蓋然性エクスプロージョン
●ヴォーテックス・シティ
悪徳の都。
悪と狂気のキング・オブ・キングス『ヴォーテックス一族』が支配する巨大都市である。
かつてこの世界にあったという大都市ニューヨークをさらに二倍にした面積を持ち、都市の残骸や無数の重機、巨獣の骨や巨大洞窟が複雑に組み合わさった魔境。
『骸骨と渦巻』の紋章が掲げられたヴォーテックス・シティには世界各地のキング……即ちオブリビオンたちから大量の物資や奴隷が上納されている。
それも連日連夜である。
電飾と篝火で夜であっても昼のように明るいこの街で暴虐と快楽に浸るレイダーたち。
彼らにまともな倫理観はない。
あるのは己の欲求を満たすための感情だけである。
「人間狩りの準備を進めロ。我らがキング・オブ・キングス『ヴォーテックス一族』のために、ベースを襲うのダ」
禁忌のテクノロジーによって肉体を機械化した『サイバーレイダー』が巨大な鋼鉄の鎚を振るい上げる。
全てが機械の体。
生命維持のために食料なども必要ない。けれど、彼らは奪う。
奪うことこそが己の欲求を満たすことであると知るからこそ、彼らは明日を望む滅びた世界に生きる人間たちを襲うのだ。
「我々は奪う者。奪われる弱者がいるかぎり、我々は滅びない。『ヴォーテックス一族』のためニ!」
電飾が明滅し、『サイバレイダー』と配下のオブリビオン、改造屍人『ナブラヘッド』が吠えたける。
彼らは一度は滅びた存在。
けれど、死した後でも誰かを傷つけずには居られない存在。
続々と彼らは人間狩りの準備を始める。人狩りバギーや虐殺戦車の整備を始める。号令がかかれば、忠実なる彼らは『拠点(ベース)』へと向かう。
その先にあるのが悲哀に満ちた弱者の悲鳴であったのだとしても、彼らを止める者はいない。いないのだ。
そう、この瞬間までは――。
●エクスプロージョン・ブラスト
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はアポカリプスヘル、かの荒廃した世界に存在するオブリビオン、レイダー達の中でも上位とされる『ヴォーテックス一族』が支配する悪徳の都にて企てられる『人間狩り』を未然に防いで頂きたいのです」
ナイアルテの瞳が爛々と輝いている。
言うまでもなくアポカリプスヘルはオブリビオンに人類が敗北した世界である。
文明は荒廃し、人々は『拠点(ベース)』に籠もり、物資を分け合いながら細々と暮らすしかない。
オブリビオン化したレイダーたちの蹴撃はこれまでも何度もあった。
だが、『ヴォーテックス一族』に連なるレイダー達はこれまでのレイダー達とは、一線を画する実力を持っている。
「彼らは『人間狩り』を行うために人狩りバギーや虐殺戦車を用いて、『拠点(ベース)』を襲います。もしも、これらが存在していれば、拠点に住まう人々は奴隷……そうでなくてもいたずらに殺されてしまうことでしょう」
そうなってはならぬとナイアルテの瞳が言っている。
だが、それだけの物資を持つ相手にまともに戦うことはできない。悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』はオブリビオンであるレイダーたちの巣窟である。
下手に乗り込めば、猟兵と言えど包囲されて倒されてしまう。
だからこそ、とナイアルテの手には小型の起爆装置があった。
「これを複数お渡ししておきます。小型の爆弾……ですが、威力は十分です。これを人狩りマシンに密かに設置し、爆破して下さい」
すでにナイアルテは『ヴォーテックス・シティ』における人狩りに参加するレイダーたちが集まる場所を把握しているようだった。
「私が予知で見たのは、巨大な重機……人狩りマシンが多数格納されている工場跡地のような場所です。廃工場を改造したレイダーたちの基地、あるいは酒場といった雰囲気があります」
そこへ猟兵たちはレイダーとして侵入し、もしくは他の手段によって人狩りマシンに爆弾を設置していかねばならない。
「爆破した後には、この人狩りに参加するレイダーたちの指揮官であるレイダー・キング……『サイバー・レイダー』との戦いになります」
此処まではいい。
けれど、レイダー・キングである『サイバー・レイダー』との戦いは迅速に行わなければならない。
此処がオブリビオン、レイダーたちが無数に集まる場所であるからだ。
爆弾の爆炎と爆発によって『サイバー・レイダー』と配下レイダーたちは分断されている。この機を逃すわけには行かない。
「レイダー・キングの打倒後は、脱出です。『ヴォーテックス・シティ』のあちこちから、バイクや戦車に乗ったレイダーたちが無数に湧いてできてきます……これを全滅させることは難しいですので、皆さんは彼らを蹴散らしながら、都市の外へと脱出してください」
再び頭を下げるナイアルテ。
猟兵達がこなさなければならないのは、潜入と人狩りマシンの破壊、レイダー・キングの撃破、そして脱出だ。
やらなければならないことは多く、困難な事件であることは言うまでもない。
けれど、とナイアルテの瞳が輝く。
「やっていただきたいのです。人狩りによって『拠点(ベース)』が襲われれば、泣くのはいつだって弱者です。文明復興の兆しは未だ遥か遠く。けれど、その一歩を奪われるわけにはいかないのです。理不尽に抗う力がないのであれば」
己達がやるほかないのだと、ナイアルテは猟兵たちを見送るのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアポカリプスヘルにおける『ヴォーテックス・シティ』において、人狩りの計画を進めるレイダー・キングの目論見を打ち破り、その脅威を未然に防ぐシナリオになります。
●第一章
冒険です。
『ヴォーテックス・シティ』にある人狩りに参加するレイダー達が集まる廃工場後を改造した酒場ないし、基地にレイダーの一人として侵入し、人狩りマシンに爆弾を仕掛けましょう。
レイダーとして侵入しても良いですし、そもそも見つかること無く隠密にそれを行ってもいいでしょう。
●第二章
ボス戦です。
仕掛けた爆弾が爆発し、人狩りの基地そのものが爆炎に包まれています。
怒り心頭のレイダー・キング『サイバー・レイダー』との戦いとなります。爆炎に囲まれての戦いですが、『サイバー・レイダー』とその配下は分断されており、『サイバー・レイダー』を倒すには絶好の機会です。
ただ、爆炎が収まってしまうと配下レイダーが無限になだれ込んで来る上に、足元が崩れたり、廃工場事態が崩壊してきたりと危険極まりない環境です。
素早く倒さねばならないでしょう。
●第三章
集団戦です。
レイダー・キングである『サイバー・レイダー』を打倒した後、皆さんは各々のマシンや、そこらに転がっているマシンを使って脱出しなければなりません。
ただし、レイダーたちがシティ中から追いかけてきます。
これらを蹴散らしながら、『ヴォーテックス・シティ』の外まで脱出しなければなりません。
それでは懸命に生きる人々をあざ笑うかのように人狩りに興じようとしているレイダーたちを打倒し、起こり得たかもしれない悲劇を未然に防ぐため、『ヴォーテックス・シティ』を爆炎に包み込みましょう。
皆様の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『人狩りマシンに爆弾を』
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POW : 喧嘩騒ぎを起こすなどして注意をそらしている隙に、他の誰かに爆弾を仕掛けてもらう
SPD : レイダー達に見つからないように隠密行動を行い、秘密裏に爆弾を仕掛ける
WIZ : 怪しまれないように他のレイダー達から情報を得て、効率的に爆弾を仕掛ける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』には、今日もまた人狩りによって連れてこられた奴隷たちがいる。
しかし、それで事足るということは決して無い。
なぜなら、『ヴォーテックス・シティ』に置いて奴隷たちは消耗品であるからだ。
時に享楽のために。
時に娯楽のために。
時に理不尽に。
人の生命を生命とも思わぬ所業にて、消耗されていく。殺されていく。
「明日もまた人狩りに出ル。マシンの準備を怠るナ」
レイダー・キング『サイバー・レイダー』は電子音の声を配下レイダーたちに告げる。
彼らはこの『ヴォーテックス・シティ』において、人狩りを効率的に行う非常に優れたマンハンターたちであった。彼らは『拠点(ベース)』を襲い、人々を無差別に拐って来る。
そうして、拐われて来た人々に明日はない。
彼らにとって、人間は生命ではない。ただの物資と同じであった。
「おい、虐殺戦車の調子はどうなっていル」
「ギア部に人骨の破片が詰まっているため、整備中です――」
「明日にもまた人狩りに出ル。問題がないようにしロ」
人狩りを行うレイダーたちの基地である、廃工場後は今や無数の人狩りマシンが存在し、同時にレイダーたちのたまり場となっていた。
しかし、彼らは余念がない。
人を狩ることは、己達の至上命題であるというように、明日の人狩りの準備を進めていく。
明日が来ればまた、『拠点』に人々の悲鳴が上がるだろう。
理不尽に泣く子がいるかもしれない。
親を、子を奪われた者たちの悲哀が満ちて、そして諦観へと堕ちていく。
だが、それを許せぬ者たちがいることを彼らは知らない。
常に狩る側であった己たちが、今さに喉元に滅びの切っ先を向けられていることを――。
月夜・玲
ええ!?
今日はコスプレ大会しても良いのか!?
あ、いやでもダサいなあ…レイダーっぽい衣装…
ほら、カルロスくんダサかったし…
●
レイダーとして酒場に乗り込もう
何かこう、肩パッドが付いてて銀のトゲトゲが各所に付いてる感じのレザー装備と顔に何か前衛芸術的なエンブレム描いて『変装』して
見てて良かったカルロス・ファッションショー!
あとは語尾にヒャッハーって付ければ完璧じゃない?
新顔だがよろしくヒャッハー!
マスター!お近づきの印にこの酒場全員に一杯オゴリだヒャッハー!
請求書はうえさまでよろしくヒャッハー!
こうして酒場を騒がせて、レイダーからマシンの場所を聞き取り
そしてわちゃわちゃしてる間に爆弾セットしよ
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』において物資とは、備蓄するものはなく浪費するものである。
アポカリプスヘルの『拠点(ベース)』に住まう人々にとって、何週間にも及んで使うことのできる電力を『ヴォーテックス・シティ』に住まうレイダーたちは一晩の内に消費する。
それは明滅する電飾を見ればわかるだろう。
彼らオブリビオンにとって物資は生命維持に必要なものではない。電力だってそうだ。必要ないのだ。
けれど、彼らは浪費を繰り返す。
己たちの欲求を満たすためだけに、貴重な物資を食いつぶし、人ですらモノと同じなのである。
そんな『ヴォーテックス・シティ』の一角、人狩りを行うレイダーたちの基地である廃工場痕は、今や酒場のような様相になっており、無数のレイダーたちが出入りしている。
レイダー・キングである『サイバー・レイダー』の元、配下たちが人狩りマシンの整備をしている横目にレイダーたちは酒盛りを始め、連日に及ぶ残虐なる行いからか、悦に入っていた。
そんな中、一人の女性レイダーが酒場のようになった廃工場後へと入ってくる。
「新顔だがよろしくヒャッハー!」
一瞬、ときが止まったかのような静寂が訪れる。
女性レイダーは真顔であるが、内心はスベってしまったかな、という気持ちが去来していたことだろう。
だが、そんなことは気にしていられないのだ。
なんかこう、肩パッドが付いてて銀のトゲトゲが買う書についてる感じのレザージャケットと顔になんか前衛芸術的なエンブレムを描いて変装した月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。
正直似合ってはいない。
玲本人も、ダサいなぁって思っていた。
けれど、やらねばならぬことをしっかりやるのだ。
普段の格好の方が絶対いい。これは間違いないことであるが、玲は参考にした人物が非常にアレであったことをちょっぴり後悔したかもしれない。
「語尾にヒャッハーってつければ完璧じゃないって思ったの誰だ。私だ……!」
ヒャッハーはよくなかったかもしれない。
いくらなんでもテンション高すぎである。
もう、色んな意味で破綻しそうである。だって、そもそも玲さん事態が『ええ!? 今日はコスプレ大会してもいいのか!?』という具合の感じであったからである。
いいぞ、これまでの分も含めてコスプレショーを遠慮なくしていい……。
となんとかやっていたからこそ、この地獄の間である。
でも、ほんとダサい。
参考元のカルロスくんがダサかったのが敗因である。
だがしかし。
「「「ヒャッハー! ウェルカムようこそ新入り!!」」」
まさかの大歓迎である。
あの地獄の間はなんだったのか。一気にウェルカムでホットな歓迎ムードで玲は迎え入れられる。
嘘だろ。
「マスター! お近づきの印にこの酒場全員に一杯オゴリだヒャッハー!」
「おおー!! 太い腹! 太っ腹ー! ヒャハー!」
「のめのめー! 請求書はうえさまでよろしくヒャッハー!」
もう大騒ぎである。
領収書を切らせるあたりが、玲さんである。後でグリモア猟兵が領収書受け取って頭を悩ませてしまったが、それはまあ些細なことである。
宴もたけなわである。
あちこちでどんちゃん騒ぎが巻き起こり、普段ならば絶対しないような人狩りマシンに乗ったり、虹色のキラキラが出たりと、こう、いかにもな世紀末の影で玲はしれっと手にした爆弾をセットし続ける。
「おい、新入り! こっちこい! まだまだ呑むぜー! ヒャッハー!」
「おっと……どんどん飲んじゃおうか! あ、それ、いっき! いっき! ヒャッハー!」
玲は怪しまれることなく、次々とどんちゃん騒ぎのように格納庫である人狩りマシンの基地で、目的を達成していく。
正直、ちょっとこれ楽しんでるなと言うう雰囲気もあったが気の所為だ。
気のせいだ。
二度言うが、気のせいだ。
「酔っても仕事はちゃんとする……あー、見てて良かったカルロス・ファッションショー!」
レイダーの格好をしていなかったら、ただのやべー奴に成り下がるところであった。
玲はどこかの世界のもう滅んだカルロスくんの嘗ての雄姿を思い出したり……することもなく、アポカリプスヘルにおけるレイダーたちの人狩りを阻むべく、どんちゃん騒ぎを続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
人類がオブリビオンに敗北した世界と言っても、ダークセイヴァーとは全然違うわね。
あっちはヴァンパイアが領主になって一応の秩序はあったけど、ここにはそれさえ無い。ここのオブリビオンには美学が欠けているわ。
ま、ヴァンプを褒め称えたいわけでも無し、仕事を始めましょ。
「式神使い」で黒鴉召喚。
呼び出した式たちに爆弾を持たせて、レイダーたちの拠点へ運ばせるわ。
感覚を式と同調させて、人狩りマシンを発見次第、エンジン部や操縦席に爆弾を設置していく。
これで後は起爆時間まで待機ね。
念のため、敵の編成やリーダーのサイバー・レイダーの情報も収集しておきましょ。
「目立たない」ように拠点の側まで移動して、その時刻を待つ。
黒き竜巻『オブリビオンストーム』によってアポカリプスヘルは文明が荒廃した世界である。
そこにはあらゆるものがオブリビオンへと変貌する可能性を秘めており、同時に悲劇に満ち溢れていた。
人間狩りもまたそれと同じである。
オブリビオン化したレイダーたちにとって人間とは即ち物資と同じである。
己達の享楽を満たすためだけに浪費される存在なのだからこそ、非人道的な行いであったとしても、良心が痛むことはないのだ。
「人類がオブリビオンに敗北した世界と言っても、ダークセイヴァーとは全然違うわね」
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』において、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は夜であっても昼のように煌々と明かりが灯された街中を見て呟いた。
ダークセイヴァーとは真逆である。
常闇の世界であるダークセイヴァーでは考えられぬほどの電飾の輝きと篝火、そして、無秩序。
「あっちはヴァンパイアが領主となって一応の秩序はあったけど、ここにはそれさえ無い。ここのオブリビオンには美学が欠けているわ」
そうゆかりは感じた。
けれど、どちらにしても人間が、人々の生命が軽んじられているのであれば、それは猟兵であるゆかりにとっては、打破しなければならない状況である。
ヴァンパイアを褒め称えたいわけでもない。
「急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!」
黒鴉召喚(コクアショウカン)によってカラスに似た鳥形の式神を召喚し、ゆかりは転移する前に支給されている爆弾を運ばせる。
すでにレイダーたちが人狩りに使うマシンを格納している場所が予知によってわかっていたことは最ウィアであった。
自身と五感を共有するカラスの式神は空を飛ぶ。
この悪徳の都においてカラスとは珍しいものではない。
享楽と欲望の果てに浪費された人々の骸をついばむ姿だってあるのだ。それを考えれば、ゆかりの取った行動は最適解であったのかもしれない。
「かなりの数のマシンを用意しているのね……『拠点(ベース)』を襲うにしたって過剰でしょう、これは」
人々は『拠点』に隠れ、籠もって生活している。
だからこそ、抵抗する力もあまりないであろうに、けれど、レイダーたちは過剰なる力でもって彼らを襲おうとしている。
それは結局の所、狩りを楽しむようなものであるのだろう。
彼らは命令に忠実に人間狩りを行っているのだろうが、結局の所、狩りを楽しむという人間的な本能には抗えないのだろう。
「趣味の悪いマシンばかりだこと」
ゆかりにとって、それは最早どうでもいいことだった。
迅速に爆弾をエンジンや操縦席に設置していく。
ここまで設置できたのであれば、後は起爆時間まで待機していればいい。
「けど、それまでの間、此処で隠れているっていうのも芸が無いでしょう」
