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羅針盤戦争~食欲の大波

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #ごはんもの

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●呑み込む
 メガリス『白亜の槍』を起動。三叉に分かれた穂先を、今回の目標である島へと向ける。
「ハ! この程度の島、すぐにオレが平らげてやるよ」
 威勢の良い笑い声に応えるように、海は泡立ち、風が逆巻く。元は深海人である彼女にとって、地上は少々やりにくい場所である。しかしこの槍の力があれば、話は別だ。穏やかだった海はすぐにその姿を変えて、島の半ばまで届きそうな大波が生じる。
「いっくぜェ!!」
 その勢いに身を任せ、コンキスタドールは、地元の海賊たちが根城にしている建造物へと襲い掛かった。
 大波と、にわかに上がった水位と共に、一気呵成に攻め立てるのが彼女の流儀だ。貪欲な本能のままに、巨大な建造物の中を勢いよく進み、道中に存在する動物、植物、生きとし生けるものを、全て餌として……。

 餌として……。

「オイィ! この島旨そうなもの何にも無いじゃねえかァ!!!」

 スペースシップワールドから落ちてきたこの島には、機械しか存在していなかった。

●その少し前
「諸君、これを見てくれたまえ」
 八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が、現在向かっている島の資料を提示する。『カーティリジ島』、ここに居る猟兵達ならば見た目から簡単に判別がつくだろうが、それはスペースシップワールドから落ちてきた宇宙船の一部だ。既にほとんどの機能を停止しており、今はとある海賊達が根城にしているだけの、寂れた島である。
 本来ならば立ち寄る意味の薄い場所なのだが、戦争となれば話は別。七大海嘯の海域を目指すための一歩として、この島が必要なのだ。
「当然、コンキスタドール達もこの島を狙っているだろう。鉢合わせすることも十分に考えられる」
 そして、ここを根城にしている海賊に渡りは付いている、と彼女は続ける。特にこちらを歓迎している様子はなかったが、海賊達もコンキスタドールが攻めて来れば、こちらに協力してくれるだろう。
「土地勘、という言い方で合っているかな。この島について一番詳しいのが彼等だ。共に戦うことが出来れば、迎撃戦を優位に進められるだろう」
 宇宙船であったというだけあり、内部はある程度入り組んだ構造となっているだろう。だが居住区画などを抜けて、資材置き場や小型艇の発着スペースなどまで行けば話は別だ。可能ならば、そういう場所を戦場にしたいところだが……。
「それと、まだ生きている機能の確認もしておきたいところだ。我々では有効活用は難しいかも知れないが、地元の海賊達ならばうまく使えるかも知れない」
 何にせよ、心してかかってくれたまえ。そう言って、彼女は鉄甲船の向かう先、くすんだ鋼色の島へと視線を向けた。


つじ
 こちらは『羅針盤戦争』の一章構成のシナリオになります。襲い来るコンキスタドールを退け、七大海嘯の本拠地を目指す一歩としましょう。

●カルカーロ・クレス
 「七大海嘯」麾下の精鋭コンキスタドール。大波と共に島(宇宙船)内を突き進んできます。
 腹ペコで凶暴、直情的で頭がよろしくないタイプです。ただし、その分能力は高く、水中での直接戦闘となると苦戦は免れないでしょう。
 メガリス『白亜の槍』の力で大波と水柱を自在に発生させ、そこを泳ぎながらの戦闘を得意とします。

●海賊達との協力(プレイングボーナス)
 宇宙船内の特定の場所まで敵を誘導すると、海賊達が宇宙船の機能を使って、敵を海水から引き離してくれます。一時的ではありますが、敵はほとんど機動力を失うので、楽に攻撃することが出来るでしょう。

 誘導の方法はお任せします。
 相手は腹ぺこなので、『ぱっと見めちゃめちゃ美味しそうなものを見せる』等で楽に釣れます。

 以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『カルカーロ・クレス』

POW   :    こいつの力を見せてやる!
装備中のアイテム「【『白亜の槍』をはじめとしたメガリス 】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    てめえ! よくもやってくれたな!!
敵より【ダメージを負っている 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    ああ、もうめんどくせえ!!!
【怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠八津崎・くくりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎、連携OKデース!

奴は腹ペコなのでありますか。それなら良い物がありマース!

海賊の方々に教えてもらったポイントにて、格納型メイド用キッチンを展開。【料理】を始めマース!
ダークセイヴァー産の活きのいい魔牛のフィレ肉を、グリードオーシャンで手に入れた香辛料でジューシーに焼き上げてステーキを作りマース。
あとは香ばしい匂いをパタパタと扇ぎ、誘引しマース!

嗅ぎつけて来てくれたら、合図を出して作戦開始!
陸上に打ち上げられたカルカーロへ向けて、遠くから《ヴァリアブル・ウェポン》の【一斉発射】を攻撃力重視で撃ち込むであります!

ステーキは戦闘後に海賊エブリワンとの打ち上げで食しマスネー。


アルデルク・イドルド
アドリブ連携歓迎

とりあえず美味しい【料理】作ってみるか?
幸い海産物は山ほどあるしな。
とりあえず海鮮バーベキューを迎撃地点(小型船の発着スペース)で作っておいて。
敵の目の前で食べて見せて【誘惑】
【誘惑】したらそのまま迎撃地点まで誘導。
ま、簡単に言えば食べ物で釣る。だな。

敵が迎撃地点の海鮮バーベキューに気を取られてる間に。他の海賊達から宇宙船に残る機能を使って援護してもらう。
あとは俺もUC【海神の弓矢】で攻撃。

食い意地張るのもいいが状況くらいは見ておこうぜ?



