●
船が来る。
深海より船が来る。
幽霊船が群れを成してやって来る。
それはまるで波濤のように、触れるもの全てを押し潰さんとする。
鬼火を掲げ、呪詛を吐き、生あるモノを全て海へと引き摺り込まんと襲い来る。
生者を沈めよ。海の底まで。
陸を沈めよ。終わりの日まで。
深海の闇より生まれし我ら、宵闇よりも尚昏く。光よりも尚昏い紫光を纏い。
亡者の船が襲い来る。
●
「幽霊船の大艦隊とは情緒がない」
ばさりと一太刀で断ち切る様に、ユエファ・ダッシュウッドはその様を切り捨てた。嘆息と共に吐き出した紫煙は、百花の馨を纏い消える。
「皆さんのあまりの勢いに押されて、多少なり相手にも焦りもあるのでしょうか。なんにせよ、幽霊船の大艦隊が向かっております。このまま捨て置けば、あれらが通った島は跡形もなくなるでしょう」
七大海嘯によって賞金をかけられている猟兵も居るが、今のところ猟兵たちがそれを意に介した様子はない。むしろ面白がっている節があるというのは、向こうにとっても誤算だろう。
その現状に焦りを感じたか、七大海嘯が一人「鬼火」フライング・ダッチマンが幽霊船の大艦隊を率いて海底より姿を現したという。此度はその前哨戦。船長たる「鬼火」と戦う為に、まずは艦隊を撃破せねばならない。ユエファは海図を一枚広げ、とある島にピンを差す。
「迎え撃つ場所は此処。巨人の島、ガルザントです。此方の島の住人達の協力を取り付けました」
住人は全員巨人だと言う。自分達の島の危機と聞いて、彼等は直ぐに協力を申し出てくれた。
戦える者は皆、爆弾の投擲や大砲による砲撃をしてくれる。弾幕として使えるだろうし、指示や合図を事前に話し合っていれば、集中砲火も可能だ。もし必要があるのなら、猟兵を艦隊のど真ん中に投擲もしてくれる。だが、あくまで戦闘は猟兵が進めねばならない。
「グリードオーシャンは異常気象により飛行が制限されておりますが、島から艦隊に飛ぶくらいならば問題ありません。ただし、高くは飛びすぎませんよう。上空の突風に巻き込まれて、何処かに飛ばされてしまいますよ。また、島から騎乗用サーペントやソードフィッシュなど、騎乗用水生生物を貸して頂けます。必要に応じてお使い下さい」
騎乗用水生生物が居れば、海上での足になってくれる。彼等も、幽霊船が海を荒らす者と心得ている。猟兵たちを乗せて、勇猛果敢に海を駆けてくれるだろう。
煙管を咥え、ユエファが怜悧な笑みを浮かべる。琥珀の眸は刃のように鋭く、猟兵たちを見回して。
「ゴーストシップは宵闇や霧に紛れて奇襲するから恐ろしいのですよ。だが、自らの強みを捨てた彼等に如何な勝機が御座いましょうか。教えて差し上げるといい。烏合の衆がいくら寄り集まったところで、連携の取れた狩人の敵ではないということを」
煙管から漂う紫煙が煙龍となり、巨大な咢を開いて門と成す。
それで準備は整った。
「貴方方は嵐です。艦隊を飲み込む波濤です。さあ、一呑みと参りましょう」
ユエファは妖艶な笑みを浮かべ、煙龍のゲートへと誘う。
波が、うねりはじめる。
花雪海
閲覧頂きましてありがとうございます。花雪海と申します。
此度は【羅針盤戦争】が一舞台、幽霊船の大艦隊戦へとご案内致します。
※このシナリオは戦争シナリオです。
一章で完結し、結果は戦況に影響を及ぼす特殊シナリオとなります。
また下記に記載しておりますプレイングボーナスとなるような行動をプレイングに記載すると、行動に対してボーナスが付与されます。
●プレイングボーナス……島民と迎撃準備をした上で海上戦に臨む。
巨人の島「ガルザント」の巨人たちが協力してくれます。
巨人による砲撃や爆弾の投擲。騎乗用水生生物の借用など、猟兵たちの戦いを支援してくれます。
うまく利用して下さると、戦いを有利に進めることが出来るでしょう。
●プレイング受付・締め切り・採用について
当シナリオに断章はありません。
受付は【2/7 8:31~21:00まで】を予定しています。
また当シナリオは戦争シナリオである関係上、完結優先で執筆致します。
【再送はお願いせず、締め切りまで書けるだけ書く】というスタンスですので、【全採用はお約束が出来ません】。
プレイングに問題がなくともお返しすることも十分にあり得ますので、その点ご了承頂けますと幸いです。
また受付時間外に頂いたプレイングは、一律採用致しません。受付期間にどうぞご注意下さい。
それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『幽霊船の大艦隊』
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POW : 『鬼火』艦隊一斉砲撃
【並んだ幽霊船が統制の取れた砲撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 『鬼火』海賊団
レベル×1体の、【カトラスを装備した右手の甲】に1と刻印された戦闘用【『鬼火』海賊団員】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : セントエルモストーム
自身の【マスト】から、戦場の仲間が受けた【攻撃回数】に比例した威力と攻撃範囲の【呪詛の紫光】を放つ。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・ランザデッド
戦場には慣れている
記憶を失くしても尚、この体は覚えている
戦いに赴く理由はそれで十分
島民から借りた騎乗用サーペントでギリギリまで敵の懐まで近づく
島民と事前に打ち合わせ、合図をして敵に砲撃での一斉攻撃を仕掛ける
敵から受けた攻撃を『奪え、抗え、痛みさえ力に』で力を増幅して渾身の一撃を放つ
どんなに傷ついたとしても≪激痛耐性≫により顔には出さず、受けた傷は、生命力吸収によってある程度回復するだろう
とどめを刺せていないのであれば、油断しているであろう相手に≪目立たない≫+≪忍び足≫+≪闇に紛れる≫で、最後のとどめを≪暗殺≫者の如く放つ
悪人が死するのは、当然のことでしょう
――私も同じだから、あなたも同じよ
●
水平線を埋め尽くす幽霊船の群れ。それはまるで紫紺の暗雲に似て、徐々に視界を埋め尽くしていく。
それは海の亡霊だ。怨念の成れの果てだ。生者を許さぬ傲慢の群れだ。
戦になる。
それを、アリス・ランザデッド(死者の国のアリス・f27443)は肌で感じ取っていた。
記憶を失くして尚、その身体は覚えている。戦いを覚えている。戦場を知っている。
戦いに赴く理由はそれで十分だ。
何故か戦場慣れした身体を連れて、アリスは島民から借りたサーペントの背に乗った。
出来るだけ体勢を低くし、アリスは海面スレスレを往く。これ以上接近すれば気づかれる、そのギリギリで。
「……お願い」
アリスは事前に取り決めていた通り、全身をボロボロの包帯で覆ったアリスがサーペントと共に高く跳ねた。
アリスを見つけた幽霊船のマストが紫紺の光を宿す。呪詛を纏いし光がアリスに向けて放たれた――その瞬間。
巨人の島ガルザントの丘が光ったと思うと、轟音と共に無数の砲弾が艦隊に放たれた。巨人たちが砲撃を開始したのだ。
砲撃を受け、幽霊船に穴が開く。外れた弾は海に落ちて波を乱し、投擲された爆弾が爆風と衝撃を滅茶苦茶にかき混ぜる。
衝撃と混乱、そして爆風で、幽霊船と鬼火の幽霊団員はアリスの姿を見失った。絶え間ない砲撃は幽霊船の注意を島に引き付けるには十分で、艦砲が一斉に島を向く。
それこそが、アリスの狙い。
誰も注意を向けぬ甲板を、ストラップシューズが駆ける。手には使い込まれたダガーナイフ。ぼろぼろの包帯は自身の血と呪詛に汚れ、受けた傷を昏き力としてナイフに注ぎ込み。
「ここね」
呪詛の光を放つマストを、たった刃渡り20㎝程度のナイフで。
一撃のもとに断ち切った。
『……?!?!』
斜めにズレて落ちたマストが幽霊船の甲板を貫き、そのまま船の竜骨までもをへし折る。竜骨を折られ、船底に大穴を空けられた船が無事に浮いていられるわけがない。
この船は沈む。たった一人の少女の力で。
「悪人が死するのは、当然のことでしょう。――私も同じだから、あなたも同じよ」
着慣れぬ青のエプロンドレスを翻し、赤き眸に感情の色を宿さずにアリスは断末魔を上げる幽霊船を一瞥した。
己の血に塗れた少女は痛みにも眉一つ動かさずに、沈みゆく船から再びサーペントの背に飛び乗った。
ひとつ倒したら、次の船へ。
敵が何体居ようと、誰が敵であろうと、己が何であろうとも、アリスはただ無心で敵対する者を倒すのみ。
成功
🔵🔵🔴
イコル・アダマンティウム
「おー……巨人さんが、いっぱい」
なんだか……負ける気がしない、ね
僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ
【協力申請:キャバリア投擲】
「投げてくれるって、本当?」
巨人さんにキャバリアを投げてもらいたい、な
真直ぐと。幽霊船に突っ込みたい
「わく、わく……」
【対:一斉砲撃】
「いやっふー……」
巨人さんに投げて貰って
真直ぐ拳を構えて鬼火艦隊に突撃、だ
砲撃は姿勢制御と手足のスラスターで軌道を修正して回避する、ね
【攻撃】
船に乗り込めば後は、潰すだけ
「一発で、沈める」
[一撃必殺]
機体の拳を船に叩きつけて
粉砕する、ね
これで攻撃回数も、最低限になる……
沈めたら、次
「次」
海の上を走って、次の船に向かう、よ
ビードット・ワイワイ
幽霊船が如何程のものよ
我はメカモササウルスぞ?
これがそろそろ脅し文句として流行らんかと思っておるが流行らんなあ
こうも多いと面倒だ
巨人の諸君引きつけを頼んだ
精一杯全力で攻撃してくれ
焦燥感を出してくれればなおいい
メカモササウルスへとなり背後へまわり
深く潜りて船底目掛け突撃
咥えて飛び上がり海面に叩きつけ
落ちると同時に高波起こし
雷撃放ちて他船巻き込み秩序を乱す
統制乱せば烏合の衆よ
喰らい襲いて船襲い蹂躙行いて骸の群れを海へとかえそう
●
「幽霊船が如何程のものよ、我はメカモササウルスぞ?」
ビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は、ガルザントの砂浜に立ち仁王立ちしていた。その自信は、己への絶対の矜持。だが。
「これがそろそろ脅し文句として流行らんかと思って居るが、流行らんなあ」
その肩ががくりと下がる。
強くてカッコいいのに、メカモササウルス。流行りの道はなかなか遠い。
敵影は既に目視で捕らえられる程。暗雲のようにも見えるそれらは既に水平線を飲み込み、呪詛を吐き散らしながら真っすぐに此方に向かって来ている。ビードットは島岸に居る巨人を振り返った。
「こうも多いと面倒だ。巨人の諸君、引きつけを頼んだ」
「任せな。思いっきりぶちかましゃいいんだな?」
「うむ。焦燥感を出してくれればなおいい」
「やってみらあ」
「任せた」
会話を終えるとビードットが海中へと身を躍らせた。深く深く潜る必要がある。何せその機獣は、途轍もなく大きいのだから――。
一方、ガルザントの丘では巨人たちが既に砲撃の準備を整えていた。
「おー……巨人さんが、いっぱい」
イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)が頭上を往く巨人を振り仰ぐ。身長が人間の三倍近い巨人たちが大砲や爆弾を抱えている様子は、とても頼もしい。イコル自身もまた格闘に特化させた愛機、キャバリアに搭乗すれば、その目線の高さは大体同じ。
「嬢ちゃんだってデケェのに乗ってんじゃねぇか」
「ね。投げてくれるって、本当?」
「おう、構わねぇぞ。って、嬢ちゃんをか?」
「うん。巨人さんに、このキャバリアを投げてもらいたい、な。真直ぐと。幽霊船に突っ込みたい」
「はは! いいぜ、何処へでも投げ飛ばしてやらあ!」
巨人たちが数人、丸太を担いで構える。それを足場にキャバリアを立てれば、巨人たちの筋肉が隆起する。
「わく、わく……」
四人の巨人が全身に渾身の力を籠めた。イコルもまた胸の高鳴りを抑えきれぬままに、キャバリアを前傾姿勢に構えてスラスターを稼働準備状態にし――。
「いいぃくぜぇぇぇ!!!!!」
その声を合図に、巨人たちが一斉に丸太を振り抜いた。
強力なGがイコルを襲う。その瞬間、キャバリアは海上を一直線に駆ける流星となった。
真っすぐに拳を構えて、キャバリアが鬼火艦隊に突撃する。
目指すはビードットが巨人に協力を仰ぎ、引きつけに成功した船の大隊だ。
だが、高速で近づくキャバリアに気づかぬ艦隊ではない。砲台が一糸乱れぬ動きでイコルのキャバリアを示し、次の瞬間には一斉に火を噴いた。統制の取れた砲撃はキャバリアが近づく軌道すら計算にいれて僅かずつずらしながら放たれている。まさに弾幕。一つ避けた先には既に一つが配置されている。だが、キャバリアは真っすぐにしか進めぬわけではないのだ。
「いやっふー……」
のんびりした口調とは裏腹に、イコルは微細な調整による姿勢制御と手足のスラスターによる軌道修正を素早くやってのける。瞳が忙しなくセンサーを追い、手足と指が条件反射レベルでキャバリアを操縦する。既にその身は、キャバリアと一体でもあるのだ。
一撃も喰らわぬままに一隻に乗り込んだイコルは、その衝撃を幽霊船のマストをへし折ることで相殺した。砲撃など船に乗り込んでしまえば意味はない。乗り込んでしまえばあとは潰すだけだ。
「一発で、沈める」
大艦隊を相手に一隻一隻に手間取っている暇はない。素早く確実に。ならばまさしく、一撃必殺の技で!!