式神使いたるゆかりの本領の発揮である。
カラスの式神がレイダー・キングである『サイバー・レイダー』の姿や、その配下たちを瞳に写していく。
レイダー・キングと呼ばれる実力は、言うだけのことがある。
式神を通しても感じる重圧。
確かに配下たちの助けがあれば、猟兵達であっても手こずるかもしれない。
人狩りマシンの爆破は、彼と配下を引き離すという意味でも有効なものであった。
爆炎によって分断されたレイダー・キングを打倒し、後は逃げおおせるだけ。
ゆかりは、静かに息を殺しながら、爆弾が起爆する時間までやり過ごすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
ちょっくらマシンの整備してくる
明日が初めての襲撃だからよ。楽しみで眠れないんだ
反吐が出そうだが仕方がない、明日の奴らの吠え面を楽しみにしよう
SPDで判定
1人でいる敵を銀腕を【武器改造】したナイフで【不意打ち】【暗殺】して服を奪い【変装】
そのまま敵の【演技】をし【暗視】【視力】【聞き耳】などでマシンの場所を【情報収集】
マシンの整備に行ってくると周りを【言いくるめ】隠し持っていた装置を取り付ける
整備道具とか持っていれば見咎められる事もないだろう
演技するだけでも反吐が出そうだが、生者の為と素早く行動する
時に人は目的のためには己の流儀を曲げねばならぬこともあるだろう。
例え、それが吐き気を催すようなことであったとしても、目的を達成するために必要なものであるのだから。
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は、それができると信じる猟兵であった。
その場を取り繕う偽りの言葉であったとしても、それを口にすることは彼の精神を追い込むことであった。
「ちょっくらマシンの整備してくる。明日が初めての蹴撃だからよ。楽しみで眠れないんだ」
そんなふうに彼はレイダーに扮した姿で『人間狩り』を行うレイダーたちの集まる廃工場痕の整備場でレイダーたちに声をかける。
その手には転移する前に預かった爆弾を入れた整備道具を入れる箱があった。
どこに行くんだとレイダーたちに声を掛けられたが故に、取り繕う言葉であったが、ルイスは己がそれを口にすることに抵抗感を覚えた。
しかし、その抵抗感すら飲み込む。
反吐が出そうであるが、レイダーたちの吠え面を楽しみにするしかない。
今は己が抱く抵抗感など伏せて置くべきである。
「そうか、なら、あっちのマシンの調子も頼むぜ」
そんなふうにレイダー達が怪しむ様子もなくルイスを見送る。
すでにルイスは一人のレイダーを物陰にて、銀の腕を変形させたナイフで葬り去っている。
彼が扮しているレイダーの服装も、そこから剥ぎ取ったものだ。
「……ああ、任しておいてくれ」
ルイスはレイダーたちと別れ、人刈りマシン……バギーや戦車と言ったマシンの前に立つ。
確かに戦力の整っていない『拠点(ベース)』であれば、これだけのマシンだ。一方的な略奪を行うには十分であろう。
彼らはオブリビオン化したレイダーである。
本来であれば物資を得る必要など無い。食事を必要としない。そんなものがなくとも生きていくことはできる。
けれど、奪う。
略奪するのだ。人の尊厳すらも踏みにじって、奪い去っていく。
それは己の楽しみのためである。『人間狩り』とはよく言ったものである。彼らにとってそれは、娯楽の一つでしかない。
「……反吐が出る。演技するだけでもな」
けれど、生者の為である。
己はデッドマンである。不死身であるが、決して生者であるとは言えない。
そんな己であるからこそできることがある。
生者のために奪う者達を駆逐する。それがルイスに課せられた使命であろう。
「生者の為だ……見ていろ」
ルイスは次々と爆弾を人狩りマシンへと設置していく。
この人狩りを行うレイダー達の集まる廃工場痕は、もはや酒場とかしていた。あちらこちらから、どんちゃん騒ぎが聞こえてくる。
他の猟兵達がうまく気を引きつけてくれている。
だからこそ、ルイスは素早く行動する。
一人でも多くを救うために。今できることをルイスは懸命に行うしかない。
そうすることで、生者の盾であることを誇れるようにと――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「人間狩り等とふざけた事を。
今すぐ潰してやりたいのは山々だけど。
物事には順番と言うものがある。」
と手にした爆弾を確かめながら。
死霊縋纏で先行偵察を行い。
内部構造を把握。
内部では【地形の利用】をしつつ
潜伏、潜入。
物陰に隠れ、耳を澄ましながら敵の接近に警戒し
敵が居れば隠れて様子を窺い
敵が此方を意識から外す瞬間を【見切り】
駆け抜ける。
また、スカイロッドで空圧を操る事により
自分の周囲の音(空気の振動)を伝わり難くして
発見を避ける。
人狩りマシンまで辿り着いたら霊に周辺を警戒させつつ
出来る限り連鎖的に、広範囲に爆発が及ぶ様に
エンジンや燃料部に爆弾を設置する。
設置終了したら敵に気づかれる前に
素早く撤収する。
ユーベルコード、死霊縋纏(シリョウツイテン)。
それはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)のユーベルコードであり、極めて発見されにくいという声質を持つ。
今回のように秘密裏に敵の目をかいくぐる状況において、これほどまでに適したユーベルコードもないだろう。
「人間狩り等と巫山戯たことを。今すぐ潰してやりたいのは山々だけど」
彼の心に灯るのは義憤の光であった。
ユーベルコードの輝きがそれに応えるように、人間狩りを行うレイダーたちが集まっている『ヴォーテックス・シティ』の一角、廃工場痕を格納庫とし、今やレイダーたちの酒盛りの場となっている場所へと死霊でもって内部構造を把握するのだ。
今も猟兵の手引であろう、酒盛りによってレイダーたちの周囲は格納されているマシンには向いてはいない。
この機に乗じてフォルクは死霊を操作して、物陰から走る。
すでに死霊によって?部の構造の把握は追えている。どのルートをかければ、最速最短で人狩りマシンへと到れるかはわかっているのだ。
「……物事には順番という物がある」
その手にあるのは転移前に手渡された爆弾である。
これらをマシンに取り付け、一斉に起爆すれば『人間狩り』を行うどころではなくなるし、この『人間狩り』を指揮しているレイダー・キングを打倒することにもつながる。
「……レイダーたちは皆、酒盛りか……他の猟兵がうまくやってくれているみたいだな」
この騒ぎはフォルクにとってh好都合であった。
影に隠れながら、様子を伺いタイミングを見計らって走る。ここでフォルクが発見されてしまえば、作戦事態が台無しになってしまう。
それに他の猟兵達にも累が及ぶことだろう。それだけは裂けなければならない。
彼の手にしたスカイロッドが空圧を操り、フォルク自身の周囲の音の伝わりを弱める。
そうすることでときには大胆にレイダーたちの目をかい潜って人狩りマシンへと至るのだ。
「これか……悪趣味だな」
フォルクが見上げる先にあるのは、狩った人間を吊るすための十字架や鋲、さらに槍のように鋭い先端など、レイダー達の欲望を象徴するかのようなマシンたちであった。
死霊たちに周囲を警戒させながら、フォルクは素早くマシンに爆弾を取り付けていく。
エンジンや燃料部、できるだけ連鎖的に広範囲に爆発が及ぶように設置していくのだ。
こうすることによって他のレイダーたちが駆けつける時間を稼ぐと同時にレイダー・キングを取り囲む炎の勢いも増す。
「こんなものか……これで、配下とレイダー・キングを切り離す炎は勢いを増すだろう。よし、撤収だ」
フォルクは死霊と共にマシン格納庫を後にする。
後は他の猟兵達の首尾と合わせて、起爆を決行するだけだ。
このような馬鹿げた凶行を止める。
それがフォルクの今の最大の目的だ。人が生きるために狩りをするのは仕方のないことだ。
けれど、生きるためでもなく、ただ殺すために人々から略奪することは許し難い。
「待っていろ。お前達の欲望は、炎に消し飛ばしてみせる」
フォルクは未だ前夜祭とでも言うように騒ぎ立てるレイダーたちの声を背に、この場から離れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユージィーン・ダイオード
※1アドリブや他猟兵との連携などはご自由にどうぞ。
※2判定:SPD
I didn't know they stacked shit that high(まるでそびえ立つクソだ)
この世界は相変わらずだな…。
―ム、任務開始(ミッションスタート)
欺瞞装置を発動…。
光学迷彩機能で目立たないようにゆっくり…しかし確実に侵入する。
先行させたスカウトボールに情報を収集させ、その情報を元に目標を捜索する。
―ム。目標(ターゲット)確認...
破壊工作を遂行する。
人狩りマシンを二度と起動させるものか…。
爆弾を仕掛けたのちに脱出する。
手がかりは残さない。それがプロだ…。
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』は、夜であっても昼のように煌々とした明かりに包まれている。
電力消費など考えていないようなきらびやかなネオンと電飾。
それらが明滅しながらも、さらに物資を燃やし続ける篝火。
荒廃した世界アポカリプスヘルにおいて、どれもが人々が生きるに必要なものばかりであった。
しかし、それらの全てが今この悪徳の都では浪費され続けている。
「I didn't know they stacked shit that high」
そう呟いたのは、ユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)であった。
彼のサイボーグの機械瞳が紅くぼんやりと輝き、この悪徳の都を『まるでそびえ立つクソだ』と評した。
まさにそのとおりであったことだろう。
アポカリプスヘル。
オブリビオンによって文明が荒廃した世界。猟兵としての経験がユージィーンに悪態をつかせる。
なぜなら、多くの世界を見てきたからである。
「この世界は相変わらずだな……」
だが、それでもやらなければならない。
変わらぬことを嘆くのではなく、変えようと奮起しなければならない。
それがこの世界に生きる人々のためになるのであれば、ユージィーンは躊躇などしないのだ。
「――ム、任務開始(ミッションスタート)」
欺瞞装置を発動させ、光学迷彩機能で目立たぬように彼はゆっくりと、しかし確実に『人間狩り』を行うレイダー達の基地でもある廃工場痕へと侵入していく。
彼の光学迷彩機能は上々である。
今もレイダーたちはユージィーンが侵入して来ていることなど露知らずに、前夜祭とでも言うように酒盛りに興じているのだ。
彼らが浪費する物資は彼らに必須なるものではない。
オブリビオンであるレイダーたちにとって、それは必要なものではないのだ。
生命を維持するためでもなく、ただ浪費するためだけに他者から奪ったものを食い潰していく。
「やりきれないな」
あれだけの物資があれば『拠点(ベース)』に住まう人々がどれだけの明日を迎えることができるだろうか。
スカウトボールが先行し、ユージィーンの頭にデータとして情報が送られてくる。
その映像が脳裏に浮かび、残虐戦車の巨大なる影が其処に在るということを示す。
「――ム。目標(ターゲット)確認……」
ユージィーンは手にした爆弾を片手にスカウトボールが示す座標へと走る。
彼の機械化された瞳が巨大なる影を捉えた。
これが人間狩りに使われるマシン。
狩るというよりは、すり潰すだけに特化したような異様なるマシンを前にしてユージィーンは躊躇うこと無く爆弾を設置していく。
「人狩りマシンを二度と起動させるものか……」
そう、彼の言うとおりである。
これを二度と使わせてはならない。人々が懸命に明日を望むように、ユージィーンもまたアポカリプスヘルの明日を憂う。
「こんなものが在っていいわけがない」
ユージィーンは爆弾を全て設置すると、素早くその場から離れていく。
自身がこの場に存在したという痕跡は残さない。
それがプロというものである。
後は爆弾を起爆させるタイミングを合わせるだけである。ユージィーンは共に転移してきた猟兵たちとタイミングを合わせるために合流する。
すでに多くの猟兵達が駆けつけてくれている。
頼もしいと思うと同時に、失敗は許されない。
けれど、その心配をする必要はない。やるべきことを必ずやり遂げる。そう、それこそが。
「それが、プロだからな――……」
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【POW】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、ってコレ目立っちゃダメなやつでは!!
しまった、普通に忍んでおけばよかったです!(胸が大きくて忍べないとは言わない
バレた以上は仕方ありません
シリカ(猫)!
私が敵を引きつけるので爆弾の設置お願すみませんちゃんと分身しますぅぅぅ!!
仕方ないので陽動と設置を自分一人でします…(しくしく)
【かげぶんしんの術】で増えて一斉に暴れますよー!
その裏でこそっと2人くらいとシリカを車庫に派遣しまして
爆弾を設置してもらいましょう
ふっ、私はやれば出来るクノイチなのです!
あとは分身大暴れで
後始末はまあなんとかなりますようん!
※アドリブ連携OK
文明が荒廃した世界、アポカリプスヘルに前口上が響き渡る。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ」
お待ちかねのサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)である。
だが、サージェは気がついてしまったのだ。
今回の予知における最大の目的と己の前口上の相性の悪さに。
「ってコレ目立っちゃダメなやつでは!! しまった、普通に忍んでおけばよかったです」
サージェはあっさりとレイダーたちに見つかってしまっていた。
いや、別に猟兵であるとか、なんかコイツ妙なことをしているぞ、とか気が付かれたわけではない。
なんていうか、あれである。
そう、彼女の忍べてない体の特定の部位故に、レイダーたちは下衆なことを言っているのだ。
非常に教育に悪い言葉なので割愛させてもらっているが、サージェ的には忍べていない要因ナンバーワンの理由である。
「バレた以上は仕方ありません。シリカ!」
そう言って、サージェは傍らにある白猫又のアバターであるシリカにウィンクを、ばちこーん! と向ける。
だが、その瞬間、ばりぃ! と身がすくむような音が聞こえた。
ひぇっ、とサージェが慄く。
まだ何も言ってないのに、と彼女はちょっと涙目になっているが、これ以上下手なことを言えば、本当にばりぃ! って乙女の柔肌にひっかき傷を刻まれてしまう。
「私が敵を引きつけるので爆弾の設置お願すみませんちゃんと分身しますぅぅぅ!!」
ここまでがお約束である。
様式美というやつである。渋々サージェは、ユーベルコード、かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって己の分身を作り出し、一斉に駆け出す。
「な、なんだなんだ!? 急にオンナが増えた!?」
すでに酒盛りに興じていたレイダーたちは酔いどれ気味である。
自分たちの目の錯覚かと目をこするが、そうではないのだ。増えた分身たちによって、もう周囲はしっちゃかめっちゃかである。
暴れるサージェたちに注目が集まる中、サージェはこっそりと分身とシリカたちと共に格納庫へと忍び込む。
「ふっ、私はやれば出来るクノイチなのです!」
ふふん、と得意満面である。
人間狩りを行うレイダー達の集まる廃工場は、てんやわんやの大騒ぎである。
ちょっと騒ぎが大きすぎるというか、サージェの分身たちが暴れすぎている気もしないでもないのだが、まあ、他の猟兵達が動きやすくなっているという点においては、これもまた揺動のうちである。
サージェと分身たちによって格納庫に納められていた人狩りマシンたちに爆弾が次々と設置されていく。
「……でもこれ、後始末が大変なやつなのでは……」
事の収取をどうしようかと思案するサージェ。
けれど、サージェはぽんと手を打つ。
どうせ爆弾が起爆してしまえば、後始末とかなんとか言ってる暇はないのである。
であればだ。
考えたって仕方ない。後は他の猟兵達が爆弾を起爆してくれるまで、レイダーたちの注意をひきつけ続けておけばいい。
それはとても難しいことのように思えたが、サージェはいつものように気楽にうなずくのだ。
「まあなんとかなりますうん!」
本当にぃ~? と誰かが言った気もしないでもないが、サージェは自信満々に分身たちを操って、レイダーたちをさらなる騒動に巻き込んでいくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
支倉・錫華
【セレーネ大佐と】
侵入・破壊・親玉退治・脱出。フルコースだね。
今回はここの噂を聞いてきた女レイダーペア、
ってことで侵入しようかな。
女ってみると、だいたいセキュリティ甘くなるんだよね。
セクハラしようとするだろうヒャッハーたちは、実力で排除。
「せめてわたしに勝ってからにしたほうがいいよ」
大佐は、わたしよより強い、って設定で、
リーダー感を煽っておこう。
悪者ロールはやりすぎないでね……?
夜になったら爆破工作。
バギーや虐殺戦車もだけど、
アジトにもいくつかしかけておきたいな。
って、大佐!?
危ないからちゃんと両手で持って!
爆弾を落としかけ、気付かれた瞬間に、
無理やり大佐の手を引いて、避難するのでした。
セレーネ・ジルコニウム
【錫華さんと】
「人々の平和を脅かすレイダーたちは、私設軍事組織ガルヴォルンが許しません。
行きましょう、錫華さん。
ヴォーテックスシティの噂を聞いてやってきた、腕利きの女レイダーペアとして潜入です!」
今回は戦艦クルーの皆さんオススメのレイダーファッションで潜入任務です。(ボンテージ衣装)
ちょっと露出は高いですけど、頑丈な素材でできてますから防御力はありそうですね。
特に、この肩のトゲトゲとかが強そうです!
