●昏き海の底から
「今は戦時である。速やかに行動に移ってもらいたい」
ふわふわと袖を揺らして、ジェニファー・リェン(アンサーヒューマンのサイキックキャバリア・f30007)が猟兵たちに告げる。だが、おさなげな仕草と裏腹に抑揚のない声音は、どこか機械的ですらあった。
いつもふわふわした笑顔を絶やさない彼女が今は感情を浮かべずそのような態度をとるのは、今回の案内が戦争だからだろう。
「ある島の深海より、海獣が迫っている。海獣の名は「オルキヌス」。全長はおよそ50m。森羅の巫女達が信仰する神そのものであり、かつて「七大海嘯」の一体であったが、『三つ目』にその単眼を奪われて失墜した大海獣だ。深海より出現するため、海上戦、もしくは海中戦でこれを迎撃し、島を守ることが目的となる」
「海上もしくは海中での戦いか」
生身の者、機械の身体の者、或いは愛機を駆る者。猟兵たちもさまざまだ。誰もがすべての戦場に適応できるとは限らない。
さてどうしたものかと思案する姿からグリモア猟兵は目を移した。無関心ではなく、彼らなら適切な選択をすると信頼して。
「作戦成功のための手段はそれぞれに任せる。猟兵である以上、臨機応変に対応することに慣れているだろうから、問題ないと考えている」
簡単に言ってくれるものだ。だが、まあ、いちいち指図されるよりも自分でやるほうが猟兵らしい。
戦場となる場所には波打つ海以外、文字通り何もない。ならばそれはそれで何とでもやれるだろう。
了承の首肯には、確認の首肯が応えた。
「よろしい。では準備が済み次第速やかにかかるように」
機械的に言って、それからふと、ジェニファーは猟兵たちを見つめてようやく微笑む。
「武運と、よい結果を祈っているよ」
鈴木リョウジ
こんにちは、鈴木です。
今回お届けするのは、海と海獣。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●『森羅冠す『オルキヌス』』
とある島の深海より、全長50mはあろうかという、恐るべき巨躯の海獣が迫っています。
その海獣の名は「オルキヌス」と言い、森羅の巫女達が信仰する神そのものであり、かつて「七大海嘯」の一体でしたが、『三つ目』にその単眼を奪われて失墜した大海獣です。
海上戦、もしくは海中戦でこれを倒し、島を守らなければなりません。
また、戦場となる場所には足場になりそうなものや戦闘を有利に行えそうなものなどは一切ありません。
リプレイでは、海上もしくは海中でオルキヌスを迎え討つシーンから始まります。
●海上戦、海中戦について
どういう行動をとるのかイメージできれば、詳細な記載がなくても大丈夫です。
但し、常識的に考えて成功しないと判断できるような行動については、判定が厳しくなる可能性があります。
このシナリオには、以下のプレイングボーナスがあります。
=============================
プレイングボーナス……海上・海中戦を工夫する(敵は先制攻撃しません)。
=============================
なお、🔵が成功数に達すると判断して以降のプレイングの採用を見送らせていただく場合があります。
ご了承ください。
それではよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『森羅冠す『オルキヌス』』
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POW : 冥海銀河オルキヌス・オルカ
【支配下にある海の生物】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[支配下にある海の生物]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 海帝覇濤ディープブルー
敵より【海に適応した生態をしている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ : 回帰狂濤ティクターリク
攻撃が命中した対象に【「海に帰りたい」という強迫観念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肺から海水が湧き出す呪い】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:山庫
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「曾場八野・熊五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
シャチだー!
どっちが真の捕食者か教えてあげよーぅ☆
UC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて、増殖し続ける肉塊に変身!
「肉体改造」を施して、増殖スピードをアップ!
戦場を飛ぶように見せて泳ぎます!
(ペンギンだって飛ぶように泳ぐって言うしね!)
匂いを海水に混ぜる事で、敵の意思を「お腹すいた」「食べたい」と思わせて統一させるよ!
後はあえて食べられて、体内で増殖して……どかーん!!
勝利の暁にはシャチ肉パーティだ☆
もちろん海鮮料理も沢山!?
