羅針盤戦争〜強欲の七・終の王
●呪宝統べし終の王
「御機嫌よう。熾烈な戦いが続いている中、今回も集まってくれた事に感謝を」
グリモアベースにある作戦会議室、招集に応じた猟兵たちをカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は一礼で出迎えた。今回の予知もグリードオーシャンで起きている羅針盤戦争、その戦いの一つなのだと彼女は告げる。
「今回の戦場は終の王笏島、敵の本拠地にあたる王宮に乗り込んでカルロス・グリードの本体との決戦に臨む形になるよ」
幸いにしてと言うべきか、このカルロスはこれまでの分身体との決戦のような絶対先制に加えてプラスαの要素は持たない。無論カルロスの先制への対策、ユーベルコードに依らず装備や技能・連携を駆使した対処が要である点は変わらないのだが……問題がもう一つ、と続けるカタリナの視線は普段より険しい。
「肝心の敵の先制、その内容がハッキリしない……という言い方は少し正確じゃあないね。何でもあり、と言うべきかな」
襲い来る能力が強大なのはある意味普段通り。だが、いざ対峙しなければ分からない不特定多数のメガリスを用いたユーベルコードの脅威はこれまでの分身体とは別ベクトルの壁となって立ちはだかる。
「何が来ても対応できるよう備えられるのが理想だけど……敵の先制内容に目星を付けて一か八か特化した対策に賭ける、というのも一つの手かもしれないね。或いはキミたちなら能力や戦法に合った別な突破口を切り拓く事も可能だろう」
一通りの説明を済ませると有翼の人狼は吐息を一つ、集った猟兵たちを改めて見渡す。
「グリモア猟兵としては些か歯痒い予知だけど、ね。今回も皆の無事の帰還と勝利を祈っているよ」
いってらっしゃいと締め括る言葉を最後に、豪奢な装飾の施されたゲートが開いて。
ふーみー
当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
羅針盤戦争も後半戦、相手はいよいよ終の王笏!
敵の先制攻撃ユーベルコードへの対処が今回のプレイングボーナス条件となります。
カルロス側のSPD・WIZのUCで敵が使ってくるメガリスの具体的な効果もプレイング側に記述頂ければ積極的にリプレイに反映する想定。
必須ではありませんが、先制対策の手段の一つとしてご活用ください。
なお敵の先制ユーベルコードに猟兵のユーベルコードを対策とする事は出来ません。
それでは皆様の健闘をお祈りしています。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード』
|
POW : メガリス『鉄鎖ドローミ』
命中した【対象1体のユーベルコードを封じる鉄鎖】の【全長】が【対象を束縛するのに充分な長さ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : メガリス『オーシャンオーブ』
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【王宮にある大量のメガリス】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : メガリス『さまよえる舵輪』
【様々なメガリス】で武装した【コンキスタドール】の幽霊をレベル×5体乗せた【空飛ぶ幽霊船】を召喚する。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大豪傑・麗刃
相手の初撃。絶対くらってはいけないやつだ。回避しかない。ただ回避も超困難。なので一回限り有効な手段を使う。
まず、飛んできた鉄鎖を見切る。刺さろうとしたところを見切ってポイントガードでジャストガードし、ポイントガードに鎖を刺させる。のち早業で早着替えを応用した早脱ぎでポイントガードを捨てる事で巻き付かれるのを防ぐ。それでも巻き付かれそうになったら衣服を犠牲にして逃げる。
ユベコ解禁後は武人らしく全て斬る。
サムライブレイドと脇差(バスタードソード)の二刀流を構え、鉄鎖が飛んで来たら見切り、武器受けの要領でカウンターで鉄鎖の先端を斬り、鎖そのものを切断する。そして返す刀で敵本体に突っ込み、これを斬る!
