闇の救済者よ、立ち上がれ
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「……とうとう、この日がやって来た」
のしかかるような暗い夜空の下で、篝火の灯りに照らされながら、ひとりの男が語る。
この時のために集まった者達に、同じ絶望に耐え、同じ志と希望を抱いた皆に向けて。
「始まりがいつだったかなんて覚えていない。俺たちが生まれた時にはもう、空は闇に覆われていて、世界は奴らに支配されていた。明日も昨日と同じように、不条理に苦しめられて理不尽に死ぬ。それを"絶望"と呼ぶことさえ、俺たちは知らなかった」
いつ終わるとも知れぬ苦難。盤石の支配体制に裏打ちされたヴァンパイアによる圧政。
『過去』に完全に支配されたこの世界に、未来も、希望も、存在しないかに思われた。
――超常の力を奮い、歪んだ支配と絶望に敢然と立ち向かう、"彼ら"が現れるまでは。
「ここにいる皆に、彼らについて語る必要はないだろう。俺たちはみな彼らに救われて、希望を知った。そして俺たちの未来を阻んでいる絶望は、戦えるものなんだと知った」
それからの日々は、あるいは隷属に甘んじるだけの時よりも過酷だったかもしれない。
だがここにいる者達は挫けずに歩んできた。"彼ら"の助けを借りながら強大な敵の支配に抗い、拠点を築き、絶望に立ち向かうための力を得た。
「そして俺たちはここまで来た。いや、今日が本当の始まりだ」
男は剣を抜き篝火にかざす。炎に照らされた刃の輝きが、ここにいる皆の決意の証だ。
かつて絶望に支配され、そして今、希望と掴み取らんとする勇士達の思いはひとつ。
「『闇の救済者(ダークセイヴァー)』よ、立ち上がれ! 俺たちの力を示す時だ!」
応! と唱和する雄叫びが天と地を震わせ、煌々と燃え上がる篝火が闇夜を焦がす。
100年に及ぶヴァンパイアの支配に風穴を開ける、人類による反撃の狼煙が上がった。
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「ダークセイヴァーの情勢に新たな動きがありました。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ヴァンパイアを始めとするオブリビオンに支配されたかの世界には、人類によるレジスタンス組織『闇の救済者(ダークセイヴァー)』が存在します。当初は吸血鬼の目を盗んで活動する弱小勢力に過ぎませんでしたが、猟兵の支援もあり徐々に力を付けてきました」
各地にヴァンパイアの支配の及ばない活動圏『人類砦』を築き、確かな地盤を得て勢力を拡大してきた彼らは、今やヴァンパイア側にとっても無視できない存在となっている。絶望に覆われたこの世界でも、希望の萌芽は静かに成長を続けてきたのだ。
「そしてついに、各地にある複数の『闇の救済者』組織が一丸となって連合軍を形成し、ヴァンパイアに対する大々的な反攻作戦を展開しようとしています」
もはや彼らは隠れ潜むだけの秘密組織ではない。「吸血鬼支配の打倒」という共通目的のためにダンピール等の他種族とも融和し、優秀な黒騎士や咎人殺しも戦列に加わった、一軍と呼べる規模の優れた戦闘集団を作り上げている。
「ユーベルコード使いこそ殆どいませんが、これほどの数と練度であれば、ヴァンパイアといえど地方の小領主程度なら勝算は十分。猟兵がここに加われば圧倒できるでしょう」
今回の依頼は、遂に大々的に叛旗を翻した『闇の救済者』達と共にとある吸血鬼の領土に攻め込み、敵軍ならびに領主を撃破することだ。これまでのダークセイヴァーでは考えられなかった、人類vs吸血鬼の正面対決となる。
「攻撃を仕掛ける領土を治めるのは『赤錆の騎士』と呼ばれるヴァンパイアです。かつてはさる国の騎士団長だったと言われますが、吸血鬼との戦いに敗れたのちに同族として蘇らされ、以降は吸血鬼に仇なす者を始末する"掃除屋"として剣を振るってきました」
今回集った『闇の救済者』の中にも身内や仲間を領主に殺された者がいる。彼らにとってこれは弔い合戦であり、塵芥の如く蹂躙されてきた過去と決別するための逆襲なのだ。
「『闇の救済者』軍の兵力はおよそ千人弱。対する赤錆の騎士は自らの屋敷を砦として、『怨魂術士』という術者の集団でこれを迎え撃ちます」
彼らは浄化されぬ怨魂を使役し、世を怨み呪う魂の波動で敵を呪殺する危険な術者だ。その術の特性は敵味方ともに多数の死者が出る合戦でこそ最大の効果が発揮される。術者自身も死ねば怨魂と化すため、仲間の被害が増えるほど彼らは強化されていく事になる。
「一大戦力を形成した『闇の救済者』でも、まともにぶつかれば多数の死傷者が出ることが予想されます。被害を最小限に留めるためには最前線で敵を動揺させる役が要ります」
赤錆の騎士の指揮下にいる怨魂術士の大軍は、猟兵だけで倒しきるのは厳しいだろう。だが先陣を切った猟兵の後に『闇の救済者』の猛者達が続けば、大軍も撃破できる筈だ。
「彼らと共に敵軍を撃破し、屋敷にいる赤錆の騎士を討てば、この戦いは勝利です。領主の倒されたこの地域は『闇の救済者』達の領土となります」
赤錆の騎士もかなりの使い手とはいえ、猟兵も『闇の救済者』に劣らずこの数年で力を付けている。油断せずに挑めば遅れを取ることはないだろうと、リミティアは断言した。
「……最も危惧すべきは、領主を倒した"後"です。地方領主とはいえヴァンパイアに正面から立ち向かう程の力を付けた人類を、地底都市に潜む者達が見過ごすとは思えません」
地底の奥深くからこの世界を支配する、ダークセイヴァーの黒幕――『第五の貴族』。
彼らは地上世界の支配を根底から揺るがしかねないこの事態に、直属の部下を刺客として派遣する。ようやく燃え上がった反抗の篝火を、燃え広がる前に絶やすために。
「この配下は第五の貴族から『殺戮者の紋章』という寄生虫型オブリビオンを授けられ、大幅に強化されたうえで、人族を皆殺しにせよとの指令を受けています。いかに力を付けたとはいえ常人である『闇の救済者』達が敵う相手ではありません」
この刺客から彼らを守れるのは猟兵だけ。紋章で強化されたオブリビオンは今の猟兵達にとっても恐るべき強敵だが、もしも敗れれば『闇の救済者』も含め、この地にいる人類は全滅する。
「この世界ではこれまでに無かった大規模戦闘に始まり、最後まで気の抜けない戦いが予想されます。ですが、負けるわけにはいきません」
二年以上にも渡るダークセイヴァーでの活動の成果が、この一戦で試される事になる。
希望は絶望を打ち破るのか、それとも再び絶望が希望を駆逐するのか。立ち上がった『闇の救済者』達の未来を猟兵達に託し、リミティアはダークセイヴァーへの道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回の依頼はダークセイヴァーにて、連合を結成した『闇の救済者』達と共に、ヴァンパイア領主に一大反抗作戦を仕掛けます。
一章は領主の配下である『怨魂術士』との集団戦です。
敵味方ともに数百名以上の戦力同士がぶつかり合う、大規模な戦争シーンとなります。戦場で死者が出るほど強化される怨魂術士は厄介ですが、戦闘に参加する『闇の救済者』の中にも士気と練度を兼ね備えた猛者が多数います。
種族やジョブの垣根を超えて連合する彼らと共に、領主の軍勢を打ち破ってください。
二章は領主の屋敷で『赤錆の騎士』とのボス戦です。
敵将である彼を倒せば、この戦いは猟兵と『闇の救済者』達の勝利です。この地域の支配権は人類のものとなり、正面から敵の領地を攻め落としたという実績はさらなる飛躍にも繋がるでしょう。
しかしこの世界の支配者階級である『第五の貴族』は、それを望みません。
三章は彼らが送り込んできた刺客との戦い、真のクライマックスとなります。
戦闘力を強化する『殺戮者の紋章』と共に人族皆殺しの指令を与えられた刺客は、この地にいる全てのヒトを殺し尽くすつもりです。全力をもって阻止してください。
始めの頃は非力だった『闇の救済者』達が、ここまで来たかと思うと感慨深いものがあります。彼らにとってもこの戦いは正念場でしょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『怨魂術士』
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POW : 永遠に続く怨嗟の螺旋
自身が戦闘不能となる事で、【仲間を殺した】敵1体に大ダメージを与える。【怨魂がもたらす恐怖】を語ると更にダメージ増。
SPD : 浄化されぬ怨みの魂
【死して怨魂と化した仲間達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[死して怨魂と化した仲間達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ : 救われなかった魂達の嘆き
自身の【使役怨魂】から【呪縛慟哭】を放出し、戦場内全ての【敵の機動力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:nii-otto
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルパート・ブラックスミス
ついに決起の時か。
一介の黒騎士として、魂が勇み震えるのを自覚する。
…やるぞ。希望を未来に繋ぐのだ。
黄金魔剣によるUC【命を虚ろにせし亡撃】での【衝撃波】【範囲攻撃】。
必ずしも三撃総て当てる必要はない。
当人の肉体か怨魂の霊体、術を行使する為の魔力、怨嗟を吐く精神活動。
どれか一つ塞がれば敵UCの効果は大きく損なわれる。
後は【騎乗】する愛機(専用トライク)を【ダッシュ】させ【なぎ払い】【蹂躙】する。
【集団戦術】としても黒騎士が敵陣に【切り込み】【存在感】を示せば『闇の救済者』への【鼓舞】にもなるはずだ。
往くぞ、『闇の救済者』よ!
その闘志の炎で、未来を照らす為!いざ、我に続け!
「ついに決起の時か」
冬の名残のある冷たい夜気の中で、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の心は燃えていた。一介の黒騎士として、魂が勇み震えるのを自覚する。
これほど多くの同志が一堂に会し、悪しき吸血鬼の支配を終わらせんと立ち上がった。その事実は、長くこの世界で戦い続けてきた者ほど、感慨深いものがあるに違いない。
「……やるぞ。希望を未来に繋ぐのだ」
噛みしめるような言の葉に、おう! と多くの声が重なる。奮起する『闇の救済者』達と共に、黒騎士は愛機である青いトライクに跨って、領主の布陣に向かって駆けていく。
「来たか、愚かな者達よ」
「貴様らの希望など、この世界に満ちた怨嗟に比べれば儚いものと教えてやろう」
立ちはだかる領主軍の中核を為すのは『怨魂術士』。怨嗟に満ちた魂を操る外法の徒。
希望をもって未来を切り拓かんとする人々を彼らは冷笑し、【浄化されぬ怨みの魂】を放たんとする――だが、救済者の先陣を駆けるルパートは、それよりも早く剣を振るう。
「我望むは命満ちる未来。されど我示すは命尽きる末路」
真の力に目覚めたルパートの大剣は金色の魔剣となり、ごうと唸る斬撃は衝撃波を巻き起こす。【命を虚ろにせし亡撃】の三連撃が、敵陣の先頭に居た者達を吹き飛ばした。
「ぐはぁ……っ、よく、も……」
「この怨みも、貴様らに返してやろう……」
黒騎士の亡撃に斃れた者は新たな怨魂となり、残された仲間達の力となる。生き延びた怨魂術士はそれを集めて報復の術を唱えようとするが――何故かその動作には力がない。
「なぜだ?! 怨嗟の魂は集まっているというのに……!」
彼らの放った術は、青い炎を帯びた黒騎士の鎧にあっさりはね返されるほど弱かった。
この程度ならば恐るるに足らずと、ルパートは愛機のアクセルを上げ、猛烈なダッシュで敵陣をなぎ払い、蹂躙しながら更なる亡撃を振るう。
(必ずしも三撃総て当てる必要はない)
黒騎士ルパートが振るう三連撃には、それぞれ異なる呪いが篭められている。第一撃で当人の肉体か怨魂の霊体の自由を封じ、第二撃で術を行使する為の魔力を封じ、第三撃で怨嗟を吐く精神活動を封じる。どれか一つでも塞がれば敵の術効率は大きく損なわれる。
「くっ、この男、我らの術の根幹を封じてくるとは……ぐわぁっ!?」
思うように力を発揮できない怨魂術士達を、青いトライクが轢き倒す。ルパートの本体から流出する「燃える鉛」を動力としたその機体は、戦場に青炎の轍を残して駆け抜け、エンジンの咆哮でその存在を敵味方に知らしめる。
「往くぞ、『闇の救済者』よ! その闘志の炎で、未来を照らす為! いざ、我に続け!」
「「おおおぉぉーーーーっ!!!!」」
先鋒として敵陣に切り込んだ黒騎士の勇ましき姿は、彼と共に戦う者の魂を鼓舞する。
気炎万丈――ルパートの青炎にも負けぬ程の威勢を上げて、『闇の救済者』の猛者達が敵軍に追撃を仕掛けた。
「愚か者共め……ッ!!」
あまりの気魄に怖気づいたように後ずさる怨魂術士達。彼らが一歩退けば、その一歩分救済者達は前に進む。この地を支配する吸血鬼の領主『赤錆の騎士』の屋敷を目指して。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
闇の中で雌伏の時を過ごし、どれだけこの時を待ち望んだことか
小さな叛逆の灯火は、今や燎原の火となり闇を焼き払わんとしている
行きましょう、皆さん
最前線で吶喊(ダッシュ)
聖槍を掲げ(威厳・存在感)、味方を【鼓舞】し、敵を【威圧】
【聖戦】を発動し、闇の救済者を強化
我が槍の輝きに続け!
【怪力】を以て縦横無尽に聖槍を振るい、並みいる敵を斬り打ち穿ち【なぎ払う】
トドメは積極的に自分で刺し、敵ユーベルコードの効果を自分に集中させる
【狂気耐性】と【気合い】で恐怖など捩じ伏せる
不浄の怨魂ならば、聖なる力(属性攻撃)による【浄化】で【除霊】すればいい
鬨の声を上げて闇の救済者たちと吶喊
闇の怪物、恐るるに足らず!
「闇の中で雌伏の時を過ごし、どれだけこの時を待ち望んだことか」
長くこの世界で戦いを続けてきたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の胸には、言葉に尽くせぬほどの感慨があった。物心付いた頃から聖槍を手に邪悪を討ち、人々を救い続けてきた半生の軌跡。その成果がここにある。
「行きましょう、皆さん」
聖槍を構え、最前線で吶喊する女性の後から、『闇の救済者』の猛者達が続く。始めは吹き消されそうな小さな叛逆の灯火は、今や燎原の火となり闇を焼き払わんとしていた。
「人々よ、暴虐に膝を屈することなかれ。拳を上げよ、剣を取れ、勝利の光を分け与えよう!」
オリヴィアが掲げる聖槍は黄金の輝きで戦場を照らし、味方を鼓舞し、敵を威圧する。
【聖戦】の始まりを告げる彼女の演説は、志を同じくする『闇の救済者』達に光り輝く神の加護を与え、その力を何倍にも増加させた。
「我が槍の輝きに続け!」
「「おおおおおおおっ!」」
勇士達の鬨の声が轟く。悪しき支配への怒りと、未来への希望に満ちた人々の叫びは、過去より来たりし邪悪――オブリビオンである怨魂術士達に本能的な恐怖さえ抱かせた。
「くっ……虚仮威しだ、こんなもの……!」
「ただの人間が我らに敵うと本気で思っているのか!」
一瞬でも怖気づいた自分を否定するように、怒りと怨みを込めて呪文を唱える術士達。
そこに一番槍として駆け込んできたオリヴィアが、烈帛の気迫を込めて聖槍を振るう。
「怨嗟の魂が何するものぞ!」
怪力を以て振るわれる聖槍は黄金と白銀の軌跡を描き、並みいる敵軍を斬り打ち穿ち、なぎ倒す。その戦いぶりはまさに縦横無尽、獅子奮迅。彼女に加護を与えられた猛者達も遅れを取るまいと後に続き、怨魂術士を打ち倒していく。
「よくも……! 我らが怨嗟の恐ろしさを知るがいい……!」
倒れた術士達の魂は【永遠に続く怨嗟の螺旋】となり、自らを脅かした者に逆襲する。
その標的となるのは必然、最前線で最も多くの敵と戦っていたオリヴィアとなる。彼女もそれは望むところ、味方がユーベルコードの攻撃に晒されぬよう、むしろ積極的に自分でトドメを刺していたふしさえある。
「不浄の怨魂ならば、聖なる力による浄化で除霊すればいい」
彼女が戦いの中で培ってきたのは、肉体の強さと武技だけに非ず。怨魂がもたらす恐怖を気合いで捻じ伏せ、聖なる輝きで不浄の魂を祓う。仮にも聖職者の衣を纏う者として、こうした悪霊への対処のひとつやふたつ、心得ていて当然だ。
「「闇の怪物、恐るるに足らず!」」
共に鬨の声を上げて敵陣に吶喊するオリヴィアと『闇の救済者』達。叛逆の意志の元に統一された彼女らの進撃はもはや怨魂術士だけで止められるものではなく、野に放たれた火の如く戦線を押し広げていく。
「馬鹿な、人間風情に我らが遅れを取るなど……!」
連中が信じられまいとそれは現実だった。長くヴァンパイアの暴虐に苦しめられてきた人々は、闇に潜みながら力を蓄え――そして今、圧政の鎖を打ち砕かんとしているのだ。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
遂に、ここまで来ましたか……。
数多の抵抗者たちが望み、そして見ることも叶わなかった光景が、今広がっている。
始めましょう。『私達』が願い、諦めきれなかった戦いを。
真の姿を解放し、旗槍を手に先陣を切る。
文字通りの旗印です。我等此処に在りと、高々と示しましょう。単純ですが、士気には大きな手助けになる筈です。
怨嗟の呪詛などは私には届かない。
私は同じもの。死んでも死に切れぬ亡霊、怨恨で動く呪いそのもの。
私だけじゃない、これまでに散っていった皆が、彼らと同じ道を歩むことはもうできないのかもしれないけれど……。
けれど、彼らがかつてみんなが願った道を同じく願うのならば、今は一緒に、その道を切り拓きましょう。
「遂に、ここまで来ましたか……」
ヴァンパイアの圧政に対する決起――数多の抵抗者達が望み、そして見ることも叶わなかった光景が今、シャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)の前に広がっている。
この時を迎えるまでに、数え切れないほどの犠牲があった。その中には抵抗運動の一員だった彼女の両親や故郷、そして彼女自身の命も含まれている。だが死してなお人々の想いは残り続け、明日を願う者達に受け継がれていった。
「始めましょう。『私達』が願い、諦めきれなかった戦いを」
【解放の旗を此処に掲げよ】。真の姿を解放し、旗槍を手に先陣を切るシャルロット。戦場に翻るそれは文字通りの旗印であり、我ら此処に在りと高々と示す。単純なことではあるが、味方の士気を鼓舞する手段としては絶大だ。
「あの娘に続け!」
「俺たちの覚悟を見せろ!」
奮い立った『闇の救済者』達の軍勢が、オブリビオンの軍勢と激突する。これまで戦いにおいては猟兵に頼らざるを得なかったが、練度を重ねて規模も拡大された彼らは今や、欠くべからざる戦力にまで成長を遂げていた。
「調子に乗るな……世界に満ちる怨嗟の闇は、貴様らの希望など簡単に滅ぼす……!」
闇の救済者達の攻勢に苛立つ怨魂術士達は、"旗印"として最前線で戦うシャルロットに【永遠に続く怨嗟の螺旋】を放つ。味方の士気を上げるために目立つよう戦っていれば、敵から標的にされるのも当然の事だった。
「消え去れ……ッ!?」
死して怨嗟となった術士の魂が、戦旗を掲げる少女を撃ち抜く――だが、彼女が膝を屈することはなかった。常人ならば即死している量の呪詛を受けてなお、平然としている。
「怨嗟の呪詛などは私には届かない」
驚愕する怨魂術士の胸を、白銀に煌めく刃が貫く。右手には旗槍を、左手には剣を構え果敢に敵に挑むその姿は可憐にして凛々しく、戦場に咲く戦乙女として印象付けられる。たとえその本質が聖なる者とは真逆のものだとしても。
「私は同じもの。死んでも死に切れぬ亡霊、怨恨で動く呪いそのもの」
理不尽に屈せず立ち向かうという誓いが、今のシャルロットを衝き動かす。命尽きても消えることのなかった小さな灯が、解放を求める願いが、彼女を人の枠から外れさせた。
彼女と怨魂の本質は同じ。異なるのはその想いが向かう先。生者の未来を阻まんとする怨嗟を弾き返し、亡霊の少女は戦線を押し上げる。
「今だ! 一気に押し込め!」
シャルロットが切り拓いた道を『闇の救済者』達が突き進み、敵陣を打ち崩していく。
溢れんばかりの生の輝きに満ちた彼らの戦いぶりは、亡霊にとっては少しだけ眩しい。
(私だけじゃない、これまでに散っていった皆が、彼らと同じ道を歩むことはもうできないのかもしれないけれど……)
けれど、彼らがかつてみんなが願った道を同じく願うのならば。過去の支配を打ち砕き、その先にある未来を、まだ誰にもわからない白紙の明日を見せてくれるのなら――。
(今は一緒に、その道を切り拓きましょう)
なおも勢いを増す『闇の救済者』の攻勢。その最前線にて、少女は戦旗を掲げ続けた。
大成功
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カビパン・カピパン
「鋒矢。敵中突破をする。目標に到達の後、魚鱗。敵に恐れる事はない、我らは最強の隊だ」
貧弱な身なりの騎兵隊がそこに。
先頭を駆けてきたカビパンが、一団に突撃をした瞬間には歓声に変わっていた。ハリセンと軍配で呪縛慟哭を無効化し繰り出される謎の嵐に、ゴミ屑のように吹き飛ばされていく。その姿は物語に登場する英雄の姿そのまま。
「中央に楔を打ち込むぞ。第一小隊、円陣の後に車懸。第二、第三小隊は左右より挟撃!」
馬の手綱を引く事無く、絵に描いたような動きで見事に反転する。
その先頭には、久しぶりにかつてないほどのシリアスで血の雨を浴びて吼える軍神。
彼女らの騎兵隊は機動力を損なうことなく死闘を演じ、一番槍となった。
「鋒矢。敵中突破をする」
領主の軍勢と対峙する『闇の救済者』連合軍の前線に、貧弱な身なりの騎兵隊がいた。
レジスタンスという組織上仕方がない事だが、恵まれているとは言えない装備と練度。だが隊を率いるカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は堂々と語る。
「目標に到達の後、魚鱗。敵に恐れる事はない、我らは最強の隊だ」
瀟洒な将校服を身に纏った彼女の言葉や振る舞いには、不思議なカリスマ性を感じる。
いつになく真剣な表情で、しかし手には愛用のハリセンを持って演説を行うカビパンに【洗脳】された騎兵隊は、女神の加護を受けた一騎当千の強者となる。
「突撃!」
「「おぉぉーーーっ!!」」
味方の鬨の声に背を押されるように、カビパンは騎兵隊の先頭を駆けていく。右手には謎のハリセンを、左手には軍配を持ち、それ以外には一切の武装を帯びずに突っ込んでくる彼女を見た怨魂術士達は、当初それをただの虚仮威しだと侮っていた。
「馬鹿め。そんな貧相な騎兵だけで我々を突破できるとでも……ッ!?」
だが彼女が一団に突撃した瞬間には、敵の侮りは驚愕に、味方の叫びは歓声に変わる。
怨魂より発せられる【救われなかった魂達の嘆き】は、あらゆる奇跡を雲散霧消させる「女神のハリセン」と、ひと振りでシリアスを飛ばす「笑門来福招福軍配」の力によって無効化され、さらに繰り出されるギャグの嵐がゴミ屑のように怨魂術士を吹き飛ばした。
「おお、なんとすさまじい!」
「あれが猟兵の力か……!」
傍目には謎の嵐としか呼びようのない現象によって敵を蹴散らすカビパンの姿は、物語に登場する英雄の姿そのままだった。味方の活躍に『闇の救済者』達の士気が高まる中、彼女は凛々しい表情で配下の騎兵隊に的確な指示を飛ばす。
「中央に楔を打ち込むぞ。第一小隊、円陣の後に車懸。第二、第三小隊は左右より挟撃!」
「「はっ!」」
馬の手綱を引く事無く、絵に描いたような動きで見事に反転する。兵士と騎馬が1人の将の意思の下で、手足のように一糸乱れず行動する様子は、まるで芸術的ですらあった。
「うおおおおおおっ!」
普段はボケてばかりの敵味方どちらにも掴み処のない言動で、場を混乱の渦に巻き込むカビパン。その彼女が久しぶりにかつてないほどのシリアスさで血の雨を浴びて吼える。
その奮戦ぶりはまさに軍神。颶風と共に駆けるカビパンの進路を阻める怨魂はおらず、彼女が指揮する騎兵隊もまた獅子奮迅の戦いぶりで敵陣をかき乱す。
「な、何なのだこいつらは……ただの人間ではないのかッ?!」
敵兵の1人が抱いた恐怖と動揺はまたたく間に周囲に伝播し、敵陣全体を混乱させる。こうなればもう敵騎兵の動きを止めるどころではない。逆に麻の如くかき乱されていく。
かくしてカビパンらの騎兵隊は機動力を損なうことなく死闘を演じ、一番槍となった。続く同志達に『闇の救済者』かくあるべしという姿を見せた、見事な戦いぶりであった。
大成功
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カタリナ・エスペランサ
これもまだ一歩に過ぎない。
けれど、その一歩を望み続けてきたのは私も同じ
未来へ繋げる為の重要な節目。完膚無きまでの勝利を以て刻み付けるとしましょう
響かせる《歌唱》は味方に《鼓舞+ドーピング+幸運》の加護を与える祝福よ
【災華殲尽】を発動し《空中戦》、純白に輝く羽が示す性質は《浄化》の《属性攻撃》
怨魂を操る敵には《神罰+破魔+蹂躙+弾幕》として作用すると同時、《ハッキング+結界術+拠点防御》の要領で戦場そのものを清浄に染め上げるわ
上空から《覇気+存在感》を発し敵への《威圧》を兼ねながら戦場を俯瞰して《情報収集》、《第六感+戦闘知識》を併せて戦局を《見切り》最大効率で敵軍を殲滅していきましょうか
「これもまだ一歩に過ぎない。けれど、その一歩を望み続けてきたのは私も同じ」
ついに決起の時に至った『闇の救済者』を、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は冷静に、しかし鼓動を高鳴らせながら見つめていた。
人類と吸血鬼の戦いはここからより激化するだろう。あるいは今まで以上の困難が待ち受けているかもしれない。それでも、今日まで積み重ねてきた全ては無駄では無かった。
「未来へ繋げる為の重要な節目。完膚無きまでの勝利を以て刻み付けるとしましょう」
高鳴る鼓動を旋律に変えて、彼女は戦場で歌を紡ぐ。高らかに響き渡るその音色は味方を鼓舞し、強化と幸運の加護を与える祝福だ。まるで天上から降り注ぐような必勝の凱歌で、『闇の救済者』達の士気はさらに高まった。
「耳障りな歌だ。誰かあの女を撃ち落とせ!」
空中から歌で味方を鼓舞するカタリナの姿は、当然ながら敵軍からは目の敵にされる。
怨魂術士は倒された仲間の【浄化されぬ怨みの魂】を集め、呪殺の波動を上空に放つ。だがその動きに気付いたカタリナは即座に【災華殲尽】を発動させた。
「聖なるは誰が栄光を讃えるか、魔なるは誰が威光を畏れるか――その魂で思い知れ!」
光の具合や角度によって色合いの変化する彼女の双翼が、威光によって純白に染まる。
この色が示す性質は"浄化"。軽く羽ばたいただけで呪いの波動は雲散霧消し、こぼれ落ちた羽が無限の弾幕となって敵陣に降り注いだ。
「な―――ッ!!!」
驚愕する怨魂術士達を襲う浄化の嵐。怨魂を力の源とする彼らにとっては相性最悪の攻撃だろう。さらに地面に落ちた羽は、浄化の力で戦場そのものを清浄に染め上げていく。
この戦いのために集められた怨魂が次々と消滅していく様を、カタリナは上空から威圧感のある眼差しで見下ろしていた。内在する魔神の権能を解放した彼女には、ただそこにいるだけでも強烈な覇気と存在感を発する。
「ぐ……貴様は一体何者なのだ……!」
「知らないわけでもないでしょう。『闇の救済者』よ」
艶やかに微笑みながら浄化の羽を放つ。戦場全体を俯瞰する視点から、最高効率で敵軍を殲滅できるよう、狙うべきポイントを見定めて。猟兵として経験した異世界での大規模戦闘の知識は、この戦いで大いに役立っていた。
「こちらは最初からフルスロットルよ。覚悟はいいわね?」
カタリナは戦場の制空権を握りながら、的確に戦局を見切り攻撃を仕掛ける。彼女が上空から敵陣をかき乱せば、地上にいる『闇の救済者』の猛者達がその綻びをこじ開ける。
祝歌により士気も最高潮に達している彼女らに、呪いを浄化で弱められた怨魂術士では対抗できない。打ち倒されていく連中の表情は、信じられないと言わんばかりだった。
「こんな……ことが……!」
彼らが聞いた鬨の声は、100年間揺るがなかった吸血鬼の支配が崩れていく音だった。
『闇の救済者』の進撃は止まらない。上空に佇む娘の歌と羽ばたきに導かれるように。
大成功
🔵🔵🔵
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
ハハハ!良いぞ闇の救済者達よ!絶望に立ち向かい打倒せんとする、その決意と意志!余らも力を貸そう!
ヤークト・ドラッヘに【騎乗】、戦旗を掲げ、黄昏大隊・戦獄凱歌を発動。
降り注ぐ砲撃と、ヤークト・ドラッヘ搭載火器の【制圧射撃】【砲撃】【誘導弾】にて並み居る敵を撃ち倒してゆこう。
敵のユーベルコードが発動した場合、余は足止めを喰らうであろうが、闇の救済者達は恐らく動ける筈だ。
余の戦獄凱歌による治療にて、呪縛を払うが故にな。
余は砲撃を続けつつ、ドローンを飛ばし周辺戦況の【情報収集】、ユーベルコードを発動していると思しき敵個体を探り出す。
発見次第闇の救済者達へ伝達、これを撃破するよう頼もう。
「ハハハ! 良いぞ闇の救済者達よ!」
人類と吸血鬼が激しく戦火を交える中、痛快至極と笑うのはギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)。傭兵組織の長として多くの戦争に参加し、戦争という行為に独自の哲学を抱く彼女の目には、此度の戦いはどのように映ったのか。
「絶望に立ち向かい打倒せんとする、その決意と意志! 余らも力を貸そう!」
大いに興が乗っている様子で、彼女は重機甲戦闘車「ヤークト・ドラッヘ」に搭乗し、赤く染め抜かれた戦旗を掲げる。その旗に意匠された傭兵組織「黄昏大隊」のシンボルが翻る時、戦場にいる全ての者達は【黄昏大隊・戦獄凱歌】を聞く。
「さあ進め! 撃て! 殺せ! 屍骸の山を! 鮮血の河を! 越えて尚征け! 黄昏の果てへ!」
ギージスレーヴの号令一下、空間を超えて無数の支援砲撃が降り注ぐ。同時に戦闘車に搭載された電磁砲や速射機銃やミサイルが発射され、並みいる敵の軍勢に襲いかかった。
「ぐわああああああっ!!!?」
単独にして大隊を名乗るだけはある、その火力。前線にいた怨魂術士は跡形もなく吹き飛ばされ、陣形が大きくかき乱される。『闇の救済者』達はその隙を逃さず、戦獄凱歌に鼓舞されながら、鬨の声を上げて突撃を仕掛けた。
「ぐ……舐めるなよ……これ以上貴様らの好き勝手にはさせぬ!」
だが怨魂術士の厄介なところは、死した仲間の魂さえも怨魂として使役する点にある。彼らは【救われなかった魂達の嘆き】を呪縛の慟哭として放ち、『闇の救済者』の機動力を無力化せんと呪いを仕掛けてきた。
「ほう。余が足止めを喰らうとはな」
ヤークト・ドラッヘの車輪が止まる。戦場の只中で機動を殺されるのがどれだけ危険な事か、勿論ギージスレーヴは知っている。足が止まったまま敵軍の攻撃の的にされれば、どれだけ強力な兵士も軍隊も壊滅は免れないだろう。
「だが闇の救済者達は動ける筈だ」
「「おおおぉぉぉぉーーーっ!!」」
戦旗を掲げている限り、戦獄凱歌の効果は続いている。敵の呪縛慟哭を受けてもなお、『闇の救済者』の猛者達は熱狂的なまでの雄叫びを上げ、足を止めずに突っ込んでいく。
「馬鹿なっ?!」
なぜ彼らの機動力は衰えないのか。それはギージスレーヴの戦獄凱歌には支援砲撃に加えて治療効果もあり、それが呪縛を払うが故だ。いかなる負傷もものともしない、狂奔の兵士と化した『闇の救済者』は、怒涛の勢いで進撃を続ける。
「このユーベルコードを発動している者を撃破せよ」
そして当のギージスレーヴは砲撃を続行しながら探査通信用のドローンを飛ばし、呪縛慟哭を放出している敵個体を探り出す。戦場全体に影響を及ぼすほどの呪詛を放っている都合上、見つけるのはそう難しいことではない。
「そこだ。頼むぞ」
「「応ッ!!」」
その所在は発見次第直ちに『闇の救済者』に伝達され、彼らの集中攻撃の対象となる。
【救われなかった魂達の嘆き】は消え、ギージスレーヴの乗機も機動力を取り戻した。彼女は再び戦場を疾走しながら、戦旗を振りかざし味方に熱狂を、敵に恐怖をもたらす。
「敵将の拠点はすぐ其処だ! 進め! 進め!」
領主たる『赤錆の騎士』が座する屋敷へ、闇の救済者達は猛然と突き進んでいく――。
大成功
🔵🔵🔵
黒風・白雨
自らが死から蘇るだけではなく、死した者の魂を捕え使役するとは。
まったく、オブリビオンという奴らは度し難いのう。
死を軽く扱うその所業、正させて貰うぞ。
2体の《竜神武者》を召喚、敵陣に切り込ませる。
また、自らもその《力》をもって、敵兵が怨恨と化すことがないようその存在ごと破壊していく。
此度の集団戦、こちら側が無傷ということは有り得まいな。
戦い、そして死した者達の魂をあやつらの遊び道具にさせる訳にはゆかぬ。
神なる力を持って、それらの魂を永久の眠りへと還そうぞ。
UCで神通力を使用。
死した者の魂や既に使役されている怨魂を浄化する。
UC指定:浄化、破魔
「自らが死から蘇るだけではなく、死した者の魂を捕え使役するとは。まったく、オブリビオンという奴らは度し難いのう」
前方に立ちはだかる敵の怨魂術士に、黒風・白雨(竜神・f31313)は不快感を示す。連中の呪術はこと多くの死者が出る戦場で威力を発揮するのは事実だが、それは戦死者の魂の冒涜に他ならない。
「死を軽く扱うその所業、正させて貰うぞ」
彼女がすっと手をかざすと、二体の「竜神武者」が召喚され、敵陣に切り込んでいく。
そして竜神である彼女自身も、その権能である森羅万象に干渉する「力」を漲らせて、戦線に加わった。
「なんだ、こいつらは……?!」
多様な種族やジョブが集結した『闇の救済者』の中でも一際異彩を放つ巨大な鎧武者。その攻撃はひと薙ぎで数人の怨魂術士を打ち倒し、驚異的な力で戦線をこじ開けていく。
その武者達を使役する白雨も、純粋な森羅万象の力を直接敵にぶつけ、魂が怨魂と化すことのないよう存在そのものを破壊する。其はまさに世界より与えられた神の力だった。
「死者の魂を弄ぶ輩に、容赦はせぬぞ」
今はすっかり丸くなったとはいえ、元は苛烈な性格だった白雨。「力」で戦場を蹂躙しながら敵勢を威圧する姿からは、かつての荒々しさが垣間見える。彼女と武者の戦いぶりは敵に恐怖を、そして味方に頼もしさを与えるには十分なものだった。
「俺達もあの人に続け!」
猟兵達に遅れを取ってはいられないと、『闇の救済者』達も果敢に敵軍に立ち向かう。
か弱き人の子らが見せる勇姿を、白雨は微笑ましげに見つめていたが、同時に一抹の不安と寂しさも抱えていた。
(此度の集団戦、こちら側が無傷ということは有り得まいな)
双方ともに数百名の兵がぶつかる合戦だ。どれだけ猟兵がうまく立ち回っても、死傷者ゼロとはいかない。多かれ少なかれ犠牲者は出る。自分にできる事はその犠牲を限りなく少なくする事と――出てしまった犠牲を敵に利させない事。
「戦い、そして死した者達の魂をあやつらの遊び道具にさせる訳にはゆかぬ。神なる力を持って、それらの魂を永久の眠りへと還そうぞ」
厳かな態度でそう告げ、白雨は【神通力 弐式】を発動。浄化と破魔の力を解き放ち、怨嗟渦巻く戦場を自らの神気で満たしていく。只人の目には何が起こったか分からないだろうが、霊的な視点から見ればその効果は劇的だった。
「なっ……我らの怨魂が!」
敵味方問わず死した者の魂や、既に敵に使役されていた怨魂が、呪いを浄化され消滅していく。それは戦死者への鎮魂であり、同時に怨魂術士から力の源を奪う行為であった。死者の怨嗟が新たな死者を生む、【永遠に続く怨嗟の螺旋】はここに断ち切られたのだ。
「今ぞ、闇の救済者達よ」
「「おおっ!!!」」
使役する怨魂を失った術士達に『闇の救済者』が攻め掛かる。こうなればもう戦いの流れは一方的だった。闇の中で雌伏を続けてきた猛者達が、次々と敵を撃破し攻め上がる。
向かうはこの地を治める領主の屋敷。人々の士気が上がっているのを肌で感じながら、白雨も竜神武者を連れて進軍を続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
思えばずっと守りの戦いが続いていたように思いますけど、この世界にも少しずつ希望が広がってきましたね。
漸く掴み取った反撃の機会……でも、だからこそ、生きて戦いを終えなければ意味がありません。
どうやら敵の手勢は対多人数に強いようですね。
折角これだけの方々が集まったのに、それが仇になっては元も子もありません。
こちらの機動力を封じられないよう、地獄の炎とサイキックの合体技【C:M.エフェクター】で敵の呪縛慟哭を防ぎましょう。
この幻像は物理的な攻撃は防げませんけど、魔法的・霊的な効果に対する囮や身代わりとして働きます。
やっぱり、やるべきことは変わりませんね。
闇の救済者の皆さんは、わたしが護ってみせます!
