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万華鏡の眠りに溺れて

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドクター・パラケルスス #ミレナリィドール

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 ――北方帝国。
 アルダワ世界の一地域にて栄える都。豪奢な館が立ち並ぶ貴族街の一角にその仮面はあった。
「なんて、美しい……」
 血の通わぬ指先で大きな宝石がはめ込まれた仮面の表面を撫でる。ちょうど額の位置に青く輝く石が埋め込まれていた。
「災魔の卵を宿すには相応しい宝石だ。ミスター・グース……キミの野心はこのボクが叶えてあげよう。一時の平和に溺れたこのアルダワ世界を乗っ取り、魔導蒸気文明の災魔化を果たすためにね……!!」

「災魔の卵、ねえ……」
 麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)によれば、街は既に災魔化した宝石から撒かれた催眠ガスによって寝静まり返っている状態らしい。
「人々はみな眠ってしまった。唯一、機械であるミレナリィドールの少女たちをのぞいてね」
 彼女たちはその眼ではっきりと見た。
 意識を失った御主人様である伯爵の元にきらきら輝く万華鏡のような硝子でできた少年が現れ、その体をどこかへ運んで行ってしまったのだ。
「後を追いかけたところ、館の庭に見覚えのない手術室のような建物がある。おそらく、御主人様はその中へ連れ去られてしまったのだろう。幸い、ミレナリィドールは3人いた。ひとりはその場に残り、ひとりは助けを呼びに行き、ひとりは建物の中へ入っていった」

 不気味な手術室の前に所在なく佇み、途方にくれるミレナリィドール。
 誰もかれもが意識を失い、自分以外に動くもののない街中を駆けながら必死に救いを求めるミレナリィドール。
「そして、果敢にも扉を開けて建物の内部に入り込んだミレナリィドールは通路に張り巡らされた鏡に自分の姿が映った途端、足が竦んで動けなくなった。それは『真実の鏡』。映した者の『他人には絶対に見られたくない自分の姿』を映し出す、オブリビオンの用意した皮肉な罠」
 催眠ガスの影響を避けつつ、ミレナリィドールと合流できればオブリビオンの発見に大きく近づけるはず。

 それにしても、と嵐は悪戯っぽく言った。
「よりにもよって真実の鏡、ねえ……嵐はむしろ、そっちの姿の方を見てみたい気がするけどね」
 既に準備は整っている。人為的な眠りに落ちた北の都へと、グリモアの導きが道を拓いた。


ツヅキ
 プレイング受付期間:公開時~常時受付中。

 他の参加者とまとめて判定・執筆する場合があります。
 共同プレイングをかけられる場合はお相手の呼び名とID、もしくは団体名を冒頭にご記載ください。

●第1章 冒険
 北方帝国のとある都が舞台です。
 オブリビオンは貴族街にある館のどれかに忍び込み、人々を機械化するための手術を行おうとしています。
 手術室のドアを開けると鏡の迷宮が広がっており、ここを抜けない限り、ボスの元へはたどり着けません。

●第2章 ボス戦
 首謀者であるオブリビオンとの対決です。

 プレイングボーナス(全章共通)……ミレナリィドールの助力を得る。
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第1章 冒険 『真実の鏡』

POW   :    鏡を割れば姿も見えない!力ずくで姿を隠す。

SPD   :    素早く通り抜ければ姿を見られない!さっきと通り過ぎてしまう。

WIZ   :    これは自分の姿ではないと暗示をかけて通り過ぎる。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒木・摩那
助けに回ったミレナリィドールの前に登場。
助けに参上! 猟兵です。

