善神、邪神の数多が地と同化し大気に解けた、かつての戦場。
現在は一個地域として、建物が建ち並びすっかり復興の様相を示す。
そこでは、“滅びし神の力”が未だ場に揺蕩い、他の地より多くの『ヒーロー』や『ヴィラン』が誕生し、此の世界の活性を促している。
そのようなとある地域にて、突如として咆哮が木霊した。
ある者が聞くには風を切るようにカン高く。
ある者が聞くには地の底へいざなうが如く重低音に。
始めの内はただただ、姿なき咆哮のみに怯える人々。
けれど、この地にて生まれし年若きヒーローたちの勇猛なる励ましにより、早々にその恐怖から脱しつつあった。
彼らヒーローチームは、“滅びし神の力”を受け継いだ者たち。
時折襲来するオブリビオンの精神汚染等にも屈する事無く、魂に宿ったその力を揮ってこの地を守る者たち。
人々は安堵した。
ああ、やはり神の力残るこの場所は、その力宿したヒーローたちは、特別なのだと。
しかして。人々が克服しつつあっても尚、不気味な咆哮はとどまる事をしらなかった。
否――“それが目的であった”。
もっと もっとである 神の残留たちを 引きずり出すべし。
我 人も神も 混沌へと還すモノなり。
いくつものチームとして、人々に希望と勇気を分け与えていたヒーローたち。
いつからか、その数を、姿見せる回数を、減らし始める。
若き力結集させたヒーローチームが、強い存在感と共に人々に寄り添った日には決まって、あの咆哮がすぐ傍で鳴り響いていた。
そして次の日には……件のヒーローたちの姿が忽然と消えていたという。
同時に。
咆哮をより近く、強烈に耳にしてしまった人の中から、暴走するものが現れ出す。
お金に執着し犯罪に走る男性――あんなに日々節約していた人なのに。
愛だと喚き、泣き、縋る女性――あんなにいつもは清楚で大人しい印象だったのに。
食べ物とみると見境なしに、恍惚と食べ続ける子供――あんなにやせ細っているのに。
まだ自我を保つ幾人かが、次第に気付く。
あの咆哮による影響だと。
あれはきっと、呪いのようなものに違いないと。
少しでも人々の恐怖を取り除くべく、新たにこの地の対処に乗り出すヒーローチームが現れるも。
咆哮はそれに呼応するように、喜ぶように、音量を増す。
そうしてまた一人、また一人と、消えるヒーローが居るのだった。
●グリモアベースにて。
「――以上が、僕の視た予知です」
サティ・フェーニエンス(知の海に溺れる迷走っコ・f30798)なる少年がお辞儀後、淡々と事の経緯を説明した。
「このままでは、この地を標的にした猟書家の思い通りになってしまいます。
幹部は、ヒーローチームたちが宿す“滅びし神の力”を奪い、集め、オブリビオンとしての形を成し『超生物スナーク』を誕生させようとしています。
その先手として放ってきたのが、乗用車より巨大なバイオモンスターです。
面をつけた猛獣の姿をしていますが、その咆哮にすら力を持ちます。
咆哮は、聞いた者の内に眠る“飢え”“渇望”、つまり欲を増長し爆発させるようです。
それにより人々を暴走させ、助けようと現れたヒーロー、それぞれ奔走し別行動するヒーローから力を奪うというやり方です。
……罠だと察するヒーローもいるようですが、やはり救けを求める声には体が動いてしまうようで」
どうか、至急現地へ赴きヒーローチームと合流してほしい、と少年は再び頭を下げた。
猟兵たちとヒーローチームが協力が出来れば、罠にあえて乗り、敵を誘き出し逆に罠にかける方法も取れるだろう、と言葉が続けられながら。
全ての話が終われば、グリモアが輝いた。
真白ブランコ
フラグメントや宿敵様をお借りする時には、いつもブルブル緊張しっぱなし。お世話になっております、小心者ブランコです。
今回は猟書家戦をお届けさせていただきます。
●一章:集団戦
猛獣型のバイオモンスターたちとの戦い。
巨大な体躯からの突進や爪だけでなく、闇と呪いの力による特殊な攻撃方法。
ヒーローたちが公の場で動き出さない限り、聞こえるのは咆哮のみで姿を現しません。
ヒーローたちと協力して、まずは敵をおびき寄せましょう。
いざ敵が出てくれば、堂々とヒーローチームと共闘するもよし。
敵を罠にはめて一網打尽にするもよし。
また、咆哮をまともに食らうと、日頃封印している“飢え”、秘めている“欲望”などがコントロール出来なくなり、自らの行動を阻害されるかもしれません。
猟兵だから何とかなる! の精神で気にせず戦闘するもOK。
全力でキャラ様なりの飢えや欲望と対峙する場合は、心情寄り描写になります。
(基本、UCに対応するフラグメント攻撃な戦いになりますが、心情寄りとなった場合は臨機応変に対処致します※このシナリオに限ります)
●二章:ボス戦『ダークメナス』
滅んだはずの、強大な邪神の一柱。
“滅びし神の力”を回収しに、集団戦後姿を現します。
この地の力を召喚し操る強力な攻撃をしてきますが、ヒーローチームたちが宿す力で相殺可能。
前章を引きずって心情寄りとなるのも歓迎致します。
(OPやマスコメで余程強調していない限り、シリアスやコメディ、心情寄りなど、全てはキャラ様らしいプレイングに準じて執筆させていただきます)
●プレイングボーナス(全章共通)
ヒーローチームと共に戦う、
もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)。
●受付期間
3/9(火)8:31~。
(ダイスに委ねた)成功度達成最小人数で進行予定ですが、プレイング送信可能な間は送ってくださって構いません。
両手を広げてお待ちしております。
第1章 集団戦
『暗黒面『熱砂のラトゥール』』
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POW : 角と翼を手折る者
【古代の戦士】の霊を召喚する。これは【【飛行している者】や【角の生えている者】に対し】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 塔を冠する一面
自身の身長の2倍の【砂と土で形成された腕】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ : 暗黒を擁する咆哮
【その咆哮を聞いたものは、内に秘めた欲望】に覚醒して【欲望を求める姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:音七香
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グラナト・ラガルティハ
「俺達こそがスナークだ」
こんな馬鹿げた呟きもいつか本当になるかもしれんしな。
ヒーローズアースの神々の力を受け継ぐものか…確かにそれらはこの世界の歴史を知るものにとっては心強いものだっただろう。その力が消えていくのなら不安にもなる。
あぁ、この咆哮は心に秘めた欲望を暴いていく。
俺の欲望、なぁ(クツクツと笑って)
燃やして壊して破壊する…闘争だ。
呼び覚ましたのなら責任をもって受け止めて貰おうか?
UC【柘榴焔】を【属性攻撃】炎で強化。
【焼却】する。
フィッダ・ヨクセム
耳栓しねえの?
軽口を混ぜて存在感で押し切ろう
別に悪く言うつもりはねェよ
妖怪鬣犬バスは事前に喚んでおく
猛獣相手に単騎でやるわけねえだろ…鬣犬("俺")は善く目立つだろう
咆哮ばかり聞こえて煩えこと…耳障り、だな
俺様達は馬鹿笑いで目立ッてやろうか
鬣犬に込める全力の魔法は炎だ
本来ありえない巻角を生やして普段よりさらにでかくしてやるわ
……ヒーロー、俺様の幼気なペットが狙われちまうよ協力してくれ
俺様は半獣姿で、バディを囮に迎え撃つわ(手放し運転・騎乗だ)
炎を槍のように纏わせた本体バス停で喧しい奴から黙らせるつもり
ああ…耳が良くなり過ぎていけねえな
だが、俺の欲も飢えも……"戦いたい"なんだよ楽しいなァ!!
