戦乱眩光に陰る花鳥風月
●封神武侠界
遡るのならば、それは仙界の至宝『封神台』が破壊されたことが総ての原因であった。
世界に生じたオブリビオンの全ては『封神台』へと自動的に封印される。
そうすることによって、世界ににじみ出る過去の化身は現在に仇為すことなく、人知れず封じられ続けてきた。
しかし、何者かが『封神台』を破壊した。
破壊の音色は硝子が砕けるようにでもあったし、水をせき止める堰堤が決壊するようでもあった。
膨大な水が溢れるように、飛び散る硝子の破片が肉を裂き血を溢れさせるように。
色鮮やかな花は散る。
穏やかなりし、平穏は壊される。
例え、その結果によって来たるべきはずであった世界の有り様が消え去ったのだとしても、それは悲しむべきことであったことだろう。
「故に英雄が必要なのだ。今再び、世界が混乱と争乱に満ちるのだとしても、人は諦めぬ。あの見果てぬ夢を見るために」
普の皇帝『司馬炎』は告げる。
彼が求めるは武侠英傑。
そう、在野にありて未だ見いだされることのないユーベルコード使いを『司馬炎』は求めた。
「『人界』であろうと『仙界』であろうと征こう。この事態を解決するために。座して待つなどしない。己の足で迎えよう。全ては惑う人心を治めるためだ――」
●死せる英傑
滲み出る過去が今という花を黒く染めていく。
それはどうしようもないことであったけれど、『死者英傑』は己の名前を思い出せずに居た。
「ああ、悲しいことですね。貴方様は貴方様の名前を思い出せない。けれど、ご安心下さい。わたくしがおります、貴方様」
『死者英傑』は呻くように、目の前で微笑む寵姫を見やる。
絶世の美女と呼ぶに相応しい美貌。
その美貌が傾国を齎す者であると知っているが、その微笑みは邪悪ではなく慈しむ物であった。
何故、と問うことはできなかった。
「いいのです。ご自身の名前を思い出さなくとも。ただ、わたくしの名を読んで頂けたらいいのです。貴方様の願いはわたくしが一番知っているのですから。さあ」
寵姫が手をのばす。
たおやかな指。薄紅色の爪が、ゴツゴツと皮膚が硬化した己の手に触れる。
力を少しでも込めれば、砕けてしまいそうなほどに儚い美しさ。『死者英傑』はなんと表現していいのかわからなかった。
けれど、これこそが己の宝であると知る。
「ああ、感激の極みでございます。わたくしを、奪うではなく守らんとしてくださるとは……」
寵姫は微笑んだ。
世界が一変したようだった。己の心のなかに湧き上がる感情を受けて、『死者英傑』は歓喜した。
これこそが生の実感。
生きている。すでに終わったはずの躯体が燃え上がるような闘気に満ちる。
「ええ、参りましょう。手始めにまずはこの国を手に入れましょう。嘗て為し得なかった願い。貴方様のためならば」
わたくしは何度だって死んだっていいのです。
そう寵姫は微笑んだ。それが例え、傾国の寵姫としての体裁であったのだとしても、その心の中にある願いは偽りなんかではなかった。
傾国の寵姫が喪った、手に入れようとしたものを過去ではなく現在で掴み取るために。
彼女は全てを投げ打つために、例え平和に暮らす者たちを脅かしてでも全てを手に入れる――。
●義侠心は烈火の如く。
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。新たに発見された世界、今回の事件は封神武侠界で起こることが予知されました」
ナイアルテは右拳を左手で包み込み一礼してみせた。
それは『拱手』と呼ばれる封神武侠界における礼儀であり挨拶である。
これを行い礼儀を欠かさないことが、かの世界における猟兵の最低限必要な知識であった。
「私達猟兵は、封神武侠界においては異なる文化や文明を持つ、素性の知れぬ存在です。けれど、挨拶は大切なことですね。この『拱手』を欠かさなければ、人々は皆さんの素性を問いませんし、ユーベルコード使いであることは大変歓迎されることでしょう」
後は微笑めばいいのだとナイアルテはぎこちなく微笑んだ。
「予知されたのは、広大な都『梟門』。その平穏な都にオブリビオンが密かに侵入し、犯罪結社を築き出しました。この犯罪結社は『刻印玄峰』と呼ばれるオブリビオンを使い、生成された『阿片』をばら撒き、都を乗っ取ろうとしているのです」
幸いに未だ『阿片』はばら撒かれる前に猟兵達は転移することができる。
だが、状況は一刻を争う。路地裏で、もしくは都の中枢で……都の至る所で『刻印玄峰』は阿片を、その針でもって人々に注入しようとしている。
これを止めなければ、人々は生成された阿片を求め、都はオブリビオンの支配下に落とされるだろう。
「オブリビオン相手では、官憲や軍隊であっても敵いません。これらの悪事を為そうとしているオブリビオンを打倒し、義侠心を人々に示さねばなりません」
ナイアルテは今一度頭を下げる。
人心を乱すオブリビオン。
彼らにとって封神武侠界は未だ手つかずの雪原のようなものである。
美しいものを汚す喜びに打ち震えているであろう。例え、それが過去よりの妄執による再現であったのだとしても、今を脅かす理由にはなっていない。
「無論、皆さんを迎え撃つオブリビオンも只者ではありません。過去より滲み出た者。英雄の再現、そう呼ばれるに値する強力なオブリビオンです」
だが、猟兵ならば、その心の燃える義侠心を持って示すだろう。
オブリビオンが人心を乱すのならば、それを治める者だって必ず存在するのだと――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
封神武侠界において平穏な都『梟門』を手に入れようと暗躍する犯罪結社を築いたオブリビオンの目論見を打破するシナリオになります。
●第一章
集団戦です。
『刻印玄峰』と呼ばれる黒々とした体を持つ巨大な蜂の群れです。
まるで黒雲のように、呪詛の針から生成された『阿片』を人々に打ち込み、虜にしようとしています。
都の様々な場所で人々を今まさに襲わんとしているタイミングで猟兵の皆さんは転移することができます。
人々を救い出しましょう。
●第二章
ボス戦です。
オブリビオン『黒縄華妃』は、第一章で『刻印玄峰』の尽くが倒されたことに気が付き、皆さんの前に現れます。
彼女は寵姫らしい微笑みを浮かべていますが、彼女の目的である『死者英傑』を一国の主にするという欲望のままに平穏な都を堕落させようとしています。
●第三章
ボス戦です。
『黒縄華妃』を撃破した皆さんは、凄まじい重圧を感じる犯罪結社の本拠地の所在を感じ取ることでしょう。
本拠地に座す『死者英傑』を打倒し、犯罪結社を壊滅させましょう。
それでは新たな世界『封神武侠界』でのオブリビオン事件を義侠心でもって、人界を照らす皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『刻印玄蜂』
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POW : 呪詛侵蝕針
【巨大な毒針】が命中した部位に【対象を融かす呪詛】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 融解驟雨
自身からレベルm半径内の無機物を【強毒針の雨】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ : 刻印転化
自身の【体が闇】になり、【敵の攻撃を透過する】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
嗚呼、黒き雲が空をゆく。
その光景は天変地異の前触れか。
平和な都『梟門』の空は真っ黒に染まっていた。人々は皆一様に見上げることしかできず、それが一体何を意味するのかも理解できなかった。
「一体なんだというのだ。雨が降るわけでもなく、黒雲が都の空を覆っている……」
「……いや、雲ではない! あれは――!」
そう、気がついた。
それは漸くにしてというほどに、遅きに失するものであった。
『刻印玄峰』。
黒雲は全て蜂であった。
黒々した巨体を持つ蜂の群れ。
それが『梟門』に住まう人々へと襲いかかる。
鋭き針から滴るのは、体内で生成された阿片。どれだけ頭脳明晰であっても、どれだけ頑強壮健であっても、一度打ち込まれれば脳は蕩け、鍛え上げた肉体はだらしなく堕ちる。
それが『阿片』。
人は多幸感のままに堕落するだろう。
「うふふ……暴力ではなく、多幸のままに人は堕ちる。ああ、変わらないのですね。貴方様は。圧倒する武を持ちながらも、生命が喪われる術を嫌われる。ですが、お任せ下さい。わたくしが貴方様の願いを全て叶えましょう。ええ、それがわたくしの、真なる望み――」
寵姫は微笑む。
その微笑みは体裁であったけれど、心に浮かぶ情念は真実。
歪な存在、オブリビオンは微笑みのままに人々の平穏を襲う――。
久瀬・了介
武侠の世界。理解出来たとは言い難いが、学んでいる暇はない。そこに怨敵がいるなら赴くのみ。
民間人に避難を呼び掛ける。学んだばかりの拱手を行い警戒心を解こう。郷に従うのは重要だ。
【墓場の主】で悪霊の群れを召喚し周囲の物品に取り憑かせ操る。
ポルターガイスト現象の様に宙を舞わせ蜂どもを取り囲み、人々を攻撃から【庇う】。
民間人を殺すのではなく、毒や病で国力を消耗させ続ける。戦争では極めて効果的だ。故に許す訳にはいかない。貴様らは殺す。必ず殺す。
包囲させた悪霊達による念属性攻撃。【範囲攻撃】だ。【呪詛】を込めた【念動力】で蜂どもを捻り潰す。
討ち漏らしをハンドキャノンで撃ち落とす。一匹たりとも逃しはしない。
黒雲のごときオブリビオンの群れが、『梟門』の都の空を埋め尽くす。
その光景は人々にとって悪夢そのものであった。
黒雲だと思っていたのは、無数の巨大な蜂の群れ。
名を『刻印玄峰』。
その体内に生成された『阿片』を人々に打ち込み、たちまちの内に堕落せしめんとする悪逆の先鋒である。
奇妙な羽音は耳をつんざくほどであり、人々は恐怖におののいた。
けれど、そんな悪夢の中にあっても希望の手は差し伸べられる。
「――あ、あれは……!?」
人々は見た。
この世界において礼儀とされる『拱手』と共に現れた黒衣の人間の姿を。
その赤き瞳は幽鬼の如くゆらめき、到底生者のものではないと思わせる雰囲気を醸し出していた。
言う成れば、墓場の主(ハカバノアルジ)。
その身に宿ったのは怨念そのもの。
オブリビオンを打倒し、オブリビオンを殺すことだけが己の存在意義であると言わしめるかのような隔絶した雰囲気をまとい、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は礼を失することなく、人々に呼びかける。
「此処は自分に任せてくれ。速く建物の中へ」
あんたは、と問いかける言葉の前に了介の背後に吹き荒れるように現れたの悪霊の群れであった。
「ゆ、ユーベルコード使いか……!」
了介の瞳が輝く。
そう、それこそが皇帝『司馬炎』が求めた在野のユーベルコード使い。
人々は了介の言葉に希望を見出した。
義侠の心でもって、人々を救わんとする徒として彼を見出したのだ。
「武侠の世界。理解できたとはいい難いが、学んでいる暇はない。そこに怨敵がいるなら赴くのみ……」
征かねばならぬ。
そこに敵がいる。己が討たねばならぬ敵がいて、未だ払えぬ脅威があるというのならば、了介は戦う。
悪霊たちが空を舞う『刻印玄峰』たちを取り囲み、人々を襲わんとしている彼らを尽く阻むのだ。
「ヴヴヴヴヴッ!!!」
凄まじい羽音なのか、それとも刃のよな鋏を震わすのか。
それは威嚇のようなものであったが、了介には関係のないことだった。
「オブリビオンは殺す。全て殺す」
ユーベルコードに輝く瞳は、黒雲を切り裂く雷鳴の如く。
民間人を殺すのではなく、毒や病で国力を消耗させ続ける。それは戦争という場において極めて効率的だ。
「だから許す訳にいかない。貴様らは殺す。必ず殺す」
悪霊たちが放つ念力の力によって『刻印玄峰』たちが一塊に集められる。
呪詛を籠めた力は、ぎりぎりと念動の効果範囲を狭めていき、『刻印玄蜂』を一撃の元に握り潰す。
潰された『刻印玄蜂』たちの体液すら念動力によって集められ、呪帯弾丸放つ大型拳銃の一撃に寄って霧散する。
だが、未だ『刻印玄蜂』の数は凄まじい。
途方も無い数だ。
「なんだというのだ、数が。俺の役目はまだ終わってはいないぞ」
咆哮するように了介の持つヴォルテックエンジンが魂の衝動を走らせ、凄まじい電力へと変換していく。
その輝きはまさに雷撃。
疾走る彼の体はユーベルコードの残光と帯び、悪霊たちと共に無限にも思えるような『刻印玄蜂』を次々と霧散させていく。
「な、なんという凄まじき力……! あの御仁は、やはり……!」
人々は感嘆の息を漏らす。
その凄絶なる戦いぶりに義侠の心を見た。
悪事を働く者を許せぬと燃える炎。それは了介にとっては怨敵を打ちのめすための魂の衝動であった。
けれど、それでも彼の行いは人々を救う。
誰もができるわけではないけれど、それでも己の身が朽ちるその時まで……否、オブリビオンを滅ぼすその時まで彼は止まらぬと、魂の咆哮が『梟門』の都に疾走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
成り行きで伝承拳を継承したが、うさんくせぇ伝説の拳法だなぁ。
(寧々「ならなぜに継承した?」なりゆき?)
阿片ならこっちの方がいいぜ。
合法阿片を取り出し一服…。ふー。『ドーピング』で『元気』120%
『気合い』『限界突破』だ。
さて、暴れるとするか。
スタングレネードを集団に『投擲』。激しい光と衝撃の『範囲攻撃』で蜂どもを『目潰し』『気絶攻撃』で叩き落す。
百里神剣の『切り込み』で『斬撃波』を飛ばして切り裂き。
『覇気』を込めた覇気を纏った拳から『捨て身の一撃』でブッ飛ばす。
トドメだ…煌閃の『レーザー射撃』で汚物は『焼却』完了。
あ、合法阿片でもう一服。
ふー。やっぱ吸うならこっちの方がいいぜ。
封神武侠界に伝わる伝承拳は数あれど、成り行きで伝承拳を継承した者もまた在るだろう。
その経緯がどのようなものであれ、その拳を振るう理由はいつだって簡単な物であった。
奪う者が居る。
ただそれだけである。
人の営みを横合いからかっさらおうという悪意があるからこそ、伝承拳は途絶えることはない。
人々が泣く声がなくなればいいと願うからこそ、拳の力は凄まじき力を持って悪を滅ぼす。
それが武侠である。
「うさんくせぇ伝説の拳法だなぁ」
なら何故に継承したと首を傾げるのは、しゃべる蛙の『寧々』であった。それに、なりゆき、と答えたのは黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)である。
彼は全身が黒尽くめに、赤い瞳が輝く少年とも言っていい体でもって黒雲の如き群れをなす『刻印玄蜂』と対峙する。
『刻印玄蜂』は体内で『阿片』を生成し、その針でもって『梟門』の都の人々に打ち込もうとしている。
それがオブリビオンの悪事であり、成されてしまえば人々は堕落し、都はオブリビオンの手に堕ちるだろう。
確かに多幸感と快楽を得ることはできよう。
けれど、それは一時のまやかしに過ぎない。
禁断症状は耐えられず、人々は『阿片』を求めてオブリビオンに隷属するだろう。
「『阿片』ならこっちの方がいいぜ」
名捨は己の所有する『合法阿片』を取り出し、一服する。
『刻印玄蜂』が生成する『阿片』とは違う。
一種のドーピング剤のようなものだ。
ダウナーな雰囲気を漂わせていた名捨の瞳が爛々と輝く。
みなぎる活力。溢れる気力。
そのどれもが普段の彼の体の限界を超えるものであったが、不思議と頭は冴え渡っていた。
「ふー……さて、暴れるとするか」
ゆらりと揺れるは、口元からこぼれ出る阿片の残り香。
しかして、刮目せよ。
手に持ったスタングレネードを『刻印玄蜂』の群れへと投げ放ち、激しい光と衝撃で『刻印玄蜂』の視覚を潰し、衝撃波は羽を吹き飛ばして大地へと失墜させる。
手にした偃月刀を振りかぶり、名捨は『刻印玄蜂』たちを尽く斬り捨てていく。
「一振りで百里離れた龍を切り倒した伝説……嘘くせぇ~」
それは百龍拳。
その昔百里離れた龍を切り倒したとされる伝承拳。
しかし見よ。
『梟門』の人々は今、その伝説の一端を垣間見ている。
「あれは、百龍拳! まさか生きてこの目で見られるとは……!」
名捨にとっては、そこまで有名な話なのかと驚くばかりであるが、かまっていられない。
人々の感嘆をよそに名捨は次々と『刻印玄蜂』を切り落としていく。
だが、『刻印玄蜂』とて黙って倒されるわけではない。
名捨という脅威を認めたのか、周囲から黒雲の如き集団が殺到する。
数で圧倒しようというのだろう。
その鋭き針に滴る『阿片』を飛び散らせながら、名捨を堕落せんとせまるのだ。
彼らは『百龍拳』の伝説を知らぬ。
そう、百里放たれた場所の存在すら斬り捨てる絶技。
「わんさか集まってきやがって……だが、都合がいいことこの上ない! これで……ラストショットだッ!」
どれだけの数が集まろうともものともせぬユーベルコードの輝きが、十字に交錯した腕から放つ破壊光線となって放たれる。
曰く、煌閃(コウセン)。
その眩き輝きは一撃で黒雲を切り裂き、その尽くを霧散せしめるのだ。
人々は歓声を上げた。
それは拍手喝采でもあり、名捨の凄まじき力を前にして驚嘆するものであった。
「ふー。やっぱ吸うならこっちの方がいいぜ」
戦いの後の一服と言わんばかりに名捨はキセルで合法阿片をぷかりと吹かせる。
この一服がたまらないのだというように、名捨は戦場を変えるようにふらりふらりと歩き出す。
『百龍拳の後には紫煙が残るのみ』。
後にそう語られる伝承拳の一節が今、封神武侠界に刻まれたのである――。
大成功
🔵🔵🔵
ベルゼ・アール
*アドリブ・連携等歓迎
あれが全部虫ってことかしら!?
(愛車「Dio Demone」を運転して現場に急行)
しかも阿片を分泌って……マズいわね。
ヤクを取り扱う連中は大抵ロクデナシって相場が決まってるのよ。
こういうのは私の性分じゃ無いのだけれど……!
(車から降りて拱手で挨拶し、逃げ遅れた人達を誘導する)
怪我して走れない人は私の車に乗って!
あんまり多くは乗れないけど……! 飛ばすわよ、舌を噛まないでね!
避難誘導が一段落したら、ナイトウィングで空を飛ぶわね。
奴ら目掛けて香水型薬剤スプレーで殺虫成分の入った薬剤を散布するわ!
マヒくらいしてくれれば儲けもの、後は二丁拳銃を撃ちまくって片付けるわよ!
『梟門』の都に疾走るは、軍馬でもなければ荷馬車でもない。
摩訶不思議な鋼鉄の体を持つ戦車そのものであった。少なくとも封神武侠界、その人界に住まう人々にとってはそう見えた。
それが異なる世界においては、スポーツカーと呼ばれ、『怪盗“R”』の愛車であることは知られているかもしれないが。
しかし、『梟門』の都に排気音が轟き、天に舞う黒雲の如き『刻印玄蜂』の群れを怯ませた。
「あれが全部虫ってことかしら?!」
ベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)は驚嘆していた。
黒雲にしか見えないが、一つ一つの点は『刻印玄蜂』の巨大なる体躯である。
その体の中で生成される『阿片』こそが、オブリビオンの目論見。阿片を体内へと打ち込み、人々を堕落させる。
このような搦手を使ってくるのは、やはりオブリビオンしかいない。
「しかも『阿片』を分泌って……マズいわね」
薬物を取り扱う連中は大抵ロクデナシというのが相場である。こういう状況は自分の性分ではないのだけれど、ベルゼは嘆息した。
けれど、襲われる人々を知っていて、放っておくことなど義侠の心を持つ義賊としての自分が許せないのである。
スポーツカーの扉を開け、ベルゼは間一髪で『刻印玄蜂』に襲われていた人々の立てになるように舞い降りる。
「怪我して走れない人は私の車に乗って!」
優雅な所作でベルゼは右拳を左手で包み込む『拱手』でもって、人々の前に礼儀を示す。
このような非常事態であるが、このような姿である。
一刻も早く人々の信頼を勝ち取る必要性があったのだ。この封神武侠界において礼儀とは何物にも優先されることである。
礼を失することなくば、信在り。
義侠の心こそが、一切の素性を問わぬ輝きなのである。
「この子だけでも、お願いします!」
赤子を抱えた女性がいる。
老人を抱えた男性が居る。兄弟であろう年端も行かぬ少年少女が居る。
これら全てを飲み込まんとする黒雲がある。
「あんまり多くは乗れないけれど……! 飛ばすわよ、舌を噛まないでね!」
ベルゼは選ばなければならなかった。
怪我をして走れない者。
弱い者。
けれど、その全てを取りこぼさずに掬い上げることは難しい。だが、彼女の瞳に輝くのはユーベルコードの輝きではない。
あるのは義侠の心だけである。
全て救う。
ただ、それだけのためにベルゼは襲いかかる『刻印玄蜂』を振り払うように許容範囲を超える人々を次々と救い上げる。
全て救えずに何が義侠であろうか。
避難誘導を終え、ベルゼの瞳が輝く。
「さぁ、夜の街を飛ぶわよ」
ベルゼの背中に魔力で構成されたナイトウィングが黒雲の如き『刻印玄蜂』を切り裂くように広げられ、一気に飛翔する。
その衝撃波が『刻印玄蜂』を切り裂き、次々と巨躯を霧散させていく。
「ヴヴヴッ!?」
だが、それだけで終わりではない。
ベルゼが飛翔した後に『刻印玄蜂』たちが次々と失墜し、大地へと叩きつけられて霧散していくではないか。
「殺虫成分よ。効くでしょう? でも、それだけじゃ終わりじゃないのよ!」
交錯する一瞬で香水型薬剤スプレーが振りまかれ、殺虫成分の入った薬剤で『刻印玄蜂』の体力を奪っていく。
構えた二丁拳銃が空に舞うたびに放たれ、不気味な羽音を切り裂く轟音が『梟門』の都の空に響き渡る。
それは轟雷そのものであり、その音が響くたびに空から黒雲が穿たれたように霧散していくではない。
人々は見上げた。
コウモリの翼が広がり、放つ轟音が『刻印玄蜂』をうがっていく様を。
「撃って、撃って、撃ちまくって片付けるわよ!」
ベルゼの翼が羽ばたき、人々の喝采を受ける。
その姿は彼女の本来の生業とは異なるものであったが、時にはこうやって喝采を浴びることもまたいいものだと思わせるほどには、その音は心地の良いものであったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
魔銃のレプリカを持って戦闘
蜂は元々脅威だってのに阿片の毒を打ち込むとは厄介だ
潰して毒を散布されるのも嫌だからな、燃えてしまえ
SPDで判定
【視力】【暗視】【聞き耳】で敵を捕捉
孔雀輪で【空中浮遊】【空中機動】【滑空】を使用し行動
攻撃は民間人には風の【結界術】を張り、自分は【結界術】【オーラ防御】を併用して守り銃を構えて攻撃
指定UCで弾丸に赤の災い:炎熱【焼却】を付与、【クイックドロウ】【スナイパー】【範囲攻撃】【全力魔法】を使用しながら【空中戦】を行う
必要なら【気合い】【覚悟】をもって人々を【かばう】
『梟門』の都は今、最大の危機に襲われている。
空を覆い尽くす黒雲は、『刻印玄蜂』と呼ばれるオブリビオンの大群に埋め尽くされている。
すでに猟兵が駆けつけているが、広大な都の全てを守れたわけではない。
今もまだ人々の悲鳴が響き渡る。
ただ平穏に時を過ごすことすら許されぬ。
それが封神台を喪った封神武侠界の運命であるというのならば、どれほどに残酷なことであったことだろう。
体内で生成された『阿片』。
それを打ち込まれてしまえば、人々は確かに多幸感に包まれたまま堕落していくことだろう。
けれど、それはオブリビオンの罠であり、目論見である。
『阿片』に毒された人々は、、すぐさま禁断症状を引き起こし『阿片』を求めるだろう。
そうなってしまえば、民草は全てオブリビオンの奴隷である。
「蜂はもともと脅威だってのに阿片の毒を打ち込むとは厄介だ……」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はオブリビオン『刻印玄蜂』が大挙として押し寄せる『梟門』の都を疾走る。
彼の瞳に映ったのは、黒雲の如き大群に終われる人々であった。
メガリス、孔雀輪。それは孔雀の目が変化した疾風を引き起こし、嵐を呼び寄せる呪われし秘宝。
けれど、ルイスはその力を持って、『刻印玄蜂』に追われる人々を守るべく、間に割り込むのだ。
「貴方達は俺が守る……!」
己を生者の盾と定義するルイスにとって、それは当然のことであった。
迫る強毒性の針が雨のように降り注ぐ中、ルイスは人々の盾となって毒の針を一身に受け止める。
人々に毒の累が及ぶことのないようにとメガリスによる風の決壊を張り巡らせ、盾となったのだ。
「ああっ……!」
人々の悲鳴が聞こえる。
己の姿が惨憺たるものへと変わってしまったからだろう。
強い毒が己の体の中を駆け巡るのを感じる。けれど、それでいいのだ。
己はデッドマン。
不死の体現者にして、死を越えた者。
ならば、この体は盾である。
「――属性付与(エンチャント)」
構えた魔銃がきらめく。
それはユーベルコードの輝き。義眼のメガリスが煌々と光を放ち、周囲に飛び交う黒雲の如き『刻印玄蜂』を放つ弾丸から開放された赤き災いの輝き、即ち炎熱の力でもって焼き尽くす。
「潰して毒を散布されるのもいやだからな――燃えてしまえ」
毒性の針を打ち込まれても尚、不死身のごとく動くルイス。
彼の身を挺した行動は、彼の素性など問うことすら憚られるものであった。人々は見上げたことだろう。
傷つきながらも空へと舞い上がり、炎熱の輝きを放つ弾丸を打ち出し『刻印玄蜂』を焼き払っていくルイスの姿を。
その姿は誰かのためにと願う義侠の心が燃え上がるようであり、その姿を持って人々はルイスの姿に嘗ての英雄を見ただろう。
戦乱を治め、人の営みを正しきものへと導く。
「太平の治世に『阿片』なんてものは必要ない」
お前達は間違えていると、ルイスは義眼のメガリスを輝かせ、その赤き輝く義侠の心が燃え上がるままに黒雲を切り裂くように燃やし尽くすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
新しい世界、封神武侠界。封神台、仙術、宝貝と
色々気になる事はあるけど。
まずやる事はいつもと変わらないのが辛い処だ。
空を覆う敵と人々を見て状況を確認してから人々の前へ。
慣れない地でも『拱手』による挨拶を忘れずに
敵は自分が抑えるのでそのまま逃げる様に伝える。
冥空へと至る影を発動、スカイロッドとフレイムテイルを
使用して風と炎の壁を作ると共に念動力で敵の動きを制限し
人々を追わせない。
敵の体が闇になってもそのまま風と炎で攻撃を続け
敵の動きとその闇の特質を【見切り】
ファントムレギオンの死霊で魂を捉える攻撃を行う。
「相手が悪かったね。
その闇も万能な訳じゃないし
魂の在処さえ分れば死霊が捉えるのも容易い。」
新たな世界を知るということは、その世界の世俗を知るということである。
全てが異なるわけではないが、全てが同じではない。
その差異こそが知識と呼ぶのであれば、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は未だ封神武侠界のことを全て知り尽くしたとは言い難い。
封神台、仙術、宝貝と知らぬことは未だ多々あれど、今はそれを気にしていることすらできない。
何故ならば、今、封神武侠界の人界、『梟門』の都はオブリビオンの大群とも言うべき黒雲のように群れる『刻印玄蜂』に襲われているからである。
体内で生成された『阿片』を人々に打ち込み、堕落させてオブリビオンの奴隷へと仕立て上げようとしているのだ。
「謂わば、国盗りといった所か……色々と気になることはあるけど、まずやる事はいつもと変わらないのが辛い処だ」
いつだってオブリビオンが狙うのは弱き者である。
それは力のない民衆であったり、無辜の人々であったりする。
だからこそ、己達猟兵がいるのだ。
世界の悲鳴に応える戦士。それが猟兵であるというのならば、力を振るうことに躊躇いはない。
「まだ都全てにオブリビオンが来襲しているわけではない……今ならば全てを守ることができる……」
なら、どうするべきか。
フォルクは逃げ惑う人々の前で『拱手』の礼儀を欠かさない。
その風貌は確かに『梟門』の都では見受けることのない異邦の人間であったが、礼儀を欠かさぬ彼の姿を咎める者など誰も居なかった。
誰かの己の言葉を聞いてほしいのであれば、まずは礼を失することのないように。
それをフォルクは知るからこそ、人々に一礼してから言葉を紡ぐ。
「あれらは俺が抑える。その間に逃げてくれ。速く動けないものがいるのであれば、手伝ってやってほしい」
「だ、だが、貴方は……!」
「俺のことは気にしないでいい。そのための時間を今から稼ぐ」
フォルクは人々に告げ、扇状と成り果てた『梟門』の都を駆け抜ける。
その瞳がユーベルコードに輝く。
「冥府への門たる忌わしき影よ。その枷を外し闇の力を我に届けよ」
その詠唱の言葉に人々は驚嘆する。
そう、その輝きこそがユーベルコード。オブリビオンという人外なる者を打倒せしめる唯一の力。
それは、冥空へと至る影(ディアボロス)。冥界へと繋がるもう一つの自分の影。
手にするのは炎のラミアを封じた魔本を変化させた黒手袋と風の杖。
術者であるフォルクが手繰るのは炎の壁である。
立ち上がった炎の壁はオブリビオンである『刻印玄蜂』だけを焼き付きし、その奇怪なうめき声と共に大地へと失墜させ霧散させるのだ。
風と炎の力が黒雲の如き群れである『刻印玄蜂』を退け、人々を追うことを許さないのだ。
しかし、炎の壁に阻まれた『刻印玄蜂』はその体を闇色に変え、炎の壁を迂回してでも人々を襲わんとする。
それをフォルクが見過ごすわけがなかった。
「相手が悪かったね。その闇も万能な訳じゃないし」
自分の影が冥界から己に送られてる魔力を武具に与え続ける。
例え迂回しようとも、姿が見えなくなったとしても、すでに彼は闇色に染まる『刻印玄蜂』の特性を見切っている。
揺らめく大気が、如実に『刻印玄蜂』の姿を捉える。歪まぬ闇色こそが、そこに敵が在るという証拠。
「魂の在り処さえわかれば捉えるのも容易い」
フォルクの放つ炎の壁が次々と『刻印玄蜂』を焼き尽くしていく。
まさに人々を守る炎の壁。
それを単一の存在だけで為し得てしまう。これこそがユーベルコードである。
太平の治世を守らんとする世界に選ばれた戦士。
その一人であるフォルクによって、オブリビオンの目論見は此処に燃え尽きる運命なのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
大陸の黒社会はいつの時代も変わらずか。
傾国の美女とそれに惑わされた英傑のよくある話も、舞台が黒社会だと一気にスケールダウンね。
街都『梟門』に降り立ったら、すぐにも黒鴉召喚で多数の式を打って、街都のどこで犯罪行為が行われてるか「偵察」しましょ。
手数が欲しいわね。アヤメと羅睺にも黒鴉との交感権限を渡すから、独自に市内での動きに対処して。拱手を忘れずにね。
場所の特定が出来たら、市内に散る。
あたしは飛鉢法で現場に急行し、オブリビオンを不動明王火界咒で討滅してはすぐ次の場所へ。
身体が闇になるなら、炎で闇を散らせばいいわよね。影だろうと闇だろうと、火炎光は全て燃やし尽くす。
各員、状況は終わった?
