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羅針盤戦争~命の価値に区別無く

#グリードオーシャン #羅針盤戦争

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#グリードオーシャン
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#羅針盤戦争


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「皆、グリードオーシャンにて「羅針盤戦争」が始まっている事は周知の上だと思うが」
 フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は苛烈な蒼い左目を光らせて、自らの呼びかけに応じた猟兵たちに対し礼を述べた後、そう切り出した。
 グリードオーシャンではグリモアによる予知と転移の能力が上手く働かない。「蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)」は、今まで猟兵達がグリードオーシャンの島々をその足で探索してきた結果判明した海域だ。先日謎の予兆によって、この「蒼海羅針域」にグリードオーシャンを支配するコンキスタドールの首領格「七大海嘯」の居場所を示す手がかりがあることが明らかになった。
 そして、その言葉を裏付けるかのように、「七大海嘯」は本格的な大攻勢を開始してきたのである。
「奴らの狙いは、我々がグリードオーシャンへやってきた時に利用した『サムライエンパイアに通じている渦潮』だ。蒼海羅針域の中心にあるこの渦潮を破壊されれば、我々は二度とこの世界へは来ることが叶わなくなってしまうだろうな」
 そのため、現在もサムライエンパイアに通じる渦潮の破壊を狙い、「蒼海羅針域」へとオブリビオンの大船団が押し寄せており、猟兵たちと戦いを繰り広げている最中だ。
「蒼海羅針域の破壊に向かおうとするコンキスタドールの大艦隊の出現を予見した。皆にはどうか、これらを海上で迎え撃ち――少しでも敵の数を減らして、渦潮へ迫ろうとする動きを食い止めてもらいたい」
 男の背後に映し出されるのは、グリードオーシャンの蒼い蒼い海。その中を行くコンキスタドールの船団にひしめくのは、まるで怪物の屍にタールのようなものがまとわりついた異形だ。
「このコンキスタドールの名は『淵沫』。本体はこの屍に纏わりつく影のようなものであるらしいな。屍を纏うことで、その生前の能力を使用することが出来るらしい。なおかつ、生前には不可能だった動きも可能になっている。死体を無理やり動かしているのだから、道理なことだろうが――それであって、そんな無理なことをしても壊れないというのが厄介だな」
 その動きは無軌道にて多彩。機動力に併せて相手の思念を読み取り、敵対対象の攻撃を予測し回避する事が可能なほか、液状の物質で全身を覆うことで仲間たちの戦闘力の増強と飛翔能力を持つ、屍の持つ骨や牙などの攻撃を行ってくるようだ。
「この戦いで最も注意すべきは、戦場となる海上では飛行や転移が阻害されるということだ。グリモアによる転移でも敵と接触するギリギリの場所までしか行けない。単身で飛翔するような行動ならば恐らくは可能だろうが、転移型・飛行型のユーベルコードやアイテムなども荒れ狂う海の影響か、使えなくなっているだろう。船と、そして海でのぶつかり合いが主戦となる。力及ばぬこと、歯がゆいことだが」
 男は一度目を伏せ、そして息を吐きだして、再び説明を開始する。
「ともあれ、この集団の掃討に成功すれば「渦潮」の防衛に一歩近づくのは確かだ。どうか、引き受けてもらいたい」
 戦いに赴く準備のできた者から、私に声をかけてくれ。
 男はそう言って、猟兵たちに向かって一礼するのだった。


遊津
 遊津です。よろしくお願い致します。
 こちらはグリードオーシャン、羅針盤戦争のシナリオとなっております。
 一章完結、集団戦です。

 当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
 ※海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。

 「■戦場について■」
 オープニングで描写した通り、飛行が阻害されているため、飛行機のような高高度を保つアイテムなどの使用は非常に難しくなっております。
 (グリモアの転移も鉄甲船までとなり、戦場へは鉄甲船で以て乗り込む形になります。既に接敵している状態からリプレイの描写を始めますので、それ以前のプレイングは不要です)
 空中戦や空中浮遊などの技能、飛翔能力を得るユーベルコードについては使用可能ですが、それでも海水に全く触れずに戦闘を行うことは難しいでしょう。
 ※判定上のペナルティとなることはありません。