「ふふ、私に手を出したいなら、まずは錫華さんに勝ってからにするのですね」(錫華さんから渡されたカンペを読みつつ
夜になったら、いよいよ破壊任務です。
爆発物の取り扱いなら任せてくださいね……
って、あっ
世に悪の種が尽きることがないのであれば、またその悪を裁く者もまた尽きることはない。
悪の栄えた試しはなく、またアポカリプスヘルにもまたそれは同様であると言える。
例え、オブリビオンによって文明が荒廃した世界であっても明日を望む者がいるのであれば、明日をもたらそうとするものだっている。
悪徳の都、『ヴォーテックス・シティ』。
それは『ヴォーテックス一族』が築き上げた巨悪の大都市と言っても過言ではない。
夜であるというのに電飾の輝きは途絶えることはなく、貴重な物資を燃やして焚かれる篝火の炎は天に高くそびえるようであった。
それら全てがアポカリプスヘル中から、レイダー・キングたちが集めた上納品であることは言うまでもない。
巨大な悪は確かに甘い蜜のようなものであった。
おこぼれに与ろうと各地からレイダーたちが集まり、勢力は強大化していく。
「人々の平和を脅かすレイダーたち……」
だが、その悪の華が咲くのならば、それを摘み取る者は存在する。
「私設軍事組織ガルヴォルンがが許しません。行きましょう、錫華さん。ヴォーテックスシティの噂を聞いてやってきた、腕利き女レイダーペアとしして潜入です!」
そう高らかに宣言したのは、機動戦艦ストライダーを駆る、セレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)であった。
彼女は今、戦艦クルーが勧めてくれたオススメレイダーファッション……黒いボンテージ衣装にを包み、ペアとして作戦に参加する支倉・錫華(Gambenero・f29951)に告げる。
彼女もまたレイダーペアという設定を守るべく、セレーネと同じような衣装に身を包んで、悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』へと降り立つのだ。
「侵入、破壊、親玉退治、脱出。フルコースだね」
錫華にとって、それはお手の物であったのかもしれない。
かつて、領主の影として闇の仕事を引き受けてきた手腕が今、ここに花咲くように発揮される。
潜入という手段において、錫華の手腕は見事なものであったことだろう。
共に行動するセレーネは肩パッドのトゲトゲが強そうで、なんとも嬉しそうである。錫華にとって、今は大佐……即ち、セレーネを無事に潜入させることが優先されるべきことだった。
「大佐、悪者ロールはやりすぎないでね……?」
「わかっています。任せて下さい。ちょっと露出は高いですけど、頑丈な素材でできてますから、防御力はありそうですね」
そんなふうにセレーネは己の身に纏ったボンテージ衣装を引っ張ったりしている。
本当にわかっているのだろうかと思いつつ、錫華は人間狩りを行うレイダーたちのマシンが格納されている廃工場痕へと歩む。
すでに『ヴォーテックス・シティ』への潜入は完了している。
二人組の女レイダーということで検問の際にからかわれたりしたものだが、女というだけで大体セキュリティーは甘くなるものである。
錫華にはそれがわかっていたからこそ、自信たっぷりに二人組として堂々と真正面から『ヴォーテックス・シティ』へと入り込んだのだ。
「ひゅー! いいお尻してんじゃんよ、ねーちゃん!」
そんなふうにセクハラまがいのことをしてこようとするレイダーだって一人や二人ではなかった。
レイダーでなくても、彼女たち二人の見目は麗しいものである。
端的に居て上玉と言っていい。だからこそ、レイダーたちの視線は露出度の高い彼女たちに釘付けになるのだ。
「ふふ、私に手を出したいのなら、まずは錫華さんに勝ってからにするのですね」
ちらっと、セレーネは錫華から用意されていたカンペを見ながら、レイダーたちあしらう。
ちょっとたどたどしいかな、と思いつつも、そこは錫華がサポートしてくれる。
「せめてわたしに勝ってからにしたほうがいいよ。大佐は、こう見えて、わたしより強いからね?」
錫華に手を伸ばしたレイダーの腕をひねり上げ、その場に投げ飛ばしながら錫華が只者ではない雰囲気を醸し出す。
女だてらになどと表現するにはあまりにも錫華の実力は高いものであった。
だからこそ、レイダーたちは彼女たちに手を出すことができずに、二人が『ヴォーテックス・シティ』を征く道を開けるしかなかったのだ。
そうして、二人がたどり着いたのは『人間狩り』を行うマシンの格納庫である。
「いよいよ破壊任務です。此処ですか……」
セレーネが見上げた先にあるのは、巨大な廃工場痕。
すでに多くのレイダーたちが酒盛りを始めており、どんちゃん騒ぎが離れた此処まで響いてくる。
他の猟兵達が上手にやってくれているのだろう。
潜入は簡単であったと錫華は手際よく格納庫へと潜入していく。
「アジトにもいくつか仕掛けておきたいね……」
錫華がそう呟いた瞬間、セレーネが手にした支給されている爆弾が目に入る。
「爆発物の取り扱いなら任せてくださいね……って、あっ」
得意な顔をしているセレーネ。
けれど、錫華は見てしまった。その優れた動体視力が、セレーネの指からつるんと転げ落ちる爆弾を。
「って、大佐!? 危ないからちゃんと両手で持って!」
あっ。
その瞬間、取り落した爆弾が甲高い音を立てる。
やべっ。とセレーネが失敗しちゃったという顔をするが、錫華はそれどころではない。取り落した爆弾が起動している。
錫華はセレーネの手を引いて、その場を痕にする。爆弾ちゃんと設置してませんよーとセレーネがどことなくのんびりしたことを言っているが、気にしていられない。
無理やり大佐と共にその場を後にして、錫華とセレーネは背後で盛大な爆発音を轟かせる廃工場痕を後にするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……あれがレイターねぇ…まともに相手をするのも面倒だし見つからないように行くか…私がレイダーに変装は少しどころじゃないレベルで無理があるしね…
…まずは【不思議な追跡者】で基地の様子を確認…人狩りマシンの位置やレイダーの警備体制、巡回経路などを確認して侵入ルートを構築…
…心理隠密術式【シュレディンガー】による心理迷彩を駆使して見つからないように侵入…
…回避出来ない監視カメラ等のセキュリティシステムはハッキングで無力化…途中にある鍵は封印解除術式【ルーナル】で解除…
…人狩りマシンの格納庫に辿り着いたら爆弾を設置して爆破の影響を範囲外まで逃げて起爆まで隠れて待機しよう…
言うまでもなく、『ヴォーテックス・シティ』に存在するレイダーたち全てがオブリビオンである。
彼らにとって生命維持は必須のものではない。
故に物資を奪い合う必要など無いのだ。けれど、彼らは生前の欲求であろうか、それともオブリビオン化したがゆえの定めであるのかはわからないが、他者から……とりわけ弱者から奪うことを喜びとしている。
「……あれがレイダーねぇ……まともに相手をするのも面倒だし見つからないように行くか……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』に映る『ヴォーテックス・シティ』に住まうレイダーたちの姿に嘆息した。
電力も物資も、このアポカリプスヘルにおいては貴重なものだ。
だからこそ、都市のあちこちで明滅する電飾や、篝火を盛大に燃やす光景に非効率この上ないと息を漏らす。
この物資や電力があるだけで、『拠点(ベース)』に住まう人々の生活がどれだけ楽になるのか、考えるのも馬鹿らしくなる。
「私がレイダーに変装は少しどころじゃないレベルで無理があるし……」
メンカルは自身がレイダー特有の奇抜な世紀末ファッションに身を包むことに抵抗を覚えた。
というか、完全に似合わないと判断したのだ。
あと、とてもIQが下がってしまうような気さえした。多分、気の所為であるはずなのだけれど。
だが、メンカルには手段がある。ユーベルコードと言う手段が。
「小さき者よ、追え、暴け。汝は狩人、汝は猟犬。魔女が望むは獲物逃さぬ鋭き眼」
小さく呟いた詠唱によって、メンカルのユーベルコード、不思議な追跡者(リドル・チェイサー)が発動する。
猫のような小動物がメンカルの腕から飛び降りて、『ヴォーテックス・シティ』、その『人間狩り』を行うレイダーたちが集う基地へと走る。
五感を共有したメンカルの視界にあるのは、まさに巨大な格納庫然とした廃工場痕であった。
事前に予知によって場所が割れているのはありがたいことであった。
確かにこの『ヴォーテックス・シティ』において小動物は珍しくないかもしれないが、それでも念には念を入れて、メンカルは心理隠密術式『シュレディンガー』による心理迷彩を駆使して見つからぬように、廃工場痕へと不思議な追跡者を走らせる。
「……ふむ。回避できないような監視カメラやセキュリティシステムはない、か……拍子抜けだね」
もしくは、文明が荒廃したことによって、それらのシステムも壊滅しているのかもしれない。
これだけの物資があっても、使い方を知らなければただのガラクタである。
それをメンカルは確認し、巨大格納庫の鍵を封印解除術式『ルーナル』によって解除し、支給された爆弾を人狩りマシンへと設置していく。
「後は爆発の圏外まで退避すればいいか……それにしても、これだけの重機。よく集めてきたな……」
『拠点(ベース)』を襲うというには、あまりにも大袈裟な戦力であると言わざるを得ない。
これはもう人間を奴隷として捕らえるだとか、そういうことすら考えてない。
人の生き死になど気にもとめていないのだ。
死ぬのならば、それまで。行きているのならば奴隷にする。
その程度の認識でしか無い。
「……悪趣味だね」
だからこそ、破壊しなければならない。メンカルは小さく頷いて、設置した爆弾から不思議な追跡者を離れさせる。
後は爆発のタイミングをあわせるだけだ。
もう数刻もすれば、他の猟兵達の準備も整うだろう。連鎖的に広がる爆発。それに紛れてレイダー・キングを打ち倒せばいい。
メンカルは、不測の事態に備え、その冷静なる瞳でレイダーたちの人間狩りの基地を見つめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アビー・ホワイトウッド
アドリブ、連携歓迎
善し悪しはともかく凄いリソース量。この街を奪えたらとてもいい。ともあれ今はやるべき事をやる。
◯
私の相棒を載せたトレーラーを猥雑な街路の目立たない場所に停車。ヴォーテックス一族の名前を出したら思ったより簡単にここまで来れた。車体の目立つ場所に一族のマークでも描いとけば手を出すヤツはいないはず。後はボロマントでも被って目標の廃工場にこっそり侵入。闇夜に紛れて動く。こういうのは得意。
レイダー共が騒いでる隙に車両に爆弾を仕掛けてやる。簡単。
万一見つかりそうな時は音を立てないよう、素早くナイフで敵を仕留める。口を塞いで一突き。
死体はパーティが始まるまで見つからないよう物陰に隠そう。
レイダー……野盗が人々から奪う者であるというのなら、アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)は奪還者(ブリンガー)である。
彼女の瞳に悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』は魅力的な街に思えたことだろう。
きらびやかな電飾が明滅し、物資をふんだんに使って燃やす篝火。
そこかしこに積み上げられた荒廃した文明の残滓である重機や車両の残骸。
ありとあらゆるものが存在しており、混沌そのものであった。けれど、それは豊かな土壌そのものであったことだろう。
アビーにとって、この街の魅力はそれだけである。
住まうレイダーたちの価値観や、倫理観などに興味はない。あるのは、この物資を『拠点(ベース)』に齎すことができたら、どんなに良いだろうかという意味でだけ、魅力的であるということだった。
「善し悪しはともかく凄いリソース量。この街を奪えたらとてもいい。ともあれ今はやるべきことをやる」
そう呟いて、アビーは己が運転するトレーラーを猥雑な街路の目立たない場所へと停車させる。
すでに彼女は『ヴォーテックス・シティ』へと車両ごと侵入を果たしていた。
彼女の相棒である歩行戦車『ラングレー』を襤褸で覆い隠したトレーラーには『ヴォーテックス一族』の髑髏と竜巻の紋章を描いている。
「まあ、この街で『ヴォーテックス一族』の名前を出したら、こんなものだね」
検問でも『ヴォーテックス一族』の関連の仕事で積荷を、と言えばすんなりと通してくれるところからして、セキュリティはザルであったのかもしれない。
けれど、アビーは油断なく街中を進む。
電飾の明かりは強烈であるが、その分影は色濃くなっていく。
襤褸マントを羽織ってアビーは廃工場痕へと侵入する。すでに多くの猟兵達がそうであったように、人間狩りに参加するレイダーたちは酒盛りを始めてのどんちゃん騒ぎで警戒は薄い故に、簡単に格納庫へと入り込むことができた。
「相棒に手を出すやつはいないと思うけれど……」
彼女自身が駆る歩行戦車。
それから離れて行動していることに僅かに懸念を示す。
けれど、ヴォーテックス一族の紋章を描いた者に手を出すレイダーもいないだろう。
それよりも、レイダーたちは警戒すらしていないのだろう。
なにせ、ここはレイダーの巣窟である。彼らに仇為す者など存在しない。だからこそ、アビーは己が発見された時のリスクを考えていたことが徒労に終わったことにため息をつきながら、格納庫に納められている人狩りマシンたちに支給されていた爆弾を設置していく。
「……本当、簡単な仕事。こんな簡単でいいのか……それとも無警戒なのは、驕り、慢心……」
自身の仕事が簡単なことは良いことだ。
アビーは素早く仕事を終え、相棒が待つトレーラーを停車している街路へと急ぐ。
後は他の猟兵たちと爆破のタイミングを合わせればいい。
無事に仕事を終えたアビーは、つかの間離れていた相棒である歩行戦車の装甲を撫でる。
「さあ、パーティの始まりまで後もう少し……どんな花火になるかな」
アビーが視線を向けた先は、レイダーたちの集まる廃工場痕。
彼女が呟いた瞬間、廃工場痕から爆炎が上がる。
それは不意に起こった偶発的な事故の結果であったけれど、連鎖的に爆発が巻き起こり、格納庫を取り囲むように炎が立ち上るのだ。
「これは派手なパーティになりそうだね」
アビーは轟音響く『ヴォーテックス・シティ』と、きらびやかな電飾に負けぬほどの篝火となった人間狩りの基地を瞳に映らせ、最大の目的であるレイダー・キングの打倒に乗り出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『サイバーレイダー』
|
POW : パワーアシストアーマー
予め【パワーアシスト機能に充電しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 奪い尽くす者達
レベル×1体の、【タトゥーで額】に1と刻印された戦闘用【機械化レイダー軍団】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : レイダーズシャウト
【略奪を宣言する叫び声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:鋼鉄ヤロウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『人間狩り』を行うレイダー達の基地であった廃工場痕は、今や『ヴォーテックス・シティ』において、最も明るい場所となっていた。
猟兵達が設置した爆弾が無数に連鎖的に爆発し、爆炎を立ち上らせる。
人狩りマシンは言うまでもなく、基地全てが焦土と化す勢いで立ち上る炎は、レイダーたちにとって寝耳に水の報告であった。
「なんダ、これは……!? 何故、マシンが爆発している……!」
レイダー・キングの『サイバー・レイダー』は立ち上がる炎を前に立っていることしかできなかった。
炎が煌々とサイボーグとなった機械の体を照らす。
配下であったレイダーたちの殆どは爆炎の中に消え、マシンも粉砕されている。
これでは例え、鎮火できたとしても、明日の人間狩りに向かうことができない。
「計画が、計画が狂ってしまう……! 『ヴォーテックス一族』に献上する人間が足りないではないカ!」
『サイバー・レイダー』は考えを巡らせる。
何故、こんなことになってしまったのかを。
何故、このような事態に陥ってしまったのかを。
けれど、どれだけ考えても答えには至らない。
なぜなら、彼らは己達が『ヴォーテックス・シティ』というレイダーの巣窟にいるからこそ、危機感が消えていたのだ。
己たちは奪う者。
決して奪われる者ではない。
だからこそ、足元をすくわれるし、寝首をかかれる。
「――まさカ!」
そう、すでに時遅しである。
爆炎に取り囲まれ、『サイバー・レイダー』は呻く。
揺らめく爆炎の向こうからやってくる影。
その影を見て知るのだ。
己が何に狙われているのか。
虎の尾を、竜の逆鱗を、踏み抜き、引き剥がしてしまったのかを知る。
「猟兵――!」
メンカル・プルモーサ
…天敵の登場だよ…奪われる側になった気持ちはどうかな…
…もう少しセキュリティに気を使ったほうが良かったね…
…戦闘用の機械化レイダー軍団を呼び出して数で押して来たとしても…無駄…
…お前達は『奪われる側』になった、と言った…【我が身転ずる電子の精】を発動…眼と腕を光の粒子化…
…そして粒子化した腕を伸ばして機械化レイダー軍団の制御システムを次々に破壊していくよ…
…私は優しくない…『この場で動けない』程度に止めてやるよ…
…遠くに居る奴らにも浸透破壊術式【ベルゼブブ】を介してモニタからハッキング…制御機能を強制ダウン、ロックしてしまうよ…
…キングも逃げられる前に機能の幾つかは奪わせて貰おうか…
猟兵達が仕掛けた爆弾が爆発し、人狩りマシンを格納していた倉庫が吹き飛ばされる。
最早、其処に在るのは炎とむせ返るような黒煙だけであった。
人狩りマシンは粉微塵に粉砕されており、例え鎮火したとしても使い物にはならないだろう。
それほどまでに徹底した破壊であった。
「猟兵……まさか『ヴォーテックス・シティ』にまで乗り込んでくるとはナ!」
だが、レイダー・キングたる『サイバー・レイダー』は怯まない。
これまでもそうであってように、彼は依然『奪う者』であった。
だからこそ、彼は己の力を過信する。
己に天敵がいるであろうことも知ろうとはしない。
無数の機械化レイダー軍団が呼び出され、『サイバー・レイダー』は笑う。
「敵の真っ只中に飛び込んできたのが運の尽きダ! お前達猟兵がどれだけ強かろうが、数では押せヌ!」
炎の中から現れる無数の機械化レイダー軍団の数は、数えられるものではない。
百を越えたあたりで相対するメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『アルゴスの眼』に備えられたセンサーを切った。
「……もう少しセキュリティに気を使ったほうが良かったね……無駄……」
そう、彼女を前にして数で押そうとしても無駄なのである。
彼女にとって機械化されたレイダーこそが、手玉に取りやすい、与し易い相手であると言わざるを得ない。
「我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
詠唱と共にメンカルの腕が光の粒子へと変化する。
それは彼女のユーベルコードであり、我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)。データや信号に直接干渉できる粒子の集合体へと変じた腕が、爆炎が上がる工場痕に疾走る。
伸ばされた光の粒子とかした腕が機械化レイダー軍団の制御システムにしんy縫うし、破壊していく。
「……なんダ!? 何故、レイダー軍団が動かなイ……!?」
『サイバー・レイダー』にとって、それは悪夢のような光景であった。
目の前の猟兵、メンカルがレイダーに何かをしたのはわかった。
けれど、それは攻撃には見えなかったのだ。ただ、光の粒子と化した腕が機械化レイダーたちに触れたと思った瞬間、『サイバー・レイダー』にリンクしていた機械化レイダーたちの制御が立ち消えていくのだ。
「……天敵の登場だよ……奪われる側になった気持ちはどうかな……」
「な、何ヲ! ……何を言っている!」
たじろぐ『サイバー・レイダー』を前にして、メンカルは察しが悪いな、と眉根を上げながら、告げる。
それは絶対的な宣告であった。
「……お前達は『奪われる側』になった、と言った……」
その言葉はどうしようもないほどの事実であった。
『サイバー・レイダー』の脳内に埋め込まれた電子頭脳が言うのだ。
目の前のメンカルこそが天敵。
己の機能の全てを蹂躙せしめる存在であると。だが、『サイバー・レイダー』は認められない。
なぜなら、今まで彼らは一度たりとて奪われる側になったことはないからだ。
上納することはあれど、理不尽に相対したことがない。
だからこそ、目の前にいるメンカルという理不尽に対応できないのだ。
「私は優しくない……『この場で動けない』程度に停めてやるよ……」
メンカルの術式は、周囲にある彼の配下たちすらも浸透破壊術式『ベルゼブブ』を介した電子解析型眼鏡である『アルゴスの眼』からハッキングし、制御機能を強制ダウンさせる。
「馬鹿ナ! 馬鹿ナ! こんなことがあっていいわけがなイ! 我々の、せい、ギョが、奪われル!?」
『サイバー・レイダー』は機械化した体故に恐れを知らぬ。
だが、今まさに天敵に己の体の機能を掌握され、身動きすらできなくなってしまう恐怖に、心から彼は怯えた。
それは如何なる電気信号が為せる業かわからない。
けれど、恐れにかられて『サイバー・レイダー』はメンカルから逃げ出す。
「……逃げるか。けれど、無駄だよ。お前は『この場から動けない』……即ち、炎の中から逃げることはできない。精々、惑うことだね。お前の滅びは、今この瞬間に決定したのだから」
メンカルの瞳が輝く。
それは絶対に逃げられないという凶星そのものであった。
いくつかの機能を奪い取ったメンカルは、その瞳に「サイバー・レイダー』の背中を写す。
決して逃れることのできない恐怖。
戦いという連鎖の中に過去の化身たるオブリビオン、そのレイダー・キングの一人が今日潰えることを予見……いや、確定したことを、彼女は識るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
さあ、決戦よ。サイバー・レイダー!
