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世間知らずの 悪徳令嬢を ぶっ倒せ! ▼

#デビルキングワールド #トンチキシナリオ

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#デビルキングワールド
#トンチキシナリオ


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●ささやかながらも吐き気を催す鬼畜の所業
 デビルキングワールド内のある国のスーパーにて。

「ありがとうございます、10Dのお買い上げでございます」
「じゃあこれで……」

 客側がそう言って出したのは1万D札。
 10Dという安い値段に対して1万D札、小銭がなかったんですかね?
 それに対して店員が真っ青な顔でレジから出すのは大量の小銭。
 5000D札1枚はついているが、残り4990Dは全て小銭、小銭で渡しおったのである!
 端から見ればお前それ両替目的では??と思われるが、この国ではそういう決まりなのだ。

「9990Dのお返しになります……」
「いや、ホントすいません……」

 店員への申し訳無さで客も真っ青な顔でお金を受け取る。流石根は善良な悪魔、罪悪感が勝る模様。
 しかし財布に入れたのは5000D札のみで、残り4990Dはレジ横にある募金箱にチャリチャリチャリン♪と音を立てて入っていった。
 「国税箱」とあるこの募金箱に、国の決まりで5000Dを切る金は全て、そう――全て小銭にして入れなければならないのである――!


 一方。

「おーっほっほっほっほ!今日も大儲けですわ!!
 儀式魔術の完成に必要な金額まであと少しまでですわね……ふふふ、その時が楽しみですわ~~~~!!
 お―――――――っほっほっほっほっほ!!」

 どっかの豪邸でお嬢様が高笑いしながら大量に集まったDの山を見てうっとりしていた。

●許すまじ、悪徳令嬢!
「……ひでえ話だろ。許しちゃおけねえだろ!!」

 怒りに炎を滾らせ、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)が集まったグリモア猟兵たちへと声を荒げた。
 新たに発見された世界『デビルキングワールド』――そこではあまりにも根が善良すぎて絶滅寸前に陥ったというとっても初で善良な(自称)悪魔たちが住んでいる。
 種の存続の危機に陥ったことから悪魔らしく悪いことをしよう!欲望のままに暴れよう!という『デビルキング法』が制定され、それを善良で真面目な悪魔たちはしっかり守っている――という何ともトンチk……げふんげふん。個性的な世界だ。
 それだけならまあ良いのだが、問題はそのせいで悪事を働くことに迷いのないオブリビオンが蔓延り、それらに心酔してデビルキングに仕立て上げようとしていることなのである。

「どんなに安い金額の商品だろうが小銭での支払いは禁止、1万D札以上での支払いを強制!さらにそれだけでは飽き足らず5000Dを切る金は全部小銭、自動レジ禁止で手動でのお釣り返しを法律で制定しやがった上に小銭は全部国税納付と称してその場で募金箱に入れさせて独り占めしてやがるんだよ!!!
 こんなド鬼畜な所業が許されてたまるかッ!!」

 デビルキングワールドの(一応)通貨である「D」には、非常に強力な魔力が秘められている。
 これを大量に集めることでカタストロフ級の儀式魔術を行うことができるというとんでもない代物だ。
 ――それをかき集めて、カタストロフを起こそうとしているオブリビオンの存在をこの度予知したのであるが、その内容が凌牙にとっては許すまじ内容であった為このように怒り心頭な状態というワケなのだ。
 グリモアが入り込んだせいで予知内容が記されるようになった本のページをばしばし叩きながら凌牙は告げる。

「この法律を敷いてる奴はその国を収める裕福なお家のご令嬢を装ったオブリビオンらしいが、小銭を大量に手動で返さなきゃいけねえことの苦労さを全く知らねえようだ。
 だからカタストロフを阻止する為にも根城にカチコミかけてDを片っ端から奪ってくれ!
 ご令嬢は多分お尻ぺんぺんで泣き出すと思うしなそのご令嬢」

 お尻ぺんぺん程度で収まってしまうカタストロフ沙汰というのもこれ如何に。

「あと、そのオブリビオンに付き従ってる悪魔たちはその世界に住んでるれっきとした住人の皆さんだからくれぐれも普段のオブリビオンに対するやり方はしないように!
 頑丈だから多少無茶やろうが大丈夫らしいけど、絶対に殺すんじゃねえぞ!いいな!」

 というワケで(どういうワケかは微妙に分かりづらいが)、猟兵たちはデビルキングワールドに向かうことになったのである。


御巫咲絢
 ※このシナリオはトンチキシナリオです!

 MSの前職での実話ですが、スーパーのレジで3000ぐらいの買い物を恐らくフィリピン辺りだろうかな辺りの出身であろう黒人さんに9割型10円玉でお支払いされたことがあります。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、新米MSの御巫咲絢です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!初めて御巫のシナリオに参加される方はお手数ですがMSページをご覧頂いた上で以下の内容にお目通しをお願い致します。

 思いついちゃったので早いとこ新しいの投げちゃいました。てへ☆
 というワケでデビルキングワールドで一本お届けします。
 実体験者だから言いますが小さい金額にでかいお札出してそれを手動でお返し、マジでキツいですよ!
 というワケでそんな店員さんに優しくない法律を強いてDをかき集めている悪徳令嬢のお宅にカチコミかけてください!

●各章説明●
 第一章:集団戦。
 『セントウィン』との戦闘です。
 悪徳令嬢のボディーガードで雇われた悪魔たちですが忠誠心はゼロ。Dで雇われてる俺たちカッコいいデビー!なのでお金をたくさん支払えばすぐ寝返ります。

 第二章:ボス戦。
 『悪徳令嬢・イレーヌ』との戦闘です。グリモア猟兵も言ってた通り多分お尻ぺんぺんでギャン泣きすると思われます。
 攻撃も何か……あんまり痛くなさそう……って感じです。果たしてちゃんとした戦闘になりうるのか!とりあえずぶっ飛ばしてDを根こそぎ奪ってしまいましょう。

 第三章:日常。
 奪ったDで喰う飯がうまいぜェー!!という感じで戦闘後の腹ごしらえをしてもらいます。
 刺激的な味らしいですよ!尚献立に関してはプレイングでご自由にしてください。

●プレイング受付について●
 1/15(金)8:31より開始致します。
 開始日以前に頂いたプレイングは全てご返却させて頂きますのであしからずご了承ください。
 お気持ちが変わらなければ開始日以降にご投函くださいませ。
 トンチキシナリオなので肩の力を抜いて楽ーにプレイングして頂けたらなと思います!

 それでは皆様のフリーダムなプレイングをお待ち致しております!
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第1章 集団戦 『セントウイン』

POW   :    ㉕セントウイン
【自身の筋肉】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    ①セントウイン
レベル×1体の、【仮面】に1と刻印された戦闘用【①セントウイン】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    ⑩セントウイン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【厨二オーラ】から【暗黒破壊滅殺光線】を放つ。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「暇デビ」
「でも雇われている以上は護衛で見回りするのが仕事デビ」
「でもサボるの悪らしさ溢れてないデビ?」
「ウッ」

 例のご令嬢邸、ボディーガード共がわちゃわちゃしている。
 真面目な悪魔たちは恐らくはした金で雇われ「雇われている俺たち悪デビ~!」と思っているんだろうが、言う通りデビルキング法に基づくとより悪らしい悪もあるので悩んでいる。
 いや、それで平気でサボりにいかない辺り真面目ですね?

「ハッ!それよりももっと悪らしいのがあるデビ……!」
「何だって!?それはいったい」
「敵対する奴にもっと高い金で買われる……それなら護衛の仕事もきちんとしていてその上で悪らしく振る舞える!どうデビか!」
「「おおお~~!!」」

 とかそんな会話が大声で行われているので、猟兵諸君らの耳に入るのは当然の状態となっている。
 実際に高い金で買い取ってもいいし、実力でねじ伏せてもいい。
 諸君らの思う"悪"を彼らに見せつけるのだ!
津上・未有
…さぼらないなんて、結構真面目だな、あいつら…
我の部下に掃除とか任せたら、大体さぼるのに…いや、さぼらないのもちゃんといるけど

ならば、寝返らせるには…Dだな
お前たち、どうせはした金で雇われているのだろう?
ならば、我からはお前たちの雇い主よりの倍、Dをくれてやろう!
しかも三食昼寝付きの豪華待遇だ!
さあ、この我に…我の【悪のカリスマ】の前に従うがいい!

…ちょっと痛い出費ではあるが…どうせ敵からDを奪うわけだからな
元は取れる!…筈だっ!フハハハハ!

アドリブ歓迎



●悪のカリスマ(胃袋的意味で)
「……さぼらないなんて」

 その様子をひっそりと見守り、様子を伺っていた津上・未有(自称真の魔王・f10638)は真面目に仕事をしているセントウィンたちの姿に少し感動していた。

「結構真面目だな、あいつら……我の部下に掃除とか任せたら大体サボるのに……」

 一応弁解しておくとさぼらないのもちゃんといる。
 ちゃんといるがこの魔王様のご家庭力が高いので「魔王様が直々にお片付けになった方がいいと思いまーす」とか思われててそれでサボっている可能性も否定できない。それが本人の耳に入っているか否かは別にして。

「ここの世界の悪魔たちは根が真面目だと聞いていたが本当だな……」

 正直部下に欲しいと思った魔王未有様である。
 きっとこの部下たちならば掃除をさぼらずやってくれるに違いない。魔王の城は広いのだ、魔王様お一人でお掃除したところで届いていないところにほこりが溜まるばかり。
 荘厳なる魔王の城としては似つかわしくないスタイルになってはその偉大な称号も名ばかりだ。
 故にこの真面目な悪魔たち……是非雇いたい!

「確かあいつらはDで雇われていたのだったな……ならば寝返らせるには――」

 Dだ。
 何故なら「金で雇われている俺たちカッコいいデビ~!」としか思っていないのだから。
 奴らの言動からしてもより高いDで雇い、かつ福利厚生もセットでつければ完璧だ。
 そうと決まれば――と早速魔王未有様はセントウィン共に声をかけた!

「そこのお前たち!」
「デビッ!?」

 まるで鳩が豆鉄砲食らったような顔をするかのようなオーバーリアクションで反応されたので流石にちょっと困惑する。
 しかしそこでパニックになってしまっては作戦丸潰れ!優秀な部下を雇う為に未有は心の中で人という字を書いて飲みまくった。

「し、侵入者デビか!?」
「まあ待て、お前たちに危害を加えるつもりはない。ひとまず我の話を聞くがいい……どうせはした金で雇われているのだろう?」
「ど、どうしてそれを!?」

 いや多分それは猟兵でなくても周知の事実ですんで……

「ならば、我からはお前達の雇い主より倍、Dをくれてやろう!」
「な、何だっデビ―――!?」
「しかも三食昼寝付きの豪華待遇だ!!」
「「「な、な、何だっデビ――――――!?!?!?」」」

 セントウィンたちは驚愕した。
 今どき身を粉にして働け!福利厚生なんぞ知らん!という風潮がはびこる中、福利厚生完璧かつ寝食の安心を得られる上に高い金を払ってくれるなんて……!

「だ、騙されないデビ!さ、三食と言ってもカロリー●イトみたいなのだったりするデビ!でもそれはそれで素晴らしい詐欺っぷりで悪なので尊敬したいデビ!!」

 詐欺前提だが大分心が動いている。

「フハハハハハ!もし我に雇われるのであればこの我が手ずからお前たちにうまい食事を振る舞い昼寝と食事の時間は仕事をしなくて良い志向の堕落の時間を与えてやろう。
 試しに我が手ずから握った握り飯を用意してやった。これを食って判断をしてもらっても構わんぞ?」

 スッ……と未有が取り出したのはおにぎりの入った包み。開ければ素朴ながらも懐かしさを味わせる至って普通ののりが巻かれたおにぎりが詰まっている。
 セントウィン共は恐る恐るそれに手を取り――口に入れる。いや待って、お前ら口どこ?????

「こ、これは……なんて素晴らしい塩加減デビか!!!」
「ううっ……故郷の母ちゃん思い出して泣けてきたデビ……」
「めっちゃくちゃうまいデビ!!これが三食食べれて昼寝もついてきて今の雇い主の倍のDデビか!?」
「どうだ、心酔せざるを得まい!さあこの我に……我の【悪のカリスマ】の前に従うがいい!!従うならこの包みに入っている握り飯を全て喰う権利をまずは与えてやろう!!」
「「「ま、魔王様~~~~!!!!」」」

 何て圧倒的悪のカリスマなんだろう。
 魔王未有の前にセントウィン共の意志よりも早く身体が動き、彼女に傅くことを選ぶ。
 どっちかっていうと胃袋を掴んだような展開な気もしなくもないが、おいしい食事の前には人間だけではなく悪魔ですら無力も同然。
 そこにおいしいご飯があるのなら!!ありつかずにはいられないのだッ!!!

「(……まあ、ちょっと痛い出費ではあるが……どうせ敵からDを奪うわけだからな。元は取れる!……ハズだっ!)」

 どの道部下が増えるなら食費の出費も増えるし、敵が溜め込んでいるDを奪えるなら根こそぎ奪ってしまえば十二分に元は取れるだろう。
 ならば何も問題はない。
 そう、魔王未有の計画に一切のぬかりは、ない――!

「ハ――――ッハッハッハ!!さあ悪魔共!我についてくるが良い!!
「「「「イエスマイサタン!!デビ」」」

 こうして魔王未有様は新たな部下を手に入れることに無事成功したのでありました。

成功 🔵​🔵​🔴​

カデンツァ・ペルッツィ
どうして自動釣り銭機を導入しないんですか?(電話ケットシー)
閉店作業の時に誤差が出たーとか泣かずに済むというニョに…
ゴホン、お仕事だニャ?分かっているから心配するニャ!

猟兵になってからずっともらってきたお賃金だが
割とマジで使い道がなくて貯まる一方だったニョだ
それを…今こそ、解き放つ時…ッ!
依頼の成功のためなら惜しむ訳があるまい、さあご覧あれ!
(吾輩にはあんまり価値が分からニャい)金銀貨幣を
Dに換金してきたこのクッソ重い袋を!ハー重かったニョだ!

猫の手ならぬお主らの手を借りたい…
というか敵の配下を買収するという鬼畜の所業をやってのけたいニョだ
札束もあるぞ、コレで顔面を叩けばイイらしいな?んん~?



