羅針盤戦争〜無敵大帝に下す鉄槌の名
●ザンギャバス大帝
不気味なる肉塊が島へと堕ちる。
その衝撃たるや凄まじい。大地を揺らし、抉る。まるで隕石か何かが落下したのだと言われても信じてしまいそうに為るほどの質量。
「ふしゅるるるるるる……」
肉塊は人であった。
いや、人ではない。巨人。体躯は一般的な巨人よりも更に大柄なるものであった。実に7mはあろうかという巨躯。
しかして、知るがいい。
その暴威たる名を。
その残虐なる大帝の名を。
そう、その名は『ザンギャバス大帝』
七大海嘯『鮫牙』直轄になった凄腕のコンキスタドール、その猛者たちをして怯えさせ、一切の抵抗すらも許されずに無残なる肉片に変え、貪り喰らう無敵と言われるにたる七大海嘯である。
「気に入らねぇ。コロす」
殺意と食欲の同化した存在。
それがザンギャバス大帝である。その肉塊の如き姿は、一つの島に降り立つ。スペースシップワールド、かつて銀河を行く宇宙船であった残骸。
はるか彼方からやってきた宇宙船の残骸が大地へと姿を変えた島であるが、ザンギャバス大帝の降り立った衝撃で宇宙船の防衛施設が偶然にも起動したのだ。
無数に放たれる宇宙船の防衛機構。
だが、それらを物ともせずにザンギャバス大帝は咆哮する。それは、彼が感じ取った一つの気配であった。
許しがたきもの。
彼のみなぎる殺意が、彼自身を突き動かす。
「グリモア、グリモアの匂いだあ……!」
その瞳が爛々と輝く。殺意と食欲、そして如何なる理由からかわからぬほどに研ぎ澄まされた力が咆哮と共に迸る。
「グリモアを使うやつ、ゼンブコロしてヤル……!」
大帝の名を持つコンキスタドール。
飢える無敵たる暴食と殺戮の七大海嘯が今、動き出す――。
●羅針盤戦争
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。グリードオーシャンにて『蒼海羅針域』を巡る大きな戦いが引き起こされる島の一つ……いえ、今は一つの船と言った方が適切でしょうか」
そう告げるナイアルテの瞳にあるのは、微かな躊躇いであった。
今回の戦いは言うまでもなく七大海嘯であるコンキスタドールとの戦いである。彼女は猟兵達の実力を知っている。けれど、それでも彼女は躊躇っていた。
「……残念ながら、今回現れた七大海嘯『鮫牙』、ザンギャバス大帝と呼ばれるコンキスタドールは『無敵』なのです。私の予知からも、彼を倒すことはできません」
スペースシップワールドから堕ちてきた宇宙船の残骸が大地となった無人島の中心にザンギャバス大帝は飛来したのだ。
だが、かの『無敵』たるコンキスタドールは今の状態では倒し切ることはできない。
「ですが、幸いにも『長時間暴れると飢餓状態になり、獅子のような姿になって撤退する』のです。その弱点を突き、全力の皆さんの攻撃でこれを迎え撃ち、消耗を狙っていただきたいのです」
それは来たるべき『鮫牙』の本拠地での戦いにおいて意味在る戦いになることは言うまでもない。
もう一つ猟兵たちにとって幸いであるのが、かつてのスペースシップワールドを航行し、今は無人島へと姿を変えた嘗ての防衛機構がザンギャバス大帝の飛来によるショックで起動し、彼を異物として排除しようと動いているということである。
「はい、これらの防衛機構をうまく利用し、ザンギャバス大帝を消耗させていただきたいのです。さらに、彼は白痴と呼べるほどの知能しか有していません。ですが、その強大な力は七大海嘯直下のコンキスタドールですらも一撃で屠るほどの力を持っています。攻撃を受ければ――」
即ち、重大なる傷を負うことにほかならない。
故にこの戦いにおける猟兵達は己の持てる全力で持ってザンギャバス大帝に打撃を与えなければならない。
それには作戦や策略も極めて有効であろう。
いわば、七大海嘯『鮫牙』との前哨戦。
ここで倒すことはできない。
けれど、攻撃すればするほどに消耗し、飢餓状態へと至るだろう。
そうなれば、きっと本拠地での戦いも優位に進めることができる。それができるのは猟兵を置いて他にいない。
「ザンギャバス大帝は、拳や獅子、蛇、山羊、竜の部位を作って攻撃してきます。言うまでもなく、それだけでも致命傷に成りかねない攻撃です。どうか、お気をつけて……」
ナイアルテは、その瞳に心細気な色を湛えながらも、猟兵たちを案ずる。
それしかできぬが、それでも信じるほかない。送り出す自身が信じる彼らこそが、猟兵最高の戦力であるからだ。
故に、彼女は憂いを払って頭を再び下げて、送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『羅針盤戦争』の戦争シナリオとなります。
スペースシップワールド由来の宇宙船が大地となった無人島において、七大海嘯『鮫牙』、ザンギャバス大帝と戦うシナリオになります。
しかし、『無敵』と称されるほどにザンギャバス大帝は凄まじい力を持っています。ここで倒すことはできませんが、消耗させ撤退に持ち込みましょう。
ザンギャバス大帝は強大なコンキスタドールですが、白痴故に皆さんの作戦や策略が極めて有効であると言えるでしょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……島の装備やユーベルコードを駆使し、ザンギャバスを消耗させる(ザンギャバスはパンチや蛇・獅子・山羊・竜の部位を作っての攻撃をします)。
それでは、羅針盤戦争を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります。
第1章 冒険
『ザンギャバスに立ち向かえ!』
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POW : 全力の攻撃をぶつけ、敵の注意を引き付けて侵攻を食い止める
SPD : 防御と回避に徹し、敵に攻撃させ続けて疲弊を誘う
WIZ : 策を巡らせ、地形や物資を利用した罠に敵を誘い込む
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
ラスボスとして暴食の化身との対決は大事だね?
どっちが真の暴食の化身か勝負だ☆
事前に「肉体改造」を自身に施し、噛み切れない弾力とスタミナを上げておこう!
こっちも頭が割と悪い方なので、ひたすらUC【膨張せし肉肉しい宇宙】で宇宙牛に変身・巨大化!
ぶん殴って、圧し潰して、踏み付ける!!
こっちは傷付いても毒とか受けても変身して回復出来るから問題なし!
食い千切られたりしても膨張していくから大丈夫!
とにかくひたすら巨大化の暴力を振るいまくる!
その場に釘付け出来れば完璧だね♪
島民にはオイラごと砲撃してもらおう♪
勝利の暁には豚肉パーティだよ☆
宗教上の理由がある人はごめんね♪
ラスボスと無敵大帝。
その二大巨頭による決戦は凄まじい激突と共に始まった。
食欲と暴力。それらを兼ね備えた七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝の力は強大と言うにはあまりにも無敵であった。
ただの拳の一撃が七大海嘯直下となるに値するコンキスタドールすらも肉片と変える。その拳の一撃を受ければ如何なる猟兵とて無事で済むものではない。
「ふしゅるるるるるる!!! コロす。全てコロす」
圧倒的な食欲と暴威のままにザンギャバス大帝は進む。肉塊の如き姿であったとしても、その一歩を踏みしめる度に大地となったスペースシップワールドの嘗ての宇宙船は揺れに揺れた。
防衛機構が動いているとは言え、それらの攻撃を持ってしてもザンギャバス大帝の歩みは止まらないのだ。
「ラスボスとして暴食の化身との対決は大事だね? どっちが真の暴食の化身か勝負だ☆」
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)はビビットピンクなカラーのゲル状の体をたわませながら、ザンギャバス大帝へと迫る。
すでにその体は調理済みと言っていいほどに肉体改造によって噛み切れぬ弾力とスタミナを獲得している。
確かにザンギャバス大帝は白痴と呼ぶにふさわしい知能しか持ち合わせていない。そこに策略はなく、ただ、暴威を振るうだけの装置と化しているのが現状であろう。
「悪いけど、こっちも割りと頭の出来はよろしくない方なので! 嗚呼、世界はかくも美味しいのか!さぁどうぞ召し上がれ♪」
そのゲル状の身体が膨れ上がっていく。
それは無限に巨大化する宇宙牛。膨張せし肉肉しい宇宙(ラ・エトワール・デ・ラ・ヴィアンド)と呼ぶにふさわしい姿である。
ザンギャバス大帝の腕が彼女の体を掴んで引き寄せ、その噛合によってラヴィラヴァの肉を噛みちぎろうとするが、凄まじい弾力に阻まれ苛立ちを募らせるのだ。
「この肉ゥ! 噛みちぎれない……! 邪魔だ」
振り払おうとするが、それでもラヴィラヴァの巨大化した宇宙牛としての肉体は容易に払うことができぬほどに圧倒的な質量を持つ。
「何度でも変身できるんだからね、こっちは! どれだけ食いちぎったって膨張していく宇宙には敵わないでしょう!」
巨大化した拳が振り下ろされ、ゲル状の身体と膨れ上がった暴食の権化がぶつかり、衝撃波が周囲に広がっていく。
「この場に釘付けにする!」
ひたすらにゲル状の拳をもって押しつぶし、踏みつけ続ける。
宇宙船の防衛機構から放たれる弾丸や熱戦はラヴィラヴァをも巻き込んでザンギャバス大帝を追い込んでいく。
彼女自身は変身の度に負傷が回復し、巨大化していく。
それはまで増殖と呼ぶにふさわしいユーベルコードであり、その無限に続くかに思える圧倒的な質量で持ってザンギャバス大帝を押し留め続けるのだ。
「勝利の暁には豚肉パーティだよ☆」
それはまるまるとしたザンギャバス大帝を見てラヴィラヴァが思いついたパーティであったが、今目の前にしている暴威を前にはわずかに食欲も落ちるであろう。
だが、そんなことを感じさせないのがラヴィラヴァのラスボスたる所以である。
どんなに食欲がなくたって、彼女が料理を振る舞えばたちまちに食欲増進というものである。
けれど、そんな彼女にもどうしようもないことだってある。
「宗教上の理由がある人はごめんね♪」
人の信条まで曲げることができない。
故にラヴィラヴァは冗談めかしながら、それでも凄まじい質量で持ってザンギャバス大帝を彼が落下してきた地点に釘付けにし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ・絡み歓迎
「遅滞戦闘、試してみますか」
【WIZ】策を巡らせ、地形や物資を利用した罠に敵を誘い込む
●戦闘
「勝手知ったる他人の家ですね」
SSW出身の【メカニック】である自分にとって、宇宙船の残骸は宝の山同然。
UCを発動し、自らは移動しながら宇宙船の防衛機構を掌握しながらザンギャバスに攻撃。
「CODE:DELIBERATE ATTACK。周辺構造物スキャン、掌握、遅滞戦闘開始」
私自身は光学【迷彩】で隠れ、防衛機構の遠隔【操縦】に努める狙いです。
迎撃機構であるセントリーガン、電磁ロック式の扉を利用した電撃トラップ、防衛用ロボットの自爆。壊れた・動かないものはUCで砲台にして使います。
嘗ては銀河の海を行く宇宙船であった残骸。
それがこの島の土壌を築き上げたというのは、俄に信じがたい事実であったが、この世界が他世界の島からなる海洋世界であることを考えれば、よくぞ今まで宇宙船の防衛機構が生きていたものだと、クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)は思ったかも知れない。
彼にとって、この島は非常に都合の良い場所であった。
七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝の7mにも及ぶ巨躯は猟兵に寄って落下した場所から少しも動いていない。
この島が無人島であることを差し引いたとしても戦果であった。
ザンギャバス大帝が動くということは即ち、彼の者の暴食の標的になるということだ。無人島であるがゆえにそれを考慮しなくてよいということは猟兵たちにとってアドバンテージと成り得ただろう。
だが、それでも無敵大帝と呼ばれるザンギャバスの力は強大であった。
「遅滞戦闘、試してみますか」
クネウスは、その瞳をユーベルコードに輝かかせる。
そのユーベルコードの名は、DELIBERATE ATTACK(ディリバレイトアタック)。
「周辺構造物スキャン、掌握開始。勝手知ったる他人の家ですね」
スペースシップワールド出身のメカニックであるクネウスにとって、この島は宇宙船の残骸と言えど宝の山である。
さらに彼のユーベルコードに寄って、周囲にある残骸全てが拠点攻撃用の砲台群に変換され、防衛機構と合わさって凄まじい数の砲弾がザンギャバス大帝へと打ち込まれるのだ。
「コロす。コロす。グリモアを使う者はゼンブコロす」
ザンギャバス大帝の何がそうさせるのかわからない。
けれど、その拳の一撃が凄まじい衝撃波となって周囲に飛び、放たれた弾丸の尽くを失墜させる。
なんという威力。
これが七大海嘯直下のコンキスタドールをも一撃のもとに肉片に変える無敵たる力であるというのか。
「これが無敵たるザンギャバス大帝ですか……ですが!」
クネウスは、この嘗ての宇宙船であった島の地面に触れる。
メカニックとしての彼の知識が教える。この島は、宇宙船は生きている。例えもう銀河の海を行くことはできなくても、生命のゆりかごであったものだ。
その責務も果たそうと今まで朽ちること無く存在していたのだ。
「ならばこそ、迎撃機構には働いてもらいます。その責務を、その意義を今ここで果たせ――!」
クネウスが光学迷彩によって地面からハッチを見つけ出し、コントロールパネルに電源を灯す。
やはり此処にある。
言うまでもなくこれが己の世界の産物であることを自覚させられる。
クネウスのメカニックとしての技量に寄って次々と防衛機構が展開されていく。セントリーガンや熱線がザンギャバス大帝の肉塊の如き体に飛び、その侵攻を更に遅らせる。
「邪魔をスルな! お前達は気に入らない、グリモアの匂いがするぅ!」
振るう拳が蛇の頭部へと変形すれば、周囲に合った防衛機構を薙ぎ払っていく。
ただ、それだけのことであるというのに光学迷彩によって隠れたクネウスにまで攻撃の余波が届く。
わずかにザンギャバス大帝の足が動く。
だが、クネウスは焦ってはいなかった。彼のメカニックとしての技量と知識が輝く。
「そこは電磁ロック式の扉がある……!」
あの巨体を落とし込める程の大きさはないが、それでもぬかるみに足を取らせる程度のことはできたはずだ。
さらに電磁ロック故に開放された電力がザンギャバス大帝の皮膚を灼き焦がす。
そこへ、ダメ押しのように防衛用ロボットを突っ込ませ、自爆させてはザンギャバス大帝を消耗させる。
壊れた防衛用ロボットさえもクネウスはユーベルコードによって砲台へと変換し、さらなる砲撃を持って、ザンギャバス大帝を押し止める。
「ここまでの物量を持ってしても倒し切るには至らないとは……大帝と名乗るだけのことはあります……ですが、倒せぬわけではない。ここで消耗させきってしまえば!」
そう、目指し『鮫牙』の本拠地。
そこでの決戦を視野に入れ、確実に倒す。今できることは消耗だけでしかないのだとしても、クネウスは絶望などしない。
数百、数千年もの時間を過ぎて尚、稼働し生命を護ろうとする防衛機構を前にすれば、クネウスはメカニックとしての矜持と共に今も尚、ザンギャバス大帝を押し留め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
實生・綿糸楼
【アドリブ、共闘歓迎】
倒すことのできぬ敵か…実に恐ろしい。
だが、飢餓状態にさえできれば勝機があるのだな
私の躯体では向こうの攻撃は一発でも当たったらアウトだろう。
SPD重視で相手の攻撃を避けることに専念したい
鬼ごっこの要領で宇宙船残骸の中で生きている防衛機構に誘導
レーザー式のトラップや自動砲台の集中砲火を浴びせれば動きを鈍らせることくらいは可能だろう
私は【指定UC】の力で罠が作動する前に潜り抜けていくがな
倒せぬなりの排し方、ご覧に入れよう!
