羅針盤戦争〜鯱哭く叢林
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グリードオーシャンに存在する「島」の中には無人島も存在する。
そのうちの一つ、熱帯の気候に属するこの「島」にはジャングルが生い茂り、獣や海鳥達の楽園となっていた。
だが会戦と同時に島の様子は一変する。
突如として巫女のような謎の集団が上陸し、島の中央で祈りを捧げ始めたのだ。
幾重にも連なり島中に広がる祈祷は言語すら定かではないものの、その禍々しい響きは、明らかに呪詛の類と知れた。
澱む空気。そして島の密林では、ツルツルとした白黒の体表と鋭い歯を備えた、異形の獣が森を徘徊し始めたのだった。
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「あ、暑い……ですね」
グリードオーシャンの海に浮かぶ鉄甲船の上で、クララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)が、額に浮かんだ汗を拭いながら言う。
一面の深緑に覆われた島。その砂浜には、金箔のすっかり剥げたシャチホコがひとつ横たわっていた。
サムライエンパイア由来と思われる無人島。その一応の名前として『逆又島(さかまたじま)』が付けられたこの島は、現在、不気味なコンキスタドール『森羅の巫女』の集団に占拠されている。
とはいえこの特殊なコンキスタドール達自身は、特に戦闘能力を持っていない。
よって、猟兵達が彼女達の元に到達した時点で、島は解放したも同然……なのだが。
「森羅の巫女たちは、島の中央で祈りを捧げています。……この祈りが『怪物化した海獣達』を呼び出し、周囲の密林を徘徊しています」
海獣はシャチが発達したヒレで四足歩行をしているような見た目だ。性格は凶暴。普段はのっしのっしと歩いているが、一度獲物を察知すれば素早く近付き、鋭い歯で噛みついて来る。
これが森に何匹も解き放たれ、容易にコンキスタドール達の元を目指せない状態だという。
だが、もし島の中心に辿り着ければ、そこには集団で祈りを捧げる巫女達がおり、中央には『巨大な胎のような塊』が鎮座していると言う。
「これを破壊すれば、巫女も、怪物も、全てがどろどろに溶けて死んでしまいます」
辿り着くまでの過程や方法は問わない。これが最終目的だ。
「周囲は、熱帯のジャングルです」
緑の砂漠とも呼ばれる程に過酷な環境、ジャングル。
島の中央に進むだけである事を考えると、水や食料の心配はしなくても良いだろう。
だが密集した植物は視界と動きを大きく制限する。他にも、体力を奪う湿気や暑さ、毒を持つ生物など、様々な不安が付きまとう。当然、海獣もまた密林を徘徊している。
遭難の危険は尽きない。だがそれら全てに対処する事は不可能でも、幾つかに対処出来ただけでも、成功の確率は着実に増すだろう。
「あのシャチホコの近くに、接岸します、ね」
どうかご無事で。そう言うと、クララはぺこりと頭を下げるのだった。
白妙
白妙と申します。
このシナリオは戦争シナリオです。
1章だけで完結する、特殊なシナリオとなります。
●無人島『逆又島』
建物の木造部分はすべて朽ち、全て熱帯雨林に覆われています。
●怪物海獣
体長5~6メートルのシャチを、そのまま四足歩行にしたような姿。
食欲旺盛。敵を見つけたら鳴いて仲間を呼ぶかも知れません。
他の生態もシャチと概ね同じです。
●プレイングボーナス
『ジャングルと怪物海獣に対処する』です。
シナリオ公開と同時にプレイング受付を開始します。
よろしくお願いします。
第1章 冒険
『怪物化した海獣たちの無人島』
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POW : 怪物化した海獣の脅威を打ち払って前進する
SPD : 不気味なジャングルを探索して、目的地である島の中心を目指す
WIZ : ジャングルの生態や、海獣の行動・習性などから、島の中心地を割り出す
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
二條・心春
いきなり怪物が現れたのなら、島の動物さん達が心配です……。早く助けてあげましょう。
私が普通に進んでも、上手く進めないで暑さにやられるか、進む音を海獣さんに察知されて襲われるか、ですよね……。
ここは、一直線に進むしかないです。……覚悟を決めましょう!
私の槍を【ウェポン・ブースト】して、島の中心まで一気に低空飛行でいきましょう。敵が呪詛を発しているなら、「第六感」でそれをたどれば島の中心につくはずです。
邪魔な蔦や枝は進むときの「衝撃波」で吹き飛ばしちゃいます。怪獣さんと出くわしてしまっても、もう私は止められませんよ。そのままの勢いで突撃して、あの塊も壊してしまいましょう!
