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汝、罪在りきと言うことなかれ

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #望月鈿女 #メガリス #戦巫女 #弥助アレキサンダー #魔軍転生

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●大海望むは呪われし秘宝
 忘神神社。
 それはサムライエンパイアにおいて有名なる神社の一つであった。
 奉られた神の名はすでに忘れ去られてしまっている。かつて、この神社は鬼が守護していたという逸話もあるが、いずれも憶測の域を得ない。
 いずれの時代にも在りて、その名を冠する者が、この神社に奉納されている宝を守護している。
 しかし、その名を冠する者も今は亡く。

 守護者を喪った神社に残るは秘宝のみ。
 だが、未だに江戸幕府を霊的に守護する力は喪われては居ない。戦巫女たちが江戸幕府から遣わされ、これの守護に当たっている。
 それは猟書家と呼ばれる存在が江戸幕府転覆を企てているという報告が為されているからだ。
「……幾ら結界で隠し立てた所で無駄ですよ」
 その声は静かに結界に包まれた忘神神社に響き渡る。
 外側から発しているというのに、よく通る澄んだ声であった。戦巫女たちは気がつく。神社に迫る圧倒的な大軍勢の姿を。
 無数のからくり忍者軍団が、こじあけられた結界から次々と疾走る。

「これが『超・魔軍転生』か。信長様の使っていた『魔軍転生』より強化されているのか。俺という魂を大量に複製して召喚して、憑装させるとは恐るべき荒業だ。信長様の無念を今此処で晴らさせてもらう!」
 からく忍者軍団の口から同じ言葉が紡がれる。それは憑装された『弥助アレキサンダー』の魂が紡いだ言葉であった。
 そんな彼らの背後から澄んだ声が響く。

 美しい、歌うような声であった。
「そのとおりです。江戸幕府転覆、これを為すために忘神神社を破壊し、何処かに存在するメガリスを奪うのです。私達、戦巫女が必要のない世界とするために。必要犠牲を強いられぬ世界のために」
 ああ、と嘆くように猟書家『望月鈿女』が、配下となった憑装された『弥助アレキサンダー』へと告げる。
「なるほど。今の世が間違っていると感じるのであれば、それもそのとおりだろう。人柱なんてものがあるからこそ、救われる生命がある。けれど、そのために人身御供にならなければならない理不尽」
 それはよくわかるぜ、と『弥助アレキサンダー』の魂たちが告げる。
 メガリスとは即ち渡来人の至宝。
 その扱いも、気配もまた敏感に察知することができる。ゆえに、『望月細女』は人魚の如き魚骨の半身を持って宙に浮かび、神社を守護する結界に穴を開けるのだ。

「メガリスの力あれば、全ての巫女も救われましょう。もう奪われなくていいように。多数の犠牲のために消費される巫女が必要とされない世界のために。必要犠牲のもとに成り立つ世界は間違っているのだと。誰かに己の生まれながらに持つ原罪を背負わせることなど在ってはならないのです」
 ゆえに生命は罪在りき。
 全て裁かれなければならない。
 誰か一人にかぶせてはならない。

 己がそうであったように、喪われる生命によって永らえる生命など在ってはならないと猟書家『望月細女』は正しく『狂気』と共に、この世の全てを呪う――。

●骨の詩
 冷たい海水の感触が肌を裂くようだった。
 人柱が必要なのだと言われた。誰かが怒れる海神を鎮めなければならないと。けれど、己達の中からそれを選ぶ事ができなかった者たちがいた。
 ゆえに己が選ばれたのだろう。
 仕方のないことであったと、その時は思ったのかもしれない。
 これで大勢が助かるのならばと納得したのかもしれない。誰かのためにと、生命を使うことこそが尊いことなのだと思ったのだ。

 それは偽りではなかった。
 そうであれと己は願ったのだから。ああ、けれど。
 けれど、『これ』を何度。後何度繰り返せば、全ての生命は救われるのだろうか。途方も無い数の人柱が必要になる。
 己だけで足りないというのならば、これから何度だって――生命は喪われる。
 それがどうしても。
「どうしても、許せない。ああ、自分でなくてよかったと隠すことも出来ぬ人の悪性がどうしようもなく私の心を逆撫でる――」

●そして、罪無き者は
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はサムライエンパイアにおける猟書家の侵攻を食い止めて頂きたく……」
 彼女の瞳は僅かに揺れていた。
 それは何か彼女の心にさざ波を立てるものであったのかもしれないが、彼女はそれ以上は瞳を揺らすことはなかった。

「猟書家『望月細女』は、『超・魔軍転生』によって『弥助アレキサンダー』を憑装させたからくり軍団と共に忘神神社と呼ばれる江戸幕府を霊的に守護する神社を破壊し、納められているであろう『メガリス』を探そうとしています」
 無論、メガリスを奪われることは避けなくてはならないし、江戸幕府を守護する神社を破壊されることは、即ち世界が再び乱れるということでもある。
「予知した今ならば、転移して直ぐに『超・魔軍転生』によって憑装され大きくパワーアップされたからくり軍団を食い止めることができるでしょう」

 言うまでもなく憑装されたオブリビオンの力は強大である。
 そこで神社を守護する戦巫女たちと協力して戦うことができれば、これらを撃退することも可能であろう。
「この神社には戦巫女が常駐していますが、数は多くなく、また皆さんに肩を並べるほどは強くはありません。ですが、この神社の内部や維持している結界などに関しては詳しいのです。彼女たちと協力して猟書家との戦いを優位に進めることが肝心かと」
 からくり軍団を全滅させることは難しいが、指揮している猟書家『望月細女』を撃破すれば、後のからくり軍団は烏合の衆となり、全ての軍勢を叩き潰す事は可能となる。

「皆さんには戦巫女の方々と協力し、からくり軍団を突破……そして、この大軍勢の指揮を取っている猟書家『望月細女』を打倒していただきたいのです。彼女の言葉は確かに……誰かのためのものなのでしょう」
 時に戦巫女とは己を棄てて、生命すらも棄てて他者のために奉仕しなければならない。
 その生き方を強いられる者もいるだろう。
 他者のためにという言葉は呪いであったのかもしれない。
 そう在るべきと言われる言葉は、強い縛りと重石になってしまう。

「けれど……私は、けれどと言葉を繋ぎましょう。無駄ではなかったはずだと。過去に歪められた存在へと成ってしまったのならば、これを止めるのが我々であるはずなのです」
 ナイアルテは頭を下げて猟兵達を見送る。
 その背中を何度も見送ってきた。
 彼らが背負ってきたのは、決して罪だけではないはずだ。
 誰かのためにという願いを受けた背中にあるのは、きっと希望であるべきはずであり、呪いなんかではないのだと、証明して欲しいとナイアルテは願うのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はサムライエンパイアにおける猟書家との戦いになります。猟書家『望月細女』は『超・魔軍転生』によって『弥助アレキサンダー』の魂を憑装させたオブリビオンの大軍勢と共に『メガリス』が納められているであろう神社を破壊しようと迫っています。
 この神社を守護する戦巫女たちと共に大軍勢を退け、猟書家『望月細女』を打倒するシナリオになります。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 集団戦です。
『弥助アレキサンダー』を憑装したオブリビオンの大軍勢である『からくり忍者軍団』と結界で覆われていた神社の中で戦います。
 この段階では大軍勢全てを叩き潰すことは出来ません。
 これを突破し、指揮する猟書家『望月細女』に迫らなければなりません。

●第二章
 ボス戦です。
 猟書家『望月細女』は憑装しておりませんが、その力は強大です。
 彼女を打倒しなければ、オブリビオンの大軍勢は神社を破壊し、奉納されているであろう『メガリス』を奪い去ってしまうことでしょう。
 一刻も早く彼女を打倒し、烏合の衆となった軍勢を叩き潰しましょう。

 ※プレイングボーナス(全章共通)……戦巫女と協力して戦う(猟兵ほど強くはありませんが、神社仏閣に詳しいです)。

 それでは、『メガリス』を求め、江戸幕府を守護する神社を破壊せんとする『望月細女』と大軍勢を迎え撃ち、彼女の恩讐を越える皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『からくり忍者軍団』

POW   :    からくり・自己犠牲術
【死角から超高速で接近し、忍刀】による素早い一撃を放つ。また、【壊れたパーツを破棄する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    からくり・自己複製術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【からくり忍者】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    からくり・麻痺拘束術
【麻痺毒の煙幕爆弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 忘神神社を包む結界が砕ける音がした。
 戦巫女たちは皆、手にした呪符や薙刀を構え、雪崩込んでくるオブリビオンの大軍勢を前にして逃げることはなかった。
 彼女たちと言っても、この神社に配された戦巫女は数人。
 慢性的な人員不足が重なり、さらにはこの神社をかつて守護していた存在も喪われてしまっている。
 彼女たちがこの場から逃げても、誰も責めはしないだろう。
 それだけの大軍勢であったのだ。
「結界が破られる……けれど、ここで退いては、江戸の人々に累が及ぶ……」
「ならば、僅かな時間稼ぎにならないのだとしても……!」
 戦巫女たちは逃げなかった。

 自分たちができることをと願った。
 例え、己達が死しても自分たちの意志を繋ぐ者がいてくれるはずだと信じていた。元より、神に捧げた身である。
 この生命を惜しむべくもない。
「互いを護り合いましょう。かすかな希望であったのだとしても、その光を信じましょう。私達は何かを信じることで力を得てきたのですから」
 戦巫女たちの手が震える。
 怖くないはずがない。けれど、その震えは止まる。
 いつだって誰かのためにと願っていたのだ。

 ならば、彼女たちは戦うだろう。
 命を捨てても――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
立地的に相性最悪だが、そうも言ってられない。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

己なく他者の幸福ために生き、そして鬼へと堕ちる。
ええ、私の生き方ですが?

鬼が守護したという逸話があるならば、多少は軽くなりましょう。
すみません、巫女の皆さん。互いに背を預け、死角をなくしてください。

矢面に立つは、私だけでいい。
パーツ落とすならば音がしますでしょうから、それにも注意しつつ。
漆黒風を投擲していきますねー。
あ、四天霊障が私の周りにありますので、近づかれても自動迎撃します。なんか、中の三人騒いでますし。

※『疾き者』の寿命だけが減るので、中の三人は大騒ぎ



 悪霊という身にあって、神社仏閣とは相性の悪い場所であったのかも知れない。
 神聖なる空気の流れ不浄を許さぬ場。
 穢れを削ぎ落とし、清めてこそ立ち入ることが許される場であるのならば、複合型とは言え悪霊として存在する猟兵である馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)たちは、まさに存在しているだけで己の身を焼く思いであったことだろう。

 だが、と言う声が聞こえる。
 それは四柱のいずれかから発せられた言葉ではなく、四柱全てが発した言葉であった。
「そうも言ってられない」
 喪われようとする生命があって、己達がそれを救うことができるというのであれば、それを救わぬ理由などないのだ。
「己なく他者の幸福のために生き、そして鬼へと堕ちる」
 否定されるべき生き方であったのかも知れない。
 誰だって幸福になることを願うし、そう思う権利はあるだろう。
 けれど、それらを捨て去って尚残る思いがあるのであれば、その生き方は否定されることではない。

「ええ、私の生き方ですが?」
 それがどうしたというのだ。四柱のうちの一柱、『疾き者』が戦場となった神社の中を駆ける。
 すでに多くのからくり忍者軍団が入り込んでいる。
 その大攻勢の中、必死に抵抗する戦巫女たちの姿を捉え、『疾き者』は加速する。その姿は、『もしも』という可能性であった。
 四天境地・『鬼』(シテンキョウチ・オニ)。
 もしも、生きていたのならば『風絶鬼』とまで異名をとったであろう姿。
 銀灰色の瞳と髪が戦場に流れるように糸を引いた瞬間、戦巫女を襲わんとしていたからくり忍者軍団を一瞬の内に叩き切るのだ。

「――……! あ、あなたは……!」
 その姿まさに鬼のごとし。
 けれど、その銀灰色の瞳に宿るのは狂気ではもなければ、恐ろしさでもなかった。あったのは、誰かを守らんとする意志。
 戦巫女たちを見つめる瞳は如何なるものであったことだろうか。
「すみません、巫女の皆さん。互いに背を預け、死角をなくしてください。矢面に立つのは――」
 己だけでいいと『疾き者』が疾風のように駆け抜ける。

 手にした棒手裏剣を投擲し、からくり忍者軍団の身体を撃ち落としていく。
 如何に『超・魔軍転生』によって『弥助アレキサンダー』が憑装されていたのだとしても、『疾き者』――いや、『風絶鬼』と化した彼の動きを捉えることはできなかった。
「ええ、例え私の寿命が尽きるのかもしれなくとも」
 戦巫女たちは守ってみせるのだと、『疾き者』は死力を尽くす。
 中で他の三柱たちが騒いでいるが今は聞こえないふりをしよう。放つ棒手裏剣とからくり忍者軍団の身体がぶつかり合う音で聞こえないのだ。

