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桜の花を献れ(作者 硝子屋
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#サクラミラージュ  #第2章プレイング受付締切済み  #リプレイの準備が出来次第、参加者様宛てにお手紙でご連絡します 


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#サクラミラージュ
#第2章プレイング受付締切済み
#リプレイの準備が出来次第、参加者様宛てにお手紙でご連絡します


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●母と子
 あのね、わたくし、このおはな、だいすきよ。
 ――かあさまよりも?
 ううん、ううん、かあさまもだいすき、どっちもだいすき。
 ――そう。かわいい子。
 ――かあさまも、あなたとあなたの好きなものがだいすきよ。

 病に痩せ細った痛々しい幼い腕が、零れ落ちる桜の花弁を掴み損なった情景を、まるで一葉の写真の様に憶えている。
 かあさま、と私を呼ぶ愛らしい鈴色の声が、少しずつ枯れ窶れて死を恐れる様に啜り泣いていた事を、宛ら蓄音機の如くに思い返す。
 どうしたって治せない病だった。
 どうしたって生かしてやれない娘だった。
 先立った夫が私にくれた、とても大切なあなた――背負うその不治の病が宿業であるのなら、私が代わってやれたらと何度祷った事だろう。
 毎日毎日、山から手折った桜をひと枝、あなたの枕辺に飾っていた。
 おはなきれいね、と笑う頬だけが血色を灯して色づくから。あなたがそうして、生きて笑ってくれるから。ひと枝、ひと枝、幾日も。
 陽が沈む度、連れて往かないでと彼岸へ渡った夫に幾度も願った。
 陽が昇る度、どうか置いて逝かないでと眠る娘のしろい頬を撫でながら冀った。
 それでもあなたは、死んでしまった。

 ――だから、今度こそ私が護ってあげなくちゃ。
「かあさま」
 幼く微笑む。甘い声が鈴を転がす様に私を呼ぶ。
 小首を傾げて私を待つ、『それ』はあの子にとても良く似ていた。

 膝に招いて頭を撫でてやれば、素直に甘えて『それ』は私に懐くのだ。
「……あなたが、」
 黒髪をそっと梳いてやる。絹糸の様な触り心地だった。耳の上に飾る様に、今日も手折ってきた桜をひと枝、挿してやる。
 あの子と一緒だ。
 ――嗚呼、還ってきたのだ。私の許へ。
「あなたが何であれ、私はもう――」

