羅針盤戦争~天使よ謳え、爆撃の嵐を奏でよ
夕焼けが海を焼き尽くすように、炎を思わせる橙に染める時間。その停泊するクレマンソー級空母の甲板に、一人の男が立っていた。
グリードオーシャンに現れたオブリビオン――コンキスタドールと呼ばれる首魁の一人、七大海嘯『舵輪』ネルソン提督は、甲板から焼けた海を目にしていた。
グレイの瞳には、これからの海戦を静かに見据えるように海を見る。
その周囲には、微か透き通る白銀の天使達の姿を侍らせて。
「戦端が開かれる。準備せよ、天使共」
ネルソン提督は纏わり付く天使達に何の感銘も受ける様子はない。
彼にとって、それは爆薬。それは弾。近づく者全てを排除する、今何よりも有効な武器そのものである。
――彼は、この天使達による不確定で当てにもならない奇跡を捨てて、その身体特徴による有利性に実質的な活用法を見出したのだ。
「猟兵が、現れる。帆船だろうが、空母だろうが、海戦の基本は変わらん。
見敵必殺。それが全てだ」
ネルソン提督の周囲を、無数の天使が歓喜と共にたゆたい舞い躍る。
「――さあ行け天使共よ。科学と魔術と戦略で、敵を撃滅するのだ」
それに応えるように、天使の群れが音にならない歌を紡いだ。
今は鼓膜すら震わすことのない無音。
だが、猟兵がそれを聴くとき――それは爆撃の音と共に紡がれるであろう。
●
「グリードオーシャンに現れた七大海嘯『舵輪』――ネルソン提督。これが今回のターゲットだ。
敵は指揮能力に長け、もう既に一つの島と、その海域を制圧し『クレマンソー級航空母艦』にてその付近に停泊している。放置すれば、付近にある他の島も制圧下に置かれるのも時間の問題であろう」
レスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)は手短に説明していく。
「変わらぬ異常気象により猟兵はテレポートも飛行能力も役には立たない。しかし、敵の手駒である羽根の生えたエネルギー生命体――天使だけは、例外だ。
敵は、これから猟兵がその島の奪還を狙ってくることを知って警戒と共に待ち構えている。
……天使らに制限はない。高速で空を駆ける翼を持ち、爆薬を落とし、己が弾丸となる事も厭わない。
飛翔がかなわない以上、こちらで鉄甲船を貸し出し、皆にはそれで攻め込んでもらうことになるが、天使達の攻撃を受ければ一撃で沈められる。ひとたまりもないだろう」
グリモア猟兵はそこで言葉を切る。
「一筋縄では海の藻屑となることだろう。
敵の唯一の弱点は、天使の攻撃で自分の空母を落とせない事だ。よって空母に近づき取り付いてしまえば、後はこちらのものだと言っても良い。
天使達の爆撃を何としてでもかいくぐり、七大海嘯『舵輪』を仕留め、勝利と共に凱旋してもらいたい。
それでは、どうか宜しく頼む」
グリモア猟兵は、一礼と共に戦闘に赴く猟兵達に頭を下げた。
春待ち猫
プレイング受付期間【2/4 08:35~システム上送信不可】まで。
こんにちは、春待ち猫と申します。
今回は戦争シナリオとなります。その為、可能な限りお早めに返して参りますことから。他執筆シナリオより文字数が大幅に減る可能性がございます。予めご了承ください。
また、プレイングは早く、当方が書きやすいと判断したものを優先して執筆させていただきます。
通常ではプレイングに全く問題がないものであっても、流れてしまう事がございます。精一杯執筆させていただきますが、流れてしまったものにつきましてはご容赦いただければ幸いです。
今回のプレイングボーナスは、
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
となります。ネルソン提督自体は上陸してしまえば与しやすいとはいえ、アイデア無しでは辿りつく事すら侭なりません。
皆さまの素敵なご発想・アイデアによる勝利をお待ち申し上げております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
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POW : 天使の行軍
【カタパルトで加速射出された天使の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の天使】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 天使による高高度爆撃
【天使達が投下する爆雷】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【位置と予測される移動範囲】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 武装天使隊
召喚したレベル×1体の【透き通った体を持つ天使】に【機関砲や投下用の爆雷】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
片桐・公明
【POW】
バイク『赤兎』+海戦対応拡張パック『江東の虎』で海上から敵空母に接近する
敵UCの先制攻撃である天使の突撃はとにかく回避に徹する
可能であれば誘導弾で直接撃ち落とすが、無理であれば海面に打ち込み発生する水柱で相手の視界をふさぎ当たらないようにする
「うっとおしいわね。制空権が大事ってよくわかるわ。」
バイクごと突撃すること敵空母に乗り込む
追尾してくる天使は空母まで誘導して同士討ちを狙う
以降敵本体をUCで攻撃する
ついでに空母にも攻撃して沈めておく
(絡み、アドリブ歓迎です。)
五百崎・零
連○/ア○
※戦闘中はハイテンション
ハッ!天使のくせして爆撃とか、やることえげつねーじゃん?
いいね、おもしれぇ。
相手が天使ならこっちは悪魔をだしてやるよ。
銃の形をした召喚器を空に向け、【悪魔召喚「アスモデウス」】を発動。
天使に負ける悪魔なんて情けねえよな?
だったら、オレに従え!
