羅針盤戦争〜嵐の中で輝くすきゅりんとサメ
●とある海域にて
青い空、どこまでも続く紺碧の海。
波穏やかな海面には海鳥の群れが浮かんでおり、波のゆりかごに揺られながら羽を休めていた。そんな中、群れの中の一羽が何かを察知して突如飛び立った。それにつられるかのように一羽、また一羽と飛び立つ中、不幸にも遅れた海鳥が波しぶきと共に海中へと消えた。
水底から海面へと潮と混ざりあった血が浮かび上がる様子から、腹をすかせた鋼鉄人喰いザメが海鳥を狙って襲ったのだろう。しかし、普段ならそれで済むものだが、今回は少しばかし違う。快晴だったはずの空が突如現れた黒い雲に覆われ、急激に発達した積乱雲へ吸い込まれるかのように横殴りの風が吹き上がって波が大きくうねった。穏やかだった海は一転して嵐となり、大きな白波が竜巻で舞い上げられる海面を稲光が激しい音とともに照らすと、その上空には何かがくるくると浮かんでいた。
「あははは♪ もっと、もっとだ! もっと荒れろ、荒れろ!!」
その正体は、メガリス『電光の羽衣』を身に纏ったコンキスタドール『すきゅりん』。
この嵐を作り出した張本人であり、この場を通過する猟兵達の障害としてUCにより穏やかだった海は大時化の海と変貌したのだった。
●グリモアベースにて
「羅針盤戦争……グリードオーシャンを支配する『七大海嘯』が遂に本格的な大攻勢を開始しました。我々も鉄甲船にて、彼らを迎撃する船出をしなければならいのですが、少々困る事態が生じました」
予兆の報せを受け集まった猟兵達を前に、シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は苦い顔をした。これまで猟兵達が探索した海域である『蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)』に七大海嘯の居場所を示す手がかりがあるのだが、鉄甲船『アルゴノート』が停泊中の海域に突如いくつもの竜巻が生じて嵐となったのだ。
「これはオブリビオン、コンキスタドールの仕業と判明しています。恐らくは、鉄甲船を介して動けない我々の初動を遅らせる為の策と見ていいでしょう。この嵐を避けても、その先にも同じ様に嵐を作られては同じ結果です。今回は嵐の中に潜むコンキスタドール『すきゅりん』を討伐して欲しいのです」
すきゅりん。
猟兵達はその気が抜けるような名前に脱力してしまいそうになるが、シグルドは「こういう名称のようですので」と申し訳無さそうに説明し、言葉を続けた。
「この…すきゅりんですが、嵐を作るUCのみに特化したコンキスタドールのようで、単純明確に言えば簡単に倒せれます。ですが、近づくと鉄甲船でも飛ばされ転覆してしまう程の竜巻を作り出す者です。海は荒れ、暗雲からは稲妻が落ち、竜巻から舞い上げられた獰猛な鋼鉄人喰いザメが宙を舞っています。それらの障害をくぐり抜け、嵐の中心に居るはずであろうすきゅりんを討って下さい。討てば元の波穏やかな海に戻ることでしょう」
最後の空を舞う鋼鉄人喰いザメはにわかに信じがたい話だが、シグルドの顔は至って真剣そのものだ。場を和ませる冗談ではなく本当のことなのだろう。
「では、現在停泊中のアルゴノートの甲板へ皆様を転送致します。ご武運を祈ります」
そうして猟兵達は鉄甲船『アルゴノート』へと転送され、錨を抜錨して嵐の海へ身を投じるのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
ようやく6ヶ月ぶりの戦争となりました。今回も勝利を目指して頑張っていきましょう。
●戦場情報
メガリス「電光の羽衣」を纏ったコンキスタドール「すきゅりん」が、羽衣から凄まじい「電撃の竜巻」を放ちながら海域を封鎖しています。
中心にいるすきゅりんを倒せば竜巻は消えますが、近づくと鉄甲船でも飛ばされる程の竜巻が海域内でいくつも発生しています。また、そのあおりを受けて鋼鉄人食いザメが海中から舞い上げられ、暴風と共に猟兵達に牙を剥いてきます。
それらの障害をかい潜りながら、すきゅりんの元へ鉄甲船を向かわせて下さい。
●プレイングボーナス
このシナリオにおいて、以下のプレイングボーナスが存在します。
これに基づく行動をして貰えれば、判定が有利となります。
『プレイングボーナス:竜巻と電撃に対抗する。』
それでは、皆様の嵐に負けない熱いプレイングをお待ちします。
第1章 冒険
『電撃の竜巻で封鎖された海域を突破する』
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POW : 竜巻に巻き込まれた凶暴な「鋼鉄人食い鮫」の襲撃から身を守りつつ、すきゅりんのいる中心に向かいます
SPD : 絶え間なく発生する稲光をかわして、すきゅりんのいる中心に向かいます
WIZ : 竜巻の風に逆らわず、強風の流れを見切って、すきゅりんのいる中心に向かいます
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーゼロッテ・エアクラフト
凄まじくやる気が出ないがまぁ猟兵の責務は果たす
というわけで…目の前の問題に対しての対抗策は
『キャバリア引っ張り出してきて防具として使いつつ更にUCで無敵の防護服を上乗せして守りを固めたうえで強引に突破する』
キャバリアはいらんと思ったものの竜巻対策で重量がありなおかつ自力である程度は飛べる方がいいだろうという判断。
後鮫への火力も兼ねる
ぶっちゃけた話普通に海に行かずに海中に潜ってけば竜巻と雷光は行けそうな気はしたが…まぁ水中用装備ないからね
ナイ・デス
鉄甲船でも、吹き飛ばされる
それなら……吹き飛ばされないぐらい、大きくなれば、解決、ですね!
