7
在武侠界絶叫好吃

#封神武侠界

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#封神武侠界


0




「ヒィーッヒッヒッヒ……どうしたァ?その程度かァ、お前の料理は……」
「くッ……う、腕が……!」
「父さん!」
 美食闘技戦!
 それは、料理人たちがその料理の技を競い合う誇り高き決闘の舞台である。
「お前……まさか、父さんに毒を!」
「それがどうしたァ?料理は勝負。勝負に綺麗も汚いもあるかよ!」
 だが、その神聖なる戦いを己が悪意と欲望によって穢す者たちがいた。
「はあ……はあ……」
「ヒヒヒ……どうやらここまでのようだなァ?ヒヒ!だが安心しろォ。俺様は優しいからなァ……いま楽にしてやる!これでトドメだァ〜ッ!」
「ぐああああああっ!!」
 剛撃!!放たれる暗黒料理の波動が、いま美食闘技戦に挑む料理人を打ちのめす!
「と、父さああああああん!」
「ヒャーッハハハハ!これで約束通りお前の店はいただくぜェ〜ッ!」
 ――こうした光景は、今や街のそこかしこで繰り広げられている。それはもはや決闘ではなく、圧倒的な暴力による侵略であった。
 武侠界の東方に位置する美食都市・マオシン――そこは今や、戦場と化していた。

「……はーい。おしごとの時間よ!」
 グリモア猟兵、ロスタ・ジーリード(f24844)は猟兵たちへと呼びかける。
「武侠界でのおしごとね。オブリビオンのせいでいましっちゃかめっちゃかになってる街があるから、すぐそこに行ってなんとかしてもらいたいの」
 ロスタは続けてモニターに映像を映し出し、資料を提示した。
 美食都市マオシン。
 そこは多くの特級料理人が訪れ、そこで自らの腕を奮い、磨く場所として武侠界では知られた食の都である。そこでは日々高みを目指す料理人たちによって腕を競い合うための独特の決闘法、美食闘技戦が開催されている。
 しかし、いかなる世界にあっても心に陰をもつ者たちはいるものだ。一流の料理人たちが華々しく活躍する一方、邪悪な心によって悪しき暗黒料理を繰り出す暗黒料理界が武侠界には存在している。
「マオシンの街で、この暗黒料理界の闇の料理人たちが一斉に蜂起したの」
 そう――その暗黒料理界の暗黒料理人軍団が一斉にその活動を活発化し、街を侵略し始めたのというのだ。
 現在は、オブリビオンの影響によってパワーアップした暗黒料理人たちが次々と料理人たちを美食闘技戦で圧倒し、道場破りめいて店の看板や調理具の強奪、更に腕を折るなどといった悪逆非道の行いを続けているのだという。
「街はもう暗黒料理界の料理人たちの侵略行為によってほとんど制圧されているわ。。闇の料理人たちはオブリビオンの影響をうけてるぶん、強い料理力をもっているのよ。……だから、みんなには街を解放するためにー、暗黒料理人たちと、それを指揮してるオブリビオンをやっつけてもらいたいのよ」
 結論として、この侵略を止めるために暗黒料理界の軍勢を指揮しているオブリビオンを倒さなくてはならないということなのだ。
「というわけで、あたしがこれからみんなをマオシンの街に送るんだけど、みんなはまず暴れ回ってる闇の料理人たちを美食闘技戦で打ち破ってほしいの。……そう。料理対決よ。料理で勝たなくちゃ、連中は負けを認めないわ」
 ――曰く。
 マオシンの街を制圧しつつある暗黒料理界の者たちは、料理対決の勝敗を何よりも絶対視しており、美食闘技戦に勝利した者には無条件で従う性質を持っているのだという。
「そうして街に蔓延る暗黒料理人をやっつけながら、敵の首魁のオブリビオンを捕捉して叩いてもらいたいの。そうしたら、オブリビオンの影響を失った暗黒料理人たちも大人しくなるはずよ」
 というわけで――。
「それじゃあらためてやることの確認ね。まず、みんなは街に飛び込んで、街で暴れまわってる暗黒料理人たちを料理対決でやっつけながらオブリビオンをさがす。で、肝心のオブリビオンが出てきたら、やっつける。以上よ」
 ロスタはそのように話をまとめたのである。
「とゆーわけで、ほかに質問はないわね」
 そうして最後に確認をとると、ロスタは一度頷いてからその手の中にグリモアの光を灯した。
「それじゃ、いってらっしゃーい」
 かくして――猟兵たちは、戦場へと赴くのである。


無限宇宙人 カノー星人
 你好、猟兵。常日頃感謝。我、可能星人。
 在新世界料理勝負。熱。美味。熱烈的気迫我超期待。
 夜露死苦願。
221




第1章 冒険 『在中華世界的美食大戦』

POW   :    料理は火力!!!!!!!!!

SPD   :    料理は技術!!!!!!!!!

WIZ   :    心の料理、調理完了!!!!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 厨闘気(クッキング・バトルオーラ)!
 それは、その心に熱い料理人の魂をもつ厨士が調理を行う際に放つ気迫が、物理的な干渉力として表出する現象である。

 マオシンの街において行われる美食闘技戦は、大きくわけて二つの段階での戦いが行われると言われている。
 ひとつは、料理対決の本旨ともいえる料理の味比べ。これは中立の立場の審査員が判定することもあれば、互いに料理を食べさせ合うことで決着をつける方式もある。
 もうひとつは、その前段階である調理中の厨闘気のぶつけ合いだ。
 マオシンの街の厨士たちは、ほぼ例外なく強力な厨闘気を発する一流の料理人である。その繰り出す厨技によって生じる闘気が対戦相手を制して決着がつくという展開もこの街の美食闘技戦では決して珍しくない。そのため、マオシンの料理人たちは日々高みを目指し、より力強く、より華麗な厨闘技を繰り出すべくその腕を磨き続けていたのである。

 しかし、暗黒料理界の厨士たちもまた同様に強力な暗黒厨闘気を放つことができるのだ。
 グリモア猟兵が観た光景の中で暗黒料理人が対戦相手の厨士にとどめをさしていたのも、この暗黒厨闘気による攻撃であった。

 そう、今はこの街は暗黒厨闘気を繰る暗黒料理人たちによって支配されつつあるのだ。
 この街を窮地から解放するには、街の各地に存在する美食闘技厨房で暗黒料理人たちに勝負を挑み、勝利してゆくしかない。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ふむふむ、毒って結構旨味成分だったりするのよね。特にキノコ、わざわざ耐性つけて食べる人もいるくらいよ。私もその一人だけどね、長年かけて肉体改造してるから毒はごちそうよ♪
さて、先手を譲って毒料理も堪能したことだし、お礼に私も毒茸料理を出しますか。白孤独、別名を破壊の天使っつー毒茸御三家の一つをメインにじゃがいもの芽に河豚の肝あたりを使いましょうか。
材料や器は結界術に化術かけることで生み出すわ。
毒に耐えきれなくても安心して?化術肉体改造神罰で眷属(式神使い)に産み直してあげるから♪これも料理(物事をうまく収める)の一環よ♡
その後は勿論センシティブ料理文字数



「ヒヒヒ……次の獲物は誰だァ~!?」
 暗黒料理界の尖兵、“毒蛙のザッゴ”は調子づいていた。
 オブリビオンより授かった強大な料理力――ユーベルコード出力にかなう料理人は、この街にはほとんど存在しないのだ。
「あらあら。随分調子に乗っているみたいね?」
 だが、通りを闊歩するザッゴの背後から、呼び止める声がかかる。
「なにィ……?誰だァ!」
「――ふふ」
 “毒蛙のザッゴ”が振り返り視線を向けたその先――そこに佇み、笑みを湛えていたのはアリス・セカンドカラー(f05202)であった。
「あなた、料理勝負をしたいんでしょう?……相手になってあげるわよ♡」
 アリスは挑発的に笑みを浮かべなから、手招くようにその指先を蠢かす。
「なんだとォ……?このガキ……この俺が暗黒料理界の厨士だとわかって言ってやがんのかァ!」
「ええ、勿論」
 凄む毒蛙のザッゴ!しかしアリスはその恫喝めいた声を笑顔で受け流し、そして誘うようにぱちりとウインクしてみせる。
「ねぇ……するんでしょ♡」
「チッ……!そんなに死にてえっていうなら、望みどおりにしてやるぜェ~ッ!!」
 激昂するザッゴは、通りに店を構えていた商店へ乱暴に硬貨を叩きつけ、そこに並べられていた食材を乱暴に奪い取る!
「このキノコを使った料理で勝負だァ~!!」
「ええ、いいわよぉ……♡ いざ♡」
「「美食闘技戦!!」」
 ――かくて、舞台は美食闘技戦のために設けられた決闘厨房へと移る!

「ヒーッヒヒヒヒッ!くらえェェーッ!必殺ゥ!邪手・毒気掌~~ッ!!」
 轟ッ!!
 “毒蛙のザッゴ”がその腕を振るう!豪快な包丁捌き!吹き上がる炎!放つ気迫が漆黒の厨闘気となって立ち上り、そしていびつな大蛙のかたちを作り上げる!
 かたちを得た暗黒厨闘気は大気を震わしながらアリスへと襲い掛かった!
 邪手・毒気掌!
 それは暗黒料理界に伝わる暗黒厨闘技のひとつである。敵に対する敵意と悪意を厨闘気に乗せ、放つことによって毒を盛る恐るべき技だ!
「きゃーっ♡」
 だが、アリスは毒気掌を真正面から浴びせられながらも、涼しい顔で受け流した!
 ――アリス・セカンドカラーという猟兵は、快楽の追求者でもある。彼女にとって、毒はそのための手段の一つだ。その取扱いは手慣れており、彼女は毒に対する耐性すら得ている。
「なに……!?この俺の毒気掌が!」
「ふふ。驚いたかしら?……毒って結構旨味成分だったりするのよね。特にキノコ、わざわざ耐性つけて食べる人もいるくらいよ」
「まさか、テメェ……!」
「ええ。私もその一人よ♡」
 微笑むアリスは絶句するザッゴに微笑みかけながら、そして完成した一皿を差し出してみせる!
「さあ、完成よ!ご覧あれ――名付けて、《天国への誘い》!」
 ジャアーンッ!!料理の完成宣言に、決闘厨房付の銅鑼坊主が銅鑼を打ち鳴らす!
「さあ♡」
 そしてアリスは進み出ながら、その一皿をずいと押し付ける!
「ば、バカ野郎!!そんな話を聞いて誰が食うか!そんな……そ、そんな……!!」
 ザッゴは恐れおののきながらじりじりと後退し、アリスから逃れようとする。――だが、その手はいつの間にか箸を握りしめていた。震える指先!揺れる視線はアリスの差し出す皿を凝視する!
「な、なんだ……!?か、身体が勝手に……!」
 いつしか逃れようとするザッゴの足は止まっていた。その箸は、ゆっくりと皿上の料理へと向かう!
「だ、ダメだ……明らかに危険だっつうのに、こ、この料理が食いたくてたまらねェ……!!い、嫌だ!死にたくない!嫌だあああああああああ!!」
「召し上がれ♡」
 ――ぱくり。
 そして、“毒蛙のザッゴ”はアリスの料理を食べた。
「こ、これは……ッ!!」
 奔る稲妻。毒蛙のザッゴが双眸を見開く。
「口に含んだ瞬間舌の上いっぱいに広がる濃厚な旨味……。その後からくる、びりびりと舌が痺れるような感覚!あ、ああ、この味付けは辛味噌……皿全体に広がった辛味噌の味わいがすべての食材を包み取り調和を取っているゥ~ッ!!おお、茸と河豚の肝の強烈な旨さが口の中で爆発しているゥ~ッ!!あ、暴れる!暴れるぞ……ああああ暴れる!!荒れる!!これはまさに旨さの暴力ゥ!ヒイイ~ッ!お、俺の、俺の舌が、頭が、頭がァ~ッ!!」
 毒蛙のザッゴは咆哮しながら天を仰ぎ、そして目と耳と鼻と口から激しい光を放ってから爆発四散した。ユーベルコード力を織り込まれたアリスの料理に耐え切れなかったのだ。
「耐え切れなかったみたいね……。でも、安心して♡ あなたのことはちゃんと産みなおしてあげるから♪」
 しかし、ここですかさずアリスはザッゴの肉体と魂魄を魔術的なアプローチで絡め取り捉えたのである!アリスは更に己の行使する魔術を用いて、ザッゴの残骸を素材にその命を再錬成。彼女の眷属となりうる見目麗しく女装が似合う可憐な男児として再誕させるのである。
「……えっ。なに、なにがどうなって……」
「これも料理の一環よ♡」
 瞬間的かつ強制的に行われた輪廻の巡りに戸惑う元ザッゴの腕をアリスは掴み、そして物陰へと引きずり込んでゆく。
 ここから先は(全年齢向けコンテンツでは不可能な描写)の時間だ。これ以上は描写が困難な情景となるため、いったん場面を打ち切らせていただく。

 ――それはともかくとして。
 かくして、マオシンの街に猟兵たちが降り立った!猟兵と暗黒料理界との戦いが、遂に始まったのである!

成功 🔵​🔵​🔴​

フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎

WIZ判定

・行動
UCを使用して食材を蘇らせ
採れたての鮮度を保ったままの食材を見せつけつつ
かざした手のひらからの電磁覇気により
芯から火の通ったレンジ調理をして見せる

・セリフ
さあ、この私に挑戦するものは居るのか!

我が磁極流の電磁覇気にかからば
あらゆる対象は活殺自在、この魚とてこれこの通り!
(針を打って気を流し込むとまな板の上の魚がぴちぴちと跳ね回り
其処を医術の腕前で正確に三枚に下ろす)

更に電磁覇気ならば表面を焦がさず中にまで火を通すことが可能!
仕上げに焼き目を付けるだけで最適な火加減に全体が仕上がるのです!
(両の手をかざすと魚から湯気が上がり
仕上げに皮目を焼くと美味しそうに仕上がる)



「なんという荒れようでしょうか……!……これは捨て置くわけにはいきませんね」
 思わず目を覆いたくなるような惨状――。暗黒料理界によって荒らされたマオシンの街並みに、フローラ・ソイレント(f24473)は憤る!
「ここは、この私が腕を振るうべきときに違いありません……然らば、ここは人々を虐げる暗黒料理界なる者どもを一気呵成に叩きのめさなくては!」
 拳を握り、その眼差しを街路の先へと向けるフローラ。その視界の先には、蠢く邪悪な暗黒料理人たちが下卑た笑みを浮かべている!
「ゲヒヒ……なんだァ、テメェ……」
「その恰好……どうやらテメェも料理人らしいがァ」
 ざざ――ッ!路地から現れた暗黒料理人たちがフローラを囲む!
「フッ……。徒党を組まねば女一人にも手出しできぬ雑兵どもめが」
 だが、フローラは強者としての余裕か。ほんの僅かのたじろぎすら見せることなく、挑発的に笑みを浮かべてみせる!
「あんだとォ……?」
「どうしました。あなた達も料理人なら、美食闘技戦で決着を付けるのが筋というものではないですか」
「なにィ!」
 フローラの言葉に激昂し殺気立つ暗黒料理人の群れ!にわかに空気が熱を帯び始める!
「いつまで無意味に吼えているつもりです!さあ!この私に挑戦するものは居るのか!」
 ざ――ッ!フローラが抜き放ったのは、一振りの包丁だ!そこに刻まれる厨士の証は美食闘技戦許可証!フローラは暗黒料理人たちに挑戦状を突き付けたのだ!
「テメェ……この俺を暗黒料理界の雄、“人食い鮫のアッカン”様と知っての挑発かァ!?」
「知りませんね。……さあ、応えてください。受けるのか、逃げるのか!」
「ふざけやがって!テメェ、ブッ殺してやるぜ!」
 咆哮!敵意と憎悪を燃やす双眸でフローラを睨めつけながら、人食い鮫のアッカンは食材を並べる屋台に硬貨を叩きつけ、そこから食材を引きずり出す!
「この鯛を使った料理で勝負だァ!」
「わかりました。では――いざ!」
「「美食闘技戦!!」」
 ――かくて、舞台は美食闘技戦のために設けられた決闘厨房へと移る!

