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羅針盤戦争〜ル・リエーラ・イラーと呼ぶ声が

#グリードオーシャン #羅針盤戦争

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#羅針盤戦争


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●子を呼ぶ声が
 それは歌のように響き渡る声であった。
 海洋世界にあって、海とは即ち母である。母なる海。そこから生まれ出るが故に、海は母性でもって表現される。
 最初の波。
 最初の風。
 生み出される海の波間、その海底から呼ぶ声が聞こえる。

 意味のない声。
 歌うような声であり、グリードオーシャンの深奥より響き渡る声は、母なる者の声であった。
「――」
 その声は人の身には届かぬ声であったが、徐々に波長が在ってゆく。
 聞き取れなかった声は、ゆっくりと人々の耳に耳障りの良い音色のように、蕩けるような甘やかな声で響くのだ。

「――聞こえますか、我が子らよ」
 慈愛に満ちた声。
 何もかもかなぐり捨てて、その声に身を委ねたくなる。
 途方もなく懐かしい声。
 嘗て聞いた声であったかもしれないし、心揺さぶられる声であったかもしれない。けれど、その声を聞いたもの達は皆一様に言うのだ。

 あれこそが我が母であると。
「愛おしい我が子ら。ええ、わかっていますとも、母が恋しいのですね。愛しましょう。誰でもない貴方たちを愛しましょう。何も心配することなど無いのです」
 海中より現れるは身長100mはあろうかという巨躯。
 青白き肌と爛々と輝く紅い瞳には、狂気が宿っていた。その姿を見た者は、常人であれば耐えられぬほどの狂気に犯され発狂する。
 高波がめくれ上がるように海洋世界に襲いかかる。

 それは正しく愛による『侵略形態』オーシャンボールのようであった。
 島一つなど簡単に飲み込むような波を生み出しながら、『大いなる神』直属――『海底の母』が出現する。
「愛しましょう。ええ、全て我が子らです。平等に慈しみましょう。平等に愛しましょう。愛おしい我が子ら。全て私のもの。貴方達は何も心配しなくて良いのです。私の愛の庇護下にあれば、何も恐れることなどないのです。さあ、さあ、私の愛を――」
 受け止めて。

●羅針盤戦争
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。急を要する存在が現れたことをお知らせいたします」
 ナイアルテの瞳は揺れている。
 それは戸惑いであったのかもしれない。猟兵達がこれまでに何度も予兆として幻視してきたコンキスタドール、カルロス・グリードの口から語られた『大いなる神』。
 その存在が遣わせた恐るべき敵が海中より迫っているのだ。

「『海底の母』と呼ばれる身長100mを超える存在です。海中より除くその姿を見るだけで常人は発狂してしまうとまで言われています」
 言うまでもなく、凄まじい巨躯を持つ敵である。
 クリオネのような無数の子どもたちを放ち、まるでオーシャンボールのように津波で島を海に変えようとしているのだという。
 当然、島民たちの避難は間に合わないだろう。

 故に、『海底の母』と呼ばれる存在を猟兵達は此処で打倒しなければならない。
「『海底の母』のユーベルコードは強力です。巨躯を晒し、その姿で持って魅了と敵意喪失により、母体と認識させ従順にさせる力。津波を起こし、外れても地形に関係なく海に変える力。そして……」
 ナイアルテは言葉を切った。
 確かに『海底の母』の力は恐るべきものであったが、その愛情は偽りのないものであった。
 例え、独占欲と庇護欲がないまぜになった危険なる感情であったのだとしても、母を知らぬ身であればこそ、その愛を偽りであると突き返すことができないのだろう。

「放った自身の子供たち……クリオネのような存在に愛情を注いでいる間、愛の力で強化されます。どれも強力なものですが、七大海嘯のように必ず皆さんに先制するだけの力はありません」
 そこがこの戦いを優位に進めるための鍵となるだろう。
 これまで七大海嘯との戦いを数多く繰り広げてきた猟兵たちにとって、彼らの初撃は如何にして凌ぐかが問題であった。

 だが、『海底の母』は違う。
 確かに強力なユーベルコードであるが、その力はグリモアの予知で割れているのだ。ならば、猟兵達は立ち向かうことができる。
 どれだけ恐るべき力であったとしても、必ず対抗策を見出すことができるとナイアルテは信じている。
「……その愛は偽りではないのでしょう。ですが、狂気と紙一重……愛とは狂気に似ているものではありますが……いつか人は庇護を離れ一人で立たねばなりません。私達は今、此処に立っている。どうか、島を救うために『海底の母』を止めてください」

 そう言ってナイアルテは頭を下げ猟兵たちを見送る。
 例えどれだけ愛が深かろうとも、猟兵達は滅びを座して待つことはない。回避できる滅びがあるのならば。
 そこに猟兵は躊躇わず飛び込んでいくのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『羅針盤戦争』の戦争シナリオとなります。

 海中より来る『海底の母』が引き起こす大波によって島が海の藻屑となるのを防ぐべく、巨大なる敵を打倒するシナリオになります。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……海底の母の放つ攻撃への対抗策を考える(敵は先制攻撃しません)。

 それでは、羅針盤戦争を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『海底の母』

POW   :    海女神
【100m近い自身の巨体】を披露した指定の全対象に【魅了、敵意喪失、母体認識と従順になる】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    回帰
【津波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に関係なく飲み込み海に変える】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    底無しの愛
自身が【自分の子に底無しの愛情を注いで】いる間、レベルm半径内の対象全てに【愛の力で強化された子供たちの攻撃】によるダメージか【鎖を通じて愛の力】による治癒を与え続ける。

イラスト:白暁

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラモート・レーパーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大豪傑・麗刃
(このプレイングはあくまでシナリオクリアのためであり、キャラおよび背後の言動や性癖等を反映したものではありません念のため)

よろしい無限の母性を突き崩そうではないか。
具体的には

「あんたなんかわたしの子供じゃありません」

的なセリフを引き出せばわたしの勝ち。
ということではじまるのだ麗ちゃんのネタ世界!

(そのテのプレイ風に)
ママ!ママのおっぱいちゅうちゅうさせてほしいのだ!
でもちょっと大きすぎるのだ!

(反抗期の不良息子風に)
おいババア!こづかい100万円よこせや!
おまえの育て方が間違ったせいでわたしはこんな変態になってしまったのだ!

(そもママがいない風に)
ばあさんや、めしゃあまだかいのお?

で適当に斬る



 その海中より出る巨躯は、ただそこに在るというだけで人の精神をかき乱す。
 巨大なる『海底の母』、その身に宿した身に余るほどの母性を持って相対するものへと愛を注ぐ。
 猟兵であれ、コンキスタドールであれ、彼女の目の前にいるということは即ち彼女の子であるという愛によってのみ、その狂気は注がれるのだ。
「愛しましょう。愛しましょう。我が子のために、ちゃんと海という揺りかごを用意したのです。さあ、眠りなさい。我が愛子よ。全ては愛ゆえに。全ては愛のために」
『海底の母』には確かに母性があった。
 無償の母の愛がった。
 けれど、それは狂気と紙一重であることはいうまでもない。

 当然である。
 母とは即ち愛を持つ者であるが、愛がなくても母になることができる者だっているのだ。
 それを知らず、されど愛をささやくことこそ欺瞞であると知れ。
「よろしい無限の母性を突き崩そうではないか」
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は、眼前に迫る巨大なる『海底の母』を前に挑発的な言葉を紡いだ。

 その巨体を披露する『海底の母』の姿は海中にあって尚、狂気を振りまく。
 見ているだけで常人は発狂してしまうという意味がよくわかった。だが、麗刃はどうするというのだろうか。
 これだけ圧倒的な母性を前に何を持って突き崩すというのか。
「具体的には、『あんたなんかわたしの子供じゃありません』的なセリフを引き出せばわたしの価値。というわけではじまるのだ麗ちゃんのネタ世界!」

 それは即ち……。

 どういうこと?

 麗刃の瞳がユーベルコードに輝く。
 ネタキャラとしての矜持(ソレデモワタシハギャグヤネタガヤリタイ)が輝いていた。
 いや、念の為に、そして麗刃の尊厳を護るために言っておくが、これから起こる一切は彼の特別なあれやそれではない。
『海底の母』という強大な敵を討つために必要なことなのだ。
「ママ! ママのおっぱいちゅうちゅうさせてほしいのだ! でもちょっと大きすぎるのだ!」

 !?