「思えばずっと守りの戦いが続いていたように思いますけど、この世界にも少しずつ希望が広がってきましたね」
レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)が振り返るように、この世界で猟兵の活動はこれまで「守る」事が主体だった。吸血鬼の圧政や暴虐から人々を守り、生存圏を確保する――そうして地盤を固めてきた訳だが、今回の戦いはこれまでと一線を画している。
「漸く掴み取った反撃の機会……でも、だからこそ、生きて戦いを終えなければ意味がありません」
未来を切り拓くために「攻め」に転じた『闇の救済者』達。彼らが生きて明日を迎えられるようにするのが、彼女の戦いだ。敵味方合わせて千人を超える兵士がぶつかる戦場においても、この手の届く限り、1人でも多くの命を護ってみせる。
「どうやら敵の手勢は対多人数に強いようですね」
決意と共に前線に立ったレナータは、相対する敵の怨魂術士達の動きを見る。死者の怨嗟を力に変える彼らは、【救われなかった魂達の嘆き】で此方の動きを封じるつもりだ。使役怨魂から放出される呪縛慟哭が、じわじわと戦場全域に拡がっていく。
「折角これだけの方々が集まったのに、それが仇になっては元も子もありません」
味方の機動力を封じられないよう、レナータは【C:M.エフェクター】を発動。地獄の炎熱とサイキックの感覚転写を組み合わせ、霊的質量をもつ幻像を幾つも作り上げる。
「怨魂の嘆きにて立ち尽くすがいい……なにっ?!」
戦場に放たれた陽炎のような幻は、怨魂が放つ呪縛慟哭とぶつかると互いに消滅する。
この幻像は物理的な攻撃は防げないが、魔法的・霊的な効果に対する囮や身代わりとして働く。本当なら『闇の救済者』達が受けるはずだった呪いを肩代わりしてくれるのだ。
「わたしはこっちですよ!」
呪縛の不発に驚く怨魂術士達に、注意を引きつけるように叫ぶレナータ。ブレイズキャリバーの能力で形成された「獄炎の翼」を羽ばたかせるたびに、霊質ある幻像が生まれ、まるで守護霊のように彼女とその仲間の傍らに飛んでいく。
「おのれッ!」
怨魂術士は苦々しげに歯ぎしりしながら呪殺の波動を放つが、やはりそれも呪術である以上は【C:M.エフェクター】に阻まれる。魔法・霊的な攻撃手段しか持たない敵に対してレナータのユーベルコードは相性抜群だった。
「やっぱり、やるべきことは変わりませんね。闇の救済者の皆さんは、わたしが護ってみせます!」
己が決意をより堅固なものとして、獄炎の翼を広げる少女。本当の翼は吸血鬼に奪われてしまっても、誰かを護りたいという意志のもとで前線に立つ彼女の姿は、本物の天使よりも輝いていて――それを見上げる『闇の救済者』達の心を奮い立たせた。
「今だ! 一斉に掛かれ!」
敵の攻撃をレナータが防ぎ止めている好機を突き、『闇の救済者』が敵陣に攻め込む。
この日のために力を蓄えてきた勇士達の剣は、オブリビオンの怨魂術士にも届き得る。
炎獄とサイキックの幻像に守られながら、彼らは一気に戦線を攻め上がっていく――。
大成功
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雛菊・璃奈
この世界の人達が再び光を取り戻す為の戦い…。
この戦い、絶対に負けられない…。
ラン達やミラ達と参加…。
ラン達には救済者達の援護と指揮の補助をお願い…。
【ソウル・リベリオン】で敵の怨魂や呪いを浄化して喰らい、逆に力に変えて吸収…。
吸収した力と【呪詛】で強化した【unlimitedΩ】による一斉斉射を放ち、それと同時にラン達の暗器【暗殺】やミラ達のブレス、救済者達の弓矢や魔法、大砲等の遠距離武器による一斉攻撃を行って貰い、大打撃を与え斬り込み…。
後は随時敵の力を【リベリオン】で吸収し、完全に優位に立った勢いで接近戦で押し切るよ…
相性が悪かったね…。この手の力はわたしとこの子(魔剣)達の得意分野だよ…
「この世界の人達が再び光を取り戻す為の戦い……」
長い雌伏の時を経て、遂にやって来た大々的な反抗の時。『闇の救済者』達と同様に、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の心は静かに燃えていた。これまでにない大規模な激戦となるが、それは彼女を怖気付かせるのではなく奮い立たせる理由にしかならない。
「この戦い、絶対に負けられない……」
必勝の決意を胸に懐き、魔剣の巫女は戦いの最前線に立つ。その後には彼女の仲間にして家族である、主人と同じ思いを共有した6人のメイド人形達と3匹の仔竜が続いた。
「ラン達は救済者達の援護と指揮の補助をお願い……」
「りょうかい!」
「まかせて!」
「頑張る!」
指示に従ってメイド達が『闇の救済者』達と合流するのを確認してから、璃奈は呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】を召喚する。死者の魂を呪いとして利用する怨魂術士を相手にするのに、これ以上適した武器はないだろう。
「人間風情が……貴様らは闇の中で、我らに怯えて生きておればいいのだ!」
そうとも知らずに敵は使役怨魂から【救われなかった魂達の嘆き】を放ち、此方の機動力を無力化しようとする。だが璃奈が魔剣をひと振りするだけで、怨魂から放たれた呪いは浄化され、逆に力に変えて怨魂ごと喰らわれる。
「なにッ!? そんな馬鹿なッ!」
呪いが無効化――それどころか剣に吸収されたのを見て、怨魂術士の間に動揺が走る。
すかさず璃奈は吸収した力を使って【Unlimited curse blades Ω】を発動。極限まで呪詛で強化した魔剣・妖刀の現身を一斉召喚し、敵軍めがけて解き放った。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
終焉の属性を帯びたその魔剣群は、受けたもの全てに終わりをもたらす。そして数百本もの呪刃が戦場の空を覆うのと同時に、彼女が連れてきた仲間達も一斉攻撃を仕掛けた。
「みんなで!」
「きゅぃ!」
「「おうっ!!」」
メイド達の暗器投擲と、仔竜達の放つブレス。そして『闇の救済者』達の弓矢や魔法、大砲等による遠距離武器のオンパレード。完璧にタイミングの一致した総攻撃が、怨魂を喰われた術士達に襲いかかった。
「な……ぐわあぁぁぁあぁぁぁっ!!!?!」
回避の隙間もないほどの大攻勢により、敵軍は大打撃を受ける。だが態勢を立て直す暇など彼らには無かった。魔剣の豪雨が降り注いだ直後には、ソウル・リベリオンを構えた璃奈が、味方の先陣を切って斬り込んでくる。
「相性が悪かったね……。この手の力はわたしとこの子達の得意分野だよ……」
呪力や呪詛の利用において、璃奈は怨魂術士を上回る技量を持っている。敵の力を随時ソウル・リベリオンで吸収する事で、刃はより鋭さを増し、ひと振りで敵を斬り伏せる。
呪術戦に特化した術士が接近戦を挑まれること自体が不利だというのに、こうなればもはや形成は覆らない。完全に優位に立った勢いで、魔剣の巫女は敵軍を押し切る。
「わ……我らの呪法が敗れるとは……!」
ただ力で圧倒されるだけでなく、得意分野で凌駕された驚愕と屈辱を噛み締めながら、骸の海に還っていく術士達。切り拓かれた道の先を、少女と救済者達は突き進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵
血骨・パトリシア
ふうんなるほど
色んな種が世界の主導権を取りたいっていうのは、神様やってた昔から変わらないサイクルだねえ
まあパトさんは人間のが好きだから人間の味方するけど
で、死兵前提でそれが効率いいっていう、怪物にしかできない戦法かあいい事いい事
じゃあこっちも死物狂いだ
UC使用で歩兵のレンジにいる者を確実に針鼠のように串刺しにし
使用可能な本数を効率的に使い首や背骨を分断するように出来る限り狙い
本数の少なさをカバーする
機動力を殺されても近間なら何とかなるねー。それ以上は別の人がんばってね
平時と変わらず笑顔で、傷を負ったとしても変わらぬ笑顔で
一切変わらぬ陽気さのまま殺し合いを続ける
それは戦において当たり前だから
「ふうんなるほど。色んな種が世界の主導権を取りたいっていうのは、神様やってた昔から変わらないサイクルだねえ」
この世界の支配と生存をかけた人類と吸血鬼の戦いを、血骨・パトリシア(借り物使い・f28186)はどこか俯瞰した視点で眺めていた。竜神として長い年月を生きてきた彼女には、この戦いも見慣れた世の流れの一部なのかもしれない。
「まあパトさんは人間のが好きだから人間の味方するけど」
緊張感のない口ぶりでにかっと笑い、雄叫びと怒号の飛び交う前線に出る。彼女は暗くてじめじめしたヤツよりも、明るく楽しい毎日のほうが好きだ。こいつら勝たせてそういう世の中になるのなら、まあ手を貸してやるのもやぶさかじゃない。
「で、死兵前提でそれが効率いいっていう、怪物にしかできない戦法かあいい事いい事」
自分自身すらも含めた死者の魂を利用して、敵を呪い殺す怨魂術士。まっとうな人間なら鼻白むような外法の使い手達を前にしても、パトリシアはあっけらかんと笑っていた。
「じゃあこっちも死物狂いだ」
歩兵のレンジにすっと踏み込むのと同時に、【ミゼリコルディア・スパーダ】を使用。手元より放たれた百本の魔法剣が幾何学模様を描きながら飛翔し、敵兵を串刺しにする。
「がは……ッ!」
針鼠のようになった術士がばたりと倒れ伏した直後には、もうパトリシアは次の標的に攻撃を仕掛けている。千人を超える敵味方が入り乱れる戦場においては、百本の魔剣でも手数は多いとは言えない。ならばそれを効率的に使うことで本数の少なさをカバーする。
「ほい、動かないでよねっと。下手に動くと余計に痛いから」
狙うのは首や背骨など、出来る限り一撃で戦闘不能にさせられるように。笑顔で的確に急所を分断する戦法はある種の不気味さもあり、思わず敵勢をたじろがせるほどだった。
「くっ、こいつ……好き勝手できると思うなよ!」
怨魂術士は【救われなかった魂達の嘆き】で、パトリシアの機動力を封じにかかった。
怨魂より放出される呪縛慟哭が、竜神の足を地に縛り付ける。戦場の只中で立ちつくす羽目になったわけだが、それでも彼女は変わらず笑顔で。
「機動力を殺されても近間なら何とかなるねー。それ以上は別の人がんばってね」
魔法剣の射程外にいる敵は他の仲間に任せ、彼女は射程内にいる敵の殲滅に注力する。
彼女の半径10メートル以内に入った者は、飛び交う剣により即座に斬り伏せられる。その領域を死地と認識した怨魂術士達は、より遠間からの攻撃を余儀なくされる。
「距離を取れ! 遠間から仕留めろ!」
剣の射程外から放たれる呪殺の波動が、パトリシアの心身を傷つける。裂けた肌から血が流れ、服を赤く染めていく。だが、それでもなお彼女は変わらぬ笑顔を浮かべていた。
「ふんふん、なかなかやるね」
一切変わらぬ陽気さのまま殺し合いを続ける。それは戦において当たり前だから。散歩の最中のような気さくさで剣を振るう女を見て、怨魂術士達はいよいよ恐怖に駆られた。
「何なのだ、こいつは……ぐぁっ?!」
「隙だらけだッ!!」
パトリシアの異質な存在感に呑まれていた術士達に、『闇の救済者』達が襲いかかる。
ユーベルコードを発動していた術士も倒され、機動力も回復する。自由になったパトリシアは援軍に「ありがとさん」と笑いかけると、次の獲物を見定めて走り出すのだった。
大成功
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詩乃守・セツア
ここが分水嶺
鎮圧すれば向こうの勝ち、通せば此方の勝ち
じゃあズルの一つや二つ叩き込むよ
――目録、開帳
今の君たちはまだまだ小さな種火だよ
吹けば消える程度の小さな灯だ
けれど、ここで燃え上がることが出来ればきっと、この世界も少しは明るくなるんじゃないかな
ってことで、君たちの手元におせっかいを一つ渡しておいた
持ってるだけでそれなりに、1度だけ十倍の力を出せる粗製の魔剣
くだらない怨嗟しか吐き出さない連中を狩るには使い捨ての武器で十分だよ
敵を仕留める時はまず首から上を一撃で吹き飛ばせ
死に際の無駄な言葉なんて聞いてる暇は君たちにも僕らにも無いよ
さあ、駆け抜けよう、戦い抜こう
燃え始めた火の恐ろしさを教えてやろう
「ここが分水嶺。鎮圧すれば向こうの勝ち、通せば此方の勝ち」
人類と吸血鬼が真っ向からぶつかり合うこの戦いの意義を、詩乃守・セツア(魔剣蒐集家・f27142)は重く認識していた。もし『闇の救済者』が勝利する事ができれば、反抗の篝火はさらに燃え広がるだろう。だが敗北すれば逆に彼らの運動は大きく後退する。
「じゃあズルの一つや二つ叩き込むよ」
絶対に負けられない戦いに勝つために、彼女は自軍の前でユーベルコードを発動する。
魔剣を収集、破壊することを生業とする一族の末裔であり、肉体そのものを「収納庫」とした彼女の能力。それは古今東西の呪われし刃の疑似再現である。
「――目録、開帳」
囁くような声量でセツアが唱えると、居並んだ『闇の救済者』達の前に魔剣が現れる。
1人につきひと振りずつ。驚く人々の前で、彼女はクールな顔で静かに演説を始めた。
「今の君たちはまだまだ小さな種火だよ。吹けば消える程度の小さな灯だ。けれど、ここで燃え上がることが出来ればきっと、この世界も少しは明るくなるんじゃないかな」
この分水嶺を超えられるか否かに、『闇の救済者』の命運が掛かっている。だからこそ全身全霊をもって領主に挑む。それはこの場に集った全ての人々に共通する覚悟だろう。
「ってことで、君たちの手元におせっかいを一つ渡しておいた」
【開帳『偽・魔剣目録』】から与えられたのは、持っているだけでそれなりに、1度だけ十倍の力を出せる粗製の魔剣。セツアにとっては銘すらない十把一絡げの偽魔剣だが、一般人からすれば相当の業物である。
「くだらない怨嗟しか吐き出さない連中を狩るには使い捨ての武器で十分だよ」
あの程度の雑兵には真打ちを出す必要すらないと、自信をもってセツアは語りかける。
確信のこもった彼女の演説は皆に勇気を与え、揺らぎない意志と共に魔剣を握らせた。
「さあ、駆け抜けよう、戦い抜こう。燃え始めた火の恐ろしさを教えてやろう」
「「応ッ!!!」」
冷めたような口調がかすかな熱を帯びる。それに呼応して闇の救済者は鬨の声を上げ、一斉に進軍を開始する。対峙する敵の術士達を、思わずたじろがせる程の気迫をもって。
「くっ、近寄るな……ッ?!」
怨魂術士が呪術を発動させるよりも速く、偽魔剣で強化された戦士達は距離を詰める。
そして初撃から全力で、首を狙い斬りつける――演説時にセツアが教えた戦術通りに。
『敵を仕留める時はまず首から上を一撃で吹き飛ばせ。死に際の無駄な言葉なんて聞いてる暇は君たちにも僕らにも無いよ』
斬撃の瞬間に解放された魔剣の力が、その威力を瞬間的に高める。断末魔の叫びを上げる間もなく怨魂術士の首が宙を舞い、泣き別れとなった胴体がばたりと地に倒れ伏した。
「凄い……これならいけるぞ!」
セツアに与えられた力を実感したことで、『闇の救済者』達の士気はさらに高まった。
一気呵成の勢いで攻め上がる彼らを、もう誰も止められない。前方の敵兵を斬り伏せながら、叛逆の篝火は領主のいる屋敷に向かって燃え広がっていく――。
大成功
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ニクロム・チタノ
これは壮観だね!
まさしく反抗の竜が舞い降りるに相応しい反抗だよ!
チタノよ、私に反抗の祝印を
先代の反抗者達と反抗の竜チタノの加護を以て戦う全てを支援しよう。
これより反抗を開始する!
この反抗にチタノの加護と導きを
「これは壮観だね! まさしく反抗の竜が舞い降りるに相応しい反抗だよ!」
反抗の竜チタノに選ばれた少女、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は眼前の光景に目を輝かせていた。長く虐げられてきた者達が集結し、悪しき支配者に反旗を翻す――これぞ世界の命運を左右する大反抗。チタノの加護を与えるに値する者達だ。
「チタノよ、私に反抗の祝印を」
ニクロムは【十三番目の加護】を希い、反抗の竜チタノと先代の反抗者達を召喚する。
左頬に刻まれた反抗の証を誇らしげに晒し、反抗の御旗を高々と掲げたその佇まいは、まさに反抗の申し子である。
「これより反抗を開始する!」
「「おおーーーっ!!!」」
ニクロムの号令に応じて前進する先代反抗者達と反抗の竜。彼らは『闇の救済者』達と一丸となって、立ちはだかる怨魂術士を打ち破らんと全力を以てその武威と加護を奮う。
「このドラゴンは一体……?」
「わからん、だが頼もしい援軍だ!」
この場に集った人々の中に、反抗の竜チタノの名を聞いたことのある者はいなかった。だが目的と志を同じくするのであれば種族の差など些細なこと。ダンピールのような異種族も味方として迎え入れてきた闇の救済者は、新たな反抗者とも躊躇いなく轡を並べた。
「この反抗にチタノの加護と導きを」
【十三番目の加護】の発動中、祝印を与えられたニクロム自身は戦いに参加することはできない。御旗を掲げて反抗しようとする者達を導き、声を上げて彼らを鼓舞するのみ。
だが、それは軍の士気を保つうえで重要なことでもあった。彼女の旗下で先代達は各々の反抗の証である武器を振るい、チタノは竜の爪牙をもって敵陣を薙ぎ払う。
「くっ……止めろ! これ以上先に行かせるな!」
止まらぬ快進撃により敵の本陣との距離が縮まっていく。これに焦りを感じた怨魂術士は【救われなかった魂達の嘆き】を発動、反抗者達の機動力を封じようとするが――。
「そんな呪いで反抗は止められないよ!」
ニクロムとチタノを介して『闇の救済者』にもたらされた加護は、怨魂の呪いをもってしても抑えきれなかった。反抗者は止まることなく進撃を続け、敵陣に食い込んでいく。
「ば、馬鹿な……!」
敵はまだ侮っていたのだ。人々の反抗の意志の強さを、叛意に応えるチタノの加護を。
まさに怒涛の勢いで、反抗の竜と反抗者達はこの地の領主の元に駆け上がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
【アドリブ、連携歓迎】
この世界は最早腐った林檎
食い潰され、価値などありはしない…生まれ育った時はそう思ったものだが
変わるものだな、ヒトは
ならば先達として祝福を
【指定UC】の援護範囲を自分だけでなく周りの闇の救済者まで拡大
電子の力にて芽吹けよ幻想の城、同胞を守護せよ…!
展開後は敵に肉薄
良いかい、前に出過ぎるな、徒党を組め!
我を喪う仲間がいたら取り押さえろ、詠唱する敵から潰すんだ!
敵のUCは強化した「精神攻撃」「呪殺弾」「範囲攻撃」「多重詠唱」を組み込んだ呪言で妨害
今一度命じる、「己の首を掻き切れ」「仲間は敵と胆に命じよ」
尚、此方に立ち向かう者は鎌鼬の属性を載せた鞭で切り捨てる
邪魔をするな、小僧共
「この世界は最早腐った林檎。食い潰され、価値などありはしない……生まれ育った時はそう思ったものだが」
ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)の眼前に広がっていたのは、若き日には夢想すらできなかった光景だった。ダンピールや人狼といった異種族までもが協力しあい、希望を抱いて絶望に立ち向かっている――あまりにも眩しい、反抗の篝火。
「変わるものだな、ヒトは」
その言葉は自分の諦観を超えてみせた者達への感嘆か、あるいは長き不老の彷徨のなかで見切りをつけていた己への自戒か。とうに夜闇に堕ちるのみと思われていた世界には、まだ変革の可能性が残されていたのだ。
「ならば先達として祝福を」
身に着けた「トートの叡帯」を媒体として、ヴォルフガングは【調律・機巧の樹國】を発動。帯状に擬態していたナノマシンが周囲に展開され、域内の物理法則を歪めていく。
「電子の力にて芽吹けよ幻想の城、同胞を守護せよ……!」
電脳魔術にて築き上げられたその領域は、彼自身だけでなく周りにいる『闇の救済者』の能力も強化する。反抗のために戦う意志が統一されているこの集団には、最も効果的な援護となるユーベルコードであった。
「すごい……力が湧いてくる!」
全身に溢れんばかりの力が漲るのを感じて、ぎゅっと拳を握る戦士達。ヴォルフガングはその様子を確認すると、彼らに手本を見せるように率先して駆け出し、敵に肉薄する。
「良いかい、前に出過ぎるな、徒党を組め!」
邪鞭「葬列の黒」を振るい敵をなぎ倒しながら、味方への指揮も行う。青年じみて快活な外面に反して、その指示には長い歳月を生きてきた者としての老練な堅実さがあった。彼の指揮の元で仲間達は連携して戦い、敵陣に深く切り込んでいく。
「調子に乗っていられるのもそこまでだ! 恐れよ、怨魂の力を……ぐッ?!」
闇の救済者の進撃を食い止めようと、怨魂術士は【永遠に続く怨嗟の螺旋】を唱える。
殺された仲間の魂を怨魂に変え、敵に恐怖をもたらすと共に大ダメージを与える術――だがそれが発動する前に、ヴォルフガングの紡いだ呪言が詠唱を妨害する。
「我を喪う仲間がいたら取り押さえろ、詠唱する敵から潰すんだ!」
自身も魔術師であるヴォルフガングは、敵対する魔術師に対処する方法も知っている。どんな術であれ一番シンプルなのは詠唱を潰す事。機巧の樹國で強化された彼の呪言は、敵の呪殺を封じるだけでなく、逆に敵を呪殺するほどの効力を発揮する。
「今一度命じる、『己の首を掻き切れ』『仲間は敵と胆に命じよ』」
ヴォルフガングが冷淡な口調で告げると、呪言にかかった敵の術士は操り人形のように自害するか、呪殺の波動を味方に放つ。敵が仲間の怨魂でユーベルコードを操るのなら、"仲間ではない"という認識を精神に刻みつけてやればいい。
「くっ……なんだ、怨魂を上手く操れん……!?」
「今だっ! くらえっ!!」
仲間割れに加えて術の不調。混乱の極みに達した敵軍に、闇の救済者達が攻め掛かる。
その連携は弱った獲物を集団で仕留める群狼の如し。ヴォルフガングという老獪な狼に率いられた同胞の群れは、個々人で戦う時より何倍もの力を引き出していた。
「っ……ならば、指揮官を潰せば……!」
群を束ねる者の脅威を実感した敵は、ヴォルフガングに狙いを定めて攻撃を仕掛ける。
が、それは余りにも彼本人の実力を低く見積もりすぎていた。彼が黒い邪鞭をひと振りするだけで、しなる縄に載せられた鎌鼬が敵を切り捨てる。
「邪魔をするな、小僧共」
真っ二つになった屍には目もくれずに吐き捨て、彼は敵味方の動きに目を配り続ける。
油断も隙もないとはまさにこの事か。寄り付く敵をことごとく退け、彼と同胞達は領主の館へと進撃を続けた。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
我々猟兵ではなく、この世界に住まう者達が立ち上がったか
喜ばしい事だ…私も負けてはいられんな
ナガクニとデゼス・ポアを装備
戦場をダッシュで駆け回り、怨魂術士達を切り裂いていく
敵を始末しながらも瞬間思考で戦場の状況を観察
もし闇の救済者達が窮地に陥っていれば即座に助けに行く
怨魂か…ならば、その欲に塗れた不浄な魂を断ち切ってやろう
闇を払い魔を退けるこの利剣でな
敵の怨魂が増えてきたらUCを発動
片手を三鈷剣と呼ばれる破邪の剣に変え敵集団を一気に攻撃
集まった怨魂ごと、奴らを今世から文字通り切り離す
魂を己の欲のままに弄び、無明の闇に落とすお前達に手向ける言葉はない
そのまま、骸の海に消え行くがいい
「我々猟兵ではなく、この世界に住まう者達が立ち上がったか」
感慨深げな表情で、戦場を眺めるキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。今まではオブリビオンに虐げられ、猟兵に守られるばかりだった民衆が、自らの手で未来を掴み取ろうと戦っている。少し前までは夢のような光景がここにあった。
「喜ばしい事だ……私も負けてはいられんな」
ふっと微笑みを浮かべると共に、彼女は黒鞘から短刀「ナガクニ」を抜き、呪いの人形「デゼス・ポア」を連れて戦場を駆け上がる。自身もこの世界の救済を願う1人として、今こそ一丸となって戦うべき時だ。
「人間風情が、すぐに皆殺しにして―――!?」
一陣の風のように前線に飛び出してきたキリカの斬撃が、怨魂術士の喉笛を切り裂く。
続いてデゼス・ポアも「ヒャハハハハ」と不気味に哄笑しながら全身を飾る錆びた刃を放ち、立ちはだかる敵に苦痛と死をもたらす。
「戦場での戦いなら慣れたものだ」
傭兵らしい無駄のない動きで敵を始末しながら、彼女はさっと戦場の状況を観察する。
全体として見れば『闇の救済者』の優勢。だがまだ油断はできない。広大な戦場の中で危機に陥っている味方を見つければ、人形を連れて即座に救援に向かう。
「思い知れ……ぎゃッ?!」
今まさに『闇の救済者』の1人を呪殺せんとしていた術士の首が、胴体と泣き別れる。
窮地を救ったキリカは短刀に付いた血を払いながら、目を丸くした仲間に声をかける。
「無事か?」
「え……あ、はいっ。助かりましたっ」
まだ若いその戦士は、はっと我に返って礼を言うと、剣を握り直して再び立ち上がる。
危ういところではあったものの、キリカの目から見ても彼の練度はなかなかのものだ。それが不覚を取りかけていたのは――当初よりも敵の力が増してきている事を意味する。
「集え怨魂よ! 我らに仇なす者共を滅ぼせ!」
戦場に満ちる死の気配が濃厚になるほど、【浄化されぬ怨みの魂】を操る怨魂術士の力は強大となる。猟兵や『闇の救済者』達が倒した敵の怨魂が、まだ生きている術士の元に集まって来ているのだ。
「怨魂か……ならば、その欲に塗れた不浄な魂を断ち切ってやろう。闇を払い魔を退けるこの利剣でな」
敵の怨魂が増えてきたのを感じたキリカは【ラ・ミラージュ】を発動し、自身の片腕を三鈷剣と呼ばれる破邪の剣に変える。状況に最も適した武器に自らの五体を変化させる、まさに戦場傭兵の真骨頂といえるユーベルコード――その特性はまさに変幻自在。
「なんだ、その剣は……ぐあッ!!?」
どよめく怨魂術士の集団を、三鈷剣の一閃が薙ぐ。仏教において降魔の剣として伝わるその法具は、魔を退散させ人々の煩悩や因縁をも断ち切るという。それをオブリビオンに対して振るった場合、どうなるか。
「魂を己の欲のままに弄び、無明の闇に落とすお前達に手向ける言葉はない」
ふっと三鈷剣を腕に戻したキリカの背後で、怨魂術士達の体が幻のように透けていく。
降魔の剣は集まった怨魂ごと、彼奴らの存在を今世から文字通り「切り離した」のだ。
「そのまま、骸の海に消え行くがいい」
「そんな―――!!!」
末期の言葉を残す暇もなく、死者の魂を弄んだ悪しき者たちは骸の海へと消え去った。
怨魂も共に浄化された事で、怨魂術士の力も弱まる。態勢を立て直した『闇の救済者』達はキリカに感謝を述べながら、戦線をさらに押し上げていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
【華組】
もう二年以上経つのね
思えば
私が初めて最初から参加したこの世界の依頼は
リミティアさんが出した物でした
当時の人々は…
抗う力を持たず
他人を殺めないと生きられなかった
更に恐怖で視野が狭まり
私達が現れても
殺す事しか頭になかった
だから…
私は生贄の身代りになり刃を受け
生贄が死なない状況を作った
殺せない事実と直面させ
新しい選択を考えられる様に
救済者達を見て
まだ小さな変化かもしれません
でも2年以上前と比べたら
大きな進歩です
希望の灯火を全力で守りましょう
救済者達を【祝音】と
破魔の祈りを籠めた浄化属性攻撃の誘導弾で
怨魂をスナイパーし援護射撃
危なければ呪詛耐性のオーラ防御結界でかばう
戦闘不能者は『聖鞄』に保護
四王天・燦
《華組》
あは、一揆だ
猟兵が吸血鬼を倒して平和を築くより、人の手で勝ち獲る平和の方が意味があるね
そのお手伝いに行きますか
人が不条理な理を越えられるのを見る為に
これほど組みしやすい敵はない
稲荷符大盤振る舞いで真威解放して戦場を神聖領域に変えて、怨魂を鎮めるぜ
機動力を奪い返せばダッシュで駆け巡りながらどんどん稲荷符を撒いて領域を広げ怨魂を慰め、力を振るえなくしてやる
そおら術士を討て!
救われなかった魂を連れてきてくれたんだ
成仏させてやろう、魂の救済だと救済者たちを大声で鼓舞するよ
機動力を奪い返せたら、窮地に切り込んで術士を斬るぜ
死んだら夜明けは拝めねーからな
最初この世界を見たときと随分変わったものだわ
「もう二年以上経つのね」
この世界で猟兵が本格的にオブリビオンとの戦いを開始してから、随分の時が流れた。今日に至るまでにあった数々の事件を、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は振り返る。
(思えば、私が初めて最初から参加したこの世界の依頼は、リミティアさんが出した物でした)
霧に隠された村で、生贄を求める悪しき領主を討ち、悲劇の連鎖から村人達を救った。あの頃はまだ、それが精一杯だったけれど――ひとつひとつ救い続けてきた命の積み重ねは『闇の救済者』という抵抗運動となり、世界を動かす大きなうねりを生み始めている。
「あは、一揆だ」
その成果が目に見える形となって現れた戦いを、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は笑いながら眺めていた。ほんの二年ほど前までは猟兵に守られるばかりだった民衆は、いつの間にか力を蓄え、自らの意志で立ち上がるほどに成長を遂げていたのだ。
「当時の人々は……抗う力を持たず、他人を殺めないと生きられなかった。更に恐怖で視野が狭まり、私達が現れても殺す事しか頭になかった」
燦と並んでその光景を眺めながら、シホはかつて目にしたこの世界の実情を語りだす。
一年に一度、一つの村につき一人――これは必要な犠牲なのだからと言い聞かせ、未来を担うべき子供さえ贄にする。誰もが苦悩と恐怖に苛まれながら、オブリビオンの力の前では逆らうこともできず、絶望に抗うことさえ忘れてしまった、そんな村があった。
「だから……私は生贄の身代りになり刃を受け、生贄が死なない状況を作った」
殺せない事実と直面させ、新しい選択を考えられる様に――聖者とはいえかなりの無茶をしたとは思う。恐慌に陥った村人達の殺意を浴びて、本気で怖かったのも覚えている。
けれどその行動は無駄にはならなかった。村人達は最終的に「生贄を捧げない」という選択肢を選び取り、決して逆らえなかったはずの領主への不服従を決意したのだ。
「あの時の村にいた誰かも、もしかしたらここに居るかもしれません」
シホは改めて『闇の救済者』を見る。ここからではとても全員の顔は確認できないが、逆に言えばそれだけの数の人々が反抗の意志を同じくしている。生まれや種族の垣根すら超えて、「領主への大々的な反抗」というより大きな選択を達成しようとしている。
「まだ小さな変化かもしれません。でも2年以上前と比べたら大きな進歩です」
「猟兵が吸血鬼を倒して平和を築くより、人の手で勝ち獲る平和の方が意味があるね」
シホの言葉に燦もこくりと頷き、霊力を込めた「四王稲荷符」を巫女服から取り出す。
ここまで燃え上がった反抗の篝火を、消させるわけにはいかない。長い長い雌伏の時を経て、彼らはようやく自分達の未来を掴もうとしているのだから。
「そのお手伝いに行きますか。人が不条理な理を越えられるのを見る為に」
「はい。希望の灯火を全力で守りましょう」
進撃する『闇の救済者』達を援護するために、二人の猟兵が動きだす。対する敵は死者の魂を操る怨魂術士。【救われなかった魂達の嘆き】で戦場を満たし、反逆者共を呪い殺さんとする、悪辣極まる術士達だ。
「これほど組みしやすい敵はない」
燦はにやりと笑いながら真威解放・四王稲荷符【陽】を発動。持ってきた稲荷符を大盤振る舞いで雨のごとく降らせ、戦場全体を稲荷神の霊威満ちる神聖な領域に変化させる。
「符術の極意とくと見よ! 御狐・燦が願い奉る。ここに稲荷神の園を顕現させ給え!」
不浄なる存在を相手にするために彼女が編み出したこの術は、戦場に満ちていた怨魂を鎮め、敵のユーベルコードを弱体化させる。呪縛慟哭による機動力封じさえなくなれば、シーフである彼女はその俊足を存分に発揮することができる。
「なッ、怨魂共が消えて……ぐあッ?!」
狼狽する術士達の懐に、風のように切り込む燦。軽やかに振るう霊刀「神鳴」の刃が、稲妻と共に敵を斬り伏せる。その手並みは、思わず見惚れてしまうほどに鮮やかだった。
「そおら術士を討て! 救われなかった魂を連れてきてくれたんだ、成仏させてやろう!」
最前線をダッシュで駆け巡りながら、彼女は近くにいる『闇の救済者』達を大声で鼓舞する。あの怨魂達もまたこの世界で虐げられていた死者ならば、このままオブリビオンの好きにさせていい訳がないだろう、と。
「これは魂の救済だ!」
「「おうっ!!」」
奮起する救済者達の前進に合わせて、燦はどんどん稲荷符を撒いて領域を広げていく。
怨魂を慰めれば敵は力を振るえない。術の使えない術士など刀のない侍のようなもの。まったくもって与しやすい相手である。
「くそっ……いやまだ、我らには同士の怨魂が……!」
だが稲荷の神域においてもしぶとく浄化されない怨魂もある。それは他ならぬ怨魂術士が死して変化したもの。成り立ちからして異なるゆえか、宿る怨念の量も尋常ではない。
「シホ、頼んだ」
「はい、燦」
そこで燦が援護を要請したのは、後方で待機していたシホ。彼女は破魔の祈りを籠めた浄化の誘導弾を二丁拳銃に装填し、トリガーを引く。緩やかな円弧の弾道を描いて飛んでいった弾丸は、過たず敵の怨魂を撃ち抜いた。
「なっ―――!」
「今だ!」
聖者の力を直接撃ち込まれれば、いかなオブリビオンの怨魂として現には留まれまい。
手持ちの怨魂を全て失った怨魂術士に、鬨の声を上げて『闇の救済者』が斬り掛かる。
「怪我をした方や戦えない方はこちらに。手当てします」
シホはそのまま後方からの援護射撃を続けながら【苦難を乗り越えて響く福音】の光で傷ついた味方を治療する。戦闘不能となった者は異空間に繋がる「聖鞄」の中に保護し、怨魂となる死者をこれ以上増やさないよう努める構えだ。
「死んだら夜明けは拝めねーからな」
燦も奪い返した機動力を十全に活かし、遊軍として窮地の味方の援護に立ち回る。無論それは人命を最優先とした行動だが――もし本当に彼らが危うくなれば、シホは身を挺してでもかばうだろう。そうなる前に助けてしまおうという算段も、多少はあった。
「おふたりの援護に感謝します」
「私達も足手まといにはなりません!」
燦とシホの援護によって、『闇の救済者』達は万全の状態で戦い続けることができる。猟兵に遅れまいと勇ましく戦う彼らの姿に、領主に怯えていた頃の絶望感はまるでない。
「最初この世界を見たときと随分変わったものだわ」
「ええ。本当に……見違えるようです」
その変化に感慨深いものを感じながら、ふたりはサポートとして彼らの戦いを支える。
世界はまだ闇に包まれている。だが、人々が夜明けを目にする「いつか」は、思っているよりも遠くはないのかもしれない――そう感じさせる光景が、ここにはあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎
フリーダムッ!!
ボクの知ってるある世界じゃこういうときはこう言うんだよ
言葉の意味は『自由を』!!
●見えざる牙
的な
さーてそれじゃあ大掃除をしよう!
この戦場にはこの世界で出会ったキミたちがふさわしい![餓鬼球]くんたち!お願い!
UCを発動!その効果で透明になった大きな餓鬼球くんたちをゾロゾロ放って怨魂くんたち怨魂術士くんたちをパクパク食べていってもらおう
あの子たち、見た目が怖いから
けどいい子なんだよ……多分!
さあ霧は晴れたよ!矢を放って剣を振るって槍を突きたてよう!
これまでの全てと、これからの全てのために!
自由を叫べーーーーーッ!!
「フリーダムッ!!」
ついに始まった『闇の救済者』達の大反抗、その陣営でいきなり叫びだしたのはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)。戦いの喧騒も吹っ飛ばすような元気な大声に、周りにいた者達はなんだろうと振り返る。
「ふりーだむ?」
「ボクの知ってるある世界じゃこういうときはこう言うんだよ。言葉の意味は『自由を』!!」
自由。それはこの世界の人々が奪われ続けてきた、そして取り戻そうとしているもの。
彼ら『闇の救済者』達の目的を端的に現す言葉としては、これ以上無いかもしれない。
「フリーダムッ!」
「「フリーダムッ!!!」」
誰かが真似をして叫びだしたそれは、またたくく間に周囲の人々による大合唱となる。
戦場に響き渡る「フリーダム」コールに、ロニは満足そうに笑ってぽんと手を打った。
「さーてそれじゃあ大掃除をしよう!」
呼び出すのは牙の生えた球体の群れ。小さいもので数メートル、大きいものなら数十メートルにも達するそれらは、ふわふわと空中に浮かびながらガチガチと牙を噛み鳴らす。
「この戦場にはこの世界で出会ったキミたちがふさわしい! 餓鬼球くんたち! お願い!」
今にも敵に喰らいつきそうな「餓鬼球」達に向けて、ロニは【神罰】を発動。既にある球体に光を透過する力を与えた上で複製して、百個近くに増えたそれを一斉に解き放つ。
ゾロゾロと放たれた透明な球体の群れは、立ちはだかる敵の怨魂術士、そして戦場に漂う怨魂に牙を剥き、ガブリと襲いかかった。
「ぐあッ! なんだっ?!」
餓鬼球を視認できない敵側からすれば、それは完全な不意打ちだった。ロニが操る球体の中でもひときわ凶暴なそれらは、実体のある物だけでなく無形のもの、例えば光や心や魂すらも吸い込み、齧り付き、そしてパクパクと喰らうのだ。
「見えざる牙、的な?」
そんな風に嘯きながら少年神が見守る中で、餓鬼球は次々と敵と怨魂を捕食していく。
魂まで喰らい尽くされれば、死後怨魂になる事すらできない。【浄化されぬ怨みの魂】により戦死者の数に応じて強化されていく怨魂術士の戦術は、ロニには通用しなかった。
「あの子たち、見た目が怖いから。けどいい子なんだよ……多分!」
「そ、そうなんですか……?」
一緒になって様子を見ている『闇の救済者』達は困惑顔。あの中に飛び込んでいけば、自分達まで噛み付かれそうな勢いなのだが――ロニの言うように根はいい子なのか、あるいはきちんと操作されているからなのか、敵味方無差別に餓鬼球が暴れることはない。
「さあ霧は晴れたよ! 矢を放って剣を振るって槍を突きたてよう!」
餓鬼球に周囲の怨魂を食べ尽くさせたところで、ロニは『闇の救済者』達に号令する。
怨魂さえなければ敵は術を使えない。つまり攻撃する絶好のチャンス。それに気付いた一同も奮起しておのおの武器を手に取り、一斉攻撃の構えを取る。
「これまでの全てと、これからの全てのために!」
弓弦がきりきりと鳴り、槍の穂が高々と掲げられ、剣が篝火に照らされて煌々と輝く。
皆の思いと高揚感が最高潮となる瞬間、暴力主義の神はあらん限りの声を張り上げる。
「自由を叫べーーーーーッ!!」
「「フリーーーダーーームッ!!!!」」
天まで届くような咆哮と共に、敵陣に飛び込んでいく『闇の救済者』達。まさに狂奔と言うべき猛然たる勢いで、丸腰に等しい敵の術士にありったけの力で武器を叩きつける。
「「ぐわあああぁぁぁっ!!?!」」
続いて上がったのは敵軍からの絶叫。神に焚き付けられた人々は、なおも怨魂を喰らい続ける「見えざる牙」と一丸となって、敵のボスを目指して駆け上げっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…そう。"貴方達"も猛っているのね。私も同じ想いよ
…ようやく此処まで来た。だけどまだ道半ば…
…死してなお救世の志を抱く者達よ
我らの誓いが彼奴らの怨嗟に劣るか否か…
この一戦で見事、証明してみせましょう
過去に左眼の聖痕に降霊した無数の魂の残像を暗視し、
心の中で救世の祈りを捧げ彼らの闘争心と同調してUC発動
…敵の業は私が引き受ける。貴方達は私の後に続いて
全身を呪詛のオーラで防御し時速一万km超の空中戦機動で敵陣に切り込み、
限界突破して魔力を溜めた闇属性攻撃の斬撃で敵陣をなぎ払い、
敵UCは攻撃の軌道を見切り大鎌に怨魂を受け流して吸収する
…無駄よ。死者の魂を力とするのは、何もお前達だけの特権では無いもの
「……そう。"貴方達"も猛っているのね。私も同じ想いよ」
長い雌伏に耐えてきた『闇の救済者』達が、ついに公然と吸血鬼に反旗を翻す大一番。
吸血鬼狩人としてこの世界で戦い続けてきたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、胸の高揚感とともに左眼の聖痕が疼くのを感じていた。
「……ようやく此処まで来た。だけどまだ道半ば……」
闇の支配から世界を救済し、人類が再び繁栄を取り戻す未来は、この戦いを乗り越えた先にこそある。猛る想いを力に変えながらも、ここで満たされてしまわぬよう――常より強い気魄を纏って、彼女は人類と吸血鬼が入り乱れる戦場に立つ。
「……死してなお救世の志を抱く者達よ。我らの誓いが彼奴らの怨嗟に劣るか否か……」
左眼の"代行者の羈束"に取り込んだ、無数の魂に語りかけるリーヴァルディ。吸血鬼の支配に苦しめられ、無念と共に死んでいった者達の残像が、その視界に浮かび上がる。
今や怨念と霊魂のみの存在となった彼らに救世の祈りを捧げ、猛る闘争心と同調する。霊魂と術者の精神が共鳴した時、【代行者の羈束・断末魔の瞳】の真の力が発揮される。
「この一戦で見事、証明してみせましょう」
聖痕より解放された呪詛のオーラがリーヴァルディを覆い、その身が空に舞い上がる。
まるで死者の怨念を翼にして纏っているような――両軍からはっきり見えるその姿は、敵には恐怖を、味方には畏敬を抱かせた。
「……敵の業は私が引き受ける。貴方達は私の後に続いて」
「はっ、はいっ!」
眼下の『闇の救済者』達にそう言い残すと、リーヴァルディは敵陣に切り込んでいく。
その飛翔速度は最大で時速一万km超。音すらも軽く置き去りにした超高速の空中戦機動に反応できるような敵は、ここの雑兵共の中にはいなかった。
「―――ッ!!!?」
目視さえ叶わぬ漆黒の斬撃が、怨魂術士の陣をなぎ払う。限界を超えた闇の魔力を溜め込んだ大鎌"過去を刻むもの"による一閃――霊魂達の闘志で強化されたそれは一騎当千の威力を発揮した。
「ッ……やってくれたな! 貴様が殺めた者達の怨嗟を知るがいい!」
幸運にも難を逃れた術士は【永遠に続く怨嗟の螺旋】を発動。死して怨魂と化した仲間達を操り、恐怖の波動を放つ。だが霊魂を纏ったリーヴァルディの【断末魔の瞳】には、彼らの呪術攻撃の軌道がはっきりと視えていた。
「……無駄よ。死者の魂を力とするのは、何もお前達だけの特権では無いもの」
「なッ?!」
リーヴァルディが大鎌をひと振りすると、怨魂が刃に吸い込まれていく。元よりこの力は怨念を喰らい力とする"名も無き神"の顕能であり、一介の魔術士に過ぎない怨魂術士よりも霊魂に対する支配力は強い。
「……我らの誓い、我らの想い、甘く見るな」
「「うおおおおおおおおっ!!!!」」
怨念を取り込み力を増した大鎌の闇撃が敵陣を薙ぐ。そこに続いてきた『闇の救済者』達も追撃を仕掛ければ、耐えきれなくなった術士達は将棋倒しのように総崩れとなった。
もはや隊列もなく潰走していく敵を追討ちながら、リーヴァルディ達は進撃を続ける。この地を治める吸血鬼領主『赤錆の騎士』の屋敷を目指して。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
【虜の軍勢】で前衛:ハーベスター、ジョーカー、異国の少女剣士、サーバントバニー。後衛:雪花、エビルウィッチ、『雪女』雪華、黒い薔薇の娘たち、狐魅命婦、神龍教派のクレリックを召喚
前衛組が各UC(【収穫の時や瞬時の首狩り、ブラックレディやレッドドッグ縮地法、ウサキックやウサキッス)で斬り込み、後衛組が援護(【とにかくふぶいてみる、ファイアー・ボール、氷柱散華、クイーンの嘆き、フォックスファイアフィーバー、神罰の吐息や神龍降臨の儀)で
後方から前衛組や救済者達を支援し、攻め込むわ!