●1st Round ― 断ち斬り滅すは剣刃一閃 ―
「ほう。猟兵どもの先駆け、それなりの駒を宛がったと見える」
“終の王笏”――コンキスタドールを統べる略奪者の王、その威を誇るが如く絢爛に輝く王宮。今ばかりは名に違わぬ闘気を纏う大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)の前にカルロス・グリードが姿を現す。
「此方としても都合は良い。貴様を徹底的に叩き、続く猟兵どもの勢いを削ぐとしよう」
「叩かれるのは御免なのだ。結構堪える!」
呼吸を整えるような軽口で返す麗刃へと放たれるは鉄鎖ドローミ、先制の利を最大限に活かすユーベルコード殺しのメガリス。一撃受ければ身動きを封じユーベルコードまでもを無力化する必殺の一手である。
(回避しかない。ただ回避も超困難。ならば)
機は一度にして一瞬。時間の流れが遅くなったような感覚の中、その中でさえ高速で迫る鉄鎖の先端を――
「――見切った」
心窩を貫かんとするドローミの軌道にポイントガードを割り込ませる。突き刺さる。完璧なタイミングの防御をして速度を衰えさせない鉄鎖を、即座にポイントガードごと脱ぎ捨てる事で振り払う。
鉄鎖は止まらない。独立した生き物の如くうねり、一度は逃れた麗刃を捉えんとして、
「斬る」
剣刃一閃、寸断され地に落ちる鉄鎖を置き去りに踏み込む麗刃の姿はカルロスの眼前。
「チィッ……!」
「斬る」
至近、迎撃に繰り出された次なる鉄鎖を脇差で斬り払う。ユーベルコードを封じる鉄鎖、それを断つ度に力が削がれていくのを感じる。否、まだ一太刀を繰り出す余地の残っている事自体が麗刃の卓越した技能と身体能力に依るものと言っていい。
(十分――ッ)
鉄鎖と打ち合った脇差を投げ捨て、サムライブレイドの柄を両手で握る。捉えた。討つべき敵は間合いの内に。
「全て、斬る!!」
気迫と共に振り下ろされた一刀。黄金の王宮を、血華の紅が彩った。
成功
🔵🔵🔴
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
様々な形態のカルロスと戦ってきましたが、ようやく本体との決戦……
今までがそうであったように彼も強敵でしょうが、抗ってみせましょう
自分の周囲に腕輪から鎖を張り巡らせて、事で敵から発射された鎖を絡め取り、『気合い』を込めた『怪力』にまかせて奪って投げ捨てる
鎖をやり過ごしたならUCを発動。バジリスクの能力の一つ、狭所を潜る能力を得る
以後、鎖が放たれたなら能力の応用、潜り抜ける事で回避していく
カルロスはバジリスクの毒と石化の魔眼により少しずつ弱体化させていく
鎖による『フェイント』を主軸に、『体勢を崩す』事で黒剣の一撃を与える隙を作っていく
攻撃が命中する度『生命力吸収』で自身の体力を回復
●2nd Round ― 罪茨は縛める ―
「ようやく本体との決戦……」
足音は響かず、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は王宮の最奥に座す終の王笏へと辿り着く。
「強敵でしょうが、抗ってみせましょう。今までそうであったように」
「なれば足掻け。獲物を踏み躙ってこそ略奪というもの」
カルロスが片手を軽く振るい、襲い掛かるはメガリス『鉄鎖ドローミ』。敵対者に突き刺さり束縛し異能を封じる秘宝は――
――ジャラ、と鎖の擦れる音。
クロスの腕輪から伸びた鎖、罪茨の名を持つ冥装が鉄鎖を絡め取っていた。
「馬鹿な……!?」
「はぁぁぁぁぁッ!」
カルロス、オブリビオン・フォーミュラをして驚愕に目を見開く程に“有り得ない”一瞬の防御を実現せしめたのはクロスの執念に依るものか。
鋭い雄叫びと共に腕を振り抜けば、張り巡らされた罪茨は強引な突破を果たそうとしていたドローミも諸共に薙ぎ払われる。
