羅針盤戦争〜赤と青の支配者
●赤の支配者
今日も今日とて海は穏やかだ、と巫山戯たことを抜かしたのは何処の何奴だったろうか。
「御機嫌よう、海賊の皆様。
本日も良きお日和ですわね」
にこりと笑みを浮かべる赤い珊瑚のような女は、その島に降り立ちさらに続ける。
「本日は皆様にとっても素敵なお知らせをしに参りましたの。
この島を、わたくしが支配して差し上げますわ」
「支配する、だァ?
おい、聞いたか?この島を支配するってよ!」
「この島は、蒼乃島は俺たち蒼乃海賊団のモンだ!
テメェみてぇな女はお呼びじゃ……あ?」
女の言葉にどっと沸く海賊達に対し、女が杖を向ける。
すると、杖から虹色の光線が迸り海賊のひとりが珊瑚へと変わってしまった。
「何かおっしゃいまして?」
「ひっ……!」
威圧的な笑みに気圧される海賊達を他所に、新たな支配者を名乗る女はぐるりと島を眺めるのだった。
●羅針盤の示す先
「ついに始まったか」
グリードオーシャンの海図を広げる黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は、そのままの状態で猟兵達を出迎える。
「召集に応えてくれて感謝する。
グリードオーシャンにて戦争が開始したのは聞いているな」
『羅針盤戦争』ーーグリードオーシャンを支配する七大海嘯の居場所を示す「蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)」に関する謎の予兆が先日起きたのは、集まった猟兵達の記憶にも新しいことだ。
「グリードオーシャンでは我々グリモア猟兵の余地が阻害されている。
故に、その予兆に現れた「蒼海羅針域」だけが頼りではあるのだが……。
敵の拠点を発見するまでには至っていない、というのが現状だ」
戦争はまだ始まったばかりである。
だが、事が起こってしまっている以上、悠長なことも言ってはいられない、というのが朔良の見解でもある。
「実際に七大海嘯の腹心とも言えるコンキスタドール達が島を攻めているのが確認されている。
今回向かって欲しいのも、そういった島の一つだ」
そこはUDCアースから落ちたとされている島で、蒼乃島と呼ばれる島だ。
「蒼乃海賊団という海賊が支配している島故に蒼乃島と名付けられているらしい。
現在わかっているのは、そこに赤い珊瑚のコンキスタドールが支配者として君臨するためにやってくるということと、蒼乃島の海賊達は島を渡す気はないということだけだ」
しかしながら、猟兵達にとってはそれだけの情報がわかっていれば充分とも言える。
「敵がどのような攻撃をしてくるかは不明だが、海賊達は島を守るためならば猟兵に協力するだろう。
不安は残るだろうが、時は一刻を争う」
よろしく頼んだぞ、と告げる朔良の手の中のグリモアが輝き、猟兵達を戦場へと転移させる。
●青の決意
「カシラァ!これ以上は……!」
「あ?ンなことねえだろ!
この島は俺達が守るって決めただろうが!」
蒼乃海賊団のボスである蒼乃・智樹は元々サラリーマンだった男だ。
体育会系でいい意味で熱血な性格の、ただの営業マンだった。
それがこの島とともにこのグリードオーシャンという異界に落ちてきてからは、自分がリーダーとなり仲間達とともに唯一の故郷の名残りでもあるこの島を守ってきた。
だからこそこの島を得体の知れない相手に好き勝手されるわけにはいかない。
「コンキスタドールだかなんだか知らねえが、俺達の島を好きにさせてたまるかよ」
コンキスタドールの姿は未だ智樹のいる場所までは来ていない。
しかし報告に入ってきてるのは、赤い珊瑚が人型をとっているらしいということと、人間を珊瑚にする能力を持つということだ。
それがメガリスの作用だろうことを智樹も知ってはいたが、生憎この島に対抗できるようなものはない。
あるならばとっくに使って撃退しているだろう。
「クソッ、万事休すってか」
せめて援軍でも来てくれれば、とあり得ないことを望むのも無理はないだろう。
しかし、それほどまでに智樹が追い込まれていたというのもまた事実なのだった。
綺朔
ついに始まりました、グリードオーシャンでの戦争『羅針盤戦争』!
