羅針盤戦争〜『鮫牙』ザンギャバス大帝とマタタビと猫
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「今日もいい天気だニャー」
「絶好の昼寝日和だニャ―」
暖かな日差し、穏やかな気候。
高台の日当たりの良い岩に寝転んでくつろぐケットシー達。
「ニャ―、これも美味しく出来てるニャ―」
村の特産品である植物が、島一面に咲き誇り実をつける。
熟した実をおいしそうに食べては、気持ちよさそうな表情を浮かべるケットシー達。
島は今日も平和な日常を過ごしていた。
これからこの島に凶悪な肉塊が襲い来るとは、欠片にも思わずに。
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「多分、アルダワから落ちてきたんだろうな。グリードオーシャンの島の一つに、ケットシー達が住んでる島があってな」
暖かな日差しに、穏やかな気候、のんびりとした島民達。コーダ・アルバート(無力な予知者・f02444)が話すのは、夏のバカンスで過ごすには快適な島。
「その島を『鮫牙』ザンギャバス大帝が襲いかかり、全てを薙ぎ払ってしまうという予知が見えた。皆はその島に行って、その事件解決に当たって欲しい」
コーダの言葉に、そいつを倒せば良いのか? と猟兵から声がかかる。
「ああ、悪い。言い忘れていたな。そのザンギャバス大帝は、倒せない」
は? と間の抜けた声が上がる。
「もう一度言う。ザンギャバス大帝は倒せない。無敵なんだ」
叩いても、切り裂いても、潰しても、燃やしても、凍らせても、毒漬けにしても、何なら次元を切り裂いたとしても倒せない。
まさに無敵という他はない。
告げられた言葉に集まった猟兵たちは絶句する。
何をしても倒せない敵を相手に、どうしろというのだろうか。
「まあ、今は倒せない敵だ。けれど、対処法が無いわけではない。このザンギャバス大帝、どうも長時間暴れると飢餓状態になり、獅子のような姿になって撤退するらしい」
つまり島に被害を出さない程度に、暴れるだけ暴れてもらって、お腹をすかせて帰ってもらおうというのだ。
その対応も全力のユーベルコードをぶつける、回避と防御に徹して疲弊させる、島にある道具を使って何か対抗策を考える。手段は考えればいくらでもある。
「ああ、相当頭も悪いみたいだから、策謀や罠にかけるって手もあるな」
ただ、それだけ頭が悪くとも、全てを打ち砕くだけの絶対的な力を有している相手。
油断は禁物だけどな、とコーダは続ける。
「戦う場所は島の浜辺。あんまり内陸へ引き入れると、島に住むケットシーも巻き込みかねないからな。島民の協力は、まず得られないと思っていいだろう」
その言葉に首を傾げる猟兵達。どの島でも、島民は猟兵に対して協力的なのに。
「その島の特産品がな……マタタビなんだ」
猟兵から視線を逸らしながら告げるコーダの言葉に、猟兵達は「ああ……」と呟く。
ケットシーの島にマタタビ。故に島の名前も『マタタビ島』。
島一面に咲き誇るマタタビの実を、年中食べ続けるケットシー達がどうなっているかは、もはやお察しだ。
「まあ、必要な道具があれば貸してくれるだろうし、まともなケットシーも居るかもしれないが、戦闘面において期待するのは難しいだろうな。そういう訳で、ネコ科の猟兵も行くなら注意が必要だ。ちなみに敵にマタタビを与えても何もならないからな?」
むしろ腹が膨れて、暴れる時間が増えるだけだとコーダは告げる。
「まあ、そんな感じだ。それじゃ準備が出来たら、島へ上陸して待機していてくれ。この件、宜しく頼むな」
コーダはそう言うと、鉄甲船をマタタビ島へと進ませていった。
早瀬諒
ちなみに狼はイヌ科です。よし問題ない。
どうも早瀬諒です。
肉塊の如き七大海嘯、ザンギャバス大帝を格好良く追い返しましょう。
プレイングボーナスは、島の装備やユーベルコードを駆使し、ザンギャバスを消耗させる(ザンギャバスはパンチや蛇・獅子・山羊・竜の部位を作っての攻撃をします)となってます。
今回は断章はありません。オープニング公開と同時にプレイングを募集します。
それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
第1章 冒険
『ザンギャバスに立ち向かえ!』
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POW : 全力の攻撃をぶつけ、敵の注意を引き付けて侵攻を食い止める
SPD : 防御と回避に徹し、敵に攻撃させ続けて疲弊を誘う
WIZ : 策を巡らせ、地形や物資を利用した罠に敵を誘い込む
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
ラスボスとして暴食の化身との対決は大事だね?
