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勇ましく歌え

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●死に損なったものたち
「どうせ死ぬなら 勇ましく」
「いくさで猛って くたばりたい」
「お前は我らの誇りだと 友に看取られくたばりたい」

「床で逝くなど 勘弁至極」
「どうせ死ぬなら 勇ましく」
「斬って斬られて くたばりたい」

「もっとだ! もっと高らかに! 愉快に歌い上げろい! 楽しくなきゃあ身体も刀も踊らねぇ!」
 軍の駐屯地としても使われていたその村には、兵が訓練を行うための設備も多くあった。
 だから戦争で住む人間がいなくなった今、この奇異なオブリビオンたちが好んでそれらを利用していたのだ。
「どうせ死ぬなら勇ましく~……ってなぁ、頭ぁ! おいらたちはいつおっ死ねるんですかねぇ!」
「適当な街に斬り込んじまえば手っ取り早く戦えるんじゃあねぇですかい?」
「馬ぁー鹿野郎てめぇ、半端な相手とやり合ったってしょうがねぇだろうが! やるなら腰抜かすぐらい強ぇのとだ!」
「猟兵って連中は本当にいつかやって来るんですかねぇ」
「来るさぁ、来る来る! だからよぉ、それまで存分に腕を磨くんだよ! いくさと歌のなぁ!」
 へい、と亡霊武者たちは返事を重ねると、ふたたび高らかに歌いながら訓練を再開した。
 錆の浮いた刀で試し合いを行うものたちの剣戟が、歌声とともに、滅びた村に響く。

「どうせ死ぬなら 勇ましく……」

●悲願
「くたばり損なった連中がいるんだと」
 ウォーマシンのグリモア猟兵、アーノルド・ステイサムがどこか呆れたような様子であらましを語り始める。
 くたばり損なったと言うが、彼らが亡霊である以上、一度死しているのは事実である。
 だが、彼らはみな一様に“自分たちは死に損なった”と思っているらしい。それが未練となってオブリビオンとして復活を遂げたという。
「連中はな、どいつもこいつも共通して“いくさ狂い”だ。やるかやられるかの命を懸けたチャンバラ劇が三度の飯よりも好き……そういう連中だな」
 だから彼らは皆、死を恐れていなかった。むしろそれは歓迎すべきものだった。
 しかしそれは、あくまで血沸き肉躍る戦場においての話だ。
「これも共通点のひとつだが……そのオブリビオンの武者集団の中に、戦場で“死ねた”やつは一人としていない」
 たとえば、病。たとえば、飢餓。
 事故で崖から落ちた。冤罪を着せられ切腹した。
 獣に襲われた。冬の寒さに凍え死んだ。怨恨から背中を刺された……。
「だから奴らは思っている。死に損なった、と」
 戦場で誇り高く、血の滾るような斬り合いを演じて死ねなかった。
 遠くから矢で頭を一撃。そのような最期でも、彼らにとっては十分だったというのに。
「今のところ連中による被害らしい被害は出ていない。というより、奴らは弱者には興味がない」
 求めるのは、最高の最期をもたらしてくれる強者との戦いのみ。
 彼らはオブリビオンに転生した時点で猟兵たちの存在を認識している。だから、待っているのだ。
 自分たちを滅さんといつかやって来る、強剛無比の異世界の猛者たちを。
「猟兵と遭遇しなきゃ無害といえば無害だが……いつか痺れを切らして、近隣の集落へ攻め込む可能性もゼロじゃない」
 武者集団がオブリビオンである以上、猟兵たちが彼らを討滅しない理由はないのだ。
 そして彼ら自身もそれを望んでいる。
「俺も一応傭兵だ。死に場所に恵まれなかった奴らの気持ちは分からんでもない」
 年季の入ったウォーマシンは、人間と変わらない声に憐憫を滲ませてそう述べる。
 武者集団は、頭らしき猿面を付けた武者の趣味で、とても楽しげに歌いながら得物を振るうという。
 その様子に最初は面食らうかもしれないが、死にたがりの武者たちが猟兵たち相手に搦め手を使うことはない。
 最高の最期を望んで猪のように突っ込んでくるのみだ。
「小細工無しで正面からぶちのめしてやってくれ。よろしく頼む」

「ああ、それとな」
 戦場となる滅びた村落は、かつてサムライエンパイアの軍が駐屯地としても使っていた場所だ。
 猟兵同士の試し合いをするには十分な広さがあり、訓練用の木人形なども健在である。
 どうやら亡霊武者たちが手入れを行っているらしい。
「仕事が終わったら好きに使っていくといい。ウォームダウンにもちょうどいいだろ」
 近くに川や森もある。地形に合わせた訓練なども準備を行えば可能だ。
「まぁ、その前に仕事だな。まずは連中を楽にしてやってくれ」


大熔解
 大熔解(だいようかい)と申します。
 今回はサムライエンパイアからお届けさせていただきます。

●第1章, 第2章
 武者集団、およびリーダーである猿面武者との戦いになります。
 オブリビオンたちは予知にもある通り、正面からぶつかってくるのみですが、
 猟兵たちが搦め手を使うぶんには特に問題ありません。
 彼らは戦場で散れればそれでよいため、
 過程がどうあれ結果が望むものなら満足するでしょう。

●第3章
 日常フェーズとなります。
 筋力トレーニングやユーベルコードの練習などに使っていただければと思います。
 ペアでご参加下さった場合は模擬戦の描写などもさせていただきますので、
 必要でしたらご検討ください。

 第3章のみ、プレイング内で希望があった場合のみアーノルドが登場します。
 特に触れる方がいない場合は登場いたしません。グリモアベースでのんびりしているかと思います。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●いざ、咲き散らす時
「うおおおおッ!!」
 得物を振るい訓練を続ける武者集団において、ひときわ突き抜けた歌声をあげていた彼らの頭領――猿面武者が、唐突に吠えた。怖いもの知らずの亡者たちもさすがに目を丸くしている。
「どうしたんですかい頭ぁ、犬みてぇに吠えちゃって」
「――来やがった」
 その言葉に武者集団たちの歌声がぴたりと止む。
 緩んでいた顔つきが引き締まり、目つきが猛禽にも似た鋭いものに変貌する。
「まだ姿が見えちゃあいねぇが間違いねぇ。辺りにうようよいやがるぜ」
 いかなる方法かは本人しか知るべくもないが、彼らを襲撃せんとする猟兵たちの存在を、先んじて感じ取ったらしい。
「そいつは……そいつはそいつは。いよいよってぇ事ですねぇ」
 穂先の欠けた槍を担ぐ無精ひげの武者がにたりと笑った。
「応よ、念願の時来たれり、だ。ようやく死ねる。――兵士として、真っ当に死ねる」
 いつだって陽気に彼らを仕切ってきた猿面武者は、仮面の下から低い声を響かせる。
 そこに楽しげに歌っていた時のような軽妙さは存在しない。
 これがこのオブリビオンの本来の顔。戦場での誇り高き死を渇望する、武者としての顔だった。
「決めてた通りにいくぜ。俺はお前らを仕切らねぇ。好きに暴れろ、そして死ね」
 俺もそうする、と言葉を終えた。
 その指示に疑念の声をあげるものはいない。元より彼らはそういう集団だ。
 “もっとも強き者が頭”。
 その認識のもとに猿面武者が君臨していただけで、彼らは指揮系統の存在する軍隊ではないのだ。
 好きに戦い、好きに死ぬ。
 望んだ最期で終われるなら、それで――。
  
「野郎ども!! いつくたばるか分からねぇから先に言っとくぜ!!」

 猿面武者が吠える。

「これにてお別れ、さようなら、だ!! 派手に歌って死んでこい!!」
 
 大地が震える。
 武者たちが得物を天に突き出し、彼らもまた吠えた。
 そして咆哮はやがて歌声へと変わっていく。

「どうせ死ぬなら 勇ましく」
「いくさで猛って くたばりたい」
「お前は我らの誇りだと 友に看取られくたばりたい――」
 
 ――ここに、開戦の幕が上がった。
ライザー・ヴェロシティ
完全な共感はしねぇが、
俺も戦士、戦場で死にてぇ気持ちもわからんでもねぇな…

…ごちゃごちゃいうのも無粋か
猟兵が、戦士が戦場にいる
なら戦うだけでいい

「俺は、否!
我こそはギスガーン最強の戦士!ライザー・ヴェロシティ!」

「嵐を恐れんのならばかかってこい!」

使用コードは【トリニティエンハンス】
風の魔力を主体に三つの魔力を纏って機動力(防御力)を重視して
自身を強化する、乱戦だしな

武器はルーンソードと黒剣を使った二刀流
今回はルーンソードで敵の攻撃をいなし
黒剣で首刈りを狙うぞ
「お前の首、頂くぞ!」

死にぞこないの首なんぞに価値はねぇが……
これでお前達は俺の武勲だ!

「どうしたどうした!もっと強ぇ奴はいねぇのか!」



●暴風ここに在り
 武者の群れを通り抜ける一陣の風。
 両の手に持った二刀にて進路上の敵を鮮やかに斬り捨てていく。足を止めずに甲冑の隙間へ的確に刃を滑らせていくその技術は明らかに手練れのものだ。
 人のかたまりを抜け、開けた場所に出ると二刀の戦士、ライザー・ヴェロシティは残る武者たちへ向け高らかに名乗りをあげてみせる。
「俺は、否! 我こそはギスガーン最強の戦士!ライザー・ヴェロシティ!」
「――はっ、最強かよ! 大きく出たな!」
 軽口が武者のひとりから飛ぶが、ライザーの動きに注意を配るその目に侮りの色はない。彼が大言壮語を吐いていないのは今の動きから証明されたばかりだ。
「そうだ、俺は何者にも止められぬ暴風! 嵐を恐れんのならばかかって来い!」
 身体の発条で力を圧縮し、射放たれた矢のような駆け出すライザー。今ふたたび武者たちへ天災をもたらさんとしたところで、手前の一人を狙った黒剣が強く弾き返された。
「そう何度も遊ばれてやらんぞ、最強の戦士とやら」
 若い武者だった。歳も体格もライザーに近い。胴にある甲冑の傷は今の斬撃によって生まれたものだ。剣筋を見切って身体を曲げ、そこで受けたのだろう。
 男が纏う雰囲気と防御の手際から、ライザーは目前の武者が強敵であることを悟る。得物に彫られたルーンが輝き、風の魔力をより力強くライザーの全身に充填させる。
「相手に不足なしといったところだな……お前の首、頂くぞ!」
「やってみろ!」
 ライザーがみたび駆ける。男が構える。
 速さを武器に男の死角に回り込み、斬撃を放つライザーだが、寸でのところで男は甲冑で防いでいる。ライザーの腕力と風の加護もあり、完全に威力は殺せてはいないが、致命傷へは至っていない。
 一方で男は防御のみに甘んじることをせず、ライザーの斬撃を無理に受けることで彼の動きを止め、白刃による鋭い反撃を狙ってくる。ルーンソードでいなすライザーだが、何度か切っ先が首と頬をかすめた。
 肉を斬らせて骨を断つ。“攻めの防御”によって隙を強制的に作ることで、一撃必殺の逆転を狙っているのだろう。
「いいね。岩のように堅く、稲妻のように鋭い――が!」
 ごう、とライザーが纏う風の勢いがよりいっそう強まった。触れれば自分の身体ごと傷つけるような、文字通りの暴風を繊細な魔力操作で制御し、そのすべてを推進力へと変換する!
「――それらすべてを呑み込んでこそ“暴風”だ!」
 黒剣が加速する。男が受けの姿勢をとるが、間に合わない。
「――見事だ」
 血を噴き出し倒れる身体と、転がる首。刎ね飛ばされる寸前、男が微笑んだのをライザーの目は確かに捕捉した。
 ライザーも一人の戦士である。己が屠った男がそうであったように、戦場で最期を望む気持ちは分からなくもない。
 ……ごちゃごちゃ考えるのも無粋か。
 猟兵が、戦士が戦場にいる。
 なら、あとはやるべきことを果たせばいい。
 胸中でのみ強敵へ別れの言葉を送ると、残る武者たちへ向かい声を張り上げた。
「どうしたどうした、もっと強ぇ奴はいねぇのか!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アイ・エイド
オレは何か変な毒(人狼病)盛られて死にそうなところを師匠に救われた
生き方を教わってここまで来た!
だから!アンタらの気持ちはよォく分かる!!
さァ、存分に死合おうぜ!

武器は双気弾銃とダガーのみだが、小柄な身体を生かしてすばしっこく走りまわるぜ!体術もある程度は出来る!

攻撃は攻撃で防御だ!出来るだけ気弾を撃ち相殺を狙い、弾いて隙が出来たら、力を溜めて気弾を撃つ!
攻撃が相殺出来ず、銃と刀の鍔迫り合いのような感じになったら、もう一挺の銃で地面に気弾を撃ち、空中に回避!空中で銃を一挺しまい、ダガーを取り出す。落下中は気弾で牽制しつつ、着地したらすぐにメンタリティ・ギャンビットを発動させ、刈り取ってみせる!



●必殺の投剣
「さァ、存分に死合おうぜ!」
 挨拶代わりの気弾を撃ち込むアイ・エイド。がんがんと撃てるだけ撃ち込みながら武者集団の内に入り込まんと疾駆する。小柄な身体は弾丸のように早い。
「元気のいいこったなァ!」
 当たり所悪く倒れる仲間たちはそのままに、歌声の音量を上げながら迎撃に移る武者たち。進路上にやって来るアイを待ち構えて斬り付けんとするが、妨害を計算に入れて足を走らせていたアイはひょいと跳んで容易く回避してみせる。
 走りながらも気弾を撃ち、撃ち、撃ちまくり、武者たちの足を止める。機動力を奪われた者からアイのダガーが飛んで止めを刺されていく。すでに四人。ダガーは一人として外れていない。
 標的の足が封じられているのも命中率を高める要因の一つだが、迷いを無くし、集中すれば集中するほど速度の増す投剣のユーベルコード『メンタリティ・ギャンビット』の力も大きい。敵を次々と着実に葬っていけば、アイの精神も呼応して研ぎ澄まされ、集中力のギアを上げていく。つまり、倒せば倒すほど技の威力が高まっているのだ。
 武者集団の半分がアイによって屠られると、残った武者の中からぬらりとひょろ長い体躯の男が現れた。アイは視認してすぐに気付く。ダメージを負っていない。気弾を数え切れないほど撃ち放ったはずなのに、この男には命中していないのだ。
「――なるほど! 仲間を盾にしてたって訳か!」
 すぐに合点がいく。男のそばに倒れている武者の胴体が不自然に損傷していた。機動力低下を狙って攻撃を続けていたアイが意図的に与えたダメージではない。
「ああ、使わせてもらった。何か不満があるか?」
「いいや、戦いってのはそんなもんだろ!」
「フッ、話せるな!」
 アイの返答に笑うと男が槍を突き込んでくる。鋭い。外れても何度も急所目掛けて襲来する手数の多さ。アイはまず攻撃の手を止めさせることを考える。気弾による牽制である。照準はあえて適当に、撃って、撃って、撃ちまくる。
 槍捌きがわずかに鈍ったところで銃身で槍の柄を押し上げ、片手に握ったもう一艇の銃で再度の射撃。今度は正確に足狙い。目論み通りに命中させると、槍の力を横に逃がし、自分は中空へと飛び上がって見せた。ダガーを抜く。
 アイに槍が届くより、ダガーが武者の眉間を貫く方が、早い。
 死してなお命を刈り取られた男はどうと倒れ、足先からその身体を徐々に霧散させていった。
「楽しかったぜ、オッサン!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ルフトゥ・カメリア
ははッ、お祭り騒ぎかよ!
良いぜ良いぜ、良し来た!
はッ、この天使サマが全員纏めて綺麗さっぱり散らしてやるから、ありがたく掛かって来やがれ!