 彼を知る者からすれば驚愕の光景と発言であったかもしれない。
 周りに誰もいなくて幸いであった。一番乗りの特権であったのかもしれない。だが、それでも『海底の母』は微笑んでいた。
 ちょっと引いてる気もするけど、無限の愛はこれくらいではいささかも崩れないのだ。
「おいババア! こづかい100万よこせや! お前の育て方が間違ったせいでわたしはこんな変態になってしまったのだ!」
 溢れ出るヤンキー臭。
 もはや反抗期を通り越して、グレている。そんな彼の姿を見て、『海底の母』は崩れ落ちた。
 だって、ババアはない。
 よしんば、ババアは許せても、育て方間違ったと愛を否定されては、ボロボロと涙をこぼすほかない。

 けれど、それでも彼女の愛は崩れない。
 く、なんて強情な。ならば、と麗刃は最後の手段に出るのだ。
「ばあさんや、めしゃあまだかいのお?」
 もはや子供ですら無い。
『海底の母』は変わり果てた息子? の姿に涙が溢れて止まらない。海中にありて、泣き崩れるように付してしまった。
 あーあ、泣かせたー。

 そこへ真顔に戻った麗刃の斬撃が飛ぶ。
 あまりにも適当な斬撃であった。
「なんちゃって、あっはっは」
 そうネタキャラとしてのある種のプライドを籠めた一撃が、『海底の母』を貫く。
 不意打ち、なんでもござれである。
 シリアスな空気や平常心で挑む姿勢のみを斬りつける一撃は、『海底の母』との二面的な戦いを切り開く一撃と成る――のかもしれない。たぶん、めいびー!

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
愛だなんて聞こえはいいが
度を過ぎればただのお節介、大きなお世話だ
自分たちの足で生きようとしている人々の
邪魔をするんじゃない

最初の一手は敢えて譲ってやる
綾!奴らの相手は任せた!
成竜の零に乗り込み
子供の群れの隙間を掻い潜りながら本体のもとへ
愛情とやらを注いでいる間は
それ以外の行動が取りにくいはず
更にその巨体、攻撃を回避するのも至難の業だろう
つまり今のお前は絶好の的なんだよ――零、今だ!
零のブレス攻撃を浴びせ、その瞬間UC発動

ユーベルコードさえ封じてしまえば
子供たちを新たに生み出すことも
ご自慢の愛を注ぐことももう出来ないだろう
お前は母でもなんでも無い
ただのデカブツのコンキスタドールだ


灰神楽・綾
【不死蝶】
母親気取りされるいわれは無いんだけどねぇ
まぁでもその愛とやら…
「殺し愛」なら受け止めてあげてもいいよ?

あいあいさー、だよ
UC発動し、雷属性のナイフを生成
海から生まれたなら電気はよく通りそうだよね?
次々とナイフを投げまくり子供たちを攻撃
ダメージを与えると同時に
雷によるマヒ攻撃で動きを封じる
派手に動き回ることで子供たちの注意をこちらに向け
梓が本体のもとへ到達しやすいように陽動するのが目的
戦いながらも梓たちの動きには気を配り
邪魔をしようとする奴にはすかさずナイフをお見舞い

梓による捕縛が成功すれば
さぁ、それじゃあ殺し愛ましょうかお母様?
Emperorに持ち替え
愛を込めた一撃を叩き込みに向かう



 さめざめと泣く『海底の母』の姿は、その巨躯を持って不気味なる狂気をはらんでいた。
 その姿を見るだけで狂気に侵され、その愛を持って海の底へと誘う。
「ああ、どうして。どうして母の愛を割ってくださらないのです。我が愛し子よ。私の愛が足りないのですか? もっとですか? もっとなのですか?」
『海底の母』は涙を流しながら、鎖で繋がれたクリオネの如き子らに愛を注ぐ。
 その姿はいっそ哀れでもあったが、それでも惜しみなく注ぎ続ける愛情は偽りなきものであったことだろう。

 彼女の子どもたちは空を舞い、その強化を受けて海上に在る猟兵たちへと襲いかかるのだ。
「母親気取りされるいわれはないんだけどねぇ。まぁでもその愛とやら……『殺し愛』なら受け止めて上げてもいいよ?」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、紫電疾走るマスカレード・ブレードを生み出し、構える。

「愛だなんて聞こえはいいが、度をすぎればただのおせっかい、大きなお世話だ」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は綾と共に並び立ち、『海底の母』の巨躯を見上げる。
 そこにあったのは狂気に侵されることのない本心であった。
「自分たちの足で生きようとしている人々の邪魔をするんじゃない。最初の一手は敢えて譲ってやる。綾! 奴らの相手は任せた!」
 梓は成竜の零に乗り込み、襲い来る子供たちへと突撃する。
 その背後を護るように綾が放ったのは、マスカレードブレードであった。
 無数に生成された紫電纏う刃は次々とクリオネの如き子どもたちを撃ち落としていく。

「あいあいさー、だよ。やっぱり海から生まれたのなら電気はよく通るね」
 そう、ナイフの一撃では倒されぬほどに子供らは強化されている。
 けれど、それ以上に相性というものがある。綾の放った雷の属性を持つマスカレードブレードは彼らを一撃で仕留めることはできないまでも、その動きを止めることは出来る。
 派手に動き回り、ナイフの乱舞で持って子供らの注意をひきつけ続ける。
 自分が派手に動けば動くほどに、梓への注意は薄れるだろう。彼が何をしようとしているのか、そして、その意図を知ることが出来るのは長い間共に戦ってきた綾だけだ。

「愛情とやらを注いでいる間は、それ以外のことができないんだろう。さらにその巨体……つまり今のお前は絶好の的なんだよ――零、未だ! 氷の鎖に囚われろ!」
 零から放たれるは、絶対零度(アブソリュートゼロ)のブレス。
 それは『海底の母』を凍りつかせる一撃。
 だが、『海底の母』事態を凍りつかせることはできないまでも、子供らと接続された鎖は氷つき、そのユーベルコードを封じるのだ。
 そうなってしまえば、子どもたちを新たに生み出すこともできない。

「ご自慢の愛を注ぐことももうできないだろう。お前は母でもなんでもない。ただのデカブツのコンキスタドールだ。――綾!」
「さぁ、それじゃあ殺し愛ましょうか、お母様?」
 ハルバードを構えた綾が梓の駆る成竜、零のしっぽを掴んで、勢いよく『海底の母』へと飛び込む。

「ああ、私の愛おしい子。私を母と呼んでくれるなんて。ああ、なんて幸せな――」
 手をのばす『海底の母』。
 けれど、綾は笑っていた。
 狂気すらはらむ眼差しを受けても尚、綾は笑う。母の愛を知らずとも、けれど、彼が持ち得るものは在る。
 故に、そのハルバードの一撃を持って『海底の母』へと叩き込む。

 彼が言ったように『殺し愛』だ。
 言葉の綾かも知れないし、もしくは意味合いも『海底の母』とは通じ合わない、相容れぬものであったのかもしれない。
 けれど、それでも確かに綾はその一撃に愛を籠めて、『海底の母』の巨躯に一直線に斬撃を見舞うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青霧・ノゾミ
ニノマエ【f17341】と

ん-、じゃあ、津波を止める防波堤になる。
UCを使って。
雹混じり(氷属性)の暴風雪を巻き起こして、
向かってくる津波にぶちあてる。
津波の威力を弱めたり、波を被害の少ない場所へ逃がせたらいいよね!
実はこれ、わりと苦手意識の強いUCなんだ。
制御が難しくて上手く使えたためしがなくて。
だけどそんなこと言ってられない。
このUCが最善だっていうのは、僕の判断なのだから。
責任をもつ。
津波を崩さなければ、数多の人が僕の後ろで死ぬ。
……的がでかいのと、集中できれば問題無し!(断言)
そーいうわけで、ぶんぶん飛んでるクリオネは
ニノマエにおまかせだ!
UCを途切れさせないよう、迅速に対処を続ける。


ニノマエ・アラタ
ノゾミ【f19439】と
…よくもまあ、気軽に頼んでくれるもんだ。
わかった、おまえはひたすら集中してろ。
それでいい。

津波の標的になることを引き受けながら、
ノゾミの周りにクリオネを近づけさせねえ。
まあ、俺に向かって津波が来るってんなら予測もしやすいだろうぜ。
なるべくなら波が割れても被害が少ない方向に誘導してェよな。
そこ意識しとくぜ。
クリオネ連中は九六式で制圧しつつ、乱れ撃ちでダメージを与える。
ある程度クリオネを集めて、まとめてダメージを与えられたら
妖刀解放で止めを刺す。根性見せてたくさん巻込んでやるぜ!
クリオネを削ることも本体へのダメージに繋がると考えてる。
だから本体に近づけなくても焦りはしねェ。



