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羅針盤戦争〜 ウサ耳スク水海賊達のチョコレー島

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #挑戦者10人までは受付

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「ダーリンィンッ!」
「ウッサ!ダーリン!!」
「ダーリン!ダーリィーンッ!!」
 ……さて、嫌な予感はするだろうが、これだけでは何のことだか分からないと思うので説明しよう。
 ここはグリードオーシャンに浮かぶジャングルが生い茂る無人島。今現在この島にはコンキスタドール「森羅の巫女」の集団が上陸し、怪物化させた海獣達を使いこの島を占拠している。上記の謎の声はその森羅の巫女達が生み出した怪物海獣の鳴き声である。

 その姿であるが、頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、むさっ苦しいほど胸毛……と言うよりも全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊の様な姿をしており、手にはチョコレートを持っていた。
 そんな見た目の怪物達の鳴き声が、あれなのである。

「……」
 此処にとあるグリモア猟兵がいる。彼女の名はルナメル・イーグナーウス(お宝好きの冒険嫌い・f26806)と言う名を持っており、彼女の目からは何故か光が失われていた。
「……事件です」
 いや正直に言おう。上記の属性を持った怪物達が島中を蹂躙闊歩する様を予知したのである。目を閉じても何をしても、事件の全容が分かるまでは終わらない映像をずっと見せ続けられたのである。
 か弱く何とか猟兵達へと事件を伝えようとする声はあまりにも弱弱しい物であり、それが予知の凄惨さを物語っているといえるであろう。
「コンキスタドール「森羅の巫女」がジャングルが生い茂る無人島で儀式をして、手にチョコレートを持って、頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊の様な怪物を生み出したので何とかしてください……森羅の巫女と怪物海獣は島の中心にある森羅の巫女が祈りを捧げる巨大な子宮のような塊を破壊すればドロドロに溶けて死ぬのでやっちゃってください……」
 生気を感じられない声ながらもなんとか自身が見た予知の内容を話してゆくルナメル。
 ジャングルは見通しが悪く、怪物怪獣達の接近に気が付きにくい。そして危険なのは怪物怪獣達の持っているチョコレートであるという。
 なんと彼らのチョコレートは食べた者を魅了し、怪物海獣への恋慕の情を抱かせるのだという。ちなみに怪物怪獣達の心は乙女の様なので相手の性別に関係なくダーリンと呼び、もしチョコレートを食してしまうと彼女達をハニーと呼ぶことになるという。恐ろしい。
「……あの、本当に皆さん気を付けてください……あ、島の名前ですけどもうウサ耳スク水海賊チョコレー島でいいですよねもう」
 最早何処か投げやりな命名を終えたルナメルのテレポートによって、猟兵達は恐ろしい島へと上陸する事となったのであった。


風狼フー太
 はじめに弁明させてほしい。これは別にバレンタインシナリオではありません。風狼フー太でございます。
 ……いやこのシナリオフレームを見た時、何故か上に書いた様な海賊が頭に浮かんだので海獣にして全員に共有させるしかないかなって……あ、プレイングボーナスの説明をしますね。

 プレイングボーナス……ジャングルと怪物海獣に対処する。

 と、なっております。特にチョコレートには気を付けましょう。問答無用でお前がダーリンであなたがハニー、って事に成りますので。なお、海獣要素ですがスク水を着ているので、海獣です。
 森羅の巫女達の戦闘力は気にしなくて大丈夫です。巨大な子宮のような塊も、視認できる距離までくれば必ず破壊できます。後、お分かりの通りネタ依頼の部類ですが、プレイングによってはホラーな雰囲気もイケルかもしれません。シリアスは無理でしょう。
 では、素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『怪物化した海獣たちの無人島』

POW   :    怪物化した海獣の脅威を打ち払って前進する

SPD   :    不気味なジャングルを探索して、目的地である島の中心を目指す

WIZ   :    ジャングルの生態や、海獣の行動・習性などから、島の中心地を割り出す

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…逆に考えるんだ。別にダーリンと喚ばれても良いやって考えるのよ

…ただし、そのチョコレートはノーサンキュー
私のダーリンは一人だけだからね

…見た目は、まあ…。私の故郷にも変なのは居たし…

第六感と暗視を頼りに海獣の殺気?や闘争心?とか、
自身の危機とかを捉えて気合いで奇襲を見切り、
残像が生じる超高速の早業でチョコを避けUCを発動

…そのプレゼントを受け取る訳にはいかない…!

限界突破した血の魔力を溜めた香気で洗脳を施し、
他の海獣が現れた時の肉壁+森の中心に向けて案内してもらう

…他の海獣が出たら私を護りなさい
その間にそいつも纏めて洗脳するから

…消える前に聞いておきたいんだけど、この海獣?は貴女達の趣味なの?


栗花落・澪
??
…???
……なにこれ(虚無顔

判断材料
鳴き声
足音
チョコのにおい

音楽で鍛えた【聞き耳】で本気で音を聞き取りつつ
甘いにおいも合わせて怪獣のおおよその位置を推測し
見通しの悪さを逆手に取って隠れながら進みます
だって近づきたくないもん

こちらも気づかれないよう風魔法を宿した★靴で微妙に【空中浮遊】し
足音は立てないように進みます

もし会っちゃったら
いやもうほんとごめん傷つけたくないのはやまやまなんだけど
こっち来ないでえぇ!
(【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】で凍結させ逃亡)

若干涙目で塊まで来たら
これだけやったら帰るから許してぇ…(べそ
巫女さん達に無意識の【誘惑】撒きながら塊にUCぶつけて壊します


アトシュ・スカーレット
どんな島だよ、つか、何を考えて巫女連中はこんな奴等錬成した!!!

