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皆が私のことをペタパイって呼ぶ

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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●風のウワサを信じる程、メンタルに来ました。
「これからが成長期だって言うのに……」
 あちこちに侵略戦争を起こしまくって、ぶっ立てた新しい王国『わたしのせかい』にて。
 まるで新興宗教団体のようなネーミングの国を作ったデビルキングワールドのオブリビオン『こおりのあくま』は俯きながら、ぽつりと呟いた。
「デビルクィーンになる為に、悪いことをしてあちこちからD(デビル)を巻き上げてみれば……皆がわたしのことを、ペタパイぺたぱいって……挙げ句の果てには、まな板テーブル滑走路って――このうらみはらさずおくべきかぁあああああ!!」
 こおりのあくまの叫びが地獄の底の怨念をともなって響き渡る。
 どこ、の話では無い。文字通り、『胸』の話である。
「このDって、風のウワサでは魔力が籠もっていて、集めまくれば『カタストロフ級の儀式魔術が出来る』って聞いた……ホントにあてのない風のウワサだけど。
 だから、とりあえず悪のステータスとして更に集めといて、本当に使えそうならその魔法でドッカンして、この世界をぶち壊して私が最後のデビルクィーンに……ペタパイなんてレッテル貼ったこの世界最後の魔王になる!! ……ま、どうせウワサだけど。
 さ、ペタパイの同志――! ううん『わたしのせかい』の皆さん! もっとじゃらじゃらDを集めて! 叶うなら、皆でレッテルを貼ったこの世界に復讐を!
 ……うんっ、叶うかも分からない野望の為に大衆をこき使うなんて、私は悪! 今日も、絶好調!」

●噂じゃなかった。
「非常に残念な事に――これが、噂ではなかった。
 予知によれば、このままでは本当に『カタストロフ級の儀式が行われ、デビルキングワールドが滅ぶ』。どうか世界崩壊回避の為に『わたしのせかい』に溜め込まれた通貨『D(デビル)』を全部散らしてばら撒いて来てほしい」
 この予知部分まで、きちんと声をあてて説明をしたレスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)が話をする。
「方法としては、ボスを叩きのめして言うことを聞かせるのが一番早いだろう。自分の国のDをそのオブリビオンにばら撒かせれば、ダサいと判断され新たな国の維持も出来なくなる、Dが散り国も消えれば一石二鳥だ。
 今、『わたしのせかい』に攻め込まれようとしている場所は、羽根の生えた『願望機の悪魔』と呼ばれる悪魔少女たちの国。
 魔王軍は個人差のある彼女らの身体コンプレックス――率直に言えば、『バストのあるなし!』『ウエストの太さ細さ!』『ヒップのあるなし!』『足の太さ細さ!』諸々!! ――を、どこがとは言わないが『広々とした大草原』だの『大根』だなどと、つつき抉り、なじり、少女たちを喜ばせている。少女達の国は制圧される寸前だ」
 喜ばせている……? その言葉の違和感に感じた猟兵達に一言「少女達は受動的――率直に言えば若干Mの気性であり、それが『デビルキング法』により、更にフリーダムになったらしい」というサラリとしすぎた内容が返ってきた。
「皆には、まずそれを上回る悪を彼女達に示して、オブリビオンの国に対抗する戦力を集めてもらいたい。だが――」
 一呼吸置いて、グリモア猟兵は高らかに叫ぶ。
「設定的に据え膳のようだが『エロやお触りは禁止』だ!
 もう一度言う、いくら身体コンプレックスに触れていようとも『エロやお触りは禁止』だ!!
 それは、何故か。
 彼女達は相手の願望を満たすことに長けた【言わば、テクニシャン】だ。そのようなありきたりな悪の願望など『一瞬で叶えられてしまい、昇天』の道を辿るだろう。という訳で、他の方法を模索してもらいたい」
 前半とは打って変わって、予知を見たグリモア猟兵は、後半は更にどこか壊れていそうな内容を、より淡々とした口調で語り続けていく。
「その後は予知でもどうなるか分からないが、デビルキングワールドなので、終始このような感じになるだろう。まずは己の願いがどれほど悪であるかを見せつけるもよし、あるいは何か別の悪を示してもいい。
 気を引き締めて、存分に悪を追究してきてもらいたい。
 それでは、どうかよろしく頼む」
 そう目の前で予知を語った存在は、今までの内容に、何一つ疑問を持つ様子もなさそうに頭を下げて猟兵達を見送った――。


春待ち猫
 こんにちは、春待ち猫と申します。
 今回は『胸がない!』から始まる、さまざまな悲哀がテーマの『コメディ』となります。終始あたまが悪い展開になるかと思われますので、ご縁がございましたらどうか宜しくお願い致します。
(※今回はコメディを想定しております。完全に成人向けとなりそうなプレイングはお返しさせていただきます)

 それでは、以下より章構成となります。

●第一章は、集団戦となっておりますが、ここでは『わたしのせかい』に侵攻する為の仲間集めとなります。(上手く行けば表示されている敵が、第二章での味方として戦ってくれます)
 戦闘ではない為、👑も7までとなります。
 方法問わず、自分がワルであることを見せればチョロいですが、叩きのめして強さをアピールすることも可能です。
(斬ったり焼いたりぶちのめしても頑丈なので平気ですが、一般住民の為、惨殺などはご容赦ください)

●第二章は、ちょっと変わった集団戦です。
 第一章の悪魔達が一緒に戦ってくれます。

●第三章は、ボス戦です。
 舞台が『デビルキングワールド』の為、第一章と同等に悪役アピールが求められます。
(猟兵側に「悪っぽくない善良な行動(悪魔的に恰好く悪い行動)」が起こりますと、悪魔が寝返り、判定そのものにマイナス影響が出ます。何卒ご注意ください)

●今回のシナリオには、各章ごとに受付期間を設けております。誠に申し訳ございませんが、詳細は各章、断章の投下後にマスターページをご確認ください。
 それでは、よろしくお願い致します。
 微乳にだって、断崖絶壁だって、必ずどこかに魅力があるはずだ。
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第1章 集団戦 『願望器の悪魔』

POW   :    汝が為したいように為すがよい
【飛び出す絵本】から、対象の【欲望を満たしたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
SPD   :    あなたを受け入れましょう
【飛び出す絵本】から、対象の【承認欲求を満たしたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
WIZ   :    いいのですよ、好きなことだけしていても
【飛び出す絵本】から、対象の【癒やされたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が辿り着いた先、そこは戦争をしているとは思えない程のほがらかさに溢れていた。
 おそらくは、そこに住まう『願望機の悪魔』達の影響であろう。こんな会話が聞こえてくる。
「今日もまた、相手の国から『ドデカメロン級を夢見る胸』って……!」
「わたしは『腰から下が、たくましい矮鶏のようだ!』って……」
「ひどいわ……わたし、さっき『二の腕を腰と見間違いました』って。あんまり、だわ……でも」
 本来の性質なのであろう、ほんの少しの辿々しさを口調に滲ませた少女たちは、しかし――。

「「きゃぁっ、最高……! 悪って、やっぱり、格好いい、かも……!」」

 一様に口を揃えて、きゃあきゃあと敵対する悪に憧れるミーハーさを露わにし始めた。
 どうやら、これは元々『わたしのせかい』に対する戦争に対しての会議だったらしい。
 ――かなりの末期じみたものを感じる。彼女達の目を覚まさせることは出来るのだろうか。

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地籠・陵也
【アドリブ連携大歓迎】
(戦う前に何か怪しい本を読み返し)
えーと?こう振る舞ったら大丈夫か?

揃いもそろって貧弱な身体をしやがって。
そんなんでこの先悪としてやっていけるとは片腹痛いな、このおさかなソーセージ共!

と、最初に言うだろ。次は【指定UC】で寒くして……

お前達を罵る連中は相応の蓄えがあるからこれを耐えられる。
だが!それもないお前らがこの先悪としてやっていけると思うのか!
悪として相応の装備すら知らぬ軟弱者が!俺が悪の何たるかを教えてやる!
と依頼に行く前に買ってきた防寒具を投げつけた上で【オーラ防御】を纏わせ寒さを遮断。
悪らしくなった感を錯覚させてみようか。

……これでいいんだろうか?悪って……



 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は、依頼を受けてから現地に来る前、必死に本を読んでいた。
 タイトルは『これで皆もワルになれる! 悪だって目指せる十箇条 初級編』。本は初級・中級・上級・地獄級とあったが、取り敢えず初級編と中級、参考として地獄編を読み通してみた。
 そして今に至る、のだが――
「あ、ちょっと待っ――いや、待ちやがれ! か……?」
 何事かと集まって来た『願望機の悪魔』達を前にして、言葉尻からも分かる通り、悪とはそもそも完全に無縁である陵也は、この段階から悪の欠片も見当たらず、慌てて背後をクルリと向いて、本の内容を確認し直した。
「えーと? こう振る舞ったら大丈夫か?」
「あ、かわいい……でも、ちょっと。かっこ、悪い(ワル的に)かも、です?」
「このひとなら、堕落、させられる、かも……!」
 願望機の悪魔達が集まってくる。もう後には退けない。正直なところ、もはや不安しかないが、これも依頼の為ならば。陵也は、大きく深呼吸を一つして、その場でしかと覚悟を決めた。

「――ハッ! 揃いもそろって貧弱な身体をしやがって。
 そんなんでこの先悪としてやっていけるとは片腹痛いな、このおさかなソーセージ共!」
「きゃっ!」
 悪魔少女たちが、驚きに小さく跳ねる。
『おさかなソーセージ』が何かは不明なところではあったが、効果はばつぐんだ!
「つ、次は……」
 陵也は急ぎ、続けて本の内容を確認する。しかし、中級だと思って持ってきていた本は、『これで皆も(省略)』の【地獄編】――難易度を二段飛びした本の見開きを目にした陵也の瞳がこれだとばかりに輝いた。
「甘やかして、堕落させて、あげます……!」
 その隙に、悪魔少女の一体が絵本を開いてユーベルコード【いいのですよ、好きなことだけしていても】を発動する。飛び出してくるのは、陵也の【癒やされたい】という願望を叶える願望機。
 すると――次の瞬間。
 絵本の中から、たくさんの手のひらサイズの子猫が一斉に飛び出して来た!

 にゃーにゃーにゃー。
 みゃーん、うなー、にゃーん。

「猫!?」
「さ、存分に癒やされて、いいんです、よ……?」
 陵也の足元に集まり、つぶらな瞳を向けてくる子猫達。
 これを抱き上げて愛でたら、きっと幸せになれるに違いない。
 だが、陵也は決めていたのだ――自分は、悪になるのだと。
「……っ!」
 陵也は涙を呑んで自分のユーベルコード【氷天の白き逆鱗(フィンブルヴェド・ドラゴネスアウトレイジ)】を発動させた。
 翡翠色に煌めく猛吹雪が一斉に周囲を覆い尽す!
「きゃあっ、寒い……! ああ、猫さんたちが! ひどい、でも素敵な悪(ワル)……!」
 一気に冷たくなった空気に、集まった子猫達も一斉に寒さに震え始める。
「え、いや――っ!」
 否定しかけた陵也は、その先の言葉を慌てて呑み込んだ。これは好機かもしれない。むしろ慣れない自分が悪らしい悪を重ねるには、これしかないとすら思われた。
 しかし覚悟を決めるにも、この光景はあまりに心が痛すぎる――それでも、陵也は今すぐ吹雪を止めたい衝動を堪えつつ、勢い良く声を張り上げた。

「お前達を罵る連中は相応の蓄えがあるからこれを耐えられる。
 だが! それもないお前らがこの先、悪としてやっていけると思うのか!」
「お、思いません……っ!!」
「悪として相応の装備すら知らぬ軟弱者が! 俺が悪の何たるかを教えてやる!」
 そう叫ぶと、陵也は身に装備していたコートに始まる防寒具を全て脱ぎ捨て、わざとワルっぽく少女達へと投げつける。
「悪に装備など不要! 悪に必要なのは【裸一貫に、気合いを纏った威圧のオーラ!!】だ!」
 陵也は、先程目に入った本の一句を高らかに叫ぶと、自分の回りに、極寒の中で浮かぶオーロラのように湧き立った、オーラをその身に纏わせた。
 そして、最初に所持していた形見の杖から、そこら辺で拾ったバールのようなものに持ち替えて、地面を激しい音と共に打ち据える。
「これが、悪の、姿だー!!」
「きゃぁあ……っ! 格好いい……!」
 裸一貫とは言ってみたものの、全部脱ぐと体育会系ではないことがバレてしまうため、最低限のインナーは着たままだが。それでもこっそり、オーラが寒さを無事遮断してくれる猛吹雪の中で、雄叫びと共に輝くオーラと共に極寒に立つ陵也の姿は、悪の素養を感じさせるには十分なものであった。

 そんな陵也に、悪魔少女達と共に願望機の子猫達も黄色い声を上げる中。
(……これでいいんだろうか? 悪って……)
 心だけ我に返った陵也は、目を思わず遠くさせながら心の中で呟いた。
 しかし、往々にして悪の道は後戻り出来ないものなのだ。我には、返らない方が良かったかもしれない――。

成功 🔵​🔵​🔴​

マヒロ・ゾスティック
なんだかシンパシーを感じる人達だね?
でも今回は一緒に楽しむ訳にはいかないから
キヒヒ♪いっそ本格的に目覚めさせてあげちゃおうかな♪

◆悪目立ちしながらUCで女王様ボンデージ姿の小悪魔に変身
空を飛びながらどんどん皆を罵倒していくよ

メロンを夢見る胸?
君のはメロンに永遠になれる訳ない不変のまな板だよ
未来見るのすらおこがましいよこの悪魔世界盆地が

ねえ鶏に謝りなよ
君の足は大根って言うんだよ
ほら鶏様に土下座して謝れ

君のは二の腕も腰も同じ寸胴鍋だよ
優しい言葉言われて嬉しがってるんじゃないよこのチョロ女

いいとこで自由自在ベルトで全員◆捕縛
軽く踏んづけたり別のベルトではたき
じゃ君らボクのしもべね
答えは聞かないよ♪



 移り気な髪色に、同じく移り気なグラデーションの入った濡れた宝石の瞳を輝かせ、そんな『願望機の悪魔』達の話を聞いていたマヒロ・ゾスティック(堕ちし快楽の淫魔忍・f31759)は少女達を目にした瞬間、腑に落ちた様子で頷いた。
 きちんと見渡せば、同種族の悪魔少女達が悲しみと同時に、コンプレックスを指摘して人を罵るという悪(ワル)にゾクゾクしているのがまじまじと実感できる。
「おー、なんだかシンパシーを感じる人達だね?」
 同気相求、マヒロは同じ気配の少女達から同じ『ひぎゃくしこう』の気配をハッキリと感じ取る。それはもう隠してもいないのだから、既にだだ漏れ状態となっている気すらしなくもない。
「あ、悪の気配の、ひとが」
「今度こそ、堕落してもらって……」
 悪魔少女達が集まってきた。話によれば、グリモア猟兵の解釈に語弊がなければ、彼女らは願望を叶えるテクニシャンとのこと。
 ならば、マヒロとしては、とてもここには載せられないような『あーんなこと』や『こーんなこと』なども、思う存分楽しめると思うのに。
「でも今回は一緒に楽しむ訳にはいかないから――んー」
 お触り禁止にエロ禁止、あのグリモア猟兵の縛りがにくい。
「キヒヒ♪ いっそ本格的に目覚めさせてあげちゃおうかな♪」

「――あなたの、欲望、満たします……!」
 そんな文字通り小悪魔の笑みを浮かべたマヒロにむかって、悪魔少女がユーエルコード【汝が為したいように為すがよい】で、飛び出す絵本の中からポンっと差し出したのは――拡声機。
「気が利くねー! ありがとー。それじゃ」
 マヒロは、その出された拡声機をひょいと手に取って、うきうきとした笑顔でユーベルコード【淫魔忍法・口寄せ嗜虐女王(インマニンポウ・クチヨセシギャクジョオウ)】を発動させた。
 次の瞬間――カッ、とヒールの音が響き渡る。スタイリッシュなベルトが映える赤のボンテージ衣装に変身したマヒロは、上空へと飛び立ち、拡声機で悪魔少女達の先の会話に向けて言葉を叩き付けた!

