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銀河帝国攻略戦⑤~リブート、ナイチンゲール

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #小夜鳴鳥(ナイチンゲール)号

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#銀河帝国攻略戦
#小夜鳴鳥(ナイチンゲール)号


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●スペースシップワールド
 宙域名L-70041。
 大型交易船にて補給を終え、まさに今飛び立たんとする船があり。
 いささか経年劣化を感じさせる船体に、色鮮やかに刻まれた小夜啼鳥のエンブレム。
 船の名もまさしく同じく。〈ナイチンゲール号〉と呼ばれていた。

「積み荷もよし。修理完了、完璧だな!」
 うら若いメカニックらしきスペースノイドの男が言った。
 その横に立つ、さらに年下と思しき青年は、シリアスな表情で各部の点検結果画面を睨んでいる。
「どうした新船長、緊張してんのか?」
 名無しのメカニックに小突かれ、青年ははっと我に返り頭をかいた。
「いやあ、ちゃんと自分の目で判断しないといけない気がしてさ……」
「なんだそりゃ? まあこの船、中古だしなあ。気をつけるに越したこたないか」

 いかにも、この船は相当古い型であり、彼らはそれを中古で購入した。
 ……彼らは知らない。この船にまつわる、オブリビオンの陰謀を。
 それを打ち倒した、猟兵たちの活躍を。
 そんな彼らが、解放軍再結成の報に応じ、参戦を決めたのは運命的と言える。
 準備は万端。若き船乗りたちはみな、噂の猟兵と肩を並べることを楽しみにしていた。

 ……だが敵は、そんな青二才たちの希望を待ってはくれない。
『緊急警告。緊急警告。当艦に銀河帝国の戦闘部隊が接近中』
「なんだって!?」
 鳴り響くレッドアラートに、誰かが声をあげた。どよめきが広がる。
『総員、速やかに持ち場につき、状況に対処せよ。
 繰り返す、銀河帝国所属の戦闘部隊が……』
 あるものはうろたえ、あるものは恐怖し、あるものは無謀に笑った。
 若き船乗りたちの視線が、船長となったばかりの青年に集まる。

 青年は安心させるように頷いた。
 だがその足は、震えていた。

●グリモアベース
「敵が動き出したわ」
 グリモア猟兵、白鐘・耀の説明は端的だった。

 ヘロドトスの戦いにおける、ユーベルコード『ワープドライヴ』の復活と獲得。
 そしてその他多くの遺産により、強化された猟兵の行動網。
 これに伴い、ミディア・スターゲイザーを旗印とした"解放軍"の再結成が宣言された。
 スペースシップワールド全域に広がったこの報せに、同調する人々は数多い。
 だが……。
「連中はそんな人たちを徹底的に叩き潰そうってわけよ。みみっちいわね!」
 耀は激していた。なにせ帝国の狙いは、まだ戦闘に加わってすらいない民間人なのだ。
 オブリビオンに慈悲はない。ならば、それを迎撃するのにもまた、慈悲は不要。

「今回標的にされたのは、〈ナイチンゲール号〉っていう宇宙船ね」
 耀は手短に説明した。この船を舞台とした、予知と戦いがあったことを。
「その件自体は、手を貸してくれた皆のおかげで解決したわ。
 オブリビオンが倒されたあと、宇宙船自体は無事に回収されたみたいね」
 いま船を所有するのは、若きスペースノイドの船乗り集団である。
 彼らはその経緯を知らない。ただ自らの意志で猟兵に同調することを決めたのだろう。
「だから帝国の奴らを叩きのめさなきゃいけないのよ。絶対にね」
 自らが戦線に参加できない口惜しさを滲ませながら、耀は言った。

 転移は敵戦艦内部に向けて直接行われる。当然敵の迎撃が予想される。
「とはいっても、相手は烏合の衆よ。まあその分数は多いけど……」
 耀の背後、グリモアベースの虚空に、敵戦力と思しき孤影が浮かび上がった。
 頭部を持たぬ不気味な戦闘機兵だ。どうやら自律機械の類らしい。
「敵の戦艦には、この気味の悪いウォーマシンが……うーん、ざっと100はいるんじゃないかしら」
 放っておけば、民間の宇宙船がこれに抗える道理はない。
 猟兵たちは敵戦力を手当たり次第に撃滅し、以て戦艦を撃沈させることになる。
「付近の宙域には、例のミディアが来てくれてるはずよ。回収はそっちに任せてあるわ」
 安全性を考慮するなら脱出後に戦艦を撃墜することになるだろうが、戦況次第ではそうもいかない。
 映画のように爆発する戦艦を脱出する……なんて事態も覚悟しておくべきだろう。
「ま、大丈夫でしょ! ようは敵ごとふっ飛ばせばいいのよ、ふっ飛ばせば」
 なぜかそのへんはテキトーに流す耀。猟兵のタフネスを信頼しすぎではなかろうか。