「砕く」
格闘に特化されたキャバリアの拳が、腕のスラスターの勢いを乗せて幽霊船に叩きつけられた。衝撃は甲板を粉砕しただけでなく、船底に特大の穴を開けて船を真っ二つにへし折った。
文字通りの必殺の拳。これでイコル自身の攻撃回数も必要最低限となり、無駄に疲労しない。船が沈む前に次へと飛び移ろうと、キャバリアが飛ぶ。
「次」
その一瞬を、別の幽霊船が既に射線に捉えている。大砲に火が入る。
だが、幽霊船は知らない。海底から巨大な影が猛烈なスピードで迫っていることに――。
咆哮をあげて、海の王が幽霊船を咥えて飛び上がった。
悠然と空へと躍り出た姿は、まさしく海の龍と呼ぶに相応しい。されどあまりに巨大な、古代の滅びし海龍の王――モササウルスの姿であった。
「これが絶対なりし海の王の魂と、機械の体が合わさった姿! 我らこそがモササウルスなり! 幽霊船団、なにするものぞ!!」
巨大な咢でイコルに照準を合わせていた幽霊船を含めた数隻を噛み砕き、残る残骸を海面に叩きつける。全長300Mという巨体が再び海へと落ちれば、巻き起こるは乱れに乱れた高波だ。それだけで数隻の幽霊船が転覆していく。再び海上へと躍り出れば、その角が稲妻と同等の雷撃を宿し放つ。巻き込まれた幽霊船が、瞬時に黒焦げとなって海に沈んでいった。
まさに嵐。今、メカモササウルスとなったビードットは海の災害そのもの。泳ぐだけで高波を起こすメカモササウルスに、幽霊船の統制などあったものではない。
「統制乱せば烏合の衆よ。喰らい襲いて船襲い、蹂躙行いて骸の群れを海へとかえそう」
「この船団の制圧、完了……次、いこう」
イコルから通信が入り、ビードットは再び海中深くへと潜降した。
一体のキャバリアと、一機の機龍。
彼らが去った後、そこには幽霊船だった残骸の木くずが浮かぶだけだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルデルク・イドルド
アドリブ歓迎
敵の掛けてる懸賞金を面白がってるっての否定はできねぇな。
必死になって猟兵に懸賞金掛けてるなんて笑える話じゃねぇか。
まぁ、やれるもんならやってみやがれとだけ言っておこうか。
巨人達が素直に手を貸してくれるなら助かるな。
まずは自分の船に乗って敵船団に近付きUCを使用
UC【雷雲招来】+【天候操作】
嵐が来るぞ!
船乗りならその恐怖がわかるだろう?
さぁ、その幽霊船でどこまで耐えられる?
ダメージを受けた船を確実に沈めるため巨人達から投擲などの援護をしてもらう。
●
「敵のかけてる懸賞金を面白がってるっての否定はできねぇな。必死になって猟兵に懸賞金掛けてるなんて笑える話じゃねぇか」
くつくつと喉を鳴らし、アルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は幽霊船団を一瞥する。今や賞金首となった猟兵は200人を超え、懸賞金の額は日々膨らみ続けている。逆を返せば、それだけコンキスタドールが撃破され続けている証左だ。
「まぁ、やれるもんならやってみやがれとだけ言っておこうか」
アルデルクは海賊服の裾をばさりと払って、その光景に背を向けた。
せいぜい敗北の悔しさを懸賞金の額と言う形で跳ね上げるがいい。そうしている間は、自らが溺れかけていることを知らずに済むだろうから。
「おう海賊のあんちゃんよ。なんか手伝えることあるか?」
巨人の一人が、アルデルクへと声をかけた。自分の船で出港準備をしていたアルデルクは、甲板の上で口の端を吊り上げる。
「手を貸してくれるなら助かるな。それじゃあ、俺の援護を頼む。タイミングは……見てりゃわかるさ」
金の眸が細められる。
巨人に背を向けて、アルデルクは舵輪を取った。舳先で美しき女が笑う。海賊が己の船に乗る時、誰がその勝利を疑うものか。
海賊船モナ・リザ号が波を切る。
その進みを巨人たちの砲撃によって援護されながら、辿り着きたるは船団の真正面。
そこで、アルデルクは手を天に掲げた。
「そら、嵐が来るぞ!」
アルデルクの呼び声に応えるように、急激に雲が成長し雷雲を作る。渦を巻いた雷雲はやがて轟音を鳴らす。
風が立つ。雨が降る。波がうねりはじめる。――嵐が来る。
海で生きたことのある身ならば、誰だってそれを怖れるものだ。幽霊に堕ちたとて船乗りであったならばそれを知っている筈だ。これで死んだ者だって居るだろう――!!
「さぁ、その幽霊船でどこまで耐えられる?」
荒れ狂う海でバランスも統制も失った幽霊船が、次々とアルデルクの放つ稲妻に撃たれて燃えていく。ダメージを受けた船を優先的に狙い、巨人たちも爆弾投擲や砲撃で援護を怠らない。
嵐に船を立てるのは容易な事ではない。ましてそれが、マストも船体もボロボロの幽霊船であったならばなおの事。アルデルク自身もまた豪快に船をコントロールしながら、幽霊船に次々と稲妻を落とす。
その様を見た巨人は、後に言うだろう。
――まるで嵐の神が暴れ狂ったかのようだったと。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
闇に紛れ不意打ちをする強みを殺してしまっている、かぁ
滑稽だな、焦りって怖いね
勿論手加減はしない
その滑稽な姿を笑いながら潰していこう
巨人の皆に援護の感謝を述べ、俺が敵を始末する間の足止め役をお願いする(フリーの敵優先で砲撃してもらう)
騎乗用のサーペントを借りるよ
よろしくねとその子を撫でる
敵の群れに突っ込む
UC解放・夜陰を敵に撃ちこみ水晶で一隻ずつ喰らい尽くしていこう
敵にUCを撃たれたらUCは呪詛だと勘付く
できる限り遮断するため急いで魔力を高めてオーラ防御
俺はともかく今日の相棒を巻き込むわけにはいかない
成程、UCはマストから放たれてるな
じゃあ折ってしまおう
そう考えた以降はマストを狙い水晶を撃ちこむ
●
「闇に紛れ不意打ちをする強みを殺してしまっている、かぁ。滑稽だな、焦りって怖いね」
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、無邪気にくすくすと笑う。
お伽噺であるならば、幽霊船とは闇夜に紛れ霧に紛れるものだ。だというのにこの大艦隊と来たら白昼堂々と海の底からやってきた。どんなに恐ろしい幽霊だって、昼間に出てきては恐ろしくもなんともない。自らの強みを忘れる程に焦っているとなれば、込み上げるものもある。
だが勿論手加減などしない。そんな慢心はしない。その滑稽な姿を笑いながら潰して行くのだ。
援護を申し出た巨人に、サンディは礼儀正しく感謝を述べた。穏やかな笑みはサンディが巨人を味方と定めた印だ。
「じゃあ俺らは何すりゃいいんだ?」
「俺が敵を始末する間、他の船の足止めをお願いできるかな?」
「成る程な。任しとけ!」
「宜しくお願いします。それと、騎乗用のサーペントを借りるよ」
胸を叩く巨人に手を振って、サンディは入江でサーペントを借り受けた。小型とは言え竜。その姿は勇ましい。
「よろしくね」
背に飛び乗ったサンディは、サーペントの鱗を撫ぜる。振り返ってサンディを見たサーペントは、一声鳴いて海を駆け始めた。
一直線に敵陣に突っ込むと同時に、サンディは漆黒の水晶を幽霊船に放った。同化を渇望する闇の魔力が水晶から広がり、幽霊船を蝕んでいく。水晶は幽霊船を喰らうようにその力を広げ、漆黒の闇で覆っていく。
だが、幽霊船もやられるままではない。周囲の幽霊船がマストに怪しげな紫光を宿したかと想うと、紫紺の闇がサンディに向けて無数に放たれた。
「……呪詛!?」
怨嗟を叫ぶ光の正体に気付いたサンディが、急ぎ魔力を高めてオーラの盾を編み上げる。今からサーペントに指示を出しても回避が間に合わない。ならばまずは、防ぐことが先決。サンディ自身はともかくとして、今日の相棒を巻き込むわけにはいかないのだ。
紫光を防ぎながらも、サンディは冷静に敵の攻撃を観察する。
「……成程、ユーベルコードはマストから放たれてるな」
何処からでも光を撃てるのならば、他の船が何処からだって撃っても良いはずだ。だが、どの幽霊船も皆一様にマストからユーベルコードを放っている。
セントエルモの火――悪天候時などにマストの先端が発光する現象があるというが、このユーベルコードはそれを模したものかもしれない。
「そうか。じゃあ折ってしまおう」
マストが無ければ光も出まい。
紫光を防ぎきったサンディは、すぐさま黒い水晶を幽霊船のマストに向けて次々に撃ち込む。
弱みがあるならそこから潰せ。
敵であるならば遠慮も手加減もしない。
サンディは、昏い笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
幽霊って美味しいのかなぁ?
それはそうと、宴会の邪魔はさせないよ☆
UC【素晴らしく肉肉しい晩餐】にて部下の肉塊を召喚し、肉の防壁と肉の砲台をメインとした砦を事前に形成。
戦闘は砲台で部下の肉塊を飛ばし、敵艦隊を超重力で圧し潰し沈没させる!
ついでに増殖した肉塊は「料理」の材料にして皆に賄いとして振る舞う!
勝利の暁には幽霊肉で(!?)「宴会」だ!!
緋神・美麗
アドリブ歓迎
とうとうダッチマンが相手かぁ。これは腕が鳴るわねぇ。個人的にもダッチマンは全て潰させてもらうわよ。
島民から迎撃体勢を確認
「そうねぇ。大砲と爆撃で迎撃して相手の足を止めてもらえれば御の字ね。その間に私が艦隊を片っ端から撃ち落とすわ」
指定UCを技能フル活用の全力攻撃で艦隊を片っ端から撃ち落としていく
「艦隊って言うだけあって数が無駄に多いわね。選り取り見取りで狩り放題ねぇ」
●
フライング・ダッチマン。
それはかの国では『幽霊船』または『その船長』を示す言葉だ。グリードオーシャンでは七大海嘯が一人『鬼火』がそれを名乗っている。
「とうとうダッチマンが相手かぁ。これは腕が鳴るわねぇ」
ガルザントの丘で額に手をあて、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は海を眺める。水平線は既に食い尽くされ、見渡す限りの黒と紫紺。まるで暗雲が迫りくるかのようだ。
「個人的にもダッチマンは全て潰させてもらうわよ」
フライング・ダッチマンに思うところがあるのだろう。美麗の戦意は高い。
まず美麗は、ガルザントの島民と迎撃態勢の確認を取った。
話を聞くと、見晴らしの良い此処と島の入り江に巨人たちは陣を張っているらしい。そこから大砲での砲撃や、樽に詰めた爆弾を投擲してくれるようだ。
「確かに此処なら見晴らしもいいし、邪魔な遮蔽物もないわね。じゃあ私も此処にするわ」
「でっけぇ武器だな、お嬢ちゃん!」
美麗が持ち出してきた武器は超巨大電磁砲。少女一人が扱うにはかなり大きい銃だ。思わず目を丸くした巨人に気にするなと美麗は手をひらり。何事もなく美麗は銃の設置を終える。
「俺らはどう援護すりゃいい?」
「そうねぇ」
人差し指を唇にあて、美麗は目視で敵を観察する。敵の進行速度はそれなりに早い。横凪ぎ出来るような武器でない以上、やはり数と進行速度が問題になる。
「大砲と爆撃で迎撃して相手の足を止めてもらえれば御の字ね。その間に私が艦隊を片っ端から撃ち落すわ」
「頼もしいねえ。いいぜ、足止めは任せな!」
巨人たちを見送って、美麗が巨大電磁砲のスコープを覗く。
無数のフライング・ダッチマンが大砲を向けて、美麗を見つめ返していた。
一方入り江では、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)もまた着々と己の砦を形成していた。
ユーベルコードを使い召喚した巨大な肉塊で防壁を作り、また肉塊の砲台を設置する。その様、まるで地獄の如く。
「嬢ちゃん、なんか、見た目すげぇえげつねぇことになってんだけどよ……」
「そうかな? まあおいら魔王だからね☆」
ラスボスの魔王ならば仕方ない。巨人が若干引いているっぽいのもデビキン的にはOKとする。それよりも、ラヴィラヴァにはもっと気になっていることがある。
「幽霊って美味しいのかなぁ?」
こてりと首を傾げる。みんながおなかいっぱいになれるせかいを目指しているラヴィラヴァにとって、見えるモノ全てが食材に見える。
即ち、食べられるか否か。さてあの幽霊(船)はどうなのか。
けれども大人しく検証させてくれる気がなさそうなのは、幽霊船が此方に砲台を向けている様子からも明らかで。
「宴会の邪魔はさせないよ☆」
「うん???」
いつから宴会がはじまっていたのだろうか。巨人は首を捻りつつも、己が大砲を構えた。
「それじゃ、いっくわよ……! チャージ、セット、」
戦の口火を切ったのは美麗だった。
超巨大電磁砲に巨大な鉄塊が装填され、内部が急速に磁場を帯びる。ギリギリまで鉄塊を抑え込み、数隻の船が一直線に並んだ瞬間を狙い――、
「いっせーのっ!!」
持てる全ての技能を使って狙いをつけ、破壊力を増した鉄塊が放たれた。
レールガンの飛行速度は通常の火薬で撃つ銃の比ではない。どれだけ離れた場所に的があっても、これだけ巨大なレールガンならば放ったと同時に着弾するも同じ!!
