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蜃仰のイド ~水底からの呼び声~(作者 七夜鳥籠
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#UDCアース 


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#UDCアース


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●契/閉
 ――私達はいつも一緒。
 ――そう、いつも一緒だったのだ。生まれてから、今までの間。

 この町唯一の産院で産まれた。同じ時期の同じ部屋。ベッドは隣、カーテン開けて。母同士が入院中、仲良くなったものだから。彼女達だからこそ出来た試み。
 ベッドを近付け、手を繋いで。そうして私達は産まれたのだ。

 おなじ、月の美しいよる。まるで双子そのものみたいに。

 ――だから、

「ねえ、やよちゃん」
「なあに? あいちゃん」
「やよちゃんとあいはなかよしこよし。だから、わたしたちはいつもいっしょよね、」
「うん、あいちゃんとやよはいつもいっしょ」

 そんなことばを、ばかみたいに信じていた。

「ずっといっしょ?」
「うん、ずっとずっといっしょ!」
「ずっとずっとずっといっしょ?」
「うん、ずっとずっとずっとずっと、ずーーーっといっしょ!」

 疑うことすら、想像すらも、することのないまま。ずっと。

「あいちゃん。中学はあそこに行くんだよね?」
「うん、もちろん!」
「そこしか行くとこないもんね」
「そうそう。だって行くとこないし。あはは!」

 ずっと。

「やよ。高校はあそこを受けるの? まあ、そこ以外だと町を出ることになるからあれだけど」
「うん、もちろん! 隣町とか考えもしなかった」

 ずっと。

「やよ。大学はあそこを受けるの? なら、私もそこにいく」
「うん、もちろん。隣町だし、通いやすいから」

 ずっと、

「うちからも一番近いし、やよは人混み苦手だもんね。都会のは、私達はテレビでしか見たことないけど――でも、隣町のお祭りの人混みすら苦手なやよがもしも都会に行っちゃったら、どうなっちゃうか! ……うう、想像するのも恐ろしいよ」
「うん、あの時は手を握ってくれたよね」
「初めは幼稚園の時だっけ? お母さん達に連れられてさ。懐かしいなあ」
「うん、なつかしいね」
「それからずっと、お祭りの時は手を繋ぐのが恒例だもんね。湖に行った時も、水に落ちるのが怖いからって、ずっと」
「そうだね。あの時は嬉しかったよ。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして!」

 ……ずっと、ずっと、

「……ということで、つまりは大学でも一緒だね! 嬉しい。これからもよろしくね」
「うん、来てくれるなら私も嬉しい。……よろしく」

 ――ずっと。
 そんなやくそくを、莫迦みたいにしんじていた。

「ふふ。私達、本当にずっといっしょだよね」
「……うん、そうだね」

「これはもはや運命? なんちゃって!」
「はは、」
「じゃあ、乾杯しよう。丁度、私達のずっと好きな苺オレ飲んでるし」
「……うん、」
「これからもずっと、ずっといっしょにいようね。永遠の友情に乾杯!」
「うん、かんぱい」

 ――えいえんに。

●解/開
「永遠なんてものはない」
 そう唐突に、述べたのは。ジェラルディーノ・マゼラーティ(穿つ黒・f21988)――黒衣の案内人、その人だった。
 彼は集まった猟兵達に、挨拶の流れでこう言ったのだ。
 ――やあやあ、諸君、お集まりいただきありがとう。早速依頼の説明に入りたいところだが……ところで、永遠なんてものはあると思うかい? と。
 そして。
「永遠なんてものはない」
 全員の答えを待たずして。そう唐突に宣ったのだ。
「――嗚呼勿論、君達の答えを否定するつもりはないよ。ただ、僕はこう思うと言ってみただけさ」
「そしてこれも勿論なんだが、永遠というものが続けばいいなと思うこともなくはない。まァ不変はつまらないし変化は楽しいものだけど、それはそれとしてね。“それ”を目指す気持ちも解るし、続くものだと信じる気持ちも、これまたとっても尊いものさ」
「……でもね、そうは簡単にいかないんだ。我々の現実だと、大抵はね」
 そんな規模の希望や夢は、まさに夢と幻だ。
「だからこそ僕らは夢掴むため、一生懸命頑張るわけだけども。そういう望みや努力や期待は、残念ながら見るも無惨に――完膚なきまでに打ち砕かれることも、まあ、ままあることだ。……わかるかい?」
「さて、君達の持論や想いも、是非とも一人一人訊いてみたいところだけど――つまりは、こういうことさ」