人の世が在る限り、営みは変わらぬというのであれば平穏もまた長く続くものではない。
けれど、悪が栄えた試しもまたない。
息を潜め、闇の中で光指す方を見ているのかも知れない。
異世界を知る者、世界を渡る者、猟兵にとって、それはあまりにも当然のことであったのかもしれない。
代わり映えのしないことであったのかもしれない。
「大陸の黒社会はいつの時代も変わらずか」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は『梟門』の都へと降り立つ。
すでに空には無数の黒雲のごとき群れを為すオブリビオン『刻印玄蜂』が渦を巻くようにして『梟門』の空を染め上げていく。
このオブリビオンを解き放った者たちは、国を傾け、国盗りを行おうとしている。
「傾国の美女とそれに惑わされた英傑のよくある話も、舞台が黒社会だと一気にスケールダウンね」
嘆息しながら、ユーベルコード、黒鴉召喚(コクアショウカン)によって呼び出されたカラスに似た鳥形の式神が空へと舞い上がる。
どこにオブリビオンが向かっているのか、無作為に人々を襲うだけではない。
そこには必ず狙いがあるはずだ。
五感を共有した鳥形の式神が空を飛ぶ。すでに多くの人々が『刻印玄蜂』に襲われ続けている。
逃げ惑う人々の姿が鳥形の式神を通して、ゆかりの視覚を染め上げていく。
どうしようもないほどの悲劇。
けれど、猟兵たちもまた、それらを振り払うのだ。
都は混乱に陥れられている。
そもそも体内で生成された『阿片』を人々に打ち込まれてしまえば、それだけでオブリビオンはいいのだ。
「つまりは、人を堕落させ自分たちに都合の良い傀儡にしてしまおうというわけ……けど、そうはさせない。まずは手数がほしいわね」
ゆかりは式神を多数放つ。
これだけ広大な都である。猟兵たちも多く降り立っているが、それだけでは手が回らないかもしれない。
だからこそ、ゆかりは式神使いというアドバンテージを最大限に利用する。
「遊撃、それがあたしにできる最大効率!」
鉄鉢に乗って飛翔するゆかりは、即座に吹き荒れる炎で『刻印玄蜂』を焼き払っていく。
「次!」
ひっきりなしに襲いかかる『刻印玄蜂』たち。時に闇に紛れるも、ゆかりにとっては無意味である。
「身体が闇になるなら、炎で闇を散らせばいいわよね。影だろうと闇だろうと、火炎光は全てを燃やし尽くす」
不快な断末魔を上げ、『刻印玄蜂』が霧散し、燃え尽きていく。
体内で『阿片』を生成する以上、潰しては体液と共に噴出するかも知れない。
そうなってしまえば、人々に害をなす可能性だってあるのだ。
これを全て排してこそ猟兵である。
霧散し、焼け落ちていく『刻印玄蜂』を尻目にゆかりは鉄鉢と共に飛翔していく。
黒雲の如き群れは、炎によって切り裂かれるように焼け落ち、人々は見上げる。
例え、蒼天の空が黒雲に覆われようとも、それを振り払う者がいる。
いつの時代も変わらぬというのならば、黒雲ばかりが空を染め上げる道理など無いのだと知らしめるように、炎が次々とオブリビオンを霧散させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』 武の天才
一人称:わし 豪快古風、最近は破壊神
武器:灰遠雷
ははは、武侠の世界とは、好ましいのう!うむうむ、腕がなる。
郷での慣習は、従うべきじゃろうて。
さて、あれが全部、蜂とはの…。だが、視認はできる。
なれば、【四天境地・雷】の出番よな。蜂の数だけ増えるのじゃし。
それに、最近、これの有効範囲がびっくりするくらい広くての…下手すれば、相手の攻撃範囲より広い。
今回の場合、相手が空飛んどるのが、相手にとっての不運よ。
…わしにとって、視界に邪魔になるものがないのであるからな。
見次第、射かける。
ところで、何でわし?
あ、破壊専門だからか…。まあ、よかろうて!
異なる世界を股にかけた猟兵たちにとって、その世界の世俗を知る機会は多かったことだろう。
己の知る世界が数多ある世界の一つであると知った時、猟兵は何を想うだろうか。
異なる文化、風習、それを前にしてただ動じるだけであっただろうか。
答えは否である。
彼らはすぐに順応する。
異なるものを受け入れ、それを好ましく思うことも、疎ましく思うことも全て飲み込んで征く。
それが世界を救うためになるのであれば。
「ははは、武侠の世界とは、好ましいのう! うむうむ、腕が鳴る」
郷での慣習には従うべきであろうと馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その複合悪霊である一柱、『侵す者』は豪放磊落に笑う。
彼の器の大きさを見せるような笑い声は、人々にとって異邦の者であっても不思議と安心感を与えるものであったかもしれない。
蒼天を埋め尽くす黒雲。
それがオブリビオン『刻印玄蜂』の大群であることは言うまでもない。『梟門』の都に住まう人々は逃げ惑う。
その針に含まされた『阿片』は『刻印玄蜂』の体内で生成されている。
一度針に刺されてしまえば、人々は多幸感と共に堕落していく。そうなれば、オブリビオンの奴隷として死ぬまで『阿片』漬けにされてしまうだろう。
そうしてオブリビオンは、この『梟門』の都を手に入れるつもりなのだ。
「だが、そうはさせぬ」
『侵す者』は逃げ惑う人々を前に立ち、『拱手』でもって礼を失することなく声を張り上げる。
「安心めされよ。わしがおる限り、皆には針の一本たりとて触れさせはせぬよ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
武の天才たる『侵す者』の瞳は、黒雲の如き『刻印玄蜂』へと向けられる。
凄まじきユーベルコードの名を人々は未だ知らぬ。
四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)。
それは構えた強弓から放たれる霊力の矢。しかし、ただ放つだけではない。一度放たれれば、その矢は『侵す者』が視認した全ての対象へと分裂し、追尾するのだ。
一射千穿。
まさにその言葉通り、『侵す者』が視認した『刻印玄蜂』全てに霊力の矢が飛び、射抜く。
「さりとて、すべてが蜂と言えど、視認できるのであれば、全て射抜いてみせようぞ。なに、空を飛んでおるのがお前達にとっての不運よ」
そう、言うまでもなく武の天才である『侵す者』にとって、己の視界に入った空飛ぶ者とは即ち射掛けられる者である。
ならば、その一射に外れはなく。
弓を射る瞬間に、その運命は決定しているのだ。
「悪霊からは逃げられない」
『侵す者』にとって、空を飛ぶ者は尽く視界を遮ることのない容易なる者でしかない。
「その針、無用の長物と知れ」
放つ矢は雷を纏って次々と黒雲を撃ち落としていく。
明滅する空に『刻印玄蜂』が霧散して消えていく姿が、まるで花びらのように。まさに優美と呼ぶに相応しい光景となって広がる。
それを『梟門』の人々は見上げただろう。
素性も知れぬ異邦の人。
けれど、その心にあるのは義侠の心であるというのならば、人々は喝采でもって出迎えるだろう。
その喝采を受けて『侵す者』は再び霊力の矢をいかける。
「ところで、なんでわし? あ、破壊専門だからか……まあ、よかろうて!」
他の三柱たちの言葉に苦笑いを浮かべるが、それでも誰かを救うことが出来る力があるということは幸いである。
オブリビオンに滅ぼされたが故に今まさに魔の手が伸ばされる『梟門』の都を救う。
それこそが彼ら四柱の至上命題であるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・ゴッドハンド
「しゃぅもあそぶー!ちからもちのー、ちからまかせのただのこぶしけいしょーしゃだよー!」
フェアリーランドの小さな壺からパワーフードの妖精蜂蜜を取り出して食べ、その甘さで力が湧き肉体改造します。戦意を滾らせる事で幼精紋を浮かび上がらせて身体を硬化、防御力と同時に打撃の威力を高めます。
龍の甲殻をも砕く蜂蜜色の覇気を身に纏い、怪力を発揮。
両手にそれぞれ蜂を掴み、武器として振り回したり叩きつけたり他の蜂へ投げつけたりします。
敵を纏めたら一撃必殺のパンチで全て砕きます。
終わったら壺からお菓子や蜂蜜を取り出して食べます。
黒雲が群れをなすように『梟門』の都、その蒼天を覆っていた。
圧倒的な数。
オブリビオン『刻印玄蜂』。その蜂とは思えぬ巨体が奇妙な羽音を立てて、飛ぶ。
その体内で生成された『阿片』。それを針でもって人々に打ち込み、多幸感の元に堕落させようとするのが、今回のオブリビオンの目論見であることは、今更であろう。
「しゃぅもあそぶー! ちからもちのー、ちからまかせのただのこぶしのけしょーしゃだよー!」
黒雲の如き大群を前に裸身のフェアリーが飛ぶ。
舌足らずな言葉遣いが、彼女の精神的な年齢と幼さを強調しているが、オブリビオンにとって、それはどうでもいいことであったことだろう。
なぜなら、オブリビオンにとって猟兵とは、いかなる姿をしていたとしても滅ぼさなければならない対象である。
それは猟兵にとっても同じことである。
互いに滅ぼし合う関係であるからこそ、もはやそこに言葉は必要ないのである。
「ヴヴヴッ!」
奇怪な音を立てて『刻印玄蜂』が巨大な針を震わせる。
その強毒性の針は、刺した対象を爆破する凄まじき力を持っていたが、シャルロットにとって恐れるには足らないものであった。
なにせ、彼女にはパワーフードがある。
「んふーしゃぅのとっておきのよーせーはちみつ! んぅー、あっまぁーい!」
手のひらで大胆に掬って蜂蜜を口に含めば、それだけで身体の其処からパワーが吹き荒れるようにこみ上げてくるのだ。
まるで肉体改造の如く戦意を漲らせ、その小さな体に圧倒的な破壊の力が宿るのだ。
「なんだ、あの小さな生き物……ひと、なのか……? いや、羽がある!」
『梟門』の都の人々は見上げた。
空を飛ぶ小さな人。フェアリーの姿は初めて見る者も多かっただろう。
けれど、そのシャルロットの裸身に浮かぶ妖精紋は、さらに得意なものであったことだろう。
それは体を硬化させ打撃の威力を高める力。
龍の甲殻すらも砕く蜂蜜色の覇気を身にまとい、その恐るべき怪力を発揮するのだ。
「しゃぅとあそぼー!」
彼女の舌足らずな言葉とは裏腹に、彼女の速度は『刻印玄蜂』を遥かに上回っていた。
圧倒的な速度で飛翔し、『刻印玄蜂』を捉える。
一瞬の踏み込みであった。怪力で巨体とも言える『刻印玄蜂』を両手それぞれに掴み上げるのだ。
まさに怪力無双。
徒手空拳において、その怪力は恐るべき力を発揮する。
例え、強毒性の針を持っていたのだとしても、刺さらなければ威力を発揮しない。
シャルロットの強化された怪力は凄まじき握力で持って、『刻印玄蜂』の巨体をびったんびったんと大地に、または蜂同士でぶつけ合って粉砕していく。
「さーどんどんいっちゃうよー!」
叩きつけ、ぶつけ、砕いては周囲に群がる『刻印玄蜂』の尽くを霧散させていく。
黒雲のような大群が次々と霧散させられていく。
はちみつ色のオーラが疾走るたびに、空に刻まれていく蒼天。
それを見上げ、人々は歓声を上げる。大きな一塊となった『刻印玄蜂』をシャルロットは有り余る膂力でもって打ち上げる。
「さいごはいちげきひっさつのー!」
みなぎるパワーフードの力がシャルロットの拳を、巨岩を粉砕する一撃へと昇華させる。
霧散するように砕かれた『刻印玄蜂』たちを見やり、シャルロットは栄養補給と言わんばかりに甘いお菓子や蜂蜜を取り出して、一息入れる。
けれど、まだまだ戦いは終わらない。
長期戦になることは間違いないが、それでもシャルロットは蜂蜜に濡れた指先をねぶって笑うのだ。
だって、まだまだ戦い足りない……いや、彼女の言葉を借りるのならば、遊び足りないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
『拱手』、ですか。
故郷にはない文化ですが、この世界独自の文化や礼儀があるのであれば、合わせるべきでしょうね。私たちは異邦人なのですから。
ですがそれも、現状を切り抜けてからです。
犯罪結社というともっと隠密に事を運ぶものを想像しますが、この世界の犯罪結社は随分と荒っぽいですね。
ですがそれならば、こちらも直接的な手段で対抗するだけです。
鳥の形に作成した「氷晶ゴーレム」に乗り【ブリザード・マニューバ】を使用、空中で刻印玄蜂の群れと戦闘を。
敵の毒針による攻撃を『見切り』強化された機動力で針を避けつつ、両手のデリンジャーからの氷の弾丸の『乱れ撃ち』で刻印玄蜂を撃ち落としていきます。
『拱手』、それは封神武侠界における礼儀の作法である。
右拳を左掌で包み込む一礼。
それさえ忘れなければ、封神武侠界の人々は、素性の知れぬ猟兵であってもユーベルコード使いである以上手厚くもてなしてくれる。
すべての世界に礼儀というものが備わっているのだとしても、この世界ほど礼儀を重んずる世界もなかったことだろう。
ダークセイヴァー。
かの暗闇の世界、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の故郷にはそんな礼儀作法はなかったが、それがこの世界の文化や礼儀であるというのならば合わせるべきであると彼女は考えていた。
数多の世界を巡ってきた彼女には柔軟な思考と対応力が身についていた。
自身が異邦人であることを自覚し、されど他の世界の人々の世俗に沿うことができる。
それはどんな才能よりも尊いものであったことだろう。
「ですがそれも、現状を切り抜けてからです」
彼女の瞳の向こうにあるのは黒雲の如き大群を形成している『刻印玄蜂』。かのオブリビオンを排除しなければ、礼儀以前の話であるからだ。
あの巨体の中で生成される『阿片』。それがひと針でも人々に打ち込まれてしまえば、人々は多幸感と共に堕落してしまうだろう。
そうなってしまえば、『梟門』の都はオブリビオンの魔の手に堕ちる。
「犯罪結社というともっと穏便にことを運ぶものを想像しますが、この世界の犯罪結社は随分と荒っぽいですね」
セルマにとって、それは返って好都合であった。
密かに、猟兵に知られぬままに計画が進行していたのならば、これほどたちの悪い目論見もないだろう。
爪が甘いのか、それとも他に理由があるにせよ、セルマは鳥の形へと変貌させた氷晶ゴーレムと共に空を舞う。
「空中戦としましょうか」
黒雲のごとき群れとなった『刻印玄蜂』たちがセルマを猟兵と認めた瞬間、彼女を取り囲まんと奇怪な羽音と共に襲来する。
直線的な動き。
確かに強毒性の針は脅威であったが当たらなければどうということはないのだ。
「こちらも直接的な手段で対抗するだけです」
構えるはフィンブルヴェト。
マスケット銃のスコープに覗くのは、彼女の得物だけである。
圧倒的な機動力を誇る氷晶ゴーレムが羽ばたくたびに『刻印玄蜂』の針を躱していく。
放つマスケット銃の弾丸が黒雲を穿ち、次々と『刻印玄蜂』を叩き落としていく。
「数が多いですが、こうまで直線的であるのなら」
その瞳はユーベルコードに輝く。
人々は見ただろう。氷晶の煌めきの先にあるセルマのユーベルコードの輝きを。
それは彼女の両手に握られたデリンジャーが凄まじい勢いで放たれ、次々と銃を変え、まるで奇術でも見ているかのように氷晶ゴーレムと共にセルマが舞う。
その輝きは黒雲を切り裂く青い輝き。
セルマは今、氷晶と共に舞う天女の如き力でもって次々と人々を襲わんとする脅威を打ち払うのだ。
乱れ撃つデリンジャーが輝くたびに、黒雲の群れは霧散していく。
「おお……! あれなるは仙術手繰る英雄の働き……!」
人々は口々に喝采する。
黒雲を蹴散らすセルマの姿は確かに英雄そのものであったことだろう。
人々は歓喜する。
例え、人心を乱れさせようとするオブリビオンがいたとしても、義侠の心静かに燃やすセルマのような者がいるということを知ったのだ。
ここに示すは、義侠の心。
オブリビオンがどれだけの悪事を目論んでいたとしても、それを打ち払う輝く光があることこそが、人々の希望足り得るのだと言うようにセルマは華麗に弾丸を放ち、黒雲をうがって蒼天の輝きを『梟門』の空に取り戻すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
なるほど拱手
右の拳を左手に叩き込むのがこの世界の挨拶なのか…
バチコーン!バチコーン!
よし、完璧だな!
結構左手痛くなるけど、大変な挨拶だなあ…
●
バチコーン!バチコーン!へい!ユーベルコード使い参上!
害虫駆除ならお手の物ってね
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
地上から『斬撃波』で蜂を牽制しながら、『天候操作』で強風を起こして針の雨の妨害を行おう
蟲を食べるのは鳥のお仕事
【断章・不死鳥召喚】を起動
蒼炎で蜂たちに対して攻撃を仕掛けて貰おう
当然、私もその間に牽制しながら『オーラ防御』を上に展開して安全地帯を形成して皆を守ろうか
ヤクは良くないねヤクは
ああでも、名探偵はヤク中らしいよ?
封神武侠界にバチコーン! バチコーン! と柏手を打つような音が響き渡る。
別に何か美味しいものを食べた時に出るあれではない。
右拳を左掌に打ち込む音であった。
それにしたって気合が入りすぎているような気がしないでもないが、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、なるほどこれが『拱手』と間違っているのだか、そうでないのか……それとも大真面目なのか判別付かぬ顔で、封神武侠界に降り立つ。
「よし、完璧だな!」
結構左手委託なるけど、大変な挨拶だなあ……などと供述しているが、それを正せるだけの度量がグリモア猟兵にはなかった。
きっと彼女なりの気合の入れ方なのだろうとポジティヴに変換していたことは余談である。
しかし、少しでも猟兵の助力は必要であった。
『梟門』の都は今、オブリビオンの大群に襲われている。
黒雲の如き大群を持って、体内で生成された『阿片』を人々に打ち込まんと『刻印玄蜂』は、蒼天を多い尽くすように飛ぶ。
人々は恐れ、まどい、広大な都を逃げ惑う。
幼き者、弱き者、老いた者。
いつだって悪意の餌食になるのはそういった者たちである。
だが、それをさせぬと降り立ったのが玲であった。
「バチコーン! バチコーン! へい! ユーベルコード使い参上!」
ヒーローがよくやる着地の仕方で玲は襲われんとしていた人々とオブリビオン『刻印玄蜂』との間に割って入る。
膝をやらないのかなぁ、とかそんな野暮なことを思ってはならない。
けれど、抜刀した模造神器の青き残光は、一振りで持ってオブリビオンを切り裂き、人々を襲わんとしていた針から守るのだ。
「あ、あなたは……!」
老いた者が幼き者をかばいながら、見上げる。
玲は覚えたばかりの『拱手』でもって礼を欠かさずに微笑む。けれど、バチコーン! とすさまじい音を建てるものだから、人々はビクついた。
ちょっと怖かったと、後で幼い者が言っていたかもしれない。
「細かいことは気にしない。ここは私に任せて、早い処屋内に逃げ込んでね。それに蟲を食べるのは鳥のお仕事ってね!」
放つ模造神器の斬撃は空を飛ぶ『刻印玄蜂』を寄せ付けず、次々と切り裂いていく。
天候操作によって吹き荒れる強風が放たれた雨のよな針すらも吹き飛ばし、人々をまるのだ。
「偽書・焔神起動。断章・不死鳥召喚の閲覧を許可。不死鳥よ、舞い踊れ――さあさあ、仕事の時間だよ。お腹いっぱいになるまで、げーしちゃうまで食べちゃってよ!」
浄化の蒼炎によって構成された不死鳥が断章・不死鳥召喚(フラグメント・フェニックスドライブ)によって呼び出される。
その蒼き炎の如き翼が広げられた瞬間、黒雲は燃やし尽くされるように霧散して消えていく。
まさに圧倒的な炎。
黒雲が如何に膨大な数であったとしても、呼び出された不死鳥の羽ばたく一瞬の内に燃え尽き、霧散していくのだ。
「ヤクは良くないね、ヤクは」
うんうん、とよく燃える『刻印玄蜂』を前に玲は笑う。
どんなときだって、そういうのをキメるのはよくないことだ。けれど、ああ、と彼女は思い出したようにつぶやく。
「名探偵はヤク中らしいよ?」
おっと、ベーカー街の名探偵の話はそこまでだ。
封神武侠界の人々には知る由もないことであったから、皆首を傾げていた。玲は、ちょっと外したかなと思いつつも、気を取り直してオーラの力を模造神器から展開し、人々を守る。
その蒼炎はたしかに敵を撃滅するものであったけれど、どこか優しいものであったかもしれない。
人々を守るだなんて、臆面もなく言えるわけではないけれど。
それでも玲の心にもまた義侠の心が燃えるのだ。
燃えているよね? とたまに気になる時もあるが、駆けつけたということはそういうことなのだ。
「さあ、皆さんご一緒に!」
へい! と玲はほほえみながら、彼女流の『拱手』のバチコーン! という盛大な音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
秦・美芳
哎呀!大変なことになってるよー!
おぶりびおんはやっぱり放っておいたらだめだね
めいふぁん、頑張っちゃうよ!
めいふぁんの降魔拳に敵なし……!
と思ったけど、数が多いし空飛んでるし、もー!
まだ出来立てで範囲も狭いけど雷公鞭いくよー!
【宝貝「雷公天絶陣」】でどっかーん
んー、変な術使ってるね
闇になってかわされちゃうかもだけど
めいふぁんに引き付けることができたら好し!
敵の攻撃はかわせるけど攻撃じゃなかったらどーなる?
「はいやっ!」
雷をかわした蜂に感電して落ちてきた蜂を蹴り飛ばしてぶつけてみる
べちっとぶつかったら好機だね!
感電した蜂目掛けてもういっかい【宝貝「雷公天絶陣」】いくよー!