凄まじい轟音をあげて、鉄塊が数隻の船を纏めて撃ち抜いた。
何があったかを艦隊が把握する前に、今度は空からぶよぶよとした肉塊が増殖を続けながら幾つも落下してくる。
船体に落下した肉塊は超重力の属性を帯び、見る間に船を圧し潰してそのまま沈没させていく。ラヴィラヴァの放った肉塊の砲弾だ。
それに気付いた船団が砲撃を差し向けるが、砲弾は事前に築いていた肉塊の壁に阻まれてラヴィラヴァまで届かない。
美麗を捕らえようとしていた敵大砲も、巨人たちの援護により狙いを定められていない。その隙に、美麗は次弾を装填し次を放つ。持てる全力で、幽霊船の大艦隊を片端から撃ち落していくつもりだ。
「艦隊って言うだけあって数が無駄に多いわね。選り取り見取りで狩り放題ねぇ」
あくまで淡々と、美麗は『ダッチマン』を潰していくのみ。
ラヴィラヴァの設置した砲台もまた、次々と増殖する肉塊を放ち続けている。その間に、ラヴィラヴァは――なんと増殖した肉塊を料理の材料にして、皆に賄いとして振る舞っていた。
「食べるといいよ! 腹が減っては戦も出来ぬってね!」
「今戦してる真っ最中だけどなあ!!」
「勝利の暁には幽霊肉で(!?)宴会だ!!」
「突っ込みどころはいろいろあるがお嬢ちゃんよ! その幽霊船、全部沈めちまってるぜ!?」
「……あ」
幽霊船を海に沈めているのだから、当然墜とした幽霊船は全部海の中。(あるかどうかはともかく)幽霊肉もまた然り。
ラヴィラヴァはしばし頭を抱えるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
栗花落・澪
協力者が多いのは心強いね
僕の合図で一斉に砲撃をお願い出来る?
出来るだけ敵の目線を上に誘導して
その間に僕は海から艦隊に近づく
ソードフィッシュ借りるね
万一攻め込まれることがないように
島の入り口に【破魔】を宿した★花畑を広げて自然の結界を作っておきつつ
奇襲が出来るのはこっちも同じ
★マイクを使って、すっと息を吸って
作戦開始!
僕はソードフィッシュの背に乗って
なるべく身を小さくして進む
なんなら潜ってくれても構わないよ
風魔法と【オーラ防御】を組み合わせた膜を纏えば
呼吸くらい確保出来る
そして【聞き耳】で戦況を聞き分け
幽霊達の意識が島に向いてるなら作戦成功
一時的に翼で船に飛び乗り
反撃が来る前に即【指定UC】を
●
巨人たちが大砲を担ぎ、樽に詰められた爆弾を次々と用意していく。島民全員の協力を得られたことは、猟兵たちにとっても頼もしいことだ。
「協力者が多いのは心強いね」
「それは俺らにも言えることだ。嬢ちゃんたち猟兵が島を護ってくれるんなら大助かりだからな」
「……うん、お互い様だね」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が口を開くのにほんの数コンマの間。とはいえ今説明するのも時間が惜しいので、嬢ちゃん呼ばわりは少々そのままにしておくとして。
「で、俺らはどう手伝えばいい?」
「じゃあ僕の合図で一斉に砲撃をお願い出来る? 出来るだけ敵の目線を上に誘導して。その間に僕は海から艦隊に近づくから」
「あいよ、任せな!」
勇ましく胸を叩いた巨人に手を振って、今度はガルザントの入り江に向かうと巨人のおかみさんが手を振っていた。騎乗用水生生物が借りることが出来る場所だ。
「ソードフィッシュ借りるね」
ひらりとソードフィッシュの背に乗った澪は、その背をぽんと撫でて。ゆっくりと泳ぎ出したところで島を振り返り、島の入り口に魔を祓う力を宿した花畑を広げた。万が一にも攻め込まれることのないよう、自然の結界を張っておくのは澪らしい心配りだろう。
幽霊船の強みとは闇夜や霧に紛れて彷徨う神出鬼没さ、そして不確定さにある。それ故奇襲を得意としてきたが、何も奇襲とは幽霊船のみの特権ではない。
澪の眼前に広がるのは、開けた海原だ。目線の先には暗雲たる幽霊船の大船団。しかし、この状態であっても奇襲は出来る――!!
マイクを使い、すっと深く息を吸って。
「作戦開始!」
「「「おおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
澪の合図と同時に、巨人たちが丘から一斉に砲撃を開始した。
砲弾と樽爆弾が雨霰と幽霊船団に降り注ぐ。幽霊船団も砲塔を巨人たちの丘に向け、周囲は砲撃と爆発音、そしていくつもの水柱に覆われる。
そんな中を、澪は出来るだけ身を小さくして進んでいく。なるべく幽霊船に悟られぬよう、澪はソードフィッシュに合図して海に潜る。風魔法と防御に重きを置いたオーラを組み合わせた膜を纏えば、呼吸くらいいくらでも確保できる。
その耳は絶えず戦況を聞き分けていた。巨人たちはうまく幽霊船の意識を引き付けてくれているようだ。誰も己の足元になど注意を向けてはいない。
「……ここ!」
10隻程の船団の中心部に到達すると、澪はソードフィッシュを海面に向けた。
海上に高くソードフィッシュが飛び上がる。その背から翼を広げ、澪が更に高くへ飛び立った。
中心部にいた船のマストへと飛び乗った澪は、素早く片手を掲げる。
「全ての者に光あれ――!!」
澪のユーベルコードの発動は、幽霊船の攻撃が来るよりも早い。澪の全身から放たれた強い浄化の光は周囲に居た船団を丸ごと飲み込んでいく。
そしてその光が収まった頃、澪の周囲には幽霊船など跡形も残っていなかった。
成功
🔵🔵🔴
二條・心春
幽霊船は不気味ですが、私には頼れる仲間がいます。さらに協力してくれる海賊さん達もいるとなれば、怖くありません。
騎乗用のサーペントを貸してもらって、敵に近づきましょう。私の役目は囮です。「第六感」を活かして攻撃を避けたり、グラビティシールドを海に浮かぶ程度に重力操作して広げて紫光を遮りながら、敵の注意を引きましょう。海賊さん達には敵に会立てないよう注してもらいながら大砲で牽制してもらいましょうか。
その隙に【召喚:大烏賊】で召喚したクラーケンさんに、触手で巻きついて船を壊してもらいましょう。強力な攻撃を放つマストを優先的に壊してくださいね。さあ、船を飲み込んじゃってください、クラーケンさん!
●
水平線を埋め尽くし、今なお巨人の島ガルザントへと襲い来る暗雲。あれが全て幽霊船だという。たった一人の船長に統括されし大艦隊だ。その数は、目視では数えるのも億劫な程。
「幽霊船は不気味ですが……」
黒き艦隊を前に、二條・心春(UDC召喚士・f11004)はガルザントの入り江に立つ。あれは一人で立ち向かえる数ではない。けれども。
「私には頼れる仲間がいます。さらに協力してくれる海賊さん達もいるとなれば、怖くありません」
「おうよ、攻撃も援護も任せな。嬢ちゃんがやりたいようにやってこい!」
ニカっと白い歯を見せて笑う巨人に、心春はしっかりと頷いて駆けだした。
一人じゃないということは、こんなにも力をくれるから。
騎乗用のサーペントを借りた心春は、波を切って幽霊船の一団へと近づく。マストに揺れる怪しげな紫光が、まるでサーチライトのように心春を追う。纏うは呪詛。命ある者を呪う怨念が、近づく心春を照らし海に墜とさんと狙い来る。
「……っ、サーペントさん、こっち!」
ぞわりと背筋が粟立つ感覚に、心春が素早くサーペントを促した。サーペントが進行方向を変えた直後、真後ろに呪詛の紫光が放たれる。他方から襲い来る光は、心春自身とサーペントを覆える程に広げたグラビティシールドを展開して防ぐ。その間も、巨人たちは大砲で幽霊船を牽制している。
心春は闇雲に海上を駆けまわっているわけではなかった。その証拠に、いつの間にか数隻の船が密集する程に集められているのだ。心春は逃げ回るように見せかけて囮の役目をし、巨人たちが大砲で幽霊船を追い立てる。気づいた時には既に遅い。
その機を、心春は待っていた。
「今です!」
心春の合図と同時に、海面に巨大な召喚陣が展開された。
陣が消えたと思った瞬間、水中から猛烈な勢いで巨大な触手が幽霊船を突き上げ、別の船に巻き付き、波を乱す。
突き上げられて砕けた幽霊船の破片が降り注ぐ海面で、ぎょろりとした金の目が覗いている。
召喚されしはクラーケン。船乗りならば誰もが一度は恐れた海の魔物――!!
「マストを優先的に狙って下さい! 強力な攻撃が放てないように!」
心春の声に反応し、丸太程もある触手がしゅるりと伸びた。幽霊船のマストを掴むと、そのまま力任せにへし折る。折れたマストが甲板に叩きつけられ、さらに船を破壊しながら海へと沈む。向けられた大砲も揺れ動く触手を狙うのは楽ではなく、また海の中にいる本体へは水の抵抗により大したダメージを与えられない。
「さあ、船を飲みこんじゃってください、クラーケンさん!」
周囲の船を全ての触手で掴み、クラーケンが潜降を開始する。バキバキと船体をへし折られながら、幽霊船が沈没していく。
やがて浮かび上がるのは、静寂と砕けた木の板のみ。
千切れたマストで揺れた紫光が、波に揺られて消えていった。
成功
🔵🔵🔴
鵜飼・章
リュカさんと
いきなり僕の存在を全否定だね
どうして?皆可愛いのに
僕は強くて賢いシャチを借りるよ
水上スキー?そこまで嫌かな
いいけど多分危ないから気をつけてね
幽霊船一度見てみたかったんだ
支援を頼りつつ容赦なく全速力で進む
敵の砲撃が始まったらシャチくんに
ジャンプやターンで弾をかわしてもらう
どう、僕の猛獣使いぶり
リュカさんを落としていても悪気はないんだ…
船と戦わせるならやっぱりこれだ
リュカさんの技に合わせ【確証バイアス】を発動
空にカブトムシ座を描き戦艦に突撃させる
角でひっくり返して転覆させたり
弾丸や砲撃に合わせて穴を開けたり
かっこいい…
幽霊船vsカブトムシが見られるのも今だけ
また一つ世界の果てが増えたね
リュカ・エンキアンサス
章お兄さんf03255と
俺はね、生き物に乗るとか大っ嫌いなんだ
水上バイクとかないの?