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
でけェ相手だな。楽しめそうだ。
UDCを纏って黒い狼のような姿になる。武装は爪と牙。爪は水属性で水中を動きやすくして、牙は風属性で厚い皮も切り裂けるようにしておきつつ呼吸も確保しておく。海中戦だ。
空中戦の応用で水中を自在に駆けるぜ。
流石に早ェな。動きを野生の勘で予測して攻撃をギリギリ避ける。っ、水流が邪魔くせェ、なら逆に利用してやる。
爪で水を操って水流を起こし動きを阻害する。避けようったって楽には避けさせねェよ。殺気で恐怖を与えマヒしている間に噛みついてやる。
トリテレイア・ゼロナイン
バルバロス兄弟…あの巨人達に目を奪われた経緯には些かの同情を覚えますが…
この世界の陸に住む者達へ累を及ぼすのなら騎士として討つほかありません
水中用装備を装着し●水中戦
ソナーモードのマルチセンサーでの●情報収集や●暗視で海中の状況把握しつつ敵集団へ●水中機動ランスチャージ
水中用装備の誘導魚雷(●誘導弾)も発射し敵の群れを退け追い散らし数を減らしつつオルキヌスへ接近
クエーサービースト程ではありませんが…やはり水中では脅威ですね
●瞬間思考力で巨体の攻撃範囲を見切りランスの推進機構を●限界突破し回避
ですが怪物退治は騎士の務め
臆しはしません
すれ違い様に今まで充填していたUCを解放
敵突撃の勢いも利用し両断
栗花落・澪
【指定UC】で【海中戦】
適応に関してはどっちがどうとかわからないけど
自由にしておくのは危ないから…申し訳ないけど足止めさせてもらうよ
【催眠術】を乗せた【歌唱】で音波攻撃
声は届かなくても音波は拾うでしょ
ついでにもしオルキヌスも海中生物と同様
超音波を使って物の位置や距離を把握してるなら
その音波をかき乱す事にも繋がる筈
催眠術の力で混乱させ足止めを
見た目は可愛いんだけど
脅威になるならほっとけないから
【高速詠唱】で打ち出す氷魔法の【属性攻撃】で
水に囲まれた海中という戦場を利用し
他の仲間の勝利のためにも、敵を凍結させて弱らせたい
全身が無理でもすぐには動けない程度には
これが、サポート主体の僕なりの戦い方だよ
戒道・蔵乃祐
この海では、コンキスタドールの流儀であるところの略奪も支配も力が全てということなのでしょう
元七大海嘯
代替わり、或いは簒奪というものか
ならば知恵ある獣オルキヌス
相手にとって不足なし!
骸の海と、神話に唄われる海獣狩りの伝説にお帰りいただく!
◆
【相転移イフリート】を発動
精霊体に変身し、飛行能力でオルキヌスに海上戦を仕掛ける
【回帰狂濤ティクターリク】に念動力+ジャストガードで対抗
潮飛沫、高波といった海を利用した攻撃はパイロキネシスで吹き飛ばし
体当たり、尾鰭の殴打などの物理攻撃には限界突破+怪力。炎の鎚の重量攻撃で打ち据える
肺に湧いた海水は焼却で蒸発させる
痛打!
退化の力を失った瞳には戦輪を見切り+投擲!
ヴィクトル・サリヴァン
無茶苦茶デカいねー。まともに攻撃通すのも大変そうだ。
でも八つ当たりなんてさせないよ。
水中戦挑む。
暗い場合暗視を、移動は水泳と水中機動、素潜り等を活かして静かに泳ぐ。
目指すはオルキヌスの胴、配下は無酸素詠唱の水と重力の魔法で水圧を倍加させて潰すか海底に強引に押し込む。
意思統一を乱せりゃ十分、頭数減らせればなおよし。
オルキヌスの胴を狙える位置まで泳げたら全力でその横腹に銛を投擲しUC起動。
なんとなーく魚類っぽさ感じるけど、例えばサメってシャチに横腹どーんとどつかれたら酷い事になるんだよ。
大きさもあって頑丈だろうけど比較的ここは弱いはず。
さあ水シャチさん、どーんとやっちゃって!
※アドリブ絡み等お任せ
音取・ゼラ
ふはは!海上で我が雷霆に乗って浮いているのである!
ふむ、敵は海の神とな?つまり敵はポセイドンであるな!(違います
確かにポセイドンは強い、だが!負けて失墜したような有様ではこのゼウスの転生たる余の敵ではないのである!