「くらえエェッ!!我が究極美食闘技ィッ!螺旋・大海嘯ォォォ!!!」
 ゴオオオーッ!!渦巻く厨闘気ッ!人食い鮫のアッカンがその身体から放った膨大なエネルギーが、獰猛な大鮫の姿をかたちづくる!それも一匹や二匹ではない!
 凄まじい料理力が無数に吼え猛り、そしてフローラへと襲い掛かった!
「なるほど……これがあなたの厨闘気ですか!」
 だが、フローラはそれに一歩も退くことなく、自らの調理へと取り掛かる!
「呼――ッ!」
 フローラは静かに調息しながら構えを取った。丹田で練られた氣を全身に巡らせ、磁極流活殺拳の極意をそこに顕現する!
「なに……ッ!!」
 ばぢ、ッ!爆ぜる電光が襲い来る厨闘気を弾いた!だが、驚くのはここからである!
「見よ!我が磁極流の電磁覇気にかからばあらゆる対象は活殺自在、この魚とてこれこの通り!」
 フローラの手にはいつしか針が握られていたのである。そして、その針先はまな板に載せられた鯛へと突き立てられる!
「哈ッ!」
 閃光!そして次の瞬間――まな板の上で、まるで生きているかの如く鯛が跳ねたのだ!
「な、なにィ――ッ!」
「ば、バカな!あの鯛は水揚げから半日は経った食材のはずだ!」
「それを覆すのが私の秘儀……活殺自在の【磁極流・生生流転】よ!」
「グアアアアーッ!!」
 その瞬間、フローラのユーベルコード出力は膨大かつ強力な厨闘気と化して咆哮した!凄まじいエネルギーに晒された人食い鮫のアッカンが悲鳴とともに吹き飛ぶ!
 更にフローラは跳ね上がる鯛を捉えると、その身に素早く包丁を入れ、捌いた!――医術の心得をもつ彼女にとっては、魚の3枚おろしなど児戯にも等しい。切り下ろされた鯛の身が、深皿の上へと落ちる!
「み、見ろ……あの活き活きとした鯛の身の輝き、色つや……!」
「ああ……まるで食材が生き返ったようだぜ!」
「まだまだッ!これだけでは終わりません!」
 慄く暗黒料理人たちを尻目に、フローラは更なる工程へと入る!――おお、見よ!鯛の身が落ちたその皿には、香り良い香草が敷き詰められていたのである。そして!
「そしてご覧あれ!この電磁覇気ならば焦がすことなく中にまで火を通すことが可能!」
 更なる閃光!ばぢ、ッ!音を立てて弾ける火花がスパークし、焼けてゆく鯛の匂いが立ち上る湯気とともにふわりと広がってゆくのだ!
「これでとどめ――ッ!仕上げに焼き目を付けるだけで最適な火加減に全体が仕上がるのです!」
 そしてフィニッシュムーヴ!磁極流の奥義が鯛の皮目に焼き目を加える――かくしてここに完成する必殺の一品!
「さあ、完成です……名付けて、『鯛の電磁風香草焼き』!」
 ジャアーンッ!!フローラの完成宣言に決闘厨房付の銅鑼坊主が銅鑼を打ち鳴らした!
「どうぞ、召し上がれ」
「ムウ……ッ!」
 フローラは暗黒料理人たちへとその一品を突き出す。
 躊躇うように僅かな間を置いた後――暗黒料理人・人食い鮫のアッカンは、鯛の身へと手を付けた。
「こ……この味は――!!」
 その瞬間、閃光が迸る!
「弾けるようなこの肉質……。おお、信じられない新鮮さ……!そして噛み締めるほどに湧き出す濃厚な旨味……。あの特殊な調理法が鯛の旨さをその身の中に圧縮して閉じ込めたに違いない!そして旨味の中に感じる仄かで優しい塩の味はまるで母なる海に抱かれているようだ……。だが、そうであると同時に魚介特有の生臭さは決して感じられない。これは調理の際に敷かれた香草が鯛の臭みを打ち消しつつ、この香しくも爽やかな匂いで更なる味わいの重なりを生み出しているのだ!なんという……なんという完璧な一品!お、おのれ……これは……これでは完敗ではないか!」
「お、俺達の負けだ……!」
 叫びながら天を仰ぐ暗黒料理人たち!即ちそれは決着の瞬間であった!ジャアーンッ!!銅鑼坊主が銅鑼を打ち鳴らし、戦いの終了を告げる!
「これが、私の磁極流活殺拳です!」
 そして――拳を掲げるフローラが、その勝利を高らかに宣言するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィーリィ・チゥシャン
「さて、あんたは俺にはどんな料理食わせてくれるんだ?」
互いの料理を食べさせあう形で暗黒料理人に料理勝負を挑む。
一つは無関係の人に被害を出さないため。
もう一つはそいつの料理を俺の舌で見極めたいから。

【早業】で【料理】しながら相手の厨闘気を【カウンター】で炎の【属性攻撃】を付与した大包丁で両断する。

俺の料理はもち米と具材を詰めた鶏を蒸して肉汁を具材に吸わせてから醤油を塗って揚げて香ばしさを出し、煮込んで更に旨味を増したもの。
相手の毒などの小細工を【見切り】それを除けながら純粋に料理を味わい、その上で【華味三鎮】で相手の目を覚ます。
「こんだけ上手い料理作れるんなら、暗黒料理だけなんて勿体ないぜ?」



 マオシンの街を、乾いた風が吹き抜ける。
 そして、その中央通りを颯爽と闊歩する料理人の姿があった。

 ウィーリィ・チゥシャン(f04298)。
 その男は、これまで無数の修羅場を潜り抜けてきた歴戦の猟兵であり、そうであると同時に、あまねく世界において貪欲なまでにその腕を磨き続けてきた一流の厨士であった。
 ざり、ッ。
 石畳の地面を踏み鳴らし、ウィーリィはその双眸をまっすぐに前へと向ける。
「ヒャハハハ!またカモが来やがったぜぇ!」
「おいおい、ガキじゃねえか!」
「へへへ、遊び場と間違えて来ちまったのかい?」
 その眼差しの先に立ち塞がったのは暗黒料理界の闇厨士たちである!男たちは威圧するようにウィーリィへとにじり寄り、3人がかりで囲みながら嘲笑を浴びせる!
「……この街は、料理の都なんだってな」
 だが、その程度の挑発に動じるウィーリィではない。
 ウィーリィは、その口の端に笑みすらたたえながら、男たちへと相対したのである。
「そしていまここを支配しているのは、暗黒料理界の厨士たち……つまり、あんたらだ」
「……なんだァ、テメェ」
 予想とは異なる反応。堂に入ったウィーリィの落ち着き払った態度に、男達が困惑する。
「超級料理人、ウィーリィ・チゥシャン」
 名乗りを上げるその瞬間である。ジャアーンッ!!その身に纏うただならぬ気配を察知した近場の決闘厨房の銅鑼坊主が、無意識のうちに銅鑼を叩き鳴らしたのだ!
「な、なにィ……!?超級料理人だとォ!?」
 慄く男たち!
「テメェ、まさか俺たちに美食闘技戦を挑もうってハラか!」
「ああ、その通りだ」
 しゃ、ッ。ウィーリィは愛用の大包丁を抜き放つ。無数の食材を捌き続けてきたその刃が、ぎらりと眩しい煌めきを見せた。
「さて、あんたは俺にはどんな料理を食わせてくれるんだ?」
「ヌヌヌヌヌゥ……ッ!!」
 勝負を挑む真っ直ぐな眼差しに、男が激怒する!
「ガキが……!この俺、“魔熊(マグマ)のモヒンカ”様に挑もうってのか!!」
 ダァンッ!!激昂する男が懐から抜き出した硬貨を食材露天商へと叩きつけ、そして食材を奪い取る!!
「その自信満々のツラを叩き割り、恐怖と絶望の悲鳴をあげさせてやるッ!!このニワトリを使って勝負だァ〜!!」
「ああ、いいぜ!その勝負……受けさせてもらう!」
「いざ!」
「「美食闘技戦!!」」

「くらえェェッ!!必殺暗黒厨技ィ!!熱烈紅黒乱打ァ!!」
 “魔熊のモヒンカ”はその身で練り上げた強大な厨闘気を凄まじい気迫と共に放った!轟ッ!!そこに顕現する厨闘気は赤黒く前進を輝かせた獰猛な熊の姿となってウィーリィを襲う!
「こいつは……!」
 だが、ウィーリィはそれを真正面から迎え撃った!放つ大包丁の刃が、闘気を弾く!
「……ッ!」
 その交錯の中、ウィーリィは嗅ぎ取る。料理人として厳しい修行を積んだ彼の五感を誤魔化すことはできないのだ。
「この赤と黒の彩り……強烈な自己主張!わかるぞ。お前の厨闘気の正体……これは唐辛子と黒胡椒をふんだんに使ったスパイシーな味付けだ!いや、それだけじゃない。ただ辛いだけの料理で終わらせない工夫もしっかりされている。この香りは花椒……それに香り付けのためにかなりのスパイスを使ってるな。仄かに感じる甘味と爽やかさは陳皮に甘草、桂皮!それ以上に相当のスパイスを精密なバランスで調合している!」
 そう。ウィーリィは受け止めた厨闘気の性質からモヒンカの料理の味付けを分析し、その構造を見抜いてみせたのだ!
「なに……!ば、馬鹿な!たったこれだけで俺の技を見切ったというのか!?」
「ああ。……なかなかの味付けだぜ。あんた、凄ェ料理人じゃねえか」
 ウィーリィが大包丁を振り抜いた。残る赤黒の厨闘気の残滓を振り払い、そして火にかけた鍋を竈から降ろす。
「……今度はこっちの番だぜ」
「なに……ッ!そ、それは……!」
 ジャアーンッ!!ウィーリィが鍋の蓋を開いたその瞬間、銅鑼坊主が銅鑼を叩き鳴らす!!
「さあ、出来上がりだぜッ!!」
 ふわ――。香りと共に広がる湯気が決闘厨房を包み込んだ。鍋より引き上げられた鶏肉が、皿上へと上げられる!
 それは大量の香辛料の投入によるモヒンカの刺激的な料理とは対照的に、比較的ベーシックな調味料を用いながらも丁寧に作り上げられた鶏料理であった。野菜やもち米を詰め込んだ鶏を蒸し、上げた上で煮込んだ一品だ。参鶏湯やローストチキンが近いといえるかもしれない。
「こ、この料理は……!」
「食べてくれ。この一皿のために俺は料理人になったんだ」
 躊躇うモヒンカへと、ウィーリィは皿を差し出し、そして勧める。
「テ、テメエ……!!」
「食べてくれ」
「…………!」
 そして――モヒンカは、ウィーリィの料理を口にする。
「こ、これは――この味はッ!!」
 その瞬間、モヒンカは天を仰ぐ。同時にその目と鼻と口と耳から激しい光が迸った!
「この香ばしさ……!これは表面に塗られた醤油の味!だが醤油だけではない!この蕩けるような味わいはなんだ……!?醤油のやわらかな塩味の第一印象から更に一歩進み、ひとくち噛み締めれば内側に秘められていた鶏本来の味わいが爆発!しかしその内側から野菜と米から染み出した優しい甘味が追いかけてくる……!もっちりとしながら口の中で弾け広がる旨味……。否、鳥の身だけではない。内側のもち米!これは鳥と野菜の旨さを吸い込み凝縮した至高のおこわとして完成している!この食感、この味わい。これはまるですべての食材が調和した皿上の小世界!これは……これは!」
 だん、っ!モヒンカは目と鼻と口と耳から激しい光を迸らせたまま敗北感に打ちひしがれ土下座めいたその場に頽れた。
「お、俺の負けだ……!」
「……」
 だが、ウィーリィは膝を屈したモヒンカの横をすり抜け、モヒンカが決闘厨房に完成させていた料理のもとへ向かう。
 そして、ウィーリィは箸をつけた。
「……美味いじゃないか。あんたの料理。ぴりっとしてて刺激的で……だけどそれだけじゃなく、スパイスの調合が複雑で奥深い味わいを作り出している」
「……」
 その言葉に、モヒンカは顔を上げて激しく光を迸らせる双眸でウィーリィを見た。
「こんだけ上手い料理作れるんなら、暗黒料理だけなんて勿体ないぜ?」
「……そうか」
 ウィーリィはモヒンカに手を差し伸べ、そして立ち上がらせた。
「なあ。この騒動が終わったらさ、あんた、やり直してみなよ。あんたの料理の旨さは俺が保証するぜ」
「…………ああ。考えておく」
 そして、モヒンカは頷いた。

 ――かくして、ここにまたひとつの美食闘技の決着がつく。
 勝者、ウィーリィ。そしてウィーリィは次なる勝負のために、マオシンの街を進む!

成功 🔵​🔵​🔴​

堆沙坑・娘娘
暗黒料理界…いつ聞いても美味しい料理を作るとは思えない名前をした連中ですね。
私は特別料理が得意というわけではありませんが、一芸は百芸に通ず。パイルバンカー料理を見せてやりましょう。

というわけで本日作るのは烤乳猪-气-。
前日に殺し、毛や内臓の処理を済ませた子豚のお腹の中に柑橘類の絞り汁、塩、その他調味料を入れて紐で縫い、元の姿に近い形状に。
バナナの葉で作ったハケで全体に醤油と油を塗り付けたら準備完了。
子豚から離れた地面に杭打ちし闘気爆発。その闘気の余波により豚を一瞬で焼き上げます。そのついでに周囲に命脈【貫通攻撃】の闘気も飛び散りますが美味しい料理のためです。

まだ生きているのならご賞味あれ。



「おい、そこのお前――」
 巨漢の料理人“大猪のブデイ”は、今のマオシンの街を制圧しつつある暗黒料理界の厨士である。
 ブデイは大通りに構えて仁王立ちし、街路をゆく人影へと威圧的に声を発した。
「私ですか」
「そうだ。お前だ」
 襤褸の外套で全身を覆い、目元を隠したその風体をブデイが睨みつける。
「どうやら旅人のようだがァ~……今のこの街の状況を知らないと見えるなァ?」
 ずし――ん。
 踏み出すブデイ。その巨体が一歩その靴底を街路に衝く度、周囲一帯が揺らぐ。
「このマオシンの街はもはや我々暗黒料理界が支配しているのだァ!つまり、ここを通りたくば……」
「ええ、わかっています。私はあなたたちを倒すために来たのですから」
「……なにぃ!?」
 巨大な威圧感を発するブデイへと、毛ほども動揺を見せることなくその人影は外套越しに視線を返す。
「暗黒料理界……その噂は聞き及んでいます。いつ聞いても美味しい料理を作るとは思えない名前をした連中ですね」
「なんだとテメェ……言わせておけば調子に乗りやがって!!この俺と暗黒料理界を愚弄して、生きて帰れると思っているのか!!」
「無論です」
 凄むブデイ!しかし、そよぐ風を受け流すように彼女は静かに視線を返した。
「ナめやがって……ブッ殺してやる!!燃え上がれ我が暗黒厨闘気ィッ!!」
 激昂!ブデイは怒りに拳を震わせながら街路の食材露天商へと財布を叩きつけると、すぐさまそこに掲げられていた豚肉を引きずり出した!
「爆裂骨砕打ァッ!!」
 ごォ、ッ!!剛撃!!ブデイの凄まじい剛腕が鉈のように巨大な大包丁を振るい、豚肉を叩く!その衝撃によって骨を粉々に粉砕しつつ、叩くことでその肉質を柔らかくしているのだ!更に、そこに乗せられた気迫が黒靄めいて浮かび上がりながら巨大な猪のかたちをとる!
「さあッ!この俺の暗黒厨闘気をくらって死ねィ!」
 ギュオオオンッ!咆哮と共に直進するブデイの闘気が、襤褸の外套を巻き込みながら街路に激突し、そして爆ぜた!
 霧散する闘気。そこに残されたのは、砕かれた街路の建材とばらばらに引き裂かれた襤褸布の切れ端だけだ。外套の人物はブデイの厨闘気の前に爆散してしまったのか!
「フン!跡形もなく潰れたか!口ほどにも……」
「――これはつまり、私に勝負を挑む、ということですね」
 否――!勝ち誇るブデイの背後に気配!
「……ヌウッ!?」
「美食闘技戦……でしたね。では、勝負を始めましょう」
 そこに立つ者こそ――堆沙坑・娘娘(f32856)である!
「テ、テメェ……そのいでたち、料理人か!」
「いえ。私は特別料理が得意というわけではありませんが――一芸は百芸に通ず。パイルバンカー料理を見せてやりましょう。食材は豚でいいですね?」
「ヌウ……!」
 ブデイは娘娘の湛えた静かな闘気に気圧されるように一歩退く。
 この世界では見慣れぬ風貌……そして、その腕に構えた杭のような調理器具。ただ者ではあるまい。ブデイは警戒心をあらわにする。
 しかし、ここで退いては暗黒料理界の名折れだ。ブデイはぎりと歯を噛み鳴らし、そして再び一歩を踏み出した。
「いいだろう……ならば、いざ!」
「「美食闘技戦!」」

