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羅針盤戦争〜幽霊船団、西へ

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #フライング・ダッチマン

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 朝まだきの水平線に、帆船が姿を現した。
 昏い金色に輝いている筈のマストは不気味な紫紺に彩られ、襤褸のように風に靡いている。
 幽霊船だ。
 すぐさま報せは島を駆け巡り、浜辺は喧騒に包まれた。
 大砲を引っ張り出そうと島民達が集まり、海賊達は船を出す準備を始める。
 だが少し経った時、その場の全員が言葉を失った。
 たった一隻と思われた船がその数を増やしていき――水平線を埋める大艦隊と化したからだ。
 曙光を昏い深海の蒼に染め、音もなく迫る巨大な木の壁は、絶望そのものであった。


「グリードオーシャンでの戦い、お疲れ様です」
 不気味な静けさを保つ『アーマリー島』の入り江に接岸した鉄甲船。
 その船上で、クララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)が、二十から三十程の粒が浮かぶ東の海を見つめていた。
「あれは全てコンキスタドールです……幽霊船の大艦隊が、この島に迫っているのです」
 幽霊船。コンキスタドールの中でもボスクラスに相当する存在であり、これまでの依頼の報告では単体で行動するのが常だった。
「しかしその大半は、七大海嘯『鬼火』……フライング・ダッチマンの配下である事が判明しました」
 つまり幽霊船は本来、『鬼火』の命令の下、集団行動が可能なオブリビオンだったというわけだ。
 そして今まさに、命令を受けた大海賊の指揮の下、大船団がこの島を襲撃しようとしている。

 ただし幽霊船の常として、その能力は奇襲向きであり、ここが弱点となる。
 特に効くのは――迎撃だ。この場合、大砲の用意や海上封鎖等だろうか。
「浜辺には島民と海賊のみなさんが集まっています。一緒に準備を整えた上で海戦に臨めば、決戦を有利に進められるでしょう」
 またアポカリプスヘル由来のこの島には、古い不発弾が大量に遺されている。威力は折紙付きだが、『落下』を耐え抜いた所から見て、かなりの衝撃が無ければ爆発しない事は想像に難くない。
「この世界の大砲では、着弾時の衝撃が、ほんの少しだけ足りないようです……」
 手段はいくつか考えられるが、敵の船上で爆発させられるか否か。それが焦点になるだろう。

「知っての通り、グリードオーシャンの海は荒れており、翼は封じられています。軍船類を持っている方は、それをどうぞ。無ければ船を用意します」
 陸から狙うか、海から狙うか、それともいっそ斬り込むか――。
 どのような方法を取るにせよ、幽霊船本体を破壊するのが最終目標である事を忘れてはならない。
「このままでは……島の生命全てが、水底に引き摺り込まれてしまうでしょう」
 そうなる前に、どうか、お願いします。
 そう言ってクララは頭を下げるのだった。


白妙
 白妙と申します。
 このシナリオは戦争シナリオです。
 1章だけで完結する、特殊なシナリオとなります。

●アーマリー島
 島民は大砲の設置や砲弾の運搬を行う事が出来ます。

●不発弾
 ドッジボールサイズの丸い砲弾。別名爆弾。
 通常の砲弾よりも高い威力を秘めています。
 ただし極端に信管が鈍く、
 島に備え付けの大砲で撃ち込んでも、ほぼ不発で終わります。

●プレイングボーナス
 『島民と迎撃準備をした上で海上戦に臨む』です。

●捕捉
 シナリオ公開と同時にプレイング受付を開始します。
 全採用は厳しいかも知れませんが、宜しくお願いします。
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第1章 集団戦 『幽霊船の大艦隊』

POW   :    『鬼火』艦隊一斉砲撃
【並んだ幽霊船が統制の取れた砲撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    『鬼火』海賊団
レベル×1体の、【カトラスを装備した右手の甲】に1と刻印された戦闘用【『鬼火』海賊団員】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    セントエルモストーム
自身の【マスト】から、戦場の仲間が受けた【攻撃回数】に比例した威力と攻撃範囲の【呪詛の紫光】を放つ。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱鷺透・小枝子
この丸い形状…うっかり爆発しないように、
ちゃんと作られたが故の、鈍さなのでしょうね。
これは信頼できましょう。

島民の皆様方に、砲弾を船へ積んでもらい、
海賊の方々には船の上で砲弾を大砲に装填し、撃っていただきたく。
軌道や起爆については、自分がどうにかします。とにかく撃ってください!