悪魔の獄炎で天使を迎撃し、仲間の進路を確保する。
自身も銃を使い【制圧射撃】で援護。
多少攻撃を喰らっても前進するのをやめない。むしろ、攻撃を受けるとよりテンションアップ。
ヒャハハハ!!おら、どうしたもっとこいよ天使様!!
グリモアベースから猟兵達が転移した先、その海域は既に戦場となっていた。
「ハッ! 天使のくせして爆撃とか、やることえげつねーじゃん?」
上空を、祝福を示す花びらの代わりに、鋼鉄の弾と爆雷を降らす天使が舞っている。五百崎・零(デッドマンの死霊術士・f28909)は、その光景を目に己が魂が震えるのを確かに感じ取っていた。
――数が多い。終わらない敵。それは、見れば昂揚せずにはいられない。ここはまるで自分に誂えられたかのような戦場だった。
「いいね、おもしれぇ。
相手が天使ならこっちは悪魔をだしてやるよ――来やがれ! 『アスモデウス』!!」
零が流れるような仕草で、禍々しさを携えた特殊弾を召喚式『アイン』にリロードし、天使が跳梁跋扈する天空へと向けて撃ち放つ。
発砲をトリガーに完成するユーベルコード【悪魔召喚「アスモデウス」】により、白銀の天使が飛来する世界に巨大な赫の影が湧き上がり、静かに零の元へと降り立った。
『使役を求むる代価は何とする?』
「ハッ! この天使の群れを前に節穴かよ。
天使を前に敵前逃亡か? ――天使に負ける悪魔なんて情けねえよな?
――だったら、オレに従え!」
こちらは今にも、敵を屠る得物が欲しい。強制を要求する零の言葉に悪魔は答えた。
『応じよう』
安全圏ぎりぎりにて待機していた鉄甲船から、太陽光に煌めく赤の一閃が海上へと飛び出した。
揺れる水面を切り裂き、片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)の乗る、海戦対応拡張パック『江東の虎』を積んだバイク・赤兎が駆け抜ける。目的の敵空母まで一直線。しかしその行動は、天使達の目に容赦なく留め置かれた。
クスクスと、天使達のせせら笑いが聞こえて来たような気がした。
公明のすぐ右隣に、背後からカタパルトによって飛来した天使が、赤兎を激しく揺らす衝撃と共に沈み、激しい水柱を立てる。鉄甲船すら沈める天使が立て続けに、こちらを狙い落ちてくるのだ。その場に留まれば即沈められることだろう。荒くれる猛獣にも近しい赤兎を片手で制御し、公明は正面の敵を臥龍炎による誘導弾で撃ち落とすが、流石に真後ろからの攻撃だけはどうしようもない。
「うっとおしいわね。制空権が大事ってよくわかるわ」
公明が辟易しながら、更に背後からの天使飛来を感覚で察知する。急ぎ、水中に弾丸を放ち、そこに発生した水柱を壁としてこちらへの目眩ましに利用する。一体の天使が水柱に直撃し推進をやめるが、カタパルトの勢いに乗って水柱を旋回して来た他の天使が、今度は更に別方向から公明に向かって突進してくる。きりが無い。
回避には方向転換が避けられない――目的の空母が逆に遠くなっていく。
「これは……っ」
公明が内心舌打ちをしながら、僅か撤退の文字を脳裏に浮かべたとき――そこから空母までの道筋にいた天使達を、突如湧き上がった獄炎が全て焼き払った。
拓けた空に天使達が散り散りになって墜ちていく。
「――!」
今しかない――公明は躊躇わず、背後に追撃してくる天使を引き連れたまま、その道筋を全力で駆け抜けた。
公明の背後に迫る天使を、更に弾幕により数体撃ち落とす――鉄甲船の船首に立ちながら、零は公明が敵空母へ向かうのを確かに確認した。
それにより、天使達の敵意が一斉に零に集まる。明らかな排除と殺意の気配。零の口許が一気に笑みの形を深く刻んだ。
天使達が、こちらの乗る鉄甲船へと爆雷を落とし、機関砲の弾をばら撒く。爆雷は何とか回避していくが、甲板は地震のように揺れ、機関砲の弾が零の身体を容赦なくかすめ、その内一発が肩を撃ち抜いた。
激痛が、血の赤が瞳を見開く零の胸をこの上なく煽っていく――そう、楽しい。楽しくて仕方がない。
「そうだ、そうこなくっちゃなぁ!!」
船は更に前進し、受ける攻撃の激しさを増す。
「ヒャハハハ!! おら、どうしたもっとこいよ天使様!!」
零から上がる歓喜の声が、神を冒涜するように天空へと木霊した。
自身も傷付くが、それと同等に炎が天を貫き、弾丸に天使が大海に墜ちる。
――死にたくない。
今、己の身体の五感は、この昂揚せずにはいられない全てを楽しむ為にあるのだから――
「到着!!」
公明が赤兎で船体の左舷を一気に駆け上がり、ついに敵空母の甲板まで乗り上がる。背後で追尾してきた天使は、公明のほぼ九十度に近い急なハンドリングに付いていけず、船の一部へと突き刺さると、硝子が砕けるように砕け散った。
乗り込んだ勢いのまま、公明は唯一の人の姿――七大海嘯『舵輪』ネルソン提督へ赤兎を投げるように乗り捨てる。
「くっ……!」