●バーベキュー&ステーキ
 荒ぶる海面、立ち上る水柱。大波と共に宇宙船内の水位は上がり、それと共にコンキスタドールは進撃を続けている。ここが海水に没するのも時間の問題で、運が悪ければコンキスタドール自身に蹂躙されてしまうだろう。泡を食って駆け回る現地の海賊達を宥めて、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)とアルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は迫る敵についての情報を聞き取った。
「つまりここに誘導できれば、反撃の手はあるんだな?」
「ああ、俺達も黙ってやられてやるつもりは無いからな」
 この島――というよりは宇宙船だが、その機能を活かして、敵を嵌めることができるだろう……そんな話だったが。
「ま、それもあいつがここまで来ればの話だ」
 肩を竦める彼等の言葉に、バルタンが頷く。相手を誘導したいのなら良い方法がある、と。
「奴は腹ペコなのでありますか。それなら良い物がありマース!」
 早速その場所に進み出た彼女は、ガコンと音を立てて格納していたそれを展開。一通りの調理器具と調理台――つまり即席のキッチンが、宇宙船の一角に出来上がった。相手を誘い出すのに有効な一手、それは勿論『美味しい料理』である。現場で料理を始めるアイデアは、メイドのバルタンならではのような気もするが。
「とりあえず、美味いもん作ってみるか」
 アルデルクの方にもその発想はあった。幸い海産物には事欠かない。地元海賊の協力も得て、甲殻類やら貝類やらを焼き網に乗せていく。
 一方のバルタンは他世界の食材を使用。メインはダークセイヴァー産の魔牛フィレ肉だ。そこにグリードオーシャンでの交易に使われている香辛料を振りかけ、ジューシーなステーキを作り始めた。
 双方ともにシンプルながら香り高い料理。じゅうじゅうと音を立てて煙が上がり、焼けた脂と香辛料の入り混じった香りが、パタパタと扇ぐバルタンのそれに合わせて、宇宙船の中を漂っていった。
「さーて、ドーデショウカねー」
 待つこと暫し、料理を続ける二人と、それを心配そうに見守る現地海賊たちの元に、「うおおおお」みたいな声が聞こえてくる。
「どうやら、釣れたらしいな」
 安心するような、呆れるような、そんなアルデルクの呟きと同時に、水流と共にコンキスタドールが姿を現した。
「こんなトコで料理だとォ!? 何やってんだバカかてめェらよくやった!!」
「焼き加減は如何シマス?」
「当然レアだ!! 焼きすぎんなよ!!!」
「ああ、だからそんなに急いでたのか……?」
 頷きながら、アルデルクは摘まみ上げたエビの殻を割って、おもむろに食べ始める。
「てめェ!! このオレを差し置いて何食ってんだこの野郎!!!」
「あんたにやると言った覚えはないな」
「このやろう!!!!」
 語彙が少ないのか同じことを叫びつつ、カルカーロは二人に……正確にはその料理に向かって飛び掛かる。そのタイミングで。
「それでは海賊エブリワン、ヨロシクデース!」
「はいよー」
 がしゃんと音を立てて、部屋の隔壁が閉じる。歪んだ扉がそこを塞いでくれるのは一時のことだろうが、それでも、コンキスタドールの引き起こしていた洪水はそこで堰き止められ、泳ぐための水をシャットアウトされたカルカーロがべちゃっと床に墜落した。
「え……あれ? 水止まった?」
 深海人である彼女には浮遊能力もあるはずだが、突然の事態に対応しきれなかったのか、ぴちぴちと床で跳ねるばかり。
「水揚げされた魚と変わりマセンネー」
「食い意地張るのもいいが状況くらいは見ておこうぜ?」
 明らかなその隙に、バルタンが内臓武装を展開し、アルデルクの手には海神の弓矢が握られる。
「あっ、卑怯だぞてめェら! せめてオレの分も残しておいて――」
 手の届かぬ場所からの銃弾と魔法矢が、驟雨の如く降り注ぐ。二人の猟兵による一斉射撃に耐えかねて、カルカーロは這う這うの体でその場から逃げ出した。

「上手くいったようだな」
「ええ、それデシタラ――」
 勝利を収めたアルデルクとバルタンは、その場で協力してくれた海賊達の方へと向き直る。戦いを終えたそこには、良い感じに焼けた料理が多数、並んでいるわけで。海賊で勝利と言えばやっぱり宴である。
「エブリワン! ステーキとバーベキューで打ち上げシマショー!」
 いえーい太っ腹だな猟兵は! という歓声が多数上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
お?キャラ被りか?
しかし圧倒的に妖艶美女なのは俺の方だな!勝利!
ふっ、雑魚め!魚だけに、雑魚め!!!

でもその牙かっけーな!その点は認めてやろう!

世界を牽引する圧倒的妖艶美女な俺が用意したのはこれ!
はいっ、りーんーごーあーめー!
赤くて綺麗でかぁいいだろ?しかもうまい!
でもお前にはやーらん!欲しけりゃ掛かってこいやァ!

煽りに煽ってから敵の誘導だ!
【空躁】使ってすたこらさっさ!
海賊のおっちゃん達ー!獲物だぞー!
海賊のっ!ちょっといーとこ見てみたいっ!

敵が良い具合なとこに来たら【空躁】で接近
「怪力」ドカ盛りの蹴りで吹っ飛ばすぞ!
とびきり痛ぇのをご馳走してやる!

泳げるのなんて全然羨ましくねぇんだからな!



