「デビルクィーンになる為に、悪いことをしてあちこちからD(デビル)を巻き上げてみれば……皆がわたしのことを、ペタパイぺたぱいって……挙げ句の果てには、まな板テーブル滑走路って――このうらみはらさずおくべきかぁあああああ!!」
だから、とりあえず悪のステータスとして更に集めといて、本当に使えそうならその魔法でドッカンして、この世界をぶち壊して私が最後のデビルクィーンに……ペタパイなんてレッテル貼ったこの世界最後の魔王になる!! ……ま、どうせウワサだけど。
予知によれば、このままでは本当に『カタストロフ級の儀式が行われ、デビルキングワールドが滅ぶ』。どうか世界崩壊回避の為に『わたしのせかい』に溜め込まれた通貨『D(デビル)』を全部散らしてばら撒いて来てほしい」
「方法としては、ボスを叩きのめして言うことを聞かせるのが一番早いだろう。自分の国のDをそのオブリビオンにばら撒かせれば、ダサいと判断され新たな国の維持も出来なくなる、Dが散り国も消えれば一石二鳥だ。
魔王軍は個人差のある彼女らの身体コンプレックス――率直に言えば、『バストのあるなし!』『ウエストの太さ細さ!』『ヒップのあるなし!』『足の太さ細さ!』諸々!! ――を、どこがとは言わないが『広々とした大草原』だの『大根』だなどと、つつき抉り、なじり、少女たちを喜ばせている。少女達の国は制圧される寸前だ」
喜ばせている……? その言葉の違和感に感じた猟兵達に一言「少女達は受動的――率直に言えば若干Mの気性であり、それが『デビルキング法』により、更にフリーダムになったらしい」というサラリとしすぎた内容が返ってきた。
彼女達は相手の願望を満たすことに長けた【言わば、テクニシャン】だ。そのようなありきたりな悪の願望など『一瞬で叶えられてしまい、昇天』の道を辿るだろう。という訳で、他の方法を模索してもらいたい」
「その後は予知でもどうなるか分からないが、デビルキングワールドなので、終始このような感じになるだろう。まずは己の願いがどれほど悪であるかを見せつけるもよし、あるいは何か別の悪を示してもいい。
そう目の前で予知を語った存在は、今までの内容に、何一つ疑問を持つ様子もなさそうに頭を下げて猟兵達を見送った――。
春待ち猫
こんにちは、春待ち猫と申します。
今回は『胸がない!』から始まる、さまざまな悲哀がテーマの『コメディ』となります。終始あたまが悪い展開になるかと思われますので、ご縁がございましたらどうか宜しくお願い致します。
(※今回はコメディを想定しております。完全に成人向けとなりそうなプレイングはお返しさせていただきます)
それでは、以下より章構成となります。
●第一章は、集団戦となっておりますが、ここでは『わたしのせかい』に侵攻する為の仲間集めとなります。(上手く行けば表示されている敵が、第二章での味方として戦ってくれます)
戦闘ではない為、👑も7までとなります。
方法問わず、自分がワルであることを見せればチョロいですが、叩きのめして強さをアピールすることも可能です。
(斬ったり焼いたりぶちのめしても頑丈なので平気ですが、一般住民の為、惨殺などはご容赦ください)
●第二章は、ちょっと変わった集団戦です。
第一章の悪魔達が一緒に戦ってくれます。
●第三章は、ボス戦です。
舞台が『デビルキングワールド』の為、第一章と同等に悪役アピールが求められます。
(猟兵側に「悪っぽくない善良な行動(悪魔的に恰好く悪い行動)」が起こりますと、悪魔が寝返り、判定そのものにマイナス影響が出ます。何卒ご注意ください)
●今回のシナリオには、各章ごとに受付期間を設けております。誠に申し訳ございませんが、詳細は各章、断章の投下後にマスターページをご確認ください。
それでは、よろしくお願い致します。
微乳にだって、断崖絶壁だって、必ずどこかに魅力があるはずだ。
第1章 集団戦
『願望器の悪魔』
|
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POW |
●汝が為したいように為すがよい
【飛び出す絵本】から、対象の【欲望を満たしたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
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SPD |
●あなたを受け入れましょう
【飛び出す絵本】から、対象の【承認欲求を満たしたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
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WIZ |
●いいのですよ、好きなことだけしていても
【飛び出す絵本】から、対象の【癒やされたい】という願いを叶える【願望器】を創造する。[願望器]をうまく使わないと願いは叶わない。
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👑7 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴 |
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達が辿り着いた先、そこは戦争をしているとは思えない程のほがらかさに溢れていた。
おそらくは、そこに住まう『願望機の悪魔』達の影響であろう。こんな会話が聞こえてくる。
「今日もまた、相手の国から『ドデカメロン級を夢見る胸』って……!」
「わたしは『腰から下が、たくましい矮鶏のようだ!』って……」
「ひどいわ……わたし、さっき『二の腕を腰と見間違いました』って。あんまり、だわ……でも」
本来の性質なのであろう、ほんの少しの辿々しさを口調に滲ませた少女たちは、しかし――。
「「きゃぁっ、最高……! 悪って、やっぱり、格好いい、かも……!」」
一様に口を揃えて、きゃあきゃあと敵対する悪に憧れるミーハーさを露わにし始めた。
どうやら、これは元々『わたしのせかい』に対する戦争に対しての会議だったらしい。
――かなりの末期じみたものを感じる。彼女達の目を覚まさせることは出来るのだろうか。
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地籠・陵也
【アドリブ連携大歓迎】
(戦う前に何か怪しい本を読み返し)
えーと?こう振る舞ったら大丈夫か?