どっちが真の暴食の化身か勝負だ☆
事前に「肉体改造」を自身に施し、噛み切れない弾力とスタミナを上げておこう!
こっちも頭が割と悪い方なので、ひたすらUC【膨張せし肉肉しい宇宙】で宇宙牛に変身・巨大化!
ぶん殴って、圧し潰して、踏み付ける!!
こっちは傷付いても毒とか受けても変身して回復出来るから問題なし!
食い千切られたりしても膨張していくから大丈夫!
とにかくひたすら巨大化の暴力を振るいまくる!
その場に釘付け出来れば完璧だね♪
島民には避難をしてもらおうね!
勝利の暁には豚肉パーティだよ☆
宗教上の理由がある人はごめんね♪
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どこまでも、のんびりライフを過ごすマタタビ島。
その島に我先にと上陸した、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)は浜辺に立ち、肉体改造をしながら今か今かとザンギャバスを待っていた。
静かな波が浜辺に打ち付けていたが、ザンギャバス大帝が迫っているのか、静かだったその波はどんどんと荒くなっていく。
「ラスボスとして暴食の化身との対決は大事だね? どっちが真の暴食の化身か勝負だ☆」
ユーベルコードを発動するラヴィラヴァ。
巨大な宇宙牛へとその姿を変えると、水しぶきを上げながら姿を見せるザンギャバス大帝。
ラヴィラヴァはその姿を視界に捉えると、自身の前足で殴りつける。
波しぶきを立てながら、再び海に戻されるザンギャバス。
「なんだぁ、おめえ。うまそうな牛だなぁ」
突如目の前に現れた巨大牛に、水中から飛びかかり、巨大化した前脚をがぶりと喰らいつくザンギャバス。
「っ……」
「あぁ? 噛み切れねぇなぁ……」
がりがりと歯を立てて噛みちぎろうとするも、事前に施した肉体改造の効果か、噛み切れない程の弾力性を身につけたラヴィラヴァの肉。
血は流れても、肉は食わせず。前脚を食い千切ろうとするザンギャバスを、ラヴィラヴァは噛みつかれているのとは別の脚で踏み潰した。
「こっちは傷付いても毒とか受けても変身して回復出来るから問題なし! 食い千切られたりしても膨張していくから大丈夫!」
自分に言い聞かせるように、痛みに耐えながらラヴィラヴァは浜辺に落ちたザンギャバスを踏み潰し続ける。
ザンギャバスに噛みつかれて血が出ていた傷は、ユーベルコードを使い、膨張する度にきれいに消え去っていた。
「勝利の暁には豚肉パーティだよ☆」
自身が牛だからなのか、豚肉を強調するラヴィラヴァ。
腹ペコにさせ、追い返したその後の食事を楽しみにしながら、ラヴィラヴァはひたすら、ザンギャバスが砂から起き上がらないように踏み潰し続けた。
大成功
🔵🔵🔵
トゥリース・リグル
連携アドリブ歓迎。
【SPD】で判定します。
無敵、とはまた困りましたね。
…とはいえ、時間稼ぎでよいのならば、何とかなるでしょうか。
【錬成カミヤドリ】で最大数のダガーを複製。
そして複製ダガーで敵の目の部分を重点的に狙い、視覚を妨害していきます。
更に耳の近くでダガーの刃同士を接触させて聴覚の妨害も試みます。
そして自分は【目立たない】ようにしつつ【忍び足+ダッシュ】で静かに動き回り、相手に場所を掴まれないようにします。
攻撃に対しては、【第六感】で事前の察知を試み、【見切り+フェイント】で回避を試みます。
その際、敵の攻撃の軌道により【ジャンプ】・【スライディング】を使い分けていきますね。
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
限定的な無敵ならともかく、本当の意味での無敵や不老不死というものが存在するとは思えませんが……どうあれ少なくとも今は倒せない
なら、求められる仕事を果たすとしましょう
UCを発動して影の獣達を召喚。大多数は『目立たない』よう離れた場所で待機させておき、少数をザンギャバスに対応させる