自分はディスポーザブル03に搭乗、操縦。
海上歩行、海面をスラスターで滞空。

視力、発射された砲弾を03のモニターで確認。
速さが足りないのであれば、足しましょう!
『3番目の加速機』発動。
砲弾一つ一つにメガスラスターを増設、推力移動の加速と軌道修正を、さらに、03で誘導弾発射!ミサイルの爆発で確実に誘爆させます!
爆ぜろ!!



「野郎共! 砲弾を船に積み込め!」
 静まり返っていた浜辺に、海賊船長の指示が響き始める。朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の提言をきっかけに、防衛線が動きを取り戻したのだ。
 砂浜より高い『ディスポーザブル03』の搭乗席。小枝子はそこから敵艦隊の接近を見張りつつも、時折船員や島民の作業を振り返る。
 ふと目を留めたのは、見事なまでに球形を保った砲弾だ。
「この丸い形状……うっかり爆発しないように、ちゃんと作られたが故の、鈍さなのでしょうね」
 発達した文明において球形弾は珍しい。欠点としか見えない信管の鈍さも含め、小枝子はそこに製作者の意図を感じ取っていた。
「欠陥品だとばかり思ってたが、なるほどな」
「ええ、これは信頼出来ましょう」
 近づいて来た海賊船長に、小枝子は力強く返す。
「積み込み装填はほぼ完了した。……次はどうする?」
「このまま撃って頂きたく」
「いいのか?」
「軌道や起爆については、自分がどうにかします。とにかく撃ってください!」
 海賊船長が船へと踵を返すと同時に、小枝子は『ディスポーザブル03』の姿勢を低めると――海に向けてペダルを踏み込んだ。
 波を切り裂き褐色の機体が進む。背面と足裏に取り付けられたスラスターは推力を生み、水場でも自由自在な移動を可能としていた。
 やがて沖合いに出ると――海上を滞空。ただ一機、大艦隊と向かい合った。
 背中で微かに船長の怒号が響いたかと思えば――立て続けに、砲声。
 すぐさまモニターには戦艦から放たれた弾の様子が映し出される。
「やはり……」
 次々表示されるデータから小枝子は即座に、不発弾が幽霊船の甲板をバウンドし、そのまま海上へと消える結果を導き出す。
「……速さが足りないのであれば、足しましょう!」
 不発弾の後方に尾を引くように――ぽ、と火が灯った。それは『ディスポーザブル03』に搭載されたメガスラスターから噴出するものと、全く同じ色をしていた。
 みるみる増す弾速。同時に軌道修正された弾丸は、幽霊船に向けて一直線に撃ち下ろされる彗星の如き軌道を描く。
 直撃に合わせるように、小枝子は操縦桿を握り込み――。
「爆ぜろ!!」
 展開したミサイルコンテナから、誘導弾を発射した。
 次の瞬間、轟音。
 砲弾は全て爆発。その威力に数隻が纏めて破砕され、上がる火の手は周囲の船をも襲い始める。
 小枝子の手で、戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
ユベコでなくても大砲の弾がちゃんと爆発すれば敵にダメージ与えられるということか。
ならば武人として防衛戦の指揮をとらせてもらおう。みんなには敵の進行方向に向け大砲を用意してもらい、敵が出たら撃ってもらう。
え?なに?普通に撃ったんじゃ爆発しない?