●札束で汗を拭くのもきっとデビキン的には悪
 カデンツァ・ペルッツィ(ワンダリングウィザード・f06034)は電話ケットシー顔にならずにはいられなかった。

「どうして自動釣銭機を導入しないんですか?」

 ご も っ と も で す 。ホントその通り。しかし残念ながらそういう国の決まりなのです、悲しいね。

「閉店作業の時に誤差が出たーとか泣かずに済むというニョに……」

 そう、釣り銭手動式は誤差が出やすい。
 というのも金額の確認が事実上店員任せになってしまうのでヒューマンエラーと隣合わせ。
 故に自動釣銭機はお金を入れるだけで勝手に計算して出してくれるので非常に楽なのだ。
 依頼に赴く前、実際にデビルキングワールド某国内のスーパーに立ち寄り、疑問に思ったことを実際に現場の人、いや悪魔に聞いてみた。

「それは全く仰る通りなんですけど……デビルキング法があるじゃないですか?アレに基づくと最高に悪なんですよ。
 誤差が出ても報告しないのも悪なので、省令がそのまままかり通っていると言いますか。実際に買い物行く時に申し訳ないとは思うんですけどね……」

 ……という、ますます電話ケットシー顔不可避な解答が返ってきたのである。
 デビルキングワールドの(自称)悪魔たちは実に真面目で誠実な善良悪魔(よくよく考えてみたらめちゃくちゃパワーワードの塊である)。種の存続の為に制定された法をきっちり守ろうと毎日頑張っているのだ。
 だがしかし、真面目に従った結果がこの有様とは何とも言えないアレ感が半端ない。
 電話ケットシーどころか宇宙ケットシー顔にもなってしまうので、カデンツァはこれ以上考えるのを一旦やめた。
 というか全部その善良な悪魔(パワーワード)とデビルキング法を利用するオブリビオンが悪いのでオブリビオンを倒せば解決するのだから特に考えすぎる必要もなかった気もしないでもない。
 ところでカデンツァさんそろそろ行った方がよろしいんではないでしょうか。

「……ごほん!お仕事だニャ?わかっているから心配するニャ!」

 さて、彼はどういったやり方で悪魔たちを退ける、あるいは仲間にするのであろうか……


「はー暇デビねー……暇だからお掃除用具借りて掃除しようデビかね」

 さてボディガードで雇われたセントウィンたちであるが、何ということでしょうボディガードの仕事の領分外であるお掃除まで始めた。
 暇という理由でやることが他人のお庭のお掃除とは何とも根が善良なことか、これだからこの悪魔共は(称賛)!
 正直本当に人間の方がより悪魔らしいまであると思う善良っぷりが発揮されている。 

「……」

 そこにやってきたカデンツァさん、さてどうコメントしてくれようかと一瞬逡巡。
 セントウィンたちはそれに気づいて振り向く。

「ん??お客さんデビか?それとも侵入者……?」
「いやさっき唐突にやってきたかわいい女の子に雇われてった奴らもいるデビよ。侵入者じゃないデビか?」
「あー。じゃあお相手するデビかねえ。お掃除終わってからでもいいデビか?」
「アッハイ。じゃあ待ってるニャ」

 お掃除>ボディガードの仕事って優先度逆じゃねえか。
 恐らく本当に金で雇われるという悪をしてみたかっただけなんだろうな、と思わずにはいられない。
 ここで話を持ちかけに無理やり割り込んでもいいが、それをさせないというかできない何かのオーラを感じたカデンツァはお掃除が終わるまで律儀に待っていた。

「お待たせしたデビ。お嬢様に御用デビか?それなら我々を倒してもらってからになるデビ」
「いいや違うニャ。吾輩は猫の手ならぬお主らの手を借りたい」
「そりゃまたどういう」
「……というか、敵の配下を買収するという鬼畜の所業をやってのけたいニョだ」
「な、何だっデビ!?なんて悪デビ……!」

 単刀直入に切り出したら早速食いついてきたセントウィンたちである。
 悪を成し遂げたいという心構え、まさにデビルキング法を遵守するに当たって必要不可欠なものなのだ。

「そ、そんなこと言われちまったら……手伝うしかなくなるじゃないデビか!」
「さあ!さあ!いくら用意したデビか!」
「ふっふっふ……」

 含み笑いをするカデンツァはあるモノを取り出した。それは――

「(猟兵になってからずっともらってきたお賃金だが、割とマジで使い道がなくて貯まる一方だったニョダ。それを……)」

 今こそ、解き放つ時……ッ!!

 ユーベルコード【バトルキャラクターズ】で召喚した31人のゲームキャラクターと共にカデンツァがせっせこせっせこと運んできたのは。

「依頼の成功の為なら惜しむ訳があるまい……!さあご覧あれ!(吾輩にはあんまり価値がわからニャい)金銀紙幣をDに換金してきたこのクッッッッッッッッッッッッッッッッソ重い袋を!!!」
「で、デビ―――――――っ!?」

 明らかに重すぎて引きずらないと持ってこれないのが見て取れる、大量にお金の入ったクソ重い袋だった。
 セントウィンたちは驚愕する。
 そのぱんっぱんに詰められた袋を見るだけでわかる……このケットシー、めちゃくちゃお金持ちだ!大富豪だ!!と。

「はー、重かったニョだ……!よっこらせ……ほら札束もあるぞ」

 鞄の中にチラ見えする1万D札が大量に積み重なった札束。100万Dは固いであろうその札束をおもむろに取り出して……

「コレで顔面を叩けばイイらしいな?んん~??」
「あっ……こ、これはいけない、実にいけないデビよ!もっと!もっと札束で叩いてください!!」

 札束で叩かれるという、金持ちの悪役でなければそう簡単にお目にかかれない悪行をその身で体験したセントウィン。完全に虜である。

「うちのお嬢様は全部小銭にしてしか集めてなかったから札束で叩かれるという誰しも経験してみたい悪をしてくれなかったのデビ……!!」
「今とても夢がかなった気分デビ……!感謝感激雨あられデビ、是非ともあんたについていかせて欲しいデビ!!頼むデビ!!」
「ボスの為なら何でもやるデビ!!!」
「(えっもしかしてそんニャ理由で雇われてたニョかこの悪魔たち)」

 カデンツァは心の中で電話ケットシー顔をした。
 まあともあれ無事成功したんだから結果オーライってことでいいんじゃないでしょうかね!

成功 🔵​🔵​🔴​

オネスト・ファッション
アドリブ歓迎

1万D以上での支払いに5000D以下は募金!?
学生悪魔には辛すぎる仕打ちだぜ…気軽に買い食いもできねぇじゃねえか!
ダチを苦しめるワルは許せねえ、ぶっとばしてやる!(それに、お偉いさんに反抗するのってワルっぽいしな!)

おいそこのお前ら!金を貰うだけで満足するなんてまだまだだぜ!
金は使ってこそ意味があるのさ、見せてやるよ!
そう言ってUCを発動
大量のDを材料に自分の服を[アート]で煌びやかにアレンジ!
支払いに使うだけが使い道じゃないんだぜ?ワルくてイカすだろ!
ついでにお前らの服も(手持ちのDで)カッコよくしてやるぜ!

なぁ、この先にあるDをゲットできればもっとカッコよくなれると思わないか?



●デビルキング法が僕らにもっと輝けと囁いている
「1万D以上での支払いに5000D以下は募金!?」

 オネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)は激怒した。

「学生悪魔にはつらすぎる仕打ちだぜ……気軽に買い食いもできねえじゃねえか!」

 そう、何故なら学生には厳しいなんてものではないのである。
 1D=1円とのことなのでUDCアースの現代日本で例えるなら、1万円は学生にしてはめちゃくちゃ高いお小遣い。
 共働きの両親がもし残業なりで帰れなくて晩ご飯作れそうになかったらこれ買って食べてね、と一ヶ月の食事分として渡す金額というなら納得がいくが、5000円以下は募金です、なんて言われたら一月の食事もままならない。
 まあ、彼の場合は気軽に小腹が空いたとかおやつが食べたいと思った時にかるーく買ってつまめる程度の意味合いなのだが、買い食いというものは気軽にできるからこそおいしく食べられてストレスも減るもの。
 それもまともにできないというのは苦しいものがある。
 そしてそれはオネストから見たらダチを苦しめる最低の"悪"だ。
 彼には政治のことはわからないが、ダチを苦しめるものに対しては人一倍敏感だった、故にかの学生の財布事情的な意味で邪智暴虐な令嬢を除かなければならぬと決意した。

「ダチを苦しめるワルは許せねえ……ッ、ぶっ飛ばしてやる!(それにおえらいさんに反抗するのってワルっぽいしな!)」

 こっそりと別の本音も混ざっておられた。
 ダチを救うことができる上にデビルキング法に基づくワルもこなせる、そう考えると一石二鳥なのかもしれない。
 そうと決まれば善は急げ、いや悪は急げと言った方が良いのだろうか、いや多分細かいことはいいんだろう。
 オネストは早速カチコミをかけた!

「おいそこのお前ら!」
「デビ!?す、すいませんお嬢様サボってなんかないんで減給は――」
「いや流石にお嬢様と間違えるのはなくね?」

 偶然背後から声をかける形になったのかビビり具合が半端ないセントウィン。本人が既にツッコんでいるのでこれ以上の言及はしないでおくものとする。

「まあそんなことはどうでもいい!金を貰うだけで満足するなんてまだまだだ……ぜ……おっ?」

 興味深そうにオネストが視線を向けたのはセントウィンが手に持っているデビキンファッション雑誌。

「な、何デビか?」
「デビナクの今月号じゃん!お前もファッション興味あるクチか?雑誌の選出センスがいいじゃんか」
「そ、そうデビが……この服欲しいんだけど高くて、もうちょっと生活費と貯金貯めてから買おうかなと思って……」
「なる程……貯めてから買おう貯めてから買おう、だとトレンドがもう変わっていたりもするんだが、……トレンドについていかずに己の理想を求めるその姿勢、嫌いじゃないぜ。だが――」

 ばっ、とオネストは懐から大量のDをぶちまけ始める。
 一体何を始めるのかというと、このDはユーベルコード発動の為の触媒だ。集まればカタストロフ級の儀式魔術に使える魔力を秘めたモノがユーベルコードの一助とならない訳がなく。

「金は使ってこそ意味があるのさ!見せてやるよ!」

 ばらまかれた大量のDがきらーん!!と光ってオネストの服を包み込んだかと思えば、えげつない量のイカした装飾と謎の光沢によるアレンジが施し始めた!
 これぞファッションリーダーである彼のユーベルコード【スタイリング・ゴージャス!】。
 そう、彼のユーベルコードは常にデビルキングワールドのトレンドの最先端を行く衣装をすぐに仕立て上げることができるのだ!
 おおお、とセントウィンがそのカッコよさに感嘆の声を上げる。

「か、カッコいいデビ……!めちゃくちゃ輝いてるデビ……!!!」
「だろー、ワルくてイカすだろ!支払いに使うだけが使い道じゃないんだぜ?ついでにお前らの服も(手持ちのDで)カッコよくしてやる!」

 オネストのDが放つ光がセントウィンを包み込み、恐らく彼(?)の好みに沿っているであろういかした煌びやかなファッションへとアレンジ!

「お、おお……おおおおお!?これがホントにオレなのデビか!?」
「どうだ、自分でイカす衣装を着てみた感想は」
「か、か、カッコいいデビ……!まさかこんなスタイリッシュになれるとは思ってなかったデビ……!それもこれも全部兄貴のおかげデビよ……!!」

 さらっと自らを舎弟認定するセントウィン。
 まあ、ただ単にDで雇われているだけなので、お嬢様の出す条件以上に魅力的な案件があればそれは当然そちらになびくもの。
 彼はどうやらオネストのファッションセンスとそれを自分にも与えてくれる粋な計らいに感激したようで、恩義に報いたいと思っているようである。
 うーん、律儀。根が善良だとこうなるんですね。

「ふっ……兄貴なんてよせよ、僕たちはダチだろ?」

 ファッションを愛するもの悪魔同士、互いに目指すファッションに袖を通し、理解し合えたのであれば最早友情は育まれているも同然だ。
 そしてダチを苦しめる悪を討伐する為にオネストはここにいるワケで。

「なぁ、ところで……この先にあるDをゲットできればもっとカッコよくなれると思わないか?」
「ハッ……!!」

 耳元でこっそりと企みを伝えるというワルの王道ムーブ。
 小銭しかないとはいえカタストロフを起こせる程の数、何千万、いや何億何十億あってもおかしくはない。
 それを全部とは言わずとも、1割2割ファッションに当てることができたならば最高にカッコよくなれること間違いなし。
 セントウィンは黙ってオネストと固い、固い握手を交わした――!

成功 🔵​🔵​🔴​

灰神楽・綾
【不死蝶】
かの世界の同人誌即売会では
朝っぱらから万札出してくる人に対して
丁重にお断りしてもいいという暗黙の了解があるらしいね

黒い背広に赤いワイシャツ
俺は梓兄貴の弟分ポジション
さすが梓、見た目だけならめちゃくちゃワルっぽーい

聞けば、ブラック企業も真っ青な環境で
働かされているそうだね君たち
俺たちのボスのもとで働けば
平均年収はこの国の軽く二倍
夏冬のボーナスも勿論出るし
福利厚生もばっちり
完全週休二日制で定時には皆帰れる
あれやこれやホワイトっぷりを熱弁

お金はこのくらいでどうかな?
立派なジュラルミンケースを取り出し
中にはDの札束がぎっしり
ちなみに見えない部分は全部新聞紙
平気で偽札用意するのもワルだよね~


乱獅子・梓
【不死蝶】
こいつってたまに妙な知識持っているよな…

悪になりきるにはまずは形から
…と綾に言われたので
白い背広に黒いワイシャツ
そしていつもの黒グラサン
綾曰く「ヤーさんあるある、妙に派手なスーツ姿」
俺はヤーさんの兄貴ポジションらしい
おい、それ褒めてんのか!

俺たちは隣国「デビルドラゴン国」からの使いだ
※勿論でっちあげ
お前たち、実に優秀なボディガードらしいじゃないか
どうだ?こんなちっぽけな国よりも
俺たちの国のボスに仕えてみないか?
勿論タダとは言わん…綾
「例のものを出せ」と視線で合図送り

それでも嫌だと言うなら
こいつと遊んでもらうことになるがな
成竜の焔の目がギラリと光りグルルと唸る
…意外とノリノリだな焔??



●派遣社員で25連勤は実話として存在しています。
「かの世界の同人誌即売会では、朝っぱらから万冊出してくる人に対して丁重にお断りしてもいいという暗黙の了解があるらしいね」
「お前ってたまに妙な知識持ってるよな……」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の豆知識に乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は首を傾げた。
 実際同人誌即売会ではお札はあって千円札で出した方が断然良い。まあまず一回の買い物で1万円行くことはそれこそ公式ブースのグッズ買うぐらいじゃないとなさそうですね。
 文庫本サイズもだいたい1冊1200円とするなら5冊買っても6000円、しかしよっぽどの壁サーじゃないと万冊対応のお釣りを出すことはないのではなかろうか……
 それはさておき梓は白い背広に黒ワイシャツ、反対に綾は黒い背広の赤ワイシャツを纏い、互いに愛用のグラサンをキメてどこからどう見ても文句の付け所のないヤーさんスタイルで現場にやってきた。
 綾曰く「悪になりきるにはまず形から」とのことで「ヤーさんあるある、妙に派手なスーツ姿」を採用したのである。
 梓が兄貴ポジションで綾が弟分ポジション、ヤーさん一族(?)らしい兄弟関係もばっちり、二人共長身なのでまあそれはもう、見事なまでにヤーさんらしい迫力を醸し出していた。

「流石梓、見た目だけならめちゃくちゃワルっぽーい」
「おいそれ褒めてんのか!」
「もちろん褒めてるよ?」

 むう、と梓は流石に複雑そうな顔をするが、黒グラサンに長身なのでスーツを着込むだけで迫力はかなりのものである。
 もしこれがヤーさんじゃなくてSPだったら敵もビビるかもしれない。

「まあ、その方がこの世界では良いらしいしそういうことにしておくか。行くぞー」

 デビルキングワールドではワルさ全開のヤーさんは確かに大歓迎されそうですね?
 そんなワケで(?)梓の愛竜の一匹である炎竜の『焔』も連れてヤーさんらしく堂々とした佇まいでご令嬢邸宅へとやってきた二人。

「む、どちら様デビか?」
「失礼、俺たちは隣国”デビルドラゴン国"からの使いだ」
「デビルドラゴン国……?最近できた国デビかね、初耳デビ」

 というのはもちのろんでその場のでっちあげなのだが、出迎えた護衛のセントウィンたちはそうなのかーと信じている様子。
 うーん悪魔なのに純真だ。

「お前たち、実に優秀なボディガードらしいじゃないか……どうだ?こんなちっぽけな国よりも俺たちの国のボスに仕えてみないか?」
「お、引き抜きデビか?確かに買い物が面倒デビし、引っ越しは吝かではないデビが……(チラッチラッ)」
「ただ通勤は楽なんデビよねーここ……(チラッチラッ)」

 様子を伺うような素振り、いい感じのワルか金額くださいと言いたげなお顔をしておられます。
 ふっ、と梓は敢えてグラサンをくいっと上げて。

「もちろんタダとは言わん……綾」

 そう言って、綾に目配せをする。『例のものを出せ』――と。
 こくりと頷いた綾がさっと用意したのはそれはまあ立派なジュラルミンケース。
 がちゃ、と開ければとんでもない量のDの札束がぎっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっしりと詰まっているではないか!

