羅針盤戦争〜スイーツは賞金よりも強し
●賞金稼ぎVSスイーツ好きの海賊団員たち
大きな波しぶきをあげて、一艘の海賊船が大海原を駆けてゆく。
「賞金首っ、賞金首はどこにいるのかな~?」
金色の髪に緋色の瞳を輝かせ、コンキスタドールはウキウキと嬉しそうに地図を覗き込んだ。
目指す場所は正直どこでもいい。だって、テキトーな島でも襲えばきっと『彼ら』はやってくるに違いないから。
「ん~~っ、ココでいいや! この島に決定~!」
パッと目についた近場の島を目的地に定めると、コンキスタドールは海賊船団員たちへとあれやこれやと指示を出す。
……しかし、団員たちは互いに顔を見合わせたまま動く気配がない。
『ボスは何でそんな島に行くペ?』
きょとんとした顔で首を傾げる団員たちの姿を見て、コンキスタドールは大きく溜息をついた。そして、無言で賞金首の顔が載った紙を取り出すや否や、配下たちの顔面にぐいぐいと押しつける。
「こいつらを! 見つけて! 賞金を! いただく! の!!!」
島を襲うことが大事なのではない。賞金首を誘い出すことが目的なのだ。
だが、配下たちは小さく肩をすくめると、コンキスタドールから視線を逸らして呟きを漏らした。
『ボクたち、賞金よりも美味しいお菓子が欲しいぺ~』
そのまま楽しそうにお菓子談義を始める配下たちにコンキスタドールは冷めた目を向ける。
こいつらに賞金の価値はわからないだろうから、金でやる気を出すとは思えない。彼らのやる気を出すためには――。
「よーし、一番金額の高い賞金首を見つけたヤツには特別スイーツをやるぞ~!」
『!!??』
自棄になったコンキスタドールの言葉だったが、思惑通り配下たちは気合十分、一斉に持ち場へとよちよち駆けてゆく。
やる気に溢れた配下を前にコンキスタドールは再び溜息をつくも、すぐに気持ちを切り替えた。そんな彼女の頭の中には、もう大量の賞金を手にした自分の姿しかない。
「――さぁ、野郎ども、ガッツリ賞金を稼ぎに行くよ~!」
●スイーツは賞金よりも強し
「みんな、大変! 緊急事態発生なのねーっ!」
わたわたと一人慌てふためきながら、ユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)はカタカタと手元の端末を操作する。すると、宙に浮いたモニターに立派な海賊船の姿が映し出された。
「賞金稼ぎ『メリー・バーミリオン』が、猟兵達の首に掛けられた賞金を狙って動き出したの!」
厄介なことに、メリーはどこか適当な島を襲えば、猟兵がやってくるということを承知している上に、さらにそれを実行しようとしているのだという。だから、それを阻止するためにメリーの海賊船に乗り込んでやっつけてほしいということらしい。
「メリーは猟兵全員の賞金を把握しているみたい」
賞金稼ぎを自称しているだけあり、メリーは賞金首が出てくると欲が出て隙ができるという。そこが狙い目だというユニの台詞に「なるほど」と頷く猟兵たち。賞金首であることを上手くアピールすることで、メリーに対して有利に動くことができるかもしれない。
あれやこれやと考えを巡らせる猟兵に、ユニは「それから……」と言葉を続けた。
「メリーの海賊船の団員たちは甘い物に目がないみたいなのね~」
ペンギンに似た姿をした配下たちも、報酬である『特別なスイーツ』に釣られて猟兵たちの前へと姿を現す。
配下といってもメリーへの忠誠というよりは、お菓子に釣られているというのが実態であるため、交渉次第では快くこちらの要求を呑んでくれるだろう。
「ユニからお話できるのはこれくらいかな。それじゃ、みんな、いってらっしゃい!」