自身は最前線で全体の指揮を執りつつ魔弾【高速・多重詠唱、誘導弾、早業】で各部隊を支援するわ!
さぁ、この世界を救うわよ!
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
人類と吸血鬼がそれぞれの軍勢をもってぶつかり合う大規模戦闘に、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は自らの【虜の軍勢】を連れて参戦する。
呼びかけに応じて「魔城スカーレット」より馳せ参じるのは、過去に彼女の虜になり僕となった者達。故郷の世界すら異なる非常に個性的な面々が、闇の戦場にずらりと並ぶ。
「まずは前衛組が各ユーベルコードで斬り込み、後衛組は後方から前衛組や救済者達を支援。各自全力を尽くしなさい。貴女たちの働きに期待しているわ」
「「はい、フレミア様!」」
指示通りに大きく前後衛の二手に分かれ、行動を開始する眷属達。フレミア自身はその最前線で真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を掲げて、麗しくも勇ましく号令を発する。
「さぁ、この世界を救うわよ!」
「「はいっ!!!」」
先陣を切ったのは「異国の少女剣士」。【縮地法】による高速の踏み込みから放たれる斬撃は、回避する間もなく敵を斬り伏せる。その後から「ハーベスター」「ジョーカー」が続き、死神のような大鎌を振りかざして暴れまわる。
「くっ、何だこいつらは……?!」
ダークセイヴァーの住人とは明らかに毛色の異なる集団の攻撃に、敵は混乱していた。
動揺から対応の遅れる敵軍に対し、フレミアに指揮された【虜の軍勢】の行動は迅速。後方に控えていた眷属グループが、各々ユーベルコードによる遠距離攻撃を放つ。
「今よ!」
「はいなの~!」
雪女見習いの「雪花」と雪女の「雪華」達による吹雪と氷雪が、敵の足元を凍らせる。
動きが止まったところに「エビルウィッチ」の【ファイアー・ボール】、「狐魅命婦」の【フォックスファイアフィーバー】が放たれ、敵陣を火葬場に変えた。
「す、凄い……!」
見たこともない強者達の戦いぶりに、目を丸くする『闇の救済者』達。こうしてはおれまいと彼らもまた奮起し、各々の武器を構えて吶喊する。ダークセイヴァー限定とはいえ様々な種族やジョブが集まった彼らもまた、一筋縄ではいかない戦闘集団だ。
「その調子よ。各自、敵の反撃に注意しなさい!」
フレミアは最前線で全体の指揮を執り、槍の穂先から魔弾を放って各部隊を支援する。
指揮官と戦士の役割を同時に果たすのは容易なことではないが、彼女にはそれを可能にする才覚があった。吸血姫のカリスマに惹かれた眷属達は手足のごとく彼女に付き従い、その命令を忠実に実行する。
「ぐぬぬ、このままやられる訳には……ぐあッ?!」
「はい、ダメダメ♪」
【浄化されぬ怨みの魂】を集めて反撃に転じようとする怨魂術士に、飛び掛かったのは「サーバントバニー」。投げキッスの衝撃波で相手を怯ませてからのジャンプキックが、地面ごと敵を粉砕する。
「俺たちも行くぞ!」
「おおっ!!」
敵軍を穿つその一撃の後に押し寄せる『闇の救済者』。後方からは【クイーンの嘆き】を発動した「黒い薔薇の娘たち」や「神龍教派のクレリック」による援護射撃が放たれ、さらに【神龍降臨の儀】で召喚された空想の神龍が突撃を援護する。
「このまま領主の屋敷まで攻め込むわよ!」
「「おおーーーっ!!」」
フレミアに率いられた軍勢は次々と敵部隊を撃破し、鬨の声を上げて快進撃を続ける。
一見して何も接点もないような者達が、この世界を救うという目的の為に一丸となる。それは夜闇に覆われたこの世界の、明るい未来の可能性を象徴するような光景だった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
【騎神】
私もお手伝いしますね
士気高揚時:(植物の女神ゆえ)光の女神?そんな頼もしい人がいるんですね♪と振り返るが誰もおらず…。
声と自分への視線で悟り、勘違いに赤面しつつ取り繕うように真の姿になって、「皆さんは私が護ります。だから力を合わせて勝って生き延びましょう。無謀な戦いはメッですよ。」と精一杯演説。
UCで除霊能力強化。
皆さんの武器に除霊・破魔・浄化・付与属性攻撃・範囲攻撃で怨魂を鎮める力を付与。
空中浮遊・自身への念動力・空中戦にて空を飛んで同行。
結界術で怨霊退散結界を味方周辺に展開して援護。
怨魂さん達は除霊・浄化・破魔・光の属性攻撃・全力魔法・範囲攻撃・高速詠唱で纏めて鎮魂。
どうか安らかに
トリテレイア・ゼロナイン
【騎神】
(闇の救済者の今後の戦いに備え騎馬戦力運用の経験積ませる為、騎馬部隊引き連れ)
ここまでの戦力とは…感慨深いものがありますね
さて、これから突撃を敢行いたしますが…
詩乃様、どうぞお力添えをお願い致します
(槍突き上げ)
私達に光の女神のご加護がある以上、闇の軍勢など恐れるに足らず
さあ、皆様の力を今こそ示す時です!
(士気高揚の象徴としての担ぎ上げ…ご容赦を)
……詩乃様、詩乃様
貴女の事です(小声)
…全騎突撃!
機械馬に騎乗してのUC突撃で敵軍勢蹴散らし
槍を振るい馬で踏みつけ格納銃器を乱射
先頭で注目集めることで敵の術から味方かばい除霊対象限定
普段は対処に苦慮する霊魂ですが…今この瞬間は百人力です
「ここまでの戦力とは……感慨深いものがありますね」
領主打倒のために集結した『闇の救済者』連合軍の陣容に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は壮観さを覚えていた。志は高かれども戦力としては心許なかった発足初期の彼らと比べれば、もはや規模も練度も比較にならない。
「詩乃様、どうぞお力添えをお願い致します」
「はい。私もお手伝いしますね」
この戦いを『闇の救済者』の今後の糧にしようと考える機械仕掛けの騎士に、同行するのは大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)。異世界の女神と騎士という異色の【騎神】コンビには、多くの味方からの注目も集まっていた。
「さて、これから突撃を敢行いたしますが……」
トリテレイアが引き連れるのは、『闇の救済者』の中でも馬の扱いに長けた者達で編成された騎馬部隊。野戦において重要な役割を果たすこの兵科には、今回の戦いで運用経験を積ませておきたい。そのためにまず必要になるのは、彼らの士気を高めておくこと。
「私達に光の女神のご加護がある以上、闇の軍勢など恐れるに足らず。さあ、皆様の力を今こそ示す時です!」
馬上槍を突き上げ、高らかに宣言する。古今において神や英雄といったシンボリックな存在は、戦場において兵士達の心の支えとなる。彼はその役割を同行する詩乃に託した。
(士気高揚の象徴としての担ぎ上げ……ご容赦を)
申し訳なさを感じつつも味方の手前、それをひた隠すトリテレイア。しかし彼の前フリを受けても当の詩乃はピンときていない様子で、はんなりとお淑やかに微笑んでいる。
「光の女神? そんな頼もしい人がいるんですね♪」
と後ろを振り返るが、当然誰もいない。彼女は神は神でも光ではなく植物を司る女神であり、それゆえ自分以外にも神が来ているのかと勘違いしたようだ。普段はしっかり者のように見えて、意外と抜けているところもある女神である。
「あら? 誰もいませんけれど……」
「……詩乃様、詩乃様。貴女の事です」
きょとんとしてる詩乃に、トリテレイアが耳打ちする。その声と、周囲から自分に向けられる視線でようやく勘違いを悟った彼女は、かあっと赤面しつつ愛想笑いを浮かべた。
「あ、あはは……失礼致しました」
取り繕うようにぱたぱたと手を振ってから、真の姿――女神アシカビヒメの姿になる。
天女のような羽衣を纏い、華麗な意匠の黄金の冠を戴いたその御姿は、困惑気味だった『闇の救済者』達を思わず見惚れさせる、美しさと神々しさを兼ね備えていた。
「皆さんは私が護ります。だから力を合わせて勝って生き延びましょう。無謀な戦いはメッですよ」
先程のうっかりの動揺が抜けきっていないのか、若干たどたどしくも精一杯演説を行う"光の女神"。怪しい所はあったものの、その本心からの慈愛の想いは伝わったようだ。
「女神様がついていらっしゃるのなら……この戦い、勝てるぞ!」
「ああ! 俺たちみんなで、この世界に光を取り戻すんだ!」
特に直属となる騎馬部隊の士気の高揚度は明らかで、それはアイドルへの熱狂に近い。
なんとか作戦が上手くいったことを確認したトリテレイアは、改めて部隊に号令する。
「……全騎突撃!」
「「おおーーーーっ!!!!」」
機械白馬「ロシナンテⅡ」に騎乗したトリテレイアを先頭に、戦場を駆ける騎馬部隊。
まずは手本とばかりに敵陣に飛び込んだ【機械騎士の突撃】が、怨魂術士を蹴散らす。
「ぐわぁっ!?」
槍を振るい、馬で踏みつけ、格納銃器を乱射しながら激走する騎士。騎兵の強さは機動力と高所からの攻撃力に加え、馬体の重量が生み出す衝撃力。これらを十全に活かす術を心得た機械騎士にかかれば、雑兵の群れなど鎧袖一触である。
「遅れず続け! 騎士様だけに戦わせるな!」
トリテレイアが突き破った進路を、『闇の救済者』の騎馬部隊が駆ける。先頭で騎士が敵の注目を集めているおかげで、彼らは余裕をもって騎乗や攻撃に集中する事ができた。
「ぐうっ……こ、これ以上行かせるものか! 怨魂の力を見るがいい!」
だがその分、先頭の騎士は攻撃のターゲットになる。進撃を止めようとする怨魂術士は死んだ仲間を【永遠に続く怨嗟の螺旋】に変え、呪殺の波動として放たんとするが――。
「これより神としての務めを果たします」
念動力により空中に佇む詩乃が一声発すると、怨魂が発する呪いはたちまち霧散する。
【神事起工】を発動し、自身の神力と天地に宿りし力、そして人々の願いと想いにより強化された彼女の威光は、怨霊退散の結界となって騎兵部隊を包みこんでいた。
「我らの術が効かぬだと?!」
敵の術士達の驚きはそれのみに留まらなかった。詩乃が祝詞のような呪文を唱えると、太陽の輝きを思わせる光の雨が降り注ぎ、周囲に漂っていた怨魂が消えていく。まさしく"光の女神"の名に恥じない、浄化と鎮魂の力であった。
「どうか安らかに」
死者の霊に安息をもたらす詩乃の権能は『闇の救済者』にとって最大級の援護となる。
彼女の加護は味方の武器にも怨魂を鎮める力を付与し、霊に対抗する術を与えていた。
「普段は対処に苦慮する霊魂ですが……今この瞬間は百人力です」
女神の加護を受けた馬上槍や弾丸で、並みいる怨魂の群れを祓ってゆくトリテレイア。こうした神秘を行使する術に疎い彼としては、非常にありがたい援護である。それは祈るくらいしか死者を退ける術を知らなかった、後続の騎馬隊にとっても同じだった。
「俺たちには光の女神様とその騎士様がついている!」
「恐れずに進めー!!」
【騎神】のふたりの力を体感したことで『闇の救済者』騎馬隊の士気は最高潮に達し、馬蹄の音を高らかに響かせながら鬨の声を上げる。対して怨魂の力が通じない敵の術士達は完全に萎縮し、騎馬の突撃に轢き潰されないよう逃げ惑うばかり。
「ひいいいいっ!?」
情けない悲鳴を上げる敵をはねのけて、光の女神に見守られた騎馬隊は機械騎士を先頭にして、敵陣のさらに奥深く、その向こうに見える『赤錆の騎士』の館に迫っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふむ…この世界もなんだかんだ盛り返してきてるね…
…主役は彼らとしても…手伝いぐらいはしようか…
…飛行式箒【リントブルム】で空を飛んで戦場全体を観察…術式の光で『闇の救済者』の指揮官に合図を送ってから【神話終わる幕引きの舞台】を発動…
…相手が怨念や呪詛を使うのであれば…その手段を無効化すると言うのが早道…戦場全体の呪詛と加護を減衰させるよ…
…さて…本題はここから…得意戦術が使えなくなるなら…相手は指揮官に指示を求めるはず…
…その動きから指揮官の位置を把握…術式装填銃【アヌエヌエ】での狙撃に回るよ…
…これだけの大軍がぶつかり合う以上…指揮官の有無は大事…首狩り戦術で援護していくとしようか…
「……ふむ……この世界もなんだかんだ盛り返してきてるね……」
始めて訪れた頃とはまるで違う情勢の変化に、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は感心したように呟く。オブリビオンに完全支配された状態からここまで立ち直る事ができたのは、多くの猟兵の活躍と、この世界の住人の力だろう。
「……主役は彼らとしても…手伝いぐらいはしようか……」
飛行式箒【リントブルム】に乗って戦場全体を観察しながら、彼女は頃合いをみて術式の光を発する。暗い夜空にチカチカと瞬くその輝きは、地上にいる『闇の救済者』に送る合図だった。
「上空注意! だが恐れることはない、味方の援護が来るぞ!」
合図を受け取った『闇の救済者』達の指揮官は、直ちに付近にいる味方に指示を出す。
それを見ながらメンカルは呪文を唱えると、【神話終わる幕引きの舞台】を発動する。
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
その瞬間、天空より降り注ぐは数多の鍵剣。世界法則を改変する文字通りの鍵(キー)であるそれは、地面に突き刺さると共に結界を構築する。戦場全体を包み込むように展開されたこの結界には、あらゆる加護と呪詛を極度に減衰させる作用があった。
「……相手が怨念や呪詛を使うのであれば……その手段を無効化すると言うのが早道……」
怨魂を操る敵の術式を封じるべく発動されたユーベルコードは、すぐに劇的な効果を発揮した。戦場に満ちていた怨魂の力が結界により弱められ、呪術の効力が大幅に弱まる。
「なっ……なにが起こった?!」
【救われなかった魂達の嘆き】で相手の進軍を阻もうとしていた怨魂術士達の動揺は、上空からでも見て取れるほどだった。そこにすかさず、合図を受けていた『闇の救済者』達が攻め込み、術の使えない敵を蹴散らしていく。
「行け! 進めッ! 俺たちの力を示す時だ!」
呪詛も加護も関係なく、自らの力で未来を切り拓かんとする「只人」の彼らには、今の戦場環境のほうが合っている。止まらない救済者の快進撃は、もはや現場にいる個々の兵の判断ではどうにもならない状況になっていた。
「……さて……本題はここから……得意戦術が使えなくなるなら……相手は指揮官に指示を求めるはず……」
窮地に立たされた敵軍の動きを、メンカルはじっと観察していた。一時後退して態勢を立て直すにせよ、結界の破壊を試みるにせよ、判断を下して軍を動かす者がいるはずだ。
領主の『赤錆の騎士』が屋敷にいるなら、現場指揮官は部隊の中にいる怨魂術士の誰か――動揺する兵達の動きから、魔女はその位置を見つけ出した。
「た、隊長! どうすれば……!」
「落ち着け! ここで浮き足立てば敵の思う壺だぞ!」
必死に軍の統制を保とうと檄を飛ばす、他よりも目立つ意匠の外套の術士。そいつに狙いを定めてメンカルは術式装填銃【アヌエヌエ】を構え、空中からの狙撃態勢に入った。
「とにかくここは退いて、あの結界を解除する方法を探り……がッ?!」
流星のような尾を引いて空を翔けた、一発の術式弾が怨魂術士達の指揮官を撃ち抜く。
銃声は戦いの喧騒に紛れ、狙撃に気が付いた者はほとんど居なかった。だが、その一発の銃弾が仕留めた一人の敵が、戦局に与える影響は大きい。
「……これだけの大軍がぶつかり合う以上……指揮官の有無は大事……」
指揮統率を失った敵部隊の動揺は、もはや抑えがきかない。兵を束ねる者がいなくなった軍は烏合の衆であり、高度に連携された今の『闇の救済者』には及ぶべくもなかった。
雄叫びを上げて一丸と突き進んでいく人間達に、敵の術士達はあわあわと惑うばかり。
「……この調子で首狩り戦術で援護していくとしようか……」
快調に進撃する『闇の救済者』達を見たメンカルはどこか満足げに、そしてまた術式銃を構えて次の部隊の指揮官を狙う。怨魂も統率力も奪えば、もはや敵軍に勝ち目はない。
鍵の結界に囚われ、魔女の狙撃手に狙われた怨魂術士達は、やがて潰走を始める――。
大成功
🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
練度、数とも戦力に申し分ない。
だが、あの怨魂を受けてしまったら……
恐怖で士気崩壊に繋がりかねん。
奴等の怨みの魂はオレが請け負おう
サイコパームから放つ呪殺弾で先制攻撃
制圧射撃後に闇の救済者達と共に切り込む
ここからが本番だ
「禍ツ凶魂」発動
姿無き魂をも捕え取り込む……それがソウルトーチャーの真の能力
禍き呪獣よ、怨魂を喰らい尽くせ!
怨嗟の螺旋はここで断ち切る!
さぁこれでも死んで怨魂と化すか?
呪獣に魂を咀嚼されたいならそうするがいい。
奴等に恐怖を与え士気を挫く
後は数で押しきれる筈だ!
「練度、数とも戦力に申し分ない。だが、あの怨魂を受けてしまったら……恐怖で士気崩壊に繋がりかねん」
反抗の牙を研ぎ上げた『闇の救済者』の実力を高く評価しつつも、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)にはひとつの懸念があった。それは戦いで死者が増えるほど力を増す【永遠に続く怨嗟の螺旋】。死者多数の劣勢でこそ、敵の怨魂術士は真の力を発揮する。
「奴等の怨みの魂はオレが請け負おう」
ここまでの優勢の流れを覆させるわけにはいくまいと、彼は戦いの最前線に飛び出す。
心に漲る静かな決意は、体内に埋め込まれた「サイコパーム」によって光に変換され、かざした掌からビームとして放たれる。それは闇を切り裂き、敵を射抜く光の矢だ。
「ぐっ……!?」
光線の連射を浴びせられ、前線の怨魂術士がたじろぐ。制圧射撃で敵を怯ませた直後、ナギは呪獣「ソウルトーチャー」を引き連れ、『闇の救済者』と共に敵陣に切り込んだ。
「ここからが本番だ。禍つ魂の封印は今解かれる――恐怖を知れ」
同時に発動するのは【禍ツ凶魂】。自らの血を代償にしてソウルトーチャーの封印を解き、呪獣としての最終形態、咎人の肉と骨でできたおぞましき殺戮捕食態に変化させる。
人とも獣ともつかぬ異形と化したソレは、耳を塞ぎたくなるような咆哮を上げ、血と涎のしたたる牙を剥く。その眼が見据えるものは、本来肉眼では捉えられない魂の在り処。
「禍き呪獣よ、怨魂を喰らい尽くせ!」
姿無き魂をも捕え取り込む――それがソウルトーチャーの真の能力。術士達の使役下にあった怨魂が異形の獣に貪り食われ、吸収されていく。呪いの源である怨みの魂を失ってしまえば、彼奴らはもう術を使えまい。
「怨嗟の螺旋はここで断ち切る!」
「やっ、やめろッ!!」
敵は慌てて呪獣を取り押さえようとするが、傍にいるナギのレーザー射撃による牽制、そして『闇の救済者』の数に阻まれ近付けない。多くの死で満たされ、大量の怨魂が漂うこの戦場は、ソウルトーチャーにとって格好の餌場に過ぎなかった。
「さぁこれでも死んで怨魂と化すか? 呪獣に魂を咀嚼されたいならそうするがいい」
貪欲に魂を喰らい続ける呪獣を横目に見つつ、ナギは敵の怨魂術士に向けて言い放つ。
今、呪獣が喰らっている魂は、術士の同胞が死して姿を変えたものだ。同胞の力になれるならまだしも、あんな怪物の餌食になるのは――想像するだけでもゾッとする拷問だ。
「うっ……」
悍ましい末路を考えてしまった術士達の顔は恐怖に染まり、竦んだ足が後ろに下がる。
武器を失い、士気の挫けてしまった敵など、もはや恐るるに足らぬ雑兵の群れだ。
「後は数で押しきれる筈だ!」
「「はいッ! 行くぞぉ!」」
ナギの号令の下、ここぞとばかりに一斉攻撃を仕掛ける『闇の救済者』達。人として鍛え上げた練度と士気の高さ、何より数の力は、今の怨魂術士の軍を完全に凌駕している。
あとはひと押ししてやるだけで、恐怖に駆られた敵軍は崩壊を始め――逃げる敵を追撃しながら、彼らは戦場を一気に攻め上がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
奪還。叛逆…
傭兵として数多見て来た。
成功も、無残な終わりも。
なら己がすべきは――
意気を挫かぬ為、止めは闇の救済者に委ね。
けれど(先に助けには入りますが)敵は脅威と、
未だ全て成せる域には至らないと認識頂き。
…何より。
諦め、捨て鉢は許しません。
『何が何でも生きて帰る』
それが次へ、この先へと繋がると。
一時の助力だけで無く、示す事。
敵味方の配置。何処が優位か、不利か。
戦場全体を把握。
特に猟兵の少ない側のカバーを。
敵の術式の兆候、標的等を見切り、危険な者はワイヤーで釣り救助。
駆け、同時に張る鋼糸。一気に引き斬り範囲攻撃、傷深め。
止めは彼らに任せ。
強化者は…
手は覚えました。邪魔させませんよ?
放つ
――拾弐式
「奪還。叛逆……傭兵として数多見て来た。成功も、無残な終わりも」
吸血鬼の支配に叛旗を翻した『闇の救済者』達の姿を見つめながら、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は独り言つ。幾つもの戦場を渡り歩く中で目にしたのとこれも同じ。勝利の先には栄光を掴めるだろうが、敗れればこれまで以上の絶望が待っている。
「なら己がすべきは――」
思案を巡らせつつ戦場を見渡し、敵味方の配置の何処が優位か、不利か、全体を把握。
特に戦っている猟兵の少ない側を確認すると、すぐさまそちらのカバーに向かった。
「思い上がるなよ、人間風情が!」
「くっ……!」
怨魂術士で編成された敵軍と、様々な種族とジョブで構成された『闇の救済者』達は、激しい戦いを繰り広げていた。人類側もかなりの実力をつけてきたとはいえ、まだ猟兵の援護なしではユーベルコードを操るオブリビオンに苦戦する場面もある。
「貴様らが殺めた我らが同胞の魂が、我らの力となるのだ……!」
特に【浄化されぬ怨みの魂】を集めた怨魂術士は、開戦当初よりも大幅な強化を遂げている。予想以上の手強さに焦りを見せる人々に、死をもたらす呪いの波動が放たれ――。
「そうはさせません」
「うわッ?!」
その刹那、カバーに駆けつけたクロトの放ったワイヤーが、窮地の味方を釣り上げた。同時に彼は付近の敵から術の予兆を見切り、先んじて鋼糸をグローブから張り巡らせる。
「ぐおっ?!」
駆ける鋼糸は術士達を縛り上げ、極細の刃となってその身を傷つける。クロトが一気にそれを引き絞れば、傷はより深く抉り斬られ、たまらず漏れた悲鳴が戦場に響き渡った。
「ご無事ですか?」
「え、ええ……少し油断していました」
危ういところを救われた『闇の救済者』は、冷や汗をぬぐいながら表情を引き締めた。
長い雌伏を経て蓄えてきた自分達の力は、吸血鬼にも敵うものだと思っていた。それは事実だ。だが敵の脅威が衰えたわけではない。100年に渡り世界を支配してきた吸血鬼は現在も油断ならない勢力を保っている。
「私達は、未だ全てを成せる域には至っていないのですね……」
それを彼らに認識させることが、クロトの目的のひとつだった。無論、ピンチになれば生命を落とすよりも先に助けには入るが、敵味方の戦力差を正しく把握することは、今後も戦い続けるにおいて重要である。たとえ今回勝ったとしても、驕ってはいけないのだ。
「……何より。諦め、捨て鉢は許しません」
未来を求める反抗はまだ始まったばかり。この一戦で全てを燃やし尽くすのではなく、『何が何でも生きて帰る』という意志を彼らに抱かせる事。それが次へ、この先へと繋がると、一時の助力だけでなく示す事が、クロトの最大の目的だった。
「……そうですね。俺も生きて、この世界の夜明けが見たいですから」
「なら、良いでしょう。止めは貴方がたに委ねます」
人々の神妙な表情を見るに、その想いはしかと伝わったようだ。クロトは満足げに口元に笑みを浮かべ、縛り上げた敵の止めを任せる。そして自身は拘束を脱した敵の対処に。
「手は覚えました。邪魔させませんよ?」
「なにを―――ッ」
【浄化されぬ怨みの魂】で強化された敵も、先の攻撃で速度や行動特徴、次手の傾向は全て読めている。戦場で研鑽を重ねたクロトの技は、敵を識ることでより鋭利さを増す。
「――拾弐式」
再度放たれた鋼糸の斬撃は、怨魂術士に反応も許さず、五体をバラバラに切り裂いた。
その恐るべき技量に敵は戦慄し、味方は驚愕と憧憬と高揚を抱く。数多の視線が集まるなか、その男は味方を「生き延びさせる」という目的の下、糸を振るい続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
漸く、この世界にも漸く……!
はっきりとした光明が見えてきたって訳ね
叛逆の刻が来た、奴らを喰らい尽くし、今を生きる者達の尊厳を取り戻す為に
UCを発動し、主に生命力の弱い人間の味方を対象に一時的にデッドマン化させる
味方に生やした耐性技能で敵のUCを防御させつつ
さらにUCを使用可能とする事で戦闘力を強化する
死ななければ奴らの術中に取り込まれる事はないわ
いいえ、死なせはしない、決して
死して後続の礎に、なんて考えは捨てなさい
最後の最後まで生き延びなさい
共に見ましょう、いつか必ず、この世界に昇る陽光を
「漸く、この世界にも漸く……! はっきりとした光明が見えてきたって訳ね」
昂ぶる情念を堪えきれぬように、噛みしめるように声を上げ、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)はぐっと拳を握る。横暴な吸血鬼に家畜の如く虐げられてきた人間が、公然と叛旗を翻す時がついに訪れたのだ。
「叛逆の刻が来た、奴らを喰らい尽くし、今を生きる者達の尊厳を取り戻す為に」
この身は継ぎ合わされた屍なれど、魂に宿る想いは同じ。金の瞳が燃えるように輝き、影の眷属らも外套の内側からざわざわと蠢き出す。その容貌は怪異なれども、恐れを抱く『闇の救済者』はいない――志を同じくするならば、屍人であろうと同志なのだから。
「力を貸すわ。最初は慣れないかもしれないけど、我慢しなさい」
メフィスは躰から滲み出る「飢渇に喘ぐ」眷属を、その『闇の救済者』に寄生させる。
一時的に対象をデッドマン化させる【染】――これにより彼らはメフィスと同等の呪詛や苦痛、狂気への耐性を獲得する。いずれも敵の呪いを防ぐのに有効な特性だ。
「これは……!」
「ほら、最高に便利で忌々しい躰でしょ?」
自虐混じりにメフィスがそう語る一方で、『闇の救済者』達は身体から湧き上がる力に驚いているようだった。【染】により与えられるのは耐性だけではなく、本来なら猟兵かオブリビオンにしか使えない力――ユーベルコードさえも限定的に使用可能となるのだ。
「死ななければ奴らの術中に取り込まれる事はないわ……いいえ、死なせはしない、決して」
デッドマン化した『闇の救済者』の前で、メフィスは静かに、だが力強い語調で語る。
この力を与えたのは、決して彼らに屍兵となれという訳ではない。どんな死の呪いにも耐えうる躰を、どんな激戦となっても生還できるだけの戦闘力を、彼らに与えるためだ。
「死して後続の礎に、なんて考えは捨てなさい。最後の最後まで生き延びなさい」
屍の山ならもう十分過ぎるほど積み重なっている。吸血鬼の支配から真の意味での脱却を目指すなら、誰一人として欠けず失われず、犠牲とならない完全勝利こそが望ましい。何より、この先にあるはずの輝かしい明日を誰かが見られない、そんな結末は許せない。
「共に見ましょう、いつか必ず、この世界に昇る陽光を」
「「はいッ!!」」
ニィ、と歯を見せてメフィスが笑うと、居並ぶ『闇の救済者』達は力強い声で応じた。
"死"中にて活を掴み取る――決意を一つにした彼女らは、何者にも殺せぬ屍人の軍勢として、猛然と戦線を駆け上がる。
「止まれッ! 貴様ら……なぜ止まらぬ?! なぜ死なぬ?!」
敵の怨魂術士は【救われなかった魂達の嘆き】を放ち、その進撃を封じようとするが、死者の怨念で屍人を縛れるものか。一気に肉薄したメフィス達は骨身を変形させた武具や牙を使って、敵陣を文字通りに"食い破って"いく。
「罪の数だけ悶え苦しめ」
「「ひっ……ぐわぁっ!!?」」
背骨が変異した【鋸】状の肥大化した尾刃が、猛攻にて体勢を崩した敵軍をなぎ払う。
突破口を開いたメフィスはそのままデッドマン仲間を引き連れ、奥に奥にと突き進む。
この地を治める敵の領主――『赤錆の騎士』の屋敷は、もう目前にまで迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『赤錆の騎士』
|
POW : 強撃
【瞬時に間合いを詰め、二刀の剣】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 致命へと繋がる
【剣による打ち払い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 切り裂き詰める
対象のユーベルコードに対し【超常すら切り裂く斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:善知鳥アスカ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「見えたぞ! あれが領主の屋敷だ!」
敵軍との熾烈な戦いを経て、猟兵と『闇の救済者』はついに領主の屋敷になだれ込む。
吸血鬼の邸宅としては華美な装飾の少ない、質実剛健という印象のあるその建造物は、むせるような錆の匂いに包まれていた。
「……これで何度目だろうか。人が吸血鬼の支配に叛逆するのは」
そして、屋敷の最奥で猟兵達を待ち受けていたのは、全身を甲冑で包んだ1人の騎士。
『赤錆の騎士』という異名が示すとおり、彼の鎧と剣は黒ずんだ赤錆に覆われていた。ただ手入れを怠るだけではこうはならない。恐らくは大量の血を――その剣で粛清した、数多の人間の返り血を浴びてきた結果がそれなのだ。
「これほど大規模な反乱が起きた例は、私の記憶にはない。だが、お前達のような者が現れるのはこれが最初ではないし、最後でもないだろう。私も、かつてはその1人だった」
兜の奥から発せられる騎士の声もまた、錆びついたようにざらついて聞き取りづらい。
だがその声色からは、単なる敵意には留まらない複雑な情念が感じられる。まるで過去を懐かしむような、届かない未練を目の当たりにさせられているような。
「かつての私は、人は吸血鬼に勝てると信じていた。世界を闇に閉ざす悪意から、この剣で人々を守るのだと……だが私は敗れ、忌むべき敵の同族に、卑劣な裏切り者と化した」
吸血鬼として蘇った『赤錆の騎士』は、吸血鬼に仇なす者を始末する"掃除屋"として名を知られている。かつて守りたかった者達の返り血を浴び、錆を纏った裏切りの騎士。
彼が手にかけてきた者の中には、今の『闇の救済者』に繋がる者も多くいたのだろう。
「お前達もまた、同じ末路を辿るのだろう。だがもし、違うと言うのであれば……」
騎士は二刀の構えを取り、静かな殺気を向ける。錆びついたみすぼらしい外見ながら、その佇まいからは強い気迫を感じる。いち地方の小領主とはいえ、その実力は本物だ。
「……私を越えてみせろ」
『闇の救済者』達の多くは、まだ抵抗を続けている敵軍と屋敷内で戦いを続けている。
ここで猟兵が赤錆の騎士を討てば、領主を失った敵軍は瓦解し、勝敗は決するだろう。
「ここは我々が食い止めます! 皆さんは領主を!」
今も懸命に戦う人々から、想いと希望を託されて、猟兵達は赤錆の騎士と対峙する。
この反抗が絶望に潰えるのか、それとも希望に繋がるのか――ここが正念場である。
カビパン・カピパン
「手荒い歓迎だな」
一点を見つめている。その先には騎士が立っていた。
「絶望や孤独に心を閉ざした者よ、神は人類が光ある明日を手にするに相応しいか見定めておられる。心に僅かな光あれば秩序を取り戻せるであろう。私は皆と共に進む、闇を裂き道を創るため。皆の心の光を束ね、この世界を照らす!」
その檄は闇の救済者達へではない、赤錆の騎士に宛てたモノ。
「数多の死に触れ、私に運命を与えた女神を恨んだ。だが真に憎んだのは、戦場に転がる数多の骸を救えなかった自分自身。しかしギャグが闇を打消し、再び前へと向かう強さをくれた。行くぞ騎士よ、如何に険しく酷い現実が待ち受けようとも、光ある人間の明日のために貴様を越えてやる」
「手荒い歓迎だな」
乗り込んだ敵の館で、カビパンは一点を見つめている。その先には騎士が立っていた。
かつて気高い理想と希望を掲げながら、残酷な力に敗れ、闇に堕ちた『赤錆の騎士』。生前は鏡のように磨き上げられていたはずの武具は、彼自身の犯した罪に染まっていた。
「絶望や孤独に心を閉ざした者よ、神は人類が光ある明日を手にするに相応しいか見定めておられる。心に僅かな光あれば秩序を取り戻せるであろう」
そう語るカビパンの手には、いつも愛用している「女神のハリセン」が握られている。
傍目にはシュールでしかないが、彼女の表情と言葉は今までにないほど真剣であった。
「神、か……私はそのようなものを信じない。真に善性の神がこの世にいるのであれば、なぜ斯様な理不尽と絶望が蔓延るのだ。なぜこのような残酷な試練をもたらすのだ」
対する騎士は絶望に錆びついた声音で怨嗟を吐き、二刀の剣を構える。吸血鬼の手先にまで落ちぶれてもなお、その技量だけは錆びることはなかったのか、堂に入った構えだ。
明確な闘気と殺意をぶつけられ、丸腰に等しい状態のカビパンは、しかし臆する事なく言葉をかけ続ける。その声にはいかなる絶望をもはね退ける意志の強さがあった。
「私は皆と共に進む、闇を裂き道を創るため。皆の心の光を束ね、この世界を照らす!」
その檄は闇の救済者達へではない、赤錆の騎士に宛てたモノ。ハリセンを持つ女教皇の身体は女神の加護によって光り輝き、薄闇に包まれた戦場を照らし出す。それはまさしく彼女の心の光を具現化しているかのように。
「……何故お前はそうも断言できる? この世界がどれほど深い絶望に覆われているか、知らないとでも言うのか?」
短い沈黙の後に赤錆の騎士が発した言葉には、微かな困惑が含まれていた。数え切れないほどの苦難に、悲劇に満ち溢れた世界で、己が信念を曲げずにいられるのは何故かと。
対するカビパンの返答はやはり明瞭ではあったが、声色には様々な感情が混じりだす。
「数多の死に触れ、私に運命を与えた女神を恨んだ。だが真に憎んだのは、戦場に転がる数多の骸を救えなかった自分自身」
教皇だなんだのと持て囃されても、その手で救える生命には限りがある。女神の寵愛は彼女"だけ"に常に幸運をもたらすが、誰にもその恩寵を与えるわけではない。力がありながらどうしようもない理不尽と絶望なら、彼女とて何度も味わってきたことだろう。
「しかしギャグが闇を打消し、再び前へと向かう強さをくれた」
「ギャグ………だと?」
突然ぶちこまれた訳の分からない概念に、今度こそはっきりと困惑を示す赤錆の騎士。
だがカビパンは大真面目である。闇を退け希望を取り戻し、未来へと前進する原動力。それこそがギャグなのだと――真意は定かではないが、どこまでも彼女は真剣だった。
「行くぞ騎士よ、如何に険しく酷い現実が待ち受けようとも、光ある人間の明日のために貴様を越えてやる」
女神のハリセンを剣のように振りかぶり、堂々と対峙するハリセン女教皇。その構えにシリアスな本気を感じ取った赤錆の騎士は、困惑を振り払うと【強撃】の構えを取った。
「……理解はできぬが、冗談や酔狂の類ではないか。ならば見せてみよ、お前の力を!」
瞬きすらできぬ速さで瞬時に間合いを詰め、二刀の剣を振り下ろす赤錆の騎士。戦場で対峙した雑兵共とは比較にもならぬ、超高速かつ大威力の斬撃に対し、カビパンは渾身の【HARI☆SEN】の一撃を見舞う。
「見るがいい騎士よ、これがギャグの力だ!」
スパーン! と戦場に鳴り響く快音。交錯した剣とハリセンは、刹那の差でハリセンの方が速く相手に届いていた。空気が凍りついたような、静寂と硬直の一瞬が過ぎ去り――首筋に刃をかけられたカビパンの前で、がくりと騎士が膝を突いた。
「これが……ギャグの力か……」
あらゆる奇跡を霧散霧消させる女神のハリセンのツッコミ力は、赤錆の騎士の身体を傷つける事なく、その心に宿る邪念や邪心、呪詛や洗脳といった負の精神のみを攻撃する。
傷つけるのではなく、癒やす力。それを己の心で体感した彼は、僅かながらも思ってしまった――彼女達なら、痛みと苦しみに満ちたこの世界を、変えられるかもしれないと。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
憎むべきは先達の戦いを穢したヴァンパイアの所業だもの
かつての騎士には相応の敬意を以て臨みましょうか
……貴方たちの戦いも無駄ではなかった。これはその先に繋がった未来の一つよ
夜明けの灯火、一足早く貴方にも見せてあげるわ
《高速詠唱+先制攻撃》から【暁と共に歌う者】。召喚した102の不死鳥を《式神使い+武器改造》の要領で束ね相手と同じく二刀の騎士剣へと変成、《決闘》と洒落込みましょうか
相手の動きは常に《第六感+戦闘知識》の理論と直感を組み合わせ《見切り》先読み
《浄化+属性攻撃+焼却》の灼熱纏う刃を《早業+鎧砕き+怪力》で振るい攻め立てるわ
“闇の救済者”、貴方たちの後に続く者の力を手向けに眠らせてあげる
「憎むべきは先達の戦いを穢したヴァンパイアの所業だもの。かつての騎士には相応の敬意を以て臨みましょうか」
目の前に立つ赤錆の騎士を、只の悪党ではなく敬意を払うべき相手と認めたカタリナ。
彼女はリズムを取るようにとんとんと靴を鳴らしながら、凛とした眼差しで敵を見る。
「……貴方たちの戦いも無駄ではなかった。これはその先に繋がった未来の一つよ」
「その未来の先が途切れていないと誰が証明できる。全てが無為ではないと何故言える」
答えは言葉ではなく力で証明してみせよと言うことか、赤錆の騎士からの闘志が増す。
カタリナもそれに異存ない。歌うように詠唱を紡ぎ、発動するのは【暁と共に歌う者】の召喚。魔神"暁の主"の眷属たる、焔の祝福受けし子等が戦場に舞い降りる。
「夜明けの灯火、一足早く貴方にも見せてあげるわ」
カタリナは召喚した102羽の不死鳥を自らの元に束ね、白兵戦用の武器に変成する。
プラズマの翼は刃に、劫火の身体は柄に。完成したのは相手と同じく二刀の騎士剣。
「決闘と洒落込みましょうか」
「……良いだろう」
赤錆の騎士は二刀を構えながらじりじりと距離を詰めていく。一方の剣で相手の攻撃を打ち払い、直後にもう一方の剣から【致命へと繋がる】一撃を放つ、攻防一体の構えだ。
武芸において天賦の才を持つカタリナの目から見ても、騎士の剣技は達人の領域に達していると一目で分かる。この"決闘"、挑んだ彼女とて確実に勝てる保障はなかった。
「そうでなくては、ね」
戦場で培った経験と、研ぎ澄まされた第六感――理論と直感の組み合わせでカタリナは敵の動きを先読みし、灼熱纏う刃を振るう。並みの金属であればバターのように溶断する斬撃を、しかし錆に塗れた騎士の剣は打ち払い、そのまま反撃の刺突へと繋げてくる。
「この程度か」
「いいえ、まだよ」
カタリナは背中の翼を羽ばたかせて姿勢を変え、心臓を狙った一突きを紙一重で躱す。
あるいはこの翼で空中から遠距離攻撃を仕掛けたほうが楽に戦えたかもしれないが――いや、酔狂にも決闘を挑んだ時点でそんな思考は捨てる。全ての思考、感覚、身体能力を費やして、この先達を上回ってみせよう。
「皆も見てるのだから、格好よく決めないとね」
今も戦っている『闇の救済者』達の視線を感じながら、カタリナは果敢に攻め立てる。
浄化の力を込めた不死鳥の騎士剣は、たとえかすり傷でも呪いを灼く――呪詛と怨念に塗れた赤錆の騎士に対しては、この上ない特効の武器だろう。
「……ッ」
一分と過ぎぬうちに繰り返される数十度の剣戟の応酬。互いに一歩も譲らぬ攻防の均衡は、赤錆の剣に僅かな刃こぼれが生じたことにより崩れた。それがもたらしたのはほんの些細な太刀筋の鈍りだけだが、達人同士の戦いにおいてはその"些細"が勝敗を分かつ。
「"闇の救済者"、貴方たちの後に続く者の力を手向けに眠らせてあげる」
錆の二刀の攻防を切り崩し、不死鳥の二刀が十字を描く。刹那の間隙に繰り出された、カタリナ渾身の斬撃――それは錆びた鎧を切り裂いて、赤錆の騎士に灼熱の傷を刻んだ。
「ぐ、ぁ……"闇の救済者"……これが……」
今を生きる者達の力をその身に刻みつけられた騎士は、驚嘆と共に大きくよろめいた。
カタリナが握る灼熱の二刀――闇夜を照らす篝火のようなその輝きから、彼はいつしか目が離せなくなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
貴方を裏切り者と断じるのは容易いでしょうが……。
その物言い、それなりに生前の記憶は持っているようですね。
良いでしょう。あなたが最早その業から逃れられないのであれば、同じ逝き損ないのよしみとして、解放して差し上げます。
私の得物は旗槍、対するあちらは双剣。
であれば、こちらの懐を狙うのは必然であり、潜り込まれれば不利になる。
十中八九突っ込んでくると考えていいでしょう。
そして迎撃に選ぶのは、旗槍ではなく銃身を切り詰めた散弾銃。
散弾なら狙う必要もない。装甲は抜けなくとも、衝撃で動きを止めるくらいはできる。
あとはそこに渾身の一撃を入れるだけ。
……私は運がよかった。まだ、こうしてこちら側にいられる……。
「貴方を裏切り者と断じるのは容易いでしょうが……その物言い、それなりに生前の記憶は持っているようですね」
赤錆の騎士本人から語られた過去と、闇に堕ちた現在の有様に、シャルロットは微かな既視感を覚えていた。かつてはヴァンパイアの支配に抗う者でありながら、粛清を受けて人の枠を外れてしまった者――だが同情の余地はあれど、彼は余りにも罪を重ねすぎた。
「良いでしょう。あなたが最早その業から逃れられないのであれば、同じ逝き損ないのよしみとして、解放して差し上げます」
旗槍を掲げ、正面に立つ。死せる者同士なれど、その間には見えない線引きがあった。
方や猟兵。方やオブリビオン。道を違えた死者達は、怨みや敵意ではなく、互いの信念を確かめ合うかのように戦いに突入する。
「……そうか、お前も。囚われ続けているのだな」
赤錆の騎士は【強撃】の構えを取り、静かな歩法で踏み込むタイミングを窺っている。
迂闊には飛び込んで来ないだろう。だが一瞬でも隙を見せれば仕掛ける。彼がどのように攻めてくるかは、対峙するシャルロットの側からもはっきりと分かっていた。
(私の得物は旗槍、対するあちらは双剣。であれば、こちらの懐を狙うのは必然であり、潜り込まれれば不利になる)
槍のリーチの長さは適切な間合いにいてこそ優位を生み出すが、その内側に入り込まれると一転して小回りがきかなくなる。かといって普通は剣で槍に立ち向かうなど簡単ではないのだが――あの騎士の技量ならば、瞬時に間合いを詰められるはずだ。
(十中八九突っ込んでくると考えていいでしょう)
至近距離での戦いは不可避と判断した上で、シャルロットは対抗する術を考えていた。
肝要となるのはその策を見切られずに、敵が突っ込んでくるタイミングを見切ること。その為に彼女はほんの僅かに、旗槍を突きつける構えに隙を作った。
「……往くぞ、同類よ」
本人ですら感じ取れないほどの微細な隙。それを敏感に感じ取った赤錆の騎士は、瞬時に間合いを詰めてきた。まるで空間を飛び越えてきたかのような踏み込み、そこから放たれる超高速の斬撃は、死者に再びの死を与えるに足りうる威力で――。
「必ず来ると、思っていました」
その刹那、シャルロットが迎撃に選んだのは旗槍ではなく、銃身を切り詰めた散弾銃。
猟兵と化した彼女が身を寄せた異世界、アルダワ魔法学園で手に入れた力。未だこの世界では普及していない水準のテクノロジーと魔術の産物が、超至近距離で火を噴いた。
「が……ッ!!」
間合いを取る必要のある他の武器とは違い、これは接近戦でこそ真価を発揮する銃だ。
散弾なら狙う必要もない。魔術処理を施した術式弾でも、甲冑を抜ける保障はなかったが、衝撃で動きを止めることができれば十分――あとはそこに渾身の一撃を入れるだけ。
「志は未だ折れず、灯は未だ消えず……。……私は、諦めない……!」
【希望の旗、空高らかに】。決意の言葉と共に戦旗が輝き、シャルロットを包み込む。
信じるものの為に戦い抜く決意を力に変えて繰り出された渾身の一突きは、赤錆の騎士の胸を深々と刺し貫いた。
「ッ……お前、は……!!」
それは騎士が失ってしまったもの、もう二度と手に届かないもの。あまりにも眩い光に憧憬と羨望にも似た眼差しを向けながら、赤錆の騎士は胸を押さえがくりと膝を突いた。
「……私は運がよかった。まだ、こうしてこちら側にいられる……」
シャルロットは決意の証たる御旗をぎゅうと握りしめながら、赤錆の騎士を見ていた。
"向こう側"に堕ちてしまわぬために、手放してはいけないもの。それを改めて深く実感しながら、まだ終わりではないと彼女は呼吸を整えた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
聖槍を振るい斬り結ぶ
強化された【視力】で【情報収集】するが、外連味を持たぬが故の純粋な技量に幾度も痛打を受ける
だが、決して膝は屈さない
闇の救済者を護るために前に出ましたが――本当に【鼓舞】されていたのは私の方
【闇の世界に青空を】
夜闇を裂いて展開される、陽光煌めく希望の青空
赤錆の騎士、かつては光を希った者よ
超常を斬るその剣でも、この青空を斬ることだけはできまい
これには貴様の未練――【祈り】もまた籠められているのだから
越えてみせろと言ったな
いいだろう、貴様を踏破し世界を取り返してみせる!
