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羅針盤戦争〜甘き死の海

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #メロディア・グリード

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「……こんなにグロテスクな海は初めて見たわね」
 グリモアを通じて目的地の様子を確認しつつ、クリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)は呆れたようにぽつりと呟く。
 同時に猟兵達の到来にも気がつくと、そちらの方へ向き直りつつ小さく咳払いをした。
「反応が遅れたわね。集合お疲れ様、今回も羅針盤戦争の案内よ。皆には七大海嘯の一人、『桜花』メロディア・グリードの分身体を潰してきてもらうわ」
 そう言葉を紡ぎつつ、クリナムは改めて目的地を投影していく。
 そこに映し出されたのは――どろりとした、チョコレートの海だ。
「吃驚したでしょう? メロディア・グリードの分身体……通称『増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)』が出現した海域が、こんなことになってしまっているの」
 チョコレートの海には数百、数千体の女の姿をしたコンキスタドール、スイート・メロディア達が蔓延っている。
 もしもこれだけの敵が一斉に動き始めたら。厭な汗が猟兵達の背に滲む。

「……更に残念なお知らせよ。この分身体、攻撃力だけで見れば『七大海嘯と同格』なの。けれど良い知らせもあるわ。防御力という面では彼女達、非常に脆いみたいなのよね」
 スイート・メロディアの身体を構成しているのは、無数のチョコレートやキャンディチョコレートやキャンディといった甘いお菓子だ。
 なので攻撃をすれば簡単に撃破することは出来るだろう。
 しかし、手早く敵を潰していかなければ危険なことに変わりはない。
「皆にはスイート・メロディアが一斉に動き出すまでの間に、出来る限り数を減らしてきて欲しいわ。数体分の攻撃なら耐えられるでしょうけど……それでも長く戦い続けるのは難しいでしょうね」
 今回の作戦は『出来る限り手早く、そして多くのスイート・メロディアを撃破すること』が重要になるだろう。
 そのために得意な作戦を考え、全力を尽くして欲しいとクリナムは付け加える。

「海もチョコレートに変質してしまっているわ。通常の船を使う場合も工夫が必要でしょうね。そして何より……甘い香りに当てられないように気をつけてちょうだいね」
 話を締めくくりつつ、クリナムは転移ゲートを開いていく。
 その先からは――濃厚な甘き死の香りが伝わってきていた。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 地獄バレンタイン。

●プレイングボーナス
 一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す。

●増殖する私の残滓『スイート・メロディア』
 七大海嘯『桜花』メロディア・グリードと同等の力を持つ分身の大群です。
 肉体はお菓子で出来ているため簡単に破壊出来ますが、攻撃力は本物のメロディア・グリードに引けを取りません。
 彼女達に集団で囲まれないよう、「出来る限り手早く、そして多くのスイート・メロディアを撃破する」ことを目指して戦って下さい。

●備考
 戦場はチョコレートの海です。
 通常の船でも進めますが、何か工夫があるといいでしょう。


 オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。

 シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
 また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。

 それでは今回もよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』

POW   :    スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニィエン・バハムート
【空中浮遊】【水上歩行】で海面に降りたち、大地震による【範囲攻撃】の【先制攻撃】を【乱れ撃ち】!
この海域ごとがっつり揺らして纏めてぶっ壊してやりますわ!

ある程度攻撃したら囲まれる前に一度離脱を図ります。行動速度を5分の1にされようと放つ【衝撃波】と電撃【属性攻撃】の速度は変わらないはず。衝撃波による加速と電撃ばら撒きでなんとか離脱してやりますの。
無理が出るまでは大地震と離脱を繰り返しますわ。削れるだけ削ってやりますの!

かつて竜王だったという『桜花』…奴を打ち破れば私は今度こそ真なる竜王に…!
というか!竜王であることよりも姫君になることを望んだってそれ絶対にカルロスのこと大好きですわよね!?




 どろりと流れるチョコレートの海に、勢いよく降り立つ影が一つ。
 その影が水面へと着地をすれば、そこから広がる衝撃波が海上に佇んでいたスイート・メロディア達を薙ぎ払った。
 甘い波に飲まれる敵の姿を見遣り、降り立った影――ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「先制攻撃は成功ですわね! この調子で海域ごとがっつり揺らして纏めてぶっ壊してやりますわ!」
 ニィエンは更に空へと飛び立ち、再び海へと勢いよく降り立つ。すると再び海が揺らぎ、また別のメロディア達が海の中へと沈んでいく。
 深海人である彼女にとって海の上を歩くことも容易いことだ。
 更に鯰としての能力も用いれば、架空の能力である大地震だって巻き起こせる。
 しかし――これだけ大暴れを始めれば、敵だってニィエンの存在には気づくだろう。
「嗚呼、何時迄も殖え続ける肉体といえど、乱暴に潰されるのは不愉快ですね」
 スイート・メロディア達は互いの肉体を切り離し、特製のキャンディを作り出す。
 そこから生じる魔力はニィエンの身体を麻痺毒のようなもので侵し始め、動きを鈍らせているようだ。

