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猟兵凸歓迎、真っくライブ!

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #シャドウキマイラ #キマイラ

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「私が主役のブラインドタイム、はっじまるよー!」
 最低限の光源の元、肌も衣装もまるで墨をぶちまけられたかのような全身真っ黒の少女が舞台の上で叫ぶ。
 それに応える会場を埋め尽くす観客の姿に、巨大なカメラを持ったキマイラのシャッターを切る手は止まらなかった。
「すごいですね、この盛り上がり様!」
「ああ、これだけ熱心なファンがいるんだ。そりゃあ売り出されて1分もしないうちに売り切れになるわけだ……」
 そうライブの邪魔にならないように小声で呟く彼らの胸には「関係者」の札がぶら下がっていた。
「そういやこの後の予定は?」
「ちょっと待ってください……ええっと、『シャドウ・ティア』ちゃんとの独占インタビューとプロデューサーさんとの打ち合わせで終わりですね」
「そうか……。今まで真っ黒なベールに包まれてきた謎のアイドルの初インタビュー記事だ、アップした途端に多くのアクセスが見込めるぞ……!」
 そんなマスコミの様子を窓越しに見下ろすことが出来る一室ではキーボードを叩き終わったキマイラの女性は息を吐くと背もたれに身を任していた。
 その傍らにあるカレンダーには予定されている取材の時間がびっしりと刻まれている。
 ……そう。彼女こそこのライブハウス「シャドウパラダイス」の支配人であり、ライブを行なっているアイドルのプロデューサーでもあった。
 彼女が手がけたアイドルによりアップされた楽曲やライブパフォーマンスを収めた動画は賛否両論だった物の、動画ランキングの急上昇へ立て続けにランクインしている。
 そんなアイドルが行うライブのチケットは売り出されて数分のうちに全席SOLD OUTとなっており、転売する者も一切現れないために一種のプレミアチケットと化していた。
 まさに順風満帆と言っても良い船出に、彼女は笑みを隠しきれない。
「ははっ、でもまさか目の前にいる人全員が『サクラ』だなんて思ってもみないでしょうね」
 そう呟かれると同時に、コロコロと変わっていた顔が突然丸ごと外れて床に落ちる。しかし彼女は一切動揺せずに笑い続けていた。
「取材しに来たマスコミを全て『影法師怪人』に改造し、彼らの報道によってシャドウパラダイスに多くの客を引き寄せ、それらもまた改造し、その家族もまた引き込む……ああ、なんて素晴らしい計画! 我ながら自分の才能が怖くなるわ!」
 仮面が剥がれた奥には底が見えないほどの漆黒が渦巻いていた。

「『シャドウパラダイス』というライブハウスをご存知でしょうか?」
 ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)は集まった猟兵達に向けて唐突に告げる。
「最近、彗星のごとく音楽シーンに躍り出たアイドルのライブを行っている施設です。そのアイドルの見た目は全身真っ黒に包まれていて何も分からない……というのをウリにしていて、今まであらゆる取材も断られていたそうです」
 しかしそんな素性も何も分かっていないアイドルが取材に応じ出した……という知らせが届くと同時に各種マスコミが一斉に取材を申し込み直すと、それら全てをアイドル側は受け入れた。
 突然の方向転換に湧く取材陣であったが……この裏に隠された狙いをルウは射抜いたという。
「この施設のオーナーは猟書家『シャドウキマイラ』。奴は取材陣をこのライブハウスに閉じ込めた後に『影法師怪人』へと改造し、自らに都合の良い記事を書かせることでより多くのキマイラをシャドウパラダイスに飲み込もうとしていました」
 すでに取材陣はライブハウスの中に入っており、自分達に危機が迫っていることに気づいていない。そこへ猟兵達には突入してもらい、彼らを救出しつつシャドウキマイラの一派を一掃することが今回の任務である。
「今回の任務は相手の本拠地のど真ん中に踏み込むこととなるため、大量の影法師怪人との戦闘が予想されます。影法師怪人は『どこにでもいるようなキマイラの姿に擬態する能力』を持っているため、うっかり守るべき対象を攻撃してしまわないようお気をつけください」
 そう言い切った後、突然思い出したかのように慌てて付け加えた。
「あと、怪人ではないキマイラの方々は騙されているとはいえ自分の意思でこのライブハウスに入ってしまっています。我々の突入に怒ったり困惑したりする可能性もあるので、その点のケアもお願いいたします……」


平岡祐樹
 皆様お疲れ様です、平岡祐樹です。

 今回はライブハウスで暗躍する影法師怪人達の目論見をぶっ潰していただきます。ぶっ潰し方は物理でも音楽でも構いません!

 なお今依頼にはプレイングボーナス「キマイラに応援される」がございます。こちらに沿ったプレイングがあると有利に動きやすいため、皆様お試しくださいませ。
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第1章 集団戦 『ティア・オーバスター』

POW   :    L・O・V・E☆
【推しのハチマキとはっぴ、うちわ】で武装した【熱狂的なファン】の幽霊をレベル×5体乗せた【ライブ会場】を召喚する。
SPD   :    キミも、ティアを応援してね☆
【笑顔】を向けた対象に、【嫉妬したファン(怪人)の暴力】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    盛り上がっちゃお☆
【召喚した怪人たち】から【一糸乱れぬオタ芸】を放ち、【対象の周囲をぐるぐる回る動作】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サエ・キルフィバオム(サポート)
猫かぶりな妖狐で、直接的な戦闘というよりも、情報を集めたり、不意打ちやだまし討ちのような奇襲を得意とします

