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羅針盤戦争〜進化する体、退化した体

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #バルバロス兄弟 #三つ目島

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「弟よ、聞いて欲しいことがあるのだが」
「何だ、兄者よ」
「なんでもあの『舵輪』の野郎がおっ死んだらしいじゃねぇか」
「おお! あのお高くとまったインテリ野郎ついに死にやがったか!」
「それだけじゃねぇ、あの王も島をいくつか落とされてるらしい」
「おいおいマジかよ! こりゃ七大海嘯もいよいよ危ねぇかもな!」
「ああ全くだ。どうも猟兵の連中、七大海嘯全部を根絶やしにしようと躍起になってるようだな。怒涛の勢いで全部の島に攻め込んでるって話だ」
「そんな中で二週間以上この島を守り続けてる……流石だよな、俺ら! ところで兄者……」
「皆までいうな。忘れらたり飽きられたりしてんじゃねぇ。俺たちにビビって手が出せねぇんだ。そういうことにしておけ」
「……流石だよな、俺ら……」


「あと何回出せるか分からないけど、今日も羅針盤戦争の依頼よ」
 集まった猟兵たちに子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)が語り掛ける。彼女の言う通りもう時間がない。猟兵たちの先を急かすように視線を受け、オーロラは続ける。
「今日向かって欲しいのは『三つ目島』。最初期から暴れまわってた『三つ目』ことバルバロス兄弟の本拠地よ」
 二人の体を継ぎ合わせた双頭多腕の巨人であり、生物を退化させる瞳を持つ七大海嘯が一人。羅針盤戦争開始時から各地に分体を派遣し、早々に本拠地を発見されながら今まで持ちこたえた強豪である。
「彼らの使ってくる能力自体は分体と同じ。その継ぎ合わせた肉体を用いたハイパワーの攻撃と自分より小さいものに対する圧倒的優位を生かした攻め、そしてなにより、弟ハイレディンの持つ『退化の瞳』の視線よ」
 見つめた者を『退化』させる視線。『森羅』オルキヌスから奪い取った力であり、彼ら兄弟の最大の特徴とも言える技である。
「ただ、この三つ目島にはこの視線を増幅する装置があって、これを通して放たれた視線はビームとなって島に降り注ぎ、島土着の生き物を『原始の魔物』に退化させてしまうらしいわ」
 島の装置を通した影響かこちらは猟兵には効果がなくなっているらしいが、その代わり退化した者は原始の強大な姿を手に入れるという。
「この原始の魔物たちを対処しながら、バルバロス兄弟を倒してちょうだい。原始の魔物たちは兄弟の配下なわけじゃないけど、猟兵を侵入者と見なして本能的に襲い掛かってくるわ」
 知能は原始と言うだけあって単純で、通常の獣並らしい。
「兄弟自身の実力も、分体の時より上がっているわ。そして彼らの目的はもちろんグリモア。それに猟兵の体も自らの強化パーツとして取れたら取りたいくらいの気持ちでいるから、油断したら体を奪われるわよ? 文字通りにね」
 そう言ってオーロラは胸の下で腕を組む。
「彼らはがさつで粗野な言動が多いし実際そういう性格だけど、決して愚鈍じゃない。兄オルチの方は特にね。彼自身まで獣とは思わず、気を付けて戦ってきてちょうだい」
 そう言ってオーロラは、船の先に立ち三つ目島の方を向くのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。ラストスパート参りましょう。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードと、「原始の魔物」に対処する』

 最早説明不要の先制攻撃に加え、島の獣が退化した『原始の魔物』をいなしながら戦っていただきます。イメージとしては恐竜や超大型哺乳類など、大昔にいたでかくて強そうな生き物、みたいなイメージで大丈夫です。彼らは本能的に猟兵を侵入者と見なして排除してこようとしてきますが、三つ目に操られていたりはせず彼らの味方と言うわけでもありません。また、知能は普通の獣並です。その辺りをうまく利用してみてください。

 注意点として、このシナリオは28日までの完結を目指します。その為内容に問題なくても全てのプレイングを採用できない可能性がありますので、ご了承のうえご参加ください。
 それでは、原始の力さえねじ伏せるプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』

POW   :    フォーアームズ・ストーム
【四腕で振るった武器】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    「オルキヌスの瞳」
【弟ハイレディン(左頭部)の凝視】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【肉体、精神の両面に及ぶ「退化」】で攻撃する。
WIZ   :    バルバロス・パワー
敵より【身体が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:ちーせん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱鷺透・小枝子
バルバロス兄弟……。
海賊らしい海賊の兄弟を、忘れる訳がない…!