「このままだと囲まれてしまいますわね……。ですが、これなら!」
 ニィエンは身体中の力を振り絞り、再び飛翔と着地を繰り返す。
 強烈な地震『バハムート・デストラクション(本人談)』の威力は弱まっているが、それでも発生する事象には麻痺毒の影響は与えられないはずだ。
 次々に衝撃波を生み出し、それに鯰の電撃も交えつつ、ニィエンは少しずつ敵を牽制していく。
「私が繰り出すのは世界を揺るがす竜王の鉄槌。これでかつて竜王だったという『桜花』を打ち破れれば……!」
 そうすれば、自分が真なる『竜王』バハムートになれるはずだ。
 強い欲望と目標を胸に、ニィエンは海を跳ね続ける。
 そんな彼女のことをメロディア達も追いかけてきてはいるが――それ以上に気になることがあるようだ。
「竜王? その肩書を欲するのですか?」
「ええ! だって竜王って格好いいでしょう! その名を捨てたあなた達には分からないかもしれないですけれど!」
 ここまで言葉を紡ぎ、ニィエンははたと気づく。
 そういえば……『桜花』は何故竜王を辞めたのだろうと。
「というか! 竜王であることよりも姫君になることを望んだってそれ絶対にカルロスのこと大好きですわよね!?」
 びしっと指を指しながらニィエンが叫ぶ。
 少しの沈黙が流れ――。
「…………あの小さき来訪者、必ず潰しましょう」
「ええ、潰しましょう」
 地雷を踏まれたのだろうか。メロディア達は美しい微笑みを崩さないまま、全力で追いかけてきているではないか。
「やっぱり大好きなんですわねー!?」
 焦りの色は滲ませつつも、ニィエンはどんどん地震を起こしつつ後退を続けていく。
 彼女達の追いかけっこは暫く続き――何体ものメロディアが海へと沈んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
チョコレートの海はどう考えたって進みづらい。
幸いにもわたしのスーパー変態人2なら飛行能力がある。これで海上を飛行する。しかも超高速。最速速度はレベル×100km/h。このプレイング書いてる時点でレベル96だから速度9600km/h

マッハ8.5

自分で書いておいて寒気がした。なにそれすごい。

とにかく!右手に刀2本!左手に脇差2本(実際はバスタードソード・ヒーローソード)!背中に薙刀!これらを携え、超高速で戦場を縦横無尽に飛び回って片端から敵を掃滅すると。ここ飛行阻害される場所じゃなかったよね?大丈夫だよね?
敵が動き出したとしてもこんだけの高速飛行だから30cmまで近づくのは困難であろうと思いたい!




 チョコレートの海とは。物語に出てくるのならメルヘンチックかもしれないが、現実的に考えればどう考えても進みづらい。
 そんな不可思議な現象を前に、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)はううむと唸る。
 幸いなことに、埒外の力を使えば空を飛ぶことだって不可能はない。欲の海では飛行は制限されるだろうが、戦場を駆けるくらいなら不自由もないはずだ。
「うおーー!! さっさと終わらせに行くのだーー!!」
 麗刃は青白いスパークと金色のオーラを纏いつつ、スーパー変態人2へと変身する。
 そのまま勢いよく空へと飛び立ち、全身全霊でチョコレートの海上を駆け抜け始めた。
 ちなみに現在の麗刃の速度は速度9600km/h(現在レベル96)だから。マッハに換算すると8.5。空気抵抗とかそういうのはオーラが全部どうにかしてくれてる。

「……自分で気付いて寒気がしたのだ。なにそれすごい」
 改めて状況を省みていると、すぐに目の前にスイート・メロディアの大群が現れた。
 麗刃はハッとした表情で懐から武器を取り出していく。
 まず右手に刀を2本、左手にも刀(実際はバスタードソードだったりヒーローソードだったりする)を2本、背中には無理やり習わされた薙刀を。
 完全武装状態になった麗刃は勢いよくメロディアの元へと飛び込んでいく。
「戦場をチョコ塗れにしたり、身体がスイーツで出来ていたり……お前達、よく考えると結構トンチキ生物だな!?」
 ツッコミのように武器を振るえば、メロディアの身体はあっさりと崩れる。
 飛び散った破片が口の中へと飛び込めば確かに甘い。彼女達は本当にお菓子で出来ているようだ。

「トンチキ……? 一体どういう意味なのでしょう?」
「兎に角あの男を捕らえましょう」
 メロディア達は麗刃の言葉をあまり理解は出来ていないようだが、敵としてはきちんと認識しているようだ。
 彼女達はほっそりとした腕を伸ばし、甘い香りと共に死の抱擁を放ちだす。
「ふはは、その程度の速度で麗くんは捕まえられないのだ!」
 麗刃も負けじと戦場を飛び回り、抱擁を回避しつつぶんぶんと刀を振るう。
 伸ばされる腕もさくっと叩き切っているが――。
「そう、麗くんは捕まらないのだが……実は結構制御してる方も怖いのだ!!」
 マッハ8.5だからね。正直目の前の敵も残像程度に見えてるかもしれないね。
 それでも麗刃は囲まれることもなく、次々に敵を切り伏せる。
 これも一刻も早くシリアスを終わらせ、平和を齎すために――埒外の力が切れるまで、麗刃はひたすら暴れまわるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
※アルターギア:魔力で接続した電脳空間からのコマンドで動く
脚部全体がブースターユニットの空戦用魔術特化型キャバリア

あの人数が全部、すごい攻撃力を持ってるんだね…
ん、ここでできるだけ、食い止めるの

こういう時の為の、アルターギアなの
赤熱の【オーラ防御・結界術】で防御
水上・地上をホバーで動き回りながら攻撃するの(【航海術・水上歩行・空中戦・ダッシュ・残像】)

装甲の魔術回路でぼくの魔力を増幅(【継戦能力】)
UCの発動を【高速詠唱】なの
アルターギアの演算補助も使って【全力魔法】の【範囲攻撃】を【乱れ撃ち】なの
どんな姿になっても、消滅すれば意味はないよ
アルターギアが保つ限り、撃ち続けるの

ここが限界、だね…




 キャバリア『アルターギア』に搭乗しつつ、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は空を駆ける。
 見下ろす海は全てチョコレートと化しており、遠くを見遣れば無数のスイート・メロディア達。
 蠢く敵の姿を見遣りつつ、ロランは思わず固唾を呑む。
「あの人数が全部、すごい攻撃力を持ってるんだね……」
 七大海嘯と同程度の攻撃力を持った存在が、あんなに沢山。
 あれら全てが何の力も持たない人々を蹂躙するのだとしたら。そんな未来は絶対に訪れさせてはならない。
「ん、ここでできるだけ、食い止めるの」
 決意を胸に、ロランは己の魔力を電脳空間へと展開させる。
 呼応するようにアルターギアの周囲には赤熱の結界が張り巡らされ、チョコレートの海上に立とうとも機動力を失うことはない。
 脚部のブースターユニットから発せられる熱が海を撫でる度に、濃厚な甘い香りが鼻をついた。

