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羅針盤戦争〜Double greed

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #バルバロス兄弟 #三つ目島 #島の座標N16E15

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●メガリスブラスター
「真っ向勝負を所望する!奪い合いは二の次だ!そうだろ、ハイレディン!」
 動物を模した石の柱を、トライデントの一突きで破壊する。
 ひとつ、ふたつ。モーニングスターの鉄球が原型すら無くなるくらいの破壊を後押しした。手当たり次第に破壊したが、大破したはずの石柱は流れるように時間が巻き戻るように元の姿を取り戻す。
 そう、力試しにしか使えないいつかどこかでぶんどったメガリスなのだ、あれは。
 破壊をメインに行ったのは、隻眼の兄、オルチ。
 七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟といえど、壊れても治るだけの石(メガリス)を体に組み込もうとは思わなかったのだ。
 だから、島に据え置いてむしゃくしゃした時ひたすら壊す用として置いてある。
 そんな無造作な扱いでも己の島だ、誰も文句などいう奴はいない。
 いるとすれば、赤髭を生やしたもう一つの頭、弟ハイレディンくらいなもの。
「おうとも、オルチ兄。絶好調じゃねえか!」
 双頭の男の顔は、意気投合してニッ、と笑う。
「空白の『眼窩』を埋めるチカラは"グリモア"!王の言ってた事がそのとおりかどうかも確かめねぇとなんねえし、まずは」
「ああ。"殺して奪って"使えるか確認しねぇと。俺たちの完成を祝えねぇからな!」
 身長5mの巨人よりも更に大きく存在主張する石柱。
 二つの柱は、動物の石柱とは様相が少し異なった。
 兄弟たちが呼称するには「三つ目の石碑」。
 どの石柱よりもとにかく巨大で。そして――バルバロス兄弟、オルチとハイレディンを模すように。
 片方は"隻眼"で、もう片方は"両目"を開いて、島中を見渡している。
「今日は"オルキヌスの瞳"の調子が良いからな、兄者と俺の宿願、きっちり果たそうじゃねえか!」

●砂の蛇島
「大男はグリモアを空いた眼に嵌めたいんだって。……入るのかな」
 ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は少し的外れな事を口にした。
「まあ、それはそれとして。『バルバロス兄弟』の話はどこかで聞いたかな?ちょっと皆にも乗り込んで貰おうかなって」
 どこへ?兄弟たちの本拠地『三つ目島』へ。
「襲撃を繰り返す兄弟達を黙らせるには、決戦に持ち込むしかないからね。安心して、兄弟達は島で"グリモア"使いを待ってるから」
 困った顔をするソウジは、軽く説明を書いた紙を渡し始める。
 大したことはない。島に関することだけだ。
「"グリモア"。エネルギー体。体を強化改造し続ける彼らが今一番欲するもの。最高に力を振るえる場所で、"奪う"ことを楽しみにしているわけだよ」
 相手の敷地で、猟兵は戦わなければならない。
 だから気をつけて欲しいことを、と紙をとんとん、と叩く。
「おヒゲの弟さんの"眼"に気をつけて欲しんだ。あれは"オルキヌスの瞳"っていうモノでね……"七大海嘯の一員だった両目が存在したオルキヌス"から、片眼を奪いとって得た代物でさ。オルキヌスは失落こそしたけど、神のような力を振るっていたそうだよ」
 神の力は、"生物を退化させるエネルギー"を放つ特殊な力をハイレディンに与えた。
 島の生物がそれを浴びると、恐るべき「原始の魔物」に変化するというのだ。
「『三つ目島』には"サンドサーペント"って砂のなかを泳ぐように移動できる小型陸竜が大量に住んでるらしいんだけど、あ、うん。硬い鱗で覆われてて、牙の鋭い蛇みたいなにょろにょろさん……ライドサーペントみたいには飛ばないね」
 陸に住むものは元は海から来たという話がある。
 サンドサーペント達が退化エネルギーを浴びた場合は、原始の力を取り戻して巨躯の魔獣へと早変わり。
 陸と海を荒らし回る凶悪な害獣になることだろう。
「島に聳える"三つ目の石碑"。ハイレディンはあれからエネルギーを増幅させて放つことが出来るらしいから、皆が避けれてもサーペントたちに当たる可能性があるって、話なんだよね。島の生物は、エネルギーさえ当たらなきゃ特に敵対して来ないんだけど……」
 わりとたくさんいる。砂の蛇島と改名したほうが良いくらいは、沢山いる。
「皆が島へ行くと、バルバロス兄弟は歓喜の号砲代わりに先制攻撃を仕掛けてくるし……対処がいっぱいだね。でも」
 ――皆だったらきっと、何とか出来ちゃうんでしょう?


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。
 だぶる・ぐりーど。ふたつのごうよく。

 プレイングボーナスは敵の先制攻撃ユーベルコードと、「原始の魔物」に対処する。

 このシナリオでは、『三つ目の石碑』と動物を模した石柱は全て同一のメガリス。
 動物の方は「破壊しても元の形に戻る力しかない」のですが、「三つ目の石碑」と呼ばれる二柱は、『神の如きエネルギーを放つ』力を改良して付け加えられているため、破壊すると再生は遅いようです。でもそのうち元の形に戻ります。

『三つ目島』は石柱と砂の島。
 島の生き物は砂蛇、サンドサーペントだけ、です。大きさは小型小竜、ライドサーペントくらい。二人乗りはむりかな、くらいの大きさで野生。
 退化エネルギーを浴びるとバカでかくなって襲ってきます。大体のサイズ感は、平均二m超え。少なくとも少数は必ず『原始の魔獣』化して襲ってくると思っていただいたほうがいいかも知れないです。この島の蛇たちは、魔獣化しても空を飛ぶ力はありません。

 グリモア猟兵がもしいたら集中的に狙われてしまうかも、くらいのフレーバーがありますがあまり気にしなくて大丈夫です。
 全部の採用は厳しいかもしれませんので、ご留意いただきますと幸いです。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』

POW   :    フォーアームズ・ストーム
【四腕で振るった武器】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    「オルキヌスの瞳」
【弟ハイレディン(左頭部)の凝視】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【肉体、精神の両面に及ぶ「退化」】で攻撃する。
WIZ   :    バルバロス・パワー
敵より【身体が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:ちーせん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…グリモア猟兵を狙う。それならそれで好都合
私は騎士でも戦士でも無いからね。獲物はただ狩るだけよ

存在感を消す呪詛で闇に紛れて魔物の索敵から逃れ、
過去の戦闘知識を頼りにUCの発動タイミングを見切り、
敵の攻撃を"写し身の呪詛"の残像と入れ替わる早業で受け流しUC発動