これ以上は誰も狩らせない。次の獲物はあなただから。
「火炎耐性」を活かして、「目立たない」よう炎に紛れながら戦いを挑む。
その叫び声は、どうやら自己強化くらいのものみたいね。それなら怖くない。
不動金縛り法で動きを封じて、「衝撃波」をまとう薙刀で、「なぎ払い」「串刺し」に。
サイバー・レイダーの攻撃は「受け流し」、炎の中に消えては死角からの奇襲をかける一撃離脱戦法で、出来れば急所を貫きたい。
こっちもあまり時間は無いものね。
手数が欲しい。アヤメ、お願い。手を貸して。
不動金縛り法が解けそうになったら即座に重ねがけ。
好きにはさせないって言ったでしょう。
ここがあなたの終着点。
レイダー・キングは、アポカリプスヘルに置いて、野盗(レイダー)を束ねる長でもある。
その存在は言うまでもなく強大なものであった。
式神を通して、その存在の強大さを感じていた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)にとって、『サイバー・レイダー』の上げる咆哮は、ビリビリと肌をひりつかせるものであったが、今の『サイバー・レイダー』にとって、それは戦いを告げる咆哮ではなく、ただ己の天敵――猟兵に対する怯えをにじませたものであると知る。
爆炎が取り囲み、配下レイダーたちの応援もない状況に追い込まれた『サイバー・レイダー』にとって、その咆哮は意味を為さぬものであった。
けれど、ゆかりは油断することなどなかった。
「さあ、決戦よ。サイバー・レイダー! これ以上は誰も狩らせない。なぜなら――」
ゆかりは爆炎の中を駆け込む。
炎が立ち上る中、彼女の紫の瞳はユーベルコードに輝きながら、『サイバー・レイダー』へと迫るのだ。
「次の獲物はあなただから」
「抜かセ! 我々は奪うものだ! 奪われる者じゃなイィィ――!」
今度こそ、『サイバー・レイダー』は咆哮した。
それは今まさに己が自覚させられた『奪われる側』とは違う、レイダー・キングとしての矜持の咆哮であったのかもしれない。
機械化された身体が駆動する。
破壊の衝動を持って、あらゆるものを奪い尽くすと決めた己の欲望を具現化するために、『サイバー・レイダー』はゆかりへと突撃する。
「その叫び声は、どうやら自己強化がいいところみたいね。生憎とあなたの配下は爆弾で吹っ飛んでしまったようだし? それなら怖くない」
振るう薙刀と『サイバー・レイダー』の機械鎚が交錯する。
確かに機械化された膂力は尋常ならざるものであった。
けれど、ゆかりは薙刀の柄で受け流しながら、距離を取る。
「ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン」
手にした霊符『白一色』を掲げ、ユーベルコードの輝きを放つ。
一瞬の明滅の後、放たれるは不動明王の羂索。それは『サイバー・レイダー』の身体を縛り上げる。
ぎちぎちと音が鳴るように『サイバー・レイダー』の身体が締め上げられるが、ほどかれるのは時間の問題であろう。
だからこそ、ゆかりは一瞬で炎の中から飛び出し、『サイバー・レイダー』へと薙刀の一撃を一瞬で突き入れる。
「アヤメ、お願い。手を貸して」
式神アヤメを呼び出して、ゆかりは一撃離脱を繰り返す。
「弱者から奪う! 奪ウ! 奪ウことそが、我々の至上命題! 邪魔ヲ!」
するな、と羂索を振りほどいて、『サイバー・レイダー』が機械鎚を振るう。
アヤメが攻撃を受け流しながら、吹き飛んでいく。
けれど、ゆかりは止まらなかった。
彼女の手にした霊符が再び輝き、咆哮迸る戦場にあって、尚薙刀の一撃が紫の輝きを放って一直線に『サイバー・レイダー』の胸を貫くのだ。
「グ、ァ――ッ! オオオオオッ!!」
それでも振り抜く機械鎚をゆかりは羂索で再び縛り上げる。
「好きにはさせないって言ったでしょう。ここがあなたの終着点。悪いけれど、途中下車させるわけにはいかないのよね」
再び振るった薙刀の斬撃が『サイバー・レイダー』の胴を薙ぐ。
バラバラと飛び散る機械の部品の破片。
それが爆炎を受けて煌く。
ゆかりはアヤメを抱え、離脱していく。
「確かに強敵かもしれないけれど、驕ったわね。精々味わいなさい。『奪われる理不尽』ってやつをね――!」
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
キャバリアの魔銃のレプリカを使い戦闘
奪われる気分はどうだ?
俺ははっきり言って最悪だ
これがお前らのしようとした事、報いを受けろ
SPDで判定
【視力】【暗視】【聞き耳】で【情報収集】し【索敵】
指定UCで敵将に義眼の黄の災い:感電【マヒ攻撃】を付与した弾丸で【範囲攻撃】し次の攻撃までの【時間稼ぎ】した後、藍の災い:圧壊【重量攻撃】の弾丸を【全力魔法】【範囲攻撃】で放ち軍団を攻撃する
軍団が粗方片付いたら、敵将に【重量攻撃】の弾丸を【スナイパー】【全力魔法】【鎧無視攻撃】で撃ち込む
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』に篝火よりも巨大な爆炎が立ち上がる。
それは人間狩りを行うレイダーたちが集う基地であった廃工場痕を爆心地とした、凄まじい爆発の結果であった。
猟兵達が仕掛けた爆弾の数は無数。
それらが連鎖的に一度に爆発したものであるから、廃工場痕に存在していたレイダーたちの殆どは跡形もなく骸の海へと還ったことであろう。
だが、レイダー・キングである『サイバー・レイダー』は未だ健在である。
咆哮が轟くのは、怨嗟でもなければ、怒りでもなかった。
在ったのはこれまで感じたことのない怯えを振り払おうとする意志だけであった。これまで彼らは『奪う側』であった。
決して『奪われる側』ではなかったのだ。
それが今覆ってしまった。
「我々は、奪う者のはずダ! それは覆ることのないもののはズ! 猟兵ども――!」
皆殺しにしなければならない。
それは己がレイダーであるからとか、相手が猟兵であるからとかではない。
己の電子頭脳に浮かぶ怯えを消し去るためであった。
召喚された機械化レイダー軍団たちの動きが鈍い。それは先行した猟兵が奪った機能によって、動きがぎこちなくなっているせいだ。
だが、それでも数で押せる。そのはずだったのだ。
「奪われる気分はどうだ?」
その呟きと共に放たれるは、黄色の災いの輝きを伴った弾丸の一撃であった。
『サイバー・レイダー』のすぐ横に立っていた機械化レイダーの一体の頭部が吹き飛び、糸の切れた人形のように大地に倒れ込む。
「……ッ!? な、なんダ……どこかラッ!」
「俺ははっきり言って最悪だ」
また再び、周囲に存在していた機械化レイダーの一体が、また一体が、次々と撃ち抜かれて消えていく。
そのたびに黄色の災いの如き輝きが煌めくのだ。
それはユーベルコードの輝きであり、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)の手にした魔銃から放たれたものであった。
属性付与(エンチャント)によって義眼のメガリスが輝く限り、その力を付与した弾丸が飛ぶのだ。
「これがお前らのしようとした事、その報いを受けろ」
「関係などあるものカ! 我々は奪うだけダ! そうあるべきと在る者ダ! それを弱者から奪って――」
何が悪いのだと、『サイバー・レイダー』は叫ぶことすらできなかった。
放たれた弾丸が生み出す藍色の災いの輝きが、『サイバー・レイダー』の身体に重くのしかかる。
圧潰の災い。
それは『サイバー・レイダー』をして動きを止めざるを得ないほどの重量を齎す災いであった。
機械化レイダー軍団はのみならず、『サイバー・レイダー』すも動けなくしたルイスはつぶやく。
「お前達が一度でも理不尽を感じたことがあるのならば、自分たちがしたことの意味を知っているはずだ。明日を望む者たちの、そのか細い願いすらも踏みにじったということを」
だからこそ、ルイスは識れと引き金を退く。
放つ弾丸に籠められたメガリスの力は、ルイスの全力を籠めたものであった。
極大の輝きを放つ弾丸が、『サイバー・レイダー』の肩を貫き、その機械化された装甲をひしゃげさせる。
「グ、ァ――! こんナ、こんなことがあっていいはずガ――!」
だが、その叫びすらもルイスには届かない。
彼らが踏みにじってきた数多の悲鳴、悲哀、その全てをルイスは代弁するように、再び弾丸に込めて、その理不尽を初めて知る体に刻み込むように引き金を引くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユージィーン・ダイオード
※アドリブや他猟兵との連携などはご自由にどうぞ。
目標確認...殲滅(ターミネイト)を開始する。
その怒りは勘違いと知れ。
武装展開(オープン・コンバット)アサルトライフルとビームキャノンを装備に選択(セレクト)
アサルトライフルの制圧射撃とビームキャノンのレーザー射撃による爆撃をお見舞いする。
スカウトボールから情報収集したデータを受信。
パワーアップアーマーか…オーラ防御発動。
レフトアームの怪力を全開にして受け止める。
レフトアーム破損…しかし…掴んだぞ!!
Hasta la vista, baby.(地獄で会おうぜ、ベイビー)
鉄面皮をんの少しだけその口角を上げ、超龍炎爆撃を発動する
あとは任せた!
爆炎轟く『ヴォーテックス・シティ』の一角、『人間狩り』を行うレイダーたちの操る人狩りマシンが格納されていた廃工場跡の倉庫は、すでに見る影もなくなっていた。
あるのは爆弾の起爆によって立ち上る炎と、マシンの残骸であった。
レイダー・キングと呼ばれるレイダーの上位存在である『サイバー・レイダー』は猟兵たちに追い詰められていた。
本来であれば、機械化された体は恐れを知らぬものである。
だが、初めて己が『奪う側』から『奪われる側』に立った時、その体は恐怖に硬直したことだろう。
それが何よりも許せなかった。
己が奪う者であるという自負があったからこそ、これまで『サイバー・レイダー』は驚異的な力を発揮してきた。
だというのに、ここに来て自身が奪われる側に回るとは思っても居なかったのだ。
「許せなイ。我々を此処まで追い詰めるとハ……!」
そのサイボーグとしての体に充填された電力によって、パワーアシスト機能が作動する。
肩をえぐられていても尚、その膂力は陰りを見せず、振るう機械鎚の一撃は重たいものであったことだろう。
「目標確認……殲滅(ターミネイト)を開始する」
ユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)もまた体の90%を機械化したサイボーグである。
だが、己と『サイバー・レイダー』の違いがなんであるかを知っている。
『サイバー・レイダー』が猟兵に向ける怒りがお門違いのものであると知っている。だからこそ、ユージィーンは赤い機械瞳を輝かせるのだ。
「その怒りは勘違いと知れ」
武装展開によってアサルトライフルとビームキャノンを選択したユージィーンは炎巻き上がる戦場に火線を引く。
それは強烈なる火力で持って迫る『サイバー・レイダー』の足を止めるのだ。
爆撃の如き火器による制圧射撃。
しかし、『サイバー・レイダー』は構わずに突っ込んでくる。攻撃の動作は単純なものであったが、制圧射撃をものともせずに進んでくるのは厄介であった。
スカウトボールが伝える情報をユージィーンは理解した。
「パワーアシスト……! 強行突破するつもりか!」
パワーアシスト機能に蓄積された電力によって『サイバー・レイダー』は一気にユージィーンとの距離を詰める。
「お前達さえいなければ、事は簡単にすんだのダ! 我々が奪う側だと、知らしめることができタのダ!」
振るわれる機械鎚の一撃と伸ばしたレフトアームが激突する。
しかし、ユージィーンのレフトアームが砕け散る。粉々に砕けても尚、ユージィーンはひるまなかった。
なぜなら、彼はフルボーグタイプの体を持つものである。
例え破損したとしても、費用はかさむだけだ。それよりも補えぬ生命が奪われようとしていたことを止められたことのほうが彼にとっては大事なことであり、優先すべきことであった。
「破損……しかし、掴んだぞ!!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
「Hasta la vista, baby.(地獄で会おうぜ、ベイビー)」
その鉄面皮の広角が僅かに上がる。
それはユージィーンと、相対する『サイバー・レイダー』にしかわからぬほどに僅かな変化であったが、確かに彼は笑ったのだ。
何故、と理解するよりも速く、彼のユーベルコード、超龍炎爆撃(ドラゴンエクスプローション)が発動する。
それは自身が戦闘不能になってもなお、敵に打撃を与えると決意した決死の一撃である。
そう、ユージィーン自身が爆心地となって放たれる凄まじい爆撃の一撃は、レイダー・キングたる『サイバー・レイダー』をしてもなお、その装甲を溶け落とすには十分すぎる威力を持っていた。
「馬鹿ナ! 自身の機体保全を棄てる、だト――!?」
『サイバー・レイダー』にとって、それは自殺行為そのものであった。
けれど、ユージィーンは躊躇わなかった。
己の持てる最大火力を持って敵を討つ。
例え、己が戦闘不能になったとしても続く者がいると知っているからこそできる攻撃であった。
「あとは任せた!」
凄まじい爆風に煽られ、ユージィーンの身体が宙を舞う。
しかし、その腕、掌が雄弁に伝えている。
その言葉の意味を。
後に繋ぐ戦いの楔となったことを示すように親指を立て、続く猟兵たちに勝利の道筋を示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「これで舞台は整った。
さあ、始めようか。」
フレイムテイルから炎を生み、
辺りの炎に紛れさせ不意を突く様に
足元や背後から焼いていく。
「その機械の体でも暑さを感じるのか?
生きたまま焼かれる気分はどうだ?
