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羅針盤戦争~無貌の王

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #六の王笏島

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「おう、来てくれてありがとうな。今回の羅針盤戦争、最後の「七大海嘯」の本拠地が判明したんは聞いとるか? これで後は全部の敵を叩くだけんなったで!」
 シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は自らの呼びかけに応じて集まった猟兵たちに向かってそう言うと、右の手に持った槍の石突きで地面をかぁん!と叩く。
「そんで今回皆に行ってほしいんは、七大海嘯「王笏」の八つに別れとるうちのひとつ、「六の王笏島」や。ここにはこの世界のオブリビオン・フォーミュラ「カルロス・グリード」の分身体がおる」
 様々な世界から落ちてきた島を内包するこの欲望の海での戦争。アリスラビリンスの力を具現化している「六の王笏島」のカルロス・グリードの肉体は漆黒の虚無と化し、すべてを飲み込む力を有しているという。
「六の王笏島のカルロスは二つのメガリスを持っとるそうや。それぞれ分身を作る「ヤヌスの鏡」と、死者の力を奪う「玉鋼の塗箱」っちゅーらしいねんけど、カルロスはそれを金と銀の鋏に変えて自分の武装にしとるらしいわ」
 金の鋏は敵対者のユーベルコードをコピーし、その刃から発動できる。そして銀の鋏は自分自身を切り裂くことによって新たな分身を作り出し、その分身は本体と同様にすべてを飲み込む漆黒の虚無の肉体を持っている。
「それからなぁ、他の七大海嘯、カルロス……今までの戦争で戦ってきた強敵どもにも共通しとることやけど、このカルロスも同様に先制攻撃でユーベルコードを使ってくる。対策は忘れんようにな」
 敵の先制攻撃はこちらがユーベルコードを使うよりも速い。躱すか、それとも耐え抜くか、あるいはそのどちらでもない第三の手を用いるか。何にせよ、何の対策もせずに挑めば、攻撃を仕掛けるよりも先に大きな痛手を負うことだろう。
「逆に、この先制攻撃に対する対策をしていけば、敵の出鼻をくじくことが出来る。戦いは有利になるやろうな」
 それから、とシャオロンは続けた。
「この六の王笏島のカルロスを一回ぶっ倒すにつき一つ、こことは違う「七大海嘯」配下にされてもうとる島を一つ解放することができるそうや。もう全部の敵の本拠地は判明してもうとるとは言え、七大海嘯に支配されとる島を解放してやるんは悪ないやろ?」
 ニヤリと笑って、かぁん、ともう一度槍の石突きで床を叩くシャオロン。
「現地までの転送は俺が請け負うたる。転移が阻害されとるグリードオーシャンやけど、何でかここへは直通での転移が可能や。門を抜けたら、早速カルロス・グリードとご対面やで。気張って行けや!」
 そう言うとシャオロンは八卦のグリモアを煌めかせ、そこに転移の門が現れる。
「ほな、準備の出来たやつから、俺に声掛けたってくれ」


遊津
 遊津です。グリードオーシャン、羅針盤戦争のシナリオをお届けします。
 一章完結、ボス戦のみの構成です。
 難易度はやや難となっております。お気をつけ下さい。

 当シナリオには以下のプレイングボーナスが発生いたします。
 ※……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 「■戦場について■」
 六の王笏島、島内となっております。
 島ですので海に浮かんでおりますが、今回は直接の転移が可能となっているため、鉄甲船によって近づかずとも直接島内に乗り込む事が可能です。
 戦場はアリスラビリンスらしい森の中の拓けた場所となっております。島内ですが、水場は遠くなっております。
 戦闘を邪魔するものは何もありませんが、逆に戦闘に利用できるものもありません。
 グリードオーシャンでは飛行が阻害されているため、飛行船のように高高度を保つアイテムの使用は非常に難しくなっております。
 (飛翔系のユーベルコード、空中戦や空中浮遊などの技能、自らの翼での飛行などは使用可能です)
 ※判定上のペナルティが発生することはありません。

