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羅針盤戦争〜大海原の狂筋脳筋奇想曲

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #迷惑マッチョトレーナー

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#羅針盤戦争
#迷惑マッチョトレーナー


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●筋肉を制するものは大海原を制す

 ――ぅおおおおおおおおおおおおお!!

 眩しい太陽が照りつける、青々とした空の下。
 蒼海羅針域の中心に、新たなコンキスタドールの大艦隊が押し寄せようとしていて。
 船上から上がる凄まじい熱気は陽炎の如く。遠くまで響く豪雷に似た雄叫びが戦場の空気をビリビリと震わせる。
 ――よほどの魔獣か、豪の者らが乗っているのだろうか?
 けれど、甲板にひしめく船員たちの姿は人そのもの。違うのは身に纏う筋肉が常人の2倍3倍はあり、ほぼ全員が人智を超えるレベルの高負荷筋トレに励んでいたことだろう。

「インターバルのあと、先程のトレーニングをもう10セットだ!!」
「フ、我々に余った時間などない。筋トレ……それ以外に何に使うというのだッ」
「そう、筋肉は裏切らないの、私たちはその為に筋トレをするの!」
「ぅおおおおおおおおおおおおお!! 筋肉は至高、筋肉は正義(ジャスティス)!!」

 彼らの名は、迷惑マッチョトレーナーという。
 無数の筋肉隆々の男女と筋トレマシーンを乗せていた大艦隊は、むさ苦しいまでの熱気と雄叫びを轟かせながら力強く大海原を前進、渦潮に迫らんとしていた。

●大海原の狂筋脳筋奇想曲
「なんだかとっても凄い光景なのですじゃー」
「…………」
 琥珀色のグリモアが映したのは、無数の迷惑マッチョトレーナーを乗せた大艦隊。
 その暑苦しい光景にげんなりとした数人がゆっくり回れ右をした瞬間、恰幅の良さに似つかわしくない動きで、ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)が素早く前に立ち阻み、つぶらなお目目をキリッと光らせる。
「億が一、兆が一にも渦潮を抑えられてしまったら大変なのですじゃ。なので、蒼海羅針域の破壊に向かう大艦隊への対応は、必要不可欠なのですじゃ!!」
 蒼海羅針域の中心にある渦潮を破壊されてしまえば、猟兵たちはグリードオーシャンの世界に来れなくなってしまう。
 言っていることは全うだ。しかし、どうにも危機感がないのはなぜだろう……。
 ユーゴはなんとも言えぬ温かい眼差しを帯びたまま、少しだけ明後日の方を向いた。
「というわけで、迷惑マッチョトレーナーひしめく大艦隊をサクッと倒して、サクサクッと沈めて欲しいのですじゃ」
「「「やっぱりかあああああーい!!」」」
 全てを筋トレに賭け、あらゆる攻撃に耐性を持つことに成功したマッチョたち。
 彼らは強制的に相手に筋トレを押し付け、自慢の筋肉でマウントを取るという……。
「幸い1体1体はそれほど強くありませんのじゃ。いくら筋トレをしても、運動性を鍛えてるわけではありませんのじゃ」
 筋トレで格闘が強くなることはないし、スポーツ選手や力士に勝てるわけでもない。
 また、海上では飛行や転移が阻害されてしまうので、敵がひしめく艦隊に近づくには、何かしら一工夫する必要がありそうだ。
「もちろん、マッチョたちも飛ばないので、そこは安心してくださいなのですじゃー」
「…………」
 アイキャンフライなマッチョ群を妄想させたユーゴに剣呑な眼差しが注がれたのは置いといて、迷惑マッチョトレーナーたちは、全身を使ってポージングしたり、激しくパンプアップすることでほぼ無敵化したり、筋トレについてあつく語ることで、戦場にいる筋トレとコーチングを楽しんでいない者全てをドン引き……否、行動速度を阻害するという。
 要は、動きが鈍く、持久戦に持ちこむタイプ。
 何らかの方法で素早く肉薄すれば、先手必勝の攻撃を叩き込むのは容易とも言える。
「彼らは筋トレと筋肉を愛し、貧弱な体を嫌っておりますのじゃ。なので、自分の筋トレや筋肉の方が素晴らしいとアピールする方、もしくは筋トレのしがいがありそうな体型の方がおりましたら、戦闘態勢を解いて嬉々と接近して来ますのじゃー」
「それ、すごく嫌なんですけどッ!!」
 ――貴様等のコーチングなど不要!と、己の肉体美を大いに誇示するのも良しッ!!
 ――私貧弱ですぅ……と、筋トレのしがいがありそうなアピールをするのも良し!!
 ――どちらもちょっと…な貴方の場合、なんらかの方法で船上に素早く接近、甲板で暴れまくるのも良しッ!!
「わしも、戦場の後方で頑張って転送しますのじゃ。要は道連れなのですじゃー!!」
「「「それが本性かあああああ!!」」」
 猟兵たちのツッコミからユーゴがそっと視線をそらす中、無情にもグリモアによる転送が始まってしまうのでした。


御剣鋼
 某リングなフィットでレベル250を越えました、御剣鋼(脳筋は正義)と申します。
 このシナリオは、戦争シナリオです。
 1フラグメントで完結し「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 また、以下のプレイングボーナスが発生致します。
 =============================
 プレイングボーナス……海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。
 =============================
 と、ありますが、脳筋打線濃厚だと思いますので、頭のネジを3本くらい外して楽しんでいただけますと、より楽しめるかと思います♪

●プレイング受付期間:2月6日(土)9時〜2月7日(日)8時30分予定
 スケジュール最優先のため、書ける範囲での少数採用となる見込みです。
 有り難くもたくさんご参加頂いた場合、プレイングの内容を吟味して採用いたします。
 先着順ではありませんので、期日内でしたらいつでもどうぞですー。

●その他
 御剣鋼の場合、2〜3名様を組み合わせて描写することが多いです。
 ソロでの描写をご希望の方はプレイングの冒頭に「★」をつけてくださいませ。

 ご一緒したい方がいる場合は【相手のお名前】を明記して頂けますと助かります。
 旅団の皆様でご参加の場合は【グループ名】で、お願いいたします。

 皆様の狂筋脳筋っぷり……げふん、プレイングを楽しみにお待ちしております!
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第1章 集団戦 『迷惑マッチョトレーナー』

POW   :    筋骨隆々!それ以外に何が必要だ?
全身を【使ってポージングし、攻撃を跳ね返す筋肉】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    余った時間は筋トレに使う!それ以外に何に使う?
【筋トレとコーチング】を給仕している間、戦場にいる筋トレとコーチングを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    筋肉は裏切らない。その為に筋トレをするのだ!
非戦闘行為に没頭している間、自身の【全身の筋肉】が【激しくパンプアップし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。

イラスト:黒メガネ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イコル・アダマンティウム
「鍛えるのは、いい
けど……迷惑は、ダメ」

【乗り込めー】
キャバリアに搭乗して
海上を走ってく、ね<水上歩行><ダッシュ>
生身でもできるけど
歩幅分、速い

【船上】
敵が人?だし
サイズ差で殴りにくい
着いたら機体を降りる、ね

「おー……すごい、すごい」
筋肉は感心
これだけ鍛えるのは大変、褒める
ポーズしてくれたら提案
「ね……お腹殴って、みてもいい?」
正面から、打ち砕く

「えい」
お腹を正拳中段突き<暴力>
腰を落とし、引き手を構える<踏み付け><足場習熟>
腰を入れながら、拳を螺旋回転させて[一撃必殺]

これで腹筋が割れるといい、けど
ダメでも衝撃で内臓へのダメージを狙う、よ
<貫通攻撃><鎧無視攻撃>

「ん……見ため、だけ?」


三上・チモシー
アドリブ連携歓迎

いいよね、筋肉
自分も少しくらいは筋肉欲しいなぁ
鍛えても見た目変わらないんだよね。ヤドリガミだから?

巨大熱帯魚のライ麦ちゃん(ナマズ)に乗って海上を移動して、マッチョトレーナーに接近
はーい、先生! 自分とライ麦ちゃんも筋肉欲しいです!
鍛えてください!
あともっと先生たちの筋肉見たいです!