『海底の母』は涙した。
 どうして、と涙した。何故、己の愛おしい子たちは己の愛を受け入れてはくれぬのだと、傷つけるばかりなのかと嘆いた。
 滂沱の涙は、その巨躯から流れ落ちる滝のように海面に落ちては水飛沫を上げる。
 白く淀んだ海面は次の瞬間、大波となってせり上がっていく。
 それこそが『海底の母」のユーベルコード。
 その力の源は言うまでもなく彼女の溢れんばかりの愛である。どれだけ傷つけられたとしても、『海底の母』の愛は尽きることはない。
「ああ、これこそが愛の試練。母たる私への試練なのでしょう。愛おしい子たちが、今まさに私の母の愛を試している」

 きっと何を告げたところで、『海底の母』の認識を改めることなどできないだろう。
 目の前の『海底の母』とは即ちそのような存在であるのだから。
 クリオネの如き子供らが空を舞う。
 鎖に繋がれていながら、『海底の母』が齎す無限の如き愛でもって強化され、猟兵を襲うのだ。
 だが、それよりさきに大波が猟兵を襲う。
 巨大なる波はそれだけで島を飲み込むほどの巨大なものであった。『海底の母』と呼ばれるだけの力は十分に持っているのだろう。
「じゃあ、津波を止めるための防波堤になるよ――」
 氷と雪の嵐(アイス・スノウ・ストーム)が向かってくる大波にぶち当たり、その威力を押し止めると共に波を凍らせる。

「んー……やっぱり、これは難しいな。苦手意識の強いユーベルコード……制御が難しくてうまく使えた試しがないな……」
 青霧・ノゾミ(氷嵐の王子・f19439)はそういいながらも、その瞳をユーベルコードに輝かせ続ける。
 どれだけ制御が難しくてもそんなことを言ってられないのだ。
 あの大波を防ぐためにはこのユーベルコードが最善だということは彼自身の判断なのだから。
 だからこそ、無責任にはできない。必ず防がねばならない。もしも、津波を崩せなければ――。

 嫌な想像が頭の中をかき回す。
 けれど、そんな想像を吹き飛ばすようにニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)の声が響いた。
「ぶんぶん飛んでるのは、ニノマエ、頼んだ――!」
「……よくもまあ、気軽に頼んでくれるもんだ。わかった、お前はひたすら集中してろ。それでいい」
 ニノマエは空を舞うクリオネの如き子供らを相手取って、機関銃でノゾミへとクリオネたちを近づかせない。
 乱れ打ち、叩き落とす。

 撃破できないのは、『海底の母』の注がれる愛故であろう。だが、それでもノゾミの集中を途切れさせないようにクリオネを近づけさせなければいいのだ。
 ここでノゾミの集中が切れてしまえば、大波によって自分たちの背後にある島が滅ぶ。
 ノゾミがそう思ったようにニノマエもまたそう思ったのだ。
 この一点は二人にとって斬っても離せない点であった。故に彼らの戦いは見事なものであった。

 大波を凍りつかせ、押し留めていた壁面が崩れていく。
 そこへニノマエが飛び込み、妖刀解放(ヨウトウカイホウ)によって怨念を纏い、凄まじい速度で持って駆け抜ける。
「……」
 数多のクリオネたちを巻き込みながら、亀裂の走った氷の壁を刻む。
 衝撃波でもって崩れた壁はしかし大波を島とは別方向に流すように逸したのだ。敢えて押し止めるのではなく、流すことに寄って大波の進路をコントロールしたのだ。
「根性見せてやるぜ……! 任されたからにはな!」
 子供らと呼ばれたクリオネたちは鎖で繋がっている。
 だからこそ、彼らは強化され、猟兵たちを追い詰めていく。

 本体たる『海底の母』に近づけぬ焦りもある。けれど、ノゾミは叫んだ。
「津波を崩さなければ、数多の人が僕の後ろで死ぬ……だからっ!」
 ユーベルコードが再び輝き、暴風雪が吹き荒れる。
 どれだけ津波を起こそうとしたとしても、己の背後には行かせない。その誇り高き矜持と共に輝くユーベルコードの嵐の中をニノマエが駆ける。

「ああ、クリオネを削っていけば、本体にもダメージがつながるだろう……! だから、俺達はここで踏ん張る」
 乱舞する妖刀の怨念が生み出す衝撃波がクリオネを刻み、その余波が『海底の母』にまで到達する。
 彼ら二人の獅子奮迅なる活躍に寄って、彼らの背後にある島々には一切の波すら届かなかった。

 彼らは守り抜いたのだ。
 あれだけ強大なる存在を前にして、一つの取りこぼしがないほどに守りきったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「ここに来て、またえらい奴が出て来たわね。飽きさせない海だこと!」
もたらす被害は極めて甚大だ
ここで止める!

怖れは恐れに、恐れは畏れに通じる
畏れたら負けだ
要は気合だ

蒸気王のマリンモードで潜航し、火の迦楼羅王と水の天蛇王を呼び出す
狙いは水火の合一による蒸気合体

「打ち砕きなさい、蒸気帝!!」

反撃を装甲と両腕で受け流しながら、推力移動で肉薄してパンチ
巨体に捕えられそうになれば、メカニックで分離回避だ

「合体解除!」

回避から奴の背後に位置取りし、水中戦に優れた天蛇王をベースに再合体

「切り刻みなさい、天蛇帝!!」

蛇矛の乱舞に水属性攻撃を加えて切り刻みたい
合体と分離を攻防一体で運用し、奴を出来る限り消耗させる



 大波が島々を襲わんと、巨大な建造物をも超える巨大なる姿となって溢れ出す。
 けれど、その大波の尽くを防ぐのが猟兵であった。
『海底の母』は嘆いた。
 これだけ己の愛を持って海底に我が子らをまねこうとしているのに、目の前の子たちはそれを阻もうとする。
 それが悲しくて仕方がない。
 100mを超える巨躯から流れ落ちる滂沱の涙は、まるで滝であった。
「ああ、ああ、なんて悲しい。我が子らよ。どうして。愛しい子らよ。私の愛を受けれてはくれないのですか?」
 その言葉は正しく母のものであったけれど、同時にどうしようもないほどの魔性でもあった。

 海中より除く姿は異形。
 常人が見れば発狂してしまうほどの巨大さと、その狂気にも似た愛は猟兵達をしても異様なる存在であった。
「ここに来て、またえらいやつが出てきたわね。飽きさせない海だこと!」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は海中を駆ける。
 魔導蒸気ゴーレムである『蒸気王』をマリンモードで潜航し、巨大なる『海底の母』へと迫るのだ。

 海上に在っては、他の猟兵達が津波を食い止めてくれている。
 その大波の被害がどれほどのものになるのか、紅葉は測りかねていたが、その結果が甚大なるものになることだけはわかっていた。
 だからこそ、この『海底の母』と呼ばれる異形は此処で止めなければならない。
「怖れは恐れに、恐れは畏れに通じる。畏れたら負けだ――」
 紅葉は己に言い聞かせる。
 目の前にあるあの巨躯。
 常人を発狂させるほどの、ただ在るというだけで混沌を齎す存在を前に紅葉は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

「要は気合だ。合体支援ガジェット展開……追加ジョイント接続確認……電子系シンクロ承認……蒸気合体! 出なさい、蒸気帝!!」
 それを勇気と呼ぶのであれば、それはまばゆい輝きを放つものであった。
 火の迦楼羅王と水の天蛇王を呼び出し、『蒸気王』と合体させる。
 火と水のちからを合わせることによる蒸気合体。

 まばゆき勇気の輝きが見せたのは、蒸気帝(スチームカイザー)、その姿であった。
 顕現した巨大なる機体。
「打ち砕きなさい、蒸気帝!!」
 溢れんばかりの魔導蒸気が身を包み、晴れた瞬間、その威容は『海底の母』の眼前にあった。
 恐れはないのかと言われれば、それらはもう乗り越えてきたのだ。
「いつまでも愛してあげましょう。幼子から変わらぬのだとしても、あなたを愛しましょう。どこまでも、どこまでも」
『海底の母』の手が迫る。
 それは攻撃の意志ではなく、ただ己の傍へと近づけようとする抱擁の如き腕であった。

 けれど、紅葉はそれを否定する。
 装甲と両腕で受け流しながら、その巨体へと拳を叩きつけるのだ。だが、それでも『海底の母』は笑っていた。
 ああ、元気な子だ、と。
 我が子の成長を喜ぶように笑って、蒸気帝へと手をのばす。
「合体解除!」
 分離した三つの蒸気ゴーレムが再び空を舞い、『海底の母』の背後で合体する。しかし、その姿は先程までとは打って変わった姿であった。
 蒸気王をベースとするのではなく、天蛇王をベースとする蒸気帝へと姿を変え、紅葉は叫ぶ。

「そういうのが鬱陶しいっていうのよ! 切り刻みなさい、天蛇帝!!」
 蛇矛を構えた天蛇帝が水の刃を解き放ち、その背後に言えぬ斬撃を放ち、『海底の母』の身体を海中へと叩き落とすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍・雨豪
確かに私は海から多大な恩恵を受けて生きてきたわ。でもねぇ……。
誰よ、あなた!
何いきなり出てきて母親アピールしてるの?
そもそも、母だと言いながら滅ぼそうとしてくる時点で嘘八百もいいところよ!
お呼びでないわ、帰んなさい!