その炎でもお前達の犯した罪に比べれば温い位だろうが。」
と敢えて【挑発】する様に語り、敵が略奪を宣言すると。
「そうくると思ったよ。
まだ自分が奪う側にいると思っているならね。」
を発動。敵の感覚を狂わせ【呪詛】により体を破壊。
更に赤眼に魔力を注いで動きを封じて
その間にフレイムテイルの炎で周囲を囲んで
一気に大出力の火炎を解放し焼き尽す。
「もうお前が奪えるものは何もない。
できるのは此処で静かに果てる事だけだ。」
ユーベルコードの凄まじい輝きに呑まれたレイダー・キングたる『サイバー・レイダー』の機械の体、その装甲が焼け落ち、内部フレームがむき出しになりながら一歩前に踏み出す。
『奪う者』から『奪われる者』に堕ちた己を呪うように、『サイバー・レイダー』は咆哮する。
それは今までとは違う咆哮であった。
猟兵に与えられた恐怖に怯えるだけの存在ではなくなっていた。
そこまで追い込まれたという事実はあれど、『サイバー・レイダー』は奪われたものを奪い返す者へと変貌を遂げるのだ。
「奪われたのならバ、奪い返せばいいだけの事ダ! 我々は依然――」
『奪う者』であると咆哮が告げる。
その咆哮によって、フレームがむき出しになった身体を引きずりながら、機械鎚を振るい上げる。
しかし、その姿を前にして、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は先行した猟兵が紡いだ戦いの軌跡を繋ぐ。
楔のように打ち込まれたユーベルコード。
その次を更に繋ぐのが己であると知るのだ。
「これで舞台は整った。さあ、始めようか」
彼が手にするのは炎のラミアを封じた魔本を黒手袋に変じた拳から溢れる炎に紛れながら、爆炎の中を駆ける。
放つ炎が『サイバー・レイダー』の咆哮を遮るように足元と背後から襲う。
「ヌ――ッ! そこカ!」
振るわれる機械鎚の一撃を躱しながら、フォルクの拳が叩きつけられる。
噴出した炎が、フレームの中に入り込み、その内部を焼く。
「その機械の身体でも熱さを感じるのか? 生きたまま焼かれる気分はどうだ?」
打ち付ける拳の威力が上がっていく。
それはこれまで『サイバー・レイダー』が奪ってきた命の痛みであったことだろう。
フォルクは怒りと共に哀切を振り切るように炎を噴出させる。
「その炎でもお前達の犯した罪に比べれば温い位だろうが」
「ぬかセ――! 我々は存在したときから、『奪う者』ダ! 弱者ではなイ! 我々は略奪する側なのダ! 断じテ!」
お前達に奪われる存在ではないと咆哮する。
瞬間、フォルクのフードに隠れた顔が笑う。
「そうくると思ったよ。まだ自分が奪う側にいるとおもっているならね」
その瞳がユーベルコードに輝く。
闇に浮かぶ瘴気を纏う不気味な無数の赤眼が炎の紛れて、『サイバー・レイダー』の姿を捉える。
片時も視線は『サイバー・レイダー』から離れることはない。
あまりにも不気味な光景であった。
それこそが、誘いの魔眼(イザナイノマガン)である。恐怖すら覚える光景に『サイバー・レイダー』はたじろいだ。
何故、己をその眼が見ているのかわからない。
何が言いたいのかわからぬほどに強烈な視線が彼の身体を貫くのだ。
「な、なんダ、これハ……! この眼ハッ!」
「もうお前が奪えるものは何もない」
フォルクの声が嫌にはっきりと戦場に響き渡った。
流し込まれた呪詛は、『サイバー・レイダー』の身体を内側から破壊していく。
感覚を狂わされ、さらに魔眼に注がれた魔力が肉体と精神を蝕んでいく。
それは耐え難い苦痛であったことだろう。
「巫山戯るナ! 我々はまだ奪ウ! 奪って、奪って、奪い尽くしテ! 己の欲望のためにこソ!」
略奪し続けるのだと怨嗟の如き咆哮を轟かせる。
しかし、知るといい。
生まれたてきたが故に、常に生命は奪い奪われるものである。それは言葉を変えれば、与え、与えられるということでもある。
それを忘れた者に明日は来ない。
「できるのは此処で静かに果てる事だけだ」
フォルクの持てる魔力を注ぎ込んで発露する炎が、大出力の火炎を開放し、『サイバー・レイダー』の身体を焼き尽くす勢いで迸る。
放たれた拳が『サイバー・レイダー』を吹き飛ばし、フォルクは炎だけが彩る戦場で喪われた生命の仇を討つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
支倉・錫華
【セレーネ大佐と】
『虎の尾』とか『竜の逆鱗』とか、
人外みたいな言われようだね、心外だなぁ。
とはいえ猟兵以外から見たら、似たようなものか。
わたしは安心して指揮ができるように、
中央にいる大佐の護衛につこう。
んー……さすがボス。
人数的にもちょーっと不利な感じだし、
力推しだけではなかなか攻め切れない感じかな?
あ、ミスランディアの言ってた策は使えるかも。
指揮官を囮にして、相手部隊を突出させ、
包囲作戦とかいいかもしれない。
わたしはこっそり隠れて、
弾に当たらないくらいに大佐を露出させよう。
攻撃は【エニア・スライサー】で叩き落として大佐はちゃんと守るよ。
だいじょぶだいじょぶ、しっかり守るから泣かない。
セレーネ・ジルコニウム
錫華さんと
「出ましたね、敵の親玉!
指揮官さえ叩けば軍は総崩れです!
私達の前に姿を現したのが運の尽きでしたね!」
『その台詞、おぬし自身にブーメランしておらんかのう?』
サポートAIミスランディアのよくわからない言葉はスルーして、この時のために潜ませていた【特殊部隊】の皆さんを呼び出します!
「さあ皆さん、やってしまってください!」
武装した部隊員たちに攻撃を指示しつつ、トゲ付きボンテージ衣装姿で私も銃で攻撃です!
「なんか部隊員の皆さん、いつもよりテンション高くありません?」
『おぬしが過激な格好しとるからのう』
ですが、敵の機械化レイダー部隊に数で押され始め……
「うえーん、錫華さん、どこいったんですかー」
猟兵の戦いは常に繋ぐものである。
たった一人で強大なるオブリビオンを打倒することは叶わず。
けれど、これまでもそうであったように猟兵たちはいつだって勝利してきた。戦いとは常に一人で決するものではない。
オブリビオンが強大であることは変えられない。けれど、猟兵たちは隣に立つ戦友と共に戦うからこそ、力を発揮し、打倒せしめるのだ。
「出ましたね、敵の親玉! 指揮官さえ叩けば軍は総崩れです! 私達の前に姿を現したのが運の尽きでしたね!」
爆炎が上がる廃工場跡地。
そこにあったのは猟兵によって消耗させられたレイダー・キング、『サイバー・レイダー』の満身創痍なる姿であった。
装甲は砕け、溶け落ちている。
それほどまでに強烈なる攻撃であったのだろう。
『その台詞、おぬし自身にブーメランしておらんかのう?』
サポートAIのミスランディアの言葉にセレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)は小首をかしげていたが、支倉・錫華(Gambenero・f29951)は同意するように声を発することなく頷いていた。
けれど、錫華にとってセレーネとは守るべき指揮官である。
彼女が安心して指揮できるようにとセレーネを中心に、特殊部隊(スペシャル・フォース)の隊員たちと共に護衛に付くのだ。
「『虎の尾』とか『竜の逆鱗』とか、人外みたいないわれようだけれど、心外だね」
錫華にとって猟兵とは傍らにある者である。
だからこそ、『サイバー・レイダー』の態度には僅かに抵抗があるのだ。
「我々は奪う者ダ! 未ダ!」
溶け落ちた装甲の中でパワーアシストが電力を消費して、機械鎚を振るう『サイバー・レイダー』の身体を駆動させる。
その姿はまさに一騎当千のレイダー・キングとしての実力を兼ね備えていたものであった。
「我々ハ! 奪ウ! 奪ウ!」
召喚された機械化レイダー軍団とセレーネの指揮する特殊部隊が激突する。
「ガルヴォルンの精鋭の力、見せてあげまさほう。さあ皆さん、やってしまってください!」
棘付きボンテージ姿のセレーネが指揮を取る。
その姿は妖艶というか、過激というか、ともかく彼女とおそろいの錫華の衣装は特殊部隊の隊員たちの指揮を高揚させるには十分すぎるものであった。
「なんか部隊員の皆さん、いつもよりテンション高くありません?」
『おぬしが過激な格好しとるからのう』
サポートAIのミスランディアの言葉にやっぱりよくわかっていないセレーネであったが、錫華はよくわかっているようだった。
けれど、そうこうしている内に数で勝る機械化レイダー軍団んいセレーネたちは押され始める。
「んー……さすがボス。人数的にもちょーっと不利な感じ」
錫華は戦局を見極める。
確かに押し切られるまではないが、このままではこちらが消耗するのが早いだろう。
だからこそ、錫華はあえてセレーネを敵に露出させる。
そう、サポートAIミスランディアが言っていたように、ブーメランである。こちらの指揮官であるセレーネをあえて晒すことによって、敵の突出を誘うのだ。
「奪ウ! 何も、我々は奪われなイ! 奪われないのダ!」
機械鎚を振るい、こちらに突撃してくる『サイバー・レイダー』の姿は鬼気迫るものがあった。
それだけ彼が追い詰められている証拠であろう。
錫華は愚かであると断じた。
奪う側にしか立っていなかった者が、奪われる側にたって初めて得た感情。それに翻弄されている。
それはあまりにも戦巧者である錫華にとっては悪手でしかなかった。
突出した『サイバー・レイダー』を取り囲む特殊部隊の隊員たち。けれど、強大なオブリビオンを仕留めるには足りない。
「うえーん、錫華さん、どこいったんですかー」
セレーネはじりじりと戦線を押し上げる『サイバー・レイダー』と、いつの間にか別行動をして姿の見えなくなった錫華を呼ぶ。
しかし、振るわれた機械鎚がセレーネに迫った瞬間、横合いから放たれた九枚の真空輪刃が『サイバー・レイダー』の身体を吹き飛ばすのだ。
「だいじょうぶだいじょうぶ、しっかり守るから泣かない」
錫華は、九芒真空輪(エニア・スライサー)の一撃を『サイバー・レイダー』に叩き込んでから、セレーネをなだめる。
結果として敵の虚を突くことができたのはよかったが、此処までセレーネに不安を覚えさせるつもりなんてなかったのだ。
ちゃんと守ると決めたのだから、錫華はそれを守る。
セレーネは錫華の姿に笑顔を向けてくれている。誰かのために戦う者にこそ、力は宿るのであれば、錫華はセレーネの笑顔のために今は戦おうと決めた。
彼女たちの絆は、きっとこれからも揺るぎないものとして、オブリビオンとの戦いに必要不可欠なものとして、紡がれていくのだろう。
それを証明するように、『サイバー・レイダー』が瓦礫と炎に包まれ、召喚した機械化レイダー軍団が霧散していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アビー・ホワイトウッド
〈ユウキ・スズキと参加〉
アドリブ、連携歓迎!
敵は浮き足だっている。やるなら今。それにしても呼んだ助っ人がなかなかこない。遅刻。あとでご飯と弾薬と燃料を奢って貰おう。そうしよう。
◯
物陰から隙を伺い爆発性燃料を詰めた火炎瓶を投擲。交戦開始後は物陰を移動つつアサルトライフルの短間隔の連射で弾丸を浴びせて行く。
ユウキ、流石グリモア猟兵。えげつない転移の仕方。それはそうと敵がかなりタフ。手を貸して。
ユウキの戦闘に合わせて銃撃しながらあのサイボーグ野郎を狙うのに最適な位置に密かに移動する。それにしても派手な戦い。
105mm無反動砲に弾頭をセットして準備。UC発動と同時にお見舞いする。
「地獄に落ちろ」
ユウキ・スズキ
<アビー・ホワイトウッドと共闘>
突然液状化した地面からひょっこり
「アビーさんねぇ……何かあれば呼べとは言ってあるが、本来俺は戦闘に参加する側じゃあねぇんだぜ? まして"屑鉄"掃除かよ」
沼から上がりつつレイダーキングを見て
「まぁいい。さっさと終わらせよう」
アビーと共にSchwertleiteで周囲の機械化レイダーごと制圧射撃。
機を見て義手のアンカーショットで対象を拘束しアビーの"大火力"の起点を作る。
「……ま、壊れてもいいか。たまにはグリモア持ちに修理費を請求する側になるのも悪くない」
UC使用
「まぁ、鉄屑潰すにはお似合いさね……潰れろ、カンカラ野郎」
吹き飛ばされたレイダー・キング、『サイバー・レイダー』の身体が炎と瓦礫に包まれるも、次の瞬間それらを吹き飛ばすように立ち上がってくる。
手にした機械鎚を振るい、周囲の残骸を振り払った『サイバー・レイダー』の姿は最早、満身創痍なる状態であった。
装甲は溶け落ち、フレームが露出している。
さらに肩はえぐられ、腕部には傷跡が刻まれている。
そんな状態にあっても尚、『サイバー・レイダー』は己が未だ『奪う側』であることを自負していた。
「猟兵、猟兵さえ、潰せれバ……! また元通りのはずダ。明日も、明後日も、ずっと、ずっと我々は奪う側ダ!」
咆哮が轟き、内部フレームに搭載されたパワーアシスト機能が唸りを上げる。
迸る咆哮によって現れた機械化レイダー軍団の数は未だ圧倒的であった。
けれど、その姿を見てアビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)は敵が浮足立っていると判断した。
「やるなら今」
そう判断して彼女は駆け出す。
けれど、彼女には心配事が一つあった。それは助っ人の存在である。彼女は強大なオブリビオンを前にして彼女の知る信頼の置ける猟兵を呼んだのだが、その猟兵がなかなか姿を表さないのだ。
瓦礫と化した廃工場跡地の物陰から隙を伺い、爆発性燃料を詰めた火炎瓶を投擲し、『サイバー・レイダー』の気を引く。
炎が再び、その身体を焼くが、同時にアビーの存在を彼に伝えてしまうことになる。機械化レイダー軍団がアビーの潜んでいた物陰に殺到するが、すでにそこにアビーの姿はない。
すぐさまにポイントをすて、アサルトライフルを細かく連射し、機械化レイダー軍団に弾丸を浴びせながら駆けるのだ。
「遅刻。後でご飯と弾薬と燃料を奢って貰おう。そうしよう」
うん、そうしなければならないとアビーはいつのまにか、そんな約束を自分の中に課す。
そうしたって文句はいわれないだろうと、いつの間にか法外な契約が成立しかけた時、液状化した地面からひょっこり顔を出したのは、ユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)の顔であった。
「アビーさんねぇ……何かあれば呼べとは言ってあるが、本来俺は戦闘に参加する側じゃあねぇんだぜ?」
そんなふうに憎まれ口を叩くユウキの姿を見て、アビーは軽口を叩くように見下ろす。
「ユウキ、流石、えげつない転移の仕方。それはそうと敵がかなりタフ。手を貸して」
アビーの言葉にユウキは『サイバー・レイダー』の姿を見やる。
これまで数多の猟兵達の攻撃を受けて尚、その力は健在である。ユーベルコードによって機械化レイダー軍団を指揮し、さらにはパワーアシスト機能によって尋常ならざる膂力を発揮する姿は、アビーの言葉を裏付けるには十分なものであった。
だが、ユウキは沼のように変化した地面から這い上がり、『サイバー・レイダー』に視線を向けつぶやくのだ。
「まして“屑鉄”掃除かよ。まぁいい。さっさと終わらせよう」
シュバルトライテよ呼ばれる大口径自動小銃を切り詰め、カスタムされた銃を手にアビーとユウキは機械化レイダー軍団へと斉射を加える。
放たれた弾丸が凄まじい勢いで機械化レイダーたちをなぎ倒していく。
重厚から放たれる光が明滅するたびに機械化レイダーたちが倒れていく姿は確かに派手な戦いであったことだろう。
アビーは手にした無反動砲に弾頭をセットする。
それは大きな隙になったであろう。それを見逃す『サイバー・レイダー』ではない。けれど、アビーは何も心配していなかった。
自分が何かをしようと判断した時、すでにユウキが放った義手に装備されたアンカーショットによって『サイバー・レイダー』の動きが止められる。
「悪いな。そこから先には進ませない。そういうことになっているんでね」
ぎりぎりと『サイバー・レイダー』の動きが鈍る。
完全に止められぬのは、彼のパワーアシスト機能に充填された電力の力であろう。
だが、それだけ十分だった。
アビーが照準器を覗き、集中するだけの時間は稼げたのだ。
「当てる」
短く呟いたアビーの瞳がユーベルコードに輝く。
狙撃(ソゲキ)。それは言葉にすれば短く、簡単なことであったことだろう。けれど、戦場においては様々な要因が絡みつくように狙撃の精度を落としていく。
極限の集中。
それによって齎されるアビーの射撃は必中である。放たれた無反動砲の弾頭が『サイバー・レイダー』の身体へとぶつかり、爆炎を再び巻き起こさせる。
その火柱のように立ち上がった一撃をもってしても、未だ『サイバー・レイダー』は消滅しない。
「まだダ! まだ、終わらなイ! 奪ウ! 我々に明日を奪わせロ!」
奪う者として存在したからこそ出る怨嗟の言葉。
彼らにとって奪うこととは存在することなのだろう。だから、躊躇なく奪うことができる。
けれど、アビーにとってそれはどうでもいいことだった。
爆炎の中から『サイバー・レイダー』が飛び出してくる。けれど、アビーは小さく呟いた。
「地獄に落ちろ」
その瞬間、ユウキの左腕の義手がユーベルコードに輝く。
それは全てを焼き尽くす暴力(オーバードウェポン)であった。瓦礫と化した廃工場跡地の柱を引き抜き、己の身体の三倍はあろうかというコンクリートの柱を掲げる。
義手に対する過負荷に警告が響くが、ユウキは無視した。
どうせ壊れてしまうものである。
「……ま、壊れてもいいか。たまにはグリモア持ちに修理費を請求する側になるのも悪くない」
アビーに迫る『サイバー・レイダー』は見ただろう。
己の姿を遥かの超える圧倒的な質量が己に降り注ぐように叩きつけられる光景を。
それは理不尽と呼ぶに相応しい光景であった。
一切の妥協を許さぬ滅びの一撃。
「まぁ、鉄くず潰すにはお似合いさね……潰れろ、カンカラ野郎」
放たれたコンクリートの塊に寄る一撃は、しかして『サイバー・レイダー』の絶叫をかき消し、凄まじい轟音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
愛久山・清綱
(黒装束を纏った男が駆け抜けてきたのだが)
加勢に来たでござるよ……っておおっ!!