あー、もう…
しゃーねぇから危険がないか【指定UC】で【偵察】の容量で調べとくか
一応、【視力/暗視/聞き耳/忍び足/目立たない】で調べとくな
んー…見つかりにくいように【化術】で小鳥に変身しとこ
もしこっちにチョコを食わそうとするなら【(腐敗と炎)属性攻撃/呪詛】で腕ごとチョコを抹消するか

目標を発見次第、さっさと壊そう
さっさと呪詛をかけて撤退しよう、そうしよう

アドリブ、共闘大歓迎


ニィナ・アンエノン
怖っ!?
にぃなちゃん、今めっちゃ恐怖を感じてるぞ☆
このうさちゃんな格好でチョコ持ってだーりんとかうっさとか言ってれば仲間だと思って見逃してくれたりしないかな?
くれない?やっぱり?
こうなったらユーベルコードで頼れる無人機軍団を召喚して【時間稼ぎ】!
怪物海獣達がそっちにチョコ食べさせようとしてる隙に、にぃなちゃんは【迷彩】で隠れてその場からそっと離れてバイクでジャングルを抜けるぞ☆
足元は悪いだろうけど【地形耐性】と【悪路走破】でごーごー!
一刻も早く怪物海獣をこの世から消す為に、塊を見つけたらガジェッティアレーザーを【リミッター解除】して全力で【砲撃】だぞ☆
無人機達が海獣に惚れてなきゃいいけど……


鈴木・志乃
(かぽっ)
(ヘルメット装着)
よしっ。
あっ念の為口元に厳重にオーラ防御張っときます。死んでもそんな風に呼びたくはない。死んでも。なんなら舌噛んで死んでやる。

ぎ ぼ ぢ わ る い !!
UC発動、FIRE!!
何がかなしゅうてあんなもん見なきゃーならんのだ! いくら戦争に勝つ為とは言えどうしてあんなものをうぇっ(ストレスで吐血)
もやせ、もやせ、別にスニーキングミッションじゃないでしょこれ?
正直な話するなら島ごと燃やした方がいいんだけど、それだと他の猟兵がががががry

とんでもねえことしてくれやがったな巫女!!
他の戦場でも許さねえ!!決めた!!覚悟しやがれ!!
(ガソリンぶちまけて着火)


神海・こころ
事件は会議室で起きてるんじゃない!!
無人島で起きてるんだ!!
ルナメルさん直視はキツイです!!
変態への殺意が抑えきれません!!
うん、潰そう
即潰そう
完膚なきまでにボコス♪

近寄るな変態!!
アンタ達には拒否権はない!!!
もう一歩でも近づいたら容赦しないぞ!!!
黄金戦陣!!!
召喚された宙に浮く80本以上の自動追尾を付与した黄金バット操ってミサイルのように飛ばして
股間を無慈悲に打ち抜きます

地獄の苦しみでのたうち回ってる相手へ
最後の介錯
しゃがんで届くようになった頭に向って
気絶攻撃を足したフルスイングで
打ち抜きます
南無三!!!


高砂・オリフィス
そういえばバレンタイン近づいてきたねっ。ぼくもチョコの作り方、勉強しようかなぁ。勉強苦手だけどねっ。あははっ!

ウサ耳スク水海賊チョコレー島、唯一無二の価値を持ってることは間違いないねっ! むしろ二つあってたまるかーって感じ! というわけでチョコをもらいにいこう

ところで無理やり気持ちを射止めるなんて攻撃だと思わない? むしろ歌と踊りでメロメロにさせちゃうよ! こういう時こそ笑顔笑顔、声出してこ! あははっ!

求愛のダンスってのもオツだよね。踊りながらジャングルを突破するよ! 盛り上がってこー!


キョウジ・コケーシ
怪物に占拠された島……これは解放せねばなりません。

キャバリエを召喚し樹上すれすれを飛行しつつ守護神たちをジャングルに放ちましょう。
私も目標を捜索しますが彼らもジャングルを進んで探索してくれるでしょう。

あっ、守護神たち。
か弱き方々の心を守るため、チョコを食べて二人ペアを大量に作ってジャングルデートを楽しんできても構いませんよ?
その場合は、出来るだけ違ったデートコースを楽しんで来て下さいね。
ほら、あなた達が心からデートに夢中になれば他の人の危険も減るので脅威を打ち払えますよね?
だからほら、濃密な描写のデートを楽しんで来て下さい。各地でバリエーション豊かに。

あっ、標的発見したら突撃して破壊します。


ヘスティア・イクテュス
………貴方疲れてるのよ…
流石にそんな手にチョコレートを持って、頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊の様な怪物なんて…うわっいるわ……

なんであんなナマモノ生み出したの…?馬鹿なの?


とりあえず関わりたくないので光学『迷彩』で姿を隠して儀式場に…
あれうさ耳あるけど、聴覚がすぐれてるとか無いわよね…?(あったらなりふり構わず『ダッシュ』)
熱源!音響レーダーで『索敵』!【情報収集】で敵を避けて!

儀式上に着いたら巫女に道中拾ったチョコを口に叩き込む!あなた達が生み出した怪物のなんだから責任とって食え!!

その後はあの塊にUCを叩き込む【爆撃】
嫌な…事件だったわね……


霧鵺・アギト
あーーー地獄絵図じゃないかーーー!!!
僕は嫌だ。
こんなところにいるのは嫌だ。
一刻も早く帰りたい!!

【指定UC】で炎の突風を起こし敵を吹き飛ばしながら進むとしよう。
なるべく近付いて欲しくないし、スク水にあの毛はけしからん…。
せめて毛は燃えろ。
うさ耳はまだ許容できても毛は駄目だ。

ちょっと冷静さが欠如してる気も否めないがこんな状況では致し方ない。
とにかく僕は早くあの気持ちの悪い塊を破壊しなければ…。
チョコレート?
そんなもの絶対に口にしないぞ。
絶対にだ…!!