 ともあれ再び雰囲気を引き締めると、耀は火打ち石を取り出す。
「昔あの船に乗っていた人たちは、命がけであれを守ったのよ。
 せっかく皆が守ってくれたものを、今度は堕とされましたなんて話にならないでしょ?」
 なにより、今の乗員は未来ある若者たち。帝国に手出しさせるわけにはいかぬ。
 猟兵たちの顔を見渡し、しっかりと頷く耀。そして火打ち石を鳴らす。
 カッカッという小気味いい音が、転移の合図となった。


唐揚げ
 そして小夜啼鳥は宙を舞う。唐揚げです。
 OP、いかがでしたか? エッ、読んでない?
 では一応まとめ……の前に大事なことを。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 はいOKです。では改めてまとめを。

●目的
 オブリビオンおよび敵戦艦の撃破。

●敵戦力
 自律機械『彷徨うウォーマシン』超多数(よわよわ)

●備考
 敵戦艦内部に転移した直後から開始。
 ミディア、およびナイチンゲール号との通信は戦闘後にのみ可能。

 とまあこんな感じです。サッと行ってバーン! ですね。
 なおこのシナリオは当作『誰が墓場鳥を殺したか?』の設定を踏襲しています。
 未読でも問題ありませんが、知っているとちょっと楽しいかもしれません。
 逆に前作参加者様が優先採用されるわけでもないので、その点ご了承くださいませ。

 では前置きはここまでにして。
 皆さん、小夜啼鳥の唄を聞きながらよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『彷徨うウォーマシン』

POW   :    多弾頭型収納ミサイルポッド
レベル分の1秒で【腰元から複数の誘導ミサイル】を発射できる。
SPD   :    演算処理
【高性能ソナーによって】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    近接形態
自身に【強化外骨格】をまとい、高速移動と【スラスター】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帝国戦艦『ゾー・ホーホ』
 戦艦の内部は暗かった。
 なぜか? "そいつら"に明かりなど必要ないからだ。
 だが猟兵という生体反応を検知した瞬間、バチバチと一斉に照明が点灯した。
 カチカチ。
 カチカチカチ。
『敵生体反応を検知。敵殲滅プログラム、タイプ:デスを起動』
 それらは首のない兵士だった。不気味な者共だった。
 言うなれば、機械仕掛けのスリーピー・ホロウか。胴体部から無機質な電子音声。
 カチカチ。カチカチカチ。
 それらが床を踏みしめるたび、虫が鋏角を鳴らすような音がした。
『反逆者に死を。帝国に永遠の忠誠を。皇帝陛下に栄光あれ』
 祝詞のような唱和。ゆうに100を超える首なし機械どもが猟兵を迎え撃つ。

 こんなものは、これから先に繰り広げられる激戦のほんの兆しに過ぎない。
 命なき生の簒奪者の群れを、その刃と拳で打ち砕け!
ノノ・スメラギ
ハハッ、待ち望んだ、この時が! 銀河に蔓延る害獣共を! 一匹残らず! 駆逐してやるその時が来たわけだ!
VMAXランチャー、キミとボクの力の見せ所だ!
数も多いし、出し惜しみは無しだ!
ガンナーズとスライサー、シールドデバイスを展開、VMAXランチャーを射撃モードにして敵軍へ突撃するよ!
敵の攻撃は盾受け、防具改造での耐ビームの防御力を向上させて、戦闘知識でうまい事相手の船内重要機器を背後にしつつ、リフターを駆使して(空中戦)立ち回って、最大限敵を巻き込めるとこまでいけたらUCで一斉攻撃だ!
一機も残らず薙ぎ払ってやろうじゃないか!(二回攻撃、一斉発射、捨て身の一撃)


フィーナ・ステラガーデン
(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎)
まず転移後は敵の捜索だけどけど、話に聞いてた数なら
すぐ見つかりそうね!向こうから来るなら望む所よ!

またワラワラワラと何なのよこいつら!?
とりあえずこいつら全部焼き払えばいいのよね?任せておくといいわ!

