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羅針盤戦争〜必勝を得るために　六の攻略

作者：黒代朝希

「遂に全七大海嘯撃破の準備完了が報告されたわ！」
　そう言いながらも自分の予知から得られた一の王笏島攻略戦の準備を整えている金髪の縦巻き髪の少女、シャルロット・シフファート（ツンデレの国のアリス・f23708）はこうして猟兵たちをグリモアベースに招集している。
「現状、グリモアベースで算出された王笏攻略戦の統計を見ると3月1日の朝までには全ての攻略戦が完了していれば全七大海嘯を撃破することが可能と算出されたわ」
　そう、それは『アルダワ魔王戦争』や『帝竜戦役』のように完全勝利を迎えることが可能という事だ。引いては『羅針盤戦争』後のグリードオーシャンにおける憂いを完全に断つことが出来る、という訳だ。
　しかし、とシャルロットは告げる。
「これは全ての攻略戦を担当しているグリモア猟兵が順調に攻略を終えられたらの話。万が一『王笏』攻略戦にて不都合によって攻略が滞ってしまった場合、戦争敗北もあり得てしまうわ」
　そうなった場合、多世界侵略船団コンキスタドールはこのグリードオーシャンの世界を侵略形態に変換し、猟兵たちをこの世界から追儺するだろう。
　そして、猟兵たちはこのグリードオーシャンに二度と足を踏むことは出来なくなってしまうのだ。
「それを防ぐために一つでも攻略戦の余裕を生んで迅速に制圧できるよう手配しているの」
　そう言ってシャルロットは自身のグリモアである蒼いタブレットを起動させて王笏島の一つをホログラフとして映し出す。

「今回アンタたちに攻略してもらうのは『六の王笏』よ。他の分身体と違って先制攻撃以外の特殊な対処は存在しないわ。純粋に先制攻撃への対策が肝になるわね」
　だけど、ここまで来たアンタたちなら迅速に攻略が出来るはず、と告げてシャルロットは転移術式を起動させた。

第1章 ボス戦 『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    メガリス『銀の鋏』 自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。 SPD   :    メガリス『金の鋏』 【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。 WIZ   :    虚無なる起源 自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルｍ半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。 イラスト：hoi 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「全てを飲み込む虚無、ですか……」
　驚嘆の声を漏らすのは馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）、その人格の内の一つである霊力使いの武士『静かなる者』。
「……ですが作用上、相手の足元には必ず地面があるのでしょう」
　そう判断した『静かなる者』は大きなミズクラゲの使い魔、『陰海月』を召喚する。
「『陰海月』にとっては初陣ですが……」
　初戦がオブリビオン・フォーミュラと言うのはいささか酷ではないかと心配の視線を『陰海月』へと向ける『静かなる者』。
「ぷきゅる」
　と、腕があったら力こぶを作っていそうな、と言うか触手を用いて力こぶを作る真似をしていた。
「……問題なさそうですね。最終的には使役者の私の実力がモノをいう訳ですし」
　そこへ放たれるは『六の王笏』が自身の体を変容させた『全てを飲み込む虚無』。
「『四天境地・水』」
　対応するは『白雪林』から発射した氷雪属性霊力矢。
　霊力で出来た矢は『六の王笏』の足元へと突き刺さり――周囲の地形を『敵の生命力を吸収する雪解け水の湖』へと変容させていく。
　その周囲の環境を――否、世界の相ごと変容させて『敵の生命力を吸収する雪解け水の湖』は『全てを飲み込む虚無』を上書きして逆に飲み込んでいく。
「……湖は地面ではないですからね。澄んでますから、よく見えます。『陰海月』は水中戦を」
　ユーベルコードが虚無ごと世界を書き換えたのを見届け、『陰海月』に命令した後『静かなる者』は霊力を用いて水面に立つ。
「さて、最初に言っておきますが……あなたの叫びは、誰にも聞こえませんよ」
　宣言すると同時、『白雪林』から放たれた氷雪属性の矢が『六の王笏』へと突き刺さった。

