たそがれに染まるスペシメン
●某旧団地にて
くるよ、くるよ。
あの日がくるよ。
くるよ、くるよ。
たそがれがくるよ。
とうに忘れ去られた古びた団地。
美しい夕日が沈む、その瞬間。
ころころと鈴が鳴るようなうたが響き渡る。
さあ集めよう、うつくしきものを。
さあ飾ろう、その生贄を。
●ヤドリガミ、かく語りき
「やっほー。見て、この鉱石標本。綺麗でしょ? キミ達は標本、つくったことある?」
四角い仕切り箱の中にきらきらした鉱石が詰まった標本をキミ達に見せびらかしながら、戴・凜風(浄化を祈る・f23661)は言う。
「標本って、繰り返し観察したり、データを取るために作るんだって。りんふぁは好きな石を詰め込んだだけだけどねー」
耳に提げたペンデュラムを揺らしながら、凛風は続ける。
「生贄ですってよ、皆様方。UDC……アンディファインド・クリーチャーは、ヒトを標本にして眺めるのが好きらしい。毎年夕日が美しく輝く日に新しい標本を信者に要求するんだとさ」
曰く、そのUDCは百余年もの間信奉され続け、信者たちの望むものを見せているらしい。
そしてその月日の長さから、かなりの強さを持つUDCになっていると。
「でね、今週末に夕日が美しく見える条件が揃うんだ。雨上がりって、すごく綺麗に映えるらしいよー。
で、本題さ。キミ達には人間標本になってもらいます! なんとここの信者たち、生贄を集めるために立食パーティーを開いちゃうらしいです! あやしさ満点! でもふしぎなちからで一般人は引き寄せられちゃう!!」
近くのテーブルへ鉱石標本を置き、代わりにビラをキミ達に見せる。
「貼ってあったビラはぜーんぶ引っぺがして来ました! これで一般人はパーティーには参加しないよ。なので代わりにキミ達に参加してもらいます。
雨が降る中、そのパーティーは団地の一室で行われるよ。信者たちはキミ達の好きなものを聞いてくるんだ。なんでも、標本にはヒトだけじゃなくて、そのヒトが好きなものを一緒に詰めるんだって。好きなものと一緒にいる姿がいちばん美しいんだってさー」
どうやらパーティー中に情報を集め、猟兵たちを標本にする準備を整えるようだ。
「ご飯の中には、睡眠薬が混ぜられているんだ。食べるフリとか、何か対策してね!
みんなが寝ちゃったあと、聞き出した情報をもとに標本をつくって献上するみたいだね」
キミ達には寝たふりなんかしてされるがままになってもらいます! と凛風が言い放つ。
「完成した標本になったキミ達は、団地の屋上に運ばれるよ。そのころには雨がすっかり上がって、綺麗な夕焼けが広がっているよ。まずはそこで、眷属と戦って欲しい。眷属をやっつけたところでボスが出てくるから、ぶちのめしてやってね!」
からっと笑って、凛風はキミ達に願う。
「さぁ諸君! 敵は強いぞー! がんばって、いーってらーっしゃーい!」
八卦盤の形をしたグリモアを広げ、一人ひとり転送していく。
涼村
こんにちは、涼村と申します、よろしくお願いします。
今回は、日常、集団戦、ボス戦の3章構成となっております。1部参加でも、通し参加でも、奮ってご参加ください。
1章、2章不参加であっても、そこに実はいました! という感じで描写させていただきます。
1章では、あなたの好きなものをプレイングに記載をお願いします。標本に一緒に入れたいものという感じで考えていただければ大丈夫です。
信者はとっても聞き上手ですので、何が好きか、どこが好きかなどを語っていただけたら幸いです。
身に着けているものを見せて頂いたり、お菓子やぬいぐるみなどふわっとしたもののご指定も可能です。
同行者に限り、猟兵を提示するのも可といたします。その場合は同じ箱に入りますのでご了承ください。
1章の最後にまとめて皆さんを標本にさせていただきます。
2章以降、断章にてご案内いたします。
あなたの好きをこれでもか! と詰め込んでください。
それではみなさま、バーンとぉ! 行っちゃってください!
第1章 日常
『「祝祭」への参加』
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POW : 奇妙な食事を食べたり、奇怪な祈りのポーズを鍛錬する等、積極的に順応する
SPD : 周囲の参加者の言動を注意して観察し、それを模倣する事で怪しまれずに過ごす
WIZ : 注意深く会話を重ねる事で、他の参加者と親交を深めると共に、情報収集をする
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●祝祭
おいで、おいでよ。
黄昏時がくるまえに。
おいで、おいでよ。
この雨が止むまで。
●おいしいおかしもございます
しとしとと雨が降る中、きみたちは招かれた。
薄暗い階段をのぼり、とある一室の扉を開く。
そこは壁が取り払われた大きな部屋だった。
妙に甘い香が焚かれたその部屋には、美味しそうな料理が並んでいる。
人のよさそうな笑みを浮かべた信者が、グラスを片手にあなたへ話しかけた。
「やぁ、こんにちは。あなたも祝福を貰いに来たのかい? 夕日が沈むころ、彼女は祝福をもたらしにやってくるらしいよ」
だから、それまで話していよう、と。
目の前でグラスを傾け、唇を濡らしてさらに言葉を続ける。
「あなたは好きなものはあるかい? 好きなものにまつわる祝福をもたらしてくれるようだよ。今のうちに考えておくといいさ。わたしは沢山あるよ。
そうさな……金魚が好きだ。星空も好ましい。あとは……恋人、かな。とても好きな娘が居るんだ。祝福を貰えたら、もしかしたら結婚ができるかもしれない」
恥ずかしそうに好きなものを並べる彼は、あなたは? と言わんばかりにきみの瞳をのぞき込んだ。
霞・雪花
”片耳が粒綿解れた、白熊のぬいぐるみ”
念糸で自由がままに動く
ひと時さえ、足元から離れないわたしの情愛注ぐ傀儡
それ、大切なの
わたし、熊さん、だいすきだから
隠れ里から逃げ果せた時から片時も離れやしない心の友 なのよ
雨粒の降る音には静謐を心に宿す
湿気た板の音さえ余韻として跳ね返り心地いい
足元をくるくるり、回る傀儡へ目線の軸落として悠長に信者へ語って見せた
鼻のつく芳香嗅ぐフリして
料理を唇のあわいに挟むフリ、して
振袖の袖口へほろほろと、零れ落として隠してしちゃった
咀嚼する演技も忘れずに
うーん 美味しくって、クセ、なっちゃう!