わーい、筋肉すごーい! カッチカチ!
先生、腹筋触らせてください! えっ、パンチしていいんですか? じゃあ1回だけ……
えいっ☆(灰燼拳)



●狂筋の宴の開戦、悪夢の始まり
「いいよね、筋肉、自分も少しくらいは筋肉欲しいなぁ」
 鍛えても見た目が変わらないのは、自身が南部鉄瓶のヤドリガミだから?
 高温や炎に強くて頑丈なら少しはあってもいいのに……と、思いながら、三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)が、ナマズのような巨大熱帯魚――ライ麦ちゃんに騎乗すると、上着のポケットに両腕を突っ込んだまま、イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)が、赤色の眼差しを静かに細める。
「鍛えるのは、いいけど……迷惑は、ダメ」
 今は心地よい海風に深紅の髪を委ねているけれど、視線の先にある大艦隊周辺は、マッチョたちの熱気が生み出した陽炎で揺れ、野太い雄叫びが聞こえてくる。
 周囲を見回すと、その強引すぎる暑苦しさに戸惑っている猟兵も少なくはない。
 けれど、チモシーとイコルは戦いの口火を切るべく、真先に大海原へ跳び出した。
「ライ麦ちゃん、いくよ!」
 ピンク色の巨大熱帯魚に乗ったチモシーが勢い良く前進、素早く青鋼のキャバリアに騎乗したイコルも海上を疾駆し、マッチョたちの魔境――大艦隊に近づいていく。
「乗り込めー」
 愛機のコックピットに青々とした海が描かれたのも一瞬、瞬く間にマッチョひしめく大艦隊が視界いっぱいに広がり……というか、嫌でも飛び込んできまして。
 水上は自分でも走れるけれど、歩幅分含めて愛機に委ねたイコルの判断は正しい。
 ――そう、いろんな意味で、正しかった。

「よーし、プランク3分10セットのあとは、バーベルスクワットだ!」
 船上ではバーベル――ではなく、重量級の鉄箱や大タル、大砲を担いでスクワットをしている無数の迷惑マッチョトレーナーたちが、暑苦しい熱気を放ってまして。
 蒼海羅針域の中心に近づいても戦闘……ではなく筋トレに没頭している姿は、ある意味尊敬に値するものがある、のかもしれない。
「ぅおおおおおおお! 筋肉は裏切らない!!」
 限界まで高負荷を与えた筋肉が激しくパンプアップしようとした、その時だった。
「はーい、先生! 自分とライ麦ちゃんも筋肉欲しいです!」
「「「なんだ、とッ!!」」」
 いつの間にか船上に上がったチモシーが元気良く手を挙げると、ライ麦ちゃんも主人に習ってハートのような尻尾を、パタパタと横に振ってみせて。
「自分とライ麦ちゃんを鍛えてください!」
「「「ぅおおおおおおおおお、入会者キターー!!」」」
 そう、彼らの本質はトレーナー、生徒が現れるのは願っても無いことッ!!
 感極まって思い思いのポージングを決める光景を綺麗に言い換えると、あらあら大変「密」になりました筋肉3倍増しの、ギリシア彫刻群でございますわね!
「おー……すごい、すごい」
 颯爽とキャバリアから飛び降りたイコルの視界にも、何とも言えない光景が広がっておりまして……。
 見た目は人間でも、背丈含めていろ〜んな意味で、イコルとチモシーの倍はある。
 肉壁とも呼べる堅牢な筋肉は、並大抵の攻撃では崩すことすら、叶わないだろう。
「筋骨隆々! まずは我々と一緒に大タルを担いだ、バーベルスクワットを――」
「自分、もっと先生たちの筋肉見たいです!」
「……なるほど。良かろう良かろう、まずは我が上腕をとくとご覧あれ!」
「わーい、筋肉すごーい! カッチカチ!」
 マッチョたちの押し付けを華麗にスルーしたチモシーが、差し出された上腕二頭筋をペチペチ叩き出すと、ひょいっと顔を覗かせたイコルも感心したように頷く。
「お腹もすごい、ね」
 これだけ全身をくまなく鍛えるのは、並大抵の努力では叶わないのは事実……。
 イコルの唇から漏れた本音とも呼べる感嘆に、マッチョたちも嬉しそうに腹筋を魅せるポージングを決めようとしてます、どうします?
「ね……お腹殴って、みてもいい?」
「もちろん! キミも遠慮なくシックスパックの良さを堪能するがいい」
 マッチョに促されたイコルは、隙の無い動きで腰を落とす。
 それを「じっくり観察したいのかな?」と、マッチョたちが勘違いしてしまったのが、運の尽きだった。
「砕く」
 正拳中段突きの要領で深く腰を落としたイコルは、手前のマッチョの鳩尾を然りと見据え、腕に力を込める。
 拳の内に渦巻くのは、圧倒的な暴力と必殺の意思。
 イコルはその感覚を確かめながら静かに拳を引くと、同時に利き足を鋭く踏みつけ、瞬時に足場を習熟する。
 ――その瞬間、全ての機は熟した。
「えい」
 ――一撃必殺(ゴットハンド)ッ!!!
 短い言葉と共に正面から打ち砕くように腰を入れたイコルは、引き手を鋭く真っ直ぐ突き刺すと、拳を高速螺旋回転させる。
 UDCアース出身の者がいれば、尊敬と畏怖を込めて、こう呼ぶだろう。
 まるで、超鋼金属をも易々と貫通させる、最先端のドリルのようであったと……!
「「「うぎゃあああああああああ」」」
 至近距離から強烈な一撃を見舞ったマッチョは、錐揉み回転をしながら頑強な船の柱にズドンッと激突ッ!!
 その衝撃は筋トレに励むマッチョたちが「どうした」と、手を止めてしまう程で。
「ん……見ため、だけ?」
 腹筋と同時に内臓も破壊されたようで、鳩尾からプスプスと煙が上がっている。
 鋼鉄の鎧すら貫通させるイコルの渾身の一撃(暴力)、しかしマッチョたちの悪夢はこれで終わりではなかった。
「先生、自分にも腹筋触らせてください!」
「――!!!」
 満面の笑みでペチペチと腕を触り続けていたチモシーが同じことを嬉々と告げるや否や、マッチョたちが「まさかこの子も?!」と、戦慄したのは無理もない。
「えっ、いや、その……」
「どうする?」
「まあ、この生徒なら大丈夫そうだけど……」
 ニコニコと微笑むチモシーを前に、マッチョたちは背中に冷たい汗を流しながら漫才の如く「どうぞどうぞ」と互いの顔色を見比べ、押し付けている。
 このままではトレーナーの名が廃ると、マッチョの1人が恐る恐る口を開いた。
「ま、まあ、1回だけなら……」
「えっ、パンチしていいんですか? じゃあ1回だけ……」
 にこっと花咲くような笑みを返したチモシーは、腰を軽く落として一度腕を引く。
 先程の少女よりもラフな構えに全員が思わず安堵を漏らすものの、勇気あるマッチョは油断無く腹筋に力を入れる、が。
「えいっ☆」
 マッチョの鳩尾目掛けて放たれたチモシーの掌が、轟と空気を振動させる。
 見た目は華奢でも拳から奔る威力は、重量ボクサーのパンチなど、比ではない。
 それは、パンチ――をはるかに凌駕した、全力全開一撃必殺の灰燼拳であーる♪
「「「うぎゃあああああああああ!!」」」
 そして、悪夢再び♪
 真っ直ぐ放たれたチモシーの拳は超高速かつ大威力の一撃(物理)となり、マッチョたちの腹筋を次々と襲う――ッ!!
「これで腹筋が割れるといい、ね」
「「「割る意味、違うしイィイィーー!!」」」
 ツッコミ虚しく次々と錐揉み回転で吹き飛んでいくマッチョたちを横目に、イコルは相変わらず無愛想のままで……。
 けれど、その様子は何処か生き生きとしており、弾むように船上を駆けるチモシーと一緒に様々な意味で激戦となるであろう、戦いの幕を切って落としたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月凪・ハルマ
いやただただむさくるしいなオイ!!
(心の底からの叫びであった)

◆WIZ
したくもない筋トレにわざわざ付き合ってられるか!

【水上歩行】と【早業】で水面を駆け艦隊へ接近
敵からの攻撃は【見切り】【残像】【第六感】で回避

爆裂煙幕弾で敵を怯ませた後、適当な艦に乗り込み
【忍び足】で【目立たない】様に【情報収集】
敵の位置を把握しながら船上を移動して
できるだけ多くの敵を巻き込む位置で【心身解放蒸気】を発動

直接のダメージは防げても、流石に眠気までは無理だろ
眠らせた後は【暗殺】で即、仕留める

こっちはこっちで必要な鍛錬はちゃんとやってるんでね
筋トレの押しつけはノーサンキュー

※アドリブ・連携歓迎


政木・朱鞠
アドリブ連帯歓迎

何となくゆるい感じだけど、この筋トレモンスターを排除しないと私達が手詰まりってことでOK?
飛行や転移がダメなら…本来の使い方じゃないけど、鉤縄の代わりに拷問具『荊野鎖』をマストに引っかけるアンカーにして対応出来ないかな?
【ロープワーク】と【クライミング】を組み合わせてターザンの様に奇襲してみたいね。

戦闘【WIZ】
乗り込んだ所で命を賭けた影踏み遊び『忍法・鋳薔薇姫』を展開、数秒だけど相手の動きを封じて隙を作り攻撃に移行するよ。、
武器はそのまま拷問具『荊野鎖』を本来の用途として【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い敵の体に鎖を絡めつつ【傷口をえぐる】で絞め潰すダメージを与えたいね。


フェルト・ユメノアール
あ……暑苦しい……
なんか普通に目に毒だし早めに倒さないと!

マッチョすし詰め艦隊に乗り込んで敵を倒すよ!
敵の索敵に引っ掛かり難い斜め後方から小型船で全力接近、フックロープを引っかけ素早く戦場へ

ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!
カモン!【SPアクロバット】!
どれだけ強力なパワーも当たらなければ意味はない!
『パフォーマンス』で鍛えたバランス感覚で揺れる船上を素早く移動
フックロープを帆に引っ掛けて頭上を取ったり、アクロバットと共に三次元戦闘で敵を攪乱していく

相手のUCをスピードで上回る
手札を全て捨て、効果発動!
アクロバットの戦闘力を捨てた手札の枚数分だけアップさせる!
超高速の一撃を喰らえ!