●
そそり立つは古よりの神の威厳。
その場に居る者全てを鼓舞し、同時に牽制する。
姿なき呪いの咆哮に恐怖する人々、打倒する術見出せず疲弊の色濃くしたヒーローたち。
彼らは今、確かに神の降臨を目にしていた。
――ヒーローズアースの神々の力を受け継ぐもの、か……。
一歩、踏み出しながらグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は、これまで奮闘していた彼らを一瞥する。
確かに、この世界の歴史を知るものにとってその力は心強いものだっただろう。それらが消えていくのなら不安にもなる。
人間とはそういう生き物であるゆえに。
真なる戦神なれば、グラナトは震える者たちの、立ち向かっていた彼らの、心の在り方を一瞬にして理解する。
常であれば早々容易く手を貸す気分にはなれぬところである、が。
微か、口角を上げ。ただ紡いだ。
「俺達こそがスナークだ」
それは戦神による重々しくも厳かな、真言と化す。
たった一言。
それだけで、周囲から恐怖の支配が取り除かれていくのが、誰の肌にも感じられた。
神にとってはほんの戯れに近い言の葉だったかもしれない。それでも。
――こんな馬鹿げた呟きも、いつか本当になるかもしれんしな。
己が口にし確かな力を宿す事で、他の猟兵たちへの今後の道標となるならば、無駄にはなるまい。
咆哮の獣は憤怒する。
ヒーローたちから力奪う機会を邪魔されただけでなく、じわじわと時間をかけ、この地全体から恐怖という名の下に歯向かう力を消し去ろうとしていたというのに。
今、この場において感じるのは戦神の威圧感のみ。もはや恐怖の色はどこにも見えなかった。
暗黒面の猛獣たちが、一斉に姿を現せばグラナトを包囲した。
そうして怒りのままに、狂吼が発せられた。
……あぁ、この咆哮は心に秘めた欲望を暴いていく。
ドクンッ――蠍の心臓が音を立て、その首をもたげた。
「俺の欲望、なぁ」
何の防御の構えも見せる事無く、真正面からその咆哮たちを食らったグラナトの唇が、低く笑い声を漏らした。
刹那。
グラナトの周囲で、数多の業炎が赤々とした塊となって現れる。
その主が瞳に浮かべるは、鋭き金の矢。
猛獣より猛る炎宿したその目が、恍惚と細められた。
「よもや、無知では済まされんぞ……燃やして壊して破壊する……“闘争”、それが俺の欲、存在そのものだ」
言葉と同時に、UC【柘榴焔】は生き物が如く猛々しい炎柱を上げ、更なる灼熱帯びて猛獣たちへ襲い掛かった。
容赦なく攻め立て、射抜くスピードで獣の巨体をも貫き燃え上がらせる。その一つ一つの炎たちは、まさに蠍の動き。
「呼び覚ましたのなら、責任をもって受け止めて貰おうか?」
嬉々として暴走を受け入れた戦神は、焼却の手を緩めなかった。
焔色の長き赤髪を躍らせ、幾体もひっきりなしに出現する獣たちの、必要とする酸素ごとまるで燃やし尽くそうとでもいうように。
この荒ぶる心臓、一等星の輝きを鎮める存在があるとすれば、この世にたった一つ。
そう告げるかのように、燃え盛る赤星の中でも決して色褪せぬ青色が、グラナトの指できらきらと瞬いていた。
◇
元が器物ゆえか、はたまたヒトの身を得た仮初神だからか。
視界に入る生身の者たちより、神の真言の影響を受けず、けれど“俺達”という言葉に反発する事もせず。
フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は淡々とした歩調で、グラナトの威厳に圧され佇んだままとなっているヒーローたちへと寄っていく。
「耳栓しねえの?」
あくまで軽い口調で。あの咆哮の影響するところを分かっているならば、戦略としてやっておくのもありだろう、そんな提案として。
敵の罠にはまって動いてしまった自分たちへの羞恥と、眼前で行われている激しき戦闘に圧倒されてしまっている事へ、年若いヒーローたちが項垂れているのを気付いていないフリでフィッダは一度背を向けた。
「別に悪く言うつもりはねェよ。動いてなんぼなんだろ、てめェらは。
動いてんのを待ち受け停めるのが、俺様の専売特許」
ヒーローたちの、不思議そうな視線をその背中で一身に感じれば、その原因となるバディ・鬣犬に己の傍らに来るようにと視線で促す(『そっちが来ればヨロシイでしょうに』といつもの悪態をつかれたわけだが)。
鬣犬。それは、転移前すでに召喚していたフィッダの使役妖怪――正しくは“己の本性”ともいえる存在であるが――今は戦闘時に増える攻撃手段的なモノである。
フィッダと鬣犬が密接した事で、その存在感が一気に増大したのへ、暗黒面の猛獣たち数体が意識を向けてくる。
“俺”は善く目立つだろう。
フィッダと鬣犬の心の声が重なった気がした。
結果、咆哮の集中砲火を受けることとなるも。
「煩えこと……耳障り、だな」
言葉とは裏腹に、イラ立ちとは違う高揚をその胸に覚えれば、フィッダは躊躇う事無くUCを、炎纏わせた全力魔法を鬣犬へぶつける事で解き放った。
【masirat alwahsh(マシラート・オルウォッシュ)】
瞬間、フィッダの傍に在った斑鬣犬の体格が一気に膨れ上がり、その毛並みは火の粉の如く爆ぜては燃え上がる。
その頭には、先程までは無かった大きく立派な巻角を生やしたのを確認しながら、フィッダ自身もその姿を半獣へと変化させた。
「あ? いつもより巨大化させてねェかッて? 気分だ。そう……ヤル気、つーな」
きっと咆哮の影響下なのだろう。そう開き直りながら。
広々とした燃える背に熱がる様子見せず跨ったフィッダが、そうバディに告げた直後、咆哮が音色を変えたのを半獣の耳で聞き取った。
途端獣たちとは別の、古代アーマー纏う戦士の霊たちが己らを取り囲んだ。
それらは明らかに個々の憎しみをはらんで、フィッダを、正確には彼が跨る超大型の鬣犬を標的にし襲い掛かった。
――視線……コイツの角ばッか狙ッてんな。
観察得意とするところなれば、即座に己がバディを囮に迎え撃とうと判断する。
フィッダはクルリと、ヒーローたちへ振り返った。
「……ヒーロー、俺様の幼気なペットが狙われちまうよ協力してくれ」
幼気……?
超巨大生物と化しているその物体へ、疑問の視線を注ぎつつも。
ヒーローたちの表情に生気が戻る。
協力を請われた――それは、自分たちの力を必要としてくれているのだと。
勇敢なる心のままに、ヒーローたちは戦士の霊を引き受けた。その身から迸る“滅びし神の力”は、怨恨を押し返す。
牙を覗かせ口の形だけで笑えば、フィッダは未だ咆哮続ける獣共へ突進した。
「ああ……耳が良くなり過ぎていけねえな。
だが、俺の欲も飢えも……"戦いたい"なんだよ楽しいなァ!!」
吼えと同時に、その手に固く握り込まれた本体たるバス停が、轟と焔噴き槍の形を成す。
さァて。いちばん煩いヤツはどいつかね。
揮った槍は炎の鞭の如き赤い曲線を描き、定めた的へ直撃し吹き飛ばす。
本能が喜びを上げるのを感じた。
やはり、俺様の生き方は本来かくあるものなんだろう。
ならば。折角の“今”を堪能するとしようか。
戦神は僅か、心地よい火の気配に眉を上げる。
その視線の先には、荒れ狂う黒獣たちのど真ん中に踊り出た、妖獣と炎獣が在った。
その身を貪欲なまでに戦いへと浸した赤き化身たちは、暗黒の咆哮が消えるまで暴れる力を解き放つのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レスティア・ヴァーユ
【ヒーロー】
まずは敵を炙り出さなければならないとは、中々に厳しいものだ
卑怯極まりない、早々に潰すべきであろう
なれば、まずは交渉から…だろうか
こちらの不安を察したように言われた親友の言葉は、正直渡りに船だった
交渉ごとほど不得手なものは無い
言葉に甘え、私は私に出来ることをするとしよう
戦闘状況把握、可能な限りヒーロー達のサポートに回りつつ
敵の様子を見て、飛行者が狙われていることに気付く
羽根など飾りだ!空など飛ぶ必要などは無い!とばかりに地面を駆ける
羽根だけで狙われるようならば回避も視野に
親友のUCの発動、そしてこちらへの呼び声と同時に動く
敵のとの距離を一気に詰め、自己設定UCを敵顔面に全力で叩き込む
アシュエル・ファラン
【ヒーロー】
なるほど?
つまり、ヒーローがいなければ攻撃も侭らないと
ちょっと待っててくれ、交渉してくる
レスティアは確実に屠れる戦闘準備だけしててくれ
こういうのは俺の仕事ってね
体が勝手に動くと言っても、罠だと分かってりゃ正直死ぬほど葛藤するのが人間心理
それなら『それを終わらせる為に、原因を倒す為に来ました!』とコミュ力駆使して『罠だと察しているヒーロー』に声を掛けて共闘を仰ぐ
気付いていないヒーローは今回却って足引っ張りそうだから、選択肢には入れられん
戦闘が始まれば、敵に念動力当てて指定UC
ゲームの開始だ!ルールは簡単!
『俺とお前とで、先に【何かを召喚した方】が負けだ!』
――レスティア、後は任せた!
