銀河帝国攻略戦⑤~巡洋艦ハウメア救援~
●巡洋艦ハウメア、参戦す
「こちら巡洋艦ハウメア、解放軍聞こえますか! 本艦はこれより貴艦隊に合流します!」
解放軍再び立つ。その報せを受け巡洋艦ハウメアは解放軍艦隊へと進路を向けた。
先代のクルーは帝国軍の襲撃に果敢に立ち向かい、そして全滅した。その苦い記憶は、一時はゴーストシップと化したこの船を受け継いだ現クルーたちにも深く刻まれている。
父を、母を、兄弟姉妹を、伴侶を、友をこの船で失ったクルーたち。
だが、彼らは知っている。猟兵達が――解放軍の戦友たちが、その仇を討ってくれたことを。彼らが持ち帰ってくれた記録と遺品が、大切な人々の記憶を宇宙の闇に眠るままにはしなかったことを。
「――猟兵の皆さん。私はパトリシア・マコーレイ、今のハウメアの艦長です。私達は貴方たちへの恩を忘れない。今度は私達が貴方たちを助ける番です!! 全艦戦闘配置、解放軍との合流を阻む敵艦隊を強行突破します!」
集結する解放軍艦隊への合流を目指し最大戦速で航行するハウメア。
その進路には既に帝国軍の空母機動艦隊が待ち受けている。精鋭飛行部隊を発艦させつつある、銀河帝国の強大な航空戦力が。
●生ける勇士達の宇宙へ
「ミッションを発令します」
アレクサンドラはゴーグルの表面を這うモノアイで、集まった猟兵達を見回した。
誰も彼もが戦意と決意を瞳に宿し、出撃の準備は万端だ。その様子にわずかに微笑み、アレクサンドラは戦況の確認を行う。
「知っての通り、ミディア・スターゲイザー女史によるワープドライブ再稼働により、スペースシップワールド各艦は解放軍として再結集しつつあります」
そうだ、そして銀河帝国に決戦を挑み、銀河皇帝を打倒する。
「今回の皆さんへのミッションは、この解放軍艦隊に合流を目指す巡洋艦ハウメアの――」
その艦名に、幾人かの猟兵は驚いたような表情を見せたかもしれない。
かつて銀河帝国の無人機甲部隊によって、練度の高いクルーを失った巡洋艦。それが再び戦場に戻ってきたのだ。
「その救援になります。軍用艦とはいえ、クルーは補充されたばかりの新兵。一部に至っては軍隊経験すらない、まさに義勇兵です。このままでは迎撃網を張る帝国軍空母によって撃沈されるのも時間の問題でしょう」
だから、先んじて帝国軍空母を撃沈する。それが今回のミッションだ。
「まずは空母内で出撃準備中の艦載戦闘機隊を撃滅してください。艦内は広く、戦闘機との空戦も十分に可能なスペースが存在します」
その後、護衛戦闘機を失い丸裸となった空母を内外からの攻撃で撃沈する。そうすれば、ハウメアの合流を阻むものはない。
どうか、今一度かの船を救ってほしい。そのために発つ猟兵たちの背に、アレクサンドラはご武運を、と敬礼を投げかけた。
紅星ざーりゃ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
こんにちは、紅星ざーりゃです。
スペースシップワールドで初の戦争ということで、猟兵の皆さんも戦意旺盛なことと思います。
是非、その戦意に満ちた熱いプレイングで巡洋艦ハウメアの義勇兵達を救ってください。
巡洋艦ハウメアの正規クルーの最期についてご興味がありましたら、拙作『ゴーストシップ・オブ・オートマトン』をご確認ください。
第1章 集団戦
『デルタ・ファイター』
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POW : 増援要請
自身が戦闘で瀕死になると【増援飛行隊 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : 帝国軍の栄光のために!
【制御不能の高速航行モード 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 対宙銃撃
レベル×5本の【貫通 】属性の【機銃弾】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ハル・パイアー
「あのハウメアか?やれやれ、リクルートされた新兵は大人しく軍事教練を受けていて貰いたい……所だが、そうもいかんのだろな。」
小官はこれより、ハウメア艦への緊急支援を開始。
《ゴッドスピードライド》起動。N=ムーバーに[騎乗]し、高速[操縦]で敵機デルタ・ファイターの目を引きつけ[空中戦]を挑みます。
兵装は熱ブレード『N=フューザー』と熱線銃『圧縮重粒子放射器』
高速起動で敵を引き摺り回しつつ、[誘導弾]熱線射撃。
追尾する敵を[見切り]、隙があれば急停止からのすれ違いで[早業]斬撃で攻撃を試みるものであります。
「戦争では新兵は生き残るのが仕事だ。私のような幼年個体に言われたくないかもしれんがな。」
●
「ハウメア……あのハウメアか? やれやれ、リクルートされたての新兵は大人しく教練を受けていて貰いたい……ところだが、そうもいかんのだろうな」
N=ムーバーに跨がって敵空母に転移したハルは、カタパルトに接続され出撃準備中の艦載機――デルタ・ファイターに銃撃を加えながら苦笑する。
だが、自分たちが繋いだ未来が今此処にあるのだ。あの時の戦いでハル達猟兵が記録を持ち帰ったからこそ、彼らは恩義を感じ、今この決戦に未熟ながら加わろうとしてくれている。それに、力量の足りない分は自分たち猟兵が補えばいい。
「小官はこれより、巡洋艦ハウメアへの緊急支援を開始」
N=ムーバーの速力を上げ、既に飛び立ったデルタ・ファイターを追う。
あれが宇宙空間まで飛び出せば、その時は空宙戦となる。となると帝国軍主力戦闘機の名を恣にするあの戦闘機が相手では些か分が悪い。あれが出撃ゲートを潜るまでが勝負か。
ハルは先行する一機にぴたりと付き、ドッグファイトを挑む。
「閉所での機動性なら小さい分こちらが有利、そちらは自慢の速度も出せまい……!」
くるりくるりと回転するように蛇行してハルと彼の放つ誘導弾を撒こうとするデルタ・ファイターだが、それを許すほどハルは未熟ではない。障害物スレスレを飛ぶデルタ・ファイターを決して逃すこと無くその尾に喰らいついて離さない。
『――メイデイ、メイデイ! くそ、しつこいぞこの……!』
救援を求める眼前の敵機にブラスターを叩き込み、見事撃墜したハル。
「これで二機。さて、この規模の空母であれば残る艦載機の数は……」
何十機落とせばいいだろうか、と振り返ったハルは、まっすぐ一直線に突撃してくる新手を見た。
いや――見た、と思ったときにはそのデルタ・ファイターはN=ムーバーに衝突し、その車体を吹き飛ばしながらまっすぐに突き抜け、そして整備用のクレーンをなぎ倒しながら大きく旋回する。
『帝国軍の栄光のために、この艦隊決戦を邪魔されるわけにはいかない……!』
コックピットで荒く息を吐きながら、次なる突撃で確実にハルを仕留めるべく艦内空間に視線を走らせるパイロットだが、見えるのは漂うN=ムーバーの破片ばかり。
『どこだ……何処に行った、反乱軍のライダー……!』
「ここだ」
すぐそばからの声にパイロットに緊張が走る。続いて衝撃。制御を失ったデルタ・ファイターは墜落するように空母の内壁に叩きつけられ、爆発四散する。
――衝突の瞬間、ハルはその速度を見切り、N=ムーバーの速度を合わせて最大限に衝撃を殺しつつ熱ブレードN=フューザーの刃をファイターの装甲に突き立て、その機体にしがみついていたのだ。
そうしてファイターが減速し、轢いたはずのハルを探し始めたところでエンジン基部に一撃を加えたのである。
墜落する寸前に飛び降り、転がるように衝撃を和らげて空母内壁に降り立ったハル。
衝突の衝撃、デルタ・ファイターとともに受けた超加速のG、墜落の衝撃――無事と言うには少しばかりダメージを多めに受けてしまった彼は、しかし生きている。
「戦争では新兵は生き残るのが仕事だ。私のような幼年個体に言われたくないかもしれんがな……」
少なくともその言葉を直接ハウメアの新クルーたちに伝えるまでは、彼は倒れるわけにはいかないのだから。
苦戦
🔵🔴🔴
柳生・友矩
世界を救いたいっ。少しでも皆さんのお役に立てるなら、俺は死んでも構わないっ!