 「■カルロス・グリードについて■」
 七大海嘯が一人であり、この世界のオブリビオン・フォーミュラ「カルロス・グリード」の分身体です。
 アリスラビリンスの力を具現化させており、その肉体は漆黒の虚無と化しております。
 使用してくる能力はオープニングにて説明したとおりです。
 こちらのユーベルコードを使用するよりも先に先制攻撃を繰り出してきます。これに対策することでプレイングボーナスが発生します。
 先制ユーベルコード・指定ユーベルコードの他にもアドリブの範囲内での戦闘が発生します。あらかじめご留意下さい。(金銀の鋏を用いて攻撃してきます)
 リプレイは猟兵が島内に転移し、接敵、もしくはその直前の状態から始まります。

 当シナリオのプレイング受付は2/21(日)朝8:31~となっております。
 (時間帯によってはマスターページ上部及びこちらのページのタグに受付募集中の文字が無いことがございますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって結構です)
 プレイングを送ってくださる場合は、必ずマスターページを一読してくださいますようお願いいたします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    メガリス『銀の鋏』
自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。
SPD   :    メガリス『金の鋏』
【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。
WIZ   :    虚無なる起源
自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナイ・デス
オウガオリジンさん、猟書家に、カルロスさんにと、力を奪われ過ぎではないですか……?

光を放ち【推力移動ジャンプ】跳び退いて漆黒の体から逃れようと

全てを飲み込むと聞きましたが、地に足はつけ続けるのですね

放った光は攻撃性もあり【レーザー射撃トンネル掘り】足場を壊して、発動条件を満たせなくしようと
上回られることも【覚悟】
【激痛耐性、継戦能力】仮初の肉体、半ば飲み込まれても。本体が無事であるから、死なない。後で再生できる
だから怯まず
『生命力吸収光』を放つ
【範囲攻撃生命力吸収】加減は、しない

全てを飲み込む、虚無も
今に生る、在る為には「時間」が必要
私の光は、それを、喰らう

時間が尽きれば

骸の海へ、還る時、です


御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎

先制攻撃前提ってちょっときついわねぇ。

レガリアスシューズの機動力で回避、無理な分はオーラ防御でどうにかしてダメなら武器受け……シューズで蹴り飛ばすかしら。
手のナイフは一応ナイフだけど、マイクだしこれで攻撃を受けるのは遠慮したいのよねぇ。
こういう場所だし、多少は怪我しても仕方ないのかしら。

攻撃に回れたならばLa danza della rosa blu……待ってあげたんだから一曲付き合ってもらうわよカルロス・グリード。
次のパートナーは貴方。
アリスラビリンスの力……どんな可愛らしい感じになってるのかしら。
折角だから衣装に青い薔薇を追加して飾ってあげるわ。




