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羅針盤戦争〜コート・オブ・アームズ

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ

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●一の王笏
 七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリードは、見よと告げる。
 その視線の先に在るのは『蒼海羅針域』―――コンキスタ・ブルー。遂に猟兵達は七大海嘯の拠点を示す羅針盤を手に入れた。
 かの『王笏』たるカルロス・グリードは七大海嘯に数えられながらも特殊な存在である。彼こそがグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラ。
 例外的に8つ本拠地を有し、猟兵達が勝利を目指すためにはこれら全てを制圧しなければならない。

 そのうちの一つ、『一の王笏』たるカルロス・グリードが、桜の花弁舞い散る島に降り立つ。
 季節外れの桜。
 それを猟兵達は知っている。この島に咲く桜は幻朧桜。サクラミラージュより落ちてきた島なのであろう。
 花弁を払い、仕立ての良いスーツに身を包んだカルロス・グリードは自嘲するように笑った。
「多世界侵略船団コンキスタドールが、逆に他者の侵略を許すとは」
 皮肉である、と彼は息をついたが取り乱した様子もなかった。
 その体には紋章が輝く。それもまた猟兵たちにとっては知るものである。そう、ダークセイヴァー世界に存在する寄生虫型オブリビオン。
 それは与えられた紋章によってオブリビオンを超絶為る強化をもたらすものである。

「いいだろう。来るがいい、猟兵たちよ。我が直々に相手をしてくれよう。そして、知らしめるとしよう。貴様たちが来訪する『渦潮』を破壊し、我らこそがコンキスタドールであると。侵略を持って証明しよう。お前達にも侵せぬものがあると」
 カルロス・グリードの胸に輝く紋章が凄まじい重圧を伴って、島へと迸る。
 それはこの島に住まう島民たち全ての意識を刈り取り、人々を昏睡させる。それは彼自身が戦いを楽しんでいる証左であった。
「この戦いにおいて野暮はよそう。我は王故に小細工など要らぬ。猟兵、お前達が懸念する人命など我が求める秘宝に比べれば、塵芥よ」

 余計な心配をしなくてもいいと。
「来い。そして、この先端を持って我は示そう。貴様らには滅びの道しかないのだと」
 王である自負があるからこそ、患うものなどなく、さりとて猟兵に負ける気などさらさらないというように、その凄まじき力の一端を示すのだった――。

●羅針盤戦争
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。グリードオーシャンにて『蒼海羅針域』を巡る大きな戦いが引き起こされる島の一つへと赴いていただきたいのです」
 彼女の瞳には緊張が走っていた。
 それもそのはずである。彼女が予知した島の危機。当然、七大海嘯のうちの一つ、そのコンキスタドールが現れたということは集まった猟兵たちにも察することは簡単であった。

 であれば、いずれの七大海嘯であろうかというのが、これより彼女の口から語られるはずなのだ。
「……幻朧桜、サクラミラージュより落ちてきた島に現れたのは『王笏』……オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードです」
 オブリビオン・フォーミュラ。
 それは世界を滅ぼすオブリビオンの名である。言うまでもなくこれまで猟兵達が戦ってきたオブリビオン・フォーミュラは、どれもが強敵と呼ぶには生ぬるい者たちばかりであっただろう。
 未だ羅針盤戦争は始まったばかりである。けれど、現れたのは『王笏』である。

「正確には『一の王笏』と呼ばれるカルロス・グリードなのです。オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードは他の七大海嘯と違い、8つの拠点を持つコンキスタドールです。そのうちの一つ、おそらくダークセイヴァーの特性を持つのでしょう。その胸に輝く紋章……」
 ダークセイヴァー、紋章。
 その単語だけで猟兵達はうなずく。ダークセイヴァーにおいてのみ確認されている、寄生虫型のオブリビオン。取り付いた宿主に強化を施す宝石のような紋章だ。
 その特性を持ったカルロス・グリードの分身体と言うだけで、そのコンキスタドールとしての力量は推して測ることができるだろう。

「カルロス・グリードが所有している紋章は3つです。闇霧の紋章、紅き月の紋章、黒百合の紋章です。それぞれに触れた者の生命力を奪う黒い霧、無数の三日月型の刃、触れたものを呪詛で侵す黒百合の花弁……」
 言うまでもなく、それらの全ては猟兵達に先んじて来る。
 圧倒的な力を持ったオブリビオンに見られる特徴である。この初撃を躱さなければ、猟兵と言えど反撃することも難しいだろう。
 それほどまでの相手であるのだ。

「紋章事態による強化で、カルロス・グリード自身も凄まじい力を持っていることは考えられます。ただ……」
 そう、猟兵達の懸念はこの島に住まう人々の安否である。
 ナイアルテの瞳はわずかに明るかったが、けれど、余計に彼女は素直に喜ぶことはできなかった。
「島民の皆さんは昏倒させられています。戦いに支障をきたすような行動をカルロス・グリードは行わないようですが……」
 逆にそれは、彼にとってそんなことが必要ないほどに圧倒的な存在であることの裏付けである。
 それほどまでに強大なる存在との戦いに赴かねばならぬ猟兵を案じながらもナイアルテは頭を下げる。

 戦わなければ奪われるばかりなのだ。
 だからこそ、ナイアルテは送り出す。これまでもそうであったように、集まった猟兵達であれば必ずやと――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『羅針盤戦争』の戦争シナリオとなります。

 幻朧桜舞い散る島にて七大海嘯『王笏』の分身体であるカルロス・グリードと戦うシナリオになります。
 彼自身もオブリビオン・フォーミュラ故に強力な存在ですが、ダークセイヴァーにしか存在しなかったはずの『紋章』によって、さらに強化された状態で皆さんに襲いかかってきます。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 それでは、羅針盤戦争を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    闇霧の紋章
【紋章の力】に覚醒して【触れた者の生命力を奪う黒き霧の体】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    紅き月の紋章
【無数の三日月型の刃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    黒百合の紋章
自身の装備武器を無数の【触れたものを呪詛で侵す黒百合】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
海の幸を独り占めしようとしてるのかな?
どちらにせよ、うざったいね★

まずは敵がUCで変身して攻撃される所を「肉体改造」で回避に適した身体に改造する事で回避。
その後、UC【膨張せし肉肉しい宇宙】で宇宙牛に変身、敵の霧の身体を吸い込んで「捕食」する。
生命力を奪われてもUCによる変身を続ければ問題なさそう。
霧の身体でもそうでなくても、巨大化して押し潰す事し、捕食する事は出来そう。



 幻朧桜の花弁が舞い散る島にありて、七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードは悠然と構えていた。
 すでに島民たちは昏倒しており、猟兵にとっては住民を庇っての戦いも避難の必要もない。故に真っ向からカルロス・グリードと対峙することができる。
 それはある意味で不遜なるものであったことだろう。
 小細工も何も必要としない。
 オブリビオン・フォーミュラたるカルロス・グリードが持つ己の力、そして彼が得たであろうダークセイヴァー世界の力を顕現させた如何なる力かわからぬものへの自負。
「来るがいい、猟兵。我が黒霧の紋章を受けて尚倒れぬというのならば、我自ら相手をしてやろう」
 カルロス・グリードの身体が黒霧に変貌する。
 その姿は不定であるが、一瞬で猟兵達の間合いへと肉薄する。

 恐るべきスピード、そしてその黒霧の一端に触れた瞬間に生命力を根こそぎ奪われてしまうことはすでに猟兵達は知っている。
 知っているということは対処のしようがあるということだ。
「海の幸を独り占めしようとしてるのかな?」
 ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(いつもはらぺこ系ラスボス(可食・高栄養・美味)・f31483)は、そのぶよぶよどろどろのゲル状の身体をたわませながら、同じく不定の身体の特性を生かして、黒霧が触れようとした瞬間、形を変えて躱す。

 恐るべきスピードであるが、共に不定形の身体を持つ者同士である。
 どうやって相手の虚を突くか、そして何処を狙うかはわかっている。故にラヴィラヴァはピンクのゲル状の身体をたわませ、時には細く、時には薄くしながら黒霧の猛攻を躱し続けるのだ。
「海の幸もまた我が海の財であれば、当然我のものである」
 その言葉にラヴィラヴァはカチンときた。
 食材とは他者とわけあってこそである。
 美味しいものを独り占めにしたところで、幸せになるのは一人だけだ。料理とは作り、食材に感謝し、他者と振る舞うからこそ広がっていくものだ。

 だからこそ、ラヴィラヴァは誰かのために料理を作る。
 今までだってそうしてきたのだ。確かに食べさせ過ぎて太らせてしまうこともあったけれど、それはご愛嬌というやつである。
 故に彼女はコンキスタドールの王たるカルロス・グリードを前にしてにっこりほほえみながら言うのだ。
「どちらにせよ、うざったいね★」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 そのゲル状の体が無限に巨大化する宇宙牛へと姿を変える。

 言うなれば、その姿は膨張せし肉肉しい宇宙(ラ・エトワール・デ・ラ・ヴィアンド)である。
 宇宙を前にして黒霧の一端が己の体に触れようとも、有り余る生命力、変身の度に自身の美味しさと宇宙牛の身体が二倍になっていく。
 言ってしまえば、宇宙が膨張する速度と一緒だ。
 光の速度で走ったとしても今のラヴィラヴァには届くことはない。

「こ、この美味なる味! なんということだ! ここまで美味なる生命が在る、とは――!」
「嗚呼、世界はかくも美味しいのか!さぁどうぞ召し上がれ♪ と言いたいところだけど、キミに食べさせるものはない!」
 膨張し、巨大化したラヴィラヴァのピンクのゲル状の腕が黒霧となったカルロス・グリードへと振り下ろされる。

 その鉄槌とでも言うべきゲル状の拳が叩きつけられ、大地を抉り、割る。
 強烈なる一撃はどれだけ強靭な生命力を持とうとも、防ぎきれるものではない。痛烈なる一撃は、カルロス・グリードを叩きのめし、ラヴィラヴァはオブリビオン・フォーミュラを超える凶悪なるラスボスとしての貫禄を示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

傲慢であるが、それ故に島民に被害なしなのは助かる、か。

先制攻撃に対して、四天霊障による三重属性(風、氷雪、重力)オーラ防御+結界術でいなす。
少しばかりくるやもだが…うん、その量で悪霊をどうやって呪うのだ?(呪詛耐性)

反撃か。…そのUCな、似たのを戦友が使うからわかるのだ。
武器が手元にない、とな。
黒燭炎によるなぎ払い+指定UC。桜で視界が遮られたところにもう一撃(二回攻撃)。
わしは『侵掠如火』の体現者。どのようなものであれ、侵してみせようぞ!