「島の動物さん達、心配です……」
砂浜に立つ二條・心春(UDC召喚士・f11004)は、目の前の森から一切の鳥の声が響いて来ない事に気付き、ぽつりとそう零す。
心優しい心春は島に住む動物達の事を案じていた。彼等は今、突如出現した規格外の肉食獣の脅威に晒されているのだ。事態は一刻を争う。
「……早く助けてあげましょう」
頷くと、心春は自身の槍を取り出した。
普通に徒歩で進めば海獣達とぶつかる危険がある。湿気と暑さもまた着実に心春の体力を奪っていくだろう。
だが心春には、少々の危険と引き換えに、立ち塞がる脅威の数々を帳消しに出来る手段がある。
槍の切先を島の中央付近に向けて構え、柄をしっかりと両手で握り込む。
すると槍はみるみるうちに変形を遂げ……穂の付け根や石突辺りを中心にして、何かが姿を現した。
それは、ブースターだ。高出力の噴射機が幾つも装着されたのだ。
「……覚悟を決めましょう! 上手く制御できれば良いのですが……!」
刹那、轟音。心春の体は地面を離れていた。
――否、翔けていた。まるでロケットのように、樹上スレスレを低空飛行していたのだ。
真下からは海獣達のものらしい鳴き声が響き始める。だがそれらは耳を打つ激しい風音に掻き消され、たちまち後方へと飛んでいく。
淀んだ森の大気を切り裂き発生する衝撃波は、進行方向にある蔦や枝を容易く吹き飛ばし、心春を守るシールドの役目をも果たしていた。
「……っ!」
必死で槍にしがみついて風圧に耐えつつも、心春はブースターを調整する事で軌道を少しずつ修正していく。
コンキスタドール達の祈祷に織り込まれた呪詛の気配。目にこそ見えないが近付くにつれて濃くなっていくそれを、心春は自身の優れた第六感で鋭敏に感じ取り、辿ろうとしていた。
「! やっぱり……!」
果たして、心春の読みは当たった。
遥か前方に天守跡と思しき石垣と、その上で祈祷を捧げる巫女達が姿を現す。
そして彼女達の輪の中心には――不気味な形の塊が鎮座していた。あれを破壊すれば島の動物達は救われるのだ。
そんな心春の想いに応えるように――ブースターがその出力をさらに増す。
「……!」
ぐんぐんと迫る目標。
加速する勢いもそのままに、心春は自身を一本の投槍と化した。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
心情)じめっとした空気はここちいいねェ。日差しは葉っぱが遮ってくれる。中心にいるってェわかってンのもイイ。無人島ってェこた、"いのち"は植物と虫鳥獣ってとこか。そこいらの命数は振り幅がヒトの比じゃねえし、どんぶり勘定でかまわんだろう。
行動)タル坊ザイ坊、この島に仔をはびこらしとくれ。地中を通れば怪獣らの目もごまかせるだろ。中央が肝要らしいから、そこ重点的に生やしておくれ。大いに毒をまいとくれ。俺も《毒》を眷属ども《虫・獣・鳥》に託して広がらせよう。そうすりゃあとはカンタンさ。ちょいと火がつきゃ島の真ん中で大爆発だ。《鳥》にのって島の上から、《烟管》の火種落っことそう。
朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が森に足を踏み入れた時、それまで静まっていた鳥の声が微かに響いた。
「じめっとした空気はここちいいねェ」
纏わり付くような湿気は病疫を素早く浸透させ、蔓延らせる事だろう。生い茂る植物は日差しを遮り影を落としてくれる。
本来が人の理の外に居る逢真にとって、此処の環境は心地良いものであった。
そして、無視出来ない程に蝟集する命の気配も。
植物は勿論、現れた海獣から身を隠しているらしい獣や鳥、虫達もそうだ。
人の手が入っていないからこそ、この森には命が溢れている。益々良い。
「タル坊ザイ坊」
この島に仔をはびこらしとくれ。逢真の言葉と共に、一本の樹木が忽然と現れる。見た目こそ異質ではあるが、周囲の木々の生育を邪魔している様子はない。
それを確かめた逢真は、なおも呼びかける。
「中央が肝要らしいから、そこ重点的に生やしておくれ」
木々が微かにざわめく音。響いて来たのは、島の中心の方角だ。
「大いに毒をまいとくれ」
葉を揺らし、樹木が何かを降らせ始める。
その横を小さな獣が数匹、島の中心の方角へと駆けていく。木の葉を揺らすのは蛇や虫、そして鳥たちだ。
皆、逢真に『媒介』を託されたのだ。
島の生命の手を借り、包囲網が着々と形成されていく。
それから少し経ち、逢真は上空に居た。
巨鳥の背で潮風に吹かれつつ空を翔け、島の中央を目指す。
地上では、熱帯の木々の隙間に隠れるように、逢真の呼び出した樹木が点在しているのが見える。
……それらに包囲されている事に気付かず、輪になって祈祷を続ける、巫女達の姿も。
細工は流々。逢真が烟管を逆さにし、コン、と叩けば、そこからぽろりと火種が転がり落ち――。
間を置いて、地上で巨大な火柱が上がった。
大成功
🔵🔵🔵
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
ジャングルって美味しい食材がいっぱいあるんだよね☆
これは是非とも解放しよう♪
UC【膨張せし肉肉しい宇宙】で宇宙牛に変身・巨大化!
その巨体を利用して、ジャングルの木々を薙ぎ倒し、怪物海獣も圧し潰し、制圧していく!
建物も謎の物体も巫女も破壊しつくそう!
小さい所へは「肉体改造」でにゅるんって感じで流動体になって侵入しましょう!
解放したら得られた食材で「宴会」を開こう♪
フェルト・ユメノアール
海獣の徘徊するジャングル、その中で探し物をしなきゃいけないなんて
さて、この難題にどう挑戦するかが問題だね
まっ、考えても仕方ないか無理は禁物、基本に忠実に行くよ
ここはキミの出番だね!
現れろ!【SPキャンドール・フラン】!
