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きちゃった♪

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●すらいむはがくえんで飼えません
 アルダワ魔法学園。
 その地下に広がる迷宮の浅層の一角が、にじいろになっていた。
 迷宮そのものの色ではない。にじいろの何かが、大量に迷宮に集まっているのだ。
 それらは何かが書かれた箱に収まって、ぷるぷるしながらつぶらな瞳を寂しげに虚空へ向けている。
 誰かが通るまで、じっと――。
「あなたたち、いつまでそうしているつもりなの!」
 そこに、少女の声が響いて甘い香りが漂って来た。

「にじいろとろりん、と言うすらいむが、アルダワの地下迷宮にいるんだけどね」
 グリモアベースの一角で、ルシル・フューラー(エルフのマジックナイト・f03676)は集まった猟兵達にその姿を映しながら話を切り出した。
「なんでか『ひろってください』と書かれた箱に入ってて、実際、迷宮で出会うとひろってほしそうにみてくるらしい」
 さみしがりやなんだってさ。
「で、こいつがとある迷宮の浅層に溜まっちゃってる事態になっててね」
 何でそんなことになってるかというと。
 うっかり出会ってひろってほしそうに見つめられて、退治できずに逃げたものの着いて来ちゃって振り切ったのが浅層だった、とか。
 或いは、そのつぶらな瞳に負けて拾っちゃって、外で待ち構えていた教師に『学園では飼えません! 捨ててきなさい!』と怒られて迷宮にリリースされた、とか。
「どうもそんな事が続いていたみたいで、溜まっちゃった」
 このままだと、にじいろとろりんが迷宮に飽和してしまうのだろうか。
「いや、その前に逆侵攻が起こる。この状況に目を付けた別のオブリビオンが、にじいろとろりんたちを扇動すると予知が出たんだ」
 そのオブリビオンは、迷宮ショコラティエール。
 チョコの魅力に憑りつかれた、元チョコレート職人の少女のオブリビオンである。
「にじいろとろりんが群れてるこの状況、チョコの良さを迷宮の外にも広めるチャンスになるのでは、とショコラティエールは考えた。で、にじいろとろりん達にこう言った」

 ――待ってるだけじゃ駄目なのよ!

 かくして、ひろってもらえなかったにじいろとろりんの群れと、チョコ狂いの少女オブリビオンによる逆侵攻が始まってしまうのだ。
「色んな意味で、あそこの生徒達には手に負えない事態だからさ。ここは転校生の出番と言うわけだ。1つ、心を鬼にして、頼むよ」
 転送先は、迷宮の中の広い部屋だ。にじいろとろりんぱれーどが通るのを、そこで待ち構える形となる。
「それと学園の方から、ついでに魔法薬作成の授業にも参加して貰えないかって話があってね。あそこ、設備は整ってるから、色々作ってみるいい機会じゃないかな?
 一応、回復薬を作るってテーマみたいだけど。戦いが終わったら、にじいろの残骸とかチョコの残骸とか残るかもしれないし。何使っても良いみたいだよ?」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 ひろってもらえないから、きちゃった。
 チョコの魅力を広められると思って、きちゃった。

 そんなゆるい逆侵攻を、止めてください。

 1章が、にじいろとろりんの群れです。いっぱいいます。いっぱいです。
 2章が、迷宮ショコラティエールとの戦闘になります。
 どちらも戦場は、アルダワの地下迷宮の一室。ほぼ正方形の広い部屋です。直接そこに転移される形になります。
 1章がいちばんのきょうてき、になりそうな気もしますが。
 どちらも心を鬼にして戦って来てください。

 3章は魔法薬作成の日常パートとなります。
 迷宮で何か拾ってきた事にしても良いですし、この章からの参加でも何か持ち込んでいただいてもOKです。
 なお作った薬をこちらからアイテムとしてお渡しする事は出来ませんが、シナリオの結果に即して作成して頂くのは自由です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『にじいろとろりん』

POW   :    とろりんは、ひろってほしそうに、きみをみている。
【ひろってほしそうなまなざし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ひろってあたっく】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    とろりんは、うったえている。
【拾ってほしい気持ちを訴える鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ   :    とろりんは、りらっくすしている。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【体の一部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カナカナ・リッタリア
な、なにこれ可愛い…
いや、惑わされちゃだめだ、頑張ろう

初手で【グラフィティスプラッシュ】で地形を塗りつぶし自身を強化
心を強く持たなくちゃ…
惑わされない様なるべく手早く倒したいしね

【目潰し】を使って拾ってほしそうな視線を見えないようにしよう
そ、そんな目で見ないでぇー!
にじいろを僕の武器の虹色で塗りつぶしていけば
きっとただの虹色の塊に…

仲間にも声かけして惑わされないようにしたいかな
目を見ちゃだめだよ、心が持っていかれる…!
精神的ダメージが大きい気がするこれ…


ファレリア・リトヴァール
学園では飼えないなら、他の場所なら飼ってもよいのでしょうか……?
ああ、いえ、冗談ですわ。倒さねばなりませんのよね。
いくら可愛らしくて美しい色合いでつぶらな瞳であっても!
しかもそんな愛らしいにじいろとろりんを扇動する者がいますのね? 許せませんわ!

ぱれーども美しくも愛らしいですわ……。
けれどこれ程数が多くては地上に出す訳にはいきませんもの。
どうかお許し下さいませね?
まずは衝撃波で攻撃。自分や仲間が攻撃されれば
さすがにりらっくす状態ではなくなりますわよね?
その後、瓊嵐でまとめて倒しますわ! せめて苦しませない様速やかに!

次に生まれる時はもっと拾いやすい種族になってきて下さいませ。可愛いままで。


ヴィリヤ・カヤラ
虹色だし可愛いし持って帰りたい気持ちも少し分かる気がする。
でも、今回はこの気持ちに負けちゃいけないんだよね!

とにかく数を減らさないといけないから氷晶が効くか試してみるね。

拾って欲しそうに見られたら、
持って帰りたくなるけど我慢するよ!
…でも、少しだけ撫でても良いかな?ダメ?

もう!存在が可愛すぎるんだよ、この子達!
可愛いけど本当にごめんね!!
氷晶とジャッジメント・クルセイドの効きそうな方を
メインに使って頑張って数を減らすよ。

アドリブと他の方との連携は歓迎。


ルトルファス・ルーテルガイト
(凶悪そうには見えない顔の粘体集団を見て)
……やりづらい、どうにもやりづらいな。
…魔物は基本的に俺たちよそ者を嫌って、狂暴になって襲うはずだが。
…こいつらは、その…襲うような気がないというか。

(WIZ型)
…かわいそうだが、液状だし…凍らせて砕きやすくするか。
…【エレメンタルファンタジア】による【氷の津波】で、集団に
先制攻撃を狙う。
…風で切ってもすぐ戻りそうだし、炎で溶ける…という感じでもない。
…なら、凍らせて砕いてしまった方が早いだろうから。

…そんな目で見てもだめだぞ、俺だって飼う場所無いんだから。
(「まなざし」を避けるように目を逸らして)


黒木・摩那
★にじいろとろりんは目を合わせてはダメなのです
【WIZ】

かわいいは正義!というけれど。
くっ、なんて強敵を。

にじいろとろりんとは目を合わせません。
合わせたら負けです。
にじいろとろりんの少し上あたり。輪郭が見える程度のところで
いるか、いないかを見極めるのがコツです。
あと電脳ゴーグルで輝点にしてしまうのも手ですね。


あ。こっち見てる。
めちゃ見てる。
見たらダメ、ダメだってば。
ここから先には行かせるわけにはいかないんだからね。

心を鬼にして、UC「風舞雷花」を発動して、
範囲内のにじいろとろりんを一掃します。


ポク・ョゥョゥ
ぽくもきちゃったー

ひろってくださいの前に来て、あがめよー
両手広げてご挨拶ー

わーりらっくす?してるねー
ぽくもしよーだらーん
そういえばーその箱すてきだねー
ぽくも入っていーい?
入れてくれたら一緒にわーい
ひろってくださーい

みてる?みてる?
ぽくもみてるよー
じーっ
(しばらく みつめ あっている)

おぷるっ
ぁぅーあたっくされたよー
おかえしだーバウンドボディでのびーるのびーる
ぽくぱーんち

鳴き声かわいー
あれ?回復したーありがとー
いいこいいこー

あーでも、倒さないとーごめんねー
ぱくと一緒にがんばるよーおいでー
ぽくぱくきーっく

あれーいっぱいとろりんとくっついてたからかなー
ぽくもにじいろになっちゃったー
虹色ぱんだだー


梯・剛士
かっっっわ……!
飼いたいけど!飼いたいけど!
俺の部屋はヴァリウードだけで満室だから!
ヴァリウード「やれやれ、我が主の好き者ぶりにも困ったものですね」

※ヴァリウードは3mオーバーのでっかい狼獣人です

■戦闘
「そんな可愛らしい声で鳴いたって、駄目なもんは駄目なんだかんな!いけっ、ヴァリウード!」
ヴァリウード「一切の容赦なく参ります」
ヴァリウードを召喚して、その拳でにじいろとろりんを叩き潰してもらう
この手の敵は切るより殴った方が効くだろうしな!

ヴァリウード「手が汚れました我が主、ハンカチのご用意を」
なくても払えば綺麗に出来んだろ……しょうがねーなー


チコル・フワッフル
★アドリブ、他猟兵との絡み歓迎!