 「■集団敵「淵沫」について■」
 能力についてはオープニングで説明したとおりです。
 指定ユーベルコード以外にも、武器となる牙や骨、爪などを使用して戦います。
 (攻撃ユーベルコード以外を選んだ場合でも、以上の武装による戦闘がアドリブの範囲内で発生するということです)

 当シナリオのプレイング受付は2/3(水)朝8:31~となっております。
(時間帯によってはマスターページ上部及びコチラのページのタグに受付募集中の文字が無いことがございますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって結構です)
 プレイングを送ってくださる場合は必ずマスターページを一読してくださいますようお願い致します。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『淵沫』

POW   :    残影
【屍と影の機動力に併せ、思念を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    群影
全身を【深海の水圧を帯びる液状の物質】で覆い、自身の【種のコンキスタドール数、互いの距離の近さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    奔影
【屍の持つ骨や牙】による素早い一撃を放つ。また、【屍が欠ける】等で身軽になれば、更に加速する。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

片桐・公明
【POW】
海上での行動はバイク『赤兎』+海戦対応拡張パック『江東の虎』使用して移動する
バイクの上に立ち、足とUCでハンドルを操作することで両手を自由にしたうえで海上行動を行う
敵船からの攻撃は普通に回避する
攻撃は誘導弾と拳銃からの射撃を行い、敵本体や屍より船を、特に喫水線あたりを狙い船そのものを沈めることを目的とする
また沈まないにしても舵を狙い操作不能にしたうえでUCで船の向き先を変更して同士討ちを狙う

「攻撃をよける屍なんて、大分しんどいわね。」
「まぁ、やりようは幾らでもあるけどね。」
(絡み、アドリブ歓迎です。)


ビードット・ワイワイ
我が思念は破滅のみ
モササウルスの魂は捕食のみ
合わさり想いは唯一つ
獲物を食らうは一瞬よ

此度に雷撃は必要あらず
小賢しき策も必要あらず
気配絶ち耐え獲物が油断するまで待ちモササウルスの狩猟本能に任せよう
本能は狩りを忘れず。どれだけ姿変わろうと獲物は獲物
屍を砕き影を食い千切り我が最適化されし機動力で蹂躙しよう

