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羅針盤戦争~蒸気の中で汗が輝く

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #二の王笏島 #ネタですよ #筋肉

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●その名もマッスルダンジョン
「二の王笏島で、厄介なダンジョンが見つかった」
 集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)は何やら沈痛な面持ちで話を切り出した。
 二の王笏島。
 七大海嘯の王『カルロス・グリード』の8つある拠点の1つ。
 そこは『アルダワ魔法学園』の力を具現化したカルロスが、魔法装置『ダンジョンメーカー』を使った事によって、島全体が『罠だらけの蒸気迷宮』と化している。
「今回見つかったダンジョンの何が厄介かって言うと、罠なんだ」
 ルシルは珍しく溜息を零すと、話を続けた。

「なんかやたら運動させられる系の罠ばかり揃ってる」

 例えば、スクワット100回しないと出られない部屋とか。
 プランクを累計5分続けないと出られないとか。
 床がなく代わりに掴まる棒が幾つもあって懸垂で出口を目指せとか。
 鍵代わりのダンベルを10個、部屋の壁の窪みに嵌めろとか。

 そんな感じの、なんと言うか筋肉痛待ったなし系の罠ばかりなのだという。
「正直、人を選ぶダンジョンだと思う」
 普段から筋トレしてる系の人には、割と楽な部類かもしれない。
 そういう習慣のない人には――地獄とも思えるかもしれない。
 しかも、罠抜けて終わりではない。
 ダンジョンの奥には、奴がいるのだ。
 カルロス・グリードが。当然、倒さないといけない。
「しかもこのアルダワ形態のカルロスは、戦闘でもトラップを利用したユーベルコードを使ってくる。どんなトラップが出て来るかは――言わなくてもわかると思う」
 やっぱり運動させられる系なんですね、わかります。
「それが先制攻撃で飛んでくる。撃ち合いでは勝てない」
 だってカルロス、ピンピンしてる筈だから。
 少なくとも、奴自身は筋トレしてない筈だから。
「説明は以上だよ。このダンジョンに行くのなら、せめてこれを持って行ってくれ」
 ルシルが猟兵達の前に、水筒を並べる。
 中身は?
「スポーツドリンク」
 水分補給は大事ですね!


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 オブリビオン・フォーミュラーなのにネタ依頼ですよ。
 いいのかなー。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、『羅針盤戦争』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 二の王笏島。
 『アルダワ魔法学園』の力を具現化したカルロスと、彼が造ったダンジョンです。

 というわけで、今回のプレイングボーナスはこちら。

 【敵の先制攻撃ユーベルコードと「蒸気迷宮」に対処する。】です。

 OPで大体お分かりかと思いますが、ダンジョンの筋トレ系トラップの方の描写をメインにする予定でいます。
 どんな筋トレ系トラップに挑むか、希望のある方はプレイングで書いて下さい。推奨。
 特に希望が無かったら、こっちで適当に筋肉いじめます。
 取り敢えず一度は、汗が輝いてる状態になってもらいます。

 なお『元ネタ、アレだろ』ってお思いの方もいるかと思いますが、ほどほどにお願いします。
 あまり触れてると、適当にマイルドにするか人数次第では流れる事もあり得ます。

 とまあここまでネタっぽい説明でしたが、カルロスはオブリビオン・フォーミュラーですので、先制攻撃はされます。
 そこはきっちりします。
 ユーベルコードの撃ち合いでは普通に先に撃たれます。

 プレイング受付期間は、
 2/22(月)8:30~2/23(火)23:59までとさせて頂きます。
 今回も再送はせず、2/24の夜で書ける分だけの採用の予定です。

 なお、リプレイ完結すると、敵戦力削れる他、七大海嘯支配下の別な島をひとつ解放することになります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『『二の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    黄金なる王者
【背部に装着された魔導砲】が命中した対象に対し、高威力高命中の【連鎖するダンジョントラップ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ゴールデンレオ
いま戦っている対象に有効な【武装を生やした、機械仕掛けの黄金獅子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    スチームエンチャント
自身の装備武器に【罠と連動して威力を増す蒸気魔導装置】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※OPに書き忘れました。
ダンジョンメインというシナリオである事と、トラップの性質上、今回は『キャバリア禁止』とさせて頂きます。
七瀬・麗治
※()内は、闇人格ロードの台詞です
待たせたな!運動のことなら、オレに任せておけ。
(ふん、私を差し置いて王を名乗るとは許しがたい。処刑する!)
あの岩石回廊を乗り越えたオレに、不可能はないぜ!

滑車式人力エレベーターや、ルームランナー式コンベア床などの
障害を越えてカルロスの元に。
いくぜカルロス、覚悟しやが……ぶっ!
ガーゴイルの口から飛んできたのは、砲弾のごときサッカーボール!
テメエ、オレにサッカーで勝負を挑む気か!いいぜ、そっちがその気なら!
【筋肉こそ正義】発動、無敵の筋肉を想像から創造する!
(性懲りも無くそれか……)
オレの黄金の右脚で、カルロス目掛けてカウンターシュートを
蹴り込んでやるぜ!



●なんであれ、やる気があるのはいいことです
 ――運動のことなら、オレに任せておけ。
 マッスルダンジョン一番乗りは、意気揚々と乗り込んできた七瀬・麗治(ロード・ベルセルク・f12192)であった。
 その姿はいつもの黒スーツではなく、ジャケットもネクタイも外して、上は動き易く通気性もあるTシャツ一枚と、運動する気満々である。
 そして意気が高いのは、麗治だけではなかった。
(『ふん、私を差し置いて王を名乗るとは許しがたい。処刑する!』)
 彼の中にいる闇の人格――ロードも、七大海嘯の王たる『カルロス・グリード』に対する敵愾心の様なものを燃やしていた。

●理不尽トレーニング経験者
 麗治の前に現れたのは、一本の太いロープ。
 上は何処かに伸びていて、下は大人一人乗れるくらいの板に繋がっている。
「なになに? 滑車式人力エレベーター? 成程な。このロープを引いて、自力で昇って来いと言う事か」
 説明プレートを読んだ麗治は、柵もないただの板の上に乗りロープを引き始めた。
 両手で確りとロープを握っておいて、ロープを引き寄せる。麗治自身の体重と、板の重さを支えて、持ち上げる。
 必要になるのはロープを掴む握力と、引き上げる腕と肩の力。
 特に来そうな筋肉は、上腕二頭筋・三頭筋・三角筋・僧帽筋辺りになるだろうか。上半身の筋肉をを苛め抜くトラップを、しかし麗治は額に汗しながらも、途中で一度も止まる事もなく昇り切って見せた。

「む?」
 滑車式人力エレベーターを越えた麗治は、しばらく進んだところで足を止めた。
「トラップは一つではないのか」
 目の前に見えるのは、所謂、動く床。
 それも進行方向から後ろに向かって。
「ルームランナー式コンベア床……と言ったところか」
 呟いて麗治が周囲に視線を巡らせると、壁に刻まれた説明が目についた。

 ――21.0975キロメートルほど走れば床が止まる。

 ハーフマラソンの距離であるが、普通、マラソンで床は動かない。
 逆向きとなれば、負担は実際の距離より大きい筈だ。
「この程度、何の問題もない」
 麗治は躊躇うことなく動く床に飛び込んで、走り出した。

 ――今から9ヶ月ほど前。
 麗治はこことは違う世界で、超重力が発生している上に岩が転がって来るという特異な地形を乗り越えた。
 その超重力地帯でトレーニングして、身体を鍛える事で。
「あの岩石回廊を乗り越えたオレに、不可能はないぜ!」
 超重力に比べれば、動く床くらい恐れるものではない。

●ゴールデンムテキンシュート(仮)
「どうだ、越えてやったぞカルロス」
 腕に続いて脚。
『うむ。見事であった。来るがよい。我はその道を真っすぐ来た先だ』
 容赦なく筋肉をいじめて来るトラップを越えた麗治の呟きに、伝声菅を伝って来たカルロスの声が届く。
「余裕かましやがって」
 高を括ってそうなカルロスの声に苛立ちを覚えながら、麗治はダンジョンの最後の部屋に飛び込んで――。
「覚悟しやが――」
 ドォンッ!
 麗治の声をかき消す程の、轟音。
「ぶっ!」
 それが何かの発射音であると気づいた瞬間、麗治の顔面に何かがぶつかった。

 それは、麗治にとって懐かしい衝撃だった。
(「そうだ。オレはこの衝撃を覚えている。これは……」)
 麗治の中に、過去の記憶がよみがえる。
 それはまだ、麗治の中にロードも生まれる前。
 UDCなんて存在を知らない、サッカーの名門校にいた頃だ。とある試合で、キーパーが裏をかかれてゴールに決まりかけていたシュートを止められるのは、麗治だけだった。
 キーパーでなければ、手は使えない。だから麗治は必死に走って――止めた。
 顔で。シュートを。

「っ!!!」
 倒れるか否かという所で、麗治が踏みとどまる。
 同時に、脳裏に甦った光景と同じ様に、脳に届いた衝撃で意識が飛びかけていたと言う事を認識した。
 足元には、衝撃を合立てた物体――サッカーボールが転がっている。
「テメエ、オレにサッカーで勝負を挑む気か!」
『このトラップが良い気がしたのでな』
 麗治が張り上げた声に返ってきたのは、淡々と喋るカルロスの声と、その周りに並んだガーゴイル像の口から放たれた、2発目のサッカーボール。
「いいぜ、そっちがその気なら――!」
 迫るサッカーボールに対し、麗治は、動かなかった。
「フン! ムン!」
 バァンッ!
 空気が弾ける音が響いて、ボールが跳ね返る。
 麗治は、微動だにしていなかった。その身体は、ほんの数秒前まで麗治になかった筋肉に覆われている。

 筋肉こそ正義――マッスル・イズ・ジャスティス。

 無敵の『筋肉』を想像から創造する業。
「これぞ無敵の筋肉……略してムテキン! どうだ! 恐れ入ったか!」
(『性懲りも無くそれか……』)
 脳裏に聞こえるロードの呆れたような声を軽くスルーして、麗治は放たれた3発目のサッカーボールを無敵の大胸筋でトラップして、膝で軽く打ち上げる。
「くらえ――オレの黄金の右脚の一撃を!」
『な、なに!?』
 麗治が放った渾身のシュートは、さっきやられたお返しとばかりに、カルロスの顔面に見事にぶち当たっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