とはいえ、こういう手合いは苦手なのよね……。
でもコイツは殴らずにはいられない!
完全には無理でも、影響を軽減出来ないかしらね。

まずは海の中に飛び込んで、対象がぼんやり見えるくらいの深度まで潜るわ。
直接見るよりは多分マシでしょ。
向こうからは私が見え辛いから、指定されないかもしれないしね。
ここからUCを使って、殴っていきましょ。
これならサイズ差を少しは埋められるし、遠隔でも戦えるしね。



 大波は氷雪に砕かれ、『海底の母』の巨躯は海中へと没する。
 そのすさまじい質量が海面にぶつかって立てた波を受け流しながら、龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)は疾走る。
「確かに私は海から多大な恩恵を受けて生きてきたわ。でもねぇ……」
 水辺に生きる彼女にとって海とは棲家であり、恩恵を受ける場でもあった。
 故に、その海に対する感謝と畏敬は大きいものであったことだろう。
 けれど、今の惨状を、その眼に焼き付ける。

 海は荒れ、周囲の島々は大波の被害を受けるのではないかと島民たちは怯えているだろう。
 何よりも常人に狂気を齎す、その巨躯。
『海底の母』と呼ばれる存在を前にして雨豪は叫んだ。
「誰よ、あなた! 何いきなり出てきて母親アピールしてるの?」
 その言葉はどんや刃よりも『海底の母』に突き刺さったことだろう。
 悲しい、と涙が滝のように溢れ、海上にある彼女の瞳からこぼれ落ち続ける。

「どうしてそんなことを……私を母だと認めてくれないのですか? 我が子なのに、どうして、私の愛を……」
 その言葉を遮るように雨豪は指を突きつける。
「そもそも、母だと言いながら滅ぼそうとしてくる時点で嘘八百もいいところよ! お呼びでないわ、帰んなさい!」
 彼女はそう叫んで海中へと飛び込む。
 深き海底まで潜れば、『海底の母』の姿を直接見なくて済む。
 海上に在りては、他の猟兵達の攻撃もある。そうなれば、ぼんやりとしか見えぬ海底から海上に足止めされている『海底の母』を攻撃できるのだ。
「こういう手合は苦手なのよね……でも、コイツは殴らずにはられない!」

 雨豪の瞳がユーベルコードに輝く。
 敵が巨大であるのならば、それに対向しる者を創造すればいい。
「これで相手をしてあげる!」
 水身投影(スイシントウエイ)。
 それが彼女のユーベルコードの名である。
 自ら創造された龍人。それは彼女の動きをトレースし、自身の二倍はあろうかという巨躯へと姿を変える。

 だが、それでも『海底の母』には遠く及ばない大きさである。
 だからなんだというのだ。
 雨豪は瞳をユーベルコードに輝かせながら、叫ぶ。
「どれだけ身体が大きかろうが――!」
 それでもぶっ飛ばす、と。
 殴れば吹き飛ぶ。どれだけ相手が巨大な存在であろうとも、彼女は己の拳を振るうことを厭わない。

 なぜなら、彼女には海の恩恵を受けている。
 これまでも、これからも。 
 だからこそ、彼女は叫ぶのだ。偽りの如き狂気を孕んだ愛をささやく『海底の母』の横っ面を張り倒すように渾身の一撃で持って、龍人が海中から海上に飛び出す。
「ああ、我が子。愛おしい子!」
「だーかーら! 違うって言ってんでしょ!」
 炸裂する龍人の拳の一撃が、『海底の母』の頬を強かに打ち据え、その巨体を見事に打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニィエン・バハムート
姿を見ることによるデメリットは【狂気耐性】で耐えます。
メガリスの試練を幾度となく乗り越えた私の我の強さを甘く見てもらっては困りますわね!

知っていますか?
津波というものは何を原因として起きるのかを…それは地震ですのよ!

敵の津波に対してこちらも大地震を起こし津波を相殺!
寧ろ逆に押し返してやりますわ!

津波を相殺できたら【空中浮遊】してから【衝撃波】を自分の身体から放ち、その勢いを利用して上昇・加速。【空中戦】に移り、今度は顔面に大地震の力を叩き込んでその巨体を【蹂躙】してやりますの。

家族、友人…全てを置き去りにしてきたからこそ、ここにいる!
私は夢に生きてロマンを貫く!
『愛(あなた)』は!邪魔ですの!



 龍人の一撃が巨大なる『海底の母』の頬を張り倒すように放たれ、その巨躯を海上へと叩きつける。
 それは想像を絶する光景であったことだろう。
 未だ大波は猟兵達の働きによって周辺の島への被害を食い止められていた。けれど、戦いが長引けば長引くほどに周辺の島への被害の可能性は広がっていく。
 戦いは短期決戦が望ましかったが、それをさせぬのが『海底の母』と呼ばれるコンキスタドールの凄まじさであった。
「ああ、なんてことを。悲しい。私は悲しい。けれど、愛しましょう。我が子らのすることです。それさえも可愛らしいと言える。私の愛で満たしましょう。世界を包みましょう」
 海上にありて、『海底の母』は海面に手を降ろす。
 瞬間、波立ち、膨れ上がる海水。

 それは凄まじき力であった。
 ただ手をおろしただけで大波が生まれる。
「知っていますか? 津波というものは何を原因として起きるのかを……」
 ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)はこれまで何度もメガリスの試練を乗り越えてきた者である。
 メガリスとは狂気で侵す呪われた秘宝である。
 狂気に対する耐性というものがあるのならば、ニィエンのそれは凄まじいものであった。

 例え、常人が一目見た瞬間に発狂するほどの異様なる姿であったとしても、ニィエンは笑って相対するだろう。
「……それは地震ですのよ! 世界を揺るがす竜王の鉄槌!バハムート・デストラクション!」
 それは鯰が持つ『第自身を起こすという本来なら空想上の能力』を用いるユーベルコードであった。
 空想上の迷信であったのだとしても、世界が違えば、それは即ち真に至るものもあるのである。

 ここにその力が顕現する。
『海底の母』が引き起こした津波の大波とニィエンがヒキコした大地震。
 それは海底にありて凄まじいエネルギーとなって生まれ、『海底の母』とニィエンとの間に巨大な波の激突を引き起こす。
「ナマズのグラグラ大地震(ナマズノグラグラダイジシン)、その力を思い知るのですわー!」
 輝くユーベルコードが世界を明滅させる。
 それほどまでの力の激突であった。『海底の母』の生み出した津波と激突し、相殺するニィエンの波。
 けれど、ニィエンは違った。
 歯を食いしばり、己の持てる力を振り絞って大波を押し返すのだ。

「家族、友人……全てを置き去りにしてきたからこそ、ここにいる! 私は夢に生きてロマンを貫く!」
 ニィエンは押し返した大波とともに『海底の母』へと迫る。
 空中を浮遊……いや、生み出した衝撃波と共に加速し上昇したニィエンは巨躯たる『海底の母』を見下ろすほどの高みまで飛び上がって、その愛に満ちた瞳を見下ろした。

 そう、ニィエンは全てを置き去りにしてきた。
 己のロマンを求めた。
 そのためにあらゆるものを犠牲にしただろう。そこにあったのは家族や友人といった尊いものもあった。
 けれど、それでもニィエンに後悔はない。
「愛がいらないというのですか? 愛なくば、生きられないのですよ。さあ、私の、母の愛を受け入れて――」
 そんな『海底の母』の言葉をニィエンは否定する。
 その瞳に輝くユーベルコードは未だ潰えず。彼女が追い求める竜王へのいただきを目指す道は此処で途絶えない。