今日の食事は糧にはならんが畏怖を示せる。モササウルスよ、海の王者を見せつけようぞ
忘れし恐怖を思い出せ
我らメカモササウルスこそが捕食者だ




 コンキスタドールを乗せた船団を発見したビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は、鉄甲船の上から飛び降りる。同時に起動させるのはユーベルコード【実行仮想破滅・七海征する最新にして古代の龍(アクセス・イマジナリールーイン・メカモササウルス)】。
「“古代に滅びし海龍よ。海は其方を忘れたぞ”――“絶対なりし海の王”“機械の体に魂宿せ”“古代と最新今こそ合わされ”」
「――“我らこそが”“モササウルスだ”」
 機械の肉体が機械のままに、全長三百メートルのモササウルス……滄竜とも呼ばれた、およそ九千八百万年前に出現し、繁栄したという海生爬虫類の姿に転じていく、大海原に解き放たれたメカモササウルスは深く潜り、コンキスタドールの船まで泳いでゆく。
(我が思念は破滅のみ――モササウルスの魂は捕食のみ――合わさり想いは唯一つ)
 角から放つ雷撃砲を搭載している。されど、此度に雷撃は必要非ず。小賢しき策も、必要非ず。気配を絶ち、ただ一心に耐えるのみ。モササウルスとしての狩猟本能に委ね、ビードットはしばし海の底を揺蕩う。
 その間に、海上を走るのが片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)を乗せた海戦対応拡張パック「江東の虎」によって海上走行を可能とした真っ赤なバイク、赤兎。かの覇王将軍もかくや、公明はバイクの上に立ち、足とサイコキネシスによってハンドルを操作しながらコンキスタドールの船へと近づいていく。両手に握るは父の異名を持つ銃「Mathem842」と母に縁ある銃「臥龍炎」。公明が狙うのは戦場のコンキスタドールではなく、船だ。喫水線を狙ってガン、ガン、ガンと続けて撃ち抜けば、船そのものが僅かに傾ぐ。ぬらりと船上に積み重なったコンキスタドールが震え、そして公明へと向かって船から次々と飛び降りてくる。――その瞬間、海中から現れたビードット……メカモササウルスの口内にコンキスタドールが飲み込まれた。
「獲物を食らうは、一瞬よ――!」
 九千八百万年前の本能はたとえ機械の体にインストールされたとしても、狩りを忘れてはいない。屍と化し、どれだけ姿が変わろうとも獲物は獲物。骨を噛み砕き、影を食い千切り、モササウルスの姿に最適化された機械の機動力によってコンキスタドールたちを蹂躙していくビードット。
 しかし、そのまま一網打尽というわけにはいかなかった。船上を滑り降り、海中に降りてくるコンキスタドールたちの中から、メカモササウルスの牙を逃れる個体が増え始めたのである。
彼らは学習する。屍に取り付いた影はその機動力で持ってメカモササウルスの狩りの本能を、その行動パターンを読む。そうやってビードットの牙から逃れたコンキスタドールのいくつかは、公明の銃によって撃ち抜かれてゆく。
「攻撃を避ける屍なんて、大分しんどいわね……まぁ、やりようは他にいくらでもあるんだけど……ねっ!!」
 船上で舵をとっていた――舵輪にまとわりついていたコンキスタドールに降り注ぐ銃弾の雨。操り手ごと舵を粉々にされた船は操作不能となる。それを変わって操ってみせるのが、公明のサイコキネシスだ。ぐるりと勢いよく方向転換した船は、近隣を走っていた船を巻き込んで衝突する。船がグラグラと揺れ、乗っていたコンキスタドールが落下してくる。それに襲いかかるのは、狩猟本能を剥き出しにしたメカモササウルス――ビードット。
(今日の食事は糧にはならぬ――だが、畏怖を示せる――。モササウルスよ、海の王者が誰であるのか、此処に見せつけようぞ――!!)
 ――海に生きるものよ、忘れし恐怖を思い出せ。
「我ら、メカモササウルスこそが、捕食者だ――!!」
 刻一刻とビードットの中の理性は擦り切れていく。思考がモササウルスの本能、飢えに塗りつぶされていく。喰らう、喰らう、喰らう。それで良い。ビードットの理性は、ともに戦う少女を食い殺さぬ程度に持てば良い。その牙から逃れた獲物は、公明によって撃ち抜かれる。
 また一つ、舵輪を破壊された船が転覆し、乗っていたコンキスタドール達が海へと投げ出される。それらを、メカモササウルスの巨大な顎が飲み込み、蹂躙の限りを尽くすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天王寺・七海
こんな、動物の死骸を弄ぶコンキスタドールなんて、目じゃないのね。
あたし達、シャチの狩りにつきあってもらうのね。
まず、仲間たちや他の群れも呼んで、まずは、相手の船を横転させてもらうのね。
なに、船から落ちれば、人型なら【集団戦術】で仲間たちで【蹂躙】するのね。

人型じゃないなら、これまた【集団戦術】で【水中戦】【水中機動】【高速泳法】【地形の利用】【コミュ力】【蹂躙】して、全力で食らいつくよ。

まぁ、それでもまだ、船に残っているのがいたら、こっちは、あたしが空中に登ってシャチホコファンネルによる【一斉射撃】【鎧無視攻撃】【制圧射撃】で船ごと潰させてもらうのね。
猟兵がいる船なら、船に穴あけずに対処する。