ないの。そう…
いいよ。水上スキーくらいは準備できる
勿論、章お兄さんが引っ張るんだよ。よろしくね
巨人さんには、砲撃支援をよろしく。敵の爆弾を撃ち落としたり、逆に幽霊船にぶち当ててもいいから
で、お兄さんに引っ張られながら船へと急ごう
落ちないとは思うけど、一応泳げるから、転んだら泳ぎます
それから船に…え。船と戦うのか。スケール感が違うな
しょうがない。星の終点で地形を塗り替えつつ、地道に削っていくよ
テンション上がってるお兄さんは相容れないなーって顔をしながらも、壊れかけた個所とか狙って地味に倒せそうなのから倒していくよ
●
幽霊船の大艦隊。無論戦場は海の真っただ中。
巨人の島ガルザントからは、騎乗用水生生物の借用が出来る、というが。
「俺はね、生き物に乗るとか大っ嫌いなんだ」
「いきなり僕の存在を全否定だね」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)が嫌な顔を隠しもせずに言うものだから、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)も肩を竦めてしまう。
鴉をはじめとして、章には生き物を扱うユーベルコードも多い。リュカ個人の思想とはいえ、なかなかにバッサリだ。
「どうして? 皆可愛いのに。僕は強くて賢いシャチを借りるよ」
とはいえ大した意に介さないのが鵜飼章という人間でもある。次の瞬間には、巨人のおかみさんにシャチはいるかと聞いていた。リュカとてその性格も承知済である。
「水上バイクとかないの?」
「バイク? なんだいそりゃ」
「ないの。そう……」
一応聞いてみたものの、巨人は首を傾げるばかり。UDCアースでいうところの大航海時代レベル以上の技術が失われているこの世界では、そもバイクという存在が無い。当てが外れてしまったが、リュカもまた切り替えは早かった。
「いいよ、水上スキーくらいは準備できる」
「水上スキー? そこまで嫌かな」
「勿論、章お兄さんが引っ張るんだよ。よろしくね」
シャチの背に騎乗した章に、リュカがロープを投げ渡した。シャチにロープを結ぶことも、リュカは絶対に許してはくれない。やろうとしたら章をじっと見つめる目がとても怖かった。
「いいけど多分危ないから気をつけてね」
となれば、本当に章がシャチに騎乗したまま水上スキーのリュカを引っ張るよりない。章はシャチの速度と腕にかかる負荷を想像して眉を下げた。
そんな二人の傍に、巨人の一人が歩み寄る。
「あんちゃんたち、俺らはどう支援してやりゃいい?」
「砲撃支援をよろしく。敵の爆弾を撃ち落したり、逆に幽霊船にぶち当ててもいいから」
「おぅ。そりゃいいな」
ニッと笑う巨人が頼もしい。
ロープの先に棒を括り付け、その強度を確かめたリュカもまた、静かに口の端だけを上げた。
「幽霊船一度見てみたかったんだ」
泳ぎ出したシャチ――の上に騎乗する章に引っ張られ、水上スキーのリュカが追う。
だが平坦な道を車で移動するのとは違い、生き物が泳ぐ動きとスピードに合わせて水上スキーで追うのだから、どうしても不安定さは否めない。普段からバイクに乗っており、バランス感覚に長けたリュカであっても、動きのコントロールに気を遣う。まして、巨人たちの砲撃支援と幽霊船団の砲撃戦はもうはじまっているのだ。砲弾が飛び交い、あちこちで水飛沫が立って波がうねる。落ちないとは思うが、万が一転んでも泳ぐつもりで居た方がよさそうだ。
「どう、僕の猛獣使いぶり」
そんなリュカに、章がご機嫌に振り返って笑う。巨人たちの支援を頼りつつ、シャチには容赦なく全速力で進んでもらっている。ジャンプして砲弾を回避し、ターンで狙いを定めさせない。確かに見事な猛獣使いぶりだ。
ただ、ご機嫌な顔をとは裏腹に、リュカのロープを引っ張る腕が震えている。
「ところでリュカさん」
「なに、章お兄さん」
「悪気はないんだ。ただ、僕には筋肉もそんなにないんだ。だから……」
「……」
嫌な予感がした。
「ごめん、もう無理」
「……いや、なんとなく想像はしてたけど」
あえなく手放されるロープ。
章にしてはよく頑張ったと思う。シャチのトップスピードは時速50kmを超える。それをリュカの体重+水の抵抗を加味した負荷を支え続けながらここまで耐えたのだから、本当によく頑張ったと思う。
だが、やっぱりシャチに乗ったまま水上スキーの人一人を引っ張るのは楽ではなかった……。
置いていかれるリュカ。
だが有り難いことに、既に撃沈された幽霊船の残骸が浮いている地点に到達していた。リュカは素早く水上スキーから足を外し、残骸を踏み台にしながら海を駆け抜ける。
そのまま一隻の幽霊船の取りつくと、甲板に駆けあがる。だが、道中も甲板にも敵影はない。それもそのはず。敵はこの幽霊船そのものなのだ。
「……え。船と戦うのか。スケール感が違うな。しょうがない」
手持ちのアサルトライフルでは少々威力に欠けるかもしれないが、ならばそれを底上げするだけのこと。リュカは空へと流星の弾丸を放った。放物線を描いた弾はやがて本物の流星となって船を穿つ。いつのまにか戦場は、夜の野戦と同様の環境へと変化していた。
一方。リュカを離してしまったあとも、章はシャチを巧みに操って海上を駆け巡っていた。だが、章とて戦場をかき乱すばかりではない。
「船と戦わせるならやっぱりこれだ」
章が空に描くはカブトムシ座。無敵ですごくカッコいい巨大カブトムシ。想像から創造されるそのカブトムシに対する信頼という名の前提は、絶対に揺るがない。
巨大カブトムシが羽を広げると、そのまま船の一隻に突っ込んだ。角を船底に突き刺し、力いっぱいにひっくり返して船を転覆させる。そのまますいと横に飛んで敵の砲弾を回避し、逆に巨人たちの爆撃や砲撃に合わせて船に穴を開ける。
「かっこいい……」
シャチを手繰りながら、章はカブトムシの有志に見惚れている。召喚した章が絶対にその強さを疑わないからこそ、カブトムシは幽霊船相手に無敵の強さを誇る。もう何隻船をひっくり返しただろうか。
「幽霊船vsカブトムシが見られるのも今だけ。また一つ世界の果てが増えたね」
(「相容れないなー……」)
カブトムシの大活躍にテンションが上がっている章を後目に、リュカは船から船へと飛び回る。カブトムシや砲撃によって壊れかけた箇所を狙い、派手さはなくとも確実に船を削り壊し倒していく。
互いに対極の世界の果てに立つ二人は、けれども不思議と息を合わせて戦場を駆け巡る。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
コノハ・ライゼ
あっは、分かり易くてイイわ
ケドぜぇんぶ喰らったって、オードブルに足るかしら?
ところで、と期待の面持ちで巨人達を見上げる
アレ迄投げてもらえるって聞いたケドほんと?
オレ飛ぶのに術使うしかナイから助かっちゃうンだよね
あのマストを狙うのいけるかしら
投げて貰った滞空中にオーラ防御で備え【黒喰】で影狐のくーちゃん喚び空中戦
先ずは雷の範囲攻撃で出来るだけ多くの傷を刻むわ
さあ、たあんとお食べ
反撃へはカウンターで仕掛け呪詛をくーちゃんに喰らわせ封じ
2回攻撃でオレの「氷泪」から傷口を抉る紫電奔らせ傷口を抉り捕食
生命力をいただくわねぇ
船だろうと呪いだろうと、骸の海より来たのなら
オレに喰えねぇモノなんてナイのよ
●
敵は幽霊船という名の大艦隊。だが幽霊の如きそれではない。実体のある亡霊の船だ。それを一呑みにする波濤になれという。
「あっは、分かり易くてイイわ」
呪詛の残り香をはらむ風に紫雲をなびかせ、コノハ・ライゼ(空々・f03130)が彼方を見遣る。水平線を喰らった幽霊船の大艦隊は、海の青を黒く侵食しながら此処へと迫っている。
「ケドぜぇんぶ喰らったって、オードブルに足るかしら?」
だがそんなものを意にも介さず、唇に指当てコノハは笑う。所詮は虚ろな空の船。悪食の獣の腹を満たすに足るか、否か。
「ところで」
「ん?」
期待の面持ちで、大砲の準備をする巨人達を見上げる。人の三倍程大きい彼等は、その実きさくな住民たちであった。
「アレ迄投げてもらえるって聞いたケドほんと?」
「あんちゃんを投げればいいのか?」
コノハが指差すは、今まさに迫りくる次の一波、その先鋒だ。既に猟兵たちにより相当数の幽霊船が片付けられているとはいえ、海を埋め尽くす大船団は未だその数に余裕を持っている。
ならば次々と喰らうのみ。
「オレ飛ぶのに術使うしかナイから助かっちゃうンだよね。あのマストを狙うのいけるかしら」
「まぁかせろい。一直線に飛ばしてやらぁ! 来い、あんちゃん!」
不敵な笑みを浮かべ、巨人が丸太の一本を担ぎ出す。そのまま思い切り振り被ると、コノハを呼んだ。その丸太に乗れと言いたいらしい。言外にそれを感じ取ったコノハは、身軽にその丸太へと飛び乗り身を屈める。
「いぃくぜぇぇ!!」
巨人の筋肉が唸りをあげる。巨体故の膂力を最大限に使って振り抜いた丸太。その勢いを存分に受け、コノハは飛び出した。
景色が飛び去る程のスピードで、コノハが飛ぶ。
既に眼下では砲撃戦が繰り広げられているが、そのうちの幾つかの幽霊船の砲台がコノハに向けられた。
「くーちゃん」
だが、既にコノハは初手を終えている。砲弾が放たれると同時に黒喰を発動していたのだ。砲弾を封呪の雷が叩き落し、更に目指すべき幽霊船の周囲一帯を巻き込んで稲妻の傷を穿つ。
そのまま、コノハはボロボロのマストをクッション替わりにしながら勢いよく船へと取りついた。
すぐさまマストの先端が怪しげな紫光を宿し、受けた傷を返さんと呪詛に塗れた光をコノハへと照射する。
――緩やかにも見える程に余裕を持った動きで、コノハがマストから離れる。
くるりと回転し、甲板に立って再びマストを見た時に、コノハの目の前には黒き狐の影が居た。
「さあ、たあんとお食べ」
呪詛の光を黒き狐の影が喰らう。光であろうと呪詛であろうと関係ない。黒き狐は全てを飲み込む影なのだから。
反撃すら封じ切って、コノハは優美に笑う。まるで何も出来ぬ幽霊船を笑うように。うすいうすい青の氷牙「氷泪」から迸った紫電が、雷によって刻まれた傷を深く抉った。船の傷口には虚ろが渦巻いている。
「生命力をいただくわねぇ」
その傷に牙を突き立てて、コノハは幽霊船を「捕食」する。
船だろうと呪いだろうと、骸の海より来たのならば。
「オレに喰えねぇモノなんてナイのよ」
悪食の獣が、骸を冷たく一瞥した。
成功
🔵🔵🔴
青和・イチ
幽霊船は、単体で彷徨ってて欲しいのが浪漫
でも、団体様で来ちゃったんだね…
潔く海の底で眠って貰おう
それも浪漫
巨人達には、艦隊の進路を阻むよう投擲をお願いします
爆弾、岩や丸太、杭…使える物なんでも投げて貰って
後はタイミング見て援護砲撃貰えたら
水生生物もお借りします
くろ丸も居るし、乗り易いイルカとか…亀とか?に『騎乗』
巨人の攻撃に紛れて船に近付き、『目立たない』地味属性を活かして奇襲したい
攻撃は【煌星】
船には船で対抗(図鑑のアルゴ座をなぞって
今はもうない星座だけど…勇敢な船の星だよ
船員(居れば)、マストや舵、船の重要そうな部分を探し狙い撃つ
海賊を召喚されたら、くろ丸と連携し、合体される前に素早く倒す
●
「幽霊船は、単体で彷徨ってて欲しいのが浪漫。でも、団体様で来ちゃったんだね……」
完全に幽霊船のセオリーの真逆を行った、今回の幽霊船大艦隊。しかも白昼堂々と。
期待を裏切られた感がすごくて、心なしか青和・イチ(藍色夜灯・f05526)の肩も悲し気に下がる。
霧や宵闇に紛れて彷徨う幽霊船はどうしたのか。団体どころではない数で押し寄せるとか、幽霊船の矜持は無いのか。
「潔く海の底で眠って貰おう。それも浪漫」
幽霊船の最後はやっぱり沈むもの。
最期くらいはセオリーと浪漫に乗っ取って頂こう。
「おう、あんちゃんよ。援護すんぜ。どうすりゃいい?」
艦隊を見つつ戦い方を考えていると、ぬっと巨人の一人が顔を出した。巨人の身長は人の三倍ほど。その大きさに、思わずイチも驚く。
「わ。ええと、ありがとうございます。じゃあ艦隊の進路を阻むように投擲をお願いできますか。爆弾とか、岩や丸太、杭……使える物なんでも投げてもらって」
「いいぜ、お安い御用だ!」
「後はタイミング見て援護砲撃貰えたら」
「ヨーソロー。任せな。じゃあ遠慮なくやってこい!」
景気づけのつもりだったか、巨人がイチの背を押して笑う。その力強さに少しだけ前につんのめりながら、イチは相棒のくろ丸と共に駆けだした。
くろ丸も共に乗れるウミガメの背に乗り、イチは砲撃飛び交う海を往く。
巨人たちが幽霊船の目を引いてくれている間、イチとくろ丸はなるべく姿勢を低くして目立たぬように幽霊船に近づいた。
狙うは奇襲。
充分に近づいたところで、イチは大切な星座図鑑を取り出した。海水に濡れないようにカバーをかけつつ、開きなぞるページは――天の船。
「今はもうない星座だけど……勇敢な船の星だよ」
それはかつて南天に輝いていたアルゴ座。かつて黄金の羊の毛皮を求め、ギリシア神話の英雄たちが乗り込んだ船の名前。
召喚されたアルゴー船が、海に降り立つ。波しぶきをあげた船が黄金に輝くと、眩い光弾が周囲の幽霊船を次々と穿った。
呪詛を放つ不気味なマスト、ひとりでに動く舵、大砲、船底を黄金の光が撃ち抜いていく。船の重要な部分や危険な部分は、さっさと取り除くに限る。
「船員がいないのが気になるけど……、幽霊船だからそんなものかな?」
船底を撃ち抜かれて沈没していく幽霊船を見ながら、ふとイチが呟いた。その船にはどこにも船員が居ない。気を取り直して次の船を――、そう思い視線を外した瞬間。
「ワンッ!!!」
くろ丸がイチを押しのけ飛び出した。
そのままイチの背後へと迫っていた幽霊船員にタックルを喰らわせて、海へと落とす。ギリギリで亀の背に着地したくろ丸に、イチが慌てて駆け寄った。
「危ない……くろ丸ありがとう」
「ワンッ」
賢く勇敢な相棒を抱き締めれば、嬉しそうに尻尾を振って頬を舐めてくれる。
イチは一人ではない。頼もしい相棒がいつだって傍に居るから。
互いに背を預け合って一人と一匹は、二人以上の力で敵へと再び挑むのだった。
成功
🔵🔵🔴
箒星・仄々
命を蔑ろとする所業は見過ごせません!
島や皆さんをお助けしたいです
ランさんに騎乗
水上を滑るように移動しながら
魔力の矢を連射
水の矢を水面へ打ち込み波を荒く
風の矢の豪風で船を揺らし
幽霊船の動きを阻害し
また砲撃の狙いがつけられないようにします
今です!
上空へ打ち上げた魔力の矢が花火の如く
巨人さん達に砲撃の合図を送ります
私も破魔を込めて炎の矢でマストを燃やしていきます
もし紫光の発射が阻止できなかったら
炎や水の魔力の矢を打ち込んで空気の屈折率を歪めて
明後日の方向へ逸らしながら
破魔&風の矢の連射で嵐の防壁とします
島の皆さんは絶対に守ります!