…このまま首を狩れると思ったのに…残念。気付いたのね

…だけど、もう遅い。この距離まで近付けば私の物よ

左眼の聖痕に異端の神の欠片を降霊して魔力を溜め、
静止した時の世界に切り込み、怪力任せに大鎌で敵を乱れ撃ちUCを解除
無数の斬撃を同時に叩き込む時属性攻撃を行う

…お前が得られる物なんて何一つ無い
何が起きたか理解できないまま、骸の海に沈むがいい



●Bloody flower

 ――グリモア猟兵を狙う。
 それはそれで好都合。
 そう、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそれに該当しないから。
 ――私は騎士でも戦士でもないからね。
「獲物はただ狩るだけよ」
 息を吐くように存在感を消す。いやこの場合は"殺す"だ。
 リーヴァルディは呪詛で闇に紛れて、砂に住処を持つサンドサーペントたちに悟られぬように距離を置く。
 気付かれなければ、彼ら魔物たちを驚かすこともない。
 そのまま悠々と砂を泳ぐように"なんでもない日"を過ごしていればいいのだ。
『……おいハイレディン!なにか聞こえたか?』
『おうよ、確かになにかが言葉を発していたな。サーペント共に言葉はねえから間違いなく喋る知能を持つもんだ!』
 七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟の頭身が5mあることも聞き取れなかった一つの原因だ。
『つまりあれだ、俺達より"小さき者"が居るってことだなあ!』
 ガハハと笑う兄オルチ。
 呼ばれた弟ハイレディンがこれに同意して二頭にして一体の巨人は己の力を誇るようにして、石碑の群れる広い場所で立ち尽くす。
『そうだな兄者、つまりどこかでこっちを見てるってこった。"最強無敵バルバロス・パワー"!』
「……盛り上がってる所で悪いけれど、"知っているわ"」
 過去の記憶、つい最近のようで戦いの中に置いてきた記録。
 だがリーヴァルディは覚えている。この戦術、この戦法。
 バルバロス兄弟が取るその行動は、"身長差"があるからこそ成立する御業。
 巨人との身長差がないものなどいない。
『知ってるゥ?嘘はいけねぇ、喋ったからには逃さねぇ!行くぜトライデントブラスター!』
 攻撃のタイミングで適当な名前を言わなければならないほど彼らは暇を持て余していたのか。兄弟が投擲するトライデントは、命中精度も籠められた力も爆発的に高められていた。

 が。

「……だから、知っているのよ」
 どごぉお、とリーヴァルディに突き刺さるトライデント。
 小さな猟兵という生き物に、必中させたと兄弟は広角をあげて笑おうとして――。
 突き刺したはずの人影は、戦闘力のない残像をその場に残した呪術で組んだ"リーヴァルディの分身"に過ぎなかったのだ。
 すぅうと消える分身に気づいた男は、ミスを犯したと悟り、慌てる。
 存在をまた見失った。攻撃を経験から知っていると言った、あの猟兵。
 では次の手をどこから――。
「……このまま首を狩れると思ったのに……残念。気付いたのね」
 巨人の背後。しかもしれは首に迫るほど近く。
『一体どうやって!?』
『オルチ兄、俺たちなら"殺し"の気配だって避けてやらぁ!』
 高められた回避のパワーで、リーヴァルディの"狩り"の手から逃れた兄弟。
 だが息付く暇など与えない。
「……だけど、もう遅い。もっと離れるべきだったのに」
 ――この距離まで近づけば私のモノよ。
「……聖痕解放。"至高の天より、深淵の獄を賜らん事を"」
 左眼に刻まれた証に、異端の神の欠片を降霊して魔力を溜める。
 さあ起動しろ。魔力に反応して支配する領域を広げろ。
 その瞳に刻まれた証を使うことは、"時間を支配するモノ"の力を使う事。
 兄弟の動きが止まる。流石の七大海嘯でも、時間の壁を隔てられ、時間を静止させられた空間では息をすることすらできない。
 人よりたくさんある腕を動かすことも。
 強化してきた肉体を振るい暴れ倒すことも。
「……お前が得られる物なんて何一つ無い」
 代行者の羈束・零の世界で動けるのは、環境に順応できるリーヴァルディだけだ。
 時の静止した世界に切り込み、巨体を怪力任せに大鎌で乱れ撃つ。
 いくら強靭な肉体があっても、無傷であるはずがない。
 ――静止世界、解除。
 無数の斬撃は、同時に叩き込む時属性であった。
 ユーベルコードが解除されると同時に、わずかに遅れた斬撃乱舞がバルバロス兄弟の体から大量の血しぶきを上げさせた。
「何が起きたか理解できて居ないでしょ。そのまま、躯の海に沈むといいのよ」
 頭上に疑問符を浮かべた兄弟は、斬りつけ倒された反動で思い切り尻もちをついて倒れ込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中村・裕美
「……要は……能力の出力を上げる要素が何か欲しいって……ことかしら? ……グリモアは……そんな単純なものではないのだけどね」
まずは周囲の地形を電脳魔術で【ハッキング】して【情報収集】し、魔物は避ける
兄弟との戦闘では、石柱という【地形の利用】をし、【ハッキング】【罠使い】で向こうが攻撃を仕掛けてきたら、石柱が敵に倒れるように仕掛け、攻撃を防ぐ
「……再生速度……強化」
更に再生の過程で脊柱が武器を取り込んでくれればラッキーかな

「……ここから……反撃」
UCを使えるようになったら、魔竜になって暴れ回る。
原初の魔物も【ブレス攻撃】で電子データか。後で魔物になる前の状態にデータをいじってから戻してあげたい


ジェイソン・スカイフォール(サポート)
おもに「正当防衛」「衛生小隊」を使ってメイン参加者の援護を行います。

▼行動例

「下がってください!」
メイン参加者が不利な状況に登場し、かばう。ボス敵の相手を引き受け、味方が態勢を立て直すための機会をつくる。

「救護します!」
衛生小隊にボス敵の牽制を命じ、その隙に、負傷したメイン参加者を安全圏に撤退させ、応急手当を行う。必要に応じて「生まれながらの光」で治療する。


臥待・夏報(サポート)
やっほー
実は最初から此処に居た夏報さんだよ

隅っこで怯えてる一般人の捕虜とか
はたまたフードを目深に被った敵の一味とか
もしかしたらボスの傍らに侍ってる女とかいるじゃない?
そういうモブのうちの一人が、『目立たない』よう『闇に紛れ』て『情報収集』している夏報さんだったって寸法さ

とは言っても夏報さんはしがないエージェント、身体能力は一般人に毛が生えた程度
そんなに派手なことはできないね
実弾式記憶消去銃『MILK-DIPPER』による情報操作や暗殺
毒針付きフックワイヤー『釣星』による罠の仕掛けや暗殺
ま、こんな話をしている頃には地味な仕事は終わっている
戦闘に巻き込まれる前に、『逃げ足』を活かして退散しておくよ