揃いもそろって貧弱な身体をしやがって。
そんなんでこの先悪としてやっていけるとは片腹痛いな、このおさかなソーセージ共!
と、最初に言うだろ。次は【指定UC】で寒くして……
お前達を罵る連中は相応の蓄えがあるからこれを耐えられる。
だが!それもないお前らがこの先悪としてやっていけると思うのか!
悪として相応の装備すら知らぬ軟弱者が!俺が悪の何たるかを教えてやる!
と依頼に行く前に買ってきた防寒具を投げつけた上で【オーラ防御】を纏わせ寒さを遮断。
悪らしくなった感を錯覚させてみようか。
……これでいいんだろうか?悪って……
地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は、依頼を受けてから現地に来る前、必死に本を読んでいた。
タイトルは『これで皆もワルになれる! 悪だって目指せる十箇条 初級編』。本は初級・中級・上級・地獄級とあったが、取り敢えず初級編と中級、参考として地獄編を読み通してみた。
そして今に至る、のだが――
「あ、ちょっと待っ――いや、待ちやがれ! か……?」
何事かと集まって来た『願望機の悪魔』達を前にして、言葉尻からも分かる通り、悪とはそもそも完全に無縁である陵也は、この段階から悪の欠片も見当たらず、慌てて背後をクルリと向いて、本の内容を確認し直した。
「えーと? こう振る舞ったら大丈夫か?」
「あ、かわいい……でも、ちょっと。かっこ、悪い(ワル的に)かも、です?」
「このひとなら、堕落、させられる、かも……!」
願望機の悪魔達が集まってくる。もう後には退けない。正直なところ、もはや不安しかないが、これも依頼の為ならば。陵也は、大きく深呼吸を一つして、その場でしかと覚悟を決めた。
「――ハッ! 揃いもそろって貧弱な身体をしやがって。
そんなんでこの先悪としてやっていけるとは片腹痛いな、このおさかなソーセージ共!」
「きゃっ!」
悪魔少女たちが、驚きに小さく跳ねる。
『おさかなソーセージ』が何かは不明なところではあったが、効果はばつぐんだ!
「つ、次は……」
陵也は急ぎ、続けて本の内容を確認する。しかし、中級だと思って持ってきていた本は、『これで皆も(省略)』の【地獄編】――難易度を二段飛びした本の見開きを目にした陵也の瞳がこれだとばかりに輝いた。
「甘やかして、堕落させて、あげます……!」
その隙に、悪魔少女の一体が絵本を開いてユーベルコード【いいのですよ、好きなことだけしていても】を発動する。飛び出してくるのは、陵也の【癒やされたい】という願望を叶える願望機。
すると――次の瞬間。
絵本の中から、たくさんの手のひらサイズの子猫が一斉に飛び出して来た!
にゃーにゃーにゃー。
みゃーん、うなー、にゃーん。
「猫!?」
「さ、存分に癒やされて、いいんです、よ……?」
陵也の足元に集まり、つぶらな瞳を向けてくる子猫達。
これを抱き上げて愛でたら、きっと幸せになれるに違いない。
だが、陵也は決めていたのだ――自分は、悪になるのだと。
「……っ!」
陵也は涙を呑んで自分のユーベルコード【氷天の白き逆鱗(フィンブルヴェド・ドラゴネスアウトレイジ)】を発動させた。
翡翠色に煌めく猛吹雪が一斉に周囲を覆い尽す!