●
激しい戦闘行われている一角とは打って変わり――
まさにこれから人々を励ましに行こうとしていたヒーローチームと出くわせば、よしちょっと待とうか、と咆哮の音色が微かでも遠のく路地にて。
レスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)とアシュエル・ファラン(盤上に立つ遊戯者・f28877)が作戦会議というアイコンタクトを交わしたところである。
「本当に遠吠えみたいなのしか聞こえないんだな……なるほど? つまり、ヒーローがいなければ攻撃も侭らないと」
「まずは敵を炙り出さなければならないとは、中々に厳しいものだ」
人々を救いたいと、居ても立ってもいられぬヒーローたちの気持ちを利用する敵の現状。
卑怯極まりない、早々に潰すべきであろう。レスティアの一見凪いだ表情の奥で、怒りの灯火が灯るのを見れば『案外短気なんだよなコイツ……』と、アシュエルは無言のまま肩をすくめたり。
かと思えば。
「……なれば、まずは例え危険でも、ヒーローたちへ協力求める交渉から……だろうか」
的確な意見を紡いだはずのレスティアの、高揚したと思ったその瞳が今度はどこか途方に暮れたように伏せられれば、思わず吹き出すのを堪えるアシュエル。
無表情の様に見える端整な顔。そこにもしっかりと感情の機敏が読み取れるようになったのは、さていつからだろうか。
「よし、そういう事ならちょっと待っててくれ。交渉してくる」
「……良いのか?」
「お前に任せたら日が暮れるだろ。確実に屠れる戦闘準備だけしててくれ。こういうのは俺の仕事ってね」
「……助かる。ならば、私は私に出来ることをするとしよう」
軽口も彼の優しさだと知っている。己の不安を察して提案された親友からの言葉に、レスティアは素直に安堵の微笑みを見せた。
適材適所だ、と颯爽と返してヒーローたちの方へと向かうアシュエルの、その表情はいつの間にか先程よりどこか固い。
――これでいい。あいつがいつも通り振る舞ってくれるなら、俺はそれに従おう。
それは自分自身への言い訳でもある。
いつぞやの戦闘で、自分はあの強く儚い親友の心を深く傷つけた事が脳裏に浮上しそうになったのを、アシュエルは無理矢理沈めさせる。
遠慮のない言葉、ふと見せる表情変化、それを許された今の立ち位置を、どうして揺るがすかもしれぬ言動を自分が取れようか。
――逃避だ。
分かっていても、今はただこうして共に任務に赴けるなら、そこで互いに役割を全うするのみ。
思考を振り払えば、アシュエルは持ち前の愛想の良さとスムーズな会話力を発揮する。
体が勝手に動くと言っても、罠だと分かってりゃ正直死ぬほど葛藤するのが人間心理……。
ヒーローたちの心に寄り添いながら、主として敵の罠なのだと察していた面々へ共闘を仰ぐ。
『その葛藤を終わらせる為に、原因を倒す為に来ました!』
重くならない程度に。且つ貴方たちの力があれば、より効率良く敵を排除できるのだと確実に伝わるように。
この数人はいけそうだな。他はー……うん、一般人の避難誘導でもしておいてもらおう。
例え善意で飛び出してきたにしても、頭の回らぬ者は戦場においてそれだけで命を危険に晒す。自分だけならまだしも、仲間までも。
その辺りは合理主義よろしく、すっぱりと割り切るのもアシュエルの性格である。
十字の道で、たった一人声を張り上げ無意識に力揮うヒーロー1人。
それは囮。交渉の末、咆哮の大元たちを引きずり出す為の。
この場に宿る神の力の残留が高まる気配を感じたその時、餌に食いついたように暗黒面の猛獣が一匹、二匹、次々とその巨体をどこからか曝け出した。
「よくやった! 流石この世界のヒーローだ!」
年若い彼らへ一度だけ満面の笑顔で言葉を送ってから。
レスティアとアシュエルは獣たちを挟むように影から飛び出した。
未だヒーローたちへ襲い掛かろうとする獣、その数体が翼持つ幾人かへ執着するのをレスティアは目にする。
ということは……。
気付いた矢先、アシュエルへ向かうよりずっと多くの数が、自身を標的と定めたのを目に留める。
羽ある神に恨みでもあるのだろうか。
ふと過ぎりつつ、しかし焦ってその身を空へ飛ばすことなく翻し、巨体たちの突進を跳躍で身軽に躱した。
レスティアは確信している。
自分に注視した敵たち。ならば、あいつが次にすることは――
「そんなに一点集中してちゃぁ、視野が狭くなるぜ!」
巨体たちの仮面の死角から、予想していた声色が響いた。
アシュエルが念動力を獣の肉体へと当てる。
UC【掟守護する女神の誘惑(テミス・テンプテーション】発動。
悪戯好きそうな黒の瞳が、ゲームの開始を告げた。
「さあ、ルールは簡単!『俺とお前とで、先に【何かを召喚した方】が負け』だ!」
咆哮の獣たちに、言葉が通じたかは定かではない。
しかして得も知れぬ力が、己が役目を、狂い吼えるのを押し留めるのを感じれば獣の本能のままに動きが鈍った。
猛るままに力を揮えば、ダメージがやってくることを知っているかのように。
「――レスティア、後は任せた!」
澄んだ青がその呼び声に応える。
万全の態勢で準備された、レスティアの拳に輝きが集約され始めた。
UC【封印解除・天質の顕】。
真の姿の時に本来纏う気魄と、そっくり同じ強き光帯びた拳が、躊躇いなく獣の眼前に飛び上がったレスティアから超高速な一撃として放たれた。
「人々の生き甲斐を奪おうとした罪、その身をもって償え……!」
一際白に包まれた拳と獣。
次にはバキーンッと太く高い音と共に、獣の暗黒面ごと顔面が叩き割られ巨体が弾け飛んだ。
ヒュゥ……UCとはいえ、どこにあんな馬鹿力潜めてんだ……。
レスティアの、あまり見ない肉弾戦な攻撃に思わず凝視するアシュエル。
その目に捉えられたのは、雄々しく凛々しい背中と――神々しさすら帯びた美しい横顔。
――上手く受け流していたつもりだったが……これはあの咆哮のせいだな、そうに違いない。
親友のそんな姿に、鼓動がいつもと違う跳ね方したのは不可抗力だと、そっと胸と帽子抑え視線外す男の姿があったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バーン・マーディ
…我はバーン・マーディ
ヴィランである
故に
我はヒーローと協力するつもりはない
唯利用するだけだ
敵出現と共に
【オーラ防御】展開
【戦闘知識】で敵の陣形を把握
我が角を手折る気か
良い
その意に我は叛逆しよう
我は欲望は隠さぬ
我が欲望は叛逆なり
この我をねじ伏せんとする蹂躙者を我は蹂躙しよう!
己の破壊・蹂躙・殺意の欲望を開放する
UC発動
敵や古代の戦士の攻撃は【武器受け・カウンター】で切り捨て
【切り込み・二回攻撃・鎧破壊・鎧無視攻撃・生命力吸収・吸血】
車輪剣と魔剣の二刀で斬りかかり蹂躙する
切り捨てれば更に他の敵にも襲い掛かる
一般人は基本的に無視
彼らを助ける者達は既にこの場にはいるのだろうからな?
