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羅針盤戦争〜ハングリー・ビースト

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #ザンギャバス大帝 #鮫牙島 #2/18(木)15:00で今回のプレイング受付終了します

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#2/18(木)15:00で今回のプレイング受付終了します


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「皆さん。お集まり頂きまして、ありがとうございます」
 グリモアベースのブリーフィングルームの一つ、立体映像投影機の前で。ノエル・シルヴェストル(Speller Doll・f24838)が、礼儀正しく一礼する。
「この度、皆さんにお伝えする依頼は……グリードオーシャンにおいて進行中の『羅針盤戦争』の一戦場であり、『七大海嘯』が一人『『鮫牙』ザンギャバス』の討伐を、お願いしたく存じます」
 様々な島を強襲しては、暴虐の限りを尽くそうとした『鮫牙』ザンギャバス大帝だが。遂にその本拠とも言える場所が見つかったのである。そこを逆に強襲し、ザンギャバスを追い払おうというのが。今回の作戦の概要である。

「但し、少なくとも現状ではザンギャバス大帝は『無敵』であり。決して『殺す』事はできません。ただ一定回数、獅子の姿になるまでの飢餓状態に追い込む事が出来れば。とりあえず一定期間は、姿を見せなくなる事が分かりました。今回は、その状態まで追い込む事が目的です」
 今回の作戦の目的を述べた後。ノエルは詳細を付け加えていく。

「まず目標の『鮫牙島』へ、猟兵が接近しますと。島は海中へ急速潜行してしまいます。その為、戦闘は海中にて行われる事となります」
 その言を聞いて、眉をひそめたり、顔をしかめたりする者が続出する。猟兵の活動範囲は幅広いが、それでも水中や海中での戦闘の機会は少ない。故に装備や戦闘法は必ずしも確立されておらず、それを得意とする者は更に少ない。及び腰になる者が多いのも無理無いが、今回は一応のサポートがある。
「スペースシップワールドで、多くの猟兵が使用している『薄く透明な膜状の宇宙服』を調整し、潜水服を誂えました。呼吸や最低限の機動力の確保は、心配ありません」
 また武装に関しても、水中でも性能を発揮できる様に調整される為。この依頼の為に無理をして、水中用の装備を新調する必要は無い。
 但し、最初から水中での戦闘用に製作或いは調整された装備の方が、今回の依頼と親和性が高いのは無論であり。技能に関しても、無いよりは会得している方が、有利であるのも当然である。

「次に先言通り、ザンギャバス自身は『無敵』であり。痛覚は極度に鈍く、傷を負わせても即再生する為、現状では決して倒す事は出来ません。故に、彼を散々動き回らせて空腹にさせ。そのまま飢餓状態まで追い込む事で、逃走させるのが勝利条件ですが……実はこの海域には、巨大な鮫が巨大な群れを成して棲息しています。どういう生態なのか殆ど分かっておらず、幾ら捕殺しても全く数が減らない事から。或いは野生化した魔法生物の一種かという話もありますが……鮫達は皆さんの戦いを大きく遠巻きにして、見守っているだけですので。鮫自体には問題はありません。問題はこの鮫の群れが、手っ取り早くザンギャバスの空腹を満たす、生き餌となりかねない事です」
 その為、ザンギャバスが鮫を捕食できない様に。彼を鮫に近づけないか、鮫の方を遠ざけるなりして、ザンギャバスと鮫との距離を開け。捕食の可能性を潰しつつ、彼の運動量と時間を稼ぐ事が肝要となる。
 ちなみにどう頑張っても、鮫の群を追い払ったり、殺し尽くす事は不可能である上。生き餌が撒き餌に変わる為、かえって捕食しやすくなるだけなので。鮫を故意に傷付ける様な戦法はお勧めしない。
 幸いな事に、ザンギャバスは思考能力に乏しい為、初歩の挑発や策略にも呆気なく引っかかる。戦法や策略を駆使して、ザンギャバスを引きずり回すのも一計だろう。

「また、一応は本拠地という事もあってか。今回はザンギャバスが、猟兵達に先制してユ-ベルコードを放ってきます。こちらへの対処も、忘れずにお願いします」
 仮にも幹部級のコンキスタドール、つまりオブリビオンであるという事だ。その巨体故に、ユーベルコードの威力も侮れない。先制攻撃で壊滅させられない様、くれぐれも注意を怠らぬ様に願いたい。

