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羅針盤戦争〜雷槌に叫べ

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #既存島シナリオ(新規でマップに新たな場所として載りません) #ニトゥルス島 #島の座標N0IE06 #(この島の影響で開放できた座標:S26E42)

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#グリードオーシャン
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#羅針盤戦争
#既存島シナリオ(新規でマップに新たな場所として載りません)
#ニトゥルス島
#島の座標N0IE06
#(この島の影響で開放できた座標:S26E42)


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●狡知
『舵輪』『邪剣『鬼火』それから『鮫牙』。
 コンキスタドールの首領各の元にそれぞれ身を置いて、今やどの所属か思い出せず。
 思い出す必要もない。飲み下して消した過去に過ぎない。
 献上すべき手柄を貪欲に、手の内に抱いしまいこのドラゴンは離せなかった。
 どれもこれも、自分のものにしたかった。
 結果的に名のある称号を持つ『七大海嘯』と反りが合わないと解るやいなや、手のひらを返すように口裏を合わせる。
 いまこそ、『七大海嘯』麾下の精鋭名のもとに、力を示すと。
 船を所属を下りた事を――ばれぬように、どの『七大海嘯』の前でも宣言してやった。
「ただ戦禍をあげてくれば、それでいいんだろ?」
 貪欲ドラゴン"ファフニール"は内心ニヤリと笑っている。
 いつかどこかで得た"テトラナンバーズ"という称号、その意味を――『七大海嘯』は知らないのだから。
 目標としてどの『七大海嘯』も言葉の端から告げていた、敵対者側に存在する「渦潮」の破壊。
「……んなのを全軍が目指すんなら、今はどこもかしこも穴だらけってーことだよなあ?世の中お宝ちゃんが世界をおおきく広げんだよ、ハハハハハ!」

●叫べ
「その生き物は貪欲に戦いと知識を求め、狡知に長けるという」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、予知に掛かったドラゴンのことを狡知と例える。
「アンタは、"ニトゥルス島"を知ッているか?」
 スペースシップワールドからこぼれ落ちた、ある宇宙船である島の名だ。
 大雨大嵐が基本装備の天候の悪い、"島"の半分が海に沈んでる古い島。
 おかしな電気が体に帯電し、電力を浴びすぎて浮かんだ機械がちらほら浮遊する不思議な島だ。
 雷は島から何らかの理由を持って発生する――。
「七大海嘯』麾下の精鋭であるコンキスタドールがな、大嵐の島に上陸した。たッた一体で喰いに来たんだそうだ」
 飛行する動力を失って久しいニトゥルス島の中に入り込み、大暴れ。
 どたどたと騒々しい騒音と、破壊の限りを船内で行っている。
「小耳に挟んだ話では、ニトゥルス島の心臓部。時折、役割を思い出したように動く"コアマシン"が実はメガリスにいつかどこかで置き換えられていたのではないか、と囁く海賊がいるらしいな。壊れかけの機械にしては、不定期に、稼働しているようだから疑問に思う奴らがいるらしい」
 このコアマシンが、ニトゥルスの雷、その大本である。
 放出しすぎる雷も、体に帯電する雷も。
「重要なのは、宇宙船の"コアマシン"を財宝(メガリス)ではないか、と疑うモノが少なからずいるということ」
 わかるか、とフィッダが強気な視線を向ける。
「海賊なら、求めてるもんなんだろう?だから、ドラゴンは貪欲にソレを求めて暴れまわり――喰らおうとしている」
 財宝の数々を腹に収め、誰にも取られないように務めるドラゴン、ファフニール。
 あれでもコンキスタドール。元々人間だったはずのもの、という話もある。
 言葉を話し、人間以上の知恵を持つ。
 故に狡猾で、強欲な欲を持つモノを嗅ぎ当てるのがとても得意と来た。
「既に島の海賊の一部が……哀れな躯となッた。島に関する知識と、島の海賊団団長のメガリスの秘密を食い殺されたことで知られてしまッた。コアマシンのことを知られたのは、彼らのせいになる」
 この島のメガリス『船乗りの絵筆』。
 その話はこの報告書、と纏められた紙が渡される。
「島には今だ知られていない"秘宝"が眠ッていることがあるようでな。冒険は人を裏切ッたり裏切らなかッたりするのさ」
 ドラゴンは秘宝を求めて、やってきた。王たるカルロス・グリードの命(めい)を聞きつつも、他のコンキスタドールを出し抜く形だ。
 各島の秘宝を奪うチャンスが来たと、ファフニールは胸をときめかせて一番手にニトゥルスを選んだようである。

「コアマシンの電力が全て奪われたり、そのものに手を出されてみろ。宇宙船の機能が全て停止する可能性が高いんだ」
 到達する前に、討たなければならない。
 情報共有を行える絆を備えた海賊だらけの島でもある。
 猟兵に助けられたことの有る島だから、猟兵への協力は出来る範囲で惜しまない。
 まともに戦うと、猟兵に不利なことばかりが起こる可能性すら、ある。
「ところで。普段の電力は人体に害をだしたりしないが……コアマシンがもし、危険を感じて帯電の出力を上げたならどうなると思う?」
 くくく、と場違いに笑うフィッダは楽しそうだ。
「想ッてること全部口からでるぞ。"楽しい"だとか"怒り"だとか、"敵に対して言いたいことだとか"、考えた事がぜんぶだ!」
 真実全てが無制限に出るわけではない。
 帯電が一種のテレパシーのようなものへと昇華して、"隠したい気持ち"が全部バレてしまうだけだ。
「まァアンタらがバタバタ到着するころには、最大出力で敵に抵抗してると思うけどな」
 恋香る季節に、そんな電力アップが行われたりするらしい。
 想いを打ち明けられない男女には、なかなか好評だったりするのだとか――。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。
 この依頼には関連依頼があるので、タグをつけておきます。

 既存島、ニトゥルス島への奇襲。
 過去に運用したことのある、スペースシップワールド島です。

 プレイングボーナス……海賊達と協力する。
 海賊たちはわりと猟兵達に親しく接します。
 強力の仕方は、想像力、無限大。

 猟兵たちは、島に停泊させた鉄甲船またはニトゥルス島甲板に訪れます。
 島(宇宙船)内部を手短に探索し、ボスを追い詰めて倒しましょうなシナリオです。

 このシナリオ上では、ボスは既に島の心臓部に到達していてコアマシンが持ち出せないかなんやかんやしています。島の帯電は、はじめから髪をふわりと持ち上げる等では留まらないレベルで人体に影響を及ぼしていると考えて頂くのがいいでしょう。

 帯電は、微弱なので攻撃などに転用したりはできません。
 加えて行動を阻害するものではありません。
『心の内に考えを留めておけない(みんなだれがなにかんがえてるかわかる)』。
 みたいなギミックだと思っていただければ。このギミックに全く触れなくても構いませんが、タテガミがよくする考えの考察は、いい感じにみんなに丸聞こえになるのでお気をつけを。
 ほら、バレンタインが近いですからね、言いたいことはどばどば言っておきましょう。ボス相手でもいいですし、隣りにいる誰かでもいいですよね!

