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嘆きの声は地の底に消える

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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「おねえちゃん、さむいよぉ」
「こっちに、ほら、いっしょにいたらあったかいでしょ」
 粗末な小屋の中で、幼い姉妹が身を寄せ合って薄い毛布を纏い寒さを凌ぐ。
「ん、あったかい。ねえ、おとうさんはいつかえってくるの?」
「えっおとうさんは……おとうさんはね、ミーナがいい子にしてたら帰ってくるよ。きっと……」
「じゃあミーナいいこにしてる!」
 妹の質問に暗い顔で言い淀んだ姉は、何とか取り繕って妹に笑顔を咲かせる。だがそんな和やかな会話もすぐに掻き消された。

 ――ぎゃあああああああっ!!

 突如として悲鳴が町に轟く。ぼんやりと光る苔が照らす外では男が襲われていた。
「お前、今日のノルマを達成していないようだね」
 頭から翼を生やした異形の女が鳥のような脚で踏みつける。
「ゆ、許してください! 腕を怪我してしまって! それで畑仕事が――」
「怪我をして仕事ができないというなら、お前は不要だよ」
 ぐちゃりと、男の頭を無造作に踏み潰す。スイカでも割ったように、真っ赤な鮮血と肉片が飛び散った。
「お前達はね、生まれてから死ぬまで領主様の奴隷なんだよ! それが口答えするなんて、身の程を弁えな!」
 見せしめのように、その死体がさらに踏み砕かれる。
「ふんっ、死体はいつも通り獣の餌にしな!」
 言い捨てると、女は翼を羽ばたかせ同じ姿をした仲間達の元へと飛んでいった。

「また一人殺された……今年は何人死ぬことになるのか………」
「おい、聞こえるぞ」
 暗い顔の町の男達がひそひそと喋りながら、慣れた手つきで死体を町の外へと運び出す。
「こいつガキができたばかりだろ」
「先週殺されたマルクのやつも、可愛がってた娘二人残して死んじまったしよ。次は誰が殺されるのか……」
 想像すると会話が途切れ、明日は我が身だと身体を震わせる。
「しかたねぇ、俺たちはこの町で生まれて、この町で死ぬんだ……」
 上を見上げれば、光る苔に覆われた天井が見える。それは生まれてから死ぬまで代わり映えしない地底の風景だった。
「でもさ、噂を知ってるか?」
「噂?」
「なんでも、この先にもっと広くて自由な土地があるって話しだ」
「なんだ、御伽噺か……だけど、あったらいいな………」
 男達が同胞だった死体を町の外の穴に投げ入れる。そこには何人もの白骨化した遺体や、まだ肉の残る腐臭漂う死体も転がっていた。
「この穴に入らなくていいなら、きっとそこは天国だろうさ――」
 諦観した男達は埋めもしない野晒しの墓穴に背を向ける。人が去ればすぐに獣が餌を喰らいにくるだろう。

 この巨大な地底空洞こそが、地底都市に生きる人々の世界の全てだった――。

●グリモアベース
「ダークセイヴァーに隠された新たな地底都市を見つけた」
 バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)がダークセイヴァーの各地に存在する地底都市の一つを予知によって発見したと猟兵達に告げた。
「ヴァンパイアが支配する地底都市には奴隷として多くの人々が飼われている。地底に生まれ育った人々は地上があるという事すら知らないようだ」
 地底都市に住む人々は生まれた時から地下世界しか知らず、何もかもを諦めて支配者の命令のまま家畜のように生きている。

「諸君にはその地底都市に侵入し、人々を解放してもらいたい」
 このままでは人々は消耗品として扱われ、地の底で働くだけ働かされて死んでいくことになる。
「その為には、地底都市に入る道を守る『門番』を倒さなくてはならない。この門番は『同族殺し』さえも上回る圧倒的強さを持っている。その力の源は、『番犬の紋章』という寄生虫型オブリビオンのようだ」
 門番は番犬の紋章によって強化され、地底都市を単身で守るだけの力を得ている。
「門番は紋章以外にはダメージが殆ど通らん。如何にして紋章へ攻撃を与えるかが攻略の鍵となるだろう」
 紋章により強化された強靭な体はあらゆる攻撃に対して耐性を持っている。その源である紋章を攻めなくては守りを貫けないのだ。
「紋章は黒い太陽のような形をしていて、門番『聖剣のアデリーナ』の左肩に刻まれているようだ」
 門番は剣を操る少女の姿をしたオブリビオンで、露出した左肩に紋章を見ることができる。

「門番を倒したならば、地底の町を管理しているオブリビオンの兵士どもを殲滅してもらう。そうして人々を解放し、地上に出るように誘ってほしい。急に地上と言われても戸惑うと思うが、地上からやってきた諸君等が何よりの証拠となるだろう」
 初めて見る外部の人間の言葉は説得力を以って聞き入れられるだろう。
「地上に出られるのは生きている者だけだ。死者は共に連れ出ていくことはできない。出発前に獣の餌として晒されている亡骸を供養してやってほしい。家族が死んで別れを迷う者も、亡骸を埋葬し故人と別れを告げられれば旅立つ決心がつくだろう」
 この地底都市に住む人々の死体は全て無残に捨て置かれている。きっちりと墓を建てて埋葬する方法を教え、死を悼んで気持ちに区切りをつける必要がある。

「墓を作り死を悼むことすら知らないなど、そこはまさに地の底にある地獄だろう」
 険しい顔でバルモアは、そんな地底の入り口に繋がるゲートを開く。
「地底の閉塞的な絶望から人々を救い、外へと連れ出して希望を――世界の広さを教えてやってくれ」


天木一
 こんにちは天木一です。ダークセイヴァーで見つかった地底都市の解放任務となります。強力な門番と住民を虐げる兵を倒し、人々を救い出しましょう!

 第一章は、地底都市に繋がる道にある門を守る門番との戦いとなります。左肩にある黒い太陽の紋章以外には殆どダメージが通りません。
 紋章を狙う行動にはプレイングボーナスが入ります。

 第二章は、地底都市に入り管理しているオブリビオンの兵達との戦いとなります。
 この戦いで活躍すれば、地底都市に住む人々に勇気を与え、三章での行動にプレイングボーナスが得られます。

 第三章では、人々を地上に出るように説得し、その一環として野晒しの骸の墓を建てることになります。人々は死者の墓を建てるということも知りません。
 親を失った者や子を失った者。誰も彼もが家畜のように家族を殺され嘆いています。ですが死者を葬ることもできず、死を引き摺っています。乗り越えるきっかけをあげてください。

 複数人で参加する方は最初にグループ名などをご記入ください。
 プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページかタグにて。
 奴隷として地底に閉じ込められている人々を救い、地上へと導いてください!
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第1章 ボス戦 『聖剣のアデリーナ』

POW   :    疾風怒濤・緋燕十字斬
敵を【聖剣「導きの極光」による超連撃】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD   :    内臓攻撃
【一瞬で間合いを詰めてからの腸を抉る一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    極光放射
【聖剣「導きの極光」から全てを切る光刃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●地底への門
 外の薄明かりも届かぬ洞窟の中。だんだんと下る坂道を進むと、松明の灯が目に入る。
 見れば洞窟の奥に大きな門がある。まるで何かを守るように厳重な金属の扉が鎮座して、この先に行こうとする者を阻む。
 その門の前には、剣を腰に下げた少女の戦士が目を閉じて立っていた。
「そこにいるのは誰?」
 ゆらりと松明の火が揺れると、すっと瞼が開き誰何の声が飛ぶ。洞窟内に反響した音がまるで侵入者を探すように木霊す。
「ここを通りたいならこのあたし、聖剣のアデリーナを倒すことね。まあ無理だけど……」
 すらりと腰に下げた剣を抜き放つ。すると眩い光が放たれて洞窟を照らした。
「そこね!」
 剣を一閃すると光の斬撃が飛んで岩を切り裂く。するとその向こう側から猟兵の姿が現れた。
「久しぶりに聖剣を思いっきり振るえそうね。見ての通りここは退屈なの、簡単には死なないでよね――」
 門番のアデリーナが激しい戦いを予感して楽しそうに笑う。
 生前は名のある勇士だったのだろうか……だが今は堕ちて闘争と血を求めるオブリビオンと成り果てていた。その左肩には真っ黒な太陽を模った番犬の紋章が浮かんでいる。

 猟兵達はこの強敵を倒し、地底都市へと続く門を開こうと戦いを挑む――。
ラウラ・クラリモンド
「地底都市の人々を助け出すためにも、あなたを倒させてもらいます。」
【WIZ】で攻撃します。
攻撃は、【フェイント】や【カウンター】を織り交ぜながら、【破魔】を付けた【貫通攻撃】と【鎧無視攻撃】の【死女の恋】を【範囲攻撃】にし、『聖剣のアデリーナ』の左肩にある黒い太陽の紋章を巻き込めるようにして【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「私の役目は、少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


ミア・ミュラー
アリスラビリンスも辛い世界だったけど、希望が、あった。ここにはそれすらない、のね……。ん、早くみんなを助けてあげないと、ね。

敵の攻撃は当たるとまずそうだし、「視力」で剣を振るのをよく見て、光刃がどう飛ぶか見極めて、避ける。ただ壊すだけじゃ、本当の光じゃない、よ。
お返しに【陽はまた昇る】の光で攻撃する、よ。弱点が見えてるなら当たるはずだし、ただ攻撃するだけじゃなくて、みんなを強くすることも、できる。ん、確かに隠して光を遮れば防げるけど、そんなことしてる暇、ある?アーデントクラブをぶつけて追撃しちゃう、から。
あなたに構ってる暇は、ないの。この先には今も苦しんでる人たちがいる、から。



●門番
「地底都市の人々を助け出すためにも、あなたを倒させてもらいます」
 門番の前に姿を現したラウラ・クラリモンド(ダンピールのマジックナイト・f06253)が、火刀『デイジー』を抜き放って駆け出し、左肩にある黒い太陽の紋章を狙って袈裟斬りに振り下ろす。その刃は甲高い音を立てて防がれた。
「なかなかの斬撃だね……楽しめそうだよ!」
 アデリーナは聖剣で弾き、お返しと片手で軽く胴を薙ぐように振るう。軽やかな一撃に見えても、紋章に強化された一刀は容易く体を断ち切る威力を持っていた。
「そうですか、では存分にお楽しみください」
 ラウラは屈んで避けると反射的に刀を薙いで露出した太腿に当てる。しかし掠り傷が着く程度で殆どダメージを与えられなかった。
「無駄だよ」
 アデリーナが下から剣を切り上げ、ラウラは刀で受け流し後退した。
「あたしを倒したいなら、ここ、ここを攻撃するしかないよ」
 自らの弱点を指し示すように左肩を前に出して紋章を見せる。
「できれば、の話だけどね!」
 大きく踏み込み剣を振り下ろし、真っ二つにするような斬撃が迫る。
「やってみせましょう」
 右に跳んだラウラが突きを放ち左肩を狙う。しかし跳ね上がるような剣の一撃を受けて刀が手から弾き飛ばされ天井に刺さった。

「もう終わり? じゃあ終わらせようか――これは?」
 がっかりした顔でアデリーナが剣を上段に構える。そこへ天井からひらひらと薔薇の花びらが降り注いだ。
「剣の勝負では私の負けですが、戦いには勝たせてもらいます」
 ラウラは弾かれた刀をユーベルコード『死女の恋』によって無数の薔薇の花びらに変え、室内を満たすように包み込む。それがアデリーナの左肩の紋章に触れると、まるで刃物のように切り裂いた。しかし紋章は鋼のように硬く簡単には削り切れない。
「そう、この花びらが攻撃なんだ。なかなか洒落た技じゃない!」
 楽しそうにアデリーナは聖剣を眩いほど輝かせ、一閃して光の刃を放って花びらを切り払った。
「門番なんてつまらない仕事にうんざりしていたけど、こんな刺激のある戦いができるなんてね!」
 アデリーナが嬉々として輝く聖剣を振るい、凶刃がラウラへと迫った。


「アリスラビリンスも辛い世界だったけど、希望が、あった。ここにはそれすらない、のね……。ん、早くみんなを助けてあげないと、ね」
 ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は今も虐げられる地底の人々を思い、無表情な顔を僅かに曇らせる。
「苦しんでいる人がいるのに、ずいぶんと楽しそう、ね」
 目の前で遊ぶように剣を振るうオブリビオンを見て、ミアはふつふつと胸の内に怒りが湧くのを感じた。
「つまらないなら、辞めてしまえばいい……」
 巻き込まれないように光刃を観察し、飛ぶ光の斬撃を躱してミアはスートロッドを構えてユーベルコード『陽はまた昇る』を発動する。魔法の太陽が頭上に作り出され、光が洞窟内を照らす。
「光?」
 振り向いたアデリーナの元に束なった光条が真っ直ぐに伸びて全身を照らした。
「くっ、あたしと同じ光の力を使うの!」
 光が左肩の紋章を焼きつけ、ジュッと音がして肉が焦げるような臭いが漂う。
「やるじゃない!」
 左肩を後ろにして光の直撃を遮り、眩しそうに目を細めてアデリーナはミアに視線を向けた。
「だけど、こうすれば直撃は避けられる。わかっていれば対処は簡単だね」
 離れた位置からアデリーナは右肩を前にして踏み込み、フェンシングのように突きを放つ。すると切っ先が伸びるように光刃が放たれ、ミアの胸を狙った。しっかりと敵の動きを見ていたミアはそれに反応し、飛び退いて躱すと、後方の岩が貫かれ穴が開いた。


「ただ壊すだけじゃ、本当の光じゃない、よ」
 ミアは光を強くして照射し、辺りを日の元のように照らす。
「攻撃するだけじゃなくて、みんなを強くすることも、できる」
 ミアがそう呟くと、その光り輝く大地の上で活性化したラウラが側面から敵に氷剣『ヴァイオレット』で斬り掛かった。それをアデリーナは剣で受け止めるが、身体の向きを変えた為に光が左肩に射した。
「っ剣ではあたしの方が上なんだから!」
 押し戻して間合いを開け、また光から防ぐように左肩を後方に向ける。
「これは剣の試合ではありません。剣で倒さずともよいのです」
 ラウラが剣を一振りすると薔薇の花びらが舞い、後方から襲いかかって紋章を傷つけた。
「邪魔!」
 アデリーナが左肩を左手で光から守りながら、窮屈に剣を振るって花びらを散らす。
「ん、確かに隠して光を遮れば防げるけど、そんなことしてる暇、ある? アーデントクラブをぶつけて追撃しちゃう、から」
 そこへミアがクラブのスート型アイテム『アーデントクラブ』を飛ばし、熱を帯びて敵の左肩を狙う。
「次々と! だけど面白いじゃない!」
 もっといろいろな攻撃をしてみろと、アデリーナはクラブを剣で弾いた。
「あなたに構ってる暇は、ないの。この先には今も苦しんでる人たちがいる、から」
 そこを退けとミアは太陽の光を強めて敵の紋章を焼いた。
「そんなこと知らない! もっとあたしを楽しませて! 導きの極光よ! 光を!!」
 アデリーナが守りを捨てて大上段に聖剣を構える。天井に届くほど光の刃が伸び、真っ直ぐに振り下ろす。極光が放たれ、洞窟に浮かぶ太陽ごとミアを切り裂かんとする。
「……太陽を斬るなんて無茶苦茶、ね」
 ミアは咄嗟に飛び退いたが、地面を抉る極光の衝撃波に吹き飛ばされて地面を転がった。その大技の隙をつき、突進したラウラが剣を左肩に突き入れる。しかし切っ先が紋章を抉ったところで、左手で刀身を掴んで止められた。
「あたし相手によくここまで喰らいついたね。だけど近接戦では負けない!」
 アデリーナが輝く剣を振り抜き、ラウラは剣を引いて受け止めるが壁まで吹っ飛ばされた。
「……私の役目は、少しでもダメージを与えて次の方に繋ぐことです」
 ラウラが残った力を振り絞り、花びらを操って肩の紋章に突き刺した。

「紋章を宿すあたしを傷つけるなんて本当に面白いね。さあ! 次の相手は誰だ!」
 花びらを抜いたアデリーナは紋章に傷を負いながらも、まだまだこれからだと闘志を燃やして次の相手を待つ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハロ・シエラ
なるほど、聖剣ですか。
今の使われ方はあまりその名に相応しいとは思えませんが……良いでしょう、相手になります。

さて、敵の動きは速いですね。
ですが、間合いを詰めてきて内臓を狙って来てくれるならそこに勝機はあります。
一瞬の勝負になるでしょうし、帽子と上着は取っておきましょう。
後は右手にダガーを逆手持ちし、攻撃を待ちます。
敵の動きを【見切り】近付かれた瞬間に【カウンター】で左肩の紋章にユーベルコードの一撃をくれてやりましょう。
【瞬間思考力】を駆使して上手く動き、敵の【体勢を崩す】事が出来れば、その攻撃の威力を殺ぐ事も出来るかも知れません。
そう出来なかった分のダメージは激痛体勢で耐えましょう。


才堂・紅葉
ったく、楽しそうで良いわね
私はそう言うの御免なんだけど

挨拶代りに【早業】でアサルトライフルをセミオートで叩き込む
自身も「ガジェットブーツ」で洞窟の外壁、天井を蹴りつけて的を絞らせない遠距離戦に徹し、相手の癖を【情報収集】だ

狙いは内臓攻撃
観察した相手の攻めのタイミングを【見切り】、こちらのリロードを【フェイント】にしてUCを誘う
やる事は空蝉の術だ
銃と上着、そして【存在感】を残し、弧を描く動きで奴をすり抜けたい
奴自身の瞬足の踏み込みに呼吸を合わせる事で、その意識の死角に潜り込もう

音のない跳躍から踵を振り上げ、奴の左肩に重力【属性攻撃、重量攻撃】の踵落しで勝負する

「あら。簡単には死なないでね?」



●狂戦士
「なるほど、聖剣ですか。今の使われ方はあまりその名に相応しいとは思えませんが……良いでしょう、相手になります」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が敵の視界に姿を現わし、ゆっくりと近づいていく。
「いいね! 堂々と戦う戦士は大好きだよ!」
 その態度を見て嬉しそうにアデリーナは聖剣を構えた。
「さて、敵の動きは速いですね。ですが、間合いを詰めてきて内臓を狙って来てくれるならそこに勝機はあります」
 少しでも勝機を高める為に帽子と上着を脱いで身軽になる。そして右手にダガーを逆手持ちにして構えた。
「準備できたみたいだね。いくよ!」
 飛ぶようにアデリーナが一瞬で間合いを詰め、左手の貫手をハロの脇腹目掛けて放った。
(左の貫手。速い、だけど対応は可能――)
 瞬間思考力で刹那の間に思考を巡らせ、ダガーで貫手を受け流し、軌道を逸らして敵の上体を泳がせる。そして丸見えになった左肩に向けて、ユーベルコード『スネイクバイト』を発動してダガーを振るい刃を走らせた。金属でも斬るような硬い手応えで紋章にガリガリと傷が刻まれアデリーナが痛みにしかめっ面になった。
「へぇ、あの速度についてくるなんて……驚いた」
 飛び退くと本当に驚いたという顔をしてアデリーナがハロを見つめた。
「ごめん。ちょっと舐めてたかも、謝るよ」
 そして笑みを深めてアデリーナは聖剣を構えた。先よりも真剣に、そして殺気もまた増大した。ふっと閃光のように首を刎ねる鋭い斬撃が放たれる。
(速度上昇。首への斬撃。回避は不可。防御を――)
 ハロは咄嗟にダガーを上げて受け止めたが、押し込まれて後方へと弾き飛ばされた。