フランと亡霊たちにはボクの周囲で警戒と探索をお願い
進行に邪魔な草木は炎で焼き払い、方向を見失った時はフックロープで樹上に登り、方向確認
敵に遭遇した時は『トリックスターの投擲』で牽制、その隙にフランたちに攻撃してもらう
敵数が多かったり苦戦しそうな時は『ワンダースモーク』を使って視界を奪った隙に逃走、樹上に飛び移りやり過ごすよ
上手く中央にたどり着けたら速やかに塊を破壊する事も忘れずに
熱帯のジャングルに一歩踏み入れば、丈の高い草木が作り出す新緑の壁が何処までも続く。
「海獣の徘徊するジャングル、その中で探し物をしなきゃいけないなんて」
それが難題である事はフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)も理解している。島の中心にコンキスタドール達が居る事まではわかるが、さらに詳しい位置を特定するには現地調査を行うしかない。
思案に耽るフェルトの横では、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)が周囲を見渡していた。
「ジャングルって美味しい食材がいっぱいあるんだよね☆」
熱帯雨林には数多の動植物が存在する。優れた料理の腕前を持つラヴィラヴァにとっては、それらは新鮮で魅力的な食材だ。
「この島は是非とも解放しよう♪」
一見呑気そうなラヴィラヴァの言葉だが、それは同時に猟兵達の目的そのものでもある。思わず目をぱちくりさせたフェルトだが、すぐに笑顔を取り戻す。
ラヴィラヴァもまたフェルトに同意するように、にぱっと笑みを返す。
「まっ、考えても仕方ないか!」
「そうそう☆」
島の中心へと向き直り、ひとまず二人はジャングルを踏破する事を決める。
「ここはキミの出番だね! 現れろ【SPキャンドール・フラン】!」
最初に動いたのはフェルトだ。同時に手元のカードに魔力を込めれば、ふわふわと宙を漂う亡霊達と蝋燭を引き連れた、蒼ざめた肌の少女が姿を現す。
「フラン、警戒と索敵をお願い!」
言葉と共に辺りに散り、警戒を始める亡霊達。
島の中心へと歩を進めるフェルトの前方では、ぼ、と絶えず何かが焼け焦げる音が響いて来る。
フランが近付けた蝋燭の灯が、進行方向を塞ぐ草や低木を、延焼しない程度に焼き切っているのだ。
そこに生まれた隙間を身を屈めて通り、順調な探索を続けるフェルト。
そして時折フックロープを樹に引っ掛けたかと思えば、次には曲芸のような身軽さでスルスルと登り、進行方向を見定めるのだった。
近くの樹の幹にラヴィラヴァの視線は注がれていた。
そこには丸い塊が幾つか並んでぶら下がっている。
緑と茶色の中間のような色をしたそれは、ともすればジャングルの中では見逃してしまいそうな色合いをしていたが、ラヴィラヴァの目は誤魔化せない。
ラヴィラヴァは手に持つ包丁……っぽい聖剣『シェフスカリバー』を一閃。綺麗に両断された丸い物体の断面には、瑞々しい鮮やかなオレンジの果肉が覗いていた。
どうやられっきとしたフルーツだったらしい。
「島を解放したら、この食材で宴会を開こう♪」
周囲を警戒しつつも、食材集めにも余念がないラヴィラヴァだった。
「! 敵だ!」
方向確認の為に樹上に昇ったフェルトが、今まさに此方に迫って来る一匹のシャチを目視した。
フェルトは迷わず投擲用のダガーを抜くと、その大きな白黒の体に向けて撃ち下ろす。
『!』
風を切る音。
キュイ、とシャチが声を上げたのも束の間、畳みかけるようにフランと亡霊達が殺到する。
その体力が尽きた瞬間、ドロドロになって融けるシャチの体。だが同時に辺りからガサガサと葉を掻き分けるような音が響いて来る。
二匹、三匹……四匹。新たに現れたシャチ達がフランたちと交戦を始めようとした――その時。
足音が響いた。
だがシャチ達とは比べ物にならない程に重い音だ。
ただならぬ気配。動きを止めるシャチ達の目の前に、それはすぐに姿を現す。
「嗚呼、世界はかくも美味しいのか! さぁどうぞ召し上がれ♪」
それは、巨大な宇宙牛に変身したラヴィラヴァであった。ジャングルの木々を薙ぎ倒して迫ったかと思えば、瞬く間に海獣達を数匹踏み潰し、残りも追い散らしてしまった。
それでもラヴィラヴァの突進は止まらず、島の中央へと驀進を続ける。
「よし今だ、行こう!」
フェルトは素早くフラン達の近くに着地。ラヴィラヴァの後を追って駆け出すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天王寺・七海
あー…洒落になってないのね。
こんな歪曲、許さないのね。
ただ、察知すれば、どうにかなりそうなのね。
超音波ソナーは周囲に森なので近距離限定で。
ジャングルというところなので、森が大量にあるから、そのまま狭い通路を通り抜けする。
もしくは、メロンブレインで超音波会話で敵はいないと抜かす。
子宮を見つけたら、バイオミック・オーバーロードで巨大化して噛み付いて破壊する。
アドリブ歓迎
コンキスタドールにより生み出された、四本足のシャチ。
身体を左右に揺らしながら地上を闊歩するその絵面は、悪夢のようですらある。
(「あー……洒落になってないのね」)