(……こんな、動物の死骸を弄ぶコンキスタドールなんて、目じゃないのね……!)
 天王寺・七海(大海の覇者・f26687)はシャチである。生まれた時はそうではなかった。けれど、三年前に実験によって己の記憶をシャチの肉体に移植されてから――彼女は超能力を持つシャチとして生きてきた。今ではシャチの群れのリーダーを番に持ち、シャチの仔を持つ母である。
「あたし達、シャチの狩りにつきあってもらうのね!!」
 キュウウウウイイイイイイイイイ――甲高い鳴き声を上げると、七海の周囲に己が属する――七海の番をリーダーとするシャチの群れが現れる。それだけではない、別のリーダーを持つ群れも混じっている。これこそが七海のユーベルコード、【オルカライヴ】だ。
 シャチ達がコンキスタドールの積載された船へと向かって体当たりを繰り返す。何頭、何十頭ものシャチの体当たりは巨大な船のバランスを崩し、横転させる。どっぱあんと派手な水飛沫が舞い、乗っていたコンキスタドールが海中に落ちてくる。
 それにむらがるシャチの群れ。海の中に落ちればこちらのものだ。シャチ同士が見事な連携を取り、その屍が人型ならば、集団戦術を駆使して粉々に砕きつくす。人型でないならば、同じく集団で群がり、それぞれに屍を引きちぎり、噛み砕き、喰らい尽くすまでのこと。肉がない為にシャチたちの腹を満たすことが叶わないことが難点ではあったが。
 ふと、七海たちの周囲の水圧が変わる。七海はシャチたちに警戒するよう伝える。コンキスタドール達は深海の水圧を帯びた液状物質で全身を覆い始めたのだ。横転した船に乗っていただけとあれば、大量のコンキスタドールがそこにいる。それらが一気に戦闘力を増し、そして飛翔能力を得て海面を飛び交い始め、骨で皮膚を貫き、牙で噛み付いてくる。
 だが、それがどうしたというのか。鋭利な牙持つシャチの集団の前に、そんなものは瑣末事!海面が赤く染まろうとも、シャチたちは勇猛にコンキスタドールたちに喰らいついていく。ばりばりと骨を噛み砕く音が、水中で鈍く響いた。
 海中に落ちたコンキスタドールたちを仲間たちに任せ、七海は空へと飛び上がる。グリードオーシャンの特性上そこまで高くは飛び上がれないとはいえ、船を飛び越えるぐらいなら容易いものだ。そして展開するのは幻獣「鯱」を模した一対二砲の遠隔操作兵器、「シャチホコファンネルシステム」――。
 シャチホコファンネルから放たれたバスター砲とランチャー砲が横転した船へと降り注ぐ。バキバキ、メリメリと音を立てて、今度こそ船は木っ端微塵となった。その砲撃に焼き尽くされたコンキスタドールたちもいれば、船から投げ出されてシャチに噛み砕かれたコンキスタドールもいる。
「あたし達を、なめないでほしいのね」
 着水した七海が言う。海のギャング、海の殺し屋とも呼ばれるシャチ、彼らによるコンキスタドールの蹂躙は、未だしばらく続くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木々水・サライ
【灰色】
いーやーぁー……落ちたくない。(必死)
親父、耐水性のある装備って無いの?
……あ、ないの。……そう……。

しょうがねえ、無いんだったら作るっきゃねぇな!!
UC【願い叶えるチビサライ軍団】で噛んでる間だけ願いを叶えるペンダントを作ってもらって、と。
あ、親父も使う? 噛んでる間だけだけど。

(噛む)俺の願いはたった一つ!!「海上戦が有利になるよう足場を創造する」ことだ!!
足場さえありゃ七つの刀でぶった切るのが楽になるからなぁ!!
っつっても人が一人が乗る程度の大きさの足場だけでいいな!

親父、援護を頼む!!アンタだけが頼り……って何作ってんだァ!?
いらねぇ!!お祝いとかいらねえから!!


金宮・燦斗
【灰色】
いやぁ、海ですねえ。いいですねぇ。
え?耐水性装備? ありませんよそんなもの。
あったら既にあなたに装着してますもん。

あ、それ私にもくださいな、小さいサライ。
ちょっとひらめいたので。

ふむ、では私は……サライの作る足場をお借りして、UC【命削る影の槍】で攻撃しましょうか。
足場さえあれば影は作れますし、影がないならどうにかして作りましょう。

で、攻撃している間にサライのペンダントを噛みまして、と。

(噛む)私はですねぇ、特大の花火を打てる砲台を作りたいんです。
愛しの我が子が頑張って海上で戦ってる記念です(厭味ったらしく)
海上戦では砲弾を使うのも手段の一つですからねぇ(厭味ったらしく)