影の獣はザンギャバスを煽るように動き回って攻撃を誘導したり、或いは自分たちを『追跡』させる事で島の内陸部に移動しないように妨害、わざと捕まって喰われるなどで『時間稼ぎ』を行う
撃破される、喰われるなどで数が減少したなら、待機させていた影の獣を移動させて減った分を補充して常に一定数が相手をできるように心がける
●
猟兵によって浜辺に沈められ、怒り心頭でようやく砂から飛び出したザンギャバス大帝。
「ぐぬぅ……よくもコケにしてくれたなぁ!!!」
苛立ちを顕にするザンギャバス。その荒れ狂う視界に収まるのは、島でのんびりと過ごすケットシーたちの姿。
「あいつらぁ、全部めちゃくちゃにしてやるぅ……!」
「影より来たれ、来たりて征け。獣たちよ」
苛立ちから飛びかかろうとしたザンギャバスに、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)はユーベルコードで影の獣達を召喚する。
(限定的な無敵ならともかく、本当の意味での無敵や不老不死というものが存在するとは思えませんが……どうあれ少なくとも今は倒せない)
ならば、今求められる仕事を果たそうと、クロスは呼び出した影の獣たちを、砂にまみれたザンギャバスへと向かわせる。
「くそぉ、何だコイツラぁ」
足元から、高台から、四方からザンギャバス目掛けて飛びかかる影の獣たち。
ザンギャバスが腕を獅子の頭へと変貌させ、飛びかかる影の獣の一体を噛みちぎる。
食い破り、自身のエネルギーにしようとした獣は、牙を立てられると同時に爆発するように消え去る。
消えた影の代わりに、新たに姿を現す影の獣たち。
「邪魔だなぁ……」
ザンギャバスが体の一部を蛇の姿へと変貌させ、影の獣たちを纏めて薙ぎ払おうと腕を振るった。
「させないです。錬成、カミヤドリ!」
蛇の腕が影の獣たちを消し去る前に、トゥリース・リグル(刃を為すモノ・f00464)が、錬成カミヤドリで複製したダガーを投げつける。
投げつけたダガーは、ザンギャバスの蛇を砂浜に縫い付けるとともに、視界を奪おうとザンギャバスの目を目掛けて飛んでいく。
だが、ザンギャバスの目を狙ったダガーは、ザンギャバスの皮膚を削る程度の傷しか負わせられない。
「ぐぬぅ……邪魔を……」
「っ……」
ダガーが掠めた傷を撫でながら、ダガーを投げた地点へと視線を向けるザンギャバスの視界に収まる前に、トゥリースはダッシュでその場から走り去った。
トゥリースの姿を隠すように、クロスの影の獣たちが視界を隠すように飛び回る。
(無敵、とはまた困りましたね。……とはいえ、時間稼ぎでよいのならば、何とかなるでしょうか)
負わせることの出来た傷はそう多くはない。けれど、トゥリースたちの目的はザンギャバスを倒すことではない。
目的はあくまでも、ザンギャバスを島にあげない事。
そして空腹にさせて、島から追い返すことだ。
クロスの召喚した影の獣が飛び回り、トゥリースの操るダガーがザンギャバスの視界を切り裂く。
時には耳元でダガー同士を交錯させ、音によって二人の移動する音を撹乱させる。
決定的なダメージを与えられずとも、クロスとトゥリース……二人の連携は、ザンギャバスを浜辺に縫い付けることには成功していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
なんでよりによってこの時期にマタタビと戯れてんの!!
かわいいけど!! モフりたいけど!! 何故今が戦争中なのか!!
(慟哭し始める)
ああぁもうおんおん……。しかも食糧になっちゃうしどーしろと。
あっ見える範囲にマタタビあったら高速詠唱で刈り取って遠くに念動力でポイします。頼むから島民さんも逃げてね。
UCで岩と木を積み上げてバリケード化
食糧化しないなら口の中目がけて岩を投入。詰まらせて食えなくなれ。
高速詠唱の催眠術で敵の頭上に架空の食糧を出現させ、頑張って取らせようとする。あれ猫と遊んでるみたいだなこれ。
時たま念動力で煙幕と閃光弾を目に向かって投げるよ。耳元にスピーカー持ってってハウリングもいいな!