「きゃあっ、寒い……! ああ、猫さんたちが! ひどい、でも素敵な悪(ワル)……!」
一気に冷たくなった空気に、集まった子猫達も一斉に寒さに震え始める。
「え、いや――っ!」
否定しかけた陵也は、その先の言葉を慌てて呑み込んだ。これは好機かもしれない。むしろ慣れない自分が悪らしい悪を重ねるには、これしかないとすら思われた。
しかし覚悟を決めるにも、この光景はあまりに心が痛すぎる――それでも、陵也は今すぐ吹雪を止めたい衝動を堪えつつ、勢い良く声を張り上げた。
「お前達を罵る連中は相応の蓄えがあるからこれを耐えられる。
だが! それもないお前らがこの先、悪としてやっていけると思うのか!」
「お、思いません……っ!!」
「悪として相応の装備すら知らぬ軟弱者が! 俺が悪の何たるかを教えてやる!」
そう叫ぶと、陵也は身に装備していたコートに始まる防寒具を全て脱ぎ捨て、わざとワルっぽく少女達へと投げつける。
「悪に装備など不要! 悪に必要なのは【裸一貫に、気合いを纏った威圧のオーラ!!】だ!」
陵也は、先程目に入った本の一句を高らかに叫ぶと、自分の回りに、極寒の中で浮かぶオーロラのように湧き立った、オーラをその身に纏わせた。
そして、最初に所持していた形見の杖から、そこら辺で拾ったバールのようなものに持ち替えて、地面を激しい音と共に打ち据える。
「これが、悪の、姿だー!!」
「きゃぁあ……っ! 格好いい……!」
裸一貫とは言ってみたものの、全部脱ぐと体育会系ではないことがバレてしまうため、最低限のインナーは着たままだが。それでもこっそり、オーラが寒さを無事遮断してくれる猛吹雪の中で、雄叫びと共に輝くオーラと共に極寒に立つ陵也の姿は、悪の素養を感じさせるには十分なものであった。
そんな陵也に、悪魔少女達と共に願望機の子猫達も黄色い声を上げる中。
(……これでいいんだろうか? 悪って……)
心だけ我に返った陵也は、目を思わず遠くさせながら心の中で呟いた。
しかし、往々にして悪の道は後戻り出来ないものなのだ。我には、返らない方が良かったかもしれない――。
成功
🔵🔵🔴
マヒロ・ゾスティック
なんだかシンパシーを感じる人達だね?
でも今回は一緒に楽しむ訳にはいかないから
キヒヒ♪いっそ本格的に目覚めさせてあげちゃおうかな♪
◆悪目立ちしながらUCで女王様ボンデージ姿の小悪魔に変身
空を飛びながらどんどん皆を罵倒していくよ
メロンを夢見る胸?
君のはメロンに永遠になれる訳ない不変のまな板だよ
未来見るのすらおこがましいよこの悪魔世界盆地が
ねえ鶏に謝りなよ
君の足は大根って言うんだよ
ほら鶏様に土下座して謝れ
君のは二の腕も腰も同じ寸胴鍋だよ
優しい言葉言われて嬉しがってるんじゃないよこのチョロ女
いいとこで自由自在ベルトで全員◆捕縛
軽く踏んづけたり別のベルトではたき
じゃ君らボクのしもべね
答えは聞かないよ♪
移り気な髪色に、同じく移り気なグラデーションの入った濡れた宝石の瞳を輝かせ、そんな『願望機の悪魔』達の話を聞いていたマヒロ・ゾスティック(堕ちし快楽の淫魔忍・f31759)は少女達を目にした瞬間、腑に落ちた様子で頷いた。
きちんと見渡せば、同種族の悪魔少女達が悲しみと同時に、コンプレックスを指摘して人を罵るという悪(ワル)にゾクゾクしているのがまじまじと実感できる。
「おー、なんだかシンパシーを感じる人達だね?」
同気相求、マヒロは同じ気配の少女達から同じ『ひぎゃくしこう』の気配をハッキリと感じ取る。それはもう隠してもいないのだから、既にだだ漏れ状態となっている気すらしなくもない。
「あ、悪の気配の、ひとが」
「今度こそ、堕落してもらって……」
悪魔少女達が集まってきた。話によれば、グリモア猟兵の解釈に語弊がなければ、彼女らは願望を叶えるテクニシャンとのこと。
ならば、マヒロとしては、とてもここには載せられないような『あーんなこと』や『こーんなこと』なども、思う存分楽しめると思うのに。
「でも今回は一緒に楽しむ訳にはいかないから――んー」
お触り禁止にエロ禁止、あのグリモア猟兵の縛りがにくい。
「キヒヒ♪ いっそ本格的に目覚めさせてあげちゃおうかな♪」
「――あなたの、欲望、満たします……!」
そんな文字通り小悪魔の笑みを浮かべたマヒロにむかって、悪魔少女がユーエルコード【汝が為したいように為すがよい】で、飛び出す絵本の中からポンっと差し出したのは――拡声機。
「気が利くねー! ありがとー。それじゃ」
マヒロは、その出された拡声機をひょいと手に取って、うきうきとした笑顔でユーベルコード【淫魔忍法・口寄せ嗜虐女王(インマニンポウ・クチヨセシギャクジョオウ)】を発動させた。
次の瞬間――カッ、とヒールの音が響き渡る。スタイリッシュなベルトが映える赤のボンテージ衣装に変身したマヒロは、上空へと飛び立ち、拡声機で悪魔少女達の先の会話に向けて言葉を叩き付けた!
『メロンを夢見る胸?
君のはメロンに永遠になれる訳ない不変のまな板だよ。
未来見るのすらおこがましいよこの悪魔世界盆地が!』
「きゃああ!」
盆地――むしろ、えぐれている。それが自分の事だと気付いた悪魔少女が真っ赤になって悲鳴を上げた!
