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スノウベリーと言ノ葉の旅

#アルダワ魔法学園 #戦後

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#アルダワ魔法学園
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#戦後


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●甘い時間
 石造りの迷宮内には、不思議なことに木々が立ち並んでいる。
 扉で数多の部屋が結ばれたその迷宮は、奥に進まなければ大きな危険は無いのだろう。その為かお遊び感覚で訪れる生徒達もいるとかいないとか。
 入り口に生る緑の木々に、揺れるように実る赤と白。
 ――その先の扉をくぐるのを、一体誰が待っているのだろう。

●春の味
「アルダワ魔法学園での苺狩りに興味はありませんか?」
 唐突に、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は猟兵に向けそう言葉を零した。
 話の元となるのは、よくあるアルダワ魔法学園で教師となり生徒に経験を積ませて欲しいと云うもの。生徒達は猟兵で無ければ、数多の冒険の経験を積んだことも無い一生徒。その為、今回はいつもより穏やかなお話なのだとラナは笑う。

「それで、ですね。まずはアルダワ魔法学園の迷宮内にある、苺狩りはどうでしょう?」
 そこで話は元に戻る。
 アルダワ魔法学園内には数多の迷宮が存在し、そこには様々な不思議が詰まっている。その中でも今回は、迷宮の入り口付近の為生徒達の手が行き届いた苺畑が目的地。
 石造りの迷宮と云う室内の中に、不思議と生える苺の木々は立派な緑色に色付き。赤や白の小さな宝石を沢山実らせている。不思議な迷宮の力と、植物が好きな生徒達の努力の賜物の果実を味わうのならば今が一番だという。
「此処で食べられる苺は、2つあります。簡単に言うと赤いのと、白いのです」
 赤は大きな果実で、しっかりとした果肉で正に苺と云う言葉が相応しい果実。しかし食べてみるとその味わいは優しく、甘味と酸味が丁度良い為いくらでも食べられるだろう。
 逆に白は、普通の白苺よりも真っ白な、正に純白と云う言葉が合うもの。不思議なことはその色だけでなく、触れた時は普通の苺なのだが、口に含むとじゅわりと溶けるように消えてなくなってしまうらしい。後に残るのは、しっかりとした苺の味わいと香り。
「どちらの苺を、どれだけ楽しむかは皆さんの自由です」
 勿論常識の範囲で、と注意を添えて。ラナは自分のことのように楽しそうに語った。

●コトノハ綴り
 そして、存分に苺狩りを楽しんだ後には――迷宮の奥へと、進むことになる。
 苺狩りを行った部屋の奥にある扉を開けると、そこには新たな部屋が待つ。広い部屋には数多の白い葉をつけた背の低い木々が立ち並び、宙には鳥が飛び回る不思議な室内。
 天井には青空の絵が描かれているが、壁や床はしっかりとした石造りになっている。
 飛び回る鳥は侵入者にも襲い掛からず、他に敵も存在しない。至って安全な部屋。
 けれどその部屋の先へと向かう扉には――鍵が掛かっているのだ。
「その鍵を、見つけないといけないんですけど。どうやら、普通の鍵では無いみたいで」
 ヒントは、辺りに生える木と飛び回る鳥。
 その鳥は囀ることなく、羽ばたく音のみを響かせ宙を飛び回る黒い鳥。――その鳥をよく見てみると、どの鳥も『文字』で出来上がっていると云う。
 『あ』と云う文字が集まり出来ていたり。短い単語で出来ていたりと様々な種類がいる。だが、文章になる程の言葉で出来た鳥はどうやらいないらしい。
 その鳥が木の枝に止まったその時――その下にある白い葉が、ひらりと落ちるのだ。不思議なことに、鳥が宿した言葉を記して。
 それは言葉を綴った葉の栞のような見目をしているという。そして、その栞こそがこの部屋の扉を突破する鍵となる。
「鳥さんは手を伸ばせばすぐに下りてきてくれると思います。そのまま、自分のお好きな木の枝に止まらせてあげればきっと」
 この迷宮を突破する為に『栞』を手にすることが出来るだろう。突破するのに必要な言葉に決まりは無いので、別に単語ひとつで出来上がった適当なものでも構わないのだが。
「折角なので……思い浮かんだ特別な言葉を、綴ってみるのも素敵だと思います」
 自分の為に。心に想う誰かに。そして、共に居る誰かに。
 想う相手に向け綴る言葉は、何も自身の手で綴るものだけではない。
 此の場で選んだ言葉は、きっと普段とは違う特別な意味を宿すから――。

「鍵を無事に開けられたら、ついに災魔との戦いです! 相手はもふもふで可愛いですし、あんまり危険じゃないですけど……油断はしないで下さいね」
 念の為、と注意を添えつつラナは紡ぐ。
 奥に待っているのは、モフィンクスというもふもふの身体に小さなおひげが愛らしい災魔。基本的には温厚故に危険は少ないが、れっきとした災魔なので討伐は必須。
 けれど、猟兵達ならばさほど苦労する相手では無いだろう。
 呑気にぼーっとしている者ばかりのようなので、思い思いに対処をすることが出来るはずだ。最終的にしっかり倒せば、その過程はお任せするとラナは微笑む。
 そのままお話が長くなりました、と添えると。少女は呼吸を整え最後の言葉を紡ぐ。
「戦いは待っていますけど、思いっきり楽しんで来て大丈夫だと思います!」
 だからどうか、楽しい春の一日になりますようにと。贈る言葉を添えてラナは猟兵達を迷宮へと送り出す。

 ――甘い甘い味と言葉。
 ――春のひと時に、溶けるように、刻むように、残しましょう。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『アルダワ魔法学園』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 日常(迷宮イチゴ狩り)
 ・2章 冒険(文字探し)
 ・3章 集団戦(モフィンクス)

●1章について
 迷宮の入り口辺りに出来上がった、アルダワ産苺畑です。
 種類は赤と白の2つ。お好きなだけ摘み取って、その場で食べることが出来ます。
 特に現地でクリームなどが用意されている訳ではありませんので、持参の必要があります。
 学園の生徒に話し掛けることは必須ではありませんが、声を掛ければクリームなど分けてくれるかもしれません。

『苺恋』
 大きく真っ赤な苺。
 しっかりとした果肉と、少し酸味のある爽やかな味わいです。

『淡苺』
 真っ白の苺。
 口の中に入れると、不思議なことに雪のように溶けるように消えます。
 果汁多め、味は控えめながらもしっかりとした香りと甘さがあります。

●2章について
 石作りの部屋の中、木々の生えている迷宮内。
 部屋の中には数多の『文字』で出来た鳥が飛んでいます。
 その鳥が部屋に生えている木に止まると、枝の白い葉っぱが落ちて鳥の文字を書き落ちてきます。
 その栞をかざすことが、扉を開ける鍵です。

 文字は『あ』等の一文字だったり『幸せ』などの簡単な単語で出来ています。
 お好きな組み合わせで、自分だけの栞を作って下さい。

●3章について
 2章の扉を抜けた先には、数多の段差がある狭めの部屋。
 その部屋で待ち構える、もふもふ『モフィンクス』との戦いです。
 彼等は基本的に、こちらから攻撃を仕掛けない限りはただぼーっとしているだけです。

 WIZで攻撃した場合は質問をします。基本的には『今欲しい物』を聞きますが、ご指定頂ければ他の質問で描写致します。

●その他
 ・全章通してほのぼのお遊び系の予定です。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・途中からの参加も大丈夫です。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『迷宮イチゴ狩り』

POW   :    いちごを食べます

SPD   :    いちごをお土産などにして持って帰ります

WIZ   :    いちごでスイーツを作ったりします

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●白と赤の祝福
 歴史を感じさせる石造りの迷宮。
 扉を開き、足を踏み込めば――そこは溢れる程の鮮やかな緑で埋め尽くされていた。
 爽やかな葉の香りに混じるのは、どこか瑞々しさを感じる甘い香り。上を見上げればしっかりと石の天井が見えるが、不思議なことに陽の光のようなものが射し込んでいる。
 此処は、アルダワ魔法学園にある地下迷宮。
 幾多の戦いを経て、大戦を経た今も尚災魔が残っているが、今足を踏み入れたこの場はなんとも穏やかな空気で包まれていた。
「転校生の皆さん、いらっしゃい!」
「今年は特に綺麗に実ったから、是非食べて下さい」
 猟兵達の姿に気付くと、苺畑の中に佇む生徒達が次々に歓迎の言葉を掛ける。彼等が語る通り、この場に広がる苺畑は迷宮に生っていた苺を、生徒達の手で育て上げたもの。年も性別も様々な彼等だが、皆この苺を大切に想う心は一緒なのだろう。
 丁度手に取りやすい高さに調整された葉の間から覗くのは、彼等の愛が注がれた真っ赤な果実と純白の果実。光を浴びてキラキラと輝く姿は、ルビーやパールのように美しい。
 大きさも形も様々なのは、果実が人々の愛と、自身の力で美味しく実ったから。
 さあ、お気に入りのひと粒を探して、そうっと優しく手を伸ばしてみよう。口に果実を含んだ瞬間は、きっと今まで感じたことの無い幸せに包まれるだろうから。

 今この瞬間は、災魔のことを忘れてしまってもよい。
 だって、楽しむことが彼等と仲良くなる秘訣だから。
狹山・由岐
瑞々しい緑葉の合間から漂う
鼻先を擽る芳しい馨に
石畳を往く足も止まる

…転校生、なんて呼ばれる年齢は過ぎたけれど
思えば此処は学園だったっけ
面映い気持ちを裡に仕舞って
会釈も早々に繁る小径の中へ

人目を避けて滑り込んだ先
熟れて赤々と色づく一粒と
輝かしく艶めく白い一粒が
品定めさせるように並んでいる
縁起が良い、なんて思ってしまうね

手塩にかけた逸品だもの
素材の味をしっかり堪能したいから
摘み取った新鮮な果実はそのまま口へ
じわり、一囓りすれば溢れる蜜
喉を潤してゆく甘く爽やかな滴
…うん、申し分無いかな

等身大の恋色に染る子も
淑やかさの内に想いを秘めた子も
誰かにとって幸せの味になるだろう
僕の幸せの味は――内緒。




 すんっと、鼻を掠める香りに狹山・由岐(嘘吐き・f31880)は微かに音を鳴らした。
 天を見上げれば穏やかな春の陽光が降り注ぎ、石造りの世界に生える瑞々しい緑へと降り注ぐ。キラキラと輝くその光景に眩しそうに由岐は瞳を細めると、鼻をくすぐる芳しい香りが一層強くなり思わず足を止めていた。
「転校生さん、この辺りにいっぱいあるよ」
 奥のほうから由岐見て、声を掛けてくれる少年。――自身よりも随分と年が下であろう彼は、学生と云うのに相応しい年頃なのだろう。由岐自身は転校生と呼ばれるには年齢は過ぎてしまった気がするけれど。
(「此処は学園だったっけ」)
 石造りの迷宮であるこの地が、学びの場だと云うことを改めて再認識する。
 此の地に住まうのは学生が殆どで、迷宮に足を運ぶのも学園の関係者ばかり。だからこそ、猟兵を転校生として歓迎してくれる彼等の様子とその懐かしい呼び名に、少しの面映ゆい気持ちが由岐の心を満たした。
 けれど、嫌では無い。
 どこかくすぐったい心地を胸に仕舞って、声を掛けてくれた生徒へ会釈をして彼は苺畑の中を歩み――人の少なそうな、一際色濃い葉を茂らせるエリアへと辿り着いた。
 視線を動かせば、熟れて赤々と色付くひと粒と。輝かしく艶めく白いひと粒が並んでいる。それはまるで、品定めさせるかのようで。
「縁起が良い」
 赤と白のその美しい色合いに、そんな心に想ったことがつい零れてしまう。
 この苺は、生徒達が手塩にかけた逸品。
 その味を楽しむのならば、摘み取った新鮮な果実を。そのまま味わうことこそが一番だと由岐は想い。丁寧にひとつ摘み取ると、そのまま口の中へと。
 ひとつ目の赤い果実は、噛むほどに溢れる蜜と苺の濃い香り。
 ふたつ目の白い果実は、口に入れた瞬間零れ出る喉を潤してゆく甘く爽やかな滴。
「……うん、申し分無いかな」
 雫を堪能した時、自然と零れた言葉と共に由岐の口許には笑みが浮かんでいた。
 この、等身大の恋色に染まる子も。淑やかさの内に想いを秘めた子も。きっと、誰かにとって幸せの味になるのだろうと――そう想い、そうっと彼は淡い青の瞳を細める。
 僕の幸せの味は――内緒。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・カンタレッラ
【揺蕩う魚】

苺狩りって初めてするなぁ、私
つーか、狩りって聞くと普通に獲物とか狩る方だと思っちまう
リルはやったことあんの?

どっちも食ってみたけど、私は赤い方が好みかな
歯応えあんの好きなんだよね
おーおー、リルもヨルもクリームとかチョコとか零すなよー
つか、ヨルって雑食なのな?苺食いすぎて腹冷やすなよー、また医務室のお世話になるぞ

クヴェレも食う?ってこら、ゼーヴィント横取りしない!たっく、油断も隙もねぇなこのお子さま……はいはい、好きに食べといで
んー……うっま、こんなに美味いのに坊ちゃんたちにお土産に出来ねぇのが残念だなー……
ふは、そうだなー
いっぱい楽しんでいっぱいお土産話持って帰ろうな、リル


リル・ルリ
【揺蕩う魚】

わぁー!ルクス、みてみて!
あっちにもこっちにも苺がある
苺摘みじゃなくて狩りなの面白いよね
僕は前に一度だけ

ご機嫌に苺を選び游ぐ
ヨルはもう両方をほっぺ一杯に詰め込んでる
ヨルは食いしん坊なんだ
そうだぞ
食べ過ぎ注意

ルクスは赤と白のどちらが好き?
わぁ赤いの!食べごたえがあって美味しい
こういうの、じゆしーっていうんだっけ
ふふー
僕は僕と同じ白のを食べるよ
口の中で雪みたいにとけちゃった!

ルクス、くりむを付けてみようよ
僕はちょこのしろぷ、持ってきたんだ!

ルクス達のやり取りをほのぼの眺めてまたひとつ、ぱくり
お土産は僕達のとっても美味しいお話だよ
たくさん楽しんで、甘く楽しく熟したとっておきを持って帰ろ!




「わぁー! ルクス、みてみて! あっちにもこっちにも苺がある」
 長い月光ヴェールの尾をひらりと宙に泳がせ、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)はキラキラと輝く水面のように、煌めく声を上げる。
 天から降り注ぐ陽射しは穏やかで、並び生る苺の葉は瑞々しく艶やか。此処が地下迷宮と云う室内とは思えない光景に、リルは嬉しそうに尾を揺らす。
「苺狩りって初めてするなぁ、私」
 彼の無邪気な後姿を見遣りながら、ルクス・カンタレッラ(青の果て・f26220)は思わず心に想ったことをぽつりと零していた。冒険譚を愛する海賊紳士である彼女にとっては、狩りと云えば普通に獲物を狩るほうを考えてしまう。
 けれど、この地は穏やかな場だと云うことは分かっている。緑の中から覗く赤へと、コーンフラワーブルーの瞳をちらりと向けた後。
「リルはやったことあんの?」
「僕は前に一度だけ」
 ふとした疑問を問い掛ければ、彼はこちらを振り返り艶やかな笑顔で答えた。美しい宝石のようなあの苺も美味しかったけれど――この地に広がる苺は、どんなお味だろう。
 ひらひらと尾を泳がせ苺の海へと入っていけば、いつの間にやら小さな子ペンギンのヨルは苺を堪能していたよう。クチバシを真っ赤に染めて、頬いっぱいに苺を詰め込んでは小さな両手を頬に当て嬉しそうに身体を揺らしている。
 ひとつ、赤い苺をぷちりと摘みながら。ルクスは式神である彼が雑食なことに少しの驚きと、次々に苺を頬張る姿に少しの心配を宿し。
「苺食いすぎて腹冷やすなよー、また医務室のお世話になるぞ」
「そうだぞ。食べ過ぎ注意」
 女子供に語るような口振りでひとつ注意をすれば、リルもこくりと頷いてヨルの頭をぽんっと軽く叩いた。注意を受けたヨルは、こくこくと素直に頷きながら少しだけ食べる速度を緩め、尚も苺を堪能している様子。
 そんな小さな子の様子に、ルクスが口許に笑みを浮かべていると。
「ルクスは赤と白のどちらが好き?」
 赤と白。迷うように細い指を動かしながら、リルが問い掛ける。その言葉にルクスは視線をヨルからリルへと移すと。今、口に含んだ白苺が溶ける様子を楽しんだ後――ごくりと果汁を飲み込んで、口を開く。
「どっちも食ってみたけど、私は赤い方が好みかな。歯応えあんの好きなんだよね」
 雪のように融ける白も魅力的だけれど。より苺らしい物は赤だろう。素直な感想を述べる彼女に頷くと、リルは彼女が好きだと述べた赤をひと粒口に放り込む。その直後、口に酸味と甘みが広がり、果肉から次々と満ちる果汁の旨味。
「こういうの、じゆしーっていうんだっけ」
 無邪気に笑いながら感想を零し、次は自分のような白の苺を手にして――口にした途端、ふわりと優しく溶けて消えた果実にリルは驚いたように瞳を見開く。
「ルクス、くりむを付けてみようよ。僕はちょこのしろぷ、持ってきたんだ!」
 更なる苺の楽しみ方を思い出し、キラキラと瞳を輝かせリルが紡げば。足元のヨルも欲しいとおねだりするようにぴょこんと跳ねる。そんな無邪気な彼等に、ルクスはくすくすと楽しそうに笑い声を漏らしながら。
「おーおー、リルもヨルもクリームとかチョコとか零すなよー」
 まるでお姉さんのように、注意を零す。――すると、彼女の足元で青の鱗を持つ海竜がじっとこちらを見ていた。その視線に瞳を返し、食べるかと赤い苺を差し出せば。
「ってこら、ゼーヴィント横取りしない! たっく、油断も隙もねぇなこのお子さま……」
 横から現れた純白の鱗を持つ翼竜が、クヴェレへと差し出した苺をぱくりと食べていた。翼と尾を揺らし、ご機嫌そうなその様子を見れば注意も続けられず。好きに食べといでと言うのが精一杯。その言葉を聞いた彼等は、お気に入りの苺を見つけようとじっと苺の葉の間を覗いていく。
 その様子を眺めながら――ルクスはまたひとつ苺を楽しみながら、心に想ったことを言葉にしていた。こんなに美味しいのに、お土産に出来ないことが残念だと。
 その言葉を聴き、彼女達のやりとりを微笑ましく眺めていたリルは柔らかな笑みを浮かべ、ひとつアドバイスをする。
「お土産は僕達のとっても美味しいお話だよ」
 たくさん楽しんで、甘く楽しく熟したとっておきを持ち帰ろう。
 明るく語られる彼のその表情と言葉に、ルクスは少し驚いたように瞳を開く。瞬き、ひとつ息を零した時――共に零れたのは、笑い声だった。
「いっぱい楽しんでいっぱいお土産話持って帰ろうな、リル」
 こくりと頷き、再び輝く苺へと手を伸ばせば――傍らの人魚も、嬉しそうに笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
十雉(f23050)と

いちごいちご
なんだよ、気分も上がるだろ

お前だってほら
みたらしたらふく食えるってなったらテンション上がんじゃないの
ふは。そいじゃ、今度は一緒にみたらし食いに行ってあげようねえ
なんて揶揄い交じりに

こゆとこにいちごが生るなんて不思議
なんかきれーに見えるよなぁ
フツーのと味は変わんないのかしら

まずは赤いのから
――これはよくあるやつだな
やっぱうめぇ

ほんっとうに真っ白だ
――どう?
まじ?溶けるいちご…
半信半疑でぱくり
――!
まじだった
こっちもうま

此処でしか食えないのが残念なくらいだわ
だろ。十雉もいちごさまの虜になった?
しょうがねーな
十雉が俺と一緒に来たいってんなら
来てやってもいいよ


宵雛花・十雉
綾華(f01194)と

やけにご機嫌じゃねぇか、綾華くんよ
大好きな苺が食えんのが楽しみかい?

あ、そこでみたらしを出してくんのは卑怯だぞ!
言い方は気になっけど
ちゃんと聞いたからな、今度一緒に来いよ!

迷宮に生えてる苺って聞くと特別感あるよなぁ
見た目はそこまで普通の苺と変わんねぇ気がすっけど

んじゃあオレも赤いのから食ってみよ
お、うめぇ!
甘酸っぱいっていうか、これぞ苺って味だよな

お次は白いのか…
味の想像がつかねぇや
恐る恐るひと口齧ると、みるみる口の中で溶けていって
!… 綾華、これすげぇぞ!ホントに溶けた!
騙されたと思って食ってみ

いやぁ美味いなぁ
綾華が苺好きになんのも分かる気がする
おう、また食いに来ようぜ




 注ぐ陽射しは室内にも関わらず春の穏やかさを宿し。瑞々しく茂る葉を輝かせる。緑の葉から覗くのは赤と白の艶やかな果実で――その色を瞳に映し、上機嫌に笑う青年に。
「やけにご機嫌じゃねぇか、綾華くんよ。大好きな苺が食えんのが楽しみかい?」
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は少しだけ揶揄るように、言葉を転がした。
「なんだよ、気分も上がるだろ」
 彼のその言葉と表情に、浮世・綾華(千日紅・f01194)はほんの少しだけ唇を尖らせる。いつも落ち着いている彼だけれど、気分が上がる程に大好きな苺を前にしては冷静ではいられない。その気持ちを伝える為に――彼は少し、思考を巡らせると。
「お前だってほら、みたらしたらふく食えるってなったらテンション上がんじゃないの」
「あ、そこでみたらしを出してくんのは卑怯だぞ!」
 的確な綾華の言葉選びに、十雉は見るからに動揺したように語る。そんな彼の分かりやすい反応に、綾華は思わず笑い声を零すと――。
「そいじゃ、今度は一緒にみたらし食いに行ってあげようねえ」
 仕返しのように揶揄い交じりに零されて、十雉は少し眉を寄せるけれど。今度一緒に来いよと、念を押すように紡げばまた綾華は笑いを堪えられずに口元に手を当てる。
 そんな彼の様子を横目で眺めながら、十雉が一歩踏み出せば辺りの緑が揺れ動く。薫る瑞々しい香りも、注ぐ陽射しも春の景色と変わらない気もするけれど。天にも壁にも映る岩の姿は此処が迷宮内だと語っているかのよう。不思議な景色に咲く苺の姿はどこか神秘的で、不思議で、特別な感じがすると彼等は想う。
「なんかきれーに見えるよなぁ」
 真っ赤に生る苺に触れながら、どこか感慨深げに綾華が語れば十雉も頷く。赤の苺は色も濃く、艶やかな姿は美味しそうに見えるけれど、それはよく知る姿でどこか安心する心地。手にした苺を、綾華が迷うこと無く口の中へと放れば。広がる酸味も甘みもその食感も、大好きなその味で満足そうに綾華は笑みを零していた。
「やっぱうめぇ」
 吐息と共に零れる言葉は短いけれど、それが綾華の素直な感想。
 満足そうな彼に倣い、十雉も一際色濃い赤の苺をひと粒口にすると。
「お、うめぇ! 甘酸っぱいっていうか、これぞ苺って味だよな」
 彼の口から零れる感想に、綾華は少し満足そうに笑ってみせた。――そのまま、緋とオレンジの瞳に映るのは純白。
 緑の中にぶら下がるその白は、普通では見ることが出来ないほどの白さ。白い苺は今までも見たことはあるが、どれもほんのりとピンク掛かっているのが普通だ。
「ほんっとうに真っ白だ」
 感心したように綾華が零せば、十雉も頷き恐る恐ると手を伸ばす。手にした感触は、普通の苺と変わらない。粒々も白の中にきちんとある、色以外は普通の苺。味の想像がつかないその苺を、恐る恐る齧ってみると――。
「! ……綾華、これすげぇぞ! ホントに溶けた! 騙されたと思って食ってみ」
 舌の上に転がれば、一瞬で果肉は消えてなくなり口に満たすのは甘酸っぱい果汁。ふわりと広がる香りは、消えてしまった苺の存在感を際立たせるようで。じっと様子を見る綾華に向けて、十雉は興奮気味に声を上げていた。
「まじ? 溶けるいちご……」
 そんな彼の言葉と反応に、綾華はどこか半信半疑に――そうっと唇へと苺を運び、ひと粒を口へと放ってみれば、みるみる果肉は溶けていく。
「――! まじだった」
 驚いたように瞳を見開く姿は少しだけ珍しい。儚く溶けて消えゆく苺の味を堪能するように舌を転がせば、此処でしかこの苺が味わえないことが残念に思う。
 だからこそ、このひと時は満喫しようと。次なる苺へと手を伸ばした時。
「いやぁ美味いなぁ。綾華が苺好きになんのも分かる気がする」
 己の髪に似た、純白の苺をひとつ手にしながら笑う十雉の言葉に、思わず顔を上げていた。苺を頬張る彼はとても嬉しそうで、その顔を見れば綾華もどこか満足げに笑い。
「だろ。十雉もいちごさまの虜になった?」
 少し不敵な笑みを浮かべ問い掛けてみれば、十雉は年齢よりも幼げな無邪気な笑みを浮かべ頷きを返す。
「おう、また食いに来ようぜ」
「しょうがねーな。十雉が俺と一緒に来たいってんなら、来てやってもいいよ」
 軽い言葉を紡げるのも、2人の間柄ゆえか。
 温かな陽射しの注ぐ迷宮内に、楽しげな声が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

イチゴ大好き
でも白いイチゴは初めて知ったわ
興味あるからどっちも食べたい!
パパは白い方食べた事ある?
じゃ、初めてがお揃いね!

イチゴはこう実ってるのね
目の前の赤いコを摘んで口へ
甘くてすっぱくて、味が濃くて、おいしい!

パパ!
とびきり美人なイチゴさんを見つけて交換こしない?
パパは白を、
ルーシーは赤を
なんて、どう?

イチゴ畑をぐるぐる
下から横から眺めて
ど、れ、に、しようかな
たっぷり時間をかけて選び抜いたひとつ
大きくて、形もキレイで、色もいい!
うん、このコにしよう

パパは見つかった?ルーシーはこれ!
さあどうぞ!
自慢の赤をパパに差し出す
お返しの白をぱくり
……甘くて、溶けた!