古傷掻っ捌いて、傷口から地獄の炎をバスターソードに伝わせ【鎧砕き、怪力、2回攻撃】を叩き込み、時に【フェイント、だまし討ち】で自分の土俵に持ち込む。
こちとら育ちが悪ぃもんで、正当な剣技なんざ習ったことねぇんでな!実戦重視だ。
足首からの炎を宿した柄の悪い蹴りも入れる。火葬だ火葬!

【第六感】で相手の思考と軌道を読んで、【武器受け、オーラ防御、カウンター】で炎を噴き出しバスターソードで武器ごと叩っ斬ってやんよ!
あークソ楽しい、好きだぜテメェらみてぇな馬鹿共。



●炎天
「どうせ死ぬなら!! 勇ましくッ!!」
 両の手に握った刀を渾身の力で振るう武者。その斬撃から繰り出される衝撃波はルフトゥ・カメリアへと疾走する。
「ははッ、お祭り騒ぎかよ! 良いぜ良いぜ、良し来た!」
 巨大な鉄塊のような剣を地面に突き刺し、盾代わりとするルフトゥ。飛来した斬撃の威力はその分厚さの前に呆気なく殺された。
「この天使サマが全員纏めて綺麗さっぱり散らしてやるから、ありがたく掛かって来やがれ!」
 右手首に残る古傷に、爪を立てて鋭く走らせる。するとルフトゥの内から漏れ出した地獄の炎が手首から指、指から剣へと伝わり、そして刃のすべてを瞬く間に覆ってみせた。炎の剣――否、燃え滾る“炎そのもの”を携えた猟兵の姿に、武者たちから「おお」と感嘆の声が漏れる。
「こりゃあ物騒な……喰らったら堪ったもんじゃねぇなぁ!」
 言葉と裏腹に臆した様子は全くなく、にかっと顔に笑みを刻んで迫り来る巨躯の武者。その男もまたルフトゥと同じく大剣使いだった。鉄板に棒を取り付けたような粗雑な作りの武器を大きく振りかぶる。
「ぬぇぇぇぇぇぇぇいぁああ!!!!」
 咆哮とともに叩きつけられる肉厚の剣。ルフトゥは鉄塊剣で受け止め、耐える。質量から地面がわずかにめり込んだ。
 その後数度、斬撃の応酬が続いたところで武者の大振りが外れる。好機とばかりにルフトゥは水平に鉄塊剣を構え、胴体への必殺の一撃を試みる。
「甘いわッッ!!!」
 読んでいたかのように大剣を縦に構え衝撃に備える武者。
 が、来るはずだった横薙ぎの斬撃はやって来ない。
「足元がガラ空きなんだよッ!」
 代わりに襲来したのは、炎を纏った脚による蹴撃――!!
「ガァッ!!!」
 体勢を崩した武者へ、本命の鉄塊剣による一撃が入る。力任せの横薙ぎの一閃は武者の鎧を難なく砕き、胴体を七割ほど断ちながら男の巨躯を大きく吹き飛ばした。直撃を喰らった武者はネモフィラ色の炎に包まれながら地面へ転がり、やがて動かなくなると炎ごと武者の身体が消失する。
「火葬だよ火葬! はッ!」
 楽し気に口角を吊り上げてみせる灼滅の天使。
 一切の容赦なく仲間を屠ってみせた猟兵を前にしても、亡霊武者たちの顔から戦意が消えることはない。
 むしろ強敵の確信を得て愉悦が増したように、ルフトゥ同様の凶悪な笑みを浮かべてみせている。
「あークソ楽しい、好きだぜテメェらみてぇな馬鹿共」
 残りの武者たちへ鉄塊剣を構え直すルフトゥ。
「お前らもやるだろ!? 来いよ!!」
 その誘いを号令として、痺れを切らした亡霊武者たちが歌声を絶叫させて、炎纏う天使へと突貫していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナナ・モーリオン
……そう。眠れないんだ。
やり残したことがあるんだね。

いいよ、わかった。
無念を晴らして、静かに眠れるように、お手伝いするのも、ボクらの仕事。
受け止めてあげる。……往こう。

コードで大狼の亡霊を召喚、騎乗。
正面から突っ込む。
一緒に縦横無尽に駆け回って、狼の爪と牙で、切り裂いて、食い千切る(『騎乗』『動物と話す』)。
遠くの相手は、ボクが黒炎槍を投げて攻撃(『怪力』『槍投げ』)。

ボクは死者の怨念を受け止めるモノ。
大丈夫。満足するまで、いくらでもおいで(『呪詛耐性』)。

……これで、満足?
やりたいこと、やりつくしたら……ゆっくり、おやすみなさい。
気持ちよく眠れるといいね。



●黒い炎の獣
「……そう。眠れないんだ。やり残したことがあるんだね」
 俯き、憐憫を隠さず亡霊武者たちに語り掛けるナナ・モーリオン。
 死に場所を求める男たちは困惑していた。目の前の銀髪の少女には戦意が見えない。そして、戦う力があるようにも。
 この少女が本当に、我々が渇望するものを与えてくれるのだろうか。
「いいよ、わかった」
 決心したナナは顔を上げ、疑念から探るように己を見つめていた亡霊武者たちを正面から視線で射抜く。
 ――無念を晴らして、静かに眠れるように。
 幼い少女の瞳に宿る優しき殺意に、男たちはわずかに目を見開く。
 それで認識を改めた。惑いを表情から消し、目つきが鋭くなっていく。
「受け止めてあげる。……往こう」
 その言葉は誰にかけたものなのか。答えはナナの背後から、黒い炎となって現れた。
 怨念が意思を持ったような闇のゆらめきは徐々に形を変えると、やがて黒炎の狼となってナナの隣に並ぶ。
 主を騎乗させると、屠るべき“餌”たちを睨めつけて獣が唸り、そして吠えた。敵対するものすべてに等しく恐怖を植え付ける狩猟者の咆哮である。
「……はっはぁ、どうやり合うのかと思っておったが、まさかまさかの獣使い!」
 もっとも歳を食っていると思われる、髷のほとんどが白く染まった痩せぎすの男が、集団から前に出て刀を正眼に構えてみせた。肌を粟立たせる狼の威嚇にも臆した様子はない。
「お相手いただこう! いざ! いざ、いざ!!」
 ぎょりろと目を開いて立ち合いを迫る白髪男。その声に応じるように狼が地を蹴って走り出した。
 男に正面から喰らいつかんと顎を開けて肉薄する。白髪男は狼の横顔に手の甲を叩きつけて軌道を逸らしたが、回避されても狼は勢いを止めず、そのまま白髪男の後ろにいた武者へと狙いを定めて突っ込んでいく。
 その武者もまた防御を試みたが、一手間に合わなかった。青白い首筋に狼の牙が食い込み、男の体内に黒い炎が潜り込んでいく。炎は内側から男の身体を焼き、やがて全身を黒い炎で包むと、灰すら残さずに男の存在を完全に消滅させた。
「……これで、満足?」
 狼に屠られた男のいた場所、もはや何も残っていない地面に、ナナは穏やかに声をかける。
 壮絶な最期であったが、これは彼の、彼らの望んだものだ。
 ――気持ちよく眠れるといいね。
 少女は胸の中でのみそう呟いて、心から男の安寧を祈った。

 一方、仲間が黒い炎に焼き潰されるのを見て、臆すことなく奮い立っていたのは最初の白髪男だ。
「なんとまぁ物騒なけだものよ! おっそろしい炎を使いおるなぁ!」
 次は自分の番だとナナと狼の前に立ちはだかる。
 ナナは表情を変えず男を見て、まるで子供を安心させるように口を開いた。
「ボクは死者の怨念を受け止めるモノ。大丈夫。満足するまで、いくらでもおいで」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィルジール・エグマリヌ
今から死にに行くというのに
随分と愉しそうだね、君達
私には分からない気持ちだが
最期は華々しく送ってあげよう

落武者はたくさん居るようだ
弱った敵から撃破して行ったり
仲間が攻撃した敵を狙い
更なる攻撃で傷口を開いたりと
連携も意識してみようかな

素早い一撃は特に警戒
敵の動きを観察したり距離を取る事で
成る可く被弾を防ぎたいな

攻撃には眠れぬ夜の揺籃歌を使用
鋸達を落武者達へと嗾けよう
聊か喧しいけれど、無骨な君達には
きっと心地の好い子守唄だろう?

取り零した敵がいたら
拷問具……処刑人が用いるような剣で
1人ずつ斬り伏せよう

君を屠る男は歴戦の勇士では無いんだ
すまないね、せめて最後のひと時に
その渇きが満たされる事を祈るよ



●死神の子守歌
「今から死にに行くというのに、随分と愉しそうだね、君達」
 乱戦の果てに手負いとなった武者たちを追撃する形で現れた死神は、優雅さを伴って彼らに語り掛ける。
「応よ、愉快にやんのが俺らの流儀だ。歌って斬り合って笑って死にてぇのさ」
「そうか。――私には分からない気持ちだが」
 亡霊武者たちの視線の先、ヴィルジール・エグマリヌが柔らかく微笑む。三人の亡霊武者の槍を握る力が強まった。
「では、最期は華々しく送ってあげよう」
 宣言と同時、赤い鮮血が中空へ噴き出す。発生源はヴィルジールの背後から襲い掛からんと吠えかけた武者の首だった。
 どっと倒れる武者が立っていた位置には、血に濡れた古めかしい鋸が浮遊している。
 『眠れぬ夜の揺籃歌』――愛用のアンティーク鋸を自在に操り、激痛とともに敵を屠る、ヴィルジールのユーベルコードである。
「聊か喧しいけれど、無骨な君達にはきっと心地の好い子守唄だろう?」
 ひとつ、ふたつ、みっつ。無数の鋸がヴィルジールの周囲に出現し、意志を持ったように楽しげに踊ってみせる。凶悪な刃同士が触れ合って、かちんかちんと金属音が奏でられた。
 殺気を滲ませたヴィルジールの挑発に、残りの亡霊武者たちは臆するでもなく、ただ暴力的に口角を上げてみせる。
 渾身の一突きを見舞わんと腰を低く構え、咆哮し、かの猟兵の胴体へと目掛けて一気に――。

 最後の一人に止めを刺す。
 斬首刑に使われるとされる切っ先のない剣で、転がっている男の首をごとんと刎ね落とした。
 倒れている武者たちの身体には、鋸によって千切り削られた傷痕が全身に残っている。猟兵の仲間たちが先に負わせた傷を抉り、深手を負わせた結果だった。
 その過程でヴィルジール自身もまた浅くない傷を負ったが、それでもまだ二つの脚で立つことができている。
 本懐叶え消滅せんとする彼らを見下ろすと、その表情には紛れもない喜色が浮かんでいた。

 ――喉からやられたよ。満足に歌えなかったな。

 ――まぁ、そんなこともあるさ。

 ――ここは、戦場だから。

「せめて最後のひと時に、渇きが満たされた事を祈るよ」
 ――すまないね。君たちを屠る男は歴戦の勇士では無いんだ。
 その言葉は呑み込むヴィルジール。
 望んだものを与えられ、悔い一つなく逝かんとする彼らに対し、その謝罪は無用であると悟ったのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

花剣・耀子
死に損ない。
……ははあ。なるほど。

困ったことに、その気持ちはわからなくもないのよね。
死に損なって命を拾ったなら兎も角、
死に損なって死にっぱなしだもの。

いいわ。
人里を襲わず待ち続けた、その心意気に免じて相対を。

此方も小細工は無しよ。派手にゆくわ。
【《花嵐》】を使用、集団の中に切り込みましょう。
周りの猟兵を巻き込まないように注意はするつもりだけれど、
駄目だったら御免なさいね。

斬って斬られてくたばりたいと歌っていたかしら。
あたしは首を斬られなければ止まらないわよ。
これなら不足はないでしょう。
地獄までは付き合ってあげられないけれど、
黄泉路に付き添うくらいはしてあげる。

――手向けの華よ。散りなさい。



●少しの間
「いくさで猛って、くたば――うおおお!!!?」
 刀を構えこちらに襲来せんとする娘を、迎え撃たんと歌声に力を入れた時だった。
 彼方にいたはずの娘の姿が消え失せたと思えば、なんと、いつの間にやら武者集団の中に何でもないように混ざっている。
 そして時すでに遅し。娘が武者たちから遠のきながら、得物に付着した血液をぴっと振り払う。
 とっさに腹を押さえても、こぼれ落ちるものを留めることはできなかった。
「……鎧ごと、か――見事なものよ……」
 どうと倒れる四人の武者。赤い血が腹部を中心として地面に広がっていく。
 満足した面持ちで消えゆく男たちの身体を見ながら、花剣・耀子はぽつりと独り言ちた。
「死に損ない、ね……困ったことに、気持ちがわからなくもないのよね」
「ほう」
 声。近い。
 耀子は気配のある方向を見ぬまま得物を一閃させるが、手応えはない。
 振り返って見れば、剣の間合いから一歩離れた先に二十半ばほどに見える若い武士が立っていた。青白く不健康そうな肌ではあるが筋骨に恵まれており、背丈も高い。
「すまんな、続けてくれ。気持ちがわからなくもない、とは?」
「……死に損なって命を拾ったなら兎も角、死に損なって死にっぱなしだもの」
 綽々と話してのける闖入者だが、耀子もまた余裕を崩さず微笑んで答えてみせる。
「ふん、死んだこともない小娘がわかったように語ってくれる」
 気分を害した様子はない。むしろその態度が心地よいと、男は愉快そうに笑ってみせた。
「それで、お前がおれに最期を恵んでくれるのか」
「――ええ。ご期待に応えてあげる」
 耀子が後ろに跳んで距離を取り、刀を構える。
 男も腰に提げた太刀を抜き、倣って力強く正面に構えてみせた。

