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銀河帝国攻略戦⑤~ヤられる前にヤれ

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●未は前
「アハハ、戦争だってね。うん、みんなもやる気だね?」
 何が面白いのか、いかにも軽薄そうな笑いを浮かべて。結晶・ザクロ(真実のガーネット・f03773)は背後に映る、スペースシップワールドの光景に、視線を送る。
「道を阻む無数の敵。なんていいよね。こういうシチュエーション」
 ザクロの視線の先に映るものは、一隻のスペースシップワールドに詰め込まれた、無数の人影のような、兵士たちの姿。
 彼らは全員、何時でも敵地へと踏み出せるように、武装を整えた姿で整列していた。
 そんな光景を目に、ザクロは目を輝かせて、唱える。
「うん、燃やし放題。やり放題って感じ!」
 タガを外した言葉とともに。その指先に炎を灯す。
 皆を送り出すのでなければ、自ら飛び込んでいってしまいそうな程の勢いで。
「ま、ここに行くのは皆の仕事だけど」
 しかし、勢いをつけた指先の炎はあっさりと消されて。
 代わりにザクロが口にし始めたのは、今回の作戦について。
「今回の戦いの事は、みんなも知ってる通りだね。スペースシップワールドの存亡を掛けた、おっきな戦い」
 前提として。『銀河帝国攻略戦』の事を交えて指折り為されていく解説は、いよいよ背後に映る光景の事へと至る。
「ここは、敵の艦の中だね。それも、これから宇宙船を襲おうっていうヤツらのね」
 補足するならば、襲われる宇宙船というのは、解放軍との合流を図る宇宙船である。
 兵士たちが重厚な武装に身を包み、整列しているのには、そうした理由があった。
 そして、そのような場所を映している、という事はつまり。
「うん、だから。どこかの艦が襲われる前に襲ってきてよ。敵の艦が沈むくらい思いっきり」
 誰もが思い至るシンプルな答えに、ザクロは自ら先だって答えてみせる。
 これこそ攻撃は最大の防御だと、適当な言葉も付け足して。理屈としては間違っていないのだが、ザクロの態度はどこか信憑性というものを欠いているようにも見えて。
「大丈夫、大丈夫。何だったら手加減する理由もないんだから。皆なら簡単じゃないかな? それじゃあ、よろしくって事で」
 そんな根拠のない言葉と共にザクロは、猟兵たちを送りだしていくのだった。


一兎
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

●はじめに。
 こんにちは、もしくはこんばんは。
 まさかの戦争の仕組みに驚きながらも。
 乗るしかねぇ、このビッグウェーブに。とばかりに数ある戦争シナリオの一群から、失礼します。
 以下に、当シナリオの概要を。

●概要
 といっても、おおよそは皆さまご存知の通りかと思います。
 ですので、ざっくりと。
 当シナリオは、タイトルにもつけた通り。戦場⑤。
 ⑤帝国戦艦迎撃指令を扱わせていただきます。
 敵の詳細は、フラグメントの通り。
 一隻に無数に集う敵兵の群れを蹴散らしたい方はどうぞこちらに。

 ちなみに、敵を撃破した後、最低でも自動的に脱出を遂げた、という事になります。ご心配なく。一応、かっこいい脱出がしたい方も遠慮なくどうぞ。

 以上それでは。皆さまからのプレイング、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『クローン重騎兵』

POW   :    インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ   :    サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

多々羅・赤銅
おお、要はシンプルだな!
斬って、斬って、斬り伏せる。

敵の攻撃さえも斬って正面から突き進む大立ち回り、見切り感残像フェイント、あらゆる刀術を駆使して鮮やかでしぶとい剣戟ご覧に入れようぞ!全体の斜線を視野、耳、全感覚駆使して素早く把握し、敵を盾にしてやりゃお得だろ。
どんな武装も赤銅鬼の前にゃ豆腐も同然、なあ?鎧無視の斬れ味の体感はどうだ?最早気持ちいいだろう?

オラオラもっとお代わりあんだろ?まだまだ満足にゃ程遠いんだこちとらよぉ!


ソフィア・テレンティア
雑魚相手ならソフィアにお任せあれ。お屋敷だけでなく、敵の【お掃除】もメイドの嗜みですので。
UC【魔導蒸気機関複製機構】で【蒸気駆動式機関銃・冥土式】を21機複製、敵を取り囲むように操作し、その全弾をもってクローン重騎兵を攻撃いたします。
いくら相手の相互情報支援とやらが優秀でも、この数全てを視認することはかなわないでしょう。
敵の数は未だ多数健在。まずは数を減らすのに専念でございます。


イデア・ラケル
多数を相手する時は一点突破に限るね、ガンガン突き進んで薙ぎ払ってやろうじゃん!
アタシはでっかいサムライブレイド、マサムネXXの【鎧無視攻撃】でクローン兵をぶった切るよ、力任せなら自信ありってね。【サイキックブラスト】で丸焦げにしてやるのもいいね。
敵の攻撃は【残像】や【野生の勘】で避けられるかな?【目潰し】で相手のコズミックスナイプの妨害を狙うとこっちの被害も減らせそう


ドリスコ・エボニス
戦争ってのはいつだって心が踊るもんよ
やりたい放題やっていこうじゃないの!

まずは近場のヤツに一気にダッシュで距離をつめるぜ
怪力と力溜めを合わせての捨て身の一撃による鎧砕きのグラウンドクラッシャーを叩き込む
一発とはいわない、おまけの二回攻撃よ
倒したのならまたダッシュで次のヤツに向かうよ
相手からの攻撃には戦闘知識と野性の勘を駆使して回避をしてみるぜ
余裕があればカウンターも狙っていこうじゃないの

さてとどれだけ倒せるかな?


マスター・カオス
フハハハ…我が名は、グランドフォースに導かれし、世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大幹部、マスターカオス!1


敵の拘束ワイヤーなどの対処は、念動力で封じつつ、敵を盾にするように立ち回ります。

「ほう…銀河帝国の先兵か、懐かしくもあるがやはりこの数は煩わしくもあるな。 ならば、私もここらで、かつての戦いの再現をするのも一興か!」

「大騎士団ノ残光」にてフォースナイト達の霊を召喚して、敵のクローン重騎兵を蹴散らします。


脱出時は、敵の戦闘機でも奪ってみます。脱出遅れた方はどうぞ。
あれ…? 今の私の依り代は操縦などできただろうか…?
まぁ、なんとかなるか…な?


ルフトゥ・カメリア
はッ、雑魚が何体集まろうと敵じゃねぇよ!蹴散らしてやる。

手首の古傷を掻き切って地獄の炎を溢れさせ、バスターソードに纏わせて突っ込む。金属だろうと何だろうと、溶かし斬っちまえば一緒だろ。【怪力、2回攻撃、鎧砕き、フェイント、だまし討ち】
背の翼の付け根にある古傷からもブースターのように炎を噴き出し、背面の護り兼カウンターに応用。弾も何も燃やし尽くしてやる。

もし周囲に狙われて危険な状態の猟兵がいた場合は、【武器受け、かばう、オーラ防御、カウンター】で割って入る。
罵声の割には自分がいる限りは決して傷付けさせないと身を呈す、傲慢な守護天使。


ユーリ・ヴォルフ
燃やし放題だなんて心惹かれるな
いやそんな楽観している場合でもないな
そう、攻撃は最大の防御だ。やられる前に、撃って出る!

