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羅針盤戦争~過去より来たる波濤

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #グリードオーシャン大海戦

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●グリモアベース
 ぐるりと巻いた状態の『世界地図』を手に、コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)はさっそく話を切り出した。
「少し前の予兆の告げた通り、グリードオーシャンで、『七大海嘯』の大規模な動きが始まったわ」
 これまで、サムライエンパイアより渦潮を通り、鉄甲船でもって航路――すなわち、グリモア予知が可能な範囲を広げてきた。
 そして、版図の周辺に不思議な光が満ちると同時。これは不都合とでも言うように、『七大海嘯』の侵攻が始まったわけである。
「今まで探索されて来た範囲は、蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)と呼ばれてるわ。この前の予兆をヒントに、既に座標の割り出しも始まってる。――で、はっきりと何処で何が起きているのか、わかったところから対処していくのが今の段階」
 あらゆる島への襲撃や海域封鎖、コンキスタドールの大艦隊など、状況は既に動き出している。
 反面、この状況に対処し、蒼海羅針域より更に先へと進むことで、より『七大海嘯』の喉元へと迫る機会でもある。

「まずは、渦潮を狙う、コンキスタドールの大艦隊。そのうちの一部隊の撃破をお願いするわ」
 敵は海を突き進んできており、迎え撃つのも海の上ということになる。
 何よりもそれに注意して欲しい、とコルネリアは告げる。
「知っての通り、グリードオーシャンの海では、飛行や転移みたいな、船以外での移動が制限されてるの。今回の迎撃戦でも、同様の制限がかかっているわ」
 飛行を控えるのも良いが、何らかの手を講じてみるのも良いだろう。
 たとえば、海の上は制限が課されても、防衛の為の味方船や、相手の船の上ならば、あるいは……という可能性は高い。
「今回相手取って貰う敵は、水陸どちらでも戦えるようだけれど、陸ならではの戦法も使って来るのよね。今回の制限を利用すれば、その能力を封じることも出来るかも」
 そこまで述べたところで、コルネリアは改めて敵に冠する説明を始める。

 名はディープ・ライダー。海に飲み込まれ、溺れ死んだ者達から生まれた深海の怨霊騎士。
 命ある者すべてへの憎しみで動き、相手を殲滅するまで攻撃を止めない性質を持つ。
 ただし、あまり知能は高くない。今回は指揮官個体のような者も居ない為、統制された動きは出来ないと見て良いだろう。

 手に持つ巨大な三叉槍は、非常に破壊力が高い。特に、体勢を崩した状態の相手には、怨みの一念から、より致命的な箇所へと命中する。
 また、突如地中より溢れ出す黒く濁った海水と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に転移することが出来る。
 もし船上で戦っている場合、増援の可能性は意識した方が良いかもしれない。
 もうひとつ注意すべきは、一度に多数放たれる毒の針だ。
 毒ウニのような針は猛毒を備えており、また、針の数も注意が必要となる。他ふたつの能力との組み合わせによっては、危険なことになるだろう。

「数は多いけれど知能は低いし、さっき言ったような制限も考えて、気をつけて戦えば大丈夫だと思うわ」
 まずはひとつずつ。現在の状況に、対処してゆくこと。
「その奮闘は、必ず、状況を打破する力になるわ。――どうか気をつけて。武運を祈ります」


越行通
 こんにちは。越行通(えつぎょう・とおる)です。
 『羅針盤戦争』のシナリオをお送りします。

 今回は、オープニングにもあります通り、海上戦(船上戦)となります。
 それに伴い、以下のようなプレイングボーナスがあります。
『プレイングボーナス……海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。』
 一見足かせですが、ものは考えよう、ということで、『考えよう』に対して、ボーナスが入ります。
 海上で戦うか、船上で戦うかも含めて、色々方法はあると思います。
 どうか、自分らしい、自由なプレイングをかけてみて下さい。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ディープ・ライダー』

POW   :    怨みの一撃
【怨念を纏う巨大な三叉槍】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    海の底から来る者
【突如地中より溢れ出す黒く濁った海水】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ   :    猛毒の細針
レベル×5本の【猛毒】属性の【ウニの一種、ガンガゼのような細長い毒針】を放つ。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ディグ・ドリラー
ドリルの悪魔のこの俺が船の敵にやることは一つ!
とうっ!(海の中に飛び込んで敵の船に取り付く)

船の底に穴を開けまくって沈めてやるぜ!
こいつらの頭じゃ沈む船だって直せねえだろ、だって頭の中カラだもんな!
いくらテレポートするつっても行く場所が海の中ならしかたねえだろ。
もっとも不法投棄は…いいか。
まあでもこれだけだとつまらねえから俺も上に登って戦うぜ!