 きっとそうなのだ。
「誰かのために戦える者にこそ。力は宿るべきでしょう。理不尽も、誰にも奪わせないという願いも、何もかも私が」
 守ってみせるのだと、そうユーベルコードの輝きを瞳に宿し、『疾き者』は在り得たかも知れない可能性を燃やすように、疾風のようにからくり忍者軍団を巻き込んで破壊し尽くすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
POW

俺も自分を犠牲にして誰かの為に、という思いが強い方だから、少しはその気持ちがわからなくもない

その人達の想いを無駄にするかどうかは、残された人、周りの人達次第
だからこそ、俺は今この時、力になりたいと思う

死角からの高速攻撃には【第六感】【瞬間思考力】で瞬時に判断し退魔刀で【受け流し】
とはいえ、全ての攻撃に対処するのは厳しいだろう
戦巫女達に協力を仰ぎ死角が少しでも少なくなる場所がないか教えてもらい、敵をその場まで誘い出す
戦巫女が狙われたら【かばう】
俺の目の前で誰かの命を奪うなんて絶対にさせないぞ!
相手の攻撃後の隙を狙い【破魔】付与の退魔刀による灰燼一閃で勝負に出る



 結界の破られた忘神神社になだれ込む、からくり忍者軍団。
 彼らにとって己の存在は捨て駒と同じである。
 全てが『超・魔軍転生』によって憑装された『弥助アレキサンダー』であれば、己の生命は軽いものであったのかもしれない。
 例え、戦巫女たちが決死の思いで、生命を投げ打つ戦いをしたのだとしても、からくり忍者軍団たちにとって、それは代わりの効く生命でしかないのだ。
「憐れだな。戦巫女。お前達がどれだけ生命を燃やそうとも、結果は変わらない。破れ、生命奪われ、他の犠牲にしかならないのだというのに。俺は悲しいと思うが、それもまたお前達が選んだ生き方であるというのなら」

 容赦はしないと襲いかかる、からくり忍者軍団。
 暴風のように襲いかかる彼らの速度は凄まじい。戦巫女たちは決して強いとは言えない。
 けれど、決死の覚悟を持つ者たちが、信じられないような力を発揮することを『弥助アレキサンダー』は知っている。
 だからこそ、容赦はなかった。
 刃と刃がぶつかる音がした。
 退魔刃を構えた一人の猟兵が、からくり軍団の放った斬撃を受け止めたのだ。
「俺も自分を犠牲にして誰かの為に、という思いが強い方だから、少しはその気持がわからなくもない」
 だが、と鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)と告げる。
 憑装された『弥助アレキサンダー』の言葉は確かに正しいのかも知れない。

 どれだけ一人の生命を燃やしたとて、たどり着けない、護りきれないものだってあるだろう。
「けれど、その人達の想いを無駄にするかどうかは、残された人、周りの人達次第。だからこそ、俺は今この時、力に成りたいと思う」
 それは祈りにも似た感情であったかも知れない。
 人の善性を信じたい。
 誰も彼もが犠牲を良しとするものではないのだと、信じたい。

 だからこそ、ひりょは戦場を駆ける。
 今、誰かのために生命を懸ける者たちのために己は戦うのだと、その退魔刀を振るうのだ。
「くっ……! 疾い……!」
 からくり忍者軍団が振るう一撃は、憑装された『弥助アレキサンダー』によって強化されたものである。
 大帝剣を振るっていた『弥助アレキサンダー』の膂力を上乗せされた己の身体を厭わぬ攻撃は、ひりょを追い詰めていく。
「巫女さんたち、できるだけ死角がない場所は……!」
「あちらです……!」
 一人の戦巫女が叫ぶ。
 この境内では視界が開け過ぎている。敵を神社の内部へと誘い込むのは気が引けた。

 けれど、迷っている時間はなかった。
 戦巫女が指し示した先にひりょは、からくり忍者軍団を引き連れるように走る。
 彼の背に迫る刃を打ち払い、戦巫女を庇うのだ。
「庇うか、猟兵! それがお前の戦い方だというのなら、それは否定しないが。お前諸共倒れてしまえば、その生命すらも無駄だと知れ!」
 放たれる凶刃。
 けれど、ひりょはすでの己の命の使い方を心得ている。
「俺の目の前で誰かの生命を奪うなんて絶対にさせないぞ!」

 それは一瞬の隙を付いた一撃であった。
 彼の瞳に輝くはユーベルコードの光。
「全力全開!一撃必殺っ、喰らえっ!」
 ひきつけたからくり軍団の一撃を退魔刀でいなし、放つは超高速の灰燼一閃(カイジンイッセン)。
 一撃のもとに全てを決する。

 破魔の力を宿した一撃は、『超・魔軍転生』によって憑装された『弥助アレキサンダー』の力を振り払って、からくり忍者軍団を斬り捨てる。
「……言っただろう! 絶対にさせないって!」
 戦巫女をかばい、ひりょは戦場を駆け抜ける。
 己の矜持が例え、相対する者にとって間違いであったとしても、もうひりょは目の前にある生命を見捨てることはしない。

 必ず救う。
 必ず手をのばす。それが罪在りきと言われたのだとしても、もはやそれは覆ることは決してないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
普段はゲーマーですが、私も戦巫女の端くれ。
前世は前世ですが、まあ前世も戦巫女でしたし。
ちょっと私の中にいそうな私の前世(藤乃さん)との意見合意しまして!
不思議な助っ人参上!

巫女の皆さん、敵に向かって、呪符の投擲お願いできますか?
脱力状態を極力作り出したくないんですよ。
こちらが合わせますので、好きなタイミングで!

カモン【バトルキャラクターズ】!今回は立地に合わせて、破魔の弓持った戦巫女タイプです。
呪符投擲に合わせ、敵に向かって射かけなさいな!

私自身も、七色竜珠の赤から変化させた紅紋薙刀振るいますね!
なぎ払い、突き。突破しますよ!
誰かのために、私は戦えるのですから。



 忘神神社は江戸幕府を霊的に守護する要の一つである。
 それを破壊されぬために結界が厳重に施されてはいたが、猟書家『望月細女』の力を前に儚くも砕け散った。
「さあ、メガリスを。古より伝わる因習などに囚われる必要などないのです。戦巫女を救う。私にとって、それが最上の目的なのですから」
 いつだって犠牲になるのは弱者だ。
 それを必要犠牲などとは言えない。言ってはならない。

 からくり忍者軍団が破壊された結界から、神社の中に雪崩込んでいく。
 駆けつけた猟兵達がいてもなお、膨大な数のからくり忍者たちは、『超・魔軍転生』によって憑装された『弥助アレキサンダー』によって強化されている。
「そのとおりだ。必要な犠牲があるのであれば、強き者がそれを為せばいい。持つものが持たざる者を虐げていい理由などない」
 彼らの言葉は正しいのだろう。
 言葉の上っ面は確かに甘美で、耳障りの良いものであったのかも知れない。

 けれど、彼らが為すことは何一つとして弱者のためになるものではない。 
 江戸幕府が転覆すればどうなるか。
「不思議な助っ人参上!」
 彼らの進撃を阻むように、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)はシャーマンズゴーストの不可思議な獣のような姿を戦巫女とからくり忍者軍団との間に割り入るのだ。
 戦巫女たちにとっては、希望。
 からくり忍者軍団にとっては、邪魔者である猟兵の姿。

 檬果は普段はゲーマーである。
 楽しいことが好きな、人生を楽しく謳歌する猟兵である。けれど彼女の前世が言うのだ。
 彼らの言う言葉は確かに正しさに溢れている。
 けれど、今を見ていないのだ。
「巫女の皆さん、敵に向かって、呪符の投擲をお願いできますか? こちらが合わせますので、好きなタイミングで」
「は、はい……!」
 檬果の言葉に戦巫女たちがうなずく。
 手にした呪符は強化されたからくり忍者軍団には通用しないだろう。

 けれど、檬果はそれではない。
 彼らのユーベルコード、脱力状態によって受けたユーベルコードを無効化し、跳ね返してくる力を阻害したいだけなのだ。
 放たれる呪符がからくり忍者軍団に張り付き、その呪力でもって彼らの脱力状態を解く。
「カモン、バトルキャラクターズ!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。

 彼女は戦巫女の端くれであるが、バトルゲーマーでもある。
 召喚されたゲームキャラクターたちが戦場に舞い降り、手にした破魔弓を引き絞り、呪符の放たれたからくり忍者軍団へと破魔の力を籠めた矢が降り注ぐ。
「さて、私も行きますよ!」
 七色竜珠の赤から変化させた紅紋薙刀を構え、からくり忍者軍団へと突撃する。
 迫るからくり忍者軍団が檬果を打倒せんと凄まじい速度で迫る。

 けれど、檬果は躊躇わなかった。
 そこにあったのは、前世の自身との完全なる意見の合致が見せる力であった。
 己のためだけに戦うのではない。
 誰かのために戦う。
 それができるのだと檬果は自分自身を知っている。
「誰かのために、私は戦えるのですから」
 だから、この振るう力は正しいのだろう。

 どれだけ耳障りの良い言葉が彼女の耳を撫でようとも、振るう薙刀の業に曇りはない。
 在るのは、今危機にさらされている生命を守るという意志だけである。
 その意志に後押しされるように檬果は、薙刀を振り回し、からくり忍者軍団を吹き飛ばし、戦巫女たちに近づけさせないのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
絡繰だろうと複製だろうと、オブリビオンは殺す。全て殺す。

【雷人】使用。上空へ浮上し、近接攻撃から逃れる。
怨敵への【呪詛】と怨念を「ヴォルテックエンジン」に込め電流に変換。戦場の敵全てに向かって放電。【マヒ攻撃】【範囲攻撃】だ。忍者どもを【捕縛】し動きを止める。
「ハンドキャノン」を構え、上空から対オブリビオン用の呪装弾丸を叩き込んでいく。
敵全体の動きを上空から把握、戦巫女達にも指示を出し、撃ち洩らしを仕留めて貰う。軍人と巫女、立場は違うが民間人の為に己を滅し働く身同士。連携は容易い。
過去や将来、運命や宿命がどうだろうと、今の俺達は人々を守り敵を滅ぼす為にここにいる。それで十分だ。



 誰かのために戦うということは、何かを棄て去るということでもある。
 それは生命であったり、矜持であったり、もしくは己であったりもするだろう。その行いが尊いのか尊くないのかは、後の歴史が決めることであろう。
 今を生きる者たちにとって後の歴史のことまで気にかけている余裕はない。
 正しさとは、いつだって誰の心にも宿るものであれど、それを真に正しいと断ずることは誰にもできないのだ。

 ヴォルテックエンジンの唸る音が轟音のように空に響き渡る。
『超・魔軍転生』によって『弥助アレキサンダー』が憑装された、からくり忍者軍団が空を見上げる。
 そこにあったのは、黒い雷を纏った猟兵の姿であった。
 まさに雷人(ライジン)。
 久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は誰に言うでもなく呟いた。
「絡繰だろうと複製だろうと、オブリビオンは殺す。全て殺す」
 宣誓でも宣言でもない。
 ただの事実であった。了介は殺す。オブリビオンを必ず殺す。
 どんな理由があれ、どんな境遇があれ、彼の目の前に現れたオブリビオンは必ず殺す。

 そう在るべきと存在するからこそ、彼は黒き雷を身にまとい、凄まじい速度で飛翔する。
「怨霊の類ってやつか。大義なきやつ! 信長様の仇討ちの前哨には相応しいな!」
 威勢よく言い放つからくり忍者軍団。
 けれど、空を飛ぶ了介には彼らの攻撃は届かない。それは一方的な怨念の放出でしかなかった。
「発雷」
 短く発した言葉は、了介の底知れぬ怨念を雷となって迸らせる。

「この雷は……!」
「そうだ。お前達の動きを止める雷。俺の怨念。俺の魂の衝動だ」
 大型拳銃を構え、呪いの籠められし弾丸を打ち込んでいく。
 次々と砕けていくからくり忍者軍団。けれど、その数は膨大である。壊れた結界の穴から、次々と神社を破壊せんと迫るのだ。
「確かにお前は強いのだろうよ。けれどな、戦っていうのは、怨念一つでどうにかなるものじゃないんだよ」
『弥助アレキサンダー』にとって、今や己の身体は大量複製されたものの一つでしかない。

 ならば、今の身体を惜しむ理由などないのだ。
 ユーベルコードの雷がいくら彼らを穿つのだとしても、徐々に数で押されてしまう。
「過去や将来、運命や宿命がどうだろうと」
 了介にとって、それはどうでもいいことだった。
 確かに己は悪霊と呼ばれる怨念の集積した存在であろう。けれど、ただの悪霊に堕すことがないのは、己が嘗て軍人であったことが、強烈な楔と成って狂気から己を遠ざけている。
 地上に在りて、己の撃ち漏らした、からくり忍者軍団を叩き伏せていく戦巫女たちを見やる。

 彼女たちとの立場の違いはあれど、民間人のために己を滅し働く身同士である。
 自身と彼女たちの戦い方はどこかにているし、連携も取れるものだ。
 だからこそ、了介は己の『魂の衝動』に従うのだ。
 必ずや殺す。
 それ以外の理由は必要ない。
「今の俺達は人々を護り敵を滅ぼすために此処にいる――」
「大義知らぬ怨霊が!」
 互いの意志が交錯する。