不知火・鉄馬
なんつーか…自分だけやらねぇってのも卑怯だよな

これでも元々スポーツやってた
どんな罠も【気合い】で乗り越えてやるよ

着痩せするタイプのため見た目はモデル体型だが
普通の懸垂やダンベル程度なら余裕でこなす
指一本で逆立ち懸垂くらいでちょっとキツいか?
んだよ★シエン乗るんじゃねぇよ
俺は乗り物じゃねぇっつの

先制は…カウンターとしてならUCいけんのか?
グローブの魔法陣から【早業】で取り出した★閃雷をぶん投げ
雷の【属性攻撃】により相殺
押し返しまで狙えるようであれば【マヒ攻撃】で感電
または【指定UC】でシエンに食わせ

俺らだけじゃ不公平だ
テメェも筋トレしやがれ
その間に直接雷攻撃

龍の体力嘗めてたのが敗因だな



●鍛え方が違う人
 ゴゴゴゴゴ……!
 不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)の後ろで、扉が重たい音を立てて閉まる。
「いよいよ罠のお出ましか」
 来るなら来いと待ち構える鉄馬の前で、床が開いて台座がせり出してきた。
 上に乗っているのは、幾つものダンベル。
 床と同時に壁も開いていて、ダンベル型の窪みが同じ数だけ並んでいる。
「ふーん。嵌めろってか」
 2kgから始まって、20kgまで。
「普通だな」
 それらのダンベルを、鉄馬は全て片手で持ち上げて軽々と壁に嵌めていった。
 ゴゴゴゴゴ……!
 再び重たい音が響いて、入ってきたのとは別の扉が開く。
「まさかこれで終わり……」
 鉄馬はすぐに踏み込まず、扉の向こうを覗き込んでみる。
 すると、また似たような部屋が広がっているのが見えた。
「ま、そんなわけねぇよな」
 苦笑交じりに呟いて、鉄馬は今度こそ躊躇なく次の部屋に入って行く。

「来いよ。どんな罠も気合で乗り越えてやるよ」
 ズンズン部屋の真ん中に進んでいくが、先の部屋の様に何かが床から出てくると言う事はなかった。
 代わりに、既に準備は整っているようだ。
 部屋の中央付近にある、此処に両手を着けと言わんばかりの手のマーク。その上には、引っ張れと言わんばかりのT字型の棒が逆さまにぶら下がっている。
 だが、手を下に着けと言うのなら棒はどうやって引けと言うのか。
「なになに……逆立ち腕立て伏せで棒を引け? 100回?」
 手ではなく、足を引っかけるための棒のようだ。
 いきなり難易度を上げてきた、運動トラップ。
「よっと」
 しかし鉄馬はこともなげにマークの上に手をついて、ひょいと逆立ちしてみせた。
 更に棒に足をかけて、肘を曲げて身体を上下に動かし始める。
「これをあと99回か……ま、何とかなるだろ」
 そもそも何の支えもないところで逆立ちをすること自体、常人に軽くこなせるものではない。ましてそのまま、腕立て伏せなどと――。
 だが鉄馬は、その運動も軽くこなしていた。
 鉄馬の外見はモデルでもしてそうなものだが、服の下は中々どうして、相当に鍛えられた身体が隠れている。所謂、着痩せして見えるタイプだ。
『ギャ?』
 同じ動きを繰り返している鉄馬を遊んでいると思ったか、濃紫の巨大槍でもある金眼の紫龍『シエン』が、背中に飛び乗ってきた。
「んだよシエン。乗るんじゃねぇよ」
 遊んでいるんじゃない――そう言っても、シエンは背中から降りない。
「ったく……俺は乗り物じゃねぇっつの」
 ぼやく鉄馬だが、シエンの重みが背中に加わっても、逆立ち腕立て伏せのペースは落ちなかった。

●筋トレ返しと雷斧
『……汝、凄いな』
 罠部屋を越えてきた鉄馬を見たカルロスの第一声が、それだった。
『逆立ち腕立て伏せして、何故そんなケロっとしている』
「それなりに疲れちゃいるぜ」
 カルロスの驚嘆を、鉄馬は口の端に笑みを浮かべて受け流す。
「ま、指一本で逆立ちしてあれやれって言われたら、ちょっとキツかったな」
『……そうか。汝の様な者もいるのでは、トラップのレベルを見直さねばならぬな』
 腕を組んだカルロスは、鉄馬の顔を見て真顔で告げる。
『それはそれとして、そんな汝なればこそ、容赦はせぬ!』
 カルロスの背中の魔導砲が、いきなり火を噴いた。
「来やがったな!」
 それを見た鉄馬は、魔法陣の中に手を突っ込んで、引き抜いた。
 取り出したのは、柄以外が雷で生成された斧――名を閃雷。
「っらぁ!」
 魔導砲から放たれた光を、鉄馬は『閃雷』で受け止める。
(「ちっ……思ったよりも疲れてるのか」)
 鉄馬は、『閃雷』で受け止めるのではなく、投げて相殺するつもりだった。だがカルロスの砲撃の方が速く、止めるのが精一杯だった。
 罠で動き続けた身体は、少なからず疲労があったか。
(「けど、問題ねぇ。この程度なら、このまま押し返しても――」)
 ぐっと腕に手を入れた鉄馬の頬に、何かが触れる。
 まだ背中に乗ったままのシエンが、何か言いたげに鉄馬の方を見ていた。
「よし――シエン、食え!」
 鉄馬が声を上げると、シエンが肩から乗り出して――口を開く。その口に、カルロスの放った光が吸い込まれて消えた。
『なに――食っただと?』
「なんつーか……自分だけやらねぇってのも卑怯だよな」
 驚くカルロスに、鉄馬が低い声で告げる。
『なんの話だ』
「筋トレだよ。俺らだけじゃ不公平だ。テメェもしやがれ」
 鉄馬は光を吸い込んで口を開いたままのシエンを、カルロスの方に向ける様にして両手で掲げた。
「テメェの得意技、そっくりそのまま味合わせてやるよ」

 飛龍・鏡反。

 シエンが食った敵のユーベルコードを、短時間、シエンの口から放つ業。
『な、なにぃ!?』
 驚くカルロスを、光が撃ち抜く。
 その光に反応して、強制逆立ちトラップが発動した。
 ――カルロスに。
『しまった! これは逆立ち腕立て伏せ100回しないと解けないやつだ』
「へー。まあ頑張れよ」
 仕方なく逆立ち運動を始めたカルロスの真横に、鉄馬が立つ。
 その手に、『閃雷』を持って。
『お、おい。ちょっと待て――』
「待たねぇ!」
 雷斧の一撃が、カルロスに容赦なく叩き込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨咲・ケイ
一体カルロスは何を思って
こんなダンジョンを造ったのでしょう?
聞かずにはいられません。

私は日々欠かさず鍛錬を行ってはいますが、
筋トレ自体はちょっと専門外ですねえ……。

【SPD】で行動。

むぅ、私の苦手な懸垂のトラップですか……。
挑戦する前に専門書を読んで【学習力】で
コツを学んでおきましょう。
トラップを抜けたら水分補給を忘れません。

敵の先制攻撃は【オーラ防御】と【盾受け】で防ぎ、
銀霊縛鎖を黄金獅子に【投擲】して【捕縛】します。
先制を凌いだら【天霊回宝輪】を使用して、
【衝撃波】で黄金獅子を破壊。
カルロスは【グラップル】による接近戦で
一気に攻めましょう。

アドリブ歓迎です。



●来るなと言うと来るってあるよね
 雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は、日々の鍛錬を欠かした事はない。
 かつて己の弱さを克服し、強くなるために門を叩いたあの日から
 ただそれは、古武道の鍛錬だ。
「筋トレ自体はちょっと専門外ですねえ……」
 身体を造るトレーニング、と言う意味では筋トレの類をしたこともなくはないが、そればかりをしているわけではない。
 どうか苦手な類がこない様に――。
 そう願いながら、ケイはマッスルダンジョンに踏み込んだ。

 往々にして、そうした願いはかなわないものである。

「これは、どう見ても……」
 ケイが踏み込んだ部屋には、扉の向こうには僅か1m四方程度の床しかなかった。
 周りを見れば、壁にいくつもの棒が伸びている。良く見るとその最初の一本は扉のすぐ上から伸びていて、徐々に高い位置へ移動している。
 床がなく、壁には掴まりやすそうな棒。
 掴んで昇って来いと言わんばかりである。
「むぅ……私の苦手な懸垂のトラップですか……」
 力なく呟いたケイの背中で、扉がひとりでに閉じた。
「成程。もう進むしかないわけですね」
 退路を断たれたとあっては、進むしかない。
 だが――幸い、この唯一の床までは崩れたりしないようだ。
 ならば、ケイがやるべきことは一つ。
「時間をかけても大丈夫なら、先ずは勉強しましょう」
 こんなこともあろうかと持ってきた、代表的な筋トレの手順書である。
 トレーニングには大抵、正しい姿勢や正しい道具の持ち方などがある。それを知っているのと知らないのでは、疲れ方も効果も違うものだ。
「懸垂……いや、移動するなら雲梯ですかね」
 パラパラと、ケイの手が手順書を捲る。
「ふむ。この場合は腕力と握力ですか。確かに落ちたら大変ですしね」
 一通り読み終えると、ケイは本を閉じ、確かめる様に二度、三度と己の拳を握って開いてを繰り返す。
「よし。行きます!」
 そしてその場で軽く跳躍すると、最初の棒を掴んで――すぐに2つ目、3つ目と、ひょいひょいと掴む棒を変えて昇って行った。