にこりと笑顔を浮かべて猟兵たちを送り出すユニの手元で、グリモアがキラキラと輝いていた。
春風わかな
はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
オープニングをご覧いただきありがとうございます。
●プレイング受付について
【2月17日(水)8時31分から】プレイングを受け付けます。
プレイング締め切りやリプレイに関するご連絡は、タグやマスターページにて行います。
1日に執筆できる人数に限りがあるため、ある程度プレイングを頂戴したら早めに受付を締め切る可能性があること、また問題のないプレイングであっても採用できない可能性があること、ご了承ください。
●このシナリオについて
戦争シナリオです。一章のみで完結します。
シナリオはメリーの海賊船にてレポートしたところから始まります。
船上は戦うに十分な広さがあり、戦闘への影響はありません。
賞金金額をアピールしたり、配下たちをお菓子で手なずけたりすることでメリーに隙ができ、有利な展開に持ち込むことが出来ます。
なので、配下を構うことに力を尽くしていただくことも可能です。
攻撃はユーベルコードのご指定があればOKです。他のことに文字数を割いていただいて構いません。
・プレイングボーナス……賞金首になっている。
なお、賞金は執筆時の情報を参照します。
●メリー・バーミリオンについて
賞金首に関する情報はガッツリ集めています。
賞金額は高い方が彼女にとって魅力的にみえるようですが、判定には左右しません。
配下の海賊団員たちはペンギンに似た姿をしています。
争いごとへの関心は低いです。
一方、甘い物に目がなく、美味しいお菓子や珍しいお菓子の誘惑には勝てません。
触り心地は柔らかくモチモチとしており、ギューっとすると気持ち良いです。
交渉次第では快く触らせてくれます。
●共同プレイングについて
ご一緒される方のID(グループ名も可)を記載ください。
また、失効日が同じになるように送信していただけると大変助かります。
以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『メリー・バーミリオン』
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POW : 野郎共、仕事の時間だ!
レベル×1体の【海賊船団員】を召喚する。[海賊船団員]は【したっぱ】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : お宝発見アイ〜伝説の海賊を添えて〜
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【大海賊の霊】が出現してそれを180秒封じる。
WIZ : 大逆転! 元の木阿弥大津波
自身の【サーベル】から、戦場の仲間が受けた【屈辱の数】に比例した威力と攻撃範囲の【津波】を放つ。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「十六夜・巴」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
パルピ・ペルポル
もちもち…もちもちかぁ。
それはそれでありね。
どうもお探しの賞金首よ。
額はともかく賞金首が目の前にきたら皮算用始めるでしょうから。
その間にまずは配下を手懐けるとしましょ。
ドライフルーツをたっぷり混ぜこんだカップケーキを配るわ。
とある所では金貨108枚で取り引きされるほどの入手困難な珍しい果物よ。
もちろんとっても美味しいわよ。どう?