どうも、綺朔(キサク)です。
実はこれが初めてのグリードオーシャンのシナリオだったりします。
というわけで、早速戦争シナリオをお届けいたします。
また、今回は戦争シナリオということで1章でのお届けになります。
2章以降はございませんのでご注意ください。
●舞台
UDCアースから落ちてきた島のひとつ「蒼乃島」です。
蒼乃・智樹という人物がボスの「蒼乃海賊団」が支配する島で、UDCアースの離島のような島です。
「蒼乃海賊団」は海賊団と名前はつきますが、実際のところ蒼乃島における警察の役割も担っているようで、島民からは慕われれいるようです。
現在島民たちは避難しているため、島の外にいるのは蒼乃海賊団の海賊達だけです。
なお、蒼乃海賊団のボスの智樹は島の中心の高台にある屋敷にいます。
●第1章 ボス戦『蒐集の女王『コーラルクイン』』
蒼乃島に新たな支配者を名乗ってやってきます。
現在は蒼乃海賊団の海賊達を珊瑚へと変えながら島の中心、智樹のいる場所へと向かっています。
プレイングボーナス:海賊と協力する。
●プレイング募集について
OP公開後から随時募集いたします。
なお、今回の断章追加はございません。
その他については綺朔のマスターページをご参照ください。
以上、皆さんの素敵なプレイングお待ちしています。
第1章 ボス戦
『蒐集の女王『コーラルクイン』』
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POW : 侵食する珊瑚の腕
【背の巨大な珊瑚の腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【珊瑚化の侵食】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 変化する珊瑚の杖
【珊瑚杖のメガリス】から【虹色の光線】を放ち、【珊瑚化】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 埋め尽くす珊瑚群
【珊瑚化の呪いがかけられた珊瑚の欠片】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を珊瑚化の呪いがかけられた珊瑚群に変化】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:すねいる
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠テフラ・カルデラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神海・こころ
悪いけど中央には行かせないし
もう好きにはさせない
行くよ!シャーくん!!
脳筋仕様を舐めんなよ!!
内なるオウガに声を掛けたあと
ダッッッッ!!と駆け寄って
超重量の黄金バットのフルスイング
能力に自信があるみたいだし
背の珊瑚の腕でガードして
オートの呪いの侵食でいい気になるんじゃないかな?
アタシだってただの切り込み隊長じゃないよ!!
にやりと笑って宣言
鉄甲鉄火!!
ゴウッ!!!っと
立ち上がったユーベルコードを封じる炎を纏って呪いを打消し
弾かれた反動を利用して回転するように遠心力をつけて
貫通+気絶攻撃のキツイ一撃を叩き込み防御を砕きます
龍・雨豪
私としては、誰が敵で誰が味方か解ってれば問題ないかしら。
まぁ、まずは地元の海賊とやらに挨拶しときましょ。
「梃子摺ってるなら、手を貸してあげても良いわよ」
ここで情報と戦況を聞いときたいわね。
もう結構な数の仲間がやられてるようだし、報復は必要よねぇ?
杖持ってるし、接近戦を仕掛けて拳を連打してやるわ!
相手の拳は受け流して威力を殺しつつ、カウンターも狙っていきましょ。
って、なんか私の腕がおかしくない?
珊瑚化って魔法か何かだと思ったのに!
しかも、どんどん侵食されてる!?
ぐぬぬ……。せめて動けなくなる前に『破滅を齎すもの』の破壊光線で海賊達の無念を晴らしてやるっ!
もう動けそうにないから、後は任せるわ……。
御乃森・雪音
アドリブ歓迎
赤い珊瑚と蒼の海賊の戦い……蒼に味方するのは当然。
海賊の方は話は通じやすそうねぇ、これ以上被害を出さないように手を貸して貰うわよ?
無茶はしなくていいからもう一寸頑張ってね。
適宜、手は出さずにコーラルクインの位置を教えるだけにしてもらって、屋敷に着く前、狙いやすい場所で止めに入りましょ。
艶やかな赤の女王、La danza della rosa blu……手向けの青薔薇の鎖で飾ってあげるわ。
とん、と一度地に踵を打ちつけて歌うのは無伴奏のアリア。自らが奏でる音に身を預けて、緩やかに踊りながら手を差し伸べて。
絶対に逃がさないわよ、次のパートナーは貴女。
さあ、潔く海に還りなさい。
フィロメーラ・アステール
「人間を珊瑚にしちゃうだって!?」
なんて恐ろしいんだー!