その様子を物陰から一匹のシャチが見つめていたのは、天王寺・七海(大海の覇者・f26687)であった。
元は人間だが、今は若いシャチとしての人生を送っている彼女にとって、コンキスタドールたちの所業は生命を弄ぶ歪曲以外の何物でも無い。
だが同時に七海はシャチ達の仲間意識の強さを熟知してもいる。袋叩きにされかねないなら、最後まで目立たず行動するのが上策だ。
(「……察知すれば、どうにかなりそうなのね」)
額に意識を集中した七海は、前方に微弱な振動のような何かを放つ。
シャチの備える力、超音波ソナーであった。
跳ね返って来た信号を顎で受け、それを耳まで伝えて察知する。
七海は暫く思案した後、近くの茂みに隠れていた目立たない通路を見つけ出し、そこをするりと抜けていった。
樹海をスイスイと泳ぎ渡るかのように一匹のシャチが往く。ソナーの範囲を至近距離のみに限定した七海に気付くものは存在しない。
順調な航海を続ける七海だが、障害に突き当たる。
樹間から覗くのは、島の中心を示しているらしい石の構造物。
そこに至る唯一の進路に……一体の海獣が居た。
(「う~……そこどいてなの!」)
そんな七海の思いも虚しく、海獣は猟兵を警戒しているのか、それとも散歩しているだけなのか、その場をひたすら往復している。
思案の末、七海は……物陰からシャチに向けて、超音波を放った。
果たして、ぴくりと頭を持ち上げた四本足のシャチは、暫く動きを止めた後……踵を返して森の中に消えていった。
七海の読みは当たった。シャチとしての生態を持つなら、当然シャチとしての会話も可能だ。
(「ほ、『この近くに敵はいない』って言葉、通じたなの」)
そのまま静かにジャングルを抜けた七海の前に姿を現したのは、石垣の上で輪になって座る巫女達と、中心に鎮座する不気味な子宮の形をした塊であった。
「あれが……」
同胞を弄んだ元凶を前にして、たちまち七海の心を怒りが満たし、その体を著しく肥大化させる。
気付いた時、七海は突進していた。
滝登りよろしく石垣を駆け上がり、巫女を突き飛ばし――その鋭い牙を、塊に思い切り突き立てていた。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ジャングルに危険な海獣。ならば
『眼倍』を起動。
地形と、視力×1㎞半径内のキャバリアサイズの生物達を索敵。
瞬間思考力、敵の位置、数、移動方向、速度、それらの情報から、
敵と遭遇しない道筋を立てる。無論、適時情報は更新し続けながら。
駆け抜ける!
スラスターの推力移動、悪路走破。ぬかるんだ地面を推力移動で飛び、深い水面を跳び越え、木々を足場にジャンプ。
大きく飛びあがり、島の中央。巫女共の居る地を目視で確認。みつけた。
塊に向かってスラスターを吹かし、自身を塊へ吹き飛ばして
騎兵刀を突き立てて離脱。再度スラスターで飛び空へ
落ちろ、雷光!!
天候操作。雷降拳銃を空へ撃ち属性攻撃、
騎兵刀を避雷針に、塊へ雷を落す。
視界を阻むのは、鬱蒼と生い茂るジャングルの植物達。
これは遺伝子操作を受けた朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)に対しても変わらぬ効力を発揮する。とはいえ。
(「ジャングルに危険な海獣……」)
キャバリアに乗り、木々ごと踏み倒して進む訳にもいくまい。現に小枝子は徒歩。拳銃片手に、腰には騎兵刀といった出で立ちだ。
とはいえ遭遇してしまえば、少々心許ないのも事実。
(「――ならば、眼倍(ガンマ)起動」)
それは広範囲の任意の対象に関する情報を把握出来る、小枝子の強力なユーベルコードであった。
(「指定内容――地形及び、半径93㎞内のキャバリアサイズの生物」)
途端に夥しい情報が小枝子の左目の義眼に流れ込み始めた。
敵の位置、数、移動方向、速度……小枝子は持ち前の瞬間思考力でそれらを処理し、目的地への道筋を組み立てる。
やがて、敵の間を確実に縫う事の出来るルートを割り出すと――。
(「駆け抜ける!」)
地面を蹴る小枝子。途端に耳が爆音に包まれる。
人間用のスラスターの推力は凄まじい。泥濘。飛び越えた水場、足場にした木々。全ての景色が後方へとすっ飛んでいく。
駆けつつも小枝子は自身を追って動く海獣の動きを絶えず確認。次々更新されていく情報を元にルートを組み立て直し、危険を回避し続ける。
森を抜け島の中央に出ると同時に――小枝子は一際大きく跳躍した。
「みつけた」
眼下に迫る不気味な塊に自身の身体をぶつけるように、スラスターをふかす。
スピードを上げてぐんぐん迫る塊に向けて、その手に持った騎兵刀を――突き刺す!
手に残る確かな手応え。地上へと叩き付けられる寸前で小枝子の体が、上空に向けて大きく跳ねた。
「落ちろ、雷光!!」
手に持つ拳銃が天に向かって砲声――否、雷鳴を上げれば、その神器の力により上空で発生したのは、一条の落雷であった。
小枝子の真横を掠めて落下したそれは、塊に深々と突き立つ騎兵刀を避雷針とし、凄まじい音を立てて直撃するのだった。
成功
🔵🔵🔴
レン・ランフォード
錬:仲間に鯱のキマイラがいるが…
蓮:これと比べるのは失礼ですよ?