『ねえ鶏に謝りなよ。
君の足は大根って言うんだよ。
――ほら、鶏様に土下座して謝れ』
「ヒッ! ひどい、ひどいです……! 鳥類以下の野菜だなんて……っ、――なんて、悪……!」
会話に加わっていた隣の悪魔少女が、あまりの残酷な悪に感動しては、頬を染めてよろめいては地面に座り込む。
『そこの君のは二の腕も腰も同じ寸胴鍋だよ。
同じに見えましただなんて、優しい言葉言われて嬉しがってるんじゃないよこのチョロ女』
「同じ寸胴鍋に、チョロ女……!?
ああっ……なんてパーフェクトな罵り――! これが、想像もつかない、本当の悪の所業、なのです、ね……。格好良すぎて、胸が――あぁっ」
こうして――マヒロの悪言に、悪魔少女達はその格好良さから、色艶煌めくハートマークを飛び交わせては次々と倒れていった。あまりの悪ムーブの魅力に、悪魔少女達はもう息も荒く失神寸前だ。
「さぁてっと」
地上に降りたマヒロはダメ押しに、所持している数も長さも望み通りの自由自在ベルトで、息も絶え絶えの悪魔少女達を捕縛し、その身体を軽く踏んで、他のベルトで音だけ大きく響くようにはたいていく。
踏むのも、ベルトでシバくのも威を示す立派な攻撃の一つ。これも全ては悪を示す為の戦闘手段……であろう。
「じゃあ、君らボクのしもべね。
答えは聞かないよ♪」
「――は、はいっ! デビルクィーン!」
こうして、マヒロは男の娘な上にオブリビオンでもないが、その風格をパーフェクトなまでに打ち出し、この場の悪魔少女達にとっての立派な悪魔女王となった。
……女王の意味が若干違う可能性もあったが、きっと悪魔少女達は戦力として立派な働きをしてくれるに違いない。
成功
🔵🔵🔴
ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
はろはろ!お姉さん達、ボクと一緒にワルいことしない?。ボクは贋作の悪魔、ユニだよ。よろしくね。アピール代わりに、願望器の悪魔を対象に【デモン・フェイカー】。手品の様に「贋作の願望器」を生やしてみせて。どう?この存在感、マモノ(真物)なんて目じゃないよ。
まだまだ、この願望器はお姉さん達の武器でもあるんだから当然武器改造の範疇。仕様変更も受け付けるよ♪。混ぜるな危険?でも本物と贋作の願望器が入り乱れれば、とっても楽しいことになると思わない?(お触りは禁止って話だし視力で。目力こめつつ誘惑。)
それにボクのユーベルコードは、本物の操作能力も盗むからね♪騙し討ちも出来るよ♪。
「はろはろ! お姉さん達、ボクと一緒にワルいことしない?」
集まる『願望機の悪魔』達に、まるで軽い晴れ日を思わせるナンパのような声がかかった。これは、とてもデビルキングワールドらしい誘い方とも言える。悪魔少女達が声のした方に目を向ければ、そこには少女達に軽く手を振るユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)の姿があった。
「悪いことの、お誘い、です、か?」
「そそ、今この国に攻め込んできてる悪魔達を叩き伏せる、すごくワルいこと」
こうして声を掛けたユニに、その場にいた悪魔少女達が一同にざわめき、ヒソヒソと小声で話し合い始める。
ときおり聞こえる会話から内容は筒抜けだが、ここで『聞こえているよ』と教えるのは善人の所業だろうと、ユニは悪らしく立ち聞きに徹することにした。
「でも、でも……」
「本当に、できるか、ためして……」
そして、しばらくコソコソしていた悪魔少女たちが一斉にユニの方に向き直り、中央にいた少女が飛び出す絵本を取り出した。
「あなたを、受け入れ、ましょう――!」
「おっと?」
悪魔少女がユーベルコードの言葉と共に本を開く。絵本の中から飛び出してきたのは、手のひらに乗る大きさをした、山吹色にきらめき輝く金結晶――現出したそれはユニの『承認欲求を満たす願望機』として、ポンっと軽い音を立てながら、その手の中に収まった。
「へぇ、金か」
軽く目を眇めてユニが手にある金結晶を見つめる。
「――それじゃ、少しワルなところを見せようかな」
その表情に見えたものは、文字通り優しい『贋作の悪魔』の微笑だった。
願望機の悪魔達に聞こえない程度の小声で、ユニは何かを呟き、そして少女達に意識を向けて、ユーベルコード【デモン・フェイカー】を発動させた。
ユニが空いている片手を金の上に翳し、手品を見せる動きですいっと指を横に滑らせる。すると次の瞬間、
「えっ!?」
悪魔少女達の目の前で、ユニの手の中にあった金の塊から、完全に一縷の違いすらもない、同じ大きさ、同じ形の金結晶が生え現れたではないか。
「全く、同じものが……!」
「贋作だけどね。
でも――どう? この存在感、マモノ(真物)なんて目じゃないよ。
これならどんなワルなことでも出来そうな気がしない?」
「で、でも、あの人達は、とても、悪くて……もう、私達じゃ……」
ユニが提示してくる悪の予感に、胸をドキドキさせながら。それでも、もっと罵りなじられるという明瞭かつ大胆な悪を感じ受けてきた悪魔少女達が、困惑と共に戸惑いを告げて来た。
「まだまだ、この願望器はお姉さん達の武器でもあるんだから、当然武器改造の範疇。仕様変更も受け付けるよ♪」