おうその恨みの籠もった槍はブッソウだな!
なんで破壊させてもらうぜ!
お前達みたいな陰気野郎共に俺のドリルは壊せねえ!
そのまま骨の体も砕かせてもらうぜ!

おっし大体片付いたな!
また今度やりあおうぜ!


ビードット・ワイワイ
メカモササウルスになれば全て解決するのでは?
というわけでメカモササウルスに変形

我が電脳、我が魂、我がメカモササウルス
それら全てが言っている
サクサクしそうだが味が無さそう。食いでが無さそうな見た目だと

味方猟兵の邪魔にならるよう逃げようとする船や離れた船と戦おう
こ奴らは海中に適応できそうゆえ船を丸呑みし食残しを雷撃にて屠る

ある程度減れば海に潜りて勢いよく飛び出し海面に落ちることで大波起こし船を沈めて雷撃にて殲滅

近づこうものなら体を勢いよく回転しながら雷撃を全方位へと射出し牽制する


鈴木・志乃
アド連歓迎

水陸両用のヒーローカー持ってきました。
爆走運転します。逃げます。
一応車にガンガゼのような棘が飛ばされても大丈夫かなーと思いたいけど、不安なので高速(多重)詠唱でオーラ防御展開しておきます。
基本的には距離を取って立ち回るかな。止むを得ず近くを走る時は第六感で攻撃を見切り回避するよ。

UC発動っ!
UCと念動力でがっつり体を縛り上げます。あの形なら縛るとこいっぱいあるし良かった。浄化と破魔の力も彼らには合ってるね。
そのまま縛り上げて倒すかな。君たちの居場所はここじゃないよ。今度こそ、ゆっくりお休み。何にも妨げられることなくね。


ライカ・ネーベルラーベ
ふぅん、飛んじゃだめなんだ
つまんないの

「その程度でわたしが手も足も出なくなると思ったら大間違いだけどさァァああハハハははハはっ!」

【マクスウェルの方程式】を起動して、海に飛び込むことができた時点でこっちの勝ちは確定
そっちが海中での奇襲に慣れてようが……
「雷より早く動ける訳無いじゃんさあはははははははぁっー!」

海水は純水じゃないから電気通し放題
普通の雷じゃ拡散してすぐ消えるかもしれないけど……
わたしと言う生きた雷は!殺意ある限り決して消えない!
「どれだけ湧いて出ようとも、全部一撃で始末してあげるよぉおおおおお!」


ナイ・デス
船の上での、戦い。自分は無事でも、船が沈められたら負け
船を守りながらは、大変ですね
だから……乗り込んで、大暴れが一番、ですね!

『猟兵』ナイ・デス……オブリビオンを、撃破します!

「ダイウルゴス」を小型船のように、その背に乗って
【念動力】で操って、帆のかわりに私が光を放っての【推力移動ダッシュ】で海上を進み
敵部隊の船へ【重量攻撃】突撃!
私は【ジャンプ】!地縛鎖を放って【ロープワーク】乗り込んで

【第六感で見切り】避け
もし受けても【覚悟激痛耐性継戦能力】体内の聖なる光が再生するし解毒もする
本体が壊れない限り、私は死なない、ので
止まらない
両手から【レーザー射撃】聖なる光を放って【なぎ払い】
【浄化】します


アルフレッド・モトロ
連携アドリブ歓迎

「俺の故郷で暴れてんじゃねー亡者共!骸の海に還れ!!」

海戦は俺の得意分野だ!
この俺に喧嘩売ったこと、後悔させてやるぜ!

UCで渦を起こし、船の周りだけでも猟兵側に有利な戦場を作るぜ!もし増援が来るようなら、黒く濁った海水とやら、渦潮ぶっかけて希釈して流しちまおう!

俺はUCで作った渦から波を作ってそれに乗る!
ヘルカイトにサーフして敵を攪乱するぞ!
力を溜めつつ時に渦に潜り、水中機動と水中戦技能を駆使して、敵の攻撃を避けようと思う。

隙を見て怪力でワンダレイチェインをつけたワンダレイアンカーを繰り返し投擲して攻撃だ!