じゃみんなでティータイムにしましょうか。あ、あとでちょっともちもち…もとい、触らせてもらってよいかしら。
もちもちを取り付けたらお邪魔な賞金稼ぎは糸でぐるまきにして海にぽいしとくわ。
配下もすべて済んだらきちんと
片付けるけどね。
●
目的地に向かって、海賊船は海を突き進んでいく。
島にいけば猟兵に会えると疑う素振りも見せないメリーだったが、配下の海賊団員たちは違う。
『賞金首なんてホントにいるペ~?』
疑わしそうに望遠鏡を覗き込む団員たちの姿をじっと物陰から見つめるのは、この海賊船へと転移したパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)だ。
(「もちもち……もちもちかぁ」)
よちよちぺたぺたと短い足で忙しなく歩き回り、懸命に働く団員たちを見て、パルピは正直な感想を呟く。
「――それはそれでありね」
パルピはこくこくとひとり頷くと、機を見計らってメリーたちの前へと姿を現した。
「どうもお探しの賞金首よ」
「え!!?? うそっ、なんでここにいるの!!!???」
飛んで火にいる何とやら。なぜいきなり目の前に賞金首がいるのかと驚きを隠せないメリーだったが、すぐにそんな些細なことはどうでもよくなった。
「理由なんて別にどうでもいいか~。そんなことよりも、賞金を貰ったら、どうしようかな~」
ウキウキと皮算用を始めるメリーを横目に、パルピは無言ですっとカップケーキを取り出す。それは、正直の実と嘘つきの実で作ったドライフルーツをたっぷりと使ったケーキだった。
突然の甘い香り漂うケーキの登場に、今度は団員たちがどよめく。
『そ、それは……!?』
「このケーキに使っているドライフルーツはね、とある所では金貨108枚で取り引きされるほどの入手困難な珍しい果物よ。もちろん、とっても美味しいわよ。――どう?」
『美味しそうぺ~……た、食べたいっ! 食べてみたいぺ~』
口元から垂れた涎を拭くことも忘れ、配下たちはうっとりとした面持ちでパルピのカップケーキをじっと見つめている。予想通りの反応にパルピは満足そうに頷くと、配下たちに気前よくカップケーキを配り始めた。
「じゃ、せっかくだしみんなでティータイムにしましょうか。あ、あとでちょっともちもち……もとい、触らせてもらってよいかしら」
遠慮がちに尋ねるパルピに団員たちはお安い御用とばかりに皆、OKのサインを出す。
ここが戦場であるということを忘れかねないほど和やかな雰囲気で、パルピは団員たちと一緒にお茶会を楽しんでいた。
だが、メリーはそれが気に入らない。
「ちょっと! 野郎ども、何をやってるんだ……」
大海賊の霊を召喚しようとしたメリーだったが、パルピは雨紡ぎの風糸を取り出して素早くメリーの身体をぐるぐる巻きにして縛り上げる。
「なんだこれ!? 放せー!!」
そして、パルピはじたばたと暴れるメリーをひょいと持ち上げるとそのままポイっと海に向かって放り投げた。その見た目からは想像が出来ない力に思わず配下たちはヒィッと身を縮める。
「見た目だけで判断するのは……ね」
パルピは何事もなかったかのように、涼しい顔でティーカップを傾けた。
このもちもちたちも、全て済んだらきちんと片付けるつもりだけど――。でも、それはこの楽しいお茶会が終わった後のお話。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】
みてみて、あーさん! ペンギン! ペンギンのひといる!(パーカーのすそひっぱる!)
かわいー! うまくこーしょーしたらさわらせてくれるって!(ぐっ)
あまいものに弱いって聞いた!
なのでおれはこれを買ってきました! じゃーん、アイスボックスー!
ジュースこおらせてー、一口サイズにくだいた感じのスイーツ! あまい氷ってしんせんじゃねーかなって!
これあげるからスーさんとおれになでさせて!
もっというならぎゅーっとさせて!(真剣!)
おっけー出たらぎゅーっとしてあーさんとこつれてく!
スーさーん! ペンギンもちふわ~~!!(たったか)
(あーさん=スーさん=スキアファールさん。交互に呼ぶよ!)
スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】
わぁ、ペンギン……もちもち……(裾を引っ張られるが儘である)
しかも甘い物が好きとは、グリードオーシャンってかわいい動物だらけですねぇ
これは張り切って交渉しましょうねトーさん!(ぐっ)
私はこちら、アイスボックスクッキーです
甘い物がお好きと聞いて作ってみたんですよ
市松模様にマーブル、四角かったり丸かったり
味はチョコやストロベリー、抹茶など様々です
沢山ありますから好きなだけ食べてくださいね
そして撫でぎゅーっとさせていただけませんか(真剣な目)
Oh……もちふわ……マジですか
トーさんに抱えられてるペンギン、なんて可愛らしいのでしょう
私も思う存分撫でぎゅーさせていただきますっ……
●
メリーの海賊船へと乗り込んだ茜崎・トヲル(白雉・f18631)の目に最初に飛び込んできたもの――それは、愛らしいペンギンに似た姿をしたメリー配下の海賊団員たち。
「みてみて、あーさん! ペンギン! ペンギンのひといる! かわいー!」
興奮を抑えきれぬまま、トヲルは傍らのスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)のパーカーの裾を引っ張る。
そのスキアファールはというと、嫌そうな素振りなど欠片も見せず、トヲルに裾を引っ張られるがままに団員たちに視線を向けた。
「わぁ、ペンギン……もちもち……」
スキアファールが思わず言葉を漏らした通り、もちもちボディに身を包んだ団員たちはただただあっけに取られたまま、ポカンとした面持ちで二人の猟兵の顔を交互に見つめている。
そのちょっと間の抜けた表情にさえも、愛らしさを感じるのはスキアファールだけか。否、きっとそんなことはあるまい。何しろこんなに可愛い姿な上に甘い物まで好きだというのだ。グリードオーシャンという世界は実に奥が深い。
「ねぇねぇ、スーさん」
ツンツンとトヲルはスキアファールを突くと、身を屈めた彼の耳元に口を寄せて囁いた。
「うまくこーしょーしたら、さわらせてくれるって!」
「これは張り切って交渉しましょうね、トーさん!」
ぐっと二人仲良く気合をいれて、さっそく可愛らしい団員たちと交渉を開始する。
「あまいものに弱いって聞いた! なのでおれはこれを買ってきました!」
じゃーん! と効果音を付けてトヲルが取り出したのは暑い日にピッタリの冷たいスイーツ!
「これはね、ジュースこおらせてー、一口サイズにくだいた感じのスイーツ! あまい氷ってしんせんじゃねーかなって!」
『えぇ!? 氷は甘くないペ……?』
トヲルの予想通り、団員たちの想像を超えたスイーツの登場に一同は驚きを隠せない様子。
一方、スキアファールが用意したスイーツはというと……。
「私はこちら、アイスボックスクッキーです」
市松模様にマーブル、渦巻きといった模様も様々、形も丸やら四角やら多種多様。
味もチョコや抹茶にストロベリーと選り取り見取り。
「甘い物がお好きと聞いて作ってみたんですよ。沢山ありますから好きなだけ食べてくださいね」
「そうそう! オレのもあげるから、あーさんとおれになでさせて!」
――もっというならぎゅーっとさせて!
真剣な表情で訴えるトヲルの隣でスキアファールも真摯な眼差しを団員たちに向けて言う。
「好きなだけ食べていいですから、撫でぎゅーっとさせていただけませんか」
二人の熱意に押されるまま、団員たちは思わずこくこくと頷いた。
正直なところ、甘い氷もカラフルなクッキーもどっちも食べてみたかったから、二人の申し出を断るつもりなんて毛頭なかったのだけど。
「やったー! じゃぁ、これあげるー!」
トヲルから貰った氷を口の中に放り込み、その仄かに甘い初めての味に相好を崩す団員を、約束通りトヲルはギューッと抱きしめる。もっちりとした弾力のあるボディの感触に笑みを浮かべるも、すぐにこの感動をスキアファールにも伝えねばと顔を向けた。
「スーさーん! ペンギンもちふわ~~!!」
ぎゅーっと団員を抱きしめ、たったかと軽やかな足取りでスキアファールの元へと駆け寄るトヲルに抱えられているペンギン団員の愛らしさは言葉に出来ず。ぎゅぎゅっとスキアファールのハートも掴んで離さない。
「あーさんもぎゅーってするでしょ?」
「はい、私も思う存分撫でぎゅーさせていただきますっ……」