「此の身体に宿すは禍つ蛇。祟り呪いし邪眼の主よ! 総てを呪え――!」
奇跡は一度。刹那の勝機を掴み取らんと吼えるクロスの姿が蛇めいた異形を宿す。
「おのれぇッ!」
「最早その鉄鎖は喰らいません。全て、躱してみせます!」
立て続けに新たな鉄鎖が繰り出され、四方八方からクロスへと襲い掛かる。その力に一切の翳りは無く、一度捉えれば忽ち異能の力をも喰らい尽くすであろう致命の猛攻。
だが。
「チィ……!」
その一撃が当たらない。半歩誤れば破綻する死線を、クロスは罪茨を振るいながら潜り抜けていく。
冥装が王笏を傷つける度にその存在を蝕むは禍つ蛇の毒。瞳孔の縦に割れたクロスの瞳は視界に捉えたものを石と化し、カルロスの動きを鈍らせていく。
最早天秤の覆る事は無く、趨勢は此処に定まった。王笏の生命を喰らい、身を翻したクロスの手に黒羽が舞う。
「逃さない――我が凶刃、我が死を受けろッ!」
漆黒の軌跡に数瞬遅れ、迸るは鮮血の紅。
生命そのものを断つが如き凄絶な一閃に、フォーミュラの苦悶の叫びが重なった。
大成功
🔵🔵🔵
クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「此処が本拠地ですね」
【POW】
●UC対策
「システム:戦闘モード」
自前のキャバリアに乗って出撃。
敵のUCをキャバリアの装甲の【盾受け】で受けます。
「突き刺さりましたか、困りますね」
動かないので頭部側のハッチから機体から離脱。UCを封じる鉄鎖は自動【操縦】に切り替えたキャバリアで掴んだまま己が肉体で戦闘を継続します。
「では、初めましょうか」
●UC
【エネルギチャージ充填】完了、【リミッター解除】。背のアームドフォートのブースターを吹かせ敵に突撃します。
「CODE:LUCIFER。ブースト展開、仕掛ける!」
LMGの【弾幕】を浴びせ、パイルバンカーの【貫通攻撃】を叩き込む狙いです。
●3rd Round ― “鋼鉄”と称されしは ―
「此処が終の王笏の本拠地ですね」
そう、あのオブリビオンのハウスである。
クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)自作のキャバリアが闘志の現れのように唸り声めいた稼働音を上げ、出迎えたカルロスに相対する。
「システム:戦闘モード」
「斯様な玩具で我に抗し得ると考えたのなら笑止千万。或いは我が財貨に加えてやるも一興か」
見上げるような鋼の巨躯とて恐るに足りずと一笑に付し、カルロスが繰り出すはメガリス『鉄鎖ドローミ』。キャバリアさえ捕え得る長さにまで伸長した異能殺しの秘宝が宙に閃き、並外れたクネウスの操縦技術さえ物ともせずにその機体を貫く。
「突き刺さりましたか、困りますね」
鳴り響くアラート。どうにかクネウス自身への被弾は避けたが、縛められたキャバリアは最早指先一つ動かす事も儘ならない。
困った。困ったので――キャバリア頭部のハッチを開き脱出。すぽーん、と勢いよくクネウスが飛び出すまでに僅か一秒。
「では、始めましょうか」
「何事も無かったように仕切り直すな」
元より……クネウス・ウィギンシティはクロムキャバリア世界の発見以前より戦い続けてきた歴戦の猟兵である。
キャバリアを封じられた事は痛手だが、しかし。鋼鉄のエンジニアの力はキャバリアのみに由来するものではない事を、カルロスはどこまで把握していたか。
ここまでの展開は想定通り。エネルギーチャージは万全、疾うにリミッターから解き放たれた兵装は反撃の好機を逃しはしない。
「見縊るなよ猟兵……ッ!」
「CODE:LUCIFER。ブースト展開、仕掛ける!」
キャバリアを封じた鉄鎖は逆にキャバリアによって食い止められ、新たな鉄鎖を展開するまでに一瞬。軽機関銃バロールの形成した弾幕は不完全な防御が張り巡らされる前に打ち破り、鎧装騎兵の代名詞たるアームドフォートが高らかに吼える。