世界に、お願いします
一緒に、守りましょう!
今ここは、過去と戦う『フロンティア・ライン』です!
海水をダイウルゴス化させて、合体させて
体高5mの「ダイウルゴス」倍の大きさに
10回ぐらいなら、大変だけど【覚悟激痛耐性継戦能力】繰り返しても、平気
15回繰り返した時は頭爆散しそうでしたが
嵐の中を進むのに必要な大きさ……体高約5kmまでは平気で大きくなって
嵐も、雷も、鋼鉄人食いザメもその圧倒的巨体で意に介さずに顔をだし
全身の隙間から光が溢れ
口に【エネルギー充填】
【範囲攻撃】とても太い【レーザー射撃】で、飲み込みます
猟兵達を乗せた鉄甲船『アルゴノート』が抜錨し、羅針盤戦争という新たな船出を始める。奇しくもサムライエンパイアよりこの世界グリードオーシャンに訪れたのと一緒で、嵐の海を突破する事が始まりであった。徐々にうねる波に貝蛸の名を冠した鉄甲船が揺られ、強く吹き付ける横殴りの風が鉄張りの船を転覆させようと絶えず吹きすさぶ。何時しか鉄甲船の上空は暗雲に包まれ、雷槌と竜巻、巻き上げられた海水混ざりの叩きつけるような大粒の雨と舞い上げられ宙を泳ぐように飛び交う鉄鋼人喰いザメの群れ。そして、コンキスタドールのすきゅりん。それらが猟兵達の新たな航海に立ちはだかる。
「その『すきゅりん』という名前で凄まじくやる気が出ないが、まぁ猟兵の責務は果たすのみだ」
一体誰が呼んだか名付けたのか。すきゅりんという言っても聞いても脱力してしまう響きに、リーゼロッテ・エアクラフト(混ざりものの『アリス』・f30314)が仕立ての良い洋装を嵐で蒸らしながら深く溜息をつかせる。それと、にわかに信じがたかった『そらとぶサメの群れ』という眉唾な話も、現実として今現在目の前で繰り広げられている。鉄甲船とぶつかる度に起きる衝撃が、それが幻ではなく現実だと余計に思いやられてしまう
「鉄甲船でも、吹き飛ばされる。それなら……吹き飛ばされないぐらい、大きくなれば、解決、ですね!」
一方ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)とは言うと、リーゼロッテとは対象的に理解し難いこの事態へ対応していた。彼はこの大時化の大波と竜巻による風をどう攻略すれば良いかという答えを導き出した。それは、船でこの嵐を作り出している大元のすきゅりんに向かうのではなく、彼自身がこの嵐を進んで捜索するという策だ。些か無謀とも言えるが、昼時であるのに暗雲のお陰で地平線の彼方まで雲の切れ目もない夕闇のように暗くなった海だ。この広大な海域の何処かに居る者を一隻の船で捜索する事態が無謀やもしれない。
「世界に、お願いします。一緒に、守りましょう! 今ここは、過去と戦う『フロンティア・ライン』です!」
ナイ・デスが船べりにしがみつきながら掌を高らかに掲げると、それに呼ばれたかのように波とは別のうねりが生じ、それは鉄甲船を大きく揺らした。海面を大きく隆起させて姿を現したその正体は、黒き鱗の竜『ダイウルゴス』。彼が所有する彫像を模した竜が、UCによって海水を触媒にして顕現させたのだ。
「…ふむ。なるほどな。その手があったか」
ナイ・デスが取った行動にリーゼロッテが感心を示す中、彼は船の傾きを利用してダイウルゴスの胸で紫に輝く水晶に向かって飛び降りた。ぶつかると思いきや、ナイ・デスの身体は吸い込まれるようにダイウルゴスと一体化を果たした。彼は鉄甲船より離れると荒れ狂う海に埋没する。息継ぎをするかのように再び浮上すると、潜る前よりも若干大きくなっていた。それもその筈。海水を触媒として作られたダイウルゴスであれば、海水を更に取り込むことで体高5m程あった体高が、倍の10メートルにまで増えたのだ。
ダイウルゴスと一体化したナイ・デスが大きく呼吸をして、もう一度潜航した。再び姿を現せば更に倍の20メートル。この調子で巨大化すれば、今は身体がバラバラにされるかのようなこの大波にも、油断すれば嵐の外まで飛ばそうな竜巻にも負けない巨体へと成長する。そう思えた矢先、目の前に雷が落ちてその眩さに目が眩んでしまう。ほんの一瞬の怯みだったが、視界が復活した時、それは目の前を向かっていた。巨大な鋼鉄人食いザメが大口を開きながら、今や獲物に食らいつこうとしていた。
鋼鉄という名は硬さもだが、強固な鱗で身を固めた大魚でさえその鋼鉄のような牙の前ではいとも容易く貫かれてしまうのが由来で、それは竜のダイウルゴスとて例外ではない。腹をすかせた獰猛な鋼鉄人食いザメが翼に食らいつく。その痛みにナイ・デスが歯を食いしばり耐えようとするが、サメ達は群れとなって次々にダイウルゴスに食らいついてくる。流れた血が荒れ狂う海をほのかに赤く染める。このままでは海の中に居る鋼鉄人食いザメが血の匂いを嗅ぎつけて寄ってくるのも時間の問題だ。早く潜って、海水を取り込んで巨大化しなければ…。焦る気持ちが募る中、次々と激痛は各所で生じてくる。このまま彼は鋼鉄人食いザメの餌食となってしまうのか?