既にドンパチやっていたようだな。
■闘
更に、足場や建物が悲鳴を上げている……
すぐに終わらせねば此方も危ない。速めに決めねばな。
敵は確かに戦闘力が強化されるが、その分【見切り】易い。
敵の振るう武器の軌道を目視し【怪力】を込めて【武器受け】、
受け流しつつ、【残像】を見せつけレイダーと距離を取る。
そこから居合の構えを取り、【早業】の抜刀から『距離』の概念を
断つ【無刃・渾】を放ち、其の身体をすっぱりと【切断】せん。
戦場に『道理』の二字は無し……其方達が一番わかっている筈だ。
※アド歓不採用可・可能であればトドメNG
コンクリートの塊が大地に叩き付けられる轟音が鳴り響く。
それは猟兵たちにも知らしめる一撃であったし、けれど、戦いが未だ終わらぬことを告げていた。
「加勢に来たでござるよ……っておおっ!! 既にドンパチやっていたようだな」
黒装束を身に纏った愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が駆けつけた時、扇状となった廃工場跡地は圧倒的な破壊の痕が残されていた。
瓦礫と化した人間狩りを行うレイダーたちが集う基地は吹き飛ばされ、その首魁である『サイバー・レイダー』は猟兵達による度重なる苛烈なる攻撃の前に満身創痍であった。
しかも、彼が駆けつける直前に打ち込まれた一撃は並のレイダーであればすでに滅んでいてもおかしくないものであったが、機械鎚を振るいながら瓦礫の跡から見を這い出した『サイバー・レイダー』はパワーアシスト機能によって、さらなる膂力を発揮していた。
「フッ――! フッ――! まだダ!」
その表情は機械化されているがゆえに判然としない。
けれど、清綱にはわかっていた。あれは存在して初めて恐怖を感じている者の顔だ。
今まで奪う側でしかなかった者が、初めて奪われる側に立ったのだ。
その恐怖はどれほどのものであるか言うまでもない。
「……すぐに終わらせねばこちらも危ない。速めに決めねばな」
すでに戦いの場となった廃工場跡地はあちこちで悲鳴を上げている。一度崩れれば、連鎖的に瓦礫が己たちを襲うであろう。
だからこそ、早期に決着を付けなければならなかった。
「猟兵がいるから、我々の存在が脅かされル! 許されなイことダ!」
清綱の姿を認めた『サイバー・レイダー』が凄まじい速度で迫る。
振るわれる機械鎚の一撃は、清綱とて当たればタダでは済まないだろう。けれど、その動きは強化されているがゆえに直線的であった。
言ってしまえば、見切りやすいものであった。
「……感情的。機械の体に身をやつしたとて、その心に宿る感情に左右されるか」
振るわれる機械鎚の一撃を清綱は手にした刀で受け止める。
いや、受け止めるのではなく、受け流すのだ。動きが直線的で強大であればあるほどに、清綱の業の冴えは凄まじいものとなって、かの機械鎚の直撃を受けること無く、大地をえぐらせるのだ。
「――ッ!?」
一瞬の残影。
清綱の姿が残像となって『サイバー・レイダー』の視界に映る。
それは驚異的な速度であったことだろう。
瞬時に距離をとった清綱が構えるは、居合。
鞘に刀を納め、柄に手を添える。
「戦場に『道理』の二字は無し……其方達が一番わかっている筈だ」
けれど、其の言葉は届かない。
なぜなら、道理なく奪い続けてきた者たちに、自分たちがその道理無く奪われるいわれはないと信じているからだ。
だからこそ、反応が遅れる。
これより行われる斬撃は理不尽そのものである。
「……奥義、無刃」
清綱の放つ居合の一撃はユーベルコードに昇華する。
名を無刃・渾(ムジン)。
その一撃は原理や概念すらも断ち切る刃となって、『サイバー・レイダー』の持つ『奪う者』としての概念すらも斬り捨て、その胴を一撃のもとに切り裂く。
噴出する血潮のようなオイルが吹きすさび、けれど、その一滴すらも清綱の装束に染みを作ることはない。
それほどまでの剣速。
決して破れぬ一撃は、清綱の信念と共に『サイバー・レイダー』の身体を引き裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
いやー派手にやってるねー
お祭りかな?
皆気の良い飲み友だったのに畜生だれがこんなことを…!
こうなったらアレ
サイバーやめて栽培レイダーにでも転職しよう
ダメ?
土いじりも楽しいらしいよ
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【偽書・焔神】を起動
両剣に蒼炎を纏わせて迎え撃とう
敵の近接攻撃を『武器受け』しつつ『カウンター』で炎で燃やしていく!
続けて斬撃や『串刺し』して追撃して延焼部位を増やしていこう
他の炎とは違うよ?君を燃やし尽くす、浄化の炎。
さあ、ハンマーを鍬に持ち替えて今からでも転職しよう!
まあマジで転職されても吃驚して困るけどさ
アーマーも回収したかったけどボロボロだしいーらないっと
レイダー・キング『サイバー・レイダー』と猟兵の戦いは夜であっても昼のような明るさを誇る悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』にあって尚、凄まじい光を放っていた。
爆弾の爆発は凄まじく、人間狩りを行うレイダーたちが集っていた廃工場跡地は今や見る影もない。
それほどまでに多くの爆弾が設置され、人狩りマシン諸共吹き飛ばしていたのだ。
無論、集っていたレイダーたちが無事であるはずもない。
「いやー派手にやってるねー。お祭りかな?」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は何の気無しに呟いた。
派手だ派手だと思っていたけれど、ここまで盛大にふっ飛ばされるとは思っていなかったのかも知れない。
彼女はレイダーに扮して、彼らの気を引きつけるようにどんちゃん騒ぎに興じていた。いや、興じていたのではなく、それが作戦であったのだ。
いやほんとに。玲さんの名誉のために言っておく。
「皆気の良い飲み友だったのに畜生だれがこんなことを……!」
いや、割りと本当に飲み会楽しんでいただけかもしれない。
少し自信がないが、それでもやることをやるのが玲である。
「こうなったらアレ。サイバーやめて栽培レイダーにでも転職しよう。それが天職だよ、きっと」
そんなふうに冗談まじりに『サイバー・レイダー』へと告げる。
目の前の『サイバー・レイダー』はすでに苛烈なる猟兵の攻撃を受け続け、満身創痍であった。
もうどうにもならない。転職どころではない。
奪わない生活もあるんだよ、と諭した玲に対する返答は機械鎚の一撃であった。
パワーアシスト機能によって蓄えられた電力を振り絞って放たれる一撃は凄まじい速度であったが、玲にとっては最早興味をそそられるものではなかった。
「ダメ? 土いじりも楽しいらしいよ?」
振り抜いた模造神器の二振りが蒼炎を纏って、機械鎚の一撃を受け止める。
女性の細腕とは思えぬ力で強化された膂力でもって放たれた一撃を迎え撃つ姿は、現実離れしていたかもしれない。
「――誰が、そんなことをするカ! 奪うことこそが、我々の存在意義ダ、奪って奪って奪い尽くして、死せる者からも奪い尽くすことこそガ!」
己達の意義であるとぎりぎりと機械鎚を玲に押し込むようにパワーアシスト機能が唸りをあげる。
けれど、玲は嘆息してつまらなそうにつぶやくのだ。
「システム切替、偽書・焔神起動。猛り、狂い、燃やし尽くせ」
模造神器に纏った蒼炎が吹き荒れる。放出された炎は『サイバー・レイダー』の身体へと燃え移るのだ。
それは周囲を取り囲む赤い炎とは対照的であった。
「他の炎とは違うよ? 君を燃やし尽くす、浄化の炎。さあ、ハンマーを鍬に持ち替えて今からでも転職しよう!」
レッツ自給自足! と玲は模造神器を振るう。
突き刺し、斬撃を加え、その満身創痍たる身体へと蒼炎を叩き込むのだ。それらは燃え尽きること無く、『サイバー・レイダー』の身体を燃やしていく。
例え、機械の体であったとしても関係ない。
彼女の放つ炎は消えることはない。例え、いくら消火機能があろうとも、鋼鉄の身体だろうとも、偽書・焔神(ギショ・ホムラカミ)は全てを燃やし尽くすのだ。
「まあ、マジで転職されても吃驚して困るけどさ」
それにアーマーも回収したかったのだけれど、時既に遅しである。
数多の猟兵達の攻撃によってボロボロに溶け落ちている。ならば、もう問答している時間すらも無意味だ。
「りょう、へい――ッ!!」
『サイバー・レイダー』の怨嗟の声が蒼炎の向こうから迸る。
けれど、玲は気にした様子もなく、一歩前に踏み出すのだ。互いの身体が交錯する。ただその一瞬の内に打ち込まれた斬撃によって、『サイバー・レイダー』は蒼炎によって浄化され、霧散して消えていく。
「もういいよ。君は」
蒼い炎が消えていく。
それは戦いの決着を告げるものであり、玲にとって新たな逃走劇の始まるを告げるものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『改造屍人『ナブラヘッド』』
|
POW : マスターキー
【高温に熱せられた斧】が命中した対象を切断する。
SPD : ダブルタップ
【戦闘補助プログラム】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【銃による連続射撃】で攻撃する。
WIZ : ナブラレーザー
【視線】を向けた対象に、【頭部から放たれるレーザー光線】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『人間狩り』を行うレイダーたちと、その首魁であるレイダー・キング『サイバー・レイダー』は潰えた。
廃工場跡地は見るも無残に爆弾によって吹き飛ばされ、最早再利用することはできないだろう。
未だ爆発の余波である炎は鎮火されていない。
レイダーたちにとって、それは大して重要なことではないのだ。
彼らにとって重要なのは、この蹴撃を行った猟兵たちを生きて『ヴォーテックス・シティ』から出してはならぬということだけであった。
炎をかき分けて進むのは、改造屍人『ナブラヘッド』。
その姿はレイダーたちの中にあって異様な存在でもあった。レイダー・キング『サイバー・レイダー』の直轄の配下たちであり、今際の際にダサれた『サイバー・レイダー』の司令を受け、猟兵たちを逃さぬと大群でもって襲い来る。
猟兵たちは、この大群を蹴散らし、『ヴォーテックス・シティ』から脱出を図らなければならない。
爆心地とも言うべき破壊の跡の周辺には無造作に置かれた重機やバギー、それに類する移動手段がある。
これらを活用するものいいだろう。
ともかく、猟兵たちは戦いの終盤……逃走劇を繰り広げなければならないのだ――。
村崎・ゆかり
よし、あたしたちはあのバギーを使おう。
燃料は十分ね。それじゃ、アヤメは運転よろしく。あたしは追っ手を撃退するわ。
「範囲攻撃」雷の「属性攻撃」で九天応元雷声普化天尊玉秘宝経を連打する。直撃しなくていい。視界を奪うことが出来れば、玉突き事故の発生よ。
移動中に黒鴉召喚で式を放って、逃げ道を「偵察」してアヤメに指示。
どうせなら、外まで一直線に走り抜けたい。
外が見えたら、雷撃を確実にレイダーを撃ち抜くように狙いを付けていく。いつか戦争でここに攻め込むんだろうから、敵は削れるときに削るべきよね。
よし、脱出。アヤメ、おつかれさま。これで失われるはずだった人命を救うことが出来たわ。小さなことからコツコツと。
改造屍人『ナブラヘッド』はレイダー・キングである『サイバー・レイダー』の今際の際に発せられた命令を忠実に遂行するように炎の壁をかき分けて行軍するに猟兵たちに迫る。
爆心地の如き廃工場跡地にあってもなお、彼らの進軍は止まらない。
彼らは命令されたのだ。
猟兵を討てと。
その命令を実行することだけが改造屍人『ナブラヘッド』の存在理由。
手にしたサーマルアックス、その高熱に達した斧の刃が白熱し、猟兵たちへと振り下ろさんとしている。
だが、猟兵たちもただ座して待っているだけではない。
この悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』には様々な物資が運び込まれ、そこら中に放置されている。
重機やバギー、移動の手段はそこかしこに存在しているのだ。
「よし、あたしたちはあのバギーを使おう」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は周囲を見回し、放置されていたバギーの状態を確認する。すでに燃料を確認した所、ガス欠の心配はいらないようだった。
「燃料は十分ね。それじゃ、アヤメは運転よろしく」
「ゆかりさんはどうするんですか?」
式神アヤメがバギーの薄汚れたハンドルを息を吹きかけて吹き飛ばしながら、問いかける。
その瞳にゆかりはにっこりと笑って言うのだ。
「決まっているでしょう。あたしは追手を撃退するわ」
彼女たちを追う改造屍人『ナブラヘッド』たちは改造バギーに乗って追走してくる。彼らを退けなければ、ゆかりたちは『ヴォーテックス・シティ』の外に出ることもできないだろう。
動き出したバギーの荷台にゆかりは立ち、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
その紫の瞳は明滅する雷撃と同じ色をしていた。
けれど、その眼差しと違うのは激烈なる雷撃が染め上げる視界の色であった。
白一色とも言うべき雷撃が落ちる光景は、改造屍人『ナブラヘッド』たちの視界を奪う。
しかし、バギーは止まらない。
当たり前である。彼らにとってバギーは自動で走行するもの。けれど、視界が塞がれてしまえば、自分たちがどのような進路を取っているのか、仲間たちがどれほどの速度を出しているのかさえわからなくなってしまう。
「なら、これで玉突き事故発生ってね」
九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソン)の一撃が視界を染め上げる中、ゆかりは自身たちを追走していた改造バギーが盛大にぶつかって吹き飛ぶ姿を見る。
「後は外まで一直線ね。アヤメ、ルートは確保できているから、黒鴉の指示にしたがって!」
ゆかりは『ヴォーテックス・シティ』の外壁を見やり、アヤメに指示する。
此処まで引き離せば、改造バギーも追ってはこれないだろう。
けれど、眼前に迫る改造屍人『ナブラヘッド』たちは、何処からともなくやってくるのだ。
「まるでたちの悪いホラー映画みたいな展開ね。けれど……――! 九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放つ雷撃がレイダーたちを彼女たちが駆るバギーに近づけはさせないのだ。
いつかこのアポカリプスヘルにもオブリビオン・フォーミュラが現れるだろう。その時の為に、オブリビオンであるレイダーたちの戦力を削れる時に削っておくべきであると考えたのだ。
敵を全滅させることはできなくても、それでも。
次々と雷撃が視界を染め上げ、そのたびにレイダーたちが消滅していく。
彼女たちの逃走劇を阻む者はなく、ゆかりは奪ったバギーと共に『ヴォーテックス・シティ』の外へと飛び出していく。
「よし、脱出。アヤメ、お疲れ様。これで喪われるはずだった人命を救うことが出来たわ」
そう、今回の戦いは小さなことであったのかもしれない。
けれど、この積み重ねがいつか、オブリビオン・フォーミュラに届くかもしれないし、文明の復興にも繋がるかもしれない。
例え、遠い道のりであったとしても、それはコツコツと積み上げていくしかないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
能力を使って待たせていたライドサーペントの蒼雷に【騎乗】して逃走
流石に熱いな、あいつらの頭も冷やしてやろう。蒼雷
明日の予定は無くなったんだ、海水浴でも楽しめ
SPDで判定
指定UCで俺と蒼雷の周囲を海に変えて【地形の破壊】【地形の利用】で進む
俺達が離れたら元に戻るから仲間の邪魔にもならないはず
蒼雷が【高速泳法】【水中機動】で動き回るのを俺は【息止め】【素潜り】【深海適応】で耐える
敵を海に引き摺り込んだら、銀腕を【武器改造】で銛の形にし【水中戦】を挑んで【串刺し】にしたり、【騎乗突撃】で攻撃する
爆炎が未だ消えぬ『人間狩り』を行おうとしていたレイダー・キング、『サイバー・レイダー』が人狩りマシンを格納していた廃工場跡地にて、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はライドサーペントの蒼雷の背に乗って、その光景を見ていた。
炎はあちらこちらで立ち上がっており、『サイバー・レイダー』の今際の際に発せられた命令を受けて、改造屍人『ナブラヘッド』達がなだれ込んでくる。
彼らの手にした銃火器が火を吹き、ルイスとライドサーペントの蒼雷の逃走を阻止しようと迫ってくるのだ。
「流石に熱いな、あいつらの頭も冷やしてやろう。蒼雷」
軽くルイスはライドサーペントの蒼雷の鱗を撫でる。
それは彼のユーベルコードであり、ライドサーペントの能力でもあった。
海竜が望む場所(オーシャン・ブルー)、即ちそれは、海である。自分の周辺を泳ぐことのできる海に変える能力によって、一斉に海水が溢れ、ライドサーペントの力は十全に発揮されるのだ。
波をかき分けるように蒼雷が周辺を海に変え、『ヴォーテックス・シティ』の外を目指す。
「明日の予定はなくなったんだ、海水浴でも楽しめ」
そんなふうにルイスは言い捨て、蒼雷と共に逃走を開始する。
改造屍人『ナブラヘッド』の銃火器による斉射は未だ続いているが、ライドサーペントの蒼雷が駆ければ、駆けるほどに周辺は海水に満たされ、遅い来波によって、『ナブラヘッド』たちは呑み込まれていく。
海水を満たした場所であれば、蒼雷を捉えられるものはない。
ルイスはしっかりと捕まって、海水へと変貌した地形を利用して『ナブラヘッド』たちの追撃を振り切るのだ。
「周辺を海に変えるだけで終わると思うな……! お前達の数は此処で減らして行く!」
ルイスの銀腕が変形し、剣の形へと変貌する。
海水の中を潜航して駆け抜けるライドサーペントの速度とルイスの変形させた銀の腕の刃の鋭さは、海水に引きずり込まれた『ナブラヘッド』たちを次々と切り裂き、霧散させていくのだ。
ここで彼らを打倒したとしても、彼らを全滅させることはできない。
それはルイスにもよくわかっていたことであったが、例え『人間狩り』が阻止できたとしても、彼らを生かしておく理由などルイスにはなかったのだ。
海水から飛び出すようにして、ライドサーペントの蒼雷の流麗なる鱗が『ヴォーテックス・シティ』に煌めく。
その背に捕まって飛ぶルイスの銀の腕さえも、煌々と焚かれた篝火を反射し、次の瞬間には海水に飲み込んでは闇夜に紛れて壁の外へと到達する。
「それじゃあな。お前達の滅びの時まで、その首を預ける」
ルイスは己の銀腕を翻し、一気に壁の外へと蒼雷と共に踊り出る。
きっと他の猟兵たちも首尾よく脱出できていることだろう。
ルイスにとって、今回の事件は許し難いことの連続であった。けれど、また一つ生者のために為すことができたという誇りだけが、己の胸の中にある。
それはきっといつの日にか花咲くことであろうし、この文明の荒廃した世界、アポカリプスヘルにおいても、明日を望む者達の礎になるであろう。
「それを信じて一つ一つやっていくしかないんだから――」
そう、ルイスは呟き活躍を見せてくれた蒼雷の鱗を労るように撫でるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユージィーン・ダイオード
―機能停止(ゲームオーバー)
―戦闘不能...。
敵の残像戦力を考えず、安易に自爆する。やはり貴様は甘い。
ここからは不肖の弟に代わり…オレが相手をしよう(猛牛再臨。兄参上)
こー言うときにお前ならこう言うのだったな。
武装展開(オープン・コンバット)
ユージィーンのデザートイーグルと零式直接支援火砲。少しの間借りるぞ。
デザートイーグルの乱れ射ちで愚弟に近づくレイダーを優先的に撃ち抜き、零式直接支援火砲の誘導弾で吹き飛ばす。
ふッ。ああそうそういい忘れていたが、そこにはあらかじめ破壊工作として爆弾を仕掛けていた。吹っ飛べ。
ああ、貴様ならこういう時にどう言う?