「ここからはあたしも油断なしでいくね!」
 強敵相手に楽しそうにアデリーナが追撃せんと駆け出す。しかし殺気に気付いて進路を変えて飛び退く。するとそこに洞窟内に響く銃撃音と共に弾丸が大地に穴を穿った。
「ったく、楽しそうで良いわね。私はそう言うの御免なんだけど」
 嘆息混じりに才堂・紅葉(お嬢・f08859)が続けてアサルトライフルをセミオートで発射し、命中精度を上げて敵を狙っていた。
「飛び道具か、それじゃダメだよ。あたしを倒したいなら近接戦じゃないと!」
 射線から左肩を隠して弾丸を体で受け止め、アデリーナが紅葉に向かって駆け出す。
「ダメかどうかは私が判断するわ」
 紅葉は跳躍して壁を蹴り、壁や天井をまるで大地のように『ガジェットブーツ』で駆けて距離を取り、射撃を繰り返して遠距離戦に徹する。
「面白いね! ならあたしも!!」
 アデリーナが真似して壁を蹴り天井へと飛ぶ。すぐに紅葉が天井を逆さまに駆けると、アデリーナは天井に剣を突き立て、適当な凹凸を蹴って飛ぶように追いかける。
「近接戦に絶対的自信があるから、動きは直線的ね」
 敵の癖を観察し、紅葉は攻撃のリズムを覚える。
「逃げ回るのも限界ね。そろそろ反撃に移りましょうか」
 紅葉は地上に跳んで着地すると、動き出しながら銃のリロードをする。
「隙を見せたね! 逃がさないよ!」
 同じく地上に下りたアデリーナが加速して一息で間合いを詰める。そして左手の貫手が背中に向けて放たれた。その刃のような鋭い一撃が紅葉の身体を貫く。
「手応えが、ない?」
 やったと思った瞬間、アデリーナはまったく肉を裂く感触がない事に気付いた。見ればそこにあったのは上着と銃だけ。
(空蝉の術にかかったわね)
 上着と銃を身代わりに存在感を残して敵を惑わした紅葉は弧を描いてすり抜け、背後に回り込んでいた。そして気付かれぬうちにユーベルコード『ハイペリア重殺術:虚空』を発動し、音のない跳躍から踵を高々と振り上げ、重力を操作して速度を上げて踵落としを放った。振り下ろされる踵は左肩の紋章に直撃し、金属にぶち当たったようなガツンッという音を響かせてひびを入れた。


「なっいつの間に!?」
 そこでようやく紅葉に気付いたアデリーナは驚いて見上げ、反射的に剣を斬り上げる。しかしその刃が届く前に弾かれ剣筋が逸れた。
「私もいます」
 復帰したハロがダガーを操り、聖剣を捌き左肩を狙う。
「させないよ!」
 アデリーナは蹴りを放ってハロを押し、間合いを離して聖剣を振り下ろす。
「ここからはそっちの得意な近接戦で付き合ってあげるわ」
 その刃を紅葉が横からハイペリアの紋章を浮かべた拳で打ち抜き外させた。そして反対の拳を顔面に叩き込む。
「そんなもの効かないから!」
 紋章以外への攻撃は構わずアデリーナは聖剣を振るう。
「ですが注意を逸らすことは可能です」
 ハロが背後に回って左肩にダガーを当て、ひびを大きくした。
「くぅっ、紋章を得たあたしがこんなにダメージを受けたのは初めてだよ!」
 アデリーナが振り返りながら剣を横薙ぎにすると、ハロは素早く飛び退いた。
「あら。簡単には死なないでね?」
 揶揄うように声をかけながら紅葉が回し蹴りを放って左肩を打つ。
「言うじゃない! ええ、面白くなってきたところだもの! そっちこそ、簡単に死なないでよ!!」
 テンションが上がり狂戦士のような笑みを浮かべ、アデリーナは聖剣を縦横無尽に振るい出した。剣より光が漏れ出て辺りを切り裂き始める。
「これは暴走でしょうか、近づくのは危険そうです」
「まるでバーサーカーね。疲れて止まるのを待った方が良さそうだわ」
 ハロと紅葉は冷静に判断し、暴走する敵から安全な位置まで距離を取った。

 その予想通りに辺りの岩が飛び交う光刃によってばらばらに砕け、近くのものを容赦なく切断していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「退屈?結構な事じゃないか。
この世界にはその退屈も味わえない内に
命を落とす者も多い。
俺はこの先の人々に退屈する位の
毎日を過ごして貰う為に此処にやって来た。」

ディメンションカリバーを発動。
魔石をフレイムテイルに搭載し炎の斬撃で攻撃。
敢えて正面から対して敵の光刃を撃ち
【残像】を発生させながら走り攻撃を躱す。

攻撃のやり取りに敵が気を取られている間に
【念動力】で操ったデモニックロッドから
闇の魔弾を放ちつつ。【誘導弾】として周辺の闇に隠す。

敵の動きを【見切り】闇の魔弾で紋章を狙える
位置となったら不意打ちで魔弾を紋章に撃ち込み
敵が魔弾に対応するなら
【全力魔法】の魔力を込めフレイムテイルから炎の斬撃を放つ。


鏡島・嵐
ッ、自信満々な奴が出てきたな……!
退屈しのぎで命のやり取りとか怖すぎて笑えねえけど、ここはやるしかねーよな……!

剣からビーム撃つとか、ゲームみてえでおっかねえな。
〈第六感〉を活かして〈見切り〉、〈逃げ足〉を活かして間合いを詰められねえようにしねえと。
バックアップで伏せてる《二十五番目の錫の兵隊》が“黒い太陽の紋章”を狙い撃てるように〈援護射撃〉で隙を作ったり、〈武器落とし〉を仕掛けて攻撃を妨害したりして、チャンスを窺う。
自分で狙い撃てそうなら〈スナイパー〉ばりの精度で紋章を狙い撃ちにいくぞ。

もし近くに他の仲間が居るんなら、タイミングを見計らってそっちにも〈援護射撃〉を飛ばして支援する。



●闘争
「はぁはぁ……あははっ! 楽しい!! もっともっとあたしを楽しませて! 血湧き肉躍る闘争を!!」
 ひとしきり暴れて落ち着いたアデリーナが無邪気に笑い、目に見える程の激しい闘気を纏った。

「ッ、自信満々な奴が出てきたな……!」
 その気迫に怯えて、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は下がろうとしてしまうのをぐっと堪える。
「退屈しのぎで命のやり取りとか怖すぎて笑えねえけど、ここはやるしかねーよな……!」
 覚悟を決めて嵐は戦う準備を済ませ、じりっと姿を見せるように前に足を踏み出した。
「次に相手をしてくれるのはあなた? どんな戦いを見せてくれるのかな!」
 アデリーナが聖剣の切っ先を嵐へと向けた。それだけで胸を貫くような殺気が吹き抜ける。
「剣からビーム撃つとか、ゲームみてえでおっかねえな」
 銃口を突き付けられたような気持ちで、嵐は横に移動し射線に入らないように動く。しかしそれに合わせて敵も切っ先を動かした。
「あら、そっちからこないなら、こっちからいっちゃうよ?」
 アデリーナの聖剣が光を纏い、切っ先から光線が放たれる。それを察知して咄嗟に嵐が飛び退くと、先ほどまでいた場所を光が貫き壁に突き刺さった。
「危ねえ……!」
 驚く間もなく、アデリーナが駆け出して間合を詰める。
「よく避けたね! だけどこれはどうかな?」
 アデリーナが一気に間合いを詰めて剣を振り上げる。
「思ったよりも速い! けど……!」
 嵐は事前に発動してバックアップに伏せておいた、ユーベルコード『二十五番目の錫の兵隊』の片脚が義足の武装した兵士を動かす。
 身を隠す岩場から兵士が銃を構えて狙い撃った弾丸が、嵐に注視しているアデリーナの左肩の紋章に命中した。金属に当たったように弾丸が弾かれるが紋章を削ることに成功する。
「なにっ!?」
 不意打ちを受けたアデリーナが振り向いて兵士を見つける。
「チャンスに追撃しとかねーとな!」
 さらに気が逸れている間に嵐が『お手製スリングショット』で石を飛ばし、アデリーナの左肩に当ててさらに紋章を傷つけた。


「へぇ、あたしを翻弄するなんて、思ったより頭脳派みたい――」
 不敵に笑ったアデリーナは聖剣を眩いほど輝かせる。
「ふふっいいね! こんな退屈する暇もない戦いを待ってたんだ!」
 アデリーナが聖剣を一閃し、光刃が逃げようとする嵐と兵士を衝撃波で薙ぎ払った。そして倒れたところへ止めを刺そうと歩いて嵐に近づく。

「退屈? 結構な事じゃないか。この世界にはその退屈も味わえない内に命を落とす者も多い」
 それを阻止するようにフォルク・リア(黄泉への導・f05375)が立ち塞がる。
「俺はこの先の人々に退屈する位の毎日を過ごして貰う為に、此処にやって来た」
 フォルクはユーベルコード『ディメンションカリバー』を発動し、魔石を炎のラミアを封じた魔本を黒手袋とした『フレイムテイル』に搭載し、腕を振るって炎の斬撃を放った。距離を無視して炎の刃は空間ごと敵を切り裂く。
「よっと!」
 しかしその一撃をアデリーナは聖剣で受け止めた。
「すごい威力だね、あたしの聖剣じゃなければ真っ二つだったかも!」
 想定以上の威力に驚き少女らしいあどけない顔で笑う。
「次はこっちが見せる番だね、お返しだよ!」
 アデリーナが輝く聖剣を振り下ろし、光刃が放たれた。その一撃がフォルクを真っ二つに両断する。
「え? もう終わりって、手応えがない……残像か!」
 アデリーナが視線を動かすと、横に駆けるフォルクの姿があった。
「そこっ! また外れ!?」
 聖剣を振るって光刃を飛ばすと、フォルクの残した残像をまた切り裂いた。
「こちらに気を取られているな――」
 フォルクは敵の攻撃を躱しながら、念動力で『デモニックロッド』を遠隔操作して死角から闇の魔弾を放った。辺りの岩場の陰に紛れるように魔弾が誘導して飛び、左肩の紋章を撃ち抜いた。黒い紋章が少し色褪せ一瞬アデリーナのオーラが揺らいだ。


「なっ、そこ!」
 アデリーナが光刃を飛ばして浮かぶデモニックロッドを吹き飛ばして壁に叩きつけた。
「小細工を弄するのは上手いようだけど、正面からはどうかな!」
 聖剣の光が全身を覆い、加速してアデリーナは一気にフォルクを間合いに捉えた。
「あれだけ紋章に撃ち込んでもまだ元気なのか、だけど攻撃を続けるしかねえ……!」
 起き上がった嵐がスリングショットで石を飛ばして剣にぶつけ、真っ直ぐな剣筋を逸らした。振り下ろされる剣が外れて地面を深く抉る。
「まだ動けたのね!」
 アデリーナの視線がじろりと嵐に向けられる。そこへ兵士が違う方向から狙撃するが、その一撃は予想していたとばかりに聖剣に弾かれた。そして無造作に突き出した剣からの光で兵士は消し飛ばされた。
「強力な紋章の力を得たがために、戦い方が荒くなっているようだな」
 目の前で視線を切るという愚かしい隙を見せた敵に、フォルクはフレイムテイルに全魔力を込めて放出し、手刀を振り下ろして猛々しく燃え上がる炎の斬撃を浴びせた。炎が紋章を焼き、皮膚が火傷を負って黒く焦げる。
「はぁっ!!」
 その絡み付く炎をアデリーナは聖剣の光で消し飛ばした。
「確かに……この紋章を得て門番になってから暇で暇で仕方がなかったからね。だからあなたたちとの戦いで、生死を賭した戦場の緊張を思い出させてもらうから!」
 それこそが求めているものだと、アデリーナが口角を上げて光放つ聖剣を地面に突き立てる。すると放射状に光が奔り、魔力の防壁で防ごうとするフォルクと逃げようとする嵐を纏めて吹き飛ばした。

「さあ、闘争を楽しみましょう! それだけがあたしに生きていると実感を与えてくれるの!」
 アデリーナが聖剣を引き抜き、高々と掲げた。その姿は生前の勇者だった頃を彷彿とさせる。しかしその力は正義ではなく吸血鬼の暴力装置として振るわれる――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…聖剣に選ばれし勇士が今や吸血鬼の走狗とは…哀れな

…これ以上、罪を重ねる前に終わらせる
それが、かつて人類の護り手だった貴女に送る唯一の手向けよ

右腕のみの完全な吸血鬼化を行い血の魔力を溜め、
限界突破して自身の生命力を吸収させてUCを発動

…全魔解放。無限の斬閃、抜けられると思うな

暴走する怪力の右腕を過去の戦闘知識から全身で制御し、
残像が生じる超高速の早業で大鎌を無数に乱れ撃ち、
敵の攻撃を全周囲をなぎ払い切断する斬撃のオーラで防御

第六感が防御を抜け敵が懐に切り込むのを捉えたら、
誘い込んで左手の銃によるカウンターで紋章を撃つわ

…そう来ると思っていた。必ず、強引に突破してくると…

…だからこそ、読みやすい


霧島・絶奈
◆心情
相手にとって不足ありません
存分に愉しみましょう

◆行動
【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別するサーメート」を複数設置
炎を切り裂いた所で剣がすり抜けるだけ…
火勢に影響はありませんし、例え無力化しようとも目眩ましや足止めとしては役に立ちます

『涅槃寂静』にて「死」属性の「濃霧」を行使し【範囲攻撃】
此方も引き裂いた所で一時的に形が変わるだけ…
貴女を屠ると言う権能は些かも衰えませんよ

更に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】

これらの【範囲攻撃】で紋章諸共敵を鏖殺
ジークフリートやアキレスと同じで、弱点が解れば対処も叶います

負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



●堕ちた勇者
「聖剣の使い手……勇者ですか。相手にとって不足ありません。存分に愉しみましょう」
 猟兵を退け堂々と門の前に立つ敵に、戦いの下準備を終えた霧島・絶奈(暗き獣・f20096)が離れた位置で姿を現わす。
「その位置取り、あなたも小細工派かな? でもなんでも同じ、あたしを倒すことはできないよ!」
 紋章で強化されたアデリーナは絶対的な自信を持ち、聖剣を強く握って輝かせる。そして駆け出して一直線に絶奈に近づく、しかし突然足元で爆発が起こった。
「これはっ?」
 構わずアデリーナが更に踏み込むと、また爆炎が巻き起こる。
「罠か!」
 それを聖剣で斬り払うが、炎は轟々と燃え続けていた。
「炎を切り裂いた所で剣がすり抜けるだけ……火勢に影響はありませんし、例え無力化しようとも目眩ましや足止めとしては役に立ちます」
 炎で視界が塞がれた隙に、絶奈は位置を変えてユーベルコード『涅槃寂静』を使い、周囲の空間に干渉して死を宿した黒い濃霧を起こした。それがアデリーナを包み込む。
「今度は霧?!」
 鬱陶しいとアデリーナは聖剣を輝かせて吹き飛ばす。しかしすぐに霧はまた集まり閉じ籠める。
「此方も引き裂いた所で一時的に形が変わるだけ……貴女を屠ると言う権能は些かも衰えませんよ」
 死の霧がアデリーナの左肩に触れると、紋章を侵食してその輪郭を薄れさせていった。
「搦め手かぁ、あんまりあたしの好みじゃないかな!」
 アデリーナは聖剣を幾重にも振るって光刃を放ち霧を吹き飛ばす。そして再集結する前に絶奈を仕留めようと、一気に接近すると剣を一閃した。
「其れは残念です」
 絶奈はその首を刎ねる一撃を槍の柄で受け止めるが、勢いを防ぎ切れずに槍が弾かれ体も吹き飛ばされた。
「あははっ! 今の本気で殺すつもりだったのに、よく防いだね! もっともっと力を見せてよ!」
 アデリーナは傷ついてもご機嫌で、ただ戦いへの闘争本能だけを剥き出しにしていた。


「……聖剣に選ばれし勇士が今や吸血鬼の走狗とは……哀れな」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は吸血鬼に利用される存在に墜ちた聖剣使いを哀れみの目で見る。
「……これ以上、罪を重ねる前に終わらせる。それが、かつて人類の護り手だった貴女に送る唯一の手向けよ」
 敵の前に姿を見せたリーヴァルディは、堕ちた勇者をここで葬ろうとグリムリーパー『過去を刻むもの』を手に静かに歩き出す。
「次はあなたね! あたしの聖剣が言ってるの、もっともっと戦えって! さあ、殺し合おう!」
 呼応するように聖剣が輝き、アデリーナは満面の笑みを浮かべて剣を構えた。
「……貴女は既に死んでいる。私はただその身を還すだけ………」
 リーヴァルディは血の魔力を溜め、その限界を越えて自身の生命力を吸収させユーベルコード『限定解放・血の閃刃』を発動して、右腕のみ変化させて完全な吸血鬼と化す。
「………全魔解放。無限の斬閃、抜けられると思うな」
 敵に向かって飛び込みながら、暴虐の衝動のままに暴走しようとする右腕を、今までの戦闘経験から全身の動きを利用して暴れ馬を御するように制し、残像が生じる超高速連続攻撃を放つ。大鎌が無数に存在すると錯覚するような乱れ斬りに対し、アデリーナが聖剣を合わせた。
「あははっ! 正面からの斬り合いだ!!」
 楽しそうに剣を振るい大鎌と打ち合う。火花が幾重にも散り、激しい鋼同士のぶつかり合いが連続し、互いの間で無数の花を咲かせた。
「……押し切る………」
 リーヴァルディの右手が好敵手を前に興奮したように速度を上げ、押し込み始め拮抗が崩れる。
「やるね! だけど――」
 アデリーナは喰らう斬撃の内、左肩に当たるもの以外を無視し始めた。すると大鎌の強烈な一撃は首や胴を刈るが、その全ては重厚な鎧にでも当たったように掠り傷を与える事しかできない。
「効かないんだ!」
 アデリーナが斬撃の嵐の中を平然と踏み込み、至近距離から左手の貫手をリーヴァルディの腹に向けて放つ。
「……そう来ると思っていた。必ず、強引に突破してくると……」
 リーヴァルディはそれを予想し、同じく左手に大口径二連装マスケット銃『吸血鬼狩りの銃・改』を構えていた。
「……だからこそ、読みやすい」
 引き金を引くと銃弾がちょうど攻撃の為に前に出した左肩の紋章に命中した。紋章を抉った死刺弾が無数の棘を出し、傷口をさらに貫き紋章に穴を穿った。