【POW】ユーベルコードの剣刃一閃で敵を斬りますっ!!皆さんの大切な人達はかえってはこない...。でも、でも、これ以上悲しい思いをする人をなくすために、俺は刀を振るいますっ!
皆さんの援護を主に行動します!お願いします!
アリシア・マクリントック
戦闘機相手とあっては生身で戦うわけにもいきませんね。……変身!
敵がどのように動くかは予想しにくいですが……飛ぶ相手への対処法なら考えてきました!
直上は死角のはず……思いっきり跳躍して、敵を踏み台にして渡るようにしながら攻撃していきましょう。
東洋の伝説にもこうやって戦う者がいたような?
属性攻撃……有効そうなのは炎でしょうか。いかに頑丈と言えど、金属ならば高温になればやわらかくなるはずです!
マリアと守護者の軍勢はどの程度効果的な攻撃ができるかわかりませんが、下から攻撃してもらえば挟み撃ちの形にできますね!敵も多いですし、こちらも数で対抗です!
●
「戦闘機相手とあっては生身で戦うというわけにはいきませんね」
――変身。アリシアは宇宙服の上から白銀のアーマーを纏う。美しくも冷たい戦装束に身を包み、すらりと剣を抜いて侵入者を迎撃すべく上空を旋回するデルタ・ファイターを見上げる。
「この世界を救いたい。少しでも皆さんのお役に立てるなら、俺は死んでも構わないっ!」
その傍らで、刀を手に意気込む少年剣士。サムライ・エンパイア生まれの彼は、名を柳生友矩という。
立派な父と兄に負けじと努力する彼だが、その意気込みはこの戦いにおいて些か危うい方向へと傾きつつあった。
「友矩さん、でよかったかしら。戦う前に少しだけ話しましょう」
見かねたアリシアが彼に声をかける。緊張に声を上擦らせて応じる友矩を遮蔽に引き入れ、あなたは何のためにこの戦場に立つのか、と問う白銀の戦乙女。
「それは……」
友矩は思う。この一大決戦に臨むにあたって聞いたあの通信を。家族を、友人を銀河帝国のために亡くし、それでもなお明日のために帝国を打ち破らんと戦場に赴く人々の声を。
「あの人達の大切な人たちはもう帰ってはこない……でも、でも! これ以上悲しい思いをする人をなくすために、俺は刀を振るうんです!」
その気高い決意は見事なものだ、とアリシアは思った。だけれども、そこには一つの大きな要素が欠落している。
「では、あなたがこの戦いで帰らぬ人になった時、悲しい思いをする人がいることはいいのでしょうか?」
家族や友だけでなく、単なる顔見知りであれ――猟兵には時としてそういった関わりを一切持たない孤独な人間も居るが、彼はそうではないように見えた――が、悲しまないと言い切れるのか。
言い切れないのならば、今の捨て身の決意は、その志を裏切るものではないのか。アリシアの指摘に、友矩は静かに頷いた。
「た、確かにアリシアさんの言う通り……です。俺が死ねば、もしかしたら父上や兄上は悲しんでくれるかもしれない……」
だったら、死んでもいいなんて覚悟は捨てて、生きるために戦おう。
二人は頷きあって遮蔽物から飛び出すとそのまま跳躍し、上空を旋回するデルタ・ファイターに飛び乗る。
「戦闘機……というものは、前か下を攻撃するものと聞きました。ならば直上は死角のはず……!」
空を飛ぶ相手に苦戦した記憶も新しいアリシアだ。対策は万全、そしてそれに習った友矩もまた、別のデルタ・ファイターの上に飛び移る。足元のキャノピー越しに、驚愕するパイロットと目が合った。
アリシアは炎をまとわせた剣で戦闘機を叩き落とし、友矩は研ぎ澄まされた一刀のもとに機体を真二つに断ち割り撃破する。
その様子に、慌てて僚機を救援すべく飛来し機銃掃射を仕掛けるまた別のデルタ・ファイター。二人は示し合わせたようにまたも違うファイターに飛び移っては、攻撃を繰り返していく。
墜落して尚大破を逃れ、再び離陸しようとする機には地上に残されたアリシアの相棒、マリア率いる狼の群れに襲撃され、解体されていった。
「東洋の伝説にも、こうやって戦う者がいたような?」
受け持った編隊の最後の一気に飛び移り、アリシアがふと記憶の端に引っかかる物を思い出して呟く。
同じ機体に飛び移ってきた友矩が、その答えを知っていた。
「ああ、それはきっと――」
――義経公の八艘飛び。
二人の一撃を受け、空中でバラバラになったデルタ・ファイターが墜ちていく。
壁面に立つ整備クレーンめがけて墜落機の背から飛び移った二人は、クレーンを伝って無事に地上へと降りるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
キリエ・ニール
…なるほど。
あいにく僕は先の一件に参加できたわけじゃないけどさ。
相当大変だったろうに無茶をする、下手すりゃ蛮勇って叱られても知らないよ?
まぁそれでも、僕らはその勇気を買おう。
その勇気を優しさを義理を通す心意気を、応援しようじゃないか。
なぁ…皆!
飛び交う護衛戦闘機の中でコードを使用、空中戦で飛び上がり戦闘機を、無数のUDCによる体当たりで叩き落とす!
鎧無視攻撃と鎧砕きを組み合わせれば戦闘機の強固な装甲でも、日々を入れることができるはず…
そこに、二回攻撃による僕の一撃、数内による斬鉄…斬り捨て御免ってね。
斬れるタイミング、斬れる場所を第六感で察知しながら、飛んで跳ねてUDCの友達と暴れまわる。
東郷・三笠
巡洋艦ハウメア……以前、調査した艦だな
新しいクルーを乗せ戦場に戻ってきたのだな
勇気ある者達を見殺しには出来ない
ゆくぞ、諸君!
空中戦11、ジャンプ5、ダッシュ5で三次元移動をしつつ超電磁単分子ブレイド『布都御魂』ですれ違う敵を切り捨てつつ
一斉発射11、範囲攻撃2、鎧無視攻撃8、零距離射撃1で目についた艦載戦闘機隊の全てを『タケミカヅチ』を用いてフルバースト・マキシマムで攻撃し殲滅
有象無象が、砕け散るがよい!