『メロンを夢見る胸?
 君のはメロンに永遠になれる訳ない不変のまな板だよ。
 未来見るのすらおこがましいよこの悪魔世界盆地が!』
「きゃああ!」
 盆地――むしろ、えぐれている。それが自分の事だと気付いた悪魔少女が真っ赤になって悲鳴を上げた!
『ねえ鶏に謝りなよ。
 君の足は大根って言うんだよ。
 ――ほら、鶏様に土下座して謝れ』
「ヒッ! ひどい、ひどいです……! 鳥類以下の野菜だなんて……っ、――なんて、悪……!」
 会話に加わっていた隣の悪魔少女が、あまりの残酷な悪に感動しては、頬を染めてよろめいては地面に座り込む。
『そこの君のは二の腕も腰も同じ寸胴鍋だよ。
 同じに見えましただなんて、優しい言葉言われて嬉しがってるんじゃないよこのチョロ女』
「同じ寸胴鍋に、チョロ女……!?
 ああっ……なんてパーフェクトな罵り――! これが、想像もつかない、本当の悪の所業、なのです、ね……。格好良すぎて、胸が――あぁっ」
 こうして――マヒロの悪言に、悪魔少女達はその格好良さから、色艶煌めくハートマークを飛び交わせては次々と倒れていった。あまりの悪ムーブの魅力に、悪魔少女達はもう息も荒く失神寸前だ。
「さぁてっと」
 地上に降りたマヒロはダメ押しに、所持している数も長さも望み通りの自由自在ベルトで、息も絶え絶えの悪魔少女達を捕縛し、その身体を軽く踏んで、他のベルトで音だけ大きく響くようにはたいていく。
 踏むのも、ベルトでシバくのも威を示す立派な攻撃の一つ。これも全ては悪を示す為の戦闘手段……であろう。

「じゃあ、君らボクのしもべね。
 答えは聞かないよ♪」
「――は、はいっ! デビルクィーン!」
 こうして、マヒロは男の娘な上にオブリビオンでもないが、その風格をパーフェクトなまでに打ち出し、この場の悪魔少女達にとっての立派な悪魔女王となった。
 ……女王の意味が若干違う可能性もあったが、きっと悪魔少女達は戦力として立派な働きをしてくれるに違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
はろはろ!お姉さん達、ボクと一緒にワルいことしない?。ボクは贋作の悪魔、ユニだよ。よろしくね。アピール代わりに、願望器の悪魔を対象に【デモン・フェイカー】。手品の様に「贋作の願望器」を生やしてみせて。どう?この存在感、マモノ(真物)なんて目じゃないよ。
まだまだ、この願望器はお姉さん達の武器でもあるんだから当然武器改造の範疇。仕様変更も受け付けるよ♪。混ぜるな危険?でも本物と贋作の願望器が入り乱れれば、とっても楽しいことになると思わない?(お触りは禁止って話だし視力で。目力こめつつ誘惑。)
それにボクのユーベルコードは、本物の操作能力も盗むからね♪騙し討ちも出来るよ♪。



「はろはろ! お姉さん達、ボクと一緒にワルいことしない?」
 集まる『願望機の悪魔』達に、まるで軽い晴れ日を思わせるナンパのような声がかかった。これは、とてもデビルキングワールドらしい誘い方とも言える。悪魔少女達が声のした方に目を向ければ、そこには少女達に軽く手を振るユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)の姿があった。

「悪いことの、お誘い、です、か?」
「そそ、今この国に攻め込んできてる悪魔達を叩き伏せる、すごくワルいこと」
 こうして声を掛けたユニに、その場にいた悪魔少女達が一同にざわめき、ヒソヒソと小声で話し合い始める。
 ときおり聞こえる会話から内容は筒抜けだが、ここで『聞こえているよ』と教えるのは善人の所業だろうと、ユニは悪らしく立ち聞きに徹することにした。
「でも、でも……」
「本当に、できるか、ためして……」
 そして、しばらくコソコソしていた悪魔少女たちが一斉にユニの方に向き直り、中央にいた少女が飛び出す絵本を取り出した。
「あなたを、受け入れ、ましょう――!」
「おっと?」
 悪魔少女がユーベルコードの言葉と共に本を開く。絵本の中から飛び出してきたのは、手のひらに乗る大きさをした、山吹色にきらめき輝く金結晶――現出したそれはユニの『承認欲求を満たす願望機』として、ポンっと軽い音を立てながら、その手の中に収まった。
「へぇ、金か」
 軽く目を眇めてユニが手にある金結晶を見つめる。
「――それじゃ、少しワルなところを見せようかな」
 その表情に見えたものは、文字通り優しい『贋作の悪魔』の微笑だった。
 願望機の悪魔達に聞こえない程度の小声で、ユニは何かを呟き、そして少女達に意識を向けて、ユーベルコード【デモン・フェイカー】を発動させた。
 ユニが空いている片手を金の上に翳し、手品を見せる動きですいっと指を横に滑らせる。すると次の瞬間、
「えっ!?」
 悪魔少女達の目の前で、ユニの手の中にあった金の塊から、完全に一縷の違いすらもない、同じ大きさ、同じ形の金結晶が生え現れたではないか。
「全く、同じものが……!」
「贋作だけどね。
 でも――どう? この存在感、マモノ(真物)なんて目じゃないよ。
 これならどんなワルなことでも出来そうな気がしない?」
「で、でも、あの人達は、とても、悪くて……もう、私達じゃ……」
 ユニが提示してくる悪の予感に、胸をドキドキさせながら。それでも、もっと罵りなじられるという明瞭かつ大胆な悪を感じ受けてきた悪魔少女達が、困惑と共に戸惑いを告げて来た。
「まだまだ、この願望器はお姉さん達の武器でもあるんだから、当然武器改造の範疇。仕様変更も受け付けるよ♪」
 そこに更なる悪の気配を察知――少女達が悪の足音に、上気した頬で顔を見合わせた。
「これも、私達の、武器……いけそう、かも、かも……っ?」
「でも、本物と贋作が混ざったら、分からなくなって、しまうのでは、では」
 不安を示しながらも、尚湧き上がるワルへの期待――少女達は興胸の高鳴りに呼吸を微かに濡らしながらも、動揺を隠さずソワソワし始める。
「――混ぜるな危険? でも……本物と贋作の願望器が入り乱れれば、とっても楽しいことになると思わない……?」
 躊躇う悪魔少女達に向けて、ユニは誘惑する蛇のように少女の一人に近づいて、耳元でそっと囁き、ウインクと共に軽くそこに吐息を吹きかけた。
「きゃぁ……っ! もうだめ、……悪すぎて、どきどき、しちゃい、ます……!」
 ユニのターゲットとなった悪魔少女が、ライブで熱狂しすぎたファンのように、悪への期待に昂りすぎた末、ついには失神してしまう。
 倒れ込みそうになった少女を、ユニは『これは不可抗力♪』とばかりに、そっと善良には見えないように気をつけながら、ボクっこにあるまじき妖艶さを添えてその身体に触れ支えた。
 そのような思いきり背徳感極まりない雰囲気を漂わせるユニに『悪の気配が!』と、黄色い悲鳴を上げ始めた悪魔少女達。
 その少女達に、ユニは笑顔で訴えた。
「それにボクのユーベルコードは、本物の操作能力も盗むからね♪ 騙し討ちも出来るよ♪
 ねぇ……皆で、ワルいことしよ?」
「きゃああ……っ!」
 そして、ついにユニを取り囲む周囲から、堪え切れなくなった少女達による歓喜が一斉に沸き上がった。

 ――悪のハート掌握、完了。少女達は、きっと次の戦闘でその能力を遺憾なく発揮してくれることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
ボリュームのある胸を求めるか…
ならば、大胸筋を中心に筋トレをすれば良かろうに
いや、正道を往くのは此の世界では「格好悪い」のだったか

ともあれ、野望を阻止する第一歩は味方集めか
…悪い懐中時計、とは
どのように振る舞えば良いのだ…(頭を抱える)
嗚呼、こんな時畜生の権化のような我が伴侶が居てくれたら…

そうか、畜生行為か
わざわざ俺の為に想像してくれた願望器、其れを敢えて無碍にしてはどうか
どのような形状かは知らぬが、冷ややかな顔で
【時計の針は無慈悲に刻む】を以て、眼前で破壊してみせよう
「人の好意を無碍にする」、此れは相当なワル行為なのでは!?

(めたくそ真面目な性格なのでこれが精一杯です、判定はお任せします)



「ボリュームのある胸を求めるか……」
 グリモアベースで話を聞いたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は、その内容を振り返りながら不可解極まりないという表情で思案した。
「ならば、大胸筋を中心に筋トレをすれば良かろうに」
 ――そうして口に出た言葉は、筋肉であった。あまりにもマッスルであった。
(広背筋も捨てがたい。ならば、まずはワイドプッシュアップからであろうな)
「いや、正道を往くのは此の世界では『格好悪い』のだったか」
 改めて、前提を取り戻してニコは目的地へと歩き出す。
 筋トレが、普遍一般的な正道かと言われれば悩ましいかもしれないが。ニコや一部の筋肉を嗜む存在から見れば、筋トレはほぼ全ての心身問題を一発で解決する、正面突破の最速正道であることに間違いないのである。
「ともあれ、野望を阻止する第一歩は味方集めか」
『願望機の悪魔』達の国に足を踏み入れ、辺りを見渡せば悪魔少女達が、悪とは見るからに縁遠そうなニコを見て、興味津々に集まってくる。
 この悪魔達を前に、悪ムーブを行えとは言うが。
「……悪い懐中時計、とは」
 ニコは無機物から存在を顕現させたヤドリガミである。更には生真面目な気質も重なり、その問いはあまりにもハードルが高すぎた。
 例えるならば、悪を働く『悪いスピーカー』『悪いティッシュケース』『悪いペットボトル』――日常生活を送る中に、これらについてどれだけの想像が出来るだろう。それは一部の性癖所持者以外に、即時答えを出すのは、あまりにも難しい問題であった――。

「どのように振る舞えば良いのだ……。
 嗚呼、こんな時畜生の権化のような我が伴侶が居てくれたら……」
 直球過ぎる、畜生の権化――もとい、とても可愛らしい暴君である大切な伴侶に大変な言いようであるが、相手がここにいれば、この難局も容易く乗り越えられたことには違いない。
「この方、たくましいですが、悪の気配がない、ので」
「堕落させて、しまいましょう……!」
 悪魔少女の一人が飛び出す絵本を構える。
 存在には向き不向きがあるものだ――しかし、このままでは依頼そのものが果たせない。
 それでは困る。ニコは伴侶の行動を思い起こそうと懸命な努力をした。
「――そうか、畜生行為か」
 そして、悩みに悩み抜いた末、ニコは一つの行動に行き着いた。
 この少女達は対象の願望を叶える為に、相手が望むものを願望機として形にしてくる――それを敢えて無碍にしてみるのはどうか。

(出されたものを、冷ややかな顔で眼前で破壊する――『人の好意を無碍にする』此れは相当なワル行為なのでは!?)

 ようやく辿り着いた完璧とも言える答えに、ニコは自信を掲げ、悪魔少女達の行動に向かい合う。
 そして自信さえ滲ませていたニコに向かって、絵本から飛び出してきた物は、
 可愛らしい桃色をした、まるで思いきり誰かを思い浮かばせる、たれ耳ロップイヤー種のうさぎのような、小さな妖精のぬいぐるみ。

「――!?」
 ニコの『癒やされたい』という願望に沿って出された、そのキュートなぬいぐるみは、愛する我が伴侶と瓜二つだったのである。
(……ッ!? 無理では……!?)
 脳内が思わず叫ぶ。表情には出さないが、手に僅かな震えが走る。それでも『他のにしてください』等とは、悪的に間違っても言えないだろう。
(これはただのぬいぐるみ、ぬいぐるみであろう――!)
 ニコは、完璧に内心を押さえ込み、表情に冷徹を装うとユーベルコード【時計の針は無慈悲に刻む(ルースレス・クロックワークス)】によって、その柔らかぬいぐるみを木端微塵に破壊した! 
 ……無論、それは中途半端に形が残れば、その場で泣きながら崩れ落ちる自分の姿が容易に予測出来たからである。

「キャッ……!
 ひどいです! ああでも、こんな悪、凄い……! 躊躇いなく、こちらの心を踏みにじるなんて……!」
(すまない……我が伴侶よ、本当にすまない……!)
 もはや、心を踏みにじられたのはこちらの方であるとしか言いようがない。
 普通の己の願望ならば、たとえ、どのようなものが来ようとも、ニコには任務の為ならば、いくらでも完璧に破壊するであろう事に疑いはなかった。鋼鉄のような心から生まれた自信は、確かにそこに存在していたのだ。
 しかし、今回は敵の使うユーベルコードの【癒やされたい】を形にした願望機は――気が付けば、この場の誰もが予想も付かなかった、あまりにも涙が止まらない惨劇を生み落としたのである……。
「……」
 言葉に出来ない自身の声が、己の沈黙があまりに重い。しかし、犠牲の代わりに、猟兵としての目的は確かな形で達成された。
 ここまでしたのだ。願望機の悪魔達は、次の戦いにおいて非常に心強い戦力となってくれることだろう――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘスティア・イクテュス
なるほど…悪の追求ね、それなら海賊なわたしの出番ね
任せなさい、D…通貨を奪うのは海賊の仕事。得意分野よ!