終幕
鎮魂の調べ
安らかにお休みくださいね
●
黒く呪われた船たちが、暗雲となって水平線を埋め尽くす。
その先には光はない。あれが通った後には、きっと命は残らない。
「命を蔑ろにする所業は見過ごせません! 島や皆さんのお助けをしたいです」
けれども、そんなことは箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が許さない。小さな体に勇気をいっぱいに漲らせて、仄々は共に立つ巨人を振り仰いだ。
「ありがとうよ。その気持ちにオレたちも応えるぜ。めいっぱい援護してやる。思いっきりやってこい!」
巨人と仄々。あまりに身長差がありすぎる二人だけれど、並び立つ気持ちはむしろ同等だ。仄々はしっかりと頷くと、友である目旗魚の背に飛び乗った。
「いきますよ、ランさん」
その背を撫でると、ランさんは水上を滑るように泳ぎ始める。急速に近づきながら、仄々は魔力の矢を幽霊船の傍の水面へと撃ち込んだ。
水の矢は波へ撃ち込まれて大きく弾け、波を大きく荒れさせる。
次に風の矢を放てば、矢に追随して豪風が巻き起こる。波が荒れ、風が荒れれば船は大きく揺れ動く。波は風を受けてどんどん高くなって荒れ狂い、やがて嵐のそれと同じように強く激しく幽霊船団をうねりの中に飲み込んでいく。
これでは砲撃も呪詛の光もうまく狙いをつけられない。それどころか、まともに進むことさえ阻害されてしまった。
それこそが、仄々が作り出したかった状況。
「今です!」
機を見逃さず、仄々は上空へと魔力の矢を打ち上げた。
高く高く昇った矢は、上空で花火の如く咲き誇る。それが――砲撃の合図。
「おうよ!!」
巨人たちが一斉に砲撃を開始した。大砲を担ぎ、樽に詰め込んだ爆弾を次々に投擲していく。
荒れ狂う海に降り注ぐ砲弾と爆弾の雨。
まともな反撃はおろか、船の制動すらままならぬ状況では、幽霊船にそれを防ぐ術はなかった。
爆発音が連続した。
荒れる海をものともせずに、目旗魚のランさんはよく駆ける。仄々もまた巨人たちと共に、破魔の力を籠めた炎の矢で次々と幽霊船のマストを燃やしていった。
マストがなければ、そもそもに呪詛の光で反撃することも出来ない。自然の力を魔力で上手く操る仄々に、幽霊船はもはや為す術を失ったかに見えた。
それでも、一隻の幽霊船の未だ燃えきらぬマストに怪し気な紫光が宿る。燃え盛りながらも放たれた呪詛は、幽霊船の断末魔の叫びのようだ。
だが、狙いもつけずに出鱈目に放たれた叫びは、運悪く巨人の島ガルザントを向いていた。
「危ない……っ」
咄嗟に、仄々は紫光に炎と水の魔力の矢を打ち込んだ。光に触れて弾けた炎と水は空気の屈折率を歪ませる。それが呪詛を纏う光であれ、光であるならば屈折率は無視出来ない問題であるはずだ――!!
紫光が弾かれたように軌道を変える。
「島の皆さんは絶対に守ります!」
破魔と風の矢の連射によって嵐の防壁を築きながら、仄々は真っすぐに敵を見据え、その小さな背にガルザントを背負う。
全て終わったら、鎮魂の調べを奏でよう。安らかな眠りを祈ろう。
けれども未だ、その時ではない。
仄々は魔力の矢を再び構えながら、ランさんと共に果敢に向かって行った。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
『わしら』も賞金首じゃが…戦国乱世でも似たようなものじゃし気にするわけでもない。
それに…たぶん、相手にとって同族(悪霊的な意味で)からの攻撃は、予想しとらんじゃろうて。
騎乗用サーペントを借りようかの。はじめてじゃが、騎乗活用でいける。
幽霊船に接近したならば、炎属性攻撃をつけた【それは火のように】発動。思いっきり黒燭炎を叩きつけよう。破壊され、そのまま沈むがよいわ!
わし、最近は破壊担当なのよなぁ…。
敵からの攻撃は、結界術とオーラ防御で防ごう。
焦ると、よい結果はついてこんぞ?
●
此度コンキスタドール側が、猟兵たちに賞金をかけているという。
対象は、この戦争においてコンキスタドール側に損害をもたらした猟兵であれば誰でもだ。今のところそれがどのように機能しているかは知らぬことだが、此処に居る馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)もまた、その賞金首の一人である。
2/9現在において、懸賞金順位32位。その額12,300G。かなり上位の賞金首と言えよう。
だが、大概の猟兵たちがそうであるように、義透もまたそれを意に介した様子はなかった。
「『わしら』も賞金首じゃが……戦国乱世でも似たようなものじゃしな」
生温い海風に長い髪を揺らした義透が、此度表に出ているのは第三の人格『侵す者』。武を以て船を沈めるのならば、彼が一番の適役である。
「それに……たぶん、相手にとって同族からの攻撃は、予想しとらんじゃろうて」
義透は悪霊である。それも四人の魂が寄り集まった複合型悪霊だ。幽霊船が亡霊の船だというのなら、あれらと然程違いがないことを義透は否定しないだろう。
ただ一つ、決定的に違うことは、義透には人を呪う気がないということだ。それ故、亡霊はコンキスタドールとなり、義透は猟兵と成ったのだろう。
騎乗用サーペントを借用した義透は、そのひやりとした鱗の感触を感じながら跨った。サーペントに乗るのははじめてだが、馬などへの騎乗経験はある。同じようにその経験を活かせるだろう。
巨人たちの砲撃支援の中、義透は素早く幽霊船へと接近する。
そうしてその先鋒を眼前にしたならばゆっくりと立ち上がり、義透は黒燭炎と呼ばれた黒い槍を構えた。
槍の穂先が炎を纏う。炎の熱は加速し、赤から青へ、やがて白へ――!
「わしの一撃、受けきれるか!」
サーペントの背から飛んだ義透が、力の限りそれを幽霊船へと叩きつける!!
一瞬の静寂と、轟音。
斬り裂いた箇所から炎があがり、ヒビと共に広がって燃やし砕け壊れていく。
「破壊され、そのまま沈むがよいわ!」
軽い身のこなしでサーペントの背に降り立った義透は、再びサーペントを手繰り次の船へと向かう。
厳しい顔は――、されど一瞬緩む。
「わし、最近は破壊担当なのよなぁ……」
若干不満らしい。
艦隊から斉射される砲弾を、結界と防御に重きを置いたオーラで防ぐ。砲弾はひとつたりとも義透に辿り着くことなく、海へと沈んでいった。
「焦ると、よい結果はついてこんぞ?」
主たるコンキスタドールに、その言葉は届くまい。
だからこそ、幽霊船は沈むのだ。
成功
🔵🔵🔴
リュアン・シア
巨人の島の住人って、本当に巨きいのね(下から見上げ)
どうぞよろしく。
相手が幽霊船でも何でも構わないのだけど、私、基本、近接戦向きなのよねえ……。
だから、お願いがあるのだけど(下から見上げ)。私のこと、あの幽霊艦隊のちょうどいいあたりに投げ入れてくれない? それが一番速そう。帰りはサーペントに乗せてもらうから。
私がサーペントに移ったタイミングで艦隊を砲撃してもらえると助かるわ。
投擲されて、艦上に降り立つのを待つことなく、空中で【執着解放】を展開。そのまま風にのってシップごと海賊団を斬り捨て、嵐の如く周囲を巻き込む衝撃波で艦隊の一角を破壊したいわね。
瓦解しかけたところへ砲が着弾すれば何よりかしら。
●
巨人。人の三倍もの身長と、長い長い寿命を持つ種族。
話に聞くのと実際見るのでは、やはり迫力が違う。リュアン・シア(哀情の代執行者・f24683)はそんな巨人たちの様子を下から見上げ、ほぅと息を吐いた。
「巨人の島の住人って、本当に巨きいのね」
「なんだ嬢ちゃん、巨人に合うのは初めてか? よろしくなあ」
「どうぞよろしく」
通りがかった巨人が白い歯を見せて笑えば、リュアンもまたそっと目礼した。アンニュイな雰囲気のリュアンは、それだけの仕草ですら蠱惑的だ。
さて、と呟いて黒い瞳を投げかけるのは、水平線の向こう。
暗雲が迫るが如く、黒い艦隊が海を埋め尽くしている。あれは全て亡霊の船だ。此度相手取るのは一人の敵ではなく、船そのもの。
「相手が幽霊船でも何でも構わないのだけど、私、基本、近接戦向きなのよねえ……」
唇にそっと指を当てて思案する。遠距離で船を破壊出来るような武器もユーベルコードも、リュアンにはない。となれば。
「だから、お願いがあるのだけど」
「おう、言ってみ?」
そのまま傍らで砲撃の準備をしていた巨人が、再び見上げるリュアンに首を傾げる。
「私のこと、あの幽霊艦隊のちょうどいいあたりに投げ入れてくれない? それが一番速そう」
「構わねえが大丈夫か? 帰りどーすんだ」
予想だにしなかった頼み事に、巨人が瞬いた。華奢な容姿のリュアンを投げろといわれると、流石に少々心配にもなるのだろう。けれども、まともな方法でないことは百も承知で、平然とリュアンは言っている。
「帰りはサーペントに乗せてもらうから。私がサーペントに移ったタイミングで艦隊を砲撃してもらえると助かるわ」
「嬢ちゃんがそう云うならいいぜ。その代わり、乱暴な方法だっつーのは勘弁してくれな」
「わかってるわ」
もう一つ念押しして、やはりリュアンが事も無げに答える様子を見て巨人は構えた。
巨人の力を借りて、リュアンが空を一直線に飛ぶ。風が黒髪を乱す。眼下にはどんどん近づく幽霊船の群れ。
艦上に降り立つのを待つ間でもなく、リュアンは空中でユーベルコードを解放した。
解放した力で纏うのは、己を解き放つ風だ。風の力を借りて更にスピードを増し、心身を断つ斬撃と衝撃波を纏ったまま、リュアンは着地と同時に幽霊船ごと甲板の幽霊海賊団を全て斬り捨てた。
纏った風を開放すれば、衝撃波と風の斬撃が嵐の如く周囲を飛び交い、数隻の幽霊船を滅茶苦茶に切り刻む。船団の一角が、まるで竜巻に飲まれたように舞い上がった。
もはや沈没を待つだけの幽霊船の甲板で、リュアンはちらりと巨人の島を振り返る。
その瞬間、島の丘に閃光が走った。
「ん。いいタイミング」
リュアンは風を纏ったまま、待機していたサーペントにひらりと飛び乗る。
次の瞬間、リュアンが崩した船団を無数の砲弾や爆弾が襲った。頼んだ通りのタイミングで、巨人たちが支援してくれたのだろう。瓦解しかけていた船団は、ひとたまりもなかった。
乱れた髪をばさりと後ろに追いやって、リュアンは後ろを振り返りもせずに次の幽霊船へと突き進む。
成功
🔵🔵🔴
イメルダ・スキュアリエル
【お嬢様ズ】
前線は初めてですが
やれるだけやってみますわよ
サリアさんは初めまして。ご一緒なのも何かのご縁、がんばりましょうね
まずは攻撃を当てないといけませんわね
騎乗用の水生生物を借りて接敵、巻き込めるように(水の属性攻撃を込めた誘導弾)舵輪をブン投げて船体を狙いますわ
そう簡単には離しませんわよ。【業欲】な魔術の紋様をブチ込んで、波や船自体からゴーストの腕を呼び出しますの。引っ張ってやりますわ
船自体を揺らす幽霊。いい目印になりませんこと?サリアさんの火球をブチ込めるよう、隙を作りますわよ
外れそうな弾でも拾って突っ込む気概ですわ
はーーっ、お綺麗な花火! 最ッ高ですわね!
サリア・カーティス
【お嬢様ズ】
イメルダさんとは初めましてになりますわ。よろしくお願いいたします。
そうですわね。私は敵の連携を崩したり引っ掻き回すように動きましょうか
まずは島の方々に騎乗用の水生生物さんをお借りして、幽霊船に近づきますわ。効果範囲内に来たら【大声】で【人狼咆哮】を放ち、【衝撃波】で吹き飛ばしたり【恐怖を与える】などして連携を乱しますわ。合体する暇なんて与えないわよォ!
更には、炎の【全力魔法】で生み出した火球を船にぶつけて差し上げたりもしましょうねえ。
あら、当てやすくして下さるのは助かるわぁ。沈めるつもりで行くわよぉ!