 決して交わらぬ想いがある。
 相容れぬ存在が目の前にいる。猟兵とオブリビオン。それはどうしようもない道であったのかもしれない。
 けれど、了介は言うのだ。
「それで十分だ」
 己は怨霊であり、やっていることは怨念返しなのかもしれない。

 けれど、それでも喪われてはならぬ生命があるのならば、この身の内側から魂を焼く雷の如き衝動は潰えぬのだと、黒き雷を降り注がせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クルル・ハンドゥーレ
連携・アドリブ歓迎

『必要犠牲のもとに成り立つ世界は間違っている』
嗚呼、その通りや
『誰かに原罪を背負わせることなど在ってはならない』
それが正しいからこそ
己の痛みと悲しみを晴らす為に、犠牲と他人の罪を全てに強いようとしてるあんたを、どうしても止めなあかんのや

戦巫女と共闘
互いに守りあって貰い
UC展開に最適な場所・キャバリアで立ち回れる場所を教えてもらう

WIZ
UCで敵を分断、毒と棘で弱体化
可能なら倒し数を減らす
敵UC対象がドローンとなるようドローンの電磁パルス砲でマヒ攻撃、気を引く
迷路出口でキャバリアで待ち構え
マヒ攻撃・毒使い・破魔・鎧無視のせた範囲攻撃で残敵を掃討
敵攻撃には見切り、武器受けで打ち返す



 猟書家『望月細女』は言った。
『必要犠牲のもとに成り立つ世界は間違っている』
 その言葉を聞いたクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は溜息をつくように、言葉を漏らした。
 嗚呼、と。
 その通りやと。
『誰かに原罪を背負わせることなど在ってははならない』
 その言葉は正しいのだとクルルは思った。

 けれど。
「正しいからこそ。己の痛みと悲しみを晴らすために、犠牲と他人の罪を全てに強いようとしているあんたを、どうしても止めなあかんのや」
 彼女は忘神神社の境内に降り立つ。
 すでに江戸幕府を霊的に守護するための要である神社を守る結界は砕かれた。
 なだれ込むからくり忍者軍団の数は膨大である。数で押されれば猟兵とて、勝利することはできないだろう。
「戦巫女のみなさんは、互いに守り合ってな――後は私に任せておいてや」
 軽やかに舞うようにクルルは戦巫女たちから、からくり忍者軍団を引き離すように境内を駆ける。

 クルルの放ったドローンが、からくり忍者軍団の放った煙幕爆弾によって次々と撃ち落とされていく。
 負けじとドローンも電磁パルス砲で応戦し、クルルと共に戦巫女たちから、からくり忍者軍団の注意をひきつけていくのだ。
 あくまで彼女は戦巫女に累が及ばぬようにと立ち回る。

 戦巫女たちの数は少ない。
 けれど、他の猟兵たちも駆けつけてくれている。
 今は彼女たちの負担を減らすために自身が、敵の多数を引き受けなければならない。
「こちらを誘い込むか。だが、戦は数だよ。如何にお前達猟兵が優れているのだとしても!」
『超・魔軍転生』によって憑装された『弥助アレキサンダー』が言う。
 それも尤もな話である。
 例え、からくり忍者軍団の一人ひとりが猟兵に劣る存在であったのだとしても、無限のようにわき続ける彼らを相手取って戦い続けることのできる猟兵はいない。

「そやろうな。けど……百花繚乱、徒然に、廻り廻りてゆく末は――」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 戦場と成った境内に芳しい毒花が無数に咲く鋼の荊で出来た迷宮が瞬時に生み出される。
 それこそは花逍遙(ハナニサマヨウ)。
 ククルのユーベルコードである。それは出口の一つしかない、決して抜け出すことのできぬ檻。
「迷宮のユーベルコード! だが、出口は必ずあるのなら!」
 一斉に駆け出すからくり忍者軍団。
 彼らの強みは数である。ならば、数に任せて迷宮を踏破すればいい。時間稼ぎにもならぬ。

 程なくして、彼らは出口を見つけたことだろう。芳しい毒花が咲く迷路を物ともせず、鋼の荊を踏み抜いてでも次々と走破していくのだ。
 だが、クルルは己のキャバリアを駆り、出口の前に立ち塞がる。
「ここで行き止まりや。あんたらの、この先はない。例え、憑装した大量の中の一つであろうとも……」
 顕現したサイキックキャバリア、異形の銕の機神が炉心を燃やし、咆哮する。
 放つ攻撃は苛烈を極めただろう。

 例え、からくり忍者軍団が攻撃に耐えたとしても、絶え間なく放たれる攻撃は、彼らが朽ち果てるまで続く。
「誰かのためにと言う人らを傷つけていい理由なんてない。無念を、悲しみを、痛みを、誰かに同じように思えというのは……」
 それは思い違いである。
 誰もが罪を抱えて生きている。大きいか小さいかの違いでしかない。

 けれど、誰かのためになりますようにと願った想いすらも踏みにじる傷みがあっていいわけがない。
 クルルは銕の機神と共に、その凶行を止めるべく戦場に蔓延るオブリビオンの大群を押し留め続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
儀式や生贄の良し悪しはオレには解んねーが
健気な巫女さんが神社の為に暴徒の犠牲になるてァ間違いだって解るね
…今更時代錯誤だが
戦場での使い捨てはオレみたいな下っ端忍びのが似合いでしょ

巫女さん方には敵前逃亡してでも護るべきお勤めがあるんじゃない?
オレが連中を足止めする
風通しや見通しの利く場所ってあるかい?
巫女達を退避させつつ最後尾に付き
頃合いの場所で巫女たちを逃し【かばう】

敵UC命中を【野生の勘/視力/罠使い】で極力避け対煙幕の為【地形の利用】風上を取り
クナイ手裏剣等を複数【投擲】し即UC発動+【毒使い】
敵-自分がUC応酬で互いに拘束状態の間に巫女を逃がす
麻痺時も【念動力/暗殺】追撃を続行

アドリブ可



 からくり忍者軍団が忘神神社の境内を疾走する。
 彼らにとって全てが大量に複製された魂、『弥助アレキサンダー』そのものである。
『超・魔軍転生』は全てのオブリビオンに『弥助アレキサンダー』の力を上乗せする凄まじき荒業である。
「押しきれないか……さすがは猟兵と言いたいところであるが、消耗戦に引きずり込めば数を誇るこちらが有利。ならば!」
 手にした煙幕爆弾を投げ放ち、周囲に麻痺性の煙幕を張り巡らせる。
 これで容易に猟兵は煙幕の中に突っ込んでくることはないし、彼らは戦巫女を必ず護ろうとするだろう。
「悪いが、そこが狙い目だよな!」

 彼らは己の身を厭わぬ、からくり忍者軍団。
 一人が倒れても、その屍を超えるように次々と無限のように湧いてでてくるのだ。
「儀式や生贄の善し悪しはオレには解んねーが」
 その煙幕を振り払うように鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)はクナイ手裏剣を複製し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 彼はすでに戦巫女たちに風通しや見通しの利く場所を聞き及んでいた。
 戦いとは確かに数であるが、それを覆す術策はあるのだ。
 例えば、風向き。
 風の流れを読み切れば、弓矢の威力は上がり、対するこちらに弓矢は届かない。

 高台に陣取れば、勢いのままに敵を蹴散らすことだってできる。
「健気な巫女さんが神社の為に暴徒の犠牲になるァ間違いだってオレにも解るね」
 今更時代錯誤も甚だしいけれど、とトーゴは自嘲する。
 洗浄において使い捨てにされていいのは己のような下っ端忍びが似合いなのだ。間違っても、戦巫女のような健気な想いを持って戦いに挑む者たちではない。
 けれど、だからといって生命を棄てるわけではないのだ。

 己の命の使い所を知るからこそ、トーゴは風上に立ち、目立つようにからくり忍者軍団の前に姿を顕す。
「千鳥砂嘴ひと刺し浅しニワトコに 天地五感を掠め狩る──なに、些細なかすり傷さ」
 放つクナイ手裏剣が次々と、からくり忍者軍団の身体へと突き立てられる。
 それは傷みはないが三半規管を狂わせる毒の付与された手裏剣であった。例え、からくり忍者であったとしても、憑装された『弥助アレキサンダー』は渡来人と言えど人間である。

 身体を操る三半規管に類するバランサーのようなものが毒によって狂わされてしまえば、まともに動くことなどできないのだ。
「麻痺毒が自分たちだけのお家芸だと思うなよ。千鳥庭(チドリノニワ)……酔いどれの千鳥足のように焦って転んで、マキビシの餌食ってやつさ」
 トーゴの声が響き、『弥助アレキサンダー』たちが混乱する。
 それもそうだろう。ユーベルコードの毒は、常に彼らに焦りを誘発させ、けれど焦れば焦るほどに立ち上がることすら困難になっていく。

 そこをトーゴは次々と追撃し、からくりの身体を砕いていくのだ。
「悪いけれど、今だよね。巫女さんたちは、今のうちに!」
「ありがとうございます……! 私達は本殿の守りに……!」
 戦巫女たちは次々とトーゴとからくり忍者軍団がにらみ合う隙を駆け抜けていく。彼女たちは本来の護るべきお勤めがあるのだ。
 この戦いの引き金となった呪われし秘宝『メガリス』。

 それが奉納されているであろう本殿こそが、最も守りを固めなければならない場所であるのならば、ここで彼女たちを足止めさせるわけにはいかない。
「オレが足止めをして、彼女たちが本殿を護る……役割分担ってやつさ。『弥助アレキサンダー』……下っ端忍びが相手で不足かもしれないが、此処はオレと睨み合ってもらおうか!」
 トーゴの裂帛の気合と共にからくり忍者軍団との熾烈なる戦いが始まる。

 互いに忍びの業を駆使して戦う光景は凄まじいの一言に尽きたであろう。
 けれど、トーゴは笑っていた。
 難しいことはわからない。けれど、尊いものがなんであるのかはわかっているつもりだった。
 あの健気さが、きっと猟兵を呼んだのだ。
 なればこそ、己は己が為すべきことをするのだ。力をふるい、戦場において敵をひきつけ足止めする。
「後先考えられねーオレでもな! やっぱり正しいことは解るんだよ――!」

 その言葉は、戦場にありてユーベルコードの輝きよりも輝くように響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
村崎ゆかり、陰陽師。推参。
これで巫女の方にも手を染めててね。他人事じゃないから手伝ってあげる。
その代わり、上手くいったら一晩、ね?

大のために小を犠牲にする。確かに素人には受け入れがたいのかもしれない。それでも、自ら犠牲になろうという人はいる。
何よりも、目の前にいるでしょう。この神社の巫女たちよ。そして小さな犠牲を強いようとするのはあなたたち!
所詮、オブリビオンの説く道理なんてそんなもの。
皆、神社の結界の再構築! 鬼門と裏鬼門から順に手当てしていって。

問答が長くなってごめんなさいね。薙刀の「衝撃波」と「なぎ払い」で多対一の戦況を作りつつ、ぎりぎりまで粘ってからの紅水陣!
せめて赤く咲きなさい。



『超・魔軍転生』の恐ろしさは言うまでもなく、その憑装されたオブリビオンの強さがオブリビオンに上乗せされることにある。
 単純な強化であるが、それ以上に恐ろしいのは『複製された大量の魂』をもって全軍を強化できるという数の利を最大限に利用するところにあった。
 かつてエンパイアウォーにおいて、その協力さを思い知った猟兵たちも多いことだろう。
 からくり忍者軍団に憑装されたのは『弥助アレキサンダー』……言うまでもなく大帝剣と呼ばれた彼の力は、死を厭わぬ、からくり忍者軍団にとって凄まじい数の暴力を齎したことだろう。
 放つ麻痺毒を持つ煙幕爆弾が煙、戦巫女たちは本殿の守りを固めるどころではなかった。

 例え、猟書家『望月細女』が戦巫女を殺すつもりがないのだとしても、からくり忍者軍団には殺さぬ理由がない。
「江戸幕府に連なる者は全て滅ぼす。それが俺のできる信長様への忠義。悪いが、ここで後顧の憂いを絶たせて頂く!」
 麻痺毒を吸い込み動けぬ戦巫女たちに迫る、からくり忍者軍団。
 その間に割って入ったのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)であった。
「村崎・ゆかり、陰陽師。推参。これでも巫女の方にも手を染めててね。他人事じゃないから手伝ってあげる」
 その代わりと、戦巫女たちに囁いたのは茶目っ気であったのかもしれない。

「猟兵……! なら丁度いいな、此処で遭ったが百年目ってやつだ。信長様の仇、討たせて頂く!」
 からくり忍者軍団に憑装された『弥助アレキサンダー』たちが叫ぶ。
 彼らにとって個体とは意味のないものだ。
 どれだけ滅ぼされようと、複製された魂に限りはない。
「大のために小を犠牲にする。確かに素人には受け入れがたいのかもしれない。それでも、自ら犠牲になろうという人はいる」
「それを強いる者たちもまた存在するんだよ。人間というのはそういうものだ。美辞麗句で幾ら飾り立ててもな」
 刃と刃が激突する。
 ゆかりは薙刀を振るって、からくり忍者軍団を払いのけて、戦巫女たちに号令を飛ばす。