そしてDをかき集めて胸もDに!!!抵抗の少なくて宇宙を飛ぶの速そうとか、小惑星帯とか得意そうなフルフラットボディとかこれで言わせないわ!!!(ペタパイの同志)


願望器の悪魔……(一部分を見)…(更にもう一度見)
なるほど…宿敵ね!(違う)


†煌白の苗木†をSFOに括り付けて『ダッシュ』+【不意打ち】で轢き殺…ついうっかりぶつかっちゃう!
まぁ!大変!大切な苗木とSFOに傷が…!(無傷)
この慰謝料しっかり払ってくれるんでしょうね!!(当たり屋)


無いならその願望機でわたしの胸を増やしなさい!(無茶振り)



「なるほど…悪の追求ね」
 グリモアベースで依頼を受けたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、その内容を完全に理解した様子で、力強く頷いた。
「それなら海賊なわたしの出番ね。
 任せなさい、D……通貨を奪うのは海賊の仕事。得意分野よ!」
 こういう時こそ、日常以上に宇宙海賊であることが誇らしい。ヘスティアは満足げにドンと胸を張る――ふと、その胸に目をやれば、視線が地面まで『ストン』と、何にも引っかかることもなく一直線に落下した。
「……っ! そしてDをかき集めて胸もDに!!! 抵抗の少なくて宇宙を飛ぶの速そうとか、小惑星帯とか得意そうなフルフラットボディとかこれで言わせなわ!!!」
 その屈辱に顔を歪ませ、ヘスティアは己が野望を高らかに叫ぶ。
 そう、一度は言ってみたい『胸が大きくて足元が見づらい』という乙女の夢――!
 胸の大きさは急務である。何としてでも叶えたい。
 ふつふつと湧き上がる野望に、大きく足を踏み出して現地を歩く。国に入れば丁度パタリと、一人でいた願望機の悪魔の姿があった。
「わ、私も何か悪いことを、を」
 外部からの存在におどおどしている悪魔少女を前にして、ヘスティアは、偶然にも丁度直前まで考えていた、どことは言わない相手の身体の一箇所に視線をぶつけた。
 ――一度見て、全身を見て、もう一度その辺りを凝視する。
 そこには、布地が丸いカーブを描いていた。見るだけでも果物に例えるには勿体ない柔らかさを感じさせた。文学にある『抱きあまるほど豊満なふところ』とは、こういう事を言うのだろうか。当然――
「願望機の悪魔――なるほど……宿敵ね!」
 そんなもの、ヘスティアにはない。

 海賊であり、宇宙の海を渡り歩くのに躊躇いなどない。ヘスティアはその感情から奮い立つ悪を見せつけるべく、即準備を始めた。
 持ち物の中から、宝石や金属のような煌めきを見せる†煌白の苗木†を、空を駆ける愛機S.F.Oにロープでぐわしと括り付け、それに華麗に飛び乗った。そして、ユーベルコード【S.F.O突撃!(スペースフライングオブジェクトトツゲキ)】を発動させると、
「あっ! 危ないッ!!」
 と叫びながら、目の前の相手を容赦なく轢き殺……もとい、不可抗力の事故的に思いきり相手にぶつかった!
「きゃんっ! 何するんですか、あ、危ないです、です!」
 悪魔少女は転がりながらも、頑丈なのですぐに戻ってくる。
 しかし、本番はここからだ。
「まぁ! 大変! 大切な苗木とSFOに傷が……!!」
 S.F.Oから飛び降りたヘスティアが、相手にも聞こえるように息を呑む。だが、見れば分かる。無傷である。
「む、無傷ですっ!」
「この慰謝料しっかり払ってくれるんでしょうね!!」
 ヘスティア、渾身のパーフェクトな当たり屋ムーブに、ターゲットとなった悪魔少女が震え上がる。
「ひっ、被害者はこちらなのに、悪ですっ!」
 少女が涙ぐみながらも、瞳には喜びの色を浮かべて悲鳴を上げ始める。あと一息!
「い、慰謝料なんて、何も持ってなくて、払えません……!」
「無いならその願望機でわたしの胸を増やしなさい!」
 ――悪を追求する傍ら、己の欲望まで満たすとは、まさに海賊としての鑑である。
 無茶ぶりのように思われた内容。だが、ここで悪魔少女は半泣きになりながらも飛び出す絵本を取り出した。
「あなたの、欲望、かなえます……!」
 願望機の悪魔のユーベルコードが、満を持すように発動する。

 そうして、飛び出してきたものは――一本のダンベルだった。

「ダンベル……?」
「どこからか『バストアップするなら、大胸筋』という言葉が聞こえて来て……。
 こ、これを上手く使えば、有効活用すればきっと胸だって、大きくなります……!」
「有効活用――筋トレ……っ! くっ……!」
 確かに、これでもかと言うほどに筋トレをすれば、確実に胸は大きくなるであろう――しかし、胸の大きさを夢見るペタンコ乙女にとって『筋肉アプローチ』というのは、現実を突きつけられる最後の手段なのである。

 胸は、いつの間にか、気が付いたら大きくなっていってほしい。それでこそ、乙女のロマン。

 ヘスティアは、願望機の悪魔に確かな悪を示したものの、悲しいまでのリアルを殴り倒すように突きつけられて、その場にがくりと膝を落とした……。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう、Dを集めればカタストロフ級の儀式魔術が使えるのか。
こおりのあくまとやらは頭が足りていないようだな。
その魔術が使えればカタストロフ級巨乳になることも可能ということ!」

くくく、ならば、そのD、我が奪ってカタストロフ級巨乳になるとしよう!
うん?べ、べつに、今の胸が小さいと言っているわけではないからな?(目逸らし

「ふむ、願望器の悪魔か。
くくく、望みを叶えてくれるというならDに頼るまでもない!
我を巨乳にするがよい!」

……なぜ変化がないのだ?
ゼロは何倍してもゼロ……だと……!?

「ええい、貴様らなど塵も残さず滅してくれるっ!」

【魔力増幅】した【竜滅陣】を受けるがいい!

アドリブ大歓迎



「ほほう、Dを集めればカタストロフ級の儀式魔術が使えるのか」
 ふわふわと、ウィザードブルームに乗りながら。転移先から現地の『願望機の悪魔』達の国へ向かいつつ、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)はグリモアベースでの話を思い出していた。
「こおりのあくまとやらは頭が足りていないようだな」
 そうフィアは端的に己の思考を口にして、フフンと自信と傲慢を交えた微笑みを浮かべた。

「少し考えれば分かるというものだが――
 その魔術が使えれば『カタストロフ級巨乳』になることも可能ということ!!」

 その真実に辿り着いた漆黒の魔女は、その栄光を見据えて高らかに笑い声を上げた。
 ちょうど足元は願望機の悪魔達の国の中心部。その笑い声を聞きつけて、悪魔少女達が何事かと集まり始めてきた。
「くくく、ならば、そのD、我が奪ってカタストロフ級巨乳になるとしよう!」
 瞬間……下からジィッとした、まるで宇宙人でも見るかのような奇異の視線を感じ取る。よくよく見れば、視線は集まって来ていた悪魔少女達のものだった。

「うん? べ、べつに、今の胸が小さいと言っているわけではないからな」
 フィアは居たたまれなくなり、その視線から逃れるように目を逸らす。
 そして、箒から降りるタイミングで、ふと、己の視線を身体に沿って下に移動させた。すると、やはり『何の引っかかりもなく』箒に乗っている自分の太ももまでが、何の障害もなく目に飛び込んでくる。
 そこには、常にあって欲しいと願う――視線を遮る胸がない。
 もう、じっと見つめるまでもない。彼女もまた、悲しきかな、こおりのあくまとバストのサイズが類友に近しい『大草原の小さな胸』の同志であったのだ。

「おむねがない……悲しい、話です……」
「これは、願いを叶えれば……」
 悪魔少女達が、フィアを前にして小声ながらも堂々と筒抜けの相談を始める。
 だが――使える物は何でも使う。フィアは願望の悪魔に隠さない自信に満ち溢れた傲慢さで、その少女たちに語り掛けた。
「ふむ、願望器の悪魔か。
 くくく、望みを叶えてくれるというならDに頼るまでもない!
 我を巨乳にするがよい!」
「これは、堕落の第一歩……!
 は、はい、あなたの、欲望、叶えます!」
 悪魔少女の一人が飛び出す絵本を大きく開く。ユーベルコード【汝が為したいように為すがよい】が発動し、そこからポン! と一際大きく期待感を煽る音がした。

「これで我にも胸が!
 ――何だ……なぜ変化がないのだ?」
 しかし、待てど暮らせど、願望機の悪魔が持つ絵本からは、何も願望機らしきものが出て来ない。
 もしやと思ってフィアが自分の胸を見る。しかし、当然『胸は、大きくなってない』。
「どういうことだ! 我の胸が大きくなっていないではないか!」
「あ、あの……もしかしたら」

 他の存在から同じ願いを叶えた時には、ダンベルが出てきたという。その存在は、まだ頑張れば可能性を秘めていたのであろう。だが、フィアの場合――
「……ゼロは何倍してもゼロ……だと……!?」
「は、はいぃっ『未来がないから』――だ、だから願望機も……」
 辿々しくも、サラリと真実を告げてしまった願望機の悪魔に、直球で逆鱗に触れられたフィアの思考は――一気にぷちんと引きちぎれた。

「ええい、貴様らなど塵も残さず滅してくれるっ!」
 怒りを露わにするフィアの回りに、魔力が加速度的に循環をし始める。
「あぁっ、悪――! ま、待ってください!
 あ、出ました! 出ました、よ!」
 このままでは街が壊れる。国の危機を感じ取り、とてもダサいと評される行動に涙を呑みながらも、他の悪魔少女が急ぎ絵本から持ってきたもの。
 それは――『500mlサイズの牛乳パック』。

「――我に牛乳を飲め、と……!? 我に『牛乳飲め!』とっ!?」
 ……ゼロは何倍にしてもゼロだから、せめて胸が大きくなりそうなボディ作りから始めるしかない。
まさに、そう言われたに等しい、この平らで『ないむね』にだだ漏れに溢れてくるこの屈辱と絶望感。

 フィアは半泣きになりながら、怒りにまかせて【魔力増幅(マナ・ブースト)】を重ねて瞬時に魔力を編み上げる。
 そして、巨大な竜すら跡形も残らず消し飛ばすユーベルコード【竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)】を乗せると、怒りと共に、全力でぶっ放し悪魔少女達をきらめく星になる場所まで吹き飛ばした!
 そうして国の中央には、一つの立派なクレーターが出来上がった。
 悪魔少女達から、その力はトンでもない悪であると讃えられた。絶賛された。

 だが……フィアにとっては、それまでの惨劇がペタンとしたままの胸にザックリと刻み込まれ。
 そして、ここで起こった願いどころか出来事全てが儚い夢であったかのように。巨乳になれなかった悲しみを、フィアは己のひらたい胸の中にそっと仕舞い込んだ……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『魔界主婦の皆さん』

POW   :    ウチの家に限って…
【家事育児を手伝わない旦那への不満】【我が子の将来の進学進路についての不安】【老後の生活、ご近所さんとの悪魔関係の心配】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    私達だって暴れたい!ミートゥー!
【自身と同じ境遇に不満を持つ魔界主婦】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[自身と同じ境遇に不満を持つ魔界主婦]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ   :    社会を革命する力を
【自分達の身の回りの社会を今すぐよくしたい】という願いを【魔界SNSを利用する悪魔の皆さん】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ねぇ、奥さん。聞いてちょうだい。
 私赤ちゃんが生まれてから、体型バランスが崩れちゃって困ってるのよ~」
「わかるわぁ。私もそうだったもの。でも、赤ちゃんが生まれると胸が大きくなるって聞いたのに……ならなかったわね……。
 それはそれで大変って聞いていたけれども、やっぱり個人差があるのかしら?」
「アイドルとかが子供産んで、それでもスタイルがバツグンなのはやっぱりエステ効果なのかしらね。羨ましいわぁ~!
 どうせウチの家なんて旦那が――」

『願望機の悪魔』という戦力を連れ立って、敵国へと侵入し、後は『こおりのあくま』がいる城内まで一直線という先――。
 そこでは、通路中央に女性悪魔達が集まって、思い切り毒花が咲いたような井戸端会議を展開していた。
 足を踏み入れたこちらに気付いていないのか、会話は水がザバザバと乱暴に流れるように、世間や自分の身体への不満をまき散らしながら続いていく。

「旦那はいっつも遊び歩いて――! 私だって高級エステに行ってバストアップしたいわぁ~!」
「今はバストアップには、ジムも効果的だそうよ、奥様。いいわねぇ、家事に追われず時間のある悪魔は~」
 会話内容は、主に主婦特有の身体のコンプレックスを中心に、そこにちょいちょいと、それなりに深刻な人生の不安が混ぜ込まれた内容だった。
 ちなみに、皆、揃いも揃って――胸がない。

「いくらデビルキング法と言っても、どうしても子供や家庭やお付き合いがあるじゃない? 庶民はつらいわぁ~。旦那がもっと悪だったら格好いいのに、ねぇ」
「そうよねえ。でも、こうして私達にも悪をさせてくれている、こおりのあくまさんには頑張ってもらいたいわ。
 他の国から巻き上げたDで、整形手術をしてバストアップ……なんて素敵なのかしら――!」
 目の前で堂々と城へと通じる唯一の道を塞ぎつつ、世間話と社会への不満を語り続ける女性悪魔たち――
「世間のしがらみさえさえなければ、私達も好き勝手できるのに。……ああ、私達だって自由にしたいわ! この平らな胸から、ナイスバディへ!!」
「ミーートゥーー!!」
 そこまで意気投合すると、悪魔主婦達が一気に拳を衝き上げた。

「というわけで、そこのボーイ&ガール! Dを出してちょうだい! こういう所で、悪を見せないとデビルキング法に引っ掛かっちゃうわ。そしてえぐれている胸も、何としてでも大きくするのよぉ――!!」
 なんと悪魔主婦たちにとってDを巻き上げるという事は『デビルキング法を守りつつ、夢見るバストアップまで叶ってしまう(かもしれない)』という、まるでマルチショッピングのような一石二鳥の行動であったのだ。

 悪魔主婦達は、世間話を継続しながらも本気でやる気を出している。
 猟兵達はこの難局を無事に乗り切ることは出来るだろうか――。
 
 
フィア・シュヴァルツ
「くっくっく、この我から金を巻き上げようとは、見上げた悪だな!
おっと、この世界では悪事は推奨されるのだったか」

ならば、自分たちが金を巻き上げられても文句は言うまいな?
人から奪う権利があるものは、自分も奪われる覚悟のあるものだけ。
降りかかる火の粉を払った上で火事場泥棒をするとしよう。

「さあ、我が魔力によって凍りつけ」

【極寒地獄】を発動し、悪魔たちを徐々に氷漬けにしていこう。
爆砕してDまで木っ端微塵にするわけにはいかんからな。

「さあ、氷から解放されたければ、持っているDを全て渡すのだな。
主婦というからには、どうせ旦那に内緒でへそくりをしているのだろう?」

ふむ。Dで整形手術という手もあるか……



「さあ、そこの思わずシンパシー感じちゃう胸ぺたガール! あなたも大人しくDを差し出すのよ!」
「――ッ!」
 高らかにカツアゲを示唆した魔界主婦の皆さんに、『胸ぺた』と言われたフィアの心に、鋭いナイフが音を立てて突き刺さる!
 しかし、それを表情に出さずギリギリのラインで切り抜けて、フィアは改めて勢い良く笑い声を上げた。
「くっくっく、この我から金を巻き上げようとは、見上げた悪だな!
 おっと、この世界では悪事は推奨されるのだったか。だが、命知らずにも程がある!」
 高らかに宣言したフィアの溢れんばかりの自信に、魔界主婦の皆さんは、思わず動揺を隠せないままにたじろぎながら。それでも『カツアゲ行為は譲れぬ!』と意を決した様子で向き直る。
 ――デビルキングワールドの主婦というものは、どんなにデビルキング法で規定されようとも、たとえどんなに悪を極めきれずにダサいと言われようとも、少なからずその行動に情がなければ生きていけないものなのである――主に、家庭生活を支えてもらっている周囲が。
 その為、Dを地道に巻き上げるという地域密着型の悪であっても、デビルキング法が敷かれたこの世界において、それは魔界主婦の皆さんにとっては大切な悪行。故にこれを断念するわけにはいかないのだ。――実際、胸だって大きくしたいし。

「そうよ~! だからあなたのありったけのDを置いていきなさいー!」
「ふん、ならば、自分たちが金を巻き上げられても文句は言うまいな?」
「――え?」
フィアの発言が想定外であったのか、魔界主婦の皆さんの動きが止まる。
「人から奪う権利があるものは、自分も奪われる覚悟のあるものだけ。当然の摂理であろう」
 端的にフィアが言う。その目はハッキリと告げていた。
『そちらこそ、所持しているDをありったけ我に寄越せ』。

「まさか私達からたかる気ぃっ!?」
「そのまさかだ!
 ――さあ、我が魔力によって凍りつけ!」
 決めてしまえば即決行。フィアはウィザードブルームに跨がり上空に飛び立つと、大地へと向かい、ユーベルコード【極寒地獄(コキュートス)】を発動させた!
 大地に向かい、氷の壁が一斉に迷路を形取り降り注ぐ。魔界主婦の皆さんの距離を断絶するように立ちはだかった壁は、その足元から少しずつ浸蝕するように氷を侍らせ、あっという間に動きを奪う。
 フィアの目的はあくまでDだ。一気に凍らせて木端微塵にすることも考えたが、頑丈な魔界主婦の皆さんが無事でも、Dが砕けては話にならない。
「ひえぇっ! 足が冷たいわ~! こうなったら――!」
 魔界主婦の皆さんが、ユーベルコード【社会を革命する力を】を発動させる準備に入る!
『自分たちが不幸になる! このような社会を良くする為、社会を革命する力を!』
 ――その願いを叶えるべく、必死に魔界SNSへと書き込みをする。しかし、
「え?『どこかの政治家のようなゆるふわ感溢れる発言ではなく、具体的にでなければ賛同できない』? そ、そんな! 酷いわっ、こっちはDと足の凍傷がかかっているのにぃっ!」
 そう言う合間にも、氷の迷宮により魔界主婦の皆さんは、足先から少しずつ上に上にと張り付くように身体を凍り付かせている。
 ――この状況を逐一SNSで打ち、賛同と打開を求める時間など、当然魔界主婦の皆さんには残されていない――
 賛同者は悲しいくらいに現れない。相手にもう手札はないのを把握すると、フィアは箒の高度を落として、氷の迷宮の上空から魔界主婦の皆さんに声を掛けた。
「さあ、氷から解放されたければ、持っているDを全て渡すのだな。
 主婦というからには、どうせ旦那に内緒でへそくりをしているのだろう?」
「ど、どこで私達主婦のタンス預金のことをーーっ!」
 ――なんとも、どこの世界に行ったとしても『主婦』というものの考え方は、そうそう変わるものではないらしい。
 そうして、フィアは解放した魔界主婦の皆さんのへそくりを根こそぎごっそりと没収し、己の懐をホクホクにすることに成功した。