ふふ、あれを花火だなんて、イメルダさんいいご趣味をしておいでねえ(くすくす
●
巨人の島ガルザントの入り江。
別々にゲートを潜った者でも、猟兵であれば仲間だ。その場で共闘することはよくある。
殊、イメルダ・スキュアリエル(好きな言葉は濡れ手で粟・f26513)とサリア・カーティス(犬の子・f02638)のように、何処か似た雰囲気を感じた者であるのなら。
「サリアです。初めましてになりますわね。よろしくお願いいたします」
「イメルダですわ。えぇ初めまして。ご一緒なのも何かのご縁、がんばりましょうね」
互いの自己紹介に滲み出るのは育ちの良さ。そして、微笑みかわし合う中で笑わぬ眸に宿る剣呑な色。境遇は違えど、二人は互いに似ていると感じとっていた。
とはいえのんびりと親睦を深める暇もない。既に状況は開始され、猟兵や巨人たちは幽霊船の大艦隊と激突している。イメルダとサリアもまた、騎乗用のサーペントを借りて背に乗った。
「前線は初めてですが、やれるだけやってみますわよ」
そう告げたイメルダに強気な笑みが浮かぶ。初陣に対する気負いは思ったよりもない。体は緊張で固くなることもない。やりたいままに動けると思える。
「そうですわね。私は敵の連携を崩したり、引っ掻き回すように動きましょうか」
一方、ある程度は猟兵として数を踏んでいるサリアはいつも通り。
二人は恐れる事もなく幽霊船に近づいていく。
初手を打ったのはサリア。
周囲の船団に十二分に自分の声が届く範囲に辿り着くと、サーペントには頭を海中に下げるように指示する。そうしてすっと立ち上がれば、甲板で蠢く幽霊海賊たちが見えた。それら全てに向け、サリアは大きく息を吸うと。
アアアアアアァァァアァァァァァァァァァ!!!!!!
その細い体の何処にそんな力があったかと思う程の大音量。猛き人狼の咆哮が開戦の合図となる。
周囲に居た幽霊船を押し戻し、衝撃波で幽霊船団員を吹き飛ばす。亡霊にも恐怖はあるのか、腰を抜かす者も居る。戦場は一気にかき乱された。
「ふふ、合体する暇なんて与えないわよォ!」
サリアの咆哮は、波を高く揺らす。
「わたくしも負けてられませんわね!」
その波間を駆け抜けて、イメルダは水の属性を込めた舵輪を力いっぱいに投擲した。水は刃となって、舵輪の軌道のままに幽霊船を斬り刻む。だが、これは攻撃でもあり準備でもある。
幽霊船のマストが反撃しようと、その先端に妖しき紫光を灯し始める。
それはセントエルモの火。一般にはマストの発光現象と言われるが、幽霊船にあっては呪いを振りまく不吉の光――!
「狙えるとお思いで?」
イメルダとサリアを狙った呪詛の光は、けれども突然に大きく揺れた船体に狙いを逸らされて明後日の方向へと飛んでいく。見ればイメルダの攻撃で切り裂かれた箇所から半透明の手が現れて、船自体を揺らしている。
「そう簡単には離しませんわよ」
舵輪の攻撃と同時に業欲の魔術紋様を仕掛けていたイメルダが、一度にその欲を解放したのだ。波や船から現れた半透明の腕が、幽霊船を引っ張っている。その力は見た目に反して強く、船は何処にも進めずに腕によって一纏めにされていく。
「いい目印になりませんこと?」
イメルダが口の端を吊り上げてサリアへと振り返る。
サリアはイメルダが船を攻撃している間、己が全力を以て炎の巨大な火球を作り上げていた。
「あら、当てやすくして下さるのは助かるわぁ」
くすくすと笑うサリアの赤の眸には、昏き色が揺れる。
彼女は手加減する気がない。何処までも非情に、冷徹に、敵と定めた者には容赦なく、そして苛烈に――!!
「沈めるつもりで行くわよぉ!」
巨大な火球が、イメルダによって一纏めにされた船団へと墜とされた。
まるで燃え盛る隕石が墜ちるが如く、焔は亡霊の呪いごと幽霊船を飲み込んでいく。
眩い閃光。一瞬の静寂。そして。
轟音と強烈な爆風が迸った。
「はーーっ、お綺麗な花火! 最ッ高ですわね!」
目の前で巻き起こった大爆発に、イメルダもまたご機嫌だ。これぞ最高潮。派手で良い。
「ふふ、あれを花火だなんて。イメルダさんいいご趣味をしておいでねえ」
くすくすと淑やかに笑うサリア。
互いに笑みを浮かべながら、ついと視線を先に向ける。
爆発の後にも、未だ暗雲たる幽霊船の船団は舳先を連ねている。
危険な令嬢は不敵な笑みを浮かべて、武器を構えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
冴島・類
いざや、参らん船墜とし
大きいなあ、骨が折れそうだが
島の方々がお力貸してくれるなら
不利道を潰していきましょうか
巨人さん達には
シーサーペント君をお借りし
自分や、他の猟兵さんが海を行き近寄る際の目眩しに
砲台が向きそうなら、威嚇射撃をお願いできないか相談
あちらに乗れさえすれば、後は何とでも
接近時は気を抜かず
敵の砲撃の機を見切り
シーサーペント君と回避しながら接近
乗り込めたら、彼は巻き込まぬよう戦場から離し
船上での船員との戦闘は
瓜江と連携し背を取られぬよう挑もう
近接は糸から離した彼の打撃
中距離は、破魔を込めた薙ぎ払いで足並みを乱し
合体させぬように
呪いに引きこむ幽霊船なら
魔を断つ祈り…効けば良いんだがね!
●
潮風が柔い白の髪を揺らす。
萌黄色の眸には、水平線を喰らい尽くして尚海を侵食する幽霊船の大艦隊が映る。
此度の敵は人ではない。船そのものである。
「大きいなあ」
一隻一隻の大きさを指で計りながら、冴島・類(公孫樹・f13398)は小さく息をつく。人型サイズから鯨、果ては船や宇宙船まで相手どるというのだから、猟兵とは中々にスケールの大きい仕事だ。だが此度、猟兵たちには協力者がいる。類の背で砲撃支援を展開している巨人たちだ。
「骨が折れそうだが、島の方々がお力貸してくれるなら。不利道を潰していきましょうか」
一人では成せぬことも、仲間が居るのなら。
それは巨人たちであっても同じこと。彼等は気さくに類に笑みを向ける。
「あんちゃん、俺らに頼みたいことはあるか?」
「じゃあ自分や、他の猟兵さんが海を行き近寄る際の目眩しをお願いできます? 砲台が向きそうなら、威嚇射撃もお願いしたいです。あちらに乗れさえすれば、後は何とでもなりますので」
「おうよ、任せときな。大船に乗ったつもりでな!」
何せ俺らの船はデケェからよ!
なんて、豪快に笑う巨人が類と目線を合わせて笑う。つられて笑いながら、類は借り受けたシーサーペントの背に飛び乗った。
類を乗せて水竜が海原を駆ける。
任せろと言った通り、巨人たちは絶え間ない砲撃によって幽霊船の注意を引き続けている。時折砲台が類の方を向くが、それを遮るように爆弾が船にぶつかって狙いを定めさせない。確かに、ボロボロの幽霊船とは比べ物にならぬ頼もしさだ。
敵の砲撃の機を見切り、発射直後の僅かな隙を狙って類が飛ぶ。
「危なくないところで待っていておくれ」
飛びながら、類がシーサーペントに叫ぶ。その言葉を理解したか、一声鳴いてシーサーペントは海中へと潜っていった。
甲板へと降り立つと、鬼火海賊団の亡霊団員が待ち構えていた。すぐさま瓜江を手繰る。
「其方は頼むよ、瓜江」
類と瓜江には決して断たれぬ縁の糸がある。それ故、共に戦うのならば彼を手繰る糸はもう必要ない――!
襲い来るカトラスを掻い潜り、瓜江と互いに背を預け合う。振り下ろされたカトラスを、瓜江の手刀が叩き落す。その腕を掴むと、類は背負い投げの要領で海賊を投げ飛ばして別の海賊に叩きつける。
距離を取ってカトラスを投げつける動作をしていた海賊には、破魔の力を込めた枯れ尾花で薙ぎ払って足並みを乱す。そのままもう一閃。破魔の力に触れた海賊が燃え尽きるようにして消えていく。
そのままでは勝てぬと悟った海賊たちが合体しようとしても、その隙を類と瓜江は与えない。強き縁が生む完璧に呼吸を合わせた攻守の動きは、亡霊如きでは止められない。
類と瓜江が高く跳んだ。
居合の構えで、類が枯れ尾花に強く強く、破魔の力を籠める。
「呪いに引き込む幽霊船なら、魔を断つ祈り……」
力を限界にまで込められた刀が、チキチキと鳴って放たれる時を待っている。幽霊船は新たに海賊を召喚するが、もう遅い!!
「効けば良いんだがね!」
神速の居合、一閃。
刃のみならず溢れた破魔の力が衝撃波となって、幽霊船を両断する。
次の瞬間、船が真っ二つに割れた。
まず一つ。
それが沈むのを見届けぬまま、類と瓜江は更に駆け往く。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
沈没船も幽霊船も浪漫ではあるけれど、
凪も時化も海の姿には違いないけれど、
斯様な荒らされ方は
海神も望んで居ないでしょうし
まして島の民達が迷惑千万と歌うなら、
私も波濤の陣に加わりましょう
お借りしたソードフィッシュにて海原を駆ける
足場として難なく立てるのは
巨人達と大いなる海と騎乗用水生生物達、
三者の見えぬ絆の賜物
其れらを頼もし気に笑んで
朗と高らかに響かせる、篠笛の音色
上空から獲物を狙う猛禽類の如く
牙持つ魚の如く
群成し怒涛の流れを生む魚の如く
弥速に
或いは勇敢に
其れから秩序乱さず優美に
幾度も幾度も絶えず押し寄せる波濤のように
奏でる旋律
数多の水の鳥達が
朽ちた艦隊の帆柱を折り
船を呑み
鬼火を消さんと喰らい付く
●
白昼堂々と海原を往くは、幽霊船の大艦隊。鬼火に率いられた亡霊の群れ。
宵闇も霧もない。奇襲も彷徨もない。亡者の怨念が鬼火に手繰られて進む、沈没船の群れだ。そこには浪漫も物語もない。
「沈没船も幽霊船も浪漫ではあるけれど。凪も時化も海の姿には違いないけれど」
玲瓏な声は謳うように紡ぐ。巨人の島の崖に立つ都槻・綾(絲遊・f01786)の眼下には、暗雲たる亡霊の艦隊が広がっている。
人を呪い、生者を呪い、世界を呪って歩む足取りは海に破滅を呼ぶ。
「斯様な荒らされ方は海神も望んで居ないでしょうし。まして島の民達が迷惑千万と歌うなら」
細められた花緑青。海に似た色持つ男は、
「私も波濤の陣に加わりましょう」
――今、波となる。
巨人たちより借り受けた剣魚で、綾は海原を駆ける。
高速で泳ぐ魚だと言うのに、水の抵抗も自らの動きさえも全て丸め込んで剣魚は真っすぐに泳いでいく。その上に立つ綾はいささかの揺らぎもない。
剣魚を足場として難なく綾が立てるのは、巨人たちが彼等騎乗用水生生物たちと共に、この海で長く暮らしてきたからこそだ。剣魚たちは巨人たちと暮らしてきたから、人の動きに合わせて動くことを知っている。巨人たちは剣魚たちの動きや習性を熟知し、共に海を駆ける友としてきた。そしてそれら全てを、海は様々な表情で受け入れる。彼等の見えぬ絆が、猟兵たちへの大きな手助けとなるのだ。
それらを感じ取った綾は頼もし気に微笑んで、そっと篠笛を取り出した。
静かに唇に当てれば、朗と高らかに音色が響き渡る。
それは黄泉標。陰陽五行の属性を纏いし水鳥たちが、綾の周囲に次々と召喚されていく。
幽霊船の群れが暗雲だとするならば、その鳥たちは鮮やかな色彩の虹雲だ。されどその疾てなる羽搏きに纏うは――死。
音色は鳥たちに渡り逝く航路を標す。
まるで上空から獲物を狙う猛禽類の如く、機敏に。
牙持つ魚の如く、果敢に。
群成し怒涛の流れを生む魚の如く、渦を巻き。
五百羽近い水鳥たちが、幽霊船を襲う。
弥速に襲う爪で帆を引き裂き。
或いは果敢に鬼火海賊団を襲い、怨念の鬼火を啄み。
其れから秩序乱さず優美に。
篠笛の音色は幾度も幾度も絶えず押し寄せる波濤のように、旋律を奏でて戦慄を彩る。
たかが鳥。されど鳥。
群れとなり統制されて襲い来る鳥は、恐怖以外の何物でもない。
数多の水鳥たちが朽ちた艦隊の帆柱を折る。或る鳥はその嘴で。或る鳥は鋭い爪で。
折れた帆柱が幽霊船に倒れ込んだ。草臥れた板はその重さに耐えきれずに崩れ、船体が真っ二つに割れる。
されど未だ鳥たちは止まらない。
船を吞み込み、怨念を呑み込み、鬼火を消さんと喰らい付き、やがて全てが海に帰る迄。
――艶麗な碧がその旋律を止める迄。
大成功
🔵🔵🔵
アトラム・ヴァントルス
幽霊船団の数は多いですが、巨人相手だとあまり優位そうにも思えませんがね…。
だが何かあるかもしれませんから、ここは警戒して確実に一体ずつ戦力を減らしていきますか。
巨人達に協力を依頼して、騎乗用水生生物を借用させていただければと思います。
少しの間お借りしてもいいでしょうか?