 未だ麻痺毒を受けて動けないだろうが、それでも自分が時間を稼ぐしかないのだ。
 一度解けてしまった結界を再び構築するのは難しいまでも、彼らの目的であるメガリス、それが奉納されているであろう本殿の結界を強化することはできるはずだ。
「何よりも、目の前にいるでしょう。この神社の巫女たちよ。そして小さな犠牲を強いようとするのはあなたたち!」
 衝撃波を伴った斬撃が、からくり忍者軍団を吹き飛ばしていく。
「問答が長くなってごめんなさいね!」
「どのみち平行線だ。お前達は猟兵。俺達はオブリビオン。どちらに道理があるかなんて、正しさがあるかなんて論ずるだけ時間の無駄ってやつさ」
『弥助アレキサンダー』の憑装された、からくり忍者軍団が一斉にゆかりに襲いかかる。

 本殿の結界を強化される前に邪魔者であるゆかりを排除しようと言うのだろう。
 だが、そのゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「所詮、オブリビオンの説く道理なんてそんなものね。古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 そのユーベルコードが輝いた瞬間、真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨が戦場となった神社の境内に降り注ぐ。
 それはあらゆるものを腐食させる赤い靄であり、触れるもの全てが溶け落ちていく。

 言うまでもなく、からくり忍者軍団も同様であろう。
 この領域に踏み込んだが最後、どれだけ強化されたからくり忍者軍団であっても、末路は同じである。
「せめて、紅く咲きなさい」
 ゆかりの振るった薙刀が、靄を裂き、陣の中にありてこれ以上からくり忍者軍団を進ませぬと鉄壁の壁のように立ちふさがり続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
(巫の服装を纏った男が、羽ばたきもせず降りる)
おう、御同業。加勢に来たぞ。
では、此の戦……『神』に捧げよう。
■令
皆は後方から呪符を放ち、援護してほしい。
狙いは『最も前列にいる敵』だ。

■闘
此処は博打が得策……むむ、何をすると?御覧あれ。
敵軍の動きを【見切り】つつ、攻撃に合わせて鞘で次々と
【武器受け】しながら前進。

距離が迫ったら刀を抜いて応戦……と見せる【フェイント】を。

実際にはその場で【ジャンプ】し敵軍の真上に登るぞ。
仕上げは瞬時に居合の構えを取り、眼前の敵を一人残らず目視、
身構えられる前に【破魔】の力を込めて【心切】を放つ。
不可視の【範囲攻撃】で一気に仕留めるのだ。

※アドリブ歓迎・不採用可



 戦いの趨勢は、大軍勢を誇るオブリビオンに当初は傾いていた。
 けれど、その勢いは徐々に削がれている。
 それは何故かと問われれば、猟兵の存在が要となって、忘神神社に迫るオブリビオン、からくり忍者軍団を押し留めているのである。
 本殿に奉納されているであろうメガリスを守護する戦巫女たちは追い込まれてはいるものの、猟兵たちの活躍によって誰一人として犠牲は出ていない。

 しかし、それでもなお迫るからくり忍者軍団の数は膨大である。
 倒しても、倒しても無限に湧き上がってくるようなすさまじい数。それこそが『超・魔軍転生』と呼ばれる荒業の恐ろしさであった。
 大量に複製された魂。
 それをオブリビオンに憑装させることによって得られる力は単純な力の上乗せにすぎないのかもしれない。
「だが、それでも俺、『弥助アレキサンダー』であればな!」
 そう、憑装されているのは、有象無象のオブリビオンの魂ではない。大帝剣と呼ばれた『弥助アレキサンダー』そのものである。
「……! 数が……! 猟兵の方々が危ない……!」
 徐々に押され始める猟兵達の防衛戦線。
 戦巫女たちにとって、猟兵は規格外の戦力であったが江戸幕府を転覆させんとするオブリビオンの軍勢を前に戦巫女たちは猟兵達の命が損なわれることを憂いた。

「おう、御同業。加勢に来たぞ」
 ふわりと巫の服装を纏った男……愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が本殿の前に降り立つ。
 猛禽の翼は羽ばたき一つせず。
 けれど、広げた翼の背後に戦巫女たちを庇うように舞い降りたのだ。
「では、此の戦い……『神』に捧げよう」

 清綱は何を言うでもなかった。
 それ以上の言葉は必要ないと考えたのかもしれない。しかし、戦巫女たちはわかっていた。彼が何をするのか、言葉はなくとも己たちを背後に背負ったことがその証拠である。
「わかりました。ご武運を」
 そう呟いた瞬間、清綱が駆ける。
 御覧あれというように襲いかかる、からくり忍者軍団の攻撃を鞘で次々と受け流しながら、稲妻のように戦場を駆けて征く清綱。
 その背後から放たれる呪符が清綱の動きに合わせて、最前列のからくり忍者軍団を足止めしていく。

「疾い……! だがな!」
 からくり忍者軍団たちには、脱力状態でユーベルコードを受けることによってユーベルコードを無効化し、放つことができる。
 だが、それは完全なる脱力状態でなければならない。
 それゆえに清綱の抜刀に対応できないのだ。
「見誤ったな、『弥助アレキサンダー』。大帝剣と呼ばれた男が、数を頼りにして勘所が鈍ったと視える」
 清綱の抜刀……それはフェイントであった。

 もしも、『弥助アレキサンダー』が単一のオブリビオンであったのならば、そのようなフェイントは即座に看破したことだろう。
 生命は一つしかないのだから。
 あらゆる状況を想定し、対応しただろう。
 けれど、今は違う。複製されたがゆえに代わりが効くという慢心。それが『弥助アレキサンダー』の弱点とも成り得たのだ。
「秘伝……心切」
 霊力を身に宿した清綱の居合の構えを見た。

 それは一分の隙もない完璧なる構え。
 彼の瞳に映るは本殿に迫らんとするオブリビオン、からくり忍者軍団の全てである。
「眼前には御同業たちの符。そして頭上には俺の居合。完全なる脱力を為すには些か時間が足らぬであろう――ゆえに!」
 放つは不可視の一太刀。
 一閃された斬撃が気魄と霊魂を絶つ一撃となって、からくり忍者軍団の尽くを糸が切れた人形のようにガラクタの山へと変えるのだ。

 抜刀された刀を納め、清綱は再び飛ぶ。
『超・魔軍転生』によって憑装されたからくり忍者軍団の数は未だ減ることはない。
 それほどまでの大軍勢を相手取らねばならいのならば、立ち止まっている時間などないのだ。
 此の戦いこそ、己の奉ずる神に捧げるのであれば、刹那の間ですら惜しまねばならない。
 猛禽の翼を広げ、清綱は新たなる敵を求めて飛翔するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
いやー、救済の押し売りはさぞ気持ちの良いもんだろうね
まあ、考えは分からんでもないけどさ、それを考えるのは生きてる人間の仕事
過去にどうこう言われる筋合いは無いよねー
空気読めなーい
つーわけで、体動かすついでにシバく


《RE》IncarnationとKey of Chaosを抜刀
【断章・焔ノ血】を起動
剣で左腕に傷を入れて流血し発動条件を満たす
ダメージがある戦巫女は寄っておいで
紅き炎が癒すから
回復したら一緒に突っ込もうか
大丈夫、私の近くにいる限り傷は全て焔が癒すからどーんと全治1ヶ月くらいダメージ受けよ!

両剣を構えながら近接戦闘
蒼炎で敵を焼きながら『なぎ払い』にして数をどんどん減らしていこう!



 鋭い傷みが己の腕に走った。
 それは自傷であったけれど、流れる血潮は赤く、切り傷であっても自己犠牲であった。
 蒼き炎が忘神神社、その本殿の周囲に膨れ上がり、相対する者を焼く。
 けれど同時に膨れ上がった紅き炎は月夜・玲(頂の探究者・f01605)に与する者、戦巫女達の傷を治癒し続けるのだ。
「いやー、救済の押し売りはさぞ気持ちの良いもんだろうね」
 そうつぶやいた視線の先にあったのは、オブリビオンの大軍勢、からくり忍者軍団の背後に座す猟書家『望月細女』の姿であった。

 彼女の言葉は確かに言葉面の良い、耳障りの良いものであっただろう。
 誰もがそれが正しいことだと理解できるものであったし、救いを求める者にとっては、救済の光にも見えたことだろう。
「まあ、考えはわからんでもないけどさ、それを考えるのは生きてる人間の仕事」
 玲の瞳がユーベルコードに輝いている。
 断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)。偽書・焔神より読み込まれた断章による力が彼女と彼女の周囲に影響を及ぼす。

 正しいと言える事であったとしても、それを考え選ぶのは今を生きる人間であるべきだ。
「過去にどうこう言われる筋合いは無いよねー。空気読めなーい。つーわけで」
 玲は首を傾げるように骨を鳴らす。
 別になまっているわけではないけれど。別に運動不足というわけでもないけれど。

 けれど、今を害するオブリビオンがいるというのならば、話は別である。
 抜き払った模造神器の刀身が蒼く輝く。
「身体動かすついでにシバく」
 戦巫女たちが玲の周囲に集まってくる。わー、やる気まんまーん、と玲は軽口を叩いたが、それでこそ、と笑った。
 それでこそ、誰かのために戦うと決めた者たちであると。
「これだけの数を前にして、よく言った。猟兵、やはりお前達こそ滅ぼさなければならない。信長様の仇討ちをやらせてもらう!」
 からくり忍者軍団が疾走する。
 放つ麻痺毒を持つ煙幕爆弾を投げ放ち、構えた忍者刀でもって、からくり忍者軍団が一斉に切り込んでくるのだ。

 蒼い炎が彼らを焼くが、関係がないというように崩れていく絡繰の身体を踏み越えて襲いかかるのだ。
「大丈夫。私の近くにいる限り傷は全て焔が癒やすから、どーんと全治一ヶ月くらいのダメージ受けよ!」
 そんなふうに軽く言えるのは、猟兵くらいのものです、と戦巫女たちは辟易したような顔をしたが、それでも笑っていたのは恐怖からではない。

 傷を追うことを恐れなくて良いからでもない。
 あるのは、共に誰かが闘ってくれることが誇らしいからだ。正しいか正しくないかは今はわからない。
 自分たちが判断することでもないのかも知れない。
 後の誰かが、あの戦いには意味があったのだと言ってくれるかもしれない。その戦いに自分たちが参じることのできたことが誇らしいのだ。
「ま、それは冗談だけどさ。数をどんどん減らしてこう!」
 玲が先陣を切って、からくり忍者軍団へと突っ込んでいく。
 炎が次々と、からくり忍者軍団を飲み込み、振るう模造神器の斬撃が『超・魔軍転生』によって強化されたことを感じさせないほどの鋭さで斬り捨てていく。

「今を生きてる人達が決めたことに後からどうこう言うのはさ、まして、それを」
 罪在りきということは冒涜にほかならぬ。
 罪を正すこともできず、恨み言を抱えて過去より滲み出るというのならば。
 玲は模造神器を振るい、ユーベルコードの炎と共に解き放つ。
「恨みつらみで濁そうっていうのなら、それは余計なおせっかいってやつだよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
弥助アレキサンダー…!
その主君への忠誠、かの海峡で相対した時と同じく見事と言わせて頂きます
ですが、こちらも譲る訳には参りません

戦巫女達の元へ急行
センサーでの●情報収集と●瞬間思考力で戦況把握に死角無し
動きを●見切り味方を●庇いつつUC使用

ただ脚を運び、剣を振るい、盾を掲げ…尋常のされど極めた一挙一動で敵群を瞬く間に粉砕
壊れた部品の破棄などさせぬ程に全て一撃の下に解体

ご無事ですか?
敵の総大将の元へ辿り着く為、この神舎の構造などの道案内を願えますか
道中の護りはお任せを

…これ以上の犠牲無きように…
その答えが全てを無に帰す等…何故…
いえ、今は進みましょう

…どの様な哀しき理由が在ろうとも…



「弥助アレキサンダー……! その主君への忠誠、かの海峡で相対した時と同じく見事と言わせて頂きます。ですが、こちらも譲るわけには参りません」
 その言葉は忘神神社の境内に迫る大軍勢、からくり忍者軍団に憑装された『弥助アレキサンダー』の魂に投げかけられた称賛であった。
 騎士道精神を宿す機械騎士であるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、『弥助アレキサンダー』の主君への忠誠は、見事なものであると言わざるを得ないものであった。

 敵であれど称賛を贈るべきと考えるのであれば、トリテレイアは言葉を選ばない。
「機械騎士風情がとは言わぬよ。いずれかの時に相対したであるのかもしれないが。生憎とこちらに、その記憶はないものでね。だが、互いに主君に忠義を尽くすということを理解するのであれば」
 からくり忍者軍団が走る。
 一切の躊躇もない忍者刀の斬撃がトリテレイアへと振るわれた。
 けれど、その動きをトリテレイアは剣をもって制する。
 火花散る刀身の輝きにアイセンサーが揺らめく。己の機体の損壊を考えない尋常ならざる一撃。