鋼の彗星と化したクネウスの突撃、その手に装備されたパイルバンカーがカルロスを捉え――三連射。艦隊の装甲さえ貫く火力が惜しみなく王笏へと叩き付けられる。
「ぐおおおおオオオ――ッ!!」
人間に――人型の標的に打ち込んだとは考え難い破壊的な音の連続。カルロスの身体はひとたまりもなく吹き飛ばされた。
成功
🔵🔵🔴
七那原・望
そのユーベルコードでは未来予知や過去干渉は不可能ですよね。
今の戦況がその証明です。
【第六感】と【野生の勘】で行動を【見切り】、敵の攻撃が当たる寸前で【クイックドロウ】【結界術】で弾いたり回避し、向こうの追加行動前に結果を確定させます。
【果実変性・ウィッシーズダンサー】を発動後【全力魔法】で攻撃。
さらに展開したセプテットやオラトリオで【乱れ撃ち】。
詠唱や結界、オラトリオを掻き消されてもすぐに次を用意。
遠距離しか脳のない相手を潰すなら近接戦でしょう。
敵が至近距離で攻撃してきたら防御に見せ掛けた【早業】【カウンター】でグラツィオーソを同時に2つ叩き込みユーベルコードを封じ、【全力魔法】で追撃を。
ギルティナ・エクスキューション(サポート)
わ…私はギルティナと申します…
鞭のヤドリガミでして…その…人を様々な方法で苦しませ追い詰めることが得意…です…
それと…人から情報収集したりとかも…
戦闘はあんまり得意じゃないですけど…
鞭をふったり針を投げたり…最低限はなんとか…
あ…それとですねぇ…
人体の構造とかに結構詳しくてですねぇ…壊す方は勿論ですけどぉ…治す方もちょっとだけ自信が…あるかも…
やりすぎても…治してしまえばまた…やりすぎれますから…
あぁ…最後に私の趣向の話なんですけどもぉ…
女の人が大好きでしてぇ…
味方にいても張り切っちゃいますし…敵にいてもいっぱい張り切っちゃいますから…
いえ、男の人も普通に相手できるんですけど…やる気が…ねぇ…
●4th Round ― 因果をも超えて ―
絢爛たる王宮、内装を彩る秘宝の一つ一つがカルロスの力の源となるメガリスか。
七那原・望(封印されし果実・f04836)は正面に感じた王笏の気配を毅然と見据える。
「よくぞ此処まで踏み入ったものだ。だが、これ以上は許さん」
「いいえ。終の王笏、ここで折らせてもらうのです」
「無駄だ。我が力に為せぬ事は無い!」
カルロスの掲げたメガリス『オーシャンオーブ』が輝き、虚空に生じた海水は逆巻いて刃となる。海を冠する名の如く溢れ出す水量に限りは無く、その全てがカルロスに従う得物となって。
「そのユーベルコードでは未来予知や過去干渉は不可能ですよね。今の戦況がその証明です」
「仮にそうであれば何とする」
一斉に襲い掛かる数多の水刃。視覚の代わりに研ぎ澄まされた望の知覚はそれさえも見切り、十分に回避を可能とする筈だった。
だが。
宝珠が輝く。王宮を彩るメガリスの一部が砂のように崩れ、ユーベルコードがカルロスの攻撃に望の回避に対する優越を決定づける。
因果は歪み、オラトリオの柔肌に水刃が迫り。
その身が斬り裂かれる寸前――弾けるような音と共に、水刃が退けられる。
「チッ……!」
「躱せないのならば防ぐまで。防げないのなら躱すまでなのです」
再びオーシャンオーブが輝きを放つ。カルロスの攻撃は望の結界を貫き、しかし貫いた先に望の姿は無い。
宝珠によって事象を定められた刹那、その一瞬に更なる手を打つ事で再び結果を覆す。それは言葉の容易さとは比べ物にならない離れ業であり、故にカルロスをして更に因果を覆す事は容易ではなく。
「今こそわたしは望む……ウィッシーズダンサー!」
稼いだ時間は十分。望の姿は対のチャクラムを操る踊り手に変じ、絶え間ない猛攻は一部を掻き消されようとも水刃の軍勢を押し返す。
「小娘の分際でよく戦う。……だが」
(来るっ!)