人攫いして無理やり災魔にするなんて、さすがは猟書家。
やることがえげつないです。
ともかく、一刻も早く後を追いましょう。

最初の難関、『真実の鏡』。
やましいことなんてないんですから、堂々としていれば何の問題も……って、裸!
さすがにそれは見せるものではないですね。

UC【胡蝶天翔】で鏡ごと黒蝶に変換して、空間を蝶で埋めれば、鏡も見えなくて問題なし、ですよ。



 そこは一面の硝子世界だった。合わせ鏡になっているせいで奥行きが分かりづらく、一度足を踏み込んでしまえば無限にも思える己の姿が――それも隠しておきたい真のそれが詳らかにされてしまうという。
「大丈夫ですか? 目を閉じたまま、私の手に捕まってください」
 蹲ったまま震えるミレナリィドールに差し伸べられた手は温かった。黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は彼女を励ますように背を撫で、代わりに鏡の前に姿を晒す。
「あ、あなたは……?」
「街の皆さんを助けに参上しました、猟兵です! 私の他にも来ているみたいですから、手分けをして――って、裸!」
 まさかよもや、そう来るとは。
 ――ふふん。やましいことなんてないんですから、堂々としていれば何の問題もないのです。そう余裕たっぷりに迷宮へと足を踏み入れた摩那には心の暗部などあり得なかった。まさに清廉潔白。故に鏡は一糸まとわぬ生まれたままの姿を暴くことにしたらしい。
「さすがやることがえげつないです。人攫いして無理やり災魔にしようなんて考えるだけのことはありますね」
「あ、あの、どうしましょう? このままでは御主人様がっ」
 縋りつくミレナリィドールを宥め、摩那は胸元を隠すように細身の剣を構えた。
「まあ見ててください。鏡ということは無機物です。ならばこうしてしまえば――!」
 ミレナリィドールが思わず目を閉じた。鏡が無数の黒い蝶の群れに変換され、ぽっかりと空いた空間を嵐のように埋め尽くしているではないか。
「綺麗……」
 陶然とつぶやくミレナリィドールに、摩那は優しく微笑みかけた。
「さあ、御主人様を助けにいきましょう。気配がわかりますか?」
 頷き、白い指先が一点を指し示す。
「あっちです、猟兵様。まだ御主人様は生きておられます――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
アドリブ歓迎

厄災の再来なんてごめよね
それに屋敷に残ったドールたちの助けなきゃ

迷宮に一人ドールがいるとき来たけれど
ここは…!いえ、これは…!?

一人では何もできない自分が映る
いいえ、私は立派に舞台役者としても…
けれどそこにはいつも姉の姿がある

生きている人は苦手、よ
私の方を分かってくれるのはいつも…

実は寂しがり屋で、でも誰かに合わせるのももう嫌なの…よ…
生きている人は…

しゃくりあげる幼な子の声は
もしかしたらミレナリードールの耳に入るかも知らない

うっ…うぇぇ、くず。

あなたは人ではないのね
質問してもいい?
私の見られたくない姿は
「友達が少ないこと」

ありがとう。他人から言われると少し冷静になったわ。



「ここは……! いえ、これは……!?」
 リオ・ウィンディア(Cementerio Cantante・f24250)を驚かせたのは迷宮でも鏡そのものでもなく、親とはぐれた子猫のように震えて泣く女の子の姿であった。
 ごくりと喉が鳴る。
 頭ではわかっている。早くここを通り抜け、助けを求めているはずのドールを探さなければ。厄災をもたらそうとする悪しき存在を倒さなければ――。
 けれど足が竦んで動かない。
 これは、私――?
「そうよ」
 鏡のリオが言った。
「私はあなた。一人では何もできない自分自身」
「いいえ、私は立派に舞台役者としても……」
 乳白色の瞳が「本当に?」と問いかける。リオは自信を持って頷くことができなかった。だって、いつもそこには姉の姿があったから。
「一人はいやなの」
 ああ、それは果たしてどちらが発した言葉であったのか。リオと同じ声で、姿で鏡は語る。生きている人たちの無理解が私を傷付ける。
「私の方を分かってくれるのはいつも……」
「だから生きている人は苦手、よ」
「でも、寂しいの」
「でも、誰かに合わせるのはもう嫌なの……っ」
 しゃくりあげる幼な子の声に気付いたミレナリィドールがいつの間にかそばにいた。
「うっ……うぇぇ、ぐす」
「泣かないで。どうしたの? 悲しいことがあったの?」
 濡れた頬を拭う指先は冷たい樹脂でできていた。そうだ、この人は人ではない。リオは彼女の手を握り締め、囁くように問いかけた。
「質問してもいい? こんな私を見てどう思う? 友達が欲しくて、でも人に合わせることができなくて……ひとりぽっちで泣いている私、を」
 ミレナリィドールは淡い微笑みを可憐な唇に湛えた。
「とてもいじらしいと思います。なにも恥ずかしくはありませんよ。いつか、本当の心から理解し合えるお友達ができるといいですね」
 頷き、リオはようやく泣き止む。
「ありがとう。取り乱してしまったわね……」
 振り返った先にはまだ恨めしそうな顔の自分がこちらを見ているが、随分と気持ちは落ち着いていた。
「私、あなたたちを助けに来たのよドール。厄災の再来なんてごめんよね。もう大丈夫だから、元凶を倒しにいきましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンリ・ボードリエ
うーん...【気合い】で耐えたけれど、催眠ガスはボクにはきついなぁ...。