確かに可愛いし、カラフルで綺麗だし、何だか見つめられると心がぎゅうってするけど……!
ダメダメ、私達が負けちゃったら大変なことになっちゃう。気を引き締めて挑まないと!

まずは一番近くにいるとろりんに先手必勝!
技を使われる前に手早く上着を脱ぎ捨て、【シーブズ・ギャンビット】で素早く攻撃!
スピードが足りなければ、キャミソールと短パン姿になるまで脱ごう(ぽいぽい)
【野生の感】【聞き耳】もフル活用して、ピンチな猟兵がいたら急いで助太刀に向かう!
大丈夫!?拾っちゃダメだからね、気をつけて!
うぅ、これは強敵だぁ……!


烏護・ハル
な、何なの、この……訴えてくる様な瞳は……。
……ダメダメダメ。ダメだよ拾っちゃ……!
……危ない危ない。
可哀想だけど、これも任務だもんね……。(しょぼん)

とろりんを【誘惑】してみて逆にこっちに寄ってこないかな。
引き付けられたら逆に脱力状態を妨害できる……かも。
お、おいでおいでー。

相手の隙を見つけてUC「七星七縛符」をお見舞い。
ウィザードロッドで魔力を高めつつ、氷の【属性攻撃】で少しでも動きを封じられたら!
……カッチカチになっちゃえ!

相手の攻撃に魔力的要素が絡んでるなら、【破魔】の効果で打ち消せないかな?
駄目元で試してみよっと。

他の仲間とも連携して、次の攻撃に繋げられる様な立回りを意識していくよ。


影杜・梢
学園で飼えないのなら、家で飼えば……いや、何でもないよ。
とろりん、か。本当に可愛らしいね。持ち帰りたいぐらいだ。
ま。倒さないといけないから、倒すけどさ。
でも、一体くらい持って帰っても……やっぱりダメかい?

仲間と協力して、なるべく早く倒せるようにしようか。
ボクは「サモニング・ガイスト」で古代の戦士の霊を召喚して戦おう。
脱力状態にさせる隙を与えず、一撃で倒せるようにするよ。
とろりんが密集している所には炎での攻撃を。こちらに襲いかかってきた場合は槍で薙ぎ払う攻撃で、対応していくよ。
もし攻撃されそうなら、「見切り」で躱そうか。



●げきせん
 にじいろがやってくる。
 ぷるぷにょぽてぽてと、にじいろとろりんの群れが迷宮の奥からやってくる。
「動くたびにぷるぷるして、美しくも愛らしいぱれーどですわ……」
 ぷるぷにょ震えるにじいろととりんのぱれーどに、ファレリア・リトヴァール(白花を纏う紫輝石・f05766)の口からほぅと溜息が漏れた。
 その横から、ポク・ョゥョゥ(よろしくなの0・f12425)が、ぽてぽてと四足でにじいろとろりん達に近づいて行く。
 そしてポクは、先頭の一箱のにじいろとろりんの前ですくっと立ち上がり。
「あがめよー」
 両手を広げてご挨拶。
 なんやかんやで真っ黒パンダ的な扱いで祀りあげられてたポクにとって、これ挨拶。
『ぷぷぷきょー』
 するとどうだろう。
 箱の中で重なっていた3体のにじいろとろりん達も、真似するように短い手らしきものを広げて、ほぼ同じ長さの鳴き声をあげたではないか。
「みてる? みてる? ぽくもみてるよー」
(ぷるぷる)
 何故かそのまま見詰め合う真っ黒パンダとにじいろとろりん。
「かっっっわ……!」
 その光景にやられた梯・剛士(ヴァリウードの随伴者・f12919)の口からは、抑えきれなかった声が漏れ響いていた。
 はっきり頷いたり心の中で頷いたりだったが、他の猟兵達も大体同意である。
 だが、そんな間にも、ぱれーどは続いている。
 手を広げてた為に進みが止まっていたにじいろとろりん一箱に、後ろからきた別のにじいろとろりんがどんっとぶつかった。
 ぐらりとよろけた一箱から、にじいろとろりんが1体、零れ落ちる。
『ぷぃ』
「な、なにこれ可愛い……」
 そのままつぶらな瞳で見上げるにじいろとろりんと、うっかり目を合わせてしまったカナカナ・リッタリア(七つの赤薔薇・f04382)の理性がぐらりと揺らぐ。
「こいつらは……魔物、なのか?」
 ルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)も、困惑を隠しきれずにいた。
「魔物は基本的によそ者を嫌い、狂暴になって襲って来る筈だが……こいつらからは……襲うような気が感じられない」
 ルトルファスの知っている魔物の概念と、目の前でひろってあぴーるしている存在が一致しないでいた。
 だから、この顔の何処に凶悪さが――なんて観察し、目が合う。あってしまった。
 ひろってほしそうなまなざしが、ルトルファスの黒瞳を射抜く。
『ぷぃっ』
「っ!?」
 次の瞬間、三段に重なっていたにじいろとろりんの一番上が、ルトルファスに向かって飛び掛ってきて――そのまま引っ付いた。
「な、何なの、この……訴えてくる様な瞳……しかも多い……ひゃっ!?」
 右を見ても左を見てもにじいろとろりん。
 そうなりつつある状況を、困った表情を隠しきれずに見回していた烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)も、つい目を合わせてしまい――引っ付かれていた。
 カナカナや剛士、ポクも引っ付かれている。
 ひろって、と全身で訴えるひろってあたっくだ。

 そう。せんとうはもうはじまっている。
「その箱すてきだねー。ぽくも入っていーい? わーい!」
 ポクは何か打ち解けてるけど。
 ここは――はげしいせんじょうだ!

 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)には、秘策があった。
「うう……こっち見てる。めっちゃ見られてる気がする」
 摩那が見ているのは、にじいろとろりんの輪郭。
「にじいろとろりんと目を合わせてはいけません。目を合わせたら負けなのです。目を見ずに見極めるのがコツです」
 ようは目を見なければ良いのだ。
「かわいいは正義!とは言いいますけれど、この数は……なんて強敵を溜めてくれたんでしょうか」
 輪郭ぎりぎりを視界に捉えるだけでも、位置は把握できる。後はうしろにずらっといるにじいろとろりんとうっかり目を合わせないようにすれば――。
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別……多分良し。風舞雷花――散開!」
 摩那の手にある金と銀の腕輪が七色の花びらと変わり、高電圧を帯びたそれらが雷花となってにじいろとろりん達に襲い掛かる。
「はて? ――もしかして」
 雷の花弁が全てにじいろとろりんを貫いたのに気づいて、摩那はHMD端末をつけた眼鏡をすちゃっとかける。どうしても目視で確認したい事が出来た。
 そして、電脳ゴーグル越しに見た摩那は確信した。
「……リラックスしてないね?」
 それだけにじいろとろりん達も、必死なんだろう。拾ってほしくて。
 必死なのは、猟兵達だってそうだ。
 チコル・フワッフル(もふもふウサキツネ・f09826)も、目を合わせないに戦う工夫を考えていた。
「ああ、もう。確かに可愛いし、カラフルで綺麗だし、何だか見つめられると心がぎゅうってするけど……!」
 揺れる尻尾を押さえるのは諦めて、チコルは上着を脱ぎ捨てる。
「私達が負けちゃったら大変な事になっちゃうんだから! 気を引き締めないと!」
 ダガーを握る手に力を込めて、チコルの足が地を蹴った。
 一瞬でチコルの姿が消えて、すぐに現れる。
 にじいろとろりんの背後に。直後、にじいろとろりん一箱が輪切りになっていた。
 にじいろとろりんの目に映らない程の速さで動き続ける限り、チコルがにじいろとろりんと目が合う心配はなさそうだ。
「そ、そんな目で見ないでぇー!」
 カナカナがも必死に目を合わせないようにしながら、戦場を飛び回る。
 その手にあるのは、口紅型のペイント武器。
「にじいろを僕の武器の虹色で塗りつぶしていけば、ただの虹色の塊に……!」
 カナカナが狙っているのは、にじいろとろりんの目だ。
 七色を秘めた赤色であのつぶらな瞳を塗ってしまえば、目が合う事も多分ない。