添える美味の一言とやわい笑みも備え付けて
袖元で優雅に頬笑った
●眞白
つめたい空気を纏った、雪のような肌を持つ霞・雪花(龍神に焦がれる雪の花・f19167)は、そっとその瞳を閉じて雨音に心を寄せる。
しとしと、ぴちょん。
しみじみと心に染み入るその音がたまらなく心地よい。
そんな雪花に、同い年くらいの女性が小さなエッグタルトを手に近づいてくる。
「こんにちは。貴女は初めて見る顔ね? 祝福の話を聞いていらっしゃったの?」
雪花の尖り耳にその声が届き、閉じていた瞳をそっと開いて声の方を見遣る。
「ふふ、そうなの。祝福がとーっても楽しみで。確か、好きなものを持ち寄る、だったかしら?」
こてり、とその小首を傾げて信者に問う。足元に居た、白熊のぬいぐるみ。――シロさんも、己の友と同じく小首を傾げた。
「そうよ、好きなものを持ち寄って、彼女に見せるの。……その子が、貴女の好きなもの?」
信者はしゃがみこんで、シロさんと目線を合わせ雪花に言葉を紡いだ。
「ええ、ひと時さえ、足元から離れないのよ。わたし、熊さん、だいすきだから」
「へぇ、ずっと一緒なのね。小さいころから?」
よいしょ、と立ち上がり、手にしていたエッグタルトを勧めながらさらに重ねる。
手渡されるタルトを口に近づけながら、やわい笑みを浮かべ、愛おしいものに心を寄せる。
「そうだよ。3歳の頃からずっと一緒なんだ」
シロさんをくるくるりと操り、信者の関心を引いて目がそらされているうちに、タルトを口に運ぶ。
ほろほろりと崩れたタルトくずは、振袖の袖口へ。もぐもぐ、と咀嚼の演技を挟み、笑みを深めた雪花は。
「うーん 美味しくって、クセ、なっちゃう! もうひとつもらってもいいかしら?」
愛しい神の鱗片を埋めたシロさんを抱き上げて、信者におねだりをした。
大成功
🔵🔵🔵
スイ・シルフィード
SPD
人間標本パーティですか……それは人間でなくとも参加出来るのでしょうか。たとえば、人型機械人形であっても?
とりあえずヒトらしい風体になるよう、分かりやすい機械装置はすべて格納したり外して行きます。あとはヒラヒラしたワンピースでも着て関節あたりを隠しておけばそれらしく見えるでしょうか。
食事に睡眠薬が混ぜ込まれているということですが、ドールにその手の薬は効きませんから、普通に飲食します。
祝福をいただけるというなら、有り難く頂戴します。
私の好きなもの……ですか? そうですね、あまり考えたことがないですが、自然は美しいと思います。野原に咲くれんげ草、とか。何だかホッとします。夕焼け空も綺麗ですね。
●風戦乙女
つめたい雨の降る灰色の世界で、スイ・シルフィード(霊処の尊厳・f31761)は、つい、と空を見上げて、グリモア猟兵の言葉を思い出していた。
――人間標本パーティ。
果たしてそのパーティに人間ではないものは参加できるのであろうか。
たとえば、人型機械人形であっても?