猫をかぶってる時は「あたし」と自身を呼び、語尾に「~」が入るような間延びしたしゃべり方をします
真剣な時は「私」呼びになり、口数は少なくなり、語尾の間延びは消え、気に食わない相手には結構キツめの口調になります

「ごめんなさい、あたし道に迷っちゃってぇ~……」
子供らしく振舞って油断を誘う、色気を出して魅力で釣るなど、あの手この手を使います

「は?私がそんな事許すと思った?」
本性を現し後ろから絞殺糸を巻き付けるようなイメージです

基本的に行動はおまかせします
アドリブや絡み歓迎です
よろしくお願いします



「うう、会場はどこなのよ〜……」
 非常口を指し示すランプのみが煌々と灯る通路をサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は前に進んでいた。
 シャドウ・ティアの出番を待つ観客の声はどこを歩いても聞こえてはくるが近づきはしない。
 そうこうしているうちに関係者以外立ち入り禁止の立札に気づかずに立ち入ってしまっていたサエを、スタッフが呼び止めた。
「おい、あんたこんな所で何をしているんだ!」
「ごめんなさい、あたし道に迷っちゃってぇ~……」
 久しぶりに話せる相手に会えた安堵感からかサエは思わず目から涙を流す。そんなやり取りを聞きつけたのか、近くにあったドアから見覚えのある少女が顔を出した。
「どうしたのー?」
「あ、ティアちゃん。大丈夫です、すぐに返しますので……あ、ながっ!?」
 応えるために振り返ったスタッフの首に長い髪の毛が巻き付き、一気に締め上げる。その持ち主の顔には先程まで浮かんでいた心配や恐怖の感情は露ほども残っておらず、獲物を捉えた狩人の目が爛々と輝いていた。
「みーつけた」
「だ、誰か助けて!」
 身の危険を感じ取ったティアは慌てて奥へ駆け出していく。それと入れ替わるように現れた全身真っ黒くろすけなキマイラ達がサエを取り囲んだ。
「よっしゃ、ティアちゃんを守るぞー!」
「タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー! ダイバー! バイバー! ジャージャー!」
 冷たい視線を送ったサエはしゃがみ込んでキマイラ達の視界の外へ抜け出す。そしてサイリウムを振り回す腕と違い、微動だにしない足の間に渾身の蹴りを叩き込んだ。
「ふんぐぅ!?」
「ごめんね、あなた達に構ってる暇はないの」
 前屈みになりながら崩れ落ちたキマイラを足蹴にし、サエはティアが逃げ出した先を追いかけていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇賀神・麻樹(サポート)
 人間のサウンドソルジャー×聖者、23歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、年上には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 そんなドタバタ騒ぎが舞台裏で起きているとは知るよしも無いキマイラ達は隣の者と顔を見合わせ、小声で話し合いが交わしていた。
「おかしいですね……楽屋で何かあったんでしょうか」
「かもしれないな。くそっ、密着取材が通っていればな……って、ん?」
 予定の時間を過ぎても始まる気配が無く案内もない今の状況は、サクラであろうとなかろうと不安を掻き立てられる物である。
 スクープを前に何もできない自分達に取材班が歯噛みしていると、何者かがあがった。
 ティアとは違うシルエットの者は、舞台袖から持ってきたスタンドマイクの電源が入っていることを確認し、観客に向かって声をかけた。
「Kirschblüteだ。……と言いつつも今回いるのは俺だけだけどな」
 スポットライトが点かないステージの上で宇賀神・麻樹(音速のギタリスト・f29256)はでっち上げの説明を始める。
「今、ティアさんは想定外のアクシデントの発生で出れない状態だ。だから、彼女が戻ってくるまで時間稼ぎをさせてもらうぜ」
 そう言ってアンプにギターを繋いだ麻樹は軽くチューニングをする。しかしティアを見に来ている体のキマイラ達からは大ブーイングが投げかけられた。
「この反応、お馴染みのバンドメンバーでは無いんですかね」
「ああ、少なくとも今までのMVでは後ろにいたことは無かったはずだ」
 異様な雰囲気の中、ひょっとしたら新曲では生の楽器演奏が入るのかもしれない、と取材班は注意深くカメラを麻樹へと回す。
「よし、始めるか」
 ブーイングを遮るようにアンプからギターの音が激しいテンポでかき鳴らされ始める。続けて紡がれる歌声を聴いた取材班は厳しい視線を、じっとステージ上の麻樹に向けていた。
「……凡、だな」
「ですね、確かに発声も演奏も良いですが……心を打たないんですよね」
「だが……」
 首を傾げる後輩に頷きつつも、先輩記者はカメラのシャッターに指をかけた。
「この圧倒的なアウェーの中でこれだけのことが出来るハートの強さは、間違いなく武器になる」

成功 🔵​🔵​🔴​

家綿・衣更着
見た目も腹の中も真っ暗というか真っ黒っすね。
キマイラ達を騙し怪人に改造する悪の所業!このホワイト狸な衣更着が許さないっす!

まず取材陣を助け出すっす!しかし怪人に騙されてる現状、信じてもらえるか分からない…もたつけば危険っす。
だから【化術】で戦闘経験のある『アイドルを狙うミズ・ルチレイテッド』に化けて襲撃の【演技】、【化術】と【催眠術】で危険を感じさせ逃げてもらうっす!