 スイート・メロディアもロランの存在に気がつくと、お菓子で出来た身体をどろりと溶かし始めたようだ。
 彼女達と混ざった海から放たれるのは――毒を帯びた、甘い薔薇の花弁。
 少しくらいなら耐えられるだろうが、あの花弁全てが自分を包み込めばただでは済まないだろう。
 そこでロランが選択したのは、大切な友達の魔法から編み出した消滅魔術だ。
「対消滅術式展開、ターゲットロック、ヒート・コールド、ミキシング――レディ」
 機械音声のような呟きと共に魔術回路をキャバリアへと接続し、溢れる魔力を更に増幅させて。
 アルターギアに搭載された演算補助機能も使えば、通常よりも強力な魔術を放つことが出来るはずだ。
「……ぼくの魔術、受けてみて! これがぼくの、ロラン砲なの!」
 アルターギアが照準器型の魔術陣を構えれば、そこから放たれるのは熱気と冷気を織り交ぜた破壊消滅の輝きだ。
 その光は迫る毒花の花弁を撃ち落とし、同時に海に大きな穴を穿っていく。
 相手が海の中へと溶けていくなら海ごと消し飛ばしていけばいいのだ。
 ロランは友人の姿を思い浮かべつつ、彼女のように何度も消滅魔術を放っていく。
「アルターギア、ぼくと一緒に頑張って……!」
 一体でも多く、出来る限り手早く。身体の底から魔力を湧き上がらせつつ、ロランは敵へと立ち向かう。
 彼の魔力が限界に達する頃には――多くのスイート・メロディアが海から姿を消していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勘解由小路・津雲
予兆を見るかぎり、メロディア・グリード本体もこの能力を制御できていないようだな、哀れな……。手早く終わらせることが、せめてもの情けか。

【作戦】
チョコレートやキャンディで出来ているというのなら、まずは氷結の【属性攻撃】を乗せた【衝撃波】を広範囲に放ち、相手を固めてしまおう。こうすればこちらの攻撃を軽減する融解体の効果も弱められるはず。

その上で【歳刑神招来】を使用。通常なら刺突攻撃は効果が薄そうだが、凍らせたチョコレートならば砕くのはたやすいはず。さらに【二回攻撃】で手数を増やし、一瞬で終わらせるぞ!

海も、どろどろの状態なら船の動きを取られそうだが、凍らせて砕けば、ただの氷塊とそうかわるまい。




 猟兵の力で目にした予兆を思い返し、勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は小さく息を吐く。
 どうやらメロディア・グリードは己の能力を制御出来ていないようで、彼女の分身体は蠢きながら海を満たしている。
 その光景に対し津雲が抱いたのは――憐憫の情だった。
「哀れな……」
 寂しげな呟きと共に、想いをしっかりと固めて。
 手早く終わらせてやることが、せめてもの情けだろうか。『桜花』の本拠地に乗り込むために、少しでも海を切り拓いていかなくては。
 小さな船に乗り込みつつ、津雲はスイート・メロディアの元を目指して進み続ける。
 メロディア達もこちらへ向かう敵に気がつけば、どろりと身体を海の中へと溶かし始めたようだ。

「成程、確かに菓子の海ならば動きづらいな」
 船のゆっくりとした歩みを確認し、津雲は『玄武の錫杖』を構える。
 チョコレートと化した海も、その中にどろどろに溶けた敵も厄介ではあるのだが――その性質は逆に活かすことも出来るだろう。
 津雲が錫杖に籠めたのは氷結の術式だ。それを海へと放り込めば、南極の風のような衝撃波が周囲を撫でる。
 広がる冷気は海を固め、そしてこちらへ向かってくるメロディアをも凍らせていく。
「海も分身体も、こうしてしまえば扱いやすいな。ならば……」
 次に津雲が取り出したのは強い呪力の籠められた霊符だった。
 氷結の術式は効いているが、敵は強敵。その効力もいつまで聞くかは分からない。だからこそ、手早く敵を破壊する必要がある。
 そのために力を借りるのは八将神が一柱、刑罰を司る神が相応しい。
「歳刑神の名において、汝を裁かん。急急如律令!」
 呼びかけに応じ、津雲の周囲に無数の槍や鉾が姿を現す。
 その一つ一つに強力な破魔の力が宿り、津雲の理に適った行動――悪しき者を罰し、情けを以て倒すための戦いを助ける手足と変わる。
「凍らせて砕けば、ただの氷塊とそうかわるまい。ここは一瞬で終わらせるぞ!」
 津雲が霊符に力を籠めれば、呼応するように槍や鉾が海へ目がけて降り注ぐ。
 その刃は凍りついたメロディアごと打ち砕き、跡形もなく骸の海へと消し去っていくだろう。

 暫くすれば、津雲の周囲にあったチョコレートの海はすっかり抉り取られていった。
 しかし――この海以外でも、メロディア・グリードはやはり増殖を続けているだろう。
「……道は長いな。だからこそ急がなければ」
 決意を新たに、津雲は割れた海を進んでいく。凍りついた甘い海からは、津雲を導くような香りが漂っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ・連携・歓迎デース!!

オー! 美味しそうデスネー!
自己再生するチョコレート……生け捕りできるなら最高なのデスガ。
ダメデスヨネー。

数の暴力でありますが、こうも露骨な弱点があるなら試してみマショー。
放火しマース。

水上用滑走靴で滑走しながら、「六式武装展開、炎の番」火炎放射器による火力で溶かして参りマース!
直撃しなくても余波の熱を受ければ、チョコもキャンディも溶けマスヨネー?