●狂筋忍法帖、マッチョすし詰め艦隊奇襲作戦!
「あ……暑苦しい……なんか普通に目に毒だし、早めに倒さないと!」
 先行隊が交戦する中、奇襲を狙う猟兵たちも、虎視眈々と動き出していて。
 大艦隊の死角である斜め後方から小型船で全力接近を試みていた、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)の緑色の大きな眼差しにも、マッチョひしめく船上の様子が飛び込み、その近くで心の底からの叫びが喉元まで出掛けた、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は、気を引き締めるように、帽子を深く被り直す。
(「いやただただむさくるしいなオイ!!」)
 辛うじて心の叫びを押し殺したハルマは、蒼色の羽織を靡かせながら海面を蹴る。
 気配を消して海上を滑るように疾駆する様は、まさに忍の者。
 そして、同じ忍の者でも海上ではなく宙に鋭い軌跡を描いていたのは、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)。鉤縄代わりの拷問具『荊野鎖』を道中の小島に突き刺し、それを起点に巧みなロープワークで、素早く大艦隊へと距離を詰めていく。
「本来の使い方じゃないけど、問題はなさそうね」
 朱鞠の艶やかな唇が優雅な弧を描き、少し遅れて金色の髪が晴天に煌めいて。
 あとは、楽に船上に上がれたら御の字。ひとたびマッチョたちに無敵化を許してしまったら最後、大変暑苦しい持久戦が避けられなくなってしまうからだ。
「この方角なら敵の索敵に引っ掛かり難いし、すぐに船上に乗り込めそうだね」
「しかし、迎撃がないのは妙だな」
 ……先行隊が惹きつけているのだろうか?
 楽しそうに小型船を大艦隊に寄せていくフェルトを前に、ハルマは水面に残像を残しながら素早く近づき、船上に向けて感覚を研ぎ澄ます。
 暫くして。ハルマは足元から崩れ落ちるように、目頭を押さえ込んでしまった。
 彼の鋭い五感と六感が捉えてしまった、残念な光景とはッ!

「ぅおおおお筋肉は決して裏切らない、我々は何の為に筋トレをするのだ!」
「皆、怯むなあああ!! 戦いの際も筋トレを怠るんじゃないゾッ!!」
「筋肉は正義ィィィィ! 筋肉は至高の極みィィィィ!!」

 船上を埋め尽くすマッチョの殆どは、戦闘中でも筋トレを怠らず、迎撃に向かう者は一握りしかいないという、筋トレづくしの有様でして。
 周りでぶっ飛ばされる仲間を横目に筋トレに励む姿は最早狂気の沙汰ではないし、狂信者に似ているとも言いますか、ドン引き通り越して、とっても怖いッ!!
「なんとなくゆるい感じなのは伝わったけど、あの筋トレモンスター達をなんとかしないと、私達が手詰まりってことでOK?」
「したくもない筋トレにわざわざ付き合ってられるか!」
 上空から死角に回り込んでいた朱鞠は一足先に現場を間近で見てしまったのだろう、いたって冷静である。
 口の端から赤いモノを垂らしながら菩薩の笑みを返したハルマの手には、いつの間にか爆裂煙幕弾が、しっかりと握られていた。
「俺が煙幕を張るから隙を見て乗り込んでくれ」
「了解、ボクはフックロープを使って、マッチョすし詰め艦隊に乗り込むね!」
「私も数秒だけど敵全体の動きを封じてみせるから、使えそうなら使ってね」
 その後、頃合いをみてマッチョたちを眠らせると告げるハルマに、フェルトが元気良く頷き、朱鞠も艶やかな微笑を返す。
 煙幕と眠りによる強力な支援。
 戦場を翻弄するように、舞うように戦う者たちにとって、頼もしいものがあった。
「それじゃ、いきますか」
 ハルマは、爆裂煙幕弾を船上に向かって放り投げる。
 ――キーンッ。
 緩やかな弧を描きながら甲板に到達した其れは短く甲高い音を響かせ、少し遅れて船上の景色を厚い煙幕が飲み込んでいく。
「う、目が、耳が! このままでは――」
「我々の筋トレに支障が出てしまうッ!!」
 いや、少しは筋トレを休んでくれてもいいんですよ?
 視覚と聴覚を奪われたマッチョたちの声が飛び交う中、鉤爪が付きのワイヤーロープを引っ掛けたフェルトは素早く船上に上がり、その後をハルマが追い掛ける。
 ――そして、朱鞠は。
「私と一緒に命を賭けた影踏み遊びをしましょ?」
「――ッ、総員頭上を警戒、何かいるぞ!!」
 2人より速く船上に到達した朱鞠は唇を軽く湿らせると、静かに甲板に降り立つ。
 ふわり羽衣を翻した姫忍者は跳ぶように船上を疾駆。素早く踏み抜いた影から生成された金属鎖状の触手が船上の敵全ての動きを阻害し、筋トレの熱意を封じていく。
「何てことだ! 筋トレの醍醐味――パンクアップがしたくなくなるだとッ!」
「ちょっとの間だけ、大人しくしていてくれるかな…なるべく痛くしないから……」
 ――忍法・鋳薔薇姫(ニンポウ・イバラヒメ)。
 その効果は数秒でも、朱鞠が攻撃に転じる時間稼ぎには十分。
 更に速度を上げた朱鞠は、鉤縄代わりに使っていた鎖をそのまま本来の拷問具の用途として鋭く、しなやかに打ち振う。
 ――一閃。
 マッチョたちの堅牢な筋肉ごと打ち砕くようにキツく絡め取るや否や、傷口を抉り出すように、一気に絞め潰した。
「このままでは筋トレに集中できなくなってしまう、総員迎撃に――」
 流石に危機感を抱いたのだろう、影の戒めを脱したマッチョたちは迎撃という名の高負荷筋トレと、招かざる客へのコーチングに入ろうとした、その時だった。
「そうはさせないよ!」
 ハルマの煙幕に朱鞠が身を隠したのと、入れ替わるように大きく跳躍したフェルトが、砲台の上を軽やかな足取りでトンットンッと駆け抜けたのは、ほぼ同時。
「次はボクのパフォーマンスをみて欲しいな」
 フェルトの弾む足取りが止まったのは一瞬。即座にフックロープを帆に引っ掛けて更に頭上高く舞い上がると、帆柱にある物見台でぴたりと足を止め、指の間に挟んでいた魔法のカードを、素早く扇のように広げていく。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待! カモン! SPアクロバット!」
 ――瞬間。満面の笑みを浮かべたフェルトの前で、鮮やかな彩りが爆ぜる。
 魔法の手札から現れたのは、丸みを帯びた何とも愛らしい1匹のコウモリさん。
 コウモリは嬉しそうにフェルトの周りを1周すると、即座に急降下を開始したッ!
「アクロバット、ゴー!」
 フェルトの合図と同時に急旋回したコウモリ――アクロバットは、マッチョたちの脳天目掛けて鋭い軌跡を描きながら、強烈な一撃を見舞っていく。
 相手が堅牢な盾なら其れを上回る速さで守備が薄いところを狙い、射抜くまで。
 ――頭。そこは身体で筋肉の厚みが薄い場所。そして、人体の急所でもあった。
「う、うわああああ!!」
「落ち着け、壁を背にしろ! そうすれば前方に集中できる!」
 上空からアクロバットが狙い、左右をフェルトが軽やかに動き回りながら撹乱。死角からは朱鞠の鎖が飛び交う船上に置いて、マッチョたちは自然と船室がある方角に向けて後退し、揃って壁に背を預ける態勢をとっていて。
「いい感じに集まってきたな」
 足音を忍ばせながら船室近くの物陰に移動したハルマは、マッチョたちを射抜くように見据える、が。
「よくよく考えると俺がいるところが1番ヤバくないかオイ!!」
 ハルマの周辺はサウナの如く熱気が立ち込み、さらに視界内の筋肉率は80パーセント超えという、まさにマッチョたちの楽園(パラダイス)♪
 ――ハルマの視界と脳内に支障が出まくるのが先かッ!
 ――反撃に転じたマッチョたちの筋肉が肥大化、無敵状態になるのが先かッ!
 否、どちらの選択肢(フラグ)もバギバギに折らないと、明日はやって来ないゾ!
「ん、キミは入会者かい?」
 マッチョが振り向いたのと「気付かれたか」と察したハルマが、トンファー型のガジェットからリラックス効果がある蒸気を放ったのは、ほぼ同時。
「はいはい、ちょっと静かにしててくれ」
 ――心身解放蒸気(リラクゼーション・スチーム)。
 できるだけ多くの敵を巻き込むように放たれた蒸気は瞬く間に船上に広がり、深い眠気に襲われたマッチョたちが、バタンバタンと倒れていく。
 そして、その絶好の隙を逃す猟兵たちでは、ない。
「トレーニング、お疲れさま」
 鉤縄の代わりに拷問具『荊野鎖』を帆に引っ掛けた朱鞠の身体がターザンの要領で大きく弧を描き、その勢いを乗せたまま手前のマッチョの頭を鋭く蹴り飛ばす。
 軽やかに着地した朱鞠は同時にアンカー代わりの鎖を素早く引き寄せ、衝撃で足元をふらつかせたマッチョ目掛けて鎖を伸ばすと、傷口を抉るようにして締め潰した。
「直接のダメージは防げても、流石に眠気までは無理だろ」
 筋トレの押しつけは、ノーサンキュー。
 ハルマは眠気に駆られて片膝を付いたマッチョに狙いを定めると瞬時に肉薄し、トンファー型ガシェットを鋭く脳天に叩き付ける。
「こっちはこっちで必要な鍛錬はちゃんとやってるんでね」
 そのまま横に身体を捻って2体目の鳩尾を穿ち、3体目の懐へと飛び込んでいく。
「そうそう、どれだけ強力なパワーも当たらなければ意味はないよ!」
 一流のエンターテイナーを夢見るフェルトがパフォーマンスで鍛えたバランス感覚は素晴らしく、揺れる船上すら物ともせず上下左右に攪乱していて。
 ……そして。夢見る笑顔の道化師のパフォーマンスは、さらにもう1つ。
「超高速の一撃を喰らえ!」
 マッチョたちを翻弄するように跳び回っていたフェルトが全ての手札を捨てた瞬間、さらに加速。瞬く間に彩り鮮やかな船上の疾風となる。
 フェルトが敵の筋トレとコーチングを上回る速度を得ると同時に、捨てた手札の数だけ戦闘力が向上したアクロバットも、嚆矢(かぶらや)の如く戦場を駆け抜けた。