●りんご飴
「テメェらも何か旨いもん隠してんだろ! 出せやオラーッ!!」
 宇宙船内を上ってくる濁流、その轟音が響く中でも、コンキスタドールの叫びは花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)の耳に届く。目的を定めたら一直線、よく言えば豪快なその声。そして現れた敵の姿に、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は似た者の気配を嗅ぎ取った。
「お? キャラ被りか?」
「あァ? 全然似てねェだろよく見ろよ」
「そうかそうか、そうだよな。圧倒的に妖艶美女なのは俺の方だもんな!」
 一方的な勝利宣言を叩き付け、八千代は高らかに笑ってみせる。
「ハァ!? 今の時代は深海人だろ魚混ざってねー癖に調子乗ってんじゃねぇぞ?」
「ふっ、負け惜しみか雑魚め! 魚だけに、雑魚め!!!」
「誰が雑魚だオラ!! うまいこと言ったみたいな空気出してんじゃねえ!!!」
 挑発的な言動には滅法弱いらしく、怒声を張り上げたサメ女が牙を剥く。今にも噛み付いてきそうなその様子に、八千代はさっと踵を返した。
「その牙かっけーな! その点は認めてやろう!」
「テメェもイカした角してんな! でもザコっつったのは許さねぇかんな!!」
「おーおー気にしてたんか? そう怒るなよ、ほら」
 はい、と口にして、八千代が取り出したのは、そう、りんご飴だ。突如鼻先に差し出されたそれに、よほど飢えていたのかカルカーロはぴたっと動きを止めた。
「赤くて綺麗でかぁいいだろ? しかもうまい!」
 よだれを口の端から垂らしたまま、じり、と敵が間合いを窺う。ごくりと唾を飲み込む音が聞こえたところで。
「ま、お前にはやらねーけど!!」
「っざけんなそれ寄こせェ!!!」
「欲しけりゃ掛かってこいやァ!!!!」
 似たレベルのやりとりを経て、八千代は強く床を蹴る。凄まじい脚力を活かしてスタートダッシュを決めた彼女は、そのまま空中でさらなる一歩を踏み出した。『空躁』、ユーベルコードの力で空を駆けた彼女は、そのまま傾いた宇宙船の通路を上へと向けて逃れていく。
「待ちやがれェ!!!」
 それを追うは、突如勢いを増した水柱。大波を引き連れ立ち上ったそれの中を、カルカーロは力強く泳ぎ、迫る。
 後ろを振り向いた八千代は、宇宙船内がどんどん水没していくのを目にして、少しばかり頬を引き攣らせた。
「あァン? その顔色……さてはテメェ泳げねェな!?」
「は?? 別に泳げなくても陸で生きてりゃ問題ねーし! 羨ましくなんてねぇからな!」
 何にせよ捕まるか、墜落して水の中に引き摺り込まれでもすれば命はないだろう。先程よりも力強く空気を蹴り付けた八千代は、通路の先、「こっちに来い」と合図を送る海賊の方へと向かう。
「おっちゃん達ー! 獲物だぞー!」
「おうよー、任せときな!」
 小型艇の格納庫跡らしきそこに、八千代に続いてカルカーロが飛び込んだ、そこで。
「海賊のっ! ちょっといーとこ見てみたいっ!」
「よっしゃ吊り上げろー!」
 牽引用のトラクタービームが起動、迫りくる大波から、深海人のみを引っ張り上げた。
「あっ! テメェこら! ちょっと待てッ!!」
 まだ水位の届いていない床に下ろされた彼女は、乾いた地面の上でビチビチと跳ねている。
 そこに、満面の笑みを浮かべて八千代が降り立った。
「とびきり痛ぇのをご馳走してやる! これでも喰らってろ!!」
「ギャーーーッ!!?」
 怪力を誇る彼女の渾身の蹴りを受けて、カルカーロはすごい勢いで吹き飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハニーレモン・メルティキッス
誘導なら任せなさい。
恋愛テクニックで培った【お誘い】スキルがアタシにはあるわッ!
手持ちのスイーツでもひらひら掲げて誘き寄せるとしましょう。
わ、激しい攻撃。

——ところでアンタ、好きなコとかいる?
恋愛経験とかは?
……あら、答えてくれないの。残念。

「——遅れてるわねッ!!」

恋愛トーク即ちUC発動の合図!
相手が恋愛トークに乗ってこないなら、その動きが遅くなって誘導しやすくなるのみ。

敵が遅くなったなら、あとはじっくり海賊達の待機してる目的地まで誘導。
お腹減ってるのにどうでもいい話されるのは、さぞ腹立たしいでしょ?
海賊たちが動きを止めたなら、はい、口に沢山放ってあげる。
お望み通り、この毒スイーツをねッ!!



●恋とは駆け引き
 コンキスタドールに攻められ、慌てふためく地元の海賊達。けれど彼等は言う、場所によっては、彼等も一矢報いることが出来るはずだと。
「そう、じゃあアイツをここまで連れて来ればいいのね?」
 話を聞いたハニーレモン・メルティキッス(炎にして毒、病にして蜜・f31585)は、その『一矢』に手を貸す事に決めた。
「誘導なら任せなさい。恋愛テクニックで培ったスキルを見せてあげるわッ!」
「マジかよねーちゃん! それじゃ頼んだぜ!」
 海賊達の威勢の良い声に見送られながら、彼女は敵の進行ルート上へと向かう。普段から持ち歩いているスイーツがあれば、とりあえず注意は引けるだろう。そもそもピンク色の彼女は良く目立つ。見落とされることもないだろうし――。
「おーおーイイモン持ってんじゃねーか! 一つと言わず全部! オレに寄越しなァ!!」
「わ、熱烈ね」
 実際問題、食いつきは非常に良かった。遠目からハニーレモンを発見したカルカーロは、召喚した波に乗り、文字通り怒涛の勢いで迫る。そんな相手に対し、ハニーレモンが投げたのは、一つの問い掛けだった。
「――ところでアンタ、好きなコとかいる?」
「ハァ?」
「恋愛経験とかは?」
「知るか! オレは腹が減ってんだよ!!」
「あら、答えてくれないの。残念」
 当然、まともな答えは返ってこない。だが向かい来る敵への対応としては不可思議なそれも、彼女の狙いの内である。
「――アンタ、遅れてるわねッ!!」
「なッ――!?」
 そう、文字通り『遅れている』。彼女の言葉をトリガーとするユーベルコードによって、カルカーロの突進の勢いに急制動がかかり、共に進むはずの大波が空しく通り過ぎていく。
「テメェ……何しやがった……!?」
 速度を落としながらも泳ぎ進む彼女から、ハニーレモンは余裕の表情で、一定距離を保って走り出した。
「恋愛トークよ。色気より食い気、なんていつまでも通用しないの、アンタだって気になる相手の一人や二人いるんでしょう?」
「くっそ、わけわかんねェ……!」
「全然無いのかしら? でもほらアンタどう見ても肉食系でしょ? 一回落ちると一直線だと思うのよねー」
「ハーッ! そんなにご希望なら、オレが喰らい付いたら離さないってところも見せてやるよ!!」
 えっそれ恋愛的な意味で? 動きの制限を脱したカルカーロは、急加速してハニーレモンに襲い掛かる。大口を開けて跳び上がった敵は、宣言通りその牙の鋭さを見せつけ――。
「ほんとに誘い出してきたのかよ、やるなねーちゃん!」
「えっ」
 空中で、海賊達の操作する荷運び用アームに捕まった。
 水揚げされた魚よろしく困っている相手へ、ハニーレモンガ微笑みかける。
「……お腹減ってるのにどうでもいい話されるのは、さぞ腹立たしかったでしょ? お詫びと言っては何だけど、これを食べさせてあげるわね」
 先程から囮に使っていたスイーツを手に、そう申し出るが……鮫は割と嗅覚が鋭い。
「いや待てテメェ、やめろ、オレにだってわかるぞそれは――」
「遠慮しないで。どうぞ、召し上がれー」
 わめく口にも、お腹に開いた凶悪な顎にも、ハニーレモンの毒スイーツがぽいぽいと投下されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
まぁ怖い!
大食らいの鮫さんだなんて
哀れな兎は丸呑みかしら?