暴食の権化の如き肉塊。
それが七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス大帝である。その姿、その威容、言うまでもなくこれまで猟兵達が対峙してきた敵の中でも異様な存在であったことだろう。
今のザンギャバス大帝を、力の増した猟兵では倒し切ることができない。
予知から得られた驚くべき事実。
けれど、それでも猟兵達は立ち止まらない。
今は倒せなくても、消耗させ撤退させることはできる。この島が無人島、そしてスペースシップワールド由来の宇宙船が大地となった島であることが幸いしていた。
防衛機構がザンギャバス大帝が飛来した衝撃で起動し、これを迎撃してくれていることが猟兵たちを助ける。
それでもなお動きを止める気配すらないのは、猟兵たちにとって驚くべきことであった。
「倒すことのできぬ敵か……実に恐ろしい」
實生・綿糸楼(二代目實生忍軍棟梁・f31351)は比較的新しい妖怪である。
彼女の一族の歴史は浅い。
されど、彼女たちの持つスピードと美しさを兼ね備えた技は無敵と呼ばれたザンギャバス大帝の攻撃の尽くを躱す。
彼女の体ではザンギャバス大帝の放った拳の一撃に耐えられない。
それは彼女が特別脆いというわけではない。
かのザンギャバス大帝の拳はただの一撃でさえも、七大海嘯直下のコンキスタドールすらも肉片に変える。
「邪魔だ。邪魔をするな。グリモアの匂いがするやつらはゼンブコロす。コロす。邪魔をスルものもコロす」
肉塊の如き身体が山羊の頭部へと一部を変え、その雄々しき角でもって周囲を取り囲む防衛機構を薙ぎ払っていく。
未だその足の一歩すら進めぬのはこれまでの猟兵達のユーベルコードと戦略があればこそであろう。
ここで一歩も行かせない。
このザンギャバス大帝を消耗させずに次なる島へと移動させてしまえば、その島で起こる残虐なる宴は想像に難くない。
故に、錦糸桜は青色が眩しいその忍び装束を翻して戦場を駆け抜ける。
倒し切ることは出来ない敵。
それは恐ろしい敵である。
「だが、飢餓状態にさえできれば勝機があるのだな」
彼女は巧みに自分へとザンギャバス大帝の注意を惹きつけるように立ち回りながら、鬼ごっこの要領で持って防衛機構に誘導していく。
ザンギャバス大帝の足取りが重いのも計算の内だ。
「ちょこまかと。鬱陶しい……!」
ザンギャバス大帝は白痴。それ故に誘導や策略に何の疑念も抱かずに嵌ってくれる。それが彼女の幸いであった。
レーザー式のトラップや自動砲台の集中砲火がザンギャバス大帝を襲う。
誘導したが故に錦糸桜もまた巻き込まれそうになるが、そこは彼女が新しい妖怪であるゆえに、何の心配も要らない。
火線と砲弾が舞い飛ぶ最中、彼女は華麗に舞う。
指先から弾いた妖怪メダルの柄がきらきらと輝きながら宙に舞い、それを素早く手にとった錦糸桜は己に『スカイフィッシュ』――そう、彼女の一族の証である妖怪メダルの力、實生流忍法【天駆】(ミバエリュウニンポウ・アマガケ)でもって砲弾の雨をかいくぐるのだ。
それはカメラに写りづらくなるほどの超加速。
誰も彼女を捉えることはできない。
「さぁ、無敵大帝ザンギャバス! 捉えられるなら捉えてみせよ!」
疾走る。その姿は青き閃光のように戦場にありて誰も彼女の姿を正しく認識することはできなかっただろう。
それは無敵と呼ばれたザンギャバス大帝ですら同じであった。
気配は感じる。けれど、捉えられない。
苛立つ咆哮が周囲に反響し、衝撃波となって錦糸桜を襲うが、その全方位なる攻撃すらも彼女を捉えることができないのだ。
「倒せぬなりの排し方、御覧に入れよう!」
凄まじい速度で戦場を駆け巡り、ザンギャバス大帝ですら翻弄してみせた錦糸桜は、新しい妖怪でありながら、その名を世界に轟かせるように青色の忍び装束が見せる残影と共に、ザンギャバス大帝を消耗させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【不死蝶】
戦いは力だけでは勝てない…が
突き抜けたパワーがあれば馬鹿でも勝ててしまうのか
倒せない、喰らえば重傷必至か
まずはUC発動し、辺り一帯を暗闇へと変化させる
これで敵は視認能力が著しく下がり
攻撃も当たりにくくなるだろう
必然的に僅かな光や音を頼りにすることになる
ここでスペースシップワールド技術の出番
暗闇の中でレーザービームが放たれれば
敵はそこに何者かが居ると思って
攻撃を仕掛けてくるだろう
更にUCの紅い蝶を人の形の象るように群れさせて
あたかもそこに人が居るように見せかける
こうして敵に攻撃対象を誤認させて時間を稼いでいくぞ
くるくる動き回る光が目に入る
綾のやつ、こんな時でも敵をおちょくっているな…
灰神楽・綾
【不死蝶】
これで知能も持ち合わせていたら
カルロス・グリードなんて目じゃなかったかもねぇ
いかに攻撃を喰らわないようにしつつ
相手の気を引き続けるかが大事なわけか
どちらが生きるか死ぬかの殺りとりがしたい俺には
ちょっと物足りない戦いだけどね
まずは黒揚羽(アイテム)を頭から覆い闇に紛れる
敵が暗闇に目が慣れてきたとしても
そう簡単に俺の姿を見つけられないようにという保険
UC発動
暗闇で一際強く輝く、炎と雷のオーラのナイフを生成
それを投げてはその場からすぐ離れる、を繰り返す
念動力でナイフを操り
ダンスのようにくねくね動かしたり
敵の顔の傍でまるで虫のように纏わりつかせたり
おバカな大帝さんをちょっと煽っちゃおう
無敵大帝は止まらない。
いや、止まることを知らぬと言ったほうが正しいかも知れない。
かの七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝にあるのは暴力と暴食。殺すという事は即ち食すということであり、食すということは殺すと同義である。
それ故に強い。
圧倒的な肉塊の如き姿であっても、島の防衛機構だけではザンギャバス大帝を止めることはできない。
例え、七大海嘯直下のコンキスタドールであったとしても拳の一撃だけで肉片と化すのだ。
それは猟兵もまた例外ではない。
「戦いは力だけでは勝てない……が、突き抜けたパワーがあれば馬鹿でも勝ててしまうのか」
そう呟いたのは、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)であった。彼のサングラスの奥にある瞳に映ったザンギャバス大帝の肉塊の如き巨躯はどれほどのものとして目に映っただろうか。
倒せない、攻撃を喰らえば重症必至。
その考えは正しい。けれど、ここで引いてしまえば、飢餓状態にならぬザンギャバス大帝は無人島であるこの島を出て、人の居る島へと飛び込んでいくだろう。
そうなってしまえば、どうなるかは想像に難くない。
故に梓は退けない。その意志を慮るように、けれど気負うことはないのだというように灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は軽口を叩くように言う。
「これで知能も持ち合わせていたら、カルロス・グリードなんて目じゃなかったかもねぇ」
綾は笑っていた。
いや、いっそ不敵であった。その言葉は軽口のように冗談であったけれど、それでも存外真実であったかもしれない。
二人は言葉を交わす必要などなかった。言葉にせずともすでに互いが為すべきことを理解していた。
「グリモアの匂い! いる! コロす。ゼンブコロす。グリモアを使う奴らはゼンブコロす!」
ザンギャバス大帝の瞳が輝く。
その肉塊の如き身体の一部が獅子の頭部へと変形し、防衛機構から放たれる攻撃全てを飲み込んでは動き出すのだ。
そこへ飛び込んできたのは紅い蝶の群れであった。
「美しいだろう?闇に輝くこの紅は」
その瞬間、戦場は紅い蝶が舞う闇夜へと帳を下ろす。
暗闇に包まれた世界。
それこそが、梓のユーベルコードであった。胡蝶之夢(バタフライナイトメア)のような光景。
闇の帳の中では視認能力が落ちる。さらには僅かな光や音に頼らざるを得ない。本能的に動くザンギャバス大帝であれば、この策略は効くはずだ。
さらに綾が群れる黒いアゲハチョウにまぎれて疾走る。例え、ザンギャバス大帝の目が即座に暗闇に対応するのだとしても彼の姿を捉えることは難しいだろう。
「どこだ! 出てこい!」
咆哮が響き渡る。ザンギャバス大帝へと疾走るのはスペースシップワールドの遺物である宇宙船の防衛機構から放たれるレーザービームの一撃である。
それは熱線であり、同時にそこに何かが『在る』と思わせるには十分であった、肉塊の如き巨躯が飛び、レーザービームを放った防衛機構を押しつぶす。
「遅いな……のろますぎる」
梓の声がした瞬間、そこへと走るのはザンギャバス大帝の身体が姿を変えた蛇の頭部であった。
しかし、その蛇の頭部が捉えたのは紅い蝶が人の形をとっただけの存在だった。蛇の顎に飲み込まれたのはユーベルコードの輝きのみ。
そこに梓はいない。
代わりに綾のユーベルコードの輝き、暗闇でひときわ強く輝く炎と雷のオーラが迸る。
「魔法使いの真似事みたいなものだよ」
綾の放ったマスカレード・ブレードが飛び、ザンギャバス大帝の身体へと突き刺さる。
その攻撃の軌跡はザンギャバス大帝にとっては、位置を知らせるようなものであったが、綾は巧妙であり同時に梓の補助は完璧であった。
綾がおちょくるようにマスカレード・ブレードを操る。
怒りに任せて突進してくるザンギャバス大帝を暗闇が包む世界で躱し、梓は紅の蝶を人型のように為しながら、翻弄するのだ。
「おバカな大帝さん。こっちだよ、こっち」
綾の笑う声が響く。それは彼に取って酷く癇に障る声であったことだろう。
確かに今、ザンギャバス大帝は倒せないだろう。
無敵と呼ばれる存在。それを前にして梓も綾も戦いを長引かせるだけ長引かせていた。
かの大帝は飢餓状態になれば戦えなくなり、撤退する。
例え、この場に駆けつけた猟兵全ての力を合わせてもザンギャバス大帝を倒すことはできない。
ならば、ここで消耗させられる限りさせてしまおうというのだ。
「綾のやつ、こんなときでも敵をおちょくっているな……」
仕方のないやつ、と梓は綾のトリッキーな光の動きをフォローすべく力を尽くす。一撃でもらってしまえば、倒れてしまう。
だからこそ、梓は綾を理解していた。
彼が好むのはどちらかが生きるか死ぬかの殺りとりだけだ。
「――ちょっと物足りない戦いだけどね」
けれど、負ける理由にはなっていないと綾は梓のサポートを受けながらオーラを纏ったマスカレード・ブレードを操り、ザンギャバス大帝を退けさせ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
暴虐の化身のようなあの方から島を守るため
どうか力をお貸しください
自身に加護を与えてくれている神様をその身に降ろし
授かった力による召喚で呼び出した英霊の皆様の力を借りて守り抜いてみせます
貴方の飢餓が先か、わたしの心が折れるのが先か根比べ……です
1人で駄目なら2人、2人で駄目なら4人……
倒れる度に新たな変身によって追加の英霊さんを召喚し最後まで耐え抜いてみせます
口上や変身バンクが恥ずかしいとか言ってられません
ザンギャバスはもとより気にもしないでしょうし
英霊の皆さんも戦いで忙しいから気にしていられない…………と良いのですけど
いえ、きっとそうに違いありません
だから大丈夫、まだいけます
アドリブ歓迎です
残虐と暴虐、そして暴食の権化。
それが七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝であった。
この島が無人島であったことは不幸中の幸いであった。もしも、人の存在があればザンギャバス大帝は己の食欲の赴くままに人々を襲い、その血肉を貪り食い、飢餓状態に陥ることなく虐殺を続けたことだろう。
同時にこの島の土台がスペースシップワールドの宇宙船の残骸であることも幸いしていた。
ザンギャバス大帝が飛来したショックにより、船の防衛機構が目覚めたのだ。
それは偶然にも思えたかも知れないが、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)はそうは思わなかった。
彼女には判っていた。
これはきっと、この宇宙船が本来持っていた責務。
命を守るためのシステムであると。だからこそ、他者の生命を己の食欲を満たすための存在としか認識できぬ肉塊の如き無敵のザンギャバス大帝に抵抗しようと起動したのだと。
だからこそ、彼女は力を振るう。
その瞳がユーベルコードの輝きに満ちる。
「暴虐の化身のようなあの方から島を護るため、どうか力をお貸し下さい」
ソナタは祈るように自身に神を降ろす。
それはユーベルコード、転身譜(カミヤドスショウジョノキセキ)。
可憐な衣装をまとう魔法少女に変身したソナタの元に彼女の願いに答えて戦う英霊が召喚される。
「グリモア! またグリモアを使う奴らが来た! コロす! ゼンブコロす!」
咆哮する肉塊を前にしてソナタはひるまなかった。
恐ろしさはあったかもしれない。けれど、その身に宿した神の力がある。ソナタの心は折れない。
この程度で折れるわけにはいかないのだ。
「貴方の飢餓が先か、わたしの心が折れるのが先か根比べ……です」
だが、その瞳は些かも陰り無く。
英霊が飛ぶ。その力はソナタの島を守りたいという願いに応える物であった。島の防衛機構から放たれる攻撃は確かにザンギャバス大帝に吸い込まれているが、その尽くが彼の肉体が獅子の頭部に変形し、咆哮で持って撃ち落とすのだ。
それはソナタが召喚した英霊もまた同じであった。
咆哮の衝撃波だけで英霊が吹き飛ぶ。なんという力であろうか。一騎当千。そう呼ぶにふさわしく、無敵と呼ばれるのもまた理解できる圧倒的な力。
「ですが、神様……! 力を!」
ソナタのユーベルコードが再び輝く。
そう、彼女の心が折れぬ限り、何度でも英霊は呼び出される。
一人がダメなら二人、二人でダメなら四人。
まるで乗算のように増えていく英霊たち。何度も吹き飛ばされる。
「か、神様……それはちょっと恥ずかしい…………です」
彼女が身におろした神が伝える口上。それは微妙に毎回違うし、魔法少女の衣装が何度も変わるのだ。
人はそれを変身バンクと呼ぶ。
その度にソナタは成れぬ前口上を告げるものだから、心が折れるというよりは羞恥に頭がクラクラしそうであった。
「英霊のみなさんも戦いで忙しいから気にしていられない……と良いのですけど」
恥ずかしい。
とても恥ずかしい。顔が真っ赤になってしまう。けれど、ここでザンギャバス大帝を止め、消耗させなければ彼の暴虐を赦してしまう。それだけはなんとしても防がねばならない。
だからこそ、ソナタは頭を振って己の心に浮かんだ羞恥を吹き飛ばす。
「いえ、きっとそうに違いありません。だから大丈夫、まだいけます」
ならば、次これよろしくとおろした神が言う。
さ、流石にこれは、とソナタは躊躇う……ことはなかった。
彼女は、猟兵である。
今は確かに魔法少女でもあるのだ。故にそなたは口上に迷いなど無く、淀みもなく、可憐なる衣装をふるりと翻して英霊たちを召喚させ、戦いに挑むのだ。
それは羞恥すらも乗り越え、果敢に戦う英霊を鼓舞するソナタの弾けるパッションとキュートさが織りなす独壇場となって、ザンギャバス大帝を退けさせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブも連携もOKデース!