「『無敵』という、厄介極まる性質を持つ手合いが、相手となりますが……どうか皆様、お気を付けて。ご無事の帰還を、祈っております」
 緑髪のミレナリィドールは、深く一礼すると。島々と大海とが支配する世界へと向かうゲートを開いた。


雅庵幽谷
 初めましてor幾度もの参加、有り難う御座います。
 当シナリオ担当、雅庵幽谷と申します。
 シナリオOPを、ここまで読んで頂き。ありがとうございました。
 11作目のシナリオは、グリードオーシャンにおける『羅針盤戦争』幹部の一人『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』との決戦を、お届けさせて頂きます。

 ※当シナリオは『羅針盤戦争』専用シナリオです。
 シナリオ自体は1章のみで完結しますが、『羅針盤戦争』の戦況へ影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ※今回の難度は『やや難』です。通常より判定は厳しめになります。

●特殊条件
 当シナリオの戦闘は、水圧が深刻にならない深度での『海中戦』です。
 ただし、水中戦用の装備や技能は特に必要ありません。光学兵器や熱源兵器なども普通にお使い頂けます(その辺の原理などは、必要に応じて適当にこじつけます)
 尤も、水中戦用装備や技能を(技能LVも考慮対象)お使いの場合。度合いに応じて判定に色を付けさせて頂きます。

●プレイングボーナス(計二種)
『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』
 今回ザンギャバスは、ユーベルコードで先制攻撃を行います。通常の幹部戦と同じく、これに対処して下さい。
 尚【ザンギャバスハンド】は、例え遠間であっても。腕を蛇などに変えて掴みかかれる物とします。

『巨大鮫を喰おうとするザンギャバス」に対処する』
 今回は作戦海域に、無数の巨大鮫が戦闘を遠巻きにしつつ回游しています。ザンギャバスは飢え始めると、この巨大鮫を捕食しますので、暴れさせるだけでは撤退に追い込めません。彼の飢餓状態が限界を超えるまで、彼と巨大鮫とを遠ざける必要があります。
 幸いザンギャバスは頭が非常に弱い為、作戦や策略が極めて有効です。上手く手玉に取ってやって下さい。

 ※今回のプレイング受付は、2月17日(水)午前8:31からと、させて頂きます。
 また今回は、シナリオの完結をなるべく急ぐ都合…青丸の数が必要数に達した後のプレイングは、採用できない可能性がございます。
 どうかご了承頂けます様、お願い致します。

 それでは…皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』

POW   :    ザンギャバスハンド
レベル×1tまでの対象の【腕や頭】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ザンギャバスファング
自身の身体部位ひとつを【竜、山羊、蛇、蛇のいずれか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ザンギャバスポイズン
攻撃が命中した対象に【肉体の部位「蛇」からの猛毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体を侵食する猛毒】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:白

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

片桐・公明
【SPD】
バイク『赤兎』に搭乗し正面から突撃する
相手のUCに"当たりやすいよう"特に小細工することなくまっすぐ向かっていく
相手のUCが当たる直前にバイクを踏み台にして相手のUCを超える
バイクはそのまま囮にして敵UCにぶつける

本「生命力を奪う噛みつき攻撃も、無生物相手なら意味ないでしょう。」
分「そしてここまでくれば、あたしたちの間合いだ。」
相手と接敵したらUCを使用して、撹乱するように戦う
本体は素手で攻撃より回避やいなしでダメージを追わないように立ち回り
分身は妖刀を振るい、多少強引にもダメージを蓄積していく
どちらも敵から離れないことを重視して立ち回る
(絡み、アドリブ歓迎です。)


リリスフィア・スターライト
アドリブ歓迎、苦戦描写OK

天体破局で海流の流れを変えて巨大鮫の群れを
ザンギャバスに近づけさせないようにするね
そしてザンギャバスを注意を引きつけるようにして
先制攻撃はまともに受けないよう海中内の地形を
利用しながら動き回って回避に専念したいかな
猛毒を食らわないよう全身をオーラで防御して
体内に浸食されないようにするね
先制攻撃を凌いだ後もザンギャバスを挑発してから
逃げ回って無駄に消耗させるように立ち回るね
自分の魔剣をグリモアだとアピールして引き付けられればかな
自身がグリモア猟兵である事で注意を引ければいいけれどね
接近戦は自分からは仕掛けずに止むを得ない時だけ
魔剣で突くようにして怯ませてから距離を取るよ


コトト・スターチス
ムテキなのは物語の転生主人公だけでじゅうぶんですっ
強敵ですが、できることをがんばります!