 全採用は難しく即完結が難しいかもしれませんが、出来る範囲で頑張ります。
 その事を、ご留意いただけますと、幸いです。
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第1章 ボス戦 『貪欲ドラゴン『ファフニール』』

POW   :    奪ってきた物の価値を知る竜
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【今まで自分の物にした財宝や犠牲者の幽霊】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
SPD   :    全てを奪い取る強欲な牙
【様々な能力を奪い取る噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【知識や武装、思考】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    死して尚、強欲な犠牲者達
【生前の能力を持つ煌びやかな武器や防具】で武装した【腐食する猛毒な息で体を構成された犠牲者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【口から吐き出す吐瀉物】を召喚する。

イラスト:塔屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサジー・パルザンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●テトラナンバーズの物色
 それは――遡ること数刻前。
 海賊団が目撃したドラゴンは、突然どんな方法を使ったのか、どすんと甲板に落ちてきて。鼻をすんすんと鳴らして。何かに気が付き、どっだどったと不法侵入を開始ししようとしていた。
 明確に敵。異変に気がついた海賊が、ドラゴンへと威嚇射撃を行ったがファフニールはこれを無視。壁を噛み砕き、甲板を思う存分噛み千切り、蹂躙の言葉がふさわしいほどに暴れた。
 通り過ぎたドラゴンの体に染み付いた凄まじい腐臭が鼻を付く。
 むせ返る島民たちが床に身を寄せれば、ドラゴンは胸を張り、海賊団や島民に追い打ちに生臭い吐息を吐きかけて言ったという。
『俺様ちゃん単独の冒険譚は今まさにこっからはじめて往くことにしたぜ~~~?ヒュゥ、まずは軽く下見下見っとぉ~!』
 バリもぐぐしゃり。噛み砕いた島の壁を咀嚼して飲み込んで。"古い構造だ"という知識を得たドラゴンは上機嫌。
 外壁が古いなら内部の最奥には、"もっと古い物がある"可能性がある。
 誰も知らないモノ(秘宝)なら最高に運がいい。だがソレ以外でも勿論大歓迎。
 見つけたのが誰だろうと、手に入れれば勝ちだ。
『んー口に残るピリッとする味は愉快の味だな、よし決めた。こいつの出処を突き詰めてぇ~~俺様ちゃん、奪っちゃうぜ~~~!』
 ハハハハハ、と莫迦にした笑い声だけを残して、船内(島内)に消えていった。
木霊・ウタ
海賊
最短ルートの案内
無理なら地図でもOK
コアルームの排気&空気清浄装置の最強稼働
宇宙船なら絶対ある筈だぜ

龍へ攻撃しコアから引き離す

獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

吐瀉物を燃やし
剣風と炎が生む風で毒息を吹き飛ばす
更に装置の稼働で幽霊共にはおさらばだ

死んでも欲張り竜の傀儡とは可哀そうに
すぐ解放してやる


この大剣を口に突っ込んでやる
牙や爪で防がれたら砕き炙ってやる
避けられたら
替りにお宝を砕き溶かしてやる

俺の考えが判ったか?
知ったあんたが恐怖するのも
織り込み済みだ

まあ奴の考えも伝わるから
その動きに合わせ剣を振るうんで
外しっこないけど

で俺の考えが判っても
その反応より速く叩き込む
勝ち目はない
紅蓮に抱かれ眠れ


フェルト・ユメノアール
もうすでに死者が出てる、悠長にしている余裕はないね
海賊たちには道中の道案内と戦場での応援をお願い
道化師にとってお客さんの応援は何よりも力になるからね

ボクは手札からUCを発動
変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!
カモン!【SPクラウンジェスター】!
海賊たちの応援を力に変えてアイツを倒す

キミと違ってボクはお宝に興味はないんだ
お客さんの喜ぶ顔が見られればそれで満足
だからこそ、みんなの平穏を奪おうとするキミたちは許せない!

『トリックスターを投擲』しつつ左右から挟み込むように挟撃
噛みつきに対しては白鳩姿の『ハートロッド』を放ち、顔に纏わりつかせることで行動を妨害
その隙に首筋を一閃するよ



●美味しくない(確信)

「被害の報告を!助けに来た!」
 騒ぎを聞きつけて、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が駆け込んでくる。
 通り名は持たないが島の海賊団の一員であり島民が助けの手だと即座に理解して応えた。
「わりと甚大だ。食い殺された奴もいる、あの野郎……容赦がねえ!」
「このままにしとくのは俺らのプライドが許さねえが……」
 どの顔も悔しそうに唇を噛んでいる。
 彼らだけでは何とか出来る敵ではないと、わかっているからこそ。
「もう死者が出てる、悠長にしている余裕はないね」
 フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は持ち前の元気と笑顔を隠さない。辛い、歯痒い気持ちを莫迦にするつもりはないのだ。
 ただ、道化師が悲しい顔を見せるわけにはいかないと思ったのである。
 道化師が、笑わなければ一体誰が、笑うのか。
 この場にいない敵か?よくない問題の方程式だ。
「……ほらみろよ、そこにどえらい穴が開いてるだろ……」
 指さされた先をウタがのぞけば、確かに人間が通るより遥かに大きな破壊痕がある。少しだけウタが覗き込むと何度も食い破られて穴だらけだったが、下の通路を描き当てて通っていったようであった。
 ないかの匂いを目印に、道を選び進んでいったとでもいうのだろうか。
「成程な、その先か。最短なら俺も飛び込んで追うか……なあ、地図はあるか?」
「戦場での応援をお願いしたいかな。ボクら二人で壊しちゃいけないものが解るとは思えないし」
 ぱちりん、とフェルトは此処で可愛らしいウィンクをひとつ。
「道化師にとってお客さんの応援は何よりも力になるからね」
 頼もしい二人の勧誘に、海賊団内がひそひそと小声で何かを相談し始めた。
 すぐに終わる相談で、時間は要さないもの。
 誰が猟兵へ回答を告げるか、の話し合いだったようだ。
「わかった同行する。此処は俺たちの庭だ、地図より正確だぞ」
「頼むよ」
 海賊の数人がウタに協力すると、申し出る。
「伝令のように聞こえて来る話じゃあ、ドラゴンは血を踏んで"走ってた"んだとよ」
「ああ。じゃあ、ギリギリまで血の後を追えば……」
 頷きあって走り出す。血の跡を追えば居場所は判明する。
 ただし、死者の躯の数をその眼で数えることになる。それではダメだ。
「通った道なら解るんだ、最短で追いつく道を教えてくれ!」

 ふぉぁあああ。

 今しがた、敵を食い止めようとした海賊がいたがもう過去の話。
 肩を噛み千切られて絶命した海賊を無造作に捨てて。
 もちゃもちゃと新鮮な肉を喰む。
『此処にコアマシンがあるって話だなあ。いやぁ何人食い散らしたか覚えてねえけど人体の記憶はよーーーく俺様ちゃんに情報をくれたよ。
 人間は美味し、色々美味いどころの話じゃねえ、此処の海賊団を全部食らって奪っちまえば俺様ちゃん船長を超えた海賊にだってなれるんじゃね!?』
 ファフニールが心臓部を前に、舌舐めずりをしていた。
 ドラゴンは気がついていない。妙に汚い言葉で語る貪欲な言葉が心の内で話す彼の独り言であるなどと。
 丸聞こえの電圧は彼の思惑も丸裸にする。
『よぉよぉおお宝ちゃん、そのツラきちんと拝ませて~~いただきやしょ~!』
「コアルームの外まで丸聞こえだぜ?」
 排気&空気清浄機をぱちり。
 ふぉぉおお、と音を立てて生臭いドラゴンの匂いを薄めていく。
 絶対あるはずだ、とウタは思っていたし、そのとおりそのスイッチの効力は絶大。
『はああああ?美味そうな活きの良い人間がひいふうみい、やっほう狩場としてもいいじゃねえか、何だおい最高か?でも俺様ちゃんコアマシン超ほしいんで邪魔されると困るんですけどぉ~~』
「狩られるのはどっちだか。いいからそこから離れてもらうんで!」
 獄炎を纏う焔摩天で、翼よりも立派な土手っ腹を狙うウタ。
 貪欲に喰らって喰らって鮮血の似合う肢体は動きが鈍めで、薙ぎ払いをモロに受けてごろごろと転がった。
『離れろっつーんならやり方がちげえだろうがよぉ!』
『俺様ちゃんと命のやり取りがしてぇと。おうおう、いいぜ楽しませて死に晒せよ人間ちゃん?』