(オウガ・オリジンさん……猟書家に、カルロスさんにと、力を奪われすぎではないですか……?)
 漆黒の虚無となったカルロス・グリードの肉体。その貌のない姿を見て、先の戦争で倒したオブリビオン・フォーミュラ「オウガ・オリジン」を思い出すナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。猟書家たちとは異なり、アリスラビリンスの力を具現化したカルロス・グリードが実際にオウガ・オリジンから力を直接取り込んだかどうかは定かではないが、今のカルロスはそう連想させるだけに十分な姿をしていた。
 カルロスがその漆黒の手を伸ばす。虚無と化した肉体は、ぶわりと大気中に拡散してナイと御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)を鷲掴もうとしていた。
(ああ、ちょっとこれはきついわねぇ……!)
 雪音は自身の肉体にオーラの防護膜を張り巡らせると、足元の「Danzatore」を滑らせてその手から逃れようとする。その足元にざ、ざ、と漆黒の槍のごとくにカルロスの肉体が突き刺さり、地面ごと抉って飲み込んでいく。
(どうする……? 武器で、受ける……? 一応ナイフはあるけど、マイクでもあるからこれで、攻撃を受けるのは遠慮したいのよねぇ)
 ――こんな場所だし、多少は怪我しても仕方ないのかしら。
自身の身体に伸ばされるカルロスの虚無であるがゆえに肥大化した腕を前に、雪音は地面を蹴った。Danzatoreで迫りくる腕を蹴り飛ばし、虚無から逃れながら蹴りつけた勢いを利用して後ろに飛ぶ。
 同様に、ナイもその身からましろの光を放ちながら自らの体に迫る肥大化した虚無の掌から逃れんと飛び退いた。
(すべてを飲み込む虚無、と聞きましたが……地に足はつけ続けなくてはいけないのですね、なら)
 放たれた光は攻撃性を有するもの。とはいえこのままではその光はカルロスへ届いたところで飲み込まれるだけだろう。ナイが狙うは、カルロスの足元――その地面、ユーベルコードを発動させる前提条件、「地面に足をつけ続ける」それを崩すこと。
その白い光は収束しレーザーとなってカルロスの足元の地面をまるまるえぐり取る。カルロスが体勢を崩し、足をつける地面を束の間失って、その肉体をレーザーが貫いた。目も口も見えない漆黒の顔から苦悶の声が上がる。しかし一度で地面の全てを刳り続けることは叶わない。カルロスはすぐ新たな足場に足をつけ、そして攻撃の手がナイに向けられる。
「あ、ぐっ……」
 その手に触れられただけで、体をえぐり取られるような痛みが走る。
「こっ、の……!」
「――平気、です……!」
 足を止めた雪音に、ナイの制止の声が飛んだ。ぜいぜいと荒い息の下、雪音に立ち止まるなとナイが言う。
――平気だ。自分はヤドリガミ。どこかの世界のどこかの場所にある本体と引き離された、本体不明のヤドリガミ。仮初の肉体を侵食されても、飲み込まれても、本体が無事であるなら、死なない。後で再生できる。
だから――ナイが怯むことはなく。その体から発せられるは、【生命力吸収光】。
「すべてを飲み込む、虚無も……今に「在る」、為には……「時間」が必要。私の光は……それを、喰らう……!」
 存在するための「時間」――「今この“現在”という名の一瞬の連続」を奪い去られ続け、カルロスの肉体が停止する。その眼前に降り立ったのは、雪音だ。
「待ってあげたんだから、一曲つきあってもらうわよ、カルロス・グリード。次のパートナーは、貴方」
 旋律を自ら口ずさみながら、雪音は溢れ出る情熱に身を任せて踊る。そのまま指先をカルロスの胸へと突きつけると、歌声によって編まれた青薔薇の鎖がカルロスの心臓へと突き刺さった。
「アリスラビリンスの力……どんな可愛らしい感じになってるのかしらと思ったけれど。折角だからその衣装、青薔薇で飾ってあげるわ」
 じゃらり、じゃらり、心臓を胸から背中へと貫いた鎖が全身へと踊るように絡みつき、カルロスを雁字搦めにする。
「“時間”が尽きれば……骸の海へ、還るとき、です……!」
 ナイの光によって、カルロスは鎖を解くために動くことがかなわず、鎖によって全身を貫かれ、そこかしこに青薔薇が咲いた。
『ぐぅ、っ……おお、おおおおお……!!』
 カルロスの絶叫が、森の中へと響き渡ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
【灰色】
分身体を呼び出せるのか。
なあ親父、俺面白いこと思いついちゃったんだけど。
俺もアンタも瀕死になったら呼べるもんがあるし。

ってことで、俺は敢えて相手の攻撃を受けよう。
俺が瀕死にならないなら親父と2人で殴り合って瀕死になるまで叩く。
そしてUC【亡霊なる白黒人形】を発動。呼び出した義体に戦ってもらう。

