重なり合うは必然か、エースの再来
●動乱
小国家『フィアレーゲン』は激動の時代に足を踏み入れていた。
激化する小国家同士の争い。
その火種は容易に周辺国へと飛び火する。これまでクロムキャバリアにおいて幾度となく繰り返されてきた光景であった。
平和は長続きしない。
どれだけ願ったとしても、ずっとは続かない。それどころか、平和の意味すら知ることのできない者たちだっている。
いつだって戦い続けなければならないのだとしたら、それは人の思いをキャバリアが忘れないためであるのかもしれないと、いつかの誰かが言っていた。
「だから。だから、人を超えた力が要る。巨大な力があればこそ、人はそれに従うのだ。嘗ての『憂国学徒兵』、その旗印であった『フュンフ・エイル』に人々が従ったように」
その演説は小国家『フィアレーゲン』に響いた。
それは力で力を抑え込み、恐怖で持って他者を圧するものであったけれど、平和の意味を知らぬ人々にとって、それは手段でしかない。
力さえあれば、争いは終わるのだ。
その後に来るであろう恐怖と力による統治が生み出す悲劇すらわからぬままに。
「私は証明しよう。キャバリアが強大な力として、戦場を支配するのならば、それこそが私達の生活を豊かにするものだと。生命が他者の生命を食らい生きながらえるように、私達もそうあるべきだ。最速にして、最強の力を持ってこれを為そう」
『ツェーン』と呼ばれた少女が宣言する。
彼女は年端も行かぬ少女であったが、『フィアレーゲン』におけるキャバリア戦闘において、随一であった。
「私は『フュンフ・エイル』を超えた。そう在るべきと生み出されたからだ。明日の豊かな生活を夢見るのならば、私に続け。奪おう。掴み取ろう。明日さえも見えぬ争いに終止符を打とう。私達の明日を阻む者がいるのならば、それら全てを薙ぎ払って進もう――」
彼女の言葉に、人々は武器を手に取る。
力あるものが正義であるというのなら、彼女『ツェーン』こそが『フィアレーゲン』における最高の旗印であった。
彼女の後に道が出来る。
それは誰もが示せるものではない。だからこそ、人々は熱狂する。それが例え、狂気に彩られた過激で破滅的な演説であったのだとしても、それにこそ人々は惹かれ、付き従うのだから――。
●暗躍
「大仰なこった。見ていて背中が痒くなる。いいのかよ、アンタは。そうやって黒幕気取っていて」
パイロットスーツに身を包んだ女性が嘲るように大々的な演説が流れる放送を背にして影に隠された人物へと告げる。
彼女の名は『アイン』、『グリプ5』と呼ばれる小国家を裏切り、数々の小国家間を渡り歩くキャバリアパイロットである。
ここ『フィアレーゲン』に至る道程が如何なるものであったかはわからないが、それでも彼女が只者ではないことだけは確かであった。
それを制するように影に隠された人物が言う。
「構わないさ。君には動乱が。私には金が必要なように、人には役割というものがある。『ツェーン』、彼女が『エース』であり、人々の旗印であるようにね。でも、いいのかい。あれだって君の末妹だろうに」
「私は八人兄弟だよ。あんな妹を持った覚えはないね。だが、アンタが何を企んでいるのかわからねぇわけでもない。あの機体、『アークレイズ・ディナ』つったか。あれは偽装されているよな。『グリプ5』であった『セラフィム・リッパー』と同じ手口ってやつだ」
気が付かないとでも思ったのかと『アイン』は告げる。
彼女の瞳は鋭いものであったが、影に隠された人物は肩をすくめるような気配があった。
「とぼけんなよ。それとも何か、まだ金のためなんていうのを信じた振りをしろっていうのか。わかっているんだぜ、アンタが欲しているのは、『超弩級の闘争』だってことくらいはな」
「それでどうする、君は。止めるかね、私を。それとも与するかね」
その問いに対する答えは、『フィアレーゲン』の街中に響く演説に対する声援にかき消された。
後に残るのは、熱狂的な戦乱への渇望だけであった。
他者から奪うことのできる力を持った者が、自制できぬように。
けれど、彼らは知らない。
圧倒的な力は、さらに大きな力によって従わされるものなのだから――。
●飛び火
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は、クロムキャバリアの少国家の一つ、『フィアレーゲン』において最新鋭機であるキャバリアがオブリビオンマシンと化して暴走してまうのです」
どこかで似たような事件が在ったと猟兵たちは思ったかもしれない。
それもそのはずである。
どの小国家でも頻繁に最新鋭機がオブリビオンマシン化してしまう事態が何度も起こっているのだ。
「はい……『フィアレーゲン』は立地的にも長い間戦乱が続いていた小国家です。それ故に最新鋭機の開発は常に行われていて……その国の性質からか、キャバリアパイロットの技量こそが第一とされているのです」
すなわち、国の指導者足り得るものは、一流以上の技量を持っていなければならない。その一流……『エース』たるパイロットがオブリビオンマシンによって思想を歪められてしまえばどうなるか。
戦乱が続くのもまた道理であったことだろう。
「実質、国のトップは今、オブリビオンマシン化した最新鋭機『アークレイズ・ディナ』のパイロットである『ツェーン』と呼ばれる少女です。彼女の演説は常に国内で他国に戦乱を巻き起こす破滅的な内容であり、国民たちもまた、それに追従しているのです」
ナイアルテは瞳を伏せる。
力こそが正義であると説き、力なき者を従えることこそ正道であるとしているのだ。
「演説の最中に『アークレイズ・ディナ』は暴走し、街中で無差別な破壊を繰り広げています。彼女を止めねば、『フィアレーゲン』は甚大な被害を被り、これを好機と見た周辺国によって攻め滅ぼされてしまうでしょう」
そうなってしまっては、オブリビオンマシンの思うつぼである。
これを阻止し、過激な思想に染まった人々の意識を猟兵たちは変えなければならないのだ。
「オブリビオンマシン化した最新鋭機を取り押さえる。過激な思想に扇動された人々を正気に戻さねばなりません」
殆どの人々は過激な思想によって熱狂している。けれど、少なからず疑問を持つ人々だっているのだ。
彼らは平和を知らない。
けれど、心の奥底で安寧を願っているはずなのだ。ナイアルテは、彼らもまた救われるべきものであり、『ツェーン』と呼ばれた少女もまた過激な思想を刷り込まれただけに過ぎないのだと告げる。
「どうか、お願いいたします。彼女を、いえ……『フィアレーゲン』の人々をオブリビオンマシンの見せる破滅的な未来から救ってください――」
そう告げ、ナイアルテは猟兵たちに頭を下げ、見送るのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
クロムキャバリアにおいて暴走する最新鋭機を止め、オブリビオンマシンを打倒するシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
ボス戦です。
暴走するオブリビオンマシン化した最新型キャバリアとの戦闘になります。
パイロットはオブリビオンマシンの見せる過激な思想に突き動かされるようにして、皆さんに襲いかかってきます。
その技量は『エース』以上の苛烈なるものです。
刷り込まれた洗脳じみた思想を、皆さんの言葉や考え方によって振り払うこともいいかもしれません。
●第二章
冒険です。
第一章において皆さんに打倒されたオブリビオンマシンは、街中を逃走します。
過激な演説に感銘し、熱狂している人々が皆さんを阻むことでしょう。彼らの数は多く、破滅的な思想に疑問を持つ人々は少数です。
彼らは悪影響を受けているだけで、その根底にあるのは知らぬ平和への憧憬と安らかなる日々を求める心です。
彼らを説得し、また疑問を持つ人々に言葉を尽くして道を開けてもらいましょう。
●第三章
ボス戦です。
あくまでオブリビオンマシンにとって熱狂した人々は駒に過ぎません。
時間稼ぎの間に真の姿に変貌したオブリビオンマシンとの戦いになります。機体に囚われているパイロットを救い出し、小国家『フィアレーゲン』に束の間であっても平和を取り戻しましょう。
それでは争乱続く世界、クロムキャバリアにおけるオブリビオンマシンの暗躍、そして見え隠れする黒幕の一端を追う皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『アークレイズ・ディナ』
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POW : 孔壊処刑
【ドリルソードランス】が命中した対象に対し、高威力高命中の【防御を無視或いは破壊する掘削攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ガンホリック
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【デュアルアサルトライフルとテールアンカー】から【実体弾の速射とプラズマキャノン】を放つ。
WIZ : パワーオブザ・シール
命中した【テールアンカー又は両肩部のアンカークロー】の【刃】が【生命力やエネルギーを吸収し続けるスパイク】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
イラスト:タタラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リジューム・レコーズ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
人の定めがすでに決まっているのならば、平和知らぬ人々の人生もまた定めであると言えるのだろうか。
人の生死すらもままならぬ世界にあって、それでも人々の心の奥底にあるのは安寧を求めるものであったことだろう。そうであると信じたいと誰かは願ったのかも知れない。
街中に演説が響き渡る。
「強者が全てを統べる。全てを支配する。それが世の理だ。だから、今こそ私達は戦わなければならない。弱き者を食い物にするのは、何が間違いだというのだ。弱肉強食こそが真理」
その演説放送は、今や暴走するキャバリアの砲撃による爆発によってかき消されていく。
戦いの火は決して消えない。
人と人とが存在している以上、摩擦が起こるのと同じように戦禍は絶えず。
人の思いが見せる幻影の中にしか平和はないのだとあざ笑うようであった。
「そう、私は奪う。奪って、私自身を豊かにする。私は『エース』だ! 強者こそが、全てを得ることができる。プラントも、物も、何もかも、全て私のものだ。私が手に入れられなかったもの全てを、私は手に入れる!」
小国家『フィアレーゲン』随一の技量を誇るパイロット、『ツェーン』が暴走を続ける『アークレイズ・ディナ』のコクピットの中で吠える。
親も、兄弟もいない。
一人きりの己に在るのは、キャバリアパイロットとしての才能だけだ。
これだけが戦乱続く世界において己が存在していいという意義。
だから、がむしゃらに生きてきたのだ。
シュミレーションでも、誰も撃破することのできなかった、嘗ての伝説的エース『フュンフ・エイル』の駆る『熾盛』を打ち倒すことができた。
「それが私の誇り。私の意味。私は超える。超えたんだ! 伝説を超えた力が在る! だから――」
全てを欲する。
自分には何もない。そのほかの誰かに在って己にはない物を埋めるために、『ツェーン』は他の誰かから全て奪うと、己の力を誇示するように暴走し続ける『アークレイズ・ディナ』の中で憎悪に染まった瞳で、世界を破壊と混沌へと導くのだった――。
アレクサンドル・バジル
さーて、久し振りに働くかね。
今回の標的はツェーンちゃんか。才能を頼りに欲しい物を手に入れる。
良いじゃねーの。
しかし、全てを手に入れるってのはどーだろうな。
本当に欲しいものが分かってねー感があるぜ?
スルトに搭乗して対峙。
スルト・コックピットによりゴッドハンドの動きをキャバリアで再現して戦闘。
敵POWUCのドリルソードランスを見切って残像をデコイに回避しつつ、ゼロ距離に潜り込みカウンターで『一撃必殺』を入れます。
アドリブ歓迎
街中で暴走を続ける『アークレイズ・ディナ』の機体色は赤黒く変色していた。
それは熱暴走に寄る弊害か、それともオブリビオンマシン化したが故の変化であったのか。
しかし、それを理解できるものは、小国家『フィアレーゲン』にはいない。
街中を惑う人々は皆、突如として暴走を始めた最新鋭機の姿に恐れ、けれど、その力こそが己達のあり方の象徴であると熱狂する。
そこにあったのは狂気でしかなかった。
誰も彼もが熱に浮かされたように破壊と暴力、略奪を始める。
「そう、それこそが人の姿の在るべき姿。奪い、奪い、奪い尽くす。手に入れたいと願ったのならば、それを為す欲望が在るのが人間です」
オブリビオンマシンと化した『アークレイズ・ディナ』とパイロットである『ツェーン』の意識は同調していた。
彼女にとって、それは刷り込まれた教育故であったことだろう。
けれど、彼女は欲している。
自分にないものを持つ者に対するどうしようもない憎悪が、破壊へと駆り立てるのだ。
「さーて、久しぶりに働くかね」
混乱続く小国家『フィアレーゲン』の街中を見下ろす男の姿があった。
彼の名は、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)。猟兵である。彼の瞳に映るのは、オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』と、そのコクピットに在る『ツェーン』と呼ばれる少女だけであった。
「今回の標的はツェーンちゃんか。才能を頼りに欲しい物を手に入れる」
それが彼女のやるべきことであり、暴走と憎悪の根源であるのだろう。
手の内にあったものが、戦う才能であったのならば、それも良しとされるであろう。けれど、それを憎悪によって膨らませたのならば、他者のみならず自身をも傷つけると知るには、彼女はまだ幼かった。
「良いじゃねーの。しかし、全てを手に入れるってのはどーだろうな」
アレクサンドルは高層ビルの上から単身飛び降りる。
凄まじい風圧が彼の黒髪をなびかせ、自由落下によって『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
それは自殺行為であったが、アレクサンドルは超常の存在、生命の埒外に在る者――猟兵である。
同じオブリビオンマシンである『スルト』が虚空より出現し、アレクサンドルをコクピットにおさめていく。
アレクサンドルの動きは全て『スルト』に伝えられ、その動きをトレースする。
「キャバリア……! 其処にいるのは!」
突如として現れた『スルト』にも臆すること無く『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』は、瞬時にドリルソードランスを向ける。
判断が疾い。
完全に虚を突いたはずだった。並のエースならば、後ろに退くはずだ。けれど、『ツェーン』は違う。
『スルト』の蹴撃へと機体を向け、距離を詰めてくるのだ。
「ハッ――! 最速最短の道筋が見えているって面だな!」
良い腕だとアレクサンドルは感じた。
これまで戦ってきたエースと呼ばれるどのパイロットよりも技量が高まっている。そう感じるほどの動きでッタ。
ドリルソードランスの切っ先をかすめながら『スルト』が『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
「残像! デコイのつもりか。ですが、そのパターンは!」
見えていると言わんばかりに残像には見向きもせずに『スルト』へとドリルソードランスの突きが放たれる。
機体性能のあるのだろうが、『アークレイズ・ディナ』の限界挙動をよく理解した熟練の技量染みたうごきで『スルト』を捉える。
「見えすているってか……だがよ!」
放たれたドリルソードランスを小脇に抱えるようにしてアレクサンドルは掴む。回転した刃が、『スルト』の脇を抉るようにして装甲を飛び散らせるが、この距離は己の距離である。
「本当にほしいものがわかってねー感があるぜ? ただがむしゃらに、欲しい欲しいと喚いているだけじゃあな!」
手に入るものなど指の間からすり抜けていく。
アレクサンドルは飛び散る破片と共に距離を詰める。
ゼロ距離。
ただ、それだけあればいい。小脇に抱えたドリルソードランスを横薙ぎに払い、体勢を崩した『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
その機体がユーベルコードに輝く。
「私は、全て欲しいと言っている! それを大人がしゃしゃりでてきて――!」
「一つに決められなければ、何に手を伸ばしていいかわからんだろうが。人間の腕は二本しかねーんだぜ?」
一撃必殺。
それこそが『スルト』の放つ拳の名である。ゴッドハンドであるアレクサンドルの動きを完璧にトレースした一撃は、『アークレイズ・ディナ』の頭部へと放たれ、そのフェイスマスクを粉砕するのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
強い者が奪うか、なら盗賊と同じだろうに
弱肉強食は常だろうがそれが罷り通ればいつかは共倒れするだろう衰え弱くならない者はこの世にいないんだからな
SPDで判定
AIと一緒に【聞き耳】【暗視】【視力】で【情報収集】し敵を捕捉
攻撃は指輪の風の【結界術】で防ぐ
その隙を狙い、義眼の藍の災い圧壊:【重量攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】で撃ち込んで【時間稼ぎ】
その間に橙の災い:爆破【爆撃】をコックピット以外の場所を狙い【スナイパー】【全力魔法】【貫通攻撃】で攻撃
頭部のフェイスガードを粉砕されたオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の機体が吹き飛ぶ。
5m級戦術兵器であるキャバリアの機体が街中で暴れればどうなるかなど簡単なことであった。建物は崩落し、その下敷きになる者たちが多く現れる。
けれど、『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』と呼ばれたパイロットの少女も、小国家『フィアレーゲン』に住まう人々も、誰も彼らを気に留めることはなかった。
なぜなら、この小国家にとって弱った者は略奪の対象でしか無いからだ。
いつか自分もそうなるとわかっていても、他者から奪うことをやめられない。国民性であるとか、そんなものではない。
そうあるべきと、弱肉強食を掲げているからだ。
価値観が違う。
それは人間が存在する以上、文化と世俗が違うのと同じくらい当たり前のことであったのかもしれない。
「強い者が奪うか、なら――」
崩落し、瓦礫が再び人々の上へと降り注ぐ時、銀色の銃兵の如きキャバリアが放つ風が瓦礫を吹き飛ばした。
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は『銀の銃兵』のコクピットの中でつぶやく。
狙撃用の機体である『銀の銃兵』をさらけ出してでも、人々を救わんとしたのは、悪手であったことだろう。
目の前に対峙するオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』を駆るパイロットの技量は並のエース以上である。
けれど、それでも構わなかった。
「なら、盗賊と同じだろうに。お前のやっていることは――!」
「名前を変えようとも本質は変わっていない。私は、この方法しか知らない。奪い、奪われるのが世の常であろうが!」
プラントを奪い合う戦いが続くクロムキャバリアにおいて、それはある意味当然のことであったのかもしれない。
国家の生産を一手に担うプラント。
その数こそが小国家における力の指針である。ならば、それを奪うのは当然ことだ。
「それの何が悪い。奪う者から奪う。奪われる者が牙をむく。それの何が悪い!」
デュアルアサルトライフルから放たれる実体弾とテールアンカーから放たれるプラズマが『銀の銃兵』を襲う。
指輪のメガリスの力を使って防ぐも、防戦一方になってしまう。
どれだけ義眼のメガリスが視力に長けたものであったとしても、エースの駆るキャバリアの力は凄まじいものであった。
こちらが放つ弾丸は尽く躱される。
「弱肉強食――それは常だろうが、まかり通るのなら、いつかは共倒れするだろう」
ルイスは『銀の銃兵』から放つ弾丸に籠めた義眼の輝き、属性付与(エンチャント)による藍色の災いによって実体弾を押しつぶす。
弾丸は大地に失墜し、地面のアスファルトが砕けて散る。
その破片の最中を両者は飛び、互いの弾丸が必殺に成りえない事を知る。
「共倒れ? そんなことあるわけがない。あるのは、さらに巨大な強者による捕食だけだ! だから力がいるんだよ! その捕食者をも喰らうことのできる力が!」
テールブースターが火を吹く。
一瞬で建物をブラインドにして姿を消す『アークレイズ・ディナ』
「ああ、そうだろうな。衰え弱くならない者はこの世にいないんだからな――右……いや、上か!」
建物を乗り越えるようにして強襲する『アークレイズ・ディナ』の機影をルイスは見逃さなかった。
機体を仰向けにさせ、『銀の銃兵』が持つ魔銃の銃口を向ける。
勝負は一瞬であった。
互いに奇襲を仕掛ける。相手の予期せぬ行動に対応できたものこそが、この戦いの勝者である。
だからこそ、互いに撃って出たのだ。
「その手は――ッ、爆発っ!?」
放たれるは橙色に輝く義眼のメガリス。
その災が引き起こすのは爆撃。目くらましのように盛大な爆発が、『ツェーン』の強襲を妨げる。
一瞬の明滅。
けれど、ルイスにとってはそれで十分だった。体勢を入れ替える『銀の銃兵』。その魔銃が狙い付けるは『アークレイズ・ディナ』の背面。
「一手、遅かったな……!」
高い機動力を要する『アークレイズ・ディナ』の強みを潰す。その一点において、ルイスは全力の力を振り絞り、背面ブースターユニットに凄まじい爆撃の如きユーベルコードの輝きを解き放つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『エース』、か。以前によく聞いた単語ね。あそこは『グリプ5』とかいったっけ。
機甲式『GPD-331迦利』起動。目標、オブリビオンマシン。
あたしは飛鉢法で上空から指示を出す。
まずは敵の気を引くために、「レーザー射撃」を敵機に。
敵性体認定されてからが本番。
全方位への「レーザー射撃」「一斉発射」「範囲攻撃」「弾幕」「制圧射撃」。
『迦利』は基本的に空対地攻撃機。そう思わせることが肝要。一定の距離を保とうとすれば懐に飛び込んでくるでしょう。
先端に「オーラ防御」を張っての衝角突撃を奥の手に見せて。
『迦利』を確保してからが本番よ。逆にそっちの動きも制限されるはず。
九天応元雷声普化天尊、疾!
『エース』とは如何なる存在であるべきであろうか。
それは命題でもあるだろうし、意味のない論議であったのかもしれない。
ただ、そこには純然たる力がある。
ただ、そこに居るだけで戦意が高揚する力さえ、その名には意味があった。
そういった意味では、『エース』の存在は旗印であり、担ぎ上げられた者、英雄を作り出し、その影にて笑う者の存在が見え隠れしていたのかもしれないが、今はその時ではない。
「『エース』、か。以前によく聞いた単語ね。あそこは『グリプ5』とか言ったっっけ」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は爆撃の一撃から逃れたオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』が疾駆する姿を見て呟いた。
過去のオブリビオンマシンが引き起こした事件と今回の事件は似通っていた用に思えただろう。
最新鋭機がオブリビオンマシンにすり替わっている。
それ自体はよく見かけるオブリビオンが引き起こす事件である。だが、ここに来て、その『エース』のあり方を問う戦いが起こっているのは、本当に偶然であろうかと考えるには自然であったかも知れない。
「機甲式『GPD-331迦利』起動。目標、オブリビオンマシン」
ゆかりの背後で紫と白を基調とした逆三角形型のキャバリアが起動する。
無人での運用が想定された機体が空へと舞い上がる。その姿はキャバリアと呼ぶにはあまりにも特異であったかもしれない。
ゆかり自身は鉄鉢の上に乗り、飛ぶ。
この世界では空こそが死地である。炎禍殲剣から放たれる砲撃によって、上空を飛ぶ者全ては内とされてしまう。
高高度を維持できない以上、上空から俯瞰して5m級戦術兵器の戦いを見ることは難しいかもしれない。
「――スタビライザーがやられた。けど、元より必要ない!」
『アークレイズ・ディナ』のパイロットである『ツェーン』が叫ぶ。
彼女にとって、自動で機体を制御するシステムは補助輪のようなものであり、実際煩わしいものであった。
皮肉なことに追い込まれれば追い込まれるほどに『アークレイズ・ディナ』は『ツェーン』の操縦技術と相まって、その性能を十全に発露し始めていたのだ。
レーザー射撃を撃ち放ち、注意を引きつける機甲式『GPD-331迦利』であったが、『アークレイズ・ディナ』は、それらの尽くを躱すのだ。
「ちょこまかと……! 無人機か。ならっ!」
その手にしたドリルソードランスが唸りを上げて回転していく。
「見るからに空対地攻撃機。ならっ!」
一気に距離を詰める『アークレイズ・ディナ』。射撃ばかりを繰り返す機体に対して、距離を詰めない理由など無い。
あの形状、あの攻撃。
それら全てを見て、『ツェーン』は判断したのだ。近接用の防衛装備がないと。それは正しかったが、同時に誤ってもいた。
なぜなら、機甲式『GPD-331迦利』は、無人機。それ故に操縦者の身体の保全を考える必要がない。
機体自身を武装に変えてしまうことだってできる。
何故、その機体が逆三角形の形をしているのかを、『ツェーン』はもっと知るべきであっただろう。
「――ッ! こいつ、機体を!」
「そうよね、そう思うわよね。けれど、遅い!」
ゆかりが叫んだ瞬間、逆三角形の衝角が『アークレイズ・ディナ』へと突進する。オーラが展開された衝角が『アークレイズ・ディナ』を貫こうと凄まじい勢いで突撃し、その衝角を期待装甲へとめり込ませる。
だが、その突撃は蒸したスラスターの推力によって受け止められる。
「化け物じみた出力を出して……! けど、高機動型の動きを止められたのなら――! 九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放たれるユーベルコードの輝き。
視界の全てを明滅させるほどの強烈なる雷撃の一撃が、『アークレイズ・ディナ』の機体を穿つ。
どれだけ高機動であったとしても、電撃に対する備えはキャバリアである以上、完全ではないだろう。
制御系統にダメージが入れば、どれだけ頑強な装甲であろうと、どれだけ高度な操縦技術であろうと意味がないのだ。
「己の腕を過信したわね、『エース』」
ゆかりは、ユーベルコードの輝きの中、『エース』を名乗る者を見やる。
そこにあったのは雷撃の一撃を受けて、擱座するオブリビオンマシン。
まだ決着は付いていない。
けれど、後戻りできないダメージは与えたはずだ。
ゆかりは、奥の手のさらに上を行く戦術でもって『エース』をねじせたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
弱肉強食、決して間違いでは無いのでしょう。
より力ある者が他を制する、それは摂理というものです。
…されど、それは獣の理。
力とは『振るう』ものに在らず。『使う』ものです。
ヒトとして生き、戦を納めんとするならば。
――今を、未来を生きる民を。その力を以て『支配』ではなく『庇護』せねばなりません。
…貴女がそうまで力を求め、守ろうとしたのは何ですか?
UCを発動、見切り、野生の勘にて相手の飛行軌道を予測し、残像も交えて敵の射撃を躱しつつ
アイテム『氷柱芯』を飛ばし巻き付け、怪力にて地面に引き落とす
地上戦に持ち込めば怪力、グラップル、2回攻撃による格闘戦にて戦闘展開
部位破壊にて相手の飛行機構を破壊する
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』を撃つ雷撃の一撃は、小国家『フィアレーゲン』の街中を真っ白に染め上げるほどの激烈なる一撃であった。
機体から立ち込める黒煙が、オブリビオンマシンの機体のあちことに損傷を齎す。
けれど、完全でなくとも雷撃に対する耐性は備えているのだろう。
ぎこちない動きでも『アークレイズ・ディナ』は再び動き出す。
悪夢のような光景であった。
人々は熱狂していたが、それでも恐れた。
自分たちが信じた力、キャバリアという巨大な力が今打ち倒されようとしている。彼らにとって巨大な力は象徴に過ぎない。
豊かな生活をするためにはプラントが必要だ。
けれど、プラント事態を生み出すことは、技術が喪われているため不可能である。
ならば、奪うしか無い。
あるところから奪ってくるほかない。そうしてクロムキャバリアの戦乱の時代は長く続くのだ。
「他の誰でもない。自分自身のために。私達は奪うと決めたんだ。巨大な力で、もっと大きな力で、もっとよりよい生活をするために。自分が持っていないものを得るために!」
キャバリアパイロットの『ツェーン』が叫ぶ。
コクピットの中に充満してるのは憎悪であった。迸る憎悪が彼女を駆り立てる。暴走した『アークレイズ・ディナ』は動くもの全てを破壊せんとデュアルアサルトライフルとテイルアンカーから放たれるプラズマキャノンが街中を破壊へと叩き込む。
「弱肉強食、決して間違いではないのでしょう。より力ある者が他を制する、それは摂理というものです」
だが、破壊を前にして真っ向から立ち塞がる影がある。
キャバリアではない。
ただの人の姿が。生身でキャバリアの前に立ち塞がるのだ。
それは自殺行為にも等しいものであったことだろう。
だが、目の前にいるのは超常なる存在。
生命の埒外にある存在、猟兵――月白・雪音(月輪氷華・f29413)であった。
「……されど、それは獣の理」
「生きているのなら、人も獣も変わりはしない!」
放たれる実体弾とプラズマキャノンの弾丸が雪音へと迫る。圧倒的な破壊。ここで退けば、無辜なる人々を傷つける。
だからこそ、雪音は前に踏み出すのだ。
彼女は知っている。
人も、獣も力を持っている。そう、力とは。
「力とは『振るう』ものに非ず。『使う』ものです。ヒトとして生き、戦を納めんとするならば」
駆け出す。
弾丸の軌跡を見つめる。己を穿ち、射殺さんとする弾丸を見つめる。瞳を逸らすことはしない。刹那の瞬間であっても、それはしない。
恐れを知らぬわけではない。
けれど、最も恐ろしいものがなんであるのかを彼女は知っている。
獣の因子を持ちながらも、彼女はヒトとしての生き方を選んだのだから。その誇り高い意志が弾丸ごときにねじ伏せられるわけがない。
「……弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
拳武(ヒトナルイクサ)。
それが彼女の選んだ道だ。彼女が彼女であるための輝き。ユーベルコードに満ちた身体が弾丸の尽くを躱し、プラズマキャノンから発せられたエネルギーの奔流を躱す。
残像を生み出すほどの速度で駆け抜け、雪音は征く。
霊力の膜が帯びとなって、『アークレイズ・ディナ』へと走る。それは、見えぬが故に、『エース』たる実力を持つ『ツェーン』にも予測不可能なる業であったことだろう。
「弱いことを肯定するなど! 己が弱者であると認めて誰が手を差し伸べるものか! 人は奪うことばかりをする生命だからこそ、ここまで生み出してきた。キャバリアだって、そのうちの一つに過ぎないのだから!」
けれど、雪音は征く。
その瞳を真っ直ぐに見据え、走るのだ。霊力の帯びで拘束した『アークレイズ・ディナ』の巨躯を凄まじき怪力で持って引きずり倒し、大地ヘと失墜させる。
「――今を、未来を生きる民を。その力を以て『支配』ではなく『擁護』せねばなりません」
「戯言を。それが一体何になる。奪うことしか出来ない生命が、他者を護るなど、笑わせるな。そんなのは人のやることじゃあないんだよ!」
向けられたアサルトライフルの銃口。
それを雪音は尋常ならざる膂力でもって蹴り飛ばし、空へと舞い上がる。
「私は全てを欲する! 全部だ! 何もかも全て!」
その声は、悲痛なるものに聞こえたことだろう。
戦う以外に何一つ持たぬ者。その悲哀。力があっても、それを己以外の為に使えぬ悲哀。
雪音の瞳が細められた。
「……貴女がそうまで力を求め、護ろうとしたのは何ですか?」
問いかけに答えはない。
けれど、雪音は高く舞い上がり、必殺の蹴撃を『アークレイズ・ディナ』の背面ユニットへと叩き込む。
凄まじい音がして、その装甲が砕け……雪音は呟いた。
「空っぽだから、自分が以外の全てを手に入れたいと願う……力に振り回されて、力を振るうことが目的と成りはて……いえ、歪められたのですね」
その一撃は、『アークレイズ・ディナ』、そして『ツェーン』へと凄まじい衝撃となって見舞われるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ほんと、最新鋭機とか新システムとか当てにならないわねー。
あと、力による支配は結局力で滅びるのよ?