「――斬って斬られてくたばりたいと歌っていたかしら」
 苦悶の色がわずかに滲む声。ことを終えた後、耀子は脇腹を片手で押さえていた。
 倒れ伏す男――首を左から半ばまで断たれた若い武士を、強い意志の宿った瞳で見下ろしている。
「あたしも首を斬られなければ止まらないわよ」
「……ふ、ふ。“も”ときたか……」
 この世のものならぬ亡霊ゆえか。首を断たれありったけの血を吐き出しても意識がある。声も出せる。
 しかしそれも長くは保たぬだろう。
 ふいに、耀子が男の傍、血だまりのすぐ横へと座り込む。
 何のつもりか、と男が視線を動かすと、変わらぬ泰然とした面持ちで少女が見つめ返してきた。
「地獄までは付き合ってあげられないけれど、黄泉路に付き添うくらいはしてあげる」
 その言葉に吹いたのか、呆れたのか。
 カッ、と息を吐いて笑ったままの男はもう喋らず、耀子に見守られながら安らかに眠っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
戦人であって戦で死なぬは恥と聞く。
オブリビオンとして蘇らされては故人達も浮かばれまい。
…いいだろう。剣の道にあって死に場所を違えた迷い武者共よ。
この花盛乙女の修羅の剣、満足いくまで味わわせてやるぞ。

戦場に情は不要。
話を聞けば沸こうという手合いだが一切の情はかけない。
今一時は私は戦場に立つ修羅となろう。
落ち武者共の振るう刀を【黒椿】と【乙女】で受け、情けも容赦もなく斬る。刃の血が乾く間もなく、斬り、裂き、断つ。
我が剣刃の一閃で間違いなく首を落としてやろう。

一人で足らねば二人、二人で足らねば三人で来い。
貴様らの眼前にあるはおぞけふるう凶悪な羅刹女だ。
一人もこぼさん。全員間違いなく、死なせてやろう。



●剣鬼
 戦場を思うまま蹂躙するつむじ風。
 歌声を劈き、肉を断ち、血を舞わせ、すべてをないまぜにして赤い風が吹き荒れている。
 その発生源たる花盛・乙女が振るうは二振りの刀。悪刀【黒椿】に、小太刀【乙女】。
 【黒椿】による圧倒的暴力で亡霊武者たちを掻き回し、合間に乙女が見せる“隙のようなもの”を狙って届く斬撃を【乙女】にて受けている。そして彼らが見せた“隙そのもの”に対して容赦なく振りかかる【黒椿】。
 嵐のような攻勢一極の剣術と思いきや、防御の穴を生む余地もなく攻防を一体としている。理性的で冷徹な暴れぶりである。
 ――戦場に情けは不要。
 情けで彼らが浮かばれるのか。断じて否だ。
 血風吹き荒ぶ戦場にて心躍る斬り合いを演じ、容赦なく斬り伏せられ、そして果てる。
 それが彼らの望む結末のはずだ。

「戦人であって戦で死なぬは恥と聞く」
 交戦していた集団を剣舞にて一掃し終えると、加勢にやって来た新手に対して乙女が口を開く。
 新手衆はといえば、血だまりに沈んだ男たちを目立った傷もなく完封してのけた乙女に対して、武者震いを抑えられない。
「ああ。心得てるじゃねえか、お嬢ちゃん」
 思わず声が弾む。
「………いいだろう。剣の道にあって死に場所を違えた迷い武者共よ」
 羅刹の眼光が男たちを射抜く。
「この花盛乙女の修羅の剣、満足いくまで味わわせてやるぞ」
 乙女が地を蹴ったのと合わせるように武者たちが動く。
 歌え! と先頭の髭もじゃの男が吠えると、連れの武者たちががなるように歌いながら乙女目掛けて突っ込んでくる。
 まるで猪だ。
 乙女にとってみれば、彼らを料理するのは豆腐を切るより容易い――。

 一人目、斬り下ろしにて頭を割る。
 二人目、左肩から袈裟懸けに。
 三人目、体勢を崩したところで首を刎ね飛ばした。 
 
「一人で足らねば二人、二人で足らねば三人で来い」
 戦術なく迫る猪武者たちを各個撃破にて葬った乙女は、怒るでもなく静かに語りかける。
「貴様らの眼前にあるはおぞけふるう凶悪な羅刹女だ。一人もこぼさん。全員間違いなく、死なせてやろう」
 一瞬の静寂。その後は雄叫びが起こった。喜色が滲んだ、獣たちの咆哮。
 
 ――彼らにとってその鬼は、天女よりも美しく見えたに違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

音羽・浄雲
※アドリブ歓迎

「死に損なった・・・・・・ですか」
オブリビオンたちの戦う理由に眉尻をピクリとあげる。
在りし日の己が故郷の勇士たちも皆一様に『勇ましく死ぬことこそ誉れ』と笑って死んだ。
しかし浄雲には愛しいわが子のような者達がそうして死ぬのが理解出来なかった。

「貴方方の無念、ここに晴らして差し上げましょう」
今はもう言葉もかわせぬ愛しい人らの面影をオブリビオン達に重ね、印を結ぶ。
ひょっとしたらこの戦いで、自分の失った者達の気持ちが少しは分かるかもしれないと。

「きたれーー音羽が兵者どもよ!」
呼び覚まされた甲冑を纏う骸骨の兵たちが、いざ戦争と落ち武者たちにおどりかかる。



●亡者の軍勢
「貴方方が戦う理由を、お聞かせ願えますか」
 孤立した敵を勢いのまま呑まんとしていた多勢を前に、音羽・浄雲が真正面から問うてみせた。
 予知にてあらましは聞いていたが、彼らの口から実際に聞きたい気持ちが強かった。
 律儀にも足を止めた、集団を率いる白鉢巻の小柄な男は、胸を張って浄雲に答える。
「死に損なったからよ。我ら皆血に飢えた戦餓鬼だというのに、戦場で死ぬことができなんだ。だからこうしておぬしらに救いを請うておる」
「死に損なった――ですか」
 予想していた答えに、しかし浄雲の眉尻がわずかに上がる。
 ああ、やはりだ。迷いなく答える。勇ましく散ることに一切の疑念を抱かないその様よ。
 似ている。似ているのだ――浄雲が愛した、今は亡き故郷の勇士たちに。
「おう。だから娘よ、おぬしも遠慮なくやってくれ。わしらも好きにやらせてもらう」
 言い終えて口を結ぶ。これで問答は終わりだと、打刀を八相に構えてみせた。
「……分かりました。貴方方の無念、ここに晴らして差し上げましょう」
 浄雲が両の手指を絡み合わせて印を結ぶと、右の掌に赤い紋が浮かび上がった。
「来たれ――音羽が兵者どもよ!!」
 紋を地面に叩きつける。そこを起点として血脈めいた模様がじわじわと辺りに広がり、浄雲の周りに歪な陣を作り上げる。模様の伸長が止まると陣は赤黒い光を発して武者たちの視界を塞ぎ、そしてそれが消えたころには、陣の上に甲冑を身に着け佇む無数の武者の姿があった。
 忍法による召喚術――しかし呼び寄せられた者たちは尋常の人間ではない。兜の下から覗く面貌は皮もなければ肉もない、髑髏そのものである。
 その姿はまるで、まるで。
「はっはっは! わしらより“らしい”面構えをしておるわ!」
 “亡霊武者”たちは地獄より参集した援軍に心から愉快そうに笑ってみせる。
「して準備は整ったか、娘よ! ならばいざ尋常にかち合おうではないか!」
「いつでもよろしく御座います。――往くぞ!!」
 浄雲の号令に肉を持たぬ兵たちが得物を天に突きあげる。雄叫びの代わりにがたがたと身を震わせてみせると、ひっ飛ぶように疾駆して亡霊武者たちへと躍りかかっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジン・エラー
死ぬために散るために
うるっせェな、五月蝿ェよ
だったらいいか?よォ〜〜〜〜〜〜く聞いとけ
せっかく聞けるよォ〜になった耳で
ありもしねェ〜〜頭で
光もねェその目で

【オレの救い】を、刻ンで逝け

そンな生き様も
そンな死に様も
認めねェーよ
許さねェーよ

まとめて来いよ
オレに救われる為に生まれて来たお前らを
オレが救ってやる



●救い
「死ぬために散るために、うるっせェな、五月蝿ェよ」
「ああ!? 何言ってやがんだこの童!」
 背丈からジン・エラーを子供と思い込んだ武者たちは、声を荒げながらも異様な雰囲気を醸す男に近付けずにいた。
 背中の棺桶の意味を知る者はいるのか。救済者は、傲岸な態度を崩さずに言葉を続ける。
「いいか? よォ〜〜〜〜〜〜く聞いとけ」
 くたばり損なったろくでなし。死ぬために死地へ赴く、“いくさ狂い”のもののふども。
 恐れ知らずの戦餓鬼たちはしかし、一方的な聖者の慈悲に、生前を含めても記憶にない震えるような“未知”を覚える。
「せっかく聞けるよォ〜になった耳で」
 聖者の言葉が届く。
「ありもしねェ〜〜頭で」
 意味を解さず染み渡る。
「光もねェその目で」
 ――その輝きは、素晴らしき最期に求めたはずなのに。

「――【オレの救い】を、刻ンで逝け」

 雲一つない空に昇る朝日が、このように清らかな光を発していただろうか。
 ジンの身体から発せられる聖者としての本質。その説得力。
 血にまみれ死んでいくことを良しとする武者たちに、かつて拝んだ何物よりも尊いと、何者よりもそこに“神”があると感じさせた。
「そンな生き様も、そンな死に様も。認めねェーよ、許さねェーよ」
 敵意なく歩み寄る傲慢な聖者。
 死に場所を求め戦場を彷徨っていた男たち。
 得物を構える腕の形は保ち続けるものの、いかなる理屈か、間合いにいる敵に対して攻撃に移ることができない。
「――まとめて来いよ。オレに救われる為に生まれて来たお前らを、」
 金桃の慈悲が死者たちを射抜く。

「オレが、救ってやる」

 一方的な救済の始まり。
 果たして彼らに安寧は訪れたのか。
 いくつかの傷を得て仲間たちの元に戻った聖者は、何も語らず黙したままだったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

上野・修介
【POW】
上等。闘りたいてんならとことん闘ってやるッ。

自分は素手格闘で、相手は武器持ち。
下手にヒットアンドウェイを狙えば間合いの差で押し切られるので、捨て身の覚悟で懐に飛び込み、倒したら次の相手の懐へを繰り返し、できる限り一対一の状況で、一人ひとり確実にぶっ倒していく。

捨て身でくるなら、変に日和って回避したりしてこないだろうからUCはダメージ重視。
もしそういうような手合いがいれば、
「勇ましく死にてぇんじゃねのか?」と挑発する。

適当な街に斬り込むこともできたのに、それをしなかった彼らは馬鹿だが誇り高い『武辺者』だ。
だから敬意をもって全力でぶっ潰す。



●徒手の鬼
 至近距離から痛烈な拳の突き上げ。顎を完全に破壊し、鎧を着込んだ武者を宙に舞わせる。
 一人仕留めても休む暇はない。睨み合いに入れば得物の違いでこちらの不利は明白だ。足を止めず、他の武者からの間合いから距離をとりながら、狙った標的の懐へ瞬時に肉薄する。
 今度も顎。横殴りに脳を揺らして意識を刈り取ると、甲冑の隙間に止めの貫き手を槍のように突き込んだ。鍛えられた手指から命を奪った感覚が伝わってくる。
 ――亡霊でもはらわたは温かいものか。
 上野・修介は心中でそう感想を漏らすと、こと切れた武者の身体から腕を引き抜いた。血がべったりとついていたが、武者の身体がこの世から消失するのと同時に、血液もきれいに霧散していった。
 次なる標的を求めて周りを見渡す。しかし近くに敵の姿はない。武者たちは距離をとって修介を囲っている。
「拳で鎧武者と渡り合うか……さぞ勇名をはせた武辺者なのだろうな」
 総白髪の、枯れ木のような初老の男が囲いから前に出てくる。体躯と細腕に似合わぬ太刀を構え、修介を見据えた。
「他の奴らは来ないのか? 勇ましく死にてぇんじゃねぇのか」
「おれの我儘を聞いてくれておるのよ。――一対一だ。死合ってくれ、猟兵とやら」
 成る程、と得心のいった修介はグローブを付けた拳を構える。インサイドへ瞬時に飛び込むには少し厳しい位置だ。思考をまとめるためにとんとんと足でリズムを刻んでいると、先に武者が動く。
 大きく修介の間合いへ踏み込みながらの刺突である。鋭く迫る白刃を修介は腰をひねって最低限の動作のみで避けてみせると、今度は右に向けての払い。おそらくこちらが本命だったのだろうが、切り取ったのは修介の黒い頭髪のみだ。
 その後も隙を見せない堅実な刀捌きで修介を攻め立てる。手数が多く、攻撃のインターバルが短いうえに俊敏だ。腕を振り上げて強烈な斬撃を見舞おうとしないのは、先ほどの仲間のように懐に入られることを警戒しているのだろう。
 防戦しつつも、埒が明かないと判断した修介はリスクを承知で捨て身の攻勢に出る。払いを避けた直後、次の手が届く前に地面を蹴り、武者へと突貫した。
「オオオオオッ!!」
 撃ち放たれる拳。皺だらけの武者の顔面を正面から叩き潰し、吹き飛ばす。
 地面に大の字で倒れた武者の身体は、四肢をわずかに震わせた後に動きを止め、消失した。
「……俺からすれば、お前たちの方がよほど誇り高き“武辺者”だ」
 ――だから、敬意をもって全力でぶっ潰す。
 安寧を祈るように一瞬だけ瞑目して、すぐに周りに残る武者たちへと咆哮した。
「さあ、次はどうした!」

成功 🔵​🔵​🔴​

雷陣・通
待たせたな!
父ちゃんが言っていたぜ、死に場所っていうのを見つけられるのは武士の本懐だと
なら、その本懐――俺が遂げさせる!