●カルロス・グリードも苦労はある
『来たか……良い雲梯だった。汗が輝いていたぞ』
「……はぁ」
 最奥の部屋に辿り着くなり『カルロス・グリード』の口から飛び出した賛辞に、ケイが思わず目を瞬かせる。
『だがそれはそれ。疲れた体で黄金の獅子の餌食になるがいい! ゴールデンレオ!』
 カルロスの隣に、機械仕掛けの黄金の獅子が降って来る。
 その口がカパッと開いて、内臓砲台から何かがケイに向かって放たれた。
「っ!」
 咄嗟に反応したケイが、何かを拳で叩き落す。
「これは……ゴム弾?」
『そうだ。そして連射式でもある』
 訝しむケイにカルロスが答えると同時に、獅子の口から次々とゴム弾が放たれた。
「くっ! はっ! ふっ!」
 ケイはそれを拳で、肘で、腕で叩き落していく。
(「何とか防げるけれど、高い打点ばかり……そういう事ですか」)
 胸中で呟いたケイが気づいた、カルロスの狙い。
 獅子の口の中の砲台から放たれるゴム弾は、全てケイを狙っているが、より細かく正確に言えば『ケイの上半身』を狙っていた。
 腕ならば叩き落とせるが、蹴りで全てを落とすのは不可能に近い高さ。
 懸垂と雲梯で腕を酷使したケイに、さらに腕を振るわせるための武器。
「なんとか……凌ぎ切りましたか」
 ゴム弾が尽きた時、既に疲弊していたケイの両腕は、筋肉に細かい震えが出ていた。それを隠して、ケイはカルロスに問いかける。
「何を思って、こんなダンジョンを造ったのですか」
 足止めと言う目的はわかる。
 だがその為なら、こんな強制運動などとまどろっこしい事をしなくてもいい筈だ。
『汝に妻はいるか?』
「――は?」
 しかしカルロスから逆に返ってきた質問にケイが思わず目を見開く。
『良い。その反応で大体わかった。汝も機会があったら、放っておくと無限に増え続ける伴侶を持ってみると良い。色んな意味で、体力の大事さを痛感するであろう』
「あー……ええ、と……」
 予想外の方向から真面目に返ってきた答えに、ケイが言葉を失う。
『まあ他にも理由はある。五の王笏島の我の様に、竜の鎧を纏う事もいるとなると、身体を鍛えておいて損はしないものだからな』
 カルロスなりに、考えてはいるようだ。
『さて。もう良いか? のんびりと歓談する間柄でもあるまい』
「そうですね」
 カルロスの言葉に頷いて、ケイは深く息を吸い込んだ。
 疲労の溜まった腕を使わずとも、戦う術ならある。
 天霊――武器として使えるまでに練り上げたケイのオーラ。
 その力をさらに高める業がある。

 天霊回宝輪。

 3倍にまで高められた天霊のオーラの輝きがケイの全身を包み込んだ。
 その輝きを、ケイは己の両足に集中させておいて、身を沈めて足を払う。
『ガ!』
 間合いの外からの足払い。地を這う衝撃波が、黄金の獅子の足を払って転倒させる。
『なにっ!?』
「我が力の奔流……、その身で受けてみますか?」
 驚くカルロスに、オーラを纏ったケイの飛び蹴りが綺麗に叩き込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

運動トラップ?
どんなのだろ。楽しみだね!(野性児は興味津々)

蒸気は熱いから、急に噴き出すと……わわ!
(狭い道でリズムゲームよろしく高低で噴き出す蒸気)
よっしゃー、ひょいほいひょい、りんぼー!

おー、蒸気の川だ。
あれ。あのお椀と柄杓?
一寸法師すればいいってコトかな?
(カヌーの要領でばっしゃばしゃ)
ん、棒術も鍛えてきたからね♪ っと、ひゃー!(飛ばされ)

黄金獅子ロボだ!
それなら、おいらは妖怪コケコッコーで!(メダルかざし)
メダル貼り付けるまでがマッスルだよね!(羽交い絞め)

ふー。獅子はたまこ&メカたまこに任せて。

カルロス!
筋肉はね、裏切らないんだって!(ダッシュ&正拳)


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

ぎゅっぎゅと準備体操
何、まつりん
トラップ、そうね…どんな罠であろうと、わたしは怪力で仕留め、怪力で破壊し、怪力で鍛える
見てて、わたしの成長具合を

大岩を持ち上げ、蒸気の噴き出し口をがこんと塞ぎの上腕マッスル
岩をジャンプし、りんぼー

川、お椀に片足立ちしバランス運動ん、れっつごー
…はっ、この先は滝
まつりんをむんずと掴み投げ、軸足をバネにしてジャーンプ!

……ふう

んむ?カルロス…(忘れてた顔)
ん、かもん。どんな罠でも受けて立つ

【どれすあっぷ・CBA】
マッスル服を身に纏いマッスルポーズ
汗落ち防止のバンダナも忘れずに(きゅっ)
搭載された装置は怪力で握り潰すを狙っていく



●怪力100は今回の怪力ナンバー1
「1、2……3、4」
 マッスルダンジョンの入り口に、リズムを取る声が響いている。
 リズムを取っているのは、木元・杏(メイド大戦・f16565)だ。ただいま、ぎゅっぎゅと身体を曲げたり、ぐいーっと身体を伸ばしたり、準備運動真っ最中である。
 激しい運動の前の準備運動は、大事だ。
「ねえ、アンちゃん」
 隣で同じリズムで同じように身体を動かしながら、木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)が杏に声をかける。
「何、まつりん」
「運動トラップって、どんなのだろ。楽しみだね!」
 この野生児、運動トラップだろうが楽しむ気満々である。
 一方、そんな興味津々な祭莉とは対照的なものが、杏の瞳に燃えていた。
「トラップ、そうね……どんな罠であろうと、わたしは怪力で仕留め、怪力で破壊し、怪力で鍛える」
 杏の中にあるのは、情熱だ。
 どんな障害も、力で越えてやろうという心意気。
「見てて、わたしの成長具合を」
 ぐっと拳を握って、杏は祭莉に頷く。
 カルロス・グリードも考えもしなかっただろう。
 まさかこの小さな拳に、今回、このダンジョンに入ってきた猟兵の中で最大の怪力が秘められているなんて。

●リズムorパワー
 最初に2人の前に現れたトラップは、他の猟兵達の前に現れた趣が違っていた。
 まず、空間が部屋ではない。2人並べない程度の狭い通路が真っすぐに続いている。そして道中の壁からは、蒸気が勢いよく噴き出していた。
 出続けているのもあれば、時折消えて、そうかと思うとまた噴き出すのもある。
 それが熱い蒸気であるのは、赤熱した噴き出しが物語っていた。
「飛び越えて、潜っていけって事かな?」
「そうみたい」
 首を傾げる祭莉の隣で、杏がこくりと頷く。
「よっしゃー! じゃあ、おいらから行くね」
 言うが早いか、祭莉は蒸気の道へ迷わず飛び出した。
「ひょい、ほいっ、ひょいっ」
 野生の勘で蒸気の噴き出す気配を察して、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、祭莉は蒸気の道をどんどん切り込んでいく。
「らすとは、りんぼー!」
 リンボーと言うよりスライディングの勢いで、跳び越えるには微妙な高さの蒸気の下をくぐって、祭莉は蒸気の道を突破した。
「アンちゃーん。そんなに長くないよ!」
 蒸気の向こうの杏に向かって、声を張り上げる。
 しかし杏は、祭莉と同じように攻略する気など、欠片もなかった。
「……」
 いきなり壁にある何かの管を両手で掴んで――。
「よいしょ」
 ベリベキベキバリベキャベキッ!
 何と力ずくで、壁を引っぺがした。
「むん」
 ガッシャァン!
 そして引っぺがした壁を先の壁に叩きつけ、蒸気の噴き出し口を壁ごと塞ぐ。
「よし」
『良くない。待て』
 杏が進もうとしたところに、どこからか声が聞こえた。
『カルロス・グリードである。汝、我がダンジョンを破壊する気か』
「蒸気を塞ぐ大岩くらい置いてない方が悪い」
 流石に待ったをかけてきたカルロスの声を無視して、杏はその声が聞こえる伝声菅を掴んで――。
『だから待て。これは腕力で解決させようとしたトラップではな――』
「これは上腕マッスルだから、オッケー」
 ベリベキベキバリベキャベキッ!
 ダンジョン製作者の意向をまるッと無視して、杏は力ずくで蒸気を塞ぎながら、悠々と蒸気の道を進んでいった。
「りんぼー」
 最後の蒸気だけ、下をくぐって。

●蒸気の川の先
 次に2人の前に現れたのは、蒸気しかない道だった。
 チャプチャプと揺れる水音が、蒸気の下に聞こえていた。
 どうやら蒸気で隠れているが、ここから先は水路になっているようだ。
「おー、蒸気の川だ。泳ぐのかな?」
 泳いでも行けなくなさそうだが、祭莉が周りを見回してみると、蒸気に半ば埋もれる様にして何かが浮かんでいるのが見えた。
「これって……あのお椀と柄杓?」
 祭莉が見つけたそれは、丁度2人が入れそうなお椀の様なもの。柄杓は、オール代わりと言う事だろう。
「一寸法師すればいいってコトなら、おいらにおまかせ! アンちゃん、乗って♪」
「ん。れっつごー」
 ひょいっとお椀に乗り込んだ2人を乗せて、お椀は蒸気の水路を進み出した。

 ばっしゃ、ばっしゃ、と水をかく音が規則的なリズムで響いている。
 祭莉がオール代わりの柄杓で、せっせと水をかいている音だ。
「まつりん、良いペース」
「ん、棒術も鍛えてきたからね♪」
 音のリズムが崩れないどころか、祭莉は水をかく毎に、柄杓で水を捉えるコツを掴んでいた。徐々に、お椀の進むスピードが上がっていく。
「ところで、アンちゃんのそれはなーに?」
「バランス運動」
 出る幕がないので、杏が片足立ちするヨガのポーズを取っていられるくらい余裕だ。

 だが、お忘れではなかろうか。
 これはトラップなのだ。
 ただ一寸法師よろしくお椀で進めばいいと言うだけある筈がない。

 ――――――ドドド。
「ん? 今何か聞こえたような……」
 何かに気づいた杏が、軸足を変えながら向きを変える。
 ――……ドドドドドッ。
 聞こえた気がした音は、気のせいではなかった。
 激しく聞こえる水の音。
 似た音を、何度か聞いたことがある。
 水が高い所から落ちる時に、こういう音が聞こえるのだ。
 つまり――。
「この先は……滝」
 杏が気づくと同時に、蒸気が薄くなった。流れ落ちる滝に吸われているのだ。
 だがそのおかげで、滝の上にある扉が見えている。
「まつりん、飛び移るよ」
「へ?」
 杏は祭莉の襟首を掴むと、返事も待たず――ぶん投げた。
「ひゃー!」
「とーうっ!」
 投げられ飛んでく祭莉を追って、杏もお椀を蹴って高く跳躍する。
「びっくりしたー」
「……ふぅ」
 無事に高い所にある扉の前に辿り着いた2人の後ろで、真っ二つに割れたお椀が蒸気と一緒に滝に吸いこまれていった。