敵攻撃には【ダッシュ】で回避や
【属性攻撃】や【範囲攻撃】の炎魔法で迎撃するわ!
最悪【オーラ防御】で受けるわよ!

最初は【範囲攻撃】で焼き払っていくけど
途中面倒臭くなるわね絶対!ある程度密集しているようなら
UCを使用して一気に焼き払うわ!
もしも天井が高くなければ前方斜め上に打ち出すわよ!


ネグル・ギュネス
【仲間と連携、アドリブ大歓迎】

───ざけんな、糞が
死を晒すのは、貴様らの方だ!

読み合いならば、貴様らポンコツには負けはせん!
【SPD】勝負だ

敵が演算で回避し攻撃するならば、ユーベルコード【勝利導く黄金の眼】で、その先を視る!

【見切り】で、見切る、見切る、見切って

愛刀「桜花幻影」にて、貴様らを薙ぎ払い、両断し、衝撃波で宇宙に叩き返してくれるわ!

幾重に百あれ千あれど
我は敵斬り、民を守る剣

我こそはと言う雑兵ども、かかってこい!
私の首は、安くはないぞ!


メイスン・ドットハック
【WIZ】
あの船長が必死に守ったものじゃからのー
たかがウォーマシン如きに撃墜では可哀想じゃのー

相手が機械ならば電脳魔術の出番
ジャマープログラムを空間に拡散させて、AIの思考を阻害させ、行動速度を制限させる
その間にユーベルコード「蜂のように舞い、華のように散る」の機甲化爆弾蜂を飛ばし、ウォーマシンの関節部分を爆発破壊させて、さらに機動力を奪う

通路付近には機械片ワイヤートラップと地雷を設置して、船員のところに進めないように配慮する(罠使い、破壊工作)
敵が進みそうな通路には電撃放出のワイヤートラップを設置して対応に当たる(罠使い、地形の利用)

他の仲間との連携も出来る限りしていく
アドリブ・絡みOK


シーザー・ゴールドマン
【POW】
何処にでも湧くものだね。まあ、根気よく潰していこうじゃないか。
戦術
『ソドムの終焉』の魔力の閃光により射程範囲に敵が入り次第、全て滅却しながら帝国戦艦内を侵攻。
(先制攻撃)
接近された場合はオーラセイバーを振るって破壊する。
変幻自在で一撃一撃が強力な剣。
(2回攻撃、なぎ払い、見切り、鎧無視攻撃、怪力、カウンター、フェイント、第六感、先制攻撃)
防御面はオーラ防御、見切り、カウンター、第六感、各種耐性に期待
「ふむ、首より上がないせいかな?あまり、戦って楽しい相手でもないね」
(強き意志なき敵との戦いはつまらない)
「さっさと殲滅して次の強敵を待とうじゃないか」


フルール・トゥインクル
全く、戦闘にまだ加わってなくても邪魔になりそうならやっつけるってわけなのです?
さすがに酷いと思うのです、見過ごすことなどできないのですよ!

ちょっと本気出しちゃうですよ?
【精霊達の加護】で自分を強化、光と闇はあまり相手には効きそうにないので樹属性を主軸におきたいのです。ですので代償は毒ですかね

攻撃を予測されるなら、それを上回る速度と力で攻撃してしまえばいいのです
精霊銃に樹属性の魔法力を思いっきり込めて次々打っちゃうですよ
狙いは足元、もし倒せなくても他の猟兵さんの手助けになるはずなのです

毒は苦しいですけど、気合で頑張りますです
これぐらいへっちゃらなのですよ!


御狐・稲見之守
まーさかまたあの船に縁があるとは、面白いものよ。しかし“奴”とのお喋りは楽しかったが、こやつらはあんまり囀ってはくれないようじゃの…。

[WIZ]UC傀儡符、勅令随身保命……こやつらに命はあるのじゃろか。まあいい、そら動けこのポンコツ。なあに傀儡にする材料ならいくらでも湧いて来よる。ガラクタになった奴を片っ端から“りさいくる”じゃの。手駒は多いに越したことはあるまい。ついでに手駒にしたウォーマシンにまたがっておくとしよう。さあさあ進め進めからくりの兵達よ。

あ、そういえば。あの船を外側から見たことはなかったの。


エルト・アルバーシュ
僕にも、出来ることが……ありますかね。
えっと、確かバイクのここをこうすればいいって言ってましたね……わわっ!?