「見事だな! だが、この速度に着いてこれるか!」
 砕けたパーツを棄て、からくり忍者軍団が凄まじい速度でトリテレイアを囲む。元より一対一の戦いではない。
 けれど、トリテレイアはその尽くを撃ち落とす。
「肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事、その繰り返しの他は…騎士として危地に踏み入る覚悟です」
 一挙一動。
 その全てが数的、地理的優位の尽くを覆す。
 それこそが、機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)と呼ばれる所以。

 その瞳に輝くはユーベルコードの輝きなれど、蓄積された戦闘データがトリテレイアに最適なる動きを齎すのだ。
 例え、速度を上げたからくり忍者軍団の斬撃が鋭くとも、その尽くを剣で、盾で受け止めては返す刃と拳でまたたく間に粉砕していくのだ。
「……っ! この数をさばく……!?」
「そのとおりです。私には守るべきものがあります。主君を喪った貴方に言うべきことではないのかもしれませんが!」
 群がる、からくり忍者軍団をふりはらうようにして、トリテレイアは戦巫女たちが本殿を守っているのをセンサーによって察知し、駆けつける。

「ご無事ですか? 敵の総大将のもとへたどり着くため……この神舎のデータを頂ければ」
 トリテレイアは戦いに傷ついた戦巫女たちの元に膝を付き、手を伸ばす。
 彼女たちは確かによく戦ったと言えるだろう。
 圧倒的な数と質で押されて居ても尚、誰一人として犠牲になっていない。それは奇跡のようなものであったからこそ、トリテレイアは、それを守らねばならぬ。
「これ以上の犠牲無きように……」
 そう願ったのは、猟書家『望月細女』もまた同様であったはずだ。
 けれど、彼女の行いは全てを無に帰す事である。
 それが何故とは今は問うまい。

 トリテレイアにとって大切なのは、今を生きる者たちを護ることである。
 戦巫女たちは神舎の安全な場所まで護衛し、トリテレイアは意志を新たにする。
 例え、猟書家に哀しき過去と理由があるのだとしても。
「それを許容すれば世界が滅びる。それがオブリビオン、過去の化身として過去より滲み出た存在の咎であるというのならば」
 それを止めねばならない。
 そうするために己達はやってきたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『望月鈿女』

POW   :    巫覡載神の舞
対象の攻撃を軽減する【寵愛と加護を齎す海神を降した神霊体】に変身しつつ、【万象を裂く花弁を操る神楽舞、強烈な水流】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    貴方様の罪が赦されるとお思いですか?
対象への質問と共に、【対象の人生が全て書かれた巻物】から【罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊】を召喚する。満足な答えを得るまで、罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊は対象を【精神的に追い詰めるのに最も効果的な手段】で攻撃する。
WIZ   :    貴方様は犯した罪の数を覚えておいでですか?
【抗えない、魂を絡め取るような玲瓏たる声】が命中した対象の【喉の内部、咽頭や食道】から棘を生やし、対象がこれまで話した【嘘、食事を含む奪ってきた生命】に応じた追加ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠雅楽代・真珠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 未だ『超・魔軍転生』によって憑装された大軍勢は全てを滅ぼしきれたわけではない。
 けれど、猟兵達の活躍によって本殿の結界を突破できるほどの戦力があるわけでもなかった。
 言ってしまえば、戦いは膠着状態に陥ったと言ってもいい。
 ゆえに、此の後に訪れる展開は一つしかない。
 強力な単一の戦力によって状況を打破する。

 それは即ち、猟書家『望月細女』自身が打って出るということだ。
「何故、邪魔立てするのです。メガリスさえ差し出せば、生命は助かるというのに。それでもなお、己の身を粉にして江戸幕府を護ろうとするのです?」
 霊的な守護を齎す神社。
 その力の要がメガリスであるというのならば、それを奪うことこそが、江戸幕府を転覆させるということだ。

 だが、それでも戦巫女の誰一人として首を縦に振らなかった。
「理解に苦しみます。あなた達は弱者のために、そうしているのかもしれませんが。ただ、搾取されているだけなのですよ。貴方達の清らかなる生命を。自傷弱者に。弱者は、そんな声を上げることすらできないし、許されない者のことを言うのです」
 言葉を上げ、叫び散らし、不平等を嘆く者たちのどこに正しさがあるというのか。
 自身では何もせず、身を切ることもせず。
 されど、人並み以上のことを求める者達。

「そんな者たちにあなた達が食い物にされてしまうのが忍びない。ただ、それだけのことであるのに……」
 理解してもらえない。
 ならば、と『望月細女』は呪う。
 全てを呪う。
 この世界を構成する全てを呪う。一度壊さなければならない。体制を、枠組みを。
 犠牲を強いる世界の全てを――。
村崎・ゆかり
革命家気取りは手に負えないわ。机上の正論、青臭い理想論。現実を見る目は骸の海に忘れてきたの? ああ、その顔隠しじゃなにも見えないか。

そちらが水行ならこちらは木行。水生木。九天応元雷声普化天尊玉秘宝経で水の加護ごと破ってあげる。

力あるものは弱きものを守るのが義務でしょう。この天下泰平の世を、戦乱の巷に引き戻すつもり?
元和偃武は既に成った。過去の亡霊の出番はは無いわ。

攪乱のために、「式神使い」で折紙の犬を放って牽制。「集団戦術」で注意を引かせて、そこに雷公の一撃を叩き込む。

先手としてはこんなものね。後は皆に任せましょう。

無事に終わったら、「コミュ力」で巫女さんたちと距離を縮めて、いけない一夜を。



 嘆く女がいる。
 名を『望月鈿女』と言う。世界の仕組みに涙するものであり、犠牲となる弱者を救うことこそが自身の役目であると嘯く猟書家である。
 彼女自身が受ける寵愛は海神のものである。
 半身を魚骨とし、その姿を晒しても尚、彼女の隠れた顔から流れる涙は止まることはなかった。
「ああ、なんと。どうして。何故」
 どれだけの言葉を尽くしても言葉は届かないのかと嘆くしかない。

 未だ『超・魔軍転生』によるオブリビオンの攻勢は止まらない。
 猟兵達が己の前に立ちふさがったのだとしても、時間を掛ければ本殿に張り巡らされた結界も打ち破ることができるだろう。
「革命家気取りは手に終えないわ。机上の空論、青臭い理想論。現実を見る目は骸の海に忘れてきたの? ああ、その顔隠しじゃなにも見えないか」
 そう言葉を投げかけるのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)であった。
 彼女にとって、『望月鈿女』が語る言葉は理想論でしかなかった。
 誰もがそうできれば幸せになれると知りながら、誰もが他の誰かよりも少しだけ優れていたいと願うからこそ、実現しない現実を知っている。

「理想なき猟兵のあなたはどうするのですか。ならばどうやって弱者を護るのですか」
「力あるものは弱き者を護るのが義務でしょう。この天下泰平の世を戦乱の巷に引き戻すつもり?元和偃武は既に成った。過去の亡霊の出番はは無いわ」
 ゆかりの瞳に映る世界と、オブリビオンである『望月鈿女』の瞳に映る世界は決定的に違っていただろう。
 理想を語ることはしない。
 あるのは現実だけである。

 海神の寵愛受けた万象を引き裂く海流がゆかりに放たれる。
 身に宿した海神の力は、猟兵と言えど、その身を容易く切り裂くだろう。
 放った折り紙の犬が瞬く間に切り裂かれ、押し流されていく。
「そちらが水行ならこちらは木行。水生木!」
 一瞬たりとも気が抜けない。即座に押し流されてしまうほどの力の本流は『望月鈿女』の嘆きそのものであったかもしれない。

「天下泰平! 今のこの世が天下泰平と言うのですね、あなたは。誰もが奪い、誰もが奪われる。それは明日かもしれないし、今日かもしれない。あなたは、この世の体現者」
『望月鈿女』の振るう力は凄まじい。
 海神の寵愛を受けたと言われても、確かに頷ける力だった。並のオブリビオンではない。
 万象を切り裂く水流がゆかりへと迫る。

 だが、ゆかりの瞳はユーベルコードに輝いていた。
 式神である折り紙の犬たちに注意をひきつけていたおかげで、詠唱の時間は生み出された。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
 放つは視界を塗りつぶすほどの雷撃の一撃。
 明滅するように穿たれた雷が水流と激突し、その力を押し戻していく。
 だが、その雷撃は水流を切り裂いて『望月鈿女』へと奔り、その身を焦がす。
「……先手としてはこんなものね。後はみんなに任せましょう」

 互いの力の本流が激突した戦場に花弁が舞い散る。それは神楽舞。
「なるほど。海神の寵愛ってわけ。けれど、これで勝ったつもりでいないことね」
 ゆかりは未だ健在なる『望月鈿女』の神楽舞を見やる。
 己の後に控える猟兵たちがいることを彼女は知っている。例え、今の一撃で致命傷を与えられなかったのだとしても、その力を削ぎ落とすことができる。
「いいえ、私は続けましょう。私の目的はあなたたちに勝つことではないのですから。この守護の要、メガリスを奪うこと……」
 ならばこそ、ゆかりは言うのだ。

「なら、それさえも叶わないと知りなさい。どれだけ、あなたが強大なのだとしても、この泰平の世を偽りだというのなら、必ず止めるのだから――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』
アイコンはUC使用時イメージ

面白いこと言いますね、あなた。私を否定して楽しいですか?
(※命と引き換えな母の加護で生き延びた双子の忌み子)

戦巫女たちには、建物を守ってもらいまして。

まだ逸話に則って、UC使用継続です。
私自身は、風属性攻撃で水流割れるようにした漆黒風を投擲。軽減するとはいえ、傷はつきましょう。再生阻害呪詛つけます。
相手の攻撃は、四天霊障による防御オーラ+結界術で花を耐えます。多少のは激痛耐性で。

結局、あなた視点だと、戦巫女含め長じた者に無罪の者はいないということになりますね。
私ですか?暗殺してましたから罪ありますけど?

※やはり、UCの扱いで内部三人は騒いでいる



 猟書家『望月鈿女』の言葉は正しさの皮を被っているようなものであったのかもしれない。
 弱者という言葉。
 犠牲という言葉。
 それら全てを耳障りの良い言葉で覆い隠しているようなものであった。
 例え、その言葉が心から溢れた真なる言葉であったのだとしても、過去に歪んだ存在の放つ言葉と行動は伴わぬものであったのかもしれない。
 万象引き裂く花弁舞い散る神楽舞は、その身に受けた海神の寵愛そのもの。
 強烈なる水流が『望月鈿女』を取り囲み、猟兵たちを寄せ付けぬと押し寄せる。
「生命は、己のために使ってこそ。誰かのために使うことはあれど、犠牲にしていい生命など存在しないのです」

 誰かの犠牲に成り立つ世界は、間違っていると嘆く。
 その要でも在る江戸幕府の存在を『望月鈿女』は許せないのだ。
「面白いこといいますね、あなた。私を否定して楽しいですか?」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)にとって、彼女の言葉のすべてが自身を否定するものであったのかもしれない。
 四柱の中の一柱。
『疾き者』の出生を知っていればこそ、その言葉は己のと己のために散った生命を否定する言葉でしかなかった。

 戦巫女たちは未だ本殿を護る結界の意地に注力している。
 ならば、己達が戦わなければ、『超・魔軍転生』の力によって結界は押し切られメガリスは奪われてしまうだろう。
「一時、鬼に堕ちましょう……『風絶鬼』、私の至るべきはずだった力を持って、あなたを否定しましょう」
 四天境地・『鬼』(シテンキョウチ・オニ)。
 それは己の寿命を代償にしたユーベルコードであった。
 内部の三柱たちが未だ騒いでいるが、関係などなかった。あの敵は己が討たねばならない。
 例え、自己犠牲が褒めそやされたものではないのだとしても、己を守らんとした者の誇りを、願いを、祈りを踏みにじられていいわけがない。

 水流が己に迫っても、投げ放った棒手裏剣が引き裂くように一直線に『望月鈿女』へと走る。
 かき分け、必ずや相対する猟書家を貫かんと放たれるのだ。
「――っ! 楽しくはありません。あなた自身が犠牲の上に成り立つ存在でなければ。けれど、あなたは犠牲の上に立っている。自分が踏みつけにしたものをあなたの心の中で美化しているだけに過ぎない」
 それは、『疾き者』にとって、到底許容できるものではなかった。
 生命と引き換えに我が子に加護をと願った母の願いすらも、傷つけた。

 それは許せないものであったことだろう。
 再び放たれた花弁がオーラの結界術を切り裂いても構わなかった。前に進む。
 一歩を、一歩を、ただこの刃を届かせるためだけに『疾き者』は駆け抜けた。
「結局、あなた視点だと、戦巫女含め長じた者に無罪の者はいないということになりますね。私ですか? 暗殺してましたから罪ありますけど?」
 だからそれがどうしたのだというように、『疾き者』は棒手裏剣を投げ放つ。