※アドリブ連携OK
「哎呀! 大変なことになってるよー!」
そんなふうに封神武侠界、『梟門』の都に嘆く声が響き渡る。
秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)はふわりふわりと、その軽い体を風に遊ばせながら、『梟門』の都へと降り立つ。
彼女の視線の先にあるのは、蒼天を黒雲が塗りつぶすような光景であった。
それがオブリビオン『刻印玄蜂』の大群であることは、すでに彼女の知るところであり、その体内で生成される『阿片』が一度蔓延すれば、人々は多幸感と共に堕落していくだろう。
そうなってしまえば、この広大な都はオブリビオンの魔の手に落ちてしまう。
それをさせぬと奮起するのが猟兵であり、美芳の使命であった。
そう、彼女こそが音に聞こえし『降魔拳伝承者』である。ただまあ、旅の途中で数え切れないほどの『降魔拳伝承者』とであったことにより、自身の一族が一子相伝の意味を取り違えているのではないかという疑念は生まれてしまったが、それはそれである。
「おぶりびおんはやっぱり放っておいたらだめだね。めいふぁん、がんばっちゃうよ! めいふぁんの降魔拳に敵なし……!」
彼女の闘志は義侠の心を受けて燃え立つ。
しかし、オブリビオンは空を舞う黒雲の如き大群。
これでは拳法の伝承者である美芳の拳が届かない。憎たらしいことに闇に紛れるように姿を変貌させた『刻印玄蜂』は嘲るように羽音だけを響かせるのだ。
「もー! だけど!」
そう、彼女には宝貝がある。
その名も『雷光鞭』。
振りかぶった鞭から放たれる雷の一撃は、闇に紛れる『刻印玄蜂』であっても全てを強かに打ち据える。
「変な術使ってるね。けど、遅いね!」
例え、闇になって躱したとしても感電し大地に失墜する『刻印玄蜂』をまるで蹴鞠の要領で、鍛え上げられた足で蹴り飛ばすのだ。
それは妙技であった。
放った蹴撃が感電した『刻印玄蜂』の体を弾丸に変えて、雷を躱した個体へと放たれるのだ。
巨体同士がぶつかり、嫌な音を立てて潰れていく。
「はいやっ!」
けれど、美芳は気にしない。
雨のように降りしきる『刻印玄蜂』を次々と蹴撃で持って、未だ空に健在である個体へとぶつけていくのだ。
その姿はまさに大地にあって空を蹴落とす勢いであった。
類まれなる才能を持ち、弛まない練磨と経験の果てにこそたどり着くことのできる業。
それが降魔拳伝承者の為せる力である。
「好機ね! もう一度食らうとよろしいね! いくよー! 宝貝「雷公天絶陣」!!」
放たれた雷が黒雲を切り裂いて蒼天を取り戻す。
宝貝の雷撃は、次々と『刻印玄蜂』を叩き落とし、その巨体を大地へと失墜させる。
そこへ再び美芳の足技が疾走る。
「おおっ! あれなるは、やはり『降魔拳伝承者』! 生きてかの妙技を見ることが出来るとは!」
人々は知るだろう。
その拳、蹴撃が悪を決して許さぬことを。
例え、この『梟門』の都がオブリビオンの魔の手によって脅かされようとも、何度でも『降魔拳伝承者』が現れ払うだろう。
「はいやー! めいふぁんが来たからにはもう安心ね!」
巨大な蜂、オブリビオンの残骸の上に美芳は立ち、『拱手』でもって人々に一礼してみせる。
その姿は、まさに英雄そのもの。
人々は、その類まれなる拳士である美芳の姿に喝采を送るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・リデル
都『梟門』の乗っ取りを考えているそうですが……
民衆を阿片漬けなどにすれば社会を維持できません。
廃墟を乗っ取って何になるのでしょうね。所詮はオブリビオンですか。
『魔力解放Ⅱ』を発動して蜂の群れと対峙。
オーラセイバーと魔法を行使して滅していきます。
敵wizucには闇を消し去るには光と、回避率を無視する広範囲の光属性魔法で攻撃します。(属性攻撃:光×破魔×全力魔法×範囲攻撃)
猟兵にとってオブリビオンの行動原理は知れたものではない。
理解しようとしてもすでに過去に狂った存在に対して猟兵ができることは唯一つである。
そう、滅ぼす以外にない。
『梟門』の都を襲った黒雲の如きオブリビオンの大群。
『刻印玄蜂』と呼ばれる体内で『阿片』を生成する巨大な蜂は人々を襲わんとしていた。
けれど、転移してきた猟兵達によって、その被害は未然に防がれていたとしても、未だ戦いは終わらない。
これは先鋒戦にすぎないのだ。
その戦いですら未だ圧倒的な数を誇る『刻印玄蜂』の大群の前には全てを滅ぼすことができないでいた。
黒雲の如き大群は蒼天を覆う。
陽の光すら差すことのない分厚い雲。けれど、それを切り裂く輝く青いオーラが空を駆け抜ける。
「都『梟門』の乗っ取りを考えているそうですが……消えて貰います」
魔力解放 Ⅱ(デーモン・ロード)によって青きオーラを纏ったステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)が駆け抜ける。
黒雲を切り裂くオーラセイバーと魔法が『刻印玄蜂』を尽く撃滅させていくのだ。
「ヴヴヴッ!!」
青き輝きの前に『刻印玄蜂』たちは己の体を闇色の同化させ、黒雲の中に紛れ込んでいく。
けれど、ステラの放つユーベルコードの輝きを知れ。
その輝きこそが黒雲を穿ち切り裂く光である。
「民衆を阿片漬けなどにすれば社会を維持できません」
それは当然の帰結であろう。
人々を奴隷として、頂点にオブリビオンが座す。
まさに、そのためだけが目的。
オブリビオンにとって人とは、その程度の価値しかないのだろう。己の欲望を満たす、願望を叶える。
その先、その未来を見出すことが出来ないのがオブリビオンであるのならば、人が滅びようが滅びまいが関係など無いのだ。
在るのは、ただ一つ。
「ただ国盗りを行いたいただけ。一国の主になるという願望を叶えるためだけに無辜なる人々の生命を弄ぶというのですか」
ステラにとって、それは許せぬものであったことだろう。
それが義侠の心である。
許されぬ非道に怒る心根があるからこそ、彼女は封神武侠界に駆けつけたのだ。
そのユーベルコードの輝きのままにオブリビオンを駆逐する。
黒雲の如き大群を次々と撃滅し、霧散させていく。
「願望を叶えたとて、その先にあるのは廃墟。それを乗っ取って何になるのでしょうね」
オーラセイバーの剣閃が疾走る。
その一撃が『刻印玄蜂』の巨体を切り裂き、霧散させる。
あまりにも虚しい願望である。
例え叶えたとしても、その先がない。或るのは破壊と破滅だけだ。
それを悲しいと思うのは、人の性であろう。けれど、ステラには成さねばならぬことがある。
『梟門』の都を救う。
人々を阿片の脅威から守り抜く。
それが猟兵に課せられた役目である以上、彼女の魔力は青く輝き、ユーベルコードの力を持って、それを為すのだ。
「所詮はオブリビオンですか……」
相容れぬ存在。
滅ぼし合わなければならない存在。
それがオブリビオンであるというのならば、ステラは尽くを滅ぼすだろう。
「人が天下泰平の世を望むのであれば、オブリビオンの存在こそ必要ではないのです。疾く骸の海へと還りなさい」
その青きユーベルコードの輝きが、一撃の元に黒雲を切り裂き、霧散させ、その眼下に視える人々の顔を明るいものに変えていく。
僅かなことであったかもしれない。
けれど、これでいいのだ。平和な世を作り上げるのは猟兵ではない。
そこに生きる人々の意志が、そうさせるのだとステラは未だ残る大群を消し去らんと、大空に駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
礼儀を欠かさなけりゃいいんだな?
オーケイ、後はおいおい覚えておくわ!
[SPD]
テスタロッサに騎乗して現場に急行
到着と同時にバイクから飛び降りながら敵集団にTCを突撃させて【不意打ち、先制攻撃】
次いでUCを発動して流星の【誘導弾】と雷鳴の【貫通攻撃】の弾幕を形成して
行動される前に可能な限り数を減らしておくぜ
敵の攻撃は【瞬間思考力、見切り】で避けて
UCに対しては宇宙服とFZの【オーラ防御、念動力】で受け流して対処な
住民に対しては余裕があれば熱線銃を上に投げて
サッと拱手を済ませてから避難を呼び掛けとくぜ(コミュ力
ここは俺に任せて早く逃げな!
阿片をばら撒く害虫は一匹残らず駆除させて貰うぜ!
アドリブ歓迎
礼を欠かさぬということは大切なことである。
どんなに力をもった者であったとしても、そこに礼がないのであれば無礼そのもの。ならば、そこに尊敬も人としての扱いもない。
それが封神武侠界における世俗の一つであったことだろう。
礼儀を欠かさなければいい。それならば、後のことはおいおい覚えていけばいいと笑ったのは、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)であった。
彼にとって今いちばん大切なことは、『梟門』の都において生命が喪われてしまうかも知れないということだけである。
それを救うために彼は愛用のバイクであるテスタロッサ・カスタムと共に扇状となった『梟門』の都を駆け抜けるのだ。
「もう戦いが始まっていやがるのか……!」
祐一の視線の先にあるのは黒雲の如き大群のオブリビオン。
『刻印玄蜂』と呼ばれる巨大な蜂のオブリビオンは、体内で『阿片』を生成している。その針から滴り落ちる阿片を人々に打ち込み、堕落させんとしているのが、今回のオブリビオンの目論見である。
「そうはさせねえ!」
エキゾーストパイプから凄まじい排気音が鳴り響き、鋼鉄の馬の如きテスタロッサ
・カスタムが走り抜ける。
勢いに任せたまま、祐一はテスタロッサ・カスタムから飛び降り、人々を襲わんとしていた『刻印玄蜂』の集団を轢き倒すのだ。
「冬雷(トウライ)――!」
迸るは、祐一のユーベルコードの輝きである。
それは手にした熱線銃から放たれるオブリビオンを消滅させる一撃雷。
構えた熱線銃を放り投げ、その合間に『拱手』でもって人々に知らしめる。己が敵ではないこと。
ユーベルコード使いであることを、周知させるのだ。
くるくると円を描きながら祐一の目の前に落ちてきた熱線銃を素早く手に取り、引き金を引く。
目にも留まらぬ高速射撃は次々と『刻印玄蜂』を撃ち落としていく。
「ここは俺に任せて速く逃げな!」
これで合っていただろうかと、少しばかりアドリブを加えた『拱手』。
けれど、それは喝采を持って人々に受け入れられる。ユーベルコードと、『拱手』。それが合わされば、多少風貌が変わっていようとも人々にとっては、些細なことである。
何よりも人々を助けようとする義侠の心に人々は打たれたのだ。
「阿片をばら撒く害虫は一匹残らず駆除させて貰うぜ!」
その目にも留まらぬ早打ちは、雨のように降り注ぐ針の攻撃すらも受け流し、自身の背に守る人々へと一本たりとも届かせない。
その姿は確かに英傑そのものであったことだろう。
人々は見た。
彼の見事な早撃ち、そして類まれなるユーベルコードの才を。
そして、何よりも義侠の心を重んじる彼らにとって、まさしく祐一は英雄。
「頼んだぜ、異邦のユーベルコード使いの兄さん!」
人々は手を取り合って祐一が守る場から逃げていく。
それでいいと祐一は笑う。
人々を守る。
世界も守る。それが己の為すべきことであるのならば、人々が信頼してくれたことこそが、彼の力になるのだ。
益々輝きを放つユーベルコードの光。
それが祐一の瞳に宿り、凄まじい勢いで黒雲を切り裂く雷鳴となって、『梟門』の都に鳴り響くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふーむ…あれが全部蜂かぁ…更に毒針で一発でも刺さると阿片が回ると…厄介な…
…人々を守るためにもまずは動きを止めようか…【星を堕とす大地の手】を発動…
…周辺の蜂達を地面へと叩き落してそのまま大地に縛り付けるよ…
…回避率を10倍にしようがその状態では回避出来ない…
…あとは…虫だし燃やすか…幸い、ここは広場だし建物に燃え移る事も無いだろう…
…圧縮格納術式【アヴァドン】から可燃性の高い薬品を取り出して動けない蜂達に振りかけて…
…周囲に居るであろう人達に離れるように、ついでに一応延焼に気をつけるように言って火炎術式を叩付けて燃やそう…薬品を透過するならそれこそ内部から丸焼きだね…
黒雲が蒼天を覆い尽くす。
それは猟兵達の活躍に寄って、所々穿たれたように霧散しはじめていた。
けれど、『梟門』の都を覆い尽くす黒雲は未だ晴れない。
オブリビオン『刻印玄蜂』。その体内で生成される『阿片』でもって人々を堕落へといざない、支配しようと目論むのが今回の事件の首謀者である。
悪辣なるやり方である。
「……ふーむ……あれが全部蜂かぁ……更に毒針で一発でも刺さると阿片が回ると……厄介な……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は空を飛ぶ黒雲、それを構成している個体であるオブリビオンの姿を認め、息を吐き出した。
確かに厄介である。
体内で『阿片』を生成する以上、滅ぼしてしまえば霧散して消えていくが、なにせ数が多い。
空を覆わんばかりの大群。
一匹でも逃せば、そこから人々は『阿片』によって堕落させられてしまう。
その恐ろしさを今、様々と見せつけられている。
けれど、それで立ち止まるわけにはいかない。
「重き力よ、掴め、落とせ。汝は重圧、汝は天墜、魔女が望むは底より出でし昏き腕」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
それは、星を墜とす大地の手(スターライト・フォール)。
彼女のユーベルコードは術式である。そう『空に在る者を天から地へと引きずり下ろす』擬似重力術式。
それこそが、彼女の力である。
『空に在る者』――それは即ち、『刻印玄蜂』である。
空を飛ぶのならば、引きずり降ろせばいい。簡単なことだ。メンカルの術式が煌めき、一気に黒雲そのものを大地へと失墜させるのだ。
例え、闇に紛れる力を発動させたのだとしても、術式という縛りの前では無力である。
人々は驚嘆したことだろう。
ユーベルコード使いとは、無数の軍隊をしても取り押さえることの難しい存在である。
その力を伝え聞くことがあったとしても、直に見る機会などそうはなかったことだろう。
だからこそ、空に浮かぶ黒雲そのものを引きずり下ろすメンカルの力は天変地異の如き光景であった。
「幸い、ここは広場だし……建物も離れている」
ならば、とメンカルは圧縮格納術式『アヴァドン』から可燃性の高い薬品を取り出し、大地に失墜し、縛り付けられたオブリビオンたちに振りまく。
それらの一連の動作の後に、メンカルは『拱手』で持って一礼をしてから、遠巻きに事態を見守っていた人々に語りかける。
「これより、悪逆の蜂たちを燃やす。危ないので……離れるように。万全の体制をとっているけれど、一応延焼には気をつけるように」
その指先に火炎術式が灯る。
瞬間、気化した薬品に火炎術式が飛び移り、失墜した『刻印玄蜂』たちの体を一瞬で燃やし尽くしていく。
大きな篝火のように、黒煙を上げ『刻印玄蜂』は燃えていく。
その光景はまさに驚異なる力。
人々は己達が助かったことを喜び、メンカルを迎える。
彼女にとってそれは、少々手厚い歓迎であったが、この封神武侠界においては、礼を失することがなければ、当たり前の光景である。
「蜂はなんとかできた……けど、まだ黒幕がいる……」
だから、まだ危ないのだとメンカルは人々に告げる。
そう、この『阿片』を持って人々を堕落させ『梟門』の都を手に入れようとしたオブリビオンが待ち受けている。
それを討たねば真に『梟門』の都に対する脅威が払拭されたとは言い難い。
だからこそメンカルは立ち止まらない。
未だ輝くユーベルコードと共にオブリビオンの遺骸を燃やす炎の先へと進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
とんでもない数の敵だね
気は進まないけどあいつの力を借りようか
任せて下さいですの
全てを停滞させて皆様をお守りしますの
健康なままきっちり保存しますの
どんなに速く動けるとしても
この神域の中では意味無いからね
石から使い魔をたくさん創って
止まっている刻印玄蜂を石に変えていこう
体を闇に変えてても
石に変えてしまえば同じだからね
刻印玄蜂を石に変えつつ
危ない状態で止まっている人がいたら
位置を変えておこうか
新しい世界をじっくり見てみたくはあるけれど
この状態じゃそれも難しいしね
とても静かで穏やかで落ち着きますの
ゆっくりこの景色を眺めるのも楽しいと思いますの
これじゃ写真や絵を見てるのと変わらないよ
そういうものですの?
空を埋め尽くす巨大なる蜂。
それがオブリビオン『刻印玄蜂』である。体内で『阿片』を生成し、人々を堕落させて支配しようとするオブリビオンが放った襲撃者である。
その大群はまるで黒雲のように『梟門』の都の青空を染め上げ、未だ人々を襲わんと、おぞましき羽音を響かせて飛ぶ。
それを見上げるのは、猟兵の一人である佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)であった。
「とんでもない数の敵だね……」
感嘆とも取れる息を吐き出す。
これだけの大群を見るのも久しいのだろう。これまでも多くの敵を撃ってきた歴戦の猟兵である晶であっても、多少は時間がかかるだろうと思わせる敵の数であったのだ。
これをどうにかするために有効な手段を考えた時、晶は僅かに頭痛を感じる。
あまり気乗りはしない。
けれど、この事態を一刻でも早く収束させるためには、『あいつ』の力が必要なのだ。
「任せて下さいですの。全てを停滞さえて皆様をお守りしますの。健康なままきっちり保存しますの」
などとにっこり笑うのは邪神の分霊である。
にこやかな笑顔であるところが余計に質が悪いが、今はそうも言っていられない。
黒雲の如き大群は今も『梟門』の都で人々を襲わんとしているのだ。
「私の世界へようこそですの」
神域顕現(サイレント・シオファニー)が展開され、雪のような結晶が黒雲覆う『梟門』の空へと降り注ぐ。
それは邪神と眷属以外の時間が停滞する神域。
結晶が降り注ぐ限り、全ての存在は時間が停滞し、どれだけ素早く動けるのだとしても、この神域の中では意味がないのだ。
「後は……頼んだよ!」
晶が石から使い魔たちを無数に想像し、止まっている『刻印玄蜂』を石化させていく。
例え、かわそうと体を闇色に変えたとしても停滞した時間の中では躱すことなどできやしないのだ。
「おっと、この人は危ないな」
停滞した時間の中、今まさに『刻印玄蜂』の毒針の餌食にならんとしている者がいれば、位置を変えるように晶は抱える。
石化した『刻印玄蜂』を砕き、晶は人々を人知れず次々と救っていく。
彼らが停滞した時間から戻った時、何が起こったのかわからないだろうけれど、それでいいのだ。
別に感謝されたくてやっているわけではない。
「新しい世界をじっくり見てみたくはあるけれど、この状態じゃそれも難しいね」
『梟門』の都はどこも襲われ、逃げ惑う人々ばかりである。
停滞した時間の中にいるからこそ、未だ余裕があるが、見たかったのはこういう光景ではないのだ。
けれど、邪神の分霊にとって、それはまた別の意味を持つ。
この神域の中にあってこそが、彼女の望む世界であったことだろう。
「とても静かで穏やかで落ち着きますの。ゆっくりこの景色を眺めるのも楽しいと思いますの」
「これじゃ写真や絵を見ているのと変わらないよ」
働いて、と晶が邪神の分霊を小突く。
どれだけ似通った存在であっても、価値観が違うのだ。
わかっている。
けれど、晶にとって、この停滞した時間は変化のない世界だ。それは変わりゆくことを止められないからこそ、万華鏡のように色鮮やかな景色を見せてくれる。
それを知る晶にとっては、邪神の分霊のいう穏やかさとまた別の感情を抱くのだ。
「そういうものですの?」
「そういうものなの。だから、手早く片付けよう。見たい、知りたい光景は、それからでも遅くはないんだから――」
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
此の世界では、古の武将がオブリビオンとして現れる
可能性があるのだよな……む、古の武将?ハッ!!
まさか、かの文遠殿(※張遼)に会える可能性があるのか!?
■闘
……おっと、今は仕事。人々に拱手で挨拶し、避難を促そう。
俺がひきつける故、皆はなるべく騒ぎが起きていないところへ。
相手が虫なら、やはり【野生の勘】の出番でござるな。
勘を巡らせ相手の動きを予測、【衝撃波】を伴う一瞬の
【ダッシュ】で敵のバランスを崩しつつ回避し、
敵がいない場所へ移動するぞ。
そこから敵が密集した場所目掛けて【空薙・飃】による
【マヒ攻撃】からの【範囲攻撃】を放ち、一気に頭数を
減らしていくのだ。
※アドリブ歓迎・不採用可
封神武侠界。
それは中国大陸以外は海の世界。洞窟で繋がる『人界』と『仙界』が在る新たなる世界である。
どれだけの異世界を巡ってきた猟兵であったとしても、新たなる世界の世俗や風習、そして成り立ちは知るべきことの多いものである。
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)にとって、それは喜ぶべきものであったことだろう。
未知なるを知る。
そして既知なる者がまた再び現世に舞い戻ることもある。
「此の世界では、古の武将がオブリビオンとして現れる可能性があるのだよな……」
そうなんとなしに呟いた。
けれど、それは決定的な閃きでもあったのだろう。
彼の顔が僅かに紅潮したのは、彼が知る武将にも相まみえる可能性があるのではないかという考えに至ったからである。
だが、今はその時ではない。
頭を振って、清綱は戦場となった『梟門』の都を猛禽の翼を広げ、駆ける。
「……おっと、今は仕事」
清綱は『拱手』と共に舞い降りる。
人々に認知されるにはこれが一番である。世俗を知り、彼らに受け入れられるためには、右拳を左掌で包み込む一礼こそが重要であると伝え聞いていたとおりであった。
「つ、翼のある人……! あなたは……!」
清綱のような姿を取る者を、彼らは知らなかったことだろう。
けれど、異邦の人であっても礼儀を欠かさぬのであれば、それは歓迎すべきことである。ユーベルコード使いであればなおさらだ。
「俺がひきつける故、皆はなるべく騒ぎが起きていないところへ」
清綱は猛禽の翼を広げ、再び空へと舞い上がる。
人々を救う。
ただそれだけのために己は舞い降りたのだ。
相まみえるは黒雲の如き大群。『刻印玄蜂』と呼ばれるオブリビオンである。体内で生成される『阿片』でもって人々を堕落させようとするオブリビオンの目論見を此処で断ち切らねば、人々の平穏は訪れない。
「相手が蟲……しかし、不足はない」
迫る強毒性の針。
それを空中で身を翻し、大群からの攻撃を躱す。
その姿は空をまう猛禽そのものである。
人々は見上げた。その大いなる翼を持つ有翼の人、清綱の類まれなる戦いの様を。後に伝えることだろう。
その剣戟の一閃の凄まじさを。
「この刃からは逃れられまい……秘儀・空薙」
一瞬、空気が凍りついたかのようなすさまじい剣圧。
見る者全てを凍てつかせるような、張り詰めた空気。それら全てが、『刻印玄蜂』へと向けられる。
次の瞬間、放たれたのは無数の斬撃である。
振るった刀は一閃。
されど、生み出された斬撃は無数。
まさに一から無限を生みだすかのような斬撃は一瞬の内に大群であるオブリビオンを霧散せしめる。
「これこそが、空薙・飃(ソラナギ)……我が剣を前に逃れられると思うな」
清綱は刀を納め、再び空を飛ぶ。
未だ人々の不安は晴れない。
ならば、この剣でもって切り払おう。
戦うということはそういうことだ。己の欲望のままに振る舞うオブリビオンとは違う。
他者のために振るう力こそが、力を齎すのだ。
清綱は、人々を襲わんとする悪意を斬り捨てるように一直線に黒雲を切り裂いて進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
機械馬に騎乗し住人の声をセンサー情報収集で把握し急行
封神武侠界……人界に仙界、武侠に神仙と奥深き世界
把握に暫しの時がいるやもしれませんが
騎士として苦難に手を差し伸べることに変わりなし
…お下がり下さい!
UC発振器を地面や壁に投擲し面蜂と住人の間に防御障壁を構築
壁に阻まれた蜂を放電で仕留め障壁解除と同時に機械馬から飛び降りかばうために住人の前へ
蜂群の中心部に怪力でUCを投擲し放電で数を減らし
抜いた剣と盾で叩き伏せ、此方を無視し住人へ向かう敵は旋回砲塔代わりの肩部格納銃器の乱れ撃ち
(礼儀作法を気にする為、練習した拱手で)
ご無事でなによりでした
この都の乱、只今より私達が納めましょう
どうかご安心ください
『梟門』の都に鋼鉄の機械馬が駆け抜ける。
それはスペースシップワールドにおいては見慣れた存在であったかもしれないが、封神武侠界においては異邦の存在そのものであったことだろう。
しかし、その機械馬を駆る機械騎士であるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、搭載されたセンサーによって住民の声を全て拾い上げていた。
オブリビオン『刻印玄蜂』に襲われ、悲鳴を上げる声を聞けば急行し、叩き潰す。
その威容は人にとっては、見慣れぬ者であったからこそ畏怖の対象でもあった。
「……お下がり下さい!」
その手にあったのは、多機能型電磁障壁発振器射出ユニット(マルチプルバリアジェネレーターランチャー)であった。
指と指の間に挟み込んだユニットを投げ放ち、大出力の放電機能と共に再び襲いかかる『刻印玄蜂』と人々の間に防御障壁として構築するのだ。
それは謂わば、電磁ネットのような要領であり、時に浮遊し今まさに襲われんとしていた人々を『刻印玄峰』から守りきったのだ。
間一髪の出来事であった。
「魔法の杖のように万能ではありませんが……一時の時間を稼ぐには十分!」
トリテレイアは一気に機械馬から飛び降り、電磁ネットに絡め取られた『刻印玄峰』を剣で一閃する。
しかし、『刻印玄峰』の目的はあくまで人々に『阿片』を打ち込むことである。
闖入者であるトリテレイアを無視して、人々を襲わんとしている個体をトリテレイアは見逃すことはなかった。
己がウォーマシンであることを卑下するつもりはない。
けれど、過剰に誇らしく思うこともない。しかし、己の体に搭載された格納銃器が弾丸を乱れ打ち、人々を脅威から護ることができるのもまた己がウォーマシンであるからこそ。
「させません! 人々を堕落させ、あまつさえは傀儡にしようなど!」
許されることではないと、トリテレイアの炉心が咆哮する。
全ての兵装を使ってでも、人々を護る。
それが己の矜持である。
此の場に来襲した『刻印玄蜂』を尽く撃ち落とし、霧散させたトリテレイアは、守りきった人々に向き直る。
此処で初めて、トリテレイアは礼を失することのないようにと、転移前に練習した『拱手』でもって助けた人々に一礼する。
それは礼儀作法であり、人々に受け入れられるために必要な行為であった。
例え、未だ新たに発見された世界『封神武侠界』が『人界』に『仙界』、武侠に神仙と奥深き世界であったのだとしても、騎士として苦難に手を差し伸べることに変わりはない。
彼にとって、それこそが成さねばならぬことであったのだ。だからこそ、人々は『拱手』以上に機械騎士であるトリテレイアの意志を感じ取る。敵意はなく、自分たちを救わんとしてくれている。それがわかるからこそ、人々は同じように『拱手』でもって、己たちを救ってくれた騎士に礼を尽くすのだ。
「ご無事でなによりでした。この都の乱、只今より私達が納めましょう。どうかご安心ください」
トリテレイアの電子音声は彼らに聞き慣れぬものであったけれど、それでも礼を持って相対されたのならば、その素性を問うことは非礼である。
彼らは次々に礼を述べ、トリテレイアの背後を逃げていく。
「……さて、まだ敵は残っている……ここで後顧の憂いを絶たせて頂きましょう!」
残る『刻印玄蜂』の数は僅かである。
ここで全てのオブリビオンを打倒し、『阿片』を蔓延させることなどさせてはならない。
オブリビオンの悪事を打破するだけではない。
人々の安寧そのものを護るのが騎士として己を律し続ける己の矜持であると知らしめるために、トリテレイアは『梟門』の都を駆け抜け、ただの一人も取りこぼさぬようにと力を振るう。
それは過去に取りこぼしてしまった生命を贖うためでもあり、同時にそれに報いるためでもある。
トリテレイアは己のセンサーの限界を越え、聞こえるはずのない悲鳴の元にさえ駆けつけ、その脅威を振り払い続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『黒縄華妃』
|
POW : 働け、下僕共よ
レベル×1体の【配下の下級役人】を召喚する。[配下の下級役人]は【公権力】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 妾に逆らう屑虫共を、一人残らず吊るしてくれよう!
【傾国の寵姫としての体裁】を脱ぎ、【世界を滅ぼすオブリビオンの本性を現した姿】に変身する。武器「【絞殺縄鞭】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ : ああ、なんと頼もしいお方♪
【黒縄華妃に籠絡された武侠や権力者】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
イラスト:こはる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ジュリア・ホワイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒雲の如き大群であった『阿片』を体内で生成していた『刻印玄蜂』の尽くを霧散させた猟兵たちは知っている。
これで此の戦いが終わったわけではないのだと。
この事件を引き起こした首謀者がいると知っているからこそ、未だ警戒を解くことはなかった。
そう、『黒縄華妃』は、その絶世の美貌を惜しげもなく蒼天に晒し、猟兵たちの前にふわりと舞い降りた。
「あら……まさか、あれだけ居た『刻印玄蜂』の全てが倒されるだなんて」
お強いのですね、と微笑んでいた。
互いに滅ぼし合う存在であることは承知の上である。
けれど、どうしても猟兵たちは彼女に敵意を向けることが難しいとさえ思ってしまっていた。
そう、それが寵姫。
その美貌は、生物であろうとも現象であろうとも、彼女に敵対することを難しくさせる。
彼女の周囲には都の役人たちが群がり、彼女を護るように壁となって猟兵達との間に入り込む。彼らは正気を喪っていたが、それでおも傷付けてはならない。なぜなら、彼らは寵姫としての力を持つ『黒縄花妃』に魅了されているだけに過ぎないのだから。
「けれど、ここまでにしておいていただきましょう。我が主のために。この都はわたくしたちが頂かねばなりません。構いませんでしょう? 皆さん『阿片』で心地よく、幸せになって頂くだけでございますから」
微笑んだ姿は確かに美しかった。
けれど、どこかいびつであると感じるのは、己達が猟兵であるからだ。
どれだけ美しかろうが、彼女が目論んだのは、外道非道の類である。
『阿片』が多幸感を齎すのだとしても、人の体は堕落する。
どれだけ健全な体を持っていたとしても、『阿片』は全てを溶かしていく。理性すらも、何もかもだ。
そうなった後、何が在るのかを知る者にとって、それは到底捨て置くことなど出来ない。
「あら……それでもなお、阻むと」
ならば、仕方有りませんね、と寵姫『黒縄華妃』は、困ったように、けれどまるで意に介した様子無く微笑みを絶やさない。
「猟兵、貴方方はここで滅んで頂きます。全ては、我が主のために――」
黒髪・名捨
この拳法に知名度があったのが驚きだわ。
あん寵姫?