スキアファールがトヲルと共に団員たちのもちふわボディを堪能していると、突然、背後から怒りに満ちた女性の声が響いた。
「え~!? ちょっと、ここにも賞金首いるじゃん! しかも二人! って、何で懐柔されてるの!?」
どうやら、この不機嫌な彼女がメリーのようだ。しかし、今は彼女の相手などしている暇は2人にはない。
「――失せろ」
吐き捨てるようなスキアファールの呟きがそのまま衝撃波となってメリーを襲う。
この幸せな時間を邪魔する権利は誰にもないのだから。邪魔者には大人しく退場いただく他、選ぶ道は――ない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神代・セシル
ペンギンさん、私の配下になってくれませんか。特別なご褒美…あげます。ええ、当然甘いものです。
話が終わった後、足にチョコを塗って「こちらのチョコ…欲しい…ですか?」とペンギンさん達に足を差し出します。
あなた達がどんな努力にしても、メリーさんは特別スイーツを出しません…正に嘘付きです。
別のところから持って来た特色スイーツと錬金術で作った異なる味のチョコレートもありますので、遠慮なく食べてくださいね。
みんなに「私を囲わせて」と命令し、スイーツを一つずつ送ります。メリーさんを無視。
ペンギンさんをもふもふしながら「どうしましたか、メリーさん、あなたもスイーツ欲しいですか?」とメリーさんを煽ります。
●
「――ペンギンさん、私の配下になってくれませんか」
唐突に話しかけられ、海賊団員たちは『ペ?』と間抜けな声をあげる。それから、声の主である神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)をまじまじと見つめた。
「私も特別なご褒美……あげます。ええ、当然甘いものです」
思い掛けない誘いに戸惑いを隠せない団員たちとは裏腹に、セシルは「本気ですよ」と言って視線を宙に向けて考える様子を見せる。そして、おもむろに足にチョコレートを塗ると、チョコレートが滴る足先を配下たちに向かって差し出した。
「こちらのチョコ……欲しい……ですか?」
『欲しいペー!』
セシルの問いに間髪入れずに答える団員たち。彼らにチョコレートを振る舞いながら、セシルはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あなた達がどんな努力にしても、メリーさんは特別スイーツを出しません……」
『……えぇー!?』
思い掛けないセシルの言葉に配下たちはチョコレートを食べることさえ忘れて茫然と立ち尽くした。
『そ、そんな……ボクたち頑張ってるのに……嘘だと言ってほしいぺ……』
しょんぼりと肩を落とす団員たちだったが、セシルは残念そうに首を横に振る。
「正に嘘付きです。でも、気を落とさないでください……」
セシルは団員たちを慰めると、どこからか持ってきた特色スイーツと錬金術で作ったチョコレートを取り出した。
『わぁ~い! チョコレートいっぱいだぺ~! こ、これも貰っていいのぺ?』
「はい。異なる味がありますので、遠慮なく食べてくださいね」
『やった~! ありがとうぺ~!!』
セシルの大盤振る舞いにはしゃぐ配下たちの姿を見て、ついにメリーの雷が落ちる。
「こら~っ! 何やってるんだい!?」
しかし、セシルはまるでメリーはいないかのように一切の反応をすることなく、団員たちにスイーツを配りながら話しかけた。
「ペンギンさん、チョコ、美味しいですか?」
『うんうん、甘くてとっても美味しいぺ~。さすが、特別なご褒美ペ~』
セシルは周りを囲む団員たちのもちもちな肌を堪能しながら、ちらりとメリーに視線を向ける。
「どうしましたか、メリーさん、あなたもスイーツ欲しいですか?」
「私が欲しいのはオマエの賞金だーっ!」
メリーは怒髪天を衝くとばかりに腰のサーベルを抜いてセシルに斬りかかった。サーベルから放たれた衝撃波が津波となってセシルを襲う。
だが、Windows of Heartを発動したセシルがその津波に飲まれることはなく。津波の飛沫で濡れることさえなかったセシルの姿を見て、メリーは悔しそうに地団駄を踏むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『疾き者』唯一を
一人称:私 のほほん
武器:灰遠雷、漆黒風
スイーツって、つまりは甘味ですよねー?