「虹色だし可愛いし。持って帰りたい気持ちも少し分かる気がする」
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は、緩みそうなのか、口元を片手で覆ったままそう呟いていた。
「本当に可愛らしいね、とろりん。ボクも持ち帰りたいくらいだ」
 古代の戦士の霊を召喚しながら、影杜・梢(影翅・f13905)がそれに頷く。
「でも、今回はこの気持ちに、負けちゃいけないんだよね!」
 少しくらい持って帰りたくなっている気持ちを押さえつけて、ヴィリヤは空いている方の手で湾曲した柄をもつルーンソードを引き抜き、掲げた。
 ヴィリヤから立ち昇る冷たい魔力が、幾つかの塊に集まっていく。
「氷よ――射抜け」
 ヴィリヤが黒月を振り下ろすと同時に、冷たく鋭い氷の結晶の刃が放たれ、にじいろとろりん数箱を纏めて凍りつかせた。
「やはり、液状だし、凍らせて砕いてしまうのが早いか」
 あっさりと凍りつくにじいろとろりんを眺め、ルトルファスが呟く。
「……かわいそうだが……凍りつけ」
 ルトルファスの声に応えて、精霊の力が荒れ狂う。突如冷気が漂い、氷の津波がにじいろとろりん達を飲み込み凍りつかせた。
「薙ぎ払え!」
 そこに梢の声がして、古代の戦士の霊の槍が凍ったにじとろを端から砕いていく。
「そっか。氷が有効なのね!」
 ハルもそれを見て、ウィザードロッドを構え直した。
「可哀想だけど、これも任務だもんね……」
 しょぼんとしながらも、ハルはロッドに氷に魔力を集め――。
「誘惑してみたら、こっちに寄って来ないかな? お、おいでおいでー」
 ふと思いついてハルは、ちょっと手招きしてみた。
 ここで問題です。
 拾ってほしい存在に、おいでおいでなんてしたら、どうなるでしょう?
『ぷぃぷぃ』
 ぷるぷるぷるぷるぷるっ!
「え、ちょっと、多い、多いって……カッチカチになっちゃえ!」
 殺到するにじいろとろりん達に、ハルが慌ててロッドを向けて符を放つ。氷の属性を乗せた七星七縛符が、飛び掛る寸前のにじいろとろりん達を纏めて凍らせた。
「今だよ、炎を!」
 ハルがそこから離れるのを見て、梢が密集したまま凍ったにじいろとろりんを指しながら古代の戦士の霊に指示を出す。
「学園で飼えないのなら、家で飼えば……いや、何でもないよ」
 凍ったところに炎を浴びて、溶けて消えゆくにじいろとろりんを見ながら、ふと梢がそんな事を呟いた。
 ダメに決まっているだろう。そう梢は思っていたのだが。
「そうですわよね? 私も学園で飼えないなら、他の場所なら飼ってもよいのではないでしょうかと、思っていたのですわ」
 衝撃波でにじいろとろりんをふっ飛ばしていたファレリアが、それに頷いた。
 まあ、10人集まれば、そう考える人もいるさ。
「飼いたいけど! 飼いたいけど! 俺の部屋はヴァリウードだけで満室だから!」
 2人の考えを聞いた剛士が、そう叫びながら日本刀「餓狼」をにじいろとろりんに振り下ろす。
『やれやれ……我が主の好き者ぶりにも困ったものですね』
「冗談だったのですけど……」
 剛士にダシにされたヴァリウードの溜息に、ファレリアが苦笑する。

 もしかしたら--そんな彼らのやり取りが聞こえたのだろうか。

『ぷきゅぅん』
 にじいろとろりん達が一斉に上げた切なげな鳴き声が、猟兵達の耳朶を打った。
『ぷきゅーん』
 にじいろとろりんは、鳴き声で拾って欲しい気持ちをうったえている!
 その声は、一部に非常に突き刺さった。
「す、少しだけ撫でても良いかな? ……ダメ?」
 内面を反映するかの様に、ヴィリヤの金瞳が揺らいでいる。
「一体くらい持って帰っても……やっぱりダメかい?」
 あ。梢も藍の瞳が揺らいでいる。
「ダメ、ダメだってば……ここから先には……行かせるわけにはいかないんだからね」
 とにかく目を合わせないことを意識していた摩那にも、この鳴き声は響いた。
 眼差しに気をつけていた分、耳は不意打ちだったか。
「うぅ……これは強敵……!」
 いざと言う時に仲間を助けられるよう聞き耳を立てていたが故に、チコルの耳にもあの切なげな鳴き声はバッチリ届いてしまっていた。
 だが――うっかり共感しても、猟兵達は誰1人、にじいろとろりんを拾おうと手を伸ばすところまではいかなかった。
 それに、皆が皆、切ない鳴き声にやられたわけでもない。
「……ダメダメダメ。ダメだよ拾っちゃ……!」
 ハルは自分に言い聞かせるように言いながら、破魔の符の力で鳴き声を打ち消し、遠ざけていく。
 ハルの破魔の効果は、他にも数人の猟兵には届いていた。
「そうだよね! 拾っちゃダメだからね!」
 仲間を応援しつつ、自分にも言い聞かせるように言いながら、チコルは戦場を駆け回りにじいろとろりんを斬って回る。
「鳴き声かわいー! ひろってくださーい」
 ポクはまだ、にじいろとろりんの一緒の箱に入ったままだったが、その箱のにじいろとろりんもチコルによって輪切りにされた。
「あーでも、倒さないとーごめんねー」
 それで目的を思い出したのか。
 ポクが箱から飛び出し、まっしろドラゴンのパクの上に飛び乗る。
 そこでふと手を見ると、ポクの手は、足も、全身が、虹色だった。にじいろとろりんの一部がくっついたんだろう。
「にじいろになっちゃったー。ぽくぱく虹色きーっく」
 それはそれとして、にじいろとろりんがぷちっと潰される。
「惑わされちゃだめだ、頑張らないと……!」
 赤い色に染まった地面の上から、カナカナが飛び立つ。
「今まで以上に、目を見ちゃだめだよ。心が持っていかれると思うから……!」
 仲間が惑わされないように祈りながら、カナカナは口紅を振るう。赤で塗りつぶされた傍から、にじいろとろりんの体は崩れていった。
「そんな可愛らしい声で切なく鳴いたって、駄目なもんは駄目なんだかんな! いけっ、ヴァリウード!」
『一切の容赦なく参ります』
 剛士本人よりもはるかに巨大な狼獣人ヴァリウードが、その拳でにじいろとろりんを殴って叩いて潰していく。
『我が主』
 ふと手を止めて、ヴァリウードが剛士を振り向いた。
「ん? どうした?」
『これ。手が汚れますな。あとでハンカチのご用意を』
「払えば綺麗に出来んだろ……しょうがねーなー」
 溜息混じりに剛士が荷物を探すのを見て、ヴァリウードが再びを振り上げる。
「いくら鳴いてもだめだぞ。俺だって、飼う場所無いんだから……やりづらい、どうにもやりづらいな」
 今までにないやりづらさを感じながら、ルトルファスも再び氷の津波を放ち、にじいろとろりんを凍りつかせていく。
「もう! 存在が可愛すぎるんだよ、この子達! 可愛いけど本当にごめんね!!」
「ま、倒さないといけないよね。倒すけどさ」
 揺れていた気持ちを取り戻したヴィリヤが氷晶の刃を放ち、凍ったにじいろとろりんを梢が古代の戦士に槍で貫かせて砕いていく。
 部屋を埋め尽くすかと思われたにじいろとろりんも、大分数が減っていた。
「これ程数が多くては地上に出す訳にはいきませんもの。いくら可愛らしい鳴き声で、つぶらな瞳をしていても、倒さねばなりませんの――煌めく玉よ」
 ファレリアの首飾りや拡声器が、その形を崩していく。
「どうかお許し下さいませね? せめて苦しまぬ様、速やかに!」
 ファレリアの声と共に、無数の宝石の花弁が放たれる。煌く花弁が矢となって、にじいろとろりん達を穿ち貫き、切り裂いていく。
「次に生まれる時は、もっと拾いやすい種族になってきて下さいませ。可愛いままで」
 花弁がファレリアの元に戻った時、動けるにじいろとろりんはいなくなっていた。
「……やっと終わった……精神的ダメージが大きい気がする……」
 カナカナがぽつりと溢した言葉に、その場にいる全員が頷いた。
 だが、休んでいる暇はない。
 それを猟兵達は嗅覚で感じ取っている。
「そこにいるのは判ってますの。あんなに愛らしいにじいろとろりんを扇動した事、許せませんわ!」
 通路の奥にファレリアが言い放つと、甘い香りが漂って来た。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『迷宮ショコラティエール』

POW   :    チョコレート・ソルジャーズ
レベル×1体の、【頬】に1と刻印された戦闘用【チョコレートで出来た兵隊】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    チョコレート・コーティング
【溶かしたチョコレート】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    チョコレート・グラフティ
【溶かしたチョコレート】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を自分だけが立てるチョコの沼にし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御剣・誉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●チョコの香りと共に
『うそっ!? 全滅させちゃったの!?』
 通路の奥からチョコの香りと共に現れた少女は、辺りに散らばるにじいろの残骸と、多少にじいろの欠片がくっついてたりはするが、誰もにじいろとろりんを抱えていない猟兵の姿に目を丸くして、驚いていた。
『そう……やっぱりダメだったのね。折角、ひろわれに来たのにね』
 少女――オブリビオン・迷宮ショコラティエールは淡い色の瞳を悲しげに伏せる。
『やっぱり、チョコがないとダメなのね』
 ん?
『本当はね『ひろって』とか『きちゃった』とか『ひろってくれないと○○するぞ』とかって描いたチョコプレートを持たせてあげようと思ったんだけど。
 でも、あの子達の手じゃものを上手く持てなくてね。持つと進むの遅くなるし』
 にじいろとろりんの手、短かったもんね。(そもそも手なのか)
『あのつぶらな瞳に、チョコの甘さが加われば完璧だったのに!』
 さすが、チョコの魅力に憑りつかれた余りに行き過ぎてオブリビオンになった、元チョコレート職人――と言うべきなのだろうか、この謎のチョコ理論。
『仕方ないわね。ちょっと予定より早いけど、チョコパーティをはじめましょう』
 チョコのかかったようなスカートを摘んで、迷宮ショコラティエールはちょこんと小さく一礼する。
『さあ、おいで。チョコレート・ソルジャーズ!』
 ショコラティエールがチョコで描いた兵隊は、妙にまん丸でつぶらな瞳だった。
ポク・ョゥョゥ
チョコーいい匂いー
おいしそー
あ、ご挨拶どうもー
ぽくもぺこりー

ぽくはねー今期間限定虹色ぱんだなのー
あがめよー
チョコぱんだにしてもいいんだよー
チョコプレートいいなー
『あがめよー』作ってくらしゃーぃ

チョコの兵隊さん食べられるのかなー
あーん
ポク大食いたんだからーいっぱい食べられるよー
ダメだったら残念なのー
バウンドボディでのびーるのびーる
ぽくぱーんちー

溶かしたチョコはちょっとあついー?
体にくっついたらーふーふーして冷ますのー
いただきまーす

えへへーあまいのー
おかえしだーぱくと一緒に頑張るよー
ぽくぱく体当たりー
ぱくはおっきいからーチョコをなぎ倒しちゃうぞー
倒したチョコの破片はーぽくがおいしくいただきましたー


ヴィリヤ・カヤラ
にじいろとろりんがチョコプレート持てなくて良かった、
そんなの絶対可愛いし!
ソルジャーズもちょっと可愛いんだけど!
誘惑が多すぎるけど頑張るよ!