宝珠が輝く。望の直感が警鐘を鳴らすと同時に水刃の軍勢が狂乱するかの如く激しく荒ぶり、しかしそれもフェイク。
剣のようになった水刃を携えたカルロス自身が斬り込んでくるのに合わせ、それを読んでいた望はフェイントを交えた反撃を叩き込み――
――宝珠が輝く。
咄嗟に身を躱し、負傷を最小限に抑えられた要因は望自身の技量が半分。残り半分は自身の攻撃ではなく回避を成功させる事を選んだカルロスの判断ゆえだろう。
「貴様の動き、貴様のその戦輪、確かに煩わしい事は認めよう。だが、我がオーシャンオーブの力を破るには足りぬ」
「そんな逃げ腰でよく言うのです」
(……あと一手。勝利を掴むには……)
断言したカルロスへと言い返すも、王笏の力は無尽蔵。一度距離を取ったカルロスが再びオーブを掲げれば、望を取り囲む水刃がざわめいて。
戦場に光が生じたのはその時だった。
「ふぅぅー……海水が押しのけられたおかげで、どうにか……参戦、できました……」
転移の光が収まった時、その中心で陰気な笑みを浮かべていたのはギルティナ・エクスキューション(有罪死刑執行人・f14284)。漆黒の瞳がカルロスと望の姿を映せば、その手に握られた茨鞭が歓喜するようにひとりでに蠢く。
「あ……それとですねぇ……戦闘能力は最低限なので……カルロスさんの先制対策は手伝って頂けると……」
「は、はい!」
新手の登場を黙って見過ごすカルロスではないが、その攻勢を捌く望の立ち回りは未だ破られてはいない。次々と唸りを上げる水刃は退けられ、その様を見ていたギルティナは不安を掻き立てるような笑みをオブリビオンへ向ける。
「今のを見てて思ったんですけど……カルロスさん……攻め手、鈍ってますねぇ……?」
「忌まわしい呪物が囀るものだ……!」
「……つまりぃ……その技が完全に決まれば、効果は発揮されるという事ですから……お手伝い、しますねぇ……?」
ユーベルコード【垂れ流された叡血を実現したまえ】――スイッチを切り替えるようにギルティナの動きが“変わる”。過去にギルティナの浴びた血に宿る記憶は彼女のものとなり、達人の技量はヤドリガミの身体を通じて遺憾なく再現される。
宝珠が輝く。ギルティナの猛攻は敢え無く躱される。逃がさない。
オーシャンオーブの突破口、解法の一つはこの目で見た。拷問具が乱舞し、カルロスは押しやられるように一歩、二歩と後退していく。
「……これなら!」
「しまっ――!」
二人の攻勢は遂にカルロスの反応を完全に上回り、細心の警戒を払っていたカルロスをチャクラムが斬り裂く。オーシャンオーブの輝きが褪せると共に、水刃までもが力を失うように勢いを衰えさせる。
「あぁ……これで決まり……ですねぇ……?」
「決着を、付けるのです!」
均衡は此処に破れる。二人の渾身の追撃は水刃諸共にカルロスを打ち砕き、屈辱に憤るオブリビオンの呻きが王宮に響いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リオン・ソレイユ
相手は強大な力を持つ王。
ならば、一切の出し惜しみはせず、儂等の全力を以て相対しよう。
不動城壁を展開し守りを固め、
ソニアに【禁術】死棘槍とジェノサイドレイブンを展開してもらい、
迫りくる奴の鎖に対し弾幕を張り蹂躙する
防御を突破してくるならオーラ防御を展開し弾く
それすらも突破してくるなら
野生の勘と戦闘知識で見切り、
衝撃波を伴った咄嗟の一撃による武器受けと盾受けで凌ぐ
奴の初撃を凌ぎ切ったら黄昏の守護者を発動し、火力優先で強化
魔剣の力で奴のユーベルコードを封じつつ
未来を見通し、己の終焉を破壊しながら攻勢に転じ、
ダッシュで一気に距離を詰め、呪詛を乗せた魔剣の斬撃を放つ
併せてソニアの全力魔法による追撃を行う
火奈本・火花(サポート)
人探しや潜入を得意とする、UDC組織所属のエージェントです
■平時
『大切な人達の光の為に、私達が闇に立ち向かいましょう』
普段は礼節を弁え、理知的で物腰穏やかな対応を心掛けます
世間一般に「紳士的」とされる態度と相違ありません
■戦闘時
『我々は人類を邪悪や狂気から守る。その為には冷酷を貫く事も厭わない』
UDCや関連団体に相対した時は、非情に徹します
一人称は誇りをもって「我々」と呼称します
■行動傾向
日常・冒険:変装や演技、Dクラス職員や組織の支援を駆使した情報収集が得意です。自らの身を削る事にも躊躇しません
戦闘:機動部隊との連携を基本に、火器や状況を利用した奇襲・速攻を得意とします。ヤドリギは奥の手です
●5th Round ― 世界に殉ずる者たち ―
絢爛なる王宮に重厚な足音が響く。既に実体化し臨戦態勢を取る魔女ソニアを傍らに、リオン・ソレイユ(放浪の老騎士・f01568)は終の王笏と相対した。
「この最前線まで斯様な老兵が大儀な事だ。容赦はしない」
「一切の出し惜しみはせん。儂等の全力を以て相対しよう」
傲岸に言い放ちながらカルロスに侮りは無く、対するリオンたちの構えにも隙は無い。
波濤の如くに押し寄せるはカルロスのメガリス『鉄鎖ドローミ』、オーラより生じる不動の城壁が食い止めた一瞬にユーベルコードにも類似した力を持つ禁呪の巨槍と虐殺の鴉が軍勢を成す!
