「正念場だ」
グリモア猟兵、ロア・メギドレクス(f00398)は告げる。
「猟兵たちよ。よくぞここまで辿り着いた。七大海嘯の全てはその本拠を晒し、そしてフォーミュラであるカルロス・グリードもまたその隠れ家の全てを暴かれた。もはや『詰め』の局面だ」
もはや、やるべきことはシンプルだ。
「これより汝らは、敵地へと乗り込み、そして敵を撃滅せよ」
ロアは端末を操作しながら用意したモニターへと情報を映し出し、敵の戦力について猟兵たちへと伝える。
そこに映し出されたのは、『王笏』カルロス・グリードの姿であった。
「敵は首魁、カルロス・グリード。数多の姿をもつ奴であるが、汝らが此度相手取るのは『終の王笏』……数多のメガリスを用いる姿だ。あまねくものを戒める『鉄鎖ドローミ』。望みを叶える『オーシャンオーブ』。亡霊の軍勢を伴って数多の幽霊船を呼び寄せる『さまよえる舵輪』……いずれも強力な力をもったメガリスだ。当然、それによって汝らを襲うユーベルコードも凄まじい出力をもって展開される」
敵は、強い。結論を言ってしまえば、その一言に尽きる。
「敵は島の中核部に建てられた王宮の中で汝らを待ち受けている。当然、ここは敵の支配領域だ。汝らが戦場へと突入すれば、奴はすぐさま汝らにユーベルコードを仕掛けてくるであろ。……うむ、将兵級オブリビオンの常套手段だ。汝らはこの先制ユーベルコードをいかにして躱すかが重要となる。きっちり対策しながら挑み、敵の攻撃を掻い潜ってその喉元へ牙を突き立てよ」
すなわち、『いつものやつ』だ。
あとは、全力をもって敵を屠れ。
ロアはそう付け加えると、ひと呼吸置いてから更に口を開いた。
「では、これより余が汝らを敵のもとへと送り届けよう。心してかかれ。そして、汝らの持ち得る全ての力をもって『王笏』を屠るのだ!」
グリモア猟兵が叫ぶ。
「これより此度の戦乱における最終作戦を開始する!撃破目標、七大海嘯が一角。『終の王笏』カルロス・グリード!汝らの持てる力を残さず尽くし、無限の海原を邪悪の支配から解き放つのだ!」
行け、猟兵たちよ。
ロアはその手にグリモアを掲げ、そして輝かせた。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。お世話になっております。カノー星人です。
こちらはおそらく此度の戦乱における最終シナリオとなります。よろしくお願いします。
このシナリオにはプレイングボーナス要項があります。ご確認ください。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
☆プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード』
|
POW : メガリス『鉄鎖ドローミ』
命中した【対象1体のユーベルコードを封じる鉄鎖】の【全長】が【対象を束縛するのに充分な長さ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : メガリス『オーシャンオーブ』
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【王宮にある大量のメガリス】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : メガリス『さまよえる舵輪』
【様々なメガリス】で武装した【コンキスタドール】の幽霊をレベル×5体乗せた【空飛ぶ幽霊船】を召喚する。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カタリナ・エスペランサ
御機嫌よう終の王笏
いよいよ年貢の納め時ね?
先制+確定成功、厄介ではあるけれど。破るだけの手札ならあるわ
三次元的な《空中戦》で速度を最大限活用、数多の《属性攻撃+弾幕》による《先制攻撃》で先の先を取る
近距離ならダガーと体術の《早業+怪力》を武器に、《第六感+戦闘知識》で敵の動きを《見切り》隙あらば《カウンター》
敵UCが作用した瞬間に次の手で切り返し即座に体勢を立て直す事で先制対策としましょう
負傷は《オーラ防御》で軽減し《気合い》で《継戦能力》を維持
被弾のたび《封印を解く》事で《ドーピング》強化を重ねるわ
反撃は【虚実反証】、確定成功を反転させ封殺
後は地力の勝負。一切の油断無く攻め立てるとしましょう
メル・メドレイサ
SPD
絡み、アドリブ歓迎
初めましてでしょうか、また会いましたねでしょうか
最近この顔ばっかり見てるもので
先制対策としては、武器とウサギ時計を構え【武器受け】【盾受け】【ジャストガード】【オーラ防御】【継戦能力】とにかく防御系技能をフル動員して守りを固め
「あいつを殺す」的な攻撃行動の難度を徹底的にブチ上げます
いくつメガリスをお持ちか知りませんが、私一人を殺すのにどれだけ費やすおつもりで?
敵がメガリスを惜しみだしてくれたらこちらのターン
【指定UC】で防御を捨て去り高速で【捨て身の一撃】
亀みたいな防御状態から一気に攻め一辺倒に転じる【騙し討ち】です
鉄属性の重い斬撃でメガリス諸共切り捨ててくれましょう!
エドゥアルト・ルーデル
ちわーっす三河屋でござる!首を狩りに来ましたぞ!
鎖に触れたらやべーでござるね!【流体金属】君!一瞬だけ盾になってくだち!
流体金属君が叩かれている間に全身を【ドット絵】に変換!更にドットの色設定をイジって床や同色にして紛れますぞ!隠れんぼでござる
これに隙間へ入り込むも活用すればこの王宮はもう拙者の庭よ
ステルス戦の始まりだ!随時色を調整しながら移動、隙間があれば潜り込んで銃撃、攻撃されそうになったら頭引っ込めるなり隠れるなり…と永遠にモグラ叩きさせてやりますぞ!
まあこれで倒せるとは思ってないですぞ、拙者は囮でござる
本命はこっち、カルロスの背後に移動した流体金属の急所への刺突
やっちまいな流体金属君
リダン・ムグルエギ
敵は強大、絶対成功のやべーヤツ
さぁ、皆見てなさい!
アタシのデザインがどこまで通じるか
この放送で確かめてみましょ
デザインは『全敗遅延戦術』
服等に仕込んだ催眠模様や煽りパフォーマンスで
『成功されても死なない行動』をしたいという思考(ブーム)を生み誘導するの
攻撃はコードや改造済服でいなし
目指すはメガリスの枯渇!
『壊せる物なら壊してみろ!』とペイントしたキャバリアから緊急脱出し
「見つけられるかしら?」と迷彩柄服で隠れ
早業で仕掛けた「罠を乗り越えられるかしら」
環境地形を味方に『海の中にも来れるかしら?』からの
逃げ足活かして「捕まえてごらん」
そんな感じであの手この手でメガリスを浪費させ
それを放送し続けるわ
枯井戸・マックス
【血反吐】
◇POW対抗
王宮に突入する前から魔道遺物たちを召喚しておく
「双児宮、宝瓶宮、巨蟹宮……ニ天一宮。惑わし崩す!」
俺の姿を模倣したコピーキャットに水流カノンをジェットパック代わりに装備させ、鋏を分離させた二刀流で先行させる
囮にして悪いが、派手に暴れて目立ってこい!
◇UC
鎖がコピーキャットを捕らえた隙に俺はサモンズアイの短距離ワープで接近
カルロスが反応する前にバリアブル・カウスで至近距離から攻撃力5倍、射程半減で全力射撃
反撃されても気合でぶち込むぜ
「改めて名乗らせてもらうぜ。遺物を求めて東へ西へ。ゾディアックマスター・マックス! こんな楽しい海を独り占めなんてさせないぜ」
アドリブ連携歓迎
黄金と宝玉が煌めき、積み上げられた財宝があやしく輝く。
――宮殿であった。王の間であった。そこは、王たる者の居城であった。
「跪け、猟兵ども」
そして、玉座より立ち上がった“王笏”カルロス・グリードは猟兵たちを威圧的に見下ろす。
『おうおう、粋がってくれちゃって』
枯井戸・マックス(f03382)は、それに対峙しながらも笑みを崩さなかった。
「今回もまた、ずいぶんな強敵みたいねぇ」
リダン・ムグルエギ(f03694)は思索する。――敵はオブリビオンフォーミュラ。既に多くの猟兵がその分体との激戦を繰り広げてきていたが、今ここに相対するカルロス・グリードはその中でも強力なメガリスを繰る姿をしていた。まともに打ち合えば、勝つのは簡単ではないだろう。
「御機嫌よう、終の王笏」
「初めましてでしょうか、また会いましたねでしょうか?」
一方、カタリナ・エスペランサ(f21100)とメル・メドレイサ(f25476)もまたここに敵の姿を仰ぎ見た。
「フン……。汝らがここまでたどり着いたということは、既に我が分け身と刃を交えて来たのだろう」
「ええ。最近この顔ばっかり見てるもので」
「だけど、それもこれでお終いよ。いよいよ年貢の納め時ね?」
交錯する視線に殺気と敵意が入り乱れる。フォーミュラ級オブリビオン特有の強烈なプレッシャーが、宮殿の内部を満たした。
空気が、熱を帯びる。
「ちわーっす三河屋でござる!!!」
だが、その空気を崩すように、間の抜けた声が響いた。――宮殿の壁を爆破して入り込んだのは、エドゥアルト・ルーデル(f10354)であった。
「どうも!!首を狩りに来ましたぞ!!」
「――ハッ」
エドゥアルトが向ける殺気に、カルロスは嗤う。
「いいだろう。まとめて相手をしてやる。……一人たりとも、生きて帰れると思うな」
じゃら――っ。カルロスが片腕を振った
。その手に握られた鎖が音を鳴らす。鉄鎖ドローミ。戒めの力をもつ強力なメガリスだ!
「向こうもやる気満々みたいね……それじゃ、放送開始としましょうか!」
リダンは端末を操作する。――回線接続。キマイラフューチャー出身者として、映像配信は嗜みだ。始まった放送枠に向けて、リダンは叫ぶ。
「さぁ、皆見てなさい!アタシのデザインがどこまで通じるか、確かめてみましょ!」
「小賢しい。ならば……我がメガリスの力にて、貴様らを一掃してくれる!」
【オーシャンオーブ】!カルロスの掲げたそれは、他のメガリスを代償とし、あらゆる望みをかなえる力を与える秘宝である。
「《ティンカーベル》よ!」
ぱきん――ッ!カルロスの声に応じて、なにかが砕ける音がした。
「あれは……」
猟兵たちは見た。カルロスの座していた玉座のすぐかたわらに立つ、黄金の少女像を。そして、彼女が持つ無数のオブジェを。
金槌。箱。蜘蛛のオブジェ。煌めく羽衣。硝子瓶。矢。翼。剣。手鏡。ペンダント。――いずれも異なる意匠であるが、そのすべてが財宝……すなわちメガリスであるに違いなかった。
そして金槌が砕け散る。――オーシャンオーブの代償によって、メガリスを失ったのだ!
「はあッ!」
そしてカルロスは床を蹴って飛び出した。加速。瞬く間に猟兵たちへと間合いを詰める。
「厄介ね……けど、破るだけの手札ならあるわ!」
ステップ!靴底から打ち出した圧縮空気の反動で、カタリナは宙に舞った。開いた双翼で更に機動し、カルロスの攻め手を躱す。
「ええ。守りを固めていきましょうか。そう簡単にやらせませんよ!」
メルは硝子の剣で打ち払う。手にした王笏を鈍器めいて叩きつけるカルロスであったが、メルはそれを受け流した。――だが、一筋縄ではいかない。すぐさま追撃がメルを襲う。メルは咄嗟に魔法式を編み上げてオーラ防壁を展開。だが、カルロスのパワーはそれを上回る。障壁を貫く打擲の衝撃にメルは苦悶した。
「こっちも手を尽くしましょうか。タネ切れまで耐えればこっちの勝ち……かしらね」
「ヌウ……ッ!」
更なる攻撃を仕掛けようと構えるカルロスであったが、そこへ側面から水流が襲いかかった。浴びせられたカルロスが視線を向けた先、そこに浮かぶのは極彩色の球体!リダンの操る宣伝用品――もとい、キャバリアである。
「汝……!」
「あらごめんあそばせ?お邪魔だったかしら」
リダンはマシンの内部から、挑発的な笑顔をカルロスへと向けてみせた。同時に、マシンの表面へとグリードオーシャンでも用いられる共通言語でもって、挑発的な文言を浮かび上がらせる。
『壊せるものなら、壊してみろ』。
「……あからさまな挑発だが、敢えて乗ってやろう」
ぱきん――ッ。少女像のかたわらで、箱が砕け散る。その瞬間、カルロスは爆発的に加速した。
「そして、後悔しろ」
鋭く放たれた蹴り足が、リダンのキャバリアに叩き込まれた。――凄まじい衝撃。その一撃で外装が砕け散る。
「さすがにフォーミュラなだけあるわね……!」
リダンは咄嗟に作動させた脱出装置で破壊されるキャバリアから抜け出した。その次の瞬間、破砕音とともに機体が圧縮されどら焼きめいた形に押しつぶされる。その凄まじいパワーによってもたらされる破壊の光景に――リダンの配信は盛り上がっていた。
「誰を敵に回したと思っているのだ。――我は七大海嘯が王、“王笏”カルロス・グリードなのだぞッ!」
続けざま!カルロスはその腕を振った。遅れること数秒、それに追従するようにじゃららと音を鳴らして鞭のように金属が跳ねる!【鉄鎖ドローミ】だ!
「ウオーッ!来ましたぞ!触れるとやべー鎖でござるな!!」
『ああ、使ってきやがった……あれに縛られるとヤバい。躱しながら突っ込むぞ!』
エドゥアルトとマックスは同時に身構えた。ざららららら――ッ!その長さを急速に伸ばしながら、ドローミは縦横無尽に跳ね回り猟兵たちを狙っている!
「いや、ここは拙者に策があるでござるよ!――さあ、スピットファイア君!盾になってくだち!」
ここでエドゥアルトは水筒めいた瓶を投げる!そこから零れるように姿を見せたのは、銀色の流体金属生命体だ。あふれ出ながらかたちを作り始めたスピットファイアくんは――
「捉えたぞッ!」
ざら――ッ!鳴り響く金属音!スピットファイアくんはたちまちドローミの鎖に絡め取られる!
「おーし!今でござるよ!」
『なるほどな、囮作戦ってわけか――なら、こっちも仕事を果たすぜ!』
そして2人は走り出した。
――だが、2人ともただ無策で飛び出したのではない。エドゥアルトは油断なくその身のユーベルコード出力を高め、そしてその力を励起する。
「さあ いくて゛ こ゛さ゛るそ゛ !」
その身体はたちまち解像度を落とす!――ドット絵だ!エドゥアルトの姿は256色で構成されるレトロキャラクターめいたものへと変じたのである。【ドット職人の朝は早い】!
『こっちも派手に暴れさせてもらうぜッ!』
その一方、マックスは激しく加速した。その背には水を吐き出す魔導遺物・宝瓶宮グレイスポッド。その水圧を推力へと変えながらマックスの姿は爆発的に速度を上げる。そしてその両手には巨蟹宮イビルキャンサー!分解した鋏を二刀流めいて構えながら、カルロスへと距離を詰める!
『おらあッ!』
「なめるなッ!」
ギャン、ッ!金属同士が激しくぶつかり合った。――カルロスはドローミの鎖でマックスの振り下ろした鋏を受け止めたのだ。
「汝もドローミの戒めを受けよ!」
更にカルロスは押し込む!凄まじい膂力!押し込まれたマックスは態勢を崩された。そこへ更に伸ばされる縛鎖!マックスの身体はたちまち捕らえられる!
『ぐあ……ッ!』
ぎり――ッ!マックスを締め付ける力が増した。その強烈な圧力に、マックスの身体はみしみしと音をたてて軋み始める。
「このまま捻り切って――」
「おおっと そうは させないて゛ こ゛さ゛るそ゛」
「そうそう。お邪魔させてもらうわよ」
「……ッ!」
だが、その瞬間である!カルロスの顔に、機械の破片がぶつかった。気を取られたその瞬間、7.62ミリ弾がその頬を掠める!
「汝ら……!」
「にけ゛ろ にけ゛ろ」
「ええ、楽しい鬼ごっこといこうかしら?」
エドゥアルトとリダンだ!エドゥアルトはドット画像の色彩を調整し背景色に同化することで、リダンはあらかじめ準備していた特殊な服飾生地による迷彩機能を織り込んだ衣服を用いることで、共にステルス性を確保しながら“ちょっかいを出した”のである。
「おのれ……逃すか!《ティンカーベル》ッ!!」
ぱきんッ!カルロスの声に応じて少女像の持つメガリスが砕ける!しかし、それと引き換えにカルロスの視野は隠れる2人の姿を捉えた!
「もはや姿は見えた。……まずは汝を屠り、そうしてから奴らを嬲り殺しにしてくれる」
『ぐあ……』
そして、カルロスは同時にドローミへと力を込める。締め上げられるマックスが苦悶の声をあげ――
『チクショウ、メチャクチャ痛ェじゃねーか……この支払いは高くつくぜ、旦那!』
――否、そう叫んだ者はマックスではなかった!
「なに……!?」
双児宮コピーキャット。他者の姿を模倣する力を持つ、マックスの魔導遺物のひとつだ。そう、ここまでカルロスと戦っていたマックスは――彼の姿を模倣した人形だったのである!
「ああ。よくやってくれた。お陰でここまでたどり着けたぜ」
その瞬間、カルロスは自身の背後に立つ気配へと気づく。
「汝は……!」
「よう。やっと会えたな。――改めて名乗らせてもらうぜ。遺物を求めて東へ西へ。ゾディアックマスター・マックス!」
だが、カルロスが振り向いた時には既に遅い。マックスは、コピーキャットが囮役を務めている間に距離を詰め、そして既に構えていたのだ。【魔道遺物「変幻自在の弓道士」/バリアブル・カウス】――!人馬宮デッドリーアロー!高出力のレーザー砲撃を放つ彼の最大火砲!
「く、ッ――!」
カルロスは咄嗟にその射線から逃れようとした――しかし、その足が動かない!
「もはや のか゛れることは て゛きんそ゛」
「なんだと!?」
ぴきゅ――。カルロスの足元で、甲高く鳴く声がした。
そこにいたのは、先ほどまでドローミに絡め取られていた流体金属生命体スピットファイアくんである。敵の意識が逸れた時間で、スピットファイアくんはその身体の流動性を活かして鎖の拘束をすり抜け、そして仕掛ける瞬間を狙ってカルロスの間近に迫っていたのだ!
「やっちまいな スヒ゜ットファイア くん !」
その身体を針のように細く固く伸ばしたスピットファイアくんが、カルロスの足を床に縫い留めるようにその身体を突き立てた。
「こんな楽しい海を独り占めなんてさせないぜ。覚悟はいいな?」
「お、のれェッ!」
トリガー。そして膨れ上がる閃光。極大出力を伴って、光の矢がカルロスを呑み込んだ。
「ぐ、おおおお、ッ!《ティンカーベル》、ッ!!」
しかし、そのエネルギーに吹き飛ばされながらもカルロスはオーシャンオーブを掲げて叫ぶ。少女像のそばで、またしてもメガリスが砕け散る。
「ッ、おのれ猟兵ども……!」
「私たちを甘く見たわね」
態勢を立て直すカルロスへと、素早く間合いを詰めながら刃をかざしたのはカタリナである。鋭く放ったダガーの切っ先を喉元へと迫らせる。しかしカルロスは鋭い体捌きでそれを躱し、カウンターめいて肘を叩き込んだ。咄嗟に腕で捌きながら、カタリナは再びカルロスと間合いを取る。
「メガリスの残りも随分と心もとなくなったのではありませんか?いくつお持ちかは知りませんが……どれだけ費やすおつもりで?」
「そうそう。まだ誰一人倒せてないものね?そろそろ在庫が心配じゃないかしら?」
その側面へと迫ったメルとリダンが、挑発するようにカルロスへと囁きかける。
「黙れ――《ティンカーベル》ッ!」
ぱき、ん。ぱきん、ッ。ぱきんッ!爆ぜる。壊れる。砕け散る。激昂の叫びと共に、カルロスはその双眸に怒りの火を灯して猟兵たちへと更なる攻勢をかけた。次々とメガリスを代償に捧げながら、カルロスは更に苛烈に猟兵たちを攻め立てる!
「おおおおおッ!」
オーシャンオーブの力は、代償を払うことで《成功する》ものだ。その確定事象から逃れることはできない。
カルロスの放った打撃はメルの防御を貫いてその身体に少なくないダメージを叩き込んだ。逃れるリダンへとカルロスは追い縋り、苛烈な一撃を食らわせる。
「……、ちょっとまずいかしらね?」
ぜ、ッ――。荒く息を吐き出しながらリダンは呟いた。『ヤバくねえ?』『強いじゃん!』『放送事故かよ』のコメントが配信動画に流れてゆく。
しかし彼女は【トレンドストリーマー・GOATia】。この動画配信が続いている限り、いかなる攻撃をも耐え切る覚悟だ。
「このまま押し切ってくれる……《お喋りカラス》ッ!」
カルロスは更にオーシャンオーブの力を行使する。メガリス・《お喋りからす》が砕け散った。そうしてカルロスは、その拳先に力を込める!
「――いいえ。それ以上は通りません」
だが、その瞬間である。――その拳を、黒く染まった影法師が押し止めた。
「……なに?」
「『絶対に成功する』……バカな。絶対なんてものは“絶対に”存在し得ない――なんてね?」
【虚実反証/チープ・バックドア】。
カタリナ・エスペランサという猟兵は、その身に神格を宿した者であり、その権能の一部を行使する力をもつ者である。
それを限定的に開放し、ユーベルコードへと転換したものがこの『因果反転』の力だ。それは『とどめを刺すことに成功する』という結果を覆す。
「我のオーシャンオーブの力を……相殺したというのか!?」
「そうとってもらって構わないよ。……ここから先は地力の勝負だ」
メガリスを代償にしてまで行使した力が通じない――!押し返されたその事実に困惑するカルロスへと、カタリナが蹴り足を叩き込む。苦悶の呻きと共に衝撃に後退するカルロス!
「お、のれ……!」
「――おや。もうメガリスは使われないのですか?」
ぎりと音を立てて歯噛みするカルロスへ、メルは再び囁いた。
「……ッ!」
カルロスが振り返る。――玉座のかたわらに立つ少女像。その周りに配されていた筈のメガリス群は、もはやほとんどが砕け散っていた。
枯渇したのだ。次にオーシャンオーブの力を用いれば、いまこの手に握るドローミすら砕きかねない。
「それじゃあ――」
その逡巡を、メルは見逃さなかった。
「反撃、させてもらいますね」
瞬間。刃が軌跡を残して奔る。
【エンチャントダンス】。踊るように巧みな体捌きでもって跳ねたメルの身体は、瞬き一つにも満たぬ時間でカルロスへと肉薄した。
「な……ッ!」
ここに至るまで、メルはカルロスに対して防戦一方の姿しか見せていなかった。であるが故に、カルロスは把握していなかったのである。彼女がこのような攻め手を取れる、ということを。
「ぐあ……ッ!」
ざ――ッ!鈍色に輝いた硝子の剣は、鉄めいて重い刃となってカルロスの胸元へ深々と傷を抉り込む!
「猟兵、どもめ……おのれ、ッ!」
カルロスは傷口を抑えながら後退した。――あまりにも多くのメガリスを失い、想定以上の傷を負わされた。
その苦痛と屈辱に、カルロスは歯噛みする。
「もはや容赦はしない……!この我にこれほどまでの屈辱を与えた罪、即刻汝らの命をもって償わせてくれる!」
そして、その双眸に激しく炎を燃やしながらカルロスは叫び、そして猟兵たちへと対峙した。
――“終の王笏”との戦いは、続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
…絢爛な王宮ね。だけどこの世界に、お前のような王は不要よ
"写し身の呪詛"に精神属性攻撃のカウンターを仕込み、
分身を破壊した敵を洗脳するように武器改造を施し、
無数の残像を乱れ撃ちして敵集団の攻撃を受け流し、
同時に幽霊達を洗脳して同士討ちを行わせてUC発動
…心を操る外道の術だけど、お前を討つ為ならば躊躇いはすまい
…死してなお、お前達の魂を縛るメガリスは…
さまよえる舵輪は、奴の手の中よ…奪いなさい
今までの戦闘知識から銃魔と連携して敵陣に切り込み、
空中戦機動の早業で敵の周囲から銃魔を乱れ撃ちさせて、
怪力任せに大鎌をなぎ払う2回攻撃で敵を切断する
…その隙は逃しはしない
…撃ち砕きなさい、私の眷族達…!
栗花落・澪
闇には光を
霊には破魔を
子供だからって嘗めたら痛い目見るよ
【高速詠唱】で【破魔】と【呪詛耐性】を乗せた【オーラ防御】で身を護り
更に聖痕の力を用いて、地に同じく破魔を乗せた★どこにでもある花園を生成
季節問わずあらゆる世界の花々が咲く花畑を広げる事で【浄化】の結界を張り
霊達が入って来れないように
遠距離攻撃手段を持ってないとも限らないからね
その場合【聞き耳】で音を聞き分け翼の【空中戦】で回避行動
万一の時には【激痛耐性】で耐え
もう攻撃は終わり?
それなら今度はこっちの番だよ!
【指定UC】を発動する事で戦場全体を強い破魔で満たし
この天上世界に適応した聖なる力
光の【全力魔法】でカルロス本人を狙って攻撃するよ
鈴桜・雪風
終の王笏、最終形態だけあって恐るべき相手ですわね
いずれのメガリスも難しい相手ですが……
効果が召喚だけで終わるさまよえる舵輪が、唯一付け入る隙がありそうです
現地に到着したら即座にその場で【影絵眼鏡】を起動
敵にわたくしがその場で留まっているように見せかけます
召喚された空飛ぶ幽霊船には幻のわたくしを攻撃して頂きましょう
剣を抜いた後の傘もここへ残しましょう
本体たるわたくしは
時間を稼いでいるうちになるべく隠密を心がけてカルロスへ向かいます
幻のタネが割れる前に、カルロスを間合いに捉え
幽霊船共々【風鳴】の刃にて仕留めさせて頂きますわ
「我が刃の其の疾きこと風の如く。お覚悟!」
ヴィクティム・ウィンターミュート
なるほど、お前がこの戦争の最終目標か
やっぱ最後は、グリードオーシャンの王らしく…その姿か
龍だの悪魔だの神だの…これまで全て踏みつけてきた
今更「王」を相手に、負ける道理なんかありゃしねぇ
出しなよ…テメェご自慢の幽霊船を
おーおー、壮観じゃねえか…よーく『視て』おくぜ
【ハッキング】でサイバネオーバーロード
【ドーピング】でコンバット・ドラッグ摂取
【ダッシュ】で逃げながら幽霊を迎撃しつつ、UCを起動
俺にも使わせてくれ──『Dead Copy』
派手な戦争と行こうぜ…俺の狙いは大将首のテメェだけだ
幽霊は幽霊同士で楽しませておこうぜ
──インファイトのお時間だ
接近して、ナイフと仕込みショットガンで攻めまくるッ!
「不遜である――。不遜であるぞ、猟兵ども。下賎の者どもが、ッ!」
『王笏』カルロス・グリードは、激昂と共に猟兵たちへと対峙する。
その手には鉄鎖ドローミ。そしてさまよえる舵輪。超常的な力を秘めたメガリスを手に、カルロスは猟兵たちを迎え撃とうとしていた。
「なるほど、あいつがこの戦争の最終目標か」
「ええ。……七大海嘯が一角……メガリスを繰る『終の王笏』、ですわね」
そして、猟兵たちは対峙する。
玉座より見下ろすカルロスの姿を仰ぎ、ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)と鈴桜・雪風(f25900)は対峙した。
「やっぱ最後は、グリードオーシャンの王らしく……その姿か」
「そうだ。この世界を統べる者は、即ちもっとも多くのメガリスを持ち、そして誰よりも巧みに使いこなす者である。感じるだろう、この宮殿に満ちる我がメガリスの力を」
「……そうね。王を名乗るだけあって、ずいぶん絢爛な王宮ね」
リーヴァルディ・カーライル(f01841)は、煌めく広間をぐるりと見渡し、そしてその中央で佇むカルロスの姿を捉える。
「だけどこの世界に、お前のような王は不要よ」
「愚かな。異界の者である汝らに、この世界の何が分かる。この海を支配するに相応しきは我々七大海嘯の他にない」
「そんなことない!」
支配権の正当性を傲慢に語るカルロスへと、栗花落・澪(f03165)は異を唱えた。
「みんな、苦しんでたよ。あなたたちの支配のせいで!」
――ここに至るまでの戦いの中で、澪はオブリビオンたちに支配された多くの島を見てきた。
澪だけではない。いずれの猟兵達も、多くの人々が苦しめられる姿を見せられてきたのだ。
「我らにはそれだけの力があった。力はすなわち権利である。――汝が如き童では理解できぬか?」
「……子供だからって嘗めたら痛い目見るよ、『王笏』さん」
交錯する戦意。眼差しに乗せて、互いの敵意が交差する。空気がにわかに熱を帯びた。
「愚かな。――汝らは今ここで、王たる我が手によって滅ぶのだ」
「はッ。今更なんだってんだ。こっちだって今まで龍だの悪魔だの神だの……無茶苦茶な連中だってこれまで全て踏みつけてきたんだ。「王」程度の相手に、負ける道理なんかありゃしねぇ」
「ええ。わたくし達も多くの死線を潜ってここまで来たのです。負けるつもりなど毛頭ありませんわ」
「……ここで引導を渡してあげるわ、『王笏』カルロス・グリード」
「不遜な――ならば、その意気ごと呑み込み、水底へと沈めてやろう」
「いいぜ。出しなよ……テメェご自慢の幽霊船を」
「……よかろう」
カルロスはその腕を掲げる。追従するように、舵輪が宙に浮かび上がった。
「舵輪よ――この海に眠りし残霊どもをこの地へと呼び込めッ!」
そして――舵輪が廻る。同時に、宮殿ががらがらと音をたてながらその形を変えた。天井部が崩れるように消え去ってゆく。そこから見えた空に見えるのは――無数の幽霊船団!
『おおおおおおおおおおおおおッ』
『おおおおおおおあああああああああああああ』
『痛い痛い痛い痛い』
『寒い寒い寒い寒い』
『憎い憎い憎い憎い』
【さまよえる舵輪】が、ここに門を開いたのだ。そこより現れた亡霊たちが群れを成し、宮殿を取り囲んでいた。
「すごい……なんて数の幽霊船」
「おーおー、壮観じゃねえか……よーく『視て』おくぜ」
「……来るわ。対処するわよ」
轟音!――砲声とともに炸裂する火薬の匂い。空気を震わしながら、幽霊船団に搭載されたカルバリン砲が火を噴いたのだ。一斉発射された砲弾が、猟兵たちへと迫る!
「まずは切り抜けましょう……!これを掻い潜り、敵の懐へ!」
散開するように猟兵たちは砲撃の着弾点から逃れた。爆発する榴弾を躱して、猟兵たちは駆ける。
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
『沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め』
だが、更なる攻勢!続けて幽霊船の群れからはカトラスを手にした亡霊たちが飛びだした。尽きぬ憎悪を口走りながら、武装した海賊幽霊の軍勢が襲い来る!
「来た……けど、負けないっ!闇には光を!霊には破魔を!」
澪は指先を素早く滑らせ、そこに陣を描いた。破魔の術式円!闇を祓う力が光の防壁となって展開し、亡霊の振り下ろした剣を弾く!
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
だが、そこへ更に海賊剣士の大群が押し寄せる!澪一人で捌き切るにはあまりにも多い!
「多すぎる……なら、っ!」
澪は展開した破魔の防壁で敵の進攻を押し止めながら、更にその身へと宿した聖痕の力を引き出した。澪はその手を石畳の床へと触れる――。その接触点を通じて、澪は光の力を解放した。
そこに、花園が広がる。
『おおおおおおおお』
『ひ、ひかり、ひか、り……』
それは彼の聖者としての力の発露である。展開された花園の領域は、いわば破魔の結界だ。怨念に満ちた亡霊たちを寄せ付けぬ聖域として完成する。
「……退きなさい」
続けざまに風切りの音!破魔の領域展開に慄き足を止めた海賊幽霊を、駆け抜ける黒い風が3体まとめて両断したのだ。リーヴァルディが亡霊たちを闇へと還す!
「……確かに、敵は多いわね。……なら」
リーヴァルディは振り抜いた大鎌を構えなおしながら再び加速した。同時に彼女は呪を繰り出す。自らの姿を写した写し身の呪詛だ。それは分身となって戦場に展開し、敵の群れの中へと飛び込んでゆく。
『ああああああああ』
「……外道の術だけど、奴を討つ為ならば躊躇いはすまい」
リーヴァルディの繰る写し身の呪詛は亡霊たちの中で更なる呪を撒いた。――それは、周囲の者たちが敵の姿として映る幻惑の術である。
『おおおおおおお』
『おおおおおおおおおおおお』
――敵だ。敵だ。敵だ!亡霊たちの目には、周囲に並ぶ仲間たちの姿が敵として映った。カトラスとカトラスがぶつかり合い、互いに互いを敵として認識した亡霊たちが仲間同士で切り合い始める。
『沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め』
「はッ。よくも飽きずにドカドカ撃ってきやがる!」
その一方、宙に浮かぶ幽霊船団は砲撃を続けていた。宮殿のあちこちで、撃ち込まれた榴弾が炸裂する。吹き上がる爆炎を躱しながら、ヴィクティムは走っていた。
駆動するサイバネ。肉体に埋め込まれた二つのエンハンサーが神経系と筋組織に作用する化学物質を分泌する。薬物強化によって底上げされた知覚力と身体能力で砲火の中を潜り抜ける。
「まったく、困りましたわ」
そして、燃ゆる炎を躱しながら雪風は戦場に立つ。
「これほどのまでの力を使うとは……終の王笏、最終形態だけあって恐るべき相手ですわね」
濃密な火砲の雨を超えた先。そこに立つカルロスの姿を、雪風は見据える。
だが――次の瞬間であった!轟音!爆発!放たれた砲撃が着弾し、雪風はその炎の中に包まれたのである!
「……」
しかし――炎と煙が晴れたその時、そこには火傷一つないままの雪風が立っていた。
『なぜ死なぬ』
『撃て』
『殺せ』
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
直撃したにもかかわらず、平然とした雪風の姿に亡霊たちが困惑した。矢継ぎ早に弾を込め、亡霊たちは雪風へ更なる砲撃を浴びせかける。
「砲撃はこちらで引き受けますわ。そちらは手筈通り!」
そして、炎の中から雪風が声をあげた。
「おいおい、あれで平気なのかよ。ひょっとして、“探偵殿”って奴はどいつもこいつもムチャクチャなのか?」
吹き上がる炎の先に雪風の姿を見ながら、ヴィクティムは肩を竦める。
「だが――ああ、こっちの準備は整った!ここから反撃の時間だぜ!」
そして――ヴィクティムが、コードを繰る。
『おおおおおおおおおおおおおおお』
『あああああああああああああ』
『滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす』
「……なに!?」
その瞬間、戦場の空に再び門が開いた。――そこから姿を現したのは、新たな幽霊船団だ。
「……敵の増援?」
「ええっ、また増えるんですか!?」
仰いだ空に現れる船の姿に走る緊張感。しかし――
「派手な戦争と行こうぜ……行け、お前ら!フューミゲイションだ!」
ここで声を上げたのは、ヴィクティムであった!現れた船団は、それに応じてカルロス旗下の幽霊船団へと向けて砲撃を開始したのだ!
【Program:『Dead Copy』】!他者の用いたユーベルコードを、自らのユーベルコード出力によって模倣再現する彼の能力である。ヴィクティムは、カルロスの用いた幽霊船団の召喚という能力を模倣したのだ。
「……なるほど。そういうことね」
亡霊の相手は、亡霊にさせればいい――ということか。それは実際、リーヴァルディの用いた策と同じ考え方であった。
「……なら、こっちも重ねていくわ。さあ、あなたたち。……あなたたちの敵を、屠りなさい」
写し身の呪詛を通した精神干渉で、リーヴァルディはカルロス旗下の亡霊たちへと囁いた。同士討ちをしていた亡霊たちが、その声に応じるように視線の先を変えてゆく。
「……死してなお、お前達の魂を縛るメガリスは……さまよえる舵輪は、奴の手の中よ……」
リーヴァルディは亡霊たちの思考を誘導してゆく!
「奪いなさい」
『お。お。おおおお』
『う、ばう』
『舵輪……舵輪んんんん』
リーヴァルディの声を聞く亡霊たちはその矛先を変えた。猟兵たちではなく、『王笏』こそが討つべき敵であると。カトラスを掲げた軍勢が、カルロス・グリードへと向かってゆく!
「流れが変わってきたみたいだね。攻撃も弱まってきたみたいだし……それなら今度はこっちの番だよ!」
ヴィクティム旗下の幽霊船団の出現とリーヴァルディによる亡霊軍団への干渉によって、敵の攻め手は抑えられつつあった。澪はここで生まれた余裕を逃すことなく、その身に宿した光の力を更に強く励起させる。
「さあ。今ここに、希望の輝きを!」
花園が広がった。
限定的な空間に破魔の領域を作り上げていた澪の花園は、そこへ更に強力なユーベルコード出力を加えられたことで急激に拡大し、その力を拡散させる。
【心に灯す希望の輝き/シエル・ド・レスポワール】。そこに満ちる煌めきは、天上の光であった。
『おおおおおおお』
『ひ、ひかり……ひか、りいいい』
抵抗を続けていたカルロス旗下の亡霊たちが呻きながら膝を屈してゆく。――闇の存在である亡者たちは、この光の中では急激に力を失うのだ。
「なんだと……なんなのだ、これは……!舵輪が呼び寄せた我が軍勢が、押されているというのか!」
カルロスは自分へと矛先を変えた亡霊たちを撃退しながら、今置かれた状況に戸惑っていた。
「計算違いかい。そいつは残念だったな――!」
ばぁんッ!困惑するカルロスを、散弾が襲う!ヴィクティムが間合いを詰めたのだ。抜き放ったショットガンのトリガーを引き、銃撃を仕掛けたのである。
「ぬうッ!」
カルロスは横跳びに銃撃を躱した。同時に腕を振り抜き、手にしたドローミの鎖を鞭めいて放つ!ヴィクティムは咄嗟のバックステップでこれを躱した。
「──インファイトのお時間だ。テメェの首、仕留めさせてもらうぜ」
「戯言をッ!」
「……観念なさい。追い詰められているのは、あなたよ」
「なにッ!?」
次の瞬間である――カルロスは、自身の周囲を飛び回る羽音に気づいた。蝙蝠の使い魔か!舌打ちと共に視線を巡らせたカルロスであったが、彼の目に映ったのは――『翼をそなえた銃』の群れであった。
「撃ち砕きなさい、私の眷族達……!」
銃声の交響!それはリーヴァルディの用いたユーベルコードである。【限定解放・血の銃魔/リミテッド・ブラッドファミリア】。彼女の得物である吸血鬼狩りの銃へと己が血によって仮初の命を与え、敵を追い詰める秘術!