戦闘時は誰かいれば連携重視
攻撃と連携出来る隙を作れるように動くね。
あとは敵の動きを出来るだけ見るようにして、
死角からの攻撃に気付けたら声掛けとフォローに入るね。

ソルジャーズは合体すると面倒そうだから、
早いうちに氷晶で複数体を狙って倒していきたいかな。

敵が近距離で届かない所にいたら、
氷晶とジャッジメント・クルセイドで攻撃。
あとは宵闇を蛇腹剣にして届くなら
牽制に使っていくね。

アドリブと連携歓迎。


烏護・ハル
甘さが加われば……!
……んーと、ごめん。微妙、かな……。

チョコの兵隊さんは、そっちはそっちで可愛い気もするけどね。
……ふぅ、また可愛さにやられるトコだったよ。危ない。

あの【破魔】でチョコ沼をどうにか出来ないかな。
彼女の立ってる箇所を中心にに、炎の【属性攻撃】も込めてフォックスファイアを撃ち込んでみよっと。火球は散開させて広範囲を狙ってみるよ。
チョコの広がる領域全部延焼もさせちゃおうかな。
チョコレート職人にとって、チョコを焦がすのは致命的だと思うんだよ。

もし足元のバランスを崩せたら、火球を集束させて、炎の【属性攻撃】も更に加えて彼女にぶつけよう。

他にも彼女を狙う人とも積極的に連携していきたいな。


ルトルファス・ルーテルガイト
…うわぁ、なんかまたにたようなめのやつがでてきたぞ。(ものすごく棒読み + 頭にさっき引っ付いてきたとろりんの残滓(?)を乗っけたままで)
…なんか、無視した方が良い気がするんだが…オブリビオンなんだよな、倒さなくてはならないんだよな?

(方針)
…【精霊剣】による精霊の加護を受けた剣で、敵に攻撃する。
…チョコレート兵には【炎の精霊】の剣で、焼き溶かす様に。
…んでもって、溶かしたチョコの攻撃に対しては【氷の精霊】の剣で、
固めて切り落とすように攻める。
…そして隙が出来たら、本体を攻撃…でいいだろう。

…一つ…あえて言わせてもらう、『食べ物を粗末にするな』。


黒木・摩那
★チョコレートに水気は禁物です

にじいろとろりんにチョコプレートを持たせるとか、
なんて恐ろしいことを考えるのでしょう。
そんなことをしたら、さらにひどいことになって、
迷宮を守れたかも分かりません。

しかし、とろりんを煽った張本人はもう目の前です。
あとはこれを倒すだけです。

UC【トリニティ・エンハンス】を使って、
魔法剣に水の精霊を宿し、攻撃力を上げます。
火の精霊だとチョコが焦げるけど、
水ならばチョコが柔らかくなりますからね。
【属性攻撃】

「そもそも人をチョコまみれにして、何しようというのよ」


カナカナ・リッタリア
チョコ理論…?
あ、えっと、僕にはちょっとよく分からないかな
ひとまず彼女らを倒すことに集中しよう

【グラフィティスプラッシュ】でまずは兵隊さん達も色鮮やかにしてあげよう
つぶらな瞳はもういいよ!もう一回【目潰し】戦法だね
何だかトラウマになりそう…

虹色に染めてはみたけれど
虹色のチョコレートはあんまり美味しくなさそうだなあ…
ただ最近はカラフルなチョコも増えてるんだっけ?

兵隊さんが減ってきたらショコラティエールさんを狙おう
【七つの薔薇の抱擁】で動きを封じ、その隙に仲間に攻撃してもらおう
ごめんね、僕もチョコは好きだけれど、君の話にはついていけないかも


チコル・フワッフル
★アドリブ、他猟兵との絡み歓迎!

チョコのプレートを持たせて、とろりん達の魅力を倍増させようとしてたなんて……!
実現しなくてよかったよ、絶対可愛いもん!
さぁ、大人しく倒されてもらうよっ。

スピードや身軽さを生かして、敵への接近を試みるよ。
【野生の感】【ジャンプ】【ダッシュ】を駆使してアクロバティックに攻撃を回避っ。
状況によってはダガーを使って【空中戦】で対応する!
コーティングするなら、食べ物にして欲しいな?果物とかクッキーとか!

敵に近付けたら【ガチキマイラ】で頭部を変化させ、がぶっと噛み付く!
オブリビオン自体も甘いのかな?ちょっと気になったりして。


梯・剛士
いやなんでそこでチョコなんだよ!
とろりんが食っちまって看板の意味をなさなくなるだろ!
チョコレートパーティーは別にいいけどさ!

真の姿を解放
「ヴァリウード、融合だ!【電脳融合・野獣形態】!」
巨大な狼獣人の姿に変貌する
チョコレートの兵隊たちを、巨大になった拳で叩き潰す
場合によっては食っちまってもいいかもな、チョコレートなんだし、でっかくなったんだし

ショコラティエールにはぐわっと大口開けて食いつこうとしてみようか
「てめぇもガブリと一口で食ってやろうか!」
これで驚いてくれたらしめたもの、そのまま手の爪で引き裂いてやろう
驚かなかったら……食うのはあれなんで、噛む程度でいいか?


ファレリア・リトヴァール
今度はチョコレートですの?
チョコレートは確かに美味しいですけれど、
それは楽しく食べてこそであって戦う必要は無いのではありません?
ついでに言うとにじいろとろりんはそれだけでとても可愛らしかったですわよ。
ええ、拾ってあげられないのが悔しく思えます程に!

美味しいチョコレートであろうと、敵対するなら容赦はいたしませんわ。
私の頼もしい『お友達』を召喚。(サモニング・ガイスト)
さあ行きますわよ、お友達!
溶けたチョコレートを更に熱して焦がしてしまいましょう!



●チョコの香りに包まれて
 数十体も召喚された、チョコレート・ソルジャーズ。
 ――を無視して、ポク・ョゥョゥが迷宮ショコラティエールの前に進み出る。
『な、なに?』
「ぽくはねー今期間限定虹色ぱんだなのー。あがめよー」
 どうやら、ご挨拶らしい。
『あがめる? チョコ塗って良いなら考えるわよ』
 それをポクの挨拶と知らないショコラティエールは、額面通りに言葉を受け取って更にずれた答えを返す。
「チョコぱんだにしてもいいんだよー。だから、『あがめよー』ってチョコプレート作ってくらしゃーぃ」
『いいの!? いいわ、作ってあげる!』
 何故か成立しちゃってるポクとショコラティエールの会話だが、それは他の猟兵達が気を取り直す為の行為になっていたのかもしれない。