白も赤も
まだまだ楽しみましょう


朧・ユェー
【月光】

甘酸っぱい匂い
嗚呼、苺の匂いですねぇ
僕も苺好きですよ
確かに白い苺は初めてですねぇ
いえ、食べた事無いです

白い苺を一口
なるほど蕩けるように無くなりますね
赤い方も美味しかったですか
美味しそうに食べる姿を優しく見つめて
これはどう作ったのでしょう
好奇心で苺を見つめてると

小さな可愛い声が可愛い提案をしてくる
ふふっ、それは楽しそうですね

くるくる回って探す可愛い子にくすりと笑って
美味しい子はどれでしょうか
上の方の奥にひっそりと食べられずにいた真っ白な子
この子にしましょう

おや、とっても美味しそうな真っ赤な苺ですね
勿体無いですが頂きます
ん、美味しい
じゃ僕の子をどうぞ

えぇ、どちらも美味しそうですね




 苺は大好き。
 けれど初めて見た純白のドレスに、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は驚いたようにぱちぱちと大きな瞳を瞬いた。
「興味あるからどっちも食べたい! パパは白い方食べた事ある?」
 迷宮内と云う室内故か、色濃い苺の甘酸っぱい香りを深く深く吸い込み楽しんでいた朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は、無邪気に見上げる少女の姿に笑みを深めると。
「いえ、食べた事無いです」
 首を振り、そう零した。
 少女と同じ、苺が好きだという感覚も。白の苺が初めてだという感覚もどこかくすぐったく感じていると、お揃いだと嬉しそうに笑う少女の姿に更にユェーの笑みは深くなる。
 さわりと、どこからか吹く風に揺れる色濃い緑の葉。その葉の隙間から零れるように実る真っ赤な苺の姿に、感心したようにルーシーは息を零すと。小さな手を伸ばしひと粒に手にし、そのまま口の中へとぱくり。
「甘くてすっぱくて、味が濃くて、おいしい!」
 瞳を開き、キラキラと輝かせて、嬉しそうに声を上げた。そんな小さな少女の様子を微笑ましく眺めながら、ユェーも白い苺を口に含めば一瞬で雪のように消えゆく姿に、無言のまま金色の瞳を見開き、仄かに驚きを露わにする。
「これはどう作ったのでしょう」
 視線は、愛らしい少女から珍しい苺へと移る。じっと好奇心に満ちた眼差しを送っていると――ちょんっと少女が、ユェーの服の裾を引っ張ってきた。
「パパ! とびきり美人なイチゴさんを見つけて交換こしない?」
 視線を少女の金の髪から覗く青い左目へと向ければ、キラキラと期待に満ちた眼差しと共に零れる言葉も輝きに満ちている。――パパは白を、ルーシーは赤を。その小さな可愛い声で、可愛い提案をしてくる少女の愛らしさに彼は。
「ふふっ、それは楽しそうですね」
 口元に手を当て、穏やかに笑みを浮かべながら迷うこと無く頷きを返す。
 優しい彼の反応に、ルーシーは花咲くような笑みを浮かべるとくるりと向きを変え苺畑の中を歩み出す。ひらりひらりと淡いふたつの金の髪を揺らし、黒のスカートの裾が踊る姿は彼女の楽しげな心を表すかのように軽やか。
「ど、れ、に、しようかな」
 ひとつひとつ、じっくりと。とびきりな苺を見つけようと、ルーシーは楽しそうに苺を選んでいる。――下から、横から、様々な角度から一番良い苺を探そうとするその姿が可愛らしく、遠目からユェーは思わず笑みを零していた。
 彼女を静かに眺めているのは楽しい。けれど、今はやるべきことがあると――目的を思い出し、彼はそのまま広い迷宮内をぐるりと見遣る。
「美味しい子はどれでしょうか」
 彼がそう無意識に零した時――不思議と、視線に止まった白があった。
 それは濃い緑の上。奥のほうにひっそりと潜んでいた為、食べられずにいた真っ白な子。光を浴びてキラキラと輝くその色がユェーの瞳に強く焼き付き、彼がそっとそのひと粒を摘み取った時。
「パパは見つかった? ルーシーはこれ!」
 パタパタと足元を小走りで駆けてくる少女の姿。彼女の小さな手で輝く真っ赤な苺はとても大きく、苺らしい美しい形と艶を抱いている。
「おや、とっても美味しそうな真っ赤な苺ですね。勿体無いですが頂きます」
 その鮮やかさに目を奪われたユェーは、屈んでルーシーが差し出してくれた苺をぱくりと一口で。その瞬間、口の中に広がる爽やかな香りと酸味と甘みの丁度良さ。苺らしいその味わいは、先程口にした白の儚さとは全く別の味わいで。その味はルーシーが自身の為に選び抜いてくれた苺だと思うと、尚美味しく感じる。
「ん、美味しい」
 素直に感想を零せば、少女は仄かに頬を染め嬉しそうに笑みを零す。そのまま、彼女の口許へとお返しに白い苺を運べば、ルーシーはぱくりと食べ――。
「……甘くて、溶けた!」
 口を閉じた瞬間、消えゆく果肉と口に広がる味わいに、驚いたように声を上げる。果汁が零れないようにと両頬に手を当て、キラキラと輝く瞳は無邪気な子供そのもので。そんな少女の姿を見ればユェーの頬も穏やかに緩む。
 白と赤の味わいは、苺だけれどまったく違う不思議な色。
 世界に溢れる緑の中に秘める新たな色を、もっともっと見つけよう。
 ――彼等はきっと、食べて欲しいと待っているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

見事なはぁとの形をしているね
白と赤のはぁと苺を手に無邪気に笑う、私の巫女の愛おしきこと
いちご狩りは初めてだから、サヨに教わりながら摘んでは口に運び
甘酸っぱい果実を楽しむ
噫、こうして食べるのが私も好きだよ
何より楽しげにするサヨの姿が嬉しくて
甘い苺が更に甘く感じるよ

私かい?
今は白かな
淡雪のようにとけた不思議な苺を味わいながら
振り返る

──ふれた、柔らかな一瞬

唇の隙間、押し込まれた赫
口内に広がる甘酸っぱい苺の香
淡雪にとけた白に、甘酸っぱい赤が加わって
私を、心を桜色に染めていく
はにかむ悪戯なきみに、釘付けになる
触れたのは苺で、それで、でも…ふれた
確かに

─ 苺恋

その名の通り
トンとなにかが胸裡におちた


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ、みて!ハート型のような大きな苺を摘んだのよ
赤と白を摘んで得意げに神にみせ

そう、上手に摘めたわねカムイ
何かをつけるのもいいけれど私はそのままがいっとう好きよ
カムイのような赤の爽やかな酸味を楽しんでから
白珠人魚のような白の淡く解ける甘さを楽しむの
どちらも美味しくて好き

カムイは今どちらを食べているの?
白、……
カムイ
名を呼ぶ
桜唇に、苺恋を一粒咥え携えて
そうと、振り向いた神の唇に押し当てる

とろけるような視線が絡んだのは一瞬
苺色に紅潮する頬を隠して笑う

ストロベィキス──なんてね

照れ隠しに後ろを向いて、己の唇を抑える
噫、鼓動が五月蝿いわ

甘い、甘い苺恋の味に染まる心に

──悪くないと笑みが浮かぶ




「カムイ、みて! ハート型のような大きな苺を摘んだのよ」
 頬を染め、笑いながら誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が差し出したのは愛らしいハート型の赤と白の苺。その見事な苺と――そして何より、嬉しそうに無邪気に笑う彼の姿に、朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)は笑みを深めると。
「見事なはぁとの形をしているね」
 こくりと頷き、同意を示す。
 そのままカムイはぐるりと辺りの苺を見渡した。色濃い緑の中から覗く赤と白。その果実をどうすれば良いのかと戸惑うように指を揺らせば、そうっと隣から櫻宵が手を伸ばし、苺狩りが初めてだと云う彼の見本になるべくひと粒摘み取った。
 櫻宵の深い紅の爪の先に輝く赤を見て、そうやるのかとカムイは溜息を零す。苺と向き合い、自身の爪で果実を傷付けないようにと細心の注意を払いながらひとつ摘めば。
「そう、上手に摘めたわねカムイ」
 穏やかな笑みと共に、櫻宵が語り掛けてくれた。
 摘み立ての苺が初めてならば、そのまま苺を口にするのもカムイにとっては初めて。どうすれば良いのかと戸惑っていると、櫻宵が何もつけずにそのままが一等好きだと言うから、彼も倣いそのまま赤を口に運ぶ。
 苺の果肉を楽しめば、口に広がるのは爽やかな酸味と確かな果実の甘さ。春の訪れを感じるその味わいに、嬉しそうにカムイは瞳を細めると。
「噫、こうして食べるのが私も好きだよ」
 ――幸せそうに、静かに零した。
 初めての経験も。彼とこの味を共有出来たことも。そして何より、楽しげにする櫻宵の姿が嬉しくて。甘い苺が更に甘く感じると、瞳を細め彼は心に想う。
 カムイの言葉に櫻宵は嬉しそうに笑うと、自分も手にしていたカムイのような赤く爽やかな苺を楽しんで。次に楽しむのは白珠人魚のような、白の淡く溶ける甘さ。
 どちらも、甘く美味しい。
 けれど違うその味わいに――どちらも美味しくて好きだと、櫻宵は瞳を細め微笑む。
「カムイは今どちらを食べているの?」
 ちらりと隣を見れば、すっかり慣れた様子のカムイが白い苺を口に放ったところだった。じゅわりと雪のように一瞬で儚く溶ける苺を食べる彼をじっと見て――ふと、櫻宵は思いついたことがあり唇を開いた。
「カムイ」
 名を呼ばれれば、再び戻していた苺への視線から。顔を上げカムイは櫻宵を見るけれど――その瞬間、唇へと押し当てられた感触に驚いたように瞳を見開く。
 彼の眼差しのすぐ近くには、桜霞。
 ふわりと香る苺とは違う香りを感じながら、仄かに開いた隙間から滑り込む香りと味わいに、ほぼ無意識のように口を動かしていた。――広がる甘酸っぱさに、不思議と心がとくんと鳴る。淡雪に溶けた白に、甘酸っぱい赤が加われば。カムイを、彼の心を桜色に染めていく。
 視線の先の桜霞は悪戯な笑みを湛え、そうっと離れればくるりと背を向けてしまった。すっかり苺色に紅潮する頬をカムイに感づかれないようにと、両手で覆いながら櫻宵は背からひとつ紡ぐ。
「ストロベリィキス──なんてね」
 紡がれる言葉にまた、カムイの心がとくんと鳴った。
 そのままそうっと、自身の唇へと手を伸ばす。
 此の唇に触れたのは確かに苺。それで、でも……確かに触れたのだ。微かに震える指先を感じ、口に満ちるこの味わいは正に。
 ――苺恋。
 その名の通り。
 トン、と何かが胸裡に落ちる感覚に。カムイは思わず立ち尽くす。
 そんな彼の様子は、背を向けている櫻宵には分からない。逸る鼓動は彼には聞こえていないだろうけれど、櫻宵の身体に、心に強く強く響き渡る。震える手元の唇は、微かに熱を帯びてしまったかのよう。
 甘い、甘い苺恋の味に染まる心。
 ――悪くない。
 そう想いくるりと振り返った櫻宵の口許には、悪戯な笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィリーネ・リア
綺麗に実ったルビーの赤とパールの白
生徒さん
良かったらぼくとご一緒して下さらない?

手に持ったのは二種のチョコソース
ミルクとホワイトは実りに添えるため

ぼくが先に手を伸ばすのは赤ですわね
赤は大好きなあの子の炎にも似て
良かったらご一緒にってぼくの持参したソースを差し出しますわ
一緒に食べたい魔女の我侭を聞いて下さる?とふわり咲って
酸っぱさも凡て、記憶に根付く彩

白、何色にも染まっていない色
此方も頂きますわね
あら、うふふ、雪みたいに溶けてしまいしましたわ
きっと食べた人の色に染まる子たちですのね

これはきっと素敵なお土産話になりますわ
生徒さんたちに素敵なひと時にお礼を告げて
魔女は歩む、赤と白の祝福の余韻を残して




 色濃い緑の中、綺麗に実るのはルビーとパール。
 ふたつの色を温かな茜の瞳に映すと、フィリーネ・リア(パンドラの色彩・f31906)は優雅に笑いながら、ひとつ問い掛ける。
「生徒さん、良かったらぼくとご一緒して下さらない?」
 小柄な愛らしい人形少女に誘いの言葉を述べられて、嬉しそうに女生徒が笑った。大きく頷き彼女の隣を歩く赤い髪の少女を見上げながら、フィリーネは赤へと手を伸ばす。
 赤は、大好きなあの子の炎にも似ている。
 だから思わず、こちらへと手を伸ばしてしまったのだろう。彼女の手袋の中で輝く赤は艶々と美しく、見ているだけでも心が躍るようで。そのまま彼女はミルクとホワイトのソースを、女生徒へと差し出した。
「一緒に食べたい魔女の我侭を聞いて下さる?」
 優雅に咲く笑顔の花。その言葉と笑みに、少しの戸惑いを少女は浮かべるけれど。
「良いのでしょうか? その、……嬉しいです!」
 返るは笑顔の花。ふたつ咲き誇る花と共に、赤にチョコソースを絡めれば、酸味と共に甘味が口の中へと広がり沁みていく。
 嗚呼、これは――酸っぱさも凡て、記憶に根付く彩。
 瞳を閉じ、静かに赤い苺を堪能していると、声が掛かりフィリーネは瞳を開けた。
「こっちの苺もどうぞ。今年は特別に綺麗に出来た自信作なんですよ」
 少女が指差すのは純白の苺。仄かな赤みさえ帯びない見事な純白は、何色にも染まらない色で、食べて欲しいと語り掛けるように艶やかに輝く。
「此方も頂きますわね」
 少女の勧めにこくりと頷き、ひと粒摘み取り口へといれれば。
「あら、うふふ、雪みたいに溶けてしまいしましたわ。きっと食べた人の色に染まる子たちですのね」
 少し驚いたように瞳を見開いた後、口の中の果汁を堪能しつつフィリーネは優雅に笑んだ。彼女のその言葉と反応に、女生徒は嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら。
「そうでしょう、こんな苺は此処でしか食べられませんよ!」
 どこか誇らしげに、そう告げる。
 そう、この場は生徒達の手によって保たれている場。美味しい苺を更に美味しくする為に、日々頑張っているのだろう。
 そんな少女の姿も含めて――これはきっと、素敵なお土産話になるだろう。
 ひとつ優雅な礼をして、フィリーネは生徒へと素敵なひと時の御礼を告げる。
 さあ――魔女は再び、歩み出さなければいけない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白神・ハク
【幸先】

赤い苺と白い苺だァ。
どっちも僕の好きな色だよォ。
僕は両方食べるよ。

赤い苺は粒が大きいね。
一番大きな赤はどれ?
僕の目と同じくらい真っ赤で
同じくらい大きな苺が食べたいなァ。

赤い苺は安心安定の味だよォ。
いつもより大きいから贅沢な気分だね。
白い苺は赤よりも甘くないかな。
その代わりに口の中で消えちゃうんだよ。
本当だよォ。
二人とも食べた?

両方ともおいしくて止められないねェ。
ヴィリヤちゃんもエンティお兄さんもどっちの苺が好き?
ンフフ。選べないよね。

僕はショートケーキが好きだよ。
さっぱりした白いクリームと甘酸っぱい苺が好きなんだァ。
苺大福もおいしいよねェ。
白いから好きだよォ

ヴィリヤちゃんに作ってもらお


ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
二種類あるなら両方楽しみたいよね。
赤いのは大きいね。
ハクさんの目と同じくらいの苺はあるかな?
これは少し小さいかな?
こっちのは大きいからどうかな?
白いのも選んだら食べてみよう。

赤いのは大きいのに食べやすい味でホッと安心する感じがするし、
白いのは本当に消えるね!
私はどっちか選ぶなら食べてビックリな白い方かな。

苺のスイーツなら、うーん。
あ!苺大福かな!
前に食べてモチモチ食感と
甘酸っぱいのが良いなって思って。

エンティさんはどんな苺スイーツが好き?
二人のを聞いたら覚えておいて
後で機会があったら作ろうっと。
うん、いつでも作るよ。


エンティ・シェア
【幸先】

美味しそうな苺がたくさんだね
二種類あるならぜひ食べ比べてみないと

どの苺も美味しそうで、どれを頂こうかうろうろ
ハク、ヴィリヤ嬢。この辺の苺は美味しい?
目移りしてしまってなかなか選べなかったけど…
君達が美味しそうに食べてるから、私もこの辺りから拝借しようかな

ハクの感想を聞きながら、ひと粒ずつ手のひらに乗せて食べ比べ
おや、本当だ。なるほど溶けるほど柔らかな口当たり
白の後に赤、また白と…これは、無限に食べられてしまいそう
どちらが好きかなんて、選べないなぁ
ヴィリヤ嬢は如何だろう

これはスイーツにしても合いそうだ
ねぇ、二人は苺のスイーツならどんなのが好き?
なるほど…私も、今はケーキがピンときてるかな




「赤い苺と白い苺だァ」
 緑の中、生る赤と白を見つけ白神・ハク(縁起物・f31073)は嬉しそうに言葉を零した。どちらも、彼の好きな色。だからだろうか、こんなにも心が浮き立つのは。
 そんな彼の姿を見て、エンティ・シェア(欠片・f00526)は笑みを零す。髪で隠れぬ左目を細め、静かに彼の紡いだ赤と白を見つめ。
「二種類あるならぜひ食べ比べてみないと」
 まるで使命のようにそう紡げば、こくりとヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)も頷きを返す。――両方を楽しみたいと云う想いは、自然と重なった。
 カツリと石床を打つ足音は三人分。
 注ぐ陽射しのような光に輝く苺は艶やかで、本当に宝石のように美しい。赤と白、見比べればその違いは色だけではないことが分かり。
「一番大きな赤はどれ? 僕の目と同じくらい真っ赤で、同じくらい大きな苺が食べたいなァ」
 右へ、左へ。彷徨うハクの眼差しは、目の前の苺と同じような赤色。その瞳をじっと見上げて、彼の紡ぐ通りの苺を探そうとヴィリヤも赤へと視線を落とす。
「これは少し小さいかな? こっちのは大きいからどうかな?」
 じっと彼の瞳を見て、あっち、こっちと照らしてみる。これぞと云う苺が見つかれば、ヴィリヤはその苺をハクへと差し出して――残る苺は自身のものとして、自然な手付きで口へと運ぶ。
「ハク、ヴィリヤ嬢。この辺の苺は美味しい?」
 並ぶ苺は溢れる程で。色が選べなければこれというひとつを手にすることも出来ずに、エンティは彷徨いつつも先に頂く彼等へと問い掛ける。彼のその様子に、二人は笑みを零すと大きく頷いた。
「赤い苺は安心安定の味だよォ。いつもより大きいから贅沢な気分だね」
「白いのは本当に消えるね!」
 大きく安心な苺と、甘さ控えめ食べやすくも不思議と消える白の苺。
 両方を既に楽しんだハクとヴィリヤの口から零れる話は、事前に聞いていた通りだけれど。いざ目の前で感想を聞けば、確かな情報にエンティは微かな驚きを瞳に宿す。
「私もこの辺りから拝借しようかな」
 君達が美味しそうに食べてるから――未だ悩むように緑の瞳を揺らすけれど、意を決してエンティは手を伸ばした。まずは、自身の髪の色と同じ赤を口に。そして白を口にすれば、雪のように融けるその心地に驚いたように瞳を見開く。
「おや、本当だ。なるほど溶けるほど柔らかな口当たり」
 白の後に赤、また白……無限に食べられてしまいそうだと笑みを零せば、確かにと二人から頷きが返ってくる。
 同じ苺でも、全然違う味わいと食感。それは特別なこの地のみの味わいだけれど――頬張りながらふと、ハクの頭に疑問が過ぎる。
「両方ともおいしくて止められないねェ。ヴィリヤちゃんもエンティお兄さんもどっちの苺が好き?」
 赤と、白と。
 両方を手にしたまま彼等は顔を上げ、ひとつ瞳を瞬く。そのまま苺をじっと見て、エンティは困ったように苦笑を零した。
「どちらが好きかなんて、選べないなぁ。ヴィリヤ嬢は如何だろう」
「私はどっちか選ぶなら食べてビックリな白い方かな」
 素直な感想を零すエンティに続き、考えた後ヴィリヤは応える。確かに、この地限りの味と考えれば白の淡苺は随分と特別な感じがする。
 味も、色も、そして食べた後も。
 全てが違う二つの苺は、きっとお菓子に添えても美味しいだろうと。そうエンティは思えば、更なる疑問が彼の心に浮かんだ。
「ねぇ、二人は苺のスイーツならどんなのが好き?」
 この苺を添えるのならば、何が良いだろうか。そんな疑問を二人へと投げかければ、数多のお菓子を思い浮かべた後、先に口を開いたのはハクのほう。
「僕はショートケーキが好きだよ。さっぱりした白いクリームと甘酸っぱい苺が好きなんだァ」
 それならばやはり、白に映える赤が合うだろうか。しっかりとした果肉の感触も、柔らかなスポンジと生クリームに合うだろう。そんなことを考えヴィリヤを見れば、彼女は暫し悩み――思い浮かんだ甘い味に、ぱっと金の瞳を見開いた。
「あ! 苺大福かな!」
 モチモチ食感と、甘酸っぱいのが良いなと思ったのだと。素直に零しながらあの味を思い出せば、この苺たちもきっと合うと夢が膨らむ。
「なるほど……私も、今はケーキがピンときてるかな」
 そんな楽しそうに語る彼等の姿を見て、エンティは頷きを返しながら自身もハクと同じお菓子が浮かんでいることを素直に零した。
 共通点は赤と白の組み合わせ。けれど味わいは全く異なるお菓子は、今この瞬間は食べられなくともきっといつか――。
「後で機会があったら作ろうっと」
 そんな、弾む言葉をヴィリヤが零せば。期待の眼差しをハクは送る。
 けれど新たな味わいは、また今度の機会に。
 今は此の地でしか味わえぬ、果実の赤と白を楽しもうと――彼等は再び、鮮やかな葉の中を覗き込み手を伸ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
あきら(f26138)と

へぇ、好きに食べて良いの?
君らが育てた結晶だろうに
でもまぁ、その方が良いのなら頂こうか

沢山実っているからどれを選ぶか迷うな
喋らずともお喋りな視線を横目に
摘み取るは手頃なサイズの一粒
口の中に広がる芳醇さは確かに『綺麗に実った』ね、と頷き
其方は如何と君の手元を覗き込もう

そんなに大きなものを頬張ると喋れなくなるじゃない
零さない様にねと告げつつ、一口で食べられる物を選ぼう

うん?
――嗚呼、其が白い方
てっきり未だ熟していない物かと

苺と呼ぶには軽い
けれど味は確り苺だ。不思議
瞬く空色は言葉よりも雄弁で

うん、美味しい
から、もっと頂戴

白い果実を共に食みながら
飽くまで春色の一時に舌鼓を打とう


天音・亮
まどか(f18469)と

わあわあ!苺!
食べていいの?やった!

そわそわわくわく
まどかが食べるのを眺めて様子を見届ける
“おいしい”と伝える雰囲気がなんとなくわかる
一層期待膨らませ手にした大きな一粒
いただきます!
っん~!おいしい!
こんなに果肉がしっかりしてるのにちゃんと最初から最後まで甘酸っぱさが広がるね
両頬に手を添え落ちそうなほっぺを押さえるように

あ、まどか!白い苺も食べてみよう!
きみと私の手に一粒ずつ
口に入れた途端溶けるように消えた
瞳見開ききみを見る
表情が何よりも物語ってるかもしれない

ふふ、おいしいね
きみのおねだりに嬉しげに微笑んで摘まんだ新しい一粒を
はい、どうぞ

楽しいひとときを心行くまで一緒に




「わあわあ! 苺! 食べていいの? やった!」
 目の前に広がる緑に赤と白の鮮やかな光景に、天音・亮(手をのばそう・f26138)はキラキラと瞳を輝かせはしゃいでいる。彼女の様子を、にこにこと苺畑で世話を続ける生徒達はどこか微笑ましそうに眺めていて――そんな彼等を見て、旭・まどか(MementoMori・f18469)は淡い髪の奥の瞳を静かに細めた。
「へぇ、好きに食べて良いの?」
 君らが育てた結晶だろうにと、想うけれど。そのほうが良いのならと彼はじっと緑の中に生る赤と白を見遣る。
 沢山実っているからどれを選ぶか迷う――その心を表すかのように、彼の指先がゆらゆらと揺れる。美味しいという正解はあるかもしれないけれど、これが良いという正解は存在しないから。より一層まどかの心を悩ませるのだろう。
 あっちへこっちへ移る視線。その視線の端で、ワクワクとどこか期待の眼差しを向けてくる鮮やかな空色を横目に一瞬だけちらりと見て。また視線を苺へと戻し、まどかはひと粒の赤い苺を手に取ると――迷うこと無く、自身の口の中へと。
 瞬間、広がる芳醇さに口許を緩ませ、頷きは『綺麗に実った』ねと賛辞の合図。
 そんな彼の様子に、美味しいと云う気持ちが籠っていることが亮にはなんとなく分かる。彼の仕草と表情に嬉しそうに微笑んで、一層期待を膨らませて。亮が輝く眼差しでひとつ選んだのは、とびきり大きなひと粒。
「いただきます!」
 大きな声で挨拶をすれば、辺りの生徒にも聞こえたのか嬉しそうな笑みが返ってくる。彼等の様子に気付いているのかいないのか、亮は大きく口を開けて苺を一口で。しっかりとした果肉を噛めば、口に広がる果汁と爽やかな香り。
「っん~! おいしい! こんなに果肉がしっかりしてるのにちゃんと最初から最後まで甘酸っぱさが広がるね」
 両頬に手を添えるのは、美味しさに落ちそうな頬を支えるように。手に隠れて仄かに染まる頬もまた、彼女の感動を表しているようで。そんな、素直に表現する亮の様子を見て、大きな果実を頬張ると喋れなくなるとまどかは零す。
「零さない様にね」
 ひとつ忠告を零した後、彼自身は一口で食べられるサイズを選ぼうと苺へと向けば。
「あ、まどか! 白い苺も食べてみよう!」
 先程の忠告も一瞬で、亮は楽しそうに笑むとまどかへと掌の中の果実を見せた。そこには、正に純白と云う言葉が相応しい、ほんの少しも赤みの掛からない白い苺。
「うん? ――嗚呼、其が白い方」
 彼女の言葉に、まどかは一瞬驚いたように瞳を瞬く。未熟そうにも見えるその色合いだけれど、それは正真正銘の珍しい此の地だけの品種。意外そうに紡ぐまどかの手へと、亮は苺を転がすと――ふたりは一緒に、口の中へと苺を転がした。
 舌への重さはほんの一瞬。
 ころりと転がったかと思えば不思議と熱に触れた雪のように苺は溶け、後に残るのは果汁と苺の甘くも爽やかな味わい。
「っ!」
 あまりのことに亮は瞳を見開き、じっと傍らのまどかを見る。――彼は、口許を押さえながら。けれど変わらぬ表情で、ごくりと喉を鳴らすと唇を開く。
「苺と呼ぶには軽い。けれど味は確り苺だ。不思議」
 淡々と零れる言葉こそが、彼の心からの感想だ。それを分かっているから亮はこくこくと頷きを返し、口の中に残る果汁を飲み干した。
「ふふ、おいしいね」
 嬉しそうに笑い、まどかをじっと見る亮。その青をじっと見つめ返して。
「うん、美味しい。から、もっと頂戴」
 まどかは頷きと共に、もっとと手を差し出した。そのおねだりに亮は嬉しそうに微笑むと、彼の口に丁度良さそうな白い苺を探して茂る緑を覗き込む。
 後に残らぬ軽い味わい。雪のような儚さ。その全てに驚きを隠せず、ふたりは更なる発見を求めて苺を探す。
 飽きるまで堪能出来ることが、苺狩りの醍醐味だから――春色のひと時を、楽しもう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パウラ・グラーテス
アリス(f27443)と
黴た、煤けた本だけがわたしのせかいの全てだった
童話の中には沢山の『ゆめ』が詰まっていて
宝石のようなタルトや果肉を残した艶やかなジャム
描かれていたそれらの、なんて美味しそうなこと!

うふふ、じつはね
わたしもほんもののいちごは、はじめて!

振り向きざまに、真っ赤な一粒を彼女の口元へ寄せてみせ

わたしね
ほんとうはあかいろがすきなの

そのいろをなくしてしまったから、とは
まだ口には出せなかったけれど

差し出された『わたしのいろ』はとびきり甘くて
彼女の表情の僅かな変化が嬉しくて
緩んでしまう頬を隠すことなんて出来なかった

アリス、おみやげにいくつか頂きましょう
つぎはこれで、お菓子を作るんだから!