 ――ゆめときぼうのものがたり。
 ――これはそういう、おはなし。

「舞台は、UDCアース。山が連なる田舎まち。少女の夢と希望を媒介として、邪神が顕現したみたいだ」
 ――いや、これは邪神というより邪神の欠片と言う方が正しいかな? まあそれは兎も角として。
 件の少女は睦月・藍里。何やらその町唯一の小学校に、一人きりでいるみたいだけど……。
「実はその子、もう大学生になるんだよね」
 今年で高校を卒業するみたいだ。UDCの日本だから三月だね。などとジェラルディーノは補足する。
「もうじき大人となる子がどうして、そんなところにいるのかだけれど。それにもやっぱり、夢と希望が絡んでるみたい」
 ――もしかしたら、大人になりたくないのかもしれないね。
 慈愛のような哀憐のような。老齢の声はそっと落ちる。
 しかしそれも一瞬のこと。未来ある猟兵を見渡しつつ、その先の説明を続けてゆく。
「肝心の邪神はその近くにいる。移動の可能性までは不明だけども、現時点で悪影響――どころか、少女にとってはかなり危険な状態だ」
 少女の心は苗床となり、既に種が芽吹いている。此度の邪神の性質上、顕現したということは。狂気の枝葉は少女の身体を既に殆ど埋めつくし、侵食間近といったところだと容易に推定できるだろう。
「けれど、安心してくれたまえ。ここで一つ……いや二つかな。良いお知らせだ」
「この小学校は閉校してて、もはや廃墟となってるんだ。田舎ということも相俟って、周囲には人の気配はない……はず。たぶん」
 何やら微妙に口ごもりつつも。
 ――とはいえ、良い情報だろう?
 口角を上げ首を傾ぐ。
「そして、こっちが本命、」
「少女は一応、救うことができる」
 一応? と問う声に。後遺症は残るからね、と黒衣の男は応えてみせた。
「でも、まだ死んでない。生きていて、命がある。それだけで希望はあるじゃァないか」
 腕を広げて、微笑んで。
「だから、何とかかんとか、頑張ってきておくれよ。絶望の淵にいる少女に、夢と希望を届けに、さ」
 そうは上手くは、いかないかもだけども。希望を持つのは大事だよ、と。
「嗚呼、そうそう。何かそういう思念からか、いやこれはある意味真逆……? 兎にも角にも、相手に希望を持たせてからの絶望を贈りつけ、補食する。そういう類いの悪魔みたいな、全くもって可愛くないマスコットも呼び寄せられてるみたいだから。呑まれないように気を付けてね」
 甘い言葉に惑わされて、或いはその見目に騙されて。契約など、してはいけない。彼らの与える夢と希望は、終いには必ずや幻となり、絶望となって還るのだから。
「それと、これは余談だけれど。全て無事に終わったら、彼女“達”の思い出の湖を覗かせてもらうのも良いかもね」
 凍ってるわけではないけども、標高のせいでまだ肌寒いから。それにもついでに気を付けてね、風邪とか引かないようにね、と添え。
「きっと夢のようにうつくしい光景だよ」
 ――あ、縁起悪い?
 ゴホン。

「――さて、と。準備はいいかい?」
 グリモアが、起動する。

「春は出会いと別れの季節」

「道が交わり、離れる季節」

「その道はどこに行き着くのか、とは。きっと友にも、神にも問うてはならないのさ。――そう、」

 ――ただひたすらに、 進め。


七夜鳥籠
 出会いと別れの季節ですね。七作目はUDCアースより――どうぞみなさま、夢のようなひとときを。
 七夜鳥籠と申します。どうぞ宜しくお願いいたします。

●第一章
 集団戦。
 ――夢をみて。

●第二章
 ボス戦。
 ――さらに堕ちて、深淵へ。

●第三章
 日常。
 ――微睡みながら、うつくしきにて。
 醒めぬままでも、醒めてしまっても。
 どうぞあなたの想うまま。
 たとえそのまま、帰らずとも。

 三章のみ。お声掛けいただけましたら、ジェラルディーノもご一緒させていただきます。

 採用人数は未定。再送が発生する場合があります。
 また、当シナリオは全ての者に救いがあるとは限りません。予めご了承ください。
 全章、詳細は断章やマスターページにてお知らせいたします。受付期間につきましても、そちらでお知らせいたします。お手数おかけいたしますが、その都度ご確認いただければと存じます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『『都市伝説』魔法少女マスコットの怪』

POW ●証拠隠滅
自身の身体部位ひとつを【対象を丸呑みする怪物】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD ●『ほらほら敵が出てきたよ!』
いま戦っている対象に有効な【魔法少女を屠り去る敵】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ ●『これで契約成立だよ』
【対象を魔法少女に変える種】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
👑11 🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あさきゆめみし
 廃墟となった小学校。その廊下を猟兵達は手分けし各々探索していく。
 教室、階段、窓の外――。黄昏色の橙は、郷愁を誘うかのような――何処か懐かしい色をもって全てを染めあげ、包み込む。
 其処は山の連なる田舎。暖かい日差しは少し遠く、肌寒い日々が続いている。ならば景色も相俟って、人恋しくもなるのかもしれない。
 さて。手分けをするとなれば。自然、少人数での行動となる。或いは独りで黙々と、歩む者も在るかもしれない。
 然れば軈て、時と共に。人の気配は薄くなる。
 黄昏時の公園のように。子供が帰った後のように。
 静けさがしん、と充ち満ちて。世界に取り残されたのだ――そんな錯覚にも陥りかける。
 けれどそれでも、構わずに。猟兵達は進むだろう。先へ先へ、奥へ奥へと。いつの間にやら境界線を――夢現の境を越えて、足を踏み入れているとも知らずに。
 そうして夢の奥へと進み、されど未だ浅き処を彷徨うように歩いていると。

 ――キミに夢はあるかい?