ディスポーザブル03に搭乗、操縦
瞬間思考力、即座にバルバロス兄弟の頭部目掛けてスナイパー、ビーム砲撃
同時に、地面へ向けてミサイルを、上空へ向けてコンテナミサイルを射出

地面爆破で爆炎と砂煙を起こし兄弟へ目潰し
さらに上空コンテナから爆撃。周囲を吹き飛ばし、魔物を近付けさせない

故に、加減などしない!
『戦塵無窮』新たにコンテナミサイルを生成、バルバロス兄弟へ射出。誘導弾の大爆発でバルバロス兄弟を吹っ飛ばす!

何度でも、飽和爆発で延々とバルバロス兄弟を爆破し続ける

淡々と、延々と、撃って、撃って、撃ち続ける

それが、奴を近付かせない唯一の方法だ…!


カシム・ディーン
やれやれ
本当はきれいなお姉さんと遊びたいんですけどね
「ご主人サマったらー!メルシーと遊ぶ?」
焼くぞこら


対獣
【属性攻撃・迷彩・視力・情報収集・戦闘知識】
光と風属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠しつつ匂いによる察知も封鎖
周辺状況から兄弟の元への効率的なルートの捕捉

対spd
【医術・空中戦】
立体映像を複数展開
分身の術って奴です
どれが本物か分かりますまい!(尚、本体は光学迷彩モードのまま
それでも見切られる場合は肉体構造から視線を向けるのが厳しい位置へと何度も回り

UC発動
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
超高速で飛び回り円を描くように念動光弾を連射
最期に突破するようにハルペーで切断に掛かる!
眼球強奪狙い



 戦いの前、半ば冗談めかして自分たちを忘れられた存在のように語ったバルバロス兄弟。だが、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとってその言葉は決して冗談で済まされるものではなかった。
「バルバロス兄弟……海賊らしい海賊の兄弟を、忘れる訳がない…!」
 圧倒的な力で暴虐を働き、欲しいものを奪い取る。つまらない思想や矜持などなく、どこまでも暴力的で享楽的。あるいは彼らこそが七大海嘯の中でも最も海賊らしいと言ってもいい存在かもしれない。その存在に対抗するため、彼女は『ディスポーザブル03』に搭乗し向かい合っていた。
「やれやれ、本当はきれいなお姉さんと遊びたいんですけどね」
「ご主人サマったらー! メルシーと遊ぶ?」
「焼くぞこら」
 一方カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はその凶悪なる存在を軽く受け流し、自らの登場する機体『メルクリウス』と軽口をたたき合う。
 巨大な機械の巨人二体を前に、兄弟は怯む様子は見せない。
「鉄の巨人とはたまげたな! これは俺たちよりでかいかもしれんぞ弟よ!」
「なぁに、そういう時はこいつだ! 獣たちよ、お前の縄張りに化物が入って来たぞ!」
 ハイレディンが『オルキヌスの瞳』の視線を天に向けて放つ。その視線は島に据え付けられた装置に反射し、ビームとなって島中に降り注いだ。そしてそれに呼ばれるように、島中から重い足音が響き、巨大な獣が猟兵に向けて迫ってくる。
 それに対し、小枝子は上空にコンテナミサイルを、地面にミサイルを同時に射出し、巻き上がる爆炎と降り注ぐ爆雷の両方をその場に巻き起こした。
 同時にカシムも、魔術的な迷彩で光と風で機体を包み、周囲からその姿を隠す。さらにはその状態で風を周囲に散らすことで自身の匂いさえ吹き散らし、嗅覚による探知さえも困難にさせた。
 大きな音と炎は獣に原始的な恐怖を起こしその足を鈍らせ、あたりに散る光と風が目と鼻での察知も惑わす。すっかり敵を見失った獣はその場でどたどたと暴れまわり、無意味に戦況をかき乱すだけの存在となった。
「やっぱこいつらうまく動かせねぇもんだな! しかたねぇ、直に行くぜ!」
 獣をけしかけるのに見切りをつけ、ハイレディンは直に二人を瞳で睨みつける。だが、小枝子の興した爆炎は直の視界も当然防ぎ、奥にいるディスポーザブル03の視認を困難にしていた。
 そしてその中から、メルクリウスが飛び出す。
「分身の術って奴です。どれが本物か分かりますまい!」
 そのメルクリウスが、何体にも分かれ兄弟へと襲い掛かる。
「わからんなぁ……だから全部見る!」
 瞳の力は『見る』ことさえできれば発動する。故にハイレディンは視線を巡らせ、その残像全てを視界に収めた。その結果。
「何……!?」
 何もない位置から、複数の光弾が飛び兄弟を襲った。メルクリウスは魔法の光学迷彩を纏ったまま。つまり正解は、どれも本物ではない、ということであった。
 それに続くよう小枝子が攻勢にかかる。
「故に、加減などしない!」
 さらなるコンテナミサイルを射出する小枝子。だが今度のは通常の兵装ではない。ユーベルコード【戦塵無窮】にて作られた、無限に生成され続ける霊物質のミサイル。
「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!!」
 絶叫と共に、弾切れなどないそれが何度でも飽和爆発を起こしバルバロス兄弟を飲み込む。
「淡々と、延々と、撃って、撃って、撃ち続ける。それが、奴を近付かせない唯一の方法だ……!」
 海賊らしい暴力の化身を制する最良の手段は、その暴力の間合いに入らないこと。それを体現するかの如き爆風の中で、一筋の刃がハイレディンの顔を切り裂いた。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
 爆炎と光弾の遠距離戦。そのなか必死に巡らせていた眼を、【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】の高速軌道の斬撃が切り裂いた。その瞳を奪えれば。その斬撃は深くハイレディンの顔を切り裂き、その目を抉りださんとする。
「こいつは大事な弟でな……色男だろうとくれてやるわけにはいかん!」
 その刃を、三本の右手が掴み強引に引き抜いた。そのままハルペーごとメルクリウスは投げ飛ばされるが、とっさにディスポーザブル03がそれを受け止める。
「大丈夫でありますか!?」
「すみません、助かりました……このお礼は必ず」
 通信機能越しに会話する小枝子とカシム。眼球の強奪はならなかったが、確かに深いダメージは与えた。爆炎の向こう二本の左手で顔を抑えるハイレディンを見て、二人はこの場の勝利を確信するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