ところでわたしのアビリティ、射程距離がレベルの二乗m。このプレ書いてる時点で96なので

9216m

約9.2km

自分で書いといてすげえってなった。
ともあれ。この超長射程ユーベルコードで、大砲の弾が敵に当たると同時ぐらいに、視力を活かしてスナイパーの要領で弾を撃ち、衝撃で弾を爆発させるのだ!
敵が近接する前にカタをつける。

必要があれば普通に敵をスナイプすることも。



 戦いは猟兵達の有利に進んでいる。
 それでも彼等の隙を掻い潜り、船員を満載した一隻の幽霊船が、密かに砂浜に上陸しようとしていた。
 だがその時。
「撃て撃て! 敵の接岸を阻止するのだ!」
 砲撃の一斉射が放たれた。
 爆風が船体を叩き、巻き起こる黒煙からは木片が砂浜に降り注ぐ。
 辺りに飛び散る火の粉の真っ只中で、超かっこいいヒーローソード(主観)を振りかざし、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は防戦の指揮に当たっていた。
 準備段階から島民にその奇人ぶりを見せつけていた麗刃だが、それでも彼は正真正銘の武人。戦いが始まった後の指揮ぶりは見事なものだ。
「敵船、撤退します!」
「よーし、アレを撃つのだ!」
「はい! でも……」
 船員はコロコロと鉄の玉を転がして来つつも、済まなそうにかぶりを振る。
「え? なに? 普通に撃ったんじゃ爆発しない?」
「ウチの大砲じゃあ無理でさぁ」
「よーし」
 そう言うと麗刃は、砂浜にシャリシャリと何やら数字を書いた。
 9216。
「ははぁ、フィートですか? それともセンチ……」
「メートルだ」
「はっ?」
「9216m。つまり約9.2km。今のわたしの最大射程だ」
 自分で書いといてすげえってなった。そう呟くと麗刃は、呆気に取られる船員を促し、とにかく砲撃するようにと命令を下す。
 ――数十秒の後、ぼんっと放たれた不発弾は、ひゅるひゅると弧を描いて逃げる敵船へと落下していく。
 ヒーローソードを正眼に構えた麗刃は精神を統一すると。
「秘技! く、くれ……くれ……」
 ……何やら言い澱むような素振りを見せるも。
「みかづき!!」
 カッ! と目を見開き、無事、得物を全力で一閃させた。
 果たして、放たれた三日月形の衝撃波は夜空を切り裂き、砲弾を見事に両断。高所で炸裂した爆風は幽霊船のマストを完全に焼き焦がし、降り注ぐ炎は船を船員ごと灰燼と化すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)幽霊船か。ただの亡霊なら回収いちばんで動くンだが、あれぜんぶ《過去》だってンだからなァ。カラダぶっ壊して"海"に還ってもらうしかあるめェ。
行動)島民らァに頼んで、不発弾積んでもらおうかィ。できればちょっとした台座用意してもらって、そこの上においてもらえりゃ最高さ。かわいい坊主を呼び出して、でかくて力強いしっぽで弾のケツぶっ叩いて飛ばさせよう。敵の船貫通させる勢いでブチ込んでおやり。向こうからの攻撃は、その身盾にして守っておくれ。そォそ、そこの島民もな。