 すうう、と畳み掛けるようにフェルトが手元に並べる魔法のカード。
 強気に笑って、カードの引きの良さにもう一つ笑う。
 さあさあ、ショータイムはここから。
「変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!――カモン!【SPクラウンジェスター】!」
 海賊たちは、彼女の舞台の幕が突然上がったのだと気がついて、観客のように行け!や斃せ!と応援する。
 手を出さないのは、彼らの戦いが舞台上の非日常ではないから。
 命がけの舞台に上がる度量は彼らにない。
 遅れて到着する海賊団の仲間たちも、歓声に加わる。
『がんばれ!まけるな!』
 聞こえてくる声は、控えめに祈る誰かの呟き。
 仮面の道化師もコレにはふふふと楽しく笑って、踊るだろう。
『おっもしれえ喜劇役者がいたもんだ、ぶんどってやるから覚悟しろよ?』
 ダッ、と床を思い切り蹴り大口を開けて、クラウンジェスターへと食らいつこうとするファフニール。
 後方のお宝(予定)より、前方の明らかに敵が大事そうなモノ(確定)。
 強欲な気配を一番漏らすドラゴンは、道化師の罠にまんまとかかった。
 曲芸に応用するトリックスターたる短剣をぴぴぴっと投げれば、ファフニールは当然避ける。
 しかし、避けた先にいるのはクラウンジェスター。
 ステッキで容赦なくバシッ、と顔面を殴られてファフニールは後ずさった。
 鼻面は、どんなに強固の鱗を持っていたとしても痛いものです。
「キミと違って、ボクはお宝に興味はないんだ。ごめんね!だって聞こえる?物騒でも祈りでも、聞こえる声はボクらのための応援だよ。泣いた人もいるし、言葉を失ってる人もいるよ」
『でもね、ボクはお客さんの喜ぶ顔が見られればそれで満足』
「だからこそ、みんなの平穏を奪おうとするキミたちは許せない!」
 白鳩姿のハートロッドはドサクサに紛れて放たれていた。ぱたぱたとドラゴンの顔の周りで飛び回り、視界が回る。
 ぐるぐるまわる。目が回る。よろっと足元が覚束なくなる。
『不愉快だ、全く鬱陶しい鳥だな喰っちまうぞ!』
「はいはい残念、気が散りすぎてて隙だらけ!」
 クラウンジェスターに手を借りて、飛び上がったフェルトはドラゴンの頭上からがら空きの首筋に一閃。
 道化師に翻弄されるファフニールは首筋を斬りつけられて、どすんとその場に尻餅をついた。

『遊びに付き合うのはこれくらいで、いいよなあ?』
 おおきく息を吸い込んだファフニールがぶちまける吐瀉物。異様な匂いが周囲に立ち込めて、即座に換気の力で腐食する猛毒の匂いが飛んでいく。
 現れた武装したいつかどこかで喰われた犠牲者達の幽霊は、武装された腐敗・毒属性ゾンビに成り下がる。吐瀉物の上に存在を縛られたような霊たちは並び、進もうとすると吐瀉物の領域は広がった。
「そうだな、遊ぶんなら他所でやれよ」
 吐瀉物の側に立ち、容赦なく燃やすウタ。万物は剣風と炎が生む風で吐瀉物なんて廃棄処分(ゴミ箱送り)だ。
「装置を先に稼働させたのは正解だったな。死んでも欲張り竜の傀儡として働かされるなんて可哀想だ」
 犠牲者たちが次の犠牲者をて招く前に、消し飛ばし。
 集めた一部の犠牲者たちの幽霊を軽く蹴らされて、これにはファフニール。驚いて大口をあんぐり。
「いやあ、いい口してんな。そのまま閉じるなよ」
 隙を見て取ったウタが、大剣を口内に突き入れる。
「俺たちの考えが解ったか?意見交換だ、"知った"だろう。考えて応えてみろよ、解ったか?」
『容赦ねえ奴ってことは大いに理解させて貰ったわ~~~ハァやだわ~~~、対話物理に乗り出す奴まじ怖いわぁ~~~~』
「お前全然わかってないよな」
 全身を地獄の炎で覆い、大剣に纏う火炎の火力を上げる。
 ぶわああ、と燃えるウタとどんどん高温になっていく口の中。
 痛みに無意識で身を捩り、ドラゴンの腕がウタを掠めるまで焼いてやった。
 腐臭だらけのドラゴンから、こんがり焼ける肉が生み出される。
 美味しそうな匂いとは見た目とのギャップがすごく、絶対食べたくない肉であると場違いながら誰かが思い――殆どの者がそれに同意した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樹神・桜雪
『WIZ』

わあ、海賊のお兄さんたち久しぶり。
また来ちゃった。観光で来たかったんだけど、大変な事になってるみたいだから手を貸すよ。
……すでに亡くなった人もいるしね。容赦はなしだ。

海賊のお兄さんたちには道案内と、相棒を預かってて貰っていいかな。大事な半身、守ってくれると助かるよ。

悪い子にはお仕置きを。
少しやり過ぎたみたいだね?
ここはボクにとっても大切な場所なんだ。
……よくもやってくれたな。
来た道を背にして案内してくれた海賊さんたちに被害が行かないように戦う。
UCで全力攻撃。
滅多刺しにしてもまだ足りないから2回攻撃しようか。動かなくなるまで連発しよう。
こちらに来る攻撃はカウンターで凪ぎ払いで。



●蜥蜴に墓標

 樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)が顔を上げた時。
 見覚えのある海賊団が出迎えてくれた。
「わあ、海賊のお兄さんたち久しぶり」
 挨拶から始めた桜雪に、海賊たちのやや殺気立った雰囲気が和らぐ。
 彼の来島はこれで三度目。命を賭して航海する者、その度量を持つものでなければ訪れる存在がいる事自体、稀な世界。
 三度も見れば全く知らぬ顔ではないのだ。桜雪にとっても彼らにとっても。
「おうそっちは元気そうだな。変わりは……まあないよな。半年前くらいに顔を見たばかりだ」
「うんそうだね。また来ちゃった」
 一度目は海賊の流儀の途中に割り込み、二度目は祭りの時に訪れた。雨や雷、常に荒れた島だからこそ、いつも訪れる時はのんびりする空気にはならないのだが。
「一度くらい、普通に観光とかで来たいんだけどね。大変な事になってるみたいだから手を貸すよ」
 ちらり、と視線を隅に転がせば。
 甲板の上に並べたられた死体。死体。死体。
 頭がない。顔がない。体が半分無い。手しか無い。
 ちょっとスナック感覚で齧って殺し、密かに強欲を抱いたものほど大きく美味しく戴かれている。
 人間の年齢とは経験の積み重ね。全部を露呈できない記録、知識さえコンキスタドールは奪って喰らう。死体にある殆ど全部が噛み傷で、夥しい量の赤が軽く池を作っていて――降り注ぐ雨が、静かに洗い流していた。
「……既に、亡くなった人もいるしね。容赦はなしだ」
「頼もしい。弔いの気持ちを乗せて勇んで貰えるのは亡くした連中の(同じ環境で生きる)身内として、俺らは礼でしか返せない」
 力なら貸すぞ、何が必要だ?
 彼らの気持ちは不法侵入者の殲滅だ。海賊の流儀としても、ずっと許しているわけにいはいかない。
 そろそろ叛逆の狼煙の一つもあげなくては、仲間を守れない。無策に挑めば、仲間たちと同じ末路をたどるだろうことは、勿論誰もが予想できた。
 雁首揃えてそのうち酷く殺さるだけなど、以ての外なのだ。
「海賊のお兄さんたちには、道案内と……」
 普段と同じく肩口で羽を休めていた、普段より静電気でもっふりした相棒のシマエナガを優しく捕まえて。
「それから、相棒を預かってて貰っていいかな」
「相棒なんだろ?傍にいさせてやらねえのか?」
「うん、今回はダメ。随分永く一緒にいる大事な半身だからね、守ってくれると助かるよ」
 海賊に一人に手渡したが、相棒は暴れたりせずもっふりしていただけだった。
 桜雪の言い分に、理解を示してくれたのだろう。
 相棒は間違いを激しく指摘して怒るが、怒らない時は"それが正しい"と納得してくれているから。
「分かった。ソレ以上はいわねえ、そういう絆もあらァな。付いてこい、こっちだ」
 島をよく理解する海賊たち。彼らが道を案内すれば、複雑な道もどれもコレもが近くなる。
 心臓部など、深くて遠く、奥深くで脈動する秘された場所だというのに。