ではー、忍びらしく搦め手でいきますねー。
今住んでいるところ(UDCアース)だと、チョコレート手に入りやすいので、それとー。
あと、金平糖もいくつか持っていきましょう。
この甘味あげますからー、この船から退去してくれませんかねー?
金平糖って美味しいんですよー?
あ、一応、防御は四天霊障による結界術+オーラ防御してますしー。
内部三人が援護してくれますのでー。弱点補ってくれますよー?
近づきすぎますと、私、漆黒風刺しますからね?
●
メリーの海賊船へと乗り込むことに成功した馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はぐるりと辺りを見回す。
(「スイーツって、つまりは甘味ですよねー? ではー、忍びらしく搦め手でいきますねー」)
現在の義透の居住地であるUDCアースで今、最も手に入りやすい甘味といえばチョコレートだろう。種類も豊富でどこでも買える。そして、ついでに持ってきたのは金平糖。
「で、どこにいるんですかねー」
義透が静かに目を閉じ、周囲の気配を探ると、すぐに団員の一人を見つけることが出来た。彼はそのまま足音を立てずに団員の背後に回ると、優しくその肩を叩く。
『うわぁぁぁ!?』
吃驚して声をあげる団員に、義透は人差し指を口元にあてて大声を出さないようにと促すと、にこやかな顔で用意しておいたチョコレートを取り出した。
「この甘味あげますからー、この船から退去してくれませんかねー?」
『え……? でも、勝手に船から降りるなんて、ボスが許してくれないペ……』
正直言って、応じることには難しい条件だ。でも、義透が持っているチョコレートは欲しい。
団員の瞳に迷いを見た義透は、ふむと頷くともう一つの包みを取り出した。
「では、この金平糖もつけましょうー」
『こ、こんぺいとう……?』
初めて聞いた甘味の名前に団員の頭上にはてなマークが浮かぶ。
「あれー? 金平糖、知らないですかー?」
義透は笑顔を絶やさずに手にした包みをそっと開いた。その包みの中から現れたのは薄桃色や白色といった淡い色合いの小さな砂糖菓子。
「これが金平糖ですよー。美味しいんですよー? 食べてみたくないですかー?」
『た、食べたいぺ……。でも……』
うーんうーん、と葛藤する団員を見て、もう一押しだと義透が口を開きかけた、その時。
「賞金首、発見~!」
義透に気づいたメリーが襲い掛かろうするが、四天霊障がその攻撃を防ぐ。
「近づきすぎますと、私、漆黒風刺しますからね?」
いつの間にか、義透はキラリと緑色の輝きを放つ棒手裏剣をメリーに向けて構えていた。
ぐっ、とメリーがたじろいだ隙を見逃さず、義透は黒く染まった雷の弓から霊力で作られた矢を放つ。
「穏便に済ませたかったんですけどねー」
残念ですーと肩をすくめる義透の言葉は、追尾する矢から逃げ回るメリーの耳には届くことは――なかった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
もちもちに触れると聞いて!