「すごいすごい! こんなに痛いなんて! そう、傷付いたら痛いんだよね――この感覚が、戦うってこと。互いの命を燃やすのが闘争だったね!」
 カウンターを喰らってダメージを受けても構わずに、アデリーナはもう一度左の貫手でリーヴァルディを狙う。
「……まだ動けるか――」
 もう一発リーヴァルディが銃弾を放つが、今度は上体を傾けて躱された。低い姿勢から真っ直ぐ貫手が腹に届く――。
「其れほど痛みを御所望なら、存分に味わって頂きましょう」
 そこへ絶奈が横から剣を振り下ろし、左肩に叩きつけて腕を地面に突っ込ませた。
「言ったでしょ、お互いに痛みを受けてこそ闘争だって! 今度はこっちの番だよ!」
 アデリーナが聖剣を下から掬い上げ、股下から真っ二つにするような斬撃を放つ。
「……これは闘争ではない。狩りだ……」
 リーヴァルディが右手の怪力で大鎌を振り下ろし、洞窟に甲高い音を響かせてその一撃を止めた。
「ジークフリートやアキレスと同じで、弱点が解れば対処も叶います」
 敵の動きが止まったところで、絶奈は剣を突き入れ紋章の穴の開いた部分を削って欠けさせた。

「なっ!? 力が…………」
 がくりと力が抜けたようにアデリーナが片膝をつく。その好機を逃すまいと、リーヴァルディと絶奈が追撃を仕掛ける。
「導きの極光よ!!」
 窮地にアデリーナが聖剣の名を呼ぶと、刀身から眩い極光が放たれ視界が奪われる。大鎌と剣の攻撃は空を切り、その場からアデリーナの姿が消えていた。
「あたしが下がるなんて………ふふっ、あははっ、ほんと、こんな戦いはいつ以来だろう!」
 門の近くまで下がったアデリーナが心底嬉しそうに笑い、聖剣を輝かせて伸びた光刃を薙ぎ払い、強引にリーヴァルディと絶奈を後退させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベリザリオ・ルナセルウス
【白と黒】
●目的
この世界は悲劇に満ちているけれど、希望は確かに芽生えている。それをこの都市の人々に知ってほしい
希望が世界に満ちて行けば、織久のさだめも変わるかもしれない

●行動
かつて彼女が剣を取ったのは人々を害するためではないはず。これ以上罪なき人々の血に塗れないように、ここで倒す
紋章が狙われる事は彼女も分かっているはず。UCの範囲を広げ一斉掃射で味方に加護を与え、破魔の力を持つ剣を誇示するように名乗り挑発
剣と盾で攻撃を逸らしながら破魔の刃を貫通させ紋章を狙うように振舞う
極光を放つ瞬間オーラの結界で光刃を軽減して受けながら踏み込みシールドバッシュ。体勢を崩し剣を叩き落とす
後は任せたよ、織久


西院鬼・織久
【白と黒】
このような施設が他に幾つあるのやら
一つ一つ潰して行くしかありませんね

我等が狩るべき敵の巣ならば是非もなし
虱潰しにしてくれよう

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ敵味方の行動を把握し攻撃の前兆を見切る
傷は各耐性と精神系技能で無視する

先制攻撃+ダッシュで接近しなぎ払い
紋章の力に任せただ受ける、または防御するなら槍伝いにUCを使用、爆破を目くらましに早業で夜伽を足元に仕掛け残像+フェイントで回り込む
残像を囮に反撃を誘発させ夜伽+捕縛、動きを止め紋章に串刺し+UC

回避ならUCで捕縛、怪力で振り回し壁や床に叩きつけ起き上がる直前に残像を囮に反撃を回避しカウンターで紋章に串刺し+UC



●勇者
「このような施設が他に幾つあるのやら、一つ一つ潰して行くしかありませんね」
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)が地底都市に続く大きな門を見て、こんな場所が世界中にどれだけあるのだろうかと想像する。
「この世界は悲劇に満ちているけれど、希望は確かに芽生えている。それをこの都市の人々に知ってほしい」
 ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は悲劇に襲われる人々を想い、閉ざされた闇に僅かな光を届けたいと願う。
「希望が世界に満ちて行けば、織久のさだめも変わるかもしれない」
 その光がやがて織久の未来をも照らせばいいと、隣でいつも通りに暗い怨念を宿す織久に視線を向けた。
「我等が狩るべき敵の巣ならば是非もなし、虱潰しにしてくれよう」
 既に倒すべき敵しか目に入らなくなった織久は、真っ直ぐに門番に向かって駆け出した。
「もう戦いに集中してしまったか、なら援護しよう」
 ベリザリオはユーベルコード『Sanctuarium benediction』を発動し、旋律の矢を一斉に放って地面に突き立てた。すると加護の光に包まれ、その上に立つ仲間の力を高める。

「怨敵よ、我等が糧となれ」
 一気に間合いに入った織久が赤黒い槍『百貌』を薙ぎ払う。
「糧とするのはあたしの方よ! 生死の狭間の闘争こそが今のあたしが生きていると感じられる場所なの!」
 生を実感するようにアデリーナがその一撃を聖剣で正面から受け止めた。
「ならば死を以って体感させてくれよう」
 織久は槍伝いにユーベルコード『影面』を使用し、黒い影を当てて爆発を起こす。
「爆発した!?」
 眼前で起きた爆発に視界が遮られ、アデリーナは織久を見失う。その間に織久は超極細の糸『夜砥』を足元に仕掛け、残像を残して回り込む。
「そこでしょ!」
 アデリーナが爆風を切り払う一撃で、残像を両断した。
「怨敵よ、どこを向いている」
 織久が話しかけながら糸を引く。すると声に気を取られて振り向いたアデリーナの体を絡めとった。
「糸?」
 縛り上げられたアデリーナが糸の存在にようやく気付く。
「これは闘争に在らず、我等が為すは狩りよ」
 側面に回った織久が紋章を狙い槍を突き入れる。
「あたしはこんな糸には縛られない!」
 しかしアデリーナが聖剣を輝かせ、糸を断つと剣を振るって槍を弾いた。そして返す刃で織久の胴を狙うと、織久は槍で受け止め、反動を利用して間合いを離した。好機とすぐさまアデリーナは踏み込んで攻勢に出ようとする。しかしそれを遮るように朗々と声が響いた。

「私の名はベリザリオ・ルナセルウス。破魔の力を持って邪悪を討つ騎士なり!」
 ベリザリオが淡く煌めく誓いの剣『Fulgor fortitudo』を掲げ、堂々と名乗りを上げて騎士らしく剣と盾を構えた。
「あたしは聖剣のアデリーナ! この世に迷えるものを導く一振りの剣なり!」
 機を削がれたアデリーナは、名乗りには名乗りを返して聖剣を構える。
「導くですか、それどころか人々を閉じ込めて迷わせているように見えますが」
「外に出たって何も変わらない。世界のどこにいても地獄なら、まだ籠の中にいたほうがマシでしょ?」
 ベリザリオの問いかけに、堕ちてしまった勇者は目の輝きを消して虚ろに答えた。
「その剣を取ったのは人々を害するためではないはず。これ以上罪なき人々の血に塗れないように、ここで倒します」
 ベリザリオが踏み込むと同時に、アデリーナも踏み出して聖剣を振るう。袈裟斬りの一撃を盾で受け止め、剣で左肩の紋章を狙う。しかしそれは左腕で防がれ、刃は籠手で弾かれる。

「いい腕だね。だけどあたしの方が上だよ! 盾ごと真っ二つに断ち切ってあげる!」
 上段に構えたアデリーナの聖剣が光りを放ち、ベリザリオを断ち切ろうと振り下ろされる。しかしその腕が横に引かれ、地面を両断した。見れば腕に影の腕ががっしりと繋がっている。
「これは影? いつのまに――」
「怨敵の好きにはさせぬ。肉を断ち命を喰らうは我等が方よ」
 織久が爆発に乗じて繋げていた影の腕を引いて隙を作り出す。
「ありがとう、織久」
 そこへベリザリオが剣を突き入れ、頑丈な紋章に破魔の刃を突き立てた。
「あっつっ!! 紋章が焼ける!」
 破魔の力によって紋章が焦げ始め、左肩の皮膚が黒く染まっていく。
「こんのぉ!」
 影を切ったアデリーナが聖剣を薙ぎ払い、盾で防ぐベリザリオを退ける。
「吹き飛べ!!」
 アデリーナの持つ聖剣が極光を放ち辺りを眩く照らす。
「受けて立ちましょう」
 盾を構えたベリザリオがオーラの結界を張って振り下ろされる光刃を受け止める。強烈な衝撃にがくんと膝が曲がるが、耐え凌いで前に踏み出す。そして体当たりのようなシールドバッシュを敵に叩き込んだ。
「後は任せたよ、織久」
「承知」
 敵がよろめいたところに、織久が自らを一筋の矢に見立てたように飛び子み、一直線んい槍を突き入れた。切っ先が紋章を貫き、深々と肉を裂き骨に届く。
「あぃっ!!」
 思わず苦悶の声を上げたアデリーナは、腕が切断される前に聖剣を輝かせ、衝撃波を放って織久を吹き飛ばした。

「――信じられない。紋章をここまで傷つけるなんて。あなたたちも勇者なの?」
 左腕の感覚を失いだらりと垂らしたアデリーナが織久を庇うベリザリオを見つめる。
「我々は勇者などではなりません。ただ人を救いたいと願う者に過ぎません」
「この絶望の世界でそんな大それたことを考えて行動することが、勇者そのものなんだけどね――」
 何か眩しいものでも見るようにアデリーナが目を細め、光刃を放って牽制しながら後退した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風雷堂・顕吉
アドリブ連携歓迎

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも調べる伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

戦闘は剣士の動きだ。
フェイントを多用する。相手が格上や多数の場合は挑発をして隙を作ることもある。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。


愛久山・清綱
その太刀筋、相当の腕前とお見受け致した。
だが、俺は生憎戦いを愉しむ質ではない。
無礼で申し訳ないが、一瞬で行くぞ……覚悟。
■闘
『心切』に【破魔】の力を宿し、戦闘に入る。

先ずは聖なる剣の輝きを注視し、光刃が現れる瞬間を伺う。
現われたらその軌道を【見切り】つつ、間をすり抜けるように
すっと【ジャンプ】して回避。
勿論これだけではない……飛ぶと同時に光刃目掛けて『心切』を
振るって光其の物を【切断】し、攻撃を静止させる。

相手の一撃をいなしたら、好機。
中距離から『左肩』目掛けて【薙鎌・乱】による
幾百の斬撃を放ち、紋章を滅多斬りにするのだ。

此の太刀、此の力は、邪なるモノを祓うためにある。

※アドリブ歓迎・不採用可


鬼桐・相馬
【POW】
俺も門番の名を持つ者、故に一歩も引くつもりはない
醜悪な門とそれを守護する門番
それがどんな姿であろうが門諸共叩き割ってやろう

〈冥府の槍〉を手に近接戦の[戦闘知識や視力]で敵の動きを捉え応戦
攻撃を[武器受け]しつつ[カウンター]で反撃して行く
リーチはこちらが上、それ以上に距離を取ろうとするならばすかさず〈ヘヴィクロスボウ〉で攻撃と牽制を

敵の攻撃を堅実に封じ、全てに反撃していけば相手は焦って隙だらけの高威力の攻撃を放ってくると予想
超連撃を放つその瞬間を[野生の勘]で捉え、思い切り振りかぶりUC発動
紋章目掛け[怪力]を込めた一撃を

くだらない主を守る門などいずれ壊れる
まさにこんな感じにな



●砕ける門
「これほどの戦士がいるなんてね。あたしにもそんな仲間が――いいえ、もうどうでもいいこと。あたしはこの門を守る門番。それ以上でもそれ以下でもない。ただの聖剣使い………」
 紋章が傷つきダメージを受けて力が削がれ始めたアデリーナが門にもたれかかる。
「ヴァンパイアとの激しい戦いの果てに倒れた者は大勢いる……どうやらそんな勇士の成れの果てのようだな」
 ダークセイヴァーでヴァンパイアと戦い続ける風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)は、そんな存在すらも幾つもの戦場で見知っていた。
「ヴァンパイアに囚われた憐れな戦士よ、俺がそのくびきから解き放とう」
 すらりと冷たい殺気を放つ刀『ドラクリヤ』を抜いて、敵の前へと歩み寄る。
「その姿……あなたみたいな風体のヴァンパイアハンターの話を聞いたことがあるよ。その噂通りの腕かどうか、確かめてみようかな!」
 一気に間合いを詰めたアデリーナが聖剣を横薙ぎに振るうと、トンッと地を蹴って顕吉は間合いから外れる。しかし鋭い斬撃の圧は鎧を傷つけていた。
「なるほど……紋章で強化されているが、元から名のある戦士だったようだな」
 一太刀で相手の力量を見極め、顕吉は慎重に間合いを測る。互いが必殺の一撃を打ち込もうとじりじりと牽制し、先んじたのはアデリーナだった。
「はああああっ!!」
 一刀両断にせんとする聖剣が頭上から襲い掛かる。それを顕吉は刀で受け流し、カウンターを決めようとする。
「疾風怒濤――緋燕十字斬!!」
 しかしアデリーナの聖剣が輝くと跳ね上がり、そこから連続攻撃へと移行する。刃は顕吉を捉え、バラバラに切り裂いた。
「……っおかしい、まるで手応えがない!?」
 全力で剣を振るい続けていたアデリーナが刃を止める。すると斬ったと思った顕吉の体がゆらりと散って霧となり、全ての斬撃を無効化していた。


「剣が通じない……でもその状態じゃそっちも攻撃できないよね。なら人に戻った瞬間に斬ってあげる!」
 アデリーナがその性質を理解して一瞬気を緩めた。その隙をついて鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)が『冥府の槍』を手に駆け寄り、その刃を左肩に突き刺した。纏う紺青の冥府の炎が紋章を焼き焦がす。
「いっ! こんのぉ!!」
 アデリーナが聖剣を薙ぐと、相馬は槍を盾にしてずざさっと大地を削りながら後退した。
「そんなにこの門が通りたいの? でもあたしの役目は門番なの。ここは決して通さない。どうしても通りたいならあたしを倒していくのね!」
 動かぬ左腕を血で染めたアデリーナが門を背にして、一歩も引かぬ気迫で聖剣を構える。
「俺も門番の名を持つ者、故に一歩も引くつもりはない」
 相馬も前に足を踏み出し、槍の穂先を向けて負けじと気を漲らせる。
「醜悪な門とそれを守護する門番。それがどんな姿であろうが門諸共叩き割ってやろう」
 相馬が鋭く踏み込み槍を突き入れる。それをアデリーナが聖剣で弾き上げた。その力を利用してくるりと槍を回転させて石突で左肩を打つ。
「っ! なかなか器用じゃない!」
 一瞬苦痛に顔を歪めながらも、強敵を前に口元に笑みを浮かべてアデリーナは嬉々として剣を振るう。互いの刃がぶつかり合い、リーチの長い相馬が槍で突き離そうとすると、アデリーナは激しい斬撃で弾き前に踏み出し距離を詰める。
「あははっ、もっともっと! 闘争こそが今のあたしの全て!」
 テンションを上げてアデリーナは剣の速度を増した。
「無邪気なものだ……だが付き合ってやろう」
 対する相馬は無表情ながらも、どこか相手に影響されたように闘争へとのめり込み槍を振るう。
 相馬が首を狙う剣を避けて槍を振り抜いて肩に叩き込む。しかし痛みに笑いながらアデリーナは斬撃を放って槍で受ける相馬を押し飛ばした。


「はぁ、はぁ……ははっ、楽しいね! 生きてるって実感するよ!」
 消耗して息を乱しながらアデリーナは嬉しそうに笑った。
「その太刀筋、相当の腕前とお見受け致した」
 その前に愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が進み出る。
「だが、俺は生憎戦いを愉しむ質ではない。無礼で申し訳ないが、一瞬で行くぞ……覚悟」
 剣の前に問答は無用と、清綱は腰に差した刀『心切』の柄に手をかけ抜き放つ。その刃には破魔の力が籠められ淡い光を帯びていた。
「いいよ! 剣で語り合おう!」
 疲れていようとも戦場に於いて留まることは死ぬ時だと、アデリーナが聖剣を構えて剣を輝かせる。そして踏み込むと剣を一閃した。袈裟斬りの一撃を清綱は横に動いて大きく躱す。跳ね上がる逆袈裟の一撃を後退して避け、首を貫く突きを刀で弾き上げる。
「言うだけあって凄腕じゃない! ならこっちも全力だ!」
 アデリーナは聖剣を上段に構えて刀身から極光を放つ。そして真っ直ぐ振り下ろし光刃を放った。
「仕掛けてきたな――」
 清綱は身を反らしてそれを躱す。しかし続けて横薙ぎの光刃が飛んでくる。すぐに跳躍して翼を羽ばたかせ上を抜け、敵の頭上を取ろうと飛翔した。
「落とす!」
 アデリーナは幾重にも斬撃を放って光刃を飛ばす。それを清綱は巧みにすり抜け、躱せぬものには刀を振るって切断した。そこで僅かに攻撃が途切れる。
「俺の太刀をお見せしよう。秘伝……薙鎌」
 空中で清綱が刀を一振りすると、ユーベルコード『薙鎌・乱』が発動し虚空から無数の斬撃波が生み出される。
「なっ!?」
 幾百の斬撃が襲い掛かり、アデリーナは聖剣を振るって防ごうとするがあまりにも数が多い。左肩に斬撃が重なり滅多斬りにして、紋章が崩れ落ちていく。


「くっ! 導きの極光よ!!」
 聖剣を輝かせて地面に突き立て、アデリーナは光の障壁を生み出して無数の斬撃から身を守る。
「これでどう!」
「戦いに夢中になるあまり、注意が散漫となったな……」
 斬撃も障壁も無視して霧が内部に入り込み、実体化して顕吉が姿を見せる。
「あなたはさっきの!!」
 アデリーナは剣を抜けば障壁が解け、斬撃が襲い来ると逡巡して動きが止まる。
「抜くべきだったな――」
 顕吉は刀を振り抜き、左肩の紋章を半分に断ち切った。
「くあっぅぅっ!!」
 苦しそうに声を上げ、アデリーナは聖剣を地面から抜きながら逆袈裟に斬り上げる。しかしすでに顕吉は霧と化して消えていた。残っていた斬撃が襲い掛かり、紋章の力が弱まった肉体にまで傷を与え出す。
「まだ、まだよ! あたしはまだ戦える!!」
 アデリーナは満身創痍となりながらも、燃える闘志で膝を折らない。
「最期の意地か、ならば容赦なく叩き折らせてもらう」
 そんな燃え尽きる前の炎のような気迫に、怯まず相馬が正面からぶつかる。聖剣と槍が激突し、極光と紺青の炎がせめぎ合う。
「はぁあああああああ!!」
 押し切ろうと全身全霊でアデリーナが聖剣を押し込める。
「くだらない主を守る門などいずれ壊れる。まさにこんな感じにな」
 光を侵食するように紺青の炎が猛り、打ち破って左肩を貫き、紋章を粉砕してそのまま門に縫いつけた。金属の門がまるで悲鳴のように甲高い音を立てひびが入り始める。
「あたしが負ける? あたしが負けたら導く人々は――ああ、そうか。もうあたしに守るものなんてなかった………」
 人だった過去を思い出したようにアデリーナは目を虚ろにする。
「そう、今のあたしはただの門番。ただ聖剣を振るうだけのヴァンパイアのしもべ――」
 槍が刺さったままアデリーナはふらりと、門にもたれたまま光を失った聖剣を構えた。紋章を失いもはや立っているのがやっとという状態。しかし死ぬ時は戦士としてという意地だった。
「此の太刀、此の力は、邪なるモノを祓うためにある……堕ちた勇士よ、骸の海に還れ」
 清綱が刀を一閃し、聖剣ごとアデリーナの胴を両断した。