ニィナ・アンエノン
いい島だにゃー、にぃなちゃんものんびりお昼寝したいにゃー!
ま、暴れん坊を追い返してからかにゃ☆
とゆー事で浜辺をバイクで走り出す!
砂場だろうけどこの【操縦】テクニックで【悪路走破】して見せるぞ!
なんなら【水上歩行】で海面を逃げてもいいよね☆
ザンちゃんは無敵だろうけど、見た目からしてそんなに砂場をジョギングしたりはしていないと見た!
バイクの【ジャンプ】とかで上手く【パフォーマンス】してこっちを狙ってくれるように誘導、浜辺で追いかけっこしよう!
ユーベルコードでガジェッティアレーザーを複製、広範囲を【地形破壊】して砂場をかき回せばもっと走り難くてお腹も空くでしょ!
さー、にぃなちゃんを捕まえてごらん☆
月白・雪音
この島に漂う香り、これはなんとも魅惑的な…、
……いけません、今よりこの場は死地ゆえに。
にゃんにゃんしている暇はないのです。
UC発動にて、見切り、野生の勘、瞬間思考力で相手の動きを正確に予測
残像で攻撃を回避しつつ、
怪力、グラップル、2回攻撃を駆使し拳打、蹴り、投げにて
攻撃を仕掛ける
御し易い攻撃に対しては怪力、見切り、カウンターにて受け流しつつ反撃、
相手の攻撃誘導と絶え間ない攻撃による消耗を狙う
…やはり、小細工も策謀もなくただ只管に強い、という相手は相性が悪いですね。
されどこの島は、故郷より流れたケットシーの方々にとっての憩いの地なのでしょう。
我らが戦の為に、それを潰させるわけには参りません。
●
「なんでっ!!」
マタタビ島の浜辺に剣戟や銃声が響く中、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は絶叫する。
「なんでよりによってこの時期にマタタビと戯れてんの!! かわいいけど!! モフりたいけど!! 何故!! 今が戦争中なのか!!」
切実な志乃の慟哭。それも仕方ないのかもしれない。
浜辺ではザンギャバスと猟兵たちが激しくぶつかり合っているにも関わらず、島民はマタタビをぱくりと食べながら、高台でのんびりお昼寝中。
戦争中でなければ、思う存分マタタビに酔ったケットシー達をもふもふ出来たであろう。一緒にお昼寝出来たであろう。
「ああぁもうおんおん……。しかも食糧になっちゃうしどーしろと」
「いい島だにゃー、にぃなちゃんものんびりお昼寝したいにゃー!」
「この島に漂う香り、これはなんとも魅惑的な……」
葛藤する志乃とは対象的に、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)と、月白・雪音(月輪氷華・f29413)はのどかな島の空気に寛いでいた。
このまま一緒にお昼寝も……と考えたところで、浜辺で暴れる暴君ザンギャバスを見て、我に返る。
「……いけません、今よりこの場は死地ゆえに。にゃんにゃんしている暇はないのです」
「ま、暴れん坊を追い返してからかにゃ☆」
やることを忘れていなかったニィナは言うが早いか、バイクに跨った。
ブォンとエンジンを吹かせ、浜辺の悪路も気にせずに走り出す。
荒れた砂浜の凹凸を利用して、バイクで空をジャンプ!