『キャバリア憑依の術』で対応に現れた猟兵を演出しつつ、見られてない時に変化を解いて、改めて「猟書家配下の怪人ティア」を断罪し【ランスチャージ】!
キャバリアで全て【撮影】しておき、後で詳細説明と動画提供するから騙したのは許して!っす



「……すばらしい!」
 演奏を掻き消す大声と拍手に、取材班が一斉に眉を顰めてその方を見やる。
 しかしその姿を見た瞬間、少なくとも取材班は息を呑んだ。
「逸脱した行動を取らない信者を育てるカリスマ性、そして聞いた者を皆魅了させる歌にダンス! 実にすばらしい! これもまたわが『宇宙船団ルチレイテッド』に相応しき逸材だな!」
「ミス・ルチレイテッド……!?」
 そこにいたのは、バーチャルキャラクターが行うライブなどに姿を現している猟書家。
 どうしてここに……という疑問は思い当たる点が多すぎたせいで表には出てこなかった。確かに、あれだけ動画のランキングに載っていれば彼女の目についてしまうのは避けられようがない。
 そしてチケットの販売サイトにて日時や開催場所さえ確認すれば、今彼女がどこにいるかも分かってしまう……!
「ど、どうしましょう! このままじゃティアちゃんが……」
「大丈夫っすか!」
 そんな中、ステージと受付を繋ぐ扉を勢いよく押し開け、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が飛び込んでくる。この緊急事態である、その派手な音に文句を言う者はいなかった。
「りょ、猟兵さん!」
「ルチレイテッドはおいら達が相手するっす! 皆さんは流れ弾を食らわないように外に避難してくださいっす!」
「し、しかし……」
 このままではティアちゃんが危ない、と言外に心配する取材班を勇気づけるように衣更着は力強く頷いた。
「大丈夫っす、裏手にも別の猟兵さん達に回ってもらってるっすから!」
 その姿に安心感を得た取材班は、荷物を置いたままその横を通って外に出て行く。その後を黒一色のキマイラ達も続いた。
「ここで出なかったら流石に怪しまれるからね、仕方ないよね」
 ルチレイテッドはそう呟くと、逃げていくキマイラ達から演奏がいつの間にか止まったステージへ視線を戻す。するとちょうど良いタイミングで舞台袖から息絶え絶えになったティアが姿を現した。
「ちょ、ちょっと! 私のステージに何勝手に上がってるのよ!」
 麻樹の体を突き飛ばしたティアは観客が2人しかいない席を見て仰天した。
「あれ、あなた、プロデューサーさんのお知り合いさん! なんであなたしかいないのよ!」
「ふふ、君の恵まれた才能に惚れてね……ヘッドハンティングしたくなったんだよ」
 ルチレイテッドは貼り付けたような笑顔を向け、ステージの真下まで歩み寄る。
「来客者全員を影法師怪人に改造するための手先となっているあんたの頭を、ね!」
 そしてスーツの胸ポケットに挿していたハンカチーフを伸ばし、ティアの首を狙った。
「ひっ、だああああっ……!」
 ティアはアイドルとして鍛え上げられた反射神経で咄嗟に致命傷を避けれたが、全身は避け切れず左肩を抉られてしまった。
「あ、あなた、プロデューサーさんの、知り合いじゃない、一体……誰よ!」
「お初にお目にかかるっす」
 ティア以外いなくなった今、隠している義務は無い。白い煙と共に慇懃な礼をしたルチレイテッドの姿は家綿・衣更着に変わった。
「キマイラ達を騙し怪人に改造する悪の所業! このホワイト狸な衣更着が許さないっす!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎
ライブハウスならまあまあ慣れた場所って言えるんじゃないかしら。
出演者って言い張っても良いのかもしれないわねぇ、ステージに上がっても違和感ないでしょうし。
1曲歌ってみせて、猟兵であることも明かしてしまいましょうか。
演技と言いくるめでティアに近付ければこっちのモノよねぇ。
だって相手はオブリビオン。攻撃して正体が分かれば猟兵とどっちを味方するかなんて聞くまでも無いでしょ。
La danza della rosa blu
こちらもダンスと歌でお相手するわ、まっすぐに手を差し伸べれば青い薔薇の鎖が貴女を逃がさない。
さあ、ここがティアのラストステージになるんじゃないかしらねぇ。



「ティアちゃん!」
 ティアの悲鳴を聞き取り、外に出ざる負えなかったファン達がキャバリアが閉めていた扉を突き破って場内に戻ってくる。その開け放たれた扉から取材班は血を流して転がっているティアと、血で汚れた槍を持つ衣更着の姿を見てしまった。
「なっ……猟兵さんがティアを襲っている!? いったい、どういうことだ……?」
「ごめんなさい、ちょっとどいてもらってもいいかしら?」
 混乱のるつぼの中声をかけられ、慌てて振り返った先にはゴシック調の服を身にまとった御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)の姿があった。
「今日はゲストとして客席の後ろから出てくる予定だったんだけど……この騒ぎ、何かあったの?」
 ティアと同じ黒を基調としたドレスと見覚えのない姿に取材班は雪音を関係者だと思って、洗いざらい話してしまった。本当に関係者でずっと待機していたならば、これだけの騒ぎに今まで気づけていないわけがないのに。
「分かったわ、ひょっとしたらルチレイテッドが刺した槍を抜いてあげただけかもしれないから……私が確かめてくるわ」
「お、お気をつけて!」
 ここで誤解を解くようなことはしない。だって相手はオブリビオン。正体が分かれば取材班が猟兵とどっちを味方するかなんて聞くまでも無いからだ。
 見送りを受けながら客席に入ってきた雪音の姿に、目ざとく気づいたファン達がその周囲を取り囲んでぐるぐると回りだす。
 進もうとしても絶対に引く姿勢を見せないその動きは非常に鬱陶しいことこの上なかったが、それも演出やお約束だと取材陣に思わせるために雪音はその場でステップを踏みながら謡いだした。
 すると周りのファン達はどこからともなく伸びてきた青薔薇の鎖で雪音から引き離される。邪魔者がいなくなった通路を進んだ雪音は軽やかな足取りでステージへ向かっていく。
 ファン達は近づけてなるものか、と本能で危機を察知して取り繕うことも放棄して鎖の隙間から雪音を止めようと手足を伸ばす。しかしそのあがきも鎖に引っ張られて止められ、届くことはなかった。
『次のパートナーは貴女かしら?』
 そしてステージに上がった雪音はティアへ手を差し伸べる。尻餅をついていたティアはぶんぶんと音が鳴るくらい大きく首を振った。
「あ、あなた、何よ……誰かが来るなんてプロデューサーから聞いてない!」
「ええ。だって飛び入りの猟兵さんですもの」
「りょ、猟兵!? なんで、そんな、なんで!?」
 ティアの困惑も当然だろう、今まで何の横槍も入ってこなかったのに、初めて取材班が入るこの日を狙って襲撃してくるなんて預言者でもいなければ分かるわけがない。
「全く気付いてなくても、分かったらすぐに、相手に気づかれる前に動けるものね。猟書家がグリモアを欲しがる理由、少し分かるかもしれないわ」
「ねぇ、聞いてるの!?」
 そんなことを考えている間も差し出され放しだった手をティアが払いのける。するとその小さな体は青薔薇の鎖に巻き付かれ、ステージ上に吊り上げられた。
「さあ、ここが貴女のラストステージになるんじゃないかしらねぇ」
 微妙に噛み合ってない返答に、ティアは棘で衣装が傷つくことも厭わず、拘束から逃れようと暴れだすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