お料理の用意はないけれど
生食を嫌う程お行儀がいいわけではないでしょう?
ほら、アリスを食べてごらんなさい?
できるものならね! とバカにするようお尻を叩き
人喰いオウガのお墨付きの身体で【誘惑】しながら
誘導場所まで【逃げ足】活かして駆けていく

大波に呑まれないよう艦内の僅かに残った足場を
【足場習熟】【ジャンプ】軽やかに跳び越え、乗り越え、駆け抜ける

そうして誘導場所に着いたなら
打ち上げられた無様な姿に
さっきまでの勢いはどうしたのかしら?
わざと怒りを煽ってみせて
その大きくなった口の中へと
食べられるように跳び込んで
お腹の中から【復讐の一撃】叩き込む!



●ウサギとサメ
「食い物! 何か旨そうなもの! どうせどっかに隠してンだろ出しやがれェ!!」
 半ば廃墟と化している宇宙船の中に、コンキスタドールの叫びがこだまする。猟兵達に迎撃されながらもめげない、というか一層食欲を増大させて進撃する敵の姿に、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は軽く口の端で笑みを作った。
「まぁ怖い! 大食らいの鮫さんだなんて、哀れな兎は丸呑みかしら?」
 その台詞の通り、メアリーが敵を引き付けるために用意したのは、料理ではない。そもそもあのサメ女は「調理されていないと嫌だ」などと言うタイプではないだろう。ならば、彼女の与し慣れた人食いオウガ達と変わらない。
 彼等にとってのご馳走は、そう。『アリス』だ。
「ほら、アリスを食べてごらんなさい? できるものならね!」
 馬鹿にするようにお尻を叩いて、メアリーはその肉体を餌に、コンキスタドールに誘いをかける。美味しそうな肢体も、その挑発も、相手にとっては十分に効果的だったようで。
「言ったなテメェ! すぐに捕まえてやっから、オレの腹ン中で後悔しなァ!!」
 高らかに吠えると、槍の穂先をメアリーへと向け、進路を変更。大波と濁流に乗って、彼女を追いかけ始めた。
 あっという間に上がっていく水位。足元を浸す水が枷となるのを嫌って、メアリーは軽やかに跳び上がる。壁から突き出した廃材を、半ば崩れ落ちたキャットウォークを、順に足場にして、大波の届かぬ場所へと逃れていく。
「すぐに捕まえる、って言ってなかったかしら。サメって意外とのろまなのね?」
「ほざいてろッ!!!」
 尾鰭を力強く振るって、敵が加速する。水上を跳ねるウサギに喰らい付くべく、サメが飛び出したそこで、その足元の地面が揺らいだ。
 逃げるメアリーは、足場を選びながらも予定の地点まで敵を引っ張ってきていた。それゆえにこれは、待ち受けていた海賊達による一手だ。今両者が見ている床は、傾いた宇宙船の一室の『壁』にあたる部分らしい。彼等の操作に従って、扉がいくつか口を開けて。
「アーッ!!?」
 そこから急速に水が抜けていき、取り残されたカルカーロは、打ち上げられた魚状態でびちびちのたうっている。どうやら体勢を立て直すのに時間がかかっているようだが。
「あらあら、さっきまでの勢いはどうしたのかしら?」
 動きの鈍ったそこにあえて歩み寄り、メアリーはさらに挑発を追加してやる。
「この……ウサギ風情が……!」
 度重なる挑発に我慢の限界を迎えたか、敵はため込んだ怒りをそこで爆発させた。
「調子に乗ってンじゃねーぞオラァ!!!」
 溢れ出る力に任せ、その身が巨大に変貌を遂げる。開いた顎は、メアリーを悠に一口にできてしまうだけの大きさを誇っていた。鋭く巨大な歯の並んだそこへ、メアリーは自ら身を投げた。

 いただきます。こうしてウサギは丸呑みにされてしまう。
 ――が、彼女は成すすべなく食べられるだけの、『哀れなアリス』ではありえない。メアリーの手にした刃が、呑み込まれる寸前の口内で閃く。
「う、がァ――!!?」
 冷静さを欠いた結果の手痛い反撃。涎の代わりに鮮血が溢れ、飛び散る。堪らず敵は、裂かれた口から正体を見せた狩人を吐き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花染・あゆみ
ほんと。だ
機械ばかりで美味しそうなもの、何も無い…
……はっ!
美味しそうなフカヒレが……!
鮫って高級食材、ですよね