【ゴッドスピードライド】で僕のバイクを変形させて駆け抜けます。……頑張って。
正直戦ったことあまりないですが【騎乗】技術と【野生の勘】でなんとかしてみます!!
周囲の皆さんの方がきっと手練でしょうし、少しでも手助けになれば……とは思います。
あ、でも首なし機械さんはちゃんと燃えないゴミとかで廃棄しないと駄目じゃないですかね。そういうのは率先してやりますよ!



●開戦
『反逆者に死を。帝国に永遠の忠誠を。皇帝陛下に栄光あれ』
 カチカチ。カチカチカチ。
 奴らは同じ言葉を呪詛のように唱え続け、無機質な横列をなして迫りくる。
「――ざけんな、糞が」
 凛、と鈴が鳴り響く。桜花の鞘より現れたる白刃、これ幻影を断つ大太刀なり。
「屍を晒すのは……お前らのほうだ」
 怒りすら滲ませる声音の主をネグル・ギュネスという。
 その闘気に呼応し、紫眼が放つは黄金の輝き。
『敵影を確認。連携プログラムPP059起動、目標を殲滅せよ』
 最前列敵の各部から赤い光が漏れ、まったく同じ戦闘態勢を取る。
 同型AIの並列処理による高速演算、以て敵行動を予測し完封する鉄壁の戦術である。
 だが。それを前にして、ネグルは不動。構えすら取らない。
「来るがいい、木偶の坊ども。私の裏をかいてみせろ」
 挑発は首なし兵どもに通じたか否か。
 定かではないが、彼奴らがその言葉をきっかけに動いたのはたしか。
 残像すら生じさせるほどの高速機動、かつ四方および頭上からの同時攻撃!
 いずれかに反応すればいずれかが敵を屠る。必殺の陣形だ。
 逃れられるはずはない。"ただの敵"ならば――!

 ――ちりん。

 鈴が軽やかに響いた。そして納刀。
 直後、彼に襲いかかろうとした5体の死神が2倍に増え、そのまま爆発四散した。
 然り。両断である。敵は彼の先を読み、彼はその先の先を読んでいた。
 ただそれだけのこと。あとは剣を振ればいい、絶人の速度を以て。
『敵脅威度、C-からA+に変更。連携プログラムACC078を提案』
「手管を変えようが同じことだ。貴様らの運命は"視"えている」
 ぎらりと瞳が黄金を放つ。気圧されたように一歩退く死神の群れ。
「我が眼が映し出す未来は、貴様らの絶望。さあ、次は誰だ!」
 朗々たる声。それが敵陣に切り込む嚆矢となった!

●敵陣右翼
 構えをとったウォーマシン小隊の腰部から、無数のミサイルがせり出す。
『敵目標を抹殺せよ。多弾頭ミサイル発射』
 ドウドウドウドウ! 連続射出される恐るべき砲弾の雨!
 その嵐を縫うように、高速飛翔する者あり。さらに虚空を鮮やかな光条が薙ぎ払う。
 超高出力ビーム砲撃により、射出されたミサイルはほぼ全てが空中爆散した!
 ウォーマシン小隊は次弾装填に移る。だが遅い、そしてあまりにも脆い。
 ミサイルを撃ち落としたビームはそのまま床を舐めるように這い、敵を焦がす。
 神の雷じみた光の柱に呑まれ、爆散していく首なしの機械兵士ども。

 しかし。
 もうもうと立ち上る黒煙を乗り越え、カチカチと次の編隊が現れる。
「うわっ、何よこいつら! ワラワラと、どんだけいるの!?」
 状況を俯瞰していたフィーナ・ステラガーデンは思わず悪態をついた。
 無理もない。数体を破壊したところで、奥からさらに大量の増援が現れるのだ。
 これこそが銀河帝国の物量であり、恐ろしさ!
「ハハハハッ、いいじゃあないか! ようやく待ち望んだ時が訪れたんだ!」
 上空、ビームによって敵を薙ぎ払った当人が快哉めいて叫んだ。
 ノノ・スメラギ。強大な複合魔導銃斧〈V-MAXランチャー〉のドライバーである。
「アンタね、パワーはすごいけどなんだってそんな喜んでるのよ! 戦闘なのよ?」
 フィーナの言葉はもっともである。だがノノは三つ編みを揺らし誇り高く笑った。
「銀河にはびこる害獣共を残らず消し飛ばす、絶好の機会だろう!?」
「ううん、気持ちはわからなくもないけど……」
 アッパーテンションについていけず、指を額に当ててため息をつくフィーナ。
 複雑な過去を持つ彼女にとって、ノノの単純さはある意味羨ましいといえる。
 まあ彼女も、大概考え事は得意でないタイプだ。しばらく唸っていたが顔を上げ。
「まあ、焼き払っちゃえば問題解決ってのはたしかよ!」
「そうさ。出し惜しみはしないほうがいい、ボクらが全部片付けてしまうからね!」
 追撃のミサイル群が彼女に迫る。ノノはそれを見もせずに撃ち落とした。
 だが爆炎の中から飛来したのは、スラスターを起動した空中編隊である!
「バカな害獣どもだ! VMリフター展開、フルバースト!」
 魔導フィールドによりノノは重力から解き放たれ、鋼鉄の空を自在に飛翔する。
 だが敵もさしたるもの、およそ20機近い飛行編隊によりノノを包囲していく!