 辿り着いた部屋は大きな大きな扉があった。
 乱暴に破壊した痕跡があり、中がよく見え――絶句する。
 もっちゃもっちゃと気色悪い咀嚼音。
 魚でも鳥でもない生肉を、ぶちりと食い千切るドラゴン"ファフニール"の姿があった。
 猟奇的な血を体に浴びて、床は真っ赤としか形容できない。
 腐臭と生々しい死臭が鼻を突く。それは、誰にとっても不快な光景だった。
『いてえ思いをちぃとしたから、骨休め骨休め~~』
 人間美味えと一休みするドラゴン。
 到着するまでに、一体何人喰われて、知識を奪われた?
『臭う、臭うぜこのニオイ。俺様ちゃんを退けようって~勇猛なやつのニオイだなあ?』
 ガッハッハ、と気前良く笑い、ついでにげふぅとゲップも付いた。
 態度がとことん悪いファフニールが、重たい腰を上げて、桜雪の存在を見やる
「悪い子どころか現行犯だよキミ。ボクは見ていたからね、少しやりすぎかな」
 突き刺さるような冷たい視線。
 生々しい血が、ドラゴンの口から滴っている。
 まだ暖かい食べ残しがどしゃりと足元に転がる。
 誰の破片かなど、想像したくもない。だが見なかったことにも出来ない。
『少し?はああ少しかあ、もっとド派手にやっときゃよかったかねえ?悪いなあ気が利かなくてよぉ』
『俺様ちゃんのランチに招待するべきだったなあ、てめえをメインディッシュに添えて、どんちゃん騒ぎも悪くなかったかもしれねえ。カカッ、愉快な想像してたらまだまだ腹に入る気がするわ』
 土手っ腹をどん、と叩き、ドラゴンはゲラゲラ笑う。
「ここはボクにとっても大切な場所なんだよね」
 なんだこのドラゴン。誠意も忠義もなにも無い。つかつかと歩み寄り、殺意を全く隠さない声色は、とても低くドラゴンの耳を焼く。
「……よくもやってくれたな」
 部屋へ入り込み、ドラゴンの狙いが桜雪一人になれば部屋の外の海賊たちに手出しできまい。
 彼らを背に戦えば、これ以上の殺人を許さずに済む。
『殺ったからなんだ、海賊がタマ(命)奪わずに何を奪う?俺様ちゃんは奪って得たらなあんにも手放したかねがなあ!』
 ファフニールがべっ、と吐きだすなにか。どしゃっと落ちたそれは挽き肉となった誰かの――吐瀉物に表現してはならないパーツが紛れている。
 桜雪が怒る様を、ドラゴンは面白がってやっているのだ。
 ゆらりと揺れて現れる猛毒なブレスを纏う犠牲者たちの成れの果て。
 一部でも喰らって殺せば、魂さえ逃さない。犠牲者たちは使われるだけの保有物とされてしまう。
『ア"ァ"ーーー』
 聞きたくない言葉にならない言葉にも毒が混ざる。吸い込めば腐食。
 桜雪にも、なんとなく幽霊の面影に見覚えのある海賊服が映る、気がした。
「ほんとうに、ゆるさないからね?」
 パン、と胸の前で手を合わせる。一度だけ、乾いた音が空間を裂く。
「キミはどうにも同じ目に遭いたいみたいだから、――トクベツだよ?」
 ヒィインと微かに音を立てる桜硝子の太刀の群れが桜雪の背後に現れて、ぐるぐると車輪のように周り、合図を待つ。
「これは魔を絶つ刃。悪夢を正夢に換える桜花雪月――」
 犠牲者たちの魂、幽霊に手を広げるように向けて。
 数え切れない太刀が空間を裂き、飛翔する。幽霊の像を貫きかき消して。
 霊力にちょっぴり混ざった祈りが安らぎを齎しますように。
 優しさは死者への手向け。
『おわっとぉ!?』
 ドドドドドド、と突き立つ太刀はドラゴンの腹に、翼に突き立った。
『これだからやめられねえ、怒ると感情は発露する。"桜雪"とやらあ、誰かの記憶通りなら随分表情豊かになったもんだなあ!』
 大量の負傷を身に浴びて、ファフニールはげらげら腹を抱えて大爆笑。他人の記憶を喰らい、他人の感情を自分のものへ昇華させたこのドラゴンのなかには。
 喰わられた見知った海賊、も居たらしい。
「成程ね。ちょっと――黙って」
 ユーベルコードで舞わせた彼岸桜の一振りを掴み取り、無慈悲にドラゴンの腹にどすっ、と深々突き立てる。
「(ごめんちょっと……いや結構、ムカついたよ)」

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
何ですか!威厳も可愛らしさもないあの竜は!
あれが月代と同じ竜だというのですか!

むやみやたらに探しても時間がかかるだけ、最短の道順と案内を海賊達にお願いしましょう。
心臓部に到着したらUC【神使招来】使用
あの貪欲な竜の犠牲者達をこれ以上愚弄するなど許せません。
ウケ、貴方の破魔の力を込めた御神矢で彼らの魂を浄化し還るべき所へ導くのです。
ウカ、貴方は神剣に眠る玄武の力を解き放ち吐瀉物を全て洗い流してしまいなさい。
この場を清めたら、月代、あれと自分が同族など腹立たしいでしょう?
衝撃波で思いっきり吹き飛ばしておやりなさい!
体制をくずしたらみけさんのレーザービームを全力でお見舞いしてやります!



●可愛くない!

「助力ならば、急ぐべきなのですよね?」
 吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)の問いかけに、島の海賊たちは複雑そうに頷く。
「道をお教え願いますか。被害の拡大を防ぐために」
 むやみやたらに探していては時間がかかる。
 生活区でも宇宙船の中を一番するのは、普段から此処に住まう島民に限る。
 やる気のある海賊たちは、猟兵たちが"強い"頼りになる"訪問者"であることを知っている。
「いいとも任せろ、俺ら以上に詳しい奴らはそういねえ。迷子にならねえようについてきな!」
 真に頼もしいとは、気のいい彼らのことを言うのだ。
 自分たちの住処に。根城に、懐に。
 縄張りに他者を招く等――到底海賊がするべきではないのだから。
「最短でいくが、どんなみちでもいいか!」
「勿論です」
「分かった……覚悟して付いてこいよ」
 海賊に道案内を任せた道は、貪欲ドラゴン"ファフニール"が進んだらしき道を点々と縫って選ばれた。
 そこには、暴虐の痕跡が残っていた。力任せに踏み抜いた跡。鋭利な爪で抉った跡。どろどろと得体のしれない有毒そうな色合いの液体がどばっと床を濡らしていた、等。全部の箇所に共通して、表現したら後悔しそうな嫌な腐臭が漂っていて。
 飛び散った流血の跡が床や壁を濡らしていた。
 目を背けたくなる悲惨な光景。一瞬で散らされて、敵の侵入を拒めなかった痕跡。
 なんて、どこまでもいやなこうけいだろう。