家綿・衣更着
事前に【情報収集】、さらに関係者に【化術】で変身して潜入し、【鍵開け】や【迷彩】からの【忍び足】で気づかれないよう「ティアが怪人である」証拠を集めておく。

そしてゴーグルの撮影機能を利用して動画撮影。

「猟兵の化狸忍者、衣更着っす。怪人ティアその悪行はすでに明らかっす」
調べ上げた証拠、そして先の反応を突き付け、怪人であると断罪っす。

「とっさに人質にされかねない取材陣は遠ざけ、今頃外でおいらが集めた情報を受け取ってるっす!あとはその首いただくっす!」

『綿ストール・本気モード』を使って【だまし討ち】から【串刺し】。
敵の攻撃は【見切っ】って回避し、よけきれないものは【結界術】で防ぐ

「ティア、成敗っす!」



 青薔薇の鎖に拘束され、吊り上げられたファンとティアの姿を取材班は連写する。衣更着はわざとらしく咳をしてから高らかに叫んだ。
「改めまして……猟兵の化狸忍者、衣更着っす。怪人ティアその悪行はすでに明らかっす!」
「わ、私が何をしたっていうの、さっきから突然裏で襲ってきたり、ステージ乗っ取ったり、刺してきたり! 私、襲われるような真似なんてした覚えはないわよ!」
「あるわけないっすよね。だってやる前に襲われてるっすから」
 衣更着はストールを指でいじりながらティアの主張を聞き流す。
「だから、やるやらないじゃなくて、そもそも、私は、そんな、悪行なんて、するわけ、ないんだ、ってばー!」
 暴れれば暴れるほどほどけるどころかきつさを増していく鎖であられもない姿になったティアから目を逸らしつつ、衣更着は服の中からリモコンを取り出した。
「ここって、例のプロデューサーさんに一括で買われる前は映画館だったそうっすね。さっき裏を覗いたら、その時の設備が丸々残ってたっすよ」
 上映開始を伝えるサイレンが鳴り、ステージの奥にあるスクリーンに光が点る。
『ははっ、でもまさか目の前にいる人全員が『サクラ』だなんて思ってもみないでしょうね』
 そこに映し出されたのは、ティアのプロデューサーが自室で笑う姿だった。
『取材しに来たマスコミを全て影法師怪人に改造し、彼らの報道によってシャドウパラダイスに多くの客を引き寄せ、それらもまた改造し、その家族もまた引き込む……ああ、なんて素晴らしい計画! 我ながら自分の才能が怖くなるわ!』
「ティアさん。本当にあんたにその気がなかったとしても、あんたのプロデューサーは皆さんを害する気満々みたいっすよ」
 ティアは顔を青くしながら震えだし、衣更着の追及を否定する。
「ち、違う、違うわ! こんなのプロデューサーさんがするわけがない! ただの合成よ! 出まかせよ!」
「残念ながら撮り立てほやほやの映像っす。ここに来る前にこっそり立ち入り禁止の場所に入ってカメラ、回させていただきましたっす」
 忍者であり妖怪でもある衣更着、関係者に化術で変身して潜入することも、鍵開けで閉められていたプロデューサー用の部屋に入ることも、迷彩からの忍び足で気づかれずに出入りすることもお茶の子さいさいである。
「人質にされかねない取材陣は遠ざけ、今外でおいらが集めた情報を受け取ってるっす! あとはその首いただくだけっす!」
 開けっ放しにされたドアからはキャバリアに映像データを収めたディスクを手渡されながら取材班が外に誘導されている様子が見えた。そんな彼らにティアは大声で呼びかける。
「ねぇ、さっきみんなも見たでしょ! こいつがミス・ルチレイテッドに化けてたの! きっとこいつがプロデュー……」
『あれ、あなた、プロデューサーさんのお知り合いさん! なんであなたしかいないのよ!』
「あ、そういえばミス・ルチレイテッドが知り合い、って言ってたっすね、ついさっき。バーチャルキャラクターを襲っている猟書家と親しげに話せるのに、それでもまだ、関係ないって言い張るっすか? あ、今のもしっかりあれに入ってるっすから」
 衣更着はそう言って隠しカメラが入っているゴーグルを撫でる。
 ティアの必死の訴えは、自分自身の声で瓦解した。口をパクパクさせるだけになってしまったティアに笑顔を浮かべる余裕はもうない。
「ティア、成敗っす!」
 妖力を注がれ、巨大化した綿ストールを吊り上げられた状態で避けられる訳がなく、今度こそティアの体は深々と貫かれて霧散していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シャドウキマイラ』