「こうなれば、俺の奥義を見せてやるッ!!ゆくぞ、喰神暴万砕!!」
 轟音ッ!!決闘厨房に肉と骨を叩く音が響き渡る!これこそ大猪のブデイが得意とする挽肉料理の下準備なのだ!
 ブデイはその恵まれた体格から繰り出される強力な大包丁の威力と、修行によって積み重ねた繊細な技術を合わせることで本来であれば取り除く骨までも粉砕することで食材として利用しているのである!
「ブハハハハ!俺の必殺料理、犯罵悪愚で貴様も粉砕してくれる!」
「……」
 しかして一方、娘娘はその料理手順を静かに推し進める。
 娘娘は既に仕込みを終えていた。この美食闘技戦に備えてあらかじめ準備していたのである。決闘厨房の調理台に置かれたのは、既に下処理を終えられた子豚だ。
 毛や内臓の処理を済ませた子豚の腹を切り開き、その中に柑橘類のしぼり汁や塩、その他に香草や香辛料を独自のレシピで調合した風味付けの食材を詰め込み、縫い閉じた状態にしていたのである。
 それは食材である豚が再び命を取り戻したかのような姿でもあり、奇しくも原形をとどめぬまでに挽き潰した肉を用いるブデイの料理とは対照的なかたちでもあった。
 ここで娘娘は次の工程へと入る。彼女が取り出したのは一枚の大きな葉であった。
 バナナ――。武侠界では甘蕉と呼ばれる植物は、無論この世界に於いても人気の食材だ。芭蕉の木が桃源郷で甘く変質したものがこの世界に於ける起源とされており、その存在は桃と並んで仙道とのかかわりが深い。
 そうした徳高い由来をもつバナナは、その葉もまた霊的な力をもつとされているのだ。娘娘はそれを刷毛として用いながら、子豚の皮へ醤油と油を塗ってゆく。
「整いました」
 これで準備は整った。娘娘は火炊き台に豚を吊るし、そして幾許かの距離をとる。
「では、行きましょう」
 その瞬間である。――大気がやにわに熱を帯び、そして震え出した。娘娘の腕に装備されたパイルバンカーにもまた火がともる。
「なに……!?奴め、一体どんな調理を!!」
「呼――ッ」
 呼吸。体内の機関で生み出された氣が娘娘の全身を巡り、そしてパイルバンカーの内部へと力を通してゆく。
 そして!
「貫く」
 爆裂。
 娘娘の躯体で練り上げられパイルバンカーへと通された闘気が、地面へと叩きつけられ爆発した。【断气】の一撃である。
 そこに生じた激烈なエネルギーは、僅か一瞬にして子豚を焼き上げる!
「な、なにィィィ~ッ!!」
 その余波を真正面から浴びるブデイ!
「……」
 気づけば決闘厨房は焼き上がった子豚と娘娘を除き大方が瓦礫とその下敷きとなっていた。
「烤乳猪-气-……。まだ生きているのならご賞味あれ」
「……うおおッ!!」
 ――だが、瓦礫の下から這い出すブデイ!
「認めん!こんな決着、俺は認めんッ!!」
 ブデイはそこから更に走り出すと、熱く湯気をたてる豚へと箸を突き立て、そしてちぎり取った一切れを貪った!
「こ、これは――ッ!!」
 咀嚼!しかしてその瞬間、ブデイの目と鼻と口と耳から光があふれ出す!
「爆発によって焼くなどという一見雑な調理方法にもかかわらず、この火加減はなんだ!程よく火が通り、この子豚の肉の最も旨い熱さとなっている!そうか、表面に塗られていた醤油と油が子豚の皮の成分と混ざりながらぱりっと焼き上がったことでひとつの壁となり、過剰な熱の浸透を防ぎつつ風味を内部に閉じ込めていたのだ!ウゥゥ~ッ!!そしてこの噛み締める程にあふれ出す肉の旨味!まるで闘気そのものが俺を殴りつけているようではないか!!いや、それだけではない!下準備の段階で豚の内部に詰められていた味付けが肉全体に染み渡っている!雑で豪快なように見えて、なんと丁寧に計算された味付け……!か、勝てん!発想力、技術力、そしてこれを実現する闘気の強さ!いずれをとっても俺の完敗だッ!」
 咆哮!その旨さに歓喜の涙を流すブデイは、叫びながら瓦礫の上でそのままもんどりうって倒れた。その勝敗を見届け、決闘厨房付の銅鑼坊主が決着の合図として銅鑼を鳴らす。
「……これがパイルバンカー料理の神髄です」
 かくしてここにまたひとつの決着が刻まれたのである。勝者は堆沙坑・娘娘!

成功 🔵​🔵​🔴​

自動・販売機
暗黒料理人というのはすべからく邪悪である。
それは単に暗黒料理を作るからというだけではない。むしろその性根こそが本質、つまり邪悪なのだ。

己が勝つためにはあらゆる手段を講じるのが彼奴らの特徴だ。
その中には食材の買い占めなどで相手から武器を奪うなんてことも平気で行う外道である。

だが猟兵が介入した以上、彼等の目論見は崩れ去る。
毒を盛る者がいたら耐毒の者が、流通を抑える者がいたらそれに抗する者が来るのである。

自動販売機は食材の供給を止める『サーサ・ズーシ』の野望を打ち砕くために派遣されたのだ。

……いや多分稼ぎ時だから来たんじゃねと思わなくはないけど。
暗黒料理人の撃破賞金でのお支払いお待ちしています。



「おい、どういうことだ……どうなってやがるんだ!?」
「て、敵だ……この街の料理人どもじゃねえッ!!街の外から流れて来た奴らだ!」
「そいつはアレだぜ……“あの御方”の言ってた猟兵とかいう連中に違いねえッ!」
 恐慌!暗黒料理人たちは大きな混乱状態に陥っていた!
 強大な料理力をもつ凄まじい暗黒料理人の力を受けて街の制圧に取り掛かっていた筈の暗黒料理人たちは、今や狩られる側の存在となっていたのだ。
 “毒蛙のザッゴ”。“人食い鮫のアッカン”。“魔熊のモヒンカ”。“大猪のブデイ”。――いずれも二つ名をもつ暗黒料理界の雄であり、この侵略においても多くの料理人たちを血祭りにあげた強力な暗黒料理人であり、料理長クラスの厨士であった。
 ――そのいずれもが、今や猟兵たちとの美食闘技戦に敗れていたのである。
 これには残る暗黒料理人たちも騒然となった。なにしろ、エース級の厨士たちの大半を失ったということなのだ。彼らを下した猟兵たちは、今や破竹の勢いで美食闘技戦を繰り返し、マオシンの街から暗黒料理界を駆逐しつつある。
「どうすりゃいいんだ……!この力がありゃ負けねえんじゃなかったのかよ!」
 事態の変化に追いつくことができず、ただ狼狽するばかりの木っ端暗黒料理人たち――。
「狼狽えんじゃねえッ!!!」
 だが、その中から声があがる!
「気に入らねァなア……どこの貧乏人共か知らねェがよォ」
 おお、見よ。その男こそ暗黒料理界の有力料理人の一人、異界より伝来せし『寿司』を得意料理とする暗黒料理人、“サーサ・ズーシ”である。
「相手がどんな料理人だろうが、食材がなけりゃア料理なんかできやしねえんだ……。つまり、先手を打ってこの街の食料を抑えちまえばいいのさ」
「なるほど……そうすりゃ向こうは料理ができねえからこっちが勝つって寸法か!」
 邪悪!暗黒料理人たちが企むのは、対戦相手となる猟兵たちへの食材の供給を断つことで美食闘技戦に勝とうという悪辣な策略であった!
 そう。彼らが暗黒料理人である所以は単に暗黒料理を作るからというだけではない。むしろその性根こそが本質――つまり、邪悪であるからこそ。自分たちが勝つためにはあらゆる手段を講じるからこその暗黒料理人なのである。
「ヘヘヘ……そうと決まりゃあ早速行動開始だ!」
「貧乏人共がよ……目にもの見せてやるぜェ!ギャハハハハハ!!」

 ――そして。
「ククク……これでこの街の商店は全部掌握してやったぜ!!」
「ヒヒヒ……。つまり、連中が俺達に勝負を挑んでも食材なんか手に入らねえってことだな!」
 サーサ・ズーシの行動は早かった。――サーサは非合法な暗黒的手段で日頃から金稼ぎをしており、潤沢な資金力を持っている。
 暗黒料理人としてのサーサ・ズーシは、その資金力から繰り出される食材供給のストップや人を雇っての闇討ち、食品製造所への放火といった妨害行為を得意とする暗黒料理人であった。
「これでもうどうしたって連中は料理なんかできやしねえ!奴らの悔しがる顔が目に浮かぶようだぜぇ!ギャハハハハハ!」
 そして、サーサ・ズーシによる食材独占作戦は迅速に決行されたのである――。いかに猟兵といえど、虚空から食材を生み出し無から料理を創造するなどという神の御業はきわめて困難だ。たしかにこの妨害行為は非常に強力であると言えよう。暗黒料理人たちが勝ち鬨をあげる!
 ――しかし!
「お買い上げありがとうございます」
 カシャコンッ。
「は?」
 勝ち誇る暗黒料理人たちを尻目に、自動・販売機(f14256)は商品を吐き出した。
 自動・販売機は自動販売機である。多くの世界を渡り、商品を販売し、その上ユーベルコードを扱う機能まで搭載している上にしかも事件の予知までできる万能機械だ。
 今回は暗黒料理人蔓延るこのマオシンの街で商売を――もとい、オブリビオン事件の解決に協力するために赴いたのである。
「あらやだ。なんでも売ってるのねぇ」
「本日は生鮮食品も特価で取り扱っております。ご希望の商品のボタンを押すか、口頭でお申し付け下さい」
「助かるわぁ」
 ご近所の奥様が自動販売機に硬貨を投入し、ボタンを押す。ガシャコンッ。筐体から吐き出されたのは豚バラ切り落としパックである。家計に嬉しい100gあたり88円のお買い得商品であった。
「お買い上げありがとうございます」
「謝謝~」
 良い買い物にゴキゲンで帰ってゆくご近所の奥様。――そして、その一部始終を目の当たりにしていた暗黒料理人たちは愕然としていた。
「な……なんだテメエ!?」
「誰に断って商売してやがる!!」
 しかし、切り替えが早い!すぐさま身を翻した暗黒料理人たちは集団で自動販売機に詰め寄り因縁をつけ始める!
「営業妨害はご遠慮ください」
 だが、こちらは数多の世界を行き来し商品を売りさばく自動販売機であり、ユーベルコードを扱う機能まで兼ね備えた万能機である。当然ながら防犯装置も備えているのだ。自動販売機は商品取出口から非致死性飲料缶弾頭を360m/sの速度で発射した。
「グアーッアルミ缶!!!」
「グアーッポイ捨て!!!」
 カーン!小気味よい音を立てて顔面に非致死性飲料缶弾頭を叩きつけられ次々に昏倒する暗黒料理人たち!
「営業妨害はご遠慮ください」
「な、なんだ……何が起きグアーッスチール缶!!」
 困惑するサーサ・ズーシ!しかし自動販売機は立て続けに非致死性飲料缶弾頭を叩きつける!たまらず気絶するサーサ・ズーシ!
「ご希望の商品のボタンを押すか、口頭でお申し付け下さい」
 ――そして、自動販売機は動き出した。
 商店の食材は暗黒料理人たちに抑えられてしまったが、それを見越して自動販売機は食材の供給を行うために派遣されてきたのである。
「お金を入れて下さい」
 かくして、美食闘技戦に挑む料理人たちのために自動販売機はマオシンの街をゆく。
 そんな中、戦いは次の局面へと進もうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『暗黒料理異形象形拳伝承者『遍喰らい』』

POW   :    春夏秋冬(ひととせ)
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【化生・悪魔・異形の捕食行為を模した型】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD   :    前後左右(なかぬき)
【化生・悪魔・異形の捕食行為を模した型】が命中した部位に【気(エナジー)】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ   :    東西南北(よもひろ)
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「た、助けてくれえッ!」
 戦況は変わりつつあった。
 暗黒料理界の料理人たちは猟兵たちとの戦いによって叩きのめされ、マオシンの街の支配領域を次々と解放されている。
 趨勢は傾きつつある。猟兵たちとの戦いから逃れるべく、暗黒料理人たちは、マオシンの街の中央広場へと逃げ込もうとしていた。
 しかし。

「アイヤー。なんちゅう役立たずどもネ」
「ごぶぉっ!!」
 貫手!獣の牙が鋭く獲物を刺し穿つように、放たれた腕が無慈悲に暗黒料理界の厨士たちを打った。
「せっかくあの御方の料理力とワタシたちの氣を分け与えてやったとユーのに、こんなブザマな姿を見せるとは」
「惰弱にも程があるヨォ」
 その拳を放ったのは、これまで猟兵たちが戦って来た暗黒料理界の厨士たちとは比べ物にならないほどの強力な厨闘気を纏った者たち……即ちオブリビオンである!
「哈!」
「グアーッ!!」
 オブリビオンたちは暗黒料理人たちをごみのように打ち棄てると、そのまま静かに闘気を高めた。
「さあ、来るがいいネ」
「ワタシたちはこれまで相手にしてきたザコどもとはワケが違うヨ」
 遍喰らい。あらゆるものを喰らうべく、『料理』の腕を磨き続けて来た異形の拳士たち。
 その功夫の腕は獲物を喰らうために極限まで鍛え抜かれており、更に、料理人としても確かな腕をもつ強力なオブリビオンだ。
「これ以上ワタシたちとあの御方の野望は邪魔させないヨ!」
 遍喰らいたちが陣形を組み上げ、更に、それと同時に中央広場に作られた決闘厨房において煮炊きの準備を開始していた。美食闘技戦に持ち込まれたとしても猟兵たちを迎え撃とうという腹積りなのだ!

 猟兵たちよ。君たちは真正面から戦いを挑んでもいいし、美食闘技戦によってオブリビオンたちの制圧を試みてもいい。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

異形象形拳……聞いたことがある(民明書房的解説)
まぁ、私も淫魔の型だけなら暗黒料理異形象形拳を使えなくもないけどね。淫魔の捕食行為の模倣、つまりいつもどおりのセンシティブなあれです♡
武器を振るう腕の間合い、腰を入れる胴の間合い、踏み込む足の間合い、走り込む歩の間合い、その間合い全てが私の結界術の内である。不用意に踏み込めば忽ちに攻撃エネルギーを捕食されその威力は甘噛みやじゃれつきレベルに変換(化術)されるだろう。
魅了する意味で魂を略奪し、情熱の炎でじっくりコトコト煮詰め、出来上った所を捕食してエネルギー充填。コレが私のセンシティブ料理マハーカーラよ♡