●幼き破壊の使者
『来たな……』
 扉の向こうで待っていたのは、なんだかお怒りな感じな表情のカルロスだった。
「んむ? カルロス……ああ」
 そう言えばいるんだった、みたいな反応する杏。
 忘れないであげて。
『我のダンジョンを破壊した挙句、その顔……許さん!』
「ん、かもん。どんな罠でも受けて立つ」
 やっぱりお怒りらしく問答無用な感じのカルロスから目を逸らさず、杏が身構える。
『ゴールデンレオ&スチームエンチャント!』
 今回は最初っから蒸気魔導装置を搭載した機械仕掛けの黄金の獅子が、カルロスの真横に現れた。
「黄金獅子ロボだー!!」
 その姿に、祭莉が興奮した声を上げる。
 それと同時に、黄金の獅子の身体と戦場のあちこちから、蒸気が噴出した。

 ――瞬間。
「「っ!?」
 黄金の獅子が2人の目の前から消えて、祭莉も杏も吹っ飛ばされていた。
『蒸気罠とぶつかる反動を利用した蒸気加速装置搭載モードの、スピード仕様のゴールデンレオだ。汝らが破壊した罠の応用編という所だな』
 カルロスの声が、蒸気の向こうから聞こえる。
 蒸気の道を破壊されたの、根に持ってたのだろうか。
「そっちがスピードなら、わたしはクールな女」
 ザァァッ。
 どこからか風が吹いて、風に乗って流れてきた桜の花びらが杏の姿を覆いつくす。
「ふんす」
 舞い散る桜の中から出てきた杏は、マッスル服姿になっていた。
 マッスルポーズを決めてから、汗落ち防止のバンダナをぎゅっと額に結ぶ。
 くーるびゅーてぃー杏・マッスル仕様と言ったところか。

 ……。
 くーるびゅーてぃーとは。

「行くよ、まつりん」
「いつでもオッケー!」
 慣れてる祭莉は何も言わず、杏が伸ばした手を掴む。
 そして桜の花弁を纏った杏は、祭莉を引いて飛び出した。
『???』
『ゴールデンレオより速いだと!?』
 驚くカルロスを尻目に、2人はこちらを見失った黄金の獅子の上に飛び乗った。
「そっちが黄金獅子なら、おいらは妖怪コケコッコーだ!」
 ぱしーんっ!
 祭莉が黄金獅子の背中に貼り付けたのは、妖怪コケコッコーメダル。
 その瞬間――戦場の空気が、冷えた。
『な、なんだ』
 カルロスの背中を、何かがぞくっと走る。
 噴き出す蒸気の中に、幾つもの鋭い眼光がギュピーンと輝いていた。

 ――コケーッ!
 ――コケッコー!
 響いた鳴き声は、恐怖による征服――パクス・タマコ。

 殺意マシマシのたまことメカタマコが、黄金の獅子に群がり嘴を突き立てる。
『ガ、ガァ!?』
「これが蒸気装置……ふんす!」
 ベキッメキキメキメギャッ。
 たまこ&メカタマコの猛攻で傷だらけになっていく黄金の獅子の背中の上で、杏が蒸気魔導装置を片っ端から握りつぶして回っていた。
「ふー。獅子はアンちゃんと、たまこ&メカたまこに任せてよさそだねっ」
 ここは大丈夫だろうと、祭莉は黄金の獅子の背中から飛び降りる。
 そして床を蹴って、カルロスに真っすぐに向かって行った。
『なんだ……何だこれは……はっ!?』
 黄金の獅子が壊されていく光景に呆然としていたカルロスが気づいた時には、拳を固めた祭莉がすぐ目の前にいて。
「カルロス! 筋肉はね、裏切らないんだって!」
 祭莉の正拳突きが、カルロスの鳩尾に突き刺さる。
『こ……この破壊魔ども、め……』
 カルロスが膝をつくと同時に、黄金の獅子もガラガラと崩れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
体力には自信がある……そう思っていた時が私にもありました
さっきは懸垂、今度はスクワットを……ええと今何回だっけ?

あ、やばい、カルロス……(息切れ)

レオ、ライオン相手には
アイテム「沈滞の投網」・「陸生珊瑚の浮遊卵」
投網でライオンを拘束し、その間に口に浮遊卵を入れる
卵が膨らんで口が閉じれなくなれば、闇雲に暴れるだけさ

さて、カルロス王よ! 筋トレして汗を流してもらおう!

アイテム「C式ガジェット」
UC「ガジェットショータイム」

いつもはタコ型だが、密閉式のルームランナーに変身してカルロスを襲え!
10km走るまで攻撃は受けないが、脱出もできないぞ!
さぁ、トレーニングしよう!
ははは、なぜか私も走るよ!



●探検家、頑張る
「体力には自信がある、かぁ……そう思ってた時が私にもあったなぁ」
 踏み込んだダンジョンの奥で、ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)はもう何回目なのかわからなくなったスクワットをしながら、そんな後悔を口に出さずにはいられなかった。

 ゲニウスは探検家である。
 自分でそう気取っているだけだが――それでも、探検家を気取るだけの努力はしてきたつもりだ。
 探検家に必要な体力は、あると思っていた。
 だがゲニウスの目は、既に疲労で虚ろになっていた。

 ここは2つ目のトラップ部屋。
 前の部屋では、ゲニウスは懸垂をひたすらやらされた。
 ご丁寧に懸垂する場所以外の足場がなく、懸垂の回数に応じて出口まで続く足場が現れるというスルー出来ない仕様だった。
 多分、100回くらいやらされただろう。
 その次が、このスクワット部屋である。
「……ええと。今何回だっけ?」
 スクワットの回数がわからなくなっていたことに気づいて、ゲニウスの瞳が更に虚ろになった。今の回数がわからないと言う事は、あと何回繰り返せば終わるかも、わからないと言う事だ。
 終わりの見えない苦行は、中々精神に来る。額を流れる汗を拭う事も忘れ、ゲニウスはひたすら膝を曲げて伸ばしてを繰り返した。

 扉が開いたのは、それから50回ほどスクワットをした後であった。

●探検に求めるもの
「つ、次は……なんだ……」
 息切れしたゲニウスの声が、他に誰もいない通路に響く。
 懸垂で、腕――主に上腕二頭筋と三頭筋腕を。
 スクワットで脚――主に大腿四頭筋や内転筋を。
 それぞれやられて、既に軽くプルプル来ている手足を引き摺りダンジョンの奥へと進んだゲニウスの前に――それは現れた。
『よく来た。汝の汗、輝いていたぞ』
 どっかのトレーナーみたいなことを言っている、カルロスが。
『そこに我は追い打ちをかける。来い、ゴールデンレオ!』
「あ、やばい……」
 カルロスの声に応えてその傍らに現れた機械仕掛けの黄金の獅子を見て、ゲニウスは危険を感じて動こうとする。
 立っているだけでは良い的だ。
 だが――疲れた手足は、いつものように動いてくれない。
 黄金の獅子が口を開いて、中に生えている武装が何かを撃ち出した。
「くっ!」
 せめてダメージを減らそうと身構えたゲニウスの前で、黄金の獅子が撃った弾丸が空中で弾けて――黄金が散らばった。
「ん?」
 散らばったのは、金貨だ。
 大量の金貨が、ゲニウスの前に降って来る。
『汝、その出で立ちは探検家の類であろう。そういう者は、金に弱いものだ』
 誰も知らない迷宮を踏破し、奥に隠されていた金銀財宝を得る。
 そうしたものを夢見る探検家もいるだろう。
 ゲニウスだって、考えたことがなかったわけでもないかもしれない。
 だが――。
「家が没落したばかりの頃の私だったら、目を輝かせていたかもしれないね」
 ゲニウスが探検家を気取って夢見ているのは、探検記の出版だ。
 誰も見たことがない景色を見たい――それだけだ。
『む。何故平気な顔をしているのだ』
「さてね」
 訝しむカルロスの声に小さな笑みを浮かべて、ゲニウスは何かを投げる。
 空中で広がった網が、黄金の獅子に降って絡みつく。
『ゴールデンレオよ。そんな網、引きちぎってしまえ!』
 カルロスの声で黄金の獅子が動き出す。
 だが、ゲニウスが投げた網はただの投網ではない。古代遺跡で見つけた、自動修復能力を持つ謎の金属繊維の投網だ。
『ゴァッ? ゴォォァァァ!』
 黄金の獅子が暴れて網を引きちぎっても、ちぎれる傍から網はくっついていく。
「それを待っていた!」
 そして咆哮を上げた黄金の獅子の口に、ゲニウスは『陸生珊瑚の浮遊卵』を投げた。
 陸生珊瑚の卵は、水蒸気を吸って膨張し、浮遊する。蒸気機関を動力とする黄金の獅子の口の中は、珊瑚の卵にとってとても膨張しやすい環境だ。
『グゴゴゴゴッ』
 膨れ上がった珊瑚の卵が、黄金の獅子に口を閉じさせない。
「さて、カルロス王よ! 筋トレして汗を流してもらおう!」
 黄金の獅子が復活してくる前に、ゲニウスは畳みかける。タコ形態の『C式ガジェット』を手に取ると、カルロスに向かってぶん投げた。

「密閉式のルームランナーに変身してカルロスを襲え!」

 ゲニウスの声に従い、『C式ガジェット』が巨大化しながら立方体に形を変えて――カルロスをその中に飲み込んだ。
 何故か、ゲニウスも一緒に。
『これは……ルームランナーか』
「そうだよ。10km走るまで攻撃は受けないが、脱出もできないぞ!」
 ガジェットショータイムで変形した『C式ガジェットルーム』と言うべき空間で、ランニングマシンを挟んでカルロスとゲニウスが睨み合う。
「さぁ、トレーニングしよう!」
『良かろう。10kmくらいなら容易い』
 そして、何故か2人並んでランニングマシンの上を走り出した。
「ははは、なんだこれ」
 なんだこれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高柳・零
アインさん(f15171)と
WIZ
自分は聖騎士なのでそれなりに鍛えてますよ。

えーと、腕立て…1000回で開く扉!バカじゃないですか⁉︎
仕方ないのでやりますが…テレビウムは頭の比率が大きくため、シーソーのように前に傾きガンガン頭をぶつけます。
「やっと…終わりました。前が見えにく…画面にヒビが!」

カルロスのUCはオーラを全力でドーム状に張り、少しでも自分とアインさんへの影響を減らします。そしてUC使用
「く、これでも腕立て一万回の刑とは…流石フォーミュラ」

腕立てへの対策に空中浮遊で頭を浮かせ軽くします。そしてコピーしたUCをアインさんとタイミングを合わせて使用
「今度はそちらが腕立てをする番です!」


アイン・セラフィナイト
零さん(f03921)と。

…ボク精霊術士なんだけど、選択を間違えたんじゃ?