●
――我はヒーローと協力するつもりはない。唯、利用するだけだ。
一度だけ閉じた瞼を重々しく上げる。
今、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の正面には猛獣に囲まれ、折れる寸前の心を必死に奮い立たせているヒーローが在った。
丁度ヒーローが無策に動き回っているのを見かければ、何の感慨も抱かぬ瞳向けたまま流れに委ねた。
結果、まんまと襲いやすい単独行動をとったヒーローへ、その力を奪いに咆哮の獣たちが姿を見せたのである。
「……我はバーン・マーディ。ヴィランである」
悪神と成り果てた騎士の、臆することの無い歩みが黒甲冑に厳かな音を鳴らせる。
「正義と悪は相容れぬ。ヒーローの敵はヴィランであり、ヴィランの敵はヒーローである。
故に、我は貴様を助けるわけでは無い」
黄金の柄を握り引き抜けば、禍々しい覇気と神気に覆われた刃が鈍く輝いた。
「ヒーローを撃ち滅ぼすのが我らが存在意義。我はそれを揺るがそうとする獣共に、制裁を加えに来た者なり」
重低音の宣言と同時に、その体が周囲を圧するオーラに覆われると猛獣たちの殺気がバーンへと向いた。
即座に視線で射抜きながら、歴戦たる知識において猛獣たちの位置、この場の地形、それらによる最適な己が動きを瞬時に見出す。
巨体が跳ね上がり、バーンを圧し潰そうとしてくるのへ、たった今把握した獣と獣の僅かに出来た隙間へその身を滑らせ回避する。
獣たちは激昂した。
立ち塞がるもの、邪魔だてする気配、それらを片っ端から一蹴しようと咆哮を上げては執拗にバーンの頭部へその爪立てる。
……我が角を手折る気か。
表情変わらぬままに、しかして纏う覇気に殊更の深い闇炎が宿る。
「良い。その意に我は叛逆しよう」
悪の信念。悪の矜持。それらを暴走させるというならば、それは正しくヴィランの生き様となるだろう。
予想より素早い巨体たちを躱しながら、しかし咆哮には意図して耳を傾ける。
我は欲望は隠さぬ。
我が欲望は叛逆なり。
魔剣持つ手とは反対の手に、車輪剣を携えて。
「この我をねじ伏せんとする蹂躙者を我は蹂躙しよう!」
【ヴィランズ・ジャスティス】。
幻怪なる紅きオーラが、血流の如くバーンの全身を駆け巡った。
それは誓い。それは成約。
不屈の精神を全面に呼び覚ませば、何倍にも膨れ上がった力が破壊、蹂躙、殺意の欲望を開放させた。
明らかに変貌をみせた黒騎士へ、獣たちも新たな力を喚ぶ。
巨躯の足元、この地に残った力の残骸に闇色が混ざれば、それらは戦士の姿をとってバーンへ剣を振り下ろして来た。
「笑止。己が道に惑った亡霊などに、我は止められぬ!」
何本もの剣たちを容易く受け止めては、刃を切り返しカウンターをお見舞いする。
その隙に背後を狙ってきた猛獣の牙を、車輪剣と魔剣を交差させ弾き返せば、足を止める事無くそのまま正面から突っ込んだ。
二つの剣の軌跡が現れ、それは獣の胴体に深い鮮血を走らせた。
数にモノを言わせようと次々襲い掛かろうとしていた脇の獣が、その体に漸く違和感を感じ取る。
力が、血が、魂の源が、このヴィランの騎士へと流れ込んでいた。
「生への渇望、さてどちらが勝っていようか」
告げて、容赦なくその巨体鈍らせた獣を貫いた。
己の中で猛る力に、バーンは身を委ねる。
その目にもはや周囲の人々やヒーローなど映る事無く。
バーンは知っている。
この場には、彼らを助ける者達が既に他にいるであろうことを。
信頼では無い。ただ個々の信ずるままに動くがいいと、ヴィランの背はそう語っていた。
大成功
🔵🔵🔵
北条・優希斗
連携可
遂に動き始めたか、ダークメナス
とは言え、先ずはこの飢餓と欲望を喚起する獣達からヒーロー達を守る必要があるな
ヒーロー達に情報収集で接触
自分達は『秘密結社スナーク』の一員だと名乗り、信用を得る
その後ヒーローにチームに招集を掛けて欲しい旨を伝え一番の激戦区に集結し、獣達を迎え撃とう
ヒーロー達には後方援護を依頼
獣の咆哮は覚悟で耐え抜く
自身の身長の2倍ならば、それだけ動きは鈍重だろう
早業+UC発動
UCで敵の腕の攻撃を見切り、残像で攪乱、周囲の地形や戦闘知識を利用してダッシュ+ジャンプで肉薄
俺自身は2回攻撃+範囲攻撃+なぎ払い+早業で獣達に攻撃
必要であればオーラ防御+見切り+残像で攻撃を受け流すよ
森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
これは速攻でケリつけねえと
一般人にもヒーローにも犠牲者が増える一方だな
咆哮を耳にする前に「高速詠唱、言いくるめ」+【悪魔召喚「アスモデウス」】
アスモデウス、仮面をかぶった赤い虎を見たら躊躇なく獄炎で焼き払え!
ヒーローチームには先に暴走した人々を止めて保護してもらい
敵を誘き出してもらうぜ
保護したらすぐに撤退しろよ!
敵が現れたら「属性攻撃(炎)、制圧射撃」のアスモデウスの獄炎で一網打尽にしてやる
残った敵は俺が「ランスチャージ、串刺し」で二槍を手に1体ずつ確実に倒す
咆哮で引きずり出される欲は
俺もアスモデウスも『敵の破壊』だから問題ねえ
欲に身を任せて「蹂躙」するだけさ
●
それは幾度目かの邂逅という名の縁。
件の地に降り立てば、まだ自我保つ人々やから早々に情報収集を行った北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が、散り散りに動いて回るヒーローチームの一部を見つける。
『自分たち猟兵は、秘密結社スナークの一員であり、それは今この現状を打開し護る為の存在である』と根気よく、真摯に説いてまさに信用を得た丁度その時。
「あれ? また会ったなぁ、黒髪のにーちゃん!」
陽の光をよく反射する金の髪を揺らし、此方に駆けて来るのが森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)という、幾度か共闘経験のある仲間の姿と声だと優希斗は確信した。
本当によく出会う。
それは、互いに心に引っ掛かる任務が似通っている、つまりは深層心理にどこか同じようなものを抱えているのかもしれない。
無意識にそう過ぎれば、優希斗は挨拶代わりに微か微笑んで陽太を迎えた。
陽太の方も、同じグリモア猟兵なれば何となく黒髪の彼の名を把握しているわけだが。
なんかもう、自己紹介するのも野暮ったい気もすんだよな。
タイミングと機会が合えば、その内改めてする事もあるだろう。
“今”は、そんな場合ではないのだとお互い理解しているゆえに。
暗黙で心中察しながら、陽太はすでにヒーローたちと打ち解け始めている優希斗の様子を察した。
「さっすが、行動早いぜ。速攻でケリつけねえと、一般人にもヒーローにも犠牲者が増える一方だもんな」
「同感だ。先ずはこの飢餓と欲望を喚起する獣達から、ヒーロー達を守る必要があると思っているんだが」
「あ、近場に居たっぽい獣は、俺のアスモデウスが多分焼き払ったわ。聞こえる咆哮、ちょっと遠いだろ」
「成程。そっちも行動が早いな」
ヒーローの直近の安全確保と、今後の行動における自分たちとの信頼確保。
それぞれが上手く役割分担していたらしい。
なら話は早いとばかりに、優希斗が目の前に立つヒーローたちへ作戦を告げた。
まずは他の連絡可能なチームへも招集を掛けて欲しい旨。
次には、この地で最も咆哮が多く、強く、聞こえる区にて敵を誘き出してもらいたい旨。
陽太も合間で加わり、敵が集まって来る前にその場における暴走した人々を保護して回ってほしいこと事も付け加えられる。
ヒーローたちは迷いなく頷いた。
チームを組みながらも結局個々に動いてしまう自分たちとは違い、もうすでに連携を取って先を見通す、この二人の猟兵の言葉に十分な説得力を感じた為に。
かくして見事目的の区画に、咆哮の獣たちが結集させられた。
「十分だ! あとは可能なら俺たちの後方支援を頼む!」
「一般人保護してる人はすぐそのまま撤退してくれなー!」
すぐに手出し出来ぬ距離に下げられたヒーローの姿と、とうに戦闘体勢を取っている猟兵の姿に、憤慨した獣たちから加減無き咆哮が発せられる。
――……っ、確かにこれは、何か、奥底の本能が引きずり出される感覚があるな……。
全身をその雄叫びから守るよう、漆黒の外套で自らを包みながらしかして、優希斗の瞳が暴走色に染められることは無かった。
こんなところであっさり欲望に任せ、心軽くできるほど……きっと、俺の罪は軽くなどない。
それは贖罪を誓った者の覚悟。
――遂に動き始めたようだしな。
まだ予知とまでいかずとも、この任務の背後で糸を引く邪神の存在を己も最近強く感じ取っていれば、胸の内で思わずそう零す。
なれば。このような獣たちに手こずってはいられぬのだと、魔刀と妖刀を翻し突進してきた一体へ一瞬にして両刀が振るわれれば、その巨体がまるで薙刀の直撃受けたが如く払われ他の獣へ激突した。
それを見た猛獣が攻撃手段を変える。
巨体映す影から、土と砂にて形作られた腕たちが現れ、優希斗の俊敏な動きを掴み、圧し潰そうと試みる。
……数は厄介だが、動きは獣より鈍重だな。
それでも己を数の暴力で囲み、逃げる隙を無くしてきたのへ、直後黒玉の瞳に鋭い蒼の閃光が煌めく。
UC【剣王の瞳】。覚醒された眼光は、数秒先の未来を見通す。
優希斗は土の腕も、獣の爪も、数多降り注いできた攻撃全てを見切って回避した。
もう次には己が残像を作り出し、荒ぶる獣たちを攪乱すれば、街灯を利用し高く跳躍する。
そうして重力利用するままに、上空から巨躯の頭部目掛け肉薄し、双刀は仮面ごと斬り砕くのだった。
――相変わらず剣舞みたいな動きだなぁ。
後方のヒーローを狙おうとした獣たちへ、躊躇いなくアスモデウスを召喚してはその獄炎にて一掃しながら。
陽太は宙に舞う人影を視界に捉えてはデジャヴを感じた。
確かにそれは、以前の任務時に見た同一人物のそれのはず。
ただどこかで、それとは別の、闇夜に音もなく翻る姿が重なる。
……過去の、俺か……?