敵の攻撃は盾受け8を用いてアサルトシールドフィールドで防御
アドリブで他の方との絡み歓迎
●
「巡洋艦ハウメア……」
その名は知っている。以前、帝国軍の無人機甲部隊に襲撃され奮戦虚しくクルーが全滅の憂き目に遭った船だ。
あの日の戦いに参戦したものは、遺された記録からどれほどの決意を持って彼らが帝国軍に抗ったのかを知っている。
最後まで未来を守るため、帝国に屈すること無く散っていった勇敢な戦士たち。彼らがもし生きていて、この戦場に加わってくればどれだけ頼もしかっただろう。
――そう思ってしまうのは仕方のないことかもしれない。だがしかし、彼ら自身ではなくともその志を受け継いだ人々が今、解放軍の旗のもとに結集しようとやってきたのだ。
「勇気ある者たちを見殺しにはできないな」
確かに受け継がれている反攻の灯火に、無謀への苦笑を微笑みに変えて三笠は刀を抜く。
「あの感じだと殆どが民間人だね。軍艦の運用なんて相当大変だったろうに」
無茶だ、蛮勇だ――そう言われても仕方のない行為だ。
「まあ、それでも僕らはその勇気を、義理を通す心意気を応援しようじゃないか」
キリエもまた刀を構え、三笠に並び立つ。
二人の剣士が、頭上を飛び交うデルタ・ファイターへと鋭い視線を向けた。
巨大な宇宙空母のドック内、直ちに出撃するべく準備を整えたところで猟兵たちの襲撃を受けた戦闘機の群れは、まず母艦の脅威となる侵入者の排除を行うべく急降下して機銃掃射を敢行した。
狙うは二人の剣士。編隊を組み、機体に備え付けられた機関銃で舐めるように地表へ銃弾の雨を降らせる。
それを三笠とキリエは跳躍でやり過ごし、そのまま空中戦へと移行する。ドック内は無重力ではない――とはいえ、極度の低重力環境だ。宇宙に慣れ親しんだ二人にとって、その機動を邪魔するものは存在しなかった。
「――墜ちるがいい!」
大ジャンプした真下をくぐり抜けていく敵編隊の先頭を三笠がすれ違いざまに超電磁単分子の刃で撫でれば、戦闘機は真二つに割れてそのまま墜落していく。
「わぉ、すっごい切れ味! 僕らも負けていられない、だろう友達!」
ああ、とキリエの声に応えるようにぞろりと現れた触手や巨人、翼手の群れが戦闘機隊に襲いかかった。
『――な、なんだこの化け物……ひっ、うわぁッ!』
それぞれの攻撃手段で敵機を引き裂き、絡め取り、叩き潰して撃破していく"友達"に、感謝を告げるキリエ。
だが、些か派手にやりすぎた。敵のさらなる一隊が、キリエ達を脅威とみなして転進したのだ。
「げ、流石に数が多いかもしれない……」
冷や汗を流すキリエは、放たれる機銃の弾雨を切り払い身を護るので精一杯だ。
「数が多いのならば我に任せろ!」
防戦一方のキリエを庇って弾雨の前に立つのは三笠。
防御フィールドの出力は、戦闘機の機銃ごときの火力で易々と突破できはしない。自らの装備と技量に絶対の自信があるからこそ取れる捨て身のカバーリングは、三笠の思う通りに弾幕を弾いてただの一発も通しはしない。
「有象無象が……砕け散るがよい!」
そして反撃の一斉射だ。強力な火力を誇るアームドフォートの一斉砲撃が、空母の内部という広いようで機動を制限される閉鎖空間で逃げ場を失った戦闘機隊を次々と撃破していく。
だが、それも全てを撃破したわけではない。
精鋭と評される敵の飛行隊には、時として猟兵にすら匹敵するエースが混じっているものだ。
三笠の砲撃を見事な操縦で切り抜け、離脱を図る一機。あるいはただの一機が逃げ延びたところで、大局に影響はないだろう。
だが、このままあの機体の出撃を許してしまえば。
――実戦に不慣れなハウメアは、しっかりと自らの身を守れるだろうか。
キリエの眼が、最悪の未来を視たような気がした。
「皆! あの機体を逃しちゃ駄目だ!」
その叫びに応えるように彼の友達たちがデルタ・ファイターへと襲いかかるが、それすらも掻い潜ってみせるそのパイロット。
流石に砲撃と接近してくるUDCの群れを全て躱すことこそ出来なかったようだが、それでも致命傷を避けて飛び続けるその機体にキリエは全力で追いすがり、ギリギリのところで取り付いた。
「流石に数打じゃ装甲までは斬れないかもしれない。でも……」
眼前には、友達と三笠の砲撃によって損傷した装甲。ヒビが入ったそこならば。
数打はもとより消耗品だ。金属を斬ることなど想定していない量産品の刀は、数度も叩きつければへし折れる。
だがその度に新しい刀を抜き、キリエはひたすらに"全く同じ箇所"を斬りつけ――そして、幾度目かの斬撃でファイターからメインエンジンが切り落とされ、脱落していった。
「斬鉄、やってみれば出来るもんだね……斬り捨て御免、ってね! ……よし、今だよ!」
急ぎ機体から離れるキリエ。それと入れ替わるように、三笠の放った砲撃が速度の低下した敵機を撃ち抜き撃墜する。
「見事な技だったぞ、少年!」
「そっちこそ、何機落としたのさ!」
互いの健闘を称えながら、二人は新たに飛来した戦闘機の群れへと挑みかかっていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「ハウメアとの接触は初ですが、やるべきことには変わりはありません」
【SPD】
方針:敵のSPD UCの囮として速く動く物=自動哨戒型飛行ドローン「D6ID」(サーチドローン)を放出します。後は自分のUCでマシンガン掃射で攻撃。
技能:(ドローン操作)早業・メカニック。(UC)視力・スナイパー・一斉発射。(UCセカンド)2回攻撃・クイックドロウ
(ドローン操作)
「囮として、逃げるだけならAI操作で可能です」
(UC)
「ドローンにより、敵影を捕捉。固定砲台として撃退させて頂きます」
(UCセカンド)
「マガジン交換完了。攻撃再開」
御門・セツ
機械相手ね、あまり相手した事はないけど。
動き回られると弓だとちょっと分が悪そうだし
動いてない奴を片っ端から壊せばいいか。
でも、飛び回ってるのも【見切り】で動きの予測が出来れば
弓あたるかなー?
さてさて、とにかくやれる事からやっていかないとね!