危険はなるべく排除すべく、分かりやすい機械装置はすべて格納し、外して挑む。むき出しの関節は、翡翠色のひらひらとしたワンピースを着ることで隠して、パーティが開かれているという部屋のドアをくぐった。
ふわりと甘ったるい香りを感じながら、ガジェット越しに室内を見遣るスイにふくよかな男性が声をかけて来た。
「やあ、こんにちは。キミも祝福を貰いに来たんだね。歓迎するよ!」
にこにことスイにローストビーフの乗ったお皿を差し出して信者は話かける。
その皿を受け取ったのを見届けた後、信者はさらに言葉を重ねた。
「祝福は好きなものにまつわるものを貰えるという話は聞いたかい? 今のうちに考えておくといいよ。もしよかったらぼくに教えてくれないかな」
人のよさそうな笑みを深めて小首を傾げる信者に、スイは少しだけ考えた後にその唇を開いた。
「私の好きなもの……ですか? そうですね、あまり考えたことがないですが、自然は美しいと思います」
清涼な風のような声を聞いた信者は、例えば? と続きを促す。
「野原に咲くれんげ草、とか。何だかホッとします。優しいピンク色の花がそよぐ様は、とても美しい光景です。それから、夕焼け空も綺麗ですね」
聞き届けた信者は満足そうに頷いて、美しい自然に出会えるよう祝福を貰えるといいね、と声をかけて、ローストビーフを召し上がれ、とでも言うように手を向けた。
グリモア猟兵の話によると、睡眠薬が盛られているようだが、ドールであるスイに、その手の薬は効かない。
とろりとしたソースのかかった肉をその口に運び、信者に笑いかける。
「これ、とても美味しいですね。他のものも頂いてよろしいでしょうか?」
大成功
🔵🔵🔵
皆城・白露
(アドリブ歓迎)
食事は食べたふりでごまかす
(好きなものは、と問われ最初は考え込む)
…本は割と好きで、集めてる
大体見かけやタイトルで選ぶから、読んでないのもあるけどな
(所持している文庫本を見せる)
長く残るものだから、好きなのかもしれない
それから…好きなもの、って言っていいのかわからないが…仲間が、いる。
極彩色の駄菓子みたいな奴とか、色々
(友達、とは何か気恥ずかしくて言えない)
一緒に過ごすのが、オレは、きっと好きなんだと思う
…ああ、菓子も好きだな。色が綺麗な奴がいい
…少し、疲れたな。休んでもいいだろうか
(企みを知っていても、話すのはなんだか楽しかった
相手に礼を言って、眠りにつく(ふりをする))
●白灰
白い痩躯を部屋の壁に寄り掛からせ、皆城・白露(モノクローム・f00355)は周囲を観察する。先行した猟兵たちは既に信者と接触をし、談笑しているようだ。はて、自分はどうしたものかと考えていると、『近所のおばちゃん』という表現が似合いそうな信者がやってきた。
「あらぁ、どうしたの? 楽しくなさそうねぇ! ほら、食べな食べな! あたしがなにか持ってきてあげようか?」
白露の不健康そうな見た目を心配したのか、そう言うや否やたんまりとサンドイッチを皿に盛って持ってきた。
「……ああ、どうも。いただくよ」
皿と一緒に持ってきていた包み紙にくるみ、口へ運ぶ。咀嚼するタイミングで包み紙へ隠し、嚥下のフリ。美味い美味い、と食べる姿を見て、信者は目を緩めた。
「いい食べっぷりねぇ。やっぱり美味しく食べるのはいいことよね。あなたも折角ここへ来たんだもの、幸せになっていかなきゃ!」
「……しあわせ。そういえば、祝福? だったか?」
口の端についたパンくずを払いながら、白露は目の前の信者に問いかけた。
「そうよぉ。好きなものを持ち寄って、彼女に見せると、それにまつわる祝福を受けることができるの。あなたは何か好きなものはあって?」
情報収集を始める信者に、白露は言葉もなく考え込む。道中考えて来たけれど、改めて問われると少し難しい。うーん、と天井を見つめながら、ぽつりぽつりと語りだす。
「……本は割と好きで、集めてる。大体見かけやタイトルで選ぶから、読んでないのもあるけどな。今読んでいるのは、これ。狼が旅をするヤツ」
持ち歩いていた文庫本を信者に見せて、説明する。
「読み返し過ぎて、少し破れてるけど……。それだけ気に入ってる一冊だ」
ふんふん、と相槌を打つ彼女は、他にはないの? と言葉を重ねて来た。
「……他。………好きなもの、って言っていいのかわからないが……仲間が、いる。極彩色の駄菓子みたいな奴とか、色々」
言いながら、脳裏に浮かぶ友人たちの顔。己には無い色彩を持ち、なんだかんだつるんでくれる、友。その友という単語を口に出すのは少し気恥ずかしいから、仲間、だなんて濁して。
「一緒に過ごすのが、オレは、きっと好きなんだと思う。……ああ、菓子も好きだな。色が綺麗な奴がいい」
きっと、それも友と食べるのがいちばん。
ふわ、と欠伸を噛みながら、信者に休める場所を聞く。勧められたソファに礼を言いながら腰を下ろして目蓋を閉じた。この会話がたくらみによるものだと知っていても、話すのはなんだか楽しかった。
友の顔を思い浮かべながら、雨が止むのを待つ。
大成功
🔵🔵🔵
斉藤・彩矢
連携アドリブ歓迎
好きな物:お菓子・甘味系・ぬいぐるみ
気は進まないけど、普通の人が巻き添えになるより数段マシだよね。
【演技】で裏事情など何も知らない風を装うよ。
妙に甘いお香に対しては【狂気耐性】で正気を保とうとするよ。
会合に関しては【コミュ力】で会話主軸に持っていき、なるべく量を食べないよう心がけるよ。
とはいえ全く食べないというのも怪しがられそうだし、甘いものが好きなんですよね、とか言って程々に食べる。
そして寝そうになったら、表面上は眠そうな【演技】をしつつも【極限の集中】を用いて必死で眠気に耐えた後、寝たふりを決め込むよ。