逃がさず済むならきっちりと倒したいところ。相手も退屈している様子ですし、一つお相手して頂くとしましょうか

先制攻撃に対しては、鎖を盾状に形成し『オーラ防御』を纏わせて『気合い』と『怪力』で受け止める。鎖は破壊されても腕輪からまた生成出来るので良し

先制攻撃を凌いだならUCを発動。自身の戦闘能力を強化
原初の魔物達には『殺気』を放ち『恐怖を与える』事で近寄らせないようにしつつ、それでも近付くならピックを『投擲』、ダメージと『マヒ攻撃』で行動不能に

バルバロス兄弟には基本的に動き回って撹乱、足元を狙って攻撃して『体勢を崩す』と、敵の身体を踏みつけ『ジャンプ』から頭部を狙って一気に攻撃


リーヴァルディ・カーライル
…原始の魔物はバルバロス兄弟の配下じゃないけど、
あの兄弟を襲う事はしないのね?

…ならば、この手でいきましょうか

"写し身の呪詛"に魔力を溜めて武器改造を施し、
存在感のある等身大バルバロス兄弟の残像を自身の身に纏い、
魔物達の第六感に訴えて襲わないように試み進撃する

…ここまでは上手くいった。だけど、此処からは…

過去の戦闘知識から敵のUC攻撃を先読みして見切り、
最適な回避動作で受け流し早業のカウンターでUC発動
限界突破した虚属性の魔力を溜めた大鎌で空間ごとなぎ払い、
切断面から広がる虚無空間で敵を呑み込む虚属性攻撃を放つ