そこに更なる悪の気配を察知――少女達が悪の足音に、上気した頬で顔を見合わせた。
「これも、私達の、武器……いけそう、かも、かも……っ?」
「でも、本物と贋作が混ざったら、分からなくなって、しまうのでは、では」
不安を示しながらも、尚湧き上がるワルへの期待――少女達は興胸の高鳴りに呼吸を微かに濡らしながらも、動揺を隠さずソワソワし始める。
「――混ぜるな危険? でも……本物と贋作の願望器が入り乱れれば、とっても楽しいことになると思わない……?」
躊躇う悪魔少女達に向けて、ユニは誘惑する蛇のように少女の一人に近づいて、耳元でそっと囁き、ウインクと共に軽くそこに吐息を吹きかけた。
「きゃぁ……っ! もうだめ、……悪すぎて、どきどき、しちゃい、ます……!」
ユニのターゲットとなった悪魔少女が、ライブで熱狂しすぎたファンのように、悪への期待に昂りすぎた末、ついには失神してしまう。
倒れ込みそうになった少女を、ユニは『これは不可抗力♪』とばかりに、そっと善良には見えないように気をつけながら、ボクっこにあるまじき妖艶さを添えてその身体に触れ支えた。
そのような思いきり背徳感極まりない雰囲気を漂わせるユニに『悪の気配が!』と、黄色い悲鳴を上げ始めた悪魔少女達。
その少女達に、ユニは笑顔で訴えた。
「それにボクのユーベルコードは、本物の操作能力も盗むからね♪ 騙し討ちも出来るよ♪
ねぇ……皆で、ワルいことしよ?」
「きゃああ……っ!」
そして、ついにユニを取り囲む周囲から、堪え切れなくなった少女達による歓喜が一斉に沸き上がった。
――悪のハート掌握、完了。少女達は、きっと次の戦闘でその能力を遺憾なく発揮してくれることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
ボリュームのある胸を求めるか…
ならば、大胸筋を中心に筋トレをすれば良かろうに
いや、正道を往くのは此の世界では「格好悪い」のだったか
ともあれ、野望を阻止する第一歩は味方集めか
…悪い懐中時計、とは
どのように振る舞えば良いのだ…(頭を抱える)
嗚呼、こんな時畜生の権化のような我が伴侶が居てくれたら…
そうか、畜生行為か
わざわざ俺の為に想像してくれた願望器、其れを敢えて無碍にしてはどうか
どのような形状かは知らぬが、冷ややかな顔で
【時計の針は無慈悲に刻む】を以て、眼前で破壊してみせよう
「人の好意を無碍にする」、此れは相当なワル行為なのでは!?
(めたくそ真面目な性格なのでこれが精一杯です、判定はお任せします)
「ボリュームのある胸を求めるか……」
グリモアベースで話を聞いたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は、その内容を振り返りながら不可解極まりないという表情で思案した。
「ならば、大胸筋を中心に筋トレをすれば良かろうに」
――そうして口に出た言葉は、筋肉であった。あまりにもマッスルであった。
(広背筋も捨てがたい。ならば、まずはワイドプッシュアップからであろうな)
「いや、正道を往くのは此の世界では『格好悪い』のだったか」
改めて、前提を取り戻してニコは目的地へと歩き出す。
筋トレが、普遍一般的な正道かと言われれば悩ましいかもしれないが。ニコや一部の筋肉を嗜む存在から見れば、筋トレはほぼ全ての心身問題を一発で解決する、正面突破の最速正道であることに間違いないのである。
「ともあれ、野望を阻止する第一歩は味方集めか」
『願望機の悪魔』達の国に足を踏み入れ、辺りを見渡せば悪魔少女達が、悪とは見るからに縁遠そうなニコを見て、興味津々に集まってくる。
この悪魔達を前に、悪ムーブを行えとは言うが。
「……悪い懐中時計、とは」
ニコは無機物から存在を顕現させたヤドリガミである。更には生真面目な気質も重なり、その問いはあまりにもハードルが高すぎた。
例えるならば、悪を働く『悪いスピーカー』『悪いティッシュケース』『悪いペットボトル』――日常生活を送る中に、これらについてどれだけの想像が出来るだろう。それは一部の性癖所持者以外に、即時答えを出すのは、あまりにも難しい問題であった――。
「どのように振る舞えば良いのだ……。
嗚呼、こんな時畜生の権化のような我が伴侶が居てくれたら……」
直球過ぎる、畜生の権化――もとい、とても可愛らしい暴君である大切な伴侶に大変な言いようであるが、相手がここにいれば、この難局も容易く乗り越えられたことには違いない。
「この方、たくましいですが、悪の気配がない、ので」
「堕落させて、しまいましょう……!」
悪魔少女の一人が飛び出す絵本を構える。
存在には向き不向きがあるものだ――しかし、このままでは依頼そのものが果たせない。
それでは困る。ニコは伴侶の行動を思い起こそうと懸命な努力をした。
「――そうか、畜生行為か」
そして、悩みに悩み抜いた末、ニコは一つの行動に行き着いた。
この少女達は対象の願望を叶える為に、相手が望むものを願望機として形にしてくる――それを敢えて無碍にしてみるのはどうか。
(出されたものを、冷ややかな顔で眼前で破壊する――『人の好意を無碍にする』此れは相当なワル行為なのでは!?)