HAHAHA! 無敵とは恐れ入るでありますが、対策がわかっているのなら大丈夫デスネー!
叩きのめしてあげマース!
ミニ・バルタンを1体お手伝いに派遣して、防衛機構のサポートをしてもらいマース! 隔壁とか銃火とかデスネー。
ワタシはザンギャバスの前に出て、UC《ヴァリアブル・ウェポン》の攻撃力特化で【弾幕】展開デース!
まー、無敵なのでそのまま突っ込んでくるデショー。なので地形を利用して引き撃ち戦法デース!
ミニ・バルタン経由で防衛機構とのコンボを決めつつ、接近されないよう攻撃デース!
無茶はしないよう気を付けて参りマース! チャンスがあったら他の人の援護に回りマスネー!
15cm程の二頭身のメイドらしき衣装に身を包んだ自立型サポートロボットがトコトコとスペースシップワールドから海洋世界であるグリードオーシャンに落ちてきたことにより発生した島の防衛機構へと歩み寄る。
その姿は可愛らしいものであり、緑色の髪が特徴的な姿をしていた。
防衛機構は、それを敵としてみなしていなかった。防衛機構が敵として認識しているのはたった一つだけだ。
そう、様々な銃火器の砲火の的になっているのは七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝である。
その7mほどもある肉塊の如き身体へと次々と放たれる弾丸や火線は、けれど肉体を獅子の頭部に変形させて放つ咆哮の前に失墜する他なかった。
けれど、とことこやってきたサポートロボットが防衛機構をサポートし始めてから全てが変わった。
「HAHAHA! 無敵とは恐れ入るでありますが、対策がわかっているのなら大丈夫デスネー!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は緑のみつあみにした髪をふるりとなびかせながら戦場に降り立っていた。
そう、あの小さなサポートロボットの主であるバルタンは、ミニ・バルタンに命じていた。
防衛機構は今、ザンギャバス大帝を狙うだけしかしていない。
異物を排除しようとしているだけなのだ。それは直線的な攻撃であるからこそ、ザンギャバス大帝には通用しない。
ミニ・バルタンは次々と防衛機構とつながり、この島に残された遺物を起動させていく。
隔壁を展開し、ザンギャバス大帝を取り囲む。そもそも移動させないことが前提であるがゆえに、ここに止め、そして展開した銃火器で袋叩きにするのだ。
「そうデース! 叩きのめしてあげマース!」
バルタンはユーベルコード、ヴァリアブル・ウェポンによって展開された内蔵兵器を展開し、ザンギャバス大帝の前に踊り出る。
「お前からもグリモアの匂いがするぞぉ。コロす」
振るった拳が衝撃波となってバルタンを襲う。
その一撃を受けてしまえば、自分は戦闘不能に為るであろうことは想像に硬くなかった。それほどまでの一撃。
だが、バルタンは落ち着いていた。
何のためにミニ・バルタンを配置したと思っているのだ。
隔壁がバルタンの前に展開し、盾のように衝撃波から身を躱す。
「まー、無敵なのでそのまま突っ込んでくるデショーって思っていたら、ドンピシャの力押しのゴリ押しデスネー」
芸がない、とバルタンは内蔵兵器で引き撃ち戦法によってザンギャバス大帝の肉塊の如き身体へと遠慮なしに全力の攻撃を叩き込んでは展開される隔壁の影から影へと飛び移っていく。
さらに防衛機構から放たれる火線がザンギャバス大帝の身体を焼く。
これほどまでに攻撃を叩き込んでも尚、ザンギャバス大帝は倒れない。
無敵と呼ばれる所以でも在るのだろう。ここで倒しきれないというのがよくわかる。けれど、消耗させることはできるのだ。
「コロす。お前達はゼンブコロす。ひとり残らずだ!」
その恐ろしき咆哮。宣言。
けれど、バルタンは軽快に笑う。無茶はしない。それにどれだけザンギャバス大帝が強かろうが、接近されなければいいのだ。
それを為すのがミニ・バルタンと防衛機構の連携だ。
さらにバルタンは接近されないように立ち回る。その立ち回りは完璧であった。同時にこの戦いに参加している猟兵たちをサポートするように援護し続け、バルタンはメイドとして、同時に歴戦兵としての役割をまっとうするように華麗なる戦法でもって、ザンギャバス大帝を術中にはめ込み、一歩も移動させることはなく、消耗戦へともつれ込ませたのであった。
「ハロー! ご機嫌斜めなザンギャバス大帝。任務遂行ために全力を尽くさせていただきマース!」
そういって打ち込まれる内蔵兵器の数々。
その膨大な威力を持って、さらなる消耗へとザンギャバス大帝をいざなうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…敵が目の前にいるのに倒しきる事が出来ない、か
…歯がゆいけど致し方無いわね
"今は"敵の消耗を第一に行動するわ
事前に島中の監視カメラで敵の行動を観察
敵の動作や攻撃法、能力等を戦闘知識に加える
…成る程、確かに話に違わぬ強さね
…だけど実際に闘っている姿を見れた。十分、対処できる強さよ
UCを発動して敵の殺気を暗視して攻撃を見切り、
円の動きで怪力を受け流し攻撃力を加えた大鎌をなぎ払い、
生命力を吸収する呪詛を付与するカウンターを乱れ撃つ
…無駄よ。お前の攻撃はもう見切っている
…強いだけの力に敗けるほど、私の業は甘くない
…さあ、我慢比べよ。私がこの構えをとる限り、
此お前は一歩たりともこの先には進めないと知れ
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の歯が鳴る。
それは口惜しさとは違った感情であった。
「……敵が目の前にいるのに倒し切る事が出来ない、か」
そう、彼女が目の前にし、多くの猟兵が戦いを挑んでいるのは七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝である。
かの無敵と呼ばれる大帝は、これだけ多くの猟兵の攻撃を叩き込んでも尚、消耗に持ち込むしかないほどに強大な敵である。
それが予知からわかっていたことであるが、リーヴァルディはどうしようもないとも思っていた。
「……歯がゆいけど致し方ないわね」
飲み込んで彼女は戦場を駆ける。
そう、『今』は敵の消耗を第一に行動するしかないのだ。事前に無人島であり、スペースシップワールド由来の宇宙船の残骸である、この島の生きていた防衛機構が備えていた監視カメラでザンギャバス大帝の行動を観察する。
多くの猟兵がユーベルコードを叩き込み、ザンギャバス大帝を飛来した時点がから動かしていないことは驚異的な戦果であると言えるだろう。
だが、それだけの力を持ってしても仕留めきれない。
「……成程、確かに話に違わぬ強さね」
けれど、リーヴァルディにとって実際に戦う姿を見れたということは大きかった。同時に彼女は理解した。
十分に対処できる強さであると。
そう、かの巨躯、巨魁とも言うべきザンギャバス大帝の攻撃はどれもが絶大な威力を持っている。
だが、白痴でもあった。
知能が高いとはいい難いし、同時に多くの猟兵がそうしたように策略や作戦によって翻弄することが十分に可能であった。
「そして、私ができることがある――」
瞳がユーベルコードに輝く。
すでにリーヴァルディは十分に視た。
ザンギャバス大帝の大振りな拳。
様々な獣の頭部に姿を変形させる身体。その特徴のすべてを視て理解していた。
故に、ザンギャバス大帝に吸血鬼狩りの業・封陣の型(カーライル)を破ることなどできようはずもないのだ。
「……お前に、この構えを破る事はできない」
「何を言っている。邪魔だ」
ザンギャバス大帝の拳が振りかぶられ、振り下ろされた瞬間大地となった宇宙船の残骸がいとも容易く崩壊する。
けれど、リーヴァルディには一切当たっていない。生まれた衝撃波すらも届いていないのだ。
それは対象の力の流れを見切り、受け流す流水の型。手にした大鎌を円の動きで受け流し、そのままザンギャバス大帝へと大鎌で薙ぎ払う。
生命力を奪う呪詛を刻み込みながらリーヴァルディの斬撃がザンギャバス大帝を襲う。それは恐るべき戦いであった。
全ての攻撃を紙一重でリーヴァルディは躱し続ける。
その髪が衝撃波にさらわれる度に、彼女の身体は木の葉のようにひらりと宙に舞うのだ。
「……無駄よ。お前の攻撃はもう見切っている」
リーヴァルディの冷静な声が響いた瞬間、乱れ打たれるは呪詛を込めた斬撃。
その尽くがザンギャバス大帝の身体を刻むが、無敵たる巨躯はものともしないのだ。
「負けない。負けることはない。お前達はゼンブコロす。グリモア! グリモアの匂いがスル限り!」
咆哮が迸る。
それさえもリーヴァルディの大鎌は切り裂き、戦場を駆ける。
「……強いだけの力に敗けるほど、私の業は甘くない」
煌めく大鎌の斬撃と共にリーヴァルディはザンギャバス大帝の進撃を阻む。
それは体躯では敵うべくもない小さき者であったかもしれない。
けれど、ザンギャバス大帝は一歩も進めない。
彼女の小さな体を振り払うことができないのだ。
「……さあ、我慢比べよ。私がこの構えを取る限り、此れよりお前は一歩たりともこの先に進めないと知れ――」
絶対なる宣言。
彼女の業。
それは無敵たる大帝をしても押し通ることなどできはしないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
むかつくわね。知性も、理性も欠片もなく全てを貪ろうとするその在り方
それ以上その浅ましいツラを私にみせるんじゃないわよ!