‥‥痴女は趣味じゃねーな。女は慎み持てよ恥ずかしい奴。
魅了された下級役人ねぇ。
雑魚がどれだけいても障害にはならねーよ。
『覇気』を込めた『衝撃波』を『範囲攻撃』化させて拡散した状態で打ち込む。その衝撃で『気絶攻撃』で意識を奪う。
『功夫』が足りねーな。
『ダッシュ』して痴女と間合いを詰めて『ジャンプ』して上をとる。
そのまま顔目掛けて『踏みつける』この手の女なら顔は大事で庇うだろ?
隙だらけだ、『捨て身の一撃』を込めた『陸断』を防御ごと叩き込む。
あばよッ。やっぱアンタ趣味わりーわ。
百里離れた龍をも屠る拳。
誰が名付けたか『百龍拳』――その知名度が封神武侠界においてあったことに黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は驚きを隠せなかった。
「まさかこの拳法に知名度があったのが驚きだわ」
己が知らぬことであったが、それは喜びというよりも戸惑いのほうが大きかったことであろう。
なぜなら、自身もまた記憶を喪っている故に、自分の預かり知らぬところで知名度が上がっているというのは気持ちの良いものではなかったのだろう。
だが、そんな感慨に浸る暇もない。
オブリビオンの大群『刻印玄蜂』を全て打倒した猟兵達の前に現れたのは一人の寵姫であった。
彼女もまたオブリビオンであるが大胆に肌を見せる姿に名捨は吐き捨てた。
「……痴女は趣味じゃねーな。女は慎み持てよ恥ずかしい奴」
そんなふうに言葉を吐き捨てても、寵姫である『黒縄華妃』は頓着していなかった。
彼女の周囲にはどこからか集まってきた『梟門』の都の役人たちであった。
下級とは名ばかりの者たちばかりであったが、その実力は十分なものであると名捨は対峙してわかる。
「あら、申し訳ございません。己の美しさを際立たせるためには……いえ、殿方はこういうのがお好きでしょう? 残念ながら、貴方には通じないようですが」
ほほえみながら『黒縄華妃』がたおやかな指を名捨に向ける。
たったそれだけで下級役人たちは察したように名捨へと襲いかかる。その体捌き一つ見ても、彼らが下級であることを感じさせない。
だが、名捨と言えど猟兵である。
数多の異世界を渡り歩いてきた彼にとって、下級役人たちがどれだけ群がろうが雑魚でしかないのだ。
「魅了された下級役人にねぇ。雑魚がどれだけいても障害にはならねーよ」
そのつぶやきとともに放たれるのは『覇気』を籠められた衝撃波。
己の拳から放たれる『覇気』を飛ばし、拳を当てずとも襲いかかる無数の下級役人たちを吹き飛ばすのだ。
それは遠当てと呼ばれるような技法であったことだろうが、『百龍拳』においては初歩の業であろう。
「功夫が足りねーな」
「あら、殿方が皆やられてしまいましたね」
それでもなお、『黒縄華妃』は余裕であった。
この痴女め、と名捨は己の踏み込みをいなすように距離を取る『黒縄華妃』の足さばきに歯噛みする。
距離を詰める一瞬で飛び上がり、その顔面を狙ったというのに庇うどころか躱すのだ。
「チッ……! 痴女だと油断させやがって……!」
「残念です。わたくしの魅了が利かぬ殿方など、久方ぶりでしたのに」
微笑みながら踊るように名捨の攻撃を躱していく『黒縄華妃』。
けれど、それらはすべてブラフである。名捨と『黒縄華妃』の身体能力に差はない。強力なオブリビオンであるが故に、それは当然であろう。
もしも、名捨と『黒縄華妃』の間に差があるのだとしたのならば、それは経験である。
戦い続けるという経験値。
それが圧倒的に違うのだ。そう、これまで何度も強敵と戦い、制してきた名捨と己ではなく他者が戦うことによって切り抜けてきた『黒縄華妃』とでは、そこが違う。
「だが、隙だらけだ!」
舞踊のように舞い踊る『黒縄華妃』。それは美麗であれば在るほどに型に嵌った動き。
その次の動きを名捨は、はっきりと知っている。
故に、踏み込みは神速。
一瞬の最中に行われる互いの攻撃の応酬は只者には理解さえできなかったことだろう。
「あばよッ、やっぱアンタ趣味わりーわ!」
「ああ、とても、とても残念です……」
互いの瞳が交わる距離にあっても、それでも変わらぬ名捨の瞳。輝くユーベルコードは、陸断(リクダチ)。
一瞬の交錯の後に放たれた超高速かつ大威力の蹴撃は、『黒縄華妃』の胴を薙ぎ、血反吐を吐かせる。
吹き飛ぶ細い体を見送りながら、渾身の一撃を叩き込んだ手応えを感じるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
滅ぼされてたまる物か、阿片に頼った幸せはすぐに瓦解する
そんなのが無くても生者には歩いていける力があると俺は信じる
SPDで判定
役人達は銀腕を【武器改造】で刃の無い剣に変え【気絶攻撃】で気絶させ【救助活動】
それからは風の【結界術】で守る
敵の魅了や攻撃は【覚悟】と【気合い】【激痛耐性】で耐えたり【オーラ防御】で防ぐ
義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】を使って敵の武器にかけて攻撃までの【時間稼ぎ】
その間に銀腕を再び【武器改造】刃のある剣にし【怪力】【鎧無視攻撃】【早業】を使いながら敵を攻撃する
打ち込まれた蹴撃の一撃は美しき寵姫の胴へと見事に打ち込まれ、血反吐を吐かせた。
吹き飛ばされた彼女の体を守らんと下級役人たちが下敷きになる。彼らに怪我はないが、失神するほどの一撃であり、オブリビオン『黒縄華妃』は己の口から溢れる真紅の血にわなわなと体を震わせた。
「ああ、なんていうことでしょう。わたくしの血が……ああ、この血の一滴まであの方のモノだというのに……」
もはや、その表情に理性はない。
手にした絞殺縄鞭が風切り音を立てて、周囲の全てを打ち据える。
彼女にとって、寵姫とはかぶるべき仮面であったのだろう。
けれど、彼女の仮面を外すのも外されるのもまた、唯一人のためであった。己の主、愛おしき人。
死せる英傑を思って彼女は、己の血が流れたことを嘆き、そして同時に寵姫としての体裁すら投げ売って凄まじき重圧を迸らせる。
「わたくしの血を流させる猟兵……許してはおけません。わたくしは、必ずや貴方方を滅ぼして見せる……!」
飛来する絞殺縄鞭を躱しながら、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は戦場となった『梟門』の都を疾走る。
すでに彼女の下敷きになった役人たちからルイスは距離を離すべく、己の位置をあえて『黒縄華妃』へと知らしめるのだ。
「滅ぼされてたまるものか!」
「いえ、滅ぶべきなのです。わたくしの血の一片まであの方のものだというのに、わたくしに血を流させた。それだけで貴方方は滅ぶべきなのです」
振るう鞭がルイスを捉える。
風の結界術がルイスを護るが、それも一時しか持たなかった。あらゆる能力においてオブリビオンは単一で猟兵を凌駕する。
強力なオブリビオンであれば、それは当然だ。
だが、それでもやらなければならないのだ。
「あのままこの都の人々も『阿片』に鎮めば、幸せに死ねたでしょうに。何故、それをわかってくださらないのです?」
『黒縄華妃』の言葉は手前勝手なものであった。
確かに『阿片』は多幸感を与えるだろう。けれど、それは人としての死を意味する。『阿片』を求め、そのためならば親兄弟であろうと殺す。それほどまでに危険なものを何故見過ごせるだろうか。
「阿片に頼った幸せはすぐに瓦解する。そんなのが無くても生者には歩いていける力がある――」
振るわれた絞殺縄鞭の一撃を銀腕で受け止め、義眼のメガリスが輝く藍色の輝きでもって、大地へと沈み込ませる。
圧倒的な重量で持って、鞭を振るうことのできなくなった『黒縄華妃』を前にルイスは飛び出す。
彼にとって生者とは護るべきものである。
けれど、彼らはいつだって自分の足で歩いていける。すでに終わったデッドマンである己にはできないことだ。
自分は誰かを護ることしか出来ない。
だから、ルイスは戦う。そうすることで己の存在定義を規定するためだ。そうでなければ、己が何故記憶を喪ってまで存在するのか、その意義すら見いだせなくなってしまう。
「俺は信じる!」
「何をです? こんな不確かな世の中で、何を信じると」
「言っただろう! 生者には己の足で、幸せを求めて歩いていけると! それを俺は信じるんだ!」
銀の腕が刃へと姿を変える。
それは一瞬の交錯であった。義眼のメガリスが輝き、身動きの取れぬ『黒縄華妃』へとめがけて放たれる銀閃の一撃。
袈裟懸けに放たれた一撃は過たず、『黒縄華妃』の肩から胸へと切り結び、鮮血を迸らせ、絶叫を響かせる。
けれど、ルイスは止まらない。
魅了された役人たちを抱え、その場から離れていく。
犠牲は少ないほうがいい。巻き添えを食うのも、喰わせるのも防ぐためだ。
「そんな、確かでないものを信じるなんて、なんて、なんて、愚かなのでしょう……」
ルイスは頭を振った。
「オブリビオンの言う戯言に付き合う気はない。お前が信じる現実など、生者にとっては無意味なんだからな――!」
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
美貌の前に殺意や怨嗟が薄まるのを覚える。怨霊すら鎮める、これが寵姫か。封神武侠界、侮れない。
だが、民間人が危機に陥っている。衝動が弱められようとも任務は果たさねばならない。
【墓場の主】で召喚した悪霊達を操られた役人達に取り憑かせ支配を上書きする。阿片による酩酊が支配の源ならば憑依は可能な筈。
完全に乗っ取れば自身の兵隊として戦わせる事も出来る。だが論外だ。行動を【捕縛】し硬直させるに留める。
前線に立つのは己だ。人々を弄ぶ悪への怒り、民を守るべき責任、過去の怨み…全てを一言に込める。
殺す。
高めた【呪詛】で萎えたエンジンを再稼働。【リミッター解除】した高圧電流による【属性攻撃】を直接寵姫に叩き込む。
鮮血がほとばしり、『黒縄華妃』の胸からは袈裟懸けに刀傷が刻まれていた。
けれど、その美しさは益々持って増していくようであった。
まさに魔性の美。
その美しさでもって、嘗て国を傾けさせたのもまた頷けるというものであった。
「わたくしの血、血が止まりませんの……ああ、どなたか。どなたか助けてくださいませんか?」
『黒縄華妃』はほほえみながら、視線を巡らせる。
それは寵姫たる彼女だからこそできる業であった。
彼女の瞳は即ち隷属を強いる美であった。
あちらこちらからふらふらと下級役人たちが集まってくる。彼らは『梟門』の都に属する役人たちであったが、寵姫たる『黒縄華妃』の力によって吸い寄せられるようにして集まってきて、壁のように猟兵へと立ち塞がるのだ。
「……」
その魔性の美を前にして猟兵である久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)もまた殺意や怨嗟が薄まるのを覚えた。
怨霊すらも鎮める。
それが寵姫であるというのならば、それはあまりにも理不尽であった。
デッドマンであり悪霊である了介にとって、殺意と怨嗟こそが己のヴォルテックエンジンを突き動かす魂の衝動である。
だというのに、寵姫たる彼女の美しさはそれを薄めさせる。
「封神武侠界……侮れない」
まさか、こんなことで己の殺意が薄まるとは思いもしなかった。
けれど、これが現実である。
一種の安らかささえ感じるのだ。
「ああ、悲しいお方。なんという瞳をしているのでしょう。その身を焦がす怨嗟に己の身が焼かれていないことが不思議でなりません」
『黒縄華妃』の言葉が空々しく響く。
ああ、と了介はうなずく。
目の前の美しい女は己を見ていない。
ただ、上っ面だけをなぞるように言葉を発しているだけに過ぎないのだ。
だから、己は――。
「――来い」
短く墓場の主(ハカバノアルジ)は告げる。
ユーベルコードによって導かれるようにして悪霊たちが下級役人たちに取り憑いていく。
それは支配権の上書きである。
阿片による酩酊が支配の源であるのならば、憑依は可能である。ましてや、それが寵姫としての能力であるのならば、完全に乗っ取ることであっても不可能ではないはずだ。
そうすれば、彼らを『黒縄華妃』へと差し向けることだってできる。
「……あら。どういたしました? せっかくわたくしの下僕を操り還したというのに。どうして戦わせないのです?」
不思議なものを見るような瞳が了介を射抜く。
けれど、了介にとって、それは応えるに値しない問いかけであった。
そう、論外である。
この戦いにおいて最前線に立つのは己だ。
人々を弄ぶ悪への怒り。
民を護るべき責任。
過去の恨み。
ただその全てを一言に籠めてつぶやくのだ。
それは怖気疾走るほどに凄まじき怨念の籠もった言葉であった。
「殺す」
たった一言。
ただの一言であったが『黒縄華妃』はこれまでに感じたことのないほどの殺気を身に受けて、全身がすくむようであった。
それは呪詛。
たった一言の呪詛にして、了介のヴォルテックエンジンを始動させるには十分すぎる力であった。
吹き荒れるは魂の衝動を迸らせた高圧電流の一撃。
「な、にを――」
そう呟いた『黒縄華妃』の言葉すら了介には届かない。
当たり前だ。
なぜなら、恨んでいるからだ。
己の過去を、護るべきものを奪った憎しみを、了介は一時たりとて忘れたことがない。
疾走る電流をまとわせた拳が『黒縄華妃』へと打ち込まれ、憎悪の一撃を持って彼女へと癒えぬ傷跡を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
自分から出てきてくれて助かるわ。
うう、口説いてみたいけど、あたしにはアヤメもニコルもいるから!
虜にした人間、多いのね。まずはそちらから排除しなくちゃ。
不動金縛り法を使って、一気に魅了された一般人を押さえるわ。
その間にアヤメは攻撃をお願い。全員を拘束し終えるまで頑張って。
魅了された人たちは、元は内偵を進めて犯罪組織を潰そうと考えて、逆にこの女に行き着いてしまったのかもだし、手荒には出来ないわね。
よし、あたしの方の拘束終了。待たせたわね、アヤメ。
「衝撃波」を纏う薙刀を振るい、寵姫に攻撃を仕掛ける。
微妙に目を逸らしつつ、声音に惑わされないように。
やりにくい相手ね、これ。アヤメのことを思って精神統一!
オブリビオンによる悪事。
それは常に秘めやかなるものではなかっただろうが、それでも目論見を暴くためには時には地道な調査だって必要であったことだろう。
けれど、封神武侠界においては……いや、今回の事件においては、必ずしもそれが当てはまるものではなかった。
黒雲のごとき『刻印玄蜂』を全滅させた猟兵たちの前に現れたオブリビオン『黒縄華妃』。
その美しさはあらゆるものを魅了する。
例え、事象であったとしても、寵姫である『黒縄華妃』へと味方するのだ。言うまでもなく、この『梟門』の都に住まう武侠の者も、彼女の魅力によって籠絡されてしまっている。
「ぐっ、ふ……ああ、なんていうことでしょう。わたくしをよってたかって……頼もしい御方、どうかお願いいたします」
そう微笑んで、猟兵から受けた攻撃による消耗を回復させようと『黒縄華妃』が呼び寄せたのは、武侠の者達であった。
「自分から出てきてくれて助かるわ」
そう呟いて霊符を構えるのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
正直な所、彼女もまた寵姫たる『黒縄華妃』の美貌に惹かれていた。
ここだけの話、口説いてみたいと思うほどに美しい存在であった。けれど、彼女は頭を振る。
いけない。
口に出してはいけない。
そうしてしまえば、どんなに楽であったことだろうか。
けれど、彼女には愛おしい人がいるのだ。それだけは絶対に口にしてはならない。
「さあ、お願いいたします。わたくしを助けてくださいませ」
そういって『黒縄華妃』は武侠の者の背中を押す。
それに応えるように武侠たちが一斉にゆかりへと襲いかかるのだ。
けれど、ゆかりはどうじていない。その瞳に輝くユーベルコード、そして霊符が不動金縛り法(フドウカナシバリホウ)によって、不動明王の羂索を放つのだ。
「ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン――……! アヤメ!」
ゆかりが叫んだ瞬間、影から現れた式神アヤメが飛び出し、『黒縄華妃』を回復させぬとばかりに攻撃を加えていく。
ああ、よかったとゆかりは胸をなでおろす。
もう少しで口説きそうになっていたのならば、きっとアヤメがへそをまげていただろうと。
「さすがは武侠の者……力は強い……!」
だが、手荒な真似はできない。
彼らはきっと犯罪組織への内偵として『黒縄華妃』へと近づき、逆に籠絡されてしまったかもしれないのだ。
望んで彼女に近づいたわけでないのだとしたら、手荒に扱うわけにはいかないのだ。
ぎりぎりと不動明王の羂索によって動きを封じられていく武侠の者たち。
彼らの抵抗は凄まじいものであったが、ユーベルコード使いであるゆかりとのちからの差は歴然である。
「アヤメ、ありがとう! またせたわね!」
捕縛し終えたゆかりが、薙刀を構える。
その視線の先にあるのは『黒縄華妃』だけだ。彼女を討ち取らねば、この事件は終わらない。
まだ、この先に座す存在がいるのであれば、これは前座に過ぎないのだろう。
だからこそ、早期に決着を付けなければならない。
ああ、それでも。
それでも気になってしまう。微妙に目をそらさなければ、寵姫としての美貌が彼女を襲い、惑わせるのだ。
「やりにくい相手ね、これ」
「そうでしょうか。もっとわたくしと仲良くなれることだってできるでしょうに……――あなたさえよろしければ」
などと微笑むものだから質が悪い。
ゆかりは、アヤメのことを想って精神統一し、その声色を意識の外へと弾き出す。微妙にアヤメの視線が痛いことも手伝っているのが皮肉でしかない。
「だから、そんな声で惑わされるものですか――!」
裂帛の気合とともに慟哭じみた叫びを上げ、ゆかりは衝撃波伴う斬撃でもって『黒縄華妃』と誘惑の言葉を振り払うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ベルゼ・アール
※アドリブ等歓迎
女の武器ひとつでこれだけの事が出来る……流石は傾国の寵姫サマ、ってところかしら。
でも残念ね、それだけじゃどうにもならない時ってあるのよ。
例えば……相手が同じく女の武器を操っていた場合はどうかしらね!
目の前の下級役人を誘惑するわ。必要なら香水型薬剤スプレーで催眠ガスを散布してもいいわね。彼らのハートを文字通り盗んでやるわよ。
さぁ、傾国の寵姫サマのプライドもズタズタよね?
あら、本性はそういうアレなのね。
ならこっちは飛んできた絞殺縄鞭を掴んで引き寄せて……怪盗/探偵八百万ツ道具で生み出したスパイガジェット、口紅型のスタンガンで痺れさせるわ。
動きを止めたところに二丁拳銃で追い討ちよ!
寵姫とは、封神武侠界において生まれながらにして絶世の美貌を誇る存在である。
ユーベルコードを使わずとも、その眼差しは森羅万象全てを籠絡するほどである。そのオブリビオンである『黒縄華妃』は猟兵達の攻撃によって理性を失いつつあった。
いや、理性というよりも寵姫としての体裁を取り繕えなくなってきていた。
その手にあるのは絞殺縄鞭。
その『黒縄華妃』の名に相応しい編み込まれた縄鞭は風切り音を響かせ、世界を滅ぼすオブリビオンとしての本性を顕にしていた。
「わたくしの血、血が、また、こんなに……」
呆然とつぶやくようでも有り、その傷口の深さを思い知らされたようでもあった。
対峙するベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)は些か困惑していた。
女の武器一つで、他者を操り、意のままに動かすことができる存在。それが寵姫であり、さすがは傾国の寵姫であるとさえ想っていたのだ。
だが、その仮面とも言うべき体裁の下にあったのは、たった一人の女としての本性であったのかもしれない。
「あの方のための体、あの方のもの、それがわたくしだというのに……ああ、血の一滴すらわたくしはあの方以外に触れさせてはならなかったのに!」
その怒号は美しい声で響き渡る。
こんな時にだって彼女は寵姫そのものであった。
その声色さえ美しいとベルゼは想ってしまう。
「すごい美貌ね。けれど、残念ね。それだけじゃどうにもならない時ってあるのよ。例えば……」
そう、ベルゼもまた『怪盗“R”』と呼ばれる工作員である。
彼女と『黒縄華妃』は似通った部分があったのかもしれない。けれど、それは互いに類似するものであるがゆえに通用しないのだ。
「相手が同じく女の武器を操っていた場合はどうかしらね!」
下級役人たちがわらわらとベルゼへと襲いかかる。
彼らは『梟門』の都における下級役人であるが、寵姫の魅了によって操られているだけに過ぎないのだ。
彼らを躱しつつ、『黒縄華妃』へと攻撃を届かせなければならないが、ベルゼの持つ2丁拳銃の射線を彼らがどうしても塞いでしまうのだ。
「ふふ、ならこちらも同じ手を使いましょうか!」
ベルゼもまた寵姫と同じ女の武器を駆使して、あらゆる修羅場をくぐり抜けてきたのだ。
彼女の魅力は『黒縄華妃』にも勝るとも劣らないものであった。
そこにダメ押しで香水型スプレーで催眠ガスを散布する。
彼女の魅力に、催眠ガスが加われば、下級役人たちもまた次々とベルゼの前に膝をつく。
その光景は文字通り彼らのハートを盗み出す怪盗としての業であったことだろう。
これを見た寵姫たる『黒縄華妃』は酷く狼狽した。彼女の絶世の美貌は陰ることなく存在しているというのに、ベルゼの香水と魅力でもって、それを上回ったのだから。
「何故……わたくしの力が及ばないことなど」
「傾国の寵姫サマと言えど、プライドもズタズタよね?」
ベルゼは余裕たっぷりにウィンクしてみせる。
そこへ飛ぶのは絞殺縄鞭。彼女の言葉通り、たしかに『黒縄華妃』のプライドはズタズタであろう。
けれど、彼女にとって必要なのは、それではない。
彼女に最も必要なのは、己の主の寵愛だけである。だから、その瞳に宿るのは情念の炎。
「あら、本性はそういうアレなのね」
ベルゼは飛んできた絞殺縄鞭を掴んで引き寄せ、口紅を『黒縄華妃』へと押し付ける。
それは奇妙な光景であったし、事実、封神武侠界の人間が見ても何をしたいのかわからなかったことだろう。
それは、ベルゼのユーベルコードに寄って生み出されたスパイガジェット。
怪盗/探偵八百万ツ道具(クリミナルマルチプルツール)にして、口紅型のスタンガンである。
『黒縄華妃』に触れさせた口紅が青白くスパークし、彼女の体をしびれさせる。
「ガッ――!?」
思わず悲鳴を上げるほどの出力。
オブリビオンであれば、この程度で倒せない。けれど、動きを止めることはできる。
「これが私の秘密道具の出番ってわけ!」
動きを止めた瞬間、ベルゼの手にした二丁の大口径自動拳銃から放たれた弾丸が『黒縄華妃』へと打ち込まれ、その身をさらに血潮で汚すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』
?あー…たしかに美しいとは思うぞ?
だがの、わしの心は妻一筋よ!!揺れ動くわけなかろうて!!