拘束用ワイヤーは分が悪いな
隙をついて一気に近づき、突撃して接近戦に持ち込もう

【ドラゴニック・エンド】に【属性攻撃】で炎の力を乗せる
敵が密集しているならば【範囲攻撃】で焼き尽くそう
敵数が多いからこそ、槍を振り回し派手に立ち回りながら
立ち止まらずに走り続けて混乱させる。同士討ちも誘いたい
クローン兵か。同じ顔同士、潰し合え!

アドリブ共闘大歓迎です


矢羽多・景
うーん、この僕の場違い感なかなかじゃない?
逆に新しいかも、宇宙とバンカラ…
やっぱり変か。

でもそこは猟兵の仕事に垣根なし、だよね?

【WIZ】
僕は巫覡載霊の舞でSFチックな敵の攻撃に対応するよ!

艦内の狭い通路を通るなら薙刀を2つに分解して二刀流。
ワイヤーに注意を払って刃の斬撃と柄の突きで攻撃だ。
絡め取られそうになったら、外套を身代わりにしてみよう。

でもなるべく早めに広くて敵が集まる場所を目指すよ。
長物の真価は柄でぽこぽこ叩くもんじゃないしね?

薙刀を1つに繋げたら、下駄をからりと鳴らしてなぎ払いの乱舞…
遠く離れた敵には衝撃波も飛ばす。

どう?少しSFチックでしょ。


アレンジ、絡み歓迎!


御狐・稲見之守
ほほう、ここは星の海原の壇ノ浦か。重っ苦しそうな装束の兵が出てきたものよ。

“クローン”なれば遠慮はいらんな。普段は趣味が悪いのであまり使うことはないが……UC傀儡符。打ち倒されたクローンどもをワシの手駒とし戦わせようゾ。勅令陏身保命、急々如律令。

なあに打ち倒されても幾らでも替えは湧いて出る。さあクローンの木偶ども、蹂躙せよ。さあ戦、戦ぞ。


シエン・イロハ
ハッ、分かりやすくていいじゃねぇか、こいつらぶっ壊せばいいんだろ

【SPD】選択

敵の攻撃には『野生の勘』『見切り』『逃げ足』『敵を盾にする』を使って攻撃自体くらわぬように立ち回り
ハッ、当たらねぇよその程度じゃな

上着脱いだ状態で【シーブズ・ギャンビット】使用
ダガーは至近距離ではなく『投擲』、また『範囲攻撃』や『2回攻撃』『フェイント』等も駆使し敵の駆動部分狙って攻撃を
近接に敵が多い場合はベスティアの『範囲攻撃』で一掃狙い

しかし味方との相互支援情報ね…何か通信機器でももってる可能性もあるか?
上手くすりゃ今後の敵の情報混乱に使えるかもだし、余裕あったら『盗み攻撃』で奪えないか試してみるか


空廼・柩
あんなに沢山の敵を倒さなければならないの?
まったく、数を見るだけで気が滅入るよ
――でも、嫌いじゃない

眼鏡を外し、棺型の拷問具を手に準備万端
【咎力封じ】で多くの重騎兵の戦力減衰を図る
拘束した敵を叩き付ける、周囲を巻き込むよう振り回す等
効率良くダメージを与える
敵が整列状態ならば特に積極的に
ああ、勿論周囲に猟兵がいないか気を配る心算だから安心してよ

敵のスナイプにも警戒は怠らず、持ち前の視力を用いて警戒
見切りや第六感を頼りに回避
回避が間に合わなければ拷問具で少しでも攻撃を凌ごう
勿論、他の猟兵達との連携も忘れていない
武器を盾に庇う事である程度はなんとかなる筈
あんたも、こんな所で倒れる訳にはいかないだろ?


アリス・セカンドカラー
オリュンポス遊撃艦隊『アーテー』に要請し、鎧装騎兵大隊を送りこんでもらう。
数には数で対抗よ。
さぁ、蹂躙せよ、我等オリュンポスの威光を知らしめるのだ。
いうても、送り込む為には艦隊戦を消化する必要があるだろうし、それまではわたし自身が戦わないとね。
召喚出来るのはあくまで艦隊で鎧装騎兵大隊は備品扱いだから直接ここに呼べないのよね。

サイキックヴァンパイアを展開してエナジードレイン。
武器受けしては攻撃が保有する諸々のエネルギーを吸収し、盗み攻撃を仕掛けては生命力や体力をドレインしイーファルニエフィルフィンの糧に。
敵のリソースを奪い自分のリソースに回すことで消費を最小限に抑える立ち回りよ。


アルバ・アルフライラ
ふふん、雑兵を蹴散らす等造作のない事
気負い無く、派手に暴れられるのは嫌いではありませんよ?

仕込み杖で描いた魔方陣
重歩兵の群れに行使するは【女王の臣僕】
叶う限り広範囲へ魔術を展開
その身を凍りつかせる事で行動を阻害しよう
高速詠唱、2回攻撃で絶え間なく魔術を降らせる

共闘する猟兵への支援は怠らず
隙を補うよう後方より魔術で援護
猟兵の死角に敵が迫れば警告も行おう
拘束用ワイヤーに関しては見切りか第六感で回避
叶わなければ仕込み杖で受け流しを試みる
魔術によるカウンターも視野に
…ふふん、杖が使えなくとも魔術は行使出来る
私を捕らえようなんぞ不敬が過ぎるぞ
その罪、万死に値すると思え

(従者、敵以外には穏やかな敬語口調)



●今、寄りて
 冷たい、冷たい無機質な空間だった。
 その身を有機物で構成しているはずのクローン兵の軍団はというと、そうでありながらも、身を包む甲冑にも似た武装の数々によって、無機物めいた存在感を持っており。
 この空間に、温かみを感じられるような物質は存在しないといって、間違いなかっただろう。
 いや、必要がなかった、という方が正しいだろうか。
「フハハハハハ!!」
 だからこそ。
「聞け、フォースの加護なき、愚鈍の軍勢どもよ!!」
 哄笑する仮面の男の姿に、それら有機物の群れは、視線を向けざるを得なかった。
 漆黒の鎧と白銀のマントで身を包んだ彼の名はマスター・カオス(秘密結社オリュンポスの大幹部・f00535)。いや、ここで彼の事を説明するのは野暮だろう。
「我が名は、グランドフォースに導かれし。世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大幹部、マスターカオス!!」
 大仰な名乗りを挙げて、カオスは宣言する。
「我らが世界征服の野望のため、貴様らには、この場で引導を渡してやろう!!」
 瞬間、マズルフラッシュが迸る。
 敵意を示す外敵の出現に、冷静に動き出したクローン兵によるものだった。
 彼らにとって、この艦には彼ら以外に敵はなく。現れるそれ以外は、例外なく敵であるのだ。
 冷静な思考は迅速な行動へと移る。カオスの身は早くも蜂の巣となる、はずだった。
「フハハハ! やはりこの程度か。我が剣を振るうまでもないな」
 しかし、その動きを読んでいたのか。カオスは弾丸を喰らう寸前、顕現したフォースシールドにより、悉くを防ぎきっていた。
 銃撃が止む。
 弾煙と閃光に隠れた、その向こうには、構えを解いたカオスの姿。
 そして、各々の得物を手に、次々と転移を果たす猟兵たちの姿。
 さすがに、冷徹な戦闘マシーン同然であるはずのクローン兵たちも、この状況にたじろいだ。
「ここは、……突入用ハッチか?」
 すると、猟兵たちの中から、現在位置を確認するような声が挙がった。
 クローン兵が詰めているのはおそらく、ここから即座に飛び出していくためだろう。必要に応じて小型スペースシップを配置できるためか、多くの兵が配置されているにも関わらず、空間にはまだ余裕がある。
「……あるいは、温存戦力を抱えておるか、じゃな」
 そんな風に呟いたのは、猟兵の一人、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)である。
「どれ、肩を借りるぞ」
「むっ?」
 稲見之守はそのまま、最前にいてかつ背丈のあるカオスの肩に乗り、周囲を見回してみせる。
 判断を仰いでいるのか、たじろぐクローン兵の一人が、その頭を覆うフェイスの耳の辺りに指をかけ、首を捻っていた。
「集まられる、というのも厄介のぅ」
 その仕草と同じように、首を捻って、稲見之守は考える。
 今でこそ、予想だにしない猟兵たちの登場に動きを止めているクローン兵たちだが。こうした統率がとれた集団というものは、数が多いほど力を増すものである。
「であれば。答えは決まったも同然だろう! 集え、我に従いし意志たちよ!!」
 稲見之守の言葉を耳にしていたカオスの決断は、素早かった。
 彼が高く掲げた拳で煌めく指輪が、輝きを放つと同時に、猟兵たちの並ぶさらに後ろにと無数の戦士たちが現れる。
 カオスのユーベルコードによって顕現した彼らは一様に、フォースセイバーを手にしていた。
『侵入者、多数確認! 応戦します!』
「ただの木偶……のようでもなさそうだのぅ。なれば、戦力を割くのが良いか。ほれ、行くぞ、そこの衆」
 それらの姿を確認したクローン兵たちは、構えた重火器を一斉に、フォースの戦士たちへと向ける。
 同時に、戦意を感じ取った稲見之守もまた、フォースの戦士たちへと戦いの刻を告げる。
『のじゃロリ万歳!!』
「なっ、お前たち!?」
 新たに戸惑いの声を挙げるカオスの心境とは裏腹に。戦いの幕は切って落とされたのだった。