 何故かと言うとだ。

「……うわぁ」
 取り囲むチョコレート・ソルジャーズのまん丸な輪郭とつぶらな瞳を見やり、ルトルファス・ルーテルガイトがそんな平時の彼らしからぬ声を上げていた。
「なんかまたにたようなめのやつがでてきたぞ」
 しかもとっても棒読みだし、頭にはにじいろとろりんの残滓が着いたままである。
 ルトルファスの体はともかく、精神は大分お疲れの様子である。
 そして、色々と疲れているのは彼だけではなかった。
「チョコの兵隊さん……ふぅ、また可愛さにやられるトコだったよ。危ない」
「またちょっと可愛いの出て来るなんてね」
 烏護・ハルの呟きに、ヴィリヤ・カヤラが頷き返す。
「でも、にじいろとろりんがチョコプレート持てなくて良かった。もし持ってたら、そんなの絶対可愛いし!」
 ヴィリヤのこの一言に、猟兵達の反応は二分された。
「本当に、なんて恐ろしいことを考えるのでしょう。にじいろとろりんにチョコプレートを持たされていたら、さらにひどいことになって、迷宮を守れたかも分かりません」
「うん、実現しなくてよかったよ、絶対可愛いもん! チョコのプレートを持たせて、とろりん達の魅力を倍増させようとしてたなんて……!」
 黒木・摩那とチコル・フワッフルの様に、にじいろとろりんとチョコプレートの組み合わせにに肯定的な派と。
「チョコ理論……? えっと、僕にはちょっとよく分からないかな」
「……んーと、ごめん。微妙、かな……」
 カナカナ・リッタリアやハルの様に、否定的な派とにである。
「そうですね。チョコレートは確かに美味しいですけれど、それは楽しく食べてこそであって。戦う必要は無いのではありません?」
 ファレリア・リトヴァールも、どちらかといえば否定的だろうか。
「ついでに言うと、にじいろとろりんはそれだけで、とても可愛らしかったですわよ。ええ、拾ってあげられないのが悔しく思えます程に!」
 続くファレリアの言葉には、猟兵がほぼ全員、一様に頷いた。
「なあ、皆。それ以上、言わない方が……」
 頷いていなかったのは、何かに気づいていた梯・剛士である。
 剛士の言葉に、彼が指す方を見てみると――。
『な、なによ! チョコがにじいろとろりんに劣るって言うの!?』
 何と言うか、判りやすく頬を膨らませてるショコラティエールがそこにいた。
『いいわ、見せてあげる。チョコの力を。合体よ、チョコレート・ソルジャーズ!』
 ショコラティエールの号令で、チョコソルジャーズがわちゃわちゃと集まり出す。
「ヴァリウード、融合だ!」
『了解です、我が主。電脳融合――』
『「ギガンティックビーストモード!!」』
 剛士とヴァリウードの声が重なり、2人の姿も重なり、融合していく。
 しなやかな筋肉を持つ巨大な狼の獣人――その野獣形態こそが、剛士の真の姿だ。
 そして、わちゃわちゃ積み重なっているチョコソルジャーズに叩き込んだ拳の一撃が、チョコソルジャーズ達の合体を崩壊させて、群れを吹っ飛ばす。
『ああっ、チョコレート・ソルジャーズが!? 折角大きな看板も作ってたのに』
「させるわけないだろ。大体、なんでチョコなんだよ! チョコの看板だと、とろりんが食っちまって、看板の意味をなさなくなるかもしれないだろ!」
 合体を妨害されて悔しがるショコラティエールに、剛士がばらけたチョコソルジャーズの一体に爪を立てながら思わずツッコミを入れる。
『え……にじいろとろりんって、チョコ食べるの?』
 ショコラティエールの、そんな間の抜けた声が妙に響いた。
 その隙を、猟兵達が逃す筈が無い。
 迷宮の空間を、赤い薔薇が軌跡を描く。
「つぶらな瞳はもういいよ!」
 飛び回るカナカナが振るうは、口紅型のペイント武器――K×K。
 七色を秘めた赤で、チョコレートソルジャーズのつぶらな瞳を塗り潰して行く。
(「虹色に染めてはみたけれど……虹色のチョコレートって、あんまり美味しくなさそうだなぁ……」)
 声に出すとまたショコラティエールが煩そうなので、カナカナは胸中で呟く。
「虹色ふえたー」
 だが、その色に親近感を感じた者がいた。ポクだ。
「チョコあまいのーおいしいのー。ぽくも大食いたんでー、ぱくはおっきいからー、チョコの兵隊さんもいっぱい食べられるよー」
 まっしろドラゴンのパクもポクと一緒に、なぎ倒したチョコソルジャーズをがぶがぶもっしゃもっしゃ。
「よし。美味いなら、食っちまうか」
『美味しくない筈がないでしょ――って食べないでーっ!?』
 倣って剛士もバクンとチョコソルジャーズに噛み付くに至って、ショコラティエールが流石に慌てて止めようとする。
「……なんか、無視した方が良い気がするんだが……オブリビオンなんだよな? 倒さなくてはならないんだよな?」
「ええ。あれがとろりんを煽った張本人……の筈。あとはあれを倒すだけです」
 目の前で繰り広げられる戦闘らしからぬ緊張感の無いやり取りに、声に呆れと疲れを滲ませながら、ルトルファスと摩那の手が剣の柄に伸びる。
「仕方ないな……精霊よ! この声に耳を傾け、その力を剣に示せ!」
 精霊に呼びかけながら、ルトルファスは駆け出した。
 声に応えて、精霊剣の柄から炎の魔力を帯びた刀身が具現化する。
 轟炎一閃。
 ルトルファスが炎の刀身を振るう度に、チョコソルジャーズ数体が焼き溶けるように消えていく。
「水の精霊も、チョコには効く筈です」
 摩那の持つ『緋月絢爛』に、水の魔力が宿る。その刀身に浮かぶは『ペオース』と『イアル』の水の元素を表すルーン。
「この通り、水ならば柔らかくなりますからね」
 ふやけたチョコソルジャーズが、摩那の振るう細剣に次々と貫かれていく。
 あれだけいたチョコソルジャーズの数も、まばらになってきた。
「合体したら面倒そうだし、誘惑が大きすぎる気がするからね――残りは纏めて一気に仕留める!」
 そう声を張り上げ、ヴィリヤが黒剣の湾曲した柄を掴んだ。
「っ!」
 短い呼気を吐き、ヴィリヤは黒剣――宵闇を鞘走らせる。
 その漆黒の刀身がばらけた。蛇腹剣――複数のパーツに分かれて鞭の様にしなった刀身が残るチョコソルジャーズを纏めてなぎ払った。
 折り重なったチョコソルジャーズが、立ち上がろうともがいている。
 だが、ヴィリヤの目的はこの一撃で倒す事ではない。
「氷よ――射抜け!」
 ヴィリヤが掲げた黒月を振り降ろす。
 刃の様に鋭く冷たい氷の結晶が篠突く雨と降り注ぎ、凍りついたチョコソルジャーズが端から崩れて消えていった。
『ふ、ふんだっ。これで勝ったと思わないことね』
 兵隊を全て失い、ショコラティエールは若干声を震わせながらも、周囲に漂う溶かしたチョコレートを操り出した。
『チョコでコーティングされちゃえっ』
「わーっ。ちょっとあついー?」
 溶けたチョコを受けたポクが、ふーふー冷ます。すると、チョコはみるみる固まってポクの動きを封じてしまう。ふーふーしなくても、結果は同じだっただろう。
『みーんなチョコ塗れになっちゃえ』
「チョコレートに水気は禁物です」
 だが、摩那が水の斬撃で次に放たれたチョコを洗い流していた。
「そもそも人をチョコまみれにして、何しようというのよ」
「コーティングするなら、食べ物にして欲しいな?」
 摩那のツッコミに頷いて、チコルがダッシュで飛び出した。
『っ!?』
 壁も天井も足場にしたチコルの空中戦にショコラティエールの目が追いつかず、次のチョコを放てないでいる。
「果物とかクッキーとかにしきなよ!」
 言い放つチコルの頭部は、変化していた。
 兎の耳が消えて、ふわふわの赤茶の髪は獅子の鬣に。
『ちょ、ちょっと待――』
「取り巻きは中々美味かったぜ。てめぇもガブリと一口で食ってやろうか!」
 チコルの頭部がライオンのそれに変わったのを見て、目を丸くするショコラティエールの背後で、牙を剥き出しにした剛士が脅すように低い声で言い放つ。
 前門の虎ならぬ、前門の獅子、後門の狼。
「大人しく倒されて貰うよ!」
 そしてチコルがライオン頭の口を大きく開けて、がぶっと容赦なく漂うチョコごとショコラティエールに噛み付いた。
(「ん……ちょっと甘い。でもこれって一緒に食べちゃったチョコかな?」)
『痛ッ! 痛い! 牙も舌も! いーたーいーでーしょー!!!』
 必死にもがいて、チコルの口から逃げ出すショコラティエール。
 何とか抜け出したものの、歯形くっきりで、肩も大きく上下していた。
『もー怒ったもんっ』
 ぷっくりと頬を膨らませ、ショコラティエールが溶かしたチョコを足元に放つ。
 そのチョコレートは、そのままチョコの沼となった。
『この中なら……皆チョコ塗れになっちゃえ!』
 チョコの沼の中に立ったショコラティエールの身体に、力が戻る。
 操る溶かしたチョコの数が、一気に増えた。
「わっと!」
 放たれるチョコレートの乱れ撃ちを、カナカナが慌てて避ける。
 数が増えても狙いが甘い。そんなものに当たる猟兵達ではなかったが、外れたチョコレートはやはり、新たなチョコの沼になった。
「ん……チョコの沼は5つね。これなら、足りるわ!」
 ハルがロッドを構え、炎属性の魔力を高めていく。
 ボゥ、ボゥと、虚空に灯る狐火の炎。両手の指を足しても腕が1つ足りない数の狐火、その全てに、ハルは破魔の力も載せていく。
「さあ行きますわよ、お友達!」
 ハルの狐火でその意図を察して、ファレリアも古代の戦士の霊を召喚した。
『わ、これはまずっ……っ!?』
 ショコラティエールも気づいたようだが、既に遅し。カナカナがチョコを避けながら放っていた種から伸びた茨が、その足に絡み着いていた。
「だめだよ。行かせない。君を決して離さないから」
 カナカナが告げると、沼の中で数点が七色の輝きを放つ。
 七つの薔薇の抱擁――更に伸びた茨が、ショコラティエールに絡み付いていく。
「火球、散開! チョコレート職人にとって、チョコを焦がすのは致命的だよね?」
「溶けたチョコレートを更に熱して焦がしてしまいましょう!」
 そして、2つの炎が一気に爆ぜた。
 ハルの狐火はバラバラに放たれ5つのチョコの沼全てを炎で包み込み、ショコラティエールのいる沼には、ファレリアの霊が放った炎が重なる。
『ああ……チョコが……!』
「お願いしますわ、お友達!」
 茨を引き千切って炎から逃げようとするショコラティエールを、ファレリアの霊が槍で押し戻した。
「美味しいチョコレートであろうと、敵対するなら容赦はいたしませんわ」
 炎の中に崩れ落ちるショコラティエールに、ファレリアが静かに告げる。
「ごめんね、僕もチョコは好きだけれど、君の話にはついていけないよ」
 カナカナが更に種を投じた。芽吹いた茨がすぐに導火線に変わり、ショコラティエールに炎を伝えていく。
 もう逃げる力もないだろう。他の沼も全て、焦げて固まった。
 ハルは何も言わずに、全ての狐火を1つに収束させる。
「1つ……あえて言わせてもらう。――食べ物を粗末にするな」
 告げて、ルトルファスが炎の刀身を振るう。
 3つの炎が重なり、火焔が渦巻き火柱となる。
 そして、炎が消えた時――ショコラティエールの姿は、チョコが溶けた様に消えていなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『回復薬の作成』