(『侵す者』は大の愛妻家。三人「知ってた」)
む、生きし人の盾、ということか。さて、破壊を得意とするわしには、不得手な場面ではある、が。やり様はあるか。
なぎ払いの気絶攻撃で、役人たちを気絶させよう。
そのあと、ダッシュで近づき、指定UCにて攻撃をしよう。
害をなす、というのならば。わしらは全力でいくからの。
※他三人の感想
疾き者→忍ですが何か状態。若いときは色仕掛けする方
静かなる者→初恋相手:疾き者
不動なる者→妻の方がいい
その赤き血潮に汚れた美貌は、されど依然変わらないものであった。
むしろ、彼女の主である『死者英傑』にとって、その姿こそが美しいと言ったことであろう。
けれど、寵姫である『黒縄華妃』は、それを知らない。知る由もない。なぜなら、その言葉を掛けられたことがないから。
もしも、生前にその言葉をかけられていたのならば、オブリビオンとして蘇ることもなかったことであろう。けれど、それはありえない話である。時間は逆巻くことはない。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)たちが故郷を滅ぼされたように、やり直すことはできない。
喪ったものは戻りはしないのだ。
ゆえに、その美貌もまた変わらない。猟兵達の攻撃に寄って血に塗れ、それでも寵姫としての力を発露させる。
下級役人たちがどこからかまた湧き出てくる。
「ああ、こんなに血が……わたくしの血が……あの方には見せられない。こんな醜い姿など……」
『黒縄華妃』は集まってきた下級役人たちの影に隠れるようにして、姿を隠す。
けれど、複合悪霊である一柱の一人である『侵す者』は言う。
「? あー……確かに美しいとは思うぞ?」
彼の言葉は、彼女を慰めるものではない。
なぜなら、彼の心のなかにある最も美しいものはすでに決まっている。陰ることのない思い出の中にある美しい人を思い出して、わずかに魂が揺れたような気がした。
それは他の三柱もまた同様であったのかもしれない。
忍びであった者。初恋を思う者。妻を思う者。
そして、『侵す者』もまた、その心に宿るものが在る。
「だがの、わしの心は妻一筋よ!! 今さら揺れ動くわけなかろうて!!」
その言葉とともに『侵す者』は疾走る。
目の前には下級役人たちが壁のようになって『黒縄華妃』へと至ることを阻止せんとする。
彼らは操られているだけなのだ。
「む、生きし人の盾、ということか」
ゆえに破壊を得意とする『侵す者』にとって、それは不得手な場面である。
だが、それで退く理由にはならないのだ。やり様はいくらでもあるのだ。手にした黒槍を横薙ぎに振り払う。
その衝撃だけで下級役人たちが空に舞う。
殺しはしない。けれど意識だけは刈り取る。襲いかかる下級役人たちは『侵す者』に近づくたびに吹き飛ばされ、その意識を奪われては累々に積み重なっていく。
「害を為す、というのならば。わしらは全力でいくからの」
「わたくしたちはただ国が欲しいだけなのです。見逃してはくださいませんか?」
血塗れの寵姫が言う。
下級役人の壁は最早ない。オブリビオンが命乞いをする。
それは不可思議な光景であった。奪う側であった者。それが奪われる段になって、生命を惜しむようでもあったが、『侵す者』は別の感想を抱いたかもしれない。
彼女の望みは自身の望みではない。
彼女が慕う主と呼ぶ存在の望み。その望みを叶えたいという願い。それは他者を思うものであったかもしれない。
けれど、それで許されるわけがないのだ。
誰かから奪う。
それを是としたのだ。オブリビオンは己の欲望のままに、他者を害する。己達がそうであったように。
「それはならぬ。わしらは猟兵故に。そして、お主たちがオブリビオンである以上」
滅ぼし合うは必定。
故に、輝くはユーベルコード。
四天境地・『狼』(シテンキョウチ・オオカミ)――その黒槍が『黒縄華妃』へと打ち込まれる。
吸い込まれるように槍の穂先が寵姫の柔肌を貫き、さらに赤き血を華のように咲かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
黒縄花妃を目に
「正に魔性、オブリビオンでありながら
その姿に惹きつけられるとは。
それでもその邪悪さ。
此処で討ち果たすより他にない。」
武侠や権力者たちを躱し敵に近づくが、
その動きは今一つ精彩がなく接近していくのがやっと
と言った様子。
デモニックロッドを構えながらも途中で武侠につかまり
敢えて攻撃を受け。
その瞬間【早業】【高速詠唱】で
表の呪い裏の呪詛を発動。ダメージを黒縄華妃に肩代わりさせて
不意を突き。
その隙に【2回攻撃】、再度表の呪い裏の呪詛を使用。
今度は内側から湧き上る【呪詛】で攻撃。
「人を操る事に慣れすぎて、
己が欺かれるとは思わなかったか?」
と人々を守る【覚悟】を持って
【だまし討ち】を仕掛ける。
槍の一撃を受けて、赤き血華を咲かせる『黒縄華妃』の体は美しいものであった。
相手はオブリビオンであるというのに。
滅ぼさなければならない存在であるというのに、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はその姿を美しいと想ってしまった。
それが例え、寵姫としての力であったのだとしても、そう思う心は止められなかった。
「まさに魔性。オブリビオンでありながら、その姿に惹きつけられるとは。それでもその邪悪さ。此処で討ち果たす他にない」
呻くように『黒縄華妃』が傷口から溢れる血に塗れながら、彼女をかばおうとする籠絡された武侠たちの影に隠れていく。
「お願いします。どうか。ただ、国がほしいのです。あの方の望みのままに。それを叶えたいと願っただけなのです」
それは寵姫としての体裁ではなかったのかもしれない。
本心であったのかも知れないが、フォルクにはそれを断ずることはできない。
なぜなら、寵姫としての力によって判断を鈍らせているからだ。それがどうして偽りでないと言えるだろうか。
証明する手立てなどどこにもない。
許してしまいそうになる自分さえいるのだ。
「だから、人を傷つけるのか。自分たちの願いは美しいものだと、誰かのためだと言って……」
それは許されざる言葉だった。
欺瞞と言っていい。
誰かのために誰かを傷付けていい理由など、どこにもない。正当性の欠片もない。
だからこそ、フォルクは己の心に従う。彼女を邪悪だと断じた。己を邪悪とさえ想っていない無自覚な邪悪。
それを討つためにフォルクのユーベルコードが輝く。
「なら、猟兵は滅びるべきなのです。わたくしたちの願いを叶えるために――!」
『黒縄華妃』の号令と共に武侠達がフォルクへと迫る。
それを魂喰らう大鎌を封じた呪われし黒杖を構え、あえて武侠の攻撃を受け止める。
瞬間、フォルクのユーベルコードが輝く。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
それは、表の呪い裏の呪詛(オモテノノロイウラノジュソ)。
己の魔力を代償に冥府へと繋がる闇を纏う。
フォルクが受けた攻撃の痛みはそのまま『黒縄華妃』へと肩代わりされる。
「あっ――!? これ、は……この、痛みは……!」
武侠達の強烈なる一撃の痛みはフォルクのユーベルコードを介して、『黒縄華妃』へと飛ぶ。
「人を操る事に慣れすぎて、己が欺かれるとは思わなかったか?」
フォルクのユーベルコード、その呪詛が再び輝く。
己の内側から湧き上がる精神と肉体を蝕む死の呪詛がほとばしり、武侠達の間隙を縫って『黒縄華妃』へと疾走る。
人々を守る。
それがフォルクの猟兵としてのかくごだ。
例え、己の魔力が尽きることになったとしても、フォルクの前では誰ひとりとして傷付けさせはしない。
籠絡されて己を襲う武侠達であってもだ。
「その『死の呪詛』はお前を呪い続ける。蝕み続ける。誰かのためにと言うのなら、何故、もっと他の人間の思いを寄せることができなかったんだ」
寵姫として得た絶世の美しさ。
それを誰かのために使えたのならば、こんなことにはならなかったはずだ。自身の願いを他者の願いすり替え、そのためならば他の誰をも傷付けていいと嘯く邪悪さこそ、『黒縄華妃』の過ちであったことだろう。
打ち込まれた『死の呪詛』が彼女の体を穿つ。
「あ、ぁ……だって、それ以外に知らないのですもの。わたくしは、ただ、あの方のために」
尽くして、尽くして、何度でも死にたかったのだと、その美しい唇から言葉が漏れ出る。
けれど、フォルクは、その想いをもっと大切に使うべきであったと、誰かを思う事ができたのならば、誰かを傷つけることなどできかったはずだと輝くユーベルコードによって、『黒縄華妃』の魔性の美を振り払うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
いやまあ、美人だとは思うけどさ
私、ノーマルだから
それにさー、そんな露出が多いだけの下品な服…馬鹿な男しか引っ掛からないんじゃない?
●
けれども、役人たちが厄介だねえ
傷つけちゃいけない、けれども排除もしなけりゃいけない
うーん…んんんー
あ、結局の所最終的に怪我さえしてなけりゃ良い訳だ!
ナイスアイデア!
剣で自らの腕に傷を入れ、流血する
そして【断章・焔の血】を起動
篭絡された人たちには紅き炎で燃やして癒しを与えながら…剣の腹でぶん殴りながら『吹き飛ばし』て対処
回復するから大丈夫大丈夫
さてと、後はあの女だけ
蒼き炎で焼きながら接近して『なぎ払い』同時に『斬撃波』も放って一気にダメージを喰らわせてやろう
華は例え血に塗れていたのだとしても美しさを誇るだろう。
オブリビオン『黒縄華妃』はそういうオブリビオンであった。どれだけ傷ついたとしても、その美しさに陰りはない。
それが生まれながらにして絶世の美貌を持つ寵姫としての宿命であるのだとしたのならば、彼女を守らんと庇う武侠達の存在は必然であったことだろう。
ユーベルコードでもなく、ただ美しいという概念のみで人を従わせる力。
それが寵姫という存在である。
「いやまあ、美人だと思うけどさ。私、ノーマルだから」
けれど、その美しさを前にしても、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は僅かに小首をかしげた。
彼女にとって美しさとはいかなる価値を持つものであっただろうか。
例えば宇宙空間に漂う機械の残骸、そういうったものにも美しさを見出すのであれば、女性の体のなめらかな肌の美しさもまた同じようなものであったことだろう。
「それにさー、そんな露出が多いだけの下品な服……馬鹿な男しか引っかからないんじゃない?」
その言葉に血塗れの寵姫『黒縄華妃』は微笑んだ。
そのとおりであると。
己の魅了に引っかかる男など馬鹿な男だけなのだと。
「わたくしの美貌は生まれ持ってのもの。だからこそ、それ以外を見てほしいのに」
「あー、そういうこと言っちゃう類かー」
玲は嘆息した。
なぜなら、その類の言葉は聞き飽きているからだ。伊達にサブカルマニアではない。
それにしたって、と玲は冷静に状況を見定める。
『黒縄華妃』に籠絡された武侠達。
彼らを傷付けてはいけない。けれども排除しなければならない。
「うーん……んんんー」
唸る。こういうのは不得手なのだろう。どうしたって傷付けてしまう。こればかりは猟兵の持つ特性というものが物を言う。
玲にとって、こういう展開はあまり想定していなかったのだろう。
けれど、そんな唸る玲の考えがまとまるのを武侠達はまってはくれない。
一斉に彼女に襲いかかる武侠達を前に玲の頭上にびこーん! と豆電球がひらめいた。
「あ、結局の所、最終的に怪我さえしてなけりゃ良い訳だ! ナイスアイデア!」
それはある意味考えることを放棄したということでもあるのだが、彼女はそれができるだけの技量を持った猟兵である。
模造神器の刃で己の腕に傷を入れ、その血が滴り落ちる。
それは自傷行為に他ならなかったけれど、それこそが彼女のユーベルコードのトリガーである。
「何を……?」
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ血読み込み開始」
その詠唱とともに膨れ上がるのは、蒼き炎。
それは、断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)。駆け抜ける戦場に吹き荒れる蒼き炎は彼女の敵のみを討ち滅ぼす。
同時に紅き炎は武侠達を包み込んでいく。
けれど、それは傷つけるものではなく治癒するもの。しかし、籠絡された武侠達の洗脳じみた魅了を解くには至らない。
「だから、こうする――!」
本来そう使うユーベルコードではないのだけれど、彼女は模造神器の刀身の腹で思いっきり武侠たちをぶっ叩く。
それは峰打ちだから大丈夫とかそんなレベルではなかったけれど、彼らは籠絡されても武侠である。
ぶっ叩いて気絶させる端から紅き炎が癒やしてくわけであるから、ある意味体に外傷無く無効化できるのだ。
「めちゃくちゃなことを……! なんて、野蛮な……!」
『黒縄華妃』を取り囲む武侠たちを薙ぎ払って玲は飛ぶ。
その囲いを切り裂けば、あとは『黒縄華妃』だけだ。放たれた絞殺縄鞭を蒼き炎で焼き張らないながら、模造神器の蒼い刀身が疾走る。
今度は峰打ちでは済まさない。
玲の瞳に輝くユーベルコードが告げる。
「大丈夫大丈夫、取り巻きはみーんな、峰打ちだから。回復するから大丈夫大丈夫」
そういう問題かと誰もが想ったが、悲しいかな。
誰も突っ込まない。むしろ、ツッコミを入れる余裕すらない。それほどまでに玲の踏み込みは速かったのだ。
一瞬の交錯。
互いに流れるは赤き血。
けれど、『黒縄華妃』に刻まれた斬撃は、玲の流血よりも多く。迸る鮮血が華のように咲き誇り、玲の斬撃の鋭さを知らしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・リデル
杜撰な計画です。真に主の為に国を手に入れると言うのであればもう少し慎重に行うべきでしたね。私達に認識された以上、貴女の望みは叶うことはありません。
魅了された人間がいる場合はステラを中心に衝撃波を放って無力化。
(衝撃波×範囲攻撃×気絶攻撃)
敵spducに対して
ふふ、それが本性ですか。せっかくの美貌が台無しですよ。
(理性を消失しつつある姿を見て)
『破剣乱舞』を発動。千に近い破滅の魔剣が彼女に降り注ぎます。
貴女の言う主もすぐに骸の海に還してあげます。あちらで待っておくといいでしょう。
鮮血が迸る。
オブリビオン『黒縄華妃』の体に刻まれた猟兵の一撃が上げる血飛沫は華のようであったことは皮肉でしか無い。
その美しい赤き血潮の華は『黒縄華妃』にとって敗北への道を彩る一輪の花であったことだろう。
どれだけ血に塗れようとも美しさは変わらず、寵姫としての姿はそのままである。絶世の美貌。
それによってどれだけの者が惑わされてきたことだろう。
今も尚、彼女を護るようにして籠絡された武侠たちが猟兵の前に立ち塞がる。
彼らは寵姫としての力によって籠絡されているだけに過ぎない。
どうあっても猟兵は傷付けられないという打算があったからこそ、『黒縄華妃』は己の魅了の力を持って武侠たちを壁のように集め続けるのだ。
「ああ、どうして。こんなにも切実にあの方のことをおもっているだけであるというのに、貴方方はわたくしの邪魔をなさるのです?」
その言葉は真に己の行いが正しいと信じているからだ。
どうしようもないという印象を受けたのは、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)であった。
「杜撰な計画です。真に主の為に国を手に入れるというのであれば、もう少し慎重に行うべきでしたね」
彼女の言葉は真であった。
あまりにも杜撰であった。もっと隠れるように、それこそ日陰を征くようにおこわなければならなかったのだ。
確かに『阿片』による支配は有効であったけれど、それだけのことをしでかして猟兵に認識されないわけがない。
「私達に認識された以上、貴女の望みは叶うことはありません」
ステラの瞳が赤き血に塗れた『黒縄華妃』を捉える。
その視線はどれだけ武侠たちの壁を作ったところで防げるものではなかった。
ステラは見つめる。
どれだけ壁を増やした所で、『黒縄華妃』の野望は此処で潰える。それが例え、主と呼ぶオブリビオンのためである願望であったのだとしても、此処で終わるのだ。
「いいえ、叶えて見せますとも。わたくしにはこんなにも頼もしき御方がいらっしゃるのですから」
その言葉と共に『黒縄華妃』に籠絡された武侠たちがステラへと襲いかかる。
けれど、ステラを前にしてそれは悪手であったと言わざるを得ない。
武侠たちがどれだけ屈強な男であろうとも、歴戦の猟兵であるステラにとって、それは障害にすらなりえない。
もしも、彼らを盾として使い続けるのであれば、ステラも苦戦しただろう。
けれど、矛として扱うのであれば話は別である。
「私達をどうしても止めたいのであれば、彼らを肉の壁として扱うべきでしたね」
こちらに差し向けた時点で、彼らを無力化する術がないわけではないのだ。
ステラを中心に衝撃波が吹き荒れ、武侠たちを尽く吹き飛ばし、気絶させる。
その瞬間、その瞳がユーベルコードに輝く。
「終末に降り注ぐ、第二の騎士の刃、その身で受けなさい」
ステラから発せられる触れた存在を消滅させる魔力でできた剣が、破剣乱舞(ブレイド・ダンス)と呼ばれる幾何学模様を描き複雑に飛翔し、こちらへと差し向けた武侠達の盾が薄くなった部分を縫うようにして、『黒縄華妃』へと疾走る。
「嫌です……! ああ……! どうして、どうしてわたくしは、いつも――」
主のために何もできないのかと、嘆いた。
千に近い破滅の魔剣が『黒縄華妃』へと降り注ぐ。
どれだけ躱そうとしても躱せるものではない。
それは絶望の淵へと立たされるような光景であった。
「貴女の言う主もすぐに骸の海へと還してあげます。あちらで待っておくといいでしょう」
その言葉は絶望そのものであった。
それだけは。
それだけはと、嘆く『黒縄華妃』の絶叫が、千の魔剣によってかき消されるように、彼女の体へと打ち込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
秦・美芳
あいやー……傾国はよくないよー
綺麗なだけなら仕方ないかなって思うけど阿片まで使うなんて……
めいふぁん、子供だけどそれは駄目ってわかるよ!
だからお仕置きね!
いっぱい魅了されちゃってる下級役人の壁じゃま!
でも倒すわけにはいかないから、それなら!
はぁぁぁぁ! いくよー!【降魔点穴】!
「やー! たたたたたっ!!」
連打連打で役人たちの秘孔を突いて
体を操作
少しの間直立不動させるよ!
動けなくなって壁に意味がなくなったら黒縄華妃まで一足飛びに跳躍
「あなたにも食らわせてあげるよ!」
黒縄華妃に【降魔点穴】
こっちは遠慮なく爆破しちゃうよ!
阿片ダメゼッタイ!
※アドリブ連携OK
魔剣がオブリビオン『黒縄華妃』へと降り注ぐ。
その光景は誰が見ても滅びへの道でしかなかった。鮮血がほとばしり、その赤き華が魅せるのは、儚い美しさであったのかもしれない。
「我が主だけは、あの御方だけは……」
地に伏し、鮮血を流しながらも『黒縄華妃』は立ち上がる。
けれど、その美貌に一切の陰りはない。
むしろ、ますます持って美しいと言わざるを得ないだろう。その証拠にどこからとなく『梟門』の都の下級役人たちが集まってきて、彼女を守らんとするのだ。
その光景はまさに傾国の寵姫そのものであった。
「あいやー……傾国はよくないよー綺麗なだけなら仕方ないかなって思うけど阿片まで使うなんて……」
秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)は幼いながらも、阿片の恐ろしさを知る者である。
あの劇物があるだけで国が傾く。
人々は堕落し、たしかに多幸感に包まれるだろう。
けれど、その後に訪れる絶望と悲劇は図り知れるものではない。だからこそ、美芳は構える。
「めいふぁん、子供だけどそれは駄目ってわかるよ! だからお仕置きね!」
美芳は駆け出す。
魅了された下級役人たちが『黒縄華妃』を守らんと壁のように美芳を取り囲む。
けれど、彼女とて『降魔拳伝承者』である。
どれだけの数の下級役人が群がろうとも、数など問題のうちには入らないのだ。
「じゃま! でも倒すわけには行かないから、それなら!」
その瞳に気力が宿り、身に宿すは超絶なる力。
その拳には魔が降りる。
けれど、その使い方次第では、他者を活かす拳へと変わることもあるだろう。
迫りくる下級役人たちの飛行を瞬時に突く。
「はぁぁぁぁ! いくよー!」
その名も――。
降魔点穴!
秘孔への指突が可能とするのは、闘気を流し込み、下級役人たちの体を一分ほど操る秘術にしてユーベルコードである。
「やー! たたたたたっ!!」
次々と美芳の指が下級役人たちを押し貫いていく。
「少しの間だけど、直立不動しとくといいよ!」
彼女の言葉と共に秘孔を突かれた下級役人たちが、美芳の前に直立不動する。その光景はまさに驚天動地なる光景であった。
『降魔拳』の威力の凄まじさを知らしめるには十分すぎた。
「わたくしの魅了が、上書きされる……!」
下級役人たちが動かなくなったことに『黒縄華妃』は驚愕する。
美芳の拳は彼女の寵姫としての力さえも上書きしてしまうのだ。それはあまりにも凄まじい拳。
まさに魔拳と呼ぶに相応しい。
「あなたにも食らわせてあげるよ!」
踏み込む速度は、神速。
一瞬で間合いを詰める。美芳の見上げた瞳がユーベルコードに輝くのを、『黒縄華妃』は見ただろう。
幼子の純粋なる瞳。
無垢と言ってもいいその瞳。嘗ては自分もそうであったし、我が主と仰ぐ『死者英傑』だってそうだったのだ。
誰もが幸せを願っていたし、問題を抱えていた。
けれど、時の流れはいつだって残酷だ。美芳の瞳と同じ色はいつの間にか濁っていく。
叶わない願いを遂げられなかった自分たちが願ったのは。
「あの方の宿願! それを……!」
為すためにあらゆることをなそうと決めたのだ。例え、この身が滅びるのだとしても、何度真だっていいのだと思えるほどに、彼女は願い続けたからこそ、オブリビオンへと変貌したのだ。
「阿片ダメゼッタイ!」
どこで間違ってしまったのか。
それさえもわからぬままに、降魔拳、降魔点穴の一撃から闘気が『黒縄華妃』の体内に打ち込まれ、その身を爆ぜさせる。
鮮血が再び華のように裂き、それでも変わらぬ美しさのまま『黒縄華妃』は大地に堕ちるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
黒縄華妃。此れより其方を60秒以内に斬って進ぜよう。
むむ、何をわけのわからない事を言うのかと?
只宣告しただけだ、深い意味はない。
■闘
戦いを始める前に心を研ぎ澄まし、【光神】形態に突入。
敵の振るう鞭を高い反応速度を用いて【見切り】つつ、
【残像】を伴う高速移動で翻弄し、妃の攻撃を『50秒間』
自力で数えながら回避しまくる。
これだけ経てば、理性はかなり喪われた筈。
50数え終えたら反転攻勢。【フェイント】を絡めた動きで
妃の背後に潜り込み、護る隙も与えず【早業】の抜刀から
【破魔】の力を込めた居合斬りで断ち斬る!
戦は『キレた』ほうが敗れる……常に心を保たねばならんよ。
(あれ、今何秒だ?)
※アドリブ・連携歓迎
吹きすさぶ風に散る花弁のようにオブリビオン『黒縄華妃』の鮮血が宙に舞う。
その血の一滴すらも美しいと感じるのは、彼女が寵姫であるからであろう。
だからこそ、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は宣言した。
「『黒縄華妃』。此れより其方を60秒以内に斬ってしんぜよう」
「何を、言っているのです、貴方は……」
それもそうだろう。
意味がわからない。わざわざ宣告する意味があったのだろうかと『黒縄華妃』は訝しんだ。
その瞳に陰るのは、彼女がどうしようもなく絶望しているからだ。
美しさの裏側にある寵姫としての体裁ではないオブリビオンとしての性。
それが隠し立て用もなく暴かれていた。
手にした絞殺縄鞭が風切り音を立てる。
「わたくしの望みは、あの方の願い。あの方の宿願を叶えるために、わたくしはいくらでもこの生命を捧げましょう。何度心でもいいのです。必ず、必ず、あの方の願いを――!」
叶えてみせると疾走る姿はオブリビオンそのものであった。
だからこそ、清綱は宣言しただけだ。
「意味はない。ただ宣告しただけだ。ああ、そうとも」
深い意味などない。
研ぎ澄まされた心が、ユーベルコードに輝く。
己の心のなかに在る光神(コウジン)が光り輝くまで、極限に高められた精神。
それこそが、清綱のユーベルコードである。
光神形態。
その力は爆発的なまでに上昇したスピードと反応速度を齎す。
まさに閃光のように、振るわれる絞殺縄鞭のしなる一撃を躱す。
一瞬の見切り。
まるで少しも動いていないのに、鞭の一撃が清綱を通り抜けたと思わせるほどの残像。
「50……」
静かに清綱は鞭のしなる一撃を躱しながら、数を数える。
かの『黒縄華妃』は理性を失えば失うほどにオブリビオンとしての性を表す。
それは本性と言っても過言ではなかったし、彼女の真実なのだろう。誰かのために。己の主君のために。
ただそれだけのために全てを犠牲にしようとする破滅的な願望。
それは誰のためにもならない願いであったことだろう。
「わたくしは、必ず。今度こそ! 叶えてみせるのです!」
清綱には、その願いがわからなかったかもしれない。
理性を喪って、ただ他者の願いを叶えるために他者を傷つける。その原動力をオブリビオンが持っているという事実すら、あまりにも物悲しいものであった。
誰にも理解されない。
誰も救わない。そんな歪な願いを齎すのが過去である。過去に歪んだオブリビオンがもつ欲求は、必ず世界を壊す。
「それをさせてはならぬ……戦は『キレた』方が敗れる……常に心を保たねばならんよ」
一瞬の交錯。
清綱の体は、瞬時に『黒縄華妃』の背後へと回りこんでいた。
僅かな隙。
それを見逃す清綱ではなかった。躱すことも、鞭を振るうことすら間に合わぬ超高速なる斬撃。
居合の一閃は、『黒縄華妃』の背中を一刀の元に斬り捨てる。
僅かに60秒を過ぎていたが、それでも。
清綱は見事に斬撃を『黒縄華妃』へと叩き込む。
「……僅かに遅れたか。その執念が、為し得た数刻。されど、其方は在ってはならぬ存在。故に、斬らせて頂いた」
清綱の斬撃は神速。
その傷跡は遅れて血を噴出させ、戦場という想いが交錯する中に徒花となって咲き誇るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
何をどう言おうと、どんな思想を持っていようとオブリビオンならば撃つのみです。
どことなく雰囲気も吸血鬼を思い出させますし、容赦はしません。
あちらが徐々に理性が失われていくのであれば、こちらは逆に落ち着いて対処しましょうか。
フィンブルヴェトの銃剣で縄鞭を払いつつ『威嚇射撃』して牽制、敵の理性が失われ隙ができるまで時間を稼ぎます。
隙が出来たなら一息に接近、銃剣で『串刺し』からの【絶対零度の射手】の『零距離射撃』を撃ち込みます。
「主のため」と言っていましたね。献身は結構ですが……あなたの主が滅びを望むというのであれば、あなたもそちらも全て撃つのみです。
寵姫『黒縄華妃』の願いは誰かの願いを叶えること。
それが、彼女の主である『死者英傑』の一国の主となるという願いを叶えることであるのは言うまでもない。
けれど、それは破滅的な願いであった。
「わたくしが、どれだけ生命を摩耗させようとも……必ず、必ず叶えて差し上げるのです。それがわたくしの願いであれば……!」
それこそが寵姫としての体裁を取り繕うことのできぬ、本当の願い。
誰かのために。
他者のために。他の何者をも利用し、食いつぶしたとしても叶えたいという願い。
其の願いは一見美しい願いであったことだろう。
けれど、それはいびつな美しさであると言わざるをえない。
「何をどう言おうと、どんな思想を持っていようとオブリビオンならば撃つのみです」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は己の故郷である世界、ダークセイヴァーを支配するオブリビオン、吸血鬼を連想させられた。
彼女たちの言葉は、何もかも誰かに隷属を強いた先にある理想でしかない。
自分たちの欲望のままに他者を踏みにじることを肯定することしかしない。
そんなことは、セルマには許せるものではなかった。
「ならば、どうするというのです」
「――容赦はしません」
ただ、それだけでよかったのだ。
振るわれた絞殺縄鞭がしなり、宙を駆けセルマへと迫る。
『黒縄華妃』はすでに寵姫としての体裁を取り繕えない。冷静では居られないのだ。傷つき、己の願いを妨げる猟兵がいるということが、彼女の理性を削っていく。
「ならば、こちらは冷静に対処するだけです」
マスケット銃に装着された銃剣『アルマス』が氷のように研ぎ澄まされた刀身をきらめかせ、絞殺縄鞭の一撃を振り払う。
放たれた銃撃の一撃が『黒縄華妃』を穿つが、彼女は止まらない。
おそらく傷の痛みすらも忘れているほどに理性が喪われているのだろう。
もはや、誰かの願いを叶えるという欲望のみで動いている存在でしかないのだろう。
それを執念と呼ぶには、『黒縄華妃』は美しすぎた。
あまりにも美しい寵姫。絶世の美貌。生まれながらにして誰からも跪かれる生涯。そんな存在がただ一人のためにと願うのは、美しいのかもしれない。
けれど、どうしようもなく歪んでいるのだ。
「わたくしは、わたくしが叶えたいという願いを見つけたのです! あの方のために! あの方のためならば、何度だって死んでいいのです! ああ、これこそが!」
愛なのだと、歪に叫ぶ。
それを愛だと呼ぶのであれば、あまりにも醜悪であった。
他者をないがしろにしていい愛などあっていいはずがない。
その一瞬にセルマは踏み込む。
銃剣を突き立て、絶対零度の射手(アブソリュート・シューター)たる彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「あ――」
銃口は『黒縄華妃』の胸に押し当てられている。
「『主の為』と言いましたね。献身は結構ですが……あなたの主が滅びを望むというのであれば――」
その瞳が言う。
人々の営みを滅びという願いで染め上げてはならぬと。
そんな権利など誰にあるというのか。
人は誰だって幸せに生きたいと願うだろう。問題を抱えていたのだとしても、それを解決し、より良い明日を望むものだ。
そして、それを阻むのが自分勝手な欲望。
即ち、オブリビオンの願いだというのならば。
「――あなたもそちらも全て撃ち抜くのみです」
放たれた氷の弾丸の速射が、『黒縄華妃』の胸を穿ち、氷の弾丸を鮮血に染めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
なんと見目麗しい方でしょう
是非永遠にしたいですの
まあ、好みにどうこういうつもりはないけど
操られてる人達の無力化と保護は頼んだよ
むぅ、わかりましたの
操られている方々を石像に変えて保存しますの
そう簡単には壊せませんの
という訳で人質を使うのは諦めて
正面から戦って貰おうか
ガトリングガンで攻撃しつつ
鞭を神気で防いだり
ワイヤーガンを使って回避したりして戦うよ
耐える事を優先して相手が冷静でなくなるのを待とう
相手が冷静さを欠いたら
鞭にワイヤーを絡ませて何かに固定し隙を作るよ
そうしたら隙を突いて私が石像に変えて差し上げますの
とても素晴らしい像になると思いますの
堪能してるとこ悪いけど
射撃できっちりとどめをさそうか
邪神の分霊は感激するように見惚れていた。
それは寵姫たる『黒縄華妃』の美貌にである。
「なんと見目麗しい方でしょう。是非永遠にしたいですの」
そんなふうにうっとりとした視線を向けるのを、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は僅かに呆れたように制した。
「まあ、好みにどうこう言うつもりはないけど、操られている人達の無力化と保護は頼んだよ」
晶にとって、そちらのほうが優先事項としては高い。
役人たちは寵姫たる『黒縄華妃』に籠絡されているだけに過ぎないのであって、傷付けていい理由はない。
それに邪神の分霊と問答している時間だって無いのだ。
「むぅ、わかりましたの」
もう慣れたものであるのだろう。邪神の分霊のあしらい方も晶はうまくなって来ているような気がして、邪神の分霊はぞんざいに扱われ過ぎではありません? と僅かに想ったが、やることはやらねばならない。
邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)と呼ぶには、あんまりな役どころではあるのだが、致し方ない。
邪神の分霊が役人たちに触れて回る。
瞬間、彼らは石化し、石像へと変わっていく。
それは『黒縄華妃』が猟兵に対して行った人質作戦を無力化するものであった。
「というわけで人質を使うのは諦めて正面から戦ってもらおうか」
晶の言葉に傷だらけで血に塗れた『黒縄華妃』は瞳を向ける。
そこにあったのは、寵姫としてではなく、己の主のために願いを叶えるという意志しか存在しない、オブリビオンとしての性であった。
「わたくしが、叶えるのです。すべて、あの方のために――!」
宙を蛇のように駆け抜ける絞殺縄鞭の一撃が晶へと迫る。
けれど、その一撃は彼女を覆う神気の前に停滞して動きを止める。
ワイヤーガンで周囲の建物を利用しながら、飛び回る晶の手にしたガトリングガンから放たれる弾丸が、したたかに『黒縄華妃』へと叩き込まれる。
「――ッ!」
痛みと、これまで猟兵達に与えられた傷がうずくのだろう。
絶叫がほとばしり、ますます持って彼女の理性は削れていく。
ワイヤーガンのワイヤーと鞭が絡まり合って、互いを繋ぐ。
「わたくしは、必ず。必ず叶えて差し上げるのです。あの方の願いを!」
「それでしたら私が石像に変えて差し上げますの。永遠は素晴らしいのです。あなたの願いも、美しいものであればこそ、素晴らしい石像に成ると思いますの」
そんなふうに邪神の分霊がまとわりつく。
けれど、晶はそうじゃない、と嘆息する。
邪神の分霊の価値基準は変わらない。
不変そのものだ。それを今更変えようとは思わない。けれど、どうしたってオブリビオンは打倒しなければならないのだ。
「堪能しているとこ悪いけど――」
止めは刺さなければならない。打ち込まれた弾丸が『黒縄華妃』を打ち抜き、その体を吹き飛ばす。
その光景を邪神の分霊が頬を膨らませて何やら文句を言っているが、晶は気にしなかっただろう。
まともに言い合いをしたって不毛なだけだ。
けれど、『黒縄華妃』の願いが歪であることは言うまでもない。
誰かの願いを叶えることを、誰かを傷つけることの肯定に使ってなどいけないのだ。
そうすれば、必ずどこからかしっぺ返しがやってくる。
それが因果応報であるというように晶は『黒縄華妃』の願いを否定するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
おっと悪いがそれは聞けない相談だな
代償だらけのまやかしな幸せに、何の価値があるってのよ
[SPD]
【気合】を入れ直して萎えた戦意を取り戻したら
まずは役人達を最低出力の流星の【マヒ攻撃】で無力化
次いで寵姫にFZで圧縮した【衝撃波】を纏わせた拳を
叩きつけて【吹き飛ばす】これで役人達から遠ざけるぞ
【ジャンプ】で後を追いかけたら第二ラウンド開始と行こうか(拱手
敵の攻撃を【瞬間思考力、見切り】で避けつつ
【カウンター、咄嗟の一撃】で返していき
ダメージで【体勢を崩す】のを見計らって冬雷の一撃で仕留めるぜ
寵姫としての姿より今の体裁を脱ぎ捨てた姿の方が好みだぜ?