れ:うんうん…まぁなんであれ…
蓮:ええ、お仕事の時間です
島についたら【妖硬貨】を自分に張り付けて変化
猛禽類になって木より上から中央と思わしき所へ移動
下降してからは小鳥に変わったり、ムササビや猿などに変化しながら
鯱の頭上を越えていきます
毒や蛇など他の危険生物には「第六感」を合わせて感知、避けていきます
見つかっても変化中の私を見ると判断力が低下するため
仲間を呼ぶか攻撃するか迷ってる内にさっさと逃げさせて頂きます
胎を見つけたら空から何か攻撃力の高いものに変化して壊してしまいましょう
これらが島から溢れるのか、また別の目的があったのやら…
四本足で地上を闊歩するシャチ。
(「仲間に鯱のキマイラがいるが……」)
その強烈な絵面は、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)のツッコミ担当である錬をして、そう呟かしめるものだった。それにしてもなかなかの偶然ではある。
(「これと比べるのは失礼ですよ?」)
とはいえこんなにも珍妙な海獣と比べられては堪らないだろうと、錬に代わって主人格である蓮がツッコミを決めた。
(「うんうん。まぁなんであれ……」)
第三の人格、れんがのんびりした口調で言えば、蓮もまたそれに同意する。
(「ええ、お仕事の時間です」)
人格同士の意思統一を済ませたレンは軽く頷き――眩しい日差しにきらりと輝く、小さな何かを取り出した。
あやかしメダル。幽世で人気の玩具である。
それをレンが額に貼りつけた途端、たちまちその姿は一羽の猛禽へと変わる。
描かれていたのは化け狸。恐らくは伝説級の、変化の術を備えた妖怪である。
梢を突き抜け、そのまま大空へと舞い上がり――レンは島の中央へと目指す。
島の中央に当たりをつけて、大きく下降。
枝に着地すると同時に今度は野猿へと変じ、森を高速で移動し始めた。
たまたま遭遇したシャチの頭上を越し、悠々と探索を続けるレン。
辺りには毒蛇や毒蜘蛛も居る筈だが、襲い掛かって来るものは居ない。
それこそが『化け狸』のもう一つの力。変化中のレンを目にした者は、誰彼となくその判断能力を著しく減じてしまうのだ。
狸に化かされたかのような顔をする生物達を尻目に、最後にムササビと化したレンは、枝を蹴り、滑空。
そのまま島の中央らしき空き地に着地し、変身を解除する。
果たしてレンの目の前には……ぐるりと輪を描いて座る巫女と、その中央に鎮座する胎の如き塊があった。
「これらが島から溢れるのか、また別の目的があったのやら……」
いずれかが実現するにせよ、それが破滅的な結果を生むことは間違いないだろう。
確信を手に、レンは得物を手に取った。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
何故可愛い生き物に手足が生えるのか(遠い目
★靴に風魔法を付与して【空中浮遊】、空中歩行を可能にする事で
足音は立てずに木々の影に隠れながらこっそり進む
僕は植物使いだし
木の伸び方や成長具合を見れば通りやすい場所も推測できるから
より障害物の少ない道を選んで行くよ
暑さも風を纏ってれば緩和くらいは出来そうだし
焦らずゆっくり海獣を避けつつ
それでもどうしても気付かれそう
または確実に気付かれるような場所を通らなきゃならない時は
知られる前に【指定UC】で
範囲内のシャチさんもろとも眠っててもらおうかな
無事中央に到着できたら
【催眠術】を乗せた【歌唱】の【範囲攻撃】で巫女達の動きを止め
その間に塊に雷の【属性攻撃】
相馬・雷光
四足歩行のシャチ、ねぇ
博物館で骨格標本を見たことあるけど、あれが歩いてるとかほとんど恐竜じゃない
まぁ、竜巻になったり頭が八本になったりしない分、トンチキ具合はサメよりマシかしら
撃破任務じゃないからスルー安定ね
あいつらの視界に入らない(目立たない)ように木に登って、ニンジャツールから出したロープで木から木へ渡って行くわ(地形の利用・ロープワーク)
匂いとかで見つかっちゃったら、仲間を呼ぶ前に【早業】の【属性攻撃】【電光石火】で感電させるわ
辿り着いたら【制圧射撃】で木っ端微塵よ!