・ザンギャバス対応
動きのパターンを【情報収集】して【見切り】ながら、できるだけ攻撃をひきつけて【水中機動】で回避したいですっ
もし攻撃を受けても【毒耐性】の防具で受けて、致命傷はさけたいです…!

攻撃をしのげたら『ねこへんしん』!
「ここからが辻ヒーラーの本気ですっ!」
一番の目標は、前線で自分や皆さんを癒して、辻ヒーラーとして戦線を支えたいです!
もうひとつは、敵の攻撃を先ほどの情報を元によけながら、周りを飛ぶように泳ぎまわって集中をかき乱したいです
特にサメに手を伸ばそうとしたら、一撃離脱でメイスで叩いて邪魔します



●Power Dive
 紺碧から濃紺へと姿を変えつつある、周囲の光景を横目に。片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)は愛車『赤兎』を駆って、海中深くを目指す。
 本来オフロードバイクに近い形状の『赤兎』だが、今は水中航行の為にカウルを増設し、その外見はむしろジェットスキーに近く、用途はほぼ水中スクーターだ。側面と後部に推進用のスクリューを取り付け、水中を強引に突き進む仕様である。改造自体は急場凌ぎに近いが、現地で発揮される性能は、そう悪くない。
 更にシート部の後方にバーを設け、同行する猟兵が取り付ける様になっており。それを、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)と、コトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)とが握り。潜行は各人が散ける事無く、概ねスムーズに進んでいた。今回の標的であるザンギャバス大帝の位置が、朧気にしか分からないという不安を除けば。
 だが、贅沢を言っていてはキリが無い。元々『来る』と分かっていれば、基本的に有利なのは迎撃側である。一応とは言え、向こうの手の内が分かっているだけ、上出来という物だろう。

 やがて、回游する海洋生物の生態や質が変わってくる中。一際巨体を誇る鮫の様な生物が、唐突に数を増した。潜行してくる猟兵達に気付いていない筈は無いが、しかしそんな物には興味は無いとばかりに、悠然と回游を続けている。危機感覚が薄いのか、外界への興味が乏しいのか。どちらにせよ『狩る側』としては、非常に楽な対象であろう。或いは家畜の一種として、飼われていた存在なのかも知れない。
 しかしそんな呑気な海洋生物を見やり、猟兵達は気を一段と引き締める。この巨鮫の群れこそ、ザンギャバスが近い証。彼等の回游域の内側に、確実に奴が居る。公明は愛車のスロットルを握り直し、リリスフィアとコトトの二人も、バーを握る手に力が篭もる。
 まるで肉食生物が獲物に躍りかかるかの様に、猟兵の一隊は巨鮫の回游域内へ、突入を開始した。

●Combat Open
 猟兵達が巨鮫の群れを抜けるのと、それとのどちらが速かったかは分からない。が、正確に計り区別する意味は無いだろう。ひとつ確かな事は、その一撃こそが、開戦の合図となったという一事である。長く伸びてきた蛇頭が、その牙をヌラヌラと光らせ、『赤兎』を駆る公明へと迫る。
「散開(ブレイク)!」
 公明は鋭く一言を発すると、一刹那の迷いも戸惑いも無く愛車のシートを蹴った。リリスフィア、コトトも、それぞれ車体を蹴って『赤兎』から急ぎ離れる。猛烈な勢いで、蛇頭が『赤兎』を噛み砕いたのは、その次の瞬間だった。その名の通り、赤をベースに塗装された車体は、無残に引き裂かれ……そして猛烈な勢いで膨張した。
 否、爆散したのだ。
 転んでもただでは起きない処か、それを利し。カウンターの一撃を加えて見せたのである。公明はニヤリと笑んで、傷だらけの蛇を見やり。
「生命力を奪う噛みつき攻撃も、無生物相手なら意味ないでしょう?」
 表裏二体に分かれ、それぞれ独立した人格を持つ二人の『公明』の内、表側の公明が口を開けば。
「そして、ここまでくれば。あたし達の間合いだ」
 裏側の公明が言を継ぎ。
 一瞬の間ながら、二人して。華々しく散った愛車に敬礼して見せた。