「さー、にぃなちゃんを捕まえてごらん☆」
「あぁ? うるせぇなぁ」
バイクで砂浜を走り回るニィナを捕まえようと、腕を伸ばすザンギャバス。
捕まるもんかと操縦桿を握りしめ、加速度を増しながら、ニィナはその手からすり抜けるように走り去った。
「おねーさん、どーしたのー?」
葛藤する志乃の前にふわふわのケットシーが声をかける。その姿を見た志乃はまた絶叫を上げる。
「わあぁぁ! 何でもないの! 島民さんは逃げて!」
「?」
きょとんと首を傾げるケットシー。浜辺のザンギャバスと会わせるわけにはいかないと、志乃は近くにあったマタタビを、高速詠唱で刈り取った。
「頼むから島民さんは逃げて!」
念動力でマタタビを遠くへと投げ捨てる。
餌につられてケットシーが去ってくれればと思ったが、頭上を通ったマタタビをケットシーがジャンプで取ろうと飛び上がった。
「あー」
タイミングがずれたのか、頭上を通り過ぎたマタタビを捕まえられなかったケットシーは、念動力でこの場から離れていくマタタビを追って、島の中心へと去っていった。
「あ、これいいかも」
志乃はそのケットシーの動きを見て、ユーベルコードを発動させる。
降り注ぐ岩と木を積み上げて、ケットシーがこちらへ来ないように、ザンギャバスがケットシーを狙わないようにと、バリケードを作り上げる。
志乃が浜辺へ視線を向ければ、ニィナとザンギャバスの鬼ごっこはまだ続いていた。
「だぁ~~ちょこまかと~~」
ひらりひらりと浜辺をバイクで走るニィナと、それを追うザンギャバス。
「うおっ」
砂浜に足を取られ、砂浜に転んだザンギャバスへ雪音が迫り、怪力を持ってザンギャバスの巨体に殴りかかる。
ユーベルコードを掛けた上での二回連撃、回し蹴り、正拳突き。お得意の攻撃を繰り出すも、ザンギャバスにはあまり効いてはいない。
「……やはり、小細工も策謀もなくただ只管に強い、という相手は相性が悪いですね」
無敵と言われた程の相手だ。倒せないのは分かっていたが、ここまでダメージが入らないのは想定外だ。
(されどこの島は、故郷より流れたケットシーの方々にとっての憩いの地なのでしょう。我らが戦の為に、それを潰させるわけには参りません)
雪音はぐっと力を込める。ここで諦めるわけにはいかないと。
立ち上がったザンギャバスは、殴りかかってきた雪音に、お返しとばかりにパンチで殴りかかる。
そのザンギャバスの動きを見切りながら、再び殴りかかろうと手を握りしめる雪音の耳に、志乃の明るい声が響く。
「おーい、美味しそうな肉があるよー。上を見てみな!」
「あぁ??」
声につられて空を見上げるザンギャバス。そこには志乃が催眠術で生み出した、紐につられ宙に浮く巨大な骨付き肉。
「おおぉっ!!」
催眠術に掛かったザンギャバスは、視界に写った骨付き肉を何とか取ろうと飛び跳ねる。
だが砂浜で飛び跳ねても、思うように飛べないのか、幻の骨付き肉はザンギャバスの手をすり抜け、ゆらゆら宙を舞うばかり。
「くっ、このっ」
ぴょんぴょん飛び跳ねるザンギャバスの足元へ、バイクに乗ったニィナが走り寄る。
「砂場をかき回せば、もっと飛び難くなってお腹も空くでしょ!」
名案! とばかりにザンギャバスの足元でユーベルコードを発動するニィナ。
複製されていくニィナのガジェッティアレーザー。
本来であれば、建造物や乗り物ですらも破壊できる程の代物だ。
今回はその高威力のレーザーで砂をかき混ぜようと、ニィナはレーザー砲の砲口を地面へと向ける。
「せーの、ばぁん☆」
複製したガジェッティアレーザーを、掛け声と同時に周囲の砂目掛けて撃ち放つ。
高威力レーザー砲によって深くまで掘り下げられた砂場は、飛び跳ねるザンギャバスの脚を掬う。
息が荒くなりながら、それでも眼前にある骨付き肉を目掛けて飛び上がるザンギャバスへ、雪音が飛びかかる。
「これで倒れて下さい」
疲弊し、足がもつれた所を、雪音の関節狙いの飛び蹴りが入る。
「ぐ、お?」
膝を折られ、がくりと体勢を崩したザンギャバスは、その巨体を砂浜に転がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エィミー・ロストリンク
【POW】
マタタビにケットシー、つまり酔っ払い!
でも幸せそうな猫ちゃんを見ていたら、守りたくなるよねー?
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
敢えてマタタビを進路に設置して、そこに掘った深い落とし穴を仕掛ける
ザンギャバスが罠にかかって落ちたら、UC「姫君を守護する灼熱の鋼鉄騎士」を発動させ、ガトリングキャノンの連射貫通性能を向上
穴の上からあらん限りのガトリング掃射を食らわせて穴から脱出しないように集中的に攻撃する
蛇・獅子・山羊・竜の部位は優先的に潰していく
穴を脱出しそうになったら、バーニングナックルの渾身の拳の連撃を叩き込み、高熱で皮膚を焼いてもう一度穴に落ちないか試してみる
全力で頑張るよー!