ああ、そうだとも
最後でなどあるものか
これは大叛逆の幕開けに過ぎないのだから!
全霊の力を以って聖槍で突き穿つ
「それが、お前たちの力、か……だが、まだ足りん。この世界を救うには、まだ」
傷を負った『赤錆の騎士』は静かにそう呟きながら、再び二刀の錆剣を構え動き出す。
その目線の先にいるのは『闇の救済者』達。領主クラスと戦うにはまだ分の悪い彼らを護るために、聖槍を構えたオリヴィアがさっと前に出る。
「私が相手です」
「いいだろう。護り抜いてみせろ」
剛速で振るわれる赤錆の剣を、白銀の柄で受け止め、黄金の穂先で切り返す。悪鬼の類を数多屠ってきた彼女の技量は、並外れたものだ――だが騎士の剣技もまた、長い研鑽の程が伺える熟達したものであった。
(……強い)
強化された視力で情報を集めて動きを予測しても、相手は何度もその予測の上をいく。
外連味を持たぬが故の純粋な技量。錆を纏っていながらその刃は鋭く、切り結ぶうちにオリヴィアは何度も痛打を受けた。
「剣は錆びても、腕前は錆びつかず……か」
流麗な動きで振るわれる二刀が躰を抉る。常人ならば倒れてもおかしくないダメージ。
だが、彼女は決して膝は屈さない。たとえ血に塗れても瞳はまっすぐ前を向き、手にした聖槍を固く握りしめる。自分の背中を押す、沢山の人々の想いと視線を感じながら。
「負けないで!」
「ここは食い止める!」
「俺達もついてます!」
「信じてますから!」
「護るために前に出ましたが――本当に鼓舞されていたのは私の方」
『闇の救済者』の想いと願いを預かって、聖槍の使い手はユーベルコードを発動する。
【闇の世界に青空を】。この世界の生きとし生けるものが願う、希望の象徴をここに。掲げた穂先が天を衝いたかと想うと、夜闇を裂いて陽光煌めく希望の青空が展開された。
「切なる願い、尊き祈り、希望の象徴を、今ここに」
「――……!!」
その光景は味方はもちろん、敵である赤錆の騎士にも大きな衝撃を与えるものだった。
吸血鬼によって奪われ、二度と見ることは叶わないと思っていたものが、ここにある。呆然と空を見上げる彼に、オリヴィアは聖槍を突きつけながら言った。
「赤錆の騎士、かつては光を希った者よ。超常を斬るその剣でも、この青空を斬ることだけはできまい。これには貴様の未練――祈りもまた籠められているのだから」
そう、まさに。ユーベルコードさえも【切り裂き詰める】騎士の斬撃をもってしても、断てぬ超常がここにあった。どれほど罪と錆に塗れても、その胸にかつて思い描いた願いは、祈りは、未練はまだ残されていた。剣を握りしめたまま震える手こそが、その証明。
「……私は」
目を離せなかった。もう諦めたはずの青空から。思い出してしまった。希ったことを。
狼狽によって剣腕を鈍らせた騎士を、今度はオリヴィアの槍技が追い詰める番だった。青空の下で輝く聖槍の穂先が、赤錆の鎧を削いでいく。
「越えてみせろと言ったな。いいだろう、貴様を踏破し世界を取り返してみせる!」
皆の願いによって具現化したひとときの青空を、いつか当たり前のものとするために。
この戦いはそのための狼煙。これまでに連綿と紡がれてきた想いを継ぎ、未来につなげるための反抗の嚆矢。
「ああ、そうだとも。最後でなどあるものか。これは大叛逆の幕開けに過ぎないのだから!」
オリヴィアは烈帛の気魄を込めて叫び、全霊の力をもって赤錆の騎士を突き穿つ。唸りを上げる聖槍が、赤錆に覆われた鎧を貫き――その奥から錆よりも鮮やかな紅蓮が迸る。
「ここが幕開け……か。お前達にはまだ未来が見えているのだな……」
希望を失った過去の亡霊は、槍より眩しそうにオリヴィアの勇姿を見つめ、膝をつく。
青空を見たいという人々の想いと願いの力を見せつけられた彼の胸中は、彼自身にしか分からぬことであった。
大成功
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キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン、言われるまでもない
超えて、そして断ち切ってみせるさ…死と血に塗れた、そのお前の剣ごとな
装備銃器で牽制しつつ攻撃
相手の攻撃に対してカウンターで銃弾を撃ち込み弾きながら回避しつつ、敵の全身に一斉射撃で銃弾を浴びせる
デゼス・ポアは必殺の一撃のために待機させておく
お前の末路は辿らないさ
そして、これだけは言わせてもらう
UCを発動
敵が高速接近して来たらデゼス・ポアから放った刃で受けて、敵の動きが止まったらさらに刃を放ち攻撃し、更にその上から追撃として武器の一斉射撃を行う
お前を超えるのは我々「猟兵」ではない
かつてはお前が護り続けていた、この世界の人々だ
…それを刻んで、骸の海に還るがいい
「……まだだ。これでもまだ足りぬ。お前達の力の全てで、私を超えてみせろ」
「フン、言われるまでもない」
古鎧を軋ませながら立ち上がる『赤錆の騎士』に、当然だとばかりにキリカが応える。
彼女の手には拳銃と小銃。この世界にはまだ存在しない科学の力を、秘術の力で強化したものこそ彼女の武器。救いたいと願うのは、何もこの世界の出身者だけではない。
「超えて、そして断ち切ってみせるさ……死と血に塗れた、そのお前の剣ごとな」
錆びた二刀で【強撃】の構えを取る騎士に、堂々とそう宣言し。相手が踏み込んでくるタイミングに合わせて、彼女はトリガーを引いた。乾いた発砲音と刃と銃弾が弾ける音、そのふたつが領主の館に木霊する。
「崇高な理想も、強大な力の前では無意味。ここで敗れればお前達も私と同じになる」
心を摘むような冷たい声と共に、襲いかかる超高速の斬撃。対するキリカはカウンターで銃弾を撃ち込み、刃を弾き身を躱す。使う武器は異なれど双方の技量は卓越していた。
キリカはそのまま銃で敵を牽制しながら、相棒であるデゼス・ポアを待機させておく。好機とあらばすかさず必殺の一撃を叩き込む、そのための布石として。
「お前達に、この絶望の運命を覆す力はあるのか?」
全身に浴びせられる銃弾の一斉射撃を、赤錆の騎士は二刀をもって鮮やかに捌ききり、再び高速で距離を詰めてくる。あの速度から放たれる斬撃を何度も凌ぐのは困難だろう。しかしそれはキリカが狙っていたタイミングでもあった。
「踊れ、デゼス・ポア。貴様を呪う者達の怨嗟の声で」
発動するのは【バール・マネージュ】。赤錆の騎士が振り下ろした刃は、デゼス・ポアから放たれた刃に受け止められた。奇しくも呪いの人形が振るう刃も呪詛で錆びており、錆刃同士の鍔迫り合いがざらついた音色を奏でた。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒッ」
刃の拮抗により騎士の動きが止まると、人形は不気味に笑いながら錆刃をさらに放つ。
同時にキリカも追撃として手持ちの武装による一斉攻撃を行い、銃弾の嵐を浴びせた。
「お前の末路は辿らないさ。そして、これだけは言わせてもらう」
けたたましく鳴り響く銃声にも負けぬよう、はっきりと声を張りながらキリカは語る。異形を憎む執拗なる刃と、秘術と聖句により強化された弾丸。その二種をもって敵を攻め立てながら。
「お前を超えるのは我々『猟兵』ではない。かつてはお前が護り続けていた、この世界の人々だ」
もはや、この世界の住人はただ護られるだけの存在ではない。自らの意志と力で未来を切り拓かんと立ち上がった『闇の救済者』だ。絶望と戦う彼らの進撃を止められる者などいない。その魂の輝きは、あるいは猟兵以上に強いのだから。
「……それを刻んで、骸の海に還るがいい」
「――ッ!」
刃と銃撃による波状攻撃を凌ぎきれず、赤錆の騎士が鎧を穿たれながら後退していく。
文字通りその身に刻まれる形で、猟兵と『闇の救済者』の意志を叩きつけられた彼は、兜の奥で瞳の輝きを揺らめかせながら、荒く息を吐くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
詩乃守・セツア
――鍛造開始、魔剣開帳
『救世灯籠(ぐぜとうろう)』、迷える魂を導く慈悲深い側面と悪鬼羅刹の類を焼却せしめる苛烈な側面がある魔神でね
まあ何が言いたいかというと……今一度“大いなる敵”に挑むといい
錆びつく前の貴方がそうしたように
傍迷惑かもしれないけど牽制の意味も込めて、呼び出した巨人の一撃で敵を屋敷の構造物ごと薙ぎ払う
落下物で敵の動きを制限しつつ、此方の動きやすい広い場所に誘導
基本は薙ぎ払いで距離を取り、近寄ってきたら徒手空拳も織り交ぜての剣劇合戦
場合によっては自分の巻き添えも厭わず全力の振り下ろしで叩く
その血潮で錆びついた刃をこの炎と鉄で打ち直す
この先すぐ砕けようと、少しは過去の輝きが戻る筈さ
「――鍛造開始、魔剣開帳」
戦場を超えて領主の館にたどり着いたセツアは、収納庫から新たな魔剣を具現化する。
今度は数打ちの偽魔剣ではない。呼びかけに応じて現れたのは、彼女の身の丈ではとても振るいきれぬような巨大な魔剣と――その『担い手』たる獄炎の大巨人であった。
「これは……」
「『救世灯籠(ぐぜとうろう)』、迷える魂を導く慈悲深い側面と悪鬼羅刹の類を焼却せしめる苛烈な側面がある魔神でね」
『担い手』と『武器』、その両方があわさることで成り立つ『魔剣』もあるのさ。と、彼女は赤錆の騎士に語った。異界より招かれし炎影の王は、半身とも言える大魔剣を担ぎ上げると、燃える双眸で悪鬼を、あるいは迷える魂を睨め付ける。
「まあ何が言いたいかというと……今一度"大いなる敵"に挑むといい。錆びつく前の貴方がそうしたように」
セツアの言葉が合図だったように、魔神『救世灯籠』はぶんと魔剣を横一閃に振るう。
赤錆の騎士は咄嗟にその場から飛び退いて斬撃を躱す。だが巨大に過ぎる刃は標的を捉え損ねても、周囲にある屋敷の構造物をなぎ払った。
(傍迷惑かもしれないけど、牽制の意味も込めてね)
壊した屋敷からの落下物で敵の動きを制限しつつ、此方の動きやすい場所に誘導する。
巨人が暴れるならできるだけ広い所のほうが良いだろう。セツアははたはたと袖を揺らして走りながら、遠隔より『救世灯籠』を操作し騎士の相手をさせる。
「……これは吸血鬼ではない。私の識る異端の神とも違う」
魔神という未知の敵を前にした赤錆の騎士は、驚いてこそいたが狼狽は見せなかった。
大魔剣による横薙ぎの斬撃を、錆びた剣で打ち払う。そのまま【致命へと繋がる】刺突に繋げようとするが、魔神は体格とリーチの優位を活かして懐に入らせない。
「成程。確かにこれは"大いなる敵"か」
強引に距離を詰めても、徒手空拳による迎撃が来る。互いに持てる手を尽くしての剣戟合戦は、両者ともに譲らぬ展開となっていた。いや、知らない敵の動きに徐々に慣れてきた赤錆の騎士の方が、長期戦となれば僅かに有利か。
「確かに、この感覚。懐かしいものだ」
強大な存在に己の全霊を以て立ち向かう、この状況に騎士は奇妙な感慨を抱いていた。
生前とは異なるのは、討伐されるべき悪は自分の方だということ。魔神の動きを見切りだした彼は、大魔剣の斬撃を打ち払い、反撃を合わせるタイミングを掴みつつあった。
(次の横薙ぎを捌き、同時に仕掛ける)
攻防一体の二刀の構えを取る赤錆の騎士。錆びついてもなお衰えぬ練度を見せる彼に、魔神『救世灯籠』――ひいてはそれを操作するセツアが戦局を覆すために指した一手は。
「……ッ?!」
横薙ぎではなく、上段。自身の巻き添えも厭わない全力の振り下ろしが、敵の頭上から叩きつけられる。何度も繰り返し刷り込まされてきたパターンとは違う技に、騎士の思考が一瞬停まった。
「その血潮で錆びついた刃をこの炎と鉄で打ち直す。この先すぐ砕けようと、少しは過去の輝きが戻る筈さ」
轟と唸りを上げて、獄炎の魔剣が大地を割る。魔祓いの力を宿したかの剣は、過たずに赤錆の騎士を捉えていた。咄嗟に二刀受けで威力を軽減したものの、ダメージは大きい。
「この私を、鍛えなおそう、とは……随分と、手荒なことだ……!」
獄炎の焼いた箇所からは錆が剥がれ落ち、剣と鎧から微かに生前のような輝きが戻る。
同時にそれは、魔祓いにより怨念を祓われた彼の心境も意味していた。全てではない、だが生前の未練を僅かながら祓われた騎士の声色は、どこか清々しげでもあった。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
貴方もかつては反抗者だったんだね?
だからこそその思いに応えないと!
この思い、この反抗貫くから!
反抗の剣は超重力を生む
間合いを詰めて来た一瞬
その時に全重力を掛ける隙が出来た瞬間斬り込む!
必殺の一撃を入れる瞬間を重力で狙って攻められたら必ず隙が出来るはず
これより反抗を開始する!
どうか貴方の魂がチタノの元に導かれますように
「貴方もかつては反抗者だったんだね? だからこそその思いに応えないと!」
チタノの加護受けし反抗者にして、反抗の支援者たるニクロムは、闇に堕ちたかつての反抗者たる赤錆の騎士の想いを受け止める。この反抗が真にこの世界に希望をもたらせるのか、証明してみせろと言うのなら――全力をもって彼を越えてみせよう。
「この思い、この反抗貫くから!」
【ならば反抗の覚悟を示せ】。自らの寿命を代償として、彼女は「反抗の妖刀」の封印を解いた。チタノより授けられた刀は蒼焔を纏い、真の形である「反抗の剣」に変わる。
「その意気やよし……受けてみよ、私の全力を」
ニクロムから反抗の意志を受け取った赤錆の騎士は、二刀での【強撃】の構えを取る。
互いの間合いは剣戟を交えるにはまだ遠い。だが騎士の瞬発力ならば距離を詰めるのは一瞬だろう。そこから繰り出される斬撃は、文字通り必殺級の威力と速度を誇る。
(なら、間合いを詰めて来た一瞬に私も仕掛ける!)
息の詰まるような緊張感。踏み込む機をうかがう騎士に、その瞬間を見逃すまいとする反抗者。耳が痛いほどの静寂が数秒ほど続き――その直後、弾かれたように両者が動く。
「……斬る」
赤錆の騎士は疾風の如き速さで瞬時に間合いを詰めると、反撃の暇も与えず首を狙う。
剣で受け止めようにも間に合う速さではない。あわやと思われたその時――ニクロムの手元でひときわ激しく蒼焔が燃え上がる。
「そこだよっ!」
「ぐ……ッ?!」
反抗の剣は超重力を生む。必殺の一撃を入れられる瞬間を狙って、彼女はその力を騎士に向けたのだ。通常の何十倍にもなる重力の枷を掛けられては、いかな赤錆の騎士とて本来の動きはできまい。そこには必ず隙ができるはずだと彼女は確信していた。
「これより反抗を開始する!」
天まで届けとばかりに高らかに宣言し、反撃に転じるニクロム。動きの鈍くなった二刀の下をくぐり抜け、反抗の剣を構えて敵の懐に斬り込む。余力や後退などは一切考えていない、この一瞬の好機に全てをかけるという覚悟のこもった前進。
「……これが、今を生きる反抗者の力か」
必殺の一撃を越えられた騎士は、どこか満足そうにも聞こえる声音で、小さく呟いた。
その直後――蒼い焔を纏った反抗の剣が、大上段より赤錆にまみれた鎧を斬り伏せた。
「どうか貴方の魂がチタノの元に導かれますように」
敵の脇を斬り抜けた後、ニクロムは反抗の剣を捧げ持ちながら祈りの言葉をささやく。
その背後にて、反抗を貫く意志を示された騎士は、どうと音を立てて床に崩れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
超えてみせるよ…人は必ず吸血鬼に勝てる…。
わたし達が希望を紡いでみせる…!
ラン達や仔竜達には引き続き救済者達側の援護をお願い…。
【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!
【呪詛】により強化した無限の終焉の魔剣を顕現し、一斉斉射…。
敵が魔剣を回避または迎撃しようとした瞬間を狙って呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】を発動し、敵を拘束…。
そのまま終焉の魔剣による斉射で串刺しにし、呪力の侵食…。
敵の力を削いだところで凶太刀の高速化と神速による二重加速で一気に接近し、凶太刀と神太刀の二刀による連撃からバルムンクによる【呪詛、衝撃波】を込めた全力の一撃を叩き込むよ…!
これが…この世界の人々が紡いで来た力だよ…!
「超えてみせるよ……人は必ず吸血鬼に勝てる……」
力を示せと語った赤錆の騎士に、璃奈は毅然とした態度で応える。その瞳はこれまで以上に爛々と輝いており、乏しい表情の内側に隠された情熱と決意がはっきりと分かった。
「ラン達やミラ達は引き続き救済者達側の援護をお願い……」
「「わかった!」」
メイド人形と仔竜達には今だ戦っている『闇の救済者』を任せ、彼女は1人で敵の将と対峙する。相手は強敵だが臆することはない、ここに至っては全力を以てこの戦いを制し――そして希望を示すのだ。
「わたし達が希望を紡いでみせる……!」
【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解放。九尾の妖狐へと変化した璃奈の身体から莫大な呪力があふれ出し、屋敷を崩壊させていく。さらにその周囲の空間からは数え切れないほどの魔剣が権限し、切っ先を赤錆の騎士に向ける。
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……!」
決意の言葉とともに放たれる、無限の魔剣の一斉斉射。莫大な呪詛により強化された剣はひと振りひと振りが終焉の力を帯びており、弱いオブリビオンなら一撃で消滅させる。
だが赤錆の騎士は尋常の相手ではない。その剣技は超常すら切り裂く域に達しており、たった二本の錆びた剣で、飛来する魔剣を【切り裂き詰める】。華美さのない質実剛健な太刀筋は、生前の彼がどのような鍛錬を積んできたかを暗示するようだった。
「呪力の鎖よ……かの者を縛めよ……!」
そこで璃奈は魔剣が迎撃される瞬間を狙って、敵の足元から呪力の縛鎖を発動させる。
呪いで編まれた黒い鎖は、錆びた鎧にがっちりと絡みついて拘束する。騎士の技量なら一瞬で切断できるだろうが、その一瞬がこの戦いでは致命的となる。
「ぐぉ……ッ!!」
降り注ぐ終焉の魔剣が、縛鎖に捕らわれた騎士を串刺しにする。そのまま魔剣は宿した呪力を侵食させる。これだけの魔剣から一斉に呪いを浴びれば、怨念に染まった騎士とて平常ではいられまい。
「わたしの全力を見せるよ……」
敵の力を削いだところで、璃奈は一気に接近を試みる。手に携えるのは二振りの妖刀、そのうち片方の「九尾乃凶太刀」の呪力は、音速を超えるスピードを使い手に付与する。
既に封印解放によって神速の剣技を獲得していた彼女は、妖刀との二重加速により何者をも凌駕する速度を手に入れ、銀色の閃光となりて敵の懐に飛び込んだ。
「速い、ッ」
この速さには、赤錆の騎士も斬撃での相殺は間に合わない。繰り出される二刀による連撃は赤錆の剣を叩き落とし、鎧の錆を削ぎ落としていく――その猛攻にたまらず敵が体勢を崩した瞬間、魔剣の巫女は本命となる魔剣「バルムンク」を抜き放つ。
「これが……この世界の人々が紡いで来た力だよ……!」
魔竜を屠りし魔剣による、全身全霊を込めた一撃。膨大な呪詛の込もった斬撃は過たず赤錆の騎士を斬り伏せ、刃と共に襲いかかる衝撃波が、鎧を砕いた傷をさらに深く抉る。
「……見事、だ…………」
がくり、とその場に膝を突いた男が、兜の下から零した言葉は、どこか満足げだった。
未来へ向かう人々の想いと力は、過去を打倒しうることを、彼は身を以て知ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
血骨・パトリシア
うーん、そういう英雄かあ
裏切りは歴史の花ではあるけれど、それは誰かの上に咲いた花が踏み散らされるからこその魅力なんだよね
きっと今は、パトさんたちが踏み散らす巡り。そういうサイクルだ
剣戟。竜神全員に言えることだがこの身は絞りカスのような物であって非力
剣に生きた英雄に何処までやれる?
手にした剣が怒っているように思う。主から勝手に借りておいてなんだその体たらくは、と
ならばお前の力も借りよう
UC使用で逆転の伝説を開放
致命へ繋がるような鋭利な刺突ですら、この剣の伝説を打ち破れるか
窮地からの逆転が数多く積載された伝説を
パトさん、お前みたいな英雄は嫌いじゃないよ
覚えておくよ、こういう奴がいたって
「うーん、そういう英雄かあ」
正面に立ちながら俯瞰するような眼差しで、パトリシアは赤錆の騎士を見つめている。
敗北と絶望と死をきっかけにして、闇に堕ちたかつての英雄。吸血鬼による長い支配の歴史の裏には、こうした悲劇も数限りなくあったのだろう。
「裏切りは歴史の花ではあるけれど、それは誰かの上に咲いた花が踏み散らされるからこその魅力なんだよね」
そう語りながら彼女は剣を構える。遠い昔に殺し合った相手から借りたっきりの剣を。
幾年の時経ても、その刃は神威によって光り輝いている。それはまるで英雄のために誂えられた聖剣のようでもあり――ならば、その剣で討たれるのはかつての英雄か。
「きっと今は、パトさんたちが踏み散らす巡り。そういうサイクルだ」
「ならば、証明してみせよ」
手負いの身で立ち上がった赤錆の騎士は、二刀の剣を構えて斬り掛かる。柄まで錆びたみすぼらしい剣ながら、その技量は間違いなく達人の領域。パトリシアは借りものの剣で受けの構えを取るが、防御の隙間を抜けて錆刃が肌を切り裂いた。
(この身は絞りカスのような物であって非力。剣に生きた英雄に何処までやれる?)
竜神全員に言えることだが、信仰を失った彼女に往時のような力はない。対して敵は剣のみで吸血鬼の支配に抗い、死した後は一領の主として君臨するほどの武人だ。技量の差は明白であり、剣戟を交わすうちにパトリシアは防戦一方に追い込まれていく。
(なんだい。不機嫌そうだね、お前)
手にした剣が怒っているように思う。主から勝手に借りておいてなんだその体たらくは、と。あんな錆だらけのボロボロの剣に、遅れを取っていては剣としても屈辱だろう。
「ならばお前の力も借りよう」
自分もここで終わるつもりはない。この身に残された神力を振り絞って、パトリシアは【仮令『元々』が解らなくなっても】を発動する。封印を解除された剣は目も眩むほどの神威を発し、戦場の全てをまばゆく照らした。
「この光は……?!」
相手の様子が変わったのを感じ取り、赤錆の騎士はそれまでの攻勢から一歩後退する。
何を仕掛けてくるか分からぬ相手に、迂闊な攻めは命取りだ。まずは防御に回って攻撃を打ち払った後に【致命へと繋がる】刺突を返す――彼の判断は至極的確なものだった。
だが。そうした定石通りの盤面を覆す「伝説」の力が、かの神器には秘められている。
「この剣の伝説を打ち破れるか。窮地からの逆転が数多く積載された伝説を」
常勝、巨悪の打倒、そして逆転。もはや原型すら解らない程に付与された伝説の数々を力に変えて、剣はかつてあった事象を"再演"する。即ち窮地に立たされた英雄が、闇に堕ちたかつての英雄を討つという、ごくありふれた英雄譚を。
「パトさん、お前みたいな英雄は嫌いじゃないよ」
まるで分かれの挨拶のような言葉と共に、パトリシアは剣を振った。その斬撃はまるで何かに導かれているように、赤錆の騎士の二刀をすり抜け、最も致命的な急所を捉える。
「覚えておくよ、こういう奴がいたって」
「―――……ッ!!」
鎧の隙間から突き刺さった刃から、肉を貫く確かな手応えを感じる。兜の奥で、騎士が喀血する音が聞こえた。借りたままの剣に刻まれていた伝説は、ここに再演を果たした。
パトリシアは柄を一捻りした後にすっと刃を抜き――そしてまた、いつもと変わらないへらりとした笑顔を見せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
願祈・廻璃
私達の里の守りをお友達にお任せしてでも、今はダークセイヴァーの為に攻める時ですね。
巡瑠の筆の後ろに乗って移動や回避は任せつつ、常に敵を近寄らせない様に戦います。
私はカウンターに気を付けながら『願いの筆』で牽制や迎撃に専念して敵を消耗させます。
いかに強敵といえど、距離をとろうとする相手との間合いを無理矢理詰める為には隙ができる筈です。
そのチャンスを逃さず『闇の救済者』の方々の願いを込めて【願いの描出】で領主の力を出来るだけ奪います!
そうですね。頼れる猟兵の皆さんにお任せして、私達は手負いの方々の救援に向かいましょう。
次に願いを繋げる事も私達の使命です!
(巡瑠と同行します。アレンジも大丈夫です。)
願祈・巡瑠
何とか間に合ったみたいね!
【祈りの大筆飛行】を使って魔法の箒の様に『祈りの筆』へ跨り、廻璃をその後ろに横乗りさせて一緒に飛び回るわよ!
私にかかれば屋敷内での飛行もお手の物なんだから!
敵は早さも力もあるみたいね……これは迂闊に近づいても返り討ちに合うだけかしら?
高速移動と回避を織り交ぜながら敵に距離をつめさせない様に立ち回るわよ。
間合いを取る為に周りの物だって利用するわ。
敵を消耗させたら後は戦いが得意な他の猟兵に任せて、私達は屋敷内で戦いを続けている『闇の救済者』の援護に行くわよ!
私達は皆の願いを叶える手助けをしたいだけで、あんたを越えるなんてどうでもいいんだから!
(廻璃と同行、アドリブOK!)
「何とか間に合ったみたいね!」
戦場が野外から屋内に移ってから暫し後。他の猟兵や『闇の救済者』からやや遅れながらも領主の屋敷に飛び込んできたのは、大きな筆に乗って空を飛ぶ、二人の猟兵だった。
その前のほうに跨る願祈・巡瑠(祈り巡る神殺・f04944)は、大きな筆をまるで魔女が乗る魔法の箒のように操りながら、今回の討伐目標である「赤錆の騎士」を見下ろす。
「私達の里の守りをお友達にお任せしてでも、今はダークセイヴァーの為に攻める時ですね」
その後ろに横乗りになって同乗するのは願祈・廻璃(願い廻る神秘・f04941)。普段は「願いの里」という隠れ里の守護者として俗世間とはやや距離を置いているこの姉妹も、ひとつの世界の未来に関わるやもしれない大事と聞いて立ち上がったようだ。
「移動や回避は任せますね、巡瑠」
「任せて! 私にかかれば屋敷内での飛行もお手の物なんだから!」
【祈りの大筆飛行】を使用した巡瑠は大きな「祈りの筆」を操作し、まさに人器一体の動きで屋敷内を飛び回る。そこに同乗する巡瑠は小さな「願いの筆」で宙に文字を綴り、七色の軌跡を力の波動に変えて敵に浴びせかけた。
「筆使い。不可思議な技を操るものだ」
対する赤錆の騎士は構えた二刀のうち片方で波動を打ち払うと、もう片方で【致命へと繋がる】刺突を放つ。重い全身甲冑を装備していながら、その踏み込みは驚くほど速く、巡瑠がとっさに高度を上げて死の切っ先から逃れる。
「敵は早さも力もあるみたいね……これは迂闊に近づいても返り討ちに合うだけかしら?」
敵の力量を実感した巡瑠は、祈りの筆による高速移動と回避を織り交ぜて距離を詰めさせないように立ち回る。同様に廻璃も願いの筆による牽制や迎撃に専念して、近寄らせないことを第一としながら敵の消耗を狙う。
「いかに強敵といえど、距離をとろうとする相手との間合いを無理矢理詰める為には隙ができる筈です」
「そうね。じゃあその隙は私が作るから、そこから後はよろしくね廻璃」
屋敷の中には調度品や、戦闘で破壊された瓦礫などの障害物があちこちにある。巡瑠はそれを利用してわざと敵が移動しづらいような方向に飛び、縦横無尽の機動で間合いを引き離していく。一見逃げ回っているだけのようだが、その眼は我に策ありと語っていた。
「なかなかに素早い……だが、いつまでも逃げられると思うな」
一旦は距離を取られた赤錆の騎士だが、ここは元より彼の屋敷である。構造の理解を活かして間合いを詰め、やはり甲冑の重さを感じさせない動きで空中の二人に斬り掛かる。
だが、その際の挙動に隙が生まれるのはどうしても避けがたい。廻璃はそのチャンスを逃さず筆を走らせ、『闇の救済者』達の願いを込めて【願いの描出】を発動させた。
「願いの力をお見せします!」
里に伝わる大小一対の筆のうち、廻璃が持つ小筆は願いを叶えると言われている。夜明けを求める人々の想いに応じて、彼女が描いたのは青空と太陽。そこから放たれる陽光は神秘の力となって、闇の住人たる吸血鬼を照らした。
「ぐ……ッ!!?」
攻撃の間隙を狙われ、直射日光をもろに浴びた赤錆の騎士。闇に堕ちたその身体では、耐え難いほどの苦痛が襲いかかる。その隙に巡瑠は再び高度を上げて敵から距離を取り、廻璃は吸血鬼の力を弱める絵を描き続ける。
「こんなところでしょうか」
「ええ、いい感じだわ」
小筆が抽出した願いの力は、敵にかなりの消耗と弱体化を強いたはずだ。絵が消えても本調子に戻るまではかなりの時間がかかるはず。これだけでも十分な戦果と言っていい。
「それじゃ、後は他の猟兵に任せて、私達は『闇の救済者』の援護に行くわよ!」
「そうですね。頼れる皆さんにお任せして、私達は手負いの方々の救援に向かいましょう」
巡瑠と廻璃は祈りの筆に乗ったままくるりと反転し、まだ屋敷のあちこちで戦っている『闇の救済者』達の元に向かうことにする。領主との戦いの決着は、自分達よりも戦いが得意な猟兵がやってくれるだろう。優先すべきはこの場での犠牲者をゼロにすることだ。ふたつの筆が持つ不思議の力は、そのための癒やしや支援の効果ももたらしてくれる。
「待て……逃げるのか……ッ」
赤錆の騎士は太陽の輝きに苦しみながらも、遠ざかっていく二人の背中に叫びかける。
まだ戦いは終わっていないと憤る騎士に、しかし姉妹が返した答えは素っ気なかった。
「私達は皆の願いを叶える手助けをしたいだけで、あんたを越えるなんてどうでもいいんだから!」
「次に願いを繋げる事も私達の使命です!」
過去の無念や因縁に興味はない。姉妹にとって大事なのは、今ここにある祈りと願いを守ること。もはや敵には一瞥もくれず飛んでいく二人の姿は、悔しいほど輝いて見えた。
「……これが、希望か……」
自分という絶望は、彼女達の前に立ちはだかることさえできなかったのだと知って――赤錆の騎士は自嘲するように小さく息を吐き、そしてまた錆びついた剣を取るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
四王天・燦
《華組》
シホの親父さんも似た境遇だ
吸血鬼ではなく過去に縛られてる
って御託は要らんな…自慢の剣をぶつけ合おうぜ
神鳴で交えて直ぐ分かる、手練れだ
二人掛かりになるが悪く思わんでくれよ
壁になりシホに詰めることは許さない
盗みの剣で太刀筋を学びながら完全な見切りの完成にかかるよ
剣士として強敵との斬り合いは滾るね
オッサンはどうだい?
打ち払いを怪力を込めた武器受けで弾く
弾き切れると思わんが意表を突ければ上々
残像を囮にして刺突から一歩ずれるよ
剣を学び切ったら納刀
寸避けと援護射撃で凌ぎながら属性攻撃の雷気を力溜め
抜刀一閃・電刃居合い斬りで葬るぜ
改めて二人掛かりを詫びるよ
で…アタシの剣と二人の絆は希望足り得るかな?