アリス・ランザデッド
パウラ(f31973)と

迷宮に足を踏み入れれば、ふわりと香る甘い匂い
アリスは目をほんの少し見開いて、辺りを見渡していた

パウラの問いかけに、アリスはふるふると首を左右に振って答える
記憶の無いアリスには、苺の存在さえ知らないのだ

初めて見たわ。真っ赤な果実に真っ白な果実
まるで薔薇の女王の庭のよう

パウラが楽しそうに話す内容も、アリスにとっては新鮮だ
これが様々なものに使われているとは想像もつかない

あぐ……あまい、けれどちょっときゅっとなるわ

パウラに差し出された苺を口に含み咀嚼する
初めて食べた苺の味に驚きながらも、アリスは嫌いじゃないと小さく呟いた

パウラも、ほら

今度は自分が、と白い苺の果実を差し出して――




 石造りの迷宮は、足を踏み締めればカツリと音が響き渡る。
 不思議なことに天からは光が降り注ぎ、緑の景色と濃く薫るその甘い香りがアリス・ランザデッド(死者の国のアリス・f27443)の鼻をくすぐり――苺に負けぬ赤い瞳をほんの少し見開くと、鮮やかなその景色を見渡した。
 深く息を吸えば、香りが胸いっぱいに広がる。
 その不思議な心地に戸惑うように瞳を揺らしていれば、傍らの少女からくすりと小さな笑い声が零れた。
「じつはね。わたしもほんもののいちごは、はじめて!」
 華やかに笑うパウラ・グラーテス(徒花・f31973)にとっては、黴た、煤けた本だけが世界の全てだった。
 童話の中には沢山の『ゆめ』が詰まっていて。宝石のようなタルトや果肉を残した艶やかなジャム。数多の果実をとびきり甘くて贅沢な品に描かれていたそれらは、とてもとても美味しそうに映っていた。
 けれど今、こうして見るのは初めてなのだ。
 鮮やかな赤も、白も。
 そしてそれは、アリスだって――。
「初めて見たわ。真っ赤な果実に真っ白な果実。まるで薔薇の女王の庭のよう」
 それは、赤に塗り替えられる白の薔薇庭園のような色合いで。アリスの心が微かにざわつき、きゅっと胸を押さえる。
 記憶の無いアリスにとっては、苺の存在さえ知らないもの。けれど、ぼんやりと浮かぶ景色と当てはめれば――不思議な心地が胸に宿る。
 パウラの語る『ゆめ』の詰まったものとは、どんなものなのだろう? 目の前の輝く果実が、様々な姿に変わるなど想像もつかないことで。不思議そうに瞳を瞬いた時――振り向いたパウラが、アリスの口許へと何かを押し当てた。
 ふわりと香る甘酸っぱい香り。
 隙間から滑り込んできた赤を噛めば、口の中に香りと果汁が広がる。
「あぐ……あまい、けれどちょっときゅっとなるわ」
 初めて食べる苺の味わいに、戸惑うようにアリスは語る。――揺れる視線。けれど、嫌いじゃないと。小さく呟けばすぐ傍にある青い瞳は、嬉しそうに閉じられた。
 そのまま一歩、距離を取り。緑の下に生る赤を見つめ、そっと細い指先で触れながら、静かにパウラは口を開く。
「わたしね。ほんとうはあかいろがすきなの」
 ――それは、パウラが漏らした心の一部。
 そのいろをなくしてしまったから、とは。まだ口には出せなかったけれど。
 ほんの少しの本音を零せば、その言葉にアリスは少し迷うように瞳を揺らす。
 右へ、左へ。揺らした先に見つけた白をひとつ手に取ると。
「パウラも、ほら」
 今度はアリスが、パウラの口許へと白い苺を当てていた。
 花の蕾のような唇へと、滑り込むように白が招き入れられれば。ころりと舌に落ちるのと同時に雪のように溶けてなくなる。――後にパウラの口に残るのは、甘くも爽やかな苺の香りと溢れる程の果汁。
 こくりと、喉を鳴らして。
 彼女が差し出してくれた『わたしのいろ』を味わうのと同時。パウラの心を満たすのは、アリスの表情の僅かな変化への喜び。
 自然と緩んでしまう頬が、手を添えなくても分かる。隠すことなど出来なくて――上気していくのを感じつつ、彼女は口許に笑みを浮かべて。
「アリス、おみやげにいくつか頂きましょう。つぎはこれで、お菓子を作るんだから!」
 そっとアリスの手を取りながら、楽しげにそう語った。
 初めて見る果実と、パウラの語る『ゆめ』の一部。
 その色を見ることが出来ることに、アリスは仄かに胸に宿る温かさを感じながら――頷きを返し、また一歩踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンセット・グレーム
瑠菜(f02583)と一緒に
苺畑が見られるらしいからな、瑠菜も苺が好きそうだから誘った
瑠菜と一緒だとなんだかんだ楽しいし

(渋々付き合うと言いながら、苺畑にテンション高めの様子の瑠菜を見て、興味深くその横顔を見る)
ふむ、まるで宝石のような苺畑……
はしゃぐ瑠菜……
思いがけずに絵に映える場面になったな
(そっと、タブレットを取り出して、目の前の彼女と苺畑の絵を描き始める)

描くことは呼吸と同じだからな
俺のことは気にせず食べていていいんだが

(持ってきてもらったので、その美味しそうな苺に目を奪われる
が、絵を描いてて手は塞がっている)
瑠菜、俺は手が塞がっているからたべさせてもらっていいか?
(口を開けて待つ)


煌燥・瑠菜
サンセットさん(f30712)と
今度は何かと思ったら、要するに苺狩りですか……
まあ、苺は普通に好きですしちょっとくらいなら構いませんが。

(と、渋々付き合うと言った風の割に実際に苺畑を見たらテンション高め)
おおー!随分と立派な苺じゃないですか!!
いやぁ、どれから食べようか迷いますね!

……い、いや、別にはしゃいでいませんよ?ええ、至って冷静ですとも。
(言いつつ赤白交互に食べて)

ていうかサンセットさんは相変わらず絵描いてばかりですか……
もう、仕方ないですね。持ってきてあげましたよ。オススメは赤い苺の練乳がけ……はい???
いや何で私がそこまでせなあかんねん!?……はあ。仕方ないですね。少しだけですよ?




 石造りの迷宮内と云う場とは不釣り合いだが、注ぐ陽射しも茂る緑から覗く赤も。それは春の訪れを感じさせる彩で。
「今度は何かと思ったら、要するに苺狩りですか……」
 視界に広がる鮮やかな景色に、煌燥・瑠菜(続き綴る御噺の欠片・f02583)はぽつりと零す。傍らには、自身とあまり身長の変わらない少年の大きな青い瞳が見えて。にこにこと嬉しそうに見つめている。
「まあ、苺は普通に好きですしちょっとくらいなら構いませんが」
 その顔をちらりと見た後、瑠菜は何か言い訳をするようにぶつぶつと呟く。そんな渋々と言った物言いをしているけれど、歩む足取りも、彼女の纏う空気も、どこか楽しく軽やかで。目の前に広がる鮮やかな苺畑にテンションが上がってしまう。
 そんな少女の様子に少年――サンセット・グレーム(描き出す夕陽の指先・f30712)は嬉しそうに笑みを浮かべる。絵描きである彼にとっては、苺狩りよりもこの迷宮内に広がる美しくも不思議な景色を見ることが重要だったけれど。瑠菜を共に誘ったのは、彼女が苺を好きそうだと思ったから。喜んでくれたようで、安堵と共に胸に満ちる嬉しさに笑みを零すと、そっと彼はその場に座る。
 手にするのは、薄いタブレット。
 絵描きと云っても彼の画材は電子のそれ。とある人の影響を受けたのだが、数多の画材を持ち歩かなくても良いところはこういった場では利点だろう。ペンを手に、彼が見つめる先には――変わらず、瑠菜の姿があった。
 さらりと揺れる黒髪を揺らし、苺畑へと一歩瑠菜が踏み込めば。甘い香りが強くなる。
「おおー! 随分と立派な苺じゃないですか!! いやぁ、どれから食べようか迷いますね!」
 仄かに頬を染めて、大きな瞳は煌めきを帯びる。嬉しさを含んだ声を思わず上げてしまった後で――彼女ははっとして、後ろを振り返りサンセットを見ると、別にはしゃいでいないと言い訳をするように首を左右に大きく振るった。
 そのまま彼女は息を整えるように呼吸をすると――連なり実る赤と白を、交互に口に運び出した。口に入れれば零れる笑みは華やかで、嬉しそうな彼女を眺めるサンセットの眼差しも柔らかくなる。
「ふむ、まるで宝石のような苺畑……。はしゃぐ瑠菜……」
 思いがけずに絵に映える場面になった。
 ――そんな彼女と、溢れる彩の苺畑を描くこの瞬間が幸せに感じ、零れる笑みと共に画面にペンを走らせる手が止まらない。この世界の色も、嬉しそうな彼女の色も、全てを小さな画面に閉じ込めようと夢中になっていれば――そんな彼の様子を、瑠菜が見ていた。
 予想はしていたけれど、相変わらずのその様子。苺狩りに来たはずなのに、まだ彼はひと粒も食べていないどころか、苺の傍に近付いてもいない。
 むうっと唇を結び、眉を寄せ。
 手にした赤と白をじっと見つめた後――彼女は大きな溜息を吐くと、苺畑を飛び出してサンセットのほうへと近付いた。そのままずいっと、彼の目の前へと赤い苺を差し出す。
「もう、仕方ないですね。持ってきてあげましたよ。オススメは赤い苺の練乳がけ……」
 目の前に差し出されたその赤に、サンセットは蒼い瞳をぱちぱちと瞬く。――けれど、その鮮やかで美味しそうな赤に視線は奪われていた。
 けれど、どうしようか。絵を描く手は止められないから。
「瑠菜、俺は手が塞がっているからたべさせてもらっていいか?」
「……はい??? いや何で私がそこまでせなあかんねん!?」
 自然と零れた言葉の後、口を開けて待つサンセットの姿に。思わず瑠菜から零れる言葉は素の表情。けれど、尚も口を開けて待つ彼の姿に――盛大な溜息を吐いた。
「……はあ。仕方ないですね。少しだけですよ?」
 眉を寄せ、ほんのりと頬を染めて。
 赤い苺を差し出す彼女の手は――微かだけれど、震えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
千鶴(f00683)さんと

迷宮の…石造りの建物の中だなんて
陽の光も無いのに植物が育ち実を成すとは…
生徒さん達、凄いですねぇ

苺恋に淡苺
名前も可愛らしいですねぇ
まずは赤と白
一粒ずつそのままで

苺恋はさっぱりと
淡苺は甘くて美味しい

ふふ、練乳につけても美味しいです
持ってきた練乳をつけてぱくり
千鶴さんもいかがですか?
あら、チョコ?そちらも美味しそう

…?まあ!苺大福!
きょとんと千鶴さんを見守って
完成したそれにぱあ!と笑む
はわ!?い、いえ自分で…ぅ、いただきます
頬染め照れつつもぱくり
ん、美味しい
…千鶴さんもどうぞ?
あーん、てさっきのお返し

ふふふ、幸せですねぇ
色んな形で苺を楽しんで
幸せで満たされふわほわ微笑む


宵鍔・千鶴
千織(f02428)と

迷宮の中で果実が育つ、って
凄い技術だね
白と赤に分かれた色彩の
艶やかな苺の園に見惚れながら

苺恋と淡苺、ぱくりと
千織に倣いそのままの味を堪能
さっぱり甘酸っぱさと
とろり蕩ける甘さに舌鼓

千織の練乳掛けたのも美味しそうだね
俺はチョコソース!苺ちょこになるかなあって
うん、交換しよう
互いの味を食べてみれば更に甘く

ねえ、千織、もうひとつ試したくて
じゃーん。真っ白もちもち大福
これをぱかっと割って
餡子の間に苺を挟めば
いちご大福!
食べてみて?って千織の口元へあーん
彼女からのお返しには素直に口開いて
新鮮な苺を使った大福に
一緒にふわふわ微笑んで
しあわせで甘酸っぱいひとときに
心もお腹も満たされるね




 天から降り注ぐ光に瞳を細め、見上げてみればそこには変わらぬ天井があった。何か不思議な力で迷宮内に灯りを注いでいるのだろう。足元も壁も固い石に包まれたこの地は、いくら鮮やかな緑が溢れていても建物の中なのだと実感する。
「迷宮の中で果実が育つ、って。凄い技術だね」
「生徒さん達、凄いですねぇ」
 目の前の光景に宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が溜息混じりに零せば、こくりと橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)も素直に頷きを返した。鮮やかに実る白と赤を見れば、千織のツシマヤマネコの尾がピンと立つ。
 そのまま軽い足取りで苺畑へと歩めば、輝かしい赤と白が迎え入れてくれた。その煌めきに負けぬ輝きを温かなオレンジ色の瞳に宿すと――ふたつの愛らしい名を持つ苺を、優しく摘み取り、ひとつひとつ順に彼女は口にする。
 ふわり、浮かぶ千織の口許に浮かぶ笑み。彼女のそんな様子を優しく見守っていた千鶴も、同じようにそれぞれを口にすれば自然な甘味に頬が緩んだ。
 口に広がる赤の爽やかな甘酸っぱさと、白の雪のように蕩ける甘さ。
 互いに瞳を交わし、笑みを零し合えば――千織は小さな容器を取り出し中の白へと絡め、再び赤の苺をぱくりと口へ。
「ふふ、練乳につけても美味しいです。千鶴さんもいかがですか?」
 白の正体は甘い甘い極上の練乳。苺の酸味と合わさり、更なる魅力を引きだす魔法の甘味と共に食べる苺は、先程とはまた違った味わいが楽しめる。笑みを浮かべたまま容器を差し出せば、千鶴は少しだけ羨ましそうに向けていた瞳をひとつ瞬いて。
「千織の練乳掛けたのも美味しそうだね。うん、交換しよう」
 笑みを浮かべながら、彼が指しだしたのはチョコレートソースの入った容器。練乳とは違い、こちらは甘味の中に深みのある味わいが楽しめるだろう。互いに互いの甘味を楽しみ、再び果実そのままを楽しんで――無限に楽しめるこのひと時の中。けれど、千鶴の心には更なる好奇心が湧き上がる。
「ねえ、千織、もうひとつ試したくて」
 口の中で溶けた果汁を喉を鳴らし飲み込んだ後で、ひとつ千鶴が好奇心を言葉にすれば。何かと千織も瞳を輝かせる。そんな彼女の姿に微笑み、彼が取り出したのは。
「じゃーん。真っ白もちもち大福」
 純白の苺に負けぬ白。滑らかで柔らかいその生地は、まさしく大福のそれ。真っ白の生地を半分に割り、その中に真っ黒の餡子と苺を挟めば――。
「……? まあ! 苺大福!」
 作業の工程を不思議そうに眺めていた千織だけれど、いざ完成したそれを見れば鮮やかな声を上げる。彼女のその反応に少し誇らしげに千鶴は胸を反らせると、食べてみてと千織の口元へと苺大福を運んだ。
「はわ!? い、いえ自分で……ぅ、いただきます」
 唐突のことに頬を染め、一瞬慌てたように顔の前で手を振ったが――じっと見つめる千鶴に観念したように、少しだけ恐る恐ると小さく口を開け千織は差し出された苺大福を口に含む。もっちりとした感触、餡子の上品な甘みの後、口いっぱいに広がるのは苺の爽やかな味わい。甘味と、酸味と、食感。全てのバランスが良いそれは正に新たな魅惑の味。
「ん、美味しい。……千鶴さんもどうぞ?」
 口許に手を当て、幸せそうに笑む千織。――彼女はそのまま、お返しのように千鶴の口元へと苺大福を運んだ。けれど千鶴は先程の千織とは違い、戸惑うこと無く素直に口を開き大福を一口。
 広がる甘さを共有すれば、自然と零れるのはふわふわと自然な微笑み。
「ふふふ、幸せですねぇ」
 改めてこの瞬間の心地を確認するように千織が零せば、こくりと千鶴も頷きを返す。
 しあわせで、甘酸っぱいひと時に。
「心もお腹も満たされるね」
 膨れていくお腹を確かめるように、自身のお腹へと手を当てながら穏やかに紡ぐ千鶴。
 さあ、次なる苺はどう楽しもうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
レン(f00719)と

生徒達が手を入れてくれたからこそ
こんなにも輝いて、これ程多く実ったのだろうな

まずは赤と白を数個ずつ交互に
どちらも美味しいんだろう?

美味い、幾つでもいけそうだ
どちらかと言えば私は赤い苺恋の方が好みかな
酸味が私に丁度良くて

そうだ、パンに挟んだらフルーツサンドになるかと
薄切りパンを持ってきたんだ
その侭で食べるのも美味しいが、ひと手間かけても良いかと思って
練乳をかけて挟むのも美味しそうだな
淡苺にチョコは間違いないな、サンドも食べ比べ良い

此処で限界まで食べるという訳にもいかないし
お土産で幾つか持って帰るか?
家でならパフェにだってできると思うんだ

いい案だ、帰ってからの楽しみが増えたな


飛砂・煉月
有珠(f06286)と!

皆、随分と頑張ってくれたんだね
綺麗な赤と白が宝石みたいだ
負けず煌めく緋色が其処に

オレもオレも
食べ比べしてみたい!

んー、どっちも良さがあるっていうか、口の中で溶ける心地は不思議!
白の淡苺に寄れば、赤い苺恋の酸っぱさも恋しくなって

有珠、天才じゃんね
フルーツサンド、最高じゃん!
練乳に苺!
オレもチョコソース持ってきたんだ
サンドも食べ比べしちゃお?
苺恋の酸味には練乳
淡苺の雪解けにはチョコがイイかも!
余計に選べなくなっちゃった

此れはお土産にしない理由がないし買って帰ろ!
そんでパフェなら一緒に作らない?
わだつみでトッピングいっぱい用意してさ!

そんな話をしながら交互にまた一個ずつぱくり




 茂る緑の中、キラキラと宝石のように輝く赤と白。
「生徒達が手を入れてくれたからこそ。こんなにも輝いて、これ程多く実ったのだろうな」
 その眩さに透き通る海を映した瞳を細め、尭海・有珠(殲蒼・f06286)は静かに紡ぐ。彼女の言葉に大きく頷き、辺りを見渡した飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)の瞳に飛び込むのは、苺へと水やりをする生徒の姿。
「皆、随分と頑張ってくれたんだね」
 今も、そしてこれまでも――彼等の頑張りから実ったこの果実へと感謝を込めつつ。そうっと彼は優しく、輝く赤の宝石を覗き込む。魔法の力なのか、天からは陽射しのような光が注ぎ込み、キラキラと輝く果実に負けぬ程、煉月の緋色の瞳も輝いていた。
 そんな楽しげに笑う彼の姿に、有珠は口許に笑みを浮かべつつ細い手を伸ばす。
 その先には――赤と、白。
「どちらも美味しいんだろう?」
 ふたつの実を手に取って、煉月へと語り掛ければ。彼はそのふたつを見比べた後、微笑む有珠の姿に、ぱっと陽だまりのような笑みを零し。
「オレもオレも。食べ比べしてみたい!」
 声を上げ、嬉しそうに緑の中に生る実へと手を伸ばす。
 そんな彼の様子を微笑ましく思いつつ、有珠は手にした苺を口にしてみる。果肉がしっかりした赤は爽やかな酸味で、口の中に入れれば溶けるように消える白。交互に口にしてその味わいの違いを堪能していれば、同じように両方を味わった煉月が苺から顔を上げ。
「んー、どっちも良さがあるっていうか、口の中で溶ける心地は不思議!」
 白の淡苺に寄れば、赤い苺恋の酸っぱさも恋しくなる。
 そんな、素直な感想を述べ。そのまま有珠はどうかと感想を求めれば、彼女は唇に一瞬添えた赤い苺を離すと――じっとその苺を見て、一瞬考えた後唇を開く。
「どちらかと言えば私は赤い苺恋の方が好みかな」
 酸味が、有珠には丁度良いから。そう素直な感想を零した後、はたと気付き瞳を瞬く。そのまま荷物へと手を伸ばす彼女の姿に、煉月は不思議そうに小首を傾げるけれど。彼女が取り出した物を見れば、瞳を輝かせる。
「パンに挟んだらフルーツサンドになるかと。薄切りパンを持ってきたんだ」
「有珠、天才じゃんね。フルーツサンド、最高じゃん!」
 そのままの果実も十分美味しいけれど、ふわふわのパンと一緒に食べる果実はケーキのような味わいになるだろう。ひと手間加えれば、その分だけ楽しさが増す筈だから。
 練乳を掛けて甘さを増すのも良い。煉月が持ってきたというチョコソースを添えれば、また違った甘さと酸味を味わうことが出来るだろう。
「苺恋の酸味には練乳。淡苺の雪解けにはチョコがイイかも!」
 サンドも食べ比べしちゃおうと、無邪気に語る彼の姿が眩しくて――瞳を細め、微笑みながら有珠は頷く。
「淡苺にチョコは間違いないな、サンドも食べ比べ良い」
 どうしようかと、悩むこの時間が楽しい。
 此処に無い物を合わせても、きっと美味しいのだろう。そんな思考が頭を過ぎれば、数多の可能性を試してみたくなるのも仕方が無いこと。
 お腹の具合も材料も限界があるのなら――手を動かしながら暫し考えていた有珠は、ひとつの結果に行きつき煉月を見る。
「お土産で幾つか持って帰るか? 家でならパフェにだってできると思うんだ」
 彼女の唇から零れた、楽しい提案。その言葉に、煉月の心はウキウキと心が一気に踊るように跳ねた。零れる笑顔は溢れる程で、大きく頷く彼はとても楽しそう。
「此れはお土産にしない理由がないし買って帰ろ! そんでパフェなら一緒に作らない?」
 トッピングをいっぱい用意して、この場にはいない他の知人も一緒に――その光景を想像すれば、自然と彼の顔に浮かぶ表情は幸せに溢れていく。
 存在しない尾がご機嫌に揺れているような。そんな錯覚を煉月の姿に覚えながらも。有珠は新たな苺に手を伸ばしながら、瞳を閉じ静かに笑む。
 ――帰ってからの楽しみが、ひとつ増えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コイスル・スズリズム
POW
オーナーさん(f03848)と同行
アドリブ大歓迎

魔法学園に来るの、久しぶりの気持ち
いつも通っているのにね、と
誘うのは不慣れだけど、いつも一緒に戦ってるオーナーさんと笑う

陽のよなものに照らされた花やかな果実に手を伸ばせば
きっと大事に育てられたのね、生徒さんたちに感謝を呟いて
オーナーさんに貰ったフォークでお皿の上へもりつけてく

苺恋っていうんだって。この苺。
はい、あ~ん!
最初の一口は、あなたに食べて欲しいわ
お返しには驚きを浮かべ素直に受け取る

口の中に広がるのは、不思議ね
こんなにも苺を好きになれるなんて

研究熱心な彼女に笑うと
オーナーさん、魔王戦争の時は、ありがとうね

あ、みて
あっちにもいいのある!


小宮・あき
すずちゃん(f02317)と
アルダワ学園は、誘われて何度も来訪を。
いつも誘ってくれてありがとう。

美味しい苺、大好きな鳥さん、もふもふの可愛い子。
もしかして慰安!?

小さなバックに、小皿とフォークを2組、コンデンスミルクも。
すずちゃんも使う? はい、どうぞ。

すずちゃんからのあーんに、一瞬きょとり。
微笑んで、パクッ。
淑女たるもの大きな口は、なんて小言は今は無しで。

お礼に、白い苺を、あーん。

白い苺の新感覚を、純粋に楽しんで。
赤い苺の完成度を、商人目線で楽しんで。

赤い苺、小皿に取り、縦に割ってみます。
色は、香りは、形は?
UDCアースで商人をしている身、どこか真似できないかなぁって思っちゃうんですよね。




 魔法学園で学ぶコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)にとっては、不思議な迷宮の景色は特段に驚くものでは無い。
 けれど――何故だろう、この学園に来るのが、久しぶりに想うのは。
「いつも通っているのにね」
 ふわりと笑んで、言葉を零しながら――コイスルは、共に此の地に訪れたオーナーである小宮・あき(人間の聖者・f03848)へと視線を向けた。
「いつも誘ってくれてありがとう」
 彼女の大きな藍色の瞳を真っ直ぐに受け止めながら、あきは澄んだ空色の瞳を細め微笑む。本当はコイスルは誘うのは不慣れなのだけれど、いつも一緒に戦う彼女とこの場に来たいと思ったのだ。
 天を見上げれば、地下にも関わらず光が降り注ぎ。その眩しさに思わず瞳を細めてしまう。光を浴びてキラキラと宝石のように輝く苺達。
「きっと大事に育てられたのね」
 それは、コイスルと同じ生徒達の努力の結晶。ありがとうと長い袖を揺らしてコイスルが紡げば、すぐ傍で水を注いでいた男子生徒が照れくさそうに微笑んだ。
 そんな楽しそうに微笑むコイスルの姿を見ながら――あきはこの後に待ち望むこの地の試練を思い出す。美味しい苺の後には、彼女の大好きな鳥のトラップ、そして待ち構えるもふもふの災魔。どれも危険なものな筈だけれど、心躍るその並びは。
(「もしかして慰安!?」)
 澄んだ瞳を更に輝かせて、浮き立つ心を隠せずにあきは頬を染めた。
 まずは苺だと。現実に還ると共に彼女は荷物を取り出す。――小皿に、フォークを二組。それから、甘い甘いコンデンスミルク。
「すずちゃんも使う? はい、どうぞ」
 用意周到なあきから差し出されたフォークをお礼と共に受け取り、コイスルは早速苺を手に取りお皿の上へと重ねていく。
「苺恋っていうんだって。この苺。はい、あ~ん!」
 まず彼女が興味を持ったのは、真っ赤に色付く鮮やかな苺。フォークに刺して、差し出されるその赤に――あきは一瞬、きょとりと瞳を瞬いた。
 最初の一口は、あなたに食べて欲しい。すぐにその意味を理解すると、口許に笑みを浮かべそのままぱくり、大きな口を開けて苺を一口で。淑女たるもの大きな口は、なんて普段なら言われるだろうけれど。今此の場では誰も気にしないから大丈夫。
 口に広がる爽やかな香りに味わい。その味に幸せそうに微笑むと――今度はあきが、苺を手にしてコイスルへと向き直る。
「お礼に、白い苺を、あーん」
 今度はあきからコイスルへと甘味が渡される番。その仕草にコイスルは驚いたように瞳を見開き小さく声を上げたが、すぐに頷くと素直に口を開ける。
 美味しいねと、共に味わえば零れる幸せな声。
 味を、感覚を、美味しい時間を――共に味わえるこの瞬間が嬉しくて。共に零れる表情は花咲くような笑顔。
 けれど、その笑顔の裏にあきの心には探求心も宿っていた。
 純白の苺の蕩ける新感覚を純粋に楽しんで。赤い苺の完成度を商人目線で楽しんで。
 ドキドキと、緊張したように赤い苺をお皿の上で縦に割ってみれば、中は鮮やかな赤色と白の果肉が見えた。切れた拍子に広がる香りは一層強くなり、ふたりの少女の鼻をくすぐる。すんっと鼻を鳴らし、まじまじと眺める研究熱心なあきを見て――コイスルは、微笑ましそうに笑った。
 その小さな笑い声に、あきは顔を上げると少しだけ恥ずかしそうに笑う。
「どこか真似できないかなぁって思っちゃうんですよね」
 それは商人ゆえの、職業病と云うものだろう。
 魔法の力が宿る不思議な迷宮であるこの地の作物は、普通に育成したのでは育たないだろう。それもまた、コイスルの一部に触れられたような気がする。
 肌に馴染む空気。
 共に楽しむ友との時間。
 今この瞬間を楽しむ彼女を前にして――コイスルはそっと瞳を伏せると、長い睫毛が彼女の瞳に影を作る。口許に浮かぶ笑みの唇から零れるのは。
「オーナーさん、魔王戦争の時は、ありがとうね」
 一年程前の戦いを思い出し、感謝を言葉に。コイスルの言葉にあきは「え?」と驚いたように声を零したが――彼女の様子に気付いてかいないのか、コイスルは顔をぱっと上げると、苺畑の奥のほうを指差した。
「あ、みて。あっちにもいいのある!」
 上がる声と同時に彼女は駆け出し、早く早くとあきを手招きする。
 そんな彼女の姿に。先程の言葉を思い出しながら、あきは微笑み追い掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
ロキ/f25190

視界いっぱいに広がる赤と白
鮮やかな光景に、春を感じつつ

俺の舌は鈍いので
味はそんなに分からないが
匂いはちゃんと解析できる

俺も畑に入って大丈夫なら
ロキと共に苺狩りを

畑を傷つけそうな場合は
入口で大人しく待っておく
俺の分までヨロシクな、ロキ

俺は淡苺を楽しもう
白い苺は初めて見たな、珍しい
嗅覚を揺さぶる馨は強く

マスクを外し口に放り込めば
とろり蕩ける口どけに瞬いて
これは凄いな、雪みたいだ
ああ、何個でも食べて見たくなる

ロキの感想も是非聴きたい
特に苺の味について――甘いだろうか?
そうか、甘酸っぱいんだな

クリーム、いいな
その甘さなら俺も感じられそうだ
あんたと共に同じ味わいを楽しめて、俺も満足だ


ロキ・バロックヒート
ジャックくん(f16475)と

春の匂いがするね
君の味覚とか嗅覚どうなってんだろ
そんな興味を向けながら

君と入れたら一緒に
もし入れないなら籠いっぱいに両方とも摘んでくるよ
入口で待ってたりするとちょっと可愛いかも

うんと熟れたのを摘んで
俺様は苺恋を――と思ったけど
えっ雪みたい?先にそっち食べてみよう
口にした瞬間わぁって声が出る
甘さも雪みたいにすぐ消えちゃう
幾らでも食べれちゃうんじゃ?なんて