※アドリブ等、何でも歓迎です



 ――この手記は、かつてこのウサ耳スク水海賊チョコレー島似合ったおぞましい出来事と、グリモア猟兵に導かれ勇敢に立ち向かった10人の話である。

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)
 アトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)
 ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)
 鈴木・志乃(ブラック・f12101)
 神海・こころ(心海に沈む・f31901)
 高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)
 キョウジ・コケーシ(コケーシの後継者・f30177)
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)
 霧鵺・アギト(叡智を求めし者・f32015)
 
 彼、彼女達は何を為し、何を為せず、何を得て、何を失ったか。その全てを此処に書き記した事を約束しよう。
 出来れば、猟兵達の活躍と共にこれが後世に残る様に……活躍は残ってもいいけど他は残らなくていい様な気がする。

 島への上陸を終えた猟兵達は、島の広さ故に散開して捜索する事となる。昼間だというのに木々が生い茂るジャングルの中は薄暗く、無人島とという事もあって道らしき道も期待できず、猟兵達は自らの力で道を切り開きながら進んでいた
「僕はオラトリオ。僕はオラトリオ。僕はオラトリオ……」
「澪?大丈夫?ほらしっかりして」
 ルナメルの予知の内容を聞いてから光の無い虚ろな目をして、何かから自分を保つ様に同じことを繰り返し小声で呟く澪。
 彼女を心配し、共についてきたヘスティアは彼女のほっぺを軽く叩いて彼女を正気に戻させようとしていた。
「ヘスティアさん……だって、だって」
「いい、澪。貴方疲れてるのよ……流石に手にチョコレートを持って、頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊の様な怪物なんて――」
 いる訳がないと言いきろうとしたヘスティアは身をかがめ、それにつられて澪も草むらの影に隠れるように身を潜める。風上から流れてくる空気の中から二人は異変を感じたのだ。
 甘ったるい砂糖とカカオが混ざった匂い……即ち、チョコレートの匂いがすると。
「ウサァ……」
 時同じくして、自分は兎です。と、証明したがっている様な鳴き声と共に現れたのはルナメルの予知にして先程ヘスティアがいないと言いきろうとしていた怪物の姿である。
 頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊が持っていたチョコレートは、ハート形でピンク色の包装紙と黄色のリボンで可愛いラッピングまでされていた。惜しむらくは長時間手に持っていたせいで、中身が解けており形が崩れかけている事であろうか。
「……うわっいるわ……」
「……なにこれ」
 幸いにも咄嗟に伏せた事でやり過ごす事が出来たが、より一層目からは光が無くなり、最早全身から闇すら感じる様な澪に、なんであんなナマモノ生み出したの?馬鹿なの?等と思わず心の中で絶句してしまったヘスティア。見た目はあれだが、あのチョコレートを食べてしまったが最後、助けが来ない限り永遠とあれに恋心を抱きハニーと呼ばなくてはならないと言う事実に背筋に悪寒が走った二人は、すぐさま大作を立てる。
 澪は靴に魔力を流すことで空中歩行をする事で足音を経てない様にして、ヘスティアも光学迷彩を施し姿を見えなくさせると、更に熱源や音を拾うレーダーを展開する。それに合わせて澪も音楽で鍛えた耳を使い、鳴き声や足音、草木を分ける音を逃すまいと聞き耳を立てるという徹底ぶりだ。
 成果はすぐに現れ、二人はその後やってくる海獣達の悉くをやり過ごすことができ、その間に澪の心も休まった事で目に光が宿り始める。このまま逝けば遠からず島の中央を探し出せるだろうと安堵していた二人の目に入ってきたのはオリフィスの姿であった。
「あ、あれ……高砂さん?」
 小声でヘスティアに確認を取る澪から映るオリフィスの姿は、何かを見上げているかの様に上を向いて立っている姿であった。同じ方向を二人が見ても何もない事を確認し、周囲に海獣達がいない事を確認すると、オリフィスへと二人は声をかける。
「あのー、高砂さん?何かありました?」
「何を見てるのか知らないけれど、ボーっと突っ立ってたら危ないわよ?」
 二人の声に気が付き、ゆっくり振り向いたオリフィスの姿を見て二人は後悔する事になる。
「あははっ……みんなぁ……」
 後ろ姿からは見えなかったのだ。オリフィスの元……そして全身はチョコレートまみれだったのである。