 しこたま貯め込まれていたDを目に、フィアはかつてない程思い詰めた様子でそれを凝視する。
「ふむ。Dで整形手術という手もあるか……」
 それは、魔界主婦の皆さんと思考が変わらないとか言うなかれ。
 ――遠い昔。フィアは、禁断の秘術により悪魔と契約して不老不死を得た。
 だが、その瞬間――本来あるべき『成長』が、全力で彼女を見限ったのである。
 それにより、フィアの胸は成長期という未来を失った。『その胸は永久にぺたんこ』という悲劇の烙印を押されたのだ。

 故に――胸の為ならば、フィアに手段など選んではいられない。
『ふくらみ』という眩しいステータスの可能性を失ったフィアの胸。
 その胸囲問題の解決は、極めて切実な、フィアにとっては現在進行形で、何よりも切実な問題であるのだから……。

成功 🔵​🔵​🔴​

マヒロ・ゾスティック
うわぁ、可愛そうなおばさん達だなぁ
あんなに寄り集まっちゃって……キヒヒ、なら、全部引き離してあーげよっと

願望器の悪魔たちを動ける程度に全身をベルトファッション風に締め上げてあげてと
はぁあ(クソデカため息)
大きい胸だと映えるファッションもまな板に寸胴鍋に電柱に丸太じゃこの程度かぁ
ほらボクの望むもの出してよね

出させるのは大量の疑似太陽
お肌に敏感なオバサンには効くでしょ!
それだけじゃないけどね
UCで主婦達の頭上を旋回
地上に落した影で主婦達の影を接触侵蝕
疑似太陽で長く伸びた影の先端からベルトを伸ばし主婦を1人ずつ◆捕縛
引き寄せる事で密集オバサン達を引き離して戦力をダウン
後は別個気絶攻撃しとこっと



「うわぁ、可愛そうなおばさん達だなぁ」
 目の前に、魔界主婦の皆さんによる、不満しかないダベりが繰り広げられている――マヒロ・ゾスティック(堕ちし快楽の淫魔忍・f31759)の目に映ったそれは、控えめに言ってまさしく地獄の縮図だった。
 自分から不満と不幸を語り、碌な行動をしない中途半端さも然る事ながら。
 そもそもここで語られるようなしがらみの一切無い、若さ溢れるマヒロから見れば、これはもう心にドン引きどころか憐れましさすら滲んでくる。
「あ~あ、しかもあんなに寄り集まっちゃって……キヒヒ、なら、全部引き離してあーげよっと♪」
 要は、この魔界主婦の皆さんは胸ペタだけではない、同じ境遇に同情し合える仲間が欲しいのだ。
 ――ならば、全部引き剥がせば、それはきっと、さぞ愉しいに違いない。それは普段主軸ではないが、マヒロの心に存在する『しぎゃくせいへき(今日はSの気分!)』に火を付けた。
 マヒロの口許が、小悪魔的に――否、むしろ完全な悪魔の笑みを浮かび上がらせる。
「さ、気が向いたならサクサクやっちゃうよ。
 まずは、っと」
 マヒロが視線を、連れてきた願望機の悪魔達へと向ける。視線一つで悪魔少女達から上がる歓声――それが止む前に、マヒロは願望機の悪魔達を赤色の自由自在ベルトで、最低限動ける程度の強さで、ファッショナブルに締め上げた!
「きゃぁっ!」
 胸元とバスト下、ウエストと太腿に併せて二の腕と、派手な音を立てて、ベルトが悪魔少女達を締め付ける。全身のベルトにより身体のラインがセクシャルに浮かび上がる、ギリギリ街中で胸を張っては歩けない、大変そそるセクシーファッション。
『すこしM』その気がある少女達から、甘いため息が零れ落ちる、が、
「はぁあ」
 それを見たマヒロは、これでもかと言うほどにため息をついた。
 もう失望の極みだと言わんばかりに胸の空気を吐き切る程に息をつく。
 それに気付いた願望機の悪魔達が、自分達の非を感じ取り、一気に緊張した様子でマヒロの言葉を待つ――。
「大きい胸だと映えるファッションもまな板に寸胴鍋に電柱に丸太じゃこの程度かぁ。
ほら、チンタラしてないで、早くボクの望むもの出してよね」
「きゃぁん! 理不尽ですっ、素敵……っ!
 ――はぃっ! デビルクィーン!!」
 悪魔少女達にとって、既にマヒロは完全なるデビルクィーン。女王(男の子だが)自らの悪の滲んだ行動に、黄色い歓声が加速した。

 願望機の悪魔達は、喜び勇んでマヒロの望む物を絵本から取り出し天に掲げる。
 それは、眩しい陽光を放つとても小さな疑似太陽――疑似とはいえ、それは太陽。
 そして、お肌の天敵『直射日光』である。

「ひぃぃっ! 猛烈な日の光がー!」
「きゃー! 大変、日焼け止め塗っていないわぁーっ!」
 至近距離から照らされるその光は、一瞬にして魔界主婦の皆さんを恐怖のドン底に陥れた。……歳を重ねれば重ねるほど、直射日光は肌に突き刺す深刻なダメージを与えるのである。何と恐ろしい攻撃であろう――!

「それだけじゃないけどね。
 さ――自分の影に捕まっちゃえ♪」
 群れていたものが、散り散りに右往左往する様は、大変『Sごころ』をそそるものがある。マヒロはそこで畳みかけるように己のユーベルコード【淫魔忍法・侵蝕影縛り(インマニンポウ・シンショクカゲシバリ)】を発動した。
 上空の疑似太陽を背にしたマヒロが飛翔能力で浮かび上がれば、その下には綺麗に伸びた自分の影が一人の魔界主婦の上に差し掛かる――
 次の瞬間、相手は己の影を支配され、自らの影から放たれた無数の黒に艶めくベルトで、その動きを封じるように、ぐるぐるのビチビチに拘束された!
「ひぃぃっ、何てことー!」
 それを見た魔界主婦の皆さんが、更に拍車を掛けて逃げ惑う。――しかし、疑似太陽を背後にマヒロが滞空している以上、飛翔と共に大きく伸びるその影は、次々と容赦なく魔界主婦の皆さんを拘束していった。
 散り散りにされた上に拘束までされては、敵はユーベルコードを発動させる事も叶わない。そうして、地面には無数の魔界主婦の皆さんが転がっていった。

 マヒロがゆっくりと地面に降り立つ。周囲の状況を見渡しながら、マヒロは率直に口を開いた。
「やっぱり胸のベルトはボリュームないと映えないね。おばさんたち、出なおしてきたら?」
「ギャン!!!
 あ、あんただって胸がないじゃない!」
「ん? ボクはいいんだよ『可愛い男の子の特権』だから」
 そう、可愛いを兼ね備えた男の子に胸がないのは、その可愛さの為に、神が与えた光り輝くステータス。
 勝ち誇るマヒロの最後の言葉は、己がバストの為、血の滲むような努力を積み重ねてきた魔界主婦の皆さんの心に、一瞬で大量失血する程のクリティカルダメージを叩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
(前回で常にインナーに【オーラ防御】を纏わせないといけなくなってしまった兄ドラゴニアン)
まずは【指定UC】の応用でエインセルに俺の財布を持ってもらってから対峙しよう。
大丈夫だ、ちゃんと猫の姿でも持っていけるように紐をつけて提げれるようにしたからな。それを持ってあちこち飛び回るだけでいいぞ。

欲しければくれてやろう、探してみるといい。見つけられるものならな。
まさかただでくれるとでも思ったか?
希望を見せたところで試練を与え、諦めて絶望させることこそ悪の理念なのだろう?
ならば俺もその理念に従ったまでのことだ(と本に書いてあった)。
俺の財布を見つけられない限りDはやらん。(ドヤ顔)



「願望機とはいえ、子猫を寒さで震わせるなんて、悪です……!」
「悪に、服は不要……オーラこそが、強者の証、格好いいです」
 道中、背後から願望機の悪魔達による羨望の眼差しを浴びながら。地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は、その内心これでもかと言う程に悩んでいた。
(俺は、いったい何処へ向かおうというのだろう……)
 先の勧誘では、図らずもかなりの悪を見せつけたものの、正直『生きる世界線が違う』レベルで、悪と縁遠いところにあった陵也の心はかなりの大ダメージを負っていた。
 しかも、これがデビルキングワールドにいる間はずっと続くと思うと、もはやストレスマッハで胃が溶けそうである。
 ――そんな中で見えたもの。それはD回収について話をする魔界主婦の皆さん達の姿だった。
 これは一波乱を感じざるを得ない。話を耳にした陵也は、いったん視界の悪い所で立ち止まると、ユーベルコード【【昇華】風を追う白羽の猫(ピュリフィケイト・チェイスシャットエインセル)】で、子猫エインセルを召喚し、優しく話し掛けた。
「この財布を持っていてくれないか」
 それは、この世界の通貨であるDが入っている陵也の財布。
「大丈夫だ、ちゃんと猫の姿でも持っていけるように紐をつけて提げれるようにしたからな。それを持ってあちこち飛び回るだけでいいぞ」
 そうして、白猫に小さな首に紐を付けた財布を掛ける。エインセルは可愛らしく一声鳴くと、ユーベルコードの効果で完全に気配を消した。

「さぁ、そこのボーイもDを寄越しなさいな!」
 こうして陵也は、改めてこちらの様子に気付いた魔界主婦の皆さんの前に、心とは裏腹、極めて傲慢そうな雰囲気で姿を見せた。
「――欲しければくれてやろう、探してみるといい。見つけられるものならな」
「なっ――!」
 陵也の悪の参考書、初級編に記載のあった『傲慢ぶった振る舞い』を思い出して、陵也は思いきり胸を張る。
 そんな陵也の着ているものは、インナーにボトムの一着のみ。
「あ、あら? ポケットかしら……? でも」
 確かにボトムにはポケットがついているが、見る限り殆ど使われた様子がない。
 ぱっと見でも、凝視をしても、陵也が財布を持っているようには見えなかった。

「実は一文無しなんでしょ、ボーイ!」
「いいや、財布は隠した。まさかただでくれるとでも思ったか?
『希望を見せたところで試練を与え、諦めて絶望させることこそ悪の理念』なのだろう? ならば俺もその理念に従ったまでのことだ」
 きちんと本を読み悪の勉強した結果を、陵也は付け焼き刃だとバレないように魔界主婦の皆さんに告げていく。
「俺の財布を見つけられない限りDはやらん」
 最後の決め台詞に『ドヤァ!』という可能な限りの自信を効果音に背負い、陵也は力強く敵に言い放った。
「そんな、ど、どうすれば――そうだわ!」
 魔界主婦の皆さんに動揺と困惑の色が走る。しかし、ハッと気付いたように魔界主婦の一人がいそいそと魔界スマホを取り出した。

「魔界SNSの皆さん! 私達がデビルキング法に規律と誇りを持って挑めるように、社会を革命する力をー!」

 魔界主婦の皆さんのユーベルコード【社会を革命する力を】の発動! ――だが、このユーベルコード。その発動までに、非常に面倒極まりない手順を踏まなければならないのである。
 さっそく、魔界主婦の一人が必死にスマホを操作して、その思いを魔界SNSの人たちに訴えかける。
「『社会を革命、具体的には?』 え、えーっと、そうね『青少年が隠しているはずの財布を差し出す方法』……?
『めんどくせぇな、ggrks』ですって!? 私達を差し置いて、呼吸するように罵って悪を示すなんて! ずるいわ、キィィィッ!!」
 これは、魔界SNSの賛同者から願い事の荒唐無稽さを割った分だけ、効果を発揮するユーベルコードなのだが……まず、その賛同者が見つからない。
 願いは非常に現実的かつ事実であったのだが『それ、わざわざ同意いる?』レベルで情けなさ過ぎたのである――魔界SNSの皆さんも暇ではないのだ。

「こうなったら、裸にひんむいちゃいちゃうんだから~っ!」
 ついには、自棄を起こして襲い掛かってくる魔界主婦の皆さん。
「エインセル!」
 陵也はそれを待っていたかのように、呼び掛けに応じ姿を見せたエインセルを抱え上げると、複数の呪文を複数同時に編み上げ、魔界主婦の皆さんを一斉に吹き飛ばした!
「こんな所に、財布……こふっ」
 こうして――魔界主婦の皆さんは行殺レベルで力尽きた。
 ただ、追い剥ぎという悪を行おうとした上に、最後に見たのが癒やされる白猫であったなら、その心はきっと穏やかなものであったに違いない……。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
良いカモきたね~♪みんな(他の猟兵)も豊胸術を勧めるかな?。
デモン・フェイカーでボクの「女の武器」を贋作対象に、生やしてあげちゃう?(普乳でスレンダーな体型)
ううん、ワルいことするなら願望器のお姉さん達、力を貸して。(願望器を【デモン・フェイカー】の対象に)みんなが羨む、魅惑的な身体を与える願望器をここに。さあ主婦のお姉さん達、初回は無料、お試しあれ♪。(1人目は大当たりの肉体改造。あとはケモ耳生えたりどこか違うハズレも混ぜて作為的調整しちゃおう♪)
あ、2回目以降は有料だよ。Dを持ってきてね♪お得な10連コースもあるよ♪魔法の言葉、旦那に内緒で浪費も立派なワルだから♪(ガチャ誘惑)



「良いカモきたね~♪ これは他のみんなも豊胸術を勧めるかな?」
 猟兵達の前に立ち塞がった魔界主婦の皆さん。
 まじまじと見つめたユニの口が思わず二マリと笑みを浮かべた。目にした魔界主婦の皆さんの胸は、揃いも揃って、よく切れる包丁で縦切りにされた野菜の断面のように美しかった――。
 ユニは次に、相手の情報としてその身なりに視線を向ける。そもそもブランド品から貴金属、日頃の不満をそれらの購入で発散する節のある主婦たちは『贋作の悪魔』にとって格好のターゲットである。見れば、彼女達の一部が所持するバッグなどは、デビルキングワールドにある有名ブランドのパチモノであることをユニは即座に看破した。
 ――これはもう、肉付きの良いカモがネギと鍋の出汁を持って現れたようなものである。ただ、その胸には物理で肉付きの欠片も無いことが、非常に哀愁漂うものではあったが。

(これは、デモン・フェイカーでボクの「女の武器」を贋作対象に、生やしてあげちゃう? でもなぁ……)
 ふと浮かんだ思考にユニが改めて思案する。
 ユニのユーベルコード【デモン・フェイカー】で自分の『女の武器』を元に贋作を生やし『ない乳』を、黄金比のとれたスタイリッシュな体型を元にした『普乳』に――。
 当然、それもワルの為の布石なのだが、相手にしてみれば一時とはいえ『荒野が、なだらかな丘に代われば、宝物』となってしまう。それはデビルキングワールドにおける極めてダサい無償の善行として扱われてしまうかもしれない。
 ユニとしても、無償による善行などもっての外である。そうして、しばし考えた結果、これならばとユニは頷いた。