「いやぁ、海ですねぇ。いいですねぇ……」
 ざぁん、ざざぁんと寄せては返す、鉄甲船を揺らす波。香る潮風。金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)は、ほう、と感嘆のため息を吐いてみせた。
細められた目の奥、彼の言葉が真実かどうかを量る術はない。けれど、彼が純粋に大海原の風情を楽しんでいるのでないのは確か。――彼は、愉しんでいた。
「いーやーぁー……落ちたくないぃぃ……」
 燦斗の背後、その男――木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は涙目でマストに縋り付いていた。何しろ彼は泳げない。海なんぞ以ての外だ。その鋼鉄の四肢は、水に浮かぶようには設計されていないのである。
「なぁ親父、耐水性のある装備って無いの?」
「え? ありませんよそんなもの」
 あったら既にあなたに装着してますもん、と。サライの僅かな望みを粉砕する言葉を燦斗はにこにことした笑顔で言い放つ。間違いない。彼は息子と呼ぶ相手で愉しんでいる。
「……あ、ないの。……そう……」
 哀愁を背中に漂わせながら、けれど、サライは燦斗のその言葉に納得した。納得せざるを得ない。あったら使ってる。それって正しい。
サライは目尻に浮いた涙を拭い取り、腹に力を込める。
「しょうがねぇ……無いんだったら、作るっきゃねぇな!!――来い、俺の願いを叶えるチビども!!」
「「「さっらーい!!」」」
 途端に鉄甲船に溢れかえる、子供サイズのサライの複製義体。
彼らは【願い叶えるチビサライ軍団(ウィッシュ・カム・トゥルー・モノクローム)】によって呼び出された、サライの願いを叶える為の「道具」を作り出す機能を持った複製義体たち。最も、その「道具」はペンダントの形であり、願いはそれを「噛んでいる間」に限られてしまうのだが、今この場にあっては、サライが取れる最善の行動だった。
「俺の願いはたったひとつ!“海上戦が有利になる足場を創造すること”だ!足場さえ、足場さえありゃあなあ、俺だって!」
「そうですねえ、それってとってもとっても大事なことですよねえ……ふふふ」
「笑ってんじゃねぇよ親父ぃ!!」
「「「「らーい」」」」
「「「「らいらいっ!」」」」
 小さな複製義体達がとんてんかんてん、作り出したのは海か空か、蒼い宝石の嵌め込まれたペンダント。それをがりとサライが噛めば、薄いガラスのような透き通った階段が船の向こうへ、コンキスタドールのいる船へ向かって伸びていく。
「よっしゃ、行くぜ!……あ、親父も使う? 噛んでる間だけだけど」
 ぽい、とペンダントを燦斗に放り投げ、サライは刀を抜いて駆け出していく。足場さえあればと彼が言った通り、どこまでも伸びる透き通った板の上を走り抜け、コンキスタドールの乗る船へと辿り着くと、黒く闇の溢れ出す刃と白銀の光溢れる刃で持ってコンキスタドールを両断する。侵入者に気づいた船のコンキスタドール達がサライを囲む。手にした刃を投げつけて異形の屍を貫くと、空になったはずのその手には紅の刃が握られている。二刀どころか七刀の刃を操って、異形のコンキスタドールたちを次々と屠ってゆく――。
「ん、成程……と」
 いつの間にか鉄甲船とサライが乗り込んだ船とは大分距離が近づいていた。燦斗はサライが作り出した足場を観察する。一見ガラスのようではあるが脆くはなく、そして完全な透明ではなく、燦斗の姿だけでなく影もが薄っすらと映り込んでいる――それを確認した燦斗は唇を歪めて笑った。そう、影が映るというのなら。それは燦斗の舞台に十分であるからだ。
ひとりぶん、息子と呼ぶ男が走っていったその足場をゆったりと歩きながら、燦斗はそれを逆に伝ってやってきたコンキスタドールたちの群れに微笑みかける。異形の屍であるコンキスタドールにその笑みの意味は解せない。新たな獲物に飛びかかろうとしたコンキスタドールがその体を痙攣させた。その骨に深々と刺さるは、燦斗の投擲用短刀、リスティヒ・クリンゲ。次々とリスティヒ・クリンゲが異形の屍に突き刺さっていく。とは言え、刺し貫いた短刀はコンキスタドールの動きを一時止めたに過ぎないが――それでいい。これで、準備は成った。
「ああ全く。最初から死んでいる屍なんて、殺すにしてもつまらない。それとも再び生かされているというのなら、この刃でもう一度殺してみせましょうか」
 どすり、と――。コンキスタドールの体を貫いたのは、その足場に映った屍自身から伸びる影だ。リスティヒ・クリンゲによって燦斗の攻撃を「受けた」コンキスタドール達が、次々と燦斗の【命削る影の槍(ソンブラ・ランサ)】の餌食となって貫かれ、抉られ、千々に裂かれていく。そうして鉄甲船へと向かってくるコンキスタドールたちを一掃しながら、燦斗はゆっくりとサライが刃を振るう船へと辿り着いた。
「さて、私もサライのペンダントを失礼しまして……と」
 かり、と燦斗が蒼色のペンダントを齧る。果たして、彼の望みで作り出されるものとは――。