「「お、おおおおおおお……!!」」
「お金はこのくらいでどうかな?」

 と、言いつつこのD札束は偽札だし見えない部分は全部新聞紙で厚みを出しているだけなのだが。
 綾曰く「平気で偽札用意するのもワルだよね~」だそうです。確かにとんでもねえワルですね!

「そ、そうデビね、金額は確かに……でも……」

 まだ渋るセントウィン共。
 もう一声欲しいとは何て贅沢な奴、デビルキング法をしっかり護っている善良な悪魔(というパワーワード)だ!
 だがしかしそれも当然想定の内。ここからは綾がにこりと笑ってジュラルミンケースを開いたまま売り込みを始める……!

「聞けばブラック企業も真っ青な環境で働かされているそうだね、君たち」
「そ、そんなにブラックだったデビか!?」
「た、確かに……言われてみれば日給5000Dを配られるだけでその日のうちに大量に買い込んでおかないとご飯もままならないデビ……」
「その上24時間厳重体勢デビからねえ……スーパー行くタイミングがないデビよ。25連勤とかデフォルトデビ」

 なんてこったいめちゃくちゃブラックじゃねえか。

「俺たちのボスの下で働けば夏冬のボーナスももちろん出るし福利厚生もばっちり。完全週休二日制で提示には皆帰れるよ?」
「な、何だっデビ!?夏季休暇や年末年始休暇も!?」
「もちろん」
「育休手当も!?」
「もちろん。男女問わず育休取りやすいしお子さんの誕生や入園、入学にはその度にお礼の品物もプレゼント」
「な、なんてこったい……めちゃくちゃホワイトデビ!!」

 セントウィンたちは感激している。
 よくよく見ると顔部分のD硬化部分は何ていうか凄く汚くなっている……人間で言うなら顔色がイカのように真っ白で体調不良のようなものだ。
 悪魔とはいえ、ブラック企業で働きすぎると疲れてしまうものなのだ。
 だがしかし、それでもまだワル部分が足りないとわがままそうな視線を向けてくる、なんて強欲なセントウィン共だろうか(デビキン的には最高の称賛です)。
 心の中ではしょうがねえなあ、と思いながら梓が最後のひと押しに一手を投じる――!

「――それでも嫌だと言うなら、こいつと遊んでもらうことになるがな」

 そう、次に目配せしたのは自らの愛竜である。
 その目をギラリと鋭く光らせグルル……と唸り始めた。
 ドラゴンという種は結構どの世界においても最強、あるいは最上の声明であると謳われることが多く竜に立ち向かうのはよっぽどの命知らずだと言われる程である、そんな奴に殺意を込めて唸られればどうなる?

「「よろこんで働かせて頂きます!!!!!デビ!!!!!!!!」」

 セントウィンたちは即土下座で頼み込むに決まってるんだよなあ!!
 その様子に焔はとても満足そうな顔でグル、とまた唸る。

「(……意外とノリノリだな焔??)」

 主も予想以上のノリノリっぷりだったようです。目を向ければ「意外と楽しいぞコレ」と言いたげな視線が帰ってきた。

「ふっ、利口な人物は嫌いじゃないぞ。では手続きは後ほど書類を渡そう。まずはこちらのお嬢様に用があるのでな……お前たちはしばらく休んでいてもいいぞ顔色悪いしな」
「ははっ!ありがたきお言葉デビ……!」
「行くぞ綾」
「はい、兄貴」

 ジュラルミンケースを閉じて二人は令嬢邸宅に堂々と潜入し、お言葉に甘えてセントウィンたちはご飯休憩に入った。
 多分ご飯食べて元気になったら助けに駆けつけてくれると思われます。
 身内と認定した相手には慈悲を与える実に非の打ち所のないヤーさんムーブ、それはまさしくワルの手本のような姿である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シルキィ・ソーイング
なっちゃいないね!
チマチマ小銭集めなんて小悪党のやることだよ!

ここは「悪のカリスマ」として範を示さないとね
まずはセントウイン達に話しかけるよ

「そこのキミ。ボクと一緒に、もっとドでかい悪事を働いてみない?」
「この国をひっくり返すような大悪事……クーデターをやろう!」
「そうすればご令嬢が持ってるお金は全部キミ達のものだよ♪」

賛同してくれたら「裁縫」と【悪魔の正装】でみんなの衣装をチェンジ!
25セントは攻撃力5倍! 自慢の筋肉で暴れろ♪
10セントは移動力5倍! レベル×500km/hで飛び回れ♪
1セントは攻撃回数5倍! 数の暴力をフル活用だ♪
ついでに仮面の数字も5倍にして、悪徳令嬢のお部屋に突撃だ☆



●魔王的模範解答
 シルキィ・ソーイング(人の皮を被った悪魔・f31746)は情けない、と言いたげにため息をついていた。

「全く……なっちゃいないね!ちまちま小銭集めなんて小悪党のやることだよ!」

 納税を義務付けて市民から大量の小銭を受け取るはいいが、それを一つたりとて両替せずそのまま積み上げてるというのも確かにおかしな話だしスケールががくんと下がる話である。
 魔王たるモノ、堂々とかつ大々的な悪事を掲げねばカリスマのカの字もどこへやら。
 かつて魔界を恐怖のどん底に陥れた"悪のカリスマ"として、今回の首謀であるご令嬢に悪の範を示さねばならぬと決意した。

「ん?またお客さんデビか?今日は多いデビねえ……」
「何か次々同僚がやめてってるのと関係あるんデビかねー」

 何かやめてってるわー程度の認識でしかないのどんだけ日和ってんだと言わんばかりである。
 逆に言えばそれだけ仕事やる気ないしご令嬢への忠誠のちの字もないということであるが。
 そんなセントウィンたちにシルキィは気さくに声をかける。

「そこのキミ」
「デビ?」
「ボクと一緒に、もっとドでかい悪事を働いてみない?」
「ドでかい……悪事……!?」

 ごくりと唾を飲み込むセントウィン。だから口どこですか?と言いたいんだけど本当にこれただの仮面だったりするんだろうか。

「そう、この国をひっくり返すような大悪事……クーデターをやろう!そうすれば、ご令嬢が持ってるお金は全部キミ達のものだよ♪」
「く、クーデター!?!?な、なんて素晴らしい響き……ッ!!」
「やります!是非是非!!やらせてくださいデビ!!!!」
「そんな最高の悪に携われるなんて光栄デビよ!!」

 ちょろい。実にちょろい。
 「金で雇われて何でもするって悪デビね~~~」程度の感覚で雇われていただけのセントウィン共は目の前に自分が参加できるより巨大な悪がそこにあれば食いつくのだ。
 まあ実際ガチブラック企業状態なのでそれでついてきたのを後悔しているんでしょう。
 計画通り――と思いながらシルキィはにこにこ笑って裁縫道具を取り出した。

「ふふっ、そう言ってくれると思った!じゃあこれはボクからのささやかなプレゼントだよ♪」

 縫い針に糸を通し、ユーベルコード【悪魔の正装(デモニック・クローズ)】を発動。
 肌ごと突き刺さろうが構わんばかりにぷすっと針を通せば、それだけでセントウィンたちのぴっちぴちの真っ黒ボディスーツが悪魔的センス抜群のカッコいい戦闘服に早変わりだ!

「ついでに数字も5倍にして……っと♪」

 何ということだ、㉕セントが100セントに、①セントが⑤セントに、⑩セントが㊿セントに変化したではないか!!
 それぞれ体格毎に合わせて最適なサイズにした上で、動きやすさも決して損なっていない。実用性も兼ね備えた最高にカッコいいデビルスーツを身にまとったセントウィンたちはいつもとは違う力の滾りように驚きを隠せない。

「お、おお……!!!何デビかこれ、いつもより筋肉が心地よく、そして激しく躍動しているデビよッ!!」
「おおおお、いつもより動きやすいなんてモンじゃないデビよ!今なら大気圏を単独で突破だってできるデビよ!!!」
「何か今ならなんたらの百裂拳を撃つこともできそうデビ……!!」
「ふふふ♪㉕セントは攻撃力5倍!⑩セントは移動力5倍!①セントは攻撃回数5倍!暴れて飛び回れて数の暴力フル活用♪」
「「「さ、最高デビ~~~~!!!ありがとうございます魔王様!!!」」」
「おっ、何デビ何デビ!?かっこいいの着てるじゃないデビか!」

 すっかりシルキィに懐いたセントウィンたち。
 それを見た他のセントウィンたちも何だ何だとやってきてはシルキィの勧誘を受けて即承諾、いつしか彼女の後ろにはユーベルコードで強化した衣装を身に纏ったたくさんのセントウィンたちが傅いていた。
 これぞ魔王の貫禄である。

「さあ、悪徳令嬢のお部屋に突撃だ☆」
「「「「「「「イエス、マイマジェスティ!デビ」」」」」」」

 彼女の号令と共に、セントウィンたちが令嬢邸宅に大量に流れ込んだ――!
 グリモア猟兵の説明を聞く限りこれだけでもうご令嬢泣きそう。

成功 🔵​🔵​🔴​

南六条・ヴィクトリア三世
さぁやってきましたわよデビルキングワールド!
私には夢がある! いずれSSWに留まらず全ての世界に株式会社UAIの支社を設立しますわよ!
ついでに深刻なキャラ被りを起こしているオブリビオンも処してしまいますわ(注:こっちが依頼の主目的です)

と、いうことでそこの悪魔の皆様方! 面接諸々すっ飛ばして採用ですわ!
待遇としては具体的にこのような形で(雇用条件を開示。福利厚生完備、年2回ボーナス付き、サボってクッキー増やすゲームで仁義なき争いを繰り広げる元部下とその部署の人間どもの写真)

そして御覧なさい、現在建設中の支社ビルを!
(UCで屋敷の斜向かいに支社ビルを建設)
さぁ、我が社で共に世界を制しましょう!



●社畜をホワイト企業に引き抜きは特効。
「さあやってきましたわよ!デビルキングワールド!!」

 南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)、デビキンデビューの瞬間である。
 彼女には夢がある――それはいずれスペースシップワールドに留まらず、全ての世界に株式会社UAI(ユニバーサル・アーマメンツ・インダストリー)の支社を設立すること。
 というワケでやってきたはいいがなんてこったい、当の悪魔たちは深刻なキャラ被りを起こしているじゃあないか!
 これは処さなければならぬとヴィクトリアは早速行動に移る。今回に限っては支社設立よりキャラ被り対処の方が優先事項だった。

「そこの悪魔の皆様方!」
「デビ?何か今日やったらお客さん多いデビね……」

 なんでお客さんっていう認識だけで済ませてるんだろうねこいつら。仮にも雇われ護衛なのにね。
 そんな日和気味な悪魔たちにも唐突に話をブチ込んでもいいが、ここで自らを紹介しないのは社長の名折れ。ヴィクトリアは名刺をきっちり人数分用意し、一人ずつ丁寧に手渡し。
 ビジネスというものはこういった細やかな行動で誠実さを示すところから始まる(多分)。

「株式会社ユニバーサル・アーマメンツ・インダストリー……ほえ~、そんな会社があるんデビねえ。それでその社長がうちのお嬢様に何の御用デビ?」
「お嬢様にではなく、貴方がたにです。単刀直入に申し上げます――面接諸々すっ飛ばして採用ですわ!」
「で、デビッ!?面接諸々すっ飛ばしな上引き抜き確定採用……!?何てワルさデビか!!」

 引き抜きは別にワルではないし断る自由というものがあるし内定辞退だってできるのだがワル認定らしい。

「待遇としては具体的にはこのような形で……」
「……えっ、年二回ボーナス!?しかもかなりいい金額デビ!?」

 25連勤が当たり前で日給5000Dなド畜生ブラック業にボーナスなんてあるワケがないし、そんな社畜たちにボーナスちらつかせたらそれだけで食いつくのは当然の帰結であった。
 福利厚生も完備だし、月給制な上に世界に合わせた勤務形態の為場所によってはフレックスタイム制も。
 さらに何よりもセントウィンたちの目を惹きつけたのはヴィクトリアが見せた写真である。

「え、ええっ!?堂々とサボってクッキーを増やし続けている社員たちもいるんデビか!?」
「ええ、業務をサボってみんなして3那由他クッキーの記録を塗り替えるのだと言って聞きませんでしたしわたくしも参加しました」
「社長自らッ!?!?サボり公認するなんて凄いワルデビ……!」

 実はこれ当時部長だった頃の写真なのだがその部長が昇進して社長になったなら社長公認も同然なので嘘は一切ついていない(?)。
 市場の活性化、経済の回転……どれも大事だが、デビルキングワールドにおいてはそれらをしつつもデビルキング法を遵守することこそ尊ばれるのだ。
 ならば、サボってクッキーをクリックし続けることを歓迎できない程度の器で世界を制することなどできはしないだろう。
 あらゆる世界のニーズに合わせた運営展開の手腕こそが社長に求められるものなのだから……!!