ビスマス・テルマール
海の亡霊の集団が相手ですか
哀れではありますけど

頬っては置けないですし
ここはオーマグロの性能を駆使して

●POW(プレボ込み)
敵船が出現したら『早業』で
攻撃力重視でUC発動

クロマグロ型水陸両用鎧装オーマグロ
装着し味方の船から海上へ

『オーラ防御&激痛耐性』で備え

『水中戦&水上移動&水中機動&推力移動』で潜水したり水上『ダッシュ&残像』したりで敵を撹乱しつつ

『第六感』で『見切り』
攻撃を回避

【ディメンション・なめろうブレイカー&ジュリンプル・グレネドフォート】と【蒼鉛式ご当地ビーム(ミンククジラ)砲】を『誘導弾&属性攻撃(魚雷)』を込め『範囲攻撃』で『一斉発射』ですっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




 海の世界の中心、渦潮めがけて侵攻を開始するコンキスタドール大艦隊。
 無数の艦隊、無数の戦いのうちのひとつ。怨みの騎士団を載せた船が、渦潮めがけて突き進んで来る。
 船上に集う個体もいれば、周囲の海中に潜み、船を護らんとする個体も在った。
 司令官は居ない。ただ、願いはひとつ。
 ――世界中の、命ある者すべてを、我らが海へと突き落とせ。

 一方、迎え撃つ猟兵の側も、既に各々が対処の準備を整えていた。

「――海と沖膾の鮪の覇者は今此処に、オーマグロ転送!」
 そのひとり、敵船の接近にいちはやく反応したビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、味方側の船上で高らかに鎧装の起動音を響かせる。
 呼び起こされた鎧装はビスマスの意思に従い、より攻撃を重視したかたちを取る。
 鎧装の砲台にはマイクロプラズマグレネードを射出する機構を備え、更にそれらの武装に殲滅のためのあらゆる機能を付与する。
 海と沖膾の鮪の覇者という謳い文句は、決して驕りではない。
「なめろう猟兵、武装準備万端です! これより、哀れな海の亡霊たちを屠ります!」
 気迫を込めた叫びと共にオーラを纏い、一切の迷いなくビスマスは船を蹴り、海上を目指して飛び降りた。
 着水の衝撃は最小限に。敵ひしめく海上目指して、迷うことなく疾走してゆく。
 想定よりも安定して走行、潜水を繰り返し、海を潜行してきていた群れの元へ辿り着く。襲い来る攻撃に怯むことなく、鎧装の砲台と蒼鉛式ご当地ビーム(ミンククジラ)砲とを構え、広範囲へと一斉に射出。
 海面を奔る、ミンククジラ型の砲台から放たれる魚雷と、なめろうの力を秘めた砲撃、海老の大地の力を含んだマイクロプラズマグレネード。
 正確無比な魚雷。なめろうを形成する辛抱強い繰り返しの殴打。海老の大地に秘められた強烈な力。
「あなたたちもなめろうにしてさしあげたかった!」
 裂帛の叫びと共に放たれたビスマスの砲撃の瞬間的な威力、範囲は凄まじく。彼女が辿り着いた付近一帯の海上の亡者をことごとく吹き飛ばした。

 味方側の船の周囲には複数の渦潮が発生していた。
 渦潮は複雑な流れを作り、敵の接近を許さず、ビスマスのように海上に降り立つ者には安定した接近路を与え、水上である不安定さを打ち消している。
 それをもたらしたアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)は、蒼炎を纏う尾を鋭く振り、敵船を睥睨して力強く宣言した。
「海戦は俺の得意分野だ! この俺に喧嘩売ったこと、後悔させてやるぜ!」
 だん、と強く反重力サーファー『ヘルカイト』に脚を乗せ、彼もまた勢い良く海上へと降り立つ。
 海に最適な形状である、トビエイ型のヘルカイト。そして、アルフレッド本人の経験と技術。
 それらにより渦潮により生まれた波を見事乗りこなし、恐ろしいほどの速度で海中のディープ・ライダーへと接近してゆく。
 無論、亡者達はその生命力へと一斉に憎悪を向ける。
 突き出された槍を海に潜ってかわし、彼を護る渦の流れは槍をむしろ足枷とし、無数の針も海流に取り込んで、敵の群れを撹乱する。
 闇雲に暴れ、海の上に下にと移動を繰り返した頃、一際苛烈な声と共に、巨大な錨が空を舞った。
「俺の故郷で暴れてんじゃねー亡者共!骸の海に還れ!!」
 鉄の塊が、無慈悲に降る。沈むより先に引き上げられ、その巻き添えとなった亡者が跳ね飛ばされる。
 ヘルカイトが再び潜り、滑り、アルフレッドの手は軽々と鎖を振るう。
 巻き上げと放出を繰り返す鎖は、渦潮と共鳴するように的確に錨を導き、最大の効果を挙げて亡者を滅してゆく。