「哈!」
「哎呀!」
 襲撃!袖口より覗く暗器爪はさながら饕餮の牙めいてアリス・セカンドカラー(f05202)を襲う!
「く、ッ!」
 しかしてアリスは咄嗟に露店の影へと滑り込み、その一撃を躱した。代わりに爪を叩き込まれた屋台が爆ぜて砕け散る!
「どうヨ!ワタシたちの異形象形拳の味は!」
「今からこの爪でオマエを引き裂いて料理してやるヨ!覚悟するヨロシ!」
「なるほど、異形象形拳ね……聞いたことがあるわ」
 アリスは素早く身を翻し、遍喰らいどもの攻撃を逃れながら瞳孔を細めた。
「暗黒料理異形象形拳……その流派は、獲物を捕らえ、牙を突き立て啄み喰らう古今東西の化生の『食事作法』をイメージして生み出された拳法と言われているわ。あらゆる打撃は鋭く研ぎ澄まされた牙として獲物に喰らいつき、そして文字通り捕食する……。恐ろしい技の使い手ね」
 だが、アリスはこれを知っている。――何故ならば、彼女もまた異形象形拳の使い手なのだ。
 異形象形拳・淫魔の型。それは、かの流派の中でも異端であるとされながらも一定の地位をもつ(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)を用いて(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)的に“捕食”する派閥だ。アリスはある意味でそれを更に過激にした新たな流派・終夜吸精幻魔拳の伝承者としての顔も持ち合わせているのであった。
「こいつ、ただものじゃないヨ!」
「うふふ♡ おなじ流派の武術家同士よ♡ 仲良くしましょ♡」
 踊るように巧みな体捌きで揺れるアリスは、遍喰らいたちにその身体を捉えさせない――アリスは既に敵の一挙手一投足を掌握していたのだ。
 武具を振るう腕の間合い。腰を入れる胴の間合い。踏み込み詰める足の間合い。走り込む歩の間合い。そのいずれもが、アリスには手に取るように理解できた。――アリス・セカンドカラーという猟兵のもつ能力の特徴は、結界術の応用による空間の掌握と支配権の行使である。アリスは既に先手を打って自己を中心とした半径数メートルの空間に自己領域を展開していたのであった。
 であるが故に――!
「生气!!」
 裂帛!怒号めいた叫びとともに、遍喰らいの爪がアリスの躯体を捉えたのである。
 しかし、その一撃を受けたアリスはこゆるぎもしない。――展開された領域の行使する支配権が、彼女を襲った遍喰らいの拳に宿っていたエネルギーを吸収/捕食したのだ。それによって大きく削がれたその一撃は――まさに、子猫がじゃれつき甘噛みをした程度の威力にまで殺がれていたのである。
「あは♡ 遊びたいのね♡」
「哎呀!?」
「どういうことヨ!?」
「こういうことよ♡」
 まるで愛玩動物を撫でるかのように、攻撃がいなされた――その事実に困惑した遍喰らいたちへと、アリスは素早く絡みつく!
「さ♡ たのしい時間にしましょ♡」
「あっ……、あ、や、やめ、やめるネ……ん、んぅっ、そ、そんなところ……ひっ!」
「アアアアーッ ひゃめへっ らめぇ、おかひくなっひゃうぅぅ!」
 接触部位からアリスは遍喰らいの肉体へと干渉する!触れた指先を通じてその魂魄へと伸ばし、そして掌握したのである!
 歴然たる実力差は僅かな抵抗すら許すことなく、その指先がたちまちオブリビオンの存在核を捉えた!
「えいっ♡」
「あああああーーーっ♡」
 (全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)!魂魄を抜き取られた遍喰らいが(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)しながら骸の海へと還る!
「そして次はこうよ♡」
 アリスは抜き取ったオブリビオン魂魄を寸胴鍋へと放り込み、そして広場に誂えられた決闘厨房の竈へとセットしながらそこに点火した!
「略奪した魂をー♡ 情熱の炎でじっくりコトコトしてー♡」
 炎が燃え、そして鍋の中でオブリビオン魂魄が煮立つ!
 アリスは生体活力――エナジーを糧とする特殊な生命である。そうした命の在り方をしているが故に、オブリビオン魂魄。そしてそこに秘められたエナジーこそが彼女の眼には食材として映るのだ。
 食材であるならば当然調理台にかけることが可能である。そう、これこそが彼女の必殺料理のひとつなのだ!
「さあ、これでできあがり!コレが私のセンシティブ料理マハーカーラよ♡」
 ざあ――ッ!!アリスの繰る術的な炎によって煮詰められたオブリビオン魂魄が、赤黒いエネルギー物質として精製され完成した!それは凝縮された純粋なエナジーの塊である。
「んっ。美味し♡」
 アリスはそれを“捕食”する――!濃縮された生体活力の濃厚な味わいがその五感を蕩かせる。そして摂取したエナジーによってアリスの全身へと漲る活力!
「ヤバいネ……あれはヤバいヨ!」
 慄くオブリビオンの群れ!――そう、彼女たちはその光景を目の当たりにしたことで理解したのだ。
 どちらが捕食者であり、そしてどちらが被捕食者であるのか、ということを。
「うふふ――♡」
 そして――アリスの双眸が、次なる獲物を捉える。
「ヒッ」
「まてまてー♡」
 たちまち逃げ出すオブリビオン。しかし、そうは問屋が卸さない。駆け出すアリスが遍喰らいたちを追い回す!
 ――かくして、ここに捕まったら捕食されて死ぬ地獄の鬼ごっこが開催されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎

・行動
美食闘技戦で勝負を挑む

・内容
厨闘気を利用し嗅覚を刺激することで、
直接相手に点穴したのと同じ刺激を脳に与え、
UCで匂いを嗅いだだけでお腹が張り裂けるまで
勝手に手が料理を食べ続けるように敵を操る

・セリフ
(食材準備しながら)
秘孔への点穴は脳への刺激を与えるという点においては
この厨闘技場内ならば嗅覚で代用できるはず

(各種香辛料を鍋で焼きながら香ばしい匂いのする炒飯を作り)
匂いだけで僧が塀を飛び越えたという佛跳墻(ファッティウチョン)の如く
このチャーハンを前にして誰もが食べ続けずには居られない
これぞ無限炒飯(インフィニット・チャーハン)です!

(食べ続けた敵が倒れたら)
お粗末さまでした



「哈!」
「はあッ!」
 交錯!衝突!激突!拳と拳が、蹴り足と蹴り足がぶつかり合い、その間に弾ける闘気が火花を散らす!
「ちいッ!こいつ、強いネ!」
 ばぢ、ッ――!弾けるスパーク!その一撃の威力に怯んだオブリビオンが困惑と共に後退する!
「――理解できましたか。これが我が磁極流活殺拳の威力です」
 フローラ・ソイレント(f24473)は静かに呼吸を整えながら、眼前に居並ぶ敵の群れへと鋭く視線を向けた。
「どれほどの数で攻めてこようとも、我が武技を凌ぐことはできません」
 静かなプレッシャー――フローラの纏う覇気が、物理的な圧力すら伴って遍喰らいたちを圧倒した。
「お、おのれ……」
 窮地に陥る遍喰らい――しかし、彼女たちは単純な力比べでは勝てぬと察したその瞬間、別の攻め手を用いることに方針を変じたのだ!
「ならば……こちらの勝負ではどうヨ!!」
 ばッ!オブリビオンの群れは素早く身を翻すと、広場に誂えられた決闘厨房の竈台へと飛んだのだ!
「なるほど、美食闘技戦で決着をつけようというわけですか!」
 フローラは応じるように石畳を蹴り、その身を躍らせた。調理台へと向き合い包拳礼!更に応じてオブリビオンたちが素早く包拳礼を返す!
「説明はいらないようネ!」
「勝負料理は!」
「炒飯!」
「承知!」
 滾る闘志を乗せながら交わされる言葉と視線!僅か一瞬で戦場の空気は激しく熱を帯びる!
「いざ!」
「「美食闘技戦!!」」
 ジャアーンッ!!銅鑼坊主が銅鑼を叩き鳴らす!響く銅鑼の音とともに、美食闘技は始まった!

「はああああーッ!!魔性・牙乱舞ゥッ!」
「続けてぇッ!暗黒猛爪襲!!」
「見ヨ!これこそ我らが厨技!喰魔・三連撃ぃッ!」
 連鎖する厨闘技ッ!!激しく暴れ回る必殺の厨闘気が咆哮と共に爆ぜてフローラへと押し寄せた!
「そうはいきませんッ!」
 ばァんッ!!弧を描くつまさき!鋭く空を裂きながら放たれた足技は電光と共に襲い来る厨闘気を弾き返す!
「ムウッ!」
「今度はこちらの番です!」
 そしてフローラは火にかけた中華鍋を力強く振るうッ!じゃッ!跳ねる油!その中に踊るのは、刻まれたネギ!ニンニク!生姜!更に様々な香辛料を絶妙なバランスでミックスしたオリジナルブレンド・スパイスだ!刺激的でありながら香ばしい香りが、油へと染み渡る!
 立ち上る湯気とともに広がる香味油の香り!それはあまねく生命の脳髄を揺さぶり食欲という原初の欲求を激しく刺激して狂わせる悪魔の誘惑である!
「なッ……!」
「そして、こうッ!!」
 続けざま!フローラは香味油の跳ねる中華鍋の中へと炊き上げた米を叩き込んだ!
(……私の技は、この美食闘技戦においても有効なはずです)
 刹那、フローラは思考する。体内で練り上げた氣を、握り込んだ中華鍋を通じて食材へと流し込みながら!
(我が必殺の【電磁点穴】……!……脳への刺激を与えるという点に於いては、嗅覚を通じた刺激でも代用できるはず!)
 じゃアッ!跳ね上がる中華鍋!香味油の衣を纏いながら、炒飯と化した飯が舞う!フローラが鍋を振る度に広がる香味油の香り!
「こ、これは……!」
「なんて……なんてこと……」
 ――いつしか、オブリビオンたちの調理の手は止まっていた。戦場に満ちる魅惑の香りと強力な厨闘気の圧力の前にもはや抗うことができなくなったのだ。嗅覚を通じてその脳天を直撃した必殺の電磁点穴がその意識を塗りつぶしたのである!
「さあ、これで完成です!匂いだけで僧が塀を飛び越えたという佛跳墻の如く……このチャーハンを前にして誰もが食べ続けずには居られない!」
 その機を逃すまいと、フローラは畳みかけるように炒飯を器に装い、そして掲げ上げた!
「これぞ無限炒飯《インフィニット・チャーハン》です!」
「あ、あ、あああーッ!」
「な、なんて美味そうな炒飯……!」
 既に術中!差し出されたその一皿の前にオブリビオンたちが忘我する!
「どうぞ、召し上がれ!」
「い、頂くヨ!」
「待つネ!ワタシが先ヨ!」
「慌てずとも、いくらでもおかわりを作りましょう!」
 群がる遍喰らいの集団が無限炒飯へと押し寄せた!――フローラはその成果に口の端を歪めると、追加の炒飯を作り始める!
「おかわり!」
「ウウゥーッ!う、美味すぎるネ……!手際よく作り上げられた香味油はネギの香ばしさを中心としながら数多の香辛料が複雑に絡み合い虹色の交響曲を奏でているヨ……。そしてこの香り油に包まれながら炒まったこの米のなんたる旨さ!こ、コメを油で炒めただけ……だというのに、ただそれだけだというのになんという味わい深さ!」
「て、手が止まらない!止まらないヨー!」
「お、おなかいっぱいなのに!でももっと食べたいヨ!おかわり!」
「ええ、どんどん召し上がれ!」
 ――食べ過ぎだ!おなかの膨れたオブリビオンが悲鳴をあげる!だが、彼女たちは炒飯を食べる匙を止めることができない!
「グエーッ!!」
「も、もうダメヨー!!」
 そして、とうとうノックダウン!キャパシティを大幅に超過した炒飯の大量摂取によって、オブリビオンたちがとうとう戦闘不能に陥ったのだ!
「……お粗末様でした」
 倒れるオブリビオンたちを見下ろして、フローラが礼をする。
 そう、こうして敵を倒すことこそが彼女の狙い――かくしてここに決着がつく!美食闘技戦は、フローラの圧倒的勝利であった!

成功 🔵​🔵​🔴​

堆沙坑・娘娘
再度、美食闘技戦にてお相手します。
パイルバンカー料理の更なる真髄を見せてあげましょう。

敵に有効な杭を召喚し、パイルバンカーに装填。
そして全ての闘気をパイルバンカーに。

…これにて完成。杭をパイルバンカーから取り出し、食卓に。
この杭は開くように出来ています。
そして杭の中には闘気に満ちた麻婆豆腐が。

これが私の料理、麻婆豆腐-气-です。

この麻婆豆腐はとにかく辛い。何処かの異邦で激辛チャレンジなるものの対象になるものよりもずっと。
しかし麻婆豆腐が纏った闘気が食べる者の粘膜を保護するので辛さに比べるとずっと食べやすいはずです。

さあ、限界を越えた辛さとカプサイシンによるセロトニンの過剰分泌を味わうがいい。



「おのれェ……!」
「許さんネ!」
「血祭りにあげてやるヨ!」
 いきり立つオブリビオン軍団!マオシンの街の中央広場で咆哮しながら、遍喰らいたちが暴れまわる!
「死ねーッ!!」
「無駄です」
 襲い来る異形象形拳の魔の手!しかし、堆沙坑・娘娘(f32856)はその襲撃の悉くをいなし、躱してみせた。
「はッ!」
「ンアーッ!」
 ガオンッ!!インパクト!射出された杭打ち機械の放つ衝撃が群がるオブリビオンどもを弾き飛ばす!
「オブリビオンといえど、この程度ですか。薄味に過ぎます」
「なんだとォ!?」
「ゆ、許せないヨ……!」
「もはやこの戦いも消化試合に過ぎません。既に決着はついたも同然です」
 ざッ!娘娘は杭打機をかざしながら、オブリビオンの群れへと相対し、そしてその身の内に宿す強力な覇気によって圧倒した。
「ま、まだ終わってないネ!」
「そうヨ!まだ我々には美食闘技戦がある!」
 しかし、娘娘の闘気に圧倒されながらもなおオブリビオンたちは敗北を認めない!
 オブリビオンの群れは拳を掲げて抗議すると、決闘厨房に誂えられた調理台へと身を躍らせたのだ!
「……承知しました。では、再度、美食闘技戦にてお相手します」
 そして――娘娘は、それに応じる!
「パイルバンカー料理の更なる真髄を見せてあげましょう。――いざ」
「美食闘技戦!!」
 かくして成立する合意!銅鑼坊主が激しく銅鑼を打ち鳴らす音が響く!ジャーンッ!!かくしてここに戦いの火蓋が切って落とされる!

「くらうがいいヨ!牙噛重連奏ォ!」
「ハアーッ!!」
 爆発!
 オブリビオンの群れは厨房にて見事なコンビネーションから混ぜ合わせた厨闘気に指向性をもたせ、牙のカタチを作り上げながら射出する!襲い来る闘気はさながら多段連装砲!
「……その程度の威力では、私のパイルバンカー料理には届きません」
 しかして――迎撃ッ!娘娘はその腕を掲げると、纏うパイルバンカーに込めた必殺の闘気を解放して大気中へと撃ち出したのだ。圧倒的なエネルギーの差をもってオブリビオンたちの放つ厨闘気を迎撃するパイルバンカー料理のパワーは、襲い来るオブリビオンたちの厨闘気のことごとくを撃ち落とす!
「くッ……なんて威力ネ!」
「いいえ。我がパイルバンカー料理の真なる姿は、ここからです――」
「なにッ!!」
 凄まじい闘気が強烈な物理的干渉力をもって押し寄せる!巨大なプレッシャーにたじろぐオブリビオンたちの前で、娘娘は更に信じがたい光景を見せつけたのである!
「は―――ッ!!」
 呼吸ッ!
 ――そして、一瞬の凪。
 広場に満ち満ちていた巨大なプレッシャーが、急激に消失したのだ。
 否。消えたのではない。――収束し、圧縮され、そして濃縮されたのである。熱を帯びながら拡散した闘気は、僅か一瞬で娘娘の携えたパイルバンカーの杭へと詰め込まれたのだ。
「彼奴め、一体なにを――」
 その光景を前にして困惑するオブリビオンたち。――しかし、その様子を尻目に娘娘の調理工程は更に進む!
「貫く」
 その瞬間である!バァァンッ!轟音!そして同時に大地と大気を震わせながら、膨大な出力で厨闘気が放たれる!杭へと集中させた闘気を、一気に解放したのだ。
「ンアーッ死ぬ!!」
 そのエネルギーの余波に巻き込まれたオブリビオンが悲鳴をあげて爆散!しかして娘娘は構うことなく調理台へ突き立てた杭へと指を触れ――“開いた”!
「……これにて完成」
 その“杭”は調理器具だったのだ。内部に食材を詰め込み、そしてその杭へと氣を流し込むことで閉じ込められた内部の食材へと熱と闘気のエネルギーを通し、料理を完成させる――いわば一種の圧力鍋である。
 かくして、そこに完成した料理こそ――
「これが私の料理、麻婆豆腐-气-です」
 麻婆豆腐!
 それは豆板醤を中心とした辛味調味料を用いて豆腐や挽肉といった食材を加熱することによって完成する、現代アース世界線においても人気の高い、辛味が特徴の中華料理である。
 しかしこれは辛さの調整や香辛料の配合量、材料の選択や味付け、調理の腕によって大きくその評価が変わる一品だ。
「さあ、召し上がれ」
 そして漂うのは、香ばしくも刺激的な香辛料の香り――!その強烈な匂いは、この闘気麻婆豆腐が激烈な辛さをもつ一皿であることを示していた。
「む……!」
 そこに漂う激辛の気配に躊躇するオブリビオン。しかし、娘娘は表情一つ変えることなく勧める。
「たしかにこの麻婆豆腐はとにかく辛い。……しかし、それだけではありません」
 さあ、どうぞ。
 娘娘は慄くオブリビオンのうち一人へと匙を押し付けるように手渡し、そして席に着かせる。
「どうぞ」
「……こ、こうなればヤケよ!」
 暫しの逡巡を置いて――オブリビオンは、娘娘の麻婆豆腐へと匙を入れた。
 そして――
「こ、これは――!!」
 叫ぶ。
「か――辛いッ!!この舌先の痺れるような刺激は強烈な麻辣の味!まるで体の中で炎が燃え盛っているようヨ!だけど――ただ辛いだけじゃないネ、この味わい。辛くて、熱くて、こんなの到底食べられない――そう思ったはずなのに、どんどんいけるヨ!不思議ネ……これはいったいどういうコトヨ!」
「その秘密は、調理工程で食材へと伝播させた闘気にあります」
 疑問を呈するオブリビオンへと、娘娘は冷徹に返してみせた。
「この麻婆豆腐には、パイルバンカーを通じて私の闘気を込めました。このエネルギーが、食した者の身体がもつ代謝や免疫力、そしてチャクラを活性化し、“痛み”である辛さへの対抗力を与えているのです」
「なるほど……そういうことネ!」
「そうか!医食同源ヨ!」
「はい。ですから、辛さに比べるとずっと食べやすいはずです」
 そう。娘娘がここまでパフォーマンスめいた調理方法を用いたのも、ひとえにそのためである。氣の力を用いて調理することで、彼女は作り上げたメニューをさらに一段上の存在へと昇華していたのだ!
「う、美味い――!これは美味すぎるヨォ!」
 舌先から脳天に突き抜ける辛味の暴圧!カプサイシンの供給によ遍喰らいたちの脳内で急激かつ大量に過剰分泌される脳内物質!セロトニンに満たされる脳髄が、オブリビオンたちに敗北を宣言させる!
「これはワタシたちの負けネ……く、くやしい!!」
 断末魔めいた悲鳴!それを最後に残し、オブリビオンは天を仰ぎながら倒れた!
「理解できましたか。……これが、パイルバンカー料理です」
 かくして勝利を宣言する娘娘!猟兵たちとオブリビオンによる美食闘技戦は、またひとつここに決着を刻んだのである!