「ううん、ワルいことするなら――願望器のお姉さん達、力を貸して」
「は、はいっ!」
 そんなユニの考えを映し出し、連れ立つ願望機の悪魔が飛び出す絵本から差し出したものは――水なしで飲める、何だかとっても怪しいサプリ。
 それをユニは、こそりと【デモン・フェイカー】で元の願望機の能力を操り自分のものにし贋作を生やし増やした上で、魔界主婦の皆さんに差し出した。
「みんなが羨む、魅惑的な身体を与える願望器をここに。
 さあ主婦のお姉さん達、初回は無料、お試しあれ♪」
「まあ本当!? 最初から初回無料だなんて、親切過ぎてダサいけれども、これは使わない手はないわね!!」
 そうして、詐欺の第一歩としか思えない『初回無料』に乗せられて。試しに勇気ある魔界主婦の皆さんの一人が、二錠で一パックになっているそのサプリを勢い良く口の中に放り込む。
 次の瞬間、それなり美人な魔界主婦の奥さんは、顔はそのまま『バッキュンボンッ』などという数昔前の擬音が似合う、服がはち切れんばかりのメリハリボディを手に入れた!
「凄い! 凄いわっ!! 私も欲しいぃー!!」
 その効果を見た魔界主婦の皆さんが、こぞってユニの手が掛かったサプリを求め、手に入れては飲み始める。
 しかし――その二人目は、どこまでも広がる雪原のような胸をそのままに、頭に猫耳が生えた。
もう一人には、己の胸のように滑らかな、お尻に鱗のトカゲ尻尾が生えた。
「嘘ーッ!! どうしてー!」
「どういうことっ! どうして奥さんだけ、そんな綺麗な爆乳になれたのぉっ! 羨ましいわー!!」
 魔界主婦の皆さんから、唯一勝ち組となった奥さんは困惑しつつもまんざらではなさそうだ。
「えー、ケモ耳もトカゲ尻尾も魅惑的だと思うけどな。『魅惑的な身体』効果は間違ってないよ」
「なら、もう一回! もう一セット頂戴よ!」
「あ、2回目以降は有料だよ。Dを持ってきてね♪
 一回3千Dの超お得♪ 今なら千Dもお得な10連コースもあるよ♪」
「10連コースの2万9千Dなら、魔界美容外科に行くより、遙かに安く私もはち切れんばかりの大きな胸に……」
 ごくり、魔界主婦の皆さんが息を呑む。
「で、でも一瞬でそんなに使うのは流石に旦那に……」
 魔界主婦の皆さんの心が荒波のように揺れまくる――そこでユニはダメ押しに、魔法の言葉を投げ掛けた。

「大丈夫、旦那に内緒で浪費も立派なワルだから♪」
「「そうよねー! ワルってやっぱり素敵だわーッ!!♪」」
 魔界主婦の皆さんがその一言で、一気にユニの前に列を作っていく――
 だが今、願望機の効果はユーベルコードにより、ユニが手綱を握っているのだ……最初の一人だけを胸を大きく大成功させ、それを見せつけた後に、他を根こそぎハズレにする……悪魔も震え上がる恐ろしいトラップがそこにはあった。
 しかも、内容はどう聞いてもソーシャルゲームのガチャ形式であるが、パチンコやスロットなどよりも遙かに恐ろしい絞り率――もとい、そもそも大当たりの確率は、既に『0%』なのである。
 それを知らない魔界主婦の皆さんは『魅惑の身体ガチャ』の大当たりに、次は当たるかもしれないと希望を込めて、ジャバジャバと自分のDを溶かすように払っていき……。

 最後には、その場で『ガチャ課金で大爆死』した魔界主婦の皆さんによる、阿鼻叫喚が響き渡ったのは言うまでもない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
何という生々しい井戸端会議なのだ……!
「旦那がもっと悪だったら格好いいのに」という台詞が
まかり通ってしまう此の世界が恐ろしい
早く決着を付けて家に帰って伴侶に癒されたい(懲りていない発言)

Dを出せと言われてはいかしこまりましたと出す馬鹿が居るか
俺は悪を示さねばならぬのだ、共に行くぞ願望器の悪魔達!
俺の手札は【此の感情に~】、ご婦人へ不躾な質問をするという
精神的な悪事をぶちかますとしよう

「今更バストアップをしてどうするのだ」

嗚呼何という失礼千万な質問!だが答えてもらうぞ!
割と素朴な疑問でもあるので、真剣に問おう
針の力加減は、相手が一般市民という事なので加減をして
集まった主婦の皆様をじっと見つめよう



「あ~あ、旦那にはもっと格好良い悪を働いてもらいたいわ~。銀行強盗を成功させるとか、最高の悪じゃない?」
「分かるわぁっ。憧れちゃう。
 いたいけな子供の乗った幼稚園バスジャックとかも素敵よね~っ。旦那もその位の甲斐性見せればいいのに」
「………………」
(幾ら世界に敷かれた法令とはいえ、何という生々しい井戸端会議なのだ……!)
 言葉が上手く形にならない。絶句するニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)の前で、それに気付かず魔界主婦の皆さんは、デビルキング法による『高嶺の花』な悪を、まるでラフレシアが咲き誇るように語り続けている。
『幼稚園バスジャック――この奥方達にも、お子さんがいるのでは……!?』そう、震えながらもニコはかなり真剣に思い至ったが――如何せん、デビルキング法が敷かれたこの世界。幼稚園の園児達の前でバスジャックなどを行えば、一躍、子供達の瞳輝かせる皆のヒーローである。その勇姿は、同乗した子供が自ら大人になるまで語り継いでいくに違いない。
「……」
 痛い。頭があまりにも痛い――『幼稚園児に歓迎されるバスジャック』も『旦那がもっと悪だったら格好いいのに』という台詞がまかり通ってしまう此の世界も、正直ニコにはあまりにも恐ろしい。
「……早く決着を付けて、家に帰って伴侶に癒されたい……」
 先程、愛しの伴侶そっくりのぬいぐるみを木端微塵にするという惨劇が頭をよぎり、ニコは未だに悔恨に震えずにはいられない。しかし今はもう、とにかく早く帰ってそれを伴侶にひたすらに謝罪し、このような心凍り付くような環境から遠ざかって、柔らかく温かな世界で一緒に抹茶デザートでも食べて幸せになりたい……。

「そこの穏やか幸せオーラを放っているイケメン! デビルキング法的に悪の気配が足りなさすぎるわぁっ!
 悪でなければ、搾取されるのが定め。さぁ、手持ちのDをすべてこちらに貢ぐのよー!!」
 魔界主婦の皆さん、少し『イケメンに貢がれたい』という欲望が混じっている。が、言っている事は問答無用のカツアゲである。
 ニコは、依頼であると改めて心を据えて、魔界主婦の皆さんを見返した。
「Dを出せと言われてはいかしこまりましたと出す馬鹿が居るか。
 ――俺も悪を示さねばならぬのだ、共に行くぞ願望器の悪魔達!」
「は、はいっ!」
 悪など本来はニコの所業などではない。だが、これは成さねばならぬ事なのだ。
 願望機の悪魔が手にした絵本から、その心を理解したように飛び出したスピーカー付きのマイクを握ると、ニコは意を決してユーベルコード【此の感情に、名を付けるとすれば何とする(マッドネス・クロックワークス)】を発動させた。
 目指すは精神的ダメージ。それは、質問をぶつければ、ニコの満足のいく答えを得られるまで、本体の懐中時計から現れた時計針が、相手を鋭い先端でジリジリと心身ともに攻撃していくユーベルコード!
「答えてもらうぞ!

『今更バストアップをしてどうするのだ』」

 ――場が、一瞬で凍り付いた。
 ユーベルコードの効果では無い。魔界主婦の皆さんの、情熱に燃えている誇り高きマインド――バストアップに掛ける存在意義全てが。
 その純然たるニコの質問により、氷点下絶対零度、コキュートスもビックリな冷気を浴びて凍り付いたのだ。
(嗚呼、何という失礼千万な質問! だが答えてもらうぞ!)
 ニコならば本来己が決して取る事のない無礼に、内心にて血の涙が伝い零れる。
 しかし――既に伴侶がいる、お子さんもいる。環境も齢もそろそろ家庭を支えるべく落ち着いてもいい頃であろう。
 ならばどうして――そこまで思い描いたところで、この質問はニコの中で『悪の所業』というよりも『思いの外素朴な疑問』として腑に落ちた。
 改めて、ニコは答えのない魔界主婦の皆さんに向き直る。
 そしてぶつける、悪を一度思考から抜いた、あまりに純粋過ぎるその疑問。

「再度問おう! 『今更バストアップをしてどうするのだ』!」

 やめて! 魔界主婦の皆さんのHPはもうゼロよ!!
 ついに、ニコの質問とその視線の重さに耐えきれなくなった魔界主婦の皆さんが、ユーベルコードの時計針につつかれつつも、それどころではないと悲鳴を上げながら倒れ伏す――これはもはや、一方的かつ圧倒的な恐ろしい悪(無自覚)による虐殺(メンタル面なので問題は無い)となっていた。

「お、女は幾つでも美ボディに憧れを抱いていたいのよぉーッ!! うわぁーんッ!!」
 耐えきれなくなった魔界主婦の皆さんが、ついに子供のように泣き始める!
「な、なんてデビルキングをも、恐れぬ悪――!!」
 その嘆きを耳にしながら、後ろで見つめていた願望機の悪魔達がニコに盛大な拍手を送り始めた。
「……?
 何故だ……」
 その解に、理解はしたが共感は出来ず。更に重ねるようなこの惨劇――。
 この状況を、元凶でありながら純粋実直の極みであるニコには、更なる疑問を連れ立ちながら、ただただ首を傾げる事しかできなかった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘスティア・イクテュス
おう、誰がえぐれてる胸だ、表へ出ろ
あるのよ!ほら!こうちゃんと谷間も!(ない)
というわけで1章の悪魔。慰謝料分しっかり働いて貰うわよ!(脅迫)

主婦質の前に願望機の悪魔を連れて行き一言
旦那の代わりに家事育児を手伝い、子に勉強を教えてくれて、ご近所付き合いを変わりにしてくれる…そんな商品が此方(人身売買)

しかも彼女の能力でジムに行かずに(家でダンベルを使って)バストアップも夢じゃありません
しかも今ならこれ(レッドキャップ)も付いてくる【爆撃】


さぁ、ミサイル受け取ったわね?Dを出せ…因みにクーリングオフは受け付けておりません(押し売り)

願望機の悪魔?気性的に主婦にこき使われてWINWINでしょ?



「そ、そこまで、そこまで言っては……!」
 先程から、今にも泣きそうな切ない声が他の猟兵の元にまで響き渡って来る。
 そこには、隣を歩くヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)――胸を張ってそれを名乗れる『宇宙海賊』の威圧を受けて、震え上がっている願望機の悪魔の姿があった。
 先程から、この場に辿り着くまでの間、ずっとこの調子である――。
「胸はあるのよ! ほら! こう、ちゃんと谷間も!」
 先程の『願望機ダンベル事件』は余程衝撃的なものだったのか、そんなヘスティアが頑張って胸をぐいっと寄せて上げる。
 しかし……際だったのは胸ではなく、悲劇的な事に不規則的に寄せられた服の皺だけだった。
「あれ……? よせてあげて、平ら……ということは、
 も、もしかして――お胸が、へ、へこんで」
「おう、誰がえぐれてる胸だ、表へ出ろ」
「きゃぁあああっ!」

「――というわけで。
 慰謝料分しっかり働いて貰うわよ!」
「ふぁいっ……」
 脅迫と共に、柔らかな顔面の両頬を引っ張られ、べそをかきながら返事をする願望機の悪魔。これはどちらが支配すべき悪かが一目で分かる構図である。これならば、ヘスティアがデビルキングワールドに単独在住しても、問題無く立派に生きていけるであろう。
 そうして向かった先には、立ち塞がり生々しい世間話をする魔界主婦の皆さんの姿――

「そうなのよぉっ、役に立たない旦那ならせめてちゃんと家事育児を手伝って欲しいわぁ」
「うちの子にはやっぱり悪も学べる英才教育を受けさせたいのよ~。その為には家庭教師を雇わないと……どこかにいい子いないかしらねぇ」
「まあ素敵! うちの子ってば悪に疑問を持ち始めちゃって。ボランティアに手を染めようというのよ!
 このまま育ったら将来の夫婦の老後が心配だわ、このままだと恥ずかしくてご近所付き合いもままならなくなっちゃう……」
 それを見たヘスティアは、魔界主婦の皆さんの雑談によって既にガッチガチに発動しているユーベルコード【ウチの家に限って…】にも臆することなく、その正面に願望機の悪魔を連れ立って声を掛けた。

「奥さん奥さん、旦那の代わりに家事育児を手伝い、子に勉強を教えてくれて、ご近所付き合いを変わりにしてくれる…そんな商品が此方」
「えっ?」
 魔界主婦の皆さんの驚きに、すっとヘスティアの斜め前に願望機の悪魔が差し出される。
 ヘスティアの心なし手慣れているようにも見えるその光景は、どう見ても『人身売買』のそれだった。
「えっ?」
 慰謝料分戦う(働く)とは言ったものの、これは想定外である。願望機の悪魔は思わず動揺に左右を見渡すが、当然該当者は自分しかいなかった。
「しかも彼女の能力でジムに行かずに(家でダンベルを使って)バストアップも夢じゃありません」
「ひぇっ、根に、根に持ってる、根に持ってます~っ!!」
『()』内が言わなくても伝わる辺り、流石は人の願望を叶える悪魔である。だが、これは気付かなかった方が、ほんの少しだけ幸せだったかもしれない。
「しかも、今ならこれも付いてくる」
 商売相手の心を鷲づかみにする少し焦らした口調に乗せられて、ヘスティアから差し出されたものを覗き込む魔界主婦の皆さん。
 そこにあったものは――『ASBM運搬端末レッドキャップ』。赤フードを被った犬の形を模したドローンは、
「紅蓮に染め上げなさい! レッドキャップ!」
 その口から突如、超小型化した宇宙対艦ミサイルを発射し、その場を問答無用で爆撃した!