ネルソン提督が怯んだ隙に、公明が瞬息で距離を詰め、その身に刻み込んだ【諸葛流舞闘術】を叩き込んだ。
攻撃力を跳ね上げた武術で組み上げた、流れるような舞闘術に、ネルソン提督はその暴発を覚悟で己のマスケット銃で受け止め、致命打を防ぐ事しかできない。
そして、舞闘術最後の一撃となる、踵による打ち落としがネルソン提督を甲板に叩き付ける。空母沈没まではいかなかったが、彼の沈んだ甲板には、大穴を開ける事に成功した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
…此方の手が届かない場所から一方的に攻撃する
…成る程、少しは考えているみたいだけど…無駄よ
…それだけで屈するならば、闇に覆われた世界で吸血鬼狩りを名乗ってはいないわ
大鎌を武器改造して船を覆う程、大盾化して怪力任せに上に構え、
敵UCを限界突破した魔力を溜めたオーラで防御して、
衝撃は船体から海に受け流してUCを発動
…まずは第一波。次からは精度を上げてくるだろうけど…好都合ね
"演算、岩肌、世界知識、破壊魔、軍略"の呪詛を付与し、
●世界知識や●団体行動戦術を戦闘知識に加え、
風の流れや爆雷の軌道を●瞬間思考力で暗視して見切り、
銃撃で爆雷を連鎖爆破する●破壊工作で船を●かばい、
空母に切り込み大鎌を乱れ撃つ
水面が揺れる、爆雷による衝撃が海に穴を穿つように、または破裂する直前まで膨らみ大海を揺らしていく。
「……此方の手が届かない場所から一方的に攻撃する。
……成る程、少しは考えているみたいだけど……無駄よ」
鉄甲船の最上部から、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が戦況を一望し、小さく断じた。
上空の天使が、リーヴァルディをからかうように囁きかける。
「……それだけで屈するならば、闇に覆われた世界で吸血鬼狩りを名乗ってはいないわ」
リーヴァルディはそう告げると、偽りの天使を大鎌で一閃の下に斬り捨てた。
天使達の怒りが聞こえる。それはまるで馴染みのあったダークセイヴァーの死霊の声のように思われた。
リーヴァルディは、大鎌・過去を刻むものをエネルギー質量単位で存在を改変させる。そこには、船を覆う程の大きさとなった大盾が現れた。リーヴァルディは集まって来た天使達と自身が乗る船との境に、それを僅かな呼気と共に力任せに上空へと掲げ持つ。
次の瞬間、夜の闇と間違えそうな程の大盾に激しい衝撃が走った。天使達が次々と大盾の上に爆雷を投下しているのだ。まるで激しいピアノの連弾のように打たれる衝撃を、リーヴァルディは大盾が纏っていたオーラを更に激しく硬化させて受け止める。足場となる船全体が激しく揺れるが、敢えて抵抗せずに、揺れるがままに任せてその衝撃を受け流した。
しばしの間の後無音が続く――それは、天使達のユーベルコードの第一波を受け流し。そして、第二波が来るまでの予兆。
「……まずは第一波。次からは精度を上げてくるだろうけど……好都合ね」
大盾の変形を解除し、鎌の形状へと戻す。次はより凶悪な第二波が来るだろう。だが、そのターゲットはこの船ではなく、先に攻撃を受けたリーヴァルディ本人――自分だけに狙い澄まされた攻撃であるなら、対処はいくらでも出来る。
『……術式換装』。
ユーベルコード【吸血鬼狩りの業・千変の型(カーライル)】がリーヴァルディの身を包み、その身に刻まれた己の身体機能を大幅に上昇させる呪詛の幾つかを切り換えた。
そして手には大鎌の代わりに、狙撃に適した吸血鬼狩りの銃・改を構える。襲い来る天使の第二波、だが瞬間思考力を駆使した戦闘知識は、行動の主核であった天使を容赦なく撃ち抜いた。また吹く風の流れすら読み取り、投下された爆雷を的確に破壊し、破壊工作の知識から連鎖的に誘爆させる事で、リーヴァルディは己の船に傷一つ付けずに進んでいく。
――そして、空母まで隣接するとリーヴァルディは軽やかな身のこなしで、甲板の上に降り立った。
「――良くここまできたものだ」
「黙りなさい」
リーヴァルディにとって『過去』でしかないオブリビオンの言葉に、一体どれほどの意味があるだろう。
七大海嘯『舵輪』――ネルソン提督が言葉を紡ぎ切る前に、リーヴァルディは、一気に間合いを詰め寄り、その姿を大鎌で散り開く血の華が咲くように、一斉に斬り刻んだ。
大成功
🔵🔵🔵
地籠・凌牙
【黒々】
おいサライ何気落ちしてんだよ、ぼさっとしてたらやられるぞ!
あーサイボーグだもんな泳げねえわな!海嫌いな気持ちはわかんだけdほら爆撃きたじゃねーか!!
【第六感】で回避しつつ『穢れを喰らう黒き竜性』を使って【おびき寄せ】る!その間にサライは天使共を、って早ッ!!めちゃくちゃキレてんな……
はいよ、ありがたく受け取っとくぜ。
代わりといっちゃ何だが【指定UC】で吉兆の刻印を渡しておこう。これで「サライが海に落ちて沈む不運」はなくなった。まあ俺が代わりに落ちるんだがなァ!?