「あ、あれ大丈夫なのかしら!? ……うん?」
 はらはらとそれを見上げていたフィーナだが、彼女はあることに気づいた。
 一見無策に思えるノノの飛行機動は、しかし一つの意図のもとに描かれている。
「……なぁるほど、そういうことね!」
 ニヤリと不敵に笑い、ウィザードロッドを構える。
「其がもたらすは破滅、遺るは灰燼なり……」
 普段なら噛んでしまう呪文も、今回ばかりは集中してしっかりと唱える。
 すると彼女の全身と装備に赤と黒の魔法陣が浮かび上がり、魔力を励起させた。
 杖に設えられた紅玉と黒縞瑪瑙の宝石が、内側から燃え上がるように輝く。
「……炎よ! 雨の如く燃え、海のように盛りなさい! まとめて消し炭にしてやるわ!」
 口訣はここに。魔法陣がまばゆく煌き、炸裂の瞬間を待つ……!

 一方上空。
 追尾ミサイルとかきむしるような死の爪を、紙一重で回避し続けるノノ。
 その口元に、ぎしりと笑みが浮かんだ。紅眼をなお焦がすような眼下の魔力光に。
「そうこなくてはね。さあボクらも力の見せどころだ、V-MAXランチャー!」
 ギュン! と最大加速して敵影から距離をとり、突如として空中反転。
 ランチャーおよび周囲のガンナーズデバイスが一斉に砲口を敵影にセット。
 迎え撃つつもりか? バカな。いまや追尾敵は40に届くというのに!
 しかしノノに恐れはない。彼女がトリガーを引いた、まさにその時!

 ゴォオオウウ――!!

 眼下から炎の雨が"降り注いだ"。
 いかにも、それはフィーナの大魔術。敵にとっては予期せぬ大火力だ。
 ゆえに奴らは混乱した。そしてそこに、最大火力の一斉掃射が襲いかかる!
 正面と、真下。
 二方向からの大火力により、40を超える敵影は残骸すら遺さず昇華消滅!
「やるじゃないか! ボクの狙いがわかってくれたようで嬉しいよ」
 ゴシュウ、と緊急冷却を行うランチャーを担ぎながら、ノノは言った。
「敵をひきつけてもらったんだもの、このくらいはしなきゃね?」
 密集地帯への大火力攻撃を想定していたフィーナにとって、これは渡りに船だった。
 ゆえに言葉なき連携が成立し、敵右翼に風穴を開けてみせたのだ。
「でも油断は禁物ね、まだまだ次が来るわ!」
「いいさ、どのみち全員消し飛ばすんだ。さあ来い!」
 金の髪に赤い瞳。ともに炎を操る二人の少女は、不敵な笑みで敵を迎え撃つ。