 アルフレッドの生み出した渦潮は、彼の予想を超えて大きな効果を戦場にもたらしていた。
 ひとつは、敵方に指令を出せる者がおらず、一体一体もまた単純な知能しか持たない為、戦場の変化に完全に対応しきれなかったこと。
 そしてもうひとつは、船に留まるより、海の上へと打って出る猟兵の方が多かったことであった。

「船の上での、戦い。自分は無事でも、船が沈められたら負け。船を守りながらは、大変ですね。だから……乗り込んで、大暴れが一番、ですね!」
 状況を分析し、そう結論づけたのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)だった。
 彼は即座にサイキックキャバリア――SOD-71D「ダイウルゴス」を召喚し、変形合体と念動力によって小型船と同様に仕立てあげた。
「渦潮が、私たちを迎えてくれます。このまま、真っ直ぐ――捉えます」
 帆のかわりに放った光で推力を得、その軌跡も消えきらぬ速度で敵部隊の船目指して吶喊してゆく。
 速度と重さを乗せたその突撃(ラムアタック)に敵船が大きく揺らいだその時、ナイは既に跳躍と共に鎖を放ち、敵船へ飛び移っていた。
「他者(世界)からの命令……選ばれしものは、世界の敵、オブリビオンと戦う……承諾。私は、猟兵(イェーガー)です!」
 亡者の只中に飛び降りる直前、彼が二重にぶれたように――あるいは、新たに何かを纏ったように、輪郭が揺れる。
 甲板を、走り出す。先ほどまでとは、根本的な何かを違えたような、凄まじい速さで。
「『猟兵』ナイ・デス……オブリビオンを、撃破します!」
 四方八方から突き出される三叉槍、間を縫うような細長い毒針の群れ。その9割までもを回避するのは、ただただ閃きと直感。
 残る一割を気にした素振りもなく、彼の傷口から光が溢れ、その光は全身を巡り、やがては両の手に集束する。
 痛みがないわけではない。毒も、光が無理やり押しつぶしたに過ぎない。ナイは、怪我をしないわけでも、毒に罹らないわけでも、ない。
 死ぬことだけがない。
「本体が壊れない限り、私は死なない、ので」
 両手の光を長く、長く伸ばし、大きく腕を振りぬく。
 甲板に群れていたディープライダーたちに叩きつけられた聖なる光は、振りぬかれるままに薙ぎ払い、彼らの怨みを浄化してゆく。
「止まらない」
 宣言通りの大暴れの、始まりだった。

 味方船の周囲の渦潮は巧みに力の流れを作り、安定して敵船から一定の距離感を保っている。
 それにより目指す行動を確実としたもののひとり、ディグ・ドリラー(ドリル仁義・f31701)は、海中を潜っていよいよ敵の船の底部に辿り着いた所だった。
 実は彼も敵船が見えて早々に「ドリルの悪魔のこの俺が船の敵にやることは一つ!」と言い放って海底へ即刻潜った猛者であった。
 目標地点へ向かう彼に気づいた敵もごく僅かながら居たのだが、彼に気を取られた間に味方の猟兵の雷攻撃を食らったり、頑張って針を飛ばしても何やらすごいドリルを手に深部へ潜る彼への到達前に何故か失速したりで、彼を阻むことが出来た者は居なかった。
 さて、そうして目標地点へ辿り着いた彼が取り出だしたるは、当然の如く、ドリルである。
 船底。ドリル。大海戦の真っ最中。
 ――そうして、ドリルの悪魔たる彼は、実に悪魔的な所業を開始した。
『ドリリルドリリルドリドリドリリルドリ!!!!!』
 両手にドリルを構え、穴あけパンチのように秒で船底に穴を開けていく。大海戦中にだ。繰り返すが実に悪魔的な所業だ。
 しかも、単純な頭の乗組員しかいないこの船では、浸水に対処出来ないことまで計算づくである。だって頭の中カラだもんな!
 深海ゆえ直接は聞こえては来ないが、彼が穴を開けた船の上では最早パニックにも似た有様になっており、安全な場所を求めて転移した結果海の中、となった個体で溢れつつある。
 ――いくらテレポートするつっても行く場所が海の中ならしかたねえだろ。
 首尾よく転移して取り囲む戦法を封じ、一瞬だけ亡霊の不法投棄に関して思いを馳せたところで、ディグは頭上を見上げ、にぃ、と笑った。
 ――まあでも、これだけだとつまらねえ。
 心を決めると共に取り付いていた箇所に更に脚をかけ、泳ぐように滑らかに攀じ登りはじめた。