…お前の攻撃は既に見切っている

…刃に満ちよ、虚空の理。我を背く諸悪を悉く放逐せよ



 王笏島は全て落ち、羅針盤戦争の勝敗は決した。だが、未だ生き残った七大海嘯はいる。今クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)の目の前にいる『三つ目』もその一人だ。
「逃がさず済むならきっちりと倒したいところ。相手も退屈している様子ですし、一つお相手して頂くとしましょうか」
 全ての七大海嘯を倒し手こその完全勝利であり、相手もまたグリモアと猟兵の肉体の強奪を望んでおり、敵襲は望むところ。期せずして一致した双方の思惑は、自然と闘いを呼び寄せる。
「グリモアは持っていないが、こいつら相当できるぞ、兄者!」
「そのようだ。だが実地で試さんことには答えは出せん。お誂え向きに試験官が来たようだぞ!」
 兄弟のその言葉に応えるように、遠方から地を揺るがす足音が聞こえてきた。
「……原始の魔物はバルバロス兄弟の配下じゃないけど、あの兄弟を襲う事はしないのね? ……ならば、この手でいきましょうか」
 その足音に動揺することなく、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は聞いていた原初の魔物たちの特徴を考え対策をとる。
 『写し身の呪詛』を身に纏い、バルバロス兄弟の姿を模す。ただ幻覚を被るだけでなく、自身に威圧感を増させ、その巨体の存在感をも出す事でバルバロス兄弟がさもそこにいるように見せかけ魔物たちの目を欺かんとした。
 その策は当たり、魔物たちの一部はリーヴァルディを無視し、クロスの方のみに敵意を向けている。
 だが、一方獣の中には視覚が弱く、嗅覚や聴覚に認識のほとんどを頼る種類も少なからずいる。島とは異質な臭いを元に外敵を判断しているだろうそれらは、なおもリーヴァルディを敵とみなし牙を剥いた。
 その獣たちに、クロスが強烈な殺気を向ける。食うか食われるかの世界に生きる獣たちはその殺気にぴたりと足を止め、喉を鳴らしながら彼を値踏みするよう鼻を鳴らし取り囲んだ。
 その囲みを、巨大な猫化の猛獣が一匹飛び出し、クロスに噛みかからんとした。それを麻痺毒を縫った小さな刃を投げ、いとも簡単に止めるクロス。一匹が倒されたことで残る魔物は力の差を痛感し、すごすごと囲みを解き後ろへ下がっていった。
「がはは、どうやら一次面接は合格が出たようだぞ兄者!」
「そのようだ。では俺たち自ら確かめてやるとしよう!」
 その直後、間髪入れず振るわれる四つの武器。一つ一つが必殺の破壊力を持つそれを、二人は各々に受け止める姿勢を取る。
 クロスは鎖を盾上に形成し、そこにオーラを纏わせて受けの姿勢を取る。無論、強烈すぎる兄弟の攻撃をそれだけで受け着ることは出来ずに、鎖は容易に引きちぎられた。だが、この鎖はクロスの血を糧にいくらでも生成される。直撃を受けるのに比べれば血を捧げるくらい安いもの。とにかく鎖を継ぎ足し少しでも攻撃を軽減して、残るダメージは全身の筋力を込めて受け止めた。
 一方リーヴァルディは今まで幾度となく三つ目、そして七大海嘯と戦った経験から、敵の攻撃の方向を予測し武器を掲げそれを受ける。毎回ごとの誤差はもちろんあるが、その傾向は確かにつかむことができ、最小限の衝撃だけをその身に受けつつ流すことに成功した。
 そして、一撃を躱せば今度は反撃の時間。
「この血が身体を蝕もうとも……まだ、抗える……戦える……!」
「……虚空を穿ち、虚無へと還れ」
 吸血鬼化したクロスが素早く飛び、同を蹴っての跳躍からの立体的な動きでバルバロス兄弟の視線をかく乱する。それを追い腕を振り回して開いた胴に、リーヴァルディの刃が食い込んでいく。
「……お前の攻撃は既に見切っている……刃に満ちよ、虚空の理。我を背く諸悪を悉く放逐せよ」
 三つ目が力任せを好み、多少の被弾は厭わないことは分かっている。故に、傷をこじ開ける虚ろの力はその巨体を易々と喰らってくれる。
 そして胴部の異変に兄弟が視線を落とした、その瞬間がクロスの狙い処。
「どちらかは上を見続けるべきでしたね」
 いかに手練れでも反射的な動きを抑えるのは難しい。その二つの頭部に、クロスの鎖と刃が叩きつけられた。
「うぐっ……!」
「こいつは合格だが……ちっと扱いかねるな!」
 頭と胴の二本を取られ巨体を折る兄弟。彼らをして手に余ると言わしめる力の強さを、その姿は物語っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリス・スラクシナ
※エルーゼ、ジェイクと行動
絡み・アドリブOK

前回はあれだったが、今度は討たせてもらう。
第六感と見切りで相手の攻撃を避け、残像と迷彩で攻撃を誘い込む。
原始の魔物をおびき寄せ、相手にぶつけるという戦術も視野に行動する。
獣の盟約を手に、前回舐められた事を後悔させてやるとするか。
武器を槍や大鎌に変形させながら斬り刻み、動けなくできれば。
退化させる目とやらは潰させてもらう。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、ジェイクと行動
絡み・アドリブOK

第六感と見切りで動きを見ながら回避しつつ迷彩で消えて残像で誘い込めれば隙ができるはず。
魔物を誘い込んでぶつけたりしてよりダメージを与えたりしてみるわ。
剣を形成したら斬りつける。属性攻撃で焔と雷を纏わせて乱れ撃ちを繰り出してみる。
飛翔したら一気に急降下して大きい一撃を叩き込んであげるわ。


ジェイク・リー
※アリス、エルーゼと行動
絡み・アドリブOK

黒色の傷んだフード付きクロークに戦闘服、ライン状の赤いレンズのガスマスク姿の人格に変わっており、見切りで避けて残像を残して迷彩で消える。
ダブルアクションとレバーアクションを合せたライフルを持ち、早業でレバーアクションを行いクイックドロウの要領で射撃をする。
凍てつく覇気を纏い、襲ってくる魔物に対して恐怖を与える。
一言も話す事はせず、冷徹なまでに銃弾を撃ち込む。
弓に変え、刺さった相手を凍結させる矢を射る。