幽霊船へと近づき
他の方々の攻撃に紛れてUC【罪人の左手】で一体ずつ敵を確実に仕留めていこうと思います。
相手の攻撃を受ける距離に入らなければそう難しいものでもないでしょう。
さぁ、狩りの時間ですね。
借りた生き物も共に戦いましょうか。
いう事をよく聞くいい子ですね、ともにあれらを葬りましょう。
●
水平線を食い尽くし、黒と紫光を広げる幽霊船の大艦隊。
闇の紛れず、白昼堂々。亡霊としての恐ろしさと奇襲という得手を捨てても尚、この数は脅威である。
「幽霊船団の数は多いですが……」
呟くアトラム・ヴァントルス(贖罪の咎人・f26377)の背後で、砲撃音が空気を震わせた。続く勇ましき声は、アトラムの頭上から響く。
「巨人相手だとあまり優位そうにも思えませんがね……」
巨人の島の巨人たちは大艦隊にも恐れず、むしろ豪放磊落に立ち向かっている。その姿の、なんと頼もしきことよ。思わずアトラムにも微かな笑みが浮かぶ。
されど慢心はいけないと、アトラムは知っている。
巨人たちは勇猛であるし、その砲撃は確かに幽霊船を穿ち沈めることが出来る。だが、決定打がなかった。これが通常の艦隊であったならば、被害を出しつつも彼等だけで撃退出来たことだろう。しかし相手はコンキスタドール。覚醒せぬ者たちには相手しきれぬ過去の亡霊だ。
なればこそ、アトラムは往く。
「何かあるかもしれませんから、ここは警戒して確実に一体ずつ戦力を減らしていきますか」
入り江で待機する水生生物たちは、全て巨人たちと絆を結んだ者たちだ。彼等を守るように配置された巨人たちに、アトラムは目礼をして。
「少しの間お借りしてもいいでしょうか?」
「勿論だよ。みんな賢くて早い。きっとあんたの役に立ってくれるよ。この子なんてどうだい?」
快活に笑う巨人のおかみさんが、一匹のシーサーペントを連れてくる。菫の眸の小竜だった。
シーサーペントの背に乗り、アトラムは幽霊船へと距離を詰める。
戦いは既に始まっている。巨人たちの砲撃や他の猟兵の攻撃によって、戦場は混乱状態だった。あちこちで砲弾が飛び交い、水柱があがり、猟兵と幽霊船がユーベルコードを打ち合う光が瞬く。それらに紛れて、アトラムは左手で銃を構えた。
罪抱く左手はメガリスで出来た義手だ。更に構えるは光の名を冠したメガリスの銃。二つのメガリスは互いの力を高め合い、放たれる弾丸の威力を底上げしてくれる。
狙い撃つは甲板に居る鬼火海賊団だ。攻撃によって傷を受けているなら、船体やマストの破壊も十分に狙える。相手の攻撃を受ける距離に入らなければ、そう難しいものでもない。
「さぁ、狩りの時間ですね」
アトラムは淡々と引鉄を引いた。
「君は戦えますか?」
海を駆けるシーサーペントに問う。
シーサーペントは一度尾を振り上げて鳴いた。尾の先は刃のように鋭い。うまく行けば船や鬼火海賊団に傷を与えることも出来るだろう。
賢い子だと巨人のおかみは言っていたが、確かに言葉を理解できる程ならば相当に賢い。それでいて従順だ。
「いう事をよく聞くいい子ですね、ともあれらを葬りましょう」
シーサーペントが勇ましく鳴いた。
屠るべき敵はまだまだ居る。アトラムは再びリュミエールの照準を合わせた。
成功
🔵🔵🔴
ナターシャ・フォーサイス
WIZ
大艦隊で来るとは…言い換えれば、導くべき相手が一度に、といったところでしょうか。
島を守るためにも、使徒として責を果たしましょう。
低空を飛行し、常に動いて彼等の反撃を避けます。
もしくは、同士討ちを誘発させてもいいやもしれません。
そして彼等は攻撃の回数だけ反撃するのです、広範囲への光を重ねるのは悪手。
まずは聖祓杖に【高速詠唱】【全力魔法】【焼却】の聖なる光を乗せ、仮初の鎌と成してマストを叩き斬りましょう。
天使達に命じ、マストが折れた船へ収束した光を放たせるようにしましょう。
一隻また一隻と、確実に導くのです。
…そう言えば。
当然のように杖に光を宿して鎌と成しましたが、そんな事も出来たのですね…
●
「大艦隊で来るとは……言い換えれば、導くべき相手が一度に、といったところでしょうか」
見方を変えれば喜ばしいことかもしれぬが、やはり世界にとって招かれざる客であることに変わりはない。
ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は暗雲の如き黒と紫光の大艦隊を前に、静かに立つ。何が相手であれ、楽園の導き手たるナターシャが果たすべきことは何も変わらない。
「島を守るためにも、使徒として責を果たしましょう」
ただ、導くべき魂を導くために。
機械の翼を広げたナターシャは、グリードオーシャンの異常気象に触れぬ程度に低空を飛んで行く。
ただ一直線に飛んでは砲撃の良い的だ。故に常に動いて反撃を躱すことも忘れない。船団に到達すれば、並ぶ船の間を高速で飛ぶ。ナターシャを追った大砲が躊躇なく放たれたが、既にナターシャは別の船の向こう。標的を見失った砲弾が、別の幽霊船の船体を直撃した。
同士討ちも誘発させながら、ナターシャは思案する。
(「彼らは攻撃の回数だけ反撃するようですね。ならば広範囲へ光を重ねるのは悪手でしょう。ならば――」)
手にしたのは楽園の名を冠する宝杖。湛える光は闇と罪を祓う標の灯火だ。それに焼却の聖光を全力で乗せる。溢れる光は刃となり、宝杖は一時仮初の聖祓鎌となる。本物の鎌は砕けてしまったまま、けれど宝杖を依り代とした鎌は不思議な程に手に馴染んだ。
そのまま甲板へと飛び上がると、高速で飛んだ勢いも存分に乗せてナターシャは力いっぱい鎌を振るった。
一瞬の静寂の後、マストが叩き折られて倒れていく。勢いよく倒れ込んだマストは朽ちた船を砕き、激しい音を立てて海に転がり沈んでいく。
「天使達よ、光を!」
すぐさまナターシャは引き連れた天使たちを呼び、聖なる光をマストが折れた船へと収束させる。
断末魔のような揺らぎが、一瞬ナターシャを通り過ぎた。
天使の放った光の中で、幽霊船は見る間に朽ちて海へと沈む。その中に囚われて怨念や亡霊は、光に導かれて天へと昇り往った。
広範囲攻撃が不利ならば、一隻また一隻と確実に導くだけのこと。本物の祈りを携えた機械天使は、導くことを諦めたりはしない。
「……そう言えば」
ふと、改めて手にある仮初の鎌を見る。光の刃は失われることなく、今も杖にある。しかしそれを成したことは、ナターシャ本人にとっても予想外のことであった。
「当然のように杖に光を宿して鎌と成しましたが、そんな事も出来たのですね……」
ナターシャは己が内に宿る力を、まだ全ては知らない。
けれども、この力があるのなら――。
ナターシャは仮初の鎌を強く握りしめ、再び空を駆ける。
今は哀れなる魂を、楽園へと導く時。
成功
🔵🔵🔴
フェルト・ユメノアール
この綺麗な海をキミたちの好きにはさせないよ!
巨人のみんなと協力して幽霊船団を撃破する
事前にみんなに作戦と事情を説明
大砲による砲撃支援はボクが戦場についたら始めるようにお願いするよ
それとせっかくだし、ボクはサーペントを貸してもらって幽霊船と戦おうかな
『動物使い』の経験を生かして騎乗、敵攻撃を躱しつつ攻撃の届く位置まで接近
遠距離では『トリックスターを投擲』、的を絞らせないようヒット&アウェイの戦法で戦うよ
そして、ここでとっておき!
さあ、夢幻の射手のご登場だ!現れろ!【SPトリックシューター】!
周囲の飛び道具を吸収して、相手に矢として打ち返す!
飛んでくる砲撃支援を一点に集中、幽霊船に攻撃だ!
●
水平線を埋め尽くしてなお、海を侵食する暗雲の大艦隊。
呪いと怨嗟を振りまいて、死を残していく亡霊の船。その侵攻を許せば、この海には二度と笑みは戻るまい。陽光に煌く波も、命抱く優しさも、母なる海も、きっと穢される。
――そんなことは、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は許さない。
「この綺麗な海をキミたちの好きにはさせないよ!」
道化師は笑みを振りまくもの。絶望的な状況でだってフェルトはきっと笑うだろう。戦場で誰かが笑うなら、それはきっと力になるから。
幽霊船と戦う前に、まずは協力者である巨人たちとの打ち合わせだ。フェルトは自分たちの事情を伝え、作戦を伝える。
「で、大砲による砲撃支援は、ボクが戦場に着いたら始めてくれるかな?」
「なるほどな。いいぜ、任せな!」
事情を納得しれくれた巨人たちは、胸を叩く。それだけでもとても心強い。
「あ、それからせっかくだし、サーペントを貸してもらってもいいかな」
「勿論だ。入り江に行きな。気に入ったサーペントを連れて行きゃいい」
「ありがとう!」
巨人たちの快諾にフェルトは嬉しそうに笑うと、入江へと駆けだした。
シーサーペントは賢く、また巨人たちと築いた絆から猟兵たちにも協力的だった。またフェルト自身も動物の扱いに慣れていることから、すぐに打ち解けられた。
フェルトを乗せたシーサーペントは素早く海を駆ける。襲い来る鬼火海賊団の団員にはトリックスターと名付けた派手な装飾のダガーを投擲して牽制し、的を絞らせないようヒット&アウェイの戦法を取りつつ戦況をかき乱す。
そうして場が十分に混乱した機を見計らって、フェルトはシーサーペントの上に立ち上がって声を張り上げた。
「そして、ここでとっておき!さあ、夢幻の射手のご登場だ!現れろ!【SPトリックシューター】!」
フェルトが両手を広げると、シーサーペントまでもを含む特殊な力場が展開される。それを隙と読んだか、幽霊船がフェルトに向けて一斉に砲弾を発射した。また今までの攻撃への反撃として、マストにセントエルモの火が宿る。放たれた砲弾に呪いの紫光を纏わせて、呪詛の弾丸と化した砲弾がフェルトに襲い掛かる――!
「その砲弾、もらったよ!」
だが、その砲弾はフェルトの周囲の力場に阻まれて動きを止めた。
呪詛はフェルトもシーサーペントも襲う事なく、くるりと回転させたフェルトの指に合わせてその向きを幽霊船へと変える。
展開した力場は、相手の飛び道具を吸収し、己が武器とするユニットカード。フェルトのとっておきだ。その砲弾はもはや、フェルトのもの!
「いっけー!!」
合図と共に呪詛の砲弾が幽霊船へと打ち返され、また巨人たちの容赦ない砲撃支援が雨のように降り注ぐ。
己が武器を奪われ、集中砲火を浴びた幽霊船はひとたまりもなかった。
砕け散って海に沈んでいくその姿に目もくれず、フェルトは次の幽霊船へと向かう。
戦いは、まだ終わらない。
成功
🔵🔵🔴
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
ゴーストシップ…と聞くと海の恐ろしさを感じるが
倒せるならば恐れる事はないだろう…
島民達には少々恐ろしいがゴーストシップに向け宵と共に投げて貰う協力を
…確りと宵を抱きしめ投げられることを待とう
…大丈夫だ、お前が居ればう、海など恐れる事はないから、な
戦闘時は『空中浮遊』を己に保険にかけ【穢れの影】
戦艦の船首や掴みやすい場所を狙い動きを止めんと試みよう
その後は『武器・盾受け』で向けられる攻撃を防御、宵を『かば』いながら敵へとメイスを振るおう
海には少々未だ苦手意識があるが…宵が居るからな
海に沈んだ場合は頼んだぞ…と
…?宵は王子というより人魚だろう?まぁ、俺はお前を泡にはさせんが、な
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
巨人たちには「視力」で判断した敵勢力の手薄なところを抽出したものを伝え、支援砲撃を頼み
ええ、その意気ですよ
どのような荒れた海の上でも、僕がいるのですから臆することはありません
敵勢力のほうへ投擲してもらったなら 「空中浮遊」で体勢を維持し「空中戦」をおこないます
威力を可能な限り調整した【天航アストロゲーション】で敵兵および砲台等を「部位破壊」を狙いつつ攻撃しましょう
あまり船が壊れても戦いにくいですからね
ふふ、お任せを
愛しい人を助けるのは、王子の役目ですから
そして返るかれの言葉を聞けば、女性扱いされて不満なような、頼もしい言葉に嬉しいような
……本当きみは、ずるいですね
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「ゴーストシップ……と聞くと、海の恐ろしさを感じるが。倒せるならば恐れることはないだろう……」
ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は、銀の眸をゆっくりと瞬かせて呟く。
視線の先には、水平線を食い尽くした幽霊船の大艦隊。暗雲のようにゆっくりと広がるそれは、猟兵たちに数を減らされてなお、未だ艦隊としての威容を保っている。
だが、それだけだ。あれは闇や霧に紛れて彷徨うゴーストシップではない。過去の亡霊を乗せた沈没船の、更なる成れの果て。白昼堂々、そして実体のある敵であるのならば、ザッフィーロが恐れる必要はない。
その横で、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が巨人たちを相手に作戦を伝えていた。宵の遠きを見渡せる目で艦隊を確認し、手薄だと判断したところをいくつかピックアップする。
「今お伝えしたところを狙って、支援砲撃を頼めますか」
「任せろい!」
砲撃を担当していた巨人が胸を叩き、急ぎそれを周囲の巨人たちに知らせに行く。彼等の砲撃の技術は高い。とても頼もしい協力者たちだ。
そしてもう一つと、宵が指を立てる。首を傾げる巨人に、ザッフィーロは神妙な面持ちで口を開いた。
「ところで、巨人たちよ。俺たちをあの幽霊船へと投げてはもらえぬだろうか」
少々恐ろしいが。
正直投擲されて戦場へ辿り着くという行為がまず恐ろしい。その上場所は海の上。一歩間違えれば二人とも船ではなく海へと真っ逆さまだ。水を苦手とするザッフィーロにとっては、相当胆が冷える頼み事だろう。
だが、行かねば戦えぬというのならば。ザッフィーロも意を決するに足る理由がある。
「……大丈夫だ、お前が居ればう、海など恐れる事はないから、な」
確りと宵を抱き締めて、動揺しそうになる己を叱咤する。
ザッフィーロは一人ではない。愛する伴侶が居るからこそ、苦手とする海の上を駆ける行為にも決意を灯すことが出来る。
「ええ、その意気ですよ。どのような荒れた海の上でも、僕がいるのですから臆することはありません」
その決意を感じ取って、宵はふわりと微笑んだ。ザッフィーロが自分を信頼してくれるのも、支えとしてくれるのも嬉しい。愛する伴侶の支えになら、いくらでもなろう。そう思うから、宵の言葉は優しく、そして頼もしくザッフィーロを支えるのだ。その信頼が、宵自身をも支えてくれるのだから。
「んじゃあいくぜ、あんちゃんたち!! きっちり送り届けてやるから、よ!!!!」
巨人が二人を掴み、助走をつけて思い切り投擲した。
それはまるで一条の流星。風を切る速度は耳に轟音を届ける程で、目を開けば眼下には既に海があった。
「いきますよ」
「……ああ」
共に空を舞う技で体勢を維持し、甲板に着くのを待たずに戦いを口火を切る。その号砲は、ザッフィーロの静かの声。
「赦しを求めぬ者には何も出来ぬ。…生きる限り纏わり積もる人の子の穢れを今返そう」
ぞわりと。
ザッフィーロの足元から穢れが沸き上がった。それは海に落ちて波間を這い、影の腕となって幽霊船に纏わりつく。そのまま、ザッフィーロは影を操るように腕を振った。影は船首や各々が掴みやすそうな場所を掴み、まるで海底へと誘うように船の進行を引き留めていく。侵攻も狼藉も許さない。周囲一帯の幽霊船を穢れの腕によって止めたザッフィーロが、宵に目配せをする。
頷いた宵は、既に準備を整えていた。
「彗星からの使者は空より墜つる時、時には地平に災いをもたらす。それでもその美しさは、人々を魅了するのです。星降る夜を、あなたに」
深宵の眸を細めて、宵は笑った。その杖が指し示したるは、動きを止めた幽霊船。
昼間だというのに、空が煌いた。
天より招来した隕石は砕けて小隕石となり、焔を纏いて降り注ぐ。船を全て壊してしまっては足場が無くなる。なればこそ狙うは敵兵、そして砲台。更には呪詛の光を放つマスト。
宵によって指し示されるままに、小隕石がまるで雨のように艦隊に降り注ぐ――!!