 故に、ニィエンはユーベルコードの力を籠めた拳を『海底の母』へと叩きつけ言い放つのだ。
「『愛(あなた)』は! 邪魔ですの――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…母の愛、ね。生憎だけど私の母様は私を生け贄にしたわ…

…そしてお前の狂える愛とやらに浸るつもりも無い
お前は骸の海の水底で揺蕩うが良い、海底の母よ

過去に左眼の聖痕に取り込んだ魂達に救世の祈りを捧げ、
UCを発動し全身を浄化した魂のオーラで防御して覆い、
精神を同調する事で闘争心を賦活して敵UCを受け流す

…来たれ。救世の誓いの下、死してなお我が身に宿りし数多の魂達よ

…私達の誓いが、意志が、容易く折れる骨子の無いものか否か、
異世界の狂える神に披露してあげましょう

降霊して切断力を限界突破した大鎌をなぎ払い、
極限まで魔力を溜めた闇属性攻撃の斬撃を放つ

本物の母の愛は、私自身の手で探してみせるわ。いずれ…ね



 母の愛。
 それは人が母から生まれる存在であればこそ、知ることのできるものであったことだろう。
 どんな生命も自然に発生するのであれば、母の存在と斬って離せぬものであった。
 だからこそ、母の愛とは即ち万人に受け入れられるべきものであるのだと『海底の母』はうそぶく。
 己の愛こそが至高であると。
 どんな存在も、コンキスタドールも、猟兵も、皆我が子であると愛をささやくのだ。
「だというのに、我が子は私を傷つける。母に手を挙げる子。けれど、私はそれも受け入れましょう。私の愛が、母の愛であると知るのならば」
 涙が溢れる瞳。
 けれど、攻撃を受け続けて尚、『海底の母』の瞳にあったのは狂気であった。

「……母の愛、ね」 
 小さく呟いたのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)であった。
 吸血鬼狩りの業を継ぐ者は、しかして己の過去を省みる。
 己の母は自身を生贄にした。それが如何なる理由があったのか、それを知ることができるのはリーヴァルディだけであった。
 故に、彼女の瞳に映るものは、コンキスタドールとしての『海底の母』の姿だけであった。
 そこに母親を重ねることはなかった。

「……お前の狂える愛とやらに浸るつもりはない。お前は骸の海の水底で揺蕩うが良い、『海底の母』よ」
 リーヴァルディの瞳がユーベルコードに輝く。
 その左眼の聖痕が取り込んだ魂たちに救世の祈りを捧げ、ユーベルコードの輝きを増す。
 それこそが、代行者の羈束・断末魔の瞳(レムナント・ゴーストイグニッション)である。
 賦活される精神。
 そこにあるのは闘争心であり、恐怖ではない。
 どれだけ人の精神をかき乱す恐るべき姿をしているのだとしても、リーヴァルディには関係なかった。

 彼女の中に抱える業がそれを許さない。
 例え、偽りであったのだとしても母の愛に浸ることを許さない。是としない。故に、彼女の瞳は輝くのだ。
「……来たれ。救世の誓いの下、死して尚我が身に宿りし数多の魂たちよ……私達の誓いが、意志が、容易く折れる骨子のないものか否か、異世界の狂える神に披露してあげましょう」
 降霊する数多の霊魂達が叫ぶ。
 然りと。
 此処に在るのは、救世の誓いのみ。それに必要なのは愛ではないと。
 故にリーヴァルディは飛ぶ。

 そのユーベルコードの輝きに包まれながら、『海底の母』の頭上より振りかぶった大鎌の煌きを解き放つ。
 極大なる闇の輝き。
 それは極限まで高められ、貯め込まれた魔力であった。
 全ての霊魂達が言う。
 愛なくば、救世ならずと。されど、救世主に愛は必要ない。他者のための愛だけが必要であり、己に与えられる愛は己自身が選ぶべきだと。

「本物の母の愛は、私自身の手で探してみせるわ」
 与えられるものではない。 
 故にリーヴァルディは闇の力を開放した斬撃を『海底の母』へと放つ。その一撃は、過たず巨躯へと刻まれ、鮮血を噴出させながら海上を紅く染めるのだ。

「いずれ……ね」
 リーヴァルディは魔力の翼を広げながら『海底の母』の嘆くような叫びを聞く。
 未だ母の愛は知れず。
 けれど、いつか知ることのできるものであるとリーヴァルディは知っている。
 だからこそ、今は偽りの愛を斬り捨てるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
母ねぇ…。
母には碌な思い出がないんだけど(故郷にいた女らしい女を思い出しつつ)
悪いけど、ボクは母親には幻想持ってないの。現実知ってるから。

キャバリアのレスヴァントで出るよ。

レスヴァントの飛行能力で『空中戦』を仕掛けるよ。
綺麗な海も、荒れれば黒く怖いね。
津波に飲まれないように機体を『操縦』して回避。上に飛んでも撃たれない空は良い。

UC:ワルツ・オブ・キャバリア発動!!
外部装甲排除!!100m大きいね。つまり的が大きいってこと。狙いやすいね!!
アストライアの『制圧射撃』を撃ち込みつつ接近!
イニティウムで『切断』して離脱する。

悪いね。ボクはもう巣立ちしてるの。
母の愛なんて幻想より現実を知ってる。



 子は母親の何を見て育つのか。
 母の愛が無償のものであるというのならば、そこに貴賤はないのではないか。人はみな、平等に不平等であるように、貴賤はないのだとしても感じられる愛情、与えられる愛情には差が出る。
 どんな些細な差であったとしても、それは差である以上、平等は決してないのだろう。
 故に、『母』という言葉を聞いて眉根を顰めるのもまた人たらしめるものであったことだろう。
「母ねぇ……母には碌な思い出がないんだけど」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はキャバリア『レスヴァント』を駆り、海上を征く。
 その眼前に迫るは、恐怖すら感じさせる巨体、『海底の母』があった。

 その瞳に浮かんでいたのは涙であり、その涙は滝のように海上にあって溢れてこぼれ落ちていく。
「どうして私の愛が伝わらないのでしょう。皆、私の子であるというのに。私の愛は、皆のものであるというのに」
『海底の母』の巨躯は凄まじい。
 手を振り下ろしただけで津波が起こるほどであった。
 大波が立ち上がり、それらはきっと島々を飲み込んで海の藻屑へと変えるだろう。

 だからこそ、ユーリーはキャバリアで駆ける。
 迷っている時間はない。再び津波を起こされてしまってはユーリーにはどうしようもできない。
 彼女が出来ること。 
 それはたった一つ。
「綺麗な海も、荒れれば黒く怖いね」
 だからこそ、ユーリーはキャバリアと共に空を駆ける。
 上空をとんでも撃ち落とされる心配のない世界というのは、こんなにも自由であるのかと彼女は感動したかも知れない。

「ジャケットアーマーパージ。高機動モードへ移行。ぶっとべー!! ボクのレスヴァント!」
 ユーリーのユーベルコードが輝く。
 それは、キャバリアであるレスヴァントの外部装甲を排除し、高機動モードへと移行するユーベルコードであった。
 加速する。
 凄まじい勢いで戦場となった海上を飛ぶレスヴァントの機動性は目で追えぬほどであった。
 彼女の体にかかる加速度は、常人であれば気を失うものであったが、彼女はそうではない。

 母の視線を思い出す。

 けれど、それがなんであるというのか。
 今彼女は空を舞うように飛んでいる。ワルツ・オブ・キャバリアと呼ばれる飛行戦術。
 本来であれば、低空飛行でもって行うそれであったが、今の彼女はその枷から解き放たれている。
「狙いやすいね!! 大きいってことはさ!」
 アサルトライフルの弾丸が目に下ならぬ速度で放たれ、『海底の母』の巨躯を穿つ。さらに周囲を飛び回り、キャバリアブレードでもって刻んでいく。
 傷みに喘ぐように『海底の母』が叫ぶ。

 その悲痛なる悲鳴は確かに母性持つ者であったのだろう。
 だが、目の前の巨躯は怪物のものであった。例え、それがユーリーに母を想起させたのだとしても、彼女は止まらない。
「悪いね。ボクはもう巣立ちしているの」
「何故です。巣立つ必要などないのです。母の腕の中に、胸の中にお戻りなさい。それが貴方のためなのです」
 手を伸ばしてくる巨体。
 けれど、ユーリーは頭を振った。

「母の愛なんて幻想よりも現実を知ってる」
 それは必要ないものであると、ユーリーは斬り捨てるように伸ばされた手をキャバリアブレードの一撃で持って傷つけ、その身を消耗へと叩き込むように、そして、過去を振り切るように圧倒的な速度で連撃を刻むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
…?なんだこの気持ち。

亡国の主を操縦。瞬間思考力、一旦思考を整理

母親…そんな者はいない。自分にいたのは兄弟達だけだ。
よしんば母や兄弟だとて、こいつは敵だ。なら壊すだけだ!!