 暁を染めて迫る、幽霊船の大船団。
 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の目には、その艦上で犇めく亡者達の姿がはっきりと見えた。
「ただの亡霊なら回収いちばんで動くンだが」
 逢真の手を以てしても、彼等は容易く三途の川を渡すという訳にはいかない存在だ。
 では何処に送るべきか。如何にして送るべきか。
「カラダぶっ壊して"海"に還ってもらうしかあるめェ」
 口元を歪めて呟く逢真の側に、島民と船員が四人がかりで何かを抱えて来た。
「旦那ぁ、これで良いんですかい?」
「おゥ、ご苦労」
 砂浜にどさりとおかれたのは、ずっしりとした平らな石の大台だ。
「よっこらせっと」
 その上にごろごろと音を立てて鉄の球が転がされていく。
 不発弾だ。
「うわ!」
 その時、一人の船員が声を上げて飛び退く。
 コブラと言うには余りにも長大な蛇の如き存在が現れ、石の台座へと這って来たのだった。
 蛇は鉄球に頭を寄せ、確かめる様にチロチロと舐めていたが、逢真と目を見合わせると、その巨大な尻尾を一閃させる。
 辺りを突風が駆け抜けたかと思えば……鉄球は台座から無くなっていた。
 代わりに沖合で何かが轟く音。続いて、幾つかの幽霊船で爆炎の華が咲く。
 その尻尾の一撃は砲撃以上の威力で不発弾を敵艦に送り込み、着弾と共に爆発させたのだった。
 沈んで行く幽霊船。だがそのうちの一隻が砲門を開き――砲声。
「撃ち返して来た!」
「伏せろ!」
 逢真達の居る地点目がけ、弾丸がひゅるひゅると不気味な音を立てて飛来する。
「傘ンなってくれ」
 着弾寸前、するりと何かが人々の視界を塞いた。
 爆発。砂浜に巨大な火柱が上がる。
 だが体を木っ端微塵に吹き飛ばす筈の衝撃は島民達を襲わず、その代わり、さらさらと砂が降る音が辺りに響き始めた。
 逢真の呼び出した龍王が間に割り込み、島民達を護ったのだ。
 その漆黒の鱗に包まれた体表からは煙が上がっているものの、爆発の衝撃に大きなダメージを受けた様子はない。
 ぬるりと龍王がその体を動かせば、ようやく事の次第を呑み込んだ島民達の目には、その場で平然と煙管を燻らす逢真の後ろ姿が映るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
違う島とはいえ、私の故郷、オーシャンの危機だ
ひとぶんばり行こうじゃないか

学者としての経験からカタパルト等も作れるけど、大砲以上の威力が出せるかな
大砲は他の方に任せ、とにかく、住民の皆様にはばかすか大砲を打ち込んでもらいたい
相手も反撃するために、戦列を組む

アイテム「潜水作業服」
UC「水魔アプサラー召喚」

敵が砲撃に夢中になっている隙に水中から接近する
アプサラーは流水を操る
彼の力を借りて、水中を行動する
狙うは相互協力できない離れた船か最後尾の船
近距離からアプサラーのウォーターカッターで船底を破壊

さあ、目覚めるんだアプサラー!君の力と誇りを示すとき
我々の、みんなの海で好き勝手した代償を払わせよう


緋神・美麗
アドリブ歓迎

まだ出てくるかぁ。潰しても潰しても…流石にそろそろうんざりしてきたわねぇ。これで打ち止めになってくれるといいんだけど

不発弾かぁ。それは有効利用できそうねぇ。残しておいても処理に困るだけだろうし、全部有効活用させて貰おうかしら
指定UCで不発弾を撃ちこむ
「これなら爆発するでしょ」
あるだけ艦隊に打ち込んでいく
「葬送の花火になればいいんだけど。これで終わりになって欲しい所ねぇ」