……無力化した分体、もったいないので『格納型メイド用キッチン』の冷蔵庫に保管して持って帰ってもよいデスカ?
あと味見してみたいデース! お願いしマース!
(懇願したり収納している間も、淡々と【焼却】して回りマース)




「オー! 美味しそうデスネー!」
 漂う甘い香りを嗅ぎながら、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はチョコレートの海を進む。
 足元にはしっかり水上用滑走靴を装着し、普段と違った海を楽しげにすいすい滑れば気分も上がる。
 敵は自己再生をし続けるお菓子の大群らしい。生け捕りに出来れば無限にお菓子が食べられるだろうが――いや、相手は強敵。無理は禁物だ。
「無限に再生されたら食べきれないかもしれないデスネー……とと、見えてきマシタ!」
 進行ルートの前方に、無数のスイート・メロディアが蠢くのを視認し、バルタンは戦闘の準備を整える。
 生け捕りが無理だとしても、それでもやりたいことは沢山あるのだ。
「数の暴力でありますが、こうも露骨な弱点があるなら試してみマショー。というコトデ……」
 がしゃん。重い音と共に、バルタンが体内から取り出したのは無骨な火炎放射器だ。
 そこから溢れる火焔がチョコレートの海を溶かし、進むべき道を切り拓く。
「放火しマース。六式武装展開、炎の番! マジヤベェデースよ?」
 テンションを更に高めつつ、バルタンは更にすいすい進む。
 それからスイート・メロディアの悲鳴が聞こえてくるまで、然程時間はかからなかった。

「さあ、どんどん焼いていきマスヨー!」
 バルタンはひたすらに炎を放ち、次々に敵を無力化していく。
 相手が甘い芳香と共に死の抱擁を放ってこようが、腕が自分に触れるより早く燃やしてしまえばいいのだ。
 チョコレートだってキャンディだって炎に炙られればどろりと溶ける。熱された分身体の余熱すら他の敵を溶かす力になるのだ。
「ああ、私の肉体が……!」
「いい感じに溶けてマスネ。味見してみたいデース! お願いしマース!」
 目の前に無力化した分身体がいれば、少しだけ舐めてみて。
 流石強力なコンキスタドール、その味も十分に甘くて美味しい。やっぱりこのまま骸の海に流してしまうのは勿体ないだろうか。
「……ちょっとくらい持って帰ってもよいデスカ? ふふん、ワタシはちゃーんとこういう時に使える道具も持っているのデス!」
 火炎放射器とは別の部分を展開しつつ、バルタンが取り出すのは格納型メイド用キッチンだ。
 冷蔵庫にしっかりメロディアの破片を格納しつつ、バルタンは更に海を進む。
 少女の様子こそ楽しげだが、炎は淡々と全てを燃やしていくだろう。
 何故ならバルタンはプロなのだ。彼女は自分の楽しみも確保しつつ、しっかりと仕事を果たしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
……海洋汚染にも程がありますねこれ

UCで海に召喚した影手の内、数本を使って海上での足場とする
目立たぬように存在感を消しつつ
不意打ち等で囲まれぬように移動は細かく素早く

そして炎(属性攻撃)を纏ったオーラの防壁で自身の周囲を纏う
この熱で相手が放ってきたチョコを溶かしたり
お菓子の躰である敵自体を溶かすこともできるかもしれないですし
チョコの海は……溶かすべきか固めるべきか迷いますねこれ
一応私は船で進行する方の為に溶かしておきますね

で、足場に使ったもの以外の影手で敵をどんどん呑み込んでいきます
数は膨大なのである程度の蹂躙速度はあるかと
私自身も霊障を周囲にぶっ放してお菓子の敵を壊していきますか




 どろりと流れる海の中から生える、無数の痩せぎすの影手。
 その内の数本を足場にしつつ、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は甘く香る道を行く。
 ギリギリのところまで気配は押し殺し、そして不意を打たれないように気をつけて。
 少しでも周囲に目を遣れば――その光景は決して美しいとは言えなかった。
 チョコレートも適量ならば美味しいし、愛らしく飾られているものだってある。けれど目の前に広がる光景は、まるで泥の海のようで。
「……海洋汚染にも程がありますねこれ」
 呆れるように遠くへ視線を投げかければ、そこには蠢く無数の女。
 その全てを壊すべく、スキアファールが纏うのは真っ赤な炎だ。
 放つ輝きが己の影をより強くしていくのを感じつつ、影人間の青年は少しだけ首を傾げた。
「この海は……どうせなら溶かしておきましょうか。船で進行する方もいるでしょうし」
 決めた方針通りに炎で海ごと溶かしつつ、スキアファールは前進を続けていく。
 彼に付き従う影手達が、甘い死の泥から生える蓮の華のようだった。

「嗚呼、いけません。私の肉体が溶けてしまう」
「このままではあの男の助けになれぬのです。猟兵を止めなければなりません」
 迫る熱気を感じ、スイート・メロディア達も戦う姿勢を取ったようだ。
 彼女達の身体はどろりと海へ溶け、同時に甘い毒薔薇がスキアファール目がけて飛来してくる。
 けれど彼の周囲には既に炎の防壁が展開されていた。毒がスキアファールを蝕むより早く、花弁はずるりと溶けて海へと沈む。
「敵の数は多いですが……こちらの手数も多いですからね。ええ、文字通り」
 海を侵すのは激しい炎だけではなかった。
 スキアファールの周囲に展開された影手達はチョコレートの海を掴むと、そのまま跡形もなく何処かへと呑み込んでいく。
 海そのものも、海に溶けたメロディアも。
 逃げ去ろうとする敵がいるのならば、スキアファールが自ら霊障を放って打ち砕く。お菓子で出来た女ならば壊すのだって容易いことだ。

 連れ去られた命を糧に、影手は更に咲き誇る。
 それだけではない。泥の中からは朱殷の蓮華も咲き乱れているようだ。
 そんな光景を見遣りつつ、スキアファールは再び呟きを零す。
「……これで少しは、この海も綺麗になるといいのですけど」
 どこか不気味で、だけど幻想的な光景の中央で――影の青年は静かに蹂躙を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
チョコレートの海自体は美味しそうなんだけどなぁ
持って帰りたかったなぁ

メロディアも一緒に凍るかもだけど
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】
チョコは冷やせば固まるからね
海自体を凍結させながら足場に
体温で溶かさないよう★靴には風魔法を宿して