 ゲル状のピンクの塊がオブリビオン・フォーミュラにして七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードの身体を打つ。
 その一撃は強烈であり、幻朧桜の花弁を舞い散らせながら確かに猟兵達の攻撃が紋章で強化されたカルロス・グリードに攻撃が通用することを示していた。
「舐めていたわけではないが……なるほど、これが猟兵というものか」
 生命の埒外にある者。
 その言葉はあながち間違いではないのだとカルロス・グリードは認識を新たにしたことだろう。

 対する猟兵達の姿は千差万別。
 誰一人として同じものは居ない。故に、これらに対抗する術は多ければ多いほうがいい。ならばこそ、カルロス・グリードは不遜にも笑った。
「ならば、我が紋章の力を見るがいい。お前達の力を見せてもらおう。我が黒百合の花弁に触れれば呪詛にさいなまれる。耐えられるか、この生命蝕む呪詛に――!」
 紋章が輝き、あふれるは呪詛の籠もった黒百合の花弁。
 それは幻朧桜の花弁が舞い散る島にあって、異様なる光景であったことだろう。

「……傲慢であるが、それ故に島民に被害なしなのは助かる、か」
 目の前に対峙するオブリビオン・フォーミュラ『王笏』カルロス・グリードの性質、その傲慢さをみやりながら、複合型悪霊である馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱である『侵す者』は、しかして安堵した。
 何故なら島民の生命を巻き込むわけにはいかないからだ。
 これまで対峙した七大海嘯やコンキスタドールと違い、島民を虐殺に巻き込まぬことこそが、彼らにとって最優先されるべきことであった。

 その懸念を敵自らが取り除いてくれたことには複雑な思いあれど、今は黒百合の放つ強烈なる呪詛を四天霊障による多重属性のオーラによっていなす。
 結界術として使用する霊障であったが、呪詛のちからは確かに寄生虫型のオブリビオンである紋章の力を受けてましている。
「少しばかりくるやもと思っていたが……うん、その量で悪霊をづやって呪うのだ?」
 彼らの身体は人のものではない。
 嘗て人であったものであるけれど、彼らは一人ではない。
 例え怨念であったのだとしても、彼らは一人ではなく四人分の怨念と共にある者である。
 故にどれだけ強化された呪詛であったとしても、呪詛を蓄えルアク料にとっては凪のようなものであった。

「悪霊……なるほど、そういう者もいるのか。猟兵には。だが、悲しいな。お前達の怨念が何かを救うとは。呪詛に塗れた身体で何を救う。もはやないのだろう、お前達が守るべきものは」
 その言葉は呪詛よりも彼らの心をえぐったかも知れない。
 けれど、それが彼らの手を緩めることにはつながらない。既に彼ら誓っている。もう何者も奪わせはしないと。

「……似たのを戦友が使うからわかるのだ。今のお前には武器が手元にない、とな」
『侵す者』が呪詛込められし黒百合の花弁が乱舞する中を駆ける。
 彼の後に残るは幻朧桜の花弁のみ。
 全ての黒百合が『侵す者』を蝕まんと呪詛に塗れながら飛ぶが、その尽くを黒き槍で振り払いながら突き進む。

 彼の後から追うように幻朧桜の花弁がカルロス・グリードの視界を覆う。
 振るった槍の一撃の切っ先が、確かにカルロス・グリードを捉えた瞬間、その視界を覆った幻朧桜が如何なる風の働きか彼から離れなかった。
 どれだけもがいても、手で払おうとも、視界を覆い続ける幻朧桜の花弁。
「これは――連鎖する呪いか! 我を呪うか、悪霊!」

「わしは『侵掠如火』の体現者。どのようなものであれ、侵してみせようぞ!」
 振るった黒色の槍が再びカルロス・グリードへと斬撃を見舞う。
 例え、相対するものがどれだけ強大なものであったとしても、オブリビオンである以上彼らの怨念の対象であることは変わりない。
 彼らの、いや、彼らが抱える怨念こそがオブリビオンを追い詰め、討ち果たすための執念であることを『侵す者』はカルロス・グリードに知らしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
あなたがその紋章を持つのであれば、もはやこの戦い、他世界だけのことではありませんね。
それをどこで? とは聞きません。
あなたを倒したその後で、調べさせてもらいます。

あまり細かい制御がきく技ではないようですね。
無理に近づかず、島に生えた幻朧桜の木を盾にするように立ち回りつつ、避けきれない刃は「フィンブルヴェト」の銃剣で『武器受け』して凌ぎます。

無差別攻撃でだんだん木が切り倒されていけば立ち回りは難しくなりますが、同時に遠距離から射線も通るようになる。そこを逃さず『スナイパー』の技術と【凍風一陣】の『クイックドロウ』でカルロス・グリードを狙います。



 七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードは咆哮した。
 それは王である己に対して傷を与えたこと、呪いを付与したことに対する憤怒であった。
「王たる我に傷を付けるか、猟兵! この身が分身であることを差し引いても有り余る不敬! 我らが奪うことはあれど、奪われることなど在ってはならぬ!」
 迸る重圧の凄まじさは、カルロス・グリードの本気を思わせた。
 対する彼が『一の王笏』の分身の一つであったとしても、その重圧は猟兵達の肌を焼くのに十分すぎるものであった。

 胸に戴く紋章が不気味に輝く。
 その紋章は紅き輝きを放つ三日月であった。カルロス・グリードの咆哮と共に放たれる斬撃は無差別に周囲へと解き放たれ、狙撃のために離れた距離にいたセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)にも迫っていた。
 圧倒的な斬撃の質量。
 そして、長距離の射程。どれだけ距離を離していても威力の変わることのない真紅の残月は幻朧桜の木を盾にしてもなお、なぎ倒し、彼女を狙う。

「あなたがその紋章を持つのであれば、もはやこの戦い、他世界だけのことではありませんね」
 マスケット銃『フィンブルヴェト』に備えられた銃剣『アルマス』で斬撃を受け止め、セルマはつぶやく。
 渾身の力を持ってしても、斬撃の衝撃波止まらない。
 大地に足を踏みしめ、力を込めて尚、セルマの身体を押し戻す恐るべき威力。
 地面に刻まれたセルマの靴が二本線を刻み込み、漸く止まったと思った瞬間に放たれるは、さらなる真紅の三日月であった。

「我は王ぞ。侵略船団の王。他世界を侵略し、メガリスという名の財宝こそが我が手中にあるべきもの」
 放たれ続ける斬撃の嵐。
 無差別故に圧倒的な物量がセルマを襲う。
 だが、セルマの瞳は冷静であった。あまり細かい制御の効くユーベルコードではないのだと彼女は判断していた。
 動き回る標的を狙う程のコントロールがあるわけではないとセルマは、駆け出す。幻朧桜の木を盾にしながら走り出す。
 無差別に放たれる斬撃は確かに躱しづらいものであったが、盾に出来るというのであれば、これを活用するのだ。

 しかし、あの斬撃は尽く幻朧桜をなぎ倒していく。
 そうなれば、遮蔽物がなくなり、いよいよもってセルマは追い詰められてしまう。
 だが、同時にそれはセルマの最も得意とする距離での戦いである。
 射線が通ったということでもあるのだ。
「どうした、猟兵! 我を傷つけた代償を払うためには、貴様たちの業も見せてみよ! 我が紋章は未だ輝いているぞ!」
「それをどこで? とは聞きません」
 重たい音を立てて幻朧桜の木がなぎ倒されていく。

 花弁が舞い散り、周囲に降り注ぐ。
 瞬間、カルロス・グリードは見ただろう。花弁舞い散る向こうから己を狙うセルマの手にしたマスケット銃のスコープの煌きを。
「『寒い』と思う暇も与えません」
 いや、その煌きを認識した瞬間にカルロス・グリードの肉体は瞬時に絶対零度の冷気に包まれ凍てつく。
 それはまるで、凍風一陣(イテカゼイチジン)のように彼の身体を穿つ。

 セルマの瞳がユーベルコードに輝いていた。
 一瞬の出来事。一瞬の決着。瞬きすら許さぬセルマの超絶為る技巧が為せる業であった。マスケット銃から放たれた弾丸がユーベルコードによって強化され、威力もさることながら速度を高められた一撃は、カルロス・グリードをして認識することすらできなかったことだろう。
「馬鹿な……我の知覚を上回る、だと……!?」
 呻くカルロス・グリード。
 それもそうであろう。セルマのはなった弾丸は研ぎ澄ました一撃となって彼の右胸を貫いていた。

 氷結する身体をきしませながら、未だ健在であることは恐るべきことであるがセルマはスコープから覗く獲物を前にしてつぶやく。
「あなたを倒したその後で、調べさせてもらいます。ですから――」
 疾く滅びよ、とセルマは引き金を引くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
呪詛だけは許せないんだよ、私。
超個人的な理由でね、正直戦争とか関係ないの。
あんたが格上とかそういう問題じゃない。消えろ。
(わざと自分の中で感情を爆発させる、フリ。内容は全部本当だけどね。血気盛んな若者を装い油断を誘う)

オーラ防御展開。第六感で攻撃を見切り高速詠唱でバリアを張りつつUC発動。風を巻き起こし敵UCを防ぎつつ、暴風で攻撃。
UCに催眠術を織り交ぜ幻想を見せる。敵にとって都合の良い幻想をね。
猟兵が負ける幻想。黒百合がじわじわと侵食していく妄想。それでも立ちはだかろうとする気高く馬鹿な猟兵の図。

第六感で一瞬の隙を見切り念動力で光の鎖を早業で巻き付ける。
全力魔法で殺す。



 幻朧桜の花弁が舞い散る島に氷結の花が咲く。
 それは七大海嘯『王笏』にして『一の王笏』。カルロス・グリードが猟兵から受けた氷結の弾丸によって生み出されたものだ。
 完全に穿たれた身体であったが、彼は強大なるコンキスタドールにしてオブリビオン・フォーミュラである。
「我の体に傷をつけたばかりか、追い詰めるか。面白い。麗しの姫が恐れるのもわからないでもない。だが、誰も彼もが我より強いわけではない。いや、むしろ弱いとさえ言っていいだろう」
 その哄笑は傲慢そのものであった。
 確かにオブリビオン・フォーミュラの分身体であるカルロス・グリードは猟兵の個としての力を上回るものであった。

 それは認めなければならない。
 けれど、だからといって打倒できぬ理由など何一つ無い。それを猟兵はよく知っている。
「呪詛だけは許せないんだよ、私」
 鈴木・志乃(ブラック・f12101)はカルロス・グリードからあふれる呪詛の黒百合を見て、眉根をしかめた。
 許せないという感情は個人的な理由であった。
 羅針盤戦争であるとか、そんなことは関係がなかった。今だってそうだ。彼女の心の中にある感情は爆発寸前であった。

 フリであったのだとしても、その環状事態は本物であったことだろう。血気盛んであると言ってもいい。
 どれだけ言い繕ったところで発露する感情はカルロス・グリードへと伝わっただろう。
「感情をコントロールできぬか、猟兵。若いな。いや、わからぬでもない。だが、控えろ、貴様が前にするはコンキスタドールの王。格下風情が吠えるな」
 黒百合が呪詛を伴って志乃へと迫る。
 それは圧倒的な重圧となって彼女を襲う。オーラの防御を展開しながら、黒百合の乱舞を防ぐ。
 しかし、呪詛の圧倒的な力は彼女の張り巡らせたオーラすらも蝕んでいくだろう。
「あんたが格上とかそういう問題じゃない。消えろ」

 膨らんだ力がユーベルコードとなって発現する。
「今一時銀貨の星を降らせる、世界の祈りの風よ」
 世界に幸福な幻想を生み出す祈りと浄化の風が志乃から溢れ出す。
 それはカルロス・グリードによって都合の良い幻想であったことだろう。猟兵が負ける幻想。
 黒百合の乱舞に寄って志乃の身体が侵食され、崩れ去っていく。

 その光景はカルロス・グリードだけが見る光景であった。
 妄想と言ってもいいものであったことだろう。自分に都合の良い妄想。それを見せるのが、志乃のユーベルコードである。
「はっ――! これは都合が良すぎるな」
 一瞬の看破。
 これこそがカルロス・グリード。オブリビオン・フォーミュラたる所以である。己の目の前に立ちふさがる気高き猟兵の姿に彼は違和感を覚えていた。

 立ち上がるわけがないのだ。
 王たる者の前には膝を折るのが当然である。故に、それを猟兵が見せる幻影であると看破したのだ。
「でも遅い!」
 それは一瞬の煌きのように念動力によって光の鎖を巻きつけ、引き絞る。
「我に幻影を見せたのは、この一瞬のためか、猟兵!」
「ああ、そうだ。あんたは全力で殺す。格上だろうがなんだろうが、猟兵っていうのは、関係がない。世界のために、人のために、誰かのために戦えるものにこそ!」
 力が宿るのだと証明するように迸る流星群(メテオストリーム)のように志乃の放つ全力の魔法がカルロス・グリードを穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安里・真優
【心境】
「グリードオーシャンは私の故郷です。これ以上この海と島々を汚させるわけにはいきません。」
侵略者は帰ってください迷惑です!!

【対先制ユーベルコード】
新魔法です!!
『オーラ防御』+『全力魔法』=マジックシールドで防ぎつつ、ダコタンのタコ墨を『スナイパー』射撃で迎撃します。
あ、シールド面積が足りなかった…ごめんダコタン…。
『救助活動』+『全力魔法』=回復魔法ヒーリングです。
もう少し頑張ってダコタン!!