 忍たちと道化師のパフォーマンスは、始まったばかり。
 狂筋の宴を掻き消さんとする3人の勢いは終始衰えることなく、後続の猟兵たちを大いに鼓舞し、勇気付けたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
コノf03130と
狐姿で参戦
人語ムリ狐鳴き

きゅ~…
コノのお隣、大人しくちょこりオスワリ
おみみぴこぴこ
しっぽぱたんぱたん
混ざるの、ヤだな…なんて
きゅ?
突然掴まれ首傾げるも
たかいたかいと言われれば大喜び
投げられた勢いの儘に
尻尾に<雷火>の雷撃纏わせて
早業【粉砕】叩き込む
きゅ!
すたっ!と華麗に着地すれば
見よ!この!肉体美!!!とばかりに万歳ぽーず!
きゅ?
え?なに?わからない?
きゅ、きゅっヤ!!
この、自慢の冬毛!!……じゃなかった、筋肉!!(もふわぁあ)

敵の動き見切り
隙あり!!と、再び【粉砕】で敵の足場を破壊
きゅヤ!(ふんす!)
戦場にて見せかけの筋肉になど意味はない(きりっ)

攻撃見切り躱すかオーラ防御


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

…………ぇえ、ヤダ暑苦しい
船上を遠目にげんなり、そして溜め息
まあヤらねばヤられる……仕方ないわ、ココは必殺……!
言いつつ狸姿たぬちゃんの首根っこ掴み
「ほうら、たかいたかーい!!!!」
フル怪力で敵目掛けぶん投げる!
投げ慣れてるもの、狙いは外さない(スナイパー)わ
さあ存分に暴れて気を引いて頂戴

投げてすぐ【彩雨】降らせ、海面を道のように凍らせその上を駆け接敵
海面足場に跳び空中戦からの2回攻撃で敵へも【彩雨】降らせ凍らせるわ
継続ダメージでじわじわ体温と生命力奪えば
ポーズ取ってる場合じゃなくなるデショ

鍛えるのは好きにすればダケド
アタシにそんな暑苦しいのは似合わなさ過ぎるのよ!



●狂宴に爆ぜる、狐時々彩ノ雨
「…………ぇえ、ヤダ暑苦しい」
 未だ暑苦しさ100パーセント越えの船上を遠目にし、げんなりと肩を落とした、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、重めの長嘆息を洩らしてまして……。
 そして、其れは1人だけではない。
 虚ろな眼差しのままコノハが足元に視線を移すと、タヌキ――ではなく、愛らしい狐の姿でちょこんと座っていた、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)もまた、似たような感じで、冬毛でさらにモフモフ度がアップした尻尾を、小さく揺らしていて。
「きゅ~…」
 コノハの隣で、さつまが大人しくお座りしたままというのも、何だか珍しい。
 天に向かって伸びた狐耳は相変わらずぴこぴこと動き、自慢の尻尾もぱたんぱたんと左右に揺れているけれど、どちらも全くと言っていいほど、元気と覇気がない。
 まるで、「混ざるの、ヤだな…」と、抗議でもしているかのように……だ。
「たぬちゃん、気持ちはわかるわ……でもね」
 コノハの薄氷色の視線が、再び大艦隊を捉える。
 億が一、大艦隊が渦潮に達してしまった場合。そして、兆が一にでも、サムライエンパイアーに雪崩れ込んでしまったら――最早、筆舌に尽くし難いモノがあーる。
「まあヤらねばヤられる……仕方ないわ、ココは必殺……!」
 まるで、親の仇でも見据えるように鋭く双眸を細めたコノハは、視線を前方に定めたまま、さつまのモフモフ首根っこを、ガシッと掴み上げる。
 冬毛でカサ増ししてるっぽいし、多少荒っぽくなっても問題ないだろう、たぶん。
「きゅ?」
 突然、宙ぶらりんとなったさつまが不思議そうに首を傾げるのと、コノハがとても爽やかな笑みを向けたのは、ほぼ同時。
「ほうら、たかいたかーい!!!!」
「きゅっ!」
 コノ、もしかして、遊んでくれるの?
 虚無から一転。尻尾をばたんばたんと左右に大きく振ったさつまは、大喜び!!!
 ――その刹那。
 さつまの身体が地面すれすれに沈み込み、即座に物凄い勢いで上に持っていかれたと思いきや、空高くぽーんっと全力投球されたあああああ?!?!?!
「さあ存分に暴れて気を引いて頂戴!」
 さつまを掴んだ腕に全ての力を込め、砲丸投げ選手真っ青なフル怪力で高らかにぶん投げてみせたコノハは、青空にキラーンと輝いた1点を満足そうに見上げていて。
 目標地点はいうまでもなく、マッチョの巣窟と化した、大艦隊の船上。
 飛距離は良好。ぶっちゃけて言うと投げ慣れて――否、凄腕のスナイパーというものは、決して狙いは外さないのだ。
「きゅ〜〜」
 一方。晴天に大きく弧を描きながら宙を飛ぶタヌ……さつまも、慣れた様子♪
 投げられた勢いを乗せたまま、冬毛で膨らんだモフモフ尻尾にパチパチと闇色の雷を纏わせると、海上にぽつんと浮かぶ大艦隊を見据えて、一気に急降下。
「きゅっ!」
 甲板に然りと狙い定めたさつまは、着地直前のタイミングで、くるっと身を捻る。
 そして。少し遅れて弧を描いた尻尾に漆黒の雷を乗せ、船上に接触するタイミングで、勢い良く尻尾を叩き込んだ。
「「「ぅわああああああ!!!」」」
 重い衝撃が大艦隊を強く揺らし、黒雷が爆ぜて、マッチョたちが吹き飛ぶ。
 そんな特撮っぽい光景をバックに、すたっと華麗なる着地を決めたさつまは「見よ! この! 肉体美!!!」と、一流の体操選手のような身体を大きく見せる万歳を決めることも、忘れません♪
「きゅ!」
 小さな足でぴたっと身体を支え、微動だにしないさつまは、誰よりも輝いていて。
 その眩しさを前にマッチョたちも護りを固めるのを忘れ、揃って感動の雄叫びをあげてしまうくらい、盛り上がるものがあった。
「素晴らしいッ! あの子は100人に1人の体幹の持ち主なのかもしれない!」
「ああ、滞空時も美しかった。あれはG難度、いや……H難易度だな!」
「ええ、これは鍛えがいがありますね」
「きゅ?」
 ――え? 鍛えがいある? なに? わからない?
 何やら勘違いをしているマッチョたちに、さつまは一瞬だけ戸惑うものの、すぐに自慢の冬毛……じゃなくって、筋肉をアピールするように身体を大きく膨らませる。
「きゅ、きゅっヤ!!」
 もふわぁあと広がる温かな毛並みは、別の筋では歓喜する者が沢山いただろう。
 しかし、今回は相手が悪すぎた。
「なるほど、我々の指導を是非受けたい、そう言っているようだ」
「!」
「お、おおおおお!!」
「!!」
「ああ、筋肉に人も動物も関係ないッ! 我々と一緒に高みを目指して行こう!」
「?!?!」
 ほぼお約束通りと言いますか、迷惑マッチョトレーナーを名乗るだけあって、全然空気を読んでくれませんね。これは怒っていいレベルだぞおおおおッ!
「き、きゅヤ!」
 嬉しそうにじわりじわりと距離を狭めてくるマッチョたちに、さつまの背中と尻尾の毛がブワッと大きく逆立った、その時だった。
「煌めくアメを、ドウゾ」 
 磨いだ鉱石の貌の一対のナイフを鋭く構え、眩しい太陽を背にしたコノハが氷を帯びた無数の水晶針の雨を降らせながら、音も無く着地する。
 先程の全力投球のあと、即座に海面に向けて氷の雨を降らしたコノハは、道のように凍らせた海の上を軽やかに疾駆、最短距離で大艦隊まで距離を狭めていて。
 その後、さつまが惹きつけたタイミングで凍らせた海面を足場に跳躍、さらに見張り台に上がって状況を確認後、頭上から奇襲を仕掛けた。と、いうところだろう。
「くっ、足場が凍ってポージングが取りにくい!」
 再び船上に轟く、阿鼻叫喚。
 けれど、船上に降り注ぐ針雨は止むことなく、続けざまに狙うのは――。
「ふふ、ポーズ取ってる場合じゃなくなるデショ」
 コノハが不敵に唇の端を歪めたのと、490本もなる万色を映す針雨がマッチョたちを執拗に狙い始めたのは、ほぼ同時。
 1つ1つは些細な力でも、彩の雨はじわりじわりとマッチョたちの体温を下げ、内側からもゆっくりと生命力を屠っていく。
 その隙に、マッチョたちの太い足元をぴょんぴょんと搔い潜ったさつまが大きく前進、甲板にずらりと並ぶ砲台の上に移動していた、コノハの隣に並んだ。
「きゅヤ!」
 戦場にて、見せ掛けの筋肉など、意味はないッ!
 ふんすっと鼻息荒くしたさつまは青色のお目目をキリッと細め、後足に力を入れる。
 ――瞬間。高らかに大きく跳躍したさつまは、くるりと1回転。
 そのまま「隙あり!!」と、急降下、強烈な一撃を足場目掛けて見舞うと、近くにあった筋トレマシーンごと、マッチョたちを木っ端微塵に吹き飛ばした。
「うう、さ、寒すぎて、筋肉が硬直す、る」
「せ、説明しよう。体脂肪がほとんどない、我々は、寒さに、と、とても弱い」
「き、気温が下がりすぎても、筋トレの効率は悪くなる、ので、気をつけて、くれ」
 対するマッチョたちは護りを固めようとするものの、寒さに加えて足場が不安定になった状態では、自慢のポージングを決めることすら、叶わない。
「ご教示どうも、鍛えるのは好きにすればダケド――」
 そのチャンスを逃さず、コノハは雷で焦げた甲板を鋭く蹴る。
 短く呼吸を整えたコノハは、ナイフを逆手に持ち構えると、すれ違いざまに一閃。
「アタシにそんな暑苦しいのは似合わなさ過ぎるのよ!」
 ――今日の天気は、狐時々雷、所によって氷を帯びた水晶針の雨が降るでしょう。
 先程まで立ち込めていた不快な熱気と暑苦しさも、万色に煌めく雨が少しだけ洗い流してくれたらしい。
 雨上がりに似た光景が一瞬、映り込む。
 戦場を駆けるコノハの鼻腔を、初めて心地良い海風がくすぐるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
身体は丈夫だけど細っこいわたしは、鍛えるのに良い素材、になるのかなぁ?
でも筋トレとかしたら、大変なことになりそうな気が自分でもするかな。