 羅針盤戦争最初期から分体を各地に派遣し猟兵を釣りだしていたバルバロス兄弟。それ故この戦いの中彼らとまみえた者は多い。アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)もまたその一人だ。
「前回はあれだったが、今度は討たせてもらう」
 その際に侮られる発言をされたことの借りを返すと、この戦いに挑むその士気は高い。
「おっと、どいつがやった話だ? 何しろ出してるもんが多くてなぁ!」
「ダメだぜ兄者、やったことの責任はとらねぇと!」
「関係ないって顔してんじゃないぞ弟よ、お前かもしれないだろう!」
 笑い飛ばしながら言う兄弟。彼らの弁通り出した分体が多すぎて一々行動を把握し切れていない上、倒されても即時復活する上記憶がリセットされるオブリビオンの特性上本当に何の話かは思い当たらないのだろう。
 その態度に、エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)もやや呆れたように言う。
「まあ、いかにもそんな感じっぽい見た目だけど」
 さりとて彼らがただの愚かな無法者でないことは彼女も嫌と言うほどわかっている。またもう一人、黒色の傷んだフード付きクロークに戦闘服、ライン状の赤いレンズのガスマスク姿の人格を発現させたジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)も、以前彼女らと共に三つ目の分体と戦ったことがある。
 その時の戦いを再現するかの如く……あるいは乗り越えるかの如く、三人は今再び三つ目へと向かい合った。
 そしてその三人に、三つ目の持つ四つの武器が振るわれる。
「これは……!」
「早い……あの時より!」
 以前の戦いで三つ目の攻撃を見て、今回も瞬間的に見切り残像を打たせるつもりであった。だが、分体と本体の差か、三つ目の攻撃は想像以上に早い。アリスとエルーゼはもちろん、ジェイクもどうにか避けるのが精一杯で、即座の反撃に転じることは出来なかった。
「おっと、避けられたか」
「だがそっちは危ないぜぇ?」
 余裕の表情で言うバルバロス兄弟。ハイレディンの言葉に倒れ込んだ方をエルーゼが見ると、そこには涎を滴らせた巨大な肉食獣が彼女たちを餌と見なし口を開けていた。
 最初の噛みつきを何とかかわすエルーゼ。だが、獣は一匹だけでなくアリスやジェイクにも襲い掛かっている。その獣に、ジェイクは凍てつく覇気をぶつけることで自身への進軍を阻んだ。
「ほう……睨むだけで制するとはやるな!」
 その姿に、本気か冗談かオルチが感心したように言う。その姿勢は、アリスにかつて彼らから受けた屈辱を思い起こさせた。
 だが、それで激昂して下手に真似をしても意味などない。それも彼女は正しく分かっていた。
「制することは出来んので……やりたいようにやらせてやるか」
 そう言ってアリスは獣の前に身を曝け出す。同様にエルーゼも、獣の前に躍り出つつもすぐさま後退するなど揺さぶるような動きをかけた。
 動揺しているのか、あるいは諦めか……否、どちらでもない。
 獣が襲い掛かった瞬間、二人は反転しバルバロス兄弟の方へ向かって突撃した。
「先に俺たちを仕留めようとでもいうか!」
「舐められたもんだな、兄者よ!」
 自分たちは獣よりはるかに強い。その当然の理の元、再度武器を振るうバルバロス兄弟。
「先に舐めてきたのはそっちでしょ」
 そう言うエルーゼは、バルバロス兄弟を攻撃……しない。瞬間的に跳びあがり、その武器の軌道上から姿を消した。その後ろには、牙を剥いた肉食獣の姿。
「何っ!?」
 そのまま武器を振るい、獣を殴り倒す兄弟。だがその手に、別の牙が突き刺さった。
「お前の言った通り相当危険だな」
 その腕の下、屈みこんだアリスが言う。二人は自身に襲い掛かってくる獣を誘導し、バルバロス兄弟への障害として利用したのだ。
 前回の屈辱に拘泥せず、今回のみにあるものを利用する。その手腕に、噛みついた獣を力任せに投げ飛ばしながら兄弟は言う。
「留め置くより使ってしまうか、やるな、女ども!」
「俺の好みじゃねぇがな!」
 獣よりはるかに強い力でそれを引き剥がした兄弟。だが、その開いた体にレバーアクションでライフルを抜き撃ちにしたジェイクの弾丸が襲い掛かる。
 そのまま無言で銃弾をありったけ撃ち込み、さらには弓に持ち替え氷結の力を込めた矢も射かけるジェイク。
「寒いでしょ、温めてあげるわ」
 その凍った部分に、片刃の剣を構えたエルーゼが炎の雷の乱れ打ちをかける。
「ついでにその目も潰させて貰おうか……なんてな」
 さらにアリスが武器を長物に変えて切り込み、【罪なる災害】の連撃で下半身を主体に狙うことで動きを鈍らせた。目と言いつつ動きを止めることを狙う、簡単なひっかけだが攻勢時には思いのほかそれが嵌る。
「ぐぅぅ……兄者、足は動くか!?」
「厳しいな……弟よ、上を!」
 その下半身をかばおうとした矢先、オルチが警告の声を出す。そこには舞い上がり、武器を大きく振り上げたエルーゼの姿が。
「目……というか上全部潰れといて」
 【グラウンドクラッシャー】の乗せた一撃が、兄弟に地形諸共叩きつけられた。
 その一撃が敵と地形のみならず、かつて受けた屈辱をも粉砕できたのかは、二人にしか分からない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ニィエン・バハムート
・先制対策
首飾りとオーラで威力と射程を強化された電撃【属性・範囲・マヒ攻撃】で敵攻撃に【カウンター】を放ち、敵と原始の魔物の動きを鈍らせる。電光で敵を【目潰し】し原子の魔物の増加を一時でも食い止める。
敵能力値は増幅されているので【オーラ防御】【激痛耐性】で敵の動きを鈍らせても止めきれなかった攻撃を耐える。