本体である俺や親父が狙われないように黒鉄刀だけは俺が携え、他の刀は全て複製義体に。
黒鉄刀の闇で周りを染めたら、俺は戦線から少し離れておく。
瀕死の状態だし、狙われたらやばい。

親父が殺人鬼なら、俺はそれを止める刑事にでもなってやろうか?
……なんてな。止めるなんてしねぇよ。
アレが趣味みたいなもんだし。


金宮・燦斗
【灰色】
分身体……(息子を見る)(自分の影を見る)
ああ、奇遇ですね。私も良いこと思いついてるんですよ。
2人とも、似たような手法を持ってますし、ね。

ということで、私も相手の攻撃を受けます。
受けたと同時に瀕死にならなければ、カルロスを攻撃するように見せかけて2人で殴り合います。
そうして瀕死になったところでUC【傲慢なる影】を発動させて、私と影で共闘しましょう。

影はナイフを、私は刀を。
そして時折持つ武器を取り替えて、部位破壊を狙いましょう。
人の姿をしているからといって、部位破壊が効くかはわかりませんが……ま、骨ぐらいはあるでしょ?

此度の『私』は、闇医者か殺人鬼か。
それをカルロスに当ててもらいましょう




「へぇ、「分身体を呼び出せる」のか」
「分身体……」
 木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)と金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)は互いに互いの顔を見合わせる。そして、自分自身の影を見る燦斗に、サライはニッと涙袋を押し上げて笑って見せた。
「なあ親父、俺面白いこと思いついちゃったんだけど」
「ああ、奇遇ですね。私も良いこと思いついてるんですよ」
 笑い合う二人を前に、漆黒の虚無、無貌と化したが故に感情の読めないカルロス・グリードがその手にした銀の鋏を己の肩口に刺す。ずぶり、ぞぶり、まるで布を切り裂くように銀色の鋏はカルロスの体を裁ち斬った。とは言え勿論、カルロスの体には傷一つ無い。裁ち切られた部位からもうひとりのカルロスが現れ、番の鋏を手にする。
金と銀の鋏を手にしたカルロスたちは、それぞれサライと燦斗とに向かって鋏を突き刺す。――二人は、抵抗という抵抗すらしなかった。刺されるままに刺され、斬られるままに斬られる。肺と内臓、傷つけてはいけない臓器が傷ついた証の赤黒い血を吐いて倒れる。
『『おかしな話だ。私は自殺に使われたのか?』』
 ふたりのカルロスは同時にそう言った。その背中から聞こえるのは、燦斗の声。
「ふふっ……まさか、まさか。ええ、そんな事はありませんよぉ?」
「そうですとも、私。ああ、それにしてもこれだけの致命傷を与えてくださって、助かりました」
「全くだぜ、何せよぉ……」
「一撃で瀕死にならねぇようなら、俺と親父で殴り合いでもしなきゃならねぇとこだったぜ」
 燦斗の影から、ずるりともうひとりの燦斗が。そしてサライの足元から、一体の複製義体が。
サライは闇を溢れ出させる刀を構え、少し後ろに下がる。一方二人の燦斗はそれぞれに黒の刀とナイフとを手にして、一歩前に出た。
戦場にはカルロスが二人、サライが二人、燦斗が二人――。
「さぁ、これで数も丁度よくなっただろ、おっぱじめようぜ?」
 サライの言葉とともに、金の鋏のカルロスのもとに走ったのはナイフを手にした燦斗の影だった。それと同時、銀の鋏のカルロスのもとに黒き刀を手にした燦斗が斬りかかる。
「てめぇにはこいつを全部やる!持っていきな!」
 サライから複製義体に投げつけられたのは、白、紅、蒼、翠、琥珀、灰、黄金、水晶、そして玉髄に玻璃――合計十本の刀。それらを次々に抜き放ち、複製義体はサライと全く同じ様に二人のカルロスへと斬りかかる。抜いては斬って放り投げ、落ちてくる前にまた手にとって斬りつける、十刀流の連続斬り。
「ふふ、私の影は「傲慢なる殺人鬼」の影――さぁ、今の私は闇医者か殺人鬼か、どちらでしょう?」
『知ったことではない、な!』
「おや、答えてくれないと困りますよぉ」
『ならば言おう、猟兵。どちらがどちらにせよ我にとっては、殺戮者に変わりないと!』
「ふ、ふふふふははっ、そうですかそうですか!!」
 笑いながら時折得物を交換して二人の燦斗は銀の鋏のカルロスへと集中的に攻撃を仕掛けていた。金の鋏のカルロスへは息子の複製義体が相手をしているし――もはや分身の金の鋏のカルロスは、サライの猛攻によって壊れる寸前だ。ならば本体たる銀の鋏のカルロスでもう少し「遊ばせて」もらわなければつまらない!
『ぐ、ぅぐっ……!』
「さぁ、今貴方の腱と骨を断ったのは闇医者の私でしょうか、それとも殺人鬼の私でしょうか……!」
「安心しましたよ、心配していたんです。貴方の肉体は漆黒の虚無であると言うから……まともな部位が残ってないのではないのかとね。ちゃんと切断できる腱と関節と骨とがあって、本当によかった!」
「何せ、私が愉しむことが出来なくなってしまう」
『ふ……はっ、我の知る闇医者とは、随分とかけ離れているものだ……お前たちは、そのどちらともが愉悦に満ちた殺戮者であろうよ……!』
 カルロスの言葉に、ふたりの燦斗の笑い声が二重になって輪唱した。