 話を少し戻すことにする。
「怖っ!?にぃなちゃん、今めっちゃ恐怖を感じてるぞ☆」
 誰も見ていない事をいい事にしてか、他人が聞けばイラつきを感じるかもしれない喋り方と共に、一般的にバニー服と呼ばれる衣装を身に纏い、宇宙バイクのエンジンをフルスロットルで回して走行しているニィナの後ろには。
「ウッサァ!」
「ダーリン!ダーリン!!」
 と、鳴き声を上げてニィナを追い回す怪物海獣達の姿があった。
「このうさちゃんな格好でチョコ持ってだーりんとかうっさとか言ってれば仲間だと思って見逃してくれたりしないかな?って思ったけど」
 島の中央を探索する為に、ともかく歩いていたらちょうどばったりと出くわしてしまい、つい目と目が合った瞬間これはやるしかないとニィナ。
「うっさ☆だーりん☆」
「……」
「……見逃してー、くれない?」
「ウッサ」
「やっぱり?」
 結果はご覧の有様であった。わざわざ首を縦に振ってまでくれた怪物海獣を見て、ニィナは即座に転進を決意。ユーベルコードで頼れる無人機軍団を召喚し、彼等にチョコレートを食べさせる様に誘導して難を逃れたニィナであったが、逃げる際に使ったバイクの走行音を聞き取った怪物海獣達はニィナに殺到してしまったのだ。
 だが、怪物海獣達は徒歩であり、バイクの速度に今の所追いつく様子はない。この調子ならば逃げ切れると思っていた所に。
「あははっ!盛り上がってこー!!」
 突然とてもテンションの高い声がニィナの耳に届いたかと思えば、太い枝のジャンプ台の様に使い、高く飛び上がる影が一つ。空中で前回転しながら降りてきたオリフィスはニィナが走り去った後の地面へと降り立つと共に、軽やかにステップを踏み始める。
「ウサ耳スク水海賊チョコレー島、唯一無二の価値を持ってることは間違いないねっ!むしろ二つあってたまるかーって感じ!」
 そろそろバレンタインも近いこの時期である。勉強は苦手だけどチョコレートの作り方を勉強でもしようかと思い立ったオリフィスは、なんと怪物海獣達のチョコをもらいにいこうという結論に達してしまったのだ。
 無論、オリフィスも無策で挑むような事はしない。彼女のユーベルコードは、彼女の中で新しいダンスを踊っている間は外部からの攻撃を防ぎ、更に踊り続ける為のアイデアが次々と生み出されてゆくという物だ。怪物海獣達のチョコレートを無理やり食べさせる行為は攻撃になるだろうと予想し、ダンスを踊っている間に、海賊海獣達のチョコレートを幾つか貰い、バレンタインの勉強に使おうと言うのがオリフィスの作戦であった。
「そういえば求愛のダンスってのもオツだよね!ぼくの歌と踊りでメロメロにさせちゃうよ!!」
 大胆な言葉通り、溢れ出る気持ちのままに情熱的な踊りを、ニィナを追いかけてきた怪物海獣達の前で披露するオリフィス。
 だが、彼女の踊りに遠ざかってゆくニィナはふと疑問を抱く。
「……んー?あの海獣達のチョコレートって、自分を無理やり愛させようとする行為で、それに対して求愛のダンスを踊るってそれって食べる事を受け入れちゃってるって事では?」
 そう。あくまで攻撃と言うのは相手に害をなす行為であるという事である。例え無意識の内であろうとも、相手の行為を受け入れる様な行為をしている以上、オリフィスのユーベルコードの効果は半減していたのだ。
「あれ?なんか効果が薄いような……わわっ!?」
 効果の薄さに疑念を抱き、ダンスに没頭出来ていなかった一瞬の隙を突かれて怪物海獣達に両腕を捕まれ地面へと押し倒されてしまったオリフィスに、殺到した怪物海獣達は手に持ったチョコレートのラッピングを丁寧に解き始める。
「あの、ねぇ、ちょっと待って?確かにチョコレートの勉強はしたかったけど別に食べたかったわけじゃんんんー!?」
「おっとぉー!これは仲間のピンチと見た!にぃなちゃんにお任せ――」
 藻掻くオリフィスの声を聞き、ちらりと後ろを見たニィナが見た物。それは溶けたチョコレートを口元へと突き付けられて、既に口元がチョコレートに覆われあれもしかして鼻も覆われてない?気道の確保できてなくない?という状態になっているオフィリスの姿。そしてゾンビの如く群がる怪物海獣の姿。
「……む、むー?」
 あれはもう助からないのでは?無人機軍団の余裕もないのでは?下手に攻撃したら味方に当たるんじゃない?バイクは急には止まれないぞ?何か判定とかミスったんだって。この手の物は敵を倒せば助けられる物だって。ミイラ取りがミイラに成っちゃいけない。そうだそうだ、とお父さんやお母さんも言ってる気がする。
 一瞬の思考の後、ニィナの取った行動は速かった。
「ごめんね!必ず後で助けるから!!」
 胸に残る罪悪感に後ろ髪を引かれる思いでその場を走り去るニィナ。
 こうして。猟兵の内から尊い犠牲がでしまったのであった。

「あははぁ!みんなぁ!みんなも一緒にダーリンのハニーになろうよぉ!!」
 時を戻して今。オリフィスは怪物海獣達のハニーとして、澪とヘスティアを新たなハニーとするべく怪物海獣達と共に追いかけまわしていたのだった。
「いやもうほんとごめん無理!こっち来ないでえぇ!!」
「ね、熱源!音響レーダー!索敵!!右の方に逃げて澪!!」
 傷つけたくないのはやまやまなのだけど、とは言いつつ完全に目から光が失われ、正気を失っているオリフィスの姿を見て捕まった後の自身を想像してしまい余りの拒否反応から高速で詠唱した氷魔法で辺り一面を凍らせる事で怪物海獣とオリフェスの足を止め、ありとあらゆる索敵機器を使い逃げ道を探し出したヘスティアの言葉に従いながらも、土地勘がない島故に逃げ惑う事しかできない二人。
 今はまだ余力はあるが、いずれ体力の限界は来る。今も草木に足を取られそうになり、枝葉に体を擦られて傷を作りながらも逃げ出している様な有様である。
「待ってよぉ!凄いんだよぉ!ハニー達と一緒にいると、どんどん新しいダンスを思いついちゃうの!!」
 元々仲間であったオリフィスの言葉も、二人の精神を削り取ってゆく。絶体絶命かと思われた、その時であった。
「イィィィィヤッホーーーウ!!」
 けたたましいエンジン音と共に、崖の上から一台のバイクが飛び出して、二人の後ろに着地したかと思えば猛スピードで加速し二人に追いついたのだ。
「仲間のピンチに、にぃなちゃんさんじょーう!乗ってけティアちゃん達☆」
 片手でキラッ☆という効果音が出そうなポーズと共に、二人に救いの手を差し伸べたのはニィナであった。ジャングルの悪路を物ともせず、時には木々をバイクに搭載した兵器で破壊しながら走り抜けてきたニィナのバイクへと有無も言わせぬ迫力と共に乗り込む二人。
「あああぁーー!助かったぁぁー!!」
「でかしたニィナ!さっさと走り去っちゃって!!」
「おっーけぇい!あ、今更だけどバイクの3人乗りとかほんとに危ないので良い子の皆はマネしちゃいけないぞ☆」
 二人が搭乗した事を確認してニィナのバイクは更にスピードを上げてゆく。待つ様に懇願する声を上げるオリフィスと鳴き声を上げる怪物海獣達を視線を受けながらも、こうして3人はひとまず危機を脱したのであった。