●
帝国軍空母の出撃ハッチ付近。
内部空間は広大な空母だが、外界との境界――つまりは外敵にとっても狙うべき弱点となる発進口はできるだけ小さく作られており、そこを通る敵機は必然的に広い空間を利用した柔軟な戦術機動を行えなくなる。
クネウスとセツはそこに迎撃網を張り、ドック内部での戦闘をくぐり抜け出撃せんとする敵飛行隊を待ち受けていた。
「さて、とにかくやれる事からやっていかないとね!」
「ええ。そして私達のやるべきことに変わりはありません」
やる気十分のセツと、放った自動哨戒型ドローンが送信してくる情報を処理しながら冷静に応えるクネウス。
弓使いであるセツにとって、縦横無尽に飛翔するデルタ・ファイターは難敵であり、機動を制限できるならばそのほうが良い。
そしてドローンとの連携で敵を誘引し、自らはそれを待ち伏せ固定砲台に徹する予定のクネウスにとって、開けた場所よりは敵の進行ルートを限定できる閉所のほうが戦いやすい。
そういった思惑が、この出撃口付近という敵飛行隊に対する最後の防衛ラインとしてのポジションに二人を導いた。
「D6IDが接敵。マニュアル操作の必要性はなし。囮として逃げるだけならAI操作で十分に可能です。――各機は敵をこのエリアに誘導。セツさん、間もなく敵機が飛来します。迎撃準備を」
マシンガンを構え、空母の奥を睨みつけるクネウス。その言葉に従って、セツもまた弓に矢を番える。
「本当は飛び立つ前に仕留められたら一番なんだろうけどね。でも、飛んじゃったからには出来る限り見切って、なんとかしないと。できるかな?」
なにしろ宇宙艦隊戦闘に投入される、まさに機動兵器と呼んでも差し支えない帝国の主力戦闘機が相手なのだ。
機械の敵自体を相手取った経験がないセツにとって、全てがはじめての経験だ。緊張に息を飲む彼女に、クネウスが何事もないかのように平坦な声音で告げる。
「接敵まで10、9、8、7――大丈夫、こちらで敵機をそちらの射線上に誘導します。――4、3、2、1……敵影を捕捉。固定砲台として撃退させて頂きます」
クネウスの構えるマシンガンが重厚な駆動音と共に弾丸を吐き出し、顔を出したデルタ・ファイターを瞬く間に穴だらけの燃える鉄くずへと変える。
「誘導って……ええい、当たれっ!!」
来てしまったからには迷ったりもたつく暇はない。どうにでもなれ、と続く敵機に向かって矢を放つセツ。
その矢は猛烈な勢いで飛び、ドローンを追跡するため進路を変更した敵機のコックピットへと飛び込む。
キャノピーが砕け、パイロットがその胸から矢を生やして脱力し、墜落した機体は爆発、炎上。
「や、やった!!」
「まだです。次、右から3機。8秒後に左から2機。左は任せます」
ええっ、と一機落としたと思えばすぐさま次が来るという絶え間ない敵の襲来に悲鳴をあげるセツと、淡々と戦闘機を撃ち落としていくクネウス。
二人の連携は即席といえど見事に機能し、ドローンを追って集結した敵の飛行隊を次々とスクラップへと変えていく。
「次、5秒後に正面より4機。続いて12秒後、左右よりそれぞれ3機編隊」
「前のは二機ずつ、その後は自分が左でクネウスくんが右!?」
「ではそれで。攻撃開始」
作戦は成功し、撃墜した敵のデルタ・ファイターの数は10機を上回りつつある。大戦果だ――だが、この巨大空母において、あとどれほどの敵戦闘機が居るのか。
撃ち尽くしたマガジンを交換し、あるいは新たな矢を抜きながら矢筒に残る矢の残数を確かめ、二人は次なる敵の襲来に身構える。
「…………まずいです。敵、2秒後に正面。数12。マガジン交換完了、攻撃再開」
「は? 今度の早くない!? もう来るのっ?!」
敵機を追って出撃口に向かった味方機が次々と通信を絶つという異常事態を把握したその飛行中隊は、最高速でその危険地帯を突破するという策に出た。
まして、小規模の編隊ではなく機数まで多い。
二人の展開する弾幕の中を、僚機が脱落することも厭わず強引に突破して宇宙空間へと飛び出していくデルタ・ファイター。
「……撃墜確認、4機。損傷を与えたのが2機。突破されたのが8機、うち無傷が6機ですか」
「流石に二人だとあれだけの数を一気には落とせないよ……」
突破を許してしまったことを悔しがる暇すら与えず、帝国軍はなおも出撃口へと殺到する。
その機影をクネウスは捉え、慰めるように言葉をかけるセツに頷いた。
「突破されたものは仕方がありません。出来る限り敵機の出撃を阻止するため、ここでの迎撃を可能な限り続行します」
あなたはどうします、と問う視線に、セツもまた頷き返す。
「矢が尽きても、いざとなったら自分には斧があるから。飛びかかってでも戦うよ」
――そうとも。二人の背中には、守るべき味方が居るのだから。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
リダン・ムグルエギ
へぇ、新兵さんね。
…ね、アナタ達…揃いの兵装とか、興味ある?
今日のアタシは服じゃなくて戦闘機のデザインと洒落込むわ
といっても、交戦前に、既にあるハウメアの戦闘機にアートの心得で解放軍の旗印であるミディアさんっぽい人物をペイントしたり、特殊な”布”を取り付けるだけだけれどね
でも、それで十分
戦闘機の装甲を防具改造することで、催眠術用の模様を刻めば…
その”戦闘機の服の模様”を元にコードを発動することで
彼らの戦闘機を見た敵戦闘機は視覚が揺らぎ、対宙銃撃も容易に当たらないって寸法よ
新兵だからって危険を冒す必要はないわ
可能な限り安全圏から支援に徹してね?
【ワイルドハント】の人がいれば、その人にも協力するわ
天通・ジン
戦う気概は買うし、新兵だろうと貴重な戦力
大砲ってのは並べるだけでも意味がある
なら、助けに行くのは戦略的に意義がある
……ってことにしようぜ
敵空母撃滅が俺らの任務
なら、戦闘機隊をさっさと倒そう
相手を追い込まないよう、確実に仕留められるときに仕留める
数を減らすことがなにより先決。火砲の数は、戦闘の帰趨に直結する
俺らだって、当たれば死ぬんだから
追い詰めたら、何か隠しだねがあるかもしれない
それを警戒し、常にデータの取得とそれをAIに解析させることを忘れない。
ピンチのときは、愛機を信じるさ
コイツを信じなかったら、俺は生きては帰れない
アドリブ・連携歓迎
苦戦描写もOKだけど、機体撃墜だけはなんとしても避けるよ
エル・クーゴー
●POW
【空中戦】用バーニア、展開
空戦機動に移ります
【狩猟の魔眼(防御力重視)】、ON
包囲されぬよう注意し【ファイアワークス・ドライブ(攻撃回数重視)】にて応射
敵コード発動確認時、瀕死域の定義・毀損程度を学習(学習力&情報収集)
見極め完了次第、積極殲滅に移行
「瀕死域」の寸前から「即死域」までダメージを与える、敵コードを封殺する戦術を敢行します
・狩猟の魔眼(攻撃力重視)
・ファイアワークス・ドライブ(攻撃力重視)
・敵装甲を抜き易いよう、弾頭を適宜成形ないし副砲増設(武器改造)
・これらを2回攻撃で敢行
・敵機との相対距離が離れている際は「スナイパー+誘導弾」、接近している際は「零距離射撃+吹き飛ばし」
●
猟兵たちが帝国空母内部で敵の航空隊と死闘を繰り広げているのと同じ頃、三人の猟兵は空母ではなくそれに向かう巡洋艦ハウメアへと転送されていた。
「――敵機出撃を確認、数はええと……7、間違えました、8!」
「――続けて更に敵機現出します! 数4、たぶん先行する部隊と合流する模様!」
慌ただしいオペレーターたちの不慣れさの滲む報告を受けながら、三人はその格納庫に集まっていた。
数多の作戦空域を飛び回った愛機に弾薬や推進剤の補給を受けるためやってきたジン。
ハウメア所属の艦載鎧装騎兵部隊に"デザイン"を施すために来たリダン。
そして、半ばリダンに引っ張られる形で訪れたエル。
「――戦闘機への弾薬積み込み完了しました! ミサイルの規格がちょっと違うので気をつけてください、ドッグファイトを想定してなかったので少し射程が長いやつしか持ってきてなくて」
「ああ、大丈夫だよ。それより重量はどうなんだ? 機動性への影響とか」
「その辺りは大丈夫だと思いますが、接敵前に慣らしてください。違和感を感じたらすぐに投棄してくださいね!」
年若い少年整備士に頷いて、ジンはコックピットへと滑り込む。
多くの人々の想いが集う戦場だ。彼らから預かった燃料弾薬も、その一滴、一発まで誰かの想いが託されている。ジンはその実感を胸に、出撃の合図を待つ。
「へぇ、新兵さんね。……ね、アナタ達……揃いの兵装とか、興味ある?」
防空戦闘のための出撃に向け、装備を整え整列する鎧装騎兵たちに、リダンは問う。
「ノーズアート、って言うのかしら? アナタ達が解放軍の一員である、って印をアタシが描いてあげよっか」
その提案に、若い少年少女からなる騎兵部隊の面々は一も二もなく飛びついた。
やれこんなデザインがいい、やれこんなエンブレムにしよう、とやいやいと意見を出し合う若者たちを微笑ましく見守りながら、猟兵でもなく、そして本来なら兵士になるにも若すぎる彼らが戦場に挑むというこの世界の残酷な現実を見て、リダンは何を思うのか。
出撃前だと言うのに紛糾する部隊章会議を手を叩いて止め、出てきたアイデアをピックアップした彼女は、手持ちの布を各機の腕に結わえていく。
「これがハウメア隊の印。お守りだから無くしちゃ駄目よ? そして――」
こっちが解放軍の印ね。と言ってもアタシのオリジナルだけど、と筆を走らせ、肩に描いていくのは自由を掴むための翼を背景に祈る蒼髪の乙女の横顔。
「ミディアさんだ!」
横顔であっても、目を閉じていても。エンブレムとしてある程度デフォルメされた図柄でも、それでも解放軍の旗印たるミディア・スターゲイザーだと分かる。
そのデザインに、年少の騎兵たちの士気は一気に向上していく。
「いい? アナタ達は新米なんだから、危険を冒す必要はないわ。可能な限り安全圏から支援に徹してね?」
――そうよね、"中隊長"さん?