進撃しようとしてきたら足下に「迷彩」化で潜行させておいた「飢渇」地雷を起爆し転倒させる
その隙にUCで飢渇を最大限召喚し、飛龍の群れに変身させ、「集団戦術」で地上と空の全方位から群がらせて「捕食」で押さえつける
「飢渇」竜が喰われて傷ついたらさらな巨大な竜に変身、増殖させる
ついでにどこまでが「無敵」なのか試してやろうかしら
敵が喰らった「飢渇」を体内から「微塵」化して「爆撃」
「飢渇」に仕込んだ「骨身」や「血潮」による「毒攻撃」「マヒ攻撃」を試しつつ
エネルギーにさせないよう消滅させる
かつて異なる世界に在りしは、狂気の産物。
それは人をより良い家畜に改良する目的によって死肉を繋ぎ合わせて作られた人形であった。
異形なる業。
背徳と傲慢が為せる業。その傲慢が生み出したのは、植え付けられた飢餓衝動であった。足りない。足りない。何かが足りないと喘ぐ姿を哀れと想うのであれば、それは間違いである。
デッドマンと呼ばれる存在であったとしても、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)の瞳には知性と理性があった。
どれだけ飢餓衝動が迸るように胸のうちから溢れ出るのだとしても。
彼女の瞳に映る七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス大帝の肉塊の如き巨躯は、彼女にとって唾棄すべきものであった。
「むかつくわね。知性も理性もかけらもなく全てを貪ろうとするその在り方」
苛立ちが衝動を超えたのかもしれない。
メフィスが抱える飢餓。
その対極にあるであろう、暴食の権化。
七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は、己の欲望の限りを尽くす。それは、この島がもしも人が済む島であったのだならば、彼の食欲のままに島民は殺され貪り喰らわれたことだろう。
許し難い。
「なんだぁ、お前」
ザンギャバス大帝の瞳に宿るのは暴虐と暴食の欲望だけであった。
対峙するメフィスですら、捕食の対象にしか視ていない。それは怖気すら走る感覚であったかもしれないが、彼女は躊躇わずに口火を切るように叫ぶのだ。
「それ以上その浅ましいツラを私に見せるんじゃないわよ!」
迸る激情のままに叫ぶ。
それがどれだけ危険な行いであるかをメフィスは理解していただろうか。
いや、理解していたとしても止められない。彼女の心を、身体を突き動かす衝動は止められない。
ザンギャバス大帝の巨躯が走る。
それは突進というには生易しいものであったが、振るった拳に触れればメフィスと言えどバラバラになってしまう。
けれど、その足が止まる。
瞬間、ザンギャバス大帝の足元が弾ける。それはメフィスの眷属が潜行していた『飢餓』の地雷が起爆した瞬間であった。
7m程の巨躯が傾ぐ。
大地へと重たい音を立てて、ザンギャバス大帝が転倒する。
「群れて、集れ。貪り尽くすまで」
メフィスの瞳に輝くはユーベルコード。
彼女の飢餓は、即ち群(ムラガル)である。抱える飢餓衝動が形をなし、飛竜の群れとなって空のあらゆる方角からザンギャバス大帝へと群がる。
肉塊の如き身体を様々な獣の頭部に変形させて迎え撃つザンギャバス大帝。
その力は凄まじいの一言に尽きる。
空中を走る蛇の頭が飛竜の一つを丸呑みにし、獅子の咆哮が大地へと失墜させる。山羊の雄々しき角が地上に在りてもなお、翼を引き裂く。
「邪魔をするな!」
ザンギャバス大帝の戦い方は、大雑把だった。
ただの力押しでしかなかった。故に、メフィスが恐れる理由にはならなかった。倒されて捕食されても構わない。
倒れた飛竜、その飢餓の群れをさらに結集させ巨大な竜へと変身、増殖させ続けるだけだ。
「どこまでが『無敵』なのか試してやろうかしら」
体の外は言うまでもない。
ならば、身体の体内はどうだ、とメフィスは不敵に笑った。今、ザンギャバス大帝の腹の中には食いちぎられ、飲み込まれた眷属である『飢餓』が在る。
指を鳴らした瞬間、『飢餓』に仕込んだ躰を聞い破り現れる骨の武具が、内側から弾けるようにしてザンギャバス大帝の身体を貫く。
その姿は凄まじい光景であった。
あれだけ無敵であったザンギャバス大帝もまた内部からの攻撃には傷つかざるを得ないのだ。
「アンタに利する、エネルギー源にさせるわけないでしょう! 食いたければ食えばいい。だけど、その度にアンタの腹を突き破ってあげるわ」
メフィスの号令とともに飛竜がザンギャバス大帝を襲う。
外と内の二重による攻撃に寄ってザンギャバス大帝は遂に膝をつく。
だが、それでもなおザンギャバス大帝を仕留めるには至らぬ。
咆哮し、ザンギャバス大帝は一掃猛り狂うように力をふるい続ける。その恐るべき力と対峙してもなお、メフィスは己の抱える『飢餓衝動』が収まるどころか、燃え上がるようにして、目の前の暴食の権化を憎むように果ての見えぬような、消耗戦へと飛び込んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ビードット・ワイワイ
こう、何か一発逆転の一手が欲しいところ
このままではフォーミュラより厄介だぞ
都合の良い伝説の剣なぞ無いので自身のキャバリアのパラサイト展開
宇宙船の武器に寄生させ武器改造
砲同士を無理やり結合し過剰にエネルギーを供給させ一発一発を強化し再起動
更に強力になりし一撃を見よ
レーザーに腐食毒と貫通属を付与し一斉射撃し砲撃
砲台への寄生と再起動を繰り返し絶えず逃亡しながら攻撃をし続け消耗させる
こちらがされそうになれば機体そのもとと砲台を寄生させ動力を暴走
零距離で炸裂させることで大ダメージを狙う
「ふしゅるるるるるる!!!」
破壊の権化、無敵であるザンギャバス大帝は息を吐き出しながら、島の中心から一歩も進めぬことに苛立っていた。
七大海嘯『鮫牙』たるザンギャバス大帝にとって拳を一振りすれば、七大海嘯直下のコンキスタドールであっても即座に肉片へと変えることができた。
それは言うまでもなくザンギャバス大帝が強大な存在であるからだ。
だが、数多の猟兵達がそれをさせない。
己達の持つユーベルコード、それらの全力を持って無敵である存在を押し留めているのだ。
だが、それだけの猟兵が集まってもなおザンギャバス大帝を倒すには至らない。
「こう、何か一発逆転の一手が欲しいところ。このままではフォーミュラより厄介だぞ」
ビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は侵鞭蝕手パラサイトを展開させながら、うめいた。
彼には都合の良い伝説の剣なぞない。
故に彼自身のキャバリア、生体パーツを用いたパラサイトを展開し、スペースシップワールドから堕ちてきたことによってこの島へと変貌した防衛機構に寄生し、改造していく。
砲台同士を無理矢理結合し過剰のエネルギーを供給させていく。
「一発の威力が低い……わけではないが、それでもあの無茶苦茶なやつの皮膚を焼く程度しかできないなら、過剰供給で増幅させてやれば!」
砲塔に集まっていくエネルギーによって負荷がかかる砲台。
それをパラサイトによって無理矢理結合させたことによってエネルギーのキャパシティを増やすのだ。
再起動した放題の姿はまるでハリネズミのような姿になっていた。
「いや、どっちかというと雲丹みたいではあるが……更に強力になりし一撃を見よ」
無数の放題が連結した姿は確かに雲丹のようであったが、エネルギーを蓄えるタンクが増設されている。
砲塔が連結しひとつな巨大な砲塔へと姿を変える。
極大なるレーザーの一撃がザンギャバス大帝の肉塊の如き巨躯へと内放たれる。
「邪魔をスルな。邪魔だ、グリモアを使うヤツ!」
獅子の咆哮がレーザーを無効化するように放たれるが、けれど出力の増した一撃は咆哮の衝撃波で防げるものではない。
貫通したエネルギーから腐食毒がザンギャバス大帝の身体を蝕んでいく。
膨大なエネルギーを連射することはできなかった。
何故なら砲身が持たないのだ。
けれど、ここからが実行殲滅機構・骸機寄生(アクセス・ターミネイトオーダー・パラサイト)の本領である。
パラサイトの触腕が再び砲身が溶け落ちた放題に触れた瞬間、再び起動し始める。
それこそがビードットのユーベルコード。
残骸であったとしても、それを触腕でもって再起動させる。
「コロす!」
「我がお前に近づかせると思うか。―周辺損傷機体精査…適合可能。パラサイト展開、侵蝕増殖開始。損傷個所補填再起動。速やかな殲滅を実行します」
放たれるビームが再びザンギャバス大帝を貫く。
肉の焼ける音と匂いが立ち込めるが、それでもザンギャバス大帝は構わず突っ込んでくる。
ならばと連結させた砲台をぶつけ、ゼロ距離で動力を暴走させ炸裂させながらビードットは再び触腕でもって嘗ての宇宙船の防衛機構の残骸を連結させ、その本分を全うさせるように再起動させる。
「消耗戦を強いてもなお倒せぬ……だが、必ずや徹底はさせてみせる」
この宇宙船に残った防衛機構がそうであったようにビードットもまた己の為すべきことを為す。
例え滅びが確定しているのだとしても、その一歩手前は必ずやハッピーエンドにしなければならない。破滅に向かうためのハッピーエンドであったとしても、最後に笑うのは彼ではないのだとしても。
それでもビードット・ワイワイは己の存在意義を果たすために触腕を振るい続けるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
「こう言う手合いは苦手なんだけど、まぁ是非もないか」
指を鳴らして蒸気王を召喚し搭乗する
方針は、島の方々に依頼して広い平野に【トンネル掘り】で擂鉢状の巨大な穴を掘ってもらう事。欲を言えば、分厚い粘土層で表面をコーティング仕上げしてもらえればなお良しです
方針は蒸気王で奴と会敵し【先制攻撃】でぶちかまし
後は【怪力、推力移動】で用意された場所に突っ込みたいですね
「さぁて、遊んであげるわ……このオイル蒸気王でね!」
【メカニック】でアルダワ錬金科謹製の潤滑オイルを展開
ぬめりと取っ掛かりの少ない丸みを帯びた装甲で攻撃を【受け流し】、巧みな【グラップル】技術で、奴が嫌になるまでローションレスリングです
数多の猟兵達のユーベルコードが輝く。
その光景を見やる島民たちが居ないことは、幸いであった。
この島は嘗てのスペースシップワールドから堕ちてきた宇宙船の残骸に寄って成り立つ島である。
本来であれば人が住んでいてもおかしくはないが、今は無人島であることに感謝する他なかった。
無敵なる七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝。
その力は技量を高めた猟兵たちをしても倒すことのできぬ強大なる存在。
「コロす! 邪魔をする! グリモアの匂いのする奴らは気に入らないから、コロす!」
白痴なるザンギャバス大帝は、しかして無数のユーベルコードと島の防衛機構の絶え間ない攻撃にさらされながらも、未だ健在であった。
傷を追っているはずであるというのに未だ対したダメージのないようにさえ思える言動と力の発露は無敵と呼ぶにふさわしいものであった。
「こういう手合は苦手なんだけど、まぁ是非もないか」
指を鳴らし現れるは蒸気王(スチームジャイアント)。
その機械の巨躯の前に立つのは、才堂・紅葉(お嬢・f08859)であった。蒸気ゴーレムである蒸気王が放つ蒸気の噴射は彼女を覆い隠し、次の瞬間放たれた獅子の咆哮、その衝撃波によって吹き飛ばされる。
だが、すでに彼女は蒸気王のコクピットに搭乗していた。
島の防衛機構は未だ生きている。
他の猟兵達にメカニックや、それに精通するものがいたのが幸いしていた。
「これがゴッドにもデモンにもなれる魔導蒸気文明の申し子……あのマッド共、いつか締める!!」
紅葉の動きをトレースし、ザンギャバス大帝へと巨躯をぶちかます蒸気王。
ただ、それだけのことであるというのに機体のあちこちが軋みを上げる。
「ふしゅるるるるるる!!!」
がっぷり四つ。
ザンギャバス大帝後からは凄まじいものであり、同時に蒸気王の頑強なる装甲に指を立てるほどであった。
「この、っ、馬鹿力が自慢みたいだけど……!」
蒸気ブースターが噴射し、ザンギャバス大帝の肉塊の如き身体を押し戻す。
それは異様なる光景であったことだろう。
これまでザンギャバス大帝が拳を振るえば、凄腕のコンキスタドールであっても肉片へとまたたく間に変わっていた。
だが、紅葉の駆る蒸気王は違う。
魔導ゴーレムでありながら、頑強なる装甲を備えた存在。
例え機体がきしもうとも紅葉のユーベルコードの輝きを受けて、その巨魁を押し戻すのだ。
「さぁて、遊んであげるわ……」
一気に噴射したブースターがザンギャバス大帝を押し切る。
その背にあったのはすり鉢状に掘られた穴であった。
丁度宇宙船の背面噴射口のような地形。そこにザンギャバス大帝を押し込んで、這い上がらせないようにしたのだ。
だが、それは蒸気王もろとも落とすほかない。しっかりと、その装甲にはザンギャバス大帝の爪が食い込んでいた。
「……このオイル蒸気王でね!」
そう、組み付かれていてはいつ蒸気王と言えど破壊されるかわからない。
けれど、紅葉には策があった。
何故すり鉢状の地形を欲していたのか。それはアルダワ錬金科謹製の潤滑オイルを機体から展開し、ぬめりと取っ掛かりのない地形故にここからザンギャバス大帝は抜け出すことはできないだろう。
さらに振り払った蒸気王が咆哮するように蒸気エンジンを唸らせる。
オイルに塗れた機体は丸みを帯びた装甲故に、今までのように容易に掴みかかるこができなくなっているのだ。
「どろんこプロレスならぬ、ローションスリングってところね……! あんたが嫌になるまでローションレスリングで遊んであげるわ!」
紅葉の咆哮に応えるように蒸気王が蒸気を噴出させながら、ザンギャバス大帝へと拳を叩きつけ、蒸気王の限界が来るまでザンギャバス大帝を泥仕合へと引き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安里・真優
【心境】
「戦争も佳境…といった感じになってきました…。」
汚物というか肉塊というか…。
巨人より大きいって…うん。汚物は消毒ですね。
【行動】
判定:WIZ
島の防衛機構の『情報収集』で調べておきました。
うん。ここ利用しましょう。
ごめん。ダコタン…その触腕…借りるね
触腕を一本切り落として、マンボンが『焼却』美味しく焼けました。
あ、『救助活動』+『全力魔法』=回復魔法ヒーリングで再生させましたよ。
島の中央に近い場所にその焼き足を配置。ここまで来るのにだいぶ飢餓状態になってきたと…。
うん。そこは防衛機構の̠火線が重なる場所です。
私もその攻撃に参加します。
『全力魔法』シャークネス・ボルテックスです!!