「この島で一番重要なのは此処……ああ」
 大きな扉は、べこりと凹んで、破られていた。
 島の海賊や島民はこの場所が重要な場所だという事を知っているから悪戯でも喧嘩でもこの場所だけは巻き込まない。
 それなのに、この有様。鼻をつくニオイは濃度を増していた。
 そぉっと様子見に狐珀が覗くと、通ってきた道と似たような光景が広がっていたのだが――。
『くあ~~~~痛えなあ、なかなか抵抗してくるじゃねえかよぉ。だがなあにをされても俺様ちゃん欲しいものは貰ってくぜ~~~~?』
 ドラゴンの体に損傷や刺し傷が点々と。
 "欲しい"と望む気持ちの持ちようだけで、今を支える貪欲なドラゴンは心の声をもろ出しに、コアマシンにじりじりと近づいていく。
『なんか一定以上近づくとビリビリが超絶ハードなんだよなぁ~~なんだよこいつコレで抵抗してるってかぁ~~?俺様ちゃんの真新しい傷口に響いてクソムカつくんで、毒ぶち撒けたくなっちまうなぁ~~~~?』
 でもそんな事したらこの島死ぬのか?なんてゲラゲラ莫迦みたいに笑っていて。
「……なんですかあれは!」
『本当に何なのですか威厳も可愛らしさもないあの竜は!』
 蛮行の連続に加えて醜悪なニオイと殺し重ねる犯行。
 そして、なにより狐珀のよく知る竜は、もっと愛らしく可愛らしい。
「あれが月代と同じ竜だというのですか!?」
『ん~~俺様ちゃんと別の何かを比べるのは一体どこの誰かちゃんカナ~~?俺様ちゃんほどイケててプリティ、ついでになんでもかんでも実行する完璧な竜はそういねえんじゃねえかなぁ~~~?』
 俺様イズ凄いドラゴン。
 ファフニールは自信満々に言い切って、にんまり。瞳を細めて、狐珀を凝視した。
「あの貪欲な竜の犠牲者達をこれ以上愚弄するなど許せません……ウケ、ウカ!」
 ダメだまともに相手をしていては。言葉に乗って感情的に成れば、良いようにドラゴンの掌で転がされる気配すらする。
『俺様ちゃんが、愚弄した?ハハハ面白れぇ事言う良い子ちゃんだな?人間という枠、モノという枠からぜーーんぶの垣根を取っ払って俺様ちゃんのモンになってみーんな幸せハッピーエンドに決まってんだろ。ほーら皆顔を覗かせな!』
 べしょ、べしょと腐敗する猛毒の吐息混ざりの汚泥が吐き出される。
 色合いも、嘔吐物以上に表現してはならないそれに、ゆらありと有害な毒素が満遍なく詰め込まれている。
『なんら俺様ちゃんの新たな戦力のお披露目だ、いけよやれよ新たな海賊団の旗揚げだ!』
 ずずず、と姿を明確にする幽霊たち。それがこの島の島民の成れの果てだと気づくのは勿論――。
『……お、おまえら……』
 道案内を買って出た海賊たちが嗚咽とエゲツない光景に膝を折った。
 狐珀の判断は、黒狐と白狐に乞い願う言葉に置き換わる。
 鋭く、それでいて端的に。
「ウケ、貴方の破魔の力を込めた御神矢で彼らの魂を浄化し還るべき所へ導くのです」
 保食神は瞬時にぎりぎりと力ある弓を引き絞り幽霊たちを射抜く。
 ドラゴンによって塗りたくられた魂の不浄の汚れを取り払う、聖なる矢。
 私物と化した魂を、表に出したのが運の尽き。死して奪われた被害者たちの魂を開放できればこちらのものだ。
「そして、ウカ、貴方は神剣に眠る玄武の力を解き放ち吐瀉物を全て洗い流してしまいなさい」
 縦から横へ、真剣を横に構えた倉稲魂命。
 補助する力は四神の一柱にして、水を扱うに長ける玄武――こぉおおと音を立て、剣が水が纏われる。吐瀉物に斬りかかるように、水刃を放てばこちらもまた不浄の汚れが蒸発して気配を殺された。
 何を吐き出したにせよ、誰かの断片。腐食したなにか。無害化を果たせば不浄に囚われた幽霊たちは存在する寄る辺を失う。
「月代?あれと自分が同族などと腹立たしいでしょう?」
 月白色の見事な竜。
 月代は狐珀の指示を待っていた中で、とても嫌そうな顔をしていた。
『とても腹立たしい。あんなものが竜であるはずがない』
 月代の考えが、露呈する。本当にその竜は、怒っていた。
 ぐぐっと溜める怒りを込めた風の魔力がぶわあと室内に巻き起こる。
「今です!吹き飛ばしておやりなさい!」
 溜めた風は衝撃の度合いを強めてファフニールを転ばせて、ごろごろごろごろと壁の方へ追いやる。
『おわぁ~~~~!?』
「間抜けな姿を晒しましたね……!」
 御食津神が宿ったAI搭載みけさんの追い打ち。
 間抜けな尻目掛けてレーザービームをお見舞いすれば、ジュゥウウと溶けるような音。可愛くないモノに徹底的に優しくない狐珀の怒りの熱量を計測し、配分されたエネルギー。
『んだよチクチョウ!!俺様ちゃんのプリティな尻になんてことを!!』
 まだ言うか。狐珀の指差し合図はもう一度。しかも今焼いたところに、もう一度。
 浄化の力が籠もったレーザーは、死者だろうが強欲に集めた竜にはよおく痛みを伝える。煽り方に失敗した溺れる策士のぎゃあという間抜けな悲鳴が、室内に響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イコル・アダマンティウム
「ドラゴン……相手にとって、不足なし」
(ドラゴンのお肉……きっと、美味しい!)

僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ

【協力申請:援護射撃】
「僕が、護る……から援護を、お願い」
(身体に対して、翼が頼りない……)
翼幕に射撃してもらって、注意力と機動力を削いで欲しい、な

もし、それで海賊が攻撃されそうになったら
機体を盾にして守る、よ
「むぅ……痛い……」

【攻撃】
「僕も、覚えた」
(ん……毒が、ある?
毒抜きもしなきゃ、か)

[限定習熟【武技】]
ドラゴンの攻撃の癖は、覚えた
噛みつきに対して、カウンター
威力と命中を向上させて攻撃を蹴り返す、ね

「ん、言葉は……無粋?」
(無粋な……ドラゴンは解体、だー)


月詠・莉愛
WIZ判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎

■心情
貪欲ドラゴンですか、何でも食べてしまう、厄介な相手ですね。
秘宝に関しても興味ありますし、頑張りましょう。

■行動
海賊たちと協力して【集団戦術】で戦いますね。
海賊たちには、弓や銃など、遠距離から攻撃できる武器で
後方から支援して頂きます。
海賊たちが敵から狙われたら【かばう】で守りますね。

私は月下天舞を使用して攻撃しますね。
飛翔能力で空を飛びながら、月光の聖銃で敵を【スナイパー】で
狙い撃ちにしますね。

死して尚、強欲な犠牲者達には
幽霊を月光の聖銃で【乱れ撃ち】して
【範囲攻撃】で一掃しますね。


龍・雨豪
すごいじゃない、この島!
殆ど大雨大嵐とか楽園か何かかしら?!
でも、そのコアマシンってやつが無くなったら気候が変わっちゃうんじゃないの?
それは困るわ。今すぐそのお馬鹿の頭を叩きに行きましょ!