さて、真実の鏡...見た目は、普通の鏡ですが...

“やめたい”
“こんな事はもうやめたい”

...は...?

“怖い、苦しい...もう記憶を失うのは嫌だ”

...そんな、こと

“過去の記憶が何も無い。仲間の記憶もあやふや”

……黙れ

“ならボクは一体、何を以てボクなんだ”

黙れ!!!

レイピアで突き立てる
こんなのはボクじゃない

…あぁ、驚かせてしまいましたねミレナリィドールさん。申し訳ありません...
貴方はこんなところで一人...よく頑張りましたね。

冷静にならなければ。
助けを待っている人がいるんだ、ここで立ち止まっているわけにはいかない。



 アンリ・ボードリエ(幸福な王子・f29255)は襟元を緩めつつ、何とか気合いで耐えながら件の建物へと近付いていった。
「あ……」
 こちらに気付いたミレナリィドールを制したアンリは、彼女にここで待つように告げて先を急ぐ。
「大丈夫です。中へ入った彼女は僕がきましょう。あなたはこのまま、外で待っていてください」
「わ、わかりました……」
 ミレナリィドールは祈るように指先を組み合わせ、「いってらっしゃいませ」とつぶやいた。
そしてアンリは、ゆっくりと扉に手をかける。
「さて、真実の鏡……見た目は、普通の鏡ですが……」
 そっと指先を鏡に触れ、覗き込んだ途端のことだった。
“やめたい”。
 自分と同じ唇が動いた。
“こんな事はもうやめたい”。
 アンリは愕然と目を見開き、反射的に息を呑む。
「……は……?」
 鏡は――真の姿は繰り返した。
“怖い、苦しい……もう記憶を失うのは嫌だ”
「……そんな、こと」
 鼓動が高まる。
 冷たい汗が背を伝い落ちてゆく感覚。
 喉が渇いて声が掠れた。
 否定したいのに、言葉が出てこない。
「……黙れ」
 かろうじて唸ると、鏡のアンリはこちらを覗き込むように顔を近づけ、低く虚ろな声でこう囁いた。
 ――“ならボクは一体、何を以てボクなんだ”。
「黙れ!!!」
 気づけば、アンリはレイピアを鏡に突き立てて荒い呼吸を繰り返していた。激しく肩を上下に揺り動かし、軽く咳き込む。
「あ、あの……?」
 振り返れば、さきほど会ったミレナリィドールに瓜二つの少女が心配そうな顔で立ち尽くしている。
「苦しいのですか? ごめんなさい、こんなものしかなくて……」
 そっとハンカチで額の汗を拭われる。アンリはその優しさに我を取り戻し、申し訳なさそうに微笑んだ。
「驚かせてしまってすみません……貴方こそ、こんなところで一人……よく頑張りましたね」
 どうやら、彼女にも怪我はないようだ。深く息を吐き、アンリは「冷静になれ」と自分に言い聞かせる。
「助けを待っている人がいるんだ」
 一歩、足を前に踏み出した。目裏に焼き付いた鏡の自分の記憶を振り払うように首を振り、片手で顔を覆う。
 ――“ならボクは一体、何を以てボクなんだ”?
「ボクは――」
 何かを言いかけた声は途中で掠れ、明確な答えを紡ぐことなく消えてしまった。今は何も考えるな。
 困っている人が、そこにいる限りは。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
真実。へぇ、真実ね
さてさて、私は一体何が映るのだろうね
「私」か、それとも他の「彼ら」か
折角だから覗いていこうと思うよ