 尤も、その程度で末端だけでも始末できたなら。大した戦果であったろうが……ザンギャバスも伊達に『無敵』の冠を頂いてはいない。それこそ『あっという間』に蛇頭の傷は癒え、獲物を求めてそれを巡らす。一方で、猟兵達の下方から著しく巨大な物が、急速に浮上してくる。
 ザンギャバスの本体だ。
 人間、と言うより極度に肥満した巨人をベースに。神話のキマイラ宜しく、身体の各所に様々な動物の頭を備え。凶猛な表情と凶悪な眼光で、猟兵達を睨め付ける異形の暴帝。一見しただけで、恐れを成すどころか気死しても恥では無かろう。無論、並の人間或いは知性体であればだが。

 だが『生命体の埒外』である猟兵が、この程度の異形や気迫に折れていては話にならない。それは齢八つに過ぎないコトトですら、例外では無い。その小さな身体でメイスを構え、慎重に敵の挙動を見切り。行動のパターンを頭の中に叩き込みつつ、ギリギリの間合いまで引き付けては避けてみせる。
「ムテキなのは、物語の転生主人公だけでじゅうぶんですっ!」
 纏う防具に毒に対する耐性を持たせ、被弾時の対策を行いながら。コトトは些かズレた台詞で抵抗する。

 更にいま一人、リリスフィアは、周囲の海流を読んでそれを利用し。急加速と減速を不規則に行う事で、ザンギャバスの攻撃を凌ぎ続ける。迂闊に一撃でも受けてしまえば、厄介な猛毒を受けると判じていれば。当然の挙動であろう。更なる用心として、リリスフィアは毒を御する為に全身をオーラで覆い。万が一の被弾に備えている。
「当たらなければ、どうという事は無い……なんて程の余裕は無いからね」
 誰にとも無しに呟くマジックナイトである。

●Beast Hunt
 暴帝ザンギャバスの初撃を凌いだ後も、猟兵達の戦いは必ずしも容易な物では無かった。ザンギャバスの巨体から放たれる一撃は重く、そして意外に素早く鋭い。気を抜けば、一撃を受ける事は容易だろう。無論その一撃が、致命的な物になるであろう事もまず間違いない。
 そんな暴風にも似た攻勢を凌ぎつつ、暴帝を動き回らせ。更に呑気に泳いで回る巨鮫を、捕らえ食らう事を阻止せねばならない。とんだ過重労働だが、そこはうっかり生命の埒外に生まれてしまった事を、㥑いて貰う他は無い。
「ここからが、辻ヒーラーの本気ですっ!」
 コトトが高らかに宣言し、神聖で可愛い『聖天使猫モード』へ自身を変ずる。背中の聖痕から光の翼を生やし、手にしたメイスの威力を増強する。流石に空を飛ぶ事と同様の機動力と速度を、そのまま発揮する事はできないが。水中で機動力を発する術も身につけているコトトは、意外と器用に水中を舞う。
 ザンギャバス大帝の火力は一撃必殺クラスである故、辻(?)ヒーラーとしての能力を発揮する機会は無いが。先程収集したパターンを参考に、暴帝の周囲を舞う事で気を惹いて、無駄な行動を引き出す事に成功している。

 表側と裏側、自身を二つに分けた公明も、ザンギャバスの撹乱と妄動を誘う事に専念している。表の彼女は白手のまま、攻撃の動線を読んでいなしたり、身を躱す事で傷を負わない事を第一義として立ち回り。裏側の公明は乱刃を持つ妖刀『血吸』を縦横に振るい、負傷しないギリギリのラインで立ち回る事で傷を負わせ。負傷と再生を繰り返させる事で飢餓を誘う。
 コトトと併せて三人で、その周囲に貼り付く様に立ち回る事で。ザンギャバスは見事に、三兎を追って一兎も得られぬ間抜けに陥っていた。