 一瞬だけ正気に戻ったような顔でアデリーナがありがとう――と口を動かしその身を消滅させた。それと同時に扉が激しく揺れ、ひびが広がって砕け散っていく。大きな門が崩れ落ちると、そこには深く地底に続く道がぽっかりと開けた。

 猟兵達はうす暗い地底にある都市を目指し、洞窟の深部へと歩き出した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ハルピュイア』

POW   :    アエロー
【爪】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    オーキュペテー
自身に【仲間の怨念】をまとい、高速移動と【羽ばたきによる衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ケライノー
レベル×5本の【毒】属性の【黒い羽】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●地底都市
 一切の日が届かぬ地底は、光苔が照らす灯りだけで常に薄暗い。
 そんな地底にも地上と変わらぬような人の住む都市が形成されている。だが何よりも違うのはここの住人は外に出たことが無く、閉ざされ虐げられる世界しか知らないということだ。

「休むんじゃないよ!」
「お前達の代わりなんていくらでもいるんだよ!」
 畑仕事や荷運びをする人々に怒声を飛ばし、都市を管理する人間の女と鳥を掛け合わせたようなオブリビオン『ハルピュイア』達が暴力を振るう。それは本当に死んでも構わないという容赦のないものだった。
「わ、わかりました!」
「すぐにやります!」
 怯え切った人々はその命令に従い働き続ける。その目は死んでいるように濁り、何の希望も宿してはいなかった。
「お前達が使い物にならなくなったらすぐに子供を働かせるよ!」
「くくく、まあガキなんてあっという間に死んじゃうけどねっ」
「そ、それだけはお許しを!」
 ハルピュイア達が何の良心の呵責もなく子供の悲惨な未来を楽しそうに告げる。まだ小さな子を想う親はそれだけはと懇願した。
「だったら働きな!」
「ここは領主様の土地なんだ。しっかり豊かにするのが奴隷であるお前等の仕事だよ! その為に奴隷は生かされてるんだと知りな!」
 地の底で奴隷として生まれ奴隷として死ぬ。そんな絶望しか知らぬ人々は反抗するなどということも考えず、ただ働き続ける。
 反抗した者や働けなくなった者は獣の餌となるしかないと、近しい者の死で教え込まれているのだ。

 しかし、天の光届かぬ地底にも届く輝きがある。それは猟兵という希望の光だった――。

 猟兵達はこれ以上の無体な仕打ちはさせぬと、人々を救う為に地底都市へと侵入した。
才堂・紅葉
「さて……ここまでよ、あんた達!」
デビルキングダムで拾った神器“天蛇王”の蛇矛を構え、竜蛇を衣裳した装束に身を包んで登場する
大事なのは【存在感】で目を惹く事だ

「ここは私が貰うわ。文句があるなら力で来なさい!」

広場の中央で見栄を切って挑発しよう
人々に距離を置いてもらうのも狙いだ

(数を減らせば怨念は増すか……一網打尽で行きたいわね)
裏で算盤を弾きつつ、肩に蛇矛を担いで退屈そうに欠伸を一つ

後は迫る連中を蛇矛の【早業、怪力】で叩き落とし
包囲攻撃に合せUCを発動を狙う
「天蛇王!!」
蛇矛に合せてうねる九頭の大水蛇の召喚と【属性攻撃、薙ぎ払い】、及び青白く輝く蛇矛の乱舞でまとめて【吹き飛ばし】てしまおう


ハロ・シエラ
鳥の様な感じの敵ですね。
まとめて叩く為にはまず【おびき寄せ】なければならないでしょう。
敵の武器は毒の羽。
1本や2本なら【毒耐性】で耐える事も出来るかも知れませんが、数がかなり多いですね。
こちらもユーベルコードを使い、暴風を起こして【範囲攻撃】し、それらを【吹き飛ばし】て無力化を試みます。
敵そのものにもダメージを与えたい所ですが、あの翼で上手く風をいなす者もいるかもしれません。
その場合はこちらも風に乗り、ユーベルコードで倒し切れなかった敵をレイピアで【切断】して回ります。
場合によっては【ジャンプ】して突き刺すなどしながら、一体ずつ確実に仕留めて行くとしましょう。



●現れた希望
「もたもたするな!」
「お前達は黙って死ぬまで働き続ければいいのよ!」
 ハルピュイア達が人々が怠けぬように監視し、広場で荷物を運ぶ強制労働をさせていた。
「さて……ここまでよ、あんた達!」
 そこへ鋭い怒声が届き、振り向けばデビルキングダムで拾った神器“天蛇王”の蛇矛を構え、竜蛇を意匠した派手な装束に身を包んだ紅葉が堂々と立っていた。
「誰? 見たことがない顔ね」
「ここの住人じゃない? どこから……まさか門が破られたの!?」
 その存在感に目を惹かれて見つめると、目立つ姿なのに記憶にない事に気付いて門破りの可能性に至り、ハルピュイア達が慌てて紅葉へと敵意を向けた。
「ここは私が貰うわ。文句があるなら力で来なさい!」
 紅葉が蛇矛を振るって見栄を切り、挑発して敵を引き付ける。
「貰うですって!? ここは領主様の土地! 余所者が好きにしていい場所じゃないのよ!」
「侵入者は血祭に上げて、この地底都市に許可なく入った者がどうなるか見せしめにしてあげるわ!」
 ハルピュイア達が頭部から生える翼を羽ばたかせ、飛翔すると頭上から足の爪で襲い掛かって来る。
(数を減らせば怨念は増すか……一網打尽で行きたいわね)
 その攻撃を紅葉は蛇矛でいなしながら算盤を弾き、攻撃を全て避けきると蛇矛を担いで退屈そうに欠伸をした。
「ふぁ――薄暗いから眠くなるわね。あなたたちもそうでしょう? そんな眠い攻撃をしてくるんだから」
「言ったわね!」
「絶対に仕留めてやるわ!」
 逆上したハルピュイア達が再度攻撃を仕掛けるのを、紅葉は反撃に移り蛇矛を振るって二体の敵を同時に叩き落とす。
「ギャッ!!」
「痛っ! あ、足が折れてるじゃない!?」
 地面に落ちたハルピュイア達は、墜落の衝撃によって手足が折れて痛みに悶絶する。
「す、すごい……!」
「いったい誰なんだあの人はっ」
 初めてハルピュイアが傷ついている様子を見て、町の人々が驚いた顔で紅葉を見つめた。

「こいつ意外と強い!」
「門番を倒してきただけのことはあるってこと!?」
 他のハルピュイアは警戒して紅葉から離れ、空に舞い上がって旋回する。そして空から黒い羽を矢のように飛ばして攻撃してきた。それを紅葉は蛇矛を回転させて弾き飛ばす。
「鳥の様な感じの敵ですね。空は相手の領域、飛ばれていては厄介です。まずはおびき寄せることにしましょう」
 そんな鳥のように自由に空を飛ぶ敵を見上げたハロは、その飛行能力を奪うことにする。
「空を飛んでいるなら、風の抵抗を強く受けるはずです。ならばこの技が効果的でしょう」
 ハロはレイピア『リトルフォックス』を抜いて空に向けて一閃する。するとユーベルコード『嵐の出撃』が発動して風が渦巻き羽を蹴散らし、さらに強まって暴風となって拡がって敵を呑み込んだ。
「な、なに?」
「急に嵐がっ!?」
 その激しい乱気流に巻き込まれたハルピュイア達がバランスを崩して次々と地上へと堕ちて来る。
「この風はあの人が起こしてるのか?」
「空を支配してたハルピュイアが堕ちる!!」
 空からいつも自分達を嘲笑い見下ろしていたハルピュイアの墜落に、虐げられていた人々の顔に貼り付いていた絶望が崩れる。

「お誂え向きに堕ちてきたわね!」
 その下で待ち構えていた紅葉が蛇矛を構えてニヤリと笑い、ユーベルコード『天蛇王』を発動する。
「天蛇王!!」
 蛇矛を思い切り振るうと、九頭の大水蛇が召喚され津波のように迸り、獲物に喰らいつく獣のように堕ちたハルピュイア達を一気に呑み込んで集め、そこへ飛び込んだ紅葉が青白く輝く蛇矛を縦横無尽に振り回し、敵を纏めて吹き飛ばした。

「信じられない……!」
「わたしたちを倒すだけの力があるなんて!」
「地上に下りるのは危険だわ! 上から攻撃を続けるのよ!」
 暴風の難を逃れた少数のハルピュイア達が仲間がやられるのを見て、空からの羽の射撃に専念した。
「空ならわたしたちの独壇場よ! 地を這う人間には決して手が届かない!」
 嗜虐的に嗤いながらハルピュイアは無数の羽を飛ばす。
「風に乗れば、翼はなくとも飛べます」
 跳躍したハロが上昇気流に乗って空に舞い上がり、敵の頭上を取っていた。
「翼も無いのに!」
 驚くハルピュイアを炎を纏うレイピアで切り捨てて地上へと叩き落とす。
「よくも!」
 隣のハルピュイアが怒って羽を放つが、それを巧みにレイピアで切り払い、ハロは突風の乗って突きを放って敵の胸を貫いた。
「わたしたちは空の支配者なのよ! やられるものか!」
 さらに上昇したハルピュイアが反撃に足の爪を突き立てようとする。
「檻のような洞窟の空を支配したところで、あなた達の強さの証明にはなりません」
 その爪をレイピアで弾き、ハロは下から斬り上げ敵の右翼を断ち切った。
「ギャアアアッ」
 甲高い悲鳴を上げて最後のハルピュイアが墜落し、何とか片方の翼だけで降下速度を下げて軟着陸しようとする。
「こんなっ我々は支配者なのに! 力無い人間に負けるなんてありえない!」
「力で支配していたのなら、力で奪われることも覚悟しておくべきだったわね」
 降下地点に駆け寄った紅葉が勢いを乗せて蛇矛を薙ぎ、最後の敵を両断して仕留めた。

「あのハルピュイアが倒されるなんて……」
「信じられん……これは夢なのか?」
 紅葉とハロの活躍を、人々は夢現な顔で信じられないと口をぽかんと開いていて、それでも目を離せずにずっと見ていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
人々を虐げるハルピュイアを見て
顔をしかめつつ
「此処まで来て見れば、概ね予想通りか。
奴らの気分次第でいつ死人が出てもおかしくない。
事は迅速に。だ。」

不浄なる不死王の軍勢を発動し
死霊と魔物を放って敵と戦わせ
それを指揮する様に不死王を配置する。
「奇襲の要は敵の体制が整う前に潰す事。
此方の意図を悟らせない事。」
人々に被害が及ばない様に戦わせるが
猟兵でなく他のオブリビオンが攻めて来たと偽装し。
その間に人々を避難させる。
「俺は地上から来た。門番を倒してね。
詳しい話は後にして、戦いに巻き込まれない様に離れて。」
特に子供や怪我人、老人等は助けながら避難。
自身も傷を負わない様に戦闘の様子は注意しながら誘導。


鬼桐・相馬
●POW
虐げられる者の痛み、自らの代わりなどいない事実
お前達は一度身を以て体感すべきだ

〈冥府の槍〉で敵に応戦
襲われている人々は最優先で[かばう]よ
空を駆る存在との[戦闘知識]を呼び起こし動きを捉え[武器で受け]ていこう

爪による破壊攻撃は飛び上がる等何かしらの事前動作がある筈
[視力と野性の勘]でそれを察知
力が乗った爪がこちらへ届くより先に[カウンター]でUCを当てる
敵の言動は槍と――俺の本質が悦ぶであろう程の悪意
存分に吸収し火力が増した炎で周囲の敵も巻き込んで[焼却]していく

人々の中には自由を感じるよりこれからどうすればいいのか茫然とする者もいるだろう
もう何かに怯え生きる必要はないんだと伝えるよ



●外からの光
「手を休めるな!」
「今日中にこの一面を耕さないと休ませないわよ!」
 ハルピュイア達が畑で働く農奴の人々に厳しい声をかける。ノルマを達成しなければ本当に休めないのを知っている人々は、必死に汗を流し作業を続ける。
「此処まで来てみれば、概ね予想通りか」
 人々を無慈悲に虐げるハルピュイアを見てフォルクはフードの下で顔をしかめた。
「奴らの気分次第でいつ死人が出てもおかしくない。事は迅速に。だ」
 これ以上人々を危険に晒させはしないと、ユーベルコード『不浄なる不死王の軍勢』を発動する。周囲の空気が冷たくなり、ゆらりと現れたのは無数の死霊と魔物の群れ。それを率いるように圧倒的存在感を持つ骸骨姿の不死王が中心に立っていた。不死王が手を上げると、一斉に軍勢が動き出してゆっくりと進軍する。
「な、なにごとぉ?」
「魔物の群れが攻めてきたわ!!」
「ここは私達が領主様に任されてる土地よ! どこの所属か知らないけど好き勝手にさせないわ!」
 突如現れた軍勢に、ハルピュイア達は慌てて飛び上がり迎撃に動き出す。
「奇襲の要は敵の体制が整う前に潰す事。此方の意図を悟らせない事」
 それはまるでオブリビオンの軍勢が攻めてきたようで、フォルクは猟兵の存在を偽装して敵の注意を軍勢に引き付けた。
「なっ! ありゃどこの軍隊だ!?」
「こっちに来るぞ! 逃げないと!」
「だけど勝手に逃げて、ハルピュイアが勝ったらどんな罰を受けるか……」
 迫る軍勢にどうしようかと右往左往する人々に、そっとフォルクが近づき話しかけた。
「俺は地上から来た。門番を倒してね。詳しい話は後にして、戦いに巻き込まれない様にここから離れて」
「地上? そんなの御伽噺だろ?」
「だけど、こんな軍勢が攻めて来るのなんて初めてのことだし……」
 フォルクの言葉が本当がどうかと信じ切れない人々が顔を見合わせて迷う。
「俺はこの土地で虐げられる皆を助けに来た。それだけは信じてほしい」
 フードに隠れて表情は分からないが、その声には真摯なものがあった。
「……わかった。ここに居ても戦闘に巻き込まれて死ぬだけだ。それなら逃げよう」
「そうだな。どうせ死ぬから少しでも生き永らえる方を選ぼう」
 消極的ながらも人々は逃げる事を受け入れ、フォルクに従い畑から移動を始めた。


「ちょっと! 勝手に奴隷どもが逃げてるじゃない!」
「なんですって!?」
 その様子を空を飛んでいたハルピュイアが見つけ、顔に怒りを浮かべて睨みつけた。
「奴隷が命令以外で動くとはなにごと!」
 急降下したハルピュイアが逃げる人々へと頭上から襲い掛かる。
「うわああっ!?」
 頭の上に風圧を感じて男が頭を抱えてしゃがみ込む。しかし来るはずの襲撃は来ない。恐る恐る上を見上げると、そこには槍に串刺しにされたハルピュイアの姿があった。
「虐げられる者の痛み、自らの代わりなどいない事実。お前達は一度身を以て体感すべきだ」
 相馬が敵の胸を貫く『冥府の槍』を強く握り、紺青の冥府の炎で敵の内部を焼き尽くす。
「ギャアアアアアッ!」
 甲高い悲鳴を上げてハルピュイアが燃え上がって息絶えた。
「私達に歯向かうか!」
「人間風情が!!」
 ハルピュイア達が次々と相馬に向かって急降下し、手足の鋭いナイフのような爪で襲い掛かる。
「それだけ殺気を撒き散らせば、攻撃の機を読むのは容易い」
 相馬は囲まれぬように位置を変えながら爪を槍で受けて弾き返す。
「生意気な! なら一気にいくわよ!」
「手足をもいでこいつも奴隷にしてやるわ! 死ぬまで私達に歯向かったことを後悔しなさい!」
 今度はハルピュイア達が包囲して一斉に飛び掛かった。
「その悪意に満ちた言葉――槍と俺の内にある本質が悦んでいるぞ」
 ユーベルコード『鬼火継ぎ』を発動したフォルクは狂暴に口角をつり上げ、敵の悪意を糧にして冥府の炎を槍から放出して猛々しく燃え上がらせる。その槍を横に薙ぎ払い一周し、近づく敵を全て一振りで薙ぎ払った。
「熱いッ!!」
「何なのこの青い炎は!? 消えない!!」
 ハルピュイアは紺青の炎に呑み込まれ、火を消そうと地面を転がるが炎は消えるどころか勢いを増し、やがて力尽き倒れていった。
「すごい………」
 相馬の圧倒的な戦闘に人々は逃げながらも目を奪われていた。


「どうなってるの? いったいこいつらはどこから来たのよ!」
 ハルピュイアは魔物と戦いながら悪態を吐く。
「どうするの? 奴隷を逃がしたらどんな叱責を受けるか……」
「どうするって、こいつらが町に入っても処罰されるわよ!」
 迷いながらハルピュイア達は応戦し、部隊を分けて対処することになる。
「悪手だな。奇襲に混乱し部隊を分けたか。軍勢を生み出しているのが俺だと気付かなかったのが敗因だ」
 フォルクはそのまま軍勢に応戦するハルピュイアを襲わせて蹂躙していく。魔獣から飛行して逃れようとする敵を死霊が襲い、高度が落ちたところを魔獣が仕留めていく。

「向こうが苦戦してるわよ!」
「奴隷を捕まえたら加勢に戻ればいいわ!」
 ハルピュイアがフォルクが導く人々を追う。だがその前に相馬が立ち塞がった。
「お前達が戻ることはない。ここで焼け死ぬのだから」
 敵陣の中へと相馬が飛び込み、突破する間に槍で2体を纏めて貫き燃やして放り捨てる。
「貴様も奴隷も全員刻んで殺してや――」
 鋭い爪を伸ばしてハルピュイアが振り向くと、既に反転していた相馬が次々とハルピュイアを薙ぎ払って燃やし、真っ直ぐ槍を突き出し胸を捉えた。
「がはっ!」
「今まで傷つけてきた人々の痛みを知れ――」
 紺青の炎が全身を包み、最後のハルピュイアを燃えあがらせた。


「はぁはぁ、助かったのか?」
「信じられねぇ……あのハルピュイアたちをあんなにあっさりと」
 地底に住む人々にとってオブリビオンは絶対的な支配者だった。それが倒れる姿を信じられないと呆然自失で見ていた。
「俺達が地上への門を開いた。この地底から外に出る事ができるんだ」
 もう一度自分達が地上からやってきたのだとフォルクが説明した。
「もう何かに怯えて生きる必要はない」
 ぼんやりする人々に相馬も虐げる支配者はもういないのだと声をかける。
「逃げられるのか? この町から?」
「本当に? 外に世界があるのか………」
 信じられないといった青い顔から、徐々に本当かもと信じて生気が宿る。そこには確かに希望の光が宿っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風雷堂・顕吉
「どうした。代わりの仲間を呼ぶがいい。早くしないと、数の優位が覆るぞ」

 戦闘中、戦いながらも、戦場全体や仲間の状態に常に気を配ります。
「目覚めよ、我がしもべ」
 既に倒れているハルピュイアの群れに対しユーベルコード「召使契約(サーヴァント・コントラクト)」を次々と使うことで、倒れているハルピュイアの群れを味方にしてハルピュイアの数の優位を覆します。
 最大の目的は、いち早く敵の群れを殲滅することです。
 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。


愛久山・清綱
そこまでだ、魑魅魍魎よ。其方達の非道も最早此れ迄。
罪なき人々を虐げた罪、其の身で知るがいい。

■闘
此処は一斉に仕留めさせてもらおう。
その場で居合の構えを取り、『敵が密集している』場所目掛けて
【早業】の抜刀術から【空薙】による【範囲攻撃】を仕掛ける。
射程に入った敵の身体を真っ二つに【切断】し、範囲外の敵に
【恐怖を与えて】戦意を削がせるのだ。