より強い力、もしくは支配してた力が衰えたとき。
結局血を吐きながら続けるマラソンに未来はないわ。
レスヴァント…で行きたいけど…実は先月の戦争でのダメージが酷くて修理中。なのでシビリアンジョーで行くわ。
シビリアンジョー・イェーガーカスタム出るッ
この子は飛べないから、『悪路走行』+『ダッシュ』で地上から追いかける。
『対空戦闘』でダークマンティスの『レーザー射撃』で迎撃しつつ、
『操縦』テクで回避。
さて、∀キャノンの『エネルギー充填』は十分ね。
見せてあげる。力は初戦より強い力の前には無力ということを…発射―ッ
最新鋭機の暴走。
それはクロムキャバリアにおいては、類似した事件として知られることだろう。
殆どの小国家で競うようにキャバリアの開発は行われている。
生産施設プラントを他国から奪わねば、豊かな国家は育むことはできないからだ。
人は他よりも優れることを好む。
誰もが優れたものを持ちたいと願うだろうし、自身よりも劣る者を蔑むものである。そこに人と人との摩擦が加わるからこそ、戦乱の火種は絶えないのだ。
奪うことでしか豊かに慣れぬという世界の基盤があるからこそ、世界に争いは起こり続ける。
それを是とするのが小国家『フィアレーゲン』の実態であった。
暴走する最新鋭機『アークレイズ・ディナ』。しかし、その暴走はかの国の住民たちにとって、熱狂とともに受け入れられていた。
猟兵達が駆けつけ、暴走を止めようとしている姿さえ、彼らにとってはどうでもいいことであったのかもしれない。
全ての人々がそうであるとは言えない。
けれど、国のあちこちにある街頭モニターに映し出される演説によって、人々は奪うことこそが正義であるとさえ思っているのだ。
洗脳という言葉が脳裏に浮かぶ。
「ほんと、最新鋭機とか新システムとか当てにならないわねー」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は、そんなことをつぶやきながら、オブリビオンマシンである『シビリアンジョー・イェーガーカスタム』を駆り、戦場となった街中を疾駆する。
「力こそが正義であるというのなら、私こそが絶対正義でしょう。私の意志が、奪うと決めたのならば、奪うことでしか正しさは証明されない。支配する力ではなく、力が支配する世界であるのだから!」
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』のパイロットである『ツェーン』が叫ぶ。
彼女にとって力こそが全てなのだろう。
そのように育てられたことも、そのように考えるようになったことも、全てはオブリビオンマシンによって思想を狂わされたからでしかない。
だからこそ、ユーリーはため息交じりに言うのだ。
「力による支配は結局力で滅びるのよ? より強い力、もしくは支配してた力が衰えたとき。結局血を吐きながら続けるマラソンに未来はないわ」
ユーリーにとって、それはあまりにも無意味なものであった。
力とは結局の所、それ以上でも以下でもない。
あるのは、正しさでもなければ間違いでもなく、意味だ。その力にどのような意味を肉付けするかが、人の宿命であるのかもしれない。
シビリアンジョーが駆ける。
勢いよく街中を駆け抜け、『アークレイズ・ディナ』の放つデュアルアサルトライフルの弾丸とテイルアンカーから放たれる飽和攻撃を躱していく。
周囲の建物が崩落しようが、『ツェーン』には関係がないようであった。
「暴走しているからって、やりすぎでしょう!」
シビリアンジョーは飛べない。
本来であれば、ユーリーはレスヴァントと呼ばれるキャバリアで戦場に駆けつけたかったのだが、先の戦争によって修理状況が芳しくないのだ。
故に、虎の子とも言えるオブリビオンマシンである『シビリアンジョー』を駆り、今戦場を駆け抜けている。
瓦礫と化した建物を跳ねるようにして踏破していく『シビリアンジョー』。
放たれ続ける弾丸の狙いは正確そのものであり、ユーリーを徐々に追い詰めるものであった。
「『エース』って言われるのもわかる腕……! でもね!」
ユーリーもまた撃墜女王――『エース』を名乗るものであればこそ、負けることはできない。
飛来するプラズマキャノンの弾丸とダークマンティスの荷電粒子ビームが激突し、周囲を明滅させる。
「高威力……! この出力を連射するのならば!」
『アークレイズ・ディナ』がダークマンティスの射撃の間隙を縫って迫る。
距離を詰めるつもりなのだろう。
だが、ユーリーは笑う。巨大な火力につられて前に出てきたと。確かに『ツェーン』の操縦技術は大したものだ。
並の『エース』では太刀打ちできないだろう。
けれど、実戦経験が足りない。不意打ち、奇襲、予期せぬアクシデント、戦場のゆらぎ。あらゆる経験が足りていない。
いつも万全の状態で戦いに挑むことができたがゆえの弊害。
そこをユーリーは突く。
「見せてあげる。力は所詮、より強い力の前には無力ということを――」
ユーベルコードの輝きが、『シビリアンジョー』の機体装甲のラインから溢れ出ていく。
それは物理的にロックされたパーツを弾き飛ばし、シビリアンジョー・∀キャノン(シビリアンジョー・ターンキャノン)を開放する合図でもあった。
膨れ上がるユーベルコードの力の奔流が、ユーリーの寿命すらも吸い上げるようにして、エネルギーへと収束され、極大の輝きを放つのだ。
「……発射――ッ!」
放つ膨大なるエネルギーが一直線に『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
その一撃は瓦礫をも吹き飛ばし、その機体装甲の一部を溶解させながら圧倒的な力として、ユーリーの言葉を裏付けるように破壊の痕を『フィアレーゲン』へと刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
弱き者が踏み躙られるのが世の常
故に密かに牙を研ぎ強き者を喰らう時を待つのです
我等が牙、とくと味わうがいい
【行動】POW
五感と第六感を働かせ状況を把握。敵行動の前兆を察知し攻撃を予測
先制攻撃+UC+範囲攻撃に夜伽を忍ばせセンサーを狙い爆破。熱源や肉眼を撹乱するのを兼ねて怨念の炎で装甲を蝕む
直後に回り込み接敵と見せかけるため残像+ダッシュでフェイント、自身は影の腕の中に潜む
敵UC直後影の腕と夜伽を怪力で巻き上げ自身を敵機に引き寄せ弱った部分を串刺し、怨念の炎を流し込む
振りほどかれた時のため夜伽を機体に縛りつけておく
フェイントが失敗した場合は攻撃を回避するかUCの爆破でそらしダッシュで避けながら接敵
人の世が続く限り、変わらぬものはある。
それが悲しいかどうかは別の問題であるが、人の生きる理由が優しさであればいいのにと願うことができるは、幸せなことであったのかもしれない。
けれど、戦乱が続くクロムキャバリアにおいて、その優しさの詩が紡がれることはない。
それを嘆くことはあまりにも無意味である。
戦いが続くからこそ、人は立ち向かわなければならない。どれだけ強大な力であったとしても、勝ち目がなくてもあらがわなければならない。
「それが無駄だということだと何故わからない。恭順すれば、恩恵に預かれる。多数の中に埋没すれば、強力な力を持つ者のおこぼれに預かって生きていけるというのに」
それが過激化した思想であり、歪められた思いであることを知ることができるのは猟兵だけである。
オブリビオンマシンと化した最新鋭機『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』と呼ばれるパイロットは叫ぶ。
彼女にとって戦うということは生きることだった。
それ以外の何一つを持たぬからこそ、全てを求める。己の内側から発するものがないからこそ、他者にそれを求めるのだ。
「弱き者が不意にじられるのが世の常。故に密かに牙を研ぎ、強き者を喰らう時を待つのです」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は戦場となった小国家『フィアレーゲン』の街中を駆け抜ける。
5m級戦術兵器であるキャバリアと生身で戦うことは自殺行為である。
だが、これまでもそうであったように猟兵の身体能力であれば、体躯の差など無意味である。
「戯言ばかりを言う。時間は待たない。お前達がどれだけ牙を研ごうとも圧倒的な強者には届かない。何故、牙を研ぐ時間を弱者に与えるなどと考えるのだ」
『アークレイズ・ディナ』の手にあるドリルソードランスが唸りを上げて、回転する。
その威力の凄まじさは人の原形を止めぬほど、圧倒的であった。
けれど、織久は躊躇わず立ち向かうのだ。
振り上げられた瞬間、彼の瞳がユーベルコードに輝く。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
放たれた黒い影が『アークレイズ・ディナ』の機体装甲へと放たれ、装甲を爆破する。しかし、最新鋭機の装甲はそう易易と抜けるものではない。
爆炎が機体を染め上げていくが、それでも『アークレイズ・ディナ』は怯むことすらしなかった。
「この程度の炎!」
爆炎の中から『アークレイズ・ディナ』のアイセンサーが輝く。
それは紛れもなく歪められた輝きであったことだろう。どれだけ標的が小さくとも射抜くような殺気が発せられている。
放たれたドリルソードランスが叩きつけられ、地面を抉る。
しかし、そこに織久の姿はない。
すでにつながった影の腕の中へと潜み、怨念の炎で『アークレイズ・ディナ』の装甲を焼き続けるのだ。
密かに絡みついた無念の死を遂げた者の髪と血を撚り合わせて加工した超極細の糸が万力の如き織久の力と共に『アークレイズ・ディナ』の身体を引き倒す。
「我らが牙、とくと味わうがいい」
凄まじい音を立てて、大地に倒れ込む機体を見下ろすように、織久は宙に舞い上がる。
その眼下にあるのは、先行した猟兵達が刻み込んだ攻撃の痕であった。
頭部のフェイスガードは割れ、背面ユニットは砕かれている。ならば、と織久は、その怨念の炎を亀裂へと叩きつけ、流し込むように炎を燃え盛らせるのだ。
「この炎……! 内部フレームから機体を焼くつもりか!」
『ツェーン』は気がついたのだろう。
これが人の執念が生み出す炎であることに。
弱者と呼ばれた者たちが、死せる者たちが今際の際の最期に残した怨念。
その炎が今、篝火のように狂乱に包まれた『フィアレーゲン』の街中に上がる。見よ、これが人の歪められた思想の成れの果てであると言わんばかりに。
それはきっと問いかけることと同じであったことだろう。
人の悪性を信じるのと同じように人の善性を知る者もまたいるのだと、オブリビオンマシンの思惑など決して栄えることはないのだと知らしめるように、怨念の炎が皮肉にも空を焼くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
仮初の姿となってもなお人の意思を蝕むか、アークレイズ・ディナ
こちらアークレイズ
これより戦闘行動を開始します
ガンホリックアクティブ
同等程度の彼我速力を確保
敵機の動向に応じ中距離から遠距離を維持し所謂引き撃ちを行う
単体目標を多重ロックオンしたメテオリーテをスレイプニルより数秒間隔で連続発射
更にベルリオーズとヴェスタそしてルナライトのプラズマキャノンによるトリプルトリガーで継続的に火力を集中
EMフィールドでデュアルアサルトライフルを防御
より高威力のプラズマキャノンは回避運動にて対処
最終的に削り勝つ事を目的とする
エースとは強者であって狂戦士では無い
貴官が己を強者と定義するならば、その憎悪を御せる筈です
『アークレイズ』と呼ばれるキャバリアが存在する。
ダビング・レコーズ(RS01・f12341)、そのウォーマシンたる猟兵が駆るキャバリアがそうである。
小国家『フィアレーゲン』にて開発された『アークレイズ・ディナ』と如何なる関係があるのかを知る者は少ないであろう。
それが此処に存在していい理由でもなければ、オブリビオンマシンとして人の心を蝕み、歪めていく理由もまたない。
それをただし、歪みを元の清浄なるものへと戻すことこそが己に課せられた使命であるとダビングは戦場へと降り立つ。
「仮初の姿となっても尚、人の意志を蝕むか、『アークレイズ・ディナ』……こちら『アークレイズ』、これより戦闘行動を開始します」
黒き『アークレイズ』と白き『アークレイズ』が戦場に相まみえる。過剰な総合機動力と、それに耐えうる剛性を持つフレーム。
互いの機体のポテンシャルを引き出した方が勝つ。
それはダビングも、『ツェーン』も理解していたことだろう。
「同じ『アークレイズ』型……! ならっ!」
白と黒の閃光が戦場を駆け巡る。
交錯し、激突し、火花を散らし、火線が互いの機体を穿たんと放たれ続ける。
デュアルアサルトライフルから実体弾が放たれ、ダビングの駆る『アークレイズ』を牽制する。
「その機体の動き、挙動……近接仕様……疾い」
「相対距離確認、攻撃開始」
機械のような、と『ツェーン』は感じただろうが、それもそのはずである。白き『アークレイズ』を駆るダビングはウォーマシンだ。
正確無比なる機動は人のゆらぎを感じさせない。
だが、それを上回る速度と技量で持って消耗しているはずの『アークレイズ・ディナ』は追いすがる。
「この技量。『エース』と呼ばれる部類」
マイクロミサイルが放たれ、マルチロックシステムによって、テイルアンカーから放たれるプラズマキャノンの弾丸と激突し、爆発が空中に咲く。
互いに距離を測りかねているというよりは、ダビングが中距離から遠距離で対応しているという形が正しいだろう。
リニアアサルトライフルと三連装ガトリングガンの火線が『アークレイズ・ディナ』へと火力を集中させるが、その尽くを躱し続ける驚異的な脳力を見せる『ツェーン』。
拮抗していると言っても過言ではないだろう。
それは、互いに機械の身体であればの話だ。
『ツェーン』がどれだけ驚異的な技量を持っていたのだとしても、疲れもゆらぎもある肉の身体である以上、疲弊する。
対するダビングは疲れを知らず、些細なミスすらない。
「こいつ……! 私を削るつもりなのか……!」
不気味さすら感じる正確であり、淡々とした攻撃の数々。
それは確実に『ツェーン』を消耗へと引きずり込むような消耗戦であった。プラズマソードとドリルソードランスが激突し、火花を散らせる。
「『エース』とは強者であって狂戦士ではない。貴官が己を強者と定義するならば――」
ダビングの静かな言葉が迸るプラズマの奔流の合間に響く。
そう、本当に『エース』と呼ばれる存在であるのならば、ダビングは知っている。
例え、機体が憎悪を増幅させ、『ツェーン』の心の内にある、己の持たぬ者を持つ全ての者たちに向ける羨望と憧憬を正すことができるはずであると。
それを信じるからこその戦い方であった。
「その憎悪を御せる筈です。貴官は『エース』足り得る者であるはずなのだから」
迸る青いプラズマソードの一撃が、『アークレイズ・ディナ』を吹き飛ばし、瓦礫の山へと叩き込む。
ダビングは、『エース』の名を持つ者を信じる。
どれだけの憎悪が、その幼き身に宿っているのだとしても。
決して、マシンに、オブリビオンマシンに負けることはないはずだと。そう、信じるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
何が正しいかなんて自分には分からない。
分かる事は、オブリビオンマシンは…
ディスポーザブル01に搭乗操縦
瞬間思考力、ホーミングレーザー射撃で敵の機動を誘導
自機へ向かって放たれるドリルソードランスを機体の正面で受け止める
敵だという事だけだ!!
『狂わし機』戦え、壊せ、ディスポーザブル!!!
継戦能力、敵と、自身と、そして奴自身が煽った市民達の闘争心。戦意が無くならない限り、決して壊れ得ぬ体を持った01でドリルソードランスを受け止め、パワークローの怪力でドリルを握り潰し強引に回転を止め、固定
早業カウンター、同時に、プレスブロウを敵機へ吹き飛ばし重量攻撃
何もかも、全てが壊れ失せるまで、戦い続けてみせろ…!
戦いに正しさが在るのかと問う。
人の生命、その道程に置いて戦いは常に影に潜み火種としてくすぶり続けている。
どれだけ戦いから逃れようとしたのだとして、それから逃れられた運命はただの一つもないのだ。
人は須らく闘争の中に身を置く生命であればこそ、その宿命を受け入れるしかない。
けれど、人は正しさを愛する。
誤ったことよりも正しさを求める。それが人の常であるのならば、オブリビオンマシンとは如何なる存在であろうか。
人の思想を歪め、人の心を惑わしていく。
戦いに駆り立て続けるのならば、それこそが人の業であると知らしめる存在であったのかも知れない。
「何が正しいかなんて自分にはわからない。分かることは、オブリビオンマシンは……」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はキャバリア『ディスポーザブル01』のコクピットの中でつぶやく。
相対するは『エース』たる『ツェーン』。
その技量の高さを測り知らぬというわけではない。
けれど、小枝子は、『そんなこと』を考えていたわけではない。
在るのは、ただ一つ。
己が目の前にしているマシンの名を、そのマシンが生み出す破壊と混沌を、その意味を知る。
だからこそ。
「敵だということだけだ!!」
小国家「フィアレーゲン』に爆風が吹き荒れる。
『ディスポーザブル01』から放たれるホーミングレーザーがオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
しかし、その尽くが躱されていく。
先行した猟兵によって消耗させられているはずであるというのに、未だ凄まじい機動力で持ってレーザーの攻撃を躱していくのだ。
「私を誘導しようとしている……だが、その機体で!」
『ツェーン』の判断は早かった。
どれだけ弾幕を放ち、『アークレイズ・ディナ』を誘導しようとしている小枝子の思惑を理解しようとも、強者である自負がある彼女は誘いに乗らざるを得ない。
構えたドリルソードランスが唸りを上げる。
「戦え、壊せ、ディスポーザブル!!!」
真っ向から『ディスポーザブル』と『アークレイズ・ディナ』の機体がぶつかる。突き出されたドリルソードランスを『ディスポーザブル01』が受け止めていた。
小枝子の吐血がコンソールを染め上げる。
勝った、とその場に居た誰もが思っただろう。
どれだけ頑強なる装甲を持っているのだとしても、一点に力を作用させたドリルソードランスを防ぐことはできない。
小国家『フィアレーゲン』に住まい、キャバリア同士の戦いに狂乱していた市民たちが叫ぶ。
やはり力であると。
圧倒的な力が全てを覆すのだと声を上げる。
だが、見るがいい。
戦うことしかできぬ者とて、ただの一つではないことを。
「戦え――」
誰が命ずるわけでもない。己の心のなかにある何かが叫んでいる。戦えと。例え、己の躯体が砕け散ったのだとしても戦えと叫ぶ何かが居る。
戦意が消えない。
怖気を走らせるような狂気にも似た何かが、戦場を駆け抜けた。
「……――ッ」
それは一瞬の判断であったことだろう。もしも、『ツェーン』が『エース』でなかったのだとしたら、この一瞬で『アークレイズ・ディナ』は粉砕されていたことだろう。
受け止めたドリルソードランスがきしむ。『ディスポーザブル01』のパワークローがひび割れながらもドリルソードランスの回転を止める。
その刹那、放たれるは『ディスポーザブル01』の拳であった。
「何もかも、全てが壊れ失せるまで、戦い続けて見せろ……!」
ディスポーザブル! と小枝子が叫ぶ。
唸りを上げる炉心が拳を繰り出し、凄まじい衝撃波となって『アークレイズ・ディナ』の機体を打ち上げる。
それは小国家『フィアレーゲン』に住まう狂乱に染まった人々の熱狂に冷水を浴びせかけるようなものであったことだろう。
勝ったと確信していた彼らにとって、その光景はあまりにも、非現実的過ぎた。
「戦って、戦い続けねば。例え、この身が砕けて散ろうとも――」
小枝子の流血は止まらない。
けれど、それは同時に彼女が戦場で立ち止まらないということだ。
その意志が、戦意が、彼女の身体を付き動かし続けるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…力こそ正義って大事なもんなんぞ幾らでもあるだろうが
「そうだよねぇ♪ご主人サマにとって大事なのは?」(鶏立体映像
エロい事にきまってるだろう
「だよねー♪」
【属性攻撃・迷彩】
光属性を機体に付与して光学迷彩
【戦闘知識・情報収集・視力】
強化された視力から敵の動きの癖と死角
今迄の戦いも見て分析
攻撃の癖から回避の糸口とする
【念動力・スナイパー】
念動光弾を乱射
力こそ正義ですか
処で国の運営の為のシステムはどうするのです
経済対策は?教育は?
考えなければいけない事てんこ盛りですよ?
戦闘力だけでどうにかなるので?
UC発動
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
超高速で襲い掛かり連続斬撃から武装の強奪を試み
「やれやれ……力こそ正義って大事なもんなんぞ幾らでもあるだろうが」
そう戦いの熱に浮かされた人々がひしめく小国家『フィアレーゲン』の街中を見下ろして言うのは、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)であった。
彼の瞳に映るのは、猟兵の駆るキャバリアによって打ち上げられたオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の姿であった。
その姿に何を思うのか。
人々の心に去来するものはなにか。
力こそが全てであるというのならば、この瞬間に、その価値は地に失墜するものであったのではないだろうか。
「そうだよねぇ♪ ご主人サマにとって大事なのは?」
鶏の立体映像が言う。
キャバリアのコクピットの中であるというに騒々しいことだと言わんばかりにカシムが当たり前のように言葉を紡ぐ。
大事なのはいつだって同じことだと。
それに対する返答だっていつものことだ。
賢者の石で構成された界導神機『メルクリウス』が、その機体に光の力を付与し、光学迷彩によって飛ぶ。
「――……ハッ!」
吹き飛ばされた『アークレイズ・ディナ』の機体が立ち上がると同時に、パイロットである『ツェーン』の意識が戻る。
あまりの衝撃に気を喪っていたのだろう。頭を振って彼女はモニターをにらみつける。
「どいつもこいつも……! その程度で私を謀るつもりか!」
光学迷彩など無意味であると言わんばかりに放たれた念動光弾の弾幕を躱し、『アークレイズ・ディナ』が戦場を駆け抜ける。
「力こそ正義ですか。所で、国の運営のためのシステムはどうするのです。経済対策は? 教育は? 考えなければいけないことなんて、てんこ盛りですよ?」
カシムは光学迷彩を纏ったまま、斬撃を繰り出す。
だが、光学迷彩によって視覚外からの攻撃を仕掛けても『アークレイズ・ディナ』は反応してみせる。
アンカーテイルが振るった武装と激突し、デュアルアサルトライフルから放たれた弾丸が機体装甲をかすめていく。
「そんな賢しいことを知るものか。国? 経済? 教育? そんなものなど私の知ったことじゃない。私は私が欲しい物を全て手に入れるだけだ。私以外の何者がどうなろうと知ったことではない」
『ツェーン』の思想はオブリビオンマシンによって歪められたものであろう。
けれど、その根底にあるのは変わらぬものであった。
渇望だ。
己にないものを求めるという欲望。
己が欲する物を包み隠そうともしない。己に一つしか無いのであれば、他の全てから奪い取ればいいという歪んだ教育。
羨望も妬みも、全てが歪んでいる。
「戦闘力だけでどうにかなるので? それは、お前が欲しがったものは――加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
ユーベルコードに機体が輝く。
それは、神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が起動した瞬間であった。
凄まじい超高速機動。
キャバリアの機体の限界を超えた動きは、『アークレイズ・ディナ』を翻弄する。
やはり、とカシムは思ったことだろう。
確かに『ツェーン』は並の『エース』の技量ではない。
凄まじいと言わざるを得ない。光学迷彩によって見えぬ敵を確実に捉えていた。その技量は伝説的エースそのものであった。
けれど、機体が、その技量に追いついていない。
「なら、それが限界ってものでしょう!」
振るうは鎌剣『ハルペー』。
不死者をも冥府に送る力を持つとされる鎌剣の一撃が、アサルトライフルの銃身を斬り捨てる。
アンカーテイルが『メルクリウス』を襲うも、その尽くを切り裂く。
「なんでこうなった、とは言わせない。それがお前の選んだ道なんだからな!」
放たれた斬撃が『アークレイズ・ディナ』の機体を切り裂き、装甲が脱落していく。
戦う以外の全てを棄てさせたオブリビオンマシン。
そのツケを今まさに払わねばならないときが来たのだと知らしめるように『ハルペー』の斬撃が閃光となって疾走るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
アイさんと
オブリビオンマシンに取り込まれたエース、か。
このやり方……どこかで見たね。
フュンフさんにアインさんっていう、
ちょっと引っかかる名前がでてきたし、
『グリプ5』の二の舞には、絶対させないからね。
わたしは六輪車モードの【リオ・セレステ】で出て、
アイさんのサポートをしたいと思うよ。
最新鋭機体にスーパーエースの操縦となれば、
簡単にはいかないだろうけど、アイさんとわたしなら、ね!
【E.C.O.M.S】を発動して、アイさんの周囲に展開。
『アークレイズ・ディナ』の攻撃を、壁になって受け止めさせるね。
「わたしのパートナーに弾を当てたいなら、わたしを倒さないとね」
アイさん、いまだよ。いっちゃえー!
アイ・リスパー
理緒さんと
「戦乱を広げようとするオブリビオンマシンを許すことはできません!
行きましょう、理緒さんっ!」
え、この前とノリが違う?
なんのことでしょう?
理緒さんのセレステと一緒に、機動戦車オベイロンで出撃です。
「理緒さん、サポートをお願いします!
オベイロン、ミサイル発射!」
AIに指示して、敵キャバリアに向けてミサイルを撃ち出します。
理緒さんには一歩も近づけさせません!