あとはされるがままになりつつも【聞き耳】で周囲の状況把握に努めるよ。
●普通の女子高生
UDCアースに居る、普通の女子高生斉藤・彩矢(一般人+1・f10794)は、アンディファインド・クリーチャーの暗躍があるとグリモア猟兵から聞けば猟兵としての力を振るう。
アンディファインド・クリーチャーの根城に潜り込むのは気が進まないが、普通の人が巻き添えになるより数段マシだから。スクールバッグを握りしめ、その扉をくぐった。
妙に甘い香りに包まれながらも、人懐こそうな笑みを湛えて近くに居た信者へ声をかける。
「こんにちは。ビラを見て来たんですが……パーティ? ってここですか?」
茶髪のお姉さんにそう聞くと、信者はそうだよー、と答える。
「よかったぁ。雨も降ってきたし、見つからなかったらどうしようかと。祝福? でしたっけ? よく分からないまま来ちゃったんだよね」
困ったように笑うと、信者は笑いながら彩矢と話し始める。
「そっかそっかぁ、災難だったねー。祝福もらえるところであってるよー。好きなものを持ち寄って、祝福貰うの。アタシはコスメが好き! 自分に合うコスメ見つけるとテンション上がるんだよねー。アンタはなにが好きなの?」
信者に問われ、彩矢は好きなものを思い浮かべた。
「うーん……やっぱりお菓子とか、甘いものかな。コンビニの新作スイーツとか、つい買っちゃうよ。お姉さんは甘いもの、好きかな?」
「あー、わかる! アタシもスイーツ好きだよ。最近飲まなくなったけど、タピオカはやっぱおいしーよねー」
信者に調子を合わせて、なるべく食事をとらぬように会話を弾ませる。他には他には? と問う信者に、彩矢はうーん、と少し考えてからスクールバッグについているマスコットを見せた。
「ぬいぐるみ、とか。可愛いのはすごく好きだよ」
ふふ、と笑いながら、怪しまれない程度にクッキーをつまむ。多少の薬効は、極限の集中で凌いでいく彩矢は、ふあ、と小さく欠伸をした。
「あれ? 眠くなっちゃった? あっちにソファがあるから休んできたらー?」
信者に勧められるままにソファまで歩き、その目を閉じる。すぅ、すぅ、と寝息を立てる彩矢を見届けた信者は、スマートフォンに何かをメモしながら立ち去った。
彩矢の耳には小さなざわめきと、他の猟兵たちの好きなものを報告し合う信者たちの声が届いていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
標本か…蝶の標本なら見たことがあるけれど
自分が標本になるのはどんな気分なんだろう?
雨の音が好きだから
窓辺に座るところを探して
雨が降るのを眺めながら飲み物を飲むふりを
信者が近づいてきたら、にこやかに応じて
己の好むものにまつわる祝福だと言うのなら、少し目を輝かせて答えよう
そうだな
よく晴れた夕暮れのすすき野原
鳥が家へと帰ってゆく風景が好きかな
生き物が好きなんだ、特に空を飛ぶものが
自由で気ままで、気高い感じがするからね
そのまま世間話をして、まるでお酒に酔ったかのように、香りに酔いしれるように、うとうとと
窓辺に寄りかかって眠ったふりをしよう
あとは箱詰めにされるがまま
手早く終わるといいけどな
★アドリブ歓迎
●日暮れ色した
グリモア猟兵曰く、人間標本にされるらしい。蝶の標本なら見たことがあるが、自分が標本になるのはどんな気分なんだろう? とヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は首を捻る。美しい翅を見せびらかすように箱に縫い留められていたが、自分もそうなるのだろうか。
手早く終わってくれればいいけれど。そう考えながら、窓辺に椅子を見つけて、しとしとと降る雨の音を聞きながらグラスを傾ける。
雨音は好きだ。
しみじみとその音に聞き入っていると、腰の曲がったおばあさんがヴェルに話しかけて来た。
「おやまぁ。ひとりかい? よかったらこのばあさんの話し相手になっておくれよ」
人のよさそうな笑みを浮かべた老女に、ヴェルはにこやかに向かいの椅子を勧める。
「見ない顔だねぇ。祝福のことは知っているかい?」
にこにこと話す老女に、ヴェルは良く分からないんだ、と困ったように笑いながら答えると、老女はさらに言葉を紡いだ。
「雨が上がり、綺麗な夕焼けが見えるころ、『自分の好きなものにまつわる祝福』を得られるのさ。好きなものはなんでもいい。物でも、人でも、形の無いものでもねぇ」
その言葉に、ぱちぱちとふたつ、瞬きをしてからヴェルは目を輝かせる。
「己の好むものにまつわる祝福? そうかぁ。僕は……僕は、よく晴れた夕暮れのすすき野原。鳥が家へと帰ってゆく風景が好きかな。生き物が好きなんだ、特に空を飛ぶものが。自由で気ままで、気高い感じがするからね。どんな祝福が貰えるのかな」
目を輝かせたまま、己の好きなものを思い浮かべると、老女は細い目をさらに細めて。
「そうさな。それならきっと、綺麗な夕焼けをよく見ることが出来るかもねぇ。高い空を、鳥が列をなして帰っていくのをね。きっと、何度もなんども」
言葉を聞き、ヴェルは琥珀色の目をきらきらさせて頷いた。
「写真も撮れるかな。その一瞬を、切り取って……」
期待に胸膨らませるように紡いでいた言葉が途切れ始める。薬と香に酔ってねむくなる、フリ。
瞼をとろりと降ろして、窓辺にもたれかかった。
●雪花
硝子の箱に、銀の縁取り。
ふわふわと雪のような真綿を敷いて、そこへ眠った雪花を寝かせる。
その美しい透明感のある振袖を見せつけるように、両の腕は広げて留める。
足元には片耳が粒綿解れた、白熊のぬいぐるみを。