こうなったらサライからもらったUCペンダントでウォータージェット作って水中から艦に突撃だ!【鎧砕き】的要領で穴開けてやらァ!!
木々水・サライ
【黒々】
うーわーぁー……。(海嫌い)
よりによって空飛べないの……?
うーわーぁー……。(最悪だの顔)
なんで海嫌いにこんな苦行させるわけ??
(先制攻撃に対して)うるせぇ雑魚!! 俺は今猛烈にキレてんだよォ!!(七つの刀でザクーッ)
UC【願い叶えるチビサライ軍団】でチビ共呼んで、ペンダントをもらって。
一応凌牙にも渡しとくぞ。噛んでる間だけ使えるから注意しろ。
そして『海を渡る複数の足場』を創造、からの突撃じゃぁ!!
チビ共、凌牙、続けェ!!
俺の七つ刀で敵も砲弾も全部切り刻んでやらぁ!!
提督のところに到着したら、あとは黒鉄刀の闇を広げてその中に紛れて2回攻撃で傷口えぐってやらぁ!!
海嫌いの怒りを思い知れ!
青い空、広い海。爆雷で揺れる高い波。
一部素晴らしいシチュエーションとは言えないが、そのような光景を前に木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は、その絶望を隠そうともしなかった。
「うーわーぁー……。よりによって空飛べないの……?」
戦況が苛烈となっていく中で、それに応える者はいない。
「うーわーぁー……。
なんで海嫌いにこんな苦行させるわけ??」
戦う前から負けている……そのような絶望が滲みきる表情とは、きっとこのことを言うに違いない。
「おいサライ何気落ちしてんだよ、ぼさっとしてたらやられるぞ!」
そこに響く地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)の声。凌牙が見れば重すぎる絶望に膝を抱えるサライの姿。
「あーサイボーグだもんな泳げねえわな! 海嫌いな気持ちはわかんだけd――ぎゃあ!!」
「ぶわっ!!」
少し離れた所に突撃した天使のカタパルトで二人が纏めて吹き飛ばされる。痛烈な一撃を受けた鉄甲船は沈むか沈まないかの瀬戸際で、上空を見れば天使が屈託のない笑顔で爆雷を抱えて待っていた。もはや冒頭から危機一髪である。
「……」
「ほら爆撃きたじゃねーか!! 次またこっち来る気が――だああ! 自分だけ避けても船沈むじゃねえかよ!」
凌牙が絶叫しながら、いざとなれば爆雷を投げ返してでも全て引き受ける覚悟をしつつ、不幸や呪いを喰らうことで己が力とする『穢れを喰らう黒き竜性』を鉄甲船に対して発動した。敵の攻撃が一斉に引き寄せられるように、凌牙の元へと集まって来る。僅かに自分の死線が見えつつも、凌牙は覚悟を決めてサライに向き直った。
「今のうちに、サライは天使共を――!」
「だあああ!! うるせぇ雑魚!! 俺は今猛烈にキレてんだよォ!!」
――そんな凌牙の目に見えたサライは、カタパルトで凌牙に飛来する天使を怒りに光る紅玉刀で頭から真っ二つに切り裂き、返す刀で海にではなく直接こちらに落とされた爆雷を一瞬で導線ごと斬り砕いているところだった。
「って早ッ!! めちゃくちゃキレてんな……」
「こうなりゃ、殺るしかねぇだろ! うぉら!『チビ共、俺の願いを叶えな!!』」
『『『さっらー!』』』
怒り心頭に発するサライのユーベルコード【願い叶えるチビサライ軍団(ウィッシュ・カム・トゥルー・モノクローム)】により、子供サイズのサライ複製義体が集まってくる。そして、こちらへと噛んでいる間だけ特定の願いを叶えるペンダントを差し出した。
「さらーい!」
「らいらい!」
チビサライ軍団が謎の掛け声と共に周囲を跳ねている中、サライはそれをもう一つ用意すると凌牙にも手渡しておく。
「一応凌牙にも渡しとくぞ。噛んでる間だけ使えるから注意しろ」
「はいよ、ありがたく受け取っとくぜ。
そうか――代わりといっちゃ何だが、吉兆の刻印を渡しておこう。泳げなけりゃ、これで『サライが海に落ちて沈む不運』を喰えば、お前は海に落ちない!」
凌牙が、高らかにその宣言し、サライがそれに同意するように頷いた。そして条件を満たしたユーベルコード【【喰穢】祝福の標(ファウルネシヴォア・セレブラール)】が発動する。
「おう、あんがとな。でも大丈夫なのか、そりゃ――」
「その代わりに俺が落ちるんだがなァ!!」
「だろうなぁ!?」
このユーベルコードは相対的に、相手の不運という穢れを喰らい幸運を上げる事で、上げた分だけ自分に不幸が降りかかる――結果として、天使の突撃に吹き飛ばされた凌牙は問答無用で海の中へと落ちていった。
「あー……凌牙の死は無駄にはしねぇ……!
よし突撃じゃぁ!! チビ共続けェ!! ――俺の七つ刀で敵も砲弾も全部切り刻んでやらぁ!!」
サライがガッと先の『創造したい・制作したいという願いを叶える』ペンダントをかじり、現在地点から『海を渡る複数の足場』を生みだした。
サライの周囲に異なる美しい色合いの七振りの刀が展開される。言葉通りサライは、目に触れる者全てを斬り刻みながら空母まで全力で駆け抜けた。
一方その頃――凌牙は己のユーベルコードにより、ものの見事に沈んでいた。
完全に沈み切って溺れる前に対策を取らなければ――そう思い浮かんだのは先にサライから預かったペンダント。
(ウォータージェット作って水中から艦に突撃だ!)