あ、どーもつゆりんです
攻撃は【ダンス】の要領で船上を跳ね回り回避しながら
★Candy pop内の幸せ気分になる魔法を込めた美味しい飴を
手近な船員のお口にイン
ちょっと過ぎちゃったけど、ハッピーバレンタイン♪
ちなみにそれ僕の手作りです
【料理】は得意なんだ
もっと食べたい?魔法で増えるから食べ放題だよ
その気になればこの船ぜーんぶ埋め尽くせるくらい
それじゃあ一つ条件があります
抱きしめさせて?【誘惑】
わーいっ(ぎゅう
もちもちだあぁ♪
え、なにメリーさん
僕はお菓子作りが大好きなただのか弱い子供だよ
賞金首なんてそんなそんな10億ですけど
ちなみに1番得意なのは薔薇のアップルパイです
●
『賞金首め! 待つペ~!』
海賊船の船上をまるで躍っているかのような軽やかなステップで跳ね回る栗花落・澪(泡沫の花・f03165)を、この海賊船の主『緋色のメリー』配下の団員たちが執拗に追いかける。やる気の欠片も感じられなかった団員たちでさえも、澪の顔だけはわかったようだ――さすが最高額の賞金がかけられているだけのことはある。
しかし、澪としては今の状況は想定外だった。
(「せっかくもちもちに触れると聞いてきたのに!」)
困惑を隠せない澪だったが、すぐに「そうだ!」と嬉しそうな声をあげる。
「こっち、こっち♪」
澪は近くにいた団員を手招きして呼ぶと、その口の中にポンと飴玉を一粒放り込んだ。
『!? 甘いぺ~』
ほわんと夢見心地な団員に向かって澪はパチリとウィンクをすると悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「ちょっと過ぎちゃったけど、ハッピーバレンタイン♪」
幸せな気分になる魔法を込めた飴の味の美味しさは言うまでもない。
ちなみに、この飴も澪の手作りなのだというと団員は尊敬の眼差しを向けた。
『こんな美味しいものが作れるなんてすごいぺ~。……もうちょっと欲しいペ』
ダメぺ? と上目遣いでねだる団員に澪は「いいよ」とあっさりと承諾する。
「魔法で増えるから食べ放題だよ」
ほら、と澪がポンと飴玉の入ったガラス瓶の蓋を叩いてみせると、カラフルな飴がパッと増えた。
その気になればこの船ぜーんぶ埋め尽くせるくらい増やすこともできると澪が告げれば、団員たちはその幸せな様子を想像してうっとりとした表情を浮かべた。
『素敵ぺ~、夢みたいぺ~、いいなぁ……』
「それじゃあ一つ条件があります」
ぴっと人差し指を立て、澪がキリリとした面持ちで見つめると、団員たちもまたつられてピッと姿勢をただす。
「――抱きしめさせて?」
『なーんだ、そんなことでいいぺ~?』
団員たちは二つ返事で応じると、とてとてと澪の傍へ近づいていった。
「わーいっ!」
澪は嬉しそうにぎゅむっと団員の身体を抱きしめる。予想と違わぬもちもちとした心地良い抱き心地に澪はふふっと頬を緩ませた。 しかし、そんな幸せな時間を邪魔する無粋者はどこにでもいるもので――。
「あーー、もう! また!」
スイーツに唆されて全く仕事をしない団員たちに対し怒り心頭のメリーだったが、澪の顔を見た途端にサッと顔色を変える。
「そ、その顔……手配書のトップにあった……!」
「え、なに? 僕はお菓子作りが大好きな、ただのか弱い子供だよ」
ちなみに澪の1番得意なお菓子は薔薇のアップルパイらしいが、メリーにとって大切なのはそこではない。
澪にかかっている現在の賞金額はもちろん、そして着々とその金額を増やしていることもメリーはちゃんと知っていた。
「僕の賞金なんてそんなそんな――えーっと、100,000Gぐらいだっけ?」
「違う、お前の現在の金額は132,300Gだ」
澪にサーベルの切っ先を向けるメリーだったが、だが、そこで彼女は気が付いてしまった。今、ここで澪を倒していいのだろうか、と。もう少し粘れば、澪の賞金額はもっと増えるのではないか、と――。
もちろん、メリーの心に迷いが生まれた瞬間を澪は見逃さない。メリーよりもわずかに早く動いた澪が、その指先をまっすぐ彼女へと向ける。すると、メリーの身体を包み込むように、無数の花びらの嵐が襲い掛かるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW
御待ち遠様デース! 前払いでスイーツを提供しマスヨ、エブリワン!
ワタシが【料理】してきた、フルーツ盛り付けチョコレートタルトで、ペンギンたちを誘惑しマショー!
ちゃんと多めに用意してマス、もう戦う必要はありマセーン!