ま、トレーニングさせられる前に倒しちゃえば良いのかな。
せっかく勇者に選ばれたんだし、がんばっていかないと!

と意気込んで参加しますが、そこはやはりお約束。
貧弱な身体にしっかり目をつけられて、そいやそいや、と筋トレに巻き込まれます。

「え? バーベル? すっごく重そう」

でも受け取ろうとして、手を滑らせ、足の甲へと落っことしてしまいます。
涙目で
「だいじょぶですだいじょぶです……」
と繰り返しますが、身体は正直
【医療安全管理チーム】が発動して、筋トレから助けられますね。


栗花落・澪
【指定UC】を発動
【歌唱】で少し長めの五線譜を物理的に具現化
操り海に乗せる事で一時的に道を作るよ
その上を走って敵陣へ

はい!筋トレしたいです!
お兄さん達筋肉凄くてかっこいいなぁって
僕見ての通り男なのに筋肉無いから…ちょっとでも鍛えたくて
あ、でも心臓弱いので適度なやつね

無邪気にはしゃぎつつ
言外に秘めた意味を訳すなら
手加減してください、それが無理ならはっ倒す
です
伝わるかなー、無理だろうなー

あ、でもこれくらいはできるよ
自分の背よりも大きな★杖を振り回しアピール(実は軽い
話を聞きながら不意打ちで大声量で
あーっ!
と叫び、声量に比例した特大サイズのあーっ!の文字を具現化しぶつける
ごめんUC発動したままでした


ガーネット・グレイローズ
うう、遠目から見ても分かるぞ…甲板の上で筋トレに励んでいるのが。
できれば関わり合いになりたくない連中だが、
今は渦潮を守るために戦わないと。

商船「シルバーホエール号」で出撃。
【ガーネット商会】の船乗りを呼び集めて、
《航海術》《高速泳法》で海を突っ切る!
あまり肉のない私は、連中にとって格好のカモだろう…
「お手柔らかにお願いしますよ」
筋トレに参加するふりをして、敵に接近。
「その前に、少し準備体操をしないと」
私に接触してきた瞬間、合気道を応用した宇宙柔術《グラップル》で
トレーナーを投げ飛ばす!《念動力》も使えば、
威力はさらに上乗せされるだろう。
「すまない、論理的でないトレーニングはやらない主義だ!」



●マッスル:インポッシブル
「うう、遠目から見ても分かるぞ…甲板の上で筋トレに励んでいるのが」
 先に向かった猟兵たちの奮闘もあり、船上を包む熱気は徐々に衰え始めている。
 けれど、乱戦そっちのけに筋トレを続けるマッチョたちに、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、ドン引き……否、戦慄すら覚えていて。
 その近くでは、見た目はどう見ても松葉杖な勇者の剣を携えた少女、菫宮・奏莉(血まみれ勇者・f32133)が、揺れる足場で踏ん張ろうとし、足首を捻っていた。
「身体は丈夫だけど細っこいわたしは、鍛えるのに良い素材、になるのかなぁ?」
 と、言っても、奏莉はご覧の通り、天性の不幸呼び寄せ体質のドジッ子。
 立ち上がれば頭をぶつけ、走っても歩いても躓き、掴まろうとすれば手を滑らせ切り傷擦り傷etcな自分が筋トレに巻き込まれてしまった場合、大変なことになってしまうのは、誰が見ても明らかでして。
「うーん、手加減してくれるかなー、無理かなー」
 当たるも八卦当たらぬも八卦、どちらに転がってもオールオッケー?
 琥珀色の瞳を瞬かせ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、海上に向けて唄を紡ぐ。
 遠くまで良く響く、透明感のある心地良い歌声と音色は、ただの唄ではない。
 ――彩音(ボクノオト・キミノオト)。
 メロディや言葉を実体化させて自由に操ることができる、澪のユーベルコードだ。
「教えてあげる。世界に溢れる鮮やかな音!」
 歌声から具現化した少し長めの五線譜が束ね合うように集い合い、海面に路を作る。
 澪がその上を軽やかに疾駆すると、奏莉も辿々しい足取りのまま追い掛けた。
「できれば関わり合いになりたくない連中だが、今は渦潮を守るために戦わないとな」
 最近になって、この世界の海上の交易を活性化させるための事業を始めたガーネットにとっては、決して些細な事ではない。
 2人の背中を見届けたガーネットの背後には、いつの間にか100人に近いグリードオーシャンの船乗りを乗せた商船が姿を現し、主人の合図を静かに待っている。
 ガーネット商会の商船『シルバーホエール号』と、その乗組員たちである。
「さあ、仕事だ。出発するぞ! 錨を上げろ!」
 ガーネットの号令と同時に、シルバーホエール号が悠々と出航する。
 彼らにとってこの海は庭のようなもの。巧みな航海術と乗組員たちの支援を受けた商船は瞬く間に海上を疾走、大艦隊まで接敵する。仲間の仕事にガーネットは満足そうに唇を緩めると赤い髪を風になびかせ、マッチョだらけの船上に飛び乗った、が。
 そこに広がっていたのは、何とも言えない光景だった。
「はい! 筋トレしたいです! お兄さん達の筋肉凄くてかっこいいなぁって」
「嬉しいな、キミは上腕三頭筋の美しさをわかってくれるのかい?」
「二頭筋の方が知られているが、腕を太くする近道は三頭筋を鍛えることだな!」
 一足早く到達していた澪の周りには、既に多くのマッチョたちが集まっている。
 喜びの余りに思い思いのポージングを決めるマッチョたちの本質はトレーナー、褒められること以上に、教えを求める者が現れたことが、本望だったのだろう。
 そんな中。一瞬の隙を突いて動こうとした奏莉が、甲板の隙間に躓き――転んだ。
(「せっかく勇者に選ばれたんだし、がんばっていかないと!」)
 天性の不幸体質でも、筋トレをさせられる前に倒してしまえば大丈夫、なはず!
 口元をぎゅっとキツく結んだ奏莉が再び足音を忍ばせようとした瞬間、案の定お約束な光景が待っていた。
「むっ、あの女の子は怪我でもしているのか?」
「なんということだ!! ならば、我々がやることは1つ――!」
「筋トレは怪我の予防にも効果的、みっちり鍛えましょう!!」
 貧弱な身体に入院着、顔に包帯を巻いた小柄な奏莉は、マッチョだらけの船上ではとても目立ってしまい、すぐに目を付けられてしまったのも、無理はない。
(「助けたいのは山々だが、今の所は大丈夫そうだな」)
 音速でマッチョたちに担がれた奏莉が、そいやそいやと筋トレマシーンの前に連行されていく中、ガーネットにもマッチョたちの熱い視線が注がれていて。
 澪と奏莉より背丈はあるものの、細身で肉が付いていないガーネットも、マッチョたちの格好のカモになっていたようだ。
「お手柔らかにお願いしますよ」
「おお、キミもか! 共に6つに割れた腹筋(シックスパック)を作ろう!」
 ある意味、3人揃ってカモがネギを背負った作戦だったのは、幸運とも言えよう。
 筋トレに参加する振りをして近づくガーネットに対しても、先行隊と交戦したと思われるマッチョたちすら、警戒する素振りを見せなかったのだ。
 誰もが虎視眈眈と隙を伺いながら、筋トレwith迷惑マッチョトレーナータイムに入る中、最初に動いたのは、澪だった。
「僕見ての通り男なのに筋肉無いから…ちょっとでも鍛えたくて」
「それなら全身を強化できるプランクがいい。まずは1分キープ、インターバルを10秒挟んだあと、もう5セットほど――」
「あ、でも心臓弱いので適度なやつがいいです」
「それは難しいな。筋肉は通常よりも高い負荷を掛けることで成長し、肥大化(パンクアップ)する。なので余った時間も筋トレに使うのは道理、それ以外に何に使うのだッ!」
 えーと、呪文というか呪詛?
 マッチョたちに囲まれながら澪は無邪気にはしゃいでいたけれど、言外に秘めた意味を訳すなら「手加減してください、それが無理ならはっ倒す」である。
 ここまで付き合えば素人目線でもわかる、奴らは手加減する様子が全く無いッ!!
「あ、でもこれくらいはできるよ」
「おおっ!!!」
 言葉で分かり合えないなら、あとは脳筋(物理)で語るしか道は無いッ。
 澪は自分の背丈よりも大きな杖を手にすると、頭上に高く掲げながら旋回させる。
 実は、とっても軽いというのは内緒♪
 けれど、古武道のように巧みに大きな杖を上下左右に振り回す澪の姿はとても様になっており、マッチョたちも「素晴らしい!!」と、次第に前のめりになっていく。
 その好機を逃さず一気に距離を詰めた澪は、ほぼ至近距離から不意打ち気味の大声量を解き放った!!