それにしても、今回の戦争で一番驚いたのは、子宮が伏せ字じゃなかったことね
しっかし暑いわねぇ
帰る前に海でひと泳ぎしよっと
ガーネット・グレイローズ
さて、次の敵は森羅の巫女とやらか。
何の儀式かしらないが…どうせろくでもない儀式を行っているんだろう。
ジャングルを徒歩で移動するのは骨が折れるな、怪物の襲撃もあるだろうし。
ここはマシンウォーカーを持ち込んで《操縦》し、
《足場習熟》《悪路走破》《地形耐性》で不安定な足場を突破し、
障害物を掻きわけながら進んでいこう。敵の奇襲に備え、
センサーでの《索敵》も忘れない。
怪物との戦闘になったらヒートクローによる《グラップル》とミサイル、
戦車ブラスターによる《レーザー射撃》で応戦。
敵の数が多いときは【目覚める巨兵】を発動し、周囲の敵全体を
地形ごとなぎ払って殲滅だ。
愛嬌のある顔。
丸々としたフォルム。
パンダを思わせる白黒模様。
そして。
「何故可愛い生き物に手足が生えるのか」
逞しい四本脚……もといヒレで歩き回る海獣を、物陰から栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、遠い目で見つめていた。
元となった生物は可愛らしいのに。いや、だからこそ不気味さと一緒に残念感も漂って来る、気がする。
「四足歩行のシャチ、ねぇ」
その隣で相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)が思い起こしていたのは、博物館で見た事のあるシャチの骨格標本だ。あのぷっくりとした体が、実は海竜そのものの骨格に支えられている事を知る者は少ない。
「あれが歩いてるとかほとんど恐竜じゃない……まぁ、竜巻になったり頭が八本になったりしない分、トンチキ具合はサメよりマシかしら」
目の前に広がる光景も凄まじいインパクトだが、それでもプロの手がけたB級映画には及ばないのは、果たして一抹の救いなのか、どうか。
「そしてあの怪物を生み出したのは『森羅の巫女』とやらか」
さらにその隣では、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が自身の二足歩行用戦車を起動させていた。
「何の儀式か知らないが……どうせろくなものではないだろう」
彼女達の儀式に、怪物達を生み出し、島を制圧する以外の目的がある可能性は否定出来ない。
万が一そうならば、ガーネットの思っている通り、それは不吉な結果を生むことだろう。
「何してるの?」
ガーネットが操作するモニターを雷光が興味深そうに覗き込む。
「索敵だ。兵器は搭載しているが、なるべく敵を避けていきたいからな」
「ふぅん……ま、スルー安定よね」
「……行ったみたいだよ、シャチ」
鮫の様子を窺っていた澪が二人に耳打ちする。
「それにしても暑っついわねぇ……帰る前に海でひと泳ぎしよっと」
雷光の言う通り、周囲は尋常ではない蒸し暑さだ。彼女の褐色の肌にはじっとりと汗が滲み、忍び装束に大きな染みを作っている。
「暑さなら僕が対策してるから大丈夫。近くに居れば、だけど」
「そうか……頼もしいな。よし、ならば探索開始だ」
ガーネットがマシンウォーカーを立ち上がらせるのと同時に、二人もまた行動を開始した。
草木の繁茂する荒れた道を、ガーネットの操縦するマシンウォーカーが先行していた。
元々が未開惑星の調査に使われていたものだ。鉄の機体は背の高い植物を押し分け、ジャングルの悪路を難なく踏破する。
「……こっちだ」
勿論、敵の奇襲に備え、要所要所で索敵を行う事も忘れない。
そんなガーネットの少し後ろを警戒するように、澪が木々に身を隠しつつ進む。
風魔法により翼の生えた彼の靴は地面に触れておらず、全くと言って良い程に音を立てない。
そして澪の周囲に広がる優しいそよ風は、熱帯雨林の暑さを和らげる役目すらも果たしていた。
「涼しいわねぇ」
「どう? 雷光さん」
かさ、と澪の頭上から音が聞こえたかと思えば――梢から逆さまの雷光の顔が突き出された。彼女は取り出したロープを巧みに使い、樹上を密かに移動していたのだ。
「敵は居ないけど、この先は木に覆われて地形が見難いわね」
「じゃあ……あっちが良さそうだね。木の伸び方が通り易そうだから」
澪は植物使い。行き詰った時、繁茂する植物から道筋をある程度推測できるのだ。
「わかったわ。島の中心には近付いてるから安心して!」
雷光は再び樹上へと消え――すぐに離れたガーネットの近くに降り立つ。その過程を捉える事は、澪の目にも困難を極めた。
目的地までかなり近づいたところで、先頭のガーネットが制止をかける。
「……複数か」
物陰に身を隠す三人の目の前に、一体。
その向こうに複数。
敵の溜まり場だ。
「あのシャチの位置にまで行ければ、一気に眠らせられるかも」
「……なら私に任せて」
雷光がブラスターを手に掛けたかと思えば――バチィ! と閃光が迸る。
目にも止まらぬ迅速の抜き打ち。雷撃弾の直撃にシャチはその身を痙攣させると、ばったりと気絶した。
軽く息を吐く雷光。澪が倒れたシャチの横に進み出れば、たちまち周囲には優しく甘い香りが漂い始める。
「――おやすみなさい。良い夢を」
広がる花吹雪は周辺に居たシャチを包み込み――一匹残らず眠りに落とす。
「……全対象、沈黙。このまま進もう」
ガーネットの言葉に、雷光と澪は頷く。
目指す場所は、近い。
成功
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ジェイムス・ドール
丸鋸の念動力回転で邪魔なもの片っぱしから切って進む
でも
うーん、なんか、もう結構皆入った後っぽい?
どうしよっかなぁ…ん、あ、そうだ!
なら『皆』を引寄せよう!そうそう、こっちの方が私らしいわぁ!
ばんッ!と手を打ち鳴らしながら。
目の前にはちょうど良く、シャチがいる!完全に目があってる。あ、こっちきた!ようしようし、遊ぼう!まずは追いかけっこだ!(ダッシュで逃げる)
そろそろ良いかな?『戦イ続ケル為ニ』さぁもっていきなよ!