刹那脳裏掠めた陽炎を、すぐに振り払った。
戦うたび、こうした精神揺さぶる敵と相対するたび、思い出されるものはあるけれど。
まぁ今はやっぱりそんな場合じゃねえよな。
慣れたように思考を切り替えた。
炎に巻かれなかった猛獣たちが、今まさに自身の背後から飛び掛かってきた気配に、ほぼ自動で体が突き動かされる。
両の手に持つ、濃紺と淡紅のランス&グレイブから淡い輝きが迸れば、渾身の勢いのままに二槍は飛び掛かってきた巨体を串刺しにしていた。
絶え間なく鳴る咆哮。
ちらりとだけ意識するも、陽太の唇には静かで獰猛な笑みが浮かぶのみ。
俺もアスモデウスも、欲と呼べるもんは『敵の破壊』だから問題ねえ。
「期待されたら応えねーとな!」
昂る衝動にもはや身を任せた。
グローブから伝わる怪力のままに、陽太は自在に槍を操る金色の獣の動きと化し蹂躙する。
黒と金の周囲から咆哮が途絶えるまで、その舞たちは続けられるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ダークメナス』
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POW : 我、失われし汝等の盟主なり
全身を【盟主の威光 】で覆い、自身の【同志達が奪ってきた神or不死の怪物の力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 我は盟主として、同志達の無念を晴らそうぞ
自身に【神々の時代の頃より得てきた同志達の無念 】をまとい、高速移動と【六枚羽根より滅びを齎す衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 我が同志達の怨念、晴らさずにいられようか
自身が【同志達が殺された事への憎悪 】を感じると、レベル×1体の【神々の時代より存在する古代遺産】が召喚される。神々の時代より存在する古代遺産は同志達が殺された事への憎悪 を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:塒ひぷの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠エリス・シルフィード」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レスティア・ヴァーユ
【凱歌】
敵の様子を見て
これはもう素直にヒーロー達へ協力を仰ごう
「―助力が欲しい! 手に余る!!」
「こちらも可能な限りの援護をする。どうかそれまでの時間を稼いで欲しい」
ヒーロー達にそう告げ
アシュエルに
「援護する。こちらは気にするな!お前はお前で動け!」と
ヒーロー達に敵の攻撃を防いでもらっている間に
指定UC発動
両足を大地に踏みしめ
高らかに場の皆への鼓舞の歌を
『心に炎を 手には力を――正義は共に、勝利は我らに!』
己を守護してくれるヒーローを信じ
歌い始めれば
己から完全に歌う以外
戦闘中とは思えない程に人間らしい機能を閉じ
一心に歌を捧げ紡ぎ続ける
終わって
…アシュエル?
様子の違う親友へ
不思議に思い問い掛けて
アシュエル・ファラン
【凱歌】
「――ま、その手に余るものを何とかするのが、俺たちの仕事なんですけどね!手助けしてもらえると凄く有難い!!」
ヒーローに向かって、大きな声で
いつもなら、俺がレスティアの援護に走れば――なんて思ってた
…え、それは暗に俺いらないって…いや今はそんなこと考えている余裕は無い!
ヒーロー達に、ダークメナスと古代兵器への足止めを頼む
手段は問わない、地面割ってくれても良いし凍りつかせてもいい
とにかく
その能力でこちらが攻撃しやすい条件を頼む!
指定UC発動 親友UCで強化
親友の歌声が響く中
古代兵器を潜り抜け、双剣でダークメナスへ攻撃
…今までが、当たり前だと思ってた
然り気無く、親友の言葉のダメージがデカい…
「我、光も闇も求めぬ者なり。
輪廻も因果も、須らく無へといざなおう」
それは、すでに矛盾と狂気に堕ちたモノの言の葉。
邪神は音もなく降臨した。
全ては己が衝動に従う為。
超生物を生み出すという、いつしか狂気の回路に埋め込まれたその衝動のままに、ダークメナスは猟兵たちへ襲い来る――
●
あれはヤバイ。
現れた瞬間から全身総毛立てば、アシュエル・ファラン(盤上に立つ遊戯者・f28877)は瞬時に邪神から距離を取った。
ほとんど屠ったとはいえ、それまでも微か、どこからか木霊していた咆哮すら今や不自然な程止まり、凍るような無音を作り出したこの場の空気。
レスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)も、そんな空気から自身を遮断するよう咄嗟に両翼で自らを包み込みながら。
「――助力が欲しい! 手に余る!!」
猟兵として経験で得たカンが、レスティアから声を張り上げさせた。
あれに対抗するにはこの地から生まれ、この地を守ろうとするヒーローたちの力が必要不可欠である。そう悟ったゆえに。
「――ま、その手に余るものを何とかするのが、俺たちの仕事なんですけどね!
手助けしてもらえると凄く有難い!! 切実に!!」
圧倒的圧力前に冷汗つたうのを誤魔化すように、アシュエルも素直に懇願を口にした。
あれだけの猛獣たちを相手に出来た猟兵たちから、必死な程真っ直ぐに請われれば、自信を失いかけていたヒーローたちに再び活力の火が灯る。
混沌の視線は、“滅びし神の力”が眼下たる地上から溢れ出るのを感じ取る。
不吉、不快、負の……元凶。
ダークメナスの体が宙から地に降りた。
その瞬間、大地が震動した。
「“それ”は深淵に還すべきモノ。我、憎しみに力与えん」
脳へ沁み込ませるような、脳を掴まれるような、深く深く響く声がしたと同時に、大地から数多の銅色を鈍く輝かせるゴーレムたちが現れた。
受け継いだ神の力が、自然とヒーローたちの唇を動かした。
あれはかつての古代遺産だと。生あるものを蹂躙すべく生まれた兵器だと。
「おいおいスケールが一気に膨れ上がったな……」
思わずそう呟いたアシュエルと、ゴーレムたちと相対してもまだ膝つかずこの場に在るヒーローたちを交互に見つめてから、レスティアは意を決する。
「こちらも可能な限りの援護をする。どうかそれまでの時間を稼いで欲しい」
請われ、一度それを引き受けたからには全うするのみ。ヒーローたちは誰一人恐怖の色浮かべることせず、レスティアの言の葉に頷き返した。
ふわり。彼らの勇気へ賞賛の微笑みを贈ってから。
「聞いていたな。援護する、こちらは気にするな! お前はお前で動け!」
凛とした決意を親友へ鳴らせて、レスティアはヒーローたちを信じ彼らの後方へと駆け出した。
――え……。
しかして、高らかな言の葉はアシュエルの心へ、異なった旋律として響き沈んでいた。
それは……暗に俺はいらないって……?
常であれば、援護するのは自分の役割であったはずで。
こんな簡単に、何の相談もなく、役割を放棄させられる程己の存在は……。
視界が暗闇に閉ざされる寸前で、アシュエルは思い切りかぶりを振った。
……今はそんなこと考えている余裕は無い!
その耳は先程から轟音を捉えている。
憎しみ色の土人形たちと、未来へ踏み出そうとする希望の力が衝突していた。
「わりぃ! その力で地面割れるか……! 手段は問わないから!」
アシュエルのヒーローたちへの指示を合図にしたかのように、辺り一面を轟音すらかき消す歌声が覆う。
それは白金の花咲かせたオラトリオの旋律。
UC【差し伸べられし天使いの御手】。
心に炎を 手には力を――正義は共に、勝利は我らに!