●敵陣外縁部
 混迷した戦場を、青い瞳の虎人は呆然と眺めていた。
「す、すごい……」
 彼はエルト・アルバーシュという。この中では新参の猟兵だ。
 戦場を蹂躙する諸先輩の練達に、彼は畏敬し、萎縮していた。
 自分はあくまで旅人だ。こんな鉄火場で力添え出来ることなどあるのだろうか。
「そこのあなた! 一体どうしたのです?」
 そんな彼に声をかけたのはフルール・トゥインクル。
 轟音と砲声が飛び交う戦場にあっては、フェアリーの可憐さは憩いである。
「あ、いや、僕はあまり戦ったことがないので、つい」
 困ったように頬をかくエルトに、フルールはふんすと鼻を鳴らし胸を張った。
「なるほどっ、それなら私があなたを導いてあげるのです!
 大丈夫なのですよ、これでも私はそこそこ経験豊富なグリモア猟兵なのですから!
 それにそれに、ここにはとっても頼りになる人がいて」
「わ、わかった。わかったよ! だからその、落ち着いて」
 まくしたてるような早口に、エルトは慌てた様子で妖精をなだめる。
 はっと我に返ったノノは、照れくさそうに侘びてから、こう付け加えた。
「でも、あなたはきっと大丈夫なのです。オランジェもそう言ってます」
「オランジェ? ひょっとしてキミの近くにいる精霊のこと?」
 エルトの何気ない言葉に、緑の瞳を見開くフルール。そして嬉しそうに頷く。
「すごいのです、姿を消してるオランジェが見えるなんて!」
「魔法はさっぱりなんだけどね。でもありがとう、おかげで勇気が湧いてきたよ」
 愛用のバイクにに跨るエルト。その表情は一転して凛々しい。
「頑張ってやってみる。ところで、その頼れる人っていうのはどこに?」
「今は中央で戦ってるはずなのです、私もついていくのですよ!」
 ひょいっとエルトの後ろに座る、というかしがみつくフルール。
 エルトは頷き、エンジンを点火。見据える先には放火と死神の列。
 意を決してアクセルを踏む。猛烈な加速を伴い、二人は敵陣へ突撃した!
「て、わわっ!? なんだこのスピード!?」
「エルトさん、安全運転でお願いするのです! きゃあ~~!?」
 ……困惑と悲鳴をあげつつ、だが。

●敵陣左翼
 魔力の閃光が虚空を貫く。それも一条ではない。
 さながらそれは、神が愚者に下す裁きの鉄槌にも似ていた。
 ゆえにその輝きは、神話になぞらえ『ソドムの終焉』と銘打たれている。
「ふむ。首なしのせいか、あまり楽しい相手でもないね」
 シーザー・ゴールドマンは仕立てのいい赤スーツの襟元を正し、あっけらかんと言う。
 有象無象が群がる戦場にあって、彼の足取りは散歩を楽しむかのように軽やかだ。
 周囲数メートルは完全な空白。飛び込んだ敵は二つの末路を迎えている。
 すなわち、終焉の輝光に呑まれて消えるか。
 あるいは、瞬断の刃に断ち割られて死ぬか。
「キミもそう思わないかね? あの船には見覚えがあるのだろう?」
 そんな彼の隣、同じぐらいに悠然と歩みを共にする女がいる。
 その容貌、可憐なれど神秘的。しかし妖しく、耳と尾こそが人外の証。
「まーさかまたあの船に縁があるとは思わなかったがの、ワシも同意見じゃ」
 御狐・稲見之守は、落胆の吐息を漏らした。
 いかにも彼女は、この戦艦の標的――すなわち〈ナイチンゲール号〉に縁のある人物だ。
 具体的に言えばもうひとりいる。だがその人物はいまはここにいない。
「たとえ敵とて、強き意志を持つ者に私は敬意を表する。その点、これらは落第だな」
 飛び込んできたウォーマシンを一瞥すらせずに両断しながら、紳士は頭を振る。
「どうやらこいつらは"あれ"のコピーのようじゃしのう。いやはや」
 稲見之守は無造作に手を振り、複雑怪奇な祝詞の描かれた符をばらまく。
 両断、あるいは溶解破壊されたガラクタの山に、符は濡れた絹のように張り付いた。
 ……そしてそれらはがらがらと立ち上がり、彼女らの後に続く。
『敵影を発見。個体数……警告。識別信号の偽装可能性を確認』
「そんなことはしとらんぞ? あれじゃ、"りさいくる"というやつじゃナ」
 相対するは首なしの機械兵士。無機の体に刻まれしは帝への忠誠。
 一方、狐神の背後をそぞろ歩くは、忠義すら無き操り人形ども。
「オリジナルとやらの話は詳しく聞きたいところだよ。こいつらを片付けてから、ね」
「んむ。とはいえ少々面倒臭くなってきたのう。数も多いし」
 シーザーと稲見之守を囲む敵数はゆうに数十。
 傀儡符による防御はあれど、手間のかかることは必定か。
 無論、彼らは自分たちが敗北することなど万に一つも考えてはいない。