UCで変身して、幻獣の姿に
幻獣の姿でも、美味しそうに見えるのでしょう、か…
わたしの方は、貴女がフカヒレにしか、見えないのですが…
【おびき寄せ】ます
【ダッシュ】で逃げて道が悪くても【悪路走破】を合わせて、誘導できたら…
攻撃は【激痛耐性】で耐え、ます
高級食材を前に、そんなことで、止まるわけないじゃないですか…!
フカヒレへの攻撃は【捨て身の一撃】で【吹き飛ばし】て、【蹂躙】します
狩られる前に、狩るのが礼儀ですから…!
でも、近くで見ると、美味しく無さそうですね…
止めときましょう…



●高級食材
「クソが! オレが直々に襲撃してるんだぞ! メシの一つくらい用意しとけよ!!」
 めちゃくちゃな理屈を述べながら進撃を続けるコンキスタドール、カルカーロ・クレスの叫びを聞いて、花染・あゆみ(夜明けの光・f17667)は改めて周りに目を向ける。ついでにここまで歩いてきた記憶も手繰ってみるが。
「ほんと。だ。機械ばかりで美味しそうなもの、何も無い……」
 こちらはこちらで食べる事の好きなあゆみは、そう物足りなさそうに頷いた。別にそれであゆみが困る事はないけれど、やはり落胆してしまうもので……。
「……はっ!」
 そんな時、遠目に敵の姿を確認したあゆみが眼を見開いた。
「美味しそうなフカヒレが……!」
「あァ? テメェいまなんつった?」
「いえ、何でも……」
 思い切り睨みつけられて、あゆみがそっと視線を外す。じり、と少し後退り、間合いを測って、彼女はついに覚悟を決めた。
 本当の姿を、少しだけ。あゆみの背に炎の翼が現れたのと同時に、その姿が大きく変貌する。
「なん……だとォ……?」
 動揺を浮かべる敵の前には、先程までの少女からは想像もつかない獣、炎獄の幻獣イフリートの姿があった。彼女自身は「醜い」と称するかもしれないが、それこそがあゆみの真の姿。身長を追い抜かれたカルカーロは、少しの間呆けていたが、すぐに我に返った。
「ハッ! いいねェ、食いでがありそうじゃねーか!」
「そうですか……わたしの方は、貴女がフカヒレにしか、見えないのですが……」
「図体と一緒に態度まででかくなりやがったか!? なめんなよ!!」
 すぐに咬み千切ってやるからな。そう宣言したカルカーロが槍を向けると、足元まで上ってきていた水が再度荒れて、彼女を運ぶ大波が生まれ出ずる。尾鰭を打ち付けるように加速したカルカーロに対し、あゆみは四本の足で強く床を蹴り付けた。同時に白く輝く翼が振るわれて、巨体はそのサイズに見合わぬ速度で駆け始めた。
 半壊し、もはや廃墟に近い宇宙船には、崩れた建材や開かなくなった扉など、障害物も多い。それらを時に乗り越え、時に弾き飛ばしながら、あゆみは進む。だがそのスピードは、大波と共に泳ぐ敵を引き離すには至らないものだった。
「おいおいそんなんじゃすぐに捕まえちまうぜ? 諦めた方が良いんじゃねーかァ?」
 せせら笑う敵の言葉に、しかしあゆみは動じた様子を見せず。
「いえ……高級食材を前に、諦めるわけないじゃないですか……!」
「ほんっと生意気だなテメェ」
 ならばとどめをくれてやろうと、カルカーロは波を蹴り付け、一気に加速する。力強い一掻きで宙を舞い、あゆみへと喰らい付きにかかったそこで。
「今だ! 扉を閉めろー!!」
 待ち受けていた海賊達が手を打った。
 あゆみが通り過ぎた直後に素早く扉が締められ、カルカーロがそれに衝突する、びたんという酷い音が響く。すぐにもう一度開いた扉の前では、カルカーロが床に突っ伏して痙攣していた。
「何だか悪い気もしますが、狩られる前に、狩るのが礼儀というもの……!」
 フカヒレ。そう、高級食材だ。動けない敵へと向き直ったあゆみは、獲物を仕留め、喰らうべく地を駆ける。が。
「でも近くで見るとあんまり美味しく無さそうですね……!」
「ハァ!?」
「さようなら!!」
 方針変更。喰らい付くのではなく体当たりで、あゆみは敵を大きく撥ね飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

霞末・遵
【幽蜻蛉】
サメって鼻が利くんだっけ
化術で隠れたりガラクタをご馳走に見せても効果あるのかな

そんなことより船だよ!
なあにこんなの見たことない! 触りたいなーすごい触りたいなー
動くの? えっ動くの? ちょっとだけ動く? 中見れる?
見たいなーとっておきのお酒あけちゃうから見せてほしいなー

そうだサメだった
魚だしでっかいクレーンみたいなので一本釣りしたら楽しそうだけど
そうなると開けた場所がいいね。ねえ海賊さんいいとこ知らない?
惟継さんもいいお酒持ってるの知ってるんだ。後で一緒に飲もうよう
おじさんがガジェットと化術と海賊さんの案内でサメを誘導するから
一本釣りして捌くのは惟継さんよろしくね
楽しみだなーサメの味


鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
鼻が利くらしいなぁ
しかし海の中で嗅覚が働くとはすごいものだ
……後者は食われる可能性もあるのだが大丈夫か?

やはりそこに反応するだろうと思っていた
あれが宇宙船という文明が進んでいる世界での船のようだな
海賊達の力も必要だ、交渉をしようではないか!
酒の他につまみのスルメや干し肉等も用意してある
他の世界の酒には興味あるだろう?そうだろう?

宇宙船や海賊達のことは遵殿は任せて、俺は釣り上げた所を狙うとしよう
ついでにアーム部分等につまみを飾ってみよう
火で炙ったスルメ、これは良い匂いもする

姿が見えた所で雷獣ノ腕
大太刀を形成して捌くとしよう
鮫は時間が経つと臭みが出てくる、新鮮な内に食うのが良いらしいぞ!