じゃあ先に珊瑚になってしまうのはどうかな?
【七星纏身】で珊瑚に変身する魔法陣を発動だ!
ただの珊瑚じゃない、珊瑚人間的な? 動く珊瑚!
珊瑚は生き物だし深海人も見た事あるし動ける!
という訳で自分や海賊たちを珊瑚化して戦うぞ!
攻撃は海賊におまかせ!
あたしは後ろから魔法陣を【投擲】して戦線維持!
この作戦は単なる言葉遊びじゃない!
力を先に付与しておく事で別の力の影響を受けにくくする【オーラ防御】的な側面もあるのさ!
もし敵の力が勝って動けなくなるようなら【全力魔法】フル稼働の【早業】で怒涛のかけ直し!
敵に珊瑚化された人を戻して援軍にしても面白いな!
播州・クロリア
(高台の智樹さんに助っ人に来た猟兵であることを告げ協力を仰ぐ)
敵との戦闘は私が受け持ちます
海賊団の皆さんは敵から少し離れた場所に隠れてください
私には味方の位置にテレポートする能力を持っています
その力で敵に奇襲を仕掛けては皆さんの位置へテレポートして隠れるゲリラ戦を仕掛けます
この作戦は皆さんが頼りです
どうぞよろしくお願いします
(海賊団に一礼した後、敵の前に立ちふさがり、救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始める)
こんにちは、珊瑚の方
この島があなたの死地です
この踊りは滅びゆく貴女へ捧げるリズムです
どうぞ最期までご堪能ください
ジーク・エヴァン
珊瑚のコンキスタドールか
…勝手に他人の故郷を襲って自分の物にしようなんて、いい度胸じゃないか
その身に刻み込んでやるよ
奪われる側の底力をな
海賊と協力して奴を退ける!
珊瑚化させる攻撃がどれも強力だから、俺と海賊、他の猟兵にも多重詠唱した結界術を施そう
鉄馬に跨がり、奴に突撃だ!
鉄輪をした鉄馬なら珊瑚礁になった地面だろうと踏破できる
あの光線がかなり危険だな
【竜盾の軍勢】を呼び出し、盾の軍勢を操って俺や海賊達を光線から守る!
光線の隙を突き、そのままグラムで怪力を活かして奴を切り裂く!
固い歯応えだろうが奴を喰らえ!グラム!
(雄叫びをあげて不気味な黒竜の大顎となるグラム)
(生命力吸収、捕食)
アドリブ・連携
○
ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
イイモノ持ってるね♪そこのお兄さん達(海賊)、ボクとワルい[取引]しない?。
([視力]でみつけた、コーラルクインを対象に【デモン・フェイカー】を発動。手品の様に自身の手に贋作武器を生やして)
ボクは贋作の悪魔。この手にあるのは精巧なる贋作武器「珊瑚杖の偽メガリス」。どう?この[存在感]。コレを使って協力してくれたら贋作ならではの改変[武器改造]もつけちゃうよ。マモノ(真物)なんて目じゃないね♪。
ボクのユーベルコードの真価はこれから。「本物の珊瑚杖のメガリス」の操作権を[盗み]敵が操る光線を止めた隙に、ボクの金貨達共に[騙し討ち]の[範囲攻撃]といくよ♪
※取引の代価はおまかせします。
誰が敵で誰が味方か、それさえわかれば戦場では問題ないという猟兵は多い。
龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)もそういった考えの猟兵のひとりであり、御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)もまた、赤い珊瑚と蒼の海賊の戦いならば蒼に味方するのは当然のことと考えていた。
「手を貸してくれるのはありがたいが、本当に任せても問題ないのか?」
「ええ、もちろん」
この場に来ている猟兵達は皆戦闘経験豊富な、いわば戦闘のプロの集団。
ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)や神海・こころ(心海に沈む・f31901)、ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)のような、智樹にとっては子どもとも思える者や、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)のように小さな妖精もいるが、少なくとも彼らが自分達よりも腕が立つだろうことは見ただけでわかることである。
「差し当たって、現在の状況が知りたいわね。
相当な人数がやられてるみたいだけど」
「ああ、幸い町の連中には被害が出てねえが、手下がかなり……な。
今いるのはこの屋敷の周辺にいる連中だけだ」