……思いっきり、ぶっ飛ばせるからさ!
アドリブ歓迎です
どれだけ斬撃を刻まれようと、どれだけ弾丸を打ち込まれようと『黒縄華妃』は倒れない。霧散することはなかった。
その周年とも言うべき願い。
彼女の主であるという『死者英傑』の願いを叶える。
それこそが『黒縄華妃』の欲望であり、オブリビオンとしての性であった。
もはや全てを籠絡する寵姫としての体裁はなかった。
あったのは、ただ願いを叶えてあげたいという願いだけだった。
「わたくしは、必ず。成し遂げて、見せるのです……!」
血にまみれていたのだとしても、『黒縄華妃』の美しさは陰るものではなかった。
むしろ、血化粧のように彼女の美しさを彩るばかりであった。
「おっと悪いがそれは聞けない相談だな。代償だらけのまやかしな幸せに、何の価値があるってのよ」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、熱線銃の銃口を『黒縄華妃』へと向ける。
どれだけ美しく、己を魅了しようとしたとしても、祐一には曲げられないものが在る。
どんなに美化された願いであろうとも、誰かを踏みにじっていい理由など何処にもない。
「ありますとも。愛の価値は計り知れなく。ただ、わたくしは愛のために、何度だって死んでもいいのです。あの方のために! それがわたくしの愛!」
振るう絞殺縄鞭が祐一へと迫る。
けれど、祐一はフィールドジッパーによって圧縮された衝撃波でもって、絞殺縄鞭ごと『黒縄華妃』を吹き飛ばす。
彼女の魅了の力によって再び周囲にある役人たちや人々を盾にされては敵わないかからだ。
「理解できるものかよ。誰かを踏み台にした愛なんてな!」
祐一は吹き飛ばした『黒縄華妃』を追って、『梟門』の都を走る。
瓦礫と化した建物を飛び越え、その頂に立ち『拱手』でもって、『黒縄華妃』へと相対する。
血まみれのまま立ち上がった『黒縄華妃』にとって、それは礼儀ではなく挑発そのものであったことだろう。
「さあ、第2ラウンド開始と行こうか!」
放たれる絞殺縄鞭を見切り、躱していく。風切り音が耳を掠め、ビリビリとした気迫を感じる。
「わたくしの愛を阻むというのなら!」
容赦はしない。
彼女の顔にもはやほほえみはなかった。あったのは、執念だけだ。己の欲望。己の主のために、その願望を叶えるという願い。
歪んだ願いが生みだす醜悪なる執着が祐一を敵として排除しようと迫るのだ。
「寵姫としての姿より今の体裁を脱ぎ捨てた姿のほうが好みだぜ?」
それは魅了されたからではない。
祐一の本心からの言葉であった。
そう、なぜならば。
「……思いっきり、ぶっ飛ばせるからさ!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
一瞬の明滅。構えた熱線銃の銃口が、冬雷(トウライ)の如く輝き、その一撃雷の弾丸を解き放つ。
凄まじい威力を持って放たれた一撃が『黒縄華妃』を貫き、吹き飛ばしていく。
もはや悲鳴も上げることはできないだろう。
けれど、それでも彼女願いは叶えてはならない。
在ってはならない願いなのだ。
過去に歪み、誰かを傷つける願い。
それを人は愛とは呼ばない。
「そう、それはただの妄執ってやつだぜ」
祐一は熱線銃の銃口から立ち上る煙越しに『黒縄華妃』を見据える。
どこで間違ったのかなんて言わない。
あるのは、歪な願いだけだ。だからこそ、それを打ち砕く。世界を滅ぼす願いとなる前に――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(自己ハッキングによる電子セキュリティ強化で美貌の悪影響完全排除)
美貌で心融かす技を得手とする知己がおりまして
ええ、貴女への手心は期待出来ぬかと
主へ捧ぐ献身は評すれども、その所業は外道に違いなし
人々を解放して頂きます
脚部スラスターの推力移動で接近
役人達を傷つける訳にはいきませんね…
反撃はせず盾受け、武器受けで攻撃を凌ぎつつ寵姫ににじり寄り
どうやら演武の鑑賞の如く愉しまれているご様子ですが…
お傍に気を配られた方が良いかと
乱戦の最中に密かに寵姫に放ち忍び寄らせたUCの爆弾で攻撃
同時に催涙手榴弾投擲、役人達目潰し
その隙にワイヤーアンカー射出しロープワークで捕縛しお縄に
ご無礼!
引き寄せ剣を一閃
吹き飛ばされた血塗れの寵姫『黒縄華妃』が立ち上がる。
瓦礫を真っ赤に染め上げながらも、胸を穿たれ傷だらけになりながらも立ち上がる。
そこにあったのは、最早寵姫ではなくオブリビオンとしての性のみ。
「わたくしの、願い。わたくしの、貴方様のために」
うわ言のようにそれだけをつぶやきながら、彼女は立ち上がる。
到底、立ち上がってこれる傷ではないのに、それでも立ち上がってくるのだ。
それを執念、妄執と呼ぶには、あまりにも歪であった。
「美貌で心融かす業を得手とする知己がおりまして……ええ、貴女への手心は期待できぬかと」
その凄絶なる美貌を前にトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己の電脳を電子セキュリティの強化によって惑わされることなく言葉を紡ぐ。
確かに主へと捧ぐ献身は評価できるものであっただろう。
けれど、その手段、所業は外道であることに違いはない。
例え、誰かのための願いであったとしても、他の誰かを傷付けていい道理など何処にもないのだ。
そして、そんな彼女を護るように寵姫としての力、人々を魅了する力によって呼び寄せられた下級役人たちを前にトリテレイアは宣言する。
「人々を解放して頂きます――」
一気に脚部スラスターを噴かせ、機械騎士は走る。
役人たちを傷つけるわけにはいかぬ。
されど、人の壁となった下級役人たちを取り除かねば『黒縄華妃』へとたどり着くことは出来ぬ。
そして、下級役人と言えど、彼らの力もまた十分なものであった。
反撃はしてはならない。
けれど、突破しなければならない。今や機械騎士であるトリテレイアには二重にも足枷が付けられているような状態であった。
振るわれる武器を盾で防ぐばかりが、今の彼にできることであった。
「……見事な演舞ですね……ですが、わたくしは……」
それどころではないのだというように、『黒縄華妃』は歩みを進める。
ここで倒されるわけには行かぬと逃走を始めようとしていた。
けれど、それをさせぬのが猟兵であるトリテレイアである。
「どうやら演舞の鑑賞の時間と勘違いされてしまったようですね……お傍に気を配られた方が良いかと」
それは下級役人たちとトリテレイアが繰り広げる防戦の最中に起こっていた。
『黒縄華妃』は己の欲望のことしか頭になかった。
だからこそ、この場を離れようとしていたのだ。けれど、それは間違いであった。本当に逃げ切るつもりであったのならば、万難を排してトリテレイアという障害を打倒してから行うべきであったのだ。
「なにを……」
そう呟いた瞬間、『黒縄華妃』の目の前に飛ぶのは、自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ(スティールフェアリーズ・タイプ・グレムリン)であった。
その手にあったのは爆弾。
そして同時に下級役人たちへと放り込まれたのは催涙手榴弾。炸裂した2つは、『黒縄華妃』を爆風で吹き飛ばし、役人たちの目を潰す。
素早いロープワークで一瞬の内にワイヤーアンカーが役人たちを捕縛し、『黒縄華妃』の足を絡め取る。
「ご無礼!」
僅かな間隙。
例え、どれだけ寵姫の力で下級役人たちを籠絡したのだとしても、人の生理反応には抗えない。
催涙手榴弾が彼らの視界を奪い、呻く声が響き渡る。
だが『黒縄華妃』にとって、それはどうでもいいことであったのかもしれない。
己の日を持って従わせた者には興味なく。
けれど、己の主だけを思う姿は、あまりにも身勝手そのものであった。
瞬間にトリテレイアは脚部スラスターを噴かせ、空へと舞い上がり、その手にした剣を振り下ろす。
斬撃の一撃は違わず『黒縄華妃』へと振り下ろされ、その身へと言えぬ致命傷を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…さて…オブリビオン性全開だな…阿片による籠絡だけが能力……と考えたら拙いねこれは…
…とは言え相手の武器は鞭か…【戦術構築:奸計領域】を発動…狭い場所…建物内にでも誘導しよう…
さらに建物を利用して術式組紐【アリアドネ】で鞭の邪魔になるように魔力を通した糸を張り巡らせよう…
…鞭は振るわないと威力が出ないからね…糸でそれを邪魔してしまおう…
…普段の黒縄華妃ならともかく、理性が飛んで行けばそう言う判断も鈍るだろう…
…ついでに糸に連動した遅発連動術式【クロノス】による術式罠を設置…
…罠から放たれる氷結術式で拘束しよう…
…そして重奏強化術式【エコー】で強化した光の槍を放って致命傷を狙うよ…
身を引き裂かんばかりの斬撃が寵姫『黒縄華妃』へと振り下ろされた。
鮮血がほとばしり、その絶世の美貌をいたく傷つける。
けれど、その美しさは陰りを見せない。むしろ血化粧のごとく彼女の凄絶なる美しさを際立たせるだけでしかなかったのかもしれない。
「……さて……」
小さく呟いたのは、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)であった。
彼女の瞳に映る『黒縄華妃』は最早寵姫としての体裁はどこにもなかった。
かなぐり捨てたと言ってもいいだろう。
あったのは、狂気だ。
誰かのために願いを叶えるという願望。
そのために他の何者をも犠牲にしていいと考えてしまう精神性。
「……オブリビオン性全開だな……阿片による籠絡だけが能力……と考えたら拙いねこれは……」
立ち上がる執念が、その血に塗れた体の何処にあるのだろうか。
「わたくしが叶えて差し上げるおです。どうしても、どうしても、わたくしが」
他の誰でもない。
己の主の願いを己が叶える。
そのためだけに存在していると言わんばかりに、彼女は絞殺縄鞭を振るう。
空を切る凄まじい音は、凄絶なる美しさを伴って、さらなる高みへと登ろうとしていた。
オブリビオンであるがゆえに、己の欲望を達成しようとするのはわかる。けれど、彼女は他の誰かのために己の願望を使おうとしている。
それはあまりにも、醜悪であった。
「……猟兵が障害になるというのならば、全て排除致しましょう。全てはあの方のために! 全ては、あの方が望むために!」
メンカルは走る。
すでに建物を利用して張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』は、鞭の軌道を妨げ、絡め取って邪魔をしている。
「……鞭は振るわないと威力が出ないからね……邪魔をさせてもらう」
十分なしなりが得られない鞭はただの紐でしかない。
魔力を通した組紐『アリアドネ』は、その程度では引きちぎることはできないのだ。
「……普段のお前ならともかく」
そう、すでに『黒縄華妃』は理性を喪っている。
己の願望を叶えるためだけに力を振るうというオブリビオンとしての性が力を奮い立たせるけれど、理性まで喪ってしまえばメンカルの張り巡らせた知略の前に屈するほかないのだ。
振るった鞭が『アリアドネ』に触る度に遅発連動術式『クロノス』によって術式罠が発動する。
罠から放たれる氷結術式が礫のように『黒縄華妃』をあらゆる角度から襲うのだ。
それこそが、戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)。
あらゆる地形、そして己が有する術式の全てが、知略に寄って効果を相乗的に上乗せしていく。
「悲しいね。その激情がお前の死期を早めるだなんて……」
そう、理性があればメンカルの知略をも打ち破ることができたのかもしれない。
けれど、強すぎる思いは時に自身の視界をくらませる。
その結果がこれだ。
「わたしは――!」
慟哭さえも、メンカルには容赦をする理由にはならない。
その手に生み出された重奏強化術式『エコー』によって生み出された光の槍が輝く。
もう立っているのもやっとの体のはず。
この一撃が、『黒縄華妃』へと放たれる最期の一撃。
どれだけ激情を抱えていたのだとしても、滅ぼさない理由にはならない。
どうしたってオブリビオンの願望は歪んでしまっている。ならばこそ、それが世界を破壊する。
そのために自分たちはいるのだ。
世界に住まう人々の安寧のために。
「骸の海へお還り――」
放たれた光の槍が『黒縄華妃』の体を穿つ。
ここに血塗れの寵姫は、溶けて消えるように……華が散るように、その霧散した輝きのままに骸の海へと還るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『死者英傑』
|
POW : 無尽槍兵団
レベル×1体の【精鋭僵尸槍兵】を召喚する。[精鋭僵尸槍兵]は【突】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 戦場の覇者
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【方天画戟】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 孤影再起
全身を【己を英傑たらしめる闘気】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『黒縄華妃』が消滅した瞬間、『梟門』の都にほとばしる咆哮があった。
それは天を、地を揺るがす程の巨大なる咆哮。
誰もが身をすくめ、恐れたであろう。
天は、その咆哮に蒼天を陰らせるように曇天を運ぶ。
風は雨雲を呼寄せ、雷雲となって雨を轟々と振らせた。
稲妻が暗闇を引き裂き、稲光が猟兵たちに知らせる。
偉丈夫と呼んで差し支えのないほどに鍛え上げられた天性の肉体。その手にあるのは、かつて振るったであろう武器。
馴染む得物の柄の感触に己の名を忘れた『死者英傑』は、咆哮した。
何もかもが馴染む。
けれど、たった一つ喪っているものが在る。
己の名ではない。
そう、『黒縄華妃』――己が守らねばならなかった何がが永遠に喪われたことを彼は知る。
故に咆哮するのだ。
「■■■■――!!! ■■■ッ……!!!!」
言葉にならぬ怨嗟。
喪われてしまった何かを奪った者がいる。
雷鳴が轟く中、『梟門』の都に嘗ての『英傑』が凄まじき重圧と共に、猟兵へと疾走る。
まるで重戦車が全てをなぎ倒すように、人の身でありながら、あらゆる障害を吹き飛ばしながら、都の街を縦断し、猟兵を滅ぼさんと豪雨の中をひた走るのであった――。
村崎・ゆかり
オブリビオンが嵐を呼ぶ、か。
いいでしょ。あたしにとっても荒天は悪いことじゃない。
黒鴉の目を通して『英傑』の居所を確認。
街都の広場みたいなところへ誘き寄せて戦場としましょう。
アヤメ、誘導よろしく。その間にあたしは。広場にいる人たちに拱手して持ち前の「コミュ力」で他へ移動してもらうようお願いするわ。
準備は調った。アヤメ、おつかれさま。後は引き継ぐ。
『英傑』が何を望んで蘇ったか知らないけど、その様子じゃ大事なものは骸の海に置いてきたようね。
それじゃ、村崎ゆかり、陰陽師。参る。
あなたも長物を使うのね。じゃあお互い打ち合いといきましょう!
間合いが開いたその時を狙って、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経!
『死者英傑』――嘗て何という名で呼ばれていたのかもわからぬほどに遠き日に在りし者が過去より滲み出た存在である。
オブリビオンであることは言うまでもなく。
されど、その者が持つ力の凄まじさは言うまでもない。
縦断する『梟門』の都は、混乱へと叩き落された。
雷鳴が轟き、豪雨が降りしきる。
それはまるで『死者英傑』が喪った何かを求める悲哀に満ちたものであったのかもしれないが、その所以を知る者はまだ居ない。
「オブリビオンが嵐を呼ぶ、か」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)にとって天候が荒れ狂うことは悪いことではない。
彼女のユーベルコードを思えば、それは好都合であるとも捉えることができたであろうが、それでも重圧凄まじい重戦車の如きオブリビオンの威容は眼を見張るものがあった。
それを式神の黒鴉の瞳から見下ろし、ゆかりは次いで式神アヤメにオブリビオンを誘導させる。
「アヤメ、誘導を頼んだわ。あたしは広場に人が集まっていないか確かめる!」
互いに別れて行動する。
肌に打ち付ける雨粒が痛いと思うほどに、強烈な雨であった。
その中をひた走る。これだけの豪雨だ。広場に人はいないだろうが、それでも確認せずにはいられなかった。
あのオブリビオンの縦断を受けてしまえば、『梟門』の人々はひとたまりもないだろう。
それに開けた場所でなければ己のユーベルコードの巻き添えを食うかも知れない。
備えていた『拱手』も目の前にした閑散とした広場を見れば、胸でをなでおろすばかりだ。
「よかった……これなら思う存分力をふるえる!」
全ての準備は整った。
式神アヤメがオブリビオンに追い立てられるようにして、ゆかりの元に戻ってくる。
だが、ゆかりは見ただろう。
『死者英傑』の周囲に在るのは、精鋭僵尸槍兵。
その数は凄まじいものであった。まさに軍隊。一個の軍を率いる将。それがこの『死者英傑』の本来の力であるのだろう。
「後は引き継ぐ……けど、これは……!」
全てが精鋭の槍兵。
それらは次々と広場に散会し、ゆかりたちを取り囲んでいく。
陣地のごとく次々と建物を崩し、猟兵の攻撃に対する防備を固めていく。その姿派を視認したゆかりは、それでも問題ないと瞳をユーベルコードに輝かせる。
「■■■■……――ッ!!!!!」
咆哮が轟いた。
構えた得物は長物。
互いに構えた薙刀と方天画戟。形は違えど、長物である。
「あなたも長物を使うのね。じゃあお互い打ち合いといきましょう!」
一騎打ち。
槍兵達ごと、ゆかりはユーベルコードで焼き払うつもりであった。
「村崎ゆかり、陰陽師。参る」
互いに打ち合う長物の得物が火花を散らせる。暴風のような攻撃。それは嵐のようであり、ゆかりの腕がしびれるほどであった。
その咆哮が何を嘆いているのかもわからない。
けれど、全てを滅ぼさんとしていることだけがわかる。
「一体何を望んで蘇ったか知らないけど、その様子じゃ大事なものは骸の海に置いてきたようね」
そんななりで自分に勝てるわけがない。
輝くユーベルコードの雷撃が視界を埋め尽くす。白き撃滅させる一撃が荒天より降り注ぎ、『死者英傑』の体を撃つ。
九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソン)。
それは一撃必殺のユーベルコードであり、凄まじい雷撃は視界を白く染め上げてしまうほどでも在った。
轟音が広場に鳴り響き、雨を受けて『死者英傑』の体から白煙が立ち込める。
周囲にあった槍兵たちも吹き飛んでいるが、城塞の如き壁が生み出され始めていたのを止められたのは僥倖であった。
「自分が何を求めていたのかもわからないまま戦った所で、あたしたちに勝てるわけないでしょう――!」
ゆかりは己のユーベルコードの一撃が、たしかに『死者英傑』の進撃を止めたことを確認し、さらに城壁を作り上げ始めた槍兵たちを薙ぎ払うようにユーベルコードを打ち込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
そうなる気持ちは分かる、だが、相容れることはないのも分かっている
力は足りなくても全力でお前に抗って見せる
SPDで判定
【視力】【暗視】で敵を捕捉
敵の攻撃を風の【結界術】や【オーラ防御】を併用しながら銀腕を【武器改造】で剣にして防ぐ
多少のダメージは【覚悟】【気合い】で受けて【激痛耐性】で耐える
それから義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】で放ち、次の攻撃までの【時間稼ぎ】
その隙に【怪力】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】【早業】を使いながら指定UCで【切断】する
己の中に確固たる記憶のない者。
それがオブリビオン『死者英傑』であった。己の名前すらわからぬままに戦わねばならぬことを、理解できるのは同じく記憶のない者だけであったことだろう。
そういった意味では、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)の言葉は正しいのかも知れなかった。
一度死してデッドマンとして存在する事となった己。
オブリビオンとして過去の化身となった『死者英傑』。
両者の間に横たわる溝は如何なるものであったことだろう。
「■■■■―――ッ!!!!!」
その声にならぬ咆哮は、大気を震わせる。
豪雨の如き荒れた天候を物ともせず、『死者英傑』は槍兵達が築き上げ、しかして雷撃の一撃のもとに崩れ去った城壁の中で白煙を上げながら、一歩を踏み出した。
それだけでルイスの肌をジリジリと焼く重圧がある。
そうなる気持ちは分かる、とルイスは呟いた。
「だが、相容れることはないこともわかっている。力は足りなくても全力でお前に抗ってみせる」
荒れ狂う天。
雨と風、そして周囲を包み込む暗闇。
それらの中でルイスの義眼だけが輝いていた。暗視の力でもって『死者英傑』の姿を捉える。
その手に在るのは方天画戟。
突く、斬る、払う、叩く。そのどれにも対応しきる武装であるが、それらを十全に扱える将はそう多くはない。
謂わば選ばれた者だけが使うことの出来る武装でもあったのだ。
その刃が嵐の中できらめく。
「――ッ!」
ルイスの判断が遅ければ、その煌めきのあとに落ちていたのは己の首であった。
それほどまでに早い斬撃。
ルイスは己のメガリス、銀の腕を剣に変えて振るわれる方天画戟と真っ向から打ち合う。ただ、それだけで体の真芯までがしびれる。
なんという膂力。
『英傑』と呼ばれる存在は死しても、これだけの力を発揮するのかと戦慄する。
「だがっ! それでも!」
退くことは出来ない。
なぜなら己は猟兵で、相対する『死者英傑』はオブリビオンだからだ。ここでルイスが退いてしまえば『梟門』の都は誰が護るのだ。
生者の盾たる己が退くわけにはいかないのだ。
「俺と踊って貰おうか。どちらかが倒れるまでな!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
義眼のメガリスが藍色の災いに輝き、振り下ろされた方天画戟を大地へと沈み込ませる。
だが、圧潰の力をもってしても『死者英傑』は方天画戟を振り抜き、再びルイスへと叩きつける。
銀腕がきしむ。
けれど、それでも止まらない。凄まじい勢いでルイスの銀腕が剣へと変形し、『死者英傑』へと叩き込まれる。
総ての力を籠める。
歯を食いしばり、打ち込まれた方天画戟の衝撃に耐える。
「ぐっ……!」
痛みはある。けれど、それは今忘れるべきものだ。己が倒れれば、此れ以上の痛みと涙が流れる。
それは決して在ってはならぬことだ。
振り絞った力が『死者英傑』と己を分かつ。
叩きつけられた銀の腕、その剣が『死者英傑』の腕を振り払い、その身へと斬撃を見舞う。
鮮血がほとばしり、ルイスの銀の腕を濡らす。
けれど、すぐに嵐の雨がそれらを流していくだろう。渾身の力を籠めた斬撃は、たしかに『死者英傑』に届いたのだ。
「■■■ッ! ――ッ!!!」
その咆哮は痛みか、それとも怒りか。
ルイスにはわかっていた。
『死者英傑』の咆哮の意味を。
記憶なく、名もわからぬ己自身を憂いているのだ。わからぬままに滅ぼし合わねばならぬこと。
嘗て英傑であったのならば、それこそ悲劇であったことだろう。
けれど、ルイスは告げる。
「お前は此処にいてはいけない存在だ。だから、今日、此処で討つ――!」
離れた超高速の斬撃が、無数に『死者英傑』の体へと刻み込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
大切な人を失って悲しいか。仇である俺達全てが憎いか。
気持ちは分かる。俺もそうだ。
故に語る言葉は無い。ただ殺す。
この曇天は貴様の怒りが呼んだか。凄まじいが、怒りは己の内に籠めるべきだった。太陽を隠したのは失敗だったな。
【不朽兵】。擬態を解き不死身の怪異の本性を現す。
「ヴォルテックエンジン」に【呪詛】と怨嗟を込め発電した電力を【エネルギー充填】。力を蓄える。
敵兵に串刺しにされようと【激痛耐性】で無視する。今の俺はその程度では滅びない。
【リミッター解除】【限界突破】し、自身の身まで焼く高圧電流で【属性攻撃】【範囲攻撃】。敵兵をなぎ払い死者英傑を撃つ。勘違いするな。復讐するのは俺だ。貴様ではない。
無数の斬撃が『死者英傑』の体へと刻み込まれる。
しかし、未だ『死者英傑』は倒れない。倒れるわけがない。その咆哮は嵐の中にありても、恐ろしいまでに響いたことだろう。
けれど、その悍ましき咆哮を聞いても立ち止まらぬ者がいる。
「■■……■■■■――ッ!!!」
その咆哮は誰のために。
理由すらわからぬ咆哮を受けて、立ち止まる猟兵は誰一人としていないだろう。
「大切な人を喪って悲しいか。仇である俺達総てが憎いか」
久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は互いに殺意を漲らせながら、嵐の中対峙していた。
濡れた頬に髪が張り付く。
この雨が涙というのであれば、どれほどの激情であろうか。風は吹き荒れ、稲妻が疾走る。
けれど、と了介はいう。
「気持ちは分かる。俺もそうだ。故に語る言葉はない」
そう、失う痛みを知っている。
だからこそ、相手がオブリビオンであろうとも関係ない。
理解できることと、この身を焦がす衝動は消えやしないのだ。どれだけ同情できるのだとしても、それだけは己の魂が許さない。
「――ただ殺す」
その言葉が合図になったように、『死者英傑』の周囲に召喚されるのは、精鋭僵尸槍兵であった。
今再び、城壁を組み上げようとしているのだろう。
この『梟門』の都に己の牙城を打ち立て、都そのものを奪おうというのだ。
けれど、それはさせない。
例え、この曇天、嵐を『死者英傑』が呼んだのだとしても。
その凄まじき怒りは己の内に秘めるべきであったのだ。
「ああ、そうだとも。お前は失敗したんだ」
了介はいう。
何故、と問いかける言葉は返ってこなかった。ただ、恐ろしいほどに響き渡る咆哮だけが還ってきた。
そうであろう。
互いに仇である。殺意でしか互いの存在を認識できない。
太陽が隠されたのは、『死者英傑』にとっての失敗であった。
「怨霊は殺せない」
不朽兵(クサラズ)。それが了介のユーベルコードの名にして、デッドマンたる生者としての擬態をかなぐり捨てた姿の名であった。
不死身の戦鬼。
それが了介である。ヴォルテックエンジンに呪詛と怨嗟を籠め、変換された電力が彼の体に満ちていく。
その凄まじき力の奔流は、異変を察知した槍兵達によって体ごと貫かれてしまう。
だが、了介は止まらない。
どれだけ串刺しにされようが、止まらない。何故ならば、了介はデッドマンである。
死を超越した存在。
故に、そこに死はなく。そして同時に生もまたない。
在るのは何か。
「そう、殺意だけだ」
みなぎる力と共に貫かれた体の穴が即座に再生され、ふさがっていく。恐るべき力。振るわれる『死者英傑』の方天画戟の一撃すらも即座に了介は塞ぎ、駆け出す。
「今の俺はその程度では滅びない」
そう、もしも、この場が蒼天であったのならば、了介は此処まで戦うことはできなかった。
不死身の戦鬼は、太陽光で己の身を滅ぼす。
けれど、『死者英傑』が呼び寄せた黒雲。嵐は、太陽光すら遮って、了介の独壇場へと変えるのだ。
体の内側からほとばしる電流が、了介の体事態を焼く。
それほどまでの出力にまで高められた電流が、周囲に殺到した槍兵達を瞬時の内に焼き尽くす。
「……どれだけ数を揃えようが無駄だ。俺のこの身を焦がす殺意の前では――!」
ほとばしる咆哮は果たしてどちらのものであっただろうか。
全てを塗りつぶす電流が疾走り、了介の拳が『死者英傑』の胴へと叩き込まれる。
その一撃は『死者英傑』を吐血させ、その内臓全てを焼き焦がすほどであった。
「勘違いするな」
みなぎる殺意が叫ぶ。
そう、オブリビオンは間違えているのだと、了介が言う。
「復習するのは俺だ。貴様ではない――」
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
この気配…強敵だな。
しかし、あの痴女の仲間にしては中々のプレッシャーだ。
気をされないように、まずは一服
合法阿片を取り出し『ドーピング』
よし『元気』と『気合い』入った。
ついでに『勇気』100倍『限界突破』なーんてな。
つーか、こいつも部下を呼び寄せる系か。これもカリスマなのかねぇ。
百里神剣から『斬撃波』を飛ばし『範囲攻撃』内の敵を『切り込み』
覇気を纏った拳で突きを『見切り』『残像』で回避しつつ『カウンター』に『グラップル』
『功夫』が違うのさ。
さて、部下を倒したらあとは大将だ。
その無意味な怨嗟…終わらせてやるよ。
長い髪の毛で『なぎ払い』『体勢を崩す』と一撃必殺の『捨て身の一撃』
あばよ。元英雄ッ…。
『梟門』の都に咆哮がほとばしる。
蒼天は黒雲よりも暗き雷雲に覆われ、稲光と雨、そして吹き荒れる風がオブリビオン『死者英傑』の咆哮によって呼び寄せられたようであった。
その肉体は、かつて在りし英傑そのもの。
されど、その内側は過去に歪んでいる。
「■■――ッ、■■■■――……ッ! オ、■■――ッ!!!」
怒号のごとき咆哮は『梟門』の都全体を揺るがすほどであった。
「この気配……強敵だな」
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、都を縦断してきたオブリビオンの気配に気圧されぬと合法阿片をくゆらせる。
豪雨がすべての音をかき消していても、咆哮だけが響き渡る。
「しかし、あの痴女の仲間にしては中々のプレッシャーだ……よしッ」
元気と気合。
それが合法阿片によって齎されるものであったのならば、気を呑まれぬと名捨は『死者英傑』へと向き直る。
だが、彼を取り囲んでいたのは、精鋭僵尸槍兵であった。
「つーか、こいつも部下を呼び寄せる系か。これもカリスマなのかねぇ」
手にした百里神剣から斬撃を繰り出し、槍兵達の攻撃を捌く。
槍の一突き一突きが、鋭い業の応酬であった。これだけの兵を束ねる存在であったことは感じる重圧からもわかっていたことだった。
けれど、名捨もまた勇気百倍。限界突破している。
合法阿片によって引き上げられた限界。肉体の躍動が、これまで比ではない。
跳ねるようにして槍の一撃を躱し、返す拳で槍兵達の頭を弾き飛ばす。
「功夫が違うのさ――ッ!」
槍兵達を捌き切った瞬間、名捨の背中に怖気が走る。
まずい、と思った瞬間にはもう遅かった。
名捨の頭上に振り下ろされたのは方天画戟の一撃。
「■ス――ッ!!!」
凄まじい一撃を名捨は既の所で躱す。
衝撃波が己の肌を引き裂かんばかりに荒ぶ。
並の存在であったのならば、今の一撃で終わりであったことだろう。
『死者英傑』は、すぐさま名捨との距離を詰める。確かに先行した猟兵達によって消耗させられているはずであるというのに、その体に流れる力は未だ健在そのものであった。
「その無意味な怨嗟……終わらせてやるよ」
そう、その怨嗟。その咆哮は無意味だ。
どれだけ、過去に歪められたとしても現在を破壊せんとする行いの何処に正義があるだろうか。
長い名捨の髪が『死者英傑』の足元に絡みつき、引き倒すように体勢を崩させる。「お前がどれだけのことを為してきたのか、そして何をなせなかったのかなんかには興味はねぇがッ!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
確かに目の前の『死者英傑』はまごうことなき強敵であった。
けれど、それが名捨の退く理由にはなっていない。
例え、己の拳が捨て身の一撃であったのだとしても。
それでも一撃必殺の拳は届かせねばならぬ。踏み込んだ足が限界を超える。もっと疾く。もっと力強く。渾身の力を籠めても尚足りない。
己の肉体の限界はとっくに越えている。
体のあちこちの血管が弾け飛んでいるのを感じる。
「あばよ。元英雄ッ……」
それは、さよならの拳。
出会ってしまったからこそ、別れが在る。必ず訪れるのならば、せめて己の拳でと名捨は嵐の中ユーベルコードに輝く拳を『死者英傑』に打ち込む。
裂帛の気合と共に放たれた一撃は『死者英傑』の巨躯を吹き飛ばし、雷鳴を轟かせる空に向かって拳を突き上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』
気持ちはわかるからな。わしとて、愛しき妻を守れなんだから。
わしらは相容れぬよ。だからこそ、打ち合うとしよう。
曇天…得意とも不得意とも言えぬよな。
ふむ、槍兵はの…(ぷきゅとあう返事が聞こえた)うむ、任せるぞ、陰海月。
わしは、敵との一騎討ちといこうか。
攻撃は激痛耐性で凌ぎつつ。はは、やはり武侠の世界よの。
流れておるはずのない血が、騒ぐ気配がするわ…!