POW   :    擬態・シャドウドラゴン
【漆黒の巨竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【鋭利な鱗】を放ち続ける。
SPD   :    擬態・シャドウタイガー
肉体の一部もしくは全部を【虎の形の猛毒液】に変異させ、虎の形の猛毒液の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ   :    擬態・シャドウウルフ
【奇怪な仮面】を使用する事で、【呪詛纏う体毛】を生やした、自身の身長の3倍の【狼】に変身する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠レパル・リオンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「困るねぇ、うちの看板を壊されたら」
 霧散したティアの体は奥から現れたキマイラの体に吸われていく。
「君のせいで私の計画は崩壊してしまったよ、まぁ警戒してなかった私も悪いけどね。でも、その損失はシャドウパラダイスにとって莫大な物だ」
 ティアの応援をしていた真っ黒なファン達も形を崩し、キマイラの影の中に吸われていく。
「その賠償金、君たちの体で払ってもらうとしよう。なに、私の中身は真っ黒だが雇用は一生涯のホワイト企業だ。裏切っても、損はさせないよ?」
 そう語るキマイラには顔がなく、その代わりにずっと見つめていたら吸い込まれてしまいそうな暗黒が渦巻いていた。
御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎
冗談じゃないわ。
自分でホワイト企業なんて言うヤツがホワイトだった試しは無いのよ。
損失?諦めなさい。

一度目を閉じると、真の姿へ。
髪の先端が、青薔薇の飾りが全て赤に変わっていく。開いた瞳も、深紅。
薄く笑みを浮かべて呟く。
その黒を、アタシの薔薇で塗りつぶしてあげるわ。

Fiamma di incenso rosa
手のひらにふうっと息を吹きかければ、そこから普段より赤が多めの色とりどりの薔薇の花弁が舞い飛んで。
毒液だろうが鱗だろうが燃やしてしまいましょう。
薔薇の香りを振りまいて、場の全てをアタシに染めて。
何を企んでいようが、猟兵に見つかったら終わりだって。
誰からも教えて貰えなかったの?



「冗談じゃないわ」
 シャドウキマイラからの申し出を、雪音は一言で一蹴した。
「自分でホワイト企業なんて言うヤツがホワイトだった試しは無いのよ。損失? 諦めなさい」
「おやおや手厳しいねぇ」
 笑いながら肩を竦めるシャドウキマイラの体が音も無く膨れ上がり、キマイラの物とは違う骨格に形成し直し始める。
「だいたい、何を企んでいようが、猟兵に見つかったら終わりだって。誰からも教えて貰えなかったの?」
「ふっ、私達猟書家をアリスラビリンスに封じられなかったくせに大それたことを言うな。それともなんだ、その反省を活かして二度目は無いと言い張るつもりか?」
「さあ? それはこれからアンタが考えることね」
 雪音が目を閉じると、その髪の先端や青薔薇の飾りが全て赤に変わっていく。最後に息を吐いて開かれた瞳もまた、深紅に染まっていた。
「お互いに準備完了、といったところかね?」
 その前にはキマイラの小柄な体を捨て、漆黒の巨竜と化したシャドウキマイラの姿があった。
「……てっきり変わったそばから襲いかかってくると思ってたわ」
「相手の変身シーンは黙って見守る。それこそエンターテイメントの常識であろう?」
 至極当然のことをしたまでだと誇る、天井近くにまで巨大化したシャドウキマイラへ、雪音は薄く笑みを浮かべて呟く。
「なら待ってくれたお礼にその黒を、アタシの薔薇で塗りつぶしてあげるわ」
 広げた手のひらにふうっと息を吹きかけると、普段より赤が多めの色とりどりの薔薇の花弁がどこからともなく舞い飛んでくる。
 まるでステージの舞台装置が起動したかのような美しい光景にシャドウキマイラは息を飲む。しかし感動した自らの想いを誤魔化すように鼻で笑った。
「素晴らしいな。だがステージを彩るには肝心なあの色が足らん」
 そして自らの体から絶えずこぼれ落ちる黒い鱗を混ぜ込んでいく。黒い鱗は色鮮やかな花弁を切り付けながら覆い隠して、側から見て汚くさせていく。
「光あるところに影あり。綺麗は汚い。ただ美しいだけではこの世界を生き抜くことは出来ないのだよ猟兵よ」
「勝手なことを言ってくれるわね」
 自分の世界に酔っているのか、恍惚とした表情で告げるシャドウキマイラに雪音は機嫌を悪くした。
「サクラがいないと評価されない程度のアイドルしかプロデュース出来ない人が他人の演出に口出しする物じゃないわよ?」
 薔薇の香りを振りまいて、場の全てをアタシに染めて。
 毒液だろうが鱗だろうがこのステージを壊す物は全て燃やしてしまえ。
『さあ、この炎はどんな形に踊るのかしら?』
 そんな雪音の思いを乗せた色とりどりの花弁は全て同じ色の炎へと変わり、黒い鱗を燃やして新たな光源として飲み込んでいく。
 しかし向かい来る熱気をシャドウキマイラは自らの背に生やした巨大な翼で吹き飛ばした。
「……燃えると薔薇の匂いを発する花弁か。発想は面白いが……客に届かなければそこまでだぞ?」
「普通なら届くわよ。アンタが勝手に受取拒否をしただけじゃない」
 二人の演出家の話し合いは、平行線を辿り続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