【戦闘】
私を守って傷ついたダコタンの仇!!(注:死んでいません)
行くよカメゴン…
UCを発動。
同時に私も『属性攻撃』(炎)+『全力魔法』=攻撃魔法フレイムバスター
で『砲撃』します。
いっけーーーッ!



「グリードオーシャンは私の故郷です。これ以上この海と島々を汚させるわけにはいきません」
 安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)は5mにも及ぶ巨人としての体躯でもってオブリビオン・フォーミュラにして七大海嘯『王笏』、その『一の王笏』と呼ばれるカルロス・グリードを前に宣言する。
 彼女にとってグリードオーシャンはかけがえのないものである。
 例え、この世界そのものが多世界を侵略する船団そのものであったのだとしても、そこに生きる者たちの生命が奪われて言い訳がない。
 ましてや、島々を怪我されてはならない。
 故に彼女はカルロス・グリードの前に立ちふさがるのだ。

「違うな、猟兵。これは我のものだ。王たる我のな。いいや、むしろ、我に感謝して欲しいものだ。どれだけお前達がさえずろうが、堕ちた島は人間に寄って勝手に汚されている。何故お前達はいつも口を添えていうのだろうな。自分達こそが島を汚しているとは思わない。何故奪うのかと」
 カルロス・グリードは数多の猟兵の攻撃を受けながら笑っていた。
 その力の源泉は未だ捉えることはできない。けれど、ここで島を開放しなければ、そもそも『王笏』、七大海嘯の本拠地は見つけることはできない。

「侵略者は帰ってください迷惑です!」
 真優は叫び、走る。けれど、それよりも早く彼女を襲うのは、カルロス・グリードの手にした天球儀が姿を変えた黒百合の花弁であった。
 呪詛を伴う花弁に触れてしまえば、それだけで猟兵達の生命は呪詛に塗れていく。そうなってしまえば、如何に巨人の体躯を持つ真優であっても倒されてしまうだろう。
 故にオーラの力と魔法の力をかけ合わせたマジックシールドで呪詛を防ぐ。さらに呪詛へと叩きつけられるのはペットであるダコタンの放つ蛸墨であった。
 しかし、敵の呪詛は強大である。


 元よりオブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードの力は強大であり、同時に紋章の力によって強化されている。
 シールドが如何に強固なものであったとしても、その呪詛を完璧に防ぎきることはできなかったのだ。
「もう少し頑張って、ダコタン!!」
 その声に応えるようにダコタンが蛸墨を噴射し続ける。その巨体を癒やしながら、乱舞する黒百合の呪詛を耐える。
「ほう、これに耐えるか。だが、守っていてばかりではな!」
 カルロス・グリードの紋章が輝く。
 必ず猟兵に先制してくるカルロス・グリードの猛攻は終わらない。ダコタンと言えど、限界は必ず来る。

「私を守って傷ついたダコタンの仇!! 行くよカメゴン……」
 その背に桜の樹木を生やしたリクガメ、カメゴンの顔がカルロス・グリードへと向く。
 その口腔に輝くはユーベルコードの輝きである。
 真優もまた、その手に炎の力を溜め込んでいく。互いに放つは、桜の輝きは死の香り(サクラノカガヤキハシノカオリ)。
 ユーベルコードに込められた願い、そして、カメゴンの放つ荷電粒子砲が黒百合の花弁を蹴散らし、同時に真優が放った炎が渦を巻いてカルロス・グリードを撃つ。

 その一撃は黒百合の花弁に守られたカルロス・グリードの力と激突し、凄まじい衝撃を生み出していく。
「いっけ――ッ!」
 力押しならば負けはしないと真優の叫びが迸る。
 カメゴンの口腔から放たれた荷電粒子砲が黒百合の花弁を撃ち抜いて、カルロス・グリードの身を焼く。

 例え、この世界の成り立ちがカルロス・グリードの言うものであったのだとしても、今を生きる島の人々は変わらない。
 大侵略形態へと移行してしまえば、それらさえも喪われてしまう。
 それをさせぬと真優は渾身の力を込めて、ユーベルコードの輝きを解き放つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ◎

花踏み躙る行為の敵に無意識に眉間に皺寄せ(実は自然好き

(私が持つ手札だと紋章の力とやらに対抗せねばならんか
先ず初撃
敵の接近をこの私が易々と許すとは不覚)

私が創造する万物は、中々に使える事が証明済なのでな

【空想の現】で無敵の盾を自分の周囲に並べ防御
敵との接触を回避
盾を持ち後方へ下がり一定距離を保つ
此方の有利な立ち位置に持っていく

要は私のテリトリーに入られなければ良かろう
目に見える霧なのが幸いか

オウガの蒼炎込めた呪殺弾で制圧射撃
敵がUC使えなくなるまで灼き尽くす
元の体に戻り次第、二丁拳銃で通常弾で蹂躙
内に秘めた不快は弾に込め
銃口ブレず正確無比に貫通攻撃
敵の攻撃は盾で相殺

塵と化せ、一の王笏



 荷電粒子の輝きが七大海嘯『王笏』、カルロス・グリードの身を穿つ。
 その輝きは幻朧桜の花弁を吹き荒れさせ、さながら桜花嵐のように島に乱舞する。その光景を美しいと思うことはあれど、それを踏み躙ることは許されない。
 カルロス・グリードには自然に対する畏敬がなかった。
 あるのは、ただ己の所有物であるという観念のみ。
 このグリードオーシャンと呼ばれる侵略世界。それを滑る王、オブリビオン・フォーミュラたる自負が在るからこその言葉であろう。
 事実、それだけの力を持っている。

 それこそが8つの分身に別れ、七大海嘯であったとしても例外的に8つの本拠地を持つことからも察することができよう。
「忌々しいことだ。我の体に傷をつけた上に、我が領土を侵略するか」
 仕立ての良いスーツ。そのスーツに戴かれたのは3つの紋章。それはダークセイヴァー世界においてのみ見ることのできる寄生虫型のオブリビオン。
 宿主に強化をもたらす超絶為る力。
 それをオブリビオン・フォーミュラ自らが使っているという事実は、相対する猟兵を新歓させただろう。

 花弁を踏み、その体が黒霧へと変わる。
 それに眉根を寄せたのは、シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)であった。
「不服そうだな、猟兵!」
 一瞬で間合いを詰めてくるカルロス・グリード。
 その視線が交錯する中、シェフィーネスは瞳をユーベルコードに輝かせ、無敵の万物たる盾を想像し、己を覆うのだ。

「Hope for the best, but prepare for the worst.」
 その詠唱の言葉に淀みはなかった。
 彼は己の想像に疑念を持つことはない。無敵の盾を想像したのであれば、それは当然のようにそうあらねばならぬ。
 目の前に如何にオブリビオン・フォーミュラという強大な存在がいようとも、その身に触れさせることはない。
「敵の接近をこの私がやすやすと許すとは深く……だが、要は私のテリトリーに入りられなければよかろう」
 目に見える霧であったのが幸いであった。

「堅き盾……! だが防いでいるばかりでは勝てるものかよ!」
 無敵の盾。
 けれど、その無敵の盾ですら強化されたオブリビオン・フォーミュラを止めることはできない。
 ひび割れていく盾を見ながら、シェフィーネスはけれど、己の能力に一切の疑問を持つことはなかった。
 例えどれだけ傷つけられたのだとしても、己が創造した万物は消えることはない。ユーベルコードの輝きが増し、その瞳が凄まじい光とともに家紋とイニシャルの入った小銃がオウガの蒼炎を込めた呪殺の弾丸を解き放つ。

 黒霧を燃やし尽くさんばかりの勢いで膨れ上がるオウガの蒼炎がカルロス・グリードの身を焼く。
「塵と化せ、一の王笏」
 その身に秘めた不快はあふれることはない。何故なら、その不快なる念は全て弾丸に込められている。
 故に彼の打ち放つ海賊銃と小銃の弾丸は尽きることはない。
 銃口がブレることなく、次々に呪殺の弾丸は蒼炎を膨れ上がらせ、黒霧の体と化したカルロス・グリードの身を焼くのだ。

「抜かせ、不敬者め!」
 実体化したカルロス・グリードの拳がシェフィーネスへと放たれる。蒼炎を割って繰り出された拳は、けれど、万物より創造されし無敵の盾に阻まれる。
 それは当然の気血であった。
「自然に対して畏敬を抱かぬ者が言うことか」
 放つ弾丸が乱れ打たれ、通常の弾頭に切り替えた弾丸がカルロス・グリードの体を蜂の巣にするように打ち込まれ続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
【アドリブ・連係歓迎】POW
さて。ではそろそろ終幕と行きますか
そっ首頂くわね、王笏

竜の装束に蛇矛を担ぎ応戦
霧の体は性質が悪いと距離を置くように後方跳躍し、奴を誘い込む
生命力を吸われるが【気合、オーラ防御】で耐久
奴が纏わりついた所で蛇矛を頭上で旋回させる

「舞い上げなさい、天蛇王!」

水気を帯びた神器で風を薙ぎ、竜巻の【属性攻撃】で霧の体を上空へと【吹き飛ばし】たい

反撃は、地形を破壊するUC
神器解放の一閃で空を断ち大気を裂き、その霧の体を真空状態に封じ込める

「その紋章、他所様の世界には持ち出し禁止よ!」

【二回攻撃】の刃で、天に×の字を描くように二度目の神器解放
剥き出しの紋章の【部位破壊】を狙う



 無数の弾丸が七大海嘯『王笏』、その『一の王笏』たるスーツに身を包んだカルロス・グリードを穿つ。
 しかし、対するのは分身体と言えど、オブリビオン・フォーミュラたる存在。消耗させられて居ても尚、その威容は陰ることなどなかった。
 だが、滅びぬ者はおらず、そして同時に猟兵を前にして滅びぬオブリビオンもまたいない。
「さて。ではそろそろ終幕と行きますか。素っ首頂くわね、王笏」
 竜の装束に身を包んだ才堂・紅葉(お嬢・f08859)が戦場となった幻朧桜舞い散る島を駆け抜ける。
 担いだ蛇矛を振るい、一撃のもとにその首を狙わんとする。しかし、既のところでカルロス・グリードの身体が黒霧へと変貌する。

 それこそがダークセイヴァーにおいて確認された寄生虫型のオブリビオン、紋章の力である。
 強大な力を持つオブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードをさらなる強化をもたらす紋章の力は絶大であった。
 触れるだけで生命力を奪う黒霧は、紅葉にとって戦いづらい相手で在ったことだろう。
 単純に相性が悪いのだ。
「言わせておけば、王たる我の首を狙うか!」
 黒霧が紅葉の生命力を奪わんと黒霧の身体で持って迫る。距離を取ろうと跳躍しても、即座に距離を詰めてくるのだ。
 引き離せない。
 単純に強力なオブリビオンであるカルロス・グリードをさらに強化しているのだから当たり前と言えば当たり前であったことだろう。

 油断していないはずであっても、その速度は紅葉の想定を超えていた。
「――ッ!」
 誘い込むはずが、黒霧を防ぎ切れずに生命力を奪われていく紅葉。
 このままでは確実に根こそぎ生命力を奪われ、倒れてしまう。けれど、紅葉の瞳は絶望していない。
 負けるものかという気概こそが、その瞳には宿っていた。
「舞い上げなさい、天蛇王!」
 一喝の元に振るう蛇矛が水気を帯び、神器としての力を発揮する。竜巻となって黒霧となったカルロス・グリードを上空へと吹き飛ばす。

「我が生命力を奪っても尚、ここまで動けるだと――!?」
 カルロス・グリードの顔が驚愕に染まる。
 生命奪われても仕方のない量を奪ってもなお、紅葉は立っていた。
 本当に人間であるのかと疑うほどの生命力。しかし、オブリビオンであるのならば知っているはずだ。