「ったく、親父も瀕死だってのによくやるもんだぜ。俺はこうして狙われねぇように戦線からちょい離れてるってのによ」
 サライの視線の向こうでは、己自身の複製義体によって金の鋏のカルロス、すなわちカルロス・グリードの分身体がが完全に破壊されたところであった。
「――親父が殺人鬼なら。俺はそれを止める刑事にでもなってやろうかね?」
 未だ続く殺戮の饗宴を見守りながら、サライは呟いて。そして即座に、その言葉を打ち消した。
「……なぁんてな。止めるなんて、しねーよ。アレが趣味みたいなもんだし」
 サライはそういって、からりと笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神酒坂・恭二郎
「さぁて、虚無とは参るねぇ」
刀一振りでどうしたものかと腕組み一つ
増えた分身と応戦し、勝機を探ろう

2人がかりで来る金銀の鋏の攻撃を【見切り】、手練の【早業】で【受け流し】て凌ぐ
幹部級の攻撃を二人分凌ぐのは相当にきついが、ここが【覚悟】の決め所だ
ボロ雑巾になっても凌ぎ切りたい

反撃は密やかに伸ばしていた「スペース手拭い」
風桜子を帯びた円で奴等を囲み、地面に刀を突き立てる

「檻ッ!」

風桜子による【結界術】で【捕縛】し、気を練る間を稼ぎたい
虚無が現世でその形を維持するのは、その存在を現世に馴染ませる為の触媒的な力が要る
それを断ち切るのが『霊妙剣・滝祭』だ