オイルに塗れ、すり鉢状の地形へと誘い込まれたザンギャバス大帝大帝の姿は見るに堪えないものであったが、それでも未だ脅威であることに変わりはなかった。
これまでも無数の猟兵達が全力のユーベルコードによってザンギャバス大帝を消耗戦へと引きずり込んでいた。
けれど、それでもなお倒しきれぬというのは尋常ならざる存在であることを示すには十分すぎる戦いであったことだろう。
「邪魔、邪魔、邪魔ぁ。邪魔するやつらはコロす!」
迸る咆哮。
それは七大海嘯『鮫牙』の名を持つザンギャバス大帝にとって、苛立ちの咆哮であったことだろう。
その肉塊の如き巨躯は、見るものに恐れと悍ましさを齎す。
「戦争も佳境……といった感じになってきました……」
安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)は巨人である。
例え姿が見目麗しい少女の外見をしていてもスケールが違うのである。そんな彼女よりも、巨人よりも巨大なる姿を持つ7m程もあろうかというザンギャバス大帝には嫌悪感を抱いていた。
もはや汚物と言うか、肉塊と言うべきか迷うほどであった。
「巨人より大きいって……うん。汚物は消毒ですね」
すり鉢状になった地形からザンギャバス大帝は這い出ようとしていた。
ここまででも相当に消耗させられていたはずであるが、この場に止めて置かねばならない。故に真優は決断した。
彼女のペットであるダコタン、巨大なる蛸である彼の触腕を切り落としたのだ。
「――!?」
その反応も最もであろう。
え、ちょっ! という顔をしたダコタンの気持ちもわかろうというものである。
「ごめん。ダコタン。借りるね」
ごめんね、ごめんね、と言いながら回復魔法でダコタンの触腕を回復させる。ちょっと涙目になっているダコタンが可愛いとか思ってしまったのは此処だけの話である。
マンボンが隣で触腕を火を吹いて焼いている光景がシュールではあったが、これは必要なことであったのだ。
こんがり美味しそうな匂いがした瞬間、ザンギャバス大帝の瞳がギラリと輝いた気がした。
「うまそうな匂いをさせやがって……! 食わせロ!」
気がついた、と真優がマンボンから焼いた触腕を手にとって、再びすり鉢上へと放り投げる。
それはいわば撒き餌のようなものであった。
美味しそうな匂いのする蛸の触腕焼き。
いや、そう言っていいのかは語弊があるかもしれないが、その匂いと放物線を描く綺麗なスローイングにザンギャバス大帝はあっさりすり鉢状の地形へと堕ちていく。
「やっぱり。此処までで大分飢餓状態になってきたと……この地形で良かった。うん、そこは防衛機構の火線が重なる場所です」
一斉に放たれる防衛機構の砲撃。
それは島中から放たれ、すり鉢状の底でダコタンの触腕焼きに手を伸ばしたザンギャバス大帝を巻き込んで大爆発を起こす。
オイルによってさらに引火し、轟々と音を立てて燃えるザンギャバス大帝。
しかし、それで終わらぬことを真優は知っている。
あれなるは無敵たる大帝である。
故に真優は容赦しない。
「海よりも深きモノ…水よりもなお尊きモノ…深海の悪夢となりて、敵を討たん。その力は深海の鼓動。かの力は深淵の使者。その力を解き放て」
放つは、シャークネス・ボルテックス。
深淵の属性を持つ無限破壊衝動が模った鮫型の魔力弾の群れが一斉にザンギャバス大帝を襲う。
それは炎に巻かれ、深淵の力を齎す鮫の群れによって咆哮を上げるザンギャバス大帝の絶叫であった。
ここまで徹底的に攻撃を加えても尚、倒すことのできぬ敵。
消耗へと引き込むことしかできないのだとしても、数多の猟兵達が為した戦いと真優が齎した攻撃は確かにザンギャバス大帝をさらなる消耗へと叩き落とすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
秋山・軍犬
自分は鮫牙という男の事は知らない
腹が減っているというならば飯を食わせて
満足させてやりたいとも思うっす
だが…ただひたすら殺し、自分の部下すら殺す
食欲と暴虐に狂うアンタの渇きを癒す飯を
今の自分の実力じゃ作れない
だからせめて、アンタの事を少しでも知る為に
正面から全力…否、限界を超えて
その無敵ごと殴り飛ばしてやるッ!
※指定UCと覇気を纏う事で回復力と攻撃・防御力を
限界を超え高め、格闘戦を挑む
アンタは強い、だが安心しろ
アンタみたいな腹を空かせた悲しい奴を相手に
フードファイターは倒れない! 絶対に倒れて…やらんッ!
そして…もしまた、相まみえる事があれば
願わくば、その渇きを癒して終われる奇跡があらんことを…
数多の猟兵達のユーベルコードが輝き、七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は咆哮を上げ、痛みに喘ぐことなく、己の飢餓感に吠え猛るのだ。
それはいわば、己の尽きぬ食欲に翻弄される人生であるにほかならない。
フードファイターである、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)にとって、その咆哮は悲しげなものに聞こえたことだろう。
「自分は鮫牙という男の事は知らない。腹が減っているというならば飯を食わせて満足させてやりたいとも思うっす」
腹を空かせるということは悲しいことだ。
満腹こそが幸せであるというのなら、空腹は真逆の不幸せのどん底であった。少なくとも軍犬はそう考える。
だが、その空腹を盾に好き放題していいというわけではない。
グリモア猟兵が語った予知、そして己が視た予兆。
その光景を軍犬は否定する。
「だが……ただひたすら殺し、自分の部下すら殺す。食欲と暴虐に狂うアンタの渇きを癒やす飯を今の自分の実力じゃ作れない」
彼が願うのはどんなものであっても空腹を満たす幸せなる食事。
けれど、今対峙するザンギャバス大帝の渇きを己が癒せぬとしるのならば、軍犬は決意を固める。
「だからせめて、アンタのことを少しでも知るために正面から全力……否、限界を超えて、その無敵ごと殴り飛ばしてやるッ!」
その瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、彼の体を包むのは食事で得た活力を変換した黄金のオーラであった。
それは彼のフードファイターとしての矜持が齎す輝きであった。
ザンギャバス大帝ですら、その渇きを癒やしてあげたいと願う心は軍犬のフードファイターの矜持であった。
絶対に曲げてはならぬ矜持であった。
故に、相対する無敵を前に彼の矜持は一歩も退くことはなかったのである。
これこそが、フードスペシャリテ・フルコースゴールデン。
「フルコースモード限界突破ッ!…フルコースッ!!…ゴオォォルデンッ!!!」
裂帛の気合とともに黄金の輝きはさらなる大きさへと膨れ上がっていく。
「アンタは強い、だが安心しろ。アンタみたいな腹をすかせた悲しやつを相手に」
「もっと食わせろ! 腹が減っているんだ! コロす! コロして食う! 食ってコロす!」
ザンギャバス大帝の耳にその言葉は届かない。
暴虐と食欲の権化にとって他者とは捕食対象でしか無い。
それが悲しいことである事は言うまでもない。けれど、軍犬は黄金に包まれながらつぶやく。
「フードファイターは倒れない!絶対に倒れて……やらんッ!」
激突する黄金のオーラとザンギャバス大帝の放つ拳。
凄腕のコンキスタドールですら一瞬で肉片に変える拳を受けても尚、軍犬は受け止めていた。
受け止めて尚、その黄金のオーラに陰りはない。
彼の矜持は何物にも覆せることのできるものではないのだ。
「そして……もしまた、相まみえることがあれば」
黄金のオーラが軍犬の拳に集約されていく。それは彼の矜持が形になったものであったことだろう。
腹をすかせた者。
その悲しさを知るからこそ、癒えぬ渇きをもつザンギャバス大帝を哀れと思う。
故に軍犬は拳を振るうのだ。
「願わくば、その渇きを癒やして終われる奇跡があらんことを……」
その黄金の拳は輝きを放ちザンギャバス大帝の巨魁をも吹き飛ばし、凄まじい衝撃で持って身を穿つのだ。
それは軍犬が強力な猟兵だから為し得たことではない。
此処にあるのは唯一人のフードファイター。
その矜持でもって、暴虐と食欲の権化に一撃を穿つのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ティノ・ミラーリア
いつか無敵を剥ぎ取るまでは、時間を稼いで撤退願うしかないみたいだね…
眷属を展開して島の地形と防衛機構について【情報収集】。
≪影の逆戟≫で纏影を翼状に、影への潜航も活かしてザンギャバスの周囲を縦横無尽に飛翔。
視界に映るよう移動しながら遠近の攻撃を加える嫌がらせで敵の攻撃を誘発する。
速度と潜航で回避しながら情報収集で把握した防衛機構や他猟兵の元へ誘導。
ザンギャバスが飢餓状態になるまで連携、交代しつつ凌いでいこう。
いつもこうなのか目覚めたばかりだからこうなのか…まともな判断力を持たれたら厄介そう…
【アドリブ・連携可】
放たれた黄金のオーラ。それは確かに七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝の腹を撃ち抜いた。
すり鉢状の地形へと落とし込まれたザンギャバス大帝は這い上がることもできずに、ずるずると滑り落ちていく。
けれど、それでもなお倒しきれていない。
無敵と呼ばれた大帝の姿。
それは白痴の肉塊の如き威容であったが、これまで猟兵達が経験したことのないような消耗戦へと引きずり込んで漸く撤退させることのできる存在である。
「いつか無敵を剥ぎ取るまでは、時間を稼いで撤退願うしかないみたいだね……」
予知によって、そうせざるを得ないことを判っていたが、これほどまでの猟兵達が集まっても尚、撤退に持ち込むことしかできない事実にティノ・ミラーリア(夜闇を伴い・f01828)はザンギャバス大帝を見下ろしながらつぶやく。
すでに眷属を展開させ島の防衛機構についてティノは情報を収集していた。
他の猟兵達が防衛機構について調べていたことも彼の行動を迅速にさせた要因であったことだろう。
火線や砲撃。
そして地形。今はすり鉢状の背部噴射口の跡にザンギャバス大帝を引きずり落としたことが消耗戦への決定打となっていた。
「やはり、消耗させてない状態だと、この地形に落してもなお這い上がられたか……でも、ここはもう、僕たちの狩場……」
ティノは身にまとった纏影を翼に変え、空を舞う。
その姿は華麗にして美麗であった。ザンギャバス大帝の巨躯の周囲を凄まじい速度で縦横無尽に飛び回り、撹乱する。
常にザンギャバス大帝の視界に映るように飛び回るせいで、彼の視線は常にティノに集中していた。
「邪魔だ! 邪魔だ! 邪魔ぁ! ちょこまかと鬱陶しい!」
身体の変形した獅子の頭部が咆哮し、衝撃波がティノに襲いかかるが、即座に影へと潜行し事なきを得る。
ただの咆哮であってもティノたち猟兵を叩き落とすには十分すぎるものであった。
だが、影の逆戟(シャドウ・オルカ)たる力を持つティノを捉えることはできない。
「どれだけ強大な力があろうとも、消耗戦に引きずり込まれた時点でザンギャバス大帝、君の負けだ」
再びザンギャバス大帝の背後の影から飛び出したティノが、自身の操る影を槍へと変え、肉塊の如き巨躯へと叩きつける。
すでに火傷や毒などといった傷に消耗させられているザンギャバス大帝。
そこに無数のユーベルコードを叩き込まれても尚倒せぬ相手。防衛機構の砲撃すらも加えられているのに、未だ消滅しない尋常ならざるタフネスに驚愕せざるを得ない。
「いつもこうなのか、目覚めたばかりだからこうなのか……まともな判断力を持たれたら厄介そう……」
ティノの言う通りであった。
白痴である。
その一点の事実だけがザンギャバス大帝の弱点らしい弱点でもあった。
策略や術にハマりやすい。ただ、それを駆使しても尚、今は消耗戦に引きずりこむしかなく、撤退させるのは精一杯である。
だが、ティノは諦めることをしない。
何故なら、これだけ多くの猟兵が戦いに駆けつけ、そして今も己の力を賭している。例え、今回の戦いが撤退させることしかできないのだとしても、次なる機会が必ず訪れる。
それを知るからこそ、ティノは戦う。
「外の広さを知る……ザンギャバス大帝、君もそうであるのかもしれないね。けど……君は必ず終わらせる」
そう呟いたティノのはなった影が、ザンギャバス大帝の咆哮をも退けて、その体を貫き串刺しにして、この場に止め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
いかに「無敵」の相手でも、
罠で時間を稼ぐのは性に合いませんので
防御と回避に徹して勝負させていただきましょう
《ディープトランス》発動。
理性で考えず、天性の【野性の勘】と培った【戦闘知識】
厚い【オーラ防御】と各【耐性】を信じ
野性と直感の赴くまま、ザンギャバスと戦います!
常に止まらず【見切り】、相手の攻撃を回避していく
避けきれないものはオーラで防ぎ、もしくは
【衝撃波】で【吹き飛ばし】、間合いを取る
大丈夫、理性で考えなくても、私の培ったものは、
無敵の相手の攻撃に対処できるっ!
きっと無傷ではいられないでしょうが、
相手が空腹で帰るまで、【限界突破】してでも
【気合い】十分に動き続け、翻弄してみせましょうっ!
すり鉢状の地形に落とし込まれた七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は、数多の猟兵たちのユーベルコードを受けても尚健在であった。
今も影の一撃に寄ってすり鉢状の底に釘付けにされているザンギャバス大帝であったが、その猛威は些かも衰えてはいなかった。
獅子の頭部が咆哮すれば衝撃波が飛び交い、蛇の頭部は縦横無尽に鞭のようにしなって寄せ付けない。
「如何に『無敵』の相手でも、罠で時間を稼ぐのは性に合いませんので」
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は己を蛮人と呼ぶ。
彼女には鍛え上げられた肉体がある。
それは彼女の絶え間ない鍛錬の証である。
けれど、無敵たるザンギャバス大帝をして、策を弄することはユーフィの良さを殺すことでもあった。
「森の戦士の、本当の姿をお見せしましょう」
その瞳がユーベルコードに輝く。
ディープトランス(ディープ)。それは己の理性を捨てることである。天性の野生の勘と培った戦闘知識。
それらを総動員することに寄ってあらゆる攻撃からの回避を可能とするユーベルコードであった。
食欲と暴虐の権化であるザンギャバス大帝。
それは奇しくもユーフィと似通った部分があったのかもしれない。ザンギャバス大帝は殺すために食う。食うために殺す。
ただそれだけのために力をふるい続ける。
「コロす! グリモアの匂いがするやつはコロす! 邪魔ばかりスルグリモアを、コロす!」
その咆哮は衝撃波となってユーフィがを襲う。
けれど、今やユーフィに恐れはない。恐れを感じる理性も、相対するザンギャバス大帝の持つ絶大なる力を前に慄くこともない。
ただ、その瞳は見ていた。
衝撃波が伝える空気の振動、そして放たれた獅子の口腔。
それら全てを感じ、彼女は見えぬはずの衝撃波の尽くを見切って躱す。それどころか、さらに駆け出す。止まることはない。
常に止まらず、蛇のしなる鞭のような動きすらも容易く躱していく。
「邪魔です――!」
その拳が振るう衝撃波が蛇の顎を叩き割るようにカチあげる。
「ぐふっ――?!」
初めてザンギャバス大帝がうめいた。
それはこれまで猟兵達が積み重ねてきた消耗が、ここに来てザンギャバス大帝を追い詰めている証拠でもあった。
ユーフィは傷を覚悟していた。
決して無傷では居られないと。けれど、それでもユーフィは、あらゆる攻撃を躱しては、カウンターを決めるようにザンギャバス大帝の繰り出す変形した羊の角すらも叩き割るのだ。
「大丈夫、私の培ったものは無敵の相手の攻撃に対処できるっ!」
みなぎる自身。
それはこれまで戦いの軌跡がユーフィの身体を作っている証であった。どんな攻撃も、どんな策略も、彼女の鍛え上げ、練磨された肉体が踏み込めていく。
確かに倒し切ることはできないのかもしれない。
「けれど、気合十分です! 翻弄してみせましょうっ!」
ユーフィの声は高らかな宣言となって周囲に響き渡った。
終りが見えない消耗戦。
それは泥仕合と呼んでも差し支えのない戦いであったかもしれない。けれど、それでも戦う意味はある。
ユーフィの戦いはいっそ、舞踏の如き華麗さでもってザンギャバス大帝を翻弄し続ける。
それは彼が空腹という絶対的な消耗に追い込ませるという、この戦いの勝利条件へと近づいていることを意味していた。
「限界は今超えて見せますっ!」
放った拳がザンギャバス大帝の肉塊の如き身体を撃つ。
その衝撃がザンギャバス大帝を震わせ、うめかせる。それは、漸くにして猟兵達に見えた、光明であったようにユーベルコードの輝きで持って知らしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
世界を渡り始める以前、再起動直後の闘いを思い出します
戦闘経験の蓄積無き身での帝国騎士との相対…
最後は罠にかけての宇宙へ放逐…御伽噺のようにはいかぬと思い知ったかの日…
『負けぬ』為の戦いの経験も御座います
お付き合い頂きましょう、ザンギャバス大帝
敵の巨躯や変異肉体の挙動をセンサーでの情報収集と瞬間思考力で計測
範囲を●見切って躱し挑発の剣振るいつつ宇宙船のある地点…内部が浸水し落とし穴状のハッチの直上へ
事前に仕掛けた●破壊工作起動し大帝を穴へ
…蛇を伸ばし縁に!