「さぁ、ひと踏ん張り行こうじゃないか」
 浜辺で立ち働く島の住民と海賊達。彼等に明るく声を掛けるのは、ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)。彼の出身はこの島ではないが、それでも此処はグリードオーシャン。自身が生まれた世界の危機は、立ち上がるには十分な理由だ。
「敵は僕達が叩く。ここの砲台はあくまで牽制さ。砲手は決して無理しないように」
「はい!」
 博物学者であると同時に探検家でもあるゲニウスの知見は広く深い。その的確な指示は、周囲の人々に安心感と頼もしさを与えるものだった。
 そんな中、浜に据え付けられた大砲に腰を下ろし、沖を眺めて足をぶらぶら揺らすのは、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)だ。
「まだ出てくるかぁ。これで打ち止めになってくれるといいんだけど」
 流石にそろそろうんざりしてきた。そんな感情を美麗は全身で表していた。
「お嬢さん、危ないよ」
「平気平気」
 だがそれも無理はない。既に彼女は多くの島で幽霊船団を叩き潰して来たのだ。落ち着きを保つ美麗の背を前に、島民達は苦笑しつつも、僅かな頼もしさを覚えざるを得ない。
「先生、『不発弾』はどうします?」
「そうだねぇ。一応カタパルトも作れるんだけど、大砲以上の威力を出せるかな」
 船員が転がして来た鉄の砲弾を前にして、ゲニウスは顎に手を当てて唸る。
「じゃあそれ、私に頂戴」
「大丈夫かい? 美麗嬢」
「今持って来れる分だけでも有効活用させて貰うわ。残しておいても危険なだけだろうし」
「そうだね……じゃあお任せしようか! 住民の皆さんには、ばかすか大砲を打ち込んで貰おうじゃないか!」
「「「おおー!!」」」
 潜水作業服を身に着け、海へと入って行こうとするゲニウスの言葉を皮切りに、船長の指示が飛び、島民達は並べた大砲を咆哮させた。
 次々上がる水柱。迎撃を前に幽霊船達は移動を開始した。艦砲一斉射の前兆である。
 隙の無い陣形を組む為、幾つかの船影が重なった――その瞬間。
 豪速で駆け抜けた黒い風が、それらを貫通した。
 超巨大電磁砲――電磁力により撃ち出す鉄塊を無理矢理加速する、美麗のユーベルコードだ。
「――これなら爆発するでしょ」
 果たして砲弾は着弾と共に爆発。前列の船を吹き飛ばすだけでなく、加速力を保ったままの爆炎が遥か後方の船すらも襲い、たちまち敵陣を赤く染める。
 たった一発の美麗の砲撃は、敵全体の動きに影響を与えていた。幽霊船達は互いの距離を離し、被害を最小限に抑えようとする。
 だがその最右翼、動きに付いて来れない一隻の船底で――異変が起こっていた。
 バキバキ!! メリメリ!!
 大きな斬線が走り始めた船底が、みるみるうちに鋭利に切断された板切れとなって暗い水底へと消えていく。
 侵入する海水。ぎいい、と音を立てて、巨大な幽霊船が呆気なく傾いた。
「さあ、目覚めるんだアプサラー!君の力と誇りを示す時!」
 沈み行く幽霊船に代わって水面に浮かび上がったのは――流水の術を操る悪魔アプサラーと、その背に乗ったゲニウスであった。
「我々の、みんなの海で好き勝手した代償を払わせよう!」
 近くの船に狙いを定め、猛然と襲い掛かるゲニウスとアプサラー。前面を砲で圧迫されている今、水中から密かに近づいた彼に即応出来る艦は存在しない。
 浮足立つ艦隊の中央には美麗の電磁砲がもう一度叩き込まれる。
「これが葬送の花火になればいいんだけど」
 徐々に広がり始める爆炎に照らされ、縦横無尽に動き回るゲニウス達を眺めながら、美麗はそう零すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・ドレッドノート
ボトルシップを解放、真紅の高速戦艦『貴紅』に乗艦。
船速を活かしてマストからの攻撃を回避しつつ、幽霊船の側面に回り込みます。
避けきれない攻撃は閃光の魔盾で受け流しましょう。

「さぁ、海賊の時間です!」
船首を敵艦隊に向けて【紺碧の海賊旗】を発動。
突如95隻の大船団を敵の退路を塞ぐように展開します。

「今です、不発弾を敵船に撃ち込んでください!」
島民と海賊たちに合図して、敵船に不発弾が発射された所で、貴紅の甲板にセットしたキャバリア用R/BSスナイパーライフルで狙撃。
さらに召喚した真紅の海賊船団から副砲と主砲の2段構えの一斉射撃です。
狙いは不発弾。引火させ、誘爆させることで敵船を破壊しましょう!


クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

敵方は大艦隊、此方は少数。数の上では圧倒的に不利とはいえ、数が全てではなし……
どうにか数の劣勢をひっくり返してみるとしましょう

UCを発動、海賊船の怨念を身に纏って機動力を強化、『オーラ防御』により足元を保護し、『ダッシュ』で水面を走って移動できるように

島民には砲弾の補充をお願いしつつ、手持ちの鞄などに砲弾を詰め込み『怪力』で『運搬』。手頃な位置で砲弾を幾つか纏めて『投擲』。そのうち一つを鎖で『串刺し』に、ぶち抜いた衝撃での爆発、誘爆による殲滅を狙う
爆発の衝撃や敵からの攻撃も『オーラ防御』で防ぐ

手持ちの砲弾を使い切ったなら島民の元へと戻って砲弾を補充、同様の手順での攻撃を繰り返す



 戦場を漂う冷たい感触が、浜辺に立つクロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)の元へと収束していく。
(「……前へ」)
 やがてクロスは足を上げると、そっと、海面へ一歩を踏み下ろした。
 押し寄せる海賊船と『鬼火』の海賊団員。彼等が発散する負の気配を逆に利用し、クロスは自身を著しく強化していた。
 ただしこの強化はクロス本人の命を削る。鬼気迫る様子で水面に立つ彼の姿を、島民達は固唾を飲んで見守っていた。
(「敵方は大艦隊、此方は少数。数の上では圧倒的に不利とはいえ、数が全てではなし……」)
 既に半壊しているとはいえ、クロスの目前に迫る敵艦隊は圧倒的だ。だが此方の島民は既に配置につき、迎撃の手筈を整えている。
 ――あとは自身の体力が保つ限り、自在に海上を動き回る事が出来れば。
 そんなクロスの淡い期待をなぞるかのように……沖合に忽然と一隻の船が現れた。
 たちまち幽霊船のマストから禍々しい紫の光が放射されるも、船はそれらを船速だけで躱し、あっという間に側面へと出る。
 悠々と幽霊船に向けられた船首。そこで敵艦を真っ向から見据え腕組みしていたのは、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)。彼が駆るのは、真紅の高速戦艦『貴紅』である。
「さぁ、海賊の時間です!」
 未だ明け切らぬ夜闇をさらに深めるようにして、海上に何かが姿を現す。
 シンの言葉に従い突如として戦場に現れたのは、無数の砲塔を備えた、百隻に迫ろうかという海賊船団であった。
 敵を遥かに上回る数により退路の封鎖を完了させたシンは、戦闘態勢を命じる。
 だが幽霊船団もそのマストをおぞましい程に激しくはためかせ、呪いの光を送り込んでくる。
 二つの船団の間で開かれる戦端。その間隙を縫い、幽霊船団に急接近するのは――クロスだ。
 紫光と砲炎の白に照らされる海面を自在に動き回るクロスの目には、海賊船に満載された敵影がはっきりと見える。彼等は口々にクロスに向けて怨嗟の声を向けるも、手に持つカトラスは遥かにクロスに届かない。
 腰のあたりで揺れる鞄をクロスは両手で持ち、体全体で重々しくスイングする。
 撒き散らされる鉄の玉は――不発弾だ。
 敵船団に向けてばら撒かれたそれらを追いかけるように撃ち出された鎖が、そのうち一つを貫き――次の瞬間、誘爆。
「――っ!」
 次々連鎖する爆発は、たちまちクロスの視界を橙と白の爆風で覆い尽し、そのまま敵船団に大穴を開ける。
 踵を返すクロスを数隻の幽霊船が追おうとした時。
「今です、不発弾を敵船に撃ち込んでください!」
 響くシンの合図と共に、陸で砲声が上がった。
 急ぎマントを翻し、『貴紅』の甲板にセットされたキャバリア用の特大スナイパーライフルの前に実を躍らせるシン。
 スコープを覗き込んだシンの視界には、十字のレティクルのど真ん中を落下する不発弾があった。
 呼吸を整え、トリガーを引き絞る。
「副砲、一斉射!! 続いて主砲を発射してください!!」
 その言葉と共に、幽霊船が大きく爆ぜる。
 シンの狙撃と船団の一斉砲火。その二段構えを前に、全ての不発弾が誘爆。
 発生した巨大な爆発は周囲の幽霊船を焼き焦がし、そのまま水底へと叩き込んだのだった。
 凄まじい衝撃をクロスは展開したオーラで防ぎ、やがて浜辺へとたどり着く。
 果たしてそこでは島民が不発弾を用意して待っていた。
「お願い、します」
「ありがとうございます」
 渡される不発弾をクロスは礼と共に受け取り、急いで鞄に詰めていく。
 再度準備を整え、再び海に赴こうとするクロスが沖を見れば――そこにはシンの海賊船団が、幽霊船団を圧倒する光景が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・セシル
鈍い爆弾が効くために、敵の行動を封じたほうがいいかもしれません。