なにぃ!?ぽ、ポセイドンよ。そのようなクジラだかシャチだかの姿にまで堕ちていようとは哀れであるな!(違います
女好きのポセイドンが、そのような女を抱けぬ身体になるとはな。哀れである、故に余が介錯してしんぜよう!(だから違います
さぁ、ポセイドンよ!この輝きを思い出して恐れ慄くといいのである!
そう、余の【神王の雷霆(ケラウノス)】の輝きを!
ふはは!喰らうがいいのである!ポセイドン!(全略
海中で、何者かのうごめく気配がする。
戦闘態勢を整えながら猟兵たちが注視するなか、『それ』はゆっくりと存在感を強めていく。さながら脈動するように、海が震えていた。
息を呑んだ瞬間。
ざあああっ…………!!
津波ほどにも海面を揺らして、巨大な海獣が跳び上がった。その威容に猟兵たちは息を呑み、尾で水面を打ちながら再び海中へと姿を消す。
盛大に水しぶきを浴びた水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は濡れた黒髪をかきあげ、湧き立つ水泡を紫の瞳で睨んだ。
「でけェ相手だな。楽しめそうだ」
口元を歪め『――構築』、と囁くように詠唱すると、UDCを纏って黒い狼のような姿になる。武装は爪と牙。水属性の爪は水中を動きやすくし、風属性の牙は厚い皮も切り裂き呼吸も確保する。
空中戦の応用で水中を自在に駆けるも、やはり地の利はあちらにある。素早く切り込んではするりとかわされてしまい、なお攻めていくが決定打に欠ける。
「流石に早ェな」
素早く避けられるということは、素早く攻撃を繰り出されるということでもある。巨躯に反して俊敏な動きを野生の勘で予測し、攻撃をギリギリ避けるもオルキヌスが動くたびに生まれる奔流に翻弄され幾度か攻撃を食らう。
「っ、水流が邪魔くせェ、なら逆に利用してやる」
爪で水を操って水流を起こし動きを阻害する。巨躯が仇になったか、オルキヌスは自身を取り巻く流れを乱され身じろぎもがいた。
避けようったって楽には避けさせねェよ。
黒狼が牙を剥くと水中に殺気が迸り、ぶるりと身じろぐオルキヌスの動きが一瞬鈍った。その隙をつき、水を割いて爪を奔らせる。
猟兵の攻撃を受け鬱陶しげに大きく身を捻らせる海獣を、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が溜息混じりに眺める。
「無茶苦茶デカいねー。まともに攻撃通すのも大変そうだ」
でも八つ当たりなんてさせないよ。
シャチのキマイラである彼は、そのうえに水中での技能を駆使して静かに泳ぐ。
目指すはオルキヌスの胴。だが、配下とした魚たちが盾となるように集まり防御のためのベイト・ボールを形成する一方で、別の群れは鋭い刃のごとく襲いかかってくる。
いなしてかわし、無酸素詠唱の水と重力の魔法で水圧を倍加させて潰すか海底に強引に押し込む。
意思統一を乱せりゃ十分、頭数減らせればなおよし。
(「でもちょっと多いな……」)
ダメージを入れるための一手を決めかね、くぷんと唸る。
そんな彼の様子に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は一度巨大な海獣とそれを取り巻く魚たちを見渡した。
(「適応に関してはどっちがどうとかわからないけど、自由にしておくのは危ないから……申し訳ないけど足止めさせてもらうよ」)
攻撃を食らわせるだけが戦いではない。それを支えるのもまた戦いなのだ。
「水の精霊よ、力を貸して!」
呼びかけるように叫ぶ彼女の下半身が魚のそれへと変わっていく。
伝説に謳われる精霊のように、催眠術を乗せた彼の歌唱は音波攻撃となる。
(「声は届かなくても音波は拾うでしょ」)
もしオルキヌスも海中生物と同様、超音波を使って物の位置や距離を把握してるなら、その音波をかき乱す事にも繋がる筈。
果たして、オルキヌスの周囲に集まり尖兵となっていた魚たちが澪の歌声で混乱させられ足止めを食らって散り散りになり、攻撃を阻む壁となっていた群れも離れていく。オルキヌス自身もまた、混乱してかじたばたと挙動が乱れた。
これを好機と、ヴィクトルは守りが薄くなりオルキヌスの胴を狙える位置まで泳ぎつく。全力でその横腹に銛を投擲し、
「さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ」
詠唱とともに、水で象った巨大なシャチが現れた。ゆうるりと泳ぐのは決して遊んでいるわけではなく、的確な一撃を食らわせるための準備行動。
「なんとなーく魚類っぽさ感じるけど、例えばサメってシャチに横腹どーんとどつかれたら酷い事になるんだよ」
大きさもあって頑丈だろうけど比較的ここは弱いはず。
「さあ水シャチさん、どーんとやっちゃって!」
ヴィクトルの掛け声にシャチが襲いかかり、それに合わせて澪も氷魔法を高速詠唱で打ち出す。間隙ない攻撃を食らったオルキヌスは、苦しげな動きで、配下の魚たちもろとも猟兵を叩き潰そうとでたらめに暴れる。
巻き込まれないよう急いで距離を取り、澪は改めて海獣を見つめた。
(「見た目は可愛いんだけど、脅威になるならほっとけないから」)
水に囲まれた海中という戦場を利用し、他の仲間の勝利のためにも、全身が無理でもすぐには動けない程度には敵を凍結させて弱らせたい。
「これが、サポート主体の僕なりの戦い方だよ」
巨体から剥がれはらはらと海中に落ちていく氷を見つめ、つぶやく。
しかし、いまだオルキヌスの動きは止まらない。
「バルバロス兄弟……あの巨人達に目を奪われた経緯には些かの同情を覚えますが……」
少しだけ苦い調子で口にするトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「この世界の陸に住む者達へ累を及ぼすのなら騎士として討つほかありません」
騎士道の戦機ならではの戦い方で。
水中用装備を装着し、ソナーモードのマルチセンサーでの情報収集や暗視で海中の状況把握しつつ、敵集団へ水中機動ランスチャージを放つ。
仲間たちの先行する攻撃でいくらかその配下の魚たちが散らされているが、いまだ油断ならない。
ならばと水中用装備の誘導魚雷も発射し、敵の群れを退け追い散らし数を減らしつつオルキヌスへ接していく。手負いとなった海獣は敵意を敏感に察知してかわしつつ新たな配下を差し向け、自身も攻撃を繰り出してくる。
水中戦用にセッティングされたトリテレイアのシステムが、敵に拮抗できないということはない。だが、それだけではカバーしきれない。
「クエーサービースト程ではありませんが……やはり水中では脅威ですね」
呻いたその時。
「シャチだー!」
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)が吶喊してきた。
愛らしい外見だがトリテレイアほどの巨躯であり、ぶよぶよどろどろゲル状の姿はどこかアンバランスなその存在感で不安を覚えさせる。
「どっちが真の捕食者か教えてあげよーぅ☆」
自信たっぷりに笑って、手にしたナイフとフォークを掲げた。
「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
増殖し続ける肉塊に変身し、肉体改造を施して、増殖スピードをアップしていく。
音速を超えた速度で戦場を飛ぶように見せて泳ぐその姿は、深海生物のようにも思えた。
(「ペンギンだって飛ぶように泳ぐって言うしね!」)
匂いを海水に混ぜる事で、敵の意思を「お腹すいた」「食べたい」と思わせて統一させる。オルキヌスを守り刃となるはずの配下たちも、オルキヌスでさえもラヴィラヴァの動きに誘導されてしまう。
後はあえて食べられて、体内で増殖して……どかーん!!
…………――――!!!!
予想外の苦痛に、オルキヌスは先程以上に身悶えして海中で大きく暴れた。腹のなかからの衝撃で、魚たちの多くも四散してしまう。
「……お、おお……」
トリテレイアも一瞬呆然としてしまったが、瞬間思考力で巨体の攻撃範囲を見切りランスの推進機構を限界突破し回避する。
強敵、しかし。
「ですが怪物退治は騎士の務め」
臆しはしません。
捨鉢に突進してくるオルキヌスを真正面に捉えながら身体の格納スペースから柄のみの剣を取り出し、胴体から伸びたケーブルに接続。柄から白い粒子を漏らし――。
「……充填中断、刀身解放!」
すれ違い様に振るった剣は、柄に充填されたエネルギーを開放し巨大な刃となる。
敵突撃の勢いも利用し、一息に両断!