POW   :    鍋をひたすらかき混ぜる.重い材料を運搬する等

SPD   :    薬の素材を集める.調理技術で味を整える等

WIZ   :    作り方を指示する.魔法で回復力を高める等

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●薬学のお時間
「やあ、ありがとう、ありがとう、転校生の諸君! 学園を代表して、感謝の意を述べさせて貰うよ」
 にじいろとろりんと、その扇動者を倒した。
 猟兵達からの報告に、依頼主である教師は満面の笑みを浮かべた。
「そして話は聞いていると思うけれど、丁度これから魔法薬の授業があるからね。是非参加して頂きたいんだよ。
 一応、テーマは回復薬作成だけど――実験室にある設備で作れるものなら、何を作って貰っても構わないよ。魔法の植物や鉱石などを材料にしてもいい」
 むしろそう言う発想が、学生の良い刺激になる――と言う事らしい。
「流石にロボット作るとかは、あの部屋の設備じゃ無理だけどね」
 なんて冗談交じりに案内されたのは、ビーカーや試験管があちこちに並んだ少し広い教室だった。
 UDCアースの出身者なら理科室が近いだろうか。
 とは言え、魔法薬や蒸気機関のコンロなど、この世界独自の設備もある。

 何を作っても良い――言質は取れた。
 爆発しない程度に、色々やってみる良い機会だろう。
ヴィリヤ・カヤラ
【WIZ】

回収した【にじいろとろりん】を
回復薬に混ぜた時の効果も気になるけど、
色付け出来ないかな?

色付け出来たら飴にして口の中に入れておいたら
少しずつ回復…なんて出来たら面白いと思うんだけど、
それをやるには回復薬の濃度とか必要そうかな?

普通の飴になっても良いからチャレンジ!
材料は…回復薬
(にじいろとろりんで色付け出来るなら色が付いているのを使用)
あと、砂糖。

沸騰させた回復薬に砂糖を入れて、
手早く混ぜて冷まして固まれば完成。
固めるのは型を使うか、
お皿かトレイに薄めに広げて、
固まった飴を割れば良いよね。
…料理教室になりそうだけど気にしない!
こういうのは楽しまないとね。

アドリブ、他の方との絡み歓迎


ポク・ョゥョゥ
今日はねー
七色チョコぱんだになったよー
楽しかったーね

よーしぽく作るよー
わーこれなぁにー?何の道具かなー
おもしろーい

じゃあねー、回復薬?作るよー
あれとこれとー
ぽくに付いてるにじいろとろりん(残骸)とー
ぽくに付いてるチョコをーまぜてー
ぐーるぐーる、あまーくなぁれー

まぜてこねこねー
ちょっと寝かせてー
叩いて空気を抜いてー
また寝かせてー
ちぎって形を整えてーフライパンに並べてー
蓋をしてー、弱火でじっくりー

しばらく待つのー
おいしくなーれーあがめよー

踊ってたら完成したよー
甘い回復パンだよー
ぱんだが作ったぱんだよー
先生お一つどうじょー
おいしかなー?

ぽくも食べるよーおいしー
みんなも何作ったのー?
試食?ばっちこーぃ


チコル・フワッフル
手強い相手だったけど、無事に倒せてよかった!
それじゃあ、お言葉に甘えて……魔法薬作りにチャレンジしてみよう!

素材集めを頑張るよ。
拾っておいた、にじいろとチョコの残骸をてんこ盛りに用意!
あとは、体にいいものを入れよう。
薬草、お茶の葉、ミント、スパイス、あれもこれもそれも!
目についた植物を何でも入れちゃうっ。
これだけ植物を入れれば、すっごい効果のある魔法薬になるはず!
見た目が悪くても気にしない。ほら、『良薬口に苦し』って言うし?

出来上がったら、依頼を頑張ってるドラゴニアンの友達にプレゼントしてあげよう。
きっと元気バリバリのパワー100倍になるはず!



●れんきんじゅつはくっきんぐ?
 転校生が授業に加わる。
 そうと聞いて、回復薬制作の授業に参加希望を出した生徒は結構いたようだ。
「にじいろとろりん、手強かったですか?」
「うん。手強い相手だったけど、無事に倒せたよ。しばらくは、あんなに大量には出てこないと思うよ? よかったね」」
 学生の問いかけに、チコル・フワッフルが拾い集めておいたにじいろとろりんとチョコの残骸の詰め合わせを、どんっ、と机に載せる。
「それはそれでちょっと残念……かも」
「まあ、気持ちは判らないでもないけどね?」
 チコルの一言にちょっとしょんぼりした学生に、ヴィリヤ・カヤラが苦笑を向ける。
「可愛かったですか?」
「鳴き声かわいかったー。楽しかったー! ぽくも七色チョコぱんだになったしー」
 まだにじいろとチョコ塗れなポク・ョゥョゥは、一部の学生達に愛想を(おそらく無自覚で)振りまいていた。
 そんな談笑を、軽く響いた手拍子が止めた。
「はい、みんな話はそのくらいで。手も動かしてくださいね」
 教師の一言で、学生達も器具に向かう。
 猟兵達も、頷きそれぞれ作業を開始した。

「よーし、ぽく作るよー。だから、七色チョコぱんだはここまでー」
 そう言うとポクは、自分についていたにじいろとろりんとチョコの残骸をぺりぺりとはがし、混ぜる為の半球状の容器にぽいぽい投入。
「ぽくに付いてるにじいろとろりんと、チョコと、回復薬もーまぜてー」
 あまーくなぁれー、と念じながら、ぐーるぐーると混ぜるポク。
 容器の中でにじいろとチョコが混ざって、何とも不思議な色合いを生み出す。

 その向かいにいるヴィリヤの前には、2つの鍋があった。
「さて、先ずは回復薬を煮詰めてっと」
 既存の回復薬をドボドボ入れて、弱火でぐつぐつ。
 煮詰めて濃縮されるのを待つ間、もう1つの鍋で、回収したにじいろとろりんの残骸に軽く水を加えながら煮詰めて伸ばしている。
「これをどうするんですか?」
「にじいろとろりんを混ぜて薬を作った効果も気になるけど、これ、色付けに使えないかなと思ってね――あ、ここって砂糖あるかな?」
 不思議そうに鍋を覗いていた学生は、ヴィリヤの一言で更に不思議な顔になった。

「えーと、薬草に、お茶の葉っぱも入れたでしょ? あ、ねえねえ。あそこの葉っぱも使っても大丈夫かな?」
 一方、2人が混ぜたり煮詰めたりを始めている中、チコルはにじいろとろりんとチョコ以外の材料を色々と物色していた。
「アレはハーブですね。ミントやセージ、フィンネルなどです。大丈夫ですよ」
「じゃあ、全部1つずつ入れて……あとはスパイスと……この木の根っこみたいなのもお薬なの? 体にいい?」
「薬の材料になりますよ?」
「じゃあこれも!」
 学園の教師に色々聞きながら、チコルが集めるのは植物中心の身体に良いモノ。
「これだけ植物を入れれば、すっごい効果のある魔法薬になる筈!」
 材料も、すっごい事になっていた。
 既ににじいろとろりんとチョコの残骸がてんこ盛りの容器に色々足したもんだから、溢れんばかりになっている。
 チコルのフットワークと材料の量に、周りの学生達は目を丸くしていた。

「まざったー! あとはこれをこねこねしてーちょっと寝かせてー」
 ポクの作業も順調に進んでいる。
「フライパン持って来たけど……何に使うの?」
「ありがとー。これをねー、叩いて空気を抜いてー」
 学生達の見ている前で、ポクは混ぜこねして寝かせたものを軽くむにむに押し込んで、中の空気を押し出していく。
 また少し寝かせたら、今度はちぎって軽く丸めて、フライパンに並べていく。
「あとは蓋をしてー、弱火でじっくりー待つのー」
 あがめよー、と踊り出したポクを、学生達はすごく不思議そうに見ていた。
「あ、ふくらんできたー」
 そうこうしてる内に、フライパンの中身がふんわり膨らんでくる。
 うん、とてもふわっふわに焼き上がっている。
『『これパンだー!!』』
 出来上がったマーブル色なパンに、学生達から驚きの声が上がる。
 おかしいな。ここ、家庭科室だったけ?
「回復ぱんー。ぱんだが作った甘いぱんだよー。お1つどうじょー?」
 そんな驚く学生達の間を、ポクが完成品を乗せた皿を手に回る。
「おいしーねー」
 美味しかったそうだ。