雨豪の問にそう答えた智樹は、眉根を寄せて苦々しい表情をする。
たったひとりを相手に思った以上の被害が出てしまっているのが悔しいようだ。
「相手はコンキスタドール、それも七大海嘯の麾下の精鋭ですから。
これは持ち堪えたほうかと思いますよ」
播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)の言葉の通り、現在の状況はよく持ち堪えた方だと言える。
「ここから先の敵との戦闘は私達にお任せください」
「無茶はしなくていいから」
「ええ、むしろ敵から少し離れた場所に隠れてくださっていても大丈夫ですよ」
智樹としても、これ以上の犠牲者を出さないためにもそうさせたいのは山々だ。
だが、現にこうしている間にも猟兵達と共に仲間たちは戦っている。
「それは俺に言っても仕方ないと思うがなぁ」
智樹の苦笑交じりのその言葉は、仲間たちに下がれと命じても素直に聞くとも思えないと言外に告げているも同義だった。
「俺達の島は俺達の手で守りたい。
そのためにあんたらの力を貸してくれ」
「元よりそのつもりだから安心なさい。
さあ、反撃開始よ!」
雨豪の鬨の声に呼応するかのように、周りの海賊達が声を上げる。
反撃の時がまさに迫ろうとしていた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
屋敷へと続く森の中では、コーラルクインと猟兵達が既に戦いを始めていた。
「悪いけど中央へは行かせないし、もう好きにはさせない」
行くよ、シャーくん!と自身の内なるオウガに声をかけたこころが、コーラルクインに一直線に駆け寄り、超重量の黄金バットをフルスイングする。
「危ないですわね、まったく」
背から生やした珊瑚の腕でこころの攻撃を軽々とガードしたコーラルクインは、その珊瑚の腕から黄金バットを珊瑚化させようとする。
「バットも珊瑚となってしまえば振るうことは出来ませんでしょう?」
「アタシをただの切り込み隊長だって思うなよ?」
コーラルクインのその行動はまさにこころが狙っていた通りで。
ニヤリと笑って、炎!!と叫ぶこころの持つ黄金バットから、ユーベルコード【鉄甲鉄火(テッコウテッカ)】のあかあかとした炎が立ち上がる。
「なっ!?」
「珊瑚化の呪いは打ち消した、よっ!」
弾かれた反動により飛び上がったこころは、更に回転を加えて遠心力を付けてコーラルクインに向けて黄金バットを振り被った。
「二度も同じ手は食らいませんわ」
「だったらこっちも喰らってみろ!」
こころの後ろから突進してきたのは鉄馬に跨ったジークだ。
珊瑚礁化した地面をもろともせず、一直線にコーラルクインへと向かってくる。
「くっ、忌々しいですわね」
そんなジークの乗り物である鉄馬を止めるには珊瑚の腕だけでは難しいと判断したコーラルクインは、手の珊瑚の杖を掲げて虹色の光線を鉄馬に乗るジークへと放たれた。
「奪われる側の底力を見せてやる!
来たれ!竜の牙を退け、竜の息吹を払いし大いなる守護の軍勢よ!
我と共に、悪しき竜の侵攻を押し止めよ!!」
ジークのユーベルコード【竜盾の軍勢(ドラゴニック・レギオン)】により80以上に複製された「竜眼の盾」が鉄馬の前に展開され、コーラルクインの放つ虹色の光線を受け止める。
複製された盾の数枚が虹色の光線によって珊瑚化してしまうが、ジークは構わずに盾を展開しつつ突撃を続ける。
「ここは一旦引いたほうが……」
「そんな事させるわけないでしょ!」
「残念ながら珊瑚化の能力を使えるのってお姉さんだけじゃないんだよねーっ」
一旦引いて態勢を立て直そうと身を翻したコーラルクインの視線の先にいたのは、自身のユーベルコード【七星纏身(アステリズム・チェンジャー)】によって動く珊瑚となったフィロメーラと、コーラルクインの持つ珊瑚杖とよく似た白い珊瑚杖を手に生やした持つユニ、さらにフィロメーラとユニに付き従う白い珊瑚達だった。
戦いが始まってすぐ、こころとジークがコーラルクインと戦っている間にユニはユーベルコード【デモン・フェイカー】によって作られた、コーラルクインの珊瑚杖の贋作を使い海賊達と『ワルい取引』をしていたのだ。
その取引の内容とは、珊瑚杖によって珊瑚化したあとにフィロメーラの魔法陣により動く珊瑚へと変化させてコーラルクインと戦うことだった。
海賊達の意識を残したままという条件だったが、これはフィロメーラの魔法陣の力だけでなく、ユニが創り出した珊瑚杖の贋作のちからも借りている。
「贋作の悪魔を舐めないでほしいね♪」
「さあ、海賊のみんなー!