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィーリィ・チゥシャン
ザコ、か。
お前達には見えてないんだろうな、暗黒料理人の中に確かにあった「光」が。
いいだろう。
美食闘技戦、受けて立つぜ。

【カウンター】で料理の邪魔をする奴の厨闘気を切り裂きながら【早業】で無数の海老を捌いて歯ごたえを残す程度に身を荒く挽いて刻んだクワイと混ぜて蒸し、その間に剥いた殻を揚げてスパイスで味付けし、蒸した身の外側に揚げた殻を貼って龍を象った【料理】を作る。
殻を貼る糊代わりのソースには海老味噌を仕込んで旨味を増し、殻の辛さが身の甘みを引き立てる。
スパイスの使い方はモヒンカには負けるけど、あいつと勝負したからこそ出来た料理だ。
料理は食うか食われるかだけじゃない。高め合う事だって出来るんだ!



「猟兵どもめ……!よくもやってくれるヨ!」
 ――オブリビオンたちとの戦いは、猟兵たちが優位性を保ちながら進んでいた。
 遍喰らいの群れは既に幾度となく猟兵たちとの交戦を繰り返し、しかして猟兵たちの放った膨大な厨闘気によって打ちのめされつつある。
 しかし、彼女たちは未だ敗北を認めていなかったのだ。
「あんなザコどもを倒してきた程度で調子に乗ってェ!」
 オブリビオンは血走った双眸で激昂と共に叫び、その怒りを露わにする。
「……ザコ、か」
 ウィーリィ・チゥシャン(f04298)は、その敵意に真正面から相対していた。
「俺は、そんなことはなかったと思うぜ」
「何を言うネ!」
「あの程度の覇気と料理力しかないゴミクズども、ザコというほかにないヨ!」
「……」
 ウィーリィは、僅かに眉を顰めながら敵群を睨み返した。
「お前達には見えてないんだろうな。あいつらの……暗黒料理人の中にも確かにあった「光」が」
「何を愚かなことを言うネ!」
「フン……あの程度の連中の肩を持つなど片腹痛いヨー!」
「そうヨ。笑わせてくれるネ!」
 しかし、罵倒――!オブリビオンたちから向けられたのは、嘲弄と悪意に満ちた悪罵ばかりだ。
「……」
 ぎり――。ウィーリィの握った拳に、強く力が込められた。
「あんな連中の肩を持つナド、お前の料理力も大したことないというコトヨ!」
「呵々!ならばこの勝負ワタシたちがもらったヨ。オマエに美食闘技戦を申し込むネ!」
 そして、更に重なる嘲笑――!
「いいだろう」
 対し、ウィーリィは静かに応えた。
「美食闘技戦、受けて立つぜ」
「ならばッ!この海老を使った料理で勝負ヨ!」
 そして、空気が熱を帯びる。高まる闘志が静かに燃え、独特の緊張感が戦場を満たした。
「いざ――美食闘技戦ッ!」
 かくして、戦いは始まる!

「だああッ!」
 ごう――ッ!!燃ゆる炎の軌跡を残し、大包丁が乱れ舞う!
 叫ぶウィーリィの闘気が燃え上がりながら決闘厨房を満たしていたのだ。それはさながら地上に降りた炎の王竜!激しく膨れ上がる厨闘気は天を衝くばかりに立ち上り、その威容を見せつけていた。
「何……!何ヨ、この厨闘気の強さは!?」
「あり得ない……あり得ないヨー!」
 あまりにも強力なウィーリィの厨闘気に、気圧されたオブリビオンたちが絶句する。
「ムウウ……ッ!」
「うろたえないネ!こんなもの……こけおどしにすぎないヨ!ワタシたちの厨闘気で圧し潰すネッ!」
 だが、気圧されるままでは終わらせない。負けじと闘志を燃やすオブリビオンの群れもまた激しく包丁を振るい、強烈な厨闘気を放ちながら厨房に立つ!
「おおッ!」
「哈ァーッ!魔爪・無尽斬ーッ!!」
「さあ、ワタシたちの秘技の前に息絶えるがいいネ!!」
 おお、見よ!漆黒の闘気が邪悪に燃える!膨れ上がった邪悪な厨闘気がすさまじい勢いで広がりながら悪しき化生のかたちをとり、ウィーリィへと襲い掛かったのである!
「そんな邪な厨闘気じゃ……響かないぜ!!」
「ムウーッ!なんという厨闘気の出力!」
 だが――ウィーリィの放つ大包丁の刃は、邪悪な厨闘気を切り払い、そして霧散させる!その熱い料理人魂が邪悪な厨闘気をかき消したのだ。
 その一方、ウィーリィはおそろしく正確でかつ素早い手捌きで調理を進めていた。その工程は既に仕上げに至りつつある!
「なに……これは一体!」
「刮目して見やがれッ!これが……俺の答えだッ!!」
 ジャアーンッ!!ウィーリィは大皿に仕上げたその一品を掲げ上げ、完成を宣言する。銅鑼坊主の打ち鳴らす銅鑼の音と共に、その姿は白日のもとへと晒された!
「竜だと……!」
 それは――海老の外殻を繋ぎ合わせてつくられた龍のかたちをしていた。
 赤く湯気を纏いながら佇むその姿は、まさに深山に煙る霞の中から飛び立つ飛龍の様相である!
「さあ。……食べてくれ」
「ムウーッ……!しかし、小手先の技でこんな装飾をしたところで!所詮は見た目だけ!」
「フン、どんな料理なのか……ワタシたちが確かめてやるヨ!」
 警戒心と敵愾心を剥き出しにしながら、オブリビオンたちは恐る恐るウィーリィの完成させた料理へと箸を伸ばす。
 そして――
「こ、これは――ッ!!」
 海老の身を口にしたオブリビオンの群れが、口から光を吐き出しながら天を仰ぐ!
「この香り――この香ばしさ!この龍のかたちを作り上げる海老の殻、ここから漂う香りのなんと刺激的なことヨ!ああ……いけない、これは……そそる!」
「これは複雑に調合されたブレンドスパイス!からりと揚げた殻に纏わせた香辛料の豊かな風味……いや、この同時に攻め寄せてくる濃厚な味!これは……海老味噌!……アアーッ!な、なんてこと……味蕾を通じて脳髄を直撃するこの香り!香辛料の辛味と混然一体となった海老味噌がワタシを狂わせるヨ!」
「そして、殻の中に封じ込められているのは海老団子……!この弾力に富んだ歯ざわり!噛み締めるごとにその中にギュッと凝縮された海老の旨味があふれ出す!アア……甘い、海老の身の甘さのなんと甘美なことか!そしてこの甘さと殻に仕込まれたソースの辛さが互いを引き立て合い、緻密な計算で組み立てられた複雑な味の重奏を奏で上げている!」
「それだけじゃないヨ……このしゃきっとした食感!これは刻みクワイだヨ!ウウッ、この歯触りがたまらないネ……!」
 そこに花開くのは地上に顕現せし天上楽土!舌の上で乱れ咲く美食の技に、オブリビオンたちが次々に悲鳴をあげたのである!
「――その料理の味付けは、お前たちが侮った暗黒料理人の奴から学んだのさ」
 そして――ウィーリィは、オブリビオンたちへと言葉を向けた。
「俺と戦った暗黒料理人、“魔熊のモヒンカ”……。あいつも凄い料理人だったよ。スパイスの使い方は俺よりも巧いくらいさ。……そして、これはあいつと勝負したからこそ出来た料理だ」
「なんだと……!?」
 遍喰らいたちが驚愕する――よもや、この素晴らしい料理が自分たちの見下していた暗黒料理人からの影響で作られたものだったとは!その表情に明らかな困惑の色が浮かんだ。
「これでお前達にもわかっただろ。料理は食うか食われるかだけじゃない。互いの技を、料理の腕前を、そして料理へと向き合う信念と魂を認め合い、互いに尊敬することで料理人としての腕を高め合う事だって出来るんだ!」
 ジャアーンッ!!銅鑼坊主が激しく銅鑼を叩き鳴らす!
「……よ、よもや、ワタシたちが認めさせられるとはネ」
「ウン……。なるほど、ワタシたちが、間違っていたヨ……」
 ――滂沱!
 ウィーリィの魂が込められた心の料理が、それを食したオブリビオンたちの魂を絆し、浄化したのだ。
 素直に敗北を認めたオブリビオンたちが、微笑みながら崩れ落ち灰と化してゆく。――骸の海へと還るのだ。
「ワタシたちの完敗ネ……」
「ああ。……次に会ったときは、また別の形で料理対決しよう」
「……そうネ。たのしみに……」
 勝者、ウィーリィ。風に乗り消えてゆくオブリビオンたちの残骸を見送って、ウィーリィは静かに黙礼した。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守(サポート)
 100歳超(実年齢秘密) 妖狐の仙人✕陰陽師 
 口調「ワシ、~殿、ゾ、~んじゃ、じゃ、じゃナ、かナ?」

 荒ぶる力を揮うカミにして、人喰い魂呑みの外道、そして幻を繰る妖狐、御狐稲見之守である。
 助けを求め願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならば、カミの道理を通してみせよう…なんてナ。

 天変地異を起こす[荒魂顕現]、[眩惑の術]で幻覚を見せて動きを封じたり、[山彦符][木霊返し][呪詛殺し]等で敵のUCに対抗したりするんじゃ。無論、[狐火]は妖狐の嗜みじゃナ。
 他にも[式神符]で対象を追跡したり〈催眠術〉で情報収集したりと色々出来るゆえ何卒よしなに。

 さァて、遊ぼうじゃァないか。


ロバート・ウォン(サポート)
 東方妖怪の猟奇探偵×探索者、28歳の男です。
 普段の口調は「男性的(男性的(ワタシ、アナタ、アル、アルヨ、アルネ、アル?)
本音で話す時は 丁寧(私、あなた、~さん、だ、だな、だろう、なのか?)
一人称はワタシだったり「ウォンさん」だったり。
 探索者なので首つっこみたがりです。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


春・蕩華
 おまかせプレイング
『お姉さん、誰かを傷付けたり荒っぽいのは苦手なのよね〜♪』
『それより美味しい物を食べて仲良くしましょ〜♪はい、あーんして〜♪』
『ちゃあんともぐもぐ出来てすごいわ〜♪えらいえらい〜♪』
 温厚で戦いは苦手なお姉さん。相手がオブリビオン・フォーミュラだろうと攻撃せずに全てを料理で解決します。味方へ料理を作って支援。敵へは超絶品料理を振る舞い、平和的解決を望みます。

 拱手を忘れず行い【傾世飛天薄羽衣】で空中浮遊。【狐火】で料理用の火を確保。【寵姫の虜眼】で【超級食材】と【大量の調理道具】を見つめて虜にし、自分で料理してもらいます。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



~ここまでのあらすじ~

 悪鬼羅刹に魑魅魍魎、神仙天女に武侠武将蔓延る混沌界、すなわち封神武侠界――。その世界の東方に、凄腕の料理人たちの集う美食の街・マオシンがあった。
 しかし、マオシンの街はオブリビオンの陰謀によって危機に晒されてしまう。
 マオシンの街は、オブリビオンによって力を与えられた悪の料理人たち、即ち暗黒料理界による侵略を受けてしまったのだ!邪悪な料理人たちとの料理対決によって街は瞬く間に制圧されてしまったのである。
 しかし、ここに駆け付けた猟兵たちはすぐさま反撃を開始した。猟兵たちは暗黒料理人たちに料理対決を挑み、次々と打ち破っていった!
 
 だが、ことはそう簡単には運ばない。暗黒料理人たちを打ち破り、敵のオブリビオン軍団が本拠を構えるマオシンの街の中心地へと向かった猟兵たちであったが、その道を暗黒料理オブリビオンの軍団が阻んだのだ!
 かくして、ここに猟兵たちとオブリビオンたちの美食闘技戦……すなわち料理対決が開始されたのである!!

「もうどっからツッコんだらいいのかわからんナ?」
 状況をあらためて確認し、御狐・稲見之守(f00307)は眉間とこめかみを指先で揉みほぐしながらぼやいた。
「こういう胡乱なノリもたまにはイイんじゃないアルか?」
「ないんかアルんかはっきりせんか」
「哈哈哈」
 ロバート・ウォン(f30564)は飄々とした顔で笑いながらマオシンの街の中央広場に展開した敵オブリビオン軍団の姿へと視線を向けたのである。
「なにネ!」
「よもやまた新手の猟兵どもか!」
「ならば徹底抗戦ヨ!」
 ――一方、広場で待ち構えるオブリビオンたちはざわめいた。彼女たちは既に猟兵たちとの料理対決を経て、大きくその数を減らしていたのである。(※今回のシナリオにおいて、このオブリビオンたちは料理対決で負けを認めると死にます)
「まあまあ。そんなにこわーい顔しないで~♪」
 ここでオブリビオンたちをなだめにかかったのは春・蕩華(f33007)であった。同じ妖狐という種族でありながら、稲見之守と比して彼女のバストは豊満であった。否、比較対象を取らない絶対的評価においても豊満であった。
「ねっ♪ 料理対決、するんでしょ~♪」
 蕩華は歌うように身振りしながらくるりと一回転し、稲見之守とロバートにも勝負への参加を促す。
「フーム……。まあ、よかろ。ワシもたまには台所に立たんと腕が鈍るからナ」
「おや。アネさんも料理できるアル?」
「うむ。ワシを見くびるでないゾ。こう見えてワシ、五穀豊穣のカミじゃからナ。カミじゃゾ、カミ」
「あら~♪ じゃあえらいのね~♪」
「アイヨー。それじゃあ張り切っていくとするアルヨ」
 ――本題に入る前の茶番であまり文字数を浪費するわけにはいかない。グリモア猟兵を務めることもある立場からそこに配慮したロバートが会話劇パートを打ち切り、そしてあらためてオブリビオンの群れへと向き直った!
「さあ!お喋りはもう終わったネ!」
「では、コメを使った料理で勝負ヨ!」
 対し、オブリビオンたちは既に戦意を滾らせながら猟兵たちへと向きあい、そして気炎を吐く!
「なるほど、コメを使った料理……少々選択肢が多すぎて困るアルネ」
「ワシはもう決めたぞ。ふふ。連中に目にもの見せてくれよーではないか」
「は~い♪ こっちは大丈夫よ~♪」
「ならば――!いざ!!」
「「「美食闘技戦!!」」」
 オブリビオンと猟兵たちの声が重なり合い、唱和した!ジャアーンッ!!銅鑼坊主が銅鑼を叩き鳴らし、ここに美食闘技戦の開幕が示される!!