「伸ばしたにじいろとろりんと砂糖を入れて、と」
 ヴィリヤは回復薬を煮詰めていた鍋に、もう1つの鍋の中身と、砂糖を入れて軽くかき混ぜ一煮立ちさせる。
 それを薄い容器に並べた小さな金型の中に流し入れ、冷却装置の中へ。
「さて。あとは冷えて固まるのを待つだけだね」
 ここまで来れば、周りで見ていた学生達も、ヴィリヤが作ろうとしているものがなんであるか判って来た。
 さっき流し入れた型がまず、お菓子用である。
 軍服に身を包み凛々しい外見ながら、ヴィリヤはスイーツ大好きだった。
 初めて食べたショートケーキに感動して以来、自分でも作るようになったのだ。
「こんな回復薬の作り方があるなんて……!」
「こういうのは楽しまないとね」
 様子を見ていた一部の学生達は、目を輝かせていた。予想外に好評な反応に、ヴィリヤは頬をかき笑み返す。
 そして数十分後――冷却装置の中から出てきたのは、色彩々の虹色の小さな塊。
「回復キャンディ、になってると良いんだけどね」
「試食するよー」
 ヴィリヤが型から外したものを、ポクが1つ取ってぱくり。
「あまーい」
「そう? どれどれ」
 ヴィリヤも1つ取って口に運んでみると、仄かな甘さが口に広がった。
 尚、疲れを取る程度の回復効果が出たそうである。

「むむむ……! 流石にてんこ盛りし過ぎたかな」
 チコルは、自分で集めたその量にちょっと苦心していた。
 作ろうとしていたのは、間違いなく回復薬である。
 身体にいいものを色々入れれば、その効果が合わさるだろうと思ってだ。だが、集めたものはにじいろとろりん以外は、大体固形物だった。チョコも固まってたし。
「チョコを溶かしたらいいんじゃないでしょうか?」
「あ、そうか!」
 周囲からのアドバイスで、チョコを湯煎したりと、出来そうな事を色々やって。
 ついに、あとは丸めるだけで、丸薬になりそうな薬の元が完成した。
 色、悪いけど。
 にじいろがどこかに行っちゃって、何とも言えない色だけど。
「試食ー……にがー」
「……うん、苦い……」
 試食を買って出たポクも、チコル自身も、思わずそう呟く味になっていたけれど。
「でもこれ、効果は凄いです」
 微妙な表情ながら、効果は学園の教師が太鼓判を押してくれた。
(「これならきっと、元気バリバリのパワー100倍になるはず!」)
 チコルは、そう自分に言い聞かせる。猟兵の仕事を頑張るドラゴニアンの友達を元気付ける為に作った薬だ。良薬口に苦し、うん。
 だけど、実験室の中にはパンと飴の甘い香りが漂っていて。
 材料も、まだまだ残っている訳で。
「――甘いもの、好きだったかな?」
 ドラゴニアンの友達の顔を思い浮かべながら、チコルはぽつりと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファレリア・リトヴァール
回復薬の作成……ですのね、
あいにく、薬には詳しくないのですけれど、
お手伝いくらいなら出来ますかしら。

魔法で効果を高める事も出来ますの?
では、薬の作成中に癒やしの歌声(シンフォニック・キュア)を聞かせる事で
効果を高める事も出来ますかしら。
無理だとしても、薬を作る方々の疲労を軽減する事は
出来るかも知れませんし。
許可が頂ければ、歌って試してみますわね。


ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ歓迎)

(心境)
……すごく疲れた、主に精神的に。(ため息つきながら)
…此処でこれ以上何か起きても困るんだがなぁ。
(頭に引っ付いていたにじいろとろりんの残滓を剥がしながら)

(やること)
①頭に引っ付いていたにじいろとろりんの残滓を試験管に入れる
②少量ずつ、『青』『赤』『黄』の液体(薬)を混ぜる
③『トリニティ・エンハンス』で精霊力を与えながら弱火で加熱

(予想結果)
…流石に、にじいろとろりんは復活せんだろうが(したら困る…)。
…こう、とろりんの霊力と魔法薬で、蛍光ライトもどきが出来るのでは?
…微弱ながら魔力を帯びて、夜になると虹色に輝くような。
(※どうなるかは、マスターの裁量にお任せします)


影杜・梢
[wiz]で好奇心のままに回復薬の製作。
真面目に取り組むというよりは、興味と好奇心交じりの不真面目な態度。

良いよね。好きなようにして良いって。
好き勝手できる滅多にない機会でもあるから、色々と試してみようか。

一応、教科書の回復薬のページを開いておこう。そこから、自分なりにアレンジしてみようか。
迷宮で拾ったとろりんの残骸や素材と。
学校にある、毒草っぽい色合いの植物や蛍光色に光る鉱石…いかにも回復薬に向かないような材料を、適当に入れてみようかな。
そこから、魔法をかけたり混ぜてみたりして…。
さて、色々と試してみたけれど…吉とでるか凶とでるか。楽しみだね(結果はMS様にお任せします)


黒木・摩那
★つるとピカピカな魔法薬を作りましょう
【WIZ】

何でも魔法薬を作っていいということなので、
ここは洗剤作ります。

この間のとろりん&ショコラティエール対決で
チョコまみれになって、あとが大変だったんです。
もちろん普通の洗剤でも汚れやにおいは落ちますが、
魔法薬で作るのですから、もっとお手軽に綺麗にできるようにしたいです。

もう心まで真っ白になるくらいにね。

爆発に備えて、盾を側において実験に臨みます。


烏護・ハル
【WIZ】魔法で回復力を高める

す、すごい。色んな設備が、何でもある。
これなら何でも作れちゃいそう。

でも回復薬かぁ。
どんなトコから切り込んでみようかな……。
やっぱりあれかな、薬草?
色々抽出して混ぜて……みたいな感じで作れたりしないかな。
よしっ、早速準備準備!
魔法の植物……あんまり習ったことない分野だから、図鑑で慎重に判別して、有効成分調べて、あとは薬に関する魔術も色々調べて応用、それからそれから……。

……アレもこれも、みたいな感じで数種類の薬草を煎じてみるけど、これ本当に大丈夫かな。
段々不安になってきたよ、うぅ……。

これ……大丈夫、だよね?
変な反応起こしたり……しないよね?
……しないといいなぁ。


カナカナ・リッタリア
【WIZ】
回復薬作りなんて僕はやったことないんだけれど
折角だから授業を受けてみようかな

魔法で回復力を高める…魔法を込めればいいの?
慣れていそうな人に聞きながら恐る恐る試してみる
こんな風に作るんだ…?すごいなぁ

折角なら薬の色も美味しそうかつ綺麗な感じにしたいよね
僕オリジナルというか
アーティストの血が騒ぐというか
その薬を塗料みたいに使って絵を描いたら効力アップ!
とかなんか凄くいいよね
なんだか気分がすっごくノってきたかも

よーし、色々試してみよう!
今日は完成するまで帰らないよ!ふふっ



●基本は大事!
 さて、パンやら飴やら苦いお薬やらが出来てはいるが、猟兵が皆、こう言う事になれているわけでもなければ、チャレンジャーでもない。
「回復薬の作成……あいにく、薬には詳しくないのですけれど」
「僕も、回復薬作りなんてやったことないんだよね」
 不慣れな環境に、ファレリア・リトヴァールとカナカナ・リッタリアは、少し困った風に首を傾げていた。
「じゃあ、これを読んでみたらどうかな?」
 そんな2人に烏護・ハルが差し出したのは、魔法薬調合の入門書。
「図鑑を探してたら見つけたの。判りやすいと思うよ?」
「まあ、ご丁寧にありがとうございます。何か、お手伝いが出来ると良いのですが」
「折角だから、僕も読んでみようかな」
 ファレリアとカナカナは、開いた入門書に視線を落として読み始める。

 別れて、ハルは別のテーブルに向かう。
「よしっ! これだけ図鑑があれば、何とか調べられるわよね?」
 幾つか植物の葉を並べ、その周りに持ってきた図鑑をずしっと積み上げた。
「やっぱりまずは薬草を、ちゃんと調べないとね」
 回復薬なら、まず切り込むのは薬草とハルは考えたのだ。
 この場には、色んな設備も、材料もある。
 何でも作れそうだが、だからこそ迷うし、慎重にもなる。
 陰陽道に明け暮れていたハルとって、魔法薬作りは慣れていない。特に魔法の植物の見分けなんて、経験のない分野である。
「ええと、薬草は……うん、これは大丈夫かな?」
 見た目から図鑑で調べ、その成分も調べながら、ハルは薬作りに没頭していった。