●分解

「……要は…………能力の出力を上げる要素が何か欲しいって……そういうことかしら?」
 中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はグリモア持ちだ。そう、七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟が欲する"エネルギー"の使い方を知っている。
「でも残念ね……グリモアは…………そんな単純なものではないのだけどね」
「そうともそうとも、夏報さんも同意見!」
 あっちこっちにやっほー、と手を振りながらの軽い様子で臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)が同意すれば、少し遠くで身を伏せて周囲を警戒するジェイソン・スカイフォール(界境なきメディック・f05228)が頷いていた。
 誰も彼もがグリモア猟兵。
『単純ではない?嘘を付くな、俺達の前にやってきたお前ら全員所有者だろ!』
『オルチ兄!逃しちゃなんねえ、一発派手に撃ちまくろうじゃねえか!』
 おう、とオルチの一言返事を合図に、赤髭の生えた弟ハイレディンの片目が輝く。
 同時に、"三つ目の石碑"がこぉおと黄色の輝きを溢れさせていく。
 視認し、凝視したものへ影響を及ぼすチカラが――同期している。
 ハイレディンの"オルキヌスの瞳"に連動して、石碑からも目のような刻印から同一のエネルギーが放たれる!
『さあ起きろ!退化で覚醒めて暴れまくれ!』
 周囲で砂を波のように扱って泳ぐサンドサーペントの群れにエネルギーが当たり、悲鳴のようなものが木霊した。
 今ある記憶が、意識が、体の遺伝子が急速に退化して種族として始まりであったはずの"原始の魔物"へと変貌していく。
 猟兵達が見ていたサンドサーペントの体が二倍以上に膨れ上がって、獰猛さも上がった。蛇の体をぬるぬると振り回して周囲を破壊しながら、口元をぺろり。
 舌先が生物の気配を絡め取ったようで次の瞬間にはぎろり、と小さな小さな猟兵達を、餌とでも認識したのか舌舐めずりしながら見下げてくる。
『キシャァアアアアアア!!!』
「全く獰猛なのにも困ったもんだよ」
「今周囲の地形を電脳魔術でハッキング、解析が完了したから……抜け穴であり死角(デットスポット)にいれば、みつからない」
 空気を叩くように電動魔術デバイスを起動させた裕美の行動は迅速だ。
 電脳空間の干渉を補助するツール、マテリアルクラッカーも併用していたことで拘束さは苛烈さを増す。
 デッドスポットは眼鏡越しに、よく見える。踏むべきポイントは裕美の目に丸見えの地図として表示されていた。
「まあそこまで見えてるんなら、既に夏報さんのやるべきことは終わったようなもんだからなー」
 島のなかでサンドサーペント達が泳ぎ回ってる場所を、目立たないようにひっそりと先行して確認していた夏報。闇に紛れ、その足で情報収集を行った夏報はもちろん、見てきただけで終わらせていない。
 ――これでも夏報さんはしがないエージェント。
 ――身体能力は一般人に毛が生えた程度。
 ――あんな大男との戦闘なんて、派手な事は無理なのだよ。
 ――じゃあサーペントの相手は、ってうん。それも無理。
 三人同時にグリモア持ちがいれば、単体狙いだけは避けられるかもしれないが。
「大人しくおねんねするか自分の未来の姿でも落ち着いて思い出してなよ」
 巨獣となったサンドサーペントに、小さな小さな実弾が効くかは少々の賭けだった。バルバロス兄弟に行うよりは、可能性が在る方へ。
 夏報が構えた実弾式記憶消去銃『MILK-DIPPER』を連射で使い、硬い鱗を一つでも抜けることを祈って、駆け回る。
 足を止めたら起こることなど、わかりきっている。
『キ……シャ?』
 打ち込まれたサーペントたちは獰猛さ自体忘れたようにその場であんぐり口を開けて停まった。見事浸透したようである。
「もう遊び疲れてお家に帰るんでしょ、ほら帰宅時間だよ!」
 呆けたサーペント達に指示をだすと、"あ、そうだったな"とずるずる砂の中に蛇たちは消えていく。
『暴竜の暴れをすぐ止めるなんて只者じゃねえな、お前ら!』
『くぅう、やっぱりそれが能力をアゲてんのか?寄越せよ、ほら!』
 バルバロス・パワーを存分に発揮して、振り恐る四腕で振るう武器の乱舞。
 二つのカトラスと、トライデント。斧のりーチの長さの違いに尽く敵対した者たちは潰されてきた。
 彼らの肉体改造の餌食となった数だけ、彼らの肉体はあのように大きい。
「でも夏報さんは目を逸らさないのさ」
 じい、と見ていた夏報から先に視線を外したのは三つ目。
 猟兵たちは小さいのだ、当然視線がぶつかってるとは思わなかったのだ。
 オルチはじゅう、と目の奥が焼けたように痛みだす。
 今は空洞の眼窩。その奥が炎でもついたように、傷んだ。
「ふーん?」
 夏報から視線をそらしたことで起こった呪詛の炎からの"写真"の創造。
 見てすぐわかった。本当にグリモアという"宝"が欲しいのだ、彼らは。
 だが――、鼻で笑ったのは、夏報である。
「こんな子供の落書きを手に入れようって考えは甘々だと知らなきゃねえ」
 形が千差万別、グリモア猟兵一人ひとりで形状が異る。
 だからどんな形がグリモアか、バルバロス兄弟は知らないのだ。
「手に入れるならぬ目に入れたいなら、ちゃんと形状を知りましょう。はい、夏報さんの評価はそんな感じ。じゃあ、さっさと帰っちゃうから」
 戦闘の渦中に巻き込まれるつもりはさらさらなかった夏報は自分のすることを済ませて一気に後退していく。あとは、他の人がやりたいことをするでしょう、と素晴らしい脇目も振らない"逃げ足"で。
『大丈夫かオルチ兄!?』
『ああ、……どうせ空(から)だ、見えねぇ場所が痛むだけならなんとでもならあ!』
 頭を振って、バルバロス兄弟は攻撃を再開する。
 原始の魔獣化したサンドサーペントたちは蹴散らされてしまった。
 広い広い空間を、巨大な男は独占できる。

「それにしても……見事な石柱」
 兄弟たちの背丈程もあるそれらの地形は、裕美にとっても興味深い。
 攻撃用に一部を改良してあるものの、これらは原理としてはメガリス。
 ――研究対象として、ハッキング調査を行って……それから…………。
『ああそこにいたか鼠。そーら俺たちのカトラスから逃げられると思うなよ!』
『兄者、今こそ行こう――フォォーアームズ・ストォォーム!』
 攻撃名を口にして、発揮する破壊の行動。
 カトラスを外に、カトラスより長さのある武器を合間合間に差し込み入れる予測不可能な破壊の連打。
 単純でいて、明確な嵐のような攻撃。
「あぶない!ひとまず下がって下さい!」
「……ううん、大丈夫。これはこれで、"罠として"機能する…………」
 裕美の後方に石柱があったのだが、それでは当たるとジェイソンが全力で庇って飛び退かせる。飛び退いて数秒後、想像通りに破壊される石柱。
「……再生速度…………強化」
 根本から折れて、バルバロス兄弟へと直接重い打撃を決め込んだ石柱の残骸に働きかける。電脳魔術で操作してアゲた再生加速パーセンテージ。
 逆さまにした砂時計のように、みるみる元の状態へと戻っていく。
『……俺のカトラスが!』
『諦めろハイレディン!それ以上は石に挟まれる!』
 取り落した武器が石柱の再生の中に巻き込まれてしまったらしい。
 三つ目の武器が、一つ減った。
「……ここから、…………反撃」
「援護します」
 ジェイソンの捨て身のかばう行動は、成功した。
 見事に守り通したのだから当然だ。だが、今から巨人と一戦、というのは少し不安を覚えたのも確か。
「……万全でない援護は援護の機能を果たしません。それに」
「……それに?」
「そちらの邪魔になる"生身"ではいけない気がしました」
 それだけいうと、背後に"戦場の亡霊"を召喚する。
 亡霊の顔はよく見て取れない。ジェイソンに関連するもののようだが、迷彩服の戦士(ソルジャー)だ。
 本来ジェイソンは衛生兵として各地の戦場を巡っていたこともある。
 こちらのほうが、明確な戦士であるというのも、頷けた。
「……巻き込む可能性はとても高い。…………でも、わかった。ここから……反撃」
「自分は急ぎ待避して、サーペントたちが飛び出してこないように努めます」
 ご武運を。
 ジェイソンが迅速に離れていくのを見届けて、迷彩服の兵士が果敢にバルバロス兄弟へと挑んでいく。
 その武装はマシンガン。見上げるほどの大きな敵をとにかく撃ちまくる。
 時間を稼ぎ、その間の"反撃の狼煙"を待っているのだ、あの亡霊は。
「……全てを1と0の世界へ…………覚めなさい……滅びの竜」
 裕美の周囲の電子化が急激に進み、その姿が別のテクスチャーを被る。
 人の許容範囲を超える量の熱量を"滅びのプログラム"として起動、そして最大展開。魔竜へと変わった裕美の理性は此処でぶつりと途絶えたという。
 かぱりと開けた口腔に、電子データ化するブレスを充填し始めれば周囲はキラキラと輝き出す。
 分解されてデータ化されるのは何も相手だけには留まらない。
 初撃砲は原始の魔物化したサンドサーペントたちへとぶつけられた。
 さらさらと砂のように溶けるようにデータ化して何体もの竜が消えさったのを見てバルバロス、唖然。
『……おいおいオルチ兄、なんかやべえんじゃねえか?』
『ハイレディンお前も』
 ――そう思うかよ!?
 兄弟は一目散に、武器を構えるのを放棄して手頃な石柱メガリスを破壊、所持してぶん回すが電子化ブレスへと対抗する手段にはとても脆く、消えていく。
 魔竜が暴れまくり気が済んだり疲れを感じた頃、裕美は電子データから必要データを抽出して元の状態に戻すことだろう。データの海に放流するには勿体ない。
 その間、バルバロス兄弟は消し飛ばされる恐怖にずっと襲われ続けるわけだが――
巨大な存在を遠めから身を潜ませて見ていたジェイソンは、後に"あの顔色は恐怖一色だった"と報告していたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