そのためにも、催眠ガスなどに引っかかっている場合ではないね
吸わないように口布くらいはしていこう
毒耐性が少しでも緩和してくれたら良いのだけど

ミレナリィドールの子を見つけたら、布でも掛けてあげようか
君が見られたくないものを私が見てしまわぬように
君が見たくないものを見ないように

さて、私の姿は?
――鬼殿
いいや、いまは、羊殿とでも呼ぶべきか
ああ、そうだね。元々この体は君のものだ
今の「君」が映るのは、真理か
…少し、代わってくれないかい
鏡を全部、叩き割っておくれ
流石に、拳では骨が折れるから



「真実。へぇ、真実ね」
 よく手入れされた薔薇の咲き誇る中庭の園を抜けながらエンティ・シェア(欠片・f00526)は口元を覆う布の下で微かに笑った。
 ――好奇心。
 おそらくそれが最も近いのだろう。
 少なくとも「私」は面白がっている。
 一体何が映るのか?
 果たして「私」か、それとも他の「彼ら」なのか。
 あるいは――。
 軋んだ音を立て、開いた扉の向こうに広がる鏡の迷宮。深く帽子を被り、ゆっくりとエンティは内部を闊歩する。
 蹲って震えるミレナリィドールはすぐに見つかった。
「大丈夫かい? 怖かったね。さ、悪戯な鏡はこうしてしまおう」
 エンティは颯爽と布を鏡にかけ、ミレナリィドールを勇気づける。
「あ、ありがとうございます……助けに来てくださったんですね? 外には奇妙なガスが満ちているのに……あなた様こそ、平気なのですか」
「毒の類にはね、元より強いのだよ。いいかい、君は眼をつむってこの先で待っていなさい。すぐに私も行くから」
「は、はい……!」
「いい子だね」
 そうしてミレナリィドールを背を押して行かせた後で、エンティはまるで手品師のように器用な手つきで鏡を覆った布を外した。
「――鬼殿。いいや、いまは、羊殿とでも呼ぶべきか」
 やはり、と目が細まる。
「ああ、そうだね。元々この体は君のものだ。今の『君』が映るのは、真理か」
 エンティの唇から笑みが消え、
「……少し、代わってくれないかい。流石に、拳では骨が折れるから」
 不愛想な舌打ちがその返事であった。
「仕方ねえな。汚れ仕事は全部、俺にまわってくるんだからよ」
 盛大なため息をつき、拳を握り締めるのは「俺」。注文通り、全ての鏡を叩き割ってやるさ――すぐに粉々になって砕かれた破片が足元へ飛び散った。
 肩を竦め、「はい終わり」とばかりに言い放つ。用が済んだのだからさっさと代われと言わんばかりに。
「これでいいだろ? なーんにもなくなっちまった。あとは、この先にいる悪玉をお仕置きしてやるだけさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『至極の刹那』

POW   :    硝子は刺さると、痛いんだ
命中した【硝子】の【破片】が【トラバサミ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    眩んだ先は、白一色
【色彩の反射光】を向けた対象に、【数秒間視覚を失う眩しさ】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    夢幻の世界へ、ようこそ
【刻々と移り征く万華鏡が生み出す模様】を披露した指定の全対象に【ずっと見て居たいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はメルヒェン・クンストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 鏡の迷宮を抜けると、前触れなく開けた空間の中央に手術台のようなベッドに横たわって眠る身なりのいい男性の姿が見えた。
「御主人様……!!」
 感極まって呼び掛けるミレナリィドールの声に振り返る硝子細工のオブリビオン。造り物めいた無機質な瞳は彼が元は機械人形の類であることを告げている。赤薔薇のように深い色彩の瞳を薄っすらと細め、その身に纏う透き通った破片をしゃらしゃらと鳴らす彼はミレナリィドールを無視して猟兵たちへと視線を向けた。
「なんてことだ……もう少し、時間が稼げると思っていたのに。こんなに早く見つかってしまうとは思っていなかった」
 どうしようか、と小さく呟き、ふと思いついたようにメスの先を眠る男性の首筋に当てる。
「いやッ――」
 微かな悲鳴がミレナリィドールの喉から漏れた。首筋に滲んだ赤い血に眩暈を起こしたように膝をつく彼女をからかうようにオブリビオンが笑う。
「ほんの少し傷つけただけさ。けど、殺すのはいつでもできる。ボクはここで倒されるわけにはいかないんだ。ミスター・グースの野心を叶え、この世界を災魔化する……考えるだけでぞくぞくするね。だから道を空けてはくれないか? その代わり、この男は見逃してあげるよ。受け入れなければこの男がどうなるか、賢明なキミたちなら言わなくてもわかるよね――?」
黒木・摩那
世界を災魔化するために、ミスター・グースの改造を見逃せ、でも見逃さないなら、グース氏がどうなるか、わかってるよな?と。