「あーーー地獄絵図じゃないかーーー!一刻も早く帰りたい!!」
 なるべく近付いて欲しくないし、スク水にあの毛はけしからんと魔法の杖の構えて、悲壮な叫びと共に魔法の詠唱を終えたアギトが起こした火炎を伴う突風は怪物海獣達を飲み込んでゆく。チョコレー島の一角では二人の猟兵達を無数の怪物海獣達が包囲し、数をもって彼等を押しつぶそうとしていた。
「チクショウどんな島だよ!つか、何を考えて巫女連中はこんな奴等錬成した!!!」
 その鋭いツッコミと同じ様な鋭さを誇る二振りの剣を両手に構えたアトシュは、チョコレートを食べさせようと腕を伸ばしてきた所を、腐敗と炎をもたらす呪詛を剣に纏わせて切り落とし、チョコレートを腐敗させると共に炭化させてゆく。
 再び時間を少しだけ戻すことにしよう。
 他の猟兵達と別れたアトシュは、まず島の事情を知るべきだろうと、自分の体を小鳥の姿へ変身する事で目立たなくさせると共に、枝の上へと立つ。未来視の魔術を使いながら、現在と未来という二つの視点から偵察を行っていた所、座り込んで何かを調べていたアギトを偶々見かけ、彼が怪物海獣達に襲われる未来が見えたのである。
「……ほっとくわけにもいかないよな」
 急いでアギトの元へと向かい、声を掛けるアトシュ。
「おい!急いで此処から離れるぞ!」
「声?一体何処から?」
 しまったと思った時にはすでに遅かった。急いで来た為小鳥の姿のまま話しかけてしまい、アギトへと事情を説明するのに若干の時間がかかってしまった。そこを海獣に見つかり包囲されてしまったのだ。
「こんなところにいるのは嫌だ!一刻も早く帰りたい!!」
「だったらあんな所で何をのんびり調べてたんだよ!?」
「学者なので!謎が分かりそうならつい調べてしまいたくなるんですよ!!」
 言うなり、アギトが手に持っている何かしらの植物の様な物をアトシュへと見せる。
「なんだそれ!?」
「カカオですよ、割と上質な!チョコレートの材料にすればいいものになるでしょうねぇ!!」
 炎の魔法を詠唱しながら、さっさとこの島を出たかったのにどうしてこんな謎を解こうとしていたのだろうと投げやり気味に説明を行うアギト。それを聞いたアトシュも何かしらの得心がいった様子でまさか、と呟く。
「……マジでか?そんな理由でまさか?」
「マジでしょうねぇ!此処は随分と質のいいカカオが自生しているようでぇ!こんなトンチキな怪物が召喚されたのはこれも原因の一端でしょうよ!後は連想ゲームの要領で海賊がいるから海賊になってチョコレートだからバレンタインで乙女だとかそんな感じで付与されていったんじゃないですかね!?」
 勿論知りたくもないが事実は検証してみないとわからないと念押しするアギトの言葉に、召喚された理由が分かった所で何の弱点になる訳でもない事に頭を痛めるアトシュ。
 ともかく事件を解決させて帰ろうと、改めて強く心に誓った二人は最大火力を一方向へと向けて包囲を突破しようと試みる。アギトが放った炎の突風を軌道を、未来視で読んだアトシュが、突風が到達すると同時に剣で切り込む事で怪物達の連携を崩し包囲に穴を作る。
「突破したぞ!急げアギト!!」
 速く来いと目配せで訴えるアトシュに、言われなくてもと駆けだすアギト。切り裂かれた海獣達を踏み越えて二人は遂に包囲を突破したかに見えた。
 だが、怪物海獣達が一斉に溶けたチョコレートを投げ始め、その内の一つがアギトの足元に命中し滑らせたのである。
「アギトォォォ!!」
 尻もちをついて転んだアギトが痛みに声を上げる前に、群がった怪物海獣達は彼の口へチョコレートを押し込もうとする。彼を助けようと足を止めたアトシュだったが、既にアギトの姿はスク水と海賊達の中に埋もれて姿が見えない。
 それでも見捨てるわけにはいかないと、アトシュは一歩を踏み出すが、その時にアギトの手が怪物海獣達の塊の中から飛び出して、アトシュに向けて先に行けとも取れるようなジェスチャーを取ったのである。
「……チクショウ!!」
 果たして本当にアギトがその様な意思をもってジェスチャーを残したかどうかはともかく。彼の行動は、アトシュに冷静な行動を取らせるには充分だった。戻りかけた足を止めて踵を返すと、必ず巫女達に償いをさせると言う決心を胸に、彼は森の更に深くへと走り去ってゆくのであった。