苺恋も食べてみて
こっちはふつうの苺と似てるよ
きゅっと酸っぱいけどじゅわっと甘くて――

そうだクリーム持って来たんだ
ジャックくんもかけて食べようよ
こっちの甘さはイケるんだね
赤にたっぷり白をかけて
まろい甘酸っぱさにまんぞく




 石造りの世界の中、視界に広がるは緑の中に生る赤と白。
 鮮やかな色に、灯る瞳部分を揺らめかせたジャック・スペード(J♠️・f16475)は春を感じる。甘い花の香りも、天から注ぐ光の空気も、全てが春を彩る温もりを宿していて。
「春の匂いがするね」
 巨体の横で、深く深く息を吸い込んだロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)がそう紡いだ。じっと見上げるその蜜彩の瞳には、微かな疑問が浮かぶ。
 ウォーマシンであるジャック――その身体は人のそれとは違うことは分かるけれど、味覚と嗅覚はどうなっているのだろう。
 そんな素朴な疑問に、ジャックは表情の変わらぬその顔をロキへと向け。
「俺の舌は鈍いので、味はそんなに分からないが。匂いはちゃんと解析できる」
 淡々と、冷静に語る。
 そんな彼の言葉に、へえ……と少し感心したようにロキが零すと――そのままひらりと、苺畑の中へと足を踏み入れた。
 ジャックの巨体はこの中に入れるのかと、共に不安を抱いていたけれど。彼が畑に近付いても辺りの生徒は注意どころか、にこにこと嬉しそうに微笑んでいる様子を見るに、問題は無さそうだ。思ったよりも通路が広く作られている為、果実を傷付ける心配は無いのだろう。その様子に、少しの安堵をジャックは感じる。
 緑の中に生る、輝く赤と白の果実。
 どうしようかと一瞬迷い――ジャックは大きな手で、そうっと優しく白を手に取る。
「白い苺は初めて見たな、珍しい」
 驚いた様子で紡いだ後、マスクを外して口へと運べば。口いっぱいに広がる香りと、一瞬でふわりと雪のように溶ける様は味の鈍い彼でも。否、彼だからこそこの味わいを深く感じることが出来るのだろう。
 驚き、瞳の光を明滅とさせ。深く息を吐くかのように身体を揺らして。
「これは凄いな、雪みたいだ」
 零れた言葉は、心からの賛辞。その言葉に濃い赤へと手を伸ばしていたロキだけれど。
「えっ雪みたい? 先にそっち食べてみよう」
 ジャックの言葉に心惹かれたのか、赤のすぐ隣に生る白へと伸ばす手を移した。一切の赤を抱かぬ純白を手にし、ほんの少し恐る恐ると口へと運べば――舌に落ちれば果肉は消え、じゅわりと果汁が口いっぱいに広がる。
「わぁ……。甘さも雪みたいにすぐ消えちゃう。幾らでも食べれちゃうんじゃ?」
「ああ、何個でも食べて見たくなる」
 口許を押さえ感動を言葉にすれば、こくりと傍らのジャックも頷いた。けれど折角だ、白の他にも赤も楽しんで――普通の苺の味わいを楽しめば、ジャックがじいっと見つめていることに気付きロキは首を傾げた。
「――甘いだろうか?」
 不意の零れるジャックの疑問。――溶けるように消える様子も、口と身体に広がるそれぞれ違う香りも。彼はしっかり認識出来るけれど、その味わいの違いは分からない。だからこそ、言葉の情報としてどうなのかと興味が湧いたのだ。
 彼の言葉の意味を理解して、ロキは笑うと、赤い苺を手にして笑う。
「こっちはふつうの苺と似てるよ。きゅっと酸っぱいけどじゅわっと甘くて――」
 白とは違う、味覚を細かに説明すれば。ジャックはなるほどと頷き、じっと大きな手の中に転がる苺を見つめた。そんな彼の様子に、そうだとロキは思い出し――手元から、小さな容器を取り出し蓋を開ける。
 その中に眠っていたのは、純白の苺に負けぬ白。ふわりと柔らかなクリームがたっぷりと入った容器を背の高い彼に見せるよう掲げ、彼は笑う。
「クリーム持って来たんだ。ジャックくんもかけて食べようよ」
「クリーム、いいな。その甘さなら俺も感じられそうだ」
 笑い掛けてくれるロキの言葉と優しさに、ジャックはこくりと頷くと――手にしていた赤い苺を丁寧にクリームの中へとくぐらせる。赤の上に雪が積もれば、強くも優しい甘味と、苺の酸味が確かにジャックの口の中へと広がった。
 味わう彼の様子を眺め、嬉しそうに笑うとロキは自分も赤い苺を白にくぐらせる。ふわり優しいクリームと、春の果実を共に味わえば。まろい甘酸っぱさが口に広がり、思わず零れる笑みは幸せを意味していた。
 そんな彼の様子を見て――手にした苺を転がしながら、ひとつジャックは言葉を零す。
「あんたと共に同じ味わいを楽しめて、俺も満足だ」
 珍しいその味も。
 鮮やかな春の訪れも。
 共に味わえるこの瞬間が、満たされるということ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『文字探し』

POW   :    総当たりすれば、見つかるだろう。

SPD   :    こういう事にはコツがある、抜け道を探そう。

WIZ   :    慎重に考えて、効率良く探し出そう。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●言ノ葉の迷宮
 苺の迷宮の奥――立派な装飾の重い扉をくぐると、そこには青空が広がっていた。
 透き通る程に青い空は春らしい淡い雲が浮かび。温かな光が差し込む景色。――けれど、その空に浮かぶ雲は動かない。何せ描かれたものなのだから、当然だった。
 空を舞うように、天井には数多の鳥が飛び回る。羽の音色だけが響く室内。辺りを見渡せば数多の白い葉を抱く木々が立ち並び、どこからか流れた風に乗りさわりと揺れる。
 バサリと翼の音を響かせて、一匹の鳥が枝に降り立った。
 鳥は奏でるかのようにクチバシを動かして、翼を羽ばたかせて。暫しの羽休めをしているようだが――ひらりと、彼が留まる枝から一枚の葉が落ちる。
 ひらり、ひらり。
 地へと落ちゆく中、葉は不思議と緑に色付いて。よく見ればそこには『愛』の言葉が。

 此処は言の葉の迷宮。
 言葉を抱く鳥達と、言葉を待つ葉が生きるこの地では、彼等こそが突破する鍵。
 言葉を与えれば鳥も、木々も、そして迷宮も満足するようだが――折角の機会だ、自身が書くのではない言葉を、葉に宿しても良いのではないか。
 言葉を想い、手を差し伸べれば同じ言葉の鳥はこちらへと降り立つだろう。口から言葉を零さなくとも、彼等にはしっかりと想いが伝わる。
 逆に、自身の心の中の、自分も気付かぬ言葉を感じ取り鳥は寄ってくるかもしれない。その言葉に気付くのも、敢えて気付かないことにするのも本人の自由。――誰にだって知りたくないことはあるはずだから。
 近くに寄ればその鳥は随分と小さいことに気付くだろう。その言葉の鳥をそのまま好きな枝へと導けば、白い葉は不思議と数多に色付き――そして、言葉を抱き落ちてくる。
 はらり、はらりと。落ちたその葉を手に取れば、それは紙で出来ていることに気付くだろう。自分の、自分だけの言葉を添えた。特別な葉型の栞となるのだ。
 色付く色は人の心に反応するようで、何色になるかは分からない。白のままのことも多いようなので、どのような色に染まるかも楽しむことが出来るだろう。

 ――さあ、自身の言の葉を持ってみよう。
 ――舞う鳥と、揺れる葉が待っているのは。
 ――きっとアナタの中の特別な一言。
パウラ・グラーテス
アリス(f27443)と
『ことば』を口にするのはかんたんだけれど
『こころ』を紡ぐことはむずかしいことだと思うの
ひとりぼっちで喉から搾り出した音は
それが意味を成すことさえ、信じられないから

ううん、いまはちがうわ
わたしたちはお互いを認めている

わたしがねがう、こころのいろが
あなたがのぞむ、こころのおとが

ゆびさきに招いた鳥をそっと枝葉に導く
怖がることはないのだと示すことが出来るように

葉のいろが淡く朱に染まりゆく様に
ほんの僅か、息を呑んだ

ことのはの紡がれた面を彼女の方に向けてしまったのは
怖がっているのは――わたしのほう?

『残夜』

ああ
よるのとばりは、もう

アリス、あなたのこころは
うつくしい音でできているのね


アリス・ランザデッド
パウラ(f31973)と

温かな光と、描かれた青空
迷宮の中の筈なのに、開放感のある景色に、アリスは目を細める

『ことば』は簡単、だが『こころ』を紡ぐのは難しい

パウラの言葉にアリスも確かにと頷く

自分には『こころ』がない
だから、『こころ』の言葉なんてあるのだろうか?

少女の迷いに応えるように不思議と降りてくる鳥が一羽
光る蝶へ差し出した時のようにそっと手に乗せて近くの枝へと導けば、その葉には『その胸に』と、そう書かれていた

何故この言葉なのか、分からない
けれど前を向いて歩けるようなそんな気がしてアリスはパウラに向き直った

パウラ――あなたの言葉は、優しいいろをしているのね

手に持った真っ白な栞を持って、先へ進む




 扉を開けば――そこに広がる鮮やかな空と真白の葉に、アリス・ランザデッドは思わず瞳を細めていた。
 此処は地下迷宮。注ぐ光に、流れる風が頬を撫でる感覚にアリスは戸惑うよう。この迷宮を抜けるには、言葉を紡がなくてはならない。
「『ことば』を口にするのはかんたんだけれど、『こころ』を紡ぐことはむずかしいことだと思うの」
 想い耽るように瞳を閉じていれば、聴こえる甘い声にアリスは瞳を開いた。傍らを見れば、優しく笑むパウラ・グラーテスの姿。彼女の紡ぐその言葉の意味は、深く深くアリスの心へと沁み込み静かに頷く。
 ひとりぼっちで喉から絞り出した音は。それが意味を成すことさえ、信じられない。
 その想いで言葉を紡いだパウラの眼差しは、少しだけ寂しそうだったのは気のせいだろうか。彼女の青い瞳をじっと見つめて、静かにアリスは息を零す。
「自分には『こころ』がない。だから、『こころ』の言葉なんてあるのだろうか?」
 息と共にふと零れる言葉。
 それがアリスの本心だと感じると――ふるりと、パウラは首を振った。
「ううん、いまはちがうわ。わたしたちはお互いを認めている」
 それは、戸惑うアリスに語るように。
 ひとりぼっちな自分に、言い聞かせるように。
 わたしがねがう、こころのいろが。
 あなたがのぞむ、こころのおとが。
 パウラは天を見上げ、ぱたぱたと羽ばたき舞い踊る小鳥達を見上げ静かに手を伸ばす。こっちにおいでと微笑むように見つめれば――小さく羽ばたき下りてくる2羽の姿。
 その眼差しは、怖がらせないようにとの優しい想いを込めて。
 そんな彼女の姿を見つめ、戸惑うようにアリスも手を伸ばす。それは、パウラの真似をするように、夜の森で、光る蝶へと差し出した時のように――すると翼を羽ばたかせ、数羽の鳥が下りてくる。アリスの手へと小さな小さな鳥が留まると、彼女は白葉を抱く枝へとその鳥達を導いた。
 アリスと共に、パウラも言葉で出来ている小鳥が傷付かないようにと注意を払いつつ、小枝へと小鳥を導けば――じわりと、インクに紙が染まっていくように淡く朱に葉が色付いていく姿に、パウラはほんの僅かに息を呑む。
 そのまま、はらりと落ちる淡い朱。
 何故だろう、少しだけパウラの心がざわつく。
 地に落ちる前に葉を受け取るけれど、言の葉の紡がれた面をアリスの側へと向けてしまったのは――。
(「怖がっているのは――わたしのほう?」)
 微かに手が震えている気がする。
 くるりと、葉の向きを自身へと向ける。紡がれた言葉は――『残夜』と。
(「ああ。よるのとばりは、もう」)
 そっと青い瞳を細めて、遠く遠くを見るように――。
「パウラ――あなたの言葉は、優しいいろをしているのね」
 意識がどこか遠くへ移りそうになった時、傍らから零れた言葉にパウラは意識を戻す。
 声のほうを向けば、そこには淡い朱の栞を見つめるアリスの赤い瞳が。その言葉にパウラは少しだけ驚いたように瞳を見開き、ひとつ深く息を吐いて――彼女の手にする栞の文字を瞳に映すと、優しく笑みを零す。
「アリス、あなたのこころは。うつくしい音でできているのね」
 美しい。その言葉にアリスは少しだけ不思議そうに首を傾げた。
 彼女の手にする真白の葉には『その胸に』と綴られている。けれど、何故その言葉なのかが彼女には分からない。それは、記憶を失ってしまっているせいなのだろうか。
 けれど、前を向いて歩けるようなそんな気がして。アリスはパウラを改めて見ると、2人は手を伸ばし温もりを伝え合うと、同時に足を踏み出した。
 淡い朱と、真白の葉。
 ふたつの色に抱かれた言葉は、心に響く大切な言葉。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
あきら(f26138)と

白い葉なんて初めて見た
光合成は――と、嗚呼、そうか
此処は地下だったか

元より一般常識から外れたかたち
為ればその周囲を飛び交う鳥だって
“普通”で無い事も別段可笑しくは無いね

囀る聲が聞こえない事は少しばかり物足りないけれど
厭く事無く飛び回る姿はずっと追っていられそう

――おいで

此れといった言葉は浮かばないから
適当なものが在れば良いかと
柔手を持ち上げ、誘う一羽

「續」

音無く止まることのはの意は、なんともお前らしいもの
今度は切れないで、解かないで、って
そう言いたいの?
問えど音は空間に落ちるだけ

首振り意識を引き戻し、応じるは左手の先の君
うん、行こう

淡水の特別を抱きて、この先へと進もう


天音・亮
まどか(f18469)と

見上げた空の雲は眺め続けたところで動くわけもなく
その中で飛び立つ鳥たちの囀りは聴こえない
不思議な空間にぽけーっと見上げていたけれど
おいでと聴こえたきみの声に視線を下げて
上げられた手の先を見る

誘われるように降り立った一羽見れば
倣うよう指先を空に向ける
きみを真似て、ぽつり
おいで

抱いた文字は、“繋ぐ”

──うん
すとんと身の内に染み込む言葉
手を、絆を、道を、未来を
繋ぐために進んでいこう

行こ、まどか
空いてるきみの手を取り枝へと
導いた鳥が残したのは優しい日向彩の栞
手の平にすっぽり収まる大きさの葉

さ、れっつごー!なんて
珍しく大人しかった私もここまで
いつも通りの私できみと、先へ




 青の空の下――風に揺れるは純白の葉。
(「白い葉なんて初めて見た」)
 そのあまりの白に、ふうっと感嘆の息を零しながら。旭・まどかは淡い春色の瞳を幾度か瞬く。光合成は、と現実的な疑問が脳裏を過ぎるけれど、此処は地下迷宮な為元より関係は無いのだろう。瞳に映る天の青だって、本物では無く描かれたもの。
 アルダワ学園の地下迷宮は、元より一般常識から外れた不思議な空間。その中で生きる者達は、災魔でなくとも『普通』で無くともおかしくは無い。
 天を飛び回る黒い鳥達は、囀る声は奏でない。
 それが少しばかり物足りないと思いつつも、舞い踊る姿を視線で追いながら――。
「――おいで」
 ひとつ、まどかは言葉を紡いだ。
 ――その声に、天音・亮はぱちりと瞳を瞬く。
 描かれた空ゆえ、雲の動かぬ天に囀らぬ小鳥。不思議なその景色を見上げていた亮が、視線を瞳と同じ青から、傍らの春へと移せば。彼は手を挙げて小鳥を手招いていた。
 ぱたぱたと翼をはためかせて、そっとまどかの細い指へと小鳥が留まれば抱く文字は『續』の一文字。
 今度は切れないで、解かないで、って。
「そう言いたいの?」
 そっと鳥に向け問い掛けてみるけれど――ひゅるりと風が肌を撫でると共に音を消していき、そのままその音はただ空間に落ちるだけ。
 その言葉を耳にして。静かに瞳を閉じていた亮は――少しの間の後、瞳を開いたかと思うと先程の彼を真似て、同じように手を伸ばす。
「おいで」
 紡がれる言葉も彼を真似たもの。
 くるりくるり、舞い踊る鳥の中から羽ばたき下りる姿は先程見たような気がするけれど、その鳥は先程とは確かに違う姿で。優しく触れれば小ささ故か重みはほんの些細なもので、少し驚いたように亮は瞳を見開いた後――優しい眼差しで小鳥を見る。
 その身体に紡がれていた文字は『繋ぐ』という言葉。
 その言葉を見た瞬間、素直に亮の心に落ち沁み込んでいく。
(「──うん」)
 手を、絆を、道を、未来を。
 繋ぐ為に進んで行こう。
「行こ、まどか」
 2羽の鳥が旅立ち、枝へと留まれば。枝が揺れると同時にはらりと葉が地へと落ちゆく。その葉を視線で追ったかと思うと、澄んだ絵空を見上げ。傍らのまどかへと視線を移すと、亮は笑顔を零す。その手を取れば温もりに、まどかは意識を引き戻し瞳を軽く見開いて首を振るった。
「うん、行こう」
 こくりと頷いて、口許には柔い笑みを浮かべて。
 一歩、共に踏み出す。
 はらりと落ちた葉は、遠目からは分からなかったけれどまどかの栞は淡水色。亮の栞は優しい日向彩の色をしていた。掌にすっぽり収まる愛らしいその葉を優しく抱くと、亮は繋いだ手を少しだけきゅっと強く握ると。
「さ、れっつごー! なんて」
 晴れやかな笑顔と共に、明るい声を上げる。
 ――それは、先程までの静かな亮とは違う姿。いつも通りの晴れやかで、笑顔の糧となる明るい姿。その笑顔を見れば、まどかの口許にも自然と笑みが浮かんでいた。
 繋いだ手は温もりを感じ。
 肌を撫でる風が心地良い。
 手を揺らし、笑顔を浮かべて、確かな足取りで前へと進もう。
 いつも通りの私と、きみと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンセット・グレーム
瑠菜(f02583)と
苺も食べさせてもらって美味かったし、次は描かれた青空か
言の葉の鳥
こぼれ落ちる言葉の羽
ふむ、散策して追ってみるか

(描きたい心を我慢して言葉の栞を探す)
どんな言葉を作るか、心のままに
『この世の全てを描きたい』
『夜空を越える夕陽』

……ふむ
自分のことだけでいいのか?
(ちらりと瑠菜の姿を見て)

瑠菜がいないとここに来れなかった可能性もあるな
だから、この栞は、瑠菜のために作るとしよう

『感謝の意を込めて』
『月は余りに輝かしく、いつもそこにある
だから、今日も俺が見る三日月は綺麗だ』
(言葉の栞を作って、満足そうに頷いて、瑠菜のもとへと持っていく)


煌燥・瑠菜
サンセットさん(f30712)と
苺畑の次は妙な部屋ですか……
まあ景色も良いですし、軽く散策しましょうかね?

(そういうわけで栞集め中)
ええと、「ちゃんと飯食え」「1人で買い物くらい行け」「絵描くのはええけど体大事にしろや」
うん、まあ、普段サンセットさんに言ってる文句ですねこれ……

あとは……
「なんかほっとけへんしシュンとした顔させたないし結局言うこと聞いてまう私アホやと思う」
(速攻で千切って捨てて)
(何で全部あいつ絡みのばっかりやねん!?)(瑠菜心の叫び)

あー、もうサンセットさんの栞でいいですか。どんなの見つけました?(じっと見る)(顔真っ赤で固まる)
(口説き文句か!そういうとこやぞほんまに!?)




 扉を抜けた先に広がるのは――澄んだ、青い空。
 口に残る爽やかな香りを感じつつ、サンセット・グレームはそのあまりの鮮やかさに思わず青い瞳を細めた。
 これは、描かれた青。
 けれどそうとは思えぬほど遠く遠くに見えて、その空の下を飛び回る言の葉の鳥の姿を思わず目で追えば、はらりと落ちる言の葉の羽根。
「苺畑の次は妙な部屋ですか……」
 傍らから聴こえたその声に、はっと意識を戻せば。煌燥・瑠菜が眉を寄せながら少し難しい顔をしていた。――アルダワ魔法学園には不思議な迷宮が数多あるが、此処も他に負けじと不思議な構造をしている様子。
「まあ景色も良いですし、軽く散策しましょうかね?」
 ほんの少しの言い訳をするように紡ぐ少女。その言葉にサンセットは静かに頷いて、ふたりは並び歩み出す。
 天を見上げば数多の鳥。
 その全てが言葉を抱いていると言うが――さあ、どんな言葉を紡ごうか。
 手を差し伸べ、数多の鳥が近くの枝葉へと並び落ちてくる栞を瑠菜は手にする。
 『ちゃんと飯食え』『1人で買い物くらい行け』『絵描くのはええけど体大事にしろや』――数多の鳥が次々に枝へと降り立ち、飛び立ち、また降り立ち。その繰り返しの末手にした言葉は、どれもこれも覚えのあるもの。
「うん、まあ、普段サンセットさんに言ってる文句ですねこれ……」
 小さな声でぽつりと瑠菜は零す。
 その時、はらりとまた新たな葉が瑠菜の目の前へと落ちてきた。反射で彼女がその葉を手にすれば、『なんかほっとけへんしシュンとした顔させたないし結局言うこと聞いてまう私アホやと思う』と云う小さな文字で綴られた言葉が見えて――思わず、瑠菜はその葉を細かく細かく千切っていた。
(「何で全部あいつ絡みのばっかりやねん!?」)
 気付けば頬は赤く染まっている。動揺のせいか鼓動が逸り落ち着かない。
 彼女の言葉や動揺する姿は、サンセットは気付いていない様子。彼はぼんやりとした表情で手を差し出し、降り立つ鳥の紡いだ言葉をひとつひとつ見ている。
 『この世の全てを描きたい』『夜空を越える夕陽』――それは、意図せぬサンセットの心の言葉。だからこそ、心からの言葉だけれど。
「あー、もうサンセットさんの栞でいいですか。どんなの見つけました?」
 栞の文言を目で追っていれば、瑠菜から言葉が掛かりサンセットは顔を上げた。
「……ふむ。自分のことだけでいいのか?」
 瑠菜からの言葉に、サンセットの口から零れるのは素直な疑問。――けれど、そう言われたことはそのまま受け止めて、サンセットは手にした自身の言葉を眺めた後、改めて考える。この場を抜けるのに、相応しい言の葉を。
 少しだけ瞳を閉じ、思考し、再び瞳が開かれた時、彼の唇から零れたのは――。
「瑠菜がいないとここに来れなかった可能性もあるな。だから、この栞は、瑠菜のために作るとしよう」
「ッ!?」
 唐突な彼の言葉に、瑠菜の顔はまた赤く染まる。
 そんな彼女の様子に気付いた気配は無いまま、サンセットは改めて小鳥を手招き枝へと留まらせた。はらりと落ちる言葉の栞を手にすれば、彼はどこか満足そうに頷いている。
 『感謝の意を込めて』
 『月は余りに輝かしく、いつもそこにある。だから、今日も俺が見る三日月は綺麗だ』
 紡がれた言の葉は2枚分。そこに綴られた文字を見せられれば、瑠菜の顔は更に赤く赤く染まっていた。
(「口説き文句か! そういうとこやぞほんまに!?」)
 乱れる呼吸を察せられないよう注意をしつつ。
 動揺を露わにしないよう意識をしながら、彼女はじっとサンセットを見返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
ロキ/f25190

言葉の鳥、か
見返りを求めないのがヒーローなので
特別に欲しい言葉は無いな

或いは寄って来てくれた此の鳥が
裡に秘めた想いに、気付かせてくれるのだろうか
鐵のゆびで近くの枝に導いて
金彩の葉栞を掌で受け止める

綴られた「希い」という文字は
確かに裡にひとつ、ふたつ存在するもの
叶わない其れは、胸のポケットに仕舞いこみ
塒に戻ったあとで、大事な想い出の本に挟もうか
少しは慰めに成るだろう

ロキは高い所に居る鳥が気になるのか
肩を貸すのは構わないが
落ちないよう気を付けてくれ

栞の葉を捕まえたなら
片方の肩に座る友人を降ろし成果を問う
あんたの栞には、何が書かれてたんだ
隣か、ヒトとの縁を感じる
良い言葉遊びだ


ロキ・バロックヒート
ジャックくん(f16475)と

神様に願いはないなぁ
文字を探すでもなく鳥を眺めるふたりは
似たようなこと考えてるのかも

無遠慮に覗いた君の言の葉をただ眼に留めて
同じように鳥を枝に乗せて
その灰色の葉に書かれた言葉は「赦し」
瞬きの間だけ見てくしゃっとしちゃう
ほら自分だけだと
出て来るのは詰まんない言葉だから

ねぇジャックくん
あの高いところに居る子がいいな
肩を貸してよって強請る
君の肩に乗れてご機嫌ご満悦

そうして拾った言葉は翡翠色の「となり」
「となり」は「隣」と「と成り」
ひとの隣、誰かの隣、君の隣
それは喜びと成り、楽しさと成り
色んなことに成るの
なんて言葉遊び

先の言の葉の裡は言わず、問わず
今はただ君の隣人で居よう




 言の葉を宿す鳥と葉――。
 不思議なその光景を見上げ、ロキ・バロックヒートは想う。神様に、願いは無いと。
 彼の金色の瞳が、文字を探す様子もなく鳥を追えば。傍らのジャック・スペードも同じような空気を纏っていると察する。
 似たようなことを考えてるのかも――そうロキが想った通り、ジャックはヒーロー故見返りは求めない。だから、特別に欲しい言葉は思い浮かばないのだ。
 囀りの無い世界。羽ばたく音のみが聴こえる鳥達を見遣れば、ジャックはほんの少しの好奇心を抱く。彼等は、心の奥の言葉をカタチにしてくれるという。それならば、ジャックの裡に秘めた想いに、気付かせてくれるのだろうか。
 そうっと、先が銀色に光るクロガネの指をジャックは伸ばしてみる。背の高い彼の頭上を幾羽かの鳥が舞ったかと思うと、恐れることなく指先へと降り立った。何度か羽ばたき、小さな小さな鳥はそのまま――白い葉を抱く枝へと留まれば、金彩の葉が落ちる。
 その葉を受け止め、ジャックが視線を落とせば――葉には『希い』と綴られていた。
 言の葉を見て、ジャックは瞳の色を瞬かせる。その言葉は確かに裡にひとつ、ふたつ存在するものだが――叶わないそれを仕舞うように、彼は胸ポケットへと仕舞った。
 全てが終わり戻ったら、大事な想い出の本に挟もうか。少しは慰めに成るだろう。
 ――そんなジャックの綴った言葉を、ロキは見てしまった。否、無遠慮に覗いたのだ。
 機械仕掛けの彼は、表情は浮かばない。けれど、纏う彼の空気を察しロキはその文字をただ静かに眼に留めるだけ。ひとつ、息を零し――彼も小鳥を優しく枝へと導いた。
 はらり、そのまま落ちてくる葉はくすんだ灰色を宿し、そこに綴られていたのは『赦し』の一言。その言葉をロキは蜜彩の瞳に映す。――けれど、ほんの瞬きの間だけでくしゃりとその葉を握り締めていた。
(「ほら自分だけだと、出て来るのは詰まんない言葉だから」)
 そっと瞳を伏せて、口許に浮かぶのは静かな笑み。
 ひとつ息を零した後――彼は顔を上げると、ジャックを見て微笑むと。
「ねぇジャックくん。あの高いところに居る子がいいな」
 背の高い彼の袖を引っ張り、高い高い鳥を指差して彼は肩を貸してよと紡いだ。
 そんな彼を見下ろして、ジャックはその鳥と、ロキを順に見た後頷きを返す。屈んでも長身のジャックは相当な高さだけれど、ロキはするりとその肩に触れる。重みを感じ、彼が確かに乗れたことを確認すると、ジャックはそろりと立ち上がりつつ。
「落ちないよう気を付けてくれ」
 忠告を添える優しさを垣間見せた。
 そんな彼の優しさと、彼の肩に乗れた事にロキは嬉しそうに笑いながら素足を揺らす。そのまま手を思い切り伸ばせば――空絵を舞う鳥はくるりと向きを変え、ロキの指へと降り立った。仄かな重みに瞳を細め、そのまま枝葉へと乗せればはらり落ちるは翡翠色。
 ひらり、ひらり。落ちゆくその葉を手にして覗けば、綴られるのは『となり』の文字。
 『となり』は『隣』と『と成り』の意味を抱くのだろうか。
 ひとの隣、誰かの隣、君の隣。それは喜びと成り、楽しさと成り、色んなことに成る――そんな、言葉遊びのような文字。
「あんたの栞には、何が書かれてたんだ」
 文字を見つめ優しく笑むロキの姿を見て、ジャックはひとつ問い掛ける。その言葉に顔を上げると、ロキは笑みのまま手にした翡翠の葉を差し出した。
「隣か、ヒトとの縁を感じる」
 ――良い言葉遊びだ。
 そう語られれば、言の葉の意味を理解してもらえたようでロキは嬉しそうにまた笑う。
 ――先の言の葉はいわず、問わず。
 ――今はただ君の隣人で居よう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

ルーシーちゃんと手を繋ぎ扉へ
描かれている世界
えぇ、とても不思議で素敵な光景ですねぇ

伝わる言葉、伝える言葉とは簡単そうで難しいですね
おや、その子はルーシーちゃんの事好きみたいですね
この子と同じ様に手を伸ばす

枝から腕へ、スリと頬を擦り寄る姿はとても可愛らしい

ひらりひらりと舞う一枚の葉
【光】という文字
嗚呼、それはこの子だろう
光の様に輝いて、そしてとてもあたたかい
彼女の文字を見て微笑む

【月光】それが僕達の言葉ですね


ルーシー・ブルーベル
【月光】

ゆぇパパと手を繋いで扉をくぐる
雲も、光も
これ、みんな描かれているの?
とてもフシギな光景ね

ううーん、言葉、ことば……
急に言われると悩んでしまうわね
それなら、いっそ
明確に心に言葉を結ぶ事なく
つと手を伸ばしてみる

留まってくれた鳥は
現のものより少し軽い、かな
あら、そうなの?ふふ、うれしいな
その子もパパが好きって言ってるわ?