●怪力大盾投擲で完全に落とし
内部へUC乱れ撃ち
水を凍結させ幽閉
…さて、どれほど持つか
いえ、関係はありませんね
何時までもお付き合いいたします
此度の消耗戦。
それを前にしてトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己の電脳が持つ古きデータを思い起こしていた。
七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝。
その無敵たる力は凄まじいの一言であった。アイセンサーがはじき出す数値の尽くが、規格外のものであった。
これだけの猟兵が全力のユーベルコードを叩き込んでも尚、撤退に持ち込むしかないという事実。
それがグリモアの予知から得られたことであったのだとしても、驚愕なる事実であった。
しかし、トリテレイアは取り乱すことはなかった。
思い当たるデータがあるのだ。
それは彼にとって苦々しい思い出であったのかもしれない。世界を渡り始める以前、即ち猟兵となる再起動直後の戦いを思い出すのだ。
戦闘経験の蓄積のない機体。
帝国騎士との相対。
倒しきることはできずに、最後は罠にかけて宇宙へと放逐する他なかった。
「嘗てはお伽噺のようにはいかぬと思い知ったかの日……」
だが、今は違う。
トリテレイアに蓄積されたデータという名の戦いの経験がある。
「『負けぬ』為の戦い……お付き合いいただきましょう、ザンギャバス大帝」
すでにすり鉢状の地形へとザンギャバス大帝は引きずり落とされている。
そこで行われた猟兵たちと防衛機構による打撃の数々が漸くにしてザンギャバス大帝をすり鉢状の地形から這い上がることができぬまでに消耗させていた。
たった一人では為し得ぬことであったし、同時にトリテレイアはあらゆる情報を計測していた。
嘗ての宇宙船の背面噴射口。その跡地であるすり鉢状の地形。その真下は海水が浸水している場所でも在る。
すでにハッチの場所も確認済みである。
「腹が減る……! 邪魔っ、邪魔っ、邪魔っ!」
まるで幼子が駄々をこねるように拳を振るザンギャバス大帝。
しかし、その拳の威力は幼子のそれではない。凄腕のコンキスタドールですらも肉片へと変える恐るべき拳なのだ。
「いたましい、とはいいませんが……!」
直後、ザンギャバス大帝の身体が、重たい音を立てて開かれたハッチへと落ち込む。だが、7mもある巨躯。落とし穴のようにハッチを利用したとしても、即座に這い上がってくるだろう。
蛇に頭部に変形させた身体がハッチの縁を掴み、身体を這い上がらせようとする。
「そうはさせません!」
大盾を強大な膂力のままに投擲し、蛇の頭部を叩き潰す。
ハッチの底に浸水した海水が波打つ。
「あぁぁあぁ――!!!!!」
ザンギャバス大帝の体の一部が獅子の頭部へと変形し、咆哮が衝撃波となってトリテレイアの身体を襲う。
投擲した盾に身を隠しながら、それでも大盾が容易にひしゃげる様をトリテレイアは見た。
「氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
だが、これでいい。
海水の満たされたハッチからザンギャバス大帝を脱出させぬことがトリテレイアの策略であった。
トリテレイアの格納銃器が一斉に展開し、弾丸を凄まじい勢いで放つ。
その超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)は、一瞬で海水を凍結させる。体積の増した海水が棘のように、そしてザンギャバス大帝の肉体事態をも凍りつかせていく。
「……さて、どれほど保つか」
いや、それは関係ないとトリテレイアは頭を振る。氷の牢獄の如き幽閉に落とし込んでも尚、ザンギャバス大帝は消滅しない。
それは即ち、ここでは倒しきれぬという事実を伝えていた。
だが、それでおトリテレイアは構わなかった。
氷が砕ける音が響く。
むしろ、それを聞いてトリテレイアは決意を新たにした。
「何時までもお付き合いいたします―――ザンギャバス大帝、お覚悟を」
トリテレイアのアイセンサーが輝き、ひしゃげた大盾を構え直し、徹底抗戦へとザンギャバス大帝を引きずり込み、さらなる消耗を強いるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
この船はまだ生きている。
瞬間思考力と動体視力でザンギャバスの動きを捕捉し、
『劫火業臨』メガスラスターの高速推力移動で噛みつきを紙一重で回避。
腕に纏わせたシールドの刃で皮膚を掻く。
うっとうしく周囲を動いて注意を引いてやる。
…銃撃が、障害が気になるか、だが貴様が!眠っていた物を起こしたんだ!
宇宙船各所に配置したキャバリアから修復霊物質を放出、
朽ちた船を修復し、次々と停止していた機能を、壊れた、壊された迎撃機構を蘇えらせる。
何故こんな物が使えるかなんて知らない。だが、使い方は分かる。
呪詛、オブリビオンへの敵意を、霊物質から宇宙船へ伝え、全防衛機構を励起させる。
あれは敵だ!排除するべき外敵だ!戦え!!
「この船はまだ生きている」
そう感じたのは、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)であった。
彼女は氷漬けから復帰した七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝がすり鉢状の地形から這い出ようとするのを防ぐ猟兵の一人であった。
劫火業臨(ゴウカゴウリン)によってキャバリアのメガスラスターの高速水力移動の輝きを、眩いものにし、その光の軌跡は一直線にザンギャバス大帝へと向かう。
「眩しい……! 鬱陶しいんだ、グリモアはぁ!」
ザンギャバス大帝の身体が変形した蛇の頭部が鞭のようにしなって小枝子の機体へと走る。
その鋭き牙は言うまでもなく必殺の間合いであった。
だが、その蛇の頭部を弾くように島の防衛機構が弾丸を飛ばし、軌道を逸したことによって小枝子は紙一重で攻撃を躱すことができたのだ。
「……銃撃が、障害が気になるか、だが貴様が!」
小枝子はスラスターを噴かせながら、ザンギャバス大帝の周囲を飛ぶ。
その姿は確かにザンギャバス大帝にとっては鬱陶しい存在であったことだろう。だが、それ以上に防衛機構から放たれる砲撃や火線が小枝子の動きを捉えにくくしていた。
今やザンギャバス大帝はすり鉢状の地形へと落とし込められ、幾重にも張り巡らされた猟兵たちの策略やユーベルコードによって消耗を強いられている。
だが、それでもなおザンギャバス大帝の力は衰えないのだ。
「眠っていた物を起こしたんだ!」
キャバリアの腕にまとわせたシールドの刃がザンギャバス大帝の皮膚を焼く。
皮一枚しか傷つけることのできないザンギャバス大帝の無敵たる所以。けれど、それでも小枝子は構わなかった。
小さな一撃であったとしても、この積み重ねこそが『鮫牙』の本拠地にてザンギャバス大帝を討つための一手となることを知っている。
だからこそ、蝶のように舞い蜂のように刺す。
そのヒット&アウェイによって彼女はザンギャバス大帝を翻弄し続けるのだ。
「邪魔だァ――!」
ザンギャバス大帝の身体が変じた獅子の咆哮が周囲にあった防衛機構の尽くを薙ぎ払う。
無残にも破壊されていく防衛機構。
だが、それらを小枝子はキャバリアから排出した修復霊物質を放出することによってくちたはずの宇宙船を修復し、長い年月の積み重ねによって損壊した嘗ての迎撃機構を蘇らせるのだ。
「何故こんな物が使えるかなんて知らない。だが、使い方はわかる」
何故、こうしなければならないのかも。
この宇宙船がスペースシップワールドに在りし日に如何なる航海を続けていたかは、想像するほかない。
けれど、この宇宙船が護ろうとした生命があったのだ。
それさえわかればいい。
小枝子にとっては、それが一番大切なことであった。
「呪詛、オブリビオンへの敵意を……! 判るはずだ……!」
小枝子の呪詛が迸る。
霊物質を媒介としてくちた宇宙船へと伝える。全ての宇宙船の破壊され、くちた前防衛機構が励起する。
それは小枝子の呪詛と、宇宙船が嘗て持っていたであろう存在意義を持ってして為せる業であった。
「あれは敵だ! 排除するべき外敵だ! 戦え!!」
小枝子の戦う意志が、自分を自分たらしめる意志が、全ての兵器の存在意義を刺激する。
例え、それが破壊しかもたらさぬものであったのだとしても、それが己の存在意義であると咆哮するように宇宙船に蘇った防衛機構があらゆる火器でもってザンギャバス大帝を打ち据える。
「奪われたままではいられない。戦って、戦い続けねば。それが我らの為すべき事ゆえに――」
小枝子は吠える。
キャバリアと共に、防衛機構と共に、火線舞い散る中、ザンギャバス大帝を撤退へと追いやるために戦場に在り続ける。
それこそが彼女の存在意義。
己が生きていると実感できる時間。破壊しろ、破壊しろ、と心の内で叫ぶ何かが在る。
「ザンギャバス大帝、暴虐と暴食の権化、お前には何も奪わせはしない!」
キャバリアから発生したシールドの刃が、深々とザンギャバス大帝の肉塊の如き巨躯へと突き立てられ、獅子の頭部をえぐり取り、その血潮でもって、小枝子は己の存在を知らしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
無敵になる何かしら仕掛けがあるんでござるかね?まあいいでござる、阿呆に勝てないまでも負ける気はしないですぞ
全身を【ドット絵】に変換!更に防衛機構に【ハッキング】をかまして電子となった肉体を直接潜り込ませる!
防衛機構は拙者のものでござる!無敵でもあらゆる傷が付かないだけなのか無限回復する不死身タイプなのかみたいでござるね!暴徒鎮圧用の催涙ガスやらで様子見ですぞ
防衛機構を破壊されて瓦礫にされても問題ないですぞ!むしろここから拙者の本領発揮でござる
体を瓦礫の隙間に潜り込んで視界外から射撃!こっちを向いたら潜り込んで別の隙間に移動、奇襲、再度隙間に逃げ込んで…と永遠にモグラ叩きさせてやりますぞ!
七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は無敵である。
それは実際に相対してみて、実感できるものであったのかもしれない。
数多の猟兵達が策略とユーベルコード、そして島に備えられていた防衛機構を十全に活用しても尚仕留めきれぬ強大さ。
不可思議なことである。
どれだけ強大な存在であったのだとしても、そこにはからくりがあると思うのもまた無理なからぬことである。
「無敵になる何かしら仕掛けがあるんでござるかね? まあいいでござる。阿呆に勝てないまでも敗ける気はしないですぞ」
エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)はいつもの陽気な口調のまま戦場へと躍り出る。
その姿はドット絵であった。
いや、何を言っているのか理解できなかもしれない。まるで子供の落書きじみた姿へと己を変えるユーベルコードによってエドゥアルトは、ペラペラな紙人間のような様相のままザンギャバス大帝へと迫っていたのだ。
ドット職人の朝は早い(ドットショクニンノアサハハヤイ)。って、あ、そういう……?
「拙者はフリーSOZAIですぞ」
そういう話かな? と誰もが思ったかも知れない。
だが、エドゥアルトは意に介した様子もなく、猟兵に寄って十全なる状態へと修復された島の防衛機構へと電子と成ったドットの姿のままハッキングかまして直接潜り込ませるのだ。
その頭上をかすめたのはザンギャバス大帝の拳の一撃であった。
「ひゅーあぶねーでござる。ちょっとタイミングずれてたら頭がぱっかーんだったでござるな!」
間一髪で防衛機構へと入り込んだエドゥアルトは意気揚々と防衛機構の掌握へと乗り出す。
「ふーむ、無敵でもあらゆる傷がつかないだけなのか、無限回復する不死身タイプなのか……まあ、答えは後者っぽいでござるね!」
これまでの猟兵達の攻撃に傷つかぬわけではなかったのだ。
ザンギャバス大帝は、無数のユーベルコード、防衛機構によって消耗させられ続け、今はすり鉢状の地形に落とし込まれて這い上がることができずにいる。
この戦いの推移は順調であると言わざるを得ないだろう。
「防衛機構は拙者のものでござる! まずは暴徒鎮圧用の催涙ガスやらで様子見ですぞ!」
放った催涙ガスがザンギャバス大帝の瞳に染み入るが、意に介した様子はなくむしろ不快なガスによって刺激されたのか、ザンギャバス大帝は更に強く暴れまわって、周囲の防衛機構を破壊し続けるのだ。
「不快! 不愉快すぎる! なんだこれはぁ――!」
獅子の頭部が咆哮し、衝撃波でもってガスを吹き飛ばしていく。瓦礫と成った防衛機構であったが、エドゥアルトは無傷のままぬるりとドット絵の姿のまま瓦礫の隙間へと入り込んで、ザンギャバス大帝の視界の外からオートマチックライフルの弾丸を打ち込み続けるのだ。
弾丸が放たれれば、ザンギャバス大帝は即座に反応し瓦礫を叩き潰す。
けれど、フリーSOZAIであるエドゥアルトの身体はあらゆる隙間を移動することが出来る。
超絶為る拳が叩きつけられても、すでにそこにはエドゥアルトは居ないのである。
「ひゃっはー、永遠に続くモグラ叩きさせてやりますぞ! ほれほれ、こっちでござるよ~」
おちょくるようにエドゥアルトは瓦礫の隙間から散々に弾丸を撃ち放っては、ぬるりと瓦礫の隙間を移動していく。
時折頭をぴょこんと飛び出させては、若干腹の立つドット絵の顔を歪ませて挑発し、ザンギャバス大帝の苛立つ咆哮を持って、一向に点数の上がらぬフラストレーションだけが募るモグラ叩きへとひきつけ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
無敵かぁ、ヤバいね☆
そんじゃにぃなちゃんの取れる手は一つ……【ダッシュ】で逃げる!