 サライは自分に向かって突き掛かってくるコンキスタドールの剥き出しの骨を掻い潜り、琥珀色の刃でその異形の屍を両断する。その背後で、どおんという大きな重く鈍い音が響いた。船の外を見れば、燦斗、そしてその傍らに組み上げられた砲台。その砲台は真っ直ぐ空を向いていた。
「ちょうどよかった親父、援護を頼む!アンタだけが頼り……」 
 サライの視線に気づいた燦斗が、真っ直ぐに指を天に指す――どおおおおん。
『がんばれ』
 そんな文字が、蒼い空に炎で描き出された。それは紛れもなく、花火だった。
「何やってんだアンタ―――!!」
 思わずサライは絶叫する。コンキスタドールを次々に断ち切りながら、燦斗のもとまで行ってその襟首を掴む。
「確かに使うかって言ったけど!何を!作ってんだ!!」
「えー? いやぁ、ねぇ。愛しの我が子が苦手な海の上で頑張って戦ってる記念ですよぉ?」
 ぶんぶんと揺すられながら、燦斗はその目をチェシャ猫のように細める。
「いらねぇ!お祝いとか!マジで要らねえから!!」
「ふふふ、海上戦では砲弾を使うのも手段の一つですからねぇ? いやいや、私一度やってみたくて」
「あれは砲弾じゃねぇだろ!花火だろ!もうバカー!!」
 そんなやり取りをしながらも、背後から迫りくるコンキスタドールへ向かってサライの刀が一閃し、燦斗のリスティヒ・クリンゲが飛び、そして影の槍がその異形の屍を穿いて。燦斗が砲台を蹴れば、ぐるんと砲台が傾き、セットされた砲弾(花火)はそのまま船の横腹を貫いていく。ぱぁん、遠い向こうで炎の華が爆ぜた。なんかおめでとうとか書いてある。サライは気づきたくなかった。ウッソだろこれこの海で戦ってるやつに見えてんのかよ。
 どうか気づかれませんようにと願いながら、にまにまと笑ってリスティヒ・クリンゲを投げる燦斗に背を預け。サライは翡翠色の刀を振るってコンキスタドールを斬り捨てるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

これはまた奇妙な怪物が。この世界、こういうのには事欠きませんね
それに、水上戦というのは慣れませんが……なんとか手をうってみるとしましょう

UCを発動し、魔獣にして蛇であるバジリスクの特性を得た上で『オーラ防御』で足元を覆い、『ダッシュ』で水面を走る

敵を視界に入れる事で、石化の魔眼によって動きを鈍らせる
思念を読み取れても視界に一切入らないなんて事は不可能でしょうし、少しでも石化が通れば動きが遅くなる。そうすれば、更に回避が難しくなるでしょう
動きが鈍くなった所で黒剣を大鎌に変化、『範囲攻撃』で纏めて薙ぎ払う