 表裏二人の公明と、聖天使猫モードに変じたコトトとが、暴帝を翻弄する間。リリスフィアもまた、自身のユーベルコードを起動させる。
「唸れ雷光、轟け嵐。渦に飲まれ……全てを灰燼に帰せ!」
 リリスフィアのユーベルコード【天体破局】は、制御が難しい為に暴走する事もままあるが。こと今回に限っては、大した問題では無かった。その目的は、戦場内の海流を乱す事で、巨鮫の回游域を大きくズラし。ザンギャバスが巨鮫を容易に捕食する事を、阻止できれば充分であるからだ。
 果たして。傷を負い、それを再生する事で体内の栄養を消耗し。更に無駄な動きを繰り返す事で更に消耗した大帝は。周囲を回游していた筈の巨鮫を求めて手を伸長させたが……しかしそこには何もおらず。怒りと苛立ちと不満とを混合させて、凶猛な雄叫びを上げる。
 そこに、彼の目に入った物は。リリスフィアが掲げた『リリスの魔剣』だった。元々、愛嬌とか陽気さといった物には縁の無い双眸だが。この時、その眼の光は一際、凶悪さと憤怒とが強く宿っていた。唸る様な低い音で
「ぐ、グリモア……」
 そう呟き。次の瞬間
「グリモア……グリモア……っっ!」
 咆吼を上げ。その両手でリリスフィアに掴みかかった。
 何の因果があるかは分からないが……ザンギャバス大帝は、グリモアやそれを持つ者に、敵意を持っている節がある。少なくともこの時、暴帝は空腹も忘れ。意識の全てはリリスフィアの持つ剣に集約されていた。そして。
「があああぁっっ……!」
 リリスフィアがユーベルコードで仕掛けた罠に、自ら踏み込んでいったのである。海流を捻じ回し、竜巻と組み合わせた即興の渦だったが。綺麗に填まり込んだザンギャバスは、激しくもみくちゃにされながら手足をバタつかせ。更に余計な体力を使わされる事となる。
「ここまで感情に忠実な相手だと、『戦闘』って言うより『猛獣相手の狩猟』って感じだねー……」
 感心しているのか、呆れているのか。今ひとつ判然としない口調で、リリスフィアは独りごちた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

カイム・クローバー
ハハッ、こりゃ良いぜ。こんな戦場の真っ只中でなけりゃ、海中散歩と洒落込みたいトコだが。仕事中でね。そーいや、豚への挨拶がまだだったか。

鮫牙はオツムの方は弱いってんで、どうやら俺の【挑発】が有効に働きそうだ。言葉だけじゃ、伝わらねぇ可能性考えて、銃弾の【クイックドロウ】で煽ってやると更に効果的か。――勿論、再生能力は忘れちゃいない。気を引けりゃ十分だ。
十八番のUC豚足掴み…おっと、それ、手だったのか、悪ぃな。は充分な距離を取る事で【見切り】を活用して躱す。伸びるのは知ってるが…捕まって仲良くツーショットって訳には行かねぇだろうし。
動かせてダイエットさせることが目的だ。とにかく距離には注意するぜ。


ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆

事前に「肉体改造」を自身に施し、自身の表面をヌルヌル成分と吐き気成分で覆います。
これで掴もうとしてもヌルヌルして掴めないよね!
対策したら次はUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】で肉塊になるよ!
肉体改造はそのままに、巨大鮫にわざと肉塊の一部を齧らせて鮫の内部で増殖して爆散★肉片に吐き気成分を纏わせよう!
吐き気成分ごと肉片や肉塊をザンギャバスにも食べさせて、内側のものを全部逆流させれば飢えるよね!
UCの飢え続ける匂いを海水に混ぜてもザンギャバスを飢え続けさせられるはず!
それに、水中戦はちょっと得意だよ♪