噛みつきに合せて腕を喰わせ、代わりにお腹に丸鋸を叩きつける
継戦能力、喰われた腕を再生。あ、鳴いた!『皆』来るかな!?
移動しながら集めた皆とソーアックスを怪力で振って遊んで引きつけるね!
レオンハルト・アウストラリス
暑いには暑いけど、風のおかげで気持ちいいなー。
シャクイス、お前も何か見えるか?
UC【第4の魔剣・スカイキャバルリィ】で魔剣を空飛ぶ剣に変え、ボードのように乗って[環境耐性]で空の風を浴びつつ、見晴らしの悪い地上じゃなくて、見晴らしの良いジャングル上空から中心地を割り出す!
怪物海獣が見えたら習性を利用しておびき寄せて一網打尽にする。
もし襲ってくるようなら他の猟兵と協力しつつ倒していくぞ!
他の猟兵が迷いそうだったり目標を見つけたら空からナビゲートする。
塊は中身に警戒しつつ、発見したら他の猟兵と協力して全員掛かりで攻撃。
状況次第で地上に降りて、魔剣を飛翔させ遠隔操作して破壊するぞ!
【アドリブ大歓迎】
視界を覆い尽すのは、青い空と白い雲。そして、何処までも続く水平線。
島の上空に広がるそんな光景を、瞳を輝かせて見つめていたレオンハルト・アウストラリス(金色の焔・f20419)は、やがて探索を開始した。
飛翔する大剣と化した魔剣シャクイス。その上にサーフボードのように足を乗せれば、自然豊かな無人島の全景を眺める事が出来た。
四方を吹き渡る空の風はレオンハルトの髪と肌を優しく撫でていく。
「暑いには暑いけど、風のおかげで気持ちいいなー」
その思わぬ涼しさに、レオンハルトはついそんな声を漏らしてしまう。
島の中心へと目を移せば、樹間から、島の建物の遺構のようなものが僅かに覗くのが見えた。
「あれを目印にするか……シャクイス、お前も何か見えるか?」
レオンハルトの呼び掛けに応えるように、魔剣がその切先を僅かにずらす。
「ん?」
目を凝らすレオンハルト。その先には――群れを成して森を駆けるシャチ達が居た。
時は少し戻る。
「う~ん」
周囲に浮かばせた丸鋸刃で邪魔な枝を切り飛ばし、順調に森を進むジェイムス・ドール(愉快な仲間の殺人鬼・f20949)だったが、ふとそんな声を漏らす。
「なんか、もう結構皆入った後っぽい?」
ここに来るまでにジェイムスは、他の猟兵達の探索の痕を幾度も見つけていた。周囲に漂う不穏な空気は、島の中心に辿り着いた猟兵が居ない事を示していたが、それでも皆よりは少しだけ遅れている事を、なんとなく察したのだった。
「どうしよっかなぁ……」
そんなジェイムスの真正面に……一匹のシャチが姿を現した。
まだこちらには気付いていない。
「……あ、そうだ!」
何かを思いついたらしいジェイムスは――ぱんぱん、と手を叩いた。
音に反応してシャチが振り向く。
(「完全に目があってる。あ、こっち来た!」)
シャチが動き出すのとほぼ同時に、ジェイムスは駆け出していた。
「ようしようし、遊ぼう! まずは追いかけっこだ!」
時折振り向き、自慢の脚力でシャチを引き放すジェイムス。その様子は、愛犬とじゃれる飼い主のようにも見える。
(「そろそろいいかな?」)
す、とジェイムスが差し出した腕に――たちまちシャチが噛み付く。
『!』
だが、同時にシャチの腹部に丸鋸が叩き込まれ、その巨体を大きく揺らす。
横転するシャチの口元から放されたジェイムスの腕は無くなっていた。だがみるみるうちに再生を遂げ、元通りの形を取り戻す。
それに驚いたかのように、キュイ、とシャチの口から声が漏れた。
「……あ、鳴いた! 『皆』来るかな!?」
後を引く痛みに顔を歪めつつも、ジェイムスは周囲を見渡す。
――果たして、ジャングルのあちこちから、同様の鳴き声が返り始めた。
先頭でジェイムスが手を打ち鳴らしながら駆ければ、後続のシャチはさらにその数を増していく。
「あ、レオンさんだ! おーい!」
ふと前方を見たジェイムスは、空に向けて手を振る。
シャクイスに乗ったレオンハルトが突っ込んで来たのだ。
「ジェイムスさん! 俺が一部引き受けます!」
刹那、ジェイムスの横を抜け、レオンハルトは地面すれすれを低空飛行。
そのままシャチ達の真横も奔り抜け――鋭さを増したシャクイスの刃を滑らせるようにして、たちまち数匹を斬り倒す。
「こっちだ!」
仲間をやられたと判断したか、群れの一部がレオンハルトの方へと向きなおり、追跡を開始した。
「目的地へのルートは俺が知ってます! ジェイムスさんも頃合いを見て侵攻して下さい!」
「はぁ~い」
森の梢に姿を消したレオンハルトに代わって、今度はジェイムスがシャチの群れに躍りかかった。
その剛力で真一文字に引き絞った大斧を一閃させれば、興奮したシャチ達はますます激しくジェイムスへと吠え掛かる。
「そうそう、こっちの方が私らしいわぁ!」
だ、とジェイムスは駆け出し、シャチ達と暫し戯……味方の為に敵を引き付ける。
レオンハルトもまた森の上空を縦横無尽に駆け、自身を追跡してくるシャチを返り討ちにしていく。
結果として、周辺にいたシャチの殆どを殲滅したレオンハルトとジェイムス。
他の猟兵達の道を大きく切り開いた二人は、やがて島の中心を目指すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レテイシャ・マグナカルタ
甲板で待つ方が大変だなこりゃ…クララに飲み水沢山残しておいてやろう
二月だってのになんて蒸し暑さだ
冬服は流石にきつくて水着姿になる
露出した肌は体内をめぐる魔力が守りになってくれるから擦り傷からの病気や毒の心配はいらねぇ
問題はシャチだが、確か元々かなり頭が良くて群で狩りをするらしいな
第一陣が消耗したら第二陣が、その次は…と隊列を串して獲物を弱らせるらしい
なのでまずその隊列を崩す!弱っても交代なんざさせてやらねぇ!