敵が飛び掛かってきたら一旦攻撃を止め、【野生の勘】を
巡らせ防御の構えを取る。
振るってくる爪をタイミングに合わせて【武器受け】し、
【怪力】で押し返す。距離を取ったら再び空薙を仕掛けるぞ。

“在るべき海”へ還れ……邪なるモノたちよ。

※アドリブ歓迎・不採用可



●夢見た救い
「何か騒がしいね?」
「ほらさっさと歩きな! 町に戻るよ!」
「は、はい!!」
 異変を感じたハルピュイアが奴隷達に怒声を浴びせ、畑仕事を止めて町へと引き返す。
「そこまでだ、魑魅魍魎よ。其方達の非道も最早此れ迄。罪なき人々を虐げた罪、其の身で知るがいい」
 その行く手を塞ぐように清綱が道の真ん中に立ち、腰に差した刀『空薙』の柄に手を置いた。
「誰だ!」
「侵入者!? 捕まえて仲間がいないか吐かせるよ!」
 ハルピュイアがこの閉ざされた都市で見知らぬ顔を見て、侵入者と判断し清綱を捕えようと一斉に攻撃してくる。
「此方を侮っているな。ならばその隙を突き一斉に仕留めさせてもらおう――」
 ぐっと力を溜めるように腰を落とした清綱は居合の構えを取る。まだ刀の間合いには遠い。それでも清綱は獲物を狙う猛禽のように鋭い視線を向ける。
「間合いに入った者は全て断ち切る……空薙」
 鯉口を切ると刃が抜き打たれる。閃光のような一刀は空を切った。
「マヌケ! そんな距離で剣が当たるものか――」
 嘲笑うハルピュイアの体が横一線に両断され、胴が泣き別れして何が起きたのかも分からず一斉に墜落していった。それはユーベルコード『空薙』による空間を断つ一太刀が起こした現象だった。
「なっ!?」
 その様子に後列にいたハルピュイア達が唖然とした顔をして、慌てて逃げるように上昇する。
「なんだ? 今の。剣で斬った……のか?」
「ハルピュイアを倒すことができるなんて……!」
 恐るべきハルピュイアを斬るその剣技に連行される人々も驚きの声を上げた。


「くっ、まだ畑に残ってた仲間がいたはずよ! 応援を呼んで!」
 ハルピュイアは近くの仲間に連絡を取って数を集めようとする。
「何人でも呼ぶがいい」
 そこへ跳躍した顕吉がぞっとする程の殺気を放つ刀『ドラクリヤ』を振り抜いて敵を両断する。
「まだ賊がいたか!」
 ハルピュイア達が散開して纏めて攻撃を受けないように警戒する。
「どうした。代わりの仲間を呼ぶがいい。早くしないと、数の優位が覆るぞ」
 着地した顕吉は敵を見上げて挑発するように不敵に笑ってみせ、ユーベルコード『召使契約』を発動する。
「目覚めよ、我がしもべ」
 顕吉が呼びかけると死したハルピュイア達がぴくぴくと震えて起き上がり出す。
「死体が動いた!?」
「死霊術士か!」
 死体がハルピュイアに襲い掛かり、突然の事態に混乱している生前の仲間に爪を突き立てる。
「死体だから動きが鈍いわ! 飛べば恐れる必要はない!」
 損傷した死体の動きの悪さに気付いたハルピュイアが飛び回り、機動力で圧倒して押し返し始めた。
「サーヴァントは囮だ。意識を向けるほど隙を見せる事となる」
 自分から意識が逸れた敵に向かい、顕吉は跳躍して刀を斬り上げ、身体を逆袈裟に断ち切った。
「こいつ! よくもやったわね!」
 反撃に落下する顕吉へとハルピュイアが急襲して爪を振るおうとすると、横から飛び掛かった死体が抱き付くようにして地面に墜落させた。
「ギャッ! 邪魔よ!!」
 その死体を蹴り剝がすと、眼前には刀を振り上げた顕吉が立っていた。
「お前達を一体残らず殲滅する」
 刀が頭を割ってハルピュイアを絶命させ、大量の血が池のように広がった。
「ハルピュイア同士が戦ってる? いったい何が起きてるんだ?」
 同士討ちしてるような光景に、人々は混乱して逃げる事も忘れてじっと見つめていた。


「待たせたわね!」
「人間なんて引き裂いて獣の餌にしてやるわ!」
 遅れてハルピュイアの仲間が合流する。
「増援か、だが元より此方の目的は其方達を滅ぼす事だ」
 清綱が襲い来る敵の爪を刀で受け流し、刀を返して敵を斬り捨てる。
「人間風情が我等に勝てると思うな!」
 ハルピュイアが背後から襲い来るのを、割り込んだ顕吉が刀を振るって脚を斬り飛ばした。
「人の力を侮ったのがお前達の敗因だ」
 バランスを崩して落下するハルピュイアを死体たちが襲い、仲間にして数を増やした。
「このままでは領主様に顔向けできないわよ!」
「なんとしても侵入者を殺すのよ!」
 形振り構わずハルピュイア達がその爪で引き裂こうと急降下する。
「“在るべき海”へ還れ……邪なるモノたちよ」
 清綱が刀を鞘に納め、また居合の構えに移っていた。
「しまっ――」
 逃げようとハルピュイアが軌道を変えるが、それよりも速く刀が抜かれた。刃は空間ごと敵を断ち、真っ二つになったハルピュイア達が地面に転がった。
「そんな……わたしたちは領主様に選ばれた兵なのに………」
「もう援軍は終わりか? ならばこれで終幕だ」
 信じられないと首を振る最後のハルピュイアに、顕吉が刀を薙いで首を刎ね飛ばした。絶望に染まった首が地面を転がる。

「なんという強さ……! 領主様の軍勢を倒してしまうなんて!」
「誰かが助けにきてくれるって、夢に見たことはあったけど……それが現実になるなんてっ」
 同じように信じられないという顔をする人々。だがその顔は真逆で希望に溢れるものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベリザリオ・ルナセルウス
【白と黒】
●目的
さっきの聖剣使いよりは弱いだろうけど数が多い上に住民がいる
戦いに巻き込むわけにはいかない。避難までの時間を稼ごう

●行動
織久が最初に場を引っ掻き回す。その間に私は周囲の人々に助けに来た事、見張りはすでに倒した事を伝えて鼓舞しよう
広い範囲にオーラの結界を張って近くの建物に逃げ込めるように誘導する
結界を突き抜けてくる攻撃はUCで狙い撃ちするか盾で防ぐ

避難が終わったら織久に加勢する
私のUCや矢の一斉掃射で注意を引き付けたり動きを鈍らせておけばその隙を逃す織久じゃないからね
危ない時は毒の羽根からは盾で庇い、爪の直接攻撃はシールドバッシュで打ち落とす
どんなに数が多くてもこの守りは抜かせない


西院鬼・織久
【白と黒】
ベリザリオ、住民の避難をしたいなら早めにお願いします
先程の一戦で少々滾ってしまいました
巻き込むつもりはありませんが、注意はして下さい

何せ我等は底無し故に
悉くを喰らい尽くすまで止まりはせぬ

【行動】PWO
五感と第六感+野生の勘で敵味方や住民の行動を把握し予測する
ダメージは各耐性と精神力で無視して戦う

先制攻撃+UCの範囲攻撃で群れの中ほどを爆破。周囲に怨念の炎の継続ダメージ付与

敵UCなど攻撃を見切り回避しながら、周囲の敵が距離を取るなら影と繋がった敵を怪力で振り回し周囲にぶつける
落ちた所を纏めてUCで焼き払う

接近してくるなら回避ですれ違い様に早業+夜砥を巻き付け捕縛、まとめて切断+なぎ払い



●小さな希望
「どうやら攻撃を受けてるみたいよ!」
「まさか門が破られたの!?」
「お前達も準備しな! 土塁で道を塞ぐんだよ!」
「ひっ! わ、わかりました!」
 戦闘に気付いたハルピュイア達が、慌てて迎撃準備を整えようとする。怒鳴られた人々は急いで町に入る道で土を掘り起こし始めた。

「さっきの聖剣使いよりは弱いだろうけど数が多い上に住民がいる。戦いに巻き込むわけにはいかない。助けて避難させよう」
 物陰からその様子を目にしたベリザリオが助けに入ろうと、背後の織久へと視線を向ける。しかし織久の視線はベリザリオではなく、じっと敵へと向けられていた。
「ベリザリオ、住民の避難をしたいなら早めにお願いします。先程の一戦で少々滾ってしまいました。巻き込むつもりはありませんが、注意はして下さい」
 そう告げるやいなや、すぐさま織久は敵に向かって飛び出してしまう。
「何せ我等は底無し故に、悉くを喰らい尽くすまで止まりはせぬ」
 その瞳に殺意と狂気の光を宿し、織久は怨念の導くままに襲い掛かる。
「なに!」
「もう来たの!?」
 織久を見てハルピュイア達が爪で応戦する。それを織久は黒い大鎌『闇焔』を振り抜いて弾き飛ばす。そして刃を返すと反対に振り抜き一体の胴を切断した。
「ギャァッ!!」
「よくもやってくれたね!」
 仲間をやられたハルピュイアが怒り、その意識が織久に向けられる。

「少しは自重してもらいたいところだけど、今は助かるよ」
 突っ込んだ織久の事を心配しながらも、ベリザリオは敵に見つからぬように、黙々と土を掘る暗く沈んだ顔の人々の元へと駆け寄った。
「あんたは?」
「門の外から皆さんを助けに来ました。私達があの敵を何とかしますので、建物の中へ避難してください」
「門の外! 本当に外ってあるのか!?」
 ベリザリオの説明を聞いて地底しか知らない人々が驚きの声を上げる。
「はい、敵を倒した後に皆さんを案内します。ですからそれまでは安全な場所に隠れていてください」
「外に出れる……それならもう少し生きなくっちゃな……」
 疲れ切った人々の顔に生気が蘇り、外を一目見るまで生きてみようと建物の中へと避難を開始した。

「勝手にどこに行くつもり!」
 それを見たハルピュイアが怒鳴りつけ、飛翔して避難する人々に向けて毒を宿した黒い羽を雨のように放つ。
「うわぁあっ!」
「大丈夫です。攻撃は私が防ぎます。皆さんはそのまま避難を続けてください」
 身を守ろうと屈み込んだ人々の頭上に、ベリザリオが展開したオーラの結界が張られて羽を防ぐ。
「邪魔な結界ね。それなら裂いてあげるわ!」
 ハルピュイアが結界を爪で切り裂こうと手を振り上げた。
「怨敵よ、何処に行くつもりだ……」
 その背後に織久が迫って、大鎌を振るい背中をばっさりと斬り裂いた。
「奴隷どもを守ってるみたいね。それなら羽の雨を降らせてやるわよ!」
「奴隷ともども殺してしまえ! さあ、泣き叫んで死ね!」
 ハルピュイア達が空に舞い上がり、一斉に無数の羽を雨を降らすように放つ。
「人々を物としか思っていないようだね。どんなに数が多くてもこの守りは抜かせない」
 一人も傷つかせないとベリザリオが剣を掲げてユーベルコード『鈴蘭の嵐』を発動し、剣が無数の鈴蘭の花びらへと変わって舞い、周囲を漂って結界を抜ける羽を迎撃した。
「なにこの花は?」
「ふんっ、わたしたちの羽で全部落としてあげるわ!」
 攻撃を防がれたハルピュイアは、さらに集中して羽を撃とうとする。

「自ら喰らわれ易く集まるとは……我等が糧となるがいい」
 織久がユーベルコード『影面』を使って、空飛ぶ敵群の中心に黒い影を飛ばし爆発を起こした。その衝撃で多くの羽は燃え上がり狙いが逸れて飛んでいく。
「あっ熱い!」
「羽が焼けて風が掴めない!?」
 爆発と共に黒い怨念の炎がハルピュイア達を焼き、どんどん高度が落ち始めた。
「鳥ならば丸焼きにしてやろう」
 黒い炎纏う大鎌で織久が敵を切り裂く。傷口から炎が燃え上がり、黒焦げになるまでハルピュイアを焼き尽くした。
「あづぃぃいいいい! 誰か! 火を消してぇぇえええ!!」
 断末魔を叫びハルピュイアが力尽きる。
「よくも仲間をやったわね!」
「人間め!」
 無残に死んだ仲間を見てハルピュイアが怒りを露わに襲い掛かる。
「獣でも仲間が殺されれば怒るか」
 織久は躱してすり抜けながら『夜砥』を翼に巻き付けた。そして思い切り引っ張り、細い糸が食い込んで翼を切断した。
「イギャアアアッ! わたしの翼がぁ!! わたしが何をしたっていうのよぉ! 毎日ちゃんと奴隷をイジメて死ぬまで働かせてきたじゃない!」
「怨敵よ、今まで人間にしてきた仕打ちを我等も与えよう」
 涙を浮かべて叫ぶハルピュイアに、容赦なく織久は大鎌を振り下ろして体を両断した。

「人間は生まれついての奴隷! 私達に逆らうなんて許されないのよ!」
 数を減らしたハルピュイアが一斉に織久に飛び掛かる。しかし横から飛んで来た矢が翼に刺さってその勢いが衰えた。
「避難は終わったよ。ここからは援護に集中するね」
 ベリザリオが竪琴でもある弓『Misericordia musica』を引いて矢を次々と放つ。
「この人間が!」
 ハルピュイアが羽を飛ばすと、ベリザリオが容易く盾で受け止めた。
「私に気を取られていると危ないよ。隙を逃す織久じゃないからね」
 その言葉通り、無理な体勢で羽を撃った敵に向かって織久が斬り掛かり、肩から腰まで刃を通して体が斜めにずれ落ちた。
「まずはお前から殺すぅううう!!」
 攻撃した隙を突いてハルピュイアが織久の背後に爪で切り掛かる。
「そしてどんな攻撃も私が織久には届かせない」
 ベリザリオが鉄壁の盾で爪を受け止め、逆に押し込んで叩きつけ衝撃でノックバックさせた。
「ひどいっ、ここは私達の楽園だったのに!」
「怨敵の居るべき場所は地獄のみ、我等が送ってくれよう」
 人間相手に好き勝手暴虐の限りを尽くしていた敵に、織久は冷たい視線を向けて大鎌を一閃し、その自分勝手で煩い首を刈って黙らせた。

「倒しちまった。ほ、本当に門の外からきたのか……」
「もしかして、俺たちは自由になれるのか?」
 恐る恐る建物の窓からベリザリオと織久の戦いを見ていた地底の人々は、心に湧いた小さな希望を逃がさぬように強く手を握りしめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
これは、ひどいね……。けど、それももう終わり、だよ。

町のみんなを巻き込みたくない、よね。傘で「空中浮遊」して空にいれば、敵も空を飛んでわたしを攻撃してくれる、かな。敵の攻撃……毒の羽は当たるとまずそう、ね。けどこっちにまっすぐ飛んでくるなら、【風槍】を何本か敵に向かって飛ばせば、羽を吹き飛ばしながら攻撃もできる、かな。飛ばしきれなかった羽は傘で防御すれば、大丈夫。
攻撃はそれで終わりじゃ、ないよ。敵は空にいるから、いろんな方向から残った槍をぶつけることが、できる。空に飛んだのは、うかつだった、ね。

あなたたちを倒すことが、町のみんなにとっての希望にも、なる。容赦なんて、しないよ。


鏡島・嵐
わかりやすい“悪い奴”だな。
単に威張り散らしてるってだけならともかく、力もあるってんだから困ったもんだ。

衝撃波を〈第六感〉で〈見切り〉、〈オーラ防御〉も併用して極力直撃は避けるように。
クゥの機動力も活かして撹乱し、隙を突いて〈スナイパー〉ばりの精度で射撃を撃ち込んで、数を減らしていく。〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉も混ぜて、攻撃を妨害することも忘れずに、だ。
近くに他の味方が居るんなら適宜〈援護射撃〉を飛ばして、有利に立ち回れるように支援する。

強ぇ奴が弱ぇ奴を従えるんはわかる。でも、弱ぇ奴を踏みつけにするんはダメだ。
なんつーか……そういうんはみっともなくねえ?

※アドリブ、共闘は適当に。



●支配の終わり
「ちっ、どうなってるの?」
「入り口の方が制圧されたみたい! 町中に入られるなんて!」
「ここで迎え撃つわ! これ以上わたしたちが預かる町で好き勝手はさせない!」
 ハルピュイア達が侵入者に気付き、すぐさま防衛ラインを築いた。
「ほら! お前等はそこに立ってな! 肉の壁となって敵の足を止めるんだよ!」
「ひっ、こんなの無理だよ」
「俺らここで死んじまうのか……」
 命令を受けた人々が怯えながらも、逆らえずに町中の道に並べられて壁となる。
「……カルロ、お前だけでも家に入っておけ」
「父ちゃんっ」
 こっそりと小さな子供を父親が家へと押し込む。そして覚悟を決めたように人の壁に加わった。

「これは、ひどいね……」
 その人間など死んでも構わない物かなにかのような扱いに、ミアはぴくっと眉を寄せて不快感を表した。
「けど、それももう終わり、だよ」
 ミアは魔法の傘を広げて空に飛び上がる。ふわふわと上昇すると空から敵に近づいた。
「空で戦えば、町のみんなを巻き込まない、よね」
 ふわりとミアは風に乗って敵を見下ろすと、ハルピュイアもまたこちらに気付いた。
「上だよ! 上から攻めてきた!」
「あたしたち空の支配者に空中戦を挑むなんて、舐められたものだね!」
 ハルピュイア達は翼を羽ばたかせて舞い上がる。
「よかった。わたしを攻撃してくれるみたい、ね」
 こちらの思惑通り空中戦になったミアは安堵し、そして気を引き締めて戦いに集中する。
「空はあたしたちのものだ! 撃ち落としてやるよ!」
 ハルピュイアが黒い羽を一斉に射出した。矢のように飛ぶ羽が風を切って迫る。
「毒の羽は当たるとまずそう、ね」
 ミアはユーベルコード『風槍』を使い、魔法でできた風の槍を無数に浮かべ、その内の数本を発射する。螺旋回転する穂先が羽を吹き飛ばし、真っ直ぐ飛んでハルピュイアの翼や体を貫いた。
「ィギャアアアッ!!」
 悲鳴を上げてハルピュイアは、翼に穴を穿たれて飛行能力を失い墜落していく。
「よくもやったてくれたね! 包囲して一斉に攻撃するよ!」
 仲間が倒されて怒ったハルピュイア達は、囲むようにして羽を飛ばす。
「まだ槍はたくさん残ってる、よ」
 ミアは風槍を次々と撃ち出して羽を吹き飛ばし、それを抜けてきた羽は傘で防ぐ。
「空に飛んだのは、うかつだった、ね」
 風槍は羽を吹き飛ばした勢いのまま敵を貫き、次々とハルピュイアを撃ち落としていった。