●斬り開く
 無数の弾丸が、あるいは光弾が飛び交う。
 返す刃は、フォースによって形成された光の刃。
 時に弾き、時に迫り、時に射抜かれていく。
 そんな戦場と化した地で、これもまた姿の異なる、三振りの刃が閃いていた。
「そーらっ、かっとべぇ!」
 びゅごぅと、風を薙ぐ音と共に、大振りの刀がクローン兵の数人を、まとめてぶったぎる。
「なーんだ。これっぽっち? 全然イケてねぇじゃん」
 閃きの一つ、イデア・ラケル(螺旋の花・f03935)はそう言うと、手にしていた全長150㎝を誇る得物『マサムネXX』を宙へと放り投げ、太腿のベルトに刺していた棒つきキャンディを口に運んだ。
 チャキンと、鋭い音を立て、長い刀身はイデアの背負う鞘へと収まる。
「うん、この味はイケてる」
 その背後でやや遅れて、クローン兵だったモノがガシャガラと、まるでガラクタのような音を立て、崩れ果てていく。
『あんなに長い武器を振り回すなんて、なんて力だ』
『たじろぐな! いくら長くとも、射程を持つ我々の方が上だ。囲め! ワイヤーで動きを止めろ!』
 まるで、何事もなかったかのように振る舞うイデアの姿にたじろぐ兵が数名。殺意を剥き出す兵が数名。
 彼らはしかし、一瞬の後には背部のバーニアを吹かし、統率のとれた動きでイデアたち猟兵を包囲しようと動き出す。
 間合いの武器と、射程の武器。どちらが優れているかなど、言うまでもないだろう。クローン兵たちの取った行動は、理に適ったものだった。
「射程が何だって?」
『なっ?!』
 ただ、理に適うだけでは猟兵たちには届かなかった。
 フェイスの下で驚愕に目を見開く兵が見たものは、自身と並ぶように宙を飛ぶ一人の黒い翼を持ったオラトリオの姿。
 そのオラトリオ、ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は、兵たちがバーニアから噴き出すものとは異なる色をした炎を、自らの背から噴き出し、彼らと同じように、飛んでみせているのだ。
「雑魚なら、雑魚らしく、地を這いずってりゃ、いいんだよ!」
 その位置から、ルフトゥの握る刃が振るわれる。
 その刀身に淡青色の炎を纏わせた、幅広のバスターソード。
 まるで十字架のようなシルエットをしているそれを、ルフトゥは振るう。
「どうした、その背中のはお飾りか? んな程度じゃ、止められやしねぇぞ!」
 一人、二人、三人。
 追いつき、追い越し、その度に敵の姿は地獄の炎に呑まれ、爆散していく。
 炎が燃料に引火しているのだろう。降り注ぐような火の粉が、飛び散った。
「おっ、ラッキー」
 それを地上から(といっても、見上げる程度の落差しかないが)見ていた多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)は、偶然手元に振って来た火の塊に、これ幸いと煙草を掠らせてみせる。
 味わうような一息。
『有害物質を多量に含んだガスを確認!』
「あぁ?」
 その後頭部へと銃口が突きつけられる。
『貴様だな!』
 煙草の煙の事を指摘しているのだろう、閉鎖空間である艦の中において、有毒性のガスによる攻撃は、逃げ場のない恐怖を与えるものである。
 それは、兵に引き金を引かせるには十分な理由となり得た。
「チッ。人が一服キメてるってのに」
 しかしその兵も考えるべきであっただろう。
 乱戦にも近いこの状況の中、どうして悠長に煙草を吹かしている者がいたのか。
 どうして、その敵を相手にしている者がいなかったのか。
「チッ」
 小さな舌打ちと同時に、引き金が引かれる。これを赤銅は頭を振って、躱した。
 気づけばその手には、一振りの刀が握られていた。
 手前の二人と違い、何の変哲もない。ごくありふれた刀。ただそれだけを、まるでバットを扱うかのように雑な持ち方で構えて。
「しゃァらっ、くせェエエ!!」
 叫ぶと共に、自身に向けられていた銃口ごと、一人のクローン兵を切り払う。
 デタラメな太刀筋で、デタラメな速さで。
 メッタ打ちにするように何度と振るわれる刃は、クローン兵の身にする強固なアーマースーツを、叩き、割り、鉄くずと変えていく。
「人が、せっかく一服、キメてるってのによオォ!!」
 それを形容するなら、理不尽というべきだろうか。
 彼女が加える煙草のように、一度火のついた赤銅の怒りは、暴力という形で、居並ぶクローン兵たちを襲う。
「こんなトコで、咥えタバコしてるのが、悪いんじゃねぇの?」
 そんな風にして暴力を振りまく赤銅の傍で、イデアの振るう刃が、風を巻き、煙草の煙を揺らした。
「あァん? テメェも斬られてぇのかァ!!?」
 赤銅の眼光は鋭く、イデアを咎めるように。
 煙草の先から、灰が零れ落ちる。
「おー、おっかない。鬼が出たぞぉー!」
「っだとコラァ!!」
 アハハと笑いながらイデアは、赤銅に背を向けた。それを追いかけるように赤銅の脚は道を遮る兵の一人を蹴っ飛ばす。
 そうして駆け出す二人の刃は、立ちはだかるクローン兵など眼中に入っていないかのように、次々と斬り伏せていく。
 いや、事実、赤銅の目には、映っていなかったかもしれないが。
『くそ、応援を、応援を呼べ!』
 混沌を増していく戦場で、クローン兵たちの悲痛な叫びが、剣撃の嵐に呑まれていった。