●一本釣り
「サメって鼻が利くんだっけ」
「そうらしいなぁ。海の中で嗅覚が働くとはすごいものだ」
 霞末・遵(二分と半分・f28427)の呟きに、鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)が頷く。
「化術で隠れたりガラクタをご馳走に見せても効果あるのかな」
「……後者は食われる可能性もあるのだが大丈夫か?」
 可能性の吟味と言うか、確認しているだけのような、感情の入っていないやりとり。何しろ遵の眼は、ただただこの島に向けられているのを、惟継は経験から察していた。
「まあそんなことよりこの船だよ! なあにこんなの見た事ない!」
「ああ……反応するとしたらそこだろうと思っていた」
 目を輝かせる遵の様子に、納得するような溜息をついて、惟継は彼の後ろに続く。
「宇宙船という文明が進んでいる世界での船のようだな」
「すごいね、大きいね! 今も動くんだっけ? ちょっとだけ? ああできればこの手で分解させてもらえないかなあ」
「それはやめておいた方がいいと思うが……」
 惟継の言うように、世界が世界ならこれと似たもの――それも現役で宇宙を飛んでいるものが無数にあるのだが、それはいずれその世界を訪れた時の楽しみに、といったところだろうか。
「とにかく、海賊達の力も必要だ、交渉をしようではないか!」
 現地海賊を探し出して、二人は早速協力を求めることにした。
「ねえねえこの船って中見れる? 見てみたいなー、とっておきのお酒あけちゃうから見せてほしいなー」
「んん、それ今じゃないとダメか?」
「いや、それは後でも良い。だが少し手を貸してもらえないだろうか」
「そうだね、仕掛けが動くところも見てみたくって――」
 用意してきた異世界の酒やつまみで誘いをかければ、海賊達もそれには興味津々のようで。
「そうだな、それで一杯やるのは楽しそうだ」
 とはいえ、それもこの島が水没しなかったら、の話だ。絶賛コンキスタドールの襲撃を受けている海賊達は、一も二もなく彼等の頼みを聞くことにした。
「ああ、そうと決まればサメの相手をしないとね」
 上機嫌で対策を練り始めた遵は、まずは迎撃向きの場所がないかと周りを見回す。相手が鮫だというのなら、一本釣りしたら楽しそうだとは思うが……それなら相応に開けた場所で構えたい。
「ねえ海賊さんいいとこ知らない?」
「ああ、それなら――」
 海賊達に従って、元は格納庫であった区画を訪れた遵は、そこに設置されたクレーンの残骸に目を付けた。半ば朽ちかけているが、彼のガジェットで支えて、化け術で少しばかり偽装してやれば、巨大な釣り竿の完成である。
「ふむ、それならついでに火で炙ったスルメも付けよう」
「あ、嗅覚が鋭いって話だったもんねえ」
 そんなこんなで対策は完了。下層から聞こえてくる濁流と揺れからして、敵が現れるのまでそう間はないだろう。
「おじさんがサメを誘導するから、捌くのは惟継さん任せていい?」
「ああ、鮫は時間が経つと臭みが出てくるというからな、新鮮な内に食うのが良いらしいぞ」
「へー、楽しみだなーサメの味」
 どこか呑気な雰囲気を漂わせながら、二人は迎撃の構えを取った。

「オラーッ、スルメ焼いてんのはここかァ!?」
 完全に匂いにつられてきたらしい。大波と共に現れたコンキスタドールの第一声はそれだった。
「それじゃ、よろしくね海賊さん」
「えーっと……このボタンだったか?」
 匂いの元へと飛び掛かるサメ女の動きに合わせて、海賊が仕掛けを起動。釣竿こと作業用クレーンが上昇、敵を水上へと引き付ける。
「へえ、こんな風に動くんだねえ……あ、惟継さん後よろしく!」
「心得た」
 隙を晒したそこに、『雷獣ノ腕』――惟継の手にした雷の大太刀が走る。文字通りの一閃、輝く刃が一瞬でカルカーロを貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
おーおー、なんだなんだ
躾が出来てねぇ犬が暴れてるじゃねーかよ
そんなに逸るなって

自身に【迷彩】を施す
ホログラムを被せる要領
車輪の付いた肉の盛り合わせ、でどうだ?
釣られてくれんなら、資材置き場に誘導してやろう
【ダッシュ】で逃げて、【見切り】で致命打を躱す
資材置き場に誘導できたら、海賊の手を借りて閉じ込めさせる
さて、こっからが戦いの時間さ

性格からして奴は豪快に動く手合いだろう
だから俺は、小さい動きでちまちまやるのさ
ナイフと左の仕込みショットガンでヒットアンドアウェイだ

傷ついたら強くなんだろ?
知ってるよ……だから、『ひっくり返す』
お望みの水だ、受け取れよ
ま、受け取ったが最後
お前の力は三分の一になるがね


矢来・夕立
傭兵さん/f01612

▼方針
えー…(精一杯言葉を選んでいる)…手作り感と素朴さで勝負です。
傭兵さんは手作りチーズケーキ。
オレはサーモボトルに入れたコーヒー(外注)。

ボリューム、見た目のインパクト、いわゆる“映え”、何にもありません。
しかしあまり豪奢なものばかりでは胃もたれするでしょう。
…いや。アイツ頭悪そうですね。てんぷらの箸休めに油飲めそう。
傭兵さん、見せびらかす感じで食べてもらっていいですか?
そりゃ期待してないですけど…投げてみるか…

なんにしろ誘導の足と回避は任せて頂いて結構です。
【紙技・炎迅】。自動二輪を作成。
ダメ押しに煽っておきましょう。「早くしないとご飯を取っちゃいますよ」って。


鳴宮・匡
◆夕立(f14904)と

……こんなんでおびき寄せられるっていう事実に頭がついていかないんだけど
いや、話が早いのはいいことなんだけどさ……。
手作りって言ったって大したもんじゃないし
本当にこれで大丈夫なんだかさっぱりわかんねーけど……