 次々と歴戦の猟兵達が、怪物海獣達の手に掛かり犠牲となってゆく。
 だがしかしだ。例えそのような者が無くとも、人とは得体のしれない物に対して時に心が脆くなる生き物である。
「何がかなしゅうてあんなもん見なきゃーならんのだ!いくら戦争に勝つ為とは言えどうしてあんなもの……うぇぇ……」
 余りのストレスから吐血し口元を真っ赤に染めながらも、心の底から怪物海獣達への嫌悪感を叫びながら志乃はユーベルコードを発動させると次々に海獣達を炎の海へと叩きこんでゆく。
 頭の上にウサ耳を生やし、スク水を身に着けた、全身毛むくじゃらな巨漢の男海賊の様な怪物海獣達の姿を見る事は志乃にとって苦痛その物であった。心労から今にも倒れそうな志乃へと、燃え盛る炎を飛び越えて一匹の怪物海獣が襲い掛かろうとする。
「事件は会議室で起きてるんじゃない!!無人島で起きてるんだぁ!!」
 あわやという所の志乃を救ったのは、宙に浮かぶ黄金のバットであった。こころのユーベルコードによって、複製されて宙に浮かんだ黄金バットは、猟兵達に近づく怪物海獣達の股間を叩き潰すよう命令を受けている。人体の急所を激しく強打されて、苦しみ悶えるへ介錯であると本物の黄金バットを構えたこころは、何処かで聞いた事があるような科白と共に怪物海獣の頭を強く殴打し気絶させてゆく。
「絶対チョコレートなんて食べないからな。あいつ等を恋人呼ばわりするなら死んだほうがましだ!死んでも!なんなら舌噛んで死んでやる!!」
「ルナメルさん直視はキツイです!!変態への殺意が抑えきれません!!」
 猟兵達と海獣達の戦闘力を比較すると、よほどの事がない限りは猟兵達が遅れを取る事は無いと言い切れる程ではあった。問題なのは大本を潰さない限り永遠と湧き続ける数と、その大本がいまだに判明していない事。後は彼ら二人の様に、彼というか彼女と言うかの見た目があまりにもあれ過ぎる事であった。
「ウーサァー!!」
「うへへへへ……正直な話するなら島ごと燃やした方がいいんだけど、それだと他の猟兵ががが」
「近寄るな変態!!アンタ達には拒否権はない!!!も、もう一歩でも近づいたら容赦しないぞ!!!」
 最早正気を失いかけている志乃に対して、彼女よりかは幾分かまだ余裕があるこころが黄金バットを構えて前に出る。何とかこの場を切り抜けようとする二人の耳に、聞いた事のある声が届く。
「嗚呼……苦戦しているみたいですねハニー」
 怪物海獣達をかき分けてやってきたのは、先程島を探索する為に別れたばかりの猟兵、アギトの姿であった。
「……アギト……さん?なんで……」
「気が付いたのですよ……ハニーたちの素晴らしさに」
 信じられないという表情を浮かべるこころに対し、アギトは恍惚とした表情で怪物海獣達のハニーと呼びその素晴らしを語ってゆく。
「皆いい子達なんですよ?僕が何ををしていても何も聞かずにそっとしておいてくれるし、手伝ってほしい時には手伝ってくれる……最早、僕が探していた妹はハニー達だったんだと言わざる負えないでしょう!!」
 いや絶対にそんな事はないのだが、否であると突っ込める人物は今この場に存在しない。あくまで怪物海獣達の存在が行方不明となり探している妹と同じくらいの存在となったという証なのであろうが、目の前にいる二人の耳にアギトの言葉は耳に入ってはいなかった。
「……うそ、だよね?」
「嘘なんかじゃありませんよ?ほら見てください、ハニーの愛は心がない無機物達にだって通じるのですから」
 心此処に在らずと言ったこころと志乃に対し、アギトの言葉と共に現れたのは無数のキャバリア軍団である。此処にいる彼等は知る由もないが、彼等は通称にぃなちゃん軍団と呼ばれる存在であり、ニィナが逃げる為に囮にしたキャバリア達であった。
 例え無機物であろうと怪物海獣達のチョコレートを食したと言う事実があれば心の無い物達であっても、彼等のハニーとなってしまうという事を突き尽きられた二人の心の奥で。
 ぷっつりと、何かが切れた。
「さあ、共にハニーとなりま――」
「うん、潰そう」
 かつての仲間であった慈悲故、黄金バットの峰うちによってアギトを気絶させるこころ。
「もう駄目だ。私の中のシャー君が言ってるんだ。即潰そう。完膚なきまでにボコス♪って」
 虚ろな目のまま、宙に浮いた黄金バットを振り回し次々と怪物海獣達をなぎ倒してゆくこころ。当のこころの中に潜むシャーくんだが『そんな事俺様言ってないぞ!?目を覚ませ!!なっ!?』と抗議の声を上げているがこころへ声が届く事はない。
 一方の志乃であるが、何処からか取り出したガソリンが入った容器を両手に持ち、地面へ巻いてた。
「……とんでもねえことしてくれやがったな巫女」
 ぼそぼそと何事かを喋ってはいるが、その声に生気らしき物は感じられない。全てのガソリンを巻き終えた彼女は、空になった容器を投げ捨てると、ユーベルコードを放ち、辺り一帯に火を放ち始めたのだ。
「他の戦場でも許さねえ!!決めた!!覚悟しやがれ!!」
 引きつった笑顔を浮かべながらガソリンをばら撒き辺り一帯に火を放つ志乃の姿に、最早正気を感じる事はない。
 猟兵と言うよりも変態スレイヤーと呼ぶべき存在と化してしまった二人は、怪物海獣達をこの世から駆逐するべく、進撃を開始するのであった。

「ウーサー……」
「ダーリィーン……」
 此処にも、猟兵を囲む怪物海獣達の姿がある。
 だが、その姿は他の者達とは違い猟兵達に付き従っている様にも見える。かといって、その中心にいるリーヴァルディがハニーと化していたかと言えばそれは違う。彼女の目には確かな意思の光があり、どちらかと言えば意思の光がないのは怪物海獣達の方である。
「……逆に考えるんだ。別にダーリンと喚ばれても良いやって考えるのよ」
 リーヴァルディが行った事はたった一つ、周囲の存在を誘惑して洗脳する吸血鬼の魔性の香気を放ち続けると言う、それだけである。彼女を中心に周囲を漂う香りは無差別に彼女へと近づく者へ、彼女へ忠誠を誓わせる魔の香気だ。
 彼女にとって数の多さは障害にならず、彼等の見た目も故郷にいた者にも彼等と似たような者がいたという事もあり苦になる事はない。
 自分が愛する者は一人であるが故に、そのチョコレートを食す事だけは受け付けないとしながらも、ほぼ完璧に怪物海獣達を支配下に置いたリーヴァルディは、彼等に彼らが生まれた巣穴までの案内をさせていたのである。
「成程。あのような手段もありましたか」
 樹上すれすれをキャバリアで飛行して、リーヴァルディのユーベルコードの影響を受けない様に距離を取りながら彼女へと付いていたコケーシは感嘆の声を漏らす。例え変態的な見た目である怪物海獣であろうと、コケーシにとっては実らぬ恋を胸に抱く、か弱き心を持つ守るべき存在であった。
 故に彼はユーベルコードでこけし守護神を島中へと召喚し、彼等は海獣達のチョコレートを受け入れ、絶賛デートを行っていたのである。
 一体何を言っているのかわからないという者もいるかもしれないので、彼等のデートの一部をご覧いただこう。