勝利の暁には羊肉で宴会だよ☆


リーヴァルディ・カーライル
…確かに、どれだけ攻撃しても倒せないのは厄介だけど…それだけよ

…倒せなくても敵を消耗させるだけならば、幾らでも手はあるわ

…さあ、お前にも見せてあげるわ、ザンギャバス大帝
無敵の存在を封じる吸血鬼狩りの業を…

"血の翼"の推進力を利用して水中を疑似空中戦機動で動き、
第六感を頼りに敵の殺気を見切り攻撃を受け流してUC発動

全ての魔刃に武器改造を施して雷の魔力を溜め、
雷化した魔刃で敵を乱れ撃ちする雷属性攻撃で動きを封じ、
敵の周囲を電撃のオーラで防御して鮫を遠ざける

…鮫は体内を流れる微弱な電気を感知して獲物の居場所を察知するという

…ならば、超高電圧の結界でお前を覆えば鮫は危険を感じて近付いてこない…はず


シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ歓迎

島へ上陸した彼奴と対峙した事はあるが、
攻撃が届かぬのも身をもって経験済だ

此の装備の性能が良ければ其の儘持ち帰りたい所だが
生きた鮫を喰わせずして如何に飢餓状態へ持ってゆくか
巨体故に障壁を出現させるも持ち堪えられるかどうか…

(鮫に似た人工機械を創造する事も考慮したが、
食物で無くとも満腹と捉えられたら面倒だ)
安直だが挑発からの逃走劇が最も効率が良いか

敵の先制は持ち上げられた瞬間【金葩の禍】使用
敵へ目潰しし傷口抉る
怯んだ隙に敵から離れて距離取り
すぐに回復されても攻撃手を休めず
鮫より自分へ意識向けさせ誘導
自身のオウガの蒼炎込めた弾を撃ち気を惹く

本来、私が囮を務める事はせんのだが致し方あるまい



 先の三人が退くと同時に、新たに四人の猟兵が戦域に辿り着いていた。同時に戦域内の乱れた海流も元に戻るが、これは致し方ない。
 小刻みに幾つかの挙動を繰り返し、潜水服とその挙動の感覚を確かめて。カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、傲然と軽口を叩く。
「ハハッ、こりゃ良いぜ。こんな戦場の真っ只中でなけりゃ、海中散歩と洒落込みたいトコだが……仕事の最中だからな」
 海中の渦が消え、ようやく姿勢の安定を取り戻した『鮫牙』ザンギャバス大帝を一瞥し、カイムは更に言い放つ。
「そーいや、豚への挨拶がまだだったか?」
 いっそ清々しいまでの、ストレートな侮蔑の言だ。更に怒りを煽る様に、両手に構えた拳銃のトリガーガードに人差し指をかけ。殊更に余裕綽々でガンスピンを披露する。海水の抵抗が掛かっているとは思えぬ程の見事な技だったが、残念ながらザンギャバスには、その見事さは理解できない。単に馬鹿にされたと感じるのみだ。実際、カイムの挙措は。そう受け取られる為の物なのだが。

 カイムが注意を惹き付ける間、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、複数の挙動を行う事で。海中での行動の『癖』を図っていた。
「水の抵抗って、思ったより重たいのね……」
 元より、限定的な吸血鬼化の産物である『血の翼』にて空を舞う事と、同じ様に行くとは思わなかったが。身体や翼に、粘る様にかかる負荷は、予想以上に重く強い。ギリギリを狙っての機動には、注意が必要になりそうだ。

 一方、シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は、島へ上陸したザンギャバスとの交戦経験があった。特にどんな攻撃も届かない、つまり通用しない厄介さは身に染みている。
 その行動を掣肘するに、障壁を出現させるにも。その巨体と怪力で打ち破られる可能性は決して低く無い。ならばと、巨鮫に似せた自律機械を生み出す事も考えたが……『具体的な栄養分は摂取できなくとも、腹に入れば『満たされる』感覚が発生する』という可能性に考え至り。このプランも思考の上で破棄している。
(「安直だが、挑発からの逃走劇が。最も効率が良いか……」)
 結果、結論自体はこうなるも。如何にその状況に持っていくかは、個々人のアイディア次第である。

 その点では、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)の個人プランは、中々に独創的であった。
 まず自身に肉体改造を施し、表面を潤滑性が高く、嘔吐感を催す成分を込めた粘液で覆い。掴みかかられても、表面を滑らせる事で回避しようとしていたのだ。
 更にその状態で、ユーベルコード【飢餓つくと肉肉しい惨劇】の力によって自身を肉塊に変え。飢餓感を煽る匂いを撒き散らして飢餓感を煽る、というのが彼女の基本戦術である。そして、それから先のプランも構築していたが……使う事になるかは、この先の展開次第だ。