整理完了

闘争心、興奮剤で脳を活性化。戦意で心を満たす
『劫火業臨』巨大化し、両手にフレイムランチャーを生成
念動力、ランチャーから灼熱の液体燃料と化した霊物質を放射
属性攻撃、劫火の液体で兄弟を焼却、津波をせき止め、前へ、進む
水と交わる事など、ない。

…破壊し、劫火でもって全てを呑み込め、主よ。母も兄弟も関係ない。
破壊の意志ある限り!お前が進む先にあるもの、全て壊せ!!

放ち続けた劫火の液体で母を覆い包み、怪力、巨大騎兵刀で、母を斬る



 母知らぬ者にとって、母性とは如何なるものとして認識されるだろうか。
 言いよう無い感情を前に人はどのような反応を見せるだろうか。戸惑いと郷愁めいた感情の狭間にあって、理解できぬものを己の中にあるものに当てはめるとするだろう。
 そう、母親なき者はいない。
 けれど、作られた存在にはどうだろうか。
 元より、そういった生まれでない者にとって、その感情は不快であったかもしれない。

 理解できぬとて湧き上がる感情は時として人の心を逆撫でる。
 海上にある巨躯、『海底の母』の姿を見た時、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が感じたものはそれであったのかもしれない。
「……? なんだこの気持ち」
 キャバリア、『亡国の主』と呼ばれるジャイアントキャバリアを駆り、小枝子は己の目の前で、己の心をかき混ぜる存在に思考を飛ばす。
 母なるもの。
 それが目の前にいる『海底の母』である。
 だが、小枝子に母親はいない。
 彼女にいたのは兄弟たちだけだ。

 それは一瞬の思考であった。
 瞬間思考が為せる業。一瞬の空白の如き時間であったとしても、常人の長考と同じであろう。だが、彼女の導き出した答えは違う。
「私の愛おしい子。なんて力に溢れているのでしょう。愛しましょう。どれだけ母が傷つけられたとしても、構わず貴方達に愛を注ぎましょう。それが全ての者の母たる私の勤めなのですから」
 手をのばす『海底の母』。
 その手が海面に触れれば、即座に津波が引き起こされる。それほどまでに強大な存在なのだ。

 ここで津波を発生させては、グリードオーシャンにある島々は一呑みにされてしまう。そうなれば、例え羅針盤戦争を勝利したとしても、彼らの営みは元には戻らない。
 だからこそ、小枝子は叫ぶ。
「よしんば母や兄弟だとて、こいつは敵だ。なら壊すだけだ!!」
 闘争心の火がつく。
 それは化学反応が見せる燈火であったかもしれない。興奮剤が脳を活性化し、その全てを戦意で満たす。
 心の中にあるのは目の前にある『海底の母』を破壊するという望みだけであった。
「呑み込め」
 キャバリアの両手に装備されたフレイムランチャーが灼熱の液体燃料と化した霊物質を放射し、劫火業臨(ゴウカゴウリン)の如く炎で全てを焼き切るのだ。

「前へ、進む……破壊し、劫火でもって全てを呑み込め、主よ。母も兄弟も関係ない」
 そこにあったのは小枝子の瞳に燃える紅蓮の炎だけであった。
 全てを破壊するという意志。
 怨霊、悪霊の如き意志の輝きがユーベルコードに輝く。それこそが、彼女を彼女たらしめるものであった。

「破壊の意志在る限り! お前が進む先にあるもの、全て壊せ!!」
 迸る激情が炎となって、『海底の母』を飲み込んでいく。
 包み込む炎が『海底の母』の肌を焼く。それでも止まらない。故に、小枝子は『亡国の主』と共に巨大化した騎兵刀を振り下ろす。

「ああ、何故。何故なのです。母を、母を斬るというのですか」
「そんな者はいないと言った――!!」
 その腕を、津波を引き起こさんとする圧倒的な破壊の力を断ち切るために、小枝子の持つ破壊の意志でもって、片腕を両断せしめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
水上バイクの乗り、魔銃のレプリカを持って出撃

母、いたのかどうか分からないが、アレを母と思いたくないな
とんでもない災いだ、頑張ってみるしかないか

SPDで判定
【運転】【操縦】【航海術】の技術で安定してバイクの上から遠距離攻撃する
まずは【視力】【暗視】で敵を捕捉
波が来たら義眼のメガリスの橙の災い:爆破【爆撃】の力を付与した弾丸を【クイックドロウ】【範囲攻撃】【全力魔法】で放ち攻撃を押しとどめる
今度は藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【全力魔法】【スナイパー】で放ち【逃亡阻止】した後、【2回攻撃】で黄の災い:感電【マヒ攻撃】を同様に放ち攻撃する



 遂に落ちた『海底の母』の片腕は海上に落ちる前に霧散し消えていく。
 だが、未だ残る片腕であっても『海底の母』は津波を引き起こすことが出来る。
 斬撃の傷みよりも、何よりも『海底の母』の心をえぐったのは、猟兵たちの言葉であったかもしれない。
 彼女にとってコンキスタドールも猟兵も関係ない。
 目の前にいる存在は全て我が子と同じなのだ。
 惜しみない愛情を向けてしまう。しかし、それでも猟兵は拒絶する。

 その拒絶を持って彼女は涙を流す。
 何故、己の愛が通じないのかと。伝わらないのかと。
 それは彼女が人外なる者である以上の理由はないだろう。100mを超える巨躯。見るものの正気を失わせる者のどこに愛が伝わるというのだろうか。
 在ったのは狂気だけだった。
「母、いたのかどうかわからないが、アレを母と思いたくないな」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は海上を駆けるバイクの上から、その魔眼でもって『海底の母』を捉える。

 周囲に舞い飛ぶように迫る子供ら、クリオネのような姿をしたコンキスタドールがを躱しながら『海底の母』へと迫るのだ。
 その義眼がメガリスであることは、最早言うまでもない。
 呪われし秘宝であれど、使い方に寄っては破滅より逃れることができる。
「逃げなくていいのですよ。共に海底に行きましょう。片腕を落としたことなんて、些細なことなのです。私と共に在りましょう。愛してあげます。海底で一緒に過ごしましょう。そうすれば貴方にもわかるはず。母の愛がどれだけ深いのかを」
『海底の母』の微笑みは、正に母性であった。

 けれど、それが狂気をはらんでいることをルイスは知る。
 迫るクリオネの子供らを橙色に輝く災の輝きが、魔銃から放たれた弾丸に付与され、放たれる。
 属性付与(エンチャント)。
 それが手にした魔銃とメガリスである義眼が為せる業である。
 爆撃の力が弾丸より弾けて、クリオネの子供らを寄せ付けない。
 だが、本当に防がねばならぬのは、『海底の母』が打ち下ろした手から放たれる津波であった。

「とんでもない災いだ。頑張ってみるしかないか」
 膨れ上がるエネルギーが大波を立ち上がらせる。
 あの津波に飲まれてしまえば、猟兵もひとたまりもない。けれど、それ以上に猟兵たちの背後に控える島々だって無事ではすまない。
 猟兵は死なないかもしれないが、島民たちは須らく死ぬ。
 それをさせぬとルイスの瞳が輝く。

 藍色に輝く災いの輝きが弾丸を放つ。
 それは圧潰の力。
 放つ弾丸から現れる重量が解き放たれ、立ち上がった大波を海上へと鎮める。
「あんたは俺の母親じゃない。そんなことはもうわかりきっている」
 討つべき敵でしかない。

 どれだけ無償の愛、母性でもって己たちをそそのかそうとしても無駄である。
 押しつぶされた大波を見て『海底の母』は再び手を振り下ろそうとして動きが止まる。 
 それはルイスの放った黄の災いに輝く魔弾の一撃であった。
 感電するように『海底の母』の動きが止まる。