 ……そして彼らが期待していたように、当然の出来事として"それ"は起きた。
『反逆者に死を。帝国に永遠の忠ssssssss』
 唱和は唐突に途切れ、1体のウォーマシンがガタガタと痙攣し始める。
 その周囲の機体も同様に。さらにそれらの周囲にいるウォーマシンが同じように。
『警告。警告。同期システムハッキングを確認。ネットワークの切断をヲヲヲヲヲヲヲヲヲ』
 KBAM!! 人工知能の過負荷により、1体のウォーマシンが内部爆発を起こした。
 KBAM! KBAM!! ZZZZZZZZZZTTTTTT!!
 爆発。さらに感電。死神どもはその姿なき攻撃の正体すらつかめない。
「相変わらず手際がいいのう。シーザー殿のときもそうだったのかの?」
「ああ、彼女は素晴らしいハッカーだ。頼りになるとも」
 世間話のように語らう二人。周囲に巻き起こる声無き阿鼻叫喚。
 やがて見える限りのウォーマシンがスクラップに変じると、一人の少女が現れた。
「爆発する蜂は、毒針を持った奴より怖いということじゃのー」
 メイスン・ドットハックは電脳ゴーグルを外し、呑気に伸びなどする。
 先の不可思議な現象はすべて彼女によるものだ。二人の共通の知り合いでもある。
 激戦の中、単独で行動し無数の罠を設置。これは彼女の常套手段だ。
 そんな彼女の周りには、ブブブブ……と不吉な羽音を漏らす蜂の群れ。
 すべて機械である。おまけに、内部には小型爆弾まで仕込まれた機甲蜂。
 微細で、動きも速いため、捉えるのは至難。
 攻撃できたとしても、脆弱であるがゆえに連鎖爆発が攻撃者を襲う。
「"蜂のように舞い、華のように散る"か。実に『らしい』名だね」
「二手三手包囲してこその搦め手、じゃけんの。ま、めんどーは嫌いじゃが」
 面倒を排除するための面倒は喜んでする。それがメイスンという策士だ。
「では合流したところで、続きといくかの。ワシは疲れたからこいつらに乗る」
 神輿のように群がった傀儡兵たちにまたがる稲見之守。悠々自適だ。
「たかが雑魚ごときに撃墜されては、可哀想じゃからのー」
 メイスンの視線が、ガラス越しにはるか先の虚空を見やる。
 彼女らが……否、彼女ら"も共に"守り抜いた、小夜啼鳥が浮かんでいた。

●敵陣中央
『攻撃。攻撃。攻撃。反逆者に死』
 ザンッ! ……大太刀がウォーマシン三体をまとめて叩き斬る。
「言ったはずだ。屍を晒すのは貴様らだ、と」
 ネグルはなおも冷徹。その剣閃にはいささかの無駄もない。
 高度眼部演算デバイス〈カリキュレイト・アイ〉を用いた未来予測。
 その黄金の輝きの前には、心なき有象無象の動きなど児戯にも等しい。
 取り囲む敵影を睨みつける。そして彼は一歩を踏み出し――。

「うわ、うわわわ! と、止まってくれぇー!!」
「エルトさん止まったらダメなのです!? でも止まらないのもダメなのです~!」
 ネグルは一瞬眉根を顰め、しかし即座に状況判断した。
 素早いバックステップ。直後、そこに落下する巨大なバイクの前輪!
 KRAAAAAASH!! 超速度を伴う衝撃が、周囲のウォーマシンを吹き飛ばす!
「……なんだ、一体。それに今の声は、まさかフルールか?」
 訝しむ彼の前に、へろへろ顔の妖精が顔を出し、手を振った。
「そ、そうなのですよ~……はわわ、世界が回っているのです~」
「いたたた。ご、ごめんよフルール。でも少しはなんとかなったかな……」
 エルトのおずおずとした瞳が、冷徹なサイボーグのそれと絡み合った。
 わずかな沈黙。この人がフルールの言っていた? もしかして怒られる?
 ……バツの悪そうな顔をするエルトに対し、ネグルは肩をすくめる。
「敵と味方の区別はつけるべきだ、エルト君。だがいまの攻撃は見事だった」
 口元にはわずかな笑み。苦笑いとも言うが。
「あ、ありがとうございます! ええと」
「ネグル・ギュネスだ。挨拶はあとにしよう、それよりも」
 剣士は彼の背後を睨んだ。次なる増援がさっそく、カチカチとやってくる。