「アリラビ風カルロス、ね。ま、青のゴスロリ着ないだけありがたかったぜ。着てたら笑っちまってたろうからな」
　そんな『六の王笏』の姿を三白眼で見て薄く笑うのは伊高・鷹介（ディフェクティブ・f23926）。
「それにしても全てを飲み込む、か。そうなると……」
　瞬間、彼の莫大な念動力が唸りを上げる。それは最早技能単独で真の異能たるユーベルコードにすら匹敵する出力。
「俺の周囲に『念動力』の膜を張り、吸われた分張り直す」
　殺到した虚無が伊高を飲み込む前に不可視の壁――否、膜によって阻まれる。
「長持ちはしねぇだろうが一時しのぎにはなるさ」
　そして、その『一時』は『六の王笏』の先制攻撃を凌ぐには十分な時間であった。
「地面や床に足を付けてないと発動できねぇのなら……」
　そう言って伊高は地面に指をつけ、『念動力』を起動させる。
　瞬間、世界を飲み込んでいく『虚無』の浸食が停止する。
　それは『六の王笏』の足元に薄皮１枚分の念動力の布を滑り込ませ、地面と足の間に作り出された念動力の布が入り込んだ結果。
　それによって『虚無なる起源』の発動条件が満たされず、虚無の浸食が止まったのだ。
「略奪してコスプレしただけで、使いこなすにゃ時間がなかったようだな？――『一時停止』」
　掌から放たれた空間すらも捻じ曲げる念動力によって圧縮されていく『六の王笏』の体。
　そこに伊高の武装である念動力を用いて運用する『カマキリ』と『ノコギリザメ』、『カラス』の斬撃と弾丸が更に『六の王笏』を損壊していった。

「ある意味一番厄介なカルロスな気がする……」
　戦略的にも戦術的にも厄介としか言いようのない『六の王笏』の性質を評したのは黒鵺・瑞樹（界渡・f17491）。
「顔が見えないと攻撃も読みにくいし」
　そこ？「全てを飲み込む虚無」とか「メガリスを変容させた鋏」とか色々と他にも厄介と評する理由はあるのだけど。
　ともかく、かつて誰かの瞳に映る悲劇の結末を破壊する勇者の一人が有していたナイフのヤドリガミは『六の王笏』が手にしている銀の鋏を見据える。
「一か八かになるけど……『六の王笏』が自分の体を切り裂くのを妨害するか……」
　そう言って右手に胡、左手に黒鵺を構えた二刀流で『六の王笏』へと切り込んでいく瑞樹。
「と、見せかけて……」
　瞬間、自身の体を切り裂こうとした銀の鋏が強い衝撃を受けて弾かれる。
　それは二刀流――に見せかけて巧妙に『六の王笏』から見えないよう隠し持っていた投擲用ナイフを投げて銀の鋏に命中させた結果。
「そして、その隙に……」
　ユーベルコードを起動させる瑞樹。
　虚無でなければ――実態があれば本体でも胡でも斬れないものはない、という自負の元に瑞樹は二つの刃を『六の王笏』へと突き刺し、切り裂いていく。
「悪いけど、その存在を許容したらこの世界にいる誰かの瞳に、覆しようのない悲劇のエンディングが映るだろうからね」
　そう、第六の世界ではその真意が今ではわからない言葉を思わず呟きながら。

「結局防御しなきゃコピーは成立しないでしょ」
　そう氷の盾を作り上げ、金の鋏による先制攻撃を防いだ栗花落・澪（泡沫の花・f03165）は『六の王笏』のユーベルコードの一つ『メガリス『金の鋏』』の幹部級オブリビオンが有する権能、絶対先制攻撃権との相性の悪さを苦笑いしながら呟く。
「そっちが先制攻撃してるのにどうやって僕らのユーベルコードをコピーできるかって話だね……それじゃあこちらも」
　唱えられるはオラトリオとして、シンフォニアとして、聖者としての美しい歌声。
「全ての者に光あれ――『Fiat lux』」
　歌を唱え終えると同時、顕現するは魔を浄化する光のユーベルコード。澪を発生源として広がっていく浄化の光は、やがて六の王笏島全てを飲み込んでいく。
「仮にその金の鋏でこの光の一部を切り裂き、コピーしても意味ないよ」
　そう、UDCアースの聖書等聖なるカリカチュアに搭乗する天使の如き様相を湛え、『六の王笏』へ全ては無意味だと宣言する澪。
「その技に宿るのは破魔による『浄化』の力だけ。その浄化の権能を極めたこの光の力は敵味方関係無く、悪にしか効かない」
　つまりは、『侵略船団コンキスタドール』という侵略者の頂点に立つ『六の王笏』にとっては鬼門という事。
「悪はこの場で…あんただけだよ、カルロス・グリード」
　そうして自身の体から放たれる浄化の聖光。その出力を上げていき『六の王笏』を浄滅していく澪。
「相性が悪かったね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年02月25日