戦闘知識から……いや、そんなものは関係ねえ
真っすぐ先制攻撃でぶん殴る
握った拳に意志を貫き、鎧無視の一撃をガッスンガッスンにぶちまける
勿論、遊びじゃない見切って回避はかけるし、残像やスライディングで翻弄もする
それが俺の戦い方だから

だからな……ここで終わらせようぜ
隙を見て、『手刀』を振り下ろし、息の根を止める

「実戦空手、紫電会初段、雷陣・通。治において乱を鎮める武を以てお前達を倒す!」



●電光、地を走る
 見くびったつもりはない。
 小さくも彼が、本物の戦士だったというだけのこと――。

「実戦空手、紫電会初段、雷陣・通。治において乱を鎮める武を以て、お前達を倒す!」
 名乗りをあげてからは早かった。
 武者たちが反応し口を開く間もなく、地を蹴り雷光のごとく迫れば初撃、抉り込み撃ち放つ正拳。一撃決まればさらに二撃、三撃。
 着込んだ鎧など関係ない。鍛え上げた“凶器”が身を守る甲冑を、胸骨を砕き、心臓を弾けさせる。
 それでもう一人目は終わりだ。白目を剥いた男は構わず捨て置き、雷陣・通がふたたび走る。
「速っえぇなこの童……!!」
 我に返った残りの武者二人が抱いた第一印象がそれだ。小さく、低く、速い。速度だけでも未知との遭遇だというのに、素手で武者鎧を易々と砕いてくる拳鬼が、まさか年端もいかない少年だとは!
 目にも留まらぬ足運びで残像すら生みながら武者たちを翻弄する通。そして完全に見失った者から雷光の餌食となる。忙しなく武者たちの周囲を駆けながらも敵の観察を欠かさない通は、動きについていけず、明後日の方向に視線を向ける一人の武者に照準する。
 雷が閃いた。
 頸椎が砕ける。通の踵が斧となり、がら空きの武者の首へ容赦なく刃が打ち込まれた。胴回し回転蹴りである。
 一瞬で命を刈り取られ地面に沈む男と、体勢を戻す通。すでに二人目。時間をおくほど危険度が加速する目前の少年に、最後の一人、無精ひげの武者の表情には自然と笑いが浮かんでいた。死した身でなければ冷や汗のひとつでも流していたかもしれない。
「いやいや……強いのもそうだが迷いがまったく無いな。お前さん、そんなにおれらを葬りたいのか?」
「父ちゃんが言っていたぜ。死に場所っていうのを見つけられるのは武士の本懐だと」
 構えを解かず武者の言葉に応じる通。
 その瞳には歳相応のまばゆい無垢さと、己の信じた“道”を歩まんとする強固な武人の魂が同居していた。
「なら、その本懐――俺が遂げさせる!」
「ハッ、心得ているな!」
 駆ける雷光。迎え撃たんと穂先の欠けた槍を突き出す武者。
 破れかぶれでもなく、渾身の一刺を放ったはずであったが、穂先は通の頬にかすり傷をひとつ増やしたのみだった。
 通が放ったのもまた“槍”である。己が手腕を槍のごとく急所へ突き込む、必殺の貫手。腹を抉られた武者は大量の血を吐き出し、血だまりの生まれた地面へ両ひざをついた。
「……徒手と思いきや……ちゃあんと持っておるのだな……」
 斧も、槍も。
 通はそれに応えず、武者の腹を貫いた手を刀の形へ変えながらゆっくりと上げる。
「終わらせるぜ。言い遺すことはあるか、おっさん」
「……いや、ない。いたって満足だ。……ありがとうな、坊主」
 お前でよかった。
 その言葉を最後として、通は手刀を男の首へと一気に振り下ろした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『猿面武者』

POW   :    不見
レベル×1個の【陰火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    不言
予め【鉤爪を構えておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    不聞
自身が戦闘で瀕死になると【狐面や狸面を被った武者の亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は秋稲・霖です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●願い
 村落にて繰り広げられていた武者たちとの戦闘も収束しつつある。
 格上の戦闘能力を持つ猟兵たちに、亡霊武者たちはそれぞれ着実に撃破された。開戦時は村中に響く勢いで聞こえていた歌声も、今はない。戦いの後の静寂が染み渡りつつある。
 猟兵たちは演習場として使われていた村の開けた場所に集結しつつあった。

「おーおー……いい声で歌ってやがったのによぉ。もうくたばっちまいやがったか。果報者どもめ」

 重い声。
 死した仲間たちへの感傷。死せる喜び。戦いへの高揚。猟兵への感謝と、憎しみ。
 混ざりあい泥のような重みを纏った声が、猟兵たちの耳に届く。

 いつの間にかそこには、妖気を纏う猿面の武者がいた。
 単身ただひとり。対して猟兵たちは集団。
 先程までの乱戦に比べれば、単純にして絶対な戦力差があるようにも思われる絵面。
 
 しかし猟兵たちは直感する。
 この男、猿面武者の強さは、亡霊武者たちの比ではない。
 突出して正面から挑めば力のみで叩き潰される。それほどの戦力をこの男は保有している……!

「まぁやることは変わらねぇさ。あいつらにやってくれたみたいに、な? 思い切りやってくれりゃあいい」

 ――俺もそうさせてもらう。

 猿面武者が鉤爪を構えた。
 猟兵たちに押し寄せる威圧感が、何倍にも膨れ上がる。

「さあさあさあ!!! 歌うぜ戦ろうぜ叫ぼうぜ!!!!!」

 お前らに殺されてよかったと!!
 心からそう思わせてくれ!!!!!!!

 懇願する戦鬼の咆哮が、戦いの号令となった。
ヴィルジール・エグマリヌ
君の悲願は聞き届けた
痛々しく、華々しく
命を懸けて斬り合おう

とはいえ真正面から斬り合って
直ぐ膝をついては君に失礼だ
仲間との連携意識する傍ら
遠慮なく搦手も使おうか

エレクトロレギオンで
機械達を猿面武者へと向かわせて
先ずは敵の動きや隙を
観察する時間を稼ごう

もし隙を見つけたら
その機に乗じて処刑用の剣で
一撃食らわせたいな
なるべく損傷の多い箇所を狙い
傷口を抉るような斬撃を

武者の亡霊が出て来たら
其方は戦闘機械に惹きつけさせよう
引き続き時間稼ぎを命じつつ
私は猿面武者本体に捨て身の一撃を

戦の花は矢張り斬り合いだろう?
自身の命を賭け金に
私もこうして勝負を仕掛けたんだ
介錯ではなく討取らせてよ
闘争の果てに、その首を


ライザー・ヴェロシティ
同じようにか、いいだろう
お前の首も頂くぜ!

「折角だ、名乗っとけよ。」
「これから手に入れる首の名前くらい知っときたいだろ?」
「我こそはギスガーン最強の戦士!ライザー・ヴェロシティ!」
「いざ、尋常に!」


あえて正面から挑む!
今回も二刀流の近接だが
体に纏う暴風を【黒風鎧装】で更に強化して相手の力に対抗するぞ
(真の姿:全身の装備ごと魔人化。シルエットはそのままに異形と化します)

真正面から挑むのは敵の注意をひきつけて味方の攻撃を通すためだ
"聞き耳"の技能で味方の位置を把握しながら戦って攻撃を通しやすい位置取りを狙うぜ
「っは!目を離すとはつれねぇな!」

真の姿含めアドリブや連携は歓迎だ


「敵将、討ち取ったり!」


ルフトゥ・カメリア
はッ、上等だ!
戦場を求める奴らに祈りなんざ相応しくねぇ。祈られなくたって自ら道を選ぶ奴に祈りは要らねぇ
この天使サマが、彼奴らと同じく力尽くで骸の海に叩き返してやるよ!
笑って死んでけ!

花の嵐を目眩しに、身を低くして突っ込む【フェイント、だまし討ち】
元より炎は自前だ。【鎧砕き、怪力、2回攻撃、破魔】を叩き込み、祭りのように華やかに!
【第六感】で敵の思考と軌道を読み、【武器受け、オーラ防御、カウンター】で返す刀
ロープ状にしたNova.で足元も狙う【ロープワーク】
翼の付け根から噴き出す炎をブースター代わりに、より速く踏み込み、力強く駆け抜ける

武人が求めた最期なら、こっちも力の限り戦わなきゃ嘘だろうよ!



●激突
 声を張り上げた猿面武者の前に並び立つは三人の剣士。ライザー、ルフトゥ、ヴィルジールである。
 ライザーはルーンソードと黒剣の二刀を、ルフトゥは十字架に模されたバスタードソードを、ヴィルジールは切っ先の無い首切り剣・エクスキューショナーズソードをそれぞれ構えている。
「折角だ、名乗っとけよ」
「名前なんぞ忘れたよ。そんなもんが無くてもいくさはできる。そうだろ?」
 名乗りを求めるライザー、不要と断じる猿面武者。
 オブリビオンとして転生した際に、彼から見て不要なものはすべて置き去ってきたのかもしれない。
「じゃあ勝手に名乗らせてもらうぜ。――我こそはギスガーン最強の戦士! ライザー・ヴェロシティ!」
「ほう、最強ねぇ! そそる自己紹介じゃねぇか!」
「ああ、後悔はさせねぇよ。――では、いざ尋常に!」
 ライザーが身体に風を纏って駆け出したのと同時に、ルフトゥとヴィルジールも続く。ヴィルジールは自身のエレクトロレギオンを斥候として先行させる。
 ルフトゥは鋼の剣をネモフィラの花弁へと変え、蝶の群れを操るように猿面武者へと差し向けた。
「目くらまし、数押し! いいぞ、それでいい! 使えるものは使ってこい!!」
 視界を覆いにかかる花の嵐を気にした様子もなく、猿面武者は身体を捻じってぐるんと“回った”。
 瞬間、竜巻のような驚異の風力が生まれ、ルフトゥの花弁が勢いに負けて吹き飛ばされてしまう。その上、猿面武者に接近していたヴィルジールのエレクトロレギオンが数機、ダメージを受けたのか巻き込まれて消滅した。
 ヴィルジールはライザーと同様に風の力を行使するオブリビオンなのかと推察したが、そうではないとすぐに思い至る。
 あれは単に「すごい勢いでぐるりと回った」だけだ。
 そして二尺ほどもある両の手の鉤爪が、接近したレギオンに「軽く当たった」だけ。
(身体能力だけであの勢いか……すごいな)
 分析していたヴィルジールは内心感嘆する。
 吹き飛ばされた花弁をすぐさま剣に戻すルフトゥ。レギオンを砕いた猿面武者にライザーとルフトゥの二人が接近する。
 二人の剣には万象を焼き焦がす地獄の炎と、あらゆるものを呑み込む暴風が宿っている。
 炎と風。異なる力の奔流が混ざり合い、振り下ろされる剣とともに猿面武者へと襲い掛かる――!
「おおおおおッ!!!」
「オラァァッ!!!」
「ぐゥゥゥッ!!」
 咆哮とともに打ち下ろされた二人の斬撃を鉤爪にて何とか受け止めてみせる猿面武者。しかし質量なき牙は受けること敵わず、ネモフィラ色の炎をのせた暴風は、渦となって猿面武者の全身を包み込む。
 暴風が甲冑の隙間から肌を削り、炎の熱がじわじわと猿面武者の身体を蝕んでいく。
「オラオラ、どうした! もう劣勢かよ!?」
 剛力にてバスタードソードを押し込むと、一瞬だけ鉤爪から刃を離して、駄目押しの二撃目を入れるルフトゥ。背中の翼が増速器のように炎を噴き出し、剣の圧を底上げする。鉤爪が悲鳴をあげるようにぎちぎちと軋んだ。
「ハッ……! ほざいてくれるなよ、まだまだこれからだ小僧ッ!!」
 早くも追い込まれたように見えた猿面武者だが、そう言うと先ほどのように「ぐるん」と回転してみせる。だが先ほどよりも力任せで、裂帛の気合が込められた、嵐のような舞だった。
 押し込まれていた剣を強引に弾き返してみせる猿面武者。衝撃を受けた二人は勢いに負けて後退させられるが、ひるんだ様子はない。ルフトゥは嬉し気に口角を吊り上げる。
「はッ、上等だ! そうでなくちゃあなァ!」
 手応えのある敵に喜びを感じていたのはライザーも同様だった。出し惜しみは無用だと、一節の呪文を唱える。すると剣の一振りに刻まれたルーンがぼう、と黒く発光して、ライザーの身体を“黒い暴風”が包み始める。
 風の魔力を身体に纏うのは今までと同じ。異なるのは風の色と、その質だった。やがて風に滲む漆黒はライザーの身体そのものを塗り潰すように装備と肉体に馴染み始める。
 ライザーが地を蹴った。早い。今までとは比べ物にならないほどに!
「オイオイお仲間かよ……!! 怖くて怖くてちびりそうだぜ!!」
 漆黒の風の禍々しさにオブリビオンに近しいものを感じたのか、軽口を吐くもののその声には喜色と高揚しかない。猿面武者はライザーの乱打による猛攻を受け止めながらも、徐々に攻撃の手数を増やしている。
「――っとォ!」
 攻防の合間、銀色の蛇のようなものが猿面武者の足元を襲ったが、気配を感じ取ったのか片脚を上げて回避してみせる。その正体はルフトゥの使い魔、流動金属型生物である。
「チッ! きっちり見てやがる」
 ライザーの加勢に向かうルフトゥ。先ほどと同じような構図になったが、今度は猿面武者の調子が徐々に上がってきているのか、二人の攻撃を堅実に防御しながら有効打を着実に入れつつあった。俊敏に走る鉤爪が、ライザーとルフトゥの身体に負債を刻んでいく。
「やっと身体が温まってきやがった……!! どうしたぁ、威勢がいいのは最初だけかぁ!?」
 意趣返しとばかりに煽ってみせる猿面武者だが、ふいに猿面武者の背後からさらなる加勢が迫りつつあった。様子見していたヴィルジールのエレクトロレギオンである。
 鋸に似た白兵武器を取り出すと、敵将を討たんと押し掛ける足軽のように猿面武者へと突っ込んでいく。
「蟻ん子どもが!! 何度来ても同じだ!!」
 舞の予備動作を見せる猿面武者。二度見せた回転攻撃を再び放とうと身体を捻る。
 が、しかし。
「ッ!!」
 猿面武者の足を狙って閃く剣光。
 レギオンを囮にした上で気配を消していたヴィルジールの首切り剣が、猿面武者の肉ごと、技のために蓄えられた力を完全に殺してみせた。
「戦の花は矢張り斬り合いだろう? 人形劇ばかりではね」
 リスクを承知で前へ出たヴィルジールに、猿面武者が何か応えようとしたところで、
「っは! 目を離すとはつれねぇな!」
 失速した隙を見逃さないとばかりに、黒い風を纏ったライザーのルーンソードが、甲冑ごと猿面武者の身体を斬り裂いた。
「グァァァッ!!」
 甲冑の硬度をものともしない必殺の斬撃に猿面武者が悶えると、突如体勢を崩して地面に勢いよく転がる。
 その足にはにょろにょろと流動する、蛇のような銀色が絡み付いている。
「今度はきれいに嵌まってくれたな」
 使い魔を操作したルフトゥがにやりと笑う。
 ヴィルジールが首切り刀を振り上げると、猿面を見据え、落ち着いた声音で語り掛けた。
「私もこうして勝負を仕掛けたんだ。――討ち取らせてもらうよ」
 首に向け刃が吸い込まれる。