周りには、キラキラ光る六花を飾って、出来上がり。
●スイ
硝子の箱に、樹の縁取り。
寝心地の良い丘のような芝を敷いて、そこへ眠ったスイを寝かせる。
ふわりとしたワンピースは風にそよぐように縫い留めて。
夕焼け空を切り取った写真を数枚顔の周りに置いて。
れんげやコスモス、すみれにカスミソウ。
とりどりの花を飾って、出来上がり。
●白露
硝子の箱に、木の枝を組み合わせた縁取り。
ふかふかに裂いた紙を敷いて、そこへ眠った白露を寝かせる。
しっぽが隠れぬように、横に流して縫い留める。
所持していた文庫本の他に、信者が別室から取ってきた本を数冊飾って。
友人との繋がりに欠くことのできない携帯電話を、手の近くに。
色とりどりのお菓子を散りばめて、出来上がり。
●彩矢
硝子の箱に、銅の縁取り。
もこもこのぬいぐるみを敷いて、そこへ眠った彩矢を寝かせる。
セーラー服がしわにならないように広げて縫い留める。
クッキーやチョコレート、マシュマロなど、色々なお菓子を飾って。
普通の高校生には必須のスクールかばんも飾って、出来上がり。
●ヴェル
硝子の箱に、金の縁取り。
純白の羽根を敷いて、そこへ眠ったヴェルを寝かせる。
美しい装飾の服がよく見えるように、両の腕は広げて留める。
夕焼けを裂くように飛ぶ鳥の写真をいくつか散りばめて。
気高い野鳥のはく製を足元に飾って出来上がり。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『黄昏』
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POW : 【常時発動UC】逢魔ヶ時
自身の【黄昏時が進み、その終わりに自身が消える事】を代償に、【影から、影の犬などの有象無象が現れ、それ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【影の姿に応じた攻撃方法と無限湧きの数の力】で戦う。
SPD : 【常時発動UC】誰そ彼時
【破壊されても一瞬でも視線を外す、瞬きを】【した瞬間に元通りに修復されている理。】【他者から干渉を受けない強固な時間の流れ】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 【常時発動UC】黄昏時
小さな【懐古などの物思いにより自らの心の内】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【黄昏の世界で、黄昏時の終わりを向かえる事】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●たそがれ
雨が上がり、少しだけ湿度が高い屋上。
そこへ標本にされた猟兵たちが運び込まれる。
標本を並べ、信者たちは香を焚き、祝詞を唱え始めた。
ひときわ眩く夕日が輝き、それが沈むころに邪神は現れるだろう。
刻限まで、わずか。
信者たちはその時を美しい夕日を眺めながら待つ。
君たちはその不可思議な黄昏時をやり過ごさなくてはならない。
見世物の時間は終わった。
猟兵の力を解放せよ。
スイ・シルフィード
綺麗ですね、夕焼け。
雨で空中の塵が洗い流されて、より一層澄明な夕空になったのでしょうか。
この場所に飾っていただいたこと、感謝します。
何事においても、『狭間』というのは、不安定なものなのでしょうね。
ヒトと人形の狭間。身体と魂の狭間。夕と宵の狭間――黄昏時。物事の輪郭が曖昧になって、思わぬ陥穽に足を取られるひと時。
けれど、そうであると把握してしまえば、怖れるものでもありません。
私の過剰な視力の中では捉えられない輪郭など無い。すべてを見据え、破壊します。
標本箱を出て、格納していたソード・セラフを展開。【熾天使の羽搏き】によって、眼前の黄昏を数多の羽刃で一斉に斬り棄てましょう。
さあ、暮れ墜ちなさい。
●狭間のモノ
『狭間』
ソレは酷く曖昧で不安定なものである。
例えば――。
ヒトと人形の狭間。
身体と魂の狭間。
夕と宵の狭間――黄昏時。
ぼやけてしまった輪郭は、泥濘のように足を取り、思わぬ陥穽にはまる。
美しいオレンジをその銀髪に映し、スイは芝の敷かれた標本から抜け出した。
眠り込んでいたはずのスイが抜け出したことに驚きと動揺を隠せない信者たちに、美しい場所へ飾ってくれた感謝を伝える。
霊処(ヒト)と筐体(ドール)の狭間という曖昧な存在。しかしそこに確固たる粋(スイ)を集めた彼女は、格納していた羽刃のガジェットを展開した。
狭間を狭間と認識してしまえば、その道は逆に強固なものとなる。ヒトならざるその双眸に捉えられぬ輪郭など存在しえぬのだ。
何処からともなく現れた闇色の鴉の群れに、展開されたソード・セラフが風を切る。
妖精が風と戯れるような気軽さで、スイは風に乗り追撃をしていく。薄く鋭利なその羽刃は、修復し続ける闇色の鴉を斬り捨てる。
夕日は沈むもの。曖昧な境界は、いつか必ず暮れ、闇に染まるのだ。
「さあ、暮れ墜ちなさい」
凛とした風が、吹いた。
大成功
🔵🔵🔵
皆城・白露
(他猟兵との絡み・アドリブ歓迎です)
(実験の果てに標本にされるというのも、オレの可能性の一つではあっただろう
こんなにお綺麗ではなかっただろうが)
(標本箱の居心地は意外と悪くなかった
うっかり少し寝ていたが、敵の気配に気付き飛び起きる)
…信者達と違って、わかりやすくて助かるな
【ブラッド・ガイスト】使用、左右一対の黒剣を禍々しい爪状に変化させ
【2回攻撃】【カウンター】も使用し、襲い来る影を片っ端からなぎ倒す
オレは、自分がいつ消えるかなんてわからないが