初月・夕
※キャバリア搭乗
身長5mの巨人…生身でキャバリアと同規格とか、ほんと『異世界』を実感させられるわね

◎先制UC
【トワイライト】起動…黄昏号とナノマシンネットワークを通じて接続(リンク)
…体格差なら『黄昏号』は負けない…キャバリアと一心同体のキャバリア乗りに体格差だけでアドバンテージを取れると思わないで

◎原始の魔物
原始の魔獣と言っても蛇…なら特殊弾頭で各種器官を無力化させるのが良さそうね
UC発動し特殊弾頭…『轟音を伴いながら煙幕と赤外線を阻害するフレアを一帯に展開するミサイル』を発射し砂蛇やバルバロスを撹乱

其の儘煙幕に乗じつつ独自通信網でリンクした戦術ドローンの索敵・牽制・支援を織り交ぜ砲撃よ



●equality

 ――ふうん。ああいう巨体でも怯える事があるのね。
 面白い、なんて考えていたのは初月・夕(夕月・f31197)。
 搭乗済みジャイアントキャバリア『黄昏号』越しに見る七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟の頭身と、ほぼ同格。
 あちらは生身、こちらは機体。
 部分的差異はあれど、あれは継ぎ接ぎだらけの生身なのだ。
 生々しい空の『眼窩』が、なんだか余計にどす黒い色を深めているのが見える。
 原因はついさっきほど、別の猟兵に派手に燃やされた後だろう。
 ちりちりと煙がどことなくうっすら上がっている。
「身長5mの巨人……生身でキャバリアと同規格とか、ほんと『異世界』を実感させられるわね」
 どんな生き様、どんな戦場を渡り歩いていたらああなるのか。
 それとも、元々大きな人種だった?と考察は静かに続く。
『同等?ハッ生言っちゃいけねえよ?』
『異世界侵略たあ俺達の得意分野。負ける要素なんてどこにもねえぜ!』
 兄オルチ、弟ハイレディンが勇む。
 敵より身体は決して大きくない。バルバロス・パワーは封殺されたようなものだ。
 だが、多腕の腕で作る暴風のような攻撃の乱舞は健在。
 そして――攻撃は腕だけにあらず。
『輝け"オルキヌスの瞳"!ハイレディン様のパワーを見せつけろ!』
 カッと輝く兄弟の背後の"三つ目の石碑"から拡散されて放たれる黄色の輝きが、猟兵へではなく砂地へと満遍なく浴びせに掛かる。
 ――何故退化エネルギーをあえて、外した?
 考える間に答えは出る。
 うごうごと砂地から顔を覗かせるサンドサーペント。
 その形態は怪しげな黄色エネルギーに包まれて、徐々に巨大化していく。
『が、が……!!』
 めぎめぎと骨格が異常な退化についていけずに悲鳴を上げる。
 今の形状から退化して、子に戻るのではない。細胞レベルで種族として、過去在るべき姿へと至らせるのだ。
 "黄昏号"より小さな個体が、ぞろぞろと鎌首をもたげて牙をむく。長い長い胴体の尾を揺らし、仲間内、それから見知らぬ機体へと攻撃の手段を伸ばしてくる。
「本当にどちらも対処、って……っもう、本当に」
 ――ナノマシン型ネットワークシステム"トワイライト"、起動。
 人体をサーバー化し、独自のシステムを此処で構築し、稼働する。
 ――戦術ドローンのリンクを、形成。待機状態でこのままを、継続。
 ――それから。
 ――搭乗するキャバリアとナノマシンネットワークを通じて、接続(リンク)。
 ――無事の接続を確認。感度良好。
「……体格差なら"黄昏号"は負けない。キャバリアと私は一心同体だもの。体格差だけでアドバンテージを取れると思わないで」
 同時に来るだろうことはお見通し。
 巨人はともかく、魔獣たちの統率は"三つ目"が取るものではない。
 彼らは勝手に動き勝手に暴れるだけだ。
『アドバンテージがなくても俺らは勝つっていってんだよ、なあハイレディン!』
『おう!」
 強襲の斧の重さ、それからやや遅れて飛来するモーニングスターの鉄球。
 これに対して"黄昏号"がするのは、その腕ごと押さえつける荒業だ。
 搭乗者に合わせ、本来は後方砲撃と電子戦を主軸に置くキャバリア。
 武装もそれなりに重装甲。機敏な動きは、二の次。
 多頭に多腕とはもちろん、相性が悪い方では在るが――。
「だって、あれは原始の魔獣といっても、竜……でも飛ばないから蛇、と仮称するけど。特殊弾頭で各種器官を無力化させるのが良さそうね?」
 バルバロス兄弟の残りの腕の殴打をあえて無視して、別の問題への対処に当たる。
「モード"鎮圧"。動きさえ止めれば……」
 がごん、と"黄昏号"の重量増加要因の武装コンテナのひとつより、ある武装が起動する。ごごごごごご、と激しい音が、夕の合図を待たずに掃射された。
 ミサイルは飛び出してすぐに効果を付随させる――弾幕と赤外線を阻害するフレア。その弾道は標的を潰し破壊する目的ではなく、周囲一帯に展開し、撹乱することが目的だったのだ。
 思惑通りに広がるミサイルの弾幕。あたりは煙に塗れ、キャバリアも巨体も巨大な魔獣も煙に紛れで誰もが視界を奪われる。
 ――待機状態のままの戦術ドローンを飛ばすなら、ここ、
 弾幕を隠れ蓑に戦術ドローンで標的の姿を索敵、すぐさまその姿は見つかった。
「棒立ち相手に鎮圧行動を行うだけなのよ」
 動きを止めさえすればどんな暴徒も鎮圧は容易。
 支援と牽制を織り交ぜて、砲撃攻撃を開始する。
 砲撃に身を叩かれる生身の双頭から悲鳴のような声が聞こえたような気がしたが、
そんなものは聞こえなかった、気のせいだろうと手を緩めない夕の攻撃。
 弾幕が晴れる間まで、攻撃の手を緩めるわけにはいかないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
グリモアを持つお方は御多忙であることが多いのです
真っ向勝負がご所望とあらば、僭越ながら私がお二人のお相手をいたしましょう