「――そりゃあ別にいいんだがよ」

 動揺や混乱を一切見せない、低い声だった。

「まだ早ぇ!!」
 首切りの軌道途中で猿面武者が起き上がる。兜に罅を入れながら、ヴィルジールの剣を額で受け止めてみせた。
 不意の防御で生まれたヴィルジールの隙を見逃さず、猿面武者は全身の発条を使って勢いよく起き上がる。
「ッ!!」
 ヴィルジールの横腹へ猿面武者の回し蹴りが放たれた。硬い脛当てがヴィルジールの身体を叩き、吹き飛ばされるものの、咄嗟にレギオンを間に入れて防御したため直撃は喰らわなかった。だが、身体の芯にじんと重い感覚が残る。
 起き上がった猿面武者の前面と背後から挟むように、斬撃を放つライザーとルフトゥ。しかし、猿面武者はぐっと足腰に力を入れてましらのように高く跳び上がってみせると、三人から五間ほど離れた場所へ軽々と着地した。
「いい連携だったが……まだだろ。まだまだだろ。これで終っちゃ勿体ねぇだろ!!」
 吠える猿面武者。
 砕けた胴が示すように、ダメージは確実にあるはずだが、身体から放たれる覇気はいまだ衰えない。
「……やっぱり、これぐらいじゃやらせてもらえないか」
 半ば結果が分かっていたという風に、立ち上がりながらヴィルジールが呟く。
「上等じゃねぇか。それでこそあの武者どもの親玉だ」
 ルフトゥがバスタードソードの切っ先を猿面武者へと向ける。灼滅の天使もまた吠えた。
「この天使サマが、彼奴らと同じく力尽くで骸の海に叩き返してやるよ! 笑って死んでけ!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

花盛・乙女
【リリィ・オディビエントと共同戦線を張る】

貴様は彼奴らの救いの手立てを作った。感謝したい。
だが言葉で感謝というのも貴様には無作法だな。
そうさな…我らの剣戟を持って貴様への感謝としようか。

リリィ殿の騎士道と私のそれとは異なろう。
なれば愚直な羅刹女の剣、真の髄まで披露しよう。

『ジャンプ』の脚力を前進するバネとする。
猿面の全ての攻撃を刀で受ける。隙を突き【雀蜂】を見舞う。
安心しろ、私達は壊れん。悔いなど残さぬよう出し切って果てるがいい。

リリィ殿と連携し、点ではなく面で剣戟を舞おう。
だがこれは共闘であり競争、彼奴めの首を獲った方が勝者のな。

…ふふ。すまんな、猿面の。
今私は楽しくて楽しくて仕方がないぞ!


リリィ・オディビエント
【花盛・乙女と同行。共同戦線を張る】

死へと急ぐ武者か
守ることを何よりとする私からすれば愚かだが、曲げられぬ心情というのも理解できる
いいだろう、騎士リリィの名の下に引導を渡してくれる

ほう、腕前を競うか
なるほど共同でありライバルでもある
いいだろう私の剣を見せてやろう!

鎧を着こみ剣と盾の重装備で赴く
【剣受け】と【盾受け】を駆使することで守りを固める、隙を突いて剣撃やバッシュでカウンターをするのが基本戦術だ

そこへ、乙女と共に並ぶことで制圧力を高める
二人同時に攻めれば拮抗するはずだ
だが相手は強者、UCを使うことで強化を図り食らい付いてみせよう

「見事だな乙女、あなたとも手合わせしたいものだ。」

アドリブ歓迎



●剣と盾
「どうせ死ぬならァァァ……っとォッ!!」
 歌声を交えながらの猛攻。 
 打刀六振りぶんの刃を両手に備えた猿面武者が、打ち、斬り、裂き、ときには抉る。熟達した手腕によって得物の凶悪さを遺憾なく発揮しながら、目前の猟兵ふたりを容赦なく攻め立てている――が。
 見た目に表れている凶悪さほど、乙女とその相棒、リリィ・オディビエントを追い詰めることはできていなかった。
「いぃーくさで猛って……って、全然当たってねぇなぁオイ」
「当然だ。そのような攻撃を食らってやる方が難しい」
「ふん、言ってくれやがる!」
 ガィン、と鈍い金属音。リリィの大盾が鉤爪を受け止めた。
 猿面武者は手数こそ多いが、先ほどから鉤爪が当たっているのは二人の得物のみ。そしてそれらのほとんどはリリィの剣と大盾だ。乙女へ向けられる攻撃もカバーして余りあるほど、リリィの防壁は柔軟にして強固だった。
「どうした猿面の。まさかこの程度が限界だとは言うまいな?」
 唇に弧を描いて乙女が挑発する。表情の見えない猿面の下からクッ、と声が漏れた。
「見え透いてるが……いいだろう、乗ってやる。大口叩いといて簡単にくたばるなよ?」
「安心しろ、私達は壊れん。悔いなど残さぬよう出し切って果てるがいい」
「お優しいこったなァ! じゃあこっからは本気だッ!!」
「――!!」
 言うやいなや、猿面武者の両腕の回転が加速した。
 目にも留まらぬ勢いで、斬り、薙ぎ、裂き、斬り、薙ぐ! 薙ぐッ!!
 先ほどまではリリィが余力を持って受け止めることができていた攻撃が、より早く、より重く、より軌道が複雑になっていく。
 受けに徹するだけの姿勢では間に合わず、リリィのカバーを逃れた凶刃が、乙女の身体へと届かんとしていた――。
「おっと、それは困るな」
「――ッ!?」
 そこでリリィが“攻勢”に出る。
 忙しなく動いていた鉤爪が跳ねた。否、弾き飛ばされた。
 リリィの白銀の大盾による攻勢防御、シールドバッシュである。刃を受け止める“ついでに”全身の発条を使った一打を入れ、鉤爪を弾き飛ばした。もし猿面武者の武器が手持ちであれば、その勢いのまま取り落としていたかもしれない。
 装着する鉤爪ゆえにその難は逃れたが、しかし大きな隙ができた。この好機を見逃す二人ではない。
「乙女ッ!」
「承知ッ!!」
 リリィの声に応じて乙女は脚の筋肉に力を漲らせると、全力で地を蹴り猿面武者へと肉薄し、【黒椿】にて大袈裟の一刃を入れる。すでに砕けていた甲冑の胴に刃が侵入し、どろっとした黒い液体が猿面武者の胸より噴き出してくる。
「グ――フゥッ!!?」
 そして重ねることさらに二撃。【黒椿】を握ったこぶしにて、腹部目掛けて強烈な突きを撃ち放つ。
 一斬二打を一とする、これが花盛・乙女の我流実戦術。
「一撃を避けぬ者には二撃が待つ――“雀蜂”だ。覚えておくが良い」
 言い放つ乙女が二刀を構え直す。人であれば致命十二分の傷を与えたつもりだが、この程度で目前の男が果てるなどとは毛頭思っていない。
 ふらつき後ろによたよたと下がる猿面武者だが、ふいに足がぴたりと止まると、急に肩を震わせ身体を揺らし始めた。笑っているのだ。
「ふふ――ふふふふ!! 悪い悪い、見縊っていたな!! まだまだ気持ちに緩みがあったらしい!!」
 猿面の下から血が垂れた。
 間違いなく深手を負っているが、戦意に衰えはまったく見られない。
「次は反撃の隙も与えん!! 死んだと気付く前に刻み散らしてやろう!!」
 ふたたび二人に襲い掛かる猿面武者。
 負傷ゆえか発する凄味がどこか増したようにも思えたが、対する二人とてまったく怯んではいない。
「そうだな――リリィ殿、我らも攻勢に出るとしよう。守りも大事だが攻めねば首は獲れぬ。彼奴めの首を先に獲った方が勝ち、では如何か?」
「ほう……腕前を競うか、いいだろう。騎士リリィの名の下に、私の剣で引導を渡してくれる」
 その会話をきっかけとして、二人の戦闘が変わった。防御に注意を払いつつも、多少の傷を恐れず、積極的に猿面武者へ攻撃を加えるようになる。
 二人の苛烈な攻めに呼応するように猿面武者の手数もさらに増え、三人から流れる血も多くなっていく。
「……ふふ。すまんな、猿面の。今私は、楽しくて楽しくて仕方がないぞ!」
「謝るんじゃあねぇ――そりゃあこっちも同じだ!! ハハハッ!!」
 それでも笑う二人の戦鬼。
 ――あなたとも手合わせしてみたいものだ。
 頼もしくも鬼気迫る乙女の凄まじい剣捌きを目の当たりにして、リリィは胸中でそう呟いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雷陣・通
やっべーな、こいつは強敵だ
でも、気になることがあるんだよな
だから飛び込むぜ

味方の体勢を整える用意と質問を聞くために使うのは
「前羽の構え」
徹底的な超防御スタイル
守りに徹しないと、多分聞くことも聞けない

「なあ? お前、さっき歌ってやがるって言ってたよな? 歌うぜ? って言ってたよな?」
「お前にとって……歌ってなんだ? この戦いが戦場の音が戦場音楽って言いたいのか?」
「じゃあ、俺も歌ってやるよ歌って言うのは可能性を二つ重ねて欠けたものを補うって書くんだからな」

UC解除後、見切り、カウンター、二回攻撃、鎧無視攻撃の正拳突き二発
「これが今、俺が出来る歌だ」


上野・修介
【POW】
同士討ちを避け、味方の攻撃の間断を縫うようヒット&ウェイ。

半端な間合いに居つかず、突っ込む時は相手の膝より低く『ダッシュ』で一気に懐まで間合いを詰め、後退時は全体の動きが分かる位置へ。
狙いは足。当てることを重視。少しでも確実に削る。

・敵UC対策
接近時に左右への『フェント』で狙い付け辛くし、被弾率を下げる。
だが被弾は『覚悟』の上。

・自UC
先の戦闘と幾多の突撃でこちらの動きと呼吸は見切られるだろう。
構わない。
むしろ完璧に読ませ、鉤爪での迎撃を誘う。
低い位置への攻撃に対して迎撃のため下がってきた頭の『顎への「捨て身」のアッパー(布石)』からの『フロントスープレックス(本命打)』で仕留める。



●二つの拳
「なあ、お前。さっき歌ってやがるって言ってたよな? 歌うぜ、って言ってたよな?」
 修介と連携して前衛で白兵戦を演じていた通が、ふいに猿面武者へと問い掛けた。
 鉤爪を捌きながらも口を開く余裕があるのは、空手道における鉄壁の防御態勢、前羽の構えによる恩恵が大きい。
 敵の注意を引くという戦術的な理由もあったが、通は本心から気になっていた疑問を口にした。
「お前にとって……歌ってなんだ? この戦いが、戦場の音が、戦場音楽って言いたいのか?」
「――さぁな。自分で声出してる分には深く考えたことなんて無ぇけどよ」
 少年の肌を裂かんと走る鉤爪。回し受けて軌道を逸らす通。
「ただ……怒号やら悲鳴、種子島の音が馬鹿うるさく響く中でよ。
 仲間の歌を聞きながら逝けたら、幸せなんじゃねぇかってな。
 ……あいつらに歌えって言ったのは、そんな下らねぇ思い付きだ」
 跳びながら猿面武者が鉤爪を振るうと、その後に渾身の蹴りが続く。こちらが本命だ。
 屈んで鉤爪をやり過ごし、小さな体躯に刺さる具足の蹴打を両腕のガードにて受け止める。瞬間、全身の筋肉を蠕動させることで、衝撃を頭頂・足指の先まで分散させた。
「……そうか。じゃあ、俺も歌ってやるよ」
「ああ?」
 絶え間なく続く攻防の中で、疑問の声がこぼれる。
「お前が逝く時にも、聞こえてた方がいいだろ?」
 何度目かの鉤爪の受け流しの後、そこで通は構えを解いた。
 腰を入れた超高速の二連撃。鉄の拳が甲冑をものともせず、猿面武者への身体へと抉り突き刺さる。
「グゥ……ッ!!」
「――これが今、俺が出来る歌だ」
 歌という字は、二つ重ねて欠けたものを補うと書く。
 すでに猿面武者へ歌を届ける仲間たちはいない。
 ならばここにいる己がせめて、音を奏でてみせようと。
 ――歌声ではなく、亡霊を葬る必殺の拳にて。
「……そうかい。それじゃあ精々声高に歌ってみせろ!!」
 戦場に吹く血風が、二人分の“歌”を彩っていく。