シホ・エーデルワイス
《華組》
領主の話しに親近感
依頼≪罪は冷たく静かに降りしきる≫で思い出した罪が脳裏を過る
私も…昔所属していた騎士団なら吸血鬼の脅威に抗えると信じていました
実際に戦力は互角以上でした
けど…
私達は力に頼り過ぎました
吸血鬼との戦いしか考えず
守る人々の不安に気付かず…
結果
守る事はできませんでした
もしかしたら私も貴方の様になっていたかもしれません
私が貴方の立場でしたら…悔しさと…僅かに期待をしてしまうでしょう
聖銃を楽器演奏の様に発砲し【星奏】で魅了
旋律は希望の行進曲
見惚れたら隙ができるはず
敵の攻撃は第六感と聞き耳で見切り残像回避
当たりそうなら
激痛耐性のオーラ防御結界で耐える
貴方の夢
私達が叶えてみせましょう
「私も……昔所属していた騎士団なら吸血鬼の脅威に抗えると信じていました」
『闇の救済者』の戦いも山場を迎える中、シホは赤錆の騎士の前でぽつりと語りだす。
領主の話に親近感を抱いたのか。彼女の脳裏を過ったのは、とある依頼を契機に思い出した己の過去――そして罪の記憶だった。
「実際に戦力は互角以上でした。けど……私達は力に頼り過ぎました」
あの頃の自分は慢心していたと彼女は述べる。誇り高き騎士の一員で、全てを救えると信じていたと。自分達が何に支えられて、何のために戦っているのか、見失っていたと。
「吸血鬼との戦いしか考えず、守る人々の不安に気付かず……結果、守る事はできませんでした」
かつてのシホを追い詰めたのは敵ではなく、守るはずの人々からの避難と怒りだった。
激化する人々の感情を鎮める為に、彼女はその身を差し出し――死後に猟兵として覚醒した。或いはその時に世界に選ばれなければ、オブリビオンと化していたかもしれない。
「もしかしたら私も貴方の様になっていたかもしれません。私が貴方の立場でしたら……悔しさと……僅かに期待をしてしまうでしょう」
かつて絶望と死を体感したからこそ、彼女には赤錆の騎士の気持ちが分かってしまう。
終わりの見えぬ闇の中で、もう取り返せない過ちを悔い続け、そこから解放してくれる"何か"を願う。そんな果てしない苦悩の中に、あの騎士はいるのだろう。
「シホの親父さんも似た境遇だ。吸血鬼ではなく過去に縛られてる」
彼女の語りを黙して聞いていた燦も、敵意ではなく憐憫を含んだ眼差しで騎士を見る。
聞いたところによれば、シホの養父はあれから人々に失望し世界の敵となったという。経緯に差異こそあれと、類似の苦悩に囚われた者を見過ごすのは義に反するだろう。
「って御託は要らんな……自慢の剣をぶつけ合おうぜ」
燦はシホをかばうように前に出ると、霊刀「神鳴」を抜き放つ。対峙する赤錆の騎士もそれに応じるように、錆びた二刀の剣を構えた。事ここに至ればどのような事情があれど想いを通すには力を示すしかない。それはこの場にいる誰もが理解していた。
「同情する必要はない。ここに居るのは卑劣な吸血鬼の手先に過ぎない。お前達がかつていた誰かの事を想うならば――私を斬り捨ててみせろ」
錆びついた声色でそう語る赤錆の騎士。堕ちてなお堂々たる佇まいに燦が斬り掛かる。
一太刀交えただけで、直ぐに手練れだと分かった。銘刀による鋭い一閃を、彼は二刀の片方で打ち払い、間髪入れずもう片方で【致命へと繋がる】刺突を返してきた。
「二人掛かりになるが悪く思わんでくれよ」
「構わぬ。怪物を狩るのに手段など問うな」
燦は致命の刺突を紙一重で躱し、負けじと返しの太刀を放つ。剣士としての意地もあるが、それ以上に彼女の剣からはシホに詰めることは許さないという、気迫が感じられた。
「少しでもあなたの苦しみと寂しさが紛れますように……」
燦と赤錆の騎士が激しい剣戟を繰り広げる間に、シホは二丁の聖銃に魔力を装填する。
発動するのは【聖銃二丁で奏で紡ぐ芸術的弾幕結界】。銃を前に向けてトリガーを引くと、放たれた魔弾は色鮮やかな軌跡で幾何学模様を描きながら、美しい旋律を奏でだす。
「なに……?」
戦場においては場違いなほど華麗な、銃撃と弾幕によるパフォーマンス。花火のように鮮やかな模様とともに響き渡るのは、絶望に挑む者たちを鼓舞する希望の行進曲だった。
「…………美しい」
想いをこめたシホの星奏に、赤錆の騎士は一瞬、これが戦いの最中である事を忘れた。
その刹那を縫うように、燦の斬撃が襲いかかる。はっとなった騎士は再びそれを打ち払おうとするが、前よりも膂力を込めた太刀筋によって、逆に錆びた剣のほうが弾かれる。完全には弾き切れなかったが、その結果に騎士が意表を突かれたのは明らかだった。
「剣士として強敵との斬り合いは滾るね。オッサンはどうだい?」
高揚した笑みを浮かべる燦の言葉に、騎士は何も答えず刺突で応えた。正確に心の臓を狙うその一撃を、妖狐の剣豪は残像を囮にして狙いを狂わせ、実像を一歩だけずらした。
「見えた――呼吸、踏み込み、太刀筋。その技の冴え、確かに盗ませてもらったぜ!」
【四王活人剣『盗みの剣』】。剣を交えることで赤錆の騎士を見切った燦は、刀を鞘に納め居合の構えを取る。鞘で雷気を溜め、必殺の一撃を放つチャンスをうかがう構えだ。
騎士はなおも二刀を巧みに操り攻め掛かるが、彼女はもうこれまでのような紙一重や意表をつく手ではなく、完全に太刀筋を読んだうえで最小限の動作で凌ぐ。後方からはシホの援護射撃もある、たとえ相手が練達の剣士であれ、もはや当たる気がしなかった。
「っ……この短時間で、私の技を……私を、越えたというのか……!」
剣士としてのプライド以上に、騎士の心を襲ったのは驚嘆だった。この異国の女剣士は正しく自分の力を学び取っていったのだ。理想を為すことなく無為に散り、掃除屋として剣を振るってきた彼にとって、それがもたららす心の衝撃は大きい。
「貴方の夢、私達が叶えてみせましょう」
動揺冷めやらぬ騎士の耳に響くのは、清らかで美しい希望の旋律。いつの間にか標的を包囲した弾幕は、まるで五線譜と音符のような軌跡を描きながら、戦場を音楽で満たす。
希望から絶望へと転じた夢、果たせなかった望みを思い起こさせるその旋律に、騎士がまた心奪われた刹那――充填を完了した燦が全力の一撃を見舞う。
「葬るぜ」
抜刀一閃・電刃居合い斬り。雷気により加速した「神鳴」は、その名のとおり稲妻そのものの速度で鞘走る。迸る紅の電撃を纏う斬撃は、過たず赤錆の騎士の鎧を断ち斬った。
「改めて二人掛かりを詫びるよ。で……アタシの剣と二人の絆は希望足り得るかな?」
電熱と鮮血で赤くなった刀を軽く振るい、血払いと熱除けをしながら燦が問いかける。
その視線の先では、胸に大きな真一文字の太刀傷を刻まれた赤錆の騎士が、自らの血でできた血溜まりに膝を突いていた。
「……ああ。見事だ」
彼は燦と、そしてその背後からじっと此方を見つめてくるシホと目を合わせ、答えた。
紡ぎ重なる想いと、磨き抜かれた技。それは確かに自分という絶望を越える希望だと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
曾ての勇士は赤錆と呪詛に穢れた、か
…一度はこの世界を見捨てた俺より、君は余程上等な生き方をしたのだな
命は背負わん。だが敬意示はそう、尊厳ある汝の死を以て
打ち合いは厳しそうだ
接近戦にならないよう、破砕属性を込めた鞭や守護のルーンで作り上げた結界で剣戟をいなす
間隙を突いて【指定UC】を展開
針が如く鋭敏にして強靭な刺突剣を生成、彼の騎士の墓碑として突き立てよう
「全力魔法」技術を応用して刻むは祝福と光のルーン
幻想ならざる儚き聖剣を創る
我が命ずる、穢れし鎧を打ち砕き、疾くその命を刺し貫け
宵闇の眷属より、勇猛なる魂を掬い上げよ
…天国や楽土があるかなんて知りはしない
けれど、其の魂が安らかたるよう願おう
「曾ての勇士は赤錆と呪詛に穢れた、か……一度はこの世界を見捨てた俺より、君は余程上等な生き方をしたのだな」
死してなおもこの世界と向き合い続ける赤錆の騎士の姿勢に、ヴォルフガングは敬意を表した。オブリビオンと成り果ててなお「私を越えてみせろ」とは、余程強い意志の発露なくしては出てこない言葉だ。
「命は背負わん。だが敬意示はそう、尊厳ある汝の死を以て」
「構わぬ。さあ、来るがいい」
彼が邪鞭「葬列の黒」を振りかぶると、赤錆の騎士も二刀を構える。『闇の救済者』の勝利の為、そしてかつての勇士に死をもたらす為、ここで退く理由はありはしなかった。
(打ち合いは厳しそうだ)
敵は間違いなくその道の達人だろう。接近戦にならないよう、ヴォルフガングは邪鞭に破砕の力を込め、そのリーチを活かした遠間からの攻撃を仕掛ける。無論それで完封できる相手とも思っていないが、自分から間合いに飛び込むよりはマシだ。
「どうした。手ぬるいぞ」
騎士は錆びた剣による打ち払いで鞭をいなし、即座に【致命へと繋がる】刺突を放つ。攻撃自体の速度、威力もさることながら、間合いを詰める踏み込みも驚異的なスピード。
ヴォルフガングはさっと守護のルーンを描いて結界を作り上げ、敵の剣戟をいなしつつバックステップで下がる。錆びた切っ先と結界が激突し、硝子が割れる様な音が響いた。
「錆びついた剣で、大した技だ」
感嘆を込めて呟きながらも、ヴォルフガングは刺突の後に生じる隙を見逃さなかった。
その間隙を突いて彼が展開するのは【調律・創成の空図】。高度情報体であるトートの叡帯を操作して、魔力を伴う様々な物品を精製・複製そして操作するユーベルコードだ。
「我が命ずる、穢れし鎧を打ち砕き、疾くその命を刺し貫け」
創造するのは針が如く鋭敏にして強靭な刺突剣。其は彼の騎士に突き立てる為の墓標。
男はそれに魔術師としての技量を応用して、祝福と光のルーンを刻みつける。かくして完成するのは淡く透きとおるような輝きを帯びた、幻想ならざる儚き聖剣。
「宵闇の眷属より、勇猛なる魂を掬い上げよ」
ヴォルフガングの命に応えて、矢のように放たれる聖剣。夜闇に白銀の軌跡を描いて、その切っ先はまっすぐに標的の元に向かう。赤錆の騎士は再び二刀を振るわんとするが、ルーンにて強化された一閃はそれ以上に疾く――。
「ッ……! 見事、だ……!」
錆に塗れた鎧を剣が貫き、兜の奥からくぐもった呻きが漏れる。まさしく墓標のように突き刺さった聖剣を見て、騎士は感服したように称賛を告げると、がくりと膝を突いた。
「……天国や楽土があるかなんて知りはしない。けれど、其の魂が安らかたるよう願おう」
祈るべき神など知らないが、かつての勇士にそれくらいの報いがあっても良いだろう。
騎士を見つめ願いをかけるヴォルフガングの表情は、平時よりどこか穏やかであった。
闇に堕ちし吸血鬼領主と『闇の救済者』の戦いは、着実に終わりに近付いていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
そんなにグチグチ言うんなら裏切っちゃえばいいのに
雁字搦めになってできない、なんてそんなことないさ
戒めは壊すためにある!良くも悪くも!
ボクも昔はよく約束破りをされたものだよ
決心が着かないというなら、ボクがやってあげるよ!
ボクの勘【第六感】で攻撃の機を読んで…
光も空気も透過する透明だけど彼にだけ干渉する[白昼の霊球]くんに30cm以内に近づけないよう間に入ってもらうよ
そして彼の初動を潰すか受け止めたら…カウンターのUCでドーーンッ!!
沈んでもまた日は登る!
キミも今日は無理でも、いつかの明日には!
だから今日はおやすみ!
キミのかつて見たかったものをその目に焼き付けて
「んもー。そんなにグチグチ言うんなら裏切っちゃえばいいのに」
見るからに苦しげで、色んなものを背負い込んでいそうな騎士に、あっけらかんとした調子でロニが言う。嫌なら無理にやらなくてもいい、ほっぽって好きな事だけやればいい――能天気で欲求に忠実な彼からすれば、騎士の在り方はひどく息苦しそうだろう。
「雁字搦めになってできない、なんてそんなことないさ。戒めは壊すためにある! 良くも悪くも!」
ボクも昔はよく約束破りをされたものだよ、と笑いながら主張する。神である彼が言うと「約束」とやらにも重い意味がありそうなものだが、その表情から真意は分からない。
「戒めは壊すためにある……そうかもしれん。だが私には力が足りなかった」
かつて吸血鬼の支配を打ち破ろうとした男は言う。敵の力は強大で、自分はそれを壊すどころか逆に絡め取られてしまった。ここに居るのは理想を掲げたかつての騎士でなく、未練を抱いた亡霊のたぐい。
「この世界の戒めを破れるとすれば、それは私ではなく、生きているお前達が……」
「決心が着かないというなら、ボクがやってあげるよ!」
だが、それ以上の愚痴には興味ないとばかりに、赤錆の騎士の言葉は遮られる。暴力の信奉者的な一面もあるロニとしては、長々と会話で説得するよりも殴り合うほうが良い。
「……よかろう。やれるものなら、やってみせろ」
子供めいた神の言動に振り回されつつ【強撃】の構えを取る赤錆の騎士。機を見るに敏なロニが"来る"と直感的に感じ取った直後、敵は凄まじい速さで間合いを詰めてきた。
甲冑の重さをまるで感じさせない動き。そこから放たれる超高速かつ大威力の斬撃は、少年神の首を刎ね飛ばすかに見えた――だが、必殺の軌道を描いた二刀は、標的を捉える前に見えない何かに受け止められる。
「危ない危ない」
敵の攻撃を察知した瞬間、ロニは使役する浮遊球体の一種である「白昼の霊球」を間に入れていたのだ。任意の対象以外を透過する性質を持つこの球体は、今は光も空気も透過するので目には見えない。だが騎士にだけは干渉するため、不可視の盾として機能する。
「……これは」
赤錆の騎士の【強撃】が必殺の威力を発揮するのは自身から30cm以内だけ。ならばその間合いに踏み込ませなければいいと考えたロニの布石により、敵の初撃は封じられた。
「沈んでもまた日は登る! キミも今日は無理でも、いつかの明日には!」
すかさずロニはぎゅっと拳を握りしめて走り出す。白昼の霊球が干渉するのは赤錆の騎士だけ――つまり相手から間合いを詰めることはできなくても、彼の方からは近づける。
「だから今日はおやすみ! キミのかつて見たかったものをその目に焼き付けて」
鼓舞するような、或いは慰めるような言葉と共に、彼はカウンターの【神撃】を放つ。
信心無き者にも神々しさを感じさせるような、重たい拳が真っ向から叩きつけられた。
「ッ―――!!」
その衝撃で錆びついた鎧はへこみ、騎士は砲弾のように吹き飛ばされ、壁に激突する。
身体の芯まで響くダメージ。だが然程の不快感はない――これが、この時代を生きる者の力なのだと、彼は文字通りに"痛感"することになった。
大成功
🔵🔵🔵
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
喜べ、貴様のかつての本懐はここに叶う。余らと、彼ら(闇の救済者)によってな。
黄昏大隊・突撃部隊発動、召喚した突撃兵を順次突撃させる。
敵のユーベルコードの射程は30cm、ならば繰り出すタイミングは兵の攻撃が命中するその瞬間をおいて他になかろう。
その発動の瞬間に別の兵が突撃できるよう、突撃開始のタイミングを調整。
ユーベルコード以外の手段での反撃を見越し、余は魔導小銃の【制圧射撃】で敵の行動の制限にかかる。制圧射撃と言えどあわよくば有効打を撃ち込む勢いでな。
兵の突撃が決まり体勢が崩れたら、此処までの交戦で開いた傷なり鎧の破損などを狙って【スナイパー】での射撃を撃ち込む。
「喜べ、貴様のかつての本懐はここに叶う。余らと、彼らによってな」
後方を任せた『闇の救済者』達を手振りで示しながら、ギージスレーヴは悠然と語る。
吸血鬼に敗れ、闇に堕ちた赤錆の騎士。彼は服従の時を過ごしながらずっと待っていたのだろう。かつての自分と同じ轍を踏み越えて、悲願に届きうる者が現れる時を。
「そうかもしれん。あるいはお前達なら、私の……いや、これ以上は不粋か」
騎士ならば言葉よりも剣で語るべし。赤錆を纏った男はすっと【強撃】の構えを取る。
傭兵にして戦争狂たるギージスレーヴにも異存はない。紅い戦旗を高々と掲げ、自信に溢れた態度で号令を発する。
「総員、突撃!」
重装甲を纏った【黄昏大隊・突撃部隊】が、召喚されると同時に順次突撃を開始する。
ジェットエンジン搭載の重装甲を纏ったこの亡霊兵は、前方の敵を押し戻し浸透を阻止するのを主な役目とする。単体では騎士に及ばぬだろうが、その真価は連携にこそある。
(敵のユーベルコードの射程は30cm、ならば繰り出すタイミングは兵の攻撃が命中するその瞬間をおいて他になかろう)
或いはユーベルコード以外の手段での反撃がくる可能性も見越して、ギージスレーヴは部隊の突撃に合わせて魔導小銃「トーテンクロイツ」での制圧射撃を行う。目的は敵の行動の制限だが、あわよくば有効打を撃ち込む勢いの凄まじい連射だ。
「亡霊の兵か。よく訓練されている」
赤錆の騎士は二刀のうち片方で銃弾を弾きながら、接近する突撃部隊に視線を向ける。
ジェットによる速度に防具の重量を加えた突撃を、正面から受けるのは得策ではない。彼はそれを逆に利用して、自分から一歩踏み込みながら【強撃】を放つ。
「だが、まだ足りぬ――」
相対速度の増加と騎士の技量により、錆びた剣は恐るべき切れ味で突撃兵を両断する。
重装甲ごと亡霊を真っ二つにするとは、果たしてどれほどの研鑽に費やしてきたのか。罪に染まり、錆びて朽ちようとも、その剣技だけは今だ冴え渡っていた。
「――ッ?!」
だが。赤錆の騎士が剣を振りきったまさにその瞬間に、別の兵が突撃を仕掛けてきた。
偶然ではない。攻撃直後の隙を突けるよう、ギージスレーヴが突撃開始のタイミングを調整していたのだ。豪放ながら時には精緻な用兵も行えてこそ、黄昏大隊の首領である。
「余の兵らを侮るなよ」
二刀を既に使い切ってしまった騎士の懐に、亡霊兵の突撃が決まる。衝撃により大きく敵の体勢が崩れると、ギージスレーヴはにやりと笑いながら魔導小銃の照準を合わせた。
「総員、よく務めを果たした。後は余に任せよ」
狙い定めるのは錆びた鎧の破損箇所。此処までの交戦で敵が負った傷を射抜くように、ギージスレーヴはトリガーを引く。標的が体勢を立て直すよりも疾く、放たれた呪術弾はまるで吸い込まれるように――。
「がぁッ……! 見事、だ……!」
傷口に直撃を受けた赤錆の騎士は、苦悶と称賛を口にしながらフラフラとよろめいた。
これが『黄昏大隊』の力。優れた兵の練度とそれを率いる将の器に、堕ちし騎士は自分に為し得なかった悲願の可能性を見たのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
且つて人々の為に戦った騎士であろうと、わたし達の前に立ちはだかるのであれば容赦はしないわ。
そして、貴方を倒す事で貴方へ証明してあげる。人は必ず勝てると。
1章で召喚した眷属達には敵軍の掃討と支援を指示しておくわ。
【神滅の焔剣】で真の姿を解放!
飛行からの高速移動を行いつつ、神滅の焔の放射で攻撃と同時に焔で目晦ましを掛け、更に多属性の魔力弾【高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾、属性攻撃】による遠距離攻撃で敵の剣戟を封じ、レーヴァテインに限界まで魔力を集束【力溜め、限界突破】させ、全熱量を込めた【レーヴァテイン】の斬撃でその剣や鎧ごと両断して斬り捨ててあげるわ!
「且つて人々の為に戦った騎士であろうと、わたし達の前に立ちはだかるのであれば容赦はしないわ」
毅然とした意志を示すように、フレミアは真紅の魔槍『ドラグ・グングニル』を騎士に突きつける。何者であれ『闇の救済者』が取り戻そうとしている未来の邪魔はさせない。目指すべき勝利まであと一息のところまで来ているのだから。
「そして、貴方を倒す事で貴方へ証明してあげる。人は必ず勝てると」
これは人類の可能性を示す戦いでもある。そして或いはその可能性を誰よりも期待しているのは彼かもしれない。兜の奥で眩しそうに目を細めながら、騎士は再び剣を取った。
「……ああ、証明してみせろ。この悪逆の騎士を討ち取って……!」
二刀の剣で【致命へと繋がる】構えを取り、錆びた鎧の内側から闘気を迸らせる騎士。
肌が粟立つような殺気を向けられながら、フレミアはあくまで冷静に眷属に指示する。
「貴女達は敵軍の掃討と味方の支援を」
「「はいっ!」」
突入前に召喚された眷属達は、残存する敵と戦う『闇の救済者』達の援護に向かった。
ひとり敵将と対峙することになったフレミアは、【神滅の焔剣】で真の姿を解放する。
「我が血に眠る力……今こそ目覚めよ! 我が眼前の全てに滅びの焔を与えよう!」
立ち上る真祖の魔力と紅蓮の焔。背には4対の翼を生やし、空中に舞い上がる吸血姫。
高貴なる血統に連なる者らしく、その姿は美しくも他を圧倒する存在感に満ちている。ヴァンパイアとしての格だけで言えば、あるいは赤錆の騎士より上やもしれない。
「……まさかお前のような者が、人の側についているとはな」
皮肉げな言葉を漏らす騎士の上空から、赫々と燃える炎の雨が降り注ぐ。神魔を滅する焔の力を自在に放射するのが、【神滅の焔剣】発動中のフレミアが得た能力のひとつだ。
「剣の間合いで勝負するつもりは無いわ」
さらにフレミアは解放した魔力を風や雷、氷や石などに変えて弾丸のように撃ち放つ。
神滅の焔による攻撃と目くらまし。魔力弾による追撃。高速での飛行能力という優位を活かし、遠距離から敵の剣戟を封じる構えだ。
「……強いな。この力、かつて戦った吸血鬼以上かもしれん」
生前の戦いがふと脳裏によぎる中、赤錆の騎士は錆びた二刀で焔と魔力弾を打ち払う。
隙あらば【致命へと繋がる】刺突を放つ気だが、フレミアは決してその隙を見せない。油断なく距離を取ったまま遠距離攻撃に徹する一方、手元に焔と魔力を集束させていく。
「手加減なんてしない。貴方にはわたしの全力を見せてあげるわ!」
その手で形作られる武器の名は神焔剣レーヴァテイン。神殺しの焔を極限まで圧縮して生み出した刀身に限界まで魔力を注いだ、正真正銘フレミアの全力が込もったひと振り。
天をも焦がさんばかりに燃え上がるそれを、彼女はありったけの膂力で振り下ろした。
「―――ッ!!!!」
どれほど防御の技術が巧みでも、絶大な熱量の前では無意味だった。レーヴァテインの斬撃は受けようとした赤錆の剣を、騎士が纏う鎧を、そして騎士本人を諸共に溶断する。
斬り捨てられた赤錆の騎士は焼け焦げた胸を押さえ、言葉もなくその場に崩れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
アドリブ改変OK
なぜ抗うことをやめたの?
自ら妥協したのか 強制されたのかは分からないけど
いえ どっちにしろアンタはもう取り返しがつかないのね
(少しだけ鏡の前に立ったような気分)
「飢渇」を展開し集団戦術で全方位から連携攻撃し爆撃と「顎門」による体勢崩しも絡め接近
剣の攻撃を捌けないと判断したら敢えて体で受けとめ経戦能力激痛体勢で肉薄
敵の腕と胴に「骨身」を食い込ませ抱擁するように捕縛
腐食性の「血潮」を吐きかけ鎧を溶かし露出部を「飢牙」の捕食しUC起動
喜びなさい アンタの力を私達の戦列に加えてあげる
周囲の「飢渇」が98体の敵の複製に変異し本物に強撃を仕掛ける
私も猟兵じゃなければアンタと同じだったかもね
「なぜ抗うことをやめたの?」
激しい戦いの最中、傷ついていく赤錆の騎士を見つめて、メフィスはふと問いかけた。
かつて理想を掲げた騎士が、「掃除屋」として吸血鬼に従属する身に甘んじているのは何故なのか。堕ちてからも支配に叛逆し続けるという選択肢はなかったのか。
「自ら妥協したのか 強制されたのかは分からないけど。いえ どっちにしろアンタはもう取り返しがつかないのね」
守りたかった者達の返り血を浴びて、錆びついたその身が全てを物語っている。どんな理由があったとて、彼は余りに多くの罪を犯しすぎた。そして何よりも、彼自身が憐れみや救いを求めていないのは明らかだった。
(少しだけ鏡の前に立ったような気分だわ)
造られた人形だった自分にも、こうなる末路が待っていたのかもしれない。親近感か、それとも同族嫌悪か。言葉にならない感情を胸の裡に沈めて、メフィスは「飢渇に喘ぐ」眷属を展開する。
「……全ては私の未熟と弱さゆえ。少女よ、お前は違うのか?」
諦観と期待。相反する二つの感情を声に滲ませ、赤錆の騎士は【強撃】の構えを取る。
武器は錆びついた二本の剣のみ――それも片方は激戦により半ばから折れてしまった。それでも油断ならない闘志を放つ敵に、飢渇の群れは全方位からの連携攻撃を仕掛けた。
「行きなさい。食い尽くせ」
メフィスの命令に応じて変幻自在に形を変え、眼球や牙を生成して襲いかかる眷属達。
対する赤錆の騎士は巧みな二刀流でその猛襲を払いのけ、斬り捨てる。単なる物量では彼の技量を凌ぐことはできない。それを確認したメフィスは続け様に手を打つ。
「爆ぜなさい」
「……ッ!」
騎士に近付いた眷属の一部が爆発し、爆風と共に尖った骨身の破片や腐食性の血潮を撒き散らす。咄嗟に騎士が距離を取ろうとすると、次は別の眷属が捕食器官を大きく開き、強い吸引力で周りの空気ごと彼を吸い寄せようとする。
「よくやったわ」
眷属達が敵の体勢を崩した好機を逃さず、メフィスは牙を剥いて笑いながら接近する。
獲物に襲いかかる猛獣のような疾走。しかし敵もまた彼女が近付いてくるタイミングを狙って、不完全な体勢ながらも【強撃】の構えを取っていた。
「この群れを率いているのがお前ならば、その首を落とせばいい」
ごうと風を切って放たれる渾身の一撃。これは捌けないと判断したメフィスは、敢えて体で受け止める奇策に出た。即死の狙いだけは逸らし、継ぎ接ぎだらけの胴体で受ける。
「……ほう」
それは錆びついているとは思えないほどの切れ味だった。デッドマンの身体でなければ真っ二つになっても不思議はない。腹から背骨に達するほど深く刃が食い込んだ状態で、流石のメフィスもぐらりとよろめいた。
「……捕まえたわよ」
だが、これしきの傷と痛みで屍人は戦いを止めない。直後に彼女の全身から飛び出した骨の武具が、敵の腕と胴に食い込み捕縛する。その様子はまるで抱擁のようにも見えた。
さらに彼女は喉から口に溜まった血をふっと吐きかける。それは屍人の躰で生成された腐食性の血液――至近距離で浴びせられた騎士の鎧が、じゅうと音を立てて溶ける。
「喜びなさい。アンタの力を私達の戦列に加えてあげる」
溶けた部分から露出した騎士の身体に、メフィスは牙を食い込ませた。肉を齧り取り、血潮を飲み干す。血肉と共に捕食した敵の全てを、彼女は【鏡像を模る】で具現化する。
『何もかも、全て私だ。「私達」のものだ』
周囲にいた眷属達が、不定形の影から「赤錆の騎士」と同じ姿に変異する。外見だけでなく言動・記憶・技能・ユーベルコードさえ完全に同一となった98体の複製体である。
彼らは本物と同じ構えを取り、本物と同じ【強撃】で攻撃を仕掛ける。まるで万華鏡の中に迷い込んだような一斉攻撃――これを捌ききる手段は本物にもない。
「私の技に、私が敗れる、か……これが、因果というものか……?」
自嘲するように呟いた直後、無数の斬撃を浴びた赤錆の騎士は大きく吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられ、しばらくはぴくりと動きもしないほどの重傷。それを見やりながらメフィスは口元の血をぬぐい、ぽつりと呟いた。
「私も猟兵じゃなければアンタと同じだったかもね」
或いはどちらが踏み越えていてもおかしくなかった一線。だが彼女は此方側に留まり、そして今も己の意志で留まり続けている。この世界に昇る陽光を、この目で見るために。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…そんな事、お前に言われるまでも無い
私は犠牲になった多くの人達の想いを背負って此処にいる
…かつてはお前も此方側だったのかも知れないけど、
この世界の為に立ち上がった彼らの道を妨げるならば容赦はしないわ
UCを発動し反響定位で得た第六感で敵の行動を暗視し、
過去の戦闘知識から敵の攻撃を先読みして見切り、
"写し身の呪詛"の残像と入れ替わる早業で敵UCを回避
…無駄よ。骨子の無い剣では私には届かない
その隙に自身は殺気を絶って闇に紛れて死角から切り込み、
分子間結合を切断する超振動の魔力を溜めた大鎌をなぎ払い、
振動属性攻撃のオーラで防御を無視するカウンターを放つ
…切れ味も増しているもの。受けられると思うな
「見事だ、叛逆者よ……だが、まだ足りぬ。お前達のように理想に燃え、力もある者達が蹂躙される様を、私は何度も見てきた」
「……そんな事、お前に言われるまでも無い。私は犠牲になった多くの人達の想いを背負って此処にいる」
猟兵達との激戦を続けながら赤錆の騎士は語る。この世界で繰り返されてきた悲劇を。
それに応えたのはリーヴァルディ。彼女の左眼に刻まれた聖痕には、今も数多の死者の無念が宿っている。その想いをつなぎ、世界に救済と繁栄をもたらす事こそ彼女の使命。
「……かつてはお前も此方側だったのかも知れないけど、この世界の為に立ち上がった彼らの道を妨げるならば容赦はしないわ」
「それでいい。本気で道を切り開こうというなら、外道一匹斬り捨ててみせろ」
吸血鬼狩人の少女は大鎌"過去を刻むもの"を構え、赤錆の騎士は二刀の剣を構える。
互いに睨みあう一触即発の空気の中、先に動いたのは騎士だった。甲冑の重さを感じさせない動きで瞬時に距離を詰め、ほぼ至近の間合いから高速・高威力の【強撃】を放つ。
しかしリーヴァルディも即座に反応し、対抗する術式とユーベルコードを起動させた。
「……無駄よ。骨子の無い剣では私には届かない」
【吸血鬼狩りの業・天響の型】。イルカなどの海獣が有する超音波による探知能力――反響定位で得た第六感により、リーヴァルディは暗闇の中でも正確に周囲を把握できる。
それに過去の戦闘知識も加えて敵の攻撃を先読みし、必殺の斬撃から身を躱す。赤錆の剣が斬り裂いたのは、彼女が入れ替わりに残した"写し身の呪詛"の残像だけだった。
「手厳しいな」
返す言葉もないとばかりに自嘲する赤錆の騎士。彼が空振り後の隙から立ち直る前に、リーヴァルディは死角から切り込む。殺気を完全に絶った状態での、闇に紛れての強襲。いかな強者とてこれに即応できる者はそうはいない。
「……狩人からは逃れられない」
まるで死神のように敵の背後に立ち、"過去を刻むもの"を振るうリーヴァルディ。魔力を溜めたその刃は、目では解らないほどの周波数で微かに、かつ高速で振動している。
天響の型は視界の補助や防御のための技のみに非ず。超音波の力を武器に付与すれば、分子間結合を切断する超振動の刃となり、あらゆる防具の強度を無視することができる。
「……切れ味も増しているもの。受けられると思うな」
「ッ……!!」
回避は間に合わず、防御も不可能。必中の反撃と化した大鎌が、赤錆の騎士を捉える。
強固な鎧が豆腐のように切り裂かれ、直後にその断面から真っ赤な鮮血が噴き出した。
対して振動を帯びた大鎌の刃は、返り血すら付着することはなく。無表情にくるりと柄を回して構えなおすリーヴァルディの様子は、無表情さも相まって優雅でさえあった。
「……ああ。見事だ、狩人よ」
悪しき吸血鬼の領主を斬り伏せた狩人の少女に、赤錆の騎士は心からの称賛を告げる。
この者達ならあるいは、と。かつて失ってしまった希望の眩しさに、目を細めながら。
大成功
🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
何度目かなど些事だ。何度でもだ。
刈られるだけの稲穂に非ず。人は人でいようとする限り立ち上がる。
専用トライクから降車し短剣【投擲】。
無論、敵の回避と反撃を誘う為の【挑発】だ。
敵UCの軌道を【見切り】黄金魔剣で【武器受け】。
同時に鎧内の燃える鉛を這わせ双方の刀身を【武器改造】、溶接し身動きを止める。
UC【黒と青の舞刀曲】、先程投げた短剣を【誘導弾】として操作し軌道反転
敵を後方から【串刺し】だ。
それでも耐えるようなら黄金魔剣を一気に振り抜き溶接した二刀諸共両断する。(【怪力】【部位破壊】【武器落とし】)
散れ、赤錆。今日までの為に重ねてきた幾重の犠牲の一人よ。
貴様という過去を背負って。人は未来に往く。
「何度目かなど些事だ。何度でもだ」
これが何度目の叛逆だろうと問う赤錆の騎士に、ルパートは断固たる意志で断言する。
何度敗れようと、何度破られようと、何度でも立ち上がる。諦めることなく繰り返され受け継がれてきた連綿たる意志が、今日の『闇の救済者』達の反抗に繋がったのだと。
「刈られるだけの稲穂に非ず。人は人でいようとする限り立ち上がる」
専用トライクから降車した黒騎士は、鎧内から「ブラックスミスの短剣」を抜き出し、黄金魔剣と共に構える。生前の肉体を失ってもなお騎士道を貫かんとする勇ましい姿を、赤錆の騎士はどこか懐かしむような――何か遠いものを仰ぐような眼差しで見ていた。
「往くぞ」
初手は様子見とばかりに、ルパートは短剣を投げ放つ。無論、それは敵の回避と反撃を誘う為の挑発だ。見え透いた手ではあるが、恐らく敵は乗ってくるという自信があった。
「他の騎士との手合わせが叶うのは、何時ぶりだろうな」
赤錆の騎士は最小限の動作のみで投擲を躱すと、流れるように【強撃】の構えに移る。錆の上から返り血を浴び、より深い赤に染まった二刀の剣――それから放たれる斬撃は、必殺級の威力を誇る。
「受け止められるか、我が剣を」
「無論」
ルパートは回避を誘った際の僅かな動作の遅れで、踏み込んでくる敵の動きを見切る。
赤い軌跡を描く二刀を受け止めるのは、自らの名を冠した黄金魔剣ルパート。強大な呪いを宿した強固な刀身は盾としても有用で、錆びついた剣ごときに断てるものではない。
そのまま鍔迫り合いに移行すると同時に、黒騎士は鎧内から溢れ出す鉛を剣に這わせ、双方の刀身に絡ませる。燃える鉛で剣と剣を溶接し、相手の身動きを止めるのが狙いだ。
「これは……!」
予想外の奇手で武器を封じられ、兜越しにでも赤錆の騎士が驚くのが分かった。しかしこのままではルパートも魔剣を使えない。先に動いたほうが不利となる膠着状態になるかと思われたが――次の一手のための布石は、すでに打たれていたのだ。
「我が名に栄光はもはやなく。されど、我が剣の輝きは未だ鈍らず!」
剣を固めたままルパートが叫ぶと、先程投げたまま放置されていた短剣がカタカタと音を立てて浮かび上がる。この短剣はいわば彼の身体の一部であり、手元から離れていても意のままに動かすことが可能なのだ。
「なに、ッ!!」
【黒と青の舞刀曲】により青炎を纏った短剣は、くるりと軌道を反転させ後方から敵に襲いかかった。動きを止められた赤錆の騎士は、この慮外の攻撃に対応できず、無防備な背中に刃を受ける。
「散れ、赤錆。今日までの為に重ねてきた幾重の犠牲の一人よ」
後ろから串刺しにされ、それでもまだ倒れる様子のない敵を見て、ルパートは黄金魔剣に力を込めた。人ならざる身がもつ怪力を以て、溶接した二刀もろとも一気に振り抜く。
豪快かつ単純ながら、それ故に強力。膂力の差で二刀を手放させられた赤錆の騎士を、黄金と青炎に染まった横薙ぎの一閃が斬り払う――。
「貴様という過去を背負って。人は未来に往く」
その言葉は訣別か、あるいは弔辞か。黒騎士の剣が赤錆の鎧を断ち、返り血に染まる。
見事だ、と。赤錆の騎士は静かにそう応えると、自らが流した血溜まりに膝を屈した。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
こう言う技量に特化した奴の方が怖いんだよね……
…まあ…それでも対処はできる…乗り越えさせて貰うよ…
…まずは【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…500を超える魔剣をタイミングをずらしつつ全方位から1度に切り払えない軌道で発射しよう…
…この剣の対処で時間を稼ぐと共に…騎士の踏み込み方…重心の動かし方…腕の動かし方…それら把握して効果的な術式罠を設置…踏んだら腕や足を拘束するよ…
…これだけで動きを止められる物でも無いだろうけど一瞬でも動きが止まれば充分…
術式装填銃【アヌエヌエ】で破砕術式を込めた術式弾を発射…その剣を砕かせて貰うとしよう…
「こう言う技量に特化した奴の方が怖いんだよね……」
吸血鬼にありがちな数々の異能を使わず、熟達した剣技だけを武器とする赤錆の騎士。
シンプルだがそれ故に隙の少ない彼の戦い方は、メンカルの目から見ても厄介だった。
「……まあ……それでも対処はできる……乗り越えさせて貰うよ……」
「ああ。武器、技、魔法……どんな手段でもいい。お前の力を見せてみろ」
彼女が【アヌエヌエ】に術式を装填しながらそう語ると、赤錆の騎士も二刀を構える。
このレベルの相手に白兵戦を挑むのは不利。だが、剣には剣を――というわけでもなかろうが、彼女は歌うように詠唱を紡ぎあげ、【空より降りたる静謐の魔剣】を発動する。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
上空より現れしは500を超える氷属性の魔剣。その刀身から発せられる冷気で、戦場の気温が何度か下がったようにさえ感じられる。メンカルはそれらを1つ1つタイミングと軌道を変えて、全方位から赤錆の騎士に向けて発射した。
「これなら1度に切り払えないはず……」
「なるほど、確かに」
達人の域に至った騎士の剣技は、超常の力さえ切り裂き相殺する。命中と同時に凍結を引き起こす魔剣の嵐を、彼は二本の錆びた剣のみで【切り裂き詰める】――が、メンカルの計算通り、速度も軌道も変えて飛来する数百の魔剣には、対処だけで手一杯になる。
止まぬ魔剣と退かぬ騎士。双方ともに攻め手を欠いた、一時的な拮抗状態が生まれた。
(これで暫くは時間を稼げる……)
510本の静謐の魔剣を全て撃ち尽くすまでに、メンカルは騎士の動きを観察に徹する。
踏み込み方、重心の動かし方、腕の動かし方。軌道を変えつつ放つ魔剣は、様々な動作パターンを見るのにも都合が良かった。それらを全て把握したうえで、彼女は最も効果的なポイントに術式罠を設置する。あとは、相手のほうから自然にそこに掛かってくれる。
「む……いつの間に」
そうとは知らぬ赤錆の騎士は、降りしきる魔剣に誘い込まれるようにその罠を踏んだ。
光る魔法陣から飛び出した魔力の鎖が、錆に覆われた腕や足を拘束する。ただし無詠唱で編んだ即席の術式のため、強度はそれほど高くはない。
「……これだけで止められる物でも無いだろうけど、一瞬でも動きが止まれば充分……」
術式の拘束を騎士が切るまでの間隙で、メンカルは【アヌエヌエ】の照準を合わせる。
弾頭に込めたのはシンプルに破壊力を重視した破砕術式。避けようのないタイミングで発射された術式弾は、狙い過たず目標に命中し――。
「……その剣を砕かせて貰うとしよう……」
「なッ……私の、剣を……!!」
騎士の振るう二刀の剣のうちの片割れが、硝子の割れるような音を立てて砕け散った。
或いはそれは、騎士にとって生命よりも重い意味を持つものかもしれない。心の衝撃と共に得意の戦型を失ったことで、敵は大きく戦闘力を削ぎ落とされることとなった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
【騎神】
真の姿で
天候操作で屋敷の周囲に雨を降らせ、トリテレイアさんが屋外に出れば機体冷却できるようフォローしつつ、赤錆の騎士さんに語り掛ける。
この世界の人々は絶望を抱えつつ、いつの日も敗れようと、いつの日か勝たんとする意志を受け継いできました。
意志が絶たれた事もありますが、それも含めた全てが今に繋がっています。
だから貴方の戦いは敗れても意味が有ったのです。
相手の攻撃は第六感と見切りで動きを読み、二刀の斬撃をオーラ防御を纏った一対の天耀鏡でそれぞれ盾受けしつつの受け流しで対応し、UC発動。
誇り高い騎士として骸の海で安らかに眠って下さい!