 彼女は猟兵。生命の埒外に在る者である。
「力は山を抜き、気は世を覆う……だっけか。要は海をも割る気合って事よ、天蛇王!!」
 開放された力が迸る。
 それはユーベルコードの輝きと共に、一閃されるは蛇矛の一撃。
 空を断つ斬撃は、大気すらも切り裂き、その霧の身体へと変えたカルロス・グリードを真空状態へと封じ込める。
 それこそが彼女のユーベルコード、天蛇王・猛勢一挙(モーゼイッキョ)。
 空を断ち切ることなど容易である。

「その紋章、他所様の世界には持ち出し禁止よ!」
 神器の開放によって輝く斬撃。
 十字に刻まれた斬撃が、空にユーベルコードの輝きとして煌々と打ち込まれカルロス・グリードの肉体をさらなる消耗へと引き込む。
「ばかな……! 我が紋章の力を上回るだと――!?」
 打ち込まれた地形すらも容易に破壊する一撃は、凄まじい威力となって空気を押上、ダークセイヴァーの世界に在りし、紋章を砕くように強大な力の奔流の前に失墜する他なかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
その紋章は、悪用させないの
おねえちゃんのママ(故人のヴァンパイア)と一緒に、葬った紋章、こんな所にあっていいものじゃ、ないの!
(珍しく怒りを顕わにする)

すぐにその紋章、破壊するよ
オーラ防御の結界術で守りながら狼の脚力を使ったダッシュで下がるの
範囲外に逃げられなくてもこれなら避けやすいよ
残像でも時間稼ぎして刃の軌道を情報収集なの
見切ったら反撃するよ

相手は強いから、ここはぼくも自分の使いどころなの
多少ダメージがあっても、このUCなら!
行くよ、音狼
きみの怒りを貸してね

より早くなったダッシュと残像で避けながら近づいて
紅い月の紋章に遠吠えの音撃を全力魔法の乱れ撃ちなの
月光属性の満月の魔力で押し潰すの



 空を十字に断ち切る斬撃が七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードの身へと刻まれる。
 例え、分身体と言えども対するはオブリビオン・フォーミュラである。
 彼の強大なる力は、寄生虫型のオブリビオンである紋章の力によってさらに高次のものと化していることは戦いに臨んだ猟兵達の誰も知ることであった。
 けれど、それでも怒りを顕にしてたのが、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)であった。
 彼にしてみれば怒りを顕にすることは珍しいことであった。
「その紋章は、悪用させないの」
 彼の義理姉、その母親と一緒に葬った紋章が、グリードオーシャンにあっていいものではないと怒りの発露と共に戦場を駆け抜ける。

「言うな、猟兵。我が紋章をどう扱おうが我の意のままである。故に、お前に許可を取る必要など、ない――!」
 カルロス・グリードの振るわれた手、そこから放たれる紅き三日月の如き斬撃が無差別に解き放たれる。
 その斬撃の雨とも言うべき三日月はロランへと全てが放たれるのだ。
 無数の斬撃を躱す術など無い。
 張り巡らせたオーラの結界術であっても、容易く砕かれ、己へと迫る。
「悪用させぬといったな。だが、それは力在る者だからこそ言える言葉! 貴様がそれに足るのか、我に示して見せろ!」
 遅い来る無数の斬撃。

 その斬撃の軌跡をロランは瞳に写していた。
 恐怖はない。あるのは、ただやらなければならないことを為すという意志だけであった。
 狼の脚力、人狼たる彼が持ちうる最高速度で持って斬撃を後ろに跳ね下がって躱す。
 範囲の外に逃げることは出来ない。
 それほどまでに紋章の力は凄まじく、紅き三日月の斬撃はどこまでも負ってくるのだ。
 けれど、残像を伴いながら、それらを見切るのだ。
「すぐにその紋章、破壊するよ」
 確かに言った。
 言葉にした。それは絶対に為すべきことであるから。故に、ロランの瞳がユーベルコードに輝く。
 例え、己の身に傷が刻まれようとも止まることはしないという決意の現れであもった。

 その瞳に輝くのはユーベルコードにして満月の輝き、それがもたらす魔力でできた狼のオーラが、彼の髪を変色させる。
「月下の音狼、暗き夜の森より、鬨を上げ。従う者に、命ず。汝、猟者なり」
 詠唱を最後にロランの人たる言葉は喪われる。

 ――これより起こるは、憑きて荒ぶる音狼の狩猟(ハンティングオーダーオブアルファオーラ)。
 紅き斬撃がロランの狼のオーラを切り裂く。
 けれど構わなかった。より早く、より疾く、駆け抜ける。
「うぉぉおおん!」
 咆哮がほとばしり、その咆哮が月光の輝きを持って紅い月の紋章を撃つ。乱れ打ち、一度で砕けなければ二度、二度で砕けなければ三度。
 無数に放たれる遠吠えの音撃は凄まじく、カルロス・グリードをしても吹き飛ばすほどであった。
「獣風情が王たる我を――!」

 だが、止まらない。
 砕く。ただ、それだけのためにロランは獣の如き力を発揮する満月の魔力に底上げされた力は、まるで紋章を圧潰させるようにほとばしり、その衝撃波でもって幻朧桜を揺らし、その花弁を月光と共にきらめかせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
島民の皆さんを巻き込まないのは、ありがたいですね。
ならば強敵に対する敬意を以って倒しましょう。

先制攻撃に対しては、結界術・浄化・破魔を組み合わせた呪詛消滅結界を詩乃の周囲に展開し、更に炎のオーラ防御を纏わせた天耀鏡を旋回させて、黒百合の花びらを焼き払います。

それ以外の攻撃は第六感と見切りで読み、空中浮遊と自身への念動力と空中戦能力で空をふわりと舞って回避します。

UC発動すれば、950本の煌月の複製が相手を包囲攻撃。
500本は相手の動きを封じる様に操作し、400本は手足を攻撃して攻撃・防御行動を封じ、残りの50本で黒百合の紋章・闇霧の紋章・紅き月の紋章の順に攻撃。

全ての紋章を斬り裂いて倒します!



 亀裂の走った紋章が軋む音が響いた。
 それは七大海嘯『王笏』たるカルロス・グリードの持つダークセイヴァーにしか存在しないはずの寄生虫型のオブリビオン、紋章から響いた音であった。
「我の紋章に傷を……! 己、猟兵! 我が財に傷をつけるか!」
 轟く咆哮は憤怒。
 オブリビオン・フォーミュラたるカルロス・グリードの分身体と言えど、その重圧の凄まじさは言うまでもない。
 ビリビリと肌を焼くようなプレッシャーを受けながら、幻朧桜の花弁が舞い散る。けれど、それでも、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は怯むことはなかった。

 彼女にとっての最大の関心事は、制圧された島に住まう人々の安否である。
 幸いにして彼らは昏倒させられただけだ。それはありがたいことであったが、同時に強敵に対する敬意を持って倒さんとする詩乃とっては、今の憤怒の咆哮こそがこれから巻き起こる激戦の狼煙のように思えてならなかった。
「黒百合の花弁……この呪詛は……!」
 神たる身である詩乃にとって、黒百合の紋章がもたらす呪詛の力は凄まじいものでああることがわかる。
 触れれば蝕み、その身体を崩壊へと導くことだろう。

 故に、その黒百合の花弁にふれることはえきない。結界術に浄化と破魔を組み合わせた呪詛消滅結界を展開しても尚、その結界ごと侵食してくる凄まじい黒百合の呪詛は、オブリビオン・フォーミュラが放ったがゆえのものであると言わざるを得ないだろう。
「神たる者が、我が呪詛を受けるか! 大いなる神に及ばぬな、猟兵の神よ!」
 振るう花弁が詩乃の張り巡らせた結界をひび割らせていく。
 強烈なる力の奔流を前に詩乃は膝を降りそうに為るが、その瞳に宿る力は未だ些かも侵食されてなどいない。

 見開いた瞳から神としての権能が迸る。
 植物を司る神としての力、天耀鏡が輝き炎の力を纏い、周囲に迫った黒百合の花弁を灼き払っていく。
「参ります! 煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
 その手にした薙刀が神力によって複製され、立ち並ぶ姿は荘厳そのものであった。
 ふわりと空中に浮遊し、詩乃の周りに付き従う煌月。
 それはまさに、煌月舞照(コウゲツブショウ)と呼ぶにふさわしいものであり、黒百合の花弁に包まれたカルロス・グリードを明るく照らすには十分な輝きであった。

 その数はすでに千に至らんとする数である。
「この月の輝きを前にしてひるまぬというのであれば、それも良しとしましょう。ですが、貴方はここで討たせて頂きます――!」
 幾何学模様を描き、複雑に飛翔する千に至らんとする薙刀がカルロス・グリードの動きを阻害し、手足を切り裂かんと迫る。
 さらに、その中に紛れ込ませたのは紋章そのものを破壊せんとする薙刀であった。
「この我を追い込むつもりか! 面白い! やってみせろ!」
 互いに引くことはなかった。

 詩乃狙いは、あくまで紋章である。
 あの紋章がダークセイヴァー由来のものであることは猟兵たちも知るところである。本来であれば、強大なる存在から与えられるものであるが、それを自身に使うというのがカルロス・グリードであった。
 その数は実に3つ。
 それらによって強化されているカルロス・グリードは確かに一人の猟兵の力では打倒できるものではなかった。
 けれど、詩乃は理解している。

 たとえ己が倒すことができなくても、後に続く者がいるということを。
 猟兵とは個ではなく無数の意志を持った者たちが合わさることに寄って討ち果たすことのできなかった敵さえも打倒せしめる者であると。
「その全ての紋章を切り裂いて、倒します――!」
 詩乃の斬撃が無数の煌月と共に走り、カルロス・グリードの紋章の全てに一撃を加える。

 亀裂が走り、その紋章を破壊することは叶わなったが、けれど、確かに消耗させた。
 それは代えがたい事実としてあとに続く猟兵達の助けになるだろう。
 詩乃は、その確信を得ながらカルロス・グリードと月光煌めく舞いを踊るように薙刀を打ち据える音を響かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
ふふ、綺麗な桜ですね。
しかし、人の楽しそうな声が無いわ。
早くあなたを倒して、昏倒させられた人々を助けます。

SPD行動
敵の先制攻撃を目視後、UC発動。
大丈夫、私のUCは、あなたの攻撃が届くより前に発動する。

【舌打ちをする】事で【真の姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

チッ、と舌打ち。
明るいピンクの髪を、紅蓮の赤色に変え、特攻。
三日月の刃が高威力の無差別だろうと、爆発的に上がった反応速度で回避。
マスケット銃で受け止め(武器受け84)、払い、一直線に飛び込む。
オーラ防御80

「お前に救いの道などない」

近距離から攻撃。一斉発射72、鎧砕き69



「ふふ、綺麗な桜ですね」
 その手にひらりと落ちる花弁の名は幻朧桜。
 サクラミラージュと呼ばれる世界に在りし一年を通して咲き乱れる桜の名である。その桜の花の儚さとは無縁ながらも、薄紅色の同じ髪を持つ小宮・あき(人間の聖者・f03848)は微笑んだ。
 美しくも儚いもの。
 人はそれに惹かれるものである。それはあきをしても同じであった。
 しかし。そう、しかしと、あきは続けた。
「人の楽しそうな声がないわ」
 その視線の先にあるのは七大海嘯『王笏』、その『一の王笏』と呼ばれるオブリビオン・フォーミュラ、その分身体であるカルロス・グリードであった。

 彼はすでに数多の猟兵達の攻撃に寄って消耗されている。
 けれど、その身から発せられる重圧は些かの陰りもない。
「早くあなたを倒して、昏倒させられた人々を助けます」
 ただ、それだけがあきの願いであり、やるべきことだった。
「吠えたな、猟兵。我を前にしても尚、その意気は良し……だが、力の伴わぬ言葉程、愚かなることもあるまい!」
 その身に宿した紅き月の紋章が輝く。
 無数の紅き三日月の如き斬撃が実態を伴って乱舞する。それはあまりにも数が多く、そして同時に無差別に放たれた。