「一気に畳み掛けますよ、オベイロン強化外装モード!」
機動戦車をパワードスーツに変形させ、プラズマブレードを構えて斬りかかります。
敵のドリルを理緒さんが防いでくれている間に……
「オベイロン、プラズマブレードフルパワーです!」
幾度となくクロムキャバリアにおいて繰り返された悲劇であった。
今回の事件もそうだ。大なり小なり似通った事件を猟兵は何度だって見てきただろう。オブリビオンマシンが最新鋭機にすり替わっているという奇怪な現象。
いつのまにすり替わっているのかもわからぬほどの巧妙にオブリビオンマシンは、クロムキャバリアに暗躍する。
それを何故、と今は問うまい。
「オブリビオンマシンに取り込まれたエース、か。このやり方……どこかで見たね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は電子戦装備を強化された空色の戦闘艦『リオ・セレステ』を六輪の轍を小国家『フィアレーゲン』に刻みながら、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の駆る機動戦車『オベイロン』と共に進む。
彼女の言葉通り、たしかに幾度か見た光景であったことだろう。
彼女の脳裏にあるのは『フュンフ・エイル』と『フュンフ・ラーズグリーズ』……そして、『アイン』という名であった。
以前に戦った『グリプ5』での事件が思い出される。
その二の舞を『フィアレーゲン』でも演じさせるわけにはいかないのだ。彼女の意志を代弁するようにアイが叫ぶ。
「戦乱を広げようとするオブリビオンマシンを許すことはできません! 行きましょう、理緒さんッ!」
この前とノリが違うと誰かに茶化されそうなものであるが、なんのことでしょう? の一言で済まされる問題である。
今はそんなこと言っている暇は無いのだ。
気合い充分なアイの言葉に理緒はうなずく。例え、相手が最新鋭機と『エース』であろうとも、彼女と一緒ならば恐れることなんて何一つないのだ。
「理緒さん、サポートお願いします! オベイロン、ミサイル発射!」
AIに指示を出し、オブリビオンマシンである『アークレイズ・ディナ』へとミサイルが乱舞するように飛ぶ。
だが、ミサイルが飛来しても『アークレイズ・ディナ』はたじろぐことなく、その尽くを撃ち落としていく。
アサルトライフルを一丁喪ったとて、『ツェーン』にとってはどうでもいいことであった。
凄まじい勢いでアンカーテイルが飛び、ミサイルを叩き落とし、切り裂いていく。
爆風が空中に吹き荒れ、そのさなかを『アークレイズ・ディナ』が飛ぶ。
「二機……戦車もどき! その程度ならば……!」
確かにキャバリアでもない戦闘装甲車程度であれば、彼女には問題なかったことだろう。だが、侮ることをしてはならなかった。
今彼女が相対しているのは、猟兵の駆る装甲車である。
理緒の駆る『リオ・セレステ』から正八角形のユニットが飛び出し、E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)の展開によって、アンカーテイルの攻撃をアイの駆る『オベイロン』へと届かせないのだ。
「わたしのパートナーに弾を当てたいなら、わたしを倒さないとね」
「鬱陶しい真似をしてくれる! この程度の壁を張り巡らせた所で!」
アンカーテイルと展開されたユニットが激突し、互いに爆散していく。
その爆発の間隙を縫って『アークレイズ・ディナ』が飛ぶ。その動きはあまりにも早く、目で追うことすら叶わぬ超高速機動であった。
先行した猟兵達が消耗させても尚、あの速度。
それは『ツェーン』の持つ超絶なる戦闘技術にもまた由来していたのだろう。
「こちらの動きを面で捉えようなど! 食い破られるだけだと、何故わからない!」
ミサイルの弾幕を切り抜けて『アークレイズ・ディナ』が理緒とアイに迫る。
だが、猟兵がただ座して待つだけの存在ではないことを知るべきであった。
「一気に畳み掛けますよ、オベイロン強化外装モード!」
機動戦車『オベイロン』が強化外装(パワードスーツ)を装着し、プラズマブレードを構えて斬りかかる。
ドリルソードランスと激突し、火花を散らせる。
鍔迫り合いのように『アークレイズ・ディナ』と『オベイロン』が拮抗したパワーで押し合う。
そこに理緒の放った正八角形のユニットが飛来し、『アークレイズ・ディナ』を押し返すのだ。
「アイさん、今だよ。いっちゃえー!」
アンカーテイルが次々とユニットを破壊していくが、それは無駄な足掻きであった。
強化外装によって強化された『オベイロン』の持つプラズマブレードの出力が上がっていく。
「この、力、私が圧されている……!?」
「オベイロン、プラズマブレード、フルパワーです!」
出力を極限まで高めたプラズマブレードの刃がドリルソードランスを押し返し、理緒の放った正八角形のユニットと共に『アークレイズ・ディナ』を吹き飛ばす。
さらに斬りかかるプラズマブレードの斬撃が、『アークレイズ・ディナ』の右腕を切り落とすのだ。
「わたしのパートナーの力を侮らないでね!」
「理緒さんと二人なら!」
できないことはないのだと誇るように、片腕を欠落させた『アークレイズ・ディナ』、その一人ぼっちの『エース』に宣言するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】【絆】
知り合いの機体に良く似ているものでのー
エースであっても貫かせて貰うのー
キャバリアKIYOMORIに搭乗して参戦
テールアンカーやアンカークローに刺し込まれないように、レーザー砲ユニットによるレーザーブレードで叩き落し、ミサイルや榴弾による砲撃を加え続けて動きを牽制
エィミーにドローミの鎖で動きを封じたら、UC「フレミングの左手の法則」を発動し、散財したミサイルや榴弾の破片や、アカハガネのガトリング弾の残骸にローレンツ力を纏わせて、地面からの全方位レールガンを叩き込む
これがエースを倒す秘策という奴じゃのー。思う存分食らうといいのー
アドリブ絡みOK
エィミー・ロストリンク
【WIZ】【絆】
エースっていうのは希望じゃないといけないんだよー!
だから略奪なんて、強奪なんて許されないんだよー!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
クロキバの立体機動を駆使しつつ、空中機動を展開しながらテールアンカーとアンカークローを回避
さらに両腕のオルトロスⅡとキャバリア武装化したオルトロスのトリプルガトリング弾の弾幕を形成して攻撃していく
頃合いと判断したらアンカーを撃ち込まれるのを承知で接近し、UC「大海を制する姫君の縛鎖」を発動
動きと能力を封じるドローミの鎖を生み出して、刃を受ける代わりに相手の動きも封殺する
メイスンお義姉ちゃん、今だよ! あの人を救ってあげて!
「右腕部、脱落……私を此処まで追い込むなんて」
それは許されることではなかった。
己は『エース』である。それは覆ることのない事実。必ずや勝利を齎す存在。圧倒的な力の象徴。
かつて伝説的エースであった者がいたように、己もまたそう在るべきと生み出された存在。1と0から生み出された存在、『ツェーン』。
それが自分だ。
オブリビオンマシンは、その歪んだ教育の果てに在るものを更に歪めさせる。
他者への羨望も、妬みも、欲望も、全て悪意と共に捻じ曲げていく。
それがクロムキャバリアにおけるオブリビオンのやり方であった。
片腕を欠損したオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』のエンジンが咆哮するようにうなりを上げ、アンカーテイルがまるで触手のように宙へと浮かぶ。
まるで喪った片腕の代わりを探すように、獲物を狙うのだ。
「知り合いの機体に良く似ているものでのー『エース』であっても貫かせてもらうのー」
キャバリア『KIYOMORI』を駆り、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は小国家『フィアレーゲン』市街を疾走する。
彼女の駆るキャバリアを貫かんと迫るアンカーテイルをレーザーブレードで叩き落とし、ミサイルの榴弾や砲撃を加えて、超高速機動を誇る『アークレイズ・ディナ』の行動を制限するのだ。
「エースっていうのは希望じゃないといけないんだよー! だから略奪なんて、強奪なんて許されないんだよー!」
キャバリア『アカハガネ』がロープアンカーによる立体機動装置によって、超高速機動によって迫る『アークレイズ・ディナ』と競り合う。
テールアンカーの一撃を躱し、装甲を掠めさせながらも、互いは一歩も距離を離さない。
「鬱陶しいな! 子供が! そんな絵空事のようなことばかり言うから!」
人は夢を見る。
『エース』という名に、名前以上の理由を求めてしまう。
それがどれだけの重責と為るのかを知らず、けれど、その責務を果たすことばかりを強いるのだ。
「人が『エース』に思いを託すというのなら、全て差し出せ! 私に!」
ガトリングガンの斉射すらも尽く躱す『アークレイズ・ディナ』。先行した猟兵達によって消耗し、片腕を欠損して居ても尚、その機体は凄まじき機動性能を発揮し、軋みながらも二機のキャバリアを相手取って互角以上に戦いを続けるのだ。
「人の全部を誰かに押し付けるなんて、していいわけがない!」
エィミーが『アカハガネ』と共に『アークレイズ・ディナ』に組み付く。
アンカーテイルが打ち込まれようとも構わなかった。
その瞳がユーベルコードに輝いたのは、倒すためではない。救うためであった。
大海を制する姫君の縛鎖(チェーン・オブ・ロック)、メガリス『鉄鎖ドローミ』が『アカハガネ』から放たれ、『アークレイズ・ディナ』の機体を絡め取る。
「この……距離が……!」
近い、近づくなという拒絶の意志が機体から伝わってくるのをエィミーは感じていた。
きっと、人との距離がわからないのだろう。
近づけば傷つけるとわかっているから、近づけない。けれど、ぬくもりは知りたくて近づいてしまう。
傷付けた人の痛みを知ろうとして、己の痛みばかりを感じてしまうからこそ、『ツェーン』はオブリビオンマシンに乗って歪んでしまったのだとエィミーは理解した。
だから、救って欲しい。
「メイスンお義姉ちゃん、今だよ! あの人を救ってあげて!」
その言葉に応えるのはメイスンのユーベルコードであった。
その輝きは、誰かを救うために放つ光であった。 周囲にあった残骸の全てが電磁誘導によって『アークレイズ・ディナ』へと飛ぶ。
それは『鉄鎖ドローミ』の拘束を振りほどき、『アカハガネ』すらも投げ捨てた『アークレイズ・ディナ』へと迫る全方位のレールガンともいうべき攻撃であった。
確かに『ツェーン』は『エース』と呼ぶに相応しい技量を持っていたことだろう。
それは相対したメイスンにも理解出来ていた。
並ではないと理解した。だからこそ、メイスンは方策を生み出すのだ。義妹が身を挺して生み出してくれた隙を無駄にはしない。
「どれだけ『エース』が優れていようとも。生きている以上は倒せぬ道理はない。それに……」
フレミングの左手の法則(レールガン・テンペスト)によって放たれた嵐の如き砲撃は、『アークレイズ・ディナ』の回避を許さない。
もしも、『ツェーン』の操縦技術の全てに応える機体があったのだとしたのならば、この攻撃をも躱したかもしれない。
けれど、メイスンたちは一人で戦っているわけではないのだ。
数多の猟兵達が紡ぎ、重ねてきた結果がある。誰かを救いたいという願いの前に、誰かから何かを奪うという願いはかき消されてしまうものだ。
「これが『エース』を倒す秘策という奴じゃのー。思う存分喰らうといいのー!」
放たれた弾丸の全てが『アークレイズ・ディナ』へと吸い込まれ、その機体装甲を砕いていく。
その衝撃波凄まじいものであった。
機体がバラバラになってもおかしくないほどの一撃。
けれど、それでもなお輝くユーベルコードの嵐は止まらない。メイスンは願われたのだ。
あの人を救ってと。
ならば、それに応えるのが猟兵である。
オブリビオンマシンによって歪められたのなら。
「それを矯正するのまた大人の役割ってやつじゃけーのー!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
エース、エース、エース〜
エースを…とこれ以上はマズイマズイ
今回の機体はイケメンだなあ…面白いパーツあれば良いな
というわけで、その機体ぶっ壊して良さげなパーツ貰いに来たから
いやだって、さっき言ってたじゃん
奪いに来たんだよ
いえーい、ジャンク漁り最高!
●
【アームデバイス起動】
圧縮空間より、アームユニット召喚
へいへいへーい、来なよエース
ほらほら、こっちはか弱い生身だよ
馬鹿にされて、悔しくないの?
小細工なしの真っ向勝負と行こうじゃないか
両手のデバイスに『オーラ防御』を重ねて防御を固め『カウンター』体制
そして敵のドリルランスを正面から掴む!
掴んだ後は速攻で後方に巴投げ!
そのランス、面白そうだから後で貰うね
「エース、エース、エース~♪ エースを……」
そんなコートでは誰もが一人きりであると歌うような歌声がクロムキャバリアの小国家『フィアレーゲン』の街中に響き渡る。
凄まじい勢いで放たれた超電磁誘導の弾丸がオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の機体装甲を砕いていくのを見やりながら、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は詩を口ずさんでいた。
これ以上はお届けできない。
だって、権利の問題とかあるからね。そんなふうに玲は呟いて、その瞳をユーベルコードに輝かせた。
『デバイス転送。動力直結。攻勢用外部ユニット、起動完了』
彼女の背面にアームデバイスが転送され、外部ユニットとして可動し始める。圧縮空間より召喚されたアームデバイスは、生身の身体であっても、キャバリアに引けを取らぬ膂力を生み出す。
「ああ、今回の機体はイケメンだなあ……面白いパーツあれば良いなっていうか、ぶっ壊されてないといいな。いやでも、良さげなパーツをどっちにしろぶっ壊して、貰おうって思っているわけだから、どのみち壊すわけだし」
壊すことは確定しているのだ。
オブリビオンマシンであるから遠慮はいらない。
玲の身体が構想ビルの屋上から『アークレイズ・ディナ』へと迫る。
「単身……! 生身の人間がアームデバイスを装備した程度で!」
機体装甲は砕け、ひび割れているが未だ機体のフレームに対する致命的な損傷は右腕が欠損しただけに過ぎない。
それは『ツェーン』の卓越した操縦技術の賜物であったことだろうが、それでも玲は煽るように言葉を紡ぐ。
「へいへいへーい、来なよ『エース』。ほらほら、こっちはか弱い生身だよ? 馬鹿にされて悔しくないの?」
アームデバイスにオーラの力が重ねがけされ、拳を放つ。
その拳の一撃が『アークレイズ・ディナ』の頭部のひび割れたフェイスガードを完全に砕いて、大地へと失墜させる。
「ははーん、さてはあれかな? 背面ユニットはもう使えない感じかな? でもでも、それでも、その超機動は、操縦テクてわけね。なるほどなー」
「あなたは! そうやって巫山戯て!」
超高速で回転するドリルソードランスを振るい上げる『アークレイズ・ディナ』。それは生身の人間に向けていい武装ではなかったけれど、構わなかった。
奪うと決めた者、それが『ツェーン』である。
例え、それがオブリビオンマシンによって歪められた結果であったのだとしても、そう決めたのは彼女自身の意志だ。
「小細工なしの真っ向勝負と行こうじゃないか。ひゅー! ヤる気満々ー!」
叩きつけられるドリルソードランスをアームデバイスの拳が受け止める。
掴み上げ、圧倒的な膂力で持って『アークレイズ・ディナ』毎持ち上げるのだ。それは尋常ならざる光景であったことだろう。
にわかに信じがたいが、生身の人間がキャバリア一機を持ち上げ、巴投げの要領でぶん投げるのだ。
轟音が響き渡り、『アークレイズ・ディナ』の機体が大地へと失墜し、今度こそ背面ユニットがひしゃげて使い物にならなくなってしまう。
「こ、の……!」
投げ倒された『アークレイズ・ディナ』からドリルソードランスを逆手に持ち替えて、『ツェーン』が再び玲へと叩きつける。
けれど、それさえも十字に交差させたアームデバイスで受け止めるのだ。
「あなたは、なにを――!」
何をしに来たのだと、『ツェーン』が叫ぶ。
それは理不尽なる圧倒的な力を前に動揺する子供のようであった。
「いやだって、さっき言ってたじゃん。奪いに来たんだよ」
こともなげに玲は言う。
彼女にとって、これは戦いですらない。
破壊のあとに在るジャンクを、パーツを貰うために来ただけなのだ。
「そんなことなんて!」
在っていいわけがない。けれど、在るのだ。その理不尽が、理解できぬ存在が、さらなる強大な者があらゆるものを根こそぎ奪い去ることが。
「そのランス、面白そうだから後で貰うね」
にこりと微笑む玲の顔は確かに美しかった。
けれど、『ツェーン』にとって、これ以上無いほどに理解不能な存在でも在ったのだ。
再びドリルソードランス毎、『アークレイズ・ディナ』は持ち上げられ、強大な力で持って地面にしたたかに打ち付けられ、そのフレームを軋ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗
昔日の英雄越えるべきと生み出され…
狂気もあれど、あの言動は自分にはそれ以外何もないという寂寞が一因か…
人や建物かばいつつ銃器で応戦
決定打となる近接戦誘発
左右に避ければ背後が危うい
市街地の被害避けたい此方の意図を…良い戦術眼ですね…!
自機体●ハッキング機体追従性●限界突破
リーチ活かしたランス突撃に、前転宙返りからのドロップキック
意表突く●騙し討ち
姿勢制御スラスタの微細な●推力移動と●操縦技量で機体捻りランス回避と同時、胸部へ一撃
こうした邪道の、ご経験は?
体勢立て直し剣で一閃
貴女にはお若い
世界を広く見、改めて欲するものを見出さねばなりません
その為に、騎士としてお救いいたしましょう
『エース』とは英雄である。
ならば、それを後年の者たちが超えなければならないのは命題である。
「昔日の英雄超えるべきと生み出され……狂気もあれど、あの言動は自分にはそれ以外何もないという寂寞が一因か……」
地面に投げ飛ばされ、叩きつけられたオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』が立ち上がる。
ボロボロになりながらも、それでも立ってくるのはオブリビオンマシンだからではない。
パイロットである『ツェーン』の意志があればこそであろう。
その姿を見て、白き騎士のキャバリアを駆るトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は言葉を発した。
憐れであるとは思うまい。
それは騎士として在るまじき感傷でしかない。
だからこそ、トリテレイアは護ると決めたのだ。
「私は、私以外の全てを奪う。そのために……!」
人間性すら必要ない。キャバリアを動かす部品の一つだっていい。機械にだって成りきってみせると吠える。
格納銃器が『ロシナンテⅣ』から展開され、『アークレイズ・ディナ』を寄せ付けない。
あの機体装甲の状況では格納銃器の一撃でさえ、致命傷に成り得る。
だからこそ、『アークレイズ・ディナ』は駆け抜ける。無数に放たれる弾丸の一発すらかすらせずに、扇状となった小国家『フィアレーゲン』の街中を駆け抜けるのだ。
「あの騎士のキャバリア……妙な動きをする」
『ツェーン』は気がついたのだろう。
トリテレイアが攻勢に出ないのは、キャバリア戦闘における人的、物的被害を最小限に抑えるためだと。
「お人好しも……いや、私をなめている!」
機体状況は逼迫しているであろうに、『アークレイズ・ディナ』の動きは精彩を欠くものではなかった。
気迫で押し切られてしまう。
「左右に避ければ背後が危うい……市街地の被害を避けたい此方の意図を……良い戦術眼ですね……!」
「人を侮っておいて、今もまだ私を……!」
子供扱いするなと『ツェーン』が吠える。
突き出されたドリルソードランスの一撃を、ロシナンテⅣは全店宙返りからのドロップキックでカウンターを決めるのだ。
その動きはキャバリアの動きではなかった。
まるで人間……いや、人間らしくて逆に正確な動きであった。
その意表を突くドロップキックは、それでも尚、『アークレイズ・ディナ』の装甲を掠めた程度であった。
「称賛すべきは、機体性能ではなく、そのパイロットの技量……! ですが! 私の予測演算はすでに勝ち筋を見ているのですよ」
それは、機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)のように。
誘い、誘われ、今此処に『アークレイズ・ディナ』は己の最大の武器であるドリルソードランスを突き出している。
今からでは間に合わない。
機体をひねり、微細な姿勢制御スラスターが噴射し、ひねられた腰部から繰り出されるアンダーフレームの脚部が、『アークレイズ・ディナ』の胸部へと一撃を見舞うのだ。
「くっ――! こんなっ!」
「こうした邪道の、ご経験は?」
それはまるでシャル・ウィ・ダンスと紳士が令嬢に手を差し出すようなものであった。
それが『ツェーン』の激昂を誘う。
トリテレイアにはそのつもりはなかったけれど、結果としてそんなふうに見えてしまうのは、彼の慇懃無礼なる所作のせいであったのかもしれない。
けれど、戦場において激昂した方が負けるものである。
体勢を持ち直した『ロシナンテⅣ』が放つ剣閃の一撃が、『アークレイズ・ディナ』のオーバーフレームの装甲を切り裂いて吹き飛ばすのだ。
「貴女はお若い。世界を広く見、改めて欲するものを見いださねばなりません。そのために――」
トリテレイアは告げる。
それが例え望まれていないことであったのだとしても。
あたら若い生命が喪われてしまうことは、耐え難いものであった。
だからこそ、拒絶されても尚、手を差し伸べる。
「騎士としてお救いいたしましょう」
それが自身の矜持であり、為さねばならぬことであると知る。
何を為さねばならぬかを知る者は、己が何を欲するのかもわからぬままに、がむしゃらな者を導く者である。
嘗ての英雄を超えるべきであり、またその軌跡をたどる道筋だとしても――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…うーん……力が必要じゃない…と言うつもりもないけどね…
戦わなければならないことと弱者を食い物にすることは別問題だよ…
…小さな組織ならともかく国を動かすとなれば「それではダメだ」と先人が血塗られた文字で示しているというのに…まずは止めるとするか…
改造装甲車【エンバール】に乗って戦うとするよ…
…テールアンカーやアンカークローを地形を利用しながら回避しつつ【投じられしは空裂く巨岩】を発動…
…術式組紐【アリアドネ】を伸ばしてアークレイズに接触、そのまま効果時間いっぱい地面方向に投げて叩き付けよう…
…ハッキングを開始…武装の制御の幾つかにロックを掛けてしまおう…可能なら『ツェーン』を強制脱出させるか…
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の動きは、すでに鈍いものであった。
機体のフレームはあちこちが損壊しており、右腕が喪われていることで機体バランスが崩れている。
巨大な得物であるドリルソードランスを片腕で振るってなお、超高速機動を行っていたのは、パイロットである『ツェーン』の並々ならぬ技量があってこそであろう。
「見ろ、私を! 私を見ろ! 私は今も立っている。どれだけの敵が来ようとも私を屈服させることなんてできないんだ」
これが力だと誇るように『ツェーン』が叫ぶ。
それは熱狂的に小国家『フィアレーゲン』の人々に迎えられていた。
数多のキャバリアや猟兵が『アークレイズ・ディナ』を打倒してきても尚、未だ立ち続ける『ツェーン』の姿に彼らは熱に浮かされたように狂信的な言葉でもって讃える。
「……うーん……力が必要じゃない……と言うつもりもないけどね……」
けれど、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は改造装甲車『エンバール』を駆り、街中を駆け抜ける。
彼女にとって力とは知識であるし、技術でもある。
それを否定しては豊かな暮らしは築くことはできないし、喪われる物も掬い上げることはできない。
だから、力そのものを否定する気はなかった。
小国家『フィアレーゲン』の街中にある人々の瞳は皆、狂気じみた熱に染まりきっていた。
戦いが続く戦乱の世界であるからこそ、他者を屈服させるのに力は単純明快なものであったのだろう。
強者であることを証明するためにキャバリアという兵器があるように、強者と弱者を分かつものが彼らには必要であったのだろう。
「戦わなければならないことと弱者を食い物にすることは別問題だよ……」
メンカルにとって、それは繰り返し行われる人の歴史と営みでしかない。
改造装甲車である『エンバール』を視認した『アークレイズ・ディナ』から放たれるアンカーテイルとアンカークローを瓦礫が積み重なった街中を巧みに利用しながら、躱し進む。
正さなければならないという横行な気持ちがあるわけではない。
結局の所、これは嘗て間違えた歴史の状況を再現させぬための戦いでしかない。
知識とは即ち失敗の積層が見せる集大成である。
「……小さな組織ならともかく、国を動かすとなれば『それではダメだ』と先人が血塗られた文字で示しているというのに……」
「それがどうした。先人ができなかったことを私が為すというのだ! 巨大な力で、もっと強大な力で! 大人が止めようとしても無駄だ! そんな血文字で脅した所で!」
自分はできるのだと、『ツェーン』が叫ぶ。
その狂気はオブリビオンマシンが齎したものであるが、根本的に狂った教育を受けた彼女だからこそ、此処まで変わらないのだろう。
過ちを過ちで塗り固める行為であるとメンカルは知る。
「……まずは止めるとするか……見えざる腕よ、投げろ、放て。汝は剛力、汝は投擲。魔女が望むは大山投じる巨神の手」
投じられしは空裂く巨岩(タイタンズ・スロウ)。
その術式は組紐である『アリアドネ』によって『アークレイズ・ディナ』へと触れ、改造装甲車『エンバール』でもって引きずり倒すのだ。
十全の状態であれば難しかったであろう。
けれど、此処は猟兵の居る戦場である。ならば、できないわけがない。戦いに次ぐ戦いで消耗しきった『アークレイズ・ディナ』を引き倒し、接触した術式組紐からメンカルは機体へとハッキングを開始する。
「ぐっ……! こ、の!」
もがく『アークレイズ・ディナ』の機体の制御中枢へとメンカルの術式が走る。
狙いは、一つである。
「武装の制御……そして、コクピットブロックの強制脱出機構を……」
メンカルのハッキングが冴え渡る。
瞬時に機体の制御中枢へといたり、掌握を開始する。
だが、メンカルにとって予想外であったのは、その武装のロックを仕掛けようとした瞬間、外装とメインフレームの構造と仕組みがあまりにも違っていたことだった。
「これは……やっぱり、偽装していたんだね」
オブリビオンマシンをさらなるオブリビオンマシンでもって偽装する。
よくある手だ。
このオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』はさらなる変化を見せる。変貌を遂げていくシステムにハッキングが間に合わない。
「なら、ここでコクピットブロック以外を破壊する……」
『アリアドネ』の術式組紐がユーベルコードに輝き、『アークレイズ・ディナ』を大地へと叩きつけ、その外装を叩き壊す。
すでにメインフレームが露出している状態であるが、機体は動きを止める。
けれど、メンカルにはわかっていた。
ここからが、本番であると。
「……なるほどね……多腕のオーバーフレーム……そっちが本命の機体ってわけだ」
メンカルの目の前で変化していく『アークレイズ・ディナ』――その姿は異形なるキャバリアへと変貌を遂げ、術式組紐をプラズマブレードの斬撃でもって切り裂いて、駆け抜けていく。
その先にあるのは――言うまでもない。
「狙いはプラントの破壊……!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『扇動者』
|
POW : 真っ向から勢いと情熱で市民を説得する
SPD : 破滅的な演説に疑問を持つ人々と接触し、彼らの疑問は正しいと伝える
WIZ : 対抗演説を仕掛け、放送されている演説の不条理さを説く
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ここまで猟兵がやるとは思わなかったな。少々誤算であったが『ヘカトンケイル』は無事にプラントまで辿り着けそうだね」
誰かが言う。
それは雑踏の紛れた民衆の一人であったかもしれないし、小国家『フィアレーゲン』の上層部であったかもしれない。
どこにでもいるし、どこにでもいない。
そんな影が発した言葉であったが、それらは全て闇色に溶けて消えていく。
「ヒトは皆強大な力に惹かれるものだよ。どれだけ正義を、正しさを謳おうとも、己の欲求の前には見て見ぬ振りに踏み潰されてしまう」
だから、ヒトは愚かなのだと影は呟いた。
それを証明するように、逃走を開始したオブリビオンマシンを庇うように、小国家『フィアレーゲン』の人々は猟兵達を前にして立ち塞がる。
人間の壁となって、己達の最高指導者である『ツェーン』を逃がそうとするのだ。
先導者でもある彼女を失うということは、彼らにとって国が滅ぶことを意味する。
けれど、ヒトの心の光は闇色ばかりではない。
猟兵たちはそれを知っている。
大多数に流されるだけであるのが人間であると知りながらも、けれど川底の砂金のように、否と叫ぶことのできる人間だっている。
「俺達の生活を、豊かな生活を脅かすな! お前達は疫病神なんだよ!」
「奪うことが悪なわけがない! 私達の生活はこんなにも豊かなのに、これ以下になるなんて考えられない!」
彼らの言葉は皆、狂信的な洗脳めいた自己を守るための虚勢でしかない。
けれど、それもまたヒトの真実の姿であったことだろう。
彼らは彼らの生命を守らなければならない。だからこそ、強者の庇護という傘の下にいたい、居続けたいのだ。
奪われるよりは奪うものでありたいと願ってしまう。
「……だけど、それでいいのか……?」
その狂乱の群衆の中にありて、正しい道を選ぼうとする者だっているのだ。
猟兵たちは示し、説き伏せなければならない。
オブリビオンマシンがどこへ向かったのかは検討が付いている。
そう、プラントだ。
生産施設であるプラントを破壊しようというのだ。全てを奪うと言った『ツェーン』が暴走の果てに選ぶのは、全てを壊してなかったことにするという癇癪。
それを止めなければ、芽吹いた正しい道を選ぼうとする意志すら摘まれてしまう。
それが、影より彼女を手繰る黒幕の意図であると知るならば、猟兵がこれを止めなければならないのだ――。
ユーリー・ザルティア
何もかも全部終わらせたいって訳ッ
判定:POW
住民を踏むわけにはいかないからね。
シビリアンジョーのコックピットから飛び出して一喝するわ
奪われるのが嫌。
豊かさを守りたい…
でもそれは貴方達が奪う対象も同じよ。
だから力で奪おうとすれば、より強い力に返り討ちになる。
ねえ?『奪うことが悪なわけがない!』って言ったよね。
じゃあ、ボク達が君たちから豊かさを奪っても悪じゃないってことよね。やっていい?
駄目?いま悪なわけないって言わなかった?
貴方たちがよくボクたちは駄目…そんな理屈は許されない。それがあなた達が望んだ戦争よ…
いい加減気が付きなさい。その力を使う労力を別に使えばいいだけって話を!!