「この物語の結末そうではない。お前はそこで朽ち果てる運命じゃないぜ?」
突如聞こえた声と共に、雷の光とは別の閃光が暗い海を照らした。
「キャバリア引っ張り出してきて防具として使いつつ、更にUCで無敵の防護服を上乗せして守りを固めたうえで強引に突破する。この出鱈目な状況を打破するにはこちらも出鱈目を打つのが最善、か。集るサメどもの駆除は任せな。お前は巨大化に専念しろ」
創造したキャバリアに登場したリーゼロッテが、ダイウルゴスに喰らいついている鋼鉄人喰いザメを次々とロックオンした。その指示を受け、機体から分離していたRS-Fフローティングポッドらがサメのみに狙いを絞り、ビームの閃光が鋼鉄のような鮫肌共々に焼き払う。
「これで大まかに駆除完了だ。思う存分に泳いでデカくなりな」
「ありがとう、ございます。もっと、もっと、大きくなって、サメにも、負けません」
ナイ・デスがリーゼロッテにお礼を述べると、再びダイウルゴスを大海に沈める。その間、リーゼロッテが護衛を務めて罪はないが、降りかかる火の粉のように何処からともなく飛来してくる鋼鉄人食いザメを迎撃にあたる。そうして幾ばくか繰り返す中、頭と身体がぐちゃぐちゃになる錯覚を覚えつつも、ダイウルゴスは巨大化した。
その大きさは、ゆうに5キロメートル程にまでとなり、何も事情を知らないものが見れば小島と勘違いするまでの巨大さだ。
「ここまで、大きく、なれば……!」
ダイウルゴスの鱗の隙間から光が溢れ出し、リーゼロッテのキャバリアや海を照らし出す。開かれた巨顎に光が収束され、徐々に輝きが増していく。それが極限にまで達したその時、それは放たれた。嵐すらも吹き飛ばす程の光の奔流が竜巻をも切り裂きながら、横薙ぎに走った。上空を舞う鋼鉄人食いザメも例外ではなく、暴風に身を任せて風に乗った彼らはには避ける術などない。全てが終わった時、海は再び闇に覆われる。雨も風も再び強まる中、ナイ・デスは呟いた。
「この方角に、すきゅりん、居なかった、です。また撃つ、には、少し休まなければ、ならないです」」
ダイウルゴスは大きく反転し、別の方角に首を向ける。
「やれやれだ。ま、相手はコンキスタドールだが同時に自然もだ。気長に探すしか無いか」
ダイウルゴスの頭の上に着陸しているリーゼロッテは、こうも広い海ではと溜息を履きながらコンソールに指を走らせる。こうしてキャバリアが得た情報を元にナイ・デスへ方角や向かう進路を指示しながら、すきゅりん捜索を再開させるのであった。
成功
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鈴木・志乃
……正直私、自分のやれること
これぐらいしか思いつかないけど大丈夫かな。
アド連歓迎
水陸空兼用のヒーローカーに乗った状態でUC発動。光球に変化。
念動力で車を操作して無理矢理突っ切ります。
UCの攻撃遮断効果だけで乗り切れるかなぁ。一応高速の多重詠唱でオーラ防御を展開しておくね。車も加速する!
……我ながらめっちゃ脳筋。脳筋過ぎるわぁ。
私はただ『すきゅりんに辿り着く』ことだけに集中します。
ターゲットには全力接近。UC解除したら轢き殺すか全力魔法で吹っ飛ばすかどっちかかな……。
……いやあ、風も水も電撃も苦手なのよな、実は。
ついでに言うと海上戦闘も苦手。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
へっ、竜巻に……雷だぁ?
舐めんなよ、アタシだって電撃に関しちゃ負ける気はねぇんだよ!