 一瞬にして、爆風と煙が視界を隠す――地形が変わった爆心地の中央、立っていたのはそれを予測していたヘスティアと、巻き込まれなかった猟兵のみだった。
 当然――魔界主婦の皆さんはもちろん、願望機の悪魔も巻き添えである。
「さぁ、ミサイル受け取ったわね? Dを出せ……」
 据わった瞳に浮かぶヘスティアの笑顔。もはや悪魔の笑みである――が、それがもう、この上ない程に輝いている。
「因みにクーリングオフは受け付けておりません。ASBMだって高いんだから」
「人を吹き飛ばしておいて金を請求するなんて悪よ! 悪過ぎるわ!! こちらも法外な慰謝料を請求するわよ!!」
「――もう一発お届けする?」
「ヒえッ! た、退散よ~っ! 退散するわーっ!
 でも、この小娘はもらっていくわね。ちょうど無賃金のお手伝いさんが欲しかったのよ~っ」
「えっ!? いやーッ、ドナドナだけは嫌です~ッ!!」
 こうして、生贄となった願望機の悪魔は、撤退する魔界主婦の皆さん達のところへ見事にドナドナされていった。

 後にヘスティアは語る。
「願望機の悪魔? 気性的に主婦にこき使われてWINWINでしょ?」
 その見解は、正しかった。数日後、願望機の悪魔は、雇われた魔界主婦の皆さんの環境に完全に順応していたのである。
 ――これは、ヘスティアの冷静に人と状況を見る目が胸の大きさとは比例しない事を、確かに証明した瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『こおりのあくま』

POW   :    狙った相手は逃さない
【ステッキ】を向けた対象に、【氷の魔法】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    得意な地形に変えるのもお手の物
【雪】を降らせる事で、戦場全体が【雪原】と同じ環境に変化する。[雪原]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    形から入るのも大事
【理想とするデビルクイーンの姿】に変身し、武器「【ステッキ】」の威力増強と、【舞い散る雪の結晶】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミネルバ・レストーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 新王国『わたしのせかい』の王座にて。
 踏み込んだ猟兵を前にして。魔界主婦の皆さん、もとい『ペタパイの同志』をメタメタにされたオブリビオン『こおりのあくま』の怒りは頂点に達していた。

「皆の納めてくれるDが異常に少なくて、理由を聞いたら――あなたたちのせいなのね……!
 Dが集まらなかったら、私をペタパイにした世界に復讐できないじゃない――っ!!」
 どうやら、もう世界にカタストロフを起こす事は隠しもしないようだ。
「魔界主婦の皆さんは、まだ救いはあるけど! でも、でも――。

 私の、この胸は、豊胸手術なんかじゃ大きくならない!!」

 こおりのあくまが怒りを露わに、猟兵達に可愛い星と羽根モチーフの杖を振り下ろすように突き付ける。
 だが――あれだけの道のりを過ごして来た猟兵達は、身構えるよりも先に。つい、こおりのあくまの胸に目が行った。

 ……思ったほど、ペタンコではないのでは……?
 オブリビオンなので、成長の未来こそないが。胸元には、目に見えるほんのりとしたふくらみがあるように見えるのだ。
 平らではない――これは『すり切れたアスファルトの地面』ではないだけ、『青々広々とした海の水平線』ではないだけ、マシなのでは?
 そのような目線を受けて、こおりのあくまはその意図を理解したかのように、涙ながらに絶叫した。

「これはっ『ドレスについてるパッドの形』よーッ!!」

 その事実は――悲しいまでに、救いがなかった。
 万人を救うと言われる神であっても、ペタパイは救わなかったのだ。

 悲劇。
 もはやオブリビオンである以上、こおりのあくまに(胸の)未来はない。
 ならば、これはもう最初の依頼に則し、相手をコテンパンにして、集め溜め込んだDをばら撒かせるしかない。
 それしか、方法がない……それが『ペタパイは救えなくても』せめてデビルキングワールドだけは救える、唯一の道なのだ。
 
 さあ――ペタパイの悲哀を犠牲にして、世界を救え!!
地籠・陵也
【アドリブ連携大歓迎】
(かちんときたらしい兄ドラゴニアン)
いい加減にしてもらおうか。
大きくなれないからカタストロフを起こして復讐??
そんなもんで胸が大きくできたり復讐できてたらなあ……

身 長 だ っ て 伸 び て る ん だ よ ッ !!!
(切実に叫ぶ身長159.2cm)

俺は絶対にまだ諦めないぞ、毎日カルシウムもプロテインもとって程よく運動して!!170とはいかずとも165までッ!!
大きくなれないからと自棄を起こす心の狭さをその胸が表しているんだと教えてやる!!
【指定UC】+【多重詠唱】!攻撃回数を増やして【浄化】と【破魔】の魔術で畳み掛けるぞ!
敵の攻撃は【氷結耐性】で受ける!


ヘスティア・イクテュス
(目頭を押さえ)くっ…聞いてるだけで涙が…これが氷の魔法でダメージを与える彼女のUC!?胸に痛みが…!?

けれどわたしは負けない!何故ならばわたしにはまだ成長の希望があるから!(身長は初期から伸びてない)
彼女を倒して!(この世界にカタストロフを起こさせはしないわ!)奪ったDでわたしの胸の増胸を!


相手に合わせて『空中戦』
ティターニアで飛びティンク・アベルによる敵の機動、動きのパターンの『情報収集』、そして攻撃の回避よ!【見切り】

ミスティルテインで牽制しながら情報の処理(詠唱)
そしてアペイロンで周りの冷気を吸収し高熱線のマルチ・ブラスターを発射!

もし出会いが違えば…最高の戦友になれたでしょうね…



「分かる!? 一所懸命頑張ってっ、泣きながら胸にタオルを詰めてみて!
 それでもパッド以上の膨らみができない! ――この悲しみが! あなたたちに分かる!?
 こんな悲しみから解放される為には、もう世界を壊すしか無いじゃない!!」
 こおりのあくまの叫びが、大広間に響き渡った。
 それを聞いたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が、言外に悲鳴を上げる代わりに目頭を強く押さえる。
「くっ……聞いてるだけで涙が……これが氷の魔法でダメージを与える彼女のユーベルコード!? 胸に痛みが…!?」
 ――こおりのあくま、ユーベルコード未使用。しかし、それでこのダメージなのだから、ヘスティアには確かに恐ろしい強敵である。
 しかし、ヘスティアが涙しそうなまでにしみる胸の痛みに、うめき声を上げる中、
「いい加減にしてもらおうか」
 ――凛とした声が響いた。発せられたのは仁王立ちとなった地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)からだ。
 静かな言葉、何かを抑え込むような声音。だが陵也のその声には、眠れる竜が呻り吼えるような内面に激しい怒りを伴っていた。
「大きくなれないからカタストロフを起こして復讐??
 そんなもんで胸が大きくできたり復讐できてたらなあ……」

『身 長 だ っ て 伸 び て る ん だ よ ッ !!!』

 ハッと、ヘスティアが顔を上げ、隣に並ぶ陵也の身長をガン視する。
 陵也の身長『159.2cm』――そう、身長172.2cmのヘスティアには、近くにいる陵也とは自然には視線が合わない。少し目線を落とさないと、目が合わせることすら叶わない。
 身長172.2cmの女子と、そこから約13cm背の低い男子――それは、もし合コンであったとすれば、血も涙もないシビアな女性は『かなりの確率で序盤から恋愛対象から外す』であろう、悪魔のような断罪をしかねない身長であったのだ。

 ――言わなければ、口に出さなければ、まだ気付かれなかったかもしれない。
 だがそれを、陵也は思いきり怒りと共に『自虐自爆』の勢いで容赦なくこの場に差し出したのだ!
「だが――っ、だが俺は絶対にまだ諦めないぞ!
 毎日カルシウムもプロテインもとって程よく運動して!! 170とはいかずとも165までッ!!」
「そうだわ!
 ペタパイなんかにわたしは負けない! 何故ならばわたしにはまだ成長の希望があるから!」
 そう、この二人は『成長』という希望の星が輝いていた。未来がある! ならば、まだ絶望に浸る訳には行かないのだ!

 たとえ……二人揃って身長が初期から殆ど伸びておらず――もしかしたら成長から既に見放されている可能性があったとしても……。

「――大きくなれないからと『自棄を起こす心の狭さを、その胸が表している』んだと教えてやる!!」
 その言葉に、先程から『さっきからこのやりとり、悪からは遠くない……?』とざわめいていた願望機の悪魔達から歓声が上がる。
 それに合わせるように、ヘスティアが吼えた!
「そうよ! この世界にカタストロフを起こさせはしないわ!
 彼女を倒して!
『――奪ったそのDでわたしの胸の増胸を!』」
 悪魔少女達から盛大な拍手が上がる!
 しかし――ヘスティアも、同じ努力を目指す仲間だと思っていた陵也が、その言葉に『ん!?』と思わず驚きを隠さず相手を見やる。
 陵也がそれを言及するより早く、耳を塞いでいたこおりのあくまが叫んだ!
「うるさーい!! もう、私には『歪んでいない鏡』のような胸からの脱却はないのよ!
 それをけなすわ、人の有りD(金)巻き上げようだとか、そんな悪は私一人で十分!
 皆まとめて叩きのめしてDを巻き上げ、そこのバルコニーから吊してあげるわ!!」
 オブリビオンに成長はない――その事実を、初っ端から思い知らされたこおりのあくまは、全力で逆鱗を踏み躙られ泣きながら襲い掛かって来た!

 こおりのあくまがステッキを構え、ユーベルコードで理想となるデビルクィーン――全体的にスレンダーなのに、胸は大きくたゆんたゆんというロマン溢れる大人の姿に変化する!
「最初からそうしてればいいだろ!!」
「1回に『2分』保たないのよ!」
 思わずツッコミを入れた冷徹な陵也の言葉に、こおりのあくまがこちらまで涙したくなるような反論を返し、燦めく雪の結晶を伴いながら、天井が非常に高く広い大広間の上層空間へと飛翔する。
「――ひどい、偽りの姿でもカップラーメンすら作れない時間だなんて……それじゃあ夢も見れないわ……」
 これにはヘスティアも同情を禁じ得ない。しかし、呟いた鬼の所業じみた言葉は、きちんとこおりのあくまに届いていた。
「改めて聞きたくない現実を突き付けないで! ばかぁッ!!」
 どうやら姿は変わっても、中身の精神年齢までは変わらないようだ。

 城の玉座がある大広間。初っ端からギャン泣きしながら、天井高くより猟兵を見渡したこおりのあくまは、中空からステッキを二人の元へ向け、氷の魔法により現れた氷柱を一気に叩き付ける。
「空中戦だったら――!」
 ヘスティアは瞬時に、まるで妖精が羽根を広げるようにそれを金属で顕わした純白のジェットパック・ティターニアで空へと舞い上がり、その氷柱を回避する。
 ヘスティアの回避によりその鋒先を向けられた陵也は、そこら辺で拾ったバールのようなもので、正面に盾の防御壁を展開して氷柱を打ち砕いた。今回、バールのようなものは、本当に固有名称がない事が常に悔やまれる程に大活躍である。

 同時にこおりのあくまと対峙したヘスティアが、ティターニアと繋がるビームライフル・ミスティルテインを構え、こおりのあくまを狙い、撃つ。
「ふん、そんなの当たらないわ!」
 デビルクィーンの姿に相応しい軽い冷笑を浮かべながら、こおりのあくまは軽やかに旋回して一撃を躱す。――だが、これは相手の行動を見る為の威嚇射撃だ。
「ティンク・アベル。敵の機動、動きのパターンの分析!」
「かしこまりました」
 威嚇射撃を繰り返すヘスティアの呼び掛けに、サポートAI端末ティンク・アベルが主人とも言える持ち主へ冷静な声音で応え、即座にこおりのあくまを捕捉しデータを所有主へと送り始める。
「データ収集を完了致しました。目標の行動、完全に捕捉。七秒後、六時方向からこちらに向けて魔力攻撃」
「了解」
 ティンク・アベルのカウントダウンが聞こえる。ヘスティアは、それに合わせて装備していたアペイロンを本格稼働させる。
 こおりのあくまが飛翔の軌跡として残していく、凍えるような冷気をアペイロンはエネルギーとして一気に吸収し――
「今!」
「――っ!?」
 こおりのあくまの攻撃よりも一秒早く、アペイロンを構えたヘスティアが、エネルギーを高熱線の領域まで収束させたユーベルコード【マルチ・ブラスター(マルチブラスター)】を撃ち放った!
「きゃぁあ!」
 鋭い熱量で撃ち抜かれたこおりのあくまが、衝撃で地面に落ちる。
「追撃、お願い!」
 上空から、下で構えていた陵也に向けて、ヘスティアの声が飛ぶ。
「分かった!」
 陵也がいる地上からでは、高速で展開される空中での乱戦は手が出せない。
 だが――いつかは必ず地面に墜ちる。それを信じ待ち構えていた陵也は、手にしていたバールのようなものから、いつしか厳かな空気を漂わす形見の杖に持ち替え、それを高く掲げ持った。
 発動したのは、ユーベルコード【改良術式【秘された魔術書】(ミリオラメント・グリモワール)】――複数の術式を同時詠唱、元来数百にわたる呪文の殆どを省略して生み出された、純白に輝く数え切れない程の光の弾が一斉に陵也の周囲を取り囲む。
「行っけぇ!」
 陵也が恩師の形見である杖を、体勢を立て直そうとするこおりのあくまへと振り下ろす。それを合図に、浄化と破魔の力を交えた光弾が豪雨のように降り注ぎ、相手の悲鳴ごとその姿を呑み込んだ。


 光の嵐が止んだ後には、こおりのあくまが、ぷすぷすと煤けた姿で転がっていた。
「もし出会いが違えば……最高の戦友になれたでしょうね……」
 ヘスティアがその姿を見ながら、ゆっくりと降りてくる。
「痛ったぁ……っ。あ、分けておいたDの袋が――!」
 しかし、こおりのあくまは少しよろけながらも埃を払って立ち上がった。あれだけの攻撃を食らい普通に立ち上がるとは、このあくま、非常に頑丈である。
 だが、その分けられていたDの袋は、先の衝撃により陵也とヘスティアの足元へと転がっていた。
「これが、これがあれば私もバストアップが――!」
 ヘスティアの目が完全にDに眩んでいる。問い質すまでもなくその意図を理解した陵也は、ひょいとヘスティアからその袋を取り上げた。
「Dはこいつにばらまかせるまでが依頼だろう」
「どうして! このDがあれば、儀式魔術であなたの身長だって伸びるのよ!?」
 もはや完全に依頼よりも『胸』である。しかし当たり前だ、乙女達のバストアップ問題も、青少年の低身長問題も、この経緯により、どれだけ深刻なものかは火を見るよりも明らかだったのだから。
「クゥッ……それでも! 俺にはネコババはできな……」
 疑念の気配――その様子を、背後で願望機の悪魔達が凝視している。
「いや、悪らしい言い方、言い方……!!
『ふっ――こおりのあくまが絶望する瞬間を見るのは、俺の身長問題よりも、ずっと【愉悦】だからなぁっ!!』」
 バンッ! と悪のオーラを漂わせた集中線が陵也に集まる!
「わ、なんて……切実な願望を踏み躙り、己のコンプレックスを投げ捨てても、人の不幸の蜜を味わうなんて、突き抜けた悪です!」
 後ろで、喜び始めた願望機の悪魔達の感激の声を聞きながら――陵也は内心で、読んだ本の一文を思い起こしていた。
 あの本には――『とりあえず、人の不幸に対して【愉悦】と言っておけば悪っぽく見える』と。今、その効果はかなりのものだと実感できたが、内容が若干上級者過ぎて、少し陵也にはついていけない。

「ふははは! さあ、持っていけ貧民ども!!」
 そして――『思った以上に、猟兵内にDを狙う敵がいる』と判断した陵也は、急ぎ、何事かと悪魔達が集まり始めた眼下のバルコニーから、やはり本(省略)により罵りながら、きらめくDをばらまいた!
「「あああああ! Dがーーーっ!!」」
 こおりのあくま、そしてヘスティア両名から悲鳴が上がる。

 これで身長が惜しくなかったかと言えば、嘘だ。泣きたくなる程、嘘だ。
 だが悪の肩書きのもと、それでも陵也は、ついに最後まで捨て切る事の出来なかった己の善性に従って行動したのである――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マヒロ・ゾスティック
キヒヒ、そんなに救いが欲しいならあげるよ
ただし自分だけど自分にじゃない最悪の形でだけどね!