「ふぅん、飛んじゃだめなんだ。つまんないの」
 味方の船上、物憂げに佇み、柔らかな金髪を潮風に揺らす女性が呟いた。
 色違いの瞳が海上の渦潮を目で追い、『道』を作る様子を眺めて。
 剣呑さと笑みを含んでたわめられた。
 渦潮の向こう側、近寄れないかと試行錯誤するディープ・ライダーへ向けられた目が剣呑に、嗤う。
「その程度でわたしが手も足も出なくなると思ったら大間違いだけどさァァああハハハははハはっ!」
 波が引っくり返ったような勢いで豹変したライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)は、笑いと共に甲板を駆け、海上へと至りながら、彼女が備える機能のひとつを起動する。
「わたしの逝く道を照らせ雷光――不明の闇を照らして砕く!」
 彼女の『心臓』を中心に、彼女は変異する。
 雷、そのものへと。
 自然に発生するそれと違い、変異によって成った『彼女』は、拡散することなく海中を駆け抜け、手当たり次第に亡者達を穿つ。
 その中には、ディグを阻止しようとした個体や、海上のビスマスを狙った個体も混ざっていたが、彼女がそれを自覚していたかは疑わしい。
 ――わたしと言う生きた雷は!殺意ある限り決して消えない!
 海中で動く亡者はすべて焼き尽くす。
 命あるものすべてを憎む亡者への、等価のような純粋な殺意。
 ビスマスの砲撃を辛うじて逃れた者も居た。アルフレッドへ三叉槍を伸ばそうと近づいていた個体も居た。ナイによって船から落とされ、這い上がろうとしていた個体も居た。ディグを発見し、追いかけようとしていた個体も居た。
 それらもすべて等しく。
 海中を縦横無尽に駆け巡る雷となったライカに葬られる。
「どれだけ湧いて出ようとも、全部一撃で始末してあげるよぉおおおおお!」

 時間は少し遡る。
 海中と敵船、それぞれに対処する猟兵たちと、初期位置から若干距離を取っていたビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は、予測した。
 ――メカモササウルスになれば全て解決するのでは?
 彼がなぜそのような結論に至ったのかはわからない。
 ただ、その後の変化は、それが最適解なのだと証明するようであった。
『古代に滅びし海龍よ。海は其方を忘れたぞ』
 全長300mの威容。巨大なはがねの身に宿された機構が変形をはじめる。
『絶対なりし海の王。機械の体に魂宿せ』
 陸での活動リソースと機能を全て捨てる。組みあがる姿は、海に生まれ海を制した存在を模す。
『古代と最新今こそ合わされ。我らこそがモササウルスだ』
 鋭き角持つ龍に、限りなく近い機械が、名乗りを挙げる。海の王。制するもの。睥睨する巨体。
 完全なる変容を果たしたビードットは、一秒ごとに失せる理性を演算しながら、告げた。
「我が電脳、我が魂、我がメカモササウルス。それら全てが言っている」
 あまりにも強く、死と無縁に見える巨体を目指し押し寄せるディープ・ライダーひしめく船。骸骨と甲殻を併せ持つその姿を、はっきりと見据えて。
「サクサクしそうだが味が無さそう。食いでが無さそうな見た目だと!」
 巨体より放たれた感想は海を震わせ、波立たせた。
 『お前らは味のないかりんとう同然だ』という感想ひとつで動きに支障をきたすディープ・ライダー。
 余談だが、荒唐無稽な悪口よりも単なる事実の方が人は傷つくという。ビードットは多分そこまで考えていないのが一層むごい話である。
 そして、この変形と波すらも、ビードットにとっては前座であった。
 敵と味方の進行方向を視認・演算し、味方の猟兵たちの邪魔にならない位置取りであることを再度確認。
 巨体を目印に近づいてきた、遊撃と思しきポジションにあった船の群れ。
 海中に適応出来そうだという判断の下、ビードットは身をくねらせ口を開いた。
「逃がさぬ」
 機械の龍が、船をひとつ、丸呑みにした。
 あまりのことに、ディープ・ライダー側の反応は完全に遅れた。
 隙間から零れ落ち、海に漂っていたディープ・ライダーに、狙いも威力を誤ることなく雷撃が降り注ぐ。
 ――ここに、逃げ道は完全に塞がれた。