それって、どう転んでも改造する気満々じゃないですか!
あやうく口車に載せられるところでした。

ですが、そんな思惑に乗りませんよ。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
UC【蒼鷹烈風】で高速化したヨーヨーで、人質の首元を狙うメスを【武器落とし】で弾き飛ばします。
そして。そのままヨーヨーの連撃を【衝撃波】入りで叩き込みます。

飛び散ったガラスの破片は【第六感】や【念動力】で回避します。


エンティ・シェア
可愛らしいお嬢さんを泣かせるなんて、酷いことをするものだ
心配しないで。あの人を死なせたりはしないよ
助けるために、ここまで来たんじゃないか

さて、道を開けてあげるのは簡単だけど
見逃してくれるというその人は、置いていくのかい?
いつでも殺せる。本当に?
君の盾だろう。その人は
賢明な君なら、既に察しているだろうに
彼が生きている段階で踏み込まれた時点で、負けているのだと
動揺でもしてくれればいいけど、まぁ期待すまい
お喋りの合間に舞わせた華断で彼の視界を奪ってしまおう

綺麗なものは好きだよ。けれど生憎だ
さっき、ぶち割った鏡を見てきたばかりなのでね
似たような絵面は、見たくないよ
自由で苛烈な花達に、刻まれておしまいよ



「ちょっと状況を整理させてもらっていいですか?」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は小首を傾げ、万華鏡のオブリビオンが持ち掛けた取引の条件について確認をとった。
「世界を災魔化するために、ミスター・グースの改造を見逃せ、でも見逃さないなら、グース氏がどうなるか、わかってるよな? と」
「ん?」
 エンティ・シェア(欠片・f00526)が訂正する。
「いや、あれはグース氏ではなくて一般の貴族殿だと思うよ」
 多分、と彼は続けた。
「予知でそこのオブリビオンが宝石を盗み出した時に『ミスター・グース……キミの野心はこのボクが叶えてあげよう』と言った。その対象がいまそこで寝ている貴族だと思い違いをさせてしまったのじゃないかな。宝石があった貴族の館と、私たちがいるこの館は別の場所だよ」
 摩那はぽん、と手のひらに拳を軽く打ち付けた。
「把握しました。でも、結局この人を逃がせば別の場所で同じ事件を起こすだけですよね? それじゃ、あの男性をひとり救えたところで意味がありません」
「そういうことだね」
「ですよね。あやうく口車に載せられるところでした」
 そんな取引はオブリビオン側にとって有利に過ぎる。摩那に同意したエンティは涙ぐんで震えているミレナリィドールの頬をそっと指先で拭ってやった。
「可愛らしいお嬢さん、心配しないで」
「でも、でも……御主人様が……」
「私たちがあの人を見捨てるとでも? 見くびってもらっちゃ困るな。助けるために、ここまで来たんじゃないか」
 今も変わらず、オブリビオンのメスは眠る男性の首筋に触れている。タイミングを間違えば簡単に首が落ちるだろう。
 だが、本当に?
「さあ、道を空けるんだ」
 オブリビオンが言い、
「それはいいけれど、見逃してくれるというその人は置いていくのかい?」
 エンティが意地悪く尋ねる。
「君の盾だろう、その人は。賢明なキミならこの矛盾、既に察しているだろうに」
 つまり、と再びオブリビオンが口を開く番だった。
「ボクの刃が彼から離れた途端、君は約束を反故にしてボクを襲う――と?」
「それくらいの卑怯さは身に着けているつもりだよ。君にとっては不幸なことにね」
 会話を続けて相手の注意を引き付けている間に、エンティの武器は無数の花弁となってオブリビオンの視界を覆い尽してしまう。
「はッ――!」
 ほぼ同時に、摩那の手元を離れた可変ヨーヨーが烈風の如き勢いでメスを弾き飛ばした。
「なに!?」
 しかも、摩那の攻撃はそこで終わらない。硝子の腕を遡ったヨーヨーはそのままオブリビオンの急所を穿ち、激しい衝撃波を複数撃ち込んだのであった。
「く、やってくれたね……!」
 砕かれた破片がそのまま反射光を放つ媒体として機能し、戦場を目も眩む白一色へと染め上げる。だが、刹那の差で先読みした摩那はとっさに精神を集中。念動力を使い硝子の破片を拡散することで威力を削いだ。
「綺麗なものは好きだよ」
 口調とは裏葉にエンティの声色は少し飽いている。
「けど、いささか単調だね?」
「これは――」
 花の檻だ。
 万華鏡たるオブリビオンの身体を刻み、割砕くのは鮮やかなる花弁の群れ。リィン――と硝子の擦れる振動音が鼓膜を震わせる。
 エンティは容赦なく微笑んだ。
「さっき、ぶち割った鏡を見て来たばかりなのでね。似たような絵面を見せる代わりに、自由で苛烈な花の舞を御照覧あれ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