ユーベルコードでバイクを変形させて、にぃなちゃんの【操縦】テクニックを駆使すればそう簡単には追いつかれないと思うんだよね。
後は【視力】で島の装備を見つけて【メカニック】と【罠使い】の知識を総動員。
【瞬間思考力】でいい感じに防衛機構が効果を発揮するようなルートで走っちゃおう。
ガジェッティアレーザーで【地形破壊】して道を塞いで、狙ったルートに誘導するのも手だね。
でも相手がこっちを見失ったらこの作戦は台無し。
派手で大きな【ジャンプ】とかで【パフォーマンス】して、注意を引こうかな。
【元気】良く叫んでもいいかも!
すり鉢状の地形に落とし込められ、消耗を強いられる七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は苛立っていた。
防衛機構から放たれる砲撃もそうであるが、グリモアの匂いがする敵――即ち猟兵のユーベルコードが鬱陶しいことこの上なかったのである。
彼は無敵と呼ばれる存在である。
それはグリモアの予知によって裏付けされた、今は勝てぬ相手である。
だが、どれだけ強力な力を持っていようとも、相手は白痴。
肉塊の如き巨躯を持ってしていても、猟兵達の策略に寄って、このすり鉢状の地形から抜け出すことができないでいるのだ。
「無敵かぁ、ヤバいね☆」
まったくそうは思っていなさそうな明るい雰囲気の言葉を紡ぐのは、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)であった。
彼女が出来る手、それは唯一つである。
「そう、ダッシュで逃げる!」
彼女が駆る蒸気エンジンと階差機関、そして宇宙船のパーツで自ら改造した宇宙バイクであるZ17テンプテーション・カスタムがユーベルコードの輝きに包まれる。
それはゴッドスピードライド。
彼女の宇宙バイクをさらなる速度の高みへと誘うユーベルコードである。
「さらにさらに~にぃなちゃんの操縦テクニックを駆使すれば、そう簡単には追いつかれないでしょ!」
すり鉢状の地形を利用してニィナはザンギャバス大帝の視線を釘付けにする。
その間にも顔所は瞬間思考で考える。
この地形におびき寄せることができたのは行幸であった。
他の猟兵達がそうしたように、この地形は島中の防衛機構の火線が集中する場所であった。
故に砲撃の雨はザンギャバス大帝を押し止めるようにさらされ続けている。
「邪魔ぁ――!」
ザンギャバス大帝の咆哮が衝撃波となって周囲を揺らす。
弾丸すらも落とす勢いの衝撃波はそれだけでも驚異的な力を持っていることを知るには十分であった。
「うひゃ! ちょっとちょっと、ほんとにシャレにならないね!」
ガジェッティアレーザーによってすり鉢状の地面をささくれ上がらせ、防壁と為しながらニィナは更に止まらない。
ずっとこちらを視認させていいないといけないのだ。
派手なジャンプはまるで、バイクパフォーマンスのように注意を引き、敢えて攻撃を自分へと集中させるのだ。
「叫ぶのも疲れるでしょ! あーあーってほら、マイクテストしなくっていいかなー?」
そんな挑発的な元気印のニィナに益々ザンギャバス大帝の顔が真っ赤になっていく。
挑発されたと思っているのだろう。
事実そうであるが、ニィナの楽しげな雰囲気はあまりにも挑発と呼ぶには朗らかなものであったことだろう。
宇宙バイクは凄まじい速度で駆け抜け続ける。
今にも攻撃が当たりそうに成っても間一髪で躱し続け、ニィナはザンギャバス大帝を消耗戦の泥仕合へと引きずり込んでいく。
ここでニィナが離れてしまえば、ザンギャバス大帝はなんとしてでも、この地形から逃れようとするだろう。
「これでも倒しきれないってわかっているからね! お腹が空くまでにぃなちゃんたちと追いかけっこしてもらうよ!」
宇宙バイクが放つ蒸気のエグゾーストが香る戦場にあって、ニィナの楽しげな声は益々持って、ザンギャバス大帝を苛立ちの頂点へと押し上げ、終わりの見えぬ消耗戦に捕らえ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…頭悪いのはいいけど……悪すぎてほぼ迷わないって言うのはそれはそれで厄介…
…接近戦だけは絶対にダメだね…折角起動してるのだから防衛機構にハッキング…罠として利用させて貰うか…
…逃げに徹しつつ隔壁を操作してザンギャバスの行く手を阻み…
…そこに防衛用のレーザーやレールガンを遠隔操作して攻撃を加えていこう…
…そして…宇宙船ならあると思った…艦載機や鎧装騎兵用のカタパルト…ここまで逃げていって…
…ザンギャバスがこれに乗るように誘導…起動させて予め【我が手に傅く万物の理】で作って置いた分厚い壁にぶつけよう…
…まあ、生きてるだろうから…転倒しているザンギャバスを構造物を操作して埋めてから逃げるとしよう…
「ふぅ――!! これで、最後だ。グリモアの匂い、するヤツら、ゼンブコロす!」
すり鉢状の地形から漸くにして脱出した七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は、その身に無数の傷跡を刻みながらも這い上がり、その7m程もあろうかという巨躯を揺らしていた。
その瞳に在るのは未だ残虐なる光。
暴食の権化であるザンギャバス大帝にとって、猟兵とは殺すべき存在であり、同時に貪り食うための存在でもあった。
確かにザンギャバス大帝は白痴である。
知能を持ち合わせていないようでもあるが、逆に小賢しい考えを一切せず、恐れも不安も、打算さえもなく己の食欲のままに振る舞うのだ。
それが猟兵たちにとっては、厄介なものでもあったのだ。
「……頭悪いのはいいけど……悪すぎてほぼ迷わないって言うのはそれで厄介……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、ザンギャバス大帝の性質こそが無敵たる力と同様に厄介であると考えていた。
それに接近戦では確実に猟兵と言えどもザンギャバス大帝の暴威なる力によって一撃のもとに敗れてしまうだろう。
猟兵達が取れる選択はそう多くはなかった。
だが、それでもここまでザンギャバス大帝を前にして生き残り、そして消耗戦へと引きずり込むことができたのは、この戦いに参加した猟兵達一人ひとりの活躍があればこそであろう。
「せっかく起動しているのだから、防衛機構を罠として利用させてもらうか……」
メンカルは防衛機構にアクセスする。
すでに起動してはいるが、あちこちが損壊している。
これまで猟兵達とザンギャバス大帝の戦い、そして海洋世界における長年の経年劣化から、ほとんどが使い物にはならなかった。
けれど、メンカルはハッキングし、隔壁を操作する。
「コロす! グリモアの匂いのスルやつは、コロす!」
すり鉢状の地形から脱したザンギャバス大帝は這いずるようにして、メンカルへと迫る。
自分に注意がひきつけられていることは最大の窮地であったが、同時に最大の好機でもあった。
隔壁を展開し、ザンギャバス大帝を誘い込む。
防衛用のレーザーやレールガンが機能し、メンカルは即座にザンギャバス大帝へとそれを叩き込む。
だが、それでも止まらない。
「これだけの熱量、威力を持ってしても止まらない無敵の大帝か……それに迷いなくこっちを追ってくる……」
普通のオブリビオンであれば、確実に罠であると気がつくだろう。
けれど、ザンギャバス大帝は違う。
罠という認識すらない。だからこそ、行動と考えが直結している僅かなロスすらない。それが策略や知略を弄する者にとっては一番怖いのだ。
「……やっぱり」
メンカルはユーベルコードを発動させる。
「数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
そのユーベルコードの名は、我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)。周囲の無機物をリスト化し、項目を選択することで座標と構成要素の表記を変換する恐るべき力である。
それによって生み出したのは分厚い壁である。
「コロす! コロす! 気に入らないやつらはゼンブ、ぜんぶコロす!」
背後より迫るザンギャバス大帝をメンカルはゆっくりと振り返る。
7m程もある巨躯。それはちょうど、スペースシップワールドであれば鎧装騎兵や艦載機といったものと似通ったサイズであったことだろう。
「当然、あると思ったんだ。宇宙船ならね……カタパルトが」
そう、メンカルが逃げ込んだのは艦載機などを射出するカタパルト。襲いかかるザンギャバス大帝の攻撃を躱し、メンカルはカタパルトを作動する。
「――!?」
ザンギャバス大帝の瞳が驚愕に見開かれる。
自身の巨躯が強制的に移動させられているという事実と、目の前に迫る分厚い壁。それらに挟み撃ちにされるという罠。
メンカルが目論んだのは、無敵たるザンギャバス大帝の打倒ではない。
あくまで消耗。
カタパルトの速度とユーベルコードによって生み出した分厚い壁。それらを合わせた時、ザンギャバス大帝は己の無敵ゆえの自重によって、その額を割るのだ。
「……挟み込んで圧死……とまでは行かないと思っていたけれど……まあ、生きているだろうね。だから」
だからこそ、ここで生き埋めにする。
メンカルはハッキングした防衛機構を操作し、次々と隔壁を落し、同時に様々な瓦礫を押し込んでザンギャバス大帝を宇宙船の奥へとおしこむのだ。
「これでも時間稼ぎにしかならない……でも、そこから出るには相当に消耗するでしょ」
その証拠に落した隔壁が徐々に嫌な音を立てて破壊されているのがわかる。空恐ろしい程の力。
けれど、メンカルは恐れない。
何故なら、此処には彼女を始めとした猟兵達今も尚、ザンギャバス大帝を飢餓状態へと陥れようと待ち構えているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
おい、こっちだぞ。デカブツ
凄い威力だなぁ、当たったら一溜りもないんだろうな。当たればな
SPDで判定
敵を【挑発】しながら狙いを引き付け、【視力】【暗視】【聞き耳】で【情報収集】を行い敵の姿を必ず捕捉できるようにしながら回避と防御に専念
基本は【継戦能力】で体力を温存しながら【ダッシュ】と【悪路走破】、【足場習熟】からの【ジャンプ】で走り回る
銀腕は【武器改造】で盾にし、表面は液状化させたままで滑るようにしておき、必要ならそれで攻撃を【盾受け】【受け流し】する
必要なら【地形を利用】し宇宙船の部分を盾にして回避
宇宙船の奥底に封じられるようにして七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は瓦礫と隔壁に押しつぶされた。
だが、それはその無敵たる肉体を消耗させる程度にしかならなかった。しかし、その宇宙船の奥底から瓦礫をかき分けて地上へと這い出るためには、相当な力の消耗を余儀なくされていたことだろう。
これまで猟兵達が戦い、ユーベルコードと策略で持って消耗させたザンギャバス大帝の身体は徐々に異形なる姿を露呈させていた。
獅子や蛇、山羊などといった異形なる頭部。
それら全てが攻撃の手段として使われることは、これまでの戦いで判っている。故に逃さない。この無人島である島から人が済む島へとは飛ばさせはしない。
「おい、こっちだぞ。デカブツ」
そう、挑発するようにルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は軽口を叩いた。
普通のコンキスタドールであれば、挑発にもならぬ挑発であったことだろう。
だが、今相手取っているのは七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝である。
白痴であるザンギャバス大帝にとって、その程度の挑発でも否応なしに反応せざるを得ないのだ。
宇宙船の瓦礫を押しのけて、不気味な呼吸音と共にザンギャバス大帝はルイスをねめつける。
「ふしゅるるるるるる……! ゆるさない、ゆるせない、コロす!」
その肉塊の如き巨躯がルイスへと迫る。
その拳はコンキスタドールであっても一撃のもとに肉片へと変える一撃であり、それを躱すのは至難の業であった。
義眼の瞳が輝き、ルイスはなんとか縦横無尽に駆け抜ける。
防御してしまえば、確実にルイスは砕け散る。如何にデッドマンと言えど、破壊されてしまった肉体はすぐには再生できない。
故に躱すことに注力する。
「凄い威力だなぁ、当たったら一溜りもないんだろうな――当たればな」
ルイスはわざと口に出す。
こうまでして己に注意を惹きつけるには理由がある。
一つは単純にザンギャバス大帝をこの場に押し留めるため。
もう一つは体力の温存である。
それは他の猟兵達にも言えることだ。これまで猟兵達は全力のユーベルコードをぶつけてきた。ザンギャバス大帝を撤退にまで追い込まねば、やつは人の居る島へと飛び、そこで暴虐と暴食の宴を催すことだろう。
そうなってしまえば、喪われる生命は百や千ではきかない。膨大な数の生命が喪われることになってしまう。
「だから、お前は此処で飢餓状態にさせる!」
振るわれた拳。
それを銀の腕が盾へと変形させて受け止める。
だが、表面は液状化させたまま統べるようにしていなすのだ。だが、ザンギャバス大帝の拳は凄まじい威力であった。
液状化させて居ても尚、余波がルイスの身体を撃つ。
「くっ……だが、次は……!」
そう、次はない。
その瞳が、銀の腕が、メガリスである故に輝く。
ルイスのユーベルコードの輝きを持って、銀の腕の力が増していく。それこそがメガリス・アクティブ。
メガリスの力を三倍にまで増幅させる力で持って、ザンギャバス大帝の拳を液状化させた銀の盾が要約にして受け流す。
「……! 拳が滑る……! お前、気に食わない……!」
ザンギャバス大帝の顔色が変わる。
これまで己の拳で砕けぬ者はいなかった。けれど、今目の前にいるルイスは二度目の拳を受けても尚、立っている。
その事実が気に食わず、駄々をこねるような幼子のように拳をやたらめたらにルイスへと叩きつけるのだ。
だが、徐々にその拳にも力が入ってこない。
「飢餓状態……あと、もう少し……!」
受け流すことが容易に成ってきた。即ち、ザンギャバス大帝にも限界が近づいているのだ。