●潜み行く
 艦の各ブロックを繋ぐ、長い長い通路部分の道中。
『なんだ、この攻撃は!? ウァアア!!!』
『くそ、この馬鹿力が、止まれ! 止ま……』
『こちら艦橋ブロック、単独で行動中の敵を発見。追跡する』
『艦外に敵。接近してきますが、なぜか攻撃してきません!』
 ぐったりと力尽きたクローン兵のフェイスから、オープンとなった通信の内容が、次々と漏れ聞こえてくる。
「随分、良いの使ってるじゃねぇの。……いや、この世界の技術力からしたら、当たり前か」
 フェイスの耳に当たる部分の外側に自らの耳を当てて、シエン・イロハ(迅疾の魔公子・f04536)はそんな事を呟きながら、さらに通信の内容に集中していく。
『こうなったら、船を爆破させて奴らを吹き飛ばすしか……』
 そして、無数に入り乱れる言葉の海の中に混ざった一言。
 それを耳にしたシエンの口元は、無意識のうちに、ニヤリとつりあがっていた。
「へぇ……」
 悪人めいた微笑を浮かべるシエンの姿は、傍目に悪魔のように見えただろう。
 それは、彼が持つ蝙蝠の羽根も相まって、そう見せているのかもしれない。
 しかし、そんな微笑は、身に突きさすような殺気によって、瞬時に冷酷な男の顔へと切り替わる。
「っと。あぶねぇ、あぶねぇ」
 合わせて、先ほどまで耳をつけていたクローン兵の身を、殺気の感じる方へと向ける。と、ほぼ同時に放たれた光線が、フェイス部を割り砕く。
「これは元々、狙撃用だって話だもんな。忘れてたぜ」
 自らに照準を合わせ増えていく赤い光点の数々を目に、シエンの態度はむしろ面白いと言わんばかりに、軽い、飄々としたものだった。
 長く続いた通路の先に狙撃に徹するクローン兵たちがいるのだろう。身を潜めてるいるのは柱の陰か、コンテナの陰か。
 遮蔽物と身を隠す場所の限られた細長い空間を冷静に観察しながら、シエンの足にはグッと力が込められる。
 考えられる距離は最低でも100m以上、照準の数から読み取れる人数は、少なくとも片手の指ほど。
 光が弾けた瞬間、シエンの身は飛び出していた。
「ったく。誰が弁償してくれんだろうな? お前か?」
 弾けた地点では、光線に貫かれたジャケットが残るのみで。
 通路の床を、壁を蹴り、最初の目標を見つけたシエンは、迷う事なく手にしたダガーを投げ放った。
 その切っ先は装甲の関節を繋ぐ隙間へと。まるで吸い込まれるような一撃は、クローン兵に呻きを挙げさせ、その武器を取り落とさせる。
「ま、違うか。そんじゃあな」
 その一瞬に、シエンの身は敵の傍にあった。かと思えば、その敵の首の辺りには、さらにもう一本のナイフが突き立っていた。
 声を挙げる事もできないままクローン兵の一人は、呆気なく地に伏してゆく。
「さて、これを見ても続けるか?」
 未だ自らの身を刺す殺気に撃たれながら、シエンはどこからともなく取り出した一振りの槍を手にする。
「だよな? だったら、ちっとは楽しませてくれよ」
 無言の殺意を返答と受け取ったシエンの足は、再び地を蹴り行く。
 黒塗りの槍の穂先が、悪魔の尻尾の先端のように、ギラりと瞬いた。

●補う
 最初の銃撃が放たれてから、どれほど時間が経っただろうか。
 長いようで、短い時間経過の中。猟兵たちの戦いの場は、徐々に移り変わりつつあった。
 とはいえ、二つの軍勢がぶつかりあえる程の空間というのは、そう多くもないのだが。
「居住区……でございましょうか」
 ハッチから押し進むうち、またも広い空間に辿り着いたソフィア・テレンティア(ミレナリィドールのシンフォニア・f02643)は、辺りを見回すなり、その空間の用途に目星をつける。
 ただ、目星をつけた答え程に、生活感のある場所ではない。それは、この艦がクローン兵による襲撃用に用意されたものであるから、だろう。
 必要最低限の設備、環境さえあればいい。それはまるで、機械のような冷徹さの象徴ともいえる。
「っ見敵……!」
 そして、迫りくる敵の姿に、躊躇なく機関銃を駆動させるソフィアの動きもまた、機械のように堅実なものだった。
 ただ、彼女が機械のようであるからこそ、読まれやすい動きだったのかもしれない。
『貰った!』
 機関銃の射線から外れたクローン兵は、立場を替えるようにビームライフルを構え、赤い光点による照準をソフィアの胸へと重ねた。
 そして、引き金が引かれる、寸前。
「そうはさせないよ。ってね」
 飛来する拘束具が、クローン兵の身体を捉え、同時にピンと引っ張りかける事でその態勢を崩させる。
 遅れて、あらぬ方向へと放たれる光線。
「大丈夫? 観てたら、なんか狙われてるみたいだったからさ」
 そう尋ねながら、空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は、ソフィアの傍へと歩み寄る。
 柩が手にしているのは、今しがた投擲した拘束ロープの一端だった。
 その先は未だ、先ほど捉えたクローン兵の身と繋がったまま。
「ありがとうございます。お言葉ですが、その持ち方ですと……」
 素直に礼を述べるソフィア、合わせて警告も告げようとしたのだが。
 時すでに遅く。うわぁと情けない声を挙げて、柩は態勢を崩してしまう。
『このまま引きずり回してやる!』
 その理由とは、クローン兵がバーニアを使い飛び立とうとしていた事によるものだった。
 引っ張っていたロープは、逆に引っ張られる形となって、柩の身を宙へと浮かべようとする。
 そこに。
「なんだ。楽しそうな事やってんじゃん」
 一人のドラゴニアンが割り込み、何気なく、ロープを手にした。
『なっ?!』
「俺も混ぜてくれよ。そらっ!」
 ドラゴニアン。いや、ドリスコ・エボニス(蛮竜・f05067)がそのまま片腕で、ぐいとロープを引っ張ると、それに従って、ドリスコに向かって吸い寄せられるように、クローン兵の身体が引っ張られていき。
『がはっ??!』
 ロープを引く腕とは反対の拳が捻じ込まれる。
 引力が加わった事により、通常の倍以上の威力を以て叩き込まれた一撃は、クローン兵から意識を根こそぎ奪い去り。
「どっせぃ!」
 続けて繰り出された膝蹴りにより、クローン兵の身体は、ボロキレのように吹き飛ばされていった。
「全く、どいつもこいつも大した事ないな。どうした? 立てるか?」
「あ、ああ。うん、立てる、立てるよ」
 束の間、柩は呆気にとられていたように。ドリスコの差し伸べる手を取り、立ち上がる。
 実際、呆気にとられていたのだが。
「……これなら」
 一方で、そんな二人の猟兵の様子を目の当たりにしていたソフィアは口にしていた。
「一つ案がございます、力を貸してくださいますでしょうか」
 敵を掃討するために。
 ソフィアが示す『お掃除』の方法に、柩とドリスコの二人は、その耳を傾けた。