自身の思い通りにならぬからといって全てを放りだして許されるのは幼子だけであろう。
けれど、人は成長するものである。
誰もがそうであるように、いつかは必ず自分の足で自身の人生を歩んで行かねばならないのだ。
「何もかも全部終わらせたいって訳ッ」
そう毒づいたのは、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)だった。
彼女の瞳に映る小国家『フィアレーゲン』の人々の姿はどのようなものであったことだろう。
これまで彼らが受けてきた洗脳とも言うべき教育。
強者こそが国を導く者として敬われ、その強者の庇護の元に人々は安寧を得ている。
それで守られる生命だってあるだろう。
けれど、ユーリーはそれを是としない。
住民たちを踏み潰すわけには行かず、ユーリーはオブリビオンマシン『シビリアンジョー』のコクピットから飛び出して、行かせぬと人の壁を作り上げる者たちの眼前に降り立つのだ。
「――な、なんだ、あんたは……!」
彼らは強者の傘の下に居続けたものだ。
彼ら自身が何かをすることはない。保守的というものであろうが、それを否定する気はない。
誰だって安定した暮らしがいいだろう。
何不自由なく過ごせる法が良いだろう。
わかっている。
「奪われるのが嫌。豊かさを守りたい……でも、それは貴方達が奪う対象も同じよ」
その言葉は重いものであったことだろう。
奪われる者達だって、好き好んで奪われるわけではない。
誰だってそうだ。平穏無事に己の人生に幕を下ろしたい。自分に連なる者たちが豊かでありますようにと願わずには居られないだろう。
だから、とユーリーは続ける。
「力で奪おうとすれば、より強い力に返り討ちになる」
その静かな言葉はユーリーの心のなかにくすぶり続ける怒りにも似た感情によって押し出されたものであった。
彼女の瞳がとがるように鋭くなっていく。
ならば、知らねばならないと。
その奪う生き方の末路が如何なる物になるのかを。
「ねえ?『奪うことが悪なわけがない!』って言ったよね」
誰かが言ったのだ。
それをユーリーは聞き逃さなかった。
「じゃあ、ボク達が君たちから豊かさを奪っても悪じゃないってことよね。やっていい?」
「そ、そんなこと……」
ダメに決まっている。
言い訳がない。何故自分たちが奪われなければならないのだと叫ぶ者達がいる。わかる。理解ができる。だからこそ、腹立たしい。
わかっているのに。何故、と。
「駄目? いま悪なわけないって言わなかった? 貴方達がよくて、ボクたちは駄目……そんな理屈は許されない。それが貴方達が望んだ戦争よ」
そんなユーリーに掴みかかろうとする群衆を制するようにシビリアンジョーが膝を付き、そのマニュピレーターを割って入らせる。
ユーリーは醒めた瞳で彼らをマニュピレーターの合間から見据える。
「いい加減気が付きなさい」
それは自分自身で気が付き、変わらなければならないことなのだと。人々は逃げ惑う。
熱狂し、狂乱し、熱に浮かされた彼らの頭に冷水を浴びせるような言葉であったが、彼女の激情がそれを許さない。
シビリアンジョーのマニュピレーターの手のひらの上に乗りながら、逃げ惑う人々を見下ろす。
今は頭を冷やせばいい。
恐怖に、その狂った思想に染まった頭を洗い流せばいい。
それくらいの汚れ仕事は自分がやるのだと、ユーリーは叫ぶ。
「その力を使う労力を別に使えばいいだけって話を!!」
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
民衆には敬語で話す
俺も彼女の意見には賛成できません
奪う者でありたいと願うのは誰だって同じです
奪い奪われるのを繰り返すのは戦乱が続くと言う事、いつかは疲れ果て疲弊してしまいます
人間はそんな簡単な理だけで生きているとは思えません
SPDで判定
俺はキャバリアから降りて別行動
AIにキャバリアを【操縦】してもらい、過激派な人がいる場所を【聞き耳】【視力】で【情報収集】し端末を通じて教えて貰い、そこは避けて批判的な人達と接触
威圧的にならないように【優しく】【心配り】をし【落ち着い】て説得する
「後は任せたぞ、Minerva」
『了解しました、オート・モードに移行します』
オート・モードへと移行したキャバリア『銀の銃兵』の戦闘補助システムが告げるアナウンスを聞いて、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は小国家『フィアレーゲン』の街中を走る。
自動操縦によってAI操作されるキャバリアから、過激的な思想に染まった人々が密集している場所を探ってもらい、ルイス自身は比較的冷静な人々のいる場所へと走るのだ。
この小国家にはあらゆる場所にモニターがあり、最も力を持つキャバリアパイロットである『ツェーン』の言葉が垂れ流されている。
彼女とて狂った教育の犠牲者であるのかもしれない。
まだ少女と言っていいほどのあどけなさが残る顔立ち。
けれど、紡ぐ言葉はあまりにも過激な思想であった。
『奪うことで、人は豊かになっていく。だから力がいる。強大な力が。そう在るべきと私達は試されている。奪う側に立ち続け、私達自身を豊かにしなければならない。そのためのキャバリアという力なのだから!』
その言葉は、勝ち続けている時はいいだろう。
力を保持し続けている時ならば、通用もするし、甘い蜜のように人々が寄ってくるだろう。
けれど、とルイスはかぶりを振った。
それでは駄目なのだ。
いつだってそうだけれど、甘い耳障りの良い言葉は、破滅への一歩なのだ。
「……本当にそうなのだろうか」
小国家『フィアレーゲン』においても、彼女の言葉に違和感を覚える者達だっている。周りに流されない濁流の中に立つ木のような人間はいるものだ。
そんな彼の目の前にルイスは立っていた。
「俺も彼女の意見には賛成できません。奪う側でありたいと願うのは誰だって同じです」
そう、わからないでもない。
奪われるよりも、奪う側でいたい。
痛みを覚えるよりも与える側でいたい。それは当然のことかもしれない。目の前の彼は、それに違和感を覚えている。
それもまた何も間違いではないのだ。
「……それでも、多数の意見の中にいると孤独を感じるんだ。孤独を前に立ち向かえるほど俺は強くない……」
ルイスはうなずく。
それもまた人間だと。
「奪い奪われるのを繰り返すのは、戦乱が続くということ。いつかは疲れ果て、疲弊してしまいます」
うなだれる彼のそばに小さな子供がいることに気がついた。
未だ純真な瞳。
けれど、それでも父親であろう彼とルイスを見比べ、父親に寄り添うのだ。それをルイスは微笑ましく思う。
そう思えるだけの心の余裕がある。
「わかっている……けれど、俺はどうなってもいい。この子だけは豊かであってほしい。この子だけは、傷つかないで欲しい。飢えることも、苦しむこともない生活の中に居て欲しい……」
親が子を思う気持ち。
それが一歩を踏み出せぬ原因であろう。
けれど、ルイスはうなずく。
「人間は……奪い奪われるだけ、そんな簡単な理だけで生きているとは思えません。誰だって、立ち上がることは恐ろしい。最初の一歩を踏み出すには勇気がいる。当たり前のことです」
だから、己が居るとルイスは笑いかけた。
そう、最初の一歩を踏み出すのを躊躇うのならば、投げつけられる罵声も、悪意も己が引き受けよう。
この身はそのために在る。
ルイスはAIによって自動操縦されたキャバリア『銀の銃兵』を背に、力強く言うのだ。
「俺が守ります。俺が『生者の盾』であるために――」
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふむ…この程度なら迂回するなり眠らせるなりでどうとでもなる…
…けどそれじゃあ解決にならないね…仕方ない…感情に訴えるのは苦手なのだけど…
こういうの、姉の方が得意だったな…
…豊かな生活が良いのは否定しないけど…『奪ったら減る』よ…?
…奪いきったらそれ以上は無い…なんなら奪われる側がそれ以上物資を作らない可能性だってある…
…明日は豊かかも知れないけど…一ヶ月後は?一年後は?
…その時、奪うことに慣れてしまっているなら…その矛先を誰に向けると思う……?
…そもそもあのマシンが向ったのはプラントの方…あのマシンに『奪われる』のは誰になるだろうね…?
1度、良く考えてみると良いと思うよ…
人は一度得たものを手放すことを拒む。
築き上げたものを崩すことを躊躇うのは当然であろう。すべてのことを0からやり直すことには多大なエネルギーが必要であり、それは時として人生を賭したものになるだろう。
誰でも出来ることであるが、誰でもが成し遂げることのできぬものである。
だからこそ、水が上から下へと流れていくように。
人は楽な方へと流れていく。
それを堕落と呼ぶ事なかれ。ただの欲望でしかない。人が生きるために必要なものなのだ。
「……ふむ……この程度なら迂回するなり眠らせるなりでどうとでもなる……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、小国家『フィアレーゲン』において人の壁となってオブリビオンマシンを追うことを阻止しようとする民衆たちを前にして呟いた。
それは事実であったし、オブリビオンマシンの目的がプラントの破壊であるというのならば、それこそが最適の解答であったのかもしれない。
けれど、メンカルはそれをしない。
「……けど、それじゃあ解決にならないね……仕方ない……感情に訴えるのは苦手なのだけど……」
こういうのは姉の方が得意だったな、とメンカルは思い出に一瞬浸る。
けれど、今はその時ではない。
目の前には民衆が壁のように立ちふさがっている。
改造装甲車で突っ切る事もできた。けれど、彼らは口々に言うのだ。
「よしてくれ。私達の生活は、こうすることで保たれてきたのだから。アンタたちは傭兵か何かか? もうずっとこうやって暮らしてきたんだ。今更変えられない」
その言葉は真実であったのだろう。
他者から奪い、豊かになっていく。
『フィアレーゲン』とはそういう国であり、事実豊かになったという甘やかな結果が、彼らの今を形作っている。
だから、止められないのだ。
一度知ってしまった奪うという己の手を汚さずに感受できる安寧を、彼らは忘れられないのだ。
「……豊かな生活が良いのは否定しないけど……『奪ったら減る』よ……?」
メンカルは静かに言葉を紡ぐ。
それはわかりきっていたことだ。プラント事態が遺失技術の粋を集めたものである。
その数が限られているからこそ、クロムキャバリアはプラントの奪い合いに終始しているのだ。
「……全てのプラントを奪いきったらそれ以上はない……なんなら奪われる側がそれ以上物資を作らない可能性だってある……」
「ならっ、どうしろというんだ。今あるものを奪って……」
「奪って? ……明日は豊かかも知れないけれど……一ヶ月後は? 一年後は?」
メンカルにとって、その言葉はあまり意味がないように思えた。
彼らは慣れきっている。
この生活に。奪い、奪われる側に立つことすら考えていない。自分たちの今の立ち位置を失いたくないだけの、傷つく覚悟すらない。
「……そのとき、奪うことに慣れてしまっているなら……その矛先を誰に向けると思う……?」
簡単なことだ。
簡単なロジックだ。
強者の庇護の元にいた弱者に向けるだろう。奪う側に居た者達が、奪われる者に転落することなど造作もないだろう。
彼らはわかっているだろう。
慣れてしまっているが、わかっているのだ。
奪い尽くした後に標的になるのは自分たちだと。
けれど、彼らは立ち上がることはできない。これでいいと満足してしまっているから。明日はわからないけれど、明日が来るのなら、それでいいのだと思ってしまっている。
「……そもそも、あのマシンが向かったのはプラントの方……あのマシンに『奪われる』のは誰に為るだろうね?」
それはもしかしたら、自分かもしれない。
もしかしたら、自分の家族かも知れない。
大切な人かもしれないし、大切な友人かも知れない。
「一度、良く考えてみると良いと思うよ……」
メンカルが改造装甲車『エンバール』を走らせる。
今度こそ、その進路上に人々の壁は存在しなかった。今まさに彼らの中には渦巻いているだろう。
様々な考え、狂乱に浮かされた熱を、今自分たちで解熱していることだろう。
例え、それが痛みを伴うものだとしても、生きていくのならば、それもまた向き合わねばならぬことなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
成る程な
つまり奪うことが悪ではないのなら
お前らから全てを奪っても良いんだな?
UC起動
怪物達が人々を睥睨し
知ってるか?
奪うって事は奪われる覚悟もしなくちゃならない。
恨まれ
復讐される事だってあるだろう
お前らから奪われた連中はさぞ楽しくお前らを痛め付けるだろうな!
それでも尚、奪うことを正しいと言うか?
僕はどちらでもいい
復讐される覚悟があるならあいつを守ればいい
だがあいつはお前らを守ってくれるかな?
寧ろお前らもまたあいつから奪われるかもな?
だってそれが正しいんだろ?
鶏との会話(機体内)
「ご主人サマは奪われる覚悟あるの?」
あるわけねーだろそんなの
だから奪われねーように抵抗するんですよ
「だよねー♪」
キャバリアのコクピットから見下ろした先にあったのは、オブリビオンマシンを追うことを阻止しようと立ちはだかる民衆の壁であった。
彼らは一様に言うのだ。
「奪うことは悪いことではないはずだ。他の生物を食料として生命を奪っているのだから、プラントを奪い合う戦い全てが、肯定されている」
遺失技術によって生み出された生産施設プラント。
それが齎す豊かな生活は計り知れないだろう。小国家にとってプラントの保有数こそが国家の豊かさを示すバロメーターである。
再びプラントを生み出すことができないのであれば、自然奪い合いになることは当然であった。
これまでのクロムキャバリアの歴史がそうであったように。
これからもきっと連綿と続いていくことだろう。それは避けようのないことであるからこそ、奪うための力を保有することこそが、彼らにとっての豊かな明日へ繋がることであった。
「成程な。つまり奪うことが悪ではないのなら、お前らから全てを奪っても良いんだな? 万物の根源よ…帝竜眼よ…文明を構成せしめし竜の力を示せ…!」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)のユーベルコードの輝きが、帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)を顕現させる。
小型のダイウルゴスが、その眼でもってキャバリアの足元に群がる民衆を見下ろす。
その威容はまさに異形そのものであった。
悲鳴が漏れる。それもそのはずであろう。彼らにとって初めて見る異形。
カシムは告げる。
「知ってるか? 奪うってことは奪われる覚悟もしなくちゃならない。恨まれ、復讐されることだってあるだろう」
今更問うまでもないことであったかもしれない。
けれど、今というぬるま湯に使っている『フィアレーゲン』の民衆たちは、それを知らない。
いや、意図して教えられていないのかも知れない。
この国の上層部が何を考えているのか、カシムに関係のないことであった。
どれだけ洗脳的な教育を施されていようとも、対するのは人だ。
ならば、どの世界にあっても恐怖とは、因果応報とは、共通のことである。
「お前らから奪わた連中は、さぞ楽しくお前らを痛めつけるだろうな!」
「だからどうしたっていうんだ、それをさせないために力が要るんだよ。それに俺達にはそれが在る!」
それがキャバリアであり、『エース』である『ツェーン』だというのだろう。
どこまでいっても強者の庇護の元にあることしか考えていないのだ。
例え、どれだけ言葉で言った所で彼らは本質的に理解できないのかも知れない。告げる言葉も、彼らには実感できないのだろう。
「それでも正しいというんだな。僕はどちらでもいい。復讐される覚悟があるなら、あいつを守ればいい。だが、あいつはお前らを守ってくれるかな?」
カシムは告げる。
彼らが実感できないのだとしても、これだけは事実であろう。オブリビオンマシンによって思想を歪められたパイロットがまともに国を守るとは思えない。
この国の顛末は見えている。
「むしろお前らもまたあいつから奪われるかもな? だってそれが正しいんだろ?」
その言葉を裏付けるようにオブリビオンマシンはプラントを破壊しようとしている。
それはカシムにとって事実であり、民衆にとっては見てみぬふりをしてきたツケである。
現実を、真実を、知らなければならないことを、不都合なことを、全てを見て見ぬ振りをして、今さえ良ければいいとうそぶいてきた報いだ。
だから、カシムは放ってキャバリアを浮遊させる。
「ご主人サマは奪われる覚悟あるの?」
鶏のホログラムが言う。
その言葉にカシムは笑った。
「あるわけねーだろ、そんなの。だから奪われねーように抵抗するんですよ」
だよねー♪ と鶏も笑った。
今はそれでいい。彼らが考えることが大切なのだ。
どれだけ自分が言葉を紡いだ所で、彼らには届かない。ならば、痛みを持って知らなければならないのだ。
今まで目をそらし続けてきた現実が牙を剥く瞬間を。
だから、どちらでもいい。ただ、オブリビオンマシンだけは破壊する。その先に待ち受ける未来が、光か闇か。
ああ、とつぶやく。
「僕が言ったんだっけか。どちらでもいいって――」
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】【絆】
ほう、自分達が豊かであれば何でもしていいとのー?
なら僕等がそっちを蹂躙してもいいということじゃのー?
UC「電脳黒死病」で電脳ウイルスをばら撒いて、人々を感染させて一時的に身体を行動不能状態に陥らせる
そこで向けるはキャバリアKINOMORIの兵器群の銃口を構えて、強烈なる暴力装置を見せつける
人の生活を奪うということは、奪われる覚悟も持っておるということじゃのー? なら今の境遇は自業自得、つまり許容できるということじゃのー!
脅しの文句散々に吹っ掛けて、「鞭」の役割を見せつける
あとは「飴」の役割のエィミーに任せる
(まー、エィミーは見た目幼女じゃけど、僕より力強いがのー)
エィミー・ロストリンク
【WIZ】【絆】
豊かさを求める気持ちはわかるし、奪われることの怖さもわかる
だけどそれが他の人から奪っていい理由にはならないよ!
メイスンの脅しで怯んでいる民衆の前に立ち塞がって、盾となる
そして民衆に強く、子供でも幼くても、声を大にして大人たちに訴えかけていく
皆は本当は間違っているって気づいているよね?
その気持ちから目を背けないで! あなた達が正しいと思うことを思い出して!
UC「王笏の秘宝よ、姫君を導け」を発動して、ロストオーシャンオーブのメガリスを消費して、人々の気持ちを落ち着け、穏やかな気持ちへと導く
だからツェーンちゃんにすべてを求めないで。あなた達が本当に支えてあげることこそが、絆だから
人の営みは摩擦があってこそ傷つくものである。
それは人と人とが寄り添うからこそ起こり得る悲劇でも在るが、同時に人の意識を成長させる要因にも成り得る。
けれど小国家『フィアレーゲン』の人々は摩擦すらも、他者に押し付ける。
自分たちは傷一つ負わずに、他者に全てを任せている。
強者という絶対者を戴くからこそ、彼らは豊かな生活を約束されているのだ。恭順という名の奴隷でしかない。
彼らは自らが傷つくのを恐れている。
「ほう、自分たちが豊かであれば何でもしていいとのー?」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)にとって、その生き方は到底許容できるものではなかった。
確かに生物である以上、他の生命を喰らって生きるのは奪って生きることと同義であったことだろう。
けれど、それは人の営みとは言えない。
「そうだ。俺達はずっとそうして生きてきたし、これからもそうする。奪い、奪われる側にはまわらない。ずっとだ、そうやって生きていきたいんだ。此処に居る者達皆がそう願っている」
人の壁となってメイスンとエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)のキャバリアを立ち止まらせているのだ。
「豊かさを求める気持ちはわかるし、奪われることの怖さもわかる。だけど、それが他の人から奪っていい理由にはならないよ!」
エィミーの言葉は理想論でしかなかったことだろう。
メイスンもそれは理解していたし、『フィアレーゲン』の人々のように誤った教育を受けた者たちには、受け入れられないものであった。
彼らは口々に猟兵へと心無い言葉を投げつける。
彼らにとって今のぬるま湯のような平穏こそが全てであった。
豊かな、明日を心配する必要ない日々こそが、彼らの求めるものであったから。けれど、それは他者の悲哀の上に立つものであることを彼らは理解しないし、理解したいとも思っていない。
エゴだけが肥大した道徳が、彼らの根底にある。
この一連の事件の首謀者がいるのだとして、それが為したのだろう。
「なら僕等がそっちを蹂躙していいということじゃのー?」
メイスンがキャバリアと共にユーベルコードを輝かせる。
そのユーベルコードの名は電脳黒死病(スタン・パンデミック)。空気感染する電脳ウィルスによって生物であろうと、非生物であろうと感染し、その動きを麻痺させる恐るべきユーベルコードである。
「な、なんだ……身体が……!?」
『フィアレーゲン』の人々は次々に動けず、膝をついていく。
そこに向けられるキャバリア『KIYOMORI』のガトリングガンの銃口。
それは強烈な暴力装置と呼ぶに相応しいものであった。
「人の生活を奪うということは、奪われる覚悟も持っておるということじゃのー? なら、今の境遇は自業自得、つまり許容できるということじゃのー?」
その言葉は強烈に彼らの心を痛めつけたことだろう。
目の前に迫る死の恐怖。
それは生存本能を刺激することだろう。死にたくないという願いが充満する。けれど、その銃口の前に立つのは赤いキャバリアであった。
『アカハガネ』。エィミーの駆るキャバリアが動けなくなった人々の前に盾になるように両手を広げる。
例え、メイスンの脅し文句が『鞭』であったのだとしても、それはやりすぎではないかとエィミーは思ったのかもしれない。
もしかしたら、二人の間ではすでにシナリオができていたのかもしれない。
けれど、そんなこと関係なくエィミーは思い出す。
あのキャバリアパイロットであった『ツェーン』の言葉を。
「皆は本当は間違っているって気づいているよね?」
それは人の善性を信じる彼女の言葉であった。
けれど、メイスンは頭を振る。
「そうではない。こやつらは気づいてなどいないのじゃけーの」
だから、恐怖する。
真に気がついているのならば、彼らは考えを変えただろう。根本的に彼らは価値基準が違うのだ。
そう、洗脳めいた仕込みが済んでいるのだ。
けれど、とエィミーは言う。
例え、洗脳教育に近いものがあったのだとしても。人はより良く生きようとする生命であると彼女は信じる。
全員がそうではないように。自分で考え、弱者から強者ではなく、別のなにかに意義を見出す者だっているはずだと、彼女は善性を信じたのだ。
「これが、間違いだっていうのなら、どうしたらいいんだ! 僕等が間違っているというのなら――!」
一人の少年が声を荒げる。
電脳黒死病のウィルスに犯されながらも、立ち上がってくる。エィミーにとって、それは希望の光であった。
いたのだ。
どれだけ人を悪しき倫理に染めようとも、正しいものをへと自分を変える勇気を持った者がいる。
「その気持から目を背けないで! あなた達が正しいと思うことを思い出して!」
たった一人でもいい。
その気持は間違いなんかじゃないとエィミーのユーベルコードが輝く。
王笏の秘宝よ、姫君を導け(オーシャン・オブ・グリード)と、メガリスが輝き消耗していく。
ユーベルコードの輝きが、エィミーの庇う電脳黒死病に侵された人々を癒やしていく。彼らの荒れ狂う熱狂的な感情を落ち着け、穏やかな気持へと導いていく。
その光景をメイスンはため息を吐き出しながら見つめる。
わかっているのだ、彼女だって。
エィミーの見た目以上に、彼女の意志を尊重している。どれだけ力強い思いを描いているのかも。
だから、メイスンはあえて『飴』ではなく『鞭』を打つ。損な役割だと自覚しているけれど。
けれど、それでも。
「だから、ツェーンちゃんに全てを求めないで。あなた達が本当に支えてあげることこそが」
それが絆と呼ばれる者になるはずだと、エィミーはユーベルコードの輝きと共に、一人の少年を見る。
彼がこの国における希望と成り得る。
そんな予感を覚えながら、少年の緑の瞳を見つめる。きっと、それがいつか、実を結ぶときが来るだろう。
他の誰でもない、誰かのために声を上げた彼が、きっと護るべきものであろうから――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
弱肉強食良いんじゃね?
弱者がそれを主張するのは笑えるが。
まあそれはいいか。
俺からの質問は一つだ。
豊かな生活を求めるのは良い。何も間違ってねー
だがお前らは他者から奪う事でそれをなした。
その結果が現状だが間違ってなかったと本当に言えるのかい?
それでも間違ってねーと言えるならそれでも良いぜ。
俺は悪くねーって言いながら死にな。
だが、他に方法があったのではないかと思う者は道を空けな。
お前らはやり直せる。
黄金に輝くオーラを纏ったキャバリアを浮遊させて、拡声して人間の壁に呼びかけます。アレク的には実のところどうでもよくその後は彼等の頭上を飛び越えてプラントに向かうのですが。
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)にとって弱者とは一体何を持って定義されるものであっただろうか。
答えは単純である。
己の力でもって、己の為すべきことを為すことができる者こそが強者であるのならば、他の力に頼って己の欲望のままに己を肯定する者こそが弱者である。
「まあ、そういうわけだ。弱者であるお前達にとって、それが弱肉強食だと嘯くのならば」
それもまた良いのではにあかとアレクサンドルは呟いた。
オブリビオンマシン『スルト』のコクピットの中で腕を組む。
同時に『スルト』もまた、その動きをトレースし、眼下に立ち塞がる人の壁である民衆を見下ろす。
目の前に立つ彼らは強者ではない。
弱者だ。
弱者であることを隠しもせず、己達の弱さを他者になすりつける者たちでしかない。
「弱者がそれを主張するのは笑えるがな。まあ、それはいいか」
アレクサンドルは笑えると言ったが、別に笑ったわけではない。その価値すら無いと彼は頭を振る。
「俺からの質問は一つだ。豊かな生活を求めるのは良い。何も間違ってねー」
人はより良いものを求める。
それは環境であったり、衣食住であったり、様々な形を取るだろう。
欲望とも呼ぶこともあるが、それは何も悪いことではない。欲望がなければ、人の営みは此処まで進化はしなかっただろう。
連綿と紡がれてきた歴史がそれを証明している。
「だが、お前らは他者から奪うことでそれを為した。その結果が現状だが、間違ってなかったと本当に言えるのかい?」
間違っていないと叫ぶ者がいる。
けれど、アレクサンドルの瞳にはわずかだがうつむく者が居た。
己の現状に居たたまれない者だっていることに気がつくことができただけでも、アレクサンドルは収穫であったと思ったかも知れない。
「それでも間違ってねーと言えるなら、それでも良いぜ。俺は悪くねーって言いながら死にな」
『スルト』の機体が黄金の魔力に覆われていく。
それはユーベルコードに寄るアレクサンドルの魔力の発露であった。
どのみち、人の壁となった民衆をどうこうするつもりなどなかったのだ。彼らを変えるつもりなどない。
ただ、知りたかったのだ。
こんな悪辣な教育が蔓延する小国家に置いて、正しさを掴み取ろうとする意志を持つ者が芽吹いているのかを。
けれど、その芽は未だうつむいたままだ。
だから、アレクサンドルは言う。
「だが、他に方法があったのではないかと思う者は、道を空けな」
その言葉はうつむいていた者たちの顔を上げさせる。彼らは、彼ら自身の意志で立ち上がることができる。
アレクサンドルが何かをしてやる必要など無いのだ。
だから、彼は言葉を送る。
浮上していく『スルト』の機体から、弱者の絡みつく沼を乗り越えて這い上がろうとする者達へと言葉を送るのだ。
「お前らはやり直せる」
ただ、それだけでいいのだ。
アレクサンドルにとって、それが最大の声援であった。
周囲に流されず、濁流を前にしても根を張り流されることのない、彼らの意志をアレクサンドルは信じ、ユーベルコードにきらめきながら、凄まじ勢いでもってプラントを破壊せんとするオブリビオンマシンを追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
飛鉢法で鉄鉢に乗って、少し高い所から「コミュ力」で話そう。
力の有無が全てを決める世界で、あなたたちは『弱者でいる』という特権を振りかざして生きている。
強い者が守ってくれるだろう、強い者に任せておけば問題ない。そういうことでしょ?
じゃあ、その強い者の牙が自分達に向いたら? あり得ないなんて言わせない。全てを奪うとはそういう事。
極論、最大の勝者は、自らの築いた屍の山が大きければ大きいほどいい。
そのためには己に付き従う者すら犠牲とする。
身体が治癒能力を持つように、心にも自浄作用はある。
あなたたちは少し力が足りないだけなのよ。家族を友人を理不尽から守りたい。その願いは間違いなく胸の奥にあるはずでしょ!
