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苔生す迄、岩に思わば

#封神武侠界

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#封神武侠界


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 桃の淡い赤が散っては咲き、咲き乱れては風に泳ぐ。
 封神武侠界には『桃源郷』と呼ばれる美しい土地がある。
 年中桃の花が咲き続ける霊験あらたかなるその秘境に足を踏み入れれば、その者の霊力を高めるともいう。
 まるでこの世とは思えぬ幽玄な景色の中に、似つかわしくない金属の鋭い音が響く。
 この場の目に入るおおよそすべての草木や岩や土に至るまで、まるで生きているかのように淡い光を放つかのような華やかさの中で、光を返さない加工をされたその黒だけは、異質であった。
 黒い漢服、黒い中折れ帽、その袖から伸びる暗器は黒く塗られ、よく研ぎ澄まされた切っ先だけがぎらりと光を返していた。
 腰を低く、風の間隙を縫うかのように緩慢に、しかし流麗に、扇ぐかのように腕が振るわれれば、その手に握った暗器が目の前の巨岩を穿つ。
 激しい火花が散り、岩はわずかに削られ、虚空に軌跡を描く火花が淡い色に染まる空を切り裂くかのようであった。
 続けざまに、老人は岩を斬りつけ続ける。
 元は人を切り裂くための技で、静かに、ひたむきに。
 やがてその手がぴたりと止まる。
 背後に人の気配が立ったからだ。
「──『暗刃』禍凶殿ですね」
「血の匂いを、こんな素晴らしい場所に、持ち込むものではないよ。お若いの」
 堅い言葉に固い口調。それに応じる老人は穏やかだった。
 顔を斜めに向け、耳を向ける様は、老人の目が見えていない事を思わせるが、暗器を袖口にしまいこみ、節くれ立った手で緩やかに拱手を向ける先は、ちゃんと声をかけた刺客の方を向いていた。
「見ずとも、お分かりですか……流石は、暗殺拳の使い手……!」
 拱手もそこそこに構えを取る若者の様子に、老人は眉を顰め手を上げて制する。
「およしなさい。私に拳を向ければ、それに応じねばならない……お若い方。貴殿はどうやら道半ば。この老人に手折られるには惜しい花だ」
「拳を向けられる理由は、多い筈……覚悟!」
「仕方のない人だ」
 低く飛び、一瞬で間合いを詰める若者と、風に揺られる草花のように上体を逸らして袖を振るう老人が交錯する。
 その勝負は一瞬であった。
「ぐ、む、無念……」
 首筋から血を流し、若者は倒れ、動かなくなる。
 それを音のみで察し、老人は首を振る。
 若者の言う通り、老人はかつて刀刃拳という暗殺術を使う刺客であった。
 とある暗殺に失敗し、命を落とした老人は、気が付けばこの桃源郷に在った。
 死んだ筈の自分が、こんな美しいものを見てもいいのか。ここにいてもいいのか。
 死後の国がこんなにも素晴らしいとしっていれば、もう少し功徳を積むべきであったか。
 今までやってきたことを悔いるわけではないが、穏やかにこの余暇が過ぎ去っていくのも悪くはないと思っていた。
 しかし、どこからか生前の老人の名を聞きつけて、誰かが殺しにやってくる。
 そのことごとくを返り討ちにするごと、老人は遠巻きにされるようになり、そうしてようやく、老人は己が尋常ではない存在であることを考え始める。
 ここを血で染めるのは忍びない。されど、技の冴えは衰えることなく、己を活かしている。
 ただ殺されるだけでは、己は一体何だったというのか。
 未練であった。
 暗部に生きていた老人の、その証を求める行為が桃源郷を汚すものであっても、求めずにはいられなかったのだ。
 誰かに殺されるのもいいだろう。しかし、ただで殺されるのは嫌だ。
 その刃は冴えを増し、再び岩を切り刻み続ける。
 歴史の暗部に消える筈の影が、そこに在ったことを刻み付けるかのように。

「封神武侠界の、桃源郷と呼ばれる美しい土地をオブリビオンが乗っ取っているという話になります」
 グリモアベースはその一角、刹羅沢サクラの予見した内容を搔い摘んだとしても、その言い様は語弊があるように聞こえた。
「哀れな老人とお思いになるかもしれませぬが、かの御仁にとって不本意であったとしても、事実として彼はオブリビオンであり、放置すれば桃源郷は彼を求める闘争で血に染まり、滅んでゆくさだめとなりましょう」
 ならば彼が求める通り、猟兵たちが暗殺拳を超える死を与えることで、納得の結末を迎えればいい。
 外道に堕ちようとも、かの老人は武に生きた。その道を高め、道半ばで倒れようとも、それに見合うだけの納得が欲しいのだろう。
 と、サクラは語る。
「まあ、詳しくは会ってみねばわからぬこと。直接聞いてください」
 そして、桃源郷に至るには障害があるという。
 直接桃源郷に飛べればいいのだが、グリモアで送れるのは、あくまでもその手前、『三岔口』と呼ばれる三ツ辻が重なる宿までだという。
 その宿の向こう、人の入りを阻むかのような長い岩山の洞窟を抜けると、桃源郷に出るという話だ。
「洞窟は暗く、広大です。そこは桃源郷へ至る道に相応しく、噂に聞く仙術がかけられているそうで、人ではない何者かが暗がりの中で襲い掛かるそうです」
 襲い掛かると言っても、怪我をするものはほとんどおらず、気が付けば岩山の麓に戻されているらしいが。
 つまりその試練を乗り越えなければ、桃源郷へはたどり着けないと言う事である。
 暗闇の中で迷わず、同士討ちを避け、影のような敵を打ち払い、先へ進まなくてはならない。
「そしてその先に、桃源郷を死に場所とする老人、『暗刃』こと禍凶が居る筈です」
 そこで何を見ることになるのか。それは、出会ってみない事にはわからないだろう。
 ただし、相手は武術の達人。老人と侮らない方がいいだろう。
「なにはなくとも、礼儀は大事です。拱手という挨拶を今のうちに練習しておきましょう」
 右手拳を左手で包む作法をやって見せるサクラだが、本当はもっといろいろ作法があるらしい。
 まあ敬意が伝われば大丈夫なはずだ。
「さて、話はだいたいこんなところですが……もし、時間が余るようでしたら、せっかく霊験あらたかな土地という話ですから、ついでにお花見などどうでしょうか」
 話によれば、桃源郷はその名の通り、視界を覆い尽くすほどの桃の花が一年中咲いているという噂である。
 季節は春。戦いの疲れを癒すのもいいかもしれない。
 そうして一通りの説明を終えると、サクラはぺこりと一礼し、猟兵たちを送り出す準備を始めるのだった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
 新しい世界と言う事で、武侠の世界のお話を出してみよう、みました。
 まだ前の話が残っている状況ではあるのですが、すまん、我慢できなかった。
 暗殺者のおじいさんが、このままでは死にきれないというお話です。
 なんでこう、大陸のお爺さんは、謎の達人感があるのだろう。
 それはともかくとして、今回は冒険→ボス戦→日常というシナリオフレームを使わせていただきました。
 冒険フラグメントについてよく知らなかったので調べてみたのですが、実際にそういう話があるそうですね。
 同じようにはならないとは思いますが、精一杯面白く出来たら嬉しいです。
 もちろん、第六猟兵には多種多様なキャラクターがいらっしゃると思うので、敢えてハチャメチャにやってみるのも面白いかもしれません。
 3章は、日常パートです。お花見に限らず、桃源郷という場所を散策したりと、いろいろできるんじゃないかと思います。たぶん。
 そこまでに話がどうなっているかにもよりますが。
 というわけで、いつもの。
 皆さんと一緒に、楽しいシナリオを作ってまいりましょう。
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第1章 冒険 『三岔口』

POW   :    わざと大きな音を立て、敵の出方を伺う

SPD   :    感覚を研ぎ澄まし、手探りで敵の位置を突き止める

WIZ   :    『気』の流れを頼りに、直感で敵に辿り着く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユリウス・リウィウス
ふむ、どこかで聞いたような話だな。幸い、俺のところには意趣返しは来ていないが。

さて、仙界へ抜ける試練の洞窟か。こういうのはどこの世界でも変わらんもんだなぁ。なあ、おい。

それでは進むとしよう。
血統覚醒でヴァンパイアの血に目覚めて、周囲に「恐怖を与える」ように歩を進める。「暗視」で周囲の様子を確かめながら進み、罠があれば回避出来るなら避けていく。
襲ってくる何かも、「暗視」で見えるだろう。それに血統覚醒で鋭敏化した感覚なら、襲ってくる風音すら聞こえるかもしれん。

この程度か。一般人を想定した試練のようだな。歴戦の猟兵なら軽く踏破出来るだろう。

さて、俺もまた血に塗れた空気を桃源郷に持ち込むわけだが……。



 それは、古びた竹林と形容するのが、一番似合っているように思えた。
 人の分け入らぬ土地というのは、藪が茂って鬱蒼とするものだが、その竹林はうっすらと明るく、柔らかな日光がまっすぐと伸びた竹を隙間から照らして、地面には竹の葉が降り積もって浅く茶色をしていた。
 鮮やかで柔らかな緑と、奥に目を向けるほど深くなっていく薄闇。
 時間が許すならば、しばらく眺めていたいような涼しげな風景であった。
 桃源郷へと続く岩山の洞窟。その手前には、光のよく入る古びた竹林と、古めかしい宿が建っている。
 旅の宿は食事処も兼ねていて、三つの辻が出会う立地もあってか、旅人が足を休めてお茶をしていくようなところもあるようだった。
 桃源郷へ向かうべきやってきたユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)も、竹林へ続く穏やかな雰囲気に、グリモアベースで聞き知った情報が嫌に事務的だったせいもあってか、やや拍子抜けしたようだった。
 いや、あれも十二分に注意が必要だからそうしたのであって、現地がいかに穏やかであっても、オブリビオンの脅威にさらされているのには違いない。
 それに、陽があるというだけで、ユリウスにとっては、幸福でしかない。
 長く浸っていると、腑抜けになってしまうかもしれない。先を急ぐとしよう。
「のう、若いの。あんたも、見たところ、武芸者の様じゃのう」
 宿を通り過ぎ、竹林に分け入ったところで、ユリウスは老人に声を掛けられる。
 件のオブリビオンかとも思ったが、あまりにも常人の気配なので、すぐにそんな気は失せる。
 おっと、そういえば拱手だったか。と、思い出して拳と掌を合わせる。
 甲冑姿でそれをすれば、ずいぶんと剣呑な響きだったが、老人の目も明かぬような長い眉毛はちっとも穏やかさを崩さない。
「ここのところ、この先の桃源郷へ、武を求めて足を踏み入れる若者が増えちょる。
 聞けば、どこからか、おだやかな面をした人殺しが居座っておるらしいの」
 竹林のなんとなく人の踏み入ったような形跡が道になったような、道ならぬ道を歩きながら、老人は好き勝手に話し始める。
 ユリウスはそれを振り払うこともできたが、どうせ道中暇なので、それをなんとなく聞き流す。
「どれだけ高名だったか知らんが、そんな奴に挑むのがそんな楽しいもんかね。
 そやつも、手を汚さなんだらと後悔しとるかもしれん。だが、歩んできた道のせいかのう。
 血の畔は、血の畔を作り続ける。あの郷さえ、血に染めようとしちょる。
 お前さんも、それに飲まれんようにな」
「ふむ、どこかで聞いたような話だな。幸い、俺のところには、意趣返しは来てないが……」
 気が付けば、老人の姿はなく、振り向いた先にもただ竹林が広がっているだけだった。
 そうして、小首を傾げたユリウスがもう一度向き直ると、岩山の入り口についたようだった。
 もしかしたらあの爺さんも、桃源郷に関わる何者かだったのか。
 それは定かではないが、あの敵意のなさを前にしては、戦う気も起らない。
 なるほど、それをして達人というのかもしれない。強敵だな。
 力を得るほどに、ユリウスは理性と葛藤することが増えたようにも思う。
 そこに疲れが生じたり、やや達観してしまったりというのはあるかもしれないが、理なく戦い続けた戦場を潜り抜けたからこそ、無用に力を振るう虚しさも理解できる。
 故に、争いを望まない相手には、理由なく戦う気が起きないわけだ。
 差し当たって考えると、今から向かう洞窟には、理由があって臨まなくてはならない。
 実際問題、理由としてはただ通るだけなのだが、ここにかかった仙術とやらは、そうそう寛容ではないだろう。
「さて、仙界へ抜ける試練の洞窟か。こういうのはどこの世界でも変わらんもんだなぁ。なあ、おい」
 さして気負う事もなく、ユリウスは岩山の洞窟に足を踏み入れる。
 湿った匂いはするが、いやな黴臭さは感じない。
 広く、風の鳴る音がするから、風通しはいいのかもしれない。
 洞窟というものは、だいたい暗がりを好む蝙蝠などが多く生息しているため、饐えた臭いがするものだが……。
「ふむ……なるほど、暗いな」
 周囲の明かりが吸い込まれてしまうような錯覚すら覚えるほど、洞窟の中は数歩先も見えない。
 しかし慌てることなく、ダークセイヴァーで闇にはだいたい慣れているユリウスは、解決策を模索する。
 普通に灯りをともしてもいいが、試練というからには、独力で越えてみようか。
 その身の内に眠るヴァンパイアの血統。それを覚醒させると、ユリウスの瞳は、闇の中でも赤く光を湛える。
 闇に慣れた瞳と、闇に生きる者の血を呼び起こしたことで、洞窟の中は明瞭になる……と思ったのだが。
 どうやら、洞窟にかかっている術というのは、洞窟の闇そのもののようだ。
 ヴァンパイアの力、暗視の能力をもってしても、暗さは暗さのままで、輪郭を捉えることができる程度であった。
 もはや何が出てきても、驚きはすまい。
 何が来ても対処できるよう、恐怖を振り撒く存在の許すままに、ユリウスは堂々と歩みを進める。
『ほほほ……凄まじい殺気だのう』
 どこからか、声がする。あちこちに反響するような声は、近くとも遠くとも感じる。
 どこかで聞いたような声だが、老人の知り合いなどいただろうか。
『それが見せかけではないか、一応、見ておかねばなるまいて……』
 その周囲で、闇色の何かが凝縮するのが見て取れた。
 その何かは、人のように立ち上がり、ゆるりと猫背のように体を丸めたかと思うと、バネのように体を跳ねさせて拳を放ってくる。
 ところが、闇の中で一定の視界を得ているユリウスは、感覚が鋭敏になっている。
 繰り出される拳は何かしらの拳法なのかもしれないが、ユリウスにとっては大したものには感じなかった。
 その風切り音すら、明確に射殺すかのような意思を感じなかったのだ。
 止まるとわかっていたその拳を、わずかに身を引いてやや腰を落とすように身構えることで回避すると、やはり闇の拳は手前で止まった。
『ほほほ……見事な度胸。試すまでもなかったようじゃのう』
 そして凝縮する闇の気配が遠ざかっていくのを感じる。
 正直、この程度かとユリウスは拍子抜けするところだった。
 一般人ならいざ知らず、武を嗜む者、まして歴戦の猟兵にとっては、それは脅かしに過ぎなかった。
 まあ、考えてもみれば、一般人ですらほとんど怪我をさせずに追い返す仕掛けなのだから、当たり前なのかもしれない。
 差し詰め、見られたのは文字通りの度胸、資格といったところか。
 だとするならば、ユリウスにも思うところはあった。
「さて、俺もまた血に塗れた空気を桃源郷に持ち込むわけだが……」
 出口と思われる光の差す方向を見て、目を細めるユリウスの後ろで、誰かの気配があったような気がした。
『血に塗れてなお、お主は力の往く方向を考えておる。心配はしとらんよ……ほほほ』

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
先日、功夫を覚えたのですが、まだまだ体に馴染んでいるとは言えません。
今回の依頼はその達人ということですから、手合わせすることで上達できるきっかけになるかもしれません。

しかし、まずは洞窟ですね。
こういう暗闇は暗視機能のあるスマートグラスで通れば楽々……というわけにはいきませんね。
仙人が作った空間、いわば試練ですから、これも修行です。

ここは【第六感】頼りに洞窟を通ります。
襲われたら、魔法剣『緋月絢爛』で対応します。
相手の攻撃を【受け流し】ながら、見えない相手はまとめて片付けるのが一番。
UC【風舞雷花】で周囲まるごと電撃します。