側の枝にそうっとお届けする
教えて
ルーシーが、あなたが抱いた言葉はなあに?

「月」の文字と
お月様みたいな淡い黄色の葉

ああ、そうか
ルーシーにとっては常にそばに居て下さるもの、だものね

ねえ、パパはどんな言葉?
ルーシーのは、これ!
誇らしげにパパに見せましょう

……光?
月光、……うん

うん!




 扉を開いた先に広がる――青い空に、注がれる陽射し。
 その眩さに思わず覗く左目をきゅっと強く瞑った後、恐る恐る瞳を開きルーシー・ブルーベルは広がるその不思議な世界に息を呑んだ。
 雲も、光も。
「これ、みんな描かれているの?」
 きゅっと繋いだ大きな手を握り締めて、視線を上げ問い掛ければ。彼女の青い瞳の先に佇む朧・ユェーが、優しく微笑みながら視線を下ろし口を開く。
「えぇ、とても不思議で素敵な光景ですねぇ」
 こくりと頷き、紡がれるのは同意の言葉。
 ただ頷いてくれただけなのに、その言葉が温かくて、優しくて。そっとルーシーは笑みを零した後――天を飛び回る数多の鳥達を見上げ、口許に空いた手を当て考える。
「ううーん、言葉、ことば……。急に言われると悩んでしまうわね」
 意味は無いからこそ、選ぶ言葉は迷うもの。
 何が一番良いかと考えれば考える程難しくて――それならば、明確に心に言葉を結ぶこと無く、と少女は想い優しく手を伸ばした。
 小さな少女が手を伸ばせば、ぱたぱたと宙を飛び回っていた小鳥達の中。一羽が近付いて来たかと思えば、そっと彼女の指へと降り立つ。
「現のものより少し軽い、かな」
 一瞬だけ触れた重みを感じたけれど、その小ささ故か、それとも文字で出来ているからか。小さな少女でも軽々と愛でられる程の重さしか無くて。少しだけ不思議そうにルーシーが瞳を開けば、傍らの彼は笑みを落として言葉を紡ぐ。
「おや、その子はルーシーちゃんの事好きみたいですね」
 そんな、温かくも優しい言葉を聴いて、ルーシーはふわりと笑みを零した。
「あら、そうなの? ふふ、うれしいな」
 優しい眼差しをユェーに向け、そして指に止まる小鳥へと向ければ。文字で出来た小鳥は小首を傾げるように身体を揺らす。
 そんな少女の姿を見て――ユェーは、少し迷うように瞳を細める。
(「伝わる言葉、伝える言葉とは簡単そうで難しいですね」)
 どうしようかと少し考え、ルーシーと同じように手を伸ばせば――降り立つ小鳥の姿に、彼は柔らかな笑みを浮かべた。声は出ないけれど囀るように身体を揺らし、指にクチバシを触れる小鳥の姿に。
「その子もパパが好きって言ってるわ?」
 ふわりと仄かに頬を染め、幸せそうにルーシーがそう零すから。ユェーも自然と笑みが零れ、その愛らしさに眼鏡の奥の金色の瞳を細める。
 そのままふたりは瞳を交わし、微笑み合うと真白の葉が咲く枝へと導く。
「教えて。ルーシーが、あなたが抱いた言葉はなあに?」
 飛び立つ小鳥を見送って、ルーシーが紡げば――その声に応えるかのように、枝からはらりと葉が落ちる。その葉を両手を伸ばしはっしと掴んで、見つめてみれば月のような淡い黄色の葉に紡がれた文字は、色と同じ『月』の一文字。
 ああ、そうか。
(「ルーシーにとっては常にそばに居て下さるもの、だものね」)
 その優しくも温かな色に、静かにルーシーは瞳を細める。
 そんな彼女と同じように、ユェーもはらり落ちた葉を掴めば。彼の大きな掌の中で輝くのは、『光』の一文字。
(「嗚呼、それはこの子だろう」)
 淡い黄色の葉を見つめ、柔く微笑む少女を見れば。自身の文字を表したかのように光のように輝いて、とても温かな存在だと再認識する。
「ねえ、パパはどんな言葉? ルーシーのは、これ!」
 葉を見つめ微笑む彼女を眺めていれば、くるりと向きを変えユェーを真っ直ぐに捉えるルーシーに一瞬だけユェーの心臓が逸った。そのまま彼女が差し出した葉を見て、綴られた言葉を見て――嗚呼、とユェーは息を零す。
 ルーシーが月。
 ユェーが光。
 その答えは――。
「【月光】それが僕達の言葉ですね」
 深く深く微笑み、紡がれるユェーの言葉。
 その言葉と、彼が差し出した光と綴られた葉を見て。
「月光、……うん。うん!」
 ルーシーは言葉を飲み込むように幾度か瞳を瞬き。――そのまま、強く強く頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【千宵桜】

迷宮内の天は青空で
…黒鳥、不思議な形をしているね?
音無き羽搏く鳥を視線で追いかけて
呼ぶように、口笛ひとつ

手を伸ばしてみれば
指先にそっと止まり
わ、すごい、
千織も、ほら鳥が来てくれるよ
大丈夫だよ、千織も好かれそうだ

ふと見つけた木は桜の枝に似ていて
そっと指先の鳥を促して枝へ
はらり一枚落ちた葉の綴る言葉は

…、えにし、
「縁」だ
今大切にしたいもの
俺とえにしを繋いでくれた人達
確かに、其れは心に在って
傍らの彼女へふわりと笑み

ね、千織は何が綴られてた?
…ゆかり、
華やぐ様に笑み咲かせた彼女のかんばせを見詰めて
綴られた栞の言の葉は一緒だ、と
そうと耳打ちし

共にした栞の鍵をぎゅうと抱いて
先に進んでゆこう


橙樹・千織
【千宵桜】

はわぁ
綺麗な青空…の絵?
この迷宮、鳥もいるのですねぇ
あらほんと、とても不思議
それに随分小さいですねぇ

あらあら
千鶴さんは好かれているのですねぇ
彼の手に止まった鳥を見てふわり微笑んで
私も?来てくれるかしら?
真似してそっと手を伸ばす

木の枝に止まらせてあげればいいのでしたっけ
千鶴さんと同じ木の別の枝へ

ひらり舞った葉には
ゆかり…

色々なことがあった
それは今も遠い過去も同じで
色んな「縁」がある
たぶん
これからもきっと
大切で離れることは出来ないもの

…?
何か、良いことでも書いてありましたか?
彼の笑みにきょとりとしてから微笑み返し

私のは“ゆかり”でしたよ
大切な言の葉を抱いて
ふわり笑む
耳打ちにそわりとしつつ




 扉を開いた瞬間、飛び込むような眩さに思わず橙樹・千織は瞳を閉じていた。恐る恐ると瞳を開けば、飛び込んでくるのは澄んだ青い空。
「はわぁ。綺麗な青空……の絵?」
 ぱちぱちと驚いたように大きなオレンジ色の瞳を瞬き、その空が描かれたものだと確かめるように紡ぐ。じっと見つめても雲の動かぬそれは確かに絵なのだけれど、本物だと錯覚するほど美しい。
 その空の下。飛び回る鳥達は黒色を宿し、聴こえるのは囀りでは無く翼の音のみ。
「……黒鳥、不思議な形をしているね?」
 鳥の姿をじっと追うように見つめると、宵鍔・千鶴は不思議そうに言葉を零した。
 遠目から見ればただの黒の鳥なのだが、よく見てみるとその身体は沢山の文字が固まり形成されている様子。彼の言葉に千織も、不思議そうに頷いた。
 ――そのまま千鶴は、ひとつ口笛を響かせる。
 囀りの無い此の迷宮内は、比較的静かで。壁に包まれた室内故か、彼のその笛音は大きく響き渡った気がした。甲高く短い音がひとつ響き、反応したように舞い降りる黒い鳥の姿を見れば――そっと、千鶴は手を伸ばしてみる。
 するとぱたぱたと翼を羽ばたかせ、小鳥はその指先へとちょん、と留まった。
「わ、すごい、千織も、ほら鳥が来てくれるよ」
「あらあら。千鶴さんは好かれているのですねぇ」
 大きな瞳をアメジストのように輝かせ、千織へと見せれば彼女は柔らかく笑みを零す。そんな彼女の笑顔を見れば、君も来てくれるよと手招くように紡ぐ。
 彼の言葉に少し戸惑いながら、恐る恐ると千織も手を伸ばせば――真っ直ぐにこちらへと向かう小鳥の姿が見えたかと思うと、彼は静かに彼女の指へと留まった。
 その姿に嬉しそうに瞳を輝かせれば、千鶴も自分のことのように笑みを零す。
 さあ、言葉を選んだらその次は――枝へと小鳥を留まらせよう。
 どの木にしようかと、2人はきょろきょろと辺りを見回す。どれもこれも白い葉をしている同じ木に見えるけれど――「あ、」と千鶴が零し、1本の木へと近付けば。千織も当然のように彼へと着いていった。
 彼の眼に留まったのは、白い葉が重なる姿が、淡い桜花にも見える木。立派な幹と枝、儚く咲く葉が美しい。だから、千鶴はその木の枝へと自身の指先に留まる小鳥を導いた。
 ぱたぱたと舞えば、続くように千織の小鳥も枝へと留まる。するとその瞬間――枝から、葉がひらりと舞い落ちた。
 ひらり、ひらり。舞うその葉を慌てて受け止め千鶴が葉を見てみれば、そこに綴られた文字は『えにし』と。
 ――それが『縁』であると気付けば、それは千鶴が今大切にしたいものであると気付く。千鶴と、えにしを繋いでくれた人達の顔を思い出せば心に温かなものが宿った。
 そんな彼の傍らで、千織が手にしたのは『ゆかり』と言葉が綴られた葉。
 その言葉を見れば、彼女が思い出すのは今までのこと。
 色々なことがあった。それは今も遠い過去も同じで、色んな『縁』がある。多分、これからもきっと。大切で離れることは出来ない。
 想い耽っていれば、じっと見つめる視線に気付き。現実へと戻された千織は不思議そうに小首を傾げる。見つめる彼の顔には笑みが零れていて。
「……? 何か、良いことでも書いてありましたか?」
「ね、千織は何が綴られてた?」
 疑問を零せば、返る言葉は更なる問い掛け。自身の『ゆかり』と云う大切な文字を見せる彼女の顔には華やかな笑みが浮かび、その表情を見れば千鶴は瞳を輝かせる。
 きゅっと自身の葉を握り。一歩近付き、そっと彼女の耳元へと唇を寄せると。
「綴られた栞の言の葉は一緒だ」
 耳元で紡がれる囁きは、ふたりだけの秘密の言葉。
 離れた彼の顔を見て、互いに笑みを零すと――ふたりは栞を手に、一歩踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白神・ハク
【幸先】

不思議な空間だねェ。
僕も初めて見る景色だよ。
文字の鳥だって、面白いよね。
僕の神様に教えたらビックリしちゃうかも。

僕は白の鳥を探すよ。
僕の名前のハクもいいけどさっきの白い苺が美味しかったからね。

ヴィリヤちゃんとエンティお兄さんはどんな鳥を探すの?
僕は白の鳥を探すよ。
二人に声をかけていたら僕のお目当ての鳥を見つけた。
あの鳥がいいなァ。手を伸ばしたら来てくれるみたいだねェ。

大人しい鳥を木に止まらせて鍵を貰おう?
白。いいね。僕のだァい好きな色だよォ。
穿と幸、ヴィリヤちゃんの穿?
カッコイイね。
エンティお兄さんの幸は僕みたいだァ。

ここまで来たら他の鳥も探したくなっちゃうね。
赤の鳥はいないかなァ。


エンティ・シェア
【幸先】

綺麗な空だけれど描かれたものなのだね
鳥達も確かに不思議な様相だ
ふふ、ハクの神様とやらに教えてみた感想も、いずれ伺いたいね

それにしても沢山の鳥が居る
二人は、探したい文字が決まっているのかな
ハクには迷いがないように見えるけど

私は…そうだね、折角だから、目を閉じて
差し伸べた手に最初に止まってくれた子を導こうか
枝に移す瞬間に目を開けて
落ちてきた私の葉を拾おう

…さち、かな。漢字一文字だけ
幸いで、幸せで、幸福で…うん、いい言葉だ
これが鍵となると言うのも、趣深い
ハクは白か。なるほど君らしい
ヴィリヤ嬢は…穿?何だか、勇ましいね

他にはどんな子が居たのかな
栞はもう満足したし、出口に向かいがてら観察しようか


ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
描いてある空だけど綺麗だよね。
神様でも知らない事だとビックリしちゃうんだね。

ハクさんは白を探すんだね。
私はどうしようかな。
特に探したい言葉は思い付かないから
来る鳥に任せてみようかな。
私もエンティさんの真似して落ちてきた葉で
言葉を確認してみよう。

えっと、穿……「うがつ」かな。
うん。
今は父様を倒すために頑張ってるから合ってるかも。

エンティさんは「幸」だね、良い言葉だね!
みんな納得の言葉って感じだね。




 不思議な空間だと。
 此の地に足を踏み入れ、白神・ハクは零す。
 天に描かれた青空は、本物のように澄んだ色を宿し。零れる光の色も、飛び回る黒き鳥も。どれもこれも不思議で、迷宮の中故の魅力を抱く。
「僕の神様に教えたらビックリしちゃうかも」
 そっと飛び回る鳥を見上げ――ぽつりとハクが零したことに、ヴィリヤ・カヤラとエンティ・シェアは一度顔を見合わせて、小さく笑みを零す。
「神様でも知らない事だとビックリしちゃうんだね」
「ふふ、ハクの神様とやらに教えてみた感想も、いずれ伺いたいね」
 それは数多の神のひとつだけれど。ハクの語る神様ならば尚会ってみたい――素直な気持ちを言葉にすれば、彼は笑みを返した。
 そのまま彼等は、じっと飛び回る鳥を見上げたまま――エンティが何を探すのかと問い掛けると同時、ハクは迷うこと無く手を伸ばしていた。
 羽ばたき、ハクの指へと降り立つ鳥は一文字を宿し、じっと不思議そうに見つめるヴィリヤにハクは笑い掛ける。
「僕の名前のハクもいいけどさっきの白い苺が美味しかったからね」
 その鳥が宿す文字は『白』の一文字。
 迷いの無いその姿は相変わらずで、2人はどうするのかとの問い掛けにヴィリヤは戸惑いの表情を浮かべ、エンティを見る。
「私は……そうだね、折角だから、目を閉じて。差し伸べた手に最初に止まってくれた子を導こうか」
 少しだけ考え、出した結論をエンティが紡げば。彼はそのまま手を伸ばした。そんな彼の言葉と姿に、悩んでいたヴィリヤも続くように手を伸ばす。
 心に宿る、探したい言葉はヴィリヤも見つからないから。
 彼女の心の奥底にある言葉を探ってみよう。
 暫しの間の後。囀らない小鳥が一羽ずつ指へと降り立てば、彼等は揃って白い葉を抱く木へと小鳥を導いた。素直に彼等がとんっと枝葉に乗った時。枝に茂る白が、不思議なことにひらりと枝から離れ地面へと落ちていく。
 ひらり、ひらりと宙を舞うそれを真っ先に掴んだのはハク。確認するようにその葉を見てみれば、お望み通りしっかりと『白』と云う文字が刻まれている。
「白。いいね。僕のだァい好きな色だよォ」
 満足そうに笑って語るハク。そんな彼の言葉と表情を見守るように見つめた後、エンティとヴィリヤも自分の心の文字を見る為に手にした葉を見つめた。
「……さち、かな。幸いで、幸せで、幸福で……うん、いい言葉だ」
 エンティの緑の瞳に映る文字は、『幸』の一言。
 数多の意味を抱くのが文字だけれど、幸の文字から感じ取れるのはプラスの意味だろう。その言葉が抱く温かさに、エンティは瞳を細め笑みを零す。
「良い言葉だね!」
「エンティお兄さんの幸は僕みたいだァ」
 そんな彼の手元を覗き込み、ヴィリヤとハクが次々と言葉を零す。その文字から抱く印象が、彼等の心にも温もりを与えてくれたようで。零れる笑みを見てエンティはどこか嬉しそうに頷きを返した。
 そして、次なる興味はヴィリヤの手元へ。彼女は手にした葉に刻まれ文字を見て、暫し考えた後ふたりへと文字を見せる。
「えっと、穿……『うがつ』かな」
 少々難しいけれど、それは突き抜けて進む意味を抱く一文字。今は父様を倒すために頑張ってるから合ってるかも、そう想いヴィリヤは自身の心の奥の感情を改めて認識する。
「……穿? 何だか、勇ましいね」
「カッコイイね」
 彼女の言葉と、刻まれた文字を見つめ。エンティが少し驚いたように零せば、へらりとハクは笑い語る。
「みんな納得の言葉って感じだね」
 彼等から贈られる言葉に嬉しそうに笑いを浮かべ、ヴィリヤは紡ぐ。3つの栞が重なれば、シンプルな1文字に各々らしさが詰め込まれている。
 さあ、鍵を手に入れたならば次への扉を開こうか。
「他にはどんな子が居たのかな」
 きょろきょろと辺りを見回して、興味深そうにエンティが語る。1文字だけで無く、簡単な言葉を抱く鳥もいると聞くので、簡単な文章ならば作れるのだろう。鍵となる栞作りは満足したけれど、折角だから出口に向かいがてら観察をしようと彼は自身の上を通過した小鳥を見上げながら紡ぐ。
 彼の興味にはハクも同意のようで。こくりと頷いた後、再び手を伸ばす。
「ここまで来たら他の鳥も探したくなっちゃうね。赤の鳥はいないかなァ」
 白に並ぶ色を手にすれば、彼の心にまた新たな色が灯るだろう。
 心の言葉はひとつではない。
 並ぶ言葉に、己を改めて知ることが出来た結果が。
 きっとこの地の正解なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

狹山・由岐
悠々と空游ぐ鳥達の羽搏きと
頬撫でる風が心地好い

あの葉に言葉を、想いを燈せば良いの?
この空間を創造したひとはまぁ
さぞかし夢想家だったんだろうね
偶にはそんなお遊びも悪くないけれど

ついと伸ばした人差し指へ
小さな趾が引っ掛かる
雪のように白く軽い一羽
おや、僕の想いは君が届けてくれるの?
心の重みに、その羽が千切れないと良いけれど

止り木に選んだのは手近にあった細枝
真白の君にそっくりな葉は、染まらぬ儘
…残念、僕には色がないみたいだ
首を竦めると同時――ひらり、
風に攫われた一枚は緩やかに手の平へ

青空を融かした様な文字で綴られた「Just for you」

あぁ、これは君に託しちゃいけない
あの子だけにあげる、僕の心




 天を見上げれば、描かれた空の下悠々と飛び回る鳥の姿。
 さわりと頬を撫でる風が心地良く、思わず狹山・由岐の口許には笑みが零れていた。
「あの葉に言葉を、想いを燈せば良いの?」
 その風にさわりと揺れる白き葉を見て、不思議そうに彼は紡ぐ。言の葉の迷宮とは言われていたけれど、この空間を想像した人はさぞかし夢想家だったのだろうと彼は想う。
 けれど、偶にはそんなお遊びも悪くは無いだろう。
 そうっと、そのまま彼は手を宙へと伸ばした。
 するとすぐに、くるりくるりと宙を舞う鳥達の中から。数羽が向きを変え由岐の元へと降り立った。ちいさな足が引っ掛かるのは、普段ならばブラシや彩を手にする由岐の人差し指。招かれるように降り立った小さな彼を見て。
「おや、僕の想いは君が届けてくれるの?」
 笑みを零しながら、由岐が語り掛ければ。彼はそうだよ、と言いたげに翼を広げる。
 そんな素直な彼に向け、由岐が抱くのは少しの不安。この鳥は、差し伸べた主の、由岐の心を映した文字を宿していると聞く。
 ――心の重みに、その羽が千切れないと良いけれど。
 自身の心に宿る深い深い、閉じ込めた想いを胸に彼はそう想う。首を動かし辺りを見る鳥の姿を優しく見つめながら、そのまま由岐はひとつの枝へと鳥を招いた。
 ぱたた、と羽音を響かせて。枝へと鳥が留まれば――白き葉が、落ちてくる。
「……残念、僕には色がないみたいだ」
 色が変わることもあるとは聞いたけれど、由岐の心を表す葉は白のまま。首を竦めながらそう語れば、風に乗りひらりひらりと落ちゆく葉は彼の掌へと収まった。
 一枚の真っ白な葉。うっすらと葉脈まで浮かび上がるその葉を撫でてみれば、ざらりとした紙らしい手触りが由岐の指先へと伝わってくる。
 『Just for you』――そうっと、その葉栞に紡がれた文字を逆の手で撫でる由岐。
 あぁ、これは君に託しちゃいけない。
 あの子だけにあげる、僕の心。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・カンタレッラ
【揺蕩う魚】

さーて、行こう、リル
ほら、手。迷宮だし、逸れねぇように、ね?
んー?だって君とヨル、目を離すと鳥に遊ばれてそうだからなぁ……
ふは、嘘、嘘、折角一緒に来たのに別々に探すのも寂しいから一緒に行こうぜってこと!

リュウグウの仲間の大半は弟や妹を見るような気持ち
この人魚にも、勝手にそんな視線を向けていたりして
頭をわしわし撫でるついでに手を取って、木々の迷宮へ飛び込んだ

私はさー、もう決まってるようなもんだよ
私の根幹を表す言葉なんてこれに決まってんの

「自由」

伸ばした片手に降りた鳥は、また飛んで真白いの葉を文字で色付かせた
落ちて来る葉は海のような揺らめく青へ

さ、私のはこれでお終い
リル、君のはどんな?


リル・ルリ
【揺蕩う魚】

迷路だ……僕はあまし、陸の迷路は得意ではないんだよ
海の中の迷路は得意なんだけれど
差し出された手にきょとんとしたあと、キラッと眸を煌めかせて嬉しそうに君の手を握る
ルクスが一緒なら迷子にだってならない
一緒に探すんだから!
ヨルもちゃんとついてきてね

手を繋ぎ泳ぎながら、ちらと君をみる
ルクスはお姉ちゃんのようだな
ふふりと一人笑う

ルクスの文字はもう決まっているの?
自分をしっかり定められていて、すごいなぁ
自由──正にと納得する
すごく君らしいや!

僕は──ひいらり降りる鳥が告げる

「愛」

薄紅に揺蕩うそれは心を染める愛しの彩
とらえたその文字を、はにかみながらルクスにみせる

僕を変えてくれた世界(感情)だよ




 扉の先の青い空の景色を見て、リル・ルリは戸惑うように溜息を零した。
 さほど複雑でないとしても、人を惑わせる迷宮なことは確か。海ならばともかく、陸地はリルにとっては不得意な場故に、不安な心が胸に満ちる。
「さーて、行こう、リル」
 そんな彼の心を察するように、一歩前に出た後ルクス・カンタレッラは手を差し出した。逸れないようにと言葉を添えれば、リルはその手を見て、ルクスの顔を見て、きょとんと瞳を瞬いた後、きらりと瞳を水面のように煌めかせその手を取った。
 繋ぐ、手と手の温もり。
 ゆらゆらと手を揺らしながら、ルクスはリルとヨルが目を離すと鳥に遊ばれそうだと紡ぐけれど――少しだけむっとするリルの顔を見れば、けらりと笑って空いた手を振る。
「ふは、嘘、嘘、折角一緒に来たのに別々に探すのも寂しいから一緒に行こうぜってこと!」
「一緒に探すんだから! ヨルもちゃんとついてきてね」
 その言葉に大きく頷きながら、足元をちょこちょこと懸命に着いてくるヨルへと声を掛ければ、彼は分かった! と言いたげに小さな手を挙げる。
 ひらり、ひらり――泳ぐ人魚の尾びれが優雅に揺れる中。ちらりとルクスは彼を見て、仄かに心に宿る気持ちを確かめる。
 セイレーンである彼女にとっては、リュウグウの仲間の大半は弟や妹を見るような気持だった。そして、リルにも勝手にそんな視線を向けてしまっている自分を感じるのだ。
 だから、だろうか。つい心配して手を繋いでしまったのは。
 ゆらり揺れる掌から伝わる熱は海の生き物とは違う温もりで。確かにヒトとの繋がりを感じる。少しだけ後ろを泳ぐ彼を振り向き、優しい表情をルクスが浮かべれば。
「ルクスはお姉ちゃんのようだな」
 ふふりと笑って、リルはふと零してしまう。
 そんな無邪気な彼の姿を見て、ルクスは思わず艶やかな秘色の髪を撫でていた。
 そのまま迷宮の中を歩めば――飛び回る鳥達の姿に、少しだけリルは驚いたように瞳を瞬く。この中から、言葉を探せと聞いたけれど。
「私はさー、もう決まってるようなもんだよ」
 不意に零れるルクスの言葉。
 彼女は迷うこと無く手を差し伸べると、降り立った小鳥を木々へと乗せる。はらり、落ちた海のような揺らめく青をした葉に刻まれた言葉は――『自由』と云う文字。
 これが、彼女の根幹を表す言葉。
 これ以外は存在しない、彼女の全てだから。
「さ、私のはこれでお終い。リル、君のはどんな?」
 なんともあっさりな彼女の言葉選びに、リルは少しぽかんとしたように瞳を瞬き。
「すごく君らしいや!」
 自分を定められていてすごいなという素直な気持ちと、なんともぴったりな言葉とその葉の色に思わずキラキラと瞳を輝かせていた。
 それじゃあ、僕は何にしようか。
 少しだけ、迷うように彼は天を見上げる。
 舞う鳥は数多の言葉を宿している。あの中からリルが選ぶ言葉は――。
 差し出した手に止まったのは一羽の小鳥。そのまま彼を真白の葉を抱く枝へと導き、零れ落ちる葉が記していたのは。
 ――『愛』と云う一文字。
 葉が染まるのは薄紅色。その春の色に揺蕩う言葉は、心を染める愛しの彩。
「僕を変えてくれた世界(感情)だよ」
 まるで年上へと自慢するかのように、はにかみながら葉を見せるリルに向け――ルクスはまた、手を伸ばしその頭を撫でた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
レン(f00719)と。

裡なる想いがどんな言葉を紡ぐのか分からなくて
恐る恐る、鳥を招くように手を伸ばし、木へと誘う

紡がれる言葉は『星 の 思い出』
星巡りに纏わる言葉だな
言葉自体は同じではないが、由来とするところはレンと同じ
数ある中から選び取るくらいに、楽しかったという記憶が積み重ねられて、色濃くあるのだろう

隠すようなものではないが、染まる葉の色に面映ゆさが零れる
夜のような藍空色の葉の中で、『の』の辺りだけ緋色に染まるだなんて。
葉を目線の高さに掲げ並べて、見比べてみて、
「やはり、君の瞳の色だな」
そう、君の、瞳の色
――私が、レンの星
悪くないな、と照れたように、目を合わせて笑ってしまうんだ


飛砂・煉月
有珠(f06286)と

思わぬ物が漏れるのが怖いのは有るけど
そっと鳥を招いて触れた木

紡がれた『ほしめぐり』…そっか、星巡り
柔らかな文字になったのは
有珠、キミと居る時間がとてもやさしいからかな

夜色の下地に星の金色が細かく鏤められた中
文字は透き通った蒼だなんて
あっは、オレも大概だなぁ

有珠の文字列もオレと似てるね
詳しく覗き込もうとすれば目線の高さに合わせられた其れ
…オレの?
よく見てみれば一部染まった自身の色にへらりと笑って
実はオレのもねって見せてみよ
「オレの星はキミみたい、有珠」
そうキミの眸、蒼を見て笑う
栞を有珠の眸の目線に合わせてへにゃり咲う