 ふわり。マスコットめいた動物のぬいぐるみが何処からともなく下りてくる。

 ――願いは? 望みは?

 くるり、くるり。
 覗き込んだり、回り込んだり。

 ――ボクが叶えてあげるよ!

 にこにこ。
 両手をぱっと広げて、わさわさ。
 最後にきゅるんと眸が瞬き、可愛らしい声で鳴く。

 ――だからボクと、

 ――契約しておくれ!
 
 かわいそうなうつしよのきみ。
 夢見る魔法はいかが?
揺歌語・なびき


永遠が存在しないのは
ようく知ってる
夢と希望が、簡単に潰えてしまうのも
だからおれ(UDC職員)みたいなのが居るんだけど

黄昏色の微睡みの中をゆく
あの子には小学校を経験させなかったけど
中学と高校と、きっと似たようなもんだろう

きみはかわいくないなぁ
三十路の男を魔法少女に変身させたいワケ?
趣味が悪すぎて笑えるな

これは
誰かに叶えてもらえるような望みじゃない
叶えられちゃいけない

吐きだす訳にはいかない獣慾が、此方を見上げる

(あの子が、彼と、
別れちゃえばいいのに)

くそ

思考を振り払って血桜を撒き散らす【呪詛
愚かな考えを読み取られる前に
ひどいことになるのは目に見えてる

(あの子がぜんぶ、
おれの中に在ればいいのに)


●廻り
 そんなこと、よく“わかって”いる。
 生温い色をした微睡みのなかで、唯一のアオを探していた。
 永遠が存在しない、なんてこと。
 ようく、知ってる。
 春の彩を歪ませて、揺歌語・なびき(春怨・f02050)は独り往く。
 冬の名残りは惜しまれず、皆春を待ち遠しむ。
 出逢いと別れを繰り返し、過去は忘れ去られていく。
 あれ、あの子、なんて名前だったっけ。
 隣の席のあの男の子、どんな目元をしていたっけ。
 溢れんばかりに青々とした、若さも、記憶も、冴えざえとする銀も。
 いつかきっと、遠くなり、己の手元から離れていく。

 ――キミに夢はあるかい?

「きみはかわいくないなぁ」
 三十路の男を魔法少女に変身させたいワケ? 趣味が悪すぎて笑えるな、なんて。
 “彼女”には決して見せぬ笑みで、それと同じくらいに歪みきった“妄想”の欠片を振り払うように。
 頭を振って、地を見詰める。“前”を向かずに、見ないふり。
 ついと逸らした視界の端には、ましろとは似ても似つかぬ灰と、塵の山が積もっていて。
 
 一度も経験させなかったはずの、小学生姿のあの子が見える。
 ――春の蒲公英みたいな帽子と、身体に合わぬ、ランドセル。
 己には決して見せぬはずの、照れたような瞬きが見える。
 ――“それ”を向けられる資格はないのに。
 誰かに笑う、あの子が見える。
 ――その“誰か”は、ダレ?

 “器”に合わぬ、見合わぬ夢を。
 抱いているのは。どこの、だれ?

 ああ、嗚呼。見詰めてはならぬ。
 考えてはいけぬと、目を閉じる刹那。

 ただ眸だけを爛爛とかがやかせて。あの子とは違うかがやきで。
 吐きだす訳にはいかない獣慾が。頭を擡げ、此方を、見上げた。


 ――あの子が、彼と、

 ――別れちゃえばいいのに。


 嗚呼、くそ。
「吐き気がする」

 舞い散るは、血反吐染みた臓物のアカ。
 裡なる慾の、代わりにと吐く。
 夢の欠片が、降り積もる前に。
 桜の花で、覆い隠して。

 ――獣慾の色と、似てるんだね?

 染まり散りゆく間際に届いた、冴えた風には気付かないふり。
 あの子以外の、色はいらない。あの子じゃない、冬はいらない。
 冬こそあの子と云うのなら。

 春なんか、来なければいいのに。

 血は軈て黒くなり、死体は朽ちて腐り果てる。
 赫に這え。淦に蠅。
 水は澱むべきではないけど。


 ――あの子がぜんぶ、おれのなかに在ればいいのに。


「……ほんと、」

 かわいくないし、趣味わるすぎ。


●井戸の中
 私たちは、海を知らない。
 あの広大な、景色を知らない。
 閉じられた世界で、生きていた。
 廻らぬ世界で、二人きり。

 今になって、気付いたのだ。
 ……いいえ、ただ。見て見ぬふりをしてただけかも。
 あいちゃんももう、気付いてるかな。

 ――湖とプールと、私たちは。

 あまりにも、似ているってこと。
大成功 🔵🔵🔵