家綿・衣更着
「ティアさんはいろんな意味で残念っす。あいにくオブリビオンに仕える気はないので骸の海に還って貰いまっす!」

「皆さんの応援よろしくっす!」
ゴーグルやキャバリアで【撮影】、ライブ映像を流しキマイラ達に応援してもらいやすくする

「変化で負ける気はないっすよ!どろんっす!」
【毒使い】で猛毒液の特性を看破し、
『トリプルどろんチェンジ』で提灯お化けに変化し【化術】で陰を打ち消す強力な光を見せて【おどろかす】

その隙に【化術】で身代わり呪人形を巨大な綿に変化し敵を吸い取って【結界術】で閉じ込めて【呪詛】を与える
戻った所をユベコで巨大狸に変化し動きを【見切っ】てストールで【なぎ払い】
「特性は欠点にもなるっす!」



「ティアさんはいろんな意味で残念っす。あいにくオブリビオンに仕える気はないので骸の海に還って貰いまっす!」
 リモコンで何かを操作し終えた、衣更着は再びゴーグルを装置すると、その端にある録画ボタンを作動させる。
 すると備え付けの撮影機械に、ゴーグル、キャバリアで撮影された映像が各種配信チャンネルで流されて始めた。
『お、シャドウティアのゲリラ配信だ!』
『あれ、何だこれ……ドラゴンがいる!?』
『ティアどこだよ』
『ん、これ、このチャンネルの奴って同じところから配信されてないか?』
『多視点でバトルwww』
 そしてそれを捕捉した画面の前のアイドルファンのキマイラ達とその発言を見た野次馬達によって再生数は凄まじい勢いで回り出した。
 そんなことが外で起こっているとは気付いてないシャドウキマイラの左腕がどろりと溶け出し、巨大な虎となって大口を開けて震える。ただ声帯は持ってないのか、そこから大きな雄叫びが聞こえる事はなかった。
 そんな勇ましい外見に惑わされず、忍者である衣更着はその本質が相手を噛み砕くのではなく、つけた傷に染み込むことで致命傷を与える毒物であることを一目で見抜いた。
「変化で負ける気はないっすよ!どろんっす!」
 白い煙と共に印を切った衣更着の姿が、提灯お化けに変化し、舌を出しながら震えて凄まじい光を体の内から放つ。
『うわ、眩しい!』
『何の光ぃ!?』
 その隙に身代わり呪人形を巨大な綿に変化させて虎に押し付ける。よく渇いた綿は液体の虎をよく吸い取った。
「特性は欠点にもなるっす!」
 その上で結界術で閉じ込め、中で暴れられないよう呪詛もかけるという三段重ねを行った衣更着は再び舌で印を切る。
「ようやく収まっ……!?」
 光が収まったところで目を覆っていた腕を外したシャドウキマイラの前に立ち塞がっていたのはストールを首に巻いた巨大な狸だった。
「モフモフパワーを、食らえっすー!」
 動くだけで空気が切れる音をたてながら衣更着はストールを振り上げ、シャドウキマイラを叩きつけにかかる。
 しかしシャドウキマイラの巨体は突然崩れると床とステージの僅かな隙間に入り込んでしまった。
「あ、逃げるなっす!」
 衣更着は慌てて別の綿を用意してその隙間や周囲に押し当てていったが、もうすでに別のところに逃げ去った後で、綿が湿ることはなかった。
「ふふ、危ない危ない。君のストールに吸われたら全身が左腕のようになってしまうところだったよ」
 頭をあげるとキマイラの姿に戻ったシャドウキマイラがわざとらしく額があると思われるところを左腕で拭っていた。
 衣更着は反射的に最初の綿の方を向いたが、変わらず黒く変色したそれは床の上を転がっている。
「私は影だ。影は光によって形を大きくも小さくも変える。当然、部位を切り離すことも、欠けた部位を取り戻すことだって出来る」
「それじゃあ、全身吸い尽くすまでやってやりましょうっすか?」
「……全身虎にして戦ってなくて良かったよ」
 ブンブンストールと綿を持つ腕を振り回しながら近づく衣更着の元へシャドウキマイラは一切近づかず、むしろ距離を取っていく。
 どうやら左腕から感じた結界の締め付けと呪詛の痛みはトラウマとして刻まれたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーデルトラウト・ローゼンハイム
「あら、貴族が平民を守るようにアイドルがファンを大事にするのは義務のようなものでしょ?もし貴族が己が欲望のために平民を従えたならば貴族の資格がないようにあなたにも残念だけどプロデューサーを名乗る資格はないわ」
影と戦うというのは実体が掴めなくて厄介ですわね。
というわけでセイクリッド・ダークネスを使って白き闇にて影を炙り出しましょう。
影というには光がなくては存在できません。
黒き闇にしか存在できません。
白き闇の中ではあなたの存在など砂漠に放り出された小魚も同然なのですよ?
炙り出したあとは祈り続けて他の方を援護したり貴族的にボコしたりしますわ。