「ご安心なさいませ、勤務先も別に極端に場所が変わるとかそういったことはございませんわ。――ご覧なさい、現在建設中の支社ビルを!!」

 何ということだ、ご令嬢邸宅の斜向いにとてつもない勢いでビルが建設されているではないか!
 ユーベルコードにより株式会社UAIはもう既に活動を開始していたのである。
 城や街が築けるならばビルが簡単に築けないワケがない、世界を跨いでの優秀な社員が集まる株式会社UAIならではこそだ。

「もちろん社宅も近辺に建設する予定ですので、歩いて10分もかからないというギリギリまで寝ていても許されましてよ。体という資本あってこその経済ですわ」
「お、おおお……な、なんて至れり尽くせり……!!それでいてサボってもいいだなんて……!」
「ご納得頂けまして?」
「こ、こんな素晴らしい会社に採用してもらえるなんて……ううっ」

 感動の余りセントウィンたちは泣き出した。
 ここまでホワイトな会社見たことないと言わんばかりに感動で咽び泣いた。その姿から察せるであろう、あまりにもド畜生ブラックなこれまでの社畜生活の過酷さを……
 ヴィクトリアはふっと笑って、そんなセントウィンたちにそっとハンカチを差し出し涙を拭わせる。
 ここまで採用を喜んでもらえるというのは社長としても嬉しいものだ。

「「「さあ、我が社で共に世界を制しましょう!」」」
「はい社長!!!!!!!」

 その後セントウィンたちはすぐに退職届を書きご令嬢に押し付けて以降の仕事はバックレたそうです。

「むっっき―――――!!!なんなんですのあの小銭顔共――――――――!!!!!」

 というご令嬢の怒号がもしかしたら聞こえたかもしれないが、セントウィンたちは実に晴れやかな表情だったことだろう……

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『悪役令嬢・イレーヌ』

POW   :    やっておしまいなさい!
戦闘力のない、レベル×1体の【取り巻き】を召喚する。応援や助言、技能「【精神攻撃】【物を隠す】【略奪】」を使った支援をしてくれる。
SPD   :    自分がこの場にふさわしいと思っておいでかしら?
対象への質問と共に、【自分の背後】から【取り巻き】を召喚する。満足な答えを得るまで、取り巻きは対象を【あんまり痛くない攻撃か、冗談のような罵倒】で攻撃する。
WIZ   :    ちゃんと話を聞いていたかしら!?
【指さした指先】を向けた対象に、【眩しいけどあまり痛くない稲妻】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニャコ・ネネコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
 第一章ご参加ありがとうございました
 第二章のプレイング受付は1/30(土)8:31からとさせて頂きます。
 断章はそれまでに投下予定ですが、もし投下されていなくても開始日を過ぎていればプレイングをご投函頂いて構いません。
 戦争も近づいておりますので無理のない範囲でご参加くださいませ。
●豪奢な外観に反しまして
 さて、セントウィンたちはあっさりと猟兵側に寝返った為当の悪徳令嬢を護るものは何もなくなったワケで。
 猟兵たちが勇み足で駆け込めば……あの、お片付け苦手なんですかね?と言わんばかりに家の中のありとあらゆるところに小銭のDがパンパンにつまった箱やら何やら、さらに終いには直に積み上げられているではありませんか。

 ――いや、あの……

 い く ら な ん で も 無 防 備 や ろ ! ! ! ?

 と、きっと目をまんまるにした猟兵は決して少なくないだろう。
 てか何で札束にしないことにこだわりがあるのかがわからない。

「ちょっと!!人の家に許可もなく上がりこんだ上に文句までつけるなんてどういうことですの!?猟兵というのはマナーのマの字も知らないんですのね!!!」

 正論だが猟兵でなくても流石に物申しの一つや二つぐらいはあると思うし人のこと大分棚に上げている。
 主に店員さんへの優しさ的な意味で。

「全くあの小銭顔共……せっかく金で雇われる悪がしたい!と言うから雇って差し上げたのにあっさり掌をひっくり返すなんて。給与なら毎日5000D、25日間で合計すれば125000D差し上げているというのに!何が不満なんですの!!」

 月給換算125000円。
 UDCアースで例えるなら地方によってではあるがスーパーマーケットの契約社員以下である。
 そりゃロクに生活できゃしませんからみんな離れていくんだよなあ……

「まあいいですわ、このイレーヌ様に逆らったからにはあなた方に明日の朝日を拝むことはできないとお思いなさい!
 わたくしの悲願――"市営プールに小銭を入れた小銭プール"と儀式魔術の邪魔はさせませんことよ!!!」

 小銭プールってそれどう考えても泳げませんがな。というか儀式魔術がついでっぽくなってるのは気の所為だろうか。
 まあ、とりあえずこんな感じで非常に気が抜けてしまいながらもイレーヌとの戦いが今始まるのであった。
津上・未有
イレーヌの独り言が聞こえたが…
我、もしかしてセントウィンたちに毎日1万D、月給にして25万D払うの?
…ちゃんと払えるかな…
…まあイレーヌからD奪えば大丈夫だろ!多分!きっと、恐らく…

さて、セントウィンたちよ!
我はこれから闇に紛れて隠れつつ、大技のための詠唱に入る!その間お前たちは時間を稼ぐのだ!
…ようは囮役だ(小声)
ただし、さぼったりしたらこの後の祝勝会の食べ物はあんぱんと牛乳だけだ!
しかし我が満足いくように働けば…満漢全席を振舞ってやろう!

(以下長々とした厨二臭い詠唱)
我が闇の剣は絶望という名の結晶そのもの…
世界を裂くは我が無限の剣!その身に刻むがいい、塵芥!
魔王の投剣!!

アドリブ歓迎



●食欲は最強のバフステータス
「(――我、もしかしてセントウィンたちに毎日1万D、月給にして25万D払うの?)」

 津上・未有(自称真の魔王・f10638)の脳裏を不安が過る。イレーヌのやけにでかい独り言が聞こえてしまったのだ。

「(……ちゃんと払えるかな……)」

 いくら魔王とは言え14歳の少女、できる仕事が限られている――が猟兵だし猟兵のお賃金って結構高そうだし大丈夫そうな気もしないでもない。
 それに何より目の前の悪徳令嬢が持っているDを根こそぎ頂くのが今回の任務だし。

「(まあイレーヌからD奪えば大丈夫だろ!多分!きっと、恐らく……)」

 うん、大丈夫ですよ多分。きっと、そう、めいびー。

「魔王様、お顔の色が優れないデビが大丈夫デビか?」
「はっ!?はーっはっはっは、何を言っている、この我がこの程度で怖気づくワケがなかろうっ!」

 ちゃんと心配してくれるセントウィンたち、優しい。その時点で部下として優秀だと思いつつ魔王未有様からセントウィン共に命令が下る。

「さて、セントウィンたちよ!我はこれから闇に紛れて隠れつつ、大技の為の詠唱に入る!その間お前達は時間を稼ぐのだ!」
「はっ!!……ってつい了承しちゃったけど魔王様、それってつまり」
「……そう、ようは囮役だ(小声)」
「「やっぱり――――――――!!!(小声)」」

 ちゃんと魔王様のトーンに合わせて悲鳴も小さくしてくれるセントウィンたち、空気が読める子。
 何だかんだで根は善良な悪魔ということですね。こんないい連中をボロ雑巾のように使い捨てようとしていた悪徳令嬢、見る目がないのではと未有は思った。

「くっ、部下を平気で囮に……流石魔王様、悪の鑑!」
「ただし、さぼったりしたらこの後の祝勝会の食べ物はあんぱんと牛乳だけだ!」
「ひぃいい逃げ場をなくすのも完膚なきまでに悪ゥ!!!誠心誠意働かせて頂きますデビ!!!」

 やはりみんなおいしいものが食べたいのだ。
 あんぱんと牛乳オンリはやだ―――――!!!とセントウィンたちはパワーアップ!本気で殺るつもりで囮をする気満々になってくれたので魔王未有様は一安心。
 しかし魔王とは何も飴と鞭の鞭だけが本懐ではない。頑張った部下に褒美を与えるのもまた魔王の務めである。

「しかし、我が満足いくように働けば……」

 ごくり、セントウィンが唾を飲み込む。
 敢えて間を開ける。沈黙の空間を作る、とにかく、とにかく焦らす。

「……満漢全席を振る舞ってやろう!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」」」

 大フィーバーである。
 先程のおにぎりですっかり胃袋を掴まれたセントウィンたちに対してその満漢全席の言葉は至上の報酬に他ならない。
 おいしいご飯は何にも勝る……そう、食欲という人間の三大生理的欲求は時に人だけでなく悪魔をもとてつもない戦士へと仕立て上げる、最高のバフという名のスパイス!!

「よし、では行け!」
「「「突撃デビ―――――――!!!」」」

 未有が闇に紛れると同時にセントウィンたちの波が令嬢の部屋へとなだれ込む!

「ぎゃ―――――――――っ!?何なんですの貴方たち!!サボってないで働きなさーい!!」
「もう我々は魔王の忠実なる部下!イレーヌお嬢様のボディーガードにあらず!」
「我らの栄光(食事)の為に覚悟してもらうデビ!!」
「じゃかあしいですわ小銭顔共ォ!!先にやとったのはわたくしですのよ!!言うことを聞きなさ――――いっ!!」
「デビ――――――――っ!?!?」

 イレーヌお嬢様がセントウィンたちに向けて指さすと同時に眩い稲妻がぴしゃぁん!!と音を立てて屋根を破って落ちてくる!
 が。あんまり痛くない。とてつもなく眩いのは確かなのだが、せいぜい静電気にあたった時ぐらいの痛さ。

「……大したことないデビね?」
「そっ、そんなことありませんわよっっ!小銭顔共が下手にタフすぎるだけでしてよっっ!!!」

 慌てた顔で否定するがもう手遅れだと思う。ギクゥーッっていう効果音をセントウィンたちは聞き逃さなかった。
 イレーヌの眼前に広がるはその小銭顔共のニヤリとした表情――いや表情筋どこか知らんけど――。そう、それはまるで味をシメたような。
 そんな顔をしながら、①セントウィンがでは僭越ながらと言いたげに大量に①セントウィンを召喚し、どっかのホ●ォと鳴く謎の物体のような動きをして追いかけ回し始めた。

「い゛――――――――――や゛―――――――――――っ!?!?」

 ドコドコドコドコと追いかけまわる①セント顔の群れにイレーヌお嬢様は涙目で逃げ回る。
 しかしその①セントウィンの数が半端なくあっという間に追い詰められてしまい、万事休す。

「(うわあキモい。敵ながら可哀想だな)」

 と闇に隠れて詠唱していた未有は思ったが、あんなご令嬢でもオブリビオンはオブリビオン。魔王である以前に猟兵なので処すものは処さねばならない。

「"我が闇の剣は絶望という名の結晶そのもの"……"あらゆる慟哭を力とし、世界を裂くは我が無限の剣"……!』

 未有の詠唱のタイミングに合わせ、①セントウィンの群れが綺麗にきっちり直線上から離れていく。
 もちろん、イレーヌを逃げられなくするよう他のセントウィンたちと共に壁を作った上で、だ。
 イレーヌは辺りをきょろきょろと見回し、目の前に姿を表した魔王の詠唱にがたぶると震え上がる。

「ちょ、ちょっとまってくださいまし……それもしかしなくても威力が既にめちゃくちゃ跳ね上がってる奴で」
「その身に刻むが良い、塵芥ッ!喰らうがいい我が最大魔術【魔王の投剣】――――――――――っ!!!!」
「い゛―――――――――――や゛――――――――――――――――――――っっっっっ!!!!!!!!!!!!」

 直線380m上にドスドスドスドスと突き刺さる闇属性の数多の刀剣。
 最後にちゅどーんというお約束的爆発音を立ててイレーヌお嬢様が吹っ飛ぶ!場外まで一旦吹っ飛んでいった。
 その威力たるやお嬢様毎お部屋の壁をぶち破る程度の威力は余裕にあった。尚Dはそれに纏った魔力のおかげか無事なのでご安心ください。

「(うわやりすぎちゃったかな……まあこれもデビキン的には奨励されるからいっかな……?)
 ふっ、良い働きだったぞセントウィンたちよ。約束通りこの後の祝勝会では満漢全席だ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」

 魔王のありがたきお言葉に全セントウィンが喜びの雄叫びを上げた。
 一応まだ戦い終わってないんですけど、まああとは続く猟兵たちが何とかしてくれるからセーフ。

成功 🔵​🔵​🔴​

オネスト・ファッション
人の家に勝手に上がり込むなんてワルなら当然だろ?

『ヤンキー・スタイル』に[早着替え]してUC発動
「デビルキング法の最先端?違うな、時代が僕に追いついたのさ(デビナク12月号掲載)」
稲妻を受けても頑張って平気な顔をしておく
そのまま服の雰囲気に合わせて口調も変化、[威圧]で[精神攻撃]だぜ!

おぅ嬢ちゃん、今の電撃で服の裾が焦げたじゃねえか
弁償代100万D出してくれんだよな?
は?何でもクソもねーよコラァ!!!(煙草に見立てたココアシガレットを地面に捨てて踏みつける)
テメェの落とし前はテメェがつけろやコラ
払えねぇってんなら身体で払ってもらってもいいんだぜぇ?緑色の羽を配る募金活動でもさせてやろうか?



●相手の言葉頭だけで早とちりしたら後々黒歴史になります。
 「ひい……ひい……何なんですのぉ……」

 一回ステージアウトしてしまったイレーヌ様、ぜーはーと息を切らしながら帰って参りました。
 ユーベルコードの威力が大したことないとはいえ流石オブリビオン、生命力は段違いである。
 しかし帰ってきたらきたでまた別の猟兵とセントウィンたちが家に上がりこんでいたのでイレーヌのしっぽが怒りに毛を立てた!

「何なんですのまた不法侵入ですの!?」
「ん?人の家に勝手に上がり込むなんてワルなら当然だろ?」
「うぐっ」

 オネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)のデビキン的ガチなマジレスがイレーヌにCRITICAL HIT!
 そう、デビルキング法に則れば正しいことをしているのです。不法侵入は割と軽率にできる悪なので誰でもやりやすいよ!とおすすめされているまであるかもしれない。
 しかしただ不法侵入するだけではまだワルとしては足りない。

「デビルキング法の最先端?――違うな、時代が僕に追いついたのさ!」

 と、デビナク12月号に掲載されたキャッチコピーを高らかに宣言するオネストはその場で肉眼にて捉えること能わずなスピードでヤンキー・スタイルに早着替え!
 ひ、とイレーヌは息を呑んだ。衣装を素早く着替えたオネストから発せられるオーラが尋常ではなく、まさに只者ではないと言わしめるであろう程の畏怖の感情が彼女を竦み上がらせる。
 これはユーベルコード【ジ・オンリー・プレイス!】の効果によるものなのだが、そんなことつゆ知らずしっぽをぶるりと震わせた。
 だが悪徳令嬢としてのプライドが彼女にこのまま後ずさることを許さず、ごくりと唾を呑んでイレーヌはずびしぃっ!と指をさす!

「そんなこと誰も聞いていませんわよ!!!例えデビルキング法で制定されていてもわたくしの家では不法侵入は認めませんことよ!!!」

 ……と、高らかに言い切ったはいいが、オネストはセントウィンと一緒に部屋に散らかったDをかき集めていた。
 まあそりゃ収納せずにあちこちに置いてたらそら勝手に回収されますわな?
 自業自得なのだがそれを棚に上げるかの如く、イレーヌの血管がぷちーん!と音を立ててブチ切れた。

「人の話を聞きなさ――――――――――い!!!!!!!!!!!」

 ぴしゃ――――――ん!!と再びイレーヌが稲妻を落とした。
 そう、眩しいだけで静電気がばちっ!!と走った程度の痛みしか感じないあの稲妻をだ。
 痛さに反して命中精度はどこのスナイパーだよってぐらいに高く、ピンポイントでオネストに直撃した。

「あ、兄貴ー!?!?」

 兄貴なんてよせよ、と言われたのについ兄貴と呼んでしまうセントウィンの舎弟根性よ。
 慌てて駆け寄ろうとするダチにす、と手を上げて制するオネスト。
 僕に任せな――と視線で語りかけられたのもありセントウィンはその意を汲み取りそれ以上は動かなかった。
 そしてオネストはすぅ、と息を吸い込み。

「おぅ嬢ちゃん!!!」
「ピッ」

 ヤンキー・スタイルにふさわしい威圧でガンを飛ばすとそれだけで固まるイレーヌお嬢様である。

「今の電撃で服の裾が焦げたじゃねえか……」
「えっ裾だけ」
「ああん!?」
「ピィッ」

 ガンを飛ばすだけで涙目のお嬢様だが、そこに容赦なく畳み掛けるのもまたワルのスタイルなれば。
 何よりダチを苦しめるこの学生の財布事情的に悪逆非道の令嬢にくれてやる慈悲は、オネストには、ない――!