I'll be back
といって兄は立ち去る。
例え、己の身体が朽ち果てたのだとしても目的を達成する。
それがユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)の生きる意味であったのかもしれない。
かつて己の身体が朽ち果てようとしたときも、己は身体のあらゆる場所をサイボーグ手術によって延命するほどに生きる意味を達成しようとする意志があった。
誰にも穢すことのできない聖域のようなものであったし、事実、その意志がオブリビオン、レイダー・キングである『サイバー・レイダー』を追い詰めるきっかけになったことは間違いない。
ユージィーンの活躍によって『サイバー・レイダー』は打倒された。
けれど、機能停止に準じる損傷を受けたユージィーンは未だ立ち上がれずに居た。ここは悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』である。
この場から一刻も早く離脱しなければならないが、ユージィーンの身体は未だ損傷から立ち上がるのには時間を要していた。
「――機能停止(ゲームオーバー)」
身体のあちこちの機能が停止している。
復旧は未だ時間がかかることは明白であるが、そんな彼に迫るのは無情なる改造屍人『ナブラヘッド』たちであった。
彼らの手にした超高温へと達する斧の刃が白熱し、大気を揺らめかせている。
どれだけユージィーンがタフであったとしても、今の無防備なる状態で一撃を受ければ、今度こそ己は死という名の機能停止に追い込まれてしまう。
「――戦闘不能……」
白熱化した斧が振るわれる。
だが、次の瞬間、横合いから放たれた一撃によって改造屍人『ナブラヘッド』の大群が消し飛んでいた。
何が、と理解するよりユージィーンの機能停止している体に言葉が投げかけられる。
「敵の残存戦力を考えず、安易に自爆する。やはり貴様は甘い」
見えない。
けれど、その言葉をユージィーンは知っている。
そう、その声の主こそ行方不明のはずの長兄であった。
なにか言葉を紡ぐこともできず、ユージィーンはその言葉を聞くことしかできなかった。
「こーいう時にお前ならこういうのだったな。武装展開(オープン・コンバット)……少しの間だが、借りるぞ」
そう言って己の武装であるデザートイーグルと零式直接支援火砲が取り外される。
何事かをいいかけたユージィーンを遮ったのは、兄が手にしたデザートイーグルによって放つ弾丸の轟音であった。
「ここからは不肖の弟に代わり……オレが相手をしよう」
その言葉は宣言であり、宣告であった。
ここに猛牛再臨(コードオブバイソン)を果たした、ユージィーンの兄が戦場を駆け抜ける。
ユージィーンを抹殺せんと迫るレイダーたちを尽く打ち貫き、火力でもって駆逐していく。
その動きは凄まじいの一言であった。
同じ攻撃手段であるはずなのに、ユージィーンをして己よりも高い戦闘力を持つと言わざるを得ない。
己のようにサイボーグではなく、生身の人間が、だ。
「ふッ。ああ、そうそう……いい忘れていたが、そこにはあらかじめ破壊工作として爆弾を仕掛けていた」
その声を頼りにユージィーンはセンサーを働かせる。
彼のアイセンサーが感知したのは、己に迫るレイダーの大群。
「――吹っ飛べ」
けれど、その地面に強烈な熱源を感知した瞬間、兄が仕掛けた爆弾が火を吹くようにレイダーの大群を吹き飛ばすのだ。
例え一人であっても一歩もユージィーンに近づかせることなく兄の猛烈なる攻勢は続く。
「ああ、貴様ならこういう時にどう言う?」
戦いの音がやんでいる。
ユージィーンは未だ機能停止から立ち上がっては居ないが、兄に懸ける言葉を探す。
何を伝えるべきか。
なんと言うべきか。
彼は悩んだかも知れない。もしかしたのならば、未だ発声の機能が戻っていなかったのかも知れない。
けれど、それでもユージィーンの耳には兄の言葉が残っている。
「I'll be back」
その言葉とともに兄が立ち去ったのが、アイセンサーに頼らずともわかった。
機能停止から復旧した時、ユージィーンは見ただろう。
己を中心に壊滅させられたレイダーたちの残骸を。
そして、その力の凄まじさを。ユージィーンの胸中に如何なる感情が去来したのかはわからない。
それは彼だけが知る感情なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
あの爆発での後、
これだけ残っているとはね。
相手をしてやりたいのは山々だけど
これだけの数、全て相手にしていたらきりがない。
適度なところで脱出させてもらおう。
手頃な重機に乗り込むと暴走させる様に操縦し
ナブラヘッド撥ねながら移動。
敵を混乱させつつ移動速度の速いバキー置き場を目指し
適度なところで乗り換え。
脱出にシフト、敵を引き離しながら
不浄なる不死王の軍勢を発動。
魔物と死霊には敵の足止めをさせたり
脱出路の確保をさせ。
時には敵からの攻撃の盾として
自身はバギーの速度を上げて脱出に専念。
「そっちは数を頼みにするつもりだろうが。
此方もその手の戦い方はできるんでね。
目には目を。屍人の相手は魔物にさせるさ。」
悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』に溢れるオブリビオン、レイダーの数はどれほどのものであったことだろうか。
数え切れるものではなく、同時に『ヴォーテックス・シティ』がどれだけ広大な敷地を有することを知らしめるものでしかなかった。
猟兵達が吹き飛ばした『人間狩り』を行うレイダーたちの集う基地ですら、この都市に置いては一区画でしかないのだ。
例え、この基地を指揮するレイダー・キングを打倒できたとしても、また再び別のレイダー・キングが『人間狩り』を行うだろう。
それは焼け石に水のような行為であったかもしれないが、猟兵達の誰一人として悲観してはいなかった。
「あの爆発での後、これだけ残っているとはね」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は続々と炎をかき分けて群がるレイダーの大群を見て、そう呟いた。
レイダー・キングである『サイバー・レイダー』を打倒しても尚、その今際の際に発せられた命令を遂行するために改造屍人『ナブラヘッド』たちがフォルクに迫る。
「相手をしてやりたいのは山々だけど、これだけの数、全て相手にしていたらキリがない」
適度な所で脱出させてもらおうととフォルクは打ち捨てられていた手頃な重機に乗り込み、操縦する。
圧倒的な質量を持つ重機は、改造屍人『ナブラヘッド』たちを蹂躙するように暴走して『ヴォーテックス・シティ』の一角を走る。
だが、『ナブラヘッド』たちは混乱するどころか、重機に頭部から放つ熱線で応戦し始めるのだ。
例え、重機が重厚な装甲を持っていたのだとしても、そう長くは保たないことをフォルクは感じていた。
「流石に重機だけでは機動力が足りないか……なら」
フォルクは『ナブラヘッド』たちを引き倒しながら、バギーへと乗り換える。彼が重機をただ暴走させていたわけではなく、移動速度の早いバギーの置かれている場所を目指していたことを『ナブラヘッド』たちは気が付かなかった。
頭部から放たれる熱線は重機の装甲を貫き、爆散させる。
だが、すでに其処にフォルクの姿はない。
爆炎の中からフォルクはバギーと共に飛び出し、立ち塞がる『ナブラヘッド』たちを吹き飛ばして、そのフードの奥にある瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「偉大なる王の降臨である。抗う事なかれ、仇なす事なかれ。生あるものに等しく齎される死と滅びを粛々と享受せよ」
その詠唱の言葉とともに現れるは、無数の死霊と、それを貪り力を増す魔物の群れ。
即ち、不浄なる不死王の軍勢(デスロード)である。
彼らは呼び出された後、フォルクの逃走経路を確保するように『ナブラヘッド』たちと激突し、道をひらくのだ。
熱線が飛び、死霊たちを打ちのめしていくが、すぐさま彼らを超える魔物の群れが『ナブラヘッド』たちを蹴散らしていく。
それは数と数の戦いであった。
確かに軍勢の数は多い。
けれど、この『ヴォーテックス・シティ』にはそれを上回る数のレイダーたちがひしめき合っているのだ。
「そちは数を頼みにするつもりだろうが。此方もその手の戦い方はできるんでね」
フォルクの広角が僅かであるが上がる。
確かに今、数で押され始めている軍勢。
けれど、その最奥に控えるのは、軍勢の全てを凌駕する力を持つ骸骨姿の不死王である。
巨大なる不死王の腕が振るわれれば、それだけで集まってきたレイダーたちを吹き飛ばしていく。
「目には目を。屍人の相手は魔物にさせるさ」
フォルクは不死王が開いた道をバギーで疾走する。
すでに『ヴォーテックス・シティ』を脱出するには十分な距離を稼いでいる。後はあの壁を飛び越えるのみである。
不死王の腕を滑走路のようにしてバギーが走っていく。
腕から放たれたバギーとフォルクは、その背に煌々と明かりが灯り続ける不夜城の如き都市を背負い、彼らの企みの一つを確かに打ち砕いた実感を手に『ヴォーテックス・シティ』からの脱出を成功させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユウキ・スズキ
<アビーと共闘>
「じゃあ、お兄さん左手ぷらんぷらんだから必殺沼潜りでスタコラサッサするわ……ダメ?」
まったくこき使ってくれちゃってまぁ……
仕方ない、美少女に頼られるなら男冥利に尽きるってもんだ
「アビー、とっととラングレーを動かせ! ただでさえ腕がおしゃかだ! あれと白兵戦になったら保証出来ねぇぞ!!」
前章に引き続いての制圧射撃
片手が壊れて精度はお察しだが、まぁ元々大した精度は無いから気にしない気にしない
UC使用
「オラ、起きろ!状況はいつも通りの敵中枢、仕事はプリンセスと馬車のエスコートだ!いつものように片付けようぜ兄弟共!!」
ある程度間引いたらアビーのラングレーに取り付いて掃射しつつ撤退しよう
アビー・ホワイトウッド
〈ユウキと共闘〉
目標達成。追手がかかった。退避しよう。
「少しだけ時間が欲しい。外をお願い」
ユウキが戦って時間を稼いでいる間にトレーラーに寝かせた相棒の操縦席に乗り込んでシステムを起動。いい音。
トレーラーはナイアルテに頼んで後で回収してもらおう。
「オーケー。周りをクリアにする。ラングレーの真下に」
起動後、ユウキに警告したらSマインランチャーとガトリングユニットを作動して周囲の追手を掃除。それからUCを発動して歩行形態で全力移動する。
大きな通りを進み、手を出してくる敵や車両は装甲任せに文字通り蹴散らして進もう。
「踏まれたくなければどいた方がいい」
それでも邪魔する敵には遠慮なく主砲弾をお見舞いする。
「じゃあ、お兄さん左手ぷらんぷらんだから必殺沼潜りでスタコラサッサするわ……ダメ?」
そんなふうに溢れるレイダーの大群、改造屍人『ナブラヘッド』たちを見て、ユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は呟いた。
確認というよりお願いに近い言葉であったけれど、その言葉はアビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)に短く否定される。
「少しだけ時間が欲しい。外をお願い」
断られることもない。そんな雰囲気が言外に溢れ出ている。
むしろ、アビーは目標を達成したことと、これから逃走劇を繰り広げなければならないことへと意識を向けていた。
追手である改造屍人『ナブラヘッド』。
レイダー・キング『サイバー・レイダー』の今際の際に発せられた司令は猟兵たちを生きてこの『ヴォーテックス・シティ』から出すな、という単純な司令であった。
彼らはすでに死んでいる身。
恐れを知らず、またどれだけ仲間が猟兵に打倒されようとも、その屍すらも踏み越えて迫るのだ。
そんなレイダーの大波とも言うべき光景を目の前にして時間を稼いでほしいと頼られてしまったのならば、ユウキはため息をつく以外なかった。
「まったくこき使ってくれちゃってまぁ……」
だが、仕方のないことだ。
美少女であるアビーに頼られるなら男冥利に尽きるというものである。
ならば、それに応えるのもまた男である。
ユウキは迫る『ナブラヘッド』たちへと牽制の射撃を繰り出しながら、声を張り上げる。
「アビー、とっととラングレーを動かせ! ただでさえ腕がおしゃかだ! あれと白兵戦になったら保証できねぇぞ!」
ユウキの左腕、その義手は先の『サイバー・レイダー』との戦いで損壊している。
ゆえに右腕だけで戦っているのだが、未だ距離が開いた射撃戦のうちならば対応できるが、白兵戦に持ち込まれてしまっては、いつまでも時間を稼げるものではない。
それに片腕だけの射撃は精度が保てない。
精々牽制するのが良いところであろう。
「さあ、行こうか。相棒」
アビーは隠したトレーラーに寝かせた相棒――戦術二足歩行戦車 M102『ラングレー』の操縦席に収まって、息を吸い込む。
相棒の操縦席はいつだって落ち着くし、気分が高揚する。重装甲重武装の大型兵器である歩行戦車、『ラングレー』の操縦席、そのコンソールが次々と立ち上がっていく。
エンジンが唸りを上げ、炉心が燃えている。
ああ、と吐息が漏れる。それほどまでにシステムが起動し、『ラングレー』が立ち上がる瞬間は素晴らしい音がするのだ。
「いい音……調子が良いみたい」
それだけで心が浮き立つ気がした。
「オーケー。周りをクリアにする。ラングレーの真下に」
短くユウキに告げる。
ユウキはその言葉にしたがって、重装甲の二足歩行戦車の股下へと退避する。
次の瞬間、ガトリングユニットが回転し弾丸が超高速で放たれる。さらに打ち上げられた榴弾が展開され、散弾の雨を『ナブラヘッド』たちへと降り注ぐのだ。
その苛烈とも言える火力を前に『ナブラヘッド』たちはたちまちに霧散していく。
「オラ、起きろ! 状況はいつもどおりの敵中枢、仕事はプリンセスと馬車のエスコートだ! いつものように片付けようぜ兄弟共!!」
アビーとラングレーの攻撃によって『ナブラヘッド』たちの群れに穴が空く。
その瞬間、ユウキの瞳がユーベルコードに輝く。
戦場指揮官の手腕【真】(アビリティオブザバトルフィールドコマンダー)が今此処に発揮される。
かつての部下たちが躍り出る。
彼らと共にユウキは『ナブラヘッド』の群れに空いた穴を広げるように制圧射撃を繰り出し、この悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』からの逃走劇を開始するのだ。
「踏まれたくなければ退いた方がいい」
アビーの言葉も『ナブラヘッド』たちには届かないだろう。
ユウキの制圧射撃と六名の部下たちの活躍によって、『ナブラヘッド』の大群は海を割るように切り開かれていく。
ラングレーが放つ主砲弾が盛大に『ヴォーテックス・シティ』へと爆発と言う名の祝砲をあげ、まるで花道のように疾走していく。
ユウキはラングレーに取り付きながら、追いすがる『ナブラヘッド』たちを牽制し続ける。
「進路クリア! ハッ、あばよ、レイダー共」
咥えていた煙草を放り投げ、手向けとするようにユウキが再び制圧射撃を繰り出しあ、アビーの操るラングレーと共に壁へと迫る。
放つ砲弾が壁に大穴を開け、重装甲の二足歩行戦車が瓦礫を吹き飛ばしながら、『ヴォーテックス・シティ』を脱出する。
それはレイダーたちにとって屈辱以外の何物でもなかったことだろう。
「あ、トレーラー……後で回収してもらえばいいか」
アビーはトレーラーのことを思い出し、つぶやく。
けれど、それは些細なことだ。今は相棒の奏でる音に聴き入ろう。とてもいい音だ。
戦いの後だというのに、一切の乱れのない音を聞き、アビーとユウキは悪徳の都をさんざんかき回し、後にするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ゾンビ(?)と炎が迫ってくる中の脱出…前見た映画にこんなシチュエーションあったなぁ…
…なんて言ってる場合じゃ無いな…生きてる車が多いと言うことは燃料による二次、三次爆発が起こるって言うことだから早く脱出しないとね…
…改造装甲車【エンバール】に乗って脱出するとしよう…幸い、ここから脱出までの最短ルートは予めチェックしてある…
…そして、途中にある邪魔な瓦礫は【我が手に傅く万物の理】でリスト化…操作してどかして道を作ってしまえば良い…
…車で追いすがってくるナブラヘッドは運転技術で回避したり無機物の操作で事故を誘発したりしよう…
…脱出…(と同時に起る一際大きい大爆発)…ぎりぎりだったね…危ない危ない
レイダー・キングである『サイバー・レイダー』は猟兵たちによって打倒された。
後はこの悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』から脱出するだけである。
だが、今際の際に発せられた命令によって、猟兵達が壊滅させた『人間狩り』を行うレイダーたちの基地である廃工場跡地に迫るのは改造屍人『ナブラヘッド』の大群であった。
爆弾による爆発と爆炎、それをかき分けて進む改造屍人の姿は、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)にとって脅威ではなかったけれど、その数の多さは言うまでもなく窮地であった。
「……ゾンビ? ゾンビでいいのかな……ゾンビと炎が迫ってくる中の脱出……前見た映画にこんなシチュエーションあったなぁ……」
ぽつりとつぶやく。
確かに彼女の記憶にある映画のワンシーンと似たような状況である。
フィクションが今現実となってメンカルに迫っていることは言うまでもない。映画であれば見ているだけでいいが、今はそう言っている場合ではない。
周囲をざっと見回す。
あちらこちらに乗り捨てられたようなバギーや重機。それらが未だ生きているということは燃料が満タンではないにせよ、多少なりとタンクの中に燃料が残っているということだ。
「となれば……半端に残った気化した燃料に寄る二次、三次爆発が起こるっていうことだから早く脱出しないとね」
メンカルは己の所有する改造装甲車『エンバール』を駆り、爆炎が包み込んでいた『サイバー・レイダー』との戦いの場を突っ切っていく。
例え炎に巻かれようとも彼女の駆る『エンバール』はびくともしない。
「最短ルートをチェック。爆発の影響も加味しても……うん、行ける」
メンカルの電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』は周囲の状況をいち早く読み解いていく。
確かにどんな悪路出会っても『エンバール』は踏破することができるが、背後から迫りくる『ナブラヘッド』たちの攻撃にいつまでも耐えられるものではない。
「数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)。それは彼女の周囲にある無機物、即ち瓦礫や重機などをリスト化し、座標と構成要素の表記へと変換し操作する力である。
それによってメンカルは『エンバール』の行く手を阻む瓦礫をどかして道を作り出す。
「……まだ追いすがってくる……いや、四方八方から湧いて出てくるのか……これが『ヴォーテックス・シティ』……ほんとB級パニック映画じゃあるまいし……」
さらには改造バギーに乗って『エンバール』へと迫る『ナブラヘッド』たちもいるくらいである。
メンカルの映画遍歴がどれほどのものであるかはわからないが、その視聴した映画の様々な要因を組み合わせたような光景が『エンバール』の後に続いているのだ。
ゾンビやらマッドなやつやら、もうそれは大混雑である。
「……それでも追いつけないと思うけど……」
改造装甲車が華麗にドリフトを決めつつ、外壁をぶち破った猟兵が開けた大穴へと突進する。
最速にして最短。
そのルートをたどるメンカルを行かせぬと『ナブラヘッド』の頭部から放たれる熱線が放置されていた車両に打ち込まれ、気化していた燃料に引火市、盛大なる爆発を引き起こすのだ。
熱風が『エンバール』を押すように吹き荒れ、間一髪の所でメンカルは『ヴォーテックス・シティ』の外へと飛び出すのだ。
「……脱出」
確かに無事に脱出はできた。
けれど、メンカルは焦げ付いた装甲を見やりつぶやく。
「……ギリギリだったね……危ない危ない」
こんな時、映画の続編であれば、車両の下にゾンビが張りつているものであるが、メンカルの解析型眼鏡には、そのような情報はない。
息を吐き出しながら、これが映画ではなくてよかったと胸をなでおろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
支倉・錫華
【セレーネ大佐と】
ボスは倒せたけど、
わたしたちを逃がすつもりはなさそうだね。
やっぱり実力で脱出するしかないか。
アミシア、ミスランディア、
わたしたちの位置、補足してる?