逆に熱に弱いから
【聞き耳】で敵のわずかな音にも反応出来るようにしつつ
【ダンス】の要領でくるくる回りながら
炎魔法の【範囲攻撃】で足場以外の全方位を熱してみる
溶けたチョコも焼き過ぎれば焦げるからね
薔薇の花も当たる前に溶かしちゃえ
念のために【オーラ防御】はしておくけど

熱で炙り出しておおよその位置がわかれば
【指定UC】で【破魔】を宿した炎の鳥を召喚
個々で突撃させる物量作戦




 広がるチョコレートの海を見下ろしつつ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は淡桃の翼で空を舞う。
 漂う香りからしてチョコレート自体は美味しそうだ。持って帰れないことを残念に思いつつ、澪は己の魔力を高めていく。
「メロディアも一緒に凍るかもだけど……えいっ!」
 最初に放ったのは氷の魔術だ。
 素早く呪文を唱え、メロディア達が本格的に動くより早く術を展開。
 どろりと流れる海も冷たい魔力に晒されれば、あっという間に固まっていく。
 けれど全てのメロディアの動きを止められた訳ではない。残った分身体は身体を溶かし、海の中へと潜り込んでいるようだ。
 靴を風の魔力で防護しつつ、そっとチョコの海へと降り立って。空にいた時よりも強い香りが鼻を擽るようだった。

「ちゃんと魔法で固まったね。それなら……こっちも大丈夫、かな?」
 周囲の様子に警戒しつつ、澪は次の魔術を発動していく。
 踊るようにくるりと回り、放つのは激しい炎だ。
 足場にしていつ部分だけは溶かさないように注意しつつ、次々炎を展開すれば――海の中に溶けたメロディア達も一緒に燃えているようだ。
 しかし彼女達もただでは死なない。甘い毒薔薇の花弁を生み出し、澪の方へとけしかけてきているようだ。
「溶けたチョコも焼き過ぎれば焦げるからね。それはあなた達も、チョコの花も一緒だよね」
 身を守るように、澪は更に舞い踊りつつ炎を展開していく。
 毒薔薇が彼の身を侵すことはなく、ただ甘くて少しだけ苦い香りが海の上を漂っていた。

 澪が舞い踊れば踊るほど、炎の勢いは増していく。
 そうすればチョコの海もどんどん溶けて――混ざり合っていたはずの、メロディアの姿も剥き出しになり始めていた。
 しかし、改めて海の中を覗き込めば敵の数に圧倒されてしまいそうだ。
「その表情、驚いていますね」
「私の肉体は何時迄も殖え続ける。これを阻止できるのは大天使の肉のみでしょう」
 囁かれる同じ声色。ちょっとだけ恐ろしいけれど――澪はそれでも勇気を振り絞る。
「そんなことはない。僕らは増え続けるあなたをきっと倒し続けるよ。そのためにも……まずはこの海を綺麗にさせてもらうね!」
 想いを籠めて、澪は聖者の力を増幅させていく。
 その輝きは煌めく炎の鳥へと変わり、チョコレートの海を勢いよく飛翔する。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
 澪の祈りに応えるように、鳥達は次々に炙り出されたメロディアを焦がしていくだろう。
 この戦いをきっと終わらせる。そんな祈りを示すように、甘い死の海は少しずつ浄化されていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…何故にチョコ?

…竜王がどうとか言っていた気がするけど、
何故にチョコ?海に浮かべるなんて勿体無い

…いや、まあ食べないけど…

太陽の光を"影精霊装"の魔力で闇に紛れて遮断して、
船全体を"掃除の呪詛"のオーラで防御してチョコの海を浄化して進み、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して早業のUC発動

…今回、必要なのは火力よりも手数ね

…黒騎士長弓隊。一斉射、はじめ

五百体の黒騎士霊を召喚して黒炎の魔力を溜め武器改造
黒剣を長弓に変化させて黒炎矢を乱れ撃つ闇属性攻撃で、
敵陣をなぎ払い海を切り込み進撃するわ

…多数の敵を雑に討つなら火攻めが一番ね
幸い、チョコは油が多いと聞いた事があるし、良く燃える…はず




「……何故にチョコ?」
 広がる甘い死の海を見遣り、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が真っ先に零したのがこの一言だった。
 竜王がどうとか言っていたけれど。それとチョコレートに何の関係があるのだろう?
 しかもそれで海を埋め尽くしてしまうとは。どんなに美味しいチョコレートだろうと、こうなってしまっては口に運ぶ気も湧いてこない。
「……いや、まあ食べないけど……」
 気を取り直して敵と戦おう。
 リーヴァルディは首巻き布にしていた『影精霊装』を外し、そこに魔力を宿していく。
 霊装に袖を通せば、闇の魔力が輝く太陽から少女の姿を隠してくれる。
 借りてきた船には『掃除の呪詛』を施して、進み道行きを術式に綺麗にしてもらう。
 リーヴァルディが通る道に残るのはどろりと溶けたチョコレートではなく、元々この地にあった美しい海だ。

 順調に船を進めていけば、スイート・メロディアの姿も見えてくる。
 彼女達は自らの身体を砕き、麻痺毒のキャンディを生み出しているようだ。
 このまま敵が犇めく海域に突っ込むのは危険だろう。
「……今回、必要なのは火力よりも手数ね」
 リーヴァルディは己に宿る吸血鬼の力を解放すると、漂う魔性の香気で麻痺毒の力を打ち消していく。
 メロディア達もその香りには気付いたが――それでも動きはリーヴァルディの方が早い。
「……限定解放。来たれ、戦場に倒れし騎士の魂よ」
 少女の呼びかけに応じ、異世界の海に降り立つのは五百体もの黒騎士霊だ。
 特に今回多く呼び出されたのは長弓を構えた長弓隊だった。敵の数は多く、戦場は広くとも――彼らならば、周囲一帯を制圧出来る。
「……黒騎士長弓隊。一斉射、はじめ」
 淡々としたリーヴァルディの言葉に従い、黒騎士達は一斉に矢を放つ。
 麻痺毒が海の上を漂っていても、弓の速さは変わらないだろう。次々に海の上へと黒炎が降りかかれば、それが全てを燃やしていく。
 リーヴァルディも残りの黒騎士達と従え、共に戦場を駆け巡りだした。
「……多数の敵を雑に討つなら火攻めが一番ね。チョコレートなら、よく燃えるでしょう」
 『過去を刻むもの』を振り回し、次々に敵を切り刻むリーヴァルディ。
 黒炎に包まれつつ進軍し、呪われし騎士達を従える彼女にとって――ただの菓子の塊などは、障害にすらならないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
……匂いが甘ったるいぜ
ニューロンの栄養補給には良さそうだが、視覚も嗅覚も鬱陶しい
何よりこの海に大量に潜んでるのも気色が悪い
面倒だが…駆除作業をしっかりやらねえといけねえな
少々荒っぽくいかせてもらおう