カブを水上バイクモードに変形させて『騎乗』し、
一気に海原へ駆け出すよ!
風の流れを読み、なるべく竜巻の強い場所を避けながら『ダッシュ』して。
周囲に降り注ぐ稲光を、逆にアタシの力とするよう『おびき寄せ』る。
そうして落雷をアタシ自身の『属性攻撃』と混ぜ合わせるように転化させ、
さらにサイキックエナジーを練り上げていくよ!
そうしてすきゅりんの近くまで行けたなら、挨拶代わりに聖句を唱え。
嵐を吹き散らさんと【黄泉送る檻】を暗雲に向かって放とうじゃないのさ!
鉄甲船から離れ、この荒波に身を投じたものは先の猟兵達以外にも居た。嵐の中を三本の眩いヘッドライトが闇を切り裂きながら、それらは山のような大波の上を尾根筋に沿うように滑走していた。ひとつは光球に変化した鈴木・志乃(ブラック・f12101)が運転する水陸空兼用の所々へこんでいたり引っかき傷が痛々しいヒーローカー。もうひとつは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の愛車、宇宙バイクのカブJD-1725が水上バイクモードと変形したものだ。
「へっ、竜巻に……雷だぁ? 舐めんなよ、アタシだって電撃に関しちゃ負ける気はねぇんだよ!」
嵐で荒れ狂った海水を巻き上げながら渦巻く竜巻と稲妻もなんのその。電撃なら日頃から持ち前のサイキックエナジーで作り出し、オブリビオン相手には己の武器としている彼女からすれば何ら恐れるものではない。
「……正直私、自分のやれること、これぐらいしか思いつかないけど大丈夫かな」
血気盛んな多喜とは対象的に志乃はどこか不安げな声だ。この姿では手足こそは使えないが、念動力によりヒーローカーのシフトとアクセルを操作する。……いやあ、風も水も電撃も苦手なのよな、実は。ついでに言うと海上戦闘も苦手であり、こうして志乃は真の姿となっている訳でもあった。彼に出来ることは、『すきゅりんに辿り着く』ことだけに集中すること。多喜のカブが風の流れを読みながら竜巻の合間を縫うように走る中で、彼もその同じルートを辿っていた。だが、サイキックエナジーを練り上げるため、多喜自らが避雷針代わりとなって雷に打たれ続ける姿には、度肝を抜かれながらも離れれば雷がこちらに当たることを本能的に察知してアクセルを踏み続けた。
『すきゅり~ん♪』
そんな中、何かが呼ぶような声が二人の耳に入る。周囲を見渡すと少し行った場所で雨合羽を羽織った蛸足の者が宙に浮かんでいた。あの気の抜けるような名前を語っているのであれば、あれがすきゅりんであるのか?
「考えても埒が明かないね! こんな嵐の中で宙を浮かんでる時点で怪しいに決まってんだよ!」
そう多喜が啖呵を切ると、今まで雷に打たれながら練りに練り上げたサイキックエナジーをバチバチと解放させた。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
電撃を迸らせながら聖句を唱え上げ、嵐を吹き散らさんとUC『黄泉送る檻』を暗雲目掛けてすきゅりんに放った。すきゅりんは取り分け抵抗らしい抵抗を見せてはいない。勝利に確信した多喜であったが、志乃はすきゅりんが何か喋っている気配を感じる。サイキックブラストの檻が収縮する中、それは最後の一斉を上げた。
『くけけけけ! ざんね~ん。すっきゅりん♪』
そうウィンクする動作と共に消滅したが、嵐が収まる気配は一向にしない。
「どういうことだい! 奴を倒せば、この嵐が収まるって話じゃなかっのか!?」
「あのー……もしかしてですけど、もしかしてさっきのすきゅりんは偽物だったのではなかったのでしょうか?」
攻撃すれば簡単に倒せる相手だが、当然そうならないように相手も何か対策をしているはず。そしてそれが、鉄甲船を沈めて猟兵を倒す為でなく鉄甲船を足止めすることで時間稼ぎをする為であれば?
その仮説を聞いて、多喜はしてやられたという顔になる。
「つまり、してやられたってことかい。そうなりゃ、草の根を分けてでも本物を見つけ出して、今度は本当に焼きを入れてやらないとね!」
進路を変えて広大な海域の捜索を再開させる多喜に続きながらも、志乃はため息混じりに早くこの雷が収まって欲しいと願いながらも白波を越えていくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
木常野・都月
す、すきゅ……りん…
なんでそんな名前にしたんだ。
もう少し狐に優しい名前にしてくれると嬉しいんだけどな。
電撃の竜巻か…。
海の中には鮫…。
どうしたらいいかな。
……うん。
そういう難しい事は、俺には思いつかない。
嵐ごと敵を射抜いてしまおう。
それが手っ取り早い。
チィ、頼む。
UC【精霊共鳴】で攻撃力を上げて、光と風の精霊様の[多重詠唱、属性攻撃]で嵐をぶっとばそう。
確かUDCアースの図鑑で読んだんだ。
嵐はテイキアツなんだろ?