 無言で愛刀『桜花幻影』を構えるネグル。だがそこでフルールが声をあげた。
「はっ、ネグルさん! 私も役に立つのですよっ!」
 言うやいなや、彼女の周囲に精霊たちの姿が現出する。
「オランジェ、力を貸してほしいのです! 私たちに精霊の加護を!」
 燐光を放つそれらは、朋友の呼び声に応え力をもたらす。
 だが精霊の強い魔力は、彼女にも少なからぬ毒となるのだ。
「っ……さあ、プランタンで狙い撃ちなのですっ!」
 そしてフルールは色のある風となった。
 愛銃『春語りの歌声』による、精密なスナイプ。狙いはすべて敵駆動部に。
 縦列をなした機械兵士群は機動力を奪われ、その場に片膝をつく。
「まったく、無茶をする。エルト君、いけるな?」
「! もちろん!」
 二人の青年は頷きあい、そしてフルールに続いた。
 跪いたウォーマシンは次々と轢殺、あるいは惨殺され微塵と散る!

「幾重に百あれ千あれど! 我は敵斬り、民を守る剣!」
 朗々たる声が戦場に響き渡る。それは仲間たちの耳にも届いた。
「我こそはと言う雑兵ども、かかってこい! 私たちの首は安くはないぞ!!」
『反逆者に死を。銀河帝国に忠誠を。皇帝陛下に栄光あれ』
 カチカチ。カチカチカチ。
 敵はいまだ無数。されど猟兵たちは、その名乗りに応じて武器を構える。
「あそこか! いいね、一網打尽にできそうだ!」
「アンタとは気が合うわね、もう一発ぶっ放してやるわ!」
 右翼陣を根こそぎ消し飛ばしたノノとフィーナは獰猛なまでに笑った。
 ネグルめがけて殺到する敵影、それを横合いから炎と光が薙ぎ払う!
「ッハハハハ! さあ、害獣どもは掃除だァ!」
「いちいち小出しにしてきて面倒くさいのよ、全部消し飛ばしてやるんだから!」

「おうおう、派手にやっておるのう」
「全部片付けてくれればめんどーがないんじゃがのー」
「なに、露払いを果たすのも紳士の役目だ。私たちも続こうか!」
 狐神の傀儡が、少女の張った罠が、紳士の振るう刃と光が、戦場をジグザグに縫う。
 あとには残骸と焦げた、あるいは裂けた床のみが遺る。
 圧倒的。ただただ圧倒的な猛攻であった。

 反逆者に死を。
 銀河帝国に忠誠を。
 皇帝陛下に栄光あれ。

 死神どもが唱え続けたその文句は、奴らの存在もろとも叩きのめされ、打ち砕かれたのである。

●決着
 ――KRA-TOOOOOOOOOM!!
「帝国戦艦、撃沈! すごい、一体誰が!」
 ナイチンゲール号艦橋。オペレーターは呻いた。
 敵戦艦が現れた直後、その近郊に同じくワープアウトした一隻の船。
 すわ帝国の増援かと身構えた船員らであったが、直後の通信がそれを改めた。
『ご覧いただけましたか? あれが、私たちを救ってくれた人々の力なのです』
 通信画面に映し出された青き美女、ミディア・スターゲイザーは微笑んだ。
 彼女は事の次第を、ナイチンゲール号の面々に説明していたのである。
「あれが、猟兵……伝説の再来!」
 そして、艦橋の船員たちは喜びを分かち合った。歓声が上がる。
 若き船長もまた、深く安堵のため息を付いた。
 一方ミディアは、なにやらあちら側の船の人員と連絡をとりあっている。
 爆発四散する戦艦から脱出した猟兵たちを、回収し終えたのだろう。
「これからそちらへ、ワープドライヴ装着のため接舷いたします。許可を頂けますか?」
 若き船長はミディアの問いかけに我に返った。
「もちろん! その、よければ猟兵の方々もご一緒に」
「ええ。それと、皆さんから一言・託けを預かっていますわ」
 救世主たちからの伝言。船員たちはみな耳を澄ませた。

 猟兵たちの語彙は様々であったものの、彼らが一様に伝えんとした言葉はすべて同じだ。
 ――貴艦の勇気に敬意を表する。ともに、銀河帝国を打ち砕こう。

 そして数奇な縁を持つ者たちからは、もう一言。
「我らの未来に幸運あれ、というところかの」
「戦いはこれから、じゃしのー」
 窓の景色に、古びていながらも真新しく思える船影が近づく。
 かくして小夜啼鳥は再び宙に舞う。忘却の軍勢に抗うために。
 謳われる旋律の名を、凱歌と言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月04日


挿絵イラスト