 斬撃の嵐と表現したとしてもなんら遜色のない凄まじい力。これが寄生虫型オブリビオンである紋章によって強化された強大なるオブリビオン・フォーミュラの力であるというのならば、それは人を絶望に叩き落とすには十分なものであった。
 だが、どれだけその斬撃が早かろうが、あきには関係がなかった。

 ――チッ。

 それは舌打ちの音であった。
 同時にあきが真の姿(ガチギレ)をさらけ出す合図でも在った。その薄紅色の髪は赤く。青き瞳は黒色へ。身を包む衣は白から黒へ。
「――、なんだ、その姿は」
 その瞳に映る斬撃。
 どれだけ膨大な数の斬撃を放つのだとしても、それらがあきを捉えることなどできない。今や彼女のスピードと反応速度は己の寿命を代償に爆発的なまでに引き上げられている。

 踏み出した足が大地を割る。
 たったそれだけで衝撃波となって周囲に集まった斬撃を吹き飛ばす。目指すはカルロス・グリードのみ。
 黒き瞳に写した姿へと一直線に駆け抜ける。
 例え無差別なる斬撃が彼女を襲おうとも、彼女に傷一つ付けさせることはない。夫の名を刻んだマスケット銃の銃身が守ってくれる。
 どんな時だってそうだ。
 彼女を守ってくれる想いがある。
 斬撃を受け止めながらも、振り払う。砕けた斬撃の痕をひた走るあきは、まさに黒い矢のようでもあった。

 ただ見据える。
 己が為すべきことを為す。
 ただそれだけのために彼女は脇目もふらずにカルロス・グリードへと迫っていた。
「その力、その姿、貴様は――!」
 新なる姿。
 それは彼女の身に宿した怒りが発露したものであろう。
 故に、カルロス・グリードは驚愕したのだ。人の怒りがここまで力を増すのかと。その迸る激情の一切を表に出すこと無く、されど、力の発露は極限にまで至る。

 真なる姿。それは猟兵が持つ個別なるもの。
 規則性はなく、さりとて同一のものはない。その黒き瞳を見よ。その赤き髪を見よ。そこに在るのは誰がために怒りを燃やす者である。

「お前に救いの道などない」
 その言葉は正しくその通りであったことだろう。
 救いなど無い。誰かの何かを奪う者に、理不尽に奪う者に救いなどあってはならない。
 誰かを傷つけさせぬためにと想う心にこそ宿る力があるのだと証明するように、あきは真なる姿の力を発揮するのだ。
 構えたマスケット銃から放たれた弾丸が、カルロス・グリードの身体を穿つ。それはどれだけ強固なる力に守られていたのだとしても、その鎧われた力ごと砕くように、撃ち抜かれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…成る程、確かにお前にはその紋章を宿す資格がある

…力持つ者が正義と宣い、力持たぬ者は無価値と見做す

…私が狩るべき獲物に相応しい傲慢さだわ

空中戦を行う"血の翼"を広げ"写し身の呪詛"を乱れ撃ち、
空に展開した殺気を放つ無数の残像で敵UCを受け流しつつ、
自身は存在感を消して地を駆け、敵の懐に切り込みUCを発動

…残念、残像の中に正解があるとは限らないものよ

大鎌を武器改造する早業で双剣化して極限まで魔力を溜め、
限界突破して切断力を強化した双剣で敵を乱れ撃ち、
無数の魔刃のオーラで防御を切り裂き傷口を抉る2回攻撃を行う

…その紋章を用いる以上、お前の運命は決まっている

…さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい…!



 打ち込まれた弾丸が七大海嘯『王笏』にしてオブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードの身を穿つ。
 それは言うまでもなく猟兵が為したことであった。
 苦痛に呻くことは王としての威厳故か、その素振りすら無い。けれど、その身が分身体の一つでしか無いこともまた猟兵達は知る。
 七大海嘯の中でも例外的に8つの本拠地を持つ者。
 それがオブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリード。コンキスタドールの王である。
 故に、彼はどれだけ傷を負わされても立ち上がってくる。
 その身が放つ重圧は未だ底しれぬ何かを思わせた。

「……成る程、確かにお前はその紋章を宿す資格がある」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は対峙して瞬時に理解した。
 目の前のオブリビオン・フォーミュラ、その分身体の一つであったとしてもカルロス・グリードは、『そう』であると。
「……力持つ者が正義と宣い、力持たぬ者は無価値と見做す……私が狩るべき獲物にふさわしい傲慢さだわ」
「その言葉のとおりだろう、猟兵。力なき正義など正義ではない。力あるからこそ正義足り得るのだ。これを傲慢と呼ぶのであれば、それこそが真実よ」
 吹き荒れる黒百合。
 それは紋章の力によって顕現したユーベルコードがもたらす侵食する呪詛が込められし花弁。

 限定的に開放された吸血鬼の翼を広げ、血の色の如き魔力が迸る。
 リーヴァルディの残像と共に黒百合の呪詛がぶつかり合い、呪詛同士の干渉によるものか、魔力の火花が散る。
「儚いものだな、猟兵よ! お前の言う正義とは何だ。力ある驕れる者を狩り続けることか。それとも弱者を救うことか」
 次々と写し身の呪詛に寄って生み出された残像が尽く撃ち落とされていく。
 その光景はこの世のものとは思えぬものであったが、それでも魔力の火花が尽きることはない。
 強烈なる輝きの元、大地を疾駆するリーヴァルディは一つの弾丸のようにカルロス・グリードへと迫る。

「……残念、残像の中に正解があるとは限らないものよ」
 手にした大鎌が双剣へと変貌する。
 極限まで魔力を溜め込んだ身体が限界を超え、双剣に宿る魔力が凄まじき連撃と共に剣閃を走らせる。
 黒百合の花弁の尽くを切り裂き、それでもなお届かぬ剣。
 これがオブリビオン・フォーミュラ。
 強大なるコンキスタドールの王、その力の一端である。

「……その紋章を用いる以上、お前の運命は決まっている」
「ほう、我の運命をなんとする!」
 侵食の呪詛が迫る。もはやそれは、写し身の呪詛を持ってしても防げぬ程の量となってリーヴァルディを襲う。
 しかし、その双剣に込められし魔力が限界を超えた瞬間、魔刃は解き放たれる。
 それは鮮血の花弁。
 双剣は姿を変える。変幻自在たるもの。
 それこそが吸血鬼狩りの業である。

「……さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい……!」
 解き放たれるは、吸血鬼狩りの業・乱舞の型(カーライル)。
 鮮血の花びらへと変貌した無数の魔刃が舞い飛び、黒百合の花弁の呪詛ごとカルロス・グリードを切り裂く。
 その斬撃は鋭く、瞬きの間に加えられた二連撃。
 迸る鮮血と共にリーヴァルディの瞳がユーベルコードに輝いていた。

 それは確かに彼女が打倒すべき吸血鬼、そして救うべきダークセイヴァー世界の運命を暗示するように、その業を振るい、紋章の力を削ぎ落とすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
どのような意図であれ、この島の住人へ手出しを控えたこと
騎士として礼を述べさせて頂きます

…かの世界で転生齎す優しき桜、血を吸うのは忍びなかったもので
これから散らしてしまうのが残念ですが…!

遠隔●操縦で機械飛竜を呼び寄せダイブからの地面擦れ擦れへの上昇
●空中戦に使用する●推力移動の出力での風圧で襲い掛かる敵の霧の体を吹き飛ばし
自身は脚部スラスターのパイルで地面を串刺し踏みつけ
怪力で姿勢を保ち

機械飛竜が輸送したUCを装着し空中へ

その身体への真っ当な対処法は恥ずかしながら備えてはおりません故…

対艦砲をハッキングし出力限界突破

無理矢理にでも押し通らせて頂きます

スナイパー射撃でただ一撃で蒸発狙いの砲撃



 どれだけ消耗させられようとも、七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードは未だ健在であった。
 すでに3つの紋章はひび割れ始めていた。
 事実、かのオブリビオン・フォーミュラの分身体であるダークセイヴァー世界の力を取り込んだ姿は満身創痍。
 しかし、次の瞬間には黒霧の紋章の力によって、その姿を黒霧へと変え猟兵の生命力を奪うことに寄って、驚異的な継戦能力を獲得していたのだ。
「我を此処まで追い込むとは、やはり麗しの姫が言うこともうなずける。何処からともなく湧き上がるように次から次へとよくもまあ、現れるものだ」
 カルロス・グリードは驚嘆していた。
 呆れ果てるのではなく、これほどまでに力の差が合ってもなお、立ち向かってくる者たちがいる。その事実に驚嘆していたのだ。

 己が見定めた猟兵の力は言うに及ばず、彼一個体の力を上回ることはない。
 けれど瞬間的にこちらを超えてくる。
 それが不可解でしかたがなかった。
「どのような意図であれ、この島の住人へ手出しを控えたこと、騎士として礼を述べさせて頂きます」
 それは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の謝意であった。彼はこの島に育つ幻朧桜が血に染まることを望まなかった。
 例え、それが己達猟兵の力を推し量るための試金石に過ぎない戦いであったのだとしても、それでもトリテレイアはかの世界、サクラミラージュにおいて傷ついた魂の転生を齎す優しき桜が血を吸うことが忍ばれたからだ。

「慇懃無礼も此処まで来ると称賛ものだな、機械じかけの猟兵よ」
 黒霧の身体へと変貌したカルロス・グリードが言う。
 その身体は機械の体であるトリテレイアには無意味であったが、黒い霧の身体へはトリテレイアは有効打を与えることは難しかった。
 故に彼は呼び寄せた機械飛竜がカルロス・グリードと己との間に飛び込んできても動じなかった。
 遠隔操作に寄って地表すれすれへのダイブから上昇する際に生まれる風圧によって霧の身体へと変貌したカルロス・グリードを吹き飛ばす。

「パイル……!」
 自身は脚部スラスターに備えられたパイルによって大地へと身体を固定し、風圧に耐えながら、機械飛竜から射出された戦機猟兵用全環境機動型大型標的攻撃試作装備(プロトマルチアームドフォート・イェーガーカスタム)とドッキングし、空へと舞い上がる。
 吹き飛ばされた黒霧の身体が集まり、カルロス・グリードは目を剥いた。
「なるほど、それが鎧装騎兵というものか! 機械じかけの猟兵! だが、それで我がきりの身体になんとする!」
 そう、通常の打撃武器ではカルロス・グリードの霧の身体はどうしようもない。どれだけ巨大な武器を振り回そうとも黒霧の身体に致命傷は与えられないのだ。

 故にトリテレイアは恥じ入るようにアイセンサーを灯す。
「その身体へのまっとうな対処法は恥ずかしながら備えておりませんゆえ……本職ではありませんが……!」
 できぬとは言っていないというようにトリテレイアは槍型対艦砲をカルロス・グリードへと向ける。
 対艦砲へと直接コネクターを介して繋がることによって、出力の限界を超える。それは放てば砲身が持たぬことを意味していたが、この一撃で打撃を与えられなければ意味のないことであった。

 電脳が警告音を鳴り響かせるが知ったことではない。
 喪われる生命がなかった。ただそれだけでも、この装備の元は取れるというものである。
「無理矢理にでも押し通らせて頂きます」
 放たれるビームの一撃は凄まじい出力を持って、放つ砲身すらも歪めさせながら黒霧と化したカルロス・グリードの身体さえも蒸発させんと打ち込まれる。

 大地へと迸ったビームの光条は周囲に合った幻朧桜を揺らし、その花弁を舞い散らせる。
 散らしてしまうのが残念でしかたのないことであったが、それでもひしゃげ、溶け落ちた砲身とビームの圧倒的な熱量を前に霧へと変じた肉体を欠損させるカルロス・グリードを見やる。
 戦果は上々である。
 だが、同時にトリテレイアの電脳への負荷と気体温度の上昇によってトリテレイアは装備を捨てる。
 不時着するように機体が大地に膝をつくしかなかったのだが、それでも成し遂げた手応えだけが、システム復旧の間しっかりと残るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
滅ぶなら、あの時死にたかった。
兄弟と、国と、運命を共にする筈だった。
だが、自分は生きている。生きてしまっている。

迫る三日月刃へ、両手に持つ騎兵刀を振るい、強引に弾く。
動体視力で迫る刃を素早く認識し、弾く。逸らす。受け流し、前進する。
武器が壊れ、早業で鞘から次の刀を抜き放ち、刃を止める。
戦い続けるしかない。生き残ったならば、戦い続けるしかない!