ええ……それ断言するけど俺がやっても大した効果ないぜ
お前俺の表情筋が大した仕事しないの知ってるだろ
一つやるからあいつの口の中にでも放り込んでやってくれよ
そっちの方が話が早いって、絶対

……まあ、誘導の大半は任せるよ
こっちの仕事は殺すほうだ
指定のポイントまで誘き寄せて、海水から引き離した瞬間を狙う
何事も不意を打つのが一番効果的だからな
墜ちてもらうぜ



●焼肉と天ぷらとデザート
「おーおー、躾が出来てねぇ犬が暴れてるじゃねーかよ」
 大波と共に島内を進む敵の姿に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)が軽口を叩く。空腹のままに叫び、食って掛かる飢えた野犬は、やがてヴィクティムにも目を向けて。
「ろくなモン持って無さそうだな……用がねぇならそこをどけ!!」
「わかったわかった、そんなに逸るなって」
 わめく言葉を受け流したヴィクティムは、各種電算機を走らせ、光学処理に手を伸ばす。そうして彼は望んだ光景――立体映像をその身に纏わせた。

 そんなやりとりが為されている場所から、しばし後方。そこでは鳴宮・匡(凪の海・f01612)と矢来・夕立(影・f14904)が迎撃の準備に入っていた。
「……本当にこんなんでおびき寄せられるのか?」
「相手の頭のレベル次第ですかね」
 保証などあるわけもない。頭痛を堪えるようにしながら、匡は手元のそれをもう一度見る。飾り気のない包装の施されたそれは、彼の作ったチーズケーキだ。
「手作りって言ったって大したもんじゃないし、見込みが低すぎるような気がするんだけどな……」
「手作り感と素朴さで勝負できれば、あるいは」
「……物は言い様だな」
 疑いの目の向いた先、夕立が手にしているのはサーモボトル。中身は外注品とは言え、普通のコーヒーである。即席で用意できるものとしては上出来、という見方もできるが。
「確かにボリューム、見た目のインパクト、いわゆる“映え”、何にもありません。しかしあまり豪奢なものばかりでは胃もたれするでしょう。そこを突きます」
「その理論に乗り切れないのは俺が悪いのか?」
「真っ当な感性だと思いますよ」
 夕立は飽くまでも冷静に、真顔で分析内容を口にする。
「傭兵さん、それ見せびらかす感じで食べてもらっていいですか?」
「ええ……それ断言するけど俺がやっても大した効果ないぜ」
 ついに状況は演技指導が入るところまで来たが、匡もまあまあ表情筋が仕事しない類の人間だ。これを攻略の糸口にするのは難しいか。
「そりゃオレも期待してないですけど……」
「一つやるからあいつの口の中にでも放り込んでやってくれよ、そっちの方が話が早いって」
 何にせよあまり時間はない。下層から聞こえていた水流の音色は、既にかなり近くまで来ている。ならばやるしかないだろう。手作りのチーズケーキを手にした二人は、敵を迎え撃つべく身構え――。
「傭兵さん。焼肉盛り合わせが走ってきますけど」
「そうだな……」

 それは、大皿に盛られた色鮮やかな肉の束。これでもかと積み上げられた小さな山は、給仕用のカートに乗せられ、ひとりでにこちらに向けて疾走していた。
「待ちやがれよオラァ!!!」
 そこから少しばかり遅れて、濁流が通路の先から溢れ出す。その先頭に居るのは、牙を剥いたサメ女、カルカーロだ。
 追手から逃れるように走る肉の盛り合わせは、やがて夕立と匡に追いつき。
「よう、お前達も――」
「いや、焼肉と会話するのはちょっと」
「知り合いみたいな感じで話しかけてこないでくださいよ焼肉」
「お前等絶対わかって言ってるよな?」
 肉の盛り合わせ――というホログラムを纏ったヴィクティムは、併走を始めた知り合い二人に半眼を向けた。まあ、いくら目つきを悪くしても、二人には滴る肉汁しか見えていないが。
「変わった趣味ですね端役さん」
「そういうお前等はピクニックか?」
 チーズケーキと水筒を手にしたまま、夕立は話題を変えるように咳払いを一つ。
「……良いでしょう、有効性は認めます。相手があんなてんぷらの箸休めに油飲めそうな奴だとは思いませんでした」
 何にせよ敵を引き付けるのには成功している。この状況を活かすべきだと思考を切り替え、夕立は式神を前方に放った。
「誘導の足と回避は任せて頂いて結構です」
 『紙技・炎迅』、折り畳まれたそれは、一瞬で自動二輪へと姿を変える。素早くそれに跨り、迫り来る牙から逃れるべく急加速。
「何だと!? 海老の天ぷらが鱚の天ぷらと合体したァ!?!?」
 後方から聞こえた驚愕の声に、夕立が振り返る。
 あのサメ女が何を言っているのか理解に苦しむが、思い当たるものが一つ。
 ホログラム。
「……オレ今てんぷらに見えてるんですか?」
「そうだが」
「端役さん」
 呼んだところで返事はない。だが、囮を担うのなら、こちらにもホログラムを被せるのは理にかなっている。
 そんな二人から距離を置いて、匡はこの先の別れ道を指さした。役割分担には良い頃合いだろう。
「まあ、誘導の方は任せる。先回りしておくから例のポイントで合流しよう」
「では手筈通りに。とどめは任せましたよチーズケーキさん」
「……俺は今チーズケーキに見えてるのか?」
 本格的に頭痛がしてきた。