飛鉢法(ヒハツホウ)によって飛ぶ鉄鉢の上から、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は見下ろす。
彼女の瞳の先にあるのは人の壁となった小国家『フィアレーゲン』に住まう人々であった。
彼らは何も変わることを望んでなどいなかった。
例え、オブリビオンマシンであったとしても、そのパイロットである『ツェーン』が歪められた思想を語るのだとしても。
今日と変わらぬ豊かな明日を齎すのならば、それさえも是とするのだ。
「力の有無が全てを決める世界で、あなたたちは『弱者でいる』という特権を振りかざして生きている。強い者が守ってくれるだろう、強い者にまかせておけば問題ない。そういうことでしょ?」
ゆかりの言葉は刺々しいものであった。
けれど、それが真実だ。
彼らにとって、それだけでいいのだ。どれだけ耳の痛いことを言われようとも、耳障りの良い言葉で蓋をしてしまえばいい。
聞きたくない言葉は聞かなくてもいいのだ。
「そのとおりだ。そのための力だ。だからこそ、我々だって従っている。奪うことは、生命にとって必要なことだ。ましてやプラントだぞ。喪われた技術。それを奪うことこそが、我々の生活を豊かにしてくれる」
彼らの言葉の言外には、己達以外はどうなってもいいと言っているのと同じであった。
彼らの根底にあるのは歪な思想に寄る教育であったことだろう。
まるで家畜だ。
そんな印象すら受けてしまう。
「じゃあ、その強い者の牙が自分達に向いたら? ありえないなんて言わせない。全てを奪うということはそういう事」
ゆかりは告げる。
彼らの行動を後押しているのは、後ろ盾があるからだ。
強者の庇護という傘の下から言葉を発するだけで、自分たちは傷つこうともしない。手を汚すつもりすらないのだ。
「極論、最大の勝者は、自ら築いた屍の山が大きければ大きいほどいい。そのためには己に付き従う者すら犠牲とする」
その次の犠牲者が自分ではないと誰が証明できるだろうか。
今は彼らを信じるしか無い。
例え、汚濁のような環境の中からだって、この状況に異を唱える者はいるはずなのだ。
身体が治癒脳力を持つように、心にも自浄作用がある。
ただ、彼らには少し力が足りないだけなのだ。
なぜなら、彼らにとって、今猟兵達の前に立ちふさがっているのは、己だけではない、自身の家族や友人を現実という理不尽から守りたいという願いからであろう。
変わらぬ明日を望んでいる。
豊かな、食べるものにも困らなくて済むような、そんな明日を。
それは他でもない誰かのために。
だが、彼らは知らないのだ。
無知とは即ち無力だ。
人は生まれながらに力の差が在る。
境遇も違えば、性別だって違う。だから、知ることをやめてはならないのだ。疑問を持ち、己の眼と耳で知らなければならない。
世界はこんなにも残酷で、飢えに苦しむ者たちが、己達の隣にあるということを知らなければならない。
「その願いは間違いなく、胸の奥にあるはずでしょ!」
ゆかりは信じる。
人の善性を。
悪性を持つ二面性があるからこそ、人の生命であるというのならば、この悪性の中にこそ輝く善性があるはずなのだ。
「どうすればいいんだ。だって、俺達はそうすることしか知らないんだ。奪うことしか知らないのなら、どうすれば」
呻くような言葉が聞こえる。
ゆかりは微笑んだ。簡単なことだと。
「まずは手を差し伸べればいいのよ。例え、自分と違う人間だとしても、手を差し伸べればいい。それが人と人との繋がりなのでしょうから――」
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
狩りはまだ終わっていないのです
俺の、我等の狩りの障害になるなら容赦はしません
善も悪も我等には等しく無意味
ただ敵を狩り喰らうが我等よ
【行動】POW
言葉による説得は不得意なため強引な手段を取る
五感と第六感を働かせて民衆の動きを把握、予測し無意味に傷付けないようには配慮
群衆をUC+範囲攻撃の炎の壁で囲み足止め
武器を手にUC+怨念の炎と自身に宿る殺気+呪詛を抑えず解放し、民衆を怯ませ興奮を抑える
恐怖を与える事で近くにいる人間の存在に安堵を覚えるよう仕向け、一部が暴走しても他が抑えられるようにする
その上で善も悪も関係なく焼き尽くし怨念の一部にする呪詛に塗れた炎に焼かれたくなければ引くように説得
怨念の炎が尽きることはない。
オブリビオンという怨敵。それを討つまで止まれぬ存在、それが猟兵である西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)の根底にある意志であった。
怨念が蠢くからこそ、その内側には殺意と狂気が渦巻いている。
個を棄てた彼にとって、未だ終わっては居ないのだ。
「狩りはまだ終わっていないのです。俺の、我等の狩りの障害になるなら容赦はしません」
その瞳はユーベルコードに輝いていた。
今まさにオブリビオンマシンを追わんとしていた織久の足を止めさせるのは、小国家『フィアレーゲン』の民衆そのものであった。
彼らは人の壁となって織久の行く手を阻む。
彼らにとってオブリビオンマシンは未だ、この国のトップである。
その行動を阻む猟兵は、例え、オブリビオンマシンを放置して滅びたのだとしても、彼らに刷り込まれた洗脳とも言うべき教育においては障害なのだ。
豊かな明日を阻む唯一の障害。
「善も悪も我等には等しく無意味。ただ敵を狩り喰らうが我等よ」
殺意の炎(サツイノホノオ)が民衆へと放たれる。
しかし、炎が彼らを傷つけることはない。炎に追われるようにして、民衆たちが逃げ惑う。
ただ、壁を作ればいいのだ。
自分がこの道を征くための時間稼ぎでしかない。
言葉を尽くした所で時間の無駄だ。
彼ら自身が己の意志で気づかなければ、この戦いは意味がない。そして、言葉を弄することは、彼にとって不得手である。
「我等が怨念尽きぬ炎に焼かれるを望まぬのならば、退け」
それは説得と呼ぶには、脅しのような文句であったし、事実そうであった。
呪詛に塗れたユーベルコードの炎が、次々と人々を分断していく。
それは人の壁を切り裂くのと同義であった。
彼らは今も尚、狂乱の最中にある。だからこそ、織久は己の怨念の炎を見せつけるのだ。
彼らは奪うことで、豊かな生活が保証されると思っている。
そうする以外を知らないのだ。
奪われた側が、どれだけの怨念を抱えているのかも知らない。
「考えもしないのだな。善悪関係ない、ただあるのは、奪われたという怨念だけだ」
怨念返しが必ずやってくる。
それは必ずしも自身に返ってくるとは限らない。
もしかしたのならば、己の家族かも知れないし、大切な人であるかもしれない。それは誰にも判らないことだ。
けれど、必ずやってくる。
因果応報。
「だから、考えろ。今は熱に浮かされた頭では何も考えられないのだろう。だからこそ、見て、竦め。その恐怖こそが、起こり得るかも知れない奪われる側に叩き落とされるということだと」
その言葉は怨念の炎となって、次々と人の壁を切り裂いていく。
誰も生命を喪わなかった。
けれど、その怨念の炎を見た者たちは、皆呆然としていたことだろう。恐怖という冷水によって、彼らの頭は今、洗い流されたのだ。
織久は走る。
亀裂走るように崩れた人の壁を抜け、オブリビオンマシンを追う。
一刻も早く追いつかなければならない。
そうでなければ、この国は確実に滅ぶ。滅ぶだけならばいい。怨念は怨念を呼び、狂気をさらなる混沌へと堕とす。
それは地獄絵図に他ならない。
織久にとって、それは己の内だけでいい。だからこそ、彼はそうさせぬと疾走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…奪う事で富む、それは命あるモノの摂理であり、
故に間違いでは無いのでしょう。
されど、奪うことはあくまで手段。
奪うということは、奪われる覚悟も同時に持つということです。
貴方がたは、『奪いたい』のではなく『豊かに生きたい』のでしょう。
今この国において戦の旗頭として立つのは年端も行かぬ幼子。
ただ戦のみによってしか己の生き様を表す術を知らぬ少女です。
――この国が今辿るは、その幼子に『命を賭して奪わせる』道です。
安穏を強く求む貴方がたなればこそ、その歪さは察せましょう。
民とは、王によってただ庇護されるのみのものに在らず。
王の背負う責が、その身に過ぎるものなれば、
『王を守る』事こそ、民としての有り様です。
覚悟があるかと人々は問われていた。
けれど、誤った教育は、それすらも感じ取れぬ。
小国家『フィアレーゲン』に住まう人々にとって、奪うということは生きるということであった。
そのように教育されたということもあるのだろう。
何の疑問も抱かず、ただ日々繰り返される豊かな暮らしの中で、彼らは人間ですらなくなっていたのかもしれない。
豊かさの奴隷でしかないのだと、月白・雪音(月輪氷華・f29413)は感じた。
否。
そう、否と雪音はつぶやく。
「……奪う事で富む。それは生命あるモノの摂理であり、故に間違いではないのでしょう」
何も間違っていない。
けれど、目の前に立ち塞がる人の壁。
彼らの瞳を見て、雪音は否と呟いた。彼らは奴隷ではない。生きている人間だ。誰もが瞳の奥に狂乱を宿している。
熱に浮かされたように、奪うことの負債を押し付けている。
そこに心苦しさはないのかもしれない。
雪音は見たのだ。
その群衆の中に他とは違う意志を持つ瞳を。奴隷ではなく、考えることによって、現状に違和感を覚える存在を。
「されど、奪うことはあくまで手段。奪うということは、奪われる覚悟も同時に持つということです。貴方がたは、『奪いたい』のではなく『豊かに生きたい』のでしょう」
雪音は一歩を踏み出す。
考えて欲しいと願うのだ。
その瞳に問いかけるように言葉を紡ぐ。
「今この国において戦の旗頭として立つのは年端も行かぬ幼子。ただ戦のみによってしか己の生き様を表す術を知らぬ少女です」
「だが、それが彼女のためだ。戦う以外に知らぬからこそ、戦うしかない。それ以外の道を示せる程、世界は甘くはない。虎視眈々と我々の豊かな生活を脅かす外敵がいる。それを駆除することでしか、今を維持できないというのなら」
そう、『ツェーン』は戦うしかできない。
ならば、それを最大限に活かすしかない。けれど、と誰かが呟いた。
それでいいのかと。
戦い、奪うだけでいいのかと。本当にそれで、と。
「――この国が今辿るは、その幼子に『生命を賭して奪わせる』道です。安寧を強く望む貴方がたなればこそ、その歪さは察せましょう」
雪音の言葉は、全ての民衆に届けられていたが、その実、奴隷ならざる知性の瞳を宿す者たちへと続けられていた。
人の壁が割れていく。
一歩を踏み出した知性在る瞳を持つ者たちによって、雪音の道は拓かれる。
「なら、どうすればいいんだ。俺達は、どうすれば。どうすれば、それを」
それを正せるのだと。
今の生活が間違いであるというのならば、正しさとは一体なんなのだと雪音に問う者がいる。
雪音は構わず進む。
人の壁の割れた道を。オブリビオンマシンが辿るプラントへの道を征く。
「民とは、王によってただ庇護されるのみのものに非ず。王の背負う責が、その身にすぎるものなれば、『王を護る』ことこそ、民としての有り様です」
彼女は告げる。
戴く旗印を見捨ててはならないのだと。
何もかもが自分には無関係であると気取ってはならない。
国という単位で生きることを望むのであれば、奪うことの責任は誰しもの肩にのしかかるものである。
それを雪音は否定しない。
けれど、たった一人に押し付けることはしてはならない。
「わかっているはずです。貴方がたは、人なのです。間違っても、悪意の奴隷であるわけがない。豊かさが歪めたのならば、それを正すことができるのもまた人の力であると」
そう、それこそが人たる戦である。
生きるということだ。
そう告げる雪音は駆け出す。
彼女はきっとやり遂げるだろう。例え、この身に宿した殺戮衝動があるのだとしても、彼女がそうであったように武によって培った精神が、獣の闘争本能へと昇華したように。
奪うことしか知らぬ者たちの意識さえも、きっと変わっていく。
いや、変わっていけるはずなのだ。
それを願うように、雪音は真白の髪となびかせ、プラントへと急ぐのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01に搭乗したまま
人々を見やる
…奪う事は戦うという事。戦い続けるという事は奪い続ける事。
この国は、亡くなった故国と似ている
虚空からデモニックララバイを召喚遠隔操縦
故国は何かを間違えてしまった、この国は、まだ、後戻りできるのでしょうか?
『歌操器』民衆達の聴覚に、魔音の催眠術
一人一人に、夢を見させる。奪う事を選んで、戦って、仲間を、家族を失って、なお奪う事を止めなかった先に、国すら滅び、己ただ一人が、生き残って途方に暮れる白昼夢を。戦い続ける選択の一つの末を
夢は一瞬、
もう、夢じゃない
自分には何が間違いだったか分からない。
それでも貴方達には、故国の二の舞にならない様、選択してほしい。
人の壁が己の前に立ちふさがっている。
いや、キャバリアという5m級戦術兵器であれば、それを乗り越えることも、踏み潰して進むこともできるであろう。
別に問題はない。
けれど、彼らはそんなことよりも、今の豊かさが喪われることを気にしている。
ただ、それだけのために他者から奪うことを是としている。
それは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとって、在りし日の幻視であったのかもしれない。
「私達は奪われるわけにはいかない。私達の豊かさは、私達のものだ。誰にも奪わさせはしない!」
彼らは皆、己の豊かさに熱狂している。
誰もが幸せである。誰もが明日を心配しなくていい。
それは確かに豊かなものであろうが、誰かの犠牲の上に立っている豊かさであることを自覚しない。
だからこそ、『ディスポーザブル01』のコクピットの中から小枝子は見下ろし、立ち止まる。
これはあの日の自分なのかもしれない。
「……奪う事は戦うということ。戦い続けるということは奪い続ける事。この国は、亡くなった故国と似ている」
そう、幻視の原因はそれであろう。
似ているのだ。
亡国のあの日。立ちすくむ己が見た光景と同じなのかもしれない。
「故国は何かを間違えてしまった。この国は、まだ、後戻りできるのでしょうか?」
わからない。
わからないのだ。どれだけ考えても答えは出ないし、誰かが答えてくれるわけでもない。小枝子にとって、それは導き出せぬ解答であったかもしれない。
ならば、己が為すべきことは何か。
破壊し、戦うことだけなのかもしれない。
けれど、今一度知らしめなければならない。間違いだらけの国が突き進む破滅への道が如何なる物を生み出すのか。
自分たちが今、その岐路に立っているということを自覚させるように、歌操器(トラグディ・オルガノ)が響く。
「なんだ、音……?」
民衆の聴覚に音が響き渡る。
それは彼らにとって聞き慣れぬ音であり、音楽という名すら知らぬ彼らにとって、時に不快なものであったかもしれない。
けれど、小枝子のユーベルコードによって奏でられる魔音は、彼ら一人ひとりに夢を見させるのだ。
奪うことを選んだ先にある未来。
戦い、仲間を、家族を喪っても奪うことでしか生きて行けぬ道。
その先にあるのは破滅でしかないのだ。
国すら滅び、小国家という枠組みすら形骸化した荒野の中に己だけが立ちすくむ光景。
それは白昼夢と呼ぶのかもしれないが、それでも『フィアレーゲン』の人々、ひとりひとりは奪うことをやめられないだろう。
なぜなら、そう教育されたからだ。
狂った思想は、凶徒を生む。
彼らにとって、それが自然なことなのだ。分け合うということを知らぬ者たちにとって、それは、なんとも。
「そう、それが孤独。これは夢の一瞬。けれど、それは――」
もう夢ではないのだ。
それは必ず遠くない未来に起こり得る確定した事象であった。
必ずこうなると、嘗て自身がそうであったように小枝子はつぶやく。立ちすくむ人々を前に、小枝子は言い放つ。
「自分には何が間違いだったか判らない。それでも」
そう、それでも。
生き残って途方に暮れる、戦い続けるという選択をした己という未来が今、民衆の前に居る。
それはどうしようもない未来であったのかもしれない。
「貴方達には、故国の二の舞にならないよう、選択して欲しい」
選んで欲しい。
間違いかそうでないかは、誰にもわからない。
けれど、変わると決めたのならば、これから先に続く道のりは未だ白紙なのだ。
そこに如何なる彩りと轍を刻むかは、彼ら次第。
小枝子は踏み出す。人の壁が割れるように『ディスポーザブル01』の道行きを開いていく。
わかってくれたとは思わない。
これは結局の所、間違えた選択の末でしかない。
けれど、小枝子は進む。
自分が決めた道が誤りであったのだとしても、誰かにその過ちを繰り返させぬためには進まなければならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
え?
何か演説とかしなきゃだめ?
キャラじゃ無いし、ちゃちゃっと通り過ぎたいんだけど…
えー……
いやさー君達が行ってる事は正しいよ
そもそもこんな世界だもの、生きる為にする事はきっと全部正しい
こんな世界で正しくないのは、遊び半分で暴れてるやつくらいだよ
誰だそんな奴…私か!
力に溺れる人、それに従う皆の気持ち…私はそれを肯定するよ
まあ肯定すると言っても、ジャンク漁りしてないから帰んないけど
というかね君達がどう思っていようと、理不尽はいつかやって来る
その考えのままじゃあ、対応力が不足してるよ
これを機にもっと柔軟に考えてみたら?
という訳で理不尽にさらば!
【Code:U.G】起動
邪魔な民衆放っておいて飛んで行こ
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は正直な所、面倒だなと感じていた。
人の壁。
謂わば、こちらが猟兵であることを勘定に入れたオブリビオンマシンの方策であったのだろう。
一般人ならば猟兵は傷付けない。
それは多くの場合有効であったし、事実多くの猟兵たちはオブリビオンマシンを追うよりも、民衆をどうにかするように動いていた。
だから、これは入念に仕組まれたオブリビオンの策略の一つに過ぎないのだ。
何か演説とかしなきゃだめ? と玲は嘆息する。
そういうキャラじゃないし、ちゃちゃっと通り過ぎたいと本気で思っていたのだが、そうも行かぬが猟兵の辛いところである。
「我等の同志を撃たせはしない。奪うことの何が悪いというのだ。あんただって、奪ったことがないとは言わせない」
民衆が玲を前に口々に言葉をぶつける。
まるで雨のようだと玲は思ったかも知れない。言霊というものがあるのだとしたら、今玲はそれに打たれる存在でしかなかった。
正直に言えば。
面倒だと思った。二度目である。
「いやさー君たちが言ってる事はたださいいよ。そもそもこんな世界だもの」
クロムキャバリアは戦乱が続く世界である。
平和の言葉の意味も、その言葉事態も知らぬであろう。
けれど、玲だって見てきたのだ。『グリプ5』でだってそうだったのだ。意味は知らずとも、言葉は知らずとも、人の心の奥底にはそれを求めるものがあるのだと。
『フュンフ・ラーズグリーズ』、あの少年を思い出したかもしれない。
「生きるためにすることは、きっと全部正しい。こんな世界で正しくないのは、遊び半分で暴れてるやつくらいだよ」
まったく、と肩をすくめる。
誰だそんな奴……私か! とセルフでツッコミを入れたけれど、民衆はピンと来ていなかった。
う、と言葉を浴びせかけられるよりも、その間のほうが痛かったけれど、玲続ける。
「力に溺れる人、それに従う皆の気持ち……私はそれを肯定するよ」
何も悪いことじゃない。
そのように育てられ、刷り込まれたのならば、それがこの小国家『フィアレーゲン』における道徳なのだから。
それを責めるのはお門違いなのかもしれない。
だから、否定しない。
「まあ、肯定すると言っても、ジャンク漁りしてないから帰んないけど」
今のは帰る雰囲気であった。
人々は戸惑った。
これまで見てきた人間の中で、もっとも理解に苦しむ人間であったのかもしれない。
そもそも、理解しようなどという感情が残っていること事態が奇跡的だったのかもしれない。
玲は生命の埒外にある者。
そう、猟兵である。それは、異世界を渡り歩くが故に、様々な文化や世俗に触れてきた。
一世界の、それも一片の小国家の中しか知らぬ民衆にとって、彼女は得体の知れない何者かだった。
「な、何を……?」
戸惑う民衆を前にして玲は言う。
「というかね、君たちがどう思っていようと、理不尽はいつかやって来る。その考えのままじゃあ、対応力が不足しているよ。これを機にもっと柔軟に考えてみたら?」
その瞳がユーベルコードに輝く。
重力制御形態に移行した玲の身体が宙に浮かび上がる。
最初からこうしてればよかったな、と玲は思ったけれど、これもまたお約束である。
周囲に弱い重力が発生し、民衆の殆どが膝を屈してうなだれてしまう。
突如として襲い来る理不尽としては、少し弱いかなと玲は思ったけれど、それもつかの間だった。
彼女を見上げる瞳がある。
それは羨望の眼差しであった。少年の瞳とかち合う。
ああ、と玲は微笑んだ。なんだ、とも思ったのだ。まだ柔軟な考えを持っていそうな瞳を持つ少年が居たじゃないかと。
ならば、棄てたものじゃない。
「というわけで理不尽にさらば! こういう時何ていうんだっけ、少年よ、えーと……」
なんか雰囲気のいいことを言ってオブリビオンマシンを追いかけようとしたが、思い出せない。
けれど、わかっているはずだ。
他の民衆がうなだれる中、ただ一人自分を見上げた緑の瞳の少年。
彼がこれからどうするか。玲にはもうわかっている。重力制御形態、そのユーベルコードの輝きの軌跡を残して、玲は飛ぶ。
「あー……なんか、締まらなかったけど、ま、いっか」
希望みたいなものは見られたから。
あと、それにジャンクもまだ漁ってないしね、とほほえみながら、彼女は飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
これは…集団催眠ですか
これもディナが撒き散らした憎悪から生じた事態なのか、或いはそんなものはただの切欠に過ぎないのか
搾取する側でありたい
至極当然の考えです
ここで理屈を並べ立ても多くは詭弁と認識されて然りでしょう
だがそれでもあの機体は止めなければならない
さもなくばプラントを破壊し当機がするより多くのものを貴方達から奪うでしょう
そして彼の力によってもたらされた恩恵は一過性
長くは続かない
戦力としてごく僅かな猟兵に敗走した彼が今後の国家の行末を保証出来るのでしょうか?
当機には人を納得させるに足る感情論は語れません
しかし事実は語れます
彼の…個人の力に依存した先にあるのは、奪われる側に立たされる未来だと
「これは……集団催眠……いえ、洗脳教育と呼ぶに相応しい」
ダビング・レコーズ(RS01・f12341)は、己のキャバリアの前に立ち塞がる人の壁を見下ろしてつぶやいた。
『アークレイズ・ディナ』――オブリビオンマシン化したキャバリアが撒き散らした憎悪から生じた事態なのか、或いはそんなものはただのきっかけに過ぎないのか。
ダビングはどちらが正しいのかわからなかった。
けれど、はっきりしていることがある。
この事態は、この小国家における長い時間を掛けた方策の一つでしかないのだと。
人々に刷り込まれた、他者から奪うということを肯定する教育が、猟兵たちを今追い込んでいる。
人の壁となってオブリビオンマシンの追跡を阻む。
わからないでもない。
常に人よりも優位に立っていたいと願うのは、人の心理として当然のことかもしれない。
ウォーマシンとして生み出された我が身であれど、理解できることであった。
「搾取する側でありたい。至極当然の考えです」
だが、ダビングは理解していた。
ウォーマシンだからこそ理解出来る。
ここで理屈を並べ立てても多くは詭弁と認識されて然りであり、そうなる未来は容易であった。
それほどまでに民衆の熱狂具合は上昇している。
まるで熱に浮かされたような状態なのだ。それが今の『フィアレーゲン』の当たり前なのかもしれない。
「だが、それでもあの機体は止めなければならない……さもなくばプラントを破壊し、当機がするより多くのものを貴方達から奪うでしょう」
「そんな馬鹿なことがあるものか! プラントを破壊するなど! 我々は常に奪う側だったのだ! それを!」
それを、お前達が来たからと、言葉を投げつける人々。
彼らの言葉はわからないでもない。確かに自分たちは彼らの力の象徴を下そうとしている。
それをなんとしても止めようというのは、現状を維持したいからだ。
どうあっても、今の境遇を棄てたくないのだ。
「その恩恵は一過性のものです。長くは続かない。戦力としてごく僅かな私達に敗走した彼女が今後の国家の行く末を保証できるでしょうか?」
それはただの事実であった。
ウォーマシンだからこそ、ダビングは人を納得させるだけの感情論は語ることはできない。
ただの事実しか語れない。
それが残酷であることは理解している。
けれど、どれだけ辛い真実だったのだとしても、それをごまかすことはできない。
なぜなら、彼らが選んだ道の先にあるのは破滅でしかない。
「個人の力に依存した先にあるのは、奪われる側に立たされる未来でしかないのです」
奪われないために奪うというのならば、きっとそれは間違っている。
ダビングは告げる。
必ず滅ぶ。
それは彼らにとっては見たくない事実であったのかもしれない。
それでもダビングは信じる。
瞳をそむけぬ者が必ずいるのだと。そういった者がいるはずだと信じたいと願ってしまう。
ウォーマシンらしからぬことであったかもしれない。
けれど、ダビングは一歩を踏み出す。
「考えなさい。そのための時間は、自分が必ず――」
そう、必ず稼いでみせるとスラスターを吹かせ、キャバリアと共に飛ぶ。
今は恐怖でも、戸惑いであってもいい。
その熱狂した頭で考えることはせず、一時でも冷静であって欲しい。
そう願い、ダビングはオブリビオンマシンを追う。
この先の未来に、あのマシンは在ってはならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
アイ・リスパー
理緒さんと
「オブリビオンマシンが逃げ出しましたか!
ですが、逃走はさせません!」
オベイロンを機動戦車モードに戻して追撃します!
行きましょう、理緒さん!
ですが、そこに一般人たちが立ちふさがります。
「うん、邪魔ですから轢いちゃいましょう。
……って、理緒さん、どうして止めるんですか?」
宇宙世界の研究施設で生み出された私にとって、オブリビオンを倒すことだけが存在理由。
一般人たちがどうなろうと、特に興味はありません。
「……まあ、理緒さんがそこまで言うなら」
渋々、理緒さんの言葉に従って、眠った人々の間をすり抜けて進みましょう。
もし邪魔してくる人がいれば、【バタフライ効果】による竜巻で軽く吹き飛ばします。
菫宮・理緒
アイさんと
住民のみなさまとは、
コクピットから顔を出して、お話してみよう。
わ疫病神、か。そうかもしれないね。
でも、強い者が正義で、奪うことが悪でないなら、
わたしたちが、あなたたちから、
豊かな生活を奪ってもいいってことになっちゃうけど、
それでいいのかな?
ね、アイさん? って、アイさん!?
待って待って待って!?
轢いちゃだめだから!なんとかするから待ってー!(あわあわ)
アイさんにちょっとだけ待ってもらったら、
【アスクレピオスの吐息】を使って住民たちを眠らせるね。
目覚めたら、全部元に戻っているって言いたいけど、
そこまではちょっと、かな。
でも少しでも良くなるようにがんばってくるから、
今は通らせてもらうね。
猟兵達の攻撃に寄ってオブリビオンマシンは逃走した。
それはまだいい。
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)にとって、それは追えばいい話であるからだ。
きっとオブリビオンマシンの狙いはプラントである。
小国家『フィアレーゲン』におけるプラントは、他国との戦争に寄って奪い奪われしてきたものであろう。
この国が豊かであるのは、そうした背景がある。きっと他の国だってそうだ。
「オブリビオンマシンが逃げ出しましたか! ですが、逃走はさせません!」
機動戦車『オベイロン』が機動戦車モードに戻り、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)と共に追跡しようとした矢先、彼女たちの前に『フィアレーゲン』の民衆が立ち塞がる。
彼らにとって、猟兵とは味方ではなく、自分たちの今の豊かな生活を脅かす疫病神でしかなかったのだ。
オブリビオンマシンに搭乗していたパイロットは、彼らにとっての旗印。
それを討とうとする猟兵は厄介者でしか無いのだ。
「疫病神共め! 私達の同志を追わせはしない!」
言葉が投げかけられ、アイと理緒の二人の行く手を阻む人々の瞳は熱狂に浮かされていた。
そこにあったのは、狂った思想に寄る教育による刷り込み。
洗脳と呼ぶに相応しい、歪な思想だった。
「わ、疫病神、か。そうかもしれないね」
理緒は『リオ・セレステ』のコクピットから顔を出して、彼らの顔を見ていた。
誰も彼もが、憎しみの視線を己たちへと向けている。
彼らが受けた教育に照らし合わせれば、たしかに自分たちは疫病神と言えるのかもしれない。
今の豊かな生活を一変させる闖入者でしかないのだ。
けれど、と理緒は言葉を続ける。
人である以上、言葉というコミュニケーションを取るのであれば、対話を続けることこそが、オブリビオンが企てた、この国における方策を砕く楔となることを彼女は知っていたからだ。
「でも、強い者が正義で、奪うことが悪でないなら、わたしたちが、あなたたちから、豊かな生活を奪ってもいいってことになっちゃうけど、それでいいのかな?」
いいわけがない。
そう、彼らにとって奪うことは正当化されたことだ。
けれど、それは必ずしも自分たちが奪われていいということではない。手前勝手な理屈でしか無いけれど、それがまかり通ってきたのは、『フィアレーゲン』が常に奪い続けてきているからだ。
強力な力を持つからこそ、負けることはない。
それが今揺らごうとしているからこそ、狂乱は不安と恐怖によって補強されて、人の壁という手段となって猟兵を押し止めるのだ。
「うん、じゃまですから轢いちゃいましょう」
アイにとって、それはさほど重要なことではなかった。
手前勝手な理屈をこねる者たちを相手にしていられるほど、自分たちの時間は無限でもなければ、多くあるわけでもないのだ。
こうしている間にオブリビオンマシンはプラントへといたり破壊を開始するだろう。
そうなった時、一番困るのは彼らだ。
明日の生活に困るのならば、一人二人など数の内に入らない。
けれど、そんなアイを理緒は止めrう。
「ね、アイさん? って、アイさん?! 待って待って待って!?」
「……理緒さん、どうして止めるんですか?」
アイにとってオブリビオンを倒すことだけが存在理由であった。
一般人がどうなろうと興味はなかった。自分の手の内側にある者だけを守ればい。アイにとって、それが真実であった。
だから、理緒が止めた時、理解はできなかった。
理緒のことは大切に思っている。けれど、何故そんなふうに言うのだろうとさえ思っていたのだ。
「轢いちゃだめだから! なんとかするから待って――!」
理緒は息を吐き出す。
言葉は通じる。
けれど、彼らは彼らの生活を守りたいだけなのだ。
だから、今は眠ってもらうしかない。どうあがいても、彼らは変わらなければならないのだ。
オブリビオンマシンにプラントを破壊されようとも、されまいとも。
どちらにしても、彼らに襲いかかるのは変化だ。
だから。
「少しだけ眠っていてね」
理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
アスクレピオスの吐息(アスクレピオスノトイキ)のように、治療用ナノマシンの霧が散布され、アイと理緒の前に立ちふさがっていた人々の意識を眠りへと誘う。
何か言わんとしていた人々だったが、アイのユーベルコード、バタフライ効果(バタフライ・エフェクト)によって生み出された竜巻で軽く吹き飛ばされてしまう。
「……まあ、理緒さんがそこまで言うならと思いましたけど……邪魔するのは駄目です」
アイにとって今も変わらないものはある。
それを見て、理緒は仕方いないなぁ、と微笑む。
自分のみをあんじてくれていることが分かるからだ。
「目覚めたら、全部元に戻っているっていいたけど、そこまではちょっと、かな」
そんなことができるとは思えない。
けれど、それでもと言わないといけない。
世界は、彼らが思うほどに残酷でもなければ厳しすぎるわけでもない。
「でも、少しでもよくなるようにがんばってくるから、今は通らせてもらうね」
アイと理緒は眠り、倒れ伏す民衆の間を縫って進む。
例え、この道行きの先に待ち受けるのが、激動であったのだとしても。
それでもオブリビオンマシンが齎す破滅よりはきっと、マシな筈であろうから。
だから、征くのだ。
理解されないのだとしても――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【WIZ】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に忍び…胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもん!!(お約束
よし、注目は引き付けました!
あれ?皆さんきょとんとしています?
いえ、このまま注目を利用しましょう!
そうですね疫病神と言われたらその通りでしょう
しかしならばこそ貴方たちの先導者は何をしているのです?