●異、変
「私こそ、秘密結社オリュンポス、腐海四天王が一人……」
 幼い少女の姿をしたソレは、名乗りを挙げる。
 いや、事実少女であるのだが、ソレが身に纏う雰囲気というのもは、ひどく怪しく、臆面もなく言えば、少女らしからぬ妖艶なものであった。
 そんな、ソレの名はアリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)という。
「ふふふ、マスター・カオスも落ちぶれたものね。のじゃロリ如きに、いいように扱われるなんて」
 語弊をなくすのなら、いいように扱われているのは、カオスの呼び出した戦士たちであり、カオス自身ではない。
「けれど、私は違うわ。ねぇ、み・ん・な♪」
 そう言って、振り向くアリスの背後には、これもまた無数に並んだ、戦士たちの姿があった。
 その身に纏う武装から鎧装騎兵であるとわかる無名の戦士たちはみな一様に、アリスへの忠誠を示すように、片膝をつき、頭を垂れていた。
『遅れて申し訳ありません、アリス様』
 彼らもまた、アリスのユーベルコードによって呼び出された存在であるのだが。それがどうして、カオスと同じタイミングに現れなかったのか。
『艦隊からこちらに移ってくるのには、少々時間が……』
 もしも、この艦に外を展望できるような場所があったとしたら、誰もが驚いただろう。アリスのユーベルコードとは戦力を艦隊ごと呼び出す、大規模なものであったのだ。
 だからこそ、鎧装騎兵たちが直接召喚される事がなかった、とも言える。
「言い訳は聞きたくないわね。それとも、お仕置きが望み、なのかしら?」
 そういうアリス自身、理由もわかっているはずなのだが、不満そうに述べると自らの唇に人差し指を重ねてみせて。
 これに鎧装騎兵たちは、一斉に唾を呑んだ。
 中には明らかに何かを期待しているような眼差しを送るものもいて。やはりというか、彼らがどういった嗜好を為しているのか、わかりやすい反応だったと言えるだろう。
「でも、お・あ・ず・け♪」
 そして、そうした者の扱いに長けているのが、このアリスという少女の本質なのだ。
「一番戦果を挙げたヒトには、ご褒美をあげるわ。さぁ、蹂躙なさい!」
『オオォォぉ!!』
 湧き上がる鬨の声。
 こうして、混沌を極めつつある一隻のスペースシップに、新たな混沌の火種が舞い降りたのだった。

●目に映る
 艦橋ブロック。
 周囲の壁面を、特殊なガラス質の物質によって構成されたソコは、いわば艦の展望台のような役割を担っていると考えても良い。
 見渡す艦外の景色とは、広大に広がる暗黒に宇宙、そこに無数に煌めく星々と。なぜだか間近で群れる、謎のスペースシップ艦隊の姿などと。この世界にとってはありふれた。他世界からすれば幻想的な光景が広がっていて。
 やはりというか、その艦橋ブロックに集った猟兵たちの反応というのも、それぞれに応じたものとなった。
「どうせなら、もっとのんびりできる時に見たかったな。なんてっ」
 矢羽多・景(獣降しの神子・f05729)は、そう言って手にした薙刀を振るい、眼前に迫るワイヤーの一撃を撃ち払った。
 続けざま刃を返す。防御のための一振りは転じて、攻撃の一手へと。
 薙刀から放たれる衝撃波により、クローン兵の一人が吹き飛んでいく。
「もっともだな。こんな景色が見れる機会なんて、そうない」
 そんな薙刀を操る景の背後で、ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)は同じくと言った様子で、頷いてみせる。
 彼に相対する敵はというと、絶え間なく振るわれるユーリの槍捌きに翻弄され、その狙いをつけきれずにいた。
 薙刀の業を振るう景と、槍術を尽くすユーリ。
 二人の少年は、艦橋ブロックの中心に陣取り、互いに背を向けあう形で、次々と迫りくるクローン兵たちを捌き続けていた。
「これも両手に花、というものなのでしょうか。星々の煌めきとイケメンボーイズに囲まれながら、のんびり魔方陣を描くなんて経験、滅多とできませんよ」
 その二人の間で。
「えーっと。のんびりは抜いて欲しかったなぁ」
「ご心配なく。イケメンはささいな事は気にしませんから」
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は軽口を飛ばしながら、自らの立つ床一面へと、仕込み杖の先端を走らせていた。
 何気なく挟んだ景の言葉も、どこ吹く風でマイペースに。
 ちなみに、これらのやりとりは今に始まったわけでなく。辿ればおよそ、三人がまとまって行動を始めた時から、この調子であった。景がイケメンの部分にツッコミを入れなかったのも、早くも諦めの域に達していたからである。
 気にしてるんだけどなぁ、と呟く景の声もあえなくスルーされた事も加えておこう。
「ささいな事は気にしないが。体力は気にしている。あとどれくらい粘ればいい?」
 それでもとばかりに尋ねるユーリの顔には、心なし汗が浮き出し始めていた。
 今この状況が、終わりの見えない防戦である以上、無駄な体力の消耗は避けなければならない。そう思えば、焦りによる汗も混ざっていたかもしれない。
「もうとっくに出来てますよ? このシチュエーションを楽しまなくて、どうするんです?」
「なっ!?」
 にも関わらず、呆気からんとしたアルバの言葉に、思わずとユーリは息を呑む。
 もちろん、それを見越した上で、アルバはまたひらひらと手を振って弁明する。
「……冗談ですよ。本当は機会を待っていたんです」
 この術を、この規模で放つ以上、敵をできる限り巻き込めるに越した事はないと。
 そのような旨を添えて、アルバはタイミングを計っていたと言う。
 軽口は、それを敵に悟らせないため。と言い訳していた。
「だったらいいけど。さっき、この魔法なら、部屋中に効果があるって言ってたような……」
「展開『女王の臣僕』」
 景が指摘した瞬間、アルバは手にする仕込み杖で、床に描いた魔方陣を叩いた。
 途端、文様が浮きあがったかと思うと、床一面に広がっていく。
「さぁさ、女王のお出ましだ。身の程をわきまえぬ不埒の輩には、罰を与えよう」
 演技がかったアルバの身振りに合わせ、ふわりと舞い上がるように顕現した青いヴェールのような蝶の群れが、空間を支配していく。
『か、体、がっ……凍、る……っ』
 静かに、柔らかくありながら、冷酷に。
 青い蝶が撒く鱗粉に触れた敵は、そのことごとくが凍結を始めていた。
 見る間に大きさを増していく、氷塊と化す者。その身が痺れ、凍てつき、身動きを失くしてしまった者。
 かろうじて難を逃れたクローン兵たちも、その恐ろしい光景に、尻込みしたように。佇むばかりで。
「さ、あとは頼みましたよ。ナイトたち?」
 その魔方陣が女王の名を冠するなら、その行使を守りきった二人は、という事だろうか。回りくどい例えをして、アルバの両手は景とユーリ、それぞれの肩をトンと叩いてみせる。
「……敵じゃなくて良かった、かな」
「まったく、だな」
 汗どころか、血の気の引くような情景を目の当たりにした二人は、ようやっと、という様子で、その手の武器を握り直した。
 一瞬の内に凍てついた時間の流れは、再び動きだす。