海賊さん達と交流し、砲弾の運搬と大砲の操作を彼らにおまかせいたします。
出来れば、私の号令に合わせて一斉発砲して欲しいです。

UCを発動。氷魔法と津波を合成した氷の津波で敵の艦隊を迎撃し、凍結させます。足を引っ張ります。
発砲号令を出します。チャンスを狙って炎魔法と稲光を合成した炎の稲光を操作して不発弾を爆発させます。


絡み・アドリブ歓迎



 浜辺を満たす静寂は、波の穏やかさ故ではない。
 ひた押しに迫るコンキスタドールの幽霊船団達が放つ瘴気が、空気をそのものを暗く篭らせていたからだ。
 だが、その中にあって一人輝いていたのは、神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)。
 最善を尽くす事がモットーである彼女は、休むことなく海賊達との交流を深めていく。そして浜辺を行き来する度に、その姿はきらりきらりと瞬き、地上に落ちた星の如く人々の心を癒すのだった。
「それでは、お願いしますね」
「任せて下さい、お嬢さん!」
 セシルと海賊達が打ち合わせを終えたちょうどその時、敵の艦隊が動きを見せる。
 猟兵達の奮闘で大きく削られたとはいえ、未だ戦力は残存している。
 その全てのマストが禍々しい紫に彩られたかと思うと、船速を上げて浜辺に迫り始めた。
 生きとし生ける者を絶望に叩き込む呪詛、『セントエルモストーム』の集団行使である。
 その攻撃範囲に島民達が収まる――寸前。
 海に向けて撃ち下ろす寒風に、セシルの魔女装束が大きく靡いた。
 ばきり。
 海が凍る。
 セシルの足元から波間へ、そして沖合に。
 船団目指して一直線に、波濤を逆さにしたかのような形の白い氷塊が海上に現れ――見る見る内に敵船団へと到達した。
『――』
 びたり、と船団が一隻残らず足を潰される。
「……発砲、お願いします!」
 セシルの号令とほぼ同時、後方で砲声が上がる。
 ひゅるひゅると落下していく弾丸が敵船団に到達する直前、セシルは手に持つ杖を上げた。
 同時に、遠く沖合でぱっぱっと橙色の閃光が奔り、幽霊船を朱に染める。
 炎の稲光に貫かれ――敵船団の至近距離で不発弾が爆ぜる。
 誘爆――そして、轟音。
 木っ端微塵となる船、炎に巻かれて沈んで行く船は半々といった所だろう。だがそれら全てが昏い海の底と沈んで行く。
 島民と海賊達の間では爆発するような歓声が上がる。
 敵が姿を消した時、周囲の空気は清々しさを取り戻していた。
 そして、彼らが覆い隠していた、眩い朝焼けも。
「これで終わり……ですね」
 暁の光に照らされながら、セシルは胸を撫で下ろす。
 この戦いは、猟兵達の勝利で幕を閉じたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月15日


挿絵イラスト