海賊さん達には、敵の反撃を受けないタイミングでの加勢をお願いしようかしら。
その力の資格を得るのも大変らしいじゃない?
なら、命は大事になさい。

うわ、臭っ。
あなたねぇ、そんなんじゃモテないわよ?
特にその口が酷いから消毒してやるわ!
相手の意識がこっちに向くように顔周りを殴りつつ、噛みついてきた時に口の中に破壊光線をぶち込んでやりましょ。
そのまま頭部を吹っ飛ばすが理想だけど、最低でも口内をズタボロにしてやりたいわね。



●三人寄れば……

 肩に頭に降り注ぐニトゥルス島の大嵐。
 彼らの中では普段と同じ、光景の中に、例外が紛れ込んだ。
 ぴしゃりと降る雷が甲板を撃ち、島に天然のエネルギーが補充される。
「ねえ、凄いじゃないこの島!殆ど大雨大嵐とか楽園なにかかしら!?」
 思わず龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)の気分がぐんとアガる。
『こんなに肌に合う天候の場所があるかしら!いい場所ね、凄い』
 彼女が島の雰囲気を気に入ったようであると楽しそうな様子から見て取れる。
 島の海賊たちの警戒はすぐにでも"信頼できる増援"だと理解した。
「この異常気象、島からも発生しているようなものなのよね?」
「ああ。元々この天気のほうが普通だが……」
「そう。コアマシンってやつは使命を覚えている働き者なのね」
「だが核を奪おうって奴の侵略は前例がなくて、しかもすげえ強いんだ」
「でも貴方達言うのよね、それが無くなると困るって。仕組みまでわからないけれど、そんなものが無くなったら気候まで変わっちゃうんじゃないの?」
 落雷の電力を分散して利用しているシステム管理がある。
 ならば、そのシステムを管理している核は――コアマシンに他ならない。
 島中の静電気の原因も、ボルテージ量を管理する核があってこそ。
「無言は肯定と取るわね。とっても困ることだって、分かれば十分。いいのよ、難しい事は私もよくわからないから」
 単純に導けばいいのだ。
 侵略者が来て、仲間が殺されて、雨豪が来た。
 島の核が奪われそうなら、阻止してやればいい。
「助けようって手を上げたのは私だけではないのだもの。今すぐその大馬鹿の頭を叩きに行きましょ!」
 海賊を率いて、雨豪は強気に笑う。
 だってほら、プラス二人の頼もしい増援が見えるでしょう。

 強欲に溺れたドラゴン"ファフニール"は島民を見つければその手を伸ばして喰いまくり。好きなように齧って、もちゃもちゃと耳障りな音を立てて喰らっていた。
 バチバチと異常電圧が出ているような気がしなくもないコアマシンに手を出す前に、削られた体力と人員を補充しているのである。
 餌が来なければ島の壁をとりあえずガリガリ齧って味見だ(物理)。
『ひでえ奴らの追い打ちが来るってことはお宝ちゃんってばガチマジのやつなんだろ?信憑性しかねえじゃああん。ハァ~~~マジ手に入れてぇわ~~~くっそ痛ぇ傷癒やせねぇと手ぇ出したくねぇわ~~~~~』
 お宝を前にワクワクしつつ、痛いままの怪我を放置したくない俺様ドラゴンは自由だった。ひとまずは、蟻地獄のように様子を見に来た莫迦な海賊を喰って知識を貪ることに耽ったっていい。此処での食生活や暮らしにはそこまで気持ちを持っていかれないが、海底深くや心臓部以外の未探索エリア等色んなところに冒険(侵略)しがいのある場所があるときた。
『夢が膨らむ希望が膨らむ、なんて夢の宝島ァ~~~~♪』
 そんな声は、島の帯電エネルギーが最大質量で作用しているため電気は伝播し丸聞こえ。
『わぁ、貪欲ドラゴンですかあ、何でもかんでも食べてしまう厄介な相手ですね』
 月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)の考えていることも丸聞こえ。
 気がついてハッとするが、考えないなんて難しい――ほら、また。
『財宝に関しても興味ありますし、頑張りましょう』
「うん……ドラゴン、相手にとって…………不足なし」
 莉愛への返事への返答があった。
 人間も壁も島の不要部品だろうがもぐもぐしているファフニールを、敵認定しフォーカスしたイコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)。
『ドラゴンのお肉……きっと、美味しい』
 表情から読めない心の内が丸聞こえだが、イコルは気にしている様子が特に無い。
 格闘特化の愛機キャバリアに搭乗している彼女の声すら通す島の帯電エネルギーは、機体越しでも貫通するらしい。
「海賊さんたち?メインアタックは私達に任せて。敵の反撃を受けないタイミングか、私達の指示があった時の加勢をお願い」
「射撃でいいのか、カトラス戦術での撹乱なら俺らでも……!」
『無理はしないで。その力の資格を得るのも大変らしいじゃない?』
 島の"海賊"になるのも資格が必要。そう説得されては反論は、出来ない。
 命がけの契約の上で海賊でいうのは、真実だ。
 儀式一つで命を落とした仲間も、居たから――。
「なら、命は無駄に散らすものじゃないわ。大事になさい」
 雨豪は背中でそう語って、ファフニールとようやく対面する。

「……うわ、臭っ」
 初対面の言葉は実に凄い言葉だった。
『は?ファーストコンタクトでその言葉出てくるってなにどういうことなのこっわ』
「あなたねえ、そんなんじゃモテないわよ」
 ぶわあ、と吐いている毒息は最高に女子受けしないだろう。
 何でもかんでも欲しがるのなら、恋を覚えた瞬間異性を狙い始めるのだろうが。
「特にその口が酷いから、消毒してやるわ!」
 ニトゥルス島に訪れて、一体幾つの命を喰らって奪った?
 破壊した場所は一体幾つ?鮮血のドリンクは美味しかった?
『いっておくけど私からの印象は――最低よ!』
 拳を構え、顔を狙う雨豪の攻撃を――ファフニールは避ける。
『最低で結構!俺様ちゃんの生き様はァ~~奪えるか奪えないかの二択だけぇ~~!奪えないなら喰らうだけ!』
 腹の中に溜め込んだ財宝の指輪を、ぺっ、と吐き出して躱す動きは達人級。
 困難に応じた量を捨てて、その動き。
『ふざけて奪うわけねえだろう。価値があるから奪うんだ、奪ってるから俺様ちゃんのなんだぜおネエちゃぁん?』
 口からぶわああと囚われた犠牲者の霊、魂を手放す。
『意気込んだ次の攻撃は、俺様ちゃんの口の中ってかあ?ははあん、武術の達人霊がいなかったらわからなかったぜぇ~~~?』
 素早い拳が、がぶり、とファフニールの牙の餌食になる。
「そう。武術の達人の知識だよりで私の腕を食んだのね?」
 握り込んだ手に、何を持っていたかも知らず。
 決闘を好む気質の彼女が、捨て身で戦うのはどのタイミングでも勝利のため。
 コォオオ!
 ドラゴンの口の中に溢れる破壊の光線。
 戦場の仲間は、既に没した海賊たちまで含めれば尋常ではない数になる。
 その力が更にドラゴンブレスの威力を上げた。曰く――剣山が口から取れなくなるような、継続する痛みが残される。
『カハァ!?』
 吐いても零しても。血、血、血。
 被害者のものではない、ファフニール自身の、血。