「くらえェェーッ!!秘技ッ!!超・鳳凰烈破翔ッ!!」
 ゴォォーッ!!燃え上がる激しい炎!決闘厨房の竈台の上でオブリビオンが激しく中華鍋をガッと振るい、強火の油で熱され炒まった米が雑技団の曲芸めいて踊り狂う!それと同時にオブリビオンの身体から湧き上がる巨大な厨闘気が巨大な翼を広げた鳳の姿をかたちづくり、そして猟兵たちへと襲い掛かった!
「料理対決なんじゃよナこれ」
「そのはずアルネ」
「物理的に襲ってきとるんじゃが」
 しかし、猟兵たちは鋭く身を躱しながら調理作業を進めてゆく!
「とはいえ……かかる火の粉は払わぬわけにもいかんのう」
 そして迎撃!虚空を切り裂きながら迸ったのは稲見之守の繰る術式が放った【狐火】である。霊力の炎が襲い来る厨闘気の圧を打ち払ったのだ!
「ワタシたちの厨闘気を跳ね除けるとは……!」
「ならば、これでどうヨ!必殺厨技・麻辣大乱舞ッ!」
 だが、オブリビオンたちは更なる攻勢に出た!高めた料理力を闘気へと変え、猟兵たちへと追撃を仕掛ける!
「まあ。おイタはよくないわね~♪ めっ、でしょ~♪」
 しかし猟兵たちもまた反撃の手を緩めない。重なる炎!稲見之守に続いて蕩華もまた狐火を放ったのである。乱れ舞う炎と炎がオブリビオンたちの厨闘気と激突し、そして爆ぜる!
「うむ。こちらの方が強かったようじゃナ」
「なにィッ!」
 ぶつかり合いを制したのは猟兵たちの狐火である!霧散する厨闘気にオブリビオンたちが困惑を叫ぶ!
「ワタシたちの厨闘気を上回ったというネ!?」
「どういう概念なんじゃそれ」
「……とかやってる間に、こっちは一品完成アルネ!」
 その裏でロバートが調理完了の宣言!ロバートは他のメンバーがドンパチやっている間に手際よく調理を進めていたのだ。【料理人の知識】がここで役立った!
「コレこそワタシの得意料理、ウォンさん特製の黄金炒飯アルヨ」
 黄金炒飯――!それは、米と卵のみで作り上げたシンプルな炒飯である。一見誰にでも作れる簡単な一品のように見えるが、その実料理対決で用いられる場合では使う食材の数が少ないぶん調理者の腕前がダイレクトに反映される玄人向けの料理となる!
「さあ、コイツを喰らうアルネ!」
 そしてロバートは中華鍋から皿へと移した黄金炒飯をオブリビオン側へと投げ渡す!
「……頂くヨ!」
 実食!暗黒料理オブリビオンたちがその匙で炒飯を掬う!
「こ――これはッ!」
「ひとくち食べた瞬間、口の中で米と卵の甘味が広がるネ……。絶妙な火加減で炒められたことで、その結びつきがより強固になっているヨ!」
「コメの一粒一粒が完璧に卵と調和しているのも見逃せないヨ……。万遍なく火が通っている証拠ネ!」
「黄金炒飯は使う食材も少なく調理工程も単純な、料理人の腕前が直に現れる料理……それをこれだけの一品にして出してくるとは、なんという腕前!」
「ワタシは負けを認めるヨ――!」
 爆散!ロバートの炒飯に敗北を宣言したオブリビオンたちが爆発して骸の海へと還る!
「まあ~♪ これはお姉さんも負けてられないわね~♪」
 一方、蕩華の進めていた調理工程も完成に近づきつつあった。
 蕩華の行う調理は独特である。彼女は寵姫としての自身の能力を巧みに活用していた。――命持たざるものすら虜にし、自らのために働かせる寵姫としての能力を、彼女は食材と調理器具に使っていたのだ。
「がーんばれっ♡ がーんばれっ♡ うんうん、じょうずにお料理になってくれてえらいわ~♪」
 それは見ようによっては異様な光景であった――。蕩華は竈台に向かって蕩けるような声音で応援と励ましの声を投げかける。それに応じるように、調理台の上の器具と食材は誰の手が触れることもなく料理をすすめていくのだ。これぞ蕩華の秘技・【超級寵姫の食望具現術/フォックスクラフト・スペリオルクッキング】である!
「できあがりね~♪」
 そして、厨房の食材たちは遂に完成の時を迎える!そこに完成した一品は――
「お姉さん特製の中華粥よ~♪」
 中華粥!鶏を煮詰めたスープで米を炊き上げた逸品である。武侠界においても一般的な軽食として用いられるスタイルの粥だ。完成した粥を深皿へと移し、蕩華はオブリビオンたちのもとへと届ける!
「さあ、召し上がれ~♪」
「……ならば!」
 オブリビオンたちは二度目の実食へと挑む!
「お姉さん、誰かを傷付けたり荒っぽいのは苦手なのよね~♪ ……ほ~ら、美味しい物を食べて仲良くしましょ~♪」
 ここでサービスが入る!蕩華は席につかせたオブリビオンに匙を渡さず、自らの手で粥を掬ったのだ。
「熱々だから~、お姉さんがふーふーしてあげるわね~♪」
 更に、蕩華は匙に掬った粥をふーふーして軽く冷ます!
「アレが妖狐の篭絡術アルネ……。本場の甘やかし、実際に目にするのははじめてアルヨ」
「ワシも甘やかすのは得意じゃゾ。……じゃが、本番はここからじゃ。学ぶならよーく見ておれ」
「はいアル」
「はい、あーんして~♪」
 ここで飛び出したのは必殺の一撃である!言われるがままに口を開いてあーんするオブリビオンの口元へ、蕩華おねえさんがそっと匙を差し込んだ!
「ちゃあんともぐもぐ出来てすごいわ~♪えらいえらい~♪」
 更に追撃!蕩けるような声音を耳元で囁きかけ、蕩華おねえさんはオブリビオンを徹底的に甘やかす!
「……」
「これ無理ヨ。勝てんネ」
「負けを認めるヨ……」
 もはや味の評価どころではなかった。徹底的な甘やかしの前に、オブリビオンたちは既に骨抜きにされていたのだ。蕩華おねえさんに囁かれたオブリビオンたちは粛々と合唱し、天を仰ぎながら静かに灰と化して骸の海へと還ってゆく!
「よし。最後はワシじゃナ」
 そして――三品目!稲見之守がここに用意した最後の一品は!
「さあ、とくと味わうがよいゾ!これがワシ特製の……牡丹餅じゃ!!」
 ぼたもち!米の食感が残る程度にかるく搗いたもち米をまるく捏ね、そして餡をまぶした品である!――「田舎のおばあちゃんちで出てくるおやつの王者」だ!
「その方向性でいったアルか」
「三品目だからデザート感覚で甘いのにしたのね~♪」
「うむ。これもまた作戦とゆーやつじゃナ」
 かくして、稲見之守が皿に盛った牡丹餅をオブリビオンたちのもとへと運ぶ!
「……頂くヨ」
 気づけば残るオブリビオンたちももはや僅かであった。
 既に敗北は必定であると言えただろう。しかし、ここで逃げ出すことは料理対決に挑む料理人としての矜持が許さない。覚悟を決め、最後に残ったオブリビオンたちは稲見之守の牡丹餅を口にした。
「……甘いネ」
「不思議ネ……。こんなの、食べたことないのに……なんだか、懐かしいヨ……」
「妈妈……。姥姥……」
 ――滂沱!
 優しい甘さをもった餡の味わいがオブリビオンたちを包み込む。そのノスタルジックな甘味は、彼女たちにオブリビオンと化す前の生前の記憶を思い起こさせた。
「ワタシたちは……どうしてこんなところにきてしまったネ……」
「……ワタシたちの負けネ。帰るヨ、妈妈のところに……」
 そして、最後に残ったオブリビオンたちもまた自ら敗北を認めながら灰と化して消滅する!
 ――かくして、ここに暗黒料理オブリビオン軍団との決着がついたのである。
「これでワシらの勝ち、ってことでいいんじゃナ?」
「あとは敵の親玉を叩いて終わりアルネ」
 残るは、首魁である有力オブリビオンとの対決のみ――。ならば、敵の姿を捕捉しなくては。
 猟兵たちが敵を捉えるべく索敵に移ろうとした――その時である!
「フーン……ゼンゼン役に立たん奴らだったアルネ」
 獣の唸りのように低く唸る男の声――!それと共に、邪悪なプレッシャーと凄まじい闘気が広場へと迫る!
「オマエタチ。そのザコどもをヤツケテ調子乗ってる。ダメ。ワタシもっと強い」
 そこに現れたのは――邪悪極まりない漆黒の厨闘気を纏う、暗黒料理人の姿であった!

 ――暗黒料理人オブリビオンとの美食闘技戦は、ここからが本番だ! 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『暗黒料理人』

POW   :    暗黒料理・天
【超暗黒料理人】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【ながらも食欲を掻き立てる暗黒料理】を放ち続ける。
SPD   :    暗黒料理・人
【暗黒料理によって完全に支配下に置いた者達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    暗黒料理・地
【暗黒料理】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から無限に食材が湧き出る環境に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「不甲斐ないアルネ。せっかくこのワタシが直々に料理力を分け与えてヤタとユノニ」
 その男は――異様な殺気を身に纏いながら、マオシンの街の中央広場へと足を踏み入れたのである。
「マァ、いいアルヨ。トニカクおまえタチのイキノネ止めてまたこの街を侵略すればいいだけアルネ」
 びゅ、ッ。――鋭い風切り音と共に掲げられる包丁。鋭い刃が陽光を受けてぎらりと煌めいた。
 おお、見よ。その刃こそ数多の食材を捌き、いくつもの暗黒料理を作り出してきた必殺厨具である。それはもはや一種の魔剣と呼んでもいいだろう。
 そして、その魔なる刃を自在に繰り、厨房を己の領域として支配せし暗黒の魔人――その男こそ、此度の乱の首謀者でもある暗黒料理人オブリビオンである!
「サア、厨房に立つアル!このワタシの暗黒料理は華麗にして鮮烈!我が闇の究極厨技の前に死ぬヨロシ!」
 かくして、暗黒料理人オブリビオンは決闘厨房へと立った!その威圧的なプレッシャーとともに、睨みつける視線が猟兵たちを射抜く!
「いざ――美食闘技戦!!」

 猟兵たちよ。君たちはこの男に美食闘技戦を挑んでもいいし、無視して真正面から殴りかかってもいい!
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

さて、いかに食欲を掻き立てられようとも消化出来ないものをお出しされても食指は動かないのである。
まぁ、私の食事がエナジー、特に快楽エナジーなどと見破れるようなのは狂気の世界の住人なのでそこらにいても困るわけだが。
さて、食事が特殊な以上料理の仕方も特殊なのよね。先ずは下拵えに妄想結界術で場を整えて、暗黒料理人から経験を略奪し化術肉体改造で男の娘化ナーフするわ。後は、無垢な中華男の娘に料理した暗黒料理人の“ところてん”(暗喩)をじっくり味わいながら快楽エナジーを捕食し搾り取るだけよ♡
もう出ない?ま・だ、イケるわよね?(くすくすくす



「哈ッ!」
 じゃァッ!油の爆ぜる音と共に揺れる中華鍋!燃える炎の中で、色とりどりの野菜と豚肉が回転しながら跳ね回る!
「オオーッ!!こいつを喰らうヨロシ!!泰陀龍影舞ゥ!」
 おお、見よ!全身に漲る厨闘気!極大のエネルギーを纏ったその姿は、まさしく天地を揺るがす究極の超暗黒料理人!そして、男は中華鍋を掲げたその瞬間!膨大なエネルギー塊が怒涛となって戦場に押し寄せたのである!
「まあ♡ とっても元気ね♡」
 しかして、対するアリス・セカンドカラー(f05202)は聳え立つ旨さの津波へと向かいながらも、その口の端に笑みすら浮かべてみせた!
「でも駄目よ♡ いくらおいしそうにつくったって……」
 アリスは膨大な厨闘気に対して真正面から立ち向かう。だが、いま迫りつつある旨みの洪水は料理文化を知る生命にとって耐え難い味の誘惑!それを躱すことは困難である!
 ――それが肉体という器に縛られた生命であれば、という前提であるが。
「哎呀!?」
「……わたしには通じないのよ♡」
 アリスはその指先を繰り、そして霊的干渉能力を周囲の空間へと張り巡らせた。
 結界展開。アリス・セカンドカラーという猟兵は精神的な活力や霊的エネルギー、いわゆるオーラやマナ、チャクラやエナジーと呼ばれる生命体の精神エネルギーを吸収する霊的生命体であり、その捕食能力を行使するための手段として自己領域を展開することを得手としている。
 展開した支配領域は周囲の空間と断絶され、襲いくる厨闘気の波を遮断したのである。これによってアリスは暗黒料理人の厨闘気解放攻撃を凌いだのだ。
 そして。
「ごめんなさいね。わたし、そういう美味しさにあんまり興味がないの♡」
「なんとォ!」
 そう。そのような在り方をする生命であるが故に、アリスに対し食欲の誘惑は効果が減衰していたのである。
「さ、それじゃあ今度はこっちの番ね」
 領域展開!アリスは獣のように笑んでみせると、展開した自己領域を拡大し戦場を包み込む!
「なに……!これはどういうことアル!?」
「下拵えの時間よ♡」
 空間ごと捉えられた暗黒料理人が驚愕に叫ぶ!しかしそれも束の間、暗黒料理人の身体はアリスの領域に取り込まれたことによって変質され始めたのだ。その背丈を縮められながらかつて紅顔の美少年であった生前の少年期の姿へと変異する!
「哎呀!?」
 ある世界に存在するヴァンパイアが用いる術として、吸血する獲物を自身の好みであるガワへと変異させる、というものがある。
 それはある意味料理であるとも言えるだろう。そもそも料理とは、素材に加工を施すことで捕食者にとって摂取しやすい状態へと変化させる行為のことを言うのだ。
「ふふ……いい感じになったみたいね♡」
 そのようにして“料理”され、アリスが牙を突き立てるのに好ましい女子と見まごう美少年と化した暗黒料理人へと向かって、アリスがにじり寄る。
「くっ……!ば、バカな!力が……ワタシの厨闘気が発揮できぬアル!」
 抵抗を試みようとした暗黒料理人でったが、その指先にユーベルコード出力が行き渡らない。その肉体を変異させられたことで大きなデバフがかけられた状態となっているのだ!
「それじゃ、いただきます♡」
「アアーーーーーッ!!」
 ――かくして、アリスは襲い掛かった!その指先を(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)へと(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)し、暗黒料理人の(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)を(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)する!
「まあ、こんなに(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)して……。イケない子ね♡ (全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)よ♡」
「ば、バカな!このワタシがこうも簡単に弄ばれ――」
「さ、もっと味あわせてちょうだい♡」
「アアーーーッ!!」
(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)!!アリスは更に暗黒料理人の(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)を(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)し、その身の内に残るエネルギーを徹底的に搾り出す!
「や、やめるアル!もう出ない!!もう出ないアルヨ!!!」
「もう出ない?」
「出ない!!」
 苦悶に喘ぐ暗黒料理人!しかしアリスはそれをあざ笑うかのように(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)し、(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)する!
「アーッ!!」
「ま・だ、イケるわよね?
 悲鳴とともに暗黒料理人が(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)した!アリスはその姿に満ち足りたように笑みを浮かべながら、しかして更に(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)したのである!
「こ、これが房中術アルか!!」
「まだまだいくわよ♡」
 ――かくして、アリスによる苛烈な攻め手は続くのである。その捕食行動は、確実に暗黒料理人の存在核へとダメージを刻み込んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィーリィ・チゥシャン
相手にとって不足はないどころか完全に格上の相手だな。
けど、マオシンの街の人達を救うためにはこいつに打ち勝たなければならない。
何より、それだけの腕前を誰かを苦しめるために使うのが許せない!
美食闘技戦、受けて立つぜ!

作るのは普通の家庭料理。
相手の妨害を【不可侵厨域】で防ぎながら【物を隠す】で調理具の陰を利用して相手から見えない位置で【早業】で食材に無数の切れ込みを入れて複雑な食感を演出すると共にソースの味がよく絡むようにする。
そして手早く炒めて食材の旨味を逃さず、加熱で香ばしさを加える。

派手なだけが魔法じゃない。
簡単なものや複雑なものを絡めて「あともうひと味」を目指す。
それが料理の魔法なんだぜ?



「フン……。猟兵の料理人アルか。どれほどの腕前か、見せてモラオネ」
 プレッシャー――!その身に纏う膨大な暗黒厨闘気が渦を巻き、そしてマオシンの街の広場を満たした。
「なんて料理力……! 相手にとって不足はない、どころか……完全に格上の相手だな」
 ウィーリィ・チゥシャン(f04298)はその圧力へと真正面から相対する。
 ただ目の前に立っただけで、敵の強さ、ユーベルコード出力の威力。そして料理人としての“格”――。その“違い”を、ウィーリィは敏感に感じ取った。
「けど、マオシンの街の人達を救うためにはこいつに打ち勝たなければならない……いや」
 交錯する視線。見上げた眼差しの向こうに、ウィーリィは敵の姿を見据えて短く息を吐き出す。
「それだけじゃない……。俺は、アイツを……料理人としてそれだけの腕前をもっているっていうのに、それを誰かを苦しめるために使うのが許せない!」
「フン。若造が……身の程も知らずよく吼えたものアル!」
 しかして、暗黒料理人オブリビオンは嘲笑う。
 その厨闘気の強さ――料理人としての腕前は、明らかに暗黒料理人が格上だ。その実力差を鋭く見抜き、威圧するように暗黒料理人はウィーリィを睨む。
 だが、ウィーリィはその圧力にも一歩も退くことなく、暗黒料理人へとまっすぐに視線を返した。
「……お前が間違ってるってことを、俺が証明する!」
「ククク……その勢いだけは評価してやるヨ。――ならば、構えヨ!」
「ああ、受けて立つぜ!」
 そして、交錯する視線の間で火花が爆ぜる!高まる闘志に、空気が熱を帯びた!
「「いざ、美食闘技戦!!」」
 ジャーンッ!!銅鑼坊主が叩き鳴らす音色!かくして、戦いの火蓋が切って落とされたのである!