●一幕の終わり
 ソフィアの提案とは、考えようによっては荒唐無稽な。しかし、それぞれの個性と特技を備える猟兵たちだからこそできる。掃討作戦だった。
 『お掃除』と形容するのは、彼女がメイドであるゆえだろうか。
「作戦って言うより、無茶ぶりって気がするんだよなぁ」
 柩は、そんな風に呟きながら周囲に視線を巡らせる。
 視界の端で、フォースセイバーを振るう戦士たちと、鎧装騎兵の軍団が、手柄を取り合うように、クローン兵との死闘を繰り広げていた。
 まるで映画のようだと、どこか他人事のような心地で、柩の脳は思考していく。
 居住区。ここは間違いなく戦場の中心となっていた。
 艦に降り立った猟兵たちの多くが、ここに集い、その力を振るっているのが、何よりの証拠だろう。
 そうした猟兵たちを追って、敵も戦力を固めつつある。もし、ここにいる敵を殲滅できたとすれば。
「そうしたら、制圧完了ってトコかな。……ま、無茶ぶりは慣れてるし。やるだけやってみますか!」
 声に張りを与えて、自らを奮い立たせるように、柩は手にする棺の中身を次々と取り出しては、投擲していく。
 手枷、猿轡、拘束ロープ。拘束具という拘束具の数々を、目についたクローン兵というクローン兵に、無差別に取りつけていく。
 そして。
「そら、あとは頼んだよ!」
 つなげた無数の拘束ロープの先を、柩は手渡し、即座にその場から離れてる。
「おうよ!」
 渡した相手は、ドリスコである。
 ズンと片足を踏み、さらにズシンともう一歩。
 踵に重心を寄せ、始まる回転。引きずられていたクローン兵たちは、遠心力によって、徐々に宙に浮かび始める。
「離れてろよぉォ!!」
 ハンマー投げ。それは一般的に、そう呼ばれる動きであった。
 もっとも、先端についているのはクローン兵たちの塊であり。目的も、投げるためでなく、巻き込むため。
 どちらかといえば、竜巻と表現するのが相応しいだろうか。
 一人、また一人と敵を巻き込み、竜巻は成長を続けていく。
『飛べ、飛んで逃げろ!』
 しかし本来の竜巻と違う点は、それが地上のみでしか意味を為さない事だろうか。
 恐ろしさのあまり、クローン兵はバーニアを使い、次々と宙へと逃げていく。
 当然、これも想定の内であった。
「誰が逃がすかよ!」
 宙を駆るルフトゥの刃がクローン兵の背中を打つ。
「オラオラァ、びびってんじゃねぇぞ! 見かけだけのもやしども!」
 彼が叫んでいるのは、何もその性格ゆえのものだけではない。
 宙にも逃げ場はないと、知らしめるように、あえて叫んでいるのだ。
 地上の恐怖と、空中の恐怖。比べるべくもないだろうが、恐慌状態に近づきつつあるクローン兵たちからは、徐々に正常な判断力が失われていく。
「なれば、これでどうかのぅ。悪趣味な術ゆえ、あまり使うつもりはなかったが。……くふふ」
 そんな様子を見てとった、稲見之守は懐から、一枚の符を取り出すと。
「勅令陏身保命、急々如律令」
 真言を唱えた。かと思うと、すぐさま符は燃え尽きる。
 その効果は、すぐに現れた。
『う、うわぁっ、?! 止めろ、来るなぁァ!!』
 むくり、むくりと。倒れ伏していたはずのクローン兵たちが、次々と立ち上がっていく。
 しかしその動きに生気はない。
 それもそのはずである。
「傀儡符。屍人すら動かす呪術ぞ。こんなものを考えた者は外道じゃろうなぁ……」
 文字通り、稲見之守の傀儡と成り果てた兵たちは、ゆっくりとその手にした銃器を構えたまま、恐慌状態のクローン兵たちを、一点へとより集めていく。
 屍人であるなら、例え誘導の最中にドリスコの竜巻に巻き込まれたとしても問題はないため。理に適った方法ではあった。
 モラルを除けば。
「ふふふ、外道と聞いて、黙っちゃいられないわね」
「ほぅ?」
 声の主は、のじゃロリの背後から。
「では、お主も外道を見せてくれると」
 のじゃロリの問いに、声の主でありガチロリであるところのアリスは、ない胸を張って堂々と言い切る。
「もちろん、良いトコ取りよ!」
 良いトコ取り、それはまさしく外道の所業だろう。
 それが果たして稲見之守の行いを上回るかはさておき。
「うおおおォォぉ!!」
 竜巻の中心で叫びが起こった。無論、ドリスコの発したものである。
「どっ、せい!!」
 裂帛の気合と共に、回転が斜めに反れ、勢いをそのままに巨大な塊が床面に叩きつけられる。
 その狙いは違わず。敵を固めた、その中心地へと。
「トドメはまかせたぜ!」
 役目を終えたドリスコは、そのバトンをソフィアに繋ぐ。
「ありがとうございました。あとは、お任せください」
 異色の双眸を見開き、彼女の握る機関銃が輝いた、かと思うと。それと同じ形状の機関銃が、敵を取り囲むように増えていく。
 この瞬間。
「今よ。アナタたち!」
 アリスが良いトコ取りに走った。厳密には、アリスの従える鎧装騎兵たちが動いた。
『メイドと機関銃サイコ―!』
 どうして彼らはこうも俗なのか。むしろ本当にアリスに従っているのか怪しい叫びと共に一斉に動いた鎧装騎兵たちは、それぞれが機関銃を手にしていく。
 これにソフィアは一瞬、悩んだ。別に銃手が無くとも撃てる構造であるのに。
 しかし銃手がいた方が、狙いが確実になる事も確かだった。なので。
「……一斉斉射!!」
 ソフィアは叫びが、響き渡る。
 一斉に動き出した機関銃が嵐の如く、弾丸を吐き出していく。
 こうして、居住区での戦いは、幕を閉じたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​