「……所詮は尋常の業に依る模倣。我がメガリスに及ぶものでは無いな」
「故にその鎖では封じられぬ。言葉ほど余裕には見えんな?」
90の呪槍、900の魔鴉が鉄鎖と激しくぶつかり合う。形状を活かし間隙を貫いた鉄鎖はオーラの障壁に減衰され、衝撃波を伴う剣に斬り払われる。
一撃さえ命中すればその身を封じる必殺の秘宝、それをして凌ぎ続けるのは強大な装具と練達の立ち回りが合わさってこそか。
「――我等、最果てへと至りし者なり――」
「む……ッ」
偽剣を構えたリオンの詠唱が響く。魔力が高まり、老兵とその刃が理外の力を宿す。
「――我等、諸人の安寧を守護せんと誓いし者なり――」
それは黄昏に染まる最果ての地にて交わされた誓約。
それは彼等を守護者たらしめた始まりの誓約。
「――故に我等、その生涯全てを以て何れ至る黎明への礎とならん!」
見開いた眼に映るは未来の可能性。鉄鎖と同じくユーベルコードを封ずる力を発揮した魔剣を薙ぎ払えば、その技は隔絶した冴えを以て押し寄せる終焉を打ち砕いた。
紛れも無い切り札、勝負の決め手となる乾坤一擲の異能。
故に。
“終の王笏”もまた、この瞬間に全霊を賭した。
「――然らば、我は――この生涯全てを以て安寧なるを蹂躙し! 以て最果てへと至る略奪者である! 我こそはコンキスタドールが王、“終の王笏”! カルロス・グリードなれば!!」
「貴様……!」
鉄鎖を打ち払い砕くと同時、未来が曇る。不可視の鎖が絡め取る如くに動きが鈍る。
或いは広範に絶大な強化を施す異能であるが故に、ただ異能を殺す事に特化した鉄鎖は天敵となり得るか――魔剣でドローミを破るは至難。魔女ソニアの操る禁呪の援護を受けリオンは一度距離を取った。
如何にして勝ち筋を掴み取るか、両者の間に一瞬の空白が生じ……その空白を新たな転移の光が埋める。
「状況は把握しました。これより支援を開始します」
火奈本・火花(エージェント・f00795)の投げ放ったペンライトが記憶消去作用を持つ光でカルロスの目を眩ませる。至近で炸裂したそれに鉄鎖の勢いは僅かに弱まり、リオンたちの従える死棘槍と魔鴉が再び鉄鎖ドローミの先制を押し返した。
「増援か……小娘が。如何にして我が秘宝に食い下がるつもりだ」
「邪悪に応じる言葉など無い」
冷たく切って捨てる言葉と共に火花が合図を出せば、召喚されるは盾を構えた機動部隊。
ユーベルコード【≪制圧要請≫機動部隊突撃(サプレッションコール・アサルトアタック)】――召喚された彼らは禁術と鎬を削る鉄鎖の元へ躊躇なく飛び込んでいく。
「有象無象が増えたところで……!」
「危険を冒してでも守りたいものがある。それが我々の戦う理由だ」
拳銃を手に自らも戦列を支援する火花。機動部隊の頭数に火花の支援による効力上昇が合わさり、ユーベルコード殺しの鉄鎖に一人また一人と送還されながらもせめぎ合う。
制圧力の補強による活路の確保、即ち力押しも良いところの正攻法が今回の火花の選択だった。
不意に機動部隊と火花の総身に活力が湧き起こる。眼前の敵のみを見据えるエージェントたちにその姿は見えないが、朗々と謳う声はこの空間全体に響き渡った。
「――勇士諸君!」
リオンの掲げるは獅子を象る四聖の紋章。その輝きは老兵の鼓舞を増幅し、共に戦う者へと決して折れぬ勇気と活力を授ける。
「相手は強大な力を持つ王。されど我等、諸人の安寧を守護せんと誓いし者なれば――必ずや此れを討ち果たさんッ!」
「なん、だと……馬鹿な……!」
鬨の声が王宮を揺るがす。神話の如き鉄鎖の猛攻が、人の力によって退けられる。
「カルロス・グリード! 覚悟ッ!!!」
疾駆からの一閃、そして禁術を操る魔女の全力を込めた追撃。