「どれだけ母性があろうが、それを俺に向けるな――」
 放つ弾丸が『海底の母』を穿つ。
 それは知らぬ母性を否定し、己の失われたなにかの中にある、かつて与えらたであろう無償の愛を護るための一撃であったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ふむ……これは中々に大きいな…やり方を考えなければ…
…津波に対しては改造装甲車【エンバール】に乗り全速で海上へ…津波に対して垂直に乗り切る事で影響を最小限に突っ切るよ…
…津波が一番怖いのは海岸線…海上なら…それも荒波も走破するエンバールで波を突き抜ければ脅威ではない…
…そして母の様子を見つつ重奏強化術式【エコー】を繰り返し起動、十重奏(デクテット)まで強化…
…【起動:海神咆吼】を起動、ワープゲートの維持時間を強化…
上空から垂直に降り注ぐように主砲を打ち続ける事で母の周囲の海水を蒸発させて戦闘力の強化を無効化…
…そのまま主砲の限界まで打ち続けるよ…整備が大変だな…あとで艦長に謝っておこう…



 これまで猟兵達が相手取ってきたオブリビオンの中でも『海底の母』と呼ばれるコンキスタドールは巨大なる部類に入っていただろう。
 だが、想像を絶するサイズ差をこれまで猟兵達は何度も打ち破ってきた。
 まるで肉体の大きさが勝敗を決するものではないというように、それらを尽く覆してきたのだ。
「ふむ……これは中々に大きいな……やり方を考えなければ……」
 すでに『海底の母』の片腕は両断されていた。
 それでもなお、あの津波を引き起こす力は健在である以上、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は備えなければならないと考えていた。

 最も最悪の事態は己が戦闘不能になることである。
 改造装甲車『エンバール』を駆り、メンカルは海上を疾走する。すでに振り下ろされた片腕であっても、『海底の母』が生み出した津波は巨大なものであった。
 高波が立ち上がり、改造装甲車である『エンバール』すらも飲み込もうとする。
 けれど、メンカルは突っ込んだ。
 津波に対して垂直に、それこそサーフィンライドのように高波の頂点へと突っ切るのだ。
「私の愛おしい子。どうしてそんなに波遊びが好きなのでしょう。どうしたって、海底は静かですよ。荒波などない、凪いだ静寂。そこで私と共に過ごしましょう」

 片腕を斬り落とされても尚、『海底の母』は猟兵に微笑む。
 それは狂気にも似た微笑みであったが、メンカルは見ていなかった。あの巨体をして、こちらに攻撃の意図はない。
 攻撃するのはいつだってクリオネのような子供らと呼ばれる者たちだった。
「津波を引き起こすのは……私達を本当に海底に引きずり込もうとしているだけ……なら……」
 メンカルの術式が起動する。
 重奏強化術式『エコー』が重なり合うようにして起動していき、その数は十。
 謂わば十重奏――『デクテット』と呼ばれるまでに強化された術式を軸に現れるは、飛空戦艦『ワンダレイ』であった。

「座標リンク完了。魔女が望むは世界繋げる猫の道」
 ワープゲートが顕現し、その奥にあるのはワンダレイの主砲である。上空から『海底の母』へと狙いを垂直に付けた主砲。
 その先に展開される重奏強化術式の数々が威力をまして放たれる。
「主砲、一斉射!」
 起動:海神咆吼(ラン・ワンダレイ・ハウリング)。まさに咆哮の如き凄まじい熱量と共に放たれる主砲のエネルギーが『海底の母』を巻き込んで周囲に引き起こされた高波すらも蒸発させてく。

 ただの一撃でこれである。
 だが、メンカルが起動した重奏術式の数は十である。続けざまに放たれる主砲。それは砲身を溶解させかねぬほどの大熱量を発露させ、幾度も『海底の母』の身を焼く。
 それどころか、周囲に海水を蒸発させ、まるで海に大穴を開けたような状態を維持し続ける。

「海水を蒸発させれば、戦闘力を強化することもできず、そこい在り続けるしかない……」
 メンカルは己の力の続く限り、そして、重奏術式が途切れるまでワンダレイの主砲を打ち続ける。
 限界が訪れるその時まで、主砲の大熱量で持って『海底の母』を此処に釘付けにする。それは確かに有効な手段であったことだろう。

 けれど、一つだけ問題があった。
「……整備が大変だな……あとで艦長に謝っておこう……」
 気軽に許してくれるだろうか。
 それとも、整備を手伝う程度で済むだろうか。どちらにしても、メンカルはこの後のことを考え、僅かに眉根を顰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
機械飛竜に騎乗し空中戦
視認データにモザイク処理、それでも電子頭脳に及ぶ負の影響を自己への●ハッキングと定義、電子防壁を構築し●盾受け

他者の心侵す能力も許し難いですが、私に対しても『母』と振舞うのはいっそ滑稽でもあります

(騎士と護衛機故に精神・システム干渉者には辛辣)

血縁関係に依らぬ絆でなく、あれが求むのは生物的な繋がり
私達やミレナリィドール、ヤドリガミ、神…『胎から生まれぬ種族』を認識出来ぬ以上、母性の名を借りた独善に過ぎません

機関砲や格納銃器乱れ撃ち

この海は様々な世界の欠片流れ着く多様性の海
何も認識出来ぬ盲目の愛など怪物の地響きと変わりなし
騎士として引導を渡します

充填UC解放
頭部から一刀両断



 上空より放たれた大熱量たる砲撃の斉射が『海底の母』と周囲にあった海水を尽く蒸発させ、まるでひとつの独立した戦場を形成していた。
 その海に穴が空いたような戦場を上空から同じく俯瞰していたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の視界はモザイクで覆われている。
「他者の心侵す能力も許し難いですが、私に対しても『母』と振る舞うのはいっそ滑稽もあります」
 彼の言葉は常日頃からすれば辛辣なる部類に入るものであったことだろう。

 だが、『海底の母』は片腕を喪って、その体表を焼き焦がしても尚微笑んでいた。
 何故、滑稽であるのかなど言うまでもない。
 けれど、それでもありあまる母性は猟兵に対しても発露する。
「母は母なのですよ。私は貴方の母。どうして、そこまで邪険にするのです? 私は全ての子らの母。愛しましょう。例え、貴方が機械じかけの身体であったとしても、愛しましょう」
 子はごっこ遊びが好きですものね、と『海底の母』が微笑んだ。

 それは我が子が興じる遊びに対する理解を示すそのものであったが、それはトリテレイアの騎士としての精神、システムに過干渉することと同義であった。
 モザイク処理で視界を阻害していてもなお、溢れる狂気。
「血縁関係に依らぬ絆ではなく、あれが求むのは生物的な繋がり。私達やミレナリィドール、ヤドリガミ、神……『胎から生まれぬ種族』を認識できぬ以上、母性の名を借りた独善に過ぎません」
 故に、トリテレイアは機械飛竜『ロシナンテⅢ』を駆り、上級から格納銃器や機関砲で『海底の母』を討つ。

 どこまでいっても独善的なのだ。
 愛ということを履き違えている。ボタンの掛け間違いと言ってもいい。
 それほどまでにずれているし、それに気がつくこともない。だからこそ、『愛』とうそぶく。
 トリテレイアは機械じかけの身体であれど、人々の愛を見てきた。
 知っている。
 それがどんなに尊いものであるのかを。
 だからこそ、トリテレイアは許せない。
「この海は様々な世界の欠片流れ着く多様性の海。何も認識できぬ盲目の愛など回うつの地響きと変わりなし。騎士として引導を渡します」
 構えるはコアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー(ダイレクトコネクトセイバー・イミテイト)。

 極大のエネルギーが刀身と成り、その力を発露させる。
 白きエネルギー粒子がグリードオーシャンの空に舞い散り、その輝きを持って『海底の母』へと迫るのだ。
「ああ、貴方も私を、母を斬るというのですね。どうして? どうして、母の言うことが聞けないのです?」
 しようのない子。
 そんなふうにほほえみながらも隻腕を伸ばす。トリテレイアは極大のエネルギー剣を振るう。

「それは『愛』ではないのです。あるのはただの欺瞞。自己満足にも劣る、ただの独善。独りよがりと呼ぶのです、それを――!」
 振るった一撃は残った最後の腕すらも両断せしめ、海上を凄まじい水蒸気で覆う。

 その白き蒸気の中、トリテレイアのアイセンサーが揺らめく。
 嘆く『海底の母』の声が響き渡る。けれど、トリテレイアは振り返ることはなかった。己に母という概念はあれど、それは『海底の母』ではない。

 最後の最後までトリテレイアはモザイク処理された視界にある『海底の母』の姿を見ることはなかった。
 騎士としての矜持がそれを許さない。
 例え、己の何が傷つけられたのだとしても、トリテレイアは己が持つ矜持を炉心に燃やす限り、母の愛が道を塞ぐのだとしても、立ち止まることはないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
もはや呪いみたいだね
島を襲わせる訳にはいかないし
なんとかしないと