俺は船の上で処理する
──セット、『Saturation Suicide』
水中潜航型ドローンを向かわせる
水中爆発だって、脆い身体相手なら良いキルスコアを叩き出すだろう
とにもかくにも数を減らさなきゃいけねぇ──自爆による一斉【爆撃】だ
数にしておよそ500程度…爆発で複数体を巻き込めれば、500以上は殺せる
どんだけの数がいるか知らんが、十分だろうよ
テメェは甘い海に沈んでるんだろうが…俺の手管は、甘くねえぞ




「……匂いが甘ったるいぜ」
 むせ返るようなチョコレートの香りがヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)の鼻をつく。
 甘味だって適量ならばニューロンを活性化してくれるだろうが、これだけの刺激が一度に来るとパンクしてしまいそうだ。
 視覚も嗅覚もフル稼働、おまけにこの海のあらゆる場所に潜む敵に身体中のセンサーが警告を鳴らす。
 正直に言って気味が悪い。これだけの敵を駆逐しなければならないというのも面倒だ。
「しょうがねえ、少々荒っぽくいかせてもらおう」
 借りてきた船の甲板に立ち、ヴィクティムは広がる海へと視線を投げる。
 青い瞳が捉えるのは蠢くスイート・メロディア達。その数に圧倒されてしまいそうだが、それでも勝機は見えている。

「――セット、『Saturation Suicide』。散開、対象に向かって前進せよ!」
 電脳空間を投射して、そこから飛び出すのは無数の水中潜航型ドローンだ。
 ドローン達は次々にチョコレートの海へと沈み、その中をひたすらに駆け巡る。
 勿論メロディア達も異変に気付き、毒の花弁で抵抗してきているようだが――。
「オーライ、そのままそのまま……」
 ヴィクティムは指示を出すことを止めなかった。
 デバイスをフル稼働させ、適切なタイミングを見極めて。薔薇の花弁が多少ドローンを抉ったとしても、最終的な結果に変わりはない。
 全てのドローンが目的地へと辿り着いたのを確認し、ヴィクティムは最後の指示を飛ばす。
「――Ignition」
 次の瞬間、甘い毒の海が弾けた。
 ドローンに搭載された爆弾が全て起爆し、一気に海を焼き払ったのだ。
 チョコレートで出来た海はよく燃えて、お菓子で出来たメロディア達も爆ぜればただの炭へと変わる。
 散開したドローンの数はおよそ500程度だが、一つのドローンで複数のメロディアを巻き込めば、燃え尽きた数はそれよりずっと多いだろう。

 改めて電脳空間を確認し、ヴィクティムはドローン達の信号を探る。
 その全てはブラックアウトしており、周囲に生命反応も残っていない。
 ヴィクティムの周囲に広がるのは、激しい炎とただの黒焦げた塊だけだ。
「どんだけの数がいるか知らんが、十分だろうよ。テメェは甘い海に沈んでたんだろうが……俺の手管は、甘くねえぞ」
 飽和爆撃、完了。作戦が無事に遂行されたことを確認し、ヴィクティムは少しだけ息を吐く。
 そして吸い込んだ空気からは――焦げた匂いと、どこからか漂う潮の香りが伝わってきていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篠突・ササメ
綺麗なご婦人に近寄れないなんて寂しいね

生憎空は飛べないから船の一隻に間借りさせて貰おう
雨水の塊で船を押して推進力の手助けにするよ

これほどのご婦人を相手にするのは骨だから、僕も全力で頑張るために準備を整えよう
無月を開き妖力で出来る限りの雨雲を集めて、戦場を雨天に変えるよ〈天候操作〉
ただの小雨ならご婦人達の足を止める程度かもしれないけれど、招くのは猛る海の嵐だ
それを基盤にした豪雨は広く重く熱を奪い、お菓子の身体を押し流すだろう。つまりはUCの補強だよ
どこまでも彼女たちの頭上を覆う重い嵐になったなら、さあ、押し流そう

水溜まりの上なら貧弱な僕も多少戦えるからね
雨水を操って、残った君を迎え撃つよ




 予兆で見た『桜花』の婦人は美しかった。
 そんな彼女に近寄れないのは寂しいね。そんなことを思いつつ、篠突・ササメ(誘い水・f30166)は波に揺られる。
 借りてきた船を雨水の塊で押し流していけば、チョコレートの海だって問題なく進むことが出来た。
 自分の雨男としての力が役立つのならば嬉しいことだ。周囲に漂う禍つ雨の雲を眺めつつつ、ササメは海の先を見遣る。
「……ああ、見えてきた」
 少し先を眺めればスイート・メロディアの姿も見える。
 実物は予兆で見るよりも美しく――けれど、それ以上に気になるのはご婦人の数だ。
 何百、何千人ものメロディアを前にして、ササメは軽く息を吐く。
「これは僕も全力で頑張らないといけないね。それならしっかりと準備を整えよう」
 愛用の番傘『無月』を開き、空いた穴から空を見て。その穴を埋め尽くすように、ササメは次々と雨雲を集めていく。
 暫くすれば――冷たい雨が、甘い死の海へと降り注ぎ始めた。