「――弁償代、100万D出してくれんだよな?」
「は!?!?!?何でですのよそんなにかかってないでしょうそr」
「はァ!?!?何でもクソもねーんだよコラァ!!!!」

 いつの間にか口に加えていた煙草に見立てたココアシガレットを地面に叩きつけるように投げ捨てる。
 シガレットって割と砕けるのでこれだけでもう真っ二つだが、それをさらに踏みつけてずりずりずりとシガレットをカーペットになすりつけてやるのもまた悪だ。
 尚シガレットなのでまだ洗濯すればすぐ綺麗になる辺りアフターケアも実はばっちり。
 まあそんなことは今のイレーヌには理解できないしあまりにもの気迫にちびりそうなぐらい泣きそうな顔をしているのだが。
 追加で肩をがしっと掴めばすぐさま「ひっ」と息を呑む。

「テメェの落とし前はテメェがつけろやコラ。払えねぇってんなら身体で払ってもらってもいいんだぜぇ……?緑色の――」
「ひっ!?!?そ、それだけは!それだけはやめてください薄い本みたいなのはいやあああああああああああ!!」
「いや何それ」
「えっ」
「ってーか僕、これから内容を言うところだったんだが?」

 イレーヌお嬢様、早とちりのあまり勘違い。恥ずかしさに顔真っ赤。
 尚オネストがさせようとして取り出したのは緑色の羽根に募金箱。つまり募金活動である。

「……う」
「う?」
「うわああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!」

 そしてあまりにもの恥ずかしさに耐えられなくなって泣きながら家を飛び出していったのでした。しかも律儀に緑色の羽根と募金箱は持って。
 オブリビオンでありながらめちゃくちゃ律儀だ。

「…………なあ、あいつ何なんだ??」
「いやあこっちに聞かれてもわからんデビね……」

 流石にこうなるとは思わず、オネストはセントウィンと一緒に首を傾げるしかなかったのでありました。

成功 🔵​🔵​🔴​

南六条・ヴィクトリア三世
【連携アドリブ歓迎】

キャラ被りを起こしているにしてはアレですわね
この際社長である以前に南六条家のお嬢様として言わせてもらいますわよ
貴女…お嬢様としては三流ね
(「お嬢様魂」と書かれた扇子広げUC発動)

まず小銭への拘り、お排泄物モノですわ
私そもそも現金は持ち歩かない主義ですの
電子決済手段をご存じなくて?
それに小銭プール、おハーブ通り越してラベンダー畑不可避ですわ
金の延べ棒プールをやった私に敵うとでも?
つまりお嬢様的に私が格上ですわ(稲妻を扇子で弾く)
文句があるなら10先で決着付けますわよ?
我が社のシミュレータ開発チーム謹製対戦ロボアクションゲームで勝負です
決闘開始の宣言をなさい、25セントウイン!



●きっと自動釣銭機じゃないのも機械が嫌いだったからなのかもしれない。
「ひっぐ……ぐすっ……」

 募金箱を持って駆け出したイレーヌお嬢様。
 帰ってきたが募金の中はそんな大した金額ではなかった。
 そりゃそうだ、デビルキング法的にはそういった無償の施しを敢えて蹴ることも悪と定義され美徳とされるのだから。
 しかしそれよりも恥ずかしさでずっとめそめそ泣いていた。あんまりにも恥ずかしかったらしい。
 オブリビオンとはいえ年頃の女の子のようです。
 それを見た南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)、はぁ、とため息をついた。

「……キャラ被りを起こしている割にはアレですわね……」

 確かにヴィクトリアもお嬢様、イレーヌもお嬢様。著しいキャラ被りにしてポジション被りだ。
 しかし、しかし。色々な意味でこの狐耳のお嬢様はアレ、と言わざるを得なかった。
 まず小銭で貯めているという時点で色々こう、アレ。

「はあ……この際ですから、社長である以前に南六条家のお嬢様として言わせてもらいますわよ」

 ばばん!と開かれた「お嬢様魂」と書かれた扇子をつきつけ、ヴィクトリアはこう言い放った!

「貴方……お嬢様としては 三 流 ね」
「な、なんですってェ――――――――っ!?!?」

 イレーヌのメンタルにさらにぐさっと刺さる言葉の刃!

「まず小銭への拘り、お排泄物モノですわ!」
「なっ……ん……!?」

 信じられないと言わんばかりの表情を浮かべてイレーヌが固まった!これは先程よりもダメージがでかいぞ!

「私そもそも現金は持ち歩かない主義ですの。電子決済手段をご存知なくて?」
「し、知っているに決まってますでしょう!わたくしには相応しくなかったというだけでしてよっ!」
「なる程機械音痴ですのね」
「そっそそそそそそそそそそそそんなことありませんわっっ!!!!」

 図星。明らかに図星。
 ジト目でじーっと見つめれば冷や汗垂らして目をそらす辺りお察しである。
 だがヴィクトリアの追撃はこれで終わらない、終わりはしない。
 何故ならこのオブリビオンを倒すのが猟兵の使命だからであり、同じお嬢様としては決して見過ごしてはならぬ案件が故――!

「それに小銭プール、おハーブ通り越してラベンダー畑不可避ですわ。金の延べ棒プールやった私に敵うとでも?」
「な、なっ、なんですってェ!?金の延べ棒プールなんてなんて贅沢な!!悪ですわ!!!最上の悪ですわっっ!!」

 イレーヌお嬢様、それはデビキン的には称賛では??

「つまり、お嬢様的に私が格上ですわ!!」
「みっ、認めませんことよ!認めませんことよーっっ!!わたくしこそがお嬢様なのよーっっっ!!!!!」

 指をさしてきゃーきゃー喚き立てては雷を落とすイレーヌだが、それらは全てヴィクトリアのお嬢様魂扇子に全てかきんかきんと弾かれては壁をほんのちょこっと焦がしていく。

「文句があるなら10先で決着つけますわよ?」
「上等でございましてよ!!わたくしが真にお嬢様であることを見せつけてやりますわ!!」
「よろしい、では我社のシミュレータ開発チーム謹製対戦ロボアクションゲームで勝負です!」
「えっ」

 イレーヌは固まった。
 機械の扱いが苦手なのにやったこともないアクションゲームで勝負を決めねばならない。
 つまりどういうことかって?

「負け確じゃありませんの!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!卑怯ですわ!!!!卑怯ですわよっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「決闘開始の宣言をなさい、25セントウィン!!」
「は、はいデビッ!決闘開始ィィィ!!!!!!」
「ちょっと待って本当にわたくしこの手の機械苦手なんですって勘弁してあっやめて操作全然わからなア――――――――――――ッッ!!!!!!!」

 罵倒のつもりで叫んでいるのだろうが、デビキン的には称賛の言葉に他ならない。
 イレーヌの必死の懇願や野次を華麗にスルーし、ヴィクトリアはゲームで完勝を決めることでそのお嬢様力(ぢから)の格の違いを見せつけたのだった――……

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
よう、お嬢さん
お前にはデビルドラゴン国繁栄の為の
礎となってもらうぞ

…なんて、ワルムーブを再びかましてみたはいいが…
このオブリビオン、正直に言って…よ、弱い
攻撃っぽいことされた気がするが
静電気程度の痛みだったし
まぁ地味に痛いんだがアレ

オブリビオンとはいえ、女の子一人を
こんなナリの野郎二人組が攻撃仕掛けているとか
絵面的に俺たちの方が完全に悪役では?
この世界ではその方がポイント高いのかもしれないが

少し悩んだ末、UC発動
いつもより凄みを利かせた焔の咆哮
そして幻覚の炎によって敵を大人しくさせる

俺が手を下すまでもない…やれ、綾
ワルっぽく決めてみるが
本物の炎で焼かないのがせめてもの情けだ


灰神楽・綾
【不死蝶】
外では悪魔たちがせっせと掃除していたのに…
内部のお片付け担当を雇うお金はケチったのかな…?
お金踏まないように気を付けないと

残念だけど、君を守ってくれる人は
もうだぁれも居ませんよ、お嬢様
大人しく降参するなら痛い目見ずに済むけど?
梓のワルムーブに悪ノリしてみる

はーい、兄貴
幻覚の炎の中で怯む少女の前に颯爽と現れる
愛用のEmperorを大きく振り上げ
躊躇なく少女へそれを叩きつけ……る直前でUC発動
Emperorを蝶へと変えて放つ

俺もか弱い女の子を斬り刻む趣味は無いから
痛い目見せるのは勘弁してあげる
代わりに怖い目にあってもらったけど
今までたくさんおいたしてきたんだから
これくらいのお仕置きはね?



●イケメンは罪(称賛)
「外では悪魔たちがせっせと掃除していたのに……」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は家の中の惨状に流石に眉間に皺を寄せる。
 いやーあちこちに小銭が散らばってるお屋敷とか散らかってるどころのレベルじゃありませんね。

「内部のお片付け担当を雇うお金はケチったのかな……?」
「それケチるぐらいならセントウィンたちをちゃんと雇って家庭代行サービスしてもらってもよかったんじゃないか、コレ」

 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)も流石にうーんと首を傾げた。
 どう考えても優先して雇うべき順番を間違えている気がするのだが……まあ、お嬢様なので生活面に疎いからなのかもしれないと考えれば辻褄も合わなくないだろうが。
 何の辻褄かって?知らない。

「お金踏まないように気をつけないと」
「小銭だろうが金は金だからな……」

 紙幣でないからって軽率に踏んではいけない、1Dに笑うモノは1Dに泣くのだから。
 梓の愛竜『焔』と共に、二人はまごうことなきヤーさんスタイルをキープして悪徳令嬢の部屋へいざ乗り込む。

「ひっく、ぐすっ……はっ!?また不法侵入者ですの!!!?」
「(……今泣いていたのは見なかったことにしてやろう)」

 お嬢様としてのプライドをボコボコにされてベッドに突っ伏して泣いていたところに出くわしたが、敢えて言及はしないという優しさを見せながら梓は胸を張って宣戦布告。

「ようお嬢さん!お前にはデビルドラゴン国繁栄の為の礎となってもらうぞ?」
「で、デビルドラゴン国ですって……!?くっ、わたくしの預かり知らぬ間に敵国が誕生していたなんて……!」
「(信じるのか……)」

 セントウィンに引き続きまさかこのお嬢様まで信じるとはたまげたなあ……という気持ちを心の中だけに押し留めてふっ、と梓は不敵に笑ってみせる。

「残念だけど、君を守ってくれる人はもうだぁれもいませんよ、お嬢様」

 ヤーさんの弟分ポジションらしさを出す為に一歩下がっていた綾も前に出、梓のワルムーブに悪ノリ。
 にこやかな顔を崩さずに言う辺りがある意味梓よりヤーさんらしさを醸し出している。

「大人しく降参するなら痛い目見ずに済むけど?」
「ふん!敵国に大人しく降る程わたくしは愚かな為政者ではありませんことよ!その偉そうな口を叩いたこと後悔させて差し上げますわ!!」

 そうだろうか――とは、敢えて口にはしなかった。
 憤慨したイレーヌの指先がこちらに向くと、眩い稲光が音を立てて二人を直撃!
 少しばかりしゅう、と音を立てて煙を上げる梓と綾を見てイレーヌは高らかに笑う。

「おーっほっほっほっほ!どうやらわたくしの力に恐れを為したようですわね!」
「……」

 イレーヌは気づかない。
 二人共無言なのは別に恐れを為しているからでも何でもなく、ユーベルコードの威力のあまりにもの弱さにコメントが出なかったのだということに。

「(……このオブリビオン……よ、弱い……!攻撃っぽいことされた気がするが静電気程度の痛みだし……いや地味に痛いんだがアレ)」
「(何ていうか、本当に子供の悪戯って感じだよね。まあだからって手を抜くワケにはいかないんだけど……)」

 さて、どうしてくれようかこのお嬢様と二人で考える。
 こうしてヤーさん的ワルムーブを貫いてはいるが、梓は正直迷いが生じ始めていた。
 目の前にいる悪徳令嬢はオブリビオン……放っておいてはカタストロフを招いてしまう滅びの元凶に他ならない、だが!

「(オブリビオンとはいえ、女の子一人をこんなナリのやろう二人組が攻撃仕掛けてるとか絵面的に俺たちの方が完全に悪役では……??)」

 長身にスーツ、そしてグラサンつけた成人男性二人――背後に竜を添えて――。
 それが見た目はまだ年端も行かぬであろう少女に対して攻撃を仕掛けるなんて、デビルキングワールドだからこそポイント高い悪と称賛を受けるだろうがUDCアースなら間違いなく通報案件と誤解されてもおかしくない。
 色々な意味であんまりな絵面だが、だからといって手を抜いては今回の事件は解決できない……!
 思考を延々と逡巡した後、決断。

「く……焔!」

 成竜となった焔に呼びかけ、梓はユーベルコード【威風堂堂(レッドエンペラー)】を発動!
 焔の猛々しい咆吼が屋敷中に響き渡り、凄まじい威圧感と共に幻炎がイレーヌを包み込む!

「ひっ……い、いや!何ですのこれっ……!!」

 突然の竜の咆吼に火事――と本人が思い込まされているだけに過ぎないのだが――と畳み掛けられ、イレーヌは恐慌状態に陥った。
 がたがたと震えて部屋の済へと逃げていく。
 本物の炎で焼かぬのはせめてもの情けと思って実行している梓だが、正直心が痛いと内心吐血したくなる気分であった。
 オブリビオンとはいえ女の子一人にこの仕打ち、元より人の良い人物である梓には中々キツい。
 それをぐっと飲み込んでこらえ、ヤーさん的ワルとして振る舞うことができるのはより過酷な環境を強いられるダークセイヴァーで過ごしてきた経験故か。

「俺が手を下すまでもない――やれ、綾」
「はーい、兄貴」

 綾もまた決してにこやかな表情を崩すことなく、颯爽と怯えるイレーヌの前に立つ。
 炎をものともしないかのように振る舞う綾の姿は彼女をより恐慌させるには十分だ――いや幻だから当然なんだけど――。

「ひ……た、助けて……たすけて、命だけは……っ」

 にこやかな笑みを崩さず、綾はイレーヌの願いを聞き届けぬかのように愛器である『Emperor』を大きく振り上げ――

「ひっ!い、いや……いやっ、誰か、だれか――」

 怯える少女の姿をしたオブリビオンに思い切り叩きつけた……かと思いきや、振り下ろした刃が当たる直前に紅く光る蝶へと変えて、辺りをぱたぱたと漂い始めた。
 ユーベルコード【バタフライ・ブロッサム】を発動したのだ。
 炎の中で羽ばたく紅い蝶を纏うかのような綾の姿にイレーヌは目をぱちくりと瞬きさせる。

「……な、なんで……?」
「俺もか弱い女の子を切り刻む趣味はないから、痛い目見せるのは勘弁してあげるよ。代わりに怖い目にあってもらったけどね」

 ――今までたくさんおいたしてきたんだから、これくらいのお仕置きは……ね?
 にこりと笑って囁くようにそう告げた後、綾は梓と共に部屋を出ていく。
 イレーヌは何が起こったのかをわからぬまま、呆然とただ立ち尽くしていた。

「(……やだ……今の方……とても素敵って思ってしまったじゃない……!)」

 少女のいたいけなハートに響くお仕置きだったようです。
 二人が立ち去る時に大量のDを大分持っていかれたことにも気づかず、イレーヌはただただ呆然としていたのであった。
 
 ……いやあ、イケメンって罪ですねえ(※褒めてます)!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シルキィ・ソーイング
みみっちいくせにケチだなんて、ほんと小悪党だね!
せめてそこは札束プールくらい言うべきだよ!