轟音が響いた。
大砲が砕け、マストが折れ、鬼火海賊団が撃ち抜かれる。幽霊船は一瞬にして戦闘能力を失った。
ダンッッッ!!!
その隙に、埃と水飛沫が舞う幽霊船に二人は同時に着地した。そのまま直ぐに背を預け合う。
「海には少々未だ苦手意識があるが……宵が居るからな。海に沈んだ場合は頼んだぞ……」
海面が近くなったことでぐっと苦手意識が湧き上がってくるが、それでもザッフィーロはもう震えない。隣に守りたい人が居るからこそ、苦手意識などに負けてはいられない。
「ふふ、お任せを。愛しい人を助けるのは、王子の役目ですから」
「……? 宵は王子というより人魚だろう? まぁ、俺はお前を泡にはさせんが、な」
メイスを構えながら、さも当然のようにザッフィーロは言う。
あんまり当たり前のように告げるので、宵は思わず振り返ってザッフィーロを見た。
女性扱いされて不満のような、頼もしい言葉に嬉しいような。
何か言おうとしてみるけれど、宵の口は言葉を定めかねて音を発せない。
「……本当きみは、ずるいですね」
「うん?」
ようやく紡ぎ出した言葉。背を預けて合っているから、ザッフィーロは宵の耳が赤に染まっていることに気づかぬまま。
ただ互いを通じ合う心のままに、二人は再び武器を構えた。
大成功
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小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
島民の方と協力、海洋生物の手配をお願いします。
騎乗戦闘なので、跨って進めるような、イルカのような海洋生物をお願いできますか?
私もすずちゃんも普通の人間、息は長く続かない。なるべく海面から身体を出して。
戦闘は海洋生物にまたがったまま遠距離で。幽霊船が攻撃範囲内に入った場所ですずちゃんと並び停止。
UC【神罰】
直径184mの光の柱。スポットライトで任意の対象を攻撃。
海底から光を打ち上げ、船そのものへのダメージを狙います。
敵攻撃は砲撃か接近と予測。
イルカは頭が良いと聞きますし、すずちゃんと連携して動きましょう。
数が多い場合は、私がUCで蹴散らします。連発可能ですよ~!
コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と
まずは、海洋生物の手配をお願いするよ。
イルカさんの様な子をお願いするよ。
一緒に幽霊船を倒して、海を守ろ~!
乗る前に、よろしくねって、簡単な会話して、少しでも仲良くなりたいな~!
乗せてくれたら
幽霊船が見える距離を保ちながら戦闘をするよ!
海の生物たちと、こまめに範囲内を移動したり、何もない場所に水しぶきをあげて迷彩になったり
集団戦術で、こちらの的を絞らせないようにするよ
そちらは見通しのいい的だね。
じゃあ
私たちが当てるだけだ。
UC「リーディング・ブックス」で船に攻撃する
ついでに海の上にばらまかれた紙片に
「サーフィン」「足場習熟」を込め
一緒に戦う仲間たちの戦闘力を高めるよ
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幽霊船だって、亡霊だって、乙女が二人揃ったならば怖くはない。
共にゲートを潜った小宮・あき(人間の聖者・f03848)とコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)は、揃って巨人の島ガルザントに降り立った。
二人の前を忙しなく駆け回る人影は全て巨人で、辺りを見渡せば見るもの全てが巨人サイズ。旅行で此処を訪れたのならば珍しい光景を色々楽しむことが出来ただろうけれど、此度訪れた理由はこの地に巻き起こる戦争と崩壊の危機からグリードオーシャンを救うために。二人は幽霊船の大艦隊と戦いに来た。
かの幽霊船は宵闇に紛れるわけでもなく、霧に彷徨い奇襲するわけでもない。けれどもただ一人の船長に統率された大艦隊は、幽霊船でなくとも十分に脅威である。
それ故まず二人は、島の入り江に向かい巨人のおかみさんに声をかける。巨人たちの協力を得て、海での足を確保するためだ。
「騎乗戦闘なので、跨って進めるような、イルカのような海洋生物をお願いできますか?」
「ああ、じゃあまさにこの子らだ。きっと嬢ちゃんたちの役に立ってくれるよ」
あきが問えば、おかみさんは二頭のイルカを呼んでくれた。バンドウイルカに似たこのイルカたちは攻撃能力こそ持たないが、乗り手の心を読んで動いてくれると言う。
「よろしくね。一緒に幽霊船を倒して、海を守ろ~!」
屈んでイルカと目線を合わせたコイスルがにこりと笑えば、イルカたちも高い声で鳴き返してくれる。手をかざせば鼻先でつんと突いてくれたりしてくれるのが、とても可愛らしい。
「オーナー! この子たちとっても人懐こいよ!」
乗る前に少しでもイルカたちと仲良くなりたかったコイスルは、お利口なイルカに満面の笑みを咲かせた。
イルカの背に乗った二人は、海原を駆ける。
あきもコイスルも普通の人間。一時潜ることは出来ても、息は長くは続かない。それ故、なるべく海面から身体を出して、けれども見つかりにくいよう体勢は低くして幽霊船へと向かう。
そうして、二人の攻撃可能範囲内へと入ったなら準備は完了だ。
「それじゃあいきますよ」
「うんっ!」
あきとコイスルが頷き合ったら、戦闘開始!
「さあ、神罰を与えましょう」
――まるでスポットライトと見紛うような、けれどあまりにも巨大な光の柱が海底から打ち上がった。
直径184mの光の柱は、幽霊船10隻あまりを呑み込んで浄化していく。遠目に見た巨人たちは、それを一様に神の怒りだというだろう。
それに、海底から打ち上げるというあきの判断はまさに最適解と言えた。船底には竜骨がある。帆船の命とも言えるその構造材は、船を建造する際一番最初に配置する骨子だ。いわば船の背骨であるそれを真下から貫いたならば、船の背骨を直接攻撃することと同義だ――!
光の柱に焼かれて、幽霊船が砕けてゆく。
船体の背骨たる竜骨がみしみしと音を立て、やがて竜骨ごと激しい音を立てて船が真っ二つに裂けた。
断末魔のようにマストから呪詛の光が放たれるも、既にそれを見越してこまめに移動するあきとコイスルに当てる事は出来ない。
二人は海の生物たちとも連携し、何もない場所で水飛沫をあげて迷彩にしたり、気を逸らせたりと的を絞らせないようにしている。これこそが連携というもの。ただ『鬼火』フライング・ダッチマンただ一人が指揮するこの艦隊で、どうしてこまめな連携が取れようか。
それ故に、いくら幽霊船が相手であっても。
「そちらは見通しのいい的だね。じゃあ、」
コイスルはすっと瞳を細め、袖口から破かれた紙片をばら撒いて。
「私たちが当てるだけだ」
にこりと笑った。
発動せしは『“恋する空ある街の灯”』。
物語の欠片は鳥の様に空を飛び、あきが光の柱の中に閉じ込めた幽霊船へと駆け抜ける。そしてコイスルの指が操るままに、紙片は鋭い刃となって船を細かく切り裂いた。
トドメを差された幽霊船は不気味な紫光を休息に喪い、ただの沈没船へと戻って海の奥底へと沈んでいった。
更にコイスルは海上へも紙片をばら撒き、その一つ一つに力を籠める。これで、海の上でも紙片を足場にしたり、サーフィンをするように紙片を使うことができるようになる。共に戦う仲間たちの戦闘力も高めることが出来るはずだ。
あっという間に船団を一つ海に沈めた二人は、ハイタッチを交わして笑みを咲かせた。
巨人の島を襲う艦隊の撃破まであと少し。イルカに乗った二人は、トビウオや剣魚など頼もしき仲間を引き連れて、再び海を駆けてゆく。
成功
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アルトリウス・セレスタイト
残らず討てば良いのだな
戦況は『天光』で逐一把握
受ける攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
天楼で捕獲
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
高速詠唱を無限加速し現着後即座に展開
対象外である味方へは影響皆無故に最大規模で
内より外へは何も出来ず逆は自由な理不尽の檻だ
存分に憤れ
『解放』にて迷宮へ全力の魔力を注ぎ強度と自壊速度を最大化
速やかに殲滅を図る
※アドリブ歓迎
●
状況は、万象を見通す瞳が教えてくれる。
敵は海を食い尽くす幽霊船の大艦隊。
すべきことは、既に定まっている。即ち――。
「残らず討てば良いのだな」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、涼やかな声で海に立つ。
既に幾多の猟兵たちの活躍により、巨人の島ガルザントへと攻め込んできた大艦隊はその数を大きく減らしていた。あと一押しあれば、この海域の平和は守られる。
アルトリウスに気付いた幽霊船からの砲撃は、世の理からアルトリウスを切り離す断絶の原理にて回避する。マストより放たれる呪詛の紫光は、万象を包む時の原理にてアルトリウスに触れた瞬間に終わらせる。終わってしまった攻撃に、影響などあるはずもない。
全ての攻撃を事も無げに無効化したアルトリウスは、眼前に広がる船団へと手をかざした。
「……惑え」
その言葉が発せられた瞬間、残った艦隊が『天楼』に閉じ込められた。
――それは概念である。
視界に収まる範囲内の幽霊船とその召喚物全てを呑み込んで、囚えてしまう迷宮の論理である。囚えられれば出口は一つしかない。そして、対象のみを呑み込む迷宮であるが故に、対象外である味方の猟兵たちには何の影響もない。
言ってしまえば、動きを制限するための迷宮。しかしだからこそ、迷宮から脱出するという高度な動きが、幽霊船如きに出来るものか――!!
「内より外へは何も出来ず、逆は自由な理不尽の檻だ。存分に憤れ」
いくら艦砲射撃をしたところで、鬼火海賊団の団員が暴れたとて、マストで揺らめく紫光が呪詛の光を撒き散らしたとて、外の猟兵たちには何の影響もない。捕らえられた時点で既に勝負は決まっていたのだ。
アルトリウスはかざした手をぐっと握った。
閉じた迷宮は捕らえた存在を消去する自壊の原理で溢れている。それを全力で解放する。
自壊の速度は増し、幽霊船たちは出口を見つけることなく全てが塵となって崩れ海へと還ってゆく。
「元は沈没船なのだろう。再び、安らかに海で眠れ」
そうしてアルトリウスは、迷宮内に捕らえた最後の一隻を自壊させた。
辺りには風と波の音が響いている。
水平線を埋め尽くした大艦隊は、波濤となった猟兵たちの活躍によって姿を消した。無事、巨人の島ガルザントを守り抜いたのだ。
再び静寂を取り戻した海に、巨人たちはこぞって歓声をあげている。
だが、アルトリウスは知っている。
これで終わりではない。元凶たるオブリビオンフォーミュラを倒さぬ限り、この戦争に終わりは訪れない。戦いはまだ続くのだ。
けれども今はただ、波の音に身も心も浸し、ひとつの勝利と守り抜いたことの喜びを分かち合おう。
それを積み重ねた先にこそ、未来はある。
大成功
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