レスティアの、空気に解け天から注がせる戦歌は、この場に在る生ある者たちへ強大な敵を打ち砕く確信を与えた。
耳を傾け感ずるままに士気高めたヒーローが、一人また一人と土人形を押し返し、アシュエルの求むるがままに地面へと亀裂を入れていく。
鼓舞の旋律により膨れ上がる力の感覚を受ければ、アシュエルもまたUCを発動させた。
「公平なルールを構築する為の観察眼を舐めてもらっちゃ困るぜっ。
その古代遺産とやら、おたくが地にいねぇと操れないだろ……!」
アシュエルの全身が淡い青竜胆色に包まれる。
【星乙女の審判(アストライアーズ・レフェリー)】。
不快なる気の気配が近づくのへ、ダークメナスの足無き足が適切な位置取ろうと動いた。
しかして、ヒーローたちによって刻まれた大地の切れ目がその足場も侵略していれば、自身の行動範囲も、土人形を有利に動かす事も阻害される。
あくまでそれは、一呼吸あるか無いかの隙であった。
ならば土塊など捨て置いて空へ上がるのみ、と闇の思考が至った瞬間。
魔導蒸気の懐中時計をすかさず双剣へと変化させたアシュエルが、歌声を背に爆発的な加速を見せて。
「ゲームの主要キャラが高見の見物するもんじゃない……ぜ!!」
振り仰いだ双剣が十字の曲線を描けば、浮き上がろうとした闇の等身、その中央に衝撃が走る。
防衛本能による反撃が繰り出されるも、アシュエルの引き上げられた素早さは華麗に宙返りしそれを躱した。
その姿を最後に見守っては、蒼の双玉が閉じられる。
レスティアは己が全身を音に浸らせた。
戦場の経験が浅ければ浅い程、その身に受けた敗北感や恐怖はどれほどのものであっただろう。
それら全てを乗り越え、自分たちの言葉を信じ、今尚守護してくれるヒーローたちへレスティアは尊敬の念すら抱く。
ならば自分は、全身全霊をもって彼らに応えよう。
呼吸すらも歌に替えた。
天翼の一心なる歌声は、身体機能全てを捧げるように、此の地を、此の世界を己が楽器として響かせた。
五感の代わりにレスティアの瞼の裏で映るは、生ある者たちのエネルギー。
思考も無心状態であれども、そのエネルギーの輝きがレスティアに戦況の有利さを教え、歌声に力を乗せていた。
ただ一つ――そのエネルギー体たちの中、親友のそれが微か、いつもと違う色を纏っていた事にはこの時まだ気付かぬままに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
北条・優希斗
連携可
…そうだな、ダークメナス
お前が怨念、憎悪を俺達に向けるのは当然だ
お前の配下達を滅ぼしたのが、俺達なのは間違い無いからな
だが滅びし神々の力を用いて超生物スナークを誕生させるのは、頂けない
だからお前のその憎悪も、俺の…いや
俺『達』の罪として背負っていくよ
先制攻撃+早業+UC
精霊船と亡者達を呼び出し、彼等と共に戦う
ヒーロー達にはダークメナスが呼び出した神の力への対抗に専念して貰い
見切り+残像+ダッシュ+ジャンプ+第六感+地形の利用+オーラ防御で遺産をいなし亡者達と共に肉薄
2回攻撃+鎧無視攻撃+串刺し+薙ぎ払い+属性攻撃:蒼で攻撃
…悪いな
お前の俺達への憎悪への贖罪は、俺達なりの手で果たさせて貰う
●
それは過去。
ヒーローズアースの、此の地にてまごう事無く存在した、戦の記憶。
邪神から向けられる虚無。その中に潜む絶え間なき怨念と憎悪を、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は確かに感じ取った。
……そうだな、ダークメナス。
配下達を滅ぼしたのが、俺達なのは間違い無いから。
それらを向けられて当然だと、正面から受け止めて。優希斗は微か逡巡する。
過ぎ去った過去を力とする。それは己も同じである為に。
“罪”が自身の力の源。なれば、憎しみが罪持つ者を襲おうとするのもまた道理である。
――この身で良いならば、いっそ全てぶつけてくれて構わないとすら思うが。
けれど、そうしない。そうは出来ない。
罪を背負ったまま“猟兵”で在る事を選んだから。
「滅びし神々の力を用いて超生物スナークを誕生させるのは、頂けない」
だから。
覚悟と決意宿した瞳が見開かれれば、優希斗の上空に彼の岸よりいざなわれた蒼穹の精霊船が喚び出された。
UC【闇技・罪業蒼贖舞】。
「お前のその憎悪も、俺の……いや、俺『達』の罪として背負っていくよ」
それは他の仲間を含んだものか、それとも過去における『もう一人の己』を指した言の葉か。
優希斗は語らない。
今の生き様、今における戦いが全ての答えである故に。
それはダークメナスが発動を視認するよりも早く。先制して船から飛び出した数多の幽霊たちは、優希斗の覚悟を反映するままに、魔剣を揮い、魔刃を閃かせ、妖刀を撃ち降ろす。
先の地割れから態勢を立て直した邪神は、新たに古代遺産たちを大地から召喚した。
「っまだいけるか……!?」
すでにいくつもの銅色ゴーレムの動きを止めていたヒーローたちへ、助力と気遣いの視線を飛ばせば、消耗の色を浮かべながらもヒーローたちは力強く頷いてくれる。
「すまない。その代わり……こちらは任せてくれ」
巨体に似合わぬ素早さで攻撃仕掛けようとしたゴーレムたちが、優希斗の体にそれが届く前にヒーローたちの力により動きを鈍らせれば、すかさず残影と共に見かわして。
その耳で双翼のピアスが羽ばたく。
スピードに乗せた跳躍で地割れを飛び越え、ゴーレムたちを追って来れなくさせた優希斗の手で、蒼月と月下美人が刀身翻した。
「……悪いな。
お前の俺達への憎悪への贖罪は、俺達なりの手で果たさせて貰う」
邪神へ肉薄するは、自殺行為のようにヒーローたちの目には映る。
しかしその身にオーラ防御纏わせた彼に、たとえオーラ無くとも怯む心などありはしない。
――死ぬつもりなど毛頭ない。死は贖罪に生きる自分自身を否定する事だから。
優希斗は容赦も躊躇いも見せず、呪詛の斬撃を繰り出した。
鋼鉄より尚硬きバリアの被膜に覆われた闇の身体に、耳障りな鈍く甲高い音が鳴った。
串刺すように切っ先を真っ直ぐ突いた蒼月の、薙ぎ払うように太い軌跡描いた月下美人の、一点集中させた箇所。
そこに淡光りする確かなヒビが垣間見えれば、刃たちから蒼い閃光と化した追撃が成される。
「これが俺の贖いであり、弔い方だ」
無機質な邪神の表情に、僅か、燻ぶる揺らめきが見えた。
大成功
🔵🔵🔵
グラナト・ラガルティハ
戦いで命を落としたは何もお前たちだけではあるまいお前達が敵とする者達にもいるはずだ。
よっぽどの蹂躙でなければの話だが。
戦いにおける加害者と被害者など紙一重。
勝った方が正義だなどと俺は言わぬ。
俺は戦の神であって正義を司るものではない。
だがすでに敗者であるお前達が再び罷り通ることは叶わぬ。
UC【我が眷属の領域】
【封印を解く】で神の力を限定解放。
自身の装備品、蠍の剣と柘榴石の指輪をベースにUC【我が眷属の領域】を使用し火炎柱を発生させ【属性攻撃】炎で威力を上げ更に【破魔】纏わせ攻撃。
古代遺産と言えど燃やしてしまえば同じことだ。
●
炎神は静かに耳を傾ける。
この場における戦の流れ、それは神にとって揺蕩っている水面の一部にすぎぬ刹那の刻。
しかして降臨したからには、討つべきモノの、討とうとする者たちの、心の在処を掌握しておくのが義務であり礼儀であろうか、と。
罪と憎しみ。