戦い続けて、この身が壊れ失せるまで!嗚呼嗚呼嗚呼!!
『劫火戦塵』闘争心に霊物質が呼応し継戦能力を引き上げ、
強引に身体を動かし、前進する
刃の群れの隙間にスラスターで推力移動、跳び込む。
身を捻る。捩れる体を無視して、カルロス・グリードに怪力で刃を振るう!



 七大海嘯『王笏』、その『一の王笏』たるダークセイヴァー世界の力を顕現させたカルロス・グリードの咆哮が迸る。
 それは己の身体を傷つけられたがゆえの咆哮であったのかもしれない。
 今、ここで例えカルロス・グリードの分身体が倒されたとしても、その本拠地を制圧されぬ限り、彼は滅びることはない。 
 そして、それは8つある本拠地のうちの一つにしか過ぎぬのだ。コンキスタドールの王、オブリビオン・フォーミュラたる所以。
「よくぞ! よくぞ此処まで我を追い詰めたな!」
 ひび割れた紋章が輝く。
 これまで数多の猟兵達が積み重ねてきた傷跡。
 寄生虫型のオブリビオン、紋章が齎す力は絶大である。それが3つも体に宿るカルロス・グリードの力はどれだけ高く見積もったとしても足りぬものであったことだろう。

 赤き月の紋章が輝き、その咆哮と共に放たれるのは紅き三日月の如き無数の斬撃であった。
 その衝撃は一つ一つが凄まじい威力を持ち、さらには無差別に放たれる。
「だが、貴様たちは此処で滅ぼす。我が麗しの姫君と大いなる神が言うように、猟兵は滅ぼさねばならぬ!」
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は紅き三日月の斬撃を亡国の騎兵刀が迎え撃つ。
 火花が散り、紅き斬撃の元に刀身が砕け散る。
 けれど、即座に蘇る刀身は小枝子の破壊の意志が消えぬ限り、何度も蘇る。

 消えない衝動がある。
 強引に力任せに迫る紅き斬撃へと叩き下ろす。砕ける刃の破片に映る己の姿は如何なるものであったことだろうか。
 それにさえ気にかけることはなかった。ただ破壊する。あれなるは己が壊すと決めた敵である。

 滅ぶのなら、あの時死にたかった。兄弟と、国と、運命をともにする筈だった。滅ぶべき定めに在りながら、今尚在ることを自覚する。
 自分は生きている。生きてしまっている。
 迫る紅き斬撃の衝撃に額が割れる。
 だが、そんな痛みにかまっては居られない。迫る斬撃を弾き、逸し、受け流し、前進する。
 止まらない。
 次々と変える刃。
「戦い続けるしかない。生き残ったならば」
 遅い来る無数の斬撃を前にしても恐れは消えない。

 在るのは破壊の意志のみ。
 あれなるは破壊するべき敵。滅ぼさなければならない。
 例え、こお身が壊れ喪われてしまったのだとしても。嗚呼、と嘆かぬ声が響く。そう、嘆くことはない。
 ただ息を吐き出す。
 己が生きているという証を残そうと、否。それさえも形骸と化したままに小枝子は突き進む。
「戦い続けるしかない――!」

 その瞳に輝くのは、ユーベルコードの輝き。
 闘争心が齎す霊物質が呼応する。例え、斬撃が体へと刻まれたとしても強引に体を突き動かす。
 その様は正しく、劫火戦塵(ゴウカセンジン)の如く。
「なんだ……貴様は。滅びない、滅びることを知らぬのか?」
 どれだけ斬撃を叩き込もうと小枝子は止まらない。
 いや、止められないのだ。その破壊の意志が、彼女の体を突き動かす。ここに来て小枝子は無差別なる斬撃の隙間を見言い出し、一気に飛び込む。

 頬を、体を、斬りつける斬撃の痛みすら無視して身をひねる。
 ねじれた身体が、筋繊維の尽くが軋み、痛みを訴えるが、無視した。
 己がやらなければらないことは唯一つ。
「自分が為すべきことを為す! この身が振るうのは――!」
 手にした亡国の騎兵刀が上段からカルロス・グリードに振り下ろされる。

 その一撃は過たず、怪力によって放たれた。
 一閃がカルロス・グリードの身に癒えぬ傷跡を刻み込み、血まみれの小枝子はなおも突き進むのだ。
 未だ戦いは終わらぬと、その体に宿る破壊の意志のままに戦い続ける。
 それが生きているという唯一の証であると言うように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
俺は不敬故、礼は省くぞ
退場しろ

戦況は『天光』で逐一把握
受ける攻撃は『再帰』にて自身の周囲に無限遠の空間を構築、且つ『絶理』の断絶の原理も循環させ到達させない
敢えて姿だけは見せておく
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を『刻真』『再帰』にて無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成し斉射
更に射出の瞬間を『再帰』で循環、無限継続する隙間ない飽和攻撃を「一手で」実行

仮にその呪いが形なきものを侵し得るとして
無限に超え続けて尚、無限に先がある
お前の消滅とどちらが早いか試すも良かろう

※アドリブ歓迎



 凄まじい生きる力を見せつけるような斬撃の一撃は七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードの身体に癒えぬ傷を刻み込んだ。
 その身に輝く3つの紋章はどれも罅が入っていた。
 それはこれまでの猟兵達が叩き込んだ攻撃の凄まじさを物語っていた。
 七大海嘯は、その本拠地を制圧せねば滅びない。それは『王笏』でありながらオブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードも例外ではない。
 けれど、彼には8つの本拠地がある。
 それら全てを制圧せねば、この羅針盤戦争は終わらない。

「無駄だ、猟兵。我が本拠地全てを見つけ出し、我を滅ぼす前にお前達を我らコンキスタドールの全艦隊が滅ぼすであろう」
 カルロス・グリードの言葉は真実であったことだろう。
 だが、猟兵達は止まらない。
 どれだけ膨大な数の艦隊があろうとも、留まる理由にはなっていない。
「不敬なる者たちには、それ相応の報いを受けてもらおう」
 その黒百合の紋章からあふれるは呪詛の籠もった黒百合の花弁。

 吹き荒れる黒い嵐のように周囲に飛ぶ黒百合の花弁に触れてしまえば、如何なるものであったとしても侵食されてしまう。
 例え、それが無限遠の空間を構築するアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)であったとしても例外ではない。
「俺は不敬故、礼は省くぞ」
 アルトリウスの言葉は常と変わらぬものであった。
 例え無限に続くであろう空間を構築していたのだとしても呪詛の侵食速度は相対するオブリビオン・フォーミュラである『王笏』カルロス・グリードの力故であろう。
 さらにはダークセイヴァー世界にしかないはずの寄生虫型のオブリビオン、紋章の力によって強化を果たしている。

 姿を見せながらも、侵食に速度にアルトリウスは眉根を寄せることもなくカルロス・グリードを見据える。
「それは不敬ではなく、傲慢というものだ、猟兵よ。我が黒百合の呪詛の侵食からは逃れられはしない」
 どれだけ強大な力を持っていたとしても限界はある。
 カルロス・グリードが見誤ったのだとすれば、それは原理を操るアルトリウスの魔力が世界の外から供給されているということであったことだろう。

「これより先は『行き止まりだ』」
 その言葉とともに放たれるユーベルコードの輝き。
 破界(ハカイ)されしは、呪詛。
 障害たる呪詛を無視し、万象を根源から消去する蒼光の魔弾が放たれる。呪詛込められし黒百合の花弁の尽くを消滅させていく。
 それは言ってで実行された飽和攻撃であった。
 黒百合の花弁が散ることなく、消滅していく姿はカルロス・グリードをして、いかなる光景に映ったことだろうか。

「仮にその呪いが形なきものを侵し得るとして、無限に超え続けて尚、無限に先がある。お前の消滅とどちらが早いか試すもよかろう」
 放たれる続ける蒼光の弾丸が無数に浮かび、黒百合の尽くを撃ち落としていく。
 乱舞する蒼光の輝きのもとにアルトリウスは告げる。

 ただ一言。
 短くその言葉を告げるのだ。
「――退場しろ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
あねた、随分と余裕ぶってたわね。まるで、『グリード』じゃなく『プライド』よ?

「呪詛耐性」の符をあらかじめ自分とアヤメの分用意して。
アヤメ、『鎧装豪腕』を引き連れて、前衛であたしの盾をよろしく。遠慮なく「盾受け」に利用して。

黒百合の呪詛、あたしの「呪詛」知識で読み解いて、符に込めた「呪詛耐性」を更に強化するわ。

人を呪わば穴二つ。これはいわば、あなたが流してきた血の量だと思いなさい。
「高速詠唱」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「結界術」で、カルロスを中心に紅水陣を展開。
隠した相手に動くつもりはないなんて風だけど、紅水陣の中にいる限り全てが溶けていくわ。それが嫌なら、惨めったらしく逃げ出しなさいな。



 黒百合の花弁が舞い落ちる。
 それは幻朧桜舞い散る島にあって、異質なものであったことは言うまでもない。その黒百合の花弁が齎すのは呪詛。
 あらゆるものを侵食し、崩壊へと導く紋章の力である。
 七大海嘯『王笏』、カルロス・グリードはその身を8つに分け、それと同じだけの数の本拠地を持つ。
 それはあまりにも強大なる存在、オブリビオン・フォーミュラであるからこそなせる業であった。
「正直、驚いている。分身体と言えど、我をここまで追い詰めるか」
 カルロス・グリードは素直に称賛していた。
 それは王たる者のプライド故であろうか。認めるべきを認めぬ王に王たる資質などないというように、カルロス・グリードは例え分身体であろうとも追い詰められていた。

「あなた、随分と余裕ぶってたわね。まるで『グリード』じゃなく『プライド』よ?」
 その言葉とともに村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は式神であるアヤメと共に駆け出す。
 戦場に吹き荒れる黒百合の花弁の数は凄まじい。
 呪詛態勢の符を自分とアヤメの分用意して、アヤメに鎧装豪腕と共に盾となってもらっていた。
 あの呪詛の込められた黒百合の花弁は凄まじい侵食速度で呪詛耐性の符を焼き尽くしていく。

「プライドなき王がいるものか。それはもはや王にあらず。傲慢こそが王たる本質よ。欲も、プライドも全て持ち合わせぬ者に王たる者の資質が理解できるものか」
 カルロス・グリードは真にコンキスタドールの王であった。
 その人の身に余る強欲を持ってしてあらゆる世界すらも侵略する。それこそが、このグリードオーシャンを統べる者に相応しいというように紋章を輝かせるのだ。

 あの黒百合の花弁の呪詛をゆかりは読み解いていく。
 汚濁を煮詰めたような黒より闇色、闇よりも昏き何かが込められた紋章から放つ呪詛はゆかりの瞳をしても読み解く事は難しかったことだろう。
 だが、それでもやらなければならない。
「人を呪わば穴二つ。これはいわば、あなたが流してきた血の量だと想いなさい」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは彼女が表層なりともカルロス・グリードが放つ呪詛を解析した結果であった。

 怨嗟のごとく紡がれた黒百合の紋章は確かにこの世界のものではない。
 ダークセイヴァー世界から由来したものであることは確かだ。だが、共通するのは、流れた無辜の人々後の量であろう。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 例えどれだけ黒百合の花弁が呪詛でもって世界を侵食しようとも、それを上塗りするユーベルコードの輝きがある。