 さらさらさらと、風の音に嬲られる竹林の葉の囁きが、実に心地よかった。
 三ツ辻が合わさる宿を通り過ぎて、岩山の洞窟の手前には竹林があった。
 それほど深くもなく、暗くもない、迷うほどの規模でもないだろう。
 それでも、のんびり散策するだけでも落ち着いてしまえるほど、爽やかな古めかしい竹林だった。
 武侠の世界には、独特の空気がある気がする。
 いや、それを言い始めたら、どこの世界にも特有の空気を感じるものなのだが、ここには歴史の中に見聞きするような、そんなあり得たかもしれない幻想を思わせる空気がある。
 そういえばアジアンテイストといえば、サムライ世界で血みどろの斬り合いだとか、妖怪退治だとか、そんなことをやってきた気がする。
 サムライエンパイアとも、やはり空気は違う気がする。
 見上げれば胴の長い竜でも飛んでいるような……そんなことはないのだが。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)もまた、新たな世界での依頼に、胸躍らせる一人であった。
 辛いものが好きであったり、中華な服を好んでみたり、この身の程はあれどこの度になって武侠の世界がこうして発見されると、ついには行動を起こすにまで至った。
 功夫を積んたのである。
 今や中国拳法の総称ともいうべき言葉だが、その拳法は、この世界でも数限りなく存在するようである。
 摩那の会得したというそれが、はたしてにわか仕込みに終わってしまうのか、新たな力となって昇華するのか。それはまだわからない。
 何かしらの形にするには、やはり本格的なものに触れるのが一番であろう。
 今回の目標は、良くも悪くも拳法の達人と言われている。
「これこれ、そこな娘さん。その洞窟は、暗くて危ないぞ」
 岩山の洞窟に足を踏み入れようとしたところで、摩那は老人から声を掛けられる。
 はて、周りにひと気はなかったはずだが、いつの間に近づいたのだろう。
 訝しむところだが、毒気のない好々爺という印象の老人は、きっと親切心から岩山の洞窟が試練に通じていることを教えてくれようとしてくれたのかもしれない。
「おや、か弱い娘かと思えば、随分と鍛え上げられている……功夫は浅いようじゃがのう」
 ほほほ、と笑うその息の薄さが、摩那の抱く脅威度を自然と引き下げる。
 どこからどう見ても、危険度のあるようには見えないが、どうやら老人は摩那の猟兵としての力を見抜く程度には本質をつかむ力があるようだ。
「先日、功夫を覚えたのですが、まだまだ体に馴染んでいるとは言えません。
 この先には、凄まじい達人が居ると聞きます。手合わせをすれば、上達のきっかけになると思ったのですが」
 あくまで油断なく、冷静さを保ったまま、さっさと仕事に移りたい気持ちをひとまず引っ込めて、老爺の話に付き合う。
「そうせずとも、力があろうに。敢えて新たな扉を開くため、苦難に触れに行くとは見上げた心意気じゃ。しかし、そうそう楽な道ではあるまい……」
「どこまでやれるものか。若者は試してみたくなるものですよ」
 ふと、思わず遠い目をする摩那が一瞬だけ視線をそらしただけで、老爺は目の前から消えていた。
 まるで最初から居なかったかのように。
 不思議な現象ではあったが、確か、岩山の洞窟には仙術が施されていると聞く。
 かの老人も、その類と思えば納得がいく。
 去ったと言う事は、認められたと言う事なのだろうか。
 ともかく、先に進もう。と、今度こそ摩那は岩山の洞窟に足を踏み入れる。
 やはり、洞窟には不思議な術が施されているようだった。
 風が流れているせいか、湿った気配はあるものの特有の動植物が腐ったような饐えた臭いはあまりしない。
 どこかで水を打つような音が聞こえるよう気がする。
 数歩先も見えないような暗闇が続く中で、不安を覚えそうなものだが、清らかな空気のせいか、妙に落ち着く気がする。
 しかしながら、あまりにも暗い。
 そういうときの為に、自前の装備がある訳で、摩那が身に着けているアンダーフレーム眼鏡も、超小型のHMDいわゆるスマートグラスである。
 あらゆる環境、状況に応じて、適切なデータを提供してくれるこれを利用すれば、彩光機能を向上させて暗闇を見通すことも不可能ではないだろう。
 その機能を、摩那は敢えて使わなかった。
「やはり、無粋ですね。仙人が作った空間、いわば試練ですから、これも修行です」
 敢えて一から武に取り組む程度には、摩那はストイックであった。
 装備に頼りきりにならない精神性は、窮地に陥った際の力になる。
 しかしながら、五体のみ。加えていうなら第六感にも頼って、暗闇の中を歩くのは、それだけで神経を使うもの。
 洞窟内のひんやりとした風が頬を撫でたとき、不意に張り詰めた神経に違和感を覚える。
 何かが居る。
 暗闇の中で、なお暗い何かが、ゆっくりと距離を詰めてくるのを感じた。
 視界を断たれた状態だからこそ、見えない情報が、そこだけ途絶えている事を異質な気配として感じ取っているのだ。
 息遣いも、足音もしない。だからこそ、違和感が形となって人のような何かを感じさせる。
 周囲の環境以外に何も聞こえない、見えないからこそ、その足運びや体格を想像させる。
 そして、それが迫ることがわかるからこそ、摩那はその踏み込みに合わせて魔法剣『緋月絢爛』を抜き放って薙ぐ。
 何も無い筈のそこに斬りつけた剣は、パンッと何かに弾かれる感触だけを返してきた。
『ほう、剣か。この暗闇で、見事な姿勢じゃのう』
「っ……?」
 あちこちに反響して聞こえる老人の声は、先ほどの老爺のそれに似ている気がした。
 その合間にも暗い何かが手を出してくる。その気配を察し、突き出される拳を剣でいなす。
 返す刀は、その拳を追って相手を斬りつけたはずだった。
 いや違う。
 手応えが無いのは、拳をいなした瞬間に身をかがめたのだ。
 ならば、次は剣の間合いの内側からくる。
 やられる。いや、そうはならない。なぜならば、剣で切りつけるだけが摩那の戦い方ではないからだ。
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別良し……散開!」
 【風舞雷花】。振り切った筈の剣が花びらへと変じ、無数の花びらに雷光が生じると、一瞬だけ暗闇が晴れた。
 周囲に在る気配の、その全てをまとめて電撃で貫く。
『おおう! ほほほ……まいったわい』
 電撃が散り、花びらが元の剣の姿を取り戻すと、黒い気配は霧散するように消えていき、なおも穏やかな笑いと共に遠ざかっていった。
 屈み込んで剣を納刀し、ふうと一息つくと、気が付けば前方に光源が見えた。
 いつの間にか目を閉じて歩いていたのか、あんなに明るいのに、気が付かなかったらしい。
 それとも、光が届かない仕掛けでもしていたのだろうか。
 とにかく、あの老爺。あるいは、仙人だろうか。
 なかなかやりづらい相手だった。
 殺意むんむんでやってくる相手と違い、純粋に試すような武をぶつけてこられては、どう対処したものか迷ってしまった。
 それでも通してくれたのは、認めてくれたと言う事なのか。
 自分の積み上げてきたものは、何かの道に通じているのだろうか。
 深く考えるのはひとまず置いておいて、摩耶は光差す出口へと歩みを進めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

むむむー、本当にまっくらだー!
でもでもまっくらでも怖くないぞー探検だー♪

まずは風の吹いてくる方に向かってパタパタと飛んでいくよ!
こうやって進んでると何かが襲い掛かってくるんだよね?負けたらスタート地点に戻されるなんて双六みたいだね!
そのままパタパタ飛んでたら空気の流れから「第六感」で襲い掛かってくるのに気付いて緊急回避だー!
無事に回避したらこっちの反撃だーとテンションを上げて暗闇を引き裂く【お姫様ビーム】でどかーんとやっちゃうよ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 風が心地よい。
 空気が澄んでいるというのもあるのだろう。
 だがそれ以上に、清らかな空気を感じるのは、この道が桃源郷に続いているからだろうか。
 さらさらと竹林を通り抜ける風が葉を揺らす。
 桃源郷へ続くという岩山の洞窟へは、三ツ辻が重なる宿の向こう側、浅い竹林を抜けていく。
 日光がこぼれ落ちるほど、まっすぐと育った竹林を抜ける風は、ほんのりと青々とした香りを運び、胸がすくようだった。
 道ならぬ道、5日に一人くらいの人通りを感じさせるほんのりとした林道を、ひらひらと翼をはためかせて行くのは、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
 森の妖精である彼女にとって、木々のさえずりなど飽きるほど聞いたようなものだが、それでも故郷にも竹林はあまり見かけない。
 青々とした林の中に分け入ると、ちょっとした清廉な気分になる。
 わりと上機嫌に、その林を抜けると、はやくも岩山のごつごつとした岩肌にぶつかる。
 すぐに洞窟は見つかった。実に幸先がいい。
 そのままひらひらと燐光を残して洞窟に入っていく小さな姿を、人のよさそうな老爺が、どうしたものかと見つめていた。
 しかしそれに気づかないティエルは、さっさと洞窟の暗闇に消えていく。
「うーむむ、どうしたものかのう」
 腕組みを崩しながら、長く伸びた髭をわしわしといじくる老爺の懸念は、やはりティエルには届かない。
 その先には、桃源郷がある。だが、今の桃源郷は危険がいっぱいだ。
 まして、桃源郷へ至る道には、老爺に扮した仙人のような存在が、生半可な者を近づけまいとする術が込められている。
 はたして、あの子供に抜けられるものだろうか。
「むむむー、本当にまっくらだー!」
 件のお子様こと、ティエルは、アホみたいに元気だった。
 実際問題、子供じみた能天気には違いないのだが、物怖じしない行動は無鉄砲さとも受け取られかねない。
 ただ、彼女は猟兵。幼いながら数々の強敵を屠り、数々の冒険を、割とノリと勢いも手伝って切り抜けてきた。
 ちょっとやそっとではへこたれないし、底抜けの明るさがいつだって絶望を振り切ってきた。
 洞窟の中は暗い。物理的な作用もあるだろうが、何かしらの術の影響で暗くされているようでもあった。
 ちょっと灯りを付けた程度では、ちっとも視界の助けにはならないかもしれない。
 つまりは、この程度で怖がっていては、桃源郷なんて夢のまた夢というわけだ。
「でもでもまっくらでも怖くないぞー探検だー♪」
 暗闇の中にあっても、ティエルは明るい笑顔を絶やさない。いやむしろ、テンションが上がってしまっているくらいだ。
 噂には一国の王女でもあるらしい彼女を冒険に駆り立てるのは、すなわちそれだろう。
 とはいえ、ティエルも猟兵。ただの能天気なお子様ではない。
 無策で見えない洞窟に挑むほど、本物のアホなどではないのである。
 そもそも妖精は、だいたいの頻度で空を飛んでいる。
 その身を浮かしているメカニズムをわざわざ解明するような研究資料には乏しいが、その性質の為か、ティエルはいつだって風を感じている。
 目をつむったって空を飛んで居続ける生き物である。
 恐らくは視覚以上に、風の流れをその身に受けているはずだ。
 幼心に、その流れを信じているのだ。
 だいたい、この洞窟にはあまり嫌な臭いがしない。
 淀んだ空気が溜まらないよう、風が流れるようになっていて、湿り気はあるものの、ねっとりと肌にまとわりつくような陰気な湿度ではない。
 洞窟の中に風が吹いているのなら、ティエルはその風を辿る。
 念のために、洞窟で迷った時のおまじないというか、教えも実践してみる。
 曰く、忍者は暗所で風の流れを読む際に、指を嘗めて湿らせ、空気の流れを感じ取るという。
 つまり、ペロッとなめた指先が、ヒヤッとした方向が風上である。
「んー、こっちだ! こうやって進んでると何かが襲い掛かってくるんだよね? 負けたらスタート地点に戻されるなんて双六みたいだね!」
 わくわくといった風にゆらゆら揺れながら、風の感じるままティエルは飛んでいく。
 それに迷いはなく、まるで見えていないことなど関係ないかのようである。
 そしてティエルは唐突に空中で静止する。
 風の流れが変わった。
 何かが、風の動きを遮ったように感じたのだ。
 何かが、敢えて風の通り道の上に立ったような、そんな気配を掴んだのだ。
「わー! 緊急回避!」
 何かが風を切るようにティエルを正確に穿とうとしてきた。
 体の小さなティエルは、それを身を翻して躱す。
 噂に聞く洞窟の中の何かが襲ってきたのだが……この暗闇でどうやって見ているのだろう。
 幼心に改めて思うと奇妙な話だと思った。
 とはいえ、襲い掛かって来るなら、反撃だ。
 素早くレイピアを抜き放つと、その切っ先が冒険で昂ぶるテンションのままにオーラを帯びて輝く。
 暗闇の中で剣と共に輝きを放ち始めるその姿は、幼いながらどこか神性を帯びているようにすら見えた。
「うーーー、どっかーん!」
 気合一閃、レイピアの切っ先から【お姫様ビーム】が照射されると、謎の気配が、じゅわっと掻き消えるのを感じ取る。
 輝きを放つビームを当てても、結局気配の正体はよくわからない黒い何かにしか見えなかった。
『うーむむ、ぶれのない強さじゃ。その若さで、こうまで練り上げるとはのう』
「うん? おじさん、誰?」
 あちこちに反響する老爺の声に、ティエルは小首を傾げる。
 いましがた仕掛けてきた者だとは、ティエルには思えなかった。
 だって、あまりにも害意がないのだ。
 それもそのはず。一般人が迷い込んでも怪我をしない程度に追い返されるのだから、最初から老爺に害意はないのである。
『ほほほ……気にすることはない。まだ少しだけ暗いから、気を付けるんじゃぞ』
「ありがとう!」
 姿を見せないその声に疑いを持つこともなく、元気に受け応えるティエルを見送るように、何かの気配は遠ざかっていき、そうしてしばらくすると、風に混じって甘い花の匂いがしてきた。
 出口が近いようだ。
「花の匂い……これが桃の花かな!」
 心なし弾むように、ティエルの羽がぱたぱたと揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
ここが新世界『封神武侠界』か。
いやあ、楽しみだな桃源郷。この世とは思えぬ幽玄な景色って話だしな、相棒ッ!
「・・・物見遊山に行くんじゃないんだよ?」
そんな事言って相棒だって気になってるんだろ?

先ずは洞窟を抜けなきゃな。頼むぜ、相棒。
「・・・式、召喚【捜し鼠】」
式神【捜し鼠】で洞窟の出口を捜索しながら、式神【ヤタ】を明かりにして洞窟を進むぜ。

人ではない何者かが襲ってくるって話だったな。
なら第六感を研ぎ澄まして襲ってくる敵の動きを見切り、妖刀でカウンターを食らわせてやるぜ。

さあ、さっさと洞窟の試練とやらを越えて桃源郷を拝むとしようぜッ!


【技能・式神使い、第六感、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】



 日当たりの絶えない浅い竹林を歩きながら、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はそののどかな空気を堪能していた。
 彼……というには少々事情が複雑なのだが、神代凶津を名乗るのはあくまでも真っ赤な鬼の面であり、『彼ら』の内で、黒髪の女性のほうは神代桜。
 ヒーローマスクであるためか、その実情は不可思議なれど、相棒と揃って一人前の彼らの行軍は、それだけである程度の騒がしさを持っていた。
「なーんだ、いいところじゃねえか封神武侠界。いやあ、楽しみだな桃源郷。この世とは思えぬ幽玄な景色って話だしな、相棒ッ!」
「……物見遊山に行くんじゃないんだよ?」
 まさしく鬼の形相の仮面、にしては弾んだ様子の凶津にたいして、桜はずいぶんと物静かである。
 兄妹のように育ったというからには、凶津がやたらと元気に喋るせいで、おっとりした風になったのかもしれない。
「またまた、そんなこと言って、相棒だって気になってるんだろ?」
 終始こんな調子で、構い過ぎなくらいに話を振ってくれるお陰で、わざわざ桜から話を振る機会がほぼ無いように見える。
 別にそれが嫌なわけではないため、これもまたいつもの調子とばかりに適当に半分くらい聞き流して桜は、頭に凶津を乗っけたまま竹林をわさわさと分け入っていく。
 やがて、岩山の中に洞窟の入り口を見つけると、足を踏み入れる前になんとなく止まる。
 そういえば、あれだけ喋っていた凶津がぴたっと軽口をやめている。
「誰か、こっちを見てやがんな。おうおう、ウチのモンに何か用かい」
 いきなり何を言ってるんだと小首を傾げる桜だったが、来た道を振り返ると凶津の言うとおりに、人が立っていた。
「おや、先に声を掛けられるとは、珍しい。そして、珍しい二人組のようじゃのう」
 なんと形容していいのか。人のよさそうな老人であった。
 害意のようなそれらしいものは全く感じないものの、異様に気配が薄い。
 まるで霧のように存在感の薄い老爺だった。
「ここいらに目的といえばそこしか無いじゃろうが……その先は、少し暗いぞ。お気をつけなされよ」
「ふーん、わざわざご忠告ありがてぇところだが、あんたぁ……あれぇ?」
 言葉だけ残してスーッと姿を消してしまった老人に、凶津はあんぐりと口をあける。
 なんだろう、これも幻術なのか!?
 そういえば、洞窟には仙術が込められていると聞く。あの老人もその類だとすれば、誤って普通の人間が入り込まないよう忠告するものだったのか。
 何をするでもなく、気配も形も消えてしまった以上、本当に忠告だけだったらしい。
「ははーん、女一人じゃ頼りなく見えたのかもなぁ! この俺がついてるってのに、なぁ相棒」
「……式召喚【捜し鼠】」
 ふふーんと鼻を高くする鬼の面が口にするのは戯言とばかり、桜はいそいそと洞窟を攻略する為の手を既に打っている。
 呪符から生み出した無数のネズミたちが、次々と洞窟の暗闇の中に散っていく。
 岩山の洞窟は異様に暗く、しかし湿った空気にはカビや動物の饐えた臭いなど、いやなものはほとんど感じない。
 こう言っては語弊があるかもしれないが、人の手が常に入って、風通しと清掃を定期的に行っているかのような清涼感すら覚える。
 天然の洞窟によくあるような、野性味をあまり感じないのだ。
「しかし暗いな。足元が見えないぞ。灯りが必要だぜ相棒」
「うん……おいで、ヤタ」
 霊符から新たに三つ足の八咫烏の姿をした式神を呼び出すと、うっすら青白い霊光を帯びた姿が浮き上がる。
 やはり洞窟の闇自体が術なのか、ヤタの明かりでもやや暗く感じるほど、洞窟は不自然に暗い。
 それでも放ったネズミたちは夜目が利くようで、その案内もあって凶津たちはゆっくりと着実に進んでいく。
「暗くて心細い時はよ、俺に頼ってくれてもいいんだぜ」
「……うん、平気」
「って、俺も実のとこ、あんまり見えてねぇんだけどな!」
「……うん、だと思った」
 暗くて静かな洞窟の中は、よく喋る凶津のこともあるが、居心地の悪いものには感じなかった。
 冒険慣れというのもあるのかもしれないが、ものすごく暗い以外は、ひんやりとして落ち着く気がしたのだ。
 どれくらい歩いたろうか。
 案内のネズミが歩みを止めたことで、異変に気付いた。
 何かが居る。
 ひたすら暗くて見通せない先に、人のようなそうでないような、黒い何かが立ち上がり、近づいてくる気配があった。
 不思議と殺意を感じないが、その身のこなしを肌身に感じる気配で視る限りは、武による圧を感じずにはいられない。
「集中しろ相棒……」
「……!」
 神経を研ぎ澄ます凶津と桜は、その気配を読み取ることに注力する。
 暗闇の中に、ただただ瞑目した闇の中に、目に見えぬ何かが形をとって襲い掛かってくる姿を視る。
 それに合わせるように身を低く、踏み込む動作で腰を切り、妖刀を抜き放ちつつ交差する。
 パンっと何かが弾けるような手応えと共に、暗闇の中の何かが霧と消える気配を感じた。
「……ふう」
 張り詰めた息を吐き、抜き打った白刃を油断なく鞘に納める。
『ふーむ、見事な身のこなしじゃのう。お手上げじゃ』
「んん? その声は、さっきの爺さんか? 脅かしやがって!」
『ほほほ、こうでもせんと、不用意に迷い込む奴が多いんじゃよ』
 どこからともなく、あちこち反響する老爺の声に、凶津は憤慨したようにぴょこぴょこと桜の頭の上で跳ねる。
 よくよく考えれば、ケガ人がほとんど出ない仕掛けというだけあって、猟兵にとってみれば、ほんとうに脅し程度のものに過ぎないようであった。
 とはいえ、修行のような暗闇の中での攻防は、なかなかの緊張感であった。
 或は、その心意気を試される場だったのかもしれない。
「さあ、さっさと洞窟の試練とやらを越えて桃源郷を拝むとしようぜッ!」
 ひとしきり仙術をかけた老爺に文句を垂れると、凶津は視界の先に見えた光源を目指すことにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
暗い洞窟に潜む怪物・・・僕、ホラーっぽいのは苦手なんです<汗>。
等と弱音を吐きつつも、仕方なく洞窟に入るリューイン。