「バカな! 空の戦いであたしたちが後れを取るなんて!」
「高度を下げるよ! このままじゃ狙い撃ちにされる!」
「人間を盾にすればいい! 少しは被害が減るはずだよ!」
 ハルピュイアは地上すれすれへと降下し、槍の攻撃を避けられるまで距離を取った。
「わかりやすい“悪い奴”だな。単に威張り散らしてるってだけならともかく、力もあるってんだから困ったもんだ」
 そんな悪党を物陰から見た嵐が、厄介な相手だと眉をひそめる。
「でも、だからこそここで倒して、みんなを助けないとな」
 怖くて戦いから逃げたくなる気持ちを押し殺し、嵐は人々を救う為に勇気を胸に立ち向かう。そんな嵐に同意するように相棒の仔ライオンのクゥが肩に乗った。
「上に注意が向いてる間に、奇襲を仕掛けるとしようか」
 嵐がユーベルコード『我が涅槃に到れ獣』を発動すると、飛び降りたクゥが大きくなり焔を纏った黄金のライオンの姿へと変貌した。
「お前達! そこを動くんじゃないよ! 槍が飛んで来たらその身で防ぐんだ!」
 ハルピュイアが人々に怒鳴りつけ、その後ろに身を隠して空に羽を飛ばしていた。その後頭部に飛来した石が直撃して、油断しきっていた背後からの一撃に頭から血を流して昏倒する。
「なに! 石?」
「あそこだ! 隠れてるやつがいるぞ!」
 振り返ればスリングショットを構える嵐の姿があった。
「おれはここにいるぞ!」
 注意を引くようにさらにもう一発石を飛ばしてハルピュイアの翼を抉る。
「ふざけるんじゃないわよ!」
 ハルピュイアが倒れた仲間達の怨念を纏い、低空を飛翔して襲い掛かる。その高速移動と共に衝撃波が放たれた。
「クゥ、頼んだ」
 クゥの背に乗った嵐が背中を叩くと、クゥが駆け出して衝撃波を躱す。そして嵐はまた石を放って飛ぶ敵の翼を撃ち抜いて、バランスを崩させて建物へと衝突させた。


「よくもやってくれたね!」
 ハルピュイアが嵐を追い回し、衝撃波を浴びせていく。
「みんな怒って怖ぇ顔だな、だけど引き付けられた」
 敵を人々から引き離し、嵐は香辛料の目潰しや、麻痺粉をスリングショットから撃ち込んで攪乱する。
「これだけ離れたら、みんなを巻き込む心配はない、ね」
 空から敵を見下ろしたミアは、遠慮なく地上に向かって風槍を降り注がせた。
「上から――」
 気付いたハルピュイアが躱そうとしたが時すでに遅く、串刺しにされて地面い縫い付けられた。
「衝撃波で槍を逸らすのよ!」
 ハルピュイアはそれを躱そうと加速して、衝撃波を放って軌道を逸らす。
「戻るわよ! 奴隷どもを盾にしてれば攻撃の手が止まるわ!」
 ハルピュイアは戻ろうと空中で旋回する。しかしそこへクゥが飛び掛かり、踏みつけて地上へと叩き落とした。
「強ぇ奴が弱ぇ奴を従えるんはわかる。でも、弱ぇ奴を踏みつけにするんはダメだ」
 騎乗する嵐はスリングショットを構え、敵の目に石を撃ち込んだ。
「ギャアッ! あたしの目がぁ!」
「なんつーか……そういうんはみっともなくねえ?」
 降下しながら嵐は続けて目潰しの香辛料弾を放ち、敵達を怯ませて動きを止める。
「あなたたちを倒すことが、町のみんなにとっての希望にも、なる。容赦なんて、しないよ」
 その隙にミアが風槍を狙い撃ち、残ったハルピュイアを全て撃墜した。


「俺達、助かったのか……?」
「ああ、そうみたいだ。あの人たちのお蔭だな」
「父ちゃん!!」
 肉壁とされていた人々がオブリビオンを倒した猟兵達を見上げていると、家に隠れていた子供達が飛び出して親に抱き付いた。
「誰だか知らないが、感謝しないとな」
 その子供の頭を優しく撫でて、父親は猟兵へと頭を下げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…そこまでよ。これ以上、彼らを傷付ける事は許さない

…門番なら、私達が既に討ち果たしたわ
後は残された魔物を掃討するだけ

…今日という日を以て、この地は人類が奪還する
暴虐の報いを受けるがいい、怪鳥の魔

事前にUCを発動して19人の吸血鬼狩人達を召喚
殺気や闘争心を絶ち残像のように存在感を消して闇に紛れさせ、
自身を囮に注意をひいて敵の空中戦機動を見切り、
傷口を抉る呪詛を纏う銃弾を乱れ撃ちさせて仕留めていく

第六感が自身や民への攻撃を捉えたらオーラで防御して受け流し、
大鎌をなぎ払う早業のカウンターで迎撃する

…私達は地上から貴方達を助けに来たの
動けるなら巻き込まれないように隠れていて

…大丈夫。すぐに終わらせるわ


霧島・絶奈
◆心情
絶望の底に在りながら、それでも子を護ろうと思う…
其れが人としての矜持か生物の本能かは判りませんが、立ち上がる理由としては十分です
私は其の手助けをするだけです

…では、存分に愉しみましょう

◆行動
徹底的に敵勢力を叩き【恐怖を与える】としましょう

【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別する浮遊機雷型サーメート」を複数設置
効果範囲の狭さ故に一般人が戦域内に居ようとも巻き込む心配はありません

『獣ノ爪牙』にて呼出した軍勢と共に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
必要であれば【集団戦術】を駆使し、何割かは一般人の護衛として活用

負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



●地獄からの解放
「おねえちゃん。なんだかおそとがわあわあしてるよ?」
「ダメよ、ほら、こっちにきなさい」
 窓から外を覗く小さな妹を、慌てて姉が引き戻す。
「でもおとうさんがかえってきたのかもっ」
「ミーナ、ごめんね。……おとうさんはもう帰ってこないの」
「えっ……どうして? どうしてかえってこないの?」
 姉の辛そうな顔を見上げる妹の目に涙が溜まり、嗚咽と共に堰を切って溢れ出す。
「煩いよ!」
「きゃあっ!!」
 怒鳴り声が響くとガンッと家が揺れ、ぱらぱらと土埃が落ちて来る。姉妹は怯えて蹲り、互いに抱きしめ合って声を押し殺した。
「ったく! 状況は!」
「もう町の殆どが占領されたみたい。あとはこの辺りだけよ」
 侵入者の攻勢に押され、ハルピュイア達は苛立っていた。
「なんとしてもこの土地を守るのよ! それが私達に与えられた使命なんだから!」
「どうやら相手は人間を解放してるみたい。だから奴隷を盾にすれば攻撃できないはずよ」
「ふうん、ならそこらのガキを捕まえて盾にするとしましょう」
 残忍な笑みを浮かべたハルピュイア達が家の中に籠もっている子供を連れ出そうとする。

「……そこまでよ。これ以上、彼らを傷付ける事は許さない」
 それを阻止するべくリーヴァルディが姿を見せた。
「お前が侵入者か!」
「どうやってこの町までやってきた!」
「……門番なら、私達が既に討ち果たしたわ。後は残された魔物を掃討するだけ」
 警戒し爪を向けるハルピュイアに、リーヴァルディが大鎌を構えた。
「……今日という日を以て、この地は人類が奪還する。暴虐の報いを受けるがいい、怪鳥の魔」
 リーヴァルディが視線を引き付けるように大鎌を振るう。それと同時に、事前にユーベルコード『吸血鬼狩りの業・血盟の型』によって召喚していた19人の吸血鬼狩人達が闇に紛れて動き出した。
「ふんっ、一人で私達の相手をするつもり?」
「バラバラに切り裂いてやるわ!」
 ハルピュイア達がリーヴァルディに襲い掛かろうと接近する。すると建物の陰からぬっと吸血鬼狩人が現れ、陰に引き込むとナイフでめった刺しにする。
「ギャァアッやめっ! アギャッ!!」
 悲鳴を上げてハルピュイアが絶命し、建物の陰から血だけが流れ出て来る。
「仲間が隠れていたの!?」
「飛ぶわよ!」
 ハルピュイア達が飛翔し、警戒して散開すると地上の敵を探す。
「……偉そうなのは口だけ? 空に逃げることしかできないのなら、さっさと尻尾を巻いて町から消えるといいわ」
 挑発するように堂々と姿を晒すリーヴァルディが敵に向けて言い放った。
「バカにして……!」
「いいわ、一当てしてあの女を先に仕留めるわよ!」
 仲間の怨念を纏ったハルピュイアは、加速して急降下し衝撃波を放つ。
「……挑発に乗ってきたわね」
 待ち構えるリーヴァルディは敵の動きを見切ってオーラを纏い、大鎌で衝撃を受け流した。
「一気にいくわよ!」
 ハルピュイアが次々と降下し、高速飛行で衝撃波を浴びせてくる。リーヴァルディがそれを捌くと、物陰に隠れていた吸血鬼狩人達が一斉に銃撃を開始し、呪詛を纏う銃弾が敵を撃ち落としていった。落下したハルピュイアが建物にぶつかりガラガラと天井が崩れる。
「きゃあ!」
「あぶない!」
 すると建物の中から少女達の悲鳴が聞こえた。すぐさまリーヴァルディは建物に入り、大鎌を一閃して落下する瓦礫を吹き飛ばした。そこには妹を庇うように覆いかぶさった姉の姿があった。
「たすかった……の?」
「あ、おねえちゃんはだれ?」
「……私達は地上から貴方達を助けに来たの。動けるなら巻き込まれないように隠れていて……大丈夫。すぐに終わらせるわ」
 リーヴァルディはそんな姉妹に不器用に微笑んで見せ、敵の注意を引くべく外へと飛び出し戦いの場所を移した。


「絶望の底に在りながら、それでも子を、妹を護ろうと思う……其れが人としての矜持か生物の本能かは判りませんが、立ち上がる理由としては十分です」
 子を護ろうとする親や、妹を守ろうとする姉。そんな弱くとも強く生きようとする人々を見て絶奈は奮起する。
「私は其の手助けをするだけです」
 周囲に人が居ないのを確認して罠を仕掛け、ユーベルコード『獣ノ爪牙』を発動する。屍者の軍勢が町に現れ、占拠するように陣取った。
「どこから現れたの!?」
「死体の兵士みたいね。死霊術士がいるんじゃない。なんにしても私達は領主様の命令通り町を維持するだけよ!」
 飛翔したハルピュイアは軍勢に襲い掛かり、爪で引き裂き死体を撒き散らしていく。
「ふっ、空を自在に飛ぶ私達に鈍重な死体では追いつけないわよ!」
 制空権を取ったハルピュイアは好き放題に攻撃を繰り返す。
「自分達の力を過信しているようですね……では、存分に愉しみましょう」
 絶奈は仕掛けて置いた浮遊機雷型サーメートを起爆し、爆炎によって飛ぶ敵を吹き飛ばし炎上させた。
「な、なにが?」
 軌道を変えるハルピュイアの近くでも爆発が起こり、煽られて地上へと堕ちる。そこへ待ち構える屍兵達が槍を突き立てて仕留めた。
「罠が仕掛けられてるようね。吹き飛ばしてしまえばいいわ!」
 爆発物に気付いたハルピュイアは、速度を上げて衝撃波で罠を薙ぎ払う。
「気付きましたか、では足止めとして使いましょう」
 絶奈はすぐに方針を変えて敵の進路上の罠を爆発させ、目晦ましのように使用する。
「こんなもの!」
 ハルピュイアが旋回して爆炎を吹き飛ばす。しかしそこへ地上から砲撃を浴びて爆発に巻き込まれ地上に墜落した。
「あそこの兵士よ! 飛び道具を徹底的に叩くわ!」
 砲兵に気付いたハルピュイア達が急降下して強襲し、次々と屍兵を爪で引き裂いていく。
「飛行する者にとって飛び道具は天敵。此処を狙うと思っていました」
 そこに待ち構えていた絶奈は槍を突き上げ、ハルピュイアの胸を貫いて絶命させた。
「空を飛ぼうと地上に降りようと、此の町にもう貴女方が安全な場所はありません」
 絶奈が反対の手で剣を振るい、襲い掛かる爪を腕ごと斬り飛ばした。


「この強さ! 本当にこいつら門を破ってきたようだわ!」
「だからといって、この町の維持を命じられた私達に退くという選択肢はないわ!」
 ハルピュイア達が頭上を旋回し、攻撃のタイミングを計る。しかしそこに銃声が連続で轟き、バタバタと被弾したハルピュイアが堕ちていく。
「……こちらも、今まで暴虐の限りを尽くしてきた魔物を逃がすつもりはないわ」
 リーヴァルディは軍勢に紛れた吸血鬼狩人達の銃撃を受け、落下した敵に大鎌を振り下ろして首を刈り止めを刺す。
「私達を倒したって無駄よ! 領主様がこの事を知れば、町を奪い返しにすぐに新たな軍勢が来るわ!」
 ハルピュイアが飛び掛かり爪を突き立てようとするが、その前に絶奈の剣が一閃して体を両断した。
「ならば早々に此の地底からお暇することにしましょう」
 さらに絶奈が振り向きながら槍を横に薙ぎ払うと、背後から襲おうとしていた敵を纏めて吹き飛ばす。そこへ屍兵や吸血鬼狩人達が襲い掛かり仕留めていった。
「誰一人逃がすものか!」
 悪魔のような形相で最後のハルピュイアが突進する。
「……逃げるのではなく、解放されるの。この地獄のような地の底から――」
 リーヴァルディが大鎌を一閃し、ハルピュイアを縦に真っ二つに斬り裂いた。


 町中に響いていた激しい戦いの音が収まると、恐る恐る隠れていた人々が町中に姿を現わす。
 見上げればいつも威圧的に空から町を支配していたハルピュイアの姿は消え、洞窟の光る天井だけが見えていた。
「ハルピュイアがいなくなった……俺たちは自由になったのか?」
「夢じゃないんだよな!」
 誰も彼もが信じられないと顔を見合わせる。そしてゆっくりと実感したのか、その顔に笑顔が浮かび、人々は歓声を上げて抱き合い喜びを爆発させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『慈悲なき世界に安らぎを』

POW   :    死者を運び、埋葬する。屍肉を狙う獣を追い払う。

SPD   :    棺や墓石の製作。埋葬中の警戒。屍肉を狙う獣を追い払う。

WIZ   :    司祭として死者に祈りを捧げる。屍肉を狙う。獣を追い払う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●地底に積もった悲しみ
「ここが地の底で、門の外に地上があるっていうのか?」
「信じられねぇ……だけどあのハルピュイアを倒しちまったアンタたちが言うなら本当なんだろう」
 猟兵から説明を受けた人々は半信半疑ながらも、今まで絶対だと思っていた支配者を倒した途轍もない力を見たために、信じる気になっていた。
「だが、この土地を離れるのか……不安だな」
「ああ、それにうちの死んだ嫁さんも穴に入ってるんだ。放っておけねぇ」
「それはうちの旦那もだよ。まだ子供も生まれたばっかりだってのに……うぅ………」
 この町を捨て地上へ向かう話を聞いて、人々は迷い戸惑う。未知の場所への不安もあるが、ここで死んだ親しい人々の思い出が失われるのを恐れているようだった。
「ミーナはここにいる! おとうさんがかえってくるのをいいこにしてまってる!」
「ミーナ、もうおとうさんはかえってこないの。だらか外に――」
「いや! うっうっ……うええええええええっ」
 もう帰らぬ親を待つ子供の泣き声が響き、同じように親を失っている子供達もまた泣き出した。大人達に重い沈黙が広がる。
「せめて遺体を持って……」
「無理だろう。俺達は新天地に行くんだ。余分なものは持っていけねぇ」

 ――グルルルルゥウッ! アォオオオオオン!!

 ああだこうだと相談していると、町の外で獣達の雄叫びが響いた。
「ああ、くそっ屍肉喰らいだ。餌を喰いにきやがったか」
「なあ、もう獣共に家族を喰われるのはイヤだ。せめて遺体を埋めてやろうぜ」
「……そうだな。もう死んだ家族をどうしようが俺達の自由だ。行こう!」
 いつもなら獣の餌として死体を喰わせていたが、それを強制させていたハルピュイア達はもういない。ならせめて死体を荒らされるのを止めたいと人々は立ち上がった。

 この地の底の町では人々を埋葬する習慣すら与えられなかった。死者は町の外に点在する穴に積み上げられて放置される。死を悼むことを知らぬ死者との別れは、野垂れ死んで別れるのと大差がなく区切りが存在しないのだ。
 猟兵達は地上流の墓による供養と、故人との別れの告げ方を教え、明日という希望に向かって旅立つ準備を整えようと動き出す。

 それはきっと人々を本当の意味で救う。傷付いた心を癒すという一番大切な仕事だった――。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。そんなにお父さんに会いたいの?