すっかり彼女に懐いた新兵たちに言い聞かせながら、リダンは横目に戦友を見る。
『肯定します』
『敵機との交戦は当機および戦闘機隊が担当』
『艦載鎧装騎兵部隊はその戦闘支援を徹底してください』
経験浅い艦載鎧装騎兵部隊の指揮官として、現場での引率を任されたエルは頷く。
なんとなれば自分ともうひとり、戦闘機を駆る彼の二人で敵の航空隊を殲滅することは不可能ではないだろう。
だが、その先――彼らが実戦経験を持たぬまま、さらなる激戦区に投入されることだけは避けたい。
そんなハウメア側からの要請もあり、同じ鎧装騎兵であるエルが即席の中隊長騎として戦場に立つことになった。
それでも彼らはまだ若い、若すぎる新兵だ。出過ぎれば経験豊富な、ともすれば空母内部の激戦をくぐり抜けて出撃した敵部隊にとっては御しやすい獲物となってしまう。
矢面に立つべきは自分たち猟兵。通常戦力である艦載鎧装騎兵部隊は、その支援に付くように――その厳命に、少年たちは唇を固く結んで頷く。
『では、当機に続いて順次出撃』
『>戦術提案。変則ですがスリーマンセル四個分隊で連携、自身と僚騎の生存を最優先に行動』
『中隊コールサインは"ワイルドハント"とします』
「「「「――アイ、マム!!」」」」
持ちうる火器を最大限に強化し、ゴーグルに走る光に電脳の魔眼を宿して巡洋艦を飛び立つエル。
同じくしてジンの戦闘機も飛び立ち、そして12騎の艦載鎧装騎兵が遅れて続く。
「戦う気概は買うし、新兵だろうと今は貴重な戦力。軍艦の大砲ってのは並べるだけでも意味がある、なら助けるのも戦略的に意義がある……ってことにしようぜ、って言おうと思ったんだけどな」
まさかその新兵の気概がここまでだとは思わなかった、とジンは後続の騎兵隊を振り返る。
腕に揃いの布を巻き、肩に部隊章まで付けてエルに追いつこうと必死に羽ばたく小さなヒヨコ達。
「出てきちまったものはしょうがない、勇敢な新人を守りながらになるとは思わなかったけど、任務達成のために戦闘機隊をさっさと倒そう」
『肯定』
『>提案。当機とのデータリンクを推奨します』
『当機は高度な情報分析能力を有し、敵機の機動パターンを解析、最適な殲滅手段を算出可能です』
機械的なエルの提案に、ジンは愛機のAIにどうする、と問う。
普段より少しだけ長い思考を経て、AIはそれを承諾した。
「大丈夫だって、俺が一番信じてるのはお前だよ」
加速して空母に接近していく14の機影と、それを迎え撃つように飛来する多数の機影。
あの一つ一つが帝国軍の主力戦闘機デルタ・ファイターを駆る、熟練の精鋭パイロット達なのだ。
『接敵します。分隊散開、敵機への不用意な攻撃は指示あるまで厳禁』
デルタ・ファイターの群れに突っ込んだエルとジン。
それを大きく広がり、戦闘宙域のギリギリ端で警戒しながら見守る艦載鎧装騎兵隊。
――戦闘が、始まった。
エルとジンの戦術は、攻守の差こそあれよく似たものだ。
敵機の情報を収集し、知り尽くした上で叩く。あるいは、叩きながら敵機を知り、理解する。
回避に徹し、敢えて攻撃せず複数の敵機とドッグファイトを繰り広げるエルとは対象的に、隙あらば機関砲で敵機を撃破していくジン。
前者は敵の取りうる行動の全てを知った上で、その尽くを潰すべく。
後者は情報収集の最中に被弾するリスクを鑑み、少しでも敵の火力を削ぎ落とすために。
どちらが正解だとか、どちらのほうが優れているというものではない。此処に至っては、データリンクを結んだことで双方の情報が共有され、2つの戦術は互いに互いの利点を高めあっていた。
回避に徹するエルは、敵機の兵装や戦闘機動などの攻撃面のデータを良く知ることが出来る。
果敢に攻撃を仕掛けるジンは、敵機の機動性や回避機動のデータをよく知ることが出来る。
一撃も被弾せず、ひらりひらりと回避しながら敵機の時折見せる急激な加速と攻撃の頻度上昇にパターンを見出すエルは、その情報を持って偵察を完了と判断する。
一方でジン機のAIもまた、被弾した敵機が発する独特の通信シグナルが近隣戦域への救援要請であるとの解析結果を叩き出した。
それを一瞬のうちに共有した二人は、一言も交わすこと無く同時に全力攻勢へと移行する。
「下手に追い詰めると仲間を呼ぶわけか。それにこの高速機動、厄介だな」
機関砲が唸り、それを回避した敵機が急加速する。そこへすかさず放たれた長距離ミサイルが一瞬のうちに距離を詰め、敵機を巨大な火球へと作り変える。
「それにしても正確な機動データだな……良く集めたもんだぜ」
虎の子の高速航行モードが完全に読みきられた帝国軍航空隊は、たった一機の戦闘機に次々と後ろを取られて撃ち落とされていく。
『>データ受信』
『敵機の救難シグナル発信はオートシステムによるものと判断します』
『よって起動ライン寸前までダメージを与えた後、一撃で撃破が最適解と判断しました』
対物スナイパーライフルを担いだエルは、巧みに入射角を調整し、一射目の弾丸で装甲を砕き、同じポイントへの二射目で救援要請を発するアンテナを貫徹してメインエンジンを破砕するよう銃撃を行うことで次々と敵機を沈黙のままに葬っていく。
あるいは接近戦では銃口を押し当てた接射の反動で、敵機を吹き飛ばしデブリに叩きつけて爆破する。
『敵機撃破。残数3』
残る機体はわずか。次――と振り返ったエルは、新兵へと襲いかかる3機のデルタ・ファイターを見た。
新兵相手に敵戦闘機は荷が重い相手。すぐにでも救援に向かわねば、と焦るエルとジンだが、彼らを見た敵戦闘機の挙動が明らかに正常でないことに気付く。
損傷していないにもかかわらずフラフラと蛇行し、機銃掃射の射線も安定しない敵機。それも、3機同時に。
――リダンの仕込んだトラップが、お守りとして各騎の腕に結わえた布に仕込まれた催眠術式が、パイロットたちの視覚を歪めたのだ。
「わ、ワイルドハントA分隊、エンゲージ!」
「B分隊、敵が来ました! 撃っていいですか、隊長!」
「C分隊、こっちにも来ましたけど……敵の攻撃が当たりません、負傷者なし!」
その報告に、エルは仲間の仕掛けに気づいて彼女らしいと思いながらも、雛鳥たちに攻撃許可を下す。
新人たちの咆哮とともに、宇宙に3つの炎の花が咲いた。
「――これで出てきた連中は全部、かな」
『肯定』
『近隣宙域に敵影なし』
『――一旦帰投し、補給を推奨します』
帰ってくる仲間たちの機影がただの一つも欠けていないことを確認して、ハウメアで待つリダンは吐息をひとつ。
「お守り、いいデザインだったでしょ?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミスト・ペルメオス
(WIZ)
かつての、そして今の英雄達のために…ッ!