なんか取り巻きが出てきたけど、こっちにも仲間がいるもんね!
1章で【悪魔の正装】を着せたみんなに相手してもらうよ
UCの効果で装甲は半減してるけど大丈夫! 今こそクーデターの時だよ☆

で、場が混乱している隙を突いてイレーヌの衣装もUCで成金っぽくゴールデンな感じに変えちゃおう♪
これを着たキミの攻撃回数はなんと5倍! 代わりに攻撃力が半分になっちゃうんだー、ごめんね☆
元からあんまり痛くない攻撃力がさらにダウンしたら、手数が増えてもノーダメージだよね?

はい、それじゃセントウインのみんなー、フルボッコにしちゃって♪



●いつから敵に施しをしていると錯覚していた?
「ああっ!わたくしがこつこつと貯めていたDがこんなにも減って……っ!!」

 お嬢様、やっとここでDが奪われていることに気づく。
 壁に穴は空くわ火事になったかと思ったけど何もなかったわ殺されるかと思ったらイケメンムーブされてちょっとキュンってなっちゃったわでイレーヌはもう心境がしっちゃかめっちゃかであった。
 ああ、このままでは……

「このままではわたくしの夢である小銭プール(と儀式魔術)が……!」
「みみっちいくせにケチだなんて、ホント小悪党だね!」
「はっ!何者ですの!?」

 ばっと振り向くとそこにはたくさんのセントウィンを引き連れたシルキィ・ソーイング(人の皮を被った悪魔・f31746)が。
 しかもセントウィンたちは彼女のユーベルコードによって強化された状態かつ何か実にデビルらしいカッコよい衣装に身をまとっている。
 自分が雇っていた頃よりも活き活きしてる小銭顔にイレーヌは少しイラっとした。

「せめてそこは札束プールくらい言うべきだよ!」
「小銭が好きで何が悪いんですのよっ!!!!!!お財布にお札を入れた時に蓋をしめようとしてファスナーに引っかかってぐちゃぐちゃになるあの悲しみを知りませんのっ!?!?」
「いやお嬢様なんだから電子マネーなり何なりで済ませてるんじゃないの?というかお嬢様の割に懸念内容がしょぼくない?」
「う、うううううるさいですわね!!!アレ地味に嫌なんですのよ!!!!」

 イレーヌが反論すればする程シルキィのため息がどんどんでかくなっていく。
 このお嬢様、最早呆れて言う言葉もないレベルに小悪党である。悪徳令嬢ならもうちょっと傲慢に振る舞っても良いものを……

「というかさっきから言ってますけど人様のお家に勝手に上がりこんで好き勝手抜かすとか何様のおつもりでいらっしゃいますの!?もういい加減にしてくださいまし!!
 誰か!誰かこいつらをつまみ出しなさいな!!」

 イレーヌの声に応じてやってきたのはスーツに身を包み黒いグラサンを身に着けた悪魔共。
 皆強面で手強そうに見える――というかこいつらいるならセントウィン雇わなくてもよかったんでは?と思わなくもないがきっとそれは言ってはいけないことなんだろう。

「なんか取り巻きが出てきたけど……こっちにも仲間がいるもんね!みんな!今こそクーデターの時だよ☆」
「「「イエスマイサタン!!!デビ」」」

 対峙するのはシルキィが施した【悪魔の正装(デモニック・クローズ)】により強化を施されたセントウィンたちだ。
 ㉕セントウィンは攻撃力を、⑩セントウィンは移動力を、①セントウィンは攻撃回数をそれぞれ5倍に引き上げた代償として装甲が半減している――が、今のセントウィンたちはイレーヌの呼び出した悪魔たちを簡単にも凌駕できる程の力を身に着けているも同然。
 各々の特技を、強みを活かし取り巻き悪魔共をちぎっては投げちぎっては投げ……しかし取り巻き側も負けじとセントウィン共をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……
 大乱闘が始まった戦場は最早混沌として何が何だかわからなくなってきた。下手に割り込めば混乱間違いなし。
 そんな中、イレーヌは今のうちにこれ以上Dを奪われまいとかき集めようとし、地面に落ちているDに手を伸ばそうとして――眼前でシルキィの足に阻まれる。

「じゃ、邪魔しないでくださいましっ!」
「連れないこと言わないでよお嬢様。せっかくその服を今からカッコよくしてあげるんだから☆」
「な、何を言って……きゃっ!?」

 言うや否やシルキィは縫い針をさくっとイレーヌの洋服に通し【悪魔の正装】を発動!
 有無を言わさずイレーヌのお嬢様らしい衣装はよりきらびやかでゴールデンな成金お嬢様的ドレスへと早変わり。
 成金っぽさが出ていながら嫌味さもない絶妙なコーディネート、圧倒的なセンスと技術にイレーヌは思わずぽかんと口を開けている。

「どう?いいでしょ?」
「て、敵に施しをしてどうなさいますの……ああ、でもこれ、素敵……!こんな衣装着てみたかったんですわ……!」

 年頃の女の子、やはり豪華なドレスに袖を通してみたいお年頃。
 そんだけDがあれば買えたんじゃないかって?やりたいことがあったら買うの我慢するのは仕方ないことです。

「しかもとても力がみなぎってくる……今なら貴女なんかに負けたりしませんわっ!敵に施しをした己の甘さを後悔なさいませ!!」

 そして溢れるパワーにイキってシルキィを思い切りユーベルコードで攻撃!
 強化されたことによりとてつもない速度で連射するのだが……当のシルキィは全くもって涼しい顔をしている。

「あれ?」

 また攻撃をする。1秒で5回ぐらいぶっ叩く勢いなのだが、それでも全然びくともしない。

「あれ?あれ??なんで??どうしてですの!?」
「なんでかって?キミの攻撃回数は5倍になったけどその分攻撃力が半分になったからさ☆」
「なっ……なんですってェ――――――――ッ!!」

 ユーベルコード【悪魔の正装】、術者の任意の能力強化ができる代わりに別のどこかを半分にしなければならないという場合によってはハイリスク・ハイリターンの代物である。
 イレーヌの攻撃の威力はせいぜい静電気程度の痛みしか与えられないのがデフォルトだ。それが半分になったらまあ、当然全く痛くなくなるワケで。

「元からあんまり痛くない攻撃がさらにダウンしたら手数が増えてもノーダメージだよね?」
「そっ……そんな……っ」

 がくっとイレーヌはうなだれる。いや、そもそも勝手に勘違いしてイキっただけなのである意味自業自得である。

「はい、それじゃセントウィンのみんなー」
「「「デビ!」」」

 シルキィの合図で姿を表すセントウィンたち。イレーヌの取り巻きはどうしたのかって?すぐそこに簀巻きにされてピラミッド作り上げてる。

「フルボッコにしちゃって♪」
「「「イエスマイサタン!!!デビ」」」
「ヒエッ」
「25連勤の恨み晴らさでおくべきかデビ!」
「お札でちっとも叩いてくれなかったデビ!」
「5000D以下は貯金なのにどうやって生活費に使えっていうんデビか!!」
「「「本日限りで辞めさせて頂きます!!!デビ」」」
「ひぇ―――――――――――っ!!!!」


 セントウィンたちの怒りをその身に受けたイレーヌの悲鳴が屋敷中に木霊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

カデンツァ・ペルッツィ
ニャんと、市営プール程度の規模で満足するような小物とは
どうせニャら、スーパー銭湯とかスパリゾートとか!
もっと規模のデカい施設を狙ってワルさをしたらどうニャのだ?
吾輩ならそうするけどニャ~、といやらしい声で挑発するぞ

質問なら何でも受け付けるニョだ!来い!
せっかく大金で雇ったセントウインに敢えて仕事を与えニャい悪で
さりげなくポイントを稼ぎながら質問攻めに備えよう

【猫の毛づくろい】で身体をペロペロしながら一問一答
基本、言葉にも攻撃にものらりくらりと対応するぞ
摩擦抵抗ゼロだからニャ
この力がこんな風に役立つニャどとは…

ケットシーの猫としての本性をナメては困るニャあ?
恩返しもするがイタズラもするニョだ!



●いたずらをしても看板は提げません。
「ニャんと、市営プール程度の規模で満足するような小物とは……」

 カデンツァ・ペルッツィ(ワンダリングウィザード・f06034)はたまげたなあという顔をした。
 小銭をかき集めて小銭プール、という時点で大分小物なのだが市営プールで満足してしまえるとは、悪徳令嬢というよりは浮世離れ令嬢では?と。

「どうせニャら、スーパー銭湯とか~スパリゾートとか~!も~~~~っと規模のデカい施設を狙ってワルさをしたらどうニャのだ?んん~??吾輩ならそうするけどニャ~~~~」
「う、うるさいですわっ!!人……いえ悪魔が何を臨もうとわたくしの勝手でございましょうっ!」

 いやらしい声で煽ってみたら顔を真っ赤にして反論してくるイレーヌお嬢様である。
 煽り耐性弱いニャこのお嬢様、と思いながらカデンツァはきたるユーベルコードの攻撃に備える!

「そもそも!なんでお嬢様がお札を大量に持ち歩かなくてはならないという風潮になっているんですのよ!小銭が大好きなお嬢様が至っていいじゃありませんか!ねえ!?違うんですのほらほら何か言ってみなさいよ!!!」

 完全にキレたお嬢様、背後から取り巻きを呼び出して攻撃の耐性を取らせる――が、持ってる銃がどう見てもおもちゃの銃である。
 具体的に言うと撃ったら先端が吸盤のダーツが飛び出してくるアレだ。はよ答えろやにゃんこォ!と取り巻きも一緒に尋問を迫るが、カデンツァはぺろぺろと毛づくろいをしてのらりくらりとしている。

「こらそこな猫!このわたくしが聞いているんですから質問には答えなさいませ!!」
「いや~そう言われてもニャー。吾輩はお賃金そんなにいらニャいから価値があまりわからニャいしー」

 イレーヌの顔に青筋がぴき、と浮かび上がる。

「そもそも現実問題、札束が大量でさえクッッッッッッッッソ重いというニョに小銭で持ち歩くのは自殺行為も甚だしいニャ。プールにするにしてもどうやって持ち歩くつもりニャのだ?」
「ウッ!!!」

 カデンツァは先程自身が言った通りのクッソ重いDが詰められた袋をユーベルコードを使ってでもせっせこせっせこ運んだばかり。
 余計にそう思わずにはいられない。
 そして図星を突かれているかのような反応から察するにその辺り全く考えていなかったのが丸わかりでカデンツァは生暖かい目を向けずにはいられなかった。
 このお嬢様、もしかしなくても大分無計画にやっていらっしゃいましたね。

「う、う、うるさいですわね!どう運ぼうとわたくしの勝手でございましてよ!!!」

 ぱきゅーんとおもちゃの銃が火を噴いて吸盤ダーツをカデンツァ目掛けて放つのだがしゅっ、と全く引っかかりのない動きで横にズレたことにより外れてしまう。
 あれ?と思いもう一度撃たせるが、またしゅっ、と綺麗に真横に移動して回避。
 打っては避けられ打っては避けられを繰り返し、

「ちょっとなんで当たらないんですの!?!?」
「吾輩に言われても知らんがニャ……」

 というのは嘘で、実はこっそりとユーベルコード【猫の毛づくろい】で摩擦抵抗を極限まで減らしている為自然と一歩動くだけでかわせてしまうのである。

「(この力がこんな風に役に立つニャどとは……)」

 条件を踏まえると中々場所を選ぶ能力故、使うことは早々あるまいと思っていたのだがまさかこんな風に使えるとは夢にも思わなかったカデンツァである。
 さっきからお嬢様は当てられない様子にぷんすこぷんすことお怒りのご様子で取り巻きたちに雷(静電気程度の威力)を落としておりこちらには目もくれていない。
 ならそろそろ頃合いかとカデンツァは毛づくろいをやめて辺りをきょろきょろと見回し――丁度いいなと思った壁で爪とぎを始めた!!!
 ガリガリガリガリと響き渡る何かいい感じの壁が削られていく音!!!

「あ゛―――――――――――!?!??!」

 イレーヌがとんでもない悲鳴を上げる。そらそうだ。お屋敷の壁ってめちゃくちゃ高いもん。
 さらにカデンツァはテーブルの上にある花瓶をひょいっとひっくり返しテーブルを水浸しに!またまた絶叫が上がる。

「ななななななななななんてことするんですの!!!!?!?!?」
「ふっ、ケットシーの猫としての本性をナメては困るニャあ?恩返しもするがイタズラもするニョだ!!」
「こ、この不届き者――――――!!!」

 イレーヌが捕まえようと手を伸ばすがカデンツァはケットシー――猫としての身体能力をいかしぴょいんぴょいんと華麗に回避!
 猫の気まぐれさに振り回される令嬢をどうにかしてあげようと取り巻きはあたふたあたふた。お嬢様のお部屋はしっちゃかめっちゃかになりましたとさ。

 ……ところでセントウインたちは何をしているかって?何もしてません。

「な、なんと……大金で雇っておきながらオレらに仕事をさせないとは……悪デビ!」
「清々しいまでの悪デビ!流石大金を叩いてくれただけあるデビ……!」

 と、雇い主の悪っぷりに感動して見守っていたそうです。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW

札束風呂ならぬ小銭プールとは斬新ね。
ベテラン猟兵の財力で叶えてあげてもいいわ。
貴女が私のモノになるならね♥

取り巻きが現れたら
守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力増強。
『紅キ楽園ノ女王』で更に97倍!