「お、おい、誰か開けてくれ!」
 その頃、受付では取り残された取材班が必死に透明な扉を叩いていた。
 開けっ放しにされていた扉が突然意思を持ったかのように勢いよく閉まり、外からも内からも押しても引いても開かなくなってしまったのである。
「嘘だろ、なんで切れないんだ……」
 透明な素材で中の声も聞こえるのにチェーンソー剣でも斬れない扉に、閉まる前に出れた者や通報を受けて来た隊員達は顔を青くする。
「ちょっ……どき……なさい」
 そんな中、騒ぎを聞いて集まった野次馬を押し退け、アーデルトラウト・ローゼンハイム(デビル貴族・f32183)は扉の前に出た。
「ちょ、ちょっと君……」
「怪我したくなかったら離れなさい」
 隊員からの静止を振り切り、アーデルトラウトは小さな拳を一発、扉に叩きつける。
 すると何をやっても壊れなかった扉にヒビが入り、粉々に砕け散った。
 呆然とするキマイラ達をよそに、アーデルトラウトは真っ直ぐステージのある部屋へ踏み込んでいった。
「先程の映像、みせてもらったわ」
 突然飛び込んできた新手の一言にシャドウキマイラは怪訝な声をあげる。
「映像……? 上げていたのか貴様」
 衣更着を一瞥した後、シャドウキマイラはアーデルトラウトに問いかけた。
「どうだった、私の設計プランは。素晴らしい物だと思わないか?」
「あら、貴族が平民を守るようにアイドルがファンを大事にするのは義務のようなものでしょ? もし貴族が己が欲望のために平民を従えたならば貴族の資格がないようにあなたにも残念だけどプロデューサーを名乗る資格はないわ」
 アーデルトラウトの真っ向から全否定に無言となったシャドウキマイラは押し黙り、奇怪な仮面を被ろうとする。
 異変を感じ取ったアーデルトラウトは一気に距離を詰めたが、仮面の魔力で四つん這いになりながら狼へ転じたシャドウキマイラは高速で正面から衝突し、アーデルトラウトの服を噛みちぎった。
 露わにされた肌に狼の毛皮が触れると、その部分が一気に荒れて激痛が走る。
 歯を食いしばったアーデルトラウトは自分が傷つくことも構わずに抱き抱えて殴ろうとしたが、その頃には影の中に潜り込まれて消えられていた。
「影と戦うというのは実体が掴めなくて厄介ですわね。でしたら……」
 舌打ちをしたアーデルトラウトは足を止めるとその場に跪き祈り出す。すると半透明の水色の翼が白く染まり出した。
「影というには光がなくては存在できません。黒き闇にしか存在できません。……白き闇の中ではあなたの存在など砂漠に放り出された小魚も同然なのですよ?」
 すると翼から一気に噴き出した白き闇が辺りを包み込み、逃げ道となる影を消し飛ばしてシャドウキマイラを引き摺り出した。
「あなたの逃げ道は塞ぎました。正々堂々と相手なさい」
 獣の唸り声が響く中、アーデルトラウトは両手をぎゅっと握りしめ、前方を睨みつける。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクサンドラ・ヒュンディン(サポート)
人狼の力持ち×ミュータントヒーローです
普段の口調は「私、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?」、気にいったら「私、あなた、~さん、ね、よ、なの、なの?」

性格は内気で人と目を合わせるのが苦手ですが、人嫌いなわけではなく事件解決には積極的です
戦闘スタイルは力任せで、ダメージはライフで受けるタイプです

日常や冒険の場合、食べ物があるとやる気が増します

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「狼、さん? ……いや、違う。臭い、しない」
 内気で人と目を合わせるのが苦手なアレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)は真っ直ぐ狼姿のシャドウキマイラを見つめていたが、目の前の姿と臭いから連想される脳内のイメージと合致せずに困惑していた。
 一方で逃げ道を封じられたシャドウキマイラは一旦冷静になると、唸り声を上げていた口なら人の言葉を発した。
「どうせ逃げられぬならば、機動力はいらないな。この力で全部薙ぎ倒させていただこうか」
 そうして竜の姿へと再び転じて回転すると、勢いのついた尻尾が据え置きの客席を破壊していく。
 本人は牽制のつもりでやったのかもしれないが、サンディからしてみればシャドウキマイラへ通ずる経路が増えたので好都合であった。
 サンディは脚に力を込めて構えると、一足跳びに近づき、自ら晒した背中へと噛み付いた。
「あ……お前、離れろ!」
 どれだけ暴れようとサンディの枝分かれした上に側面には鋸刃まで生えた牙と化した犬歯は抜ける気配はない。
 そして掴んでいる箇所の鱗が浮かび上がり、剥がれかるほどの力で握り締めてくるサンディの拘束を外そうと、シャドウキマイラは背中の鱗を一気に落とす。
 するとサンディの手は滑るように外れ、手にしてなかった部位の鱗の縁がサンディの体を傷つけていく。
『はなさ、ない……がうぅぅぅぅっ……!!』
 しかし肉まで到達していた歯だけは外れず、サンディも味がするどころか血も染み出してこない肉に食らいつき続ける。
「くそっ、離れろ、この……!」
 どうにか剥がそうとシャドウキマイラは暴れ続ける。その度に、ティアのために作られていた舞台もぐちゃぐちゃに崩されていく。
 その様子にティアの純粋なファンとなっていたキマイラ達は憤慨し、アンチへと回り出していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリュウ・リヴィエ(サポート)
記憶喪失のダンピールだよ。
名前も年齢も本当かどうか、僕にも判らない。
ま、気にしてないけどね。

自分の過去は判らなくても、色々考えるのは好きだよ。
他人の行動とか状況とかに違和感があると、それに何か意味がないのか考えちゃうよね。
まあ、それで僕が有利になるかどうかは別問題だけど。