水流を創造すれば海中での移動も容易い。ペンダントに命を救われた凌牙はさっそくそれを噛みしめると、作り出されたウォータージェットと共に、海中を空母へ向けて一直線に侵攻を開始した。
「忌々しい、次から次へと」
既に先に辿り着いた猟兵と対峙している七大海嘯『舵輪』ネルソン提督が眉根を寄せてこちらを見やる。
だが、そのようなことは既にサライには知った事ではない。その手に黒鉄刀を掴み取ると、刀が纏う闇を一気に広げてネルソン提督を自身と共に呑み込んだ。
――それと同時に、凌牙がウォータージェットで敵艦の船底に手が触れられるところまで辿り着く。
「海嫌いの怒りを思い知れ!」
「船底に穴開けてやらァ!!」
サライが闇の中、今までの戦闘でネルソン提督に刻まれた傷の上から、更に叩き付けるように二回攻撃を重ねてその傷口を抉り出す。
同時に凌牙は、鋼鉄の鎧をも打ち砕く勢いで、船底に激しい衝撃と共に、全力で己の拳をのめり込ませた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
カシム・ディーン
キャバリア搭乗
艦隊戦ならこういう兵器も出番でしょう
「空を飛べないのは面倒だねご主人サマ!」(鶏の立体映像が現れ
確かにちょい面倒ですがやり方はあります
【視力・情報収集・戦闘知識】
迫る天使達の捕捉と共にその陣形と攻撃ポイントの把握
対POW
【属性攻撃・迷彩】
光属性を機体に付与
迷彩も施しつつ
周囲に同じ姿の立体映像を十個展開
それでも迫ってくるのは他の天使を利用し【敵を盾にする・武器受け】でダメージを抑え込む
耐えれば今度は此方の番です
UC起動
防御強化
船全体を防衛するようにバリア展開
【二回攻撃・念動力・スナイパー】
バリアで反射しもやし
更に突撃天使は凍らせてそれ以外は念動光弾で狙い打って迎撃に入る
戦闘が加速度的に激化する中、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は躊躇うことなく、己のキャバリア、界導神機『メルクリウス』に搭乗した。
「艦隊戦ならこういう兵器も出番でしょう」
『空を飛べないのは面倒だねご主人サマ!』
早速、モニタ越しで大量の天使を確認する中、一匹の雄鶏が立体映像として傍らに現れた。
カシムが思案するように浮かび上がるコンソールに触れ、メリクリウスから提示される情報を整理していく。
「確かに――ちょい面倒ですがやり方はあります」
そして出された結論。しかしその瞬間、陣形を組んでいた上空に広がる天使の海が、一斉に左右へと割れた。
新たにモニタへと映し出されたのは、その中央から流星のようにこちらに流れてくる天使の一群。
『天使カタパルト、来るよ!』
「チッ、早ぇな! ルーンによる迷彩を張る。メルシー、この地域の光の屈折による視覚誤認と立体映像用意!」
『任せて、ご主人様!♥』
カシムの指令と共に、メリクリウスが内部より一瞬弾けるように光り輝き、瞬時にしてその本体を天使達の視野から掻き消した。同時に、代わりとして鉄甲船の両側の海域に、自己と全く同じ姿の立体映像を五体ずつ出現させる。
困惑した天使達は、止まれない勢いをそのままに、立体映像を貫くように飛び込み、そのまま海の中へと次々に水柱を立てて沈んでいった。
キィィ! と歌う天使の怒りの声が、微細な音まで拾うメリクリウスに届けられた。同時に、既の所で海面との突入を免れた一部の天使が、その本体を見つけてこちらに特攻してくる。
「うっせぇ!! 大人しく沈んでてください!」
複数の情報を一斉に処理しつつ、カシムはメリクリウス越しにこちらに迫って来た天使を鷲づかみにして、そのまま他の天使へと叩き付けた。
硝子が砕けるような銀片を残して、二体の天使が砕け散る。
『第一波、制圧! 更に破壊力を増した第二波到達まで十五秒!』
「立て続けに来やがって、クソがっ!
――だが十五秒あれば十分! 耐え切れた以上は、今度はこちらの番です」
カシムが一度、メリクリウスと更に感覚を共有するように瞳を閉じる。
『万物の根源よ……帝竜眼よ……
竜の中の竜……世界を蹂躙せしめた竜の王の力を示せ……!』
カシムは見開かれた鷲色の瞳と共に、ユーベルコード【帝竜眼「ヴァルギリオス」(セカイヲジュウリンセシオウノナカノオウ)】を発動させた。
発現されたユーベルコードは、メリクリウスを中心に船全体を防衛する特殊バリア。
第二波で迫り来る天使達は、あるものは雷光と共に炎に焼かれ。またあるものは、バリアに接触した途端にその身を硬直させた氷塊となって甲板の上に転がった。
そして、ついに敵の空母がはっきりとターゲットとして捕捉できる位置まで辿り着く。
『ね、ご主人様。迎撃準備出来てるけど、敵第三波なにか手間取ってるみたい。
今なら空母が狙えるけれどどうする?』
「――それなら、こちらの手間を掛けさせたお礼参りといきましょうか」
『さっすが、ご主人様♥ 好き好きだぁいすき愛してる♥』
「気色悪ぃ愛が重てぇ!