 敷かれるは、紅水陣(コウスイジン)。
 紅き強酸性の雨が降りしきる世界へと呪詛を上塗りにするのだ。あらゆるものを腐食させる紅い靄の中でカルロス・グリードは笑った。
「ほう、これがそうか。あらゆるものを腐食させる。我が分身体と言えど耐えきれるものではないな……!」
 ここまで消耗させられてしまえば、カルロス・グリードとて逃げ回るほかない。その身体、皮膚、あらゆるものが腐食させられていく。
「格下相手に動くつもりなんてないって顔をしていたけれど……あんたの言う通りよ。全てが溶けていくわ。それが嫌なら、惨めったらしく逃げ出しなさいな」
 それは挑発の言葉であった。

 王たるプライドがあるのであればこそ、見過ごすことのできぬ暴言。
 それ故にカルロス・グリードは強酸性の紅い雨に討たれながら、ゆかりの顔をねめつける。
 その顔忘れぬぞ、という捨て台詞を吐き捨て、その鋭い眼光をゆかりへと突き刺す。
 けれど、ゆかりは頭を振る。
「おととい来やがれって、やつよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「黒百合の紋章は食べたし、次はどうしようかな?」
…うん、今度は紅き月の紋章にしよっと。

飛んでくる刃の軌道を見切り、自分に当たりそうなものだけを二振りの大鎌で怪力を駆使しながら防いだり、回避したりしながら敵さんに向かって突っ込んで行く。
奇剣とLadyを持たせた悪魔の見えざる手にはLadyでの銃撃と奇剣の斬撃で僕のフォローをして貰っとくかな。

近づけたら敵さんを対象にUCを発動。
んでもって敵さんの心臓を操作し、出来る限り停止させる事で隙を無理矢理作る。
後は動きを止めた敵さんの紋章に噛み付き、敵さんごと紋章を噛み砕いて血を奪う。

「暴食であって傲慢でもあるんだよね、僕。」
それとたまに強欲ってね。



 猟兵が塗り替えた紅い雨が降りしきる世界を飛び出した七大海嘯『王笏』、カルロス・グリードが目にしたのは、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)の姿であった。
 王たる己の前にしても、莉亜の瞳に合ったのは恐怖でもなんでもなかった。
 あったのは純然たる食欲であった。
 いや、違う。
「貴様……王たる我を前にして、在るのは吸血衝動だけか!」
『王笏』の名に相応しき強大なるオブリビオン・フォーミュラ。その分身体と言えど、莉亜が彼に抱くのは強烈なる吸血衝動だけであった。
「黒百合の紋章は食べたし、次はどうしようかな?」
 3つもあるしね、迷うよね、と莉亜は笑っていた。

 彼の強烈なる吸血衝動は常日頃抑えられている。
 その吸血衝動が開放されるのだとしたのならば、それはオブリビオンと対峙している時だけである。故に彼はグルメであったことだろう。
 あらゆるオブリビオンの血を吸い、その血を評する。抑え込んだ衝動が開放されたことによる尋常ならざる力は言うまでもない。
「不敬な――! 貴様が我の血を吸うなど、ましてや紋章を――!」
 カルロス・グリードの咆哮と共に紅き月の紋章が輝く。
 ダークセイヴァー由来の寄生虫型のオブリビオン、紋章。
 その紅き月の紋章が放つのは三日月の如き斬撃の乱舞。それはあまりにも膨大な数となって放たれ、無差別に放たれることによって猟兵達の回避を難しくしていた。

 だが、その尽くを莉亜は手にした二振りの大鎌で防ぎ、躱し続ける。
 それは斬撃の合間を縫うという表現では足りぬほどの絶技であったことだろう。どれだけ斬撃を放ったとしても、莉亜の瞳は爛々と輝き、獲物たるカルロス・グリードから片時も離れることはなかった。
 悪魔の見えざる手が銃撃と剣戟でもってフォローしてくれる。
「……うん、今度は『それ』にしよっと」
 ごくり、と生唾が飲み込まれる。
 あれはどんな味がするだろうか。紋章の味。あれもまた寄生虫型のオブリビオンであるのならば、莉亜にとってそれは吸血の対象でしか無い。

「貴様……!」
 斬撃の中をかいくぐって莉亜が迫る。
「これで死ぬまで戦えるでしょ」
 その瞳に輝くユーベルコードを見た瞬間、カルロス・グリードが呻く。その体は確かに数多の猟兵の攻撃に寄って消耗しきっていた。
 だからこそ、そのユーベルコードの付け入る隙を与えたのだ。

 そのユーベルコードの名は、傲慢な右手(プライド・ライト)。
 いまや、カルロス・グリードの心臓には右手が生えていた。それは身体の中で蠢く手。
 生えた手は、カルロス・グリードの意に反して心臓を停止させる。
「がっ――……! これ、はっ!」
「そう、その心臓を止める。それが僕のユーベルコード。無理矢理にでも隙を作らせてもらったよ……」
 莉亜の口が開く。
 そこにあったのは鋭い犬歯。吸血鬼、ダンピールたる彼の象徴が胸元に付けられた紅き月の紋章へと突き立てられる。
 瞬間、その血潮は全てが莉亜の喉へと届けられる。

 渇望していた吸血衝動が癒やされるような気さえした。
 それはいわば珍味と呼ばれるような味であったことだろう。良薬口に苦し。その表現がしっくり来る。
 けれど、癖になる味のように思えるのは、ダークセイヴァー由来のものであるからだろうか。
 ああ、と陶然とした吐息を漏らして莉亜が笑う。

「暴食であって傲慢でもあるんだよね、僕」
 それとたまに強欲ってね、とうそぶきながら紅き紋章を砕き、ごうちそうさまでした、と口元の血を拭ってカルロス・グリードを蹴り飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
さて、きっと強敵だから
気合いを入れて戦うよ
侵略される気分を味わって貰おうか

黒百合の花びらを神気で固定して防ぎ
抜けてくるものがあれば呪詛耐性で耐えるよ
邪神を呪うのは簡単じゃないと思うよ
…言ってて悲しくなってきた

あら、文字通り一心同体ですのに冷たいですの
いっそこのまま一緒に凍ってしまいましょうか

…やめてくれ
なんか邪神が喜びそうで癪だけど
邪神の施しで白金の彫像になって接近戦を挑むよ
武器を手放し広範囲に拡散して攻撃してるなら
相手の側の方が敵の体を盾にできる分安全だろうし

自分から彫像になってくれて嬉しいですの
折角ですから女神降臨でドレス姿にしておきますの

思う所は色々あるけど
強化された拳に籠めてぶん殴ろう



 紅き月の紋章を噛み砕かれ、七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードはうめいた。後一度、紋章の力を使えば確実に砕けてしまう。
 その実感があった。
 当初の彼にとってこの戦いは猟兵の力量を測る為のものでしかなかった。
 分身体であることが、その証左である。彼にとってこの分身体は捨て駒であれど、容易く敗北することなどないとさえ思っていたのだ。
 けれど、結果はどうだ。
 ここまで追い詰められている。どれだけ個としての力の差があろうが関係ないとばかりに猟兵達は次から次へと襲いかかってくる。

「侵略される気分を味わって貰おうか」
 それは正にその言葉の通りであったことだろう。
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、強敵故に気合を入れて戦いに挑んでいた。
 吹き荒れるようにして晶に荒ぶ黒百合の花弁は未だ十分すぎるほどの呪詛を持ち、その侵食の力でもって晶を滅ぼさんとしていた。
 例え、彼女が邪神と融合した存在であったとしても、オブリビオン・フォーミュラをさらに紋章の力で強化した呪詛は容易く晶を殺すだろう。

 故に邪神の権能である固定の神気でもって空中に固定する。
「邪神を呪うのは簡単じゃないと想うよ……言ってて悲しくなってきたけれど」
「ほう、その身に宿すは邪神か。我でも尚、コントロールしきれないというのに、融合して権能を使うか、猟兵!」
 コンキスタドールの王をしてコントロールしきれぬ邪神の力。
 それは『三の王笏』が示す通りであったことだろう。けれど、晶は違う。同じように融合してもなお、共存している。

「あら、文字通り一心同体ですのに冷たいですの。いっそこのまま一緒に凍ってしまいましょうか」
 若干喜んでいるような雰囲気さえする邪神の言葉に晶はげんなりして、やめてくれというのが精一杯だった。
 邪神が喜びそうで癪であったけれど、晶は邪神の施し(リビング・スタチュー)によって白金の彫像へと姿を変える。
 例え、邪神が喜んでも構わない。
 今は目の前にある存在、オブリビオン・フォーミュラの分身体と言えど、強敵たるカルロス・グリードを倒さなければならない。

 肉体改造に寄って一時的にであるが戦闘力が強化された晶の拳が振りかぶられる。
 神気に寄って固定された黒百合の花弁を抜け、晶は見た。
 カルロス・グリードの不敵な笑みを。
「なるほど。一心同体。身体だけではなく、心をも同一とする。故に性別が変わっているのだな、貴様は」
 ぞわりと怖気が走る。
 目の前にいるのが分身体であることを忘れるほどの恐怖。見透かされるような底冷えする視線。
 これほどまでに数多の猟兵達に消耗させられても尚、あふれる重圧。

「自分から彫像になってくれて嬉しいですの。せっかくですから、ドレス姿にしておきますの」
 だが、その恐怖を、重圧を振り払うような脳天気な声が響く。
 それが身に宿した邪神の声だとわかるのに、時間はかからなかった。瞬時にわかる。これだけの儒教だと言うのに、邪神は変わらない。
 停滞と固定の権能を操る邪神だからこそなのかもしれない。けれど、それが今は救いであった。

「想うところは色々あるけど、それは後回しにしてやる!」
 振り上げた拳。
 その握りしめた拳の意味を知る。なんだか、きゃっきゃしている邪神にふつふつと怒りが湧き上がる。
 こっちはこれだけ大変な目にあっているのに、今ドレスアップする必要あるかな?
 そんなふうに想いながらも、晶は根源的な恐怖すらも振り払って白金の超硬の拳をカルロス・グリードに鬱憤を晴らすように叩きつけ、その体を盛大に吹き飛ばして叫ぶのだ。

「ほんと、こういう時にそういうのやめてくれ――!」
「あら、だって可愛いんですものー。お似合いなですの」
 邪神のころころと転がるような喜色満面な笑顔を思わせる言葉だけが、晶の心を散々に疲れさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

俺達が侵す者か、猟兵から見ればお前達が侵す者だ
滅びの道は停滞を望む者の先にある、進み変化を続ける者に滅びなどあるものか

SPDで判定
先制攻撃は【オーラ防御】と銀腕を盾の形状に【武器改造】し【盾受け】することで防ぎ、その状態で敵に近づく
途中の攻撃は【地形を利用】して遮蔽物に隠れたり、攻撃の軌道を【見切】って回避する
多少の攻撃は喰らうだろうが【勇気】【覚悟】を以て行動する
間合いに入れば地面を花弁ごと蹴り上げて【目潰し】
僅かでも隙が出来るれば指定UCを【怪力】【早業】【鎧無視攻撃】と共に叩きつけ紋章ごと敵を【切断】する



 グリードオーシャンとは即ち世界を侵略する世界である。
 それはこの海洋の世界である様をみればうなずけるものであったかも知れない。堕ちてきた島、それは即ちグリードオーシャンが他世界から奪ってきた世界の一部というにほかならぬ。
 故に、彼らコンキスタドールの言葉を借りるのならば、侵略を旨とする己たちを侵略する猟兵は恐るべき存在であったことだろう。
 故に勃発した羅針盤戦争である。
「我らが本拠地をも制圧するか、猟兵……!」
 七大海嘯『王笏』にしてコンキスタドールの王、即ち、オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードの分身体が言う。

「俺達が侵す者か、猟兵から見ればお前達が侵す者だ」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は駆ける。
 その瞳に輝く義眼と銀色の義手を携え、コンキスタドールの王へと走る。
 しかし、ルイスを阻むは紅き月の紋章が輝き放つ無数の斬撃であった。数多の猟兵達との戦いで紅き月の紋章はひびわれていた。
 致命の一撃を受けて、放てば紋章の力は喪われるところまで追い詰められていたが、拳の一撃に寄って吹き飛ばされたカルロス・グリードは立ち上がるや否や決断した。