 通が注意を引きつつ猿面武者の猛攻を受け止めている傍らで、修介もまた有効打を入れんと機を探っていた。
 忙しなく踊る両足へと狙いを定めていたが、猿面武者は目前の通へ鉤爪の連撃を続けつつも、足先に至るまで全身に隙がない。さらに猿面武者の周囲には、燃え滾る炎でありながら暗い輝きを放つ“陰火”が無数に浮遊している。明らかに修介を警戒して布陣したものだった。
 辛い城構えだが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。
 危険を覚悟で猿面武者へ肉薄する修介。撃退せんと襲い掛かる陰火を走り寄りつつのサイドステップで左右に躱す。多少肌を焼かれたが軽減はできただろう。
 接近した勢いのまま蹴りを放ち、脛当てをローで叩く。
「ぐッ!!」
 猿面からこぼれる苦悶、即座に薙がれる鉤爪の反撃。
 修介は深追いせず後方へ下がって避けてみせると、再び陰火の中へと突っ込んでローで叩く。通の攻撃に両腕のリソースが割かれている隙に、ヒット&アウェイで片脚にダメージを蓄積させていく。
「いやらしい野郎だなぁオイ……!」
「こっちも身体焦がしながらやってるんだ、楽してる訳じゃないぜ」
 接近と後退を繰り返すために修介の身体にもまた炎熱によるダメージはあったが、回数を重ねるごとに陰火の動作に目が慣れていっている。二回目以降の接近では口にするほど焼かれてはいなかった。
 だが、動作に慣れるのは敵もまた同じ。
 修介の接近の際、猿面武者は脛当てが砕けつつある片脚を小さく動かして躱すようになった。
 足への攻撃を潮時と見た修介は、上半身への攻撃にスイッチする。視線の向かう先から狙いが変わったことを察知した猿面武者は、通を蹴り飛ばし距離をとらせ、鉤爪での迎撃を試みる。
 懐に入った修介からも、カウンターのアッパーブローが放たれた。すれ違う両者の攻撃。
 結果としてアッパーは猿面の下部を砕き、鉤爪の刃は修介の左上腕を斬り裂いた。
 スープレックスによる追撃を目論んでいた修介だが、腕の傷による不発を懸念し、ふたたび後方へと下がる。
「じわじわと来やがるな……馴染みのないやり方だが、効く」
 突撃一辺倒の彼らからすれば、搦め手の体術で迫る修介は新鮮に映るのか。
 猿面をずらして黒い血の混ざった唾を吐くと、淡々と感想を述べる。
「アンタにも技が効くようで安心したよ。――だが、本番はここからだ」
「へぇ、そりゃあ胸が躍るな。がっかりさせんなよ!」
 通と視線を交わし頷きあうと、二人は息を合わせ同時に猿面武者へと突っ込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナナ・モーリオン
……楽しそう、だね。
でも、あなたはそれでいいんだろうな。

罪への対価。報復の刃。『追跡』し、『串刺し』にする、あなたに向けられた殺意と戦意の『呪詛』の炎(※呪いの類なので『鎧無視攻撃』も乗せる)。
……けど、もしかしたらこの子たちは、あなたと一緒に楽しみたいだけなのかもね。
相対し、共に戦い、そして先に逝った人たちの残り火たち。
もう一度一緒に戯れ、そして一緒に逝くといいよ。
……きっと、それがこの人たちも、あなたも望んだこと。そうなんだよね?

悔いの無い、未練の無い戦いを。
それが、あなたの最期の望みなら……ボクは、それに応えよう。


音羽・浄雲
※アドリブ歓迎

「皆良い顔で逝きましたね……」
浄雲には彼らが何故戦って果てたいのかは分からなかった。
刀折れ矢尽きるまで抗った果てに愛するものを殺しつくされ、全てを焼かれた彼女には彼らの言う誉れや誇りというものがてんで理解できないのだ。

「しかし何故でしょうか、やはり貴方達はどこか重なります……。復讐の為にこそあらんとしたこの命ですが、貴方の為になら燃やしてもいいかもしれませんね」
再びを印を結ぶ浄雲。
唱うるは己が命を薪と焼べ、憤怒の劫火に身を焦がす――音羽忍法【鬼火】。

「最期の舞を楽しんでください。我が敵だけを焼く猛火にて、貴方の大願は果されましょう」
怒りを燃料とする劫火を、慈愛を持って解き放った。



●炎
「グ、ゥゥゥッ……!!!」
 猿面武者を蝕むふたつの炎。
 ひとつ、浄雲が呼び出した音羽の怨念、己が敵のみを焼き尽くす憤怒の炎。
 ひとつ、ナナが呼び出した呪詛、死人たちの殺意と戦意からなる黒刃の炎。
 浄雲の青白い炎は猿面武者を周囲の陰火ごと包んで全身を焦がしている。ナナの黒い刃は、正面から猿面武者を貫かんと放たれ、猿面武者の鉤爪によって防ぎ止められている。……が、完全には防御できておらず、鉤爪から伝わる呪いの熱が、じわじわと装着している両腕を内側から沸騰させている。
 窮地に立たされた猿面武者は、黒刃を弾き飛ばそうと力を振り絞っているが、何故かまったく歯が立っていない。陰火も出せるだけ出して浄雲の青い炎へ抵抗を試みているが、明らかに火力負けしており、多少の熱を軽減する程度が関の山であった。
「何ッ、だお前らのこれは……!!」
 相性の悪さ。
 猿面武者は生前得た豊富な戦場経験からその要因に思い至ったが、理由までは察することができない。
 人ならざる身、オブリビオンとなった今では、燃え盛る炎もさして恐れるものでは無くなっていた――が、それは尋常から発生した炎であること、という前提付きである。
 つまりこれら猟兵の炎は“そうではない”。オブリビオンを屠る超常能力、ユーベルコードであることを差し引いても、猿面武者の身を焦がす熱の凄まじさは明らかに異常なのだ……!
「これは罪への対価。報復の刃」
 猿面武者の問いに対し、槍状の黒炎を手に持つナナが、透き通った声音で答えを発した。
「罪ィ……!? 報復ぅ……!?」
「あなたと相対し、共に戦い――そして先に逝った人たちの残り火たち。
 あなたに向けられた殺意と戦意の、呪詛の炎」
「――!!」
 それで猿面武者は得心がいった。
 熱いはずだ、強烈なはずだ。
 この黒い炎は、己の今までの“すべて”といってもいい。
 心焦がす熱い戦場、そこにいた戦士たちの怒り、憎しみ――後悔。
 己に向けられていた感情、それらすべての結晶なのだ……!
「もう一度一緒に戯れ、そして一緒に逝くといいよ。……きっと、それがこの人たちも、あなたも望んだこと」
「……なるほどな。そりゃあ……くそ熱いわけだ」
 痛みを通り越して笑えてくる。納得とともに、何故かこみ上げてくるものが猿面武者の中にあったが、それを殺してもう一人の方へと視線を向けた。浄雲が口を開く。
「……この炎はわたくしの命を薪として燃える、憤怒の劫火でございます」
「命――」
 二人には見えないが、猿面の下で男が瞠目していた。
 いくさに懸ける心情としては、猿面武者もいつだって命を燃やしていたつもりだ。
 戦場とは己のすべてなのだから。
 だがこの娘は――実際に命を投げ捨ててまで、己を葬るだけの炎を焚いているというのか……!
「何故だ、何故そうしてまで俺を討たんとする」
 こともなげに壮絶な仕掛けを打ち明けた浄雲に臆した訳ではない。 
 純粋に戦いに臨むものとして、その身の投げ打ちぶりに心からの興味を覚えたのだ。
 問い掛ける猿面武者に、浄雲が唇に弧を描いて穏やかに答えてみせた。
「何故でしょうか――貴方の為になら、燃やしてもいいかと思えたのです」
「――」
 捨て身の覚悟が生まれ出でた源泉、浄雲の心のうちに燻る思い。
 愛する者を殺し尽くされた果てに覚えた憤怒と、猿面武者に重ね抱く仲間たちの姿を、オブリビオンが知る由もない。
 ただ、その言葉に嘘がないことだけを、転生してもわずかに残っていた人間の本能で理解した。
「……そうかい。こんなろくでなしのために燃やしてくれてありがとよ」
 神妙に礼を告げる猿面武者に、浄雲は劫火で焼くことを続けながらも、心からの慈愛から微笑んでみせた。
「お話は終わりといたしましょう。最期の舞を楽しんでください。
 ――我が敵だけを焼く猛火にて、貴方の大願を果たして差し上げます」
 浄雲が印を結ぶと、猿面武者を包む青白い炎がさらに燃え上がった。そしてナナが一つに束ねていた黒炎の刃を分散させ、猿面武者の周囲へ均等に配置させる。一斉攻撃にて仕留める腹である。
「悔いの無い、未練の無い戦いを。それが、あなたの最期の望みなら……ボクは、それに応えよう」
 撃ち放たれる黒刃。
 猿面武者は今も青い劫火に焼かれているが、苦悶の声はすでになく、平然と佇むのみである。
「……まったく、いくさ狂い冥利に尽きるな。最期の最期でこんな気持ちを味わわせてくれるたぁ……」
 鉤爪を構える。肉を焼かれ続けた影響は甚大なはずだが、俊敏な動作は健在だ。
「――だがなぁ、簡単に火葬されてやる気は無ぇぞ!! てめぇらの命が尽きるまでその炎で焼いてみせろ!!」
 残る力と命を燃やせ。
 紅の甲冑が旋風となる。
 青い炎を巻き飛ばし、黒刃を鉤爪で打ち消して、猿面武者は踊り狂った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アオイ・ニューフィールド
※アドリブ、絡み歓迎
※面白い展開があればプレ遵守しなくて構いません

「戦闘狂い共が…自分たちで勝手に殺し合っていればいいものを」

基本は遠距離、物陰があるならそこを利用、無いなら敢えて姿を晒しての射撃
身を隠しながら象撃ち銃、一撃毎にソリを引きずり移動して敵の意識を一箇所に留めない
ランダムに数発に一度の割合で指定UCを打ち込ませて貰う

射撃のタイミングは敵が何かしら行動を起こすその時を狙う、好きに動かれるのは厄介極まりないだろう
こちらに目が向くならそれも良し。自動拳銃で抵抗を続け味方が動きやすい時間を作る
右手、左腹部、左足は取替可能だ、好きに持っていくが良い

所詮は老兵、やれることなどたかが知れている


ジン・エラー
はァ?嫌だね。
最初っからお前の願いなンざこれっぽっちも聞いちゃいねェ~のさ
あァ、だけどよ、
"お互い思い切りやる"っつゥーのは、賛成だ

【オレの救い】は骨身に染みるぜ
魂にすら刻ンでやるよ

そンなこと思わせねェーよ
"オレに救われてよかった"なら、思ってもいいぜ

サイッコーだろ


花剣・耀子
大親分のご登場ね。
やることが変わらないなら、気楽で良いわ。
ええ、存分に。
――いざ、尋常に。

突出すれば刈られると言っても、口火を切らなければ始まらないのよ。
踏み込み。布を解いて【剣刃一閃】。
膂力で押し合う事はせず、受け流す事を意識して。
亡霊も炎も、行く手を阻むなら斬り果たしてゆきましょう。
あたしが倒れても、他の猟兵に道が出来ればそれで良いわ。

死んだ事は無いけれど、死に損なったことくらいはあるわ。
すべての終わりが納得のいくものではないことだって、知っているのよ。
あたしもいま死んだら、かつてのお前達と同じ気持ちになるのでしょう。

だからこれは、黄泉路送りの手向け。
歌って笑って逝きなさい。

たのしかった?



●決着
「……フゥー……」
 深く息を吐く猿面武者。
 すでに先駆けた猟兵たちの手により満身創痍の身。甲冑のところどころが砕けて防具の用を成しておらず、乱戦の酷使に耐え切れなかったか、得物の鉤爪も何本かが欠けている。身体は傷を負っていない箇所の方が少なく、朱漆塗りの具足を流れ出でる血でさらに赤く黒く彩っていた。
 このまま動かずとて、三途の川へは遠くない――。
「……どうしたァ、“これから”がいいところだろうが!!」
 されどいまだ戦意軒昂。
 罅割れた猿面から充血した瞳を覗かせて、手負いの戦鬼ががなりたてる。
「くたばるのを待ってんならこっちから行くぞッ!!」
 痺れを切らし猟兵たちへ向けて猿面武者が駆け出したところで、低く重い音が響いた。
 何か、と考えを巡らせる間もなくそれは襲来する。
 猿面武者の左腕が赤い花を弾け咲かせ、消えた。
「――ッ!?!?」
 不意打ちが過ぎて痛みもやって来ない。あるのは腕を吹き飛ばされた衝撃だけ。
 体勢を崩すも立ち姿を保ってみせるのは戦士の意地か。ぼたぼたと肩口から体液をこぼしながら現状を分析する。
「大筒持ってきやがった馬鹿がいるのか……!?」
 大砲。さきほどの音、肉眼で認められぬ射手の姿、そしてこの威力。
 猿面武者の頭に残る生前の知識から導き出された答えだったが、事実とは異なっている。
 轟音の発生源は、戦場から少し離れた林の中だった。
「――残念。“種子島”だよ、猪武者」
 遠目から標的の反応を予想して独り言ちたのはアオイ・ニューフィールド。射手を探し出さんと周囲に目を配る猿面武者を、樹木の陰に隠れて観察している。
 身長四、五尺ほどの華奢な体躯の娘が地に寝そべって構えているのは、火縄銃などとは比べ物にならない破壊力を有する、UDCアースの文明が生み出した殲滅兵器。アオイの体重の何倍もの質量を持つ、超大型の対戦車ライフルである。
「やれやれ、戦闘狂いめが……自分たちで勝手に殺し合っていればいいものを」
 忌々しげに呟くと、ソリをひきずって移動し狙撃位置を変更。再び射撃姿勢を整えると、次弾の狙いを定める。こちらに気付いておらず、行動予測が比較的容易だった一度目よりは難度が上がるが、それでも援護射撃程度ならこなせるだろう。
 絶大な威力ゆえに仲間を巻き込むリスクも大きい。決着を急がず、機を待って再び一撃を見舞う。
 集中力を研ぎ澄ましたアオイの目が、鷹のように鋭くなっていく。