…そう、会いたいなら会わせてあげるわ

…きっとまだこの地に縛られているはずだから

獣の餌場になっていた場所に案内してもらい、
左眼の聖痕に魔力を溜め犠牲者達の霊魂の残像を暗視し、
彼らの亡骸に両手を繋いで祈りを捧げてUC発動
彼らの魂から呪詛を浄化して"光の精霊"として召喚

…聞け。この地に縛られし魂達よ
私は声無き声、音無き嘆きを聞き届けるもの

…貴方達を死に至らしめた魔物は私達の手で討ち果たした
これより先、生き残った者達はこの地を去り地上に向かう

…彼らが安心して新天地に旅立てるように
そして何より貴方達が心安らかに眠りにつけるように

…残された人達に別れの言葉をかけて欲しい



●旅立ちの言葉
「ミーナ、おとうさんはもう帰ってこないの」
「やだ! おとーさんまつもん!」
 宥めようとする姉を小さな妹はいやいやと首を振って拒絶する。
「……ん。そんなにお父さんに会いたいの?」
 涙に頬を濡らす少女にリーヴァルディが尋ねる。
「うん! あいたい、おとーさんに!」
「……そう、会いたいなら会わせてあげるわ」
 付いておいでとリーヴァルディが町の外に向かうと、驚いた顔で姉妹もまたその後に続いた。
「……きっとまだこの地に縛られているはずだから」

「ここが死体を捨てる穴だ。そしてその子らの父親も……」
 死体を放棄している獣の餌場へと案内してくれた男性が姉妹を見て言葉を濁す。リーヴァルディは左眼の聖痕に魔力を溜め、淡い光を宿して犠牲者達の霊魂の残像を捉える。
「……やはりまだ残っているわね」
 リーヴァルディは亡骸に両手を繋いで目を閉じると祈りを捧げ、ユーベルコード『限定解放・血の煉獄』を発動する。すると黒く染まっていた魂の呪詛が浄化され、光を放ち"光の精霊"として召喚される。
「……聞け。この地に縛られし魂達よ。私は声無き声、音無き嘆きを聞き届けるもの」
 リーヴァルディは光の球のようにふわふわ浮かぶ精霊達に姿を変えた魂に話しかける。
「……貴方達を死に至らしめた魔物は私達の手で討ち果たした。これより先、生き残った者達はこの地を去り地上に向かう」
 その言葉に光の精霊達が大きく震え、自らと家族が解放された喜びを表すように宙を舞った。
「……彼らが安心して新天地に旅立てるように、そして何より貴方達が心安らかに眠りにつけるように」
 リーヴァルディが亡骸を前に悲しむ人々へと視線を向ける。そこには不安そうに手を繋ぐ姉妹の姿もあった。
「……残された人達に別れの言葉をかけて欲しい」
 光の精霊がふわりと迷うことなくそれぞれの家族の元へと向かう。そして姉妹の前にも一つの光が揺らいでいた。
「おとーさん?」
(そうだよ、ミーナ……)
 妹が手を伸ばすが、その手が光を掴むことはできない。しかし父親の声が心に響いた。
「おとうさん……」
(マリアも元気そうでよかった。二人とも、約束通りに帰れなくてすまなかった)
 姉も恐る恐る手を出して、光に手をかざした。
(マリアにミーナ。よく聞きなさい。お父さんはもう一緒にいられない。お父さんは死んでしまったんだ)
「イヤ! おとーさんはここにいる!」
「ミーナ!」
 光に抱き付き素通りして転びそうになった妹を姉が抱き留める。
(こうして、もう抱きしめてやることもできない)
 手のような光が伸びて姉妹を素通りした。
(私の心残りは二人のことだけだ。私もお母さんも小さなミーナの笑い顔が大好きだった。だからミーナには笑っていてほしい。姿は見えなくても、お母さんと一緒に見守っているよ)
 泣きじゃくる小さな頭を撫でるように光の暖かさが伝わる。
(マリア、いつもお姉さんとしていい子にしてくれてたね。ありがとう。でもこれからはもっと大人を頼りにするんだ。そして二人で助け合って生きていくんだ)
「お、おとうさん……――」
 気丈に我慢していた姉の目からも涙がとめどなく溢れ出す。
(最期に言葉を交わせてよかった。二人とも……元気で………)
「おとーさんおとーさん!」
「ぐすっ……ミーナ、おとうさんを安心させてあげなきゃ」
「おねーちゃん………。おとーさん……ミーナ、おねーちゃんとがんばる!」
 涙を拭った姉が無理をして微笑んでみせると、妹もまたごしごしと涙を擦って泣き笑いを浮かべた。すると光に浮かんだ父の顔が微笑みを浮かべて天井へと昇って消えていった。

「……これで残された人も、眠る人も心残りなく旅立てるわ」
 家族と別れを告げた光が次々と去っていくのを見上げ、リーヴァルディは安らかな眠りをと鎮魂の祈りを捧げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベリザリオ・ルナセルウス
【白と黒】
●目的
埋葬すら許されず知ることさえなかったのか…
亡き人を弔う事は喪失の悲しみを受け入れ、亡き人の記憶を悲しみではなく懐かしく大切な思い出にするもの
その手伝いをさせてもらおう

●行動
獣を追い払ったら私は住民に弔いの事を話そう
浄化の祈りを込めて竪琴で鎮魂歌を奏でて亡き人を送り、住民の心を落ち着けよう

…織久の炎が亡骸に染み付いた無念と悲しみを昇華し払って行く
こんな事ができるのに、あの炎は怨念に満ちて織久を駆り立てる
いつかあの炎に鎮魂歌を送り、織久を怨念に満ちた西院鬼のさだめから解放できる時が来るだろうか

それまであの子が背負ったものに押し潰されないようにと奏でる歌に祈りが増えていく


西院鬼・織久
【白と黒】
屍肉の味を覚えた獣がいるならただ埋葬するだけでは掘り返される
荼毘に付した上で処理しましょう
死ねば怨念の一部と化す我等にも墓はありませんが、知識はあるので

住民の説得や葬儀はベリザリオに任せます
その方がベリザリオも余計な事を考えずに済むでしょう

【行動】POW
UC+範囲攻撃で獣を追い払い、五感と第六感+野生の勘と知識を活かして遺体の選別を行う
骨格、死因と思われる損傷等から大体の年齢や死因から可能な限り知人や身内を探る

遺体を荼毘に付す時は怨念の炎を利用し、恐怖や恨みなど怨念に繋がる物を喰らい焼き払う
希望があれば小さい骨壺か麗石を作り、改めて埋葬するか形見として身に付けられるようにする



●祈りの炎
「こっちだ! こっちから獣の声がするぞ!」
「それは俺らの家族の遺体だ! もう食わせねえ!」
 死体が放り入れられる穴へと人々が農具を武器にして近づく。そこには2m近い大型の狼のような薄汚れた獣の群れがいた。
「埋葬すら許されず知ることさえなかったのか……」
 親しき者の亡骸を守ろうとする人々を見て、ベリザリオは獣の如き死を強制していたオブリビオンに改めて怒りを覚えた。
「亡き人を弔う事は喪失の悲しみを受け入れ、亡き人の記憶を悲しみではなく懐かしく大切な思い出にするもの」
 それは死した者だけでなく、生きていく者にも必要な別れの儀式だとベリザリオは思う。
「その手伝いをさせてもらおう。まずは獣を追い払わないとね」
 獰猛な大型の獣相手では怪我をしてしまうかもしれないと、ベリザリオは人々の前に立って盾を構えた。
「グルルゥッワオォッ!!」
 ベリザリオを警戒した獣の群れが咆えて威嚇する。餌を奪われまいと、牙を剥いて人間達を近づかせない。その態度は普段から餌である人間を下に見た強者のものだった。
「弱肉強食は自然の掟ですが、この場にいる強者はこちらの方です。我を通させてもらいましょう」
 オブリビオンを倒して内なる昂りを収めた織久は、冷静に邪魔者を追い払うように大鎌を横に一閃し怨念の殺意の炎を撒き散らす。炎に呑まれた獣達は瞬時に焼け焦げ、火傷するような熱気に当てられた周囲の獣達は慌てて距離を取った。
「ギャンッ」
「ワゥワゥッオォン!!」
 その一触で敵わぬと見た獣達は、悲鳴のような鳴き声を上げて逃げ出した。
「おおっ、あのしつこい屍肉喰らいをあっという間に!」
「やっぱりすごい強さだ」
 そんな猟兵の強さに人々は改めて感嘆の声を上げた。

「こんな姿になっちまって……」
「ああ、この左腕の骨が曲がってるのはうちの親父だ」
 人々は穴から軽くなった家族の遺体を取り出して地面に並べた。
「屍肉の味を覚えた獣がいるならただ埋葬するだけでは掘り返される。荼毘に付した上で処理しましょう」
 織久はこのままではまた散った獣が戻って来てしまうと、死体を焼いて弔う事を提案する。
「死ねば怨念の一部と化す我等にも墓はありませんが、知識はあるので」
 焼くための炎は自分が作り出そうと、大鎌に炎を纏わせる。
「焼くってのか? 遺体は食べ物じゃないんだぜ?」
「住民の説得や葬儀はベリザリオに任せます」
 言葉と炎から何をしようとしているのかニュアンスが伝わり、人々が疑問の声を上げる。その説得を織久は全てベリザリオに放り投げた。
(その方がベリザリオも余計な事を考えずに済むでしょう)
 感情を表には出さないが、織久もよくベリザリオのことを見て、悩んでいることに気付いていた。
「織久……皆さん。落ち着いてください。地上での死者の弔い方を説明します」
 ちらっとベリザリオは困ったような視線を返し、何か言いたげにしながらもすぐに人々へ荼毘についての説明を始めた。
「なるほど、そんな風習が地上にはあるのか」
「確かにそれだったらもう獣に荒らされねえな」
 人々は説明を受けて話し合い、荼毘に付すことで納得した。
「では始めましょう」
 人々が見守る中、ベリザリオが竪琴を鳴らし、音に乗せ鎮魂歌を奏でて亡き人々を送る。荘厳な歌が響き人々の胸に共鳴し、ぽろりぽろりと涙を零していった。
「我等が怨念よ、恐怖も恨みも全て喰らい焼き払え」
 織久が炎を放つと、並べられてる遺体に火が点く。炎が噴き上がるように大きくなり、残留する怨念の負の感情が炎で浄化され天に送っていく。
 その昇る火の粉を見て、人々は亡き家族との思い出に浸っていた。
「……織久の炎が亡骸に染み付いた無念と悲しみを昇華し払って行く」
 そんな光景を一時手を止めたベリザリオが人々と共に見上げた。
「こんな事ができるのに、あの炎は怨念に満ちて織久を駆り立てる。いつかあの炎に鎮魂歌を送り、織久を怨念に満ちた西院鬼のさだめから解放できる時が来るだろうか……」
 ベリザリオは頭を振り、弱気を追い払うように竪琴を撫でて歌を再開する。
(その時が来ると私は信じよう。それまであの子が背負ったものに押し潰されないように――)
 祈りを籠めた歌に合わせるように、炎は天に届くように猛り全てを炎で清めた。

「みんな綺麗に焼けちまったな」
「だけど、これで安らかに眠れるんだろ?」
 炎が消え、荼毘され乾いた骨となった遺体を見て、人々は憑き物が落ちたような顔をしていた。それでも何となくまだその場を離れがたく思っているように、ちりちりと燃える炭のような残り火を見ていた。
「これをどうぞ」
「これは……?」
 織久が人々に掌にすっぽり入るような小さな壺を差し出す。
「骨壺です。それに骨の欠片を入れ、埋葬するか形見として身に付けるといいでしょう」
「骨壺……ありがとうございます。これに入れて形見にしようと思います」
 壺を受け取った人々は頭を下げ、その中に家族の遺骨を大切そうに納めていった。
「織久があんな気を利かせるなんて……少しは変化が起きているということかな」
 それを良い変化だと思いベリザリオの顔に微笑みが浮かぶ。
「行きましょうベリザリオ」
 そんな親のように見守る視線から顔を背けるように、織久は人々を先導して歩き出した。それにベリザリオも続いて、祈りはきっと天に届くだろうと見えぬ空を見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
私も死者の埋葬はあまり得意ではありません。
私の故郷では戦場での負け戦で死ぬ人が多く、遺体を手元に置いておく事は滅多に出来ませんでしたし、丁重に葬儀を行う余裕も無かったからです。
精々感染症などを防ぐ為に火葬するくらいでしたね。
掘る穴を小さくする事もできますし。
ですが、猟兵になってから友人に【祈り】を捧げる事を学びました。
信じる神様は持っていなくとも、安らかな眠りを願う事くらいは私にも、地下の人々にも出来るはずです。
望まれれば火葬の手伝いもしましょう。
ユーベルコードの炎なら、遺体に残るオブリビオンの残滓を【浄化】し、ついでに獣を追い払う事もできるでしょう。


ミア・ミュラー
んー、そういえばお墓ってどうやって作るの、かな?とりあえず木とか石とか、材料になりそうなものを集めよう、かな。【プリンセス・ホワイト】で白鳥さんたちも呼んで、町の中を探す、よ。
集まったら他の人が作ってるのを真似したりして、わたしも作って、みるね。白鳥さんたちには埋葬が終わるまで周りを見張っててもらおう、かな。
ん、忘れられちゃうのが一番悲しいことかなって、思うよ。だからしっかりお祈りして、亡くなった人たちのことを心に刻んであげるといいんじゃない、かな。
ここよりはましかもだけど、地上で暮らすのもきっと大変、だよね。だから、わたしもここで眠る人たちに、みんなのことを見守ってあげてねって、お祈りする。



●祈りを胸に
「あっちへいけ!」
「この遺体はもう食わせねぇ!」
 町を出たところで、人々が農具を持って穴の遺体に集まる獣を追い払おうとする。
「グルルルルゥッ!!」
 その妨害に腹を立てた大型の獣が飛び掛かろうと脚に力を溜める。
「私にお任せください!」
 そこへ割り込んだハロがレイピアを構えると同時に、獣が喉元を噛み切ろうと飛び掛かった。すれ違うようにハロが一閃すると、獣は切り裂かれて地面に転がった。
「ガゥウウッ!!」
 仲間をやられて怒りに満ちた唸り声を上げる獣達が囲むように展開する。
「亡くなった人たちはもう食べさせないし、生きてる人も襲わせない、よ」
 そこへミアがクラブのスートを飛ばし、群れの眼前を飛行させて出足を挫いた。機を逃さずハロが飛び込み、中心にいた最も大きく唸っていた獣を斬り捨てる。
「グゥウウッオオーーーーン!」
 一瞬にしてリーダー格の獣が倒され、その鮮やかな手並みに怯え獣達は敵わぬと反転して逃げ出していった。
「ありがとう助かった。これでまだ無事な遺体を守れたよ」
 獣が去ると、人々は死体の積まれた穴から家族の体を取り出していく。

「しかし、この遺体をどうする?」
「どうするって、食われないようにするとか?」
 餌にする以外の方法を知らない人々は互いに顔を合わせて、どうしようかと悩み始める。
「んー、そういえばお墓ってどうやって作るの、かな?」
 ミアは首を傾げ、今まで見たことのある墓の様子を思い浮かべる。
「私も死者の埋葬はあまり得意ではありません」
 ダークセイヴァー生まれのハロも故郷でのやり方を思い出す。
「私の故郷では戦場での負け戦で死ぬ人が多く、遺体を手元に置いておく事は滅多に出来ませんでしたし、丁重に葬儀を行う余裕も無かったからです」
 遺体を持ち帰る余裕などなく、その場で処理しなくてはならなかった。
「精々感染症などを防ぐ為に火葬するくらいでしたね。掘る穴を小さくする事もできますし」
 戦場でできる最低限の弔いによって死者を送っていた。それも感情的なものよりも実利的な意味合いが強かった。
「ですが、猟兵になってから友人に祈りを捧げる事を学びました。信じる神様は持っていなくとも、安らかな眠りを願う事くらいは私にも、地下の人々にも出来るはずです」
 墓の立派な形よりも、祈りこそが大切だとハロは思っていた。
「なるほど、焼いてから穴に埋めるのですか。そして祈る……」
「そうしよう。焼いちまったらもう獣も近づかないだろうしな」
 その話を聞いて、人々は遺体の弔い方を決めた。

「それじゃあ穴掘りは任せて、わたしはとりあえず木とか石とか、材料になりそうなものを集めよう、かな」
 どの墓にもある墓標となるものを探そうと、ミアはユーベルコード『プリンセス・ホワイト』を使い、白く美しい白鳥の群れを呼び出した。
「みんなで町の中を探す、よ」
 ミアと白鳥たちは材料を探しに町中に戻る。あちこちを鳥が飛び回り、木や石を上空から見つけていく。
「この木材なんか良さそう、かな」
 白鳥が降り立ったところに近づくと、戦いで壊れた家からミアは木材を回収した。白鳥たちも協力して持ち上げ、多くの材料を確保した。


「穴はこれくらいの大きさでいいかい?」
「はい、骨を埋めるだけなのでそれくらいで大丈夫です」
 穴を掘る男衆の質問にハロが答え頷く。
「では遺体を火葬します。離れていてください」
 人々が痛いから離れるのを確認すると、ハロがユーベルコード『クロスファイアー』を発動して聖なる力を宿す白色の炎を放った。浄化の炎は肉体だけでなく遺体に残るオブリビオンの残滓を消し去り、獣が嫌う清浄な土地へと変化させた。
「白い炎………綺麗だ――」
 その清らかな炎に魅せられるように、人々は家族の薄汚れた遺体が浄化される様をしっかりと見つめていた。

 暫くすると、炎が下火となり地面には白い骨だけが残っている。
「これで終わりです。温度が下がったら埋めましょう」
 炎を消したハロが、まだ熱を持つ骨に近づこうとする人々に注意を呼び掛けた。
「お墓の材料、持ってきた、よ」
 そこへミアが白鳥の群れと共に木材や石を運び込んだ。
「白鳥さんたち、埋葬が終わるまで周りを見張ってて、ね」
 任せておけと白鳥たちは翼を広げてまた飛び立った。

「では遺骨を穴に埋めましょう」
 ハロが遺骨を確認して待っていた人々を招く。
「はは、あんたこんなに小さくなっちまって……もう獣なんかに荒らされないように埋めてやるからね」
 赤ん坊を背負った女性が夫の骨を拾い上げ、それを墓穴へとそっと入れた。他の人々も家族の骨を拾い、宝物のように大切に墓穴に納めていく。
「穴を埋めたら墓標を立てましょう」
 ハロがこんな感じにと石と木材を使って見本を作ってみせる。
「わたしも作って、みるね」
 それを真似してミアも墓標を作ってみた。同じように人々も墓標を作り始める。それぞれの墓標が建てられると、墓らしく見えるようになった。
「皆さんは今日この地底から旅立ちます。別れる家族の方々がここで安らかに眠れるように祈りを捧げてあげてください」
 ハロが目を閉じて、無残に死んでいった故人を想い祈りを捧げる。
「そうか、この町を出ていくんだった。こうして墓に祈るのもこれが最後なのか……」
 墓を夢中で作っていた間は体を動かして誤魔化せていたが、じっと墓を前にしてこれが最後だと思い出したように人々は悲しみに包まれる。
「ん、忘れられちゃうのが一番悲しいことかなって、思うよ。だからしっかりお祈りして、亡くなった人たちのことを心に刻んであげるといいんじゃない、かな」
 ミアは墓参りできないことより、忘れられる事の方が辛いと自分の想いを伝える。
「ここよりはましかもだけど、地上で暮らすのもきっと大変、だよね。だから、わたしもここで眠る人たちに、みんなのことを見守ってあげてねって、お祈りする」
 安らかに眠る家族の方々に、ミアはみんなの未来を見守ってほしいと願い、祈りを捧げる。
「そうだな、死んだ奴にいつまでも心配をかけるわけにはいかねえな」
「あんた、子供の事は任せておいて、立派に育ててみせるからね」
 人々は墓に祈りを捧げ、別れを伝えていく。悲しみと共に涙を流すが、その熱い雫は悲しみだけでなく、心に溜まった澱も一緒に流していく。
 しっかりと悲しみ泣いた分だけ、人はまた強く明日に踏み出せる。墓を作って弔う行為で、家族の死に対して受け入れることができた。

「これなら安らかに眠れるでしょう」
「これでもう地上に行っても大丈夫、だね」
 ハロとミアはそんな人々を見て、地上でも強く生きていけそうだと安堵した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
〈軍用鞄〉の中で眠る〈ヘキサドラゴン〉を起こす
モモ、お前は屍肉喰らいを追い払ってこい
屍肉喰らいの討伐に行く猟兵がいれば指示に従うよう言い聞かせておくよ

[怪力]を駆使して墓石に使う石や木々を運ぶ
もし、死した者が大事にしていたものや気に入ったものがあれば持ち寄って貰い
共に埋葬してやりたいな
別れを惜しむ者には在る世界が今とずれるだけだと伝えよう

生き物は遅かれ早かれ必ず死ぬ
だがそこで終わりではない、裁く者の元へと送られる
ここにいる者達は生きて地獄を味わった
きっと安寧の地へと送られるだろう――俺はそう思うよ

変化に怖れや不安があるのは当然
前を見ろ、死者が見る事の叶わなかった光景をお前達が見るんだ


愛久山・清綱
心得た。彼らの魂は、我々が祓い清めよう。
拙者はこう見えて、「此の手の職」に就く者でな。

■行
【WIZ】
……だが、先ずは獣たちが先だ。

先ずは現れた獣たちに【真気】を放ちつつ、堂々と立ち塞がる。
お次は【動物と話す】力を用いて『去れ。さもなくば此の場で
全員喰らおう』と【恐怖を与え】つつ恫喝し、退去を願う。
去らない獣が現れたら、【怪力】を込めて蹴り払うぞ。

獣の気配が完全に消えたら『装束』を纏い、葬儀を行う。
残酷やもしれぬが……人々に故人との『最後の別れ』を促そう。
場が落ち着いたら死した者たちのために墓を建てて手厚く埋葬し、
その魂が安らかであるよう【祈り】を捧げるのだ……