弱者は我に戦意を抱く事すら叶わぬ。
それに今の我は敵と判断した者から常に生命力吸収を行う。
死にたくなければ大人しくしているが良い

悪役令嬢を【怪力】で組み伏せ
【吸血】しつつ【呪詛】を注ぐ【マヒ攻撃】

悪い子供は悪い大人の格好の餌食。
もっとも、これはまだ救いのある結末であろう

【誘惑・催眠術】の睦言と共に
耳、尻尾、衣服の下を【慰め・生命力吸収】
放送コードは物を隠すのが得意な取り巻きが死守する(



●悪いことしたら神隠しならぬ吸血鬼隠しに遭うことがあるようです。
「うえええ……この壁の修理代すこぶる高いのにぃ……」

 イレーヌお嬢様、泣きながら取り巻きに溢れた水の処理をさせています。
 まあそもそもそれ以前に実は場外へ吹っ飛んだ時に盛大に穴が空いたので既にもう修理代がどれだけかさむかなんてレベルではなかったのだが、さらに猫のひっかき傷というものが追加されて考えるだけでも恐ろしかった。
 Dも大分奪われてしまったので賄えるか怪しいし支払いに使ってはせっかくの計画が一からやり直しとなってしまう。

「うう……わたくしの夢が……小銭プールの夢が……儀式魔術があ……」
「札束風呂ならぬ小銭プールとは斬新ね」
「はっ!?また不法侵入ですの!?」

 取り巻きを護衛につけて警戒態勢のイレーヌを見てドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はくすくすと笑う。

「ふふ、警戒されてるわね。まあ当然でしょうけど」
「な、何しにきましたのよ!!貴女も他の猟兵共と同じように……っ」
「安心して、私はそんなつもりないから。むしろベテラン猟兵の財力で貴女の願いを叶えてもいいわよ?」
「な、何……ですって……!?」

 猟兵は世界を跨いで命懸けで戦っているので一回の給料もそれなりのモノは保証されている。
 ドゥルールも同じく、猟兵として――目的は他の猟兵たちとは違うのであるが――長いこと活動しているのでそれはもう、貯蓄はかなりのものである。
 必要経費を削っても有り余る程度には。
 そして"オブリビオンの救済"という目的を掲げているドゥルールはオブリビオンの少女が願いを叶えたそうにしているとあれば、興味を示してデビルキングワールドにやってくるのは当然だろう。
 まあ、ただし。

「貴女が私のモノになるならね♥」

 オブリビオンを死霊として使役することになる為どの道一度は倒す必要があるんですけどね?
 いきなり「私のモノになれ」と言われてプライド高いイレーヌお嬢様が頷くかと言われるともちろんNOである。

「な、なんですのえっらそうに!!わたくしを誰だと思ってるんですのよ!!」
「そう、良い取引だと思ったんだけど仕方ないわね」
「そんなあからさまに怪しい取引に屈するわたくしではありませんことよ!やっておしまいなさい!」

 イレーヌの呼びかけに応じ次々取り巻きが出現!スーツに身を包んだ強面の男どもがぞろぞろやってきた。
 いやーこいつらいるならなんでセントウイン雇ったんだろうねこの子。
 まあ、それでビビるようなドゥルールさんではございません。自らと行動を共にしている守護霊を憑依させ、さらにユーベルコード【紅キ楽園ノ女王(ディナータイム・アルカディア)】を発動した。

「"我が身を憑代に、彼の者を贄に……"」

 ドゥルールの姿がユーベルコードにより変化を遂げる。
 髪は白銀に、瞳は血のような紅に――まさにそこに吸血妃が降臨したと言っても過言ではなく、ただその場にいるだけで彼女と同等の力がない者は戦意を確実に喪失する威圧感を発していた。
 強面の男共があまりにもの威圧感に恐怖し、武器を持つことすら叶わない。それどころか尻もちをつく始末。
 取り巻きがそんな様子なのだから当然お嬢様はそれ以上にビビっている、今にもちびりそうなぐらいにがたがたぶるぶると震えている。

「ふ、利口だな。今の我は敵と判断した者から常にその生命力を吸い取る。死にたくなければ大人しくしているが良い」

 ドゥルールは不敵に微笑み、つかつかとイレーヌに近寄りその腕を引っ張った。
 持ち得る怪力に腕がきしむような音がして小さく悲鳴を上げる悪徳令嬢のその首に牙を突き立てる――!

「あ……ぁ……っ!!」

 どくどくと脈が加速する。血が吸われているのが嫌でもわかる。
 けれどこの甘やかな疼きは何なのだろうか?
 身体から力が抜けていき、イレーヌはその場にぺたりと座り込んでしまう。

「知ってる?悪い子供は、悪い大人の格好の餌食なのよ?」

 耳元でドゥルールが悪戯っぽく囁けば、イレーヌはひ、と息を呑む。
 もっとも、これはまだまだ救いのある結末だ。少しでも歯車がかけ違えていれば自ら死を望む程の恐怖に苛まれた可能性だってあるのだから。
 具体的に言うとこう……壁に穴が空くだけじゃ済まないし……というかそもそもマジでそうなる直前レベルの思いを味わうお仕置きはされましたね?
 それで懲りなかったお嬢様、まさに自業自得である。

「わ、わたくしをどうするつもりですの……!?」
「大丈夫よ、やさしーくしてあげるから……私のモノになったら貴女の夢を叶えてあげるっていったでしょう?」
「ひ、ひぇ……!」

 イレーヌのしっぽにドゥルールの手が触れる。
 さすがお嬢様なだけあって見事な毛並みのもふもふふかふかぶり、それに心地よさを感じながらドゥルールは引き続き耳元であまーくやさしーく囁いては……
 と、それはもうとてもとても刺激的な展開へと話が進んでいくので取り巻きが別の意味であたふたし始める。
 おい誰か電気!電気消せ!!!とかカーテン閉めろ!!!とか慌ててあっちこっちと走り回る取り巻きの皆さんだが、壁に穴開いてるのに電気消したりカーテン閉めたりしてどうにかなるもんかは知らない。

 とりあえず一つわかっていることは、事が終わった時にはお嬢様どころか取り巻きの皆さんの姿もどこにもなかったということだ。
 果たしてお嬢様はどこにいったのでしょうか。その答えを知る猟兵はすっきりつやつやとした表情で帰っていったので、答えを聞くことはできるまい。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『デビル盛り食堂』

POW   :    特大サイズのメニューを難なく美味しく完食する

SPD   :    テクニックを駆使して大量の料理をうまく食べ切る

WIZ   :    普通の量の料理を優雅に楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
 第二章ご参加ありがとうございました!
 第三章プレイングは2/10(水)8:31より受付を開始致します。
 それまでに断章投下予定ですが、投下されなくてもプレイングをご投函頂いて大丈夫です。
 尚、選択肢は気にせず皆様の思うプレイングを投げて頂ければと思います。
津上・未有
アドリブ・絡み歓迎

無事にイレーヌも倒せた!
Dもがっぽり手に入れた!
お前たちの働きに感謝するぞ!
というわけで…我特製の満漢全席を思う存分食らうがいいわ!

料理時はAlice's Cookbookを使いお手伝い妖精たちに手伝ってもらう!
お前たちも出来上がった料理食べていいから頑張れ!

フカヒレの姿煮込み、エビチリ、マーボーナス、餃子、あんかけ焼きそば、五目チャーハン、その他諸々!
大盤振る舞いで作ったからありがたく食せよ!

…ふぃ、これだけの量を作るのは流石に疲れたぞ…
下手すると戦闘より大変だったかもしれん…

…しかし、不思議でならないのだが…
セントウインって、口ないよな…?
どうやって食べ物食べてるの…?



●満漢全席フルコースご案内です
『魔王様~~~あとどれだけ作ったらいいんですかあ~!?』
『下処理終わってまーす!』
「えーと今人数リスト確認するから待て!あと下処理終わったのはそこに置いておけ!」

 ユーベルコード【Alice's Cookbook sprites(スプライトコック)】で呼び出したお手伝い妖精たちに指示を出しながら津上・未有(自称真の魔王・f10638)はせわしなく鉄鍋を振るっていた。
 妖精たちの手付きもさることながら、流石料理上手なだけあって実に洗練された無駄のない動きである。
 例えばチャーハンの作り方。
 パラパラに仕上げる為に前日に炊きたてから粗熱を取った白米を一日冷凍庫に入れて冷凍、その後冷蔵庫で1日かけて解凍した2日間もの下準備という手間をかけたものを用意。
 具材は一気に米とセットで痛めると風味を引き出せない為、先に軽く炒めておく。
 それから油を改めて多めに注ぎ、煙が出る程度に温まったのを確認してから卵と一緒に白米を投入し炒めるとそれは本場の中華料理さながらのパラパラ感を引き出すことができるのだ。
 米が温まれば具材を投入し、塩コショウで味付け。その後風味程度に醤油を入れて軽くあおるように炒めれば素人でも簡単につくれて美味しいパラパラチャーハンの完成である。
 本当なら紹興酒も入れると尚良いのだが未成年の為断念。律儀である。デビキンだったら称賛されそうでもあるが、それでも未成年はお酒買っちゃダメだし仕方ないね。
 エビチリはエビの下処理を終わらせた後塩をふりかけて軽く揉み込んだ後片栗粉をまぶした後に水洗いして片栗粉を落とせば臭みが取れて食べやすくなる。
 キッチンペーパーで水気を拭き取った後塩とコショウをまぶし、先程チャーハンを作る為の卵を溶く時に少しだけ取り分けておいた卵白を入れて揉み込み、片栗粉を再びまぶしてから油通し。
 赤みがついたらすでに煮詰めていたお手製チリソース絡める――これだけでもおいしそうなのだが、最後にお酢を少々。
 すると口当たりの油っこさが消えさっぱり食べられるようになるのだ。

 ――と、そんな感じで傘下に下ったセントウインたち全員の分をせっせせっせと魔王未有様は手ずからご調理あそばされておりました。

『ひぇ~、この数めったに捌かない量ですよ魔王様~~!』
「泣き言を言うな!お前達も出来上がった料理食べていいから頑張れ!!」

 これだけせわしなく働いた後の料理はさぞおいしいことであろう。未有のその言葉を励みにお手伝い妖精たちはせっせせっせと料理を手伝った……


 調理すること多分1,2時間。

「ぜー、はー……待たせたな、セントウインたちよ!」

 息を荒げて魔王様ご降臨。
 その背後からはお手伝い妖精たちがせっせと料理をセントウインたちの机に運んでいっている。
 もちろん、驚いてもらう為に蓋をした状態なのがミソです。

「無事にイレーヌも倒せた!Dもがっぽり手に入れた!お前たちの働きに感謝するぞ!というワケで……我特製の満漢全席を思う存分喰らうがいいわ!!」

 未有が目配せすれば、お手伝い妖精たちがぱかっと蓋を空ける。
 食欲を刺激する素晴らしい香りと共に文字通りの満漢全席が!今!セントウインたちの目の前にあるッ!!

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」」」」

 全セントウインから感動の声が上がる。
 先程調理光景を移した五目チャーハンとエビチリだけではなく麻婆茄子に麻婆豆腐、チンジャオロースー、餃子、あんかけ焼きそば、その他諸々の中華料理の群れが彼らを出迎えたのだ。
 そりゃあ歓喜の渦に包まれるに決まっている。

「大盤振る舞いで作ったからありがたく食せよ!」
「「「「「「いただきま―――――す!!!デビ!!!!!!!!!」」」」」」」

 食事をする前にいただきますを言うのは礼儀だと悪魔たちもそこは弁えているらしい。うーん善良。
 皆が皆その味に喜び、あるいは感動で涙しながら満漢全席を片っ端から食らっていく。
 恐らくイレーヌにつかえていた頃は食事も粗末なものになりがちだったのだろう、おかわりをねだってはお手伝い妖精に持ってきてもらうなど賑やかな光景が広がっていた。

「……ふぃー……これだけの量を作るのは流石に疲れたぞ……」

 未有も近くの椅子にもたれかかるように腰掛け、額の汗を拭う。
 自分の分ももちろん用意していた故早速いただきますと口に運んで。

「……うむ、今日は中々うまく作れたな!」

 疲れを加味せずともいつもより良い塩梅で作れた手料理に満足げな魔王未有様でありました。

「(――しかし不思議でならないのだが……)」

 もぐもぐと自分の分を頬張りながらセントウイン共に目をやる。
 確かに食べている。餃子もちゃんとかじったであろう断面が見えてはいるのだが……セントウインの皆さん、口がありませんね?

「(どうやって食べてるの……??)」

 きっとそれは魔王でも解けぬ、デビルキングワールド七不思議の一つなんだろう。多分。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
…このD、オブリビオンの屋敷にあったものとはいえ
もともとここの国民から集めたものだろうし
悪魔たちに返してやった方が良いのでは…?
そういうもんかぁ…?俺は訝しんだ

おい、今まであれで遠慮していたつもりなのかお前
綾の発言にすかさずツッコミを入れつつ
手際よくトングで次々焼いていく
お前たちにもちゃんと食わせてやるから座ってなさい!
油断すると今にも勝手に肉に齧り付きそうな焔と零を制止
高級肉の魔力恐るべし…

おぉ…!これが最上級部位シャトーブリアン…!!
こんなの食ってしまったら他の肉が食えなくなるな…
あ、こら!それは俺の分だぞ!
すいません、シャトーブリアン追加で
もはや最初の遠慮はどこへやら


灰神楽・綾
【不死蝶】
もう、梓ってば超が付くほど真面目だなぁ
大丈夫大丈夫、俺たちもこの世界の平和の為に
しっかり働いたからその報酬と思えばいいし
それに「人の金で飯を食ってやった!」なんて
むしろすごいワルだと称賛されること間違いなし

人のお金で食べる料理で最上級のもの…
そう、それは焼き肉だ
カルビ、肩ロース、タン、シャトーブリアンetc…
メジャーな部位から、ここぞとばかりに
高級な部位まで頼みまくっちゃう
梓に奢らせ…ご馳走してもらう時は
遠慮しちゃってなかなか頼めないからね

お肉の味ももちろんだけど、タレがまた絶品だね
ビリリとくる刺激的な感覚が癖になる
さすがデビルと言うだけある
あっ、カルビも2皿追加でー



●悪魔からふんだくった金で食う焼き肉は――美味い!!
 さて、デビルキングワールド内のさる焼肉屋に乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はセントウインたちを連れてやってきていた。
 せっかく手に入った大量のDはもちろん、紙幣に両替して持ちやすくしております。小銭だらけとか重たいし財布パンパンですがな。
 ただでさえ紙幣にしても結構パンパンなんですよ!

「こんなめちゃくちゃ高そうな焼肉屋始めてデビ……」
「デビルドラゴン国は太っ腹デビねえ……!」
「(うーん純真すぎる……本当に悪魔か……?)」

 未だにデビルドラゴン国のことを信じているので梓は段々ちょっと騙していることに罪悪感を覚え始める。
 それとはまた別の懸念も彼は抱いていた。

「……このD、オブリビオンの屋敷にあったものとはいえ元々ここの国民から集めたものだろうし……」

 悪魔たちに返してやった方が良いのではなかろうかとずっと悩んで悩んで悩みまくって何だかんだでここまできてしまった。
 本当にこれで良いのだろうか?梓の脳裏では天使と悪魔が論争を続けている。

「もう、梓ってば超がつく程真面目だなあ……」

 一方綾はそんな梓の様子にくすくすと困ったように笑った。

「大丈夫大丈夫、俺たちもこの世界の平和の為にしっかり働いたんだから、その報酬と思えばいいし?」
「そういうもんかぁ……?」
「それに「人の金で飯を食ってやった!」なんてむしろ凄いワルだと称賛されること間違いなし」
「そういう……もんかぁ……???」

 梓は訝しんだ。が、デビルキングワールドはそういう世界である。

「そうデビ!あの悪徳令嬢のお金でこんだけ食べられるなんて最高デビー!」
「デビルドラゴン国万歳!!」

 そういう世界、なのである。うーんと梓は首を傾げた。


「すみませーん、バラエティパック4つとカルビと肩ロースとタンとシャトーブリアンとホルモンとレバーと馬刺しお願いしまーす」

 さて早速開始された焼き肉パーティー、綾がここぞとばかりにガンガンと注文していく!
 あのシャトーブリアン3つってめちゃくちゃお値段張りますよ?大丈夫ですか!?
 いやいや、それぐらい払える金をたっぷりもぎ取っているから問題ありません!
 人の金で食べる料理で最上級たる焼き肉、堪能するならいつ?今でしょ!と言わんばかりに肉が次々やってくる!
 メジャーな部位からマイナーな部位、ここぞとばかりに高級な部位までとことん綾が頼んでいくぞ!

「梓に奢らせ……ごちそうしてもらう時は遠慮しちゃって中々頼めないからねえ」
「おい待て今までアレで遠慮してたつもりかお前??????」

 梓は覚えている。奢らされ……げふん、ごちそうした時の綾の食べっぷりを。
 こちらの財布に割と容赦ないぐらいにはいつも食べている気しかしていないのである。まあ成人男性だからそれなりに食べるとしても。
 全くもうと言いながら梓はトングを手に手際よく肉を乗せて焼く。
 焼けば役程漂う香ばしい肉の香り、唾液が止まらなくなってくるぜ!