守護者の刃は遂に略奪の王を捉え、貫いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
カイム・クローバー
顔を見るのもこれで何度目だっけな…。鎧やら邪神やらで武装したのに比べると思ったより……見た目は普通だな、アンタ。
メガリスの脅威性は俺も知ってる。成功するあらゆる行動ってのは、『攻撃に対しての絶対回避』。
俺の十八番の二丁銃による【クイックドロウ】もあの回避の前じゃ残念ながら形無しって訳だ。
それに対して俺が打つ手は。距離を詰めさせて、左手で服を掴んで【怪力】を利用した動きの束縛。
これ事態は攻撃じゃないが…攻撃に際しては俺もUCを使う。
右手で幸運を呼ぶ金貨を宙に弾いて。結果を見ずに至近距離から魔剣の【串刺し】。
弾丸費用は報酬から差し引き。随分、無駄弾撃たされたぜ。
ハッ…高い代償になったな、強欲野郎。
●6th Round ― オール・イン ―
「顔を見るのもこれで何度目だっけな……」
数多のメガリスに彩られた絢爛な王宮、終の王笏の本拠を進むカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の足取りは軽い。
「鎧やら邪神やらで武装したのに比べると思ったより……見た目は普通だな、アンタ」
「然したる差も無い。略奪の成果を誇示する戦装束である事には変わらん」
友人に挨拶でもするような気楽さで声を掛ける。対するカルロス・グリード、オブリビオン・フォーミュラの本体たる男は気を害した風も無く鼻を鳴らす。
「貴様の得物も悪くは無い。打ち倒した暁には我が財貨に加えてやろうか」
「良い趣味してるぜ、まったく……!」
カルロスがメガリス『オーシャンオーブ』を掲げると同時、カイムの双魔銃が高らかに吼える。
生半可なオブリビオンであればそれ一つで討滅せしめる程の速度と精度を備えた速射は、しかしカルロスを捉える事無く王宮の壁に突き立った。
「中々の腕だ。だが、それだけか?」
「おいおい、アンタにはこの剣が飾りに見えるのかよ」
軽口を叩きながら追撃の手を休める事は無い。踊るようなステップで死角を取り、曲芸めいた跳弾を織り交ぜた猛攻が続くも……カルロスがただ歩くだけで、両者の距離は縮まっていく。
(『攻撃に対しての絶対回避』。メガリスの脅威は伊達じゃねぇな)
(反撃を狙っているのは確かだろう。なれば、奴が勝負に出た瞬間を潰すまで)
遂に両者の距離が零に縮まる。カルロスの手に宝剣が光り、カイムが二丁拳銃を手放す。
「さぁ、全てを賭す時だ猟兵」
「言われるまでもねぇな!」
カイムの左手が握ったのは剣の柄ではなくカルロスの装束。宝珠が輝く事は無く、理外の域に踏み込んだ怪力が王笏を捕える。
第一条件は満たされた。体勢を崩されたカルロスの動きに一瞬の停滞。
「掴んで何とする。それで我が力を封じたつもりか」
「まさか、これからさ。アンタの言葉をそのまま返そうか」
カイムの右手が金貨を弾く。行方を見ぬまま、遂に神殺しの魔剣を引き抜く。
「さぁ、準備は良いかい? Heads or Tails? 」
【表か裏か】――カイムの選んだ札は、カルロスのオーシャンオーブと似通った性質のユーベルコード。確定事象は打ち消し合い、状況は此処に互角となった。
宝剣の黄金と魔剣の黒銀が交差し、刃の肉を捉える音が続く。
音を立てて地に落ちた金貨の面は……表。
「弾丸費用は報酬から差し引き。随分、無駄弾撃たされたぜ」
「我が秘宝を、破るか……貴様……!」
「ハッ……高い代償になったな、強欲野郎」
王笏の血に濡れた魔剣を引き抜く。死線を乗り越えてみせたカイムの不敵な笑みを睨め付け、オブリビオン・フォーミュラは片膝をついた。
大成功
🔵🔵🔵
緋翠・華乃音
……君は自分の強さを持っていないのか?