鳥はお見通し何だなぁってさ
空を飛ぶ翼を振り仰いでは眸細めて




 天を飛び回る数多の鳥。
 その鳥へと、恐る恐ると手を伸ばす二人の姿。
 どんな言葉が紡がれるだろうと云う疑問。
 思わぬものが漏れるのを恐れる気持ち。
 互いに不安を抱いているけれど、尭海・有珠と飛砂・煉月の心の渦は全くの別物だった。そんなふたりの不安に一瞬だけ触れるように、鳥は指へと触れると枝へと降り立つ。
 はらり、落ちる葉を手にすれば――煉月が手にしたのは、『ほしめぐり』と云う文字。
「……そっか、星巡り」
 思っていた以上に、自身の心に宿る言葉が柔らかな文字になって少しの驚きを感じる。
 この言葉になったのは――有珠、キミと居る時間がとてもやさしいからかな。
 そう想い彼女を見れば、その手に抱かれた葉には『星 の 思い出』と云う言葉が輝いていた。その文字をじっと煉月が見つめていれば、有珠は彼を見て微笑んだ。
「星巡りに纏わる言葉だな」
 言葉自体は同じでは無いが、由来するところは煉月と同じだと彼女は語る。
 それは、数ある中から選び取るくらいに。楽しかった記憶が積み重ねられて、色濃くあるのだろうと自己を判断する。
 そのままじっとその文字を見つめた後――有珠は、その葉を煉月の顔へと寄せた。
「有珠?」
 彼女の行動に、煉月は不思議そうに瞳を瞬き小首を傾げる。その理由を、有珠は応えることなく。ひとつ、笑みを零すと唇を開いた。
「やはり、君の瞳の色だな」
 柔らかな、言葉を。
 その言葉に煉月が不思議そうにまた瞳を瞬けば、彼女は栞を下ろし彼へと見せる。夜のような愛空色の葉の中で、『の』の辺りだけが緋色に染まっていた。
 これは、君の瞳の色だから。
「オレの?」
 彼女の言葉と、その行動に。煉月の鼓動が強くなった。
 けれどその色を改めて見てみれば、確かに一部だけ自身の色に染まっていて。嬉しそうに彼はへらりと笑う。
 そしてそのまま彼は、手にしていた栞を有珠へと差し出した。
「実はオレのもね」
 染まっているのだ、君の色に。
 その言葉に、有珠は驚いたように少しだけ瞳を見開いた。彼の差し出してくれた栞は夜色の下地に星の金色が細かく散りばめられた美しいモノ。そして、そこに浮かぶ文字は透き通った蒼色をしており――こっそりと、オレも大概だなと想っていた。
「オレの星はキミみたい、有珠」
 真っ直ぐに彼女を見て、煉月は語る。
 彼女の蒼い瞳を見て、そっと先程有珠がしたように彼女の瞳の辺りへと栞を掲げれば――揃いのその色合いに、煉月はどこか嬉し気にへにゃりと笑った。
 そのまま彼は天を見上げ、飛び回る鳥を追っていく。――鳥はお見通し何だなぁってさ、なんて。驚いたように紡ぎながら、鮮やかな緋色の瞳を細めた。
 その笑みに、彼の言葉に。
 有珠の鼓動が微かに鳴り響く。
 ――私が、レンの星。
 きゅっと胸元で栞を抱き、彼の言葉を確認するように心の中で繰り返す。
 嗚呼、それは――。
「悪くないな」
 紡いだ彼女の口許に浮かぶのは花咲くような笑み。
 ほんのりと照れを含んだ笑みだけれど、確かに緋と海蒼は交わっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と

鳥さんが好きなオーナーさん
かわいらしいところもあるね?と、笑顔で
一緒に探そうかともおもったけど
今回はそれぞれで

オーナーさんのこと知りたいなってちょと思うの

すっかり大好きになった迷宮で
ここにいるかな?と身を任せ探す

心の中で思うのは
これからのこと、学園生活の日々がうつりかわり過ぎてしまうこと
でも、それ以上に心の中ではっきりと思うのは、
今すずが一緒にいる人たちとの
「未来図」

出逢えた鳥さんへ、指先をそっと差出して
落ちた葉、白色の栞に手を伸ばすと
夢みたいね、と改めて、魔法学園を不思議に思うわ

オーナーさん!どんな言葉なった?
え、すずの?ナイショだよ~!
といって、二人次の道へ。


小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。

鳥が好き。小鳥の、さらに一回り小さいのかしら。
愛らしく、人懐っこい小鳥、見ているだけで幸せになります。

猟兵として、おびき寄せも、動物会話もあるけれど。
今はただひとりの個人として、鳥さんと向かい合いましょう。
この子、と、自然に目が合った子に決め、指を伸ばし。
応じてくれてありがとう。
あなたは何の言葉をくれるかしら。

落ちた栞は「白色」、言葉は「努力」。
ほんのり金色のにじむ白色に浮かぶ文字は、私の今年の目標。
今年の暮れには、何を努力したのか、胸を張って言えるかしら。
数か月後の自分が楽しみです。

すずちゃんは、どんな言葉だった?
ひょっこり覗いて、笑いながら、扉を抜けましょう。




 鳥が好きだと、小宮・あきは仄かに頬を染めて語った。
 空模様の下を飛び回る彼等は、手を差し出せば警戒すること無く下りてくるという。小鳥よりも、さらに小さな彼等の姿を見上げながら。
「愛らしく、人懐っこい小鳥、見ているだけで幸せになります」
 ふわりと、笑みと共にあきの唇から零れる言葉。その言葉と姿に、コイスル・スズリズムは少しだけ眩しそうに瞳を細める。
「かわいらしいところもあるね?」
 くすくすと小さな笑い声を零しながらそう紡げば、彼女はそのままひとつ息を吐く。
 最初は、一緒に探そうかと思っていたのだけれど。今回は――。
「オーナーさんのこと知りたいなってちょと思うの」
 それが、今のコイスルの心の言葉。
 だからね、今は。
 ひらりと別々に、彼女達は鳥を探し出した。

 透き通るような空の絵。不思議な鳥に、不思議な葉を抱く木。
 すっかり大好きになってしまった、自身の通うこの学園の迷宮で。コイスルは探るように歩みながら、鳥の姿を探しながら自身の心を見つめる。
 心の中で想うのは、これからのこと。学園生活の日々が移り変わり過ぎてしまうこと。
 でも、それ以上に心の中ではっきりと想うのは――。
 浮かんだ言葉を確かに宿し、手を差し伸べれば小鳥が羽ばたき、コイスルの指先へと留まった。仄かな重みしかない彼等を導き、再び羽ばたいた先の葉が落ちれば――それは『未来図』と、確かに刻まれた白い葉の栞。
 この言葉は、今コイスルが一緒にいる人達との未来を綴ったもの。
「夢みたいね」
 愛おしそうに白い葉栞を撫でて。
 紡ぎながらコイスルは、改めて慣れ親しんだ筈の魔法学園を不思議に想った。

 じっと鳥を見上げて、あきは想う。
 猟兵として、誘き寄せることも動物と会話することも出来るけれど。
 今はただ、ひとりの個人として。鳥と向き合うべきなのだろうと。
 あちらへこちらへ、舞い踊る鳥を追うように視線を動かし――彼女は自然と目が合った子に向けて、手を差し伸べる。
 本当に来てくれるか。
 ほんの少しの緊張は一瞬だけ。すぐに方向を変えると、彼はぱたた、と翼音を響かせあきの細い指先へと留まった。
「応じてくれてありがとう。あなたは何の言葉をくれるかしら」
 ふわりと微笑み、優しく愛を込めて語り変えれば――彼は鳴き声をあげられないならがも、その問いに答えるように小さなその翼を広げアピールをする。
 その姿にあきは嬉しそうに微笑むと、すぐ傍にある枝へと彼を導いた。再び飛び立ち、そっと枝へと彼が留まれば――はらり、落ちるのは白い葉。
 その葉をあきは掴むと、ほんのりと金色のにじむ白色に浮かぶ『努力』の文字を見つめる。その文字は、あきの今年の目標だから。
「今年の暮れには、何を努力したのか、胸を張って言えるかしら」
 大切そうに栞を胸に抱いて。
 ――数か月後の自分を楽しみに、静かに瞳を彼女は伏せた。
「オーナーさん! どんな言葉なった?」
 その時、不意に掛かった声にあきは小さな悲鳴を上げて瞳を見開く。
 声のしたほうへと振り向けば、満面の笑みでコイスルが手を振っていた。
「すずちゃんは、どんな言葉だった?」
「え、すずの? ナイショだよ~!」
 疑問を返せば、ふるふると長い袖を振りながらコイスルが紡ぐ。互いにほんのりと頬が染まっているのは、照れ混じりだからか。互いの手にしっかりと握られた白の葉を確認すれば、互いの言葉は知らぬまま二人は並んで歩み出す。
 言葉は、今は自分の胸の中にだけ。
 だって、この迷宮での出逢いを大切にしたいから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

跳ねる鼓動を踊らせたまま
出口のない迷宮に惑うみたいに先へ進む
まだ甘い
幾度目だろうか…再び唇に触れ
どんな想いで私に──戯れ?それとも

笑ういとし巫女の笑顔に抱きしめたい衝動を抑え込む

美しい場所だ
こころが染めて
心が綴られた栞を物語の途中に狭むんだ
私はきみとの旅路を綴る旅日記用の栞にしようかな

小さな鳥に
告げられぬ想いを託すのも良いのかもしれない
指先の小鳥よ
胸の裡を焦がす想いをなんと綴る?
答えはきっとしっている
気がついてはいけないもの

枝先に移して、咲き綻ぶ葉を捕まえる

『櫻戀』

噫──違う、ちがう
いけない
戀ではなく神の愛
そうでなくては

無邪気に笑うきみの手の葉に己の掌を重ねる
言葉にしなくても

伝わればいい


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイに想いは伝わったかしら?
驚いた表情も赤く染まった頬もかぁいらし
それ以上にいとおしい
私の大好きな大切な神様へ
苺は愛を伝えてくれた?

目の前の光景に笑み彼の腕を掴む
小鳥が想いの言ノ葉をくれるだなんて

カムイは旅日記の栞?
うふふ、あなたの旅の想い出があえかな想いで彩られますように
私は大好きな本を読む時の栞にしようかな

どんな想いを読み取ってくれるのかしら
小鳥さん、私に想いのひとひらを下さいな

ひいらり、降りる葉をつかまえる

《愛》

ええ、そうでしょう
之は愛
何時だって、私は愛を欲してる
愛をしり愛を食み、寄り添い生きるの

カムイ
苦い顔したあなたを呼ぶ
重ねられた手のひらの間の愛の栞

あいは伝わっているかしら




 逸る鼓動は止まらない。
 頬の熱が引かない。
 ――まだ甘い。
 幾度目かも分からない自身の唇に触れ、朱赫七・カムイは惑うように先へ進む。
 彼は、桜は。どんな想いで私に――戯れ? それとも。
 そんな、戸惑う彼の姿を見て。誘名・櫻宵は不思議そうにその瞳を瞬く。
 カムイに、想いは伝わったかしら?
 浮かぶ疑問は浮かんでは消えていく。けれど――彼の驚いた表情も、赤く染まった頬も、なんともかぁいらしく、そしてそれ以上にいとおしいと想うのだ。
 ねえ、私の大好きな大切な神様へ。苺は愛を伝えてくれた?
 言葉を心に、そっと櫻宵が微笑めば。カムイの心臓は高鳴るけれど、ぐっと衝動は抑え込む。そのまま彼等は扉をくぐり、空を舞う鳥を見上げ息を吐いた。
「小鳥が想いの言ノ葉をくれるだなんて」
 感嘆の吐息と共に、櫻宵の唇から零れる言葉。
 描かれた絵の下の光景は何とも不思議で、美しい。
 こころが染めて、心が綴られた栞を物語の途中に挟もうか。
「私はきみとの旅路を綴る旅日記用の栞にしようかな」
 はらりと落ちゆく栞に想いを馳せ、カムイがそう紡げば櫻宵は小さく笑う。
「うふふ、あなたの旅の想い出があえかな想いで彩られますように」
 祈りを添えて、自分は大好きな本を読む時の栞にしようと語れば、ふたりは同時に手を差し出した。どんな想いを読み取ってくれるのかと、櫻宵の心に浮かぶのは好奇心。
「小鳥さん、私に想いのひとひらを下さいな」
 紡いだと同時、ひらりと優雅に降り立つ小さな鳥の姿。そのまま彼を枝へと導けば、ひらりと落ちる一枚の葉に――『愛』、と云う一文字が刻まれていた。
 その文字を櫻宵は見ると、深い笑みを零す。
 ええ、そうでしょう。
 之は愛。何時だって、私は愛を欲してる。愛をしり愛を食み、寄り添い生きるの。
 それはもう、答えは分かっていたように。納得したかのように。零れる笑みも、その吐息も、乱れることは無く深い深いものだった。
 そんな彼の傍らで、暫し迷うようにカムイの指先は揺れる。
 小さな鳥に、告げられぬ想いを託すのも良いのかもしれないと。彼の心に浮かぶのは秘めたる心。その指に留まった小鳥へと、静かな笑みを浮かべながら彼は心で問い掛ける。
 ――指先の小鳥よ。
 ――胸の裡を焦がす想いをなんと綴る?
 答えは、きっと知っている。
 けれど気付いてはいけないものなのだ。
 ふうっとひとつ息を吐いて、そのまま彼は二羽の小鳥を枝葉へと移す。すると同時に、ひらりと落ちた葉栞には――『櫻戀』と綴られていた。
(「噫──違う、ちがう」)
 栞を掴む手が震える。ふるふると、言い聞かせるように首が振るわれる。
 いけない。戀ではなく神の愛。そうでなくては。
「カムイ」
 苦い顔を浮かべ、葛藤するカムイに向け。愛を手にした櫻宵は優雅に語り掛け――そっと彼は、カムイの手へと自身の手を重ねた。
 ふたつの、手。
 その間には、先程手にした櫻宵の『愛』の栞を添えて。
 ――あいは伝わっているかしら。
 言葉にはしない。出来ない。
 けれど繋がれた熱と、心の言葉に触れることで感じる感情は確かにあるから。
 言葉にしなくても、伝わればいいと。
 願ってしまうのはどうしてだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィリーネ・リア
描かれた青空に雲、陽の光が描かれた石造りの部屋
並ぶ白い葉に飛び回る黒い鳥たち

鳥が言葉を…?
あらあら、不思議なことも有りますのね
ぼくが思うとしましたら、あるいは落ちてくるのでしたら
――それは何かしら

魔女のぼくが探すのは世界の色彩
人形のフィーが好きなのはあの子の焔の彩
こころに宿っている文字は、色は何なのかしら
ねぇ、鳥さん
ぼくに、ぼくだけの言の葉を教えて下さいな?
茜色を瞬かせながら空を振り仰いで

何も降らない時はきっと
『くゆちゃん』とフィーはきっとあなたを思い出すの
その時の彩はおそらく艶やかなピンクから赤に移ろう栞

どんな言葉でも
どんな色彩でも
それがきっとぼくのものだと大切に胸に抱きますわ

※栞内容お任せ




 描かれた青空に雲、陽の光が描かれたそこは石造りの部屋の中。
 立派な木に茂る白い葉に、空を優雅に飛び回る黒い鳥達。
「鳥が言葉を……? あらあら、不思議なことも有りますのね」
 ぱちりと大きな瞳を瞬いて、優雅にフィリーネ・リアは言葉を紡ぐ。
 その言葉の奥――胸に宿るのは、ほんの少しの好奇心。
 ぼくが思うとしましたら、あるいは落ちてくるのでしたら。――それは何かしら。
 魔女のフィリーネが探すのは、世界の色彩。
 人形のフィーが好きなのはあの子の焔の彩。
 ふたつの心は確かに感じるけれど、それならばこころに宿っている文字は、色は、何なのだろうと。小首を傾げ彼女は想う。
 だから――。
「ねぇ、鳥さん。ぼくに、ぼくだけの言の葉を教えて下さいな?」
 空を舞う鳥に向け、フィリーネが茜色を瞬かせながら優しく声を掛ければ――群れの中から小さな鳥が羽ばたき、フィリーネの元へと降り立った。
 ばさりと響く翼の音。
 そっと優しく指先に触れた後、招くように彼を白き葉が揺れる枝へと乗せれば。ひらり、落ちる一枚の葉。その葉を慌てて宙で掴んで、フィリーネは自身の心を確認するように、少し緊張した面持ちで葉を見つめる。
 紡がれる文字は、『虹』と『焔』の二文字。
 刻まれた文字は深い深い赤色で。葉は鮮やかなピンクから茜へと染まっていた。
 それは、ふたつの心。
 世界を染める数多の彩を表す虹のいろと、焔を纏う鮮やかなあの子。
 どちらの色も、言葉も、フィリーネを纏う大切なもの。彼女を彼女としてこの世に存在させる、手放すことは出来ないものなのだろう。
 その文字を見つめると、ふうっと彼女は深く息を吐く。
 これが自分なのだと、確かめるかのように。
 そのまま彼女はきゅっと、鮮やかな彩り抱く葉を胸元で抱き締めた。
(「きっとぼくのもの」)
 どんな言葉も。
 どんな色彩も。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『モフィンクス』

POW   :    モフ~ン
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【気の抜けた鳴き声 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD   :    モフ~zzz
【眠気を誘うアクビ 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ   :    モフッ、モフッ(実は今欲しい物)
質問と共に【質問の解答が具現化する靄 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●知恵を司る
 言の葉の栞を鍵にして――扉を開いた先に待ち受けていたのは、石が連なり段差の多い空間だった。石と石の間には葉が茂り、天井からは変わらず光が降り注ぐ不思議な世界。
『モフ?』
『モフ~……』
 その中に、至る所にいるのはオレンジ色のふわふわな身体が愛らしい存在。
 小さなお耳をぴくぴく動かして。まん丸な尻尾と小さな手足、声を上げれば小さなおひげがふこふこ動いている。そんな彼等が、この迷宮には至る所に転がっていた。
 あっちの子は眠そうにあくびをして。
 こっちの子は猟兵に気付くと、少しだけ興味を持ったのかぴくりと耳を動かし高い所からじーっと様子を見ている。
 彼等はこの迷宮に住まう災魔であることは確か。
 彼等を倒すことが猟兵の、そして共に戦う学園の生徒達の本来の目的。
 けれど、足を踏み入れても襲ってくるどころか。そのままのんきに転がっている彼等は敵意も感じず、敵だと認識しにくい存在。
 丁度大人が抱きかかえられる程のサイズの彼等は、触れればその身体は滑らかで温かなもふもふだと分かるだろう。
 それは動物らしい柔らかさ。けれど、普通の動物とはどこか違う彼等は。
『モフ、モフ』
 何してるの? と言いたげにじいっと高い所から猟兵を見下ろす。
 どうやら皆高い所が好きなようだが、それには特に理由は無いだろう。猟兵と比べて少しだけ高い位置にいる彼等は、ほんの少し背伸びをすれば届くはず。
 倒さなければいけない。
 けれど、少しだけ。ほんの少しの間だけ。
 その柔らかさを楽しんでも、誰も怒らない。
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。

アルダワ学園は何度か来ています。全てすずちゃんに誘われて。UDCアースに住み、アックス&ウィザーズを活動の場としている私にとって、この世界はまだ知らない事ばかり。
あの可愛いもふもふさんが、今回の敵なんです?
性質や状況を教えてもらい、なるほど、それなら、と。
もふもふして、いいんですね。

両手を、バッと広げて、ごろごろしてるモフィンクスを抱きしめます。
急にガバッと動いたので、びっくりして、少し嫌がられるかも。
気にせずぎゅーっと。もふもふ。クッションみたいに顔を埋めて。えへへ。

最期はせめて、苦しめず。
念動力で腰に下げたマスケット銃を動かし、UC。

アドリブ歓迎。


コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と進んだ迷宮の先には
自然があふれる不思議な空間。
迷宮の不思議は、知りたくて、でも知らないでいたい気持ちもあって

飛び交う敵を見たら
オーナーさん絶対好きな子たちでしょ~!
まるっこいのは大好きだもんね、と
オーナーさんの愛する人を思い浮かべて、いたずらっぽく声をかける。

大きく手を伸ばして、敵をつかまえると
少し遊んでね、
と声をかけて、抱きしめる

彼らの存在も、アルダワの不思議はいっぱい。
まだまだ知らないことを、オーナーさんと知りたい。

モフィンクスちゃん、違った形で出会えば、また遊ぼうね。
UCで作り出したハート型の紙片で私とオーナーさんの能力を高めて
全力魔法で攻撃。

アドリブ大歓迎




 苺の畑を抜け、数多の木々と鳥が飛び交う部屋を抜けて――扉をくぐった先に待っていた段差だらけの不思議な石の迷宮。
 一部屋ごとの変化の多さ。そして、変わらず地下であるにも関わらず注ぐ陽射しの眩しさに、小宮・あきはぱちぱちと空色の瞳を瞬いた。
 アルダワ魔法学園には、連れられて何度か来ている。
 その全てが不思議な空間で、数多の技術溢れる世界に住み、自然溢れる剣と魔法の世界で活動しているあきにとっては、魔法と蒸気の技術溢れる此の地は知らない事ばかりで。足を運ぶ度に新たな驚きを体験する。
「オーナーさん絶対好きな子たちでしょ~!」
 ぼんやりと、世界の不思議に身を任せていたら。傍らから聴こえた声にあきは現実へと引き戻される。首を動かし隣を見れば、キラキラと輝く瞳をしたコイスル・スズリズムがいた。――彼女こそが、あきをこの地へと何度も手招いた人物。
 アルダワ魔法学園に在籍し、日々勉学に励んでいる彼女だけれど。そんな彼女にとっても、アルダワ魔法学園の地下迷宮には知らないことが数多ある。
 地下に降り注ぐこの魔法はなんなのだろう。
 何故こんなにも自然溢れる地なのだろう。
 そんな不思議は――コイスルにとっては知りたくて、でも知らないでいたい気持ちの葛藤を生む不思議な力。
 そして今目の前の至る所に存在する、ふわふわの動物たちもその不思議さの一部。
『モフ?』
 自分達が見られているのかと気付いたのか、小首を傾げモフィンクスはコイスルをじっと見た。眠たげな瞳が一瞬開いたかと思えばとても円らで、その愛らしい姿に改めてあきが好きそうだと思う。――彼女は、まるっこいのが大好きだと知っているから。
 あきの愛する人を思い浮かべていた時、ぱちぱちと瞳を瞬いたあきは、はっとする。
「あの可愛いもふもふさんが、今回の敵なんです?」
 此の地に訪れた最大の理由は、生徒達と共に災魔を退治すること。それが教師として招かれた猟兵達の目的なのだが――目の前の彼等がその対象なのだと改めて知ると、少しの戸惑いが生まれる。
 すぐに倒して良いものかと悩んでいると――そっとコイスルが、あきの手を取った。
 その温もりにあきは顔を上げると、不思議そうに彼女の透き通る瞳を見つめる。優しい笑みを浮かべたまま、コイスルは首を振り――するりと手を離した後敵へと手を伸ばす。
 そっとコイスルの手が掴んだのは、モフィンクスの柔らかな身体。優しく優しくこちらへと寄せると、彼は抵抗することなくコイスルの腕の中へと納まり。
「少し遊んでね」
『モフ!』
 声を掛けられれば返事をするように声を上げ、大人しく彼女の腕の中へと抱かれた。ふわふわな心地に生物故の温もりを感じ、そっと瞳を閉じ穏やかな笑みを浮かべるコイスル。そんな彼女の姿を見て、あきは何かに気付いたように頷く。
「もふもふして、いいんですね」
 どこか真剣な眼差しと声色で。コイスルの様子に敵との触れ方を学ぶと彼女は両手をバッと勢いよく広げ――戸惑うこと無く、その胸へと1匹のモフィンクスが飛び込んだ。
 そのあまりの勢いにびっくりして、少し地面に踏ん張るように体重を掛ける者もいたようだけれど。それぞれ性格も違うのか、迷うこと無く飛び込む随分と人懐っこい子もいるようで、あきはそのままぎゅうっと強く抱き締める。
 腕に伝わる温もりの心地良さ。ふわふわの毛は太陽の射さない地下にも関わらずお日様の香りがするような気がして――思わずあきは、クッションのように顔を埋めていた。
「えへへ」
『モフ、モフ』
 顔を離し笑みを零せば、嬉しそうにモフィンクスもお返事をして。そんな楽しそうなあき達の姿を眺めていたコイスルは、静かに笑みを零す。
(「彼らの存在も、アルダワの不思議はいっぱい。まだまだ知らないことを、オーナーさんと知りたい」)
 此の学園に通うコイスルにとっても、まだまだ未知なことは多いから。だからこの先も、沢山の冒険をしていこう。好奇心を隠し切れずに腕の中のモフィンクスの頭を撫でると、彼は甘えるように頭をぽふんとコイスルへと預けた。
 ――けれど、その楽しい時間はひと時だけ。
 暫し楽しんだ後、名残惜しそうに2人はモフィンクスを腕から離しそっと元の位置へと戻した。『モフ?』と不思議そうに鳴く彼等もまた、どこか寂しそうに見えて。
「モフィンクスちゃん、違った形で出会えば、また遊ぼうね」
 ほんのりとコイスルの藍色の瞳に浮かぶのは寂しさの欠片の雫。ひらり揺れる袖口からハートの紙片が迷宮に溢れたかと思えば、あきが震える心で引き金を引いた。
 ――それは苦しめないようにと、2人の優しさを込めた確かな攻撃。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィリーネ・リア
甘さも酸っぱさもくれた苺に言葉の鳥の次は
ふわふわな子たち、もふって鳴くものですから
ぼくも、もふって挨拶致しましょう

高い所にいる子はぼくでも届くのかしら
少しその毛並みを堪能させて下さいな
うふふ、素敵な毛並みをしていらっしゃるのね
でも堪能しましたら、魔女のお仕事をしなくてはいけませんわ

絵筆で虹色を描きインクを投げる仕草をすれば
…今欲しい物ですの?
僅かに首を傾げるも答えはするり
それは勿論、今日まだ出会ってない彩
…でも今日見た色のインクも全部欲しいですわね
あら、ぼくったら欲張りさん
答えには満足して頂けたかしら?

さぁ、ぼくの色に染めて幕引き
魔女に躊躇いは生憎無縁なもので失礼
さようなら
可愛らしい毛並みの子




 口に広がる春の爽やかな甘みの苺。
 数多の言葉を抱く言の葉の鳥。
 不思議な出逢いが出来る此の場は、アルダワ魔法学園らしいけれど。
『モフ、モフ』
 フィリーネ・リアの目の前で、鳴き声を上げる新たな生物もまた不思議な出逢いのひとつだった。瞳を閉じたまま口を動かせば、おひげがぴくぴく動き。小さな前足をちょこんと出して、小柄なフィリーネの目線よりほんの少しだけ高い位置にその子はいる。
「もふ?」
 彼に釣られるようにフィリーネが挨拶をすれば、彼はどこか嬉しそうにまた『モフっ』と言葉を返してくれる。それはまるで、挨拶をするかのように。
 じいっと茜色の大きな瞳で彼を見つめていれば、敵であるにも関わらずすぐには攻撃はしてこない。交差する視線の中――フィリーネは好奇心故か、そっとモフィンクスへと小さな手を伸ばした。触れる直前で一瞬だけ警戒したように手を止めるけれど、彼は逃げるでも攻撃するでもなく変わらない様子で。思い切って触れてみれば、ふかりと柔らかな感覚が少女の手へと伝わった。
「うふふ、素敵な毛並みをしていらっしゃるのね」
 ひとつ、ふたつ。
 撫でてみれば温かな生命の鼓動を感じ。滑るような艶やかさに、手が埋め込んでしまうかのようなふかふかな心地に少女は思わず頬を綻ばせる。
 その心地良さは、永遠に続いて欲しいと思う程。
『モフ~』
 閉じていた瞳を更にとろけるように閉じて、心地良さそうに身体を震わせるモフィンクス。その姿はとても愛らしいけれど――此処には、ただ遊ぶ為にやってきた訳では無い。
 きゅっと手にしていた絵筆を握り締めて。呪文を唱えようと息を深く吸った時――。
『モフ、モフ?』
「……今欲しい物ですの?」
 鳴き声と共にぼふっと舞うもやが、フィリーネの顔へと触れた。そのもや自体は特に攻撃的な意味は無いらしく、ふわふわと辺りに漂うだけ。
 小さな彼の問いに、フィリーネは少しだけ首を傾げ――考える時間はほんの少しだけ。
 滑るように落ちる言葉は、今日まだ出会ってない彩。
「……でも今日見た色のインクも全部欲しいですわね。あら、ぼくったら欲張りさん」
 赤と、白と、緑と、黒と――今日出会っただけでいくつの彩があるだろう。今迄出会っていない色が、世界にはどれ程溢れているのだろう。
 考えるだけで胸が高鳴るような心地で。頬を僅かに染め色に想いを馳せながら、満足したかとモフィンクスへと問い掛ければ。
『モッフー!』
 勿論だよ、と言いたげに彼はその場からてんっと飛び上がり、そのままフィリーネの頭へと落ちてきた。もふっと柔らかな感覚が新緑色の髪へと伝わるけれど。
「さぁ、ぼくの色に染めて幕引き」
 くるりと絵筆を動かして、虹色のインクを小さな彼へと別れを告げつつ少女は当てる。
 彩が世界に満ちるその瞬間。魔女であるフィリーネに、躊躇いは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウラ・グラーテス
アリス(f27443)と
アリスが齎したお願いに、問い掛けに
どうしたって嬉しくなってしまって、満面の笑みを返し

もちろん。もちろんよ!
おいで。おいで
……うふふ!ぬいぐるみさんみたいね

わたしがことばを発したら、溶けて消えてしまいそうな笑顔
彼女が口にしてくれた『かけら』は、あまりに眩くて

アリス
あなたのなかには、たくさんのかけらがあって
いまはそれをひとつずつ集めているところだと思うの
そうしてできたかたちが、きっと
あなたを成す『こころ』になるのよ

さよならは寂しいことよ
ねえ、すてきなふわふわさん
わたしの答えをきいてくれる?