ようやく辿り着いた完璧とも言える答えに、ニコは自信を掲げ、悪魔少女達の行動に向かい合う。
そして自信さえ滲ませていたニコに向かって、絵本から飛び出してきた物は、
可愛らしい桃色をした、まるで思いきり誰かを思い浮かばせる、たれ耳ロップイヤー種のうさぎのような、小さな妖精のぬいぐるみ。
「――!?」
ニコの『癒やされたい』という願望に沿って出された、そのキュートなぬいぐるみは、愛する我が伴侶と瓜二つだったのである。
(……ッ!? 無理では……!?)
脳内が思わず叫ぶ。表情には出さないが、手に僅かな震えが走る。それでも『他のにしてください』等とは、悪的に間違っても言えないだろう。
(これはただのぬいぐるみ、ぬいぐるみであろう――!)
ニコは、完璧に内心を押さえ込み、表情に冷徹を装うとユーベルコード【時計の針は無慈悲に刻む(ルースレス・クロックワークス)】によって、その柔らかぬいぐるみを木端微塵に破壊した!
……無論、それは中途半端に形が残れば、その場で泣きながら崩れ落ちる自分の姿が容易に予測出来たからである。
「キャッ……!
ひどいです! ああでも、こんな悪、凄い……! 躊躇いなく、こちらの心を踏みにじるなんて……!」
(すまない……我が伴侶よ、本当にすまない……!)
もはや、心を踏みにじられたのはこちらの方であるとしか言いようがない。
普通の己の願望ならば、たとえ、どのようなものが来ようとも、ニコには任務の為ならば、いくらでも完璧に破壊するであろう事に疑いはなかった。鋼鉄のような心から生まれた自信は、確かにそこに存在していたのだ。
しかし、今回は敵の使うユーベルコードの【癒やされたい】を形にした願望機は――気が付けば、この場の誰もが予想も付かなかった、あまりにも涙が止まらない惨劇を生み落としたのである……。
「……」
言葉に出来ない自身の声が、己の沈黙があまりに重い。しかし、犠牲の代わりに、猟兵としての目的は確かな形で達成された。
ここまでしたのだ。願望機の悪魔達は、次の戦いにおいて非常に心強い戦力となってくれることだろう――。
成功
🔵🔵🔴
ヘスティア・イクテュス
なるほど…悪の追求ね、それなら海賊なわたしの出番ね
任せなさい、D…通貨を奪うのは海賊の仕事。得意分野よ!
そしてDをかき集めて胸もDに!!!抵抗の少なくて宇宙を飛ぶの速そうとか、小惑星帯とか得意そうなフルフラットボディとかこれで言わせないわ!!!(ペタパイの同志)
願望器の悪魔……(一部分を見)…(更にもう一度見)
なるほど…宿敵ね!(違う)
†煌白の苗木†をSFOに括り付けて『ダッシュ』+【不意打ち】で轢き殺…ついうっかりぶつかっちゃう!
まぁ!大変!大切な苗木とSFOに傷が…!(無傷)
この慰謝料しっかり払ってくれるんでしょうね!!(当たり屋)
無いならその願望機でわたしの胸を増やしなさい!(無茶振り)
「なるほど…悪の追求ね」
グリモアベースで依頼を受けたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、その内容を完全に理解した様子で、力強く頷いた。
「それなら海賊なわたしの出番ね。
任せなさい、D……通貨を奪うのは海賊の仕事。得意分野よ!」
こういう時こそ、日常以上に宇宙海賊であることが誇らしい。ヘスティアは満足げにドンと胸を張る――ふと、その胸に目をやれば、視線が地面まで『ストン』と、何にも引っかかることもなく一直線に落下した。
「……っ! そしてDをかき集めて胸もDに!!! 抵抗の少なくて宇宙を飛ぶの速そうとか、小惑星帯とか得意そうなフルフラットボディとかこれで言わせなわ!!!」
その屈辱に顔を歪ませ、ヘスティアは己が野望を高らかに叫ぶ。
そう、一度は言ってみたい『胸が大きくて足元が見づらい』という乙女の夢――!