対処後にUC発動。何かたちの電撃属性攻撃と【捕食】攻撃で原始の魔物を蹴散らしながら兄弟にも数の力で攻撃を当て、纏った雷でマヒしたところを更に波状攻撃。私も【空中浮遊】【空中戦】で兄弟の顔まで飛び【怪力】による【部位破壊】。

実際普通に強くてやりづらいですわよ、あなたたち!
それでも勝ちますわよ!


フォルク・リア
「『三つ目』だけでも厄介なのに
魔物にも対処しないといけないとはね。
まあ言っていても仕方がない。」
と切り替え三つ目に向かい
【残像】で幻惑し敵の死角に回り込む様に移動。
魔物にも気を配り魔物が近くに来たら
魔物の攻撃を躱し魔物の陰に隠れながら三つ目を
呪装銃「カオスエンペラー」で銃撃。
利用する魔物はバルバロス・パワーの影響を受けない様に
大型のものを選ぶ。
隙を見て敵から離れ古代都市ルベルを発動。
古代都市を展開しながら都市が使役する幻獣
(竜、怪鳥、大蛇、巨人等やはり大きなもの)に攻撃させ
都市の使う属性魔法(火炎、雷撃等)で追撃。
「其方が魔物を使うなら此方も味方を呼ばせて貰う。
こっちは野生じゃないけどね。」



 七大海嘯たちの多くは、その本拠地に何がしかの特殊な仕掛けを施し猟兵たちを待ち受けていた。この『三つ目島』では、原始の魔物たちがそれにあたる。
「『三つ目』だけでも厄介なのに魔物にも対処しないといけないとはね。まあ言っていても仕方がない」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はその面倒を嘆き、しかし成すべきは成すとすぐに気持ちを切り替える。
「本当に、やることが多くて面倒ですの」
 ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)も大量にいる巨大な相手を見回し、その圧倒的な存在感に嘆息した。
 もちろん、面倒だろうと何だろうとやらねばならない。ニィエンは自身の体に大量に埋め込んだメガリスの内、電気を放つオーラとそれを増幅させる首飾りを起動し周囲に電撃を撒き散らした。その電気は辺りを囲んでいた獣と三つ目本人にも当たり、その体を通電して全身を痺れさせる。
「ぐはは、こりゃマッサージにしちゃ強すぎるな!」
「だが小さいな! もうちっとデカけりゃ何かしら使い道もあったかもしれんが!」
 その電気も、小さいものへの圧倒的優位から来る力で強引に踏み越えていくバルバロス兄弟。だがその傍らを、フォルクが素早く駆け抜ける。
「そう思うなら捕まえてごらん」
 兄弟が侮る『小ささ』を活かし、巨体ゆえの死角に幾度となく回り込むフォルク。豪快に多腕を振るいそれを叩き潰さんとする兄弟だが、その大きさからかどうしても細かな隙間ができ、そこに潜り込むことでフォルクは攻撃を躱し続けた。
「こういう時は一人で頑張るもんじゃないぞ弟よ。何事も協力が大事だ」
「そうだな……行くぜオルチ兄!」
 ハイレディンが島の上空を睨み、退化の視線を島中に放たんとした。だが、その目の先を目掛けニィエンが電光を飛ばす。
「うおっ!?」
 その眩しさに思わず目を閉じるハイレディン。視る、という行為はこうにも死角が多く、存外に潰されやすいものだ。
 弟の隙を消すかのごとく兄が体を操り暴れまわるが、その力を削ぐべくフォルクはとりわけ大型の魔物の後ろに隠れ、『呪装銃「カオスエンペラー」』での牽制射撃を繰り返す。大型の魔物と相対することになったことで兄弟のサイズの優位性故に来るユーベルコードは減衰され、その一撃をニィエンも踏ん張ることで大きなダメージを受けることなく耐えることができた。
 敵の手は纏めて封じた。ここからは攻勢に出る時間。
「現れよ! 雷纏いし竜王の眷属! サンダー・バハムート・レギオン!」
 【ナマズ流鮫魔術奥義・ビリビリナマズ航空ジョーズ】で呼び出された大量の鯰のような『何か』が一斉に電撃を放ち、獣たちの進行を止める。さらには兄弟にも残った電撃を差し向けてその足を完全に止めて。
「歴史の狭間に埋もれし魔導の都。幽谷の門を潜りて今、此処に姿を現し。その深遠なる魔術の神髄を示せ」
 フォルクが呼んだ【古代都市ルベル】からは竜、怪鳥、大蛇、巨人等の大型の厳重が次々と湧き出して来る。それはまるで三つ目島を塗り替え、自身の領域へと変えてしまうかのようですらあり。
「なんだこりゃあ……でかいにもほどがあるぜ!」
「流石に町とは喧嘩したくねぇぞ……ぐおぉ!?」
 その高い力で巨大な幻獣たちを押し返しながらも、回避を封じられたことで都市自体から放たれる火炎や雷撃の直撃を受ける兄弟。
「其方が魔物を使うなら此方も味方を呼ばせて貰う。こっちは野生じゃないけどね」
 町、それは人工物の一つの極み。例えどのような文明、どのような素材でも、人が作らなければ町は出来ないのだ。
 そして、巨大な町と小さき何かが止めた兄弟の顔にニィエンが飛翔する。
「実際普通に強くてやりづらいですわよ、あなたたち! それでも勝ちますわよ!」
 冗談のように後回しにされたことをぼやき、強がり風な言葉で嘆いたバルバロス兄弟。だがそれは決して無根のことではない。彼らが猟兵に二の足を踏ませるほどの強者であったのは紛れもない事実なのだ。
 それを乗り越えるために放たれた剛腕が、兄弟の顔を強かに捉えその体をどうと倒れさせ、そこに幻獣たちの一斉攻撃が叩き込まれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
何故島を守りづけられたのか…
その要因の一つは戦争緒戦におけるお二人の分身体の攻勢でしょう
お陰でグリモア猟兵の皆様に(UC同じ故に)負荷が掛かり本島の予知が遅れた…という仮説です