 例え、万象を切り裂く花弁があろうとも、『疾き者』の信念が籠められ、呪詛の乗った一撃は『望月鈿女』へと届いた。
「誰も彼もがそうであるとはいいませんよ。けれど、あなた自身も罪在りきというのならば」
 他者に罪在りきと言える立場ではない。
 誰かが誰かを罰しようなど、あってはならない。
 放つ呪詛が、『望月鈿女』の傷口をえぐっていく。息が切れる。それほどまでに長い時間をユーベルコードによって消費してしまった。

 けれど、それでも傷を癒やすことはもうできないだろう。
 なぜなら、『疾き者』の放った呪詛には再生阻害の呪いが掛けてある。後は、海神の寵愛があれど、その身を蝕んでいくだろう。
 どれだけ時間が掛かったのだとしても必ず。
 その身を討つ。
『疾き者』は騒がしい残りの三人の声を聞きながら、ユーベルコードを解除し、息をつく。
 どこか騒々しい、けれど他者を案じる者たちに囲まれながら――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クルル・ハンドゥーレ
連携アドリブ歓迎

嗚呼
あんたの目にはもう
自称弱者の醜い姿だけが大きゅう写っとるんやろか
だから今しとる事が
本当の弱者を作り殺す事になるともう判らへんのやろか

WIZ
キャバリアは虚空に隠す
UCで召還した戦士と共闘
盾になって貰う+暗殺+迷彩で紛れ敵に接近
フェイントで翻弄
戦士には敵の回避妨害もしてもらう
破魔+マヒ攻撃+鎧無視攻撃+毒使いで攻撃
敵攻撃には見切り・武器受け、カウンター

押し付けられた罪と罰に抗う
かつてあんたが出来へんかった代わりに

命繋ぐ食は罪に非ず
己と他者を生かす為の虚偽もすべては罪に問えず
我が自覚せし罪は強欲
世界を巡りその命運を変える一助とならんとする欲なれば

あんたが呪うなら
私は願い武器を取る



 嘆く声は、悲しみに包まれていた。
 涙が流れるけれど、嘆きの言葉は紡がれ続けていた。
「なんて、なんてことでしょう。これだけ言葉を尽くしているのに。この世界の枠組みを壊さなければ、人の世は変わらないというのに。いつまでたっても、搾り尽くされ、投げ捨てられるだけの生命だけが」
 世に蔓延ってしまうのにと、猟書家『望月鈿女』は嘆いた。
 その玲瓏たる声は、世界に響く。

 他者を傷つける声。
 それは海神の寵愛を受けたからこそ得た力であろう。他者の犠牲を許さぬ者が振るう力ではなかった。
 あるのは世界を呪うエゴだけだった。
「嗚呼、あんたの目にはもう……自称弱者の醜い姿だけが大きゅう映っとるんやろか」
 クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)の目の前にいる『望月鈿女』の言葉は最早、恨み言でしかなかった。
 何故己だけが犠牲になったのか。
 己のような存在が生まれてしまうのかを嘆く声ばかりであった。

 そこにあったのは救世の意志ではない。
 思い通りにならぬと癇癪を起こす子のような存在でしかなかったのだ。
「だから今しとる事が、本当の弱者を作り、殺すことになるともう判らへんのやろか」
 クルルの背後でキャバリアが虚空へと消えていく。
『望月鈿女』の言葉を悲しいと思える。その言葉が最早、破壊しか齎さず、新たな弱者を生み出すきっかけにしかならぬことを伝えても、きっと過去に歪んだ存在には届かないだろう。

 それが、どうしようもなく悲しいと思える。
「幽世に過ぎ去りし耀きよ、残照(ザンショウ)となりて……」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 喉に感じる異物感。
 これが『望月鈿女』のユーベルコードの力であることはわかっている。罪無きと言われる身ではないことはわかっている。
 けれど、血反吐を吐きながらでも紡がねばならぬ者がある。

 輝くユーベルコードによって呼び出されるは魔剣と魔導杖を持つ、いにしえの戦士の幽霊たちを載せた幻影の船。
 頭上に在りて、彼らが降下してくる。
「弱者と強者を分かつものがあるからこそ、人は奪い、奪われ、何かを犠牲にしては、罪をなすりつけて生きていく。穢を何かになすりつけることでしか、己の身を清められぬというのであれば」
 声が響いた。
 喉が痛む。けれど、それでもククルは食い下がった。
「押し付けられた罪と罰に抗う……かつてあんたが出来へんかった代わりに」

 喉を引き裂く骨の棘が痛みを引き起こす。
 けれど、言葉は紡ぐのだ。決して退いてはならぬと、己の魂が言うのだ。
「生命繋ぐ食は罪に非ず。己と他者を生かすための虚偽もすべては罪に問えず。我が自覚せし罪は強欲。世界をめぐりその命運を変える一助とならんとする欲なれば」
 その強欲を受け入れるだろう。
 例え、それが正しくないと否定されるのだとしても。

 世界を滅ぼす正しさが、世界を飲み込もうとするのならば、己は猟兵である。
 世界の悲鳴を聞き、世界を救う戦士である。
「だから、呪うのです。すべてを、世界を、仕組みと、枠組みを生み出す者たちをこそ、滅ぼさなければならないのです。弱者を、強者を生み出さぬためには!」
 自己犠牲を強いる仕組みの何処に正しさが在るのだと、叫ぶ声が聞こえる。
 嗚呼。
 それはきっと、かつて祈りであったであろうとにクルルは痛む喉を抑えて、叫ぶ。

「あんたが呪うなら――」
 迫る水流の尽くをいにしえの戦士たちが壁と成って防いでくれる。
 そこを走り抜け、一直線に『望月鈿女』へと迫るクルル。手にした薄紅と白の花が咲き乱れ柄へとめぐり渦を巻く薙刀の刀身が煌めく。

 まるで狂気の蜜のような輝き。
 在るのは、誰かの願いであったのかもしれない。託された願いであったのかもしれない。たとえそれがいつかの誰かの残滓であったのだとしても、クルルはそれを。
「私は願い武器を取る」
 その呪いと化してしまった祈りを断ち切るために。
 振るった薙刀の刃が『望月鈿女』の身を袈裟懸けに切り結ぶ。血潮が風に荒ぶ。

 生命を感じさせる暖かな血潮がクルルの頬へとぶつかっては冷えていく。
 この暖かさを持った者でさえ、世界を呪う。
 それを悲しいと思える心があるのならばこそ、クルルは、その呪いを伝播させぬと刃を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
『差し出せば助かる…。こういうの、脅迫と言わぬか、今世』
明らかに脅迫テンプレートです、前世。お約束とも言います。

前世との見解一致続いてますね。
巫女さんたちには、できるだけ離れてもらいませんと。

オレンジライト・スピードキャバリア(略称:O.L.S.C.)に乗りまして。
結界術で神社守りつつ。そこから【兵貴神速】発動!キャバリアサイズの騎馬兵です。
これだけの数なら、相手の攻撃受けても多少は大丈夫なはず。
突進で押し込んで、巫女さんたちから離す目的もあります。

結界術で保護しているとはいえ、O.L.S.C.に傷はつきそうですが、こちらは修理すればいい。
…だいたい、あなた視点の弱者って誰ですか?



 猟書家『望月鈿女』の目的は、忘神神社に奉納された『メガリス』である。
 それが本当に存在してるのかどうかは定かではないが、神社を破壊することによって江戸幕府を霊的に守護する力は喪われることだけは確かである。
 そうなってしまえば、このサムライエンパイアにおける平穏は崩れ去るだろう。
 どちらにしても戦巫女たちには、オブリビオンの軍勢を前にして退くことはできなかったのだ。
 それを知った上で『望月鈿女』は言ったのだ。
「メガリスを差し出せば助かるのに」
 何故、それをしないのだと。逃げ出してもいいのだと。何も責任を負うことなどしなくて良いのだと告げた。

 けれど、檬果それは結局の所『望月鈿女』側の理屈でしかない。
『差し出せば助かる……こういうの、脅迫と言わぬのか』
 そう、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)の中にある前世の存在が言う。
「明らかに脅迫テンプレートです、前世。お約束ともいいます」
 そんなふうに檬果は断じる。
 オブリビオンの言葉は確かに耳障りの良いものばかりであったことだろう。
 弱者と強者。
 そこに生まれる差をなくそうとする者。
 それが猟書家『望月鈿女』である。そのためにメガリスが必要であり、必要犠牲を生み出す世界の仕組み事態を破壊しようと言うのだ。

「脅迫などではないのです。ただ私は、犠牲を強いられる側にある者たちを救いたいと願っているだけなのです」
 袈裟懸けに振るわれた斬撃の一撃が『望月鈿女』の体に刻まれている。
 それは猟兵達が紡いだ戦いの軌跡であった。
 如何に神霊体へと姿を変じ、こちらの攻撃を軽減しようとも、確実に猟兵達の攻撃は彼女を消耗させていたのだ。
「弱者を救いたい。ただ食い物にされてしまう弱者を。生贄とは、必要犠牲とは即ちそれなのです。なのに何故」
 何故、自分を理解してくれないのだと嘆く声が響く。

 それを聞いても尚、檬果は首をかしげる。
「……だいたい、あなた視点の弱者って誰ですか?」
 誰も弱者と強者に分かたれる必要など無いのだ。
 橙色をしたサイキックキャバリア、『オレンジライト・スピードキャバリア』が凄まじい速度で戦場を駆け抜ける。
 檬果と共に駆けるキャバリアが襲い来る強烈な水流を押し返しながら、万象切り裂く花弁を躱す。
「犠牲を強いられる者です。強き者が弱き者を護るというのならば、何故、私を救ってはくださらなかったのです」

 それは海神に寵愛を受けた者の力。
 水流が荒れ狂うようにキャバリアを押し返していく。
 けれど、檬果は構わなかった。キャバリアはこわれても修理すればいい。
 人の命は喪われてしまっては修理できるものではない。喪ってからでは遅いのだ。
「速さといったらこの兵種ですよね!」
 白い光を纏った召喚騎馬兵たちが一斉にユーベルコードの輝きの中から、兵貴神速(ゴッドスピードストラテジー)の如き速度で駆け抜ける。
 無数の騎馬兵たちは『望月鈿女』の放つ水流に突進し、押し返していくのだ。
「誰も彼もが平等を謳うというのなら、誰も彼もが平等に不平等を受けているでしょう。それが己と他者の違いってやつでしょう」

 誰だって幸せな方がいい。
 誰だって誰かより優れていたいと願うだろう。けれど、誰もが違うからこそ、変わっていくのだ。
 それは人の生き方もそうだ。
 誰一人として同じものではないからこそ、視点によって弱者は変わってしまう。
「だから、あなたの言っていることは」
 ただのエゴにすぎないのだ。
 己の掲げる信念も、紡ぐ言葉も。
 その悲しみに全てが過去に歪んでいるのであるならば。
 召喚された騎馬兵たちが一斉に『望月鈿女』へと突進し、彼女の放った水流ごと吹き飛ばし、その身に刻まれた傷跡をさらに広げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
誰かの為に世界を変えるなどと軽々しく言える奴に、世界を変える事など出来るものか。独善家に出来るのは世界を破壊する事だけだ。
例え貴様がこの世界にとっての救世主だろうと知った事か。オブリビオンは殺す。必ず殺す。

怨敵全てに対する【呪詛】を「ヴォルテックエンジン」に込め高圧電流に変換。
「蘇生体」に電流を流し、肉体の【リミッターを解除】。生物流の【限界を突破】した身体能力で【ダッシュ】し、敵の攻撃をかわし、若しくはダメージを最小限におさえながら懐に飛び込む。
至近距離に達したら全ての復讐心と怒りを雷に変え、右腕に込めて敵に叩き込む。亡霊は怨霊が地獄へ連れ戻す。如何に理不尽だろうとこの世は生者のものだ。



 怒りが戦場に迸っていた。
 在ったのは怒りだ。怒りしかない。その怒りは怨敵に向けられるものであり、呪詛をはらんだ怒りは『ヴォルテックエンジン』に籠められ高圧電流となって世界に迸るのだ。
 久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)にとって、猟書家『望月鈿女』の言葉はどれもが耳障りの良い言葉ですらなかった。
 何もかもが許せない言葉であった。
「誰かの為に世界を変えるなどと軽々しく言える奴に、世界を変える事など出来るものか」
 了介にとって、言葉とは即ち重みであったことだろう。
 オブリビオンである『望月鈿女』の言葉は確かに正しいのかも知れない。
 弱者の言葉として、これ以上無いくらいに悲哀に満ちていたのかも知れない。
 けれど、了介の怒りが渦巻く心には何も響かなかった。

 在ったのはやはり怒りだけであった。
「毒箭家に出来るのは世界を破壊する事だけだ」
 満ち溢れる電流がデッドマンである彼の体から抑えきれずに奔り出す。蘇生体である己の体に流れるは紅き血潮ではない。
 あるのは電流だけである。
 それがデッドマンたる了介の為せる業であった。
 ユーベルコードに輝く瞳の色は『望月鈿女』にとって、如何なる色を放っていただろうか。
「私は、救いたいのです。必要犠牲などない世界を、犠牲無き平等な世界を。ただ、それだけのために――」