だが、オブリビオンの好きにはさせんて!
一度目を体勢崩しのなぎ払い、二度目が指定UCという二回攻撃よ!
※
陰海月「ぷきゅきゅ」
ヤル気満々。なぎ払い+衝撃波+呪詛(鈍化)+蹂躙で槍兵を相手取ってる。
嵐吹きすさぶ『梟門』の都に雷鳴が轟く。
それは猟兵の放った拳の一撃に寄って吹き飛ばされた『死者英傑』の巨躯が大地に堕ちる音と重なっていた。
猟兵達の攻撃は苛烈を極める。
例え、どれだけ『死者英傑』が過去の英傑そのものであったのだとしても、過去に歪んだオブリビオンであるというのならば、滅ぼさなければならない。
そこに例外はなく。
また『死者英傑』も猟兵を滅ぼさんと、咆哮する。
「■ス、■ス、■■、■ス――ッ!!!」
凄まじい殺意が猟兵を襲う。
あれだけの攻撃を受けても尚立ち上がってくる。
掲げた方天画戟の元に再び集うのは、精鋭僵尸槍兵たちであった。彼らは即座に『死者英傑』に従い、猟兵へと襲いかかる。
「気持ちはわかる……わしとて、愛しき妻を守れなんだから」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、相対する『死者英傑』の慟哭に一定の理解を示した。
己もまた喪ったものであるが故に。
その胸の内、その慟哭の意味を知る。
けれど、と『侵す者』は言う。
「わしらは相容れぬよ。だからこそ、打ち合うとしよう」
どうしても共存はできない。
オブリビオンと猟兵。
互いに滅ぼさなければならない。その宿命が互いを分かつのだ。互いに理解ができたとしても、必ず滅ぼさなければ、己の立つ世界という足場さえ崩れ去ってしまうのだから。
「ぷきゅ」
短く『侵す者』の影から飛び出すのは陰海月であった。
それはまるで『侵す者』に返事をするようであり、迫る槍兵たちへと飛ぶのだ。
「うむ、任せるぞ、陰海月」
短くうなずく。
取り囲む槍兵たちをミズクラゲの陰海月が振り払う。『侵す者』の前に立つのは『死者英傑』。
そのみなぎる闘志は、オブリビオンであったとしても『侵す者』の肌を焼くほどの重圧であったことだろう。
「いざ、一騎打ちと行こうか」
互いに構えるのは、長物。
方天画戟と黒槍が交錯する。数瞬の内に打ち合うは幾合か。達人同士の打ち合いは、剣戟となって嵐の中に響き渡る。
しかし、打ち合うたびに『侵す者』の体を打ち据える衝撃の凄まじさは如何ともし難い。
巨躯から放たれる純然たる殺意。
そのひりつくような感覚に『侵す者』は笑ったのだ。
「はは、やはり武侠の世界よの。流れておるはずのない血が――」
その瞳がユーベルコードに輝く。
悪霊である体に血潮は流れないけれど、その魂が吠えるのだ。目の前にいる強敵を討てと。
決して許してはならぬオブリビオンという存在が目の前に在る。
ただそれだけが己の槍を振るう理由であると『侵す者』の魂が叫ぶのだ。
「騒ぐ気配がするわ……!」
それは武者としての本能であったことだろう。
方天画戟は言うまでもなく複合武装である。突く、斬る、薙ぐ、払う。あらゆる戦いに対応することの出来る達人武装。
それを手足のように手繰る『死者英傑』は、英傑の名に恥じぬ技量を持っていたことだろう。認めざるを得ない。
「だが、オブリビオンの好きにはさせんて!」
振り払った黒槍の一撃が『死者英傑』の体を突き崩す。
「一つのところに力を込めると……」
放つユーベルコードの名は四天境地・『狼』(シテンキョウチ・オオカミ)。
一撃目は布石。
二撃目こそが本命である。だが、敵もさるものである。体勢を崩しきれないのだ。長ものであるがゆえに、柄を大地へと突き立てこらえるのだ。
「見事……! だがッ!」
放たれた黒槍の一撃が『死者英傑』の胴を貫く。
その一撃は、名も記憶もない『死者英傑』の伽藍堂の中身を示すように巨大な穴を穿ち、死せる英傑との勝負を決するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ベルゼ・アール
※アドリブ・連携等歓迎
完全に我を忘れてるわね…計略による搦手は通じそうにないか。
参ったわね。まともにぶつかれば私に勝ち目はないわ。
だったら、アドリブ戦法よ!
方天画戟を地形を活かしてガードしながら、壁を蹴って三角飛びの要領で空中に飛び出すわ。腕を狙って予告状を投げ、方天画戟を落とさせるわ。
そう、目的は貴方の方天画戟を盗むこと!
奪った方天画戟を使って相手の攻撃をいなしつつ、スライディングの要領で股を潜って背後に回って騙し討ち。
貴方はただ惑わされたのよ…だから私の攻撃にも対応できない。
寵姫を喪ったことで貴方は脆くなってしまった。
そう、貴方の存在意義を寵姫に求めたからこそ、負けたのよ。
戦場の覇者。
それは『死者英傑』が嘗て呼ばれたであろう名であった。
手にする方天画戟は言うまでもなく複合武装である。あらゆる状況に対応することが出来る圧倒的な技量がなくば扱うことすらできぬ武装。
それは例え『死者英傑』が我を忘れ、怨嗟の咆哮を轟かせていたのだとしても、変わることのない技量で猟兵へと迫るのだ。
「――ッ!!! オオオオオオッ!!!」
言葉の意味すらわからぬ怨嗟。
それが喪った者の咆哮である。名も、記憶もない。けれど、『死者英傑』にとって重要であったのは、オブリビオン『黒縄華妃』の存在だけであったのだろう。
それを喪ったからこそ、我を忘れているのだ。
「完全に……これは計略による搦手は通じそうにないか」
嵐の中、ベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)は肩をすくめる。
完全に計画が狂ってしまった。
もしも、『死者英傑』と自分が正面から打つかれば、彼女には勝ち目がない。それを悟ることができるほどにはベルゼは冷静であった。
だが、退くことはできない。
『死者英傑』を放っておけば、『梟門』の都は滅びるだろう。
目につくもの全てを破壊する重戦車の如きオブリビオンに封神武侠界の軍隊が勝てる見込みは、ベルゼ以上に低いものであったからだ。
「だったら、アドリブ戦法よ!」
駆け出す。
何はなくとも速度で上回らなければならない。幸いに周囲には先行した猟兵達が破壊した『死者英傑』のユーベルコードによって生み出されようとしていた城壁の瓦礫が存在している。
壁を蹴り、三角跳びの要領で雨の降りしきる戦場を舞う。
「■■■―――ッ!!! オオオオッ!!!」
振るわれる方天画戟の斬撃がベルゼをかすめる。
傷みが走る。けれど、ベルゼの瞳は傷みよりも、『死者英傑』の手にする方天画戟の持ち手に向けられていた。
「そこっ!」
怪盗の予告状のカードを投げ放ち、『死者英傑』から方天画戟を取り落とさせようとする。
だが、それでも己の得物を落とす『死者英傑』ではない。
それで諦めるのならば、『怪盗“R”』に未来はない。大地を蹴り、壁を蹴り、変幻自在なる空中機動でベルゼは『死者英傑』の手の甲へと足を振り下ろす。
一撃で取り落とさないのならば、二撃と加えるのだ。
打ち込まれた踵が遂に『死者英傑』から方天画戟を取り落とされる。
「この程度の修羅場、切り抜けてこそよね!」
その手にはいつの間にか、ずしりと思い方天画戟。
聞きしに勝る使い勝手の悪さ。けれど、それでもベルゼの瞳はユーベルコードに輝く。
彼女の目的は『死者英傑』の得物を奪うことであった。
「■■セ――ッ!!」
迫る巨躯。けれど、ベルゼは冷静であった。
手にした方天画戟は重い。これだけの武装を軽々と振ります膂力こそが、英傑と呼ぶに相応しいものであることを知る。
けれど、彼女とて猟兵である。
迫る拳を柄でいなし、大地を滑るようにして『死者英傑』の股ぐらを潜って、背後へと回り込む。
「貴方はただ惑わされたのよ……だから私の攻撃にも対応できない」
ベルゼの声が『死者英傑』の背後から響く。
その手にした方天画戟を矢を振り絞るように掲げ、投げ放つ。
投擲の一撃は言うまでもなく『死者英傑』の体を貫き、大地へと縫い付けるようにして突き立てられる。
「寵姫を喪ったことで貴方は脆くなってしまった。そう、貴方の存在意義を寵姫に求めたからこそ――」
彼女は見下ろす。
愛は時に人を強くするだろう。
それはただの言葉でしか無いのかも知れない。
けれど、たしかに『死者英傑』と『黒縄華妃』の間にはあったのだ。確かに感じられるつながりが。
「貴方は負けたのよ――」
ベルゼの言葉は静かに響く。
嵐の中であっても良く通る声でもって、宣告するのだ。
『死者英傑』は負けたのだと。
どれだけ高い技量を持っていようとも、半身をもがれたような喪失感を抱えていて勝てるほど、戦は甘いものではない。
それを知らしめるようにベルゼの予告状が『死者英傑』の手の甲に刺さり続けたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
怒り猛るのであれば、もっと早くに戦場に出てくるべきでしたね……尤も、あなたがそうしていたとしても私のやることは変わりません。
建造物を利用した動き……町の外で戦えれば良かったのですが、今から誘導するのはリスクが大きいですね。
ならば、真っ向から迎え撃たせてもらいます。
【ニヴルヘイム】を使用、周囲を覆う冷気で地形や壁を凍てつかせて敵が利用しづらいように。
強化された身体能力があっても元の膂力が違いますし、あちらの攻撃をまともに受けるのは難しい、こちらも地形や壁を利用し敵の攻撃を避け、敵の攻撃にあわせて『カウンター』で絶対零度の弾丸を撃ち込みます。
私は自分が生きるため、オブリビオンを撃つ、それだけです。
『死者英傑』は己の体を貫く方天画戟を躊躇いなく引き抜いた。
鮮血が噴き出し、大地に夥しい量の血が溜まっていく。けれど、過去の化身はそれだけで死なぬ。
死ねるわけがない。
その身を焦がすのは憤怒であった。
己の名も記憶も存在しない虚ろな躯体。
けれど、その中にあった確かなものを奪われたのであれば、もはや、そこには怒りしかないのだ。
「■■■■――ッ!!!」
意味の成さない咆哮が『梟門』の都に響き渡る。
嵐の中を、豪雨の中を、暴風吹き荒れる中を『死者英傑』の咆哮だけが切り裂くのだ。
「怒り猛るのであれば、もっと疾くに戦場に出てくるべきでしたね……」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は絶対零度の冷気を纏い、『死者英傑』と対峙する。
彼女にこの豪雨の雨は雨粒として当たることはない。
彼女に到達する前に雪の一粒となって氷結していく。
それこそが、彼女のユーベルコード。
名をニヴルヘイム。
1分39秒という僅かな時間であれど、その身体能力は人間のそれを遥かに超える。
「尤も、あなたがそうしていたとしても私のやることは変わりません」
方天画戟の切っ先がセルマの眼前に迫る。
けれど、その動きを彼女は完璧に見切っていた。ユーベルコードに輝く瞳の残光が嵐の中に疾走る。
「私が限界を迎えるのが先か、あなたが斃れるのが先か……勝負といきましょうか」
セルマは『死者英傑』と真っ向から激突する。
身の丈も筋力も、そして性別故の身体的な遅れすらもセルマのユーベルコードは帳消しにする。
互いに槍兵が生み出した城壁の残骸を蹴って凄まじい速度で業の応酬を繰り出すのだ。
「■■スッ――!!!」
『死者英傑』が咆哮する。
それは裂帛の気合であったのかもしれないし、怨嗟の咆哮であったのかもしれない。けれど、確実に言えることは、少しでも気を抜けば次の瞬間に倒れているのはセルマであるということだ。
次々とセルマが壁を、瓦礫をける度に氷結させていく。
それは足場を習熟していない『死者英傑』にとっては不利な状況が続くことを意味する。
戦いが長引けば長引くほどに、戦場はセルマの独壇場へと変わっていくのだ。
「どれだけ強化されていたとしても――!」
膂力は『死者英傑』の方が遥かに上であろう。
受けては、即座に敗北を意味する。ゆえにセルマは凄まじい速度で絶対零度の戦場を駆け抜ける。
放つ弾丸は絶対零度の冷気を帯び、放たれた方天画戟の斬撃をかいくぐり、『死者英傑の体へと打ち込まれる。
「――ッ!!!!」
その猛り狂う咆哮を聞いてもセルマは立ち止まらない。
トリガーを引く指が止まることはない。
「私は自分が生きるために、オブリビオンを撃つ、それだけです」
生きることは戦いの連続だ。
自分から奪う者がいるのならば、それを排除しなければ生きていくことすら難しい。生きる理由がなんであれ、否応なしに戦いは人に選択を強いる。
それは即ち、戦って勝ち取るか。
それとも、敗れて隷属を強いられるか。
セルマは勝ち取る。オブリビオンという圧倒的な強者が齎す隷属を打ち破り、真に自由を得るために。
「そのために……その怒りも、怨嗟も、全て」
凍りつかせる。
放つ氷の弾丸が『死者英傑』の体を穿ち、その巨体を凍らせ、動きを鈍らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・リデル
地を揺るがせ、天を荒れさせる怨嗟の咆哮ですか。
流石は英傑だった存在と言うべきなのでしょうね。
……死者を墓場から掘り返し、破滅へと向かう存在に成れ果てさせる。
封神台の破壊者の罪は重いですね。
オド(オーラ防御)を活性化して死者英傑と対峙。
オーラセイバーと魔法を駆使して戦いながら、周囲に一般人が居ない場所に誘導します。
その上で至近距離で『魔力解放』を発動。自身を中心とした半径100メートル近くの何もかもを消滅させます。
骸の海に還りなさい。そこで貴方を待っている者がいるでしょう。
「地をゆるがせ、天を荒れさせる怨嗟の咆哮ですか」
ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は『梟門』の都を包み込む異様なる光景に呟いた。
彼女の視界に映るのは、オブリビオン『死者英傑』。
嘗ての『英傑』は今や過去に歪み、怒りと憎しみに咆哮する。人の身ならざる者が呼ぶ嵐は吹き荒れ、豪雨と暴風、そして雷鳴が轟かせるのだ。
「流石は英傑だった存在と言うべきなのでしょうね」
だが、それはあまりにも歪な存在でしかなかった。
過去の化身。
オブリビオンとして蘇った姿と存在意義は、嘗ての英傑であった頃の面影はどこにもないだろう。
「■■■■――!!! オオオオ――!!!」
咆哮が轟いている。
その身を凍結させられても、未だ動いている。
肉体には大穴を開けられ、斬撃と打撃の痕が痛ましく残っているが、それでもな憎しみと怒りにかられて動き続けるのだ。
「……死者を墓場から掘り返し、破滅へ向かう存在に成れ果てさせる。封神台の破壊者の罪は重いですね」
ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
オドの力が活性化され、オーラセイバーを構え『死者英傑』と対峙する。
互いの出方を見定める……そんな暇すらないほどに『死者英傑』は駆け出す。踏み込んでくるのだ。
到底消耗させられた者の動きではない。
尋常ならざる動きで、手にした方天画戟を振るい、周囲に在る瓦礫を利用してステラとの距離を詰めるのだ。
「誘導する暇もないですか……ですが」
輝くユーベルコードの力は、魔力解放(ブルー・インパクト)。
全身から『消滅』の魔力を放ち、瞬時に『死者英傑』の体を打ち据える。
どれだけ『死者英傑』の反応速度が人外のものであったのだとしても、至近距離であらゆるものを破壊せしめる魔力を前に逃げることはできないだろう。
槍兵達が生み出した城壁諸共、『死者英傑』を吹き飛ばす一撃。
しかし、その衝撃の中から怨嗟の咆哮が轟き、ステラへと迫る影があった。
「これでも尚、向かってきますか」
並のオブリビオンであれば、今の一撃で終わりだったはずだ。
けれど、己に迫るオブリビオンの気迫をステラは物悲しげな瞳で見つめていた。
悲しいと思うか、それとも憐れと思うか。
それはステラの胸中にしかなく、知り得る理由はなかったであろう。
けれど、今まさに迫らんとする方天画戟の一撃を彼女はオーラセイバーで受け止める。
憤怒の形相を見せる『死者英傑』。
愛しき者を喪った、奪われた者が見せる怒りの様相は、鬼気迫るものであった。
同情に値するのかもしれない。
けれど、それは決して理由にならないのだ。オブリビオンは世界を壊す。世界を壊せば、この封神武侠界に生きる人々は滅んでしまう。
「その怒りが天を荒れ狂わせることができたとしても、貴方が存在していい世界は此処ではないのです」
受け止めた方天画戟の一撃は、オーラセイバーによっていなされ、返す刃は一閃となって振り下ろされる。
「骸の海に還りなさい。そこで貴方を待っている者がいるでしょう」
現し世で共に在ることが叶わぬのならば、せめて。
過去に沈んだ先に在る者がいる。それが彼と彼女に存在する唯一の慰めであろう。
ステラは、それを剣閃の一撃に籠めて『死者英傑』の猛り狂う情念を斬って捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
咆哮で豪雨を呼ぶとかとんでもねー奴だな!?
…上等だ、受けて立ってやろうじゃねーか
[SPD]
Es、【情報収集、索敵】で開けた場所をピックアップ頼む
できれば置かれた物品も少ない所で
『了解…ではSSに表示されたマーカーの所へ移動を』
対峙したら基本は受け身からの【カウンター】
Esと精神同調して反応速度を【限界突破】
敵の攻撃を【瞬間思考力、見切り、気合】で避けながら
電気【属性攻撃】を付与した流星とEKで【咄嗟の一撃】
捨て身の一撃は驚異だがそれ故に【マヒ攻撃】の効きも早い
【体勢を崩す】のを見計らい【衝撃波】アッパーで上空に【吹き飛ばし】
雷鳴を構えて【UC、貫通攻撃】で雷雲諸共ぶっ飛ばすぜ!
アドリブ歓迎です
サポートAIの搭載されたドローンが飛ぶ。
吹き荒れる暴風の中であっても、『Es』と名付けられたAIが星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)にオブリビオン『死者英傑』の存在の位置を知らせる。
すでに猟兵達によって誘導され、広場で戦いを続けるオブリビオンの咆哮が急行する祐一の元にまで響いていた。
雷鳴さえも轟き、豪雨が薙ぐ『梟門』の都にあって尚、『死者英傑』の怒りは凄まじいものであったと言えるだろう。
「咆哮で豪雨を呼ぶとかとんでもねー奴だな!?」
泣き言ですか、と『Es』が言う。
冗談じゃない、と祐一は不敵に笑った。
雨が体を濡らし、体温を奪っていくが、自然と祐一の笑みは消えることはなかった。
むしろ、胸の内側から闘志が湧き上がってくるようでも在ったのだ。
「……上等だ、受けて立ってやろうじゃねーか」
『了解……ではSSに表示されたマーカーへ移動を』
わかってるって! と祐一は駆け出す。
未だ鳴り止まぬ咆哮が戦いの激化を知らせる。
猟兵達が次々と攻撃を叩き込み、体に大穴を空け、打撃を打ち込まれても尚『死者英傑』は立っていた。
手にした方天画戟は折れず、未だその手に在る。
「■■■■――ッ!!!」
その咆哮と共に放たれる一撃は、ただのそれだけで雷鳴すらも切り裂くようであった。
吹き荒れる衝撃波が祐一を襲う。
けれど、祐一は立ち止まらない。サポートドローンである『Es』から送られてくる情報と精神を同調させて反応速度の限界を超える。
越えてなお、頬をかすめる斬撃の凄まじさにおののくことなく祐一は前へ、前へと進むのだ。
一瞬の思考。
考えることをやめてはならない。彼我の戦闘力の差は歴然である。
けれど、考えることをやめた時が祐一の敗北の時。ならば、考え続けなければならない。手にしたエクステンドナイフが振動する。
「これで止まらねーっていうんならさ!」
手にしたリボルバータイプの熱線銃が雷を纏った弾丸を放ち、『死者英傑』へと打ち込まれる。
けれど、それでも止まらない。
まるで重戦車と相対しているかのような猛烈な突進を受けながら、祐一は吹き飛ばされる。
瓦礫の上へ倒れながらも祐一は見た。
荒天の空から降り注ぐ方天画戟の一撃。
躱す。
いや、躱すという思考を捨てる。あるのは捨て身の一撃。
放つ熱線銃の弾丸が『死者英傑』の振り下ろす斬撃の一撃を逸らす。
「――この一撃雷で終わりにしようぜ……!」
体を跳ね上げ、祐一はエクステンドナイフを振り下ろされた『死者英傑』の方天画戟を握りしめる手の甲へと叩きつける。
一瞬の隙。
「お前が呼んだ雷雲共々――!」
ぶっ飛ばす!