「ダーリン♪(特別意訳:ねぇ、ダーリン♪あそこにおいしそうな木の実があるわ♪)」
「……(本当だね!よし、僕が取ってきてあげよう)」
 物言わぬこけし守護神と怪物海獣ではあるが愛の前には些細な問題なのであろう。お互いがお互いの言葉を言語としてではなく心で理解していた彼等は、この島定番であるジャングルデートを楽しんでた。
 怪物海獣が指をさす方向を見れば、ココナッツに似た木の実がたわわに実っている。彼女へと良い所を見せる為こけし守護神が取りに行こうと、木を上り始めようとするが、怪物海獣は彼を止める。
「ウーサッ♪(駄目よダーリン。ねぇ?肩車しましょう?そうすれば私が取る事が出来るもの♪)」
「……(それもそうだね!さあ、僕の肩に乗って?)」
 しゃがんだこけし守護神の肩に怪物海獣の足が掛かった事を確認して、再び立ち上がったこけし守護神。手を伸ばし、実った木の実を幾つかもぎ取り、二人で仲良く分け合いながら甘い時間を過ごす二人。
 別のこけし守護神と怪物海獣の姿も見てみよう。浜辺までやってきた先程とは別のこけし守護神と怪物海獣の二人組。海を見てはしゃぐ怪物海獣は海へと一直線に走り始める。
「ダぁーリーンー!!(見て!海が綺麗!!)」
「……(ホントだねハニー。でも、浜辺の中で一番綺麗なのは君だよハニー)」
「ウ、ウサァ……(だ、ダーリンったらやめてよもう)」
 思わず背筋が痒くなる言葉を、当人達にとっては祝福以外の何物でもないのであろう。突然こけし守護神がほんの少し浮かび海の上に立つと、空中で縦回転を行い水を海獣へとかけ始める。
「ウサァ!(キャッ!もう!ダーリンのいじわる!!」
「……(ははは、悔しかったらやり返してごらん)」
 ……なんだかそろそろ正気を失いかねない頃合いであるが故に、その他諸々の光景は省略する事とする。

 ともあれ、だ。こけし守護神達は海獣達の心を救う為に奮闘し、その際にコケーシ達から離れる様に誘導していたのである。偶に襲い掛かって来ていた海獣達もリーヴァルディの手に落ちた今、二人を妨げる者はおらず絵面はともかくとして順調に歩を進めていった二人は、遂に如何にもな洞窟の前へと辿り着く。
 此処に巫女達がいるのかというリーヴァルディの問いに頷く海獣達。此処で間違いないと確信を得た彼女は、海獣達をこの洞窟から離れる様に命令すると、いざという時には再発動できる様備えながらもユーベルコードを解除し、コケーシと共に暗闇の奥へと進んでゆく。
 洞窟の通路はコケーシがキャバリアに搭乗しながらであろうと余裕があるだけの広さがあり移動に困る事はなく、特に待ち伏せの様な物もないまま遂に最奥へと辿り着く。そこで二人が目にした物は異様であったと言わざる負えない。
 床には何やら怪しげな魔方陣が掛かれており、中央には巨大な子宮の様な形をした肉の塊が脈打っており、コンキスタドール『森羅の巫女』達がそれをぐるりと取り囲み、一心不乱に祈りを捧げているのである。
「……貴方達が消える前に聞いておきたいんだけど、この海獣?は貴女達の趣味なの?」
 最早ここまでくれば破壊は容易であろうと、どうしても聞いておきたい事をがあるとリーヴァルディは森羅の巫女へと問いを投げかけるがそれに答える者はいない。祈りを捧げる彼女達にリーヴァルディの言葉が届かなかったのか、或いは声を出すという機能を備えていないのか、それはわからないが求める答えが帰ってくることが無いと確認し終えたリーヴァルディは黒い大鎌を両手に構え、コケーシも先端が聖なるこけしを象った形をしているパイルバンカーを構える。
「イイイィィヤッホーーーウ!!」
 いざ襲い掛かろうとした時である。洞窟の入口の方からテンションの高い叫び声と共にけたたましいエンジン音が此方へと向かってきたのである。何事かと警戒する二人の目の前に現れたのはバイクを操るニィナと、それに同乗している澪、ヘスティア、アトシュの3人であった。
「いやぁ、4ケツとかサツに見つかったら免停待ったなしだったゾ☆」
「よくやったわニィナ!……あなた達が生み出した怪物のなんだから責任とって食え!!」
「これだけやったら帰るから許してぇ……」
「助かったぜニィナ!二人も無事で何よりだ」
 多人数が乗っているにもかかわらず、猛スピードで走行するバイクを見事なテクニックで止めて見せたニィナに、礼を言ったヘスティアは降りると共に巫女達へと途中で拾ったチョコレートを彼女達の一人の口へと無理やり突きつける。澪に関しては、最早猟兵としての使命感だけで心を保っている状態であり、4人がどれほど危険な旅路を送っていたかを証明していた。3人の乗ったバイクに途中から合流して同乗する事になったアトシュは、先にいた二人の存在を確認すると安堵の息と共に再開を喜ぶ。
「皆さんもご無事の様んで何よりです」
「急いで破壊するぞ。よくわからねぇがあちこちで火の手が上がっているし、アギトとオリフィスがやられちまってる。早く助けてやらねぇと」
 4人と無事に再開で出来た事を同じく喜ぶコケーシ。島のあちこちで異変が起こっている事を二人にも伝えたアトシュは手早く子宮の塊の破壊を催促し、無論それに異を唱える猟兵はいない。
 魔法が、斬撃が、銃撃が、刺突が、爆発が。ありとあらゆる破壊の力が子宮へと叩きこまれてゆき、子宮の形は徐々に、徐々にでは崩れ始めてゆく。これならば問題なく任務が終えられるであろう。やっと帰れる等と言った考えが6人の間で漂い始めた時である。
「ウーサー!!」
 子宮の危機に駆け付けたのは無数の怪物海獣達である。この洞窟は猟兵達が下ってきた道しか出入口がなく、またキャバリアが通れる程の道幅は、どれだけ大量の怪物海獣達が来ようと洞窟の出入口は彼等の移動を阻害する事が無い。このままでは無数の怪物海獣達に襲われてしまうのは必然であった。
「くそ!こんな時に!!」
「迎撃と子宮の破壊、二手に分かれましょう。私は迎撃に――」
「いたよぉ!シャーくん!!変態だよぉ!!」
「燃やせ燃やせ燃やせ燃やせ燃やせもやせもやせぇ!!」
 忌々しく舌打ちと共に悪態をつくアトシュ。ともかくの全滅を避ける為に二手に分かれる事を提案したリーヴァルディの言葉を遮り響いてきたのは、聞いた事があり、聞いた事の無い仲間の声だ。涙声を浮かべてこころの中で彼女を止めようとするシャーくんの必死な声はこころを始めとした誰にも聞こえる事はなく、宙に浮いたこころの黄金バッドが股間へと煌めく度に怪物海獣の何ともいえない絶叫が響き渡る。悶絶に苦しむ或いは二人の脅威に立ち向かおうとした彼等を、志乃のガソリンやユーベルコードが燃やし尽くしてゆく光景はまさに地獄絵図だ。最早どれだけの海獣達を屠ったのかすらわからない程、熟練の変態スレイヤーと化した二人の力は凄まじく、鎧袖一触と断言しても過言ではなかった。
 一体二人に何があったのかを詮索するよりも、この好機を逃すわけにはいかないと子宮に向けて最大の力を込めた一撃を放つ猟兵達。様々な武具やユーベルコードを受けて、遂に完全に子宮の形が崩れ、子宮に攻撃が向かっていようと気にもとめなかった巫女達と怪物海獣の肉体が、悲鳴と共にグズグズと崩れ、液体状の物体へと化してゆく。
 遂にすべてが終わったのだと確信し安堵する猟兵達だったが、一息つく暇もなく洞窟に振動が奔り、天井から小石がパラパラと舞い落ち始めたのである。
 直感的にこの洞窟が崩れる事を予感した猟兵達は、ニィナが急ぎバイクのエンジンを回し、それに再び3人が乗り、変態を見失い状況が読み込めなくなっていた二人をコケーシのキャバリアが拾う形で洞窟の入り口を急ぎ目指す。
 暫くして轟音を立てて完全に崩れ土煙を吹く洞窟。その土煙の中から――。
「……終わった?」
 立ち込める土煙にむせながらも、呟く澪の声があり。
「嫌な…事件だったわね……」
 それを肯定するヘスティアの声があり。
「……夕日が綺麗ね」
 あれほど高く上がっていた太陽は既に海の向こうへと沈みかけており、ダンピールとしての血が夜が来る事に多少の高ぶりを覚えるリーヴァルディの姿があった。
 犠牲を払いながらも遂に任務をやり遂げた猟兵達の、歓声が響き渡るがその心中は様々である。仲間を見捨てる事への罪悪感を感じている者がいたかもしれない。変態の恐ろしさを身をもって恐怖したかもしれない。
 だが、先ずはともあれである。犠牲となった二人を探し出し、帰るべき場所へと帰ろうという提案が誰かから上がり、それに反対する物は誰もいなかった事を明記しておこう。