雪を降らせ始めたら願望器悪魔たちに指示してスキー板を出させて乗る
「おやこんな所に雪が積もった地蔵が並んでるなぁ?なんだ寸胴シスターズか」と裏切らない程度に悪く扱いながら
こおりのあくまを視認してUC発動

ベルトだけのボンテージ風着衣で奴隷化させたこおりのあくまコピー悪魔を召喚
でもちょっと弄ってある
そう、こいつはこの通り巨乳!
誤魔化しようのない本当の胸!
胸をぺしぺし叩いてドMに弄り
「さあ、ナイムネの自分に引導を渡せー!君自身なら当然雪なんて平気でしょ!」

奴隷悪魔に注目させた間に
スキーで背後に回り手裏剣で◆暗殺



 雲も無い大広間の上層空間から、静かに雪が降り落ちる。
 儚い美しさと思われた雪は、しかし見る間にその質量を増して大広間一面を白銀へと染め上げた。
「決めた……私の胸を助けてくれなかった、この世界をぶち壊す前に、本格的にあんた達をぶちのめすんだから……」
 こおりのあくまがぽつりと呟く。
 そうして、雪はあっという間に止み、雪原とも錯覚する、新雪で埋め尽くされた空間だけが残された。
「私を怒らせた事を後悔することね!!」
 怒りを迸らせたこおりのあくまは、激昂の決め台詞と共に、一瞬誰をターゲットにすべきか悩んでから、一番近くにいたマヒロ・ゾスティック(堕ちし快楽の淫魔忍・f31759)をビシィッと指差した。
「ふーん、ボクをご指名なんてキミ良い趣味してるね。
 キヒヒ、そんなに救いが欲しいならあげるよ。ただし――
『自分だけど自分にじゃない』最悪の形でだけどね!」

 マヒロが悪魔の権能により、本来既に機能を失った両手足を動かし、華麗に後方へと飛び退いてこおりのあくまとの距離を取る。
 そして、寒さからであろう、後ろでサボりを決め込んでいた願望機の悪魔達を、服に仕込んでいる自由自在ベルトの一部でビシバシとしばき倒した!
「おやこんな所に雪が積もった地蔵が並んでるなぁ?
 雪を払ってあげようと思ったのに――なんだ寸胴シスターズか」
「きゃぁっ! デビルクィーン!! 顔はっ、顔はやめてください~っ!」
「ちゃんと、その雪で『冷えてイイ音しそうな鉄鋼板の胸』を狙ってるから平気だよ。ホラ、それよりさっさと出して」
 何が、と言う必要がないのは非常に便利だ。マヒロは願望機の悪魔達を顎で使うと、今一番有効に使えるアイテム――スキー板を出させてその上に乗った。

「ふん、その程度で私からアドバンテージが取れると思う?」
 こおりのあくまは、柔らかすぎるまでの新雪に足を沈み込ませる事もなく、そしてほぼ足跡すら残すことなくにその場に立っている。
 そして、こおりのあくまは、澄んだ冷気を漂わす己のステッキを、こちらに向けるべく振りかざす。
 ――そこまでの。一連の行動全てをマヒロは見ていた。
 余す所なく、逃す事なく。それは己のユーベルコードを最大限にまで引き出す為の手段。
 マヒロの遊色の瞳が、輝きを増してこおりのあくまを凝視した。
 次の瞬間――マヒロのユーベルコード【淫魔忍法・口寄せ存在転写悪魔(インマニンポウ・クチヨセソンザイテンシャアクマ)】が、目の前にこおりのあくまの存在をほぼ完璧にコピーさせながら、その性質として『マヒロの奴隷』という概念を付け加えた、奴隷悪魔を召喚させた!
 現れたこおりのあくまのコピー。しかし、その着衣は同じ蒼色でも、ドレスではなくガチガチのベルトボンテージ――

「きゃああああ!! 私になんて格好をさせるのよ!
 大体、そんなベルトの際どい衣装、私に似合うわけ……あれ……?」
 そこまで告げたこおりのあくまが、現れたもう一人の自分を見て、その違和感に目を見開く。
「そう! このキミの奴隷悪魔――こいつは見ての通りの『この巨乳』! 誤魔化しようのない『本当の胸』!!」
「――!!」
 こおりのあくまを模倣した奴隷悪魔は……ベルトファッションで胸がハッキリと強調されていた。胸が、ある。ベルトに負けない、胸が、ある――
「あああああああああ!!!!!」
 それを見たこおりのあくまが、『自分のくせして胸がある』その嫉妬に発狂しそうになった!
 マヒロは、奴隷悪魔のベルトで強調された胸を『えむ心を誘う仕草』で弄んでから、トンと一歩その背中を押した。
「ちょっと! 私にえっちなことしないでよ!! その胸が、その胸がーっ!!」
「さあ、このナイムネの自分に引導を渡せー! 君自身なら当然雪なんて平気でしょ!」
 奴隷悪魔が、自信に満ちたこおりのあくまと同じ笑みを浮かべてマヒロに応える。
「そうね、マヒロ様! 胸がない私だなんて存在が許せないわ! 今すぐこの黒歴史を修正しないと!!」
「誰が、黒歴史じゃぁあああ!!」
 その瞬間、その場の誰もが、本人同士による魔法戦が起こる事を想定して身構えた。
 しかし――実際に目の前に展開されたものは、本人同士が相手に掴み掛かって雪の中を転がり回るという……何とも別の意味で恐ろしいキャットファイトであったのだ。

「……あちゃー……
 ま、目的さえ達成できれば、ね」
 今ならば拍子抜けなくらいに、こおりのあくまは奴隷悪魔に釘付けだ。
 マヒロは、ごろんごろんと雪原を転がる相手を注意深く観察しながら、スキーでその背後に回り込む。
そして気配を完全に消すと、こおりのあくまの頚部に忍者手裏剣を投擲して突き立てた!
「――痛ぁいっ!!」
 こおりのあくまから悲鳴が上がる。
 しかし、それを抜いてなお、余程目の前の相手が許せなかったのであろう。こちらは気にも留めずに、再び奴隷悪魔との取っ組み合いをし始める。
 ――仮にも暗殺術を嗜んだ者の手裏剣である。本来ならば痛いで済むものではない。

「…………」
 マヒロの与えたダメージは確かに蓄積された。その手応えを感じつつも、マヒロはここで戦線から引き下がる事に決めた。
 耐久力のある『どえむ』は愉しみ甲斐がある。しかし、自分同士で容赦なくキャットファイトを繰り広げるその姿は……今のマヒロの性癖には、少しばかり刺さらなかったのである……。

 やるべき事は果たした――ならば、後の見せ場は他の猟兵にでも託すことにして。
「ほら、寸胴地蔵シスターズ。そのタングステンの胸が凍りつく前に何か芸でもしてみなよ」
 びしぃっ! ばしぃっ!
「きゃんっ! ご機嫌斜めのデビルクィーンも悪で素敵です~っ!!」
 ――自分はそれが終わるまで、この願望機の悪魔達でもいじめて愉しむことにでもするとしよう……。己が差し向けたとはいえ、ドン引きするような女の子の生々しい取っ掴み合いよりも、自分にはこちらの方がずっと愉しみ甲斐がありそうだと思えたのだ……。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
バレちゃった?でもその溜め込んだD、別にボクが使い切っても構わないよね♪。ワルは成功してこそのワルだよ。
【ゴーイング・マイウェイ】ボクの金貨や魔界主婦のお姉さんから集めたD(通貨の内の金貨)を魔力ごと代償に、Dが集められてる場所へ侵入。
盗み、自身のモノにしたD(金貨)さえあれば、雪原装備も思いのままに♪ペタパイだって救えるかもね?ほら胸が苦しくない?国規模で胸が大きくなる豊胸儀式魔術だって成功するよ(オブリビオンに対して一瞬だけ試みて、咄嗟の一撃。錬成ダガー投擲)
慈善?でも魔界主婦の旦那さんって、実はペタパイ好きなんじゃない?破局しちゃうね♪横取りしたDで離婚扇動ワルへ連鎖しちゃえ


フィア・シュヴァルツ
「ほほう、どうやら我と同じ悩みを持つもの同士というわけか。
だが、Dによって願いを叶えられるのはどちらか一人だけ。
ならば、我は涙を飲んで鬼となろう」

さあ、ボコってDをいただくとするか!(嬉々として杖を構える
ふむ。氷魔法を得意とする我に対して氷魔法で挑んでくるとはおもしろい。
正面から迎え撃ってやるとしよう。

【極寒地獄】の魔法を発動。
周囲一帯を凍りつかせる大魔法で氷の迷宮を作り出してやろう。

「くくく、いくら飛翔できても氷の迷宮の中では意味があるまい。
さあ、徐々に凍りついていくがよい。
そして、おとなしく溜め込んだDを我に差し出すのだな!」

それにしても、そうか……
ドレスにパッドをつけておく手があったか。



「ぜえっ、ぜぇ……っ」
 先のユーベルコードが消え、荒れに荒れた雪だけが、こおりのあくまに起きた惨劇を物語っていた。
 そして、こおりのあくまが乱れた息を整え直して、ゆっくりと城の空間が余りある天井に向けて杖をかざすと、再び降り積もり始めた雪は、その残骸をも綺麗にあっという間に上書きするように掻き消した。
「雪かー……」
 降ったばかりの新雪はあまりにも柔らかく、何かしら対策がなければ完全に己の動きに支障をきたす。それを目にしては呟いたユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)は、この状況下についてしばらく考えると、こおりのあくまに目を付けられる前に、こっそりと己のユーベルコード【ゴーイング・マイウェイ】を発動させた。
 ――このユーベルコードはあらゆる行動を成功させる代わりに、代価に【金貨】を差し出さなければ容赦なく失敗する。だが、その下準備はユニ自身の手持ちと、先程『魔界主婦の皆さん』から巻き上げたDに含まれる金貨で完全に整っていた。
 取った行動は、誰にも見つかる事なく、とある場所へ辿り着くというもの――戦場となっていた大広間から姿を消したユニが、手持ちのDの殆どを使い切り辿り着いた先には、『D収集管理所』とご丁寧に名札の貼られた一つの部屋だった――。

「ほほう、どうやら我と同じ悩みを持つもの同士というわけか」
 一方、ユニが消えたことに誰も気付いていない大広間では、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)がこおりのあくまを前にして、ふむふむと、非常に、この上なく満足げな顔をして語り掛けていた。
「一緒にしないで! 私の方がまだ――ないけれど……」
「ふっ、否定しない正直さは称賛に値しよう。だが――Dによって願いを叶えられるのはどちらか一人だけ。
 ならば、我は涙を飲んで鬼となろう」
 こおりのあくまがその言葉に驚いたように息を呑む。その意味を問い掛けるよりも早く、
「さあ、ボコってDをいただくとするか!」
 フィアは相手の話を聞くまでもなく、もうかつて無いほどの喜びを露わに、先端に巨大なオーブの付いた両手杖をビシィッと突き付けた。
 涙を呑んでとは言うが、ここに涙があったとしたらそれは間違いなく嬉し涙であったことだろう。
「え、ちょっと待って。もしか――」
「問答無用!!」
 会話などもはや不要とばかりに響く、高らかなフィアの鬨の声。
 そして、戦端の幕は切って落とされた。
 フィアのありあまる嬉々とした殺気に、こおりのあくまが先の言葉を即座に呪文詠唱へと切り替える。そして、理想のデビルクィーンへと姿を変えると、上層へと舞い上がりながら、その一つ一つが人の頭部ほどはあろうかという雹を、勢い良く雨霰と降らせ始めた。
 雪原が一気に、氷塊交じりの小さなクレーターであふれ返った。同時に、フィアは自分の上に落ちてこようとするものを、厚さ一メートルはあろうかという氷壁の天井を生み出し、ノーダメージで捌いていく。
「ふむ。氷魔法を得意とする我に対して氷魔法で挑んでくるとはおもしろい。
 正面から迎え撃ってやるとしよう」
 敵は上層から降りて来る気はないらしい。ならば、
『我が魔力により、この世界に顕現せよ、極寒の地獄よ!』
 フィアは高らかに呪文を謳い紡ぎ、氷の迷宮を生み出すユーベルコード【極寒地獄(コキュートス)】を、地上ではなく天井に向けて撃ち放った!
「なっ――!? えええっ!!」
 猛烈な吹雪と共に、無数の氷の壁が大広間の天井から下に向かって連なっていく。
 そして最後に、下の空間へと逃げようとしたこおりのあくまを封じるように、本来天井となる壁で抑え込んだ。
「くくく、いくら飛翔できても氷の迷宮の中では意味があるまい……!
 じわじわと、凍りついていくが良い!」

 ――ドアを開ければ、そこは金銀銅的なものであふれ返るDの楽園だった。
「うん、悪くないね。さっきのユーベルコードの代価を引いても充分にお釣りが来る。自身のモノにしたD(金貨)さえあれば、雪原装備も思いのままに♪
 でも、これ全部に魔力が籠められてるなら、世界を滅ぼさなくったって何でも出来――」
 ユニは中に入って、光り輝くDに目を細めながら無差別にそれらが積まれた内部を歩く。
「……?」
 しかし、ユニは言葉半ばに首を傾げた。――まだ、何かは分からない。
 だが、贋作の悪魔としての本能が何かを訴えているのだ。
『これは、何か違う』と。

「――見つけたわぁ!!
『あの魅惑のボディガチャ』騙したのねぇええ!!」
 しかし現実というものは、大抵考える暇さえ与えてはくれないものだ。
 ここぞとばかりに飛び込んで来た、前回のユニの被害者『魔界主婦の皆さん』達が意地でユニの居場所を探り当てて来たのである。
 しかし、ユニは悪びれるという単語は辞書にないとばかりに、容赦なく屈託のない笑顔を向けた。
「バレちゃった? でもここに溜め込んだD、別にボクが使い切っても構わないよね♪
 ワルは成功してこそのワルだよ」
 魔界主婦の皆さん、正しい悪理論を展開するユニに心を少しときめきながら、あわてて一斉に頭を振って言葉を探す。
「させないわ~! このDは私達皆のものよ~!!」
「あ~あ、こんな所で共有意識だなんてかっこ悪いなー。
 このDには魔力が籠もっているんだって。これだけのDがあれば、手術よりも確実に儀式魔術でペタパイが治るかもしれないのに。
 ――ほら胸が苦しくない? ちょっとこおりのあくまに掛け合ってきなよ。豊胸手術なんかしなくても、ここの魔力で国規模で胸が大きくなる豊胸儀式魔術だって成功するよ?」
 そう言葉を紡ぎながらも、ユニは己の疑念の確認の為、魔界主婦の一人の胸を大きく出来ないか、Dを握って魔力を走らせる――しかし、そこで受けたものは『自身の直感を裏付ける確信』だった。
 魔界主婦の変調の有無を誤魔化すように、ユニは代わりにとっさに空気中の元素から錬成したダガーを相手の胸に投擲する。
「キャッ、不意討ちなんて悪なんだから!」
 その胸にはしっかりと狙い澄まされたダガーが突き刺さっていた。が、魔界主婦の皆さんはきゃあきゃあ言いながら当事者共々ピンピンしている。本当にどれだけ頑丈な身体をしているのか。

「でも、そんな国規模で平ら胸を救おうだなんて、偽善よ! 今さら慈善行為に走ろうだなんてダサくて無駄なんだから!
 そんなことを吹き込むアナタも、ここまで来て『私達に命乞いじみた慈善を撒こう』だなんて、ダサいわー!!」
「慈善? とんでもない。
 魔界主婦の旦那さんって、今の奥さん達と結婚しているって事は、実はペタパイ好きなんじゃない?
 なら――胸が大きくなったら、破局しちゃうね♪」

 ユニの言葉に、その場の緊張を忘れさせる程の衝撃が、魔界主婦の皆さんの心を打った。
 ざわめきが波のように、D収集管理所に広がっていく――。
「身体的なワガママ問題で離婚を切り出してくる旦那――ああん、自由奔放な悪! 惚れ直しちゃいそう~っ」
「でも、離婚でしょう? 子供の未来が――」
 魔界主婦の皆さんが、ユニの離婚煽動に乗って『離婚したらどうしましょ♪』話題で一斉に毒沼を湧かせたかのように一気に盛り上がり始めた!