●路の末
 艦が揺れる。
 どこかで爆発があったのだろうか。警告を知らせる赤灯と、耳鳴りを誘うような、耳障りなアラートが鳴り響く。
 あるいは、それは決着を告げる鐘であったのかもしれない。
 もちろん、その事実を知るのは、居住区に詰めていた一部の存在のみではあったが。
「沈み行く艦、逃げ惑う騎士たちと、それを導く麗しの魔術師。とってもドラマチックな展開だ。そう思いませんか?」
「……こいつはずっとこんな調子なのか?」
「半分くらいは、かな」
 一団となって通路を進む中。
 大仰な身振りをつけて一人、語りに励むアルバの姿に。シエンが呆れたように言って、早くも慣れたように景が答えてみせる。
 展望ブロックで起きた戦いからしばらく。
 合流を果たした猟兵たちは、シエンからの報せを受け、脱出のために動き出していた。
「導くというより、導かれてると思うんだが……」
 その背の、炎の灯火を纏う翼に反して、ユーリは冷静に言葉を挟む。
 事実、彼の指摘する通り、アルバが位置する所は、皆が並ぶように走る後ろの方であり。
「おや、魔術師を先頭に立たせるつもりですか? そんな事言ってると、敵があなたを狙ってる事を教えてあげませんよ?」
「っ、早く言ってくれ!」
 動じずに応え返すアルバの言葉に従うように、ユーリは自らに迫る弾丸を切り払った。
「……にしても、こいつらも諦めが悪いな」
 その様子に何か諦めをつけた様子で。次いだシエンの言葉は吐き捨てるように、行く手を阻むクローン兵たちの姿に舌打ちする。
 通信によって、とっくに事態は把握しているはずなのにも関わらず。
「せめて僕たちだけでも、道連れにするつもりなんじゃないかな」
「命を賭して、何を得るんだか。……そんじゃ、俺は先、行ってるぜ」
「オッケー、次は解放軍の艦で、だね」
 短いやりとりの後に、目にも止まらぬ早さで駆けだしたシエンの姿は、クローン兵の一団の中へと消えていく。
 遅れて、次々と挙がる悲鳴。
「それじゃあ、僕たちも。行こう!」
 気合の言葉と共に、景の身体は神霊体と呼ばれる高位の姿へと変貌を遂げる。手にする薙刀を構え、その視線は正面へと。
「んー、あそこ、でいいでしょう」
 景の声に応じて、アルバが敵勢の一点を指さした。そこへ。
「魔術師様の仰せのままに、っと。行くぞ、景!」
 ユーリは手にする槍を、渾身の力で投げ放つ。
 炎の軌跡を描いて飛来するソレは違いなく、アルバの指さす先へと。
 クローン兵たちの中心。最も効率良く敵を巻き込む事が出来る、その一点へ。
『な、なんだこいつは!?』
 ユーリの放った槍を起点として召喚されたドラゴンが、その身を纏う炎によって、あるいは吐き出す炎によって、クローン兵のバリケードを崩壊させていく。
「通してもらうよ。帰るまでが戦いなんだからね!」
 崩壊の中心、さらにその一点へと。景は衝撃波を放つ。
 渦巻く炎ごと吹き飛ばされていくクローン兵たち。
 その隊列の中に、ぽっかりと穴が開いた。
「今だ!」
 いち早く身を刺しこんだユーリが、残る敵を薙ぎ払い、その態勢を崩させる。
 既にドラゴンの脅威によって怯え竦んでいたクローン兵たちは、呆気なく。次々と倒れていく。
『ま、待て……!』
 その身に重武装を纏うゆえに、幾人もの兵が塊となって倒れた身体は絡み合い、簡単に起き上がる事もできなくなるのだ。
 効率を求め、進化と差異を失くしたクローン兵に送るには、あまりにも哀れな末路だと言えるだろう。
「アデュー。……その顔には、二度と会う事もないだろうがな」
 声を挙げる兵の姿と、残火とを視界の片隅に捉えアルバは、誰に聞かせるでもなく呟いた。

●脱出間際
 猟兵たちは、一人、また一人と小型スペースシップへと乗り込んでいく。
 この艦での戦いに繰り出した猟兵は、十数人ほど。
 小型といえど、十分に余裕はあるだろう。
「さて、さすがに全員、乗り込んだだろうか」
 今まさに乗り込んでいく、三人の猟兵の姿を横目にカオスは、確認するように口にする。
 その仮面の下に隠した顔は、悩ましげに歪む。いや、ヒーローマスクである彼自身の下で、という方が正しいだろうか。
(これ以上残るのは、まずいだろうな……)
 ハッチから見えるそこかしこで、照明がポツポツと明滅を繰り返し始める。
 今の所、どこかが崩れ出すような、そんな大きな影響はないが、それも時間の問題だろう。
 冷静に判断を下すカオスと、カオスの呼び出した戦士たちが着々と脱出の準備を整えていく中。
「どうしたァ! こちとらまだ、満足してねぇえんだよォオオラァア!!」
 赤銅の叫びが、ハッチの中でこだまする。
 アレだけ振るい続けたにも関わらず、刃こぼれの見えないその刃は、まさしく業の一振りなのだろうが。
「何だったら、一人残らず相手してやっていいぜ! 夜の相手はイカしたヤツ限定な!」
 これもまた業の一振りを手に、イデアの刃が、また一人と迫るクローン兵を斬り捨てる。
 刃だけでなく、戦意すら欠ける事のない二人の猟兵たちの饗宴は、いや、狂宴は留まるところを知らず。
「二人とも、それくらいにしておいた方が良いだろう。戦うべき敵は、未だ巨万といるのだからな」
 もし、この時、カオスが呼び止めていなければ、二人ともに本当に一人残らずいなくなるまで、戦い続けていたかもしれないだろう。
 恐ろしいほどピタりと動きを止めて、二人の猟兵は、カオスへと視線を向ける。
 そうして睨む事、しばらく。
「……チッ、いいトコなのに、煙草が切れちまった」
「アハハ、姐さんそれ、全然イカしてねぇじゃんか」
 どこか渋々といった様子を見せながらも、二人ともに小型スペースシップへと乗り込んでいく。
(意外とものわかりが良かったな……)
 正直の所、その刃を向けられるのではないかと危惧していたカオスは、二人の対応に密かに胸に撫でおろした。
 そして。
 小型スペースシップはようやくといった様子で、徐々に機能を失っていく艦から飛び出し、解放軍の船へと向かっていくのだった。
 その道中。
 そういえば、とカオスの脳裏に些細な疑問が生まれた。
(しかし、一体誰が爆発を起こしたのだろうか……)
 一人動き回っていたシエンが言うには、敵は艦ごと爆破して猟兵たちを道連れにしようとしたのではないかと、推測されていたが。
(……いや、考えるだけ無駄だろうな)
 最後の最後に疲れ切ったため息を漏らして、カオスは、それまでいた地を振り返る。
 早くも点のような大きさに近づきつつあるソレは、神々しくも戦火の証であるかのように華々しく、宇宙の塵と散っていった。
ルベル・ノウフィル
【星杯】
解放の旗のもと人々が集いつつある現状はとても喜ばしく帝国の手からそんな人々を守りたいと参戦
「攻撃は最大の防御、やられる前にやるのでございます」

UC星守の杯で味方の回復支援をいたします
「ご支援いたします、存分に腕を奮ってください」
敵の特殊ワイヤーは自分に対してはジャンプダッシュで回避しつつ味方への分は第六感と捨て身の一撃で切り刻み庇います
「邪魔はさせませんとも」

戦艦はコアルームに人狼印の時限爆弾を置き土産にしつつ、離脱後に味方戦艦へ援護要請します
「共に帝国に対抗する、その第一歩となりましょう」
撃つ時にはなんかいい感じの文言を全員で言いましょう
解放軍万歳、みたいなノリで
きっと格好良いのです


スター・レイガン
【星杯】

◆心情
同じ志を持った者がこんなに集まっているのだ
チームプレイで勝利を皆で勝ち取ろう

◆戦闘
私は【クイックドロウ(UC)】を【クイックドロウ(技能)】で加速、光線銃で敵の狙撃主を撃ち、前衛に立つゼロナイン殿を【援護射撃】しよう

遮蔽物の後ろにいたとしても【Round-Trip-Shot】で光弾の軌道をねじ曲げ命中させるぞ

少しのダメージはノウフィル殿が援護してくれる、心配はいらん

であるならば私のやるべきことはできるだけ多くの弾を戦場にばらまき敵を混乱させることさ

後ろは私達が援護する、存分にやってくれ、騎士殿

◆破壊時
最後にはなんかいい感じの文言を全員で言うぞ、ノウフィル君、音頭をとってくれたまえ


トリテレイア・ゼロナイン
【星杯】
解放の旗のもとに人々が集いつつある現状に対して
「私も騎士として戦列に加わり人々を守る盾となりましょう」

「防具改造」で人狼印時限爆弾を大量に格納し運搬しつつ、敵の攻撃から味方を「武器受け」「盾受け」で「かばう」前衛として動きます。
爆弾が誘爆しないようUCを使いながら攻撃をセンサーで「見切り」対処していきます。
多少のダメージは味方の援護で無視して動けます。