(トリテレイアさんに)
後はお任せしますね(信頼を籠めて一礼)
トリテレイア・ゼロナイン
【騎神】
裏切り者
その自嘲には共感いたします
生前の記憶ある貴方と多少異なれど、似た境遇ですので
(人格破壊再起動後、銀河帝国に弓を引く現状
合理性から帝国産戦機として『狂っている』認識から逃げられない)
互いに、骸の海に眠っていた方が楽だったやもしれませんね
迫る敵捉え剣盾で防御
…ですが刃振るった責任から逃げられない
ならば騎士としてその責を全うするのが私達の務め!
UC起動
平手の直後窓から屋外へ蹴り飛ばし
女神の一喝で心は定まりましたか?
人に付けぬならば、人の敵手たる騎士を全うしなさい
矜持を取り戻し全力で立ち塞がりなさい!
その誇り以外、真正面から砕いて差し上げます
屋敷内に黙礼
迷い捨てた敵を高速近接戦闘で撃破
「裏切り者……その自嘲には共感いたします。生前の記憶ある貴方と多少異なれど、似た境遇ですので」
激戦により破壊の痕が刻まれた屋敷にて、機械騎士トリテレイアは赤錆の騎士に語る。
彼の種族はウォーマシン――かつて銀河帝国に開発された戦闘兵器。だが帝国がオブリビオンとして蘇った時、かつての人格・記憶を失っていた彼は帝国に弓引く者となった。
猟兵として、騎士として、人々と世界を守るために戦う現状に迷いはない。だが機械としての合理性が囁くのだ。本来の製造目的に反している現在の自分は『狂っている』と。
「互いに、骸の海に眠っていた方が楽だったやもしれませんね」
「そうだな……私も、同じような事を考えたものだ」
吸血鬼に敗れたあの日、蘇らされることがなければ――彼は英雄のまま死ねただろう。
堕ちた騎士は手元に残った一振りの剣を構え、瞬時に間合いを詰める。真っ向から放たれる【強撃】を、機械仕掛けの騎士は大盾で受け止めた。
「……ですが刃振るった責任から逃げられない」
「名誉なき血塗られた道とて、剣を捨てる事は許されない」
「ならば騎士としてその責を全うするのが私達の務め!」
「いつかこの外道に終わりをもたらす者が現れるまで!」
二人の騎士は互いの信念を叫びながら、一歩も譲らぬ激しい剣戟の応酬を繰り広げる。
技量では赤錆の騎士が、装備とコンディションでは機械騎士が有利か。錆びついた剣を大盾が防ぎ、儀礼用の長剣を錆びついた剣がいなす。何度刃を交わしても結果は互角。
「この世界の人々は絶望を抱えつつ、いつの日も敗れようと、いつの日か勝たんとする意志を受け継いできました」
その戦いを見つめながら、機械騎士に続いて語りかけるのは詩乃――今はアシカビヒメと呼んだほうが良いだろうか。神としての真の姿を顕現させたまま、彼女は淡く微笑む。
「意志が絶たれた事もありますが、それも含めた全てが今に繋がっています。だから貴方の戦いは敗れても意味が有ったのです」
何度となく踏み躙られてきた叛逆の意志は、そのたびに後世に種を残した。永遠に芽吹くことはないかと思われていた種はあるきっかけによって目覚め、根を張り、そして今、大きく花開こうとしている。絶望に満ちた世界に希望をもたらす『闇の救済者』として。
「私の敗北にも、裏切りにも、意味はあったと言うのだな……」
果たしてその言葉が、赤錆の騎士にとって救いになったかどうかは分からない。だが彼は兜の奥から詩乃に視線を向けると、トリテレイアの間隙を突いて攻撃の矛先を変えた。
鎧の重さも傷の深さも感じさせない瞬速の踏み込み。しかし詩乃は第六感でその動きを見切り、振り下ろされる剣に合わせて一対の「天耀鏡」をかざした。
「はい。ですから……」
神気を込めたヒヒイロカネの鏡は、超硬の盾となって【強撃】を受け流す。その直後に彼女はユーベルコードを発動し――敵意や殺意ではなく、愛情を込めた手を振りかぶり。
「誇り高い騎士として骸の海で安らかに眠って下さい!」
肉体以上に心に響く【改心の一撃】の平手打ちが、甲冑に包まれた騎士を張り飛ばす。
その衝撃は、赤錆の騎士を一時的に放心させるのに十分な威力だった。詩乃の想いが生み出したこのチャンスを逃さずに、トリテレイアが【戦機の時間】を発動する。
「……追いつけますか、私達の時間に」
電子頭脳と駆動部に過負荷をかけ、反応速度を極限に向上させる戦機ならではの荒業。瞬時に十倍以上に加速した動作は、まるで彼だけが違う時間を生きているように見える。
「ッ、がはぁっ!!!」
振り返る間もなく蹴り飛ばされた赤錆の騎士は、窓を突き破って屋外に放り出される。
先程まで乾いていたはずの空は、いつの間にか黒雲に覆われた雨模様に変わっていた。
「後はお任せしますね」
詩乃は自らの権能によって雨を降らせながら、トリテレイアに信頼を籠めて一礼する。
信を託された機械仕掛けの騎士は黙礼を返すと、自身も赤錆の騎士を追って外に出る。
「女神の一喝で心は定まりましたか?」
過負荷により熱を持った機体が、雨に打たれて蒸気を上げる。ある程度の冷却効果は見込めるだろうが、それでも【戦機の時間】は長くは続けられないだろう。自壊の危機をひた走りながら、しかし彼はそんな事はどうでもいいかのように、赤錆の騎士を一喝する。
「人に付けぬならば、人の敵手たる騎士を全うしなさい。矜持を取り戻し全力で立ち塞がりなさい!」
雨音にも負けぬその叫びは、或いは女神の平手打ちと同じくらい、赤錆の心に響いた。
錆と血に塗れた兜の上を、雨粒が伝い流れていく。それはまるで騎士の落涙のように。
「その誇り以外、真正面から砕いて差し上げます」
「…………ああ。異郷の騎士よ、この悪逆の騎士を見事討ち取ってみせよ」
再び立ち上がった赤錆の騎士の剣に、迷いは見られなかった。残された力を振り絞り、ただ全力で斬り掛かる――赤錆の覚悟の突撃に、機械仕掛けの騎士も最高速度で応えた。
降りしきる雨の中で再び繰り広げられる、壮絶な剣戟の応酬。だがその果てにある決着は双方に明らかだった。代償と引き換えに力を得たトリテレイアに、勝利の天秤は傾く。
「ああ……見事だ……ッ!」
錆びた鎧の上から儀礼剣で斬り伏せられ、濡れた地面にがくりと膝をつく赤錆の騎士。
表情こそ兜に隠れて窺えはしないものの、言葉には自身を撃破した者への称賛と、歓喜の感情がはっきりと籠められていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
卑劣な裏切り者……
自らそう評するオブリビオンとは珍しい。
人間時代の記憶が残っているなら騎士らしく戦ってみるか?
オレはこの刃しか使わない。
剣と刃のみをぶつけ合う正々堂々の一騎打ちだ。
奴の言動から人だった頃の未練……感情が読み取れる
その感情を利用し駆け引き無しの斬り合いに持ち込み全力の一撃を誘う
オレの斬撃より敵UCの方が確実に速い
が、それが狙い
単純な斬り合いだからこそ合わせ易い
あらゆる攻撃を反射する「無驍反衝」をな
この間合いで反射すれば防御不可能
多くの人間を処刑した剣で自らを斬り裂くがいい
アンタが本物の卑劣漢だったらこんな手に乗らなかっただろう……
哀しき騎士よ、アンタを越えて人類の夜明けを齎そう
「卑劣な裏切り者……自らそう評するオブリビオンとは珍しい」
これまでに傲慢で不遜で邪悪なオブリビオンを何度も見てきたナギにとっては、自らを悪と断ずる咎人は物珍しい相手だった。かの「赤錆の騎士」がヴァンパイアの領主であり断罪されるに足る咎を抱えているのは、間違いのない事実だが――。
「人間時代の記憶が残っているなら騎士らしく戦ってみるか?」
咎人には徹底した殺戮を常とする彼にしては珍しく、「歪な怨刃」と呼ばれる鉈を突きつけて声をかける。その口元には殺人鬼らしい、静かで愉しげな微笑みが浮かんでいた。
「オレはこの刃しか使わない。剣と刃のみをぶつけ合う正々堂々の一騎打ちだ」
「……拒否する理由はないな」
まるで決闘を挑むかのような言動。挑戦を仕掛けられた赤錆の騎士はナギの真意を測るように暫く視線を向けた後、厳かに頷くと剣を構えた。身に着けた武具は錆びていても、その技術だけは衰えていないことが立ち居振る舞いから分かる。
(奴の言動から人だった頃の未練……感情が読み取れる)
だがナギは敵のそれ以上に深い部分までをも把握したうえで、この対峙に臨んでいた。
その環状を利用し駆け引きなしの斬り合いに持ち込めば、敵は全力の一撃を仕掛けてくるだろう。かつて剣でその身を証し立てた者としての矜持が、少しでも残っているなら。
(オレの斬撃より敵ユーベルコードの方が確実に速い)
同じ斬りあいの土俵に立てば、瞬時の踏み込みから繰り出される騎士の一撃は脅威だ。万全でない状態だとしても、それでユーベルコードの威力が衰える相手だとも思えない。
が、それが狙い。戦場にピンと張り詰めた緊張の糸を感じながら、ナギは全神経を集中してタイミングを推し測る。
「……参る」
律儀と言うべきか、愚直と言うべきか。敵は正々堂々、真正面から斬り掛かってきた。
確かに、速い。実際に正面から向かえば思っていた以上の速さだ。なんとか刃を合わせたところでそのまま斬り伏せられるのがオチだろう――しかしナギの表情は曇らない。
「単純な斬り合いだからこそ合わせ易い」
あらゆる攻撃を反射する【無驍反衝】。それがナギの用意していた隠し玉だった。騎士の【強撃】が身体を捉える瞬間、ユーベルコードを発動して錆びついた剣を受け止める。
本来なら両断されるはずだった斬撃の威力は全て、それを仕掛けた側に跳ね返される。互いに30cmもない今の間合いで反射すれば防御は不可能。
「多くの人間を処刑した剣で、自らを斬り裂くがいい」
「―――ッ、があっ!!!!」
ナギの冷たい宣告と同時に、赤錆の騎士の鎧に大きな斬撃痕が深々と刻みつけられる。
皮肉にもその威力は錆びた鎧を切り裂き、本人に深手を負わせるに十分なものだった。
「アンタが本物の卑劣漢だったらこんな手に乗らなかっただろう……」
がくりと膝を突いた赤錆の騎士を、ナギは哀れみの籠もった眼で見下ろしながら言う。
彼奴はあくまで正々堂々という此方の誘いに応えてきた。罪なき人々の返り血に塗れ、数え切れないほどの罪業を犯しても、騎士としての精神だけは本物だった。
「哀しき騎士よ、アンタを越えて人類の夜明けを齎そう」
それが、せめてもの慰めになるだろうと、彼は語りかけながら歪な怨刃を振り下ろす。
数多の咎人を屠ってきた刃が、騎士の受けた傷をさらに抉り――錆よりも赤い鮮血が、戦場を染め上げていく。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
貴方は、反乱を…
否、革命を成せなかった。
希望は絶たれ、無念と赤錆を纏い、
此処に、仇に縛られている。
…思うにですね。
そろそろ、人に託しても良いんじゃないです?
貴方がかつて抱いた、希望を。
数多の戦場、戦闘知識…
体幹、構え、体捌き。剣の握りに可動域。
視線に狙い、踏込み…速度。
身得た全てで、見切り躱す。
ナイフ投擲。
払われるを前提に…誘う。
刺突とあらば、動きは直線的にならざるを得ない。
突きから斬りへ切替の可能性は留意しつつ、
避け、鋼糸による反撃を。
一の傷は握る己の掌へ。
鎧など無視して、残る全てで巻き斬り断つ
――唯式・幻
貴方が剣を取った時と。
貴方が堕とされた時と。
もう違いますよ。
今は――我々がおりますから
「貴方は、反乱を……否、革命を成せなかった」
かつての英雄、或いは英雄のなり損ないをじっと見ながら、クロトは静かに語りだす。
かの騎士が辿ってきた過去の全てを知っている訳ではないが、それが如何に救いようのないものだったかは、これまでの情報や本人の言葉からも分かる。
「希望は絶たれ、無念と赤錆を纏い、此処に、仇に縛られている」
ただ死ぬよりも、どれほど辛い宿命だろう。吸血鬼に敗北した時点で終わっていれば、きっと楽だったに違いない。かつての自分が守りたかった者を、志を同じくする者達を、その手で斬り捨てる苦痛は想像する事さえはばかれる。
「……思うにですね。そろそろ、人に託しても良いんじゃないです? 貴方がかつて抱いた、希望を」
「……貴公らが、託すに値する者達であれば」
もう楽になればいいのではと問うクロトに、赤錆の騎士は錆びついた剣を突きつける。
その言葉は何かを期待しているようでもあり、また確かめるようでもあった。かつての自身が成せなかった事を、この者達なら成せるのか――彼は剣によってその是非を問う。
「力を示さなければ、信じてもらう事はできませんか」
ならばそうしましょうと、クロトはベルトから黒染めのスローイングナイフを抜いた。
そして視る。此方に斬り込んでくる敵の動きを、数多の戦場で得た戦闘知識に基いて。
「示してみせろ……私に、希望を」
「いいでしょう」
体幹、構え、体捌き。剣の握りに可動域。視線に狙い、踏込み――速度。視える全てを目に焼き付けて、敵の動きを見切り躱す。赤錆の騎士の初撃はクロトには届かなかった。
彼はそのまま流れるような所作で、持っていたナイフを投擲する。「Venom」と名付けられたその刃には、即効性の神経毒が塗布してある。が、達人相手にこの程度の細工が通じるとも思えない。対処されるのを前提にした"誘い"だ。
「私も、最期まで……全力を以て、貴公らの敵となる」
赤錆の騎士はナイフを剣で打ち払い、そこから【致命へと繋がる】刺突の構えを取る。
それは最短かつ最速の軌道を経て、標的の心の臓を貫く致命の一突き。だがその剣技を使わせるのは、クロトの狙い通りでもあった。
(刺突とあらば、動きは直線的にならざるを得ない)
途中で斬りに切り替わる可能性は留意しつつ、読みの鋭さと経験を総動員して、必殺の突きを避ける。まさに紙一重、胸の皮一枚を裂いて、錆びついた剣が突き抜けていった。
「唯ノ弐、壱ノ式」
暗色深まった瞳を輝かせて、クロトは即座に反撃に転じる。放つのは鋼糸による斬撃、鎧など無視して、視界に捉えた全ての標的を巻き斬り断つ、彼が体得した仕留めの技巧。
「――唯式・幻」
一呼吸のうちに八度の斬撃が、視認する事も叶わぬ連撃が、標的の全身を斬り裂いた。
赤錆の鎧を己の血で深い紅に染めながら、騎士は糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「貴方が剣を取った時と。貴方が堕とされた時と。もう違いますよ。今は――我々がおりますから」
技の代償として、鋼糸を握った掌からぽたぽたと血を滴らせながら、クロトは告げる。
これが現代を生きる者達の、『闇の救済者』を支える猟兵の力。それをはっきりと身に刻みつけられた騎士は、ただ一言「見事だ」と呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
闇の救済者の皆さんを危険に晒すのは本意ではありませんけど、本当にわたし達だけで領主様を討っていいんでしょうか?
勿論、承知の上で託されたんだとは思います。
それでも……もし一矢報いる覚悟でこの場に立つという方がいるなら、その想い、たとえ非望といわれようとも全力で護ります!
【C:K.エイク】で地獄の炎を貸し与えれば、その刃を敵に突き立てる支えになるでしょう。
ただし、痛覚共有により対象全員からバックファイアを受けるので、保てる時間を考えると、望むらくは乾坤一擲の一撃です。
とはいえ、命を散らせるつもりは毛頭ありません。
いざとなれば身を挺してでも【庇い】ます。
これが彼らが……そしてあなたが望んだ決着です!
――戦いは、終局に向かっている。
闇の世界で戦い続けてきた猟兵の力は領主を凌駕し、今やその命に王手をかけている。
勝利の時は目前。だが、それを見つめるレナータの胸中には、ひとつの想いがあった。
(闇の救済者の皆さんを危険に晒すのは本意ではありませんけど、本当にわたし達だけで領主様を討っていいんでしょうか?)
この戦いに参戦した『闇の救済者』達は、領主の撃破を猟兵に託した。最大戦力である猟兵を敵将にぶつけるのは理に適ってはいる。だが本当は、自分達の手で引導を渡したかったのではないのだろうか。
「勿論、承知の上で託されたんだとは思います。それでも……もし一矢報いる覚悟でこの場に立つという方がいるなら、その想い、たとえ非望といわれようとも全力で護ります!」
この戦いにかける彼らの想いを、できる限り汲み取りたい。そう思ってレナータは声を上げた。地獄の炎で形作られた翼を大きく広げて、紫色の火の粉を辺りに散らしながら。
吸血鬼に対する積年の想いを、この手で叩きつけてやりたい――『闇の救済者』の中にそう思わない者などいないだろう。獄炎の熱が燃え移ったように、人々が集まってくる。
「……只人の身で、私と……吸血鬼となった私と戦うというのか」
覚悟の決まった人々の表情を、満身創痍の赤錆の騎士は食い入るように見つめていた。
配下の軍勢ももはや総崩れに等しく、戦場に残るまともな戦力と呼べる者は彼のみだ。猟兵の助力があったとはいえ――ただの人間が、本当に吸血鬼を打倒しようとしている。
「皆さん、わたしの力を使ってください!」
領主打倒を決意し集まった者達に向けて、レナータは【C:K.エイク】で助力を行う。
我が身に宿る地獄の炎を貸し与えることで、これまでの戦いによる外傷を塞ぎ、一時的に全能力を増強する。そうすれば、その刃を敵に突き立てる支えになるだろう。
「ただし、痛覚共有により対象全員からバックファイアを受けるので、保てる時間を考えると、望むらくは乾坤一擲の一撃です」
「分かった。ありがとう」
与えた力とその制限を手短に伝えると『闇の救済者』達は神妙な表情でこくりと頷く。
危険は承知。この身に湧き上がる力がつかの間のものだと言うのなら、全身全霊を刃に乗せよう。各々の武器に獄炎を宿す彼らの表情には、鬼気迫るほどの気魄が滲んでいた。
「とはいえ、命を散らせるつもりは毛頭ありません」
いざとなれば身を挺してでも庇う覚悟で、レナータは『闇の救済者』の戦いを見守る。
誰かを護るために。支配を打ち破るために。未来を切り拓くために。ここで散ってもいいと考えている者は1人もいない。皆が皆で明日を迎えるために全力を尽くしている。
「……ああ。美しいな」
赤錆の騎士はそう呟くと、一振りのみの剣を構えた。邪悪なる吸血鬼の領主、裏切りの騎士としての任を最期まで全うすべく。この地に集った人々の全てを受け止めるために。
「これが彼らが……そしてあなたが望んだ決着です!」
レナータの宣言を合図として、『闇の救済者』が吶喊する。最初の一撃に全てを込めるという意志を明確にした、あまりにも素直な突撃。騎士ならば真っ向からはぶつからず、一時引いて対処したほうが正しいと判断できただろう――だが、彼は絶対にそうしない。
「ああ、そうだな……決着を、付けよう」
悪の領主として、非道の騎士として。超常すら切り裂く斬撃を振るって、赤錆の騎士は『闇の救済者』と全力で渡り合う。剣戟と獄炎が交わされ、人々の雄叫びが戦場に轟く。
時間にすれば僅か1分にも満たない、最後の激闘。その終わりに倒れ伏した者は――。
「――……ああ。そうだ、これこそが、私の望んだ……」
砕けた兜の下で、微かに笑う男の口元が見えた。開放感に満ちた安らかな笑みだった。
折れた剣が、朽ちた鎧が、虚空に溶けるように消えていく。罪の象徴たる赤錆と共に。
やがて、そこには最初から何もなかったように「赤錆の騎士」の存在は骸の海に還る。
それが、『闇の救済者』達による一大反抗の結果。かけがえのない勝利の瞬間だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『鮮血の骸騎士アインソード』
|
POW : 鮮血剣ダインスレイヴ
【血液で作り出した血を吸収する長剣】が命中した対象を切断する。
SPD : 鮮血の外套
【自由自在に形を変える血液で出来たマント】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 悠久の時が流れても
戦闘用の、自身と同じ強さの【血液で出来た巨大コウモリ】と【かつて愛した人間の女性を模した血液人形】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:ヤマモハンペン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アーデルハイド・ルナアーラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「勝った……勝ったぞーーーっ!!!!」
猟兵と『闇の救済者』達による反攻作戦により、領主「赤錆の騎士」はついに倒れた。
将を失った敵軍は総崩れとなり、そこから残党を掃討するまではあっという間だった。
ヴァンパイアの支配下にあったこの領地は、晴れて人類のものになったのだ。
この戦いの勝利は『闇の救済者』にとって、これまでと違う非常に大きな意味を持つ。
領主相手に正面から戦いを挑み、そして勝ったのだ。猟兵達の協力があったとはいえ、まさに偉業と言えよう。負傷者も少なくないものの、彼らの表情はみな晴れやかだった。
「俺たち、ついにやったんだな!」
「ええ! 人類の反撃はここからよ!」
「今日は祝勝会だ! うんと飲むぞー!」
「猟兵の皆さんも……あれ? 猟兵さん達はどこに?」
――だが。グリモアの予知を受けた猟兵達は、まだ終わりでは無いことを知っている。
興奮冷めやらぬ様子の人々からそっと離れ、猟兵は『闇の救済者』によって制圧された屋敷と都市部の外れに向かう。その方角から漂う尋常ならざる鬼気を察して。
「……ほほう。まさか人間如きが、本当に領主の軍を倒してしまうとはな」
そこに居たのはむせ返るような鮮血の臭いを纏った、黒い鎧姿のヴァンパイアだった。
先程戦った「赤錆の騎士」と比べても、遥かに強い威圧感。彼こそが地底都市に住まう『第五の貴族』が派遣した刺客とみていいだろう。
「主の命令とはいえ、弱者をただ蹂躙するだけの作業など退屈でしかないと思っていたが……どうやら考えを改めなければいけないようだ。『闇の救済者』とやらも中々やる」
その吸血鬼は闘争心に満ちた残虐な笑みを浮かべて、人々の声がする方角を見ている。
基本的に弱者を虐げることに悦びを見いだす同族達とは、彼はやや異なる嗜好を持っているようだ。ただしそれは彼が人類にとって友好的な吸血鬼であることを意味しないが。
「認めよう、お前達は強い。我が全力を以て殺戮するに値する強者だ」
雌伏を経て力をつけた猟兵と『闇の救済者』の実力を認めた上で、その男は剣を抜く。
彼自身の血液から作り出された、赤い魔剣。それは飢えたようにぽたぽたと血の雫を滴らせながら、不気味な魔力を発している。
「我が名は鮮血の骸騎士アインソード。さあ、私の心臓を貫いてみよ! 強者よ!」
愉悦を込めて高らかに叫び、吸血鬼アインソードは怖気をふるうほどの殺気を放った。
第五の貴族より『殺戮者の紋章』の紋章を与えられた彼の力は、地上世界の吸血鬼とは比較にならない。力をつけた『闇の救済者』とて、まだ遠く及ばないだろう。
ここで猟兵達が敗北すれば人類の勝利は覆され、『闇の救済者』達は皆殺しにされる。
ここから先は、勝利を勝利で終わらせるための戦いだ――地の底より現れし刺客を返り討ちにするために、一同は再び戦闘態勢を取った。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン…何とも品の無い香水だな
マナーも知らない者を祝勝会に寄越すとは、第五の貴族も人手不足と見える
まずはシガールQ1210で距離を取って銃撃
敵がこちらに向かって来たら鮮血剣ダインスレイヴの攻撃を見切りで回避に専念しつつ、武器をナガクニに持ち替えて隙があればカウンターで斬り付ける
ここから先は祝勝パーティーの会場でね
血の臭いを撒き散らすような奴はお帰り願おう
敵の攻撃を回避に成功して敵に大きな隙が出来たらUCを発動
軽業で素早く動き、足払いで敵の体勢を崩したら強力な蹴りの一撃を叩き込む
この勝利は、彼らが世界を吸血鬼と言う頸木から解き放つための第一歩だ
お前達に水を差すような真似はさせないさ
「フン……何とも品の無い香水だな」
強い血の匂いをまとってやって来た鮮血の骸騎士に、不快感を露わにするのはキリカ。
そんな死の気配を色濃く纏った格好で『闇の救済者』の勝利に水を差そうとは、招かれざる客であるのは勿論、実に不粋な行為と言えよう。
「マナーも知らない者を祝勝会に寄越すとは、第五の貴族も人手不足と見える」
「残念だが予定は変更だ。今宵はこれから祝勝会ではなく殺戮の宴となる」
主君より与えられた『殺戮者の紋章』を輝かせ、骸騎士は血液で出来た魔剣を構える。
その口元には隠しきれない高揚の笑み。任務である以上に、敵がこの対峙を愉しんでいるのは明白であった。
「ここから先は祝勝パーティーの会場でね。血の臭いを撒き散らすような奴はお帰り願おう」
招かれざる客を追い返さんと、強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"の銃撃を浴びせるキリカ。秘術で強化された銃弾のフルオート射撃は、竜の皮膚も貫通するほど強力――だが、敵はそれを剣一本で防いでみせた。
「こちらも手ぶらで帰るわけにはいかんのでな。止めたくば力で止めてみよ!」
【鮮血剣ダインスレイヴ】で弾を斬り捨てながら、瞬速で近付いてくるアインソード。
キリカは銃撃を続けながら距離を取ろうとするが、速度では明らかに相手の方が速い。またたく間に白兵戦の間合いに詰められる。
「まずは小手調べだ。簡単に果ててはくれるなよ?」
そう言うにはあまりにも速く、そして鋭い鮮血の斬撃。キリカは拳銃から短刀に武器を持ち替えると、敵の動きに全神経を集中して回避に専念する。やはり地底都市の主君より『紋章』を賜るだけの器ではある、その技量、膂力、速度、全てが卓越したレベルだ。
「だが、私達にも譲れないものがあってな」
一度でも読み違えれば真っ二つになる死の瀬戸際で、キリカは敵の攻撃を躱し続ける。
そして僅かでも隙があればカウンターを仕掛ける。竜骨の破片を混合させた特殊鋼製の刃が、吸血鬼の黒鎧を切り裂き浅い傷を与えた。
「この私に傷を負わせるか……! いいぞ、そうでなくては!」
アインソードは負傷にも関わらず、それどころか喜悦に笑みを歪めて攻撃を続行する。
その太刀筋はやはり一撃一撃が致命傷となりうるもの――しかし、求めていた強者との出会いに興奮しているのか、動きに粗さが見え隠れするようになってきた。
「この程度で浮き足立つとはな」
キリカはその変化を見逃さず、攻撃を避けた後に生まれる大きな隙を狙う。軽業めいた身のこなしで素早く動き、地を這うような鋭い足払いを一発。不意をつく下段への攻撃に敵の体勢が崩れた。
「この勝利は、彼らが世界を吸血鬼と言う頸木から解き放つための第一歩だ」
二度あるかどうかも分からぬ好機に、キリカは「アンファントリア・ブーツ」の機能を最大解放する。魔法工学による身体と運動能力の強化、そこから放たれる【サバット】の一蹴りを、全身全霊で敵の胴体に叩き込む。
「お前達に水を差すような真似はさせないさ」
「―――ッ!! ハハッ、素晴らしい……!」
鎧の胸甲がひび割れるほどの衝撃。大きく吹き飛ばされたアインソードは、口元の血を拭いながら喜悦に昂ぶる。素晴らしき敵手に出会えたと笑う、それはキリカの一撃が彼に有効打を与えた証明でもあった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「アインソード…だと!?」
驚愕するカビパン。
(うわ、すっげーダサい名前)
(神学校の道徳でこう返すんだよ、って習ったことがあったわね)
「す、凄い個性的な名前ですね」←人の事言えない
「私は猟書家の帝王フリーザ様ですよ」
「そうか、フリーザか…」
融通が利きそうにないアインソードに本当にフリーザだと思われてしまった。
「ちなみに、私の歌唱力は53万です」
そんなアホみたいなやり取りを続けながら
「私に貴方の心臓は貫けませんが、心に響く感動を届けられます。それでは聴いてください、新曲~悠久の時が流れても~です」
まさに悠久の時にトラウマに刻まれるようなリサイタルが始まった。
(悠久がテーマのラップ歌詞お願いします)
「アインソード……だと!?」
領主との戦いの熱も冷めきらぬうちに現れた、新たな敵の名乗りに驚愕するカビパン。
今回の依頼を通して常に威風堂々とした振る舞いを保ってきた彼女が、これほど驚きを露わにするとは――敵の強大さを感じ取ったのかと思われたが、そうではなかった。
(うわ、すっげーダサい名前)
彼女は戦慄していた。というよりもドン引いていた。敵のあまりのネーミングセンスの無さと、それを堂々と名乗れる度胸に。ここまでシリアスキャラで通してきた彼女だが、内なるギャグキャラとしての本能がとうとう隠しきれなくなってきたようだ。
(神学校の道徳でこう返すんだよ、って習ったことがあったわね)
カビパンは所謂キラキラな名前の人に出会ってしまった時の、当たり障りのない対応を思い出す。できるだけ相手の気分を害しないような作り笑いと、やんわりとした態度で。
「す、凄い個性的な名前ですね」
結果的に腫れ物に触るような扱いになってしまった。そもそも「カビパン・カピパン」なんて偽名を名乗っているヤツが、他人様の名前にケチをつける筋合いもないだろうが。
「ほう、挑発のつもりか?」
しかしアインソードはカビパンの方言を真顔で受け取ると、鮮血剣の切っ先を向ける。
強者との闘争を求める彼にとっては、その"強者"の1人であるカビパンが無駄な発言をするとは考えていないのだろう。まして本気でダサいと思っているとは考えもしない。
「私は猟書家の帝王フリーザ様ですよ」
「そうか、フリーザか……」
明らかにボケだがツッコミづらいカビパンの名乗りも完全にスルー。あまり融通の利かない性質らしい彼には、本当にフリーザだと思われてしまった。とんだボケ殺しである。
「ちなみに、私の歌唱力は53万です」
そんなアホみたいなやり取りを続けながら、カビパンはいつもの自分のペースを取り戻していく。カッコよく『闇の救済者』を率いていた名将の姿はどこへやら、ただのカレー屋の店主に戻った彼女は聖杖をマイクのように構え。
「私に貴方の心臓は貫けませんが、心に響く感動を届けられます」
「ほほう……? 面白い、我が悠久の魂を震わせられる感動があるならば見せてみよ!」
その発言には興味を惹かれたらしいアインソードは、【悠久の時が流れても】を発動し血液で出来た巨大コウモリと女性の人形を召喚する。もしつまらないものを聞かせれば、此奴らが即座に貴様を八つ裂きにするという意思表示だ。
「さあ聞かせてみよ。強者との闘争以上に、我が心に響く歌とやらを」
闘志と殺気を収める事なく、鮮血の骸騎士はいつでも斬り掛かれる距離に立っている。
微妙な緊張が満ちる中、しかしカビパンは臆さず【カビパンリサイタル】を敢行する。
「それでは聴いてください、新曲~悠久の時が流れても~です」
どこからともなく聞こえてくる謎メロディ。いやそれをメロディと呼んでいいものか。
楽譜に起こせばモーツァルトが発狂しそうな不協和音に合わせて、聖杖マイクを握りしめた女が熱唱する。
~悠久の時が流れても~
あ~悠久です それは有給です
僕も貴方もアインソードも悠久です
鮮血剣振るえ 声を震え
猟書家カビパンが まちちぇけラップ
鮮血の外套 マイク持ったら止められない
挨拶交わしてフリーザですよもこんな時間だ行かなくちゃ
お昼間なんですお日様照らす 無駄金使わずさっさと歩け
月火水木金土 悠久続くよ レッツラーゴー
「な、なんだこれは……!」
アインソードの心は震えた。もちろんいい意味ではなく悪い意味で。あまりにも酷い、酷いという言葉ですら生易しいような絶望的な音痴で奏でられる「悠久」をテーマにしたラップ調の歌詞。それはまるで精神を直接攻撃するような不快感を脳に刻みつけてくる。
「ぐぅッ、やめろ、もういい……!」
耳を塞ぎながら彼は叫ぶが、一度始まってしまったリサイタルはすぐには終わらない。
カビパンはノリノリで歌いまくり、音痴歌を全力でお届けする。このまま聞き続けていたら命に関わると敵が判断するまで、そう長くはかからなかった。
「猟兵にはこのような力の使い手もいるのか……恐るべし!」
微妙に何かを勘違いしつつ、アインソードは熱唱の聞こえない距離まで後退していく。
結果的にではあるが、カビパンは『闇の救済者』達のいる場所から敵を遠ざけることに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
戦士の獰猛さはあれど吸血鬼特有の慢心を感じない。
貴様のような真に恐るべき戦鬼を行かせるわけにはいかんな。
我が名は黒騎士ブラックスミス。
鮮血の骸騎士よ、その歩みは此処で止める。
下手に狡く立ち回れば警戒される。
真っ向から【切り込み】、敵攻撃はまずは黄金魔剣の【武器受け】。
【学習力】で相手の実力を【戦闘知識】として蓄積、
十分に動きを【見切り】次第、マントをUC【青炎模る濁竜の翼腕】に変形
敵UCを真剣白刃取り(【ジャストガード】)。
このUCで強化された反応速度ならばこの間隙を突くことも可能、
がら空きになった敵の胴を黄金魔剣で【串刺し】にする!
尊き民に勝利捧げるが我が騎士道!貴様の死をもって貰い受ける!
(戦士の獰猛さはあれど吸血鬼特有の慢心を感じない)
骸騎士を名乗る敵の隙のない立ち居振る舞いを見て、ルパートは気を引き締め直した。
あの男が命じられたのは『闇の救済者』の殲滅。手心を加える期待などするべきでないのは一目瞭然。『紋章』を与えられた力を以て、全力で反乱分子を摘み取るだろう。
「貴様のような真に恐るべき戦鬼を行かせるわけにはいかんな」
「では、何とする?」
至極愉快そうに口元を歪め【鮮血剣ダインスレイヴ】を弄ぶ敵に、黒き鎧と燃える鉛の騎士は黄金魔剣を手に対峙する。誇り高き騎士として、正々堂々とした名乗りを上げて。
「我が名は黒騎士ブラックスミス。鮮血の骸騎士よ、その歩みは此処で止める」
下手に狡く立ち回れば警戒される。そう判断したルパートは真っ向から敵に斬り込む。
迎え撃つ形となったアインソードは、その黒鎧を真っ二つにせんと鮮血の剣を振るう。
「面白い! だが、果たして貴様にその力があるか!」
火花を散らす黄金の魔剣と鮮血の剣。激しい剣戟を繰り広げながら、ルパートは相手の実力を学習する。『殺戮者の紋章』によって強化されたパワーとスピード、そして骸騎士自身の熟達した剣技――その戦闘力は先程戦った赤錆の騎士を遥かに上回っている。
「流石は『第五の貴族』直々に送り込んできた刺客か」
これほどの強者を寄越される程『闇の救済者』が敵にとって油断ならざる存在となったのは喜ぶべきか。だがここで自分達もろとも殲滅されては、これまでの努力も水の泡だ。
無論、そうさせるつもりは無い。幾度かの攻撃を凌いで、敵の動きは十分に見切った。ルパートは反撃に転ずるためにマントを【青炎模る濁竜の翼腕】に変形させる。
「彼の帝竜は既に終焉に消えて。されど、彼の暴虐は我が炎翼が覚えて!」
ある時は飛翔手段にもなる流動する鉛のマントが、青炎に燃える巨大な腕となる。この追加腕を利用して、彼はアインソードの【鮮血剣ダインスレイヴ】を受け止めんとする。
「ぬ……ッ?!」
黒騎士の背中から生えた一対の青炎纏う腕が、振り下ろされる鮮血剣を白刃取りする。
おそらくは一度しか通じぬ奇策。だが一度だけ、一瞬だけ隙を作る事ができれば十分。このユーベルコード発動により強化された反応速度ならば、この間隙を突くことも可能。
「尊き民に勝利捧げるが我が騎士道! 貴様の死をもって貰い受ける!」
全身に流れる鉛を活性化させ、ルパートはがら空きになった敵の胴に剣を突き込んだ。
異界にて戦った帝竜の能力から学んだ陸戦特化形態。翼を捨てる事で得た膂力、速度、反応は、強大なる『紋章』持ちヴァンパイアのそれを一時のみ凌駕した。
「――……かはッ!!」
一拍の沈黙を経て、喀血するアインソード。その胸には青炎を纏った黄金魔剣が深々と突き刺さっていた。切っ先が背中から飛び出すほど深く貫かれては、いかなヴァンパイアとて無事とは言えまい。
「良いぞ……この辺境の地で、これほど強く誇り高き騎士と出会えるとは!」
それでも鮮血の骸騎士は歓喜をもって叫ぶ。素晴らしき強者に出会えた悦びをもって。
地の底より現れし戦鬼に、真の死がもたらされる時は、まだしばし先の事となる――。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
同じ騎士の肩書でも心持は随分と異なるようね
いずれにせよ世界に仇為すオブリビオン、斃すべきには変わらないけれど
《空中戦》展開、《念動力+情報収集》の力場感知で《第六感+戦闘知識》の《見切り》を補正し攻撃回避
序盤は遠隔から《属性攻撃+弾幕》の雷羽による《蹂躙+吹き飛ばし》でUC発動の《時間稼ぎ・エネルギー充填》
決め手は【解演】→【閃紅散華】
普段の3倍の強化を施し《ダッシュ+切り込み》、纏う紅雷を以て血のマントを《薙ぎ払い》蒸発させ瞬時に距離を詰める
更に片手のダガーを《クイックドロウ+投擲》して《体勢を崩す》牽制
《2回攻撃》も重ねて攻撃回数は54倍、残るダガーと体術で《早業+怪力》の連撃を叩き込むわ
「同じ騎士の肩書でも心持は随分と異なるようね」
赤錆の騎士と鮮血の骸騎士。懊悩と無念に苛まれていた前者とは異なり、後者は純粋に強者との死合を求めているようにカタリナには見えた。いかなる来歴があるかは定かでは無いが、あの骸騎士は現在の自分に後悔を持ち合わせてはいなさそうだ。
「いずれにせよ世界に仇為すオブリビオン、斃すべきには変わらないけれど」
閃風の舞手は再び翼を羽ばたかせ空に舞い上がる。『第五の貴族』直属のヴァンパイアが救済者の皆殺しを企てている、それだけでも全力を以て阻止する理由には十分すぎた。
「そうだ、来るがいい猟兵よ! 貴様等の全力を示せ!」
アインソードが【鮮血の外套】を翻すと、血液で出来たマントが変幻自在に形を変え、空中にいる標的に襲いかかる。念動力の力場でその動きを感知したカタリナは、舞うように空を翔けて攻撃を躱した。
「強いわね」
赤錆の騎士の動きを読んだ時と同じ、理論と直感の組み合わせによる回避術。しかし、自在に変形するマントの動きとそれを操る骸騎士の技量は、赤錆の騎士の剣技を上回る。
ただ避けているだけではいずれ追い詰められるだろう。カタリナは翼から雷を付与した羽弾を飛ばし、マントの攻撃を弾きつつ遠隔より反撃する。
(有効打は取れなくてもいい、ユーベルコードを発動するまでの時間稼ぎにさえなれば)
"魔神"の力を体内で充填しながら、雷羽の弾幕を放つカタリナ。対するアインソードは鮮血剣で羽を切り払い、休むことなくマントによる攻勢を仕掛ける。その口元には笑みが浮かんでいる事から、まだまだ余裕を残している事が分かる。
「どうした。私を満足させるにはまだ足らぬぞ! もっと力を見せてみろ!」
「……ええ。見せてあげるわ」
だが、天と地で激しい応酬が繰り広げられるうちに、カタリナの反撃の準備は整った。
発動するのは【解演:括目せよ、是こそは神なる御業】。その身に宿した魔神の権能を解放し、他の権能の性能を引き上げるユーベルコード。"引き上げる"という言葉は正確ではないか――これは権能の真価を発揮させるための"正規の手順"なのだ。
「本来チカラの行使というものには然るべき順序というものが存在する。つまり――」
カタリナの体内から溢れ出した神力は、目も眩むほどの紅き稲妻となって全身を包む。
【閃紅散華】。調律の権能により攻撃力と速度を飛躍的に向上させるユーベルコード。その前提に【解演】の発動を組み込むことで、権能の効果はさらに高まる。
「"正規発動"という訳だ」
片手にダガーを構えてまっすぐに翔けだす。その速度はもはやこれまでの比ではない。
纏う紅雷の熱は血のマントを蒸発させ、ただ赤い軌跡のみを後に残す。アインソードがまばたきする一瞬のうちに、彼女はもう距離を詰めてきていた。
「速い……ッ!!」
アインソードの表情が驚嘆と歓喜に歪む。彼が行動を起こす前に、カタリナは空いている片手でもう一本のダガーを抜き放ち、投擲での牽制を仕掛けた。慣性によって加速した刃は銃弾以上の速度を得て飛んでいく。
「さあ、とくと御堪能あれ」
「ぐぅッ、がは、ぁッ!!」
投擲を躱すために敵が体勢を崩した直後、手元のダガーと体術による連撃を叩き込む。
一呼吸の間に54度繰り出される、斬撃、刺突、打撃の猛ラッシュ。正規の手順を踏まえた魔神の権能は、使い手の寿命を削りながらも壮絶な神威をこの地に示し――骸騎士の鎧と身体はまたたく間に鮮血の赤に染まっていった。
大成功
🔵🔵🔵
ギージスレーヴ・メーベルナッハ
折角の美酒だ、盃をひっくり返す真似は遠慮願おうか。
戦を所望ならば、余らが相手となろう!