ひかるさんがくれた光の精霊石に光の魔力(多重詠唱による光+付与属性攻撃)を注入して仙術による暗闇を解除。
洞内を明るくしつつ進みます。
更にUCで式神を洞窟内に放って進行方向や背後を精査します。。

そうして進みつつ、襲ってくる相手は第六感で読んで、動きを見切りつつビームシールドで盾受けして、マヒの属性攻撃を放って無力化します。
(襲い掛かってくる相手といっても、こちらを追い返す事しかしないのであれば、無力化する程度に止めます。)



 封神武侠界。仙人や修行僧など、他の世界とはやはりというか、毛色の違うものであるらしいことは聞いていたのだが、こと、術法や歴史といった知識の方面に食指が動きがちなリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)は、宿から岩山の洞窟に続く竹林が、あまりにも穏やかだったため、やや拍子抜けをしていた。
 ところが、ある程度進み、いざ岩山の洞窟の、その入り口に差し掛かったところで、猛烈に嫌な予感が押し寄せてきたのである。
「うう、先が見えない……こ、こわ……暗い洞窟に潜む怪物……僕、こういうホラーっぽいの苦手なんですよね」
 猛烈な嫌な予感は完全にただの思い込みだろうが、そうせしめるほどにリューインの気の弱いところは、いくつもの冒険を経ても変わらないところであった。
 よく言えば慎重。その悪い予感は大多数が杞憂に終わるのだが、肝心なところで気後れしてしまうのは、完全にヘタレである。
 とはいえ、桃源郷。封神武侠界に脈々と受け継がれるであろう、仙術の数々には、一介の魔術師としては気になる部分である。
 それに、あれやこれと言い訳を付けておかないと、結局のところ何もできなかったということになってしまいかねない。
 そんな、何者にもなれない自分にはなりたくない。
 綺麗ごとを並べたところで、今現在、足を止めている理由はどう足掻いても洞窟が怖いからという理由に過ぎないわけだが。
 ええい、迷っていても仕方ない。行くしかないのだ!
 と、意を決して足を踏み入れようとしたところで、
「これこれ、無理をして足を踏み入れるものではないのではないかな?」
「ヒェッ!」
 いきなり後ろから話しかけられて、リューインは飛び上がるようにして驚く。
 ヘタレを自称しながらも、なんだかんだと死線を潜り抜けてきたリューインだったが、その老爺の気配は、まるで霞か何かのように薄かったため、近寄られても気が付かなかったようだ。
「っはぁ~……お爺さんでしたか~。いやぁ、驚きました」
「そんな緊張せんでもええじゃろうに……なんじゃ、異国から来なすったのか。ふーむ……勇気でも試しに来たのだったら、ここでなくともええじゃろうにのう」
「ああ、いえ。実をいうと仕事というか……どうしてもこの洞窟を抜けなくちゃいけなくてですね」
 害意の感じない、好々爺然とした姿に、ほっと胸を撫で下ろしつつリューインは、当たり障りのない程度で事情を説明する。
 気のよさそうながら、どこか訝しむような老爺だったが、長いひげを撫でながら話を聞くうちにその顔には穏やかさが宿っていく。
「おぬしは、変わっとるのう。いや、最近の客人は、変わり者ばかりじゃ。
 恐れを持ちながらも、前に進む者。そういう者をこの道は拒んだりはせんよ。
 とはいえじゃ。危ない道を若者が行くのを、年寄りはあんまりいい顔はせんぞ。ほほほ」
 老人の忠言、それにリューインがいやぁと頭を掻いて笑みを浮かべる頃には、その老爺はどこかへと姿を消していた。
 やはり、と心のどこかで思う。
 ただの無害な老人にしたって、あまりにも気配が薄すぎた気がしたのだ。
 ここにいてここにいない、さながら霞のように。
 恐らく、何も知らない一般人がここへ足を踏み入れるようなことがあれば、こうして出てきて忠告をくれるのだろう。
 もう試練は始まっているのだろうか。
 深呼吸。弱気を少しでも忘れるように、ぐっと拳を握りしめると、その手の中に握ったお守りの感触が温かく反応するような気がした。
 改めて勇気を抱いたリューインは、意を決して今度こそ洞窟の暗闇へと足を踏み入れる。
 洞窟の中は、本当に暗い。不自然なほどに。
 なるほど、噂に聞く仙術というやつで、ふかい暗闇を作り出しているのだろう。
 しかし見ただけでは術の仕組みはよくわからない。
 これが見知った術式れあれば対抗術式などを構築するのだが……。
 ただし対抗策がまるでないわけではない。
 手の内のお守りに魔力注ぎ込む。
「ひかるさん……」
 お守りをくれた恋人の名を紡ぎ、その隣にあるために、勇気を振り絞る。
 光の精霊石が入っているお守りは、柔らかな光を放ち、暗闇に染まった洞窟を徐々に照らしていく。
 その効果は高い筈だが、山全体にかけられた仙術は、光を生む傍から暗闇に更新される。
「すぐに暗闇に飲み込まれるな。維持できるのは、自分の周りだけか……」
 術の範囲が違う以上、ここまで無効化できるだけでも十分と言えば十分。
 ただ、本質的な気の弱さから言わせてもらえば、もっと遠くまで明るいと気分が楽になるんだけどなぁ。
 いいや、贅沢は言うまい。暗闇に包まれている中でも、足元や数メートル先が明瞭なのは、恋人のお守りのおかげなのだ。
 それに報いる。ではないが、頑張らなくてはならない。なんというか、男として!
「あとは、道に迷わないように……【式神具現】、調査をお願いしますよ」
 取り出したる呪符を鳥獣の式神に変化させると、それらは空間に溶け込むように姿を消して四方に散っていく。
 周囲の警戒と調査のため、リューインの索敵範囲の外側まで見てきてもらい、敵の有無や順路を探そうというのだ。
 一度光で照らしたときに見えた様子からすれば、変な話だがこの洞窟は広くはあるが手入れがされている。
 迷うような場所ではないのかもしれない。
 ただ、念には念を入れておく。
 しばらく歩いていくと、果たしてその懸念は功を奏する。
「……!」
 周囲を探査する式神に感あり。
 暗闇に浮かび上がる光のただなかで、リューインは足を止める。
 目の前から、暗い何かが近づいてくる。
 心臓が跳ねそうになるのは、肝の小ささからだろう。
 ただ、驚くほどに圧力というか、害意のようなものが薄く感じる。
 そういえば、襲い掛かってくるといっても追い返す程度のことしかやってこないという話だった。
 襲われる者は、ほぼ怪我もせずに岩山の麓に戻されるだけらしい。
 避けて通りたい気分は強かったが、どうやら相手は避けてくれそうにない。
 ぐんっと速さを増して光の中に飛び出してきたのは、黒い霧の塊のような、人のようなシルエットだった。
「くっ! よ、よしましょう!」
 咄嗟に繰り出した手のひらから、浮遊型のビームシールドが展開する。
 スペースシップワールドの超技術で作られたビームシールドが、こんなオカルトじみた相手に通用するのかという懸念はあったが、即時展開した光の障壁に、黒い霧の塊はパァンっとあっさり弾かれてしまった。
『あいたたぁ! ほほほ、念の入った守りじゃ。それに、お優しい事じゃ』
「ハッ、先ほどのお爺さん!」
 光の外に消えた黒い霧の塊のような気配が、暗闇の中に溶けて霧散したようだった。
 聞こえてきた老爺の声は、それがどこから聞こえるのかわからないくらい反響していた。
『おぬし、実はそれほど腰抜けではないの。立ち上がる時は、目いっぱい立ち上がる、思い切りの強い奴じゃ。ほほほ……足元に注意して、進むんじゃよ』
 そうして声が遠ざかっていくのを感じると、暗闇の先に光の差す場所を見つける。
 どうやら出口らしい。
 やっとこの暗がりから解放される。
 と思うのと同時に、あの老人の声が名残惜しくも感じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
技能:闇に紛れる、空中浮遊、おびき寄せ、落ち着き、カウンター

アドリブ連携歓迎

「桃源郷……どれ程美しい場所か、気になりますね」
見物に行くにはまずこの試練を越えねばなりませんが、直接戦うのは苦手なので少しズルをさせて貰いましょう

召喚した液状怪物を地面の上に薄く広げ、自分はその少し上を浮遊しながら水音を立てないように移動します

敵が立てる僅かな水音には気づかないふりをしてぎりぎりまでおびき寄せ、仕掛けてくる瞬間に怪物を持ち上げて包み込みます

代償にした正気度に応じた残忍さ※で敵に止めを刺し、洞窟を突破しましょう


正気度-1:動けなくなった敵に手刀を打つ~正気度-10:液状怪物で雑巾のように敵を絞り上げる



 のどかだ。
 封神武侠界。仙人や武闘派が跋扈するという噂の世界に足を踏み入れた西洋鏡のヤドリガミ、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)が、最初に抱いたのは、そんなありふれたものであった。
 たしかに、霊験あらたかと言われればそうとも思うし、ただの田舎と言われれば確かにと思う。
 桃源郷へ続くという岩山の洞窟。そこへ至るべく明るい竹林の中を、落ち葉を踏みしめながら優雅に歩くというのは、なんとも素朴で仕事を忘れそうになる。
 いっそのこと、このままその辺りを散策してみるのもいいかもしれない。
 と考えもしたが、いやいやと思い直すのも数度。
 ヤドリガミゆえに、人と化したその姿は生まれ出た心象が形になりやすいものだが、鏡吾のそれは、モノトーンの色調、精緻でゴシックな刺繍が細かく入った紳士服には、ほのかに花の香りすら沁みついている。
 常に微笑を浮かべるその甘いマスクは、人通りがあれば多くの女性が振り向くだろう。
 ただし、本人は常に表情ほど微笑んでいるわけではなく、その手には仮面が欠かせないという。
 パッと見れば、あまりにも華やかな空気を纏う鏡吾にとって、こののどかな空気は不似合いであったが、本人は悪くない気分で歩みを進めていた。
 誰もいない上に空気もおいしい。一人の時間というのにも種類はあるが、誰の目も気にしなくてもいい森林浴というのも、たまにはいいかもしれない。
 いやいや、これはお仕事なのだから、サボっているわけではないですよ。
「いいところだ……この先にあるという桃源郷……どれほど美しい場所なのか、気になりますね」
 欲を言えばお茶と座る場所があれば言う事はない。
 達観するほど生きてはいないつもりだが、30も過ぎると、どれだけ若々しくても枯れる部分も出てくるものである。
 おっさん臭いと言われても、まあおっさんになりつつあるのだから、しかたない。
 牧歌的な解放感に浸るのもほんの少しの束の間。
 名残惜しいところだが、岩山の洞窟のその麓までついてしまった。
 入り口から洞窟を覗き込んでみると、なるほどたしかに暗闇が広がっていて、その全容は文字通り杳として知れない。
 鏡のヤドリガミとしては、光のない特殊な仙術のかかった洞窟は、なんとも踏み入るのに気が引けてしまう。
 それにだ。桃源郷への道を阻むこの洞窟を往く者には、暗闇の中に潜む何かが襲い掛かってくるという話である。
 桃源郷見物には興味があるものの、鏡吾自身は直接戦闘は苦手としている。
 さすがに一般人に引けを取る事はないだろうが、武器を持って戦国で名乗りを上げるような豪傑とは言い難い。
 鏡のように磨き上げた盾を手に怪物退治に赴いた英雄も居るという話だが、普通は鏡で戦おうとは思わないだろう。
 彼の最大の武器は、口車と電脳魔術による隙をついたり策を用いる戦術である。
 ずるいと言われるかもしれないが、戦いは戦う前の準備段階から始まっているのである。
 そうだ、今回もずるい手を使ってなんとかしてみよう。
「いあいあ のういしす……」
 ユーベルコードの発現呪文を口ずさむと、異世界の狂気に触れたためだろうか、その銀髪、身に着ける褪せた様なモノトーンの黒服が波打つように光沢を帯びて、消えていく。
 鏡のような光沢は、やがて銀色の雫となって、鏡吾の足元に水たまりのように広がる。
 暗い銀色のそれはすぐに輝きを失い、影のように鏡吾に付き従う。
 【ニトクリスの鏡】は、古代エジプトの女王が敵を呪い殺すのに用いた鏡にちなんだものである。
 鏡吾は、その水たまりのように薄く広がった液状の名状しがたき怪物の上を、わずかに浮遊しながら、洞窟に入っていく。
 洞窟の中に入ると、数歩先も見えない暗闇に包まれて、ただ風通しのいいやや湿った風だけしか感じなかった。
 洞窟と言えば、カビであったり動物の死骸や排泄物などがそのままにされてあったりで、割と嫌なにおいがするものなのだが。
 わずかな埃っぽさ以外は特に感じないほどの、静かで落ち着くほどの洞窟の空気に、鏡吾は怪物召喚で消耗した正気度のせいかとも思ったが、どうやらそうではない。
 おそらく、無用な怪我人を出さないためなのか、こまめに手入れされている洞窟なのかもしれない。
 怪物の感覚を通して、周囲を索敵しながら洞窟の中を進む鏡吾は、特に危険を感じるようなものもなく、暗闇の中とは思えぬほど順調に進んでいく。
 ただ、広く感じる洞窟だが、今のところ分岐の一つもないのは、逆に気になってしまう。
 見落としは無い筈だが、ここまで何もないと、妙に違和感があるというか……。
 ふーむ、と顎に手をやりわずかに浮いたまま考えこもうとしたところで、液状怪物の水たまりに何かを感じる。
 足音や水音とは違うような、撫でつけるようなそれは、波風のようなものだろうか。
 圧力というかわずかな質量のようなものを感じるが、存在は希薄な方だろう。
 洞窟内の風の影響だろうかとも思ったが、明らかに風の流れとは別の存在だった。
 記憶の中に、それと同等の質感を思い浮かべれば、それは恐らく霧。
 湖上に霧が立つように、不思議な圧迫感がすごく狭い範囲で起こり、近づいてくる。
 だが奇妙だった。
 悪意のようなものをまるで感じないのだ。
 怪物をけしかけるかどうか迷ってしまうほど、害意の感じないその存在に、どう対処したものか。
 いや、仕掛けてくるまで待てばいいか。
 手遅れになっては笑えないが、警戒だけはしつつ、気づかないふりで歩みを進めると、その霧も追いかけてくるようだった。
 さて、出口にはちゃんと通じているのだろうか。
 暗闇の中では時間もよくわからないことに、そろそろ不満を感じ始めたところで、霧が動いたのを感じる。
 液状怪物が波立ち、飛沫を上げるほどのそれは、人が技を以て踏み込むときのそれに似ていた。
「今です」
 それが攻撃と判断するには迷うところだったが、仕掛けてきたなら応じなくてはならない。
 ざばっと液状怪物が起き上がって霧のような何かを包み込んだ。
 包んだその何かを、えいやっと手刀で打ち据えると、それがとどめとなったのか、パンッとはじけ飛んだようだった。
 まるで手応えがない。
『変わった術を使うのう。やられてしまったわい』
「おや、様子見とは、お人が悪いですね」
『ほほほ、試すまでもなかったのう。あんなものを使っておきながら、実に落ち着いとる。しかし、余計なお世話かもしれんが、ありゃ体によくないぞ』
「フフ……体に良いものばかりも、よくないですからね」
 どこからともなく話しかけてくる老人の声にも驚くことなく、にこやかに応じながら、その霧のようなものをけしかけてきた老人には、本当に害意がない事を読み取る。
 最初から脅すつもりだったようだが、それに対応するにしては、大技を使い過ぎたか。
 いやいや、これもまた試練と思うことにしようか。
『然り。適度に穢れを嗜む。俗世とはそういうもんじゃな。この先に、お前さんの望むものがあるといいのう』
 そんな言葉を最後に、老人の声は遠のいていく。
 それをなんとなく感じつつ、前を向くと、どうやら洞窟の終わりが近づいていたらしい。
 光の洩れる出口からは、ほのかに花の匂いがした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『暗刃』禍凶』

POW   :    刀刃拳伝承者
【敵の攻撃を切り裂き反撃する拳法、刀刃拳】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【狙いを察し、思考パターン】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    飛燕刃・不視
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【透明な柳葉飛刀と景色に溶け込む柳葉飛刀】で包囲攻撃する。
WIZ   :    滑灯籠・幻刃
【足の刃で滑り加速し敵の視界から外れる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【音で惑わし視覚外から刃】で攻撃する。