あとは食べることも好き。
食わず嫌いはしないし、残さないよ。

戦うときは、突っ込んで力任せに殴り掛かることが多いかな。
一応、剣も魔法も使えるんだけど、結局シンプルなのが性に合うね。



「あんなに看板商品だとかサクラを用意したとか、大事にしてる、ってアピールしておきながら、それにまつわる品々は大切にしないんだね」
 瓦礫の山と化したステージを蹴飛ばしつつ、クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)は首を傾げる。
 ようやくサンディを引っぺがせたシャドウキマイラはリヴィエの方を見て鼻で笑った。
「何を言う、もう逝ってしまった者を悔やんでも戻ってくる事はもう無い。これだけ大きい物だ、いつかは撤去して壊すのだから何の問題も無いであろう」
「確かにそうだけど。でも処分する場所は選ばないといけないんじゃないかな? というか、あんな放送しておいてまだこの業界に残れると思ってるの?」
 ここに来るまでに見ていた生放送の動画についた凄まじいバッドの数を思い出しつつ、リヴィエは首を傾げる。しかしシャドウキマイラはそこまでの危機感を抱いてないのかピンときていないのか、巨大な竜の首を傾げるのみであった。
「まあ、気にしてないならいいや。それで僕がどうこうなるわけじゃないし」
 もうこれ以上聞くことはない、と言わんばかりに肩に立てかけていた大鉈の様な黒剣を振り下ろす。その際、外套ごと肩が裂けて血が噴き出して黒剣を染めていく。
 すると嫌な音を立てながら大鉈の見た目は禍々しい物と変貌していった。
「とりあえず、力任せにぶん殴らせていただくよ」
 そうにこやかに笑いかけ、リヴィエは一気に距離を詰めて豪快に引っ叩いた。
 そして体勢を崩して落ちてきた頭をすかさず上段から叩き潰す。
「血が出ないとやった気にならないね。……ちょっと今から血が出るようになってくれないかな?」
 首を傾げながら振られたとんでもない無茶への答えを、瓦礫に塞がれた口からは返す事は出来なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

七瀬・夏希
キマイラを集めるのに随分と馬……いえ、手間の掛かることをしているわね。
元々そういう奴だからこの世界を宛がわれたのか、それともこの世界に来たからそうなってしまったのか。
後者だとしたら、あまりこの世界に長居はしたくないわね。

さて、それはさておき。
さっさと骸の海に還ってもらうわ。
そっちで敗走ライブでもプロデュースすることね。

闇視で敵の居場所や動きを見抜く。
強化服による運動能力をもって攻撃を回避しつつ、ダガーで戦う。

――と、分身の一人を相手にさせている間に残りの分身の配置を完了。
透視とライフルをもって、遮蔽物越しに一斉に狙撃する。

まさか、目の前で戦っている相手がサクラだとは思わなかったかしら?



「キマイラを集めるのに随分と馬……いえ、手間の掛かることをしているわね」
 目を閉じた七瀬・夏希(UDC-SWAT・f29827)は気が遠くなるような計画に、思わず眉間を指で摘んでいた。
 元々そういう奴だからこの世界に宛がわれたのか、この世界に来たからそうなってしまったのか。その正誤は分からない。聞けば教えてくれるかもしれないが、わざわざそんなことはしないし、する気もさらさらない。
「後者だとしたら、あまりこの世界に長居はしたくないわね……さて、それはさておき」
 手を離し、首を振った夏希の耳元で1の数字を象ったイヤリングが揺れる。
「さっさと骸の海に還ってもらうわ。そっちで敗走ライブでもプロデュースすることね」
 夏希は白い闇の中でも見通す目で、地面にめり込んだシャドウキマイラの全身が液状化していくのを見抜く。
 新しく出来たヒビから外に逃げ出そうとしているのだと判断し、強化服による運動能力をもって素早く跳びついた夏希はあらゆる障害を全て透過・貫通するダガーで床材ごと突き刺した。
「かかったな」
 するとまだ表面に出ていた部分が虎の頭へと変わり、夏希の体を飲み込もうと大口を開けた。
「誰が逃げ帰るものか、そんなつまらない物をセルフプロデュースなどするものか!」
 シャドウキマイラに触れた夏希の肌が、ジワジワと音を立てながら溶け始める。
「そんな提案をする暇があったら、自分の身を心配するのだな!」
「強酸性の毒……!? くそっ!」
 夏希はすぐにダガーを抜いてシャドウキマイラを斬りつけるが、液状化した体はちぎれたそばから元通りにくっついていく。
 神器であるダガーや防護服は溶けなかったが、その飛沫を浴びた手の甲には白い物が見え始めた。
「ははは、このまま絶望の中で溶けてゆけ!」
「Fire」
 勝ち誇るシャドウキマイラの体が夏希ごと、突然四方八方から放たれた弾丸に貫かれてバラバラになった。
 くっつく前にさらに分解された体は、会場にかけられた暖房と弾丸自体の熱によって蒸発していく。
 何の罵声も驚嘆も発せぬまま消されたシャドウキマイラが再構築されないのをライフルのスコープ越しに見届けた「本物」の夏希は陣取っていた建物の屋上でうつ伏せになりながら口角をあげた。
「まさか、目の前で戦っている相手がサクラだとは思わなかったかしら?」
 シャドウキマイラに見えないよう、ライブハウスの外部に一人を除いて配置し、それに付きっきりになったところを叩く。
 その思惑が上手く嵌まったことに安堵し、息をついていると下の方からシャッター音が聞こえてきた。
 視線を動かせば、カッコいい銃撃を見せつけた夏希に興味津々なキマイラ達が自前のスマートフォンを取り出して撮影をし始めていた。分身達が困った顔を浮かべながら断りの言葉を告げていても、その指の動きは止まりそうにない。
 説得を諦め、全ての分身を消滅させた夏希は驚くキマイラ達の声を聞きながら天を見上げた。
「……やっぱり慣れそうにないわね、ここは」

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年02月23日
宿敵 『シャドウキマイラ』 を撃破!


挿絵イラスト