●
「マタタビにケットシー、つまり酔っ払い! でも幸せそうな猫ちゃんを見ていたら、守りたくなるよねー?」
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦したエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)。
アカハガネのモニターに、酔ったケットシーが呑気に昼寝をしている姿が映し出される。
その光景はとても微笑ましいのだが、今エィミーが構うのはケットシーたちではなく、浜辺に転がるザンギャバス大帝だ。
「さってと、全力で頑張るよー!」
体勢を崩し、砂浜でゴロゴロ転がるザンギャバスが起き上がる前にと、エィミーは効率よく作業を進めていく。
アカハガネがひたすら掘り進めるそれは、巨大な落とし穴。
「罠も効くって言ってたもんね!」
グリモア猟兵の言葉に従って、罠を仕掛けるエィミー。
ザンギャバスと穴の進行方向に、目立つよう敢えてマタタビを山盛りにする。穴を簡単に隠して、後はザンギャバスが罠にかかるのを待つだけ。
生身でやれば何時間も掛かる作業も、キャバリアを駆使するエィミーであれば、ほんの十数分で終わる作業。
「ちっくしょ……よくも……ん?」
砂浜に倒れて起き上がるのに苦戦していたザンギャバスが、ようやく起き上がったのを見て、エィミーは姿を隠す。
ありもしない骨付き肉に踊らされ、ひたすら飛び跳ねて疲弊したザンギャバス。
今度は目の前に準備されたマタタビの山に、視線が釘付けとなる。
「おおぉぉぉ!!!」
がくがくになった足で走り出すザンギャバス。
空腹を感じていたザンギャバスは手を伸ばし、後少しでマタタビを……という所で、その身はエィミーが仕掛けていた大穴へと落下していった。
「アカハガネちゃん! 一気に決めに行くよ!」
穴から這いずり出ようとするザンギャバスを前に、エィミーは一時的に停止させていたキャバリアを起動する。
同時にユーベルコードを発動させれば、アカハガネのガトリングキャノンの威力は跳ね上がる。
「そらーーーっ!!」
「どおおぉぉぉぉっ!!」
連射貫通性能を向上させたガトリングキャノンで、ひたすら連射する。
穴の中に落ちたザンギャバスは蜂の巣になるはずなのに、そこは無敵を誇るザンギャバス。
エィミーの放った弾丸が皮膚を滑っているのが、アカハガネのモニターへと映し出された。
(倒せないって本当だったんだ!)
まともなダメージを与えられていなくても、それでもこの場に縫い留めておけるならと、エィミーはひたすらにガトリングキャノンを撃ち続ける。
「だあぁぁ! うぜえぇぇ!!」
穴の上からただ撃たれ続けるのがうっとおしくなったのか、ザンギャバスが穴から這い出ようと壁をよじ登る。
どれだけ撃ち抜いても、よじ登るザンギャバスの手が穴の縁を掴む。
「ダメー!」
これ以上の銃撃は効かない。そう判断したエィミーは、ガトリングキャノンを手放し、渾身のバーニングナックルをザンギャバスの手へと打ち込んだ。
「いででででっ!」
高熱で皮膚を焼きながら、拳の連撃を叩き込む。
熱に焼かれ、掴んでいた手をひたすら打ち付けられたザンギャバスは再び穴の中へと落ちていく。
「ここからは出さないんだからね!」
穴に落ちていったザンギャバスを、再びアカハガネのガトリングキャノンが撃ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
ビードット・ワイワイ
駄目だこの島…
我がオブリビオンマシンは増える
分裂機のアウトレンジキャンセラーを使用し煙幕を出し
更に催眠術をかけ認識を阻害
残像を出し視覚を奪い狙いを定めさせず
生体キャバリアの本能から第六感と見切りで
受け流し脚から衝撃波を出し勢い良く後退
飢餓の呪詛を込めた誘導弾を放ち
付かず離れず徐々に削っていく
半生物故食われそうになったなら全機自爆
我が機体は分離した事による流血しておるが
こちらに向かってくるならば念動力で自機を
吹き飛ばし誘導弾を放ちながら後退する
アスカ・ユークレース
まともにやり合うのも馬鹿馬鹿しい、ドローンで私の分身を映写して奴を誘惑する美味しそうな匂いを流して適当に相手しましょ
私は少し離れてお茶でもしばく……からっ……!