 今目の前にいる猟兵を確実に滅ぼすためにできうる選択の最上こそが、この紅き月の紋章であると。
 放った無差別なる斬撃の嵐を最後に紋章が砕ける。
「抜かせよ、猟兵。貴様たちを滅ぼす。海洋はすでに動き出している。全てを内包しながら、滅びと再生を繰り返すのだ。お前達には滅んでもらう。我らが強欲を満たすためにも」
 放たれる三日月の如き斬撃の嵐を前にしてもルイスはひるまなかった。
 変形した銀の腕が盾にように計上し、受け止めながら進む。
 けれど、斬撃の力は凄まじかった。オーラの力を重ねてもなお、突き破ってくる鋭い斬撃。

「くっ――!」
 身体のいたる所に裂傷が走る。
 どれだけ盾で受け止めても、その盾を躱すように斬撃が動いてルイスの身体を傷つけるのだ。

 だが、コンキスタドールの王は知らない。
 ルイスがどれだけの勇気と覚悟を持って前に進んでいるのかを。
 彼の足に停滞はない。止まることなどしない。
「滅びの道は停滞を望む者の先にある、進み変化を続ける者に滅びなどあるものか――」
 そう、あってはならない。
 今を望み、未来に進む者の道を閉ざしてはならない。デッドマンとしての己が叫ぶ。
 今を生きるグリードオーシャンの生命を終わらせてはならないと叫ぶ心がある。

「俺と踊ってもらおうか。どちらかが倒れるまでな!」
 駆け出す。蹴り上げた土が視界を覆う。斬撃はそれでもルイスを襲う。構わない。どれだけの傷を負うのだとしても、己はデッドマンである。
 傷を恐れてはならない。
 敵を恐れてはならない。
 恐れは足を止める。諦めは足を止める。それを知っているからこそ、足を踏み出す。そうするべきといつかの誰かが教えてくれ方も知れない。
 背中を押す力があった。

 それがもう思い出せない何かであったのだとしても、それでもルイスは足を踏み出した。
「これでもなお迫るか――!」
 カルロス・グリードは見ただろう。目の前の猟兵の覚悟を、そして銀腕が変形した剣が己へと振りかぶられるのを。
 息をつかせぬ超高速連続攻撃。
 それは、銀武の舞(ギンブノマイ)と呼ぶにふさわしい攻撃であり、斬撃の嵐をも上回る銀色の旋風のように、カルロス・グリードの身体を散々に刻むように紅き紋章を粉々に砕くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
ダークセイヴァーの『紋章』か。成程、力に対しても貪欲なようだ。
グリードの名に恥じない、という訳だね。結構なことだ。
(悠然とにこやかに)
では、始めよう。君の力、見せてくれたまえ。

敵POWUC先制対策
紅炎の嵐(オーラ防御×属性攻撃:風&炎×範囲攻撃×浄化)を身に纏い、黒い霧を吹き飛ばし蒸発させて寄せ付けません。

まあ、こんなところか。本体の君に会える時を楽しみにしよう。

『ウルクの黎明』を発動。増大化した戦闘能力で黒い霧を一息に蒸発させる魔力爆発を起こします。(属性攻撃:超高温×範囲攻撃×全力魔法)



 ついに紅き月の紋章が砕かれる。
 その紋章、即ちダークセイヴァー世界においてオブリビオンに寄生し、宿主に超絶為る強化を齎す寄生虫型のオブリビオンの一角を突き崩したのだ。
「我が紋章の一つを砕くか……! やはり、猟兵は滅ぼさなければならぬ。ここで……!」
 満身創痍の姿に成りながらも七大海嘯『王笏』のカルロス・グリードはうめいた。
 しかし、その重圧は一つの紋章を喪っても尚、損なわれることはなかった。
 分身体と言えど、オブリビオン・フォーミュラであるとシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、しかして悠然と佇んでいた。

「ダークセイヴァーの『紋章』か。成程、力に対しても貪欲なようだ」
 紅きスーツの偉丈夫は、目の前で砕け散った紅き紋章をみやり、にこやかに微笑んだ。
 その佇まいには余裕があった。対するコンキスタドールの王、カルロス・グリードをしてもそう思わせる何かが彼にはあったのかもしれない。
「グリードの名に恥じない、という訳だね。結構なことだ」
 笑みは消えない。どれだけ重圧を放ったとしても崩れることのないにこやかなる雰囲気。それがカルロス・グリードにとっては気に食わぬことであった。
「では、始めよう。君の力、見せてくれたまえ」

「我の力を見定めようとするか、猟兵。見定めるは王たる我よ!」
 吹き荒れる重圧と共に輝くは、闇霧の紋章。
 五体を黒霧へと変え、その黒霧に触れた者の生命力を奪う、ダークセイヴァーらしい力であるとシーザーは感じていた。
「なるほど。確かに不定形の体になるメリットはある。その黒霧に少しでも触れてしまえば、生命力を奪うというわけか……だが」
 吹き荒れるは紅炎の嵐。身にまとう炎が浄化と炎、そして風を伴ってシーザーの体にまとう。
 例え黒霧であったとしても、シーザに触れるためには、この紅蓮の嵐を突破しなければならない。

 これがもしも質量を持つ体へと変貌する紋章の力であれば、強大なるオブリビオン・フォーミュラの力でもって力押しもできたことだろう。
 だが、黒霧の体では風の力に押されて動くこともできない。
「蒸発させるほどの熱量と風……さらには浄化の力か……! 貴様、何者だ!」
 カルロス・グリードは目の前に吹き荒れる炎の嵐をまとう紅いスーツの男をねめつける。その視線は射殺さんばかりの鋭さであったが、シーザーは構うこと無くにこやかなる微笑みを絶やさなかった。

「まあ、こんなところか。本体の君に会える時を楽しみにしよう」
 その身にまとう膨大な魔力がほとばしり、輝く真紅のオーラがシーザーの掌の一点に集約される。
 それはウルクの黎明(デウス・ポテスタース)とも呼ばれる夜明けの如き輝きであった。

 放たれる魔力爆発の一撃は黒霧を吹き飛ばすだけにとどまらず、これまでの数多の猟兵達の攻撃に寄って消耗し、亀裂の入った紋章を砕くに至る。
「馬鹿な――これほどの魔力を何処に隠して――!」
 超絶為る爆発の一撃。
 それは身を灼き、砕き、それでも飽き足らずに紋章さえも砕いて見せた。しかし、シーザーは頭を振った。
「いいや、違うな。これは私だけが為したことではないよ。私はひと押ししただけさ。これまで君を打倒せんと迫った者たち、彼らが積み上げてきたものだ。君たちオブリビオンは個としては確かに強いだろうさ」
 けれど、とシーザーは黎明の輝き見せる魔力を拳に握りしめる。

 そう、確かにオブリビオンは個として猟兵を上回る。
 けれど、いつだってそうだ。
 積み重ねることを猟兵は知っている。例え個として及ばずとも、重ね、刻み、つなぐことによって為せることがあると。
 それ故にシーザはにこやかに笑うのだ。
「その滅びは必定。貪欲にして傲慢なるコンキスタドールの王よ。また会おう――」
 放つ強大な魔力が弾け、カルロス・グリードは紅蓮の炎に包まれていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…一の王笏でダークセイヴァーの性質を持っている、ね…
…数字と世界が連動してるのかな…ま、他のカルロス・グリードとも戦えば判るか…
…まずはこのカルロス・グリードからだね…
…呪詛を込めた花びらに対しては復元浄化術式【ハラエド】の力を宿した術式組紐【アリアドネ】を布状に周囲に展開…
…これだけで防げるとは思っていないけど充分な時間稼ぎにはなる…
…稼いだ時間で重奏強化術式【エコー】を複数回重ね掛けした【暁天踊る集い星】を発動…
…浄化の力を得た刃の花びらで黒百合の花びらを切り裂きながらカルロスへと攻撃をするよ…
…純粋な実力じゃ敵わないからね…相性勝ちを狙わせて貰うよ…



 紅き月の紋章、黒霧の紋章。
 それらは砕かれた。猟兵達が数多積み上げてきた傷と繋げてきた戦いの軌跡が、ここに実を結ぶ。
 残るは黒百合の紋章唯一。
 紋章と呼ばれる寄生虫型のオブリビオン。それは本来ダークセイヴァー世界でしか見ることの出来ないものである。
「……一の王笏でダークセイヴァーの性質を持っている、ね……」
 ならば、それは数字と世界が連動しているということではないのかと、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は仮設を立てていた。
 ただ、それは未だ推測の域をでないものである。

「ま、他のカルロス・グリードとも戦えば判るか……」
 目の前に対峙するカルロス・グリードは『一の王笏』、その分身体でしかない。
 けれど、オブリビオン・フォーミュラである彼の分身体は、それでもなお凄まじい力がを持っていた。
 ここまで追い詰める事ができたのは数多いた猟兵達が紡いでくれたことに他ならない。
 黒百合の紋章しか残らぬカルロス・グリード。
 その咆哮が轟く。
「許さぬぞ、猟兵……! 一度ならずとも二度までも我が財を砕くとは!」
 あふれる黒百合の花弁。
 その呪詛を込められし無数の花弁はこれまで猟兵たちを苦しめてきた。呪詛による侵食と崩壊。
 触れた傍から呪詛に侵す力は脅威と呼ぶにふさわしいものであったが、メンカルは復元浄化術式『ハラエド』の力を宿した術式組紐『アリアドネ』による面での浄化でもって対抗する。

 しかし、対する呪詛はオブリビオン・フォーミュラの力が宿ったものである。
 これで防げるとはメンカルは楽観していなかった。
「その程度の薄布、網目のごとき術式でなんとする、猟兵! 我が黒百合の花弁に込められし呪詛は、貴様たちの結界すらも容易く――」
 破るのだとカルロス・グリードは吠えていた。
 だが、その言葉が途切れる。

 そう、目の前にしたメンカルが一瞬の間に紡いだ術式はカルロス・グリードの想定を遥かに越えたものであった。
「我が剣よ、歌え、踊れ。汝は残星、汝は晨明。魔女が望むは彼誰煌めく星嵐」
 詠唱の言葉が無数に重なり合って世界に響く。
 それはまるで合唱するように響き、重奏強化術式『エコー』によって複数回に寄って重ねがけされたユーベルコードの極大なる輝きであった。

 浄化の力が世界に満ちていく。
 どれだけ世界を呪詛に満たそうとも、あらゆるものを浄化し、元に戻そうとする術式の力がメンカルを中心にして吹き荒れる。
 刃の花びらが無数に展開し、オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードのはなった黒百合の花弁をも覆い尽くしていくほどの数でもって圧倒するのだ。

「……純粋な実力じゃ敵わないからね……相性勝ちを狙わせてもらうよ」
 そう、ここまでの猟兵達の戦いが積み上げてきたものがある。
 黒百合の紋章を除く全ての紋章の破壊。
 それによってカルロス・グリードの選択肢はたった一つしかなくなっていた。黒百合の呪詛に寄る侵食。
 メンカルにとって、それ以外の紋章の力を使われて凌がれてしまうことはあってはならぬことであった。

 唯一見えた勝ち筋が喪われてしまう可能性だってあったのだ。
 けれど、猟兵達の戦いは刻み、積み重ね、つなぐものである。ならば、その軌跡の最後に立つメンカルがやらねばならない。
 託されたものがある。故に、メンカルの瞳は、暁天踊る集い星(デイブレイク・ストーム)のように輝くのだ。
「これが猟兵の戦い。たった一人で無数に織り合わさった力に立ち向かうなんてできやしない……いつだってそうだけれど、お前達オブリビオンは個でしか戦おうとしない。だからこそ、お前達が軽んじた己より劣る力に負けるんだよ……」

 輝く星の如き極小の刃がカルロス・グリードを切り刻む。
 最後の黒百合の紋章を砕き、霧散させた時、カルロス・グリードさえも消滅させていく。
 数多の力が紡いだ軌跡は、今ここに集った星たちによって終焉を迎えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月07日


挿絵イラスト