少なくともお前につきあってやる気はない
遊んでやるのはここまで、後は狩りの時間だ
●道の果て
裂かれた紙の寝心地は案外悪くなく、つい微睡んでしまう白露。
施設で繰り返される実験の果て、標本にされる道もあったのだろうか。
グルルルル、と鳴る唸り声をその狼耳に受けて意識が浮上する。
硝子の箱を蹴破って影の犬の前に白露は立ちはだかった。生き抜くために逃げ出してきた施設。そこに居続けた先にあったかもしれない道は、今の白露が居るべき場所ではない。
右手に復讐を、左手に嘆きを握り、白露は腰を落とす。己の血液を代償にその殺傷力を上げた黒い剣を振るい、薙ぎ払っていく。
カラン、と標本に飾ってあったネームプレートが地を跳ねた。己の名が記されたそのプレートを見て思うのは、自分自身の事。自分の意味とは……。
未だ見えぬ道ではあるが、この命はここで絶やすものではない。
無限に湧き出てくる影の犬に、黒い剣を突き刺し、薙ぐ。
――少なくともお前につきあって命を落とす気はない。
「かかって来いよ。遊んでやるのはここまでだ」
研ぎ澄まされた禍々しい爪を一息に振るった。
狩りの時間が、始まる。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
ぱちりと目を開けたら
敵は黄昏そのものの姿
嗚呼確かに綺麗だけれど
本物の夕暮れを初めて見たあの時を思い出す
猟兵になったばかりの仕事終わり
A&Wの高い崖の上
常闇の世界で生まれ育った僕には、青い空でも驚きだったのに
朱く染まるあの空の美しさ
沈みゆく夕陽の潔さ
本物には遠く及ばない
取り込まれそうになったら抵抗はする
素早く反応して後方へ避けて
【残照回転脚】で燃えるような偽の夕日を燃やして
黄昏の空は、僕の好きなもの
オブリビオンでは決して満たされない
あの耀きに、なれはしない
●いつか見た茜色
音がした。
ヴェルの耳朶を打つのは命と命が削られる音。
始まったのだ。そう感じ取ったヴェルは閉じていた目を開ける。その琥珀色の瞳に映ったのは、燃えるような茜色の空だった。
黄昏そのものの姿はオブリビオンといえども確かに綺麗だ。……けれども。
心に焼き付いて離れない茜色はこんなものではない。いつの日か初めて見た空は、これには遠く及ばないものだった。
猟兵になったばかりの仕事終わり。アックス&ウィザーズの高い崖の上。
常闇の世界で生まれ育ったヴェルには、青い空でも驚きだったのに……。
――朱く染まるあの空の美しさ。沈みゆく夕陽の潔さ。
その光景を思い出していると、黄昏がもたらすユーベルコードを感じ取った。どこかの空へと吸い込まれぬよう咄嗟にバックステップで避ける。
そしてその黄昏を燃やし尽くすかのような地獄の炎を纏う蹴りで目の前にある偽物の夕日を灰に還していく。
オブリビオンでは決して満たされないこの心。
「あの耀きに、なれはしない。緋に染まり、灰と化せ」
大成功
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九杳・睡
香に、祝詞。美しき贄。この燃えるような夕陽さえ、禍禍しきを招くための儀式なのかしら。
こんなもので、この世界を呑み込もうなんて。
逢魔が時の、私にはもう慣れた気配。美しく呪われた夕、灼け落ちて闇に還るのはあなただけでいい。温和しくしていてね。
瑞霊墨符を黄昏に向かって放ち、捧げるのは【瑞霊ノ縛】。
籠鳥、雲を恋おうとも叶わず――籠の中の鳥が遙かな雲に恋焦がれても決して叶わないように、この縛りはあなたの願いを、力を否定する。邪なるものに魅入られた夕空に、自由など要らないでしょう。
おいたをしないなら、もう少しここにいてあげてもいいわ。
いずれにせよあなたは、時とともに自壊するのだから。
●届かぬ空
落ちる直前、ひときわ輝く黄昏に目を細めたのは、九杳・睡(供養の涯て・f31296)だった。
焚き染められる香に、耳障りな祝詞、美しく飾られた贄たち。この燃えるような夕陽さえ、禍禍しきを招くための儀式なのか、とその勿忘草色の瞳を一度閉じて、息を吐く。
こんなもので、この世界を呑み込もうなんて。
睡には慣れた逢魔が時の空気を肺に取り込んで戦闘態勢へ入る。
――美しく呪われた夕、灼け落ちて闇に還るのはあなただけでいい。温和しくしていてね。
墨で塗りつぶされた瑞霊墨符を黄昏に向かって放ち、黄昏の中へ取り込まれることを防ぐ。
「籠鳥、雲を恋おうとも叶わず」
籠の中の鳥が遙かな雲に恋焦がれても決して叶わないように、睡は黄昏の願いを、力を否定する。
邪なるものに魅入られた夕空に、自由などきっと要らないだろうから。
ユーベルコードを封じられた黄昏に出来るのは、自身が闇に染まることを待つだけ。
その美しいひかりが消えるまで、あともう僅か。
睡はその身を削りながら、雲請う黄昏に寄り添う。きっとすぐに、その時は来るだろうから。
●誰そ、彼
刻一刻と時は進む。
時間が経つにつれ、その茜色はますます美しく輝き昏い影を落としていく。
影の動物の群れが、その数を増やすことを辞めた。
睡の瑞霊ノ縛がすべてのユーベルコードを封じたからだ。
無限湧きの数の力が無くなったことで、大勢は一気に猟兵側へ傾いた。
スイのソード・セラフが、白露の嘆きと復讐者の刃が、ヴェルの地獄の炎が、残った影の動物たちを倒して行く。
最後の鴉が、カァ、と鳴いて骸の海へ還ったとき、その黄昏は暮れ墜ちた。
大成功
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第3章 ボス戦
『メリュジーヌ』
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POW : 願望の逢瀬