皆さんはワタシが仕事している間、食事を楽しんでくれればOKデース!
バルタンズ(非UC、アイテムとしてのエキストラ役)も呼んで、彼らへとの食事会を満喫してもらいマショー!
……と、サボタージュするように仕向けて、メリーに向かっていきマース!
適度にUC《ヴァリアブル・ウェポン》の攻撃力重視で撃退デース!
ところでメリーさん。なにゆえ価値観の合わないペンギンを配下に?
●
「御待ち遠様デース! 前払いでスイーツを提供しマスヨ、エブリワン!」
ハイテンションな声が聞こえたかと思ったと同時に姿を見せたのは――メイド服に身を包んだサイボーグだった。
しかし、魅力的なワードを耳にした団員たちには声の主の顔などどうでもよかった。例え、それが賞金首の一人であるバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)であったとしても。
『スイーツ貰えるぺ~!』
わーい、と無邪気に喜ぶ団員たちに、バルタンは早速お手製のチョコレートタルトを振る舞い始める。
イチゴ、オレンジ、バナナ、キウィフルーツ、ブルーベリーといった様々なフルーツをふんだんに盛り付けたタルトは、バルタンの思惑通り団員たちの心をがっちりと掴むことに成功した。
我先にとタルトに群がる団員たちを制止ながら、バルタンは言葉を紡ぐ。
「ちゃんと多めに用意してマス、もう戦う必要はありマセーン! 皆さんは食事を楽しんでくれればOKデース!」
そして、バルタンはパチンと指を鳴らすとバルタンズを呼び出した。
「カモン、バルタンズ!」
バルタンに呼ばれて現れたのは、彼女によく似た姿をした15㎝くらいのロボットたち。バルタンはミニ・バルタンに団員たちをもてなしつつ、一緒にこの食事会を満喫するように言う。
「バルバルバルバル♪」
『あれ? 一緒にこのスイーツ食べないのぺ?』
団員たちは、バルタンの様子に気づいて怪訝そうに首を傾げた。てっきり、バルタンも一緒にスイーツを食べるのかと思ったが、違うらしい。
「ワタシ、仕事しなくてはいけまセン。ご一緒できないのは残念デスガ、皆さんが喜んでくだされば嬉しいデース」
『そうか~、お仕事頑張ってペ!』
ひらひらと手を振ってバルタンを見送る団員たち。
ミニ・バルタンとの食事会に夢中な彼らはメリーに与えられた仕事のことなどすっかり忘れているようだ。
(「作戦成功デース!」)
バルタンは素早く海賊船内を見渡すと、メリーの位置を確認し、まっすぐ彼女に向かって突き進む。
「見つけマシター!」
「え? ちょっと、アンタ、誰……って、その顔は賞金首じゃない!」
メリーはきらりと緋色の瞳を輝かせると嬉しそうに顔を綻ばせた。
「さぁ、野郎共、仕事の時間だよ!」
しかし、メリーの呼びかけに応える団員たちは誰もいない。バルタンが差し入れたチョコレートタルトを堪能することの方が彼らにとって優先すべき事項なのだ。
「あぁー、もう! 大事な時なのに!」
悔しそうに地団駄を踏むメリーに、バルタンはふと頭を過った疑問を正直に口にする。
「ところでメリーさん。なにゆえ価値観の合わないペンギンを配下に?」
「そ、それは……」
そんなこと、メリーが一番聞いてみたい。一体、どこで間違えてしまったのだろうか。
思わず考え込むメリーに生まれた隙をバルタンは見逃さない。バルタンの身体に内蔵された火炎放射器が火を噴くや否や、メリーの身体は赤い炎に包まれた。炎が消えた後には――メリーの姿は、もう、どこにもない。
バルタンはメリーが骸の海へと還ったことを確認すると、晴れやかな声で猟兵たちの勝利を告げた。
「お仕事完了デース!」
大成功
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