嵐の如き武器の連撃の軌道を瞬間思考力で見切り、武器受け盾受けで防御
怪力で受け止めた武装跳ね上げ続く腕の攻撃を妨害、ペースを握らせず

センサーでの情報収集で魔物の接近検知すれば戦場にUCの発振器射出
力場平面で兄弟と自身のみを隔離

各地で略奪を繰り返したお二人に相応しい…『刑場』をご用意させて頂きました
御覚悟を

脚部スラスター噴射
●推力移動で大地から力場壁面●踏みつける移動で幻惑
視線を向けた際にUC杭を空白の眼窩に●投擲串刺しし放電

膝を付いた隙逃さず弟の頭を大盾殴打
横一線で剣を振るい


ヴィクトル・サリヴァン
グリモア狙われるのやだなー。
隠しても変な嗅覚で当ててきそうだし。
なら奪われないように先に殺っちゃおうか。

気配をオーラのようにして纏った結界でなるべく隠しつつ、石柱に身を隠しながら三つ目の元へ。
もし野生動物に見つかったら動物会話で交渉、後でお魚あげるから穏当にここから離れてもらうようお願い。
三つ目の所に着いたら風の魔法で体を空に打ち上げ緊急避難、攻撃に対しては野生の勘でどこから来るか見切って結界とオーラで防御、できるだけ時間を稼ぐ。
空なら狂暴化動物の影響は最小限に済む筈…!
UC準備できたら渦と地の属性を合成して巨大な蟻地獄式流砂を三つ目の足元に作り出して動きを封じてやるね。

※アドリブ絡み等お任せ



●徹底抗戦

『ハイレディン、……"グリモア"、やっぱなんつーか興味深えな!』
『ああ。もっと色んな形状を見てぇと思っちまう。空(カラ)を埋めるピースとするのも、選びてぇしよ!』
 七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟は、既に何度か目撃した猟兵たちの持ち得るモノを見て。
 大きな巨体のわりに子供のようにはしゃぐ。
 欲しいものを必ず手に入れるのは当然として、だが形状が異なるなら選びたい。
 好ましいものを入手したい、したくなる。当然強奪、という意味になるが。
 それが――海賊というものだ。
『猟兵、お前は持ってるのか?他の奴らよりは大きな体格をしているな?』
「いえ。私は持っておりませんね、グリモアを持つお方はご多忙であることが多いのです」
 ――予知して送る任に付かれている方は前線には来れませんので。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は嘘はつかない。
 子供向けの騎士道物語にも、そんなことはありえないからだ。
「いやぁそれがわりとひょっこり現れるものだったりしてー」
 トリテレイアよりもやや小柄なヴィクトル・サリヴァンはわっはっはなんてのんびりマイペースに笑う。彼はシャチのキマイラだ、笑った時にうっすら見える素晴らしい歯並びが余計に眩しく映った。
「そういう事は言わないんですよ……?」
「あれ、言う場面だったよね?」
 ――隠しても変な嗅覚で当てて来そうだと思ったんだよー。
 察知されて急激に狙われるくらいなら、さっさと開示したほうが気分的にもロマンは大きい。言えば狙われると解る、それだけで心の持ちようが大きく変わることが在るからだ。
「真っ向勝負をご所望とあらば、僭越ながらこの私がお二人のお相手を致しましょう」
 彼が所有者ですから、当然それを奪わせない騎士(ナイト)は存在し得る。
「奪われないよう、先に殺っちゃえばいいだけさー」
 なんて騎士道とマイペースが真っ向から衝突する聞いてる分には気の抜ける会話が展開していく。聞いてた方、バルバロス兄弟が腹を抱えて笑い出すのだから、世の中何が起こるかわからない。
『戦いへの毒気を抜くプロかお前ら』
『なんつーか、……お前らみたいなタイプが一番厄介だって知ってるぜ』
 だが勝負と成れば話は別。
 弟ハイレディンが"オルキヌスの瞳"にチカラを込める。
『オルチ兄と俺だけでも十分だがよ。――"殺られる前に殺らねぇとなあ"!』
 "三つ目の石碑"から増幅して放つ、生物を退化させる凶悪なチカラを派手に睨みを効かせてぶちまけた。猟兵相手に、そして周囲でにょろにょろと普段と同じ一日を過ごすサンドサーペントに。
『キシャァアアアアアア!』
 砂蛇たちが一斉に叫びだす。普段の崩壊と、身体の急激な退化に意識側面まで知らないものに上書きされていく。
 今を生きるモノから、原始の魔獣へ。凶悪性を前面に、彼らは太古に置き忘れた力を取り戻していくのだ。
「うーん、俺は少し離れていようかな」
「ええ。私が気を引く間に色々のご準備を」
 ヴィクトルとトリテレイアの短い会話。
『聞こえてるぜぇ?誰が逃してやるかよ!』
 斧とカトラスをぶぉんと風を殺すような勢いで振るいまくる巨人は、緩急にトライデントとモーニングスターの追撃を加えて叩き潰すための嵐へと攻撃手段を整えた。
 狙いはそう、ヴィクトル――だが立ち塞がるのは、機械騎士。
「いいえ、彼のことは逃していただきましょう。"真っ向勝負"、――その言葉を反故にはさせません!」
 嵐の如き武器の連撃を、己に集中させるように誘えばバルバロス兄弟の双頭はどちらもニヤリと笑みを浮かべた。
 挑戦的存在は、海賊的にも好むらしい。
『面白え!!』
 それぞれの攻撃初動タイミングが異なる武器と腕の動き。
 トリテレイアは瞬間的思考で、その動きが交差する僅かな隙を読み当てて、落下していくるようなモーニングスター攻撃をまず見切った。
 一つはそれでいい、だが兄弟の腕は四。一つ躱せば後が続く。
 重質量大型シールドを頭上に構え、降り注ぐカトラスと斧の連続を、"強く"弾くように耐える。その盾に、特殊な力こそ――ない。だが、凄まじい程の強度は最高の防御を可能とするものだ。
『トライデントの振り抜きは躱せねぇだろ!貰ったぁ!!』
「……いいえ。弾くように返した腕の反動は、今そこに来ているでしょう?」
『……うぉっ!?』
 フォーアームズ・ストームの欠点があるとすれば、双頭に武器を持つ複数の腕。
 考える頭と攻撃する腕の連動が、たった一つの身体を起点に保たれている。
 そこに突くような一撃が、不意打ちが刺されば――ほかは崩れなくとも、身体がバランスを崩すのだ。
「攻撃のペースは握らせません。私が、させません!」