自身が戦闘で瀕死になると【相対した者の望んだ存在】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : 来世での逢瀬
単純で重い【蹴り】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ : 切望の逢瀬
対象の攻撃を軽減する【相対した者の望んだ存在】に変身しつつ、【相対した者の望んだ言葉を呪詛として言葉】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アハト・ナハト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●逢瀬の邪神
逢魔が時が闇に飲まれた時、その邪神は現れた。
水を纏いふわり浮かぶその女が、鈴を転がすような声で歌う。
逢いたいでしょう、相対でしょう。
言葉は聞こえぬが、心にギリリと突き刺さる。
逢わせてあげましょう、合わせてあげましょう、あなたにあわせてあげましょう。
ゆらゆら踊るように空中に浮かぶ女は、その金の眸をきみたちに向けた。
あなたの好きに、あわせてあげる。
スイ・シルフィード
邪神が私の好きにあわせてくれるとは、随分と気前のいい話ですね。
でも、無理に合わせていただかなくて結構ですよ。いずれにしても、此方の好きにやらせてもらいますので。
――夕焼け、綺麗でしたから、その感謝も込めて、【勁風】にてお相手します。
風にのって高速移動にて邪神の蹴りを躱し、むしろ此方から蹴りをお見舞いしましょう。大地を割るような鋭い打撃と衝撃波の多重攻撃。体勢を崩したなら、畳み掛けるように体奥まで破壊する拳を叩き付け。
そういえば、信者さん達が、あなたは祝福をもたらしにやってくるのだと言っていましたよ。祝福って、何でしょうね。とりあえずは、あなたの消滅が、この世界の祝福にはなりそうです。
●風乙女
ころころと、歌う声が聞こえる。
あいたいならあわせてあげる。
相対なら合わせてあげる。
耳を覆うガジェットをものともせず、その声はスイに届いた。
「邪神が私の好きにあわせてくれるとは、随分と気前のいい話ですね。でも、無理に合わせていただかなくて結構ですよ」
――此方の好きにやらせてもらいますので。
その声が邪神に届く前に、スイはその身に風の加護を纏う。
ソード・セラフに純度の高い霊力を流すと、スイの身体がふわりと浮いた。
「逢いたくないの?逢わせてあげるのに。あなたに宿る魂に、あわせてあげるのに」
「……いいえ、結構です。歪められての逢瀬は望みません」
大きく振られた足を躱し、スイはお返しにと蹴りをお見舞いする。もろにそれを受けた邪神は大きく体制を崩しながらも鈴を転がすような声をかけ続ける。
「逢わせてあげられるのに、なぜ望まないの?」
「逢わずとも、誰より知っています。……もし逢ったとしても、彼女を知ることはできないでしょうから……」
水と風を纏った女が相対する。
その思考は何処まで行っても平行線だった。
もう語る事はないと、スイはガジェットにさらに霊力を流し、風に乗る。
大地を割るような鋭い蹴りを邪神に与え、衝撃波での多重攻撃。
よろめいた邪神をスイの目は見逃さない。風でブーストした拳を、邪神の身体の奥まで叩きつける。
「そういえば、信者さん達が、あなたは祝福をもたらしにやってくるのだと言っていましたよ。祝福って、何でしょうね」
美しい夕焼けを見せてくれた感謝を、足に籠めて叩きつける。
「あなたの消滅が、この世界の祝福にはなりそうです」
無機質に美しいその声は、風の精を体現するようだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
合わせてくれるのは、何のため?
ひとを、標本にする対価?
僕はコレクションのひとつになる気はないよ
おまえが合わせられないように、戦うまでだ
敵の攻撃は意外と重いようだ
相手の攻撃を見切りながら【反照舞踏脚】でひらりひらり
身を引いてフェイント、翻して避け、隙を探す
君の動きは鈍重だね
欠伸が出そうだよ
煽りも挟んだら隙は生まれやすいかな
相手の疲れや隙が見えたら敵を踏みつけ、ジャンプ
踵から脚をまっすぐ振り下ろしてその体に蹴りのお返し
あわせてもらう必要はない
逢いたいのなら――向き合えるまで成長して、自ら逢いに行くまでだもの
●やさしい光へ
ふわり、ゆらり。踊るように宙へ浮かぶ邪神へ、ヴェルは疑問を投げかける。
「合わせてくれるのは、何のため? ひとを、標本にする対価?」
水纏う邪神はころりと笑うだけで、何も答えない。
ヴェルはその夕焼けのような瞳を閉じて、そっと息を吐いた。
コレクションのひとつになる気などない。ならばおまえが合わせられないように、戦うまでだ。
先に戦っていた猟兵との動きを見て、その一撃は重いためかなり大振りになるのを知ったヴェルは、隙を探して戦うことにした。
邪神が宙を踊るようにその蹴りを繰り出すのを察知すると、ヴェルもまたそれに合わせ、踊るように回避をする。
ヴェルが邪神に合わせ、3拍子でロンドを踊ると、邪神はイラついたようにさらに大振りになった蹴りを見舞おうとした。
「君の動きは鈍重だね。欠伸が出そうだよ」
そんな煽りを挟みながら華麗なターンを決めて邪神の背後へと回り込んだ。
空振りに終わってしまった邪神は、その勢いを殺しきれずに大きくよろめく。その隙を見逃さないヴェルは、邪神の背中を踏み台に大きく跳躍し、おおきく三日月を描くようにその踵を邪神の身体へ叩き込む。
あいたいものがないわけではない。