それは人の歴史が繰り返す中で、必ず生まれ、蝕み、時に歪んだ強さと再生を促すもの。
故に、肯定も否定もするつもりは無い。
無い、けれど。
――戦いで命を落としたは、何もお前たちだけではあるまい。お前達が敵とする者達にもいるはずだ。
グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は金色の視線をもって、ダークメナスへそう告げた。
皮膚の感覚などとうに忘却されたはずのその混沌の身が、肌を突き刺すような威圧と意思にそちらを向く。
「勝った方が正義だなどと俺は言わぬ。俺は戦の神であって正義を司るものではない。
だが……すでに敗者であるお前達が再び罷り通ることは叶わぬ」
戦いにおける加害者と被害者など紙一重。
個における戦う理由、戦う意志を正義とするのであれば、どちらに加担するものではない。
「但し。それはよっぽどの蹂躙でなければの話だ」
すでに一度敗れ去り滅して尚、加虐な蹂躙を求めるというのであれば、戦神として引き際を教えねばなるまい。
一歩、グラナトが踏み出した直後、邪神の触れる大地から闇が広がった。
古代遺産という名の土の巨神が、戦神の眼前に立ちはだかる。
それを見上げた表情に、再び闘争の笑みが宿っては射手の如き瞳から神々しい光が迸った。
蠍の剣と、握る指にて赤々と輝く柘榴石の指環を高々と掲げれば、神の力の断片が解放される。
【我が眷属の領域】。
グラナトの意思纏った炎が、無機物たちへ流れゆく。
瞬間、それらは強大な火炎柱へと姿換え、蜷局巻くように巨神へと襲い掛かった。
「どのような武器や兵器を具現化しようとも、燃やしてしまえば同じことだ」
二本の火炎柱に更なる力が注ぎ込まれ、黄昏色を輝かせた炎は魔を祓う。
土の巨神が一瞬にして煉獄の炎に見舞われ、焼かれた体が、憎しみの土銅が、大地と天へ分離し塵と化した。
「全てを無に帰す事を望むのであれば……叶えてやろう。
憎しみごと燃やし尽くせ。不死鳥生む灰へと成れば、輪廻の輪に還る日もいつか来よう」
二本の火炎柱は勢い止まらぬままに、邪神の身を包み込んだ。
幾重にも張られていた強固な膜は、灼熱の炎に溶かされては新たな闇色が浮き出てくるのを、グラナトの瞳が捉える。
祓っても無限に生まれるのが人の憎悪。
――なれば、堕ちた神の力削ぐまでとし。人同士の成り行きに任せるとしようか。
大成功
🔵🔵🔵
森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
てめえにやる力なんざ何一つねえが
同志たる虎を獄炎で焼き払ったのは事実か
俺も憎悪や怨念、抱かれていてもおかしくねえな
ヒーローチームに古代遺産の抑えを頼んだ後
「高速詠唱」+指定UCでスパーダ召喚
920本の紅き短剣全てに聖なる光を纏わせ(属性攻撃(聖))
短剣全てを豪雨のように降らせて古代遺産とダークメナスを纏めて撃ち抜く(制圧射撃、蹂躙)
俺はその間に背後に回り(闇に紛れる、忍び足)
二槍て心臓を貫いてやる(ランスチャージ、暗殺、串刺し)
…一時の感情に身を任せ、剥き出しにして戦う俺は
おそらく過去の俺とは違うんだろう
だが、それでいい
今の俺は過去の残滓を利用し、前へ進むだけだ
●
過去を力として揮う仲間を、怨念を灰にしようとする戦神を、深緑色の瞳が順々に見つめる。
一見苦戦を強いられていると思われる邪神は、現れた時と一切変わらぬ静寂さを全身に纏い、けれどもそれとは相反して、その意識が集中しているのは彼らの力、彼らの輝き――その後方に控えるヒーローたち。
まるで虎視眈々と標的を物色するかのような空気に、森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は気付いた。
――てめえにやる力なんざ何一つねえが。
未だ胸の奥で燻ぶる衝動に片手を添えながら、一寸前の自分たちの所業を思い起こす。
同志だか捨て駒だかは知らねぇけど……仲間たるあの虎たちを獄炎で焼き払ったのは事実、か。
「そりゃあ、俺へも憎悪や怨念、抱かれていてもおかしくねえ……な!」
言葉と同時に、予期していたように陽太は今立っていた足場から跳躍した。
怨念に蘇る古代遺産、土ゴーレムは邪神の意図を組んだ動きで、陽太へ不意打ちを食らわせようと突如としてその足元から構築されたのだ。
チラリ。視線をヒーローたちに送ると、肩で息を援護を続けていたヒーローたちの背後から、丁度別チームが合流したのが見えた。
「ッナイスタイミング! こっちも頼んだ!」
敵の数と、それらを抑え込む仲間の様子から、即座に場の流れを把握した今来たばかりのヒーローたち。陽太の信頼に満ちた全力の一言を、一心に受け止めた。
集い始めた“滅びし神の力”が、陽太の死角から巨躯降らせようとしたのを押し留める。
咆哮の名残であろうか。
本人の無意識の内、猛る欲のままにその唇はとうに詠唱を終えていた。
「――解き放て!」
陽太の一声と共に顕現されるは、悪魔スパーダの携えし紅き短剣、920本。
その全てに聖なる輝き纏わせれば、禍々しくも生命の輝きに満ちた巨大な刃の豪雨と成る。
宙に魔法陣の如き幾何学模様を描いた刃の雨は、土人形たちごとダークメナスへと降り注いだ。
――鼓動は悦びの音を奏でているのに……やけに頭の芯は冷えてやがる。
どこか、第三者のように自身を捉えては。
陽太の足はやはり本能に任せるまま、気付けば数多の刃の影に紛れ、音もなく次の行動に移っていた。
ああ、知っているさ。この感覚……懐かしむべきもんじゃないが、利用するには絶好の相手だ。
全身から気配を、その瞳から光源を潜めた陽太はもう、邪神の背後を取っていた。
動いた空気に邪神が振り返るのとそれはほぼ同時。
両手から力送り終えた二槍により、瞬きの間で残った防壁ごと邪神の体を貫いた。
確かな手ごたえ。
しかして、怨念の体は直後槍から霧散し、距離とった位置にて再びその姿を構築した。
……不死身、なわけじゃねぇな。再生力が驚異的だが、それは確実に力を消耗する行為だ。
ならば。何度でも貫くのみ。
まだまだ手応えを感じられる事へ、何度目か鼓動が熱くなる。
――……一時の感情に身を任せ、剥き出しにして戦う俺は、おそらく過去の俺とは違うんだろう。
それでいい。
忘れることも、無かった事にもするわけではない。
過去の残留を利用する事で、“今”の自分らしさを保てるならば、幾らでも利用し強くなろうじゃないか。
陽太の足は前へ、未来へと踏み出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フィッダ・ヨクセム
なんか言いたげな殺意はてめェ?
おい態度でけェ降りて来いよ
権力と威厳は見下す事以外にねェわけ?
街中で堂々吼える喧しいハイエナに噛まれたくないか、そうかー
ヒーロー、どう思うよ
俺様ァ?スピード違反速度で飛んでるんで、ちョッとムカつく
精神は脆い方だから演る事は"戦いを楽しむこと"に傾倒する
誰でもいいよ、俺より疾くアイツを停められねェ?
よく狙ッて(スナイパー)…流血しねェか狙うんだよ
ただ一投の炎の槍みてェなとッておき(本体)でな!
どれも作戦不足なら、一撃以上貰ッてやるわ
例え俺のだろうが、臭いは目印
炎のブレスを吐く馬鹿と地に堕とすまで追撃だ
炎と獣の爪と牙で充分!
…ああァー輝く威厳、泥に塗れて台無しだなァ!