 ざあざあと降る雨に濡れ、メロディア達は顔を顰めている様子。
「雨に濡れてしまっては、増殖する肉体も濡れてしまいますね」
「さっきまで晴れていたのに、どういうことなのでしょう?」
 彼女達が空へと視線を向けてみれば、雨雲は一定の方向から流れてきているようだ。
 その先に立っているのは――勿論ササメだった。
「濡れ鼠だね、ごめんね」
 申し訳なさそうな笑みを浮かべつつ、ササメは更に妖力を高めていく。
 招かれるのはただの雨から激しい海の嵐に変わり、豪雨は生命から熱源を奪う。
 甘味で構成されているとはいえ、メロディア達も命であることに変わりはない。春驟雨が降れば降るほど、彼女達の身体は縮んでいるようだ。

 激しい雨から逃れるべく、メロディア達は身体を海の中へと溶かしていくが――。
「この状態ならもっとやりやすいかな……嵐も雲も十分だ。さあ、押し流そう」
 ササメの声色は穏やかだけど、彼の周囲で巻き起こる事象は何よりも激しく狂い猛る。
 強い雨と風がチョコレートの海を押し流したかと思えば、その力はメロディアから更に熱を奪っていく。
 ササメ自身も大きな水たまりへと降り立てば、雨水と共に悪しき者を迎え撃っていた。
「あめあめふれふれ……本当は、青空の下でゆっくり話せたら良かったんだけどね」
 ぽつりと零した寂しげな呟きは、風の音に紛れていく。
 そして降りしきる雨が全てを押し流していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
うーん、桜花。お前あまり趣味は良くないですね
チョコの海も、あと男の趣味も

挑発のつもりのない挑発をしつつ、【対征服者超振動突撃衝角艦隊】を召喚し、そのうちの一隻に乗り込む
どんな環境であろうと、この船で進めない海はありません
しかもこんなにいっぱいの数。轢き放題ですね!!

狙う必要や、考える必要すらないですね
とにかく全ての船で海上を爆走
船自体で、チェーンソーで、海中から、空中を飛行して、踏み潰すように、道ばたの虫のように、淡々と、楽しく、蹂躙です

あははは!桜花!!この程度なら、幾人も殺してきたお前の部下達の方がまだ歯ごたえがありましたよ!!?




 目的の海域に着いて早々、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は呆れた表情で首を傾げる。
「うーん、桜花。お前あまり趣味は良くないですね」
 開口一番降り注いだ言葉に、スイート・メロディアは勿論ムッとした表情を返した。
「出会い頭にどういうつもりなのでしょうか?」
「いえ、猟兵の言葉なぞ気にする必要はありません。私達は為すべきことを為すだけです」
 怒る個体もいれば、宥める個体もいる。同じ顔の人達が話し合ってるのは気持ち悪いなぁと思いつつ、シノギは更に言葉を零した。
「いいえ、悪趣味だと思いますよ。チョコの海も、あと男の趣味も」
 シノギの言葉が響いた直後、沈黙が海を支配した。
 そして次の瞬間には――怒りの表情を顕にしたメロディア達が、一斉に融解体へと変身し襲い来る!
「おや、何だかお怒りの様子ですね。そちらから来て下さるのなら助かりますが……」
 マイペースな様子を崩さないまま、シノギは無数の海賊船を周囲へと呼び寄せる。
 その内の一隻にひらりと飛び乗り、突き進むは甘き死の海だ。

「チョコレート塗れだろうと海は海、ここは私の独壇場です! しかもこれだけいっぱいの敵……轢き放題ですね!!」
 ここまで来れば深いことを考える必要もない。
 シノギは引き連れた海賊船に指示を飛ばし、その船首に備え付けられた特大チェーンソーを起動していく。
 全ての船は思うがままに海を、空を、ひたすらに飛んで跳ねて突き進む。
 例えメロディアが融解体へと化していても、溶けた海ごと抉って飛ばしていけば何も問題はなかった。
「さあ行きますよ! 駆けろッ!! 飛べッ!!! 跡形も残さずに、全てを蹂躙してください!!!」
 船が敵を轢き潰した感触を味わう度に、シノギの笑顔は眩いものへと変わっていく。
 特大チェーンソーが甘いお菓子の身体を切り裂く音を楽しみ、漂う濃厚な香りもしっかりと味わって。
 ああ、最高だ。この海では好きなだけ蹂躙することが出来る。
 ある時は激しくじっくりと、ある時は道端の虫を潰すように淡々と。
 飛ばされる毒薔薇の花弁すら打ち払いつつ、シノギは嗤う。
「あははは! 桜花!! この程度なら、幾人も殺してきたお前の部下達の方がまだ歯ごたえがありましたよ!!?」
 せめて本体はもっと楽しませてくれますように。
 そんなことを思いつつも、今一時の蹂躙をしっかりと堪能するシノギだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
茶色い海なんてなんだか不気味だね……
綺麗な海を取り戻すためにもまずはメロディアの分身体を倒さなくちゃ!

こんな海じゃ移動もままならないし、何か手を考えなきゃね
うーん、そうだ!
キミの出番だよ!現れろ!【SPキャンドール・フラン】!
フランには亡霊たちを操って船を後ろから押してもらったり、オールで船の進行をサポートしてもらうようにお願い

そしてメロディアを発見次第、戦闘に移るよ
『トリックスター』を複数投擲してメロディアたちを攻撃
体がお菓子で出来ているということは熱に弱いかもしれない
事前に油の入った樽を用意しておき、投擲武器に油を付着させて
相手に命中した所でフランの炎をばら撒き引火、炎上させる作戦でいくよ