「「「「「あーっ!」」」」」

 澪が腹の底から絞り出した全力の大声量が物理的に具現化、自身の倍もある特大サイズの「あーっ!」は、勢い良くマッチョたちに激突ッ、次々と吹き飛ばしていく。
「ごめん、ユーベルコード発動したままでした」
 青空にキラーンと煌めく幾つものお星さまを、澪は満足そうに見上げていて。
 そして、マッチョたちにとっての予想外の物理と脳筋(暴力)による乱舞は、これで終わってはくれなかった。
「なかなか筋がいいな、次はこれを持ち上げながらスクワットしてみようか」
「え? バーベル? すっごく重そう」
 直前の惨状に気が付いていないのだろう、奏莉の周囲では未だに筋トレが続行中。
 ……でも、華奢な女の子にバーベルスクワットを薦めるのは、やり過ぎなのでは?
「がんばります」
 これも世のためグリードオーシャンの平和のため、奏莉が健気にバーベルを受け取ろうとした瞬間、つい手が滑ってしまう。
 ――ズドォォォォン。
 重みのある衝撃がドスンッと落ちた先にあったのは、奏莉の足の甲。
 しかも運が悪く、冒頭で捻った足にバーベルの重りが乗っかってしまったのだ。
「だ、大丈夫か?」
「だいじょぶですだいじょぶです……」
 心配そうに声を掛けるマッチョに奏莉は涙目で頷きながらも、何度も「だいじょうぶです」と、うわ言のように繰り返す。
 けれど、身体はとっても正直だった。
「でも、これで、筋トレから助けられますね」
 ――医療安全管理チーム(イリョウアンゼンカンリチーム)。
 奏莉を護るように現れたのは、メスを手にしたお医者さんと、注射器を煌めかせた看護師たち。代償で奏莉自身が戦えなくなるものの、彼女と同じ強さを持つ医療チームは筋トレに捉われた者たちを救うべく、一丸となって船上を駆け回る!
「な、何事だ!!」
 流石に、今度は脳筋なマッチョたちも異変に気がついたらしい。
 ……もしかして、この女性も彼らの一味かもしれない。マッチョたちの不安そうな視線が、ガーネットにも注がれる、が。
「キミは何をしてるんだ?」
「トレーニングの前に、少し準備体操をしないと」
「そうだね、筋トレの前に軽く身体をほぐすのも、とても大切――ぅおっ!!」
 騒ぎの中。黙々と準備体操をしていたガーネットに近づいたマッチョの身体が突然、宙に大きな弧を描く。
 ――否、合気道を応用した宇宙柔術《グラップル》を用いたガーネットが、隙の無い動きで投げ飛ばしたというのが、正確な言い方だろう。
「すまない、論理的でないトレーニングはやらない主義だ!」
「「「――なんだとおおおおお!!!」」」
 ガーネットは静かに双眸を細め、筋トレ志願者から海上の赤き風に変貌する。
 ようやく騙されたと気付いたマッチョたちは、揃って声にならない悲鳴をあげるけれど、全てあとの祭り♪
「「「あーっ!」」」
「みなさん、お願いします!」
 隙だらけの所を澪の実体化した声と奏莉の医療チームに薙ぎ払われ、運良く逃れることが出来ても、念動力で更にチカラを上乗せした、ガーネットがぶん投げる。
 気が付けば、船上のマッチョたちは随分と数を減らしており、大艦隊の進行速度も大幅に減少していたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
【鍛】

筋肉は正義だ(雅な微笑み
刀振るうにも嫋やかに舞うにも美しい衣装纏うにも、筋肉は不可欠
暇さえあれば俺も筋トレをしているな(実は脱いだら凄い雅な筋肉ゴリラ

ふふ、八雲は今日も頼もしいな(ひらり颯爽と水着になる雅なゴリラ
伊織も参ろう、楽しみだな(微笑み

確かに遠泳は筋肉が喜びそうだ
うむ、準備運動も確りと(きり
まずは敵艦まで泳いで征こう(脳筋

敵の鍛錬指南には興味深く楽しく耳傾け
ふむ、成程
だが俺は見た目ではなく使える筋肉を鍛えたいので、相容れないな
UCで強化後、筋肉はこう使うものだ、と
筋肉生かし、舞う様に素早く肉薄し刀の一閃
ふふ、八雲はいつも元気で良いな
伊織も、手始めに一緒に10セットどうだ?(微笑み


重松・八雲
【鍛】
此処は正攻法で行く迄
気合で泳ぎ気合で登り気合で沈める作戦で参ろう!
(着物脱ぎ捨て水着で仁王立ち!)

何、気合と腕力で乗り越えられぬものはない!
雅さと力強さを兼備した清史郎殿も一緒となれば殊更に!
伊織は及び腰では押し負けるぞ、清史郎殿を見習わぬか!

では先ず肩慣らしに遠泳じゃな!此も修行の内よ!
(元気良く準備運動しUCで力高めつつ敵艦へ!)

鍛練欠かさぬ姿勢は敵ながら天晴!
然し其は此方も同じ――逆にお主等を鍛えてくれよう!
(勢い良く金剛と拳で足場壊し、敵のぽーじんぐ体勢崩し)
ふらつくとはなっとらんのう!
活を入れてくれよう!(覇気込め鉄拳制裁!)
清史郎殿も流石、堂々たる躍動感!
伊織は活が必要かの!


呉羽・伊織
【鍛】
嗚呼…鍛練は大事だネ
でも気合と腕力頼みって作戦どころか唯の脳筋…!

あと俺は腕力より速度勝負派っていうか(地味に腕力弱めでツライ)
この絵面は誰得てか地獄てか公開処刑っていうか!(やたら体格良い水着に挟まれくらり)
うう(味方の威勢と笑顔に既に押し負けた感)

俺は潜水して忍び寄って何とかするから二人は思い切りドーゾ…って聞いてないな!(始まる準備体操に遠い目)
もうどうにでもなれ☆

速度奪われたら筋肉で(主に視覚と精神が)やられる…もうやられる前にやるしか…!
UCと麻痺毒乗せた得物駆使し
手早く先制と2回攻撃重ねむさい筋トレ拒否
ウン、二人は生き生きしてて何よりダヨ(一人だけ必死)
てか二人して逆指南!?



●ドキッ☆脳筋だらけの遠水日和
 海上の戦いは終始猟兵たちの優勢で進行、周囲の陽炎のような熱気も殆ど消えており、大艦隊自体の速度も徐々に減速をし始めていて。
「これは好機だな」
 まさに、千載一遇のチャンス。
 あとは如何にして海を渡ろうかと、呉羽・伊織(翳・f03578)が【鍛】の仲間に視線を移すと、わしに考えがあると、清々しいまでの眼差しを浮かべた、重松・八雲(児爺・f14006)が、半歩前に歩み出る。
「ならば、此処は正攻法で行く迄――」
 厳つい見た目に反して、少年のように無邪気に笑ってみせた八雲は、己の着物の襟にゆっくりと触れる。
 そして、勢い良く着物を脱ぎ捨てると、その下にあったのは、年齢を感じさせぬ鍛え抜かれた色黒の肌と、墨色に白波が刻まれたハーフパンツ――水着姿だった。
「気合で泳ぎ、気合で登り、気合で沈める作戦で参ろう!」
「なんでそうなるの!?」
 水着姿で仁王立ちしたまま、楽しそうに破顔する八雲から、伊織は助けを求めるべくもう1人の仲間――筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の方を見やる、が。
「ふふ、八雲は今日も頼もしいな」
 あ、なんだかとっても嫌な予感。
 物腰柔らかに微笑む清史郎も同じように着物の襟に触れ、ひらり颯爽と水着姿に!
 青天の下に晒された肉体美は、先程までの雅な雰囲気と反して、まるで研ぎ澄まされた大太刀のように美しく、よく鍛え抜かれている。
「筋肉は正義だ」
 一点の曇りなき晴れやかな笑みを返した清史郎は、実は脱いだら凄いゴリ……ゲフン、どうやら着痩せするタイプのようでして。
 既に状況についていけず唖然としていた伊織に、清史郎は大らかに微笑んだ。
「刀振るうにも、嫋やかに舞うにも、美しい衣装纏うにも、筋肉は不可欠――」
「待て、その爽やかな顔で、その先を言うのは止め――」
「暇さえあれば、俺も筋トレをしているな」
「嗚呼…鍛練は大事だネ」
 雅な笑みのまま、上腕二頭筋をグッと持ち上げる清史郎に、伊織はさらに絶句。
 そして、もう1人。筋肉ゴリラがいることを、皆忘れてはいけない。
「何、気合と腕力で乗り越えられぬものはない!」
 雅さと力強さを兼備した清史郎に背中を後押しされたのか、八雲は嬉しそうに白い歯をみせておりまして。
(「でも、気合と腕力頼みって、作戦どころか唯の脳筋…!」)
 前門の虎(迷惑マッチョトレーナ)に、後門の狼(脳筋ゴリラ)。
 この絵面は誰が得するのだろう、この時点で混ぜたら危険と言う名の地獄では?
 いやはや、どちらにしても、公開処刑じゃないですかあああああッ!!!
「伊織は及び腰では押し負けるぞ、清史郎殿を見習わぬか!」
「いや、俺は腕力より速度勝負派っていうか」
 言外に秘めた意味を訳すなら「地味に腕力弱めでツライ」だけど、伊織は知っている。
 この脳筋たちに勝てる見込みが、自分には全くと言っていいほど、皆無だということに――ッ!!
「伊織も参ろう、楽しみだな」
「うう」
 八雲の威勢と清史郎の雅な微笑に押し負けた伊織は、渋々と水着に着替える。
 流れる黒髪が色白の肌に映え、細身でも一寸の無駄が無い伊織の身体は研ぎ澄まされた刀のよう。
 だからこそ、左右の体格の良い水着の間に挟まると言うのは、何というべきか、くらりと視界と思考が、一緒にボヤけるものがあった。
「俺は潜水して忍び寄って何とかするから二人は思い切りドーゾ…って聞いてないな!」
「では、先ず肩慣らしに遠泳じゃな! 此も修行の内よ!」
「うむ、確かに遠泳は筋肉が喜びそうだ」
 伊織の視線の先には、年齢を感じられない動きで八雲が元気良く身体を曲げ伸ばし、口元をきりっと引き締めた雅なゴリ……じゃなくって、清史郎も舞うように全身の筋肉をほぐし、揃って準備運動をしてまして。
「刮目せよ!」
 準備体操を終えた八雲は全身に堅牢な守護の力を纏うと、真っ先に大艦隊向けて力強く飛び込んでいく。その後を追う清史郎も疑いの余地もなく「まずは敵艦まで泳いで征こう」と笑みを零し、海面に向けて優美な弧を描いた。
 終始激しい水飛沫と速度を保ったまま、脳筋たちは瞬く間に点になっていく。
 1人ぽつんと残された形になってしまった伊織は、遠い目を浮かべていて……。
「もうどうにでもなれ☆」
 最早、諦めを通り越して菩薩の笑みとなっていた伊織も、静かに海中に潜っていく。