イラスト:ばんどー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 洞窟を抜けた猟兵たちが見たのは、一面の桃色。
 薄紅に染まる桃の花が咲いては散り、散っては咲くという噂の桃源郷であった。
 そこを棲家としている仙人や仙女といった住民は、みな朗らかであり、ただちょっとだけ困ったような顔をしていた。
 最近は客人が多くて楽しいことも多いとのことだが、その客人の多くの目的は、郷の外れにいつの間にか現れた老人だというのだ。
 『暗刃』、かつてはそう呼ばれた暗殺拳の使い手である老人。
 老いてなお、鋭さを失わないその実力は知る人ぞ知るものであり、暗殺武術でありながらも、彼の者に挑戦する武術家はこのところ後を絶たぬという。
 仙人の住まう郷にそういった話が珍しいわけではないが、『暗刃』禍凶と立ち会う者は無事に帰ることはなく、彼の居場所には無数の骸が転がっている。
 岩を穿つ刃物の音。
 この場所に感銘を受けてからと言うもの、老人は毎日のように岩に詩を刻んでいた。
 己の生き様を書き残すかのように。
 これまでの生が、桃源郷に居ながらにして、尚も骸を積み上げる事を儚むかのように。
 しかしながら、
「──ほう、今度の客人は、歯ごたえがありそうだ……」
 猟兵たちの歩む足音、それだけで、練達したものを感じ取った老人は、岩を刻む手を止める。
 首をかしげるようにして耳を向ける仕草、その横顔には嗜虐的な笑みが浮かぶ。
 しかしながら、今も昔も、老人にとって悔いることはほんの一握り。
 可能であれば、もう少し功徳を積んでおくべきだったか。というくらいのもの。
「私も武人。挑み来る者を無碍にはすまい。これもまた、人生の余暇なれば」
 痩せて皴の寄った、節くれ立った手が拳と掌とで礼の形を作り、
 次の瞬間にはその手に無数の暗器が握られていた。
「──仕方のない事」
ユリウス・リウィウス
いい天気だな、御老体。だが俺は、ここに血の雨を降らせに来たものだ。
あんたと同じく、俺も昔は暗殺稼業をしていたものさ。
清浄なる仙界に居慣れぬ同士、これ以上は刃で語ろうか。

俺の流儀でいって構わんな、と確認してから双剣を抜き、以後は無言で刃を交わす。
老爺の攻撃を「見切り」、「盾受け」して凌ぎ、反撃に「カウンター」で「切り込み」。「傷口をえぐる」「なぎ払い」で、暗器の間合いまで入り込ませることを許さず。
そうして老爺の注意を双剣に引き付けておく。

その打ち合い自体が仕掛けだ。本命は「暗殺」の名もなき暗殺術。
悪いな、御老体。俺は足癖が悪くてなぁ。

一歩間違えば、俺の首が飛んでいたところだ。心底、肝が冷えたよ。



 微熱を感じるほどの暖かな光景とでも言えばいいか。
 桃の咲き乱れる、言うなれば仙桃の育つ気候に最も適した環境を維持し続ける桃源郷の気風というべきなのか。
 やや蒸れた様な清涼感が吹き込める小さな丘に、武骨な切り傷を刻まれ続けた巨岩と、黒衣の老人だけが浮き出て見えた。
 いや、或は、この場に足を踏み入れたユリウス・リウィウスその人も、この甘い芳香漂う空気には、本人ですら不似合いに思っていた。
 全てのものを祝福するような、生命にあふれた空気の中に、二人という存在は、死の色を濃く映し過ぎていたのかもしれない。
「いい天気だな、御老体」
「たまに霧のような雨も降る。それもまた、善きものだよ。お若いの」
「雨か……正直、いい思い出はないな。だが、それがいいものだっていうなら、いつかお目にかかりたいもんだ」
 サングラスをかけた老人、禍凶の目線は読めないが、距離を取りながらゆるく歩む二人の間には、静かな間合いの取り合いが既に生じていた。
 よく手入れされ使い込まれたユリウスの甲冑は、重さはおろか金属同士が擦れるような音すらほとんどさせないが、使い込むほど死線を抜けてきたせいだろうか。
 戦禍に流れた血肉を泥雨のように浴びた痕跡は、いくら手入れが行き届いていようとも禍凶には匂いでわかるようであった。
 空間がまるで反発し合う磁力のような圧迫感を生み、
「しかし、貴殿が望むのは、どうやら血の雨……その鋼の具足は、この地を踏むにいささか居心地が悪そうだ」
「それはお互い様だろう。あんたと同じく、俺も昔は暗殺稼業をしていたものさ」
「私は、この場所を気に入っているんだがねぇ……」
 ぞろり、と刃物同士が擦れる音が、さながら金属の鳥が翼を大きく広げて威嚇するかのようにも感じた。
 冷たい殺意が、朗らかな陽気を一瞬にして覆い尽くす。
 その本性こそが、答えであった。
 どこか疲れた様な嘆息と共に皮肉気な笑みがもれる。
「清浄なる仙界に居慣れぬ同士、これ以上は刃で語ろうか」
 ここより先は、お互いに自分の流儀を通した方が勝ち。
 両腰に下げた双剣を引き抜くと、反発し合うかのように張り詰めた空気が均衡を崩し、弾けるような錯覚を覚えると共に、どちらからともなく加速した。
 靴底にそりのような刃物を仕込んだ禍凶が地を滑るように踏み込むも、最初の大ぶりな一撃はユリウスの剣に受け止められる。
 羽のように指にいくつも挟んだ暗器は、見た目と違って意外にも重く、老爺の膂力とはとても思えぬ攻撃だが、受けられないほどではない。
 両手を伸ばし、振りかぶるような動きは軌跡が見えるほど美しい弧を描いているからこそ、その間合いが容易に読めたのだが、それだけに一度派手に目に焼き付く間合いというのは、誤認しやすい。
 続けざまの嵐のような攻撃も受けるだけなら簡単だったが、ユリウスはふと、最大まで手を伸ばして振りかぶってきた筈の老爺の間合いが、気が付けば肌に密着するほどに寄せて折りたたんだ手によるものに変わっている事に気づく。
「ッ!」
 浅く息をつくように、敢えてえぐり込むように切り込み、もう一刀で薙ぎ払うと、ようやく距離が少し離れた。
 一呼吸分の間が開く。
 つう、と冷や汗が頬を伝う。
 とんだ食わせ物だ。
 最初に派手な一撃を見せ、間合いを敢えて見せたのは自らの間合いを縮めるのを誤魔化すための布石だった。
 武器を持てば、人はどうしたってその武器を使う意識を持つ。そして、武器を持つならその間合いで勝負するのが常である。
 最初にその間合いを敢えて見切らせたのは、最大ではなく最少を見えにくくするため。
 あのまま距離感に気づかず斬り合っていたら、知らずの内に間合いに入られていたかもしれない。
 これが虚実を織り交ぜた武術というものなのか。
 一見華やかで無駄があるように見え、その実、綿密な戦闘知識から心理の裏を突くような底意地の悪さを感じる。
 だが、意地の悪い戦場での戦い方は、こちらも素人ではない。
 鋭い剣戟がふたたび繰り返される。
「お若いの。その身のこなし、剣術は見事なものよ……。しかしそれは、生きるための粗野で必死の剣……。実の剣のみで術の奥には、届かぬぞ」
 鋭く重みのある攻撃と、フェイントから繰り出される崩しをいくつか織り交ぜ、ただ受けるだけでは力を流されてしまうユリウスは、攻撃も仕掛けることで禍凶の間合いに入られないようにはしている。
 だがそれでも、そればかり繰り返せば、いずれ見切られる気配があった。
 老いてなお衰えず。その暗器を繰り出す技は、刃を交わすごとに鋭さを増していた。
 その証拠に、重心をずらし、飛び回るようにしていた老爺の動きも、徐々に地に足を付けその身を動かさないようになっていき、代わりに攻撃を受けるユリウスのほうが動きが大きくなった気さえする。
 やがて、得物の重さすら凌駕するように、ユリウスの双剣がいなされ、胴ががら空きになる。
「これが術──!」
「ああ──」
 致命的な隙に見えたそこへ繰り出された暗器だったが、それが届くよりも前に、ユリウスの身体は深く沈み込み、すっかり足を止めた禍凶のその軸足を蹴り払っていた。
 【名もなき暗殺術】はその名の通り、名付ける程でもない近接格闘アーツの一種である。
 双剣を持てば、必然的にそれの使い手であろう。事実、ユリウスは双剣のみを以て戦い、それのみが武器であるかのように見せかけた。
 その技量に隙を見れば、それこそが狙い。
 これまでの斬り合いで完全に意識から外れていたユリウスの足技が決まり、背から倒れ込む老爺を追いかけるようにユリウスの踏みつけが繰り出される。
 頑丈な金属製の具足による踏みつけは、戦場格闘でも有用な技である。
 地を打ち付ける蹴り足が、老人を叩き潰したかのように思えたが、
 竜巻のように手足を振り回し、飛び退く禍凶に、ユリウスは思わず距離を取る。
 目の前を一瞬だけそりのような靴底の切っ先が掠めて、嫌な汗が出る。
「悪いな、御老体。俺は足癖が悪くてなぁ」
「ハハハ! この私が、術理にて後れを取るとは……長生きするものだなぁ!」
 もう一瞬だけ踏み止まっていたならば首が飛んでいたかもしれない事に肝を冷やしつつ、ユリウスは尚も剣を構える。
 対する老人は、壊れたサングラスを投げ捨て、懐から新しいサングラスを取り出すと、折れてよそを向いた鼻を無理矢理正してかけ直すと、楽しげに哄笑するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
ここが桃源郷、聞きしに勝る絶景だな。
なあ、そこの爺さんもそう思うだろ?
おっと、この世界の挨拶は『拱手』だったな。俺は凶津、こっちは相棒の桜だ。
ここで会ったが何かの縁と茶の一杯でもしたい所だが
「・・・禍凶さん。貴方を倒しに来ました。」
と、言う訳だ。ひとつ手合わせ願うぜッ!
雷神霊装だ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」

引き上げたスピードと反応速度を駆使して妖刀での攻撃を仕掛ける。
爺さんの攻撃は殺気を感じ取る事で暗器の動きを見切り避けてやるぜ。
って、うおッ!?範囲攻撃ッ!?
何とか見切って妖刀で受け流してやるッ!

強過ぎだろ爺さんッ!これが達人ってヤツかッ!?


【技能・殺気、見切り、受け流し】
【アドリブ歓迎】



 桃源郷、見渡す限り萌える桃の花は、その響きの通りに燃えているかのような生命の輝きを感じる。
 しかしながら、オブリビオンの支配すると銘打たれた小さな丘には、生命のあふれるその世界とは真逆の黒が佇んでいる。
 幽玄な景色からすれば、そのまま静かに埋没してしまいそうな小さな人影ながら、水瓶に落とした墨汁のように黒く染み出すそれは、殺意であった。
 ただの一般人が、ほんの普通な正気を持っているならば、そこには立ち入るまい。
 神代凶津と、その相棒の桜は、目的故にその小さな人影に向かって歩んでいた。
 向かい風に思うのは、熟れたような桃の柔らかな香りではなく、冷たく饐えた死の香り。
 穏やかな景色の中に、死の風だけが浮き立って見えていた。
『ここが桃源郷。聞きしに勝る絶景だな。
 なあ、爺さんもそう思うだろ?』
 紅白の巫女装束に長く艶のある黒髪は、桃色の桃源郷の中にも映える美しい立ち姿であったが、まさか桜の頭につけた鬼の面がいきなりしゃべり始めるとは思わなかったのか、黒い老人は面食らったようだった。
 しかし、すぐに違和感の正体に気づいたのだろう。
 一人でいるようで二人いる。
 禍凶は、凶津と桜が二人で一つであることに、ようやく得心したようだ。
 見た目には儚くとも、それが己にとって脅威になることも。
 それにもかかわらず、暗器を袖内にしまい込むと、年季を重ねた両手を拳と掌で合わせる。
「私の目にはもう、ちらとしか見えないが、ここの美しさは心が洗われるようだよ」
 一見すると穏やかに見えるその拱手に、おっとそうだったと凶津も桜に拱手を促す。
『生憎と顔しかねぇもんだから、そこんとこは許してくれよな。俺は凶津、こっちは相棒の桜だ』
「私も、顔だけの相手は初めてだ。気にすることはない。貴殿の可愛らしい相棒に免じるとしよう」
 口の端を緩める禍凶とは対照的に、桜の表情には何も浮かんでいない。
 あるのはただの決意。どれだけ穏やかに見えようとも、その存在はもはやこの世界を遠からず滅ぼすものに他ならないからだ。
 だから、それ以上の会話をする必要もないわけだが、どういうわけか老人もこのヒーローマスクも、お喋りがそれほど嫌いではないらしい。
 とはいえだ。
『ここで会ったのも何かの縁。茶の一杯でもやりたいところだが』
「……禍凶さん。貴方を倒しに来ました」
『という訳だ。ひとつ手合わせ願うぜッ!』
 二つの視線が重なるのを受けて、禍凶も口をつぐみ構えを取る。
 袖口から羽のように生える無数の柳葉刀を手にする禍凶を前に、桜は妖刀の柄に手をかけ、抜き放つ。
 無銘なれど妖しを斬るに十分な力を備えたそれを手にし、
 そして桜は、あどけなさの残る顔に鬼面を重ねる。
『雷神霊装だ、相棒ッ!』
「……転身ッ!」
 静かな少女が鋭く言葉を発することで【雷神霊装・二ノ型】は発現する。
 それは雷を司る神を降ろし、その身に纏うことで、比類なき反応速度をスピードを手に入れる。
 その代償は決して小さくはないが、正体がよくわからない凶津が背負うことで桜への負担を減らしている。
 つまりは、その身に強力な神を宿す桜は、とてつもなく高いポテンシャルを得ることになるのだが、
『行くぜッ!』
 紫電を纏う桜の妖刀が閃光の如き一閃を繰り出すが、その切っ先は禍凶に届かない。
「っ……」
「紫電の如き剣。確かに速い」
 続けざまに切り返すのを三度繰り返すも、その切っ先はまるで計ったかのように一歩分外される。
 単純な速さではない。読まれているのだ。
「雷に先触れあり。剣に構えあり。術に頼り過ぎてはいけない」
 もう一歩。そう勇んで踏み込もうとしたところ、思考の端で凶津が警告を発した気がした。
 踏み止まり、咄嗟に振り向きざまの一刀を虚空に浴びせれば、何かが金属音を立ててはじけ飛ぶ。
 見ればそれは、禍凶が手にしていた柳葉刀の一つだった。
 目に見えぬ術が施されたそれが、いつの間にか桜の背後を取っていたのだ。
『まさか後ろを取ってくるたぁな……いや!?』
 その周囲に風を切る音。それも一つや二つではない。
『って、範囲攻撃だぁ!? なんとか見切ってやるぜぇ!』
 見切る、と言ったものの、どうすればいいのか。相手は見えない術をかけた無数の刃だ。
 適当に動いても隙をつかれるのが落ちだ。
 いやいや、まてよ。なにも目で見るだけが見切りとは言うまい。
 禍凶は何と言ったろうか。
 そう、雷に先触れあり。剣に構えあり。
 今の凶津と桜は一心同体。そこに雷を纏うからには、その反応速度は常人の数百倍。
 それでも来ることがわかれば、読まれる。
 機先を制するからだ。
 即ち先触れ。雷を纏うからこそ、落ちる先との兆しは感じる筈だ。それを、見切る。
『うおおおっ!』
 微細な針のような違和感。引き付けられるかのような兆し。それらを、凶津は、桜は一つ一つ、ひとつ残らず切り伏せていく。
 そのスピードはまさに雷。
「はは、助言を与えすぎたかな……!」
 稲光が尾を引き、砕けた柳葉刀のその先に、禍凶がいる。
 切っ先に雷光を迸らせて、桜の剣が迫る。
 振り下ろされる斬撃は、やはり兆しを視られていたのか、紙一重で届かず。
 と、思いきや、禍凶の服の上から鮮血が散る。
「ぬぅ! ……そうか! 工夫を加えてきた!」
 同じ技を使えば同じ避け方をする。そう踏んで、切っ先から雷を発して伸ばした不可視の刃が、紙一重を破った。
『ふぅー、ふぅー……強過ぎだろ爺さんッ!これが達人ってヤツかッ!?』
 それでも咄嗟にできた工夫はまだその程度。
 その手にはまだ無数の飛刀が握られている。
 再びあれらをさばききれるのか。そして、捌いた末に、その懐に再び踏み込ませてくれるのか。
 リスクを考え始める凶津ではあったが、それに反して肉体は構えを崩さない。
 どうやら桜はまだやる気らしい。
 それならば仕方ない。どこまでもつき合ってやろうじゃないか。
 なにしろ、一心同体だからな!