 一方で、射手の危険度を十分に認め狙撃を警戒しつつも、猿面武者は探すのを止めてしまっていた。
 何故か問われれば、時間がない。
 呑気に射手を追いかけ回しているうちに血を流し尽くして死ぬ、などという間抜けな結末は御免だ。
 そう、求めるのは――。
「血ィだらだら出てンぜェー。大丈夫かァー? 大丈夫じゃねェよなァー」
 虫の息の猿面武者をおかしげにけたけたと笑うジン。
 その隣には、残骸剣《フツノミタマ》の布を解いて構える耀子の姿があった。
「ずいぶん苦しそうだけど。どうする? もう楽にしてあげようか?」
 澄んだ声音で表情を変えず問い掛ける耀子。ハッ、と息を漏らす猿面武者。
 死にかけの男の燃える瞳が猟兵たちを正面から見据えると、ぼそぼそと短い呪文を一節、蚊の鳴くような声で唱える。
「――!!」 
 すると猿面武者の両脇に大きな陰火が現れ、燃える青い火の中から猿面武者に似た装いの男が二人、歩み出でてくる。
 ひとりは狐。もうひとりは狸の面。
 猿面武者が最後の力を振り絞って生み出した己の分身。
 あるいは哀れな戦鬼と同じ悔いを抱える、どこかの誰か。
 正体は判然としなかったが、生半可な気持ちを以って挑んではならない敵であるということだけは理解できた。
「笑えねぇ冗談言いやがるな……いいから、来いッ!!」
 覇気を失わない猿面武者に、ジンの目が三日月を形作った。マスクの下から笑いが漏れる。
「最初っからお前の願いなンざこれっぽっちも聞いちゃいねェ~けどよ。
 “お互い思い切りやる”っつゥーのは、賛成だ」
「――では、存分に」
 剣を低く構え駆け出す耀子に、“救済箱”を抱えたジンが続いた。仮面の武者三人が猟兵二人へと襲い掛かっていく。
 耀子は力押しを避け、敵の攻撃を受け流すことに徹する。数で負けている以上無理はできない――だが、それは決して防御にのみ甘んじている訳ではない。
 機会を待てば必ず脅威が武者たちを襲う。それはここにいる全員がすでに知っていることだ。
「おっとォ!」
 身の丈ほどもある“救済箱”で狸面武者の攻撃をジンが防ぐ。同時に、ぐっと押し返して武者の方へと圧をかけた。
 踏ん張り硬直する狸面武者へ、その一瞬を逃さず無慈悲な一撃が襲来する。
 仮面ごと頭が弾けて飛び、首無しとなった肢体は血を流すこともなく倒れて霧散した。
「良し」
 離れた林にてアオイが呟く。
 急ごしらえの三人隊が崩れてからは早かった。瀕死ながらも覇気を緩めない猿面武者だが、戦闘能力は明らかに減退しており、連れひとり伴っても猟兵ふたりを圧倒することはすでに敵わない。
 攻撃を耀子がいなし、ジンが牽制を加え、そして遠距離からアオイが仕留める。
 狸とほとんど同じ流れで狐がいなくなると、とうとう一人、猿面のみとなった。

「奥の手も早々にか……ったく、嫌になるなァ、オイ!」
 どさっと地面に座り込む猿面武者。
 精根尽き果てた。左腕はすでに無く、右腕に残る鉤爪も一本のみ。
 陰火を出す力も、身体から流す血も――もはや立ち上がる力すら、男の身体には残っていない。
 だが、満足だった。
 望んだままに満たされた。悔いひとつ残らない爽やかさが、男の胸中には広がっていた。
「――くたばる前に礼を言っとくか。ありがとうな、猟兵ども」
「まだ早ェーよ。まだお前は救われてねェ」
 ジンの身体から聖者の光が放たれ始める。
 それはどこまでも傲慢で不遜な、唯一無二の救いの光。
 哀れな男を葬らんと、ジンの身体に慈悲の力が染み渡っていく。
「徹底的にやってやる。お前がまた蘇らねェーぐらいにな。
 オレの救いは骨身に染みるぜ? “帰ってくるんじゃねェ”って魂に刻ンでやるよ」
「ハハッ、そいつは恐ろしいな!」
 ジンの光が掌へと集束する。耀子もまた、フツノミタマを猿面武者の首に向け構えた。
 これは、黄泉路送りの手向け。
 黄泉に向かう途中でも、仲間たちと歌って笑いながら逝くといい。

「ねぇ」
 訪れる最期の前。
 安らかに瞑目しその時を待つ男に、耀子が声をかける。

「たのしかった?」

 ――その問いには応えず、ただ笑みをより深くして。
 猿面武者は身体を霧散させ、黄泉路へと旅立っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『修練』

POW   :    滝に打たれる、巨大な岩を持ち上げる、素手で岩山を登る、湖で泳ぎまくる、訓練用木人を殴りまくる、など。

SPD   :    馬と競争する、隠密行動の練習、素早い鳥や動物を狩る、訓練用木人に次々素早く攻撃しまくる、など。

WIZ   :    戦いのイメージトレーニング、瞑想、ユーベルコードの研究、訓練用木人に魔法をぶつけまくる、など。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●歌の後
 廃村は静けさを取り戻していた。
 武者集団がいなくなった今、この村に猟兵たち以外の人間は存在しない。
 吠え、歌い、戦い、そして逝った彼らの痕跡はすべて消え失せていた。
 流した血の一滴さえも。

 帰るまではどう過ごそうと自由だ。
 ひたすら木人を叩くのもいい。
 無心で滝に打たれるのもいい。
 落ち着ける場所で先の戦いを振り返るのもいい。
 相手がいるなら試し合いを挑んでみるのもいいだろう。

 強くあれば道は増える。
 人はいつ最期を迎えるかわからない。
 ――無念を残して逝くことのないように。
 備えるべきを、備えよう。
上野・修介
※絡み歓迎
【POW】
先ずは木人をひたすらぶっ叩きつつ、反省点の洗い出しから。
「落人相手はまあまあってところだったが、猿面相手ん時だ」
「決め狙いに行っといて、日和って掴み損ねた」
そこが一番悔やまれる。組み立てが甘い。詰めが甘い。
「ああ、畜生」

一通り反省が済んだら、他の猟兵を手合わせ願う。
「そういえば、かなりの空手家がいたなぁ」
もし流派を聞かれたら
「ああ、言うなればアレだ。『路地裏素手喧嘩(ステゴロ)流』ってところですかね」



●練磨
 一撃、二撃、三撃。
 殴り、叩き、蹴る。
 修練場の木人形は、練達の武人による木剣の打撃にも耐えうるよう丈夫に作られているはずだが、鍛え込まれた修介の打撃に何とも頼りない軋みをあげている。
 猟兵の殴打による威力は、通常の凶器に勝って余りあるのだ。
(落人相手はまあまあってところだったが、猿面相手ん時だ)
 とめどなく仮想敵への攻撃を繰り返しながら、修介は頭の中で先の戦いの反省を行っていた。
(決め狙いに行っといて、日和って掴み損ねた)
 布石に入れたアッパーブローからの、本命のフロントスープレックス。
 先制打は上手くいったものの、対価としてつけられた腕の傷から本命への移行を断念した。捨て身の覚悟を以って挑んだにも関わらず。
 しかし猿面武者はあの時、まだ充分に余力があった。反撃を覚悟で攻勢に出ればより有効的な手傷を負わせられたかもしれないが、それと同等以上のダメージを修介自身も受けた可能性が高い。
 そうなると、個々の生命力で勝るオブリビオンに追い込まれる可能性が高くなる。理屈の上ではベターな選択だったはずだ。
 分かってはいるが、修介はひたすらに反省を繰り返していた。
 組み立ての甘さ。詰めの甘さ。
 技に持ち込むまでの流れが違えば。機が違えば。よりより結果を得られていただろうか。
 そこに至れなかったのは、己の未熟さゆえ。
(ああ、畜生)
 悔しさに歯噛みする。鬱屈した気持ちから拳の勢いがより一層強まった。木人形の表皮にわずかにひびが入る。
 この気持ちを発条としなければならない。
 反省は綿密に、だが時間が経てば前を向こう。
 そうすれば前よりも絶対に、強くなれるはずだから。
 
 木人形を叩く音が響く。
 その音は修介の反省が終わるまで、しばらく続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音羽・浄雲
※アドリブ、絡み歓迎
なるべく静かなところで瞑想を。

彼等の望みは戦いの果てに果てること。そのために生き、そのために死ぬ。
そしてそれが出来なかったが故に再び現世へ迷いでてまた死んだ。

「うぬらもあやつらの様な心持ちで戦っていたのか・・・?」
自身の周囲に舞う青白い火の玉たちに問いかけるが返事はない。

「ほとほと人間とは分からぬものよなあ・・・。誇りやら名誉やら妾には分からぬものばかり追いかけて、滅びて・・・馬鹿ばかりじゃ・・・」
此度の敵は不退転の決意とともにその血に呪いを刻み、化け狐へと零落したモノの心を揺さぶった。
それが吉となすか凶となすかは誰にもわからぬ事だが、浄雲の心は不思議と満ち足りていた。



●救い
 修練場から離れた林の中、浄雲が木陰の中に身を置いて瞑目していた。
 先の戦いにおいて己が屠った兵たち、死にたいと願っていくさに臨んだ亡霊武者たちに思いを巡らせている。
 戦場で死ねなかったゆえの後悔、慚愧。
 その強い執着が輪廻の道へ加わることを許さず、オブリビオンとして蘇り、そして本懐を遂げるために今一度いのちを散らせた。
 ……理屈は分かっても、浄雲は共感するには至らない。
 だが、彼らに近しい人間たちに覚えがあった。
「うぬらも、あやつらの様な心持ちで戦っていたのか……?」
 それは戦いの中では見せることのなかった言葉遣い。
 声をかけた先は、浄雲のそばにぼうと浮く、無数の青白い火の玉たち。無念の中で逝った音羽の者たちの霊魂――あるいは、ただの怨念である。
 狐火の群れは意思を感じさせず、風に浮く綿のようにただそこに在るだけ。浄雲の問い掛けに対しても反応を見せることはない。
 それでも構わず、浄雲は言葉を続ける。
「ほとほと人間とは分からぬものよなあ……。誇りやら名誉やら妾には分からぬものばかり追いかけて、滅びて……」
 わずかに潤んだ目を伏せて、哀しげに微笑む。
「――ほんとうに、馬鹿ばかりじゃ……」
 亡霊武者たちの姿が、かつての仲間たちに被って仕方がなかった。
 浄雲の目の前で散っていった彼らも、亡霊武者たちのような満たされた気持ちを、わずかでも抱えていたのだろうか。
 志半ばで滅ぼされ、身命を焦がす怨嗟を浄雲に託した彼らにも、一握りぐらいの救いはあったのだろうか――。
 問い掛けたところで、答えはない。
 化け狐を復讐鬼たらしめる青い怨念たちは、浄雲のそばに黙して付き従うのみだ。

 在りし日を想起させるいくさに心乱す狐の娘。
 無くして久しかった人としてのぬくもりが、浄雲の胸いっぱいに満たされていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルジール・エグマリヌ
強さは生者も亡者も救うのだね
せめて此の剣が届く範囲は守れるよう
私も腕を磨こうか

……ということで、アーノルド
手合わせをお願いしても良いかな?
得物は何でもいいので
斬り合いに付き合ってくれると嬉しい

純粋な殺陣は余り得意じゃないから
この機会にCanopusを
上手く振るえるように成りたいんだ
折角なら強そうな人に
剣筋を見て貰えたらと思って

私は余り力が無いので
技巧と手数で勝負をしよう
剣筋の素早さには少し自信があるよ

相手の攻撃はよく観察して
成る可く剣身で受け止めたい
ふふ、鍔迫り合いとか出来たら
きっと格好いいよね

勝利の女神がどちらに微笑んでも
真剣勝負は気持ちが良い
後は……そうだね
君も楽しんでくれたなら私は嬉しい



●剣二振り
 強くあれば時には亡者とて救うこともある。
 ならばせめて、此の剣が届く範囲は守れるよう――。
「……ということで、アーノルド。手合わせをお願いしても良いかな?」
「ああ、構わんぞ」
「純粋な殺陣は余り得意じゃないから、この機会に上手く振るえるように成りたいんだ」
 ヴィルジールは刀身に星図の煌めく処刑剣、Canopusを持ち上げてみせる。
「まぁ、場数こなすのが一番だからな……じゃあ、俺も剣にしとくか」
「いいよ、得物は任せた」
「素人芸に付き合って変な癖がついたりしなきゃいいが」
「ふふ、それもいい経験かな」
 アーノルドは修練場近くの物置から鍔付きの木刀を二振り持って来る。もっとも大きかった刃渡り四尺ほどのものと、Canopusに近い長さのもの。後者をヴィルジールに渡すと、何度か素振りして感触を確かめる。いいぞ、とヴィルジールに視線を送ると、二人は開けた場所に出てそれぞれ木刀を構えた。
 ヴィルジールは正眼に似た形。アーノルドは柄の大きさが合わず、片手でしか握れていない。
「……やはり勝手が違うな。ともかく来てくれ、俺も練習させてもらう」
「では、お言葉に甘えて。――行くよ」
 言うなりはやてのごとく迫るヴィルジール。大きく袈裟に斬らんとするのを身体を捻って避ける。迅い。
 右に握った一振りにて水平に薙ぐアーノルドだが、速度はあるものの太刀筋が雑だ。力に繊細さが伴っていない。軽やかに避けられてしまう。
「……さっきのは謙遜か?」
 己の稚拙さを差し引いても余裕の見える体捌きだった。
「今日は調子がいいみたいだね」
 疑念の声にヴィルジールが柔く微笑むと、再び斬撃が繰り出される。剣術に不慣れなアーノルドの隙を突く鋭い手をたびたび放ってくるが、一度受け止めてしまえば押し返すのに別段難はない。
 膂力はやや不足している。であれば、そこに勝機があるか。
 アーノルドは正面から押し込むように斬り付け、鍔迫り合いを挑む。ぎしぎしとへし合う二振りの剣。
 このまま押し込む、と、アーノルドの手に力が籠る。
 びきり。
「! おっと」
 ふいに違和感を覚え、反射的に後ろへ跳ぶアーノルド。
 木刀を見る。刀身の半ばあたりが砕け、ひびが入っていた。このまま圧を強めていたらそのままへし折れていただろう。
「力み過ぎたか……」
 慣れない得物は難しい、とアーノルドが両手をあげてみせる。降参ということらしい。
「勝ちを拾えた……ということでいいのかな?」
「この具合じゃ続けてもそのうち折れるだろうしな。潔く負けを認めるが吉だ」
 答えを聞いて構えを解く。緊張感がヴィルジールの身体から抜けていった。
「やはり真剣勝負は気持ちがいい。君も楽しんでくれたのなら幸いだよ」
「学ぶことが多く、有益ではあった……が、次やるなら斧だな」
 木製の斧があるといいが、と機械男の鋼の手指が欠けた木刀を撫でる。
 その言葉にヴィルジールは笑うと、手合わせありがとう、と優雅に一礼した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星鏡・べりる
よーこ(f12822)と一緒に

確かに前に言ったけどさぁ
わざわざこんなとこまで呼び出すぅ~?
もおー、来ちゃったから付き合うけど
絶対勝っておやつ奢らせるからね!

それらしいこと言って
久しぶりに戦ってみたいだけでしょ!

鎮圧用のゴム弾装填したハンドガンならあるから
よーこが木の枝使うなら、私はこれ使おうかな。
これなら、骨が折れる程度で済むからね!

お互いに一発入れたら勝ちってとこ?

さーて、距離を空けて撃っても叩き落とされるから
こっちから飛び込む!と見せかけて空中を蹴って方向転換!
撃って跳んで、跳ねて撃って、上下左右。

よーこも空を蹴れるようになれば、私の動き理解できるかもね?