敵が近づいたら床を「怪力」で「踏みつけ」飛び上がり大盾の殴打で地面に叩きつけます。

離脱後は味方戦艦へ援護要請します
「この皆での勝利は宇宙開放の狼煙の一つとなるでしょうね」
撃つ時にはなんかいい感じの文言(ルベル様・談)を全員で言いましょう



●もう一つ
 そうして猟兵たちが戦いが終え、脱出を果たす直前。
 艦には、他の猟兵たちとは異なるルートを進む三人の猟兵の姿があった。
「Hmm. 予定通りだ」
 爆発音を耳に、スーツの腕部に浮き出るタイマーを確認しながら、スター・レイガン(キャプテンレイガン・f02054)は暗に告げる。
 上手くいったと。
「あとは脱出するだけ、でございますね!」
 尻尾を揺らして追従するルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は、ここに至るまでの戦いを思い出す。
 スペースシップにありがちな、ギミック満載の道のりを。時に敵に阻まれ、時に隔壁に阻まれながらも辿り着いた先、中枢のコントロールルームに時限爆弾を仕掛け。現在へと至る戦いを。
「まだ油断はできません。恐らく、敵の残りの戦力は、死に物狂いでかかってくるでしょう」
 達成感を伴うルベルの言葉に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は気を引き締めるように口にする。
 脱出手段があるだろうハッチは目前、自然と気が緩みやすいタイミングであったのもある。
「その通り。私達が向かう先には敵も集まっているはず、だっ!」
 補足するようにレイガンが口を開いたのと、彼の握るブラスターが光を弾き出したのは、ほぼ同時に。いや、ブラスターの方が早かったかもしれない。
 時間にして、二十分の一秒、それよりも早く放たれた光線が行く手を阻もうと立ち塞がる敵の姿を射抜いていた。
「このようにね。……だが、思ったよりも多いな」
 倒した傍から、新たな敵が姿を見せる。レイガンの言う通りだった。
「スター様、ルベル様。ここは私にお任せを」
 これでは脱出どころではないと、二人を庇うようにトリテレイアが前へと進み出る。
 彼の手にする盾は、これまでの道のりの苦難さを見せつけるかのように、既に変形しきっていた。
(ルベル様の力で身を癒す事はできても、こればかりは仕方ありませんね……帰ったら、修理いたしましょう)
 トリテレイアは心中で強く誓う。二人を無事に、二人と共に、必ず帰る事を。
 誓いを胸に刻むその時、鋼で出来たトリテレイアの身体は鋼を超える鋼と化す。
『ヤツは本当にウォーマシンなのか?!』
 一斉に放たれるクローン兵たちの攻撃をもろともせず、一歩、また一歩と前身を続けていく。
 銃火の中、盾の端が弾け飛ぶように割れ、破片がトリテレイアの身を傷つけた。
「ゴーゴー、ファイトでございます、トリテレイア殿!」
 だが例え傷ついたとしても、即座にルベルが傷を癒す力を持つ金平糖を振り撒き、その身を癒していく。
 使えば使うほどに、自らを疲労させていく、にも関わらず。
「後ろは気にするな騎士殿。君は前だけを見てくれたまえ」
 隙間を縫って身を乗り出したレイガンのブラスターが、一人、また一人と敵を撃ち抜いていく。
 鉄壁の布陣。三人が三人だけで艦の中を進み続けれた、最大の理由である。
 一歩が堅実であるがゆえに、我慢強く。
 一歩が大きいゆえに、間違いなく。
 銃器による攻撃が通じないと悟ったクローン兵たちは、アームドフォートに備えたワイヤーを射出しようとする。
 今までの戦いで見てきたのと全く同じ行動。クローンであるがゆえに同じ結論に至り、全く同じ隙を見せる敵に向けて、トリテレイアは駆けだした。
「道を開けなさい!」
 巨体、鎧、盾。どれもが超質量を備えた突進が、背にする二人を導く。
 はたして。
 ハッチとして扱われる空間に出た三人は、開放されたゲートに吸い込まれるような風に襲われた。
「ノウフィル君、動けそうなスペースシップはあるか!」
「……あちらにっ!」
 風に飛ばされないよう踏ん張りながら尋ねるレイガンと、答えるルベル。
 スペースノイドである彼が確認を委ねたのも、艦内での戦いによるところが大きい。
 いわゆる第六感と呼ばれる感覚が秀でている事。そして、彼もグリモアを持つゆえか、献身的な補助に秀でている事。これらを知り得る事が出来ていたレイガンは、もう一人の戦友へも協力を仰ぐ。
「頼むぞ、ゼロナイン殿!」
 言葉は簡潔に。意を汲み取ったトリテレイアは盾を自らの内に格納し、入れ替わりに現れた隠し腕と自らの両手を使って、二人の身体を掴む。
「誰かを守るために、この腕を使えるとは、思っていませんでした」
 目指すは、一台の小型スペースシップ。
 この時彼らは気づかなかったが、その小型スペースシップには秘密結社オリュンポスの印章が為されていた。
「あとは、起動ボタンを押せればいいのだが……」
 三人の背後で新たな爆発が起こり、視界の端で、吹き飛ばされたクローン兵が宇宙空間へと吐き出されていく。
 乗り込み次第飛び立たなければ間に合わないかもしれない。
「でしたら、スター殿、これを!」
 思案するスターに向かってルベルが差し出した物は、先ほどの戦いで割れたトリテレイアの盾の破片だった。
「それがお二人の役に立つのなら」
 ウォーマシンの首が縦に動く。
「なるほど、これがプレッシャーというものだな……」
 そうしてレイガンは、見た目以上の重さを持つ盾の破片を手に、思い詰める。
「ならば、期待に添えよう。ヒーローに不可能はないものだ!」
 全く良い仲間を得たものだと。
 次の瞬間、レイガンの握るブラスターは立て続けに二発の光線を撃ち出す。
 一つ目は、穿つため。迸る光が、小型スペースシップに穴を開け、コクピットまで続く穴を開ける。
 二つ目は、放つため。威力を調節された光線は盾の破片を軌道に乗せ、コクピットにある一つ目の光線を追いかけ、ある一点でその軌道を曲げた。
 そして。
「わぅ! これでございますね!」
 開きっ放しにされていた乗り込み口に辿り着くや、トリテレイアの手から飛び出したルベルが、扉の開閉ボタンを押す、次の瞬間。
 ごうんと、小型スペースシップが揺れた。
「間に合ったのでしょうか……?」
 そうトリテレイアが尋ねる間にも、それまで耳をつんざかんばかりだった爆発音が段々と遠のいていく。
「そのようだね。やれやれ、一時はどうなるかと思ったものだよ。……さて、私はコクピットに向かうとしよう」
 付いてもいない埃を払うように、身を払って立ち上がるレイガンは、そう言って、歩き始める。
 途中、おっとそうだと言って振り返った。
「そろそろ、エンドロールの時間だ」
 その身振りはまるで、映画のワンシーンのように。
 ルベルとトリテレイア、レイガンは互いの顔を見合わせる。
 先ほどまでの艦内と打って変わって静けさに満ちた空間の中。三人は順に口を開いていく。
「前に進む人々を救うため」
「自由の約束された宇宙のため」
「力なき人々を守るため」
 それぞれが掲げる意思を示す。戦いの後、必ず言葉にしようという約束のため。
「「「宇宙解放の一歩をここに刻もう」」」
 最後の宣誓は声を揃えて。
 三人の向かう先には、集いつつある解放軍の艦隊。
 星々のように煌めくそれらを、コクピットに転がる盾の破片が輝くように映し続けていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月06日


挿絵イラスト