「場違いさ。あるべき所に還るんだな」
と、斬を入れよう




カルロス・グリードが銀の鋏を手にして、その切っ先を徐に自らの体に突き刺した。ざくり、ざくりと紙切れのように裁ち切られていくカルロスの体、メガリスの特性か、そこからは血の一滴も流れることはなく切り落とされた部分から、もうひとりのカルロスが現れる。新たなカルロスは金の鋏を手にして、立ち上がった。
(さぁて、虚無とは参るねぇ……)
 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は、刀一振りでどうしたものかと腕組みを一つ。そうしている間にも金と銀の鋏を手にした二人のカルロス・グリードが、恭二郎に向かって襲い来る。
金の鋏の切っ先が、銀の鋏の刃が、叫児楼を貫かんと矢継ぎ早に突きかかり斬りかかってくる、それを抜き放った「銀河一文字」でもって受け流し、頸を薙がれる直前で身体を捩って凌いだ。
相手は幹部級、否、オブリビオン・フォーミュラ本人のの分身体。それだけの手練二人分の猛攻を凌ぐのは相当の消耗を強いられる。
(だが、ここが覚悟の決めどころか……!)
 銀河一文字で受け流しきれなかった鋏の刃が、恭二郎の体を深く斬り裂いた。ぼたぼたと地面に赤い血が滴る。喉の奥からこみ上げてくる鉄錆の味。――だが、それが何だというのか。もとより襤褸雑巾になろうとも立ち続ける覚悟を持ってこの戦場へと赴いたのだ。
この程度の傷、耐えきれなくて何がスペース剣豪か!
血を地面に吐き捨て、恭二郎は銀河一文字を構え直す。既に「仕掛け」は設置してある。あとは耐えきり、それが成就するを待つだけだ。時間差で放たれる金銀の斬撃を、刺突を、刀で弾き返して、時にはひらりと柳のように躱して……そして、準備は整った。
密やかに伸ばしていた「スペース手拭い」。風桜子(フォース)を流して長く長く伸ばし、二人のカルロスを囲むように円を描いていた。それが成就したのを見届けて、恭二郎は地面に刀を突き立てる。
「――檻ッ!」
 風桜子によって張られた結界が二人のカルロスを雁字搦めにする。そこから抜け出そうとカルロスたちが藻掻く間に、恭二郎は気を練り上げていく。
「虚無とは確かに厄介だ。だが、虚無なんてものが現世でその形を維持し続けるには、その存在を現世に馴染ませる為の触媒的な力が要る……それを断ち切るのがッ!この【霊妙剣・滝祭】だァッ!!」
 高次元にまで練り上げた風桜子を籠めた銀河一文字に依る、神酒坂風桜子一刀流の斬撃が金の鋏のカルロスを袈裟懸けに斬り裂いた。否――カルロスの肉体が生身であったならば、その攻撃は肉体に傷をつけはしなかっただろう。だが、この六の王笏島におけるカルロス・グリードの肉体は「虚無」だ。それ故に、たった今彼が口にした通り、恭二郎の斬撃は存在に関与する非物理的な超常の力のみを切り裂く――
「場違いさ。あるべき所に還るんだな」
 ――そう、すべてのオブリビオンが在るべき所、骸の海に。
そう言うと、恭二郎は残された銀の鋏のカルロスをも次いで斬りかかろうと、刀を構えなおすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
アリスの力を取り込んだカルロス?
オウガオリジンみたいな感じもするけど…

・対UC
飲み込むのなら、飲み込まれる対策を…
体全周囲を聖属性の【属性攻撃】を付与した【オーラ防御】で包んで
【第六感】で攻撃の隙間を感じ取って【瞬間思考力】で【見切り】回避行動
回避は【空中戦】で【残像】を生み出して少しでも攪乱できれば…

ただやられるのを待つだけじゃない
敵の足元に腰部の精霊電磁砲と風精杖からの風の【属性攻撃】の【誘導弾】を【一斉発射】で地面から足を離させるように試みるよ

・攻撃
【多重詠唱】で防御時から詠唱始めた
《選択UC》
【限界突破】の【魔力溜め】をして溜めに溜めたこの魔力
【全力魔法】で後先考えず撃ち抜くよっ!