胸の大きさは急務である。何としてでも叶えたい。
ふつふつと湧き上がる野望に、大きく足を踏み出して現地を歩く。国に入れば丁度パタリと、一人でいた願望機の悪魔の姿があった。
「わ、私も何か悪いことを、を」
外部からの存在におどおどしている悪魔少女を前にして、ヘスティアは、偶然にも丁度直前まで考えていた、どことは言わない相手の身体の一箇所に視線をぶつけた。
――一度見て、全身を見て、もう一度その辺りを凝視する。
そこには、布地が丸いカーブを描いていた。見るだけでも果物に例えるには勿体ない柔らかさを感じさせた。文学にある『抱きあまるほど豊満なふところ』とは、こういう事を言うのだろうか。当然――
「願望機の悪魔――なるほど……宿敵ね!」
そんなもの、ヘスティアにはない。
海賊であり、宇宙の海を渡り歩くのに躊躇いなどない。ヘスティアはその感情から奮い立つ悪を見せつけるべく、即準備を始めた。
持ち物の中から、宝石や金属のような煌めきを見せる†煌白の苗木†を、空を駆ける愛機S.F.Oにロープでぐわしと括り付け、それに華麗に飛び乗った。そして、ユーベルコード【S.F.O突撃!(スペースフライングオブジェクトトツゲキ)】を発動させると、
「あっ! 危ないッ!!」
と叫びながら、目の前の相手を容赦なく轢き殺……もとい、不可抗力の事故的に思いきり相手にぶつかった!
「きゃんっ! 何するんですか、あ、危ないです、です!」
悪魔少女は転がりながらも、頑丈なのですぐに戻ってくる。
しかし、本番はここからだ。
「まぁ! 大変! 大切な苗木とSFOに傷が……!!」
S.F.Oから飛び降りたヘスティアが、相手にも聞こえるように息を呑む。だが、見れば分かる。無傷である。
「む、無傷ですっ!」
「この慰謝料しっかり払ってくれるんでしょうね!!」
ヘスティア、渾身のパーフェクトな当たり屋ムーブに、ターゲットとなった悪魔少女が震え上がる。
「ひっ、被害者はこちらなのに、悪ですっ!」
少女が涙ぐみながらも、瞳には喜びの色を浮かべて悲鳴を上げ始める。あと一息!
「い、慰謝料なんて、何も持ってなくて、払えません……!」
「無いならその願望機でわたしの胸を増やしなさい!」
――悪を追求する傍ら、己の欲望まで満たすとは、まさに海賊としての鑑である。
無茶ぶりのように思われた内容。だが、ここで悪魔少女は半泣きになりながらも飛び出す絵本を取り出した。
「あなたの、欲望、かなえます……!」
願望機の悪魔のユーベルコードが、満を持すように発動する。
そうして、飛び出してきたものは――一本のダンベルだった。
「ダンベル……?」
「どこからか『バストアップするなら、大胸筋』という言葉が聞こえて来て……。
こ、これを上手く使えば、有効活用すればきっと胸だって、大きくなります……!」
「有効活用――筋トレ……っ! くっ……!」
確かに、これでもかと言うほどに筋トレをすれば、確実に胸は大きくなるであろう――しかし、胸の大きさを夢見るペタンコ乙女にとって『筋肉アプローチ』というのは、現実を突きつけられる最後の手段なのである。
胸は、いつの間にか、気が付いたら大きくなっていってほしい。それでこそ、乙女のロマン。
ヘスティアは、願望機の悪魔に確かな悪を示したものの、悲しいまでのリアルを殴り倒すように突きつけられて、その場にがくりと膝を落とした……。
成功
🔵🔵🔴
フィア・シュヴァルツ
「ほほう、Dを集めればカタストロフ級の儀式魔術が使えるのか。
こおりのあくまとやらは頭が足りていないようだな。
その魔術が使えればカタストロフ級巨乳になることも可能ということ!」
くくく、ならば、そのD、我が奪ってカタストロフ級巨乳になるとしよう!
うん?べ、べつに、今の胸が小さいと言っているわけではないからな?(目逸らし
「ふむ、願望器の悪魔か。
くくく、望みを叶えてくれるというならDに頼るまでもない!
我を巨乳にするがよい!」
……なぜ変化がないのだ?
ゼロは何倍してもゼロ……だと……!?
「ええい、貴様らなど塵も残さず滅してくれるっ!」
【魔力増幅】した【竜滅陣】を受けるがいい!