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
やっと桃源郷に着きました。
桃の花がきれいなところですね。

さて、いよいよ問題の『暗刃』との対決です。
暗殺武術の使い手ということで、間違いなく強敵ですが、
進んで悪事を働いているわけではないのは救いになりますね。

ここはこちらも進んで勝負を挑む身ですから、恨みっこなし。
お互い高みを目指す相手同士として挑ませていただきます。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
【先制攻撃】で足元に【ダッシュ】を掛けて、足払いからの蹴り【功夫】。
暗器はヨーヨーの【武器落とし】で叩き落とします。
そして、ワイヤーを絡めたところでUC【サイキックブラスト】を使います。

防御は【第六感】を頼りに回避します。



 緩やかな風にぬくもりを感じるほどの穏やかな気風。
 はらはらと舞う桃の花弁が、時間の流れすらも忘れさせるかのような、桃源郷の景色とはそれほどの勝ちがあるように思えた。
 黒木摩那は、洞窟の暗さから目が冴えたかのようなこの光景に手を日傘代わりに少しばかり足を止めていた。
 岩山の洞窟はほぼ登り道だったので、この光景にはなんだか達成感がある。
 何の気なしに、いきなり仙人相手に功夫の講習を受けたような気もするし、それだけでもなかなかの収穫だったのではないだろうか。
 桃源郷の美しい景色が報酬というのなら、納得してしまいかねない。
 いやいやいや、それが本題ではない。
 とはいえ、やっと着いたという気分から一休みしたい気分は拭えない。
 あの鳥は何だろう。暇ができたらバードウォッチングも悪くないかもしれない。
 仕事を忘れてのんびり散策したい気分にもなってくる。
 いやいやいや。
 霊的な力を高めてくれるという桃源郷で、一休み。といきたい欲求をひとまずは置いておいて、摩那は歩みを進める。
 さすがにしばらく歩いていれば、暗さに慣れた目も明度を調整する。
 幽玄な桃色の世界にも、ぬるま湯のような気温を涼しくする風にも、そろそろ胸が焼けそうになってくる頃になって、冷たい気配に近づいていることに気づく。
 白洲に置いた御影石のような、暗くて冷たい違和感。
 さしもの摩那とて、おのぼりさんのようにきょろきょろと見回していた視線を正し、それを見ざるを得なくなる。
 それは彼女が志し始め、積み上げ始めた功夫が故だろうか。
 それとも猟兵として選ばれたがゆえに気づいたのだろうか。
 オブリビオン、『暗刃』禍凶という老人の存在は、いささか離れていても、その小さな人影の在り様に、疑いの余地が見当たらなかった。
「今日はまったく、客人の多い事だ……貴殿のようなお嬢さんとて、命を散らしに来る。……どうだね、桃源郷は?」
「ええ、桃の花が綺麗ですね」
「ああまったく。いくら見ても飽きない。もっと見ていたい。貴殿もそうではないかな?」
 穏やかな調子で話しかけてくる禍凶の様子に、おやと思いつつも、あくまで自然体で返す摩那。
 オブリビオン、まして暗殺武術の使い手でありながらも、積極的に戦うことを望んでこない相手というのは、なんだか新鮮だった。
 しかし相手は武人。戦うべきと決めてしまえば、迷うところはないだろう。
 そしてオブリビオンという存在は、遅かれ早かれ世界を滅びに向かわせる。
 相手を気遣うような、遠回しに戦いを避けるような言い回しをしてくる禍凶の言い分も摩那にはわからなくはない。
「……進んで悪事を行わないのは、ここが桃源郷だからでしょうか?」
「私にそれを命ずる者が居ない。しかし、武人として挑まれれば、応じぬわけにもいかぬ」
「なるほど。では、恨みっこはなしですね。こちらから進んで勝負を挑む訳ですから」
「私は反対だがね。若い身空で、殺し合いに興じるなど」
 すっと腰を落とすようにして身構える老人の口ぶりに、摩那は奇妙な感覚を得る。
 暗殺武術を使う者が、どこか説教臭く人道を説いてくるのだからそれも当たり前かもしれない。
 だがきっと、それはまやかしだ。
 それが本音であろうとも、全てではない。なぜならば、暗器を構えるその姿があまりにも堂に入っている。
 だからだろう。悔いる心を抱くことのないよう、大義名分をくれてやろうと思ったのかもしれない。
「お互い高みを目指す相手同士として挑ませていただきます」
「ふふふ、小癪な」
 超可変ヨーヨー『エクリプス』を手に構える摩那の言葉に、老人の顔にようやく武人の笑みが浮かぶ。
 手放したヨーヨーが回転しながらストロークと共にワイヤーを伸縮、キャッチとリリースを繰り返し、金属のボディが重さを感じさせず回転と静止を3度ほど繰り返したろうか。
 つかみ取るヨーヨーの乾いた音とともに、弾かれたように摩那が駆ける。
 低く、素早い踏み込みは、恐らく老人の膝よりも低い。
 だがその程度は、禍凶にも見えている。
 低い踏み込みは迎撃しづらい。加えて、ヨーヨーのような分銅じみた攻撃法は間合いがつかみづらいだろう。
 禍凶の手にした暗器が摩那の頭上をかすめる。さらには、靴の先にそりのような刃を付けた足先を突き出すも、摩那はそれをのけ反って躱す。
 初めから狙いは一つ。
 武器を振るい、蹴りを出した状態では足元は軸足のみ。
 滑り込むように禍凶のその軸足を狩り、文字通りに足元を掬われて浮く老人に、身体を反転、倒立するように地を蹴り、曲芸じみた蹴り上げを見舞った。
「なんという、功夫。その若さで、よく練り上げた……! だが」
 空中で蹴りを受けながらも身を翻す禍凶の両手には、無数の暗器。
 それらが一斉にひしめき合って怪鳥の鳴き声のような金属音を立てる。
 けたたましい音を立ててあちこちに飛ぶ暗器で、攻撃の方向を見失わせる攻撃のようだが、
 降り注ぐ暗器を、摩那はヨーヨーを振り回して迎撃する。
 激しい回転と共に撃ち出したヨーヨーからワイヤーが波打ち、それが膜のように暗器を落とす。
 だが、肝心の禍凶の姿はどこへ行ったのか。
「──滑灯籠・幻刃」
「ハッ!?」
 暗器を目で追うために視線をそらした一瞬。
 なんと、禍凶はまだ空中に居た。
 鷹のように両手を広げ、刃の付いた靴で鎌を振るうかのような一閃を真上から振り下ろすのを、第六感に従うまま横っ飛びで回避する。
 あまりにも長い跳躍力。いや、或はそれは、軽身功。
 だが、相手の位置がわかれば、今の摩那にとっては都合がいい。
 撓んだヨーヨーのワイヤーを巻き取れば、両手を広げた禍凶に絡みついた。
「サイキックブラストォ!」
 それは功夫とは違うが、相手と有線で繋がった以上は、それを使う以外に手はない。
「ぬぐおっ!?」
 サイキックに依る電撃を流し込まれて、さしもの達人も身をよじって地に落ちる。
 が、次の瞬間には、バネのように身を翻して立ち上がった。
 その拍子にワイヤーも暗器で断線してしまう。
「ふふふ……素晴らしい、功夫だ。わが身の未熟を恥じるばかり……」
 黒衣からぶすぶすと焦げ臭い煙を上げつつ、ずれた中折れ帽をかぶり直す。
 もはや歳の差などと甘いことは言わぬ、油断のない武術家の笑みがそこにはあった。
 だが、【サイキックブラスト】は功夫なのか?

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
技能:念動力、リミッター解除、盾受け、大声、陽動、斬撃波

「禍神塚鏡吾と申します。早速ですが、一手の御指南をお願いしたく存じます」
拱手しつつ名を名乗り、挑みます
しかし、洞窟の試練でも殺気を感じませんでしたが、今度は別の意味で殺気を『感じられない』……
これが暗殺拳というものですか

いずれにせよ、私には彼を満足させられる功夫の持ち合わせはありません
唯、策をもって挑むのみ

装備のミラーシェイダーで急所と鏡を守りつつ、照魔鏡を使用します
「貴方が積み損なった『功徳』とはいかなる物ですか?」

実は、このUCはブラフ。真実は答えても答えなくとも結構です
鏡の中に潜ませたハングドマン・イン・ザ・ミラーで攻撃しますので



 恐らくは、一般的な美的感覚と視力を持っていれば、見る分には桃源郷という場所は美しい場所であった。
 色づいては散ってまた咲く桃の花と、それが咲き続けるに適した気温から大きく変動しない気候。
 ぼんやりとすらしてしまう生命力に溢れる空気の中に、それは異物としてしか映らないように思えた。
 うっすら甘い花の匂いに混じって、鼻腔には感じない冷たい匂い。
 それは気配ともいうべきもの。
 或は、禍神塚・鏡吾が猟兵であるために感じる、オブリビオンのその気配なのだろうか。
 いずれにせよ、桃の園の小さな丘にあって、黒点のような人影は異質であった。
 『暗刃』禍凶。痩せて水の抜けたようなうっすらとした立ち姿は、老人にしては背筋が伸びている。
「おや、花の匂いがする……この郷で桃の花以外の香りがするのは、なかなか珍しい事だ」
「そうですか? まあ、紳士の嗜みですよ」
「どうやら、少しばかり変わり者と見受ける……私を訪ねてくるのは、屈強な武術家がほとんどだ。比べるに貴殿は、まさに花のように見える」
「それは光栄ですね」
 サングラス越しに視線ではなく、耳を向けるような傾いた独特な向き方をする老人の佇まいは、どうやら視力が弱いらしい。
 それでも弱視を感じさせない観察眼と、その存在感は、足元から冷えるような感覚があった。
 これが達人の在り方というものなのだろうか。
 武術というものにそれほど傾倒していない鏡吾には計り知れぬ領域の話。
 強さとはその術理の理解度に依存するわけではないが、ある道の境地に達したものは当たり前に強い。
 老いたりとも、その小さく痩せた男の存在感は、危険であることを示していた。
 とはいえ、鏡吾には尻込みするような臆病さも、見ぬふりをする鈍感さも持ち合わせておらず、その顔には涼やかな笑みしかない。
 相手が達人であろうとも、行うことに大きな違いはなく、倒すべき相手である。
 ただ、不思議な安心感のようなものは感じていた。
 ここに狂気はない。ただの人が……人道に外れた人がいるだけだ。
 黒服の襟を正し、綺麗に背筋を伸ばして、拳をもう片手で包む拱手を行う。
「禍神塚鏡吾と申します。早速ですが、一手の御指南をお願いしたく存じます」
「仕方のない。ならば、全霊を以てお相手しよう」
 丁寧な仕草の鏡吾に感銘を受けたのか、禍凶は鼻を鳴らすと同じく拱手を返し、わざとらしく歯を剥いてニヤリと笑う。
 老人にとって、暗殺拳は殺すための技。
 それ故に、挑んでくる者は礼として必ず殺してきた。
 今回もそうなるだろう。
 術に徹する限り、そこに殺意はあれど、殺気は最小限である。
 もしくは、それを感じたときにはもう終わっている。
 ずら、と袖口から出てくる暗器を持って構える禍凶の姿に、鏡吾はやはり妙な安心感と既視感があるのだった。
 同じようで違うが、先ほどの洞窟で感じたような感覚に似ている。
 殺気どころか敵意すら感じない、術で圧倒して追い払うという、ある意味究極の武術を前にしたのとではまるで毛色が違うが……。
 これはまるで、牙を剝いた瞬間には殺されるような、圧力を感じる。
 目の前にしてようやく感じるのだから、不意を突かれれば気づくのは難しいのかもしれない。
 これが、暗殺拳というものなのか。
 構えを取る禍凶に対して、鏡吾ははなから張り合おうとは思わない。
 彼を満足させるだけの功夫は持たないし、そもそも鏡吾は直接戦闘が得意な方ではないという自負がある。
 無論、猟兵であるからには常人以上のものはあるだろうが、それだけでは禍凶には及ぶまい。
「さて、お若い方。察するに対抗する武術の心得が無いよう見受けるが?」
「確かに、こちらには唯、策があるのみ」
「ほほう?」
 音もなく、静かにすり足で徐々に距離を縮める禍凶が興味深げに鼻を鳴らす。
 それに応えるように、鏡吾は光を反射する無数の金属板『ミラーシェイダー』を展開する。
 偏光ガラスのように別の光景を映すそれは念動力で辺りを舞い、鏡吾の急所を守りつつその姿を見えづらくする。
 そしてさらに取り出したのは、【照魔鏡】という特殊な鏡。
 その鏡の放つ光に映し出された者は、真実を応えなければ手傷を負う。
「ほう、それで私を惑わすおつもりか」
 禍凶の手から離れた暗器が空気中に消える。術を施して目に見えなくなったそれは、しかし真実を明かす鏡には映る。
 それが見えれば、ミラーシェイダーで受けることも可能という訳だ。
 虚空に無数の火花が散る中で、照魔鏡を向けつつ鏡吾は問う。
「貴方が積み損なった『功徳』とはいかなる物ですか?」
「ッ!」
 息を呑んだのは、鏡吾の語気故か。それとも攻撃が届かなかったためか。
 或は、鏡に映し出された己自身の姿を視たためだろうか。
「さて、どうだったろうか……この身に暗殺拳など無ければ、こうして命を狙われることもなかったろうが、この身を血に染めねば、生きてこれなんだ。つまりはそれよ。
 どこかで、やめておくべきだったと、悔いる事……嗚呼」
 思い出すかのように手を止めて、あろうことか、戦いの最中だというのに、禍凶は後ろを振り返ってしまう。
 それが鏡吾のユーベルコードの効果では、もちろんない。
 ただ、彼が想起させた猛烈な悔悟が、暗殺で名を馳せた老人に振り向かせたのだ。
 後悔ばかりの詩を綴った巨岩へと。
 鏡吾は、別にそれが真実であろうとなかろうと、どちらでもよかった。むしろ、必殺のユーベルコードをブラフにすら使うつもりだった。
 だからではないが、本命に忍ばせた鏡の中の怪物ハングドマン・イン・ザ・ミラーが凶行に及ぶ瞬間、思わず瞑目してしまった。
 鏡に映った対象をナイフで貫くと、現実の禍凶の身にも傷が現れ、出血する。
「……戦いの中で、戦いを忘れてしまった。これが策という訳か……なるほど、強いな」
 血が漏れるのも構わず、鏡の前から凄まじい跳躍で飛び退いた禍凶は、緩めた帯で傷口を覆い止血する。
 武に生きたものにとっては、あまり経験のない技、或は策の前に、その顔は歓喜すらあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
礼儀は大切という事で拱手しつつ、「ドーモ。カキョウ=サン。リューインです」とオジギして戦闘開始。

カキョウ=サンの視界から外れる動きと攻撃に対しては、結界術による防御結界とオーラ防御で耐えつつ、UCで五感を共有する式神を召喚し、カキョウ=サンを追跡させて動きと攻撃を完全に把握。
第六感で予想外の攻撃に備えた上で、カキョウ=サンの攻撃を見切りで回避したりビームシールド盾受けで防ぐ。

反撃として翼で空を舞い、エーテルソードと流水剣に光の属性攻撃を籠め、空中戦+残像で分身をばら撒きつつ接近。
怪力で振るった双剣の2回攻撃でカキョウ=サンを斬る。

最後に「下の句は不要。ハイクを詠め」と礼儀正しくカイシャクします



 おお、見よ。そこには薄紅に染まる桃源郷にあるまじき闇が潜んでいる。
 陽のもとのような美しい情景にはおおよそ似つかわしくない、闇色が人を成したかのような小さな人影が、さながら人の世に焦がれるかのように佇んでいる。
 なんたるカンフーソウル的なアトモスフィアを感じざるを得ない状況か。
 桃源郷に足を踏み入れ、その美しい情景に気分が昂揚してしまったのか。
 リューイン・ランサードは、いつもよりもちょっぴりテンションが高かった。
 直前に読んだ書籍にやや問題があったろうか。いやいや、あれはいいものだ。
 気分を乗せる書物というのは、それだけで価値がある。
 人の心を動かすというのは、凄い力なのだ。良くも悪くもというのはあるかもしれないが、特に前向きな気分にさせてくれるのはとてもいい。
 閑話休題。
 とにかく、暗くて陰気な洞窟を抜けて、清々しい陽気とそよ風に当てられていい気分のリューインだったのだが、そうとばかりも言っていられない。
 問題のオブリビオンが占拠している桃源郷の一角に差し掛かったところで、足取りがやや重くなったのを感じる。
 今のリューインはノッている。ただ、その本質はやや気弱である。
 故郷のアルダワ学園の話に例えれば、ダンジョンで言うところのボス部屋に到達したのと同じことだ。
 いつもならば腰が引けて勇気を振り絞ってから戦いに臨むところだ。
 それを、足取りに重みを感じる程度に留めているのだから、テンションとは面白いものである。
「ドーモ、カキョウ=サン。リューインです」
「妙な言い回しだな異人さん。それが礼儀とあらば、応じぬわけにもいくまい。
 ドーモ、リューイン=サン。禍凶です」
 覚えたての拱手で、いつもよりも強気の挨拶を行う。
 挨拶は実際大事なもので、なんということか、禍凶もその例に応じてくれてた。
 若干の感動。と同時に、こんなことして大丈夫かなとも思うが、春の陽気に中てられたと思えば、思い切りもつく。
 今日のリューインはいつもよりも強気なのだ。
 その勇気がエーテルソードと呪符を構えた時、禍凶もその意図を理解する。
「なるほど、貴殿もこの老いぼれ相手に腕を試しに来たと……。それが慢心でないか、見させていただこう」
 ずらり、と袖口から無数の暗器を取り出して構えると、気のせいか小さく見えた人影が大きくなったように見える。
 無意識のうちに、リューインは間合いを見ている。
 その者が持つ戦力。放ちうる攻撃。その戦意。総合した力が、視覚には大きくなったかのように見えたのだろう。
 ゆらりゆらりと上体を揺らす陽炎のような禍凶の攻撃は、どう出てくるか予想がつかない。
 今更後には引けない。勇気をくれニンジャ。
 心の中のソウルに呼び掛け、勇気を振り絞ると、手にした術符で自身に防御結界を施し、それと並行して気づかれぬようユーベルコードを発動させる。
 【式神具現】。洞窟を探索する際にも用いたそれを周囲に展開し、目を増やすことでいかなる動きにも対応するべくこの場を鳥瞰する。
 その準備が終わるのを待っていたかのように、不意に揺らめいていた禍凶がリューインの視界から消える。
 いや、肉眼という意識の外に逸れたと言った方がいいか。
 術式を展開して安心したその虚を突いて、かくんと身を落として加速した禍凶は、刃の付いた靴底でそりのように地を滑り、円を描くようにリューインの背後に回り込んでいた。
 意識の間隙を縫うその早業。ユーベルコードによる目を展開していなければ、見落とすところであった。
 完全に死角に回り込んでその勢いのまま、刃の付いた靴先を斧のように振ってくるその一撃を、振り向きざまにビームシールドで受け止める。
「イヤーッ!」
「むう!?」
 光り輝くビームの盾に弾かれた禍凶は、その奇声よりもむしろ完全に不意打ちを受けきられたことに対して驚いたようだった。
 だが攻撃はそれだけで止まらない。
 手足の先に刃を生やした禍凶は、そのままリューインの周囲を滑って回りながら、自身も回転するようにしてその刃をぶつけてくる。
 暗器同士が擦れる音、地を滑るそりのような刃の擦れる音。それらが方向感覚を狂わせる騒音となるが、周囲にまいた式神の補助もあって禍凶の姿を鳥瞰するリューインはその攻撃の兆しを読み取って、どうにかこうにか受け流す。
「ワッショイ!」
「はは、威勢のいい!」
 どこかカラ元気のリューインは割といっぱいいっぱいだったが、張り上げる奇声は妙にキレがあり、生きのいい相手に禍凶もどこか嬉しそうだった。
 しかしながら受けてばかりもいられない。
 地表を滑りながら加速して攻撃してくる禍凶の攻撃は受け続ければ切れ目がないかのようだった。
 このままでは押し込められてしまう。
 地上にいてはダメだ。
 下からすくい上げる攻撃を受けたところで、その勢いを利用し、リューインは地を蹴った。
 足が地面から離れては回避のしようがない。禍凶の思うつぼでもあったのだが、しかし、リューインはドラゴニアン。
 その背には翼があった。
 ごう、と風を生みながら飛び上がり翼を広げて、エーテルソードともう片手には流水剣、清水の如き青い刀身のフォースセイバーを手にする。
 攻撃が途切れたのを好機と見るや、その姿は残像を生み無数の姿となって、空中から襲い掛かる。
 渾身の連撃。達人を相手にどれだけ分身が見破られるかという不安はあるものの、いざとなれば心の中のニンジャ……ではなく、その身の内に秘めた怪力で押し切る。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 ゴウランガ! そろそろやめておいた方がいいだろうか。
 とにかく、渾身の力を込めたリューインの二刀は、空中からの強襲も相成って、禍凶の手にする暗器を打ち破る。
 突き飛ばされた禍凶がよろよろと立ち上がるのを、肩で息をしながらリューインは尚も剣を構え、
「はぁはぁ……ハ、ハイクを詠め……」
「生憎だが、私は忍者ではないよ」
「ええっ!?」
 驚いたのは、禍凶はなかなかの読書家であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

むむむー、何を彫ってるんだろうと興味深そうにしながら、
おじいさん、ボクが相手だよ!と元気いっぱいに拱手であいさつをしてから手合わせをするよ!