『あなた』よ
あなたと、また遊びたいわ
またいつか、きっとよ

それまで……どうか、いいゆめを


アリス・ランザデッド
パウラ(f31973)と

アリスの眼前には、ふわふわの身体をして、のんびりと転がっている災魔――オブリビオンがいた

以前のアリスならば、すぐにダガーを構えていただろう
だが――

触っても、いいかしら

恐る恐るパウラと災魔に問いかける
そうっと、傷つけないように、怖がらせないように抱き上げれば、何とも言えない温かさが胸に灯る

――ああ、あの時も感じた
これが、『うれしい』なんだ

パウラの言葉に、アリスは柔らかく微笑んだ
そう、これはきっとわたしを形作るひとかけら

ええ――そうね、きっと

パウラも、どうかこの温かなもので満たされますように
アリスの願いと共に、彼らとのお別れの時間がやってきた

痛くないよう、最後は一瞬で――




 目の前に現れた小さなもふもふ達。
 積み重なったりくっついたりしつつ、皆高い位置から見下ろすその姿に――パウラ・グラーテスは澄んだ青空のような淡い瞳を見開き輝かせた。
 そわり胸が揺れるのは好奇心か。彼女が一歩踏み出そうかと、足を動かそうとした時。
「触っても、いいかしら」
 傍らのアリス・ランザデッドの唇から零れたその言葉に、パウラの顔に浮かぶのは満面の笑み。ほんのりと頬を染め、輝く瞳で彼女はアリスを見ると。
「もちろん。もちろんよ!」
 跳ねるような声で、大きく頷きを返した。
 今までのアリスならば、すぐに腰に携えたダガーを構えていただろう。
 けれど今は、目の前の小さな存在に確かに好意的な眼差しを向けている。そんなアリスの変化が嬉しくて、どうしたって頬が緩むのが止められない。ふわふわと嬉しそうな笑みのまま、パウラはひらひらと白いドレスの裾を揺らしながら敵へと近付くと。
「おいで。おいで」
『モッフー!』
 両手を伸ばし、見上げる位置にいる敵へと優しく声を掛ければ。嬉しそうな鳴き声を上げてパウラの腕へと飛び込むもふもふ。ふんわりと心地良い柔らかさと温かさに、瞳を閉じて少女は心地良さそうに笑みを浮かべている。
 彼女のその姿を見て、アリスもほんの少しだけ恐々と。敵の様子を伺うように、そっと手を伸ばしてみれば――先程と同じようにぴょんっとその場から跳ねて、アリスの胸元へと落ちるように飛び込んでくるモフィンクス。その柔らかさに、腕に伝わる温もりに。アリスは驚いたように息を吸い、ぱちぱちと瞳を瞬かせる。
(「――ああ、あの時も感じた。これが、『うれしい』なんだ」)
「……うふふ! ぬいぐるみさんみたいね」
 仄かに染まるアリスの頬。そんな彼女の変化に気付き、笑みを零しながらパウラが語り掛ければ。こくりと、静かにアリスは頷きを返した。
 戦いの最中にも関わらず、そんなアリスの顔に浮かぶのは柔らかな微笑み。
 その笑顔があまりにも眩しくて――けれど、すぐに溶けて消えてしまいそうで。不思議なことにパウラはきゅっと胸が締め付けられるような感覚に。胸元に抱いたモフィンクスを抱く力をほんの少しだけ無意識に強めると、彼はどうしたの? と言いたげに鳴く。
「そう、これはきっとわたしを形作るひとかけら」
 そんなパウラの変化に気付かず、モフィンクスに顔を寄せながら言葉を零すアリスは変わらず穏やかで。紡ぐ言葉には、未来の兆しが見えている。
 その『かけら』が、パウラにはあまりにも眩しく感じて。少女は大きな瞳をそっと細めながら深く深く、息を零した。
 とくん。響く胸の音は彼女の変化に喜んで。彼女の集めた先へと微かに期待が宿る。
「アリス。あなたのなかには、たくさんのかけらがあって、いまはそれをひとつずつ集めているところだと思うの」
 そうしてできたかたちがきっと、あなたを成す『こころ』になる――。
 何も知らない少女が辿り着いた、ほんの微かな未来への可能性。その僅かな欠片を見つけ出せたことは本当に喜ばしいことで、その瞬間に共に居られることもパウラにとっても嬉しいこと。
 幸せそうな笑みを零しながら、モフィンクスをきゅうっと抱き締めてパウラが零せば。
「ええ――そうね、きっと」
 じっとモフィンクスに注いでいた鮮やかな赤の瞳を今度はパウラへと向けると――静かに、アリスは頷きを返した。
 その言葉と、浮かぶ微笑にまたパウラは胸がきゅっとなる。
 きっかけをくれたのは、腕の中で心地良さそうにうとうとしているモフィンクスのお陰。ありがとうと云う気持ちを込めてそっと頭を撫でてあげれば。
「パウラも、どうかこの温かなもので満たされますように」
 アリスの優しさに、また触れることが出来た。
 パウラの心に満ちる温かさ。そして同時に、この温かな時間への確かな別れを感じる。
「さよならは寂しいことよ。ねえ、すてきなふわふわさん、わたしの答えをきいてくれる?」
『モフ?』
 彼女の心に宿る寂しさ。――そしてそれは、彼等の問いの『答え』でもあった。
 いつの間にやら辺りを漂う、白いもやへのパウラの答えは――。
「『あなた』よ。あなたと、また遊びたいわ」
 そっと額に柔らかな彼の額を合わせて。またいつかと、別れを告げれば彼は嬉しそうに鳴き声を上げた。しっかりと別れを告げるパウラの様子を見守るように眺め、アリスは今度こそ愛用のダガーを手に握る。
 痛くないようにと。
 共に宿る優しい心がふたりの唇から呪文として紡がれ、霞草の花雨と幾多のダガーナイフの雨が降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白神・ハク
【幸先】

うわァ、カワイイねェ。
キュッてしたくなっちゃうよ。
キュッじゃなくてもふもふとするのかな。
小さいね。おいでおいで。僕は怖くないよォ。

僕も手の届く子から堪能しようかなァ。
すごくもふもふしてて気持ちイイね。
ヴィリヤちゃんとエンティお兄さんにもあげるよ。
もふもふしてて気持ちイイでしょ。
僕の頭の上に乗る?高いと思うよォ。

頭の上に乗せて二人に見せるよ。
楽しそうにしているねェ。もう少し遊んだら倒そっか。
倒すの勿体ないなァ。
気の抜けた鳴き声が面白いなァ。
僕も真似してみようかな。モフ、モフ。モフ!
んふふ。中々似ないなァ。
エンティお兄さんの子たちはかわいいねェ。

もふもふを堪能したら倒すよ。


エンティ・シェア
【幸先】

もふもふはいつ見ても可愛らしいねぇ
可愛いものは好きだよ。和むだろう
戯れるのも好きだし、戯れているのを見るのも好きだよ
沢山居るのがぎゅってなってると、ほっこりするね

二人がもふもふを堪能しているのをなんとなく眺めて
おや、取ってくれるの?
ハクは背が高いからねぇ。ありがとう
はは、頭の上の子、なんだか楽しそうでいいね

もふもふは気持ちいいね
持ち帰りたい気持ちはよくわかるよ
でもまぁ…私の一番は、私の可愛い彼らだけどね
おいで、仕事だ
空室の住人でぬいぐるみを呼んで
もふっと倒してもらおう
ふふ、痛くしないように、とは。ヴィリヤ嬢は優しいね
私は被弾しないように気を付けながら
皆ともふもふの活躍を見守るとしようか


ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
猫?犬?変わった見た目だけど
可愛いから何でもいいかな。
可愛いものは正義とか何とかって聞いたことがあるし。
ハクさんとエンティさんは可愛いのは好き?
ハクさん、ありがとう!
背が高いと高い所のが取りやすそうで良いよね。
頭の上の子も嬉しそうだし高い所が好きなのかな?

わぁ、モフモフしてるし鳴き声も可愛いね。
持って帰りたいけど災魔だから倒さないといけないんだよね。
でも、可愛いから痛くない方法にしよう。
優しいかな?可愛いから特別にって感じかな。
【四精儀】の氷の風を使って凍らせちゃおうかな。
少しずつ寒くするのは寒さで凍えて可哀相だから、
『属性攻撃』で制御して出来るだけ一瞬で凍らせるね。




「うわァ、カワイイねェ。キュッてしたくなっちゃうよ」
 扉を開ければ待ち受けていた数多のもふもふの姿に、白神・ハクはへらりと言葉を零す。彼の言葉とその姿に、至る高い所に座る彼等は返事をするように首を揺らすと、そのまま攻撃を仕掛けるでもなく落ち着いた様子で動かない。
「もふもふはいつ見ても可愛らしいねぇ」
「猫? 犬? 変わった見た目だけど」
 穏やかに覗く左目を細めるエンティ・シェアと、不思議な生物を前にヴィリヤ・カヤラはほんの少しの疑問を口にする。大きさ的には一般的な猫くらい。伸びた耳とまん丸尻尾は兎のようにも見えるけれど、その身体つきはどことなく犬っぽい気もする。
 正体が分からなければ、どんな生き物かも分からない。
 それは此処が不思議な力が働くアルダワ学園の迷宮だからか、彼が災魔だからかは分からない。――ほんの少しの思考の後、可愛いから何でもいいかとヴィリヤは結論を出す。
『モフモフ』
 鳴き声をあげればぴくぴくと小さなおひげが揺れている。
 その姿を見れば改めてヴィリヤは、可愛いものは正義と云う言葉を思い出しこくりと頷いた。――そのまま彼女は、両隣の彼等を交互に見ると。
「ハクさんとエンティさんは可愛いのは好き?」
 ふと、疑問を問い掛ける。
 その言葉にエンティはひとつ瞳を瞬くと、口許に浮かぶのは穏やかな笑み。
「可愛いものは好きだよ。和むだろう」
 今も目の前で寝そべる彼等を見て、穏やかな気持ちになっているのだろう。彼等と戯れることも、彼等と戯れる仲間を見ることもきっと楽しいに違いない。エンティより背の高いハクよりも高い位置で、何匹かのモフィンクスがぎゅうっと密集している様子に気付けば思わず小さな笑い声が零れていた。
 彼の言葉にハクもこくりと頷くと――その密集している下へと近付くと、そっと長い両手を伸ばし彼等を手招く。
「小さいね。おいでおいで。僕は怖くないよォ」
 手を伸ばせばハクの背ならば届く距離。モフィンクス達はハクの声に反応すると『モフモフ』と鳴き声を上げながら、我先にと彼の元へと動こうとするが――密集しているが故に上手くいかず、もだもだと大渋滞を起こしている。
 そんな姿が微笑ましくて、ついつい遠くからエンティとヴィリヤは互いに顔を見合わせ笑みを零し合った。そして、渋滞を抜けて飛び出してきた1匹をハクは抱き締める。
「すごくもふもふしてて気持ちイイね。ヴィリヤちゃんとエンティお兄さんにもあげるよ」
 ぎゅうっと抱き締めれば温かな心地が腕いっぱいに広がる。少し楽しんだ後、ハクが振り返りヴィリヤとエンティを手招けば、2人は早足でハクの元へと駆け寄った。どの子が良いかなと悩みながら、抱いて欲しそうに仲間の中を抜けてきた子を手渡せば。
「ハクさん、ありがとう!」
 ぎゅうっと抱き締めながら嬉しそうに笑うヴィリヤ。静かに頷きエンティも心地良さそうにぎゅうっと抱き締めるけれど――その時、てんっと上から跳ねて落ちて来たかと思うと、そのままハクの頭の上へと乗る1匹のモフィンクスの姿が。
「僕の頭の上に乗る? 高いと思うよォ」
 払うこと無く穏やかに笑って、乗り心地を確かめるようにハクは話し掛ける。すると彼はお返事をするように『モフ!』と元気に声を上げると、短い前足をぱたぱたと動かし、ハクへと喜びを伝えるように頭を軽く叩いた。
「はは、頭の上の子、なんだか楽しそうでいいね」
「頭の上の子も嬉しそうだし高い所が好きなのかな?」
 そんなハクとモフィンクスの姿を見て、エンティが笑えば少しだけ考えるようにヴィリヤが紡ぐ。見て見てとハクは頭のモフィンクスが2人へと見えやすいように少しだけ屈む。頭の上の彼は尚も嬉しそうに、少しだけ顔を上げてふんぞり返っているよう。
 その愛らしさに、心地良さに、ついつい浮かぶのは倒すのが勿体無いという想い。連れて帰りたいと云う強い欲求が生まれる。
 けれどそのうち――という使命は分かっている。だって彼等は、猟兵だから。
『モフモフ?』
 一瞬だけ漂う悲しい雰囲気に、どうしたの? と言いたげにモフィンクス達は声を上げ3人を見る。その眼差しと声に、彼等ははっとすると。
「僕も真似してみようかな。モフ、モフ。モフ! んふふ。中々似ないなァ」
 悲しみを吹き飛ばすようにハクが真似をすれば、2人も穏やかに笑いかけた。
 そう、こんなにも穏やかで可愛らしい存在だから――。
「可愛いから痛くない方法にしよう」
 そうだ、と思いついたことをヴィリヤが零せば、エンティは穏やかに笑みを返す。
「ふふ、痛くしないように、とは。ヴィリヤ嬢は優しいね」
「優しいかな? 可愛いから特別にって感じかな」
 彼の言葉に、ヴィリヤは小首を傾げながらそう語る。――そう、彼等は愛らしくも愛嬌があるから。ほんの少しでも悲しまないようにと、それが優しい彼等の願い。
 さようならと送る言葉を添えて。
 3人の力が、迷宮内へと広がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・カンタレッラ
【揺蕩う魚】

うっわ何コレ、もふい
君らほんとにオブリビオン?っつーくらい懐っこいんだが?
あーーこら登るなはしゃぐな足にまとわりつくな!踏む!

リル無事かー?
こっち足元が毛玉の集会になって来たけど
……あ、君も無事とは言い難い集まり方してんね?
つーか、今ねえさんって……ふは、悪い気しねぇなぁ。かーわいい

なぁ、腹って急所じゃねぇの?何でそんな堂々たる態度でさも撫でろと言わんばかりに腹出すの?君ら野生何処行った?
たっく、やわこいなぁ君らの腹……程よくぬくくてもふい……
此奴ら、悪餓鬼トリオが喜びそうだなー
普通に欲しいけど諦めような

うーん……最後はクヴェレに流れるプールばりにゆるっゆるなブレス吐いて貰うか……


リル・ルリ
【揺蕩う魚】

僕は、もふもふしたものが大好きなんだ
内緒だよ
毛玉とかふかふかとか最高だよ
秘密だよ

ぁっ……あ……もふもふ……もふもふだよ!
ルクスねえさん!!
でれぇとした顔で、もふもふ達に埋もれてほこほこ笑う
ヨルも毛玉海に埋もれてどこかに沈んでしまった

思わず、ねえさん、と憧れを口にしてしまったことも気が付かず鰭耳をぴこんぴこん動かして、盛大な感嘆のため息と共にぎゅうと抱きつく
ふかふか眠くなってきた…

ルクスねえさん、連れて帰ろうよ
ひとつ、ぽけとにしまっていけばバレないよ

やっぱりだめか
もふもふを散らすなんてできない……せめて優しい桜の中で眠りについて
歌う「望春の歌」
ふふー、やわこくてあったかな日だったね!




「ぁっ……あ……もふもふ……もふもふだよ!」
 扉をくぐった先、溢れる程のもふもふが高い所からリル・ルリを見下ろす様子に。彼は薄花桜の瞳をキラキラと純粋に輝かせながら、跳ねるような声を上げた。
 彼は、もふもふが好き。毛玉でふかふかとか最高、と云う想いが溢れるけれどそれは秘密。ひらり尾びれを揺らして、自分よりもほんの少し高い位置にいるモフィンクスを見上げてみれば、彼は『モフ?』と不思議そうに小首を傾げる。
「うっわ何コレ、もふい」
 てんっと跳ねて頭に落ちてきたモフィンクスを受け止めれば、ルクス・カンタレッラは思わず心の声を零していた。彼女の長い髪伝いでも伝わってくるそのもふもふと温もりが心地良くて、自然と笑みが零れてしまう。
 気付けば辺りには数多のモフィンクスが集まって来ていて。ルクスの肩に乗ったり長い髪を興味深げに短い前足で揺らしたり、その足元をちょろちょろと動いたり。
「君らほんとにオブリビオン? っつーくらい懐っこいんだが?」
 一切の警戒が無く近付いてくるモフィンクス達に、ルクスはふと疑問を投げかける。もう少し警戒心なり、戦う姿勢なり見せても良いものだと思うが――彼等はただただ遊んで欲しいと言いたげに、ルクスの周りへどんどん集まってくる。
「あーーこら登るなはしゃぐな足にまとわりつくな! 踏む!」
 上に上に登りたいのだろう。足元を短い手足でちょこちょこ動きつつ、ルクスの足から登ろうとする1匹が現れれば、他のモフィンクスも続こうとして。うっかり踏んでしまいそうなのが怖くて、ルクスは足元に注意を払いながらバランスを取る。
「リル無事かー? こっち足元が毛玉の集会になって来たけど」
 自分がこんな状況ならば、彼はどうだろう。そう想って振り返ってみれば――数多のモフィンクスに乗られて、すっかり埋もれてしまっているリルの姿が。
「ルクスねえさん!!」
 顔は見えないけれど、手を伸ばして僕はここだよとアピールするリル。その言葉は切羽詰まった様子は無く、覗く表情もでれっと甘く蕩ける幸せな心地だと分かる。そのままリルと、同じくふわふわのヨルも数多のモフィンクスの海に沈んで行く。
 とても無事とは言えないけれど、幸せそうなリルを見れば助け出すことは無粋だろう。
「つーか、今ねえさんって……ふは、悪い気しねぇなぁ。かーわいい」
 それよりも、彼がつい漏らしてしまった言葉にルクスは嬉しそうに笑みを零していた。
 ねえさん――それは、リルにとっては憧れの言葉。
 けれど彼はその言葉を口にしてしまったことには気付いていない様子で、月光ヴェールの鰭耳をご機嫌に揺らしながら大きな感嘆の溜息を零し、モフィンクスを1匹抱き上げてそのままぎゅうっと抱き締めた。
『モフ?』
 リルの溜息に心配しているのだろうか。元気出して、と言いたげにモフィンクスは短い前足でぽんぽんっとリルの胸元を叩いた。その様子も愛らしく、そして柔らかさが心地良く。ついリルはうとうとと、瞼が落ちてくる。
 彼のその様子は特に危険は無さそうで。安堵の息を零した後、ルクスが改めて足元を見れば――そこには構ってと言いたげにごろり横たわるモフィンクスが居た。
「なぁ、腹って急所じゃねぇの? 君ら野生何処行った?」
 そう言いつつも腕を伸ばし撫でてやれば、モフィンクスは心地良さそうに瞳を蕩けさせる。すると他の子も次々に横たわり、自分も撫でてと言いたげで――敵とは思えぬその姿にルクスは思わず苦笑を零しつつ、次々と撫でていく。
「たっく、やわこいなぁ君らの腹……程よくぬくくてもふい……」
 背中や頭とは少しだけ違うその柔らかさに思わず頬を緩ませれば――モフィンクスの中に埋もれていたリルがひょっこりと顔を出し、真剣な眼差しでルクスを見て唇を開く。
「ルクスねえさん、連れて帰ろうよ。ひとつ、ぽけとにしまっていけばバレないよ」
 小さな子を探そうか。うろうろと数多のモフィンクスが積み重なる辺りを視線で探すリル。彼の言う通り、連れて帰れば喜ぶ人がいそうだけれど。
「普通に欲しいけど諦めような」
 ふるりとルクスが首を振れば、リルはしゅんっと残念そうに俯かせる。そう、彼だって愛らしいが災魔だと云うことは分かっている。分かり合うことが出来ない事だって。
 けれどせめて。彼等が痛みを感じないようにと――彼の桜色の唇から零れるのは柔く優しく暖かく、抱くような蕩ける歌声。すると辺りにはぷくりと泡が浮かび、桜の花弁が舞いそのままモフィンクス達の身体を包み込む。
 彼に続くようにルクスが名を呼ぶのは源流の竜。返事をすると彼は、随分と加減をした優しい水流を生み出し――桜と水に包まれた彼等は、次々と姿を消していく。
「ふふー、やわこくてあったかな日だったね!」
 少し残念そうに彼等を見送った後、最後に零れるリルの笑顔は温かくて。
 今日の日の色を表しているかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンセット・グレーム
瑠菜(f02583)と
オブリビオンだから倒す必要があるかと思ったが……
まあ、この様子なら無理することもないか……

まあ、瑠菜が前衛で戦うというならお言葉に甘えて少し距離を置いて彼女とモフィンクスの戦い?を描かせてもらうか
(タブレットのお絵描きアプリを起動して、モフィンクスとじゃれ合う……いや、懸命に戦う瑠菜の姿を描いていく
繊細なタッチでパステルカラーで)

……戦うというより愛でてるな
じゃれあってるとも見える
だが、絵に映える光景だ
まあ、瑠菜には適当なとこで倒してもらうとして

(完成した絵を彼女のメールアドレスに添付して送る
メッセージと共に)
『可愛い小動物とじゃれ合うキミが一番可愛い』


煌燥・瑠菜
サンセットさん(f30712)と
(かっ、可愛い!!?)
あっ、いえ、何でもないですよ?ええ……
それじゃあ私はモフる、じゃなくて突撃するのでサンセットさんは沢山時間をかけて絵を描いててください!
その間私は堪能……ではなく奮闘するので!よろしくお願いしますね!ね!!

(早速戦うフリをしつつ存分にモフる)
あっ、何というもふもふ感……これは強敵、すぐには倒せそうも無いですね!
この至高の撫で心地の前には無力同然……しかし、じわじわと存分に撫で回せば……!!

(しばらくモフり続けて)

ん?メール?今忙しいんですけど……可愛い!?
べべべ別に私可愛くないんやけど!?(照れ隠し腹パン)
あっ……わ、私のもふもふーー!!?




(「かっ、可愛い!!?」)
 扉を開けた瞬間、目の前に飛び込んできたもふもふの存在に煌燥・瑠菜は思わず息を呑み動きが止まった。
『モフ?』
 ぴくぴくと小さな耳を動かして、小首を傾げる目の前のモフィンクス。一切攻撃を仕掛けてこないからか、じっとそのまま瑠菜は固まったようにその場に立ち尽くす。
 ほんの僅かの不思議な間。
 すぐに瑠菜ははっと現実へと返ると、くるりと後ろのサンセット・グレームを見て慌てたように両手を振り。
「あっ、いえ、何でもないですよ? ええ……」
 平静さをアピールするように語るけれど――ほんのりと頬が染まっている。そのままひとつ咳払いをすると、再び目の前のモフィンクスへと視線を移し。
「それじゃあ私はモフる、じゃなくて突撃するのでサンセットさんは沢山時間をかけて絵を描いててください!」
 その間堪能……ではなく奮闘するからと。彼女らしい言い訳を紡ぎ、サンセットの返事を待たずにモフィンクスへと近付いて行く。
 そんな彼女の背中を静かに見送ったサンセットは――ぼんやりと頭を傾げた。
「オブリビオンだから倒す必要があるかと思ったが……」
 目の前ではモフィンクスへと手を伸ばす瑠菜の姿。高い位置にはぎゅうっと密集するほどの敵が居るのが見えるけれど、どの子もその場でぼんやりと座ったままですぐに戦闘は始まらなそうだ。
 無理をする必要も無い、そう結論を出すとサンセットは早速タブレットを取り出しお絵かきアプリを起動した。
 今が戦い中だと云うことは分かっている。
 けれど折角の機会だ。お言葉に甘え、前衛で奮闘する彼女の様子を絵として描き止めておいても罰は当たらないだろう。幸い、切羽詰まった状況では無いのだから。
 さらさらと手を動かしている彼の様子には目もくれず。瑠菜は目の前のモフィンクスに夢中だった。大きな瞳を輝かせ、そうっと自身の頭より少し上に居るモフィンクスへと手を伸ばせば――素直にその手に抱かれ、ぎゅうっと抱き締めれば心地よい温もりが。
「あっ、何というもふもふ感……これは強敵、すぐには倒せそうも無いですね!」
 頬を染め、そのあまりの心地良さに彼女はすっかり囚われてしまった。
 滑るような心地良い毛。生物故の温もりを帯びたその身体は、太陽の無い地下にも関わらずお日さまの香りがする。
 まさに至高。そう想った瑠菜は、無心で腕の中の彼を撫で続ける。幸いモフィンクスは撫でられることが好きなようで『モフ~ン』と心地良さそうな声を漏らしては、ゆるゆると瞳を蕩けるように細めている。
「……戦うというより愛でてるな」
 そんな彼女の様子を描きながら、ぽつりとサンセットは冷静に零した。
 別の言葉にするならばじゃれあっているとも言えるだろう。戦いの一幕とはとても言えない。けれどその穏やかで、温かな空間はとても絵に映える光景。
 自分も撫でて欲しいと、他のモフィンクスがもふもふ足元にじゃれつき、嬉しさを隠し切れない彼女の様子を見てサンセットは柔らかな笑みを浮かべていた。
 絵が完成すれば、すかさずサンセットはメールソフトを立ち上げる。いくつかの操作をしタップをすれば――音が鳴り、瑠菜は自分のスマホを取り出す。
「ん? メール? 今忙しいんですけど……可愛い!?」
 画面を見て、届いたメールを開けば驚いたように瞳を見開く。
 そこには、淡い色合いで描かれたモフィンクスと戯れる瑠菜の様子と、一言のメッセージが綴られていて。見る見るうちに瑠菜の顔が赤く染まっていく。
「べべべ別に私可愛くないんやけど!?」
 慌てたようにサンセットへと近付くと、彼女は照れ隠しに腕を振るう。
 そんな和やかな彼女達の様子を、モフィンクス達がモフモフと楽しそうに鳴きながら見守っていた。
 綴られた言葉は――可愛い小動物とじゃれ合うキミが一番可愛い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
ジャックくん(f16475)と

あーこれあれだ
モフモフなのにぽこっとしなくちゃなやつ
また後でジャックくんに慰めてもらお…
やったぁ

ネコ科かなー?たぶん
鳴き声がそれっぽくないけど
うん、ぬいぐるみっぽい気もする
グッズっぽく売ってそうな…
高いところが好きなんだって
ジャックくんちょっと屈んでって頼む
モフっとした子たちをもぎゅっと抱き締めてから
君の肩とか頭に乗せてあげるよ
キャットタワーみたい
ふふ

いいなー俺様もまた肩に乗りたい
羨みながら自分も抱き抱えて高いところへ
影の獣たちの背にも乗せて運ぶ
どうだろ、ちょっと喜んでるみたい?
今度獣に乗せてあげようかな