 だが、その言葉は遮られる。
 はっきりとした拒絶の言葉であった。
「例え貴様がこの世界にとっての救世主だろうと知ったことか。オブリビオンは――」
 迸る電流の全てが了介へと放たれた水流を押し込み蒸発させていく。
 肉体のリミッターはすでに解除されている。体は限界を超え、内側に流れる電流を持って駆け出す。

 その速度は神速の如く。
 一瞬で距離を詰め、放たれた万象切り裂く花弁の斬撃を受けても尚、了介は止まらなかった。
 その瞳にあったのは、純然たる殺意。
「殺す。必ず殺す。貴様がオブリビオンである以上、俺はお前を殺すまで止まらない」
 その言葉が示すように了介は花弁が身を切り裂くのだとしても気にすること無く前進するのだ。
「何故、あなたは、そこまで、私に」
 怒りを向けるのですかと『望月鈿女』の唇が言葉を紡いだのを了介は見ただろう。 けれど、関係などなかった。

 どれほどの過去があろうとも。
 どれほどの悲哀が彼女を歪めたのだとしても。関係ない。
 関係在るわけがない。
 己は猟兵であり、彼女はオブリビオンである。その間に入り込む余地があるわけがないのだ。
 在るのは復讐心。
 オブリビオンであるというだけで、その矛先は向けられるのだ。
「デッドマン・スパーク――ッ!」
 膨大な電流を籠めた右腕が振るわれる。
 その一撃は凄まじい速度で放たれ、『望月鈿女』をして防ぐことの出来ない拳であった。

 開放された電流が『望月鈿女』を穿ち、その全身を膨大な電流で焼き焦がしていく。
 吹き飛ばされた『望月鈿女』は見ただろう。
 拳を放った了介の右腕が焼けただれ、炭化し崩れ落ちていく姿を。
 そこまでして、己を滅しようとする意志に彼女は恐れ慄いた。純然たる殺意。混じりけなしの復讐心。
 世界を呪った己の言葉など、一顧だにすることのない破壊の権化が、今まさに己を襲ったのだ。
「亡霊は怨霊が地獄へ連れ戻す。如何に理不尽だろうとこの世は生者のものだ」
 間違っても、己やオブリビオンのものではない。
 その言葉の通りに了介の瞳がユーベルコードと、オブリビオン全てに対する復讐心に輝く。

 どれだけ恐怖しようとも揺るがぬ現実であると知らしめるように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

貴方の考え方は確かに一理あるのかもしれない
でも、こういう事は仮に変えていくとしても、少しずつ変えていかなければならない事だと俺は思う
それに今を生きる人達のその生き方を否定する事なんて、貴方にだってしていい事じゃないはずだ!

周囲の無機物を媒体に固有結界・黄昏の間を発動
【高速詠唱】【多重詠唱】で風と地の疑似精霊を同時召喚
風の疑似精霊の力で自分と戦巫女達の周囲に風の断層を生成、相手の声を遮断する
続けて地の疑似精霊の力で相手足元から岩の針を発生させ身動きを封じる
【破魔】の力を周囲の戦巫女達にも付与
自身の光陣の呪札での【乱れ撃ち】に合わせ皆で一斉攻撃
これが俺達の想いだ、受け取れっ!



 電流が開放され、戦場となった忘神神社に迸る。
 それは猟兵の放った強烈なる一撃であり、猟書家『望月鈿女』をして這々の体で逃げ出そうとさせるには十分なものであった。
「なぜ、なぜなのです。私は、ただ弱者を救いたいだけなのに。犠牲のない世界を作り上げるためには、今この世界を壊す他ないというのに」
 己が呪った世界。
 そのあり方を彼女は嘆いた。けれど、世界の悲鳴は猟兵に届く。
 壊させてはならぬと、過去より現れた化身、オブリビオンを許してはならぬと猟兵という戦士を送り込むのだ。

「貴方の考え方は確かに一理あるのかもしれない。でも、こういうことは仮に変えていくとしても、少しづつ変えていかなければならない事だと俺は思う」
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)にとって、猟書家『望月鈿女』の言葉は正しさを感じるものであった。
 けれど、急ぎすぎているのだ。
 誰も彼もがすぐに変化することができないのと同じように、世界だってすぐには変わらない。

 いつだってそうだ。
 急速な変化は常に人を傷つける。
「それに今を生きる人達のその生き方を否定することなんて、貴方にだってしていい事じゃないはずだ」
 ひりょの瞳がユーベルコードにか輝く。
『望月鈿女』のユーベルコードが、彼女の声を聞く者全てに伝播するものであるというのならば、本殿の結界を守っている戦巫女たちにも届くかもしれない。
 それはひりょにとって憂慮すべきことであった。
 ゆえに、彼のユーベルコードは己の周囲に在る無機物を四大元素の疑似精霊へと変換し、操作せしめる。
「場よ、変われ!」

 変化した疑似精霊たちが風の力を満たし、ひりょと戦巫女と『望月鈿女』を隔てる風の断層を生み出す。
 固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)と呼ばれるユーベルコードは、僅かな音の振動すらも伝えることはなかった。
 これならば、『望月鈿女』のユーベルコードによる声は届かない。
「強制したかったわけじゃない」
 その言葉もまた彼女には届いていないだろう。

 彼女の、『望月鈿女』の悲しみを、苦しみを理解するからこそ、ひりょは全てを否定しきれなかった。
 一理あると思ってしまったのは、もしかしたのならば、己の弱さであったのかもしれない。
「けれど、それでも今ある世界を壊していい理由なんてないんだ」
 地の疑似精霊が力を籠めた岩の針が地面から『望月鈿女』の体を貫き、その動きを封じる。
 どこまでいっても己と彼女は猟兵とオブリビオンである。
 滅ぼし合うしかない関係であったのだとしても、彼女の悲哀は本物であったことだろう。

 それを理解するからこそ、過去に歪んだ存在の為さしめるところを現実とさせるわけにはいかないのだ。
 光陣の呪札が掲げられる。破魔の力が満ち溢れ、光の一撃が『望月鈿女』の体を穿つ。
「これが俺達の想いだ、受け取れっ!」
 きっと届かないだろうという予感があった。

 結局の所、『望月鈿女』が望んだのは己のエゴを理解してほしいという願いだけであったのだから。
 世界のためにと、弱者のためにと嘯く言葉のすべてが己のエゴを証明するためのものでしかなかった。
 だから、耳障りがよかったのだ。
 エゴを貫き通すためだけに紡がれた言葉は世界を壊す。
 けれど、それが真に誰かのためにと願ったものであったのならば、そもそも己たちは駆けつけることなどなかったのだ。

「だから、貴方はオブリビオンなんだ。過去に歪められた悲しい人」
 せめて、これ以上誰かが傷つくことのないようにと、光の一撃が『望月鈿女』の体を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
犠牲生み出す人の闘争の歴史の結実にして、人の戦…罪を代行するモノ
ウォーマシンは…私は貴女にどう見えておられるのでしょうね

血に塗れ、永久に届かぬ御伽のような理想だとしても
掲げる事を辞めてしまえば未来は拓かれません

ですが世界を許せぬと貴女が呪うのであれば、私は…私達はそれを阻みましょう
ヒトが宙へと至った証左たる我が身を以て!

格納銃器乱れ撃ちスナイパー射撃でUC発射
花弁接触前に炸裂させ凍結し武器落とし
水流も迎撃し凍結させて●怪力大盾殴打で粉砕

世界の全てを壊すなど…
かつての己を否定する貴女が苦しいだけではありませんか

脚部スラスター●推力移動で一気に距離詰め自己●ハッキング限界突破
振るう剣で海神ごと一閃



 人の、生命の営みとは即ち戦いの歴史でもあったことだろう。
 他を喰らい、生命維持していく生命であればこそ、そこにあるのは連鎖でしかない。ならば、人の営みが行き着く先は如何なる光景であったことだろうか。
「犠牲生み出す人の闘争の歴史の結実にして、人の戦……罪を代行するモノ」
 ウォーマシン。
 それはかの世界、スペースシップワールドにおいて生み出された暴力代行装置であったのかもしれない。

 人は結局の所、己の手から遠くへ、遠くへと何かを投擲することで進化を続けてきた生命であるとするのならば、ウォーマシンはその極地であったのかもしれない。
 投石、槍、投槍、弓矢、ミサイル……人の手から放たれるモノは段々と罪の意識すら負うつもりのないものへと成り下がったとも言えるし、いたずらに地の流れぬことを是とするものへと至ったのかも知れない。
「ウォーマシンは……私は貴女にどう見えておられるのでしょうね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、ウォーマシンである。
 彼にとって戦いとは常なるものであったことだろう。
 戦うことこそが己の本分であると知るからこそ、トリテレイアは胸に抱いた騎士道精神との乖離に懊悩するのかもしれない。

「人の業の集大成。それがあなた。わかっているはずです。貴方もまた人の罪過の結実なのだと」
 猟書家『望月鈿女』は言う。
 すでに猟兵達によって消耗した体で舞う神楽舞は見事なものであった。
 流麗なる舞い。
 それは海神の寵愛を一身に受けるに値するものであった。万象切り裂く花弁が舞い散り、強烈なる水流がトリテレイアを襲う。
「あなたの手は血に塗れ、すでに他の何物にも触れることの叶わぬ穢れた手。元より『そうあるべき』と作られたのならば、その身が滅びるのが穢を払うこと」

 放たれた花弁を格納銃器が乱れ打つ。
「無駄です。万象切り裂く花弁は―――……?!」
 だが、その花弁が弾丸を切り裂くことはなかった。
 放たれた弾丸は、超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)。
 特殊弾頭に封入された薬剤は、花弁が弾丸に当たる寸前で炸裂し、その薬剤を噴出させる。
 分子運動を低下させ、花弁を急速凍結させるのだ。
 凍りついてしまえば、万象切り裂く花弁と言えど無意味であり、水流すらも凍結させる。

「血に塗れ、永久に届かぬ御伽のような理想だとしても、掲げることをやめてしまえば未来は拓かれません」
 トリテレイアは大盾を振るって凍結した水流を砕いて進む。
 例え、その道行きが困難に満ちていたのだとしても、己はウォーマシンである。
 生命ではないのだとしても、この懊悩こそを抱えるからこそトリテレイアはトリテレイア自身であると己を定義できる。
「そんな呪われた未来など! 私は呪いましょう。貴方のような存在を生み出した世界を。犠牲を犠牲とも思わぬ価値観を、それを生み出した枠組みを、呪う!」
 トリテレイアの存在は、結局の所、人の命を奪うという作業から遠のきたいという願いの結果だったのかもしれない。

 けれど、己の炉心に燃える騎士道が言うのだ。
 それがまやかしであるとは言わない。否定もしない。だが、それでもと咆哮する何かがあるのだ。
「ですが、世界を許せぬと貴女が呪うのであれば、私は……私達はそれを阻みましょう」
 脚部スラスターが吹き荒れるように、凍結した水流を砕きながら進む。
 氷片が光を反射してきらめきながら、再び放たれた水流を大盾で防ぎ、それでも機体限界を越えた推力で持って進むのだ。
「ヒトが宇宙へと至った証左たる我が身を以て!」
 放たれた剣の一撃が、『望月鈿女』の体へ癒えぬ横一文字の傷を刻む。

「世界の全てを壊すなど……かつての己を否定する貴女が苦しいだけではありませんか」
 それはあまりにも悲しいことだと、電脳が揺らぐ。
 これが作り物、紛い物であったとしても、これだけは真実である。
 過去に歪められる前の彼女が如何なる思いで、己の身を犠牲にしたのか。それを知る術はないけれど。

 それでも、誰かのためになりますようにと願ったことは、決して間違いなんかではなく、ましてや呪いの転ずるものではないはずだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
気遣い御無用。拙者は好きでそうすると決めた。
戦巫女としてではなく、一介の『人』として、
同じ世に生きる人々を、全力を以て護る。
■令
俺が前に出る。皆は境内を守ってほしい。
花弁が来たら、呪符や武器で振り払うのだ。

■闘
【剣宿・現】で憑神体に変身し、戦闘へ。
先ずは【破魔】の力を宿した刀を縦に構えて低空飛行を行い、
向かってくる水流を強引に【切断】し、通れる路を拓きながら
【ダッシュ】で接近。
花弁は剣気で威力を弱め、【オーラ防御】で耐える。

接近できたら更に力を込め、纏われた神霊ごと斬り伏せる
【貫通攻撃】の一太刀を放ち、その身を有るべき海へ還すのだ。
海原の、渦が祓うは罪穢……

※アドリブ歓迎・不採用可



 もはや猟書家『望月鈿女』は十全の力を振るうことはできなくなっていた。
 例え、神霊に愛されし神楽舞を舞うことがあったとしても、万象切り裂く花弁や、強烈な水流のいち撃破これまでのようにはいかなかった。
「気遣い御無用。拙者は好きでそうすると決めた」
 本殿の結界の守りを厚くするために戦巫女たちは、力を注ぐ。
 ならば、己が為すべきことは何かと問われれば、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)はきっとそう応えたことだろう。