 強烈に侮蔑されたザンギャバス大帝は、その対象であるカイムを捻り潰さんと、その腕を伸ばす。その最中で腕が蛇と化し、更に伸びた蛇頭がカイムに迫る。が、カイムはそれあるを期して、間合いを慎重に取っている。彼我の距離が短いよりは、遠い方がその動線を見切りやすい。紙三重ほどの差で、蛇頭を躱したカイムは、殊更に挑発を放つ。
「十八番の、UC豚足掴みか……おっと。それ、手だったのか。悪ぃな」
 言葉の中身より、その口調に怒りを誘われ、ムキになってカイムを狙うザンギャバスだが。視界に割り込んできたシェフィーネスに、ついでとばかりに掴みかかる。
「本来、私が囮を務める事はせんのだが……致し方あるまい」
 そう嘯くと、ザンギャバスの腕をあえて躱さず、その身を掴まれるままに任せる。そして、悪食の異名に恥じず。捕まえた生き餌――勿論、シェフィーネスの事である――を口に入れようとした暴帝だったが、しかしそれを果たせなかった。
 シェフィーネスの放った海賊銃の弾丸が、ザンギャバスの眼へ、正確に撃ち込まれたのだ。更に彼のユーベルコード【金葩の禍】の力で、弾体から暴帝の眼球の内部へ棘が伸び、突き刺さる。堪らずザンギャバスは、シェフィーネスを振り落とす。
 そこへ登場したのが、自身を肉塊へ変化させたラヴィラヴァである。
「暴食の化身! お前は、飢え続けるのがお似合いだよ☆」
 言葉と共に、ザンギャバス大帝の腕を滑ってすり抜けると。戦場の外周を滑る様に動き、強烈に飢えを感じさせる匂いを撒き散らす。目を血走らせ、泳ぎ回る肉塊を躍起になって追う暴帝へ向け。更にシェフィーネスの海賊銃が唸る。

 海賊銃、或いはパイレーツピストルは、その大半がクイーン・アン・ピストルと呼ばれる形式だが。それは銃身を外して炸薬と弾丸を込め、再び銃身を填め直して扱うタイプのフリントロック式ピストルだ。前込め式の物より精密に炸薬と弾丸を込められる為、精度は高いが装弾の手間がより大きい。当然、水中での使用など考慮されている筈も無く。グリモアベースで改修を受けた。
 銃身を外して射出対象を装填するのは、常と変わらないが。炸薬と銃弾の代わりに、十五発で空になる使い捨ての魔力石を装填して、銃身を填め直す方式に変わっている。当然ながらこの魔力弾は、水中でも威力が減じる事は無い。
 どうせ魔力式の弾丸を使うなら、半永久的に使用できる物の方が効率は良いが……しかし折角パイレーツピストル、つまりクイーン・アン・ピストルを使うのだ。装弾の手間もまた、味わいの一つとして楽しむのが。旧式の装備を扱う者の心得という物だ――武器の改修を担当した者の言である。それが正しいと感じるか否かは、実用感よりむしろ、個々人の価値観の差違だろう。

「確かに、ここまで攻撃しても倒せないのは厄介だけど……でも、それだけよ」
 シェフィーネスのユーベルコードによって、弾体を撃ち込まれる都度、その棘すら取り込んで再生する大帝を見やり。リーヴァルディは呟いた。例え倒せずとも、その対象を消耗させるだけで良いのなら。手は幾らでもある。
 海水の抵抗の所為で、軽やかにとは行かないまでも。正確な見切りと異能の直感、それに精密な挙動によって、ザンギャバスの腕やら生えた動物の頭やらを躱しつつ。ユーベルコードによって魔力結晶の刃を召喚し、更にそれらに雷の魔力を帯びさせて……一気に魔刃を暴帝に向かい、撃ち放った。
「その一撃、乗っからせて貰うぜ!」
 慎重に距離を取っていたカイムが、両手の拳銃を構え直し。魔力の紫電を纏わせた水中用のフレシェット弾を連射する。一発一発は、大帝の巨体にとっては微々たる傷だが。集中的に纏めて食らえば、ダメージもそれなりに大きくなる。勿論、その傷もすぐに癒えてしまうが……そうやって栄養を消費させて飢餓を招く事こそ、元々のプランである。
 更にラヴィラヴァが、飢餓感を促す匂いを更に重ねて撒き散らし。ザンギャバスの挙動は狂人のそれに等しくなりつつあった。