それでは――」
カシムの繰るメリクリウスが、RBS万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』を構える。
カシムの持つ魔力が、外部で光舞う念動光弾に変換され――
「行っけぇ!!」
その掛け声と共に、空母上空より星のような光弾が降り注ぐ。それは、敵の空母全体に一斉に無数の穴を穿ち果たした。
大成功
🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
アドリブ◎
空も移転も必要ねぇ
ここは海で、俺は海賊だ
それで十分だろ
まずは船を沈められない為に
ぶんと錨を振り回し
爆雷にぶつけて空中で破裂させる
危険な銃弾もあたらなけりゃ意味がない
何回だって防いでやるから
お前らはただ波に抗わず
まっすぐ船を走らせな
…俺が、導いてやるよ
旅路を楽しむ普通の航海術とはまた違う
俺が進みたい方へまっすぐ進む為の力技
【君の僕】…海を受け入れて
海へ意思を伝えよう
敵の船をこちらへ
俺の船をあちらへ
水を操り安全な航路を
敵の船に乗り込めたら
あとは、単純な勝負だ
俺の知ってる弾丸は
もっと正確で、容赦がねえもんだ
その程度の腕であたるかよ
反射速度をいかして回避して
深く踏み込み
覇気を乗せた刃を振るう
「そもそも、だ」
上空を天使が舞う。あれが戦闘機兵の代わりとして使っている敵がいる――。
それを『滑稽』と。アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)は、その有り様を鼻で嘲笑った。
「空も移転も必要ねぇ。
ここは海で、俺は海賊だ。
――それで十分だろ」
猟兵に貸し渡される鉄甲船も不要。アリエには自分の誇り高き船がある。――そして、海賊団ロールボアは戦乱極まる大海へと漕ぎ出した。
荒ぶり始めた天使が騒ぐ。猟兵に空母の揚陸を許した、主の怒りを受けて苛立ち焦るかのように。
直ぐさま、天空を滑り込むように複数の天使がこの船上を旋回し、猟兵であるアリエの姿を見つけると、まるで羽を落とすような軽やかさで爆雷を投下し始めた。
目撃していた団員達から悲鳴が上がる。だが、爆雷が船に到達する前に、アリエはアハ・ガドールを上空へと勢い良く振るい、飛来するそれらを到達前に被害の及ばない中空にて次々と爆破させた。
「どんなに危険だろうが――当たらなけりゃ意味がない。
何回だって防いでやるから。お前らはただ波に抗わず、まっすぐ船を走らせな。……俺が、導いてやるよ」
「へい、お頭!!」
船長の言う事は絶対だ。だが、それ以上にアリエには、それを人々が信じるに値する幸運と覇気がある。
『彼が言うならば、それは絶対に叶うことなのだ』――団員達が、それを疑う事はない。
天使達の爆雷の雨が一時的に静止するように静かになった。その隙に、アリエは船尾甲板へと立ち、己が進む大海を一眸する。
アリエはその大海に身を任せるように瞳を閉じて、己がユーベルコード【君の僕(オドゥーラドゥ)】を発動させた。
目的は、日常の海図と共に潮の流れに乗り、旅路を楽しむロールボアの航海とは異なる道筋――自我が、海に溶け込むように沈みゆく。海の声がはっきりと聞こえ始め、その声にアリエは言葉にしない意思で、自分の目的の道行きを伝え示す。
そして、大海はそれに応えた。アリエの船が静かにその先を安全な航路と共に、敵の目的地へと向け進み始め。同時に敵の船を他の猟兵の身を守るように不安定な方向へと揺り動かした。
そして、どこまでも広く、そして際限のない海は、そのままアリエの心を柔らかな水底まで引きずり込もうとする――その境目が完全に分からなくなった時、それが恐らく己の命が失われる時なのだ。
アリエがユーベルコードを解除し、榛色の瞳を眠りから覚めるように開く。
そこには、敵の空母が目前まで迫っていた。
差し迫ってしまえば、天使達は完全に無力化する。それでも、空母は既に乗り込んだ猟兵達によりかなりの損傷を負っていた。
「貴様ら」
だが、敵もオブリビオンである以上、容易に消えるものではない。上船を待ち構えていた七大海嘯『舵輪』ネルソン提督は、狙い澄ましたマスケット銃をアリエへと撃ち放つ。
だが、それはかすりもせずに、虚空へ抜けた。海と女神の祝福がある限り――それすら超えると誓う信念がない者に、その弾が当たることはない。
「俺の知ってる弾丸は――もっと正確で、容赦がねえもんだ」
思い浮かぶのは一人の存在――このような敵の弾に当たっていては相手への侮辱となろう。
「クッ……!」
ネルソン提督が声を荒げて、更に数発、アリエへと弾丸を撃ち向ける。アリエは相手の動揺の隙をつき、身を翻してそれらを回避すると、その勢いで数歩相手へと深く踏み込んだ。
手にしたレーシェが風を斬る。そして轟と音のする錯覚さえ受ける気迫と共に、その刃はネルソン提督へと深く刻みつけられた。
成功
🔵🔵🔴
フィランサ・ロセウス
あらあら?中には真っ直ぐこちらに向かってくる天使さんもいるのね!