背中の翅で羽ばたきながら空中を飛び回って頭上から襲いかかるね!
飛んでくる柳葉飛刀は目だけでなく、風切り音もヒントにして回避していくよ☆
こっちの死角を突こうと柳葉飛刀を広く展開したらその隙を逃さずに一気に行くよ!
【妖精の一刺し】で真っすぐ一直線にどかーんと突っ込んでいくよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 桃色の風が吹くかのように、桃源郷には一面の桃の花が咲き乱れる。
 それはこの郷が霊山の一角であるためだろうか。
 この場に留まれば霊力を高めるとすら言われており、修行を積みにやって来るものや、この場所にのみ生息する鳥や花を愛で、仙桃を求める者もいなくはない。
 そんな中で、この場所を支配しているという話であるオブリビオンの老人、禍凶が何をするかと言えば、ただ、この郷の片隅で巨岩を彫っている。
 彫刻の才があるわけでもないその老人は、生まれてこの方、武しか嗜んでこなかった。
 曰く、剣と書には通ずるものがあり、この封神武侠界における武術とは、理論や技術による追及よりも、むしろ哲学的な側面の方が広い。
 優れた科学技術が魔法のそれに近くなるように、突き詰めた技術はオカルトの領域に足を踏み入れる。
 弓の達人が弓を持たずして鳥を撃つように。
 武の練達者が、武を用いずして勝つように。
 武というものに人生を捧げた者のみが到達する哲学。
 それを、暗殺拳に身を捧げた老人は、残さずにはいられなかった。
 歴史には残らぬ翳りの物語を。己が生きた証を、綴らずにはいられなかった。
 悔悟だろうか。悔いがあるというのか。
 とにかく、一心不乱に。老人は巨岩に詩を書き綴る。
 人を殺すために振るわれた暗器が岩を切り刻む。
 その塵片、爆ぜる火花。その黒い小さな背中を、ティエル・ティエリエルは覗き込むように眺めていた。
「むむむー……?」
 何を書いているのか、その一節を見つめてみるも、漢字ばかりで読めやしない。
 独特な筆跡もそうさせるのか、その鬼気迫るような詩を、命という以外の言葉で読むことは難しそうだったが、不思議と目を引くものがあったようだ。
「おや、私としたことが。気配を計り損ねるとは……」
 まるで隙だらけといっても過言ではなかった老人の背を見つめ続けていたティエルの気配に、オブリビオン『暗刃』の禍凶はようやく気づいて手を止める。
 振り向いたその先に佇むのが妖精の小さな少女である事には面食らったものの、やがてその気配の力強さを察すると、サングラス越しに光る鱗粉を振り撒く小さな姿を見据えながら拱手による礼を行う。
「こんにちは、お嬢さん。私にも仙女が見えるようになったのかな?」
「んふー! それは違うかな」
 間違えられたことに対しては気にした様子もなく、むしろちょっと嬉しそうにしつつ、ティエルはぱしっと音がするくらいに、元気な拱手で返す。
 可愛らしいその挨拶に含ませた意を、禍凶は察する。
 この小さな子供の妖精は、自分を倒しに来た勇ある者の一人なのだ。
 俗世を離れたとて、暗黒に染まった手には、逃れられぬ宿命の鎖が巻き付いている。
 何とも厄介であり、奇縁である。
「おじいさん! ボクが相手だよ!」
「仕方のない」
 しかしながら、元気に声を上げる少女の姿には、どうしてだろう、救われる気がした。
 腰を低く落とし、弓を引くかのように重心を後ろに、黒衣からは無数の柳葉刀を手にし、小さな少女を相手取るにしてはあまりにも仰々しく戦う構えを取る。
 いいや、これは、ティエルはただの妖精の子供などではない。侮るなかれ。
 強者はその存在からして強い。佇まいがそうさせるというのもあるが、色濃く、鮮やかに世界に在るということは、万夫不当の気質。すなわち死にづらいのだ。
 油断なく構える禍凶を前に、ティエルは愛用のレイピアを抜き放ち、只無心に突撃。
 初めは何も考えず、ただ一閃をもって制圧す。
 気持ちのいい一撃。ただし、受ければ致命傷となろう。
 風を裂くような一閃を柳のようなしなやかさで受け流し、竜巻のように両腕を振り回して反撃に転ずる。
 体の小さなティエルにはどれも必殺の攻撃となろう。
 だが、それと同時に身体の小ささは、攻撃の当たりづらさでもある。
 吹き乱れるカマイタチのような連撃を飛び回って回避し、風穴を突くが如く切り返していく。
「ぬ、ほう! やるな、小童め。ならば!」
 竜巻のような攻撃から一転し、たんっと距離を取って両手に握った柳葉刀を一斉に放る。
 飛刀と呼ばれるそれは、緩い曲線を描いた刀身が風を切り、また施した術により景色に溶け込んで見えなくなる。
「目に見えぬ飛刀。この刃の嵐を、どう躱す!」
「目に見えないなら、風を見るもーん!」
 しゅっと風を切るレイピアを立て、集中する。
 風鳴りのレイピアは、獣を操る楽器でもある。正しく振るえば、その風切り音は音色を奏でる。
 つまりは、長年愛用するためには、風を読み、御する術を会得せざるを得ない。
 風に鳴るレイピアの音色が、風の歌を聞かせる。
 その兆し、風切り音を響かせる飛刀は、たとえ目に見えずとも聞こえる。
 曲線を描いて迫る無数の飛刀を、身を翻して回避し、風に舞う羽毛の如く風のうねりに任せて狙いを外す。
「ならば、これも避けて見せよ!」
 さらに袖口から飛刀を取り出して擲つ禍凶の、その風の塊のような一撃。
 これはさすがに大きく避けなくてはならない。と見えるが、
 ティエルの手首がぴくりと反応する。この風は変わる。
 きっと、避けようとすれば大きく広がって逆に覆い尽くされるだろう。
 いや、これはチャンスなのだ。
「見えたッ☆ 一気に行くぞー!」
 背中に追い風を呼び、ティエルは一直線に風の塊に突っ込む。
 迷いのない一撃。最初の一合よりも加速するそれは、風を纏ったレイピアによる突撃。
 防御を顧みない攻撃一辺倒の突撃は、そのままでは無数の飛刀に突っ込んで撃ち負けてしまうだろう。
 だが、その切っ先が更に加速する頃に、飛刀の群れは大きく広がった。
「いっくぞーーー! ボクの、全力全開だぁー!!」
 果たして【妖精の一刺し】は大きく広がった飛刀の最も薄くなった中央を突き破り、どかーんと派手な音を立てて禍凶の懐に突き刺さった。
「うぬぉおう!?」
 暴風をまとった一撃で、飛刀諸共に吹き飛んだ禍凶が地面を転がり、何かにぶつかってようやく止まる。
 手をついて起き上がるそれが、自分が刻み込んだ巨岩であることに気づき、大きく負傷しながらも老人は哄笑する。
「ハハハッ! 凄まじい! やはり、若者はいいな。この意気、久しく忘れていた」
「じゃあ、もっと思い出させてあげるよ! まだまだ、ボクは元気いっぱいだよ☆」
 戦いに殉ずる気概に笑う禍凶につられたわけではないだろうが、ティエルもまたレイピアの切っ先を向け、自信満々に笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
(洞窟をそれなりに負傷・疲弊しながら突破し)

拱手にて礼。私はパイルバンカー神仙拳の堆沙坑・娘娘。いざ尋常に勝負。

余計な問答は無用。
そして私にできる最速の一撃で【貫通攻撃】。
攻撃範囲、飛翔する見えない刃、刃の数、全てが脅威ですが『幾何学模様を描き複雑に飛翔する』という一点が強み以上に大きな隙です。
私の最速のパイルバンカーはその隙を貫く。見えず飛ぶ刃を一切気にかけず、ダメージを受けようと自分の方が敵の命を先に貫くと信じ突貫します。

決着がついたら桃源郷の散策はせず帰ります。

黄泉より舞い戻ったせいでしょうか。あなたは少々、武人として不純に過ぎました。外道ならば外道を貫いた方がまだマシだったでしょう。



 年中、桃の花が咲き続けるという神霊地『桃源郷』。
 その光景には、誰もが足を止め、一度は息を呑むという。
 この地へ至るための岩山の洞窟を抜けた者ならば、その感動も一入というものらしいが……。
 洞窟の暗闇を抜け、体中に煤を被ったような汚れを浴びながらも、その人影は浮ついた桃源郷の空気には中てられず、キョロキョロと辺りを見回しては、目的の地点へと一直線に歩みを進める。
 まるで景色などどうでもいいかのように、堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)は、己の猟兵としての感覚が求めるままに、オブリビオンのもとへと進んでいく。
 これと決めたら一直線。そんな調子で洞窟も進んでいたため、たいして迷う構造でもない筈の洞窟でも無用に時間を食ってしまった。
 ミレナリィドールである彼女は、見た目に年を重ねることが無い。
 その見た目は小柄な少女に過ぎないが、実に60年以上も左腕に装着した大型の射突型杭打機、いわゆるパイルバンカーを使った独自の拳法『パイルバンカー神仙拳』を究めんとして歩んできた。
 実に愚直に、迷いなく、心に命ぜられる『パイルバンカーを極めよ!』という覚えのもと、この封神武侠界にはおおよそあり得ぬ武器で以て戦う姿は、いつしか神仙の如き者と畏れられたという。
 なぜパイルバンカーなのか。なぜ文明の異なる武器を手にしていたのか。
 己は一体何なのか。
 そんなものは覚えていないし、疑問を挟み込む価値に乏しかった。
 ただ、その使い方、手入れの仕方、構造をのみ覚えていた娘娘にとって、それを極めよという言葉の響きは、記憶を失い空っぽに過ぎなかった存在理由を埋めるのには十分だった。
 この手に重く存在を主張するパイルバンカーを用いた拳で、道を開くことが全て。
 それ以外は、まぁ、物のついででもいいだろう。
 世界を滅ぼさんとするオブリビオンを退治するという大義名分も然ることながら、戦いに身を投じる理由の大部分は、道を究めんとすることであった。
 誰よりも求道的に、それこそ達人の放つ矢の如くひたすらに、少女は小さな丘を歩む。
 やがて辿り着いたのは、この桃源郷の中に於いて黒点ともいえる黒衣の老人と、彼が刻み付ける巨岩。
 その命があったという証を刻み付けるかの如く、刃物で詩を綴る老人の後姿に、娘娘は足を止め、静かに待った。
 やがて岩を刻み付ける刃物の音が止み、老人が振り返る頃になって、ようやく娘娘は武器を持つ掌で、もう片方の手で作った拳を包む。
 それが拱手であることに気づいた老人──禍凶もまた拱手にて応じる。
「わざわざ待ってくれていたのか。律儀な方だ」
「たとえ倒すべき敵であろうとも、この道に背くつもりはありません」
 揺るぎのない視線を送る娘娘に多くの言葉はいらない。
 緩やかな風が、褪せた緑の髪を揺らしても、その瞳は磨き抜いた鉄芯のように揺るぎがない。
 恨みや気負いも感じさせぬ、ただ道を求める者の真っ直ぐな瞳を受けて、『暗刃』禍凶も多くの言葉を飲み込み、情緒を脱ぎ捨てる。
「──刀刃拳伝承者、禍凶。貴殿の名を聞きたい」
「……私はパイルバンカー神仙拳の堆沙坑・娘娘。いざ尋常に勝負」
 お互いに名乗り合い、ぐっと拳を強く握ったかと思えば、次の瞬間には構えていた。
 恐らく、勝負は一瞬で決着がつく。
 彼女ができるのは、その一念をパイルバンカーによる一撃のため、気迫を一点に集中し、一気に貫くのみ。
 雑念は不要。
 対して禍凶は、その身のどこに仕込んでいたのか、無数の柳葉刀飛刀を手に手に、術を施して景色に溶け込ませたものをあらぬ方向に擲つ。
 空を裂くそれらが幾何学模様を描いて辺りを飛び交う。
 どれが襲い掛かってくるか、いつやって来るのか、どこからやって来るのか。
 無数にあるだけに、考えだしたらキリがない。
 だから考えない。
 一瞬の思考の中で、娘娘は書士を貫徹することを決め込む。
 あらぬ方向に擲つと言う事は、最速にはならぬと言う事。
 ならばそれを超える最速で打ち込めば済むこと。
 私の方が速い。
 絶対的な信仰が、彼女にユーベルコードを発動させる。
 不可視の刃、なにするものぞ。
 【雷霆】の名の通りに、その身は弾かれたように疾駆し、無数の風切り音を無視して突撃する。
 曲線を描くがゆえに、最短距離足り得ぬ。
 故に、先に命に届くのは直線。
 飛来する風切り音が娘娘の肌を裂く。それが命に届くよりも先に、
「貫く」
 引き絞った拳と共に放ったパイルバンカーが、その鉄芯を射出。
「っ!!?」
 凄まじい衝突音。そして撒き上がるバックファイアの噴煙。
 その最中に、軸足から踏み込み足、腰椎から上半身、肩から腕の先に至るまで、一部の隙も無くパイルバンカーを撃ち出す姿勢のまま留まる娘娘の姿があった。
 その拳の先には、やや遠く、命の詩を刻み付けた巨岩を砕く勢いで打ち付けられた禍凶の姿があった。
「……み、見事……パイルバンカー神仙拳、しかと見た」
 打ち付けられた禍凶が全身から出血しながらその手の暗器を取り落とすのを見て、ようやく娘娘は構えを解く。
 その身をいくつもの飛刀で引き裂かれながらも、致命打はなく、彼女の狙い通りに素早く踏み込んだからこそ命を取られる前に取った結果となった。
 しかし、その瞳は不満というか、物を言いたげだった。
「納得いかぬようだ……」
「黄泉より舞い戻ったせいでしょうか。あなたは少々、武人として不純に過ぎました。外道ならば外道を貫いた方がまだマシだったでしょう」
「手厳しいな。しかし……死に目に会う前より、腑抜けたというのなら、それも違いはない」
 娘娘の指摘せんとすることも尤もであった。
 暗殺拳の宿命故に、禍凶は対戦相手を殺めてきたが、桃源郷に訪れて以降の彼は自ら進んで人を殺めることはしていなかった。
 そう、真剣勝負の結果として相手が死してしまうことが当たり前で、それしか許さぬというのは、まるでただの武人。
 暗殺武術を用いるからには、闇の中で研鑽を積むべきだったのだろう。
 徹底する事をやめた暗殺拳に、牙はあるだろうか。
 拳に殉ずることをやめ、穏やかに生きるとしながらも、相手が現れれば武侠を気取って流儀のままに殺めてしまうのは、いかにも中途半端ではないだろうか。
 それは禍凶にとっても、思うところではあったのだ。
 だが、それでも、
「それでも、得たものもある……」
「それは……?」
「貴殿のような、若者に出会えた」
 そう答えると、禍凶はそれきり言葉を発することはなく、岩に埋もれながらその表情をサングラスと中折れ帽に隠してしまう。
 冷たい風が一陣だけ娘娘の頬を撫で、通り過ぎて行った。
 老人がもうこの場に居なくなったことを悟ると、娘娘は拱手を捧げ、踵を返す。
 もうここにオブリビオンは存在しない。
 ただ、刀刃拳。その武名を、老人の名を、彼女は忘れることはないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『桃園に遊ぶ』

POW   :    賑やかに宴を楽しむ。

SPD   :    ゆっくり桃園を散策する。

WIZ   :    静かに花を眺める。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンの脅威の去った桃源郷は、明るかった。
 彼の者が人に害する事も少なく、基本的には善良であったにせよ、その者がかつて得ていた悪名が悪名を呼ぶことは、この郷には実害であった。
 いずれは血で血を洗う争いが広がり、この桃源郷にも戦乱が巻き起こっていたかもしれない。
 悪名をとどろかせた暗殺拳の使い手はもはや存在しない。
 猟兵たちは、暗雲の去った桃源郷でほんのひと時、その身を休めるのであった。
 にぎやかな宴の席を設けてもいい。
 幾重にも連なる桃の園を気ままに散策するのもいいだろう。
 名産の仙桃を叩き売りしている出店もあるぞ。
 ……本当に仙界なのだろうか。
神代・凶津
いよっし、仕事完了ッ!
せっかくの桃源郷だ。帰る前に花見でもしていこうぜ、相棒ッ!
「・・・まあ、仕事も終わったしいいかな。」

仙桃の出店なんてあるんだな。仙桃二つ買っていくか。
そのまま仙桃を齧りながら桃の園をゆっくり散歩するぜ。
桃の花の見事なもんだ。UDCアースでもそう見らないぜ。
「・・・本当に凄い綺麗。」

にしても禍凶の爺さん、ホント強かったな。まさか雷神霊装での斬撃を先読みで避けられるとは思わなかったぜ。あれ、ユーベルコードじゃなく単純な戦闘経験だろ?
「・・・私達もまだまだ精進しないとね。」
あの爺さんの事は忘れそうにないぜ。
封神武侠界、あんな達人がうじゃうじゃいるのかねぇ?