ん、ありがと。ルートの指示お願いできるかな。
大佐は、操縦と射撃どっちがいい?
了解。
武器は積めるだけ積んだし、弾切れの心配はなさそうかな。
キャバリアが本職だけど、
軽装甲車だってちょっとしたものだと思ってるよ。
送られてくる走行ルートを確認しながら、
【操縦】と【地形の利用】【悪路走破】を使いながら、
『ヴォーテックス・シティ』から脱出していこう。
大佐、振り落とされないように気をつけてね。
あ、それと、風圧で衣装が飛ばされるのにも注意してね。
セレーネ・ジルコニウム
錫華さんと
「敵の指揮官は倒しました!
この勢いで一気にヴォーテックスシティを壊滅です!」
『ばかもん、追撃してくる敵の数がわからんのか!
ほれ、今レーダーに出してやるわい』
「はわわっ!?
なんか画面が真っ赤ですよ、錫華さんー!?
こほん。ガルヴォルンの大佐として指示します。
総員、戦術的優位な地点を確保するよう、各自の判断で後退です!」
『まあ、撤退とも言うのう』
錫華さんが運転する軽装甲車の助手席のドアから身を乗り出して、現地調達した武器で追撃してくる敵を迎撃です!
「って、きゃあっ!?」
『揺れとるから、車両から振り落とされんように気をつけるのじゃぞ。
あと、風で短いスカートがめくれとるのも注意するのじゃな』
戦いとは数である。
それは言うまでもなく在る一定の練度と質が揃うからこそ通用する言葉であるし、この言葉が正しいものであるということを保証するものではない。
けれど、今猟兵達が置かれている状況は正に、無限とも思えるレイダーたちの圧倒的な数の暴力に取り囲まれているものであった。
「ボスは倒せたけど、わたしたちを逃がすつもりはなさそうだね」
支倉・錫華(Gambenero・f29951)はセレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)を背にかばいながらつぶやく。
けれど、セレーネは少し様子が違った。
「敵の指揮官は倒しました! この勢いで一気にヴォーテックス・シティを壊滅です!!」
戦いの後だからかもしれないが、破竹の勢いで快進撃を続けようと思うのは無理なからぬことであったかもしれない。
けれど、それを制するのはセレーネの機械知性体ユニットである『ミスランディア』の言葉であった。
『ばかもん、追撃してくる敵の数がわからんのか! ほれ、今レーダーに出してやるわい』
提示されるレーダーの嬢を見たセレーネの目が真っ赤に染まる。
「はわわっ!? なんか画面が真っ赤ですよ、錫華さんー?!」
それは正に無限とも思えるほどにレーダーに示されたレイダーたちの数であった。
改造屍人『ナブラヘッド』たちの数は凄まじいものであった。
四方八方からセレーネたちを包囲しようと『ヴォーテックス・シティ』から集まってきているのだ。
「やっぱり実力で脱出するしかないか……アミシア、ミスランディア、わたしたちの位置、補足してる?」
錫華はため息を付くこともせず、セレーネの言葉に脱出の意志を固める。
すでにやれることは多くはない。
「こほん。ガルヴォルンの大佐として指示します。総員、戦術的優位な地点を確保するよ、各自の判断で後退です!」
『まあ、撤退とも言うのう』
ミスランディアとセレーネのやり取りを微笑ましく思いながら錫華は、軽装甲車の装甲をコンコンと叩く。
「大佐は、操縦と射撃どちがいい?」
アミシアと段取りを決めながら、セレーネに告げる錫華。
もちろん、どちらでもいいのだが自身は大佐の影となり、身を守るための存在だ。彼女が望むのならば、なんだってするだろう。
二人は装甲車に乗り込み、爆煙が渦巻く『ヴォーテックス・シティ』を走り始める。
「アミシア、ルートの指示をお願いね」
キャバリアを駆ることが本職ではあれど錫華のドライビングテクニックもまたちょっとしたものである。
アミシアから送られてくる装甲ルーツを確認しながら、勘所の冴え渡る運転で次々と瓦礫の山や重機が乗り捨てられている悪路を走破していくのだ。
「武器は積めるだけ積んでるから弾切れの心配はなさそうだけど……」
そう言って追撃してくる『ナブラヘッド』たちに反動の大きなバズーカを助手席から身を乗り出して迎撃するセレーネを見やる。
なんだか心配になってしまう。
「って、きゃあっ!?」
放った反動でセレーネの身体が窓から放り出されそうになるのを錫華は片手で掴みながら、今彼女達が身につけている衣装がレイダーファッションノリノリのボンテージ衣装であることを思い出す。
「大佐、振り落とされないように気をつけてね」
「は、はいぃ……」
『あと、風で短いスカートがめくれとるのも注意するのじゃな』
そんなやり取りが行われているとは思いもしないレイダーたち。
彼らの追撃は苛烈を極めるものであったけれど、錫華のドライビングテクニックを前に追いつけるものではない。
目下の心配事はセレーネである。
錫華は第八感の域まで高めた集中力をセレーネが危なくないようにと研ぎ澄ましていく。
アウェイキング・センシズとでも言うべきユーベルコードの力の使い所が若干違う気がしないでもないが、それでも錫華にとっての優先事項はセレーネを無事に『ヴォーテックス・シティ』の外まで護衛することだ。
それにあんなふうに見えても、セレーネは大佐である。
アドバンテージ・アンサーとでも言うべき凄まじい戦略眼は、味方であっても驚くべきものである。
「あーっ! めくれます! めくれてしまいます!」
今は風でめくれそうになるスカートをめっぽう気にしているばかりであるが、それもまた彼女の魅力でもあったことだろう。
錫華は、飛ばすよ、と小さく呟いて何処か楽しげな顔になりながら『ヴォーテックス・シティ』を爆発に巻き込ませながら、壁の外へと脱出を遂げる。
二人で居ると飽きない。
そんな感想を伝えるには今はまだ、落ち着いていないけれど。
それでもいつの日にか、あの時は、と語ることもできるだろう。そんな予見めいたことを思いながら、二人は爆炎を背負って荒野を突き進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
く…こんな状況なのに、何か炎の出るギターとかが何処にもない…!
こんな世界観なら必須だろうに…畜生!
…あ!
あー…いやでも…あー…
そんな不謹慎な事…やろうぜ!
●
周辺でなるべく大きな、荷台のあるような車を確保
運転は私!
『悪路走破』はお手の物!
さあ、今日はコンサートで派手に撤退戦だ!
【Call[Unit01]】起動
荷台におじさん達を乗せて、ブーブー吹いて貰って後方の敵に超音波の『衝撃波』で攻撃!
あふれたおじさんはブブゼラであの怪人殴っといてね!
霊だから使い捨てても心が痛まない!
へいおじさん追加!
おじさんの尊い犠牲は忘れないぜ…!
…おっと地獄かな?
地獄だったねこの世界観
でも…やっぱり世界観が悪いよなあ…
「く……こんな状況なのに、何か炎の出るギターとかが何処にもない……! こんな世界観なら必須だろうに……畜生!」
そんな声が悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』に響き渡る。
酷く場違いな気がしたが気にしてはいけないし、正直そんなことを突っ込むことの出来る状況でもなかった。
レイダー・キング『サイバー・レイダー』を打倒した猟兵たちを待っていたのは、爆弾の爆発に寄る余韻が残る廃工場跡地を包む爆炎と、それをかき分けるようにして猟兵を抹殺せんとする改造屍人『ナブラヘッド』の大群であった。
熱線を打ち放ちながら迫る姿は、まさに暴力の嵐であった。
けれど、月夜・玲(頂の探究者・f01605)はレイダーの一人くらいが必然性のない、あと必要性も感じない無駄にトゲトゲサビサビした装飾を身にまとい、火炎放射器でもないけど、ギターの弦をかき鳴らしながら登場してくれるのではないかと期待……いや、勘ぐっていたのだ。
「……あ!」
そんな玲が何か思いついた顔をする。
察しの良い者ならば、また玲さんが何かよからぬことを思いついた顔だなと理解することができたかもしれないが、幸いか不幸か。
誰も突っ込む人はいない。
「あー……いやでも……あー……」
悩むような、躊躇うような声を上げながら玲は、淀みない動作で周囲に乗り捨てられていた車両の中から、冷静にそして迅速に荷台のあるピックアップトラックの運転席側のドアを開ける。
言葉とは裏腹に少しも悩んでいない動作で、キーの付いていないエンジンを(企業秘密)で始動させるのだ。
「そんな不謹慎な事……」
まだ悩んでいる。素振り。
もう絶対やると決めている顔である。不謹慎なこと、と言いながら、完全にやる気である。
だって目の色が違う。
何故って。
その瞳はすでにユーベルコードに輝いていたから。
「……やろうぜ! さあ、今日はコンサートで派手に撤退戦だ!」
ひゃっほー!
最早一人ライブ状態である。Call[Unit01](コール・ユニットゼロワン)によって召喚されたブブゼラを吹くおじさん達の霊を召喚した玲は荷台に一杯彼らを載せ、ブーブー吹かせながらピックアップトラックを走らせるのだ。
瓦礫がなんだ。悪路がなんだ。
こっちは玲さんなんだぞ! という謎の理屈を振りまきながら、追いすがる『ナブラヘッド』たちをブブゼラの音色が打つ。
衝撃波が彼らの体を吹き飛ばしながら、けたたましい音を響かせて悪徳の都を疾走するピックアップトラック。
逃げているというより、暴走というか、珍走というか。もう『!?』っていうやつである。
「ひゅー! あぶれたおじさんはブブゼラで殴っておいて!」
召喚されるも荷台に乗り切らないおじさんたちを蹴り落として、後はしくよろです! と玲はレイダーも引くレベルの快走を続ける。
「霊だから使い捨てても心が傷まない……へいおじさん追加! おじさんの尊い犠牲は忘れないぜ……!」
きらっと玲さんの眦に光る何かが見えた気がしたが、気のせいである。
多分、言葉面が見せた幻覚である。
ブブゼラと奇怪な音とブブゼラでガンガン『ナブラヘッド』をぶっ叩く光景は、そう忘れられるものではない。
なんだか一人だけ毛色の違う撤退戦をしているような気もするが、気にしてはいけない。
「……おっと地獄かな?」
そんな光景を見やりながら玲はつぶやく。
確かに地獄である。
おじさんたちの見た目もシュールであれば、ブブゼラでぶん殴ってる様子も何か前衛芸術的なサムシングを感じる。
「地獄だったね、この世界観」
文明の荒廃した世界。アポカリプスヘル。
確かに人々は明日を求めた。どれだけ苦しくとも。どれだけ理不尽に塗れようとも。
けれど、期待していたのはこんなのではなかったはず!
それは玲もまた同様であった。
「でも」
そう、でも、である。
「やっぱり世界観が悪いよなあ……」
見た目って大切である。玲はピックアップトラックの運転席で、彼女の逃走劇の背後に巻き起こる混沌から目を背けながら『ヴォーテックス・シティ』から脱出を果たすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
かなりの数がいる。全て倒すのは不可能か。
適度に戦い、離脱するぞ。
■乗
近くにあるバギーに乗って逃げる。
種類は問わぬ、すぐ降りる故(←不穏)
■闘
バイクに乗り換えるぞ。
先ずは『バイクに乗った敵』の敵の接近を待つ。
現れたら【武器受け】の要領でわざとバギーに攻撃させ、
咄嗟の【ジャンプ】で飛び移り、敵の体を【怪力】全開で
【グラップル】し路に投げ捨てバイクを強奪。
その際は後続の敵を足止めできるよう、敵が密集した所へ投げる。
乗り換えに成功したらドリフトでバイクを横向きにしつつ、
居合の構えから【空薙】による【範囲攻撃】を仕掛け、
多重クラッシュを狙う。
振り切ったら出口まで一気に飛ばすぞ。
※アドリブ歓迎・不採用可
改造屍人『ナブラヘッド』の数は膨大と呼ぶに相応しいものであった。
超巨大都市である悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』に存在するレイダーの数がどれほどのものであるか全容を解明することができないと言わしめるほどに圧倒的な数が戦いの場となった廃工場跡地を取り囲む爆炎をかき分けて猟兵たちに迫る。
「かなりの数がいる。全て倒すのは不可能か……」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は即座に判断していた。
この悪徳の都において数とは即ち力である。
どれだけ猟兵の技量が高まろうとも、この都市に存在するレイダーたちを駆逐することは今は叶わないだろう。
「適度に戦い、離脱するとしよう……む、これでいいか」
清綱はその場に乗り捨てられていた改造バギーの状態を把握するまでもなく、即座にエンジンを始動させる。
もう少し選んだほうがよいはずであるが、清綱は構わなかった。
どうせすぐに降りるから、と清綱は考えていたが、その不穏なる考えは如何なるものであるのかを知ることになるだろう。
「そら、ぞろぞろとやってきたか」
改造バギーに追いすがる『ナブラヘッド』たちは二人乗りでバイクを駆り、清綱へと迫る。
その手にした白熱する刃を持つ大斧を清綱の乗るバギーへと振り下ろし、その装甲を刻む。
車体が大きくバウンドした瞬間、清綱の猛禽の翼が広がり、空へと舞い上がる。
「――ッ!?」
『ナブラヘッド』たちにしてみれば、それは意外な行動であったことだろう。
猟兵は逃げるものだとばかり思っていたから、なおさらである。その清綱の身体があろうことか、バイクに乗る『ナブラヘッド』へと盛大にドロップキックをお見舞いし、後部に乗って大斧を振るっていたレイダーを叩き落とし、交錯した瞬間、運転していた『ナブラヘッド』を有り余る膂力でもって掴んで、投げ捨てるのだ。
「他愛ない。馬上での戦いに慣れぬ者が騎兵を気取るか」
他の猟兵が見ていたのなら、きっとそういう話ではないと言う所であったが、ここに在るのは清綱だけである。
投げ捨てたレイダーから奪ったバイクにまたがり、清綱はドリフトの容量で『ヴォーテックス・シティ』の悪路に一文字のバイクスリップの痕を刻み込み、居合の構えを取る。
その瞳はユーベルコードに輝いていた。
「空薙(ソラナギ)……」
一瞬の抜刀術。
空間すらも断ち切る一太刀は、清綱に迫る『ナブラヘッド』たちを一閃の元に両断せしめるのだ。
まさに絶技と呼ぶに相応しい一撃は、一瞬の空白の後に盛大なる爆発と共に清綱を追っていたレイダーたちを一掃する。
「他愛ない。しかし、数だけは脅威とは……一体どれだけのレイダーが、この都市に潜んでいるのか……」
想像すらも難しいことではあったが、清綱は小さく頷いて再びバイクを走らせる。
再びこの悪徳の都に舞い降りることもあるだろう。
例え、今回の戦いが小さな一歩であったのだとしても、この闇黒に包まれる荒廃した文明を生きる人々にとっては礎となるはずである。
清綱は、そのために闘っているのだ。
己がどれだけ傷つき、消耗したとしても構わない。
そうするだけの価値があると知るからこそ、清綱は長い道のりの一歩であったとしても、躊躇うことなく踏み出すのだから――。
大成功
🔵🔵🔵