だから…空気を空気で押し上げれば、嵐は弱まるはず。多分。
嵐が弱まれば、光の精霊様のビームで、すきゅる…すきゅぃ…
……敵やメガリスを焼き切れるかも?
敵の攻撃は[カウンター]で対処したい。
家綿・衣更着
すきゅりん…名前も見た目もついでに本人の戦闘力もかわいいのに、メガリスは凶悪っすね!
とりあえず電撃の竜巻をどうにかしないとっすね。
【視力】と【第六感】で竜巻の風の流れを【見切っ】って中心を目指すっす!必要なら【操縦】し、【心配り】と【救助活動】で船や船員のダメージにも配慮っす!
次、【化術】の真価は「森羅万象あらゆるものになれる」事!自身や自身の一部でもあるストールを絶縁体であるゴムに変化し盾とすることで自分や船への電撃ダメージを緩和っす!
最後に鋼鉄人喰いザメ…なぜサメは空を飛ぶんすかね…(遠い目)
おっと、試作魔剣『空亡・蒼』を使い、ユベコで飛んできたサメを【なぎ払い】っす!
すきゅりん覚悟!
そして、舞台は再び鉄甲船へと戻る。自ら足を持つ猟兵達は母艦からすきゅりん捜索に乗り出したが、持たぬ者達は船と共に荒波を進んでいる。
「す、すきゅ……りん…なんでそんな名前にしたんだ。もう少し狐に優しい名前にしてくれると嬉しいんだけどな」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が打ち付ける波と風に耐えながらも何時すきゅりんと遭遇しても良いように、どうしても噛んでしまう『きゅ』と『りん』の境目の発音を何度も何度も練習している。そんな狐の傍では、狸の妖怪である家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)はトレードマークのストールを風ではためかせながら、風をその一身に浴びつつ向かう進路を見極めていた。
「すきゅりん…名前も見た目もついでに本人の戦闘力もかわいいのに、メガリスは凶悪っすね!」
鉄張りの鉄甲船ならいざしらず、通常の木造船であればこの暴風と荒波によりバラバラになってもおかしくはない。しかしとて、その鉄甲船でもこの嵐を前に無事であるという保証は何処にもない。それならば、自らのUCですきゅりんのメガリスがもたらす大自然の猛威と真っ向に立ち向かい闘うしかない。
「面舵いっぱい、ヨーソローっす!」
とは言え、UCと言えども絶えず襲い来る波風を対処するにも限度がある。船を操縦する猟兵達は互いに力を合わせ、側面である船端に横波を受け転覆を避けるしか無い。打ち付ける大粒の雨に思わずまぶたを閉じたくなるが、それを堪えながら衣更着は船の進路を叫んで示した。だが、向かう先は雷の巣ともいうべき、他の雲よりも取り分け一段と黒い暗雲が待ち構えていた。
船を転覆させてしまう可能性ある物を避けようとすると、また別の障害が待ち構えている。もしそれがメガリスで操作と配置ができるのなら、一難去ってまた一難な難局続きなのが理解できる。とは言え、猟兵達も無策で進んでいる訳でもない。落ち着いて自分に出来える手段を用いり、次々と起きる事態に対処すれば良いだけだ。
「化術の真価は「森羅万象あらゆるものになれる」事! 持ちこたえてくれっす!」
風で飛ばされないよう、どろんはっぱを手で押さつつの一回転ジャンプ。ドロンという音も掻き消される雷の轟音と衝撃を何かが遮った。それは衣更着が自らのストールをゴム質の絶縁体に变化させた物だ。だが、これも稲妻の電気は通さずとも、その熱と衝撃で穴が開かないという保障が何処にもない応急処置に過ぎない。
この障害を突破する本命は、そう……今精霊と交信している都月だ。
「光と風の精霊様……そしてチィ、頼む」
返事をするようにチィと鳴いて、都月のフードの中に避難しているチィがヒョコと顔を出した。2つの精霊、そしてチィ。精霊同士の共鳴が起こり、都月が握りしめる杖の先に光の渦が就職し始める。
「電撃の竜巻か…海の中には鮫…。嵐ごと敵を射抜いてしまおう。それが手っ取り早い」
幾度なく襲撃してきた鉄鋼人食いザメの群れが脳裏によぎる。この雷にやっと対処している中で、それらも同時に襲いかかってきては洒落にもならない。それならば、サメも纏めて吹き飛ばすだけだ。最大限に高まったとき、鉄甲船からメガリスによる嵐にも負けな暴風が放たれた。雷を纏った風と共に圧縮された空気が暗雲を押し上げる。
「この嵐そのものが低気圧なら……!」
何時しか見たUDCアースのテレビ放送番組。それは物語の主人公である少年と高気圧の精霊とも言える擬人化された子供との交流の話だった。最後は襲い来る嵐…低気圧の塊である台風に立ち向かうために、高気圧の子は親交を深めた少年を助けるべく立ち向かい消え去ったというもの。その話通りにならばと、放った一撃は見事暗雲を掻き消した。一瞬雲の切れ目が現れると太陽の光が海面を照らし出し、その場に居たものを照らし出した。すきゅりんだ。だが、鉄甲船に乗っている猟兵達も、度々偽のすきゅりんに遭遇して来ている。今まで一喜一憂とも言える攻防を繰り広げて来たが、果たして今回こそは本物のすきゅりんであろうか?