 美味しいチョコレートは夢があるけれど、チョコ塗れの海はお世辞にも綺麗だとは言えない。
 不気味な光景を前に、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は険しい表情を浮かべていた。
「綺麗な海を取り戻すためにもまずはメロディアの分身体を倒さなくちゃ!」
 えいえいおー、と気合を入れて、最初に考えるべきは海を進む方法だ。
 普通に船を進めてもいいけれど、もっとスマートな方法はないだろうか。
「……うーん、そうだ!」
 閃きと共にフェルトが取り出したのは一枚のカードだった。
 それを愛用のソリッドディスクにセットしたなら、腕を高く掲げ――。
「キミの出番だよ! 現れろ! 【SPキャンドール・フラン】!」
 召喚に応じ参上したのは愛らしい幽霊の霊『フラン』と亡霊達だ。
「ボクの可愛いアシスタント、一緒に海を進んでくれないかな? キミの力が必要なんだ!」
 フランはフェルトの言葉に頷き、亡霊を船の後方へと配置していく。
 亡霊達が力を合わせて船を押せば、チョコレートの海だろうとスイスイ進むことが出来そうだ。
 フラン自身もオールで必死に船を漕ぎ、フェルトの旅路を手伝ってくれている。
「それじゃあ出発進行! 海を取り戻しに行くよ!」
 勢いよく海を突き進んでいけば、スイート・メロディアが犇めく姿も見えてくる。
 ここから先は激しい戦いが始まるだろう。その準備のためにフェルトが確認したのは――幾つもの樽だった。

 メロディア達はフェルトの姿に気がつくと、すぐに身体を溶かして海の中へと潜伏し始めた。
「逃さないよ!」
 そんな敵へと向け、フェルトが投げつけたのは愛用のダガー『トリックスター』だ。
 装飾が太陽の光を受けて煌めけば、刃は次々に海を裂く。
「嗚呼、無駄なのです。私達の肉体に、そんな小さな刃で立ち向かおうとは……」
「ううん、ボクが用意したのは武器だけじゃないよ!」
 フェルトの言葉を受け、メロディア達が小さな違和感に気付き始める。
 自分達を切り裂いた刃が輝いているのは――本当に、派手な装飾が施されているからだろうか?
 いや、違う。その煌めきの正体はトリックスターに塗布された油。フェルトが持ち込んだ樽の正体は油だったのだ。
「フラン、後はお願い!」
 すかさず亡霊の少女が甲板の上に立ち、チョコレートの海を包み込むように炎を放つ。
 火の手は凄まじい勢いで上がり、あっという間にメロディア達も燃やし尽くしていくだろう。
「作戦成功だね! やっぱり熱に弱かったんだ!」
 お菓子で出来た敵ならばきっと溶かせるはず。そう信じ、確りと作戦を立てたのが勝利の鍵だろう。
 手応えを感じ笑うフェルトの笑顔は、刃を煌めかせていた太陽よりも眩しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中村・裕美
「……チョコも好きだけど……胸焼けしそうね」
ニキビとかも気になっちゃうし……気にしても、見られて困る相手がいるわけじゃないけど

『水中用UFO』でチョコの中を潜って移動。視界が悪くても電脳魔術で周囲を【ハッキング】【情報収集】して進む。チョコの中なら【目立たない】しね

「……一気に……殲滅するわ」
敵を見つけたら【エレクトロレギオン】を大量召喚して一斉攻撃。相手の攻撃力が高いなら、防御度外視で数攻めする

「……そろそろ……潮時かしら?」
こちらの位置がバレて攻撃されそうになったら撤退。毒のチョコには【毒耐性】である程度耐えられそうだけど、無理はしないでおく




 目的の海域に辿り着いた瞬間、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は思わず五感全てをチョコレートに刺激されるような錯覚に陥った。
「……チョコも好きだけど……胸焼けしそうね」
 これだけの量のチョコレート、もし食べてしまったらその後が恐ろしい。
 ニキビだって酷いことになるだろうし、当然カロリーだって気にかかる。
 だからといって、肌荒れしようと見られて困る相手がいる訳ではないのだけれど。
「……メロディア・グリードには私の気持ち、きっと分からないでしょうね……」
 ぼやく言葉を零しつつ、裕美は搭乗した『潜水用UFO』のハンドルを握る。
 嘗てプルトン人から奪い取ったこのUFO、改造を施したこの機体ならチョコレートの海だろうと問題なく進めるだろう。
 視界は電脳魔術で補えばいいし、狙うべき敵はそこら中に漂っているのだから。
「メロディア・グリードも……カルロスがどうとか言ってたわね……つまりリア充よ、爆破してやるわ……!」
 黒い決意と共に、裕美はチョコレートの海へと潜っていく。

 敵に近づかれないよう、大群と少し離れた位置まで泳いでいけば準備は完了。
 裕美は埒外の力を用い、周囲にエレクトロレギオンを呼び出していく。
「……一気に……殲滅するわ」
 レギオン達は悠々と海を泳いでいき、手当り次第にスイート・メロディア達へと攻撃を仕掛けていく!
 相手が融解体に変化して海の中へと逃げていっても、攻撃の起点も海の中にあるのだ。
 生半可な逃亡では攻撃を振り切ることは難しい。
 レギオン達はどんどん海を泳ぎ、次々にメロディア達を爆発四散されていく。
 チョコの海の中にいても、爆破の度に漂う香ばしい菓子の香りがなんだか不思議だ。
「……それにしても、何でお菓子だったのかしら……?」
 オブリビオンの考えることはよく分からないものだ。
 結局爆破させてしまうし、何か事情があろうとも関係のないことなのだけれど。

 ある程度攻撃を続けていけば、敵の数もかなり減ってきているようだ。
 しかし一箇所に留まっていてはこちらの居場所もバレてしまうだろう。
 裕美はUFOを操作して、適度に攻撃起点を変えていく。
「……そろそろ……潮時かしら?」
 レギオン達のパワーが限界に達し、敵の攻撃も展開され始めたらあとは帰るだけ。
「……これは私からのサービスよ……。バレンタインだったものね……リア充は爆発すればいいのよ……」
 最後におまけで残ったレギオン達を集めたら、大爆発を巻き起こして。
 巻き上がる黒煙をバックにしつつ、裕美は帰還していくのだった。


 猟兵達の活躍により、かなりの数のスイート・メロディアを殲滅することが出来た。
 今回の戦いが起こった海域は、じきに本来の姿を取り戻すだろう。
 そして――『桜花』への道行きも、着実に開かれていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月16日


挿絵イラスト