アドリブ大歓迎
「ほほう、Dを集めればカタストロフ級の儀式魔術が使えるのか」
ふわふわと、ウィザードブルームに乗りながら。転移先から現地の『願望機の悪魔』達の国へ向かいつつ、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)はグリモアベースでの話を思い出していた。
「こおりのあくまとやらは頭が足りていないようだな」
そうフィアは端的に己の思考を口にして、フフンと自信と傲慢を交えた微笑みを浮かべた。
「少し考えれば分かるというものだが――
その魔術が使えれば『カタストロフ級巨乳』になることも可能ということ!!」
その真実に辿り着いた漆黒の魔女は、その栄光を見据えて高らかに笑い声を上げた。
ちょうど足元は願望機の悪魔達の国の中心部。その笑い声を聞きつけて、悪魔少女達が何事かと集まり始めてきた。
「くくく、ならば、そのD、我が奪ってカタストロフ級巨乳になるとしよう!」
瞬間……下からジィッとした、まるで宇宙人でも見るかのような奇異の視線を感じ取る。よくよく見れば、視線は集まって来ていた悪魔少女達のものだった。
「うん? べ、べつに、今の胸が小さいと言っているわけではないからな」
フィアは居たたまれなくなり、その視線から逃れるように目を逸らす。
そして、箒から降りるタイミングで、ふと、己の視線を身体に沿って下に移動させた。すると、やはり『何の引っかかりもなく』箒に乗っている自分の太ももまでが、何の障害もなく目に飛び込んでくる。
そこには、常にあって欲しいと願う――視線を遮る胸がない。
もう、じっと見つめるまでもない。彼女もまた、悲しきかな、こおりのあくまとバストのサイズが類友に近しい『大草原の小さな胸』の同志であったのだ。
「おむねがない……悲しい、話です……」
「これは、願いを叶えれば……」
悪魔少女達が、フィアを前にして小声ながらも堂々と筒抜けの相談を始める。
だが――使える物は何でも使う。フィアは願望の悪魔に隠さない自信に満ち溢れた傲慢さで、その少女たちに語り掛けた。
「ふむ、願望器の悪魔か。
くくく、望みを叶えてくれるというならDに頼るまでもない!
我を巨乳にするがよい!」
「これは、堕落の第一歩……!
は、はい、あなたの、欲望、叶えます!」
悪魔少女の一人が飛び出す絵本を大きく開く。ユーベルコード【汝が為したいように為すがよい】が発動し、そこからポン! と一際大きく期待感を煽る音がした。
「これで我にも胸が!
――何だ……なぜ変化がないのだ?」
しかし、待てど暮らせど、願望機の悪魔が持つ絵本からは、何も願望機らしきものが出て来ない。
もしやと思ってフィアが自分の胸を見る。しかし、当然『胸は、大きくなってない』。
「どういうことだ! 我の胸が大きくなっていないではないか!」
「あ、あの……もしかしたら」
他の存在から同じ願いを叶えた時には、ダンベルが出てきたという。その存在は、まだ頑張れば可能性を秘めていたのであろう。だが、フィアの場合――
「……ゼロは何倍してもゼロ……だと……!?」
「は、はいぃっ『未来がないから』――だ、だから願望機も……」
辿々しくも、サラリと真実を告げてしまった願望機の悪魔に、直球で逆鱗に触れられたフィアの思考は――一気にぷちんと引きちぎれた。
「ええい、貴様らなど塵も残さず滅してくれるっ!」
怒りを露わにするフィアの回りに、魔力が加速度的に循環をし始める。
「あぁっ、悪――! ま、待ってください!
あ、出ました! 出ました、よ!」
このままでは街が壊れる。国の危機を感じ取り、とてもダサいと評される行動に涙を呑みながらも、他の悪魔少女が急ぎ絵本から持ってきたもの。
それは――『500mlサイズの牛乳パック』。
「――我に牛乳を飲め、と……!? 我に『牛乳飲め!』とっ!?」
……ゼロは何倍にしてもゼロだから、せめて胸が大きくなりそうなボディ作りから始めるしかない。
まさに、そう言われたに等しい、この平らで『ないむね』にだだ漏れに溢れてくるこの屈辱と絶望感。
フィアは半泣きになりながら、怒りにまかせて【魔力増幅(マナ・ブースト)】を重ねて瞬時に魔力を編み上げる。
そして、巨大な竜すら跡形も残らず消し飛ばすユーベルコード【竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)】を乗せると、怒りと共に、全力でぶっ放し悪魔少女達をきらめく星になる場所まで吹き飛ばした!
そうして国の中央には、一つの立派なクレーターが出来上がった。
悪魔少女達から、その力はトンでもない悪であると讃えられた。絶賛された。
だが……フィアにとっては、それまでの惨劇がペタンとしたままの胸にザックリと刻み込まれ。
そして、ここで起こった願いどころか出来事全てが儚い夢であったかのように。巨乳になれなかった悲しみを、フィアは己のひらたい胸の中にそっと仕舞い込んだ……。
苦戦
🔵🔴🔴
「というわけで、そこのボーイ&ガール! Dを出してちょうだい! こういう所で、悪を見せないとデビルキング法に引っ掛かっちゃうわ。そしてえぐれている胸も、何としてでも大きくするのよぉ――!!」
なんと悪魔主婦たちにとってDを巻き上げるという事は『デビルキング法を守りつつ、夢見るバストアップまで叶ってしまう(かもしれない)』という、まるでマルチショッピングのような一石二鳥の行動であったのだ。