「やってるねー」
 トリテレイアたちからやや離れた場所からそんな激しい戦闘を見ていたヴィクトル。気配をオーラのようにして纏った結界術を施して、なるべくその姿を隠していたのだが――。
『…………』
 魔獣化して凶暴化しているサンドサーペントと、ビームを逃れた砂蛇が睨み合う場に出くわしていた。
 体格差が大きく有り、どうみても『原始の魔獣』へと至った側が勝つだろうと想像も付く。どのような関係性が、彼らの中であったかはわからないが、ヴィクトルは堂々その間を通り抜けていく。
 移動先に、色々都合のいい石柱の群れが見えるのだ。
 兄弟から目が逸れてるうちに移動してしまわなければ、ならない。
 しかし周囲に存在したのは砂蛇たちだ、体温の違いを舌先で感じ取る。
 気配は解らなくても"何かがいる"という知覚が発生してしまう。
「なにもしないよ俺はー。ちょっと通るだけだから気にしないで」
 動物会話を試みて、首を傾げてお願いしてみる。
 通常の砂蛇たちは大丈夫そうだが、魔獣化した方は――凄く睨みつけてくる。
「じゃあこうしよう。キミたちお魚、好き?満足する分を用意してあげるし、全部あげるから……それで、どうかなー?」
 穏当に、此処から離れることを提案してみれば。
 殺気だった気配が落ち着く。仲間割れ、同族争い。
 そんな事をしなくても、"食べられる"なら話は別。
 サンドサーペントたちはずるずると砂の中に潜って去っていく。
「なあんだ、姿形が変わっても結構いい子たちじゃない」
 そんなヴィクトルの影の活躍で、トリテレイアの周辺からも大量の蛇が姿を消していた――いつの間にか、居なかった。ヴィクトルは一体どんな量の魚を納期しなければならなくなってしまったのだろうか――。

 ――センサーでの情報収集が正しいなら、魔獣の接近はまず無いようですが。
「紛れ込んでからでは遅いですからね」
 戦場に向けて、トリテレイアは体に格納した射出ユニットを素早く投擲して配置。
 カカカ、と砂だらけの地に杭状発振器は突き立って、作動。
 バルバロス兄弟と自分の周囲に電磁障壁を展開させていく。
 力場平面で隔離した。これで周囲干渉は、難しい。
『ハッ、紛れ込ませねぇ仕込みは十分ってか』
「きっちり、こちらの攻撃も受け取っていただかないとフェアではありません。それに、各地で略奪を繰り返したお二人に相応しい……"刑場"をご用意させて頂きましたからね」
 ご覚悟を。
 脚部スラスター噴射で勢いよく兄弟との視覚的距離を詰めるトリテレイア。
 推力移動で大地から力場壁面を踏みつけるような移動で幻惑を仕掛ける。
『!?』
 兄弟接近したと思い武器を振るうがそこに、トリテレイアはおらず。電磁的に生み出された残像。騙された、と思ったときにはもちろん既に時は遅く――。
「私がどこにいると思われたのでしょう?」
 双頭で"三つの目の中で最大の死角、空白の眼窩に杭状発振器を素早く投擲し、最大威力で放電させれば巨人の体でもただではすまない。
 頭の中も焼けるよう。兄オルチの顔を脳を放電現象が激しく焼き尽くす。
 神経系が最大限にずたずたにされるのだ、一つの体を共有するハイレディンの焦りは凄まじい。
『お、オルチ兄しっかりしてくれ!!くそ……なんて事をしやがるんだ!』
 がくん、と膝をついた兄弟。
「嵌めるモノが見つかったからといって眼帯もせず開けたままにしていたのが悪いかと思います」
 隙だらけなその姿に追い打ちを。弟の頭部に向けてスラスター噴射の勢いをつけて大盾で殴打を敢行。
 ごおん、と車が衝突するような反動が兄弟を打つ。
 ぐらりと揺れる体に、横一閃の剣を振るっても――当然悲鳴の一つもあがりはしない。そのかわり、大量の血しぶきが上がった。

「どっちの頭も悲惨だねぇ、殺されたほうがよかったって意識を取り戻したらやっぱりいうのかなー」
『……ってえ、誰がいうか!』
 兄オルチ、色々焼かれても意識は健在。
 それでも尚、体格差があるとバルバロス・パワーを手に負傷した事を無視して敵の殲滅を優先するのだ。
 手を伸ばせばあるのだ、"グリモア"が。
 そんな威勢の良さに驚きつつも、ヴィクトルが風の魔法で体を空に打ち上げて緊急回避を行えば、まるで風の悪戯が発生して、当たらない。
 ふよふよと、野生の勘がその向きへ飛ばす事を選ばせたのである。
 風は気のむくまま自由なもの、ヴィクトルとは実に同類だ。
『くそ、早く起きろハイレディン!』
「焦ってるねぇ。どこから来るかなんとなーくわかってしまう俺だったー」
 結界とオーラで防御を固めて、勘を外しても最小限のダメージになるよう務める。
 今日の風は、悪戯を好むように遊ぶようだが自分の方に向いている。
 ――それで終わりかい?
 凶暴化した動物たちの影響も、既に逃してしまったからこそありえない。
 浮かびに浮かんで、バルバロス兄弟の更に上を取った頃、ヴィクトルが勇魚狩りと呼ぶ三叉銛に力を集約する。
 風以外からも属性を喚ぶ。大地にあった地の属性を大量に。ざざざざざと銛の先端に力が集まりだして、それはやがて自然現象へと合成を始める。
「これはね、渦。蟻地獄式流砂と命名しておこーう。こんな高所からなら、キミ以外を巻き込まなくて済むからねぇ」
 バルバロス兄弟を頭からすっぽり覆うように生成された砂渦の蟻地獄。
 ヴィクトルが風の魔法を緩めるだけで、自由落下の反動が魔法に付随する――曰く、その現象を否応なしに三つ目に押し付けたのだ。
 巨大な蟻地獄の流砂にねじ込まれ、作り出された負傷の箇所に大きく響く。
「しばらくそこで無秩序にぐるぐる廻っててよねー」
 制御が利くうちは、砂から脱出しようとしても"足がとられて"しまうだろうから。
 兄弟は強大な海賊だ。荒波なら乗り越えられるだろうがあれは、砂が中心だ。
 流砂とは――入りこんだモノを極力逃さないように出来ている迷宮(ラビリンス)なのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

龍・雨豪
あはは、ちょうど私も同じようなこと考えてたわ!
グリモアの事はよく知らないけど、都合よく目に嵌るような代物ではなさそうよね?

とりあえず、まずは雑魚の排除からね。
本能で生きてるような連中っぽいし、睨みつけて威圧しておきましょ。
雑魚は引っ込んでなさいってね。
それでも襲ってくるようなら蹴りや尻尾であしらっとくわ。

雑魚を追い払ったら楽しい決闘の時間よ!
武具の破壊を避けるために相手の攻撃を受け流して逸らしたり回避に重点を置きつつ、隙あらばカウンターも狙っていくわ。
頃合いを見て空中に逃れて距離を取ったら、水身投影で相手をしましょ。
これでも体格差はまだあるけど、周囲は海だからいくらでも龍人を再生させてやるわ。



●フィーバー!