【アドリブ歓迎】



『いよっし、仕事完了ッ!』
 戦いには決着がついた。
 なんだか一人で戦っているような、複数人で倒したような不思議な相手だったが、ともあれ、かの達人、禍凶は骸の海へと還ったのだ。
 神代凶津とその相棒・桜は、恐ろしげな気配が消えるをの確認すると、装面する事で重なっていた合一状態を解除し、帰路につくことにした。
 ヒーローマスクとの一時的な融合と神霊をその身に宿す事により、その身体能力は飛躍的に上昇するのだが、その代償は決して小さくはない。
 ダメージや負担は鬼の面の凶津がある程度肩代わりしているとはいえ、変身を解いた直後は、肉体的な疲労度が桜の肉体にもどっと押し寄せて気だるい。
 それでも、こそばゆいような桃源郷の風は疲れた体にどこか優しく、疲れた体でも、もう少しだけ歩いていたい気分にさせてくれる。
 危険がないならもうグリモアで帰ればいいじゃんと言われればそれまでなのだが、
『いやいやいや、せっかくの桃源郷だ。帰る前に花見でもしていこうぜ、相棒ッ!』
「……まあ、仕事も終わったし、いいかな」
『ひゃっほーいッ!』
 頭の上でかちかちと顎を鳴らす鬼の面に、桜はどこか困ったように頬を緩めるのであった。
 ひとまず、ひと気の少ない丘を降りて、仕事で用のなかった人里の方まで下っていくと、活気も増えてにぎやかな様子であった。
 仙界といえど、暮らしぶりは人界のそれと大きく違わないようで、むしろ質素なように見えた。
 この地に訪れるのはだいたい修行僧のような者が多く、観光で訪れるにはちょっと交通の便が悪いらしい。
 よって商売っ気があるのは旅の宿と、小さな商店……。残りはだいたい農家らしい。
 そんな中で、凶津たちは珍しいものを発見する。
「安いよ、安いよー! 仙界名産の桃だよ! 一つ食べれば一つ長生き! 安いよ、安いよー!」
 農夫のような男がねじり鉢巻きに威勢のいい声を上げて売っているのは、なんと仙界でしか育たぬという仙桃。
 割と高級品のはずだが、その言を借りるなら安いらしい。
『おお、仙桃の出店なんてあんだなッ。買ってこうぜ!』
「……偽物じゃないよね」
 行き交う旅人向けに威勢よく黄色い声をかける仙桃売りの男に、桜は疑いの目を向けるのだが、話を聞いてみるとどうやら規格外品の処分に困って格安で売っているらしい。
 仙桃はお高い。言うなれば高級スイーツなんて目じゃない。なんたって、一つ食べれば1年寿命が延びるらしい。
 そのため、高級品は見た目も立派でなくてはならないらしく、見目の悪い果実は卸せないという世知辛い事情があるようだ。
 そこは仙桃なんだから綺麗な形で生るんじゃないのかと言われそうなものだが、いいんだよこまけぇこたぁ。
 味は本物と変わらないいい品だというので、凶津たちは二つ購入して、その辺りを歩きながら食べることにした。
 桃の園は、観光用に解放している区画が、見栄えがいいらしい。
 が、先述の理由で人があんまり来れない場所らしく、かなり空いていた。
『うンめぇーッ! ちゃんとうまいぜ、仙桃!』
「……ん、おいし」
 舗装された道をゆっくり歩きながら、二人して購入した仙桃の皮をぺろんとめくって噛り付くと、爽やかな甘みが疲れた体に染み渡る。
 噂に聞く三千年に一度実る不老長寿の桃というにはちょっと世知辛い話を聞いてしまった手前、あんまりありがたみがないところだが、味は本当にいいもののようだ。
 ちなみに、スモモかマンゴーかとも言われている仙桃だが、この桃源郷の桃は普通に白桃だった。
 UDCアースにおける中国史では、桃源郷には数千もの桃の木が生えているという。
 それが年がら年中花を咲かせているというのだから、その景観は圧巻の一言に尽きる。
 半分ほど桃を食べた辺りで、柵の設けられた川べりで一休みしてみると、覗き込んだ川面にも桃の花が写り込んでいた。
『見事なもんだ。UDCアースでもそう見れないぜ』
「……ほんとうに、凄い綺麗」
 しばし二人とも黙り込んで、風だけが騒ぐ薄紅の世界を眺める。
 ひらひらと落ちてくる花びらが水面に触れて、その波紋が覗き込んだ桜と凶津の顔をゆらゆらと揺らめかせると、ふと凶津が思い出したように、今回の戦いを振り返る。
『にしても、禍凶の爺さん、ホント強かったなぁ。まさか雷神霊装での斬撃を先読みで避けられるとは思わなかったぜ』
 フルパワーの一端。恐らくスピードでは誰にも引けを取らぬ自信があった。
 だが、相手はユーベルコードで強化された技を、ユーベルコードを用いずに回避して見せた。
 あの老人が、いくら常人離れした身体能力を持っていたとしても、その反射神経にはどうしたって限界はある。まして、肉体的な全盛期はとっくに過ぎていただろうに。
 そう考えると、禍凶にとってアドバンテージだったのは、その膨大な経験といったところだろうか。
 暗殺拳の技を磨き続け、老人になるまで生きていたと言う事は、それだけ勝ち続けてきたという証でもある。
 雷の兆しを読んで、刀を振る軌跡を読んで、その紙一重を潜り抜ける。
 何十年、触れ合うほどの距離で殺し合いを続けてきた者にのみ身につく見切りなのだろう。
「……私達も、まだまだ精進しないとね」
 脳裏に焼き付く、光と影。激しく輝くほどに、色濃く地を這う黒い影。
 薄ぼんやりとのどかな光景の中にも、あの時の昂揚を忘れられないでいる。
 オブリビオンといえど、なんと偉大で美しい術の数々……。
『忘れそうにないぜ。あの爺さんのことはよッ』
 あんなレベルの達人が、この封神武侠界にはゴロゴロしているというのか。
 恐ろしいとも感じるが、同時に胸が躍るようにも感じていしまうのは、彼等もまた武というものに足を踏み入れているからなのか。
 仙桃の最後の一口を飲み込むと、居ても立っても居られないような早足で、観光も十分とばかりに帰路に就くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
ふん、すっかり平和なものだな。なあ、おい。
俺もあの御老体の同類だからな。そうそう人とは交われんよ。

御老体が刻んでいた岩でも見てくるか。酒の一つも手にぶら下げて。
一体何を刻み込んでいたか、気になるな。
――よくもまあ、これだけ岩を削ったものだ。
読めるかな。

岩の上から酒をかけ流そう。御老体へのささやかな供養だ。
後は、座り込んで岩に背を預け、午睡と洒落込もう。

向こうは賑やかだが、ここは静かなものだな。御老体の心持ちも、多少は分かるかもしれん。
俺も死ねば、同じような存在になるものか。

ふん、俺らしくもない。つまらん感傷だ。この『桃源郷』の陽気のせいにしておこう。
ん、まぶたが重くなってきたな。一眠りしよう。



 桃源郷に、改めて春が舞い降りたかのようだった。
 空気というのか、オブリビオンであるせいだったのか、あるいは殺人拳の達人が陣取っていたせいなのか、立ち込めていた冷たい圧迫感のようなものが消え失せた桃源郷には、穏やかな活気が舞い戻りつつあったようだ。
 数千もの桃の木が生えているという桃源郷の、その林の遮りからも、人々の喧騒が漏れて聞こえてくるかのようだった。
 それでも、ユリウス・リウィウスは、オブリビオン討伐に加わった猟兵の一人でありながらも、その勝利を実感するため、里に下りたりはしなかった。
 人の営みは不可逆。憂いの反動から聞こえてくる騒がしさも今は遠く、ひと気の去った林道を一人、歩いていた。
 実質、その足取りは来た道を戻っている。
 人界に降りる岩山の洞窟へ向かっているのか。否、彼の言う来た道というのは、倒れたオブリビオンの縄張りとしていた小さな丘であった。
 陽気も喧噪も、彼にとっては少しばかり眩しいものだ。
 遠くからそれと見れば、あとはもう十分だった。
 このまま帰路に就くのもいいが、時間をくれるというのだから、何の気なしに来た道を引き返していた。
「ふん、すっかり平和なものだな。なあ、おい」
 春の陽光が助長するかのように、まるで人々の喧騒に追い立てられるかのように、ユリウスはこの場所に戻ってきてしまっていた。
 俺もあの老人も、似たようなものだ。後ろめたいという安易な言葉が、いざ我が身となると重くも感じる。
 その重さは、人との交わりをも重くさせるのか、どうにもすぐさま明るく元気にというのには馴染めない気がした。
 目の前には、禍凶が刃物で刻み付けていた巨岩が鎮座していた。
 撃破の際に一部崩れてしまったようだが、刻まれたものが詩であることは見て取れた。
 穏やかな日差しの下には、それはまるで墓標のように寂しげに佇む。
「──よくもまぁ、これだけ岩に刻み込んだものだ」
 そこに刻まれた詩の内容は、かなりの達筆と見慣れない文字故に正確な判読は難しかったが、これまでの冒険の経験から得た知識を動員してなんとか翻訳してみると、
 どうやらそれは彼の半生をいくらかぼかして綴ったもののようだった。
 記憶を辿るのも億劫なほど昔から、それこそ箸を握るより先に刃物を握り、また箸を握ればそれも武器になると教わった。
 ある時は寝食を忘れ、ある時は師友も忘れ、嫌になるほど殺し続けた。
 やがて命を落としたときは、安堵すらした。
 すべて失い、再び目覚めたとき、世界は桃の薄紅に染まっていた。
 それでも再び起こった今生の夢にも、変わりはなく殺しの日々が待っていて、何か意味があるかとも思い続ける日々であった。
 だいたいそんな内容の、気が滅入るような詩の内容を読み取るとユリウスは瞑目し、嘆息する。
 細かいところは読み飛ばしてしまったりもしたが、恐らく内容に大きな違いはあるまい。
 恐らくは、禍凶の不幸は、その才能だったのかもしれない。
 身を亡ぼすほど準ずるあまり、才能ゆえに人並の幸福にありつけなかった。
 美しく穏やかな桃源郷という仙界は、彼にとって住みよい場所だったのだろうか。
 或は、暗殺拳を極めつつあったあの老人には、無情にも人を殺めるしかない才能にすら飽いていたのか。
「……俺たちと、そう違わないのかな」
 ぶら下げた瓢箪の栓をあけると、ユリウスはその中身を岩の上からかけ始める。
 一度人里に降りた際に購入しておいた酒であった。
 桃を使った地酒らしい。ここを棲家としていた御老体への、ささやかな供養にと選んだものだった。
「悪いな、一口貰うよ」
 ふわりと立ち上がる桃の香りに、瓢箪に少し残った酒を一口煽ると、空になった瓢箪を岩の脇に置いて、どかっと岩に背を預けて座り込む。
 心地の良い風が吹き、日陰を作るほどの巨岩の傍らによりかかると、戦いの疲れもあってか眠気が襲ってくる。
「向こうは賑やかだが、ここは静かなものだな。御老体の心持ちも、多少は分かるかもしれん」
 自分も、あのような怪物になるのか。
 その可能性も否定できないが、猟兵という存在が簡単に死を許してくれるのか。
 らしくもない。とユリウスは鼻を鳴らしてシニカルに口の端を歪める。
 面白くもない感傷だ。きっと、慣れないこの陽気のせいだろう。それとも、あんなちょっとの酒に中てられたか。
 甘くて苦い、桃源郷の日差しの影で、ユリウスはしばしの午睡に身を委ねるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
【WIZ】
ここが仙人さん達が暮らす桃源郷。
綺麗なところです。

せっかく仙人さん達に会えたのだから、この世界の術について学びたいです。
洞窟で出会ったお爺さん(いなければ教えて貰えそうな方)に礼儀正しく拱手して教えを乞います。

具体的には「小周天の法で、クンダリーニの蛇を呼び覚まして、おチャクラ全開は、とても格好良いですよね。」とか「鬼骨を回すと鱗や尻尾や翼や角が生えそうなので、それは止めておきたいです。」とか、ニンジャスレ●ヤーと併せて読んだキマ●ラシリーズの知識を元に聞いてみる。
(なので仙道とヨガと密教がごちゃ混ぜ…)

学ぶ時は時間が許す限り(自分に合いそうな仙術や龍脈使い中心に)真面目に学びます。



 戦いは終わった。後は帰るだけ。なのだが、せっかくなので何か楽しんで来い。
 というお話を戴いたリューイン・ランサードであったが、一人で桃源郷観光というのも、なんだかもったい気もする。
 どうせなら恋人と一緒にくる方がいいかもしれない。
 満喫するなら、そういう時だ。
 ここにはあくまでも仕事できたわけで、はじめての楽しみはできる事なら共有したい。
 ……というのは、半分ほど建前であって。
 リューインは、桃源郷観光の時間が与えられたことに対しては、素直に喜んでいた。
 何もやる事は観光だけではない。
 なんといっても、封神武侠界は歴史ある世界である。
 サムライエンパイアと同じように周囲を海に囲まれているとはいえ、その歴史は起源をさかのぼるのすら難しいくらいには長いとも聞く。
 本の虫を自称する読書家であり、そして一人の魔法使いでもあるリューインは、魔術に類する知識を蓄える機会を得られたことに対して、この上なく胸が躍っていた。
 東洋に伝わる術と言っても、それは多岐に渡る。
 この世界に於ける術は、大きく道術と一くくりにされてしまうが、方位学や天文学などと言ったアカデミックな学術から、仙術などに分類される呪術や催眠術、養生術などといったオカルトに寄った占いや本物の東洋魔術などまで、実にピンキリである。
 この辺りはサムライエンパイアに伝わる陰陽術にも通じているものもあるようで、呪符を用いたものも多いようだ。
 例えば、キョンシー。生きている者や死体を操る呪術の一種だが、西洋世界で知られるネクロマンシーのような忌み嫌われるようなことは少ないらしい。
 霊的なものに寛容な道教の文化がなせる業なのか、とにかく神仙に対するアプローチが、他の世界とはやはり異なるのだろう。
「仙人さんが暮らす桃源郷、やはり綺麗な場所です」
 堅苦しい事を考えつつも、リューインは美しい桃の木が立ち並ぶ桃源郷の情景には感動するものがあったようで、道すがらに視線を送っては和む気持ちが湧き出てくる。
 が、それ以上に、学ぶ気持ちも抑えられないらしい。
 辿り着いた先は、来るときにも通った岩山の洞窟。
 あれだけ桃源郷について胸躍らせていたのに、すぐ帰るのかと思いきや、そうではない。
 洞窟の入り口には、いつか見た老爺が姿を見せていた。
 おいそれと桃源郷に人が迷い込まぬよう、洞窟に術をかけて追い返す役割を担っていた仙人である。
「おお、いつかのお若いの。無事にし遂げたようじゃのう……あやつの気配が消えておる」
「はい、お爺さん。これで僕も帰らなくてはなりませんが……その前に少しお願いが」
 朗らかな様子で拱手を交わす二人。
 遠い目をする老仙人に対し、若干鼻息荒くリューインは詰め寄る。
「んん? なんじゃな? わしゃあ、殴り合いはできんぞ。爺をいじめるもんじゃあない」
「いやいやいや、こちらの洞窟に術をかけた手腕。僕はそれをこそ学びたいんです!」
 リューインを旅の拳士か何かと思っていたらしい老爺は煙たそうに手を振るのだが、リューインは道術に興味があったようだ。
 メタな話をすれば、スキルレベルを上げれば済む話じゃん。と言ってしまえばそれまでの話だが、それだといかにも味気ない。
 本読み知識だけでなく、実際に使える者から学ぶ方がはるかに実践的だ。
「ほーう、仙人になりたいのか、おぬし。仙人の修業は長いぞー」
「なるべく短いコースだと嬉しいんですけど……具体的には、ですね。
 小周天の法でクンダリーニの蛇を呼び覚ましておチャクラ全開はとても格好良いですよね鬼骨を回すと鱗や尻尾や翼や角が生えそうなのでそれは止めておきたいですあキマイラっぽいといってもPON!と出る方のあれじゃないですよあれもあれで好きですけどジャンルが違うというかそもそも掲載誌が違……」
「うん、うん、よくわからんが、術を学びたいのは伝わったぞい」
 早口で捲し立てるリューインの言葉はよく理解されなかったようだが、色々とごっちゃまぜの偏った知識も適当にかみ砕いて、老爺はニコニコと話を聞く。
 どうでもいいが、たぶん天竺(インド)に通じる話は、この世界では海になっているんじゃないかなぁ。
 そうなると三蔵法師が結局のところどこまで行ったのか気になるところだが。
「そういやおぬし、洞窟を通る時も術を使っとったのう。ありゃあ、仙術に近いもんじゃ。最初っから使えるんなら、そちら側の知識を、わしの出来る範囲で教えて進ぜよう」
「本当ですかぁ!? 頑張ります、真面目にやります! ありがとうございます!」
 陰陽師でもあるリューインの使う術は、方位や天文学がベースとなっている。
 或は、仙術におけるものも同じようなものであり、八卦や風水などといった物もベースを同じくするものであるようだ。
 風を知り、水を知る。地脈や、霊的なエネルギーの通り道、龍脈を司る知識やその運用法、文化などといった物は、明確な方程式があるわけではないが、その概念をその世界の使い手から学ぶという時間は、ほんの少しのひと時であっても、リューインにとっては有意義な時間であった。
 もしかしたら、自分がこれまで以上の困難に立ち向かう際に、これまで以上の力を発揮する切っ掛けになるかもしれない。
 戦いに赴くのはいまだに苦手なリューインではあったが、知識を仕入れて、自分で昇華していくのは、一魔導士としての喜びでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
ようし、せっかくだからお花見して帰るよ!
生まれ故郷に似た気候にテンションもあがって、わーいとそこら中見て回るね♪
住人の仙人に出会ったら元気よく拱手で挨拶☆