黄昏大隊・蹂躙巨艦発動。
召喚した飛行艦から【砲撃】を行い敵を牽制しつつ、兵を降下させる。
降下した兵は、敵のユーベルコードで呼び出された蝙蝠の牽制に100名、女の迎撃に100名を割き、残りはアインソード本体へと【制圧射撃】を仕掛けさせ、攻撃を当ててのユーベルコード解除を狙う。
アインソード自身は全力での回避に徹するであろうから、その挙動を義眼による【情報収集】も交え見極める。
そして好機と見えた一瞬を狙い、魔導小銃の【スナイパー】で敵の紋章を撃ち抜いてくれよう。
「折角の美酒だ、盃をひっくり返す真似は遠慮願おうか」
勝利に酔う『闇の救済者』の声を彼方に聞きながら、ギージスレーヴは敵と相見える。
長い雌伏の時と命がけの戦いを経て、ようやく彼らは大いなる勝利を掴み取ったのだ。その余韻に浸る時間を台無しにするのは、余りにも不粋というもの。
「戦を所望ならば、余らが相手となろう!」
「成程。では心ゆくまで楽しませて貰おう!」
高らかに叫ぶ『黄昏大隊』首領に応じて、鮮血の骸騎士も愉悦を隠すことなく笑った。
戦ならばそれを好む者同士でやれば良い。強者との血湧く戦いこそが望みと言うなら、命尽きるまでたっぷりと食らわせてやろうではないか。
「ゴットリヒター出撃! 領域内の敵勢力を徹底的に蹂躙し殲滅せよ!」
ギージスレーヴの号令一下、戦場の空に到来するは【黄昏大隊・蹂躙巨艦】。黄昏大隊が保有する最大戦力、全環境対応の武装飛行戦艦が、巨大な砲塔を地上敵戦力に向ける。
轟く砲声は稲妻の如し。人間サイズの目標を撃破するには過剰とも思える大口径の砲撃だが、強大なオブリビオン相手にはこれでも足りないくらいだと彼女は知っている。
「ほほう、これは素晴らしい! 鉄の船が空を飛ぶとは!」
アンソードは飛行艦の威容を讃えると、ひらりと軽やかな身のこなしで砲撃を避ける。
大地を抉る砲弾も当たらなければ威力はない――だが牽制としての効果はある。その隙にギージスレーヴは艦内にいる兵士達に合図を出した。
「降下兵団、総員降下開始!」
飛行艦のハッチが開かれ、中から降下作戦装備で武装した兵士が次々と出撃していく。
総兵数430名。数だけでなく精鋭と呼ぶに足る練度を備えた彼らは、降下直後から一糸乱れぬ動きで作戦を開始する。
「感じるぞ……此奴等もなかなかの強者だ。では我が眷属共と踊ってもらおうか!」
対するアインソードは【悠久の時が流れても】を発動し、血液で出来た巨大コウモリと女性型の血液人形を召喚する。その戦闘能力は本人と同じ――つまり『殺戮者の紋章』で強化されたオブリビオンが実質3名に増えたようなものだ。
「隊を割いて対応せよ。蝙蝠の牽制に100名、女の迎撃に100名だ」
ギージスレーヴは果断に指示を飛ばし、降下兵団を悠久の眷属への対応に当たらせる。
一眷属につき兵士100名というのは過剰なようにも思えるが、実際にはこれでも不足する位だろう。彼女は敵の戦力を決して見誤らない。
「残りはアインソード本体へと制圧射撃を仕掛けよ。征け!」
「ハハハハハ! 愉しくなってきたな! これぞ戦争だ!」
降下兵団の装備したアサルトライフルの銃声、ロケットランチャーの爆音が響き渡る。
それを受ける骸騎士は高笑い。胸の紋章を煌めかせ、驚異的な速度と反応で銃弾と爆撃を躱してみせる。その間に大コウモリと血液人形が攻めかかり、兵士を蹴散らしていく。
(やはり奴自身は全力での回避に徹するか)
三方面で激戦が行われる中、ギージスレーヴは義眼「エレクトロニシェアウゲ」の機能も使ってアインソードの動きを観察していた。【悠久の時が流れても】の発動中、本体は戦闘に参加する事ができず、一度でも傷を受ければユーベルコードを解除されてしまう。
降下兵団の狙いは当然それだ。しかし圧倒的な力を誇る地底都市からの刺客相手には、たった一度のヒットをもぎ取ることさえ容易ではない。
(だが、好機は必ず来る)
二体の眷属の動きを牽制しつつ、本体を攻め続けて回避の挙動を見極める。熱源・生体・魔力反応の知覚から魔術的情報の解析まで、多角的な側面から敵の情報を詳らかにし、チャンスを探り当てるのだ――。
「……捉えたぞ」
その好機は一瞬。空と地上からの激しい砲火と銃撃に晒され、敵が僅かに体勢を崩す。
ギージスレーヴは即座に「トーテンクロイツ」のトリガーを引いた。古風な意匠のマスケット銃から、呪術加工された弾丸が放たれ――骸騎士に寄生する『紋章』を射抜いた。
「ぐっ……狙撃、だと!」
紋章はそれを持つオブリビオンの力の源にして急所。針に糸を通すような精確な一射を受けて、アインソードの表情が苦痛に歪み、血で出来たコウモリと人形が溶けて消える。
「この機を逃すな! 一斉攻撃!」
三方面に分かれていた降下兵団が、残された火力の全てをアインソードに集中させる。
同時に上空からは蹂躙巨艦の砲撃。"GottRichter(神を裁く者)"の名を冠するに相応しい大火力が、今度こそ鮮血の骸騎士に命中する。
「は、はは、素晴らしい……ッ、がはあッ!!!!」
砲火に吹き飛ばされたアインソードの口元には、それでも尚笑みがたたえられていた。
だが身体に刻まれたダメージは誤魔化しようがない。黄昏兵団が一丸となって負わせた傷は、紋章持ちにとっても無視できない重傷であった。
大成功
🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
《華組》
殺戮者の紋章…
普通
強力な道具であればある程
数は限られる
更に使いこなせる人材も限られる
つまり
油断は命取り
蝙蝠と血液人形は
火炎属性攻撃の追跡誘導弾で撃墜
蝙蝠の動きは対空戦闘知識も参考に見切る
血液は50℃ぐらいから凝固する
余裕があれば光学迷彩で目立たなくした誘導弾で骸騎士も狙う
敵の攻撃は第六感と聞き耳で見切り残像回避
燦が危なければ援護射撃か庇う
私の負傷はUCで霊体になる為問題無し
燦に【霊装】で憑依
第六感と聞き耳で敵の動きを見切り
攻撃は火炎属性攻撃のオーラ防御で防ぎつつ
紋章の場所を情報収集し学習力で分析
適時助言して鼓舞
戦後
『聖鞄』に保護していた救済者達と燦を【祝音】で癒す
燦、無茶も程々にしてね
四王天・燦
《華組》
パシリが借物の紋章でドヤるなと挑発的に笑うぜ
赤錆に肖って神鳴とアークウィンドの二刀流で相対する
風の衝撃波でマントを煽り、風を越えてきた分は武器受けカウンター
電撃属性攻撃で血を蒸発させる
シホに人形が向かったら集中を乱すべく突撃
打ち払いから心臓目掛けて刺突で穿つ
真っ当な剣と思わんし心臓が急所とも考えてない
下手な反撃される前に、肉体を酷使して殺戮剣舞に繋ぎ二撃三撃目の連撃に繋ぐよ
シホの助言で急所が見えりゃ地獄の筋肉痛上等で剣舞の封印を一段解除して四連撃目―即ち致命へと至る死連撃を打ち込む
シホの霊装が温かい
骨が砕けるほど無茶はしないさ
凝固した血液人形を一瞥
只の愛玩か人に夢を見たのか聞いておくぜ
「ハッ、ハハハハハ! 素晴らしい、想像以上だ! これぞ私が求めていた強者だ!」
百年の支配に比べればたったの数年。その僅かな時間でこれほどの力を付けたのか――全身に走る痛みを噛み締めながら、鮮血の骸騎士アインソードは喜悦の笑みを浮かべた。
「ああ、貴様等であれば、我が積年の渇きを満たせるやもしれん!」
「パシリが借物の紋章でドヤるなよ」
興奮する吸血鬼に水を差すように、挑発的な笑みと言葉を投げかけたのは燦。どれだけ粋がったところで奴が『第五の貴族』の走狗である事に変わりはない。紋章という首輪をかけられたまま誇らしげに語るさまは、実に滑稽だ。
「殺戮者の紋章……」
一方のシホは、鮮血の骸騎士に寄生するそれを知り警戒を強める。普通、強力な道具であればある程数は限られ、更に使いこなせる人材も限られる。『第五の貴族』が刺客という任を与えた上で特別な紋章を渡すのなら、対象となるのは相当な実力者のはずだ。
「つまり、油断は命取り」
「分かってるさ、シホ」
燦とて気を抜いているわけではない。霊刀「神鳴」と短剣「アークウィンド」を構え、微塵の隙もなく敵と対峙する。そんな彼女達を見て、アインソードはまた満足げに笑う。
「そうだ、油断などするな。互いに全力をぶつけ合わなければ意味はない!」
【鮮血の外套】をなびかせて、アインソードは【悠久の時が流れても】を発動。自らの血液から作り出した巨大コウモリと女性型の血液人形を、二人の猟兵に襲い掛からせる。
即座に前に出て対応にあたるのは燦。妖精の祝福を受けた短剣を振るえば、風の衝撃波が起こり敵を押し返す。だが、本体と同等の戦力を誇る眷属達を止めるには足りない。
『ギギィッ!』
向かい風にも負けずに飛んできた巨大蝙蝠が、鮮血の牙を剥き出しにして飛び掛かる。
だがそれが燦の喉笛を噛み千切る前に一発の銃声が鳴り響き、蝙蝠の翼に穴が空いた。
「血液は50℃ぐらいから凝固するはず」
血で造られた眷属を撃墜するために、シホが放ったのは火炎属性の誘導弾。翼持つ種族として対空戦闘の知識も豊富な彼女は、蝙蝠の動きをうまく見切り銃撃を当ててみせた。
火炎弾を受けた翼は焼けて固まり、うまく羽ばたけなくなる。バランスを崩して落下する蝙蝠を、すかさず燦が「神鳴」で斬り伏せる。
『ギギャーーッ!!』
電撃を纏った太刀に血液を蒸発させられ、血の蝙蝠は断末魔の絶叫を残して消滅する。
だがその間にもう一体の眷属――血液人形がシホに向かう。一見して美しい女性の姿形をしていても、その動きは非常に機敏で、顔には一切の表情というものが無かった。
「シホ!」
「大丈夫です」
向かってくる血液人形に対し、シホは大蝙蝠に当てたのと同じ火炎弾を引き撃ちする。
たとえ格上相手でもそう簡単に倒されはしないだろう。燦は一瞬迷いながらも、ここは本体を叩くべきだと判断してアインソードに突撃を仕掛ける。
「お前の腕前も見せてもらうぜ」
赤錆の騎士の二刀流に肖って、霊刀による打ち払いから短剣による刺突で心臓を狙う。
彼女は既にその戦技を完全に我が物としていた――だが敵もさるもの。赤錆の騎士をも超える素早い身のこなしで斬撃を刺突を躱し、刃に触れさせすらしない。
「速く・重く・鋭く。四王天・燦の荒ぶる剣戟が、肉体の限界を凌駕する!」
しかし燦の剣技はまだ終わらない。真っ当な剣と思わぬし心臓が急所とも考えてない。下手に反撃をされる前に、肉体を酷使して【四王殺人剣『殺戮剣舞』】の連撃に繋げる。
「ほう……!」
二撃、三撃と加速する二刀にアインソードが感嘆の声を上げる。彼方で血液人形を操りながら此方で攻撃を避けるのは至難の業だろう。集中力の糸が途切れた瞬間、風を纏った短剣の刃が骸騎士の肌を掠めた。
「援護します、燦」
本体が傷を負うと【悠久の時が流れても】は解除され、血液人形の動きが止まる。余裕のできたシホは拳銃をリロードし、今度は光学迷彩を付与した誘導弾で骸騎士を狙った。風景に溶け込みほぼ不可視と化した弾丸は、過たず標的に撃ち込まれる。
「この身は剣、この身は鎧、この身は翼、あなたに祝福を」
銃撃が作った僅かな隙に、彼女は【高潔なる勇気の聖霊】を発動。己の身体を聖霊体に変化させ、燦の身体に憑依する。それはまさに彼女の献身が形となったユーベルコード、大切なひとに道を切り拓く力と翼を与える霊装であった。
『燦、無茶も程々にしてね』
「骨が砕けるほど無茶はしないさ」
霊装の温かさを全身で感じながら、燦は刃を構える手に力を込める。今なら普段以上の威力を出せると体感で分かる――聖霊シホの加護が装備武器を強化してくれているのだ。
「まさしく一心同体か。地下籠りの長い身としては少々眩しすぎるな!」
アインソードは皮肉げな言葉を投げかけながら、眷属にかわり【鮮血の外套】を展開。意のままに形を変える血液のマントで二人を攻め立てる。対してシホは聖霊体のまま炎のオーラで燦の身体を包み、眷属らをそうしたように血の攻撃を灼き防ぐ。
『あの男の紋章は胸元にあります』
シホは憑依状態のまま防御に専念しつつ、攻撃役の燦に助言する。優れた聴覚と第六感を持つ彼女は、鮮血の外套の動きを見切りつつ、敵の紋章の所在まで見つけ出していた。
敵の力の源にして急所でもある一点。助言によりそれを見た燦は、後で地獄の筋肉痛になるのを承知のうえで【殺戮剣舞】に施された封印を一段解除する。
「まだまだ行ける……動けアタシの体ァ!」
肉体にかかる負荷を無視した四連撃目――即ち致命へと至る死連撃が『殺戮者の紋章』を捉える。それは旋風と紅雷と光輝、二人と三つの力を合わせた、葬送の斬撃であった。
「ッが……ァ!! 的確に、我が『紋章』を狙ってきたか……流石だ……!」
連撃に抉られた『殺戮者の紋章』はひび割れ、アインソードの声と表情に苦悶が滲む。
一旦体勢を整えようと後退していく彼に、燦が二刀を構えたまま問いを投げかけた。
「あれは何なんだ? 只の愛玩か、人に夢を見たのか」
「……かつて愛した女の似姿よ。お前達には関係のない過去の話だ」
一瞥するのは機能停止した血液人形。答える吸血鬼の瞳に感傷が宿ったのは一瞬の事。
再び敵が襲いかかってくる前に、シホが燦含む負傷者を【苦難を乗り越えて響く福音】で癒やしていく。
「主よ、この方達にどうか慈悲と祝福をお与え下さい」
『聖鞄』に保護していた救済者達も既に治療済みであり、今は後方で休んでいるはず。
あとはこの戦いさえ制すれば彼らの安全に憂いはない。完全勝利の時まであと一歩だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
願祈・廻璃
恐ろしい刺客ですね。でも、ここで引けば『闇の救済者』の皆さんが…。
厳しい状況ですが、この逆境に恐れず皆さんの勝利という願いを叶えるための覚悟があれば、
必ず【神秘の加護】が私達に力を貸してくれます!
巡瑠の後ろに乗ってしがみ付き、巡瑠と一緒に強敵に挑みます。
巡瑠の突撃のチャンスを作るために『願いの筆』で描いた虹で撹乱します。
加護のオーラを私達の周りに展開して敵の攻撃に備えますが、
敵の強力な長剣は加護のオーラの護りをも切り裂いてくるはずです。
しかし、そのオーラを切り裂くための一瞬の鈍りさえあれば、
巡瑠ならきっと突破できるはずです!勇気をもって前進します!
(巡瑠と同行します。アレンジも大丈夫です。)
願祈・巡瑠
そうね。私達の力でどこまで戦えるかは分からないけど……ここで引く訳にはいかないわ!
皆の祈った勝利を実現するためにも、何としてもここで倒すわよ!
普段の移動の時よりも攻撃的な【神殺の大筆突撃】の形態をとるわ。
ランスの突撃の様な強力なダッシュで廻璃と一緒に突っ込むわよ!
防御は廻璃に任せて、私は敵を吹っ飛ばす事に専念するわ!
とはいえ真正面から突っ込んでも分が悪いわね。
まずは地形を利用しつつ二人の筆の軌跡を残しながら高速で飛び回るわよ。
まあ、この程度で敵が見失ってくれるとは思わないけど、少しでも目暗ましになって欲しいわね。
後は私達の一撃が敵に届く事を祈って全力で突撃するわ!
(廻璃と同行、アドリブOK!)
「恐ろしい刺客ですね。でも、ここで引けば『闇の救済者』の皆さんが……」
「そうね。私達の力でどこまで戦えるかは分からないけど……ここで引く訳にはいかないわ!」
勝利に沸き立つ暇もなく、地の底より現れた『第五の貴族』の刺客。強者との闘争を求める尚武の吸血鬼に、廻璃と巡瑠の姉妹は不安を抱きつつも、皆を護る為に立ち上がる。
「退かぬか。良い、恐怖と勇気は強者に欠くべからざるものだ。後は力を伴っているか」
対するアインソードは喜悦に満ちた酷薄な笑みを浮かべ、【鮮血剣ダインスレイヴ】を構える。自らの血液から作り出したその剣は、吸血鬼である彼にとっての"牙"だった。
「厳しい状況ですが、この逆境に恐れず皆さんの勝利という願いを叶えるための覚悟があれば、必ず【神秘の加護】が私達に力を貸してくれます!」
敵の強大さを肌で感じながらも、廻璃は自分と妹を鼓舞するように叫ぶ。叶えたい願いの為ならどんな不利な行為も厭わない、その覚悟こそが何よりも強い力を与えてくれる。
姉の決意を聞いた巡瑠もこくりと頷き、指先を噛み切って自らの血を祈りの筆に流す。神殺の力を宿した彼女の血は、その筆を普段の移動時より攻撃的な形態へと変化させる。
「皆の祈った勝利を実現するためにも、何としてもここで倒すわよ!」
【神殺の大筆突撃】の形態をとった大筆に乗って、願いの姉妹はランスチャージのような勢いで突っ込んでいく。そのスピードと加速力はいずれも赤錆の騎士と戦っていた時を上回る。これが神殺しの血の力、そして封印の解かれた祈りの筆の真の力だ。
「防御は任せたわよ廻璃、私は敵を吹っ飛ばす事に専念するわ!」
「はい。一緒に挑みましょう、巡瑠」
物凄い速さで筆を駆る巡瑠の後ろで、振り落とされぬよう廻璃がぎゅっとしがみ付く。
とはいえ、このまま真正面から突っ込んでも分が悪いだろう。強大なオブリビオンにはスピードがあっても単調な動きでは対応される可能性が高い。事実アインソードは鮮血剣を構えたまま、大筆の動きをしっかりと目で追っていた。
「まずは敵を撹乱しましょう」
「ええ、そうね」
突撃のチャンスを作るため、廻璃が「願いの筆」で虹を描き、巡瑠が高速で飛び回る。
七色の軌跡を残しながら戦場を翔け巡るさまは、まるで曇天のキャンパスにお絵かきをしているようでもあり。暗い闇夜に慣れきった者の目には、格好の幻惑となる。
(まあ、この程度で敵が見失ってくれるとは思わないけど、少しでも目暗ましになって欲しいわね)
屋敷の中とは違い、開けた屋外の地形は飛び回るのに都合がよかった。敵の視界を右に左に上に下に、振り回すように飛んで。僅かでも反応に遅れが生まれるのを待って――。
「後は私達の一撃が敵に届く事を祈って……全力で!」
今だと思った瞬間、巡瑠は祈りの筆をぎゅっと握りしめ、最大速力で突撃を仕掛けた。
これは祈りに応える筆。込めた想いが強く純粋であるほどに、その力は強くなるはず。
同時に廻璃は【神秘の加護】のオーラを自分達の周りに展開して、敵の攻撃に備える。願いの筆で描いた虹色の輝きによる七重の障壁。これが今の彼女に描きうる全力だ。
「来るか……ならば私も全力の一刀を以て応じよう!」
死角を突くように飛んでくる願いと祈りの姉妹に、アインソードは鮮血の剣を振るう。
筆が描く七色の軌跡と、剣が描く深紅の軌跡が交錯し――まるで絹の衣を裂くように、加護のオーラが切り裂かれていく。
「尊き祈りも、美しき願いも! 我が剣は全てを両断する!」
『殺戮者の紋章』で強化された、鮮血剣ダインスレイヴの威力は恐るべきものだった。
しかし、姉妹の瞳に恐れはない。願いの加護を切り裂くための一瞬の鈍りさえあれば、この突撃は斬撃よりも速く敵に届くはず――彼女達はそう信じていた。
「巡瑠ならきっと突破できるはずです! 勇気をもって前進を!」
「ええ! できるわ、私達なら絶対に……いっ、けぇっ!」
疑うことなき願い、迷うことなき祈り。姉妹の想いは一つとなって大筆を加速させる。
あと一瞬アインソードの反応が速ければ、あと刹那オーラが両断されるのが速ければ、それは叶わなかったかもしれない。願いを手繰り寄せたのは、二人の作戦と覚悟の成果。
「なんと……ッ、ぐがぁっ!!!!!」
アインソードの表情が驚嘆に染まった直後、その身は祈りの筆に突き飛ばされていた。
祈りと願いが二人分なら、威力と衝撃も二人分。『紋章』を宿した強大なヴァンパイアにさえ、膝をつかせるに十分なダメージであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
変なタイミングで来るんだから!
イイとこなのに盛り下がっちゃうじゃん!
強敵なのは確かみたいだね
でもあんまり騒がし過ぎると盛り上がりに水を差しちゃう
そんなこよりもまずって思うかもしれないけど勢いとノリは大事!
UCを使うよ!
「『闇の救済者』たちは、何も、見なかった」という屁理屈
実際に見聞きできないよう遮断する世界改変
彼のUCの特性等を把握してからの時間巻き戻し
を放ってUC封じ!
さぁ後は思い切りやろう!
あっちが彼らの舞台なら、こっちはボクらの独壇場!
力の低下やUCの不発等をきっかけに[餓鬼球]くんたちをけしかける!
おつかれさま、明日の為に今宵はよい夢を
『闇の救済者』たち
「んもー、変なタイミングで来るんだから! イイとこなのに盛り下がっちゃうじゃん!」
せっかくの勝利を台無しにするような敵の襲来に、ロニはぷんぷんとお怒りであった。
祝勝ムードに湧き立つ『闇の救済者』達を抹殺しに現れた厄介者。とはいえ奴が単なるお邪魔虫に過ぎないような雑魚ではないのは、彼にも分かっていた。
「強敵なのは確かみたいだね。でもあんまり騒がし過ぎると盛り上がりに水を差しちゃう」
「祝いの宴が殺戮の宴になるだけだろう。そんなに盛り上がりが大事か?」
何より強者との闘争に重きを置くアインソードには、ロニの憤りは分からないだろう。
さらなる死闘を、さらなる強敵を。ゆらりと【鮮血の外套】を翻しながら笑う吸血鬼の姿は、まさに血に飢えた悪鬼であった。
「そんなこよりもまずって思うかもしれないけど勢いとノリは大事!」
悪鬼の殺気に一歩も怯まず、ロニは【神論】という名の子供の屁理屈を展開していく。
ここで絶対に敵を食い止める。『闇の救済者』には何も知らずに祝勝気分に浸っていてほしい。彼にとってまず第一に優先すべき点はそこだった。
「『闇の救済者』たちは、何も、見なかった」
ゆえに少年神は宣告する。この敵襲も、猟兵の戦いも、彼らは何も知らないままだと。
言葉だけなら単なる屁理屈だが、神の御言葉には世界改変さえも引き起こす力がある。理不尽なまでに戦場の空間を歪め、実際に彼らが見聞きできないよう音や光を遮断する。
「ほう。そうまでしてあの者達を護りたいか。気高い志だ」
神域の中に閉じ込められる格好になったアインソードは、悪鬼の笑みを浮かべたまま。
彼からすればただの順番の話。ここにいる猟兵を殺し尽くし、その後で『闇の救済者』を殺せば何も問題はない。
「その志に見合う力を、私に見せてみろ!」
ばっと翻った血液のマントは、まるで生きているように自在に形を変える武器である。
またたく間に巨大な赫刃と化したそれは、目前にいるロニを真っ二つにしようと――。
――パチン。
「む? 今、何かが……」
アインソードは違和感を覚える。白昼夢を見ていたのに内容を忘れてしまったような、言葉では言い表せない思考の引っ掛かり。だが戦闘中において迷いはすなわち隙を生む。
彼はすぐに思考を切り替えると「【鮮血の外套】を発動しようと」した。が、それより早く飛んできた「餓鬼球」の群れが、マントに齧りついて変形を妨害する。
「むうっ?!」
こちらの打つ手が予め分かっていたかのような迅速な対応。驚くアインソードの前で、ロニはにやにやと笑っていた。このシーンが既に"二度目"である事を知っているのは、彼だけだ。
「神に同じ技は二度も通じない!まあキミにとっては一度目だけれどね」
アインソードが"一度目"に【鮮血の外套】を使った時、ロニは敵がユーベルコードを発動する寸前まで時間を巻き戻したのだ。仕掛けてくるタイミングと技の特性さえ把握できれば、"二度目"を封殺するのは神にとって難しいことではない。
「さぁ後は思い切りやろう!」
敵のユーベルコードを不発させたのをきっかけに、少年神は残る餓鬼球をけしかけた。
子供の屁理屈から始まった【神論】のフルコースを浴びたアインソードの力は、本人も知らぬうちに弱まっている。仕掛けるならこれ以上の好機はない。
「あっちが彼らの舞台なら、こっちはボクらの独壇場!」
「ぐぅッ……とんだ道化だな。すっかり乗せられてしまったか……!」
相手の術中に嵌っていたのに気が付いても、状況はアインソードにとって最悪だった。
球体の重しをつけられ満足に動かせない外套。逆にそれが枷となって鈍ったところに、あらゆるものを齧り喰らう餓鬼球が襲いかかり――骸騎士の全身が深紅に染まっていく。
ロニはその様子を離れて眺めながら、ふと遮断された神域の向こう側に視線をやった。
「おつかれさま、明日の為に今宵はよい夢を。『闇の救済者』たち」
彼らが掴み取ったひとときの安息を、幸せな勝利の余韻を、誰にも邪魔させはしない。
微笑みながら優しく囁くロニの表情には、正しく神としての威厳と風格が現れていた。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
祝杯をあげようって時に水を差しにくるんじゃないわよ
いい加減腹も減ってきたってのに
確かに赤錆とは比べものにならない
【飢渇】の包囲も【微塵】の爆撃も捌かれる
白兵戦で喰らいつくが先の戦いの様に強引に捕まえる隙がない
腕を斬り落とされた 即座に生え替わる
足を吹き飛ばされた 体勢を崩す前に再生し立て直す
胴を一文字に裂かれた 噴き出す血潮を浴びせ飛び掛かろうとして
半歩体をずらした 首に半ば以上切れ目が入り
ずり落ちかけて 押さえてつなぎ直す
傷を負い再生する程衝動が強くなっていく
ああ 鬱陶しいのよアンタ 私は
全身と【飢渇】に形成した【顎門】がUCを放ち周辺地形毎薙ぎ払い消し飛ばす
腹減ってるんだって言ってんのよ!
「祝杯をあげようって時に水を差しにくるんじゃないわよ」
招かれざる客、遅れてやってきた不粋な輩への不快感を隠そうともせずに、メフィスは鮮血の骸騎士を睨みつける。勝利後のひとときを楽しみにしていたのは『闇の救済者』達だけではないのだ。お預けを喰らわされとんだ迷惑である。
「いい加減腹も減ってきたってのに」
「それは済まぬな。悪い時に来た」
対するアインソードは全く悪びれる様子もなく【鮮血剣ダインスレイヴ】を抜き放つ。
彼からすれば今こそが最高の宴の最中なのだろう。猟兵達との死闘を繰り広げ、その身を血に染めていくたびに、彼の喜悦はより高まっているように見えた。
「代わりに私から馳走してやろう。剣と、血と、死闘を!」
「そっちはもう十分間に合ってるわよ」
こちらの気も知らず勝手に盛り上がる不粋者に、メフィスは影の眷属達をけしかける。
領主との戦いでも採用した、全方位からの包囲攻撃。だが「飢渇に喘ぐ」無数の異形に取り囲まれても、「微塵に砕く」爆撃に晒されても、敵は剣のひと振りで影をなぎ払い、マントを翻して爆風を受け流してみせた。
(確かに赤錆とは比べものにならない)
手負いにも関わらずこの動きのキレ。『殺戮者の紋章』を付与されたヴァンパイアの力は並のオブリビオンを遥かに凌駕する。眷属だけでは相手にならないと見たメフィスは、自らも骨の武具や尾刃を振りかざし白兵戦を挑む。
「貴様からは屍の匂いがするな。だが瞳の光は紛れもない強者の輝きだ!」
屍人が振るう刃をひらりと躱し、アインソードが鮮血剣を振るう。使い手の血から形成された血の刃は、なんの抵抗も感じさせぬ程の切れ味で、メフィスの腕を斬り落とした。
斬れた腕が地面に落ちるよりも早く、屍の身体の再生力が新しい腕を生え替わらせる。戦闘続行に支障はない――だが彼女は攻めあぐねていた。
(強引に捕まえる隙がない)
捨て身の覚悟で喰らいついても、先の戦いのようにはいかなかった。一度でも捕らえれば勝機が見えるのに、その一度がひどく遠く感じる。それでも諦めずに飛び掛かっていく彼女の身体を、無慈悲な血剣が切り刻んでいく。
「既に死んでいる者は、どこまで刻めば殺せるのか分からんな」
腕の次は足を吹き飛ばされた。体勢を崩す前に再生し立て直す。すぐに次の一歩を踏み出そうとして、今度は胴を一文字に裂かれる。詰め込まれたはらわたと血潮が溢れ出る。
それでもメフィスは足を止めず、噴き出す血潮を浴びせながら飛び掛かろうとして――ふと危機感を抱いて半歩体をずらした。
「っ……」
一体いつの間に剣を振られていたのか。首に半ば以上切れ目が入り、ずり落ちかけて、押さえてつなぎ直す。あと少し反応が遅れていたら完全に刎ね飛ばされていただろう。
ただがむしゃらにぶつかっていくだけでは、この吸血鬼には届かない。その事実は彼女も痛いほど理解しただろう。だが何度も傷を負い、再生するにつれて、メフィスの中ではある衝動が強くなっていく。
「ハハハ、面白い! 首を落とされかけても向かってくるとは! では次はどこを――」
「ああ 鬱陶しいのよアンタ」
高揚するアインソードの言葉を、メフィスが遮る。常よりも低く抑揚のないその声は、ヒトの声よりも獣の唸り声に似ていて、耳にした者の心から本能的な恐怖を呼び覚ます。
ボロボロになった外套の下、傷だらけの全身から「顎門を開く」。メフィス・フェイスレスという屍人に植え付けられた飢餓衝動、その体現とも言える"牙"と"口"は、もはや我慢の限界だと言わんばかりにガチガチと音を立てていた。
「私は――……」
様子がおかしいと察した敵が、今さらになって距離を取ろうとする。逃がす筈がない。
メフィスの周りで蠢く眷属の群れからも、同一の捕食器官が形成される。それらは全てがバラバラの方を向いて――どこへ行っても逃さないと咆哮する。
「腹減ってるんだって言ってんのよ!」
自身の「禁忌」を外し、高まった飢餓衝動を力に変えて放つ、必殺の破壊光線【吼】。
血潮を乗せた閃光は戦場を紅く染め上げ、周辺の地形をなぎ払う。敵が強者だろうが、これほど大規模な無差別攻撃には回避も防御も意味をなさない。
「ッ―――……!!!」
驚愕に目を見開いたアインソードの姿は、何かを言う暇もなく紅い光にかき消された。
やがて夜闇が戻ってきた後――巨大な獣の顎に齧られたように抉られた大地の中心に、衝動を解き放ち放心した様子のメフィスだけが立っていた。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
闇の救済者の皆さんの避難を、と思いましたけど、わたし達が負けてしまえばどのみち結果は同じでしょう。
それに、できれば彼らの勝利に水を差したくはありません。
つまりは今この場で倒すのが唯一にして最善、ということですね。
敵がコウモリや人形を召喚するなら、こちらは【B.G.ブロッサム】で対抗します。
炎の花びらでそれら自体を抑えつつも、本当の狙いは召喚者本人です。
一枚一枚は小さくても数はこちらが上、敵の許まで間隙を縫い、意識を乱すに足るはずです。
召喚が解除されたら、後は残りの花びらを集中させるだけです。
皆さん、今ごろはもうお祝いを始めているかもしれませんけど。
招かれざるお客さんにはここでお引取り願います!
「闇の救済者の皆さんの避難を、と思いましたけど、わたし達が負けてしまえばどのみち結果は同じでしょう」
今もまだ勝利に沸き立つ『闇の救済者』達の存在を彼方に感じつつ、レナータは思う。
刺客の狙いが彼らの抹殺なら、どこへ逃がそうとも必ず根絶やしにするまで探し続けるだろう。今から避難を呼びかけたところで大した時間稼ぎにもならない。
「それに、できれば彼らの勝利に水を差したくはありません。つまりは今この場で倒すのが唯一にして最善、ということですね」
自分達猟兵が、地底都市からの刺客を阻む最初で最後の防衛線となる。守護者としての覚悟を決めた少女の体からは地獄の業火が燃え盛り、闇夜の戦場を煌々と照らしだした。
「良い、覚悟だ……ならば守り抜いてみせるがいい! 我が心臓を貫いて!」
対峙するのは鮮血の骸騎士アインソード。喜悦の表情のまま高らかに宣言するものの、既に相当のダメージを負っているのは明らかだ。少しでも傷を回復するつもりだろうか、彼は直接仕掛けるのではなく【悠久の時が流れても】を発動し、眷属を召喚してきた。
「征け! 我に代わってこの地を鮮血と殺戮で満たせ!」
現れたのは血液で造られた巨大コウモリと、ヒトの女性を模した人形。本体の意のままに動くだけの傀儡だが、戦闘力は本体と同等。動き出した彼女らの狙いは『闇の救済者』への道を阻むレナータだ。
「ここから先には通しませんよ!」
敵がコウモリや人形を召喚するならと、レナータは【B.G.ブロッサム】で対抗する。
ばさり、と音を立てて大きく広げられた獄炎の翼が、無数の灼熱の花びらに変化する。一枚一枚が獄炎と同じ性質を持ったそれらは、ひらりひらりと空を舞い、敵を阻む。
『ギィッ!!』
血のコウモリは耳障りな奇声を上げて羽ばたき、花びらを吹き散らそうとする。その下では血液人形が無表情に花びらを振り払い、灼熱に焼かれながら前に進もうとしている。
血液を凝固させる炎の熱はこの眷属達と相性もよく、しばらくは抑えられるだろうが、それでもじきに突破されるのは明白だった。レナータは防戦一方の状態で花びらの防壁を堅持するが――彼女の本当の狙いは別にあった。
(一枚一枚は小さくても数はこちらが上)
たった二体の眷属だけで、全ての花びらの動きは見切れまい。召喚者本人の許まで間隙を縫い、ユーベルコードを維持している骸騎士の意識を乱すのがレナータの作戦だった。
鮮やかに舞う炎の花吹雪の影で、別の動きをする数枚の花びらに敵はまだ気付かない。
「……ッ! いつの間に!」
背後から微かな熱を感じ、アインソードが咄嗟に身をよじった直後。炎の花びらが彼の肌をかすめ、小さな火傷を作る。ダメージとしては微々たるものだが、ユーベルコードを解除させるにはそれだけで十分だった。
「抜かったッ!」
渋面するアインソードの叫びと、巨大コウモリと血液人形が消滅するのは同時だった。
眷属さえいなくなれば、後は本体を倒すだけ。レナータは残りの花びらを集中させて、そこに自らの魔力と熱量をありったけ注ぎ込む。
「皆さん、今ごろはもうお祝いを始めているかもしれませんけど。招かれざるお客さんにはここでお引取り願います!」
かつては復讐のために振るったこの力は、今は誰かを護るために。力の意味を取り戻した少女の全身全霊が、闇天を灼き焦がさんばかりの灼熱の花吹雪となって解き放たれる。
「ぐ……おおぉぉぉぉッ!!!!」
全力の【B.G.ブロッサム】に巻き込まれた敵の口から、絞り出すような悲鳴が上がる。
魂さえも焼き尽くす地獄の炎――その熱量は不死身の吸血鬼にさえ"死"を予感させるものだった。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
はい。
そしてその『人間如き』に、貴方も斃されるわけです。
ふふ、と穏やかに笑って。
…死は常に鼻先にあった。それでも僕は今生きている。
其方の流儀には、僕の流儀で当たるのみ。
視線、殺気、爪先の向き…狙う先を、
体勢、身の沈み、駆ける前兆…攻撃の挙動を、
他の味方への対応から、速度、技巧を、
見切り、応ずる。
剣であれ“血”である以上、変形、伸縮の可能性も考慮、
回避はやや大ぶりに。
鋼糸一本は切られるを覚悟、剣へと巻き付け…
UC起動。炎の魔力を全攻撃力へ。
…ご存知ですよねぇ?