狂気耐性があるからある程度耐えられると思うよ
毒を以て毒を制す、かもしれないけど

巨体でUCの範囲が広いのは厄介だから
こちらも広い範囲に影響を及ぼすUCで対抗しよう

あの見た目ならたぶん邪神も手伝ってくれるだろうし
神域顕現を使い戦場の時間を停滞させるよ
邪神の領域とは逆で空間の穴から神気を広げよう

そういや邪神にも母を想う心とかあるのかな

さあ、秘密ですの

まあ、邪神にとっての愛は
永遠にして喪われないようにする事だから
どちらでも変わらないのかもね

それより動きを停めた所で
どうやって倒そうか
石にしてしまえればいいけど
無理なら火力のある人に任せようか



 両腕を両断された『海底の母』が嘆く声が響き渡る。
「こんな仕打ちを母にするなんて……なんて、なんて……」
 嘆く声は涙とともに海上に落ちていく。
 その姿はまさに異形であった。
 涙を流しながらも、それでも100mはある巨躯を揺らし、鎖に繋がれたクリオネのような子供らが乱舞する。
 注ぐ愛は全て子供らのものであるが、相対する猟兵達にも惜しみなく注がれようとしていた。

 けれど、猟兵達はその偽りの愛を否定する。
「なんて、元気な子らなのでしょう。母をこんなにも困らせるなんて、仕方のない子らですこと」
 それでもなお、『海底の母』は微笑んでいた。
 両腕を喪っても尚、その顔にあったのは微笑みであった。
「……もはや呪いみたいだね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は率直な感想を呟いた。
『海底の母』、その有り様は最早、呪と同じであった。母の愛という呪縛。鎖に繋がれながら愛の力によって強化されたクリオネの如き子供らの姿がそれを如実に物語っていた。

「毒を持って毒を制す、かもしれないけれど……」
 晶はため息をつく。 
 あの姿をした『海底の母』であるのならば、邪神の力は己に手助けとなるだろう。しかし、それでもあの巨躯を見て発狂しないのは己の身に宿した邪神があるからというのは皮肉でしかなかった。
「もちのろんですの。さあ、私の世界へようこそですの」
 その身に宿した邪神が雪のような邪神の神気の結晶を戦場となった海上に降らせる。

 それは神域顕現(サイレント・シオファニー)。
 邪神と眷属以外の時間が停滞する神域へと変える力は、ユーベルコードである。結晶が降り注ぐ間、この戦場にありて自在に動けるのは晶と邪神、そして眷属だけである。
 クリオネのごとき子供らは、晶を襲わんと迫っていたが、停滞した時間の中では脅威でもなかった。
「そういや邪神にも母を思う心とかあるのかな」
「さあ、秘密ですの」
 そんなやり取りがあったけれど、本当の所は晶にもわからないのだろう。

 母という概念があるのかもしれないし、ないのかもしれない。
 けれど、それは人の持つものとは別物であったことだろう。だからこそ、深くは追求しないのだ。
「まあ、邪神にとっての愛は永遠にして失われないようにすることだから、どちらでも変わらないのかもね」
 構えた携行ガトリングガンの銃口をクリオネのような子供らに向ける。

『海底の母』を討つには火力が足りないかも知れない。
 けれど、『海底の母』の繋がれた鎖から得ているのならば、クリオネが失われれば、それだけ『海底の母』にもダメージが行くのをすでに他の猟兵が確認している。
 ならば、晶は停滞した神域となった戦場にガトリングガンを性ぢ兄ぶちかますのだ。
「全て石にしてしまえればいいけれど、流石に100mの巨体はね……けれど、ここで子供らは全滅させてもらおう。後は任せたよ――!」

 晶は停滞した神域の中で叫ぶ。
 猟兵の戦いはつなぐ戦いだ。だからこそ、晶は次に託すことができる。自分が倒しきれなくても、必ず後に続く猟兵がいると信じるからこそ、託す。
 晶は次々と霧散していく子供らを見やりながら、『海底の母』の力を存分に削ぎ落とし、ユーベルコードの輝きが失せるまで、『海底の母』を消耗させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
悪いが押し付けがましい愛なんてごめんだぜ
俺はあんたの子供じゃないんだよ!

SPD

テスタロッサに乗ったら【空中浮遊】で空を飛び
【推力移動、ダッシュ】による【空中戦】を仕掛ける

UCで強化した雷鳴の【衝撃波、貫通攻撃】で相手の体勢を崩し
同じく強化した流星で【マヒ攻撃、誘導弾】の弾幕を浴びせる

相手の攻撃を【第六感、見切り】で避けて
魅了等は【気合と狂気耐性】で対処しながら
常に【先制攻撃】を加えて行動を妨害する事で
津波を引き起こす回数を可能な限り減らしていく

まあその愛は本物なのかもしれないな
でも此処は地上であって海底じゃあないんだよ
此処にお前の愛を受け止められる奴はいねえ
観念して往生しやがれ

アドリブ歓迎です



「ああ、なんてことでしょう。私の愛おしい子が――」
『海底の母』は嘆いた。
 両腕を落とされ、我が子らと慈しむクリオネのような子供らの全てが消滅した。
 けれど、嘆いても未だ彼女の中にある母性は潰えることはない。
 その狂気の如き母性こそが、『海底の母』と呼ばれるコンキスタドールの所以である。同時に、それ以外にことはどうでもよかったのかもしれない。
「けれど愛しましょう。あなた達がどれだけ私のことを嫌おうとも私はあなた達が愛おしい」
 すでに欠落した腕。
 けれど、それでもなお手をのばす姿は、確かに母性の権化であったのかもしれない。

「悪いが押し付けがましい愛なんてごめんだぜ。俺はあんたの子供じゃないんだよ!」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)の駆る真紅の二輪バイクが空中を駆け抜ける。
 疾駆する真紅のテスタロッサの上で祐一は瞳をユーベルコードに輝かせる。
 もう二度と津波は引き起こさせない。
 その瞳に輝くユーベルコードが告げる。

「冬雷(トウライ)――この力を受けろよ!」
 空中を自在に駆け巡りながら放つ熱線銃の青白い弾丸が次々と『海底の母』を貫く。
 伸ばされた腕が祐一をとらえようとするが、その手の先はすでに数多の猟兵達の活躍よって両断されている。
 故に、それは届かぬものであった。
 同時に、彼女の抱える母性、その愛が決して猟兵たちに届かぬという暗示であったのかも知れない。

「ああ、ああ。どうして。私の、母の愛はどうして届かないのでしょう。こんなにも愛しているというのに。こんなにも私は」
 愛に飢える子らを癒やしたいだけなのに。
 大いなる『海底の母』は、その姿で持って確かに人の心を狂わせただろう。
 巨躯は、その身に有り余る母性であったがゆえであるのかもしれない。けれど、それは間違いなのだ。

 全てが己の子であることなどない。
 生命が生まれ出る以上、最初の一つがあるのかもしれない。けれど、それは遠い過去のものであって、今を生きる者たちのものではないのだ。
「まあその愛は本持なのかも知れないな」
 祐一は真紅のバイクの上から巨躯なる『海底の母』を見下ろす。
 その姿は異形であったが、抱えた母性と愛は本物なのかもしれない。

 行き場のない愛を発露する。
 ただそれだけの存在であったのかもしれない。
「でも、此処は地上であって海底じゃあないんだよ。此処にお前の愛を受け止められるやつはいねえ」
 構える熱線銃の銃口が『海底の母』を捉える。
 ユーベルコードの一撃を籠めた強大なる熱線の弾丸は、『海底の母』の眉間を貫き、その雷鳴の如き咆哮でもって、その肉体に罅を走らせる。
 亀裂が走り、エネルギーの奔流が『海底の母』の身を内側から焼き尽くしていく。

「ああ、どうして……こんなにも愛しているというのに。私の手を離れていく。私から巣立っていく。あの生命も、この生命も、私だけを置いていく」
 それは嘆き。
 どれだけ愛を叫ぼうとも、子は巣立っていく。
 どんな生命であってもそうだ。

 例外はない。
 だからこそ、祐一は叩き込んだユーベルコードの弾丸と共に霧散し消えていく『海底の母』に告げるのだ。
「観念して往生しやがれ」

 その言葉をきっかけに完全に霧散し消える『海底の母』。
 けれど、海底の何処からか、今も尚、何かを呼ぶ声が聞こえる。

 ル・リエーラ・イラーと呼ぶ声が、どこからともなく。どこへ紡がれていくのかも知れずに、響く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月19日
宿敵 『海底の母』 を撃破!


挿絵イラスト