すでに両手に得物はない。けれど、男ならば誰もが最後に残る武器を持っているだろう。
そう、握りしめた拳だ。
「ぶっ飛ばす――!」
放つ拳は奇しくも、曇天を貫くようなアッパー。振り上げた拳が『死者英傑』の顎を捉え、その肉体を突き上げさせる。
放たれた拳の一撃が『死者英傑』の意識を刈り取るように。
そして、暗天の空を晴らすように、凄まじい一撃となって、打ち込まれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
生前は一廉の人物だったのかもしれないけど
もう倒すしかないね
とはいえどう攻めたものかな
あの闘気は厄介だね
でしたら手伝って差し上げますの
命の無い彫像になれば生命力を吸われる事はありませんの
壊れても即座に直して差し上げますの
助けてくれるのはありがたいけど
ちゃんと元に戻して貰えるんだよね
宵闇の衣のデザインが
黒縄華妃のドレスっぽくなってるのは何故?
さあ、早く行かないと無辜の人々が犠牲になりますの
ガトリングガンで射撃し
接近されたら石になり強化された拳や脚で攻撃
方天画戟は石の肌で滑らせて受け流すよ
大切なものを喪ったのかもしれないけど
だからといって無関係の相手を傷つけて良い訳じゃないからね
骸の海に還って貰うよ
英傑とは即ち一廉の人物である。
その名を残す人物であるが故に、その能力の高さは言うまでもない。
けれど、それだけの英傑であったとしても、骸の海に沈めば過去の化身として過去に歪められてしまう。
蒼天を暗天へと変え、雷鳴轟く嵐に変えてしまう。
それほどまでに圧倒的な力を持つ『死者英傑』の名を知る者はいない。
今、そこに在るのは破壊と殺意、そして憎しみだけであった。
「■■■■――ッ!!!」
怨嗟の咆哮は最早、意味すら持たぬ。
ただの憎しみの塊でしかない。
だが、英雄であったことに変わりはなく。その身を包み込む闘気は、彼の体に刻まれた傷跡をもって凄まじき力を発揮する。
「生前は一廉の人物だったのかもしれないけど、もう倒すしかないね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)にとって、それはもうどうしようもないことであった。
例え、どれだけ一廉の人物であったのだとしても、過去に歪んだ以上倒すほかない。けれど、怨嗟の咆哮の如く響き渡る『死者英傑』の闘気は凄まじいものであった。
「とはいえどう攻めたものかな……」
「でしたら手伝って差し上げますの。命の無い彫像になれば生命力を吸われることはありませんの」
邪神の施し(リビング・スタチュー)と邪神の分霊が晶にふれる。
彫像化の魔法陣が晶の体に触れた瞬間、奪われていく生命力の力を断ち切るように身体が石像へと変わっていく。
「助けてくれるのはありがたいけど、ちゃんと元に戻してもらえるんだよね」
そんなふうに一抹の不安を覚えてしまうのは、相手が邪神の分霊であるからだろう。
自分とは違う価値基準で動く邪神の言葉ほど裏を取らねばならぬことはない。
宵闇の衣のデザインがいつのまにか『黒縄華妃』を参考にしたような華美でありながら大胆な露出のもの変わっていることに晶は気がつく。
「ちょっとまて。なんで、こんな――!」
「さあ、早く行かないと無辜の人々が犠牲になりますの」
そんなふうに会話を断ち切られてしまう。
やられた、と思う比まもなく晶は迫る『死者英傑』の方天画戟の一撃を躱す。
「文句を言う暇もないなんて!」
ガトリングガンでの斉射が『死者英傑』を穿つが、重戦車の如き突進は止まらない。
確かに猟兵達の攻撃に寄って消耗しているはずなのに、止まらないのだ。
圧倒的な進撃。
この『死者英傑』が『梟門』の都を縦断すれば、どんな被害が及ぶかわからない。
ここで止めなければならないのだ。
「大切なものを喪ったのかもしれないけれど、だからといって――!」
放たれた方天画戟の一撃を晶は彫像化した石の肌で滑らせるように受け流す。ぎしりと石像化した肌にひびが入る。
「■■■ズ――! ■ス――!」
その咆哮が晶の肌をびりびりと圧する。
けれど、それでも。それでも晶は言わねばならない。
「無関係の相手を傷付けて良い訳じゃないからね」
彫像と化した腕が方天画戟の一撃を振り払い、踏み込む。ガトリングガンの銃口を『死者英傑』へと押し付け、トリガーを引く。
そう、誰しもが大切なものをもっている。
けれど、誰かの大切なものを他者が思いやってくれるかと言うとそうではない。必ずしも、そうではないのだ。
だから、猟兵がいる。
誰かの大切なものを護るために、他者を害するものを打ち払う。
それがオブリビオンであるからこそ、晶は躊躇いなくトリガーを引くのだ。
「骸の海に還ってもらうよ――!」
銃声が鳴り響き、『死者英傑』の身体を穿つ。
喪っても、喪っても、それでも立ち上がらなければならないのが人であるのならば、終わった存在であるオブリビオンは還らなければならない。
今を生きる人々を害していい理由など、現し世には何処にもないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…完全に狙われてるね……とは言え、一般人が狙われるよりは好都合だ…
…あそこまで強化されているなら近寄られたら終わり…だからその前に仕留めるしかないか…
…【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…500を超える魔剣を時間差で次から次へと発射…
…あらゆる角度から…足止めをするかのように英傑へと攻撃を仕掛けるよ…
…英傑の挙動…特に足運びを重点的に分析しながらじりじりと後退…
…それに合わせて英傑が間合を詰めんと踏み出す一瞬…その足運びを読んで足下、雨で泥濘んでいる地面を静謐の魔剣で『凍らせて』滑らせる…
…体勢が崩れた瞬間に残りの魔剣を一斉射…そして術式装填銃【アヌエヌエ】による射撃を叩き込むよ…
オブリビオンは猟兵を滅ぼさなければならない。
同時に猟兵もまたオブリビオンを滅ぼさなければならない。互いに滅ぼし合う関係性でしかないのだとしても、『死者英傑』のほとばしる怒りは尋常ならざるものであったことだろう。
それほどまでに『死者英傑』の怒りは苛烈なものであった。
『梟門』の都を縦断する重戦車。
それが『死者英傑』であった。
かつて英傑であった頃の闘気。それを漲らせ、あらゆる生命を吸い上げていく力。それこそが滅びを齎す存在である証左である。
「■■ッ、■ス――ッ!!!」
その咆哮は猟兵に向けられている。
例えどれだけ体に大穴を穿たれようとも、斬撃を加えられようとも止まらない。止まることを知らない。
「……完全に狙われてるね……とは言え、一般人が狙われるよりは好都合だ……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は戦局を見定める。
すでに多くの猟兵達が『死者英傑』を止めるために攻撃を加えてくれている。
それは多大な消耗を『死者英傑』に強いているが、未だ止まらぬのは、彼のユーベルコードの力であろう。
「あそこまで強化されているなら近寄られたら終わりだ……だからその前に」
仕留めるしかないとメンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
詠唱とともに放たれるのは空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)である。
放たれた剣はあらゆる角度から『死者英傑』を狙い、足止めするように500にも及ぶ魔剣が時間差で襲うのだ。
しかし、重戦車と表現したのは大袈裟ではなかった。
命中した端から凍結する氷の属性を持つ魔剣をしても、『死者英傑』を止めるには値しない。
足元へと重点的に剣を放って凍結させているというのに、己の身体が傷つくことをいとわずに突き進むのだ。
「……それが英傑の矜持だというのなら」
なら、何故過去に歪んでしまったのだろう。
誰かのために怒ることのできる心根が在って何故。高潔な存在であったとしても過去は捻じ曲げてしまうのか。
それを悲しいとは思わないけれど。
けれど、今を生きる人々を害するのであれば話は別である。メンカルは見定めていた。
重戦車であろうとも足場を崩されれば、弱点である車底を晒すように。英傑である『死者英傑』も体勢を崩せば躱しきれるものではない。
ゆえに、一歩を踏み出した瞬間を狙って魔剣を放つ。
豪雨にぬかるんだ足元を瞬間的に凍らせ滑らせるのだ。
類まれなる体幹を持っていたとしても、滑って体勢は僅かでも傾ぐ。
「……逃さない」
メンカルの号令と共に体勢を崩した『死者英傑』に殺到する魔剣の群れ。
それは次々と剣山のように『死者英傑』の肉体に突き刺さり、瞬時に凍結させていく。
さらにメンカルは術式装填銃を構える。
「……どれだけ強くても、終わりは来る。必ず来る。だから……せめて、その怒りが嘗て大切であったものを傷つけることのないように」
メンカルの瞳が『死者英傑』の咆哮を響かせる憤怒の形相を見定める。
怒りに呑まれ、総てを忘れて破壊しか齎さぬ化身。
その眉間に引き金を引くのだ。
放たれた弾丸は過たず『死者英傑』の眉間を貫き、その巨体を打ち倒すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ふーん、オブリビオンであるくせに
奪う者であるくせに、奪われるのには悲しむんだ
傲慢だねえ
なんというか、過去の英傑もこうなると哀れなだけの存在だよ
まあ、そういうもんか…
●
けれど…ま、強いなら楽しめそうだ
敵が召喚した兵達は剣による『斬撃波』を飛ばして『吹き飛ばし』てどっかに行って貰おう
その変でお城を作るなり、壊れた街を直すなりしててよ
私は奴と斬りあいたいんだ
2刀により『2回攻撃』で英傑と斬りあいながら戦闘開始
そして【Code:B.T】を起動
まずは左手の一太刀で一瞬だけ敵の動きを操作…まではいかなくとも鈍らせる
そして本命、右の一太刀で右足を狙い『エネルギー充填』した雷で爆破
機動力、奪わせて貰うよ
眉間を撃ち貫かれた『死者英傑』の身体が傾ぐ。
ぐらりと巨体が揺れ、大地に堕ちようとした瞬間、その足が凄まじき力で持って踏みとどまる。
まだ倒れることを許さぬというように『死者英傑』の周囲に集まったのは、精鋭僵尸槍兵であった。
彼らが倒れようとする『死者英傑』を支え、立ち上がらせる。
「――ッ!!!」
言葉にならぬ咆哮が響き渡る。
『梟門』の都に響き渡り、荒天を呼び寄せ雷鳴を轟かせる『死者英傑』の力は凄まじいものであったことだろう。
力をふるい、嘗て降りかかる災厄を払った過去も、今は歪んでしまっている。
喪ったものを嘆き、怒り、狂う。
まさに災厄そのものであった。
「ふーん、オブリビオンであるくせに、奪う者であるくせに、奪われるのには悲しむんだ」
その姿を見て、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は傲慢極まりないと呟いた。
例え、英傑がどれだけ高潔な存在であったのだとしても、こうなってしまっては憐れなだけの存在だと思わざるを得なかった。
時間はいつだって古き者の敵だ。
若き者は時間を味方につけて、軽々と追い抜いていく。それが例え、いつかは若き者に降りかかる試練であったのだとしても。
「まあ、そういうもんか……」
遣る瀬無い。
あまりにも。けれど、玲は心機一転する。気持ちを切り替える。過去に歪んだ存在だとしても、その力は折り紙付きである。
言うまでもなく強いと感じる重圧だ。
「■■ハ、■ス――ッ!!!」
その傲慢ささえ感じる咆哮に玲は不敵に笑う。強いのならば楽しめそうだと、笑うのだ。
模造神器が放つ斬撃が、精鋭僵尸槍兵を一気に吹き飛ばす。
「おじゃま虫はどこかへ飛んでお行き! そのへんでお城作るなり、壊れた街を治すなりしててよ」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
その瞳に残光が嵐の『梟門』の都に疾走る。
互いに打ち合うは幾合か。
剣戟の音が雷鳴に負けじと響き渡る。
「斬り合いたいって思っていたんだよね!」
模造神器の二振りの斬撃が『死者英傑』と切り結ぶ。言うまでもなく方天画戟は複合武装である。
斬撃、刺突、引っ掛ける、払う。多種多様な技巧を受け止める将器。
ゆえに方天画戟を操る英傑の将としての力は凄まじいの一言である。ゆえに玲は切り結ぶのだ。
「疑神の雷、その身に直接叩き込んであげる」
Code:B.T(コード・ブルーサンダー)。それは斬撃が放たれた瞬間雷を流し込む絶技。
打ち込んだ雷は、体内電流を操作するように『死者英傑』の身体を操作する。だが、その操作する力すらも『死者英傑』ははねのけてみせるのだ。
「■ス! ■ス! ■スゥゥゥ――ッ!!!」
振るわれる方天画戟の重さは言うまでもない。
玲の腕がきしむ。けれど、笑った。達人と切り結ぶとは。強者との戦いとは、常にこういうものだ。
模造神器の一撃が、方天画戟を横薙ぎに振り払う。
二刀を操る玲にとって、それは造作も無いことだ。
女の細腕とは思えぬほどの膂力でもって二刀を操る技量。それをもって玲は『死者英傑』に肉薄する。
「奪う奪われるじゃなく、どうして、その怒りの源に在る優しさをもっと器用に使えなかったんだろうね? 不器用だからって理由で何もかも流せるとは――!」
思わないことだと、玲は模造神器の一刀を『死者英傑』の右足へと突き立てる。
瞬間、流し込む雷の力が炸裂し、『死者英傑』の右足を吹き飛ばす。
ほとばしる雷が嵐の中、地上に輝き『死者英傑』を吹き飛ばす。
「悪いけれどね。機動力、奪わせて貰うよ」
玲は模造神器の残光を残して、溢れる蒼き雷の力を迸らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
自我すら定かならぬ故に、傍にあった『唯一』を求むる…
ええ、私にも覚えがありますとも
6基のUC取り出し背部から出したワイヤーアンカー先端に接続
長大な光剣を形成
鞭か腕のようにアンカーを●操縦し近づく槍兵達をなぎ払い
格納銃器の乱れ撃ちも合わせて排除しつつ英傑に接近
その所業の是非に関わらず、その憤怒は正しきもの
なればこそ、それを受け止めるのも騎士の務め
センサーでの情報収集を瞬間思考力で分析
状況●見切り、横槍入れる兵の排除と同時進行で一騎打ち
剣と盾で方天画戟を打ち払い反撃繰り出し
そして都の、人々の安寧の為…譲る訳にはいかないのです!
推力移動も合わせた脚部UCの回し蹴り騙し討ち
記憶無き者にとって、重要なものは一体なんであろうか。
己の名か。
それとも、来歴か。いずれにしたとしても、過去より滲み出た存在であるオブリビオンにとって重要であったのは己の欲望を識ることであったことだろう。
そういう意味では『死者英傑』は己の名に頓着などしていなかった。
そして、己の来歴にもまた興味はなかった。
在ったのは、己に触れてくれたたおやかな指先のぬくもりだけであった。それが偽りと過去に染まった歪んだ情愛だったのだとしても、誰がそれを咎めることができるだろうか。
否。
そう、咎めることができたのは猟兵だけであったことだろう。
オブリビオンが世界を壊すからこそ、猟兵は駆けつける。世界を救わんと戦うのだから。
「自我すら定かならぬゆえに、傍にあった『唯一』を求める……ええ、私にも覚えがありますとも」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、己もまた記憶という名のデータの欠落した存在であるがゆえに一定の理解を示した。
慟哭の如く響き渡る怨嗟は、もしかしたのならば己もそう在り得たのかもしれぬという想いを打つものであった。
しかし、それは結局の所在り得たかもしれないだけの話であって真実ではない。
今此処に在るトリテレイアという機体は、目の前で右足を失い、身体のあちこちに戦いの傷跡を残す『死者英傑』ではないのだから。
「――ッ!!!」
激痛が走っているであろうに『死者英傑』は止まらない。
トリテレイアが何かをする前に潰さんと精鋭僵尸槍兵をけしかけるのだ。
「騎士として恥ずべきこの戦法、敢えて使わせて頂きます」
それは六基の大出力可変式/足部隠蔽収納式擬似フォースセイバー(フォースセイバー・イミテイト)であった。
ワイヤーアンカーで接続された長大な光剣は鞭のようにしなりながら、槍兵たちの尽くを薙ぎ払う。
格納銃器の弾丸もまた乱れ撃たれ、槍兵たちを近づけさせないのだ。
「その所業の是非に関わらず、その憤怒は正しきもの」
そう、奪われた悲しみは、怒りは、どんな事情があれど正しいとトリテレイアは判断する。
それは画一的な判断材料でしかなかったかも知れないが、それでも怒りを己達に向ける事自体は正しいのだと言う。
「なればこそ、それを受け止めるのも騎士の努め」
迫る『死者英傑』。
右足を喪っても尚、飛びかかる姿は在りし日の英傑そのものであったかもしれない。
けれど、それは悲しいことだ。
どこまで行っても過去に歪められたという事実しか浮かび上がってこない。トリテレイアはそれが残念でならない。
過去の英傑も、過去に歪んだ結果、怒りと悲しみだけが正しさを持たぬというのは、あまりにも悲しい。
「ゆえに、討ちましょう」
他の誰もが討てぬというのであれば、猟兵である己達が決着を付けなければならない。
アイセンサーが輝き、一瞬の交錯に疾走る。
横槍を入れる槍兵たちの動きを牽制しながら、己の剣と盾でもって方天画戟の一撃を防ぐのだ。
「■■ッ! ■■■■――ッ!!!」
咆哮が轟き、方天画戟の偃月がトリテレイアの盾に引っかかり、引き剥がすように盾を宙に放り投げる。
振るわれた剣の一撃を柄で受け止め、返す刃で斬撃をトリテレイアへと叩き込むのだ。
片足を喪っても尚、衰えぬ気迫。
トリテレイアは覚悟した。そう、それは騎士の矜持が見せる輝きであった。
「見事ですが……! それでも! 都の、人々の安寧の為……譲るわけにはいかないのです!」
剣が折れた。
けれど、構わなかった。己の身体は戦機。ならばこそ、総ての躯体が武装そのものである。
推力移動に合わせたスラスター光が放つ脚部を凄まじい勢いで放つ。
それは回し蹴りの一撃となって『死者英傑』の頭部をしたたかに打ち据え、吹き飛ばす。
放った脚部がひしゃげるほどに一撃。
奇しくも『死者英傑』と同じ損傷となれど、それでも最後に立っていたのは機械騎士であるトリテレイアであった。
「――その名を知れぬことが心残りではありますが……その怒りと悲しみは私のデータの中に記憶しておくとしましょう」
手向けのように言葉を投げかけ、トリテレイアは沈む『死者英傑』を下すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
なんと……英傑たる者の魂が、ここまで荒んでしまうとは。
いや、それこそ俺の『霊剣』の出番でござるな。
拙者、愛久山清綱。其の魂、祓わせて頂く!
■闘
英傑殿の誇りを護るべく、あえて真正面から行くぞ。
兵団とは可能な限り戦闘を避けるが、万一囲まれた場合は
【怪力】を込めて槍を【武器受け】し、力強く振り払って
周囲に【衝撃波】を放ち強引に道を拓く。
城塞は【ダッシュ】や【ジャンプ】を駆使し、パルクールの
要領で一気に進むぞ。
英傑が見えてきたら刀に【破魔】の力を込めて雑念を払い、
【夜見・慈】による痛みを与えない霊力の一太刀を放ち
荒ぶる魂を少しでも【浄化】するのだ。
兵の道は、遠退くばかり……
※アドリブ歓迎・不採用可
『死者英傑』の肉体はすでに限界であった。
腹には大穴が、右足は喪われ、眉間には弾丸の痕。打ち込まれた斬撃と打撃の痕は数しれず。
けれど、方天画戟の柄を足代わりに『死者英傑』は立ち上がっていた。
荒天の下、『梟門』の都に嘗て在りし英傑の再来が在った。
「なんと……英傑たる者の魂が、ここまで荒んでしまうとは」
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)にとって、それは惜しむべきことであった。
過去に歪んだ英傑。
名も知らぬ、名乗る名も喪った英傑に敬意はあれど、その魂の荒み方は嘆くものであった。
「いや、それこそ俺の『霊剣』の出番でござるな。拙者、愛久山清綱。其の魂、祓わせて頂く!」
槍兵たちが清綱の行く手を阻むようにずらりと居並ぶ。
その光景は恐怖を齎すには十分であったが、英傑の魂を、その誇りを護るべく真正面から突っ込む清綱にとっては、恐れるに足りるものではなかった。
放たれる槍の一撃を真正面から受けがなし、力強く受け止める。
「この程度の業で拙者が――!」
止められるものかと猛禽の翼を広げた清綱が槍をつかみ、槍毎、槍兵の身体を振り回し、周囲に居並ぶ者達を吹き飛ばす。
強引な道の開き方であった。
けれど、それほどまでに清綱の気力は充実していた。
誰かのために戦うことこそが猟兵の本分であるというのならば、清綱は今こそ己の納めた霊剣の力を振るう時であったからだ。
そこにオブリビオンに向ける敵意はなかった。
組み上げられた城壁を一気に駆け上がる。
身体が軽いとさえ、清綱は思った。これが誰かのために何かを為すということであるのならばこそ、得られる力である。
「英傑殿! その魂が嘗て高潔であられたのならば――!」
「■ス、■ス、■■ハ、スベテ■ス――ッ!!」
ああ、とその咆哮を聞いて清綱は嘆いた。
嵐の中で切り裂くような怨嗟の咆哮にかき消された、清綱の言葉は届かない。
ならば、自分が為すべきことは一つである。
握りしめた己の刀に籠められた破魔の力。雑念を払う。どれだけの来歴が『死者英傑』にあり、その悲しみ、怒りがどれほどのものであったとしても、精神を統一する。
そこにあったのは『死者英傑』を打倒するという思いではなく、荒ぶる魂を少しでも浄化せしめんとする願いであった。
「兵の道は、遠のくばかり……」
自分もまた平静ではいられなかったことだろう。必ず救うと決めた道。
けれど、その道程の険しきことは言うまでもない。
知らねばならない。
いつだってそうだけれど、正しい道はいつだって険しく困難で長き道のりだ。誰もが選ばない。無謀だと思われる道筋こそが、いつだって正しい道なのだ。
ゆえに、清綱は邁進する。
振るわれる方天画戟の斬撃の一撃が清綱の身を穿つ。
けれど、傷みはすでに意識の外にある。どれだけ己が傷つこうとも関係ない。それこそが己の求める兵の道なればこそ――!
「秘伝……夜見」
そのつぶやきと共に放たれるのは、痛みを与えぬ霊力を籠めた一撃。
その斬撃は一刀の元に荒ぶる魂を切り裂く。
魂魄だけを断ち切る一撃。
それは過去に歪められた者の心を浄化させるには十分なものであったのではないだろうか。
いや、そうであって欲しい。そう願うことが、清綱にとっての魂の救済。それを為すために己の霊剣があるのであればこそ。
其の瞳はユーベルコードに輝き、『死者英傑』の魂という楔を切り裂く夜見・慈(ヨミ)の業として、一閃を嵐の空に刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
秦・美芳
わわっ!?
おおー…って嵐に感心してたらダメね
困っている人がいたら助ける
それが人の道
その咆哮
黒縄華妃を失った慟哭だとしたら
とても悲しいけれども
めいふぁんたちは負けるわけにはいかないよ!
ここで倒す!
とか言いつつ
槍とめいふぁんの腕の長さじゃ完全に負けちゃう
真正面からじゃ無理
【天人飛翔】でまずは回避の態勢
刺突の鋭さがすごければすごいほど
その風圧で回避するよ
そのまま風に乗って死者英傑の元へ
拱手してから構え
強きに礼を尽くすは当然
でも降魔拳伝承者としても退くわけにはいかないね!
「勝負!」
こっちは真正面から【降魔点穴】でいくよ!
※アドリブ連携OK
霊剣の斬撃が、その魂に穿たれた楔の如き憎悪を切り捨てる。
だが、オブリビオンである以上、『死者英傑』は倒れない。どれだけ憎悪を切り捨てたのだとしても、残る悲哀がある。
世界を恨み、世界を破壊せんとする荒ぶ魂の慟哭は未だ『梟門』の都に響き渡る。
人々は恐れ慄いたことだろう。
その怨嗟の咆哮が己達に向けられているのではないだろうかと。破壊の化身。『死者英傑』の暴力の矛先が自分たちに向けられた時、犠牲になるのが誰であるのかを恐れた。
けれど、その恐れを払拭するのが猟兵である。
そして、憎悪と悲哀、その連鎖を断ち切るのが『降魔拳』であるのならば、秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)は羽衣人の軽やかな身体を嵐吹き荒ぶ戦場へと降り立つのだ。
「■■ッ! ■■■■――ッ!!!」
言葉にならぬ怨嗟。
それを受けて、美芳はたじろいだ。
「わわっ!? おおー……凄まじい嵐ね。けれど、感心していたらダメね。困っている人がいたら助ける。それが人の道」
ならば、彼女ができることはなんであろうか。
言葉にならぬ怨嗟の咆哮。
それがオブリビオン『死者英傑』の胸の内を物語っていると彼女は感じただろう。
オブリビオン『黒縄華妃』を喪った慟哭にほかならない。もしも、それが間違っていないのだったのならば、これほど悲しいことはなかったことだろう。
けれど、それでも相対するはオブリビオンである。
「めいふぁんたちは負けるわけにはいかないよ!」
拳を打ち鳴らす。
その拳の意味を。宿った力の意味を美芳は知っている。自分たちが『死者英傑』を倒せなければ、嵐以上の災厄が『梟門』の都に降りかかるだろう。
そうなってしまえば、泣くのはいつだって弱者だ。
それを許せないと思う義侠の心こそが、オブリビオンに対抗する力そのものであった。
槍兵達が溢れかえり、美芳に襲いかかる。
「――ここで倒す!」
槍の切っ先をひらりひらりと華麗に舞うように羽衣人の美芳は躱す。
鋭ければ鋭いほどに彼女の体捌きは既の所で刃を躱して、宙に舞う。風に舞うように、例え暴風の中で合っても美芳は軽やかに身を翻す。
「■■――ッ!!!」
咆哮が痛いほどに美芳の肌をびりびりと響く。
「強きに礼を尽くすは当然……でも、降魔拳伝承者としても退くわけにはいかないね!」
拱手を持って一礼をする彼女を前に『死者英傑』は止まる。
どれだけ怒りに呑まれていたのだとしても、その礼節を重んずる彼女の所作に動きを止める。
そこにあったのは武人としての誇りだったのかもしれない。
全てを持たぬと思っていた『死者英傑』にも残るものはあったのだ。大切なもの。一つではないのだ。
喪っても、喪っても、人の中には残るものがある。
美芳は確信し、構える。
「勝負!」
互いに駆け出す。
『死者英傑』の右足は喪われていて、身体は猟兵達の様々な攻撃で消耗しきっている。
けれど、そこに侮る心はなかった。
全身全霊を籠めた指突の一撃をもって、美芳は己の『降魔拳伝承者』としての矜持を放つ。
――降魔点穴。
それこそが降魔拳の秘技にして基礎。
凄まじき指の力が闘気を押し出し、『死者英傑』の身体の中で溢れるようにめぐる。
放たれた一撃が『死者英傑』の身体を内側から爆散させ、霧散させる。
言葉にならぬ咆哮を響かせていた『死者英傑』の最期は、言葉すら必要としないものであった。
今際の際に告げる言葉もなく。
けれど、強き者への礼節を重んずる美芳は再び拱手でもって、『死者英傑』の最期を看取るのだ。
「蒼天すらも陰らせる嵐を呼び込む力……その力が過去に歪められるのなら――」
これを平定するのもまた猟兵の努め。
一礼の後に美芳は瞳を開き、そこに嵐過ぎ去りし蒼天の空を映し出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