 母だった。
 どうしようもなく、ただの、我が子を愛してやまない――弱い母だった。

●咲き初むる、花をひと枝
 猟兵たちを呼び集めた斎部・花虎の後ろには、爛漫の春と花とが咲き誇る。
 言われずとも解る、永劫の桜を誇るかの世界――サクラミラージュ、その風景に相違ない。
「死した娘が還ってきたと、彼女はそう思う事にした」
 淡、と花虎は言う。あいも変わらずその表情には感情らしきものは読み取れない。
「が、死した者は生き返らない。当然だ。察しが宜しい皆ならば解るだろう、……そう、影朧だ」
 把握している事を伝えよう、と花虎は眼差しを伏せる。
 女の名は三枝・聖子と云い、資産家だった亡夫の遺した屋敷で慎ましく日々を過ごしているらしい。
 不幸な事故で夫に先立たれ、続いて娘まで病で失い、一時期は酷く憔悴し切っていたようだ。
 花の手折られる如く、いつ倒れてもおかしくないその様子に、彼女の許に残った数人の使用人達も気を揉んでいた――だが。
「少し前から、屋敷の中に少女の声が響く様になったと云う。……同時に、三枝夫人の表情が明るくなったとも」
 そうして屋敷の外に出掛けては、娘の好物だった甘味や、少女向けの装飾品を買い求めて来るのだと。
「……娘に成り済ましているのだろうよ。そういう影朧だ。誰かの愛を得る為に、誰かの望む儘に姿を変えるものだ」
 訥々と案内役としての務めを果たす。
 ふ、と息を吐いてから花虎は顔を上げ、くるりと猟兵達を見回してから浅く首を傾いだ。
「屋敷の所在も解ったが、どうにも一筋縄では行かなさそうだ。屋敷は小さな山の上に在るんだが、この山――どうやら、仕掛けが施されている。……恐らく三枝夫人が、影朧を護る為に細工をした様でね」
 背景が揺らぎ、件の山の風景が映し出される。
 溺れる程に咲き誇る、見事な薄紅色がそこに在る――山には桜の木が敷き詰める様に植えられており、決して高くはないその頂上に、古めかしい佇まいの洋館がひとつ見えた。
「通いの商人や使用人達が麓の街と行き来をしようとしても、必ず迷ってしまう、らしい。皆口々に云うんだ、……懐かしいひとに呼ばれた気がした、と」
 なつかしいひと、と吟味する様に繰り返した猟兵が首を傾ぐが、それを見遣って花虎は緩慢に首を左右に振る。行ってみないと解らない、の意思表示だ。
 とは言え、と切り替える様に彼女は少しだけ声を張る。
「猟兵たるおまえたちで在れば、如何様に惑わされるとも桜の迷宮如き、突破は容易いだろう?」
 信頼しているよ、と瞬く花虎の手に、燐光を帯びてグリモアが発動する。
 それからもうひとつ、と前置きが在ってから、彼女の唇がごく僅かに薄っすらと笑んだ。
「麓の街では可愛らしいお祭り事がある様だ。恐らく三枝夫人も出てくるだろうから、彼女に怪しまれない程度に接触してみるのも良いし――仕事前の息抜きとして、愉しんでしまうのも良かろうよ」
 想う人がいるのならば尚更だ、と柔い声で次を継ぐ。
「街の彼方此方にね、リボンを並べる出店がたくさん並ぶのさ。色合いも太さも様々、金の縁取り銀の縁取り、極彩色の刺繍糸で縫いとる意匠もまた千変万化――これぞ、と思うものに出逢えたら、」
「――出逢えたら?」
 笑う誰かがほら早く、と促す様に続きを尋ねる。
 グリモアの燐光の向こう側には、サクラミラージュの匂やかな春がすぐ傍らに在る――背景の投影ですら馨り出しそうなその様に、今度は猟兵たちが飛び込む番だ。
「想う誰かに、贈ると良い。親しき友でも、愛しきひとでも、……今はもう、亡き誰かでも」
 そうしてふと口を噤む。
 穏やかな沈黙が少しだけ降りてから、花虎は告ぐ。
「幾らその面影を影朧に視たところで、夫人の娘御はもう還らない。――それだけは、揺るぎない事実だ」
 括る様にいってらっしゃい、と声音を重ね、案内役は猟兵たちの背を押した。





第2章 冒険 『影法師を追いかけて』

POWただひたすら追いかける
SPD現われそうな場所に先回りする
WIZもう一度現われるのを待つ
👑11

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●桜に霞むは追憶の、或いは隣人の
 街から屋敷へと上がってゆく路には、狭いながらも石畳が敷かれ、車輌一台程度であれば充分通る事が叶うだろう。
 だからいつも、行商のために通う際にはそこを歩く。寧ろこの路一本しか整っている部分はないのだから、態々脇道に逸れる必要もない。
 山には桜が植えられている――路から逸れればあっという間に桜の森で、その光景は息を呑むほど美しい。石畳をのんびり歩きながら見事な薄紅を眺めるのも、この屋敷を訪う際の楽しみのひとつだ。
 その日もいつもと変わりなく、そうやって石畳の路を登っていた――その筈だった。
『あなた』
 ふと細い声で呼ばれた気がして、行商の男はぱちぱち瞬き辺りを見回す。すっかり白く、寂しくなった男の頭を撫でる様に風がひとつ渡って、男はつられる様に風の袂へと視線を遣った。
 その向こう、桜の森の木陰に誰かの影を見る。よくよく目を凝らせば、線の細い嫋やかな女だとすぐ知れた。
 それが誰であるのか、男が見間違える筈もない――つい一昨年に亡くしたばかりの最愛の妻が、いつか遠い昔に出逢った時の背格好そのままで、そっと佇んでいたのだから。
「おまえ、何故……」
 震えるように男が腕を伸ばす。
 石畳の路を外れ、蹌踉めく足が彼女の方へと迷いなく歩む。
 逢いたかった。
 もう一度、逢いたかった。
 まだ伝えたい事が、たくさん、たくさん在ったんだ。
『あなた、』
 女が微笑む。私はここよと言いたげに、両腕を広げて待ち兼ねている。
 夢だろうか。幻だろうか。
 何でも良かった。
 もう一度逢えるなら、何だって良かった。
「待ってくれ、いま――……」
 いま行くから。
 けれど男が漸く女の許に辿り着いた、その手が届いたと思った瞬間、ひときわ強い風がざあ、と樹々を揺らして駆け抜けてゆく。
 突風にも似た勢いに桜は乱れ視界が塞がれ、うわあ、と男は悲鳴を上げる。
 慌てて頭を振るって目蓋を押し上げるが、確かに目の前に微笑んでいた筈の女の姿はどこにも無くなっていた。幾度も名を呼びながら捜し回るが見つからない。甘く自分を呼んでくれたあの声が聞こえる事は、二度と無かった。
 途方に暮れて、夢でも見たのか、或いは狐狸の類にでも化かされたかと冷や汗をかく。
 白昼夢の所為にして、とっとと仕事を終えて帰ってしまおう――そう思って男は石畳に戻ろうと来た方を振り返るが、確かに歩んできた筈のその路がどこにも見当たらない。
 そう離れてはいない筈だ。何故、どうして。
 突風で方向が解らなくなってしまったのかと歩いてみるも、視界を塞ぐ桜の樹々で何とも進めている気がしない。
 日も暮れかけた頃合いに、漸く麓の方へと降りられたものの、もう一度上ろうと云う気力は男には最早残っていなかった。