※勝敗はどのような結果でもOKです


花剣・耀子
べりるちゃん(f12817)と一緒に

この前、手合わせしたいと言っていたでしょう。
ちょっと付き合って頂戴。
勝った方がおやつを奢る、で、どう?

あたしたちはどうしても市街戦の方が多くなるけれど、
現状の最大出力を知っておくことも必要なのよ。

あたしはその辺に落ちていた木の枝を使いましょう。
これくらいなら肉までしか斬れないわ。

ええ、一発勝負で。判り易く行きましょう。

べりるちゃんの動きは、ちょっと苦手なのよね。
びっくり箱みたい。
身内が一番予測しづらいのは、逆に幸いなのかしら。

でも、狙いはあたしだもの。
それはあたしの間合いに入るということ。
銃弾だって斬れるわよ。

……そうね。今度ご教授願おうかしら。

※勝敗お任せ



●土蜘蛛
「この前、手合わせしたいと言っていたでしょう。ちょっと付き合って頂戴」
「確かに前に言ったけどさぁ、わざわざこんなとこまで呼び出すぅ~?」
 修練場の敷地内で耀子の提案に口をとがらせているのは星鏡・べりる。この用件のためだけにはるばるサムライエンパイアまで呼び出されてしまったらしい。
「あたしたちはどうしても市街戦の方が多くなるけれど、現状の最大出力を知っておくことも必要なのよ」
「それらしいこと言ってー! 久しぶりに戦ってみたいだけでしょ!」
 にっこりと笑う耀子。
「勝った方がおやつを奢る、で、どう?」
「もおー! 来ちゃったから付き合うけど、絶対勝っておやつ奢らせるからね!」
「交渉成立ね」
 さらりとべりるの不満を受け流すと、木立に転がっている枝を吟味し始める耀子。木刀代わりに使える木の枝を探している。一方でべりるは自前のハンドガンに鎮圧用ゴム弾の入ったマガジンを装填していた。
 これなら当たっても骨が折れる程度で済むから問題ない。そう、問題ない。
「いいの見つかったー?」
「んー……そうね、これなら大丈夫そう」
 手頃な木の枝を見つけた耀子は、数回素振りして感覚を確かめる。満足げに頷いた。
 ――これくらいなら肉までしか斬れないわ。
 だから当たっても問題ない。そう、問題ないのだ。
「勝敗はどうする? お互いに一発入れたら勝ちってとこ?」
「ええ、一発勝負で。判り易く行きましょう」
 距離をおいて対峙する耀子とべりる。視線を合わせて微笑むと、どちらからともなく動き出す。
 銃と剣という相反する二つの武器を携える二人だが、銃を持つべりるは迷うことなく耀子へと向けて突っ込んでくる。
 間合いに入るのは好都合とゆらり木の枝を構える耀子。
 しかしべりるは進路の途中でたんと地面を蹴ると今度は空を蹴り、軽やかに身体を捻って方向転換。天地逆転した状態で耀子にゴム弾を連射する。
「――!」
 得物を構えたまま左に一歩、右に一歩と最低限の動作で回避する耀子。一発服の袖に掠りヂッと音が鳴ったが身体に当たってはいない。セーフである。
 べりるはその後も空中で跳んで跳ねてを繰り返す。右へ左へ、上へ下へ。跳躍の回数制限に達しかけると耀子からさらに距離をとって一度地面に降り、再び飛び立つ。
 トリッキーな動きで舞いながら、不安定な体勢で的確に射撃を撃ち込んでくる。
(べりるちゃんの動きは、ちょっと苦手なのよね……びっくり箱みたい)
 隙を探りながら襲来するゴム弾を寸でのところで躱し続ける耀子。
 苦手とする相手が身内なのは幸いか。敵として対したら厄介なことこの上ないだろう。
(でも、狙いはあたしだもの。それはあたしの間合いに入るということ)
 斬撃を警戒しある程度の距離を保っているべりるだが、そこも十分耀子の“射程範囲内”。
 機を逸さず仕掛ければ、確実に勝利の芽は存在する……!
「!」
 べりるがスカイステッパーの回数制限に達し地に降り立ったタイミングで、耀子が動いた。一直線、最短距離を駆け抜けてべりるへと接近する。
 だが真正面から迫る耀子はべりるから見てもいい的だ。しっかりと耀子の胴へ狙いを定めると、マガジンに残ったゴム弾をありったけ撃ち込んでいく。

 耀子が笑った。
 一直線に迫る耀子。
 迎え撃つべく、一直線に迫るゴム弾。

 なんて――“とらえやすい”。

 一閃、二閃、三閃。
 耀子の得物――木の枝が閃く。
 そのたびに高速で鞭が叩きつけられたような破裂音が、べりるの鼓膜を叩いた。
「ちょお――!?」
 べりるの顔が驚愕に歪む。
 耀子は手に握る頼りない木の枝を以って、迫り来るゴム弾をすべて“払い落とした”のだ。
 その代価で刀身が半分ほどになってしまったが、問題ではない。
「――はい、おわり」
 べしん。
 ふたたび空に飛び立とうとしたべりるの頭を、耀子が短くなった木の枝で封じた。
 チェックメイトである。

 戦いの後。
「あんなのあり~~!?」
「間合いに入れば斬れるわよ。銃弾だってね」
 こともなげに言ってのける耀子の顔を、べりるが納得のいっていない視線で刺してくる。
「でも、べりるちゃんもとっても戦いづらかったわよ。ぴょんぴょんって、斬らせてくれないんだから」
「あ、そ~お? ふふん、よーこも空を蹴れるようになれば、私の動き理解できるかもねー?」
「……そうね。今度ご教授願おうかしら」
 機嫌を直したべりるに、耀子は素直に微笑んで応じてみせた。
 が。
「それはそうと、奢り。忘れてないわよね?」
「うっ」
 上げてから落とす。
 肉体的な手傷は負わなかったが、懐には深いダメージを負ってしまったべりるなのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリィ・オディビエント
花盛・乙女と決闘を行う


いざ、尋常に!

警戒に値するのは【雀鉢】
斬撃から流れるような拳の二撃必殺を盾受けと剣受けで防御に徹しよう

こちらが出来ることは限られる
唯一勝てているこの防御を突破する手段を携えてくるだろう

だからこそ意表を突ける技がある
UC【黒風鎧装】によって、脚部を真の姿として解放、風の力と肥大化した兎の脚を顕現
全身鎧、剣、大盾を装備して尚、一瞬だけ高い瞬発力を発揮できる奥の手だ

尋常な一騎打ちに真の姿を使うのか、と?
かの強敵な猿面よりも乙女の強さを評価している。ただそれだけだ


※Msさん側のダイス等にて勝敗を自由に決めてください
(互いに相手のプレイングは見ていません。ご負担おかけします)


花盛・乙女
【リリィ・オディビエントと行動】

これにて任務は満了、解散…といきたいところだがな。
残念ながら首獲り競争の決着が付いておらん。
ということで…リリィ殿。私と一つ、手合わせ願おうか。

鯉口を切りリリィ殿を挑発する。
かかればよし。来る勢いをそのままに『グラップル』で捌き背を追う刀で一本をとろう。

だが鯉口を切っても乗らず、防戦を張られては困る。
特にあの押し返す盾捌きは厄介だ。黒椿が折れかねん。
しかし…だとしても私は愚直に剣を振るうとしよう。

なに、盾で押し返されるなら盾ごと捌けばよい話。

私の集中からなる剣刃の一閃、受けきってみせよ!
だがダメだったなら…遠慮なく私の勝ちを受け取ろう!



●矛と盾
 任務は完了、猟兵としての目的は達した。
 しかしまだひとつ、やり残した事がある。
 先の戦闘において始めた競争。
 そう、乙女とリリィ、どちらが猿面武者の首を獲るかという――。
「決着はつかず。ということで……リリィ殿。私と一つ、手合わせ願おうか」
「ああ、願ってもない! いざ、尋常に!」
 オブリビオンとの戦いにおいては肩を並べて戦っていた二人が、相対して得物を構える。眼差しはどこまでも真剣だ。
 最初に動いたのは乙女。きん、とわざとらしく音を立てて【黒椿】の鯉口を切る。先制攻撃を匂わせて、攻め手を誘う腹だったが――剣と大盾を構えたリリィは岩のように動かない。
 リリィは警戒していたのだ。先の戦いにおいて乙女が見せた二撃必殺の絶技、【雀蜂】を。軽率に動けば喰われる。ならばあくまで自身の長所を活かすと、守りに徹して乙女の攻撃を待っている。
 そのことを乙女もほどなくして察した。このまま待っていてもリリィが己の間合いに飛び込んでくることはないだろう。
 乙女とてリリィの盾捌きは警戒している。しかし、このまま戦況を停滞させていても利点はない。
 ならば、と乙女は動いた。一直線に駆け出し、リリィの間合いへと攻め入る。
 盾で押し返されても、盾ごと捌いてみせよう。
 愚直に真正面から、二刀を構えて乙女がリリィへと肉薄する!

 ――そこでリリィが動いた。

 瞬間、漆黒の風を纏うリリィの二脚。
 足先に至るまで黒色で塗り潰されると、むくむくとその大きさが膨張し、やがて人のそれとは異なる形状を作り上げた。
 兎の脚。リリィの獣人としての本質を強く発現させた“真の姿”。
 禍々しい旋風に覆われても一目で分かるほど力を漲らせると、迫り来る乙女の撃退に備えて姿勢が低くなっていく。
 そして地を蹴り――大盾を構えた鋼鉄の弾丸が撃ち放たれた。
「おぉぉぉぉぉッッッ!!!」
「ぐ――――づゥゥゥゥゥ……ッッ!!」
 至近距離から弾け飛んできた超高速の質量。乙女は全身の筋肉を総動員させて二刀で受け止め、衝撃で肩が外れかける。何とか防御には成功したものの、そのまま押し込んでこようとするリリィ。
 歯を食いしばり、地面に足をめり込ませて何とか耐えている。が、真の姿を発現したリリィには明らかに力負けしている。受ける二刀も軋みをあげていて、長くは保ちそうにない。
 ならば、いっそ――。
「ふぅッ!!!」
「――!?」
 二刀の構えを解く乙女。当然の帰結として、胴の骨を砕かんと大盾が押し込まれる。
 乙女はそれを、身体を捻り回転させることで無理やりに受け流そうとする。すべての勢いを殺すことはできず、多少の軽減は適いつつもシールドバッシュの衝撃を受け、乙女は血の混ざった息を吐いた。
 よろめく乙女。
 だが、倒れてはいない。
 それで充分……!!
「ふふ、ふ――捌いてみせたぞ、リリィ殿……!!」
「なんと……!!」
 攻撃対象に衝撃が吸収され、一時的に速力が失われたリリィに二刀が襲い掛かった。
 速度はなくともリリィの防壁は健在だ。乱打の猛攻を加えられたとてすぐに落ちるような柔な城ではない。
 しかし、勝利への執着から鬼気を込めて繰り出される乙女の斬撃も、また尋常のものではない……!

 愚直に二刀の剣撃を振り放ち続ける乙女。
 ふたたび守りの構えに入り、好機を見出さんとするリリィ。
 しばしその光景が続くと、やがて決着は訪れる。

 受け流し持ち堪えたとはいえ、シールドバッシュの負債は大きかった。
 戦意は損なわておらずとも、失った体力は戻ってこない。息を荒くつく乙女の太刀筋は、時間が経つにつれ次第に鋭さを消していく。
 【黒椿】が大盾にて弾かれると、ほとんど抵抗なく吹き飛ばされて地面に転がった。
 残る小太刀を閃かせる乙女だが、それも大盾で押さえられると、ぴた、と首筋に冷たいものが当たったのを感じる。
 リリィのバスタードソードである。
「……参った」
 悔恨を表情に滲ませるものの、潔く告げる乙女。
 対戦者の明確な敗北を確認したところで、ようやくリリィは緊張を解いた。ふうと深く息を吐く。
「奥の手が予想以上に上手く転がった、というところだな……手の内を見せた以上、次はこうはなるまい」
「だが、今こうして私が敗北したのも事実。……悔しいが、その結果は受け入れよう」
「ふふ――真面目だな」
 こめかみに汗を流しながら、好敵手の健闘を称えてリリィは心からの笑顔を見せた。

 矛と盾による真剣勝負。
 本日は、盾の勝ち。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナナ・モーリオン
WIZ

(廃屋の屋根に腰掛けて足ぶらぶらさせている)

訓練の音。戦いの音。
みんな元気そう。

争うのは、良くないことだけど……織りなす音は、人が生きてる証の音。
みんな、この音が恋しかったのかな。
命の力に溢れた、この音の中で歌っていたかったのかな。

力いっぱい、戦えたかな。
疲れるくらい、歌えたかな。
満足して、逝けたかな。
そうだったら、ボクは嬉しい。

おやすみなさい、良い眠りを。
ボクはただ、それを祈るだけ。



●安眠あれ
 修練場が見渡せる廃屋の屋根で、ナナが腰かけてぶらぶらと足を遊ばせていた。
 木人形を叩く音、得物がぶつかり合う音。猟兵たちの掛け声。
 先ほどまで廃村を満たしていたものとは近くて遠い音の群れが、ナナの耳に届いている。
「訓練の音、戦いの音。……みんな元気そう」
 これらの音は、ここにいる人々が生きている証。
 死してなお亡霊武者たちが奏でていたそれらも、また同じ。

 彼らはこの音が恋しかったのだろうか。
 誇り高き死に焦がれていた彼らを、惹き付けて止まなかった戦場音楽。
 その中で散りゆく命の熱さを感じながら、自身も歌っていたかったのだろうか。
 
 力いっぱい、戦えたかな。疲れるくらい、歌えたかな。
 まぶたの裏に蘇る、奮戦する彼らの姿。
 黒い炎に身体を焼かれ、狼に首を噛み砕かれながらも、なお四肢を動かして抗わんとする兵たち。
 終わりを悟った武者たちの表情には、どれも満ち足りた色が浮かんでいたのを覚えている。
 ――そうだったら、ボクは嬉しい。 
 
 命を奪って奪われて、死んでいった戦餓鬼たちの行き着く果ては、憩って過ごせる浄土ではないのかもしれない。
 それでもナナは、祈らずにはいられない。
 骸の海に帰ることなく、ようやくひとりの兵として死ぬことができた彼らが。
 どうか安らかに、眠れることを。

「おやすみなさい。――良い眠りを」

 彼らに向けられた祈りの言葉が廃村の空気に滲んで、溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト