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羅針盤戦争〜無敵大帝ザンギャバス

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #ザンギャバス大帝 #鮫牙島

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「グリードオーシャンの戦争に関する予知を行いました。参加希望者はご参集願います」
 グリモアベースの一角でイリス・ノースウィンド(とある部隊の元副隊長・f21619)が声を張り上げる。戦争は終盤に突入し、各地域で七大海嘯との激しい戦いが繰り広げられていた。
「今回予知した相手は『鮫牙』ザンギャバス大帝。七大海嘯の一角、無敵の力を持つ相手となります。倒すことはできませんが追い払うことは可能ですので、ご協力をお願いいたします」
 ザンギャバスの身体はいかなる攻撃からも傷つけられないと言う。刃も炎も猛毒も、かの大帝には通じない。
「みなさんが島へ移動した後、鮫牙島はザンギャバスの待ち受ける深海へと向け急速潜航します。深海に適応した装備を用意いただくのが望ましいですが、難しい場合に備えてセイレーンクロスを利用した潜水服を用意しております。必要な場合はご利用ください。もっとも、急遽用意した品ですので効果については期待できません。最低限の移動・呼吸が確保できる程度の物です」
 あくまで補助。動きを阻害するほどではないが、有利に動けるというほどのものでもない。
「無敵であるザンギャバスへの唯一の対抗策は、『長時間暴れさせ、飢餓状態にさせる』こと。極度の飢餓に陥ればザンギャバスは撤退します。そのために皆さんへお願いしたいことは2つ。1つはザンギャバスを暴れさせ、飢餓を速めるとともに時間を稼ぐこと。2つ目は、ザンギャバスの食料となる深海巨大鮫の群れを何とかすること」
 ザンギャバスは巨大鮫であっても生きたままむさぼり喰らう。そして深海には凄まじいい数の巨大鮫がいる。鮫を遠ざけるなど、何とかしてザンギャバスの食事を邪魔して欲しい。
「ザンギャバスに関する情報をお伝えします。身の丈は7mほど。太った見た目をしていますが行動に支障はないようです。鮫牙島に何らかの仕掛けでもあるのか、必ずユーベルコードによる先制攻撃を行ってきます。例えカウンター系のユーベルコードであっても、こちらの準備が整う前に一撃が来ますので、ユーベルコード以外の方法で対処をしてください」
 ザンギャバスが使うユーベルコードは、基本的に猟兵の使用するユーベルコードに対応したものとなる。POWにはPOW、WIZにはWIZで先制されるということだ。
「ザンギャバスはかなり頭が悪いようですので、罠や策略をしかけるのも効果的です。また、効果は弱いものの、一時的なマヒなどは可能なようです」
 毒殺は出来ないが、毒による足止めは可能ということだ。
「ザンギャバスを追い払えば、支配下の島を1つ解放できることでしょう。島の名は『ディーグラシア島』。セイレーンの多く住まう深海島で、今回のセイレーンクロスを提供いただいた島でもあります」
 いつか反乱を起こす為にと用意していた品を、猟兵に提供してくれたようだ。
「飢餓が深刻になれば、ザンギャバスは獅子のような姿になり撤退するようです。逃げたとしても無敵なことには変わりありません。くれぐれも深追いはしないようお願いいたします。では、お気をつけて」
 イリスが頭を下げ、グリモアが淡く輝いた。


鏡面反射
 はじめまして。こんにちは。こんばんは。鏡面反射(きょうめんはんしゃ)と申します。当シナリオへ興味を持っていただき、ありがとうございます。
 このシナリオは『戦争シナリオ』であり、1章で完結します。難易度は【やや難】、オープニングでイリスからも説明している通り、『敵の先制攻撃ユーベルコードと、「巨大鮫を喰おうとするザンギャバス」に対処する』ことでプレイングボーナスが発生し有利となりますので、積極的に狙ってみてください。もちろん、通常シナリオと同じ基準でもプレイングボーナスが発生します。
 では、みなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』

POW   :    ザンギャバスハンド
レベル×1tまでの対象の【腕や頭】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ザンギャバスファング
自身の身体部位ひとつを【竜、山羊、蛇、蛇のいずれか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ザンギャバスポイズン
攻撃が命中した対象に【肉体の部位「蛇」からの猛毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体を侵食する猛毒】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:白

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆

事前に「肉体改造」を自身に施し、自身の表面をヌルヌル成分と吐き気成分で覆います。
これで掴もうとしてもヌルヌルして掴めないよね!
対策したら次はUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】で肉塊になるよ!
肉体改造はそのままに、巨大鮫にわざと肉塊の一部を齧らせて鮫の内部で増殖して爆散★肉片に吐き気成分を纏わせよう!
吐き気成分ごと肉片や肉塊をザンギャバスにも食べさせて、内側のものを全部逆流させれば飢えるよね!
UCの飢え続ける匂いを海水に混ぜてもザンギャバスを飢え続けさせられるはず!
それに、水中戦はちょっと得意だよ♪

勝利の暁には羊肉で宴会だよ☆



 鮫牙島が海底へ辿り着くと同時、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)はその身を海へと滑らせる。
「猟兵……コロす……」
 ラヴィラヴァの存在に近づいたザンギャバスが近づいてくる。その動きは海中とは思えないほど素早い。あっという間にラヴィラヴァへと接近し、その右手をラヴィラヴァの頭へと伸ばした。ぐしゃり、とその手を握るが、すぐにまた手を開き不思議そうな顔をする。その視線の先、少しばかり離れた場所に、変わらぬラヴィラヴァの姿があった。鮫牙島が深海へと向かう道中で準備した策。ラヴィラヴァの全身はぬるぬるとした何かに覆われ、ザンギャバスが掴もうとしてもぬるりと抜け出してしまう。
「あ、あ、ああぁぁぁ!!!!」
 赤子がかんしゃくを起こすような叫び声をあげながら、ザンギャバスは幾度もその手を伸ばす。だがラヴィラヴァは、もはやその攻撃を意にも介さなかった。ふいに、ラヴィラヴァの身体がボコボコと変質する。ピンク色のクジラゼリーのような姿は膨れて肉塊となり、なおも増殖するように内側から盛り上がる。その姿のまま、ラヴィラヴァは超高速で海中を移動する。向かう先には巨大鮫の群れ。直前で止まり、おいでとばかりに両手を広げる。
「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
 その異形じみた姿に巨大鮫は一瞬動きを止めるが、直ぐに肉塊へと貪るように齧りついた。ラヴィラヴァの肉塊から放たれる匂いが巨大鮫を刺激し、我を忘れるほどに飢えさせたのだ。夢中になって肉塊を喰らっていた鮫たちが、急に苦しみ始める。その腹が急激に膨れ上がり、内側からはじけ飛んだ。ラヴィラヴァの肉塊が体内で膨張し爆散したのだ。
「肉……肉ゥ……」
 匂いに誘われたか、追いついてきたザンギャバスが鮫の群れを手あたり次第に口へと運ぶ。その様子を、ラヴィラヴァは黙って見ていた。
「う、お、ぁ」
 ザンギャバスの口から鈍い悲鳴と共に、食べた鮫たちが吐き出される。ラヴィラヴァがその肉体に仕込んだもう一つの策。吐き気成分が鮫を経由し、ザンギャバスを苦しめたのであった。
「暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆」
 飢餓を誘う匂いと吐き気に苦しむザンギャバス。ラヴィラヴァの楽しそうな声へ視線を向けようとするが、苛む吐き気がそれすらも許さない。
(勝ったら肉で宴会しよう。羊肉がいいかな、ラムチョップ、ジンギスカン、ナヴァラン、丸焼きもいいな☆☆)
 目の前の惨状からも食欲を刺激されたのか、ラヴィラヴァの脳内は羊料理で埋め尽くされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
最初の一手…ここを上手くしのげれば…

早業で球状の魔力結界(結界術・オーラ防御)を早業で形成、ARを使って表面に無数の棘を生成、掴んできた場合のカウンター
その状況から無理に投げて叩きつけたとしても魔力結界と痛覚耐性でダメージを軽減

その後、UCで下半身を鮫の姿に変えて反撃開始

全力魔法・結界術・オーラ防御で巨大な魔力の球を生成し、自分と鮫牙(…と共闘者)以外を外に締め出し、外と内を完全に遮断

これであなたは補給は出来ないよ

その後、先制攻撃の対処をした魔力結界を形成し、水中を泳ぎ回って回避重視、相手の隙をついて魔力弾で攻撃
UCの大技などに気を付けつつ、相手を動かして消耗を狙い飢餓状態を狙っていく



 枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)は魔法の杖『ALCHEMY・Rod』を握りしめ、迫り来るザンギャバスを冷静に見据える。
(最初の一手……ここを上手くしのげれば……)
「コロす……!」
 ザンギャバスの手が水織へと伸びる。事前のシミュレーション通り。その手が水織を掴む直前、オーラによって作られた結界が一瞬にして水織を包み込んだ。その表面は、振るわれたALCHEMY・Rodにより無数のトゲに覆われている。
「あぁ?ジャマだ……気にいらねぇ、コロす」
 棘ごと結界を掴み、ザンギャバスは水織を海底へと叩きつける。視界が揺れ、意識が明滅しかけた。破れる結界を視界にとらえながら、痛みに痺れる思考でそれでも好機を捕らえる。水織の下半身が魚へと変化した。さながら人魚のごとく、しかしその尾鰭は無骨な鮫の物。水を捕らえてザンギャバスの手を脱し、再びALCHEMY・Rodを構えた。巨大な球状の結界が、水織とザンギャバスだけをそのうちに捕らえた。
「これでもう、補給は出来ないよ」
 結界に阻まれ、巨大鮫は2人に近づくことができない。淡々と事実を告げる水織へ、ザンギャバスは怒りに燃える目を向けた。掴みかからんとするザンギャバスに追いつかれないよう、水織は尾鰭を動かす。
「サメ……肉……コロす」
 追いかけっこで飢えを感じたか、ザンギャバスの視線が巨大鮫へと向く。
(ダメ……)
 ザンギャバスの力で殴りつけられれば、いくら結界といえどもいつまでも持つとは限らない。水織は手にしたALCHEMY・Rodから魔力弾を撃ち出した。
「あぁ!?気にいらねぇ、気にいらねぇ」
 魔力弾が当たろうとも、ザンギャバスには傷ひとつつかない。だがその単純さゆえか、邪魔をされた怒りは空腹を上回っていた。再び追いかけっこが始まる。逃げる水織をザンギャバスが追う。ザンギャバスが足を止めれば、水織の魔力弾がザンギャバスの怒りを揺り起こす。そうしてその追いかけっこは、水織の体力と魔力が切れるまで続いたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
この地に追い詰めるまでに数多くの島が大帝の襲撃を受けました
これ以上の跳許さぬ為、少しでも消耗させねばなりませんね

水中用装備を装着し●水中戦

巨体の筋力活かした機動性は脅威ですが…水中では此方も条件は同じ
故郷の宙間戦闘の分、三次元機動は一日の長があります

センサーの暗視●情報収集と瞬間思考力で動きを●見切り水中機動で攻撃を掻い潜り

『負けぬ戦い』は騎士として得手とする所…
お付き合い願いましょう、ザンギャバス大帝

UCを水中用装備の高速誘導魚雷(誘導弾)で敵の手足や変異した身体に撃ち込み炸裂
凍結で泳く為の運動を封じ●怪力ランスチャージで海底へ押し遣り鮫から遠ざけ

氷を砕いて…いえ、何度でも押し留めるまでです


地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
潜水服借りとくわ。運悪いからな俺。
しっかし、食い意地貼ってる上に行儀の悪い奴だなこの脳筋デブ!(※酷い言い様)
見た目の割にすばしっこいようだがおつむがお粗末ならやりようはいくらでもある!

敵のUCは【第六感】で攻撃タイミングを察知しつつ動きを【見切り】、回避したら【カウンター】と見せかけた【フェイント】を交えて【ダッシュ】で距離を取って翻弄してやる。
その間に『穢れを喰らう黒き竜性』で穢れを喰い、敵の動きが止まった瞬間を狙って【指定UC】を発動する!
突然発生の渦潮で鮫共を【範囲攻撃】で一気に叩いて奴の食い扶持を減らしてやるぜ!
俺に気を取られたばっかりに不運に見舞われたなァ!?


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


無敵とはまた面倒だねえ。
まあ、泳ぐのは得意な方だし、何とかしてみようか。

さて、まずは先制攻撃の対処だね。
掴みかかってくるだけなら竜の肺腑から空気を大量に吐き出して、
泡で目くらましにしてこっちの姿を見えないようにして避ければいいかな。

攻撃を避けたら【獣相変貌】で巨大なシャチの姿に変身するよ。
シャチはサメを食べる天敵だからね、
この姿で威圧してやればサメは逃げていくんじゃないかな。
後は相手がサメを食べようとするのを体当たりで邪魔したり、
こっちを掴もうとしたら逃げたりして時間稼ぎをしようか。

うーん、いろいろな生き物の姿で戦うのはあたしと似てるけど、
これを同類とは思いたくないなあ。



「無敵とはまた面倒だねえ」
 ここまでの戦いを経ても傷ひとつないザンギャバスを目にし、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が呟く。
「えぇ、ですがこれ以上の被害を許すわけにはいきません。少しでも消耗させねばなりませんね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)の纏う潜水服へとアイセンサーを向ける。その声は無機質な機械音声でありながら、今なおザンギャバスの支配下にある人々への憂いに満ちていた。
「あぁ、散々好き勝手に奪いやがって。こいつだけは許せねぇ、絶対に、絶対に!」
 潜水服の胸へ拳を押し当て、凌牙は怒りを顕にする。
「心中、痛いほどお察しします。ですが無敵の相手となれば、別の戦いようもありましょう。知恵と知識もまた、我々の武器なのですから」
 怒りに燃える凌牙の言葉へ、トリテレイアは冷静な言葉を返す。その言葉に、凌牙の瞳にもほんの少しの落ち着きが戻った。
「じゃあ、やろうかぁ」
 どこか間延びしたペトニアロトゥシカの声が緊張を和らげる。トリテレイアと凌牙が頷き返し、ザンギャバスとの戦いが幕を開けた。
 初めに動いたのはペトニアロトゥシカ。その口からまるで竜のブレスのように、大量の泡を吐き出す。あっという間に辺りを覆い尽くし、視界の効かない状態にした。
「どこだぁ、見えねえ。コロす、コロす!」
 癇癪を起したザンギャバスは、当てずっぽうでその腕を伸ばす。例え視界が効かなくとも、7mの巨体を完全に回避することは困難に思えた。だがその動きを、トリテレイアは逐一捕らえる。機械の身体は視界だけに頼らない。声が、水流が、体温が、鼓動が。ザンギャバスの居所を正確に教える。視界だけで見れば泡から突如として伸びた腕を、トリテレイアは難なく躱したのだった。一方、凌牙もまたザンギャバスの居所を察知する。凌牙の身に纏う覇気、『穢れを喰らう黒き竜性』はその名の通り穢れを喰らう。それゆえに、穢れの塊であるザンギャバスの位置をなんとなく把握することができた。
(けど、俺は運が悪いからな……悪いけど、一緒に戦ってくれ)
 潜水服、それを紡いだセイレーンたちへと思いを馳せる。不幸の根幹たる穢れ、それをこの一瞬だけ押しとどめてくれと願う。たとえ特別な効果が無くとも、そこに織り込まれた思いは何よりも強いものだと信じて。果たして、伸ばされた手をギリギリで避けた凌牙は、ザンギャバスの背へと蹴りを叩き込んだ。ザンギャバスの怒りが自身へ向くのをはっきりと感じる。
(食い意地張ってる上に行儀の悪い奴だな、この脳筋デブ!)
 声に出さず胸中で罵り、その怒りすらも力に変えて攻撃を加え続ける。ザンギャバスの攻撃は空ならぬ海水を切り続け、ふしゅぅるるるるるるという息遣いが隠し切れぬ疲労を感じさせた。ザンギャバスの身体へまとわりつく黒い影。凌牙の力を通してあふれ出した穢れが、ザンギャバスの動きを阻害している。やがて泡が抜け、ザンギャバスがその視界に凌牙を捉えた。そんな凌牙のすぐ横を、エイの翼のような推進器を纏ったトリテレイアが駆ける。強い意志を秘めた緑色の瞳と、強い信念を秘めた緑色のアイセンサーが交差した。まかせた、と凌牙の口が動く。
「ここからは私がお相手します。『負けぬ戦い』は騎士として得手とする所……お付き合い願いましょう、ザンギャバス大帝」
 手にした槍を構え、一直線に突撃する。並の敵なら刺し貫くその一撃を、ザンギャバスの腹がぶよりと受け止めた。だが勢いまでは殺されず、そのまま海底へと押し付ける。
「氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
 両肩から2門、脚部の水中戦用パーツから2門。計4門の砲門が、一斉にミサイルを吐き出した。狙い過たず着弾し、その手足を氷の枷で繋ぎとめる。
「あぁ?動け、ないぃ?いぎぎぎぎっ!!」
 ザンギャバスの額に青筋が浮かぶ。やがてビキビキと、氷にヒビが入り始めた。
(この氷を力で砕いて……!?)
 その膂力に、トリテレイアはわずかな感嘆すらも覚える。だが勿論、自由にさせるわけにはいかない。氷が砕けた瞬間、新たなミサイルが着弾し、その手を再び氷の内へ封じ込める。
「何度氷が砕けようとも、その度に押しとどめて見せましょう。我が護り、楽に砕けるとは思わないことです」
 一方、ザンギャバスからは少し離れた海底付近。そこには1匹の巨大なシャチが悠々と泳いでいた。ときおり寄りくる巨大鮫ヘ、くるりと回頭し泳ぎ近づく。シャチを目にした巨大鮫達は一斉に逃げ惑い、この海域から離脱していく。
(シャチはサメを食べる天敵だからね)
 巨大シャチの正体はペトニアロトゥシカ。ザンギャバスの初撃を避けると同時、その身を巨大なシャチへと変え、巨大鮫を追い払っていた。ここの巨大鮫はあくまで生物。本能に勝てる道理もない。ときおり逃げぬ鮫がいても、尾鰭で水流を起こして威嚇すれば怯えたように逃げていく。かつて自然界においてすら、たった2匹のシャチが現れたために、17匹ものホホジロザメが餌場を捨てたという事例もある。ましてや、多くの生物の知識を持ち活用するペトニアロトゥシカが扱えば、その力は本物以上に有効であった。ペトニアロトゥシカがこうして鮫を追い払っているからこそ、凌牙とトリテレイアはザンギャバスに集中できていた。
(とはいえ、向かってくるのも多いなぁ)
 捕食者たるザンギャバスがいるにもかかわらず、この海域にとどまっていた鮫たちだ。元来危機感が薄いのか、ペトニアロトゥシカが近づくまでは逃げずにとどまる個体もいた。群れを追い払っても、遠くから別の群れがやってくる。もちろん、ペトニアロトゥシカの体力と威圧をもってすれば、この広い海域を1人でカバーすることは容易い。ザンギャバスを中心とした一定範囲をぐるりぐるりと周遊し、鮫を追い払う。ひたすらの繰り返し。のんびりとした性格のペトニアロトゥシカにとってこの状況は嫌いではないが、些か面倒でもあった。そのとき、鮫のひと群れが突如発生した渦潮によって弾き飛ばされる。
「手伝うぜ」
 鮫たちの穢れを喰らった凌牙がその力を解放する。穢れは不幸の呼び水となり、鮫を巻き込む渦潮として顕現した。
「助かるよーありがとね」
 海域を半々にわけ、ペトニアロトゥシカと凌牙で鮫を追い払い続ける。どれほどの時間が経った後か、ぐるぉぉぉ、と低く重い音がした。手足の拘束が粉々に砕け、身構えるトリテレイアの前でその巨体が獅子のような姿へ変わっていった。さきほどの音は吠え声か、あるいは極限に陥った腹の虫か。深海を駆けるように飛び去るザンギャバスへと、問う手段は既に無い。
「うーん、いろいろな生き物の姿で戦うのはあたしと似てるけど、あれを同類とは思いたくないなあ」
 シャチの姿のままのペトニアロトゥシカがぽつりと呟く。各々の思いを抱きながら、猟兵は去り行く獅子を見送ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月21日


挿絵イラスト