血は、高熱じゃ固まるって。
躱しつつ障害物に鋼糸を張り巡らし、
範囲攻撃の要領で一斉に引き、斬り断つ。
その心臓に、得物を汚す価値は無いですから
「ハハハ……全く大したものだ。人間如きがこれほどの力を……」
「はい。そしてその『人間如き』に、貴方も斃されるわけです」
傷だらけになりながらも笑みを絶やさぬ骸騎士に、クロトもふふ、と穏やかに笑って。
グローブの指先から鋼糸を垂らし、ゆらぁり、と無造作ながらも隙のない構えを取る。
「このザマでは笑い話と言うこともできんな。だが、まだだ。まだ足りぬ」
対するアインソードは自らの流血から【鮮血剣ダインスレイヴ】を作り出し、構える。
研ぎ澄まされた紅い刀身は、血に飢えたように闇夜の中で不気味な輝きを放っていた。
「……死は常に鼻先にあった。それでも僕は今生きている。其方の流儀には、僕の流儀で当たるのみ」
変わらぬ柔和な態度の裏に、静かな殺意を潜ませて、クロトはじっと敵の動きを視る。
視線、殺気、爪先の向きから狙う先を。体勢、身の沈み、駆ける前兆から攻撃の挙動を。他の味方への対応から速度や技巧を、見切り、応ずる。"識る"とは最大の武器だ。
「ならば存分に見せてもらおう。数多の死を乗り越えた貴様の流儀を!」
アインソードの行動は正面からの斬り掛かり。単純だが速度・膂力は規格外のものだ。
主君より与えられた『殺戮者の紋章』により、彼の全能力は飛躍的に強化されている。一手でも対応を誤れば死――何度も味わってきた彼岸の瀬戸際を、肌に感じる。
「ええ、お見せしますとも」
剣であれ“血”である以上、変形、伸縮の可能性も考慮して、回避はやや大ぶりに。
全感覚を費やした観察によって、敵の太刀筋を見切ったクロトは、十分な余裕を保ちながら初撃を躱し、鋼糸でのカウンターに繋げる。
(鋼糸一本は切られるを覚悟)
ユーベルコードで鍛え上げられた超常の切断力では、極めて丈夫な彼の得物も断たれない保障はない。だが一本なら駄目でも二本、三本――同時に束ね連続して繰り出す事で、そのうちの一本を敵の鮮血剣へと巻き付ける。
「捉えましたよ」
即座にクロトは【トリニティ・エンハンス】を起動。炎の魔力を全て攻撃力の強化に振り分け、発する高熱を武器に伝える。鋼糸に宿った炎はそのまま敵の剣を包み込み――。
「……ご存知ですよねぇ? 血は、高熱じゃ固まるって」
血液から鍛造されたダインスレイヴは、高熱に晒されることで柔軟性を失い、切れ味も落ちる。いかに使い手が非凡でも、ただのナマクラに落ちた鮮血剣なら恐るるに足らず。
「やってくれたな」
アインソードはひとつ舌打ちして炎の鋼糸を引き千切ると、再び鮮血剣で斬り掛かる。
クロトは微笑みをたたえたままそれを躱しつつ、今度は剣ではなく周囲の障害物に糸を張り巡らせていき、敵が追撃のために踏み込んできた所で、一斉にそれを引きしぼる。
「その心臓に、得物を汚す価値は無いですから」
四方八方より襲い来る、鋼糸による範囲攻撃。敵が万全の状態ならば全て斬り断つこともできただろう。しかし凝固した鈍らの剣では、逆に斬り断たれるのはかの吸血鬼の方。
「成程……これが貴様の"流儀"か……!」
細き刃に斬り刻まれ、全身を朱色に染めながら、アインソードは凄絶な笑みを見せる。
幾度の死線を越えて生を掴んできた強者の流儀を、彼は身を以て理解したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
成程…その辺の下衆な吸血鬼とは違う「戦士」みたいね。
なら、相応の相手として貴方をここで倒す…!
二章まで連れてた眷属達は救済者達と共に休息を指示。
※筆頭の雪花のみ心配でついて来たリ
【吸血姫の覚醒】発動!
魔力弾で牽制・遠距離攻撃を織り交ぜ、魔槍による中・近距離戦闘。
聖属性の魔力弾を威力を圧縮し、貫通性を上げてホーミングレーザーの様に幾条もの光線状に射出【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾、砲撃、弾幕】。
近距離では高速飛行と膂力を活かし、【見切り、第六感】で敵の剣を回避しつつ、紋章を狙って魔槍で打ち合い。
隙を突いて近距離から全力の【力溜め、限界突破】【神槍グングニル】を紋章へ叩き込むわ!
「成程……その辺の下衆な吸血鬼とは違う『戦士』みたいね」
決して相容れぬ敵ながら、一連の言動と戦いぶりから一角の強者だと認めたフレミア。
ただ弱者を蹂躙するのではなく、敢えて強者との死合を望む者は強く、そして脅威だ。
「なら、相応の相手として貴方をここで倒す……!」
「光栄なことだ。貴様のような強者に認められるとはな」
領主の軍勢との戦いを終えた眷属達には『闇の救済者』達と共に休息を指示してある。
今ここに居るのは心配でついて来た眷属筆頭の「雪花」のみ。その彼女にも手出し無用と身振りで語りつつ、吸血姫は「ドラグ・グングニル」の切っ先を骸騎士に突きつけた。
「おねぇさま、気をつけて~……」
「大丈夫よ、雪花」
不安そうに見守っている雪女見習いの童女に、フレミアは優しくも力強い笑みを返す。
確かに敵は強大だ。だが負けるつもりは微塵もない。自身を慕う眷属の期待、強者との死闘を求める敵の期待に応じるべく、彼女は【吸血姫の覚醒】を発動する。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
【神滅の焔剣】の発動時にも見せた、真の姿への変身。今回は神滅の焔の力は用いず、真祖の血統に秘められた純然たる魔力と戦闘能力の向上を以てアインソードと相対する。
「半吸血鬼の身でありながら、これほどの力を……!」
骸騎士は感嘆と歓喜を交えた笑みを浮かべると、【鮮血剣ダインスレイヴ】を再生成。
此方は『殺戮者の紋章』により超強化された戦闘力を全開にして、獲物に斬り掛かる。
「これなら不足はないでしょう?」
フレミアは艶やかに微笑むと、聖なる魔力を圧縮して貫通性の高い魔力弾を作り出し、ホーミングレーザーのように幾状もの光線状にして射出する。円弧の軌道を描いて目標に殺到する光弾は、そのまま貫くかに見えたが――刹那、紅い剣の一閃が光線をなぎ払う。
「闇の種族が聖なる力を行使するとはな。ますます面白い!」
力だけではなく技も超域に達した吸血鬼には、この程度の攻撃は牽制にしかならない。
そのままアインソードは物凄い速さで距離を詰め、光さえも斬り捨てた剣をフレミアに振るう。対する彼女は4対の翼を広げ、目にも留まらぬ速さで身を翻した。
「流石に『紋章』持ちをこれで倒せるとは思っていないわ」
攻撃を回避しつつ反撃の動作に繋げ、敵の『殺戮者の紋章』を狙って魔槍を突き出す。
アインソードも即座に受けの構えを取り、豪速で迫る穂先を刀身で受け流してみせた。
「ハハハハハ! これだ! これこそ私が求めていたものだ!」
火花を散らす魔剣と魔槍。共にヴァンパイアとしても卓越の域に達した二人は、一歩も譲らぬ攻防を繰り広げる。互いに命を削り合うような熾烈な打ち合いに、アインソードは心からの歓喜を込めて叫んだ。
「上機嫌ね。いいわ、貴方にはわたしの全力を叩き込んであげる」
フレミアもまた笑みを浮かべるが、それは余裕を示すものであり、背後で見守る眷属を安心させるためのもの。彼女は近距離で魔槍を巧みに操りながら魔力弾のレーザーによる牽制も織り交ぜ、二種の攻撃に対応を強いることで敵の防御をこじ開ける。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
ほんの一瞬でも敵の体勢が崩れれば、その隙を突いてフレミアは槍に魔力を注ぎ込む。
真祖の魔力の全てを集束し、限界を越えて圧縮することで、真紅の魔槍は巨大な神槍に昇華される。その全長数メートルにも及ぶ破壊力の塊は、まさに神をも殺す無双の槍。
「消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」
彼女はそれを、至近距離から『殺戮者の紋章』へ叩き込んだ。覚醒した吸血姫の全力を乗せた一撃、魔力と膂力の全てがただ一点に集束され――紅い閃光となって敵を貫いた。
「がはぁッ……み、見事、だ……!!!」
フレミア渾身の神槍は『紋章』ごと骸騎士の胸板を貫通するのに十分な威力があった。
風穴の空いた紋章と胸を押さえながら、アインソードは吸血姫の力を称える。強大なる地底都市の刺客にも、命の灯火に陰りが見え始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
ラン達には救済者達の負傷者の手当て等をお願い…。
わたしは、この戦いに決着をつけるよ…。
【九尾化・天照】封印解放…!
天照の力で光を集束し【呪詛と破魔】の大威力の光呪のレーザーを照射…。
光速化で攻撃を回避し、敵をレーザーで攻撃…。
コウモリや人形、マントをレーザーの熱量で消滅させ、本体を狙い撃ち…。
敵が防御体勢に入った瞬間に一気に接近し、凶太刀と神太刀の二刀による連撃…。
敵の防御が間にあわない程の速度で仕掛け続けるよ…。
アレ(血液人形)は…人間の、女性…?人を愛する事ができたのに、何故人を虐げる…!
敵を追い込んだら、神太刀に光と【呪詛、破魔】の力を集束させ、必殺の一刀を紋章に向けて放つよ…!
「ラン達は救済者達の負傷者の手当て等をお願い……」
新たな敵襲の報せを聞き、璃奈がまずメイド達に出した指示は戦うことではなかった。
戦いを終えた『闇の救済者』達の無事と安全の確保。あるいはメイドや仔竜達の安全もそこには含まれているかもしれない。
「わたしは、この戦いに決着をつけるよ……」
「わかった!」
「待ってる!」
「気をつけてご主人!」
仔竜を抱えるメイド達に見送られ、魔剣の巫女は刺客との戦いの最前線へ。手には二振りの妖刀を構え、瞳に宿した決意をもう一度煌めかせ、【九尾化・天照】の封印を解く。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
【魔剣の媛神】とはまた異なる形態での封印解放。銀色だった璃奈の髪や尾は黄金色に変化し、身体には燦然たる光を纏う。それは百年に渡りこの世界から失われたままの光、太陽の輝きに他ならなかった。
「ほう……懐かしいな。斯様なところで我らが宿敵と再会するとは!」
吸血鬼にとって天敵となる陽光を目の当たりにしても、アインソードは愉快そうに笑うばかり。身を灼く光を逆に喰らう様に【鮮血の外套】を大きく広げ、襲いかかって来た。
「手合わせ願おうか、日輪の力を操る強者よ!」
「いいよ……わたしも、そのために来たから……」
璃奈が軽く地面を蹴ると、その動きは一瞬で光速に達する。影も踏ませず攻撃を躱した彼女はさらに天照の力で光を束ね、呪詛と破魔の力を込めた光呪のレーザーを照射する。
その威力と熱量は、血液でできたマントを蒸発させるのに十分なもの。外套が破損し敵の攻防に隙が生まれれば、そこを突いて敵本体を狙い撃つ。
「相性は最悪か。だが、そうでなくてはな!」
アインソードは負けじと【悠久の時が流れても】を発動、巨大コウモリと人形の眷属を作り出し、自身を護る盾にして矛とする。されどそれも呪われし吸血鬼の血液で造られたものである以上、破魔の光呪からは逃れられない。
「アレは……人間の、女性……?」
敵が召喚した血液人形の造形が、ふと璃奈の気にかかる。戦闘の最中にアインソードが漏らした言葉によれば、その人形はかつて彼が愛した女の姿だという――だが、あくまでカタチを模しただけのそれに魂は宿らず、傀儡として殺戮と破壊を行うのみ。
「すこし哀れだね……」
璃奈は淡い同情を抱きながらも光呪のレーザーを放ち、コウモリ諸共人形を消し去る。
マントに続いて眷属まで失ったアインソードは、次に狙われるのが自分だと察して防御態勢に入る――その瞬間に天照の巫女は光の速さで一気に斬り掛かった。
「人を愛する事ができたのに、何故人を虐げる……!」
声に押さえきれぬ憤りを滲ませて、凶太刀と神太刀の二刀による連撃を仕掛ける璃奈。
光速にさらなる加速をもたらす妖刀と、不死や再生力を封じる妖刀。いずれも彼女の力をさらに高め、吸血鬼にとっては天敵となる装備の組み合わせだ。
「それを聞いて何とする? 愛しき人に比べれば、そこいらの人間など塵芥よ!」
対するアインソードは鮮血の剣で連撃を捌きながら吼える。強者との戦いを求め、弱者を虐げることには興味がない彼だが、それは言い換えるなら弱者と見做した相手に一片の価値も見出していないという事でもある。
「やっぱり貴方もオブリビオンなんだね……」
過去への執着を垣間見せながらも、骸騎士の有り様は現世には破滅しかもたらさない。
敵の心理の一端を理解した璃奈は、より苛烈により速度を増して攻撃を仕掛け続ける。
「ッ……!」
いかに『紋章』で強化されていようと、光速の連撃をいつまでも受ける事はできまい。
追い込まれたアインソードの表情に焦りが滲んだ直後――璃奈は「九尾乃神太刀」に光と呪詛と破魔の力を集束させ、必殺の一刀を放った。
「貴方の執着に、救済者達を巻き込ませはしない……!」
その斬撃は眩い閃光の軌跡を描いて、アインソードの胸に寄生する『殺戮者の紋章』を斬り裂いた。魔剣の巫女の全力を込めた一刀を受け、寄生虫から不気味な悲鳴が上がる。
「ぐおぉぉ……ッ! この、力……流石に、堪えるな……!」
そしてアインソード自身も、斬られた胸を押さえながらがくりとその場に膝を突いた。
陽光と光呪の力に加え、神太刀による再生力の封殺。刻まれた刀傷は決して癒えることはなく、とめどなく血を流し続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
貴様は……違うな、先の騎士と
ただの殺戮者、人類の敵だ
聖槍を振るい、真っ向から斬り合う
聖なる力(属性攻撃・破魔)を帯びた槍は、不浄なる血の外套を斬り裂き【浄化】する
生じた【衝撃波】は外套ごと吸血鬼を【吹き飛ばす】
無論、紋章持ちがその程度でどうにかなるとは思っていない
厄介さは経験済み、そして今回は殺しに特化したもの
長剣で斬られ、外套に締め上げられ、血が喪われ――
――まだだ(因果超越・永劫の勇士)
不屈の闘志、気合いと根性、精神力で限界を超える
宣したのだ、かつて光を希った騎士に
あの青空を世界を取り返すと
これは幕開けだと
なら、この程度で倒れるわけにはいかない!
力を振り絞り、聖槍を振るい黄金の一閃を放つ
「貴様は……違うな、先の騎士と」
今目の前にいる鮮血の骸騎士と、先程戦った赤錆の騎士。その違いは、対峙してみれば一目瞭然だった。単純な力の差ではない――赤錆からは強い懊悩と無念が感じられたが、この骸騎士からは禍々しい凶気と闘争への悦びしか感じない。
「ただの殺戮者、人類の敵だ」
「然り。それで十分であろう」
鋭い眼光で睨め付けられ、アインソードは狩猟者の笑みを返す。彼自身も騎士の肩書きになど興味はないのだろう。求むるのは強者との死闘、それさえ満たされれば他は些事。
「さあ。私の心臓を貫くのは貴様か?」
自らの血液から創造した【鮮血の外套】をなびかせて、一陣の風となりて距離を詰めるアインソード。迎え撃つオリヴィアは破邪の聖槍を振るい、真っ向から斬り合いを挑む。
聖なる力を帯びた槍は、不浄なる血の外套を斬り裂き浄化する。互いの得物がぶつかるたびに生じる衝撃波にも、たなびく外套ごと敵を吹き飛ばす威力があった。
「この槍で、貴様を屠る」
「成程。優れた武器に使われるだけではない、良い腕だ」
オリヴィアの技量に感嘆しつつも、敵の態度にはまだ余裕があった。負傷により流した血で外套を再生させ、長剣を抜いて反撃を仕掛ける。生き物のように自在に動く外套と、赤錆の騎士をも凌駕するほどの剣技による同時攻撃だ。
(無論、紋章持ちがこの程度でどうにかなるとは思っていない)
かの『第五の貴族』に力を与えられた者の厄介さは経験済み、そして今回は殺しに特化したもの。殺戮者の名に相応しい苛烈な攻めに、たちまちオリヴィアは防戦一方となる。
聖槍による防御をかいくぐり、鮮血の剣が身体を抉る。負傷により僅かに動きが鈍った直後、外套の端が蛇のように伸びて首に絡みつく。
「ぐ……っ!」
凄まじい力で締め上げられ、呼吸と脳への血流が止まる。剣で斬られた部位からの出血も止まらず、急速に意識が遠のいていく。暗くなる視界の中で最後に見えたのは、喜悦に歪んだ吸血鬼の顔――。
「――まだだ」
消えかけた気力が再燃し、聖槍を握る手に力が籠もり、閉じかけた瞳をかっと見開く。
ここが自分の限界だと言うなら、不屈の闘志、気合いと根性、精神力で限界を超える。技とも呼べぬ魂と心の力によって、オリヴィアは外套の拘束を引き千切った。
「まだそんな力を残していたのか……!」
「宣したのだ、かつて光を希った騎士に」
感嘆と共に浴びせられる追撃を防ぎながら、彼女は内から湧き上がる情熱を言葉として紡ぐ。脳裏に浮かぶは赤錆の騎士との戦いの記憶、武器とともに交わした誇り高き誓い。
「あの青空を世界を取り返すと。これは幕開けだと」
これが最後などであるものか。ここで幕引きなどさせるものか。燃え盛る大叛逆の劫火は誰にも止められはしない、いかなる障害も踏破して、必ずこの世界に希望を取り戻す。自分は確かにそう宣い――そして赤錆の騎士も最期にはそれを信じて逝った。
「なら、この程度で倒れるわけにはいかない!」
【因果超越・永劫の勇士】。意志の力で自らの限界を超えたオリヴィアは、残された力を振り絞って聖槍を振るう。今にも力尽きそうな有様でありながら、一層苛烈さと輝きを増した攻勢は、今度はアインソードを防戦一方に回らせる。
「なんと……ハハハ、どうやら私はまだ見誤っていたようだ……!」
想像を超えた猟兵の底力を目の当たりにして、驚愕と歓喜を同時に抱くアインソード。
その胸に、オリヴィアが放った黄金の一閃が、血を蒸発させながら深々と突き刺さる。
「闇の殺戮者、何するものぞ!」
「がはぁ……ッ!!!」
最大級の破邪の力に串刺しにされ、さしもの骸騎士も苦痛に呻く。ジュウと音を立てて焼け爛れる傷口は、吸血鬼の力でも再生は叶わず――彼の命運は徐々に尽きかけていた。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふむ…地下都市の吸血鬼か…全力で来ると言うのであればその力…測らせて貰おう…
…【戦術構築:奸計領域】を発動…
…地形を利用してマントの攻撃を凌ぎながら後退…さらに煙幕を張って準備時間を稼ごう…
…そして遅発連動術式【クロノス】を用いた術式罠及び術式組紐【アリアドネ】による拘束罠を多数設置…準備完了…
…血液のマントは凍結罠で凍らせて無力化…そしてアインソードには仕掛けた罠(閃光による目潰し・糸による拘束・様々な術式によるダメージ等々)と連携をしながら追い詰めよう…
…そして罠で動きが止まったら重奏強化術式【エコー】により威力を増した術式による光の槍を叩付ける…
…言うだけあって強いね…まだ先は長い、か
「……ふむ……地下都市の吸血鬼か……全力で来ると言うのであればその力……測らせて貰おう……」
猟兵にして研究者の一面もあるメンカルは冷静に、地上には稀にしか現れない紋章持ちの力を推し測らんと行動する。この世界を地底から支配する『第五の貴族』直属の刺客の実力を知っておくのは、今後の戦いのためにも必要なことだ。
「存分に観るがいい、私は出し惜しみなどしない。観劇の対価は高く付くがな!」
アインソードは呵々と笑いながら【鮮血の外套】を再生成し、全力で攻撃を仕掛ける。
自由自在に変化するマントによる変幻自在の攻め。その威力、速度ともに、先程戦った赤錆の騎士を凌駕する性能だ。
「この地形なら……これが効果的か」
メンカルは【戦術構築:奸計領域】を発動し、戦場の地形を利用してマントの攻撃を凌ぎながら後退する。戦闘で破壊された地面や石礫など、使えるものは何でも使う構えだ。
さらに煙幕を張って敵の視界を曇らせ、少しでも術式を準備する時間を稼ぐ。正面からぶつかるだけが戦いではない、知恵と技術を活かした計略こそ彼女が最も輝く時だ。
「ハハハ! どうした、雲隠れして策でも練っているのか!」
一方のアインソードも彼女が無策でただ逃げ回っているとは思っていないだろう。だが彼はその策略を真っ向から叩き潰すのが望みなのか、悠然と笑いながら血の外套を翻す。
翼のようにはためくマントが突風を起こし、戦場に満ちる煙幕を吹き消していく――。
「……準備完了……」
煙の中から現れたメンカルはぽつりと呟きながら、改めて鮮血の骸騎士と向かい合う。
彼我の距離は2~30mと言ったところ。魔術士であるメンカルは勿論、アインソードにとっても大した距離ではない。血液のマントの先端が伸び、投槍のように襲いかかる。
「さあ、この間隙で貴様に何ができた……!」
魔女の眉間が貫かれる寸前――遅延発動術式【クロノス】を用いた術式罠が起動する。
仕掛けられていたのは強力な凍結術式。地面から噴き出す冷気を浴びた血液のマントはたちまち冷え固まり、メンカルの目と鼻の先で動きを止めた。
「……ギリギリだったね……」
「魔術の罠か。面白い!」
マントを無力化されたアインソードは、今度は自ら剣を取ってメンカルに斬り掛かる。
だが魔女が仕掛けた罠は勿論一つきりではない。敵が一歩でも足を踏み出せば、そこはもうトラップ地帯。【奸計領域】によって効果的に配置された術式が連鎖的に起動する。
「ッ……ハハハ、まるで猟師だな貴様は!」
閃光による目潰しが入った直後に、焔や礫など様々な攻性術式が放たれる。敵がそれを剣で切り払うと、そのまた直後に背後から電撃の罠が。感電による一瞬の硬直の隙を狙いすましたように、四方に張られた術式組紐【アリアドネ】による拘束罠が絡みついた。
「剣と剣を交える闘争も愉悦だが、これもまた一興よな!」
完全にメンカルの術中に嵌まりながらも、アインソードの顔から笑みは消えなかった。
組紐を力ずくで引き千切り、異常なまでの頑強さで術式のダメージに耐え。『紋章』によって強化されたスペックを押し付けて罠を踏み越えていく。
「……言うだけあって強いね……まだ先は長い、か」
たとえ地上の領主を倒しても、地底にはまだこのクラスの敵が数多く潜んでいるのだ。
この世界を闇から解放する道程の厳しさを改めて実感しつつ、メンカルは重奏強化術式【エコー】を起動。重ね合うことで威力を増した術式で光の槍を形作る。
「……それでも今回は、私達が勝つよ……」
「……っ……はは、ここまでか……!」
猛獣の如き骸騎士の暴威も、最終的に魔女の奸計が上回った。幾重にも張り巡らされた術式罠はとうとう獲物の動きを封じ、その瞬間にメンカルが光の槍を全力で叩きつける。
「ぐ、がぁ……ッ!!」
闇の種族にとっては相性最悪となる光の術式。その直撃を受けた骸騎士が苦悶を叫ぶ。
確かにまだ先は長いだろう。だが猟兵の実力が着実に闇の深淵にも届きつつあるのも、また事実であった。
大成功
🔵🔵🔵
血骨・パトリシア
お前はそういうタイプかあ
強いんだろうなあ。強いんだろう。そういう戦士は居たよ。居たさ
誇りある殺しはきっと、ただのそれよりは幾らかマシかな?
気に入らんな
再びの剣戟。英雄との打ち合いで少しは腑抜けた身体にも熱が入った
神の残り滓の力、少しは味わえ
【神罰】を剣技に体術にのせてその不浄な貴族と切り結ぶ
なんてな
至近で刃を打ち合わせ、絶対に2人の距離を変えられない戦闘中の静止する時間
【騙し討】によりUC発動
【呪詛】を込め破壊の力を込められた視界を開く。目の前に木偶を並べ立てようとそれら諸共に粉砕してくれよう
碌でもない神であったこの身とて、貴様らと比べれば幾らかマシだ
大層な言葉を吐こうが、会話出来ねば雑音よ
「お前はそういうタイプかあ」
先ほど戦った赤錆の騎士に比べれば、鮮血の骸騎士の行動原理は実にわかり易かった。
弱者には見向きもせず、ただ強者との死闘を求める。己の心臓を貫かれる事も恐れず、ひたすらに死線を交わし合う――まさに『殺戮者の紋章』にふさわしい吸血鬼だ。
「強いんだろうなあ。強いんだろう。そういう戦士は居たよ。居たさ」
神として眺めてきた長い歴史の中で、パトリシアはこのような輩も見てきたのだろう。
誇りある殺しはきっと、ただのそれよりは幾らかマシかな? と、彼女はいつものようにへらりと笑って――。
「気に入らんな」
瞬間、真顔になって剣を構える彼女からは、いにしえの竜神に相応しい気魄を感じた。
およそ信仰など程遠い生き方をしてきたアインソードの身体に、ぶるりと震えが走る。それは武者震いか、あるいは"畏れ"と呼ばれる感情だったのかもしれない。
「猟兵の中には、人間の他に斯様な存在もいるのか……実に心躍る!」
何れにせよその感情はより大きな高揚にかき消された。鮮血から剣を作り上げ、骸騎士は新たな強者に斬り掛かる。対するパトリシアも借り物の剣を構え、斬り合いに応じた。
「英雄との打ち合いで少しは腑抜けた身体にも熱が入った」
再びの剣戟。静かな呟きに偽りはなく、パトリシアの技は先の戦いよりも冴えていた。
神罰の力を剣技と体術に乗せて、不浄な貴族と切り結ぶ。使い手のやる気に応えてか、剣もより強く神威の輝きを発している。
「神の残り滓の力、少しは味わえ」
「残滓ですらこれとは、素晴らしいな!」
だが歓喜するアインソードの剣技は、それすらも上回るほど重く速い。『紋章』を付与された吸血鬼の力は並の領主とは比較にならず、災害とすら思える圧倒的な実力を誇る。いかに奮起しようとも、今のパトリシアでは超えられない地力の差があった――。
「なんてな」
だから、彼女は始めから剣戟で勝つつもりはない。至近で刃を打ち合わせ、絶対に2人の距離を変えられない戦闘中の静止する時間、その瞬間に【偽・閃光の王】を発動する。
両の瞳に呪詛を込め、破壊の力を込められた視界を開く。これまでとは違う種類の力が高まるのを感じて、アインソードは咄嗟に【悠久の時が流れても】を発動するが――。
「無駄だ。目の前に木偶を並べ立てようと、それら諸共に粉砕してくれよう」
それは昔の知人からの借り物の力。曰く、視界に入るものは全て死に絶えたという死と破壊をもたらす権能。それ程の奇跡を起こすのは無理でも、彼女とて一端の神だった身。この至近距離で、はっきりと目が合った相手を逃すはずがない。
「碌でもない神であったこの身とて、貴様らと比べれば幾らかマシだ。大層な言葉を吐こうが、会話出来ねば雑音よ」
言葉を交わしているようでいてそうではない。ただただ強者との死闘"のみ"を求める骸騎士の在り方を切って捨てるパトリシアの言葉。それと同時に死の閃光が敵を射抜く。
「ぐ、がぁッ……!!!?」
血で作り出した眷属共も脆く崩れ去り、苦悶の呻きを上げて膝から崩れ落ちる骸騎士。
それを見下ろすいにしえの神の眼差しは、どこまでも冷徹で、無慈悲なものであった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
【騎神】
(戦巫女姿で)誰も死なせはしません。任せて下さい。
とトリテレイアさんをかばえるように。
UC発動し、天耀鏡に氷のオーラ防御を纏わせる。
鮮血剣による攻撃は第六感でタイミングを読み、見切りで軌道を掴み、一対の天耀鏡による真剣白刃取りの形で盾受けして固定。
氷のオーラで剣を凍結し、氷で覆って切れ味を封じる。
相手の正面に残像を置いたまま、UCによる高速移動と空中戦能力で素早く背後に回り込み、念動力で加速し衝撃波を伴う煌月によるなぎ払いで相手をトリテレイアさんの方に吹き飛ばす。
「今です!」と攻撃の合図を送り、自身も雷の属性攻撃・全力魔法・神罰・高速詠唱・貫通攻撃・スナイパーによる落雷で撃ち抜きます!
トリテレイア・ゼロナイン
【騎神】
(グリモア転送されたUC装備、消耗で四肢の稼働に制限)
大仰な格好は失礼をば
何分、少々手負いでして…なりふり構わぬ戦いはご容赦を
詩乃様、フォローをお頼みします
(歯痒い)
格納銃器の瞬間思考力至近距離狙撃で刀身狙い衝撃で斬撃制限
慣性制御活かした急加速、急停止●推力移動で盾殴打体当たりをメイン
センサー情報収集で敵味方位置把握
私の隙を詩乃様「が」●かばいやすい位置取り心掛け
詩乃様の反撃で体勢乱した機を逃さず●見切り肩部物資収納スペースの投光器●騙し討ち目潰し
慣性制御高速スピンで砲身を胴に叩きつけ
吹き飛ばしてロックオン
無事な砲身の重力波で拘束
私達の背の命の為ならば…騎士の矜持など幾らでも!
詩乃様!
「期待以上……想像以上か。つまらぬ雑用だと思っていたが、まさかこうも血湧き肉躍る死闘を味わえるとは……ああ、実に心地よい」
砕けた黒鎧の上から、おびただしい量の出血で全身を赤く染め。並のオブリビオンならとうに倒れていてもおかしくない傷を負いながら、アインソードは愉しげに笑っていた。
劣勢に立たされて、なおも強者との死闘を求め続ける鮮血の骸騎士。『闇の救済者』を狙う彼の進撃をここで食い止めるために、さらに2人の猟兵が前線に立った。
「大仰な格好は失礼をば」
そう語りながら敵の前に立ったのは、【戦機猟兵用重力制御兵装装備型強化ユニット】を装備したトリテレイア。先の激戦による消耗が大きい彼の機体は、四肢の稼働に制限がかかっていた。その不利を補うため、急遽グリモア転送されてきたのがこの装備である。
「何分、少々手負いでして……なりふり構わぬ戦いはご容赦を」
「構わぬ、寧ろ望むところだ。貴様の全力を出し尽くしてみせよ!」
大型のスラスターと二門の大砲型グラビティガンを装備した、騎士とは名乗り難い格好のトリテレイアに対し、アインソードは呵々と笑う。元より彼が求めているのは正々堂々の決闘などではなく、互いの命を賭けた文字通りの死闘なのだから。
「詩乃様、フォローをお頼みします」
「誰も死なせはしません。任せて下さい」
刺し貫くような殺意を機体に浴びながら、トリテレイアは隣にいる詩乃に支援を頼む。
最後まで皆を守り抜くという決意を固めている彼女は、真剣な表情でこくりと頷くと、いつでも仲間をかばえる位置に立って【神性解放】を発動する。
「人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
戦巫女の姿の上から若草色のオーラを纏い、天耀鏡には氷のオーラを纏わせ盾にする。
その凛々しい立ち居振る舞いに、頼もしさと歯がゆさを同時に感じながら――手負いの騎士はスラスターを作動させて宙に浮かび上がり、機体各部から格納銃器を展開する。
「面白い組み合わせだな。では行くぞ!」
自身の血から作り出した【鮮血剣ダインスレイヴ】を構え、斬り掛かるアインソード。
純粋な速度と威力で言えば、その一撃は赤錆の騎士を遥かに凌ぐだろう。無策で受けるのは危険と判断したトリテレイアは、瞬時に狙いを定めて格納銃器を発砲する。
「……最早、騎士と名乗るのも烏滸がましい姿ですが。それでも此処は通しません」
放たれた弾丸は紅い刀身に命中し、着弾の衝撃が太刀筋を鈍らせる。直後にそのタイミングを読んでいた詩乃が斬撃の軌道を掴み、一対の天耀鏡による真剣白刃取りを試みる。
「この先にいる人達には絶対に手出しさせません!」
神鏡は見事に血剣を挟み込んで固定すると、氷のオーラで血を凍らせ、刃を氷で覆う。
これで敵の武器の切れ味は半減以下だろう。まだ油断できるレベルでは無いが、攻撃力は大幅に下がったはずだ。
「成程。これでは斬れぬな」
二人の連携にアインソードが感嘆する間もなく、スラスターを噴かせたトリテレイアが突っ込んでくる。四肢による通常の移動や細やかな手の動きが難しい現状、彼に残された効果的な攻撃手段は、自らの機体と装備重量そのものを武器とする体当たりだった。
「無骨な技で恐縮ですが、どうかお覚悟を!」
追加装備に搭載された重力・慣性制御機構により、彼の機体は物理を超越した急加速や急停止を可能とする。その猛進を直に受け止めるのは流石に危険だと判断したのだろう、敵はさっと身を翻して突進の経路から退いた。
「なかなか面白い戦い方をする。だが甘いぞ!」
体当たりを避けられた後、急停止と方向転換に要する僅かな隙。それを見逃さなかったアインソードは凍りついた鮮血剣で反撃に転じる。切れ味は失われたとはいえ、吸血鬼の膂力をもってすれば、まだ機械騎士の装甲を打ち砕くには十分な威力があろう。
「貴方のお相手は、トリテレイアさんだけではありません!」
だが、そこに割って入るように飛び込んでくるのは詩乃。【神性解放】を発動中の彼女の飛翔能力もトリテレイアに劣らず、味方の隙をフォローするには十分な機動力がある。
そして"人々や世界を護りたい"という想いが最も強まる時にこそ、彼女はより高い力を発揮する。若草色のオーラを帯びた薙刀「煌月」の一閃が、吸血鬼の剣を弾き返した。
「ほう……大した業前、そして澄んだ太刀筋。私とはまるで異なる、殺気のない武技だ」
感嘆とも皮肉ともつかぬ言葉を浴びせながら、アインソードはさらなる斬撃を振るう。今度は初撃よりも速く、鋭く――だが、その時彼の正面にいたのは、詩乃が置いていった残像だけだった。
「赤錆の騎士さん以上の強敵と正面から斬り結べるなどと、慢心してはおりません」
敵がまだこちらの速度に慣れていないうちに、素早く背後に回り込んで煌月を振るう。
念動力で加速させた若草色の斬撃は、横一文字の軌跡に沿って衝撃波を引き起こし――振り向く間もなかった骸騎士を、トリテレイアの方に吹き飛ばした。
「今です!」
「了解」
詩乃が攻撃の合図を送った直後、トリテレイアが肩部収納スペースから投光器を出す。
敵が体勢を乱した機を逃しはしない。照射される閃光は、夜闇に慣れきった者の視界を潰すには十分過ぎる光量があった。
「ぐぅッ……!?」
反射的に目をかばったアインソードに、機械仕掛けの騎士は間髪入れず突進を仕掛け。慣性制御による高速スピンを加え、グラビティガンの砲身を勢いよく胴体に叩きつける。およそ騎士らしい形振りを捨てた我武者羅な攻撃だが――故にこそ威力は莫大。
「私達の背の命の為ならば……騎士の矜持など幾らでも!」
「ごはぁッ!!」
ぶつけられた砲身の方までひしゃげるほどの衝撃。砕けた黒鎧の破片を散らしながら、骸騎士の身体が上空に吹き飛ばされる。いかに強大な吸血鬼と言えども翼を持たぬ身では空中で姿勢は変えられまい――この瞬間こそ二人の猟兵が求めていた最大の好機だった。
「詩乃様!」
「はい!」
機械騎士が無事な方の砲身で目標をロックオンするのと同時、戦巫女が呪文を唱える。
放たれるのは空間すら圧潰させる重力波と、天空を切り裂いて降りかかる神罰の落雷。
双方ともに全力を費やした【騎神】コンビ渾身の連携攻撃が、鮮血の骸騎士を捉えた。
「ぬ、ぐぉッ……なんと、いう、力……があああぁぁぁぁぁッ!!!!?」
重力の檻に拘束され、押し潰されていくアインソードを、頭上からの落雷が撃ち抜く。
雷鳴と共に轟くのは骸騎士の絶叫。重力と神雷に折り砕かれた鮮血剣が、地に落ちた。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…ここから先は未来を勝ち取った人々を讃える宴の場よ
お前のような存在が土足で踏み込んで良い所では無いと知れ
"呪宝珠弾"を乱れ撃ちして蝙蝠や人形を銃撃し、
闘争心を暴走させて同士討ちを促し敵の集団戦術を乱してUC発動
…無論、こんな物でお前を討ち倒せるとは思っていない
だけど動きを止めて時間を稼ぐだけならば十二分…
…骸騎士よ。その眼に焼き付けるが良い
救世の誓いの下に集いし数多の魂、その想いが紡ぐ刃を…!
大鎌を武器改造して巨大剣の柄に変形させて左眼の聖痕に接続して魔力を溜め、
降霊した魂達の呪詛で限界を突破して長大な闇の光刃を形成して怪力任せになぎ払い、
闇属性攻撃のオーラで防御ごと敵陣を切断する斬撃波を放つ
「素晴らしい……素晴らしいぞ、強者よ……」
猟兵という"強者"との戦いを経て、今やアインソードは満身創痍だった。剣は折れ、鎧は砕け、外套は破れ、勝敗は誰の目にも明らか。それでも彼が歩みを止める事はない。
まるで、次なる強者との出会いを求めるかのように――人の気配のする方に向かおうとする吸血鬼の前に、マスケット銃を携えた少女が立つ。
「……ここから先は未来を勝ち取った人々を讃える宴の場よ。お前のような存在が土足で踏み込んで良い所では無いと知れ」
リーヴァルディはそう告げると、凛とした表情で鮮血の骸騎士を睨め付ける。この刺客を『闇の救済者』の元へは行かせない。勝利の宴にこれ以上の血と殺戮の匂いは不要だ。
さして大きな声ではない、だが不思議と芯に響く力強い言葉に、骸騎士も脚を止めた。そして血塗れの顔に喜悦の笑みを浮かべ、吸血鬼の証たる牙を剥き出しにする。
「ならばこそよ。"過去"たる我らから"未来"を勝ち取った強者よ……彼奴らと貴様らならば、我が渇きを癒やしてくれるだろう!」
【悠久の時が流れても】――アインソードの身体から流れ落ちた血が、巨大なコウモリと女性の姿を形作る。もはや『第五の貴族』から与えられた命令以上に、最期の瞬間までこの死闘を味わいつくすのが彼の望みであった。
「さあ! 踏み込ませぬと言うのなら! 止めてみせよ、我が歩みを!」
歓喜の咆哮と共に襲いかかる二体の眷属に、リーヴァルディは「吸血鬼狩りの銃・改」を向ける。二連装の銃身に装填されているのは、ネクロオーブを加工した「呪宝珠弾」。召喚された死霊(オブリビオン)の命令に割り込みを起こせる特殊弾だ。
「……ええ。止めるわ、絶対に」
残弾など気にせず乱れ撃つ少女。命中した呪宝珠弾は血の眷属の闘争心を暴走させる。奴が"強者"に向ける殺意と闘志を、仲間内にも向かうようにしてやれば――同士討ちを促し、敵の集団戦術を乱すことができるだろう。
『ギギィッ!!』
最初に異常を見せたのは血のコウモリだった。獣らしく本能に忠実なソレは、骸騎士の制御を外れて暴れだす。牙を剥かれた人形も、召喚中は戦えない本体を護るために、それに対応せざるを得なくなる。
「我が眷属の操作に干渉するとは! だがその芸当、いつまで続く?」
「……無論、こんな物でお前を討ち倒せるとは思っていない」
アインソードの笑みは崩れない。リーヴァルディも決め手に欠けるという自覚はある。
一時的に制御を乱したところで、敵はすぐに立て直してくるだろう。『殺戮者の紋章』で強化された吸血鬼と同等の強さを持つ眷属2体と、まともに戦うのは得策ではない。
「だけど動きを止めて時間を稼ぐだけならば十二分……」
彼女が欲しかったのは、ユーベルコードを発動するまでの猶予。聖痕に取り込んだ魂の怨嗟を詠唱として、紡いだ力を黒剣と接続する事で断罪の刃と成す――咎人を葬るその技の名は、【代行者の羈束・過去を刻むもの(レムナント・グリムリーパー)】。
「……骸騎士よ。その眼に焼き付けるが良い。救世の誓いの下に集いし数多の魂、その想いが紡ぐ刃を……!」
弾切れになった銃を投げ捨て"過去を刻むもの"を大鎌から巨大剣の柄に変形させる。
その柄から先を作り上げるのは、聖痕を通じて降霊された魂達の呪詛と魔力。ひとつに束ねられた遺志と力は限界を越えて、天をも貫かんばかりに長大な闇の光刃を形成する。
「なんと……美しい……!!」
それは数多の想いと願い、未来を斬り拓かんとする意志の象徴。漆黒の輝きをその手に携え、少女がかざす闇色の極光に――骸騎士はつかの間、戦うことさえ忘れて見惚れた。
「……黒き咎人に断罪の刃を……!」
覚醒を遂げた黒剣にありったけの想いと力を乗せ、リーヴァルディが放つ渾身の一撃。
力任せに振るった闇の光刃は、巨大な斬撃波となり敵陣をなぎ払う。闇の住人共が奮ういかなる防御も、その力の前では無意味。
「――……!!!!」
極光が全てを闇に染め――気が付いた時には、アインソードの身体は両断されていた。
彼は泣き別れとなった己の状態を自覚すると、かっと目を見開き、そして、微笑んだ。
「ああ……見事だ。素晴らしき強者であった……『闇の救済者』よ……」
その言葉を最期に吸血鬼の肉体は灰に還り、『殺戮者の紋章』が跡形もなく砕け散る。
地底都市より現れた闇の刺客、鮮血の骸騎士アインソードは、猟兵の力の前に斃れた。
――かくして『闇の救済者』達による一大反抗作戦は、これにて完全なる決着をみる。
闇の支配者に真っ向から叛旗を翻し、そして勝利したこの戦いは、人類にとって大きな前進となるだろう。無論、それを表に裏に様々な形で支え続けてきた猟兵達にとっても。
今だに夜明けは遠く、闇は深い。されど希望の篝火は消えず、煌々と輝き続けていた。
大成功
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