「さあ、闘志を燃やすアル! 行くアルネ、我が配下ども! あの小僧を血祭りにあげるヨロシ!」
「「「ハッ!」」」
 暗黒料理人の声に応じて、その配下たる弟子たちが決闘厨房へと集った!
 そして暗黒料理人の弟子たちはそこで一斉にその厨闘気を高めたのだ。練り上げられたチャクラが炎となって燃え上がる!
「秘技!微塵無限斬ンンーッ!」
「オオオーッ!香派・醤々大乱舞!!」
「くらえッ!激烈辣衝破!」
 おお、見よ!そこで次々に披露されるのは悪の料理人たちが繰り出す暗黒厨技の数々である!燃える闘士はかたちを為して、ウィーリィの立つ決闘厨房へとなだれ込んだ!
「料理の邪魔をするんじゃねえッ!!」
 だが――迎撃ッ!ウィーリィは卓越した身体能力から繰り出される蹴り足を薙ぎ払い、襲い来る厨闘気を打ち払ったのだ。
「ヌウーッ!小癪な!ならばこれでどうだァーッ!!」
 第二波ッ!襲い掛かる灼熱の厨闘気!翼を広げた鳥の姿となって襲い来るエネルギーが、再びウィーリィの立つ厨房を襲撃したのだ!
「俺の1メートル以内に……入るんじゃねえッ!!!」
 しかし、ウィーリィはこれも迎え撃つ!――今のウィーリィは、その身に滾らせた料理力とユーベルコード出力をただ直向きに調理作業へと向けている。その料理へのただならぬ集中力が、何人たりとも手を触れられぬ【不可侵厨域】を形成しているのだ!
「ほう……なかなかやるアルネ」
「はあッ!」
 そして、大包丁がうなりを上げる!ウィーリィは敵の厨闘気による攻撃を捌きながらも、同時に調理工程を進めていたのだ。
 ――玉葱。人参。筍。獅子唐!更に林檎!そして豚肉!ウィーリィはこれらの食材を一口大の大きさへと刻む!
 続けざまにウィーリィは鍋に油を熱した。そこへ食材たちを潜らせ、揚げる!同時に火にかけた別の鍋の中で、ウィーリィは様々な調味料を調合して複雑な味わいをもった甘酢のソースを作り出す!
「うおおお――ッ!!」
 そして、揚がった食材を甘酢あんのソースの中へと踊り込ませて炒めあげれば――古老肉!別世界の言語においては酢豚とも呼ばれる、武侠界においてもポピュラーな家庭料理の完成である!
「完成だッ!!」
 ジャアーンッ!ウィーリィの宣言に応じて銅鑼坊主が銅鑼を叩き鳴らす!
「ほう……こちらの攻撃をものともせずに完成させたアルか。思テたよりヤルようネ」
 完成させたその一皿を誇らしく掲げるウィーリィの姿に、暗黒料理人が目を細める。
「ヨカロ。ならばこのワタシが直々にその味を見てやるアルヨ」
「ああ。……食ってくれ」
 そして暗黒料理人が批評のため、審査席へと着いた。
 ウィーリィは敵の眼前へと、作り上げた古老肉を提供する。
「フーン……。なるほど、咕老肉アルネ。豚肉、玉葱、人参……。そして林檎や梨、あるいは桃といった果実を加え、甘酢で仕上げた料理……どこの家庭でも出されるような家庭料理アルな」
 古老肉――酢豚とは、刻んだ材料を甘酢あんで包み込んだ料理である。
 アース世界線のような現代世界においては、そこにパイナップルを加えるレシピが存在しているが、ここ武侠界においてもそれに似た調理法が存在している。桃をはじめとした多くの果実が実る桃源郷の仙界との密接な関わりがある故だ。言ってしまえば、この世界の酢豚は仙界からもたらされる果実を用いた料理の代表格であり、仙界とのかかわりを物語るものでもある。
「……」
 話を戻そう。――そして、暗黒料理人はウィーリィの一皿に箸を伸ばした。
「なに……これは!」
 そして――!
「好吃……!どういうことアル……?この不可思議な食感。そして噛み締めるごとに食材の内側から弾けて舌の上で広がる旨味は!……否!わかったアルよ。これは……材料を切る段階で、ひとつひとつの具材に無数の切れ込みを入れていたアルネ!そうすることで通常とは異なる食感にすると同時に熱の通りを良くし、その上で甘酢あんの旨味を食材が吸い込むように工夫したアル!更に、切れ目を入れることで具材として入れられた果実からより強く甘味と酸味を引き出し、皿の全体にその香りを行き渡らせている……ムウウ、み、見える、見えるアル……舌の上で広がる桃源郷!よもやこのような家庭料理で、これほどまでの味わいを作り出すとは!」
 暗黒料理人は、咆哮と共に口から光を吐き出した。
「流石だな。たった一口食べただけで、この料理に仕掛けた工夫をそこまで見抜くとは」
 テーブルを挟んで、ウィーリィは暗黒料理人へと向き合った。
「……厨闘気の発露もできぬ未熟な料理人と思テいたアルが、ワタシの目が曇テタようネ」
「料理は魔法――だけど、派手なだけが魔法じゃないのさ」
 ウィーリィは、破顔して暗黒料理人へと笑いかけた。
「簡単なものや複雑なものを絡めて『あともうひと味』を目指す。食べてくれた人が、それで笑顔になってくれるように……って思いながらさ」
「……」
「それが料理の魔法なんだぜ?」
「……見事アル。どうやら、ワタシは慢心していたようアルネ」
 ――そして、暗黒料理人は席を立った。
「だが、ワタシも誇りある暗黒料理人! この一皿だけで負けを認めるわけにはいかぬアル!」
 ば、ッ!跳ねるように飛んだ暗黒料理人の姿は、再び決闘厨房へと降り立つ!
「美食闘技戦は続行するヨ!次はこのワタシの料理でオマエの闘志をへし折テくれるネ!」
 かくして、暗黒料理人は再びその身に宿した厨闘気を燃え上がらせながら竈台へと向き直る!その闘志の熱さを見せつけるように、中華鍋を炎が包んだ!
「ああ、望むところだ――来いッ!!」
 熱戦――!暗黒料理人と猟兵たちの美食闘技戦は、続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

春・蕩華
『あらあら〜♪暗黒料理人さんの厨具もとても立派で素敵ね〜♪まあ、凄いわぁ〜♪』
 拱手を行い【狐火】で料理用の火を確保。【寵姫の虜眼】で【超級食材】と【大量の調理道具】を見つめて虜にし、自分で料理してもらいます。
 UCで100倍美味しい料理を作って【蕩声】と【カリスマお姉さんオーラ】を放つ事で「一緒に食べましょ〜♪」と誘惑。【柔胸】に抱いて【魅惑の芳香】で包み込み、超級料理を「あ〜ん♡」してあげます。食後は【狐耳尻尾】を毛布のようにして、郷愁を誘う歌唱をして眠り速度で優しく寝かしつけます。

 敵の攻撃は【虜眼】とオーラ防御で味方につけて可能なら利用します。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「あらあら~♪ お料理、とっても上手なのね~♪」
「……何奴アル!」
 ぽわ――っ。熱が滾り、緊張感の張り詰めた戦場であるマオシンの街の中央広場へと、そこに不釣り合いなほど平和で間延びした声が流れ込む。
「は~い♪ 蕩華お姉さんよ~♪」
 そして――柔らかくも朗らかな笑顔で、暗黒料理人の前へ現れたのは春・蕩華(f33007)であった!
「よろしくね~♪」
 包拳拱手。礼を欠かさぬ仕草において、蕩華は静かに相対する。
「フン……。貴様、寵姫アルネ。愛でられるのが仕事の女風情が、ヨクモこの戦場に――」
 しかして暗黒料理人は表情を険しくしながら蕩華を睨めつけた。
 男は、生前よりすべてを投げ打って料理の道を志した超級厨士であった。であるが故に、彼は“美貌”などという概念で世を渡る寵姫という存在を敵視していたのである。
「あらあら~♪ そんな怖い顔しちゃ嫌よ~♪」
 しかし、向けられた敵意を受け流すように蕩華は微笑む。
 そして――彼女は、その手に武具を握った。
「料理人さん♪ 私もね、お料理がと~っても得意なのよ~♪」
「哎呀!」
 そう。蕩華の武具――それは彼女のもう一つの側面である料理人としての武器。すなわち超級厨具である!
「あなたの厨具も、と~っても立派で素敵ね~♪ 凄いわぁ~♪」
「なに……!? その包丁……その鍋!蒸し器!……よもや、オマエも料理人アルネ!?」
 よもや!展開された厨具の数々に、暗黒料理人が目を剥いた!
「うふふ♪ そうよ~♪ こう見えてお姉さん、お料理がと~っても得意なの~♪」
 一方、蕩華は表情一つ崩すことなく微笑みを湛えたままに暗黒料理人へと対峙し続ける――!
「み……認めん! 認めんアル!!オマエのような女子が料理人など……このワタシの誇りが許さんアルヨ!!」
「あら~♪ 落ち着いて、落ち着いて~♪ ねっ♪ 仲良くしましょ~♪」
「黙れ黙れ黙れ!黙るアル!かくなる上は……オマエをワタシの料理で叩きのめし、二度と料理人を名乗れなくしてやるアルネ!」
 燃え上がる敵意!一方的に敵愾心を燃やす暗黒料理人が、その双眸に暗い炎を灯しながら蕩華へと戦いを挑んだのだ!
「いざ――美食闘技戦!!」
 ジャーンッ!かくして、銅鑼坊主の叩き鳴らす銅鑼の音が戦いの始まりを告げたのであった!

「――ふふ~♪ それじゃ、がんばってね~♪」
 ぼう、ッ。燃え上がる炎。それが妖狐という種族がもつ妖力によって生成した神秘の炎。即ち狐火である。蕩華はこれを火種として、竈に火を付けたのだ。
『おいしくなりま~す♪』
『すてきなおりょうりになるからねっ♪ おねえさん、しっかりみててね♪』
「は~い♪」
 そして、蕩華は食材たちと厨具たちを応援した。
 ――これこそが彼女の得意とする料理法。無機物すらも虜にし、あまねく存在に愛される寵姫としての力を行使することで、食材と料理道具たちが自ら動き出し、料理を作り上げる――必殺の【超級寵姫の食望具現術/フォックスクラフト・スペリオルクッキング】である!
「なに……!? 馬鹿な!まるで食材や厨具が生きているかのようなあの動き……! ただ者ではないということアルか!」
 その常軌を逸した光景を目の当たりにし、暗黒料理人は驚愕に目を見張る!
「あひるちゃ~ん♪」
『グヮワーッ!』
「かにさ~ん♪」
『ガニーッ!!』
 まるで楽団を導く指揮者のように、蕩華は食材たちへと語り掛けた。それに応じた食材たちは、姫君に仕える忠臣めいてその命を惜しげなく料理の炎の中へと投げ打ってゆく!
「ヌウウーッ!そ、それ以上は赦さんアル!我が厨闘気で死ぬヨロシ!!哈ァーーーッ!」
 だが、そこへ向けて暗黒料理人の放った攻性闘気が襲い掛かる!
「おいたは~……めっ、でしょ~♪」
 しかし――凄まじい勢いを以て押し寄せる厨闘気の波を、蕩華は押し止めてみせたのである!
 あまねく存在を虜とする寵姫の御業のひとつだ。その瞳に秘められた魅了の力は、敵が放ったエネルギー塊すらにも干渉するのである。
「哎呀……!」
「さ、こっちはもうできあがりよ~♪」
 攻撃が有効に機能しない――!笑みすら浮かべてみせる蕩華の姿に歯噛みする暗黒料理人オブリビオン!しかし、その敵意を意に介することなく蕩華は暗黒料理人を手招いた!
「……うふふ、ねぇ、こっちにいらっしゃい~♪ 一緒に食べましょ~♪」
「ヌウ……!」
 ――完成宣言!応じて打ち鳴らされる銅鑼の音!
 美食闘技戦の流儀に則り、相手から提供された料理を拒絶することはできない!暗黒料理人は苦々しく渋面を浮かべながらも、審査席へと向かった!
「うふふ~♪」
「哎呀!? オマエ、どういうつもりアル!!」
 だが、ここで蕩華は更なる攻勢をかける!彼女は暗黒料理人が席に着いたのを見計らうと、その傍らに椅子を置いて彼女自身も座り、そして密着したのだ!
「いいからいいから~♪ お姉さんにぜーんぶまかせてね♪」
 蕩華は甘い声音で囁きながら、緩やかに暗黒料理人オブリビオンへと僅かに体重をかけた。当てた胸元を柔らかく押し当てながら、その身に纏った魅惑の芳香で更にオブリビオンの脳髄へと攻め寄せる!
「ムウ……!!……だが、これはあくまで美食闘技戦!ワタシは味でしか評価を下さぬアル!」
 だが、料理人としての矜持がその誘惑を振り切った!暗黒料理人オブリビオンは、目の前に差し出された料理へとあらためて向き合う。
「……武侠家鴨!」
 武侠烤鴨――現代世界線においては北京ダックと呼ばれる高級料理である。かつて武侠界においても宮廷で供されていた歴史を持つ一品だ!
「かにさんもどうぞ~♪」
「これは……揚げ蟹ネ!」
 そして、同時に供されたのはからりと揚がった蟹の姿揚げ!――ソフトシェルクラブルクラブとも言われる、脱皮したての甲殻が柔らかな蟹を用いた逸品であり、固いイメージとは異なって殻ごと食べることが可能である!
「まだまだたくさん作るから、い~っぱい食べてね♪」
「ヌウ……!」
 ――惑わすような声音に脳を揺さぶられながら、しかして暗黒料理人は箸をとった。
 そして――実食する!
「お、オオ……なんたることか。なんたることか!この、一口食べた瞬間に溢れ出す旨味!活き活きとした食感!そして、食材の芯から溢れ出す激しい生命の輝き……!!生きている……これは、食材が生きている!そして、自らの味を競って主張しながら料理として生まれた第二の生命を全うしようと全力を尽くしているアル!――そうか、わかったアルヨ……。あまねく存在を魅了し、自らのために働かせる寵姫の業……。それが食材たちに新たな生命を吹き込んだアルね!……おお、おお!アヒルのこの肉の味わい。内側から爆発的に染み出す旨さはまさに秘められた生命力の発露ヨ!そしてこの揚げ蟹!殻を噛み砕けばその中に閉じ込められた命が舌の上で踊りだし、そしてワタシの脳天を直撃するネ!なんという腕前……!ワタシの目が曇テタヨ!」
 暗黒料理人は咆哮した!そして、その双眸と耳と鼻と口から激しく光を放ちながら料理への評価を叫ぶ!
「ふふ~♪ そんなによろこんでくれるなんて、作った甲斐があったわ~♪」
 引き出した好意的な反応に思わず笑みを零す蕩華!だが、彼女の攻め手はまだ終わらない。蕩華は更に柔らかな胸元を暗黒料理人へと押し付けながら、更に囁きかけるのだ。
「――おなかい~っぱいになったら、お姉さんと一緒にお昼寝しましょうね~♪ ……大丈夫、だれもあなたのことを責めたりしないわ~♪」
「グ、グヌヌゥ……!!」
 ――巧妙かつ強力な篭絡術!それは、一般的な人間であったならば既に廃人にされていてもおかしくないほどの強力な誘惑だ。敵がこの暗黒料理人オブリビオンでなければ、既に決着がついていたと言っても過言ではないだろう。
「だ、だが、まだアルヨ……!ま、まだ、ワタシの野望は終ワテナイネ……!」
 ぎり――ッ!歯を噛み鳴らし、唇から血をながしながらオブリビオンが誘惑に耐える!
 そう――何故ならば、この男を完全に陥落させるには、まだ青丸の数が足りていないのだ!
「オオオオオオッ!」
 そして、鋼の精神力によってぎりぎり致命傷を免れた暗黒料理人オブリビオンが誘惑を振り切って再び決闘厨房へと舞い戻る!

 ――戦いは、続くのである!

成功 🔵​🔵​🔴​

フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎

POW判定

・美食闘技戦を挑む
調理中の厨闘気の争いではUCを使用して
膨大な闘気を練り上げることで相手を警戒させておき
その後の実食段階で気をたっぷりと注ぎ込んで温めた石(懐石)を出す

相手が料理を貶してきたら
(懐石料理の語源)
『ある僧が客を持て成そうとしたが何もなかったため
せめて温めた石を抱かせて飢えを凌いでもらった
もてなしとは心遣いである』という話を聞かせ

料理を野望のために使い人を支配する
お前には料理人を名乗る資格はない!と糾弾する

それはそれとして、相手が心を入れ替えない様なら
気をたっぷりと込めた石をつかんでそのまま殴り続ける
最期には懐に押し当てた石の込めた気を一気に解放して爆破する



「猟兵どもめ、よくもこのワタシにこれほどまでの屈辱を……許さんアル!」
「お前に許しを乞う必要はありません。……私は、お前を倒すためにここに来たのですから!」
 暴圧ッ!
 戦場に満ち満ちる闘気は、互いにぶつかり合いそして爆ぜた。吹き荒れる嵐のように交錯する闘志。その最中で敵の姿を真正面から見据え、そして睨むのはフローラ・ソイレント(f24473)である!
「その意気やよし……ナラバ、もはやこれ以上語る舌など!」
「ええ、言葉などただの音に過ぎません。この街で料理の道を往く者同士が行きあったのならば、為されるべきことはただ一つでしょう!」
 ぱちん、ぱちん!互いに睨みを利かす暗黒料理人オブリビオンとフローラの間で、大気が音をたてて弾ける!燃え上がる魂から放射された料理人魂がぶつかり合い、そして物理的に干渉し合いながら大気を震わせているのだ。
「ならばッ!」
 そして2人は同時に広場の石畳を蹴立て、決闘厨房へとその身を躍らせた!
「いざ――」
「「美食闘技戦ッッ!!」」
 ジャアーンッ!! 銅鑼坊主が渾身の力で銅鑼を打ち鳴らし、戦いの始まりを告げる!
 かくしてここに、フローラと暗黒料理人オブリビオンによる料理対決が始まったのだ!