基礎体力ないと戦いなんてできないからね…そういうことにしておこう。

腕立て伏せ、『境界術式』の魔導書から自己強化の魔法(全力魔法・多重詠唱)を重ねがけをするよ。

零さんが頭ぶつけてる…だ、大丈夫?

黄金獅子、でも機械か。『境界術式』から強烈な電撃と電磁波を放つ『属性攻撃』の魔導書を召喚、機能不全に陥らせてみようか。

UC発動。カルロス自身が居座る迷宮なんだから、もちろん、そっちも運動してもらわないと割に合わないよね?…ね、カルロスさん?

コピーするUCはカルロスの『スチームエンチャント』。腕立ての辛さ、分かってもらうからね!



●ここだけ難易度爆上げ特別コース
 ゴゴゴゴゴ……!
 マッスルダンジョンの一室に高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)とアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)が踏み込むと、2人の後ろで扉が重たい音を立てて、ひとりでにしまった。
「閉じ込められたか。どんなトラップが来るのやら……」
「なに。何とかなりますよ。自分は聖騎士なので、それなりに鍛えてますからね」
 やや緊張した面持ちで辺りを見回すアインに、零が自信に満ちた声で返す。頭部のモニターには『(*^▽^*)』な顔文字が浮かんでいた。
 2人で部屋の中を見回すと、出るための条件と思しきものはすぐに見つかった。
「あそこ、何か書いてある」
「えーと、腕立て伏せ100回? そのくらいなら軽いですね!」
 アインが指さした壁を見た零の心の中に、さらに余裕が生まれる。
「いえ、零さん……100回じゃないよ」
 だがアインは壁を指さしたまま、声を震わせていた。
「?」
 その声に首を傾げて、零も壁に書かれた文章を見直す。

 そこには確かに『腕立て伏せ100回』と書かれている。
 だが――それで終わりではなかった。
 その後に『×』の記号と『10セット』と続いている。
 つまり。
 腕立て伏せ100回×10セット=腕立て伏せ1000回!

「腕立て……1000回で開く扉! バカじゃないですか!?」
 零の中にあった余裕は、消し飛んでいた。
「なぜボクはここにきてしまったんだろう。精霊術士なんだけど?」
 アインも、選択を間違えたのではないかと後悔している。
 こうなってしまっては仕方がない。
 するしかないのだ。

 腕立て伏せを。

 大丈夫。
 途中で休んでも10セットこなせばOKって、ちっちゃく書いてあるから!

●体形はどうしようもない
「仕方ないのでやりますか……」
 諦めたような顔文字を顔モニターに浮かべた零が、床に膝をついて、手をついて、脚を伸ばし、腕立て伏せを始める。
「そうだね。仕方ない。基礎体力ないと戦いなんてできないからね」
 ――そう言う事にしておこう。
 自分の中に折り合いをつけるためにわざと声に出しながら、アインも頷いた。
 ガンッ、ガンッ。
「――おいで」
 アインが指で空中に円を描くと、周りに空間の穴が開いて幾つもの魔導書が現れた。
 ガコッ、ガコッ。
 幾つかの魔導書がひとりでに開いて、さらに頁がパラパラと捲れ出す。
 ――境界術式:叡智ノ書架。
 数多の術式が記された魔書から、アインは腕力や体力、持久力と言った『腕立て伏せに有効であろう強化魔法』を片っ端からかけていく。
 ガンッ、ガンッ。
 そうした上で床に膝をつき、手をついて、脚を伸ばし――腕立て伏せを始める。
 折り合いは付けたけれど、正攻法でやる気など、アインにはない。
 だって、精霊術士だもの。

「ふんっ! ふんっ!」
 ガンッ、ガンッ。
 一方の零は、アインが小細工している間も、せっせと腕立て伏せに勤しんで回数を稼いでいた。
「パラディンたるもの! どんな脅威でも! 逃げるわけには! いきません!」
 零を支えているのは、騎士としての矜持か。
「ふんっ! ふんっ! これで――2セット!」
 ガンッ、ガンッ。
「すごいですね。澪さん。もう200回ですか。何かコツは――」
 ハイペースで進めている零のやり方が参考にならないかと、アインは動きを止めて首を動かし隣に視線を向けて――目を疑った。
「え?」
「ふんっ! ふんっ!」
 ガンッ、ガンッ。
 テレビ頭を床にガンガンぶつけながら腕立て伏せをしている、零の姿を見て。

 零の種族はテレビウム。
 一種の妖精種族とされており、体格面での特徴は液晶テレビの顔と、人間の約4分の1と言う体長である。
 全身の中で液晶テレビの顔が占める割合が大きい。
 噛み砕いていえば、頭に比べて身体が小さい。手足が短い。
 つまり、頭身が大分大きいのだ。
 そんな種族が腕立て伏せやればどうなるか。

「ふんっ! ふんっ!」
 ガンッ、ガンッ。
 どうしても頭の方に傾いて、頭を床にガンガンぶつけながらになるのだ。
 人間も頭が重たいものだが、手足の長さがあるから腕立て伏せが出来るのである。
「零さん。頭、ぶつかってて……だ、大丈夫?」
「大! 丈! 夫! いつも! やって! ます! から!」
 ガンッ、ガンッ。
 アインが案じても、零はいつもの事だからとペースを緩めない。
 本人がそういうならと、アインもそれ以上は追及せず、己の腕立て伏せに専念した。

 そして――。
「やっと……終わりました。……ん? あれ?」
 腕立て伏せ1000回を終えた零が、ふらふらと頭を上げる。
「何か、前が見えにく……ヒビ? これ、画面のヒビ?」
「零さーん!? 頭! 頭割れてるから! 直すから動かないで!!!」
 1000回もガンガンぶつけ続けて割れてしまった零のテレビ頭に気づいて、アインが顔を青くして立ち上が――立ち上がろうとして、べしゃっと床に倒れ伏す。

 まさか腕立て伏せで頭が割れるとは思わんかったよ。

●万回は長尺すぎる
『よくぞ、セット数10倍特別コース、を抜けてきた猟兵達よ』
「何ですか、そのバカみたいなコース!!」
「入口に書いておこうよ……」
 悠然と出迎えたカルロスに、額に大きなテープを『×』に貼った零と、腕がプルプル仕掛けているアインが疲れた声を上げる。
『事前にわかったら、トラップにならないだろう』
 しれっと告げたカルロスが、背負った変形パイプオルガンの様なものん鍵盤を叩く。
『そして、良い感じに疲れているな。作戦通り――来い、ゴールデンレオ!』
 カルロスの声に応えて、蒸気機械仕掛けの黄金の獅子が降って来る。
『敵が2人ならば追加装備も必要だ。スチームエンチャント!』
 ガションッ! ガションッ!
 謎のパーツが飛んで来て、機械仕掛けの獅子と合体する。
『ゴールデンレオよ、スチームブレスだ』
 カパッと獅子の口が開いて、蒸気がまさに竜のブレスが如き凄まじい勢いと量で、2人に向けて放たれる。
「アインさん、離れないで!」
 零が両手を掲げ、掌からオーラを広げる。
 アインと自分が入る規模の、ドーム状のオーラが間一髪、迫る蒸気を食い止めた。
『汝らの腕立て伏せチャレンジの様子は見せて貰った』
 立ち込める蒸気の向こうから、カルロスの声だけが聞こえてきる。
『テレビウムの顔テレビは蒸気で結露して曇る筈。魔導書もそんな蒸気の中で出せば湿気にやられるであろう。その蒸気の中では、汝らは実力を出しきれまい』
 なんだか勝ち誇っている様なカルロスの声だが――ものすごく、地味だ。
「……とりあえず、ボクの魔導書、そんなに柔な物じゃないんだけど」
 呟いた言葉を証明するように、アインは再び叡智ノ書架の魔導書を喚び出した。
 雷や電気の術が書かれた魔導書から、電撃と電磁波が放たれる。
 狙うのは、蒸気の向こうに見える獅子のシルエット。

 バヂィンッ!

 しかし電撃が当たった音がしても、蒸気の勢いは変わらなかった。
『電撃など。ゴールデンレオの動力は蒸気機関だぞ』
 黄金の獅子に、電撃でショートしたりする部品はないようだ。
『スチームブレスを止める手は唯一つ。腕立て伏せだ』
 ――またか。
『1万回もすれば、止められるぞ。蒸気の蒸し暑さの中で、出来ればだがな』
「く、ここにきて腕立て一万回の刑とは……流石フォーミュラ」
 その容赦のなさに零が呻くように呟く。
 だが――実は2人とも、そんなに窮地ではなかった。
 むしろ準備が整っていた。カルロスのユーベルコードを見たし、防いだ。
「ボクが旅をして編纂した魔書の『巨大図書館』、キミは耐えられるかな?」

 編纂・無銘の書――アカシック・レコード。

 アインの周りに、数十冊の全てが白紙の魔導書が現れる。
 それは敵のユーベルコードを複製するための書物。それ故の白紙。白紙の上に、カルロスが黄金の獅子につけたのと同じパーツの絵が浮かび上がる。
 同じものが、零の液晶テレビ顔にも映っていた。

 ユーベルジャック。

 防御したユーベルコードを一度だけ拝借出来る業。
「今度はそちらが腕立てをする番です!」
「腕立ての辛さ、分かってもらうからね!」
 零とアインが、同時にコピーしたスチームエンチャントを放ち、黄金の獅子に逆向きに装着させる。
『汝らもか!』
 カルロスの足元に、此処で腕立て伏せしてね、みたいな手のマークが現れた。
 左右の手の間に書かれている数字は――20000。
 1万回分のものを2人でコピーして返したのだ。単純計算で、倍である。
『我が腕立て伏せで怯むと思ったか』
「負けませんよ!」
 互いに蒸気で見えないながら、カルロスと零が腕立て伏せを始める。
「……」
 暑い蒸気の中から、髪がしっとりしたアインが無言で出てきた。
 そして、無言で魔導書から電撃を黄金の獅子に浴びせていく。
 ショートする部品がないだけだ。電撃の衝撃は、普通に伝わっている筈。こうして撃ち続けていれば、どちらかが腕立て伏せを終えるまでに壊せるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

司・千尋
連携、アドリブ可

えぇい、筋肉痛が怖くて
猟兵やってられるか!