敵の攻撃を受けた場合は『激痛体勢』で耐えて『継戦能力』で戦闘続行




「これは、また……奇妙な怪物が」
 鉄甲船から敵船を眺め、船に乗る――積載されているようにも見える――異形の屍の形をしたコンキスタドールたちを見て、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は溜息を吐く。
(この世界、こういうのには事欠きませんね……)
 何せ他のあらゆる世界から島が落ちてきている。コンキスタドールの中にはその島にくっついて他所の世界から落ちてきてしまったようなものもいるだろう。尤も、クロスの目に見えるコンキスタドールは海に特化したような姿をしていて、このグリードオーシャンで生まれたのだろうと考えることが出来た。
「さて、と……」
 水上戦というものには、慣れていない。それでも、手の打ちようがないわけではない。
既に彼より以前に多くの猟兵が戦っている。やってやれない量ではないだろう。
「“此の身体に宿すは禍つ蛇”“総てを呪え”――!」
 クロスの半身が鱗に覆われていく。それは、雄鶏の卵を蛇が孵化させて生まれたと言われる魔獣にして蛇、見ただけで全ての死を齎す力を持つと言われる怪物――バジリスク。
両脚、特に足裏に防護の加護を纏い、クロスは鉄甲船から身を乗り出し、海面を「走って」いく。クロスの目の前で敵船からコンキスタドールが落下し、着水する。影のようなものを纏わりつかせた異形の屍がクロスを取り囲み、牙のあるものはその鋭利な牙で、あるいは露出したその骨で、一斉に襲いかかってくる。しかし――。
クロスの半顔、蛇と化したその眼光に睨まれた屍は、痙攣したようにびくびくと震えるとその動きを止めた。魔獣バジリスクの力を得たとは言え、流石に視線だけで相手を殺すことは出来ない。しかし、バジリスクの伝承に語られる通りに、石化の魔眼でもって見たものを「石のごとく固まらせる」ことは出来る。クロスは手にした黒剣「【葬装】黒羽」を大鎌へと変えて、動きを止めたコンキスタドールを砕いた。
クロスの力に気づいたコンキスタドール、屍に入り込んだ影がクロスの思念を読み取ろうとする。しかし、読み取られたとして。クロスの視界に一切入らないということは不可能だ。ほんの僅かでもその眼に捉えられればその部分から石化して動きが鈍くなる。そうすれば、さらに石化の魔眼から回避することは難しくなるのだ。
もともと骨と牙の屍だけで出来ていた、生身の部分の殆どない異形のコンキスタドールである。石になりようのない影だけがうねうねとうねりくねって逃れようとするが、その依代は石となって動けない、それをクロスは、大鎌の刃で纏めて薙ぎ払う。
「さぁ、あと少し」
 もう残ったコンキスタドールの数も残り少ない、クロスはそのまま船の一部を石化させる。バランスの崩れた船は横転し、残っていたコンキスタドールを全て吐き出した。
異形の屍が頭上から降り注ぎ、クロスはそれらを石化させて動きを止め、大鎌で打ち砕いていく。
ちゃぷり、その音に気づく暇があったかどうか。クロスの真後ろ、視界外から小柄なコンキスタドールが牙でもって食らいつく。コンキスタドールの一体が自らの身を犠牲にしてクロスの顔面に張りついた。それに対処せんとする一瞬の隙に、クロスを囲んでいたコンキスタドールが一斉に牙と骨がクロスの体を刺し貫いた。蒼い海に真っ赤な血が飛沫く。その全身を突き刺す激痛を、奥歯を軋るほどに噛み締めて耐え、クロスは無理矢理に体を動かす。顔に張り付いたコンキスタドールを引き剥がし、自身を襲ってきたコンキスタドールたちを次々と石化させ、大鎌で持って打ち砕き、貫き、薙ぎ払っていく――
ぼたり、ぼたりと蒼い海にクロスの紅い血が滴っては溶け合って見えなくなる。
――ああ、喉が渇いたな。
酷い渇きに気づいたときには、彼の周囲にいた――否、残っていたコンキスタドールたちは、全てクロスの手によって粉々に砕け散ったあとだった。
ざばり、水をその体で掻き分け、クロスは鉄甲船へ向かう。
 それは勝者の凱旋であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月06日


挿絵イラスト