 その中で――改めてDを凝視していたユニは、一度澄んだ橙色の瞳を大きく見開き頷いた。
(このDは、やっぱり――)
 しばし考える。これは重大情報だ。ユニの価値観としては、有益な情報ほど、ただで教えるのはバカらしい。が、
「――教えておこうか。
黙っていても口にしても、コレ、どちらにしてもボクの悪の印象が深くなってお得だし」
 結論を出したユニは、ここから金貨のDを拝借すると、再びユーベルコード【ゴーイング・マイウェイ】を発動し、その場にたむろする魔界主婦の皆さんには目もくれず、大広間へと戻っていった。

「出ーしーなーさーいーよーっ!!」
「ふふん、さあ、徐々に凍りついていくがよい。
 そして、おとなしく溜め込んだDを我に差し出すのだな!!」
「誰が出すものですか、このペタパイ!!」
「なっ!」
 敵が氷という存在そのものに適性があるからなのだろう。飛翔能力などのユーベルコードの効果は既に切れているはずだが、中からは非常に元気な声が迸っている。
 戦況はフィアの圧倒的有利だが、もし相手が凍りついていなければ、これ以上の攻撃手段は即座には思い至らない。しかも、氷の迷宮に対象を凍りつかせる能力がある以上、他の猟兵も手が出せない。
「ええい、Dを出さぬなら、ここでもう迷宮ごと木端微塵に砕いて――!」
「ちょっといいかな?」
 そこで戻ってきたユニが、そっとフィアへと、そしてこおりのあくまに向かって声を掛けた。

「ねえ、キミの集めているこのDに籠められた魔力って――。
もしかして【破壊儀式にしか使えない魔力】なんじゃない?」

 ――え? フィアが、信じられないようなものを目にする様子で、呆気に取られてユニを見た。
 同時に氷の迷宮の中から声が聞こえる。

「そうよ! ここにあるDに籠められている魔力ソースは全部が全部、攻勢魔力――『ただ物を破壊して吹き飛ばす為だけにしか使えない』魔力!!
 私が試さないとでも思った!? この虚しい胸が魔法で大きくなれば素敵なのに……と思わないとでも思った!?
 ――『Dによって籠められている魔力が違えば』なんて思って、集めに集めて他国にまで侵攻して――今までそんなDには巡り会えなかった!!
 満足!? ねえ、これで満足!? 私の努力を返してよぉーっ!!」
 姿が見えれば、きっとその憐れましさに全人類が泣いたであろう。泣きわめき響き渡る、こおりのあくまによって語られた真相。

 だが、その真相を突き付けられ、傷付けられたのは一人ではなかった。

「……そんな、ばかな……」
 フィアが、長き己の野望を打ち砕かれ呆然としていた。『きょぬー』に憧れた乙女の夢は、ここで完全に木端微塵にされたのだ。
 心が折れて、フィアのユーベルコードが軽快な音を立て全て氷片へと砕け散る。
「……そうか……
 ドレスにパッドをつけておく手があったか……」
 氷の迷宮どころか、心まで砕けたフィアが、それを遺言に雪の中へと崩れ落ちる。
 同時に、泣き崩れていたこおりのあくまが、ぼてっと落ちた。

「うわぁ……」
 これは中々の惨状である。
 ユニは、一瞬言わなければ良かったかなとも思ったが、あのままではフィアが第二のこおりのあくまとなる危機すら感じた為、これはこれで良かったのだと思うことにする。
 ――ユニは贋作取引の経験から学んでいた。
 何事にも、希望にはその期待値を低く持つこと、そして何より『深く入れ込む事は厳禁』なのだと――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
そうか、君はオブリビオンであるが故に…
筋トレさえも無力というのは哀しいことだ
ならばせめて、ひと時の夢くらいは見させてやろうか
今此処に其の力を示せ、【時計の針は逆さに回る】!

此れが俺の最初の主の姿にして、戦う者として目指す姿
君も見せてみろ、己が理想とする姿を
そう、ふくよかな胸を手に入れた
パッドなどに頼らずともその存在を主張できる
…失礼、これ以上具体的に語るのはセクハラにあたるのだな
何?悪だから続けて良い?いや…俺が恥ずかしいから此処までだ…

其方がステッキならば此方も魔法の杖だ
魔力を飛ばすなら「高速詠唱」で炎の「属性攻撃」を「一斉発射」
君の凍てついた心と、俺の静かに燃える炎
さあ、何方が勝つだろうな



 魔界主婦の皆さんも、大広間で起きている争いの気配で中庭へと退避している。完全に孤立状態となった、こおりのあくまは悲嘆と共に呟いた。
「一体、私が何したって言うの……」
 それに答えられる者はいなかった。Dによる身体コンプレックスに大打撃を受けた結果、沈黙でしか答えられない猟兵が半数近くに及んだという事態も大きい。
 そのような状況下、長きにわたり思考を重ねてきたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は、こおりのあくまに向けてゆっくりと口を開いた。
「そうか、君はオブリビオンであるが故に……」
「そうよ……気付いた時には『どこまでも胸がないまま!』――こんな理不尽聞いたことないわっ!」
 まさか『胸がない』から始まった事案が、今ここまで猟兵を巻き込んでのお通夜ムードになるとは、誰も思いもしなかった。
 もはや湧き上がるものは、どこもかしこも悲哀ばかりだ。
「……筋トレさえも無力というのは哀しいことだ」
「……っ! 喧嘩なら買うわよ!! まだ戦えるんだから!」
 ニコの言葉を受けて、真摯に嘆いていたこおりのあくまから頭の血管が切れる音がする。だがニコは決して相手を煽った訳では無い。
 相手がオブリビオンである以上、筋肉すら無意味――ニコにとって、自分の世界を回す歯車の一つである確かな『筋肉という理』すらも届かないという哀愁がそこにはあった。
(ならばせめて、ひと時の夢くらいは見させてやろうか)
 ニコは先のこおりのあくまのユーベルコードを見ていた。
 それならば、と声を張り上げる。
「来い!! 勝負だ!」
「氷の中に沈めてあげるわ!」
 その瞬間、二人が、互いを倒すべき標的と見做し牙を剥くように向かい合った。

「――今此処に其の力を示せ、の名【時計の針は逆さに回る(リメンバランス・クロックワークス)】!」
 ニコが己のユーベルコードを、魔術杖Bloom Starを手に高らかに叫ぶ。
『百年の時を経て今此処に甦れ、我が力の根源よ!』
 魂の呼び掛けと共に、ニコとこおりのあくまとの間を、紅蓮の炎による壁が遮った。そして炎の壁が暴風と共に掻き消えた時、そこには赤の魔法使いの服に身を包んだニコの姿があった。
 しかし、ただ服装が変わっただけではない、そこにあるものは日常のニコの気配を何倍にも増長させた、燃え盛るような激しいオーラ。現れた空飛ぶ箒を手にニコは己の姿に感じ入るように、閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
「此れが俺の最初の主の姿にして、戦う者として目指す姿――君も見せてみろ、己が理想とする姿を」
「ふん、敵に塩を送る気? 後悔しても知らないわよ!」
 その言葉と共に、こおりのあくまもステッキを掲げ、くるりと雪の結晶を纏って上空で身を翻す。次の瞬間、そこにあったものは細身の身体に大きな胸を顕わにした、こおりのあくまが本来望んだ理想のデビルクィーンの姿。
「そう、そのふくよかな胸ならば、パッドなどに頼らずともその存在を十分に主張できる」
「――!」
 ふいにニコが口にした言葉、それを聞いたこおりのあくまの顔が一瞬で赤くなった。
 何しろ、もって二分の胸である。まともに見る存在がいる事自体が稀であり、ましてやそれを褒められるなんて――。
「胸をほめました……! 善では、では!?」
 状況を見ていた願望機の悪魔達が一斉にざわめき立てる。
 しかし、つい思ったままを口にしてしまったニコが、それを失策と表情に出す前に、こおりのあくまは願望機の悪魔少女達の声を蹴り飛ばすように告げた!
「ううん――『乙女に対するセクハラ』は立派な悪!!
 こんな悪、久し振りに見たわ! それに免じて、もっと続けてもいいのよ!? さあっ!」
 こおりのあくま、ここでまさかのリクエスト要求である。プライドも何もあったものではないが、きっとそれだけ嬉しかったに違いない。
「い、いや……っ、俺が恥ずかしいから此処までだ……!」
 今度はニコの方が動揺を露わにする番だった。愛しうやまう伴侶がいるのに、他の存在の胸を褒めるとは何たる悪。きっと愛する伴侶は気にしないであろうと思われたが、ニコにとっては重大事変だ。
 ニコは溢れそうになる動揺を何とか押さえ付け、仕切り直しとしてこおりのあくまを睨み付けた。
 互いの間を、一気に緊張が走リ抜ける。

「ここで決着を付ける。――炎よ、燃えろ」
「負けるのはそっちよ!――魔法は解ける、凍え死になさい」

 心の中に炎を灯したニコが静かに吼える。同時に、こおりのあくまが純然なオブリビオンとして、凍えるような微笑を見せた。
 ニコが矢継ぎ早に呪文を編み、時計針を模った鋭い炎の剣を一斉に撃ち放った。こおりのあくまは、その全てを凍りつかせるべく、一面を雹が叩き付ける吹雪で覆い尽くす。
 それは、あちこちで温度差による激しい水蒸気爆発を起こし、爆音と共に辺りを一斉に呑み込んだ――!

 鼓膜の割れそうな爆音がやみ、白んだ空気が一気に引いていく。
 そして――上空に留まっていたのは、ニコの方だった。
「私は、まだ負けるわけには……!」
 地面に落ち、ボロボロになって尚、世界への怨讐を漂わせ立ち上がるこおりのあくま。

 しかし――こおりのあくまは、べち、と音を立て。
 その場に力尽きるように、潰れ落ち倒れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ーー胸が欲しいか?
多重詠唱による第六感と読心術で思考を同調させて脳内に直接語りかける。技能じゃ無理?自分を対象にした指定UCの願望器で押し通すから平気平気。
アルダワの魔王すら男の娘化した私の化術肉体改造結界術にかかれば巨乳化程度造作も無いわ。え?それなら私が同士なのがおかしい?
ま、ぺたん娘同盟総帥代理として貧乳はステータスなので(封印を解く&化術肉体改造で下着設定資料の姿に変身)
ま、拒否されても勝手に願望器での神罰で巨乳化させるけど♪
押し売りによる代償で魂を略奪するわ♡
あ、拒否されずに願われたらやさしく叶えるわ、代償で魂を奪うのに変わりはないけど☆



『――ほしい、か……?』
「な、何この声……」
 倒れ潰れていたこおりのあくまが、うっすらを目を開けて擦れきった声で呟く。
 先程から、猟兵達がDを全部捨てるようにと訴えかけてきているが、こおりのあくまは聞く耳を持ち合わせていなかった。
 それは――彼女が『真の悪』であったから。どうせ自分は長くはもたない。ならば、最後は残された人間がもどかしく、思い通りに行かない世界の方がずっと楽しいに決まっている。
 そんな中――今聞こえるこの声は、頭に直接響いている!

『――胸が、欲しいか?』
「欲しいぃぃぃっ!!!!」

 ハッキリと聞き取れたその言葉――こおりのあくまは最後の力を振り絞って、弾けるように起き上がった。

「やっと起きたわね」
 こおりのあくまが、目にした先――そこには銀の光を交えて、赤の髪が艶めく美しいストロベリー色に輝くアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)の姿があった。
「む、胸を大きくしてくれるって……本当……?」
「ええ、この『アルダワの魔王すら男の娘化した』私の化術肉体改造結界術にかかれば巨乳化程度造作も無いわ」
 ここ、徹底した悪の法が敷かれたデビルキングワールドですら、あまりお目に掛かることのない、心底ピュアで邪悪な微笑みを紅玉輝く瞳に浮かべながら、アリスがこおりのあくまに誘惑するような甘い声で告げる。
 しかし『アルダワの魔王すら男の娘』――それが、恐ろしく凄いことだけは感じ取り、こおりのあくまは頷いた。
 これならば。今目の前にいる存在ならば、自分の胸の『EとかFカップとかも夢じゃないかもしれない』と――。

「……でも。
 それなら、どうしてあなたは『ツルンツルン』なのよ……!?
 消え掛けのオブリビオン騙すなんていい度胸してるじゃない……!」
 こおりのあくまが、震える手で杖をかざし、最後の力を振り絞ったユーベルコードで、スレンダー爆乳美女へと変身し戦闘態勢に入る。
「……私が同士なのがおかしい? ま、『ぺたん娘同盟総帥代理』として貧乳はステータスなので」
 次の瞬間、見るからに禍々しく、そしてちょっと表に出せない、いかがわしさを感じる触手状のオーラ・サイキックヴァンパイアが、流れる髪と共にアリスの全身を包みこむ。
 そして、溢れる闇と共にオーラが消えると、そこには肉体改造により己の身の封印を解いた、たわわな胸と細身の姿を、セクシーな下着とガーターベルトで包むアリスの姿があった! これを一言で表すならば、まさしく『えっち!!』
「あ、わわ、――ぺたんこと言いながら、実はきちんとメロン級の胸があるなんて、なんて、本当に予想を裏切らせる悪!!」
 今までの経緯を見過ぎた願望機の悪魔達としては、その胸の出現は完全なまでの純粋悪としてその目に映った。
 それは、これまで、この場の猟兵の女性陣が血を吐くほどに望み求めたもの。手を伸ばし、それでも夢砕かれた悲しみの象徴――!
「その胸――、本当に大きくなれるの……っ? せめて、せめて今の姿をずっとキープできれば……」
 確かに、今の姿が理想なのであるから、大きいならこちらの姿を保てた方がいいに決まっている。
「はい、その願いを叶えてくれる願望機はこちら♪」
 それに頷いたアリスが己のユーベルコードを繰り、大広間を包む桃色の闇という概念を具現化させたような結界と共に【不可思議な魔女の御業(イマジンウィッチ)】を発動させた。
 それは、願望機の悪魔達と似た性質を持つユーベルコード。だが、こちらは完全なアリスの自由が通る結界の中である。そこから生み出された願望機は、結界の中において完璧な効果を果たすのだ。
「はい、どうぞ♪」
 そして、本当にアーサー王伝説に出て来そうな金の器の形をした『見るからに願望機』を、問答無用でアリスはこおりのあくまの手に渡す。
「さっきの……『ふくよかな胸』がずっと続きますようにー!!」
 こおりのあくまは躊躇わなかった。オブリビオンになってからずっとぺたんこ。その胸が、褒められた瞬間をこおりのあくまは忘れられなかったのである。
 それから、二分経過――ユーベルコードの効果は切れることはない――。

「やった……っ、やったわ……っ! これで私は……」
「おめでとう。じゃ、その代わりに契約行使の代償で魂をもらってくわね♪」
 そのさらりとした発言に、その場の一同がぎょっとしてアリスを見やる。
 ――しかし、こおりのあくまは、笑っていた。
「ふっ……悪の気配を感じた以上、そんなところだろうと思っていたわよ!
 ――この胸の為だったら、魂なんて喜んで差し出すわ!!」
「――!?」
 この反応は、若干アリスの想定外だった。だが、確かに――次の瞬間、こおりのあくまは魂が抜けて、抜け殻のように呆然とその場に座り込んでいた。
「何が……。でも、魂は手に入ったし、いいわっ♪」

 その後――魂をなくし、人に言われるがまま行動するようになったこおりのあくまは、貯蔵していたDを全部バルコニーからばらまいた。
 下から、こおりのあくまを信じていた悪魔達の絶望と、ばらまかれたDによる歓喜の声が聞こえてくる。これでこの国も終わりだろう。
 そして、こおりのあくまは、完全に己の存在を使い切りこの世界から姿を消した。

 オブリビオンの消滅は、過去の浸蝕の完全消滅でもある。例外もあり、他の世界ならば『転生』という概念もあるが――今回は根こそぎ、こおりのあくまはものの見事に消え去ったのである。
「ない! 魂まで消えるなんて!
 せっかくコレクションにと思っていたのに!」
 こおりのあくまは、恐らくそれを間際にして知っていたのであろう。概念は完全消滅であろうと、アリスはものの見事に逃げられたのだ。苦渋と共に、アリスは魂を詰めていた空の瓶の中身を見つめる事しかできなかった……。


 こうして、依頼は終了した。
 依頼遂行度は完璧だったと言っても良い成果。
 だが、一部の猟兵達が期待と共に失ったもの……そして併せて受けたメンタルダメージは、通常よりも遙かに大きかったのは言うまでもない――。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年02月01日
宿敵 『こおりのあくま』 を撃破!


挿絵イラスト