「私、敵から逃げてるんだよね? 味方から逃げてるんじゃないよね??」
 水陸両用のヒーローカーで海上を走りながら、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は疑念と共にハンドルを捌く。
 深夜の高速道路を全力でかっ飛ばすような爆走運転は、あくまで敵から距離を取る為である。ここまでに誤射だって一度もない、きっと大丈夫。ちょっとみんな活きが良いだけ。
 それに、こうもうじゃうじゃと亡者の居る状況下においては、味方の活きの良さは頼もしい限りである。
 オーラによる防御で車全体を覆い、たまに飛んでくる毒針の群れを弾き飛ばす度に念の為防御を張り直す。
「車だから、ガンガゼのような棘ってのは、大丈夫だと思うけど」
 ちらりと前方を見やり、再びハンドルを切る。海中に潜んでいた亡者が槍を手に飛び出したのを遥か後方に引き離し、引きずり回すように車体を見せ付ける。
 再び海中へ潜ろうとするその瞬間、志乃は真っ直ぐに視線を向ける。
 捉われたように動きを止めた亡者の身体に、無数の光の鎖が巻きついて、見えぬ手と共に空中へと吊り上げる。
「あの形なら縛るとこいっぱいあるし良かった。すり抜けられず、確実に浄化出来る」
 鎖を伝う光は、破魔と浄化を帯びて、亡者を心身共に縛り上げる。
 ――もう、いいでしょう、と。
 その意思に抵抗するように、骨を歪め、甲殻部がぎちぎちと鳴る。
「君たちの居場所はここじゃないよ」
 生きる為ではなく、殺す為に海を昇ってきたというのなら。
 その時点で、居場所はないのだ。
 彼ら自身が、必要としないのだ。
 鎖が締め上げるほどに、思い知らせてゆく。

 ――やがて響いたのは、見た目にそぐわぬはかない音。
 浄化によって怨みを晴らされた、抜け殻が砕ける音だった。


「おうその恨みの籠もった槍はブッソウだな! なんで破壊させてもらうぜ!」
 悪魔特有のシンプルな理屈と共に、ディグがドリルを振るい、目標とした槍ごと、骨をも砕く。
 気合ひとつ込めた一振りと、凶悪無比なドリルのあわせ技は、浸水でパニックになっていた亡者達を軽々捉えてゆく。
 たまに現れる黒く濁った海水は、近くを通りがかったアルフレッドの渦潮によって流され、その度にぼちゃんと無残な音が響いた。
「お前達みたいな陰気野郎共に俺のドリルは壊せねえ!」
 最後の一体と思しき亡者へドリルを叩きつけ、怨みも骨も、すべてを砕いた。

 遠くでは、ビードットが飛び込みと上昇を繰り返し、大波で残存の船を沈め、雷撃による殲滅を行っている。
 決着までは時間の問題だと感じたディグは、実に爽やかに言った。
「おっし大体片付いたな! また今度やりあおうぜ!」
 彼と亡者たちに、今度があるかはわからない。
 だがとりあえずお返事は(出来る状態では)ない。

 機動力を活かし、阻害に動いていた志乃が、苦笑ぎみに――苦味だけでない感情を乗せて、海へと呟いた。
「今度こそ、ゆっくりお休み。何にも妨げられることなくね」

 同じく阻害と、仲間の連携に動いていたアルフレッドが、力強く最後の錨を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月05日


挿絵イラスト