異世界から獲得した能力やメガリスに頼りきりだと、いざ追い詰められれば呆気なく窮地に立たされる。
今この時のように。
少しは提督の戦術と強かさを見習った方が良いのでは、と思うが。
先制攻撃が可能であれば仕留められると思わない方が良い。
君に対する猟兵の優位性は“情報”だ。
先制をするのかしないのか、どんな攻撃を仕掛けるのか。
……全くグリモアとは恐ろしいものだと思わないか?
情報があるのなら戦術も組み立てられる。
先制攻撃に対する最善手は回避だ。
体幹を、骨格を、筋肉を、動きの癖を、呼吸のリズムを。
一挙手一投足を見切って躱してみせる。
そして攻撃後に生まれる一瞬の隙を突く。
●Final Round ― 必然の刹那 ―
「……君は自分の強さを持っていないのか?」
絢爛なる王宮、呪われし秘宝メガリスに彩られたフォーミュラの本拠地。その最奥、終の王笏が座す戦場へと緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)は踏み込んだ。
「異世界から獲得した能力やメガリスに頼りきりだと、いざ追い詰められれば呆気なく窮地に立たされる。今この時のように」
「ほう。言うではないか」
対するカルロスは度重なる交戦にその存在を随分と削られながら、未だコンキスタドールの王たる気風を崩す事無く、あくまで泰然と侵入者に相対する。
「少しは提督の戦術と強かさを見習った方が良いのでは、と思うが」
「アドミラル・ネルソンの事か。成程、英明にして精強なる同志であったが……今や彼とて敗者に過ぎん」
「そう切って捨てるなら。君も直、その列に加わる事になる」
瑠璃蝶の拳銃が音も無く弾丸を発し、メガリス『鉄鎖ドローミ』の軌道を逸らす。生じた僅かな死角を見切り、舞うような踏み込みで初撃を潜り抜ける。
「先制攻撃が可能であれば仕留められると思わない方が良い。君に対する猟兵の優位性は“情報”だ」
「小賢しい真似を……!」
蜘蛛の巣を広げるように無数に放たれる鉄鎖は一度でも命中すればその身を縛り、ユーベルコードをも封殺せしめる致命の一手。ただ一撃を当てれば勝利を得られるカルロスの猛攻は、しかし紙一重の差で終奏の蝶をすり抜けていく。
華乃音からすればただの一撃とて受ければ全ての終わる死線。瑠璃の瞳を凝らし、研ぎ澄ました戦術構築によって僅かな勝ち筋を手繰り寄せていく。
「先制をするのかしないのか、どんな攻撃を仕掛けるのか。……全くグリモアとは恐ろしいものだと思わないか?」
「その力の脅威たるは認めざるを得まい。だが――それがどうした」
手の内を見透かされ、既に対策を練られた状況。その不利を理解し、眼前に突き付けられながら、猶もカルロスは傲岸に言い放つ。
「王笏たる我、カルロス・グリードの名に懸けて……勝利し、奪い取る!」
メガリスの攻撃が更に激しさを増す。鉄の嵐めいたそれはフォーミュラの矜持の現れか、回避不可能の未来を以て押し寄せた。
「否だ。君は俺に勝てない」
ユーベルコード【逢魔ヶ刻(フィンブルヴェトル)】――攻撃力を増強。鉄鎖の怒濤、その要に当たる一点を数発の弾丸が穿つ。メガリスが硬い悲鳴を上げ、纏わりつかれるように異能が鈍る。
「問題無い」
勝算は五分余り。十分だと呟き葬送の刀剣を抜き払う。攻撃回数を増強、瑠璃色の刃が活路を切り開く。
ユーベルコードの効力は更に減衰。鉄鎖に絡め取られた刀剣を手放し、身を投げ出した先はカルロスの眼前。
「まだだ……ッ!」
メガリスによる武装の一つだろうか、カルロスが黄金の宝剣を抜く。背後からは鉄鎖の波濤が追いついてくる。
(――全てだ。全て見切り、躱せ!)
コンマ一秒の先を読み、最適のタイミングで地面を蹴る。
決着は一瞬。
「……これで終わりだ」
鈍い音。華乃音の握ったタクティカルナイフがカルロスの心臓を貫き、力を失ったメガリスが砂のように崩れて消えていく。
――貴方は私の復讐であり、私は貴方の復讐である。
役割を果たした刃を鞘に納め、華乃音もまた戦場から姿を消した。
―― 七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード、撃破 ――
成功
🔵🔵🔴