「づァッ!」
だが、カルロスは素早く身を翻し銃魔たちの包囲から逃れた!1秒前までカルロスの存在していた空間を、血の銃弾が通り過ぎてゆく――
「……その隙は、逃しはしない」
「ぐお、ッ!」
しかし、その回避機動は読んでいた。リーヴァルディは敢えて銃魔の包囲に緩みを作っていたのだ。敵は必ずそこへ逃れてくるであろうと予測した上で、彼女は待ち受けていたのである。
「は――ッ!」
「ムウッ!」
斬ッ!振り抜く大鎌がカルロスを襲う!その胸元を裂かれながら、カルロスは後退して致命傷を避ける!
「なんだ……この感覚は!何故、我の身体がこうも重い!」
猟兵たちの攻撃から逃れながら、カルロスは自らの身体に違和をおぼえていた。――今の彼は、明らかに本来の力を発揮できていないのだ。身体が重い。力が入らない。自らの力を出し切れぬ奇妙な感覚。それは攻め込まれたこの状況を更に致命的なものに追いやっていた。
「言ったはずだよ。……『嘗めたら痛い目見るよ』ってね!」
「ぐあ――ッ!こ、これは――!」
歯噛みするカルロスのもとへ、光が落ちた。
――澪である。展開したこの破魔の領域の中で、光の力を束ねた魔法弾を形作っていたのだ。そして、その光の鉄槌がカルロスへと落とされたのである。
「汝……ッ!汝の仕業かッ!」
光を払い除けながら、カルロスが激昂する。――そう。彼の感じた違和感の正体は、この破魔の領域がもたらした光であった。展開されたユーベルコード出力が、邪悪の存在であるオブリビオンの身体に枷をかけていたのである。
「よくもこの我に、これほどの屈辱をオオオオオオオッ!」
憤怒に叫ぶカルロスが、その身体から強大なユーベルコード出力を放出する!舵輪を通して拡散したエネルギーが溢れ出し、展開する幽霊船団へと力を注ぎ込んだ!
「これ以上汝らのような下賎の者どもに勝手を許すものか!我が全霊の力でもって、汝らを――」
だが――次の瞬間である。
「――いいえ。そうはなりませんわ」
花吹雪。桜の花弁と共に、一陣の風が吹いた。
『ああああああああ』
『おおおおおおおおおおお』
亡霊たちのうめき声。それと共に、宙に浮く船の一隻が瓦解する。
「今度はなんだ……!何が起こっている!?」
「まだ気づいていらっしゃいませんでしたか?」
困惑するカルロスの耳元に、風が囁いた。――更に次の瞬間、カルロスは身を裂く痛みに呻く!
「既に『詰み』です――もはや逃れる術はありませんよ」
そして、嵐が来る。
【桜純流剣術『風鳴』】――雪風の放つ超剣技が、戦場に吹き荒れたのだ。
「馬鹿な……!汝、一体……!」
「仕込みははじめから、でしたわ」
舵輪の力によって幽霊船団が現れた時、雪風は既に身を隠していたのだ。――そう。亡霊たちが砲撃を仕掛けていた雪風は、彼女が仕掛けていた幻灯機によって作り出していた虚像に過ぎない。
彼女は自身の虚像と猟兵たちのユーベルコードに紛れて、この瞬間を待っていたのだ。
「これで終いと致しましょう。我が刃の其の疾きこと風の如く……お覚悟!」
刃が王笏を断つ。カルロスは苦悶に呻いた。
「……その罪を、贖いなさい」
「ちい、ッ!」
反撃に転じようとするカルロスであったが、猟兵たちはその暇を与えない。リーヴァルディが再び詰める!銃魔の群れと振り抜く大鎌がカルロスを更に追い詰めた。
「いい加減諦めろっつうの――バズ・オフ!」
「がふ――ッ!」
矢継ぎ早!横合いから再び接近したヴィクティムが引き金を引く!吐き出された散弾がカルロスへと浴びせられた。
「あなたを倒して……この海を、解放するんだっ!」
そして――光が爆ぜた。
「……おのれ、おのれ、おのれ、ッ!」
――しかし。
『王笏』カルロス・グリードは、これほどの攻撃を浴びせられながらも未だ膝を屈さなかった。
否、既に致命傷といえるダメージは負っている。もはやそのオブリビオンとしての存在核にも猟兵たちのユーベルコードは達しているのだ。
だが――その精神は、ここで斃れることをよしとしていなかった。
「まだだ……まだ、我は倒れてはいないッ!」
その双眸に激憤の火を灯し、憎悪の炎を胸へと燃やしながら――カルロス・グリードは未だ立つ。
かくして、戦いは終局を迎える。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
アシェラ・ヘリオース
・血反吐
「ここが終焉の地だ。終の王笏」
最後の決戦の地にて、真の姿の近衛装束にて挑む
先制で召喚される幽霊船は脅威だ
強力な本体の攻撃を回避しつつ、※推力移動で※空中戦を挑み、常に動く事で猛攻を凌ぎたい
避け切れぬ被弾は「闇理力盾」で※盾受け、「黒の外套」で※オーラ防御を駆使する
「死ねば生きる……だったか。久しい感覚だ」
かっての末期戦は何時もこれだった
戦力的優位のあった戦など片手の指ほどもない
最適に防ぎ、最適に砲撃し、最適に刻み、最適に貫き、最適に位置取る……
※瞬間思考力で無駄を削ぎ、己を研ぎ澄ます
結局、戦とはシンプルな物なのだ
「終の王笏、その心臓貰い受ける!」
※ランスチャージで破天の槍を突き立てよう
オリヴィア・ローゼンタール
強欲なる者、その首魁!
傍若無人の報いを受ける時だ!
幽霊船の召喚そのものの妨害は困難故に、その武装への対策へ専念する
強化された【視力】で【見切り】、射撃を聖槍で【受け流し】、砲撃を【ダッシュ】で躱し、飛び降りて白兵してくる者を斬り伏せる
浮ついた賞金稼ぎとは練度が違う、士気が違う! だが、押し通る!
第一波を凌げば、次弾装填までの隙に【ヘラクレス】を召喚・搭乗
天来せよ、鋼の大英雄!
【巨神射殺す星辰の強弓】を引き絞り、防御用のメガリスも船も諸共に撃ち砕く
絶大な破壊力により【貫通攻撃】となり、その一矢はカルロス・グリードも貫く
外しはしない――直撃させる!
ミスト・ペルメオス
・WIZ
いよいよか。――こちらブラックバード。加勢するッ!
愛機たる機械鎧を駆って参戦。
ヘルム等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
ヘルファイア・デバイス展開、敵の増援にはスラスターを駆使した戦闘機動を行いつつの対空射撃。
弾幕を張って迎撃、被害の軽減や陽動を図りつつも念動力を最大まで解放し――【サモン・シュラウドレイダー】。
空飛ぶ船には空飛ぶフネを。精神生命体の戦士達が駆る亡霊宇宙戦艦および異形の戦闘機群を召喚、敵の飛行幽霊船に対抗。
そうして自身は戦線を強引に突破、カルロス・グリードに迫る。
弾幕を張って牽制、そして素早くドレッドノート・デバイス展開。
叩き込んでやる……!