後でちゃんと戻してあげるから、存分に暴れてこーい!!」
フィロメーラの号令により、白い珊瑚と変化した海賊達がコーラルクインに一斉に襲いかかる。
「もうすでに珊瑚になってるから珊瑚化の光線も意味ないよね」
フィロメーラ達の狙いはそこにもあった。
すでに珊瑚と変化している海賊達には、珊瑚化の呪いが効くはずもなく。
逆にコーラルクインの赤が白へと侵食されていく結果となっていた。
「次から次へと……っ!?」
珊瑚杖から虹色の光線を発しようとしたコーラルクインだが、その杖からは光線が発せされることはなかった。
「あれー?虹色の光線出せなくなっちゃった?
そうだよねー、本物の操作権を持ってるのはお姉さんじゃないもんねー?」
クスクスと、コーラルクインの様子を見てユニが邪悪に嗤う。
彼女作る贋作により真実が歪み、その真価が崩れて真作たる本物は悪魔の手に堕ちる――
コーラルクインと猟兵の攻防は、猟兵達の優勢であることは言うまでもなく。
ユーベルコード【蠱の共犯者(コノキョウハンシャ)】によるテレポートを使いつつ、ゲリラ戦を仕掛けようとしていたクロリアの作戦は意味がないものとなった。
しかし、ダンスによる攻撃を考えていたのはクロリアだけではなかったようで。
クロリアとともに現れた雪音の口ずさむ無伴奏のアリアに乗り、ふたりがデュエットする。
「次のパートナーは貴方かしら?」
緩やかにその手をコーラルクインに差し出した雪音ののユーベルコード【La danza della rosa blu(ラ・ダンツァ・デッラ・ローザ・ブルー)】から生み出される青薔薇の鎖がコーラルクインに絡みついて離れない。
「珊瑚杖の力さえ元に戻れば、あなた方など葬って差し上げますのに……っ!」
コーラルクインの腕の能力と珊瑚杖の光線の2つが封じられているこの状況下では、コーラルクインの逆転は非常に難しい。
最後の足掻きとして、ダンスをするふたりに対してコーラルクインがまだ赤い部分のサンゴの欠片を飛ばす。
「危ない、ふたりともっ!」
その間に割って入ったのは雨豪だった。
珊瑚化の呪いがかけられた珊瑚の欠片を一身に浴びた雨豪の体が赤い珊瑚へと変化していく。
「せめてひとりだけでも道連れにいたしますわ……っ!」
「雨豪さんっ!」
「これくらい、私は大丈夫!
って言いたいところだけど、侵食早くない!?」
珊瑚化を魔法か何かだと思っていた雨豪は、この呪いに対する対策を行っていなかったようで。
どんどんと侵食されていく自身の身体に驚きはしたが、すぐに冷静さを取り戻す。
「せめて動けなくなる前に……
消し飛びなさい!」
ユーベルコード【破滅を齎すもの(ハメツヲモタラスモノ)】による珊瑚と化した海賊達の無念という名の破壊光線がコーラルクインを襲う。
「そんな、私が負けるなど――」
雨豪による最後の一撃が、コーラルクインごと周囲一体を焼き払う。
「あはは、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
ああでももう動けないや、と雨豪は地面に倒れ込むように意識を手放した。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
その後、珊瑚と化した海賊達はフィロメーラの魔法陣の力により元に戻され、蒼乃島に平和が訪れた。
こうして猟兵達の善戦により、一つの島が救われた。
しかしグリードオーシャンを巡る戦いはまだ始まったばかり。
これから激化するであろうこの戦いに勝利するのはどちらかは、今はまだわからない――
大成功
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