鳴き声はめっちゃ和むけど
観念して獣にかぷっとしてもらおうかな


ジャック・スペード
ロキ/f25190

戦場だと云うのに、どこか気の抜ける空間だ
ああ……いつかパンダを愛でた時も
最期はきっちりお別れしたな
俺で良ければ頑張って慰めよう

前々から想っていたんだが
モフィンクスたちはネコ科なんだろうか
腕を伸ばし抱きかかえてみる
動物と云うより……ヌイグルミっぽいな

屈めば良いのか、分かった
ズレないよう帽子を押さえながら
肩にのそのそ乗って来るところを見守って
キャットタワーか……
その割には運動しそうに無いな

モフィンクスを肩に乗せた侭
高所へ昇ってみよう
気の抜けた鳴声が聴こえてくるが
気に入ったのだろうか

ロキの獣に乗る子たちも楽しそうだ
ああいうの、俺も少しやってみたい

最後は苦しまないよう
一撃で眠らせよう




「あーこれあれだ。モフモフなのにぽこっとしなくちゃなやつ」
 扉をくぐった瞬間、石造りの迷宮内に溢れかえるもふもふの姿を見て。瞬時に状況を察したロキ・バロックヒートは少し残念そうに言葉を零す。
 彼のその言葉に、ぐるりと迷宮内を見渡していたジャック・スペードはかつてを思い出し静かに頷きを返す。かつて、愛らしい存在と共に対峙した時。愛でる瞬間は確かにあったが、最期にはこの手で別れを告げた。
 それは、猟兵としてとても大切なこと。
 敵を、オブリビオンを倒すことこそが、猟兵である者の務め。
「俺で良ければ頑張って慰めよう」
 だから、彼が悲しまないように――少しだけ蜜彩の瞳を揺らす彼にジャックがそう言葉を掛ければ、ロキは顔を上げ嬉しそうに微笑んだ。
 とん、改めて石の床を踏みしめて迷宮内を進めば、所々のモフィンクス達は顔を上げじーっとこちらの様子を伺っている。それは決して敵意は見えない、ただの好奇心のようで。ひくひくおひげを揺らして、小さな耳をぴくぴく動かす。
「前々から想っていたんだが、モフィンクスたちはネコ科なんだろうか」
 ふと抱いた疑問を言葉にしながら、そうっと1匹のモフィンクスへと手を伸ばしてみれば。彼は拒否することなく素直にジャックの大きな手に抱かれ、そのまま胸に寄せればどこか嬉しそうに鳴き声を零す。
「ネコ科かなー? たぶん。鳴き声がそれっぽくないけど」
 ジャックに倣い頭上のモフィンクスを見上げながらロキは紡ぐ。小さな手足は普通の動物とは全く違い、四足と云う共通点だけ。少し長い耳と短い尻尾は違和感だが、なんとなく纏う空気は猫っぽい気がしないでもない。
『モフモフ』
 しかし、決定的に違うのはその鳴き声だろう。改めてその気の抜ける鳴き声を聞けば、ロキはどこか納得がいっていない様子で首を傾げる。
「動物と云うより……ヌイグルミっぽいな」
「うん、ぬいぐるみっぽい気もする。グッズっぽく売ってそうな……」
 改めて抱いて、すぐ傍で見てみれば。どの動物にも当てはめることが出来ない不思議な存在。これで抱いた時の、生物故の温もりが無ければほぼぬいぐるみになる。
 じいっとモフィンクスと顔を見合わせてから。ふとロキはモフィンクスから顔を上げると、腕の中の生き物を撫でていたジャックを見上げ。
「高いところが好きなんだって。ジャックくんちょっと屈んで」
 お願いを零してみれば、彼は疑問に思うこと無くすぐに頷き応じてくれる。長身な彼が屈めば、少し小柄なロキでも十分に届く高さで――ロキは、ジャックの頭や肩に次々とモフィンクスを乗せていった。頭のモフィンクスがぱたぱたと足を動かせば、ジャックは帽子を落とさないようにと慌てて押さえる。
「キャットタワーみたい、ふふ」
 高い所でくつろぐ彼等を見れば、つい思いついたことを零し小さな笑い声を零す。その言葉と笑い声に、ジャックは肩でバランスを取るモフィンクスを改めてじっと見て。
「その割には運動しそうに無いな」
 小さな笑い声と共に、そんなことを零した。
 そのまま彼は落ちないようにと、肩と頭のモフィンクスを支えながら立ち上がり階段を昇り出した。高い所が好きならば、こっちのほうが喜ぶと思ったから。
「いいなー俺様もまた肩に乗りたい」
 そんなジャックとモフィンクスの姿を見て、素直にロキは羨ましいと思うけれど。今は彼等が主役だと思い、影の獣を作り出しその背にモフィンクスを乗せ、自分も抱きかかえてジャックの後を追うように階段を昇っていく。
『モフ~♪』
 ジャックの肩と、ロキの腕の中のモフィンクスは嬉しそうに鳴き声を上げ。ゆらゆら身体を揺らし喜びを表現しているかのよう。なんとも気の抜ける鳴き声ではあるが、気に入ってくれたのだろうと思えば2人は顔を見合わせた。
「ロキの獣に乗る子たちも楽しそうだ。ああいうの、俺も少しやってみたい」
 そのままジャックの視線は、後ろをついてくる獣の背のモフィンクスへと。彼もまた素直に好奇心を露わにすれば、ロキは暫し考える。
 彼の巨体を受け止めるのは、普通の動物ならば難しい。
 けれどロキが作り出した影の獣ならば、ある程度は自由に出来る。
 だから今度――その誓いを胸にしながら、ロキは腕の中のモフィンクスを撫でた。
『モフ、モフ』
 尚も嬉しそうな鳴き声を上げるその姿に、すっかり情が湧いてしまったけれど。猟兵としての役目を思い出し、彼等は顔を見合わせ呪文を唱える。
 せめて、せめて。苦しまないようにと目一杯の力を込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
あきら(f26138)と

秘密の扉を抜けた先だというのに
其処に住まう災魔は随分と気が抜ける子たちだね

寧ろ名前負けしていないかい?
苦笑交じりに小突けど返ってくるのは呑気な声ばかり
探せばあるのかもしれないけれど少なくとも僕は見た事無いね

手を伸ばせど抵抗しないその毛並みを撫で
穏やかなふれあいタイムに動物園に来たのかと錯覚しそう
抱き抱えたら聞こえた声に其方へ目線を
自分が戯れている姿にすれば良いのに
零しはすれど好きにさせる

うんかわいい
けれど此処には彼らの住める地は無い
質問には素直に「君たちの毛皮」と答え
駄目かい?
じゃあぬいぐるみで
手触りが落ちないなら欲しい事に変わり無い
おやすみの代わりに星の一閃を与えよう


天音・亮
まどか(f18469)と

ほあぁ〜っ
なにこのもふもふ!こののんびり感!
かわいい、かわいすぎる!

きみが小突いてその子達が声を上げる様子も愛らしすぎて
表情は終始緩みっぱなし
手を伸ばせばモフ、なんて鳴きながら近づいてくる様子はたまらない
小さな尻尾がぴるぴると………
これ、フィギュアとかぬいぐるみとかで販売されてないかな(本気トーン)

はわっ…!!かわいいとかわいいの共演…!
ま、まどか待って!そのまま、そのままね!
なんて言って構えたスマホでぱしゃり
待ち受け決定だこれ

うぅ、やっぱり倒さなきゃダメ?
ううぅぅ〜〜ごめんねっ…!
威力を極力押さえた竜巻できみ達が大好きな高い高い空へ
毛皮よりぬいぐるみとかにしよ?ね?




 石造りの中、数多の段差の上でくつろぐモフィンクスの数は数えられないほど。
 右を見ても、左を見ても。天音・亮の瞳に映るのはのんびりとしたモフィンクスの姿。人気の高い場所では、ぎゅうっと密集するほど集まっていたりもして。
「ほあぁ~っ。なにこのもふもふ! こののんびり感! かわいい、かわいすぎる!」
 瞳を輝かし、ふるふると身体を震わせて。亮は素直にその感動を言葉として落とす。
「寧ろ名前負けしていないかい?」
 ちらりと亮のそんな様子を見た後、苦笑交じりに旭・まどかがモフィンクス達を小突いてみるけれど。相変わらず敵意は見せずに、ただ何? と言いたげに呑気な声を上げる。
 まどかの指に反応してぷるぷるっと身体を震わせたり、鳴き声を上げる彼等の様子を眺める亮の頬は緩み続けていて。そのまま「おいで?」と手を伸ばしながら声を掛けてみれば、ちょこちょこ近付いてくるモフィンクスを抱き上げた。
「小さな尻尾がぴるぴると…………。これ、フィギュアとかぬいぐるみとかで販売されてないかな」
「探せばあるのかもしれないけれど少なくとも僕は見た事無いね」
 真剣な眼差しと声色で語る彼女にくすりとひとつ笑みを零し、冷静にまどかは返す。――けれど、彼が見たことが無いだけで真実は分からない。アルダワ魔法学園と云う数多の生徒が集う地には何があるかは分からないからだ。
 モフィンクスを抱き締め、嬉しそうに笑う亮の様子を見て。まどかは真似をするように小突いていたモフィンクスへと改めて手を伸ばし、そうっとその背を撫でてやる。
 掌に伝わるもふもふとした柔らかな手触り。生き物故の温もり。そして、心地良さそうなモフィンクスの鳴き声。
 そんな穏やかなふれあいの時間に、思わず動物園に来たのかと錯覚しそうになるまどか。どこか期待の眼差しを向けるモフィンクスを見返すと、彼はそのまま抱き上げた。
「はわっ……!!かわいいとかわいいの共演……! ま、まどか待って! そのまま、そのままね!」
 彼のその様子を一部始終眺めていた亮は、彼がモフィンクスを抱き上げた瞬間ふるふると震えながら声を上げた。腕の中にモフィンクスを抱いたまま、器用にスマートホンを取り出すと、まどかに向けて構える。
「自分が戯れている姿にすれば良いのに」
 シャッター音が響く中、ぽつりとまどかはそう零すけれど。彼女の好きにさせようと、ただ静かに佇んでいるだけだった。
『モフ』
 しっかりカメラ目線のモフィンクスは、そんな彼等へ語り掛けるように鳴き声を上げる。変わらず可愛いその姿。けれど――そろそろ戯れのひと時は終わりだろう。
 そう、此処には彼等の住まう地は無いのだから。
 まどかが思った時。ぽふっと、腕の中のモフィンクスが白いもやを生み出した。
 それは彼等が放つ質問のもや。
 ゆらゆらと世界を包み込むそのもやをじいっと見て、まどかは素直に応える。『君たちの毛皮』と紡げば、怖がるようにモフィンクスは身体を震わせた。愛らしい彼が怖がる姿に、亮が慌ててぬいぐるみにしようと提案すれば。
「駄目かい? じゃあぬいぐるみで」
『モッフー』
 了解、とでも言いたげにモフィンクスが鳴けば。もやが晴れていくのと同時にそこにはモフィンクスのぬいぐるみが現れた。触れてみれば腕の中の彼と手触りはほぼ同じ。ほんのりと温かい気がするのは何故だろうか? どこか満足気にまどかは微笑むけれど。
「うぅ、やっぱり倒さなきゃダメ?」
 そんなまどかをじっと見つめながら、離したくないと言いたげに亮は腕の中のモフィンクスをぎゅっと抱く。そんな彼女をまどかはじっと見ると、ダメだと首を振った。
 首を振るまどかを見て、モフィンクスを見て。亮は盛大な溜息を零す。
「ううぅぅ~~ごめんねっ……!」
 そのまま覚悟を決めたように呪文を唱えれば、竜巻に乗り高く高く彼等は昇る。
 くるくると回るモフィンクス達は、相も変わらず楽しそうな鳴き声を上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
【千宵桜】

あらまあ
何だか不思議な生きものが沢山…
そこかしこにいる生物に瞬いて

はわ…
ふわふわ、というよりもふもふなのですねぇ
千鶴さんも触ってみては?
そっとつついて感触を確かめて
傍らでそわそわしている彼にくすくす笑って勧めてみる

……あったかですねぇ
埋もれて一緒にお昼寝したくなっちゃいます…
そっと一匹抱えてぬくぬくしつつ
その温かさともふ具合に思わずウトウト
ぅぅ…ちづるの誘惑が……
気付けば追加されるもふぃんくすに埋もれ
反撃、と千鶴さんの上につみつみ。もふとん。

んー…むぅ
もふもふ、名残惜しいですが…
これにてお別れですねぇ
癒しのひとときをくれた彼らへのお礼も込めて
柔く歌う子守歌
良い夢が見られますように


宵鍔・千鶴
【千宵桜】

不思議な光射す空間に
…何か浮いて…る?

ふわふわ…もふもふ…
はっ…、さ、触りたいなんて…
そんな…
…え、千織、良いの?
早速つついている千織の勧めに抗えないもの。
そっと自分もほっぺつんつん
もふぎゅっと抱きしめてみたら

…あ、これやばいやつ。
一生ぎゅっぎゅ出来るぞ
ちっちゃい手足をにぎにぎして癖になりそうになる

うとうと眠くなる千織の横で俺も眠いなってこてりと寄り掛かり
温もりはもふぃんくす増し増しでちおりの周りに敷き詰めちゃお。まくら。
欠伸をして微睡んで
となりのきみと温もり分かち合い

満足するまでもふを堪能したら、最期はちゃんと、ね
やさしい、千織の歌だ
子守唄に微睡むきみたちを葬送ってあげようか




 こちらをじいっと見下ろしながら、鳴き声を上げるもふもふ達。
「……何か浮いて……る?」
 小さな羽らしきものをパタパタと動かしているその存在を見て、宵鍔・千鶴は驚いたように声を上げていた。
『モフ、モフ』
 鳴き声を上げて存在をアピールしたモフィンクスは、そっと橙樹・千織へと近付いてくる。すぐ傍で揺れるもふもふ。好奇心を抑えられず、千織は手を伸ばした。
「はわ……。ふわふわ、というよりもふもふなのですねぇ」
 柔らかな心地が気持ちよく、包み込まれるような温かな毛。ぎゅうっと抱き締めてみればそのふわふわの心地良さは魅惑的で、身体全体が包み込まれたかのような錯覚が。
「はっ……、さ、触りたいなんて……そんな……」
 モフィンクスと戯れる千織の姿を見て、その温もりを求めるように千鶴も手を伸ばそうとするけれど――ふるふると首を振り、必死に耐える。そんな彼の様子に気付いているのかいないのか、千織はくすりと笑みを浮かべると。
「千鶴さんも触ってみては?」
 手招くように言葉を紡いだ。
 彼女の言葉に、千鶴はぱちぱちと大きなアメジストの瞳を瞬くと。
「……え、千織、良いの?」
 問い掛ければこくりと頷く彼女の姿。折角の勧めなのだからと、抗うことなど出来ず千鶴はそうっとモフィンクスへと指を伸ばし――柔らかそうな頬を人差し指で突いてみた。
『モフ~』
 ちょっとくすぐったそうに身を揺らすモフィンクス。思っていた通り、否それ以上にふわふわで心地良く。千鶴は口許を和らげながら、気付けばモフィンクスをぎゅっと抱き上げていた。包み込まれるような温かさが身体に触れ。
「……あ、これやばいやつ。一生ぎゅっぎゅ出来るぞ」
 腕から零れるようなモフィンクスの手をにぎにぎと掴んでみれば、それも心地良く癖になりそう。手に肉球は無いらしく、そこもまた身体とは違ったふわふわさだった。
 嬉しそうな彼の姿に微笑むと、千織は改めてモフィンクスへとその身体を預ける。顔を寄せてみれば不思議なことにお日さまの香りがして。
「……あったかですねぇ。埋もれて一緒にお昼寝したくなっちゃいます……」
 ひとつ、欠伸を噛み殺しながら千織が紡げば。モフィンクスは同意するようにのんきな鳴き声でお返事をした。
 気付けばその場でずるずると座り込み、身体全体でモフィンクスの温もりを堪能する2人の姿が。必死に瞼が落ちるのと戦う千織への追い打ちは、彼女の横でこてりと寄りかかってきた千鶴の一言。
「俺も眠いな」
 そのまま彼は、周囲にモフィンクスを敷き詰めていく。彼等はそれでもまだ戦う意志は見せずに、2人と一緒にお昼寝するつもりなのか床の上にごろんと横になった。
「ぅぅ……ちづるの誘惑が……」
 千織の唇から零れる言葉は既にゆらゆらと夢心地。落ちる意識を振り払うように、千鶴の上にもモフィンクスへと積み上げていけば――気付けば2人は意識を失っていた。
 それは暫しの休息の時間。
 眠りに落ちた彼等の周りのモフィンクスは、邪魔をしないようにと顔を見合わせて。寒くないようにと思ったのか、それとも自分が高い所が好きだからか。真意は分からないけれど、もふもふと2人の身体へと昇って自身の体温を分け与える。
 その温もりと優しさに。ふわりと、眠る彼等の口許には笑みが浮かんだ。
 ――そして、どれほどの時間が経ったのだろう。
 目を開ければ自分達を包み込むモフィンクスの姿に、彼等は小さな悲鳴を上げていた。寝ぼけ眼で現実へと意識を戻せば、眠る直前そういえばこんなことをしたような気がすると思い出す。
 周りのモフィンクス達は2人に釣られたのか、すやすやと心地良さそうに眠っていて。起こしてしまうのが可哀想だと思う程穏やかな顔をしている。
 そう、これはチャンス。
 だって相手は災魔。お別れをしなくてはいけないことは分かっているから。
「んー……むぅ。もふもふ、名残惜しいですが……」
 眉を寄せ、悲しげに瞳を潤ませながら千織が語る。けれど、もうダメだから。すうっと深く息を吸うと、彼女は歌を紡ぎ出す。それは癒しのひと時をくれた彼等へのお礼を込めた、柔く歌う子守唄。
「やさしい、千織の歌だ」
 良い夢が見られますように――そう願う彼女の想いを受け止めながら、千鶴もしっかりと数多の桜の花弁でモフィンクスを包み込み別れを告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸神櫻

かぁいい子達がたくさんいるわ!
甘やかな香りで誘ってみれば、たくさんのもふが近寄ってきて──えーい!飛び込んじゃえ!
綿毛に包まれる心地はまさに春の陽だまりのよう
これ、攻撃されてるのかしら?
カムイも早くおいで

やわこい感触に、柔らかな心を重ねる
コロコロ変わる神の表情が愛らしく、数多な顔を見せてくれるのが嬉しいわ

大丈夫よう
何があっても私の神様が助けに来てくれるもの
ほら、カムイも抱っこして


─艷華
桜化の神罰を巡らせて、ふわふわを柔らかな桜に変えていく
桜花弁に埋もれながらこたえる
あなたの顔は見えない

いいと思うわ
何時だって何時の時代だって
神は戀をしていたでしょう

それに
戀は、いつの間にか咲いているものよ


朱赫七・カムイ
⛩神櫻

もふもふとした面妖な!
初めて見て触れるもふもふさに驚愕する
かわい……いいや
正気になれ、私
(両頬を叩く)
私の巫女のほうが可愛いだろう

ねぇサヨ……サッ!私の巫女が埋もれている!?
なっこの!もふもふ!
私の巫女を返せ……!
サヨを囲う獣たちの中へ飛び込む

噫……やわこいな……布団に包まれているかのようだ
なんという心地良さと、癒し系な鳴き声…
そっとひとつ抱えてみる
可愛い……
はっ!サヨ!

サヨ、大丈夫かい?助けに…そんな幸せそうな顔をして
何だか妬ける
……?
妬ける……?

……、
ねぇ、サヨ
神は……戀をしてもいいと思う?
寝転ぶきみのそばに座り問う

モフ達が解けて咲いた桜に埋もれる
そう

とん、となる胸を抑える
─違いない




「もふもふとした面妖な!」
 初めて見る柔らかくも愛らしいその姿に、朱赫七・カムイは思わず声を上げていた。
 恐る恐ると手を伸ばし、近寄ってきたモフィンクスを抱き寄せてみれば。もふりと包み込まれるような柔らかさと、温かさ。
『モフ~』
「かわい……いいや。正気になれ、私」
 その柔らかさと呑気な鳴き声に、ついつい頬を緩ませそうになるけれど――慌ててカムイは自身の両頬を叩いた。
 そう、彼等は可愛いかもしれない。
 けれど、カムイにとっては自身の巫女のほうが可愛いのだから。
 そんなカムイの葛藤には気付かず、誘名・櫻宵は愛らしい彼等の存在に頬を薔薇色に染め嬉しそうに笑みを零す。懐から包みを取り出せば、ふんわりと漂う甘い香りにひくひく鼻を鳴らしたモフィンクス達が、櫻宵の元へと集まってきた。
「えーい! 飛び込んじゃえ!」
 最初はうずうずとしながら堪えたけれど。もふもふが密集しているのを見てしまっては我慢が出来ず、櫻宵は勢いよくモフィンクスの群れの中へと飛び込んだ。
 ばふん、っと音がしたかと思えば次に感じるのは温もり。綿毛に包まれたような、温かなお布団のような、心地良さはまさに春の陽だまりのようで。櫻宵の下で、上で、もぞもぞと動くモフィンクスの感覚はなんだかくすぐったい。
「ねぇサヨ……サッ! 私の巫女が埋もれている!?」
 すっかりモフィンクスに埋め尽くされてしまった彼を見れば、慌てたようにカムイは声を上げた。手招く櫻宵の手に気付いたのかいないのか、動揺したカムイは櫻宵に続きその群れへと飛び込むが――すぐに、その温かさに戦う意志を奪われる。
「噫……やわこいな……布団に包まれているかのようだ」
 心地良さにゆるゆると瞳が閉じていく。『モフ~』と耳に届く鳴き声もとても癒されるように愛らしく、思わず彼は好奇心を隠し切れずにそっと1匹抱き上げてみた。すると先程までとは違う、温もりの心地良さの他。すぐ傍に居るモフィンクスの存在に。
「可愛い……」
 幸せそうな笑みを零しながら、ついそう零してしまう。
 そんな彼の姿を見れば、櫻宵も嬉しそうに微笑んだ。
 コロコロと変わるカムイの表情が愛らしく、数多な顔を見せてくれることが嬉しくなる。ふわりと口許に浮かぶ笑み。そんな彼に元へと、またモフィンクスはもふもふと昇り、小さな彼等に櫻宵は埋められていく。
「はっ! サヨ! サヨ、大丈夫かい? 助けに……そんな幸せそうな顔をして」
 腕の中のモフィンクスから、意識を櫻宵へと戻すと。幸せそうに笑む彼の姿にカムイは驚いたように瞳を瞬いた。そう、櫻宵は最初から恐れてなんていない。だって――。
「大丈夫よう。何があっても私の神様が助けに来てくれるもの」
 そう、信じているから。
 笑みを深めながら足元のモフィンクスを1匹抱き上げると、カムイの元へと追加する。ふわふわと温かな心地を感じながら……ふと、カムイはひとつ問いをする。
「……、ねぇ、サヨ。神は……戀をしてもいいと思う?」
 寝転び、目の前のモフィンクスを撫でる櫻宵の傍らに座り、そう紡ぐカムイ。その言葉に顔を上げると――櫻宵は、魅惑的な笑みを浮かべながら甘い言葉を落とす。
「いいと思うわ。何時だって何時の時代だって。神は戀をしていたでしょう」
 彼の言葉にカムイの瞳が見開かれる。
 そのまま世界を埋め尽くす程の桜が溢れれば、カムイは淡い桜を見上げ息を吐いた。そっと櫻宵は彼へと寄り添うと。その眼差しを見つめ。
 ――戀は、いつの間にか咲いているものよ。
 人差し指を唇に当て、そう紡ぐ櫻宵の笑顔は何とも魅力的で。
 カムイは、とん、となる胸を静かに抑えた。
(「――違いない」)
 そう想った心は、今はまだ秘密だけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
レン(f00719)と。

見上げ、手を伸ばしモフィンクスを手招き
少しだけ遊んでいこう

ピクニックにも昼寝にも良さそうではあるが
今欲しいもの…(じっと敵を見て)
今私が欲しいのはもふもふふわふわの枕とかブランケットとか
コレ見てたら安眠グッズが欲しくならないか?
手を繋いでうとうとする位は許されるだろう

小腹を充たせるなら摘まめる軽食とか、焼き菓子とかでも良いんだが
そうだ、レンなら何が食べたい?例えば好きな食べ物とかさ
…レンは肉まんが好きなのか?
消えなければお腹も満たされたのに残念
戻ったら肉まん買って帰ろうか

話して遊んだら、彼らとはお別れ
災魔であるが故に、倒さねばならないから
≪淡き抱擁≫で優しく終わらせよう


飛砂・煉月
有珠(f06286)と

オレも見上げる位置に居るのかな?
そんじゃ有珠を真似っ子して手招きだ
あーそぼ!

うんうん、安眠グッズ欲しくなるのわかるー
全部貰えるならオレも同じの欲しいけど
んーもしかしてこれ出ても消えちゃう系?
でもふわもふが居るなら転寝くらい出来るかな
有珠、手繋いで
其の方がオレ心地好く寝れるから

食べたい物…肉まんかな
ふわもふ傍らに半分こなんて何か良くない?
好きなのもあるけど食べ歩きの切欠になったものだから
ふわっと思い浮かぶのかもしんない
あっは、そうだね帰り道で半分こしよ

存分に游んだらお別れの時間だ
オレがあげられるのは痛みになるけど
でも、其れも内側に刻む生きてた証だから
ごめん、終いだよ

バイバイ




 じいっと尭海・有珠の澄んだ海の瞳に映るのは、オレンジ色の柔らかな身体。
『モフ?』
 何? と言いたげに小首を傾げるモフィンクス。そんな彼へと手を伸ばすと、こっちにおいでと彼女は手招きをした。すると彼は警戒心など無いようで、ちょこちょこと小さな足を動かして有珠の元へと近付いてくる。
 ぎゅっとモフィンクスを抱き締める彼女を見守った後、飛砂・煉月はお日さまのような笑顔を浮かべると、長身な彼よりも少しだけ高い位置に居るモフィンクスを手招いた。
「あーそぼ!」
 人懐っこいその笑顔を見れば、モフィンクスも当然寄ってくる。石床を勢いよく蹴り、てーんと煉月の腕へと飛び込んでくるもふもふを、慌てて彼は受け止めた。
 ぎゅうっと抱き締めながら――モフモフ尋ねるモフィンクスに、有珠は瞳を瞬く。
 彼は今欲しい物を聞いているのだろう。今、この瞬間欲しい物は。
「コレ見てたら安眠グッズが欲しくならないか?」
 もふもふふわふわ、枕やブランケットが欲しくなるのはこのモフィンクスを抱いているからか。思ったことを素直に口にすれば、こくこくと煉月も大きく頷く。
「全部貰えるならオレも同じの欲しいけど。んーもしかしてこれ出ても消えちゃう系?」
 ぽふんっと現れた柔らかくも大きな枕が転がり、温かなブランケットが有珠の肩へと掛かったのを見守りながら煉月はふと疑問に思う。これは、素直な心からの言葉だと思うから。敵の行動的にはすぐに消えてしまうのだろう。
 それならば、どうしよう。
 腕の中のモフィンクスを見下ろせば、彼はぴくぴく耳を動かし嬉しそうにしていて。その温かさと柔らかさに、彼が居るならばこの冷たい石の上でもうたた寝くらいは出来るかと思う。だから煉月は優しく、有珠へと手を伸ばすと。
「有珠、手繋いで」
 そのほうが、心地良く眠れるから。
 嬉しそうな笑みを浮かべながら煉月がそう零せば、有珠は素直に頷き手を伸ばした。
 密集するモフィンクスの中へとその身を預け、ごろりと寝転ぶ。下でもぞもぞしたり興味津々に上に乗ってきたりと。落ち着きは無いが彼等の温もりに包まれている為ちっとも寒くはなく、むしろ心地良い程。
 ほっと落ち着く心地に息を零した後――自身のお腹を押さえながら、有珠は問う。
「そうだ、レンなら何が食べたい? 例えば好きな食べ物とかさ」
 不意な質問に、天を見上げていた煉月は視線を彼女へと移し、ぱちぱちと瞳を瞬く。けれどすぐに視線を天へと戻し、何かなあと思考を巡らせて。
「食べたい物……肉まんかな。ふわもふ傍らに半分こなんて何か良くない?」
 ピンっと浮かんだものを言葉へと移した。彼の答えに、有珠は肉まんが好きなのか? と少し驚いたように紡ぐけれど――ぽんっと一瞬だけ現れた肉まんが消えていけば。後に残るのは美味しそうな香りだけ。
「好きなのもあるけど食べ歩きの切欠になったものだから」
 消えゆく肉まんを名残惜しそうに眺めつつ、思い出を語る煉月。彼のその眼差しと紡ぐ言葉に、有珠は微笑むと。
「戻ったら肉まん買って帰ろうか」
「あっは、そうだね帰り道で半分こしよ」
 紡がれた提案に、眩しい程の笑みを煉月は浮かべる。――ほんの小さなお腹の音が聴こえたのは、どちらだったのだろう。その音に反応するように、2人のお腹の上にまた新たなモフィンクスが乗って、その場でごろんと一緒に横になった。
 寝転び。温もりを楽しみ。思い出を語り。
 楽しいひと時はあっという間で、気付けば大分長い時間が経過していた。
 まだまだ名残惜しいけれど、彼等は災魔。そして有珠と煉月は猟兵。この関係性の結果行われることは、ひとつしかない。
 息を深く吸い、杖を輝かせると。有珠から放たれるのは数多の桜の花びら。花びらが触れれば一瞬でモフィンクスの身体は消えていき、キラキラと青白い光が零れていく。
「オレがあげられるのは痛みになるけど。でも、其れも内側に刻む生きてた証だから」
 ――バイバイ。
 煉月が紡ぐ言葉はお別れの言葉。
 その言葉に返事をするように、消えゆく一瞬の間で『モフ』と零れる鳴き声。
 それは悲しみの色は宿さぬ、相変わらず呑気な鳴き声だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月22日


挿絵イラスト