 大きく見開き、赤光を孕み血走った目で、暴帝は一見悠然と回游する鮫の群れを睨み付け。そこへ腕を大きく伸ばすが……今度はシェフィーネスの海賊銃が魔力弾を続けて撃ち放ち。着弾した腕から棘が伸び、更にそこを痛めつける。
「そう簡単に、やらせはしない……」
 更に放った一発が、再度眼球へと命中し。ザンギャバスは咆吼を上げた。その巨体を魔刃が包囲し、一斉に雷撃を放った。但し、暴帝を覆う様に。
「鮫は、体内を流れる微弱な電気を感知して、獲物の居場所を察知するという。ならば、超高電圧の結界でお前を覆えば。鮫は危険を感じて近付いてこない……筈」
 リーヴァルディの備え自体は、完璧と言って良かった。しかし今回に限って言えば、過剰であったかも知れない。何せ周囲の鮫どもと来たら、外界に興味が無いのか、身の危険に対する感性が薄いのか。この後に及んで逃げようともしないのだ。近寄ってくる気配が無いだけ、マシという物であったろう。
 しかし。巨鮫どもに関しては、大きな意味を持たなかった結界だが。ザンギャバスを鮫共に近寄らせない役には立った。完全にその巨体を縛る事はできないが、行動を掣肘するには充分と言える。
(「破られる事を前提としてしまうなら。障壁を使うのも一手だったか……?」)
 その有様を眺めつつ、シェフィーネスは心中で独りごちた。

 リーヴァルディの結界を所々突き破り、腕やら何やらを振り回す暴帝の手に、何かが触れる。それを何かも確かめず、ザンギャバスは徐ろに口中へ放り込んだ。正確には放り込もうとしたが、実際に口内へ入ったのは、ごく一部分に過ぎなかった。それは口中へ投げ込まれる寸前、自身の一部を切り離して離脱し。全てを食らい付くされる事を避けたからだ。
 果たして、その『何か』とは。ラヴィラヴァが変じた肉塊であった。彼女は自身の一部をあえて喰らわせ。最期の『詰め』を行ったのだ。
 これこそ、彼女の奥の手だった。
 負傷と再生を繰り返させられて、蓄えた栄養素はほぼ底を尽き。飢餓感を散々高められ、一方で嘔吐感を催す肉片も飲み込み。二つの強烈な生理感覚は、大帝と呼ばれたザンギャバスを狂じさせた。錯乱し、のたうち回るその巨体が。やがて徐々に、変貌を遂げていく。それは四つ足の獣の様に見えた。

「終わった……?」
 誰かがそう呟いた。尤も、誰もが心中でそう呟いていた故に。誰がそれを言語化したかは、誰にも分からなかった。
 その言と共に、ザンギャバスの変貌も終わり。歪な形をした巨大な獅子が、猟兵達の眼前に顕現する。獅子は大きく仰け反り、咆吼を放つと。まるで地面を蹴る様に律動的な動きで、何処かへと去って行った。
「やれやれ。何とかあの豚野郎と、仲良くツーショットを決めずに済んだか……」
 カイムが相変わらず憎まれ口を叩くと。リーヴァルディが小さく肩を竦める。
「確かに、どう頑張っても。絵にはなりそうに無いわね」
「喰われずに済むだけ、マシではないか?」
 シェフィーネスが口を挟むと、「どうかねぇ……?」と、カイムが小さく首を傾げた。
「まーそれはそれとして!」
 元の姿を取り戻したラヴィラヴァが、勢いよく声を張り上げる。
「今日は勝利のお祝いに、羊肉で宴会だよ☆」
 この一言が、暴虐の大帝ザンギャバスとの一戦の。締めくくりと相成った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月21日


挿絵イラスト