●ふぃーりんぐも大事
 一方、図鑑も入門書も、ろくに見ていない猟兵もいた。
「さてと。にじいろとろりんの残骸はまず素材に入れるとして」
 にじいろとろりんの残骸を当然の様にフラスコに投入すると、影杜・梢は他の材料を物色し始めた。
(「好き勝手できる滅多にない機会だ。不真面目と思われても、色々試してみよう」)
 梢を動かしているのは、興味と好奇心。
(「良いよね、好きなようにして良いって」)
 そこを良いと感じるのは、梢が幼少の頃から入院生活を送っていた事に関係しているのだろうか。
 何にせよ、一応、学園所蔵の魔法薬の教科書の回復薬のページを開いてはいるが、自分なりのアレンジを加える気満々であった。
 問題はその方向性である。
「いいね、この毒草っぽい色合い」
 禍々しい紫の葉っぱを摘んで、適当に千切ってパラパラ。
「このキノコも、いかにも回復薬っぽくないね」
 赤黒いまだら模様のキノコは、迷わずそのまま投入。
「こんなところに光る石が……入れちゃえ」
 輝く謎の鉱石も、躊躇なくごりごり削る梢の調合を、学生達が遠巻きに眺めていた。

 そして、遠巻きに眺められているのがもう1人。
「……ふぅ」
 口から大きなため息が零れている、ルトルファス・ルーテルガイトである。
 ため息は、多分、無自覚。
(「……すごく、疲れた」)
 身体はほとんど無傷でも、精神的な疲労が溜まっている。
(「これを使っても……流石に復活したりはせんだろう」)
「……ふぅ」
 ふとよぎった考えに、思わず何度か目のため息を吐きながら、頭に引っ付いたままのにじいろとろりんの残滓をぺりぺり剥がし、試験管に投入する。
 そんなルトルファスの背中で、アルダワの学生達が数名、顔を寄せて小声でヒソヒソと話していた。

 ――すごく疲れてるみたいだけど、大丈夫かな?
 ――にじいろとろりんのボスも倒したと聞いたよ?
 ――私も聞きました。きっと凶悪な敵だったのでしょう。
 ――それであんなに疲れて……すごい人なんだね。

 ああ、尾ひれ背びれが増えていく。
 3つの試験管に入れたにじいろとろりんの残滓に、それぞれ『青』『赤』『黄』の薬液を混ぜるルトルファスには、聞こえていないけれど。
(「蛍光ライトのような物にするなら……固める何かがいるな」)
 そして実験室を見回したルトルファスの目に、梢が削ってる輝く鉱石が目に入った。

「今ひとつ、弱いような……もう少し、何かを足したいですね」
 なにやら難しそうな顔をしている黒木・摩那の前にある鍋の中は――何と言うか、既にちょっと謎だった。
 まず並々と入っているのは、既存の状態異常回復薬。
 たっぷり入っている白い粉は重曹。アルコールも混ぜている。
 あと、何故か柑橘系の皮。
「あの……何を作っているのですか?」
 全く判らないと言った様子で、学生の一人が摩那に問いかける。
「洗剤です」
 ――その摩那の一言で、教室に衝撃が走った。
 さっきもパンとか飴とか出来てたけど、もう口にするものですらない。
 回復薬のかの字も関係なさそうであるが。
「先の戦いでですね。チョコまみれになって、あとが大変だったんです」
 一応理由を告げてみると、学生達の表情が変わった。
「もちろん、普通の洗剤でも汚れや匂いは落ちます。ですが、魔法薬でもっとお手軽に、つるとピカピカに綺麗にできるようにしたいです」
「……成程」
「戦闘中に綺麗に出来る薬……欲しいです!」
 頷く者、目を輝かせる者。
 反応は様々だが、特に一部の女子学生には突き刺さったようだ。
「いっそ洗剤も混ぜてみませんか?」
「つると……オリーブオイルとかどうでしょう!」
 提供される材料で良さそうなものを、摩那は迷わず足していった。

●混ぜるのは危険? 正解?
「あら、これは――」
「魔法で回復力を高める……?」
 入門書を隅々まで、じっくり読み込んでいたファレリアとカナカナは、やがてあるページに書かれた一節に目を止めた。

 ――魔法薬の効果は、属性を同じとするか近しい魔法で高める事も可能である。

 そして、その一節に近いことをしている者がいないか見回し――2人は頷くと、ぐつぐつと大鍋で煮込みながら、その上に手をかざしているハルの元へ寄っていった。
「それは、魔法……ですか?」
「あ、うん。薬に関する魔法書があったから、その術を使ってみてるの」
 ファレリアの問いに、ハルは鍋から目を離さず返す。
「成程……こんな風に作るんだ? すごいなぁ」
 鍋の中身を覗き混み、カナカナが感心した様子で呟く。
「でも、あんまり美味しそうな色じゃないんだね?」
「うん。アレもこれも、みたいな感じで数種類の薬草を煎じてみたのよ」
 カナカナが気にした色より、ハルは効果を重視した。
 その感性の違いが、カナカナのアーティストの血を騒がせた。
「これ、少し分けてもらっていい? 色んな色をつけてみて、薬を塗料みたいに使って絵を描いたら効力アップ! とか、出来たら凄くいいと思うんだ」
「ええと……で、出来たらいいんだけど。実は、本当に大丈夫かな? 変な反応起こしたりしないよね……って、段々と不安になってて……」
 カナカナの提案に、ハルは内に膨らんでいた不安を吐露した。
「では、私もお手伝いさせて頂きますの」
 それを聞いた、ファレリアが口を開いた。
「魔法が効果を高めるなら、薬の作成中に癒やしの歌声を聞かせる事でも、効果を高める事も出来るのではないかと思いますの」
 なお、学園の教師は面白い案だと、二つ返事でこれを快諾した。
 仮にファレリアが思った通りにならなかったとしても、害はない。むしろ皆の疲労は軽減されるだろうから。
 実験室中に、ファレリアの歌声が響き渡った。

「さて、こんなものでいいかな」
 響いて来た歌声を耳にして、梢はフラスコに向けて魔力を注ぐためにかざしていた手を下ろした。
 気分のままに様々な入れた材料を、梢は蒸留にかけて薬を作り上げた。
「色々と混ぜて試してみたけれど……吉と出るか凶と出るか」
 敢えて回復薬に向かないような材料も混ぜて、果たしてどうなったか。
 楽しみだ、と笑みを浮かべて、梢が蒸留器具から取り外したフラスコの中には、充分な量の薬液が揺れていた。

「……何となく、盾があった方がいい気がします」
 同じく、歌声が聞こえてきた頃。
 摩那は第六感が告げるままに、傍に置いていた盾代わりを広げていた。
 一部に「ひろってください」と書かれているどう見ても段ボールっぽいのは気にしてはいけないところだ。
 そして、次の瞬間――ぼんっ!
 摩那が色々混ぜていた鍋の中身が、爆発した。
 突沸のようなものでも起きたのだろうか。幸い、鍋が壊れるほどの爆発ではなく、単に中身が飛び散ったくらいで――。
「あら? これは……」
 曇った眼鏡を拭こうと指をかけたところで、摩那は気づいた。
 盾で止め切れなかった煙を浴びた髪が、さらさらのツヤツヤになっている事に。

 ――ぼんっ!
「はっ!?」
 小さく響いた爆発音に、ルトルファスの視線が思わずそちらに向く。
(「……流石に、大丈夫か。にじいろとろりんの復活ではなかったな」)
 危ない事でなければいいと爆発音自体気にしないで、ルトルファスは己の前の試験管に向き合った。
 3本の試験管それぞれの下には、アルコールランプ。弱火で加熱されているそれらに、ルトルファスは炎と水と風の魔力を別々に注ぎ込み続けた。

●完成品
「こ、これは一体……」
 学園の教師達も目を見張る、摩那の完成品。
 老若男女問わず、髪がさらさらのツヤツヤに。無い人は頭がピカピカに。
 その効果自体は何も問題はない。ただ、誰もが、どうしてこうなった? とならずにはいられないと言うだけであった。

「これは……毒と石化の抵抗反応が見られます」
 梢の薬を鑑定した教師が、目を丸くして告げる。
「へえ。吉になった――」
「但し服用するには、成分がキツスギマス」
 つまり、あれだ。ダメージ入るけど異常が回復する系。
「吉と凶が同居してしまうとはね……」
 思わぬ結果に、梢は苦笑を浮かべていた。

「安心してください。ちゃんと回復薬ですよ」
「ほんとっ? よかったぁ……」
 鑑定結果を聞いて、ハルがほっと安堵の表情になる。尻尾の方が揺れていた。
「良かったです。お手伝い、出来たでしょうか」
 ファレリアも、釣られて笑みを浮かべる。
 歌声の効果があったか――実証する術はないが、きっとあったのだろう。

「俺の思った通りになっていれば……」
 ルトルファスは己のマントと机の下を使い、簡易的な暗闇を作る。
 そこで薬品の入った試験管をかざしてみると――足した薬液の色、つまり『青』『赤』『黄』に淡く輝いていた。
「おお、その色綺麗だね。なに使ったの?」
 その光に釣られて、カナカナが興味深そうに覗き込んできた。
「こんなカラフルに出来るのもあるんだね。うんうん、なんだか気分がすっごくノってきたかも。よーし!」
 この色とあの薬を混ぜたら――そんな想像が膨らむ。
 カナカナも、薬の色づけを色々試してみようと言う気になっていた。
「今日は完成するまで帰らないよ! ふふっ」
 猟兵達の魔法薬作りは、まだしばらく続きそうである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日


挿絵イラスト