ここは…
スクワット100回部屋だと…!?
無茶なポーズばかりのヨガ部屋よりはマシかもしれない、等呟きつつ挑戦
最初は順調
だんだんキツくなってきた…

無理だろこんなの!
俺は!インドア派なんだよ!
筋トレもインドアとか言うな!!
こうなったら最終手段だ
UCで複製した紐を使い自分を操ってスクワットする

やっと終わったと思ったのに
これからが本番とか…!
召喚された黄金獅子はUCで縛り上げ
鴗鳥で叩いて大人しくさせる

カルロス…
お前も一緒に筋トレしようぜ…!
UCで複製した紐でカルロスを捕まえて一緒に筋トレだ!!
絶対逃がさないから覚悟しておけよ!
暁と宵も筋トレだ!


ユディト・イェシュア
筋トレですか…
俺は常々気になっていたのです
クレリックは肉弾戦も得意…
もう少し筋肉をつけるべきではないかと

自信はないですが
ここは挑む気持ちで…!

これは…
スクワットすることで
次の部屋の扉が開くのですね
スクワットは筋トレの基本
やりきってみせます

…かなり膝にきますね
メイスを杖代わりによろよろ進みます
まだいけます…まだ…!

カルロス…(はあはあ
あなたを倒します…(膝がくがく

先制攻撃でさらに筋トレさせられるという狂気にも耐えてみせます
あ、でもできれば下半身以外で…
なんとか耐えきればUCで攻撃
これなら手さえ動けば攻撃できますから
明日の筋肉痛など怖くありません
しなやかな筋肉と共にこの戦いの勝利を勝ち取るのです!



●葛藤
「マッスルダンジョン……」
 踏み込めば筋トレトラップが待つダンジョンの入口で、司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)はその先に進む事を、躊躇っていた。
 どちらかと言えばインドア派である千尋だ。筋トレが得意である筈がない。
 そういう、力に任せた戦い方をするタイプでもないのに。
 だが、ここでこうしていても始まらない。
「えぇい、筋肉痛が怖くて猟兵やってられるか!」
 千尋は葛藤を乗り越えて、マッスルダンジョンの中へ踏み込んだ。

●決意
 ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、常々気になっていることがあった。
 クレリック。
 それは癒しや神罰を与える魔法を使う以外に、肉弾戦も得意とする職だ。
 ユディトとて肉弾戦が出来ないわけではないが、得意かと訊かれると、素直に頷いて良いものかと考えてしまう自分がいる。
 更にユディトは、守り手たるパラディンの力も有している。
 つまり――もう少し筋肉をつけるべきではないかと、思っているのだ。
 そして、このマッスルダンジョン。
(「筋肉をつける、絶好の機会なのでは……?」)
 敵の罠だと言う事は、この際、気にしないことにしよう。
 使えるものを使って悪いものか。
「筋トレの自信はないですが……挑ませて頂きます!」
 そして決意を胸に、ユディトはマッスルダンジョンへ踏み込んでいった。

●スクワット部屋での出会い
 千尋とユディト。
 種類は異なれど、決意を秘めた2人が偶然同じ罠部屋で出会った。
 ゴゴゴゴゴ……!
 顔を見合わせる2人の後ろで、それぞれ入ってきた扉がひとりでに閉じていく。
「戻らせないつもりか」
「協力して当たるしかないようですね」
 千尋とユディトは顔を見合わせ、頷き合う。
 こうなったら、この部屋の運動罠をこなすしかない。
「とりあえず台座を見てみるか」
「他に調べるものもないですしね」
 そして調べるべきは、これ見よがしに部屋の中央に並んでいる台座だろう。『此処で運動しなさいね』と言わんばかりの存在感である。
 その上に乗ってみれば、ここで何をすればいいのかすぐに判明した。
 書いてあるのだ。

 ワイドスクワット100回せよ――と。

「スクワットすることで、この部屋の出口の扉が開くのですね」
「ス、スクワット100回部屋だと……!?」
 なるほどと頷くユディトの横で、千尋の口から溜息が零れる。
「スクワットは筋トレの基本。やりきってみせます!」
「まあ……そうだな。無茶なポーズを要求されるヨガ部屋よりはマシかもしれない」
 ユディトはぐっと決意を握り締め、千尋はしぶしぶと言った様子で。それぞれ台座の上でゆっくりと膝を曲げて身体を沈め、膝を伸ばして身体を持ち上げる。

 ブーッ。

 まずはスクワット1回――と思ったその時、謎の音が部屋に響き渡った。
 あーダメダメ、と言いたげな音である。
「なにかが違うと言う事でしょうか?」
「音だけで言われてもわかるか!」
 ユディトは首を傾げ、千尋は抗議の声を張り上げる。
『スクワット部屋にいる猟兵よ』
 すると、先の音とは別の声がどこからか聞こえてきた。
『カルロス・グリードである』
 まさかのカルロスだった。
『先に言っておくと、伝声菅を通して声を届かせている故、我はまだ先、このダンジョンの奥にいる。我の元まで辿り着きたければ、ワイドスクワットをこなすのだ』
 このタイミングで声をかけてきたと言う事は、向こうは見えているのだろうか。
『いいか? ワイドスクワットだ。スクワットとワイドスクワットは、違う。先の音が鳴った理由だ』
「――は?」
 淡々と告げて来るカルロスの声に、千尋が首を傾げる。
『台座を良く見ろ。足を置く模様があろう』
「あ、確かにありますね」
 カルロスの声にユディトが足元を見ると、足形の様なマークがあった。
 千尋側の台座にも、同じマークがある。
 そしてどちらも、2人が今立っている場所からは離れていた。左右に開いた場所に。
『そこに合うように足を置けば、自然とワイドスクワットの形になる筈だ。では、精々疲れてくれたまえ』
 応援してるのか疲れさせようとしてるのかわからない言葉を最後に、カルロスの声はパタリと途絶えた。
「……こう、か?」
 カルロスの最後の声の通り、千尋はそこに足を置いてみる。
 肩幅よりも大分足を広げる形になった。
 そのまま同じように膝を曲げて身体を沈め、膝を伸ばして身体を持ち上げてみる。
 今度は、何の音も鳴らなかった。
 これが正解らしい。

 最初の20回くらいまでは順調だった。
 だがそこを越えた辺りから、徐々に足に疲れがたまってキツくなってきた。
「無理だろこんなの!」
 50回になるかならないかと言うところで、千尋が思わず音を上げる。
「確かに……かなり、膝に、きますね……」
 ユディトはまだ続けているが、その膝も足もプルプルと震えている。
「俺は! インドア派なんだよ!」
『筋トレもインドアだが』
「言うな!」
 張り上げた声をどこで聞いているのか、律儀にも伝声菅でつっこんで来たカルロスに叫び返し、千尋は大きく息を吐いた。
「こうなったら最終手段だ」
 千尋が懐から取り出したのは、飾り紐。
 『結詞』――それはただの飾り紐ではない。かつて呪術道具として使われていたこともある飾り紐であり、ヤドリガミである千尋の本体でもある。
「錬成」
 飾り紐が、千尋の掌から離れて浮かび上がる。
 そして――パァっと強い輝きを放った直後、その一瞬で90個以上に増えていた。

 錬成カミヤドリ。

「よし。ここをこうして、こっちをこう……」
 千尋は増やした飾り紐を自分の身体に引っ掛けたり、結んだりする。
 そして、千尋は念力で飾り紐を動かし始めた。
 飾り紐を繰糸の様に使う事で、自分を人形の様に操って、疲れて動かせる気がしない身体を、強引に動かそうと言うのだ。
「……糸、要るなら言ってくれ。半分くらいに回してもいけそうだ」
「いえ……俺は、筋肉、を、つけたい、ので……」
 飾り紐で上下に引っ張られながら告げる千尋の提案をやんわりと断って、ユディトは時々崩れ落ちながらも自力でワイドスクワットを続けていった。

●倒れても戦う
 何とかノルマの回数を達成した千尋とユディトの前で、扉がゆっくりと開いていく。
「やっと終わったと思ったのに……!」
 珍しく苛立たし気な千尋の声が、扉の先の通路に響いた。
 終わった。確かに終わった。ワイドスクワットは。
 だが、色々言ってきたカルロスが、まだ残っている。
「やっと終わったのに、本番はこれからなんてな」
 ぼやく千尋は、一見普通に歩いているように見える。
 だが、よく見れば、その身体はまだ『結詞』が幾つか結ばれていた。飾り紐で操らなければ、満足に動けそうにないのだ。
(「カルロスにも筋トレさせてやる……!」)
 そんな決意を胸に、千尋は通路を進んで行く。

 その後ろから、ユディトも続いていた。
「まだいけます……まだ……!」
 だがその姿は、見た目だけなら千尋以上に重傷に見えた。
 ガクガクと腿と膝が震えていて、メイスを杖の様に支えにしなければ、立っていることもままならなない様子だ。
 それでも這うようにして、ユディトも奥へ進んで行く。

『よく来たな、猟兵達よ。ワイドスクワット、出来たようだな』
 そんな千尋とユディトを、カルロスは悠然と出迎える。
「こんな目に合わせられた礼は、させてもらうぜ」
「カルロス……あなたを倒します……明日の筋肉痛など……怖くありません」
『やってみるがよい。我は容赦なく追い打ちするがな。来い、ゴールデンレオよ』
 カルロスの隣に、機械仕掛けの黄金の獅子が降って来る。
「さらに筋トレさせる気なのはわかっていますよ。その狂気、耐えてみせます」
『ほう……これを見てもそう言えるかな』
 ユディトの視線を浴びながら、カルロスがパチンと指を鳴らす。すると、黄金の獅子の腹部がカパッと開いて、中から砲台の様なものが現れた。
「まさか――」
 千尋が感じた予感は、すぐに的中した。
 砲台が、地面スレスレにまで伸びてきたのだ。
「あ、できれば下半身以外で……」
『だが断る。スチームエンチャント!』
 ユディトが思わず口走った懇願をさらっと流して、カルロスはさらに追加の蒸気魔導装置を召喚し、黄金の獅子の砲台に搭載させる。
『スクワットだ』
「「――は?」」
 すわ攻撃かと身構えた2人は、カルロスの言葉に目を丸くする。
『30秒やろう。スクワットで、あの砲台の威力は弱められるぞ』
 カルロスが追加した蒸気魔導装置は、罠と連動している。スクワット罠をこなせば、威力を弱められるという、通常ならば謎仕様。
 だがスクワットを限界までさせられた千尋とユディトにとっては、言われたところでどうしようもない。
 そして黄金の獅子の砲台から、地を這う様な衝撃が放たれた。