 彼にとって己の体は自由にできるたった一つのものであったのならば、必ずや為さねばならぬことを為すために動くはずであった。
「戦巫女としてではなく、一介の『人』として、同じ世に生きる人々を、全力を以て護る。
 清綱は先行した猟兵達の戦いを繋ぐように駆け出していた。
 本殿である神殿の結界は再び貼り直され、強化されている。ならば、彼女たちの存在こそが江戸幕府を守護するための要である。

 吹き荒れる花弁が清綱を襲う。
「剣の神は、我と共に在る……」
 剣宿・現(ツルギヤドシ)。
 それは天空舞う剣神の力を操る憑神体へと変身するユーベルコードである。破魔の力宿した刀を構え、空を飛ぶ。
 それは奇しくも猟書家『望月鈿女』の神楽舞と似た動きであった。
 放たれた水流を刀の一刀の元に切り討て、開きながら進む。
「戦うと決めたのならば!」
「私は私の犠牲にある世界を、正したいだけなのです。なのに、なぜ、そうまでして今の世を統べる者たちがあぐらをかいていることを庇うのです」
『望月鈿女』の言葉は、全てが悲嘆にくれていた。

 己の生命を掛けた後にある世界が、このような世界であってはならないと嘆くのだ。
 自身の生命を棄ててでも願った祈りは、彼女の思うものではなかったのだろう。
 ただ、慰めでもよかったのだ。
 感謝してほしかったわけではない。そうしなければならなかった者たち全ての心を慰撫してくれていればよかったのだ。
「だというのに、未だ世界は変わらない。変わっていない。少しも変わらない。弱者の犠牲の上に成り立つ世界だと誰もがわかっているのに、その犠牲を忘れたかのように振る舞うことこそが」
 許せないのだと、『望月鈿女』は叫ぶ。

 けれど、清綱は万象切り裂く花弁を受け流し、いや……オーラすらも切り裂く花弁に身を刻まれながらも飛ぶ。
「その身をあるべき海へと還す。過去に歪んだ御身が如何なるものであったのかを知る術はないのだとしても!」
 放つ剣気が花弁を吹き飛ばす。
 破魔の光刃と化した太刀が、忘神神社の境内に迸った。

 あるのは、穢れを祓う一太刀のみ。
 一意専心。
 清綱が為すべきことは、それしかないのだ。振るわれた斬撃の軌跡が『望月鈿女』の体へと吸い込まれるようにして打ち込まれる。
「海原の、渦が祓うは罪穢……」
 その一撃で持って禊としよう。

 再び、骸の海へと還っていくだけに過ぎないのだとしても。
 それでも、今ある世を乱す者は此処にいてはならぬのだ。
 そのために清綱は全力を尽くす。
 それが、己に化した使命であればこそ、その瞳はユーベルコードに輝くのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
これが現代価値観無双とかそんな感じのアレな奴!
拗らせたなろうな感じの面倒くさいやつ
っていうかさーそれ以前に相手の喉元に刃突き付けてにそういうムーブしちゃうのどうかと思うよ?
まあ良いけど
語る気も無いしね


致命的な攻撃を『オーラ防御』や『武器受け』して避けつつ、軽い攻撃は無視
【断章・焔ノ杖】起動
剣に蒼炎を纏わせて敵が神楽舞を舞っている間に距離を詰める
そして自分の血を燃やして火力上昇させ、2刀による『2回攻撃』を叩きこむ!

敵の前で舞を舞うなんて随分とよゆーじゃない?
それを利用させて貰うけど
攻撃を軽減するなら、それ以上の火力でぶん殴ってやればいい!

あ、めっちゃ貧血になる…
何か血が増える系の料理食べたい



 斬撃の一撃が、猟書家『望月鈿女』の体を一文字に刻む。
 それは半身を魚骨のように変貌させた海神の寵愛を切り離すような一撃であったが、過去に歪んだ彼女のかつての祈りを思い出させるものではなかった。
 むしろ、彼女は益々持って世界を呪っただろう。
 己に犠牲を強いた世界。
 その世界が上げた悲鳴に応える猟兵たちの攻撃は、彼女にとって恨みつらみを募らせるものでしかなかった。
「許せない。私は、私の祈りは、願いの結実が、こんな世界であるだなんて、許せない」
 到底、許容できるものではない。

 けれど、猟兵は迫る。
 どれだけ己が世界を呪おうとも、その呪うべき世界を守らんと湧いて出てくるのだ。
『超・魔軍転生』によって強化された軍勢を蹴散らしながら、月夜・玲(頂の探究者・f01605)が模造神器の二振りを蒼き残光と共に『望月鈿女』へと迫る。
「これが現代価値観無双とかそんな感じのアレな奴! 拗らせたろうな感じのめんどくさいつ」
 そういうしみったれた感情を周囲に振りまいた所で、何がなせるというのだ。
 玲にとって、それはそういう感情であった。
 己の身の内に秘めるのならば、それもまたいいだろう。そういう生き方だ。
 けれど、それを他者に……ましてや。

「相手の喉元に刃突きつけて、そういうムーブしちゃうのどうかと思うよ?」
 振るった模造神器と万象切り裂く花弁が激突し、火花を散らす。
 力の奔流が周囲に飛び、明滅する。それほどまでに力は拮抗していた。
「嘗てそうされたように、私もまたそうしているだけに過ぎないのですよ。有無を言わさぬ同調圧力など!」
『望月鈿女』はすでに過去の化身。
 どれだけ生前が高潔なる心のもとに己のみを犠牲にしたのだとしても、過去に歪んだ以上、その論理は、言葉は、想いは歪み果てている。

「まあ良いけど。語る気も無いしね」
 振り払った花弁。取れる、と思った瞬間玲を襲ったのは強烈なる水流であった。
 十全の状態であれば、この一撃で勝負は決しただろう。けれど、すでに消耗した猟書家の攻撃である。
 オーラで受け止め、模造神器で受け流す。
「軽い攻撃ばかりなら簡単だったんだけどさ! 敵の前で舞を舞うなんて随分とよゆーじゃない?」
 ならば、それを利用させてもらうと玲の瞳がユーベルコードに輝く。

「偽書・焔神起動。断章・焔ノ杖閲覧。システム起動」
 燃える。
 己の血が燃える。それは比喩ではなく、己の血液を燃料にしたユーベルコードの輝きであった。
 断章・焔ノ杖(フラグメント・レーヴァテイン)。
 彼女の血液を燃やして膨れ上がる蒼炎は、世界すらも焼く炎となって立ち上がる。 攻撃を軽減するというのならば、それ以上の火力でもってぶん殴ればいい。

 己の血液が燃え尽きようとも、それを為すと決めた以上、玲は生命を燃やす。
「それが、それこそが、世界のために犠牲になるという行いだと何故」
 わからかないのかと叫ぶ『望月鈿女』へと、玲は神速の踏み込みでもって距離を詰める。
 もはや言葉はいらない。
 あるのは己の力が膨れ上がった極大なる蒼炎の一撃。

 すでに己の血液は危険な領域まで燃え尽くしている。
 けれど、やらなければならない。誰かのためではない。己のために。己の信じる何か、己が意志で決めたことを貫くために。
 そのために玲は蒼炎を燃やして、模造神器を振るう。
「そんな、炎、私は知らない――」
 極大なる蒼炎が一点に集中するように引き絞られ、凄まじき斬撃の一撃が振り下ろされる。

 例え、海神の寵愛があろうとも関係ない。
 どれだけ攻撃を軽減する神霊としての力があろうが、生命を燃やして放つ一撃を前にして防ぐことなどできはしないのだ。
 焼き尽くす。
 その驕り、その呪い、それを変貌させた過去を切り裂くように玲の蒼き一閃が『望月鈿女』を切り裂くのだ。

「……あ、めっちゃ貧血になる……」
 ぐらりと身体が傾ぐのを玲は感じた。
 放った斬撃は『望月鈿女』の半身の焼き切るようにして消滅させた。燃やし尽くした血液は戻らない。
 だからというわけではないけれど。
 ああ、と息を吐き出すように言うのだ。
「何か、血が増える系の料理を食べたい」
 生きることは何かを喰らうこと。
 ならば、今自分は生きていると実感するのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ

随分感情的なお人だねェ
心底心を痛めた事が有るんだな
嘆きに引き摺られそーだもん

でもアンタ自分と同類の犠牲者しか哀れんでないじゃん
幕府転覆劇で死ぬ奴は必要犠牲って事かい?
二枚舌使うんじゃねーよ

UCで全強化
罪が赦されるか、だって?
罪って時点で赦されるとは思っちゃいねーな
罪は積むモノ
背負ってくモンなんだってよ?
…オレは大事だったミサキを殺めたし名を知らぬ人も仕事で死なせた
誰が赦すわけ?アンタに裁いて貰う義理もねーし?
精神的責めに激昂するがクナイで自身の腿を突き自我を保ちたい
UC代償の流血を手裏剣と共に【目潰し/念動力で投擲】
それを【追跡】し手にしたクナイで強化膂力で刺し斬る【串刺し/暗殺】

アドリブ可



 半身を焼き切られるようにしてえぐられた猟書家『望月鈿女』は、それでもなお消滅を免れていた。
 猟兵達による数多の攻撃。それにさらされても尚、このように生きながらえているのは強大なるオブリビオンである猟書家であればこそであったことだろう。
 その凄まじき生命力は海神の寵愛を受けているという一言では済まされない。
 其処に在ったのは、執念であった。
 世界を呪い、世界を破壊するという絶対なる意志。
 それが彼女を今も尚、この世界に顕現させ続けるのだ。
「許せない。私の理想を、世界を、犠牲無き世界を作ろうとする、この意志をエゴと呼ぶ猟兵……!」

 激情を顕すように、海神に寵愛された半身が揺らめく。
 魚骨の如き骨身になりながらも『望月鈿女』は世界を呪う。己に犠牲を強いた世界を。それは結局の所、我が身の犠牲だけを憂いていたに違いない。
 嘗て在った高潔なる魂は過去に歪む。
 どれだけ生前が清らかなる者であったとしても、過去は醜悪に歪めていく。
 エゴが醜悪なのではない。
 その理想が利己というエゴに染まるから、歪になっていくのだ。
「……随分感情的なお人だねェ。心底心を痛めたことがあるんだな。嘆きにひきずられそーだもん」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)にとって、その嘆きは悲痛なるものであったことだろう。

「でもアンタ自分と同類の犠牲者しか哀れんでないじゃん。幕府転覆劇で死ぬ奴は必要犠牲ってことかい?」
 彼女の言葉を借りるのならば、そのとおりであろう。
 あるのは、自身とそれに類する者のみ。
 いや、結局、自分だけを哀れんでいる。同じような境遇の者全てを己の写し鏡にしかしていないのだ。
「二枚舌使うんじゃねーよ」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 妖怪、悪鬼、幽鬼を身に宿し、降魔化身法によって己の体に呪縛がしがみつくように這っていく。
 けれど、それでもトーゴは足を止めなかった。

 例え、『望月鈿女』の手繰るユーベルコードによって呼び出された神霊が己の過去の罪状を読み上げようとも構うことはなかった。
「あなたもまた許されざる罪を持つもの。許されていいわけがないのです。罪在りきの存在が、私に――」
「罪って時点で赦されるとは思っちゃいねーな。罪は積むモノ。背負っていくモンなんだってよ?」
 自覚なき恋心を殺した己の罪を問うのであれば、それはすでに自問自答の渦中に身を落とした。
 ならば、それは赦す赦されぬということではない。

 言葉にするまでもない。
 どれだけ神霊が己の人生という名の巻物を紐解いた所で、今更己が心揺れることはない。
 その後悔も、過去の己に対する感情も。
 何もかもが己自身のものである。他の誰にも触れていいものではないし、裁かれる言われもない。
「オレはオレ自身が裁く。赦すつもりも、赦されるつもりもない」
 誰が己を赦すというのだ。
 それは、決して『望月鈿女』ではない。

 確かに己は激昂しているのだろう。
 到底許せると思えぬほどに、『望月鈿女』のユーベルコードを憎んでいる。
 どれだけの精神的責め苦が己を攻め立てようとも、己自身が突き立てた刃の傷みが、それを凌駕するのだ。
「ならば、何故」
 何故、それを抱えて生きてけるのだと。
 重石の如き罪悪を抱えたまま、現世において溺れずに生きられるのだと、『望月鈿女』は呟いた。

 けれど、それを遮るように放たれたトーゴのクナイが彼女の額を貫く。
「――」
「知るか、そんなもん」
 瞬時に間合いを詰めたトーゴが伸ばした手が額に突き刺さったクナイにふれる。
 万力の如き力を籠めて、一気に引き下ろす。
 刻まれた一文字が鮮血を迸らせ、猟書家『望月鈿女』の体を両断する。

 はらり、はらりと花弁が舞い散るように霧散していく。
 それはいつか見た光景であったかも知れない。
 傷付けられた心の痕は未だ痂もかからぬままであろう。けれど、その痛みを持って彼は前に進むだろう。
 それが己が己に課したものであり、背負うべきものであるというように。

 誰もが原罪を持っていると言うことなかれ。
 罪在りきの先にあるのは、赦しである。
 けれど、それを否定する者だっている。それもまた生の一つの形であるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月08日


挿絵イラスト