 ――そして、数分後♪

「何でこうなった」
 気配を隠しながら船上に上がった伊織の視界に入ったのは、マッチョたちの暑苦しい筋トレとコーチングに、興味深く楽しげに耳を傾けている、清史郎の姿でして。
「ふむ、成程。つまり、ぱんくあっぷとやらに全てを費やす、と」
「その通り! 余った時間は全て筋トレに使う、それが強さに変わるのだ!」
 ――筋トレをすると強くなる? 否、聞く限りでは身体付きと体幹の強化では。
 その言葉に引っ掛かりを感じたのだろう。静かに瞼を落とした清史郎は暫し黙すると、ゆっくりと目を見開き、蒼地に桜舞う雅な扇を、はらりと広げる。
「俺は見た目ではなく使える筋肉を鍛えたいので、相容れないな」
「そうか。ならば、筋肉と筋肉で語り合うまでッ!」
「その言の葉、然りと承った。開き咲け、零れ桜」
 ――開花桜乱(カイカオウラン)。
 もう1度、清史郎がひらりひらりと扇を返せば、蒼天に降る雪の如く桜吹雪が舞う。
 暑苦しい世界を幻想的な花弁が幾つも舞い落ちる中。清史郎は静かに刀の柄に触れ、瞬時に濃口を切った。
「筋肉はこう使うものだ」
 全身の筋肉をバネにして強く鋭く甲板を蹴った清史郎は、舞うような動きで間合いを詰めあげると、瞬時に懐に滑り込む。
 そのまま半歩踏み込んで肉薄し、軸足に体重を乗せたまま鋭く刀を横に奔らせた。
 ――一閃。
 強靭な筋力で支えられた清史郎の体幹には一切のブレはなく、真っ直ぐ伸びた太刀筋が敵の堅牢な筋肉を易々と斬り裂いてみせると、周囲の空気がざわりと凍りつく。
 1人だけ別の意味で「何でここだけガチのシリアス調? 意味が分からないヨ」と、ゲンナリしていたけれど、彼の名誉のため、誰なのかは割愛しておこう。
「清史郎殿も流石、堂々たる躍動感!」
 全身の筋力を隈なく使う清史郎の所作の美しさに多くのマッチョが戦慄する中、別のマッチョと対峙していた八雲の豪快で楽しそうな笑い声が、すぐ近くまで迫るように響き渡ってきて。
 伊織が初めに清史郎しか見つけられなかった理由は、八雲がこの暑苦しい風景に溶け込んでいたからであろう、たぶん。
「フン、筋骨隆々! それ以外に何が必要だ?」
 全身の筋肉を余すことなく使って自身を堅牢な盾に変えたマッチョを前に、しかし八雲は臆することなく破顔一笑し、さらに一歩前に踏み込む。
「鍛練欠かさぬ姿勢は敵ながら天晴! 然し其は此方も同じ――逆にお主等を鍛えてくれよう!」
「我々を鍛える? 何を言って――ぅおおおおお!!」
 ニヤリ不敵に口元を歪めた八雲は、不屈の意志と名を関する連珠を固く握り締めると、そのまま拳ごと勢い良く甲板に叩き付ける。
 鈍く重い超弩級の衝撃が甲板にビリビリと浸透していく様は、大地震のよう。
 その中央でしっかりと地面に両足を踏み固め、堂々とした仁王立ちを決めていたのは、唯1人――八雲のみッ!
「ふらつくとはなっとらんのう」
 足場を崩されたマッチョたちが揃って態勢を崩す中、楽しそうに地面を強く蹴った八雲は地を舐めるように身を低くして加速、敵の間合いに瞬時に肉薄する。
「此のまま活を入れてくれよう!」
 さらに、駄目押しする勢いで達人の域に練り上げた闘気を拳に上乗せした八雲は、手前の敵の鳩尾目掛けて腰を落とすと、真っ直ぐ拳を突き出した。
 ――鉄拳制裁ッ!
 その重く鈍い衝撃は直撃を喰らったマッチョだけでなく、すぐ後ろにいた者も含めて纏めて吹き飛ばし、次々とお星さまに変えていく。
「ウン、二人は生き生きしてて何よりダヨ」
 なぜ、自分1人だけが必死な形相になっているのだろうと、伊織は強く思う。
 そんな深淵の闇に堕ちかけたのも一瞬。己の技能を一気に高めるべく呼吸を整えると、麻痺毒を乗せた暗器を構えた。
「――何処までも飄々と」
 ――陣風(ハヤテ)。
 其の名の通り、速さに関わる技能を一気に底上げした伊織は誰よりも早く先駆けると、迫り来る筋トレを拒絶する迅速さで刃を繰り出し、幾つもの斬撃を重ねていく。
「もうやられる前に、やるしか…!」
 自慢の速度が奪われてしまったら最後、視界と精神が無事では済まなくなるだろう。
 ――ならば、やられる前にやる!
 その一心で双眸を鋭くした伊織はさらに加速。一迅の鋭さを持って眼前に迫るマッチョたちを纏めて薙ぎ払った、その時だった。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオン。

「――むっ?」
 後続の猟兵が船底を狙ったのだろう。船の下から爆発音が聞こえて来るのと同時に、大量の水が流れ込んで来るような衝撃が、八雲たちの足元にも伝わってきて。
「粗方片付いたし、ここが引き際だな」
 軽く周囲を見回すと、船上に残っていた猟兵たちも、撤退の準備を始めている。
 ……嗚呼、ようやく悪夢が終わる。
 伊織は胸の内で安堵に似た溜め息をそっと零すと、緩みかけた口元を引き締める。
 その判断はとても真っ当で的確だったけれど、左右の脳筋のみなさまは……。
「伊織は活が必要かの!」
「ふふ、八雲はいつも元気で良いな、伊織も手始めに一緒に10セットどうだ?」
「二人して逆指南!?」
 この状況を心の底から楽しんでいた脳筋2人は、迷惑マッチョトレーナーたちよりも遙かに強く、逞しく、美しく。
 ――そして♪
 気合いが僅かに足りなかった1名に対しては、容赦無しのスパルタでした、合掌。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ある意味、私とは対極に位置する存在の方々ですが…
彼らの己が肉体…生命に掛ける信念が尊い物でも、この世界の安寧の為に通すわけにはいきませんね

…いえ、筋トレを強要するなら尊くはありませんね

水中用装備を装着し水中戦
ランスチャージ水中機動UCで船底を破壊
ワイヤーアンカーで甲板に跳び移り

船底を破壊いたしました
皆様には選択をして頂きます

ポージングを解き私と戦いつつ泳いで生を勝ち取るか
沈みゆく最期の時まで自負と誇りを胸に己が筋肉への愛を貫くか!