 これも万全の状態であれば、ジャンプして良ければ済む話だ。
 だが――スクワットで脚がパンパンになっている今の千尋とユディトに、急にジャンプしろと言うのは酷な話である。
 避けきれなかった衝撃が、千尋とユディトの脚に当たって痛そうな音を響かせた。
「ぐあっ!」
「くぅぅっ」
 衝撃で脚がもつれて、千尋とユディトがその場に倒れ込む。
 だが――。
 2人とも、まだ諦めていなかった。
 何故なら、脚がプルプルして立てないだけだ。上半身は元気である。
 千尋もユディトも、立ち上がれなくとも戦う術があった。

「黄金の獅子は、こうしてやる」
 千尋は自分に巻き付けていた『結詞』を操ると、その半分以上を黄金の獅子に絡みつかせる。完全に動きを止めるのは難しいが、しばらくは動きを阻害出来るだろう。
 千尋はその間に、別の飾り紐で別の武器を浮かび上がらせた。
 『鴗鳥』――実用性重視の鈍器を、飾り紐で結んで振り回す。

 ――ブォンッ! ――ブォンッ!

 風を切るというより掻き分ける重たい音が、鳴り響く。
 たっぷり振り回しておいて、千尋は殴られたら痛そうな鈍器を、容赦なく黄金の獅子に叩きつけた。
 黄金の脚と、腹から生えた砲台が砕け散る。
『その身体で、ゴールデンレオを壊すだと!?』
 驚くカルロスに、ユディトが倒れたまま腕を向ける。
 一つ伸ばした指先。
 それさえ向けられれば、ユディトは攻撃できる。

 ――ジャッジメント・クルセイド。

「この痛みの後に身につくであろう、しなやかな筋肉と共に……この戦いの勝利、勝ち取ってみせます!」
『ぐおおぉおぉっ!』
 ユディトが何発も放つ頭上から降り注ぐ光に撃たれ続け、カルロスの口から苦悶の呻きが上がる。
「カルロス……お前も一緒に筋トレしようぜ……!」
 そしてカルロスがユディトの光に撃たれて動けずにいる間に、千尋はその身体に『結詞』を絡みつかせた。
 その目的は、捕縛ではなく操作。
 カルロスにも、筋トレさせることだ。
「絶対逃がさないから覚悟しておけよ!」
 自分が味わったワイドスクワットを、念力で操る『結詞』を通じて、強制的にカルロスにも味合わせる。
「暁と宵も筋トレだ!」
 更に千尋は、黒と白の狐面を被る人形をカルロスの左右に配して――何故か1人と2体を揃って、しばらくワイドスクワットさせ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
※罠…筋トレ+魔法封印

…確かに私は普段から大鎌を振り回しているし、
半人半魔のダンピールだしPOWだって400以上ある…

…だけどね。その大半は"怪力の呪詛"の賜物であって、
魔法を封じられると年相応の筋肉量しか無いんだけど…

"怪力の呪詛"があるから余裕と踏み込んだら魔法封印
大鎌や銃等、重くて持てない武器を捨てて先に進み、
満身創痍の状態で先制攻撃を受けてUC自動発動
吸血鬼の第六感と身体能力で罠を突破して、
血の魔力を溜めた爪で敵を切断する

…こんな雑に起こされるのは初めてだわ
楽ばかりするから、こんな無様を晒すのよ、本当に愚かな私…

…無駄よ。今の私は吸血鬼。人間用の罠なんて何の痛痒も感じないわ



●余裕は時にフラグとなる
(「運動の罠? 余裕ね」)
 誰に言うでもなく胸中で呟いて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はマッスルダンジョンへ踏み込んだ。
 手にした愛用の大鎌『グリムリーパー』の長さは、リーヴァルディ自身の背丈とほとんど変わらない。そこに大鎌部分の重さも加わるのだ。
 普通の、例えばそこらの同じ16歳の町娘では持ち上げるのも難しいだろう。
 リーヴァルディがそれを軽々と振り回せるのは、半人半魔のダンピールだからと言うだけではない。
 ましてや、見た目にそぐわない凄い腕力を持っているとかでもなく、鎧の様に全身を覆う術式『怪力の呪詛』の賜物であった。
 ならばもし、その術式が使えなくなったとしたらどうなるか――。

 それを、リーヴァルディは身を以て味わう事となる。

●魔封じと言う災難
「え」
 その部屋に踏み込んだ直後、リーヴァルディについぞ感じた覚えのない『重さ』が突如のしかかってきた。
 まるで地面から見えない腕が生えて凄まじい力で『グリムリーパー』を引いている様な重たい感覚に、リーヴァルディは大鎌を取り落としてしまう。
 それどころか、その場に膝もついてしまっていた。
「重……もしかして、これもなの?」
 それが大口径二連装マスケット銃『Kresnik』の重さだと気づいたリーヴァルディは、銃も捨てて身体から離してみる。
 すると、あれほどかかっていた重みがすっと消えた。
「一体、どうなって……」
 この場の重力がおかしくなったのかと思ったが、だとすると武器を捨てたら重みが消えたというのはおかしい。
 手がかりを探してリーヴァルディが部屋を見て回ると、入ってきたのとは反対の扉にその答えが書かれていた。

 バーベルキーの間――魔法・魔術封印ルート。

「……え……」
 呆然としたリーヴァルディの声が、空しく響く。
 信じられないと言う思いとは裏腹に、吸血鬼狩りとして何度も戦ってきたリーヴァルディの感覚は、その文字が嘘でないことを感じてしまっていた。
 即ち――怪力の呪詛が封印され、その効力を失っているのだと。
「魔法を封じられると年相応の筋肉量しか無いんだけど……」
 呟いたところで、封印は解かれない。
 尤も、怪力の呪詛に頼っていたとは言え、大鎌を振り回し戦い続けた日々は伊達ではない。年相応よりはリーヴァルディは力がある方だろう。
 少なくとも、そこらの同じ年齢の町娘なら、怪力の呪詛なしで腕相撲しても勝てるくらいにはあるんじゃなかろうか。

 まあだとしても、デッドリフトでバーベル持ち上げろなんて無茶の前には、あってないようなものである。

「どう、して……こん、な、目に……」
 怪力の呪詛があるから余裕――そう思っていたダンジョン突入前の自分を呪いたい気持ちになりながら、リーヴァルディは何とかバーベルをセットし、扉を開く。
 試しに部屋を一歩出てみても、怪力の呪詛の封印は解かれなかった。
「……置いていくしか……ないわね……」
 カルロスを倒せば封印も解ける――そこに一縷の望みを託し、リーヴァルディは愛用の大鎌と銃を置いて、先へ進んでいった。

●吸血鬼
『よくぞ来た、猟兵よ』
「…………」
 カルロスのいる最奥の部屋に辿り着いた時、リーヴァルディはもう、喋る気力も残っていなかった。
 ここまで辿り着くまでのトラップで、その四肢は生まれたての小鹿の様にプルプルと震えていたのだ。
『満身創痍だな。せめて、一撃で倒してやろう』
 そんなリーヴァルディに、カルロスは背中の魔導砲を向ける。
 銃口が向けられても、リーヴァルディにはどうする事も出来なかった。手足が動かせたとしても、大鎌と銃を置いてきてしまっていてはどうしようもない。
『さらばだ』
「――!」
 カルロスの魔導砲から放たれた光が、リーヴァルディを撃ち抜いた。衝撃で宙に浮いたリーヴァルディの身体が、背中から床に落ちる。
「――……」
 リーヴァルディの意識がゆっくりと、闇に沈んでいき――。

「本当に愚かな私……」

 その口から、嘲るような声が上がった。
「……こんな雑に起こされるのは初めてだわ」
 倒れた身体をゆっくりと起こして、リーヴァルディが立ち上がった。
 ――否。
 その身体を動かしているのは、リーヴァルディであってリーヴァルディではない。普段は彼女の中に封印されている、吸血鬼の人格。
「術に頼って楽ばかりするから、こんな無様を晒すのよ」
 己すら嘲る様に言うそれが、リーヴァルディの真の姿。抑圧された吸血衝動から生じた享楽的で傲慢な吸血鬼。

 限定解放・血の封印――リミテッド・リーヴァルディ。

 瀕死にまでなる事で、吸血鬼の姿を得る業。
「でも、そんな私に容赦なく攻撃してくれたお礼は――しないとね」
 さっきまでの棒立ちが嘘だったように軽やかに床を蹴って、吸血鬼のリーヴァルディがカルロスへ向かって飛び出す。
『来るか。ならば、連鎖するバーベルトラップで――』
「無駄よ」
 壁から飛び出してきたバーベルを、リーヴァルディはひらりと飛び越える。
『な、なんだと!?』
「今の私は吸血鬼。人間用の罠なんて何の痛痒も感じないわ。だからと言って、かかってあげる理由もないし」
 既にこの空間は、道中の罠部屋にかかっていた封印はない。
 そこまで封印してしまえば、カルロス自身にも影響が出かねないのだろう。
 吸血鬼のリーヴァルディは、それに気づいていた。血の魔力を片手に集め、さらに五指の先へと集中させる。
「……ふふ。本当の私を魅せてあげる」
 血の魔力で作った紅い爪が、罠ごとカルロスを引き裂いた。
『なんと……こんな手を隠していたとは』
 胸を斬られたカルロスが、流石に膝をつく。
「……」
 その姿に溜飲が下がったリーヴァルディが小さな笑みを浮かべ――踵を返す。
 カルロスにとどめを刺すよりも、やらなければいけないことがある。
「捨てっぱなしだと、私が困るのよね……」
 大鎌と銃の回収と言う、大事な仕事が。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
紫崎さんf03527と