『ぐぬぬぬ。ここに隠れていれば大丈夫と思ったのに…っ!』
だが、今までとは様子が違った。偽物は挑発するかのように振る舞って、その殆どは進路を惑わすモノであった。だが、今回はどうだろうか。あたかもバレてしまったと言わんばかりの狼狽っぷりだ。
「本物だろうと偽物だろうと構わない。こうなれば光の精霊様のビームで、すきゅる…すきゅぃ…えぇっと」
『ぎへへへへ。ランナウェイのチャーンス♪』
何度も練習したはずだったが、思わず噛んでしまった都月が取り繕うとしている隙を見て、すきゅりんが逃げ出そうとメガリスを操作した。潮流を狂わせ渦潮を作り出すと、泳いでいた鉄鋼人食いザメらを遠心力で鉄甲船めがけて放つ。
「そうはさせないっす! 劒さん、その力借り受けるっす!」
衣更着と交友のある魔剣のヤドリガミが自らの力を篭めて作った魔剣『空亡・蒼』。彼がドロンと変化を解いて元の姿に戻るや否や、『全てを切り裂く妖力』を宿す妖刀を抜刀し、迫りくるサメ達を次々と切り捨てた。だがサメを目くらましとして、すきゅりんは再び何処へと消える。だが、そう遠くは行っていない筈である。
鉄甲船を未だ残る渦潮に引き寄せられないよう迂回する中で、都月は再び噛まずに「すきゅりん」と言えるよう再び練習をしていた。
大成功
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フェルト・ユメノアール
どんな海も、嵐も、雷も!
ボクのロードを阻むことは出来ない!
迷うことなく嵐に突入!すきゅりんの元へ
鉄甲船が吹き飛ばされるレベルの竜巻、頑張ってどうこうなるものじゃないね
なら……逆に風に身を任せ、空に舞い上がる!
『パフォーマンス』で培った平衡感覚を生かして、上下を見失わないよう、バランスを取りながらアレを探す
見つけた!ボクは手札から【SPファントム・マタドール】を召喚!
こちらに喰らいつこうとする人食いザメの攻撃をマントで受け流し
そのまま鮫の背に騎乗、ロデオのように鮫を『動物使い』で操り、移動手段にする!
降り注ぐ雷はファントム・マタドールのマントで反射、そのまま勢いをつけてすきゅりんに突撃だ!
一時的に姿を見せた太陽は再び雲に隠れ、一時の平穏は再び嵐となって鉄甲船を襲う。先程見つけた本体と思わしきすきゅりんを探すため、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は叩きつける雨、風、雷に臆することなく警戒を厳とする。
「どんな海も、嵐も、雷も! ボクのロードを阻むことは出来ない! 迷うことなく嵐に突入さ! いざ、すきゅりんの元へ」
だが、先程の会敵で相手も警戒心を高めてか中々発見できない。こうなればボクも船を出て捜索に出るよと、畳んだ帆が結ばれているマストの頂上に登り立つ。
「鉄甲船が吹き飛ばされるレベルの竜巻、頑張ってどうこうなるものじゃないね。なら……逆に風に身を任せ、空に舞い上がる!」
この竜巻に近づこうものなら重量ある鉄甲船すらも吹き飛ばされる。すきゅりん捜索もこれが障害となり、船を竜巻に引き寄せられないよう距離を取って迂回するしかなかったのだ。先程の雷雲の下で身を潜めていたすきゅりんの考えを読み取れば、近づけば鉄甲船が沈みかねない場所に隠れている可能性が大だ。
となれば、嵐を操るメガリスにより竜巻を利用しているかもしれない。フェルトは確信に近い推測と共に、マストから飛び降りた。幼い頃に出会ったサーカスの楽しさに魅せられ、日々培ってきた平衡感覚。元気と笑顔が取り柄の道化師少女は抵抗することなく、身体を風に預けて高く舞い上がった。
「……見つけた!」
彼女の考えは的中し、いくつかの竜巻に守られるようにすきゅりんが居たのだ。
『なるほど~、風を利用したのか! だけど、それなら自由に動けないはずよね。サメの猛攻で骨も残さずバリバリ食べられちゃえ♪』
すきゅりんが手にした幅広の海賊刀をフェルトに向けると、突如風の流れが変わる。恐らくあれが嵐を操るメガリスなのだろう。竜巻の中で渦巻きながら集められた鋼鉄人食いザメが次々と放たれ、鋭い牙を剥かせながらフェルトに向かい襲いかかる。