※共闘など歓迎
ヴィクトル・サリヴァン
流石金持ちというか財宝持ち?メガリスの使い方豪勢だねー。
でも手札が多くとも勝負がそれで決まるわけではないよね。
手札がなくとも王は討たれる事もある、それを骸の海にでも持ち帰ってね。
幽霊船のコンキスタドールにはUC準備まで時間稼ぐ。
破魔の力付与したオーラを結界のようにして全身を覆いダメージ軽減、直感を活かして致命傷だけは避けるように。
宮殿の地形利用して弓や銃の射線はできるだけ絞らせる感じで高速詠唱からの破魔付与した水弾を飛ばして牽制する。
それでUCの準備できたら即起動、更に破魔の力纏わせて邪魔してくる幽霊達を銛でぶち抜いたり尾でしばいたりして退けカルロスに全力の拳を叩きこむ!
※アドリブ絡み等お任せ
激戦に半ば崩壊した宮殿の中で、『王笏』カルロス・グリードは今一度猟兵たちへと対峙した。
「強欲なる者、その首魁!傍若無人の報いを受ける時だ!」
オリヴィア・ローゼンタール(f04296)は、手にした槍の柄を強く握り締めた。邪悪を屠り世界を守るという、その決意に満ちた瞳がオブリビオンの姿を射る。
「ここが終焉の地だ。終の王笏」
アシェラ・ヘリオース(f13819)は剣を抜く。
漆黒を纏う戦装束。かつて帝国騎士として剣を執っていた際のその戦衣は、彼女にとっての誇りである。その覚悟をもって、アシェラは敵の首魁へと相対した。
「……いよいよか」
崩壊した天井より見える青空の中に、黒く翼が舞った。
鎧装ブラックバード。ミスト・ペルメオス(f05377)は機体の操縦席から戦場を見下ろす。
「今までずいぶん好き勝手やってきたみたいだけどさ」
そして、ヴィクトル・サリヴァン(f06661)が仰ぎ見る。
「もう、これで終わりにしよう」
やわらかな物腰とは裏腹に、ヴィクトルの身体には力が満ちる。
「黙れ……黙れッ!!許すものか。我が終焉など、許してかッ!」
しかして、カルロスは叫ぶ。
その躯体は猟兵たちとの死闘を経て既に満身創痍であったが、その双眸には憎悪と敵意の炎が激しく燃え盛る。
「舵輪よ、今一度我が軍勢を呼べッ!!」
カルロスは再びメガリスの力を励起した。宙に浮かび上がる【さまよえる舵輪】が廻る!開かれた『門』より現れる幽霊海賊船団!未だ晴れぬ怨念と怨嗟に叫ぶ亡霊どもの声が空を覆い尽くした!
「おお……惜しげもなく使うじゃないか。流石金持ちというか財宝持ち?メガリスの使い方豪勢だねー」
宙を進む亡霊船団を仰ぐヴィクトルは、満ちゆくメガリスの力に身構える。――しかし、あくまでも平静を保って。
「でも、手札が多くとも勝負がそれで決まるわけではないよね」
「ああ。むしろ重要なのはその“質”だろう。……ならば、我々も決して引けを取るものではない」
アシェラはその手に赤く輝く魔槍を握る。圧縮されたフォースの刃。破天槍の感覚を、アシェラはその手で確かめる。
「ええ。我々こそ戦況を返す鬼札です。……決着を、つけましょう!」
そしてオリヴィアは走った。
応じるように、天に満ちる亡霊船団が火砲を放つ。飛来する榴弾が轟音と共に爆裂した。
『おおおおおおおお』
「はあッ!」
オリヴィアが槍を薙ぐ。黄金の穂先が闇を祓うように、爆炎を切り裂いた。火砲を掻い潜り、オリヴィアは前進する。
「フン――小癪な!」
ざら――ッ!涼やかな金属音。カルロスの手に握られるのは鉄鎖ドローミ!振り抜く腕の動きに追従し、蠢く大蛇のように跳ねた鎖が猟兵たちへと襲い掛かった!
「くッ……こうまでもメガリスを使ってくるか!」
紙一重!放射するフォースの力を推力へと転換しながら、アシェラは素早く軌道した。その真横の空間をドローミの鎖が貫いてゆく。
『おおおおおおおお』
だが、そこへ向けて更に上空の亡霊船団が火砲を構えた。眼下、見下ろした先に見える猟兵たちへと亡霊たちが狙いを定める――。
しかし、その時である。
「――させるか!」
『あああああああああああ!!』
爆発、ッ!宙に浮かぶ幽霊船団の更に上方より、爆ぜるように散った光弾が亡霊共を襲ったのだ。船体へと触れた粒子弾が次々と爆発を起こし、亡霊たちを恐慌状態へと陥れる。
「あれは……鎧装騎兵か!」
「――こちらブラックバード。これより、そちらへ加勢するッ!」
推進剤の燃える軌跡が尾を引いて、ブラックバードが空を舞う。亡霊たちが対空砲火で迎撃を試みるが、加速するブラックバードの躯体を捉えることはできない!
ミストは続けざまにトリガーを引いた。ヘルファイア・デバイスが駆動し、再び粒子弾を散らす!
「おお……これは助かるね」
激しい空中戦を繰り広げるブラックバードが、亡霊たちの意識を強烈に引きつけた。――その分、地上の猟兵達へと向けられる攻勢は弱まっている。ヴィクトルは幾分薄まった火砲の中を突っ切るように駆け抜けた。
その身体はいつしか鋼を纏う。【海王の装甲/オーシャンキング・クロス】。その表皮に浮かび上がった金属質が鎧となってヴィクトルを包んだ。
「じゃ、力押しでいくとしようか……ッ!」
――強行突破!展開したユーベルコードの装甲を頼りに、ヴィクトルは更に前進する!砲撃を打ち払い、炎を突き抜け、そして爆炎を踏み越えながら、その視線の先に敵の首魁の姿を捉え、立ち止まることなくまっすぐに進む!
「お、ッのれェ……!やれ、亡霊どもよッ!」
止まらぬ猟兵たちの姿に、カルロスは激憤とともに声をあげる。同時に、その身に宿した強力なユーベルコード出力を舵輪へと流し込んだ。メガリスを通じて、放出されたエネルギーが亡霊たちの軍勢へと注ぎ込まれた!
『おおおおおおおおおッ!』
『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ』
『滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす』
カルロスの力を受けた亡霊軍団が、カトラスを構えながら幽霊船から飛び降りた!地上へと降りた亡霊軍団が、猟兵たちへと押し寄せる!
「くッ……!」
降下する亡霊兵士が放つ鋭くも重たい一撃!オリヴィアは槍で弾く!しかして即座に入れ替わった次の攻め手が更にオリヴィアを襲った。
『おおおおおおおおッ!』
「浮ついた賞金稼ぎとは練度が違う……士気が違う!」
オブリビオンフォーミュラから直接ユーベルコード出力を供給された亡霊たちは、オリヴィアほどの手練れの猟兵でも真正面からぶつかり合えば一筋縄ではいかない相手だ。押し寄せるカトラス剣撃の嵐に、オリヴィアは押し込まれる――しかし!
「だが……、押し通る!」
裂帛!その声と共にオリヴィアは全霊の力をもって槍を薙いだ。爆ぜるように輝いた黄金の穂先が、亡霊たちを切り伏せる!