自前の機械鎧を駆り、敵の艦載機部隊に対抗する。
空間戦闘こそ鎧装騎兵の本領。しかしそれは敵も同じこと。
専用デバイスを介して念動力を最大限に活用し、機体や武装の制御に利用する。
敵の思惑に乗せられないよう慎重な立ち回りを心掛け、フェイントを混ぜた回避機動やビームシールドおよびオーラによる防御で攻撃を凌ぐ。
そうして【バラージショット】、ビームアサルトライフルの速射や可変速ビームキャノン・対機動兵器モードの射撃により応戦。
苦しい戦いなのは承知の上だが、戦っているのは己だけではない。
共に戦線を張る猟兵達と共に、勝利を目指す。
※他の方々との共闘等、歓迎です
ユーノ・ディエール
失礼します、到着が遅れました。ユーノ・ディエールです。
記録は確認しております……
もう、あのような悲劇を再び起こしてはいけません。
全装備を合体、変形し騎乗。出撃します
武装は以下の通り
誘導弾のレーザー
ミサイルの一斉発射
連装ビームの2回攻撃
防御に念動力のフィールド
整備は完璧です。行きましょう
コールサインは任意で
カタパルト装着、カウント省略、発艦!
即席の騎兵隊でも歓迎します
敵は複数、単騎で暴れるよりは陣形を組んで確実に
私は先陣で敵を引き付けます
機動性と防御力はそれなりにありますから
迷彩で浸透後に奇襲、反転
敵集団を誘い込みますから
その両側から味方に始末して貰えれば幸いです
この戦争、負ける訳には行きません
●
「到着が遅れました、ユーノ・ディエールです」
グリモアベースに保管されていた、以前の猟兵たちによるハウメア調査作戦の記録を確認してからやってきたユーノ。
その胸中にあるのは、あのような悲劇を再び起こしてはならないという決意だ。そのために銀河帝国はここで叩かねばならないだろう。
「かつての英雄達の……そして今の、貴方達のためにぼくらは戦います」
共に立つミストもまた決意は同じく。ハウメアの格納庫から伸びるカタパルト上で、二人は出撃に備えていた。
「通信でごめんなさい、ハウメア艦長のパトリシア・マコーレイです。あなた方の援護に深く感謝を」
そしてもう一息、この戦線を突破するまで力を貸してほしい、という彼女の頼みに、ユーノとミストは力強く頷く。
「……ありがとう、貴方達猟兵には借りを作ってばかりですね」
マコーレイ艦長の自嘲するような声音にユーノはいいえ、と首を横に振った。
「貴方達の補給と整備のおかげで、私達は万全の状態でこの戦いに臨むことが出来る。直接矢面に立つことだけが戦争ではありません」
「そうです。船団の、艦隊の人々無くしてぼくらは帝国に勝つことは出来ないでしょう。借りや貸しではなく、一緒に戦うんです」
猟兵はユーベルコードという強力な力を持つが、その数は決して多いとは言えない。銀河帝国の圧倒的な物量に抗するためには、後方支援や戦線維持を担う彼ら解放軍艦隊の力も必要なのだ。
貸しや借りなどといった一方的な関係ではなく、共闘する仲間として助け合う。それは巡洋艦ハウメアだけでなくこの戦場に立つ全ての人々への想いでもあった。
「カタパルト装着、カウント省略……発艦!」
全ての武装を接続し、火力と機動力、防御力を強化したユーノのスタークルセイダーが、
「ブラックバード、ミスト・ペルメオス……出ます!」
対艦攻撃仕様の重武装に身を包んだミストのブラックバードがハウメアを飛び立つ。
その後方から、補給を終えたハウメア所属の艦載鎧装騎兵部隊が続く。
先の制空戦では損傷もなく、弾薬と推進剤の消耗も少なかった彼らはすぐさま再出撃の準備を終え、同じく対艦爆装を纏って二人に続く。
「――こ、こちらハウメア所属、ワイルドハント中隊! よろしくお願いします!」
まだ若い二人よりさらに幼い声に、この戦争がまさに宇宙の命運を賭けた総力戦なのだと再認識したふたり。
「よろしく、ワイルドハント中隊。敵の迎撃機はこちらで処理します、そちらは対艦攻撃に専念してください」
視線の先では、今まさに再び飛び立った艦載機がその機首をこちらに向けている。
「各騎ブレイク! クルセイダー、エンゲージ! 私が先行して敵をひきつけます。ブラックバード、そちらは敵機の数を減らしてください!」
「ブラックバード了解! 無理はしないでくださいよ、敵の数は多いんです。いつでも囮の役は交代しますよ!」
迷彩を展開し、増速して敵機の編隊に突入したユーノと、遅れて切り込むミスト。さらに遅れてワイルドハント中隊が続く。
敵編隊を突き抜け、後方に抜けてから迷彩を解除したユーノは、敵の編隊長機らしき機体に喰らいつき背後からミサイルの斉射を浴びせかける。
『――なんだ!? いつの間に背後に……くそ、ブレイク! ブレイク!! 振り切れない、脱出する!!』
瞬く間に火だるまとなり爆散した隊長機に動揺する帝国軍航空隊。
後方に取り付いたユーノと、正面から迫るミストたちのどちらを叩くべきか迷っているその隙を逃す猟兵ではない。
さらに放たれたホーミングレーザーと、ブラックバードのマシンキャノンが前後から敵機を襲ってそのいくらかをさらに撃墜した。
『――グリフォン02、編隊の指揮権を継承する! まずは後方に付く敵機を落とせ、前方の敵は対艦装備だ、どん亀は後でも叩ける!』
『――了解! マンティコア隊ならびにケルベロス隊、グリフォン隊の指揮下に入る!』
指揮官を含む複数の仲間を失ってなおすぐさま統率を取り戻し、狙いをユーノに定めて各個撃破を挑むその練度は流石に精鋭部隊ということか。
編隊単位での連携で複数の方向からユーノを追い、攻撃の網に絡め取っていく帝国軍航空隊。
「そうよ、もっと……もっと来なさい!」
回避しながらホーミングレーザーや連装ビーム砲で牽制を加えるユーノ。個としての機体性能ではスタークルセイダーがデルタ・ファイターを上回るが、一方で即席の編隊であるクルセイダーおよびブラックバード、ワイルドハント中隊に対して、敵部隊はずっと連携を取り続けてきた勝手知ったる僚機なのだ。
連携と練度の差が性能差を埋め、ユーノと帝国軍航空隊は互角の勝負となる。
『――全機高速航行モードを起動! 一気に決着を付けるぞ! 帝国軍の栄光のために。皇帝陛下万歳!』
そして、戦局が動く。
一気に加速し、攻撃の密度を増した航空隊の前に、念動フィールドで防げこそするものの被弾の増えていくユーノ。
「くっ……急に動きが良くなったわね……でも、加速した分機動が直線的よ!」
それは予想外ながらも彼女たちにとって都合のいい展開だった。被弾を顧みず急減速し、猛烈なGに耐えて反転するユーノ。眼前にはまっすぐ迫る敵の戦闘機部隊、そしてさらにその後方に――
「敵部隊、射線上に入りました。全武装斉射の後突入します、クルセイダー、目立つ役はそろそろ交代の時間ですよ!」
ぴたりと敵編隊の背後に回ったブラックバード。二機の猟兵による挟撃は、高速航行モードの敵戦闘機を次々と撃ち落とす。
そして、すれ違いざまに目配せをしてポジションを入れ替わる二人。
被弾したユーノは空母攻撃に向かう味方騎の護衛に回り、ミストが残敵の掃討へと加わっていく。