「その攻撃は通さない! ボクは手札からSPファントム・マタドールを召喚だ」
フェルトが腕に身に付けたデッキホルダーから抜いた、ドクロ頭の闘牛士が描かれたカードを彼女は高く掲げる。その絵柄から抜け出るように出た闘牛士の霊体は、闘牛さながらに鋼鉄人食いザメの前に風ではためく赤いマントを向ける。そして、ひらりひらりと受け流すようにサメ達をフェルトから反らして行く中、彼女はと手頃なサメを見繕うとその背びれ掴むと強引に騎乗した。
「どうどうどう! あはは、元気が良いね君。どうしてそんなに怒ってるのかい?」
怒り。そう、鋼鉄人食いザメ達は怒っていた。それもその筈、海中で平穏に過ごしていたかと思えば、突然起きた嵐と竜巻で舞い上げられれば怒るのも無理はない。だが、その張本人であるすきゅりんは、メガリスによってサメ達の猛威から逃れている。そうなればやるせない怒りを抱えた彼らの矛先は、無防備な猟兵達へと向けられていた。
「オーケー。それなら、ボクと一緒に君達をこんな目に合わせたすきゅりんを倒そう。君の力を貸して欲しいんだ」
それならば悪い取引ではないと、サメはフェルトを乗せて渦巻く風を泳いでみせた。これでサメを味方につけた。後はすきゅりんを倒すのみ。
『うげー! 獰猛な鋼鉄人食いザメを味方につけるだなんて!! こうなれば、サメ共々黒焦げになっちゃえー!!』
すきゅりんとしては鋼鉄人食いザメを一方的に利用しているだけであるので、サメ側としては彼女に協力する義理など毛頭ない。であるので、特にサメごと猟兵を攻撃しても問題なんてないとばかりに、今度は雷をフェルトとサメに向けて落としてみせる。
「こんな攻撃、ボクのSPファントム・マタドールにかかればお茶の子さいさいだもんね」
再び現れた骸骨の闘牛士は鋼鉄人喰いザメに乗ったフェルトを守るように、周囲を漂いながら彼女達を狙うように落ちる稲光を赤いマントで反射させた。その先に居たのは…そう、すきゅりん。自らの攻撃も反射させるとは思いもよらなかった彼女は、それらから逃げるように竜巻の巣を抜け出す。しかし、猟兵と彼女とのかくれんぼと鬼ごっこはここで終わりを告げた。何故ならば、抜けた先には猟兵達を乗せた鉄甲船が待ち伏せをしていたのだ。
「チェックメイト。前門にウルフ、後門にタイガーだね。今度は逃さず倒すよ!」
たじろぐすきゅりんの背後から、フェルトを乗せたサメが牙を剥かせながら突撃した。既の所で躱したもの、鋼鉄のように固い鮫肌がすきゅりんの蛸足をずたずたに擦り切らせる。
苦痛にもがくすきゅりん。もはや素早い逃げ足を封じたのも同然である。そして、戦いは佳境を迎えるのであった。
成功
🔵🔵🔴
ナイ・デス
『文明守護竜』「ダイウルゴス」は群体
周辺環境に力を与え、竜化させ変形合体することで巨竜となった、無数の竜の集合体
約5kmとなった現在の竜数は、約1兆
ただ中枢で、指揮をとるだけなら、鮫に噛まれても痛みはない
でも、一緒に戦いましょうとお願いして、きてくれた、仲間の痛み、ですから
【覚悟激痛耐性】同じように、感じて
【継戦能力】聖者の光で、癒して
【念動力】で鮫の牙、押し返して
【だまし討ちカウンター】周囲の変形合体組み換え、口か腕のようになり、逆に鮫をとりこんで【生命力吸収】して
鮫も風も雷、今に在る仲間
一緒に
『文明守護竜』11回目約10km、約8兆の竜の群体は
【第六感】で感じる方向に【重量攻撃、なぎ払う】
カシム・ディーン
キャバリア搭乗
一応竜巻対策にもなるでしょう
油断はできませんが
「色んな手段を講じるのはありだよご主人サマ♪」(鶏の立体映像が応え
パターン化すれば楽なんですけどそううまくもいかないでしょう
何かダイウルゴスがいますね…では僕も
UC発動
5体ずつ合体させて巨大化
重量を高めて飛ばされないように
【属性攻撃】
土属性を機体とダイウルゴスに付与して雷撃耐性を高め
【視力・情報収集・戦闘知識】
風の流れを把握
更に巻き込まれてる鮫についても捕捉
突破の為のルート把握
突き進む中飛ばされそうになったら
ダイウルゴスとしがみ付きあって重量増加しつつ鎌剣を大地に突き立てて堪え
そして風が落ち着いたタイミングで突き進む
先の美女を求めて!