「キュー!キュー!」
「ガウ、ガウ!」
「お前たちにもちゃんと食わせてやるから座ってなさいっ!!」
「キュー!!」
「ガウ!」

 はーやーくーたーべーたーいー!と言わんばかりに大騒ぎする焔と、クールなのできちんとご主人様の言いつけを護る零。
 これが高級焼肉店の魔力である……おそるべしと梓はごくりと唾を飲み込んだ。
 断じて焼いてて本当においしそうで食べたくなってきて唾液がめちゃくちゃ分泌されたからではない、ないですよ。
 一方綾とセントウインたちは梓が焼いていってくれるからと遠慮なく程よく焼けた奴をぱくぱくもぐもぐ。
 お店自慢のタレにつけて、ご飯と一緒に頂いたら噛めば噛むほど出る肉汁と混ざり合いこれがもう、とにかく、たまらん!!!と語彙が死ぬ程のおいしさが広がっていくのだ――!

「うーん。お肉の味ももちろんだけど、タレがまた絶品だねー。ピリリとくる刺激的な感覚が癖になるよ」
「元が取れるぶんたくさん食べるデビ!食べまくるデビよ!!」
「うーまーいーデービー!!!」

 箸、伸びずにはいられないッ!!絶品な肉に舌鼓をうつデビルドラゴン国(嘘)一行。
 そしてそこについに、あの究極の肉が、訪れる。

「お待たせ致しました、悪魔坂牛のシャトーブリアンでございます」

 シャトーブリアン――それは牛ヒレ肉(テンダーロインとも言う)の中で中央部に位置するもっとも太い部分、牛1頭につきヒレ肉およそ4kgから600g程度しか取れない、最上にして最高級の部位。

「おお……これが最上級部位シャトーブリアン……!!」

 梓がごくりとまた唾を飲み込む。
 セントウインたちもおお、と感嘆し、綾も表情を輝かせて。その肉が、盛大に、取り替えたてほやほやの金網の上に――!!
 香ばしく焼ける音が響く度に溢れ出る油、おさえつければ肉汁が飛び出し、ひっくり返したらその真っ赤な色は綺麗な焼き色を見せて……

「こ、こんなの食ってしまったら他の肉が食えなくなるな……」
「うーん、これは……絶品だねえ……」

 焼き立てのシャトーブリアンを皿に載せて戦慄する梓、反対に綾は早速おいしそうにそれを頬張っていた。
 いつもにこにこしている綾の顔がますますにこにことしている。やはり美味しい肉は正義なのである。
 意を決して梓もそのシャトーブリアンを食べようと――して、焔が我慢できなくなったようで先に食べてしまった!

「あっこら!!それは俺の分だぞ!!」

 と言うも既に遅し、ごくんと飲み込んで幸せそうにキューと鳴く焔。
 はあ、と梓は大きくため息をつき、最初の遠慮はどこへやらの注文を通りすがりの店員に。

「すみません、シャトーブリアン追加で」
「あ、カルビも2皿追加でー」
「豚トロも3皿追加で頼むデビー!」

 その日、焼肉屋は今までかつて無い売上を見せたという…… 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

南六条・ヴィクトリア三世
【元上司と元部下】
さて……手に入れたDに関しては社の運営に投資致しましょうか……。
あらジェイミィ、どうなさったの?
記念すべき支社ですわよ! 喜びなさいな、これから先株式会社UAIはあちこちの世界に支社を建てますわよ!

……え、何ですの? 作って欲しいものがある?
え……く、空母ォ!? そんなのここで作れるわけ……あ、そうか通貨を両替して他の世界で作れば良いですわね。
わかってますわよ! 以前私の専用キャバリアを設計していただいたのですから、こちらもやらないわけには行きませんわ。
さ、セントウイン、忙しくなりますわよ。空母の建造実績が出来れば造船関係の案件も増えるでしょうから。


ジェイミィ・ブラッディバック
【元上司と元部下】
あの、凌牙さんから「依頼のついでに支社をぶっ建てた輩がいるんだが」と泣きつかれて嫌な予感がして飛んできたんですが社長何やってんですか。
……オブリビオンから奪った資金を会社運営にですか……それブラックマネーですしやめといたほうが良いですよ。
それよりも妙案があります、作って欲しいものがありまして。えぇ、空母です。羅針盤戦争で必要になりまして。
そうです、両替した上で他世界の工廠で建造すればまぁ、世界が別なのでマネーロンダリングも容易ですし税金対策にもなるかと。
前に社長にキャバリア作ってもらいましたし、これくらい言っても良いですよね。
ふふふ、完成が楽しみですねぇ……。



●グリモア猟兵は「本当に支社建てるとか思わなかったんだよ!!!!」と申しており
『なあジェイミィ、ちょっと相談があるんだがよ……』
『どうしたんですか凌牙さん?そちらの報告書は確か……ん、ちょっと拝見させてもらっても?――え、ちょ…………はあ~~~~~~……わかりました、ちょっと行ってきますね』

 と、そんな経緯でデビルキングワールドへすっ飛んできたジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)。
 彼の目の前には『株式会社ユニバーサル・アーマメンツ・インダストリー』と書かれたビルがどどんと佇んでいた。

「……社長、何やってんですか」

 頭を抱えた。
 いや、全世界に支社を設立させるとは行っていたがよりにもよってデビルキングワールドで早速やるかあーた、と顔を覆った。
 とりあえず早速社長室へと向かおうとエントランスへ入ると受付セントウインが声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。アポの予定は取っておられるデビか?」
「ええはい。私こういう者でして……社長との商談に参りました」
「確かに頂戴致しましたデビ。社長室は向かいのエレベーターから9Fにお登りくださいデビ」

 さすが元サラリーマン、名刺の渡し方から何まで完璧な振る舞い。
 早速エレベーターから9Fへと登り社長室へ向かう――!


「さて……手に入れたDに関しては社の運営に投資致しましょうか……で、それから――」

 南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)はぽつぽつと今後の会社経営を頭の整理がてら口に出しながらスケジュールの予定を見直していた。
 そこにこんこんこん、と3回ノックする音。

「どうぞ」
「失礼します」

 元部下、参上。マナーに則った動きでドアを開け、閉めてつかつかとヴィクトリアの元へ歩み寄るジェイミィ。

「あらジェイミィ、どうなさったの?」
「凌牙さんから「依頼のついでに支社をぶっ立てた輩がいるんだが」と泣きつかれて嫌な予感がして飛んできたんですよ……」
「なぁんだそういうことでしたの」
「そういうことじゃないんですが社長」
「記念すべき支社ですわよ!喜びなさいな!これから先株式会社UAIはあちこちの世界に支社を建てますわよ!!つきましては手に入れたDを社の運営投資に――」
「……」

 オブリビオンから奪った資金を会社運営に……?ジェイミィの顔が真顔になった。

「それブラックマネーですしやめといた方がいいですよ」
「ううむ、それを言われてしまうと確かに……」

 ブラックマネーで経営される会社がどうなるかの結末が【S.K.U.L.D.System】の演算から予測できてしまったジェイミィ、胸を撫で下ろす。

「それよりも妙案があります。作って欲しいものがありまして」
「作ってほしいもの?何ですの?」
「空母です」
「なるほど空母ですkって空母ォ!?」
「ええ、空母です。羅針盤戦争で必要になりまして」

 口を開けて唖然とするヴィクトリアに対し、ジェイミィはにこにこオーラを放出している。
 この瞬間においては力関係が元部下>元上司になっている気がしないでもない。
 そう、ちょうどこの案件が解決の運びとなった辺りから羅針盤戦争が始まり、現在真っ只中。
 猟兵たちも日々奮闘しつつもやってくる新たな敵やオブリビオン・フォーミュラに対応すべき装備やユーベルコードを開発していっており、ジェイミィの提案はその一つというワケである。

「そ、そんなものここで作れるワケ――」

 と、最初は断ろうとしたヴィクトリアであったが。

「……あ、そうか通貨を両替して他の世界で作れば良いですわね……」
「ええ、両替した上で他世界の工廠で建造すればまぁ……世界が別なのでマネーロンダリングも容易ですし、税金対策にもなるかと」

 猟兵の支援を行う会社である以上ブラックマネーは(多分)ご法度。資金洗浄は大事である。

「前に社長にキャバリア作ってもらいましたし、これくらい言ってもいいですよね~」
「わかってますわよ!私の専用キャバリアを設計して頂いたのですからこちらもやらないワケには行きませんわ」

 キャバリアを作ってもらった対価に空母とはとても規模のでかい取引だ。猟兵一人ひとりの戦力増強は大事なのだが規模がでかい。
 しかしこれで実績を積み上げればよりなおさら株式会社UAIには仕事が舞い込むこと間違いなし。戦力増強もできて一石二鳥の取引というワケだ。
 流石社長わかってる。そしてジェイミィも長い付き合いなのでよくわかっている。

「さあセントウイン!忙しくなりますわよ!」
「「「かしこまりデビ社長!!」」」
「空母の建造実績ができれば造船関係の案件も増えるでしょうからね……我が株式会社UAIの事業拡大間違いなしですわ……!!!」

 よりよい未来に期待を膨らませるヴィクトリア。株式会社UAIの明日は明るく照らされているぞ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オネスト・ファッション
悪い奴も無事退治完了!お疲れ様だぜ!
緑色の羽募金は横領してうちの学校の緑化活動に使ってやるから安心するんだな!
…ところで薄い本ってなんだ?何かの雑誌のことか?(未成年悪魔並)

よーしお前ら!早速この奪ったDで服屋に…と言いたいがまずは腹ごしらえだな!新調した服を汚さないように先に食べておくべきだ!

大金持って行くところなんて焼肉屋に決まってるよなあ?
スペシャル特産牛肉コースで頼むぜ!
みんなも好きなだけ好きな肉食べてくれよな!(焼きにんにくをそっとセントウインの皿に除ける)

みんなで食べてるところをスマホで撮って、デビスタに挙げておく!
#ワル大成功 #他人のDで食う焼肉最高 #この後アウトレット行った



●好き嫌いはホントはよくないけど匂いは服とかについてしまうので致し方ない部分も
「よし、悪い奴も無事退治完了!お疲れ様だぜ!」
「お疲れデビよ兄貴!こうしていい方向に行ったのも兄貴のおかげデビ!」
「だから兄貴はよせって言ってんだろー?」

 すっかり兄貴と舎弟な関係に落ち着いたオネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)とセントウインたちであった。
 え、セントウインたちが学生なのかって?そこは気にしてはいけないところだぞ!

「緑色の羽募金は横領してうちの緑化活動に使ってやるから安心するんだな!」
「おおっ流石デビ兄貴!募金活動で募ったお金を横領して学校に宛てるとは実にワルデビ!」
「よっ生徒会副会長!」
「副会長だからな!学校の利益は考えて当然だぜ!……ところでセントウイン、聞きたいんだけどさ」
「何デビ?」
「薄い本って何だ?何かの雑誌のことか?」

 セントウイン、固まる。
 全部あのお嬢様が勘違いでうっかり口滑らしてしまったがばかりに、この高潔なお人に薄い本の存在が知られてしまったことは本当によかったのだろうか――とか思った。
 確かにカッコいいしイケてるが彼はまだ16歳の現役高校生……

「……うーん、オレたちもよく知らんデビねえ」
「そう言う割には結構間空いてたような気がするけど……まあいっか!よーし、早速この奪ったDで服屋に……と、言いたいが」

 そう言ってオネストがずびしっ!と指差したのはすぐ近くの焼き肉屋。

「まずは腹ごしらえだな!新調した服を汚さないように先に食べておくべきだ!」
「おお、確かに!せっかくの新しい服を汚すワケにはいかないデビからね」
「流石兄貴、常にデビキンのファッションの最先端を行くお人デビ~!」

 そうと決まれば食べにいくしかありません。大金持って食べに行くところなんて当然焼き肉屋さんに決まってるんだよなあ!
 ちょうど何か似た感じのセントウインっぽい人たちとすれ違ったけど多分きっと彼らは別のとこで雇われた悪魔たちでしょう。

「スペシャル特産牛肉コースで頼むぜ!」
「かしこまりました~~~!!」

 焼肉屋さん大喜び。今日はめっちゃ儲かるやったー!とうっきうっきウェイターさんがホールに入っていく。
 大皿に大量に盛られたスペシャル特産悪魔坂牛肉の群れ。あらゆる部位、もちろんシャトーブリアン込という大盤振る舞いである。
 オネストもセントウインたちもおお、と感嘆の声を上げずにはいられない!唾液分泌不可避案件、早速トングを手に金網に焼き肉をどばっと載せていきましょう。

「みんなも好きなだけ好きな肉食べてくれよな!」
「よっ兄貴、太っ腹デビ~~!!」

 ご飯を片手に焼けた肉を次々みんなでぱくぱくもぐもぐ。
 ああ、焼きたてほやほやの熱々肉の旨味の何と形容しがたき素晴らしい味よ!!
 美味しいものの前ではあらゆる悪魔が、人間が、きっと多分オブリビオンであっても語彙力が死ぬ。肉とはそういうものだ。肉は正義。肉を崇めよ。
 そんな気分になりながらおいしく堪能しつつ、オネストはそーっと焼きにんにくをセントウインの皿に除けていく。
 しかしセントウインは何でも食べるしにんにく好きみたいなので気づかない。

「(よし。気づいてないな。そっとさり気なく苦手な食べ物を載せて食べさせるのもワルってモンだ……!)」

 きっとこれは子供の悪魔たちができるデビルキング法に基づいた悪事であるに違いない。
 デビルキングワールドの子どもたちが一番最初に覚える悪事ではないのだろうかというような可愛らしいものですが、本当は嫌いな食べ物はない方がいいですよ!
 そしてオネストはあっ、と思いついたようにスマホを取り出した。

「そうだ、写真撮ってデビスタ挙げとこ。お前らー写メとるからこっち向けー!」
「おっ?」

 \パシャッ/

 "セントウインたちと一緒に焼肉屋なう! #ワル大成功 #他人のDで喰う焼き肉最高 #この後アウトレット行った"

 と、デビスタにこうして記念写真が投下されたところデビルいいねがたくさんフォロワーからつきましたとさ。
 その後アウトレットに言ってからの写真も合わせて歴代最高記録になったとかどうとか。

●エピローグ~そういや法律ってどうなったんですか先生~
 かくして悪徳令嬢の野望は潰え、政治のトップにいたご令嬢が(事実上)退いたことによりこれまでの法律はなかったことになったのであった――のだが、それからどうなったのかについて記述しておく。
 結論から言うと「まだ大分楽な方に改善されました」。
 スーパーには全部自動釣銭機が導入され、買い物後の納税はは「9D以下の端数1桁のみ」とすることにしたそうです。
 今までお嬢様のやり方を支持してきた人たちが妥協してくれる最適解のラインがこう、だったらしい。仕方ないね、きっと今まで習慣づけられたものをすぐに変えるのは悪魔だって難しいんだ。
 でも店員さんに大分優しくなったので、スーパーは前より良い意味で賑やかになったらしい。
 なら、ひとまずそれでいいんじゃないかな!!と、悪魔たちは前向きに捉えていたそうだ。

 (多分)めでたし、めでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月17日


挿絵イラスト