 クラクラとする頭を、多腕の一つで擦る巨人。七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟。猟兵をぎろり、と睨んでくるのは隻眼の兄オルチ。
『ハイレディン……おい、いい加減起きろ!』
『う、う……すまねぇオルチ兄……』
 気絶していた赤髭、ハイレディンも頭を振った。兄は空(から)の目とその奥に、弟は脳天に鈍い痛みがどちらへも加えられているのだ。
『まだ戦いは終わらねぇ、多少の怪我は手に入れる前の前金だろ!』
『おう、此処での戦いを乗り切って……掴まねぇとだしな……!』
 戦うことを諦めない。狙うことも諦めない。その姿勢に、おかしなモノを見た気がして竜・雨豪(虚像の龍人・f26969)は大胆不敵に笑ってやった。
「そうなっても真っ向勝負を?あはは、ちょうど私も同じようなこと考えてたわ!」
 戦いへのモチベーションはそうでなくては。あちらとの体格差は二倍どころではすまないが、だからこそ雨豪は挑戦しがいがあると思うのだ。
「"グリモア"の事はよく知らないけど、都合よく目に嵌るような代物ではなさそうよね?」
『意外となんとかなるかもだろ!』
『そうだそうだ!兄者の理想を簡単に奪ってんじゃねえ!』
 気合で気分を持ち直したハイレディンが"オルキヌスの瞳"に集中する。
 連動して"三つ目の石碑"の眼玉の文様が輝き始める――エネルギーが増大して、大きな岩から増幅して放たれる輝き。
 降り注ぐ輝きに、雨豪は首を傾げる。狙い打たれたのは、己ではなかったからだ。
「ああ、私に雑魚の相手をさせて実力を確かめようっていうのね?」
 ぞぞぞ、と体格が爆発的に大きくなる砂蛇・サンドサーペントたち。
 元々竜種ではあるのだろうが、エネルギーに当たったことで遺伝子が退化して急速に『原始の魔物』へと至らせたことで色々な者が置き去りだ。
 例えば彼らが現代で持っていた理性だとか。
 進化の過程で過去として排出した陸で暮らすなら"要らなくなったもの"だとか。
 雨豪は巨大化していく魔獣を、見て"雑魚"と定義する。
 現在から果てしなく"強化"されたようなものなのに、凶暴化していて力を自分の物にできないあれは哀れなる――"雑魚"。
「雑魚はいいから、引っ込んでなさいね」
 原始の魔物となって本能堕ちした連中はもちろんだが、統率など無い。
 キッ、とキツく雨豪は本来持っている威厳込めて、睨みつけて一瞥する。
 "私の決闘に水を差すな"。
『!!』
 気圧されたサンドサーペントたちは即座に引き下がる。砂の中に潜るように逃げ出していく。ただ、気圧されず鈍感な魔獣化した存在は当然のように存在し、大きく口を開けて噛み殺そうと突っ込んでくる!
「敵対する相手を間違えてるわ」
 振り向きざまに放つ渾身の回し蹴りが、顎を捉えて――蹴り上げる。
 体格差なんて関係ない。蹴り上げて追撃のように、深い海のように暗い雨豪の龍の尾であしらう。
『キシャァ!?』
「警告は次は無しよ」
 もうひと睨みで、魔獣との戦いはトドメ。戦意を喪失したようでじりじりと後方に逃げていくのを雨豪はきちんと見て確認した。
「どう?これで満足?」
『その顔だけで満点以上だ!』
「お望み通りの――楽しい決闘の時間よ!」
 バルバロス兄弟の返答は四本の腕で振るう武器の乱舞での出迎えとなる。
 刃物と鈍器と形状姿が別々の、対処に困るモノたちの嵐。
 雨豪は武具の破壊を避ける為、不規則な順番で襲ってくる攻撃を受け流して反らす。決して致命傷となる当たりを起こさないよう、足さばきは慎重そのもの。
『よく避けた!だがまだまだ続けるぞ、ハイレディン!』
『ああ、俺達の攻撃を避け続けられる奴ばっかりじゃねえんだよ!』
 打撃の武器を軌道を読んで踏みつけで躱し、刃物の連撃を力強く踏みつけて飛び退くことで回避する。
 ――今ので三つ。
 四度目の攻撃、等と単純に考えれば速度を挙げて殴り込んでくるはず。
 大きく踏み込んで全攻撃を躱してカウンター。
 重い一撃をバルバロス兄弟の脛を殴り倒すことで叩き込み、追撃を逃れる為、空中へと逃れる。
「此処は島の中央に近いけれど、周囲は海よ?――これで、相手をしてあげる!」
 雨豪の身長から二倍の、水から創造された龍人が海の水を媒介に立ち上がった。
 ぐぐ、と持ち上げた体格で、雨豪の動きをトレースし、同じ構えを取って兄弟に向き直る。
『なんだあそいつは』
「どう見えてるの?」
 これでも体格差はまだあるけれど、と雨豪は思うが勝負は勝負、手をクイと引く。
 "さあ掛かってこい"、龍人が動きを映して同等たる風格を見せるのでバルバロス兄弟が挑発に乗って拳を叩きむ。
『どう見える?答えてやれよハイレディン!』
『当然、単なるちっこいただの、水の塊だろ!』
 ばしゃあと激しく流動の腹部が弾け飛ぶ。
 無残に、容易く簡単に。ニィと兄弟が調子に乗って叫ぶ!
『どうしたこれで終わりか?』
「水の塊だなんて失礼ね。ああ、これは私じゃなくて――水に、よ?」
 周囲はどこまでも海が広がる。水が散らされても、いくらでも再生と再構築は可能。素早く欠けた体を補って、力強く踏み込む雨豪(と龍人)は渾身のストレートを兄弟の腹に見舞うのだ。
 だだだだだ、と拳の連撃を加え、吹っ飛ぶまで終わらせない。
 ――攻めて攻めて攻めていくから、さあ、反撃の手を緩めないで。
「楽しいわね!」
『――こうでなくちゃあいけねぇなあ!』
 拳と拳の気力の続くまで続く殴り合い。この場の優位は雨豪が勝ち取った。
 水は強度を変えられる。拳周りはまるで鈍器、鉄のよう。
 それになにより、兄弟はこれまでの負傷を抱えて立ち回っているのだ。
 戦いは楽しいと兄弟の笑顔は告げていたが――凍りつくように、言葉数はどんどんと減っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ◎

冷静に分析
勝利への方程式を編む

私も色んな眼(眼鏡や義眼)を所持済だが、貴様の瞳の能力は退化
使い方次第で凶器ともなりえる事も体現したか
実に興味深い

(退化と聞くと弱体化が真っ先に想像しやすいが
根幹に関わる即ち
厄介である事実は揺らがぬ)

UC使用
敵に壊されても良い盾や石壁を沢山創造

私が引き金に手を掛けられるならば
例え動けずとも敗けは無し

砂蛇がエネルギーを浴びない様、
柱の再生も頭に入れつつ三つ目の石碑に罅入れる
二丁拳銃で破壊(継続ダメージ
魔獣化後は蒼炎込めた呪殺弾で遠距離から蜂の巣に(制圧射撃
魔獣を盾にしたり石壁の障害物利用し、敵の足や武器を持つ手を的確に狙撃
最後に心臓狙う