ですがこの場に至っては関係無し
七大海嘯『三つ目』…騎士として討ち取らせて頂きます

瞬間思考力で振るう武器の軌道を見切り、武器受け盾受けで防御
怪力で受け止めた武器を跳ね上げ腕の動作妨害、連撃阻止
脚部スラスターの推力移動で後退

格納銃器でUCを乱れ撃ちスナイパー射撃
知能が獣並みならば魔物も火を恐れるでしょう
そして兄弟握る武装にも発射、超高温で柄を炙り●武器落とし

あまり褒められた戦法ではありませんが…御覚悟を!

飛び上がり剣を一閃


ヴィクトル・サリヴァン
なーんか継ぎ接ぎ過ぎてグリモアで変な化学反応起きちゃいそうな気も。
でも倒しちゃえば問題ないよね、うん。

原始の魔物達は動物会話で交渉。
魚でよければ後で好きなだけ取ってくるから今はノータッチでいてくれない?
あとあの三つ目がいたら体のパーツ取られちゃうかもよ、と言ってみたり。
三つ目には高速詠唱からの水の魔法で足元の地形崩して行動をとにかく妨害、力を発揮させない。
防御は結界術とオーラ防御、野生の勘で見切って最小限の傷に抑える。
こっちのUC準備できたら虚実反転の水鏡に飛び込み相手より大きな姿の幻を真実に変え敵のUC無効化、三つ目の頭上から降り注ぐ銛の雨の幻を現実に変えて攻撃しよう。