(戦闘時はセンサーでの情報収集で船の揺れ見切り剣盾での近接戦)

皆様の覚悟、騎士としてしかと見届けました

私の、敗北です

…やはり筋肉は重いのか直ぐに沈みましたね


菱川・彌三八
(半裸)

いや、脱いだ方が善いのかと思ってよ…

然しすげェな
此奴はよ、皆日に焼けてやがるが、其れが決まりかい?
笑うのも?
ふうん
にしても、色んな身体の見せ方があるもんだなァ
動かねェなら手控えしとこ
やい、動くんじゃねェや
お前ェ背見せな、そうそう
山の如しだな、善いねェ
足をぐ、とこう…其れ
次はちょいと此奴を持ち上げて…

いやあ良いもん見た…

…はっ
危ねェ、帳面埋めて帰ぇるとこだった
ちいと偲びねェが仕方ねェな…

最期によ、前から聞きたかったんだが…何食ったらそんねェになるんでぇ?
たん…ぷろ…何て?
肉は食わねェが、豆腐は、うん
見目はお前等にゃ及ばねェが、力は出るぜ
そら、こんな風に
軽々投げ飛ばして見送る
さらば筋肉



●狂筋の宴の終戦、マッチョたちの最後の願い
「ある意味、私とは対極に位置する存在の方々ですが……」
 迷惑マッチョトレーナーの巣窟と化した大艦隊での戦いも終わりを迎えている今、敵の数もだいぶまばらになっている様子。
 ――ならば、あとは『最後の駄目押し』を仕掛けるだけ。
 そのための水中用装備を搭載した、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)からは、甲板の様子をはっきり伺うことは出来ないものの、マッチョたちが己の肉体と生命に掛ける信念が、彼らにとって尊いものであることは、少なからず理解したいと――。

「「「筋肉隆々ッ! それ以外は何もいらぬわあああ!!」」」
「「「戦う暇があるなら、筋トレしろおおおお!」」」
「「「ぅおおおおお、みんな俺の筋肉を見てくれええ!!」」」
 
「…いえ、筋トレを強要するなら尊くはありませんね」
 沈黙。そしてすぐに前言撤回。
 自分の同情は全く勘違いであったと、トリテレイアは小さく首を横に振る。
 それに、何となく彼らの押し付けが強くなっている今、この世界の安寧のためにも一刻でも早く、大艦隊の進行を止める必要があるだろう。
「実際の戦場の騎士は、道具や手段を選ばないものです」
 密かに水中に潜ったトリテレイアは、すぐにランスチャージを機動。
 センサーで水中の情報を集めながら船の揺れと動きを把握、瞬時に向きを変える。
 トリテレイアが進む先にあったのは、――大艦隊の船底。
「船底を捕捉、破壊を開始します」
 普段は弱者や仲間を護る清廉な優しき騎士として振舞っているけれど、時に目的達成のために手段を選ばぬ二面性を持つのが、トリテレイアという騎士。
 船底に接近したトリテレイアは四肢や手のありとあらゆる武装を解放、単純で重い超弩級の一撃を、船底目掛けて叩きつける。

 ――そして。時間は船底が破壊される、ほんの少し前に遡る。

「然しすげェな此奴はよ、皆日に焼けてやがるが、其れが決まりかい?」
「特に決まりはないが、普通の肌よりも身体の凹凸が明確になるので、より格好良く筋肉を魅せることができる! なので、焼いている者が多いな!」
 郷に入れば郷に従えの心算で半裸になった、菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、分厚い帳面と絵筆を手に、船上に残るマッチョたちに色々聞いている様子……?
「笑うのも?」
「我々はボディビルとは異なるが、筋肉を鍛えているものは清潔感と爽やかさを大切にしているものは多いな!」
「ふうん」
 彌三八は一瞬だけ思案して考えを纏めると、帳面の横に一文を付け加える。
 それにしても『まっちょ』と言うモノには、様々な身体の見せ方があって面白い。
「折角の機会だ、動かねェなら手控えしとこ」
 猟兵たちと交戦している間も隙を見つけては思い思いのポージングを取るマッチョたちに、彌三八は半ば呆れながらも、彼もまた絵筆を動かす手を止められずにいて。
「やい、動くんじゃねェや、そこのお前ェ背見せな、そうそう」
「憎坊筋のことか? ならば、このポージングで」
「山の如しだな、善いねェ。次は足をぐ、とこう…其れ」
「ふむ、ハムストリングスは、この角度が1番……」
「へぇ…善いねェ、次は」
 彌三八は速写画の要領で躍動感あふれる肉体美を、次々と帳面に描いていく。
 そして「出来た」と短く告げると、帳面を覗いたマッチョたちから歓声が上がった!
「おおおお、素晴らしい躍動感だ!」
「私の三角筋から前腕屈折群までの部位も、ぜひ描いてくれ!」
「ぜん…わん…腕か? なら、ちょいと此奴を持ち上げて……」

 ――10分後♪

「いやあ良いもん見た……」
 半分まで埋め尽くした帳面に彌三八は至極満足げに口元を緩ませ、はっと気づく。
 己がこの大艦隊に乗り込んだのは帳面を埋めるためではない。マッチョたちを駆逐して大艦隊の進行を止めるというのが、今回の重要ミッションであーる。
「危ねェ、帳面埋めて帰ぇるとこだった」
 ふと、彌三八が顔を上げると、マッチョたちの期待に満ちた視線が眩し過ぎて。
 皆自慢の筋肉を描いて貰いたいのだろう、正直偲びないところもあるけれど、此ればかりは仕方がない。
 最後に1つだけ聞いたら『お開きだ』と割り切った彌三八は、淡々と口を開いた。
「前から聞きたかったんだが…何食ったらそんねェになるんでぇ?」
「主にプロテインだな! 他には鶏肉と卵なども――」
「たん…ぷろ…何て?」
「たんぱく質のことだ! 筋トレの効果を高めるのに、とても効果的なのだ!」
「肉は食わねェが、豆腐は、うん」
 ならば、食事は今迄通りで善いかねェと、彌三八は思う。
 同時に。全身を鳳凰の刺青で覆って戦闘力を大幅に向上させた彌三八は、瞬時に眼前のマッチョの前襟と腕を掴み取ると、右脇に入り込んで身体を回転させた。
「見目はお前等にゃ及ばねェが、力は出るぜ」
 ――そら、こんな風に。
 背負い投げの要領で軽々と投げ飛ばされたマッチョは、瞬く間にお星さまになる。
 息継ぐ間もなく2体目の懐に潜っては投げ、3体目は両手で豪快に投げ飛ばす。
 そして、そのまま4体目と対峙しようとした、その時だった。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオン。

 船の下から重く鈍い轟音が響くのと、水中にいた筈のトリテレイアが、ワイヤーアンカーで甲板に跳び移ってきたのは、ほぼ同時。
 彼は彌三八とマッチョたちの間に立つと、トンデモないことを告げたのだッ!
「船底を破壊いたしました、皆様には選択をして頂きます」
「「「な、なんだってええええええ?!?!」」」
 筋肉は脂肪よりも重くて水に沈みやすい性質を持っているため、沈没イコール死に直結するということを知らないマッチョは、此処にはいない。
 冷や汗をダラダラと流すマッチョたちの前に、トリテレイアは指を1本立てた。
「1つ、ポージングを解いて私と戦いつつ、泳いで生を勝ち取るか」
 沈黙が流れるまま、誰も答えない。
 一拍置いて、トリテレイアは2本目の指を立てる。
「それとも、沈みゆく最期の時まで自負と誇りを胸に、己が筋肉への愛を貫くか!」
 こちらの問いにも重い沈黙が支配しようとし……でも、そうはならなかった。
「フッ、全ての時間は筋トレのために使う、それ以外に何があるッ!」
「筋肉は裏切らない。なので、我々も我々の筋肉を信じてみせるッ!!」
「筋骨隆々! それ以外に何が必要なのかい?」
 シニカルな笑みを浮かべ、船上に居る全員が伸び伸びとポージングを決める。
 ――己が筋肉への愛を貫く。それが自分たちの総意で、答えだとも言うように。
「その解答で間違いありませんか」
 トリテレイアが告げると、誰もが黙したまま、穏やかな笑みを浮かべていて。
 沈黙という名の肯定である。
「我々からも最後に1つ……そうだな、キミに頼みがある」
「ん、俺かぃ?」
 成り行きを見守っていた彌三八が己を指差すと、マッチョは二つ返事で頷く。
「今この瞬間で魅せる最高の筋肉とポージングを、時間が許すまで描いて貰いたい」
「――!」
 マッチョたちの言い分に、嘘偽りは見られない。
 彌三八が黙り込んだのも一瞬、即座に帳面と絵筆を手に取ると、然りと頷き返す。
「俺はただの売れねェ絵描きだが、然りと埋めて帰ぇるぜ」
「ありがとう」
 固い握手を交わした2人の決意に、トリテレイアは1人静かに踵を返す。
「皆様の覚悟、騎士としてしかと見届けました」
 一瞬だけ沈黙が流れ、すぐに紡がれた言の葉は、短い呟きにとても良く似ていて。
 けれど、何所か心に残るような、余韻があった。
「私の、敗北です」

 時刻は夕刻を迎えた頃。
 最後にグリモア猟兵が待つ小型船に帰還したトリテレイアと彌三八は、先程まで自分たちが立っていた船上があった海上を、ゆっくり振り返る。
 そこに陽炎の如く熱気を纏い、豪雷に似た雄叫びを轟かせる大艦隊の姿はない。
 船底を破壊された船は鉄屑に等しく、あっという間に沈んでしまったのだから。
「……やはり筋肉は重いのか、直ぐに沈みましたね」
「ああ、最後に善いもん拝ませて貰ったぜェ」
 ――さらば筋肉、ありがとう筋肉ッ!!
 迷惑マッチョトレーナーたちの筋トレ愛は、半分にトラウマを与え、もう半分には二つとない思い出を残してくれたのも事実。
 そして。グリードオーシャンを巡る戦いも、そろそろ佳境を迎える頃だろう。
 道連れにしてくれたマンゴーコックを簀巻きにした猟兵たちは、帰路に向かう船の中で思い思いの短い休息(インターバル)を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月14日


挿絵イラスト