 今だ、攻めたてるならば。飛び出すキャバリアと進み出る莉愛。
「一斉射撃です、お願いします!」
「そう……チャンスは、ここ。僕が、護る…………から、援護を」
『このドラゴン、体に対して翼がとっても……頼りない』
 猟兵の合図で、ラッパ銃と最近新しく使い出したマスケット銃が火を吹く。
 弾丸の雨だ。彼らは機材の場所を理解する。海賊たちが狙うのは、翼と足。
『こいつ、うまく飛べないのでは』
 誰か心の吐露は皆の確信。
 あまり飛行の能力がなさそうなドラゴンに翼など、必要だろうか。
『翼幕を射撃して……』
 注意力と機動力が、土手っ腹の大きなドラゴンには必要だ。
 もしそれらが削がれたら――。
『どんぱちどんぱち、いてえじゃねえか人間ちゃ~~~~ん?俺様ちゃんはやるときはやるし、"食い放題"となりゃ話は別だ。へっへっへ、楽しくなって、来たなあ!!』
 血反吐を吐き、喋り倒すファフニールの業は深い。丸っこい体を活かし、翼が異常に狙われているドラゴンは猟兵たちのほうへ転がってくる。
『上手じゃないなら使わずに、接近すれば良いだろ!俺様ちゃんマ~~~~ジ賢いよな~~~!』
 ぐあっと開いた口が、海賊たちに向くのをすかさずイコルが機体の腕でカバー。
 機体を盾にして守ったことで、ドラゴンの牙が食い込みギリリと嫌な音がする。
 ぶぉん、と強引に腕を払ってドラゴンを退けてやれば、にんまりとそのドラゴンは目を歪めて嘲笑っていた。
『ほお~~~~~こいつはキャバリアちゃんか、いいなこの海じゃあまず見ねえ知らねえ奴だ!超欲しいんですけど』
「ダメ……」
 喰らいついたことで情報を掠め取ったのか、ファフニールは凄く興味を示しだす。
 知識や武装に対する貪欲な姿勢は、知った何もかもを欲しがる。
『良いだろ腕の一本や二本~~~~』
 べろり、と舌舐めずりして毒息をどばあと吐き散らす。
 吐瀉したモノからずずずっと幽霊達がずらありと並ぶ。腐敗する毒の息に呪われた彼らに触れれば、壁や生者なあっという間に脆く崩れ落ちる。
「よくはないですよ。ひとのものをとったら、泥棒さんなので」
 月下天部の歌姫は、清楚で純粋な姿を見せて、微笑む。
 くるりん、と身を翻し恐るべき速度で飛翔すれば、悪辣な竜は目の前に。
 鼻先に構えた月光の聖銃。月の魔力を持つ精霊を宿す聖なる銃だ。
「一度綺麗に浄化するのもいいと思うのですよ。たまには荷物の整理とかをですね」
 ずどんと狙って撃った。浄化の力がある銃だ。痛みこそそれほどなくても、死者の魂さえ捕らえて離さないドラゴンは。浄化によって呪いに沈めたこれまで集めた"財宝"や"魂"を体の内側から強引に引き剥がされる。
「此処にも月の加護は届きます。だって、此処には私がいますから。歌いましょう、そして、――眠りましょう?」
 乱れ撃つ銃が幽霊たちの囚われた魂を、月の加護のもと、解き放つ。範囲全域に広がる邪悪な気配から生じた魂は、一層して光の向こうへ旅立たせよう。
『げぇ~~~~コイツらマジ俺様ちゃんの集めたモン奪うじゃんかよぉ~~~!』
 引き剥がされた財宝をせっせと短い手でかき集め、吼えてみせるが哀れなドラゴンに同情する者は誰も居ない。
「奪うんじゃない、……開放」
『毒の、息……?毒抜きもしなきゃ、かな』
『あとそこのお前!ひとりだけ想像デスクッキング楽しんでるんじゃねえよ!俺様ちゃんはこんなことではあきらめなぁ~~い!』
「そう僕も、攻撃……覚えたから」
 食らったモノの記憶や情報すら奪い取る。
 魂まで奪われたら、死して所有物にされてしまう。
「ほら、おいでよ……ねえ?キャバリア、あげるよ」
 両手を広げたイコルの掌返し。
『マ・ジ・で!?なんだお前考え全然意味分かんないのに良いやつじゃあ~~ねぇか~~~~~~!』
 ドラゴン大歓喜。どったどったと駆けてきて、大口開けて、食べるスタイル。
『いっただ~きまぁ~~~~~~~~~~』
「まあ、たべていいとは、……いってない」
 キャバリアの手に、かぶりと食らいつかれた。
 だが、それでいい。もう片方の手は、空いている。顎を顔を粉砕する威力で放たれる拳が、どかどかと叩き込まれるだけだ。
「ん、言葉は……無粋?」
『無粋な……ドラゴンは、解体、だー』
 威力と命中率を向上させていたからこそ、刺さる連続した拳の威力は異様に高い。
 殴り殴り殴り、最後に力任せに放りなげて、イコル――思わずガッツポーズ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
【契】

そろそろこの島も“俺たちの”縄張りみたいなもんだろ
なぁ、シェフィー

思考がバレようが
数で攻めれば全ては防げねぇだろ
斬りつける瞬間に思考で号令を飛ばし
同時に射撃させる

喰らおうとする牙を回避し
シェフィーの近くに並んだら
高揚した気分のまま
心を隠そうともしない甘い声で囁くように
あの蜥蜴野郎は俺を食いたそうにしているが
シェフィーは、俺が欲しいか?
(欲しいって言って?)
じゃあ俺がアレに食われても?
(くれてやる気はさらさらねぇが
俺が言って欲しいから)
つれねぇなぁ
(強請る言葉も返答も
嘘でも今、言った方が
全員に聞こえやしないだろう?)
何しろここは戦場だ
だからほら、

小さく笑い
その熱を覇気に変えて敵にぶつける


シェフィーネス・ダイアクロイト
【契】
此の島は私の縄張りだ
誰にもくれてやるつもりは無い

海賊達は自分の邪魔さえしなければ自由に
帯電した髪にも慣れ

…悉く攻撃が弾かれる(頭が良いな
ならば
直に棘(どく)が回るだろう

後衛
敵が代償に使う宝や幽霊を2丁拳銃で正確に貫通攻撃
UC封じる
数が減ったら【金葩の禍】使用

此処へ来た事が最大の謬り
精々不運を嘆け

要らぬ
(何を企んでいる?)
構わん
いっそ喰われろ
(私のデメリットしか無い)

アリエの胸元掴み不機嫌顕にし

僕の手を煩わせるな莫迦者が
万に一つ
私が貴様を欲するなら、其の強運
(─海に愛されし幸運
不確定でいて絶対
私には無い故に
揺らがぬ勝利の足掛けに
其れを除くならば、)

口閉じてアリエから離れ
敵へ制圧射撃・蹂躙



●ある海賊の"縄張り"

 ある海賊たちの島への到来は、三度目だ。
 コンキスタドールとの戦いに上がりこんで始末をつけた日から、彼らにとっても此処は"縄張り"。
 機会があれば当たり前の顔をして上がり込む。
「そろそろこの島も“俺たちの”縄張りみたいなもんだろ。なぁ、シェフィー」
 アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)はあえていう。海賊団に聞こえるように。俺のシマであって、そして俺たちのシマだ、と。
「此の島は私の縄張りだ」
 個々の考え方は様々。受け取り方も、だ。
 他所から突然やってきた賊に簡単に蹂躙を受けるなどと、と滑らせる言葉の尻は海賊団団長にぶつけられる。
「そいつは言わねえトコだろ、アンタら相変わらずだな……」
 頭をがりがり掻いた団長がこの二人を知らぬはずもなく。
 言葉をぶつけてきた男シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)の主張は最もだとさえ思った。何よりこの男、初めて訪れた時に島を救った礼に寄越せと冗談混ざりに言ってのけている。
 島の権利自体を譲るわけにはいかないのだが、こんな強い海賊に"縄張り"と主張されるのは、悪い気はしなかった。
「誰にもくれてやるつもりは無い。……それで?」
 ニトゥルス島の"正しい名を見つけた"男がこの島を得る、という野心を未だ持ち続けてる。そんなシェフィーネスの顔に戯れがない当然の顔になんとも言い難い団長。
 絶対まだ狙っている。余計なことは言わないでおこう。
「入り込んだ賊は最奥らしいんだが……アンタらに道中の案内はいらねえよなあ」
「シェフィーは地図持ってるし、なにより俺がいるしなあ?」
 アリエが自然にシェフィーネスの肩を捕まえようとするのを、サラリと躱される。
 やや案内図には拙い地図から、特に情報は更新されていないらしい。
 更新をこまめに行う奴がいないのが原因のようだが……つまり、シェフィーネスが持つこの島の地図は常に最新版だ。
 記述のない道は勝手に拓いていいと、正しく冒険心を擽る。
「ま。勝手に進んだ道がどうだったか教えてくれれば整備でもなんでも平和が取り戻せたら、するさ」
「私はもう行く。邪魔さえしなければ自由に」
 団長より彼は上にいるのか。それだけ言って奥深くへ進んでいく。
 "縄張り"を壊した並びに心臓部を奪取しようとする犯罪者を"海賊"ならば、生きて帰すはずがないだろう。二人の海賊がなにをするか、など島の海賊はあまり気にしていなかったが明確な事実は一つ。
 島を荒らした"悪食"を、殺しに来たのだ――。
 彼ら二人の配下にこそ、島の海賊団もなった記憶はない。
 だが、成し遂げてくれるかもしれないという期待は島民たちの気持ちを動かす。