「あれが……アリス、ううん……アリスラビリンスの力を取り込んだカルロス……? オウガ・オリジンみたいな感じもするけど……」
 シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は漆黒の虚無と化し、無貌となったカルロス・グリードを見てそう言った。シルにとっても、カルロスのその姿は先の戦争、迷宮災厄戦で見たアリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラ「オウガ・オリジン」の姿を彷彿とさせるものだった。
 カルロスはシルへと向かって手を伸ばす。瞬く間にその肉体は虚無であるがゆえに膨れ上がり、巨大なてのひらとなってシルを飲み込まんとしていた。
シルは全身を防護膜で包むと、その防護に聖なる加護を、そして聖なる攻撃の力を与えて地面を蹴り、空中に舞い上がる。容赦なくシルを叩き落とし、そのまま体内に飲み込もうとしてくる虚無のてのひら。その動きを読み切り、シルはひらりひらりと虚無の手から逃れていく。それと同時に、詠唱を始めることも忘れない。虚無がシルを捉えたと思いきや、それは高速移動で生み出された残像だ。
「ただ、やられるのを待つだけじゃないよ……!」
 腰部の精霊電磁砲を発射可能なように展開する。そして掲げた風精杖「エアリアル」。
風の力が二箇所に集中し、そして撃ち放たれる。風の属性を付与された魔力の弾丸がカルロスの足元の地面を抉る。カルロスが虚無の肉体で持って敵を飲み込むためには足場が必要だ。故にシルは、地面を抉りぬいて、その足場を崩す。シルに伸ばされていたカルロスの肥大化した肉体が元に戻る。し
 しかしカルロスから全ての足場を失わせることはこの「六の王笏島」全てを水没、あるいは消滅させることに等しい。故に次の瞬間にはカルロスは移動し、再びその足で地面を踏みしめて虚無と化した肉体を拡散させ、シルを捉えて飲みこもうと腕を伸ばしてくる。
 ――だが。
そのときには、シルも反撃に転じる準備は整っていた。
「“闇夜を照らす炎よ”――」
 炎の力が、杖に集まる。
「“命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ”」
 水の力が、風の力が、大地の力が、同じく杖に集結していく。唇と舌を酷使し、同時に異なる音節を紡いでいく。カルロスから逃げ回る間も詠唱を始めていたその呪文は、力ある言葉となりてシルの魔力を杖に注ぎ込んでいく。
「“暁と宵を告げる光と闇よ”……。」
 同時に異なる音を紡ぎ出して詠唱を重ねていく、魔力を極限まで注ぎ込む。どれもこれもシルの限界を優に越える作業だ。限界を超えた代償に、末端の血管が千切れ。喉の奥から血の味がする。溜め続けた魔力を放出する反動で、目の前がぐらりと歪む。それらを耐える、耐え抜く。途端に重くなった頭を力強く振って、全身にのしかかる倦怠感をかなぐり捨てて。溜めに溜めた魔力を、一点へと収束させて――六芒陣が、シルの背後に現れる。
 その瞬間に、シルにはもう一工程やらねばならぬことがあった。展開させてあったままの腰部の精霊電磁砲から魔力砲撃を行って、再びカルロスの足場を崩す。先程と同じ?否、先程のは反撃に転じるためのもの。今のは、そう、これから放つ「それ」を、カルロスに吸収させないためのもの。魔弾の一斉掃射はカルロスに体制を崩させ、再び地面を踏みしめることをさせる間も今度は与えぬままに、シルは叫んだ。
「“六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!”――ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト……っ!!」
 そして、四百五十メートル幅の直線状という規格外の巨大な魔力砲撃が、カルロスへと発射された。今度こそカルロスには、どこにも逃げる場所はない。瞬く間に、六属性の力を複合させた光に飲み込まれて――。
『がぁぁぁっ……ぐぅ、ああああああああああああっ!!!』
 シルに認識できたのは、光に飲まれて絶叫を上げるカルロスの声だけだった。彼の肉体がどうなったのか、光に包まれて確認しようがなかった。
 ただ、「六の王笏島」の森の木々をなぎ倒すほどの魔力砲撃の痕跡が、其処に残る焼け焦げた跡だけが、カルロスの最期を物語っていた。

 斯くして、六の王笏島のカルロス・グリードの分身体、無貌の王は、またひとたびの最期を迎えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月24日


挿絵イラスト