あいさつしたおじいさんおばあさんからお菓子とかいっぱいもらうけど
仙桃の叩き売りしているお店が気になるよ♪
ふふーん、ここはボクの値切り力を見せる時だね!
おみやげにいっぱい買っていくぞー☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


黒木・摩那
オブリビオンは去りました。
功夫の良い修行にもなりました。
あとは桃源郷の散策です。

名産の仙桃ですと!
それが叩き売りならば。

こちらは叩き買いをせねばいけませんね。
これでどうですか!(手持ちの銭をばーん)

つい勢いで買ってしまいましたが、これだけ買えれば大満足です。
あとは桃の花を愛でながら、おいしくいただきます。



 桃源郷に居座っていたオブリビオンの脅威は去った。
 果たしてそれを脅威とするべきかどうかは迷うところではあったが、彼の者の存在はやはりこの地にとってはイレギュラーであったようだ。
 禍凶という一人の達人の存在は、この何千と桃の木の立ち並ぶ桃源郷の空気を歪ませていたのかもしれない。
 根拠のない話ではあるのだが、事実として、オブリビオンの去った桃源郷の空気は、なにか底冷えのするような気配が無くなったというのか、暖かく穏やかな空気が戻ってきたというのか、とにかく空気が変わったように感じたのである。
 死と共にあった禍凶の存在は、それだけこの地を緊張させていたのかもしれない。
 まあ、それはもう済んだ話である。
 全力で暴れまわった後の猟兵たちにとって、心地の良い風の吹くこの郷の空気はすぐに去るには惜しい。
 幸いにして帰還するまでにはまだまだ時間が残っている。
 せっかく来たのだから、疲れた体を休めがてら観光というのも悪くない。
「んんー……いい空気ですね。多くの人が桃源郷を求めてやまぬ気持ちも、わかる気がします」
 功夫の見識をより深めるため達人との戦いを潜り抜けた黒木摩那は、ひとまずの充足と手応えを胸に、激しい全身運動からくる心地よい疲れを背筋を伸ばすことで適当に誤魔化しつつ、桃源郷の集落へと下る。
 仙界だけあって、ここの住人はその多くが仙人であり、その在り方は基本的にストイックであるが、だからといって排他的という訳でもなく、その人柄は明るく人懐こい。
 仙人と言えども、完全に人界との接触を断っているわけではないし、修行の末に身に着けた知恵や術を分け与えたりするなど、なんだかんだ言っても彼らは人が好きなのである。
 そしてただの人が仙人の修業を行う事には寛容であり、いつでもその門扉を開いている。
 全てが善人というわけでもないが、学ぶ意思に対しては彼らはとても真摯である。
 武や術、そして礼を怠らぬ者に対して、仙人たちは友好的であることを、摩那はなんとなく散策している内に感じ取る。
「何にもないところではありますけど、皆さん朗らかでいいところですね。ん?」
 ほっこりする気持ちと共になにかお土産でも買って帰ろうかと出店を見回っていると、なにやら騒がしいところを発見する。
「わーい! いいところだー!」
 光る鱗粉のようなものをまき散らしながら、ひらひらと飛び回るのは小さな妖精のティエル・ティエリエル。
 森の中の妖精の国出身の彼女にとって、温暖でぽかぽかしている桃の園は、どこか故郷を感じさせる懐かしい空気だったようで、ティエルは戦いの疲れも忘れてそこいら中を元気に飛び回っていた。
 住人たちはそれをほんわかと見守っていたが、ティエルがそれらを見つけると、
「はっ、挨拶挨拶……こんにちはー☆」
 ぱっしぃ! といい音がするくらいに元気に拱手を向けて、バチーンと可愛らしい笑みを向ける。
 実は噂によるとやんごとなき血筋らしいティエルは、天真爛漫さも然ることながら、笑顔のサービスも常に絶やさないのである。
 そんな異邦の存在を、住民たちは近所の元気な子供を見るような微笑ましさで迎え、にこにこと拱手し、あまつさえ孫ほども年が離れているのもあるのか、色々お菓子やら野菜やら持たされたりしている。
「えっへへ、ちょっと貰い過ぎかな……」
 妖精の体格に見合わぬ、お土産をぶら下げてはにかむ姿も、どこか華があるように見えるのは、妖精だからだろうか。
「仙人さんも、かわいい子供には形無しなんですかね……。持ちましょうか?」
「わっ、こんにちは!」
「あー、こんにちは!」
 両手が塞がるティエルを見かねたのか摩那が声をかけると、慌てて振り返ったティエルが反射的に拱手……しようとして、貰ったあれこれを取り落とす。
 それを返答しつつ、器用に空中でキャッチ。頭や肘に荷物をひっかけながら器用に拱手に応じる。
 さっそく、奇妙な形であるが功夫の修業が活きたようである。
 おおっ、と驚くティエルだが、そこでようやく見覚えのある相手であることに気づいたようだ。
 そういえば依頼で一緒になることも何度かあった相手である。
「拾ってくれてありがと! ちょっと待っててね」
「いえいえ、空気のせいでしょうかね。ついつい体が動いてしまいました」
 お互いにちょっと照れたように笑いつつ、摩那が持ってくれた荷物を次々と腰に下げた壺の中に詰め込んでいく。
「じゃあこれ、お礼に!」
「いいんですか。わーい」
 一通り荷物をしまい終えると、最後に残ったお菓子の包みを二人で分け合うことに。
 そのお菓子はシャーチーマーと呼ばれる、この世界やUDCアースにおける中国屋台に行けばだいたい売ってる伝統的なお菓子のようだった。
 小麦粉で練った短い麵状の生地を揚げて糖蜜を絡めて固めたものを切り分けたもので、見た目にはおこしに似ているが、食感はさっくりふわふわしている。
 なんとも素朴て子供が好きそうな味である。
「なんというか……のんびりしていて、いい場所ですね」
「うん、ボクの故郷に似てるんだ! お菓子くれたりするのも!」
 二人でのんびりとお菓子を食べながら、のんびりと話していると、ティエルの故郷というものがどれくらい平和で住み心地がいいかが伝わってくる。
 それなら、どうしてこんな過酷な稼業をやっているのかとも思うが、当人が実に楽しそうでそれに伴うだけの実力を持っているため、特に言及する気は起きなかった。
 故郷か……それを思うと、摩那は少しだけ気が重い。
 実験施設生まれの身の上話は、正直、人に話すようなものではない。
 観光気分で空気が悪くなる話をするのは、御法度だ。
 それに、気ままな猟兵生活というのも危険は伴うが、こうした出会いや、たまに見慣れないお菓子を食べられるのも役得として十分なものだ。と思う。
 生まれ故郷は持たぬものの、住めば都とはよく言うもの。
 それを探すというのも面白いかもしれない。
「あーっ! 桃売ってるよ! 仙桃だって!」
「ほほう、名産の仙桃。叩き売りですと!」
 噂に聞く不老長寿の仙桃。さすがは仙界。それもかなりお安く叩き売りしているらしい。
「おやぁ、綺麗なお嬢さんたちだ! 安いよー、安いよ、桃が安いよー。一つ食べれば一年長生き! 名産の仙桃だよぉー!」
 靴ベラのような棒を片手に、売り台にでんっと並べられたのは、ちょっぴり形の不揃いながら、おいしそうな桃。どうやらここの仙桃は白桃らしい。
 話に聞くと、今や仙桃は三千年に一粒の奇跡の果実ではなく、生産法も確立され、むしろけっこうな出荷が可能になったらしい。
 ところが、伊達に王室御用達の高級品ではないらしく、こだわりにこだわる品質は高騰していき、味や効能のみならず形や大きさまで求められるようになったそうだ。
「ふーむなるほど、お安くという理由は、傷物や規格外品、天候被害果というわけですね」
「おおっとぉ、お嬢さん、真実に気づいちまったねぇ。しかし、味には変わりないよ。疲労回復に便秘解消、肌をきれいに保つ効果もあるから、不老長寿も嘘じゃあない!」
「やだ、詳しい……」
 ほんとに文明に明るくない世界なのだろうか。
 それとも営業上手なのだろうか。
 事実、桃は栄養豊富で、水分も多く含んでいるので、むくみや高血圧にも効果があるらしい。
 ただ、そんな風に科学的根拠の話をされると、逆にうさん臭くなってしまう気がするのは、なぜだろう。
 いやぁしかし、お安く提供してくれるなら、この場で買わぬも損であろう!
 何しろ、桃源郷の桃なのだから。
「叩き売りをするというのなら、こちらも叩き買いをせねばなりませんね!」
 銭貨を握ったてをぐわぁっと振り上げる摩那は、まさに叩き買いをしようと振りかぶるのだが、それをばっと小さな手が遮る。
 摩那を制したティエルの目つきは、勝利を確信したものであった。
「ふふーん、ここはボクの値切り力を見せる時だね!」
「なにぃ、仙人相手に値切ろうっていうのかい! いいぞ、やってみなぁお嬢ちゃん」
 異様に威勢のいい商売人によく見えるように、ティエルは目いっぱい手を広げる。
「いーっぱい買うから。その分、まけて☆」
 バチーンとウィンクして笑顔を見せるティエルの仕草は、隣にいた摩那ですらうっと呻くくらいには眩しいものに見えた。
「くぅ……息子夫婦が子供を見せに来た時を思い出す! しょうがねぇ、もってきな!」
「脆い……あまりにも……」
 思わず、どこかの中国史を描いた漫画のようなセリフが漏れてしまう摩那だったが、なんやかんやあっても、訳アリの仙桃はとても安かった。
 そしてティエルは本当にいっぱい、それこそ、えそんなに? というくらいいっぱいの仙桃を購入し、例によって妖精の壺にそれらを詰め込んでいった。
「そんなに買って、食べきれるんですか? 桃って結構、足の速い果物ですよ」
「ボクのだけじゃないよ。友達とか、国の皆とか……いーっぱい!」
 弾けんばかりの笑顔で自信満々に答えるティエルの姿に、摩那は微笑ましく思いながら、どこか羨むものもあった。
 なるほど、故郷ってそういうものか。いいなぁ。
 得るものも、得たいものも、まだまだたくさんあるし、あった。
 ざあざあと風が桃の花を揺らす音が聞こえる。
「ね、桃の花が綺麗ですし、ちょっと休みながら、仙桃を食べちゃいましょうか」
「食べるっ!」
 近くを流れる川面が銀色にきらめいて、たくさんの桃の花を映しこんでいる。
 幻想的な風景を、もうちょっとだけ堪能しながら、二人は一足お先にお土産の味を噛み締めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
WIZ

アドリブ・連携歓迎

技能:情報収集、郷愁を誘う、慰め

「過去の生を悔いるオブリビオンか……」
後悔から新たな生き方を模索できれば良かったのでしょうが、半端に余暇を過ごす事しかできなかったのは彼がオブリビオンだったからでしょうか?
或いは、この地を訪れた武侠や猟兵が一因となって戦いから逃れられなかったかも知れないと思うと、やり切れません

禍凶が詩を刻んでいた岩の所に戻り、破壊された岩から詩を判読しようとします
せめて彼が足掻いた証だけでも、記録に残しておきたいですから

一通り記録を終えたら、再び拱手してその場を去ります
桃源郷を楽しむのは、また別の時にでも



 春の日和が舞い戻ってきたかのような感覚であった。
 オブリビオンにして、武の頂、その一端に立っていたであろう暗殺拳の使い手がこの地を去った。
 それにより、桃源郷に漂っていたうっすらと冷たい気配、それが消え失せて人並の活気が再び訪れたような、眠っていた山が芽吹くような、そんな様相だったように思う。
 桃源郷にも当然人は住んでおり、その多くが仙人であるが、誰もが戦う力のために仙人になるわけでもなく、ある者は学術、書や花の道のため、ある者は仙桃などこの地にしか育たぬ作物のため、その身を長い生涯でもって道なき道を切り開くために捧げるために仙人となる。
 言うなれば、彼等にとって長く生きることは研究の毎日のためであり、必要な手段の一つであった。
 武の為に命を賭する武侠とは毛色が違うのだ。
 相容れぬこともあったろう。
 いたずらに命を奪うべからず。死は、戦いの結果に過ぎぬ。
 暗殺拳を志し、その極みに手をかけんとしていたオブリビオンもまた、その存在意義に反して在り様は淑やかであった。
 それでも、彼の者が選んだのは、この地の隅の隅。人里の喧騒がまるで届かぬ小さな丘であった。
 禍凶がその商売道具で刻み続け、戦いの果てに砕けた巨岩を前に、禍神塚・鏡吾は静かに佇んでいた。
 その顔には仮面を被り、表情は伺えないが……。
 彼が仮面を被る理由は、その無表情にある。
 常に微笑みを絶やさぬその顔は、笑み以外を作れないという。
 激しく感情を揺さぶられることはあっても、涼しげな笑みしか浮かべられぬ事は、時には有利にもなるのだが、今という時にあっては、たとえ只の一人であっても笑みを向ける気分にはなれなかった。
「過去の生を悔いるオブリビオンか……」
 その手に武術が無ければ。と言っていた。
 その手に武術が無くては。とも言っていた。
 そして戦いの中で老人は戦いを忘れて、我が身を振り返るように背を見せたのだ。
 あの巨岩へと。
 そこに刻まれた禍凶が残した詩は、残念ながらその全てを読み取ることは不可能なようだが、残された内容を汲み取る事くらいはできるだろう。
 あちこちに欠損やかすれがあって正確な内容を判別するのは難しいが、鏡吾は記述された内容をメモにとってその古い文体を読み解いていく。
 それは老人の半生を綴った日記のようなものだったようだ。
 日が昇り沈むまで人を殺す術を学び続けた。
 弱肉強食の獣が日々の糧を得るために殺すのと同じように、人殺しが金になる事を学んだ男は、その技を磨き続けた。
 体を鍛えるのも、食を得るのも、より効率的に人を殺すため。
 時にはそれが逆になることもあったが、楽な殺しを選ぶ余地はこなかった。
 より高みを目指すほどに、より高みを得るためには、高い技術が要求されたからだ。
 武術で名を馳せた武官を手にかけた。
 激しい命の取り合いだった。
 息を吸うにも吐くにも苦しくなるほど振り絞り、持てる力を出し切っての勝利だった。
 その時になって初めて、そこに充足を求めていたことを知り……。
 もう後戻りはできぬ事を知った。
 技が冴えるのが楽しい。命の取り合いが楽しい。
 ひとたび刃を交えれば、そこに貴賤はなく、清水のような澄んだ心だけがあると思っていた。
 桃の園に再び生まれた今にして思えば、私は憑りつかれていたのだろう。
 いくらでも言い訳はつく。
 つまるところ、白熱の欲からは、今も昔も逃れられぬのだ。
 いつかやめておけば……そう思いながら、命を落とした。
 そこには安堵すらあった。
 どのみち、私はいくら生まれ変わっても、同じことを繰り返すだろう。
 挑まれては殺し、そして悔いる事で紛らわそうとするのだ。
 あの白熱への欲求を……。
 それでも何か意味があるのかと問い続けるために、私は私の半生を綴る──。
 そこから先の続きはもう読めない。
 苦悩と諦め。その詩から読み取れるのは、暗殺拳の宿業とでもいうのか。
 必然的に人を殺し続けた達人であっても、気が付けば出来上がっていた道の先へと、歩むことを止めることができない事が記されていた。
 或は、この桃源郷に現れたときに、後悔からか別の生き方を模索していたのかもしれない。
 しかし、半端な余暇に過ぎなかったこの地での出来事は、生前とそう違いはなく。
 暗殺拳の使い手であるが故か、オブリビオンであり、それを狩る猟兵の存在もあってか、それとも彼に挑み続ける武侠の存在もあってか。
 どうやっても戦いの宿命からは逃れられなかった。
 そしてそれを望む、白熱の戦いを望み続ける自らの宿命をも覆せなかった。
「やり切れませんね……」
 メモを取る手を止め、鏡吾は小さく呟く。
 彼は半端者であったろうか。
 或はそう呼ぶ者も居るだろう。きっとそれも正しい。
 しかし、ここに刻まれた命の証を読み取るに、どう判断すべきなのか。
 今はただ、その物語を、あの達人の存在を忘れぬよう、メモの末尾に名を加え、鏡吾はそれを胸にしまい込む。
 そして佇まいを正し、静かに拳と掌を合わせて拱手を捧げると、踵を返すのだった。
 観光をする気分ではない。それはまたの機会でもいいだろう。
 オブリビオンにとっては、それはありふれた幾つかの死の一つであろうとも、今だけは悼む気持ちに素直になっておこうと思ったのだ。
 吹き抜ける風に桃の柔らかな香りが乗る。
 そこには、冷たい風を纏うかの老人の憂いなど無いかのようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月11日


挿絵イラスト