しかしそれはいびつな形であわせてもらうようなものではないのだ。
逢いたいのなら――向き合えるまで成長して、自ら逢いに行くまでだもの。
大成功
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皆城・白露
(アドリブ歓迎です)
黒剣を爪状に変化させ、【2回攻撃】【カウンター】も交え戦う
戦いながら、自分の血を相手に付着させておく
召喚されるのは、人狼達――昔の、実験体仲間
実験に耐え切れず死んだ奴、オレが「喰ってしまった」奴
「いなくなった」奴らが、今度こそ一緒に逝こうと、誘ってくる
これがオレの望みなんだろうか
そんなに、先に逝った奴らに会いたいのか
…本当は、生き残った事が、苦しいのか
(この気持ちも、敵の術中って奴かもしれないが)
…いいさ、付き合ってやるよ。だが、お前(邪神)は許さない
【血の復讐者】使用
メリュジーヌに付着させておいた血をマーキング代わりに、自分の血で狙い撃つ
大量出血を伴う為、その場で倒れる
●かつての仲間
ころりと聞こえる邪神の声に、白露は体勢を低くし、迎え撃つ。
復讐に染まる黒き剣を爪状へ変えて、邪神の身体を切り裂いていく。
大きく振りかぶられたその足に、迫る勢いそのままに黒剣を深々と突き刺した。
邪神はそんなことお構いなしに、重い蹴りを叩きつけていく。
かふ、と白露の口から血が飛び、水に揺蕩う邪神に付くが、邪神はからころ笑うだけ。
「あなたのあいたいを叶えてあげる」
リン、と涼やかな音が白露の耳朶を打つ。ひとつ、瞬きをしたその目の前に居たのは、かつて共に施設に収容されていた人狼たち。――昔の、実験体仲間だった。
虚ろな目をした狼耳の少年が、白露を組み敷き、鋭い牙をその白い肩に突き刺す。
「おれを送ってくれただろう。お前も来いよ」
「助けてくれたんだろう? 今度こそ一緒に逝こうぜ」
今いるはずのない、過去の者たちが甘い言葉をかけてくる。
確かあいつは施設の実験に耐え切れず死んでいった奴。
肩口を抉るこいつは、オレが「喰ってしまった」奴。
自分でも自覚していなかった『あいたい』という望みを見せつけられる。
かけられる声は懐かしく、誘う言葉は甘い。
誰にも覚えて貰えなかった仲間が、やさしい眠りへといざなう。
これがオレの望みなんだろうか。そんなに、先に逝った奴らに会いたいのか。
――本当は、生き残った事が、苦しいのか。
そう思わせることも邪神の術中なのかもしれない。
ならば、あえて乗ってやろう。
目の前の人狼に、その身を委ね、柔らかく小さく笑む。
きっと、このまま今度こそ一緒に逝けるのだろう。
誰も白露を恨む者は無く、甘い誘惑に蕩けていくだろう。
しかし。
白露の血が、その血液だけが、邪神を許すことは無い。
どくどくと肩口からあふれ出る熱き血潮が邪神を穿つ。
「メリュジーヌ。お前は、許さない」
小さく呟いて、白露は幻想に身を委ねた。
大成功
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キャロル・キャロライン
私が会いたいと願う存在に会わせてくれる…………なるほど、貴方は我が神を騙ろうというのですね。
貴方程度の存在が神を偽ることなどできようはずもありませんが、そのようなことを企図するものが存在すること自体、認める訳にはまいりません。
我が神の威光、その身でしかと受け止めなさい。
UCを用いて、幾多の神剣を召喚。
死なない程度に敵の四肢に一斉に突き刺します。
何処に逃げようとも、私の剣は貴方を追い掛け、磔にします。
自らの神剣を敵の胸にゆっくりと突き刺しながら、今までに受け取った標本をどうしたのかを問いましょう。
早く答えれば、それだけ早く骸の海に還ることができるでしょう。
――そのようなこと、認めませんが。
●神と邪神
水を纏い、ふわふわ浮かぶ邪神の前に、美しい金の髪を靡かせた聖騎士、キャロル・キャロライン(聖騎士・f27877)が立ちふさがる。
己が会いたいと願う存在に会わせてくれる。つまり、それは。
「……なるほど、貴方は我が神を騙ろうというのですね」
しゃらり、神が鍛え賜うた白銀の剣を抜いた。この剣はオブリビオンに救いを与えない。世界を浄化するために、オブリビオンを屠る為だけの聖なるものだ。
「貴方程度の存在が神を偽ることなどできようはずもありませんが、そのようなことを企図するものが存在すること自体、認める訳にはまいりません」
すぅ、とその剣を掲げ、邪神の方へ振り下ろす。
すると、数多の神剣が現れ、邪神の四肢を縫い留める。
まるで標本のように磔刑に処された邪神に、キャロルは近づき、手にする白銀の剣をその胸にじわりと突き刺した。
「貴方は今まで、いくつもの標本を受け取ったはずです。いったいそれをどうしたのですか? 早く答えれば、それだけ早く骸の海に還ることができますよ」
問いながら、ゆっくりとその白銀の剣を胸の深くまで差し込んでいく。
しかし、邪神はころころと笑うだけ。邪神の笑い声が掠れ、小さくなった時、キャロルの眼前に現れたのは――。
それを掻き消すかのごとく、キャロルの周りを浮遊していた神剣が、一息に邪神を貫いた。
「塵芥の貴方がなにを為そうとも、私は世界を浄化するだけです」
手にしたグラディオスを一閃し、水に沈み逝く邪神を見下す。
かぽ、こぽ。邪神は水に崩れながらもなお、笑っていた。
「あいたいのでしょう」
邪神メリュジーヌは最期に言うと、ぱちりと消えた。
傍らに居た、猟兵たちのあいたいと共に。
大成功
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