多々羅・赤銅(サポート)
一切合切大成敗。赤銅鬼が、お邪魔すんぜ
混ーぜて!

NG:子殺し

性格:人助けに躊躇無い破竹の快楽主義】
酒煙草賭け事、悪巫山戯も夜伽もだぁいすき。ガタイの良い真摯な奴とか特に好き♡敵でも惚れちまうね、赤い糸ごと御魂を斬って、何れ地獄の果てで落ち合おう。
あとな、私すっっげー寂しがりなの!
だから敵ともガンガン話すし、人には好かれたい!
ま、敵は仲良くなっても斬れっけど。

戦闘:鎧無視斬撃と耐火特化】
斬れないモンは何も無えよ。
鉄、炎、音さえも
見切り受け流し斬り伏せる。
身体に流れる聖者の血が、多少の傷は次々塞ぐ
肉盾役も、ご要望とあらば

日常冒険:酒、交流、笑う脳筋】
人と話すの好き!はしゃぐのも大好きー!あそぼ!


ナギ・ヌドゥー(サポート)
普段はなるべく穏やかで優し気な感じで話してます。
……そう意識しておかないと自分を抑えきれなくなりそうなので。
それでも戦闘が激しくなると凶悪な自分が出てしまいますね。
オブリビオン相手なら最初から素で対峙し、手段を選ばず殺しにいきますよ。