深く穿った一撃にオルキヌスが断末魔めいた悲鳴を上げ、そして海面へと駆け上がっていった。
海上で雷霆に乗って浮き、ふはは! と声高く笑う音取・ゼラ(自称ゼウスの生まれ変わり・f24198)。
「ふむ、敵は海の神とな? つまり敵はポセイドンであるな!」
ことの次第を理解し納得したかに頷く自称主神。
うむ、違います。
「確かにポセイドンは強い、だが!負けて失墜したような有様ではこのゼウスの転生たる余の敵ではないのである!」
自称ではあるが、その気位の高さはかの主神にも劣らぬだろう。
その彼女の真正面に、手負いのオルキヌスが高く跳ね上がった。
「なにぃ!? ぽ、ポセイドンよ。そのようなクジラだかシャチだかの姿にまで堕ちていようとは哀れであるな!」
狼狽するゼラと、見当違いの同情。違います。
再び海上に姿を現したオルキヌスを、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)はぎっと睨み据える。
「この海では、コンキスタドールの流儀であるところの略奪も支配も力が全てということなのでしょう」
元七大海嘯。代替わり、或いは簒奪というものか。
「ならば知恵ある獣オルキヌス、相手にとって不足なし! 骸の海と、神話に唄われる海獣狩りの伝説にお帰りいただく!」
大連珠を握りしめるその体躯は筋骨隆々。堅固な身体、金剛の如し。
だが今ひとたびは、その堂々たる姿を炎魔へと変え、空へ飛んではオルキヌスに海上戦を仕掛ける。
ざんっと跳ねた飛沫が、空中で爬虫類のような生き物の姿をとる。大きく開けた口のなかに鋭い牙を認めると、蔵乃祐は念を込め対抗し、攻撃が直撃すると同時に防ぐ。
海面を尾で打って高く飛沫を跳ね上げ、その衝撃で生まれた波をパイロキネシスで吹き飛ばす。海上でも苦なく巨躯を躍らせた体当たり、尾鰭の殴打を受け止め、
「ぬっ……!」
重厚な打撃にわずか呻き、しかし己の力を限界の先まで高め受け流すと、炎の鎚の重量攻撃で打ち据える。生まれた海への回帰の想いと肺に湧いた海水を焼却で蒸発させ、その身をいっそうに燃え上がらせた。
力と力のせめぎあいに、ゼラはううむ、と唸る。
「女好きのポセイドンが、そのような女を抱けぬ身体になるとはな。哀れである、故に余が介錯してしんぜよう!」
だから違います。
「さぁ、ポセイドンよ! この輝きを思い出して恐れ慄くといいのである!」
そう、余の神王の雷霆(ケラウノス)の輝きを!
高らかに告げるとともに、彼女の乗る雷霆のまとう雷光がひときわ強くなる。
「これぞ世界を溶解させ全宇宙を焼き尽くす、余の最強たる雷霆ケラウノスである!」
だから違……いや、どうだろうか。全宇宙までは難しいかもしれないが、もう少し狭い範囲であれば可能かもしれない。
ともあれ絶対の自信で補強された雷霆は、ポセイドン(仮)をまっすぐに目標と定めた。
「ふはは! 喰らうがいいのである! ポセイドン!」
ガガガガッ!!!!
雷撃がオルキヌスを撃ち貫き、痙攣するように震えるその巨躯に、蔵乃祐がすかさず痛打!
とどめに、退化の力を失った瞳へと戦輪を投擲し射抜いた。
――…………!!
高く、悲鳴を上げて海獣の巨躯が海へと沈む。
沈みゆく際に生まれた大きな渦と盛大な波しぶきから離れ、再び浮かび上がり攻撃を仕掛けてくるか警戒する。しかし、海面は穏やかなまま。
「勝利の暁にはシャチ肉パーティだ☆」
もちろん海鮮料理も沢山!?
目を輝かせるラヴィラヴァの言葉に猟兵たちは色をなくす。やっぱり食べるんだ……?
……ともあれ、オルキヌスは倒された。シャチ肉パーティが開かれたかはともかく。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年02月12日
宿敵
『森羅冠す『オルキヌス』』
を撃破!
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