「早くしないと、ご飯を……いや、肉が冷めちゃいますよ?」
「うるせェ! テメェらが大人しくすりゃそれで終わりだろうが!!」
 夕立の煽りに乗った怒声が響く。襲い来る敵の牙と、槍の攻撃を素早く躱しながら、ヴィクティムと夕立は宇宙船内を駆け抜けていった。
 ぐるりと大きく島の中を回って、辿り着いたのは資材置き場。
「やれ!」
 それは、海賊達との打ち合わせ通り。ヴィクティムの合図に従って、カルカーロの真後ろで隔壁が閉じる。泳ぐための水を失い、敵は成す術もなく墜落した。
「痛ってェ!! くそが! よくもやりやがったなァ!!!」
 隔離には成功。だが怒声を上げたコンキスタドールは、その煮え滾る怒りを力に変える。
 泳げなくとも、その力はなおも脅威――だが、それもヴィクティムにとっては予測の範囲内。
「お望みの水だ、受け取れよ」
 霊符が輝き、発射された破魔の水弾が敵を穿つ。そして同時に、込められていた破魔の力が、敵のUCの作用を反転させた。
「なんだと……!?」
 《運命転換》、逆に弱体化し、完全に動きの鈍った敵を、レティクル越しに匡が捉える。
 予定外の事も多々あったが、連携の成果と言うべきか。ここまで来れば楽な仕事だ。
「墜ちてもらうぜ」
 『千篇万禍』。放たれた弾丸は、鮮やかにカルカーロの急所を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

雨野・雲珠
※アドリブ・連携歓迎

お米文化に生きる者たちの魂…
そう、OMUSUBI!(竹笊にてんこ盛り)
冷えた塩むすびにすることでいっそうの旨味際立つコシヒカリ。
お釜で炊いたつやつやの宝石…

を、果物から人が出てくる某国民的アニメのOPのノリで見せつけた後
【枝絡み】で後方の進路妨害をしながら
【ロープワーク】の要領で逃げます。

指定された場所まで辿り着いたらくるっと向き直り
「カルカーロさま!おむすび食べたいですかー?」
【大多恵主】召喚のための質問です。
答えがどうあれ駄目です!
ぬしさま、お願いいたします!

ふう。腹ペコの相手に鬼畜外道な真似をしてしまいましたね…(もぐもぐ)
おむすびは海賊さんたちとおいしくいただきます



●OMUSUBI
 飢餓感のままに突き進み、暴れ回るコンキスタドールの気配は、雨野・雲珠(慚愧・f22865)の元にも届いていた。移動に当たって生じさせている波のさざめき、そして通路を満たし、全てを押し流すような濁流の音色。そして槍と牙を以って破壊の限りを尽くし、「腹が減った」と叫ぶ声。
 凶悪なそれに挑み、その注意を釘付けにするため、雲珠が用意したのは、お米文化に生きる者たちの魂とも呼べる逸品――。
「そう、OMUSUBIです!!」
 竹笊の上にてんこ盛りにしたそれを、高々と両手で掲げれば、つやつやとしたその光が敵を襲う。
「くっ……この眩い輝きは……!」
 これこそが、お釜で炊いたコシヒカリの底力。さらに冷えた塩むすびにすることで、その旨味は一層際立つのだ。
「如何です? この白い光、まるで宝石の様でしょう」
「ああ、ああ。確かにオレにとっちゃ至上の宝だ。当然そいつはオレに献上するんだよな?」
「いいえ!」
 涎を垂らしたカルカーロの言葉をきっぱりと否定して、雲珠は踵を返し、走り出した。勿論、その間も竹笊を見せつけるように掲げながら。
「テメェ! そこまで見せつけといて逃げるんじゃねえよ!!」
 力強く尾鰭で水を掻き、メガリスによる大波の力も借りて、コンキスタドールが雲珠を追う。水位を上げ、逃げ道を塞ぎながらの追撃。並の者ならばその牙から逃れることは不可能だろう、が。
「うお、何だこれ!?」
 雲珠の意思に応じた桜の枝が、その先端を伸ばし、カルカーロの目の前で結び目を作った。不意を突かれた彼女は大きく仰け反り、勢いを殺されたことに舌打ちしながらそれを槍で薙ぎ払う。その間にも、雲珠は伸ばした枝を支えにより高所の、小さな入り口を潜って逃れていった。
「待ちやがれ!」
 すぐさま後を追ったサメ女がそこに飛び込んだところで、雲珠は振り向く。
「カルカーロさま! おむすび食べたいですかー?」
「当たり前だろ! さっさと寄越せェ!!」
 牙を剥きながらの叫び。だがそれに応えたのは、雲珠ではなく、この部屋で待ち構えていた海賊達だった。カルカーロの潜った場所に、隔壁が落ちて、後続の水流をそこで断ち切る。
「えっ」
 べちゃ、と床に落下した彼女の前に待ち受けていたのは、雲珠の背負っていた箱宮だった。
「残念ですがおむすびはあげられません! ぬしさま、お願いします!」
 ゆっくりとその扉が開いて、角に花咲く艶やかな神鹿――大多恵主が、その姿を現す。
「あァ!? 鹿肉も悪かねェがオレはもう完全に白米の気分なんだよ! 邪魔すんじゃねェ!!!」
 威勢よく吠えてはいるが、所詮ここには水が届いていない。哀れな敵に対し、大多恵主がその神威を示すのを、雲珠は正座しながら見守った。

「腹ペコの相手に鬼畜外道な真似をしてしまいましたね……あ、皆さんも食べます」
「お、良いのか?」
「ありがてえなー」
 海賊達と一緒に、もぐもぐと塩むすびを頬張っている内に。
「ぐぅ……一個くらい、くれても……」
 猟兵達からの攻撃と、ついでに限界を超えた空腹によるものか、カルカーロはそんな力無い言葉を最後に、力尽きた。
 コンキスタドールが骸の海へと還るのに合わせて、島を襲っていた海水もその水位を下げていく。

 こうして、猟兵達はカーティリジ島の確保に成功し、さらにその先にある七大海嘯の拠点を目指して、大海を渡っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月06日


挿絵イラスト