※アドリブ歓迎・不採用可



●前を向いて
「我々は遺体の処置の仕方を知らん。地上のやり方を教えてもらえんか?」
 無残に野ざらしにされた遺体を何とかしたいと、年配の男が猟兵に尋ねた。
「心得た。彼らの魂は、我々が祓い清めよう。拙者はこう見えて、『此の手の職』に就く者でな」
「おお、それはありがたい」
 清綱が任せてくれと胸を叩き、自分は専門家だと告げる。
「アォオオオオオオオッ!」
 喋りながら遺体の積まれた穴に向かっている途中で荒々しい獣の群れの雄叫びが反響する。それは近づくなという威嚇だった。
「……だが、先ずは獣たちが先だ」
 清綱は駆け出して一足先に獣の元へと向かう。

「獣か」
 相馬は軍用鞄の中で幼生化して眠る黒竜の『ヘキサドラゴン』を起こす。
「モモ、お前は屍肉喰らいを追い払ってこい」
 くわ~と口を開けて欠伸をしたヘキサドラゴンは、鞄から飛び出すと巨大化して元の姿に戻る。
「既に向かっている猟兵の指示に従うようにな」
 そう言い聞かせると、一つ頷いて翼を羽ばたかせて飛翔した。
「獣なら任せておけば問題ないだろう。その間にこちらは墓石の材料を用意するとしよう」
 怪力を活かして大きく重い石を易々と担ぎ上げ、相馬は人々と共に穴の方へと向かった。

「見つけたぞ」
「ガルルルゥッ! ガゥッ!!」
 姿を見せた清綱に獣達は牙を剥いて獰猛な雄叫びを叩きつける。
「飢えた獣か、しかも数が多い」
 清綱が辺りを確かめれば、暗がりに爛々とした目が幾つも輝き、こちらが隙を見せれば噛み殺そうと狙っている。
「他の場所から追い払われたものが集まったか」
 他の猟兵が追い払った獣もこちらに流れ着いたのだろうと考え、町からもっと遠ざけねばと『真気』を発した。獣達にも負けぬ獣の殺気が清綱の身体から放たれ、威圧された獣達の声がばったりと途切れた。
『去れ。さもなくば此の場で全員喰らおう』
 続けざまに清綱が動物に話しかけ退去するように恫喝した。
「ウォンッ」
 気の弱い個体は怯えたように鳴いて逃げ出す。
「ウォオオオオオオッ!!」
 しかし身体の大きな獣は負けじと咆えて立ち向かう。だが清綱はあっさりと巨体を蹴り飛ばしてあしらった。
「グルグルグル……!?」
 唸り声を上げてじりじり後退していた獣達が、自分達を覆う影に気付いて天井を見上げる。するとそこには翼を広げて旋回するヘキサドラゴンの姿があった。
 ヘキサドラゴンが天井に反響するように咆えてブレスを軽く放つ。既に戦意を折られかけていた獣達はその圧倒的な姿にもろく崩れ、群れの綻びから次々と獣が逃げ出した。
「後は頼めるか?」
 清綱が見上げて声を掛けると、ヘキサドラゴンは任せろと尻尾を振って返答し、敵の尻に向けてブレスを浴びせ、獣達がもうここら一体に近づかないように追い回した。


「墓穴はこれくらいで充分か」
 遺体の数の分だけ相馬は穴を掘るのを手伝い、人がすっぽり入る穴が出来上がった。
「もし、死した者が大事にしていたものや気に入ったものがあれば持ち寄ってくれ、共に埋葬してやろうと思う」
「大事に……そういやうちのお袋は俺の作った小物入れを大事にしてくれてたな」
「うちの親父は大切にしてる道具があったな」
 相馬の提案に家族の事を振り返った人々は、懐かしむように思い出しながら町に戻って縁の品物を持ってきた。
「ではこれより葬儀を執り行う」
 神聖な『装束』を纏った清綱が姿を見せると、淀んでいた空気が凛として清められる。落ち着いた態度で遺体を清めて人々へと視線を向ける。
「これより故人に『最後の別れ』をしてもらう。それが終われば埋葬していくこととなる。悔いの残らぬよう、しっかりと言葉を伝えるように」
 清綱が促すと、人々はそれぞれの家族の変わり果てた姿の前に膝をついた。
「お袋、地上って場所があるんだってよ。俺はそこに行ってみようと思う。お袋にも見せてやりたかったけど…………代わりにしっかりと目に焼き付けて、会いに行くときにしっかりと話を聞かせてやっからな」
「親父ぃ、死ぬのが早すぎるよ。オレまだ全然一人前じゃないのによぉ。大工仕事もっと教えてくれよう……」
 遺体に話しかけ、辛くとも大切な思い出に涙を流す人々。それは亡き家族との別れの時間だった。

 やがて涙が渇き顔を上げた人の前に清綱が静かに立つと、頷いて遺体と思い出の品を墓穴へと埋めていく。
「待ってくれ、うちの子供はまだ……もう少し……寂しいって言ってるんだよ。こいつがさあ」
 幼い子供を失った親は、まだと別れを引き延ばす。もう死して時間が経ち骨となっている体は小さく、触っただけでも折れてしまいそうだ。
「在る世界が今とずれるだけだ。消えてしまうわけではない」
 相馬がそう言って別れを拒絶する親を諭す。
「生き物は遅かれ早かれ必ず死ぬ。だがそこで終わりではない、裁く者の元へと送られる」
「裁くもの……」
 相馬の言葉に耳を傾けた父親が顔を上げた。
「ここにいる者達は生きて地獄を味わった。きっと安寧の地へと送られるだろう――俺はそう思うよ」
 穏やかな顔で相馬は苦難の道を歩んだ故人たちを見やる。その視線につられるように他の人々も並べられた遺体に目を向けた。
「じゃあうちのやつも、見送ってやらんとね」
 別れを惜しんでいた人々も、重い腰を上げて墓穴に遺体を埋め始める。
「くぅっ……先にいっとってくれ、父ちゃんもいつか行くからな!」 
 最後に小さな子供の骨も納められ、全ての穴が埋められた。そこに石や木を使って墓石を立て、立派な墓が建てられ手厚く埋葬された。
「迷える魂に安らかな眠りを……」
 目を閉じた清綱が祈りを捧げ、亡き人々の魂の安寧を願う。自然と人々もそれに従い黙祷を始めた。


「これにて葬儀は終わりとなる。そしてこれより皆で地上の新天地へと向かう。準備はよろしいか」
 ゆっくりと見渡した清綱が尋ねると、別れを告げて気持ちを切り替えても、皆の心には未知への不安が残っているようだった。
「変化に怖れや不安があるのは当然。前を見ろ、死者が見る事の叶わなかった光景をお前達が見るんだ」
 相馬が墓に背を向けて歩き出す。人々も惜しみながらも一人また一人と墓に背を向け歩き出した。その背を押すように、墓の辺りの苔が光を強めた。
「見送っているようだな。安心せよ、もう彼らは振り返らない」
 清綱もまた墓に背を向けて人々の後に続く。

 その先にあるのは希望の光だと信じ、人々は地上の世界へと力強く足を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
なるほど…この世界だと悼む事すら自由じゃなかったのね
小さく息を吐く
戦場でのクソみたいな風景は馴染みがあるが、この世界のそれは根底に悪意がある
憎悪でも復讐でもなく、余裕のある悪意とでも言うべきか。まぁ酷く胸糞の悪いそれだ

「ったく、気分悪いわね。良いわ、少し手伝ってあげる」
携行する火器で死肉に味を占めた獣を蹴散らし、気合の入った奴は杭打ち銃で仕留めて周辺整理

「獣に掘られたくないなら、深く掘らないとね。硬い所は私に言いなさいな」
後は皆を指導して、墓穴を掘りましょう
硬い場所は私の「高周波シャベル」と【怪力】でさっさと仕上げますね

「余裕があるなら、死者を悼むのは良い事ですよ。哀しい時には哀しむべきです」


鏡島・嵐
……そうだな。「気持ちを整理する」ってのが、きっとこの人たちには必要だと思う。
失くしたものはいっぱいあるだろうし、今更取り戻すことも出来ねえ。
ならせめて、気持ちに区切りをつけねえと、前に進むんも儘ならねーよな。

おれの故郷じゃ火葬が風習なんだけど……遺骸を燃やすってのは手間がかかるし、心理的に抵抗あるかもな。
なのでいろんな世界の〈世界知識〉を参考にして、土葬で供養するように手伝いをする。
見様見真似で亡骸を清めて、傷とか隠して、修繕した服を着せて。どうせなら、綺麗な姿で送り出してえしな。
遺族と対面が終わったら、柩に入れて、埋める。
……おれに出来るんはこれくらいだ。

可能なら、他の猟兵とも協力する。


霧島・絶奈
◆心情
Rest In Peace...

◆行動
『暗キ獣』を使用
軍勢に埋葬と獣への警戒を手伝わさせます

私も埋葬を手伝いつつ少し話をしようと思います

遺骸は置いて行かざるを得ませんが…
せめて遺髪位は持って行っても大丈夫でしょう
そのまま形見とするも良し、新天地にて改めて葬るも良し…です

そして彼らを此の地に葬るのは仕方なくではありません
彼らの誇りある生涯に敬意を表する故に、此の地の勝者として葬るのです
だから胸を張って埋葬なさい
彼らの尊厳を冒涜する輩はもう居ないのですから

最後になけなしの【優しさ】を込めて【祈り】を捧げます
宗派や宗旨の違いなど、死者を悼む想いの前では些末なモノ

誇り高き者達よ
どうか安らかに眠れ



●地上へ
「ウォオオオオン!!」
「屍肉喰らいの声だっ、みんな気をつけろ!」
 獣の遠吠えを聞いて、農具を武器に構える人々が緊張して町の外を進む。もうすぐ幾つもの遺体が放棄されている穴がある。死の香りが漂い、それに混じっり獣臭さも伝わった。
「なるほど……この世界だと悼む事すら自由じゃなかったのね」
 紅葉は小さく息を吐き、内に籠もった熱い怒りを吐き出した。
(戦場でのクソみたいな風景は馴染みがあるが、この世界のそれは根底に悪意がある)
 戦場の敵意に満ちた風景とはまた違う、空気に当たり前のように混じる悪意を感じ取る。
(憎悪でも復讐でもなく、余裕のある悪意とでも言うべきか。まぁ酷く胸糞の悪いそれだ)
 地底に充満する悪意に満ちた空気に酔いそうだと、紅葉は顔をしかめた。
「ったく、気分悪いわね。良いわ、少し手伝ってあげる」
 その重苦しい空気を吹き飛ばすように、人々の前に出て大型の獣と対峙し、鬱憤をぶつけるようにアサルトライフルの引き金を引いた。地底のうす暗さを照らすように鮮烈なマズルフラッシュが輝き、弾丸が獣を撃ち抜いていった。
「ギャォッ」
「ウォォオッ!!」
 悲鳴を上げて蹴散らされる獣達。その中でも一際大きく勇猛な獣が飛び掛かってくるが、紅葉は冷静に『対戦車杭打銃“楔“』を向けて迎え撃つ。
「この群れのリーダーね? 頭を潰せば群れは統率を失うわ」
 放たれる杭が獣の口から入って頭部を粉砕し、身体を痙攣させてずるりと地面に落ちた。
「此れから埋葬という大切な仕事があるのです。邪魔な獣には帰ってもらいましょう」
 絶奈は屍の軍勢を呼び出し、遺体を守るように展開した。数で襲おうと思っていた獣達はリーダーを倒され烏合の衆となり、自分達よりも数多くの屍兵を見て遁走する。
「アォオオオオンッ」
 残った獣が咆えると、まだ戦える獣も一斉に逃げ出してその姿を闇夜に消し去った。
「野生動物だけあって逃げ足は見事ね」
 警戒して銃を構えていた紅葉は、敵の気配がなくなったのを確認して武装を解いた。

「では埋葬の仕方を教えるわね」
「は、はい……!」
 あっという間に恐ろしい獣を荒々しく蹴散らした紅葉に、人々は背筋を伸ばして話を拝聴した。
「相当な数が必要なようですね。掘る手伝いは任せてください」
 穴に放り込まれていた遺体の数を見た絶奈は、軍勢を使って土を掘る作業を手伝う。死した屍に疲れはなく、黙々と土を掘り進めた。

「……そうだな。『気持ちを整理する』ってのが、きっとこの人たちには必要だと思う」
 嵐は土を掘り始めた人々を見て、じっとして想いを胸に溜め込むより、亡き人の為に墓を作るのに体を動かすのは、気持ちの整理に適しているだろうと思った。
「失くしたものはいっぱいあるだろうし、今更取り戻すことも出来ねえ。ならせめて、気持ちに区切りをつけねえと、前に進むんも儘ならねーよな」
 失われた命は戻ってこない。そして背負い続ければ生きる者の重しとなってしまう。
「おれの故郷じゃ火葬が風習なんだけど……遺骸を燃やすってのは手間がかかるし、心理的に抵抗あるかもな」
 土葬の準備を始める仲間達を見て、嵐も納得して頷く。
「いろんな世界の土葬のやり方があるけど、ここでもできそうなのをやらねえとな」
 嵐も手伝おうと、屍兵に手伝ってもらって遺体を入れる木の棺を作り始めた。

「これくらい掘ればいいのかな?」
 ざっくざっくと土を掘り起こし、墓穴を作る男が額の汗を拭う。
「もう少し掘った方がいいわね。獣に掘られたくないなら、深く掘らないとね。硬い所は私に言いなさいな」
 紅葉が少し浅いと指摘して、獣に荒らされる可能性を指摘する。
「すみません! こっち硬い石が出ちまって、お願いできますか?」
「任せなさい」
 違う穴を掘っているところから声が上がると、すぐに紅葉は向かって地面から覗く岩のようなものに『高周波シャベル』を突っ込み、容易く粉砕して掘り起こした。
「おおっ、ありがとうございます!」
 あっさりと岩を粉砕した紅葉に頭を下げ、男はまた穴を掘り始めた。

「棺はだいぶできたみてえだな。それじゃあ見様見真似だけど亡骸を清めようかな」
 手を止め汗を拭った嵐は、後は黙々と仕事をしてくれる兵達に任せ、並べられた死体の前に向かう。
「荒らされたままじゃ可哀想だもんな」
 まだ肉の残った遺体の傷を隠し、修繕した服を着せて綺麗な姿に整えていく。
「あんた、なにしてるんだい?」
「これは亡骸を清めてるんだ。綺麗な姿で送り出してやりてえだろ」
 尋ねる女性に嵐はこうして亡骸を綺麗にして送る風習があるのだと伝える。
「なるほどねえ、確かに綺麗な姿の方がいいわね。あたしにもやり方教えてくれるかい?」
「もちろん構わねーよ。こうして傷を隠したり、出来るだけ見た目をよくしてやるんだ」
 教えを乞う女性に、嵐も知っている事を教えて一緒に清めを行う。すると同じように興味を持っていた女性陣が集まり、わいわいと賑やかに亡骸の化粧が始まった。
「ええっと、女の人ばっかでなんかやりずれえな……」
 女性陣に囲まれた嵐は何とも居心地が悪いが、もはや離れる訳にもいかずに作業に集中した。

「しかし、遺体を埋めちまうのか、これでもう二度とこの顔を見られないんだな」
 埋めようとしていた妻の遺体を前に、まだ若い夫は手を止めてその顔を見つめる。
「遺骸は置いて行かざるを得ませんが……せめて遺髪位は持って行っても大丈夫でしょう」
 移住の邪魔にならないものなら持って行っても構わないと絶奈が声をかける。
「そのまま形見とするも良し、新天地にて改めて葬るも良し……です」
「そうか、持ってもかさばらないものならいいんだな。ありがとう!」
 教えてくれた絶奈に礼を述べ、男性はさっそく遺髪を切り取り大切に仕舞った。
「じゃあ俺も……」
 それを見た他の人々も、家族の遺髪や遺骨を少しだけ形見として持って行った。
「彼らを此の地に葬るのは仕方なくではありません。彼らの誇りある生涯に敬意を表する故に、此の地の勝者として葬るのです」
 凛とした声で、絶奈はこの地で戦い抜いて生を次へと繋いだ勝者として亡くなった人々を弔うのだと告げる。
「だから胸を張って埋葬なさい。彼らの尊厳を冒涜する輩はもう居ないのですから」
「そうだ……な。みんな必死になって生きてきたから、こうして地上への世界に出られるなんて話になったんだ」
「ああ、ここで死んじまった奴らも、決して無意味じゃないんだ」
 死に意味を与えられ、悲しみながらも人々は胸を張って止まっていた手を動かし始めた。

「後はこの棺に入れて埋めるだけだ」
 嵐が人々と協力して、遺体を入れた棺を埋めていく。次々と遺体は埋められていき、あれだけあった亡骸も全て地の底へと消えてしまった。
「……おれに出来るんはこれくらいだ」
「いや、ありがたいよ。俺達だけじゃこんなこともできやしなかっただろう。全部あんたたちのお蔭だ」
 嵐の呟きを聞き取った男が、目を合わせて感謝の気持ちを伝える。町を救い、死した家族の魂を救ってくれたことに心から感謝していた。
「……それなら、来てよかった」
 真摯な気持ちを受け取り、嵐は怖くても頑張って良かったと心から思えた。

 全ての遺体が埋められ、土を盛って大きめの石を乗せ墓標にする。
「親父、お袋はちゃんと俺が連れてくから、ここでゆっくり眠っててくれな」
「あんた、子供のことはちゃんとあたしが育てるから、心配しないで……」
 哀しみを胸に人々が別れの言葉を告げていく。
「余裕があるなら、死者を悼むのは良い事ですよ。哀しい時には哀しむべきです」
 そうして感情を発露することで、しっかりと区切りを作って感情を引き摺らずに明日に向かえる。幾つもの戦場を越えてきた紅葉にはその大切さがよく分かっていた。
「みんなを無事に地上に連れ出すから、安心して眠ってくれよな」
 嵐は眠る人々を安心させるように語りかけて約束した。
「宗派や宗旨の違いなど、死者を悼む想いの前では些末なモノ」
 絶奈はなけなしの優しさを込めて祈りを捧げる。――Rest In Peace...
「誇り高き者達よ――どうか安らかに眠れ」
 それはどの宗派という既存のものではない。しかし真摯に祈る姿は神聖なものとして映った。

「じゃあ行くわよ、地上へ!」
 人々の顔から暗さが薄れ、前向きなものへと変わっている。地底に充満する悪意を希望という名の一筋の光で照らせたと、紅葉は満足そうに人々を見渡し先頭を切って地上に向かって歩き出した。


●新たな一歩
 門を潜り、洞窟を登り続けると、やがて苔の光ではない薄明かりが見える。
「あれは?」
 それに気づいた人々の足が速まり、もどかしく洞窟を抜けて外に飛び出した。
「天井が……」
 見上げれば地底のように天井ではなく、薄暗い雲が広がっている。それはどこまでも限りなく続き、果ては見えない。
「これが………地上」
「御伽噺じゃなかったんだ。本当にあったんだ1」
 人々の顔が驚愕から喜びに変わり、興奮したように笑顔が浮かぶ。
「地底で死んじまったみんなの分まで、俺たちはこの地上で生きて行こう」
 皆が同じ気持ちで頷き合い、いつかきっと地底に眠る家族にこのことを教えてやろうと、初めて見る地上の世界へと新たな一歩を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月02日
宿敵 『聖剣のアデリーナ』 を撃破!


挿絵イラスト