最初に襲って来た奴の頭を両手で掴み、魔力で強化された筋力で振り回すぜ
シャチはジャンプ力もやべーらしいからな近づくのが難しいとなったら離れた所から跳んでくるだろうからそれも警戒しておくぜ!
「暑っつー……」
鬱蒼と生い茂る植物を掻き分け進むレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は、熱帯そのものの気候を前に、思わずそう溢す。
「甲板で待つ方が大変だなこりゃ……」
二月だというのに、この島はとても蒸し暑い。それでも植物が影を落とす分、暑さに関しては船の上よりマシかも知れないというのが、レテイシャの実感だ。
それは今のレテイシャが、ビキニにショートパンツ、そしてサンダルという出で立ちをしているからでもある。
一見それはジャングル探索には不向きに思える服装でもあったが、魔力で強化されたレテイシャの肉体は装甲以上の頑丈さを誇っている。掠り傷や毒蛇など、全く問題にならないだろう。
汗の滲んだレテイシャの肌に大きなシダの葉が影を落とす。
船上に残った者の為に水を残しておいて良かった。そう思うレテイシャだった。
島の中心に近づくにつれて周囲の木々は疎らとなり、代わりに丈の高い草だけが生い茂る平地が姿を現す
「……となると、問題はあいつらだけだな」
レテイシャの目前には、海獣達の溜まり場があった。
シャチはかなり頭が良い動物だ。狩りの際は集団で波状攻撃を仕掛けて来る。
ならば。
覚悟を決めたレテイシャが茂みから姿を現す。
たちまち一匹のシャチが咆哮を上げ、レテイシャへと突進した。
身を低くしたレテイシャは鋭い噛み付きを紙一重で躱すと同時に、そのシャチの首を、両腕で押さえ込む。
『!』
そのままレテイシャは、既に形成されつつあったシャチの戦列のど真ん中へと突進し――。
「……せいっ!!」
気合一閃。引き摺って来たシャチを、思い切りスイングした。
魔力で増強されたレテイシャの腕力は見た目以上だ。ベちべちと音を立ててシャチ達が吹き飛ばされ、戦列が崩れる。
何度か繰り返すうちに逃走を始めるシャチ達。レテイシャを敵わない相手と見たのだろう。
だがその時、レテイシャの死角に当たる少し離れた場所から、一匹のシャチが飛び付いて来た。
レテイシャは、予期していた。
振り向きざまに掴んでいたシャチを――投げつける!
『!!』
二匹のシャチは空中で衝突。
そのまま数度地面でバウンドを繰り返したかと思えば、同じ方向へと逃げ去るのだった。
●
猟兵達が辿り着いた、島の中心。
そこには石垣が一つと、遺棄されたもう一つのシャチホコがあった。
どちらも風雨に晒され苔むしてはいるが、昔の壮麗な天守を偲ばせる、堂々とした造りをしていた。
――石垣の上では『森羅の巫女』達が輪になって座っている。
目元は肉のような塊に目を覆われ、その表情は読み取れない。
彼女達はただ、猟兵達に気付いていないかのように、ひたすらに祈祷を続けていた。
そして輪の中心に浮かんでいるのは……今回の破壊目標である、巨大な塊だ。
子宮のような形もさることながら、ドロドロと液体を滴らせる様は、おぞましい事この上ない。
この状況を前に、猟兵達は距離を詰め始める。
無言で目配せする者、武器を構える者、巫女達を警戒する者。
今まさに森や空を突っ切って来た者も少なくない。
置かれた状況は様々だが、それでも互いに彼我の距離やタイミングを測り、隙間の無い包囲網を形成する。
そして、誰からともなく最初の攻撃が飛ばされた――次の瞬間、ほぼ同時に全員の攻撃が着弾した。
煙が晴れた時、塊は猟兵達の一斉攻撃を受け、跡形も無く四散していた。
周囲では巫女達がその体をドロドロと崩し、一言も発さずに消えていく様が見える。
ジャングルからは咆哮が次々と響いて来た。おそらく海獣達が、そのおぞましい生に別れを告げたのだろう。
見事コンキスタドールを駆逐した、総勢13名の猟兵達。
彼らの手により『逆又島』の叢林には、海鳥達の声が戻り始めるのだった。
大成功
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