「はああああ……ッ!!」
 ばづ、ッ!音を立てて光が弾け散った。それは、爆ぜる電光となって発露したフローラの厨闘気の表れである!
「ヌウ……!なんという厨闘気アルか……!」
 【磁極流:帝釈天/ヴァジュラ】――。磁極流活殺拳。すなわち人体に流れる電流を己が意のままに操り、そして氣脈の流れと繋ぐことで稲妻を伴った拳技として放つ武術流派の奥義の中でも、特に強力な術式だ。練り上げられた闘気の凄まじさは暗黒料理人オブリビオンをもってしても驚異的な威力となって戦場を満たす。しかして、それは同時にフローラ自身の身体にも負担をかけ、彼女の活動限界時間を削り取る諸刃の刃でもあった。しかして、それは、彼女がこの戦いに賭した想いの強さそのものでもある。
 膨大なエネルギーをもって膨れ上がるフローラの闘志は、暗黒料理人オブリビオンすらも慄かす強烈な厨闘気としてこの戦場に顕現していたのであった。
「それほどの厨闘気……奴め、一体何を企んでいるアル!」
 暗黒料理人は、膨れ上がる厨闘気の暴風めいた圧力の中、フローラの姿を睨む!
「――なに!?」
 しかし、そこで暗黒料理人オブリビオンが目にしたのは――信じがたい光景だったのである!
「どういうことネ……奴は…………奴は、“石を温めている”アル!?」
 驚愕と共に叫ぶ暗黒料理人オブリビオン!そう――フローラは、その全身から放つ闘気によって熱を帯びたその身体で、石を抱きかかえていたのである!
「オマエ……一体何をしているアルか!ワタシに勝てないと思テ狂ったアル!?」
「……いいえ、そうではありません」
 フローラは顔を上げ、そして射すくめるような真っすぐな視線でもってオブリビオンを睨んだ。
「懐石料理、というものを知っていますか」
「懐石……?」
 暗黒料理人が怪訝な顔をする――。この武侠界において、本来であればアース世界線の和食文化の一端である懐石料理という料理ジャンルは存在しないものなのだ。
 戸惑う暗黒料理人へと向け、フローラは言葉を続ける。
「懐石とは……昔、ある世界の修行僧が客を持て成そうとした際の故事に因みます。……僧は客をもてなそうとしましたが、彼は修行中の身。もつものは何もありませんでした。……ですが、僧はせめてもの空腹しのぎに、と、自らの懐で温めた石を客に差し出したのだといいます」
「何を……ただ貧しいだけの話アル!そんなおためごかしでこのワタシに勝てるとでも――」
「……笑わせないでください」
「なに……!?」
 敵意を込めた視線に対し、フローラは立ち上がり、そして真正面から相対する!
「この故事から現代にまで伝わる思いを、お前には理解できないのでしょう。……この伝承が伝えるのは、すなわち。もてなしとは心遣いであり、それが料理にとってもっとも大事なことの一つだということです!」
 電光!フローラの身体を通して広がる雷が、厨闘気となって激しく迸った!
「もてなし、だと……!馬鹿な、そんなもので勝負を……」
「口を開けば勝ち負け……いえ、自分が『勝つ』ことばかり!そればかりか、お前はこの料理の技をひとを苦しめるために使っています!」
「ヌウ……ッ!」
 フローラはここで更にたたみかけるように責め立てた!そして、その怒りに燃える双眸が暗黒料理人を糾弾する!
「人をもてなし幸福へと導く気持ちを忘れ、料理を野望のために使って人を支配する……そのような外道に落ちたお前には、料理人を名乗る資格はない!」
 ジャアーンッ!!
 鋭い指摘と共に、銅鑼坊主が銅鑼を叩き鳴らす!
「な、なにをオロカな!!石を温めて故事を語っただけでこのワタシを下したツモリアルか!!ワタシの料理は無敵!ワタシの料理は最強!ワタシの料理はすべてを支配するアル!!オマエのような小娘に、一体なにがわかるとユーネ!」
 だが――暗黒料理人はそれを認めない!往生際悪く喚き散らす暗黒料理人オブリビオンは、激昂とともに手にした包丁を掲げ上げたのである!
「どうやら……心を入れ替えるつもりはないようですね!」
「フン!フザけるのもいい加減にするヨ!小娘、かくなる上はオマエを食材にして料理にしてやるアル!」
 ダ、ッ!暗黒料理人オブリビオンはここで決闘厨房を飛び出した!戦いは調理場を離れ場外乱闘へと移行する!
「……残念です。かなうことなら、もてなしの心を思い出したあなたの料理を味わってみたかった」
 だが――あくまでも料理人である暗黒料理人オブリビオンと、数多の修羅場を潜り抜けて来た歴戦の猟兵の一人でもあるフローラとでは、戦場に生きる者としての実力が違っていた。
「はああッ!」
 暗黒料理人オブリビオンの襲撃を見切ったフローラは、襲い来る包丁の切っ先を躱しながら素早い身のこなしで敵の懐へと踏み込む。その手に握りしめたのは、たった今まで彼女の氣を注ぎ込み、激しく熱していた“懐石”だ。
「……帝釈天《ヴァジュラ》、ッ!」
 フローラは最接近の瞬間に握り込んだ石を暗黒料理人の胸元へと叩きつけた。
 同時に、懐石の内側へと注ぎ込んでいた自らの氣の塊を解放し――そして、爆発させる。
「グアオオオオオオオーッ!!」
 衝撃――ッ!!極限まで練り上げられ高められた氣の塊が、爆発的に膨れ上がり、そして爆ぜる!その威力を至近からまともに浴びせられた暗黒料理人オブリビオンは、悲鳴と共に吹き飛ばされ、そして広場の石畳の上へと叩きつけられた!
 ――しかし!
「ば、バカな……!こ、このワタシがここまで追い詰められるとは……!ドユコトアルネ!!」
 暗黒料理人は、それでも尚健在であったのだ。
 既に致命傷に近いダメージを負い、オブリビオンとしての存在核に届くにもあと僅かであったが――しかして、暗黒料理人は血を拭いながら立ち上がる!
「……シカシ!まだ、まだ終ワテナイヨ……。真の美食闘技戦はマダココカラネ!!」
 カァーン!――暗黒料理人が、おたまと中華鍋を掲げ、そして打ち鳴らす!
 それはまるで最終ラウンドの開始を告げるゴングめいて、マオシンの街へと響き渡ったのである。

 かくして、オブリビオンとの戦いはまもなく佳境に入る!

成功 🔵​🔵​🔴​

堆沙坑・娘娘
流石はこの騒動の首魁…これまでの料理人とは格が違うようですね。(実際は料理人の腕を見た目で判断なんてできませんがオーラとかでなんとなく)

相手が料理人とはいえ、これ程の敵が相手であれば、我が武の極地を見せる必要がありそうです。パイルバンカー神仙拳の奥義が一つ、幽灵。

「先の先」の領域にある私にはあなたがどんな料理を作るのか、その全てが分かる。
「料理は半歩先」…とある料理界の重鎮が残した言葉です。
その言葉に従い、敵がどんな料理を作ろうと、先読みした敵の料理の半歩先を行く料理を作り続けます。

あなたの勝利は、既に私が半歩先を行くことで未来を貫き破壊している。※【貫通攻撃】
故に!我が料理はパイルバンカー!



「フン……猟兵どもめ、よくもこのワタシにここまで手向テくれたアルな……」
 幾多の美食闘技戦を経て、暗黒料理人オブリビオンの存在力はもはや既に風前の灯火であった。
 しかし、その力はまだ完全に消失したわけではない。蝋燭の火が燃え尽きる瞬間こそもっとも力強く輝くと言われるように、暗黒料理人オブリビオンの纏うユーベルコード出力もまたこの土壇場にきてなお一層激しく燃え上がっていたのだ。
「……全力で叩き潰してやるネ。皆殺しアル」
「流石はこの騒動の首魁……ここまでの傷を負ってなおこれほどの闘気を放つとは。これまでの料理人とは格が違うようですね」
 そこに対峙するのは、堆沙坑・娘娘(f32856)であった。彼女の眼前で大きく燃え広がるのは、爆発的に増大した厨闘気!しかして娘娘は燃え上がる強大なユーベルコード出力を前にしながら、一歩たりとも引くことなく立ち向かう!
「相手にとって不足はありません。これ程の敵が相手であれば、我が武の極地を見せる必要があるでしょう」
「来るがいい!ワタシの奥義でオマエを葬テやるアル!」
 そして、ぶつかり合いながら爆ぜる闘気!かくして、ここに戦いは最終局面を迎える!
「ならば……いざ!」
「「美食闘技戦!!」」
 ジャアーンッ!!銅鑼坊主が叩き鳴らす銅鑼の音色を合図として、ここに料理人魂を賭けた最後の戦いが始まった!

「はあああああああッ!!!獄鳳滅乱舞ァッ!続けてェ――紅蓮咆哮破ァ!!」
 轟ッ!!暗黒料理人オブリビオンが振るう中華鍋の中で、赤く染まった具材が廻る!爆ぜながら渦巻き、そして広がるスパイスの香り!
「見よ!これぞ我が暗黒厨闘技の数々ッ!」
「くッ……なんという闘気!ですがッ!」
 爆ぜる!爆ぜる!爆ぜる!襲い来る紅蓮の厨闘気が娘娘の立つ決闘厨房へと流星雨めいて飛来し、そして激しく爆発した。だが、娘娘はこれを迎え撃っていた。掲げた杭打機から放たれた杭が闘気とともに暗黒料理人の厨闘気にぶつかり、激しい閃光とともに砕け散る!
 ――その身に宿したユーベルコード出力、すなわち闘気の量を比すれば暗黒料理人の方に分がある。シンプルなパワーでは、首魁級のオブリビオンの方が猟兵を上回っているのだ。
 だが、娘娘はここに至るまで研鑽し続けてきたパイルバンカー神仙拳の奥義によって対抗した。――結果、厨闘気のぶつかり合いは互角の戦いとなったのだ。
「このワタシの闘気と互角にやり合うとは!」
「――ならば、決着を付けるのは即ち“味”に尽きるでしょう!」
「道理ッ!」
 爆ぜる闘気の炎を振り払い、そして2人は互いに決闘厨房へと向かい合う!
「ならばここはワタシの取って置きの得意料理をくらわせてやるアル――見よ!不死鳥が道を示す先、我が故郷に伝わる究極の必殺料理――!!」
 ジャッ!中華鍋の中で再び踊る鮮烈な赤の色彩ッ!それは多種多様なスパイスを独自のバランスで調合し完成させた秘伝の調味料!そして、地獄の業火めいて赤く燃え上がる鍋の中で踊るのは――鶏肉である!
 暗黒料理人は既に調理工程の終盤に入っていた。あとは最後の火入れを残すのみだ。強く厨闘気を燃え上がらせながら、暗黒料理人オブリビオンが必殺の一撃を繰り出すべく着々とそのパワーを高めてゆく!
「その名も!」
 そして、暗黒料理人が最後の一撃とばかりに鍋の具材を炒め切る――!
 しかし、その時である!
「――辣朱雀」
「……なにッ!?」
 ジャアーンッ!!――銅鑼の音!それは、料理の完成宣言によって鳴らされる音である!
「これは――貴様!」
 驚愕!困惑!そして――憤怒!表情を歪めるオブリビオン!――一方。対する娘娘は努めて冷徹な態度を崩すことなく――完成したその一皿を、暗黒料理人の前へと差し出してみせた。
「……私の料理の方が先に完成しました。……さあ、実食してもらいましょう」
「貴様……な、何故、ワタシの料理を!!」
 暗黒料理人が激怒する。
 なぜならば――娘娘が完成させ、提供した料理は、たった今完成するところだった暗黒料理人オブリビオンの一皿とまったく同じものだったのだ!
 辣子鶏――。武侠界の中でも特に寒冷な地方でポピュラーな料理だ。唐辛子や花椒をベースとした辛い味付けで、葱や鶏肉の具材を炒めた料理である。
 否、ここに出された一品はそれを更に高めた料理なのである。きめ細やかなバランスで調合されたスパイスの分量。巧みな技術で適切にカットされた食材。そしてそれらが鍋の中で渾然一体となることで完成する究極の“辣”味――!
「極めて高い技術によって繰り出される、最高峰の辣子鶏……名付けて『辣朱雀』。あなたがそれを出すことは、わかっていました」
「なに……!」
 パイルバンカー神仙拳の奥義が一つ、【幽灵】。
 それは、研ぎ澄まされた感覚が相手の気の“起こり”を感じ取り、「先の先」の領域に到達した彼女の精神が敵の行うすべてを読み切る、究極の先読み能力である。それはもはや、ある意味では未来視の超常能力にまで到達しているとも言えた。
「『料理は半歩先』……とある料理界の重鎮が残した言葉です」
「ムゥ……!」
「……あなたの勝利は、既に私が半歩先を行くことで未来を貫き破壊している」
「ふざけるなアル……!こんなもの、ワタシの料理を真似ただけネ!……猿真似に過ぎないヨ!」
 激昂!娘娘の物言いに、怒りで顔面を赤く染め上げた暗黒料理人オブリビオンが咆哮する!
「そう思うなら、どうぞ召し上がってください。……それでわかるはずです」
「小娘ェ……!受けて立つアル!」
 促す娘娘。暗黒料理人オブリビオンは、それに従って荒々しく席につく!
「これでワタシに負けを認めさせられなかったら……貴様の命はないアルよ!」
「結構です――どうぞ」
 そして、実食――!
「……」
 暗黒料理人オブリビオンは、静かに箸をとり、皿の中から鶏肉をつまみ上げた。
 そして――口の中へと、運ぶ。
「ムゥ――ッ!?こ、これは……馬鹿な!!」
 咆哮!暗黒料理人オブリビオンが口から光を吐き出しながら天を仰ぐ!
「ワタシの『辣朱雀』を完全に写し取っているアル……!この香るスパイスの風味!びりびりと舌先を攻め立てるように刺激する辣の味わい!そして、この痺れるような辛味に飲み込まれることなく噛み締めるほどに染み出す鶏肉の旨味の完全なパランス……!否、否否!それだけではない、それだけではないアル!これは――」
 驚愕に目を見開く暗黒料理人オブリビオン!暗黒料理人は、その見開いた双眸のままで震えながら娘娘へと視線を向けた。
「――糖蜜を、ひと匙」
「……あ、味な真似をッ!!」
 やられたアル――!暗黒料理人がテーブルを叩く!!
「そう……!これは、仄かな甘み!!辛味の中にほんのひと匙混ぜ込まれた甘さが、料理の味わいの中に奥行きを作り出し、更に奥深い味わいに変えながらも辛味と旨味を引き立てている!な、なんたることアル……なんたることアル!!このワタシの、ワタシの究極料理を、このような技で……こんな“ひと工夫”で、『半歩先』に進めるとは――!!アアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!!好吃!好吃好吃好吃好吃好吃!ワ、ワタシの負けアルーーーーーーッ!!!」
 絶叫――!――それは敗北を認めたその証明だ。
 自らの得意料理を、自らの技術を超えたレベルで作り出されること――それは、一流であると自らを誇る料理人にとって、なによりも屈辱的なことであった。
 両手で頭を抑えながら断末魔めいて叫ぶ暗黒料理人オブリビオンはそのまま空中へと飛び出し、そして咆哮とともに爆発四散した。その魂魄は、そのまま骸の海へと還る。
「……これが、我がパイルバンカー料理の威力です」
 そして、その消滅を見届けた娘娘は静かに掌と拳を打ち合わせる――包拳拱手。最後に礼をもって、彼女は消えゆく敵の姿を見送ったのであった。
 
 ――かくして。
 暗黒料理界の料理人たちを扇動していたオブリビオンは猟兵たちの活躍によってそのすべてが駆逐されたのである。
 間もなく、マオシンの街には平和が戻ることだろう。そして、人々は青空の下で取り戻した笑顔とともに叫ぶのだ――好吃(おいしい)の一言を。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年04月30日


挿絵イラスト