此処が正念場である。ルイスは覚悟を決め、ザンギャバス大帝の暴風のごとき攻めを銀の盾で受け流し続け、その消耗をさらなるものへと引きずり込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
『無敵』か。飢餓状態になるというのであれば、逃亡を許さずに攻め続ければいずれ餓死しそうではあるね。まあ、今はまだその時ではないという事だろう。とりあえず。飢餓状態にしてお引き取り願おうか。
ふむ、『無敵』には『無敵』をぶつけるか。
【ダマーヴァンドの終末】を発動して巨大な竜を顕現させる。
とりあえず、その巨竜から無限に湧き出る悪魔の軍団による倒されても倒されても無限に続く波状攻撃。
(様々な属性による攻撃で鮫牙の様子を観察)
ハハハ、なかなかの『無敵』ぶりだ。これは滅ぼすのが楽しみだね。
すでに七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は限界に近づいていた。
これまで数多の猟兵達がユーベルコードと策略をぶつけて消耗させてきた結果が、結実しようとしていた。
ザンギャバス大帝の放つ拳の勢いが目に見えて衰えてきていた。
七大海嘯直下のコンキスタドールすらも一撃で肉片に変える拳が、弱まってきている。さらに姿も異形なる獅子や羊、蛇といった頭部を元に戻すことができなくなってきている。
それこそがザンギャバス大帝が消耗し、飢餓状態へと近づいていることを示していた。
「『無敵』か。飢餓状態になるというのであれば、逃亡を許さず攻め続ければ餓死しそうではあるね」
そう呟いたのは紅のスーツに身を包んだシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)であった。
彼の推測はおそらく正しいのだろう。
だが、今はその時ではない。予知によってもたらされた情報、それらを参考にするのであれば、此処では倒しきれない。
此処が『鮫牙』の本拠地でないことも関係しているであろうが、それならば為せることがある。
「此処で消耗させ続け、とりあえずはお引取り願おうか」
シーザーの金色の瞳が輝く。
それはユーベルコードが発言した証であった。しかし、同時にザンギャバス大帝の瞳がギラリと輝く。
シーザーは言うまでもなくグリモア猟兵である。
ザンギャバス大帝が忌み嫌うグリモア。その所持者でもある。だからこそ、シーザーはまっさきに狙われる存在でも合ったことだろう。
「お前、お前から、グリモアの匂いが強い! お前だな! お前が、グリモアを使うやつ……! コロす!」
それまで消耗しきっていたとは思えぬほどの俊敏なる動きでザンギャバス大帝はシーザーへと迫る。
その速度はこれまで対峙してきたオブリビオンの中でも最高なるものであったことだろう。
「ふむ、『無敵』には『無敵』をぶつけるか――蹂躙せよ」
その言葉は短く発せられた。
金色の瞳が輝き、無敵の空を飛ぶ巨大竜と、その身体から無限に湧く悪魔たちが創造される。
それらはダマーヴァンドの終末(デウス・カースス)。
あふれるようにしてシーザーのユーベルコードの輝きから想像される悪魔と巨大竜は一斉にザンギャバス大帝へとお剃りかかる。
無限にも思えるほどに湧く悪魔の軍団。
それを薙ぎ払い、喰らい、次々と葬り去っていくザンギャバス大帝。
本当に消耗させられているのかと疑うほどの戦いぶりであった。
「ふしゅるるるるるる――! 邪魔、邪魔、邪魔ァ! どけ! グリモア! グリモアがそこにある!」
怒りと暴食。
それらが合わさった時、その無敵たる大帝は持てる力のあらん限りを絞り出してシーザーへと襲いかからんとする。
だが、悪魔たちの軍勢がそれを押し止めるのだ。
「なるほど……あらゆる攻撃が効かないというわけでもなさそうだ。暴食の権化とはまあ、よく言ったものだ」
巨大竜がザンギャバス大帝へと掴みかかり、無敵と無敵が激突し、凄まじい衝撃波を周囲に生み出していく。
その戦いはあまりにも激しく。けれど、シーザーは落ち着いた面持ちで笑うのだ。
「ハハハ、なかなかの『無敵』ぶりだ。これは滅ぼすのが楽しみだね」
滅ぼす。
そういったのだ。
彼は、この壮絶なる戦いを前にしても楽しみだと笑った。それは確かに、確実に、ザンギャバス大帝を滅ぼすと決めた男の顔であった。
無敵の名を冠する相手であったとしても関係ない。
今は倒せないのだとしても、必ず滅ぼす。そうシーザーは宣言するように、ユーベルコードをたぐり、ザンギャバス大帝を消耗させ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ほほう、我のグリモアを狙うザンギャバス大帝か。
この我に楯突くとは許しがたい敵だな!」
さらに、暴れれば暴れるだけお腹が空くとか、我とキャラが被っておるではないか!
まあ、頭脳派の我と違って、ヤツは単細胞なところが違うようだがな。ふふん。(注:フィアも十分単細胞です
「くくく、頭脳戦なら我に任せておくがいい!
単細胞な相手なら、我の賢い作戦で手も足も出せないまま倒してくれるわ!」
【魔力増幅】からの【竜滅陣】を、敵の近距離攻撃が届かない遠距離から撃ちまくってくれるわ!
我、頭いい!(頭悪い作戦
「さあ、我の魔力が尽きてお腹が空くのが先か、貴様が力尽きてお腹が空くのが先か、正々堂々と勝負だ!」
「ほほう、我のグリモアを狙うザンギャバス大帝か。この我に楯突くとは許し難い敵だな!」
そう高らかに言い放ったのは、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)であった。
今まさに七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝は猟兵達のユーベルコードを受けて消耗の一途をたどっていた。
あらゆるユーベルコードが彼を遅い、けれど、倒しきれない。
それはグリモア猟兵であるフィアにしても知るところであったことだろう。
無敵と呼ばれた大帝。
その恐るべきタフネスと、力の強大さは対峙するだけでフィアはよく理解できていた。
「暴れれば暴れるだけお腹が空くとか、我とキャラがかぶっておるではないか!」
いや、そういう問題ではないのだが、悪魔たる彼女からすれば由々しき問題である。ここまで来てまさかのキャラかぶり。
それはフィアにとってグリモアを狙われることよりも許し難いことであった。
「グリモア! お前もグリモアを持っているのか!」
コロす、と猪突猛進のごとくザンギャバス大帝が目の色を変えてフィアへと迫る。
その姿は肉塊が弾丸のように己へと突進してくるようでもあった。
「まあ、頭脳派の我と違って、やつは単細胞なところが違うようだがな。ふふん。そんな一直線に来たところで!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
「我と契約せし悪魔よ、我との契約に従い、汝の全ての力を以て、我が魔力の糧となれ」
それは魔力増幅(マナ・ブースト)。悪魔との契約に寄って魔力を増幅させた時間に応じて彼女の次なる一手を必勝のものへと変える。
これこそがフィアが編み出した頭脳派の攻撃である。
「貴様の手の届かぬところから一撃で滅してくれる! くくく、頭脳戦なら我にまかせておくがよいというものだ! 単細胞な相手なら、我の賢い作戦で手も足も出せないまま倒してくれるわ!」
放たれるは、竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)。
ドラゴンすらも消し飛ばす大規模破壊魔法。その一撃がザンギャバス大帝を打ちのめす。だが、それでもザンギャバス大帝は消滅しない。
わかっていたことであるが、無敵にもほどが在る。
だが、フィアという魔女を舐めてはいけない。
彼女がどれだけの存在であるのかを今、放ったユーベルコードで知ることができたであろう。
何故、魔力を増幅させたのか。
その意味するところをザンギャバス大帝は理解……できなかったかもしれない。けれど、自身に迫る極大の破壊魔法の一撃が、一撃で終わらぬことを、その体に叩き込まれた複数回に及ぶ魔法の連撃でもって知ることに為るのだ。
「貴様の攻撃が届かぬ遠距離から打ちまくってくれるわ! 我、頭いい!」
どこかで誰かが、いやそうでもなくないかな、と呟いたような気がしたがフィアには幸いに届かなかった。
今まさにフィアはノリノリであった。
敵の攻撃が届かない場所からの一方的な攻撃。それはとても楽しいものであったことだろう。
テンション高めなまま、フィアは叫ぶ。
「さあ、我の魔力が尽きてお腹が空くのが先か、貴様が力尽きてお腹が空くのが先か、正々堂々と勝負だ!」
遠距離から延々と極大の魔法を放ち続けている時点で正々堂々もないわけであるが、だれも突っ込まなかった。
何故なら、その余裕すらないからだ。
ザンギャバス大帝は、これだけの攻撃を受けても尚消滅するどころか、撤退さえしないのだ。
それが否応なくザンギャバス大帝の力の強大さを物語る。
けれど、そんな不安さえもフィアは一笑に付して魔法を放ち続ける。彼女には確信があった。
自身のお腹の空き具合。
それから察するにもうひと押し。フィアはお腹の虫が成り始めようとするまで、魔法を連発し続け、ザンギャバス大帝をあと一歩まで追い込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
無敵で倒せないとか厄介極まりないね
周りの物を上手く利用して消耗させよう
ガトリングガンの射撃で注意を惹いたら
防衛機構がある方に逃げて攻撃させよう
攻撃が当たりそうになったら
ワイヤーガンの移動で回避
避けきれない場合は
宇宙船の外殻とか頑丈そうなものを
固定して盾にしよう
攻撃を防げたら
攻撃を受けた側の反対に誘導し固定を解除
溜った運動エネルギーを解放して攻撃
誰もいない場所から攻撃されてる様に見せかけ
戸惑わせて時間を稼ぎつつ
防衛機構やガトリングガンで削ろう
わかってはいたけどこういう相手だと
邪神の手助けは期待できないね
あら、後で晶で遊ばせてくれるなら考えても良いですの
僕とじゃなくて僕での時点で答えるまでもないね
極大なる魔法の輝きが幾度も七大海嘯『鮫牙』のザンギャバス大帝を撃つ。
その輝きはザンギャバス大帝をあと一歩のところまで追い詰めていた。
「無敵で倒せないとか厄介極まりないね。だけど――」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は戦場に駆け出す。
極大の魔法に穿たれ、ザンギャバス大帝はもはや動くこともできないでいる。ここで押し込まなければ、別の島へと飛ばれてしまう。
もしも、居住している島民たちがいる島に飛ばれてしまったのならば、ザンギャバス大帝は容赦なく彼らを貪り食うだろう。
そうなってしまえば、被害は数千、数万に及んでしまう。
それだけはなんとしても阻止しなければならない。携行式ガトリングガンから弾丸をばらまきながら晶は己に注意をひきつけさせる。
「判っていたけど、こういう相手だと邪神の手助けは期待できないね」
薄情者め、と晶はつぶやく余裕すらなかった。
ガトリングガンの弾丸は確かにザンギャバス大帝に当たっているが、手応えがない。
無敵と呼ばれているのは知っているが、それでもあまりにも効果が薄い用に思えてしまうのだ。
「グリモア、グリモア! お前っ、鬱陶しい! コロす!」
何処にまだそんな力があるのか、ザンギャバス大帝が拳を振るっただけで衝撃波が晶を襲う。
ワイヤーガンで防衛機構を利用しながら攻撃を躱す晶。
けれど、それも限界が来る。
どれだけワイヤーガンを巧みに使ったとしても、避けきれない場面が必ず来る。
「宇宙船の外殻……!」
これまで猟兵達が利用したのは防衛機構だけではなかった。
この島の由来となっているスペースシップワールドの宇宙船、そのささくれた外殻を盾にしながら、晶はザンギャバス大帝にガトリングガンによる攻撃を加える。
だが、次の瞬間には、その外殻を押しつぶすようにザンギャバス大帝の巨躯が空から降ってくるのだ。
「ほんと、めちゃくちゃだな……!」
けれど、と晶の瞳がユーベルコードに輝く。
決めるのならば今しかない。何故、今まで無作為にガトリングガンを討ち放ち続けていたのか。それは弾丸を固定し、弾頭への運動エネルギー蓄積を待っていたのだ。
それは、邪神の手遊び(スタティック・アクセラレーター)とも言うべきユーベルコードであった。
蓄積された運動エネルギーを開放した瞬間、弾丸は超加速された凄まじい一撃となってザンギャバス大帝を襲うだろう。
「あら、後で晶で遊ばせてくれるなら考えても良いですの」
体の内側から邪神がうそぶくのか、それとも本気なのかわからぬ言動をしてくるが、晶は構わなかった。
正確には言い返す余裕がなかったのだ。
ザンギャバス大帝の巨躯が再び晶を圧殺せんと降りかかる。
ワイヤーガンを放ち、巻き取られながら晶は固定していた弾丸の全てを開放をする。
「塵も積もれば山となる、ってね」
開放されたエネルギーが超加速となって凄まじい勢いでザンギャバス大帝を貫いていく。
ただ撃ち放っただけでは得られない弾丸の威力。
それが無数に、それこそ数百以上の弾丸でもってザンギャバス大帝の肉体を貫く。
「ぐぅぁ――!」
ザンギャバス大帝が呻く。
ぐらり、ぐらりと、その巨躯が揺れ小刻みに震えた瞬間、その肉体が極限の飢餓状態へと到達した。
獣の頭部が折り重なったような身体。
その巨大なる異形が島より逃走する。それはあまりにも早く、同時にこれまで猟兵達が視た予兆によって割り出した『鮫牙』の本拠地を指し示す方角へと飛び退る。
長い戦いが終わった。
ザンギャバス大帝を倒し切ることはできなかったけれど、それでも猟兵達は『負けぬ』戦いを制し、ザンギャバス大帝を、無敵大帝と呼ばれた七大海嘯を撤退へと追い込んだのだ。
それはコンキスタドールたちにとって驚愕させるに十分な勝利と言って差し支えなかったことだろう。
晶は息を吐き出し、内なる邪神に言う。
「僕『と』じゃなくて僕『で』の時点で応えるまでもないね」
疲れたから今は休ませて欲しい。
そんなふうに晶は思うほどに、戦いに参加した猟兵達と気持ちを同じくするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