それじゃあ天使さん達の体当たりを【戦闘知識】で予測してかわしつつ、『ニンジャ・フックシューター』を射出!
引っ掛ける事に成功した【敵を盾に】しつつ、お空に連れて行ってもらうわ。
上空にはお仲間が沢山いるから、さっきと同じ要領でより空母に近い天使にフックを引っ掛けて跳び移るのを繰り返して空母を目指しましょう!
だいたい空母の上に来たら、甲板に向けてダイビングしながらUC発動!
(着地の衝撃は強化された肉体と、その副作用の【激痛耐性】が抑え込む)
会いたかったわ、素敵な提督さん♥
この艦ごとまとめて壊(あい)してあげる♥
「あらあら? 中には真っ直ぐこちらに向かってくる天使さんもいるのね!」
既の所で直撃を避け、自らの傍らを駆け抜けた衝撃と、その流線型に流れる天使の美しさ。それをぎりぎりまで見ていたフィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)は、その乙女の心の針を左右に揺らした――これは『好き』という言葉の三歩手前。天使に対して、少し胸がときめきに音を鳴らす。
「こんなに素敵な天使を駆っている提督は、どれだけ魅力的な提督さんなのかしら。さっそく逢いにいかなくちゃ♥」
早速フィランサは、柔らかな微笑みを浮かべてこちらに突進してきた天使一体の直撃を、今までの知識経験から華麗に躱した。
そして、更に旋回と共に突撃を狙う天使の後ろ姿に、フィランサは拳銃型のフック付きワイヤー射出装置『ニンジャ・フックシューター』を撃ち放つ。
弾丸の代わりに放たれたワイヤーは、見事に透き通る銀細工で出来ていそうな天使の身体を抉るように食い込み、繋がれたフィランサを一瞬にして上空まで持ち上げた。
「わ、お仲間がたくさん! ――じゃあ、次はあなたにするわね」
突然の猟兵の乱入に、空に滞空していた天使達が可聴域の声で喚き叫ぶ。
フィランサはワイヤーを巻き上げると、綺麗にバランスを取りながら、今度は空母に近い距離に滞空する天使を対象に、再びフックを食い込ませながらの飛翔移動を繰り返し始めた。
まさか天空にいる自分達が、猟兵の移動道具にされるなどとは思いもしなかったのであろう。天使達は、今まで組んでいた陣形を大幅に乱しながら逃げ惑い始めた。
だが、大量すぎた天使の群れに、既に逃げ場など存在しない。
フィランサは、先程から心湧き上がらせる興奮にも似た感情をそのままに、敵空母の上空まで辿り着くと、天使のフックを外して上甲板まで一直線に飛び降りた。
「素敵。早く、早く逢ってこの想いを伝えなきゃ♥」
落下中も止まらない乙女の想い。フィランサは心急くままにユーベルコード【愛を捧ぐ(フラグランティ・カリターテ)】を発動させた。
発動するのは『単純で重い【愛】の一撃』――攻撃方法は、当然飛び降りる自分の存在以外に他ならない。
数秒後――爆音を伴わせたその着地は、上甲板から中甲板に至るまでを貫き、船の中央を容赦なく粉々に砕き散らせた。通常であればフィランサも無事では済まない。だが、元より非道な実験により強化された肉体と、残された精神に受けた副作用により、フィランサが痛みを感じることは殆どなかっt。
フィランサが、のめり込んだ中甲板から弾け飛ぶように跳躍して、七大海嘯『舵輪』ネルソン提督の正面へと着地する。
フィランサの瞳がネルソン提督を捉え、その狂気交じりの紅の瞳を更に光り輝かせた。
「猟兵とは、化物か!」
オブリビオンに言われたくはないものだが、船を大破させたフィランサの瞳は、そう定義してもおかしくない程に色に染まり燦めいている。
「――会いたかったわ、素敵な提督さん♥
この艦ごとまとめて壊(あい)してあげる♥」
オブリビオンへと紡がれた愛の言葉と同時に。
再度、フィランサのユーベルコード【愛を捧ぐ(フラグランティ・カリターテ)】が、今度は拳に乗せられて。その相手の答えを確認する事もなく、ネルソン提督の胸へと抉り打たれた。そして、アッパーの要領で持ち上げられたその身体が、次の瞬間には、一気に真下へと叩き付けられる。
その衝撃は、真下に残る甲板を容赦なく砕き、落下するネルソン提督の身を呑み込んだ。
――フィランサはその様子を確認するように、破壊された穴を覗き込む。そして、落下していったネルソン提督がまだ動いているのを目にすると、うっとりと微笑んだ。
「あ、まだ生きてる。
――良かった。まだ、この『好き』を伝えられるのね♥」
『心を揺るがすものを、みな好意と感じ』また、それが『殺害に至る蹂躙』が紐付けられている少女の愛。
フィランサは、このオブリビオンが消滅に至るまで。その想いを狂乱の拳と共に、情熱に胸を焦がしながら紡ぎ続けた。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
空は無理
地上も危険
なら、海底は?