『ぐぬぬぬ…挟み撃ちにされたって、私の周りに嵐を巻き起こしてしまえば!』
すきゅりんはメガリスの宝剣を振りかざし、相手に嵐をぶつけるのではなく自身に嵐を巻き込ませる事で逃れようとした時、それは海の中から現れた。
黒々しいその正体はナイ・デス……いや、『文明守護竜』ダイウルゴスだ。周辺環境に力を与え、竜化させ変形合体することで巨竜となった、無数の竜の集合体。先程の約5kmに至った時点で身体を構成する竜数は、ゆうに約1兆にも及ぶ。ナイ自身はは核として巨大ダイウルゴスの中枢部として、群体の指揮系統を司っている。
これにより鉄鋼人喰いザメに噛まれようとも、彼自身は痛みを感じなくなった。だが、それでも痛みは感じていた。
「でも、一緒に戦いましょうとお願いして、きてくれた、仲間の痛み、ですから」
ナイの声に応えてくれた竜達の痛みが自身のように感じる。そびえ立つ島のような巨体に鉄鋼人食いザメらが寄生虫のように喰らいつこうとも、ナイは作り出した力場でサメ達を弾き返す。それを突破されて噛みつかれようとも、噛みちぎられた肉を瞬時に盛り上がらせて癒やしていく。一部では周囲の変形合体組み換えを利用して、体の一部を口か腕のような器官を作り出し、腹をすかせて怒るサメを逆に取り込んでいた。そして、ナイは再びダイウルゴスを海中に沈めた。
「何かダイウルゴスがいますね…」
鉄甲船の甲板上でキャバリアに搭乗しているカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、カメラアイが捉えたダイウルゴスを界導神機『メルクリウス』のコクピット内で確認をした。
『色んな手段を講じるのはありだよご主人サマ♪』
何でこうなったと呟く彼の目の前で、鶏の立体映像が浮かび上がるとカシムの頭の上で寛ぐよう座りだす。主人を主人とは思わない素振りだが、クロムキャバリアでこの変なキャバリアを拾った時からこんな調子のままで居る。そんな鶏の提案を受けつつも、彼は既に慣れた様子で操縦桿を握り直す。
「パターン化すれば楽なんですけど、そううまくもいかないでしょう。なので、状況を利用させて頂きます。万物の根源よ…帝竜眼よ…文明を構成せしめし竜の力を示せ…!」
カシムは暴風が吹き荒れる中でメルクリウスを飛翔させると、バランサーを保ちながら海上へ出る。カシムがUCを発動させると、海面から何かが飛び出してきた。ダイウルゴスだ。眼球に1と刻印された竜はメルクリウスの一部として取り込まれ、機体は巨大化するとともに重量を増していく。更には竜の鱗のような装甲に絶縁性を付与して雷撃耐性を高め、強化された各種センサーは風の流れをシミュレートすると共に巻き込まれているサメの予想進路も割り出し、再び嵐を作り出そうとしているすきゅりんへの突破口をカシムへ示した。
『この嵐でぎったんぎったんのバラバラにしてやるんだからぁ!!』
すきゅりんの叫び声と共に再び高まる風、激しさを増していく稲妻。先程観測した物とは比べ物にならない嵐がメリクリウスを襲う。空中機動用ウィングとフレームの接続部が軋み、装甲板が剥がれて飛ばされる音がコクピット内に響いた。だがその時、海面から再び何かが姿を現す。
「鮫も、風も、雷も、今に在る仲間も、一緒に」
11回目なる合体により約10km、約8兆の竜の群体となったダイウルゴスの上半身が海面を飛び上がると、その巨腕を海に叩きつけた。ナイがダイウルゴスの本能に任せた一撃で、巨大な水柱が巻き起こる。その衝撃にすきゅりんは思わず怯んでしまう。しかし、この一撃が彼女のメガリスを操る集中を阻害させ、暴風は一時的に弱まった。
『やるのは今ですよご主人サマ!』
「確かに、今がチャンスですね」
バサバサ飛びながら耳元で捲し立てる鶏をあしらいながら、カシムは弱まったとは言えまだ暴風の域である風に機体を乗せ、一気にすきゅりんへ詰め寄った。メリクリウスはBX鎌剣『ハルペー』を振りかざし、センサーが捉えるそれに目掛けて振り下ろす。
『ぎやぁあああああああっ!!?』
人間サイズのすきゅりんは成すすべもなく、鋭く研ぎ澄まされた鉄塊の如き刃先で真っ二つに断ち切られ、風と共に塵となって消滅した。
すきゅりんが消滅すると、嘘のように嵐が収まる。まるで今まで幻を見ていたかのように暗雲は消え去り、波も風も穏やかになっていく。ただ一つ、それが現実であったのを教えてくれるのは雨のように海面へ落ちていく鉄鋼人食いザメ達だ。鉄甲船の甲板にも落ちてくるが、元気よく跳ねるとそのまま海の中へと帰っていく。
猟兵達は自分達に牙を剥いて襲いかかってきた彼らもすきゅりんが巻き起こした嵐の犠牲者であると胸に思いながら、その姿を見届けた。何時しか日は夕日となって海に沈つつある。黄金色に染まる海へ猟兵達は鉄甲船を進ませ、この海域から離脱するのであった。
大成功
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