「なるほど――メガリスを通じてフォーミュラの力を注がれた兵どもか。ただの雑兵ではない、ということだな」
しゅ、ッ!風切りの音とともに、アシェラはカトラスの間をすり抜けながら前進する。
「死ねば生きる……だったか。久しい感覚だ」
しかして多勢に無勢の状況下であったが、アシェラはその口の端に笑みすら浮かべてみせた。
銀河帝国の終焉を知る彼女にとって、無勢の戦いは既知の領域だ。かつて帝国近衛騎士であった時、彼女の戦いはいつもこうだった。思い返してみれば――戦力的優位のあった戦など片手の指ほどもない。
だが、彼女はその戦いの悉くを生き延びて今ここに在る。
研ぎ澄ました感覚が、肌を刺すような殺気を気取る。アシェラは瞬間的な思考を繰り返し、常に最適の行動をとった。無駄のない動きで、彼女は敵の猛攻をすり抜けながら前へと進む。
結局、戦とはシンプルな物なのだ。――思考を止めず、常に最善と思えた行動をとり続ける。生存と勝利は、それを繰り返した先にしか存在しない。
【軍神の教え/ハイスイメソッド】。それこそが、ユーベルコードの領域にまで昇華された彼女の戦う術なのだ。
――ユーベルコード出力が空間を満たす。空気が熱を帯びながら、戦局は更に加速してゆく。
「殺せッ!亡霊共ォッ!」
『おおおおおおおおお』
しかし――爆ぜる砲撃!砲火!砲火!砲火!叫ぶカルロスの声に応じる亡霊たちが、更なる火力を以て猟兵たちを襲ったのである!
「向こうも死に物狂いということか……ならば、ッ!」
燃える砲火を見下ろしながら、ミストは精神を集中させた。――収束するサイキックエナジー。ミストは念の力を解放する。その力が、虚空へと亀裂を走らせた。
(来たれ、来たれ、来たれ――!)
そして――開く!
『 』
『 』
『 』
その瞬間、光が走った。
放射された亜空粒子滅却光線砲が87連装超次元レーザー砲塔より放たれ、亡霊船団を撃ったのである。
【サモン・シュラウドレイダー】。――ミストによって開かれた『門』より呼び込まれた異形の異次元戦艦が、彼らをこの地へと呼び込んだミストの思念に応じて、敵軍へと攻撃を仕掛けたのだ。
『 』
『あああああああああああああ』
無数の閃光が空に迸り、何隻もの幽霊船が光の中に消滅した。
「なに……!なんだ、あれは……!?」
戦場へと現れた未知の脅威に、カルロスが困惑する。
「状況が変わった……こちらが押している!ならば、これこそ好機!」
――流れは、間違いなく変わった。
ミストの呼び込んだ異界の軍勢の火力は、亡霊船団の兵力を大きく抑え込んだのだ。アシェラとヴィクトルは地上において展開した亡霊どもと互角以上にわたり合い、そして着々とカルロス本体との間合いを詰めつつある。
「……天来せよ、鋼の大英雄!」
ここに生まれた隙が、彼女にそれを可能にさせた。その腕を掲げ、オリヴィアはここに鋼を呼び込む!
「いきますよ、ヘラクレスッ!」
ヘラクレス――!オリヴィアの駆る鋼の英雄!すなわちスーパータイプ・キャバリアである!宮殿を揺るがし着地したヘラクレスのコクピットへと、オリヴィアは素早く滑り込むように搭乗した!
「そして顕現せよ、星辰の強弓!」
ヘラクレスが腕を突き出した。その掌は虚空へと突き入れられ、そして鋼を掴み出す。
【巨神射殺す星辰の強弓/ギガントマキア・シューティングスター】!ヘラクレスはその強靭な黒鉄の腕で矢をつがえ、そして力強く弓を引いた。ヘラクレスの瞳を通じて捉えた敵の姿へと向け、オリヴィアはその狙いを定める。
「なに……!」
「これで終わりだ、『王笏』カルロス・グリード。外しはしない――直撃させる!」
そして――放つ。
その瞬間、星が流れた。
強弓より放たれた矢は、光の軌跡を残しながら音にも匹敵する速度で走る。その進路を遮ろうとした亡霊共を容易く貫きながら、僅かたりともその勢いを落とすことなくまっすぐにカルロスのもとへと迫った!
「ヌウウ……ッ!!」
着弾。
矢に込められたユーベルコード出力がカルロス・グリードの持つオブリビオンとしての存在力にぶつかり、エネルギー同士が反発しあって爆発する。
「おのれ――おのれ、ッ!猟兵風情がッ!」
爆発から逃れながら、カルロスは態勢を立て直した。その腕の中でドローミの鎖が音を鳴らす!反撃態勢に移ろうとしているのだ!
「決着はもうついている……滅べ、オブリビオンフォーミュラッ!」
だが、カルロスは反撃に転じるよりも速く、翼が戦場を翔けた。――ブラックバードだ!鋭く加速した漆黒の躯体が、カルロスへと肉薄したのである。
ミストは巧みに機体を操りながら銃身を向けた。展開するドレッドノート・デバイス。照星の先に捉えたターゲット。――そしてミストはトリガーを引く!
「ッ、おおおおおおお!!」
爆ぜる重粒子!爆発する閃光に飲み込まれながら、カルロスが呻く!
「終の王笏――その心臓、貰い受ける!」
そして、次の瞬間である。
赤く閃光が迸り、戦場に再び流星めいて光が流れた。
――高速のランスチャージ!破天の槍を携えて、フォースの光を煌めかせながらアシェラが飛び込んだのだ。
「馬鹿な……、ッ!我は、『王笏』なるぞ……!七大海嘯を統べる、オブリビオン・フォーミュラ……!」
「……七大海嘯だろうが、フォーミュラだろうが」
インパクト!激突するアシェラが、カルロスの胸部を貫いた。
「負ける時は、負ける。――それだけだ。戦とは、そういうものだろう」
そして、引き抜く。
「お、ッ、ゴ……おおお、お、ッ!」
ごぼ――ッ。喉奥から込み上げた血を吐き出しながら、カルロスが苦悶した。
「ふ、ざけ、るな……ふざけるな、ッ!我が……我が、敗れるはずがない……!数多の、メガリスを繰り、七大海嘯の頂点に君臨する、この我が……」
「いやァ――いい加減、現実を見なよ」
ひゅ、ッ。
風切りの音。――ご、ッ!一拍遅れて、鈍い激突音。
「ガ……ッ!!」
頭蓋を揺らす衝撃。顎先から脳天まで突き抜けた打撃のダメージに、カルロスの意識は一瞬の空白をつくる。
「何度ヤだって言っても、事実は変わらないよ。キミの負けだ」
揺れる視界の中、カルロスは目の前に立つ男の姿を見た。
「まあ、口で言っても納得しないと思うから、もうこっちでわかってもらうしかないんだけど――これで、本当に終わりだよ」
ぎり、ッ。強く音を立てながら、ヴィクトルがきつく拳を握った。
「やめ――」
「手札がなくとも王は討たれる事もある、それを骸の海にでも持ち帰ってね」
轟音。
そして、カルロス・グリードの意識は暗転した。
「……終わりましたね」
「ああ。ようやくだな」
ヘラクレスを降りたオリヴィアが、アシェラと頷きあう。
「とはいえ、まだ全部が全部終わったわけじゃないけどね」
ヴィクトルは短く息を吐き出しながら、瓦礫の地面へと腰を下ろした。
「はい。……ここは撃破しましたが、他の七大海嘯が抵抗を続けているはずです。そちらも叩いておかなくては」
そして、ミストはヘルムをかぶりなおした。
猟兵たちの見上げた空にもはや亡霊たちの姿はなく、どこまでも続く空の青色ばかりが広がっていた。
彼らは再び頷きあい、そしてもう一度飛び立ってゆく。
――かくして、ここにグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラは滅びたのである。
この海に広がった戦乱の渦もまた、終焉の時を迎えつつあった。
成功
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