デルタ・ファイターの毎分6000発以上に及ぶ機銃の発射速度は脅威だが、念動力で機体制御を補助するブラックバードの有機的な機動を捕らえることは困難。
さらに高速航行モードの負荷がパイロットを蝕み、やむなく速度を落とさざるを得ない彼らにとって、もはやミストを撃墜することは至難の技となった。
フェイントを交えた機動に追随できずドッグファイトを脱落した機体から順に、ビームアサルトライフルや高速ビームキャノンによる反撃が襲いかかり撃墜されていく。
『マンティコア01、限界だ、離だ――』
『マンティコア01が墜ちた!! 野郎、なんて機動を……うわぁッ!!』
次々と数が減っていく僚機に、帝国軍の動揺は頂点へと至った。
『グリフォン02より各機、何機生き残った! ――何機生き残ったんだ! 誰か返事を……』
まさか、もう誰も残っていないのか。
その考えたくはない事実に気づき、動揺し、そしてミストとのドッグファイトの外に意識を向けてしまった敵の編隊長。
「――捉えた」
その一瞬を逃さず、減速して追い抜かせて後方に躍り出たミストの銃が敵機のエンジンを蜂の巣にして爆散させた。
「ブラックバードより全騎、護衛戦闘機はこれで全部落としたはずです。予定通り対艦攻撃に移りましょう」
「クルセイダー了解、こちらも脱落騎なしです。見事でした、ブラックバード」
そちらこそ、と互いの健闘を称え合いながら敵空母に肉薄する部隊は、射程にその巨体を捉え次第すぐさま攻撃に移行する。
無数のレーザーが、ビームが、ミサイルが迎撃機銃を破壊し、防空網に空いた穴に中隊騎がここまで大事に抱えてきた大型の対艦ミサイルを叩き込む。
巨大な爆発が複数箇所で巻き起こり、敵の空母が煙を吐き出しながら揺らいでいく。
「――やった! やったぞ!!」
喜ぶ少年兵たちだが、猟兵の二人にはわかっていた。
「まだ、ね……」
「はい。ですがもう残弾僅かです、あとは直接突入したチームに託しましょう」
損傷した空母だが、その機能の中枢はまだ死んでいない。しかし、
――あとは、仲間たちに任せるほかはない。
二人は歓声を上げる新兵たちを引き連れ、母艦へと撤退していくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
村崎・ゆかり
大物は相手の腹に入ってうちから潰すのが定番よね。
そうして、この空母も沈めましょうか。
ふん、いるわね、過去の亡霊たち。
「先制攻撃」。七星七縛符を「高速詠唱」「全力魔法」「2回攻撃」で、そこに「呪詛」を乗せて戦力を封じる。
射程に入れられたら巫覡載霊の舞で反撃。「なぎ払い」、「破魔」の「衝撃波」をばらまいて、とどめに「串刺し」よ。
艦載機、どれだけいるのかしら?
艦載機の撃破が終わったら、艦のコアを破壊に向かいましょ。
敵の数は多いけど、巫覡載霊の舞で「なぎ払い」ながら、敵が防御を固めている方へ進むわ。
空母のコア!
この薙刀で「串刺し」にしてあげる!
この艦を落とすことで、解放の狼煙を宇宙全体に伝えましょう!
フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室で参加】
旅団メンバーと連携を取っていくわ!
戦争なんて大事になってきたわね!
とにかくあのでっかい船の中にある鉄屑(戦闘機)を壊して
その後船を壊せばいいのよね?
ここは私達にどーーんと任せておけばいいわ!
まず帝国空母に降り立って真正面から戦闘機の破壊を目標とするわ!
ってこいつどうやって動いてるのよ!ミラクルだわ!
とりあえず「ダッシュ」を使って動き回って「属性攻撃」で
ちょこまかと打ち落としていこうかしら!
むしろ空母破壊の方に力をいれたいわね!
派手に好きに暴れれるこの場こそ私のステージよ!
「全力魔法」込みでUCを使って外から思う様派手に爆発させてやるわ!
(アレンジ、アドリブ等など大歓迎)
イデアール・モラクス
【PPP開発室で参加】
クク…敵が強大であればあるほど滾る、それが我ら魔女という生き物!
さぁやるぞフィーナ、銀河帝国を我らの魔術で焼き尽くすのだ!
・行動
フィーナと共に強力な魔法で敵を殲滅する。
「魔女の狂宴と洒落込むか!」
『全力魔法』で威力を増し、『属性攻撃』で炎を纏わせ『範囲攻撃』で多数の敵を巻き込む程に巨大化させて【隕石招来】を『高速詠唱』で連続発射。
「アッハッハ!躱したら空母に穴が空いちまうぞぉ?」
隕石の着弾地点は吹き飛ぶだろうがどうせ空母を落とすのだから問題はない、一切の容赦なく巨大隕石で戦闘機も空母も破壊し尽くしてやる。
「楽しいなぁ、戦争は最高だなぁ!アーハッハッハ!」
※アドリブ歓迎
●
「大物は相手の腹に入って内から潰すのが定番よね」
ドック内部での空戦を仲間たちに任せ、宇宙空母の急所――すなわち、この世界の艦艇の心臓そのものであるコアマシンが収められたコアマシンルームを目指して進撃するゆかり。
敵の抵抗が激しくなる方向へと突き進めば、それはつまりコアマシンに限らず進んでほしくない何かがある場所に近づいているという証明だろう。
ブリッジであれメインエンジンであれ、行きがけの駄賃がわりに潰すのも悪くない。
――悪くないのだが、同行者の強すぎる個性にゆかりはこめかみを抑える。
「とにかくさっきからびゅんびゅんうっさいあの鉄くずを壊して、その後船を壊せばいいのよね? ここは私達にどーんと任せておけばいいわ!!」
「クク……敵が強大であればあるほど滾る、それが我ら魔女という生き物! さあやるぞフィーナ、銀河帝国を我らの魔術で焼き尽くすのだ!」
語彙力がちょっと残念そうな赤い衣装の火炎の魔女ことフィーナと、出会う戦闘機を片端から無駄にヌトヌトした触手やなんやとアレげなナニを召喚して制圧する赤い衣装の邪気あふれる魔女ことイデアール。
「どっちも赤いわね……小さい魔女と大きい魔女、かしら」
「ちょっと!! 誰が小さいのよ誰がーっ!!」
「ククク……事実なのだからそう噛み付くなフィーナ」
さておき、そんなクセだらけの一行はそれでいて攻撃力に長けたパーティである。
『第107警邏飛行隊、侵入者を発け――』
「今取り込み中なのよ!!」
哀れ、飛来した敵のデルタ・ファイターはダッシュで距離を詰めたフィーナの爆裂魔法が直撃しバランスを崩したところにゆかりの七星七縛符で機能を停止させられ、イデアールの呼んだ触手や筋骨たくましい男たちによってパイロットを引きずり出されていく。
『う、うわぁぁぁぁー!? メーデーメーデー、救援を要請する――!』
敵兵の必死の叫びがどんどん遠ざかっていく。その後彼らがどうなったかなど、ちょっと考えたくないわねとゆかりはすっぱり第107警邏飛行隊の面々のことを記憶から消し去った。
「それにしてもこれで何度目の接敵かしら。艦載機、どれだけ居るのよ」
やれやれと収まる気配のない戦闘にそろそろ疲労を感じ始めるゆかりに、
「これどうやって動いてるのかしら、ミラクルだわ!」
珍しく爆発魔法で木っ端微塵になることなく損傷軽微で墜落したデルタ・ファイターを杖でごんごんと叩いて回るフィーナと、