 
 その犠牲となった二人についての話をしよう。
「……夕日がきれいだねハニー」
「ウサァ(うん、そうだねダーリン)」
 体育座りと共に海を見ていたオリフィスとアギト、怪物海獣達の間に漂っていたのは悲しみの感情である。子宮を破壊された事で姿を保つ事が出来ない彼等は、最後にハニー達と共に海が見たいと言いだし、その遺言を叶える為に彼等と共に海の見える崖の上まで来ていたのである。
「ハニー……消えるのですか?」
「ダーリィン……(うん……もう、体も動かないしね)」
 アギトの声に答えた様に、最早怪物海獣達は動く事もかなわない。チョコレートを食べたにぃなちゃん軍団や、こけし守護神達の力を借りて何とかここまでやってきた怪物海獣達の声も、最早弱弱しい物だ。今、ダーリンとハニーとの絆は死によって断たれようとしている。その事に、耐えられないと声を上げる二人。
「まだね。私ね!ハニーにいっぱい見せたいダンスがあってさ――」
「僕も耐えられない!親しい誰かと別れる悲しみなんて――」
 このままでは共に死すら選びかねないと言った二人を、最後の力を振り絞った怪物海獣達は。
「……ウッサァ!!」
 二人を、海へと突き落としたのである。
 信じられない様な物を見たという顔をして落ちてゆく二人に海獣達は確かに『貴方は生きて』と伝えていたような気がしたが、その事が二人の耳に届く事はない。
 海へと落ちた二人は、本能に従い水面へと泳ぎ空気を肺に取り込むと、叫ぶ。
「ぷっはっ!はに……うん?」
「……僕達、何をしてたのでしたっけ?」
 自分達が一体何をして、何故海の中にいるのか理解できない二人。その崖の上では何も言わぬ、にぃなちゃん軍団とこけし守護神。
 そして彼等の足元には、物言わぬどろりとした甘い液体だけが地面に残っていたのであった。

 かくして。これが忌まわしき島での全容である。余談ではあるがかつてこの島はカカオが名産品であったという噂があったが、真偽の程は最中ではない。かの怪物海獣達はその島のカカオが関係しているのではないかとの話も上がったが、関係者の一人は。
「あははっ……、なんかよく覚えていないんだよね。でもすっごく美味しかった気がする!」
 という話しかせず、もう一人に至っては。
「すみませんノーコメントで。あれが妹とかホントないんで」
 と、事実を話す事はなかったという。
 ただ一つ言えることは、この島は今でも存在しており、もしかすればいずれ第二、第三のウサ耳スク水海賊チョコレー島が現れないとも限らない。故にこの手記を残すことにする。

 願わくば、この手記の内容が役立つことが永遠にない事を祈るばかりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月08日


挿絵イラスト