疫病神を排除することもなく、プラントへ逃げ込んで
そう、貴方たちを盾にプラントを破壊しようとしているのです
それが…正義ですか?貴方たちの信じるモノですか?
正義を決めることは難しいですが悪を定めるのは簡単です
貴方たちの自由を壊すもの
それは絶対に許してはいけないのです!
※アドリブ連携OK
小国家『フィアレーゲン』に黒幕の笑いが木霊する。
どこかで嗤っているのだろう。
これが人であると。
例え、己達が破滅する運命であったのだとしても、奪うことをやめられない。止められない。
奪い続け、誰かを傷付けてでも、己の豊かさをこそ求めるあさましき存在であると嗤っているのだろう。
だが、その嗤う声は切り裂かれる。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に忍び……胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもん!!」
お約束の前口上と共に、猟兵のオブリビオンマシン追跡を妨げる民衆の壁を前に降り立ったのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)だった。
実家のような安心感を齎す前口上は、人々の視線を釘付けにしていたことだろう。
いや、それよりも唐突すぎて、誰もが言葉を紡げないでいた。
「よし、注目はひきつけました! あれ? 皆さんきょとんとしています?」
なんででしょう、とサージェは首を傾げた。
彼女の目的は民衆の注意を自分に集めさせること。そうすることで他の猟兵が人の壁を突破する時間を稼げるからだ。
けれど、サージェが思っていたような反応とはまた違うものであったので、ちょっと戸惑ったのだ。
「いえ、このまま注目を利用しちゃいましょう! ふふ、そうですね。疫病神と言われたらそのとおりでしょう」
ばーん!
元気よくサージェは腕を組み、うなずく。
それまでのシリアスな雰囲気や、熱狂的な狂乱の徒とかしていた人々にとって、それはあまりにも空気を読まぬものであったが、紡ぐ言葉は真摯なものであった。
「しかしならばこそ貴方たちの先導者は何をしているのです? 疫病神を排除することもなく、プラントへ逃げ込んで」
オブリビオンマシンは敗走し、プラントへと向かった。
それは民衆にとっては、生産施設から機体を修復するため、とも捉えることはできたであろうが、事実は違う。
プラントを破壊し、全てをなかったことにしようとしているのだ。
「そう、あなた達を盾にプラントを破壊しようとしているのです。それが……正義ですか? 貴方達の信じるモノですか?」
「正義って一体何なんだ! 俺たちはそれを知らないんだぞ。お前達の言う言葉は一体なんなんだ!」
緑の瞳をした少年が叫ぶ。
彼は猟兵達が突破してきた人の壁の中にもいた少年だった。
彼は言う。
正義も知らず、平和も知らず。
けれど、猟兵たちはそれを説く。わからないことをわからないままではいられないと、彼は叫んだのだ。
サージェは威風堂々(シノベテナイクノイチ)と胸を張る。
「正義を決めることは難しいですが、悪を定めるのは簡単です。貴方達の自由を壊すもの」
自由。
その言葉の意味もわからぬだろう。
けれど、その胸の鼓動を聞けばいい。
高鳴るものがあるだろう。奪わなくていもいいという自由。
それが、緑の瞳の少年の胸を打つ。
「それは絶対に許してはいけないのです!」
サージェは圧倒的に忍べていないクノイチとして、胸を張る。
理解不能な言葉であったかもしれないけれど、彼らの心を打つには十分な説得力があった。
洗脳じみた教育の刷り込みをも超える何かがサージェの言葉にはあったのだ。
彼らはきっと忘れないだろう。
自由とは、常に勇気と共に在ることを。
今早鐘のように胸を打つ脈動とともに、少年と、民衆は目覚めたのだ。
狂乱から、熱に浮かされたような思いから、オブリビオンの企てた方策から解き放たれ、サージェの語る自由へと、一歩を――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
よっ助太刀に来たぜ…あ、コラ逃げんな!
急いで追いかけたいってのにどうしたもんか…
[SPD]
…おっと、そこの君達!何か疑問があるんじゃないか?
あの演説はおかしいとか、思ってない?
なんで分かるのって?【読唇術】に自信があってね(コミュ力
ともあれその疑問は正しいぜ
力と恐怖で他者から奪っていく行為の結末は
更なる力と恐怖で全てを奪われる末路さ
ただ幾ら間違いだと分かってても
周りがこんな状態だと言い辛いよな…そこでだ(CSを呼び出して騎乗
俺があんたらを護ってやる!
だから遠慮なく演説は間違ってるとぶちまけちまえ!
そうすりゃ他で同じ考えの人達も集まってくる筈さ
多分な!
さあ自分達を貫き通しに行こうぜ!
アドリブ歓迎
「よっ助太刀に来たぜ……あ、コラ逃げんな!」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)が小国家『フィアレーゲン』へと到着した時、オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』は猟兵達の攻撃に寄って敗走した後であった。
急いで追いかけてきたのだが、それを阻むものがある。
そう、人の壁だ。
猟兵達によって言葉を紡がれた人々の中には、『フィアレーゲン』によって刷り込まれてきた教育に疑問を持つ者たちだって現れ始めていた。
祐一は、そんな彼らを見つける。
緑の瞳をした少年がうつむいていた。
猟兵達の言葉で何かを掴みかけている。そんな集団が一塊になっているのだ。
奪うことを是としない。
それは本当なのかということを疑問に思えど、口には出せないでいたのだろう。それを祐一は捨て置くことはできなかった。
「……おっと、そこの君たち! 何か疑問があるんじゃないか? あの演説はおかしいとか、思ってない?」
祐一は気安い笑顔で近づいていた。
少年は、はっとしていたが、未だ考えが頭の中で巡っては決着が着かないのだろう。
祐一の顔を見ても、何も言えないでいた。
「なんでわかるかって? ともあれその疑問は正しいぜ。うまく言葉にできなくたってわかるさ」
祐一は肩を叩く。
少年は言う。
「奪うばかりでは駄目だってわかるんだ。けれど、何がどう間違っているかわからない。本当は、奪ったものを……」
誰かに分け与えるという言葉が出てこない。
それが小国家『フィアレーゲン』における教育なのだろう。
長い時間を掛けてオブリビオンが編み込んできた方策が今、芽吹いていた。どれだけ言葉を紡いでも、その実感を口にするための言葉を知らないのだ。
「力と恐怖で他者から奪っていく行為の結末は、さらなる力と恐怖で全てを奪われる末路さ」
「それが嫌だから、そんなの間違っているって」
言いたい。
けれど、それはあまりにも難しいことだと祐一も理解している。
だから、力強く肩を掴むのだ。
「ただ、幾ら間違いだと分かっていても、周りがこんな状態だと言いづらいよな……そこでだ」
祐一は笑った。
この状況を嗤って高みの見物をしている者がいる。そいつを排除しないことには『フィアレーゲン』は変わらない。
頭をすげ替えただけになってしまう。
だから!
「俺があんたらを護ってやる!」
彼の背後に鉛色をしたキャバリアが飛来する。地響きを立てて降り立つキャバリアの姿に民衆はどよめいた。
そのマニュピレーターの上に緑の瞳をした少年を乗せる。
「だから、遠慮なく演説は間違ってるとぶちまけちまえ! そうすりゃ、他で同じ考えの人達も集まってくるはずさ! 多分な!」
言っていることはむちゃくちゃだった。
そこは多分じゃなくて、絶対って言ってほしかったと、少年は笑った。
けれど、祐一は思った。いい笑顔だ。
その笑顔があれば、なんでもできるはずだ。
「そうさ、間違ってる! こんなのは間違っているって、言っていいんだって! 俺達は、そう思える心があるんだって、言えるんだ――!」
その言葉は、小国家『フィアレーゲン』に響き渡る。
祐一は少年の腹の底から出た言葉にうなずく。
「さあ、自分たちを貫き通しに行こうぜ!」
鉛色のキャバリアが駆ける。
戦場へと。このいびつに歪んだ価値観を正すために。
人が奪い合うのではなく、分け与えることのできる存在であると知らしめるために――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
こうした戦いは口数少ない方が影響力を失う物
少々卑怯な手を使わせて頂きましょう
ツェーン様には申し訳ございませんが…
UCの妖精を各地に放ち、扇動演説が流れている小国家のモニター通信網をハッキング破壊工作
妖精達に情報収集させた猟兵達の説得の模様の映像音声を同時に流すことで録画映像と生の声を民衆に比較させ影響力を最大に
自身もキャバリアから降り群衆の前へ
奪う事で豊かになれる
それは事実です
ですが、奪い尽くした後は?
皆様は子供達やその子孫に奪われた者達の怨嗟のみを残すのですが?
その腕の中の赤子に、荒野だけを残すのですか?
次代の種子や若芽を育み慈しむ…その道を捨てるかどうか
皆様の責で決める時です
人の壁が迫る。
それは鋼鉄の巨人であるキャバリアにとって何の意味を持たぬものであったが、こと猟兵に関しては有効な手段であると言わざるを得ない。
殆どの猟兵がそうであるように一般人は救うものである。
それをオブリビオンは逆手に取っている。
そのための洗脳じみた教育を長らく小国家『フィアレーゲン』で行ってきたのだろう。
その結実が、今まさにトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の目の前に広がっている。
「こうした戦いは口数が少ないほうが影響力を失うもの。少々卑怯な手を使わせて頂きましょう。『ツェーン』様には申し訳ございませんが……」
自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が、キャバリアの格納スペースから射出され、『フィアレーゲン』のモニター通信網に取り付き、ハッキングしていく。
それはモニターをハッキングして、演説を止めさせるだけではない。
モニターの画面が切り替わった瞬間、そこに映っていたのは、緑の瞳をした少年の姿であった。
キャバリアの手のひらに乗り、声を発している。
「そうさ、間違ってる! こんなのは間違っているって、言っていいんだって! 俺達は、そう思える心があるんだって、言えるんだ――!」
妖精たちに情報収集させた他の猟兵達の説得の模様と合わせて、生の声を民衆に届けさせるのだ。
ああ、とトリテレイアは感嘆した。
これこそが人の営みであると。騎士として護らねばならぬ存在であると。彼らは自分で気がつくことができたのだ。
どれだけ周囲の大半が自分とは違う考えに埋め尽くされたのだとしても、声を発することを選んだのだ。
傷つくことを恐れず、失うことを恐れず。
けれど、誰かのためにと願う心が発するものが、オブリビオンが時間を掛けて刷り込んできた洗脳教育すら振りほどいたのだ。
『ロシナンテⅣ』と共にトリテレイアは進み、コクピットから降り立つ。
「奪うことで豊かになれる。それは事実です。ですが、奪い尽くした後は?」
トリテレイアの言葉は、モニターに映る少年の言葉と共に届けられる。
彼は自発的に声を発した。
大人がなんと言おうとも、間違っていると叫んだのだ。
それは勇気であり、称賛に値する。
だから、トリテレイアは紡ぐ。あの声を護らねばならないと、己の中の騎士道精神が言うのだ。
あれこそが希望だと。
「皆様は、子どもたちや、その子孫に奪われた者たちの怨嗟のみを残すのですか? その腕の中の赤子に、荒野だけを残すのですか?」
心が、炉心が、痛む。
アイセンサーがゆらめき、赤子を抱く女性が視線を落とす。
豊かさを求めるのは、護るべきものがあるからだ。
この子のためにと願う心があるからこそ、人は豊かさを求める。
その気持ちが間違いであるとは言えない。けれど、手段が間違っているのだ。奪うことではなく、分け与えることで人の営みは豊かになっていく。
「次代の種子や若芽を育み慈しむ……その道を捨てるかどうか、皆様の責で決める時です」
それは辛い決断であったことだろう。
即ち、今の豊かさを捨てるということだ。
分水嶺だ。
ここで決断できなければ、『フィアレーゲン』は遠からず必ず滅ぶ。
けれど、トリテレイアは不思議と確信していた。
モニターに映る緑の瞳をした少年。彼のような者がいるかぎり、それは訪れない。
「ならば、オブリビオンマシン。その長い年月をかけて練り上げた方策が、たった一人の少年の思いに寄って砕かれる様を見るがいいでしょう」
これが人の営みである。
トリテレイアは己が機械騎士であることを誇りに思ったことだろう。
なぜなら、彼らを護れる。
その誇りこそが、彼の炉心にさらなる火を灯すのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『百腕の機神』メカトンケイル』
|
POW : ハンドレッドデモリッション
【様々な武器を持った無数の腕(最大百本)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ターゲッティング オブ デス
攻撃が命中した対象に【ロックオン状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【様々な武器を持った無数の腕】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ : フローティングハンド・デストラクション
【浮遊する無数の腕による多彩な攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:TFJ,
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠夢幻・天魔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』は半壊しながら、プラント施設へと到達していた。
「壊す、全部壊さないと……! 私は、敗北してはならない。負けてはならない。だって、だって――!」
勝ち続けなければ。
奪い続けなければ。
己の存在意義が見いだせなく為る。どうして自分が此処にいるのかさえわからなくなってしまう。人々の期待を受けて、戦わなければならない。
そう在るべきと生み出されたのだ。
そう、嘗ての『フュンフ・エイル』を超えるために。
いや、超えたはずだ。
シュミュレーションで誰も撃破することのできなかった、あの『熾盛』と『フュンフ・エイル』を打ち破ったのだ。
超えたはずだ。
「なのに、なんで、私はまだ――!」
力が足りない。
猟兵達に負けない力がほしい。絶対的な力がほしい。
全てを屈服させる力が。
そうでなければ、生み出された意味がない。
『そうだね。そのとおりだ。君は生み出されたんだ。フュンフ・エイルを超えるために、『1』と『0』の両方を持って』
嗤う悪意の声が聞こえた気がした。
気のせいであったのかも知れない。
けれど、その声はとても甘やかで。『ツェーン』は頷いた。受け入れた。
破壊を齎す存在となるべく、嘗ての『フュンフ・エイル』とは違う道を選ぶために。
『アークレイズ・ディナ』の機体が変貌していく。
その姿は、圧倒的な神々しさを持って顕現する。
百腕の名で知られる機神。
その姿へと変貌していくのだ。
『さあ、行くといい。君が望んだ力だ。全てに手が届くようにと、望んだ力だよ』
甘やかな悪意が遠のいていく。
けれど、『ツェーン』は構わなかった。己が欲したちから。すべてをほろぼすちから。
「ああ、これが、私の――のぞんだせかいをほろぼすちから!」
ユーリー・ザルティア
はぁ、とりあえず…ツェーンだっけ?歯を食いしばりなさいッ
悪いけど、さっきの住民とかすっごいムカついたんで…。
(八つ当たりともいう)
さて、シビリアンジョーのダメージは軽。
まだまだいけるね。
こっちをロックオンしてるってことは同時にこっちも認識してるッとこと。
『悪路走行』+『ダッシュ』のローラーダッシュで最大機動ッ
『操縦』テクニックで最小限の命中に抑えつつ、ウルティメイトキャノンによる『制圧射撃』の連続攻撃で無数の腕を迎撃しながら接近ッ。
もう一度言う。歯を食いしばれッ
シビリアンジョーのハンマー型の右腕で『重量攻撃』
いっぺん頭冷やして周りをみろッ
壊し続けた後の荒廃がアンタの勝利の証だったのかッ!!
一種の神々しささえ感じさせるオブリビオンマシン、『百腕の機神』メカトンケイル。
それこそがオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の下から現れた真なる姿であったのだろう。
プラントを目指していたのは、その破壊も当然であるが、この姿へと変ずるための出力を得るためでもあったのだろう。
「壊す。全て壊す。なかったことにしないと。敗北を認めない。敗北はあってはならない。だって私は――」
『エース』なのだから。
パイロットである『ツェーン』の思想は歪みに歪んでいる。
その歪みを生み出した者はあれど、今は彼女を止めなければならない。
オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルが、その無数に飛ぶ腕を操り、猟兵達に迫るのだ。
「はぁ、とりあえず……ツェーンだっけ? 歯を食いしばりなさいッ!」
凄まじいスピードでプラント施設へと飛び込んできたのは、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)の駆るオブリビオンマシン『シビリアンジョー』であった。
戦いを経て、ダメージがあれど、それは軽微なものであった。
まだまだいけると彼女は判断して、飛び込んだのだ。
百腕の名を示す通り、メカトンケイルの子機とも言うべき無数の武器を携えた腕が『シビリアンジョー』を取り囲む。
状況は好転していない。
けれど、ユーリーはむかっ腹を抱えたままであった。
「悪いけど、さっきの住人とかすっごいムカついたんで……!」
それは八つ当たりというものであるが、その怒りこそが彼女を突き動かすのだ。
プラント施設の周辺に入り組んだパイプを、ローラーダッシュで一気に距離を詰める。
常にこちらをロックオンしているということは、、膨大な情報をパイロットが処理しているということだ。
「それが特別な才能がなければ、動かすことのできない武装だってわかっているんだからさ!」
ユーリーは凄まじい勢いの変幻自在なる機動でもって飛来する腕の斬撃を躱していく。
「ウルティメイトキャノンモードへ移行。エネルギーライン、全段直結。チャンバー内、正常加圧中…ライフリング回転開始…発射準備完了!!」
『シビリアンジョー』に装備されたウルティメイトキャノンが物質化するほどの膨大な質量を持つ電力で持って、飛来する腕を叩き落としていく。
「初見でこの武装を見破った……!」
「この程度でっ、勝ち誇るな! もう一度言う。歯を食いしばれッ!」
『シビリアンジョー』のハンマー型の右腕が唸りを上げる。
放たれる腕をウルティメイトキャノンが放つ電流で撃ち落としながら、戦場を駆け抜ける。
その機動は稲妻のようであり、『ツェーン』にとっては、悪夢のような光景であったことだろう。
「誰がっ! 誰に向かって説教をたれようと!」
追いすがる『シビリアンジョー』を突き放すようにメカトンケイルが機動する。
だが、高速機動型であった『アークレイズ・ディナ』ほどの速度はない。
ただのパイロットの技量で持って引き離しているだけに過ぎない。
ユーリー叫ぶ。
それに呼応するようにオブリビオンマシンである『シビリアンジョー』が咆哮し、ローラーダッシュで一気に距離を詰めるのだ。
「いっぺん頭冷やして周りを見ろッ!」
振るい上げたハンマーの一撃がメカトンケイルへと放たれる。
既の所で躱すが、その一撃は胸部装甲を叩き割る。凄まじい衝撃があたりに響き渡り、衝撃波を伴った勢いはプラント施設を震撼させるのだ。
「壊し続けた後の荒廃がアンタの勝利の証だったのかッ!!」
奪い続け、破壊し続ける。
それが彼女、『ツェーン』に与えられた宿命であるとはユーリーは思わない。
例え、オブリビオンマシンに歪められたのだとしても、彼女の道行きは誰かにコントロールされていいものではない。
だから、そのオブリビオンマシンから彼女を降ろす。
そのためにユーリーは『シビリアンジョー』と共に鉄槌の一撃を下すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
そんな物を存在意義にするというのなら、それこそ壊して滅ぼしてやる
それで一から見つけていけ、本来、人は存在意義を見出して行く生き物だ
SPDで判定
AIと協力し【視力】【暗視】【聞き耳】で【情報収集】し敵を捕捉
風の【結界術】を敵の周囲に張り【目潰し】した後、指定UCで藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【スナイパー】【範囲攻撃】【全力魔法】で放ち動きを止める
それからは橙の災い:爆破【爆撃】でコックピット以外を狙い【スナイパー】【貫通攻撃】【鎧無視攻撃】で攻撃
敵から捕捉されれば、自分の周囲に風の【結界術】を張って防ぐ
無数の武装を手にした腕が宙を舞う。
それはオブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルの放つオールレンジ攻撃であった。
百を数える攻撃端末を一斉に操ることなど、常人には不可能である。
だが、『エース』たるパイロットである『ツェーン』というパーツを手に入れたメカトンケイルは、その力を十全に発揮していた。
「敗北は認めない。私は未だ『エース』だ! 全てを奪い、全てを壊す。世界の全てが私の思うままになるほどの力が」
それが欲しいのだと『ツェーン』は叫ぶ。
思い通りにならぬことなど在ってはならない。『エース』とはそれさえも超越していく存在なのだと、彼女は教育されてきたのだろう。
だから、そこにしか存在意義を見いだせないのだ。
百を数える腕、その子機が無数の武装を持って迫る猟兵たちを迎え撃つ。
「そんな物を存在意義にするというのなら、それこそ壊して滅ぼしてやる」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はキャバリア『銀の銃兵』を駆り、戦場となったプラント施設を駆け抜ける。
そのキャバリアのアイセンサーが捉えるのは、メカトンケイルの姿であった。
オブリビオンマシン。
『ツェーン』の心のなかにある、破壊的な衝動と狂気に染まった思想を歪めさせたメカトンケイルは、彼女はパーツとしてしか扱っていない。
彼女の技量こそが、メカトンケイルに必要不可欠なのだ。
「そんなことはさせない! 私は、破れない!」
風の結界術がメカトンケイルの周囲に吹き荒れ、子機のコントロールを難しいものにしていく。
吹き荒れる風は、子機に微細なコントロールを要求し、結果、それを掌握している『ツェーン』に多大な負荷を懸けるのだ。
「全てをコントロールしたいというお前の心の現れなのならば、お前はそれを棄てられないだろう!」
ルイスは疾走る。
属性付与(エンチャント)された義眼のメガリスの輝きが持つ災いを籠めた弾丸を放つ。
それは藍色の輝きを放ち、圧潰の力を開放する。
周囲にあった風の結界によって膨大なコントロールを強いられいていた子機に、重力による負荷まで掛けて、叩き落とす。
失墜した子機の合間をすり抜けるように『銀の銃兵』の残影が疾走る。
「このっ、私の……! 私の存在意義を……!」
「そんなものは壊すと言った! それで一から見つけていけ!」
ルイスと『銀の銃兵』の構える魔銃の銃口が輝く。
それはユーベルコードの輝きであり、義眼のメガリスが齎す災いの輝きであった。
放った弾丸は、橙に輝く。
それは爆破の災い。
無数にある腕の一本を吹き飛ばし、『銀の銃兵』に追いすがる子機の腕を吹き荒れる風の結界と共に防いで、ルイスは叫ぶ。
例え、彼女がどれだけ歪なものを抱えていたのだとしても。
ルイスは叫ぶしかない。
「本来、日お手ゃ存在意義を見出して行く生き物だ。できるはずだ!」
そうでなければ、『エース』ではない。
超えたいと願い、超えたと思ったのならば。
その願いは見果てぬものであたのだとしても、人としての生命をまた紡いでいくことだろう。
人の生き方とはそいうものだ。
だから、ルイスは引き金を引く。
橙の輝きが世界に放たれ、爆風が次々と子機の腕を吹き飛ばしていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
結局最後は力にすがるのね。あなたにはエースの気概が足りないわ。
『迦利』の「レーザー射撃」「範囲攻撃」「弾幕」でツェーンの目を引き付けて。
最初のあれは、いわば初見殺し。二度は通用しない。
ツェーンもそれは分かってるでしょ。下手に『迦利』へは近づかないはず。
距離を取っての射撃戦で、しばらく膠着状態を作る。
その間にあたしは、「目立たない」ようにメカトンケイルの背後へ回って、不動金縛り法で動きを封じる。
完全に拘束出来たら、『迦利』に「オーラ防御」を張って、衝角で突撃。
コクピットを外して、ツェーンを間違って殺さないように。
機体を抉り込みつつ、「レーザー射撃」は止めることなく。
さあ、そろそろ目覚めの時間よ。
『百腕の機神』メカトンケイルを完璧に操縦するには、並の『エース』では不十分であった。
『ツェーン』は、その点においては十分すぎる素養を持つパイロットであったが、猟兵達による波状攻撃の前に子機である腕の数を減らし始めていた。
「子機がやられる……私が、やられる……! 全部が、私なのに!」
すでにオブリビオンマシンによって思想を歪められた彼女にとって、空を舞う子機ですら己であると錯覚しているのだろう。
そういう才能もまた必要不可欠な機体。
無数の子機を同時にバラバラに操るのは、脳に対する負荷が大きいのだろう。
けれど、それでもやれてしまう。
本来ならば、セーフティがかかるように身体が負荷に耐えられない。けれど、『ツェーン』は耐えられてしまう。
「私がたくさんいる……もっと、もっと力が必要だって!」
「結局、最期は力に縋るのね。あなたには『エース』の気概が足りないわ」
その言葉と同時に放たれるレーザーの弾幕。
それは視界を覆うような目くらましであり、広範囲に渡って放たれた攻撃であった。
けれど、それらの尽くは子機の腕に内蔵されたバリアで防がれていく。
「そうね。わかっているのね。最初のあれは、謂わば初見殺し。貴方に二度は通用しない」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、戦場を走る。
プラント施設にまでメカトンケイルが到達していたことは予想外であったけれど、それでもあの無数の子機を従えるメカトンケイルを操縦しているのが『ツェーン』であるというのならば、できることがある。
機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』が放つレーザーの射撃は、よい目くらましであり、走るゆかりから注意を逸らすには十分なものであった。
「このやり方……! 私に二度目があるとでも!」
無数の子機である腕が飛ぶ。
それはレーザーを全て躱し、迫る逆三角形のキャバリアの衝角を警戒するように迦利との距離を保つようにメカトンケイルとの間に割って入るのだ。
「ツェーンもそれは分かっているようね。下手に近づけばどうなるか……すでに対応済みってわけね」
確かに気概は足りないのかも知れない。
けれど、『エース』たる力量はすでに彼女に備わっている。
それは言うまでもないことであったけれど、ゆかりは未だ奥の手を切っていない。
膠着状態に成れば、こちらに利があるのだ。
「ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン」
手にした白い霊符から放たれるのは、不動明王の羂索であり、不動金縛り法(フドウカナシバリホウ)によってメカトンケイル本体を縛り上げるのだ。
「――! 拘束……どこからっ!」
『ツェーン』は機体のアイセンサーを巡らせ、自身の機体を縛り上げる拘束の元を探る。
ゆかりとアイセンサーがかち合う。
たとえ、機械越しであっても、そこから伝わる憎悪は本物であった。
本気で憎んでいる。子機である腕がゆかりへと飛んでいく。その手にした武装でゆかり自身を叩き潰そうとしているのだ。
「遅いッ!」
こちらへと注意が向いた瞬間、『迦利』が、その衝角でもってメカトンケイルへと突撃する。
オーラを張り巡らせた衝角とメカトンケイルの装甲がぶつかる。
火花を散らし、子機が生み出したバリアとゆかりの力が激しく衝突しあうのだ。既の所で防がれた。
けれど、ゆかりは構わない。
無人機は無人機の戦い方ができる。コクピットを外して攻撃したのが、甘さであるというのならば、それはゆかり自身が選んだ道だ。
殺さない。
殺してしまっては、意味がない。
『ツェーン』は今岐路に立っている。やり直すやり直せないではない。彼女という人間の人生をこれからどう生きるかの分水嶺に立っているだけの話だ。
今はただ眠っているだけに過ぎない。
迦利の放つレーザーが子機を撃ち落とし、推力のままに衝角をメカトンケイルの機体へとめり込ませ、抉るように機体装甲を引き剥がしていく。
「――ッ、ぁ! 私はっ! 負けない。負けてはいけない。だって!」
「まだ目覚めてもいないのだから。さあ、そろそろ目覚めの時間よ」
自分の足で立って、眼で見て、聞くべきなのだ。
誰に言われたからでもない。
自分で自分の人生を決めなければならない。例え、それがどんなに苦しく険しい道であったのだとしても。
いつだってそうだ。
「本当に正しいのは、いつだって。辛く険しい回り道なのよ」
ゆかりの言葉と共にメカトンケイルが咆哮する。
それは怨嗟の咆哮であった。己の一パーツとしての『ツェーン』の目覚めを拒否するように、それを促した猟兵への怨嗟をメカトンケイルは轟かせ、衝角の一撃によって吹き飛ばされるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
戦う為に産み出されたものがより大きな力を求めるのは当然です
それが存在意義であり義務なのですから
兵器が兵器であり続ける事を否定するなど誰が出来るのでしょうか
よって双方の間に交わされる言葉など既に意味を為さない
力の答えは結果によって贖われる
全てのサブアームを対処し切るのは現実的では無い
敵機本体の一点突破を狙う
SS・WM起動
兵装はプラズマガンポッド(攻撃回数)を選択
ベルリオーズとヴェスタも併用し正面へ火力を集中
本体を保護するサブアームを尽く破壊し接近
その間の被弾はEMフィールドにて防御
ルナライトによる近接格闘戦闘に持ち込み本体を直接攻撃
コクピットブロックを除くあらゆる部位を溶断し機能を停止させる
プラント施設で戦うオブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイル。
その戦いの激しさは言うまでもない。
本来であれば、キャバリア戦闘が行われていい場所ではないのだ。
けれど、猟兵たちはプラント施設からオブリビオンマシンを引き離すように吹き飛ばしていく。
子機である無数の腕を操り、メカトンケイルは猟兵たちへと襲いかかる。
そのアイセンサーが輝くたびに、子機である腕が数多の武器を持って斬撃や打撃、刺突にバリア、あらゆる攻撃方法で持って近づけさせない。
それは『エース』であるパイロット、『ツェーン』が機体のパーツの一つとなることによって生み出される嵐のような攻勢であった。
「もっと、もっとっ! 私は何もかも超えるっ、超えてみせる……何かも超越したいと願ったのだから。全てを破壊して、私の優位性を」
示してみせるのだと、百を数える子機が飛ぶ。
その姿を見て、ダビング・レコーズ(RS01・f12341)は当然であるとつぶやいた。
「戦う為に産み出されたものがより大きな力を求めるのは当然です。それが存在意義であり、義務なのですから」
彼の駆るキャバリアが飛ぶ。
子機である無数の腕に対処しきるのは現実的ではない。
ならば、敵機本体を狙うしかない。
あの本体事態にも武装能力はあるが、もっとも厄介なのは、子機の存在だ。そもそもあの子機の嵐のような攻撃をかいくぐらなければ、そもそもが本体に近づけず、例え、近づいたとしても本体を操る『ツェーン』の操作技術は一流以上であった。
「兵器が兵器であり続けることを否定するなど誰が出来るのでしょうか」
もう機体の一部でもいいと、オブリビオンマシンに乗り続ける彼女は思ってさえいるであろう。
己の意志でもなく、ただ行動を為すための機械。
そうあるべきだと受けた教育が、歪んだ形で発露している。
しかし、己はウォーマシンである。それを否定しない。
けれど、彼女は違うはずだ。人なのだ。成長するし、間違える。正しさを愛するけれど、正しさの意味すら履き違えることだってある。
それでいいのだ。
それが人間だ。ダビングにとって互いに交わす言葉など既に意味をなさない。
『プラズマガンポッド、アクティブ』
SS・WM(ソリッドステート・ウェポンモジュール)。
ダビングのキャバリアに装備された武装のロックが解除される。キャバリアの武装をアクティヴにし、飛翔しながら迫る子機を撃ち落としていくのだ。
正面突破。
もはや、それしかないのだ。
火線がほとばしり、子機を撃ち落としながら、電磁障壁が子機から放たれる攻撃を減少させていく。
「退けッ! 私はお前だって超えているのだから!」
立ち塞がるなと叫ぶように乱れ狂うように飛ぶ子機が見せる爆発の中をメカトンケイルとアークレイズが交錯する。
一瞬の交錯。
けれどプラズマブレードの一撃が、青月の光を宿したように弧を描くのだ。
その残光は、メカトンケイルの機体装甲のあらゆる場所へと放たれる。
コクピットブロック以外を除いた全てに繰り出す。
「力の答えは結果によって贖われる」
ダビングにとって、それが答えであった。
どれだけ技量さが離れていたのだとしても、オブリビオンマシンが見せる狂気に侵されたパイロットには追いつけぬ領域がある。
そう、正しき思想に『エース』の技量が宿るのだとすれば、今の『ツェーン』は十全ではない。
嘗ての伝説的エースを超えた力を持っていたのだとしても、それを発揮できなければ。
「そう、持っていないのと同じ。オブリビオンマシンに乗っている限りは!」
放たれたルナライト、プラズマブレードの斬撃がオブリビオンマシン、メカトンケイルに斬撃の痕を深々と刻み込み続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
まーたフュンフ・エイルか
これじゃあもうただの呪いだねえ
そんな呪いを君に…えっと名前何だっけ?ま、いいか
君を唆したのは誰かな?