●
ダークメナスの意識に、微かな揺らぎが生じる。
我は 混沌に還すもの。
如何なる存在も 障害になど成り得ぬ。
――ナレバ、この状況は――
感情を理解し得ない、己が憎しみの存在である事を認識しない、その邪神の凍てつく気配がビリビリとした鋭い圧へと変化する。
ヒーローたちに抑え込まれた古代遺産たちを放棄するように、その身を毒々しい力で覆った瞬間、高速に上空へと昇って行った。
予定調和から外れたこの場。ならばまた一からやり直すのみ。
獣の五感はすぐに、邪神の変化とその動きを捉えていた。
「なんか言いたげな殺意になったな、てめェ」
疲弊したヒーローの傍で援護をかって出ていたフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、気に食わぬ視線を空へと向ける。
「おい態度でけェ降りて来いよ。権力と威厳は見下す事以外にねェわけ?」
これは己へ向けられたものだろうか。
邪神は僅か、その首を地上へと動かした。
視界に映るは赤き獣、土人形の砕き音、引き継がれた神々の力。
……全て、無にすべきモノたち。
ワズラワシイ。また、空気が揺らぐ。
鬣犬の鼻は、闇に隠されたそんな感情すら嗅ぎ取り、感覚がフィッダへと伝わった。
「はーん……街中で堂々吼える喧しいハイエナに噛まれたくない、ッてか。
ヒーロー、どう思うよ」
燻ぶる本性は未だこの身を焦がしている。
衝動のままに邪神への挑発はらんだ視線と言葉を振れば、本格的に動きを見せた邪神相手に委縮したヒーローたちが、ハッと我に返った。
その視線が告げてくる。あの圧倒的な力を前に、恐怖は無いのだろうかと。
受けた視線から、フィッダと鬣犬が同時に鼻を鳴らした。
「俺様ァ? スピード違反速度で飛んでるんで、ちョッとムカつく」
視線たちが今度はきょとんとした。
そうか、強大な力相手でも、怒っていいのか。例え元神であっても、理不尽に屈する必要はないのか。
決して何の意図も無かったフィッダの言葉が、ヒーローたちを鼓舞する。
再び上空を睨んだフィッダが紡いだ。
「誰でもいいよ、俺より疾くアイツを停められねェ?」
矢先、鬣犬に跨るフィッダの姿が変貌する。
地獄の番バス従える運転手よろしく、上等な制服生地から放つは狂喜の炎。
【Jayie Bahima(ウエタケモノ)】。
荒れ狂いそうな本能をまだどうにか抑えながら、前足で地を蹴る準備万端なバディを見下ろして。
「1秒とかでイイ。あとはぜッてェ俺様が停める(=ヤる)」
頼もしさの中に鳥肌が立ちながらも、ヒーローたちはもう震える事無く邪神を見つめた。
不快、不快。邪神が動く。
去ネ。白紙に ゼロに。
明らかな気の昂り。途端、大きく羽ばたいた六枚羽から衝撃波がヒーローたちへ放たれた。
鬣犬の巨体をもって、咄嗟にヒーローたちを庇ったフィッダを、その隙逃す事なく高速飛行からの羽刃が襲う。
フィッダはしっかりその動きを捉えていた。敢えて、その刃を掠めさせた。
「ッ景気よい切れ味じャねーか!」
運転手の肩から鮮血が舞ったのへ、ヒーローたちが動揺しそうになるのを吼えて一蹴する。
楽しくなッてきたトコだ……! てめェらも乗ッかれよ!
背中押されたヒーローが、フィッダを攻撃しに降りた邪神へすかさず力をぶつけた。
スピードが怯んだ隙をフィッダも見逃さない。
「やりャあ出来んじャねえか。
……よぉ堕ちぶれたカミサマ、俺様の匂いぷんぷん付けてどこ行くんだ……!」
それは目印。赤い標識。
フィッダの血痕染みた羽を、一心同体の獣が嗅覚にて完璧に捉えれば、炎のブレスと牙がその胴体へと直撃した。
急降下で地面に叩きつけられた邪神へ、起きる隙も与えず追撃の咆哮が轟いた。
「ああァー輝く威厳、泥に塗れて台無しだなァ!
せめてとッておきをくれてやる……よ!!」
歪んだバス停が、一本の炎槍となってフィッダから投げ撃たれる。
幾度もダメージを受けたその闇の身体には、もはや障壁も回復も施す力は残されていなかった。
我……無に帰すモノ なり……無は 消滅 せず……永久 に 蘇ル……
衝撃音と爆風が辺りを覆う。
それらが払われた先には、地面に突き刺さったバス停が、墓標のように存在を主張しているのみであった。
◆戦いの後。
「すまない……戦略とはいえ。自分たちも手伝おう」
獣と邪神による脅威は無事取り除かれた。
そうして現れたのは、おびただしい地割れや土塊の山たち。
周囲の建物は無事とはいえ、見るも無残な地形に真っ先にそうさせた自覚あれば、レスティアは潔く頭を下げた。
ヒーローたちはとんでもないと一同首を振る。
その晴れやかな笑顔を見れば報われた心地で、しかし残れる時間の間は出来る事をしようと進み出るオラトリオは、もう一人の元凶相手が未だ言葉発しない事に気付いた。
「……アシュエル?」
いつもであれば、呼ばれた事に、かけられた言の葉に倍以上の反応でかえしてくる親友は、まるで地面の遥か下を見つめているふうで。
――……今までが、当たり前だと思ってた。
アシュエルの心には、雑に抉られた空洞が出来ていた。
頼られて当たり前。隣りに在って当たり前。手を差し伸べるのが――要らぬと、言われたようで。
親友に生まれた空洞の傷に、レスティアは気付かない。ただどこか、元気がないようにしか、疲れたのだろうかとしか窺えなかった。
……あとで茶菓子でも買っておくか。
レスティアの中でも、アシュエルの家でひとごこちつくのがもはや当たり前で。
それがどれ程に親友の空洞をまた広げる事になるのか、真面目に一人片付けに精を出し始めれば、思い至れる隙は無くなった。
「ァー……一歩も、うごけねェかも、しれん……」
猛々しい獣の姿は、今やどこにも無かった。
『役目は果たしマシタ。では』とばかりに、あっさりと己を置いて行った半身の後ろ姿を、どこか恨めしそうに見つめながら。
せめてと、瓦礫を片付け始めたヒーローや猟兵たちの邪魔にならぬ隅っこで、フィッダはべしょりと倒れ込んでいたり。
「ちょ、紫髪のにーちゃん、大丈夫かっ?」
ひょこっと。仰向けの視界に、すっかり人懐っこそうな顔に戻った陽太の瞳が覗いてくる。
「ん、なんてこたァねえ。まァ、うん、反動、みてーなもんだ」
言えない。
あれだけ楽しく欲望に身を預けて暴れて。
実は本来、結構な不健康優良児(矛盾)だなんて、格好悪すぎて言えない。
フィッダの目がうろんと泳ぐ。
無理矢理叩き起こされた本能であったゆえか、咆哮の主たちが完全に消え去れば衝動は自然と鎮まるも、今度はいつも以上に手足が冷たい。
……ちッくしょー……暖を取れるモフモフがいねェ……。
心中で八つ当たりを零すフィッダ。
「先に手当をしに戻るか? 俺が肩貸そう」
「ちッと休んでれば動けるし。ッてか、よしッ、もうヘーキ! 俺様も手伝うぜ」
「ふらついてんじゃねーか、にーちゃん!!」
優希斗と陽太からクルリと回れ右をして、おぼつかぬ足取りでいそいそ行くフィッダの背中を見つめれば。
……照れくさそうだな……。
不器用そうな雰囲気を彼から感じれば、こっそりと微笑む優希斗。
あんな戦い方もあるのだなと、素直に感じた。
欲望が、渇望が、零れ出るままに己の血肉を武器とするような。
猟兵である以上、これからもそういった戦いの傍らに居ることも増えるだろう。
羨望、だろうか。これは。
償い続ける事を誓った、守れなかった過去を抱き続ける事を選択した自分には、きっと許されぬ戦い方であろうから。
――許しを請うつもり自体無いけどな。
自嘲を浮かべては、思考を横に置くように足元の大きな石をぞんざいに隅へ放った。
「黒髪のにーちゃんはまだ力余ってそうだな。あんだけ戦ってたのに」
「それはお前もだろう」
陽太の呟きに、今度は可笑しそうに笑った言葉が返される。
体力お化けか、いや、配分が身についてんだろうな。
どんな戦場で出会っても、優希斗が肩で呼吸しているのをあまり見た事なければ、陽太はふとそう過ぎったり。
猟兵であるならば、敵を屠る事に全力を込めるべきであろうけれど。
成した後、必ず動けるだけの余力を残す生き方をしてきたのは、きっと、自分も同じ。
俺は無意識だけど。黒髪のにーちゃん――優希斗――は、これからもその戦い方を選んでいそうだ。
「……なんだよ?」
「いーや何でも! よっし、どっちがあの瓦礫の山キレイに出来るか、競争しようぜ!」
「おま、待てっ、俺はまだ返事をしていない!」
過去を力として生きる者、
過去を未来への足掛かりとする者、
それぞれが今は同じ目的の為に駆け出した。
業火の嵐に似た戦場が、いつの間にか明るく、騒がしい空気を醸すのを戦神は見届けた。
忙しない。だが、タフでもある。
人間の底力を垣間見るのはこれで幾度目であろうか。
かつて、気付こうとしなかったその輝きを教えてくれた、たった一つの蒼い星に今無性に焦がれる心地がすれば、もう興味を失せた地へ背を向け紅の衣翻す。
そこへ、ヒーローたちから声を掛けられた。
感謝と、ほんの少しの、膨大な存在への恐れ、敬い。
遥か昔からの見覚えのあるその眼差しへ、ただ一度、頷いて返答とした。
振り返ることなく歩き出したその背後で、『あの邪神に似て非なる雰囲気だった、もう一人の猟兵さんはどこへ行っただろう』という言葉が耳に届く。
……あの存在感は、長くこの地に居られる者ではなかろう。
あれは魂を掛けて神の力に到達した、元来ヒーローと反発する存在だと気付いていたけれど。
決してそれらを発する事無く。グラナトはその場を後にした。
大成功
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