※アドリブ連携等お任せ



 ここまで守り抜いた三つ目島もとうとう陥落がそこまで迫っていた。今まで彼らが持ちこたえられた理由を、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が推測する。
「何故島を守りづけられたのか……その要因の一つは戦争緒戦におけるお二人の分身体の攻勢でしょう。お陰でグリモア猟兵の皆様に、戦法の同一性などから負荷が掛かり本島の予知が遅れた……という仮説です」
 かなり正鵠を射ているだろうその仮説に、兄弟は鷹揚として答える。
「つまり飽きられた、ってことだろ? ひでぇ話だ、なぁ兄者よ」
「だがつまりそれがグリモアの弱点ということだ。これから俺たちに埋め込むんだ、弱みを知っておいて損はないぞ弟よ」
 ここに至ってなおグリモアを得ることを諦めた様子はないバルバロス兄弟。こうして数多の肉体やメガリスを自らの体に継ぎ足してきたのであろう彼らを、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が呆れ気味に見つめる。
「なーんか継ぎ接ぎ過ぎてグリモアで変な化学反応起きちゃいそうな気も。でも倒しちゃえば問題ないよね、うん」
 実際彼らはグリモアを入手の暁には、『鮫牙を殺す』という猟兵側でも認知していない手段に用いようと画策している。彼らが得た力がこちらの知る用途のみに使われるなどという保証はどこにもないのだ。
「ですがこの場に至っては関係無し。七大海嘯『三つ目』……騎士として討ち取らせて頂きます」
 相手が如何に持ちこたえ、どのように力を使おうとしていようと今なすべきことは変わらない。猟兵と七大海嘯、騎士と悪逆の徒が出会えばそこにあるのは戦いのみだ。
 兄弟はまずトリテレイアに向かい、四つの武器を一斉に振るった。その四つの軌道を、トリテレイアは瞬間的に計測、対策を弾きだす。
 左下から来た斧を大型盾で受け止め、右下の湾曲した刀を自身の耐久性の高い剣で受け止める。そのまま剣をはね、強引に右上の槍にぶつけることで軌道を反らし、一瞬遅れてきた左上のフレイルを、高速で後ろに移動して躱した。そして移動中、内蔵銃器を空に向かって撃つ。
「騎士が火攻めとは……笑い話にもなりませんね」
 その高熱と火炎が原始の魔物に原始の恐怖を与え、その身をすくませた。
 そうして怯える獣たちを、ヴィクトルが説き伏せる。
「魚でよければ後で好きなだけ取ってくるから今はノータッチでいてくれない? あとあの三つ目がいたら体のパーツ取られちゃうかもよ?」
 今までどの猟兵も試みなかった『対話』という対処法。そもそも原始かどうかに限らず普通獣に会話は通じないので当然と言えば当然だが、動物と話す力を持つ彼ならば話は別。
 奇しくもトリテレイアによって恐怖を与えられていたところに報酬込みの懐柔、そして追加の脅しが加わるという人間相手でも通じそうな交渉術となったとことで、原始の魔物たちは後退り戦況を遠巻きに見るような状態となった。
「おいおいそういう交渉は俺たちがやるもんだぜ! 小さいくせによぉ!」
 そのヴィクトルを兄弟が狙う。190cmと人間基準では大柄なヴィクトルも、巨人であるバルバロス兄弟からすれば己の半分にも満たぬ小物。その小さきものを叩き潰さんとその巨体を持って兄弟は上から彼に襲い掛かった。
「じゃ、そっちが沈んでもらおうか」
 それに対しては素早く兄弟の足元に水の魔法を放ち、足元を泥土に変えるヴィクトル。兄弟そのものへの攻撃は通じづらく共、その足元はただの地面だ。兄弟は足を取られながらも圧倒的な力で己を固定し武器を振るうが、その一瞬の手間の分だけ攻撃は遅れ、ヴィクトルは何とか最初の一撃を外すことに成功した。
「足はお任せいたします……私は手を! そちらの耐熱、冷却機能は十分ですか?」
 その振り切った手に、トリテレイアの【超高温化学燃焼弾頭】が放たれる。獣相手には脅しで放ったそれだが、今度は当てる気満々だ。そしてその狙いは、兄弟本人ではなく彼らの持つ武器。
「うおっ!? あ、あちぃ!」
「弟よ、槍と剣は捨てろ!」
 超高温が武器を炙り、その全体に高熱を纏わせる。総金属製の槍と剣は特に比熱が大きく、手がただれることを恐れた兄が弟に武器を手放すことを命じた。
「虚ろなるもの実なるもの、水の境を越えた先はどちらだろうね?」
 その隙に、武器の残る右手側にヴィクトルが飛び込む。三本の右手だ振るわれ彼を打ち据えんとしたが、それより早くヴィクトルは足元の泥に張った水鏡へと飛び込んだ。
 そして再び飛び出た時、その姿は三つ目を越える巨体となり天を覆う。
「馬鹿な……!」
「幻だからね、馬鹿もあるさ。でも、幻だって敵は殺せる」
 その身から銛の雨の幻を降らせるヴィクトル。幻のはずのそれは、彼の力の元現実となり、武器を手放し防御の甘くなった兄弟を貫いた。
「兄者、自分を守れ! 瞳は移せるが兄者の知恵は……ぐおおぉぉぉぉ!!」
「ハ、ハイレディン!!」
 武器を失った左手を右半身にかざし、ハイレディンがオルチを守る。その瞳は最後に兄を見やると、その頭の真ん中を貫かれ沈黙した。
 移せる力より司令塔たる兄を優先した、最後まで揺るがぬ兄弟の絆。それに一抹の敬意はあれど、今はそれを称える時ではない。
「あまり褒められた戦法ではありませんが……御覚悟を!」
 トリテレイアは動かぬ左より跳躍し、弟の死に動揺するオルチの首を一閃した。
「すまんな弟よ……やはり我らは、地獄の底までともにあらねばならぬらしい……猟兵よ! 勝者の権利だ、瞳でも島でも好きに持っていけ……そして願わくばその力で『鮫牙』を、そしてそれ以上さえもを、殺せ……!」
 そう言って兄弟の首が胴から落ち、さらには次当ての部分から体の全てがバラバラになって崩れ落ちた。そして地面にぶちまけられると同時に、それらの肉体は全て消滅した。
 羅針盤戦争全般にわたり猟兵を苦しめた三つ目の跳梁は、ついにここに潰えた。最後に彼の言った言葉はただの懇願か、あるいは新たなる戦いの予見か……彼の瞳に何が見えていたのかは、もう誰にも分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月28日


挿絵イラスト