「なあ、さっきの連中追い掛けて様子を見に行かないか?」
「「嫌よ!!」」
107飛行隊のパイロットたちを追いかけようと提案して速攻で二人から却下をくらうイデアール。
そんな三人も、それから遠からずして目的地へとたどり着いた。
――結局、一人で107飛行隊を追い掛けていったイデアールを連れ戻そうとさらに追い掛けた結果というのがなんともいい難いが。
「コアマシンルーム、ようやく見つけたわね」
「こあま……? なんだかわかんないけど、これだけ守りを固めているってことは大事なものなのね! わかったわ、吹っ飛ばすわよ!!」
「なあ、さっきの連中追い掛けて」
「「後にしなさいよ!!」」
ともあれ、頑丈な隔壁に守られたコアマシンルーム、扉の前には滞空する敵戦闘機部隊。
これがこの空母での最後の戦いとなるだろう。その予感に、三人は身構える。
『こちら第201警邏飛行隊、コアマシンルーム防衛のため戦闘に入る! 至急応援を送られたし!』
仲間を呼んだ敵戦闘機。それを速やかに排除して、増援が来る前にコアマシンを破壊する。時間制限付きの戦いだが、三人にとっては容易いものだ。
「ここが正念場ね。あと一息頑張るわよ!」
神霊体へと変身し、薙刀を構える本気のゆかり。彼女が駆け出し、薙刀を振るえば放たれた衝撃波で敵の戦闘機はぐるぐると回転させられ、コックピット内で撹拌されたパイロットが感覚を取り戻す前に跳躍し肉薄したゆかりの一撃がキャノピーを貫きパイロットを斃す。
「――へんな触手にやられなかっただけ幸せだと思いなさい!」
107の末路を知る者にとって、その一撃で終わらせる攻撃は慈悲深いものだ。惜しむらくは、此処を守る201飛行隊は彼らの最期を知らないのだが。
「最近追い掛けられてばっかりな気がするわ!!」
全力ダッシュで猛追する敵編隊の機銃掃射を躱すのはフィーナだ。連射性の高い火炎魔法は威力も優れ、帝国兵にとってわかりやすいほどに「対空砲」としての役割を果たしてそのように認識された彼女。
いつの間にか自身の脅威度がやたら高く設定されていることなど露とも知らない彼女にとって、何故か理不尽なまでに自分ばかり追い回されているように感じるのは仕方のないことだろう。
「もーっ!! なんでよ!? あっち行きなさいよあっち!!」
たまたま進路上に立っていたイデアールを指差し、走る自分より棒立ちのあっちに行けと帝国兵に説教かますフィーナと指差されてドヤ顔でセクシーポーズをキメるイデアール。
そんなことやっている間に軸線を合わせられ、機銃掃射が襲いかかってくるのをずべしゃーっと顔面スライディングでやり過ごし、埃だらけで起き上がるフィーナ。その顔は怒りで真っ赤に染まっている。
「あー! もーッ! 消し飛べえええええええ!!」
怒りの籠もった爆裂魔法"的なやつ"が、旋回して再度攻撃体勢に入った敵の編隊を木っ端微塵に粉砕した。
『――全機一旦離脱、防衛目標前で編隊を再編するぞ!』
二人の猛攻で次々と撃墜されていく僚機にただ事ではないと判断した飛行隊が、コアマシンルームの隔壁の前まで逃げていく。
一斉攻撃で各個撃破、それしかない。帝国軍パイロットたちはそう確認し、では誰から狙うかを通信で協議する。
その前にずい、と歩み出るイデアール。
「ククク……魔女の狂宴へようこそ、帝国軍の諸君!」
私は魔女じゃないんだけど、というゆかりのツッコミは届かない。
「早速で何だが、我招く無窮の厄災に慈悲は無く、汝に救いと希望の一切も無し……」
ほんと唐突に詠唱始めたわね!? というフィーナのツッコミも届かない。
「メテオストライク!! アッハッハ! 躱してみろ、大事な空母に穴が空いちまうぞぉ?」
展開された魔法陣から召喚された巨大な隕石が、猛烈な勢いで隔壁めがけて射出された。
どっちが悪役かわからないわね、ともはやツッコミを諦めた二人がぼやく。
一方で帝国軍は必死だ。重要施設であるコアマシンを破壊されれば、空母の機能は失われ、まさしく轟沈といって過言ではない状況に陥ってしまう。
『全機踏みとどまれ、一斉攻撃で隕石を破砕するんだ!!』
懸命な機銃の攻撃が隕石を砕くが、しかしそれも表面を剥がす程度の効果しかもたらさない。
『だ、駄目だ……散開、散開――』
『ま、間に合いません! 隊長っ……!!』
隕石と隔壁がデルタ・ファイターの群れを押しつぶし、衝突の衝撃とファイターの誘爆で隔壁がコアマシンルーム内へと吹き飛ばされた。
「楽しいなァ……戦争は最高だなァ……! ククク、アハハハ、アーッハッハッハッハ!!」
もうどっちが悪役なのかわからないくらい見事な三段笑いを披露しながら隔壁の残骸を踏み越えコアマシンルームへ押し入るイデアールと、しばし唖然としながらも急ぎそれに続くゆかりとフィーナ。
「あなたね、ああいうマトモな攻撃が出来るんなら最初からやりなさいよ!」
「まったくだわ! さっきだって変なポーズキメてる暇があるならあのでっかい石でずがーんってするやつで助けてくれればよかったのに!!」
「ああいうものは此処一番で使うからいいんだろう。それよりさっさと終わらせて帰るぞ」
ひとしきり高笑いして満足したのか、真剣な表情で杖を構えるイデアール。
「そうね……ここのは全部吹き飛ばしていいのよね!?」
ド派手に魔法を撃ちまくれるとあって、テンションが上がるのを隠せないフィーナ。
「ええ、この艦を落とすことで、解放の狼煙を全宇宙に伝えましょう!」
薙刀を構え、コアマシンを見据えるゆかり。
三人の全力攻撃が巨大空母のコアを貫き、打ち砕いて戦いの終わりを齎した。
ドックで戦闘中の帝国軍飛行隊は、突如電力の供給が断たれ暗黒に閉ざされた中でクレーンやコンテナに衝突して次々と墜落していった。
出撃口を突破しようとする者たちは、非常事態に伴い自動で緊急閉鎖していく隔壁へと突っ込んで、星の海へと飛び立つことなく散っていく。
そしてさらなる敵増援が断たれたことで、外では再出撃した猟兵や艦載鎧装騎兵たち、そして空母を射程に収めた巡洋艦ハウメアの一斉攻撃が巨大空母を徐々に粉砕している。
「この振動、派手な花火になるわね。撤収するわよ」
内外での爆発による振動を感じ取り、急ぎ引き上げるゆかり達。
「花火! 再転送で見に来れるかしら!!」
これだけの巨大な船が爆発するならどれほどのものなのだろう、と期待するフィーナ。
「なあ、さっきの連中……はもういいか。私も十分楽しんだ、帰るとしよう!」
――この日、猟兵たちと"解放軍"巡洋艦ハウメアの共同作戦により、銀河帝国が誇る巨大空母の一隻が撃沈された。
それは大艦隊同士が激突する一連の戦いにおいて、「たった一隻」の空母を撃破しただけのことではある。
だが、その爆発を見たハウメアの乗員たちは確かに確信した。
――時代は変わる。自分たちは猟兵たちと共に戦うことできっと勝利できる。銀河帝国はもはや抗えない絶対的な支配者ではないのだ、と。
その意味は、空母一隻撃沈という数字以上に、大きな意味をきっと人々の心に齎したはずだ。
大成功
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