 通ったことのある道。騒々しい音だらけの廊下。
 あからさまに真新しい破壊痕と死ぬほど刻まれた廊下の爪痕。
 かぶりと喰われたぼろぼろの壁や扉、それから――人間、だったかもしれないもの。流血だけあればまだ"そこにいた"といえるだろうが。
 ご丁寧に躯は男女の判別さえ、できない。
 指だけ、足だけ、たっぷり血塗れの髪の束、履いていただろう靴だけ。
 判別するパーツにしては部品が足りない。真っ赤に滴る島民の、流血を踏んでドラゴンはつきすすんでいった、それだけ分かれば――十分だ。
 奥深くに行ったのなら、逃げ道は島上部を突き破るか来た道を戻るのみ。
 馬鹿め。財宝求めてさまよい込んだのが運の尽きよ。
「そこか」
 ばり、ばり。聞こえる。何かを砕く音。
 ぐしゃり、ばきり。聞こえる。柔らかいモノを潰して折る音。
『けほ……あぁあ喉痛てえ!体が痛てぇ!!あああああああああ!!!!』
 貪欲に、強欲に。島が遠い世界の宇宙(ソラ)にあった時の記憶や記録を含めれば。
 壁も床も、コアマシンじゃなくても知識が増える。知らないものを知れるまたとない財宝。
『そろそろ行かないとまずいか。ここで死んだら知識が無駄になっちまうしなぁ~~俺様ちゃんマジ考えどころ~~~~!』
『俺様ちゃん、七大海嘯の指示をよおく利く偉い子だしなあ。戦禍は生むぜ、最悪な日はどこまでも創り出してやるぜ~~~?』
 バカでかい独り言。
 途中から自分の身分のようなものまで語りだしたのは――。
『お前らで終わり?まだまだ俺様ちゃん喰いたりねえのよ。お宝ちゃん終わったら頂いてくけどな、人間ちゃんをもうちょっと頂いていきたいわけよ』
『ついてきてるんだろ、お前ら。いいよ、そこからでいいから撃てよ』
 帯電が伝達する速度は人の心の内さえ、明らかに。
 二人の後方よりさりげなく付いてきていた団長たちはそれがアリエの指示だと気づいて援護射撃を始める。
 声に出しても出さなくても、二人に当てる莫迦は存在しない。
 信じたからには、どこまでも信じ抜く。彼らは信頼に値する。紛れ込むようにシェフィーネスの弾丸も入り込む。ただし、どれがそれだと判別できないほどの雨だ。
 躱すことは出来ないだろう。
「数で攻められれば後ろは狙えねえし、防ぎようもねぇだろ?」
 弾丸の雨の中、飛び込んできたアリエは、軽く跳躍。
 足場に散らばる赤を飛び越して、レーシュを手にドラゴンの鼻面に迫っていた。
 慌てて防ぐように差し出された鋭利で長い爪が切り裂くのを阻んでいたが、抵抗されなくては面白くない。
『跳んで火にいる何とかか人間ちゃん、此処に集った中で一番初めに喰われたいって?命がけの切り込みが当たらなくて残念だったなぁ~~~?俺様ちゃん、そういう捨て身な奴、だぁいすきだぜ~~~?』
 競り合う間に開けられた大口が、ばくんと喰らおうとするのを、既のところで押し返し、回避する。
 接近して見て分かった。このドラゴンの間合いは意外と狭い。

『ま~~~ぁ?俺様ちゃんの財宝をこんだけ捨てりゃあ、痛みなんてないようなもんだよなガアハハハ!!』
 ばらばらと足元に破棄された財宝が現れて、困難の代償に錆びついて壊れる。
 奪ってきたモノは壊れて、価値は竜のみぞ知る。
「……悉く攻撃が弾かれていた」
『頭がいいな……』
「ならば。直に棘(どく)が回るだろう」
 その攻撃は当たっていた。そう、"当たっていた"のだ。既に棘は仕組まれた。
 であれば、その最大に威力を発揮する場所を作り出さなければならないと、シェフェーネスは弾丸をうち続ける事をやめない。
 海賊たちの援護射撃もある。ならば、それを疾く利用する。
 撃てば撃つほど、ファフニールは応じた量の幽霊、または財宝をぶちまけることで"完全回避"を成し遂げる。
 一体幾つの財宝を持っているかはわからないが……では逆に放棄された財宝を回収する暇もなく破壊したならば――。
 おそらくはユーベルコード自体を封殺できる。

 後方のシェフェーネスの隣に並び立つように逃げてきたアリエ。
 ドラゴンを間近に見て、気分が高ぶる。打ち合って、切り裂けない強敵だった。
 高揚。いやそれだけでは無い気もするが。
 今考えつきそうな事はきっと、隠せないのでいっておこう。
「あの蜥蜴野郎は俺を喰いたそうにしているが、シェフィーは俺が欲しいか?」
 心の声は甘い声で囁く。隣に聞こえるだけの小さな声だ。
『欲しいって言って?』
「要らぬ」
 返答は甘さを受け取らない声。
『何を企んでいる?』
「じゃあ俺がアレに喰われても?」
 冷たい返答にアリエは追撃してくる。
 企み。そんな寂しい言葉で返してくるとは予想外。
『くれてやるきはさらさらねぇが俺が言って欲しいから。もう一度言う?ねえ、――言 っ て?』
 口に出ていない言葉のほうが何故か長い。
「構わん」
 シェフィーネスの対応は、端的。
「いっそ喰われろ」
『私のデメリットしか無い』
 隣りにいては伝えきれない。シェフィーネスはアリエの胸元掴み不機嫌顕にし。
「僕の手を煩わせるな莫迦者が!」
 ぎりりと胸元を掴んだ手に力が籠もる。
「つれねぇなあ」
「万に一つ……私が貴様を欲するなら、其の強運」
 敷いて言うならば、である。
「何しろここは戦場だ。だからほら」
『強請る言葉も返答も嘘でも今、言った方が全員に聞こえやしないだろう?』
 口を閉じてアリエから離れるシェフィーネス。
『海に愛されし幸運。不確定でいて絶対。私には無い故に揺らがぬ勝利の足掛けに。――其れを除くならば』
 ふふふ、と小さくだが楽しげに笑うアリエ。

 不思議なことに運良く敵の攻撃はこの短い会話の中で二人に向かなかった。
 祝福された豪運の、愛し子への寵愛はいい風を齎す。
 彼らの会話はそこで終わり。シェフィーネスの銃がたった一発の空砲を撃つことで劇的に状態は変化する。

 ずどん。

 弾丸は無。なかったのだ。しかし、フェフニールが心臓に違和感を感じた。
『ん~~?なんか……』
 胸元を気にして、状態を確認するため頭部を下げたとき。
 熱を覇気に変えて、敵に思い切り投げつけられたカトラスが顔面を貫いた!
「──Loose lips sink ships」
 確認する時間を与えない。頭部を潰されたドラゴンの心臓もまた潰そう。
 ずしゃり。致死量を超えた棘(どく)が内側より貫き生えた。
「此処へ来た事が最大の謬り。精々不運を嘆け」
 此処まで口内を焼かれ斬られ与えられてきたダメージの数々は勿論強運とは言えない。ドラゴンはぐしゃりとその場に倒れ込み。自身の腐食する猛毒な息の中に沈み込んだ為に自分の手に入れた力で殺されていく。
 得た財宝、奪い取った知識、死して尚、強欲な犠牲者達に見送られ、ドラゴンは躯へと還っていくのだ。

「俺(豪運)がいるんだ、当然だろ。なあ――シェフィー?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月09日


挿絵イラスト