探索行動の時は第六感などの知覚に頼る事が多いです。

日常的な行動は、寛ぐ事に慣れてないから浮いた存在になるかもしれません……

武器は遠距離ではサイコパーム、近距離では歪な怨刃、
痛みや恐怖を与える時はソウルトーチャーを使います。

己は所詮、血に飢えた殺人鬼……
それでも最後の理性を保つ為に良き猟兵を演じなければ、とも思っています。
どうぞ自由に使ってください。



「というわけでやって来ました、ガチョウさんの陰謀渦巻く蒸気世界かあ。いいね浪漫さね。私この無骨な得物っきゃ手持ちないけど仲間に入れてちょーだいな♡」
 能天気な横やりを入れた輩の名を多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)という。彼女は天井付近のシャンデリアに腰掛け、刀で肩を軽く叩いた。
「いつの間に……」
「だってさ、面白そうな話してンだもん。なあ、次は私の相手してよ。お綺麗な機械人形さん?」
 答えなど赤銅は待たなかった。頭上から真っ逆さまに――まるでギロチンの刃のように――落下してくる刀を紙一重で躱したはずの硝子の腕がパキンと砕けて飛び散った。
「く……!」
「おっと、逃がさねえよ。次は肘じゃなくて急所に当てるぜ」
 ひゅんっと無造作に振られた太刀筋が獣用の罠となって襲い来る硝子の破片ごと敵を追い詰める。
「私の卵雑炊は何だって斬っちまうのさ。お前の体それ万華鏡って奴? 斬ったらさぞかしきらきらした塵になるんだろうなぁ!」
 赤銅の思うが儘に刀が振るわれる度に硝子が砕け、戦場には似つかわしくない瀟洒な音が響き渡った。
 その音色すら、鮮やかに斬り伏せて。
「あなたはどうして、アルダワ世界に災魔を齎したいのですか?」
 疑問の主はナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)。
 密やかに、影に寄り添うように。
 気づけばそこに立ちつくしていたナギは両の手のひらを腰の辺りで握りしめて繰り返した。
「なぜ、と聞いているのです。答えられないのなら――アンタは用無しだ」
 直後、室内に響き渡ったのは重厚な鉈が硝子を叩き潰した音である。壁と拷問具の間に体を挟まれたオブリビオンは恐怖に震え、乾いた喘ぎを漏らした。
「ボ……ボクの肩が――!?」
 穿ったそれは見る間に形状を不気味な獣の姿に変え、獰猛な牙の間からちろりと赤い肉色の舌を覗かせる。
 ソウルトーチャー、咎人の血と骨より生み出されし呪獣。
「可愛いだろ、オレにはよく懐いてる」
 ナギはその頭を撫で、自らは鉈を手に彼の元へと近づいた。震える顎を指先に乗せ、視線を外せないようにしてから刃を振り下ろす。
「がっ……!」
「血が出ないのが残念だ」
 無機物相手は作業のようで物足りない。飛び散った破片が頬を裂き、滲んだ血を舌先で舐めとる。
 早く終わらせて、次に行こう。
「後はやるよ、ソウルトーチャー。綺麗に喰えよ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アンリ・ボードリエ
貴方を見逃せば彼は助かる…しかし、世界は災魔化する…。
なかなか卑怯で醜い提案をしますね。

僕の答えなんて初めから決まっていますよ。
大丈夫、心配しないでください。貴方の主人を見捨てたりしませんよ。
もちろん、世界も見捨てない。
僕の身を犠牲にしてでも、両方救ってみせる。

【覚悟】を決めて、UDCに精一杯の【祈り】を込める。
向こうからの攻撃は【激痛耐性】で耐えて、UCを発動し光【属性攻撃】で切りかかる。

ボクなんてどうなっても構わない。ほんの少しの間でいい、どうか万物をも救えるような力をお与えください。



 戦いは熾烈を極めた。猟兵がオブリビオンと戦うさなか、ミレナリィドールは主人がいつ巻き込まれやしないかとはらはらしなが見守っている。アンリ・ボードリエ(幸福な王子・f29255)は彼女を宥めるように微笑み、あなたこそあまり前に出ないようにと言い含めた。
「は、はい……」
「大丈夫、心配しないでください。あのような卑怯で醜い提案を受け入れたりはしません」
「本当ですか?」
「ええ、ボクを信じてください」
 胸に手を当て、おっとりと微笑むアンリに心を許したミレナリィドールの頬が薔薇色に染まった。
 そう、これがアンリの――幸福な王子に課せられし皮肉な宿命。誰かの笑顔と引き換えに失われる記憶は、世界を救えるほどのそれはどれほどの犠牲を彼に強いるのだろうか。
「結論が出ましたよ」
 決然としたアンリの足元から俄かに光が輝き始める。
「なんだい、その光は……くそっ、まぶしいじゃないか……!」
「ッ――」
 体を裂くトラバサミの痛みに耐え、まぶたを伏せる。どうか、力をお与えください。
 万物をも救える力を、この手に。
「もう決めたんです。そこの方の主人を見捨てたりはしません。しかし、世界も見捨てない」

(捨てるのは、ボクだ)
(それでいいんだ)

「ボクなんて、どうなっても構わない。だから――」
 アンリの祈りがUDCを通して現実化する。万華鏡を喰い尽くす音が途絶えた時、そこには目覚めた主人を労わるミレナリィドールの涙だけがあった。
「あれ? ボクはここで何を……」
 頭を振り、ぼんやりと中庭を見渡す。けれど、きっとよいことがあったのだろう。だってあの人たちはあんなに喜んでいるのだから。
「なら……いいか。よかったですね、おふたりとも」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月05日


挿絵イラスト