くっ……!
しまった、油断したわ……!
なんちゃって、かかったわね?
そこには爆撃で範囲攻撃する罠を仕掛けてたの
自爆覚悟の大爆発
これで一気に削れたんじゃないかしら
私自身?別にUCで回復…というか再構成し続ければ問題なくない?
耐久度HP雑魚だけどほぼ残機無限の私と恐ろしく頑丈だけど(多分)残機一つだけの貴方、どっちが強いか試す……いい機会だと思わない?
●
「駄目だこの島……」
浜辺では、ザンギャバスとの戦闘が繰り広げられているのも関わらず、のんびりとマタタビを食べて、高台で昼寝をするケットシー。
それを眺めて、もふもふしたい葛藤に悩まされる猟兵を見ながら、ビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)黄昏れたように呟く。
それでも今は戦争中で、目の前には対処するべき敵がいる。
首を振って気持ちを切り替えると、穴に落ちたザンギャバスが出てくる前にと、ビードットはユーベルコードを発動する。
分裂し、次々に生み出されるビードットと同型の機体。
「我がオブリビオンマシンは増える……さて、行こう」
穴からザンギャバスが出てきたのを確認して、ビードット達は動き出す。
分裂機のアウトレンジキャンセラーを使用し煙幕を出すと、周囲は煙で覆われる。
「機械が……メシの邪魔すんなぁ!」
視界が消えても、感覚はそれなりにあるのか。ザンギャバスは蛇の腕で周囲の複製ビードット達を薙ぎ払う。
分離したことで血を流すビードット本体は、足から衝撃波を出して後方に下がった。
「はあ、まともにやり合うのも馬鹿馬鹿しい……」
分かりきった穴に落ち、煙幕に感覚を奪われるザンギャバスを見ながら、アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)はため息を吐きながら呟いた。
かくなるうえは、ドローンで自身の分身を映写して、適当に相手をすればいいかと、アスカはドローンの操縦を始める。
「私は少し離れてお茶でもしばく……」
煙幕に包まれる中、甘い匂いを放ちながら、ドローンがアスカの姿を映し出したのを確認して、その場から離れようとしたアスカの背後から、勢いよく襲いかかるザンギャバス。
「しまった!」
アスカが気付いた時には、その身体はザンギャバスの口の中に捕われて。
「やっと飯にありつけるなぁ……」
「くっ……!」
ニタリと笑うザンギャバスに、噛み付かれ苦悶の表情を浮かべるアスカ。
けれどもそれは一瞬で。
「なんちゃって、かかったわね?」
くすりとアスカが笑う。今にも食い千切ろうとするザンギャバスの咥内で大爆発が起きる。
「があぁ!?」
「そこには爆撃で範囲攻撃する罠を仕掛けてたの」
爆発の拍子に咥内から逃げ出したアスカは、身体を再構築しながらザンギャバスに笑いかける。
「がっ!」
爆発で体勢を崩したザンギャバスに、ビードットの飢餓の呪いが込められた誘導弾が撃ち込まれる。
「大丈夫か?」
「私? 別にUCで回復……というか再構成し続ければ問題ないわ。……というか、再構成中はあまり見ないでいただけると助かります……美しく、ないので」
「そ、そうか……」
血まみれで肉が吹き飛んでいるアスカにビードットが声をかければ、再構成中だったアスカはどこか恥ずかしそうに答える。
「ぐっ、うぅぅ……」
疲弊した身体に撃ち込まれた飢餓の呪いは、一気にザンギャバスの空腹感を膨れ上がらせていく。
「どう? 耐久度HP雑魚だけどほぼ残機無限の私と、恐ろしく頑丈だけど残機一つだけの貴方、どっちが強いか試す……いい機会だと思わない?」
挑発的なアスカの言葉に、空腹MAXなザンギャバスは、目を充血させながら睨みつけて。
「覚えてろよぉぉぉ!!!」
その姿を獅子の姿へと変貌させると、脱兎の勢いで島から去っていった。
「あら、終わり?」
「そうみたいだな」
島に残された二人は、唐突に去っていったザンギャバスを見送った後、そっと島の様子を見回った。
島の中はザンギャバスが来る前同様、のんびりとした空気が流れていた。
大成功
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