僕は鵜飼章…労働と力仕事が凄く苦手
この戦場だけは来たくなかったのに…
うう嫌だ…帰りたい

僕アラサーだよ
筋トレなんか体育の授業以来だ
試しに同じメニューやってみるけど
数回でつぶれるもう無理だ
このダンベル(2㎏)人間の持つ重さじゃないよ…

あっきみ10代?元気だね…
紫崎先生のお手本を見て頑張る(ぷるぷる
僕輝いてる?
ゆっくりでもやり遂げるのが大事だ…多分
カルロスさん終わるまで待っててくれるのかな

これ以上筋トレさせられたら死ぬよ
魔導砲だけは【早業/読心術/逃げ足】を総動員し
何が何でも避ける
筋肉がなくても僕にはこのUCがある
カブトムシが運動するからもう許して

すごいや…筋肉がビクトリーだよ


紫崎・宗田
鵜飼(f03255)と

紫崎宗田だ
来ちまった以上は諦めろ
ほれ行くぞ

筋トレは日常の一部みてぇなもんだからな
どんな内容でもサクッとこなす
ダンベル嵌め等は代わりにやってもいいが

あんたは体力無さすぎだろ
丁度いい、この機会に鍛えとけや
腕の角度はこう、足はこう!
間違った体勢でやると腰痛めるぞ
その歳でぎっくり腰なんざ笑えねぇだろ
カルロス…律儀に待ってそうだな

敵の魔導砲は炎の【属性攻撃】を乗せた★破殲を【怪力】で【薙ぎ払い】
【衝撃波】による風圧での【吹き飛ばし】で触れずに打ち返す【カウンター】か相殺
【指定UC】を発動
カルロスがカブトムシに気を取られてる間に接近して足を掴み
顔面から地面に叩きつけてやる

はん、ダッセ



●ダンベル部屋での出会い
 傭兵である紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)にとって、身体は資本と言える。
 身体のコンディションを保つのは、当然の努力だ。
 彼にとって筋トレは、日常の一部の様なものだ。
「さて、どんな筋トレさせるんだ?」
 だから宗田は特に気負いもなくマッスルダンジョンを進み、最初に部屋にも警戒もなく踏み込んで――ぶに。
「ぐえっ」
「ん?」
 足元に感じた変な感触と蛙が潰れたような声に、宗田が降ろしかけた脚を止める。
 視線を降ろせば、ダンジョンの床とは違ってそこだけ黒かった。
 より正確に言うならば。

 黒ずくめの誰かが転がっていて、危うく宗田に踏まれそうになっているのである。って言うか踏まれかけてた。

「あ。誰か来た」
「うぉ!? だ、誰だ……」
 喋った黒ずくめに驚いて、宗田が脚をどけて横にずれる。
「僕は鵜飼章……驚かせてしまったらすまない。ちょっと疲れ果てて、床の冷たさを感じて心を癒していた所だよ」
「紫崎宗田だ……こっちも気づかず踏みかけちまって、すまねぇ」
 立ち上がる章に名乗りと謝罪を返しつつ、宗田はその名前が引っかかっていた。
(「鵜飼? 確か最近、チビからそんな名前を聞いたような……黒焦げになってたとかなんとか」)
「そう。その鵜飼章だよ」
「心読むんじゃねえ!」
 胸中で呟いたらしれっと心を読んできた章に、宗田の向ける視線が胡乱になる。
「ところで、きみ10代? 僕は労働と力仕事が凄く苦手な、アラサーなんだけど」
 しかし章はそんな視線を気にした風もなく、部屋の中央の台座に置かれたダンベルを指さしながら、宗田に縋るような視線を向けてきた。
「ダンベル嵌めるの手伝えってか。まあいいけどよ」
 大体察して、宗田は一番重い20kgのダンベルを軽々と持ち上げ、壁の窪みに嵌める。
「どこまでやりゃあいい? 流石に一番軽い2kgは行けるだろ?」
 次に重たい18kgのダンベルを持ちながら、宗田は訊ねる。
「え? そんなの、人間の持つ重さじゃないよ……」
 だが章の答えは、宗田の予想以上に貧弱なものだった。
「ウソだろオイ……」
「2kgも持てなかったから、ああして床の冷たさで心を癒していたのさ」
 目を疑う宗田の前で、章は2kgのダンベルに手を伸ばし――本当に上がらなかった。

 ――結局、宗田が全部頑張ってくれました。

●紫崎先生の腕立て伏せ講座
 次の部屋は、腕立て伏せがノルマの部屋だった。
 そこで宗田は、さっきの2kgのダンベルが持ち上がらないという以上に信じられない光景を目にすることになる。

「うう……もう無理だ……」

 ほんの数回の腕立て伏せで力尽きて潰れるという、章の姿を。
「あんたは体力無さすぎだろ……」
 その間に30回ほど腕立て伏せをこなしながら息も切らしていない宗田が、呆れ顔になって立ち上がる。
「丁度いい、この機会に鍛えとけや」
 そして、自分の分もそこそこに、章の指導を始めた。
「腕の角度はこう、足はこう!」
「えっと、こうかい?」
 宗田のお手本を見て、章も手や足の位置を動かす。
「もっと足を伸ばせ。間違った体勢でやると、腰痛めるぞ。その歳でぎっくり腰なんざ笑えねぇだろ――よし、それでやってみな」
 宗田に言われるままに姿勢を直した章が、肘を曲げて身体を沈める。
「お?」
 スッと沈んだことに驚きながら、章は腕にググっと力を入れる。
 すると、さっきまでよりも随分と楽に、身体が元の姿勢に戻った。
「おお? 出来てる 僕輝いてる?」
「おう。さっきよりマシに出来てるじゃねぇか」
 驚きに目を丸くする章に、宗田も小さな笑みを浮かべる。
「凄いね、紫崎先生」
「先生って……ガラじゃねえな」
 章の向ける視線にむず痒くなって、宗田は自分の腕立て伏せを再開した。
「こっちのペースにつられんな。ゆっくりでいいからな」
「そうだね。ゆっくりでもやり遂げるのが大事だ……多分」
 宗田が4,5回こなす間に章が1回と言う感じではあったが、2人は着実に腕立て伏せの回数を重ねていく。
「カルロスさん終わるまで待っててくれるのかな」
「カルロス……律儀に待ってそうだな」
 章も宗田も、知らなかった。
 その頃カルロスは、先にダンジョンを突破した猟兵達によって、予想外の筋トレをさせられているなんて。

●パワー&カブトムシ
「もうだめだ……動けない……」
 何とか腕立て伏せを終えた2人だが、結局、章はまた力尽きていた。
「だから、この戦場だけは来たくなかったのに……うう嫌だ……帰りたい」
「来ちまった以上は諦めろ。ほれ行くぞ」
 悲しくなさそうに泣き言を零す章を置いていくわけにもいかず、宗田はその腕を掴んで引き起こそうとする。
「運んでくれるととても嬉しい。引き摺って良いから……」
 本人がそういうのだから、宗田は腕と足を持ち替え、章をずるずる引き摺って先へと進んでいった。

『よく来たな、猟兵達よ』
 そんな2人を、なんだか疲れた顔のカルロスが出迎える。
『1人は立つ気力もないか……ならばトドメだ!』
「ちっ。問答無用かよ」
 宗田が章の脚を離して、漆黒の巨大斧『破殲』を構える。
「これ以上筋トレさせられたら死んでしまう……何が何でも逃げないと」
 身の危険を感じた章は、立てない身体を転がしてゴロゴロと逃げ出し始めた。
『……』
「僕を攻撃しても良い生き物か迷っているようだね。しない方がいいよ」
 何か言いたげな視線を送ってきたカルロスの心を読んで、章が転がりながら告げる。
『……』
 結局、カルロスは無言で鍵盤を叩いて、背の魔導砲を発射した。
「!」
 その瞬間、章はすくっと立ち上がって全力で走って逃げだした。
「動けんのかよ!」
 思わずツッコミの声を上げながら、宗田は『破殲』を柄を握る手に力を籠める。赤い狼の紋様が輝きを放ち、炎が刃を覆う。
「っらぁ!」
 宗田が怪力で振るう巨大斧の衝撃波が、カルロスが放った光を散らして消える。
「助かった……」
 こちらも走って光を逃れた章が、またべしゃっと倒れていた。
 どうやらさっきのは、本当に最後の力を振り絞った類のものだったらしい。
「僕はもう動けない。だけど僕には、カブトムシがある。この前提は揺るがない」

 ――確証バイアス。

 ブゥゥゥゥン!
 羽音を響かせ、どこからともなく現れたのは、章が想像し創造した、無敵のすごくかっこいい巨大カブトムシ。
「カブトムシが運動するから、もう許して」
 その言葉が指令となったか、ブゥゥゥンと羽音を鳴らして飛び回るカブトムシ。
『ええい、何だこのカブトムシは。飛び回るな!』
 飛び回るカブトムシに気を取られ、カルロスは魔導砲の照準を向ける。
 ガシッ!
 その足首を、いつの間にか近づいていた宗田がしっかりと握っていた。
「てめぇくらい、武器なんざ無くても戦えんだよ!」

 ――秘めた力。

 宗田の腕に力が籠り、カルロスの身体が軽々と持ち上がる。
『な、何だこの力は!』
「潰れてろ!」
 驚くカルロスを足首を掴んだまま振り回し、宗田は顔から地面に叩きつけた。
 叩きつけたその地面が、陥没する程の勢いで。
 ドガァァンッ!
 人が人を振り回したとは思えない轟音が響き渡った。
「凄いや……筋肉がビクトリーだ」
『な、なんという……力だ……』
 身体でその威力を感じた章が倒れたまま感嘆の声を上げ、地面にめり込んだままカルロスが呻く。
 宗田はカルロスをもう一度引っ張り上げようとして――その手が足から離れた。
 離したのではない。離れたのだ。
 掴んでいた足首が、宗田の手の中でかき消えて。
「おい――」
 ドスンッ!
 そこに上から降ってきた章のカブトムシが、まだ残っているカルロスを叩き潰す。
「まだ生きてんなら――しまいにしようぜ」
 カブトムシの下に、宗田が声をかける。
 だが、カルロスの返事はない。
「カブトムシ……飛んでいいよ」
 章が声をかけると、カブトムシが再び飛び上がる。
 陥没した地面に、カルロスの姿はない。人型の窪みがあるだけだ。
「はん、ダッセ」
 いつしか静かになっていたダンジョンに、鼻で笑った宗田の声が小さく木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月26日


挿絵イラスト