 後日、行商仲間に話してみた所、少し前からあの屋敷へは誰も辿り着けていないのだと云う。
 曰く、皆が皆、そうやって『なつかしいひと』に呼ばれるのだと。
 応えてそちらへ行ってしまったら最後、戻る事など出来ないのだと。
 どんな真面目な商人も、抗いようもない心地にさせられてしまうのだそうだ。
 恐ろしいね、と誰かがぽつりと囁いた。

●マスターより
 第2章は、屋敷のある小さな桜の山の攻略となります。
 麓の街から屋敷までは素朴な石畳の路が敷かれており、通常であればこれを辿るだけで迷わず目的地に辿り着けますが、三枝夫人が影朧を護る為に細工を施した為、それが叶わなくなっています。
 石畳の路を進むうち、猟兵たちはどこかで誰かに呼ばれます。既に亡くなった人、かつての友達、恋人など、誰でも構いません。猟兵にとって『懐かしい』『もう一度逢いたい』と想う人の幻影が顕れます。
 幻影は皆、蠱惑的に猟兵を招き、欲しい言葉や態度を示してくれるでしょう。
 誘惑に負けてそちらに手を伸ばしてしまったが最後、延々と桜の迷宮を迷わされ、最終的には麓へ還されてしまいます。猟兵であればもう一度上り直す事は可能ですが、【第3章にて疲労状態での戦闘参加】となります。
 誘惑を振り払って迷わず石畳を進む事も、猟兵には可能です。その場合には【第3章にて通常通りの戦闘参加】です。
 疲労はバッドステータスのようなもの、とお考え下さい。詳細は第3章開始時に記載します。

・アドリブが大変強めに入ります。大事な設定を勝手に解釈されたくない、という場合は第2章へのプレイング送付をお控え頂くか、迷わず進む方をお勧め致します。(後者は多少アドリブが入るかとは思います)
 第2章への参加がない場合でも、第3章へは問題なくご参加頂けます。迷わず進んだ、という扱いになります。
・シナリオ参加者ではない別の猟兵がモチーフになっていると思しき幻影は描写しないか、大変ぼやかした表現になります。
 判断に迷う場合はプレイングを採用しませんので、ご留意下さい。
・1名及び2名程度での、少人数での参加を推奨致します。
 2名参加時はそれぞれ見る幻影が違っていても、同じ誰かの幻影を見ても構いません。迷うも迷わないもそれぞれでご選択頂けます。
・選択肢にある様に、自分から幻影を捜しに行くプレイングも大丈夫ですが、その場合には【疲労より強めのバッドステータス付与】の可能性が御座います。プレイング次第です。

 受付期間、及び諸注意は雑記に準じます。
 それでは、ご参加をお待ちしております。