出来れば空母爆発の瞬間とかに
飛び込んだ事を悟られないよう海中へ
【指定UC】で人魚へと変身し泳いで近づくよ
船の下くらいから【高速詠唱】で風魔法の【属性攻撃】
提督の船目掛けてスクリュー攻撃
部位破壊まで出来ればラッキーだけど
とにかく“下に何かがいる”と思わせれば充分
目標を海中に惹きつけたい
風魔法で渦潮も作ろうか
船が沈みそうになれば無視も出来ないでしょ
【聞き耳】で提督の足音を聞いて位置把握
常に逆方向に泳ぎ位置は悟らせない
姿が見えない恐怖は焦りを生む
追い込んでから船目掛けて植物魔法で蔦をワイヤー代わりにし乗り込み
提督に即全力尾鰭ビンタで叩き飛ばし
雷の【全力魔法】で狙い撃ち
目に映る遠くで、敵の空母が無数の煙を上げている。
だが、まだ上空にひしめく天使達の存在が、未だにオブリビオン――七大海嘯『舵輪』ネルソン提督がこの海域にいる事を証明していた。
「空は無理、地上も危険。
――なら、海底は?」
言葉と共に、確実な作戦として栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の脳裏に一つの戦略が浮かび上がる。
その思考を辿り、問題点が無い事を確認して。澪はそれを決行に移すべく、敢えて危険と認識しながらも鉄甲船へと乗り込んだ。そして可能な限り、自分の体力を温存しつつ空母側へと近づいて行く。
主であるオブリビオンが相当追い詰められているのであろう、上空に存在する天使達の群れは明らかな殺気に溢れていた。
鉄甲船を見つけた天使が、空母より容赦なく初撃として澪の上空に爆雷を落とし始める。
作戦の第一歩――鉄甲船がそれをぎりぎりの所で回避し、爆雷が水の中で爆発した瞬間、澪は天使の目を欺くように、立ち上がる水柱の影から海の中へと飛び込んだ。
水中で数秒、追加の爆雷が水の中へと落とされる。しかし、天使達はこちらを見失ったのか、それらは澪には離れた位置で次々と爆散していった。
澪は、その爆発に巻き込まれないようにユーベルコード【マジカルつゆりん☆アクアフォーム(マジカルツユリンアクアフォーム)】を発動させる。そして、己の姿を美しい人魚へと変えると、尾ひれで華麗に海水を打ち、その場から急ぎ離脱した。
そのまま、鉄甲船を離れ、泳ぐ。その目的地――七大海嘯『舵輪』ネルソン提督の存在している、クレマンソー級空母の真下に向けて。
「これかな――」
天使は完全に澪を見失っていた。追撃から免れて辿り着いた空母の船体には、既に穴が開いており、これまでの猟兵の行動が見て取れるようだった。
確実に船内に浸水を促している事であろうその穴に向けて、澪は酸素消費の少なくて済む極めて短略化した呪文詠唱と共に、魔法で水中の僅かな気泡を拡張させる。
そして、生みだした螺旋状の水圧を、その穴に向かい一気に叩き込んだ。
ガグン! と船体がへしゃげる音を立てて、船底の穴が更に大きくなった。澪はその場を中心に、先の魔法の応用で巨大な渦潮を作り出す。
目の前の空母がコントロールを失い大きく旋回し始める。今は花びらとして仕舞われているAngelus ametを取り出せば、海中であっても強化された聴覚から、澪は確かにネルソン提督の動揺を聞き取った。
「流石に、船が沈みそうになれば無視も出来ないでしょ」
何者かが、自分が手を下せない海中から船底を破壊しようとしている――ネルソン提督が、追い詰められているせいであろう、海底には潜れない天使達を罵っている怒声が響き渡った。
同時に、澪は海中から上を見上げつつ、ネルソン提督の足音から現在位置の把握を試みる。甲板のあちこちが破壊されているのであろう事が想像つく程に、ネルソン提督はほぼ同じ場所から動く様子がない。
澪は己の位置を悟られないように泳ぎながら、更に相手への恐怖からの焦りを煽っていった。
「――そろそろ、かな」
船が完全に沈没してしまえば、却って敵に逃げる隙を与える事になる。
澪はその寸での状況を見極めて、植物を繰る魔法により海中から無数に編み上げられた蔦を伸ばし、今ネルソン提督がいる船嘴に絡ませると、その身を一気に空母の上へと躍らせた。
見えたのは澪の狙い通り敵の背面。完全に死角となっていたその背後に、澪は揚陸の勢いそのままに、己の尾鰭を全力で相手に叩き付けた。
「グアッ!!」
既に満身創痍で、立つことがやっとであったネルソン提督が、容赦なく穴だらけの甲板の狭間へと弾き飛ばされる。
もはや――敵に必要なものは、とどめのみ。
「これで――!」
澪は、ユーベルコードを解除し、その手にStaff of Mariaを掲げ持つ。そして、澪が歌い紡ぐ世界を震わせる透き通った歌声により、杖より現れた幾重もの迅雷が、もはや立ち上がる力なく転がり悶えるネルソン提督を、力一杯に貫いた。
そして――ネルソン提督の身体が、闇の粒子となって散り散りに消え始める。
ボロボロになった空母は、その存在そのものが霞んでいき、空駆ける天使達は一斉に銀の輝きを持つ塵となって、上空を漂いそのまま蒼天の空に消えていった。
――七大海嘯『舵輪』ネルソン提督、撃破。
戦場であった海域から、悪夢のような空母が、猟兵達の活躍により完全に消滅した瞬間。
今までの光景は、まるで完全な幻であったかのように――目に映る大海は、さざ波が謡う物静かな凪を取り戻していた。
大成功
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