Checkmate



●honeycomb

 島の中央"三つ目の石碑"に、陣取る巨人。
 いや、あれはこの島の生態系の中でも、周囲の海域だけみても"頂点"を取る強欲な海賊の首領だ。
「……」
 無言にて、静かに状況を分析する海賊の姿が在る。
 ――空洞(カラ)の眼窩を私が来るまでに二度。
 ――雷撃と炎で直接的に、焼かれたらしいな。
 ――あの頭部の脳や神経系が既に無事で在るはずがない。
 ぶすぶす、と黒い煙がなにもない筈の黒い窪みから立ち上らせている頭が僅かに見上げると確かに見える。
 あれこそが、七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟が主格、隻眼の兄オルチ。
 ――ではもう一の頭は。
 兄に従う髭面の方。左右で双眸の色が異なる弟ハイレディン。
 気をつけろと言われたのは恐らく、黄に輝く獣が如し瞳孔の方だろう。
 ――重力加速も加わった激しく重い打撃があったという。
 ――時折眼の焦点が合っていないように、みえるが。
 しっかりと大地に起立して訪れるモノと尽く嵐のように戦い、強化改造した力を誇示する海賊。
 見た目は双頭に全部で5つの双腕に、使用目的の異なる4種の武器。
 そんな奇妙なバランスなそれらに対して、体は一(ひとつ)。
 ――大量の血飛沫の跡。
 傷口から溢れる赤はまだ乾いてすらいない。
 生々しい切り傷をその胸に、体に刻まれた体格5mの巨体は見るも無残に満身創痍。
「負ける要素がどこにある?」
 シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)の計算に狂いはない。例え名高い"七大海嘯の一角"でも、手負いなのだ。
 だがそんな状態でも戦うのがこの手の脳筋思考持ちにはよくある話。
「あとはもう、私一人で十分」
『……オルチ兄、聞いたか』
『ハイレディン、俺達より小せえ奴がなんか言ってんな……』
 ――ほら見ろ、どちらも思考の応答に手一杯ではないか。
『もういいだろ、俺ら"三つ目"が三つ目島(おれたちのしま)で負け越すなんてありえねえ!』
 巨体に相応した巨大なカトラス、斧。
 それらを手に、高められていくのは闘志、殺意それから――絶対負けないという"海賊の矜持"。
『"グリモア"持ちなんぞその辺の海へ繰り出しゃあ、今ならどこでもいるだろ!』
『殴りこんでぶんどるのも今となりゃありだ!』
 傷を怪我を負わされ続けのバルバロス兄弟から真っ向勝負という言葉は既に消えていた。結果的に勝てばいい。もうそれだけでいいのだと。
『だーからぁー……てめえは此処で討っていく!』
『三つ目様にゃあ用事が出来た、さあ帰って貰おうか!』
 三叉槍とモーニングスターを振るうフォーアームズ・ストームが吹き荒れる。
 巨人の腕の長さ、腕力それから相応な大きさの武器が加速するように命中箇所を探して、振り下ろされる様をただ男は冷静に判断して行うべき手段として、コードを発動する。
 ――先制攻撃コードの発動は確認した。
「I hope it should be now. Go beyond the worst.」
 突撃してくる大男と武器の嵐を受けるという言葉がシェフィーネスにはない。
 万物の創造物が、"今此処にあるべき"と適宜して盾や石壁を沢山並び立つ。
 シェフィーネスという海賊の、創造の気風は使い捨て前提での創造のわりには中々に豪奢な装飾が目立った。
 ただの大盾でも、平坦な石壁でもない。
 細々とした装飾がどことなく目を引くものだ。
 おそらくは、――彼の好ましいモノはああいうものなのだろう。
「さあ突っ込め」
『うらぁあ!!』
 命中した場所は破壊される。だが、シェフィーネスに命中したわけではない。
 壊した場所の奥にまた石壁、壊せば簡単なそれだが、数が多いと人は不快感を顕にする。
『うぜえ、おいハイレディン!やっちまえ!!』
『おう!」
 ギラつく獣の視線、ハイレディンの"オルキヌスの瞳"に魔力が集まるような気配と、三つ目の石柱が連動して力を増幅させていくような肌触り。
「……私も色んな眼(眼鏡や義眼)を所持済だが、貴様の瞳の能力は退化か」
 奪われたそれは、オルキヌスの眼だという。では玉(ぎょく)でこそあるが、メガリスではない。
「単なる眼としてだけに保持するならば三流。だが使い方次第で凶器ともなりえる事も体現したか」
 ――実に興味深い。
 ――退化と聞くとまず思い浮かぶものは弱体化。
 ――ただ弱めるだけのそれだと誰もが思うだろう。
『あいつ、ファンサービスが欲しいってよ!』
 兄オルチの笑いを横に、ハイレディンがシェフィーネスとその周囲に向けて放とうと高められていくエネルギー。
 シェフィーネスの目にもそれが目視できた。黄色のエネルギーの波動が、光量を上げて増大中だ。
 ――根幹に関わる退化。原始に返り咲かせる眼力。
 ――厄介な代物である事実はどうあっても揺らがぬ。
「その眼は何も見通さない。貴様は私を捉えていないが」
 素早く駆ける手に、二丁拳銃は握られている。
 ――私が引き金に手を掛けられている。
 ――敗けは無し。断言できる。
 その間も、空想の現の設置を続けているが、邪魔をするなら徹底的に。近くにザザザと砂地を泳ぐ巨体の動く音を耳に聞きつつ、石柱へ弾丸を手早く撃ち込む。
 ――壊した後の再生角度は、この辺りで十分。
 元通りの風貌を取り戻す石柱は"再生しか"取り柄のないものだと聞いていたからこそ、容赦なく破壊を行う。
 継続ダメージ入れ続け、ひび割れまで持ち込み準備は完了。
『いいや見えている!ハイレディンが見えてねえなら俺が見てる!――やれ!』
『最大威力で目覚めろ(おきろ)!吼え千切って、暴れまくれ!』
 黄色のエネルギーが戦場全体にぶち撒けられて、光源を全身に浴びてしまったサンドサーペントたちが"原始の魔獣"へと至って暴れだす。
『あ……トライデントとモーニングスターが!』
 暴れるサーペントが兄弟たちの武器を落とさせる。命令など聞かない野生の生き物を凶暴化させた罰だ。拳一つをとってもバルバロス兄弟は脅威だ。
 しかし、シェフィーネスの配置した大盾や石壁にサーペントは居場所を操作され、巨大化した魔竜は尽くバルバロス兄弟の側で挟まって、身動きが取りづらくなっている。先程までの小柄な姿からやや巨大化する蛇の身体は、折れる間際だった石柱にぶつかるだけで瓦礫の下だ。
 そんな勝手に変わっていく環境で、兄弟を徐々に窮地へと追い込んでいく。
『くそ、ハイレディン!俺達の足場まで蛇まみれにしてどうする!』
 どんなに暴れて苦しいんでも、もがいても暴れたいサーペントは凶暴の産物。
 ――場所も考えずの強制巨大化など、誰が許すか。
 シェフィーネスの策略に嵌められた魔獣化した蛇達は全身こそ動かなくても、長い舌が、長い尾がある。
『シャァアア!!』
「黙れ」
 大口を開けた蛇に、蒼炎を込めた呪殺弾を額辺りに着弾させて有言実行。いずれ内側から苦しみ暴れる間に蜂の巣へと至るだろう。蛇の長い身体を踏みつけて、勝手を振る舞う兄弟への終焉を届ける足掛かりとして死した獣は再利用。
「足場は蛇まみれ。詰んだな」
 直接撃ち込むべき狙いはジャストこの高さ。
 蛇の頭部からちょうどその角度が"丸裸"。
 バン――と二撃の射撃音。
 呪殺の蒼炎は巨人の兄弟からしたらとても小さな弾丸だっただろう。
 だが――胸に渦巻く野望ごと、心の臓が獄の炎上を受け入れてしまったならば。
 例え強いものでも胸の内を掴みだしてでも消し止めなければあとがない。
 消し止めても修繕できなければ意味がない。
 バルバロス兄弟は、ツギハギの身体から心臓を確かに掴みだして鎮火を試みた。
 既に遅し、呪殺が尽きるまでその炎は消え去ることはない。
「checkmate」

 "三つ目"の野望は此処で終わる。
 死因は――ただの実力と自分たちへの驕り。
 一つの体を共有するのではなく個々が孤高に戦わなった事がそもそもの間違い。
 双撃を来る二人組であったなら、話は多少違っただろう。

 だから銃の一発で"三つ目"という人生は此処に潰えることになったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月26日


挿絵イラスト