探して、殴りに行ってあげるからさ
●
腕が多いだけの木偶か
ま、試し斬りには丁度いいかな
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
左手のBlue Birdに『オーラ防御』でオーラを重ね『武器受け』の為の盾役にして敵に接敵
キャバリアぶっ飛ばすのにキャバリアは要らねえ
機械仕掛けの邪神の右腕、それさえあれば十分さ
【断章・機神召喚】起動
召喚した右腕を『念動力』で飛ばし、私の右腕とリンク
斬撃で思いっきり切り刻んであげる
君は間違ってるね
目標にすべきは天才メカニック剣士って事!
その名は呪われている。
最初にそう思ったのはいつであったことだろうか。
クロムキャバリアにおいて、幾度となく耳にした言葉。その名を持つ少年は、知る由もなかったけれど。その運命を別の者によって打ち砕かれた。解き放たれたと言ってもいい。
「まーた『フュンフ・エイル』か。これじゃあ――」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は呟いた。あの少年の顔を思い出したかも知れない。
「もうただの呪いだねえ」
彼女は生身の単身でオブリビオンマシン、『百腕の機神』メカトンケイルに対峙する。
すでに猟兵たちとの戦いは始まっていた。
無数に飛ぶ子機である腕が繰り出す武装の攻撃はオールレンジで放たれる。
その子機を操るには特別な才能が必要であった。十全に機能を引き出すことは並の『エース』では不可能であったが、『ツェーン』はそれを可能にしていた。
「奪う、壊す、全部同じことだもの。私が勝つってことは、変わらないもの!」
吹き荒れる嵐のように子機の腕が飛ぶ。
しかし、その嵐を前にしても玲はいつもの調子を変えなかった。
「そんな呪いを君に……えっと名前何だっけ? ま、いいか」
「私は、私の名前は! 『ツェーン』!」
叫ぶ声さえ、痛ましい。
自分が何者であるかを知るが故に、彼女は、己を縛る名をも見失う。
オブリビオンマシンに乗るとは、こういうことなのだと知らしめるように、百腕の子機が玲へと迫る。
なんだ、と玲は嘆息する。
腕が多いだけの木偶かと。それならば、試すには丁度いい。
膨れ上がるプレッシャーの前に『ツェーン』はたじろいだ。目の前にいるモノは一体何なのだと。
生身で、単身で現れた女性。
言葉にすればそれだけだと言うのに、何故。
「君を唆したのは誰かな?」
怖気が走るのだと、『ツェーン』は本能的に悟っていた。これが、超常の存在。抜き払った模造神器の蒼い光が、『ツェーン』の本能を突き動かす。
子機の腕が玲へと叩きつけられる。
だが、その打撃の一撃をサイズ差すらも無視するように玲の模造神器が受け止める。蒼いオーラが重ねられて、無数に迫る子機の腕の一撃一撃を受け止めていく。
「なんでっ! 壊れないの! 生身なのに……! そんなの!」
凄まじい轟音が響き渡る。
玲は己の腕がきしむ音を聞いた。叩きつけられる打撃そのものが重い。地面がひび割れ、衝撃波が迸る。
「さあね。けれど、君は間違っているよ。キャバリアぶっ飛ばすのにキャバリアは要らねえ……――偽書・焔神起動。断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
その瞳がユーベルコードに輝く。
猛烈に叩きつけられ続ける子機の打撃。
それは彼女のユーベルコードの発現を阻止するようでもあった。それは正解、と玲は微笑んだ。
だが、その瞳は剣呑に輝く。
「フラグメント・マキナアーム――それさえあれば十分さ」
召喚されるは、機械で出来た右腕。
見よ。輝くは、焔。
浄化の焔に誓い、我は世界を燃やし尽くす者也と世界に轟く力が在る。機械腕が掲げるは、巨大化した模造神器の刀身。
「君は間違ってるね」
「何を……! 私、間違ってなんかいない。だって、そうだもの。私は、だって、超えないといけないって、そう言われたから!」
そうでなければならないと作られたのだから。
自分が何者かがわからないから、自分を構成するものを、かつて在りし名を越えようと思ったのだ。
それが奪うことに繋がるなんてわかってる。
自由な生き方じゃないなんてことくらい。
「そんなのわかっているもの!」
飛翔する無数の腕の子機が合わさり、巨大な拳へと変形し玲へと放たれる。
「そんな名前に縛られてばかりで。君の数字の半分の男の子は、とっくに乗り越えているっていうのにさ!」
玲の機械腕が念動の力によって飛ぶ。
彼女の右腕とリンクした動きが、放たれた機神の腕へと放たれる。模造神器の刀身が見せる蒼き残光が疾走り、巨腕を切り刻む。
爆発が吹き荒れる中、玲告げる。
「目標にすべきは天才メカニック剣士って事! わかったかな?」
今はもう居ない誰かの背中を追うなんてことはしなくっていいのだと玲は言う。
もう超えたというのなら、それを超える存在を見ればいい。
目標を喪ったのならば、己が代わりになろう。
『ツェーン』は歪んだ視界の中、見ただろう。
蒼き残光を放つ模造神器の刀身、それが見せる超常の存在の後ろ姿を――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01に搭乗操縦
駆ける。
継戦能力、刃も、銃弾も、絡みつく腕も、弾き、怪力で振り払い、その膂力で真っ直ぐ愚直に一直線に敵へ向かって駆ける
それしか能がないのだから
国があった。仲間が居た。
自分が失ったモノを、貴女は勝ち得ていた。手に入れていたんだ!
『戦場の怪談』敵を無力化
瞬間思考力、霊物質を力に武器改造、フォースウィップを手の様に広げて拘束し引き寄せる
何も無いだなんて言わせない!失っても、まだ、見つけられる筈だ!
上から下へプレスブロウで重量攻撃
からブラストナックル、マヒ攻撃
それをお前が邪魔している!だから壊す!壊してやる!!オブリビオン!!!
何度でも、壊れろ、と呪詛を吐いて、01で殴る
無数の子機である腕が重なり合った巨大な拳の一撃は切り裂かれ、爆発の中に消える。
けれど『百腕の機神』たるメカトンケイルは未だ健在である。
その名を冠する機神にとって、浮遊する子機である腕はまだまだ無数に存在している。
その腕にある様々な攻撃手段は、それだけで脅威になるものであったし、オールレンジで攻撃を仕掛けてくる全天を覆うような嵐のような斬撃を受けて尚『ディスポーザブル01』は戦場を駆ける。
刃も銃弾も、絡みつく腕も、あらゆる攻撃を弾き、怪力で振り払う。
それはあまりにも愚かな直進であったかもしれない。
「邪魔をしないでよ! 何が猟兵よ! 何も与えてくれないから、何かを欲しがるのだって、当たり前のことでしょう!」
オブリビオンマシンであるメカトンケイルのコクピットの中で『ツェーン』は叫んだ。
たった一つのことしかもっていないからこそ、その他の全てを持っていないことと同義であった。
だから、彼女は求め、求め果てた上に破壊を求める。
それがオブリビオンマシンによって齎された破滅的な思想であることは言うまでもない。
けれど、それは嘗ての己と同じであると朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思ったかも知れない。
「国があった。仲間が居た」
つぶやく。
機体が駆けるたびに、飛来するメカトンケイルの攻撃が機体を砕いていく。
けれど、止まらない。
最早この足は己の意志では止められないのだ。
その眼差しに輝くのはユーベルコードではなく、小枝子自身に去来するなにものかであった。
その名前を彼女は知らない。
「だからなんだって言うの。何もかも持っているくせに、全部喪ったみたいな――!」
「自分が喪ったモノを、貴女は勝ち得ていた。手に入れていたんだ!」
互いに似たものであるからこそぶつかる。
火花が散るように飛来した腕を振り払う『ディスポーザブル01』の腕。
そう、自分が望んで止まない渇望の其処にあるものを、『ツェーン』はもっていて、尚己と同じように手放そうとしている。
それは何よりも耐え難いものであった。
己の過ちを見せつけられているようなものであった。
だから、小枝子の瞳は今度こそユーベルコードに輝く。
「疾く――」
戦場の怪談(ディスポーザブル・アウトレイジ)の如く戦場から霊物質が放出される。
目の前にいるのは己の敵だ。
オブリビオンマシン。あれは破壊しなければならない。放出された霊物質が、『ディスポーザブル』の砕けた腕を束ねるようにして、巨大な手のひらに変換され、メカトンケイルを掴む。
「このっ! 私を鷲掴みに……!」
「何も無いだなんて言わせない! 喪っても、まだ見つけられる筈だ!」
振るい上げた巨大な手がメカトンケイルの機体を振り上げる。
そう、まだやりなおせる。
誰だってそうだ。何も手遅れだということなんてない。誰もが幸せな未来を願っているのならば、そこに早い遅いはない。
いつ決断するか。
いつ決意するかだけの違いでしか無いのだ。
だから、それを邪魔するものが在る。人の悪意でもなければ、誰かの悲しみでもない。
純然たる過去。
どうしようもない、変えようのない過去が追いすがってくる。
だから、小枝子は吠える。
「それをお前が邪魔している! だから壊す! 壊してやる!」
裂帛の気合と共に掴み上げたメカトンケイルを大地に叩きつける。
ディスポーザブルへと放たれる無数の腕の子機が機体をひしゃげさせても、小枝子は止まらなかった。
『ツェーン』を捉えているのはオブリビオンマシンだ。
ただ、狂わされているだけ。
ならば、やはり邪魔なのは、たった一つ。
「オブリビオンマシン!!! 壊れ、ろ――!!!」
呪詛の如き破壊をブラストナックルが砕けて散るまで叩きつける。
メカトンケイルのフェイスがひしゃげていく。
まだ足りない。
そう、例えこの身が砕けようとも、止まることはないのだというように、小枝子は『ディスポーザブル01』の拳を叩きつけ、メカトンケイルを破壊へと導くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
力を求めるのは俺も同じです
故に、求めた成れの果ても知っています
力を求める悪鬼と成り果て我等が敵となるがいい
諸共我等が喰らい尽くしてくれよう
【行動】POW
先制攻撃+ダッシュで接近、五感と第六感を働かせて敵攻撃の前兆や軌道を戦闘知識+瞬間思考力を活かして見切る
攻撃や命中率重視ならダッシュ+グラップルの体術で躱すか武器で受け流し、回数ならなぎ払い+範囲攻撃で払いのけながら接敵
夜砥を巻き付けてダッシュ+クライミングで駆け上がりながらなぎ払い+切断で損傷させ、武器に纏わせた怨念の炎で傷口を抉る
損傷が最も深く脆くなった箇所を串刺しで更にこじ開け、内部回路にUCを流し込み機能そのものを奪う
求めて、求めて、求め果てた先にあるのが破滅だというのならば、人は求めることをやめるであろうか。
答えは否であろう。
例え、破滅という結末が待っていたのだとしても、人は力を求めることを躊躇わないだろう。
大きすぎる力に呑まれてしまったのだとしても、それに気がつくことすらできないかもしれない。
自分が制御していると思っている力は、本当に自分自身のものであるのかさえわからなくなってしまうのであれば、それは果たして本当に力であったのだろうか。
「もっと、もっと、力が欲しい。代償が必要だというのなら!」
私の生命すらも使えと、『ツェーン』が叫ぶ。
叩きつけられた機体、オブリビオンマシンである『百腕の機神』メカトンケイルが立ち上がる。
ゆらめくアイセンサーの輝きは、ひしゃげたマスク部分から漏れ出し、宙に浮かぶ無数の子機、その腕を飛翔させる。
それはまるで降りしきる雨のようでもあった。
「力を求めるのは俺も同じです。故に、求めた成れの果ても知っています」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は、殺意の炎(サツイノホノオ)と共に走る。
揺らめく焔に圧されるようにして、黒い炎が翼のように織久の背中にたなびく。
無限とも思われるような子機の腕が織久に放たれるのを躱しながら、時には己の体術でもっていなすのだ。
「力を求める悪鬼と成り果て、我等が敵となるがいい」
それは挑発めいていたのかも知れないし、討つべき敵としての有り様を説いたものであったのかもしれない。
『ツェーン』という少女が力を願い、オブリビオンマシンがそれに応えるというのであれば、即ち敵である。
織久にとって、その敵足り得る牙ごと喰らい尽くすことこそが、本懐であろう。
巨大なオブリビオンマシンに極細の強靭なる糸が絡みつく。
飛来する拳を躱し、鋼鉄の巨人の身体へと取り憑く。
「ちょこまかと、邪魔を。私は、全部こわしたいって、なにもかも、私自身だってなかったことになればって、そう思ったのだもの!」
振るわれる拳が、織久を打つ。
けれど、織久は張り巡らせた糸によって拳を受け止める。
殺意の炎が、怨念と共に膨れ上がり、先行した猟兵達が刻み込んだ傷跡へと炎を流し込み、傷口を抉るのだ。
「我等と同じになるか。いや、成り果てるか。全てを憎む心が、その身を縛っていると知らずに」
傷跡をこじ開けるように装甲を開き、流し込むは怨念。
それは織久の中に渦巻くオブリビオンへの恨みであったのかもしれない。
内部に流れ込んだ怨念の炎は、次々とメカトンケイルのフレームを侵食していく。
「私は、縛られてなんて、いないッ!」
力を持つからこそ、縛られることはない。
けれど、知らなければならない。例え、どれだけ強大な力を持っていたのだとしても、大きな力は必ず争いを呼びつける。
その時、戦いの巻き添えになるのは、己の大切なものである。
喪って初めてなどという感傷は、何者をも取り戻さない。
だから、織久はオブリビオンを決して許さない。
己の内に蠢く殺意と狂気のままに、その力を振るうのだ。
「ならば、知れ。我等が怨念尽きる事なし――」
放つ一撃がメカトンケイルの機体を傾がせ、その内部より燃え上がる炎が、フレームすらも歪ませていくのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
おお、オブリビオンマシンはなかなか格好良くなったな。
その一方でツェーンちゃんの方はかなりカワイソーなことになってるな。
オブリビオンマシンなんて普通の人間が乗るもんじゃねーな、なあ、スルト?
『戦闘モードⅠ』を発動して対峙。
敵powuc、無数の腕の動き、攻撃を見切り回避あるいは破壊しつつ本体に接近。(見切り×第六感×瞬間思考力)
コックピットを避けつつ、動力部に黄金の魔力を纏わせたスルトの貫手による貫通攻撃を。
オブリビオンマシンの影響下にある人間に説教する気はねーな。
まあ、解き放たれたら自分で身の振り方を考えるんだな。
相談できる奴くらいいるだろ……いるよな?
いないなら乗ってやっても良いぜ?
内部フレームを焼く黒い炎が立ち上がる。
けれど、オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルは未だ立っていた。
その子機である無数の腕は数を減らしていたけれど、それでもなお猟兵たちをねめつけるのだ。
気概は良し。
そう呟いたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
「おお、オブリビオンマシンはなかなか格好良くなったな」
冗談のようなつぶやきであったけれど、アレキサンドルにとっては、本音であった。
これまで戦った『アークレイズ・ディナ』に比べれば、格段にオブリビオンらしい外観であると彼は思ったのだ。
「その一方でツェーンちゃんの方はかなりカワイソーなことになってるな」
「私を憐れむな! 見下すな、猟兵!」
『ツェーン』にとって、憐れみとは即ち侮辱と同じであった。
それに激怒することのできる気力が漲っているのは、何故か。
それは彼女が『エース』であるからだ。紛れもない事実。数多の猟兵達の攻撃にさらされても尚、彼女の操るオブリビオンマシンの操縦は精彩欠いたものではなかった。
むしろ、益々持って磨きが掛かっている。
追い込まれれば追い込まれるほどに力を発揮するように、彼女もまた『エース』なのだ。
「オブリビオンマシンなんて普通の人間が乗るもんじゃねーな、なあ、『スルト』?」
それに構わずアレキサンドルは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
魔力開放と共に戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行した『スルト』の機体が黄金の魔力で覆われていく。
アレキサンドル自身の魔力に寄る『スルト』の強化。
無数に飛来する子機の腕の攻撃を見切る。
一瞬の洞察力。
子機事態は大したことはないとアレキサンドルは判断していた。それよりも特筆すべきは――!
「この操縦技術ってやつか……! オブリビオンマシンの影響下にある人間に説教する気はねーが!」
厄介であると言わざるを得ない。
これまでアレキサンドルが戦ってきたキャバリアパイロットの中で、その操縦技術は随一であった。
これまで子機に攻撃を任せていたメカトンケイル事態は武装を手に取り、攻撃を加えてくるのだ。
選択を迫られる。
それは子機を裁くのか、それとも本体を討つのか。
「選択肢があると思うな!」
凄まじい速度、踏み込み。
これが消耗させられたオブリビオンマシンの性能ではないと言わしめるほどの、圧倒的な攻勢。
それを見てアレキサンドルは笑った。
「疾いが、それだけだな! まあ、解き放たれたら自分で身の振り方を考えるんだな。相談できるやつ位いるだろ……いるよな?」
「そんなもの必要ない! だって、私は一人だ! ずっと、これまでも、これからも!」
迫るメカトンケイルの割れたフェイスが泣いているようにみ見えたかも知れない。
けれど、アレキサンドルは構わなかった。
例え、どれだけ泣き叫んでいたのだとしても、人は一人で立ち上がることができる。
これまでだって何度も見てきたのだ。
だから。
「……いないなら乗ってやってもいいぜ、相談。でもまあ、必要ねーだろ。お前にはまだ二本の足があって、何かをつかもうともがく二本の腕があるんだからな」
放たれた『スルト』の黄金に包まれた蹴撃が、接近するメカトンケイルを吹き飛ばす。
その一撃はメカトンケイルの腕をへし折り、武装を破壊する。
例え、オブリビオンマシンを破壊したとしても、彼女の人生という名の戦いは続いていくのだ。
だから、ここで余分なものを削ぎ落とす。
荒れ狂うような黄金の魔力が、メカトンケイルを強かに打ち据え、その道行きを切り開くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
アドリブ歓迎
あー
判りますよその気持ち
僕も初めて魔法覚えた時は凄い万能感でしたし?
「でも中々厄介だよ?捕まっちゃうかも」
何だポンコツ
ビビってんのか?
「まさか!これでもメルシーは百の眼を持つ巨人を倒した事あるし?」
【視力・情報収集・戦闘知識】
機体構造とその動きの癖の把握
攻撃の性質も分析
UC起動
状態異常強化
【念動力・属性攻撃・武器受け】
全属性と念動力をバリアに重ねて強化
凍結させ燃やし腕の無力化を狙
突破してきたのはハルペーで防
どいつもこいつも感情的になってさ
クールにやれよ
「ご主人サマも結構キレやすくない?」
やかましい
【二回攻撃・盗み攻撃・切断・盗み】
ハルペーで連続斬撃から腕を強奪に掛かり戦力低下を狙う
力を得た万能感は、いつだって地に足のついたものではない。
ふわふわとした浮遊感が身体を支配する。
それが己が掴み取った力ではなく、与えられた力であれば尚更である。
与えられた力は確かに強大であったかもしれない。けれど、それは己の望んだ力ではないのかもしれないという疑念もまた『ツェーン』の中にはあったのだろう。
だからこそ、『百腕の機神』メカトンケイルの力は十全に引き出せても、猟兵達に尽くが破られてしまう。
宙に舞うオールレンジで攻撃を仕掛けることのできる子機である腕はその数を減らしている。
尽くが猟兵に撃ち落とされる。
「なんで、私が迷っているのだと……こんなにも力がたくさんあるというのに!」
全てに手が届く腕。
どこへでも行ける腕。
それらが備わっているというのに、万能感とは程遠いうつろが彼女の心を支配する。
「あー、判りますよその気持ち。僕も初めて魔法覚えた時は凄い万能感でしたし?」
「でもなかなか厄介だよ? 捕まっちゃうかも」
そんなやり取りが、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の駆る界導神機『メルクリウス』のコクピットの中であった。
鶏のホログラムにカシムは悪態を突く。
なんだこのポンコツ、ビビってのか? そう毒づいたが、鶏のホログラムは、まるで気にした様子もなく返答する。
「まさか! これでもメルシーは百の眼を持つ巨人を倒した事あるし?」
だから平気なのだと己たちを取り囲む暴風雨のような子機の腕の攻撃を交わす。
「機体構造……やっぱり、本体が動くようになったのは厄介だな。子機の動きだってまだいいじゃないか……」
だが、それ故に直線的な動きが多い。
どれだけ子機の数が健在であったとしても、動きが見切れるのならば、カシムにとって恐れるべきものは、機体性能ではなかった。
「万物の根源よ…帝竜眼よ…竜の中の竜…世界を蹂躙せしめた竜の王の力を示せ…!」
帝竜眼「ヴァルギリオス」(セカイヲジュウリンセシオウノナカノオウ)がユーベルコードに輝く。
『触れた者を毒にするバリア』、『攻撃を反射し燃やすバリア』そして、『触れたものを凍結するバリア』が機体に張り巡らされていく。
念動力によって重ねられたバリアが、突進してくる子機の腕を次々と侵食し、落として行く。
「子機が、やられる……!? 私の、動きを、こいつ……!」
読まれていると『ツェーン』は感じたただろう。
激昂が伝わってくるようだった。それに対して、カシムは冷静であった。
「どいつもこいつも感情的になってさ。クールにやれよ」
鎌剣ハルペーが煌めき、その斬撃が子機である腕を切り落として爆散させる。
どれほど無数の攻撃でこちらを圧そうとしても無駄である。すでに直線的な子機の動きは見切っているのだ。
「ご主人サマも結構キレやすくない?」
「やまかしい――!」
付き合ってなどいられないとばかりにカシムは叫び、子機をバリアで凍結させ、燃やし、毒によって腐食させていく。
己自身がこの戦場に有り続けることによって子機は次々と失墜していくのだ。
「私の邪魔ばかり……! 私が全て壊すまでおとなしくはできないのか!」
オブリビオンマシンはどれだけ高潔な思想を持つ者であっても、それを歪めさせる。
オブリビオンマシンに搭乗するということはそういうことなのだ。
明確な言葉は届かない。
けれど、その魂を揺さぶるにはやはり言葉を尽くすしかない。
「そんな感情的だから、他人を傷つけるだけだって知るんだよ!」
鎌剣の斬撃が、メカトンケイルの多腕を瞬時に二つ切り落とす。
それは見えぬと錯覚させるには十分すぎるほどの斬撃であった。けれど、カシムは誇らない。
どれだけ卓越した技量があったとしても、感情に振り回されて他者を傷つけるのだとするのならば、それはあってはならないことだ。
だから、奪う。
全てを奪って、なかったことにしようとす『ツェーン』を止めるように、その全てに届くと言う腕の全てを失墜させるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
アイさんと
人々があなたに期待したのは、
勝ち続けることや奪い続けることだけなのかな?
破壊だけではどちらも叶わないけどね。
あなたが越えたのはフュンフさんの『力』だけ。
フュンフさんは立ち上がって真のエースになったけど、
あなたはどうかな?
存在意義というのなら、
ほんとの意味でフュンフさんを越えないとじゃないかな。
そのためにもいまは、そこから降りないとね。
その攻撃は一度見たよ。
もう偽りの丘を使うほどでもないね。
【等価具現】で攻撃を相殺。
攻撃を防いだら【M.P.M.S】をクラスター弾頭で使用。
至近で破裂させて援護と目くらましをしよう。
全部終わったらアイさんを見てにこにこ。
パートナーになれて良かった、よー♪
アイ・リスパー
理緒さんと
「理緒さんがあそこまで想う街の人々……
なら、私もその人たちのために戦っても……いいのかもしれないですね」
ならば……
私のやるべきことは一つです!
機動戦車オベイロンから降りて、生身で敵キャバリアの前に立ちましょう。
「大丈夫です。今の私は、オベイロンの装甲よりも頼りになる理緒さんに守られているのですから」
精神を集中し無防備に立ったまま、大規模破壊電脳魔術【破砕領域】の発動を準備します。
攻撃は理緒さんが防いでくれると確信していますから。
「今ですっ!」
理緒さんが作ってくれた敵の隙をついて、電脳魔術を発動。
対消滅により敵を消し去りましょう。
「私も理緒さんがパートナーでよかったです」
猟兵達の攻撃は苛烈を極めた。
無数の子機である腕が飛翔するたびに、それらを失墜させる。
オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルの主な攻撃手段は、子機である腕によるオールレンジ攻撃である。
その多彩な武装を一度に操ることは、パイロットに尋常ならざる負荷を懸けることと同義であったが、『エース』である『ツェーン』にとって、それは難しいことではなかったのかもしれない。
数多の猟兵達の攻撃に寄って消耗させられてもなお……いや、消耗させられたからこそ『ツェーン』は追い込まれ『エース』としての力を発揮する。
それは皮肉なことであった。
「人々があなたに期待したのは、勝ち続けることや奪い続けることなのかな?」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『リオ・セレステ』の中で問いかける。
そうではないといい。
そんな理想論であったのかもしれないし、現実には違うかもしれない。けれど、たった一つ確かなことがある。
「――破壊だけではどちらも叶わないけどね」
「そんなことはない! 破壊すればいい。全て、破壊すれば私のものだ! 全部! そうやって私は今まで手に入れてきたのだから!」
『ツェーン』の言葉は最早、矛盾をはらんでいたが、それにさえ彼女は気がつくことができない。
それがオブリビオンマシンによって歪められた定めであったのかもしれない。
「あなたが越えたのはフュンフさんの『力』だけ」
かつての小国家『グリプ5』に居た、『フュンフ・ラーズグリーズ』、あの少年のことを理緒は思い出す。
彼だってそうだった。
名前だけを受け継いだ半端者。けれど、彼は違ったのだ。誰のためでもない。自分自身で選んだのだ。
「『フュンフ』さんは立ち上がって真のエースになったけど、あなたはどうかな?」
「誰だ、それは! 私は、私の名前は――!」
メカトンケイルの子機の腕が飛ぶ。
けれど、それは尽くがユーベルコードによって防がれる。理緒にとって、それは一度見た攻撃であった。
その拳がぶつかる障壁の前に生身で立つ少女が居た。
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)だった。彼女の心のなかにあるのは、他の誰でもない、パートナーである理緒のことだった。
「理緒さんがあそこまで想う街の人々……なら、私もその人達のために戦っても……いいのかもしれないですね」
そう、そっと呟いた。
その独白は戦いの音にかき消されたかも知れないけれど、その胸に宿る暖かな思いまではかき消されない。
灯火が消えない。
どれだけ暴風雨のような子機の腕に寄る攻撃が迫ろうとも、アイの心は静かな物であった。
機動戦車オベイロンから下りて、生身の単身でメカトンケイルへと姿を晒す。
危ないとさえ思わなかった。
なぜなら。
「大丈夫です。今の私は、オベイロンの装甲よりも頼りになる理緒さんに護られているのですから」
精神を集中させる。
やらなければならないことはわかっている。同時に、それが何故やらなければならないのかさえ、わかっている。
これは自分がやりたいことだ。
自分が理緒を信じるように、理緒だって自分を信じてくれている。
ならば、それに応えることこそが、アイにとっての大切なことだった。
「電脳魔術により不確定性原理に干渉。反粒子生成確認。反粒子ビームによる対消滅攻撃、開始します」
産み出された反粒子がユーベルコードの輝きと共に破砕領域(イレイズ・サークル)を生みだす。
それは対消滅を引き起こす粒子。
目の前にあるメカトンケイルの子機の尽くが砂のように崩れ去っていく。
「何故、私が消える……どうして、私の、腕が、なんにでも届く、どこにでも届く腕が……!」
『ツェーン』にとって、百腕の機神は、彼女自身が求めたものであったのかもしれない。
二本の腕では全てを手に入れられない。
ならば、腕を増やせばいい。全てに届く腕。遠くまで、疾く届く腕。
それが求めたのは、きっと。
「存在意義というのなら、ほんとの意味で『フュンフ・エイル』を越えないとじゃないかな。そのためには今は……そこから下りないとね」
理緒の言葉とともに対消滅していく腕が、減っていく。
アイの生み出した領域の中にあって、存在できる敵意はない。
「今ですっ! 理緒さん!」
理緒はうなずく。
誰よりも信じることの出来るアイが生み出してくれた隙。
それを逃さない。
全ての子機を消滅させる。
クラスター弾頭を装填されたミサイルランチャーが放たれ、二人を取り囲んでいた嵐のような子機を次々と爆散させていく。
「その攻撃は一度見たよ……もう、いいんだよ」
理緒の言葉とともに百腕の機神の子機は潰える。『ツェーン』と彼女たちを分かつものがあるのだとしたのならば、一体なんであっただろうか。
それは言うまでもない。
「パートナーになれてよかった、よー♪」
理緒の隣にはアイが。
「私も理緒さんがパートナーでよかったです」
アイの隣には理緒が。
二人は並び立って笑顔で向き合う。
その笑顔の大切さが、『ツェーン』と彼女たちを分かつ決定的な差であったのだろう。
一人きりでいる者に得られぬ者があるのだと、知らしめるように、二人は見上げる。
その先に在ったのは、怨嗟の咆哮を轟かせるメカトンケイルの滅びへ至る道筋であった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
星野・祐一
少年は危ないからここで待っててな
で、合図したらこの通信機で思いの丈を言いまくれ
演説以外にもあの少女に伝えたい事あるだろ?
[SPD]
CSに搭乗し【推力移動、空中戦】を仕掛ける
まずあの無駄に多い腕が邪魔だな
電気【属性攻撃】を付与したCBRで【乱れ撃ち、部位破壊】を狙う
壊せなくても【マヒ攻撃】で無力化できれば十分だ
粗方減らしたら【リミッター解除、ダッシュ】で接近
【グラップル】で無理やり拘束するぞ、踏ん張ってくれよCS
あんた!自分には力しかないなんて思ってるみたいだが
そりゃ勘違いもいい所だぜ…ほら少年、言ってやれ!
後は少女を助けて意思を歪めるマシンはぶっ潰す
その邪悪な企み諸共冬雷で射抜くぜ
アドリブ歓迎
鉛色のキャバリアが戦場を走る。
その手のひらの上にいるのは、緑色の瞳をした少年であった。
彼を連れてくるつもりはなかったけれど、彼自身が下りたがらなかった。どれだけ危険だと説明したとしても、彼の瞳が言っていたのだ。
例え、どんなに危険なことであろうとも、これは自分たちがどうにかしなければならないことなのだと。
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、ならばと彼を連れてきた。
戦場にあっては、オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルが猟兵たちと苛烈なる戦いを繰り広げていた。
ユーベルコードの輝きが明滅する戦場にあって、なおメカトンケイルを駆る『ツェーン』の『エース』としての技量は精彩欠くことすらなかった。
「少年は危ないからここで待ってな。で、合図をしたら、この通信機で思いの丈を言いまくれ」
演説以外にもあの少女に伝えたいことがあるだろう、と祐一は笑った。
きっと、この戦いの趨勢を決めるのは猟兵たちではない。
いや、自分たちの戦いがなければ、メカトンケイルを止めることはできないだろう。だから、これは役割分担なのだ。
自分たちはオブリビオンマシンを破壊する。
少年がするべきことは、彼の瞳が物語っている。もうわかっているのだ。彼を卸、祐一はキャバリア『クロムスティール』と共に飛ぶ。
「――ッ! また、キャバリア! これ以上私を、私から奪うな!」
子機である腕が飛ぶ。
それは新たに現れたキャバリアである『クロムスティール』を狙うように乱舞し、凄まじい速度で飛翔する。
猟兵達によって、その子機は相当数が減らされていたが、本体であるメカトンケイル事態に装備された副腕を飛ばしてオールレンジ攻撃を繰り出してきているのだ。
「無駄に多い腕は、落とされたかよ! ならさ!」
キャバリアビームライフルで、飛来する子機を撃ち落とす。
乱れ撃たれるビームの光線が戦場に交錯する。
破壊するに至らなくとも、ユーベルコードである冬雷(トウライ)によって強化されたビームは動きを止められるはずだ。
「あんた! 自分には力しか無いなんて思ってるみたいだが、そりゃ勘違いもいいところだぜ……!」
祐一は『クロムスティール』を巧みに操り、攻撃を躱していく。
子機である腕は撃ち落としたが、本体がまだ残っている。そう思った瞬間、迫るのはメカトンケイルのひしゃげたマスクの顔であった。
あの距離を一瞬で詰めてきたのかと、祐一は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
それほどまでに圧倒的な技量。
子機はおまけみたいなものだ。やはり、『エース』。本体をどうにかしなければ、と『クロムスティール』のリミッターを外す。
「もてよ、『クロムスティール』ッ!」
出力の上がった『クロムスティール』のパワーがメカトンケイルに組付、その多腕を抑え込む。
だが、フレームがきしむ。
パワーであっても、あちらが上かと歯噛みする。
けれど、祐一は叫んだ。
「……ほら少年、言ってやれ!」
その叫びと共に通信機から流れてくるのは、緑の瞳をした少年の言葉だった。
「――間違っている。君は間違っているとわかっているけれど、それは皆持っていることなんだ。特別じゃない。特別なんかじゃなくたっていい。俺は君に助けられた。君がいなかったら、きっと飢えていただろう。死んでいただろう」
「何を……」
特別でなければならないと産み出された存在に、特別でなくてもいいと言う少年の言葉に『ツェーン』は初めて戸惑っただろう。
そうであれと育てられた者。
けれど、そうでなくてもいいと言う者。
その顔が交錯していく。重なっていく。
「だから、ありがとう。君を責めるのではなく、君に感謝を伝えたい。だから、いいんだ。誰かが想う君じゃなくたっていい」
少年の言葉と祐一の叫びが重なる。
「君が想う君でいればいいんだ――!」
青臭いことを言う、と祐一は思ったかもしれない。
少年少女の言葉は、少しおとなになった自分には臆面もなく言えることではなかったかもしれない。
けれど、それが彼女を救う。
どれだけオブリビオンマシンに歪められようとも。
「後は任せな。意志を歪めるマシンはぶっ壊す」
その邪悪な企み諸共、と祐一は再び瞳をユーベルコードに輝かせる。
「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」
放つ一撃はメカトンケイルへと吸い込まれていく。
コクピットを外した一撃は、メカトンケイルの胸部のひび割れた装甲へと吸い込まれ、その一部を引き剥がすように爆発を引き起こす。
それが、祐一が貫くと決めた一射であったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗
漸く本性を現しましたか、オブリビオンマシン
ツェーン様を惑わすのは止めて頂きましょう
センサーでの情報収集と瞬間思考力で腕の位置と攻撃把握
銃器には砲座として動かす格納銃器での乱れ撃ちスナイパー射撃を
近接武装には剣と盾での打ち払いを
四方八方の攻撃など…故郷の宙間戦闘で慣れたもの
数を揃えようと、狙いが私一つなら見切りやすいという物です!
飛来する腕そのものを『足場』と踏みつけ跳躍
推力移動も細やかに、微細な制御の機体操縦の挙動で幻惑し肉薄
力を求める
それは正しき欲求です
ですが力とは、手段に過ぎません
貴女は『認められたい』のでしょう!
その力の振るう先は世界の破滅では無い筈です
接近し猛打浴びせ
オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルの動きが鈍る。
その子機である多腕の数々が猟兵達によって失墜させられ、本体である機体そのものにも損傷が目立つようになっていた。
しかし、そのメカトンケイルのひしゃげたフェイスマスクがひび割れ、その下に視える獣のようなフェイスが顕になる。
それは獣性を秘めた、オブリビオンマシンとしての怨嗟であったことだろう。
咆哮が轟く。
緑色の瞳をした少年と猟兵達の言葉が、パイロットである『ツェーン』の心を揺さぶる。
揺さぶられた心身では、『エース』としての技量は損なわれたことだろう。
けれど、それを許さぬとオブリビオンマシンは咆哮する。
『よくないな。これは――けれど、わかっているだろう? 君が想う君なんてものはどこにもない。最初から仕組まれて生まれてきた君にそんなものなんてないんだよ』
その声は甘やかな悪意であった。
どこから響くかもわからぬ声。
どこにでもいて、どこにもいない声。
それが『ツェーン』の心を蝕むからこそ、猟兵は立ち塞がるのだ。
「漸く本性を現しましたか、オブリビオンマシン。ツェーン様を惑わすのは止めて頂きましょう」
『ロシナンテⅣ』を駆り、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)がメカトンケイルへと突進する。
それは矢のような速度であり、メカトンケイルは反応することすらできなかったことだろう。
白き騎士のキャバリア『ロシナンテⅣ』の格納銃器から乱れ撃たれる弾丸が、防御しようとする多腕を弾き飛ばし、引き抜かれた剣と盾でもってメカトンケイルを強かに打ち据える。
「ああっ――! なんで、わからない、わからない。わからないよ。本当の私なんてどこにもないのに!」
その『ツェーン』の咆哮と共に立ち上るのは、破壊されたはずのメカトンケイルの子機である腕達であった。
破壊されても、より合わせるように欠損した部位を繋ぎ合わせた腕が宙に浮かぶ。
百腕。
その名を冠するに相応しい異形の力を持って、メカトンケイルの子機が『ロシナンテⅣ』へと迫る。
だが、トリテレイアのアイセンサーは全てを捉えていた。
己がウォーマシンであるからとか、そんなことは関係ない。
これはすでに通ってきた道だ。
「四方八方の攻撃など……故郷の宙間戦闘で慣れたもの。数を揃えようと、狙いが私一つならば――!」
見切りやすいものだと言わんばかりにトリテレイアは、機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)を奏でる。
機体の位置を切り替え、子機の腕同士が衝突するコースを見切って躱していく。
剣を振るい、盾で弾く。
それは激突する装甲が旋律を奏で、剣が歌うようでもあった。
「力を求める。それは正しき欲求です。ですが力とは、手段に過ぎません」
飛来した腕そのものを足場として、白き騎士のキャバリアが空に舞う。鋼鉄の巨人であっても、空を舞うことができる。
それを知らしめる超絶なる技巧でもって、トリテレイアはメカトンケイルへと迫るのだ。
「貴女は『認められたい』のでしょ! 他の誰でもない、貴女自身を!」
それをもう知っているはずなのに。
けれど、彼女はそれを知れないままでいる。それは何故か。オブリビオンマシンがいるからだ。
オブリビオンマシンに乗っている以上、彼女は変われない。
そうあるべきと刷り込まれた意志すら変えられないのだ。だから、トリテレイアは、己の炉心が燃えるままに突き進むのだ。
接続されたキャバリアのエンジンが猛然と出力を上げる。
「その力の振るう先は、世界の破滅では無い筈です!」
放つ斬撃は猛打となって、メカトンケイル本体の装甲を次々とひしゃげさせる。回避する暇も、隙も与えない。
徹底的にオブリビオンマシンを叩く。
トリテレイアは知っている。
人は変わる。否応なしに変わる。
けれど、自分の意志で変わることを決意することだってできるのだと。
その道行きを護ることこそが。
「私の騎士道。貴女が望むのならば――!」
それを助けることこそ、騎士の本懐であるとトリテレイアは万感の思いを込めて剣を振り下ろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…オブリビオンマシンの所為もあるんだけど環境も所為でもあるのかな…
…見事に手段と目的と存在意義を混同してる…
…さて…ロックオンした対象を追尾する…ときたか…それなら…
まずは浸透破壊術式【ベルゼブブ】を用いたハッキングによりロックオンの対象を誤認させてその辺の壁か柱に追加攻撃を向わせるとしよう…
…そして【我が身転ずる電子の精】を発動…そのままメカトンケイルへと接近…
…粒子化した目で制御系を把握…粒子化した腕でシステムを弄ることで自身を「ロックオン」した状態に固定、自滅させよう…
…腕は良いけど肝が据わってない…
…これじゃあ世界どころか私の知ってる「フュンフ」にも勝てないよ…
オブリビオンマシンの機体を切り裂く斬撃が『百腕の機神』メカトンケイルの装甲へと縦に鋭い一文字を刻む。
その斬撃は言うまでもなく、無数に飛翔していた子機である腕も大半が喪われていた。
先行した猟兵達が消耗させ、メカトンケイルのオブリビオンマシンとしての本性を表すようなフェイスが獣のような様相を見せる。
怨嗟の咆哮のように轟くジェネレーターの音は、それだけで周囲にあった者たちを震撼させるほどに世界を呪うものであったことだろう。
「だって、私が私であるために奪わないといけないんだって。そう言われたもの。そういないと私は私じゃないって、ほんとうのわたしってなに?」
その言葉は数多の猟兵と、緑色の瞳をした少年によって導かれた彼女の歪みのない本心であったのだろう。
けれど、それは根底にある教育が齎したものである。
悪意に溢れたものであると、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思った。
「……オブリビオンマシンのせいもあるんだけど環境のせいでもあるのかな……見事に手段と目的と存在意義が混同してる……」
悪意。
そうあるべきと育てた何者かが抱える悪意が、『ツェーン』をそうさせたのだとメンカルは理解した。
「だからっ! 私は奪うんだって決めたのに! 私を惑わすことばかりを!」
癇癪を起こしたように『ツェーン』が叫ぶ。
それに呼応するようにメカトンケイルの子機の腕が撚り合わさり、巨大な拳となってメンカルを襲う。
「……さて……ロックオンした対象を追尾する……ときたか……それなら……」
単身生身で相対するメカトンケイルの威容は言うまでもない。
自動追尾に寄ってどこまで逃げても、あの拳は届くだろう。
ならば逃げることは意味がない。
「浸透破壊術式……『ベルゼブブ』」
術式の潜んだ画像が展開される。
それはロックオン機能を有する子機の腕にメンカルという対象を誤認させる術式である。
誤認させられた子機の腕は、プラント施設の柱へと激突し、破片を撒き散らす。
「――ッ! どこに、どこに行ったの!」
オブリビオンマシンも機械である。
キャバリアでもある。ならば、そのアイセンサーから送られてくる情報はモニターに誤認されたままのものを映し出すだろう。
どれだけ技量が優れていても、情報を正しく読み取れぬのであれば、宝の持ち腐れである。
「……オブリビオンマシンにとっても、その子は宝の持ち腐れだよ」
メンカルが懸ける。
その瞳がユーベルコードに輝いた。その腕がデータや信号に直接干渉出来る粒子の集合体へと変貌する。
我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)となった腕が、取り憑いたメカトンケイルのパネルラインから機体へと侵入する。
「我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
呟いた詠唱と共に書き換えられたのは、ロックオンした対象をメカトンケイル自身へと設定する誤情報。
がらりと瓦礫を持ち上げて、子機の腕が宙に浮かび上がる。
それは言うまでもなく、コクピットのモニターに映るメンカルを叩き潰さんと凄まじい速度で持って飛翔する。
「……腕は良いけど肝が据わってない……これじゃあ世界どころか」
メンカルはひらりとメカトンケイルより飛び降りる。
次の瞬間、巨大な拳と化した子機がメカトンケイル自身を襲い打ち倒す。轟音を立てて、装甲がひしゃげ、メカトンケイルが大地へと倒れ伏す。
「私の知ってる『フュンフ』にも勝てないよ……」
迷いながら、それでも誰かのためにと力を欲した少年を思い出す。
同じ名前を持つ存在を後追う同士。
けれど、決定的に違うものがある。それを何かと問われたわけではない。
けれど、電子の精へと変えた腕を倒れ伏したメカトンケイルへと触れさせる。モニターをハッキングさせ、メンカルの顔がモニターに浮かぶ。
「……もっと自分を識ればいい。識ることは楽しいことだよ。まだまだ知らないことがたくさん世界にはある。世界の全部を壊したいって願うのは、きっとそれからでも遅くはない」
だから、識るといい。
メンカルは言葉を紡いだ。答えを期待したわけではない。
なぜなら、オブリビオンマシンに乗っている彼女から得られる答えは何一つ正しくはないだろう。
だから、メンカルは頭を振る。
またいつか、その答えを教えてほしいと――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
追いつきました!
じゃあ行っちゃいましょう!
かもんっ!『ファントムシリカ』!
いやー猫じゃないシリカが久しぶりな気がしますねー
アッハイコワシマセンダイジョウブデス
ここは【VR忍術】とセラフィナイトスピアの斥力バリアを駆使してー!!
いきます!
【VR忍術】影縛りの術!!
全ての腕を封じるには気合が足りないかもですが
半分でも動きを鈍らせることができれば!
ついでにファントムクォーツユニット起動!
あとはシリカの機動力でかく乱しつつ
斥力バリアを前面展開&接近です!
懐に踏み込めばこっちのもの!
「手数こそ正義!参ります!」
攻撃回数重視の【疾風怒濤】で決めますよ!
※アドリブ連携OK
凄まじい轟音を立てて、オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルが己自身の拳でもって大地へと倒れ伏す。
それは自滅したかのように思われたが、猟兵の弄した策による一撃であった。
ひしゃげた装甲、消失した子機である腕。
オブリビオンマシンとして、すでに多大なる損傷を受けても尚、メカトンケイルは咆哮し立ち上がる。
「わからない。わからないよ。どうしていいのかも、何を識ればいいのかも、何が正しいのかも」
『ツェーン』は最早、何もわからない。
ただの機体を構成するパーツの一つでしかなかった。
どうしようもないほどに、彼女は壊れてしまったのかもしれない。けれど、それを許さぬと咆哮するのがオブリビオンマシンである。
破壊を齎すために存在するのだと、咆哮は怨嗟のように世界に響き渡るのだ。
「追いつきました! じゃあ、行っちゃいましょう! かもんっ!『ファントムシリカ』!」
その声はやけに明るく世界に響いた。
例え、オブリビオンマシンの怨嗟の咆哮が響き渡ろうとも、上塗りするように明るい声が響いた。
人はそれを希望と呼ぶのかも知れない。
「いやー猫じゃないシリカが久しぶりな気がしますねー」
なんて、冗談めかしてキャバリア『ファントムシリカ』に搭乗したサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が笑う。
けれど、次の瞬間顔がこわばる。
白猫又のシリカが爪をにゅっとしたからだ。言わずもがなである。
「アッハイコワシマセンダイジョウブデス」
なぜだか片言になってしまうほどにサージェはビクビクしていた。
壊すの常習犯であるからだ。自業自得である。
『―――ッ!!!!!』
メカトンケイルが吠える。
その動きは最早、人の操縦するものではなかった。自律して動いているような、そんな生物的な動きであったが、サージェは何も臆することはないと、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「いきます!」
穂先に斥力を発生させる突き槍を手に、『ファントムシリカ』が駆け抜ける。
すでに子機である腕は尽くが猟兵達によって撃ち落とされ、破壊されている。ならば、残るは本体であるメカトンケイルだけだ。
「ついでにファントムクォーツユニット起動!」
『ファントムシリカ』の機体が幻影を生み出し、凄まじい勢いでデコイを振りまく。
それは生物的な動きを始めたメカトンケイルにとっては、反射的に動いてしまうほどのものであったし、それを見分ける技量があるわけがない。
今や『ツェーン』自身は戦う気力すらないのだ。
ならばこそ、ここで畳み掛けなければならない。圧倒的な速度を誇る『ファントムシリカ』でメカトンケイルを翻弄し、サージェは斥力バリアを展開し、踏み込むのだ。
「手数こそ正義! 参ります!! そにっくぶろー!!」
疾風怒濤(クリティカルアサシン)のように放たれるセラフィナイトスピアの斬撃がメカトンケイルの機体装甲を引き剥がしていく。
どれだけ頑強な装甲であろうとも、斥力によって護られた穂先が生みだす超高速の連続突きの前には無意味である。
一切の抵抗を許さぬ刺突の連撃は、目にも留まらぬ速度であり、メカトンケイルを吹き飛ばす。
機体フレームがむき出しになったメカトンケイルを下し、サージェは白猫又のシリカへとVサインを送る。
「ほら、見て下さい、シリカ。今回は全然損傷無いですよ!」
やりましたね、と喜ぶサージェを前にシリカは、そうですね、と珍しく褒めてくれる。
けれど、めったに無いことであるが故にサージェは調子に乗る。
乗らなくてもいいのに乗るのである。
えぇ~もっと褒めてもよくないですか~と、それはもうしつこいくらいシリカに詰め寄った結果……。
ばりぃ――。
そんなひっかく音が『ファントムシリカ』のコクピットの中に響き渡るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】【絆】
ほう、それが求めたエースの姿というわけかのー?
それじゃ世界を滅ぼすには足りんのー。僕等を倒すのにものー
オブリビオンマシン形態「清盛」に変形して参戦
ジェットウイングで加速しながら腕による攻撃を回避行動
レーザークローによる斬撃や、肩から発射される誘導ミサイルで急場を凌ぐ
頃合いになったら、UC「機竜の大海、空にありて天罰を下さん」を発動して、無尽蔵の落雷で攻撃、自律機構である腕の無力化を狙う
そのまま加速して、無防備メカトンケイルをエィミーのアカハガネの方向に吹き飛ばし、アシストする
ほれエィミー、わからず屋に熱い拳を叩き込んでやるとよいのー!
力は所詮力、溺れていては使いこなせんからのー
エィミー・ロストリンク
【WIZ】【絆】
背負った先で苦しんで、それが望んだ果てなの?
ならわたし達が下してあげるよ。ツェーンちゃんの重荷を!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
両腕のオルトロスⅡをガトリング連射して腕による攻撃を牽制しながら、接近してくる腕にはキャバリア武装化した骸魂無双で薙ぎ払って接近を警戒する
メイスンの落雷と共に、UC「受け継がれる魂の姫君」を発動してアカハガネを含むメガリスの能力を6倍まで引き上げる
そして骸魂無双を投擲してメカトンケイルの意識をこちらに向けさせ、清盛の突進をサポート
飛ばされてきた敵にイフリータの拳をありたっけ叩き込む
これが目覚めの拳だよ! 熱いから覚悟してねー!
咆哮が響く。
その咆哮に恐れを抱く者、悲しみを感じる者、それぞれであったことだろう。
誰もが同じものを見て、同じ煌めきを見ることがないように、その咆哮を聞いて同じように感じることはないだろう。
けれど、悲しみを感じ取れる者にとって、その怨嗟の如き咆哮を轟かせるのは、オブリビオンマシン『百腕の機神』メカトンケイルではなく、そのパイロットである『ツェーン』のもののように聞こえたかもしれない。
「ほう、それが求めた『エース』の姿というわけかのー? それじゃ世界を滅ぼすには足りんのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は青きキャバリアをオブリビオンマシン形態である『清盛』へと変え、扇状に降り立つ。
ジェットウィングで加速しながら、一気に本丸を叩くように飛ぶのだ。
『―――ッ!!!!』
メカトンケイルから迸る咆哮は、破壊された子機を再び空中に浮かび上がらせる。
それらの尽くをメイスンは撃ち落とし、切り裂いて飛ぶ。
「なかなかの気迫。だけど、僕等を倒すのにも、足りんのー」
そう、メイスンは一人ではない。
ただ一人世界を破壊するために戦う『ツェーン』とは違う。
赤きキャバリア『アカハガネ』が両腕に構えたオルトロス、ガトリングガンの斉射と共に道を切り開くのだ。
「背負った先で苦しんで、それが望んだ果てなの?」
エィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)は叫んだ。
そんなはずはないと。
こんなことが、彼女の望んだ世界であって言い訳がないと、心の底から叫んだのだ。
「だって、こうしないといけないものだから。生きている以上、奪わないといけないから。そうしないと、私の周りには誰もいなくなるって、そう言ったんだもの――!」
『ツェーン』の言葉が迸る。
ああ、とエィミーは喜んだ。不謹慎かもしれないけれど、マシンに呑み込まれていない。生きる気力をも吸い取られたわけではないのだと安心したのだ。
だから、その手にした十字槍のメガリスをキャバリアサイズまで巨大化させ、構える。
「ならわたし達が下してあげるよ。ツェーンちゃんの重荷を!」
「力は所詮、力。溺れていては使いこなせんからのー上空は僕の清盛が制したけーのー、早々に諦めることじゃ!」
メイスンの瞳がユーベルコードに輝く。
それは、周辺上空に帝竜ワームの質量のある雷雲の海を生み出し、無尽蔵の雷撃で持って大地にある者全てを打ち据える力。
同じオブリビオンマシンであったとしても、『清盛』の力を超えることはできないであろうほどに圧倒的な力の奔流が周囲を埋め尽くしていく。
機竜の大海、空にありて天罰を下さん(パニッシュメント・プリズン)と雷撃がメカトンケイルへと降り注ぐ。
その雷撃は全ての子機をも巻き込んで爆発を引き起こす。
もう二度と空へと飛ぶことはできないであろう。メイスンは無駄だと迫るメカトンケイルを前にレーザークローで切り払う。
「無駄じゃけーのー! このままッ!」
本体の多腕すらも損失したメカトンケイルに『清盛』を振り払う力など残っているわけがない。
もがくように動くのは、『ツェーン』が未だ抵抗しているからだろう。
それが、あまりにも厄介であったが、メイスンはメイスンの義姉としての誇りがある。
義妹が救おうと願うのであれば、それを叶えて見せるのが己である。
どんなこともフォローしてみせる。アシストしてみせる。その気概が、執念深きメカトンケイルの抵抗を押さえつけ、ジェットウィングで加速したままエィミーの駆る『アカハガネ』へと押し出すのだ。
「ほれ、エィミー。分からず屋に熱い拳を叩き込んでやるとよいのー!」
その言葉に応えるように『アカハガネ』のアイセンサーがユーベルコードの輝きを放つ。
「わたしの魂の絆、ここで見せてあげる!」
受け継がれる魂の姫君(オーバーロード・オブ・ソウル)は、その魂を目がリストつなげる。
総ての力を引き出すユーベルコード。
手にした十字槍を投擲し、メカトンケイルの残った多腕で防御させる。
意識は必ず此方に向けさせる。
間違っても、その機体に擁した『ツェーン』をどうこうはさせないとエィミーは裂帛の気合と共にユーベルコードでもってメガリスの力を引き上げる。
拳が赤熱する。
『アカハガネ』の腕部に搭載された武装、『イフリータ』が大気を揺らめかせるほどの超高温にまで到達し、きしむ音を響かせた。
「これが、目覚めの拳だよ!」
圧倒的な力の奔流と共に放たれる拳がメカトンケイルの頭部を溶解させる。
砕け散ることも赦されぬラッシュが頭部から両腕、両足と飴細工のように溶かして破壊していく。もがくように多腕が蠢き、自身のコクピットブロックを潰そうと十字槍を引き抜く。
「そんなことさせない! 熱いから覚悟してねー!」
「エィミー! コクピットブロックを!」
メイスンの言葉にエィミーが頷き、『イフリータ』がオーバーフレームを吹き飛ばす一撃を打ち出す。
溶解する装甲の中にもう片方の腕を放ち、コクピットブロックを包み込むようにマニュピレーターにつかみ上げる。
けれど、オーバーフレームを吹き飛ばされ、アンダーフレームとなったメカトンケイルのアンダーフレームが蜘蛛の手足のように『アカハガネ』の手のひらにある『ツェーン』の乗るコクピットブロックを狙う。
「往生際が――悪いッ!」
メイスンの放ったユーベルコードの落雷の一撃がメカトンケイルのアンダーフレームを粉々に砕いて霧散させる。
その一撃を持って、オブリビオンマシンは、その姿を『フィアレーゲン』から消失させる。
コクピットの中で眠る『ツェーン』。
彼女が目覚めるのは、きっともう少し後だろう。
けれど、次に目覚める時、彼女の胸に去来するのはきっと。
きっと暖かくも、熱いこみ上げる想いであったことだろう。
なぜなら、彼女は多くの猟兵から託された思いがある。
それを抱えて生きる限り、彼女はきっともう、『何も無い』なんて思わないだろうから――。
大成功
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